【🎲/閲注】そこはかとないホラー

  • 1125/08/15(金) 15:40:57

    ワンピ世界の日常にホラーっぽいものがログインするだけの話
    時間軸はジンベエ加入後~エッグヘッド前くらいの謎時空かもしれない
    ゆっくりまったり進行

  • 2125/08/15(金) 15:42:03
  • 3125/08/15(金) 15:44:41

    前スレ最後埋め荒らしされたので最後のパートまとめ

    白い本9−A.ジンベエ

    焦点が水平線から戻ってきた時、ジンベエはハッとした。船のヘリに不透明な何かがいる。透明な影とでもいうか、辛うじて視認できる程度のもの。

    この異常事態にジンベエは油断などしない。が、ジンベエの見聞色をもってしても全く引っかからない、それほどにごくごく弱い、儚いものだ。

    敵意は感じない。恐ろしいとも思わない。そして状況的にこの本に関わるものだろう。

    「わしに何か用か?」

    問うと、透明な影はふるりと揺れてそのままヘリから落ちた。海に。えっ、と驚いて駆け寄り海面を見下ろすと、透明な影が海から生えていた。そのままクラゲのように揺れている。

    来い、と。言われている気がした。

    得策ではない。呼んでいるのは得体の知れないもの。しかも自分以外の仲間は皆意識がない。罠かもしれないし第三者からの攻撃に晒されないとも限らない。

    それでも。今行かなければならない気がした。

    数秒の巡差の後、ジンベエはどぼんと海に飛び込んだ。


    *


    海に潜ってすぐ、ジンベエは違和感に気づいた。海上から見ていただけだが、この海の中はこんな風だっただろうか?温度、流れ、密度、海底までの距離、光の差し方、全てが何か違う。直感的に海面を見上…
    te.legra.ph
  • 4125/08/15(金) 16:19:49

    今回安価は【一味以外】【200ランキングのキャラ限定】縛り

    ダイスも歓迎ですが一味に当たったら再安価

    お試し一人目 dice1d200=83 (83)

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 16:51:56

    博ジローだ楽しみ

  • 6125/08/15(金) 17:56:57

    1.博ジロー

    二回の部屋から見渡せば、行き交う人々の様子がよく見える。天秤棒を担いで声を張る売り物屋、走り回って怒られている子ども達、軒下で将棋を指す爺たちと見物人。
    一際高い声に視線を向ければ、町娘たちがきゃらきゃらと笑いながら紅屋の店先で騒いでいた。女達の表情も随分明るくなった。問題は山積みだが明日に希望があるというのはこれほど民の顔を変えるものか。
    そう思って、ふとその思考に一点の濁りができた。博ジローの記憶にシミのように残る記憶だ。

    もう何年も前のこと。居眠り狂死郎として正体を偽っていた時は遊郭ももっていたが、当然遊女達の管理も仕事の一つ。なにせ花街はトラブルが多い。そして情報の宝庫でもある。それも博ジローとしての狙いだったから、当然遊女たちともそれなりに交流はしていた。誰かの噂話や愚痴にどんな情報が隠れているかわからない。
    ある日一人の遊女が浮かない顔をしてため息を吐いているのを見かけた。これ自体はよくあることで、仕事柄、あるいは身の上、華やかなお座敷の裏ではありふれた光景。血が流れるような騒動もザラであることを考えると大した問題ではなかった。
    とはいえ遊女は客を喜ばせるのが仕事。その遊女からはそれに触りそうな深刻さを嗅ぎとれた。
    遊女の深刻な悩みと言えば客に入れあげたかその逆か、あるいは妊娠か。いずれも後で大変なことになる騒動の種だ。
    だから番頭にそれとなく話を振ったところ、返ってきた答えに狂死郎(博ジロー)は首を傾げた。
    「ああ、親分さんも見ちやいましたか。なんだかねえ、最近鏡を見ちゃあ溜息ついてるんですよ。あれだけの器量なのに、なんだか急に自信を無くしちまったみたいでねえ…」
    「面倒な客でもいたか?」
    「いいえ、最近はとんと。この前の客だって紅をくれたとかで、えらく喜んでたんですよ。ただねえ…」
    「?」
    「最近ね、そういう話をちらほら聞くんですよ。遊女が妙に落ち込んじまうらしくてね。どうも妙な客がいるんじゃねえかって話になってるんです」
    思ったよりも広範囲の話だろうか。客となると遊女と違いどこにでも行ける。行く先々で遊女にいらぬことを吹聴しているとなると遊郭間のバランスを崩すことが目的かもしれない。
    少し気をつけておいた方が良さそうだ。その時はそう思っただけだった。

  • 7二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 19:28:55

    新作だー!!良かった前スレ最後のほう荒らされてたから心配だったんだよな…

  • 8125/08/15(金) 19:46:37

    それからしばらくはいつもどおりの騒がしい日々だったが、報せは唐突に入った。
    「身投げだと?」
    「へえ。向こうの店の遊女なんですが…」
    狂死郎のもっているのとは別の遊郭の遊女が橋の上から身投げしたという。正直なところ、それだけなら珍しくはないのだが。
    「身投げの理由はわかってるのか?」
    「いやァ…ただその遊女、うちのと同じで最近鏡を見てはため息ばっかり吐いてたっていうんですよ」
    「それも珍しくはねェが…」
    身投げするほど悩んでいたならそりゃ鏡を見てため息も吐くだろう。おかしくはない、何も。おかしくないはずだった。
    「何か気になることはあったか?」
    「一つ。どうやら身投げした女、客に紅をもらったらしいんです」
    「紅か…どこのだ?」
    「それがその紅、どこの店でも扱ってないようなんですよ。綺麗で赤い、細工の入った入れ物なんで目立つと思ったんですが」
    「職人から直接買いつけてるか…」
    「ただね、親分さん。細工の入った赤い入れ物の紅ってェと、うちのが客からもらったのと同じらしいんですよ。妙な事企んだ奴が変なモンバラまいてなきゃいいんですがね」
    その話にピンときた狂死郎の行動は早かった。その夜遊女が客を取っている間に彼女の部屋に侵入し、件の紅と思しきものを盗んで調べ、最後はこっそり捨てた。紅がないことで遊女は少々騒いだが、それ以降徐々に状況が改善していった…。

    あの騒動は花街の騒動に紛れるようにしてひっそりと終わった。紅をバラまいていた下手人らしき怪しい客も探したが手がかりはまったくなくそれっきり。調べられていることを察して身を潜めたのかもしれない。
    早期に対処できてよかった。ただし目的はわからないし、当の下手人は今もお天道様の下を平然と歩いている。
    「(なんだったんだろうなァ、あれは)」
    他にもいくらでも心残りな事件はあったのに、なぜかあの一件は執拗に頭の片隅に残り続けている。

  • 9125/08/15(金) 19:50:45

    >>7

    あざます

    まあそういうこともあるよねってことで


    次2人目

    【一味以外】【200ランキングのキャラ限定】

    >>14

  • 10二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 19:57:31

    dice1d200=42 (42)

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:05:46

    ベッジ

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:22:00

    dice1d200=122 (122)

  • 13二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:39:10

    dice1d200=151 (151)

  • 14二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 21:43:25

    dice1d200=95 (95)

  • 15二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 03:46:01

    ペロ兄だ

  • 16二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 06:52:49

    何が起こるんだろ?

