【cp閲覧注意】#4_最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった

  • 1練乳グラブジャムン25/08/12(火) 20:48:14

    続きモノになります。
    初めての方は初期スレからご覧いただくとより楽しめるかと存じます。
    諸々の注意書きも初期スレにありますので併せてご確認ください。

    このスレはコメントフリーです。
    是非とも盛り上げていただければ幸いです。
    いつもコメントしていただいている方、大変励みになっております、ありがとうございます。

  • 2練乳グラブジャムン25/08/12(火) 20:49:37

    初期スレ

    【cp閲覧注意】最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった#1|あにまん掲示板●注意点1・原作最終話、No.431の後日談です。このため本作は、原作に継続するナンバリングで記載します。(第一話がNo.432、第二話がNo.433、と進みます)・原作コミック最終巻までのネタバレが…bbs.animanch.com

    収録No


    ~導入編~

    ■No.432 相談事

    ■No.433 怖くなってしまうのは

    ■No.434 困ったときは


    ~拡大編~

    ■No.435 それは偽物だろ

    ■No.436 第一回 恋仲発展プロジェクト会議

    ■No.437 まだ足りない

    ■No.438 第二回 恋仲発展プロジェクト会議


    ~準備編~

    ■No.439 喜ぶ顔が好きだから

    ■No.440 silent communication

    ■No.441 麗日お茶子・ドレスアップ

  • 3練乳グラブジャムン25/08/12(火) 20:50:45

    過去スレ#2

    【cp閲覧注意】#2_最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった|あにまん掲示板続き物です。初めての方は初期スレからご覧いただくことを推奨いたします。諸々の注意書きも初期スレにありますので、併せてご確認ください。初期スレhttps://bbs.animanch.com/board…bbs.animanch.com

    収録No


    ~準備編~

    ■No.441 麗日お茶子・ドレスアップ(続き)

    ■No.442 realized

    ■No.443 緑谷出久・ドレスアップ

    ■No.444 イメージトレーニング

    ■No.445 第三回 恋仲発展プロジェクト会議

    ■No.446 星空のひとつ

    ■No.447 全力の包囲網

    ■No.448 麗日お茶子・スタイルアップ

  • 4練乳グラブジャムン25/08/12(火) 20:52:25

    過去スレ#3

    【cp閲覧注意】#3_最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった|あにまん掲示板続きモノになります。初めての方は初期スレからご覧いただくとより楽しめるかと存じます。諸々の注意書きも初期スレにありますので併せてご確認ください。このスレはコメントフリーです。是非とも盛り上げていただけ…bbs.animanch.com

    収録No

    ~準備編~

    ■No.449 麗日お茶子・メイクアップ


    ~舞台編~

    ■No.450 Pumpkin carriage

    ■No.451 絶妙なタイミング

    ■No.452 全国共通で笑顔を作る合言葉

    ■No.453 大義名分の嵐

    ■No.454 何もしなくて済むのが最善

    ■No.455 やりたかったこと

    ■No.456 傍目には

    ■No.457 何度も見たはずだろ

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 20:54:02

    たておつありがとう

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 20:55:02
  • 7二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 21:01:11

    保守だぜ⭐︎

  • 8練乳グラブジャムン25/08/12(火) 21:03:41

    ■No.457 何度も見たはずだろ(続き)

    ※SIDE 緑谷


    お湯の中を泳ぐ、麗日さんの足先。
    素直に、とても綺麗だと思った。

    ぼーっとしていると、麗日さんの綺麗な足先が、僕の足に、ちょん、と触れた。

    心臓が跳ね上がり、思わず足を引っ込める。
    「デク君、どうしたの?」
    「いや、その、ごめん! 足当たっちゃって!」
    正確には僕は足を動かしていないので、当てたのは麗日さんの方だが、そんなことはどうでもいい。

  • 9二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 21:04:07

    ほぉ

  • 10二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 21:06:28

    緑谷・・・

  • 11練乳グラブジャムン25/08/12(火) 21:06:40

    きょとん、とした顔の麗日さんは、急に、にや~っとした。
    「あれぇ~? デク君は、くすぐったがりなんかなぁ~?」

    いたずらっぽい笑みを浮かべ、足を伸ばし、僕の足に当ててくる。
    「ちょっ!? ちょっと!?」
    驚いた猫のようにビクッとなり、全身の毛が逆立つのが分かった。

    麗日さんの足の裏が、僕の足の甲に触れ、ゆっくりと前後に動かされる。
    スベスベの肌の感触が伝わってくる。
    温泉の成分でお湯がトロトロなせいで、肌が滑らかに触れ合って、とんでもなく気持ちがいい。
    足先の五本の指が絶妙なアクセントとして添えられる。
    くるぶしを撫で上げられ、足首を擦られ、指の間に入り込もうと開かれる。

    お湯の中で感じられる、肌の触れ合い。
    人生で初めて味わう、極上の心地よさ。

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 21:08:15

    緑谷…?ひょっとして勃ってない?

  • 13練乳グラブジャムン25/08/12(火) 21:09:31

    まっずい、まっずい、まっずい!
    これ、本っっっ当にまずいって!

    「ちょっ!? ちょちょっと、ほ、本当にダメだって!」
    「えぇ~? なんでぇ~?」
    にやにやして足を触れ合わせてくる麗日さん。

    麗日さんは遊びのつもりかもしれないけど、こっちはたまったもんじゃない。
    心臓が爆発したみたいに動いている。
    意思に反して股間にどんどん血流が送られて、ヤバイ事になっている。
    これ以上されると本当に死んでしまうかもしれない。
    なんというか、社会的に!

  • 14二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 21:10:49

    構わんplus ultraしろ

  • 15練乳グラブジャムン25/08/12(火) 21:14:02

    何とかやめさせないと。気を逸らさないと。

    「そっ! そうだ! LINK! コメントが来てる!」
    「ああ~……そういえば、通知鳴ってたね」
    「見よ! 確認しよ! 来れない人達もいたし!」

    すぐに携帯を取り出し、画面に目を向ける。
    心頭滅却、足の感覚を可能な限りシャットアウトする。
    麗日さんの動きが止まった隙に、可能な限り足を遠ざけた。

  • 16練乳グラブジャムン25/08/12(火) 21:15:16

    【元A組グループ】

    Ⅸ黒い鳥Ⅸ
    『すまん、写真は有難いが、これだけ見ても何だか分からん』
    テンタコル
    『緑谷の足?』
    烈怒頼雄斗
    『旅行の写真なんだから、顔写してもらえるか?』
    イヤホン=ジャック
    『お茶子も一緒に写ってくれる?』
    大・爆・殺・神ダイナマイト
    『だからネットの画像みたいなもんはいらねえっつうんだよクソナード』


    「やっぱり一緒に撮らないとダメかあ」
    分かってはいたけど。
    でも麗日さんを撮るのも、なんか嫌だったし。

    「まあ仕方ないよ、デク君、一緒に撮ろ?」
    「うん、そうしよっか」

    返事をするものの、前かがみに座ったまま、動かない僕……
    「……私、そっち行く?」
    「うん、ごめん……そうしてもらえると助かる……」

    いま、立てないし……

  • 17練乳グラブジャムン25/08/12(火) 21:17:52

    「ちょっと待って」
    麗日さんは立ち上がり、そのままスカートをたくし上げ、ぱちゃぱちゃとお湯の中を歩いてくる。
    歩きにくそうで非常に申し訳ないけど、どうしようもない。

    そのまま、隣にすとんと座った。
    さっきよりもすぐ近くに、すぐ隣に。肩が触れ合う。

    「なな、なんで?」
    「へ? だって近付かないと、一緒に写真撮れないでしょ?」
    「ああ、そ、そうか……」

    足湯の中にいるせいで、誰かに頼んで携帯を渡すことも出来ない。
    自撮りするしかない。
    だから近づくしかない。

  • 18二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 21:18:11

    今立てないし

    別のところが立ってるからな

  • 19練乳グラブジャムン25/08/12(火) 21:27:02

    写真を撮ろうとするが、どうしても足元を写そうとすると顔まで写らない。
    自撮りをする予定など無かったので、自撮り棒みたいなものも無いし。
    かといって顔が入るようにすると、足湯に入っていることが分からない。

    何より、麗日さんが気になって、撮影に集中できない。
    さっきまでの足の感触と、いま感じる肩の感触。

    心臓の動きが早いままだ。
    どうしても平静を保てない。
    くっそ……落ち着け、落ち着け、落ち着け……


    そのとき、ふと声をかけられた。
    「よろしければ、撮りましょうか?」


    ―――― to be continued

  • 20二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 21:29:03
  • 21練乳グラブジャムン25/08/12(火) 21:39:03

    というワケで次に続きます。
    個人的にも結構好きな話でしたが、お楽しみいただけたでしょうか。
    皆さんのコメントと画像のセンスがヤバくて腹抱えて笑わせてもらいました、マジありがとう。
    っつーか、どこからそんなに適切な画像持ってきてるのか、引き出しが凄すぎて脱帽ですわ。

    次の話はツッコミ不在の影響が色濃く出ます。

  • 22二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 01:53:15

    お茶子ちゃんがだいぶ緊張ほぐれていたずらモードなの可愛い
    デクくんはプルスウルトラしちゃってたw
    (心の)距離縮まってきてて良いね

    って写真のために物理も近くなってデクは(心臓的にもバレないか的にも)大丈夫か?
    こっちは元A組の皆と一緒にニヤニヤしとくね

    最後、デート見守りヒーローの助っ人が介入しにきた?

  • 23練乳グラブジャムン25/08/13(水) 09:10:30

    ■No.458 周りをみんな笑顔にしてしまう

    ※SIDE 緑谷


    写真撮影に悪戦苦闘していると、地元の方だろうか、一人の男性に声を掛けられた。
    傍らには小さな子供と、母親と思われる女性がいる。見る限りご家族のようだ。
    子供は歩き始めたばかりだろうか、とても小さい年齢にみえる。

    「あ……すみません。お願い出来ますか?」
    「はい、もちろん」

    携帯を渡し、男性が少し離れ、写真を撮ってもらう。
    お礼を言って携帯を受け取った。
    足湯の全景と、背後の街並み、僕ら二人もよく映っている。
    いい写真だった。
    「ありがとうございます、助かりました」
    「いえいえ。お安い御用です」

  • 24練乳グラブジャムン25/08/13(水) 09:46:02

    「こえなーい?」
    子供が、たどたどしい言葉遣いで、足湯を指差している。
    「これ? これはねえ、足湯だよ~」
    「あちゆ」
    「そう。ひーちゃんはまだ小さいから入れないよ~」
    女性が、とても幸せそうに教えてあげている。

    「はいゆ」
    「入らないよ。ほら、帰ってゼリー食べるんだろ? さっき買ったゼリー」
    「ぜいーたえゆ!」
    男性が、コンビニのものだろうか、小さなビニール袋を揺すると、子供が袋を触ろうと手を伸ばした。
    「うん、そうだね。じゃあ帰ろうね~」

    よちよちと歩く子供と手を繋ぎながら、ご夫婦は去っていった。
    その姿が見えなくなるまで、ずっと目で追っていた。

  • 25練乳グラブジャムン25/08/13(水) 10:01:20

    「やば……麗日さん、あの子めっちゃ可愛くなかった?」
    「ね! あの子超可愛かったぁ!」
    麗日さんと二人、隣同士で顔を見合わせる。
    本当に幸せそうなご家族だった。

    「頑張って歩いてたけど、歩き始めかなあ」
    「二歳くらいじゃない? 一生懸命お喋りして、もう超かわいかったぁ!」
    両手を胸の前でギュッと握り、身悶えするほど感動している。僕も全く同じ気持ちだった。

    「麗日さん、子供好きなの?」
    「うん。保育園とかにも行かせてもらうけど、すっごい楽しいし。デク君は?」
    「僕も好きだな。洸汰君とか壊理ちゃんの小さいころとか、一緒に遊んでると、もう楽しくって。今は二人とも大きくなっちゃったし、あんまり小さい子供と遊ぶ機会無いけど」
    「あ、じゃあ、個性カウンセリングの仕事、今度一緒にしてみる? きっと楽しいよ」
    「本当に? すっごい行きたい。ああでも、根津校長とオールマイトに許可とらないと」
    「ダメとは言わなそうだけど。またチームアップの申請出しておくね」
    「ありがとう、是非お願いするよ」

  • 26練乳グラブジャムン25/08/13(水) 10:11:19

    「子供ってさあ、凄いんだよねえ。周りの人が、みんな笑顔になっちゃうんだよ」
    「ああ、それすごい思った。なんか、さっきのご夫婦、すごくいい笑顔してたよね」
    「そうそう! なんかもう、私達、幸せです! ってオーラ凄かった」
    「だよねえ。子供いたら幸せだろうなあ」
    「ねー。あんな風に親子で手を繋いで歩くの、すっごい幸せそう」

