もし四音が初星に移籍してPに堕ちたら

  • 1二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 10:35:01

    四音「はぁ。疲れました。姉様不在の中で極月学園のエースとして君臨し続けることも、姉様が戻ったら戻ったで劣等感に苛まれることも……」

    ヒュォォォォッ。

    四音「夜風が気持ちいいですね」

    四音(…………)

    四音「……旅に、出ましょうか」

  • 2二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 10:36:45

    カラカラカラカラ。

    四音「スーツケースまで引いて、夜逃げでもしている気分ですね」

    ヒュォォォォッ。

    四音「実に、いい気分です。こんなにも晴れやかな、夏の……」

  • 3二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 10:41:08

    ???「おい」

    四音「!!?」

    ???「その様子だと。もう戻らないようだな」

    四音「姉様…!? 一体いつ……」

    月花「昼間に帰国した。言ってなかったかも知れないが」

    四音「そん……」

    月花「安心しろ。連れ戻しはせん。お前はこのまま極月にいても成長が望めないからな。どこにでも行け」

    四音「な…………」

    月花「新天地で足掻くも、アイドルを辞めるも自由だ。じゃあな」

    四音「姉さ……ま…………」

  • 4二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 10:44:46

    四音「は、ははは……」

    ヒュォォォォッ。

    四音「ついに、見放されたようですね。ははは……」

    四音(…………)

    四音「まさか見つかるなんて……引き止められても困ったところですが……これはこれで……う、くぅ……………」

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 10:54:12

    四音「……足が、動かない。どこへ行けばいいかも、分からない……」

    ヒュォォォォッ。

    四音「途方に暮れるとは、まさにこのことです。…………」

    --------

    四音(気付いた頃には、公園にいた。姉様と話したあとの記憶が、ほとんどない)

    四音「はは、何をやっているんでしょうね。あてもなく家出なんてして、見つかったのに見放されて。莫迦そのものじゃないですか。初星の連中を、笑えませんね。むしろ誰か笑ってくださいよ、このボクを……」

    ???「笑いませんよ」

    四音「!? 誰……」

    ???「驚かせてしまってすみません。初星学園のPと申します。こうしてお話しするのは、初めてでしょうか。白草四音さん」

    四音「な……んで…………」

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 10:58:22

    学P「帰りが遅くなりましてね。公園に人がいると思って近付いてみたら、あなただったという訳です」

    四音「だからってどうして声を掛けるのですか。曲がりなりにもライバルでしょう」

    学P「こんな夜遅くに、女子高校生が1人で出歩くなんて危険です」

    四音「ハッ、何を言うかと思えば。わざわざボクを襲う奴なんていませんよ。こんな無価値なアイドルなんかを……」

    学P「…………」

    四音「…………」

    学P「……何か、あったのですか?」

    四音「は……?」

  • 7二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 11:00:35

    期待

  • 8二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 11:04:55

    学P「白草四音さんと言えば、姉の月花さんに次いで極月学園を代表するアイドルです。月花さん不在の状況が多い中で学園を支えているあなたを、知らないなんてことはありません。お姉さんとの間に何かあったのかも知れませんが……」

    四音「姉様が関係ないとは言いません。ですが、あなたには関係のないことです。1人にしてくれませんか」

    学P「それはできません」

    四音「なっ……迷惑なのですが」

    学P「ここで帰って明日あなたが被害者のニュースを見るのは、目覚めが悪いですから」

    四音「それはあなたの自己満足でしょう。人を巻き込まないでください」

    学P「ですが未成年が深夜に1人で出歩いていれば、通報する権利が俺にはありますよ」

    四音「ふざけないでください。ボクがどうしようとボクの勝手でしょう」

    学P「では、ここで一夜を明かすのですか? そのつもりなら、俺もここから離れませんが」

    四音「なっ……! あなた、それこそ通報…」

    学P「どうぞ、通報してください」

    四音「くっ………これだから大人は……」

  • 9二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 11:13:23

    学P「もし今日自宅に帰ることができないなら、初星学園の女子寮に案内しますよ」

    四音「よくもまあ次から次へと莫迦なことを言えますね。応じる訳がないでしょう」

    学P「であれば、警察を呼びます。あるいは、うちの学園長か」

    四音「っ…………」

    学P「……今すぐそうするのはやめましょう。自宅に帰れない事情があるなら、話してくださいませんか。何があったのかを」

    四音「あなた…………」

    学P「…………」

    四音「いいでしょう。どうせもう、アイドルは辞めますからね」

  • 10二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 11:19:39

    学P「アイドルを、辞める……?」

    四音「はい。もう、疲れましたから。どうせあなたににも二度と会わないでしょうから、話してあげますよ。たっぷりと……」

    --------

    学P「……なるほど」

    四音「分かったならもう私に構わないでもらえますか」

    学P「ひとつ、お願いをしてもいいですか?」

    四音「なんですか。今日だけでも初星の寮に泊まれと?」

    学P「今日だけではないですね」

    四音「はぁ? 孤児院でも兼ねてるのですか初星学園は」

    学P「違います」

    四音「じゃあどうして…」

    学P「あなたを、プロデュースさせてください」

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 11:25:56

    四音「…………は?」

    学P「あなたを、プロデュースさせてください」

    四音「聞こえています。何を言ってるんですかという意味です」

    学P「あなたをプロデュースしたいと言いました」

    四音「意味が分かりません。ボクはアイドルをやめたんですよ」

    学P「1日も経っていないのですから、極月をやめたことにしかなりませんよ。そして、有望なアイドルがいればスカウトするのはプロデューサーの性というものです」

    四音「有望? 話を聞いてましたか?」

    学P「はい。あの白草月花が認める才能を持っていて、極月にいるままでは頭打ちになってしまうということを」

    四音「都合よく取らないでください。ボクは見放されたんですよ。白草月花に」

    学P「では、先ほどの話もあなたの事情も関係なく、いちプロデューサーから見た白草四音さんの絶対評価を言いましょう。あなたは、アイドルとしてのポテンシャルに溢れている。初星学園の誰よりも、白草月花よりも、とてつもないパフォーマンスができる素質を備えている」

    四音「…………」

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 11:33:23

    四音「よくもまあそんなお世辞を。失意に暮れている人間に慰めの言葉をかければ靡くとでも思ったのですか?」

    学P「目の前にいるアイドルから素質を感じていなければ、既に警察を呼んでます」

    四音「だったらもう呼べばいいじゃないですか。ボクは保護される、あなたは日常に戻れる。win-winじゃないですか」

    学P「それはevenでしかありませんね。あなたをプロデュースできたなら、文字通り俺もあなたも勝てる。数多ものアイドルひしめくステージで」

    四音「っ……そう言ってあなたも、ボクが結果を残せないとなれば見捨てるのでしょう?」

    学P「結果が残せないなんてことにはならない、と言っても信じられないでしょうから、約束しましょう。何があっても、あなたを見捨てないと。もし約束をたがえたその時は、深夜に女子高校生に声を掛けた変質者として、自ら警察に出頭します」

    四音「なっ……んで、そこまで……」

    学P「言ったはずです。有望なアイドルが、目の前にいるからと」

    四音「はっ……歯の浮くようなセリフを次から次へと。言っておきますが、ボクは初星の連中のようにキャッキャウフフするつもりはないですからね」

    学P「構いません。ある程度、他のアイドルと行動を共にする必要も生じますが」

    四音「あの連中と……まぁ、多少はやむを得ないでしょう」

  • 13二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 11:42:45

    学P「今日はもう帰りましょう。学園長に連絡を取ります」

    四音「はぁ。疲れました。まさかこんなことになるとは」

    --------

    十王邦夫「なるほどのぅ。月花君が把握してるなら問題ないじゃろう。移籍の手続きはこっちで済ませておく。気を取り直して、アイドル活動に励むとよい」

    四音「はい……」

    学P「ありがとうございます。お手数お掛けしました」

    十王邦夫「寮はもうみんな寝ておるじゃろうから、今日のところは宿直室にしてくれ。空きもあるじゃろ」

    学P「分かりました。四音さん、こちらです」

    四音「はい」

  • 14二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 11:51:42

    学P「皆さん、おはようございます」

    咲季「朝っぱらから全員集めて、どうしたのよ?」

    学P「皆さんに、紹介したい人がいます」

    ことね「紹介したい人ぉ?」

    学P「どうぞ、こちらに」

    スタ、スタ、スタ、スタ。

    手毬「この人は……」

    四音「…………」

    麻央「もしかして、極月学園の?」

    学P「はい。突然ですが、この白草四音さんもプロデュースすることになりました」

    一同「「「ええぇぇぇぇぇぇ!?」」」

  • 15二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:03:18

    リーリヤ「えっと……初星学園の人じゃ、ないんですよね……?」

    学P「移籍の手続きはすぐに終わります。正式に初星学園の生徒として、活動してもらうことになりますので、皆さんよろしくお願いします」

    燐羽「あら、ついにクビになった? 可哀相に」

    四音「この……」

    千奈「か、賀陽さま、お言葉が……!」

    四音「というか、その女は何故ここにいるのです」

    燐羽「別にいいでしょう。大会にはちゃんと極月のアイドルとして出てるんだし、普段の活動拠点がどっちでも」

    清夏「すごい入り浸ってるよね燐羽っち。もう慣れたケド」

    広「りんは。たまにすごい辛辣なことを言ってくる。刺激的……♡」

    四音(なんですかこの人、大丈夫なんでしょうね……)

  • 16二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:06:37

    莉波「なんにしても、これから一緒にアイドルやるんだよね。私3年生だから、困ったことがあったら何でも言ってね」

    佑芽「新しいお友だちだー! わーーーい!」

    美鈴「ふふ。よろしくお願いします」

    星南「生徒会長の十王星南よ。よろしくね」

    燕「副会長の雨夜燕だ。とりあえず、生徒会の1年よりはしっかりしてそうで安心した」

    佑芽「ちょっとそれって千奈ちゃんのことですか!」

    燕「お前も含まれてるに決まっているだろう馬鹿者!」

    佑芽「えぇーー! そうだったのかーーー!」

    四音(何なんですかこのお馬鹿な集団は……)

  • 17二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:19:10

    学P「四音さんには、1年2組に入っていただきます」

    佑芽「やったー! 一緒だぁ!」

    咲季「ま、1組が5人で2組は4人だものね」

    ことね「あとの2組のメンバーは……」

    千奈「倉本千奈です! よろしくお願いしますわ!」

    広「條澤、広。よろしく、ね」

    美鈴「秦谷美鈴です。ふあ……」

  • 18二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:29:18

    四音「同じクラスの、メンバー……」

    佑芽「?」

    千奈「?」

    広「やっほー」

    美鈴「ふあ……ぁ」

    四音「……まさか、私にこの人たちの面倒を見ろと言っているのではないでしょうね」

    学P「いえ、そんなことは」

    清夏「ぷっ。あっははははは! 四音っちサイコー!」

    リーリヤ「笑っちゃダメだよ清夏ちゃん!」

    佑芽「むぅ。あたしだってしっかりしてるんですよ! 生徒会にも入ってますし!」

    四音「しっかりしてないみたいなことを、さっき副会長の方が言ってましたが?」

    佑芽「うわぁ~~ん! 新しいお友だちがいじめる~~~!」

    千奈「わたくしたちが生徒会の先輩方に迷惑を掛けているの事実ですから言い返せませんわ……!」

  • 19二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:33:07

    四音「本当に騒がしい人たちですね……」

    広「そんな“新しいお友だち”に、朗報」

    四音「何でしょう」

    広「実は2組で一番の問題児は、美鈴」

    四音「は……?」

    美鈴「ふあ……」

    四音「あまりそうは見えませんが。少し、やる気のなさそうにしているだけで」

    佑芽「ふっふっふ。甘いよ四音ちゃん。美鈴ちゃんのやる気の出さなさを、甘く見過ぎているよ」

    広「なんと美鈴は、授業をサボっているところを私たち3人で探しに行かなくちゃいけないほどのサボリ魔なのだーー」

    四音「は……!?」

  • 20二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:36:02

    四音「この、3人で……?」

    佑芽「? ムッフー」

    千奈「? チナチナッ☆」

    広「? やっほー」

    四音「いや……さすがに、冗談でしょう。初星学園ではジョークの鍛錬もしているのですか?」

    清夏「冗談じゃないんだな~それが」

    咲季「あんたたち、思ったより大変なのねえ」

    リーリヤ「美鈴ちゃん、晴れた日はどこでも寝ちゃうから……」

    佑芽「美鈴ちゃん捜索隊、新たな隊員をゲットだ~~~!!」

    千奈「満場一致で四音さまが隊長ですわね!」

    四音「ふざけないでください…! 何でこのボクがそんな意味の分からない隊の隊長にならなければいけないのですか」

    広「決定事項。もう覆らない、よ」

    四音「ぐ、ぐあぁぁぁぁぁ……!」

  • 21二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:41:59

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  • 22二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:45:31