  • 17125/08/16(土) 15:32:06

    2.ペロスペロー

    万国では各大臣たちがよく子どもたち相手に腕を振るう。定期的に料理教室を開いたり、お菓子を大量に作って食べさせたり。
    単に子ども達を喜ばせるだけではない、後進を育てる意味もある。小さいうちからお菓子作りに興味を持たせ、早ければ子どものうちから適性のある島へ送る。万国の子ども達は、ゆくゆくは菓子職人になる者も多い。教育の開始は、早ければ早い方がよかった。
    もちろん、それが全てではない。彼らも海賊であると同時に菓子職人、手製の菓子で子ども達を喜ばせるのが楽しいのだ。
    だから料理教室に熱心に通う子どもなど、兄弟でなくともなかなか可愛いものなのだが…。

    「ペロスペロー様、見て!ウサギのアメ!」
    「おお♪上手くなったじゃないか!」
    その日はキャンディ島ペロリンタウンでの飴菓子作り教室の日で、キャンディ大臣であるペロスペローは仕事の合間に顔を出していた。多忙な彼が来たとあって子ども達ばかりか講師達も、助言を求めて寄ってくる。総監督は恐縮しきりだ。
    「ご多忙のところ申し訳ありません、ペロスペロー様」
    「なあに気にするな。いい息抜きだ、ペロリン♪」
    これは割と本心だ。何しろペロスペローは本当に忙しい。大臣としてはもちろん、ビッグマム海賊団の幹部として、そして長男として…ママとか仕事とか兄弟とかママとか他勢力とかママとか海軍とかママとか。
    この前の食い患いは本当に酷かった…とペロスペローが遠い目をしていると、足元に小さな女の子が駆けてくる。兄妹ではないが、アナナと同じくらいだろうか。今日一番上手くできた、と力作を見せてくる姿は微笑ましい。
    「花の飴細工か…なかなか上手いぞ、ペロリン♪」
    褒めてやると嬉しそうに笑う。これペロスペロー様にあげるね!と言って、女の子は調理台に戻った。あー、癒される。
    「あの子はなかなか筋がいいですよ。センスもあります」
    「将来有望だな」
    早めにママを満足させるキャンディ職人になってほしいものだ。切実に。
    女の子が作ったアメはチューリップの形をしていた。花びらの先端をちょっと反らしていたりして、造形にこだわりを感じる。
    その花の飴を見て、ペロスペローはふとある事を思い出した。

  • 18125/08/16(土) 17:39:14

    ひどく熱心な少年がいた。器用で覚えもよく、万国の店に出せそうな飴細工を作り上げた。
    その飴細工は花の形をしていたのだが、その時期、同じように花の形をしたお菓子を作る少年が他の島にもいた。
    どうやら同一人物のようだった。、チョコレートや砂糖菓子、焼き菓子教室。ペロスペローは兄妹達との雑談でそれを知った。
    それだけなら有能な子どもがいるというだけで済むところ、話はまだ続く。
    少年が作るのは何も花の形のお菓子だが、何の花かはわからない。バラではなかった。ひまわりでも、ユリでもガーベラでもなかった。キキョウのような星を思わせるシルエット。でもキキョウにしては大きかった。桜ほど小さくもないが、ふんわりした儚さは似ている気がする。
    色は赤ほど強くなく、薄紫?ピンク?白?黄色だったかもしれない。
    うん?とペロスペローは首を傾げた。あれだけ印象に残っている少年のお菓子の記憶が、なぜこんなに曖昧なんだろう。
    それはペロスペローだけではなかった。少年を絶賛した兄弟の誰もが、そのお菓子の具体的な形や味を覚えていなかった。そればかりかその少年の顔すらも。いや、そもそも本当に少年だったか?女だったのでは?年は?背格好は?髪の色は?名前は?
    誰もが明確な答えを出せなかった。そこに至ってやっと、ペロスペロー達は慌てた。どこかの海賊のスパイじゃないのか、関係者に聞き取り調査を、悪魔の実の能力者かーーーと。

    散々騒いだというのに、結局謎の少年は見つからなかった。調べ始めてから一月もする頃には最早万国にはいないと諦めざるを得なかったし、警備体制に手を加えることになった。
    あれが狙っての侵入と撤退だったのなら見事なものだ。ナメやがって。
    バキッ、と歯を立てた飴の花びらが砕ける。
    「嫌な事を思い出しちまったぜ…ペロリン♪」
    可愛らしい飴の花は、数分ともたず粉々になった。

  • 19二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 17:54:57

    このレスは削除されています

  • 20125/08/16(土) 17:56:13

    次2人目

    【一味以外】【200ランキングのキャラ限定】

    >>25

  • 21125/08/16(土) 17:57:15

    >>20

    間違い3人目

  • 22二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 19:33:58

    dice1d200=1 (1)

  • 23二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 20:50:24

    >>22

    すごいの引いてる

    dice1d200=143 (143)

  • 24二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 21:10:53

    dice1d200=5 (5)

  • 25二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 21:16:18

    カリファ

  • 26二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 23:46:21

    エミュの上手さと話の面白さで引き込まれる
    カリファも楽しみ

  • 27二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 06:53:15

    >>26

    それな

  • 28125/08/17(日) 15:14:20

    3.カリファ

    雨の降る町に、泡に覆われた一角があった。
    「いやァ、見事なもんだな!」
    綺麗になった屋根を見ながら、掃除屋の男は感心してカリファを褒めた。曇天とはうってかわった笑顔が、仕事柄、偽りでない素の自分を正面切って褒められることはあまりない身としては少々面映い。
    「よし、次はこっちを頼むよ」
    「ええ」
    春の女王の町、セント・ポプラ。司法の塔で敗北し海軍に追われる身となったカリファ達は、ルッチの治療代のために働いていた。

    戦いのために得た悪魔の実の能力がこんな形で役立つなんて。
    綺麗になっていく屋根を見ながら、カリファはホッと息を吐く。考えてみれば当たり前の有効活用だが、実際に自分がやるとは。しかも任務に関係なく。
    線路を歩いて辿り着いたこの町で何をして稼ごうかとなった時、清掃業者に話をつけてくれたのはジャブラだ。上着のことといい、口は悪いが面倒見のいい男である。
    突然町を訪れた怪しい集団とはいえそもそも潜入を得意とする彼らにとって、一般人の警戒を解くのは容易い。特にカリファは突然のセクシーな美女の参入とあって歓迎されたくらいだ。一部女性の不況はかったがそれも仲間の治療費を稼ぎたいという動機が知られれば態度は一変、何かと気を配ってくれるようになった。…ちょっとお人好しすぎないか、この町の人たち。助かるけど。
    実際仕事を手伝わせてみれば高いところにも平気で登るわ悪魔の実の能力で町は綺麗になるわでカリファは即戦力。しかも洗剤要らず。これはいいと連日町のあちこちを泡まみれにしている。カリファとしても治療代は間に合ったものの、当面の逃亡費と生活費も必要なので否はなかった。
    「(…あら?)」
    その日二箇所目の清掃が終わろうという時、カリファは汚れが落ちていない箇所に気づいた。泥のシミのような、ちょっとした汚れ。
    「(見落としてたのかしら?これで…え?)」
    その汚れは、カリファの能力をもってしても落ちなかった。普通にブラシで擦っても消えない。まるで初めからここにある模様ですよというように。
    さらに不思議なことにその汚れは、カリファにしか見えていなかった。清掃業の人たちも、その場の管理者も、汚れの残ったその床を前にピカピカになったと喜んだ。釈然としないものを抱えながらも、もしかすると能力が安定していないが故の不具合かと考えて黙した。