  • 27練乳グラブジャムン25/08/13(水) 12:43:28

    「麗日さん、すごくいいお母さんになりそうだよね。滅茶苦茶優しそうな気がするんだけど」
    「そうかなあ? デク君こそ、いいパパになりそうじゃない? なんか毎日、すっごい遊んであげてそうやん」
    「あーでも確かに、子供いたら一緒に遊びたいなあ。なんかもう、何してるの見ても楽しそうだし」

    「デク君は子供いたら、どこ行きたい?」
    「ええ、どこだろう。どこ行っても楽しそうだけど。ああでも、お弁当作ってピクニックとか楽しそう」
    「ああ~、分かる! それすっごいやってみたい。ご飯食べて、その辺で遊んで、お昼寝したり」
    「ほんと、最高だろうなあ」

  • 28練乳グラブジャムン25/08/13(水) 12:44:31

    「デク君は、子供何人くらいほしいの?」
    「どうだろう? 僕一人っ子だったし、一人は欲しいけど。兄弟がいたら楽しそうだし、二人くらいは欲しいかなあ。麗日さんは?」
    「私も一人っ子だったからね。親も共働きで、一人で家にいることが多かったからなあ。兄弟とか姉妹がいたらどんなかなあ、って思ったことは、何度も……」

  • 29二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 14:06:18

    新婚夫婦かお前ら

  • 30練乳グラブジャムン25/08/13(水) 16:09:21

    急に言い淀んだ麗日さんの顔が、みるみる真っ赤に染まっていく。
    その瞳を見つめながら、ふと、我に返る。

    ……何でこんな話してるんだ?
    結婚どころか、まだ交際もしていない男女が、子供が何人欲しいかって……

    「そ、そろそろ上がろうか!?」
    「そそそ、そうだね! 身体温まったよね!」

    気恥ずかしくなって、お互いに反対側を向いて、足をお湯からあげる。
    背中合わせになってしまい、それがまた何か恥ずかしく、ものすごく身体が温まっている事を自覚する。
    本当に汗をかきそうだ。

  • 31二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 16:10:10

    構わん、このまま旅館に行ってそのまま作れ

  • 32練乳グラブジャムン25/08/13(水) 16:29:18

    恥ずかしさを振り払うように、カバンからタオルを取り出す。

    手元に握ったタオルを見て、ふと考えた。
    ……これ、どっちが先に使えばいいんだ?

    僕が使って麗日さんに渡す?
    でもそれって麗日さんが使う時に嫌じゃないだろうか。
    じゃあ麗日さんが使ってから僕が使う?
    でもそうなると、麗日さんの足を拭いた布を使うわけで、なんかそれは、いいのか?
    なんか変態っぽくないか?
    ……正解が分からない。

    「麗日さん、先にタオル使う?」
    「あ、デク君先でいいよ。持ってきたのデク君だし」
    即決だった。特に気にしていないみたいだ。
    ……まあそれならいいか。

  • 33練乳グラブジャムン25/08/13(水) 16:32:18

    タオルで足を拭いて、麗日さんにタオルを渡す。
    なんとなく見てはいけない気がして、背を向けたまま靴下を履き、靴を履く。
    足先からポカポカした感覚が残っていて、だいぶ体温が上がった気がする。

    「はい」
    タオルが返される。
    カバンに入れようかとも思ったけど、また使うかもしれない。
    少し考えた後、カバンに結んで、乾かしていくことにした。

    温泉の香りに混じって、ほんのりと、いい匂いがした気がした。


    ―――― to be continued

  • 34練乳グラブジャムン25/08/13(水) 16:46:29

    というワケで、誰もツッコミ入れないから延々とぶっ飛んだ会話が続く二人でした。

    スレ民の皆様のコメントあって完成する回でしたので、ご協力ありがとうございました。
    お楽しみいただけましたら幸いです。

    ネタバレ。
    次回はデート回です。

  • 35二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 17:06:07

    次回はデート回?

    つまり、じゃあこれはデートじゃない…?

  • 36二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 18:02:11

    このレスは削除されています

  • 37二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 18:03:55

    なるほど…まだ来れないって連絡してない人がいるからか

  • 38練乳グラブジャムン25/08/13(水) 19:00:36

    ■No.459 最高の調味料は

    ※SIDE 緑谷


    「こ……これからどうしよっか。時間的に、そろそろお昼にしたほうがいいかな」
    先ほどまでの恥ずかしさを振り払うように、次の予定を考える。
    「麗日さん、何か食べたいものある?」
    「ん~っと……ど、どうしようかな……」
    麗日さんも恥ずかしいのか、まだ顔が赤い。
    とりあえず携帯で探すことにする。

    地図アプリで探すと、色々な店がヒットした。
    定食屋、ラーメン屋、カレー屋、カフェ、ファミレス、洋食屋、鰻屋、焼肉屋、蕎麦屋、台湾料理屋……何でもあるな。
    ステーキハウスとかインド料理屋まであるぞ。
    居酒屋はまだこの時間では開いてないから無理だとしても、だいたい何でも希望は叶えられそうだ。

  • 39練乳グラブジャムン25/08/13(水) 19:03:02

    「デク君は食べたいものある?」
    「そうだなあ……」
    お腹は減ってきているが、特に食べたいものも無い。
    何を、と聞かれても、なんでもいい、というのが正直なところだ。
    「う~ん、特に希望は……この土地のもの食べたい、っていうくらいしかなくて」
    「あ、分かる。折角だし、下呂温泉ならでは、っていうもの食べたいよね」

    どうしようか考えながら、地図アプリを動かす。
    「このあたり、食べ物屋さんはいっぱいあるみたいだけど。適当に歩きながら決める?」
    「じゃあせっかくだし、食べ歩きにしようよ。いろんなもの少しずつ食べた方が楽しそうだし」
    「うん、そうしようか」

  • 40練乳グラブジャムン25/08/13(水) 19:12:13

    足湯を後にし、北に向かって移動する。
    何かいいお店は、と思っていると、すぐに現れた。

    「なんだこれ!? 温泉プリンだって。本当にプリンが温泉に入ってる!」
    浅い桶の中に、瓶に入ったプリンがいくつも並んでいる。
    桶の上から、かけ流し風呂のように温泉が流れ、温かい湯気が上がっていた。

    「ねえねえ、これ食べようよ! どんな味するんやろ!?」
    「うん、これは食べよう!」
    温泉卵は食べた事はあっても、温泉プリンを食べた事は無い。
    プリンは食後のイメージがあるが、そんなこと気にせず食べたい気分だ。

  • 41練乳グラブジャムン25/08/13(水) 19:25:20

    会計を済ませ、桶に入ったプリンを受け取る。
    「いや、うまっ!」
    「ん~~。温かくてトロトロだねぇ~」
    本当に美味しい。なめらか食感で、口の中で溶けていくようだ。
    程よい甘さ、卵とバニラの風味。コクのある味わい。
    何より温泉で温められた、程よい温度が最高だ。

    「あ、そうだ。麗日さん、写真だけ撮ろうか。食べてるところ」
    「そうだね。どうする?」
    「ん~、ちょっと待ってね」
    カメラを自撮りに切り替え、斜めに構える。
    さすがにこれは食べてるのが分かれば、並んで撮らなくてもいいだろう。

    自分が手前、麗日さんが奥に写ってる感じでポーズを作る。
    「じゃあ麗日さん、笑って」
    「へへ~。いただいてまーす」

  • 42練乳グラブジャムン25/08/13(水) 19:51:30

    撮った写真を、LINKに送っておく。
    「やばい、ほんと美味いねこれ。温かいプリン初めて食べたけど、イケるね」
    「ね~。これいくらでも食べれるよ」

    プリンを食べ終え、さらに道を進む。
    坂道を進むと、また違うお店が見えてきた。
    「デク君、牛串だよ牛串! 食事っぽいの来たよ!」
    テイクアウト可能な店構えだ。これなら食べ歩きで食べられる。
    「うん、これも食べよう」
    「五平餅とお団子もあるね。これも一緒に食べない?」
    「いいね、それも頼もうか」

  • 43練乳グラブジャムン25/08/13(水) 19:59:55

    その場で焼いてもらい、一人一本ずつ受け取る。
    食べる前に二人で写真だけ撮ってLINKに送ると、さっそくかぶりついた。
    「うんっま。飛騨牛、美味いね~」
    「うん、これはさすがブランド牛って感じするわ」
    レアに近い絶妙な焼き加減。やわらかくてジューシーだった。

    「お団子もモチモチやねコレ。その場で焼いてもらうと違うね~」
    「だね。お団子ってこんなに柔らかくなるんだなあ」
    お団子というと冷たいイメージがあったが、これは焼きたてで火が通ってる。
    お餅に近いような感じだが、お餅より全然柔らかい。
    これが本来のお団子かと思うと感動する。

    「五平餅も、くるみかな?タレの味が濃くて美味しいよ」
    「うん、これも最高」
    麗日さんの、ぷっくりとした唇に目が奪われる。

    「ん~~……美味ひい~」
    ハムスターみたいに頬を膨らませた姿が、これまた可愛い。

    一気にぺろりと食べてしまった。
    なんだかんだお腹に溜まる。

  • 44二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 20:25:05

    これでまだ付き合ってないの???

  • 45二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 20:42:08

    まだ付き合ってないのと言うか結婚してないのというか子◯りしてないの?

  • 46練乳グラブジャムン25/08/13(水) 20:43:22

    「ねえ、次行こ次! 何があるかな?」
    僕の手を引いて、先を示す麗日さん。
    弾むような足取りで、楽しそうにしてくれているのが嬉しくて、こっちまで楽しくなる。
    繋いだ手のひらが温かい。

    道を進んでいくと、先ほどとは違う形の足湯が現れた。
    「なにこの足湯。中央に彫刻が置いてあるよ」
    「こんなのもあるんだね」
    人が多くて、ちょっと入れない感じだ。
    「デク君、写真だけ撮らない?」
    「そうだね、とっても写真映えしそうだし」
    周囲の人にお願いして、二人一緒に写真だけ撮ってもらった。
    思い出になる写真が増えたことを喜びつつ、そのまま更に道を進む。

  • 47練乳グラブジャムン25/08/13(水) 20:46:26

    「ねえ、麗日さん、わらび餅だって」
    「なんやこの器、デザインいいね。温泉地ならではって感じ」
    お風呂場の桶みたいなデザインの器に入ったわらび餅。見た目は非常に面白い。
    「食べてみよ? どんなかな?」
    買ってみると、表面にはきな粉が溢れるほど乗っており、下の様子が伺えない。
    「これ、このまま写真撮っても、わらび餅って分かんないよね。麗日さん、箸で出してもらっていい?」
    麗日さんに箸を入れてもらうと、きな粉の下から、黒蜜に絡まったわらび餅が、びよ~んとのびて出てきた。
    わらび餅を掲げて、にっこにこ笑顔の麗日さんを写真に収め、LINKに送る。

    「ん~~~~。美味しいねえ~」
    「甘さもちょうどいいし、めちゃくちゃ柔らかいよこれ」
    「なんて表現すればいいのかなあ。すぅーって溶けちゃうって感じ」

    幸せそうに食べてる麗日さんを見ると、僕も嬉しくなってくる。
    一緒に話して、こうして同じものを食べて。
    本当に楽しい。

    疲れも何もかも吹き飛んでいくみたいだ。
    今更ながら、来てよかった。
    心から、そう思う。

  • 48練乳グラブジャムン25/08/13(水) 21:30:19

    ※SIDE 飯田


    「……なあ、オイラ達は何を見せられているんだ?」
    「仲睦まじいカップルのデート写真がガンガン送られてくるんだけど」
    峰田君と上鳴君が、携帯を片手に死んだ目をしていた。

    「それが目的なんだから、願ったり叶ったりだろう」
    「こちらの思惑通りですわ。やはり蛙吹さんのジョーカーが、かなり効いていらっしゃるかと」
    「そのとおりなんだけどさ、何だろうなこの気持ち。無性に何かをぶん殴りてえというか」
    「なあ切島、組み手の練習でもしねえ?」
    「ねえ、それ、本気の戦闘訓練に発展しそうだから絶対やめてよね」
    「ひとまず写真を見る限り、デートは大成功じゃないか。僕らが頑張ってきた甲斐もあったというものだ」
    「腹立つくらい幸せそうだな」
    「もうこのまま結婚しろよコイツら」

