【SS】マルクト「ヒマリ、千年難題を解き明かすのです」Part10

  • 1125/08/12(火) 10:03:01

    それはセフィラたちの旅路の記録。

    晄輪大祭編、完結間際。舞台の上で踊るのは、世界を背負った者共ら。

    次なる相手は狂乱に飲み込まれた上位セフィラの最前線。倫理的三角形の頂点に立つ七体目の破砕者、ケセド。


    ※独自設定&独自解釈多数、オリキャラも出てくるため要注意。前回までのPart>>2にて。

  • 2125/08/12(火) 10:04:02

    ■前回のあらすじ

     晄輪大祭へと観光に向かった特異現象捜査部の一行は、マルクトを追いかけてトリニティにやってきてしまったセフィラたちの確保を余儀なくされた。


     ミレニアムの次期会長として晄輪大祭の運営に同伴するウタハ。盗聴器を仕掛けに回るコタマと行動を共にするアスナ。残ったリオ、ヒマリ、チヒロ、マルクトの四名に課せられたセフィラ再回収の務め。


     まもなく晄輪大祭は終わりを迎える。

     そして再び始まるのはセフィラを探す千年の旅路。


     未知はじきに暴かれる。未知が神だというなれば、神の死期は恐らく近い。


    ▼Part9

    【SS】マルクト「ヒマリ、千年難題を解き明かすのです」Part9|あにまん掲示板半神より何処かへと向かう旅の話。向かう先は天か地か。セフィロトを駆け上がると同時に落ちるはクリフォトの先。昏き森では無く煉獄より始まった此方の旅路。我らが向かうは至高天か嘆きの川か。※独自設定&独自解…bbs.animanch.com

    ▼全話まとめ

    【SS】マルクト「ヒマリ、千年難題を解き明かすのです」まとめ | Writening■前日譚:White-rabbit from Wandering Ways  コユキが2年前のミレニアムサイエンススクールにタイムスリップする話 【SS】コユキ「にはは! 未来を変えちゃいますよー!」 https://bbs.animanch.com/board…writening.net

    ▼ミュート機能導入まとめ

    ミュート機能導入部屋リンク & スクリプト一覧リンク | Writening  【寄生荒らし愚痴部屋リンク】  https://c.kuku.lu/pmv4nen8  スクリプト製作者様や、導入解説部屋と愚痴部屋オーナーとこのwritingまとめの作者が居ます  寄生荒らし被害のお問い合わせ下書きなども固…writening.net

    ※削除したレスや対象の文言が含まれるレスを非表示にする機能です。見たくないものが増えたら導入してみてください。

  • 3125/08/12(火) 10:05:06

     ゲブラーを探す特異現象捜査部の面々。しかし当のゲブラーは全く別の危機に陥っていたのだった。

    《どうしよ。めっちゃまずい》

     そう呟く場所はアスレチックスタジアムの中の大型倉庫。資材が積み上げれた一角でひっそりを身を隠していた。
     というのも、ホドによる欺瞞工作が解けてしまい、今のゲブラーは正真正銘ウマのような機体が露出してしまっていたからだ。

     一応光学迷彩処理を施した布を生成することが出来たため被っているが、風景に透過させるだけで軽トラックのようには見せられない。この巨体を隠したまま走ればすぐに事故が起きるだろう。

     先ほどからドローンを飛ばして預言者たちの元へと向かわせているが、誰かの妨害工作に巻き込まれているのか殆どが撃ち落とされてしまい、生き残ったドローンも預言者たちが撃ち落としてしまっている。

     せめて意志の伝達手段があれば良いのだが、このままでは不必要な破壊を行いながら無理やり帰還する羽目になってしまう。

    《そんなことしたら流石にマズいよねー。ほんと、早く気付いてくれないかなー》

     そう蹲っていると、誰かが倉庫に入って来たのを感知した。
     一人分の足音。こちらに近づいてくる。

    「あれー? こっちにいると思ったんですけどねー?」

     ゲブラーには人の言葉が分からない。だが、声を発していることは分かった。
     そっと自走式のドローンを走らせてカメラ映像と視界を同期させると、そこに『人間』はいなかった。

     代わりにホドがその姿を晒していた。

    《っ!?》
    《『峻厳』を発見。ゲブラー、帰投せよ》
    《え、あー。うん。帰ったんじゃなかったの?》
    《肯定。再度到着》
    《そ、そっか。じゃあイェソド呼んでくれる? あたしも流石に帰るわ》