    しかし、話はこれで終わらなかった。

  • 29125/08/17(日) 18:56:58

    「(まただわ)」
    荒れた室内の中に見つけた汚れに、カリファは僅かに眉を寄せた。
    あの日セント・ポプラで見かけた泥のシミのような汚れ。それから数ヶ月に一度あるかないかの頻度ではあるが、同じものを見つける事がある。
    カリファのような鍛えられた洞察力と記憶力がなければ気づかないだろうごくごく小さな痕跡。そしてこの数回で、幾つかわかった事とわからない事がある。
    わかったのはこの汚れはカリファの能力で発生した泡を通してのみ見えるということ。カリファ以外には見えないということ。何を使っても消えないということ。しかし何もしなくても数日後には消えているということ。ただそこにあるだけで、害らしい害は何もないということ。
    わからないのは発生条件。今までこの汚れは床、地面、木、犬、そして今、本にもついているのを見つけた。
    害がないのなら気にしなくてもいいのだが、そう確定したわけでもないし何より自分にだけ見えるというのが気持ち悪い。性別、年齢、能力の有無、見聞色の有無も関係ないということだ。霊感?あったら他に幽霊の一体も見えているはず。しかしカリファに見えるのは、この誰にも見えない汚れだけ。
    生き物以外にもついているなら死の予兆などでもあるまい。とはいえやはり、不気味であるには違いなかった。
    「(なんなのかしら、本当に…)」
    「カリファ、どうした?」
    床に落ちた本をじっと見ているカリファに気づいたブルーノが「戻るぞ」と呼んでいる。ほんの1秒をおいて、カリファは身を翻して空間に丸く開いたドアをくぐった。くぐる時に、チラッとブルーノを横目に見ながら。
    ブルーノの体にあの汚れはない。ルッチにも、カクにも、ジャブラにもクマドリにもフクロウにも。
    …なければいいと思う。これからも。

    最後にブルーノが自らの能力で開けたドアをくぐり、閉じる。
    誰もいなくなった室内は、それきり物音ひとつなくなった。

    (見えない汚れ)

  • 30125/08/17(日) 20:49:16

    次4人目

    【一味以外】【200ランキングのキャラ限定】

    >>35

  • 31二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 21:27:26

    dice1d200=187 (187)

  • 32二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 21:33:16

    dice1d200=124 (124)

  • 33二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 21:40:06

    ベラミー

  • 34二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 21:48:22

    dice1d200=8 (8)

  • 35二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 21:50:45

    ノーランド

  • 36二次元好きの匿名さん25/08/18(㜈) 06:49:40

    保守

  • 37125/08/18(㜈) 14:26:19

    4.ノーランド

    航海中に何が一番困るというと、食料問題だ。荒れ狂う気候や海獣に襲われるのももちろん困るが、そこは乗り越えるなり仕留めるなり、割と力技のゴリ押しでなんとか対処できる。だが水不足や食料不足。こればかりはどうにもならない。一人ではなく船員全員の胃袋を満たす食料は、広い海で必ず確保できるものではない。だから島に寄れば食料確保に努めるし、そのための財は惜しまない。しかしそれでもダメな時もある。そういう時は。
    ザバッ ドスドス…ドンッ ウォォォォォ――!!?
    「て、提督!これは!?」
    「これだけあれば次の島までもつだろう…ひとまず焼くか、メシにしよう」
    「提督〜〜〜〜!!」
    素潜り漁。これに限る。担いだ大太刀で仕留めた海獣を引き上げる部下たちの騒ぎを背に、ノーランドは息を吐いた。
    「さすがにこの大きさは骨が折れるな…鈍ったもんだ」
    「あれを単身で仕留めて鈍ったって言ったら世界中の猛者達にキレられますよ。はい、タオル」
    「お、すまんな」
    食糧不足でしおれていた部下たちはやたら元気になって鉄板やら食器やらを用意している。既に切り出しが始まっていて、大きく切られた肉の塊が更に小さく切られて串に刺され、そのまま鉄板の上に並べられていく。あ、いい匂い。
    「肉の焼ける匂いはいつ嗅いでもたまらないな」
    「確かに」
    海獣の肉は陸の動物肉とはまた違うが、食いでは甲乙つけがたい。しばらくして焼き上がり第一弾を盛った皿を部下の一人が運んできた。
    「提督、どうぞ!」
    「おう、ありがとな。お前らも食えよ」
    「はい!」
    一番立場の上の者が口をつけないと部下は食べにくい。遠慮なく串に刺さった1つ目の塊に齧りつく。ハーブもないから塩胡椒だけの肉だが、味が濃くて肉汁が溢れて匂いまで美味い。
    鉄板に部下たちが群がって雄叫びを上げている。しばらくぶりに聞く明るい声だった。

  • 38125/08/18(㜈) 15:37:11

    そういったことは度々あって、その都度ノーランドは海に飛び込んだ。それでなんとかなった辺り自分は運がいいのだろうと思う。この海で食料問題で死ぬ者は決して少なくない。
    そうして仕留めた獲物がかれこれ10を越えた頃だっただろうか。その日もなかなかの大物を仕留めたのだが、それを解体していた部下達が「あれ?」と声をあげた。
    「胃袋に未消化の魚がいるな」
    「あ、タコだ…うわ、スミ吐きやがった!」
    「生きてるのが何匹かいるなあ」
    捕食したてだったらしい。消化されていない魚を見ては「これ食えるかなあ」などとやっている。
    「なあこれでか―――あれ?見た目の割になんか軽いな」
    一等大きな魚を両手で持ち上げた部下が、その軽さに首を傾げる。珍しい魚ではないがそれだけに重さはある程度あるはずだと誰にでもわかる種類で、受け取った別の部下が「確かに軽いな」と検分した。
    「傷もないし、色も変なところはないんだが…」
    「うわあ、開いたら中になんかいたとかいうオチやめてくださいよ?」
    「おいおれ今からこれ捌くんだが」
    ぶちぶち文句を言いながら調理係が刃物を持ち出す。なんだなんだと集まる部下に紛れてノーランドも野次馬に参加した。腹からすっと刃を入れて、開いて。
    「―――え?」
    「あれ…」
    なにもない。開いた腹の中には何もなかった。胃の中に何もない、ではなく、腹の皮一枚下がまるまる空洞なのだ。まさかと上から下まで開いてみたが、内臓も、肉も、何もない。最初から何もなかったのではなく、ちゃんとそれらがあった痕跡はある。そしてその状態で、形だけは保っていた。普通に考えたら凹むはずなのに。なにせ骨もないのだから。
    「な、なんだこれ…」
    「どこにも傷なんてなかったぞ、どうやって…」
    「なんか…中だけまるごと食われたって感じっすね」
    ガワだけ残してからっぽ。そんなこと、あり得るのか?
    ノーランドはこの時、グランドラインのでたらめな気候や海流とはまた別の恐ろしさと言い知れぬ不気味さを感じた。

    (からっぽの魚)

  • 39二次元好きの匿名さん25/08/18(㜈) 16:04:11

    ん? 時空を超えてないか?

  • 40二次元好きの匿名さん25/08/18(㜈) 17:42:51

    それぞれの時間軸で書いてるのでは?

  • 41125/08/18(㜈) 19:48:41

    >>40

    そのつもり

    なんかミスってたら教えて


    次5人目

    【一味以外】【200ランキングのキャラ限定】

    >>46

  • 42二次元好きの匿名さん25/08/18(㜈) 20:43:35

    dice1d200=106 (106)

  • 43二次元好きの匿名さん25/08/18(㜈) 21:25:21

    ペローナ

  • 44二次元好きの匿名さん25/08/18(㜈) 21:25:29

    dice1d200=90 (90)

  • 45二次元好きの匿名さん25/08/18(㜈) 21:26:49

    ロックスター

  • 46二次元好きの匿名さん25/08/18(㜈) 21:26:55

    ベッジ

  • 47二次元好きの匿名さん25/08/19(灍) 03:33:11

    ほしゅ

  • 48二次元好きの匿名さん25/08/19(灍) 12:34:21

    ファーザー!