  • 49練乳グラブジャムン25/08/13(水) 21:35:08

    「でもさあ、信じられないけど、まだ付き合ってないんだよね、この二人」
    「どういうことなんだよ……改めて考えるとヤベぇな」
    「新婚旅行みてぇな顔してるのに」

    親友の写真を見ながら、充足感に満ちていく。
    本当に二人とも楽しそうだ。

    いろいろと作戦は考えていた。
    でもそんなものを必要とせずとも、二人とも楽しそうにしてくれている。
    結果としては最良だ。

    まだ昼を過ぎたところ。まだまだ時間はある。

    緑谷君、麗日君。
    ここから、更にいい想い出を作ってくれ。


    ―――― to be continued

  • 50練乳グラブジャムン25/08/13(水) 22:00:43

    さて、食べ歩きデート回でしたが、いかがでしたでしょうか。
    お楽しみいただけましたら嬉しいです。

    実は今回登場したものは、ガチで現地行けばご賞味いただけます。
    いずれデートコースはご紹介させていただきます。

    次回ネタバレ。
    お茶子がキュピーンします。

  • 51二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 22:07:39

    このレスは削除されています

  • 52二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 22:33:28

    もう二人の世界に入ってますね…

  • 53二次元好きの匿名25/08/13(水) 23:34:42

    保守

  • 54二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 00:22:56

    2人は完全にデートしてて草なんだけど下呂の描写が詳しすぎて行ったときのこと思い出したわ
    そこらじゅうに温泉流れてるし温泉プリンかわいいよね

  • 55練乳グラブジャムン25/08/14(木) 06:10:09

    ■No.460 あっ(察し)

    ※SIDE 麗日


    食べ歩きをして更に進むと、また足湯が見つかった。
    今なら人もいないから、すぐに入れる。

    向かいにはプリン屋さんがあるけど、ここから先には、あまり食べ歩きできるようなお店は無さそうだ。

    何だかんだ食べ歩いてきたし、また戻るにしても、ちょっと休みたい気分でもある。
    それに……さっき、肌が綺麗って、褒めてもらえたし。

  • 56練乳グラブジャムン25/08/14(木) 07:01:48

    「ねえデク君。もう一回、足湯入らない?」
    「え?」
    「まだ時間あるし、せっかく温泉に来たし……戻る前に、もう一回入りたいなって」
    「足湯……入るのはいいんだけど……」
    困ったような、悩んでいるようなデク君。

    「どうかしたの?」
    「あの、麗日さん……入る前に、お願いがあって……」
    「なあに?」

    「その……お湯の中で、足当てるの……やめてね……?」
    口元を隠し、どこか違うところに目線を流して、真っ赤になっているデク君。

    かわいすぎるっ!
    やばい、なにその顔、すっごいかわいい。
    男の子がそんな顔しちゃダメだよ!?

    急に反則的な顔を見せられ、胸が、きゅうん、と高鳴った。

  • 57二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 07:55:13

    あ、これは…うん、やっちゃう奴っすね?

  • 58練乳グラブジャムン25/08/14(木) 09:45:28

    だって足が当たるだけだよ? なんで? なんか困ることある?
    私のことが嫌いとかじゃないよね、だって手繋いでくれてるし。
    じゃあ逆? 足が当たるとドキドキするから?
    足だけで? 手繋いでるのに? それ以上なの?

    だって、えっちなことしてるわけじゃないし。
    太ももに手が当たったりすると、っていうなら、まだ分かるけど。
    でも足首から下だし。
    え、全然分からない。
    デク君は何がそんなに困るの?
    でも、とにかく、かわいい。

  • 59二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 09:51:35

    お茶子さん、アンタ男の◯欲舐めんなよ?ましてや2X年◯貞のデクくんやぞ?

  • 60練乳グラブジャムン25/08/14(木) 09:57:25

    「わ……分かったよ……足当てないから、入ろう……?」
    ついさっきまで一緒に手を繋いでご飯食べてたのに、何でこんなに急に恥ずかしがってるんだろう?
    私もつられて恥ずかしくなってくる。

    ここの足湯は向かい合わせに座るのが難しかったので、隣に座った。
    靴と靴下を脱ぎ、ちゃぽん、とお湯に入る。
    ゆっくりと足を動かしながら、じんわりと足先から身体が温かくなっていくのを感じる。

    「ああ~、気持ちいいねえ」
    「うん、すっごく」
    何度入ってもいい温泉だ。
    こすり合わせた足が、スベスベになっていく感覚。

    これが毎日無料で入り放題とは、この周辺に住んでいる人が心底羨ましい。

  • 61二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 10:10:59

    そんな事して旅館でデクくんに襲われたらどうs…襲えるかな?

  • 62二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 10:24:29

    緑谷出久……

  • 63練乳グラブジャムン25/08/14(木) 10:52:23

    「はぁ~~……」
    隣で、気持ちよさそうにリラックスしてるデク君を見ていると、ふと悪戯心が芽生えてきた。

    ……どうしよう。
    すっごい足当てたい。

    さっきのかわいい顔、もっと見せてほしい。
    でも、やめてって言われてるし。

    ……怒るかな?
    あんまり怒らなさそうだけど……でもそれで嫌われたら、嫌だし。

    そもそも、なんで足が当たるのがダメなんだろう?
    もうずっと手を繋いでるのに。
    足ってなんか違うの?

    そういえばさっき写真撮るとき、座ったまま立とうとしなかったけど。


    …………立つ……?

  • 64二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 12:05:29

    あっ……………

  • 65二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 12:13:50

    そりゃまあ成人女性だし知識としては当然、、、

  • 66二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 13:33:03

    「――――――っっっっっ!?」

    脳裏によぎった可能性に、一瞬で頭が沸騰する。
    反射的に顔を背けた。

    …………え!? いや……いやいや…………違うよね……?
    そんなはずないって。
    だって、足が触っただけで、そんな風にならないって。

    でも、知識として聞いたことはある。
    オトコノコは、その……アレが大きくなると、座ったまま立てなくなるって……

  • 67練乳グラブジャムン25/08/14(木) 14:08:39

    そうっと、隣のデク君の様子を伺う。
    表情と、こっそりとズボンを……いまのところ、普通だと思う。
    デク君は気持ちよさそうに足湯を楽しんでいるだけだ。

    眼を閉じて、さっきの足湯の光景を思い出す。
    どうだったっけ……?
    ズボンなんてよく見てなかったけど……

  • 68練乳グラブジャムン25/08/14(木) 14:29:10

    「ん? 麗日さん、どうかした?」
    「はあえっ!? いや、あの、えっと、その、え、何がや!?」
    急に声をかけられて、物凄く慌ててしまう。

    ちょん。

    慌てた拍子に、お湯の中で足が当たった。
    びくっとして、私の反対側に足を動かすデク君。
    私の胸も、どきっと跳ねた。

    頭の中にあるピンク色の可能性が、さらに確信に変わっていく。

  • 69練乳グラブジャムン25/08/14(木) 14:31:35

    「ご、ごめんなさいっ!」
    斜めに座るように、身体全体で反対側を向いてしまう。
    足が当たらないように遠ざける。

    「あっ、あの、あのね!? わざとやないねん! いまの、わざとやないんよ!?」
    「う、うん……分かってる、大丈夫……」

    恥ずかしそうにしているデク君。
    ……やっぱり、そういうことなの?
    でも、他に理由が思いつかない。

  • 70練乳グラブジャムン25/08/14(木) 14:33:58

    っていうか、よく考えたら、これって相当マズイんじゃ?

    私は何を考えていたんだろう?
    そりゃ誰だって手は当たるよ。
    手を繋いだりすることもあるよ。

    でも、足の先って、こんなの普段当たるわけがない。
    だって靴履いてるか靴下履いてるんだから。
    足が当たるのってどういう状況?
    机に座った時に、二人とも素足だったら机の下で、とか?
    でも靴下履いてるから、そんなこともまず無いよ。
    じゃあそれ以外だと?

  • 71練乳グラブジャムン25/08/14(木) 14:43:00

    それこそ一緒にお風呂入るとか、えっちしてるときじゃなきゃ、当たったりしないんじゃ?

    さっき自分がやっていた事が脳裏に思い出される。
    お湯の中で、足をこすり合わせて……

    「~~~~~~~っ!!」
    両手で顔を覆った。

    なにやってんの!?
    なにやってんの!?
    さっきの私、バカじゃないの!?

  • 72練乳グラブジャムン25/08/14(木) 15:34:03

    デク君がかわいい顔するから、面白くってやってたけど!
    自覚した今はもう無理だ、足当てるなんて恥ずかしくて出来ないっ!

    急激に襲ってくる、とんでもない羞恥心。
    恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
    何か、とんでもなくイヤらしいことをしてしまったんじゃないかという気になる。

    ……これ、謝った方がいいのかな。

    もし予想どおりなら、すごく悪いことをしてしまった。
    外で、こんな人が多いところで、アレを大きくさせられたら……男の人は、とんでもなく恥ずかしいんじゃ?

  • 73二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 16:07:15
  • 74練乳グラブジャムン25/08/14(木) 16:34:22

    でも……どうやって? なんて謝ればいいの?
    おっきくしてゴメンね? そんなこと言えるわけ無い。
    足当ててゴメン? でもそれを謝るのって、なんで謝ってるの、ってならない?

    困った……謝り方が分からない。
    悪いことをしてしまったと思う。謝らなければいけないと思う。
    でも、どうやって謝ればいいか、その方法が分からない。

    最悪だ。
    デク君、私のこと嫌いになってないよね?

    足湯を出た後のことを思い出す。
    タオルを貸してくれて、手を繋いで歩いて、一緒にいろんなもの食べて、ずっと楽しそうに笑っててくれた。
    ……嫌われてはいない、と思う。

    でも、やっぱり謝らなきゃ、とは思って。

  • 75練乳グラブジャムン25/08/14(木) 16:47:49

    「ねえ……デク君?」
    「うん、どうしたの?」
    「あの……さっき足当てたの……ごめんね……?」
    「へ? いや、全然いいよ」
    「もう、せえへんから……許してくれる?」
    「いや許すも何も。全然気にしてないっていうか……どちらかというと、僕が悪いというか」

    照れくさそうに頭をかくデク君。
    全然気にしてない、って言ってくれたのが、なんか凄く嬉しくって。

    気にしないでくれた。
    嫌われてないんだ。
    よかった。

  • 76練乳グラブジャムン25/08/14(木) 16:48:50

    なぜか、無性に抱きつきたくなって……でも、それはどうしても出来ないから。

    そっと、下ろしてるデク君の手に、自分の手を重ねた。

    「……麗日さん?」
    「ナ、ナンパ防止!」
    「へ?」
    「こ、こうしてた方が、絶対、トラブル起こらないからっ!」

    ただの言い訳だ。こんな場所でナンパの心配なんて全くしてない。
    でもやっぱり、どうしても……甘えたくって。

    この手のひらだけでいいから。
    ちょっとだけ、触れあっていたかった。

  • 77練乳グラブジャムン25/08/14(木) 16:51:15

    ゆっくりと、お湯の中で足をくぐらせる。
    周囲を見ると、いろんな人がいる。
    その中には、腕を組んでるカップルなんかもいて。

    ……いいなあ。

    私も、本当に付き合えたら。
    腕を組んだり。頭を肩に乗せたり。
    いまよりもっと、ああして甘えることができるのに……

  • 78練乳グラブジャムン25/08/14(木) 17:24:07

    ※SIDE 緑谷


    麗日さん、さっきはあんなに楽しそうに足を当ててきたのに、急にどうしたんだろう?

    なぜだか一転して恥ずかしそうで。
    向かいに座るのはいいけど、隣に座るのは恥ずかしいのかな?
    ……いや違うよな、さっき写真撮るときに隣に座っても普通だったし……手だけは繋いでるし。
    本当に分からない。

    まあ、足を当てられないのは助かる……立てなくなるから。
    ちょっと残念ではあるけれど。

  • 79二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 17:42:54

    ………これはひょっとして緑谷も気づいたりする?