    四音「早くも先が思いやられるのですが、これからボクはどうすれば?」

    学P「ひとまず、他のアイドルたちと交友を深めるところからですね。円滑なアイドル活動のために」

    四音「この人たちとですか……仕方ありませんね」

    清夏「そんじゃ明日、海に行こっか」

    四音「は……?」

    清夏「だって夏っしょ? 夏といえば海っしょ? みんなで行くしかないっしょ?」

    四音「意味が分かりません。あなたまで変なことを言わないでもらえますか」

    佑芽「やったー! 海だーー! みんなで行こう~~~~!!」

    広「決定事項、だね」

    四音「……いい精神病院を、探しておいた方がいいのかも知れません」

    燐羽「がん、ばっ、て~♪」

  • 23二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:51:47

    星南「んん~~~っ。いい天気ね」

    燕「海水浴日和、というやつだな」

    莉波「四音ちゃんは、よく眠れた?」

    四音「はい。まぁ」

    麻央「寮のことで何かあったらボクに言っておくれよ。これでも寮長だから」

    四音「分かりました」

    清夏「お、四音っちおはよー♪」

    佑芽「みんなで遊びに行くの久しぶりだから楽しみ~!」

    ことね「言われてみりゃ久々だね。この人数だと全員誘うってことほとんどないし」

    手毬「たまには良いんじゃない。新しい人も増えたことだし」

  • 24二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:55:22

    学P「皆さんお揃いですね」

    四音「え、あなたも来るのですか?」

    学P「? そうですが」

    咲季「何かおかしいことでもあるの?」

    四音「いやいや、アイドルと一緒に遊びに行くプロデューサーがどこに……」

    千奈「極月学園では、なかったことなのですか?」

    四音「ある訳がないでしょう。それも、男性プロデューサーなんかと」

    清夏「そうなんだ? ちょっと味気ないねえ極月学園」

    四音「こっちがおかしいみたいに言わないでください」

    リーリヤ「ですが、センパイだけお留守番というのは、ちょっと寂しいです」

    四音(ダメだこの人たち、プロデューサーもほとんど友達みたいなものだと思っているようで……)

  • 25二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 12:59:52

    ことね「はっは~~ん。アンタもしかして、プロデューサーに水着見られるのが恥ずかしいのかナァ~~?」

    四音「はぁ!? なっ、こっ、このボクが、そんなこと、あるはずがないでしょう。アイドルなのですから水着仕事ぐらい想定しています。プロデューサーに見られるぐらい、何だというのですか」

    麻央「ははは。分かりやすいくらいに動揺しているね」

    清夏「どんな水着でPっちを悩殺するつもりなのかなぁ?」

    四音「だからボクは……!」

    莉波「それくらいにしようよみんな~。可哀相だよぉ~」

    千奈「皆様どうぞバスへ。倉本家専属のドライバーが、責任をもって海までお送りしますわ」

    燐羽「こういう時に金持ちがいると便利ねえ」

    四音「当然のようにこの女もいるし……」

  • 26二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 13:05:25

    広「海だ」

    佑芽「う・み・だ~~~~~!!」

    手毬「まずはパラソル設置だね」

    咲季「任せなさい! このパラソル奉行と言われた花海咲季が受けて立つわ!」

    ことね「誰に対して受けて立つって言ってんだよ……」

    燕「風だろうな」

    美鈴「ふあ……心地よく眠れそうです」

    清夏「美鈴っちもちょっとは手伝ってよ?」

  • 27二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 13:09:35

    咲季「よし、完成ね!」

    千奈「3つ持ってきておいて正解でしたわ!」

    星南「この人数だからね。2つではぎゅうぎゅうになると思ったのよ」

    ことね「ぷろでゅーしゃー、オイル塗ってぇ~~??」

    学P「お断りします」

    ことね「ケチ~~」

    手毬「平然とライン踏み外そうとしないでよ」

    燐羽「何を言っているの? ラインは踏み外すためにあるものよ?」

    リーリヤ「賀陽さんこそ何を言っているの……」

    燐羽「あら。プロデューサーとのギリギリ限界アイドル、も方向性の1つして良いと思うけど。そうだ、白草四音にやってもらいましょう」

    四音「ふざけたことを言わないでください」

  • 28二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 13:13:49

    清夏「そんじゃ、四音っちの水着お披露目タイムだね。Pっちもちゅうもーく!」

    学P「別にまじまじと見るつもりは……」

    清夏「あとでひっそりチラ見するつもりなんだー♪」

    学P「そうもしません」

    ことね「まーまー、せっかくだから見てあげれば? ラッシュガードを脱ぐところをさ」

    四音「ちょっ、何を余計なことを……」

    ことね「でもさぁ、全然興味持ってもらえないのも寂しいっしょ?」

    四音「それは……」

    ことね「おおっ! 四音ちゃんの乙女心発動、いただきましたー!」

    四音「この……!」

    咲季「ほどほどにしなさいよアンタたち」

    四音「そう思うなら助けて欲しいものですね……」

  • 29二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 13:22:14

    ことね「佑芽、プロデューサーを取り押さえろー!」

    佑芽「はーーい!」

    がしっ

    学P「ちょっと……」

    燕「よくあの体形で後ろから抱き着けるな……」

    星南「無自覚ほど恐ろしいものはないわね」

    四音「というか水着の披露なら、この場にいる全員がそうでしょう」

    清夏「だってもうみんな1回は見せてるし」

    ことね「お初なのは四音ちゃんだけでっせ?」

    燐羽「いいじゃない。初めてをプロデューサーに捧げても」

    リーリヤ「あの、その言い方だと、水着の初披露はもうみんなしたから……って、何言わせるんですか!」

    広「はじめてを、ぷろでゅーさーにうばわれる、いいね……」

    千奈「よくありませんわーーーー!!」

  • 30二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 13:24:12

    清夏「さ、四音っち、今だよ♪ Pっちの前で脱いじゃえ」

    四音「いや、こんな目の前で……」

    清夏「しょうがないなあ」

    がしっ。

    四音「は?」

    清夏「ことねっち、今だよ!」

    ことね「任せろ! うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

    四音「ちょっと、何を……!」

    ことね「ゆっくり、ゆ~っくりファスナーを下ろしますからね~~」

    四音「や、やめ……!」

    佑芽「プロデューサーさんは目をつぶっちゃダメ!」

    学P「くっ……! まぶたを押さえられ……」

    四音「ちょっと……!!」

  • 31二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 13:29:45

    ことね「ゆ~っくり下ろしてぇ~~、はいっ!」

    バンッ。

    四音「っ…………!」

    一同「「「おおぉ~~~っ」」」

    ことね「中々にグッドな感じですなぁ。プロデューサーはいかがですか?」

    学P「いや、感想を求められても……」

    清夏「えぇ~~? アタシたちには言ってくれたクセにぃ~」

    学P「今と同じように言わされただけなんですが」

    佑芽「じゃあ同じように言っちゃってください!」

    学P「くっ…………」

    四音「…………」

    学P「えっと……十分に水着撮影の仕事もこなせると思います」

    ことね「はぁーあ」

    清夏「まぁ、Pっちはそうだよね」

  • 32二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 13:39:21

    清夏「てなワケで、Pっちってばこんな感じだから、恋なんてしちゃったら報われないぞぉ~~?」

    四音「は……? こ、っこ……ボクたちはアイドルですよ。プロデューサーに、こっ、こ、コケコッコッ、恋など、するはずがないでしょう……!」

    ことね「でも気になるんだよね~。どんな口説かれ方をして、初星に来ることになったのか」

    四音「は……口説かれ……いや、普通にスカウトされただけですが」

    ことね「ホントにそれだけぇ~? アンタなら“バカなこと言わないでください”で一蹴しそうだけどぉ~?」

    四音「くっ……」

    麻央「こらことね、詮索は良くないぞ。極月を辞めてまで来たんだ。口説き文句は気になるが、彼女なりの事情があったのだろう」

    ことね「はあ~~い。じゃあ口説き文句はプロデューサーに聞きま~~す」

    学P「それもやめてくれませんか?」

  • 33二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 13:44:04

    咲季「全く……準備できたんだからさっさと泳ぎに行くわよ」

    ことね「うっしゃ行くかぁ~っ。それーー!」

    一同「「「それーーーーー!!」」」

    燕「どうだ有村。久々に競泳勝負でもしないか?」

    麻央「受けて立つよ。人の少ないところまで行こうか」

    美鈴「ふあ……私はここで寝てますね」

    莉波「ほら四音ちゃん、私たちも行くよ」

    四音「え? ちょっと……」

    学P「荷物なら俺が見てますから」

    四音「そういうことではなく……」

    学P「では最初のプロデューサー命令です。海に入ってみんなと遊んで来てください」

    四音「なっ……なんてずるい」

    莉波「ほら行くよ。お姉さんの手につかまって」

    四音「お姉、さん……?」

  • 34二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 13:52:14

    莉波「うん♪ 3年生だし、私がみんなのお姉さんなの」

    四音「お姉、さん……ぐあ……!」

    莉波「ど、どうしたの…!?」

    四音「い、いえ……何でもありません……」

    莉波「でも……心配だよ……」

    四音(こ、こんな、本当に心配してそうな目を……)

    四音「っ……実の姉が、厳しい人だっただけです」

    莉波「あぁ、あの……。大丈夫だよ。みんながみんな、厳しいお姉さんじゃないから。咲季ちゃんも、ことねちゃんも、妹ちゃんがいるのに優しいでしょ? 私も、他の3年生も優しいから、安心して過ごしてね」

    四音「なっ…………まぁ、誰かの目を気にする必要はなさそうですね」

    千奈「四音さま~~~! 早くこちらへ~~~!」

    四音「別の意味で気疲れしそうですが」

    莉波「あはは……」

  • 35二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:05:08

    佑芽「四音ちゃん食らえー!」

    バシャン!

    四音「や、やりましたね」

    バシャン!

    佑芽「あいたっ! それならこれで、どうだ~~~~~!!」

    バシャシャシャシャシャシャシャ……!!

    四音「なっ……!」

    手毬「ちょっと、こっちにも……!」

    リーリヤ「きゃあああああ!!」
    千奈「わ~~~~~~!!」
    広「ひゃ~~~~」

  • 36二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:09:45

    ことね「おい! こっちまで巻き込むなよ!」

    四音「なんて馬鹿力……」

    手毬「体力だけが取り柄だからね、あいつ」

    佑芽「あぁ~~っ! 手毬ちゃんがあたしの悪口言った~~~!」

    手毬「耳もいいみたい」

    広「目もいいよ。校庭の端にいる美鈴を、教室から見つけられる、から」

    千奈「お鼻もいいですわ! 美鈴さんを匂いだけで探し当てたこともあるのですから!」

    四音「あの人は動物なのですか? あと秦谷さんは本当によく居なくなるのですね」

  • 37二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:19:52

    ことね「よーしみんな力を貸せ! 佑芽の動きを封じる!」

    清夏「りょうかーい!」

    リーリヤ「私も手伝います!」

    燐羽「面白そうね、乗ったわ」

    佑芽「わっ、ちょっ、みんなで来るなんてずる~~い!」

    ことね「善良な市民を巻き込んだ報いさ! さぁ四音、やるんだ! 佑芽に強烈な一撃を食らわせてやれ!」

    四音「強烈な一撃って……」

    手毬「何でもいいから適当にやれば?」

    莉波「こういうのは、それっぽくやってればいいから」

    四音「やれやれ……」

  • 38二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:24:53

    四音(さっきより少しだけ強めにすればいいでしょう)

    四音「いきますよ。ほら」

    咲季「佑芽、危ない!」

    バシャン!