  • 49125/08/19(灍) 21:26:32

    5.カポネ・ベッジ

    汚いものや醜いものはうんざりするほど見てきた。元より西の海の5代ファミリーの一角、血腥いことにかけては海賊顔負けだ。活動拠点こそ海に移したが趣味の悪さは衰え知らず。海に出てからも幾つかの組織を崩壊させてきたカポネ・ベッジは人生最大の組織としてビッグマム海賊団に狙いをつけたのだが…。

    「頭目、お疲れ様です!」
    「「お疲れ様です!!」」
    「ああ。一先ずこの島での仕事は終わりだ。明日には万国に戻る、支度をしたておけ」
    「は」
    「シフォンはどこに行った?」
    「おかみさんは街へ買い物に出られてます」
    「大事な時期だろうが…」ハァ
    妻のシフォンは妊娠中である。が、なかなか活動的な女でこうして国の外に出た時などは街へ出回ってしまう。元ふんわり大臣だけあって特にスイーツに目がなく、その島その街の菓子店巡りが好きなようだ。
    大人しくしていてほしい気持ちはあるが引きこもっている方が体にも赤ちゃんにもよくないと愛する妻に言われてはベッジも強く出れない。本当に危ない地域であればベッジが何も言わずとも外に出たりはしないし安全な国でも護衛はちゃんとつけるので、危機管理はしっかりしている。その辺りはさすがビッグマムの娘だ。
    「頭目、どちらへ?」
    「迎えに行く。誰かついてこい」
    そう言って向かうのは自分の部屋。着替えるためだ。愛する妻を迎えに行くのに仕事で匂いのついたスーツなどふさわしくない。部下もそれを承知で、ベッジの後についていった。

    *

    ベッジ達が今回訪れていたのは比較的治安のいい国で、街は賑わっている。それでいてベッジ達のような明らかに堅気ではない者たちが歩いていてもあまり気にもされないのだから、呑気なだけの国ではないようだ。
    支度している間に護衛についている部下から受けた連絡でシフォンの居場所はわかっている。この島で会ったばかりの女性とカフェで話が盛り上がっているらしい。我が妻ながらコミュ力が高い。
    街の中心から少し外れたそのオープンカフェに部下がいた。シフォンと女性の会話を邪魔しないよう少し離れて警護しているのだ。
    シフォンはテラス席にいた。楽しげに話す姿を見て悪いなと思いつつ、妻の元へ向かったのだが…。

  • 50二次元好きの匿名さん25/08/20(ć°´) 04:54:54

    ベッジはほんといいキャラになったよな

  • 51二次元好きの匿名さん25/08/20(ć°´) 06:27:39

    >>50

    確かに原作で最初はヤバいマフィアだったが、2年後は家族を大切にするファザーになってたし

  • 52二次元好きの匿名さん25/08/20(ć°´) 16:07:19

    結婚が転機かなやっぱり
    だとしたらマムやっぱりすごいな

  • 53二次元好きの匿名さん25/08/21(㜍) 00:16:55

    >>52

    シフォンも凄いと思うから、やはり縁だろうな縁

  • 54二次元好きの匿名さん25/08/21(㜍) 08:20:44

    このレスは削除されています

  • 55125/08/21(㜍) 08:31:36

    妻の話し相手は妻と同じ妊婦だったようだ。同じように大きな腹を抱えて大事そうに撫でている。
    「シフォン」
    「あら、アナタ!」
    シフォンはパッと振り返ってベッジを見上げた。相手の妊婦も顔を上げるがベッジを見ても特に怖気付いたりせずにこにこしている。
    腹が大きく重いためにしゃがむことが難しく、落とし物を拾うのに難儀していたところを助けたのがきっかけらしい。お礼がてらこの街で一番評判のいいケーキがあるというこのカフェに案内してくれたようだ。妊婦同士ということもあって話がはずみ、そのまま一緒にお茶していたと。連絡先を交換したりはできないが、一時の友情を育んだ女2人はお互い元気な子どもを産もうと手を握りあい、別れた。
    「それでね、これをもらったのよ。妊婦のお守りなんですって」
    手のひらサイズのそれはあの妊婦が落としたのも同じ物らしい。模様の入った丸い陶器で、中に種が入っているんだとか。
    「時間が経つと模様の色が変わっていって、ちょうど赤ちゃんが産まれるくらいの時期に花が咲くらしいわ」
    シフォンが妊娠してからというものベッジも色々と調べたし、その中には安産祈願のお守りや慣習もある。出産に向けて花を育てたり縫い物をしたりというものもよく見た。その一種で、かつ女性向けの容器を合わせたお守りだろう。妻への心遣いに、ベッジは名前も知らない妊婦に感謝した。

    ただ、このお守りはしばらく後に割れてしまった。何か悪いことがあったわけではなく、つわりが酷くなった時期によろけたシフォンがテーブルにぶつかってその揺れで床に落ちて割れた、それだけだ。シフォンは少々落ち込んだが、ベッジ達に慰められて元気をとりもどしたので問題ない。
    なにせその後の経過は順調で、シフォンはペッツを産んでくれた。母子ともに健康であるというベッジにとって最高の出産だった。シフォンには感謝してもしきれない。すくすく成長していく我が子を妻やかわいい部下たちと見守るのは至上の日々だ。

    だから、そう。あのお守りが割れたのも、結果的にはよかったのだろう。

  • 56125/08/21(㜍) 08:33:38

    シフォンが怪我をしないよう割れた陶器を片付けた部下がベッジだけに報告した、あの陶器の中身。
    陶器の中に入っているのは何かの花の種だったはず。だが実際に中に入っていたのはひからびた動物の…憚りなく言えば、胎児のミイラだった。
    実際その後調べさせたところ、あの街には陶器と種を用いたお守りなんてものはなかった。あの女の行方も探らせたが名前もわからないので調べるにも限界があった。

    ただ、調べているうちに奇妙なことがわかった。あの街ではここ数年の間に、他の年と比べて妊娠出産のトラブル件数が増加していたのだ。偶然といえる範囲かもしれない。そのトラブルの全てにあのお守り、あの女が関わっている証拠もない。それを調べる術もない。ただ…。
    「間違ってもシフォンには言うなよ」
    「もちろんです」
    いつか彼女にまた会いたいと言っていたシフォンには悪いが、あの街にも二度と連れてはいけない。
    ジジ…と小さな音とともに、一枚の報告書が燭台の火で燃えていく。そこに記された全てを、ベッジは胸のうちにしまい込んだ。


    (出産のお守り)

  • 57125/08/21(㜍) 08:35:49

    次6人目

    【一味以外】【200ランキングのキャラ限定】

    >>61

  • 58二次元好きの匿名さん25/08/21(㜍) 09:21:56

    dice1d200=194 (194)

  • 59二次元好きの匿名さん25/08/21(㜍) 11:36:17

    ロミ

  • 60二次元好きの匿名さん25/08/21(㜍) 11:37:05

    dice1d200=43 (43)

  • 61二次元好きの匿名さん25/08/21(㜍) 11:38:12

    ドフラミンゴ

  • 62二次元好きの匿名さん25/08/21(㜍) 11:38:20

    ガイモン

  • 63二次元好きの匿名さん25/08/21(㜍) 21:09:00

    保守

  • 64125/08/22(金) 05:29:51

    6.ドフラミンゴ

    ドレスローザの王宮にも、宝物庫がある。元々最低限しか機能していなかったその場所はドフラミンゴが王の座についたことで中身が大きく変わった。量的にも質的にも。金銀の装飾品や什器、宝石、骨董品、絵画、楽器…部屋を拡張してなお余りそうな財宝の数々は、当然だが正規のルートで手に入れたものばかりではない。裏の仕事で流通している物や、金の代わりに取り立てた物、そこらの組織から強奪した物も多い。
    そうした荷物の運び込みは、基本的に幹部指示の元で構成員がやる。当然だが万が一欲目を出して盗もうなどとしたら…誰の記憶からも消え、地下の労働者が1人増えることになる。