  • 80練乳グラブジャムン25/08/14(木) 17:56:44

    さっきより随分と静かな足湯を堪能してから、散策を再開する。
    来た道を戻るようにしてまっすぐ進むと、また違った店が見つかった。
    「デク君、飛騨牛のにぎり寿司だって」
    「テイクアウト出来そうだね、これも買って食べよう」

    おすすめとある、にぎり三種盛りを頼む。
    その場で炙って出してくれた。
    「すごい、お煎餅に乗っとる」
    「とりあえず先に、写真だけ撮っちゃおうか」
    「あ、今度は私が撮るよ。デク君、食べてるポーズとって」

  • 81練乳グラブジャムン25/08/14(木) 18:35:35

    麗日さんに携帯を渡し、上を向いて握り寿司を口に放り込むみたいな格好をする。
    「はいチーズ」
    手前にニコニコで写った麗日さんと、上向で映る僕。
    なんかバカっぽいな、僕。
    でもまあ、楽しそうな感じが出てるし、これはこれでいい写真だ。

    「霜降りと、赤身と、豚バラか」
    「とりあえず、いただきまーす」
    順に食べていく。
    「いや、うまっ」
    「本当にね。」
    「なんか、霜降りと赤身だと、赤身の方が好みかも?」
    「ん~、若干霜降りの方が濃厚というか、柔らかい感じするね。しっかり食べてる感じするのは赤身の方かも」
    「でもすっごい美味いよね」
    「うん、それは本当に」
    豚は牛と違って、これもまた美味しかった。
    残ったお皿のお煎餅も食べたが、口直しになってゴミも出なくて最高だと思う。

  • 82練乳グラブジャムン25/08/14(木) 18:40:17

    お店を後にして進むと、麗日さんが指をさした。
    「かえるの滝だって。よみがえる、若返る、か」
    小さな用水路のようなものから水が流れ落ちている。
    滝というほどのものではないけど、子供がいたら喜びそうかもしれない。

    「へえ、僕らには縁起がいいね」
    「どうして?」
    「カエルって、帰る、と語呂合わせになるから。ヒーローが無事帰る、って」
    「あ、そっか。デク君物知りだね~」
    「さっきから、色々とカエル関係のものあったよね」
    マンホールとか神社とか、カエルに関係するものが沢山あったのを思い出す。

  • 83二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 18:43:13

    梅雨ちゃんを思い出しそうだな…

    そういや梅雨ちゃんはその手のイベントとかにも呼ばれてたりして、、

  • 84練乳グラブジャムン25/08/14(木) 18:52:23

    「梅雨ちゃんがいたら喜んでくれたかも。早く来ないかなあ」
    「あ、それは本当に。じゃあ、写真撮って送ってあげようか」
    「手を清めよ……ってあるけど」
    「じゃあせっかくだし、洗ってるところを撮ろうか」
    麗日さんが流れ落ちる流水に手をかざして、その場面を携帯に収める。
    ついでに自分も手を洗わせてもらった。
    そういえば、さっき握り寿司とか食べてたから、本当に手を洗うみたいになってるけど……まあいいか。

    LINKに写真を送り、持っていたタオルで手を拭いて。
    また手を繋いで、先に進む。

    もうずっと、意識することもなく、自然に手を繋いだままだった。


    ―――― to be continued

  • 85二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 18:55:33

    ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜

    砂糖吐いて良いっすか?

  • 86練乳グラブジャムン25/08/14(木) 19:14:33

    はい、足湯2回目にして、察してしまったお茶子でした。

    コメントくださった皆様ありがとうございます、めっちゃ楽しませてもらってます。

    ゴルゴが毎回すげえ話の先を求めるのウケる。

    >>64

    Noタイトル回収ありがとうございます。



    ネタバレの代わりに裏話を。

    ここから数話の展開は、全体通しての推敲回数ランキング第2位です。

    とにかく納得いく展開、表現ができるまで、めっっっちゃ書き直しました。

    どうかお楽しみいただければ幸いでございます。

  • 87練乳グラブジャムン25/08/14(木) 20:31:26

    ■No.461 One slash Two

    ※SIDE 麗日


    道を進むと、橋に続く大通りに出た。
    場所は違うが、最初の大通りに戻ってきた形だ。
    右車線と左車線の、道の真ん中を川が走り、飛騨川に続いている。
    川にそって、枝垂桜だろうか、いまは緑の葉をつけている木々が並んでいる。

    川を渡った車線の向こうに、一台の車が見えた。
    クレープのキッチンカー。
    いつかの言葉を思い出す。


    恋人は、遊園地で手を繋いで、クレープを半分こ。

  • 88練乳グラブジャムン25/08/14(木) 20:36:03

    繋いだ手の温もりを感じながら、ちら、と隣のデク君を見やる。

    一緒に食べられたら……
    もしそう出来たら、たまらなく幸せだろう。
    デク君と二人で、クレープ半分こがしたい。

    でも、言えない。
    あの場にいた自分が「クレープ半分こしたい」と言い出すのは、しまっている想いを伝えるのと変わらない。

    もし、断られたら?
    そんな事できない、と拒まれたら?

    そう思うと、怖くて足がすくんで、喉の奥から声が消えてしまう。

  • 89練乳グラブジャムン25/08/14(木) 20:49:34

    「麗日さん?」
    「……へ?」
    「どうかした?」
    「あ、あの……その……別に……」
    「ああ、ここ見晴らしいいもんね。写真撮ろうか」

    確かに、いい景色の場所だ。
    この場所の写真も是非ほしい。
    「そうだね、うん。デク君、写真撮ろうよ」

    デク君がにっこりと笑って、周囲の人に撮影をお願いしようと離れる。
    私はひとり、橋の柵に手を置き、ちらり、とキッチンカーに目を向けた。

  • 90練乳グラブジャムン25/08/14(木) 21:04:12

    クレープは食べたいけど、欲張っちゃいけない。
    これまで一緒に、いろんなものを食べてきている。
    その写真も撮っている。
    何だかんだ、お腹も膨れてきている。
    宿に行けば、また美味しいお夕飯が待っているだろう。

    別にクレープなんて、いつでも食べられる。
    ちゃんと付き合えたら、それこそ遊園地にでも行って、一緒に食べればいいだけ。
    「じゃあ麗日さん、あの人の方向いて、笑って」
    デク君が戻ってきて、撮影を促される。

    そうだ、デク君とのツーショット写真。
    これが一枚増えるだけでも、私にとっては、とんでもなく幸せなことだ。

    そう思うと自然と笑顔になり、写真を撮ってもらった。

  • 91練乳グラブジャムン25/08/14(木) 21:11:42

    撮った写真を、デク君がLINKに送ってくれる。
    その写真は、当然私のところにも届く。
    川沿いの並木道を背景に一緒に写った、素敵な一枚。

    今日一日で、もう充分すぎるほど、素敵な時間を過ごしている。
    人生最高の想い出が沢山できている。
    多くを望んでは、バチが当たってしまうほどに。

    「じゃあ行こうか」
    「うん、次は何があるかなあ」
    キッチンカーを横目に、手を繋いで歩き出す。

    そうだ、忘れちゃいけない。
    こうして手を繋いで歩けるだけで、舞い上がるほど幸せだってことを。

  • 92練乳グラブジャムン25/08/14(木) 21:29:51

    ※SIDE 飯田


    「ケロッ!? みんな、この写真見て! 奥にキッチンカーがある!」
    送られてきた写真を見て、蛙吹君が大声を上げた。

    「どうしたんだ?」
    「キッチンカーなんてどこにでもあるだろ」
    「そうじゃないわ! これ、クレープのキッチンカーなの!」

  • 93二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 21:31:25

    皆んなに知れ渡ってて草

  • 94練乳グラブジャムン25/08/14(木) 21:46:27

    みんなが顔を見合わせるが、深刻な顔をしているのは蛙吹君だけだ。

    「クレープがどうかしたのか?」
    「絶対に食べさせなきゃ! 二人で半分こさせるの!」
    「はあ?」
    「どういうこと?」
    「名物でもないでしょうに、何かありまして?」
    「みんな何でっ!? ああ、そっか、あのとき私とお茶子ちゃんだけだったから!」
    頭を抱える蛙吹君。
    何かあるのか。

  • 95練乳グラブジャムン25/08/14(木) 22:02:21

    蛙吹君が、キッと顔を上げて、叫んだ。
    「恋人は、遊園地でクレープを半分こ! それが緑谷ちゃんの恋愛観!」
    「はあ?」
    「なんだそりゃ?」
    「緑谷の、なに? 恋愛観?」
    「……って、どういうことだ?」
    「梅雨ちゃん、これでいい!?」
    いち早く状況を把握したのは葉隠君だったようだ。
    既にコメントを打ち終えて送信した画面を見せてくる。

    「透ちゃん、ありがとう! 絶対にお茶子ちゃんはクレープを食べたいはずなの!」
    「……クレープを? 食えばいいじゃん」
    「それは無理! 絶対にお茶子ちゃんは言い出せない! 緑谷ちゃんも、正式にお付き合いしてない人には、絶対に言わない!」

  • 96練乳グラブジャムン25/08/14(木) 22:17:13

    深呼吸した蛙吹君が、真剣に訴える。
    「みんなよく聞いて。細かい説明は省くけど、クレープを半分こするのは、緑谷ちゃんにとって、物凄く特別な意味があるの。それこそ恋人同士がすることだって信じてる。そして、お茶子ちゃんはそれを知ってる」
    皆の顔に緊張感が宿る。
    僕にも事の重要性は理解できた。

    「なるほど。つまりこの二人にクレープ半分こさせるのは、お互いに恋人と認めさせるようなものだということか」
    「そういうこと。特に緑谷ちゃんに対してね」
    「分かったぜ、任せろ。スイーツなら俺がコメントするのがいいよな」
    「そうだな、頼む砂藤!」
    砂藤君が携帯にコメントする。

  • 97練乳グラブジャムン25/08/14(木) 22:54:05

    「急いで! どんどん二人がキッチンカーから離れて……いや、止まった! たぶん携帯確認してくれた!」
    口田君が位置を伝えてくれる。

    「よしナイス! とにかく戻ってクレープ食わせるぞ!」
    「ケロ。この事を知ってるのは、この中では私だけ。だから、このクレープ作戦、私はコメントできないわ。それはとても不自然になってしまうもの」
    「既にコメントした葉隠と、甘味の説得力が高い砂藤が鍵だな」

  • 98練乳グラブジャムン25/08/14(木) 23:00:56

    「勘だけど、ここの緑谷は手強いぞ」
    「爆豪、どんなレス来ても飛んでくんじゃねえぞ」
    「わーっとるわ!」
    「皆様、おそらくここが、今日の天王山でしてよ。全員の知恵を結集して、必ずや成功させましょう!」

    皆が気炎を上げ、すぐにコメント内容の調整に入る。

    いくぞ、緑谷君。君はきっと遠慮するのだろう。
    だが、それは我々が認めない。

    緑谷君、麗日君。二人とも、遠慮などいらない。
    お互いに、好きな人が隣にいるんだ。
    存分に、いい想い出を作ってくれ。

  • 99二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 00:14:13

    ここにてついにクレープを半分こか…
    ニヤニヤが止まらん…

  • 100二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 00:21:44

    甘々過ぎて口からカスタードクリーム吐きそう

    …失礼しました※ドゲザッ

  • 101二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 02:10:35

    梅雨ちゃんが、荒ぶってるw
    デクの恋人定義だもんなぁ。それが通ればもう濃い人よ。
    …いや今までのでも充分だけどな?ほんとにな?

    続けてどうぞ

  • 102練乳グラブジャムン25/08/15(金) 05:03:42

    【元A組グループ】

    インビジブルガール
    『ねえ麗日、そこのクレープ屋さんの写真ちょうだい。奥に写ってるキッチンカーのお店!』
    シュガーマン
    『俺も気になるな。なんか見覚えある店だ。写真もらえるか?』
    ウラビティ
    『はい、写真撮ったよ』


    麗日君からコメントと写真が添付されてきた。

    「チラシの画像なんか求めてないよ!」
    「やめろ葉隠、携帯叩きつけんな!」
    「待って。とりあえず店の前までは移動させることが出来た! 一歩前進!」
    「店の前にいるなら、味教えろってレスすればいけるんじゃねえか!?」
    「それだ!」
    「葉隠さん、砂藤さん、お願いします!」
    二人が携帯をタップする。
    固唾をのんで見守る面々。
    何としても半分こさせたい、その一念が僕らの思いだ。

  • 103練乳グラブジャムン25/08/15(金) 05:45:46

    【元A組グループ】

    インビジブルガール
    『結構種類あるね。じゃあ、食べたいやつ買って、写真撮ってよ』
    シュガーマン
    『思った通りだ、その店気になってたんだよ。一つ買って食レポしてくれ』
    ウラビティ
    『食べたいけど、一人じゃ食べきれないよ』


    返ってきたLINKのコメントにみんなが沸き立った。
    「これお茶子のサインだって!」
    「おい緑谷気付け!」
    「あいつが気付くわけねえ! 追撃するぞ!」
    「誰か、他の方もコメントを!」
    「じゃあ俺がいく!」
    「お願い切島!」
    「俺もコメントしよう」

  • 104練乳グラブジャムン25/08/15(金) 06:38:23

    【元A組グループ】

    烈怒頼雄斗
    『麗日が食べきれなかったら、緑谷が食えばいいんじゃね?』
    テンタコル
    『確かに、それで解決だな』
    シュガーマン
    『夕飯前だと1個は重いか。じゃあ半分食って残りは緑谷で、それで解決してくれ。頼むわ』


    「これでどうだ!?」
    「よくやった切島!」
    「流れ的にはおかしくないと思うが……」
    「この流れで買わないのは逆におかしいだろ」
    「様子を見つつ、葉隠と砂藤を援護する感じでいこうぜ」
    「少しタイミングを見計らい、更に追撃するか……」
    一致団結の手本を見ているようだ。
    みんなに協力を仰いで本当によかった。

    さあ緑谷君。
    この要求に、君はどうする。

  • 105二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 07:33:19

    ゴルゴさんが出茶推しみたいになってて笑えるw

  • 106練乳グラブジャムン25/08/15(金) 07:35:12

    ※SIDE 緑谷


    「ぅええええええええっっ!?」
    グループLINKのコメントに、今日一番の衝撃を受けた。
    店の前で変な声を上げてしまう。

    みんな何を言っているんだ!?
    麗日さんが食べきれなかったら僕が食べる!?

