【閲覧注意】清夏「Pっちの日記……?」【☁️】

  • 1◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 17:58:20

    しばらくP佑芽とか補習組ばかり書いてましたが、なんか最近やけに☁️SSを見るので僕も書いてみます。

    ☁️書くの久々なので、優しい目で見てください、お願いします。

    以下本文


    「清夏さん。あなたには心底失望しました」

     ど、どういうこと?

    「ごめんね清夏ちゃん。わたし、もう清夏ちゃんのこと待ってあげられない」

     リーリヤまで……何を言ってるのさ?

    「清夏……いえ、紫雲さん。あなたのプロデュースは今日で終わりです」

     Pっち……? 嘘だよね?

    「嘘なんてつかないよ。今日からセンパイは、わたしのプロデューサーになるの」
    「そういうことなので、紫雲さんとの契約は打ち切りです。今までありがとうございました」

    「じゃあね、清夏ちゃん」

     いや……ちょっと、待ってよPっち! リーリヤ!
     いや、いやだ、いやだよ……!
     動いて……動いてよ……。
     どうしてあたしの右膝は、動かないの──?

  • 2二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 17:59:43

    多分それ、私のせいです。
    それはそれとしてグラードンの曇らせ待ってた

  • 3◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 18:02:01

    「リーリヤ──!?」

     目が覚めた。
     あたしは右手を大きく天井に突き出していて、耳が痛いくらいに心臓の音が響いている。
     少しずつ意識が鮮明になっていき、今自分が布団の中にいると気がついた。
     じわり。背中にぐっしょり汗をかいているのを感じながら、恐る恐る隣を見る。
     リーリヤが──あたしの親友が、気持ちよさそうな寝息を立てて眠っていた。
     よかった。あたしの大声で起こしちゃったら、申し訳ないもんね。
     リーリヤの瞼にかかる前髪をそっと指で撫でると、だんだんと呼吸が落ち着いてくるようだった。
     まだ少しだけ震えている手を布団の中に潜らせ、自分の右膝をさする。
     あたしはここ数日、毎日のように同じ夢を見る。
     あたしの膝が動かなくなったあの日から、毎日──。

  • 4二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 18:08:57

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  • 5◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 18:09:57

    「転換性障害……?」

     H.I.F選抜試験で燕先輩に負けたその日、あたしの脚は急に動かなくなった。
     歩ける。走れる。しゃがんだり、軽く跳ねることもできる。
     けど、踊れない。
     一緒に病院に行って、お医者さんの話を聞いたPっちがあたしに告げた病名は、耳馴染みのないものだった。
     
    「はい」
    「それって、なんなの? あたしの脚、治るの?」
    「厳密にいえば、清夏さんの脚は至って健康です。どこも悪くない」
    「でも、じゃあ……どうして動かないの?」

     あたしがそう聞くと、Pっちは今まで見たことないくらい苦しそうな顔で、躊躇うによう口を開く。

    「清夏さんの脚が動かないのは、心因性のものである可能性が高いそうです。強いトラウマやストレスが原因で、どこも悪くないのに身体に機能障害が発生している状態。つまり──」

     Pっちが目を伏せる。
     話すときは必ずあたしの目を見てくれていたPっちが、瞳の置き場所に困っていた。
     唇が震えている。拳が強く握られて、筋張っている。初めて見る、Pっちの姿。

    「だからこそ、“治る"というものでは、ないと。そう、言われました。原因となっているトラウマ、ストレス……。それらを払拭しなければならないと」

     あたしは言葉が出てこなかった。
     やめてよPっち。そんな真剣な顔で、鬼気迫った様相で。
     あたし、笑えないじゃん。冗談に、出来ないじゃん。

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 18:15:18

    >>2

    多分某学P日記の人も絡んでると思う

  • 7◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 18:18:34

     しばらくの間、アイドル活動は休止することになった。
     当たり前だ。踊れないあたしに何の価値もないってこと、自分が一番よくわかっている。
     あたしがPっちにしばらく休みたいと言ったとき、Pっちは眉間に詰め込めるだけのシワを寄せ集めて、「わかりました」と頷いた。
     手毬っちみたいに歌が上手いわけでもない。星南会長みたいに圧倒的オーラがあるわけでもない。千奈っちみたいな愛嬌も、リーリヤみたいな人の心を動かす直向きさも、あたしは何も持っていない。
     踊ることしか出来なかったのに、今はそれすらも失った。
     