    さてその日、ドフラミンゴは珍しく自ら宝物庫に来ていた。次の取引を有利にするために、先方にちょっとした贈り物を見繕いに。滅多に直接会わない組織のトップに震え上がった見張りを一瞥もせず重い扉を開かせて中に踏み入る。もちろん一人で。
    「フッフッフッ…さて、あれはどこにしまったか…」
    絵画や美術品の好事家が相手だと品物一つで破格の取引を成立させることができる事が多々ある。個人的にはさほど興味のない絵画や美術品を大事に保管しているのはこのためだ。今回の取引相手は正にそういった物を好む。
    折良くその手の輩が好みそうな絵画があったことを思い出し、選別のために宝物庫まできたわけだ。定期的に掃除や手入れもしているが状態も確認したい。
    金の像、大ぶりの宝石が嵌め込まれた錫杖、なんだかの曰くつきの冠、箱いっぱいにぎっしり並べられた宝飾品、没した国の財宝が詰まった宝箱、歴史的価値のある銀細工…。
    所狭しと置かれている財宝の間を抜けて、目的のものは壁際にあった。一枚一枚額縁に収まり布もかけられている。
    「ああ、そういえばこれもあったな…ちょうどいい、こいつにするか」
    何枚かの絵を確認してこれにするかと決めた一枚。値をつけたら億に届くかどうかというところ、十分だろう。それを引き抜いて戻ろうと身を翻した時、ふっと風とも言えない空気の流れを感じた。
    「なんだ…?」
    宝物庫は密室なので、室内で風が発生するはずがない。気のせいかと思い過ごすには、ふわりと鼻を掠めた湿度の高い匂いは濃すぎた。見聞色には何もひっかからない。しかし、今の匂いは…。

  • 65二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 12:04:21

    このレスは削除されています

  • 66二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 20:16:07

    そういえばドレスローザではお宝ゲットとかなかったな
    ナミがいたら言及されたかもしれないけど

  • 67二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 01:26:50

    ドフラミンゴ楽しみ

  • 68二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 01:46:54

    このレスは削除されています

  • 69二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 01:48:03

    このレスは削除されています

  • 70125/08/23(土) 01:49:19

    匂いの元らしき物はすぐに見つかった。他に比べて妙に薄汚れた布をかけられた絵。躊躇うことなく布を剥いだドフラミンゴは、絵を認識した途端「うげ」と顔を歪めた。
    「なんだ、こいつは」
    抽象画、だろうか。胸の上で手を組んで寝転んだ…いわゆる死者の姿勢をした人骨に、心臓を初めとした臓器が幾つか収まっている絵。胸骨の中に鎮座する心臓の赤が不気味だ。ドフラミンゴをして一瞬ぎょっとするほどに。特に本物っぽい質感のある骨に明らかに作り物の臓器を合わせているのが気持ち悪い。
    「趣味が悪ィな」
    画風的にも有名な画家のものとは思えない。どこから紛れ込んだのだろう。最低限、贋作や質の悪いものは弾いているはずなのだが。
    「いや、待てよ…。…。…よし」
    破棄しようと思ったが、それならばと絵画に布をかけ直してを引き抜く。次の取引相手に先程の絵と一緒にこれをくれてやろう。”そっちの”趣味も悪いと噂のある奴だ、ちょうどいい。ドフラミンゴが2枚の絵を持って、宝物庫を出た。

    後日、取引は大成功だった。大成功だった割にドフラミンゴはどこか釈然としないという顔をしてウイスキーの入ったグラスを揺らしている。トレーボルやディアマンテにも不思議がられるほどには。
    理由はあの気味の悪い絵にある。絵自体は目論見通り取引相手に押し付けることに成功した。ただ相手の喜びようが尋常ではなかったのだ。本命の絵そっちのけであの不気味な絵を掲げて興奮しきり。あの絵一枚で、取引はほぼこちらの要求通りになった。
    あの絵にそれほどの価値があったとは思えない。つまりあの取引相手の趣味だろう。だから絵そのものの価値についてはそれで解決しているのだが、問題は。
    「本当に、どこから紛れ込みやがった」チッ
    あの絵自体の入手経路。調べても結局わからなかった、そこが気に入らない。何せ宝物庫の品数自体は変わっていないのだ。つまりあの絵が紛れ込んだ代わりに別の絵が無くなっていることになる。スパイか、盗賊か、あるいは…。
    「チッ」
    イライラしながら、ドフラミンゴはウイスキーを煽った。

    (生臭い絵)

  • 71125/08/23(土) 08:39:25

    次7人目

    【一味以外】【200ランキングのキャラ限定】

    >>75

  • 72二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 09:31:18

    トムさん

  • 73二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 10:10:39

    マゼラン

  • 74二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 10:16:06

    ウルージさん

  • 75二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 10:33:10

    ミホーク

  • 76二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:48:49

    ミホークとホラーは親和性高い

  • 77二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 02:50:58

    保守

  • 78二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 12:21:38

    このレスは削除されています

  • 79125/08/24(日) 21:57:17

    7.ミホーク(誤字修正)

    育ちが悪かったり腐ってしまったり野鳥に食われてしまったりしたものを幾つか間引く。始めた頃よりだいふ少なくなってきたが油断はできない。逆になかなか良いものも採れるようにもなった。
    畑仕事も存外面白い。世界最強の剣豪はキャベツ畑の真ん中で満足気に息を吐く。
    「ギャーーーーッ!!でっかい虫!!!」
    少し離れたところでペローナが悲鳴をあげる。そこにヒヒたちがフォローに向かうのも見慣れてきた。

    いつか己の首を取ると豪語した生意気な弟子が出ていって少し経った頃。その日も畑仕事に勤しんでいたミホーク達が昼食におにぎりを頬張っていたところ、一匹のヒヒがキャベツと卵を持ってきた。
    「落ちていた?…畑に?」
    「なんだ、どっかの木の上の巣から落ちたとかじゃねェのか」
    しおれたキャベツを間引いていたところ、ちょうどその横に落ちていたのだとか。ただ畝の間にぽつんと一つ。
    この辺りにも野鳥はいるが、巣も作らずそこらに卵を産み落とすというのは見たことがない。そもそも鳥の習性としてあり得るのか、そんなことが。
    卵はつるりとした楕円形の鶏卵にも似た見た目をしている。鶏卵より少し厚いだろうか?中には確かに何か半液状のものが入っている。
    「何の鳥だ?」
    「知らん。おれは鳥には詳しくない」
    すげなく返されたペローナはふぅんと首を傾げ、卵をまじまじと見る。
    「ま、孵ればわかるか!」
    「そうか」
    1人納得したペローナの手に、ミホークが卵を乗せる。ん?
    「お前が世話をしろ。おれは畑で忙しい」
    「はァ!?」
    畑仕事は私もしてるだろうが!!と高い声で吠えるのを後ろに、さて続きだ…とミホークは素知らぬ顔で畑に戻った。

  • 80二次元好きの匿名さん25/08/25(㜈) 06:12:55

    ペローナのツッコミも読めておトクだな

  • 81125/08/25(㜈) 14:30:14

    卵を拾った翌朝。なんだかんだ籠に小さなクッションやら何やら詰め込んで卵の世話を始めたペローナは、頼んでもいないのに卵の状態を報告してきた。やれちゃんとクッションに収まらないだとか、ちょっと動いただとか、朝になったらちょっと大きくなっただとか。磨いて温めて話しかけたというのだからマメなものだ。というか卵は大きくはならないだろう。欲目がすぎる。寝不足気味なのかしきりに欠伸を繰り返すペローナに、ミホークは呆れたものだったが…。

    「どうした」
    4日後の朝、ペローナはぐったりしていた。目の下に隈までできているし気のせいかゴーストもふらふらしている。若干ふらつきながらもずかずかと一直線にミホークの前まで来ると、両手を突き出して何かを押し付けようとしてきた。
    「なんだ。…卵?」
    ペローナの片手では足りないだろう、ダチョウのそれくらいの大きさの卵。ミホークは最初、それがあの畑で見つかった卵だとわからなかった。
    新聞を読んでいたため反射的に受け取ることはなかったが、ペローナはぐいぐい卵を押し付けてきてそれでもミホークが受け取らないものだから終いにはゴン!と眼の前のテーブルに置かれた。その勢いは割れるぞ。
    「鳥じゃねェ」
    「む?」
    「鳥じゃねェぞ、これ」
    それだけ言うと「私は寝る!」と宣言して部屋を出ていった。本当に何なんだ。
    「これがあの卵…?鳥ではない、とは」
    ゴトッ
    「?…!」
    4日前には鶏卵程度の大きさだった卵がまさか本当に大きくなったのかと見ている前で、当の卵が動いた。中にいる何かが動いて揺れたような動き。ヒナか?
    ゴトゴトッ
    「…」
    ゴトゴトガタガタッ
    どう見てもヒナの動きではない。中で小人が暴れているかのような揺れ方だ。孵化の瞬間を見たことはあるが、決してこんな風ではなかった。これが一晩中側にあったからあの隈か。

  • 82二次元好きの匿名さん25/08/25(㜈) 22:23:31

    ナニカの卵成長速度すごいな

  • 83125/08/26(灍) 04:55:56

    ふと思いついて、ガタガタうるさく揺れる卵を掴み上げ陽に透かしてみた。手の中の卵はまだ元気に動いているがミホークの握力の前にはどうということもない。
    ちょうど曇天が散り、太陽光が差し込む。それに卵を透かすと、中に何か動くものが見えた。何だ?内側から殻にバチンと叩きつけられた、小さなヒトデのような…。
    「―――手?」
    バチン、バチンと殻を叩く、手。一度そう見えてしまうと手以外の何にも見えない。本当に小人族かなにかが中にいるのか?いや、あまり良くないものの気がする。ミホークが目を細めた途端、その気配を察したかのように卵が、いや中の生き物が一層激しく暴れ出す。
    「む」
    勢いあまり、つるっと卵がミホークの手を逃れた。石床の上に落ちて割れ――。
    ゴトッ ゴトゴトゴトッ
    割れない。割れないが、少し見ているとピシリと殻にヒビが入った。
    ピシピシピキビキッ
    うまれる。
    殻に入った割れ目が盛り上がって中身が出てこようとすると同時に、ミホークは卓上のナイフをとった。ひゅん、と銀色の線が走る。
    バキッ …ビチャッ
    うまれる、その瞬間、ナイフでの斬撃が殻を叩き割った。2つに別れた殻が転がり石床に中身が飛び散る。
    殻同様真っ二つになったそれは、見ようによっては鳥の雛ともいえた。ただ、それにしては羽はないしなんというか、肉肉しい。皮膚のない剥き出しの肉が鳥の形をしようとしているような、そんな噛み合わなさがある。翼に当たるのだろう部分の先には殻越しに見た小さな手のようなものがある。ぴくぴくと小さく痙攣する肉の塊は一声細く鳴いて、そのまま力尽きた。その鳴き声にゾワリと鳥肌がたつ。
    「…なんだ、これは」
    もはや何の気配も感じない、ただの肉と化したそれを見下ろしてミホークは渋面する。微かな血生臭さ。
    任せられる相手もいない。仕方なく、ミホークは自らその残骸を片付けるべく道具をとりに向かった。

    後日。残骸を捨てた部分の土周辺3メートルの草が枯れているのを見て、ミホークはあの最後の鳴き声を思い出した。形状も臭いもだがあれが一番気味が悪かった。

    おぎゃあ

    枯れた土に背を向けた時一度だけその鳴き声が聞こえたが、ミホークは振り返らなかった。


    (うまれる)

  • 84二次元好きの匿名さん25/08/26(灍) 13:13:15

    何が産まれるところだった…?

  • 85二次元好きの匿名さん25/08/26(灍) 18:31:22

    恐怖のナニカ?

  • 86二次元好きの匿名さん25/08/26(灍) 20:43:33

    このレスは削除されています

  • 87125/08/26(灍) 20:44:43

    次8人目

    >>91

    【一味以外】【200ランキングのキャラ限定】

  • 88二次元好きの匿名さん25/08/26(灍) 21:04:44

    dice1d200=60 (60)

  • 89二次元好きの匿名さん25/08/26(灍) 21:06:45

    dice1d200=124 (124)

  • 90二次元好きの匿名さん25/08/26(灍) 21:33:20

    ハットリ

  • 91二次元好きの匿名さん25/08/26(灍) 21:34:54

    誰がでるかな?誰がでるかな?

    dice1d200=175 (175)

  • 929125/08/26(灍) 21:44:28

    すいません91なんですが……麦わら帽子の擬人化が当たるとは
    そもそも麦わら帽子の擬人化は一味にはいりそうで……そこはどうなりますか?
    麦わら帽子の擬人化のホラーは見てみたいんですが……麦わら帽子の擬人化は一味にはいるなら別の人をだします

  • 93二次元好きの匿名さん25/08/26(灍) 22:02:32

    ある意味神引きしてて草

  • 94125/08/26(灍) 22:07:46

    >>92

    画像確認して腹抱えて笑った

    一味の中にメリー号とかサニー号も含めてたので麦わら帽子の擬人化も一味に内包されますね

    今回は申し訳ないんだけど別のキャラ指定お願いします

  • 959125/08/26(灍) 22:54:27

    >>94

    91ですわかりました

    じゃあモモンガさんでお願いします

  • 96125/08/27(ć°´) 02:38:36

    >>95

    ありがとうございますではモモンガさんで!

  • 97二次元好きの匿名さん25/08/27(ć°´) 10:31:52

    保守

  • 98125/08/27(ć°´) 13:49:01

    8.モモンガ

    何年海兵をしていても、どれだけ強い海賊と戦っても、その都度死線を潜り抜けても、何度経験しても。いつまで経っても慣れない仕事というものがある。その筆頭がこれだ。その日モモンガは呑み込みきれない重苦しさを携えて現場へ向かった。
    「モモンガ中将、お疲れ様です」
    「ご苦労。様子はどうだ」
    「は。瓦礫の撤去と死傷者の確認はほぼ完了しました。傷病者は病院に収容し軍医の指導の元、支援を開始しております」
    「順調だな」
    そういいながら言葉とは裏腹に、モモンガは眉を顰めた。焦げて乾いた空気に混じる饐えた匂い。目の前に広がる焼けた跡地。
    海賊に襲われた街の、成れの果てだった。

    モモンガがこの島に関わることになったのは別件の任務から基地に戻る途中、たまたま電伝虫の念派圏内に引っかかった救援要請をキャッチしたからだ。助けを求める声に無理やり進路を変えて乗り込めば町は火の海。すぐに海賊の捕縛と住民の保護を開始したものの後手に回ったのは否めない。
    なんとか海賊は捕らえ奪われたものは取り返したが、破壊されたものは戻らない。命も。
    その嘆きが色濃く焼けた街に染み込んでいた。

    一部では早くも復興作業が始まっている。自ら作業に加わる逞しい住民もいた。
    一方でとてもそんな状態にない者もいる。肉体的にも精神的にも。病院に立ち寄ったモモンガはそれを目の当たりにして歯噛みした。
    「あっ!海兵さんだ!」
    「やあ中将さん、来てくれたんか」
    「ママー!海兵のおじちゃん来たー!」
    病院に着けば傷病者達はモモンガ達の来院を喜んだ。何もかもが奪われ壊され焼かれている最中、突然現れるやいなや暴れる海賊達を片っ端から蹴散らしていった彼らは正にヒーロー。モモンガがこの街を訪れるのは、そんの彼らへの慰問の意味もある。
    そしてモモンガには1人、どうしても様子を見ておきたい者がいた。

  • 99125/08/27(ć°´) 20:51:31

    「あの子はどうだ?」
    モモンガの問いに、看護師は窓の辺りを指差した。まだ幼いとも言える子どもがスケッチブックを膝に乗せてクレヨンを握っている。その目には光がない。それは、親を目の前で海賊に殺された子どもだった。

    あの日モモンガは宙を蹴り屋根を走り、急いで街の中まで駆けつけた。目の前で住民を斬りつけた海賊目掛けて飛び降り蹴り飛ばす。倒れた住民に声をかけながら襲いくる海賊に応戦した。モモンガの背後で崩れ落ちた住民の腕の中に庇われていたのが、あの子ども。あの事件以降何度かモモンガはこの島を訪れては様子を伺ったが、子どもの心に回復の兆しは見られない。しかし今回、これまでと違う点がある。
    「絵を描いているのか」
    「ええ。あの子の叔父さんが、あの子は絵を描くのが好きだったと言うので…試しに紙とクレヨンを持たせてみたんです」
    実際は描いているというよりクレヨンを紙に押し付けて動かしているだけだ。それでも、ただ人形のように動かなかった時に比べたら。
    職員が子どもに話しかけるのを眺めて、モモンガは病院を後にした。親を亡くしたこどもや子を亡くした親が嘆く姿には、いつまで経っても慣れない。しかし世界には、こんな光景がありふれている。


    それから2度目の訪問の時だった。
    「退院した?」
    あの子どもが退院したと聞いてモモンガは驚いた。確かに状態は良くなったと思っていた。前回来た時は絵を描けるようになっていたのだ。両親らしき大きな人間と本人だろう小さな人間がチューリップ畑でピクニックか何かしているような、実に子どもらしい絵だった。
    「叔父さんが引き取ることになったみたいです。あの子も"家に帰るんだ"って言って、ここしばらくで随分元気になったんです」
    「そうか…」
    正直なところ、ホッとした。よかった、と言っていいのか複雑なところだが。
    「(いや、ともかく…元気になったなら)」
    「それで、あの子がですね。助けてくれた海兵さんにこれを渡して欲しいと」
    「うん?おr…私にか?」
    ええ、と看護士が持ってきたのは、一枚の絵。

  • 100二次元好きの匿名さん25/08/28(㜍) 06:47:59

    今まで見た中で一番人が多く描かれた絵だった。子どもの絵だからほぼ棒人間だし手足のバランスもおかしなことになっているが、お祭りのような雰囲気を感じる。実際その解釈で正解らしい。
    「この街ではなにかに理由をつけて祭りをするんですよ。規模はそんなに大きくないんですけどね。豊穣祈願祭なら花を持って、収穫祭なら街の中心に農作物の山ができる。これはどっちも描いてますね」
    あの子にとって楽しかった記憶なのだろう。この絵のような光景をまたこの街で見れるようにという願いも込められているのかもしれない。
    「これは私がもらってもいいのか?」
    「あの子の希望ですので、ぜひ。強いおじちゃんに街を守ってほしいと言ってましたから」
    「そうか…」
    額縁に収めてあるのはあの子どもの叔父の心遣いらしい。稚い絵としっかりした額縁というバランスの悪さに思いやりを見た。そんな叔父とともに笑顔で退院したのなら、大丈夫だろう。
    「あの子が戻ってくる時には、この祭りで迎えたいですね」
    いつかこの街の傷が癒えて、この絵のような祭りをできるまでに復興したら。あの子どもは叔父に連れられてこの街に帰ってくるだろう。モモンガ自身もそれを願った。

    その絵はその後、モモンガの部屋に飾られることになる。稚い絵を眺めては海兵として気を引き締め、また時には暗い気持ちを慰めた。
    「モモンガ中将、お時間です」
    「ああ」
    そうして今日も、市民の願いを背負ってモモンガはコートを羽織る。あの絵のような平和を1つでも多く守るために。


    (家に帰る)

  • 101125/08/28(㜍) 08:22:04

    次9人目

    >>105

    【一味以外】【200ランキングのキャラ限定】

  • 102二次元好きの匿名さん25/08/28(㜍) 10:19:16

    dice1d200=5 (5)

  • 103二次元好きの匿名さん25/08/28(㜍) 10:23:10

    ロー二回も出てきてるのすごいな

    dice1d200=150 (150)

  • 104二次元好きの匿名さん25/08/28(㜍) 10:41:46

    dice1d200=40 (40)

  • 105二次元好きの匿名さん25/08/28(㜍) 10:42:51

    ボルサリーノ

  • 106二次元好きの匿名さん25/08/28(㜍) 19:02:48

    なんで今回一味禁止なんだ?

  • 107125/08/29(金) 04:24:50

    9.ボルサリーノ

    悪魔の実の能力は何であっても不可思議だ。その上でその能力に限定した不可思議な現象が付随する場合がある。ボルサリーノは自分の能力にもそれがあることを早い時期から知っていた。
    知っていたが、誰彼構わず漏らすことはない。悪魔の実は同時期に多発生はせず、ボルサリーノが能力者でいるうちは他にピカピカの実の能力者が存在することはない。つまり事例を集めることすらほぼ不可能。分析も考察も、材料は自分自身の事例のみ。そしてあまりに不可解かつ不確定、曖昧でおまけに実害もないので、必要性も薄い。そんなことより日々増加する対海賊の仕事の方がよほど大事だ。
    だから本当にたまに、忘れた頃に遭遇するそれについて、ボルサリーノは深く考えないことにしている。
    しかし今回ばかりは、そうも言っていられないかもしれない。
    「う〜〜ん…困ったねェ…」
    見ず知らずの町?で一人、ボルサリーノは割と本当に困って頭をかいた。

    それは決まって能力を使うことで稀に起こる現象だった。光となって文字通りの高速移動をしている時、ほんの一瞬の違和感。能力者になりたての頃は気づくことすらなかったその違和感は練度があがるにつれて誤魔化し様もなくなった。
    例えば、真っ昼間なのに何も見えないほど視界が暗くなる。海の上なのに湿った土の匂いを感じる。宙を飛んでいるのに葉を掠めたような感触があった。静まり返っているはずの場所で一瞬だけ耳を劈くような喧騒が聞こえた。そういう、その瞬間にはありえないものが五感に触れる。そんな現象だ。
    どれも一瞬のことだし錯覚と言われてしまえばそれまでだ。まるで高速移動の直線上に膜1枚分の別の場所を通過したような、刹那のこと。人が光速を体感することで発生する不具合やバグかと考えれば納得もできる。
    いや、納得していたのだ。今までは。

  • 108二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 08:37:59

    >>106

    別スレとしてリスタートしたからか? スレ主が違うとか?