    冗談でもやっていい事と悪い事がある。
    旅行先でクレープ半分こ、なんてしていいのは、それこそ恋人同士だけだろ。

  • 107練乳グラブジャムン25/08/15(金) 08:16:53

    キッチンカーが気になるというコメントが来たから、写真を取りに戻った。それはいい。
    クレープを買って食レポをする。それも構わない。

    でも、これは内容がマズすぎる。
    ここまでずっと手を繋いで歩いてきた。
    携帯には二人で撮った写真がたくさん入っている。

    麗日さんと、クレープ半分こ。
    そんな夢みたいなことが叶ったら、そりゃあ嬉しい。
    舞い上がるほど嬉しい。
    たぶん人生最高に嬉しい。

  • 108練乳グラブジャムン25/08/15(金) 08:18:00

    ……でも、それは僕だけだ。
    麗日さんにその気が無かったらどうするんだ。
    付き合ってもいないのに、男女でクレープ半分こしようなんて、絶対に嫌がられるぞ。

    みんな今日はどうしたんだ。
    どうして麗日さんを困らせるような事ばかり要求してくるんだ。
    ちょっとは配慮ってものがあってもいいんじゃないのか。
    だいたい何でまだ誰も合流してないんだ。
    誰かもう駅に着いたっていいじゃないか。
    こっちはずっと二人っきりなんだぞ。
    誰でもいいから、せめてあと一人誰かがいれば、こんなに困ることはないのに。

  • 109練乳グラブジャムン25/08/15(金) 08:19:50

    【元A組グループ】

    インビジブルガール
    『ねえ、私ら仕事で行けないんだよ? 感想くらい聞きた―い』
    シュガーマン
    『俺もその店は気になってたんだ。なんとか頼めないか?』
    イヤホン=ジャック
    『砂藤がこんなに反応するって珍しいね。美味しいんじゃない?』
    Ⅸ黒い鳥Ⅸ
    『俺も気になってきた。砂藤オススメのクレープ屋について、感想を頼む』


    くそ……どうしても買わないといけないのか。
    みんなおかしいだろ。
    こっちが二人っきりなの分かってるだろ。
    なのになんで、二人でひとつのクレープ食べろ、なんて言えるんだよ。
    買えるわけが無いって、常識で分かるじゃないか。

  • 110練乳グラブジャムン25/08/15(金) 08:57:21

    ちらりと、隣の麗日さんに目を向ける。

    キッチンカーを見つめる麗日さんは、頬を染めて、少し不安そうな表情で……

    ほらみろ、言わんこっちゃない!
    みんな分かってよ!
    麗日さん、恥ずかしいんだよ。やりたくないんだよ。
    恋人でもないのに、クレープ半分こなんて出来るわけがない。
    そんな事したくない、って顔に書いてあるじゃないか。
    常識だろ、常識!?

  • 111二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 09:12:58

    このクソナードめ…A組の意図にはよ気付けや…

  • 112二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 11:03:01

    いやいや意図に気づかれたら駄目なんだ
    皆がものすごい勢いで外堀は埋めるけど、そこから先は本人達にかかってるんだ

  • 113練乳グラブジャムン25/08/15(金) 12:37:39

    くっそ……どうする?
    砂藤君も葉隠さんも来れなかった。その二人からの……いや、みんなからのリクエスト。
    みんな大切な友人だ、せめて感想くらいは伝えてあげたい。

    でも、半分こは無理だ。
    いくらなんでも麗日さんの気持ちを無視し過ぎている。
    好きでもない人とクレープ半分こなんて、罰ゲームにしたって酷すぎる。
    相手によっては泣くほど辛いはずだ。

    手を繋ぐのはまだ分かる、トラブルを防止するっていう大義名分があった。
    でもクレープを半分こしなきゃいけない大義名分なんて存在しない。

  • 114練乳グラブジャムン25/08/15(金) 13:07:56

    これだけは絶対にやっちゃいけない。
    恋人同士じゃなきゃ絶対に許されない。
    本当にこれだけは、踏み入ってはいけない一線だ。

    麗日さんは、一個は食べられないとコメントしている。
    でも半分こはできない。

    どうする、どうする、どうする……


    悩みに悩んだ末、麗日さんに声をかけた。

  • 115練乳グラブジャムン25/08/15(金) 13:15:04

    ※SIDE 飯田


    【元A組グループ】

    デク
    『じゃあ、せっかくだし2個買って食レポするよ』


    「クソナードおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
    川面で今日一番の大爆発が起きた。とてつもない水柱が上がる。
    が、誰も気にも留めない。
    それよりLINKに表示された緑谷君のコメントの方が問題だ。

    「畜生! あの野郎、逃げやがった!」
    「なんで!? 麗日、一個は食べれないって言ってるじゃん!」
    「いくつアウト重ねるんだよ! 試合終わらせるつもりか!?」
    「やっぱ手強かった! くっそ、これどうするよ!?」

  • 116練乳グラブジャムン25/08/15(金) 14:15:37

    「まずい! 二個買われたら全部おしまいだ!」
    「あんまり食うと夕飯食えなくなっちまうぜ?」
    「今すぐ何とかしないと!」
    「どうしろってんだ!?」
    「何か考えないと!」
    「何かっていったって、店は目の前だよ!?」

    阿鼻叫喚の地獄絵図。
    クレープひとつにここまで大騒ぎする集団もいないだろうが、事は深刻だ。
    今すぐ何か手を打たなければ。

    「くそ……こんな……いや待て!? この店、もしかしたら……」
    砂藤君が携帯をタップした。

    その手に期待が集まる。
    頼む、何でもいい。
    起死回生の手を打ってくれ……!

  • 117練乳グラブジャムン25/08/15(金) 14:18:28

    ※SIDE 緑谷


    二人で相談した結果、結局二つ買うことにした。
    食レポが目的なんだ、種類は多いに越したことはない。
    麗日さんも、多分食べきれる、ということだし。
    もし残してしまったら、本当に申し訳ないけど、お店の人にお返ししよう。
    もう、それしかない。

    「はい、いらっしゃいませ」
    「あの……クレープ二つもらえますか」
    「はい。お味はどちらにしましょう。」
    「そうだなあ……僕は……これでいいかな。麗日さんは?」
    「え? 私は……えっと……どうしようかな……う~んと…………」

    『prrrrrrr』
    麗日さんがメニューを指そうとしたとき、店員さんの携帯が鳴った。
    「あ、すみません。先に電話出させていただいても、よろしいですか?」
    「はい、どうぞ」

  • 118練乳グラブジャムン25/08/15(金) 14:28:41

    「はい、もしもし。え……ああ、サトウさん、お久しぶりです!
    はい、はい。いえ、その節は大変ありがとうございました。
    ええ、僕は変わりなく。いま岐阜でキッチンカー出して……そうそうそう! それです! いや、流石です、よくご存じで。
    あ、すみません、いまお客様がお待ちなので、また今度ゆっくり……え?
    いやだからお客様が……あ、そうなんですか?
    なら直接ご連絡を……え?
    はい、はい。は? いや、ちょっとよく分からないんですけど、どういう事で……はあ。
    在庫はそりゃ今日一日は……え、いやいやそりゃ出来ないですよ、先にお越しになった方が……は? え、どういうことです?
    はあ……ええ、ええそうですね、ちょうどお二人、いまお待ち頂いてて……あ、そうなんですか?
    いやでも……え、全部?
    いや全部って、それ結構すごい額に……いやもし違う人だったらどうするんですか?
    ……え、本当に?
    ……いや確かに生活ありますし、それは助かりますけど……はあ、まあ、そういうことなら。
    でも本当にいいんですか?
    はい……はい……本当ですよね?
    間違ってても知らないですよ?
    ……はい……分かりました。じゃあそうしますけど。
    でも、本当ですよね?
    終わったらすぐ電話しますよ?
    はい、はい。じゃあ、また後程、はい……はい、お疲れ様です」

  • 119練乳グラブジャムン25/08/15(金) 14:34:51

    店員さんが携帯を仕舞って戻ってくる。
    「いや……すみません。急に先輩から連絡があって。で……あの、クレープなんですけど」
    さっきまでの営業スマイルはどこへやら、物凄く気まずそうにしている。

    「あの……大っ変、申し訳ないんですけど……あと一食しかご提供できないんですよ」
    「えええええええっ!?」
    「いや……本当に申し訳ございません」
    「こ……困ります!」
    困る。冗談抜きで本当に困る。
    もうみんなには買うとコメントしてしまっている。

    「いや、本当にすみません。もう在庫無くなっちゃって……」
    「そんな……」
    どうする……別の店を探して……いやダメだ、砂藤君達のリクエストはこの店だ。
    他の店じゃリクエストに応えられない。
    いったい、どうすれば……

  • 120練乳グラブジャムン25/08/15(金) 15:20:25

    「ね……ねえ、デク君……」
    おずおずとした感じで、麗日さんが袖を引いてきた。
    耳まで真っ赤になっている。
    「一個しかないなら、しょうがないよ……は、は……半分こ、すればええやんっ!」
    「ええええええええっ!?」
    耳を疑った。

    「いやいやいや! だって……!」
    それって、恋人同士がするやつだよ?
    僕あの時、結構でかい声で叫んじゃったんだけど……
    覚えてないの?
    いやでも、八年も前だし、戦闘中だったし……忘れてる可能性もあるのか?

  • 121練乳グラブジャムン25/08/15(金) 16:25:24

    「だだだ、だってデク君、しょ、しょうがないよ!? あと一個だけなんやもんっ!」
    確かに、そうだけど。

    「しょうがない! しょうがないんだよ! 不可抗力! どうしようもないんやって!」
    それは、そうなんだけど。

    「……麗日さんは、いいの? その……僕と、クレープ、半分こ、って……」
    麗日さんが、くるっと背を向ける。
    その表情が伺えなくなる。

    「……別に……そ、そんなん。ふつっ、普通やし! みんなすることやん……普通やん……!」
    両手を後ろ手に組んで、少し下を向いて、なんか恥ずかしそうにしている。

  • 122練乳グラブジャムン25/08/15(金) 16:49:52

    麗日さん……覚えてないの?
    それとも、覚えてて言ってるの?
    いや……覚えてて言う訳がない……よね?

    少しだけ振り返り、僕の方を伺ってくる麗日さん。
    その横顔は、頬が染まって、どこか寂しそうで。

    「で、デク君は……た、食べたくないんかな……? 私と……クレープ……」
    食べたいに決まってる。
    誰より一緒に食べたいって願ってる。

    でも、そんなの嫌だろうし、迷惑だろうからって……だから、必死に我慢して……

  • 123練乳グラブジャムン25/08/15(金) 17:14:22

    麗日さん……覚えてないの?
    それとも、覚えてて言ってるの?
    いや……覚えてて言う訳がない……よね?

    少しだけ振り返り、僕の方を伺ってくる麗日さん。
    その横顔は、頬が染まって、どこか寂しそうで。

    「デ、デク君は……た、食べたくないんかな……? 私と……クレープ……」
    食べたいに決まってる。
    誰より一緒に食べたいって願ってる。

    でも、そんなの嫌だろうし、迷惑だろうからって……だから、必死に我慢して……

  • 124練乳グラブジャムン25/08/15(金) 17:16:08

    「麗日さん……迷惑じゃないの? 嫌だったりしないの?」
    「別に……何も、嫌とか、そんなんないし……」
    少しモジモジしたような、恥ずかしそうな仕草。

    ……なんで今日の麗日さんはこんなに可愛いんだろう。

    「じゃあ……食べよ、っか……」
    「そ、そうだよ。せっかくだもん」
    「あ……麗日さん、味、何にする?」
    「えっと……さっ! さっきデク君が選んだやつ!」
    「じゃあ……これにしよっか……」

    熱に浮かされたような感覚のまま、クレープを注文した。
    出来上がるのを待ちながら、思考がぼーっとしている。

  • 125練乳グラブジャムン25/08/15(金) 17:20:32

    ……これ現実か?