     あたしは怖かった。Pっちに見放されるのが。リーリヤに諦められるのが。
     だからあたしは、自分で自分に、見切りをつけたんだ。

  • 8◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 18:31:19

     日常生活には問題がない。
     それが却ってあたしを苦しめた。
     もう歩けないくらい悲惨な状態で、車椅子生活になれたんだったら、もう少し素直に可哀想なあたしでいられたのに。
     クラスのみんなが、リーリヤが、Pっちが掛けてくれる言葉が全部、嫌味みたいに聞こえてしまって。卑屈な自分に、さらに嫌気が差して。あたしの心は、まるで建て付けの悪い引き戸のように、軋んで、歪(ひず)んで、開かない。

  • 9◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 18:39:01

     その日はコンクリートの屋根を被ったように重い雲が空を覆っていて、あたしは妙な居心地の良さを感じながら廊下を歩いていた。
     人間とは不思議だ。なにも意識していなくても、身体は勝手に動いている。気がつくとあたしは、以前ほど通い詰めることはなくなっていた空き教室──あたしとPっちの事務所の前に立っていた。
     閉める時にちょっとしたコツが必要な引き戸が、十センチくらいの隙間を残している。
     珍しいな。閉め方のコツ、教えてくれたのはPっちなのに。
     中にいるはずであろう人物に声をかけようと、引き戸に手を掛ける。隙間から声が漏れてきた。
     聞き間違えるはずのない、あたしの大切な親友の声だ。
     反射的に手を引っ込めて、隙間から中の様子を窺った。
     楽しそうな顔で、Pっちとリーリヤが喋っている。別に前々からよくあった、なんてことのない風景のはずだった。

     あたしの脳裏に、毎晩見ているあの夢がちらついた。

  • 10◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 18:48:18

     屋上に駆け上がる。大きな足跡を立ててしまったけど、そんなの知らない。
     後ろの方でリーリヤとPっちの声がしたけど、それも全部知らない。あたしには関係ない。
     面白いくらいに脚が回る。あたし、今ならハンデ無しでも佑芽っちに勝てるかも。

     一段飛ばしに階段を登って、重たい鉄扉を開いた。どんよりした雲が風を吹き下ろし、あたしの髪がたなびいた。 
     空と同じ色の地面を踏んで、一歩ずつ歩いていく。高く張られたフェンスの一角。老朽化のため近寄るな、という文言とともに置かれた三角コーンの間を抜ける。フェンスの一部が腐食して、ちょうど人間が通れるくらいの穴が空いていた。
     ここから飛び降りたら、楽になれるのかな。
     そんな考えが一瞬頭をよぎる。なーんて、踊れなくなるくらい心の弱いあたしに、そんな度胸なんてあるわけないけど。

  • 11◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 18:54:45

    「清夏さん!」
    「清夏ちゃん!」
     
     大きな声に呼び止められる。二人があたしを追いかけてきてくれたみたい。別に頼んでないけど。

    「なに?」

     自分でも驚くくらい冷たい声が出た。……あたしめっちゃ嫌なヤツだ。

    「清夏ちゃん、なにやってるの、そんなところで」
    「清夏さん、落ち着いてください。何か誤解があるようです」

     リーリヤとPっちがゆっくりあたしの方へ歩いてくる。宥めるような声音で。まるであたしを駄々を捏ねている子供みたいに思っているのかな。

    「誤解ってなに? あたし、別になにも考えてないけど。ここにいるのだって、なんとなくフラフラしてたら偶然辿りついただけ」

     突き放すような声を出す。これはわざと。
     もう二人にはあたしのことなんて忘れて、リーリヤはPっちと、Pっちはリーリヤと。お互いの夢を叶えてよ。あたしはそれを、見守っているからさ。

    「清夏ちゃん、危ないよ。こっちに来て」

     リーリヤが泣きそうな目であたしを見つめる。
     うん、そうだね。これ以上憐れむような目を向けられるのもしんどいし、雨も降ってきそうだし、今そっちいくよ。
     そう思って一歩踏み出す。
     ああ、けれど。
     神様は、どうしてもあたしを苦しめたいらしい。

  • 12◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 19:11:14

    「清夏ちゃん!?」
    「清夏さん!」

     踏み出した右足が、紙ストローのように力無く折れ曲がる。膝に力が入らなかった。
     歩けたのに。走れたのに。どうして、今。
     そんな疑問が浮かんだ頃には、あたしの体はバランスを崩して後ろにゆっくり倒れていた。
     ああ、このまま死んでしまうのかな。
     ごめんね、リーリヤ。
     ごめんね、Pっち。

     あたしは腕から引っ張られるように前方に体を投げられ、屋上のアスファルトの上に手をついた。
     リーリヤの叫び声が聞こえる。
     咄嗟に後ろを振り向く。
     Pっちの安心した笑顔が、優しい瞳が、フェンスの向こうに見えた。

  • 13◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 19:12:23

     ある日曜日。あたしの元へ届けられたのは一冊の手帳だった。

    「それは、清夏ちゃんに渡したかったから」

    あの日から疎遠になってしまったあたしの親友が、気まずそうに視線を泳がせながら手渡してくれたそれを、あたしは恐る恐る開く。

    「Pっちの、日記……?」

     黒いなめし革をめくると、几帳面な文字がびっしりと並んでいた。
     思い出したくなかった、思い出さないようにしていた記憶が、一気に頭に流れ込んでくる。
     初めて人を好きになって、勝手にその人に裏切られたと苦しんで、そして大切な人を二人失ったあの頃の記憶。
     きっとここには、リーリヤとの思い出が書き連ねてあるんだろう。そう思うと、心臓がバクバクと暴れ出しそうになる。
     一年経った今でも、あたしはまだあの日に縛り付けられているみたいだった。

  • 14◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 19:13:23

     一ページ、一ページとめくるたびに、あたしの胸は甲高い音を立てて引き裂かれていく。
     日記はあたしをスカウトした日から始まっていて、ほぼ毎日書かれているみたいだった。
     全部、全部あたしに関すること。
     紫雲さんが、紫雲さんが。清夏さんが、清夏さんが、清夏さんが……。
     視界が滲んで、読むのがだんだん辛くなってくる。Pっちはこんなにもあたしのことを考えてくれていた。それなのにあたしは……Pっちのこと、少しでも考えていた?
     自責がページをめくる指を速める。百ページ以上もめくったから指先が乾燥してきたけれど、気にも留めなかった。
     そして最後のページに差し掛かり、あたしは最初の方と変わらない熱量と丁寧な文字で書かれている文を読み進めていく。
     お腹の奥から込み上げてくる感情を堪えきれずに、胃の中身をそこへ吐き出した。
     


    『原因がメンタルにあるのなら、気分転換をしてみるのも有用だろう。葛城さんにも声をかけて、次のオフは三人でどこかへ出かけてみようと思う。なにかきっかけにでもなってくれたら良いのだが』


    終わり。

  • 15二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 19:33:54

    流石の完成度だ…

  • 16二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 19:52:31

    相変わらず衰えていないようで……

  • 17◆WsV5Czf1Hs25/08/13(水) 20:16:55

    >>15

    >>16

    そう思ってもらえたならよかった。

    なんかこんな感じだったっけ? と思いながら書いてたから安心した。

  • 18二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 20:42:09

    >>17

    自分の曇らせ、明日が丁度清夏の番なので参考にするかも

    どちらかと言うと鍵垢の方と近い内容になる予定だけど

    また定期的に曇らせ書いてくれてもいいのよ?

  • 19二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 20:45:27

    >>17


    さっ……進行中の千奈の曇らせ頑張らないとな……

  • 20◆HaBLx0H.oA25/08/13(水) 23:32:56

    曇王の久方ぶりの曇らせが脳に染み入る…
    今際の笑顔も日記も最終的に呪いと化すのあまりにも残酷だ…

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