    咲季「あだっ!」

    佑芽「お姉ちゃん!」

    咲季「佑芽。良かった……私の分まで、強く、生きて……」

    佑芽「お姉ちゃ~~~~~ん!!」

    四音「何をしているのですか」

    咲季「ちょっとぉ~、ノリ悪いわねぇ。姉が妹を守って命を落とす重要なシーンなんだからぁ~~」

    ことね「何のシーンなのかはサッパリわかんないケドな~」

  • 39二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:30:05

    四音「姉が、妹を、守る……?」

    咲季「何? 私そんな変なこと言った?」

    四音「い、いえ……」

    清夏「そっかぁ、四音っちのお姉ちゃんって」

    リーリヤ「白草、月花さん。ですよね……」

    ことね「確かに、妹を守る、って感じじゃなさそうだもんねぇ」

    咲季「ふん。姉の風上にもおけないわね」

    千奈「咲季お姉さま、あまり他の方のご家族を悪く言うのは……!」

    四音「構いませんよ。良い思い出がないのは、確かですから」

    莉波「それじゃあ、楽しい思い出、いっぱい作ろ? 初星学園で」

    四音「いや、ボクたちはアイドル…」

    ことね「アイドルだからこそ、楽しんでやんなきゃだろ? 自分が楽しめなくて、どうやってお客さんを楽しませるのさ」

    四音「それは……」

  • 40二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:37:49

    ことね「キレッキレのダンス? 宝塚ばりの歌唱力? 違うっしょ。アイドルには、アイドルにしかできないことがあるんだよ」

    四音「だとしても、ボクには、できるはずが……」

    咲季「ま、ウチに来たからには否応なしに、自分自身も楽しむことを求められるけどね。もちろんレッスンもトレーニングも欠かさないけど」

    ことね「キッツいぞ~? 咲季のトレーニング」

    手毬「あと食事もね」

    咲季「ちょっと! あれは改善したでしょ!?」

    手毬「ことねとの勝負で負けるまで変えなかった癖に」

    咲季「だってぇ~~~~」

    佑芽「お姉ちゃんを、いじめるな~~~!」

    咲季「佑芽……ありがとう。お姉ちゃんのために……」

    四音「だから何をしているのですか」

    佑芽「いじめられるお姉ちゃんを守るために妹が立ちはだかる重要シーンだよ!」

    四音「はっ……全く、拍子抜けしてしまいますね」

  • 41二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:40:42

    清夏「ね? 悩んでるのがバカみたいになってくるっしょ?」

    ことね「実際悩む必要なんかなくね? 自分のことを大切にしてくれない奴のことなんか忘れちまえよ」

    広「四音。私に効くこと、たくさん言ってくれそう」

    四音「ち、近寄らないでください。あなたからは良くないものを感じます」

    広「よくないもの……いい、ね」

    四音「何なんですかこの人は!」

    佑芽「広ちゃんはちょっと変わってるトコあるから」

    四音「“変わってる”の一言で済むのですかこれが?」

  • 42二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:45:21

    清夏「はいはーい、まだまだ遊ぶよ?」

    リーリヤ「四音ちゃんも、イルカさんに乗ってみませんか?」

    四音「イルカ……乗ったら写真を撮ってネットで晒すつもりですか?」

    リーリヤ「しないよそんなこと!」

    四音「スマホを構えてる人がいるみたいですが?」

    リーリヤ「燐羽ちゃん!!」

    燐羽「あ、ごめ~ん。ダメだった?」

    リーリヤ「もう~~~~」

    四音(どいつもこいつも制御不能すぎる……!)

    四音「あの……よく、一緒にやっていけますね。この人たちと」

    莉波「私は楽しいよ。やんちゃしちゃう人も多いけど、四音ちゃんもきっと、ここでの生活が楽しかったと思える日が来るから」

    四音「だといいですけど……」

  • 43二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:54:58

    星南「みんな~~~~! そろそろお昼にするわよ~~~!」

    一同「「「はーーーい!」」」

    --------

    ことね「あれ? 麻央先輩と副会長は?」

    美鈴「あそこに見える島に行ってしまったようです」

    リーリヤ「えぇ……!?」

    広「すごい」

    学P「いつの間にか遠くまで行っていました。ですがあの2人なら大丈夫でしょう」

    四音(3年生も制御不能なのですか……)

    佑芽「お姉ちゃん! あとであたしたちも行ってみようよ!」

    咲季「いいわね! どっちが先に着くか競争よ!」

    ことね「あたしはパスだかんな~~」

    咲季「そうね。この戦いについていける来れる人だけが来なさい?」

    清夏「そんなの咲季っちと佑芽っちしかいないって」

    手毬「それより早くご飯食べようよ。美味しそ~~~~う」

  • 44二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 15:02:07

    ことね「はー食った食った。でも食後すぐに運動すんのもなー」

    清夏「んじゃPっちを埋めて遊ぼ♪」

    学P「えっ」

    燐羽「あなた良いことを言うわね。やりましょう」

    学P「ちょっ……」

    手毬「逃がさないよ、プロデューサー」

    美鈴「いいじゃないですか。埋められてる間は動かなくてもいいのですから」

    学P「いや、“動かくていい”と“動けない”は違うのですが」

    燐羽「違うからこそ、“動けない”がいいのよ。あなたも手伝いなさい」

    四音「えぇ……」

  • 45二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 15:16:25

    学P「四音さん、助け……」

    四音「……あなた、午前中に言いましたよね。“みんなと遊べって”」

    学P「あっ…………」

    千奈「覚悟してくださいませ、先生!」

    広「たまにはプロデューサーを苦しめるのも、いい、ね」

    リーリヤ「こ、これは、海回での必須イベント! 私も失礼します!」

    学P「あ……あぁ…………」

  • 46二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 15:23:48

    ことね「かんせーーーい!」

    手毬「ふふ、いいご身分だね、プロデューサー!」

    清夏「ほらほら~Pっちどんな気分?」

    学P「早く出たいです」

    清夏「それはすぐには聞けないなぁ~~」

    広「安心して。骨は拾うから」

    学P「骨になってからでは遅いのですが」

    莉波「だぁいじょうぶ。みんなが海に入ってる間は私がプロデューサー君のことを見てるから」

  • 47二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 15:29:25

    四音「そういえば姫崎さんは、プロデューサーにタメぐち聞いてるんですね」

    莉波「うん。私はプロデューサー君のお姉さんだから」

    四音「ん……? えっと、プロデューサーは大学生ですよね。まさか姫崎先輩、ろうに…」

    莉波「違うよ!?」

    星南「まぁ、普通は疑問に思うわよね」

    清夏「慣れちゃったのが怖いんですケド」

    莉波「私は年下だけど、プロデューサー君のお姉さんなの」

    四音「は……!?」

  • 48二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 15:34:22

    四音「ちょっと、言っている意味が分からないのですが……」

    莉波「単純なことだよ? 私は、プロデューサー君のお姉さんとして過ごしてるの。どっちが年上かは関係ないよ」

    四音「いや、あるんじゃ……女じゃ弟になれないのと同じように、年下じゃ姉には……」

    莉波「なれるよ? 弟にはれないのはそうだけど、女の子なら誰だって、お姉さんにはなれるの」

    清夏「四音っち……気にしたら負けだよ」

    千奈「よいではありませんか。わたくしたちにとっては正真正銘、年上のお姉さまなのですから」

    四音「それはそうですが……」

    莉波「ほら、プロデューサー君が干からびないように私が見てるから、みんなは遊んでおいで」

    星南「それじゃあお言葉に甘えて行きましょうか。今度は私もお邪魔するわね」

    一同「「「はーーーい!」」」

    四音「えぇ……」

  • 49二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 15:40:37

    四音(姫崎先輩はまともだと思ってたのに……あとは生徒会長ですが)

    星南「どうかしたのかしら?」

    四音(いや、感じる。この人は多分、まともじゃない。初星学園、なんて恐ろしい場所……)

    四音「いえ、何でもありません」

    星南「そう? それじゃあ早く行くわよ」

    ことね「佑芽がいないと平和だぜ!」

    燐羽「それはどうかしら?」

    リーリヤ「気を付けてことねちゃん! 燐羽ちゃんが……!」

    燐羽「ちょっと失礼するわ?」

    ことね「ちょっ、おい! こんな時は、千奈ガーーード!」

    千奈「ふえっ?」

    燐羽「あら、こういう体型も嫌いじゃないわよ?」

    千奈「ふえっ、やめっ、……やめてくださ~~~い!!」

    四音「何をしているんですか……」

  • 50二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 15:43:06

    ことね「いや~~~楽しかったぁ~~~」

    咲季「あっという間に夕方ね」

    手毬「あの島はどうだったの?」

    佑芽「何の変哲もない無人島でした!」

    麻央「火起こし対決に果物採取対決、イカダ作り対決と、すごく楽しむことができたよ!」

    清夏「あ、もしかしてサバゲーってやつですか?」

    リーリヤ「違うよ清夏ちゃん。 違うよ??」

    清夏「分かった、分かったから……!」

    燕「佑芽のイカダはすぐに壊れてしまったのは、さすがだったな」

    佑芽「絶対その“さすが”って悪い意味で言ってますよね!」

    四音「聞き返すことでもないでしょうに」

    燐羽「あら、2組メンバーの世話係が板に付いてきたじゃない」

    四音「誰が世話などするものですか」

    広「見える。見える、よ。私が喜ぶ言葉を、四音が掛けてくれる未来が」

    四音「ボクの身は最後まで持つのでしょうか……」

  • 51二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 15:50:16

    星南「それじゃあみんな、また明日ね」

    一同「「「はーーーい」」」

    莉波「どうだった? 四音ちゃん。みんなと仲良くできそう?」

    四音「あ、ある程度は……」

    四音(一番の危険人物……! あまり頼りすぎるのは良くなさそうです)

    莉波「そっか。良かったぁ。みんなも、プロデューサー君も優しいから、きっと四音ちゃんも楽しくアイドルやれると思う。一緒に頑張ろ?」

    四音「はい」

    咲季「せっかくだからアンタには、朝のランニングに付き合わせてあげるわ?」

    四音「いいでしょう。初日から遊ぶことになりましたから、いい切り替えになりそうです」

    ことね「悲鳴あげんなよ?」

  • 52二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 15:53:42

    四音(…………)

    四音「ボクは、恐ろしい場所に来てしまったのかも知れない。まさか初星学園が、こんな魔境だったなんて……」

    ヒュォォォォッ。

    四音「確かに、あんな連中と過ごしていたら色々と鍛えられそうです。設備も悪くないですし、もう少し付き合ってみるとしましょう」


    【初星学園の誰よりも、白草月花よりも、とてつもないパフォーマンスができる素質を備えている】


    四音「確かめないといけないこと、ありますからね……」

  • 53二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 16:00:08

    四音「ゼェ、ハァ、ゼェ、ハァ……」

    咲季「あなたやるじゃない! さすがは極月学園のエースね?」

    四音「いや、あなた……」

    四音(なんて体力をしているんですか、この人は……)

    ことね「へーすっげー。咲季にここまで付いて来れる奴が他校にいたなんてなー」

    手毬「ちなみに、こいつの妹、もっとやばいから」

    四音「は……? ははは、さすがにそれは……」

    佑芽「お姉ちゃ~~~~~ん!」

    咲季「佑芽、遅いわよ!」

    佑芽「ごめんなさ~~い! 寝坊しちゃった~~~!」

    咲季「さっさと3週走りなさい!」

    佑芽「うん! うぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

    ビュゥン!