    隣にいる麗日さんが、恥ずかしそうに、なんかずっとモジモジしているように見えてしまって。
    何か、本当に恋人同士になったみたいで。

    誰より特別な、麗日さんと、クレープ半分こ。

    ただの偶然だ。
    本当の恋人同士じゃないんだ。
    こんなの錯覚だ。

    そんなこと……分かってるのに。

    それでも、泣きだしたいくらい……嬉しい気持ちが満ちてきていた。


    ―――― to be continued

  • 126練乳グラブジャムン25/08/15(金) 18:01:38

    というワケで、クレープ買うところまででした。

    コメントくれてる皆様ありがとうございます。

    お楽しみいただければ幸いです。


    >>100

    このスレは好きにコメントしてくれてええんやで。


    ネタバレ。

    次回はお茶子SIDE。

  • 127二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:35:50

    お茶子クレープ半分こ知ってるしこれ実質告白だろ

  • 128練乳グラブジャムン25/08/15(金) 21:22:44

    ■No.462 Melty

    ※SIDE 麗日


    デク君がクレープを受け取ってる。

    ……こんな事ってある?

    駅を出てからずっと、魔法の国に迷い込んだみたいに、不思議なことが起こってる気がする。
    こんなに都合よく、一個だけ買えることなんて、あるわけが……
    ああ、でも、買えてよかった。

    「麗日さん、どうする? 座って食べる?」
    「そ、そうだね……うん……」
    だめだ、頭が回らない。
    熱に浮かされたみたいに、ぽーっとなってて、現実感が無い。

  • 129練乳グラブジャムン25/08/15(金) 21:24:53

    川沿いの、近くのベンチに並んで座る。

    これが本当に現実なのか疑問に思う。
    夢でも見せられてるんじゃないだろうか。

    「えっと、これも写真撮らなきゃか」
    「そ、そうだね……葉隠ちゃんと砂藤君、見たがってたもんね」
    「でも今、ちょうど周りに人いないし……いや、風景じゃなくてクレープ撮らないとだから、結局自撮りしかないか。じゃあ麗日さん、ちょっとクレープ持っててもらえる?」

    デク君からクレープを受け取った
    手のひらに、作りたてのクレープの温かさを感じる。

  • 130練乳グラブジャムン25/08/15(金) 21:29:19

    デク君が携帯を取り出して、カメラを起動する。
    「えっと……ぼ、僕たちも写ってないといけないんだよね」
    「そっか。そうだね……二人で……」

    デク君が持った携帯を見ながら、角度を調整していく。
    「これ、画面に入れるの大変だね……」
    「もうちょっと寄れば入りそうかな」

    カメラの中に、一緒に収まるように近付く。
    肩が触れ合った。
    それだけじゃ足りなくて、少し斜めに、顔を寄せる。
    今日一番近い距離。

    カメラの映像を確認しながら、妙な既視感を感じていた。

    なんだろう、これ……?
    こんなこと絶対に初めてなのに、見たことがあるような……知ってるような……?

  • 131練乳グラブジャムン25/08/15(金) 21:31:04

    「――――っっっ!?」

    雷に打たれたような衝撃が走り、全身に鳥肌が立った。

    「ぁ…………」

    うそ。
    信じられない。

    携帯の画面。
    そこに映し出されている情景。

    それは。


    ずっと、ずっと、願い続けて。
    何度も、何度も、夢に描いた。

    いちばん憧れた、恋のカタチだった。

  • 132練乳グラブジャムン25/08/15(金) 21:32:52

    デク君と一緒に、すぐ近くで、顔を寄せ合って。
    私達の間には、美味しそうなクレープが映ってて。

    一緒に、クレープ半分こ。


    夢見た景色がそこにある。
    画面にその証拠が映っている。
    ずっとずっと願っていた幸せが、今この瞬間に訪れている。

    目の前の光景が信じられない。
    嬉しさで胸がいっぱいになっていく。

    画面の中の私の瞳が、泣きそうなくらい潤んでいくのが見えた。

  • 133練乳グラブジャムン25/08/15(金) 21:37:01

    「じゃあ、麗日さん。笑って?」
    「あ、うん……」

    そうだ、笑わなきゃ。泣いちゃダメ。
    こんなに嬉しい一瞬なんだから。

    憧れ続けた、夢の舞台に立ったみたいで。
    泣きそうなのを我慢して、笑顔をつくる。

    嬉しい気持ちを隠さないで。
    幸せだ、って思いながら。
    頬を綻ばせて。

  • 134練乳グラブジャムン25/08/15(金) 21:39:11

    丁度いいところで、小さなシャッター音。

    「これでいいかな?」

    デク君が撮った写真を見せてくれる。

    私とデク君がクレープを手にして、頬を染めている。
    とっても優しい笑顔のデク君。
    幸せで胸いっぱいの笑顔をした私。

    最高の一枚だった。

  • 135練乳グラブジャムン25/08/15(金) 21:41:45

    「……うん。いいと思う」
    「じゃあ、グループLINKに送っておくね」

    片手で自分の携帯を取り出し、デク君から送られてきた写真を確認する。

    ずっと夢見てた情景が、いつでも見れる形になって、手元にあった。

    そこに写る私は、大好きな人の隣で、幸せを独り占めしたみたいに笑ってて。
    これが自分だって信じられないほどで、写真の自分に嫉妬してしまいそうになる。
    見ているだけで幸せで、羨ましいくらい。

  • 136練乳グラブジャムン25/08/15(金) 21:48:18

    ……この写真、私の宝物にしよう。


    あとでこっそり、携帯の待ち受けにしよう。
    帰ったら、印刷して写真立てに入れて、部屋に置いておこう。
    いつでも、この瞬間を思い出せるように。

    ああ、もう、どうしよう。

    あまりにも嬉しくて。
    舞い上がるほど幸せで。
    今すぐ大声で泣きたくてたまらない。

  • 137練乳グラブジャムン25/08/15(金) 21:54:00

    「麗日さん、クレープ。お先に、どうぞ」
    「あ、そっか……」
    これ、食べるんだ。
    夢が詰まった、大切な宝石のようで、食べるのがもったいない。

    でも、手に感じる出来立ての温かさは、今しかない。
    心底もったいないけど、食べるしかない。

    「……じゃあ、先にもらうね」
    デク君の眼差しに見守られながら。
    一緒に買ったクレープに、ぱくり、とかぶりついた。


    口に入れた瞬間、鼻の奥が、ツン、として、涙が零れそうになる。
    喉の奥から嗚咽が漏れそうになったのを、必死に堪えた。
    もう、さっきからずっと、言葉にできないくらい、胸がいっぱいで。

  • 138練乳グラブジャムン25/08/15(金) 22:00:58

    美味しい……。
    すごく……すごく、美味しい。

    ずっと夢見て、憧れて。
    ずっと食べたかった。

    デク君と半分このクレープ。


    とっても甘くて。
    ちょっと酸っぱくて。
    どこか、ほろ苦で。


    とろけるような、恋の味。

  • 139練乳グラブジャムン25/08/15(金) 22:02:09

    あんまりにも美味しすぎるから。
    さっきから、嬉しい気持ちが身体中に溢れて、もうこれ以上は堪えきれなくて。
    瞳に涙がふつふつと沸いてきていて。

    もう無理だった。

    「デ、デク君も食べなよ!」
    顔も見ずにクレープを渡すと、勢いよくベンチを立つ。

    「私ちょっと、お手洗い行ってくるから、待ってて!」
    返事も待たずに駆けだした。

  • 140練乳グラブジャムン25/08/15(金) 22:03:21

    だって、もう、視界は涙でぐにゃぐにゃで、上を向いてないと、いまにも零れそうで。
    まばたきをしたら、せっかく綺麗だって褒めてもらえたのに、メイクが流れてしまうから。

    だから、デク君。
    急にごめんね。

    ちょっとだけ。

    この嬉し涙を拭いてくるための、時間をください。


    ―――― to be continued

  • 141二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 22:34:10

    あああああああ!!!!ついにやったぞ!!!!

  • 142練乳グラブジャムン25/08/15(金) 22:56:25

    お茶子SIDEいかがでしたでしょうか。
    皆様のお気に召していただければ幸いです。

    裏話。
    とろけるような恋の味、が僕の表現力の限界でした。

  • 143二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 03:17:03

    お茶子の涙がっ。良かったね!
    甘々だというのにこっちまできゅうってなった…

    デクの反応楽しみ!

  • 144練乳グラブジャムン25/08/16(土) 08:46:25

    ■No.463 また絶対に

    ※SIDE 緑谷


    走り去る麗日さんの後ろ姿を見ながら、呆然とする。

    一口だけ食べて渡されたクレープ。
    ……やっぱり嫌だったんだろうか。

    ま、仕方ないか。
    彼氏でもないのに、クレープ半分こ。
    そりゃあ嫌に決まってる。

  • 145練乳グラブジャムン25/08/16(土) 10:01:38

    大きなため息をひとつ。
    ざわつく心を落ち着かせる。
    辛いのは僕じゃない、麗日さんだ。
    一口でも食べてくれたことを感謝するべきだろう。

    手渡されたクレープを食べながら、携帯を開いた。

    少し上にスライドすると、さっき自分が送った、麗日さんとの写真。

    なんか、僕と麗日さん、すごくいい顔してるな。
    何も知らない人が見たら、仲睦まじい恋人同士にしか見えないんじゃないか。
    これを皆に送ったのか。
    ……さすがに恥ずかしい。

  • 146練乳グラブジャムン25/08/16(土) 10:10:05

    みんなへのコメントどうしようか。
    このクレープ食レポしなきゃ。

    もぐもぐと食べながら、どう書くのがいいかと悩む。
    砂藤君の参考になるようなコメントって、どう書けばいいかな。


    そうしているとき、ふと、頭に浮かんだ思い付き。

    この一緒にクレープ半分こした写真を、携帯の待ち受けにしたら?
    麗日さんの、この眩しい笑顔を、毎日いつでも見られる。

  • 147練乳グラブジャムン25/08/16(土) 10:27:53

    心臓が、どくん、と跳ねた。
    人に隠れて悪い事をしているような感覚。

    いやいや……自分の携帯なんだし。
    自分の携帯の待ち受けなんて、何にしても自由なわけだし。
    恋人ではないかもしれないけど、大切な友達であることは間違いないわけだし。
    別に誰にも責められる理由は無いわけだし。

    やってもいいかな? いいよね?
    いやでも万が一、誰かに見つかったら……

  • 148黒騎士25/08/16(土) 11:37:33

    やってしまえよぉ…緑谷ぁ…!

  • 149練乳グラブジャムン25/08/16(土) 13:34:40

    「あーーーーーっ!? デク君、食べすぎ!」
    突然の声に驚いて顔をあげると、目の前に麗日さんがいた。

    「え……あれ……?」
    そうだ、お手洗いに行ってくると言っていた。
    用が終われば戻ってくる。
    なんだか逃げられたような気がしていたから、戻ってきてくれた事に驚いている自分がいた。

    「もうっ! 私まだ一口しか食べてないんやよ!?」
    半分ほどに減ってしまったクレープを指さされる。

  • 150練乳グラブジャムン25/08/16(土) 13:53:55

    「ずるいやん! 待っててよ! そんな美味しいの一人で食べて!」
    「え? え?」
    「私にも頂戴!」
    ずいっ、と手を差し出される。
    ワケも分からずクレープを渡した。

    「あれ……? 麗日さん……いらなかったんじゃ?」
    「何言うとんの? お手洗い行くから、待っててって言うたやん」
    麗日さんは、隣に座ると、僕の歯形がついた、食べかけのクレープにかぶりついた。

    ……嫌じゃないの?
    僕めっちゃ食べた後なんだけど。
    逃げられたような気がしたのって、僕の気のせい?

  • 151練乳グラブジャムン25/08/16(土) 13:56:19

    もぐもぐと食べる麗日さん。
    小動物のようにかぶりついている。
    「ほら、やっぱり……めっちゃ美味しいやん……こんなの……ないやん」
    眼を細めて、頬が赤く染まって、若干瞳が潤んでいる。
    本当に、この上なく美味しそうで。

    「……ねえ。あと全部、私が食べていいよね」
    「あ、うん……いいけど……麗日さん、食べたかったの?」
    「当たり前やん……ずっと、ずっと食べたかったんやもん……」

    ……そっか。
    嫌がられたと思ったの、僕の勘違いか。
    本当に麗日さん、食べたかったんだ。

    僕と、クレープ半分こ。

  • 152二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 16:10:20

    これ見てたら口角天井に突き刺さったわ
    デク茶最高!!!