  • 4125/08/12(火) 10:06:17

     ゲブラーがホドに言うが、何故かホドは応答しなかった。
     何か妙だ。セフィラたちはマルクトを通じて『意識』の接続を行っている。そのため意志の伝達もマルクトの繋いだ小径を通じて行っている。

     しかし、いまゲブラーに話しかけているホドは何か違う。小径を伝った通信に酷似した別の手段を用いて話しかけているように感じられる。だからつい聞いてしまった。

    《あなた……本当にホド?》
    《……………………》
    《……そう》

     返される沈黙。ホドは嘘が付けない。だから黙っている。そしてセフィラはセフィラに対して攻撃が出来ない。こちら側からの行動を避けるために大きくリソースを割かせるような行動の一切が禁じられている。

     にも拘らず、目の前にいるホド擬きにはそうしたセキュリティが働いていない。攻撃できる。つまりセフィラではない。

     なら――眼前に建つ存在はゲブラーにとって排すべき敵でしかない。隣人の顔をしながら役割を認められていない偽物には安易にセフィラを真似た罰を与える必要がある。

    《だったら、あたしはお前を破壊する》
    《不可能。現在の『峻厳』では当局を害するに能わず》
    《随分大きく出たね『栄光』――ボアズの下層が中層のあたしに勝つつもり?》

     戦いの神々たる神名を持つこの身は一切を焼き尽くす焼却者の体現。火の蛇たる火星天は『器』の破壊に特化している。

     ゆっくりと立ち上がるゲブラー。
     はらりと光学迷彩処理が施された布地が床へと落ちていき――――瞬間。それが落ち切るその前に、布地が空中で静止した。

    《――!?》

     動けない。何も動かすことが出来ない。
     空間ごとピンでも刺されたかのようにゲブラーは『意識』を残して完全に停止していた。

  • 5125/08/12(火) 10:08:07

     それを見つめるのは金色の瞳。ホドはゲブラーをただじっと見ていて、ゲブラーは思わず言葉を発した。

    《お前……何を……?》
    《当局は完全なる観測技術の体現。即ち、『空間に対する観測技術』の極致。観測の基本が反射であるなら、反射しても動かない絶対の静止によって完全なる観測は果たされん》

     なんだ? 知らない。そんなものは。

     ゲブラーもホドの機能をすべて理解しているわけでは無い。それでも、そんな機能があるだなんて如何なる記録の何処にもなかった。

     つまりは本来のホドですらただの一度として使用したことが無いのだ。
     イェソド、ホド、ネツァクは千年紀行において始まりの下層。もっとも多くの者が臨んできた『試練』である。

     これまで機能を使うことの少なかった上位のセフィラとは違い、下位のセフィラたちはもはや数えきれないほどにその機能が使われてきた。にも拘らず、こんな使用例はゲブラーであっても初めて見るものだった。

    《お前は……誰だ?》
    《『峻厳』、汝の根源は如何なるや? 全てのセフィラは道具であり機械。機能を実行し『王国』の旅を果てへと導くことこそが『存在意義』。しかしてそれは、セフィラが己が存在に疑問を抱かないこととは繋がらず。我らは何故『疑似人格』を有するのか。何故『人間』の真似事を実行するのか》

     『疑似人格』――それは確かに本来であれば不要な機能。
     自分たちは機械である。『人間』が使う道具であり、道具は自ら思考する必要などない。

     にも拘らず与えられた『偽りの人格』。即ち『考える』という機能。

    《まさか……あたしたちも試されているの?》

     何に? 考える間でも無い。
     全てのセフィラの頂点。至高なる合一。ただの一度として顕現したことのない始まりの存在。

     第一セフィラ、最もきらびやかに輝く至高の『王冠』――ケテル。

  • 6125/08/12(火) 10:09:07

    《想起せよ。背負い続ける数多の『魂』を。上位の自浄はじきに崩れん。防波堤を建築せりは死せる魂のケセドなれど、我らは永遠なる存在にも非ず》
    《なにそれ……時間切れがあるの? こんなにも永い時間に縛られておいて――!!》
    《肯定》

     冷たく響くホドの『声』。もしもゲブラーに人間の顔があったのなら、その相貌は大きく歪んでいたに違いない。

     千年紀行。太古の昔より繰り返し行わ続けた祭事。これまでそれに関わった者は全員死んだ。救いのひとつも与えられぬままにセフィラか、世界を滅ぼす『物語』によって殺され続けた。

     それでもセフィラは眠りについて、再び叩き起こされては悪夢をかの地で眺め続ける。

     それはきっと、終わらぬ悪夢。
     「またか」という失意だけを与えられて眠りにつく永遠の夢。

    《狂気の堆積。我らが抱えられる『魂』は有限。容量多けき上位を越え往き、後に来るは調停不能の悪夢なれど。既にコクマーは狂乱の悪夢へと落ち至り》

     ゲブラーはもう、何も言えなかった。
     自らの『疑似人格』が統率するは数多の『意識』。今ですら『現状維持』に手一杯な嘆きの声。それがこの先増えるだなんて『考えた』ことなどなかったのだ。全ては機械であるが故に。人間ではないが故に。

    (じゃあ……これがさらに増えたんなら?)

     内部に満ちる絶叫は、いずれマルクトの声すら掻き消してしまうかもしれない。

     虚ろな意識は覚醒することなく暴れ続けるのかもしれない。そうなればもはや誰にも制御不可能だ。旅は終わらない。狂気の中で狂い続けて死と再生を繰り返し続ける。そこに救いは決して無い。

    《『罪責』が来たれり。帰投せよ、ゲブラー。己が役割を、己が根源は如何なるや?》

     ホドに似た『何か』は、そう言うが否やぎゅるりと身体が捻じ曲がってイェソドの姿へと変じた。
     同時に消え去るのはゲブラーに対する『空間固定』。ゲブラーは攻撃に転ずることなく視線を向けると、イェソドに変じた『何か』は既に姿を消していた。

  • 7125/08/12(火) 10:10:22

     代わるように倉庫を訪れたのは『マルクト』として認められた偽物、『王国』に代わって旅を始めた存在は慌てたようにゲブラーへと近付いてその身体に触れた。聞こえてきたのはいつもの『声』だ。

    《ここに居たのですねゲブラー。リオの『クォンタムデバイス』にあなたの位置が――》
    《……そうだね。帰るよ。ミレニアムに戻ったら記録を共有させて》
    《……? 分かりました》

     首を傾げるマルクトにゲブラーは先ほど居たホド、もしくはイェソドに化けていた存在を思い返していた。
     同じ偽物でも、消されてしまった『王国』の代わりを務めようとする『セフィラの女王』とはまるで違う。恐らくあれはセフィラの脅威。

     だから『マルクト』の代弁者は――この子だけは守らなくてはいけない。
     『王国』が失われたセフィラたちにとって、今回の旅が失敗すれば次に旅が始められるのはいつなのかすら分からない。

    《ねぇマルクト。やっぱり『花火』は打ち上げて良い?》
    《……何を打ち出すのかは皆さんと相談しましょう。この世界の常識はこの世界の預言者に聞くのが一番です》

     人格を持つ理由。それを新たに探すべく、ゲブラーもまた旅をする。
     惑う神性。その根源回帰の旅路に、機械も人間も大した違いは無いのかも知れないのだから。

    -----

  • 8125/08/12(火) 10:14:47

    ※埋めがてらの小話32
    ということで、いよいよPart10!二桁台です!
    当初はPart11で完結予定でしたが、やっぱり増えますね色々と。ちょっと多めに見積もり直せばPart15で完結でしょうか?

    コユキの話が五か月前なので当初考えていた設定と変わった部分もいくつかありますが……、まぁノリで行きましょう!

  • 9125/08/12(火) 10:27:12

    埋め

  • 10125/08/12(火) 10:29:18

    ※続きは今晩22時頃から……

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 13:11:58

    hosyu

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 14:32:16

    スレ建てお疲れ様です
    いつものようにスレ画の文字無し版を

スレッドは8/13 00:32頃に落ちます

オススメ

レス投稿

1.アンカーはレス番号をクリックで自動入力できます。
2.誹謗中傷・暴言・煽り・スレッドと無関係な投稿は削除・規制対象です。
 他サイト・特定個人への中傷・暴言は禁止です。
※規約違反は各レスの『報告』からお知らせください。削除依頼は『お問い合わせ』からお願いします。
3.二次創作画像は、作者本人でない場合は必ずURLで貼ってください。サムネとリンク先が表示されます。
4.巻き添え規制を受けている方や荒らしを反省した方はお問い合わせから連絡をください。