    四音「え……」

  • 54二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 16:03:51

    ビュゥン!

    咲季「あと2周!」

    四音「な…………」

    ことね「な?」

    手毬「何度見ても凄いね」

    --------

    佑芽「3周完了!」

    四音「あ、あなた……」

    佑芽「うん?」

    四音「取り組む競技を、間違えてるんじゃ……」

    佑芽「ん? アイドルに体力は必要だよね?」

    四音「いや、それはそうですが……」

    佑芽「四音ちゃんも一緒にぃ、トップアイドル目指して頑張ろーー!」

    四音「か…………っ」

  • 55二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 16:11:04

    学P「どうでしたか?」

    四音「いや、どうも何も、明らかにアイドルの域を超えてる人がいるのですが?」

    学P「そうですね。俺もビックリしました。学園自慢の逸材です」

    四音「“逸材”で済むのですかあれが? というかアレにどう勝てと……」

    学P「体力勝負で勝つ必要はありません。アイドルとして上回ればいいのです。と言っても対抗意識を燃やす必要まではありません。仲間として切磋琢磨していってください。夏休みの間は色んな人と交流できるでしょう」

    四音「分かりました。こっちに来る前は甘く見ていましたが、ストイックな人もいるみたいですからね」

  • 56二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 16:17:47

    四音「花海咲季さん、少しいいでしょうか」

    咲季「どうしたのよ?」

    四音「あなた、アイドル向けの食事も作れるんだそうですね? ボクの分もお願いしていいですか?」

    咲季「もちろんよ! どのコースにする?」

    四音「コース、ですか?」

    咲季「改良したことがあるって話をしたでしょ? その改良前か、後かでだいぶ違うのよ。完璧を求めるなら、改良前の方がいいのだけれど」

    四音「何を改良したのですか?」

    咲季「料理の味と見た目のバリエーションよ。手毬に言われて、毎日食べても飽きないようにしたのよ。佑芽は改良前でも喜んで食べてくれたし、花海家、両親含めてアスリート一家なんだけど、ずっと食べてくれたから」

    四音「なるほど、アスリート一家……であれば、ボクの分も“改良前”で頼んでいいでしょうか。気を引き締めたいですからね。あの小学十年生が耐えられなかった程度のことで、引く訳にはいきません」

    咲季「あなたそれ、本人の前で言わないでよ? 面倒なんだから」

  • 57二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 16:26:47

    咲季「はい、どうぞ。召し上がれ♪」

    四音「な、なるほど……」

    佑芽「ふわぁぁぁぁぁ~~~~♡」

    四音(この料理(?)を前に、こんなに目を輝かせることができるなんて……やはり人間ではないのでは……?)

    広「咲季のご飯、いつも美味しい」

    四音(この人がおかしいのはもう気にしてはいけませんね)

    四音「では、いただきましょう。 はむ。 なるほど、確かに味はよいですね」

    咲季「でしょ~~~! もっと褒めていいのよ?」

    四音「いえ……」

    四音(このストイック女、褒めたら凄い勢いで喜びますね……)

  • 58二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 16:34:17

    四音「ごちそうさまでした。栄養学には詳しくないのですが、あなたや妹さんの体を見れば効果があるのは分かります。今後もお願いしていいですか?」

    佑芽「あたしの体を見て、って……えっチだよ四音ちゃん!」

    四音「……それで花海咲季さん、よろしいですか?」

    咲季「もちろんよ! どのみち毎日作ってるから、1人増えるぐらい」

    佑芽「うわぁぁぁぁぁん、無視されたぁぁぁぁぁぁ!」

    広「佑芽。無視されて悲しいのは分かる。でも、そこから喜びを探してみよう」

    佑芽「無理だよぉぉぉぉぉ。あたし広ちゃんみたいに特殊じゃないもぉぉぉぉぉぉん」

    広「素直な言葉も時に刺激をくれる……ね」

    四音「本当にいい精神修行になりますねここは……」

  • 59二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 16:52:39

    四音「プロデューサーの指示もありますから、皆さんの練習に付き合います」

    四音(なんだかんだで、体力作りは花海姉妹、ダンスは紫雲さんがいて、歌は……認めたくないですが賀陽燐羽がブランクを無視しても参考になる。ここの連中も捨てたものではないですね。使い道いくらでも……使い、道?)

    清夏「おっけー。今日は自主練ベースになるけど、ダンスからでいい?」

    四音(そうです。他人はみんな、ボクがトップアイドルになるための道具。踏み台にしてしまえばいいのです)

    清夏「四音っち?」

    四音「失礼しました。考えごとをしていて。では、ダンスからやりましょう」

    清夏「よーっし、得意だから任せて?」

  • 60二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 16:56:23

    清夏「いやー四音っちさすがだねえ」

    四音「はぁ、はぁ……このくらいなら……ですが、あなたの方が一枚うわてに見えましたが?」

    清夏「まぁ得意分野だし……正直、同学年でここまでできる人がいてちょっと悔しいぐらいなんだケド」

    四音「それにしても……」

    リーリヤ「はぁ、はぁ……」

    タン、タンッ。

    四音「休ませなくていいのですか、葛城さん」

    清夏「う~~~ん……すぐには聞いてくれないからなあ。みんな心配してるんだけど」

    手毬「倒れる前に、腕づくで止めるしかないね」

    四音「そのレベルですか……」

  • 61二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 17:01:54

    リーリヤ「はぁ、はぁ……」

    清夏「やっと来た。そろそろ呼ぼうかと思ってトコだよ?」

    リーリヤ「そんな気がして、集中できなくなってきたから」

    清夏「それはごめ~~ん」

    四音「あなた、どうしてそこまで頑張るのですか? 過度な無茶は為になりませんよ」

    四音(どんなに頑張ったって、才能の差は埋まるはずがないのに……)

    リーリヤ「でも、才能が足りない分は、努力の差で埋めないと……」

    咲季「別に私は、あなたに才能がないようには思えないけど」

    リーリヤ「今の時点で実力差があれば、同じ練習量じゃ、追いつけないから」

    四音「…………」

    清夏「四音っち? どこ行くの?」

    四音「少し、外の空気を吸って来ます」

  • 62二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 17:15:56

    四音「…………。やはり気分が悪いですね。才能がない癖に、努力する人の姿を見るのは……」

    学P「そうですか」

    四音「プロデューサー……!」

    学P「無駄に終わると決まっているのに、そこに労力を割くなんて馬鹿馬鹿しい、ですか?」

    四音「……では、葛城リーリヤが、花海咲季や月村手毬を超えるビジョンが、あなたには見えますか?」

    学P「見えなければ、彼女をスカウトしていません」

    四音「なっ……一体彼女のどこに、才能ある人間を超える力があるというのですか」

    学P「ダンスで超える必要はない。歌で超える必要もない。それらで引けを取ったとしても……アイドルとしては、超えられます」

    四音「ふざけ……パフォーマンスに劣っていて、どうやって……」

    学P「アイドルが、ステージの上でだけ見せられる、お客さんに届けられるものが、あるのです」

    四音「そんなものがあるのなら、普段の努力になんて意味は…」

    学P「あります。努力をしているからこそ、ステージの上で届けられるものが、でき上がるのです。日々の習慣が、必ずステージの上で現れます。だからこそ、あなたはこの初星学園で、より高みへと行けるのです」

    四音「え……?」

  • 63二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 17:25:26

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  • 64二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 17:29:01

    四音「それは、どういう……」

    学P「まずは、仲間との切磋琢磨です。互いの力を認め、ライバルごと引っ張り上げるつもりで、上を目指してください」

    四音「だからそれは、どういうつもりで……」

    学P「自分で見つけてください。人との向き合い方も、“習慣”の1つです」

    四音「人との、向き合い方……?」

    学P「現時点で俺から言えるのは、ここまでです」

    --------

    四音「大事なのは、自分がどうあるかという部分のはず。他人なんて、競争相手です。それをライバルごと引っ張り上げろだなんて……初星の連中が私に協力するのは止めませんし、利用させてもらいますが、どうして私まで他人を……」

  • 65二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 17:42:57

    清夏「あ、戻って来た。長かったねえ」

    四音「考え事をしてましたから」

    手毬「アイドルしてどうあるべきか、なんて考えでもした?」

    四音「そうですね……皆さんは、どうしてまるで、お互いを助けるような鍛錬をしているのですか? トップアイドルを目指すなら、ライバルになるはずなのに」

    咲季「簡単よ! ライバルは強い方がいいじゃない! そしてその強い奴に、私は勝ちたいの!」

    清夏「咲季っちは戦闘民族だからねぇ。あたしは単純で、リーリヤ……友だちと一緒にステージに立ちたいから。勝ち負けを気にしなきゃいけない場面はあるけど、世界で活躍するアイドルって1組じゃないじゃん? だったらみんなで、友だち以外のアイドルに勝てばいいんだよ」

    リーリヤ「私も、清夏ちゃんとステージに立つのが夢だから。清夏ちゃん以外はライバルかも知れないけど、私は助けてもらってる側だし、みんなには感謝してる。だから、私が上達することで皆のお手伝いができるなら、嬉しい、かな」

    手毬「白草四音……あんたに言っておくけど、1人じゃ限界あるよ。色んな奴がいるって、初星に来て分かったでしょ。私も、高等部に来て、色んな人と出会って、かなり変わった。いがみ合ったりしても、いいことなんてない。協力体制を敷いた方が、間違いなく上に行けるよ」

    清夏「手毬っち……」

    咲季「初日からクラスの輪を乱した奴が言うと説得力が違うわね」

    咲季「咲季っちも十分に乱してたからね?」

    リーリヤ「あはは……」

  • 66二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 17:50:00

    四音「そうですか……。あとは、藤田さんはアルバイト、2組のメンバーは補習かサボリでしたか。賀陽燐羽は神出鬼没ですし、3年生に聞きに言ってみましょう」

    清夏「今から行くの?」

    四音「今は、レッスンよりも優先すべきと判断しました」

    清夏「そっか」

    四音「では、私はこれで」

    --------

    清夏「四音っちも頑張ってるんだねえ」

    手毬「あいつ、私たちを練習台か手駒ぐらいにしか思ってなさそうだね」

    リーリヤ「手毬ちゃん……!」

    手毬「ご、ごめん……」

    咲季「まぁいいんじゃないレッスン付き合ってくれるなら。中々やるから刺激になるわよ」

    清夏「切磋琢磨させてもらいつつ、見守りますか」

  • 67二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 17:58:50

    星南「どうして、お互いライバルのはずなのに助け合うか、ね……」

    燕「いざ聞かれてみると、難しいものだな」

    麻央「やっぱりみんなで勝てる方が嬉しいから、かな。枠に限りがあると、どうしてもライバルになってしまうけど」

    燕「とは言え、お互い非干渉でレッスンを続けても全滅だろうな」

    星南「それは間違いないわね。莉波はどう思う?」

    莉波「私は……四音ちゃんの求めてる答えになるかは分からないけど、みんなで上達していった方が楽しいから。1人で毎日ひたすらなんて、私には耐えられないよ」

    四音「そうですか……」

    四音(レッスンを楽しむ、なんて、考えたことがなかった……)