  • 153練乳グラブジャムン25/08/16(土) 16:21:43

    頬を染めて、うっとりとして食べる麗日さんを見ていると、胸の奥が温かくなってくる。
    なんだか本当に恋人同士になったようで。
    こんな表情の麗日さんを見られるだけで、本当に幸せだって気持ちで満ちていく。

    「……ねえ、デク君……?」
    隣でクレープを食べながら、上目遣いで僕を見上げてくる麗日さん。
    「その……デク君は……美味しかった? クレープ……」
    さっきまで食べていたクレープの味を思い出す。

    「あ、うん……たぶん」
    「えっ!? たぶんって何!?」
    「あああ、ごめん! 携帯触ってたから、ちゃんと味わってなくって」
    「そ、そういうこと……むぅ……じゃあ、しょ、しょうがないな……最後の一口は譲ってあげよう」

  • 154練乳グラブジャムン25/08/16(土) 17:39:34

    「へ?」
    麗日さんは包み紙を外して、
    「これ絶対美味しいから。ほら、口あけて」
    言われるがままに口を開ける。

    「はいっ」
    麗日さんが食べていたクレープ、最後の一口を、口の中に放り込まれる。

    そのとき、麗日さんの指先が、僕の唇に触れた。
    触れられた唇に、ぷに、という肉球の感触と、甘いむずかゆさが残る。

    「どう? 美味しい?」
    「……うん」
    麗日さんに見つめられたまま、口の中のクレープを味わう。

  • 155練乳グラブジャムン25/08/16(土) 17:40:43

    その最後の一口は、とても甘くて。
    胸の奥から、温かい幸福感が、じんわりと広がってくるようで。
    さっき一人で食べたときは、全然分からなかった。

    なんだこれ。
    こんなの生まれて初めて食べた。

    「……めっちゃくちゃ、美味しい。これ、また絶対に食べたい」

    「ほら。やっぱり美味しかったやん」

    麗日さんが満面の笑みを浮かべた。
    陽の光を浴びて、花が咲いたような笑顔だった。

  • 156練乳グラブジャムン25/08/16(土) 18:27:20

    ※SIDE 飯田


    【元A組グループ】

    デク
    『ごめん、1個しか買えなかった』


    緑谷君のコメントと共に、一枚の写真がアップされた。

    「「「「「ぃぃぃよっっっっっしゃあああああああああ! クレープいったああああああああああ!」」」」」
    本日一番の歓声が上がる。
    あちこちでハイタッチが巻き起こった。

    「なんだこの写真、今日イチじゃね!? 緑谷のやつ、腹立つくらい嬉しそうだな!」
    「最初からやれやクソナードが! 手間かけさせやがって!」
    「もうあいつら一生、砂藤に足向けて寝られねえぞ!? いや、バラせねえけどさ!?」
    「何でもいいからって交渉して、最終的に全部買い占めたもんな、割り増しで!」
    「金どうすんだ? スポンサーか? 俺らで割り勘か? ああもうこの際なんでもいいか!」

  • 157練乳グラブジャムン25/08/16(土) 18:29:43

    「お茶子ちゃん、すっごい嬉しそう……こんな顔初めて見たわ」
    「ね!? やっっっばいよ、この笑顔! 超かわいい! 惚れるって!」
    「あああんっ! お茶子ちゃん良かったねえ! なんか私、泣きそうなんだけど!」
    「ここにプロポーズされました、って書かれたら、信じますわよ私!?」

    みんなの歓声を聞きながら、僕も、目頭が熱くなる思いだった。
    二人とも、喜んでくれただろうか?
    いや、野暮なことは聞くまい。
    この笑顔が、何よりの報告じゃないか。

  • 158二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 19:12:31

    マジでツッコミいないw

  • 159練乳グラブジャムン25/08/16(土) 19:26:50

    「LINKのコメントどうする!?」
    「味だけ! 味だけ聞こう! そんで終わり! 茶化すな! 余計な事は何も書くな!」
    「ああああ、めっちゃなんか言ってやりてえ!」
    「もう祝辞でも送りてえんだけど!? いや送れねえけどさぁ!」
    「もうこのまま予定変更して、ここに式場創ろうぜ? 轟と八百万がいれば出来るだろ」
    「式場ってどんなデザインだ?」
    「ありがとう轟! 気持ちは一緒だけど、本当に作らなくていい!」
    「いや待て! 来た! コメント来た!」

  • 160練乳グラブジャムン25/08/16(土) 19:28:27

    【元A組グループ】

    デク
    『うまく言えないけど、甘くてめっちゃ美味しかった』
    ウラビティ
    『すごく美味しかった! とろけた感じの味だったよ』
    シュガーマン
    『食レポありがとう。助かるよ』
    インビジブルガール
    『いいなー。私も今度食べてみたーい』


    「そりゃクソ美味ぇだろうなあ!? 緑谷オイこら!」
    「すっとぼけてコメント返したけどバレねえかな? 何の食レポにもなってねえもん」
    「大丈夫だ、たぶん緑谷なら気付かねえ!」
    「ねぇっ!? とろける味って何!? 何!? とろけてるのクレープじゃなくない!?」
    「ああんっ、もう! なにこれ!? めっちゃ彼氏ほしくなるぅ!」

    止むことのないクラスメイトの歓声を聞きながら、やって良かった、という充足感に満ちていく。

    だがまだだぞ、緑谷君、麗日君。
    まだ今日は終わっていない。
    更に、いい思い出を作ってくれ。


    ―――― to be continued

  • 161練乳グラブジャムン25/08/16(土) 19:55:17

    クレープのエピソード、3話続けての内容でしたが、いかがでしたでしょうか。
    コメントしていただいている皆様ありがとうございます。
    とにかく丁寧にクレープ半分こを書いたつもりです。
    お気に召していただければ幸いです。

    悲報?朗報?
    まだ続きます。
    引き続きお付き合いよろしくお願いします。

  • 162二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 20:46:06

    めっちゃ楽しいです!

    申し訳ないのですが…

    >>160

    の部分誰がどのセリフをしゃべっているのか分からないので、「」の前に頭文字だけでもいいので付けてくれませんか?

  • 163練乳グラブジャムン25/08/16(土) 21:31:15

    >>162

    ありがとうございます!

    楽しんでいただけたなら嬉しいです。


    ご質問あった部分についてご説明させてください。

    ラノベや小説を踏襲した書き方をしているので(そんなご立派なものでもないですが)、誰のセリフかは読んだ方のご想像にお任せするスタンスです。


    まず、>>160のセリフですが、一応スレ主は、上から以下のキャラクターで想定して書いておりました。

    峰田

    砂藤

    上鳴

    芦戸

    葉隠


    ですが、特に誰のセリフかは明記していない以上、それは読んだ人が自由に判断して良いことだと思っております。

    A「スレ主は峰田のつもりで書いたらしいけど、俺は切島のセリフだと思ったなあ」

    B「そう?俺は上鳴だと思った」

    なら、それはAさんにとっては切島のセリフで、Bさんにとっては上鳴のセリフでいいと思います。


    『物語とは、誰かに見せた瞬間に読み手のものになる』、みたいなことをどこかで聞いたおぼえがあるのですが、まあそれに則れば、ある程度は読んだ人の自由でいいかな、と考えております。

    〇〇がこう言った、××がこう言った、みたいなのを並べていくと非常につまらない文になりますし……

    まあそもそも、そんな事しなくても誰の発言か自然に分かる文章力があればなんの問題もないのですが。

    そこは本当に申し訳ないです。


    ちなみに、この先も同様の書き方が続くので、誰のセリフか分かりにくい箇所があるかと存じます。

    でもその場合は、ご自由に捉えていただいて構いませんので、よろしくお願いします

  • 164二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:40:47

    分かりました!!続きを楽しみに待ってます!

  • 165二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 01:55:21

    やばい、クレープとんでもなく甘とろだったんだろうね…
    お茶子ちゃんずっと感動してる…よかったね!
    デクくんよ、味の違いなんてよく言われてるだろ、愛情だったり、誰と食べるかが美味しいスパイスなんだよ!

    そんでナチュラルにあーんしたぞ、この2人…。良いぞもっとやれ。
    ツッコミたいの我慢して歓喜の叫びあげてる皆もほんといいヤツだなぁ!

    続き期待

  • 166練乳グラブジャムン25/08/17(日) 06:07:40

    ■No.464 思い出すために

    ※SIDE 緑谷


    クレープを食べ終えたところで、宿に向かって歩き出した。
    坂を下り、橋を通って、もう一度飛騨川を渡る。
    そのまま歩くと、ちょうど最初に休憩した、お土産屋さんに差し掛かった。

    「さっきは私が休憩しただけで、中には入らなかったったけど……せっかくだから見ていく?」
    「そうだね、時間あるし。この辺のお土産ってどんな物があるか気になるよね」
    お土産は明日買えばいいかと思いつつも、店内を見てみたい気分だった。

  • 167練乳グラブジャムン25/08/17(日) 07:00:32

    店内に入ると、土産物としてのお菓子、漬物、置物などが並んでいた。少し変わったものといえば、風鈴なんかもある。
    「デク君、ここお菓子の試食できるね」
    「どうする? 今買っちゃった方がいいかな?」
    「戻ってキャリーケースに入れちゃえば帰る時に楽やし、いま買っちゃおうか」
    「そうだね。試食できるし、ここで選んじゃおう」

    雄英の教職員と、実家と……頭の中で必要な数を考える。
    漬物は冷蔵が難しいし、無難にお菓子でいいだろう。
    二人で試食しながら、どれがいいかを選んでいく。
    だいたい選んだところで、面白いものを見つけた。

  • 168練乳グラブジャムン25/08/17(日) 08:03:15

    「ねえ麗日さん、これ見て」
    ひとつを手に取って見せる。

    「なにこれ。ご当地オールマイトやん」
    「そう。面白くない?」
    カエルの着ぐるみを着た、ご当地バージョンのオールマイトだ。
    温泉地だからか、湯浴みタオルを頭に載せてあり、タオルには【下呂】と刻印されている。
    デフォルメされて非常に愛嬌があるデザインになっている。

    オールマイトのグッズは色々と持っているが、こういった全国各地のご当地アイテムまでは、さすがに集めきれるものでもない。
    当然これは持っていなかった。

  • 169練乳グラブジャムン25/08/17(日) 08:05:10

    オールマイト以外にも、エンデヴァー、ベストジーニスト、翼のあったころのホークスといった、有名どころが並んでいる。

    「デク君、デク君。これ見て」
    麗日さんが指したのは、A組のみんなのキャラクターだ。その内容に自然と笑いが零れる。

    「ダイナマイト……目つき悪いよかっちゃん。梅雨ちゃんは着ぐるみ着てないね。個性カエルだからかな」
    元A組のみんなも、今や立派な有名ヒーローだ。こうした商品も展開されていた。

    「ショートはカッコいい感じにしてあるんやね。やばい、テンタコルめっちゃ可愛えぇ」
    「インゲニウムとかすっごいカッコいいよ、ロボっぽくて。うわ、ファントムシーフはカエルの執事にしか見えない」
    一緒に声を上げて爆笑したかったが、店の中だから、堪えるのに必死だった。

  • 170練乳グラブジャムン25/08/17(日) 09:07:28

    ようやく笑いの波が引いてきた頃、真面目に買うかどうかを考えだした。

    普通のぬいぐるみやストラップなどはどこでも買える。
    しかし、こういったご当地商品はそうはいかない。普段手に入らないし、その場所でしか買えないから、価値がある。

    「気持ちだけなら、全部ほしいけど……集め出したらキリがないしなあ」
    「コレクションしたいんじゃなくて、旅行の想い出だもんね」
    「うん……でも、いざ選ぶとなると難しいな」
    「だよね。すごく分かる」
    今日この地に来れたのも、本当に偶然だ。
    全部は無理でも、どれか一つくらいは買って帰りたい気がする。

  • 171練乳グラブジャムン25/08/17(日) 09:40:56

    (皆特別は、誰も特別じゃねぇンだってよ)
    先日の幼馴染の言葉が蘇る。

    「……これがいいかな」
    しばし逡巡して、『ウラビティ』を手に取った。
    カエルの被り物をしてデフォルメされたデザインで、とても可愛らしい。

    「私!? どうして? デク君、オールマイトじゃなくていいの?」
    「だって、今日ずっと一緒に回ってるから。一緒に歩いた思い出になるかなって。なんか急に来れない人多かったし、余計に。あ、だからインゲニウムとかは、後で飯田君が合流できたら、明日またここで買ってもいいし……ああでも、麗日さんが嫌なら、他のにするけど」
    「ううん、嫌じゃない!」
    とっさに麗日さんに手をとられ、キーホルダ―を握らせられた。
    これを買ってくれとお願いされているようにすら感じる。