  • 109125/08/29(金) 18:03:48

    いつもは薄い水の膜を突き抜けるような感覚がある。今日は水に突っ込んでそのまま、出られなかった。
    「おやァ…?」
    軍艦に向かっての高速移動中に視界がパッと切り替わった。いつもなら一秒にも満たないはずの時間で世界が変わる。あったはずの海と青空、軍艦は消え、今目の前に広がるのはしとしとと雨が降る森。はて。
    「大きな木だねェ〜」
    光化も解けて通常の実態になっている。軽やかに手近な枝に降りたボルサリーノは改めて辺りを見渡した。
    どこかの島の森かと思ったが視線を下に向けると土地が見当たらない。海から直に木が生えている、いわゆる海の森。晴れていたらさぞ綺麗だろう。
    悪魔の実の能力による攻撃ではなさそうだ。対象を強制的に移動させる能力は複数確認されているが、光と化したボルサリーノを捉えるのは至難の業。攻撃だとしたらその場所に触れるか通過するかしたら発動する罠式能力の可能性が高いが、状況がおかしかった。飛ばすだけ飛ばしてそれっきり、追加攻撃が何も無い。だからこれはたぶん、自分にだけたまにある、あの不思議な現象。
    次に見聞色で周辺を探る。と、少し離れたところに気配を感じた。人がいる。ここがどこかは知らないが、ともかく人がいるなら現在地の把握と軍への連絡はつけられるだろう。ボルサリーノは気配の方向に向かって飛んだ。

    海軍大将としてこれまで多くの島を見たし様々な文化にも触れた。世界トップの科学もその発明者も知っている。そんなボルサリーノをしても、その…村?は、異質だった。
    分類としてはツリーハウスというやつだろう。木の枝を支えとして小さな部屋が幾つも連なっていた。素材も廃材を組み合わせたような粗末な物が多く、あれこれツギハギしている。おそらく数部屋が一件分としてまとまって、数十件分それが散見された。まるで立て直し中の廃村だ。
    「こういう形態の村は初めて見るねェ〜。…ん?あれは…」
    屋根にあたる部分に貼り付けられた板のようなものをよくよく見て、ボルサリーノは目を見張った。見覚えがある、あれは。
    「確か、ベガパンクのところで…なんていったかな」
    光を、機械を動かすエネルギーに変えるための板。あれと同じく升目状の線が入っていた。当然だが一般に普及している技術ではない。ましてこんな、自給自足も怪しい村にあるはずがない。ボルサリーノはしばらくその村を観察していたが、ふと一件の家に人影が覗いた。

  • 110二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 03:18:15

    保守

  • 111二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 12:53:27

    このレスは削除されています

  • 112125/08/30(土) 12:55:05

    屋根の下から顔を出したのはどう見ても普通の男だった。種族的にも力量的にも。男は火を熾しているようで、しばらくすると薄く煙があがってくる。お湯を沸かしているようだ。
    煙が屋根の板を掠めた。その時、板全面に見慣れた軍艦が映った。電伝虫の映像のように。
    ーー今なら戻れる
    そう直感したボルサリーノは瞬時に光となって板目掛けて飛んだ。文字通りの光速一直線。
    男が気づいて顔を上げる頃には、板は元の通り光を待って沈黙するだけになった。


    *


    予想通りあの板に突っ込んだところ、元の世界?に戻れた。
    どうやら磨き上げられた軍艦の鉄板に突っ込んでそのまま反射せず出てこなかったらしい。ボルサリーノが光として飛び出した時には周囲の海兵達がひっくり返っていた。何があったんですかという部下達の声には、何のことだと知らぬ存ぜぬを通した。自分でもよくわからないし。

    この話を一度ベガパンクにしたところ、案の定ひどく興味を示した。非現実的なことでもベガパンクは否定しない。彼曰く"人間の知らないことなどいくらでもある"のだそうだ。
    「過去か、未来か、あるいは全く別の並行世界か…出入り口は常に開いているわけではあるまい。光の性質か?太陽光発電の技術のありそうな世界だったことが関係しているのか…」ワーッと白いポートに何かを書きつけては途切れることなく喋っている。それが半分ベガパンクの独り言なのはわかっているので、ボルサリーノは聞き流した。
    「(しかし…過去か、未来か、並行世界ねえ…)」
    どれにしたって、あまり楽しくはなさそうだ。だって崩壊した後の世界を生きているようにしか見えなかった。特に未来だとは思いたくない。
    「どうせ行くなら…次はもっと楽しい世界がいいねェ」
    まだ続いているベガパンクの話をBGMに、ボルサリーノは熱いコーヒーを啜った。そういえばあの男はお湯を沸かしていたけれど、あの世界にコーヒーはあるのかねェ、なんて考えながら。

    (世界の壁)

  • 113125/08/30(土) 15:48:52

    >>106

    >>108

    次が一味の予定だから

    あくまで予定


    次10人目

    >>118

    【一味以外】【200ランキングのキャラ限定】

  • 114二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 17:39:53

    次スレ?一味なのか

    dice1d200=86 (86)

  • 115二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 18:50:38

    dice1d200=15 (15)

  • 116二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 20:44:04

    dice1d200=141 (141)

  • 117二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 20:53:59

    dice1d200=184 (184)

  • 118二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 21:02:07

    アイスバーグさん

  • 119二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 04:59:53

    ホラーというより不思議な話

  • 120二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 07:43:08

    >>119

    それな

    世にも奇妙な物語みたいな

  • 121二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 16:40:17

    保守

  • 122二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 19:17:31

    アウターゾーンだっけ? あっち系でもあるな

  • 123125/08/31(日) 23:40:37

    ダメだネタが2つあって決められないこういう時はダイス


    1.夢の船設計大会

    2.沈んだ街

    dice1d2=2 (2)

  • 124二次元好きの匿名さん25/09/01(㜈) 04:10:10

    このレスは削除されています

  • 125125/09/01(㜈) 04:42:22

    造船業で名を知られるウォーターセブンは、反面地盤沈下により島が沈み続けるという問題がある。島民達は沈むだけその上にまた町を作るという作業を繰り返してきたが、さらにアクア・ラグナという高潮で毎年大打撃を受けている。この対策を、アイスバーグはずっと考えている。

    時折忙しい合間を縫って島の端に様子を見に来る。数カ月ぶりに訪れたその場所で大きく息を吐いた。
    「ンマー…予想より少し早いな」
    ウォーターセブンでは島の数カ所に水準点を置き、沈下状況を計測している。以前に水際に設置した測量用の鉄柱は既に数十センチが水中だ。
    「(何か対策を考えたとして、それを実行できるだけに技術を高めてかつ完成させるまでどれだけかかるか)」
    向こう何年の計画になるか。時間がない。市長という立場になりできることができただけに事の深刻さもより理解できるようになったアイスバーグは確実に迫る危機に焦燥を覚えている。
    どうしたものかと歩いていると、波打ち際に色々と揺れているものが目についた。廃材、海藻、おそらく沈んだ家や店の生活用品や雑貨…。
    その中で一つ、目についた瓶があった。他に瓶は幾つかあったが、それだけが目に留まったのは中に入っている物があったから。瓶の中に入っているのは丸められた紙。
    「ボトルメールか」
    どこから流れ着いたのか、よくも割れずにここまできたものだ。もしかするとこの島から出して離岸流で押し戻されたのかもしれないが。気になって瓶を拾い、栓を開けてみる。
    中身は手紙ではなく絵だった。子どもの絵だろう、クレヨンで家族らしきものが描かれている。赤い花がたくさん咲いてて、楽しそうで、全員が笑顔。ウォーターセブンでは赤い花は主流ではないからどこか別の島だろう。
    「ンマー…どこから来たんだろうな」
    微笑ましくなって、紙を丸めて中に戻したアイスバーグは瓶を持ち帰った。

  • 126二次元好きの匿名さん25/09/01(㜈) 14:12:51

    ボトルメールはロマンある

オススメ

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