    星南「白草四音さん。あなた、アルバイトやってみたら?」

    四音「……はい?」

  • 68二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:04:06

    ことね「で、こっち来るんかい」

    星南「いつ来てもいいわね、ことねバーガー」

    ことね「だからそんな名前じゃありませんって!」

    星南「いいじゃない。正式名称をナントカ店まで言うの面倒なんだから」

    燕「ナントカ店まで言わなくても大抵は通じるだろう……」

    麻央「という訳で四音のことを頼むよ。客商売だから良い経験にもなると思う」

    莉波「頑張ってね、四音ちゃん」

    四音「はい……」

  • 69二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:09:45

    ことね「よっ、新入り。頑張ろうぜ~?」

    四音「昨日の海といい、行動が早すぎませんか? 今回はお店も関係するのに何故か即時でOKがもらえてますし……」

    ことね「いきなり1人増えるぐらいならイケっから。10分ぐらいは見てるだけで良いから、後は見よう見まねでよろしくぅ」

    四音「は……?」

    --------

    ことね「はい次あんたの番♪」

    四音「本当に新入りを10分で立たせる人がありますか」

    ことね「時給一緒なんだから我慢しろー」

    客「すみませーん」

    四音「い、いらっしゃいませー……」

    ことね「ほら、スマイルスマイル。アイドルだろ?」

    四音「そんな無茶な……」

  • 70二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:14:23

    四音「はぁ、はぁ……」

    ことね「いやー思いのほか順応してたじゃん。笑顔がまだイマイチだけどな?」

    四音「別にいいでしょう。ステージの上じゃあるまいし……」

    ことね「いや金もらって仕事してんだから、レジに立ったらステージと一緒っしょ」

    四音「そもそも、ボクはそんな笑顔を振りまくスタイルでアイドルをやっていないんですよ」

    ことね「ハンバーガーショップじゃダメでーす。笑顔必須でーす。ちゃんとお客さんの顔を見て、笑顔で接客してくださーい」

    四音「くっ……このために生徒会長は……」

  • 71二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:18:59

    四音「いらっしゃいませー」

    客「それじゃあ、これと、これと、あとハッピーウィンクで」

    四音「は……?」

    客「いやー俺ここ来たら絶対ハッピーウィンク頼む派なんで」

    四音「っ…………」

    客「おなしゃす!」

    四音「こっ、これでいいですか」

    客「あ…あざーーっす!」

    ことね「ぷっ、くくく……」

    四音「後で覚えておくことです、藤田ことね」

  • 72二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:24:31

    四音「ありがとうございましたー」

    客「お姉ちゃん、ありがとー!」

    四音「はい、ふふ」

    ことね「へー、あんたってそんな風にも笑うんだぁ」

    四音「何ですか」

    ことね「べっつにー? アイドルらしくて良いと思うぜ?」

    四音「確かにこの仕事は、否応なしに客の顔色を伺うことになりますね」

    ことね「“客”じゃなくて“お客様”な? せめて“お客さん”にしろ。先輩命令な」

    四音「都合のいいときだけ先輩ぶるのはやめてくれませんか?」

    ことね「やっだねー。少なくとも、あの“不幸のウィンク”を何とかするまではあたしが先輩でーーす!」

    四音「この……!」

  • 73二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:34:09

    ことね「おっつかれー!」

    四音「本当に、疲れましたよ……」

    --------

    学P「くっ……アルバイトは俺の方からも言おうと思ってたのに、星南さんに先を越されるとは」

    四音「何を悔しがっているのですか」

    学P「星南さんは俺の担当アイドルであると同時に、プロデューサーの後輩でもありますから。対抗意識を燃やすのは当然です」

    四音「それも、切磋琢磨ですか?」

    学P「そうですね。まだ教えることの方が多いですが、しばらくすれば、俺も星南さんから学ぶことも出てくるでしょう。先輩だからと言って、いつまでも上にいられる訳ではありません」

    四音「担当アイドルからの信頼は、厚いように見えましたが」

    学P「だといいですが……四音さんも、少しは俺のことを信頼してくれてますか?」

    四音「言った私がバカでした……」

  • 74二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:40:07

    学P「担当アイドルからの信頼を得られることほど、嬉しいことはありませんから」

    四音「まぁ、少なくとも、感謝はしています。途方に暮れていたボクに、行き場所を与えてくれましたから」

    学P「行き場所、ですか」

    四音「何か?」

    学P「ここはあなたの、居場所になりますよ。そう思えるように、俺がしてみせます」

    四音「な……にを。そもそも、どう違うというのですか」

    学P「極月学園への帰属意識が、まだあるようでしたので」

    四音「そんなもの、残っているはずがないでしょう」

    学P「では、ここ初星学園は、白草四音さんの帰る場所にもなり得るという訳ですね」

    四音「はぁ……?」

    学P「この先、トップアイドルを目指す過程で、必ず白草月花、あなたのお姉さんと相まみえることもあるでしょう。そこで彼女を倒した時、もし、帰って来いと言われたら、どうしますか?」

    四音「そ……れは…………」

  • 75二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:47:21

    学P「すぐに決めなくてもいいです。もしその時が来たら、答えを出す必要がありますが」

    四音「もし極月に戻ると言ったら、引き留めるのですか?」

    学P「もちろんです。全力で交渉します。極月にお金を渡してでも止めます。あなたのことは、ずっと見ていたいですから」

    四音「っ………!?  フーーッ……。あなた、言葉はもう少し選んだらどうですか」

    学P「どうしてですか?」

    四音「な……っ。いいです。よくそれで、10何人ものアイドルを担当していますね」

    学P「?」

    四音「ハァ……あなたと同じ手腕で、女性のプロデューサーがいた方が良かったのかも知れません」

    学P「プロデューサーが男性か女性かで何か変わるのですか?」

    四音「スーーーッ……もういいです。今日はもう寝ます。おやすみなさい」

  • 76二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 18:59:42

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  • 77二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 19:02:16

    四音(あれから、夏休みの間はレッスンとアルバイトの日々を過ごした)

    佑芽【四音ちゃん、競争だ~~~!】

    四音【ちょっと、待っ……!】

    清夏【ここの振り付け、もっとこうしようかな? トレーナーに相談しようと思うんだけど、四音っちはどう思う?】

    四音【確かに悩ましい部分ですね。清夏さんは変えてもよさそうですが、背が低めのメンバーは今のままでもよい気がしています】

    燐羽【あら? 歌の腕前が下がったんじゃない? 夏バテ? それとも老化?】

    四音【相変わらずの減らず口ですね。ひねってあげましょうか根本から】


    客【ちょっとサッパリしたい気分なんですけど、おススメってありますか?】

    四音【それだと、こちらの商品がよいかと思います。飲み物は……酸味と苦み、どちらがお好みですか】

    四音(ボクは、変われているのだろうか……)

  • 78二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 19:06:47

    咲季「2学期よ!」

    ことね「うげぇ~~っ。夏休みが終わったぁ~~」

    莉波「これからいよいよ学校だね。四音ちゃん、楽しみ?」

    四音「楽しみという訳では……」

    広「私は、楽しみ。四音が、どう私を罵ってくれるのか」

    四音「意味もなく罵ったりはしませんが」

    広「いい。すごくいい。四音の喋り方、すき」

    四音「どうすればいいのですか……」

    千奈「同じクラスでよろしくお願いしますわ、四音さま!」

    佑芽「あたしもいるよ! よろしくね!」

    美鈴「ふあ……ぁ。夏休みに戻りたいです」

  • 79二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 19:21:32

    清夏「てか制服そのままなんだ?」

    四音「別にいいでしょう。あなたたちも統一感がないですし」

    清夏「言われてみればそだね」

    ことね「極月の制服ってさぁ、みんな黒で辛気臭くない?」

    リーリヤ「ことねちゃん……!」

    燐羽「それは別にいいのだけれど、あんた服変えてくんない? これだけバラけてる中で2人だけ同じって嫌なんだけど」

    四音「そちらが変えればいいでしょう」

    燐羽「いや私極月の生徒だし」

    四音「極月の生徒がなぜ初星の生徒に混ざって初星に向かっているのかという問題があるのですが?」

    燐羽「今日の気分よ。気が向いたらあっちに行くわ」

    咲季「極月の生徒も十分に自由人じゃない」

    四音「元はそちらの生徒だった人間ですけれどね?」

  • 80二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 19:33:24

    千奈「もうすぐ1限目……ですが、秦谷さんがいませんわ~~~!」

    四音「嘘でしょう。下駄箱で一緒だったのは見かけたのに……」

    広「そこから消えるのが、美鈴」

    佑芽「全然気づかなかったよぉ~! 美鈴ちゃんめぇ~~、隠密の術をレベルアップさせたなぁ~~っ」

    四音「何をゲーム感覚でいるのですか」

    佑芽「早速ですが、新・美鈴ちゃん捜索隊、しゅうぱーーつ! 隊長、まずはどうします?」

    四音「だから隊長になった覚えは……」

    佑芽「わくわく、わくわく♪」

    千奈「わくわく、わくわく☆」

    広「わくわく、わくわく」

    四音「あの、かくれんぼじゃないのですが……」

  • 81二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 19:38:48

    四音「そもそも、探しに行く必要があるのですか?」

    3人「「「えっ」」」

    四音「だって、そうでしょう。引っ張り出したところで寝るのがオチじゃありませんか? やる気のない人間のためにボクたちが時間と労力を割くこともないでしょう」

    佑芽「まさかの諦め宣言!」

    広「これが新・捜索隊の、新しいカタチ……」

    千奈「こんなのよくありませんわ~~~~!」

    佑芽「探しに行こうよ~~~~」

    四音「でも、もうすぐ授業が。1限が終わってからでも……」

    佑芽「うるうる、うるうる……!」

    四音「っ…………」

    千奈「うるうる、うるうる……」

    広「うるうる、うるうる」

    四音「あなたはせめて涙を目に浮かべてくれませんか?」

  • 82二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 19:55:31

    四音「では佑芽さん。あなたの持てる全てを使って秦谷さんを探してください」

    佑芽「はいっ!」

    ピューーーー。

    四音「あとの2人は適当に歩き回ってください」

    千奈「雑すぎますわ! 戦力として数えられてませんわ!」

    広「そんな隊長も、すき」

    四音「そもそも、これまではどのように探していたのですか」

    千奈「花海さんに2人で付いて行ってましたわ!」

    広「あとは、美鈴が行ってそうな場所を考えて3人で向かったり、放送部に3人で向かったり……」

    四音「あなた方は手分けして探すという手段を考えないのですか?」

    千奈「ハッ……確かに!」

    広「でも、迷子が増えても、困る」

    四音「あなた方なら本当に迷ってしまいそうなところが悩ましい限りですよ」

  • 83二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:01:48

    ピロン♪

    広「あ、佑芽からメッセージ」

    【隊長! 発見しました!】

    四音「では、連れて帰って来るように、と」

    【了解です!】

    --------

    佑芽「ターゲット、無事に確保しました!」

    千奈「もうっ、秦谷さんっ。1限目前からいなくならないでくださいませ」

    四音「朝一番でなければよいという訳ではありませんけれどね?」

    美鈴「ふあ……お騒がせしてしまったようですね。すみません」

    四音「悪いと思っているのなら、いなくならないでくれませんか」

  • 84二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:04:48

    美鈴「ですが、このぽかぽか陽気で、昼寝をしないという選択肢はありません」

    四音「“昼寝”というのならば、せめてお昼にしてくれませんか」

    美鈴「昼寝は、朝でも成り立ちます。晴れてしまうお外が、悪いのです」

    四音「これからは毎日雨乞いが必要なようですね……」

    千奈「それでは授業に参りましょう。もう始まってしまってますわ」

    広「怒られるところからスタート、だね」

    四音「ボクは転校初日なのですが……」

    広「大丈夫。美鈴を探してたって言えば、許してもらえる」

    四音「朝っぱらから昼寝に行ったクラスメイトを探しに行ったという遅刻理由が許されるのは、初星学園だけでしょうね……」

  • 85二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:08:44

    学P「お疲れさまでした。授業はどうでしたか?」

    四音「授業どころではありませんでしたよ。秦谷さんが3度も失踪したのですが?」

    学P「今日は3回でしたか」

    四音「人が失踪する回数を毎日記録できること自体おかしいですからね」

    学P「理解しています。お疲れのところ悪いのですが、これからレッスンです」

    四音「夏休みと同じように1組メンバーに混ざれば?」

    学P「いえ。今日は2組メンバーの、補習の様子を見に行ってください」

    四音「は……!?」

  • 86二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:33:05

    千奈「あっ、四音さま、来てくださったのですね!」

    四音「プロデューサーに頼まれましたから」

    佑芽「もしかして一緒に練習してくれるの!?」

    広「楽しみ、だね」

    Daトレ「君か。話は聞いてるよ。是非とも、この3人をビシバシ鍛えてやってくれ」

    佑芽「えぇっ! 四音もトレーナー!?」

    千奈「なんということでしょう!」

    広「楽しみ、だね……♡」

    四音「もう帰りたいのですが……」

  • 87二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:49:24

    四音「佑芽さんは絶望的に要領が悪いだけですね。ボクから教えられることはありません」

    佑芽「そんな! ひどい……!」

    四音「倉本さんは絶望的に身体能力が低いですね。ダンスの練習の前に体作りからです。現時点で教えられることはありませんね」

    千奈「そんな~~~~~!」

    四音「條澤さんは絶望的にアイドルに向いていません。教える気にすらなれない」

    広「そんな……ひどい……いい……」

    Daトレ「まぁそう言わずに、付き合ってやってくれ。きっとお前の、糧になる。と、プロデューサーちゃんも言ってたからな」

    四音「プロデューサーが……?」

    Da「あぁ。頼む。あいつを信じてやってくれないか。お前のことを、とても気にかけているみたいだった」

    四音「……プロデューサーの指示で私がコーチングをさせられているなら、従うほかありませんね」

  • 88二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:57:58

    佑芽「わっ、わわわっ……!」

    四音「どうしてそこでそんな動きをするのですか。もう少し、落ち着いて、テンポを下げますから個々の動作を確実にしてください」

    佑芽「はい……!」

    千奈「あわ、あわわわ……」

    四音「やはり体幹から鍛えた方が……ですが時間が掛かりますね。ここはこうした方がバランスが崩れにくいです。次の場面はこうですね」

    千奈「お、おぉ……!」

    広「こうして、こう、っと。あ」

    ぱたり。

    四音「見てられませんね……しゃきっとしなさい。体力の問題は咲季さんに任せるとして、体の動かし方次第で、多少は踊れるようになりますから」

    広「うん。がんばる。見てて」

    四音「っ…………」

    四音(急に真剣になられると、拍子抜けしますね……)

  • 89二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:11:24

    Da「よーし、今日はここまで! 白草、ご苦労だったな」

    四音「いえ、これくらいな」

    Da「今後も火曜と木曜は来てもらうから、お前自身も、何かをつかめるようにな」

    四音「はい……」

    佑芽「楽しかったねー! 四音ちゃん、ありがと!」

    四音「お礼ならプロデューサーに言ってください。あの人が、ここに行けと言ったのですから」

    千奈「けれでも、実際に指導頂いたのは四音さまですわ。感謝を忘れる訳にはいきません」

    広「ありがとう。これからも、よろしく。何だか、上達しそう」

    四音(お世辞には、聞こえない……高校生とは思えないほど純粋ですね。何なのですか、この人たちは)

  • 90二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:15:21

    学P「お疲れさまでした。どうでしたか、初めてのコーチングは」

    四音「ボクが極月でそんなことしてなかったのは、お見通しという訳ですね。ご明察ですが」

    学P「人の成長を見るというのも、楽しいものでしょう」

    四音「いや今日の進歩はゼロでしたけど」

    学P「長い目で見てあげてください。皆さんいい子たちですから」

    四音「いい子すぎませんかね。本当に高校生ですか?」

    学P「ですが、アイドルとしては魅力的です」

    四音「それを教えるためにボクにコーチングを?」

    学P「さあ、どうでしょう」

    四音「あなたが答えを教えるとは思えませんから、他にもあるでしょうね」

    学P「ははは」

    四音「全く……」

  • 91二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:19:55

    学P「一番大事なのは切磋琢磨、これだけを言っておきます」

    四音「そうですか」

    四音(佑芽さんはともかく、他の2人がライバルにまでなるとは思えないですが、根強いファンが付きそうであることも、なんとなく分かる……アイドルとは何なのか、を考える時でしょうか)

    学P「それでは、聞いていると思いますが火曜日と木曜日はよろしくお願いします」

    四音「分かりました。騙されたと思って言う通りにしてみますよ」

    四音(ボク自身のレッスンの時間が奪われますが……十王星南や、他の実力あるアイドルも含めてあのプロデューサーは優秀だと言っている。だから、ボクがトップアイドルになるのに必要なのは、技術の向上よりも……)

  • 92二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:25:56

    四音(約束通り、火曜日と木曜日は2組メンバーと、他は1組や3年生たちのレッスンに混ざった)

    佑芽【わわわっ!】

    四音【無自覚のうちにテンポが上がっていく癖がありますね。手拍子をよく聞いて、しっかりと動いてください】

    千奈【きゃあ~~~!】

    四音【遅れたからと言って動作を省略するからそんなことになるのです。練習なのですから、できないままに進まず止まってください】

    広【きゅ~~~~】

    四音【やっぱり疲れていたではないですか。無理をせず休みなさい!】

    燕【ふっ、ふっ、はっ!】

    麻央【実力を上げてきてるね。ボクも負けてられないよ!】

    四音【ライバル……】

  • 93二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:33:11

    学P「1週間、お疲れさまでした」

    四音「疲れましたよ。これ以上ないほどに」

    学P「極月学園よりも、きついですか?」

    四音「ええ、それはもう、色んな意味で」

    学P「トップアイドルは、目指せそうですか?」

    四音「っ……極月で同じ毎日を過ごすよりは、可能性があったのかも知れません」

    学P「それは良かった。ではこの調子でいきましょう」

    四音「週末は、夏休みと同じようにすれば?」

    学P「基本的にはそうですが、明日は、何か予定がありますか?」

    四音「ありませんよ。休養日は咲季さんに合わせることにしましたから」

    学P「それでは、2人で出掛けましょう」

    四音「………………は?」

  • 94二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:44:01

    四音(来てしまいましたが、どうしてこんなことに……)

    学P「えっ、お待たせしました。すみません、時間に余裕を持って来たつもりが」

    四音「構いません。ボクが早く来すぎただけです。それより、どこに行くんですか?」

    学P「遊園地です」

    四音「………………は!?」

    学P「遊園地です」

    四音「聞こえています。なぜ、遊園地なんかに行くのかということです」

    四音(それでは、まるで……いや、そんなことは。この朴念仁が、そんな意図で女性と2人で遊園地に行こうなんて言うはずがありません)

    学P「パレードがありますから。ファンを楽しませる現場を見に行きましょう」

    四音「はっ、ははは……っ」

    四音(そうでしょうとも。そうでしょうとも……って、そうじゃない方が困るのに何を考えているのですかボクは)

  • 95二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:51:47

    学P「到着しました」

    四音「今更ですけれど、パレードは夕方のはずですが、どうして午前中から?」

    学P「パレード以外にも、通常のアトラクションやキャストのファン対応など、学べるものは多いですから」

    四音「それはそうですが……なぜ2人で? 遊園地なら人数多くても良かったでしょうに」

    学P「四音さんと2人で過ごすためです」

    四音「はぁっ!? いっ、いきなり何を……!」

    学P「他のメンバーと違って、あなたとはまだ知り合って浅いです。プロデュースする上で担当アイドルの人となりを知ることは重要ですから、四音さんとだけ向き合えるように2人で出掛けることにしました」

    四音「だっ……から何でそんなことを……」

    学P「どうかしましたか?」

    四音「何でもありません。さっさと行きましょう」

  • 96二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:54:28

    あまあま遊園地デート助かる
    この世界線の撫子はどうしてるんだろう……

  • 97二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 22:09:54

    学P「何か乗りたいものはありますか?」

    四音「特にはないですね。絶叫系に乗りたいのなら付き合いますが」

    学P「いえ、待ち時間も長いですし、四音さんが興味なければやめておきましょう」

    四音「もしボクが、アイドル活動の参考にならない乗り物ばかりを希望したら、どうしたつもりですか?」

    学P「希望に合わせます。その方が、四音さんの人となりを知ることに繋がりますから。接客対応の見学よりも優先です」

    四音「っ……そうですか。幸いにも、遊園地ではしゃげるような年齢ではなくなりましたから、見学を優先しましょう」

    学P「高校生なら十分にはしゃげるように思えますが」

    四音「あなたの周りの高校生がそうというだけでしょう。あんな、子供みたいな……」

    学P「見ごたえのあるアイドルたちでしょう」

    四音「否定はしませんが、もう少し落ち着きが欲しいですね」

    学P「自然にああいった振る舞いができるのが、彼女たちの魅力です」

  • 98二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 22:16:44

    四音「ふーーん。ではあなたは、ああいった女の子が好みなのですか?」

    学P「はい? どうして好みの話に?」

    四音「魅力がどうとか言ったでしょう」

    学P「アイドルとしての魅力です」

    四音「ですが、女性アイドルということは意識してますよね?」

    学P「もちろんです。ですがそれと、女性の好みに何か関係が?」

    四音「え…………人間って、どこのネジを外せばこうなるのでしょうか」

    学P「?」

    四音「あそこの、写真撮影してる着ぐるみのところに行きますよ」

    学P「はい。行きましょう」

  • 99二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 22:38:35

    パシャリ。

    客(親)「ありがとうございました~」

    客(子)「ありがと~~!」

    着ぐるみ:ふりふりふりふり

    四音「考えてみれば、キャストの方の表情が見えませんね」

    学P「ですが、想像してみてください。あの仮面……ではなく、着ぐるみの中を」

    四音「想像、と言われても。客が来たら手を振って、少しじゃれて、最後に写真を撮るだけでしょう。ハンバーガーのアルバイトと同じに見えます。あそこにキャストとしての何かがあるのですか?」

    学P「この場合はキャストとしての個を出さないことが重要ですね。キャラクターになりきること。我々はキャラクターには詳しくないですが、例えばガニ股で歩かないとか、尻尾を握られると力が抜けて立てなくなるとか、“中の人”を意識させないことが求められるでしょう。ここは夢と魔法の王国。ゲストを現実に戻すことだけは、絶対にしてはいけないのです。その点は、アイドルに似ていると思いませんか?」

    四音「なるほど……」

    学P「安全への気配りも忘れてはいけません。誰も写真撮影に来ていない状態でも、常にゲストの動きをチェックし、危険な状態にならないようにする。ハンバーガー屋さんのレジで、座席に座っているお客さんの様子を気にかけたことはありましたか?」

    四音「それは……」

    学P「実態としては、よほど大きな声や音でもしない限り問題はないと思いますが。ですが遊園地にしてもハンバーガーにしても、敷地内にいる人のことは、気にかけるに越したことはないのです。その習慣が、顧客満足度に繋がります。例え目に見えなくても」

  • 100二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 22:54:40

    四音「目に見えない習慣、ですか。言っている意味が、少しは分かる気がします」

    学P「2組メンバーのコーチングが、早くも役に立ったようですね」

    四音「目に見えないどころか。目が離せないレベルでしたよ。いえ、目を背けたくもなりました。そうすれば、気になりませんからね」

    学P「では、彼女たちのレッスンはトレーナーに任せますか?」

    四音「それは……何故だか、見ていたくなってしまいますね。やはり、あれが……」

    学P「そうですね。技術とは別の、アイドルとしての武器になります。ですから四音さんも目指しましょう。お客さんのことを第一にするのを意識しつつ、四音さん自身も、目が離せない存在になるのです」

    四音「あんなポンコツになれと?」

    学P「違います。彼女たちは一例です。四音さんの場合は……これと言ったテーマを設けるのは難しいですが、まずは、人をよく見ることです。そうすれば必ず、人はあなたのことを見てくれます」

    四音「人を見る、ですか……そうですね。さすがに、行動を共にすることになった初星のメンバーたちは、無視できなくなりました」

    学P「自然と気遣いも必要になってくるでしょう。習慣のトレーニングになります」

  • 101二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 00:08:57

    筆が爆速で濃密…
    スレ開始10時間で読めていい分量と濃さじゃない

  • 102二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 08:28:45

    四音「みんなが言っていた通りですね」

    学P「何がですか?」

    四音「あなたは、本当に人を見ている。アイドルなんかよりも、よっぽどです」

    学P「俺は10人ちょっとを見るだけでいいですから。何千、何万人ものファンを見ることになるアイドルとは、訳が違います」

    四音「それでも、十分に……本人以上に、アイドルのことを見れてますよ。ボクのことも……」

    学P「はい。俺なりに四音さんを見て、プロデュースプランを考えました。目に狂いはなかった。あなたは、魅力的なアイドルです」

    四音「なっ、みっ、魅力とか……何ですかいきなり」

    学P「先ほども使った言葉ですが」

    四音「本人に直接言う人がありますか。他人の話をする時だけですよ、そんな言葉を使うのは」

  • 103二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:12:16

    学P「そうですか。では今後は気を付けます」

    四音「別に、いいですけど。ボクに使う分には……」

    学P「え? ですが先ほど…」

    四音「ボクはもう怒りませんから、どうぞ目の前で使ってください。ですが、他の人には魅力的だなんてことを直接言わないことですね。変に喜ぶ人が出ますから」

    学P「場合分けですか……複雑な注文ですが、分かりました」

    四音「どこまで分かっているのだか……」

    学P「?」

    四音「あなたがアイドルを見ている分、アイドルもあなたを見ているということです。プロデューサーも例外ではありませんよ?」

    学P「どうして俺を見る必要があるのですか?」

    四音「ぶん殴りますよ?」

    学P「なんで……!」

  • 104二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:19:26

    四音「はぁ。気分を変えたいですね。軽めのアトラクションに乗りましょう。適当に決めてください」

    学P「では、あれにしましょうか。ゆったり動く船のようです。」

    --------

    キャスト「さあ、ジャングルの冒険へ、行ってらっしゃ~~い!」

    四音「へえ。子供だましかと思っていましたが、結構本格的なのですね」

    学P「テーマパークも侮れないでしょう。随所から、ゲストに楽しんでもらいたいという思いを感じます」

    四音「舞台装置は、無機物のはずなのですが……何故か、作り手の魂が宿っているように見えてしまいます」

    学P「アイドルに求められるものと同じですね。丹精を、心を、最終的なアウトプットに込めるのです。そうすれば必ず、見る人を魅了させるものとなります。」

    四音「心、ですか……」

  • 105二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:32:57

    グラッ。

    四音「わっ」

    学P「おっと」

    がしっ。

    学P「揺れましたね。大丈夫ですか?」

    四音「か…………ぁ…………」

    学P「四音さん?」

    四音「ハッ。い、いつまで人の肩をつかんでいるのですか。離れてください!」

    学P「いやそちらから簡単に離れられたはず……」

    四音「突然体勢を崩しましたから……止めて頂いたことには感謝しますが、すぐに押すなりして立て直してもらっても良かったのではないでしょうか、ということです」

    学P「こちらもそんなすぐには……」

    四音「~~~~~~……」

    四音(何なのですか、もう……)

  • 106二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:37:51

    四音「っ…………何か、言ってくださいよ」

    学P「何か、とは」

    四音「話題です。何かないのですか?」

    学P「そうですね……いつか、水上でボートに乗ってパフォーマンスという日が来ることに備えて、水上でのバランス感覚を養うトレーニングも考えておきましょうか」

    四音「ハァ~~~~~ッ……」

    学P「えっ、何かまずいこと言いました?」

    四音「悪かったですね。バランス感覚が悪くて」

    学P「あっ、いやっ、責めるつもりは……」

    四音「分かってますよ、そのくらい。仕事の話に戻ったのが、イラッときただけです」

    学P「でも仕事の情報収集のために来てますし」

    四音「それはそうですけけど……! もう……」

  • 107二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:47:30

    四音「はぁ。なんだかドッと疲れました」

    学P「すみません、俺が悪いみたいで」

    四音「あなただけのせいではありませんよ。ボクの問題でもあります」

    学P「何か気掛かりなことでもあるのですか?」

    四音「それを聞いてしまうことは、あなたの悪い部分ですけどね」

    学P「えぇ……分からない……」

    四音「あなたも、人のことをよく見たらどうですか」

    学P「担当アイドルのことはよく見ているつもりでしたが……まだまだ足りないということですね」

    四音「目の前にいるのは、ただのアイドルではないということです」

    学P「はい。トップアイドルになれる、ポテンシャルと魅力を秘めた、将来有望なアイドルです」

    四音「ハァ………いつか、分かりますよ。そうやって、人の人生をよい方向に変えてばかりいれば」

    学P「?」

    四音(この人に心を揺さぶられるのも、バカバカしくなってきましたね……)

  • 108二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 09:58:19

    学P「そろそろパレードの時間ですね」

    四音「さすがに人が増えてきましたね」

    学P「キャストだけでなく、ゲストの方々の顔もよく見ておいてください。あなたが将来ステージの上から見る景色になりますから」

    四音「分かりました。間近で観客の様子を見る機会は、そうそうありませんからね」

    --------

    客「「「わーーーーっ!」」」
    客「「「きゃーーーーっ!」」」

    四音「国内で有数のテーマパークというだけあって、パフォーマンスの完成度が高いですね。観客の人たちも、心から楽しんでいるようです」

    学P「難しいですよ。たった1人のステージで、夢も魔法も使わずにここまで魅了するのは」

    四音「別にこれも、使っているのはテクノロジーだけでしょう」

    学P「学生アイドルでは、使えるテクノロジーに限りがあります」

    四音「それはそうですが……」

    客「「「わーーーーっ!」」」

    四音「っ…………そうですか」

    四音(ボクの見たいものが、見つかったかも知れません)

  • 109二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 10:02:40

    学P「パレードが終わりましたが……」

    四音「この混雑では、まともに身動きが取れませんね」

    学P「流れに沿って歩いていくしかなさそうです」

    ぎゅぅ、ぎゅぅ

    四音(っ……人の波に押され……)

    ぱしっ。

    四音「え?」

    学P「四音さん……!」

    四音「ちょっと……」

    学P「はぐれると、まずいですから」

    四音「だからって……」

  • 110二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 10:13:35

    学P「こっちです。窮屈ですが何とか耐えてください」

    四音「っ…………」

    ぐいっ。

    学P「ふぅ、何とかはぐれずに済みましたね」

    四音「はぐれたって、連絡を取り合えばいいでしょう」

    学P「最悪の場合はそうしますが、手を伸ばせば届くものを、敢えてはぐれる選択をすることもないでしょう」

    四音「そうかも知れませんが……というか、いつまでボクの手をつかんでるんですか」

    学P「もう少し人ごみが解消されるまでですね」

    四音「はぁ……っ!?」

    学P「今度はぐれそうになった時に届く保証はないですから。もしかして、嫌でしたか?」

    四音「別に嫌という訳では……」

    四音(嫌じゃないから困ってるんです……)

    学P「ではこのまま行きましょう」

    四音「はい……」

  • 111二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 10:18:06

    学P「ふぅ、何とか脱出できましたね」

    四音「テーマパークがここまで過酷なものとは思いませんでしたよ」

    学P「観客の動線やスムーズな誘導についても勉強しなければなりませんね」

    四音「それはライブ会場や警備会社の選定で何とかできるでしょう。1人でどこまでやるつもりですか」

    学P「ですが勉強したい」

    四音「はぁ。それは止めませんけど」

    学P「少し休憩したら帰りますか?」

    四音「そうですね。ですが、どうせ休憩するなら……」

    学P「?」

    四音「あれに、乗りませんか?」

  • 112二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 10:25:52

    学P「観覧車……これも、遊園地の定番の1つですね」

    四音「アイドル活動の参考になるかは、分かりませんけど」

    学P「もう十分に目的は果たせましたから、息抜きも悪くありません」

    四音「改めて考えてみれば、街を高いところから見下ろすって、あんまりないですね」

    学P「人がゴミのように見えますか?」

    四音「暗くて見えませんよ。それに、ボクはそんな悪党に見えますか?」

    学P「極月にいた頃は、そう見えたこともありました」

    四音「正直ですね。というかそれで、ボクからアイドルとしてのポテンシャルを感じていたのですか?」

    学P「はい。この人はきっと、環境が変われば輝くだろうなと。俺が、プロデュースできたらなと」

    四音「そうですか。良かったですね。ボクが家出なんてするどうしようもない人間で」

    学P「伸び悩めば、道に迷うことだってありますよ」

    四音「プロデューサーもあったのですか?」

    学P「秘密です。ただ、紆余曲折はありました」

    四音「なんですかそれ……」

  • 113二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 10:33:15

    学P「今でもまだ、何をすべきか迷ってますか?」

    四音「いいえ。見つけました。自分のやるべきことを」

    学P「良かったです。もう、トップアイドルまでは一本道ですね」

    四音「聞かないんですか? ボクが見つけた道を」

    学P「はい、信じていますから」

    四音「っ……まだあなたは、ボクの全てを知っている訳ではなさそうですけれどね」

    学P「どういうことですか?」

    四音「あなたが思っている以上に、ボクはあなたに感謝しているということです」

    学P「かなり感謝されていることは、理解しているつもりですが」

    四音「足りませんね。10何人もアイドルを見ていれば、色んな人から感謝されて個々の印象が薄くなるかも知れませんが」

    学P「そんなことは……」

    四音「さっきも言いましたが、いずれ分かりますよ」

    四音(もし姉様を倒すその時が来たら、抑えられる気がしませんから)

  • 114二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 10:40:53

    学P「そんなものでしょうか」

    四音「そうですね。今1つ、あなたが想定していない、あなたにして欲しいことを言いましょうか」

    学P「なんですか?」

    四音「もうすぐ観覧車の頂点ですからね。こちらから頼まなくても、同じ景色を見るために隣に来るぐらいはして欲しかったですね。一蓮托生の、プロデューサーとアイドルなのですから」

    学P「それくらいなら、今からでも」

    四音「いいえ、大丈夫です。同じ景色は、ライブ会場で見ましょう。客席を完全に埋めて、大喝采を浴びながら」

    学P「っ………はい、分かりました」

  • 115二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 11:10:54

    四音(それからは日常に戻り、これまでと変わらぬ日々を過ごした。いや、以前よりも人のことをよく見るようになって過ごした。

    1組メンバーや3年生とは競い合いつつも互いの能力を認め、高め合った。十王星南は自身の能力に驕らず常に危機感を持って取り組んでいた。葛城リーリヤは驚異的な粘りで食らいついてきた。夢と約束だけを支えにライバル兼仲間を追い続けるあの精神力は、底知れない。

     2組メンバーの上達も目に見えるようになってきた。特に花海佑芽は、一度要領をつかんだものについては凄まじく、恐怖さえ覚えるほどだった。倉本千奈と條澤広も、少しづつではあるが形になってきている。そして何より、目が離せない。危なっかしいという意味ではなく、今後が楽しみだ。悔しいがその魅力は、この2人にしか出せない。

     アルバイトも随分と慣れた。ハッピーウィンクも恥を捨てて全力で応えたり、軽く罵った方が喜ぶ人間を見分ける選球眼も付いた。今となっては藤田ことねが対抗心を燃やして、頼まれてもないのにウィンクするほどだ。

     そして、大きなオーディションに向けて駅前や商業施設でミニライブをやるようになったある日のこと)



    ???「四音お姉様!」

  • 116二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 11:21:05

    ???「四音お姉様!」

    四音「っ……撫子……」

    撫子「どっ、どうして急に……しかも、初星学園なんかに……!」

    清夏「あや……向こうでのお友だち?」

    麻央「ほら、あまり聞き耳を立てるものじゃないよ」

    四音「構いませんよ別に。撫子……黙っていなくなって、申し訳ないことをしました。それに……」

    撫子「わたくしよりも、そんな奴らの方が役に立つというのですか……!」

    四音「本当に、申し訳ありません。……撫子、もうあなたは、ボクにとらわれる必要はありません。自由に、のびのびとアイドルとして精進するのです」

    撫子「そんな、ですがわたくしは……!」

    四音「ボクが、間違っていました。他者を利用し、蹴落とすことを繰り返していては、のぼり詰めることはできません。目を覚ます時です。あなたは、あなたの道を探しなさい」

    撫子「そ、んな……」

  • 117二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 11:36:35

    このレスは削除されています

  • 118二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 11:40:11

    撫子「もう、わたくしは、必要、ないと……」

    四音「そうは言っていません。なんと言えば……ボクがいなくなった今、極月学園のナンバーツーはあなたです。初星学園の、そしてボクのライバルとして、どうか立ちはだかってください。あなたには、それができるだけの可能性があります」

    撫子「無理です! わたくしには四音お姉様がいませんと……!」

    四音「そんなことはありません。むしろ、ボクが足枷になっていました。ボクがいることで、撫子は無意識のうちにボクを超えちゃいけないと思い込んで、それが撫子の、アイドルしての成長を邪魔していました。ですから撫子のためには、ボクはいない方がいいのです」

    撫子「そんなことありません! 四音お姉様抜きでアイドルなんて続けられません……!」

    四音「撫子……ありがとうございます。ボクを、必要としてくれて。であれば、たまには極月に顔を出すことにしましょう」

    リーリヤ「えぇっ…!?」

    四音「賀陽燐羽も同じことをしているんです。初星に籍を置いたまま極月で鍛錬をしても構わないでしょう」

    ことね「そういえば前例があったナー……」

    四音「ボクは、トップアイドルになるためには初星学園が必要なのです。ですが撫子、あなたはボクとは違って、極月学園にいるままでも上を目指せる。ボクがよきライバルとして、たまにそちらに行きますから、共に上を目指しましょう」

    撫子「う、うぅ…………」

  • 119二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 11:43:34

    ???「随分といい目をするようになったな、愚妹。いや、もう“愚”は付けられないか」

    四音「月花、姉様……」

    月花「環境を変えたことが、いい方向に転がったようだな」

    四音「はい。お陰様で」

    月花「私は何もしてないが?」

    四音「いいえ、最後のひと押しをしてくださいました」

    月花「ほぅ……初星学園のプロデューサー」

    学P「はい」

    月花「例を言う。よくぞ妹を、ここまでのアイドルにしてくれた」

    学P「お礼なら、彼女の仲間たちに言ってください」

    月花「…………なるほど。粒ぞろいだな。 妹が世話になったな、お前たち」

    麻央「こちらこそ、悪いね。ナンバーツーを引き抜いてしまって」

    月花「構わんさ。力あるアイドルが育つなら、そいつが極月所属であることにこだわりはしない」

    麻央「っ……世間的にもトップアイドルと認められている人物は、格が違うね。ボクなら、仲間が移籍先で成長した時に同じことは言えないよ」

  • 120二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 11:50:27

    月花「次のオーディション、極月からは私が出る。不肖の妹がいなくなってしまったからな、撫子1人でお前たちと戦わせるのは酷だ。 楽しみにしているぞ、四音」

    四音「はい」

    月花「撫子、帰るぞ。お前にも、いつか分かる。四音の判断が正しかったことがな」

    撫子「うぅ…………」

    リーリヤ「行っちゃった」

    清夏「丸く収まった、のかな?」

    麻央「まぁ、これ以上は望めないだろうね」

    ことね「罪な女だねぇ~四音ちゃん♪」

    四音「からかわないでください。撫子には悪いことをしたと思ってますよ。根は優しい子です。ボクのせいであぁなってしまいましたが、責任を持って“いい子”に戻します」

    学P「そのためにも、お姉さん、月花さんを倒さなければなりませんね」

    四音「はい。負けてしまっては、格好も自信もつきませんからね」

  • 121二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 11:57:06

    ガヤガヤガヤガヤ。ガヤガヤガヤガヤ。

    四音(ついに迎えた、オーディションの日)

    月花「言葉は不要だな。見せてみろ、お前が初星で手に入れたものを」

    四音「はい」

    撫子「…………」

    四音「撫子も、どうか見ていてください。ボクが、トップアイドルに打ち勝つ姿を」

    撫子「…………はい……」

    月花「ほぅ……」

  • 122二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 12:05:18

    客「「「わーーーーっ!」」」
    客「「「きゃーーーーっ!」」」

    MC【白草月花さん、ありがとうございましたー! 続いて、初星学園の白草四音さん、よろしくお願いしまーす! 学校の枠を超えた姉妹対決を、とくとご覧あれ~~!!】

    客「「「わーーーーっ!」」」

    四音「…………」

    スタ、スタ、スタ、スタ。

    四音(ステージから見た客席が、これまでと違って見える。目の前にいるのは、人形ではない。投票装置でもない。心と熱を持った、人なんだ)

    四音「…………」

    四音(私がそこに、火をつける)


    ♪~♪~♪~♪~~~


    四音「スーーーッ……」

  • 123二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 12:14:59

    このレスは削除されています

  • 124二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 12:16:43

    客「「「「「わーーーーっ!」」」」」
    客「「「「「きゃーーーーっ!」」」」」
    客「ブラボーーーーーッ!!」


    四音「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………」

    四音(私の全てを、出し切った……)

    客「「「「「わーーーーっ!」」」」」

    四音「はぁ、はぁ………」

    四音(観客の熱狂が、こんなにも心地のよいものだったなんて……)

    客「四音ちゃ~~ん!!」

    四音「は、はは……」

    パチッ。

    客「「「「「わーーーーっ!」」」」」

    ことね「あいつ、ハッピーウィンクを使いこなして……!」

    学P「歌唱後の疲労状態とマッチする良いウィンクでしたね。やはり四音さんは、とてつもないスーパーアイドルです」

  • 125二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 12:22:32

    MC【さて、結果の方ですがぁ~~~~っ】

    四音「……………………」

    月花「ふん」

    月花(見るまでもないな。極月も、やり方を考えなさなければならんか)

    ドゥルルルルルル……!


    MC【勝者、白草ぁ~~~っ、四音ぉ~~~~~~ん!!】

    客「「「「「わーーーーっ!」」」」」
    客「「「「「きゃーーーーっ!」」」」」
    客「「「「「ヤーーーーッ!」」」」」


    四音「っ…………」

    ことね「うおぉ~~~っ! あいつやりやがった~~~~!!」

    咲季「当然でしょ。こんなところで負けてもらっても困るわ」

  • 126二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 12:27:21

    客「「「「「わーーーーっ!」」」」」

    四音(ボクが、姉様に……? もちろん、それを目指していましたが……)

    チラリ。

    学P「…………」グッ。

    四音「は……はは…………」

    四音(歓声に、応えなくては)

    四音「…………スーーーッ」

    四音【皆さん、ありがとうございましたー!!】

    客「「「「「わーーーーっ!」」」」」
    客「「「「「きゃーーーーっ!」」」」」
    客「ホワァ~~~~~ッ!!」
    客「姉より強い妹は、存在するーーーっ!!」

    咲季「嫌なこと言うわね、あの観客」

    佑芽「ムッフー。覚悟しててね、お姉ちゃん」

    ことね「あたしも怖ぇナ~。なんかすっげー嫌な予感がする」

    星南「今は、仲間の勝利を喜びましょう。先輩も、とんでもない子を連れて来てくれたわね」

  • 127二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 12:41:57

    学P「お疲れさまでした。見事です」

    四音「今でも、実感が湧きません。まさかボクが月花姉様に……」

    学P「最初はそんなものです。ですがいつしか、あなたは勝利が当たり前になる。そうなった時に勝ち続けてこそ、真のトップアイドルです」

    四音「道は、まだまだ長いということですね」

    学P「ですがひと区切りです。道が長いからこそ、張り詰め続けていては心身が持ちませんよ。羽を休めてください」

    四音「どのみちもう、緊張の糸はほどけ…あ、あれ……?」

    学P「四音さん?」

    四音「ど、どうして、涙が……勝った、のに……」

    学P「勝ったから、ではありませんか? お姉さんの存在によるプレッシャーが、聞いていた以上に苦しかったようですね」

    四音「ようやく……ひっ、っ……ようやく………!」

    学P「……席を外した方がいいでしょうか。一旦外に出ますね」

    スタ、スタ、スタ…

    四音「バカ言わないでください」

    だきっ。

    学P「!? し、四音さん……!?」

  • 128二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 12:47:49

    四音「言いましたよね、感謝しているって……ひっ、っ……」

    学P「それは、そうですが……」

    四音「こんな表現じゃ、足りません……本当に、あなたのお陰で……っ………」

    学P「四音さん……」

    四音「逃がしませんから……私の気の済むまで、そのままでいてください……」

    学P「あの、ですが、アイドルとプロデュー…」

    四音「アイドルである前に、1人の女です。あなたも、プロデューサーである前に、男でしょう。プロデュースマシンなんですか……」

    学P「まさか。機械なんかに、自分以上のプロデュースをされたら……」

    四音「人間としてアイドルをプロデュースするなら、これくらい覚悟した方がいいんじゃないでしょうか。人の、異性の人生を救っておいて、ビジネスライクに済むと思っているなら大間違いです」

    学P「えぇ……」

    四音「そこで“えぇ…”なんて言葉が出るのが、信じられません。アイドルをプロデュースするなら、もう少し人の心について学ぶべきです」

    学P「ですが、俺はプロデュー…」

    四音「自分が男に生まれたことを後悔してください」

    学P「そんなの恨みようが……」

    四音「知りませんっ……」

  • 129二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 12:59:34

    四音「そこまでプロデューサーであることにこだわるなら、約束できますか? ボク以外のアイドルから好意を向けられても、その気持ちに応えないことを」

    学P「もちろんです」

    四音「っ…………その上で、ボクの気持ちに応えることは約束してください」

    学P「え……というか、四音さんの気持ちとは……」

    四音「分からないのなら、はっきり言ってあげます。アイドルとしてだけではなく、個人的にも、ずっとあなたのそばにいたいです。有り体に言えば、好き、ですね」

    学P「なっ………」

    四音「どうですか、応える気になりましたか?」

    学P「それは……」

    四音「安心してください。他のアイドルのプロデュースをやめろなんて言いませんから」

    学P「ですが……」

    四音「今すぐに交際しろとも言いませんよ。アイドルとプロデューサーという関係が終わっても、そばにいさせてもらえれば……」

    学P「…………」

  • 130二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 13:06:50

    四音「応えないなら、深夜の公園で女子高校生に声をかけた変質者として通報します」

    学P「そんな……!」

    四音「なんですか? 自分からナンパしておいて、いざ好意を向けられたら無視するのですか?」

    学P「別にナンパでは……」

    四音「プロデューサーによるアイドルのスカウトなんて、ナンパですよ。責任取ってください。トップアイドルにするだけじゃ、足りませんから。異性の人生を救った責任を、取ってください」

    学P「っ……ぜ……善処します……」

    四音「なんですかそれは……ちゃんと、ボクのことを、1人の女として見てもらいますから。でなければ、他の担当アイドルの前で何をするか分かりませんよ」

    学P「えぇ………」

    四音「人助けも、ほどほどにすることですね。1人に対してしか責任は取れないのですから、今後は好意を向けられた分だけ女性を傷つけることになりますよ」

    学P「………………」

    四音「分かったなら、みんなところに戻りましょうか。くれぐれも、他のアイドルに好かれないように気を付けてくださいね」

    学P「はい……」


    こうして、四音のトップアイドルとしての道が始まった。前途多難であるが、きっと彼女は、アイドルとしても女性としても、幸せを手に入れることになるであろう。


    おしまい

  • 131二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 13:27:47

    おつ

  • 132二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 13:41:30

    一気に読み切ったけど凄い満足感だった……
    すばらしいSSに感謝……

  • 133二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 14:08:48

    very good

  • 134二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 21:31:24

    良い終わり方だけど続きが読みたくなる

  • 135二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 21:55:44

    はあっ……よかった……
    そしてこれから始まるキャットファイトが楽しみだ

オススメ

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