    「じゃ、じゃあ……僕はこれで。麗日さんは?」
    「私は……そうだなあ……」

  • 172練乳グラブジャムン25/08/17(日) 10:21:31

    麗日さんはなにを選ぶだろう?
    自分のものを選んでほしい気持ちはあるものの、悲しいかな、そもそも『デク』のご当地キーホルダーは無い。
    あの大戦で僕も有名になったとはいえ、あの頃は仮免だったし、ヒーロー活動に復帰したのも、アーマーが出来てから。つい最近だ。
    僕のグッズも一般的なものはいくつか存在するけど、こんなご当地商品まで作られてないのは当然といえる。

    そもそも、こんなの無理に買うモノでもないし。
    麗日さんは何も選ばない可能性もある。

    口元に人差し指をもってきて、んー、と目線を動かしている麗日さん。
    こんな仕草も可愛いな、と思ってしまう。

  • 173練乳グラブジャムン25/08/17(日) 14:58:07

    「じゃあ、私はこれにしようかな」
    麗日さんが選んだのは、僕が最初に手に取った『オールマイト』だった。

    「あれ? 麗日さん、オールマイトでいいの?」
    「うん」
    もちろん嫌いなわけでないだろう。
    雄英でも指導してもらったし、好きなヒーローの一人だと思う。
    けど、特別好きだという印象も無い。
    仲のいい『フロッピー』やA組で一番チャートの高い『ショート』、それこそ自分の『ウラビティ』もある。
    わざわざ『オールマイト』を選ぶ理由が思い当たらない。

  • 174練乳グラブジャムン25/08/17(日) 16:02:25

    「だってこれが一番、デク君のこと思い出せそうやし」
    にっこりと微笑む麗日さん。
    今日一日かけて慣れたはずなのに、心臓がまた、どきっ、とした。

    「僕のことを、思い出す……ため?」
    「え……あれ……?」
    瞬間的に、ボンっと音が鳴るような勢いで、真っ赤になる麗日さん。

  • 175練乳グラブジャムン25/08/17(日) 16:15:19

    「あ、えと、あのね!? 私だって、今日のこと思い出したいし!? だったら一緒に歩いたし、デク君かなって思うけど、デク君のやつ無いやん!? 私がウラビティを買うのもなんか違うし!? って思ったら、デク君に一番近いのって、やっぱりオールマイトなんかなあ、って思って!」
    「あ……う、うん! そうだよね、分かるよ、分かってるよ! ありがとう!」
    何故か二人して焦ってしまう。

    落ち着いたら、なんだか可笑しくて、笑いあい、一緒にお会計をした。
    お土産のお菓子と一緒に買った、旅先の、どこにでもある安物。

    それでも、何かとても大切な宝物かのように思えて。
    優しくそっと、鞄に仕舞ったのだった。


    ―――― to be continued

  • 176練乳グラブジャムン25/08/17(日) 16:20:25

    クレープの次はお土産回でした。

    次回予告。
    ツッコミ不在です。

  • 177練乳グラブジャムン25/08/17(日) 18:19:06

    ■No.465 一番早いのは誰?

    ※SIDE 緑谷


    今日の宿は、少し坂を上ったところにある。
    駅前で宿のマイクロバスに乗ってもいいけど、何となく歩いていこう、という話になった。
    実際、そこまで遠い距離でもない。
    何より……もう少し、この手を繋いでいたかった。

    坂を上って宿への道を歩いていると、眼下に、別のホテルの中庭が見えた。
    そこに人が集まっている。

    スーツ姿の人が大勢いる。
    その中心には、羽織袴と白無垢を着た二人。
    和装の結婚式だ。

    もう式も終わったのだろうか。
    入れ替わり立ち代わり、記念撮影をしているようだ。

  • 178練乳グラブジャムン25/08/17(日) 19:16:37

    「いいなあ……」
    隣にいる麗日さんが、ぽつりと零した。
    その視線は、憧れをもって、新郎新婦の晴れ姿に向けられている。

    「結婚式が?」
    「だって、みんな笑顔でいるんだよ……新郎新婦も、周りの人たちも」
    「そういえば、麗日さんは、周りの人の笑顔を見るのが好きなんだっけ」
    「うん……みんな笑ってて。祝福されて……みんな、すっごく、幸せそう……」

  • 179練乳グラブジャムン25/08/17(日) 19:42:28

    「最近は結婚式しない人も多いっていうけど、やっぱり挙げたいよね」
    「うん。私は結婚式したいなあ。人のに参列するのもだし、自分の式もやりたいって思う」
    ふと気になった。
    麗日さんは、どんなのが似合うんだろう。
    普通のウエディングドレス? それとも和風の白無垢?

    「麗日さん、着るとしたら、やっぱりドレス? それとも和装?」
    「ん~……どっちかで選ぶなら、やっぱりドレスの方がいいかなあ。何となくやけど。こうして見ると、和装も良さそうだなあって思うけどね」
    「確かに、麗日さん、ドレス似合いそうだよね」
    「そうかな?」
    「うん。今日の服、その白い上着もピンクのスカートも、すごい似合ってるし。なんか、ドレス着た時のイメージが湧くっていうか」
    「お……おぉぅ。えへへ、ありがとう……デク君はどっちが似合うかなあ」

  • 180練乳グラブジャムン25/08/17(日) 19:57:14

    「僕? 考えた事ないや」
    「じゃあ、自分が着るなら、どっちがいい? 羽織袴か、タキシードか」
    どっちがいいだろう?
    頭の中に二つ並べてみるが、決められない。

    「う~ん……僕の場合は、本当にどっちでもいいなあ。花嫁さんの希望に合わせたいかも」
    「花嫁さんも、どっちでもいい、って言ったら?」
    「ええ~、その場合どうするかな……あ~でもそれなら、花嫁さんが着た時に綺麗な方、って決めるかもしれない」
    「へ~、優しんだ」
    「いや、こだわりが無いだけっていうか。僕は本当にどっちでもいいし。やっぱり、結婚式って、女性が主役っていうイメージあるから」
    「ブーケトスとかするのも、花嫁さんだもんね」
    「そういえば、ブーケトスって和装だと無いよね? いや、最近はあるのかな?」
    「ブーケトス、どうせなら、やってみたいなあ」
    「確かに、ブーケトスあった方が楽しそうだよね」

  • 181二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 22:09:38

    >>176

    もうずっとだよ(ツッコミ不在)


    子供の話に続き…。もう君たちの結婚式の話でいいですか?いいですよね?いいよな!


    砂糖そのまま口に入れたかもしれん甘々出茶ありがとう…

  • 182練乳グラブジャムン25/08/17(日) 23:15:40

    「ね。もし私が投げたら、誰がキャッチしてくれるんだろ」
    「麗日さん、誰呼ぶの?」
    「やっぱりA組の皆は呼びたいかな。B組の子も呼びたいし。他にもお世話になってるヒーロー仲間なんかも」
    「結構人数が集まりそうだし、取りに行く人は多そうだけど。実際誰がキャッチするかなあ」
    「みんな運動神経いいし、落とすことは無さそうだけど。やってみるまで分かんないね」
    「誰に向かって投げたいとかある?」
    「そんなの無いよ。誰かが受け取ってくれたら、それだけで嬉しいかな」

  • 183二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 03:19:35

    >>179

    デクくん、さらっとまた褒めてる…。えらいぞ

    そして褒めてることに気づいてないだと?


    本心てか事実を伝えてるだけなんだね、そうだよね…

  • 184練乳グラブジャムン25/08/18(月) 05:11:40

    「じゃあ、人の結婚式だったら、キャッチして受け取りたい?」
    「ん~……どうなんだろ。でもどうせなら、手に持ってみたいかも」
    「あれ? でもブーケトス受け取るのって未婚の人だけだよね?」
    「そうとは限らないらしいけど、一般的には未婚の人が受け取るイメージがあるよね」
    「なら、麗日さんが受け取るなら、他の人が先に結婚しないとか。誰が結婚するかなあ」
    「え~、誰だろう……私を式に招待してくれて、結婚しそうな人だよね」

  • 185練乳グラブジャムン25/08/18(月) 06:55:55

    「呼んでくれるとなると、やっぱり元A組の皆とかが可能性高いんじゃないかな」
    「そうなると誰だろう……響香ちゃんか百ちゃんかなあ」
    「ああ、耳郎さんは何か分かるかも。上鳴君と事務所が隣なんだっけ」
    「そうそう! 響香ちゃん、いつも違う違うって否定するけど、絶対何かあるって! 上鳴くんともずっと仲いいし」
    「確かに学生時代から、耳郎さんと一番仲よかったのって、上鳴君だったかも」
    「ね。そのうち、いきなり結婚しそうだよね~」
    「元A組で一番結婚しそうなのって、確かにあの二人な気がするなあ」
    「うん、絶対そうだと思う」

  • 186練乳グラブジャムン25/08/18(月) 08:01:07

    「八百万さんも何かあるの? いま名前上がってたけど」
    「ご家族とか親戚から、お見合いの話が結構来てるんだって。断ってるっていう話だけど、もしかしたらあるかなあ、って」
    「なるほどなあ。じゃあ、耳郎さんと八百万さんが候補か」
    「そうだね。私が先に結婚しなければ、あの二人が有力候補かな」

    「でもさ、A組の皆って、まだみんな未婚なんだよね。20代半ばだし、そろそろ身を固める人が出てきてもいいんだけど」
    「そうだよね。誰かいきなり結婚しそう」
    「誰が一番最初に結婚すると思う?」
    「ええ~、誰だろう? 響香ちゃんな気がするけど」
    「でもあの二人は、案外あのままな関係が続きそうな気もするなあ」
    「それはあるよね。でもそうなると誰だろう、全然分かんない」

  • 187練乳グラブジャムン25/08/18(月) 10:27:22

    「男子だと誰かなあ?」
    「ええ~……飯田君とか良い人見つかったら、ちゃんと結婚まで進みそうだなあ。かっちゃんとか、いきなり結婚しそう」
    「あ~でも飯田君はすっごい分かる気がする。結婚願望ある女性からすると、すごい理想の男性って感じするよね」
    「あとは誰だろう……みんな良い人が見つかれば結婚しそうだし、そうじゃなきゃ、しなさそうでもあるんだよなあ」
    元クラスメイトの顔を思い浮かべる。

  • 188練乳グラブジャムン25/08/18(月) 12:05:43

    「案外、麗日さんが一番早かったりして」
    「そうかなあ。だってわた……し、は………………」
    急に会話の流れが途切れた。
    「ん? どうしたの? 麗日さんは――――」
    好きな人、いるの?
    首を隣に向けたときに、その一言を出せず、固まった。

    真っ赤になって黙ったまま、僕を見上げている麗日さん。

    その姿を見た瞬間に、我に返った。
    手に伝わる温もりが、急に存在感を増して、いま誰と手を繋いでいるかを主張してくる。

    固まってよかった。
    会話の流れのまま、とんでもない事を聞いてしまうところだった。
    好きな人がいる、って答えられたらどうするつもりだ。

  • 189練乳グラブジャムン25/08/18(月) 12:08:03

    っていうか、なんでこんな話してるんだ?
    ブーケトスとか、結婚式に誰を呼ぶとか、何着るとか。
    手を繋いだまま。

    隣に音が聞こえるんじゃないかってくらい、心臓がバクバクしてくる。
    さっきまでの和やかな空気はどこへやら、いま僕らの空気は完全に凍り付いていた。

    やばい、どうしよう。
    この空気は……まずい。
    駅前で合流した直後と同じ、何も話せない空気。
    直前まで話していた内容が内容だから、あの時より、やばい。

  • 190練乳グラブジャムン25/08/18(月) 12:20:27

    次スレ

    【cp閲覧注意】#5_最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった|あにまん掲示板続きモノになります。初めての方は初期スレからご覧いただくとより楽しめるかと存じます。諸々の注意書きも初期スレにありますので併せてご確認ください。このスレはコメントフリーです。是非とも盛り上げていただけ…bbs.animanch.com

    というワケで、ツッコミ不在のまま次スレに続きます。


    いつもご覧頂いている皆様、本当にありがとうございます。

    どのエピソードが一番お気に召していただけたでしょうか?

    またご感想等で埋めていただければ幸いです。

    引き続きお付き合いよろしくお願いします。

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています