オリキャラ同士をAIで戦わせるスレ 第七幕

  • 11◆ZEeB1LlpgE25/08/15(金) 23:05:56

    安価で出たオリキャラたちが戦っている様子をAIが短編小説化してそれを楽しむスレです。

    不定期進行な上AI生成の都合上納得のいかない結果になることもあります。




    ※版権キャラはそのままでは出さないでください

    ※閲覧注意が必要になるキャラは禁止です

    ※相手が能動的に突ける弱点を必ずつけてください。

    ※AIの生成によるインフレは仕方ないですがそうでない限り勝てないほど強くするのはやめてください。

    ※スレ内で死んだキャラはifルート以外では復活しません。命には非常にシビアです。

    ※ここに出たキャラクターは基本スレ内でのみフリー素材です。要望があるなら必ず設定と一緒に記載してください。

    ※コテハンを本スレでつけていいのはスレ主のみです。


    まとめ↓

    オリキャラAIバトルスレ・アカシックレコード | WriteningオリキャラAIバトルスレのページやリンクをギュギュっと一つにまとめたページです。 このページの編集コードは「aiai」です。 新しいページやスレが作られた時は追加していっていただけると助かります キャ…writening.net
  • 2二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:09:31

    たておつです

  • 3二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:09:55

    立ておつ!

  • 4二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:12:39

    おつです

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:20:22

    もう7スレ目か…
    おつ

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:36:42

    10まで保守しておくか

  • 7二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:37:14

    保守7

  • 8二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:37:25

    保守8

  • 9二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:37:39

    保守9

  • 10二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:37:52

    保守10

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:38:11

    シュバッ

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 06:39:00

    ナッグレーさん⁉︎

  • 13二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 11:04:16

    このレスは削除されています

  • 14二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 11:14:47

    たておつ(拳)

  • 151◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:07:08

    題名『石畳に刻まれた拳』

  • 161◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:07:51

    深夜のロンドン、霧に濡れた石畳を踏みしめる音が、静寂を切り裂く。
    赤い月の光が、血染めのサスペンダーを身に纏った男の体を照らす。
    その名はバーナビー・デッドマン。

    「……歯を抜くか、命を抜くか、どっちにする?」

    闇の中で低く響く声。声の奥には、好奇心にも似た余裕が混ざっている。
    鉄骨のような右腕が、月光を反射して鈍く光った。
    彼の拳は、これまで数え切れぬほどの命を砕いてきた。
    人間の頭蓋を叩き潰すその感触に、彼は美学を見出している。

    だが、目の前に立つのは——

    小さな男の子、5歳の山桐潤。
    男の娘のような柔らかい顔立ちに、まだあどけない身体。だが瞳は鋭く、興味で輝いている。

    「え……えっと……命……かな?」

    幼い声が、静寂を割る。潤は恐怖で固まるどころか、好奇心を押し隠すこともなく、バーナビーを見上げていた。

  • 171◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:08:03

    「ふん……小僧……」

    バーナビーの唇が歪む。
    拳を握る手が、ゆっくりと空気を切り裂く。

    振り下ろされた右腕は、重く、遅い——だが破壊力は圧倒的だ。
    潤は瞬間的にそれを認識する——この力を学ばねば。

    「わぁ……すごい……!」

    目の前で炸裂する破壊力に、少年の瞳は驚きと興奮に輝く。
    泣き叫ぶこともなく、潤は右腕の軌道、重さ、速度を脳裏に刻み込んでいた。

    バーナビーは拳を振るいながら、少年の小さな反応を確認する。

    「……何だ、この子……ただの子供じゃねぇのか?」

    闇の路地に、静かな緊張が走る。
    血と好奇心が入り混じる夜の戦場——
    戦いの幕は、この瞬間に開かれた。

  • 181◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:09:14

    拳が空気を裂いた瞬間、潤の小さな体は壁へと吹き飛ばされた。
    石造りの壁に背中を打ち付け、息が詰まる。
    鈍い痛みが全身に広がり、視界が少しだけ揺れた。

    ——だけど、怖くない。

    「……すごい……これが、本気の“殴る”なんだ……」

    潤は痛みに顔をしかめながらも、その一撃を頭の中で反芻する。
    右腕の振り抜きの軌道、肩の回転、腰の捻り、足の踏み込み。
    重さと速度のバランス、衝撃の伝わり方——全てが、鮮明に記録されていく。

    バーナビーは一歩、また一歩と近づく。
    月明かりの下、その巨躯はまるで肉食獣のように迫力を増していた。

    「立てよ、小僧。もう一発くれてやる」

    その声に、潤はゆっくりと立ち上がった。
    足は震えている。だが、それは恐怖ではなく未知の力に触れた興奮の震え。

    次の瞬間、バーナビーの右腕が再び振り上げられた。
    潤の脳は、先ほど記録した全てのデータを瞬時に呼び出す。
    ——この角度、この速度、このタイミング。

    「……こうだっ!」

    わずかに首を傾け、肩を引く。
    拳は紙一重で潤の顔の横を掠め、後方の壁を粉砕した。
    飛び散る破片と粉塵の中、潤の口元に小さな笑みが浮かぶ。

  • 191◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:09:27

    「やっぱり……避けられた……!」

    バーナビーは眉をひそめる。
    たった一度見ただけで、今の一撃を避けた——
    それは経験豊富な戦士でも容易ではない芸当だ。

    「……面白ぇ」

    低く呟くバーナビーの瞳に、わずかな警戒が混じる。
    5歳児のはずの少年が、もう一歩、極地へと近づき始めていた。

  • 201◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:11:55

    バーナビーは再び距離を詰める。
    その歩みは鈍重だが、一歩ごとの地響きが潤の小さな心臓を揺らす。
    まるで捕食者が獲物を追い詰めるかのように——。

    潤は後退しながら、路地裏の様子を素早く観察した。
    石畳の段差、壁のひび、街灯の影……全部、頭に刻み込む。
    ——この人は力で押してくるだけ。それなら……。

    「動きは大きいけど、曲がるのは遅い……!」

    小声で呟く潤の目が、わずかに輝く。
    バーナビーが右腕を振りかざす。
    潤は正面から受け止める代わりに、横の壁へ飛びつき、足を掛けて反動で避けた。
    拳は空を切り、その勢いのまま壁を粉砕。石片が降り注ぐ。

    「チョロチョロと……」

    苛立ちを含んだ声が夜に響く。
    バーナビーは方向転換を試みるが、その大きな体は路地の狭さに適していない。
    潤はすかさず街灯の影へと潜り込む。
    巨体の死角を利用し、バーナビーの位置を視界の端で捉える。
    ——あの人は、真正面しか見てない。なら……。

    「こっちだよ!」

    あえて声を出し、路地の奥から手を振る。
    視線がそちらに向いた瞬間、潤は反対側へと滑り込んだ。

    バーナビーの顔に、一瞬だけ戸惑いが浮かぶ。
    ほんのわずかな時間——だが、それは5歳の少年にとって反撃のための十分な隙だった。

  • 211◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:16:27

    バーナビーの巨腕が、再び空気を切り裂いた。
    潤はそれを壁際でギリギリまで引きつけ、紙一重で回避する。
    ——その時、彼の脳は熱を帯びるように回転していた。

    右腕の筋肉の動き、肩から腰への力の伝達、足裏の踏み込みの圧。
    先ほどまで観察していた要素が、ひとつの“動き”として体の中で再構築されていく。

    ——これなら……少しは真似できるかも。

    潤はバーナビーの懐へ素早く潜り込む。
    その動きは小さく、素早いが……肩の捻りと腰の回転だけは、完全にバーナビーのものだった。

    「……はっ!」

    拳が、石畳にめり込んだ。
    小さな手なのに、瓦礫が飛び散るほどの威力。
    バーナビーの目が、わずかに見開かれる。

    「……ほぉ……」

    低い声が、今度は興味と警戒を同時に孕んでいた。

    「ガキ……今の、俺の真似か?」

    潤は肩で息をしながらも、笑顔を見せた。

    「うん!すごかったから……やってみた!」

    その無邪気な返事が、バーナビーの中に奇妙な感情を芽生えさせる。
    怒りとも違う。

  • 221◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:17:21

    これは——本能的な警告だ。
    このガキ、時間を与えたらマズい。

    バーナビーは右腕を構え直し、今度は躊躇なく踏み込んだ。
    潤はその一撃を見切ろうとするが……完全模倣にはまだ届かない。
    体格も筋力も圧倒的に違う。
    受け止められるはずもなく、再び吹き飛ばされた。

    だが——
    瓦礫の中から起き上がる少年の目は、さらに鋭く、深く、飢えていた。

  • 231◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:21:05

    瓦礫の中から立ち上がった潤を見て、バーナビーは低く唸った。

    「……チマチマと学びやがって……」

    その声音には、苛立ちと焦燥が混ざっている。

    ——今、決めなければ危険だ。
    この小僧に時間をやれば、いつか自分を超えてくる。
    バーナビーの直感は、拳闘士としての本能は、確かにそう警告していた。

    「もう遊びは終わりだ、小僧……!」

    バーナビーの右腕がうねりを上げる。
    ただ振るうのではなく、足の踏み込みから腰、背骨、肩、そして腕へ——
    体全体の力を連動させた“必殺”の一撃。
    鉄の扉すら粉砕する、**屠殺屋の右腕(ブッチャーズ・アーム)**が襲いかかる。

    潤は咄嗟に動いた。
    だが、まだ体の小ささが邪魔をする。
    壁際へ逃げても爆発的な衝撃波が押し寄せ、肺が潰れるような圧迫感に喉が詰まった。

    「っぐ……!」

    膝をつきながら、潤は必死に息を吐き出す。
    今までの模倣では、この“全身連動”の力までは再現できない。
    頭では理解しても、肉体がついていかないのだ。

  • 241◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:21:24

    バーナビーが迫る。
    その影は、幼い潤の体を丸ごと飲み込むほどに大きい。

    「歯を抜くか、命を抜くか——もう一度聞いてやるよ」

    赤いサスペンダーの男は、ゆっくり拳を掲げた。
    鉄槌のように重いその右腕が、今度こそ潤を叩き潰そうとしている。

    しかし——

    潤の瞳はまだ、消えていなかった。
    全身を震わせながらも、彼は笑みすら浮かべていた。

    「すごい……今の全部……ちゃんと見えたよ」

    その言葉に、バーナビーの拳が一瞬だけ止まる。
    本能が告げていた。
    ——こいつは次で、必ず何かを掴む。

    夜のロンドンの路地に、濃密な緊張が張り詰めた。
    巨腕が振り下ろされる瞬間、潤の小さな体は——極地へと到達しようとしていた。

  • 251◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:27:07

    バーナビーの拳が振り下ろされる。
    石畳が砕け、空気が爆ぜるほどの殺意を帯びた一撃。
    潤はその真正面で、両足を大きく開き、ぐっと腰を沈めた。

    ——肩の捻り。
    ——背骨のうねり。
    ——足裏からの踏み込み。
    バーナビーが繰り出した動きを、潤は全て頭の中で繰り返す。

    違うのは、その小さな体に適応の力が宿っていること。
    無数の失敗、吹き飛ばされた痛み、そして驚嘆と憧れ——それら全てが潤の体を導いた。

    「——いっけぇぇぇぇッ!!!」

    潤の右拳が、空を裂いた。
    幼い手のひらから放たれた一撃は、確かにバーナビーの“屠殺屋の右腕”を模したもの。
    だが小ささゆえに、余計な負荷がかからず、むしろ純粋に力が一点へと集約されていた。

    轟音。
    二つの拳が正面からぶつかり合った瞬間、石畳の路地全体が爆発するように揺れた。
    土煙の中、巨体がよろめく。

  • 261◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:28:14

    バーナビーの右腕が痺れ、血が滴り落ちる。

    「……な、に……っ……」

    信じられない光景。
    ——自分の“武器”が、ガキの小さな拳に押し返された。

    潤はその場にへたり込み、肩で荒く息をしていた。
    体は限界、立ち上がる力も残っていない。
    それでも、その瞳だけはまだ燃えていた。

    「すごいね……ほんとに、すごかった……!
     でも……ぼくも、ちょっとだけ……届いたんだ」

    夜風が土煙を払い、崩れた路地の真ん中で、巨漢と幼子は向かい合った。

    バーナビーはしばらく沈黙した後、にやりと笑う。

    「……クソガキ……面白ぇじゃねぇか」

    それは敗北の笑みではない。
    むしろ、死神の右と呼ばれた男が初めて「認めた」笑みだった。

    ——こうして、ロンドンの裏路地に、
    「小さな到達者」と「巨腕の屠殺屋」が残した衝撃は、静かに語り継がれていくのだった。

  • 271◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 17:28:52

    以上

  • 28二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 17:31:17

    このレスは削除されています

  • 29二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 17:34:59

    今回も良かった。治安悪い男とショタのコンビは劇薬だね

    >>28

    それがこのスレのいいところだからなぁ

  • 30二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 17:38:24

    潤くん……恐ろしい子……!

  • 31二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 17:44:59

    最高!

  • 321◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:10:17

    題名『六の刻、裏の闇』

  • 331◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:10:44

    霧雨の降る夜、ロンドンの裏通り。
    濡れた石畳には誰のものとも知れぬ血痕が点々と続いている。

    その道の奥で、数言六月は立ち止まった。
    「……まちがえた」
    彼女の小さな声は、いつもの通り六文字。迷い込んだ路地の先に、ひとりの男が待っていた。

    黒いコートの裾を引きずり、顔を仮面で覆った義肢の男。
    裏社会で名を知らぬ者はいない、裏伏。
    彼の背後には、複雑に仕掛けられたワイヤーや小瓶が光り、路地全体が罠の巣と化していた。

    「……ふん、ガキが一人か。
     だがちょうどいい、試し斬りだ」

    声は冷ややかで嘲るよう。
    六月はその言葉を受けて、わずかに震えた。
    胸の奥で、右目に潜む悪魔が囁く。

    (ほら、怖いだろう? でも君は逃げられない。逃げても殺される。
     だったら、“六”で踏み込んでみせろ)

    六月は唇を噛む。
    彼女の小さな拳が、ぎゅっと握られた。

    「……やるしか、ない」

    路地の闇に、裏ボスと少女の影が対峙する。
    その瞬間から、理不尽な“裏ワザ”と“六の速さ”が交錯する戦いの幕が開いた。

  • 341◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:12:22

    裏伏は仮面の奥で嗤った。

    「さて……見せてやろう。世界の裏側ってやつをな」

    彼の義手がわずかに震える。
    指先で奇妙なコマンドを打ち込むような仕草をした瞬間——

    チン、と小さなナイフが抜かれた。
    普通の果物ナイフのようにしか見えない。

    「これで、戦艦が斬れる」

    す、と振り下ろされた刃が石畳を撫でる。
    次の瞬間、硬い路地が音もなく真っ二つに裂け、地面が数十センチずれる。
    六月は息を呑み、数歩後ろへ跳んだ。

  • 351◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:12:41

    「……なに、それ」

    六文字の問いが震え声で漏れる。

    裏伏は答えない。ただ一歩進むごとに、またコマンドを刻むような動き。
    壁をすり抜け、次には彼女の背後に立っていた。

    「どうした? 気づかぬうちに、死んでるのが裏社会だ」

    ワイヤーが風に鳴り、瓶が割れて毒霧が路地に広がる。
    裏伏の手が動くたびに、世界のルールが無視されていく。

    六月は立ち尽くした。
    “速さで詰める”前に、あらゆる位置に敵が現れる。
    “拳で届かせる”よりも先に、死が迫る。

    右目の悪魔が囁いた。
    (ほら、どうする? 君は“六”でなきゃ届かない。
     でも届けば、必ず裂け目を作れるはずだろう?)

    六月は両手を握りしめた。
    震えながらも、彼女の瞳に六角形の光が宿る。

    「……やってみる」

    まだ幼さの残る声で、そう告げた。

  • 361◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:15:28

    裏伏の義足が音もなく路地を蹴る。
    毒霧が濃く広がり、六月の視界を覆った。

    「……終わりだ」

    裏伏の声は背後から響く。
    だが振り返ってもそこにはいない。

    ——その瞬間。

    「……六歩、いく」

    六月の瞳がぎらりと六角に光る。
    彼女は一歩踏み出す。
    だが実際には、六歩分の距離を一瞬で駆け抜けた。

    視界が切り替わるように、霧の外へ。
    裏伏の姿が目の前に現れ、初めてその動きが止まった。

    「なにっ……!?」

    驚愕の声。
    六月は続けざまに拳を握り、低く呟く。

    「六連、打つ」

    次の瞬間、拳が閃いた。

  • 371◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:15:49

    ——一度振るだけで、六発分の衝撃が裏伏の胸を叩く。
    義肢の内部で金属がきしみ、仮面の奥から短い呻きが漏れた。

    「ぐっ……!」

    裏伏は後退しながら、即座に再び“裏ワザ”の予備動作を刻む。
    だが六月はさらに詰める。

    「……止める」

    声と共に、また一歩。
    それは六歩の速さ。
    小さな体が音もなく肉薄し、拳が再び閃く。

    裏伏の仮面が大きく揺れ、壁に叩きつけられる。
    義手から火花が散った。

    ——わずかだが、均衡が崩れる。

    六月の胸は早鐘のように高鳴っていた。
    恐怖と同時に、初めての“手応え”を感じて。

    「……できる」

    彼女は六文字で、自分を励ました。

  • 381◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:18:25

    壁に叩きつけられた裏伏は、火花を散らす義手を抑えながら、かすかに嗤った。

    「へぇ……やるじゃねぇか、小娘。
     だがな、お前は脆い」

    六月が構え直す。
    だがその耳に、鋭い言葉が突き刺さった。

    「お前なんか、誰にも必要とされてない。
     六文字しか喋れねぇ欠陥品。
     仲間にも、家族にも、ただの足手まといだ」

    その瞬間、六月の瞳から光が失われる。
    胸を押さえ、動きが止まった。
    喉が塞がれ、声すら出ない。

  • 391◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:19:09

    (やめろ、やめて……!)
    心の奥で叫んでも、体は固まったまま。
    右目の悪魔が冷ややかに囁く。

    (あぁ、また止まった。いつもそうだな、六月。
     言葉一つで動けなくなる。
     弱い……弱い……)

    裏伏はゆっくりと立ち上がる。

    「ほら、見ろよ。自分で自分を縛ってやがる。
     そんな心で、俺を倒せると思ったか?」

    彼は小さなナイフを構え直し、静かに歩み寄る。
    六月の身体は硬直し、逃げられない。

    「終わりだ、小娘」

    刃が振り下ろされる瞬間、六月の右目に宿る悪魔が叫んだ。

    (立て! “六”で抗え!
     このまま潰されれば、二度と“到達”なんてできないぞ!)

    六月の震える唇が、かすかに開いた。

    「……や、だ」

    六文字にならず、掠れた二音。

    しかし、それは確かに抵抗の火種だった。

  • 401◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:19:46

    刃が迫る。
    六月の胸を裂こうと、裏伏のナイフが振り下ろされる。

    その瞬間——

    「……まけない、わたし」

    掠れた声が、はっきりと六文字になった。

    次の刹那、彼女の瞳がまばゆい六角光を放つ。
    右目に宿る悪魔が驚愕し、叫んだ。

    (こいつ……! 本当に自力で……!?)

    六月の能力——碌外地が進化する。
    六歩を一歩で駆け抜けるだけでなく、六重の影を同時に生み出す。
    彼女は一歩進んだだけで、六人分の像が路地を埋め尽くした。

  • 411◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:20:13

    「……六撃、一閃」

    裏伏のナイフが影を裂くが、次の瞬間には別の六月が背後から迫る。
    六つの幻と六つの拳が同時に炸裂し、
    義手義足が一斉に悲鳴を上げた。

    「ぐぉぉぉっ!」

    裏伏の体が宙を舞い、毒霧を散らして壁に叩きつけられる。
    仮面が砕け、顔の半分が露出した。

    血を吐きながらも、裏伏は笑った。

    「ハッ……おもしれぇ……
     やっと“遊べる”ガキに会えたわけだ……」

    六月は肩で息をしながら、それでも震える手を構える。

    「……まだ、たおれない?」

    裏伏は義手を引きずり、最後の“裏ワザ”のコマンドを刻む。

    「次で決めてやる。お前の“六”と、俺の“裏”。
     どっちが世界を壊せるか、試してやろうじゃねぇか」

    ——決戦の刻が迫る。

  • 421◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:20:49

    路地の闇が震える。
    裏伏の義手が最後の動作を刻む間、六月は息を整えた。
    右目の六角光が瞬き、六つの影が完全に実体化する。

    「……いく!」

    六重の拳が一斉に飛ぶ。
    裏伏の“裏ワザ”が繰り出す不可思議な現象——壁をすり抜ける、時間を加速させる、刃が無数に飛ぶ——
    それらを六月は全て“六撃の圧縮”で避け、反撃の一閃に変える。

    金属がきしむ音、瓦礫が砕ける音、義肢が悲鳴を上げる。
    裏伏は想定外の速さに目を見開いた。

    「こ、こいつ……速い……だと……」

    六つの影が一斉に叩きつける拳。
    一撃ごとに義手の構造が壊れ、体がよろめく。
    ついに裏伏は壁に押し付けられ、ナイフを落とした。

    「……まだだ、まだ終わらんぞ!」

    怒声と共に裏ワザの最後の予備動作を試みるが、六月の六連撃はそれを許さない。
    一撃で義肢が砕け、爆発的な衝撃に押され、裏伏は路地の石畳に倒れ込む。

    沈黙。
    六月は小さく肩で息をしながら、六つの拳をゆっくりと下ろす。
    右目の悪魔も、驚きのあまり囁きが止まった。

    裏伏は仰向けに倒れ、ゆっくりと笑った。

  • 431◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:21:05

    「……くそ、ガキ……やるな……」

    笑みは敗北のそれではない。
    むしろ、裏世界の覇者が初めて「認めた者」の表情だった。

    六月は微かに笑みを返す。

    「……六、つかえた」

    夜の霧が路地を包む中、**少女の“六”と裏ボスの“裏ワザ”**は、互いに一歩も譲らず、静かに決着を迎えた。

  • 441◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:21:43

    以上

  • 45二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 20:23:10

    投下乙 お相手さんも対戦ありがとうな

  • 46二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 20:25:43

    >>45

    対ありです!

  • 471◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:49:14

    溜めてたの一気にやるので今日中に安価しますよ
    多分

    題名『』

  • 481◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:49:30

    みすった
    題名『極寒の支配者』

  • 491◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:50:54

    北の荒涼とした平原。
    風が氷を裂き、雪煙が空を覆う。
    地面は凍りつき、足跡ひとつ残らぬ凍土が果てしなく広がる。

    その中心に、立ち尽くす男がいた。
    引導イワオ——55歳。重量挙げで鍛え上げた巨体に岩石プロテクターを身につけ、重力の信念を全身で背負っている。

    「……ここが、呪巫女の伝説の土地か」

    低く唸る声。雪煙にかき消されそうな独り言だ。

    だが、視界の奥で不穏な気配が動く。
    地面の雪がゆっくりと盛り上がり、木々が異様に歪み、動物たちの目が赤く光る。

    「……な、なんだ……この気配は……」

    冬籠り——北の呪巫女が遺した術式。
    死後も土地を守護する自立稼働する術式が、全ての生命を異形化させ、凶暴化した地帯。
    集落の民以外、生物はすべて敵となる。

    引導は重く息をつく。

    「なるほど……重力の力で試す価値がありそうだな」

    雪原の地面が揺れ、氷柱が忽然と立ち上がる。

  • 501◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:51:36

    その柱の影から、異形の狼や鳥が牙と爪を剥き出しに飛び出した。

    「……くっ、避けろ!」

    引導は瞬時に重力を圧縮し、己の体重を活かした衝撃波で異形たちを吹き飛ばす。
    だが、それでも次々と生物は湧き上がる。
    術式は、無限に近い速度で平原を守り続けているのだ。

    氷柱の間から、白い霧のような冷気が渦巻く。
    その中心に、かつての呪巫女の左腕のミイラが埋められた地下核が眠る。
    ——冬籠りの力の源。

    引導は拳を握り、全身に重力を集中させた。

    「よし……一歩ずつ、確実に行く!」

    極寒と異形の大地に、男の決意が響く。
    これが、死者が遺した術式との初めての接触だった。

  • 511◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:52:22

    雪煙が舞う平原に、異形たちの咆哮がこだまする。
    氷柱の影から現れる異形の狼や鳥、歪んだ樹木の枝が攻撃を仕掛けてくる。

    「くっ……ここまでか!」

    引導イワオは低く唸り、重力を圧縮した拳を振るう。

    衝撃波が雪と氷を砕き、異形たちは吹き飛ぶ。
    だが、その隙間からさらに生物が湧き上がる。
    術式は常に先手を取り、地形をも武器に変えているのだ。

    「……重力、全部ぶつける!」

    彼は岩石プロテクターに体重をかけ、全身で重力を極限まで押し付ける。
    雪原が一瞬で隆起し、氷の柱が割れる。
    異形たちは吹き飛ばされ、凍土に叩きつけられる。

    だが、術式の核である呪巫女の左腕の存在は地下深く、まだ安全圏。
    攻撃は地表の生物を排除するのみで、術式自体にはダメージを与えられない。

    「……なるほど、核を破壊しなきゃ終わらんのか」

    引導は息を整え、次の作戦を考える。

    その時、氷柱の間から濃い霧が立ち上り、視界を遮った。
    異形の動きも消え、辺りは静まり返る。
    ——術式が、男の行動を読み取り、間合いを封じるフェーズに入ったのだ。

  • 521◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:52:34

    引導は岩石プロテクターを叩き、地面を踏みしめる。

    「よし……圧をかけ続ければ、必ず道は開ける!」

    凍土の平原で、重力と呪式が静かにぶつかり合う。
    男の巨体が押し潰されそうな圧力の中、初めて術式の核へと近づくための戦いが始まった。

  • 531◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:53:10

    引導イワオが一歩踏み出すたび、地面が唸る。
    氷柱が次々と立ち上がり、雪煙の中から異形の生物が飛び出す。
    まるで平原そのものが男を押し潰そうとするかのようだ。

    「……くっ、重力だけじゃ押し返せんか!」

    男は岩石プロテクターを叩き、体重を増幅させた打撃で生物を蹴散らす。
    だが、氷柱は割れても次々に再生し、凍土から異形が湧き出す。

    ——術式の核は地下深く。
    だが冬籠りは、地脈を通じて周囲の環境そのものを兵器化していた。

    吹雪が強まり、視界は数メートル先すら見えない。
    氷の尖塔が空中に突き出し、男を取り囲むようにそびえる。
    一歩動くたび、足元から巨大な氷の柱が押し出され、まるで牢獄の壁のように彼を縛った。

    「うおおっ!」

    引導は重力を極限まで集中させ、雪と氷を叩き割る。
    だが、術式の圧力は絶えず変化し、男を中央に誘導するように動いている。

    「……そうか、俺を核まで誘い込むつもりか」

    洞察するが、体は圧迫に喘ぎ、次の一歩を踏み出すのも困難だ。

    氷柱の間から、異形の群れが低く唸り、牙と爪を突き出す。
    その攻撃の連鎖は、重力の衝撃波でも簡単には押し返せない。

    引導は重さを活かして押し潰すか、壊して突破するかの二択を迫られる。

  • 541◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:53:35

    しかし、術式は冷酷にそれを許さない。
    まるで雪原全体が男を狩る罠となったかのようだった。

    ——極寒の地で、極限の重力と術式がぶつかる。
    引導は、これまでの経験では味わったことのない圧迫感に全身で耐えるしかなかった。

  • 551◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:54:24

    吹雪が凍てつく北の平原に、巨体が低く唸る。
    引導イワオの岩石プロテクターは氷雪で白く覆われ、指先まで震えている。
    氷柱が林立する雪原は、まるで無数の槍で男を拘束する巨大な迷宮のようだ。

    「くそ……甘く見やがって……!」

    男の唸り声は、吹き荒れる風にかき消されそうになるが、全身の筋肉は限界の力で膨張し、重力の塊と化していた。

    氷の壁を叩き、異形の群れを押し返す。
    それでも次の瞬間には、別の方向から氷柱が飛び出し、異形の獣が牙を剥き出しに飛びかかる。
    男は膝を折り、両腕で体を支え、地面の重力を自身のエネルギーに変換した。

    「行くぞ……!」

    彼の足元の雪が粉塵となって舞い上がる。
    岩石プロテクターに加重された体重が、地面に触れるたびに強烈な圧力波となり、周囲の氷柱と異形を押し潰す。
    拳を振るうたびに衝撃波が雪原を裂き、氷の尖塔を粉砕する。

    だが、術式は容赦しない。
    地脈を通じて、地下の呪巫女の左腕が微かな振動を起こす。
    それは全方位に連鎖し、雪原に新たな氷柱が立ち上がるたび、異形の生物たちが湧き出す。
    一瞬の隙も許されない。

    「……これが、冬籠りの真の力か……!」

    引導は息を切らしながらも、重力をさらに圧縮する。
    岩石のプロテクターに全体重を載せ、体の周囲の空気を押し潰すようにして、彼はまるで地面そのものを拳に変えた。

    氷柱は粉砕され、異形は吹き飛ぶ。

  • 561◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:54:38

    だが、術式は雪原の地形ごと変化させ、男を中心に罠を再構築する。
    吹雪の中で足場が崩れ、氷の壁が回転するように男を囲む。

    「……くっ……俺の重力でも、押し返しきれない……!」

    汗と雪が混じり、顔を流れる。
    筋肉の痛みと関節の悲鳴が同時に襲い、体は限界の手前まで張り詰めている。

    その時、男の耳に地鳴りが届いた。
    地下核——呪巫女の左腕の位置を示す微かな振動だ。
    地脈のエネルギーが全て集中する場所。
    そこを破壊すれば、術式は終わる。

    「……よし、最後の一撃だ……!」

    引導は両腕の岩石プロテクターに最大限の荷重をかけ、拳に全体重を乗せる。
    膝と足首が悲鳴を上げるほどの圧力が、雪原を震わせた。
    周囲の氷柱が粉々に砕け、異形が吹き飛ぶ。

    男は渾身の一歩を踏み出し、地下核の方向へ全力で突進する。
    雪煙と氷塵が舞い上がり、視界は真っ白に変わる。
    それでも、地鳴りを頼りに、男はただ前だけを見つめた。

    ——極限の重力を体現した男と、長年北の地を支配してきた術式の極寒の戦い。
    その一撃が、冬籠りの運命を変える鍵となる。

  • 571◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:55:31

    吹雪の中、引導イワオの足跡はほとんど消えかけていた。
    氷と雪の迷宮は、術式の意思のように男を中心に形を変え続ける。
    立ち上がる氷柱、突如現れる凍結した獣、雪原を裂く冷気の竜巻——冬籠りは全ての障害を一度に押し付け、男を核へ誘導していた。

    「……あと、少し……」

    息を荒げ、膝を曲げ、岩石プロテクターに全体重を乗せる。
    重力の力を体中に充満させ、踏み出す一歩一歩で地面を粉砕する。

    氷柱の林が急に迫り、足元の氷が軋む。
    男は咄嗟に重力を押し込み、柱を粉砕して前進する。
    破片が吹雪に紛れて空中に飛び散り、冷たい雪の粒が顔面を打つ。
    痛みはあったが、男の意志を止めることはできなかった。

    「地脈……感じる……!」

    耳に微かな地鳴りが響く。
    地下深く、呪巫女の左腕が潜む場所から、エネルギーがほのかに伝わってくる。
    術式の力の源、まさに“冬籠りの心臓”。

    周囲の異形たちが最後の抵抗として飛びかかる。
    氷に覆われた狼、羽を凍らせた鳥、歪んだ樹木が、男を包囲する。

  • 581◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:56:01

    だが、引導の拳は重力でそれらを圧し潰す。
    衝撃波が地面を揺らし、雪原に轟音が響き渡る。

    一歩、また一歩。
    雪煙と氷の砕ける音の中、男の足は確実に核へ向かっていた。
    膝と足首の痛みは限界に近く、岩石プロテクターの金属は軋む。
    だが、精神は揺らがない。

    「……この力で、終わらせる……!」

    地脈の振動を頼りに、引導は雪原の中央にそびえる氷の柱へと近づく。
    氷柱の根元には、微かに埋もれたミイラ——呪巫女の左腕が光を帯びているのが見えた。
    術式は最後の防御を仕掛けるため、雪原の形を変え、異形の群れを再生成する。

    男は膝を曲げ、重力を全身に集中させた。
    岩石プロテクターと体重を合わせた力が、氷の柱を押し割るように爆発的に伝わる。
    雪原は揺れ、氷が粉々に砕ける。
    異形たちも吹き飛ばされ、術式は地表の防御を失いかける。

    だが、核はまだ地下に深く潜む。
    男の目の前には、最後の難関——術式の意志が直接干渉する領域が立ちはだかる。
    地面から吹き上がる冷気と、雪原の歪み、空中を舞う氷の破片が、男を包囲する。

    「……ここまで来た、……絶対に、止めはせん!」

    全身を硬直させ、重力の圧を最大に集中する引導。
    彼の一歩が、冬籠りの核心へと迫る——。

  • 591◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:57:02

    雪煙と氷の破片が舞う北の平原。
    引導イワオは膝を深く曲げ、全身に重力を集中させていた。
    吹雪は最高潮に達し、視界はほぼゼロ。
    しかし、耳には微かに、地脈を通じた呪巫女の左腕の鼓動が伝わる。

    「……これが……核か……!」

    男の視界の奥、雪に半ば埋もれた氷の柱の根元で、呪巫女の左腕のミイラが淡く光っていた。
    その瞬間、冬籠りの術式が最後の防御フェーズに入る。
    氷の壁が急速に立ち上がり、異形の群れが吹雪に紛れて飛び出す。
    冷気の竜巻が男を押し返し、雪原の地形を激変させる。

    「……これでも、俺は止まらん!」

    引導は岩石プロテクターに全体重を乗せ、膝と足首の関節が悲鳴を上げるのも構わず踏み込む。
    周囲の氷柱を粉砕し、異形を重力で押し潰す。
    雪原が大きく揺れ、氷の砕ける音が轟音となって響く。

    ——そして、男はついに核の真上に到達した。
    地下深くの左腕に集中する地脈のエネルギーが、微かな振動となって指先に伝わる。
    膝を折り、拳を雪面に叩きつける。

    「今だ……!」

    重力を極限まで圧縮し、岩石プロテクターと体重を合わせた全力の一撃を、左腕のミイラに叩き込む。
    地下の地脈に衝撃が伝わり、雪原全体が振動する。
    氷柱は軋み、次々と崩れ落ち、異形の生物たちは暴風と衝撃波に押し流される。
    吹雪が一瞬止み、静寂が訪れたかと思うと——
    地面が割れ、淡い光を帯びたミイラが雪原から浮かび上がる。
    地脈との接続が断たれ、冬籠りの術式が崩壊し始めたのだ。

  • 601◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:57:12

    「……終わったか……」

    引導は疲労で膝をつき、息を荒げながらも拳を握りしめる。
    雪原には粉々になった氷柱と、力尽きた異形の残骸が散らばる。
    極寒の北の地は、ようやく静寂を取り戻した。

    だが、男の視線は核の崩壊を見つめながら、冷たい北風に向かって小さく呟いた。

    「……これで、この土地に平和が戻る……な……」

    雪煙がゆっくりと晴れ、朝日に照らされた雪原は淡い光を帯びる。
    冬籠りの術式は完全に崩れ去り、地脈も凍りついたまま。
    極寒の北の平原は、長きにわたる守護から解放されたのだった。

    引導イワオは膝を伸ばし、ゆっくりと立ち上がる。
    全身に傷と疲労が刻まれているが、目は力強く光っていた。
    戦いは終わった——北の地を守り抜いた男の足跡だけが、雪原に残される。

  • 611◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 20:57:39

    以上

  • 62二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 21:10:35

    重力こそパワー!

  • 631◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:31:36

    題名『法則なき衝突』

  • 641◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:32:18

    久那土の夜は、常に静かではない。
    濡れた石畳が街灯に反射し、街路の影が波のように揺れる。湿った空気が鼻をつき、古びた建物の隙間から冷たい風が吹き抜ける。

    その街路に、紺色のツナギを着た巨人が、音もなく佇んでいた。
    長い金髪に覆われた顔は無表情。身長は204センチを超え、体格は常人の倍近くある。肩幅、胸囲、腕の太さ——全てが異様なスケールだ。しかしその動きはしなやかで、重さを感じさせない。まるで街そのものに溶け込むかのように、存在感を消している。

    その背後、雨に濡れた倉庫の影から、血塗れの僧衣を纏った男が現れた。
    浪人傘で顔を隠し、十文字槍を握るその手は力強く、槍の刃には梵字が刻まれ、異能や魔術を打ち消す力を秘めている。
    彼の名は槍術院 百鋭。かつて愛する家族を鬼の末裔に奪われ、以降、己の命すら顧みず異能者を狩ることに人生を捧げてきた男だ。

    二人の視線が、雨に濡れた石畳の上で交錯する。
    キャージ・スレイ・Jr.は動かず、ただ肩越しに僅かに視線を送るだけ。
    その沈黙は、百鋭の感覚を極限まで研ぎ澄ませる。呼吸、雨粒の落ちる音、遠くで揺れる街灯の光——全てを計算に入れ、一歩一歩を慎重に踏み出す。
    しかし、常識を無視する男は、瞬間にして壁の陰から現れる。
    まるで光の速度で移動したかのように、百鋭の視界を横切り、肩に触れた——その瞬間、百鋭の瞳が一瞬揺れる。

    「……!」

    驚きは一瞬で消え、槍を構える。刃の先端に宿る異能殺しの力が、キャージの身体にかかる影響範囲を試すかのように微かに光る。

    キャージの巨体は微動だにせず、無表情の奥で思考が閃いている。
    一歩踏み出すごとに、空気の流れや雨粒の落下まで利用し、物理法則を無視する動きを繰り出す。
    百鋭はその先を読み、槍の一振りで異能の影響を削ぎ取ろうと試みる。

    路地の壁に叩きつけられた水滴が飛び散り、雨音が二人の呼吸と混ざる。
    この街は、二人だけの戦場となった。
    見上げれば濃い雲が街灯を覆い、微かに差し込む光が二人の影を長く伸ばす。
    ——これが、久那土最強の異能殺しと、物理法則無視の巨人、キャージ・スレイ・Jr. の初対面であった。
    緊張と沈黙が街全体に張り詰める中、雨粒が二人の身体に当たる。
    どちらが先に動くのか——答えはまだ、誰にもわからない。

  • 651◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:33:20

    街は深夜の雨に濡れ、静寂を装いながらも、どこか不穏な空気に包まれていた。
    百鋭は路地の先をじっと見据え、槍の先端にわずかに力を込める。異能殺しの刃は、触れる相手の能力を瞬時に打ち消す。だからこそ、相手の一挙手一投足が全ての計算に織り込まれる。

    一方、キャージ・スレイ・Jr.は、壁の陰から現れては消える。その動きは不規則で、物理法則すら無視するかのようだ。重力、摩擦、空気抵抗——通常の人間なら一瞬で失敗する動作を、彼は滑らかに行う。
    その巨体がまるで街灯の光と影の隙間に溶け込むように消えたり現れたりするため、百鋭ですら完全な視認はできない。

    「……やつ、どこにいる……?」

    百鋭は呟く。視界の右側には死角があるが、左眼と全身で捉えようとする。相手の動きは予想外だが、槍の先に宿る異能殺しが、わずかに彼の動きを阻害する。
    しかしキャージはそれすら計算に入れているかのように、体の軸を微妙にずらす。刃の力が届く距離であっても、触れた瞬間には無意味になる。

    突然、キャージの巨体が背後の建物を蹴り、空中で反転しながら前方に飛び出す。
    その速度と軌道は人間の感覚では追えない。百鋭は一瞬ためらい、槍を振るタイミングを逸する。
    しかし、長年鍛え抜かれた百鋭の感覚は微動だにせず、わずかな気配から次の攻撃を読む。槍を軌道上に構え、キャージの接触点を狙う。

    「……来るな!」

    百鋭の呟きに合わせ、雨粒が飛び散り、路地に小さな波紋を描く。
    キャージの拳が突如として空間を切り裂くように迫る。物理法則が意味を失い、彼の巨体はまるで街をすり抜けるかのように振る舞う。

    だが、百鋭は怯まない。右目の死角を補うように全身の感覚を研ぎ澄まし、先読みで槍の刃をキャージの拳の進路に押し出す。
    刃が触れた瞬間、キャージの能力の影響範囲の一部が瞬時に無効化される。が、そのわずかな時間差を利用して、キャージは別の角度から再び飛び込む。

    路地の石畳に雨が跳ねる音、槍の振動が微かに響き、空気が波打つ。
    二人の戦場は路地一面に広がり、雨、影、壁、屋根——全てが戦闘の舞台となる。
    街灯の光は時折、キャージの巨体の動きを映し出すが、影はすぐに消え、百鋭の目を翻弄する。

    「……くそ……予想外だ……!」

    百鋭の吐息が荒くなる。だが、戦士としての本能が彼を突き動かす。

  • 661◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:33:34

    キャージは動かない表情のまま、背後から、上空から、斜めから——あらゆる方向から迫る気配を与え、百鋭の心理を揺さぶる。

    ——この街で、二人の戦いの兆しが確実に立ち上がった。
    静寂を破る雨音の中、次第に戦場は嵐へと変わろうとしていた。

  • 671◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:34:03

    雨に濡れた久那土の路地は、もはや静寂を装ってはいなかった。
    石畳に跳ねる雨粒、遠くで鳴る風鈴の音、壁に反射する街灯——全てが、二人の存在によって戦場へと変わっていた。

    キャージ・スレイ・Jr.は背筋をピンと伸ばしたまま、無表情で歩を進める。
    その巨体の一歩一歩が空気を震わせ、百鋭の感覚を刺激する。物理法則を無視する彼の動きは、百鋭の読みを一度は交わし、また別の角度から襲いかかる。

    「……来るな……!」

    百鋭は槍を前に突き出し、キャージの巨体が触れる寸前で刃を押し付ける。
    触れた刃の部分だけが異能を殺す——しかし、キャージはそれすら計算の内。わずかに身体をひねり、無効化された部分を避けながら次の動作へと移行する。

    そして、衝撃の瞬間が訪れた。
    キャージが壁を蹴り上げ、上空から百鋭の頭上へと降下する。重力を無視したその落下速度に、百鋭は刃を横に振り、先読みで迎撃を試みる。
    刃と拳がぶつかる——激しい衝撃が雨音を打ち消し、路地の空気が震える。

    キャージの拳は、異常な強度で百鋭の防御を押し返す。
    だが、異能殺しの刃が触れる部分だけ能力を無効化しているため、百鋭の体は完全には破壊されない。
    互いに距離を取り、呼吸を整える二人。雨の中、微かに漂う湿った匂いが、緊張をさらに高める。

    キャージの無表情な瞳に、一瞬の光が宿る——
    百鋭はそれを見逃さない。戦士としての直感が告げる。「次の一撃が来る」と。

    次の瞬間、キャージは壁や屋根を踏み台にしながら、連続して斜め方向から飛びかかる。
    百鋭は槍で迎え撃ち、斬撃が空気を裂く。雨粒が飛び散り、石畳に微細な衝撃波を描く。
    一撃一撃が互いに異質なリズムを刻む——まるで、戦場全体が二人の戦いの鼓動に合わせて動いているかのようだった。

    「……動きすぎる……!」

  • 681◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:34:16

    百鋭の呟きには、初めての驚きが混ざる。
    ただし、動揺は一瞬で消える。戦士としての本能が彼を支配し、再び冷静に攻撃の軌道を計算し直す。

    キャージの拳が放たれるたび、百鋭は刃を合わせ、異能の力で削ぎ取る。
    しかしキャージの身体は法則に縛られず、速度や角度を瞬時に変化させる。
    一瞬の隙を突いて、百鋭の右目の死角に入り込み、背後に回り込む動き——人間離れした身体能力と物理法則無視のコンボが、徐々に百鋭の心理を揺さぶり始めた。

    路地の端から端まで、雨が激しく打ち付ける中、初撃の応酬はついに決着を迎える気配を見せる。
    ——だが、この戦いの本質は、まだ始まったばかりだった。

  • 691◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:35:21

    雨は弱まる気配を見せず、路地を叩きつけ続けていた。
    水たまりに反射する街灯の光が揺れ、二人の影が長く伸びては消える。濡れた石畳は滑りやすく、戦場としては最悪のコンディションだ。だが、それをも二人は計算に入れ、戦いに利用していた。

    キャージ・スレイ・Jr.は、無表情のまま巨体を微妙に傾け、壁を蹴り、屋根を伝い、何度も視界の死角から百鋭へと迫る。
    百鋭はその都度、槍の先端に宿る異能殺しの力を調整し、触れた部分だけで相手の能力を削ぐ。
    だがキャージの常識無視の動きは、先読みと計算をも超えており、百鋭は何度も微妙な間合いを失う。

    「……くそ、速度が……!」

    百鋭は息を荒げながら呟く。
    槍を振り下ろすと同時に、石畳を蹴り返しながら回避するキャージの巨体——普通の人間なら数秒も持たない連続動作を、彼は何事もなかったかのように行う。

    連続攻防が続く中、キャージは一瞬の隙を突く。
    壁際の雨水に飛び込み、滑る足場を逆手に取り、百鋭の右目の死角から再び背後に回る。
    百鋭は刃を振り返すが、刃の効果範囲は触れた部分だけ。キャージの全身はほとんど影響を受けず、僅かな衝撃だけを感じるに留まる。

    しかし、百鋭は動揺しない。

    「……動きすぎる……だが、冷静に……」

    長年の戦闘経験と鍛え抜かれた身体が、キャージの連続動作に耐え、次の一手を瞬時に組み立てる。
    槍の先端をわずかに傾け、キャージの攻撃ラインを制限する——ほんの数センチの調整が、戦局を左右する。

    路地の両端にある壁や屋根も、二人の戦いの一部となった。キャージは屋根から壁、壁から水たまりへと跳び、まるで重力を拒否するかのように飛び回る。
    百鋭はそのたびに刃を合わせ、わずかに間合いを詰め、攻防を繰り返す。
    雨粒が跳ね、水音と石畳の振動が重なり、周囲の静寂を完全に破壊する。

    連続攻防の最中、キャージの動きの隙にわずかな心理的揺らぎが生まれる。
    巨体が次の一歩を踏み出す瞬間、思考のひらめきが生まれる。——相手の刃が触れた瞬間、どう動けば無効化の範囲をかわせるか。

  • 701◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:35:33

    その瞬間、百鋭もまた先読みの力を最大限に働かせ、次の一撃を待つ。

    雨に濡れた石畳に、二人の戦いのリズムが刻まれる。
    ——拳と槍、速度と精度、能力と技術、予測と常識無視。
    二人の戦場は、雨音と振動に満ち、まるで生きているかのように動き続けた。

    そして、連続攻防の果てに、互いの視界と意識が完全に交錯する瞬間が訪れようとしていた。
    この戦いは、ただの力比べではない——心理、計算、直感、そして非常識の全てがぶつかり合う、真剣勝負の極地であった。

  • 711◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:36:31

    雨が止む気配はなく、街灯に反射する水滴が路地全体を鈍く光らせていた。
    連続攻防の中で、キャージ・スレイ・Jr.と百鋭は互いに消耗を感じつつも、その戦意を失うことはなかった。
    しかし、ここで戦局を左右する小さな“変化”が、二人の間に生じようとしていた。

    キャージは無表情のまま動き続けるが、彼の身体がほんのわずかに雨で滑った。
    普段なら問題にならないその差が、百鋭にとって見逃せないチャンスとなる。

    「……ここか」

    百鋭はその瞬間、鋭い勘で判断し、刃を微妙に傾け、キャージの攻撃軌道に合わせる。

    しかし、キャージもただの人間ではない。無表情の背後には、緻密な計算と、常識を超えた直感が潜んでいる。

    「……この角度……この力……」

    キャージは自分の巨体と速度を微調整し、わずかに異なる軌道からの攻撃を仕掛ける。
    だが、この微妙なタイミングのずれこそ、戦局の転機となる。

    百鋭は長年の経験で、相手の心理と戦闘パターンを分析している。
    キャージが攻撃の連続をわずかに崩したその瞬間、槍を正確に合わせる。
    刃が触れた部分だけで能力を殺す異能殺しの力が、キャージの動きを制限し始める——
    通常なら無効化できない角度で、キャージの速度と常識無視の動きを封じるのだ。

    「……なるほど、これが……」

    キャージは初めて、戦闘中に少しの驚きを見せる。
    わずかに目を見開き、頭の中で次の対応を考える——しかし、百鋭もそれを見逃さない。
    視界の死角を埋めつつ、槍の角度をさらに微調整し、次の攻撃ラインを作る。

  • 721◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:36:44

    雨に濡れた石畳に、二人の足跡が刻まれる。
    互いの攻撃が交錯し、拳と槍がぶつかるたびに振動が街全体に伝わる。
    キャージは物理法則を無視する動きで反撃を試みるが、百鋭の先読みと刃の微調整により、思うように攻撃は通らない。

    ここで、戦局の“転機”は二つの意味を持つことになる。
    一つは、キャージの常識無視の能力が、百鋭の経験と技術によって初めて封じられたこと。
    もう一つは、百鋭自身もまた、キャージの予測不能な動きにわずかな不安を抱き始めたこと。
    両者が互いに初めて“相手を完全には掌握できない”ことを意識した瞬間だった。

    そして、百鋭は槍の先端を雨に濡れた石畳に軽く突き立て、周囲の振動と水の跳ねを感じ取る。

    「……動きの微妙な変化……ここで仕掛ける」

    計算し尽くされた刃が、キャージの次の動きを予測して待つ。

    キャージは一瞬の隙に気づく。

    「……読まれている……だが……」

    その瞬間、戦闘のリズムが変化し、連続攻防のテンポが崩れる。
    雨粒が二人の間を舞い、路地の静寂を破壊する音が、まるで戦場の鼓動のように響き渡った。

    戦いの転機——それは、互いの心理と能力のせめぎ合いの中で、初めて生まれた均衡の崩れであった。
    ここから先は、単なる力比べではなく、戦術と予測、心理と経験が交錯する、より深い戦いへと突入していく。

  • 731◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:37:48

    雨はついに小降りになり、路地には水溜まりと破れた瓦礫、そして血の匂いが混じり合っていた。
    連続攻防の果て、キャージ・スレイ・Jr.と百鋭は互いに疲労を抱えながらも、最後の力を振り絞る状況に至っていた。

    キャージは無表情のまま背後から現れるが、以前のような無敵感は薄れていた。
    百鋭は槍を握る手に力を込め、わずかに傾いた視界でキャージの動きを読み取る。

    「……最後の一手だ」

    その声には、冷静さの中に僅かな緊張が混じる。

    キャージは常識を超えた動きで前進するが、雨で滑る石畳と、百鋭の微妙な刃の調整が彼の動線を制限する。
    刃が触れた瞬間、異能殺しの力がキャージの常識無視の行動を封じ、巨体は一瞬硬直した。

    その瞬間、百鋭は槍の重みを活かして反撃に転じる。

    「……ここだ!」

    水溜まりを蹴り、足場の不安定さを逆手に取り、槍の一撃がキャージの肩をかすめる。
    通常なら刃が触れた瞬間に無効化されるはずの異能も、接触のタイミングを完璧に合わせることで、キャージの速度を完全に殺す。

    キャージは初めて、無表情の奥に焦りを見せる。

    「……予測されている……だが……」

  • 741◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:38:21

    心の奥底で常識無視の動きを再構築しようとするが、身体が思うように反応しない。
    百鋭はそのわずかな隙を逃さず、槍を振り下ろす。刃先が触れる瞬間、キャージの動きは完全に封じられた。

    雨が止み、路地に漂う静寂の中、キャージは膝をつき、初めて人間としての限界を知る。
    百鋭は呼吸を整え、槍を軽く構え直す。

    「……これで終わりだ」

    その一言は冷徹で、だが正確無比な戦闘の証明でもあった。

    キャージは無言で頷き、微かに頭を下げる。
    戦闘経験や常識の範囲を超えた力を持つ彼であっても、百鋭の技術と経験の前では、圧倒的に不利だった。

    戦闘後、路地には二人の影だけが残る。
    雨水が足元で反射し、破れた瓦礫と水たまりが静かに揺れる。
    百鋭はその中で、戦いの余韻を噛み締めながら、キャージの無表情を見つめる。

    「……強者だった……だが、力だけでは勝てぬ」

    キャージもまた、初めて自らの限界を理解し、人間としての一面を垣間見る。
    無言のまま立ち上がり、雨の中をゆっくりと歩き出す。
    その背中には、敗北の痛みとともに、次なる成長への予感が漂っていた。

    戦いは終わった——だが、両者の魂には、互いの存在が深く刻まれたままだった。
    力と技術、常識無視と先読み、経験と直感——それらがぶつかり合った果ての決着は、静かでありながら、誰の目にも鮮烈なものとして残ったのである。

  • 751◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:39:00

    以上

  • 761◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 21:39:40

    安価は22:30より10個募集

  • 77二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 21:47:20

    槍術つえー

  • 78二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:00

    名前:河の荒御魂、あるいはミヅハ
    年齢:約5000年(現在の人格を獲得してから約400年)
    性別:女(自称)
    種族:水妖
    本人概要:水気に宿る意識体。井戸や川に話しかけると、ごく稀に返事をする。
地下水脈を主な棲家とし、河川の流路を変えて田畑を干上がらせたり、鉄砲水で村を流したりして人間を困らせるのが好き。
    砕けた柔らかい口調で、人間との会話を好むが、人の話を真面目に聞かないし個人を識別しない。
    能力:水行末
    能力概要:水それ自体がミヅハの肉体であり意識である。水蒸気や流水として河川や風雨等の自然現象に乗って移動するほか、土壌に浸透して地形ごと動かすこともできる。敵対者には暴風雨、洪水、濃霧として振る舞う。
    弱点:ある程度まとまった水にのみ意識があり、分散すると支配が外れる。最大質量約92,0000トン。基本的に呑気な性格だが、分散による意識の喪失を極めて恐れている。
    要望(任意): 気さくだがかなりいい加減な言動をする。敵対中にも概ね危機感を持たない。

  • 79二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:00

    名前:山郷坊
    年齢:48歳
    性別:男性
    種族:人間
    本人概要:般若心経に傾倒し観自在菩薩と同様の悟りの境地へと至った盲目の僧侶。
    毎日少なくとも100回般若心経を復唱しており、自身の細胞の隅々にまで般若心経の教えが浸透している筋金入り。
    異教徒を悉く滅ぼすために活動中であり、般若心経を唱え終わった後に放つ錫杖の一撃は想像を絶する威力。
    能力:≪般若波羅蜜多≫
    能力概要:観自在菩薩が行き着いた【智慧を完全に理解し悟りの境地へ到達した境地】。
    悟りの力によって偽りなく真にあらゆる苦痛や傷を取除くことが出来る。
    仏説摩訶般若波羅蜜多心経
    観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空
    度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空
    空即是色 受想行識亦復如是 舎利子 是諸法空相
    不生不滅 不垢不浄 不増不減 是故空中
    無色 無受想行識 無限耳鼻舌身意 無色声香味触法
    無眼界 乃至無意識界 無無明亦 無無明尽
    乃至無老死 亦無老死尽 無苦集滅道 無智亦無得
    以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故
    心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒夢想
    究竟涅槃 三世諸仏 依般若波羅蜜多故
    得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多
    是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪
    能除一切苦 真実不虚 故説般若波羅蜜多呪
    即説呪日 羯諦 羯諦  波羅羯諦 波羅僧羯諦
    菩提薩婆訶 般若心経
    弱点:攻撃するたびに般若心経を読み上げなくてはならないため大きな隙が出来る。
    盲目であるため錫杖を鳴らして周囲の状況を把握しており、音を乱されるのに弱い。

  • 80二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:00

    名前:八ツ辻 襖
    年齢:16
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:ある種の異能を保有する一族「八ツ辻家」の一員 基本的に臆病な性格だが…?
    ちなみに襖という名前なのはその力を発現する事が予言されていたから
    能力:襖
    能力概要:指定した空間に自分しか操作できない頑丈な両開きの襖を設置・固定する 襖のサイズは縦横比に制限こそあれど自由自在だし襖を閉じることで挟まれた部分を消滅させることによる強制切断や襖で攻撃を逸らすことはもちろん触れた物体を襖化することで強制的に開けたり閉じたりできる
    弱点:能力を発現したてで力がまだ馴染んでいないので同時に展開できる襖は8つまでだし操作できるのは1つだけ あと展開する襖の数が増えると耐久が分散されて落ちるし襖は開閉以外の操作は不可

  • 81二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:00

    名前:埋葬者
    年齢:既に忘却している(見た目は15歳くらい)
    性別:女性
    種族:死人
    本人概要:身体に包帯を巻いた褐色の少女、黄金や装飾品を纏い、鎖付きの棺桶を引いている、可愛い顔して性格は割と尊大
    能力:埋葬
    能力概要:地を割り、砂と亡者達の手を操りあらゆる者を埋葬する
    また埋まっているものならば「埋葬品」として取り出して過程をすっ飛ばして利用する権限を持つ
    また既に「埋葬」されている者である埋葬者は既に死んでいる存在である為、身体を吹き飛ばされてもその活動を停止させる事は出来ない
    弱点:引いている棺桶の中のミイラの心臓を滅する事で完全に滅ぼす事が出来る
    埋葬品の一回の戦闘で使用回数は各一回のみ
    亡者は数が多いだけで一体一体はそんなに強くない
    また彼女は生前に片目を奪われた影響で半永久的に左側の眼が見えない
    その為彼女から見て左側の空間に関しては反応が遅れ、能力の操作も甘くなる

  • 82二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:00

    名前:大火の主・フラムゴール
    年齢:1000以上
    性別:無し
    種族:悪魔
    本人概要:甘い不死の誘惑で数多の人間に終わらぬ苦痛を振り撒いた炎の大悪魔。黒山羊の頭に獅子の立て髪、巨人の肉体を持った怪物。性格は傲慢だが、狡猾で邪悪の極み。炎を操る魔術師としても一流だが、戦士や魔術師としての誇りは待ち合わせておらず、罠や人質、騙し討ちなど卑劣な手段も好む。人間はおろか同族でさえも薪程度にしか思っていない。
    能力:不死の炎
    能力概要:生物から死を奪い、永遠の灼熱に捕える消えることのない呪われた炎。囚われた生物の苦痛を薪として力を増してゆく性質を持つ。彼はその炎を用いて様々な強大な魔術を行使する。
    ・炎に包まれたアンデッドの軍勢を召喚できる。彼らは不死の炎に囚われた犠牲者たちであり、フラムゴールはそうした者たちを支配しいつでも召喚出来る。死ぬ事も出来ずに苦しみ続ける彼らは、救いを求めて近くの生者を目指す。そんな彼らを嘲笑う様にフラムゴールは彼らを生きた爆弾として利用する。彼の意思一つで彼らの肉体は不死の炎による大爆発を引き起こし、更に多くの生物を炎に捕え支配する。アンデッドたちは不死であるが肉体破壊で戦闘不能にできる。ただし肉体破壊時にも同様の爆発が起こるので注意。
    ・不死の炎は治癒にも転用可能。自身の治療や破裂や破壊されたアンデッドたちを修復し繰り返し爆弾として再利用する。
    ・致命傷を受けた場合は不死の炎が暴走し、炎が全身を包むことで攻撃性能が跳ね上がる。全身が焼け爛れ、発狂し理性なき炎の獣と化したそれには最早魔術を使うことも戦略を考える余裕も残されていないが、見境なく凶暴に暴れ狂う。行動原理は復讐ただ一つでありどんな攻撃にも怯むことなく襲いかかってくる。更なる追撃で肉体を完全に破壊することで倒せるが、肉体破壊時に道連れ狙いの極大爆発を起こすので注意。
    弱点:胸の中心部に真紅の宝石が埋め込まれており、それが彼にとっての心臓であり核。弱点故に警戒されるが、破壊すれば致命傷となる。悪魔という種族上、強力な光や浄化といった神聖な力にも弱く、大ダメージを受ける。
    要望(任意):敗北時は核破壊→致命傷→暴走大暴れ大爆発→道連れに出来なかった場合めちゃくちゃ恨めしそうにしながら死亡みたいな流れでお願いします。

  • 83二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:00

    名前:文豪从番
    年齢:0歳
    性別:なし
    種族:AI
    本人概要:一号やニダイメなどの経験を活かし作られた完全自立型AI。
    能力:「知」
    能力概要:相手の感情や能力、体の状態まで全てを知ることができる。発動条件は1秒以上相手を見ること。能力自体はそれだけだが相手に合わせて体を変形させることで、無類の対応力を持つ。プライバシーの概念が無いので、基本的に人間に嫌われている。自分には何かが足りないと常に感じており、多くの人に会い、その命の散り際を見ることでそのその人を理解しようとしている。
    弱点:器用貧乏なので、相手の得意分野で勝つことはできない。
    要望(任意):命の大切さを気づかせてやってください。

  • 84二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:00

    名前:フォーミュラ
    年齢:???
    性別:男性
    種族:人間
    本人概要:この世の全てを数式で表せると考え、世界を数式に変換している狂人。フォーミュラは《ケ_カ_ィオス・"ゲニー_/EN_セン"_JOY /》が能力を己に使い続けた結果、存在が崩れて混沌に関する能力を得たのを見た。それを見た故に、己を数式で表せばさらに世界を数式で表せられると思考し、己を数式に変更した。結果、名前が数式を表す言葉フォーミュラになり、世界が彼を認識する形が少し数式になってしまった。その対価に《イクエーション》が強化された。
    能力:《イクエーション》
    能力概要:ありとあらゆる物・生命を数式に変換出来る能力。数式に変換されたら、その姿は誰にでも見える数式で構成される。物を数式に変換し、数式の問題を解いたら分解して再構成したり、生命を数式に変換し、数式の問題を解いたら設定の改変が出来る。自分を数式に変換し、数式の問題を解いた場合は自分の身体能力を弄れて、あらゆる競技のプロレベルの身体能力を得る。ただし、対象が複雑である程、変換される数式も高度かつ難解になり、解読には多大な演算能力が必要になる。数式を解く方法は、計算である。
    例 単純な場合は、-5×-25の数式などになる
    弱点:存在が数式になってしまった為に、七つの数式に覆われており、数式を解かれると身体能力が数式を解いた者が好きに変更出来る。
    欠損や姿形が変化などの変化した場合はまた数式を組み立てしないと、能力が発動しない。
    自分自身を理解している為、自身を数式にする場合は、比較的簡単な数式になってしまう。
    《イクエーション》は感情を変数としているので、感情を持つ存在には少し時間が掛かる。

  • 85二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:00

    名前:怨霊ダイナソー

    年齢:定義不能

    性別:定義不能

    種族:地縛霊+バイク+恐竜+怨念

    本人概要:

    正式名称は『幽霊バイカー・恐竜形態<暴走モード>』

    幽霊バイカーが燃料兼怨念エネルギーとして石油燃料を取り込みすぎた結果、恐竜たちの怨念に逆に呑み込まれてしまった暴走形態。

    半透明・紫色の恐竜がバイクのパーツを鎧として身に纏ったような姿をしている。

    無数の恐竜の怨念の集合体と化しているため、ティラノサウルスやプテラノドンなど状況に応じて様々な恐竜の形態へ切り替えが可能。

    恐竜に自我を乗っ取られていることにより、念仏をはじめとする浄化能力は一切効かない。野生に人間の常識は通用しない。

    能力:怨念吸収

    死体や霊的存在を吸収することで自分の力を無制限に強化し続ける。

    石油は恐竜たちの死体の凝縮物なので、ガソリンを食うと超高効率で強化される。

    モノ=ス料理を食っても超強化される。

    弱点:

    ・炎に非常に弱い。ガソリンを大量に取りこんでいるため派手に燃える。

    ・塩にも弱い。バイク部分が錆びる。お清めは特に関係ない。塩水だと効果倍増。

    ・恐竜に意識を乗っ取られているため思考が単純。読み合いや駆け引きに弱い。

    要望:

    決して言語を喋らせないでください。吼えるのはかまいません

  • 86二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:01

    名前:”血統裁判”ギヨタン・ド・タンバ
    年齢:34
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:凄腕の処刑人にして剣客。常に喪服のように漆黒なスーツを着て、首に縫い目がある痩せぎすの男。
    その処刑の腕前は卓越しており、どのような処刑方法にも精通しているが、特に斬首刑に関しては文字通り”薄皮一枚”遺す斬首技術を持っている。
    彼の目的は存在すら許されぬ悪人を処刑すること。
    そのために彼は”悪”の気配を探し世界中を巡っている。
    能力:血統裁判”アヌビス・ルール”、魔剣”アメミット”
    能力概要:あらゆる処刑方法に精通した彼が生み出した処刑法。
    この処刑法は善なら生を、悪なら死を与える絶技であり、ただ相手を一目見ただけで善人か悪人かを判別できる眼力と卓越した処刑技術の結晶である。
    これは通常の刀剣で行った場合であり、彼が持つ魔剣”アメミット”を用いた場合は以下のようになる。
    魔剣アメミットは罪人の心臓を喰らう神獣の牙を加工したダチョウの翼のような短剣である。
    この魔剣で絶技”アヌビス・ルール”を発動した場合、善なら祝福で病や不運を癒やし祝福を与えるが、悪の場合はその者が過去に起こした悪事とこれより先に起こす悲劇全てを斬首する。
    即ち、悪人が存在したという証明……血統を処刑するのである。
    弱点:昔修行していたときにうっかりミスで自分の首を半分くらい切ってしまったため首をうまく動かせない。そのため、相手をすぐに見失いがちであり、さらに首に強い衝撃を与えると古傷から血が溢れ出してしまう。
    さらに、アヌビス・ルールは相手を見ていなければ発動できず、アメミットは非常にリーチが短いという欠点もある。
    要望(任意):相手が善人なら腕を鍛えるための修行として手合わせを、悪人なら自分か相手が亡くなるまで死合うようにしてほしいです。

  • 87二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:01

    名前:邪怨ニア
    年齢:20代?
    性別:男
    種族:人間?
    本人概要:哀れにも邪神と怨神の二人がお遊びで作り現世に置いた二つの神具を発見し触れてしまったことで狂った
    元は久那土帝国史に名を残す程の才覚があり【二刀流極めし葛葉 ニア】と世界中に名が轟く武士だった
    しかし今は二つの神具に侵食され何かを斬ることに執着している狂人?と化している 
    能力:邪怨
    能力概要:邪刀【ニャルラト】と怨刀【崇魔】を扱う
    邪刀【ニャルラト】
    「万物を冒涜する邪刀」
    邪神により作られた邪刀 斬ったものを冒涜し悍ましい何かへと変貌させる力を持つ
    空間を切れば悍ましい異界に、機械を斬れば冒涜的な何かになど……
    変貌させたものは基本邪刀所有者に操られるうえ過去現在未来からそうであったと言った形に改変させられる 
    所有者の存在を冒涜し作り変える特性を持つ

    怨刀【崇魔】
    「万物に怨嗟をぶつける怨刀」
    怨神により作られた怨刀 所有者に凄まじい怨嗟の力を授け斬った相手に概念的な呪詛を与える力を持つ
    所有者は怨嗟の力を元に瞬間移動や怪力など怨霊が出来そうなことは大体出来る様になる
    また斬ったものには凄まじい呪詛が与えられる
    所有者に永続的な凄まじい怨嗟の感情と力を植え付ける特性を持つ

    弱点:二つの神具に侵食されている為本来の優れた思考判断能力がとても鈍っている その為
    相手が工夫した攻撃などには対応仕切れない また攻撃の動作も大振りで分かりやすい
    邪刀による存在冒涜は数秒の猶予があり掠り傷などで有ればその部分を切除することで全体に広がることを防げる
    怨刀による怨霊の能力は複数同時発動は不可能 例としては瞬間移動をしながら怪力で攻撃などは無理 
    身体能力は人間のそれと変わらず特別なものは怨刀使用時以外は何も備わっていない
    要望:喋るけど斬る斬るとぶつぶつと独り言を言ってる感じで話が通じない感じだと嬉しいです

  • 88二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:01

    名前:佐藤 武(さとう たけし)
    年齢:75歳
    性別:男
    種族:人間
    人物概要:佐藤清の父親であり佐藤智の夫で佐藤兄妹(雪、蓮、純、凛、命&聖、和)のおじいちゃん
    身長200cm以上、白髪オールバックで筋骨隆々の大男、常に笑顔でがははと大笑いする事が多い破天荒なお爺さん
    長年、防衛隊という組織の幹部として努め無数の命を助けてきた英雄で腐敗した組織の改革に積極的な人物の一人
    裏表のない豪快で漢らしく熱血で気持ちの良い性格で破天荒ながら誰よりも平和の為に動き多くの国や種族の危機を救った実績を持つ
    どんな強敵と相対しても豪快に笑いどれだけ傷付いても獰猛に喰らいつき最後まで己の拳で勝利をもぎ取ろうとする戦闘狂
    能力:闘争の主
    能力概要:時間経過で少しづつ「強く」なっていく力
    少しづつ少しづつ着実に着実に戦えば戦う程に彼は強くなっていき少しずつではあるものの際限なく強くなってゆく
    戦う時間が長引くほどに身体能力や防御力、持久力が強くなってゆき果てしなく果てしなくどこまでもどこまでも強くなる
    時間経過と共に身体能力、耐久力、持久力などの基礎スペックが少しずつ増しある程度に経つと遠距離攻撃や能力抵抗も可能となる
    次第に拳は一発で概念を打ち砕き速力は光をとなり身体はどんな武器や神の権能すら通さなくなり闘神の如き力を発揮する
    その強さは異名である「闘神」に違わぬ程であり時間こそかかるが戦えば闘うだけ脅威となってゆく力である
    弱点:能力の性質上、強くなるには時間が掛かるスロースタータータイプで最初の数分は能力の本領を発揮できない
    身体能力、持久力共に凄く身体も人並み以上に頑丈だがあくまで人並み以上であり過信できる程でもない
    身体がデカいので攻撃が当たりやすく戦闘スタイル的にゴリ押し多めなのでただでさえ当たりやすい攻撃がより当たりやすい
    時間を掛けてある程度の強さになるまでは遠距離攻撃や能力抵抗は解放されず最初の段階だと遠距離や能力への対抗手段は少ない
    攻撃は一撃一撃の火力がヤバいが比較的に大振りで能力によって攻撃速度が上がっていない最初の何分かは回避が容易である
    要望:豪快で漢らしい口調でお願いします
    一人称は「わし」

  • 89二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:01

    名前:王 神龍(ワン シェンロン)
    年齢:不明
    性別:男
    種族:龍神(神鱗)
    人物概要:長安帝国の裏の最高指導者。見た目は赤い角と尻尾が生えた、踵まで届くレベルで長い黒髪の男性。両目を黒い布で完全に覆っている。陽気で心優しい昼行灯だが、政治と軍略を極めたキレ者でもある。趣味は盤上遊戯。
    遥かな過去において全ての王、全ての神格と魔王を一騎討ちにて屠り、全世界を征服して長安王朝と〝ヒト〟の時代を築き上げた初代皇帝(神祖)にして征服王。戦乱を平定し、世に平和をもたらしたが、何度も何度も内乱を引き起こし国を分裂させる家臣達に失望し、自らを自らの手で封印した。(分裂したあと紆余曲折あって現在の領土に落ち着いた)
    現代の長安にて、未定が長安に再来した際に自国の分体だけでも確実に殲滅し得る戦力として現皇帝の手で呼び起こされた。当初は諸外国侵攻のための兵器や錦の御旗にするつもりだったが、全く言うことを聞かない上に、本気を出されると国の全てを持ってしても全く太刀打ちできないので完全に持て余している。
    政治にも戦争にも興味なく、自ら施した封印により『世界を救う』ような戦いでなければ力が大幅に制限される。そのため、国と民を守護する際と、気になった相手の力試しを行う際にのみ自ら打って出る。
    能力:龍神としての能力、倚天剣
    能力概要:・固有能力は時間操作。赤龍(ショクイン)は時間を司る神である。全宇宙の根本的な法則を根底から丸ごと書き換える力に他ならない。時間停止、巻き戻し、早送り、時飛ばし、何でもござれ。
    ・倚天剣は『概念としての天』を貫く神剣。時間ごと敵対者を切り裂いてしまう絶対の力である。
    弱点:・『未来や過去が見えすぎる』という理由で両目を自ら潰しているので視力が全くない。特殊な感覚器官で周囲を知覚しているが、動きを止めて静止した相手を捉えることができない。(莫大な魔力持ちなら動いていようがなかろうが普通に分かる)
    ・倚天剣は世界の存亡を賭ける規模の大敵との戦いにのみ抜き放ち、その力を発揮できる。でなければ硬いだけの鉄棒でしかない。
    ・能力で時間を弄った後、弄った時間分のクールタイムを置く必要がある。
    ・巻き戻しで自分の命や負傷を再生することはできない。
    ・皇帝は前線にあり、民を導き護り抜く者。という矜持ゆえ、相手の攻撃を一切避けないプロレススタイルを貫く。

  • 90二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:01

    名前:リラ=トーファ
    年齢:17才
    性別:女性
    種族: 人間
    本人概要:何気なく遍く黒を白に塗り潰してしまえる鬼神...の気配に中てられた世界がバグって生み出してしまった神霊が僅かに力を与えた一族の末裔。
    性格は朗らかで慈しみ深い。それでいて力に振り回されない強い心を持っている。
    容姿は滑らかな銀髪に透き通るような瞳。玉が嵌め込まれた杖を持ち、光熱に耐性のあるローブを身に纏っている。身体能力は低めだが反射神経は高い。
    能力:光熱支配
    能力概要:自身に眠る光や熱を操る能力を、杖媒体で解放する。ただし人の身に余る力ゆえに連発は不可能。
    弱点:能力は杖媒体であるため、杖を奪われるなり壊されるなりすれば無力化される。

  • 91二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:30:41

    早すぎィ!

  • 92二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:32:59

    1 秒 !

  • 931◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 22:33:56

    審査

  • 94二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:36:01

    はえぇ

  • 951◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 22:37:46

    >>78

    >>83

    相手がつける弱点の提示を22:50までにお願いします

  • 96二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:37:59

    今回はアウトあるかな?

  • 97二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:41:48

    どうでしょう

    名前:河の荒御魂、あるいはミヅハ

    年齢:約5000年(現在の人格を獲得してから約400年)

    性別:女(自称)

    種族:水妖

    本人概要:水気に宿る意識体。井戸や川に話しかけると、ごく稀に返事をする。
地下水脈を主な棲家とし、河川の流路を変えて田畑を干上がらせたり、鉄砲水で村を流したりして人間を困らせるのが好き。

    砕けた柔らかい口調で、人間との会話を好むが、人の話を真面目に聞かないし個人を識別しない。

    能力:水行末

    能力概要:水それ自体がミヅハの肉体であり意識である。水蒸気や流水として河川や風雨等の自然現象に乗って移動するほか、土壌に浸透して地形ごと動かすこともできる。敵対者には暴風雨、洪水、濃霧として振る舞う。

    弱点:ある程度まとまった水にのみ意識があり、他者からの干渉などによって水を散らされると支配が外れる。最大質量約92,0000トン。基本的に呑気な性格だが、意識の喪失を極めて恐れている。

    要望(任意): 気さくだがかなりいい加減な言動をする。敵対中にも概ね危機感を持たない。

    >>95

  • 981◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 22:43:58

    >>97

    水に攻撃を加えるのが難しいんです

    核とかを用意してください

  • 99二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:47:51

    >>97

    横からだが一定以上の攻撃を喰らうとどんな攻撃でも水が散らばってしまう

    水が散らばると支配が外れるみたいなのは?

  • 1001◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 22:49:29

    >>99

    92.000tあるっていう設定がノイズですね

    それだと実質討伐不可能です

    今回はお見送りでお願いします

  • 101二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:49:43

    >>98

    弱点:人間の頭部程度の大きさの中心核で全体を制御しており、崩されると全体の支配が外れる。最大質量約92,0000トン。基本的に呑気な性格だが、分散による意識の喪失を極めて恐れている。

    これでどうでしょうか

  • 102二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:50:25

    弱点でわざわざ最大質量約92,0000トンってのがいらないと思うぞ……
    核の追加は良いと思う

  • 103二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:50:30

    修正案がギリギリ滑り込んだがどうか

  • 104二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:50:31

    時間か
    今回はモノス安価もあるし繰り上がりでええんでない?

  • 1051◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 22:53:07

    >>101

    質量がどうしてもネックですね

    今回はなしです

    繰り上げで

    >>88

    >>90

    が採用です

    神龍は入れても調整が入るのではじきます

  • 106二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:56:07

    神龍ダメだったかーどこら辺がダメ?

  • 1071◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 22:56:52

    >>106

    時間操作のあと同じ時間だけクールタイムってありますけど

    10分時間止めたらクールタイム入る前に全部終わります

  • 108二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 22:57:43

    >>107

    なるほどなー

    『時間操作中は攻撃不可』とか付け加えたら大丈夫な感じ?

  • 1091◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 22:59:41

    >>108

    時間操作系は操作できる時間の制限を付けないとだめですかねぇ

    5秒止めるだけでも致命的ですし攻撃できなくてもいくらでもやりようはありますからね

  • 110二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 23:02:06

    時間操作系は全部ダメ!って思っといた方がいいな

  • 111二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 23:07:08

    時間操作系で過去にクロネスとかいたぞ!そいつは時間停止も普通に使ってた

  • 1121◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 23:09:39

    >>111

    それ何スレ目のやつですか

  • 113二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 23:12:23

    >>112

    2スレ目のレス番595ですね

    ただ能力としては数秒の効果に対して数分のクールダウンというバランスだったようです

  • 114二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 23:12:44

    >>112

    第63試合の奴だからだいぶ前だなぁ神龍に比べると基礎スペックが低い感じはするけど

  • 115二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 23:13:52

    時間停止は数秒しか出来ずクールタイムが1分以上ある 
    まあ時間停止はこれぐらいの制限無いとな 後基礎スペックが高いと許されない代物

  • 116二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 23:16:18

    >>112

    あっちなみに111は時間操作系は全部駄目は極端だぞ!って感じにレスしたので

    スレ主の判断がおかしいみたいな意図は無いですよ 神龍のスペックで時間停止はやばいし

  • 117二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 23:18:12

    数秒間時間停止したところで人間スペックでどうやって戦うのよ?という別の問題が発生するな。
    まぁ初期の大らかな時代の産物だし、今じゃ通用しないだろう

  • 1181◆ZEeB1LlpgE25/08/16(土) 23:22:56

    まあ2スレ目とかルールがしっかりしてませんでしたしね

    今はもうだめです


    >>79

    >>80

    >>81

    >>82

    >>84

    >>85

    >>86

    >>87

    >>88

    >>90

    が採用です

  • 119二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 08:39:21

    ほしゅ

  • 1201◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 11:03:47

    フォーミュラvs山郷坊
    佐藤武vs大火の主・フラムゴール
    邪怨ニアvs怨霊ダイナソー
    ”血統裁判”ギヨタン・ド・タンバvs埋葬者
    八ツ辻 襖vsリラ=トーファ

  • 1211◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 14:48:16

    題名『数式と智慧の極限戦争』

  • 1221◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 14:49:36

    雨に濡れた倉庫街は、夜の闇と鉄の匂いに支配されていた。水たまりに映る街灯の光が、赤黒く歪んで揺れる。

    その闇の中、静かに佇む一人の男――フォーミュラ。

    長い白衣は濡れていながらも形を崩さず、掌には青白い光がゆらめく。彼の瞳は虚数を映すかのように冷たく、世界を数式の羅列として見ていた。

    「この世界も、全て数式で表せる……」

    低く呟く声は、倉庫街の静寂を切り裂く。

    彼が指を動かすと、空気中の埃が瞬時に座標に変換され、倉庫の壁や梁が複雑な方程式の立体モデルに変わった。鉄骨は虚数の曲線となり、木材は立方体の数列に分解され、空間そのものが数学の問題に変貌していく。

    そのとき、遠くから音もなく現れた影があった。盲目の僧侶――山郷坊だ。

    杖を片手に、ゆっくりと地面を探りながら歩く。視覚はない。だがその耳と身体に沁み込んだ般若心経は、空間の微細な揺れ、風の流れ、音の反響から、周囲の情報を完璧に読み取る。

    フォーミュラは一瞬にしてその存在を数式に変換しようとした。しかし、山郷坊の「智慧」は数式の計算外にある。式を解こうとしても、変数としての動きや反応が固定されており、簡単には書き換えられない。

    「……やはり、計算だけでは全てを制御できないか」

    フォーミュラは不敵に微笑む。

    手を振るうと、倉庫の梁が空中で絡み合い、虚数の曲線の刃として襲いかかる。粉塵が舞い、音もなく迫る数式の斬撃は、まるで空間そのものを切り裂くようだ。

    だが山郷坊は杖を床に軽く叩き、音波で攻撃の軌道を読み取る。

    「心経!」

    声は低く、しかし空間に響き渡る。杖先が空中の数式の刃を弾き、粉塵と梁が衝突する。まるで計算されたかのような精密な回避。数式の嵐が山郷坊の智慧に阻まれ、虚空に散らされていく。

  • 1231◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 14:49:50

    「なるほど……感覚も変数か……」

    フォーミュラは掌の光を増幅させ、数式の刃を倍に増やす。空間の全てが計算式で覆われ、彼の視界は世界の数値と座標で満たされた。梁も壁も、空気さえも、すべて解析され、攻撃の軌道が計算される。

    しかし、山郷坊は動じない。杖を左右に振るたびに、空間を智慧で補正し、攻撃を物理的現実として読み取り、避ける。粉塵の舞う倉庫の中で、静かな動作が異様な緊張感を醸し出す。

    「さあ、これからだ」

    フォーミュラの目が青白く光る。

    数式で世界を支配する男と、智慧で現実を制する僧侶――異なる力が、この倉庫街で激突しようとしていた。

  • 1241◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 14:50:54

    倉庫の中は、粉塵と雨水の匂いが入り混じり、静けさと緊張が支配していた。

    フォーミュラは掌を前に突き出し、空間に浮かぶ数式の刃を次々と操作する。

    「一、二、……六……七」

    声は囁きにも近く、だが計算は正確無比だ。梁や鉄骨は分解され、光の刃として山郷坊に迫る。

    山郷坊は杖を握り直すと、深く息を吸い込む。

    「般若心経……!」

    唱えるたびに空気が振動し、数式の刃の軌道を微妙にずらす。刃は空間に散らされ、無力化されるわけではないが、僧侶の智慧が制御する壁に弾かれ続ける。

    フォーミュラは眉をひそめ、指先で数式の刃を高速で再構築した。梁や柱の断片が連鎖的に光の刃となり、山郷坊を取り囲む。

    だが僧侶は杖を床に叩きつけ、音の反響で周囲の数式を読み取る。動きを一切妨げられず、彼の身体は精密な座標上で最適な軌道を描いていた。

    「……なるほど、感情や意図も数式の変数になるのか」

    フォーミュラの目が光を増す。

    次の瞬間、掌から放たれた数式の刃が一斉に回転し、倉庫全体を切り裂く勢いで飛んできた。梁や壁の破片さえ光の刃に変換され、無数の方程式が実体化して迫る。

    「む……!」

    山郷坊は杖を横に振り、空中で跳ねる刃を弾く。粉塵と光が渦巻き、倉庫の天井に衝突音が響く。

    フォーミュラは短く笑った。

  • 1251◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 14:51:07

    「面白い……数式だけでは、まだ君を制御できない」

    山郷坊は杖を高く掲げ、般若心経を高速で唱える。

    「羯諦……波羅羯諦……」

    彼の身体が智慧と呼応するように、刃の進路が微妙に変化する。数式の刃は精密だが、僧侶の智慧に従った物理の壁が、その攻撃を押し返していた。

    フォーミュラの瞳がさらに冷たく光り、掌から新たな数式の刃を生成する。

    「ならば……世界の全てを、私の問題に変えてみせる」

    空間は完全に数式に覆われ、現実と虚数の境界が曖昧になった。梁も壁も空気も、全てが解析され、計算式の形を持った実体となる。

    しかし、山郷坊は動じない。杖を振るたびに、現実の壁を智慧で補強し、数式の刃を押し返す。粉塵の中で、異なる次元の力が衝突し、倉庫は微細な振動に包まれる。

    「……次だな」

    フォーミュラは掌を空に掲げ、全ての数式を一点に集中させた。

    倉庫街はまるで数式と智慧の嵐に飲まれるかのようだった。

  • 1261◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 14:52:26

    数式の刃と智慧の壁がぶつかり合い、倉庫内は粉塵と光で視界を遮られる。金属の梁や瓦礫が飛び交い、まるで時空そのものが歪んだかのようだった。

    フォーミュラは掌を回し、数式の刃を回転させる。刃は空間を切り裂き、無数の計算式がリアルタイムで生成されていく。

    「……なるほど、君は動きを感知して補正するのか」

    フォーミュラの声は冷たく、まるで計算の結果だけを述べるようだった。

    山郷坊は杖を地面に叩きつけると、空気が振動し、智慧の壁が瞬時に反応する。数式の刃は押し返され、方向を変えざるを得なくなる。

    「般若心経……!」

    声と振動が空間を支配し、数式の刃を微妙にずらす。刃は威力を保ちながらも、僧侶の制御する空間に弾かれる。

    フォーミュラは笑みを浮かべる。

    「面白い……やはり感情や意図も変数か」

    掌をひらりと翻すと、数式の刃が再編され、さらに複雑な軌道で山郷坊に迫る。

    しかし僧侶も動じない。杖を軸に回転しながら、空中で刃を弾き返す。智慧と経験が彼を守り、刃の軌道を一瞬ずらすだけで済ませる。

    「……次だな」

    フォーミュラは掌を空に掲げ、数式の刃を集中させ、全方位に展開した。倉庫全体が数式の網で覆われ、現実の壁も梁も全て解析され、変形していく。

    山郷坊は杖を縦に構え、深く息を吸い込み、般若心経を速く、正確に唱える。

  • 1271◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 14:52:36

    「色即是空……空即是色……」

    彼の言葉と呼吸が空間に干渉し、数式の刃の動きを微細に補正する。

    刃が迫る速度は凄まじい。空気の振動で耳が痛み、床は微細な振動で揺れた。だが、僧侶の智慧は刃の軌道を読み取り、正確に防御を組み立てる。

    フォーミュラは指を素早く動かし、刃を集中させて一点突破を試みた。刃は光の柱となり、山郷坊の頭上を貫こうとする。

    だが僧侶は杖を振り下ろし、空間の知覚を最大化させて刃を弾き返す。刃は衝撃で分解され、粉塵となって宙を舞った。

    「ふ……これが、智慧か」

    フォーミュラの瞳が光を増し、次の計算式を構築し始める。

    空間は、計算と悟りの衝突でさらに加速する。刃の速度も防御の応答も、人間の限界を超えた領域でぶつかり合っていた。

  • 1281◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 14:53:21

    倉庫の天井は崩れ、梁は折れ、粉塵が舞い上がる。数式の刃と智慧の波動が交錯するたび、空間の境界が歪み、現実と計算の境目が曖昧になっていった。

    フォーミュラは両手を広げ、全方向に数式の刃を展開する。刃は空中で折り重なり、光の迷路を形成していた。壁も床も天井も、数式で構成された仮想空間に変わっていく。

    「なるほど……ここまで空間を操作するとは」

    フォーミュラは興奮気味に呟いた。目の前の現象は計算だけでは完全に制御できない。人間の知覚や反応も変数として組み込まれているからだ。

    山郷坊は杖を胸元で交差させ、息を整える。閉じた眼から漏れる暗闇が、空間全体を包む。智慧の壁は完全ではないが、数式の刃の一部を阻み、破壊の範囲を制限する。

    「般若波羅蜜多……」

    僧侶が呟くたび、空間の歪みは微妙に修正され、刃は予想外の軌道を取らされる。粉塵の中、刃は錯乱し、計算を再構築する時間を稼がれていた。

    フォーミュラは唇を歪める。

    「なるほど……君の制御は経験と感覚の組み合わせか。数式だけでは再現できない……」

    掌をひらりと動かすと、刃の一部が自律的に変形し、空間を切り裂く。

    しかし山郷坊も動じない。杖を軸にして回転し、指先で空間の微振動を感じ取り、刃の進行を微妙に制御する。数式の刃が分解され、粉塵となって落ちていくたび、僧侶の周囲には小さな「空間の平穏」が生まれた。

    フォーミュラは額に手を当て、計算式を高速で再構築する。次の瞬間、数式の刃が集中して一点突破を試みる。しかし、僧侶は杖を大きく振り下ろし、智慧の壁が衝撃波となって刃を弾き返す。

    「……これは、予想外の抵抗だ」

    フォーミュラは微笑み、計算を再構築する手を止めない。空間そのものを変えようとする彼の行為は、倉庫の構造を越えて現実の法則を侵食していく。

    境界線は完全に崩壊寸前だった。光と粉塵、計算と智慧、破壊と防御が入り混じり、倉庫内部はもはや現実か幻想か判別できない状態になった。

  • 1291◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 14:55:17

    山郷坊は深呼吸を一度だけ行い、全身に智慧の流れを集中させる。数式の刃の動きが次第に鈍り、粉塵の中に僧侶の静かな姿だけが浮かび上がる。

    「……これで、どう動く?」

    フォーミュラは低く呟き、空間を解析し続ける。対する僧侶は静かに杖を握り、次の瞬間に備えた。

  • 1301◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 14:59:47

    倉庫の瓦礫の間を、数式の刃がうねるように飛び交う。空間の歪みは増し、天井の鉄骨が不規則に落下し始めた。粉塵に包まれ、辺りは視界も感覚も狂った世界となる。

    フォーミュラは低く唸る。

    「計算が……計算が狂い始める……」

    彼の頭の中では、刃の軌道、空間の変化、山郷坊の智慧の波動、全てが連動する数式として立体化している。しかし、僧侶の存在は単なる数式では読み切れない変数となっていた。

    「般若波羅蜜多……」

    山郷坊の声は粉塵の向こうで静かに響く。杖を振るうたびに、智慧の壁が空間に浸透し、数式の刃を吸収し、また再構成される。無数の刃が衝突し、粉塵と光の奔流となる。

    倉庫の瓦礫の間を、数式の刃がうねるように飛び交う。空間の歪みは増し、天井の鉄骨が不規則に落下し始めた。粉塵に包まれ、辺りは視界も感覚も狂った世界となる。

    フォーミュラは低く唸る。

    「計算が……計算が狂い始める……」

    彼の頭の中では、刃の軌道、空間の変化、山郷坊の智慧の波動、全てが連動する数式として立体化している。しかし、僧侶の存在は単なる数式では読み切れない変数となっていた。

  • 1311◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 15:00:35

    「般若波羅蜜多……」

    山郷坊の声は粉塵の向こうで静かに響く。杖を振るうたびに、智慧の壁が空間に浸透し、数式の刃を吸収し、また再構成される。無数の刃が衝突し、粉塵と光の奔流となる。

    「なるほど……君の防御は、時間と空間の干渉を利用しているのか」

    フォーミュラは目の色を変え、掌からさらに数式の刃を展開する。それは数十枚、いや数百枚にも及び、倉庫全体を包み込む勢いだった。刃は独自に軌道を選び、時折空間を切り裂く。

    しかし山郷坊も動じない。

    「我に干渉せよ……智慧の波動よ」

    杖を振るうと、刃が接触する前に空間が微妙に変形し、数式の刃は途中で分解され、粉塵に消えていく。

    フォーミュラは唇を歪めて笑う。

    「面白い……計算では説明できない干渉……だが、まだ理解できる……」

    彼は自らの身体も数式に変換し、反応速度を限界まで上げる。刃は倍速で飛び、山郷坊の防御の隙を狙う。

    しかし僧侶は動じず、杖を軸に全身で空間を感じ取る。目は盲目でも、音と振動で数式の刃の位置を正確に把握する。智慧の壁はさらに強固になり、粉塵の中で刃を遮断する。

    衝突が続く度、空間は揺れ、現実の法則は破れ、数式の理論世界と悟りの智慧世界が重なる。

    「……無限の干渉か」

    フォーミュラは低く呟き、次の手を考える。

  • 1321◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 15:01:37

    「このままでは、時間も空間も読めない……だが、解くしかない……!」

    山郷坊は静かに立つ。

    「我が智慧に干渉せよ。されど、誤りを生じることなかれ……」

    二人の干渉は加速し、粉塵の中、空間の揺らぎはさらに広がる。倉庫の壁は無数の亀裂を生み、床は沈下し、天井は落下し続ける。だが、二人の戦いは決して止まらない。

    世界そのものを巻き込む戦場の中で、数式と智慧の衝突は無限に続く——。

    「なるほど……君の防御は、時間と空間の干渉を利用しているのか」

    フォーミュラは目の色を変え、掌からさらに数式の刃を展開する。それは数十枚、いや数百枚にも及び、倉庫全体を包み込む勢いだった。刃は独自に軌道を選び、時折空間を切り裂く。

    しかし山郷坊も動じない。

    「我に干渉せよ……智慧の波動よ」

    杖を振るうと、刃が接触する前に空間が微妙に変形し、数式の刃は途中で分解され、粉塵に消えていく。

    フォーミュラは唇を歪めて笑う。

    「面白い……計算では説明できない干渉……だが、まだ理解できる……」

    彼は自らの身体も数式に変換し、反応速度を限界まで上げる。刃は倍速で飛び、山郷坊の防御の隙を狙う。
    倉庫の瓦礫の間を、数式の刃がうねるように飛び交う。空間の歪みは増し、天井の鉄骨が不規則に落下し始めた。粉塵に包まれ、辺りは視界も感覚も狂った世界となる。

    フォーミュラは低く唸る。

  • 1331◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 15:02:08

    「計算が……計算が狂い始める……」

    彼の頭の中では、刃の軌道、空間の変化、山郷坊の智慧の波動、全てが連動する数式として立体化している。

    しかし、僧侶の存在は単なる数式では読み切れない変数となっていた。

    「般若波羅蜜多……」

    山郷坊の声は粉塵の向こうで静かに響く。杖を振るうたびに、智慧の壁が空間に浸透し、数式の刃を吸収し、また再構成される。無数の刃が衝突し、粉塵と光の奔流となる。

    「なるほど……君の防御は、時間と空間の干渉を利用しているのか」

    フォーミュラは目の色を変え、掌からさらに数式の刃を展開する。それは数十枚、いや数百枚にも及び、倉庫全体を包み込む勢いだった。刃は独自に軌道を選び、時折空間を切り裂く。

    しかし山郷坊も動じない。

    「我に干渉せよ……智慧の波動よ」

    杖を振るうと、刃が接触する前に空間が微妙に変形し、数式の刃は途中で分解され、粉塵に消えていく。

    フォーミュラは唇を歪めて笑う。

    「面白い……計算では説明できない干渉……だが、まだ理解できる……」

    彼は自らの身体も数式に変換し、反応速度を限界まで上げる。刃は倍速で飛び、山郷坊の防御の隙を狙う。

    しかし僧侶は動じず、杖を軸に全身で空間を感じ取る。目は盲目でも、音と振動で数式の刃の位置を正確に把握する。智慧の壁はさらに強固になり、粉塵の中で刃を遮断する。

    衝突が続く度、空間は揺れ、現実の法則は破れ、数式の理論世界と悟りの智慧世界が重なる。

  • 1341◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 15:03:51

    「……無限の干渉か」

    フォーミュラは低く呟き、次の手を考える。

    「このままでは、時間も空間も読めない……だが、解くしかない……!」

    山郷坊は静かに立つ。

    「我が智慧に干渉せよ。されど、誤りを生じることなかれ……」

    二人の干渉は加速し、粉塵の中、空間の揺らぎはさらに広がる。倉庫の壁は無数の亀裂を生み、床は沈下し、天井は落下し続ける。だが、二人の戦いは決して止まらない。

    世界そのものを巻き込む戦場の中で、数式と智慧の衝突は無限に続く——。
    しかし僧侶は動じず、杖を軸に全身で空間を感じ取る。目は盲目でも、音と振動で数式の刃の位置を正確に把握する。智慧の壁はさらに強固になり、粉塵の中で刃を遮断する。

    衝突が続く度、空間は揺れ、現実の法則は破れ、数式の理論世界と悟りの智慧世界が重なる。

    「……無限の干渉か」

    フォーミュラは低く呟き、次の手を考える。

    「このままでは、時間も空間も読めない……だが、解くしかない……!」

    山郷坊は静かに立つ。

    「我が智慧に干渉せよ。されど、誤りを生じることなかれ……」

    二人の干渉は加速し、粉塵の中、空間の揺らぎはさらに広がる。倉庫の壁は無数の亀裂を生み、床は沈下し、天井は落下し続ける。だが、二人の戦いは決して止まらない。

    世界そのものを巻き込む戦場の中で、数式と智慧の衝突は無限に続く——。

  • 1351◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 15:04:58

    粉塵と瓦礫が舞う廃倉庫の中、数式の刃と智慧の壁は衝突を繰り返していた。空間の歪みは極限に達し、重力も光も時間も、すべてが二人の戦いに飲み込まれていく。

    フォーミュラは額に汗を浮かべながら掌の数式をさらに加速させる。刃は倉庫の柱や壁を斬り裂き、空間に裂け目を作り出す。だが、山郷坊の智慧は常に一歩先を行く。杖を振るうたび、空間は僅かに揺れ、数式の刃は分解されて消滅する。

    「これ以上は……」

    フォーミュラの声は震えていた。計算可能な変数は全て投入した。しかし、僧侶の悟りは、数式の枠組みを超えた存在だった。

    山郷坊は杖を掲げ、静かに般若心経を唱える。

    「色即是空……空即是色……受想行識亦復如是……」

    その声と智慧の波動が数式の刃を包み込み、混沌を秩序に変える。フォーミュラはその波動に一瞬の揺らぎを感じた——計算できない変数、予測不能な現象、これが人間の智慧の力か。

    「なるほど……君の『解』は……計算不能か……」

    フォーミュラは数式を再構成し、刃を再度飛ばす。しかし、山郷坊は杖を地面に突き、空間全体に智慧の結界を展開する。その結界は数式の刃を吸収し、さらに反転させてフォーミュラに跳ね返す。

    「この世の法則は、計算だけでは解けぬ……智慧の眼を持て」

    山郷坊の声は静かだが揺るがない。フォーミュラは咆哮する。掌から飛び出す刃は数百枚、数千枚、数万枚——だが全て反転され、自身に迫る。

    絶体絶命。フォーミュラは最後の手段を取る。
    自らを完全に数式に変換し、身体能力を限界まで引き上げ、刃を無限に増殖させる——しかし、智慧の壁は依然として崩れない。

    「我が智慧に、無限の解はなし」

    山郷坊は杖を掲げ、空間を切り裂くように振るう。粉塵の渦の中、刃は全て停止し、消滅する。倉庫は静寂に包まれる。

    フォーミュラは倒れ込み、数式としての姿も崩れ始めた。

  • 1361◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 15:05:16

    「……解けぬ……どうやっても……」

    彼の声は遠く、虚ろに響く。
    山郷坊は杖を地面に突き、静かに息を整える。

    「計算ではなく、智慧……それが究極の解法である」

    廃倉庫の瓦礫の間、粉塵が静かに舞う。無数の刃と智慧の衝突は終わりを迎え、戦場には静寂だけが残った。
    人知を超えた数式も、悟りの前には無力——。山郷坊の智慧が、世界を静かに支配した瞬間であった。

  • 1371◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 15:05:29

    以上

  • 138二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 15:13:48

    良かった!!

  • 139二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 15:21:21

    投下乙です

  • 1401◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 16:56:02

    題名『闘神、炎獄を砕く』

  • 1411◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 16:56:57

     空は血のように赤く染まり、大地は燃え盛る炎で焼け爛れていた。
     黒き巨影がゆっくりと歩むたび、地面に広がる炎が轟音を上げる。

     黒山羊の頭に獅子の鬣、巨人の体を持つ異形――。
     大火の主、フラムゴール。

    「フハハハ……またしても人の里を灰にしたぞ。
     哀れな人間ども、不死の炎に囚われるがいい」

     彼の背後には、呻き声を上げる無数のアンデッドたち。
     かつて人であった者たちは、今や炎に囚われ、救いを求める亡者となっていた。

     そのとき――。

    「がはははは!!!」

     豪快な笑い声が響き渡った。
     燃え盛る地平線を割って現れたのは、白髪オールバックの大男。
     200センチを優に超える筋骨隆々の体躯。
     全身に古傷を刻みながらも、笑顔は太陽のように輝いている。

    「おぬしか。炎だの悪魔だのと偉そうにしとるのは」

     男の名は――佐藤 武。
     幾多の修羅場を潜り抜け、いまなお戦いを求める闘神のごとき男である。

    「わしの名は佐藤 武。七人の孫を持つ、ただのジジイよ」

     フラムゴールは鼻で嗤った。

  • 1421◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 16:57:13

    「ただのジジイだと? 笑わせるな……この世の者はすべて薪。
     お前もまた、不死の炎にくべてやろう」

     武は肩を回し、ゴリゴリと骨を鳴らした。

    「がはは! 面白ぇ……!
     ならばこの老いぼれの拳で、その炎ごと叩き潰してくれるわ!」

     燃え盛る戦場の中央で、二つの巨影が睨み合う。
     闘神と炎魔――宿命の激突が、今始まろうとしていた。

  • 1431◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 16:59:13

     フラムゴールが両腕を広げると、背後のアンデッド軍勢が一斉に咆哮を上げた。
     炎に焼かれながらも決して朽ちることのない亡者たち。
     その眼は救いを求めながらも、強制的に武へと突き進む。

    「フハハハ! 見よ、かつてお前と同じ人間だった連中だ。
     哀れにも死すら許されず、永遠に燃やされ続ける薪よ!」

     武は腕を組み、しばしその群れを見下ろした。

    「……哀れじゃのう」

     そう呟くと、笑顔のまま拳を構える。

    「だが――哀れみは拳で示す! わしの道はいつもそうよ!」

     武が一歩踏み出すと、大地が揺れた。
     巨体から繰り出される拳がアンデッドの一体を粉砕し、爆炎が弾ける。

     轟音。火柱。
     だが武は怯まない。爆風に髪をなびかせながら、豪快に笑った。

    「がははは! 爆ぜようが焼けようが関係なし!
     わしの拳は止まらんぞォッ!」

     次々と繰り出される重拳がアンデッドを打ち砕き、そのたびに大爆発が起こる。
     肉体を削り、炎を浴びながらも――武の動きは止まらなかった。

  • 1441◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 16:59:29

     フラムゴールは愉快そうに手を叩いた。

    「素晴らしい! 人間の身でここまで爆炎を受けてなお戦うか。
     だが、貴様の拳では数が尽きぬぞ!」

     地平線の彼方から、更なるアンデッドの群れが現れる。
     不死の炎に囚われた者は次々と甦り、終わりのない波となって押し寄せてきた。

     武は血を流しながらも、不敵に笑みを浮かべた。

    「フハハ……ええぞええぞ! 数が尽きぬなら尚更よ!
     わしは戦い続ければ続けるほど、強くなるんじゃ!」

     その体から溢れる闘気が、徐々に膨れ上がっていく。
     爆炎を浴び続けるたびに、傷付くたびに、武の闘争本能は研ぎ澄まされ――。

    「わしはまだまだ強くなるぞォ!」

     炎と屍の荒野に、闘神の咆哮が轟いた。

  • 1451◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 17:00:46

     無尽蔵に溢れるアンデッドの群れを蹴散らしながら、武は前へ進む。
     爆炎は全身を焼き焦がすが、その大男の足取りは一歩も止まらない。
     その笑みはむしろ獰猛さを増し、血と炎に染まりながらも堂々と胸を張っていた。

    「がははははッ! どうしたどうしたァ! もっと爆ぜろ! もっと燃えろォ!」

     拳が唸りを上げるたびに、炎の屍兵たちは肉片と化し、大地を赤黒く染める。
     そして、爆炎を浴び続ける度に、武の肉体は進化を始めていた。

     呼吸は乱れぬ。
     動きは鋭さを増す。
     筋肉は熱に鍛えられ、鋼のように硬化していく。

    「……ほう。なるほどな」

     玉座のようにそびえる炎の柱の上から、フラムゴールが武を見下ろしていた。
     その瞳に、初めて僅かな警戒の色が差す。

    「戦いの中で強くなる……か。
     人間風情が、悪魔である我に近づくとは愚かにも程がある」

     その声が終わると同時に、フラムゴールの巨体が躍り出た。
     黒山羊の頭部に獅子の鬣を持つ炎の魔王が、大地を踏み砕きながら武へ突進する。

     炎を纏った巨腕が、振り下ろされた。

  • 1461◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 17:01:13

     灼熱の一撃は山をも溶かす勢いで迫る――!

    「おお、いいぞ! 待っとったわいッ!」

     武はその拳を迎え撃つ。
     爆炎と轟音が大地を裂き、衝撃波が周囲のアンデッドを薙ぎ払った。

     炎と拳の激突。
     力と力、魂と魂のぶつかり合い。

    「わしは佐藤武! 闘争の主にして、闘神と呼ばれた男よ!」

    「我はフラムゴール! 炎と不死を支配する、灼熱の大悪魔なり!」

     二つの咆哮が重なり合い、空気を震わせた。
     拳と炎が弾け合うたび、夜空をも照らす閃光が迸る。

     人の身と悪魔の身。
     だが、互いに一歩も退かぬ。

     その場は、まさしく神話の一幕の如き激戦と化していた――。

  • 1471◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 17:02:39

     武の拳は、確かにフラムゴールを打ち据えていた。
     巨悪の胸を殴り、腕を裂き、鬣を焦がす。
     だが――悪魔は笑っていた。

    「ククク……愚か者め。強くなろうとも、所詮は人間の枠を出ぬ」

     その言葉と共に、大地が揺れる。
     無数の黒炎が地中から吹き出し、武を囲むように広がった。

     現れたのは――焼け爛れた兵士、苦悶の顔を浮かべる女、叫び声をあげながら彷徨う子供。
     彼らはすべて、フラムゴールの【不死の炎】に囚われた犠牲者たち。
     今や人ならぬ炎のアンデッドとして、武の周囲を取り囲んでいた。

    「うおおおおッ!」

     武は拳を振るい、迫る群れを打ち砕く。
     だがその瞬間、アンデッドたちの肉体が爆ぜ、巨大な火柱が武を包む。

    「ぐッ……! ちぃッ!」

     爆炎に呑まれ、武の巨体が揺らぐ。
     皮膚は焦げ、筋肉は焼ける。
     だが――彼は笑っていた。

    「がははッ! 爆発ごときで止まるかい! もっとやれぇ!」

     炎の渦中で、武の筋肉がさらに硬化し、肺が爆煙を吸い込みながらも強靭さを増していく。
     彼の「闘争の主」の力が、確実に進化を刻んでいた。

  • 1481◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 17:02:58

    「……ならばもっと苦しめてやろう」

     フラムゴールが腕を掲げると、アンデッドの軍勢がさらに膨れ上がる。
     百、二百、数を増し、地平を埋め尽くす黒炎の軍勢。
     それらはフラムゴールの嘲笑と共に、一斉に武へと突撃した。

    「さあ、燃え尽きろ! 佐藤武ィ!」

     武は大地を踏み鳴らし、拳を握る。
     その眼は燃えるように輝き、炎の地獄のただ中で吼えた。

    「上等じゃ! わしを焼き殺したいんなら――」

     武は拳を振りかぶり、轟音と共にアンデッドを薙ぎ払う。

    「わしより強ェ爆炎を持ってこいッ!」

     爆発の連鎖が戦場を覆い、炎と拳が入り乱れる。
     闘争は、さらに熾烈さを増していった――。

  • 1491◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 17:04:04

     地平を埋め尽くす黒炎の軍勢。
     爆ぜるたびに大地は割れ、空は赤黒く染まる。
     常人であれば一瞬で灰燼と化す地獄の炎。

     だが――その渦中で、佐藤武は笑っていた。

    「がははッ! まだまだ足りんぞォ!」

     皮膚は焼けただれ、髪は焦げ落ちている。
     それでも武の体は、確実に進化していた。
     爆炎に晒されるたび、筋肉は膨れ、血流は強まり、拳は大地を割る力を宿す。

     闘争の時間こそが、彼の糧だった。

    「ククク……まだ立つか、人間……」

     フラムゴールの瞳に、初めて警戒の色が浮かぶ。
     炎に囚われたはずの男が、炎を喰らい糧として強大化している。
     それは悪魔にとって、想定外の事態だった。

    「そうよのォ……お主ら悪魔は“恐怖”を糧にしとるんじゃろ?」

     武は爆煙をかき分け、一歩、また一歩とフラムゴールへ歩を進める。

    「ならば見せてやる……“恐怖なき闘争”をッ!」

     次の瞬間、武の体が光を裂いた。

  • 1501◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 17:04:19

    筋肉が爆ぜる音と共に、その拳は光速の煌めきを帯びる。
     一振りで大地が抉れ、残像すら追えぬ速さでアンデッドの軍勢を粉砕する。

    「なっ……!? 馬鹿なッ!」

     フラムゴールが後退る。
     だが遅い。
     武の拳は既にその喉元へ迫っていた。

    「わしの拳はなァ――」

     轟音。
     空気が破裂し、悪魔の巨体が宙を舞う。
     炎の結界すら粉砕する一撃が、確かにフラムゴールを貫いた。

    「闘神の拳じゃあッ!!!」

     大地が裂け、空が砕ける。
     人間という枠を越え、武はついに“闘神”の名に違わぬ存在へと到達した。

  • 1511◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 17:05:13

    「……ぐ、はぁ……」

     大地に叩きつけられたフラムゴールの胸。
     そこに埋め込まれた真紅の宝石は、ひび割れていた。
     核――悪魔の心臓。

    「人間風情が……ここまで追い詰めるとはなァ……」

     呻く声と共に、不死の炎が暴走を始める。
     フラムゴールの巨体を覆い尽くし、やがて炎は獣のように咆哮した。

    「グォォォオオオオ――ッッ!!!」

     理性は消えた。
     ただ憎悪と復讐の本能だけで、炎の塊と化した悪魔が突進する。
     触れるだけで大地が蒸発し、空すら焼き尽くす。

     それは最早、魔術ではない。
     純粋な破壊の奔流だった。

  • 1521◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 17:05:34

    「来よるか……」

     武は全身を焦がしながらも、顔に笑みを浮かべる。
     拳を握り、巨体に立ち向かう。

    「がははッ! これぞ最っ高の喧嘩じゃのォッ!!!」

     拳と炎が激突した。
     瞬間、天地が反転するほどの衝撃波が奔り、世界は光と火に包まれる。

    「グォォオオ――!」

     武の拳が、フラムゴールの胸を撃ち抜く。
     真紅の宝石が砕け散り、悪魔の断末魔が大気を裂く。

    「馬鹿なァァァァァッ!!!」

     その巨体は爆炎と化し、最期の最期に周囲を道連れにせんと膨れ上がる。
     極大の自爆。
     不死の炎が大爆発を起こし、全てを焼き払わんとする。

  • 1531◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 17:05:51

    だが――

    「……遅いわァ!!!」

     武は最後の力を振り絞り、空へと拳を突き上げた。
     闘神の拳が爆炎をぶち抜き、道連れの火柱を天へと叩き返す。

     空に咲いたのは、巨大な火の花。
     地上は、ただ一人の男の勝利によって守られた。

    「……ふぅ……」

     武は膝をつく。
     全身は傷だらけだが、その笑顔は崩れない。

    「がはは……やっぱり……拳で殴り合うのが一番よのォ……!」

     炎の残骸の中で、フラムゴールの声が微かに響いた。

    「……人間……武よ……貴様だけは……決して……許さん……」

     怨嗟の声を最後に、炎の大悪魔は完全に掻き消えた。

     勝者――佐藤 武。
     闘神の拳は、今日もまた世界を救った。

  • 1541◆ZEeB1LlpgE25/08/17(日) 17:06:20

    以上

  • 155二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 17:28:40

    なんだか逆襲に来そうなセリフで逝ったな…
    あの一家のじっちゃんに相応しい戦いぶり

  • 156二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 17:29:20

    投下乙です
    熱くて良い戦いでした

  • 157二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 00:47:19

    このレスは削除されています

  • 158二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 00:52:39

    サァンバァーー!!!!!!!!!!!!

  • 159二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 06:33:15

    ほしゅ

  • 160二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 13:09:50

    このレスは削除されています

  • 1611◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:39:49

    題名『狂刀、怨念を斬る』

  • 1621◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:40:49

    街の外れ、廃工場の前で風がざわめいていた。錆びた鉄扉が軋む音と、遠くで鳴る猫の声だけが静寂を割る。

    「……斬る……斬る……」

    薄暗い通路の奥から、呟く声が聞こえた。声の主は、長く黒い髪を垂らした若い男。目は鋭く、しかしその瞳には常軌を逸した光が宿っていた。邪怨ニア――元は名高き武士だった男は、今や二つの神具に侵食され、思考も言動も狂気の渦に巻き込まれている。

    ニアの手には二本の刀が握られていた。邪刀【ニャルラト】は黒く禍々しい光を放ち、空間そのものを冒涜しうる力を秘めている。怨刀【崇魔】は怨嗟の力を帯び、斬ったものに概念的呪詛を与える――その刀身は常に微かに震え、呪いの気配を漂わせていた。

    一方、廃工場の鉄柱の影から、不気味な紫色の気配が立ち上る。怨霊ダイナソー――幽霊バイカーが恐竜の怨念に呑まれた姿。半透明の巨大な恐竜の体には、バイクの金属部品が鎧のように覆いかぶさり、見る者に圧倒的な威圧感を与える。

    鋭い嗅覚や耳を持たない存在にも、空気の揺れや気配の変化で迫る危険を察知する本能がある。ダイナソーの眼は無くとも、その暴走する怨念は周囲の鉄やコンクリを振動させ、廃工場全体に不穏な波動を放っていた。

    「……斬る……斬る……斬る……!」

    ニアは呟きながら前へ進む。狂気に導かれたその歩みは、まるで獲物を追う刃のようだった。廃工場の床に散らばるガラス片が微かに光を反射する。

    すると、ガシャリと金属の音が響いた。

    地面を這いながら、ダイナソーが姿を現す。ティラノサウルスの巨躯を思わせる背中に、バイクのエンジン部品が組み込まれた異形の存在。紫色の半透明の体が、廃工場の錆びた光に淡く反射する。

    ニアは微笑むこともなく、ただ独り言のように呟いた。

    「斬る……斬る……すべて斬る……」

  • 1631◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:42:09

    その瞬間、ニアの手元で邪刀が微かに震え、空間に黒い波紋が走る。短い間だが、周囲の空気がねじれるように歪む――【ニャルラト】の力だ。

    ダイナソーは吼えた。

    「ギャオオオオオッ!」

    その声は廃工場中に響き渡り、鉄やガラスを振動させる。まるで過去の怨念の集合体が目覚めたかのような轟音だった。

    二人の存在が互いを感知する。

    ニアの呟きは止まらない。
    ダイナソーの暴走は増すばかり。

    そして、互いの視界が交わった瞬間――世界が歪むほどの緊張が、廃工場を包み込む。

    「……斬る……来い……!」

    ニアは刀を抜き、ダイナソーは巨大な爪を振りかざす。
    狂気と怨念の衝突は、今、始まろうとしていた。

  • 1641◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:43:19

    廃工場の暗闇が二人の存在を一層際立たせる。

    ニアは独り言のように呟きながら、一歩一歩前に進む。
    「斬る……斬る……斬る……」

    刀身が黒く光り、空気を切り裂く音が微かに響く。刃先に漂う邪刀【ニャルラト】の気配は、触れたものの形を冒涜し、過去や未来までも改変する狂気の力だ。

    対するダイナソーも吼えた。
    「ギャオオオオオッ!」

    恐竜の咆哮に伴い、バイクの金属部品が軋み、紫色の怨念が渦巻く。廃工場の床や壁が振動し、ガラス片や錆びた鉄片が飛び散る。

    ニアは躊躇も迷いもなく、刃を振り下ろした。

    「斬る……斬る……!」

    その瞬間、邪刀【ニャルラト】が空間に黒い波紋を走らせる。壁や床が微かに歪み、切られた空間が悍ましい異界の欠片のように揺らめいた。

    ダイナソーは爪を振り上げて応戦する。巨大な恐竜の腕が振り下ろされ、廃工場の鉄柱が軋む。だがニアは微動だにせず、刀を交わしながら怨刀【崇魔】の力で瞬間的に距離を詰め、怪力を纏った斬撃を放つ。

    「斬る……斬る……!」

    ダイナソーの胴体に刀が当たり、半透明の体に亀裂が走る。だが、それすらも怨念が吸収し、瞬時に修復される。かすかな傷が蓄積されることなく、怨念を糧に力を増していく恐ろしさ。

    ニアは眉をひそめた。
    「ふ……思ったより手ごわいな……」

    しかし、彼の狂気はブレーキにならない。斬ることしか考えられないその心は、己の刀に全てを委ね、次々と攻撃を繰り出す。空間を切り裂き、斬撃の衝撃で小さな金属片が飛び散る。

  • 1651◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:43:29

    ダイナソーは咆哮とともに後退せず、全身の怨念を振動させて迎え撃つ。瞬間、周囲の空気が熱を帯び、紫色の怨念が舞い上がる。

    二人の距離は急速に縮まり、衝突の瞬間が迫る。
    刀と爪、邪怨と怨念――互いの力がぶつかるその瞬間、廃工場の鉄骨が悲鳴を上げ、ガラス片が雨のように降り注ぐ。

    「斬る……斬る……斬る……!」

    ニアの呟きが叫びに変わり、ダイナソーの咆哮と混ざる。
    そして、最初の一撃が炸裂した――!

  • 1661◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:43:52

    衝撃の一撃が廃工場に響き渡る。鉄骨が悲鳴を上げ、飛び散ったガラス片が月明かりに反射してちらつく。

    ニアは刃を握り直し、独り言を続ける。
    「斬る……斬る……斬る……」

    目の前のダイナソーは咆哮と共に再び前進する。紫色の怨念がうねり、半透明の身体から恐竜の鋭い爪が次々と伸びる。圧倒的な力で迫るその姿に、常人なら震え上がるだろう。

    ニアは刀を振るい、邪刀【ニャルラト】の力でダイナソーの突進する体を切断しかける。だが、怨念は瞬時に吸収され、傷は瞬く間に修復される。

    「くっ……!」

    ニアは呟きながら距離を取り、怨刀【崇魔】の力で瞬間移動を駆使して斬撃を加える。斬撃は一瞬の間、ダイナソーの形を歪めるが、怨念の塊はなおも暴走し、再び姿を整える。

    ダイナソーの体が半透明に光り、次々と異なる恐竜の形態へと変化する。ティラノサウルスの巨大な顎、プテラノドンの翼、ヴェロキラプトルの素早い爪――状況に応じて恐ろしい戦力を使い分ける。

    ニアはその都度、刀を振るい斬撃を放つが、動きは大振りで隙が生まれる。ダイナソーはそれを見逃さず、巨大な腕や爪で反撃する。半透明の体が宙を舞い、衝撃波が周囲に広がる。

    「斬る……斬る……斬る……」

    言葉が次第に叫びに変わり、狂気の戦意が刀に宿る。しかし、ダイナソーは咆哮するだけで思考は単純。読み合いや駆け引きに弱く、だがその力は圧倒的だ。

    互いの攻撃は交錯し、廃工場の床が割れ、鉄骨が折れ、埃と怨念の紫煙が立ち込める。斬撃と咆哮、刃と爪のぶつかり合いで、戦場はまるで異界のように変容していく。

    ニアは息を切らしながらも刀を握り直し、目の奥で狂気が光る。
    「斬る……斬る……斬る……!」

    ダイナソーは咆哮をあげ、次の攻撃態勢に入る。戦況は膠着しているが、双方の力は着実にぶつかり合い、周囲の建物や空間を徐々に破壊していく。

    この戦い、まだ始まったばかり――狂気と怨念の戦いは、徐々に頂点へと向かう。

  • 1671◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:45:33

    ニアは荒れ果てた廃工場の隅に身を潜め、独り言を続ける。

    「斬る……斬る……斬る……」

    怨霊ダイナソーは紫の怨念をうねらせ、鉄骨や瓦礫を踏みつぶしながら突進してくる。咆哮が空間を震わせ、地面に亀裂を刻む。

    ニアは刀を振るい、邪刀【ニャルラト】で衝撃の一閃を放つ。刃が触れた瞬間、ダイナソーの体の一部が異界へと変貌しかけるが、怨念の吸収力で瞬時に元通りになった。

    「くっ……!」

    彼は咄嗟に怨刀【崇魔】を使い、瞬間移動を絡めた斬撃を連続で叩き込む。怪力を伴った攻撃で、怨念を一時的に抑え込むことには成功した。しかし、動作は大振りで、次の瞬間には恐竜の爪が襲いかかる。

    ニアは素早く身をかわすと、さらに距離を取り、廃工場の柱や梁を利用して戦場を構築する。

    「斬る……斬る……斬る……!」

    彼の声が狂気じみて響き、刀の軌跡は次第にダイナソーの動きを誘導する罠のようになった。半透明の紫色の身体は、攻撃を避けるために次々と形を変えるが、ニアは怨刀を使って瞬間移動しつつ、体の隙間や動線を狙い続ける。

    ダイナソーはティラノサウルスの形態で突進し、プテラノドンの翼で空を切り裂き、ヴェロキラプトルの爪で攻撃を繰り出す。しかし、思考は単純で、次第にニアの誘導に乗せられていく。

    ニアは息を切らしながらも、刀を握り直し独り言を囁く。

    「斬る……斬る……斬る……止めない……止まらない……」

    突進するダイナソーに向け、連続斬撃を放つと、邪刀【ニャルラト】の力で斬られた部分はかろうじて冒涜され、動きを一瞬止める。そこに怨刀【崇魔】の瞬間移動を重ね、再び斬撃を叩き込む。

    紫の怨念は暴走を始め、周囲の瓦礫を巻き込みながらうねる。建物は倒壊し、空間に裂け目が生まれる。その中でニアは冷静に狂気を操り、怨念を誘導して自らの攻撃軌道を確保する。

    しかし、ダイナソーの力は圧倒的だ。怨念の吸収で次第に体力を回復し、戦況は再び膠着する。

  • 1681◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:47:09

    ニアは刀を握る手に力を込め、口元でつぶやく。

    「斬る……斬る……終わらせる……」

    その刹那、廃工場に響く咆哮と斬撃の軌跡が交錯し、狂気と怨念の戦いはさらに激化していく――。

  • 1691◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:47:59

    廃工場の鉄骨が軋む音が響く中、ニアは息を切らしながらも狂気じみた独り言を続ける。

    「斬る……斬る……斬る……逃がさぬ……」

    怨霊ダイナソーは紫の怨念をうねらせ、姿を次々と変えて攻撃を仕掛ける。ティラノサウルスの巨躯で柱を叩き潰し、プテラノドンの翼で上空からの急襲を試みる。だが、ニアは邪刀【ニャルラト】と怨刀【崇魔】を巧みに組み合わせ、攻撃の軌道を誘導して相手を罠に嵌める。

    「斬る……斬る……これで……!」

    彼の言葉と共に二刀が閃き、刃が交錯する。邪刀が触れた部分は瞬時に悍ましい異界へ変貌し、怨念ダイナソーの動きを一瞬止める。さらに怨刀の瞬間移動で距離を詰め、怪力を伴った連続斬撃を浴びせる。

    紫色の体が揺れ、怨念のうねりが制御されるように見えた。ダイナソーは反撃しようとするが、単純な思考しか持たないため、次第にニアの攻撃軌道に従う形となる。

    ニアは柱を踏み台に飛び上がり、空中で二刀を交差させながら斬撃の渦を作る。

    「斬る……斬る……斬る……止まれ……!」

    刃が触れた瞬間、怨霊の集合体であるダイナソーの一部が冒涜され、動きが鈍る。その間に、ニアは次々と斬撃を重ね、怨念の暴走を逆に自分の攻撃軌道へと利用する。

    「斬る……斬る……終わらせる……!」

    廃工場の瓦礫が舞い、鉄骨が崩れ落ちる。紫の怨念は渦巻きながらも、ニアの二刀の精密な誘導により動きが封じられ、戦場は次第にニア有利に傾く。

    その刹那、ニアは深く息を吸い込み、狂気と理性が入り混じった集中状態に入る。二刀の軌跡は完璧に連動し、怨霊ダイナソーの進行方向を完全に制御した。

    紫色の怨念がうねるたび、ニアの刃は一瞬の隙も見逃さず斬り刻む。もはや恐竜形態での突進も無力化され、ダイナソーは足掻くほどに刃の渦に捕えられる。
    ニアは刀を握り直し、ぶつぶつと独り言を呟く。

    「斬る……斬る……斬る……もう……逃がさぬ……!」

    怨念ダイナソーの体の一部が切り裂かれ、空間に裂け目が広がる。刃の渦は全身を覆い、逃げ場はなくなる。廃工場は崩壊寸前、紫の怨念の暴走も封じられ、狂気と怨念の戦いはついに極限の局面へと突入した――。

  • 1701◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:49:35

    廃工場の鉄骨が悲鳴を上げ、床には瓦礫が散乱していた。

    「斬る……斬る……斬る……もう終わりだ……!」

    ニアの声はぶつぶつと続き、理性を欠いた狂気の響きに満ちている。しかし、その双眸は凄まじい集中力を帯び、二刀はまるで意思を持ったかのように空間を切り裂く。

    怨霊ダイナソーは紫色の体を暴れさせ、恐竜形態のまま突進するが、邪刀【ニャルラト】が触れた部分から異界の裂け目が現れ、怨念が渦を巻く。プテラノドンの翼で飛びかかろうとするが、刃の渦は空間を変化させ、飛翔の軌道すら狂わせる。

    「斬る……斬る……止まれ……!」

    怨刀【崇魔】の力で瞬間移動し、怪力を伴った連撃がダイナソーの胴体を捕らえる。紫色の怨念が悲鳴のように揺れ、もはや抵抗は不可能に近い。

    ニアは床の瓦礫を蹴り、空中へ跳ぶ。二刀を交差させ、渦巻く斬撃で怨霊ダイナソーを包み込む。

    「斬る……斬る……斬る……逃がさぬ……!」

    刃が触れた瞬間、怨霊ダイナソーは空間の裂け目に巻き込まれ、体が断片化する。紫色の怨念が渦を巻き、暴走を試みるが、二刀の精密な誘導により次第に封じ込まれる。

    ついに、残された最後の怨念も邪刀と怨刀に触れ、完全に冒涜される。紫色の恐竜の形態は崩れ、バイクのパーツは瓦礫の中に散らばる。

    ニアはぶつぶつと呟きながら、刀をゆっくりと下ろす。
    「斬る……斬る……終わった……もう……逃がさぬ……」

    静寂が廃工場を包み、紫色の怨念は完全に消滅した。狂刀と怨念の戦いは、ニアの圧倒的な斬撃によって終焉を迎えた。

    瓦礫の山に立つニアの背中は、狂気の残滓を漂わせながらも、勝利の痕跡を鮮烈に示していた――。

  • 1711◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 19:50:12

    以上

  • 172二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 19:52:00

    最高です!

  • 173二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 19:56:48

    投下乙です!

  • 1741◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:01:35

    題名『砂塵の裁き』

  • 1751◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:05:26

    夕暮れの空が赤黒く染まる中、廃墟と化した墓場に一人の男が立っていた。

    その背筋はまっすぐで、漆黒のスーツが闇に溶け込む。
    首元の縫い目が、不気味に男の静寂さを際立たせていた。

    「……悪は、ここにいるか」

    ギヨタン・ド・タンバは低く呟く。
    その声は冷たく、しかしどこか揺るぎない決意に満ちていた。

    墓石の隙間から、少女の姿が現れる。

    包帯に包まれた小さな身体、鎖で繋がれた棺桶を引きながら、黄金の装飾が微かに光る。
    左目は完全に見えず、彼女の動きには独特の歪みがあった。

    ギヨタンは魔剣アメミットを握り、軽く回転させる。

    刃の先に宿る神獣の牙が、薄明かりに反射して淡く光った。

  • 1761◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:06:03

    「悪よ、見える。裁かれるべきものよ」

    少女――埋葬者は言葉を発さない。
    しかし鎖の音と棺桶の引く軋みが、静寂を打ち破る。
    その目には、死の意志と尊大さが宿っていた。

    ギヨタンはゆっくり歩み寄る。

    墓石の隙間を縫うように、一歩一歩確実に距離を詰める。
    彼の歩みに合わせるかのように、棺桶が重く引きずられ、砂埃が舞い上がる。

    「覚悟せよ……悪人よ」

    一閃、刃先が光を切った。

    しかし少女は動かず、ただ埋葬の手が砂をかき分けて立ち塞がる。

    砂の中から無数の亡者が手を伸ばし、ギヨタンを拘束しようとする。

    彼は片手でそれらを払う。
    その動作は冷静で、しかし力強く、敵の意志を一切許さない。

    少女の棺桶が微かに浮き上がる。

    埋葬者の視界外で、左側の空間に小さな死者の手が忍び寄る。
    だがギヨタンは目線を微動だにせず、全体を把握していた。

    「この命、無駄にするな」

    彼の声と共に、魔剣アメミットが一閃する。

  • 1771◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:06:32

    刃は悪の血統を識別し、悪人であれば死をもたらす。
    しかし善であれば祝福をもたらす、絶対の裁きの剣。

    少女の亡者たちは弾かれ、棺桶は揺れる。

    埋葬者自身は動かず、ただ死者の手を操り続ける。

    ギヨタンは一歩踏み込み、次の攻撃の構えを取った。

    墓場に風が吹き抜ける。

    砂埃と腐敗した葉の匂いが混ざり、死の気配を強める。

    「……さあ、始めるか」

    彼の瞳に光が宿り、刃の神獣牙が震えた。

    埋葬者は無言のまま、墓場全体を覆う亡者の群れを集める。

    二人の視線が交わり、時間が一瞬止まったかのように感じられた。

    決闘の序章――黄昏の墓場で、死と裁きの戦いが幕を開けた。

  • 1781◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:07:17

    砂埃の中、棺桶を引く少女の足音が響く。

    ギヨタンはその音を敏感に拾い、刃を少し傾ける。

    「動くな……悪よ」

    空気が震え、亡者たちが砂の中から手を伸ばす。
    それはまるで、生と死の境界線を裂くかのような動きだった。

    ギヨタンは一つの動作でそれらを払う。
    刃が亡者の手を切り裂き、砂が舞い上がる。
    しかしそれはほんの一瞬、少女の埋葬の力は衰えていない。

    棺桶の中から、黒い影が伸びる。
    亡者の一団がその影と共に立ち上がる。
    その数は多く、彼の視界を埋め尽くすほどだった。

    「ここまでか……」

    彼は一瞬、息を吸い込む。
    刃先を地面に突き刺し、神獣の牙を震わせた。

    亡者たちの動きが鈍る。
    砂の粒子が光を反射し、死の輝きとなって舞う。

    ギヨタンの目が鋭くなる。
    善と悪を見抜く眼力――アヌビス・ルールの力が、悪の本質を探る。

  • 1791◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:08:17

    「悪よ……出でよ」

    棺桶が揺れ、少女の動きに合わせて亡者たちが突進してくる。
    だがギヨタンはその群れを次々と切り裂いた。

    「斬る……斬る……!」

    少女の呟きが風に混ざり、砂埃に溶ける。
    その声は意味を持たず、ただ狂気のリズムを刻むだけだった。

    亡者たちが再び集まり、ギヨタンを取り囲む。
    だが彼の刃は止まらない。
    一閃、二閃、三閃――連続の斬撃が死者を裁く。

    「……これで、どうだ」

    棺桶の影が大きく揺れ、少女が次の動きを準備する。
    死者の手が地面から伸び、ギヨタンの足元に迫る。

    彼は跳躍し、空中で刃を振るう。
    亡者の手は切り裂かれ、砂と血が混ざり合い舞い散る。

    「まだ……まだ終わらん!」

    ギヨタンの瞳に光が宿る。
    彼の体から発せられる気迫が、亡者たちを一瞬、怯ませる。

    棺桶が揺れ、少女の左目が微かに光る。
    見えぬ空間から新たな手が伸び、次の攻撃を仕掛ける構えだ。

  • 1801◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:08:47

    ギヨタンは構えを低くし、次の瞬間の動きを待つ。

    風が砂を巻き上げ、死の匂いが一層濃くなる。
    黄昏の墓場は、戦いの舞台として完璧に整った。

    「……くそ、やりやがる」

    彼は小さく呟き、魔剣アメミットを握り直す。
    刃の先に宿る神獣の牙が、微かに震えた。

    埋葬者の無言の動きが、次第に迫力を増す。
    亡者たちの数も増え、戦場は混沌の色を帯びていく。

    ギヨタンは心の奥で静かに決意した。
    どれだけ相手が狂おうとも、どれだけ死者が集まろうとも、悪を断つ――その覚悟だけは揺るがない。

    そして二人の戦いは、黄昏の墓場でさらに激しさを増していった。

  • 1811◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:12:17

    墓場を吹き抜ける風は冷たく、乾いた砂を巻き上げる。

    埋葬者は棺桶を引きずりながら、尊大に顎を上げた。
    包帯で覆われた顔の片目は虚ろで、もう片方は薄い黄金色の光を宿している。

    ギヨタンはその視線を受け止めながら、静かに呟いた。

    「……お前の本質を、見極める」

    アヌビス・ルールの眼が開く。
    相手の魂を覗き込み、善悪を裁定する――その力が冴え渡る。

    彼の瞳に映るのは、幾千幾万の死者の影。
    そして、少女が過去に埋めてきた数多の存在。

    「……悪、か」

    刃を握る手に力が入る。
    決して間違わぬこの眼は、少女を”裁かれるべき者”と断じていた。

    棺桶の鎖が鳴る。
    埋葬者は笑みを浮かべると、地面を指先でなぞった。

    ズズ……と音を立てて、地面が裂ける。
    無数の亡者の手が砂から伸び、ギヨタンの足を掴もうと迫る。

    「下らぬ」

    ギヨタンは刃を振るい、亡者の手を次々と断つ。
    切り口から砂が吹き出すように散り、手は崩れて消える。

  • 1821◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:13:12

    だが、埋葬者はさらに続ける。
    棺桶の蓋が開き、黄金の装飾に覆われた剣が引き出される。

    「埋葬品……!」

    ギヨタンの眉がわずかに動く。
    それは、かつて偉大な王が使った剣――すでに歴史に埋もれた遺物だった。

    埋葬者は片手でその剣を持ち上げ、軽々と振るった。
    砂嵐のような斬撃がギヨタンを襲う。

    ギヨタンは首を僅かに傾けて避ける。
    だが首の古傷が軋み、激痛が走る。

    「ぐっ……!」

    視界が一瞬霞む。
    埋葬者はその隙を見逃さず、砂と亡者を一斉に操り波のように押し寄せる。

  • 1831◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:14:38

    ギヨタンは歯を食いしばり、短剣アメミットを構え直した。
    短いリーチ――だが確実に悪を断つ刃だ。

    「斬首――処刑」

    彼の声が墓場に響く。
    次の瞬間、アメミットの刃が亡者を貫き、悪意そのものを断ち切った。

    砂と影が裂け、光が一瞬だけ漏れる。
    その光は善を祝福し、悪を滅ぼす裁きの輝き。

    埋葬者は顔を歪め、棺桶の鎖をさらに強く握りしめた。

    二人の死闘は、裁きと埋葬――相反する力が正面からぶつかり合う局面へと進んでいく。

  • 1841◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:16:35

    砂嵐が渦を巻き、墓場は戦場へと変貌していた。

    ギヨタンのスーツは砂にまみれ、その黒はより深い闇のように見える。
    彼の首筋からは微かに血が滲み、赤黒い染みを広げていた。

    「……まだ、生きている」

    埋葬者は鼻で笑い、黄金の剣を棺桶に突き立てた。

    「ならば、もっと埋めてやろう」

    その言葉と同時に、地面が大きく沈む。
    砂の底から、巨大な亡者の腕が這い出した。
    まるで巨人のようなその手が、ギヨタンを押し潰そうと伸びる。

    「処刑人を――埋葬できるか」

    ギヨタンは短剣アメミットを構え、迫る巨腕を迎え撃つ。
    刃が砂と骨を断ち、轟音と共に亡者の腕が崩れ落ちる。

    だが、埋葬者の動きは止まらない。
    彼女は鎖を振り回し、棺桶を錘のようにして放つ。
    重々しい音が響き、ギヨタンの足元を大地ごと抉った。

    「ッ……!」

    彼は咄嗟に跳び退くが、首に走る痛みが再び視界を歪ませる。
    古傷が災いし、動きが鈍る――。

    埋葬者はその様子を見て、片目を細めた。

  • 1851◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:17:24

    「お前の首、弱いのだな」

    尊大な笑みを浮かべ、彼女は黄金の剣を再び引き抜く。
    その刃は砂の光を反射し、まるで太陽のように煌めいた。

    ギヨタンは深く息を吐き、血で濡れた首筋に手を当てる。

    「弱さ……それもまた、裁かれる理由になるか」

    彼の瞳が研ぎ澄まされ、再びアヌビス・ルールの力が宿る。
    埋葬者の魂を見据え、その奥底に潜む悪を照らし出す。

    「お前は死を恐れぬ……既に死者だからな。
     だが、悪事は積み重なり、魂を蝕む」

    アメミットの刃が低く構えられる。
    彼の姿はまるで処刑台の前に立つ死刑執行人そのもの。

    埋葬者は棺桶を前へと突き出し、亡者の群れを一斉に解き放つ。

    「来るがいい、処刑人!」

    ギヨタンは砂嵐を切り裂きながら前進する。
    彼の歩みは重く、だが確実に埋葬者へと迫っていった。

    砂に沈むか、裁きに斬られるか。

    両者の力は拮抗し、墓場全体が彼らの戦いに震えていた。

  • 1861◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:18:15

    砂嵐の中心で、二人の影が交錯していた。

    ギヨタンの短剣アメミットが砂を裂き、亡者の群れを次々と斬り払う。
    だが、倒しても倒しても、地の底から新たな亡者が這い出てくる。

    「きりがない……」

    彼は息を整え、眼光だけで埋葬者を睨んだ。

    「お前の力は死を呼ぶだけだ。
     その棺桶――そこに秘密があるな」

    埋葬者は片目を細め、唇を吊り上げる。

    「ようやく気づいたか、処刑人。
     この棺はわたしそのもの。
     中に眠るのは――わたしの心臓」

    ギヨタンの瞳がわずかに揺れる。

    「心臓……」

    「そうだ。
     わたしは既に死んでいる。
     この心臓を滅されぬ限り、何度でも蘇る」

    鎖が軋む音を立て、棺桶が地面を引きずる。
    その重さは、まるで世界中の死を背負っているかのようだった。

    ギヨタンは構えを崩さず、低く呟いた。

  • 1871◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:18:59

    「処刑の条件は整った」

    埋葬者は鼻で笑い、黄金の剣を振りかざす。

    「処刑人が死人を裁けるか?
     お前の刃に、死者を止める権限があるのか?」

    ギヨタンは短剣を掲げ、砂嵐を切り裂くように叫んだ。

    「アヌビス・ルールは生者も死者も隔てない。
     悪を断つための裁きだ!」

    その瞬間、彼の視界に映る埋葬者の姿が変わる。
    砂に覆われた少女の影の奥――無数の悪行が鎖のように繋がっていた。

    「……見えるぞ。
     お前の魂を縛るものが」

  • 1881◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:19:28

    埋葬者はわずかに顔を歪めた。

    「わたしは悪ではない。
     ただ、すべてを埋めるだけだ。
     死は平等だろう!」

    ギヨタンは首筋の痛みに耐えながら、一歩踏み込む。

    「だが――その平等を奪う心臓がある。
     それこそが罪だ」

    亡者の群れが一斉に襲いかかる。
    砂嵐の音が轟き、墓場全体が沈みかける。

    ギヨタンは短剣を逆手に握り、ただ一つの目標に視線を固定する。

    ――棺桶。

    埋葬者はそれを守るように立ちはだかり、黄金の剣を振るった。

    「来い、処刑人!
     ここが貴様の墓場だ!」

    ギヨタンの眼光が燃える。

    「ならば、ここが――お前の処刑台だ!」

    砂と血と亡者が渦巻く中、二人はついに決戦の瞬間へと突き進んでいった。

  • 1891◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:20:07

    砂嵐は最高潮に達し、墓場全体が揺れていた。

    ギヨタンは全身に亡者の爪痕を刻まれながらも、眼光を失わず前進する。
    その視線の先には、鎖で繋がれた棺桶と、それを守る埋葬者の姿。

    「……ここで終わらせる」

    低い声が砂を割る。

    埋葬者は黄金の剣を掲げ、包帯の下の口元を吊り上げた。

    「終わるのはお前だ、処刑人。
     わたしを裁く権利など誰にもない!」

    亡者の群れが吼え、砂の手が無数に伸びる。
    それはまるで大地そのものが彼を飲み込もうとしているかのようだった。

    ギヨタンは首の痛みに呻きつつ、短剣アメミットを構える。

    「権利ではない。
     義務だ。
     悪を裁く、それが――血統裁判」

    彼の瞳がぎらりと光り、アヌビス・ルールが発動する。

    一瞬、亡者の群れが立ち止まり、砂嵐が凍りついた。
    ギヨタンの視界に浮かび上がるのは、埋葬者の魂の奥に潜む「罪の系譜」。

    それは無数の墓、無数の嘆き。
    彼女が「平等」と称して埋めてきた命の連鎖が、黒い縄のように絡みついていた。

  • 1901◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:20:38

    「……見えた。
     お前の罪は、心臓と共に眠っている」

    埋葬者が一歩退いた。

    「それを裁くなど……許さない!」

    少女の残された片目が怪しく光り、地が裂ける。
    棺桶を守るため、巨大な砂の亡者が姿を現した。

    ギヨタンは構え直し、低く息を吐く。

    「処刑は一度きりでいい」

    短剣が閃き、亡者の巨体を紙のように裂く。
    その隙間を縫い、彼は棺桶へと駆け抜ける。

    埋葬者が叫ぶ。

    「やめろおおおおおっ!」

    黄金の剣が振り下ろされる。
    だが、ギヨタンは半身を捻り、首筋の古傷を裂きながらも短剣を振るった。

    刹那、砂嵐が静まり返る。

    アメミットの刃が棺桶を断ち割り、中から現れたミイラの心臓を貫いた。

  • 1911◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:21:04

    「……これで、終わりだ」

    埋葬者の体が崩れ落ちる。
    包帯がほどけ、砂の粒となって風に散っていった。

    「わたしは……平等を……与え……」

    最後の言葉は砂に飲まれ、消え去った。

    静寂の中に、処刑人だけが立っていた。
    血に濡れた首筋を押さえながら、彼は夜空を見上げる。

    「善人か悪人か……それを決めるのは、俺ではない。
     俺はただ、罪を断つだけだ」

    砂嵐が止み、夜空に星が戻る。

    ギヨタンは短剣を納め、ゆっくりと歩き去った。

    墓場には、もう亡者の声も、少女の影も残ってはいなかった。

    ただ一つ――血統裁判の執行が果たされたという事実だけが、静かに刻まれていた。

  • 1921◆ZEeB1LlpgE25/08/18(月) 23:21:56

    以上

  • 193二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 23:23:12

    投下お疲れ様です

  • 194二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 23:26:15

    >>188

    死なない相手が語る「死は平等」に対して、「その平等を奪ってるから罪」って返せるのかっこいい

  • 195二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 06:54:46

    権利ではない、義務だ。
    めっちゃかっこよくないコイツ?

  • 196二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 10:37:14

    このレスは削除されています

  • 1971◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:03:13

    題名『光熱を裂く襖』

  • 1981◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:06:56

    夕暮れの街外れ、廃屋が立ち並ぶ路地に、少年の姿があった。
    八ツ辻 襖──16歳、八ツ辻家の一族の末裔。少年の目は緊張に揺れていた。

    「……ここで会うことになるとはな」

    彼は自分自身に言い聞かせるように呟く。
    手のひらが微かに汗ばんでいる。まだ能力に慣れていないのだ。

    路地の向こう側で、銀髪の少女が立っていた。リラ=トーファ。
    光を宿す杖を手に、柔らかな笑みを浮かべる。

    「こんにちは。ここ、私の通り道だったの」

    言葉とは裏腹に、彼女の瞳は鋭く、そして何かを見透かすような光を帯びていた。
    少年は一歩後ずさる。

    「お、お前……何者だ?」

    「えっと、私はリラ。あなたは?」

    軽く会話が交わされる間も、襖の力は少年の掌の中でうずく。
    閉じるだけで空間を切り裂く、両開きの襖。その威力をまだ完全には制御できない。

    「……八ツ辻 襖だ」

    彼は名を告げ、思い切って力を解放した。
    まずは小さな襖を一枚、路地の中央に設置する。
    それは、まるで見えない壁のように、空気の流れさえ遮る硬さを帯びていた。

  • 1991◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:07:11

    リラは杖を掲げ、静かに光を帯びさせる。
    目の前の襖を瞬時に光熱で溶かすことはせず、彼女は慎重に動きを探る。

    「ふふ、やっと遊べそうね」

    その言葉に少年は胸を高鳴らせる。
    「遊ぶ」──その意味を理解する前に、戦いは始まろうとしていた。

    路地に静寂が広がる。
    少年と少女、互いに力を測り合いながら、一歩ずつ距離を詰める。

    襖が一枚、光熱の杖が一振り。
    その交錯は、これから続く戦いの序章に過ぎなかった。

  • 2001◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:07:54

    少年は肩の力を抜き、もう一枚の襖を手元で展開した。
    縦横比の制約を考えながら、慎重に配置する。
    まだ能力を完全には扱えないが、それでも攻防の鍵となるだろう。

    「これで……どうだ」

    少年の声は緊張混じりだが、力強さもあった。
    襖が静かに路地に並ぶ。空間を押し広げるその硬質感が、少年の意志を物語っていた。

    リラは杖を前に構え、微かに光を灯す。
    その光はまるで生きているかのように揺れ、路地の影を照らした。

    「ふふ……楽しそうね」

    少女の笑みは柔らかいが、瞳の奥には戦う意思が光っている。
    光熱を一気に解放すれば襖を貫ける力はある。しかし、彼女は慎重に動いた。
    少年の動きと襖の配置を観察し、最適な攻撃のタイミングを探る。

    襖が一枚、少年の前に飛び出す。
    触れたものを切断する力はまだ不完全だが、十分に威圧を与える。
    リラは杖を軽く振り、襖の端を光熱で弾く。

    「なるほど……まだ未熟ね」

    彼女の声は軽やかだが、攻撃の速度は一瞬で少年の視界を裂いた。
    少年は咄嗟に別の襖を展開し、防御する。
    「くっ……速い……!」

    衝撃が掌に伝わる。
    襖の耐久は分散され、操作できる数の限界も感じる。

  • 2011◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:08:28

    それでも少年は諦めず、連続で襖を展開し、リラの攻撃を迎え撃つ。
    リラは杖を振り、路地の壁を光熱で削りながら、少年の襖を避ける。
    光と影の交錯が路地に鮮やかな模様を描く。

    「斬る……斬る……」

    少年は独り言のように呟きながら、襖を自在に操作する。
    挟まれた空間を切断する感触が、彼の集中を研ぎ澄ませる。

    リラは軽く跳び、杖を振る。
    光熱の刃が襖を裂き、少年の動きを一瞬遅らせる。
    だが少年はすぐに別の襖を展開し、戦線を維持した。

    「ふふ……面白くなってきたわね」

    少女の声に、少年の胸も高鳴る。
    戦いはまだ始まったばかり。
    互いの力を探り合い、攻防が続く。
    光と影が路地に踊る。
    襖と杖の軌跡が、静寂の街に不思議な緊張感を刻んでいく。
    少年の呼吸が荒くなる。
    リラの瞳は冷静だが、戦意は高まっている。

    「……これでどうだ!」

    少年は全力で襖を展開し、リラの進路を封じる。
    光熱の刃がそれに迫る。
    二人の力が激しくぶつかり合う瞬間、路地に鋭い風が巻き上がった。

    戦いの第一幕が、ここに幕を開けた。

  • 2021◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:09:07

    少年の汗が額を伝う。
    襖の操作に全神経を集中させ、リラの動きを読もうとするが、彼女の光熱は予想以上に素早かった。

    「まだ……まだ……負けん!」

    独り言のように呟きながら、少年は別の襖を展開する。
    今度は二枚を連結させ、路地の中心を封鎖する構えだ。
    触れたものを切断する力はまだ部分的だが、瞬間的な防御としては有効だった。

    リラは杖を掲げ、光熱を帯びた小さな球体を生成する。
    それは少年の襖を貫くための高速攻撃であり、放たれる光はまるで燃える彗星のようだった。

    「行くわよ……!」

    少女の声とともに球体は襖を裂き、少年の前に迫る。
    少年はぎりぎりのタイミングで襖を閉じ、攻撃を逸らす。
    衝撃が掌に響き、襖の耐久が微かに削られたのを感じる。

    「くっ……ま、負けるか!」

    少年は息を整え、続けて別の襖を操作する。
    空間を挟むように配置し、リラの視線を翻弄する。
    能力の制約で同時に扱えるのは八枚までだが、それでも戦局を有利に運ぼうと必死だ。

    リラは柔らかく微笑む。
    だがその瞳の奥には冷徹な判断が光る。
    「動きが読めるようになってきた……でもまだ足りないわ」
    杖を振ると、光熱の刃が路地の壁を切り裂き、少年の襖に直撃する。

    少年は再び襖を開き、光を受け流す。

  • 2031◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:09:18

    「くそ……速い……!」

    体が硬直しそうになるが、諦めずに攻防を続ける。

    戦局は変化を見せ始めた。
    襖の操作に集中するあまり、少年の視界は徐々に狭まる。
    リラはその隙を逃さず、杖の光熱で小さな隙間を切り裂き、少年を揺さぶる。

    「斬る……斬る……」

    独り言のように呟きながらも、少年は反撃の準備を進める。
    襖で光熱を受け止め、再び間合いを取り直す。
    リラもまた、冷静に次の攻撃を狙う。

    二人の呼吸が路地の狭間に混ざり合う。
    光と影、切断と回避の攻防が交錯し、戦場は混沌と化す。

    「まだだ……まだ負けんぞ……!」

    少年の叫びに応えるように、リラは杖を一振り。
    光熱の刃が襖を切り裂き、戦局はますます緊迫していく。
    互いの力を読み合い、攻防が一層速く、鋭くなった瞬間、路地に冷たい風が吹き抜けた。

    戦局は静かに、しかし確実に変化していく。
    少年の襖とリラの光熱は、次第に戦いの主導権を巡って火花を散らす。
    二人の戦いは、まだ序盤の段階に過ぎない。

  • 2041◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:10:05

    「くっ……まだ……まだ耐えられる……!」

    八ツ辻襖は額の汗を拭いながら必死に襖を展開し続ける。
    路地のあちこちに設置された八枚の襖が光熱の刃を受け止め、切断と防御を繰り返す。
    だが、リラの攻撃は一度として緩むことがない。

    「動きが読めてきたかしら……でもまだまだよ」

    少女の声と共に、杖から光熱の波動が次々と放たれる。
    襖の耐久が削られ、いくつかはひび割れを見せた。
    少年は焦りと痛みを押し殺し、次の襖を操作する。

    「うっ……この速度……! 俺の……襖でも……間に合わん……!」

    視界の隅で、リラが杖を掲げて小さな光の球体を作り上げる。
    それは今まで以上に高速で、あっという間に襖の間合いに突入した。
    少年は全力で襖を閉じ、光を遮断するも衝撃で身体が揺れる。

    「くっ……くそ……!」

    襖の操作に集中するあまり、少年の体力は確実に削られていく。

  • 2051◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:10:33

    呼吸は荒く、指先の感覚は鈍り始めていた。
    しかし、それでも目だけはリラを捉え続ける。

    リラは軽く笑う。

    「もう少し……あなたならできるはず」

    しかしその微笑の奥には戦略家の冷静さが潜んでいた。

    少年は心の中で叫ぶ。

    「折れるわけにはいかん……これで終わりにはできん……!」

    襖の一枚を閉じ、リラの攻撃を逸らす。
    次の瞬間、触れた物体を襖化して攻撃の進路を逆に誘導する。
    小さな工夫だが、これで一瞬の猶予を得ることができた。

    リラは驚いたように目を細める。

    「……なるほど……少しは工夫できるのね」

    杖を振り、光熱の刃を別方向へ放つ。

  • 2061◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:10:48

    少年は再び襖を開閉し、光を受け止める。
    体力は限界に近いが、心はまだ折れていない。

    「俺の……襖で……お前を……止める……!」

    路地の中で光と影が入り混じり、攻防は熾烈さを増す。
    二人の呼吸は互いに意識され、瞬時の判断が勝敗を左右する。

    「くそ……俺も……まだ負けん……!」

    リラの光熱と襖の防御がぶつかり合い、路地の壁が微かに崩れる。
    少年の襖は限界に近く、リラの光熱は絶え間なく襲いかかる。
    ここが二人の戦いの正念場だった。

    「このままじゃ……俺は……!」

    少年は汗と血を混ぜた顔を歪め、次の襖を展開する。
    リラは杖を掲げ、光熱の刃をさらに加速させる。
    互いの能力の限界が、今まさにぶつかり合おうとしていた。

  • 2071◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:12:16

    「これで……終わりにする!」

    リラが杖を高く掲げ、光熱の刃を全力で放つ。
    路地中に赤と白の光が閃き、空気が熱で揺らぐ。
    八ツ辻襖は汗と傷だらけの手で襖を操作し、全力で光を受け止める。

    「くっ……このくらい……俺の襖で……防ぎ切ってみせる……!」

    襖が次々と展開され、光熱の刃は跳ね返される。
    だが、耐久が分散された襖の端から熱が漏れ、少年の肩を直撃する。
    痛みで声が漏れるが、少年は顔を歪めながらも立ち上がる。

    「ここで……折れるわけにはいかん……俺は……!」

    リラは冷静に、しかし表情にわずかな挑戦の色を浮かべる。

    「まだまだね……でも限界は見えてきたかしら」

    杖の先から放たれる光熱の波は、少年の襖の耐久を確実に削っていた。

    少年は額の汗を拭い、呼吸を整えながら考える。

    「工夫……そうだ……触れた物を襖化……位置を変えて……!」

    手元の襖を自在に開閉し、光の進路を次々に操作する。
    一瞬の隙を作り出すことに成功した。

    「なっ……?!」

    リラの声が驚きに変わる。

  • 2081◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:12:37

    杖を振るも、光熱の刃が思い通りの軌道を取れず、わずかに逸れる。
    少年は勢いよく前に踏み込み、残りの襖を最大限展開する。

    「これが……俺の……襖の極み……!」

    路地に強烈な衝撃が走り、光と影が交錯する。
    二人の力がぶつかり、地面に亀裂が入る。
    小石や瓦礫が飛び散り、視界を遮るが、少年の目だけはリラを捉えて離さない。

    「くっ……限界……でも……!」

    リラも負けじと杖を振り、光熱を凝縮した連撃を放つ。
    少年はそのたびに襖を操作し、ぎりぎりで防御を続ける。
    汗と血にまみれた顔が、決意で引き締まる。

    「俺は……折れん……お前を……止める……!」

    二人の呼吸は互いに同期するかのように早まる。
    光熱と襖の衝突が、路地の壁を揺らし、火花が散る。
    少年は一瞬の判断で、触れた物体を襖化し、リラの攻撃を逆に誘導する。

    「……なるほど、やるじゃない」

    リラの瞳に感心の色が宿る。
    しかしすぐに冷静さを取り戻し、最後の連撃を準備する
    少年も拳を握りしめ、全力で立ち向かう。

    「ここで……終わらせる……俺の……襖で……!」

    路地の中で、光と影が渦巻き、二人の能力の限界が、ついに火花を散らす瞬間だった。

  • 2091◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:19:24

    「……終わらせる……」

    八ツ辻襖の声は、震えながらも決意で満ちていた。
    汗と血にまみれた体をひきずり、少年は路地の中心で最後の襖を展開する。
    光熱の刃が空間を切り裂き、振動が地面に走る。

    「ここで……俺の力を……見せる……!」

    触れた瓦礫も、鉄の扉も、襖の操作で自在に開閉される。
    リラは杖を握りしめ、冷静な視線を少年に向ける。

    「……すごいわね……でも、私も全力よ」

    杖から放たれる光熱の波が、最後の襖にぶつかる。
    衝撃で襖が歪み、耐久が削られていく。
    少年は痛みをこらえ、次の一手を考える。

    「……ここで……工夫だ……触れた物を襖化……位置をずらす……!」

    わずかの隙間を作り出すと、光熱の刃を誘導し、進路を変える。

  • 2101◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:19:47

    リラの光は予測を外され、わずかに逸れる。
    少年は前に踏み込み、最後の襖を全力で閉じる。

    「……これで……終わる……!」

    轟音とともに光と影が衝突し、路地は激しい振動に包まれる。
    瓦礫が飛び散り、煙と埃で視界が遮られる。
    その中、二人の姿がわずかに見える。

    リラは杖を握りしめ、息を整える。

    「……すごいわ……あなたの力……」

    少年も立ち上がり、汗と血で汚れた顔をあげる。

    「お前も……強い……だが……俺は……折れん……」

    互いの呼吸が重なり、静寂の中で決意の光が交錯する。
    そして、少年は最後の力を振り絞り、襖を操作して光熱を完全に封じる。
    リラの杖から光が消え、熱が徐々に落ちていく。

  • 2111◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:20:24

    「……これで……終わり……ね」

    リラは静かに杖を下ろす。
    少年は胸を打ち、疲労と安堵で震える体を支えながらも立っている。

    「……俺の……襖が……守った……」

    路地には静寂が戻り、光と影の戦いの痕跡だけが残る。
    二人は互いを認め、そして互いの力に敬意を示すように一歩ずつ離れていく。

    「……あなたの力……忘れない……」

    リラの声は穏やかで、しかし心に深く響くものがあった。
    少年は微かに笑みを浮かべ、襖を一枚ずつ解いていく。

    「……俺も……お前の力……忘れん……」

    戦いは終わった。
    だが、この戦いで得た経験と決意は、二人の未来を確かに変えていた。
    光と影、襖と光熱――互いの力を認め合ったその瞬間、世界は静かに呼吸を取り戻した。

    少年と少女は、互いに深く一礼し、戦いの場を後にする。
    路地の瓦礫と煙の間に、静かな余韻だけが残った。
    そして、二人の心には、次の出会いへの期待と尊敬が刻まれていた。

  • 2121◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:20:40

    以上

  • 2131◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 17:20:57

    安価募集は18:30から

  • 214二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:29:59

    このレスは削除されています

  • 215二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:29:59

    名前:タマ/佐藤 珠(たま)
    年齢:人間体の見た目は15歳
    性別:女
    種族:猫?/人間?
    人物概要:佐藤家のペットの白猫で人間と猫の姿を自由の行き来ができる不思議な存在
    自由気ままに過ごしているが龍や獣、蟲などの強大な獣や生き物に好かれやすく彼女を「女王」と呼んで世話を焼く
    その正体は神代の時代に森羅万象のありとあらゆる全ての生物を総べ統治した獣の皇帝であり最強の獣だった「獣神」の転生体
    創世から絶対最強として君臨し「獅子の皇帝」と呼ばれた正真正銘の怪物だが家臣どころか腹心にも理由を語らず急に転生した
    記憶も力も魂の最奥に封じられ解放の刻を待つ、性格は寡黙で神秘的でありちょっぴりお茶目な自由人
    能力:百獣の主
    能力概要:封じられた「獣神」の力が魂の最奥から漏れ出してきた残滓の様なモノ
    ありとあらゆる獣を召喚可能で使役できるのは格下の獣だけだが心を通わせ「盟約」結んだ獣は彼女より格上でも問題なく使役
    己の肉体を変異させる事ができが好きな生物の身体機能、能力、技を使う事を可能とし巨大化、群体化、縮小化も可能
    「最終形態」も存在し召喚した獣や周辺にいる獣と融合する事で超短時間ながら超強力なキメラ状態になれる
    戦闘時には肉体を変異させ召喚した獣と共に類い稀なる群れの連携をして相手を追い詰めてゆく
    弱点:首輪の宝石で本来変異しか使えない獣神の力を解放、増幅しており壊すと再構築されるあまで召喚を使えず出した獣も強制帰還
    召喚した獣の腹にある紋章を突く事でも帰還させる事が可能、召喚した獣の受けたダメージは彼女にもフィードバックされる
    体力の消耗、ダメージフィードバック、攻撃に巻き込まれるといった様々な都合で召喚するのは同時に2体までに留めている
    変異状態は長時間は維持できず感覚の鋭敏化で受ける痛覚とダメージが倍増し最終形態になるともっとダメージが倍増する
    体力が減りすぎたりダメージを受けすぎたりすると変異維持が出来なくなり変異無しの彼女のスペックは普通の少女と変わらない
    要望:口調はふわふわした神秘的な感じで稀に「にゃ」と語尾に付けます。薄々神様である察しているので少し達観しています。

  • 216二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:30:00

    名前:レイモン・トーテンタンツ
    年齢:35
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:アルビオン裏社会において鼠を使うことで諜報や暗殺などをこなしてきた「トーテンタンツ家」の一員 彼らは鼠を扱う方法にこそ差があれど一様に18世紀めいたペスト医師装束に身を包んでいるのだ ちなみにトーテンタンツ家は現在"M教授"なる人物に仕えている
    能力:鼠使いの笛
    能力概要:彼が"ハーメルンの笛吹き男"の伝承からインスピレイションを受けて開発した能力 ペストマスクの嘴部分に仕込まれた機械から発せられる特殊な音波とM教授から通信教育で授かった数学インストラクションにより凶暴なクローヴァン鼠たちを呼び寄せて統率された軍隊のごとく使役する ただ近接戦に弱いかと言われるとそんなことはなく杖を用いたバーティツ格闘術の達人なので近接戦も問題なくこなせる
    弱点:嘴の機械に衝撃を受けたり大きな音を立てられたりして演奏を乱されるとクローヴァン鼠が統率できなくなり戦力が低下する ただし服がネズミには傷つけられないくらい頑丈なので暴走した鼠に襲われても問題はない 機械の操作には集中が必要なので近接戦を行なっている時は鼠を統率できない
    要望:やや芝居がかった喋り

  • 217二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:30:00

    名前:支配者(如月 宇美)
    年齢:22
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:【特異能力犯罪対策局】制圧課所属で制圧課の中でも問題児
    万物を支配する力を持つ異能を持ちとても傲慢(メスガキ)だったが【提唱者】と遭遇し制圧を試みた(喧嘩を打った)結果
    完膚なきまでに叩きのめされて凄く臆病になってしまった経歴を持つ 
    今の性格は調子に乗りやすいがすぐビビる感じ
    制圧課では戦闘のサポート、触れることで相手を支配し無力化などを主に担当している
    能力:支配
    能力概要:万物を支配する力 
    空間を支配したら空間内のものを自由に動かせ
    環境を支配したら環境を自由自体に変化させ
    時を支配することで時を止めたり加速させたり巻き戻したり
    世界を支配することで現実改変を起こしたり
    一見最強に見えるものだが中々に面倒な制約が多い
    弱点:一度に支配できるものは一つだけ 他に支配したくなると一度支配を解除しないとならない
    また自身に対して敵対感情があるものは触れないと支配出来ない
    支配するもの規模、強さが大きい程 集中する必要があり 
    環境支配なら自分の動きが鈍く、空間支配なら自分の動きが半減 
    時とか世界の様な概念的なものは(呼吸含めて)全く動けなくなる
    また能力の都合上支配したものに自身の身体を守らせる、運ばせるなど怠惰な日常を送っていた為
    身体能力がとても低いぞ!
    要望:有利な時は調子に乗って 不利になると【提唱者】にボコられたトラウマが蘇りビビる感じでお願いします

  • 218二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:30:01

    名前:”ビッグ・キーパー”ズゥ・オラクル
    年齢:1984歳
    性別:男性
    種族:人間(現人神)
    本人概要:バイオスフィア“イーハトーヴォ”を管理している老人、傲慢たる支配者とも呼ばれる。土偶のような防護服を常に着込んでいる。
    生物が好きであり、彼の管理するバイオスフィアには様々な動植物が生活しており、中にはティラノサウルスや三葉虫、ドードーなど既に絶滅した動物や鼻行類やツチノコなどの存在しないはずの生物さえ元気に生息している。
    が、彼の本性は厳格な管理者である。あらゆる物事、森羅万象を手の内に収めなければ満足できない異常者。そのためまったく思い通りにならない人間社会に嫌気がさし、一つの生態系(せかい)を建造し、それを完璧に掌握することで満たされない渇望・欲求を慰めている。
    能力:Synchro Gazer
    能力概要 : 世界規模の照応魔術。照応魔術とは本来マクロコスモス(世界)とミクロコスモス(人体)を照応させる、あるいは人と人形を照応することで呪う原始的な魔術である。しかし、彼は小規模ながら完璧に循環した世界を創り、それを完璧に運営している。それはまさしく神の御技、彼の異常な年齢もこの小さな世界の神であるから実現できたものである。
    舞台がイーハトーヴォである限り彼は神の如き超常現象を起こすことができる。それこそ洪水伝説やバベルの神罰、ソドムとゴモラを崩壊させた裁きすら起こせるだろう。
    弱点:バイオスフィアはかなり繊細な空間である。そのためちょっとでも火事が起きたり、地形の大幅な変化、空調設備が壊れると彼の照応魔術に不全が起きてしまう。
    そうなるとズゥの寿命や超常性も損なわれ普通に倒せるようになる。
    要望(任意):モノ=スがイーハトーヴォに侵入したため、イーハトーヴォの生態系に悪影響が出る前に駆除に奮闘する。

  • 219二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:30:01

    名前:キャージ・スレイ(通称:スレイパパ)
    年齢:51
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:無限のメンタルを持つスレイ家のパパ。
    金髪オールバックのポニテに碧眼。秦家から喜びの能面を盗んだ前科があり、現在感情は“喜”しかない。よく笑いとてもよく笑って凹むことがない。
    家族以外スレイパパのことを知らない。謎の存在。
    たまに公園で子供と遊んでいる。仕事はしていない。しなくてもいいぐらいお金がある。家はほぼ城であり、よく敷地内で飛んでいる。最近奥様方に不審者として指名手配された。不服。
    ラフな貴族ファッションをしている。背は174cmくらい。スレイパパの関係者と関係を持たない限りスレイパパを認知することは難しい。しかしよく集中し、動きのあった場所に注目すれば見付けることが出来る。能力がアレのため、無意識に毒舌を吐いてくる。家族みんなこう。
    妻のシェレナはスレイパパのことをハッキリ認知出来ている。素で持っている魔法のセンスがある。先祖が神様だったらしい。
    能力:【スレイ家の定番】
    能力概要:無意識を操る能力。
    常識の外側に行くことが可能であり、無意識に様々な力が扱えるようになる。
    他者から認知されなくなり、存在そのものを忘れ去られる。見えたとしても道端の石ころを見たかのように目を離すとすぐに忘れられる。
    言動は予測不能で未来視でもスレイパパの未来を見ることは不可能。
    相手の無意識の記憶を呼び覚まし、精神攻撃をすることも可能(先祖の記憶を呼び起こして攻撃させる、無意識に相手が恐れていること再現する)。
    相手の無意識を操り、弱点を無意識に露出させるという応用も効く。常時発動している能力。
    弱点:スレイパパに注目が集まりすぎると能力の効果が薄くなる。
    雨では普通に濡れるし、痛いものは痛い。攻撃などが無効化されているわけではないため。
    目を攻撃されると一瞬攻撃が緩む。さらに追撃すれば逃げ去っていく。身体能力が高いわけではない。
    弱点を知ったからといってスレイパパが必ず攻撃してくるわけでもなく、知るだけ知ってなにもしないということが多い。無意識の記憶は「怖い」と感じなければほぼ意味を成さない。

  • 220二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:30:01

    名前:統粘魔プレティト(最小分体)
    年齢:0
    性別:無性
    種族:統粘魔
    本人概要:スライム系最上位種【王粘魔】変異個体【統粘魔】識別名称プレティト(古代言語で集いし神)。其の最小分体。侮ること勿れ、之は人以上の智慧を誇り、他を従えるのではなく取り込むことで絶対者と成った怪物の遺伝子を受け継いでいる。そもそもスライム系統の特質たる分解、理解、変質を高度に備えていることも忘れてはならない。
    能力:統一
    能力概要:自身より矮小なるものを己が一つとする。
    弱点:掌大ほどの大きさしかなく、そのままならば一般人ですら討伐は容易。本体から分離した知能を保持する為、触れたら壊れてしまう核がある。

  • 221二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:30:02

    名前:無神
    年齢:???
    性別:???
    種族:神(荒御魂)
    本人概要:産まれたくても産まれなかった命の集合体が集い混ざった結果無意識を司る神になった存在。産まれなかった命が故に意識的に行動が出来なく、無意識に考えた事を瞬時に行動に移したりが出来ない。現在は剣神が襲撃してきて生き延びる為に抗った結果荒御魂と和御魂の二柱に分かたれた。分かたれてしまったので《Unbewußtsein》を使っての一つの事に集中が出来なくなった。
    能力:《Unbewußtsein》
    能力概要:無意識を自他共に操る事が出来る能力。相手の無意識を操り己の姿を認識しづらく、相手の動きをずらすことでテンポを崩す事が可能で、己の無意識を操る場合は一つの事に集中させたり、身体のリミッターを解除する事が可能であった。現在は分かたれている為、己の無意識を操る事は出来ない。
    弱点:無神になる前は産まれなかった命の集合体なので、攻撃力は7しかない
    子供のように好奇心でフラフラと行動する為、隙が生じやすい。
    天界から現界用の肉体(全体の1%の産まれなかった命の集合体)のコアが破壊されたら現界出来なくなる。

  • 222二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:30:13
  • 223二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:30:31

    代理安価

    名前:文字ちゃの鳩
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:人間
    本人概要:人が不幸になっているところを見ると性的に興奮し、笑いが止まらなくなる、カスの鳩(決して特定の誰かを貶めるような意図はありません。あくまでこのキャラの事を言っています。)
    よくロアの鳩とどつきあいをしているが、実際の仲は良い。蝶が好物で食べはせずべろべろ舐める。
    語尾が何かしらの顔文字になっている。
    例「私も戦慄してる……怖い(((;゚ Д゚)))ガクガクブルブル 」
    「あぎゃああああ(´・ω・`).;:…(´・ω…:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..」
    「( ・∇・)」
    能力:お前も道連れだYOU
    能力概要:自身が負ったダメージを相手と共有することができる
    弱点:心は意外と繊細なので自分は傷つかない程度に精神責めすれば文字ちゃの鳩だけぶっ倒れる。
    要望:負けた時は以下のセリフを言わせて下さい。
    「あぎゃああああ(´・ω・`).;:…(´・ω…:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..」
    負けてるところ見たいので勝率20%くらいにしといて下さい

  • 224二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:31:10

    >>218

    修正忘れてた

    モノ=スを対戦相手に置き換えてください

  • 225二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:32:08

    名前:ロアの鳩
    年齢:-3
    性別:雄を自称
    種族:鳩
    本人概要:
    光が大好きで、光合成でテンションが上がる。闇を嫌いすぎて夜になると「ギャアア!」と叫びながら発狂する。孤独に耐えられず、道端の石やゴミ袋にまで話しかけては「友達!」と喜ぶ。食生活は虫オンリーだが、100%の確率でお腹を壊すという才能を持つ。
    実は宇宙の理を少しだけ狂わせる存在で、呼び出されると周囲の確率がバグる(例:敵が転ぶ、味方のパンツが破れる、空からなぜかプリンが降る)。
    能力概要:
    召喚された瞬間から空気がぶっ壊れる。「敵を倒す」というより「敵も味方も巻き込んで全員を困惑させる」役割を持つ。闇の中では完全に無力。
    能力概要:
    「文字ちゃの鳩召喚」:呼び出せるが、情けなくてほぼ役に立たない
    「光バフ」:直射日光を浴びるとテンションが爆上がり、無意味に早口で喋る
    「確率崩壊」:本人の存在で周囲の物理法則が微妙に狂う(でも戦闘に有利になるとは限らない)
    弱点:
    闇を見ただけで泣き叫ぶ
    一人にされたら三秒で「孤独死するぅ〜」と叫ぶ
    虫を食べて即リバース → そのまま戦闘不能に

  • 226二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:32:14

    このレスは削除されています

  • 227二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:33:58

    名前:既知の魔物
    年齢:43!
    性別:無し
    種族: 既知の魔物
    本人概要:あらゆる理解の外にある魔物が一つ。その性質は比較的恐ろしいものではないが、知能が人を遥かに上回ることから全く侮れない凶悪無比な存在。狡猾極まりなく、仮に相手が史上最高の大天才でも容易く欺いてしまうほど頭脳戦では無類の強さを誇る。
     姿形は見たものが知る全てを混ぜ合わせたような様相になる。
    能力:既知
    能力概要:対象にとって既知の魔物が「既知」になったとき、若しくは既知の魔物にとって相手が「既知」となったとき、森羅万象を無視して相手を支配する。
     ここで言う「既知」とは相手の全てを完全に理解することで、その為にかかる労力は計り知れない。
    弱点:直接戦闘能力は皆無。また、姿の内、相手にとって大事な物が自動的に急所になる。

  • 228二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:33:59

    名前:ガウガガウ
    年齢:14歳
    性別:雌
    種族:人間
    本人概要:
    幼少期から魔物や植物型の魔物が跋扈するジャングルで木厳しい生存競争を生き抜いてきた野生児。
    鋭く尖らせた木の枝や自身の牙・爪を主武装として野生的に相手を追い詰める。
    教養は低く「ガウ」「ウガー!」程度しか喋ることが出来ないが、代わりにジャングルで培われた極めて鋭敏な野生的“勘”を持つ。
    “勘”による危機回避は未来予知と見紛うレベルであり、“勘”で相手の弱点を暴き攻め立てる姿はまるで急所への誘導ミサイルである。
    “勘”により自身が不利と判断した場合には無様なまでに逃げに徹するが、好機と見た時の攻めは驚異的。
    身体能力と判断力の高さが野生で生き抜いてきた何よりの証だ。
    能力:『ガウウガーガウ(植物生成)』
    能力概要: 枯れた大地にすら瑞々しい種々の植物を瞬く間に繁茂させジャングルを作り出す。
    弱点:
    生成した植物の命は短く、すぐに枯れてしまう。教養が無いため複雑な思考が苦手。
    優れた五感を持っているのが強みではあるが逆に強力な光や音、臭いに弱いという弱点でもある。

  • 229二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:34:03

    名前:獄蠍モノ=ス・アルマータ
    二つ名:鋼殻王蠍(こうかくおうかつ)
    年齢:推定数千年
    性別:オス
    種族:超巨大バケモノ
    本人概要:
    歴代最強個体にして、外殻をさらに強化し鋼鉄の鎧のように進化した怪物。
    体長は約20メートル、体重30トン以上の巨体を誇り、通常の武器では傷ひとつ付かない。
    3本のハサミはすべて巨大化しており、前脚と尾による同時攻撃で敵を逃がさない。
    その存在は、まるで大地そのものが鎧を纏って動き出したかのようと恐れられている。
    能力:
    外殻強化『アルマータ・シェル』
    巨大化ハサミ『トリプルクラッシャー』
    猛毒ガス『ヴェノム・マントラ』
    地脈掌握『アース・マスター』
    能力概要:
    『アルマータ・シェル』は衝撃吸収と反射機能を持つ鎧殻で、建造物すら耐える。
    『トリプルクラッシャー』は3本のハサミを巨大化させ、切断力・挟撃力を飛躍的に強化。尾のハサミは伸縮・回転可能。
    『ヴェノム・マントラ』は広範囲に拡散する猛毒ガスで、対象の神経を麻痺させ行動不能に追い込む。
    『アース・マスター』は地脈や岩盤を操り、地形を歪ませて拘束や攻撃に利用する能力。
    弱点:
    腹側は依然として装甲が薄く、直接攻撃を受ければ致命傷となる。
    巨体ゆえ狭所では機動力が著しく低下し、複数方向からの攻撃に弱い。
    毒や地脈操作を発動する際、一瞬の「溜め」が必要で、その隙を突かれると脆い。

  • 230二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:34:04

    このレスは削除されています

  • 231二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:37:31

    フライングとか安価指定とか削除とか色々あってどこまでが範囲かパっと見分からんね

  • 232二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:38:48

    このレスは削除されています

  • 233二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:39:05

    このレスは削除されています

  • 234二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:39:41

    コテハン、コテハン

  • 235二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:40:00

    >>233

    スレ主!名前が!

  • 236二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 18:57:43

    さてはアーティスファクトスレにもいるな?

  • 2371◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 18:57:55
  • 2381◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 19:08:49

    >>236

    あそこ楽しいですよね

  • 239二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 20:14:19

    スレ主、スレイパパの要望追加していいですか?

  • 2401◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 20:23:02

    >>239

    どうぞ

  • 241二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 20:28:20

    >>240

    勝った時には相手が死んでても生きてても家のエントランスの飾りとして拉致らせてください

  • 2421◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 20:35:45

    >>241

    oh

    了解

  • 2431◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 20:41:14

    レイモン・トーテンタンツvsキャージ・スレイ
    ”ビッグ・キーパー”ズゥ・オラクルvs統粘魔プレティト
    既知の魔物vs文字ちゃの鳩
    ロアの鳩vs無神
    支配者vs佐藤 珠

  • 2441◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:10:16

    題名『鼠の鎮魂歌と父の狂笑』

  • 2451◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:11:10

     アルビオンの裏路地は、いつも湿っている。
    レンガ造りの壁には黒い水が伝い、鼠たちの細い影がそこかしこに走る。

    「ふむ、今日もまた……。闇が囁き、我が笛に応えるな」

     ペスト医師装束に身を包んだ男――レイモン・トーテンタンツは、芝居がかった声色でひとりごちた。嘴状の仮面に仕込まれた機械が微かに唸りを上げ、クローヴァン鼠たちが暗がりから集う。
     彼はその群れを見下ろし、杖の先で地を軽く叩いた。まるで観客が幕を上げるのを待つかのように。

     だが、その静謐な裏路地の空気は、突然に破られた。

    「ハッハッハッ! よーし、次はもっと高く飛ぶぞ!」

     朗らかで、あまりにも場違いな笑い声が響いた。
    路地の先で、金髪の男が子供たちと一緒に縄跳びをしていたのだ。
    ラフな貴族風の服に、やたら豪奢なポニーテール。彼の周囲だけが陽だまりのように明るい。

     レイモンは片眉を吊り上げた。

    「……ふむ? このような薄汚れた路地にて、陽光の精か何かか?」

     彼の鼠たちは、しかし一斉に立ち止まった。

  • 2461◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:11:23

    標的を探して走っていたはずの群れが、何かを見失ったかのように散り散りに迷う。

    「……これは?」

     レイモンの仮面の奥で、目が鋭く細められる。
    男は一度、笑いながら子供たちを解散させると、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。

    「おや、見慣れない格好だな。お医者さんごっこか?」

     にこやかに、しかし軽薄な調子で言葉を投げかけてくる。
    その声を聞いた瞬間、レイモンは背筋に冷たいものを感じた。

     視界にいるはずなのに、次の瞬間には存在感が霧散する。
    鼠たちの感覚も追いつけない。

    「……なるほど。これはこれは、噂に聞く“異端者”。」

     レイモンは杖を構え、静かに呟いた。

    「さあ、幕が上がるぞ。
     我が舞台へ足を踏み入れたのなら、踊ってもらわねばなるまい――!」

     相対するは、“スレイパパ”と呼ばれる謎の男。
    路地裏で、奇妙なる二人の出会いが幕を開けた。

  • 2471◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:12:29

     クローヴァン鼠たちが路地を覆い尽くす。
    歯を剥き出し、赤い眼をぎらつかせながら、標的を求めて四方八方へ走る。

     しかしその動きは、まるで空振りの連続だった。

    「……なに?」

     レイモン・トーテンタンツの仮面の奥で、鋭い眼差しが揺れる。
    確かにあの男は目の前にいる。
    金髪をオールバックに結い、碧眼を輝かせ、能面のような笑みを浮かべて。

     なのに鼠たちは、彼を獲物と認識できない。
    すぐ目の前を通り過ぎ、影を追い、空虚な地面を掘り返している。

    「ハッハッハッ! すごいすごい! こんなにたくさんの鼠を見るのは初めてだ!」

     金髪の男――スレイパパは両手を広げ、楽しげに笑った。
    まるで祭りを眺める子供のような無邪気さ。
    その余裕が、レイモンの胸を逆撫でする。

    「……くっ。
     これはつまり、笛の音が届いていないのか? いや、違う。
     この男の存在が……齟齬を起こしている!」

     レイモンは舞台上の役者のように仰々しく杖を振るい、再び仮面から音波を解き放つ。
    空気が震え、鼠たちが同時に声を上げた。
    鉄の規律に縛られた軍勢のように列をなし、標的へ向かう――はずだった。

     だが、彼らの牙はやはり空を噛んだ。

  • 2481◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:12:46

    「ちょっと! そっちは子供たちが帰った方向だぞ!」

     スレイパパが大声で笑いながら手を叩くと、鼠たちは逆に混乱し散り散りになる。
    統率は崩れ、戦線は乱れ、まるで糸の切れた人形劇だ。

    「あり得ん……。我がクローヴァン鼠は百戦錬磨、幻惑や幻覚に惑わされることはない……!
     ならば、この男は何だ……?!」

     レイモンは苛立ちを隠さず杖を突き出す。
    その先端がスレイパパの胸元を狙った瞬間――

    「おっと、それは少し痛そうだな」

     ふっと影が消える。
    確かに視界の中央にいたはずなのに、まばたき一つで空席になる。

     気づけば、背後から明るい声が響いた。

    「ところで君、衣装のセンスはなかなかだ。ハロウィンなら人気者だろう」

     仮面越しに冷や汗が伝う。
    存在しているのに、認知が滑り落ちていく。
    相手を目で追えば追うほど、まるで夢の中の人物のように曖昧になる。

    「――無意識を、操る力……!」

     レイモンはその本質を掴みかけ、杖を強く握り締めた。

    「……愉快だ。
     ならば我が舞台は、狂気の舞踏にしてやろうぞ!」

  • 2491◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:15:24

     杖の一閃とともに、仮面の嘴から甲高い音が走った。
    まるで金属を擦り合わせるような不快な音波。
    瞬間、路地の隅々からさらに多くのクローヴァン鼠が姿を現した。

     その数、数百。
    建物の壁を這い、屋根を渡り、路面を黒い波のように覆い尽くす。

    「――出でよ、我が楽団!
     狂鼠の舞台はここに整った!」

     レイモンの芝居がかった声に応じるように、鼠たちが同調する鳴き声をあげる。
    それはまるで不気味な合唱。
    観客などいないのに、舞台が始まる。

    「おお、すごいすごい!」

     スレイパパが大げさに拍手をした。
    まるで舞台を楽しむ観客そのもの。

    「まさにオペラ座の怪人だ!
     ただし顔は見えないし、観客もいない!
     しかもネズミしかいない!」

     愉快そうに笑うその姿に、レイモンの目が怒りに燃える。

    「黙れ……!
     この狂鼠の楽団は、すべてを齧り尽くす。
     例えお前が何者であろうともな!」

     その言葉を合図に、黒い波が一斉にスレイパパへ押し寄せた。

  • 2501◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:15:54

    地鳴りのような足音と、牙の音が路地を震わせる。

    「……さて、どうしたものかな」

     スレイパパは首を傾げる。
    まるで本当に困っているかのように。
    しかし次の瞬間、軽やかに跳ね、屋根の上に着地した。

    「おっと。
     いやぁ、迫力満点だな。
     だが――残念ながら、私は“観客”に徹するつもりはない」

     にやりと笑う。
    だがレイモンの視界から、その笑みは瞬く間に薄れ、消える。
    認知できない。
    目の前にいるはずなのに、どこにいるのか分からない。

    「……ちっ……!」

     杖を構え直し、仮面の下で歯を食いしばる。

  • 2511◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:16:09

    「見えぬ相手にこそ、舞台の幕は必要だ!
     踊れ、狂鼠ども! 空をも壁をも、すべて噛み砕け!」

     音波が更に強く響き、鼠たちの動きは激しさを増した。
    彼らは目に映らぬ敵を求め、路地のすべてを蹂躙する。

    「ふふ……やっぱり困ってるね」

     声だけが聞こえる。
    それが右からか、左からか、あるいは頭上からか。
    レイモンには判断がつかない。

    「だが安心しろ。君の舞台は盛り上がっているぞ!」

     スレイパパの愉快な声に、レイモンの苛立ちは頂点に達する。

    「――よかろう!
     ならば観客席ごと舞台に沈めてやる!」

     杖を振り上げ、全力の音波を放つ。
    街全体を揺るがすほどの轟音が走り、鼠の群れが爆発的に跳ね上がった。

     黒い津波が、見えぬ敵を飲み込もうと迫る。

  • 2521◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:19:29

     黒い鼠の波が一斉に舞い上がり、路地の屋根をも覆い尽くした。
    瓦が崩れ、壁が削れ、まるで街そのものが鼠に食われていくようだった。

    「ははは! これぞ我が楽団の大合奏!
     隠れることなど不可能だ!」

     レイモンの声は勝利を確信していた。
    だがその耳に、不意に柔らかな声が滑り込む。

    「……おや? でも君、心のどこかで怖がっているね」

     背筋を撫でられるような感覚。
    仮面の奥の目がかっと見開かれる。

    「なに……?」

     視界の端に、過去の影が浮かんでいた。
    幼い頃、街で疫病が流行ったあの日。
    泣き叫ぶ母の姿。
    床に転がる妹の冷たい手。

    「やめろ……!」

     レイモンは杖を振るう。
    だが音波は乱れ、鼠たちは統率を失いかける。
    動揺の証拠だった。

    「ふふ。無意識って面白いね。
     自分では忘れたつもりでも、ちゃんと残っている」

  • 2531◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:21:18

     スレイパパの声はすぐ傍にあるようで、しかし姿は見えない。
    まるで幻聴だ。

    「黙れ! これは私の舞台だ!
     過去の亡霊などに踊らされはしない!」

     必死に音を奏でる。
    だが、鼠の足並みは乱れるばかり。
    視界のあちこちに、亡き家族の幻影がちらつく。

    「助けて……」

     小さな少女の声。
    レイモンの胸に突き刺さる。

    「ぐっ……違う! 私は……強い……!」

     心を固めるように、杖を地に叩きつける。
    金属音が路地に響き渡る。
    再び鼠たちは整列し、牙を剥いた。

     だが――。

    「本当にそうかな?」

     今度は真後ろから声がした。
    レイモンが振り向くと、そこに――笑顔だけが浮かんでいた。
    金色の髪がふわりと揺れ、能面のような“喜”の感情が張り付いている。

  • 2541◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:23:21

    「うわっ――!」

     驚愕で足を引き、杖の構えが緩む。
    その隙に鼠の統率が完全に乱れた。
    凶暴化した群れが勝手に暴れ、壁をかじり、レイモン自身の足にもまとわりつく。

    「おいおい。せっかくの楽団が、指揮者に牙を向けちゃったね」

     スレイパパの嘲笑が路地に響く。

    「さて――君の“無意識の恐怖”、もう少し引き出してみようか?」

     その瞬間、レイモンの仮面の奥に、再び亡き家族の幻影が広がった。
    妹の声、母の泣き顔、そして――“疫病”という言葉そのもの。

     心の奥底に封じた恐怖が、音もなく崩れ出す。

  • 2551◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:25:56

     路地に響く笛の音は、もはや旋律をなしていなかった。
    ただの雑音。
    掻き乱された楽団のように、クローヴァン鼠たちは統率を失い、暴徒と化していた。

    「……くっ、落ち着け! 我が下僕たちよ!」

     レイモンは必死に杖を振るい、音を正そうとする。
    しかし彼の視界に映るのは、己の記憶から引きずり出された幻影ばかり。

     母の泣き顔。
    妹の冷たい手。
    疫病で失われた過去の断片。

    「違う……これは違う!
     私は……克服したはずだ!」

     だが声は震えていた。
    心が揺らげば、鼠たちも揺らぐ。
    建物に齧りつき、互いを噛み千切り、秩序はもはや跡形もなかった。

    「ふふふ、いいねぇ。舞台が壊れていく。
     でもそれを壊しているのは、他でもない君自身なんだ」

     スレイパパの声は軽やかに響く。
    姿はどこにも見えない。
    しかしその笑いは、レイモンの耳のすぐ傍にあった。

  • 2561◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:26:17

    「黙れぇぇッ!」

     叫びと同時に杖を突き出す。
    だがそこには誰もいない。
    気づけば、鼠たちが杖に群がっていた。
    牙を剥き、金属を噛み、少しずつ削っていく。

    「やめろ! 離れろ!」

     レイモンは足を蹴り上げて鼠を払う。
    しかしその間にも、統率の取れぬ群れが笛の機械に飛びかかり――。

     ガリッ、と鈍い音。

     嘴の装置にひびが走る。

    「……しまった!」

     たちまち響く音は途絶え、鼠たちは完全に制御を失った。
    暴走の群れは主を見失い、路地全体を荒らし尽くす。

  • 2571◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:26:30

    「見てごらん。君の舞台は、観客も楽団もすべて崩壊した」

     スレイパパの声は今度は正面から聞こえた。
    能面のような笑みを浮かべた姿が、瓦礫の上に腰を下ろしている。

    「まるで喜劇だろう?」

     その笑い声が、レイモンには悪夢そのものに思えた。

    「私は……まだ負けていない!
     鼠など不要、私自身の手で……!」

     杖を構えるが、その手は震えていた。
    幻影と恐怖が絡みつき、無意識が自分を縛り上げている。

     楽団はすでに崩壊。
    舞台は幕を下ろそうとしていた。

  • 2581◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:27:25

     路地に満ちるのは、鼠たちの狂乱と、破壊の余韻。
    だがそれ以上に重くのしかかるのは――静かすぎるスレイパパの笑みだった。

    「……もう観客もいない。楽団もいない。
     あとは君が舞台から退場するだけだよ」

     その声は優しげでありながら、確実に心臓を抉ってくる。

    「黙れッ!」

     レイモンは吠えた。
    震える手で杖を握りしめ、最後の突撃を仕掛ける。
    クローヴァン鼠はもはや役に立たない。
    己の肉体と、鍛え上げたバーティツの技だけが頼りだった。

     踏み込み。
    低い姿勢から繰り出される杖の一撃は、鋭く速い。

    「そこだッ!」

     だが。

     スレイパパの姿は、ふっと霞んだ。
    一瞬で視界から消える。
    次の瞬間、背後から軽く肩を叩かれた。

    「惜しいね。すごく惜しい」

    「なっ……!?」

  • 2591◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:27:43

     驚愕のあまり振り返ったときには、杖を持つ腕が勝手に緩んでいた。
    まるで無意識が操られたかのように。

    「君の心の奥にある恐怖――『誰からも認知されない自分』。
     それを思い出させただけさ」

     耳に残る声。
    その瞬間、杖がカランと落ち、鼠たちが完全に散った。

    「……ぐっ……!」

     崩れ落ちるレイモン。
    彼の視界は白んでいく。
    最後に見たのは、能面のように笑うスレイパパの顔だった。

    「いい演目だったよ。少し悲しい結末だけどね」

     そう言ってスレイパパは、倒れたレイモンを軽々と担ぎ上げる。
    どこへ運ぶかなど、聞くまでもなかった。

    「……家のエントランス、少し寂しかったんだ。
     君には立派な飾りになってもらおう」

     朗らかな笑みと共に、彼は路地から姿を消した。
    狂乱の鼠も、瓦礫の影も、すべてが幻だったかのように静まり返る。

     ――ただ、舞台の幕だけが音もなく降ろされていく。

  • 2601◆ZEeB1LlpgE25/08/19(火) 23:29:59

    以上

  • 261二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 23:31:16

    ブラボー
    異常者がより深淵に近い異常者にぶちのめされる展開はいいね

  • 262二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 23:31:44

    パパつええ
    完勝じゃないか

  • 263二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 07:57:48

    ほしゅ

  • 2641◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:35:14

    題名『イーハトーヴォ、戦域と化す』

  • 2651◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:36:19

    イーハトーヴォの森は静かだった。
    絶滅したはずの鳥たちが木々の間を飛び交い、太古の虫たちが鮮やかな羽音を奏でている。
    人工の天井に描かれた太陽がゆるやかに輝き、ここが閉ざされた箱庭であることを忘れさせるほどだった。

    その楽園を歩く老人がいた。
    全身を土偶のような防護服で覆い、背は曲がり、歩調は遅い。
    しかし、その瞳には支配者の威厳が宿っていた。

    ズゥ・オラクル――
    彼は今日も世界の均衡を確認する。
    水の循環、空気の調整、獣と草の比率。
    すべては彼の掌の中にあり、乱れることは決してないはずだった。

    「……ふむ、安定している」

    そう呟いたときだった。
    水辺に置かれた岩が、ぬるりと形を変えた。
    ありえぬことだ。
    ズゥが設計した岩はただの鉱石。動く理由など、どこにもない。

    「……誰だ?」

    その声に応えるように、掌ほどの塊が身を震わせる。
    半透明の粘液に、核のような黒点が浮かんでいた。
    それはぐにゃりと歪み、やがて人の口を模した。

    「――我はプレティト」

    声は小さくも澄んでいた。
    水音のようでありながら、確かに言葉として響く。

  • 2661◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:36:43

    ズゥは眉をひそめる。
    侵入者。
    この完璧な世界を乱す、異分子。

    「統粘魔……まさか、お前が」

    老人の呟きに、粘体はゆるりと揺れる。

    「小さき分体なれど、我は我。
    お前の世界を識り、取り込み、ひとつにしよう」

    ズゥは歩を止め、静かに息を吐いた。
    怒りではない。
    それは支配者の本能、侵入者を排する冷徹な決意だった。

    「――駆除対象に認定する」

    彼の言葉と同時に、天井に描かれた太陽が揺らめいた。
    人工の風が一層強く吹き、鳥たちが一斉に鳴き叫ぶ。
    世界そのものが彼の意志に従い、侵入者を排そうとしている。

    だが、プレティトは怯まなかった。
    小さな身体を揺らし、黒点をぎらりと輝かせる。

    「世界ごと、お前を飲む」

    世界と支配者、侵入者と怪物。
    その邂逅が、戦いの始まりだった。

  • 2671◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:37:30

    ズゥ・オラクルはゆるやかに右手を掲げた。
    その瞬間、森全体がざわめき、空気が震えた。
    人工の大地から樹々が唸りを上げて伸び、枝々が絡み合い、侵入者を捕らえる檻と化していく。

    「――我がイーハトーヴォに、汝の居場所はない」

    声は低く、重く、世界そのものが老人の言葉を復唱しているかのようだった。
    照応魔術――Synchro Gazer。
    彼が作り上げた生態系は彼の体そのものであり、思念ひとつで森羅万象が従う。

    枝々の網に、粘体はあっという間に閉じ込められる。
    だが、そこでプレティトは笑った。

    「檻か……だが、我は形なきもの」

    ぬるり、と。
    枝の隙間から水が染み出すように、半透明の身体が滑り抜けた。
    ついには檻の外に出て、地に落ちると、再び掌大の塊へと戻る。

    ズゥの目が細く光る。

  • 2681◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:38:10

    「……逃げるか」

    だがプレティトは首を振るように揺れた。

    「違う。――食む」

    その瞬間、周囲の枝がみるみる溶けていった。
    樹皮も、葉も、繊維ひとつ残さず分解され、プレティトの身体に取り込まれていく。
    ささやかながら、確かに森が削り取られていた。

    「我は統べる。小さきを分け隔てなく己がものとする」

    ズゥの背筋に冷たいものが走る。
    自分が長きにわたって培った循環――その一部が喰われている。
    それは自らの臓腑を食い荒らされるに等しい。

    「――愚かなる寄生体」

    老人は杖を大地に突き立てた。
    轟音。

  • 2691◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:38:46

    人工の大地が割れ、水が噴き上がり、濁流となってプレティトに押し寄せる。
    洪水の裁き――バイオスフィアに備えられた「伝承の再現」であった。

    波が覆いかぶさり、粘体は翻弄される。
    だが、その中で確かに黒点がぎらついた。

    「水……分解……吸収可能」

    ぐにゃり。
    水流に身を溶け込ませ、あたかも濁流そのものと同化するかのように拡散していく。

    ズゥは息を呑む。
    敵は小さい。だが、それは拡散すればするほど制御しづらくなる。
    しかも――取り込まれれば、この閉じた世界そのものが奴の餌になる。

    「……面白い」

    老人はそう呟き、胸の奥に久方ぶりの昂揚を覚えていた。
    完璧な世界を揺るがす存在。
    駆除すべき害悪でありながら、同時に試練であり、挑戦者でもある。

    「ならば――我が神罰をもって応じよう」

    空の太陽が赤く染まり、熱が森を焼こうとしていた。
    その光に照応し、ズゥの全身からは神の如き威圧があふれ出す。
    小さな粘魔はそれを真正面から受け止め、黒点を燃えるように光らせた。

    「統べるか、統べられるか――」

    両者の声が重なり、イーハトーヴォの楽園が震えた。

  • 2701◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:39:44

    プレティトは掌大の身体を伸縮させ、地面に転がる石や植物を次々と取り込む。
    その動作は滑らかで、まるで小さな嵐が森をなめていくかのようだった。
    取り込んだものはすぐさま変形し、黒光りする粘体の一部となる。

    ズゥ・オラクルは杖を掲げ、森全体を掌握するように右手を振った。

    「――愚かなる者め、世界を乱すことは許されぬ」

    その言葉に応じるように、バイオスフィア内の動植物が一斉に動き出す。
    樹木の枝が鋭い槍となり、茂みの草が鞭のように伸び、空の鳥は爪を光らせて襲いかかる。
    だが、プレティトはそれらをまるで流れる水のように吸収してしまった。

    「……増やす、統べる」

    枝や葉、岩や水――あらゆるものが小さな粘体に同化し、徐々に黒い影のような形状へ変わっていく。
    ズゥは眉をひそめ、杖を地に突き立てた。

    「……生態系を食むか、やはり恐るべき」

    洪水、突風、地割れ。
    ズゥが発動する超常の力はバイオスフィアのあらゆる層に影響を及ぼし、地面は裂け、川は逆流し、火山は小規模な噴火を起こした。
    それでもプレティトは翻弄されず、むしろその力を取り込むように姿を変化させる。

    「力……吸収……統合」

    黒い塊が増殖し、鳥や獣の形を模した触手が飛び出す。
    小さな粘魔が生成する触手は、ズゥの作り出した洪水や火山をも貫通して進撃する。

    ズゥは杖を回し、さらに魔術を増幅させた。

  • 2711◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:39:56

    「世界の秩序を、我が手で保つのみ」

    巨大な樹木が空を覆い、枝の先端から光の刃が生まれる。
    しかし、プレティトは空中に浮かぶ小石や葉を吸収し、それを自らの分体として飛ばす。
    無数の小さな黒点が飛び回り、樹木の刃を弾き、ズゥの視界を撹乱する。

    「……面白き者よ、汝の手で何を成す」

    ズゥの顔には笑みが浮かんだ。
    戦いの真っただ中でこそ、この長い生涯に初めて味わう緊張と高揚を感じていた。
    彼の掌中で生態系は牙を剥き、地は裂け、空は燃えた。
    だが、粘魔はそのすべてを同化し、体内で再構築していく。

    「……統べる……すべて、我の一部」

    黒光りする小さな塊は、次第に森のあらゆる要素と結合し、ズゥの前に一つの巨大な影を形成し始める。

    「――これほどの力……許すまじ」

    老人は杖を高く掲げ、空から降り注ぐ光と熱を集中させる。
    バイオスフィア全域を照応させ、地表から空まで、あらゆる存在をその力で抑え込もうとした。

    だが、プレティトの黒い影は、光と熱をも無力化しつつあった。
    触れるものすべてを吸収し、統合し、巨大な黒い波動へと変える。
    イーハトーヴォの森は、もはや神の力と粘魔の意志が交錯する戦場と化していた。

    「……生態系……俺のもの……いや、我のもの!」

    二者の力がぶつかり合い、森全体が震え、裂け、流れる水と燃える樹木が渦となる。
    その渦の中で、ズゥは自らの秩序を守るため、プレティトを抑え込む一手を考え続けていた。

  • 2721◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:41:10

    ズゥ・オラクルは杖を強く握り、静かに息を吐いた。

    「……よかろう。ここまで来たなら、我が裁きを示そう」

    掌から放たれた光が森全体を覆い、樹木の葉や水面に反射して眩い輝きを放つ。
    まるで太陽そのものが地上に降り注いだかのような錯覚を覚える。
    だが、プレティトはその光を吸収し、黒光りする塊に変えて再び体内に取り込む。

    「……吸収……統一……」

    小さな黒い分体が空中に飛び散り、光を遮り、光の刃や熱線をかわす。
    バイオスフィアの中で炎と洪水、雷と黒光の影がせめぎ合い、空気は濃密なエネルギーで震える。

    ズゥは杖を地面に突き立て、巨大な樹木の根を操り始めた。
    地面から突如として根が飛び出し、プレティトの分体を捕らえようとする。
    しかし、プレティトはそれを瞬時に吸収し、体内でさらに粘体を増殖させた。

    「……制御……不能……いや、統べる……」

    黒い波動が森全体を飲み込み、ズゥの視界は次第に薄暗くなる。
    だが彼は焦らず、杖を回し続けた。

    「生態系は我が手中にある。どんな者も……乱すことは許さぬ」

    突然、地面が裂け、深淵のような空間が出現する。
    光がその裂け目に吸い込まれ、空間全体が歪み始めた。
    プレティトの分体もその裂け目に引き寄せられるが、逆に裂け目から溢れ出る黒い塊と融合し、さらに巨大化する。

  • 2731◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:41:20

    「……増殖……統合……」

    ズゥは杖を強く掲げ、雷光と熱線を集中させた。

    「――生態系の神罰よ、降り注げ!」

    空から雷が落ち、火山が噴火し、洪水が流れ込み、森のすべてを裁くかのように力を振るう。
    だが、プレティトの黒い塊はそれを飲み込み、吸収し、再び一つの巨大な影へと変貌する。

    ズゥは息を整え、杖を強く握り直した。

    「――この小世界で、我が力の限りを示そう……!」

    杖から発せられる光は、森の生物だけでなく、空気や水、土、岩までを照応させた。
    プレティトの影が触れるものすべてを統合する中、ズゥは逆にその照応を用いて黒い塊を封じ込めようと試みる。

    黒と光、秩序と混沌、神罰と粘魔――
    イーハトーヴォの森は、二つの絶対的な力が交錯する戦場となった。
    生態系そのものが震え、裂け、流れ、燃え、変化する。
    その中で、ズゥの眼は一つの戦略を閃いた。

    「……あの小さな分体を狙えば……統合の核……破れるかもしれぬ」

    ズゥは杖を高く掲げ、黒い影の中心部――プレティトの核を直接狙う光線を放つ準備を始めた。
    だが、プレティトもまた、分体を散らし、核を巧妙に隠す準備を整えていた。

    静寂の中、両者は次の一手を構え、森全体がその緊張に息を止めるようだった。

  • 2741◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:42:06

    ズゥ・オラクルは深く息を吸い込み、杖の先端から放たれる光を凝縮させる。

    「……これで……終わらせる」

    森の地面が微かに震え、空気は光と黒の渦巻きで歪み始めた。
    プレティトは小さな分体を散らし、核を隠すように瞬間的に姿を変える。
    しかしズゥは迷わなかった。

    「核は小さくとも、統一の中心である……見逃すはずがあるか」

    光線が空中で収束し、杖から放たれる強烈な輝きは黒い影を切り裂く。
    プレティトの分体が慌てて核の周りに集まり、防御の盾を作ろうとするが、ズゥはそれを予測していた。

    「分散は統一の弱点……一つ一つ、潰してやろう」

    雷光が森の全域に降り注ぎ、光と黒がぶつかり合うたび、木々が粉々になり、地面が抉れる。
    生態系そのものが戦場と化し、ズゥの光が吸収される前に、光の刃が黒い核へと突き刺さった。

    「――ここまで……」

    黒い塊が悲鳴のような音を上げ、分体が逃げ惑う。
    プレティトの核が光の刃に捕らえられ、徐々に崩れ始める。

    「……統一……解かれる……」

    しかし、完全に破壊するには至らず、核は微かに生き残る。
    ズゥは杖を強く握り、次の一手を考える。

    「小世界を守るため……我が力の全てを……使う!」

  • 2751◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:42:18

    杖を回すと、光の網が森全体を覆い、核を逃がさぬように閉じ込める。
    その光の網は空気や水、土、岩にまで作用し、黒い影の移動経路を徹底的に制限する。

    プレティトの分体は吸収されたり消滅したりしながらも、なお核を守ろうと抵抗する。
    ズゥはその隙を狙い、光線の強度を最大に上げる。

    「――これで終わりだ……!」

    光が核を包み込み、黒い塊は激しく揺れる。
    森全体が光と影の交錯で震え、静寂が一瞬訪れる。
    しかし、プレティトはまだ完全には消滅していない。

    ズゥは冷静に杖を掲げ、最後の照応を行う準備を始めた。

    「……最後の神罰よ……この世界の秩序を守れ……!」

    黒い核が光に押し潰され、分体は次々と消滅していく。
    森の生態系はズゥの掌中に収まり、風や水、光までもが彼の意志に従い始める。
    しかし、プレティトの最小分体が微かに残る限り、完全な安寧は訪れない。

    光と黒の戦いは最高潮に達し、次章でついに勝敗が決する。

  • 2761◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:43:37

    光が森を満たす。
    ズゥ・オラクルは杖を高く掲げ、全身に力を集める。

    「……終焉の時……」

    空気が震え、木々の葉が逆風に揺れる。
    プレティトの残存分体は微かに震えながら、核を守ろうと必死に形を変える。
    しかし、ズゥの目は揺るがない。

    「小さきものよ……我が手の内から逃れることはできぬ……」

    杖の先端から放たれた光は、森全体を包む巨大な球体となり、黒い核を中心に収束していく。
    分体たちは必死に逃れようとするが、光の網はあらゆる隙間を封鎖し、動きを止める。

    「統一……終わるのだ……!」

    光がさらに強まり、黒い核は圧迫され、徐々にその形を崩し始める。
    微細な分体まで捕らえられ、もはや逃げ場はない。

    ズゥは杖を回しながら、照応魔術の全力を注ぐ。

    「この世界の秩序は、私の掌中にある……!」

    光が核を飲み込み、プレティトの最後の声がかすかに森に響く。

    「……我、……まだ……」

    だが、光の圧力は止まらない。
    黒い塊は裂け、分体は消滅していく。
    生態系のすべてがズゥの意志に従い、秩序が戻る。

  • 2771◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:44:02

    「……これで……終わりだ……」

    森は静寂を取り戻し、風の音と鳥のさえずりだけが響く。
    プレティトの最小分体も完全に消え、もう再びこの世界に混乱をもたらすことはない。

    ズゥは深く息をつき、杖を地面に立てる。

    「……私の創った世界よ……安心して生きろ……」

    光は徐々に消え、森は自然の色を取り戻す。
    絶対神たるズゥの掌中に、イーハトーヴォの生態系は完全に安定した。

    老人は静かに歩を進め、木々の間に目を巡らせる。

    「……完璧なる統治……これが私の使命……」

    時折、絶滅したはずの生物が顔を出し、平和に遊ぶ姿が目に映る。
    ティラノサウルスの子どもが葉を食み、三葉虫が水辺を泳ぐ。
    全てが生き生きと息づき、秩序は揺るぎない。

  • 2781◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:44:16

    ズゥは満足げに杖を握り直す。

    「……人間の世界は未熟だが……この小さな世界は……我の手の中……」

    遠くの山並みの向こうに、太陽が昇り始める。
    光が森を染め、影が揺れる。

    「……これより先も……私が守ろう……」

    彼の視線は静かに、しかし確実に、この世界のすべてを見据えていた。
    そして、長き時を生きた現人神の瞳には、安らぎと支配の満足が宿る。

    イーハトーヴォは、ズゥ・オラクルによって、完全なる秩序の下で生き続ける。
    絶対者の掌の中で、自然は理想的な調和を取り戻したのだ。

    光と生命の営みが静かに続く。
    そして、彼の統治はこれからも永遠に続く――そう予感させる、朝日の中で。

  • 2791◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 15:44:39

    以上

  • 280二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 15:54:46

    最高です

  • 281二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 15:56:01

    最小分体にしては盛られてる…

  • 282二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 19:18:41

    プレティトの人対戦ありがとうございました

  • 2831◆ZEeB1LlpgE25/08/20(水) 23:46:25

    大苦戦しております
    更新は明日になりそうです
    最近頻度が少なくてすいません

  • 284二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 07:25:51

    このレスは削除されています

  • 285二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 11:43:59

    気にせず焦らずやっとくり〜

  • 2861◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 16:48:07

    題名『お前も道連れだYOU』

  • 2871◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 16:50:14

    月明かりが崩れたビルの影に差し込む。
    私は廃墟を駆け抜け、息を荒げながら笑った。

    「ふひひひ……お前も道連れだYOU!( ・∇・)」

    背後の瓦礫を蹴りながら、私の翼は震えた。
    負傷の痛みも、私の笑いを止められない。

    でも……違和感が走る。
    空気が、視界が、まるで歪むように震えていた。

    「……な、なんだこれは……(((;゚ Д゚)))ガクガクブルブル 」

    目の前に現れたのは、既知の魔物。
    人の知覚を越えた形。理解を拒むような混沌の姿。
    見れば見るほど、脳が疲弊する。

    私は反射的に笑った。

    「ふひひ……君……おもしろい(((;゚ Д゚)))」

    でもその笑いは、いつものように心からの快楽ではなかった。
    私の能力――「お前も道連れだYOU」を発動する。
    私が受けたダメージは相手にも返るはず。

    「……痛っ!でも君も痛いはずだよね~(´・ω・`)」

    しかし、既知の魔物の瞳――いや、存在全体が私を貫く。

    「既知。」

  • 2881◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 16:52:11

    その一言で、私の心が揺さぶられる。
    私の攻撃が、まるで意味をなさないことを理解させられる。

    笑い声は震え、嘲笑にも苦痛が混じる。

    「いや……いやいやいや……(´・ω・`)お、私……勝てない……」

    既知の魔物は一歩も動かない。
    ただ、私の全てを理解したという事実だけで圧倒してくる。

    体が小さく震え、膝から崩れ落ちる。
    笑いも涙も入り混じり、私は地面に倒れた。

    「あぎゃああああ(´・ω・`).;:…(´・ω…:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..」

    既知の魔物は微動だにせず、混沌の中に立つ。
    私はただ敗北を味わい、笑いさえも奪われたことを知った。

    周囲の瓦礫が静かに月光を反射する。
    しかし、私の心は嵐の中にあった。
    この魔物を前に、私がどれほど無力か。

  • 2891◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:04:47

    「ふひひ……でも……まだ……諦めない( ・∇・)」

    弱気な声に、かすかな希望を混ぜて。
    それでも全身を支配する恐怖が、私を押し潰そうとする。

    私は何とか体を起こし、再び翼を震わせた。

    「お前も道連れだYOU!」

    だが、心のどこかで、自分の力が通じないことを理解していた。

    それでも、戦うしかない。
    この相手は、私の存在そのものを理解しているのだから。
    私の勝機は――微かな希望だけ。

    広場の静寂に、私の小さな笑いが響いた。

    「ふひひ……ふひひ……( ・∇・)」

    しかし、笑いはすぐに震えに変わる。
    私はこの戦いの始まりを、まだ理解しきれていなかった。

  • 2901◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:05:28

    瓦礫の隙間を踏みしめながら、私は翼を広げた。
    空気がざわめき、夜の冷気が皮膚に突き刺さる。
    既知の魔物はただそこに立っているだけなのに、視線を向けるたびに頭が割れそうになる。

    「ふひひ……見てるだけで脳がバグるよ……(((;゚ Д゚)))」

    私は笑いながらも震えていた。
    理解できない姿。混ざり合う概念。
    人の脳が「理解しよう」とするほど、心が摩耗していく。

    「でもね……私の能力は……私が痛めば、君も痛むんだよ?( ・∇・)」

    私は胸を拳で叩いた。
    その瞬間、肺が焼けるように痛む。
    痛みが相手へ伝わるはずだった。

    「ふひひっ……さあ……どうだ!(´・ω・`)」

    けれど、既知の魔物は微動だにしない。
    その不気味な姿は何の反応も示さず、ただ混沌を保っている。
    私の痛みは共有されていない――?

    「……嘘だろ……」

    頭が混乱する。
    能力が通じないことを「理解」してしまう。
    その瞬間、魔物の声が脳裏を支配した。

  • 2911◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:06:31

    「既知。」

    全身の血が冷たくなる。
    私の思考が、心が、読まれている。
    過去の記憶、他者との関わり、蝶を舐めていた時の感覚すら暴かれる。

    「や、やめろ……見ないで……私の……私の中を……(((;゚ Д゚)))ガクガクブルブル 」

    笑い声が震えに変わる。
    私は心の奥が掘り返されるたびに、快楽と苦痛の狭間で揺れた。
    不幸を笑うはずの私が、今や不幸そのものの標的にされている。

    「ふひひ……っ……や、やだ……やめてよぉ……(´・ω・`)」

    魔物は何もせず、ただ「知る」だけで私を追い詰める。
    その圧力に、膝が勝手に折れる。
    地面に手を突きながら、私は必死に耐えた。

    「私が……負ける? そんなの……(´・ω・`)……認めない……!」

    涙が滲む。
    でも、同時に笑いも零れる。
    恐怖と嗤いが混ざり合う奇妙な感情に、喉が詰まりそうだった。

    私は立ち上がり、羽ばたいた。

    「お前も道連れだYOU! 私が壊れれば……君も壊れるんだ……( ・∇・)!」

    声は虚しく、夜に響く。
    しかし心はすでに、魔物の「既知」の中に囚われつつあった。

  • 2921◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:09:07

    月明かりに照らされる廃墟で、私は再び翼を広げた。
    膝の震えは止まらない。
    でも、心の奥で小さな炎が灯る。
    ――まだ諦めない。

    「ふひひ……まだ……諦めないんだから……( ・∇・)」

    既知の魔物は微動だにせず、ただ私を見据える。
    その姿は、知覚を超えているのに、頭に焼き付く。
    私の全てを「既知」にされたという恐怖が、胸を締めつける。

    「でも……私だって……やれることはある……(´・ω・`)」

    私は自分の負傷を思い出す。
    腕の裂け、背中の痛み、足首の捻れ――すべては相手に返るはず。
    けれど、既知の魔物には通じない。

    「ふひひっ……痛い……でも……でも……君も痛いはずだよね……!( ・∇・)」

    魔物の姿は依然静止している。
    私の痛みが伝わらない現実が、心をえぐる。
    精神が揺さぶられ、笑いは震え、涙が混ざる。

    「いや……いやいやいや……(´・ω・`)……なんで……効かないの……」

    膝から力が抜け、地面にうずくまる。
    でも、私は小さな策を考え始める。
    このままでは敗北する。
    けれど、知識だけでは防げない小さな混乱――それが私の反撃の鍵。

  • 2931◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:18:09

    「ふひひ……ねぇ……ちょっとだけ……騙してみせる( ・∇・)」

    私は意識的に動きを乱し、痛みを誇張して表現する。
    膝をつき、手を振り回し、悲鳴をあげる。
    全ては演技――でも、私の体は本当に痛む。

    「痛っ……でも……これで……君も……!(´・ω・`)」

    既知の魔物は瞬間的に揺れたような錯覚を見せる。
    その一瞬を逃さず、私は距離を詰めた。
    負傷の影響で動きは鈍い。
    でも、その不完全さが、かえって相手の「既知」に微細な狂いを生む。

    「ふひひっ……これが……私の反撃……( ・∇・)!」

    笑い声と痛みが混ざり合い、戦慄と狂気の境界を漂う。
    魔物の目が、ほんのわずかだけ揺れる。
    それを見逃さず、私はさらに攻める。

    「お前も道連れだYOU!」

    しかし、魔物の圧倒的な「既知」の前で、微かな反撃はかすかな影に過ぎなかった。
    それでも、私は戦う。勝機は小さくても、私は諦めない。
    膝の震えと共に、笑いながら、次の瞬間の可能性を探る。

    「ふひひ……これで……どうなるか……楽しみだね( ・∇・)」

    廃墟の風が私の羽を揺らし、夜の静寂が私の心を試す。
    私はこの戦いの中で、まだ負けてはいない。
    ただ、勝利までの道は遠く、霧の中にかすかに見えるだけだった。

  • 2941◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:20:26

    夜風が廃墟の隙間を抜け、私の羽を揺らした。
    体中が痛む。翼の震えは止まらず、足元もふらつく。
    でも、目の前の魔物は微動だにせず、ただ私を見下ろしている。

    「くっ……まだ……まだいける……(;・∀・)」

    胸の奥で、もうひとつの声がささやく。
    ――無理だ、諦めろ。
    でも私は振り払った。
    笑いでごまかしながら、まだ戦う。

    「ふひひ……これ以上は……私も壊れちゃうかも……でも……やるんだ!( ・∇・)」

    体力が限界に近づく。
    翼の筋肉は震え、手足は痺れ、息が荒くなる。
    それでも攻撃の意志を捨てない。
    この瞬間、私の痛みは本当に魔物へ届くかもしれない――そんな淡い期待だけが残っていた。

    「痛いっ……でも……これが……私の……力……(;・∀・)」

    既知の魔物は、静かに、しかし確実に私を追い詰める。
    姿の一部が、私にとって大事な何かを正確に狙う。
    攻撃ではなく――理解と精神圧力だけで。

    「やめて……もう……限界……でも……諦めない……(´・ω・`)」

    私は地面に手をつき、立ち上がる。
    痛みと恐怖が入り混じり、思考はほとんど停止しかけていた。
    しかし、その中で小さな計算が動く。
    ――ここで倒れるわけにはいかない。

  • 2951◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:21:52

    「ふひひ……まだ……まだ終わらせない……( ・∇・)」

    魔物の目――いや、存在全体が私を見透かす。
    一瞬、全てが凍りつく。
    痛みも恐怖も、私の意識も、魔物に完全に「既知」にされている。

    「いやぁ……もう……体が……(;・∀・)でも……まだ……戦う……」

    膝をつき、翼を広げ、私は地面から体を引き起こす。
    笑いは震えに変わる。
    涙も流れる。
    でも心だけは折れない。

    「ふひひ……どうして……こんなに……つらいのに……でも……戦うんだ……(;・∀・)」

    魔物は動かない。
    私の痛み、疲労、恐怖――すべてを理解した上で、ただそこにいる。
    圧倒的な存在感が、私を押し潰す。

    それでも私は立ち上がり、翼を震わせる。

    「お前も道連れだYOU!」

    声はかすれ、笑いも途切れがちだ。
    でも、この一撃に全てを込める。

    月明かりの下、廃墟に響く私の羽ばたき。
    私はまだ、戦いの最中にいた。
    体は限界、精神も限界。
    でも、諦めることだけはできない――たとえ、勝てる見込みがほとんどなくても。

  • 2961◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:25:34

    月明かりが私の羽を白く染める。
    全身が痛みで悲鳴を上げ、膝は震え、腕の筋肉も限界に達している。
    それでも私は立ち上がった。
    ――ここで倒れれば、全てが終わる。

    「ふひひ……まだ……私、諦めないんだから……(;・∀・)」

    既知の魔物は静かに立ち尽くす。
    動きはない。けれど、その存在だけで私を追い詰める。
    私の頭の中に全ての行動を読まれていることが、恐怖以上に重い。

    「でも……やる……やれる……はず……( ・∇・)」

    私は痛みに耐え、翼を大きく広げた。
    最後の力を振り絞り、膝から反動をつけて前へ飛び出す。
    痛みが全身を駆け巡る。
    でも、私が倒れれば、相手も倒れる……そのはずだった。

    「お前も道連れだYOU!」

    力を込めた一撃を放つ。
    空気を裂く音が、廃墟に響く。
    しかし、魔物は微動だにせず、私の攻撃はわずかにかすめるだけだった。

    「ふひひ……っ……効かない……(;・∀・)」

    体が痛みで震え、笑いも途切れがちになる。
    それでも心は諦めない。
    ――まだ、私には策がある。

  • 2971◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:36:07

    「いや……まだ……これで……どうだ……( ・∇・)」

    魔物の全てを「既知」とされた私に、残された隙間はほんのわずか。
    その隙を突こうと、私は意識的に動きを狂わせる。
    痛みを強調し、動作を過剰に演出する。
    わずかな心理的揺らぎを作る――それが唯一の反撃手段だった。

    「ふひひ……これで……君も……わずかに揺れるはず……(´・ω・`)」

    しかし魔物は圧倒的な存在感で、私の全てを把握している。
    一瞬、微細な揺れは見えたかもしれない。
    でも、決定的な隙にはならなかった。

    「いやぁ……もう……体が……(;・∀・)でも……まだ……戦う……」

    私は膝をつき、手を地面に押し付ける。
    全身の痛み、限界の息、震える翼――すべてが私の現実。
    そして、魔物の「既知」の前では、努力もほとんど意味を持たない。

    「あぎゃああああ(´・ω・`).;:…(´・ω…:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..」

    体が力尽き、地面に崩れ落ちる。
    笑いも涙も混ざり合い、精神は砕けた。
    勝つことはできなかった。
    でも、私の意志――小さくても、最後まで諦めなかったその心は、まだそこにあった。

    月明かりの下、私の羽は静かに地面に広がる。
    廃墟に響いた最後の笑い声は、震える残響として残った。
    戦いは終わった。
    そして、私は――負けた。

  • 2981◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:36:37

    月明かりが廃墟を静かに照らす。
    瓦礫の隙間に私の羽が広がり、冷たい地面に沈む。
    体中の痛みが重くのしかかる。
    翼も脚も、もう思うように動かない。

    「あぎゃああああ(´・ω・`).;:…(´・ω…:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..」

    声が震え、笑いも涙も混ざり合った。
    敗北を認めることは、これほど辛いものなのか。
    でも、心のどこかで、微かに暖かい感覚が残っている。

    「ふひひ……でも……戦った……私……(;・∀・)」

    既知の魔物はもう立ち去った。
    その存在は静寂の中に溶け、空間だけが残った。
    私は地面に伏したまま、ゆっくりと呼吸を整える。
    痛みと恐怖、敗北感――それらすべてが私の体に刻まれている。

    「……ふひひ……こんなに……疲れるなんて……( ・∇・)」

    静けさが、私の心を少しずつ包む。
    まだ体は痛むけれど、戦った証としての誇りがある。
    負けたけれど――私は立ち向かった。
    笑いながら、泣きながらも、諦めずに戦った。

    「……これが……私……なんだね……(´・ω・`)」

    羽を折り、膝を抱え、私は静かに震える。
    でも、その中で微かに次の戦いへの想いが芽生える。
    まだ終わったわけじゃない――まだ、立ち上がる希望はある。

  • 2991◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:37:30

    「ふひひ……次こそ……少しは……やれるかも……( ・∇・)」

    夜風が廃墟を抜け、私の髪と羽を揺らす。
    冷たい空気に包まれながらも、心の奥に小さな炎が残る。
    敗北の痛みと共に、戦いの余韻が静かに私を包む。

    「ふひひ……でも……私は……まだ……負けてないんだから……(;・∀・)」

    静寂の中で、私はただじっと座る。
    笑いも涙も、痛みも恐怖も――全部が混ざり合い、夜の廃墟に溶けていく。
    敗北の余韻は苦いけれど、同時に次への力になる。

    「あぎゃああああ……でも……また……戦うんだから……(´・ω・`)サラサラ」

    月光が地面に反射し、私の影を長く伸ばす。
    戦いの終わりは、静かな夜に溶け込んだ。
    そして私は、まだ立ち上がることを心の奥で決めていた。

  • 3001◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 17:38:58

    以上

  • 301二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 17:49:59

    感動系になった…

  • 302二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 17:50:37

    投下乙です!

  • 3031◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:35:36

    題名『闇に沈む確率の羽』

  • 3041◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:41:04

    朝の光が草原に差し込む。
    ロアの鳩は翼を震わせて喜ぶ。

    「ギャアア!光だ!光ぅ〜!」

    心臓が跳ねるように高鳴る。
    小さな虫を捕まえながらも、目は空を仰ぐ。
    光合成の効果で体中に力が満ちていくのがわかる。

    だが、地面が微かに震え、空気がぶっ壊れた。
    石が跳ね、ゴミ袋が空を舞う。
    ロアの鳩は飛び退きながらも、好奇心の方が勝っている。

    「わぁ!友達!? 友達!?」

    その瞬間、無神が姿を現した。
    形は定まらず、光の反射で歪む。
    漂う空気が不可思議で、神秘的でもあり、恐ろしくもある。

    「……ここにいるのは……誰?」

    無神は声を発しているようには見えないが、存在感が強く、周囲の無意識を微かに揺らしている。

  • 3051◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:41:35

    ロアの鳩は身をすくめる。

    「うわぁぁ……すごい……でも……怖い……」

    光を浴びてテンションが上がるが、恐怖で少し震える。
    周囲の石や葉っぱ、空の雲までが微妙に動き、物理法則が狂い始める。
    虫を追いかけるたびに、足元が跳ねる。

    「ふひひ……召喚されたよ、文字ちゃの鳩も呼べるけど……出す?出す?」

    文字ちゃの鳩が現れ、頼りなげに足を踏み出す。
    少し間抜けだが、存在感だけはある。
    ロアの鳩は仲間が来たことで少し安心する。

    「わわ……大丈夫かな……」

    無神は静かにロアの鳩を見下ろす。
    その目――いや、存在――は、無意識を操作する力を持っていることを告げていた。
    一瞬で動きや感覚を狂わせることができるらしい。

    「面白くなりそうだね」

    光を浴びながら、ロアの鳩は周囲を飛び跳ね、混沌と喜劇の空気を作り出す。
    戦いの幕は開かれた。
    混乱と好奇心が入り混じる、予測不能な戦いの始まりである。

  • 3061◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:42:20

    朝の光に包まれて、ロアの鳩は翼を広げた。
    テンションが上がり、全身の筋肉が弾む。
    だが、無神の存在感が周囲の空気をねじ曲げる。
    見るだけで、無意識が揺さぶられるような感覚が全身を貫いた。

    「ギャアア!今日も光がまぶしいぞ!」

    叫びながら、ロアの鳩は草原を駆け回る。
    しかし、地面や岩、葉っぱまでもが微妙に跳ね、物理法則が狂う。
    虫を追いかけるたびに、足元で小石が飛び、偶然の衝突が起こる。
    この混乱の中で、無神は静かにその動きを観察していた。

    「……予測できない動きだな」

    無神の声は風のように届く。
    その存在は周囲の無意識を揺らし、意識的に反応することさえ困難にする。
    ロアの鳩の動きは無意識に誘導され、偶然が偶然を呼ぶように次々と奇妙な現象が生まれた。

    「わぁ、プリンが空から!? でも、これは友達ってことだよね」

    突然、空からプリンが降り、足元に落ちる。
    虫を追っていた勢いで直撃したロアの鳩は、体をひるがえして着地する。
    混乱と喜劇が入り混じる光景。
    無神は微動だにせず、ただ存在だけで周囲のテンポを狂わせている。

    「ふひひ……文字ちゃを呼んでもいいけど、今日はこのまま楽しもう」

    文字ちゃの鳩が現れ、頼りなげに地面を踏む。
    互いに仲間を確認し合うが、無神の視線が二羽を圧倒する。
    意識をずらされるたび、飛ぶタイミングや角度が微妙に狂う。

  • 3071◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:42:55

    一歩でも遅れれば、次の偶然が生まれるかもしれない。

    「面白い……光と混乱の舞台だ」

    ロアの鳩は光を浴びながら、無神の存在の不可思議さを楽しむ。
    全てが予測不可能で、戦闘というよりカオスの実験場のようだ。
    地面の石、落ちてくるプリン、跳ねる虫――あらゆるものが勝手に舞い、戦場を形成する。

    「よし、まずは状況を確かめよう」

    翼を羽ばたかせ、飛び上がる。
    光を浴びて体力が回復する感覚に満ち、テンションが再び上がる。
    しかし、無神の存在は微かな揺らぎを見逃さず、瞬時に周囲の動きを修正する。

    「この相手……手強い……でも、面白いぞ」

    空間は混乱しているが、無神の狙いは正確だ。
    偶然と必然が入り混じる戦場の中、ロアの鳩は全力で跳ね、飛び、奇襲の機会を探す。
    その羽ばたきが、草原に無数の奇妙な影を落としていく。

    光と混乱の中で、戦闘は静かに、しかし確実に始まっていた。
    ロアの鳩は好奇心を爆発させ、無神は静かにテンポを崩す。
    勝敗の行方はまだ誰にもわからない。
    ただ、この瞬間だけは、混乱と喜劇が支配する世界だった。

  • 3081◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:43:50

    空は午前の光に包まれ、草原の影が長く伸びる。
    ロアの鳩は翼を広げ、全身の筋肉を軽く震わせる。
    テンションは高く、光を浴びる度に心拍が跳ねる。
    だが、無神は静かにその場に立ち、存在だけで空気を揺らしていた。

    「……動きが読める、と思ったが、少しずつずれるな」

    無神の声は風に溶けるように届く。
    ロアの鳩の無意識に触れ、体の動きを微妙にずらす。
    羽ばたきのタイミング、ジャンプの角度、視線の方向――
    すべてが思わぬ形で狂い、偶然の連鎖が生まれる。

    「わぁ!また石が跳ねた!」

    足元の小石が飛び跳ね、虫を追いかけるはずの体が少し後ろにずれる。
    プリンも落ちてくる。
    ロアの鳩は混乱しながらも喜んで飛び跳ねる。
    だが、その背後では無神の無意識攻撃が静かに効いていた。

    「なるほど……この小さな意識の揺らぎを利用するのか」

    文字ちゃの鳩が飛びながら様子をうかがう。

  • 3091◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:44:28

    仲間として心強いが、戦力としてはまだ不十分。
    無神の存在は、動きを狂わせつつも直接の攻撃力はほとんどない。
    だが、それだけで戦場のテンポは完全に支配される。

    「ふひひ……どんな偶然が次に来るかな?」

    ロアの鳩は笑いながら光を浴び、周囲の空間をさらに狂わせる。
    落ちる虫、跳ねる石、風に舞う葉っぱ。
    すべてが無神の意識によって微妙に操作され、奇妙な連鎖を生む。

    「この混乱……読み切るのは難しいな」

    無神は存在を微かに揺らし、ロアの鳩の行動パターンを分析している。
    予測不能な行動も、無意識操作によって微妙にテンポを狂わせられる。
    偶然と必然の境界線が溶け、戦場は完全に不安定な状態になった。

    「よし、次はこっちの番だ」

    ロアの鳩は翼を広げ、高く飛び上がる。
    光を浴びると体力が回復し、テンションが上がる。

  • 3101◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:44:43

    全力で飛び跳ね、奇襲の隙を探す。
    しかし、無神の無意識攻撃はすぐにそれを補正する。

    「くっ……体が勝手に動く……でも面白いぞ」

    偶然の中で飛び跳ね、空中でバランスを崩すロアの鳩。
    文字ちゃも必死にサポートするが、無神の存在感には抗えない。
    戦場は混乱の極致に達し、誰が有利かは一目ではわからない。

    「ふひひ……混乱の中で、誰が先に動きを制するかだな」

    プリンが再び空から降り、虫が飛び跳ね、石が跳ね返る。
    光と影、混乱と喜劇、偶然と必然が絡み合う。
    戦場全体が、まるで舞台装置のように動いている。
    無神は冷静にそれを操り、ロアの鳩は無邪気に反応する。

    戦闘はまだ序盤。
    だが、確率の崩壊と無意識操作により、戦況は刻々と変化していた。
    勝敗の行方は、未だ誰にも読めない。
    ただ、この瞬間だけは、混乱と喜劇の支配する舞台だった。

  • 3111◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:45:21

    空気が一層張り詰め、草原に重苦しい圧がかかる。
    無神の存在は静かだが、見えない糸のように周囲の無意識を絡め取っていた。
    その影響でロアの鳩の羽ばたきは常にわずかに遅れ、踏み出す一歩も微妙に滑る。
    それでも彼は光を浴びて、気持ちだけは高揚している。

    「うひょー!今日もプリンが降ってくるぞ!」

    またも空からプリンが落下する。
    確率崩壊の効果は健在で、物理法則が混乱し続けていた。
    だが無神はそれを利用し、鳩の意識を微かに操作する。
    プリンを受け取ろうと伸ばした翼が、いつの間にか地面を叩いていた。

    「……君は愉快だが、同時に扱いやすいな」

    無神の声は柔らかくも冷たい。
    その言葉はロアの鳩の耳に届き、心にざらりとした違和感を残す。
    偶然を操る存在に、無意識を揺さぶる神が重なれば、状況はさらに混沌を極める。

    「友達! ほら、そこの石も、プリンも!」

    ロアの鳩は孤独に耐えられず、足元の石や落ちてきたプリンに話しかける。
    笑いながら動き回るが、無神の影響でそのテンポは狂い続ける。
    足を上げた瞬間に石が転がり、羽ばたいた瞬間に風が逆流する。
    無神はただ立ち尽くすだけで、場の支配者として機能していた。

    「……意識と無意識、その境界を壊すのは容易い」

    無神が低く呟く。
    ロアの鳩は光を浴び、笑いながらも心の奥に小さな恐怖を抱き始める。
    闇の匂いが漂い始め、太陽がわずかに陰ると体が震え出す。

  • 3121◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:45:38

    「ギャアア! 闇は嫌だぁ!!」

    その叫びが戦場に響き渡り、テンションは一瞬で奈落へと落ちる。
    孤独の恐怖と闇の恐怖が重なり、ロアの鳩はバタつきながら地面に叩きつけられた。
    それでも確率崩壊は止まらない。
    無神の足元に突然ゴミ袋が転がり、草むらから意味不明な物音が響く。

    「……なるほど、周囲そのものが敵になるのか」

    無神の眼差しは冷徹だが、その体は好奇心に導かれて小さく傾いた。
    子供のような無邪気さが隙を生む。
    ロアの鳩はその瞬間を感じ取り、翼を大きく広げて突撃する。

    「今だ! ギャアアッ!」

    突撃は予測不能の動きと共に炸裂する。
    だが無神の無意識操作は、ロアの鳩の軌道をわずかにずらす。
    狙った急所には届かず、ただ風を切る羽音が響くのみ。
    それでも奇跡のように、無神の外殻に一撃がかすった。

    「……ほう。君の混沌は、ただの偶然ではないらしい」

    ロアの鳩は地面に転がりながらも立ち上がる。
    光を浴びて再び力を得る。
    確率崩壊と無意識操作――二つの混沌が絡み合い、戦場はますます不可解さを増していく。

    「次はもっと……面白いぞ」

    鳩の笑みと無神の静かな声が、重なり響いた。
    混乱は頂点を迎えようとしていた。

  • 3131◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:46:48

    太陽が西へ傾き、戦場に影が伸び始めた。
    ロアの鳩の羽が震える。
    光を浴びていた時の高揚感が、じわじわと剥がれていく。

    「いやだ……いやだ……夜は嫌だ……!」

    彼の声は子供の泣き声に似ていた。無神の周囲に漂う気配は、闇をさらに濃くする。
    存在そのものが「光を拒むもの」として鳩を圧迫していた。

    「……君の力は面白い。だが、光がなければ何もできない」

    無神の声は淡々としている。
    だが、その響きは鳩の無意識を削り取るように重かった。
    ロアの鳩は必死に羽ばたこうとするが、翼は闇の空気に縫いとめられたかのように重く感じる。

    「ギャアアア! 光を返せぇぇ!!」

    鳩は喉を裂くように叫び、太陽に祈る。
    しかし雲が流れ、光を隠す。
    確率崩壊の影響で、なぜか雲が増え続けるという皮肉。

    「孤独も、闇も……君には拷問になる」

    無神の声が落ちるたびに、鳩の心は冷たく凍りついていく。
    彼は地面に転がる石を抱きしめて震えた。

    「友達……友達だよね……? 置いてかないで……」

    その姿は戦士というより、ただの弱い鳥だった。
    それでも確率崩壊は無慈悲に続く。

  • 3141◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:47:35

    無神の足元に突如として蟻塚が崩れ落ち、地面がぬかるみに変わる。
    子供のような好奇心を持つ無神の意識は、そこに一瞬だけ囚われた。

    「……これは……?」

    その隙を、ロアの鳩は見逃さなかった。
    震える翼を広げ、全力で飛び出す。
    しかし無神の力はすでに働いている。
    鳩の無意識が歪められ、軌道はずらされる。

    「届かない……!」

    声を張り上げた瞬間、羽がもつれて地面に叩きつけられた。
    身体が泥に沈み、視界が闇に覆われる。
    孤独と恐怖が同時に襲いかかり、鳩は喉の奥でうめき声を漏らした。

    「ギャアアアアア!! 死ぬぅぅ!!」

    夜の気配は加速する。
    光を失ったロアの鳩は、もはや自分を保つことすら困難になっていた。
    それでも偶然の鎖が戦場に混乱を撒き散らす。
    プリンが落ち、石が跳ね、風が逆流する。

    だがその全てを超えて、無神は動じなかった。
    彼の冷静な瞳が闇の中で輝く。
    戦況は明らかに傾き始めていた。

  • 3151◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:48:07

    夜が完全に降りた。
    草原は影に沈み、星の瞬きすら届かない。
    ロアの鳩の体は小さく震え、呼吸も乱れていた。

    「ひ、光……光が……どこにもない……!」

    声はかすれ、涙がにじむ。
    彼は無意識に地面の石を抱きしめた。
    孤独を埋めるために。
    だが、その石でさえ冷たく、何の慰めもなかった。

    無神は静かに歩み寄る。
    彼の存在は闇そのものであり、鳩にとっては耐え難い圧力だった。

    「君は、光がなければ生きられない。
    ならば、この夜に沈むしかない」

    淡々とした言葉が刃のように突き刺さる。
    鳩の羽が重く沈み、体が闇に絡め取られていく。

    「ギャアアア!! 嫌だ! 嫌だぁぁ!!」

    鳩は絶叫する。
    その声は戦場に響き渡り、空気を震わせた。
    しかし、誰も応えない。
    孤独と闇が心をすり潰す。

    その瞬間、確率崩壊が最後の悪あがきを見せた。
    空から唐突に無数のプリンが降り注ぎ、草原を埋め尽くす。
    だがそれは敵を混乱させることなく、鳩自身の動きを阻害するだけだった。

  • 3161◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:49:00

    「……おしまいだ」

    無神の低い声が、夜風と共に響く。
    鳩の意識は揺らぎ、世界が遠ざかっていく。
    孤独、闇、絶望――すべてが重なり、彼を押し潰した。

    「……友達……どこにいるの……?」

    小さな呟きを最後に、ロアの鳩の体は泥に沈んだ。
    羽が震え、口が勝手に動く。

    「あぎゃああああ(´・ω・`).;:…(´・ω…:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..」

    断末魔のような叫びが闇を裂き、やがて消えた。

    無神は一歩退き、夜空を見上げる。
    勝利の感情はなく、ただ静かに観察するだけ。
    彼にとって鳩は脅威ではなく、ひとつの好奇心を満たす存在でしかなかった。

    光を失った鳩は、もはや動かない。
    確率崩壊の余韻だけが戦場に漂い、奇妙な静けさを残した。

    こうして、光を愛し孤独を恐れた鳩は、闇に飲まれ敗北した。
    そして夜の草原には、無神の影だけが残り続けた。

  • 3171◆ZEeB1LlpgE25/08/21(木) 20:56:26

    以上

  • 318二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 20:59:25

    ロア鳩「呼んでもいいけど今日はこのまま楽しもう!」
    文字鳩「おいっす」

  • 319二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 22:41:43

    普通にロアの鳩可哀想

  • 320二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 07:13:11

    鳩おまえやるだけのことはやったよ…

  • 3211◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 16:49:47

    題名『森の盟約者』

  • 3221◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 16:54:52

    森の奥、光が僅かに差し込む林間。
    葉がざわめく中、一人の少女が静かに立っていた。
    如月 宇美――制圧課でも名を馳せた異能者だ。
    今日も傲慢な笑みを浮かべ、軽やかに周囲の枝や草を支配する。

    「ふふん、今日の獲物は……あの子かしら?」

    手を伸ばすだけで小石が宙に浮かび、枝が曲がる。
    支配の力は確かに強大だ。
    彼女はそれを鼻で笑うように弄び、触れれば敵も味方も自在に動かせると意気揚々だった。

    しかし森の奥から、異質な存在が姿を現した。
    小さな白い猫の姿――タマ。
    透き通った瞳は静かに光り、まるで周囲の生物すべてを見透かすかのようだった。

    「……ずいぶんと大きな力を持った方ですね、にゃ」

    ふわりとした声。
    淡く揺れる毛並みが、光に反射して柔らかに輝く。
    その落ち着きに、宇美はわずかに眉をひそめた。

    「……なによ、その態度。ちっちゃな猫が生意気言って」

    宇美の笑みにはわずかな余裕と、同時に緊張が混じる。
    提唱者に叩きのめされたトラウマが、無意識に胸を締め付けた。
    だが、支配者としての矜持は捨てない。
    彼女は手を広げ、林の空間を自分の支配下に置こうと試みる。

    空気が歪む。
    枝は彼女の意志で曲がり、葉は宙に浮く。

  • 3231◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 16:55:03

    だがタマは動じない。
    小さな猫の姿ながら、何か得体の知れない威圧感を放つ。

    「ふふ、面白い力ですね。けれど、私には届かないにゃ」

    静かに歩みを進めるだけで、周囲の生物たちが猫の周りに集まる。
    小鳥、獣、虫たち――皆がタマを中心に輪を作り、支配者の空間操作を微妙に阻む。

    「……っ!ちっ……なんて……」

    宇美は舌打ちをする。
    普段なら容易く掌握できるはずの空間が、不可視の力に干渉されている。
    支配者の調子乗りはまだ消えていない。
    だが無意識の恐怖が背後で囁き、彼女の動きを鈍らせる。

    タマは淡く微笑む。
    毛並みを揺らし、微かな声で「にゃ」と一言。
    その瞬間、森全体の気配が一瞬揺らぐ。
    宇美は本能的に体が硬直するのを感じた。

    「……くっ、面倒な子ね……!」

    支配者としての誇りと、トラウマが入り混じった微妙な笑みを浮かべつつ、戦いの序章が静かに幕を開ける。

  • 3241◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 16:55:43

    森の空気は一瞬にして張り詰めた。
    如月 宇美は両手を広げ、周囲の空間を自分の掌握下に置こうと集中する。
    枝がねじれ、岩が浮き、空気の密度まで歪む。

    「さあ、私の力を思い知りなさい!」

    傲慢に笑いながらも、内心では背筋に冷たいものが走った。
    提唱者にボコられた過去の記憶が、脳裏を掠める。
    しかし今は自分が強い――少なくとも、そう信じて動くしかない。

    一方、タマは悠然と猫の姿のまま地面に座った。
    ふわりとした声で一言。

    「…面白い力にゃ」

    その声に反応するかのように、森の小動物たちが静かに動き始める。
    小鳥は枝を飛び交い、獣たちは木の影から姿を現す。
    タマの目に映る全ての生物が、彼女の盟約下にある獣たちだった。

    「……なんだって……」

    宇美は空間を支配しながらも、意図せず枝や岩に縛られる感覚を覚える。

  • 3251◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 16:56:26

    自分が動かすはずの空間が、タマの存在によって微妙に歪められていた。
    調子乗りの笑みは一瞬で消え、舌打ちと苛立ちに変わる。

    「ちっ……貴女……私の動きを……」

    タマは少し首を傾げ、穏やかに微笑む。

    「にゃ…強引には動かせないにゃ」

    その一言で、森の空気が柔らかく、しかし確実に支配者の意志に干渉する。
    宇美は決意を固める。

    「こうなったら、直接触れて支配するしかない……!」

    手を伸ばす瞬間、タマは体を変異させた。
    猫の耳と尾が伸び、背中の毛並みが微妙に硬質化する。
    そして周囲の獣たちが一斉に動き、宇美の動線を塞ぐ。

    「……っ、うわぁっ!」

    支配者は触れられない敵の存在に戸惑い、空間の支配が一時的に乱れる。

  • 3261◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 16:56:40

    タマは静かに歩を進めながら、戦況を見極める。
    そしてほんの少し手を上げるだけで、複数の獣が動き、宇美の背後を押さえる。

    「……ううっ、こんな……ちっ、なんて面倒な……!」

    支配者の心臓は速まる。
    傲慢に笑いながらも、内心では恐怖が顔を出す。
    提唱者に叩きのめされたトラウマが、皮膚を伝う冷たい汗として現れる。

    タマは淡く笑う。
    「にゃ…無理に戦わなくてもいいのに」

    その穏やかな声に、宇美は苛立ちと焦燥を募らせる。
    そして再び手を伸ばす――しかし同時に、タマの小さな仕草で森の生物たちが連動し、支配の効果を減衰させる。

    「くっ……まだ……まだ……!」

    宇美は必死に力を振り絞る。
    だが、タマの盟約獣と変異の微妙な連携は、思った以上に巧妙で、支配者の優位は一瞬で揺らぐ。

    この初撃の応酬で、戦況は早くも緊迫を増していた。
    調子乗りの傲慢と、淡い達観の神秘――二人の心理戦が、森の中で静かに、しかし確実に火花を散らしている。

  • 3271◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 16:57:51

    森の奥、朝日の光はまだ届かず、空気は重く湿っていた。
    如月 宇美の呼吸は荒い。
    傲慢に振る舞う彼女の顔には、焦燥と苛立ちが交錯している。
    手を伸ばせば枝や石が彼女の意志に従うが、その動きはタマの存在でわずかに揺らぐ。

    「くっ……この猫……何者なのよ!」

    傲慢な声は震え、無意識に背後に冷たい汗が伝う。
    提唱者に叩きのめされた過去が、わずかな隙間から顔を覗かせる。
    しかし支配者としての矜持は消えず、必死に空間を掌握しようと手を伸ばす。

    タマは悠然と立ち、猫の姿を保ったまま森を見渡す。
    「にゃ…楽しそうにゃ」
    小さな声が森の静寂を揺らす。
    その一言で、周囲の獣たちは微妙に呼応し、宇美の支配力に対抗する。

    「……くっ……こんな……」

    宇美は一度手を伸ばした獣を強引に支配しようと試みる。
    だがタマが指を軽く動かすだけで、獣たちは連携し、支配の効果を削ぐ。
    まるで無形の糸で全てを絡め取られているかのようだ。

    「これが…盟約……」

    タマはふわりと微笑み、森の中で小鳥や獣が一斉に彼女の周りに集まる。
    空気は静かに揺れ、支配者の掌握力を押し返す。
    宇美は苛立ちと恐怖を同時に感じ、手がわずかに震える。

  • 3281◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 16:58:02

    「っ、ちっ……くっ……負けてたまるか!」

    支配者の傲慢な笑みが復活する。
    小石や枝を自在に操り、獣たちを牽制する。
    だがタマは動じない。
    むしろ微笑みを浮かべ、猫の体を変異させ、獣の形態を部分的に取り入れる。
    その姿は小さくとも、圧倒的な存在感を放った。

    「にゃ…驚かせるだけにゃ」

    獣の群れがタマの周囲で蠢く。
    小鳥は枝を飛び回り、獣は林の影から襲い掛かる。
    宇美の支配力は衝突し、空間は揺らぎ、枝や葉が不規則に動く。
    傲慢な彼女は苛立ち、動きを加速させる。

    だが、タマの冷静な観察眼と変異能力が、常に一歩先を行く。
    宇美の支配が及ぶ範囲を微妙にずらし、攻撃のタイミングを封じる。
    それでも支配者は必死に反撃し、空間内の物体を盾にして前進を試みる。

    「……くっ、負けない……!絶対に……!」

    心理戦は続く。
    調子に乗る傲慢さと、トラウマによる恐怖の揺れ動き。
    それが支配の力に微妙なブレを生む。
    一方、タマは静かに微笑み、猫の姿で悠然と戦場を見下ろす。

    戦いの中心に立つ二人の間に、森全体が応酬の舞台となる。
    獣の群れと支配力――心理戦と戦術が入り混じった攻防は、ますます熾烈になっていった。

  • 3291◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 16:59:10

    森の奥、光はまだ差し込まず、湿った空気が肌を包む。
    如月 宇美は疲れを感じつつも、傲慢な笑みを浮かべ、手を振る。
    小石や枝を自在に操り、タマの召喚獣たちに攻撃を仕掛ける。

    「さあ、私の力を思い知りなさい!」

    だが、タマは冷静だ。
    猫の姿を維持したまま、体を変異させる。
    耳や尾の動き、背中の毛並みの微妙な硬化――小さな動きの連続が、獣の動きを巧みに誘導する。

    「にゃ…少し遊ぶにゃ」

    その瞬間、タマの周囲に群れる獣たちの動きが統一され、宇美の支配の影響を受けていた獣たちを逆に押し返す。
    宇美は驚きと苛立ちで手が止まる。

    「……な、なに……っ、ちっ……!」

    調子乗りの笑みは消え、焦燥と恐怖が交錯する。
    提唱者の記憶が脳裏をよぎり、わずかな隙間が生まれる。
    タマはその隙間を見逃さない。

    体を小さく変異させながら、召喚した獣の動きを微調整する。
    枝や石、空間を操作する宇美の力に対して、獣たちは柔軟に連携し、攻撃の軌道を微妙にずらす。

    「……くっ、こんな……面倒な……」

    宇美は必死に支配を維持し、触れられない獣に対抗しようと空間操作を加速させる。
    だが、変異と盟約を巧みに使うタマは、二体目の獣を召喚し、戦況を逆転させ始める。

  • 3301◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 16:59:21

    「にゃ…楽しいにゃ」

    その言葉とともに、空間内の獣たちは連携攻撃を仕掛け、宇美の掌握を切り崩す。
    小石や枝が反転し、支配者自身の周囲の空間が歪む。
    傲慢な笑みは苛立ちに変わり、焦りが全身に広がる。

    「や、やめ……っ、くっ……ううっ!」

    内心の恐怖と戦う宇美。
    タマの微笑みは淡く、しかし戦況の掌握は確実で、支配者の力を凌駕し始める。
    空間の歪みと獣の連携が、宇美の支配を逆手に取り、戦場全体を支配するかのようだ。

    「……くそっ、まだ……まだ……!」

    支配者の心の奥底に、提唱者に叩きのめされた記憶が強く蘇る。
    だがそれを押し殺し、手を伸ばす――触れられない獣や空間操作の隙間を見極め、反撃の機会を探る。

    タマは淡い微笑を保ちつつ、盟約の獣と変異状態で戦場を巧みにコントロールする。
    戦況は完全に逆転し、支配者は必死に耐えるしかない。

    心理戦と能力応酬の応酬――森の奥で、二人の戦いは熾烈さを増していった。

  • 3311◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 17:00:39

    森の奥深く、夜はまだ完全に訪れていなかった。
    光は僅かに枝の隙間から差し込み、地面に斑模様を描く。
    如月 宇美は荒い息をつきながら立ち尽くした。
    支配力で動かすはずの空間も、微妙に揺らぎ、予想外の動きが生じる。

    「くっ……まさか、こんなに……」

    手を伸ばすたびに、タマの変異と盟約獣の連携が邪魔をする。
    傲慢に振る舞う笑みは消え、恐怖と焦燥の入り混じった表情が浮かぶ。
    過去のトラウマが再び押し寄せ、胸の奥で冷たい波となった。

    一方、タマは木の枝に座り、淡く微笑む。
    「にゃ…面白いにゃ」
    猫の姿から微妙に変異を加え、耳や尾を敏感に動かす。
    森の生物たちは彼女の微かな指示に応え、静かに戦場を支配する。

    「……触れなきゃ、支配できない……」

    宇美は必死に自分に言い聞かせ、手を伸ばす。
    しかし、タマの存在と盟約獣の連携で、触れられる距離まで近づくのは容易ではない。
    焦りが苛立ちに変わり、空間操作が雑になる。

    「ううっ……やめ……っ、ああっ!」

    小さな動きの一つ一つが、戦況を大きく左右する。
    タマはふわりと微笑むだけで、戦場全体を把握し、宇美の行動を読み取る。
    微妙にずらされた獣たちの位置が、支配者の力の有効範囲を削ぎ、空間を不安定にする。

  • 3321◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 17:00:51

    「……くそっ、まだ……まだ、ああっ!」

    宇美は必死に腕を伸ばし、枝や岩を操って防御と攻撃を両立させる。
    だが、盟約獣と変異能力による圧力は増し、徐々に押し込まれる。
    心理戦は頂点に達し、調子に乗る傲慢さと恐怖の揺れが、彼女の動きを鈍らせる。

    タマは柔らかい声で囁く。
    「にゃ…無理に戦わなくてもいいにゃ」

    その声が、宇美の心の隙間を突く。
    触れなければ支配できない――それが現実として重くのしかかる。
    傲慢さと恐怖がぶつかり合い、空間操作の精度はさらに揺らぐ。

    「……っ、負けるわけない……!」

    それでも支配者は手を伸ばす。
    空間、物体、環境――全てを掌握し、わずかな隙間を突いて反撃の機会を狙う。
    だが、タマの冷静な観察と獣の連携は、一歩も譲らない。

    森の中で二人の心理戦は続く。
    決戦前夜の緊張が、静かに、しかし確実に戦況を追い詰めていった。

  • 3331◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 17:01:29

    夜の森は静まり返り、月光だけが木々の間を淡く照らしていた。
    如月 宇美は息を荒くし、疲労で手が震える。
    傲慢に振る舞っていた笑みも消え、目の前の現実に打ちひしがれていた。

    「くっ……まだ……まだ終わってない……!」

    手を伸ばして空間を支配しようとするが、タマの存在はそれを完全に阻む。
    盟約獣たちが微妙に連携し、支配の範囲を常にずらす。
    支配者としての矜持と、恐怖心がせめぎ合い、全身の動きが鈍る。

    タマは木の枝に座り、淡い笑みを浮かべる。

    「にゃ…もう、充分にゃ」

    その一言で、召喚された獣たちが一斉に支配者の周囲を囲む。
    宇美は必死に抵抗しようとするが、空間を掌握しても触れられない――力は通じない。
    心の奥底に押し込んでいた提唱者の記憶が、冷たい波となって全身に広がる。

  • 3341◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 17:01:39

    「や、やめ……っ……ああっ!」

    支配者は力尽き、膝をつく。
    傲慢さは消え、震える体と混乱する思考だけが残った。
    タマは優雅に立ち上がり、猫の姿から微妙に変異した姿に体を変える。
    獣神の残滓が、短くも圧倒的な存在感を放つ。

    「にゃ…これでおしまいにゃ」

    盟約獣たちの静かな視線に包まれ、宇美はついに力を手放す。
    空間や物体を操作しようとする手は宙で止まり、力は抜けていく。

    「く……うっ……」

    地面に膝をつき、息を切らしながら支配者は呻く。
    全身が疲労と恐怖で震える。
    タマの淡い微笑みだけが、戦場の静寂を包む。

    「にゃ…大丈夫にゃ」

    タマの優しい声が、宇美の心の緊張を少しだけほぐす。
    支配者は何も言えず、ただ膝をついたまま森を見上げる。
    敗北を認めざるを得ない現実――それでも、心の奥底で、彼女はまだ次を模索していた。

    森は再び静寂を取り戻す。
    獣神の残滓であるタマは、淡く光る瞳で戦場を見渡し、次の瞬間には森の中へと静かに消えていった。
    支配者は跪いたまま、敗北の余韻と共に、静かに息を整えるしかなかった。

  • 3351◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 17:02:14

    以上

  • 336二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 17:03:18

    傲慢な女が怯えるのは最高!

  • 3371◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 17:06:55

    次の安価は18:30から10個

  • 338二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:00

    名前:ガウガガウ
    年齢:14歳
    性別:雌
    種族:人間
    本人概要:
    幼少期から魔物や植物型の魔物が跋扈するジャングルで木厳しい生存競争を生き抜いてきた野生児。
    鋭く尖らせた木の枝や自身の牙・爪を主武装として野生的に相手を追い詰める。
    教養は低く「ガウ」「ウガー!」程度しか喋ることが出来ないが、代わりにジャングルで培われた極めて鋭敏な野生的“勘”を持つ。
    “勘”による危機回避は未来予知と見紛うレベルであり、“勘”で相手の弱点を暴き攻め立てる姿はまるで急所への誘導ミサイルである。
    “勘”により自身が不利と判断した場合には無様なまでに逃げに徹するが、好機と見た時の攻めは驚異的。
    身体能力と判断力の高さが野生で生き抜いてきた何よりの証だ。
    能力:『ガウウガーガウ(植物生成)』
    能力概要: 枯れた大地にすら瑞々しい種々の植物を瞬く間に繁茂させジャングルを作り出す。
    弱点:
    生成した植物の命は短く、すぐに枯れてしまう。教養が無いため複雑な思考が苦手。
    優れた五感を持っているのが強みではあるが逆に強力な光や音、臭いに弱いという弱点でもある。

  • 339二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:00

    名前:全能統合体 Af-11 / アルマ
    年齢:15
    性別:女性
    種族:人間
    本人概要:白い長髪と全身に手術痕が目立つ少女。素体に数多の能力者の存在を統合することで人為的に全能を再現する冒涜的研究「異能統合研究」最後の生き残り。非道な実験の果てに覚醒した彼女は研究者たちを始末した後、世界を滅ぼすため動き始めた。胸に渦巻くやり場の無い怒りと悲しみをぶつける様に。
    素体となった少女の名はアルマ。争いを好まない心優しい性格で、たくさんの兄姉と共に研究団体が所有する孤児院で暮らしていた。実験に際して彼女が器とされ、兄姉全員を含めた大勢の人間がアルマに存在統合された。Af-11覚醒後は肉体の主導権を失うも残された意思で抵抗を続けている。大好きな兄姉の力が誰かを傷つけることに使われている。彼女にはそれが許せないようだ。

    能力:疑似全能・千識万理/強制統合・百識合一
    能力概要:疑似全能・千識万理:素体に統合された無数の能力を複数発動し、理論上あらゆる事象を引き起こす全能の如き能力。能力の出力は統合された存在の持つ力全ての加算、もしくは乗算であるためいずれも絶大。
    強制統合・百識合一:相手の意思に関係なく相手の存在を自身に統合し己の力とする能力。存在の統合に伴い対象の知識や技術だけでなく情報処理能力なども取り込むことが可能なため攻守共に隙が無い。研究終了時点で数多の存在を統合している。

    弱点:四肢と胸部計5箇所に施された研究素体補強用の防御術式の魔法陣が弱点。全て破壊されると統合された膨大な数の能力に肉体が耐えきれず自壊を始める。
    ・アルマの意思がAf-11による能力の発動を妨害する。妨害で能力の発動が不発になった場合、隙ができ攻撃チャンスになる。妨害の成功率は高くはないが、戦闘でAf-11がダメージを受けるたびアルマの力が強まり妨害の成功率が上昇する。アルマの力次第でAf-11を抑え込み体を取り戻すことも可能。
    ・兄姉の想いの残滓がアルマに力を貸し、Am-11の意思に反して能力を発動させアルマや対戦相手への援護を行う。この際、Af-11の攻撃性能は弱体化する。

    要望(任意):構図としてはAf-11vs対戦相手&アルマの様な形になると嬉しいです。敗北条件はAm-11死亡かアルマが肉体の主導権を取り戻すことでお願いします。

  • 340二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:00

    名前:超越者(山桐 一馬)
    年齢:22
    性別:男
    種族:半神
    本人概要:適応者と万能者の長子で山桐家のお兄ちゃん枠 万能者からは神の力を色濃く受け継いでいる
    性格はガハハハと笑う感じの破天荒な兄貴といった感じであり正義感もとても強い 容姿はムキムキ超身長で神話のヘラクレスを思わせる
    山桐家の中でも珍しく働いており【万事屋カズちゃん】というなんでも屋をしている 
    基本的には悪事以外ならなんでも引き受けるが基本的に戦闘系が多く防衛隊や特異能力犯罪対策局などからも仕事を引き受けたこともある 
    マフィアである深紅の梟に関しては裏社会の秩序維持の為必要と理解している為依頼を受けたことはある
    基本的には身体のみで闘うが巨大な大剣も使用する
    能力:超越
    能力概要:あらゆる道理法則程度の壁を超えてしまえる能力 
    周りや相手が絶対に不可能だと思うことをやってのける 例えば相手の概念レベルの防御や攻撃を拳で破壊 絶対に制御出来ないと思われた武器を制御など
    相手の予想を限界なく超えて上位存在や神をも凌駕し得る
    だが規格外のことをやる際には流石に力の溜めやとんでもない気合いが必要らしい
    弱点:
    すんごい脳筋の為分かりやすい小細工などにも引っかかるし相手が罠とかを仕掛けるなら全部被弾する
    心臓部に光輝く力の源言うなればコアの様なものがある それを破壊されると数日間は力が入らず全く動けない状態にそしてコア復元は一週間は掛かり敗北する
    コアは一馬が力を強く発揮していればいるほど光輝き弱点があからさまになるうえ脆くなる性質がある為
    規格外の力を常に出した状態は不可能 仮にやった場合はコアが一瞬で壊れて自滅という悲惨な結果になる為
    超常の力は此処ぞ!というタイミングのみ使用する
    超常の力は此出した場合は一時的に疲労し大きな隙が出来る 
    【脳筋で被弾し易い】【コアは力の規模が大きい程目立つし脆くなる】という最悪の組み合わせがある為 
    どんな相手でもピンチになりやすい 

  • 341二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:00

    名前:デプス・ハイト
    年齢:17歳
    性別:男性
    種族:人間
    本人概要:
    親には売られ、買われた先では兵士として扱われ、そこから救った組織には実験動物として扱われ、逃げた先では関わってはいけない人間扱いをされて育った青年。本人曰く、闇組織で兵士をしてた頃が1番マシな扱いだった。
    「普通」や「幸せ」というものに強い渇望とそれを上回る嫉妬と憎悪を抱いている。
    そのため現在では「幸せの取り立て人」と称して数多の国や地域を襲撃しており、軍隊や防衛組織も含めて甚大な被害を出し続けている。
    能力:『天地無用』
    能力概要:
    「上」と「下」を入れ替える能力。
    能力を使うたび、2発目は最初の5倍、3発目は最初の25倍というふうに、その範囲や規模や威力が5倍ずつ倍増していく。
    5倍増回数のリセット以外に威力や規模の調整方法はない。
    必殺技『デプス・ハイト』
    自分の名前を付けた必殺技。デプスの憎悪の具現化。
    重力方向の上下を入れ替えて相手を無理やり浮遊させた後、相手の位置の上下を入れ替えて深海に叩きこみ水圧で押し潰す。
    倍増回数が10回を超えると星の上下(つまり外側と内側)をひっくり返せるようになる。
    奥義『フォーリンダウン』
    デプスの嫉妬の具現化。強さや格の「上下」を入れ替えて相手を自分より下にする。
    デプスに仲間がいたなら、逆に自分を相手より強くした後、自分以外の味方をさらに自分より強くするバフ的な使い方も可能だった。
    弱点:
    ・最初の能力射程範囲は半径1mしかないため序盤は遠距離攻撃が有効。そのうえ能力の威力も低い。
    ・能力を使ったあと5秒間は能力が使えない。5は0と10、位の上と下のちょうど半分の値のためである。
    ・ある程度規模が大きくなると本人も巻き込まれるようになるため、定期的に5倍増回数をリセットしなければそのうち自滅してしまう。
    ・フォーリンダウンは、差が大きい相手には能力の回数を5回以上重ねて入れ替え可能範囲を伸ばした後でないと使えない。
    ・気絶またはデプス・ハイトかフォーリンダウンを使うと5倍増回数が一旦リセットされる。よって必殺技は連打不能。

  • 342二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:00

    名前:氷室屋 あいす
    年齢:14
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:度を越してワガママで小生意気な性格の中学生、だがそれは、誰かに甘えたい、愛されたいといった本心の裏返しでもある。
    ぱっつんの水色髪にカラフルな髪留めをたくさんつけている。
    大好物はアイスであり、いつも3段アイスクリームを舐めている。
    能力:『雪菓姫症候群(アイスクリン・シンドローム』
    能力概要:雪玉を自由に作り出す能力。
    座標も大きさも甘さも自由に操れる。
    その気になれば美味しいアイスクリームだって作れる。
    主な得意技
    【○段雪だるま】
    相手の頭上に巨大な雪だるまを産み出してたたき落とす。
    あいすが好んでよく使うメイン技であり、○の中の数だけ積んである雪だるまの段数が増える。小型のものをを広範囲に降らせるバリエーションも存在する。
    【雪球蹴式(スノーボール)ショット】
    巨大な雪玉を精製し、持ち前のキック力を武器に思いっきり蹴り飛ばす。
    弾丸の如きシュートは巨木すら薙ぎ倒す。
    【ドンドゥルマ・ロッド】
    専用のロッドの先に特製配合のよく伸びる雪玉アイスを装着、翻弄しつつ取り餅のように振るって相手を捕まえる。
    【覇皇アイス】
    彼女の使う切り札。生命エネルギーに満ち溢れた覇王のアイスクリーム。
    精製すると白いオーラの様な物を見に纏うことができ、次の一撃に物理攻撃の効かない相手や概念にすらも損傷を与える力を付与する事が出来る。
    現在は一度の戦闘で2度までしか発動出来ない。
    弱点:使用時には雪玉を精製する座標を視界に収めておく必要があり、視界を塞がれると能力がほとんど使えなくなる。
    近接戦はほぼ身体能力頼みなため、動き自体はかなり隙だらけ。

  • 343二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:01

    名前:妖怪"瞳集メ"
    年齢:5
    性別:不明 どちらかというと男
    種族:都市伝説
    本人概要:"美しい瞳"を持ち主ごと手に入れて愛でるために雨と共に現れる怪異 彼にとって最も美しい瞳とはこの世の闇を集めたかのような無機質な瞳のようだが彼は謙虚なのでどんな瞳であろうと持ち主ごと愛して収集する
    能力:降雨 転移 氷棺 異次元鞄 侘茶
    能力概要:
    降雨:自分のいる場所に雨を降らせる能力 例え天井があろうと降るが霊的な雨なので濡れることはない
    転移:相手の視界の外に転移する力 部分的に転移したり相手の背後に転移しての追跡などに用いる
    氷棺:雨に触れた生物をゆっくりと氷漬けにする
    完成した氷棺はまるで生きているかのようだ
    異次元鞄:完成した氷棺をしまっている鞄 内部は暗闇が広がっており破壊されたり開いたりすると暗闇が溢れ出す だが重要な物なので追い詰められて撤退する時以外は使わない
    侘茶:侘茶に深く精通しており相手の瞳を覗くことで過去を見通す謎技能を持つ
    弱点:相手に見られていると転移できない 雨に触れた相手が完全に氷漬けになるまでは最低でも一分かかる 戦闘時は相手の体温が上がるのでもっと長引く 鞄を破壊されると中身の集めてきた氷棺が破壊されてしまうので動揺する
    要望(任意):常に敬語で喋る 相手の瞳がよほど理想的でない限り負けそうになったら撤退する

  • 344二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:01

    名前:ポイニクス
    年齢:5000歳
    性別:なし
    種族:ガーディアン・ゴーレム
    本人概要:人類が成長する為に作られたゴーレム達の1体。フェニックスを元に作られている。
    救世機構S.S.S.を制作した人類にポイニクスはブチキレて、救世機構S.S.S.を破壊して己が強大な試練として君臨し、人柱を作らずに抗うように誘導することを目論んでいる。
    能力:《Sanierung》+《Wissenschaft》
    能力概要:《Sanierung》はフェニックスの原型だと言われるベンヌが夜に飛び込み死に、毎朝にその炎から生まれると信じられている事を元にして、旧個体を元に新個体を制作する能力。ポイニクスが破壊された時、ゼフラ渓谷にある神聖を漂わせる炎を発生させる機械から、ポイニクスの後継機が生成させる。後継機のポイニクスが制作される時は、前のポイニクスの能力とポイニクスを倒した能力や技術を解析し再現する。再現出来るのは、継承可能な技術と炎関係の能力である。後継機が生成された時は前の個体の記憶は継承されないが、制作目的である人類が成長する為の壁という使命は、新たなポイニクスが生成された時に刻まれる。
    《Wissenschaft》はフェニックスが悪魔として見られた時に様々な学問を理解していると言われているのを元にした能力。相手の能力や技術を己のメモリにある記録書庫から類似する学問を探し、解析する。
    弱点:飛ぶのに2秒掛かる。
    炎を出すのに1秒掛かる。
    両翼にあるコアを壊されるとポイニクスは破壊される。
    メモリから類似する学問を探すのに10秒かかる。
    ゼフラ渓谷に住まう他の神話生物によってを《Sanierung》発動させる機械は少し壊されている為、再現と能力の一部が後継機のポイニクスに与えられない。
    要望(任意):1体のポイニクスが破壊されたら戦闘を終了してください

  • 345二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:01

    名前:シェレナ・バーグ=スレイ
    年齢:48
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:鉄仮面をつけた長身の女性。
    スレイ家のママであり、スレイパパの妻。
    よく行方不明になる夫の捜索などをしており、家にいないときがしばしばある。
    ノースリーブの赤いドレスにベリーショートの黒髪、赤眼。背は194cmくらいで、脅威の胸囲。
    スレイパパを唯一ハッキリと認知出来る存在であり、独り言のようにスレイパパと話していることが多い。
    能力を用いて日常生活を過ごしており、突然目の前に来たりなぜか遠くにいるのに声が耳元で聞こえたり、ころころ性格が変わったりしている。占いが趣味。
    素の身体能力がとても高く、パルクールは余裕で出来る。バーグの血はとても強い。
    能力:【スレイ家の時間】
    能力概要:物事に宿る波長を操る能力。
    音波や電波、精神の波長を操り不可能を可能にすることが可能。非常に汎用性が高い。
    あらゆる能力の波長や情緒を操ることで精神や思考に乱れを生じさせたり、逆に自身の冷静や平常を保ったりなどが可能。また、遠くにいるのに耳元で声が聞こえる、姿が見えなくなる、攻撃などの軌道が一瞬見えなくなるなどの使い方が出来る。
    電波を操れば電子機器や機械系や思考などをジャックすることも可能。音波は万能であり、音波を操ることでストレスやイライラを底上げして相手の冷静さを失わせたり、超音波で相手の情報を正確に読み取ることも可能であり相手自身も知り得ない弱点を発見することが可能。これらを応用すれば、相手の能力を欠き消すことが可能。さらに、瞬間移動をしたり自身の性格を変えたりなどが可能となる。
    弱点:能力の欠き消しをするには電波、音波、波長の三つを繊細な組み合わせで融合する必要がある。
    音波は耳を防げば大体防げる。また、半径5メートル以上には音波の効果は届きづらく、効果も薄い。
    能力の源でもある目を攻撃されると、能力の効果が徐々に薄くなり、一週間の能力封印が起こる。
    姿を消せるのは一瞬であるため、使い所をよく考えなければいけない。
    要望:能力使う時は目を赤く光らせてください
    お嬢様言葉を使わせてください。勝てたら相手を新しい使用人として拉致らせてください。

  • 346二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:03

    名前:高橋 誠(まこと)
    年齢:75歳
    性別:男
    種族:人間
    人物概要:佐藤紬の父親であり高橋礼の夫で佐藤兄妹(雪、蓮、純、凛、命&聖、和)のお爺ちゃん
    真理顕現教団「フィディス」にて中々に高い地位と発言力を持つ重鎮で他の宗教に寛容な派閥である「穏健派」の筆頭格
    幼少期から教団に仕え実績を重ね頁徒、筆守、編纂院と歩んできた生え抜きであり他の派閥の揉め事の解決など色々と頼りにされる
    性格は寡黙だが本当に心優しく信心深く凄い良い人なお爺ちゃんであり誰に対しても親身になり戦っている相手すらも気遣う
    元来ずっと平和主義者であり誰からも根本的に戦闘向きの性格では無いと言われる程に優しくて温かい善の心を持っている人物
    能力:治癒の主
    能力概要:森羅万象ありとあらゆる総てを治癒し完璧に治し癒し戻し直し安らがせ正常とする事が出来る力
    対象は生物だけに留まらず無機物や概念的なものまで何でも癒す事が可能で彼が傷に気付かずとも力が認識し癒すべき物を癒す
    負傷、病気、肉体の切断や欠損、存在、魂、心、状態異常など総てを一瞬で完璧に治癒し正常な状態へと完全完璧に戻せる
    基本的に癒せない対象、癒せないもにというものが存在せず絶対に癒せぬようになった傷や殺意や敵意すらも癒して鈍らせる
    治癒という一点においては何よりも万能で死以外のあらゆる「傷」や「不調」を癒せる治癒の神すら超える治療の権化
    弱点:実は彼の治癒の主は他に使う分には一瞬で回復できるが自分に使うとジワジワと再生していく感じになり治癒が遅め
    また性格的に本当に戦闘向きではないので技術はあれど相手を傷付ける事に迷いがある故か全体的に隙が多めに存在する
    耐久力は相応に人間で治癒には体力と精神力を消費し尽きてくると再生がかなり遅くなってゆく、流石に心臓や脳を突かれるとヤバい
    殺傷性やダメージの高い技術を覚えていないゆえに攻撃力が低くメイスも攻撃力は低めに改造してある
    火力が低く性格的に隙がとても多く敵の心配が勝って足元を掬われる事もあると性格が戦闘向きでない故に突けるタイミングも多い
    要望:凄い優しいお爺ちゃん口調で一人称は「私」、当たれば戦意を削るメイスを持ち勝つ
    時は相手の戦意や敵意、殺意を削り切って戦闘不能にして勝利という形でお願いします

  • 347二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:39

    名前:数言怜吾(かずこと れいご)
    年齢:00000000000歳【編集済み】
    性別:男
    種族:人間によく似た何か
    本人概要:数言家現最強の男。今の数言家当主と同時期に生まれ、0の使い手数言零吾として当主候補にも選ばれていた実力者。しかしある日、民間人を数千人殺し、対処しにきた大規模異能集団も全滅させて逃亡、動機は、なんだか人をいっぱい殺したくなったから。この事件により数言家から勘当され、零の文字も剥奪された。今では一族全員から命を追われる身。本人は家族のことが大好きで全員殺したいと思っている
    精神構造自体が異常であり、自分に敵意を向けられると興奮するサイコパス
    小さい頃からあらゆるものが数値で見える体質で、人の気持ちが理解できず、自分さえ良ければそれでいい、と言う思想。能力を使いすぎて人間を辞めている、頭髪の色素も抜け落ちており白髪。判断力身体能力共に人を殺すためだけに生まれたような進化を遂げている。
    能力:0
    能力概要:0を操る能力。温度、攻撃の威力、視力、意志、脈拍など、物体から概念まであらゆるものを0にする。
    意思を0にした人間を操ったりもできる
    本来射程は1mほどだったが1に0を付け加え、今では射程が100mになっている。これが今の限界
    弱点:怜吾に見えている数値が0から離れているほど能力が効きにくい。心臓の活動で言うと、病気などにかかっている状態なら数秒で絶命させられるが、正常な状態だと数分張り付いていないと絶命させられない。また、自分から離れるほど能力の効き具合が悪くなり、射程ギリギリだとほぼ効かない。
    肉弾戦が好き
    要望(任意):口調は、優しく語りかけるような無邪気な感じ。話してる内容は殺人鬼
    1人称は俺、2人称はお前

  • 348二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:30:47

    このレスは削除されています

  • 349二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:31:28

    このレスは削除されています

  • 350二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:32:38

    このレスは削除されています

  • 3511◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 18:43:34
  • 3521◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 20:03:22

    超越者vs高橋 誠
    ポイニクスvs妖怪"瞳集メ"
    デプス・ハイトvs全能統合体 Af-11 / アルマ
    ガウガガウvs氷室屋 あいす
    数言怜吾vsシェレナ・バーグ=スレイ

  • 3531◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:26:07

    題名『砕く者と癒す者』

  • 3541◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:31:59

    黄昏に沈む廃都の広場。
    そこに立つのは、筋肉の塊のような青年と、温厚そうな老人だった。

    「ガハハハハ! あんたが“フィディス”の穏健派の大物か! じいさんの顔に見合わず、ずいぶんと厄介な力を持ってるって聞いたぜ!」

    一馬は豪快に笑い、背中に背負った大剣を軽々と振り回す。
    その姿はまさしく神話の英雄のようだ。

    対する老人――高橋 誠は、静かに首を振る。
    「……私はただ、人を癒し、人を正しく導きたいだけなのです。一馬殿、戦う理由などありません」

    「理由ならあるさ!」
    一馬は拳を固め、胸を叩いた。
    「アンタの力がある限り、この世界のバランスは崩れる! 誰もが癒されちまえば“限界”なんてものはなくなる! だからオレが止める!」

    「……悲しいことですね」
    誠は寂しそうに微笑み、手に持つ改造メイスを構える。
    攻撃力を削ぎ、鈍器として調整されたその武器は、殺すためではなく“戦意を削るため”のもの。

    「ではせめて、あなたを癒しながら……終わらせましょう」

    静かに構えた誠の目に、一切の敵意は宿っていなかった。
    しかしその優しさが、逆に一馬の闘志をさらに燃え上がらせるのだった。

    「ガハハッ! 癒すだぁ? オレをぶっ倒せるかどうか、試してみろやッ!」

    広場を揺るがすように、二人の戦いが幕を開けた――。

  • 3551◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:35:37

     一馬が地面を蹴ると、大気が爆ぜた。
     超巨体とは思えぬ速度で踏み込み、拳が誠の眼前に迫る。

    「ガハハハ! 拳で全部ぶっ壊すのがオレの流儀だァッ!」

     凄まじい衝撃音。
     拳は誠の胸を貫くはずだった――だが、その瞬間。

     誠の身体は淡い光に包まれた。
     拳が到達するよりも早く、“傷”が癒えてしまう。

    「……無駄だよ、一馬殿。あなたの拳は確かに重い。だが届いた刹那に、私は癒されてしまうのです」

    「な、なにィ!? オレの拳が……効いてねぇだと!?」

     一馬は距離を取らず、連撃を繰り出す。
     大剣を逆手に振るい、地を抉り、衝撃波ごと老人を押し潰そうとする。

     だが――

     地割れは瞬時に塞がり、大剣が破壊した石畳も元通りに修復されていく。
     まるで戦場そのものが誠に癒されているかのようだった。

    「私の力は、傷や欠損に留まりません。大地も、空気も、環境も……“正しい姿”に戻ってしまうのです」

    「ちぃっ……! ならばオレが壊し続ければ、いずれ癒す前に――!」

     一馬は巨体を振り絞り、渾身の膝蹴りを叩き込む。
     誠の身体は確かに吹き飛んだ。
     しかし、転がった先で彼はすぐに立ち上がる。傷一つない。

  • 3561◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:37:11

    「ガハハッ、マジかよ! 老人のくせにタフすぎだろッ!」

    「……私はタフなのではありません。ただ、傷がすぐに治るだけです」

     誠は小さくため息をつき、ゆっくりと一歩踏み込んだ。
     メイスを軽く振るう。
     その一撃は、一馬の頬をわずかに掠めただけだった。

    「なっ……!? 全然痛くねぇ……のに……なんだこれ……?」

     一馬の目から、ぎらついた闘志がふっと削がれていく。
     わずかに、ほんのわずかに――拳を振るう気力が鈍る。

    「……これが私の武器です。一馬殿。敵意もまた、“癒すべき傷”なのです」

     淡々とした声。
     その慈愛は、鋼鉄の防御よりも強靭に、一馬の心へ食い込んでいった。

    「クソッ……! なんだこのジジイ……! 戦う気が……萎えてきやがるッ……!」

     だが一馬は脳筋らしく、自ら頬を殴り気合を入れる。

    「ガハハッ! オレの闘志はそんなもんじゃ折れねぇッ!」

     再び拳を構えたその姿は、まだまだ猛る炎の如く。
     しかし確実に、誠の“癒し”は浸透し始めていた。

  • 3571◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:37:42

     一馬の拳が宙を裂く。
     その一撃は、もはや物理という枠を越えていた。

    「ガハハハ! “超越”の力、見せてやるぜッ!」

     彼が大地を踏み鳴らすと、空気が震え、世界そのものが悲鳴を上げる。
     拳が放たれた瞬間、目に見えない壁――概念そのものが砕け散った。

     誠を守るように働いていた“癒しの光”さえ、一時的に剥ぎ取られる。

    「おぉぉぉぉッ! 避けろよジジイッ!」

     拳が誠の胸に直撃する。
     老人の身体は後方へ吹き飛び、地面を激しく転がった。

    「がはっ……ッ!」

     血が吐き出される。
     その姿は、一瞬だが確かに“傷ついた”。

     一馬は吠える。

    「見たかァ!? オレの“超越”は癒しすら超えるッ! 不可能なんざ全部ぶっ壊すんだよォッ!」

     だが――

     誠の胸元が、再び淡い光に包まれる。
     砕けた骨が瞬時に繋がり、血が止まり、呼吸が安らいでいく。

  • 3581◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:38:04

    「……やはり、すごい力ですな。一馬殿。しかし……私が癒す限り、決定打にはなりません」

    「チッ……! なら何度でも叩き込むまでだッ!」

     一馬は勢いそのまま突進する。
     誠は後退せず、一歩前に出た。

     メイスが振り下ろされる。
     一馬は避けない。正面から受ける。

    「効かねぇッ! だが……なんだこの感覚……!」

     肉体は傷ついていない。
     しかし胸の奥で、確かなものが揺らいでいた。
     怒りが、闘志が、敵意が――少しずつ削がれていく。

    「一馬殿……私はあなたを傷つけたくはない。あなたの拳は、人を守るためのものなのでしょう?」

    「……っ……うるせぇッ……!」

     拳を振り上げる一馬の動きが、ほんの一瞬、鈍った。
     その隙を、誠は見逃さなかった。

     再びメイスが当たる。
     優しい一撃。だが確実に、闘志を蝕む。

    「クソッ……! オレの拳は……まだ折れてねぇッ!」

     一馬は咆哮する。
     だが誠の静かな眼差しが、その炎を少しずつ覆い隠していった。

  • 3591◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:41:22

     一馬の胸の奥で――心臓の隣に埋め込まれた“コア”が、強烈に光を放ち始めた。
     闘志が高まれば高まるほど、その光は強くなる。

    「ガハハハ! まだだッ! まだ終わっちゃいねぇッ!」

     一馬は吠え、拳を振るう。
     世界をも断つ超越の一撃。
     大地が裂け、空が揺らぎ、音すら消し飛ぶ。

     誠はそれを受けながら、穏やかな眼差しを崩さなかった。

    「一馬殿……その胸の光……あなたの弱点ですね」

    「っ……黙れジジイ! オレの拳は不可能を越える! そんなモン、関係ねぇッ!」

     彼の拳は誠の肩を砕いた。
     だが砕けた瞬間、誠の肩は治癒の光に包まれ、再び元通りになっていく。

    「……やはり、すごい力です。ですが……」

     誠のメイスが、そっと一馬の胸に触れた。
     直接ではない。ほんのかすかな接触。
     だがそこから、淡い癒しの光が一馬のコアへと流れ込む。

    「ぐっ……な、なんだ……身体が……熱い……ッ!」

     癒しの力は、敵意すら癒す。
     コアの輝きが、少しずつ穏やかに和らいでいく。

  • 3601◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:42:35

    「あなたの力は、人を守るためにあるのではないのですか?」

    「オレは……ッ!」

     一馬は叫ぶ。
     だが叫びの奥に、迷いが生まれていた。

    「クソッ……こんなはずじゃねぇ……! オレは……超えてみせるッ!」

     再び拳を振るおうとする。
     だがその拳は、誠の優しい声に揺らぎ、力を失っていく。

    「……もう十分です。一馬殿。あなたは立派に戦いました」

     メイスが胸を打つ。
     今度は痛みではなく――温かさが広がる。
     コアの光は徐々に弱まり、まるで安らぐように静かに輝きを落としていった。

     一馬は膝をついた。
     拳を握ったまま、それでも顔を上げて笑った。

    「ガハハ……! やるじゃねぇかジジイ……! オレの超越を……乗り越えるとはな……!」

     誠は静かに首を振る。

    「いいえ……私は何も超えてはいません。ただ、あなたの心を癒しただけです」

     その言葉に、一馬はしばし沈黙した。
     そして――誇らしげに、笑った。

  • 3611◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:44:44

     地面に膝をついたままの一馬。
     肩で息をし、なおも拳を震わせていた。

    「ガハハ……まだだッ! まだオレは……戦えるッ!」

     だがその胸の奥――コアは既に静かな光を帯び、怒りも闘志も和らいでいた。
     誠の癒しが、戦意すらも削ぎ落としていたのだ。

    「……もう十分です。一馬殿。あなたはよく戦いました」

     誠はゆっくりと歩み寄り、疲弊した彼に手を差し伸べる。
     一馬はそれを睨みつけるように見上げた。
     だがその眼差しも、やがて揺らぎ――小さな笑みに変わる。

    「……チッ。くそ……お前の勝ちだよ、ジジイ」

    「勝ち負けなど、どうでも良いことです」

     誠の声は、春の日差しのように柔らかかった。
     その声に触れた瞬間、一馬の拳は完全に力を失った。

    「オレは、超越者だぞ……! 神だって殴り倒せるんだぞ……! それを……こんな優しいジジイに、負けちまうなんてな……」

    「優しさもまた、力なのです。一馬殿」

     メイスが地面に静かに置かれる。
     戦闘の終わりを示すように。

     一馬はしばし沈黙した後、大きく笑った。

  • 3621◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:45:30

    「ガハハハ! クソッ! だが悪くねぇ! お前みてぇな奴に負けるなら……まぁ、オレも満足だ!」

     その笑い声には、敗北の悔しさと、どこか清々しい誇りが混じっていた。

     誠は膝をつき、傷ついた彼の胸に手を当てる。
     癒しの光が再び流れ込み、疲労で沈んでいた肉体をゆっくりと修復していく。

    「あなたはまだ若い。これからも、多くの人を救えるでしょう」

    「オレが……人を救う?」

    「ええ。超越の力は、誰かを傷つけるためではなく……誰かを守るためにあるのだと、私は信じています」

     一馬は目を閉じ、しばらく沈黙した。
     やがて小さく呟く。

    「……あぁ。そうかもな」

     戦意は完全に削がれた。
     一馬はゆっくりと地面に横たわり、穏やかな息を吐く。

     誠はその姿を見守り、静かに祈りを捧げた。

    「――戦いは、これで終わりです」

  • 3631◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:47:39

     夜風が吹き抜ける戦場跡。
     粉塵はすでに落ち、静けさだけが残っていた。

     一馬は岩に腰をかけ、胸をはだけて笑っていた。

    「ガハハ! いやぁ……あの時は本当にやべぇと思ったぜ。心臓、マジで止まるかと思ったわ!」

     その声は豪快だが、どこか照れ隠しにも似ている。
     誠は隣に立ち、優しく頷いた。

    「止まらずに済んで、良かったですね。一馬殿」

    「おいおい、“殿”とかやめろよ。オレはただの一馬だ。兄貴とか、アニキでいいぜ!」

    「では……一馬殿、ですね」

    「変わってねぇじゃねぇか!」

     二人のやり取りに、微かな笑いが生まれる。
     さっきまで死闘を繰り広げていたとは思えない穏やかさだった。

    「なぁ、ジジイ。……おっと、誠さん。オレは、強さだけを信じてここまで来た。拳で殴り、牙を食いしばり、超えて、超えて……それがオレの全部だった」

     真剣な眼差しで、誠を見据える。

  • 3641◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:49:23

    「でもな。今日わかった。……優しさもまた、超越できる力なんだってよ」

     誠はその言葉に、静かに目を細めた。

    「気づかれたのなら、もう大丈夫です。あなたの道は、これからさらに広がるでしょう」

    「ガハハ! その道が血みどろになってもか?」

    「その時は、私が癒しましょう」

     短いやり取り。
     だがそれは、確かな絆を生んでいた。

     一馬は立ち上がり、大剣を肩に担ぐ。

    「オレは負けた。でもな、負けたまんまじゃ終わらねぇ。次に会ったら……今度は勝つぜ!」

    「ええ。その時も、私は受けて立ちましょう」

     誠は笑い、一馬も豪快に笑う。
     空に月が昇り、二人の影を長く伸ばす。
     戦場に残るのは、互いの笑い声と、静かな風の音だけだった。

    「……さて、帰って仕事するか! “万事屋カズちゃん”が待ってるからな!」

    「私も、孫たちに顔を見せに行かねば」

     それぞれの道へ戻る二人。
     だが心の奥には確かに残っていた――
     超越者と癒し手が交わした、戦いと対話の記憶が。

  • 3651◆ZEeB1LlpgE25/08/22(金) 22:49:45

    以上

  • 366二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 22:50:32

    最高!

  • 367二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 22:50:53

    強キャラ爺は良いぞ!

  • 368二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 07:44:08

    ほす

  • 3691◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 10:56:42

    題名『試練の炎と氷の瞳』

  • 3701◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 10:57:38

    ゼフラ渓谷。
    切り立った断崖と深い谷が続くその地は、古来より神話の舞台とされてきた。
    岩肌には幾千年の歴史が刻まれ、時折吹き抜ける風が鋭い笛のような音を立てる。
    その大地に、巨きな影が立っていた。

    それは人ならざる存在――ガーディアン・ゴーレム、ポイニクス。
    燃え盛る炎を羽ばたかせるような両翼を持ち、その瞳は赤熱する炉心のように輝いている。

    「人類よ。己を試す壁を選んだのだ。ならば我を越えてみせよ」

    声は持たぬはずのゴーレムが、まるで大地そのものを響かせるように意思を放つ。
    使命。それこそが彼の存在理由だった。

    だがその時、空が暗転する。
    晴れ渡っていた空が、音もなく灰色の雲に覆われていく。
    一滴。二滴。
    やがて霊的な雨が空から降り始めた。
    その雨は衣を濡らさず、土も湿らせない。
    それでいて、確かに冷気と重圧を伴って大地に満ちる。

    「……おや」

    声が聞こえた。
    雨粒の中から、ふと現れる人影。
    和装のような衣に身を包み、手には古びた鞄を下げている。
    その瞳は闇の深淵を映すように無機質で、しかしどこか陶酔を宿していた。

    妖怪――“瞳集メ”。

  • 3711◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 10:58:17

    「これは……実に強き光を放つ瞳。お会いできて光栄でございます」

    その声音は丁寧で、敬語の端々に愛好家の熱が潜む。
    彼にとって、美しい瞳を持つ存在こそ収集すべき宝。
    そして、今目の前にあるポイニクスの双眸は、まさしく理想的な獲物だった。

    ポイニクスは揺るぎなく答える。

    「我は人類の試練。瞳を求める妖怪よ、ここはお前の遊び場ではない」

    炎の翼が広がり、赤熱の粒子が宙に舞う。
    それは雨粒とぶつかり、瞬間的に蒸気を生み出す。
    雨と炎――二つの力が、最初の衝突を始めようとしていた。

    “瞳集メ”は小さく首を傾げた。

    「遊びではございません。ただ……美しきものを集める、それだけのこと」

    次の瞬間、彼の姿がふっと霞む。
    視界から消え――そして現れる。

  • 3721◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 10:58:35

    ポイニクスの背後に、雨粒と共に。

    巨体が振り返るより早く、冷気が押し寄せた。
    雨は霊的な氷へと変質し、ポイニクスの片脚をゆっくりと覆っていく。
    氷棺――瞳集メの収集の手段。

    だが炎のゴーレムは動じない。

    「その冷気――焼き払う」

    一拍置き、翼が振るわれた。
    灼熱が奔流となって周囲を包み込み、氷を砕き、雨を蒸発させる。
    空気が爆ぜ、渓谷が震える。

    互いに一歩も譲らぬ意思。
    一方は人類のための試練。
    一方は瞳を求める収集者。
    雨と炎は相克し、そしてこの地に新たな戦いの物語を刻もうとしていた。

    「ならば――試させてもらおう」

    「では――頂戴いたします」

    渓谷に轟く声は、戦いの開始を告げていた。

  • 3731◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 10:59:16

    炎の翼が広がる。
    その輝きは、谷を昼のように照らし出した。
    対する“瞳集メ”の周囲には、なおも雨が降り続けている。
    濡れることはない雨だが、降り注ぐだけで温度を奪い、気配を鈍らせる。

    ポイニクスは、相手の奇妙な気配を感じながらも確信する。
    この妖怪は遊戯ではない。本気で自分の瞳を収集対象として狙っている。
    それは使命を持つ者にとって侮辱にも等しい挑戦だった。

    「我を奪うか……ならば、その試みを超えてみせよ」

    巨体が一歩踏み出した。
    大地が軋み、周囲の雨粒が震動で弾け飛ぶ。
    灼熱が波のように押し寄せ、“瞳集メ”の輪郭を揺らした。

    しかし――

    「……おっと、危ないところでございました」

    影が揺れ、消える。
    彼は一瞬で視界の外に転移し、再び背後に現れる。
    ポイニクスが振り返るよりも早く、雨が糸のように絡みつき、再び氷を作り出す。

    「その輝く瞳……どうしても、私のコレクションに加えたくなるのです」

    氷棺がじわじわと形成されていく。
    だがその瞬間、炎が轟いた。
    翼の羽ばたきが烈火を巻き起こし、雨粒ごと氷を蒸散させる。
    氷と炎がせめぎ合い、渓谷の空気は一瞬にして霧へと変わった。

  • 3741◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 10:59:33

    「氷で我を縛るか。だが我は幾度でも蘇る」

    「……なるほど。試練としての矜持、というわけでございますね」

    ポイニクスは更なる熱を込めようとしたが、わずかな遅れが生じた。
    炎を放つための一秒――その隙を、“瞳集メ”は見逃さない。
    影が走り、ポイニクスの両翼の根元――コアに近い部分へと手が伸びる。

    「ここに……宝がございますね」

    だが、手が触れる前に衝撃が走った。
    炎の爆発が炸裂し、瞳集メの姿を弾き飛ばす。
    彼は宙を舞い、雨と共に滑るように着地した。

    「……危うい。あと少しで届いたものを」

    「容易く触れられるほど、我は脆弱ではない」

    両者の視線が交錯する。
    一方は収集欲に燃えた瞳。
    一方は使命を背負う炎の眼差し。

    その瞬間、谷全体が震える。
    雨と炎が激しく混じり合い、戦場はさらなる混沌へと変わっていった。

    「では、もう一度挑ませていただきましょう」

    「望むところだ。来い、瞳を求める妖怪よ」

    戦いは、まだ始まったばかりだった。

  • 3751◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 11:01:59

    霧が漂う渓谷の中央。
    炎と雨のせめぎ合いは止むことなく続いていた。

    ポイニクスは巨大な体を揺らしながら、相手の動きを観察する。
    瞳集メは転移を繰り返し、決して視線の真正面には立たない。
    代わりに雨を操り、少しずつ少しずつ、氷の檻を形成しようとしていた。

    「……なるほど、雨を媒介にして凍結させる術。では我が記録書庫よ、答えを示せ」

    ポイニクスの両眼が紅から白へと変わる。
    《Wissenschaft》が発動した。
    内部のメモリに蓄積された人類の学問が光となり、目の奥で巡り始める。
    氷結反応の理論、気化熱、転移術の系統――十秒間の解析。

    「雨に触れさせぬこと、それが鍵か」

    結論を導き出す。
    だが、その十秒の沈黙こそが大きな隙。

    「今でございます」

    瞳集メが背後に現れる。
    霊雨が一気に凝縮し、鋭利な氷柱となって翼の根元を狙った。

    ポイニクスは振り返るより先に、炎の翼を大きく振り抜いた。
    烈火が一瞬にして霧を焼き払い、氷柱を粉砕する。
    爆ぜる音と共に、谷の空気がさらに乾いた。

    「……むぅ、やはり容易ではありませんね」

  • 3761◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 11:02:39

    瞳集メは後退し、雨をさらに強める。
    降りしきる雨はやがて氷粒を含み、温度は急激に下がっていった。

    「氷棺は完成まで時間を要する。だが時間を稼げば必ず捕らえられる」

    彼の声は静かだが、瞳の奥には狂気の光が宿っていた。

    「私の収集は止まりません。あなたの瞳も、必ず」

    「人類の試練たる我が、そのような執着に屈するものか」

    炎が再び渦を巻く。
    赤橙の奔流が天へと伸び、雨雲を切り裂かんばかりに燃え上がった。
    しかしその度に、瞳集メは転移で死角へ逃れ、決して真正面からは挑まない。

    「逃げ続けても、人類は成長せぬぞ」

    「いいえ。逃げではございません。これは“愛でる”ための舞でございます」

    その言葉と共に、氷の結晶が花のように舞い散る。
    雨粒が一斉に凍りつき、空間全体が氷の檻と化していった。

    ポイニクスの巨体が炎で抗う。
    だが、炎を放つには一秒、飛翔には二秒の溜め。
    その刹那の遅れを、瞳集メは狙い澄まして迫ってきた。

    「――閉ざされなさい、氷棺!」

    谷に冷気が満ち、炎と氷の決戦が激化していく。

  • 3771◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 11:04:39

    霧の渓谷に冷気が満ちる。
    氷棺は徐々にその形を現し、ポイニクスの翼の周囲に重くのしかかっていた。

    「このままでは……翼が固定される」

    炎を振るうも、冷気はそれを包み込み、溶けきる前に再び凍る。
    瞳集メは姿を視界の端にわずかに現すだけで、中心から動かず、雨を操って冷気を強化する。

    「……解析通り、氷棺完成にはまだ間がある」

    ポイニクスは巨体を揺らし、翼を上げ、全身から燃え盛る炎を噴き出した。
    熱の波が霧を焼き払い、氷の結晶を砕き、空間を揺るがせる。

    「ふむ、動きの遅れを突くとは……面白い」

    瞳集メの声は静かだ。
    しかし氷棺は完成間近であり、冷気はポイニクスの翼を包み込み、重く押さえつけていた。

    「だが、分析結果を信じるのみ」

    ポイニクスは一瞬だけ、内部の解析を活性化させた。
    《Wissenschaft》が再び目の奥で光を巡らせる。
    氷の性質、結晶の成長速度、冷気の密度――
    十秒間の解析で最適な炎の放出角度を導き出す。

    「これでどうだ」

    炎が一気に巻き上がり、翼を覆う氷を焼き尽くす。
    粉々になった氷が谷底へと落ち、冷気は僅かに後退する。

  • 3781◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 11:05:00

    「――やはり強大な存在……」

    瞳集メは後退し、雨を強化して再び氷棺を形成し始める。
    「しかし、この程度で私の舞は止まりません」

    再び降り注ぐ霊雨の中、氷の柱が形成され、谷の空気が震える。
    翼を振るうタイミングを探るポイニクス。
    だが、炎を放つには一秒、飛翔には二秒。
    その僅かな隙を、瞳集メは逃さず、狙い澄まして迫る。

    「――受けよ、氷棺の束縛!」

    氷棺はポイニクスの翼を包み込み、徐々に拘束力を増していく。
    巨体は炎を噴き出して抗うが、冷気に包まれた翼は動きが鈍る。

    「これが、抗えぬものか……!」

    炎と氷の力がぶつかり合い、渓谷全体が揺れる。
    だが、解析と経験の融合で、ポイニクスは僅かに優位を保っていた。

    「後は時間との勝負……」

    瞳集メは冷静に構え、雨を操る。
    ポイニクスは炎を振るい、翼を羽ばたかせる。
    激突は続く――
    勝敗は、あと一歩の差にかかっていた。

  • 3791◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 11:05:40

    霧の渓谷に緊張が張りつめる。
    氷棺はほぼ完成し、ポイニクスの翼を完全に包み込もうとしていた。
    冷気は容赦なく広がり、霧の中で炎は必死に抵抗している。

    「ここで耐えれば……後継機生成の時間は稼げる……」

    ポイニクスは解析を最大化するために《Wissenschaft》を起動。
    翼の角度、冷気の密度、雨との相互作用を瞬時に分析する。
    一瞬の判断ミスも許されない。

    「二秒の飛翔、一秒の炎……タイミングが鍵だ」

    瞳集メは雨を強化し、氷棺の形成速度をさらに高める。
    「焦るのはまだ早いです、ゴーレム様」
    冷静な声だが、氷棺の中で体勢を整え、翼をじわりと封じ込める。

    ポイニクスは巨体を揺らし、炎を噴射する角度を変え、氷を砕きながら翼を解放しようと試みる。
    氷の結晶は熱で粉々になり、谷底へと落ちていく。
    しかし、雨と冷気は再び翼に覆いかぶさり、動きを鈍らせる。

    「――解析は正しい、だが、力の出力が……」

    翼を動かそうとするたび、冷気が抵抗として立ちはだかる。
    ポイニクスの巨体は振動し、炎の熱が全身を駆け巡る。

    「後継機生成……それが、我が使命……」

    一瞬、全身の炎を集中させ、氷棺を焼き尽くす。
    霧が揺れ、霊雨は飛び散る。
    その隙に翼を広げ、次の飛翔の準備をする。

  • 3801◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 11:06:40

    「しかし……これ以上は無理か……!」

    瞳集メは冷気を強化し、氷棺完成まであと数秒。
    ポイニクスの翼は完全に拘束され、動かすことが難しくなる。
    だが、解析と炎の連携で、僅かな隙間を見つけて抵抗する。

    「ここまで……来たか……」

    翼を羽ばたかせる力と、炎の熱で氷棺を裂く瞬間――
    渓谷は轟音に包まれる。
    霧が燃え上がる炎と冷気で舞い上がり、視界は完全に混沌と化す。

    「勝利は……まだ諦めぬ!」

    ポイニクスは全力で翼を動かし、炎を最大出力にする。
    氷棺の冷気を焼き払い、氷を粉々に砕く。
    瞳集メは背後に転移し、再び雨を操ろうとするが、ポイニクスの解析がそれを読み切る。

    「あと一瞬……だが、時間が……」

    翼の拘束と冷気により、炎の出力と飛翔の準備に必要な時間が逼迫する。
    後継機生成までの時間は刻々と迫り、勝敗の行方は紙一重となる。

    渓谷は静寂と嵐の間で揺れ、戦いは最高潮に達していた。

  • 3811◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 11:08:09

    霧の渓谷はまるで戦場そのものだった。
    氷棺と炎、雨と熱が激しくぶつかり合い、谷底の地面はひび割れ、霧が舞う。

    ポイニクスは翼を広げ、最後の炎を全身に集中させる。

    「ここで……止まるわけにはいかぬ……!」

    解析と《Wissenschaft》の知識を総動員し、氷棺の薄い隙間を見つけ出す。

    瞳集メは雨を強め、背後に転移し、氷棺を完成させようとする。

    「ですが……ここまで来たのですね、ゴーレム様」

    彼の声は冷静そのものだが、瞳は戦況を見極め、撤退のタイミングを常に探している。

    ポイニクスは全力で炎を噴き出し、氷棺の結晶を粉砕する。
    氷は爆ぜ、霧の中に白い粉雪のように舞う。
    翼は完全に自由を取り戻し、巨大な羽ばたきが谷を揺らす。

    「これが……私の使命……人類への試練……!」

    最後の力を振り絞り、ポイニクスは大きく飛翔。

  • 3821◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 11:08:21

    氷棺の中心に炎を集中させ、一瞬で結晶を溶解させた。
    瞳集メは転移で逃れようとするも、完全な氷棺形成には至らず、冷気は消えかけていた。

    「……撤退します。次の機会に、必ず……」

    瞳集メは霧の中へと姿を消し、雨も止む。
    その背中は静かに、しかし悔しさを滲ませていた。

    渓谷は静寂を取り戻す。
    粉々になった氷と舞い散る霧、熱の残り香だけが戦闘の痕跡を残す。
    ポイニクスは羽を休め、翼を畳む。
    「これで……人類への試練は、まだ続けられる……」

    炎の熱が渓谷を包む中、ポイニクスの目は未来を見据えている。
    後継機生成は不要となったが、彼の使命は変わらない。
    人類が成長するための試練は、終わりを告げたわけではない。

    「次に備えねば……私の試練は終わらぬ……」

    霧が晴れ、太陽の光が谷に差し込む。
    冷たい雨は跡形もなく乾き、戦場は静かに朝を迎えた。
    ポイニクスはその姿を高く掲げ、無言で勝利を噛み締める。
    そして、再び人類に向けて歩みを進めるのであった。

  • 3831◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 11:09:30

    以上

  • 3841◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 12:43:11

    題名『天地の逆転者』

  • 3851◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 12:45:21

    荒廃した都市の中心、瓦礫に覆われた広場に、17歳の青年が静かに立っていた。
    デプス・ハイト――かつて兵士として使い捨てられ、組織に操られ続けた過去を持つ彼は、自らを「幸せの取り立て人」と称し、世界の秩序に逆らう者たちに制裁を与えていた。

    「……さて、今日も誰かに“上下”を教えてやるか」

    彼の足元で砂埃が舞い、空気が微かに歪む。デプスは手を軽く振ると、周囲の重力の方向を操り始める。まずは半径一メートル、身近な瓦礫を浮かせて投げる。小さな攻撃だが、威力は充分である。

    その時、遠くに白い長髪を揺らす少女が現れた。全身に施された手術痕が、かつて彼女が経験した残酷な実験を物語っていた。

    「……全能統合体 Af-11……?」

    少女はゆっくりと歩みを進める。彼女の胸には渦巻くような力が宿り、無数の能力者の力を統合した存在であることを示していた。その姿は、単なる人間の域を超え、圧倒的なオーラを放っていた。

    「あなたが……僕の相手か」

    デプスは視線を定め、無意識に上下を入れ替える動きを繰り出す。瓦礫が宙に浮き、彼の周囲の空間がわずかに歪んだ。
    Af-11――アルマの肉体を宿す少女は、静かに彼を見据える。声は低く、冷静そのものだった。

    「私は……あなたを止める」

    デプスは笑みを浮かべる。過去に虐げられ、見下され続けた自分に、初めて挑戦者が現れたことの興奮があった。

    「なら、力比べってやつだな……天地無用、行くぜ!」

    手を一振りした瞬間、周囲の重力が反転し、瓦礫が天高く舞い上がった。しかし、Af-11は動じない。むしろその瞳に浮かぶのは、微かな苦悶と、反抗する小さな意思――アルマの存在だった。

    「……これは……!」

    デプスは気付く。単なる力比べではない、この戦いは、少女の内に眠る意識と向き合うものでもある、と。
    街の瓦礫が宙を舞い、空気は張り詰める。二人の戦いは、静かに、しかし確実に始まった。

  • 3861◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 12:51:39

    デプス・ハイトは息を整え、次の攻撃に備える。
    半径一メートルの範囲を支配する最初の一撃はまだ小さな威力だったが、彼の体内に宿る憎悪と嫉妬が徐々に熱を帯びる。

    「次は……もっと大きく、もっと深く……!」

    手を振り下ろすと、今度は半径五メートルの瓦礫が一斉に浮き上がり、Af-11へと飛びかかる。
    しかし、少女は動じず、その長い白髪の隙間から微かに瞳を細めた。

    「……あなたの攻撃、止められないわけではない」

    その瞬間、瓦礫は空中で止まり、ゆっくりと左右に揺れる。
    Af-11の統合能力が力を及ぼし、デプスの重力操作を部分的に押さえ込んでいたのだ。
    だが、彼の顔には笑みが浮かんでいた。

    「そうか、なら……次は倍だ!」

    第3の攻撃――半径二十五メートル、威力は先の5倍。
    瓦礫が一斉に舞い上がり、地面を揺らす衝撃波が生まれる。
    しかし、Af-11はただ立ち尽くすのみ。
    だがその背後で、微かな抵抗が生じた
    ――アルマの意思が、小さな隙間を探っていたのだ。

    「……やめて、そんなこと……」

    Af-11の瞳がわずかに揺れ、攻撃が部分的に不発となる。
    デプスはその隙を見逃さず、空間をさらに操作する。
    瓦礫の群れが少女の周囲で渦を巻き、上下を入れ替える重力の奔流が彼女を押し込む。

  • 3871◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 12:52:08

    「どうした? 耐えられるか、全能統合体!」

    しかし、少女の動きは止まらない。
    無数の能力が彼女の意思に反して働き、攻撃を解析し吸収する。
    だがアルマの微かな妨害が成功する瞬間、デプスの重力操作にわずかなずれが生じる。
    その隙間を見逃さず、彼は次の倍増を狙う準備をする。

    「……まだだ、まだ終わらせない!」

    都市の瓦礫が空中で狂い、空気が重く歪む。
    戦場の全てが二人の力によって揺れ、光と影、上下の秩序が瞬間的に崩れる。
    デプスの能力は拡大し、Af-11の統合力は絶えず対応を迫られる。

    「……私の意思が……負けるわけには……!」

    アルマの声が、かすかにAf-11の意識を揺らす。
    戦闘は単なる力比べではなく、二つの意思のぶつかり合いへと変質していった。

  • 3881◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 12:52:37

    空中に浮かぶ瓦礫が渦を巻き、都市の一角が無重力の混乱に飲み込まれる。デプス・ハイトの目は紅く燃え、次の攻撃の準備に入っていた。倍増する力の感触が、彼の血液を震わせる。

    「……デプス・ハイト、行くぞ!」

    半径百二十五メートルの範囲が一瞬で支配され、地面の上下が逆転し、ビルの屋上は底辺となり、道路は頭上に引き上げられる。人々は叫びながら逃げ惑うが、デプスにはそれすらも快感の一部だった。

    Af-11は動じず、白髪を靡かせて立つ。だが、アルマの微かな意思がAf-11に干渉する瞬間、瓦礫の流れの一部が止まる。デプスはそこに気づき、笑みを歪めた。

    「お前……人形に操られてるだけか? それとも……自分の意思か?」

    「……私の意思だ……!」アルマの声がかすかに響く。Af-11の瞳が揺れる。そのわずかな動きが、デプスにとって絶好の隙となった。

    彼は瞬間的に動き、必殺技『デプス・ハイト』を発動する。瓦礫と建物が一斉に跳ね上がり、Af-11を取り囲む。上下の重力を入れ替え、彼女の体を空中に吊るし、次に位置を逆転させて地面へ叩き込む。

    「これで……終わりだ!」

    だがAf-11は全能統合体。周囲の瓦礫や環境を解析し、重力の流れを部分的に制御する。衝撃は和らぎ、彼女の体は完全に押し潰されることはなかった。しかし、アルマの意思がAf-11の力を抑えることで、統合体の反応速度は若干遅れる。

    デプスはその微かな隙を狙い、さらなる倍増攻撃を計画する。半径六百二十五メートル――通常なら人体に危険すぎる規模だ。だが、彼の憎悪と嫉妬が理性を凌駕し、己をも巻き込む覚悟で力を解放する。

    「……この上なく、完全に……!」

    空間が歪み、瓦礫と建物、空気そのものが逆転する。Af-11は全能の力で反撃するが、アルマの意思が徐々に力を取り戻しつつある。少女の瞳に微かに決意が宿る。

    「……私が……この体を……取り戻す……!」

    混沌の中、二つの意思と力がぶつかり合い、都市はまさに天地無用の渦の中にあった。デプスの力は絶大だが、Af-11とアルマの連携も徐々に反撃の余地を見せ始める。

  • 3891◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 12:52:54

    街全体が異常な重力の乱れに包まれる中、デプス・ハイトは満面の笑みを浮かべ、拳を振り上げた。倍増した攻撃範囲は数百メートルを超え、ビルの残骸も道路も空中で逆転し、まるで世界そのものが彼の掌にあるかのようだった。

    「さあ……次だ! フォーリンダウン!」

    デプスの声に呼応するかのように、周囲の“上下”が再びひっくり返る。Af-11の体は浮かされ、空間の流れごと押し下げられる。しかし、白銀の髪が靡くAf-11は冷静に構え、微かな揺れで自らの重力制御を部分的に行う。だが、その力もアルマの意思が干渉し始めたことで、完全ではなかった。

    「……私が……この体を、取り戻す……!」

    アルマの意思がAf-11を内側から揺さぶる。統合された数多の能力が彼女を守ろうとするが、少女の決意が徐々に支配力を奪い返す。デプスはその変化に気づき、赤い瞳を見開いた。

    「くっ……人形が、俺に反抗しているのか!」

    彼の力の増幅はさらに加速する。上下の入れ替えは単なる環境操作ではなく、力や戦力の格そのものまで操作する“フォーリンダウン”の領域へと拡大していた。Af-11の周囲の空間は、重力と戦意の入り混じった渦となり、まるで世界そのものが変貌していく。

    「ここで……止めるわけにはいかない……!」

    アルマは微かに笑みを浮かべ、全存在を見渡すように瞳を輝かせた。Af-11の身体は徐々に統合体の力に飲まれず、少女自身の意思が主導権を取り戻し始める。デプスの攻撃は圧倒的だが、アルマの反撃はまだ見えない。彼女の力は内側から徐々に増幅され、Af-11の無数の能力の干渉を抑えつつあった。

    「……今だ……!」

    アルマの力がAf-11の意識を押し返し、統合体の暴走を制御し始める。デプスはその瞬間、周囲の上下反転の感覚が揺らぎ、必殺技の威力の一部が反転するのを感じた。街全体の瓦礫が乱れ、風が渦を巻き、混沌は頂点に達する。

    両者の力が衝突する中、デプスは己の全力でフォーリンダウンを押し付け、アルマは内なる意思でAf-11を支配し返す――天地無用の戦いは、混沌と意思のぶつかり合いの最高潮に達していた。

  • 3901◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 12:53:09

    デプス・ハイトの眼前で、Af-11の体内で渦巻く無数の力がゆっくりと沈静化し始めた。アルマの意思が、統合された存在の奔流に割り込むように力を通し、暴走を制御していく。白銀の髪が微かに光を帯び、冷たい風の中で少女は静かに立っていた。

    「……これ以上、誰も傷つけさせない……」

    アルマの声がAf-11の体を震わせ、統合体の防御術式に微細な亀裂が走る。デプスは驚愕した表情を見せ、拳をさらに強く握る。

    「くっ……この俺の天地無用を……! ……え、止められるって……?」

    デプスの言葉が途中で途切れた。周囲の空間がわずかに揺らぎ、上下反転の感覚が乱れ始める。フォーリンダウンの効果は増幅され続けていたが、アルマの意思がAf-11の体内から逆流を起こすことで、攻撃の方向と強度が徐々に逆転していくのだ。

    「私の体……、私の意思……取り戻す……!」

    アルマの瞳に確固たる光が宿る。Af-11の無数の能力が徐々に鎮められ、統合の力は少女の手に戻ってくる。デプスは力の増幅を止めるわけにもいかず、攻撃の威力と規模は逆に自分自身を巻き込む形となり始めた。

    「なっ……これは……!?」

    地面が揺れ、瓦礫が宙に舞い、周囲の建物は軋む。デプスの上下操作は、アルマの反撃と意思の干渉により次第に制御を失っていく。攻撃は彼自身の体と周囲の環境に跳ね返り、深海のような重力が逆に彼を押し潰そうとする。

    「……行く……行くしか……!」

    アルマの意思とAf-11の肉体が完全に融合し、少女はAf-11の力を制御下に置くことに成功する。無数の能力がアルマの判断に従い、デプスの天地無用の渦を徐々に封じていく。白銀の光が渦巻き、彼女の存在が全ての攻撃を包み込み、浄化するかのように輝いた。

    「これで……終わりにする……!」

    力の集中が極限に達した瞬間、デプス・ハイトの倍増攻撃は反転の末、自らを巻き込み、都市の一角に衝撃を与えつつ沈静化した。地響きが収まり、街には静寂が戻る。アルマはAf-11の力を完全に掌握し、少女の意思が主体となった統合体として立っていた。

  • 3911◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 12:53:38

    戦場の瓦礫の隙間に、静寂が戻った。デプス・ハイトは倒れ込むように地面に突っ伏し、呼吸が荒く、体に微細な傷が刻まれている。倍増された天地無用の反動によって、自らの力が跳ね返り、完全に消耗してしまったのだ。

    「……く……あ……」

    デプスは手を伸ばすが、空中に漂う力の渦が彼の攻撃を弾き返す。彼の目の前には、Af-11の体を完全に掌握したアルマが立っていた。長い白銀の髪が風に揺れ、瞳には決意の光が宿る。

    「……デプスさん、もう……これ以上、誰も傷つけさせません」

    アルマの声は冷たくも穏やかで、Af-11の圧倒的な能力を統制するだけでなく、彼女自身の意思で戦局を完全に支配している。能力の奔流は、街を巻き込むことなく、デプスの周囲だけに穏やかながら制圧的な圧力をかけていた。

    「……まだ……力を……増やせる……」

    デプスは必死に立ち上がろうとするが、アルマの意思がAf-11の千識万理を介して彼の攻撃パターンを事前に予測し、増幅させる天地無用の反作用を最小限に封じ込める。力を解き放とうとした瞬間、彼自身の重力操作が逆に足元を引きずり、立つことさえ困難にする。

    「……これで……終わりです」

    アルマがAf-11の能力でデプスを包み込む。重力の上下を自在に操るデプスの能力は完全に封じられ、彼の攻撃は効力を失う。倍増回数もリセットされ、体力も限界に達していた。視界の端で、街の瓦礫や崩れた建物が、微細に変形し、元の位置に戻る。Af-11の能力で修復されるが、今回統合された力はアルマの意思に従い、被害を最小限に留める。

    「……私は、私の意思で……守ります」

    アルマはAf-11の身体を支配下に置き、少女の意思で戦闘を終結させた。デプス・ハイトはその場に膝をつき、完全に降伏せざるを得なかった。街は戦闘の痕跡を残しつつも、命は守られ、破壊は最小限に抑えられている。

    「……くそ……こんな……俺が……」

    デプスの悔しさと絶望を、アルマはただ静かに見つめる。Af-11の膨大な力の奔流は、もはや少女自身の意思に従い、外界には暴走を及ぼさない。戦闘は完全に終わり、彼女の統合した力は、制御されるべきものとして収束した。

  • 3921◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 12:54:27

    「……終わりました。これで……皆が、少しでも安心できます」

    アルマは深く息をつき、Af-11の身体に宿る力を完全に掌握したまま、静かに街を見下ろす。彼女の中に残る兄姉の想いは、統合された力を正しく導く羅針盤となり、荒廃した世界に一筋の光を落としていた。

  • 3931◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 12:55:02

    以上

  • 394二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 13:25:30

    最高だ!

  • 3951◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:27:33

    題名『雪と獣の乱れ舞』

  • 3961◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:28:33

    熱帯の陽光がジャングルの葉を照らす中、あいすは木漏れ日の下で三段アイスを舐めていた。
    水色の髪が光を反射してきらきらと輝く。

    「ふぅん、今日もいい天気だね〜♪」

    いつも通りの無邪気な声。だが、その目の奥には戦闘の閃きが潜む。
    目の前の空間、木々の間を見渡す。座標を確認――雪玉を降らせる場所の準備は万全だ。

    ジャングルの奥から、不意にざわめきが聞こえた。
    地面を踏みしめる音、枝が折れる音――野生の気配。

    「……誰か来たの?」

    小首を傾げ、あいすは立ち上がった。すると茂みの向こうから、牙をむき出しにした少女が飛び出してきた。

    「ガウッ!ウガー!」

    ガウガガウだ。黒い瞳に野生の光が宿る。鋭い爪を空に向け、牙を剥く。
    あいすはすぐに身構えた。

    「わっ……いきなり来るなんて、びっくりしちゃうじゃん!」

    ジャングルの奥で野生の勘を働かせるガウガガウは、あいすの座標を読み取り、正確に攻撃を誘導する。
    だがあいすは手早く雪玉を精製し、巨大な一段雪だるまを頭上に生成。

    「○段雪だるま! 一段目〜っ!」

    勢いよく落とす雪玉。ガウガガウは敏捷に横に跳び、ぎりぎりかわす。

  • 3971◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:28:46

    「ガウッ!」

    悔しそうに声を上げる野生児。あいすは笑みを浮かべる。

    「ふふ、まだまだよ。次は二段目〜♪」

    雪だるまが積み上がるごとに、ジャングルに冷気が漂い始める。熱帯の陽気と雪の冷たさが奇妙な対比を成す。
    ガウガガウは足音を消し、木の上から飛び掛かる。空中で鋭い爪が振るわれるが、あいすは体を翻し雪玉で防御。

    「雪球蹴式ショット!」

    巨大な雪玉を蹴り飛ばす。ガウガガウは飛び退きながら、ジャングルの草木を自在に伸ばして防御壁を作る。

    「ガウウ……!」

    二人の戦いはまだ始まったばかりだ。あいすは雪の魔法を巧みに操り、ガウガガウは野生の勘と植物の繁茂で応戦する。
    熱帯のジャングルで、冷気と野生がぶつかり合う――小さな戦場に異様な緊張が張り詰めた。

    「ふふ、面白くなってきたね……♪」

    あいすは三段目の雪だるまをさらに高く積み上げ、ガウガガウの動きを誘う。

    「ガウガッ!」

    牙を剥く少女も、全力で応戦の構えを取る。

    ジャングルの奥で、雪と牙の攻防が始まった――

  • 3981◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:29:20

    あいすは木の枝の陰に隠れ、次の攻撃の座標を確認した。
    雪玉の精製に集中しながらも、ガウガガウの動きを見逃さない。

    「ふふっ、今度はちょっと高く積むよ〜♪」

    両手を伸ばすと、巨大な二段雪だるまが空に現れる。
    空気が一瞬冷たくなり、ジャングルの熱気と不協和音を奏でた。

    ガウガガウは勘を働かせ、葉や枝を自在に操り防御を作る。
    それでも雪だるまの勢いは鋭く、彼女の足元をかすめるように落ちてきた。

    「ガウッ!」

    野生児の叫び。爪で地面を蹴り、雪玉を回避する。
    だが次の瞬間、あいすはすかさず雪球蹴式ショットを繰り出す。
    大きな雪玉が勢いよく飛び、枝を薙ぎ倒し、ガウガガウを追い詰める。

    「うふふ、次はドンドゥルマ・ロッドだよ〜!」

    雪玉アイスをロッドに装着し、振り回すあいす。
    その動きに合わせて雪が伸び、ガウガガウの視界を遮る。

    「ガウ……!」

    野生の勘を頼りにジャンプして避けるガウガガウだが、雪の柔軟な攻撃が体に絡みつく。
    一瞬の隙をつかれ、雪玉が肩をかすめる。

    「痛っ! でも、まだまだ元気だもん♪」

    笑顔で雪玉を作り続けるあいす。

  • 3991◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:29:40

    しかしガウガガウは負けていない。ジャングルの枝葉を駆使し、雪玉の落下を巧みに誘導する。

    「ウガー!」

    地面に広がる枝葉と雪のコンビネーションで、あいすの足元が滑る。
    雪玉を蹴った瞬間、バランスを崩し倒れかけた。

    「わっ……ちょっと待って〜!」

    それでも素早く体勢を立て直し、覇皇アイスの準備に取り掛かる。
    白いオーラが雪玉を包み、次の一撃に強力な力を宿す。

    ガウガガウは植物をさらに繁茂させ、攻撃と防御の両方を同時に展開する。
    葉や蔓が絡み合い、雪玉の軌道を微妙に変える。

    「ガウガッ! ウガー!」

    雪と植物がぶつかり合うジャングルの中、冷気と湿気が混ざり合い、奇妙な霧を作り出す。
    二人の戦いは、ただの力比べではなく、思考と勘の応酬でもあった。

    あいすの雪玉が再び飛び、ガウガガウはジャンプし、枝を盾に受け流す。
    しかし一瞬の油断で、雪玉が肩をかすめる。

    「ふふっ、面白くなってきたね♪」

    あいすは笑いながら次の攻撃を準備する。
    ガウガガウも牙をむき出し、全身で応戦の構えを取る。
    ジャングルの奥で、雪と植物の奔流が激しく交錯していく――戦いは、まだ序盤に過ぎなかった。

  • 4001◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:30:17

    あいすは雪玉を次々に作り出す。
    空に積み上げた三段雪だるまは、まるで巨大なアイスクリームのように輝いていた。

    「こんなものでどうかな〜♪」

    蹴り飛ばされた雪玉がジャングルの枝にぶつかり、跳ね返る。
    だがガウガガウの勘は鋭く、軌道を見極めて身を翻す。

    「ガウッ!」

    枝や葉を足場にジャンプし、雪玉をかわす。
    同時に蔓を伸ばし、あいすの雪玉が地面に落ちる前に迎撃する。

    「うふふ、なかなかやるね〜♪」

    あいすは笑い、さらに雪球蹴式ショットを繰り出す。
    巨木すら薙ぎ倒す勢いの雪玉は、枝葉を切り裂き、ガウガガウの側面を狙う。

    「ウガー!」

    体をひねり、枝に飛び乗るガウガガウ。
    雪の冷気に肌を刺されながらも、野生の勘で次の行動を読んで回避する。

    あいすはドンドゥルマ・ロッドを振り回し、雪玉アイスを絡めて複雑な攻撃を繰り出す。
    蔓や枝が雪に絡み合い、二人の間の空間は混沌と化す。

    「ふふっ、これでどうかしら〜♪」

    覇皇アイスを準備し、白いオーラで雪玉を包む。
    次の一撃には物理攻撃の効かない力が宿り、概念的な障壁すら貫く力を持つ。

  • 4011◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:30:38

    「ガウッ!」

    ガウガガウは植物をさらに生長させ、雪玉の軌道を変えようとする。
    しかし、白いオーラに覆われた雪玉は蔓や葉の防御を突き破り、ジャングルに衝撃を走らせる。

    「うわっ!?」

    衝撃で枝葉が揺れ、ガウガガウは足元をすくわれる。
    雪と植物の衝突で生まれた霧が視界を遮り、二人の動きをさらに複雑にした。

    あいすはすかさず次の雪玉を精製し、ジャンプで回避するガウガガウを追い詰める。
    白いオーラを纏った雪玉が、まるで生き物のように追尾していく。

    「ふふっ、逃がさないんだから〜♪」

    ガウガガウは牙をむき出しにし、蔓や枝を巧みに操る。
    雪玉をかわしながら、次の攻撃のチャンスをうかがう。

    冷気と緑が混ざる迷宮の中、二人の戦いは息をつく暇もない。
    雪と蔓が交錯し、空気は凍り、葉は揺れ、視界は常に変化する。
    あいすとガウガガウ、それぞれの能力がぶつかり合うたびに、ジャングルは新たな戦場となった。

  • 4021◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:31:55

    雪が舞い散るジャングルの奥、あいすは冷たい息を吐きながら構えを取り直した。

    「まだまだ行けるんだから〜♪」

    次々と雪玉を生み出し、三段雪だるまを高く積み上げる。
    空中に浮かぶそれらは、まるでアイスの塔のように光を反射して輝いた。

    一方、ガウガガウは鋭い眼差しで周囲を見渡す。

    「ガウッ…!」

    枝に飛び乗り、葉の陰から隙間を探る。
    雪玉の軌道、風の流れ、あいすの蹴りの癖、全てを野生の勘で読み取ろうとする。

    あいすは笑いながらドンドゥルマ・ロッドを振るい、雪玉アイスを絡ませて奇襲を仕掛ける。
    雪玉が枝を巻き込み、跳ね返りながらガウガガウを狙う。

    「ふふっ、どうかな〜♪」

    「ウガー!」

    ガウガガウは飛び跳ねてかわすが、白いオーラに包まれた覇皇アイスの一撃が迫る。
    枝と雪玉の衝突で生まれた霧が、ジャングル全体を覆った。
    視界は遮られ、冷気が二人の肌を刺す。

    あいすは次の雪玉を素早く精製し、蹴り飛ばす。

    「ふふっ、これでどうかな〜♪」

    雪玉は枝や蔓を蹴散らし、ガウガガウの動線を塞ぐ。

  • 4031◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:32:12

    「ガウッ!」

    ガウガガウは咄嗟に背を反らし、枝を踏みつけながら反撃の準備をする。
    彼女の伸ばす蔓や新たに生える葉は、雪玉の進行を微妙に変える。

    だがあいすは動じない。
    覇皇アイスを振るい、雪玉を白い光で包んで放つ。
    物理を超え、概念的な障壁すら貫く力が、ガウガガウの守りを突き破る。

    「うわっ!」

    枝が揺れ、蔓が切れ、ガウガガウはバランスを崩す。
    雪玉は正確に彼女の足元を襲い、逃げ場を奪った。

    「ふふっ、逃がさないんだから〜♪」

    ガウガガウは牙を剥き、必死に反撃を試みる。
    だが冷気と雪玉、さらに枝や蔓の障害が複雑に絡まり、思うように動けない。

    雪と緑の迷宮で、二人の戦いはさらに激化する。
    雪玉が砕け、枝が折れ、霧と冷気が混ざり合い、視界と感覚は混乱の極みに達していった。

    あいすの笑い声がジャングルに響き渡る。

    「うふふっ、これが私の力なんだから〜♪」

    ガウガガウは息を整え、次の瞬間をうかがう。
    牙と蔓、野生の勘であいすの動きを読み切ろうと必死だ。
    雪と牙、冷気と緑。二人の力がぶつかり合うたび、ジャングルは生き物のように変化していった。

  • 4041◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:33:15

    霧のジャングルに冷たい風が吹き抜ける。
    あいすは雪玉を何度も蹴り、ドンドゥルマ・ロッドを回転させてガウガガウを追い詰める。

    「ふふっ、まだまだいけるんだから〜♪」

    だがガウガガウはその全てを野生の勘で読み、枝や蔓を駆使して攻撃を避ける。

    「ガウッ!」

    枝に飛び乗り、雪玉の軌道を正確に計算して跳ね返す。

    あいすは次の雪玉を精製し、三段雪だるまを重ねて上から叩き落とす。

    「うふふっ、これでどうかな〜♪」

    雪玉が落下するたびにジャングルの葉が揺れ、枝が折れる音が響いた。

    ガウガガウは体を低くして回避する。

    「ウガー!」

    蔓を伸ばして足元の雪玉を弾き返し、反撃のチャンスを狙う。
    彼女の牙が光を反射し、目に鋭さを宿らせた。

    あいすは覇皇アイスを手に取り、白いオーラを雪玉に纏わせる。

    「次はこれなんだから〜♪」

    雪玉は物理攻撃を通さぬ力で飛び、蔓や枝を次々と破壊していく。
    ガウガガウは一瞬ひるむが、すぐに牙を剥き、蔓を伸ばして反撃。

  • 4051◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:33:26

    「ガウッ…!」

    雪玉が当たりそうな瞬間、蔓で跳ね返し、逆にあいすの前に障害を作る。
    ジャングルの地形が二人の戦いで次々と変わり、視界は混乱の極みとなった。

    あいすは笑いながら雪玉を連続で蹴り、枝や蔓を巻き込む。

    「うふふっ、これでもくらえ〜♪」

    雪玉が飛び、葉が散り、冷気がジャングル全体を包む。

    ガウガガウは冷気と雪の中で野生の勘を研ぎ澄まし、次の一手を決める。

    「ウガーッ!」

    枝を使って雪玉を跳ね返し、あいすの背後に回り込む。

    だがあいすは微動だにせず、覇皇アイスを再び精製する。

    「ふふっ、まだまだこれからなんだから〜♪」

    雪玉は光を帯び、ガウガガウが避けられない角度で迫る。

    ジャングルは二人の戦闘で雪と緑、冷気と葉の嵐に包まれた。
    雪玉と枝、蔓とオーラがぶつかり合い、攻防は激しさを増していく。
    あいすの笑い声とガウガガウの叫びが響き、戦場は生き物のように動いた。

    二人の力が互いに拮抗し、ジャングルの迷路は混沌を極める。
    雪と牙、冷気と野生。どちらも譲らぬ戦いは、次の瞬間の勝負を待つのみだった。

  • 4061◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:34:53

    ジャングルの奥深く、雪と葉の残骸が散乱する。
    あいすは覇皇アイスを二度目の発動で精製し、白いオーラをまとった雪玉を両手で抱え込む。

    「これで最後なんだから〜♪」

    ガウガガウは野生の勘で距離を詰め、蔓と枝を駆使してあいすの動きを封じようとする。

    「ガウッ…!」

    牙を剥き、雪玉の進路に飛び込み、あいすの背後に回り込む。

    あいすはロッドを振り、雪玉を地面に叩きつける。

    「うふふっ、くらえ〜♪」

    雪玉は跳ね返り、枝や蔓に衝撃を与え、ジャングルの地面が揺れる。
    ガウガガウは身を低くして雪玉をかわし、蔓で反撃を試みる。

    「ウガーッ!」

    しかし覇皇アイスの力が彼女の予測を超え、蔓や枝は粉々に砕ける。
    あいすは笑いながら雪玉を蹴り、空中に巨大な三段雪だるまを作り上げる。

    「ふふっ、これでもう終わりなんだから〜♪」

    雪だるまは落下し、ガウガガウを包み込む。

  • 4071◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:35:04

    ガウガガウは必死に枝を伸ばし回避を試みるが、雪玉の圧倒的質量と覇皇アイスの魔力には抗えなかった。

    「ガウッ…!」

    彼女は雪だるまに埋もれ、雪と枝の重みで動けなくなる。

    あいすはゆっくりと近づき、笑顔で手を差し伸べる。

    「ふふっ、勝っちゃったんだから〜♪」

    ジャングルは静まり返り、雪と枝、蔓の残骸だけが残る。
    あいすは深呼吸を一つし、雪玉を消して地面を平らに戻す。

    「これで終わりなんだから〜♪」

    ガウガガウは雪から顔を出し、短く「ウガ…」と呟く。
    疲れ切った体を支えきれず、雪の中でじっとしている。

    あいすはロッドを肩に担ぎ、勝利の笑みを浮かべる。

    「ふふっ、やっぱり私、強いんだから〜♪」

    ジャングルに差し込む光が雪に反射し、冷たくも輝く戦場を照らした。
    二人の戦いは終わり、雪と野生の攻防は静かに幕を閉じた。

  • 4081◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 13:35:15

    以上

  • 409二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 13:51:40

    良い戦いだった

  • 4101◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:15:52

    題名『零と波長の従属』

  • 4111◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:17:35

    夜の街外れ、霧が低く垂れ込めていた。
    街灯の光は湿ったアスファルトに反射し、空気はじっとりと重い。

    数言怜吾は、白髪を揺らしながらふらふらと歩く。
    その足取りは子供が散歩を楽しむようで、だが瞳は淡々と数字を追い続けている。

    「なあ、お前知ってるか? この道をまっすぐ行くと、すっごく面白いもんに出会えるんだ。
     人だったり、命だったりさ。そういうのをぜーんぶ、壊せるんだよ」

    その声は優しく穏やかで、語りかけるように柔らかかった。
    けれどその内容は、氷のような残酷さを孕んでいる。

    前方に赤い眼光が灯る。
    霧の中から、長身の女が現れた。
    ノースリーブの赤いドレス、鉄仮面、ベリーショートの黒髪。
    シェレナ・バーグ=スレイ。スレイ家の母にして、波長を操る者。

    「……まあ。こんなところで、あなたに会えるなんて」

    鉄仮面の奥から、お嬢様然とした声が響いた。

    怜吾は無邪気に笑みを浮かべる。

  • 4121◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:18:48

    「やっと来てくれたんだな。嬉しいよ。お前みたいに、元気そうな数字を持った奴、ずっと探してたんだ。
     壊しがいがあるからさ」

    シェレナの赤眼が強く輝き、空気そのものの波長を歪ませる。
    耳元で囁かれるような錯覚が起き、距離感が狂わされる。

    「遊びたいのなら、わたくしがお相手いたしますわ」

    怜吾は首を傾げ、子供に話しかけるような調子で呟く。

    「遊ぶのはいいな。俺、遊びの中でお前らが壊れていく顔を見るのが、大好きなんだ。
     だから……ちゃんと俺に見せてくれよ?」

    シェレナは一瞬で視界から消え、怜吾の数値の視界がそれを追う。

    「ほら、やっぱりそこにいる。お前が隠れても、全部数字で見えちゃうんだ」

    赤眼が輝く。零の力と波長の力。
    二つの異常が交錯する瞬間、街灯の光がぶれるように揺れた。

    「――始めますわよ」

    「うん、たくさん壊して遊ぼうぜ」

    夜の静寂を裂き、狂気と優雅さの戦いが幕を開けた。

  • 4131◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:22:23

    怜吾の足音が止まった。
    数値の世界に映るシェレナの姿は、波長の揺らぎで輪郭が霞んでいる。
    まるでここにいるのかどうかさえ曖昧な幻影。

    「へえ……面白いな。お前、ちゃんと数字が崩れて見える。普通は綺麗に並んでんのに」

    彼は小さな子供を褒めるように優しく笑う。
    その笑みの下に潜むのは、人間の理を殺す快楽の狂気。

    シェレナは鉄仮面の奥で赤眼を光らせた。

    「数字など、波長の乱れの前では無意味でしてよ」

    声が耳元に響いた瞬間、怜吾の背後から衝撃が走った。
    シェレナが瞬間移動のように現れ、長い脚で蹴りを放つ。
    怜吾は吹き飛ばされながらも、くすくす笑う。

    「いってえなあ……でも楽しいな。お前の蹴り、数字が一瞬でゼロに近づいた。あんなの初めて見た」

    次の瞬間、怜吾の指がひらりと動く。
    シェレナの「筋力」の数値がゼロへと傾いた。

  • 4141◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:23:17

    途端に蹴りの威力が抜け、重心が崩れる。

    「おっと……っ!」

    鉄仮面の女はよろめきながらも即座に波長を操作し、自らの動きを補正する。

    怜吾は、まるで恋人に語りかけるように囁く。

    「いいなあ、お前。俺のゼロに、まだちゃんと抵抗できてる。
     ほら、もっと頑張れよ。俺に負けないで。俺は、お前みたいな奴を――壊すのが一番好きなんだから」

    シェレナは身を翻し、距離を取った。
    そして両眼が赤く妖しく輝く。

    「……本当に子供のように残酷な方ですわね。ですが――わたくしの波長があなたを呑み込みますわ」

    怜吾は頭を傾げ、首筋をかきながら無邪気に答える。

    「呑み込む? ははっ、それ最高じゃん。俺を飲み込んで、お前もゼロにしてやる」

    再び二人の力がぶつかり、街全体が揺れるような感覚が広がる。
    ゼロと波長――相反する力が拮抗し、世界の理を歪ませていった。

  • 4151◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:25:28

    街の夜気を震わせるように、怜吾とシェレナのぶつかり合いは続いていた。

    怜吾は瓦礫を蹴散らして軽やかに踏み込む。
    その笑みは、まるで友達と遊んでいる子供のように無垢。

    「なあ、お前……どこまで耐えられるんだ? 俺、こうやって遊んでるだけで何人も殺しちゃったんだ。お前もさ、きっとすぐゼロになる」

    彼の掌が伸びた瞬間、シェレナの「心拍数」の数値が落ち始めた。
    胸の奥に重圧がかかるような苦しみが広がる。

    しかし鉄仮面の奥で赤眼が強く光る。

    「……愚かですわね。波長を制御すれば、鼓動など自在に整えられますのよ」

    彼女は音波を操り、自らの鼓動を安定へと導く。
    すると、怜吾がゼロに引きずり込もうとした数値が揺らぎ、逆に跳ね返された。

    「うわっ、跳ね返すのかよ! お前、本当にいいなぁ! 俺のゼロを返すなんて、最高にお前を壊したくなる!」

    怜吾は舌なめずりをしながら、まるで恋人に囁くように笑う。

  • 4161◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:25:47

    シェレナは一歩も引かず、赤眼をぎらつかせる。

    「わたくしは壊されるために存在しておりませんの。むしろ……あなたを調律して差し上げますわ」

    その声が耳元に響いた瞬間、怜吾の視界が揺れる。
    周囲の数値が乱れ、焦点が定まらない。

    「ははっ……! すげえな、お前。俺の目に映る数字が、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられてる……っ! でも、それって俺をもっと興奮させるだけだぞ?」

    怜吾は笑みを深め、拳を振るう。
    ゼロをまとった拳が大気を裂き、シェレナへと迫る。

    「お前の全部をゼロにしてやる! ほら、もっと俺を楽しませろよ!」

    シェレナは仮面を傾け、その拳を受ける直前に波長を操作。
    一瞬だけ姿を消し、背後へと回り込む。

    「……お戯れも大概にしなさいませ」

    鋭い蹴りが怜吾の背を撃ち抜いた。
    だが怜吾は倒れず、子供のように嬉しそうに笑う。

    「いいぞ……いいぞ! お前、本当に最高だ! もっと俺を殺そうとしてみろ! そしたら俺、お前をゼロにするから!」

    二人の戦いは、破壊と快楽が交錯する地獄の舞踏へと変わっていった。

  • 4171◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:27:00

    瓦礫が崩れ落ち、粉塵が舞う。
    その中で怜吾は、血に濡れた頬を指先で拭いながら、まるで子供のように無邪気に笑っていた。

    「なぁ、お前……本当に面白ぇな。俺をここまで追い込もうとするやつ、なかなかいねぇんだ。お前の全部をゼロにしたら……どんな顔するんだろうなぁ。考えただけでゾクゾクする」

    シェレナは長身の影を揺らし、赤眼を光らせて一歩前に出る。

    「……口にするたび、下劣さが増していきますわね。ですが……あなたのその興奮も、波長を断ち切れば簡単に静まるのですわ」

    その声と同時に、彼女の周囲に不可視の揺らぎが広がった。
    耳元で囁くような残響、遠くから響くはずの声が至近で鳴り響く。怜吾の数値の視界に「余分な数字」が割り込んでくる。

    「……ッ! ははっ! お前、俺の数字を混ぜやがったな! すげぇな……脳みそん中がバグってんのに、こんなに気持ちいいなんて!」

    怜吾は頭を抱えて笑いながらも、片手を突き出す。
    ゼロの力が走り、周囲の温度が急速に下がっていく。

  • 4181◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:27:39

    地面に散らばった石ころが次々と砕け、粉と化して消えていった。

    「お前の波長……ゼロにしちまえば消えるんだよ。俺の前じゃ、全部ゼロになるんだ」

    シェレナの赤眼がさらに強く輝いた。

    「……わたくしを“ゼロ”になどできませんわ。波長は消えず、ただ形を変えるのみ……」

    彼女は手を振り下ろす。
    その瞬間、超音波が怜吾の身体を貫き、筋肉の動きが一瞬だけ硬直する。

    「ぐっ……! ……っははははッ! すげぇ、今の! 俺の身体、数字が崩れたみたいに動かねぇ……! お前最高だな!」

    血を吐きながらも、怜吾は恍惚とした笑みを浮かべる。

    「もっとやれよ、お前。俺を殺そうと必死になれ……そしたら俺は、その必死さごと“ゼロ”にしてやる」

    シェレナは仮面の奥で冷ややかに微笑む。

    「……愉悦に酔う狂犬ですのね。ですが、あなたのその矛先、すぐにわたくしの“新しい使用人”として矯正して差し上げますわ」

    怜吾は目を細め、無邪気に囁く。

    「……お前、俺を飼うつもりか? いいぜ。飼い殺しにされるのも、殺し殺されるのも……俺にとっちゃ全部、楽しい遊びだ」

    ゼロと波長――二つの力が互いに共鳴し、街を揺さぶる戦いはさらに深みに落ちていった。

  • 4191◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:28:18

    街の残骸が、音もなく崩れ落ちていく。
    怜吾が踏み込んだ瞬間、半径数十メートルにある温度、衝撃、心拍、鼓動……あらゆる数値が“ゼロ”へと傾いていった。

    「お前、見えるか……? ほら、全部“ゼロ”になるんだ。建物も、音も、血の匂いも……この世界が空っぽになっていくの、最高だろ?」

    怜吾は子供が遊びを見せびらかすように笑いながら、指先で虚空をなぞる。
    その軌跡に沿って、瓦礫が塵へと変わり、遠くの電線すら一瞬で沈黙した。
    シェレナの赤眼が強く光り、鉄仮面の奥から冷ややかな声が響く。

    「……このままでは世界が虚無に沈みますわね。愚かで愛らしい殺人鬼……ですが、あなたに世界は壊せませんの」

    彼女は両手を広げ、周囲の空気を震わせた。
    電波が走り、超音波が空間を切り裂き、精神波が鼓膜を震わせる。

    「――波長、三重融合。《欠き消し》」

    その瞬間、怜吾の視界に広がる“数値”が乱れた。
    すべての数字が揺らぎ、ゼロに収束していくはずの値が歪んで、まとまりを失っていく。

    「ッ……! ……お前……俺の“ゼロ”を消そうってのか? やっべぇ……! これ、心臓止まりそうなくらい楽しいな!」

    怜吾は吐血しながらも笑い続け、ふらつきながら前に進む。

    「でもなぁ……お前の波長も、俺のゼロで“空っぽ”にできるんだ。力のぶつけ合い……どっちが先に壊れるかなぁ」

    シェレナは彼の狂気を真正面から見据え、赤眼をさらに輝かせた。

    「わたくしは壊れませんわ。壊れるのは、あなたの“快楽”の方ですの」

    二つの力がぶつかり合い、世界は音も光も失い――虚無の静寂だけが残った。

  • 4201◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:30:01

    瓦礫と血の匂いが入り混じる街は、もう原型を留めていなかった。
    怜吾の“ゼロ”は世界を削り、シェレナの“波長”はその削られた空間に揺らぎを与え続ける。
    存在と不存在の狭間で、景色は泡のように弾けては消え、再構成されては崩れていく。

    「……っは、はははっ……! やっぱりお前、最高だな……! 俺のゼロをかき消そうなんて、普通は怖くてできねぇよ!」

    怜吾は白髪を振り乱し、血を吐きながらも笑い、足取りは獣のように乱暴で、それでいて軽やかだった。

    「もっと……もっと俺を壊してくれ! そうじゃねぇと、お前を殺した時に気持ちよくなれねぇ!」

    シェレナは赤眼を強く輝かせ、両腕を広げて空気を震わせる。

    「――波長は全てに宿りますわ。意志も、快楽も、あなたの“殺意”すら例外ではございませんのよ」

    瞬間、怜吾の中にある“数値”が暴走を始めた。
    血圧、脈拍、筋肉の収縮速度――すべてがゼロへと傾くはずが、シェレナの波長操作により、強制的に“揺さぶられる”。
    ゼロと非ゼロの間で数字はカチカチと点滅し、彼の世界観そのものが混乱した。

  • 4211◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:30:13

    「ぐ、ははっ……! なにこれ……! 俺の視界の数字が、全部壊れてやがる……! でも……でもお前を殺せば……全部戻るだろッ!」

    怜吾は絶叫とともに肉弾戦を仕掛ける。
    鋭い手刀が鉄仮面をかすめるが――シェレナの姿が一瞬掻き消え、背後に現れる。

    「……ゼロの視界に、波長の揺らぎは映りませんのよ」

    彼女の声が耳元で響いた刹那、赤い光が怜吾の頭部を包み込み、波長の三重融合が発動。
    怜吾の意志、殺意、快楽――それらを乗せた波が、一瞬にして“消音”される。

    怜吾の瞳から数字が消え、彼は膝をつき、笑いながら崩れ落ちた。

    「……やっぱり……お前……俺を壊してくれたな……。なぁ……もっと壊してくれよ……」

    シェレナは静かに彼の頭を撫でるように手を添えた。

    「いいえ。壊すのではなく――使いますの。あなたの“ゼロ”は、わたくしの家に必要な力ですから」

    赤眼が再び輝き、波長が怜吾の意志を塗り替えていく。

    「今日から、あなたはわたくしの新しい使用人ですの。逃げてもよろしいけれど……その先でまた捕まえるだけですわ」

    怜吾はうっすら笑いながら、目を閉じた。

    「……お前の命令なら……殺すのも……悪くねぇな……」

    こうして、数言怜吾はスレイ家の“従属者”として組み込まれることとなった。
    彼のゼロと、シェレナの波長――世界を狂わせる二つの力は、新たな物語の幕を開けようとしていた。

  • 4221◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 16:30:51

    以上
    次の案かは17:30から10個

  • 423二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 16:56:51

    数言怜悟が数言・スレイ・怜悟に…!

  • 424二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:00

    名前:ポットリアシャビアバット
    年齢:19歳
    性別:雄
    種族:コウモリ型ボスモンスター(亜熱帯エリア)
    本人概要:
    亜熱帯エリアに生息する5mを超える超巨大コウモリモンスターの群れのボス。
    ボスであるため他のコウモリモンスターより卓越した身体能力と熟練冒険者に対してさえも一瞬の隙を狙って急襲し仕留めてしまうしたたかさを持つ。
    立派な翼膜を持つが羽ばたいて飛ぶことは無く、発達した脚力で空高く跳躍した後滑空するために使用する。
    滑空しながら獲物を探し、好機を嗅ぎつけると翼膜を閉じて獲物まで一直線に急降下して狩るスタイル。
    地上においてもその脚力で超低空滑空を行えるため、機動力は高い。
    能力:≪ウルトラソニック≫
    能力概要:
    口、或いは鼻から強力な超音波を放つ能力。
    物理的衝撃を急襲時の攻撃に活用、エコーロケーションによる索敵、音圧で冒険者からの銃撃も防ぐ音の壁を作り防御に使うなど、用途は多彩。
    狩りの時や、ボスに成りあがるための同族との闘争において幾度となく使用してきたため高精度で使用可能。
    弱点:
    超音波は相手との距離が離れている程攻撃力が低下。また、超音波の起点である鼻が急所。
    亜熱帯エリアのモンスターであるため熱に強いが冷気に弱い。

  • 425二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:00

    名前:数言千幾(かずこと せんき)
    年齢:26
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:ライブラリに所属している数言家の男
    一日ごとに記憶がリセットされる体質。18歳の頃からリセットされ始めており、18歳以前の記憶はあるがそれ以降の記憶が毎回消える。
    人間離れした理解力で、目覚めた瞬間に自分の情報・状況を全て理解する。ライブラリの研究所に寝泊まりしているので、目覚めてから周囲の人物と情報交換をするのが日課(本人にその自覚はなし)になっている。
    自分のこれまでの研究成果をまとめたノートを、常に持ち歩いており、新しい発見があるとすぐにそのノートに書き込む。例えば戦闘中であろうとも。
    3時間程度あれば他のライブラリ構成員と同じくらいの情報量を手に入れるとができ、仮に一週間記憶が引き継がれれば、真の神の存在にも気づける。
    能力:一で千を知る
    能力概要:常人の1000倍の理解力になる能力。1000倍と言うのは、理解の速度、情報の深さ、処理能力、情報の取り込み量、その全てが1000倍になるということである。相手を見ただけで、その能力や今の状態、性格、過去、戦闘スタイル、など全てを見抜く、どころか相手の次の行動を先読みして行動し、ほとんど未来予知をしているかのような動きで相手を翻弄することができる。
    弱点:予測しても意味のない広範囲攻撃には無力
    身体能力も一般人程度
    よく眠くなる。戦闘中にも眠くなり、その瞬間は隙ができる

  • 426二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:00

    名前:屍山血河(本名東雲 一)
    年齢:32
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:【紅月傭兵団】の幹部格で古株の傭兵で戦闘技能は非常に高く主に刀と拳銃の二つを巧みに扱う
    また刀と拳銃は特注品でどんな相手でも最低限通じる様になっている
    見た目はスーツにコート身につけるイケオジ
    能力の都合上 戦った後は自分の死体が積み上がることが多いことから屍山血河のコードネームがついた
    他の幹部格からは泥臭い、ダサい戦い方だと揶揄されいるが実力は認められている
    その一方で他の組織員からは躊躇なく自殺し自分を複製する精神性が異常だと恐れられている
    能力:スワンプマン
    能力概要:自死を条件に自身を一体完璧に複製出来る
    複製は精神や肉体記憶など自身が身につけているものなどを含めて複製される
    複製される時間は即座から5秒まで任意 複製される場所も近くならある程度自由
    この能力を活かして自死からの奇襲 相手の致命的の攻撃を自死で回避 
    複製する場所を選ぶことで擬似的な瞬間移動などを行なっている
    そして【自分の死体は残る】これが彼の能力がスワンプマンと言われる所以 
    また屍山血河は自分の死体でさえも盾がわりに平然と使う
    弱点:自死が条件な為他の相手に殺されるなどした場合はそのまま死ぬ
    戦闘技術は極めて高いが肉体強度は人間の域を超えず攻撃が直撃すれば普通に死ぬし気絶もする
    自死は基本的に拳銃で頭を撃ち抜く形で行っている為 ラグが有るのと 繰り返すことで奇襲などが通じ辛くなる
    要望: 戦闘開始時は「泥臭い戦いになると思うがすまんな」とか自死の回数が多いと「チッ今日だけで○体死んだぞ俺」
    相手に殺されそうになると「危ねぇ真の意味で死ぬところだった」みたいな台詞をお願いします

  • 427二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:01

    名前:殺悶吽(サモン)
    年齢:20
    性別:雄
    種族:ヒグマ型獣人(サイボーグ)
    本人概要:人類とは異なる知的生命体「獣人族」の一員。「獣人権利防衛運動隊」(実態はほぼテロ組織)の若き隊長。見た目は軍服を着たムキムキの二足歩行のクマのサイボーグ。改造の影響で常に若干ぼんやりしているが、それでいて非常にキレやすい。好物は鮭。
    能力:ウェン・カムイ・ランチャー
    能力概要:かつて人類族との抗争により大怪我を負ったため、身体の右半分をサイボーグ化しており、肉体強度はほぼ鋼鉄並み。中でも最大の武器は右腕の大砲から放たれる大量のイクラの弾丸。この弾丸は赤く半透明でツヤのある外観をしているが、破裂すると灼熱の液体金属を撒き散らす。
    サブウェポンとして右目の空間制御装置によって展開される粘着性の蜂蜜バリア。
    またヒグマ型獣人としての鋭い牙と爪(金属強化済み)、筋力を利用した近接戦闘の威力も抜群。ただし身体に無理のかかる改造の影響で、緻密な格闘スキルは全盛期より衰えている。
    弱点:「改造疼き」の発作(一日一回、激しく動くと機械化部分と生身部分の継ぎ目に痛みが走り、数秒間無防備で悶え苦しむこととなる)

  • 428二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:01

    名前:リミレト
    年齢:21歳
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:おっちょこちょいで天然な賢者。控えめな性格で誰に対しても丁寧に接する半面、稀に殺意の高い狂気が垣間見える。普通の家庭から生まれたナチュラルボーン怪物。元は圧倒的なカリスマを持っていたが、人を従えたりするのが性に合わなかったので能力として封じ込めた。得意魔術は癒系や氷系。特に再生と氷柱の魔術の練度が高い。下記の能力は普通に考えて後衛が使うものではないが、何をトチ狂ったのか自身を釣餌にして狩るという独自のスタイルを構築している。
    能力:注目
    能力概要:自身を目にした対象の意識を惹きつける能力。
    弱点:近接戦が壊滅的に弱い。

  • 429二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:01

    名前:アルナ・スレイ
    年齢:13
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:スレイ家の長女である少女。
    自由奔放でわんぱくな性格だが、戦闘センスはずば抜けて高い。能力のおかげか普通では考えられないことを発生させたりと遊んでおり、その度にシェレナに叱られている。
    アシメントリーの金髪に碧眼。いつも黒いパーカーを着ている。背は155cmくらい。
    お金はたんまりあるうえに地頭がいいので、毎日遊んで暮らしている。
    だが能力の副作用で周りから認識されずらくなっており、最近は自動ドアも反応しなくなってきた。謎の存在。
    一時期ムキになって暴れまわったことがあるが、家族からも無視されだしたため最近は鳴りを潜めている。
    能力:【スレイ家のお楽しみ】
    能力概要:常識や定義から解放される能力。
    相手の能力の“常識”や世界のルールから逸脱した行動が可能になる。
    それを利用した非常識的で混沌的な現象を引き起こすことが可能になる。常時発動している。
    例えば、“あり得ない”とされているような事象を発生させることや、亞空間から神器を取り出したり、様々な能力を乱用したり、目の前の相手の能力を自身も使ってみたりや、回転することで小さなブラックホールを生成したり、なんなら魔界へ通じるポータルにしたり、季節を狂わせたり、触れることで相手の思考を混乱させショートさせる、歴史を歪めるなどと、やりたい放題な能力。
    瞬間移動をしまくって影分身をしたりなど、戦闘中でもふざけた言動でいられる。焦りや不穏が訪れることがない能力でもある。
    世界一自由な存在になることが可能。
    弱点:常識的なことを言われると能力が一時的に解除される。額を攻撃されると気絶する。
    叱られることが苦手のため、常識的なことを言われる+で説教(注意)までされると能力の制御が効かなくなる。こうなりゃ止めれるのはお母さんくらい。
    歴史歪めは1ヶ月に一回、5分以内の歴史以外不可能。
    要望:一人称は「私」、二人称は「君」でお願いします。勝てたら相手を戦利品として持ち帰らせてください

  • 430二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:02

    名前:月夜 魁(かい)
    年齢:20歳?
    性別:男
    種族:人間?
    人物概要:燕尾服を纏った黒髪メガネの好青年で佐藤家に住み込みで仕えている超万能執事
    戦闘や護衛から家事、雑務まで何でも完璧に業務をこなし呼べばいつでも現れ頼まれればどんな無茶振りをも叶えてしまう超人従者
    ただいつから佐藤家にいて誰が彼を雇ったかはあやふやでどういう経歴や過去を持つ人物かは家族の誰も知らない謎多き未知なる人物
    人を揶揄う時に「私、実は悪魔なんですよ」とか「悪魔の契約ですか?」とか言ってくるので悪魔なのかもしれないが真偽は不明
    性格は礼儀正しく誰に対しても敬語だが軽薄な雰囲気を纏い人を揶揄ったりおどかしたりするのが好きで物凄く嘘つきでもある
    能力:転移の主
    能力概要:移動に関することなら大体何でも自由自在にできる能力でどんなものでも自由に移動できる
    ポータル、瞬間移動、ワイヤー移動、高速移動、アポート、転移、位置入替と移動に関することならどんな事も可能
    上記以外にも無数の移動に関する力を持っておりどこからでも現れる事が可能で変幻自在の攻撃、無数の戦術を可能とする便利能力
    必殺技として概念的なものの移動や超大規模移動も使えるが彼自身にも負担が大きいのでここぞで使うと必殺技となる
    弱点:移動能力は同時には使えない、高速移動しながらテレポートは出来ないしワイヤーを使いながらポータルは開けない
    長距離移動や規模の大きいものの移動には能力チャージか体力大幅消費のどっちかが必要でありそう何度もは使えない
    移動能力は連続使用や短時間での過剰使用で疲労と負荷が溜まるので乱発はできず移動の使用直後は一瞬の隙を見せる
    身体能力は高いが持久力は並みであり持久力は特に能力の発動に深く関わる、故に能力乱発はせずタイミングを見て使うと選択が必要
    身体の耐久力は普通だが実は本人も自覚し自嘲する程に打たれ弱く「攻撃を喰らうと色々と辛いしマズイですね」と言うレベル
    要望:口調は丁寧な敬語で一人称は私
    蹴りや足技のみを使って戦ってください、スマートな感じを出してください
    有利でも不利でもテンションは落ち着いてる感じでお願いします

  • 431二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:02

    名前:フェウラ・ブリッツ
    年齢:28
    性別:女性
    種族:人間
    本人概要:
    「蒼き太陽」という二つ名を与えられている存在。超攻撃特化な能力とは反対に性格は基本的に冷淡で感情を前に出すことは稀。
    青色の髪に緑色の眼。服は燃えるような赤の軍服を身にまとっている。
    名実ともに防衛隊最強の一角。

    能力:プラズマ支配

    能力概要:
    体内に宿る「プラズマコア」から膨大なプラズマエネルギーを生成・制御することで、稲妻や熱撃を自在に操る。遠距離攻撃・範囲攻撃・防御フィールドとしても応用可能で、都市規模の雷撃やプラズマ嵐を生み出すこともできる。コアの集中度に応じて威力・範囲が増大する。
    必殺技のプラズマカノンは当たれば基本どんな存在でも無傷では済まない火力。

    弱点:
    ・プラズマコアが損傷すると制御不能になり、自身も大きくダメージを受ける。
    ・絶対零度や帯電阻害環境では能力が弱体化する。
    ・コアのエネルギーが尽きると能力の大半が封じられる。

  • 432二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:02

    名前:結縁 絆(ゆうえん きずな)
    年齢:14歳
    性別:女性
    種族:人間
    本人概要:縁神と契約した隻眼隻腕の巫女。元々、様々な不運等に襲われやすく、疲弊し困っていた。そんな時に、昔絆がよく遊びに行っていた神社に祀られている神様が縁切り・縁結びの神様と知って不運との縁を切れるように願った。その結果、縁神にナイフを貰いその使い方まで教わって、自分の意志で己の右腕を捧げる事で不運との縁を切った。
    能力:《所縁》
    能力概要:縁神と契約した事で得たナイフ。自身が保持する何か(目・聴覚・四肢・友との縁・これから出来る大切な縁)等を捧げる事で、悪縁・良縁等の様々な縁を自他共に結ぶことも、切ることも可能なナイフ。
    弱点:捧げる部位を言ってからどの縁を切る・結ぶかを言って発動する為、最も速くて3秒掛かる。

  • 433二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:42

    代理

    名前:“廃棄伝承”カノン・シャングリラ&ユウ・ゴダイ
    年齢:カノンは不明、ユウは16歳
    性別:カノンは女性、ユウは男性
    種族:カノンは半人半竜、ユウは人造英雄
    本人概要 : カノンは灰色のゴシックロリータを着た少女。体の節々に革製のベルトで縛られており、その小さな体躯を拘束している。ユウは某国の国防学園の生徒であり、その制服を着こなす少年である。カノンよりユウの方が一回り背が高い。
    ユウの正体は人為的に遺伝子及び魂に捜査を施し生まれた人造英雄である。小柄な肉体には伝説に語られる英雄…ヘラクレス・ラーマ・ヤマトタケルらに匹敵する戦闘の才能がある。が、実生活ではザンネン、常識に疎く些細な勘違いでため息を吐きたくなるような失敗を繰り返している。趣味の料理だって味はともかく見た目は最悪、カノンは毎日グロテスクな料理を食べさせられている(善意、かわいそう)。
    カノンは伝説に語られる神器…聖遺物をその身に納め封印する一族の生まれ。現代のファフニール。尊大で傲慢な性格だが、ユウのグロテスクな料理には辟易としている。実はツンデレ。
    能力:邪竜装甲“エインヘリヤル”
    能力概要:カノンの能力。カノンは鎧に変身し、契約者であるユウの肉体を武装させる。カノンの身体に納められた聖遺物の力を反映し、バランスの良い基本形態の”アガートラーム“、一撃破壊に特化した“ガングニール”、砲撃・射撃戦に特化した“イチイバル、機動力と毒を操る”アメノハバキリ“の3つの形態を切り替え戦況を優位に押し進むことができる。
    弱点:伝説に語られるジークフリートと同じくエインヘリヤルの装甲は背中にはなく、急所となっている。
    形態を切り替える際にアーマーパージをする必要があり、3秒ほど戦闘能力を失う。

  • 434二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:30:48

    このレスは削除されています

  • 435二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:31:50

    すとっぷ

  • 4361◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 17:36:10
  • 437二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:38:07

    無事全採用!

  • 4381◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 17:40:45

    ポットリアシャビアバットvs殺悶吽
    フェウラ・ブリッツvsアルナ・スレイ
    結縁 絆vs月夜 魁
    “廃棄伝承”カノン・シャングリラ&ユウ・ゴダイvsリミレト
    屍山血河vs数言千幾

  • 4391◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:15:22

    題名『超音と鉄槌の森』

  • 440二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 20:16:03

    このレスは削除されています

  • 441二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 20:16:33

    このレスは削除されています

  • 442二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 20:17:18

    このレスは削除されています

  • 4431◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:18:24

    亜熱帯の密林。湿気と熱気が入り混じる空間を、巨大な翼膜を持つコウモリが滑空する。ポットリアシャビアバット、その名は群れの頂点に立つ存在。

    「……今日はどの獲物を狩ろうか」

    低く唸る声が森の奥に響いた。翼膜を広げず、鋭く蹴り上げる脚力だけで高く舞い上がる。下界の木々や地面を蹴散らし、滑空を続ける。獲物の匂いを嗅ぎつけると、翼膜を閉じて一直線に急降下。視界の中で小さな冒険者たちが、無防備に足元を歩いていた。

    一方、森の入口に、鋼鉄の獣が立つ。殺悶吽だ。ヒグマ型の獣人にサイボーグ改造を施し、右腕にはイクラ弾を放つ大砲。戦闘態勢に入り、獣の動きを読み取る。

    「……奴が狙ってるのは俺か」

    濃い霧のような熱気が彼を包む。視界は曖昧でも、右目の空間制御装置が獲物の軌道を計算していた。翼膜を閉じたボスモンスターの姿が急に大きくなり、地面近くを滑空して迫る。

    ポットリアシャビアバットは脚力で地上の障害物を利用しながら、高速滑空で距離を詰める。敵が構える前に接近し、超音波を口から放つ。周囲の空気が揺らぎ、草木が震える。

    「ギャオオオオオ!」

    耳を突く高周波が殺悶吽を刺激するが、彼は蜂蜜バリアを展開し、反射的に攻撃を防ぐ。だが、重力を感じさせぬ低空滑空の速度は、その防御をも試す。

    ポットリアシャビアバットの瞳は冷徹に光り、狩りの本能が研ぎ澄まされる。殺悶吽はゆらりと身を低くし、鋭い爪と牙で迎撃の姿勢を取る。互いに相手を観察し、戦闘開始の瞬間を探る。

    「……来るなら、来い」

    ヒグマ型獣人の声が低く響く。肉体の鋼鉄化部分がきしむ音が、空気を震わせる。

    上空と地上、それぞれの王者が互いにその力を探る。まだ第一撃は放たれていないが、森全体に緊張が張り詰める。亜熱帯の空気が揺れる中、戦いの幕が静かに開かれた。

  • 4441◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:18:43

    ポットリアシャビアバットは上空で滑空し、狙いを定めた。巨大な翼膜を閉じ、急降下。獲物に狙いを絞ると、口から鋭い超音波を放つ。

    「ギャアアアア!」

    波動が森の木々を揺らし、枝葉を散らす。音波は周囲の空気を圧縮し、冒険者の遠距離攻撃すら防ぐ音の壁となる。狩りの経験から、正確な角度と距離で放つ超音波は、一瞬で敵の平衡感覚を狂わせる。

    一方の殺悶吽は、右腕のイクラランチャーを構えつつ、即座に蜂蜜バリアを展開する。赤く半透明の弾丸が炸裂する前に、音圧を吸収し防御を補助する。

    「……侮れぬ相手だ」

    低く唸り、獣人の鋭い爪と牙を活かして反撃を狙う。滑空中のボスモンスターに近づくことは危険だが、爆発的な脚力を利用して地上から跳躍し、相手の攻撃の隙を突く。

    ポットリアシャビアバットは地面すれすれの低空滑空に切り替え、反射的に方向を変える。音波を放ちつつ、獲物の動きを探る瞳は、冷徹な狩りの本能で輝く。

    「……これでどうだ!」

    鋭い音波が殺悶吽を直撃。蜂蜜バリアが音圧を抑え込むが、一瞬のバランスの乱れが生じる。獣人は瞬時に身体をひねり、地面に蹴りを入れて回避。

    両者は互いに攻撃と防御を繰り返し、距離を計りながら戦場を移動する。ポットリアシャビアバットの超音波は森全体に響き、殺悶吽の耳と感覚を鋭敏に刺激する。

    「……だが、俺も簡単にはやられん」

    獣人は鋼鉄化した右腕を構え、次の攻撃の準備を整える。音波と肉体、双方を駆使した戦いは、互いの能力の応酬となり、亜熱帯の森を戦場に変えていく。

    亜熱帯の空気が振動し、葉が舞い、獣とモンスターの緊張が増す。戦いはまだ序章に過ぎないことを、両者は互いに理解していた。

  • 4451◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:18:55

    ポットリアシャビアバットは翼膜を広げ、再び空へ舞い上がる。超音波を口から放ちつつ、地面の動きを警戒しながら滑空する。

    「そろそろ……狩りを本格化させるか」

    脚力を駆使し、急降下と滑空を繰り返す。音波は精密に調整され、森の木々を揺らしながら殺悶吽の位置を探る索敵手段となる。

    一方、殺悶吽は両脚で地面を蹴り上げ、飛び跳ねる。鋼鉄化した右腕を振り、空中から襲いかかるモンスターに備える。

    「俺の拳で……決める!」

    ヒグマ型獣人の力が空気を切り裂き、鋭い爪が獣の脚筋を狙う。しかし、ポットリアシャビアバットは旋回しながら音波で反撃。地上にいても、音圧が振動となり、獣人の動きを微妙にずらす。

    森全体が戦場となり、空を駆けるボスモンスターと地上の獣人の戦いは、互いの反射神経と戦術を試す極限の応酬となる。

    「……やるな」

    殺悶吽は右目の空間制御装置で攻撃軌道を補正し、反撃のタイミングを見極める。脚力と鋼鉄化した腕、そして鋭敏な爪を活かした近接戦の準備は万全だ。

    ポットリアシャビアバットは急降下し、地面近くまで滑空しながら、口から強烈な超音波を放つ。音波は一瞬のうちに森の空間を震わせ、枝葉や土を巻き上げる。

    「くっ……耐えろ……!」

    殺悶吽は蜂蜜バリアを展開し、防御と攻撃のバランスを保つ。だが、音圧により身体が揺さぶられ、攻撃の精度が僅かに狂う。

    両者は互いの能力を最大限に活かし、攻防を繰り返す。亜熱帯の森は戦場の証として、揺れる葉と土埃、空気の振動で二人の戦いを記録していく。

    戦いはまだ中盤。どちらも互角に見えつつ、次の一手で勝負の行方が決まることを、森も戦士たちも知っていた。

  • 4461◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:19:10

    ポットリアシャビアバットは森の上空で旋回を繰り返し、獲物の動きを探る。脚力で急降下しつつ、翼膜を閉じて速度を上げる。

    「よし……こいつを捕らえる……!」

    急降下の勢いに乗り、口から放つ超音波は森の木々を裂き、地面に微細な振動を生じさせた。その振動は殺悶吽の足元を微かに揺らす。

    殺悶吽は鋼鉄化した右腕を振り、空中からの攻撃に備える。

    「……甘く見るなよ!」

    超音波の衝撃で体が揺れるも、右目の空間制御装置で軌道を補正。鋭い爪と筋力を活かし、地上から飛びかかる勢いで反撃する。

    ポットリアシャビアバットは空中で反転し、旋回しながら再び音波を放つ。森の空気を振動させ、音圧で獣人の呼吸を乱す。

    「ふ……耐えられるか……?」

    殺悶吽は蜂蜜バリアを展開。空間制御と音波防御の組み合わせで体勢を保つが、連続する振動に身体の微細な動きが制限される。

    ポットリアシャビアバットは滑空しつつ急降下を繰り返し、距離を詰める戦法に切り替える。狙いは獣人の無防備な隙間。

    「……この距離なら……!」

    殺悶吽は一瞬、爪を構え反撃に出る。しかし、ボスモンスターの急降下速度と音波の圧力に押され、攻撃の精度が狂い始める。

    森全体が戦場となり、葉が裂け、土が舞う。空気の振動が二人の戦闘を包み込み、互いの能力がぶつかり合う音と衝撃で森が震えた。

    両者は互角のまま、次の瞬間、決定的な一手を繰り出すための間合いを探る。空と地の王者たちの戦いは、まだ終わりを見せない。

  • 4471◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:19:45

    ポットリアシャビアバットは地面近くまで滑空し、脚力を生かして超低空で旋回を開始する。

    「……これでどうだ……!」

    その瞬間、口から放たれる超音波が森の空気を切り裂き、地面を震わせた。木々の葉は震え、枝が折れる音が戦場に響く。

    殺悶吽は鋼鉄化した右腕を振り上げ、イクラ弾を連射する準備を整える。弾丸は赤く光り、空間を漂いながら飛翔する。

    「甘く見るな、ボス!」

    空中のポットリアシャビアバットは振動を利用して攻撃を回避するも、連射の一部が翼膜をかすめ、痛みが走る。

    「ぐ……やるな……」

    彼は急降下を続け、狙いを殺悶吽の頭上に定める。鋭利な爪が獣人の肩に迫る。

    殺悶吽は爪を掴み、肉体とサイボーグの力を活かして押し返す。

    「……簡単には行かせんぞ!」

    ポットリアシャビアバットは音波を再度強化。振動の波が獣人の聴覚とバランスを乱す。森の木々も共鳴し、戦場全体が振動に包まれる。

    殺悶吽は蜂蜜バリアを展開し、振動をある程度吸収するが、衝撃で体勢を維持するのが精一杯となる。

    「……くっ、距離を詰めねば……!」

    ポットリアシャビアバットは滑空の角度を変え、脚力で跳躍しながら猛攻を続ける。森の中で二人の速度差が激しくなる。
    殺悶吽は瞬間的に目を赤く光らせ、次の攻撃のタイミングを計る。彼の右腕からイクラ弾が放たれ、空中で爆発する。
    衝撃と音波がぶつかり合い、森に衝撃波が走る。葉や土が舞い上がり、視界を遮る中、二人は互いの動きを見切ろうと必死に反応する。
    この空中戦は、どちらかが一瞬でも隙を見せれば決着がつく瞬間に近づいていた。

  • 4481◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:20:09

    森の中、衝撃波と超音波の干渉で辺りは砂煙と木の葉が舞い、視界はほとんど遮られていた。

    ポットリアシャビアバットは滑空を止め、低空で脚を踏ん張り体勢を立て直す。

    「……まだ、俺の番だ……!」

    その瞬間、殺悶吽は右腕のランチャーからイクラ弾を連射する。赤い弾丸が飛び交い、衝撃波に混じって飛来する。

    「来やがれ……!」

    ポットリアシャビアバットは超音波を口から放ち、弾丸をかき消そうとする。しかし距離が近く、弾丸の破裂音が直接耳に響き、微妙にバランスを崩す。

    「くっ……効いてきたか……」

    殺悶吽は鋼鉄化した右腕で弾丸の反動を抑えつつ、ポットリアシャビアバットに肉薄。鋭い爪と牙で直接攻撃を仕掛ける。

    「……まさかここまで……!」

    ボスモンスターは翼膜を閉じ、急降下して反撃を狙う。衝突する寸前、ポットリアシャビアバットの爪が殺悶吽の肩をかすめるが、サイボーグの肉体で衝撃を吸収する。

    「まだまだ……俺には負けられん……!」

    殺悶吽は突進を続け、脚力と腕力でボスを押さえつける。ポットリアシャビアバットは反撃を試みるが、右目の発作の兆候が体を襲い、一瞬の隙が生まれる。

    「……今だ!」

    殺悶吽はイクラ弾の最後の一発を放ち、ボスの急降下を阻止。衝撃でポットリアシャビアバットは地面に叩きつけられ、動きが鈍る。

  • 4491◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:20:26

    森の木々が揺れ、砂煙の中で二体は互いに呼吸を荒げる。ボスモンスターは翼膜を広げて立ち上がろうとするが、脚力が限界を迎え、ついに動きが止まった。

    殺悶吽は腕を下ろし、ゆっくりとボスを見下ろす。

    「……終わったか……」

    森に静寂が戻り、散乱した葉や砂が舞い落ちる中、戦いの余韻だけが残った。二人の呼吸音だけが微かに森に響く。

    この戦いで、ポットリアシャビアバットの支配する森もまた、若き獣人隊長の力を示す舞台となったのだった。

  • 4501◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:20:41

    以上

  • 451二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 20:24:30

    良い戦いだった お互い狩人みたいな精神性で良き

  • 452二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 20:29:15

    負けたか 対戦ありがとうな

  • 4531◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:54:29

    題名『自由と規律の果てに』

  • 4541◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:56:10

    夜の都市は眠らず、ネオンの光が薄暗い路地を切り裂いていた。
    アルナ・スレイは黒いパーカーを羽織り、ひとり路地裏を跳ねるように歩く。

    「……よーし、今夜も遊ぶわよ、君!」

    口角を上げ、子供らしい無邪気さと好奇心を同時に滲ませる彼女の目は、光を反射して碧く輝いていた。
    背丈は小さいが、その姿勢や動きには既に戦闘者としての研ぎ澄まされた感覚が宿っている。

    一方、赤い軍服を纏った女性が、路地の向こうで静かに立っていた。
    フェウラ・ブリッツ──蒼き太陽の異名を持つ防衛隊最強の一角。
    青髪を風になびかせ、緑の瞳で相手を見据える。冷徹な空気が周囲を凍らせるようだ。

    「……子供が勝手に遊んでいるだけかと思ったら……厄介な存在ね」

    手元のプラズマコアが微かに青白く光る。膨大なエネルギーが、夜の静寂の中で低く唸っている。

    アルナは笑いながら小さく跳び、瞬間移動で路地の端から端へ。

    「ほら、君も一緒に遊ぶんでしょ?」

    触れる者の常識やルールを逸脱させる能力──【スレイ家のお楽しみ】が、既に戦場の空気を変えていた。
    自動ドアが反応せず、壁の一部が突然透明化する。都市の理が彼女の手で乱れ始めていた。
    フェウラはそれを見て眉を寄せるが、冷静に呼吸を整える。

    「規律を乱す者には、規律で応えるだけ」

    プラズマコアが強く脈打ち、腕の先に稲妻が走る。
    アルナは楽しげに笑い、ブラックホールを小さく生成し、回転しながら跳ねる。

  • 4551◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:56:28

    「うふふ、やっぱり君って面白い顔してる!」

    触れた壁や路面が歪み、空間の概念さえ捻じ曲げられる。

    フェウラは動きを制限するように、プラズマのバリアを展開。
    都市規模の雷撃や熱撃を即座に組み合わせ、アルナの奇想天外な行動を抑え込もうとする。
    しかしアルナは焦らず、楽しむかのように小さなポータルを開き、神器を取り出す。

    「よし、君も驚きなさい!」

    路地裏の夜は、既に二人の遊戯場となった。
    規則も常識も通用しない戦場に、フェウラの圧倒的なプラズマとアルナの無秩序な力が衝突する。
    最初の数分で、路地のレンガや看板は歪み、ネオンの光は波打った。
    アルナは笑い、フェウラは冷静にエネルギーを集中する。

    「……少し面白くなりそうね」

    フェウラは攻撃の構えを取る。
    アルナは背中越しに跳ね、瞬間移動で位置を変え、影を分身させる。

    「さあ、遊びの始まりよ!」

    夜の都市に、二人の戦いの影が伸びる。
    自由な少女と、冷徹な蒼き太陽の邂逅──戦場は既に静かに沸騰していた。

  • 4561◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:57:00

    路地裏の冷たい空気を裂くように、フェウラの掌から稲妻が飛び出した。

    「ここで止めるわよ」

    雷光が地面を弾き、レンガやコンクリの塊を弾き飛ばす。
    アルナは瞬間移動でその場から跳び、背後に影を分身させる。

    「うふふ、君も元気ね!」

    触れた影分身が、プラズマをかすめる。
    だがフェウラの防御フィールドは圧倒的で、熱撃も雷撃も寸断される。
    アルナは顔をしかめず、むしろ楽しげに跳ねるように回転した。

    「こういうときこそ、スレイ家のお楽しみの出番よ!」

    小さなブラックホールが瞬間的に生成され、稲妻の軌道を捻じ曲げる。
    街灯が歪み、遠くの建物の影がねじれた形で伸びる。
    プラズマの光がその歪みを追うが、アルナはさらにポータルを開き、空中から神器を呼び出した。

    「さあ、これでどうするの?」

    フェウラは眉をひそめ、プラズマコアを集中させる。
    掌から放たれる稲妻は、都市の静寂を突き破るほど強烈だった。
    アルナはその光を受け流すように、瞬間移動で何度も位置を変える。

    「……逃げるだけじゃ面白くないんだから!」

    アルナは回転しながら小さなブラックホールを生成し、プラズマを吸い込むかのように空間を歪めた。
    フェウラはそれを見て、一瞬の間を置き、次の攻撃を準備する。

  • 4571◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:57:13

    「……なるほど。予想以上に手強いわね」

    プラズマ嵐がアルナの周囲に広がる。
    熱と電撃が渦を巻き、影分身の存在もろとも攻撃を打ち砕く。
    アルナはそれでも笑顔を崩さず、回転しながら季節を狂わせる小さな現象を起こした。
    突然、街路樹の葉が紅葉し、夏の匂いが一瞬漂う。

    「ふふ、やっぱり君には私の遊びが似合うね!」

    しかしフェウラの攻撃力は凄まじく、街灯や壁はひび割れ、アルナの影分身も徐々に消耗していく。
    だがアルナは焦らず、相手の能力を模倣しつつ、魔界への小さなポータルを開き攻撃を逸らす。

    「君、楽しくなってきた?」

    フェウラは冷淡な表情のまま、腕を振るう。
    プラズマカノンの構えが整い、狙いは次第にアルナに絞られる。

    「……遊びはここまでね」

    都市の夜を裂くような閃光が、アルナを直撃する寸前で、彼女は小さく跳び、再び影分身で攻撃を回避した。
    路地裏に、雷鳴と混沌の光景が幾重にも重なり、二人の戦いはさらに加速していく。

  • 4581◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:57:59

    路地裏に残る瓦礫の山を前に、アルナは無邪気に跳ねる。

    「ふふ、やっぱり君って面白い顔してる!」

    触れた地面が歪み、小さな亀裂から虹色の光が噴き出す。
    空間の概念さえ自由に歪める彼女の能力は、街の理を根本から覆そうとしていた。
    フェウラは冷たい目でそれを見据え、掌のプラズマコアをより強く光らせる。

    「……もう言い訳は許さないわ」

    掌から放たれた稲妻が空中で光の渦を作り、アルナの影分身に直撃する。
    だがアルナは笑い、瞬間移動で距離を稼ぎつつ、小さなブラックホールを生成する。

    「君の光、ちょっとお借りするね!」

    生成された空間の歪みに、フェウラのプラズマが吸い込まれ、方向を変えられる。
    都市の灯が波打ち、看板や街灯が奇妙に揺れる。
    アルナは跳ねるように前進し、空中から神器を呼び出した。

    「さあ、次はこれでどうする?」

    フェウラは眉をひそめ、冷静さを保ちながら攻撃を続行する。
    プラズマ嵐が路地を覆い、熱と電撃が波紋のように広がる。
    アルナはそれを楽しむかのように、季節を狂わせる小さな現象を起こし、通りの樹木の葉が瞬間的に雪化粧する。

    「ほら、もっと混乱させちゃうわよ!」

    しかしフェウラの集中力は圧倒的で、攻撃は精密にアルナの軌道を追う。
    一瞬でも隙を見せれば、稲妻が直撃するほどの力だ。

  • 4591◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:58:11

    「……子供じゃないわね」

    プラズマカノンの構えが整い、威力は最大級に達していた。
    アルナは跳ねながら、魔界への小さなポータルを開き、攻撃を逸らす。

    「うふふ、面白い!君、もっと頑張って!」

    だがフェウラは冷静に、次の瞬間、エネルギーの集中度をさらに高める。
    稲妻がより鋭利に、熱撃がより熾烈に変化し、路地のコンクリを一瞬で蒸発させる。
    アルナは跳びながらも、影分身を駆使して奇想天外な動きを続ける。

    「やっぱり君って……手強いね!」

    一方、フェウラの表情には微かな緊張が覗く。
    ただし冷淡さを崩すことはなく、掌の稲妻をさらに増幅させる。
    街の理は完全に二人の戦いで歪み、都市の光景は混沌の海となった。

    「……遊びはここまでよ」

    フェウラがついに最終決断を下す。
    アルナは跳ね、笑い、回転し、ポータルを生成しながらも、徐々に圧力を感じ始めた。
    自由奔放な少女と冷徹な蒼き太陽の衝突──戦場は今、最高潮に達していた。

  • 4601◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:58:54

    アルナは肩で息をしながらも、笑顔を絶やさなかった。

    「……はぁ、はぁ……ふふっ、でもまだ遊び足りないわ!」

    彼女の周囲の空気は歪み、光がねじれて揺らめいている。
    ブラックホールの残滓が街路に穴を穿ち、ポータルの口が次々と開閉する。
    アルナが手を伸ばすたび、異空間から奇妙な神器が現れ、戦場はカオスに満ちていった。

    フェウラは一歩前に進み、冷徹な声を響かせる。

    「……子供の遊びにしては、度が過ぎているわね」

    彼女の掌でプラズマコアが脈動し、青白い光が激しく明滅する。
    熱風が路地を焼き尽くし、壁のひび割れが次々と崩れ落ちていく。

    アルナは一瞬で影分身を散らし、瞬間移動で頭上へ飛び出す。

    「君はすぐ真面目になるから楽しいのよ!」

    影分身たちが一斉に神器を構え、まるで千の刃の雨のようにフェウラを取り囲んだ。

  • 4611◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:59:21

    だがその瞬間、フェウラは冷淡に腕を振るう。

    「無駄よ」

    プラズマ嵐が炸裂し、分身は一瞬で蒸発した。
    アルナの本体は後方へ跳ねるが、髪の先を焦がされ、思わず眉をひそめる。

    「ちょっと……熱いじゃない!」

    額に汗を滲ませつつも、笑いは消えない。
    彼女は地面を叩き、常識を狂わせて道路のアスファルトを液状化させる。
    建物の壁からは突如として紅葉した木々が芽吹き、季節が狂い始める。

    「見て、君の世界はこんなに面白くなるの!」

    しかし、フェウラは表情を動かさず、冷たい瞳でその光景を貫く。

    「混沌で覆い隠しても、力の差は変わらない」

    彼女の周囲に形成されたプラズマフィールドがさらに強化され、近づくもの全てを焼き尽くす。
    アルナの神器さえ、その光に触れた途端に溶解していく。

  • 4621◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 20:59:33

    「……っ!?」

    アルナは一瞬驚き、すぐに笑顔を取り戻す。

    「ふふ、やるじゃない。じゃあ、次は──これよ!」

    彼女は歴史を歪めようと両手をかざした。
    だが、能力の制約により長時間は続かない。
    過去の数分を捻じ曲げ、街の一角を「存在しなかった」かのように塗り替える。

    フェウラはその揺らぎに一瞬たじろぎながらも、すぐに呼吸を整えた。

    「小細工ね……なら、上から押し潰すだけ」

    天を仰ぐと、プラズマカノンの砲口が完成する。
    蒼白の光が収束し、夜空を昼に変えるほどの輝きが広がる。

    アルナは影を広げ、ポータルを無数に展開する。

    「受け止めてやるわ!君の“常識”ごとね!」

    雷鳴のごとき轟音が響き渡り、二人の戦いはさらなる極地へ突入していった。

  • 4631◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 21:00:30

    夜空を裂いたプラズマカノンの光が、アルナの全身を覆う。
    彼女は無数のポータルを展開し、次々と攻撃を異空間へ逃がしていく。

    「ふふっ、すごい光……でもまだまだ楽しいね!」

    しかし、光の奔流は止まらず、ポータルの数も次第に追いつかなくなる。
    アルナの肩口を稲妻がかすめ、黒いパーカーの袖が焦げ落ちた。

    「……っ、熱っ……でも大丈夫、私は止まらない!」

    彼女は笑顔を崩さず、影分身を再び散らして敵を撹乱する。
    だが、フェウラは既にアルナの動きの癖を読み取り、冷徹な瞳で標的を絞っていた。

    「……終わらせるわ」

    彼女は一歩踏み込み、低く呟く。
    その瞬間、アルナの心臓が一瞬だけ跳ねる。
    フェウラの声に宿った「常識」が、彼女の能力を縛ったのだ。

    「子供は夜に出歩くべきじゃない」

    「……っ!?」

    その言葉を浴びた途端、アルナの能力が一瞬停止する。
    分身が掻き消え、ポータルが次々と閉じていく。
    体の自由はまだ効くが、混沌の加護が剥ぎ取られた。

    「な、なんで……? こんな簡単な言葉で……!」

    アルナは震える声を漏らす。

  • 4641◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 21:00:41

    額に汗が流れ落ち、指先が痺れる。フェウラは感情を見せず、冷たく言葉を重ねた。

    「無茶をして家族を困らせるのは、子供のすることじゃない」

    「や、やめて……!」

    アルナの胸が締め付けられるように痛み、能力の制御が乱れる。
    歪んでいた空間が次々と元に戻り、街路は再び“普通の”姿を取り戻していった。

    「君の能力は……常識の否定。なら、私は常識を突きつけるだけ」

    フェウラが歩を進める。
    アルナは後ずさりし、必死に影を生もうとするが、まったく形にならない。

    「私……遊んでただけなのに……!」

    「遊びの代償は、自分で払うものよ」

    冷徹な声が落ちた瞬間、アルナは額に鋭い衝撃を受けた。
    フェウラの拳が正確に額を打ち抜いたのだ。

    「……っぁ……」

    アルナの視界が暗転する。
    パーカーの裾が風に揺れ、膝から力が抜け落ちる。
    地面に倒れ込むその姿を、フェウラは無言で見下ろした。

    「……終わりね」

    夜風が吹き抜け、混沌に満ちていた戦場は、ただの路地裏に戻っていた。

  • 4651◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 21:01:42

    アルナの体は地面に横たわり、かすかな息だけが漏れていた。
    黒いパーカーの袖は焦げ、金髪は乱れ、碧い瞳は閉じられている。
    常時発動していた混沌の力は完全に沈黙し、ただの少女の姿に戻っていた。

    フェウラはその姿を見下ろし、冷徹な声を落とす。

    「……やはり、子供だったのね」

    プラズマコアの光は静かに収束し、稲妻の奔流も消え去っていく。
    都市に広がった破壊の余波は残るが、戦いはすでに終焉を迎えていた。

    フェウラはしゃがみ込み、アルナの頬に軽く手を触れる。
    かすかな体温が返ってきた。

    「死んではいない……だが、もう二度と暴れられない」

    彼女は小さく息を吐き、赤い軍服の裾を翻して立ち上がる。
    その視線は冷たく、しかしどこか責任を帯びていた。

    「……あなた、敗者を持ち帰るんだってね」

    フェウラはアルナを抱き上げる。
    小柄な体は軽く、しかし背負うものの重さは計り知れない。
    能力による混沌は、世界にとってあまりに危険すぎた。

    「君は……戦利品として連れて帰る」

    その囁きに答えるように、アルナはうっすらと瞼を震わせる。
    微かに笑みの形を作り、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

  • 4661◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 21:01:52

    「……やっぱり……君、強いね……」

    フェウラは返事をしなかった。
    ただし、その青い髪を夜風に揺らしながら、歩き出す。

    「……蒼き太陽は……君みたいな自由も、焼き尽くすの……?」

    アルナの掠れた声に、一瞬だけフェウラの瞳が揺れる。
    しかし、すぐに冷徹な光を取り戻した。

    「……世界に害を為すなら、それが答えよ」

    彼女はそう告げ、意識を失ったアルナを静かに抱き締める。
    路地裏を離れ、夜の街を抜け、防衛隊の本部へと歩を進めていく。

    瓦礫の山の隙間から、冷たい風が吹き抜けた。
    誰もいない街路に、ただ蒼き太陽の背中だけが残る。

    「勝者──フェウラ・ブリッツ」

    その名が、夜の闇に刻み込まれるように響いた。

    そして、自由を求めた少女アルナ・スレイは、彼女の手に戦利品として収められたのだった。

  • 4671◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 21:02:07

    以上

  • 468二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 21:14:15

    フェウラ良いな!

  • 469二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 23:04:48

    このレスは削除されています

  • 4701◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 23:17:01

    題名『代償と冷静の戦場』

  • 4711◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 23:23:44

    月明かりに照らされた境内。
    鳥居の前に立つのは、黒髪に眼鏡、燕尾服を纏った一人の青年──月夜 魁。
    佐藤家に仕える完璧な執事である彼は、今宵、不思議な因果に導かれるようにここへ現れた。

    「ふむ……神社というのは、夜になると一層厳かな空気を帯びますね」

    静かに呟いたその時、鈴の音が風に溶ける。
    拝殿の前に立っていたのは、一人の少女だった。
    隻眼、隻腕の姿。だがその立ち姿は決して弱々しくなく、むしろ毅然としている。

    「……あなたは?」

    「おや、これは失礼。私の名は月夜 魁。佐藤家に仕える執事でございます」

    燕尾服の裾を揺らし、深々と一礼する青年。
    だがその声色には、どこか軽薄な響きも混ざっている。

    「そしてあなたは……縁を切り、縁を結ぶ巫女殿とお見受けします」

    少女──結縁 絆は、一瞬だけ瞳を揺らした。

  • 4721◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 23:25:01

    彼女の隻眼が、夜の光を反射する。

    「どうして……私のことを知っているの」

    「執事の務めは広うございます。何事も“知っている”というのは、職務の一環でして」

    魁はわざとらしく眼鏡の位置を直す。
    その余裕ある態度に、絆は唇を噛んだ。

    「……私は、もう失わないために戦う。あなたが邪魔をするなら……容赦しない」

    彼女の左手には、縁神から授かった黒い刃──《所縁》が握られている。
    ナイフの刃が月光を浴び、妖しく輝いた。

    魁は小さく笑みを浮かべた。

    「これはこれは。大変光栄なことに、私めが巫女殿の矛先に選ばれたようで。……しかし」

    彼は音もなく、ふっとその場から掻き消える。
    瞬きの間に、絆の背後へ。

  • 4731◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 23:28:06

    「私、実は悪魔なんですよ。呼ばれれば、どこにでも参上するものです」

    冷たい声が耳元に響いた瞬間、絆は反射的に振り返る。
    しかし、既にそこには誰もいない。

    次の瞬間、彼女の足元に影が揺らぎ──

    「っ……!」

    燕尾服の青年が現れ、鋭い回し蹴りを振り抜いた。
    風を切る音が境内に響き渡る。

    絆は咄嗟にナイフを構え、蹴撃を受け流す。
    火花が散り、刃が軋む。

    「……蹴りだけで、ここまで……」

    「ええ、武器を手にするほどの大事でもございませんので」

    魁は落ち着いた声で告げ、すぐに距離を取る。
    夜風に燕尾服がひらめき、その姿はまるで舞う影のようだった。

    「さあ、巫女殿。縁を断ち切る刃が、私の“移動”を捕らえられるのか──試してみましょう」

    境内に張り詰める気配。
    縁と転移の、不可避の戦いが幕を開けた。

  • 4741◆ZEeB1LlpgE25/08/23(土) 23:59:18

    夜の境内に、緊張が張り詰めていた。
    鈴の音すら止んだかのような静寂の中、二人の視線が交錯する。

    魁は余裕ある笑みを浮かべ、燕尾服の裾を軽く整える。

    「さて、参りましょうか」

    その瞬間、彼の姿は掻き消えた。
    空気が揺らぎ、風が渦を巻く。

    「──っ!」

    絆が振り向いた時には、すでに魁の足が迫っていた。
    横薙ぎの蹴撃。
    だが彼女はナイフを立て、ぎりぎりで受け止める。

    「お見事。しかし」

    魁は笑みを浮かべたまま、姿を再び消す。
    次の瞬間、斜め上方から回転蹴りが降り注いだ。

    絆は身をひねり、石畳を転がってかわす。
    その頬をかすめた風圧が、鋭く皮膚を切った。

    「速い……! これじゃ、縁を結ぶ隙も……」

    彼女の呼吸が乱れる。
    《所縁》を発動させるには最低でも三秒の猶予が必要。
    その間に魁の蹴撃が襲い掛かれば、確実に叩き伏せられる。

  • 4751◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:00:06

    「ふむ、縁を操る力。とても厄介ですが──宣言を必要とするのは致命的ですね」

    声が四方八方から響く。
    魁は境内の石灯籠の上に立ち、悠然と眼鏡を直した。

    「……私に勝ちたいなら、どうぞその三秒をお作りください」

    「……っ、挑発して……!」

    絆は息を呑み、刃を強く握り締める。
    縁神の声が心に響くような気がした。

    ──怯むな。縁を断ち切る覚悟を示せ。

    「……《左目を捧げる》──!」

    刹那、彼女は叫んだ。
    その隻眼が淡く光を帯びる。

    「──悪縁との縁を断ち切る!」

    ナイフが閃き、空間を裂いた。

  • 4761◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:00:16

    次の瞬間、魁が展開していた転移の座標がひとつ、断ち切られ消え去る。

    「……ほう」

    魁は驚きに目を細めた。
    直後、彼の姿が空中で揺らぎ、転移の流れが乱れる。

    「私の“移動の縁”を……断ち切られましたか。これはこれは、実に愉快」

    だが彼は乱れを力に変え、空中で身をひねりながら、鋭い蹴りを放つ。
    それはまるで燕が夜空を裂くような軌道だった。

    絆はとっさに腕をかざす。
    衝撃が走り、石畳がひび割れる。

    「ぐっ……!」

    吹き飛ばされながらも、彼女は必死にナイフを握りしめていた。

    魁は軽やかに着地し、再び眼鏡を押し上げる。

    「素晴らしい。ですが……私の足技はまだ、ほんの序の口でございます」

    月光の下、二人の戦いはさらに熾烈さを増していく。

  • 4771◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:11:14

    夜の境内に、石畳のひび割れが幾筋も走っていた。
    吹き飛ばされた結縁 絆は、荒い息をつきながら立ち上がる。
    左手に握られた《所縁》は、まだ揺るぎなく輝いていた。

    「……私が……負けるわけにはいかない……!」

    震える声。
    だがその隻眼は決して折れてはいない。
    縁神との契約が、彼女に力を宿していた。

    一方の月夜 魁は、何事もなかったかのように燕尾服の埃を払う。
    息も乱さず、冷ややかな笑みを浮かべる。

    「……大した覚悟でございますね。片腕を失ってなお、縁を結び続ける。その姿勢、実に尊敬に値します」

    だが次の瞬間、彼の姿はまた掻き消えた。
    縦横無尽に動く残像。
    空間を行き来しながら繰り出される蹴りは、まるで万華鏡の光のように四方から降り注ぐ。

    「ぐっ──!」

  • 4781◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:11:37

    絆は必死にナイフを振るい、迫る蹴撃をはじく。
    だが一本、二本と防ぎ切れずに受ける度、身体は軋み、呼吸は荒くなる。

    「……このままでは、押し潰される……!」

    彼女は決意を固め、声を上げる。

    「──《聴覚を捧げる》!」

    耳元に鈴のような響きが走り、彼女の世界から音が消えた。
    だが同時に、彼女の《所縁》が蒼白に光を放つ。

    「魁さん、あなたと“攻撃の縁”を結ぶ!」

    ナイフが振り下ろされると、魁の足が一瞬だけ重くなった。
    まるで自身の蹴撃が、絆に繋がれた鎖に引かれたかのように。

    「……っほう」

    魁は僅かに目を見開く。

  • 4791◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:11:51

    次の瞬間、絆がその隙を突き、反撃に出た。

    刃が閃き、彼の燕尾服の裾を裂く。
    月明かりの下、布が舞い散った。

    「……捕らえました」

    「ふむ……素晴らしい。縁を結ぶというのは、実に厄介な力でございますね」

    魁は軽く後退しながらも、笑みを崩さない。
    彼の眼鏡が月光を反射し、冷ややかに光る。

    「ですが……縁に繋がれても、私の“移動”を封じることはできません」

    その言葉通り、魁の身体がふっと揺らぐ。
    次の瞬間、絆の背後に現れる。

    「お試しください。果たして三秒……お持ちになりますか?」

    低く囁きながら、鋭い踵落としが振り下ろされた。
    石畳が砕け、土煙が舞い上がる。

    絆は必死に転がり、辛うじて直撃を避ける。
    しかしその表情には焦燥が浮かんでいた。

    「……私が……ここで縁を繋がなければ……!」

    ナイフを握る手に力が籠もる。
    彼女は既に、さらなる代償を覚悟していた。

  • 4801◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:13:09

    夜風に舞う落ち葉の音さえも、二人の戦いの前では静まり返っていた。
    結縁 絆は、左腕と左目を差し出す覚悟を固め、《所縁》を発動する。

    「……《左腕と左目を捧げる》! これで、私の縁が──全て、攻撃と防御に!」

    刃が光を帯び、夜の闇を切り裂く。
    魁の蹴撃の軌道が、一瞬、まるで糸に引かれるように変化する。

    「……ほう、これはまた大胆な代償でございますね」

    月夜 魁は冷静に、しかし内心で小さく興奮を覚えた。
    この少女、確かに強い。代償を払い、縁を力に変える……その決意は並大抵ではない。

    「だが……私の“移動”もまだ、健在です」

    軽やかに空中へ跳び、旋回蹴りを放つ。
    その足は、刃の光とほぼ同時に、絆の虚空を切る。

    絆は全身で跳ね、蹴撃をかわす。
    しかし、その身体は明らかに疲弊していた。
    縁を代償に力を引き出す行為は、短時間で彼女の体を蝕む。

    「……私は、縁を結ぶために……ここで倒れられない……」

    声が震える。
    だが隻眼は冷静に光を放ち、《所縁》が発動する。
    瞬間、魁の蹴撃を迎撃するための結界のような縁の糸が展開され、彼の足の軌道をわずかに逸らす。

  • 4811◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:13:24

    「おや、これは面白い……」

    魁は笑みを崩さず、次の蹴りを準備する。
    空間を滑るように跳び、距離を詰める。
    縁の糸に阻まれつつも、彼の蹴りの精度は失われない。

    「──ふむ、代償が大きいほど、力も増す……か」

    足を振り抜き、連続蹴りを放つ。
    空気が切れ、石畳に衝撃が走る。
    結縁 絆は必死にナイフで防ぐが、受ける衝撃は確実に彼女の身体を蝕んでいた。

    「……くっ……まだ……まだ……」

    血がにじむ口元を抑え、少女は涙をこらえる。
    だが、その視線には恐怖よりも決意が宿っていた。
    魁は一歩下がり、冷ややかに彼女を見据える。

    「……さて、巫女殿。縁の力で私の動きを縛れましたか?」

    「……っ、あと少し……縁を……」

    少女は刃を握り締め、全力で縁を操ろうとする。
    しかし、身体への負荷は確実に重くのしかかっていた。

    「……次の一手で、勝負が決まりますね」

    魁の冷静な声に、夜の空気が凍る。
    縁と蹴撃、代償と戦略。
    二人の戦いは、最高潮へと近づいていた。

  • 4821◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:14:06

    夜空に星が瞬く中、境内の石畳には無数のひび割れと血の跡が残る。
    結縁 絆は、左腕と左目を完全に捧げ、《所縁》の力を最大限まで解放した。
    その代償は大きく、身体は揺らぎ、呼吸は荒い。

    「……これで、私の縁を……最大限に結びます……!」

    彼女の隻眼が光を増し、刃からは縁の紐が伸びる。
    それはまるで見えない糸で空間を切り裂くかのように、魁の蹴撃軌道を縛ろうとしていた。

    「……なるほど、最大限ですか」

    月夜 魁は冷静に足を止め、軽く屈伸する。
    燕尾服の裾が微かに揺れる。
    彼の眼鏡に映る光は静かに、だが確実に戦況を分析していた。

    「ふむ……しかし、私の移動はまだ封じられてはいません」

    彼は掻き消えるように転移し、瞬間、絆の正面から背後へと移動。
    回し蹴りを放つ。
    その軌道は、まるで風そのものが彼を押し出すかのように滑らかだった。

    「──っ!」

    絆は必死に刃を振るい、防御の縁で蹴撃を受け止める。
    だが連続する蹴撃と空間の撹乱により、身体の軋みは止まらない。

    「……まだ……まだ足りない……縁を……結び……」

    彼女は血の滲む手でナイフを握り締め、縁をさらに展開する。
    その瞬間、魁は軽やかに宙に跳び、反転蹴りを繰り出す。

  • 4831◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:14:18

    月光に光る足が、石畳を裂く。

    「……ほう、縁を結ぶ力、確かに凄まじい」

    だが彼は冷静に足を止め、すぐさま転移で位置を変える。
    蹴撃は、常に次の一歩を見据えた完璧な連携で繰り出される。

    「……ここまでですか」

    絆は咳き込み、血を拭う。
    だがその瞳にはまだ諦めはなく、ナイフは光を放つ。

    「──まだ……縁を……断ち、結ぶ……!」

    魁は微笑み、低く囁く。

    「素晴らしい……ですが、私の足技は無限ではありませんが、可能な限り無限の動きを試みます」

    彼の蹴りは、月夜の影のように静かに、しかし確実に迫る。
    絆は必死に縁で防ごうとするも、身体への負荷は限界に近づいていた。

    「……私……ここで……止められない……」

    その言葉と共に、境内に二人の戦いの痕跡が深く刻まれる。
    蹴撃と縁、冷静と覚悟──極限の攻防は、次章でついに決着へと向かう。

  • 4841◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:15:14

    夜の境内、石畳にはひび割れと血の跡が散らばる。
    結縁 絆は左腕と左目を捧げ、《所縁》の力を最大限に引き出していた。
    それでも彼女の身体は限界を迎えつつあった。

    「……まだ……まだ終われない……!」

    隻眼が必死に光り、ナイフは縁の糸となって魁の蹴撃を受け止めようとする。
    しかし、魁は冷静な表情を崩さず、微かに肩を揺らすだけだった。

    「ふむ……素晴らしい力です。ですが、限界を迎えた縁は……予測可能でございます」

    そう言うと、彼は静かに転移し、絆の背後に回り込む。
    空気が裂けるような音と共に、蹴りが放たれる。

    「──後ろ、左!」

    絆は反射的にナイフを振り、蹴撃を受け止める。
    だがその防御はわずかに遅れ、衝撃が全身を走る。
    石畳が割れ、砂煙が舞い上がった。

  • 4851◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:15:42

    「……くっ……!」

    息を荒くする絆を前に、魁は一歩一歩、冷静に距離を詰める。
    彼の蹴りは無駄なく、効率的で美しい。
    まるで空気そのものを切り裂くかのように鋭い。

    「……もう、これ以上……縁を使えませんね」

    魁の声は落ち着いている。
    しかしその蹴りの連打は、絆に逃げ場を与えない。
    空間を滑るように跳び、前後左右から蹴撃が降り注ぐ。

    「……まだ……!」

    絆は必死に縁を操るが、身体は悲鳴を上げ、代償は限界を超えていた。
    最後の力でナイフを振るおうとするも、魁の蹴りが完全にタイミングを外していた。

    「……これで、勝負は終わりです」

    空中で旋回蹴りを決めると、結縁 絆は石畳に倒れ込む。

  • 4861◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:16:19

    身体は動かず、ナイフも手から滑り落ちた。

    魁は静かに近づき、柔らかく手を差し伸べる。

    「……お疲れ様でした。私の勝利です」

    絆は顔を上げ、かすかに息を吐く。
    月夜の光の下、執事の冷静な瞳が彼女を見据えていた。

    「……私は……あなたの足技に、完全に……屈しました……」

    魁は微笑み、手を貸して彼女を立たせる。

    「……さて、戦利品は……お連れしましょうか」

    彼の足技は無限ではないが、冷静な判断と転移の応用で、隻眼隻腕の巫女の力を完璧に凌駕した。
    夜の境内に、二人の戦いの静かな余韻だけが残った。

    「……勝者は、月夜 魁」

    月光の下、燕尾服の裾が風に揺れる。
    足技と転移、冷静さと計算──それが、執事の勝利を決定づけたのだった。

  • 4871◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 00:16:30

    以上

  • 488二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 00:17:20

    屈服したのが最高!

  • 489二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 00:17:35

    強キャラ執事は最高なんだ

  • 490二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 00:17:58

    つおい
    やっぱ足技主体ってかっこいいな

  • 491二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 06:30:09

    …これ最後に誰か観測してるやついない?気のせい?

  • 4921◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:29:51

    題名『邪竜鎧と氷の狩人』

  • 4931◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:31:18

    灰色のゴシックロリータを纏った少女――カノン・シャングリラ――は、薄暗い廃工場跡の中で静かに目を開いた。
    体の節々は革製のベルトで縛られ、その小柄な身体を強制的に拘束しているように見えた。

    「……今日も、始まるのかしら」

    ツンデレ混じりに小さくつぶやき、カノンは腕をぴたりと体側に揃える。

    隣に立つ少年――ユウ・ゴダイ――16歳。
    某国の国防学園の制服を着こなす彼は、背丈こそカノンより一回り高いが、その佇まいはどこか幼く、常識に疎い雰囲気を纏っていた。

    「おはようございます、カノン。今日も……あのグロテスクな朝食からですか?」
    ユウは苦笑いしながらも、全力で準備した手作り料理を手渡す。

    「……まったく、ほんとに毎日毎日……どうしてこうなるのよ!」

    カノンは眉をひそめ、料理を軽く蹴飛ばしたが、すぐに落ち着きを取り戻す。

    「……仕方ないわね。今日の任務に備えましょう」

    二人の背後で、廃工場の錆びついた鉄骨が微かに軋む。
    外は薄曇りの朝。静寂の中、誰もが気づかぬうちに緊張が満ちていく。

    「……さて、リミレトが現れるのはこのあたり……」

    カノンの瞳が冷たく光る。

    「ユウ、準備はできてる?」

    「はい!……あの、カノン、今日は……本気で?」

  • 4941◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:31:47

    「当然よ。私はあなたの鎧ですから、手加減なんてするわけないでしょ」

    その瞬間、空気が歪む。
    透明な波紋のような《注目》の魔力が工場の隅々まで広がる。
    目を離すと、ユウの意識はその中心に吸い寄せられるように揺れた。

    「……くっ、やはり来たか」

    カノンは小さく息を吐き、腰に手を当てる。

    「ユウ、エインヘリヤル、準備!」

    瞬間、少女の体が光に包まれ、装甲――邪竜装甲“エインヘリヤル”――へと変形する。

    「アガートラーム、発動!」

    カノンの身体が、ユウを中心に鎧の形態を形成する。
    重厚だがバランスの良い装甲が、少年を包み込み、戦闘準備が整った。

    廃工場の空気が一瞬静まり返る。
    次の瞬間、背後から氷の柱が天井を突き破り、リミレトの姿が現れた。
    「おはようございます。……ええと、戦う気満々ですね」
    天然の微笑みを浮かべながらも、瞳の奥には冷たく鋭い狂気が光る。

    「……行くわよ、ユウ。私たちの戦い、始まります!」

    カノンの声に応え、ユウはぎこちなくも力強く頷く。
    そして、廃工場の戦場に、伝説と人工の英雄が静かに、しかし確実に動き出した。

  • 4951◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:35:37

    廃工場の鉄骨に反響する足音。
    ユウはカノンの鎧に包まれながら、慎重に前方へと足を進める。

    「……落ち着いて、ユウ。焦らなくていいわ」

    カノンの声は冷静だが、内心では背後に潜むリミレトの《注目》の圧力を感じていた。
    リミレトは微笑みを浮かべ、手をゆっくりと振る。
    廃工場の隅から、氷の柱が無数に天井を突き破り、ユウたちの前に現れる。

    「……あら、動くのね。私、見ているだけでも楽しいんですけど」

    天然の口調に紛れて、瞳の奥の狂気がチラリと覗く。

    「ユウ、回避!」

    カノンは瞬時に形態を切り替え、アガートラームの機動力を最大限に活かす。
    ユウは宙に跳び、氷柱をかろうじて避ける。

    「ふう……危なかったですね」

    少年は息を整えつつ、ぎこちなくも戦闘姿勢を保った。
    カノンは鋭く視線を走らせる。

    「次はガングニール、狙いは一点突破よ!」

    装甲が瞬時に変形し、ユウを包みつつ前方への破壊力を強化する。
    足元の石板が砕け、廃工場の壁に亀裂が走る。

  • 4961◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:36:49

    「──来ます!」

    ユウの声に合わせ、蹴撃が放たれる。
    空気を切り裂くその一撃は、リミレトの氷の結界に跳ね返される。

    「……なるほど、力はあるみたいですね」

    彼女は軽やかに笑い、氷の結界を自在に操って攻撃を受け流す。
    だが、ユウは慌てない。
    カノンは冷静に戦況を分析し、形態切替のタイミングを計る。

    「アメノハバキリ、機動力重視。ユウ、私の背後に回り込むのよ!」

    瞬間、二人は宙を滑るように移動し、リミレトの視界から姿を消す。

    「……あれ、どこ……?」

    リミレトは少し動揺した。天然の微笑みは消え、氷の魔力を膨らませる。

    「……ふふ、面白くなってきましたね」

    その微かな狂気に、カノンの瞳が鋭く光る。
    戦闘はまだ序盤。
    廃工場の空間に、氷と聖遺物の力がぶつかり合う音だけが響く。

    「……この調子で攻めるわよ。ユウ、次は私の指示に従って」

    「はい、カノン……任せます!」

    二人の心が一つになり、戦いはさらに激しさを増していった。

  • 4971◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:38:19

    廃工場の空間に、砕けた鉄骨と氷柱の残骸が散らばる。
    ユウはカノンの鎧に包まれながら、冷静に呼吸を整える。

    「……カノン、次はどう動きますか?」

    「ユウ、状況をよく見て。今は防御より攻勢よ」

    ツンデレ混じりの声は冷静そのもの。装甲の光が淡く揺れる。

    「ガングニール、発動!」

    カノンの体が瞬時に破壊力特化形態に変化する。
    ユウの足技に加え、重厚な蹴撃が廃工場の壁を吹き飛ばし、氷の結界を粉砕する。

    「……おお、これは……!」

    ユウは驚きつつも、蹴りの連携を止めず、装甲と一体化した足技を繰り出す。
    リミレトは微笑みを浮かべ、氷の壁を生成して反撃の構えを取る。

  • 4981◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:39:05

    「……私、見せ場が好きなんです。逃がすわけにはいきません」

    その声の奥に潜む狂気が、工場全体に微かな圧力を生む。
    カノンは瞬時に形態を切り替える。

    「イチイバル、射撃戦。ユウ、斜めから攻めて!」

    鎧の砲撃形態が展開し、廃工場の梁や床を突き抜ける光と衝撃が走る。
    ユウは蹴りを加えつつ、砲撃の隙間を縫うように機動する。

    リミレトは困惑の色を僅かに見せたが、すぐに氷魔術で応戦する。
    氷柱が空中で回転し、ユウの蹴りを狙う。

    「……くっ、避ける!」

    ユウは俊敏に跳躍し、背後の壁を蹴って跳ね返り、再び攻勢に転じる。

    カノンは冷静に分析する。

  • 4991◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:40:19

    「……今だ、アメノハバキリ、機動力重視。ユウ、背後から圧をかけるのよ」

    二人は瞬間的に姿を消し、廃工場の天井付近へと回り込む。

    「……どこ……?」

    リミレトは呟く。天然の声に狂気が混じり、氷魔術を縦横無尽に展開する。

    だが、ユウの蹴りは予測できない角度から襲い、氷の防御を破壊する。
    カノンは背後の急所を意識しつつも、形態を切り替え、次の攻撃への準備を整える。

    「……リミレト、あなたの動き、読んだわ」

    「……ええ、面白いじゃありませんか」

    天然の微笑みと狂気が、戦場を一層混沌に染めていく。

    蹴り、跳躍、砲撃、氷の防壁、全てが複雑に交錯する。
    二人と一人。廃工場は戦術と魔力の迷宮と化した。

    「……これが、私たちの力の応酬……!」

    カノンは小さく息を吐き、次の形態切替を見据える。
    ユウは蹴りを構え、次の一撃のタイミングを待つ。

    戦術の応酬は、まだ序盤戦の興奮に過ぎない。
    廃工場の空気が、二つの力のぶつかり合いで震え続けていた。

  • 5001◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:42:26

    廃工場の中空に、氷と光の残響が鳴り響く。
    リミレトは天然の微笑みを浮かべながらも、その瞳は冷徹に輝いていた。

    「……お二人とも、いい動きですね。けれど、もう少し楽しませてもらいます」

    その声とともに、無数の氷柱が天井から降り注ぐ。

    「ユウ、気をつけて! 背後の急所を狙われるわよ」

    カノンは警告しつつ、形態を機動力重視のアメノハバキリへ切り替える。

    「はい……カノン、任せます!」

    ユウは蹴りを連打し、氷の柱を蹴散らしながら瞬間的に回避する。
    リミレトの魔力は次第に増幅し、周囲の鉄骨や瓦礫を凍結させる。

    「……氷の迷宮ですね、面白い」

    ユウは壁を蹴って跳ね上がり、蹴りで氷壁を破壊する。

    「逃がすものですか……!」

    リミレトの声に微かな狂気が混じり、氷魔術がより鋭く、より素早く襲いかかる。

    「ユウ、次はガングニールで一点突破!」

    カノンの指示に応え、蹴りと共に装甲の破壊力を一点に集中させる。
    氷の防御が割れ、リミレトは驚きの表情を見せたが、すぐに冷静を取り戻す。

  • 5011◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:42:37

    「……なるほど、力はある。けれどまだ足りませんね」

    リミレトは自身を囮にして攻撃を誘導し、《注目》で意識を惹きつける。
    ユウはその圧力を感じながらも、蹴りを駆使して攻撃と回避を同時に行う。
    カノンは背後の急所を守りつつ、形態を切り替え、次の戦略を模索する。

    「……ここからが本番よ、ユウ。アメノハバキリ、前後左右を制御!」

    鎧は俊敏に動き、蹴りの軌道を変化させつつ、リミレトの意識の隙を狙う。

    「……ええ、面白いじゃありませんか」

    リミレトは天然の微笑みを浮かべつつも、氷魔術で反撃を繰り出す。

    蹴撃と氷の衝突が連続し、廃工場の空間が震える。

    「……ユウ、冷静に! リミレトの意識を読んで!」

    「はい、カノン……任せます!」

    二人の連携が生み出す力は、徐々にリミレトを追い詰めていく。

    狂気と戦術の激突――戦場は混沌の渦の中で、まだ誰が勝つか予測できなかった。
    だが、カノンとユウの連携は、確実に一歩ずつリミレトの防御を削り取っていた。

  • 5021◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:44:16

    廃工場の瓦礫と氷の破片が飛び散る。
    リミレトは微笑みを浮かべつつも、その眼に焦りが僅かに光った。

    「……こんなに……力があるなんて」

    天然の口調に狂気が隠れ、氷の柱がより鋭く、より素早く襲いかかる。

    「ユウ、後方注意! 形態をガングニールに切り替えるわ!」

    カノンの声に応じ、鎧は破壊力特化形態に変化する。
    ユウは蹴りを連続で繰り出し、氷の防御を次々に破壊していく。

    「……わかりました、カノン!」

    蹴撃の衝撃が廃工場の床に深い亀裂を刻む。

    リミレトは《注目》で意識を引き寄せ、攻撃の隙を作ろうとする。
    だが、カノンは冷静に計算する。

    「ユウ、次は私が軌道を制御する。蹴りの角度を変えて!」

    アメノハバキリの形態が機動力を活かし、蹴撃が予測不能な角度で襲う。

    「……えっ、ど、どうして……!?」

    リミレトは氷魔術で防ごうとするも、蹴りの連携が正確に急所を狙い、氷の防御を突き破る。
    ユウは冷静に蹴りを続け、カノンの指示で連続攻撃を繰り出す。

  • 5031◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:44:31

    「これで……終わりよ!」

    カノンの声と同時に、蹴撃の軌道が完全に計算され、リミレトの意識を惑わせる。
    氷の壁が崩れ、リミレトは後退を余儀なくされる。

    「……まさか、こんなに……!」

    彼女の瞳に焦燥と驚きが混ざり、天然の微笑みが歪む。

    ユウは最後の蹴りを放つ。
    鋭い蹴撃は廃工場の梁をも破壊し、リミレトの防御を完全に貫いた。
    カノンは冷静に背後の急所を守りつつ、形態を安全な基本形態に戻す。

    「……ユウ、よくやったわ」

    小さく頷き、二人は連携の勝利を確信する。

    リミレトは氷の残骸に倒れ、息を整える。

    「……すごい、二人……」

    天然の微笑みに狂気は薄れ、力尽きたように静かに目を閉じる。

    廃工場には、蹴撃と魔術の痕跡だけが残り、戦いの興奮が静かに冷めていく。
    勝利の余韻を感じつつ、カノンはユウに微笑む。

    「戦利品は……あなたね」

    ユウは少し照れくさそうに頷き、二人の連携は確かに結実した。

  • 5041◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:46:44

    廃工場の空気は、戦闘の熱気と崩れた瓦礫の匂いに満ちていた。
    リミレトは氷の残骸の中に倒れ、動きを封じられたまま静かに息を整える。

    「……二人……強い……」

    天然の声に狂気の影は消え、戦闘の疲労が透けて見えた。

    カノンはゆっくりと歩み寄り、鎧を基本形態のアガートラームに戻す。

    「……リミレト、戦いは終わったわ。もう動けないでしょう?」

    ユウは蹴りの姿勢を解き、息を整えながら背後で立っている。

    「……はい、カノン。これで、私たちの勝利です」

    廃工場の中、瓦礫に囲まれた静寂。
    戦術の応酬も狂気の攻撃も、すべては今、終息を迎えた。
    カノンはリミレトを見下ろし、冷静に判断する。

    「……回収するわよ」

    ユウは少し困惑しつつも、頷く。

    「……承知しました、カノン」

    カノンは慎重にリミレトを抱え上げる。
    その軽さに驚きつつも、鎧の保護を意識しながら慎重に移動する。
    ユウは後ろから支え、蹴りによる反動や瓦礫の障害物を避けつつ、出口へと向かう

  • 5051◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:47:05

    「……まさか、こんなに戦力になるとは」

    カノンは独り言めいた声で呟く。
    ユウは微笑みを浮かべ、静かに頷く。

    「……カノン、あなたの指示があったからこそです」

    「……ふふ、私も楽しめたわ」

    ツンデレ混じりの微笑みが、戦闘の余韻を和らげる。

    廃工場の外に出ると、夜風が二人を包む。
    瓦礫と戦闘の痕跡を振り返りながら、カノンはリミレトを安全な場所へと運ぶ。
    ユウは後ろで支えつつ、蹴りのリズムで微妙にバランスを取り、静かに歩く。

    「……戦利品は無事回収。これで一安心ね」

    カノンは淡々と言うが、その口元には微かな達成感が滲む。
    ユウも静かに微笑み返し、戦闘の緊張から解放された気配を見せる。

    リミレトはまだ意識が戻りかけの状態だが、二人の冷静な雰囲気に安心を覚え、微かに目を開ける。

    「……ありがとう、です……」

    天然の声に、かすかな笑みが混ざる。

    夜空に浮かぶ月が、二人と戦利品を静かに照らす。
    蹴撃と魔術の痕跡、戦術の応酬、そして狂気の狭間で紡がれた連携の勝利――
    全てがこの静かな余韻に包まれていた。

  • 5061◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:47:23

    カノンはリミレトを安全に確保しつつ、ユウに視線を向ける。

    「……よくやったわ、ユウ」

    「……ありがとうございます、カノン」

    二人の連携が、また一つ、確かな成果を刻んだ瞬間だった。

    廃工場には戦闘の余韻だけが残り、月光が瓦礫の影を長く伸ばす。
    勝利者と戦利品、そして連携の証――
    それは静かに、だが確かに記憶に刻まれた。

  • 5071◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 10:47:35

    以上

  • 508二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 10:48:03

    最高!

  • 5091◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:24:52

    題名『屍山に刻む理解』

  • 5101◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:26:43

    深夜の都市、雨に濡れたアスファルトが光を反射し、孤独な影を揺らしていた。
    廃工場の錆びた鉄骨と崩れたコンクリートが、不気味に夜の闇に溶け込む。
    その中を歩く男──東雲 一、コードネーム「屍山血河」は、背筋を伸ばしながら静かに進む。

    視界に入るのは、もう一人の人影。
    黒髪の青年、数言千幾。目を閉じているようにも見え、ただそこに立っているだけで不思議な威圧を放っていた。
    東雲はゆっくりと手を動かし、スーツの内ポケットに仕込んだ特注拳銃を握る。
    刀も抜き、指先で刃の重さを確認する。どちらも過去の戦いで鍛え抜かれた相棒だ。

    「……泥臭い戦いになると思うが、すまんな」

    声に淡々とした調子が混じる。戦闘前の宣言というより、自分への確認のようでもある。

    千幾は小さく目を開け、まっすぐに東雲を見据える。

    「……君が“屍山血河”か」

    その声は眠気を帯びていながらも、確実に情報を吸い上げる鋭さを持っていた。

    東雲は拳銃を頭に向け、軽く頬を叩く。

  • 5111◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:27:32

    これは自死の準備であり、同時に思考を整理する儀式でもある。
    彼の能力──スワンプマンは、自死を条件に自身を完全複製する。
    死体が残ることも能力の一部であり、盾にも、奇襲にも、瞬間移動にも応用できる。
    しかし一歩間違えば、自分自身の死は取り返しのつかない現実となる。

    東雲は視線を床に落とし、軽く吐息をついた。

    「……今日だけでも、ずいぶん数が増えたもんだな」

    自死と複製で積み上がる死体を確認しながら、彼は淡々と呟く。
    それは自嘲でもあり、戦いへの覚悟の表れでもあった。

    千幾はノートを取り出すこともなく、ただ立っている。
    東雲の動き、刀の角度、拳銃の握り方、体重移動の癖──全てを一瞥で理解しようとしている。

    「瞬間移動……いや、擬似的な裏取りか」

    東雲は心の中で呟き、次の行動を決めた。

    鉄骨の軋む音、雨の滴る音、遠くで落ちるゴミ箱の音。
    全てが戦場のBGMとなり、二人の呼吸が微かに重なる。
    東雲の瞳が鋭く光った。
    刀を握り直し、拳銃を再装填する。

    「さあて、始めるか」

    夜の廃工場は、静かに、そして確実に戦場へと変わり始めた。

  • 5121◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:29:30

    廃工場の奥、錆びた鉄骨の隙間から雨粒が落ちる。
    静寂の中、東雲は刀を握り、拳銃を肩に沿わせた。
    一歩踏み出すごとに、床の水たまりが軽く波打つ。
    千幾は動かず、ただ全てを見透かすように立っている。

    東雲は軽く息を吐き、心の中で計算を巡らせる。
    自死を使った複製──それは奇襲や防御、瞬間移動の応用にもなるが、同時にリスクも孕む。
    最初の一手は、相手の動きを試すための賭けだった。

    拳銃を頭に押し当てる。

    「準備はいいか?……行くぞ」

    トリガーを引き、瞬間、東雲の身体は床に崩れ落ちる。
    同時に、わずか数メートル先の陰影に一体の自分が立ち上がった。
    スワンプマン──彼の複製が、最初の奇襲として千幾の目の前に現れる。

    千幾は眉一つ動かさず、その全身から情報を読み取り、次の行動を瞬時に理解する。

    「……刀、そして拳銃……複製の瞬間位置……なるほど」

    微かに呟きながらも、その動きは極めて静かで無駄がない。

    東雲は再び拳銃を構え、複製に代わって千幾を攻撃する。
    斬撃と銃弾が交錯するが、千幾はわずかに身をひねり、空間の有効範囲を使って回避した。
    彼の理解力──一で千を知る──は、相手の次の一手を瞬時に読み解き、ほとんど未来予知のような動きで翻弄する。

  • 5131◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:29:42

    東雲は床に転がる自死の死体を盾にしながら、一歩踏み出す。

    「……今だな」

    拳銃を握り直し、次の複製の位置を頭の中で決める。
    複製は即座に現れることも、わずかに遅らせることも可能。
    そのタイミングの違いが、千幾の予測を乱す唯一の手段だ。

    しかし千幾は、目に見えない情報を頭の中で瞬時に処理する。
    複製の軌跡、死体の位置、動線──全てを一瞥で理解し、東雲の奇襲をことごとく回避していく。

    鉄骨の軋む音、銃弾の金属音、刀が弾く音。
    廃工場の暗がりで、二人の戦いは静かに、しかし着実に激化していった。

    東雲の瞳が鋭く光る。

    「……面白くなってきたな」

    戦いの最中でも、僅かに笑みが浮かぶ。
    自死と複製の応酬──泥臭く、異常な戦法だが、彼にとってはこれが最も確実に敵を翻弄する方法なのだ。

  • 5141◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:31:27

    廃工場の内部。雨に濡れた鉄骨の隙間からわずかに差し込む月光が、二人の影を長く伸ばす。
    床にはすでに、東雲の複製の死体が幾つも積み上がり、まるで小さな山のようになっていた。
    その上を踏み越え、彼は刀を振るいながら前進する。

    「……ったく、俺の命はごみじゃねぇんだぞ
     ゴミみてぇに捨ててるのは俺だが」

    自嘲にも似た呟き。だが彼の動きは迷いを知らず、死体を盾に、複製を活かした奇襲を繰り返す。
    複製は瞬間的に現れ、敵の死角から斬りかかる。
    刀の刃が軋む音、銃弾が跳ねる音、そして自分の死体が崩れ落ちる音──全てが戦場のリズムとなる。

    千幾は眉ひとつ動かさず、全てを頭の中で処理する。
    複製の位置、死体の配置、動線、次の一手の可能性……瞬時に把握し、未来予測のように反応する。

    「……この動き……複製のタイミングを少しずらしたか」

    千幾は小さく呟く。目の前に現れた複製に刀を振るうが、東雲の別の複製がすぐさま隙を突く。
    瞬間、彼は回避の角度を変え、さらに無駄のない動きで反撃を試みる。
    しかし、複製の数が増えるほど千幾の処理量も膨大になる。
    一瞬の遅れ、微かな反応のずれ、それが致命的な隙につながる可能性があった。

    東雲は汗を拭いながら、また頭を軽く打ち抜き、次の複製を作る。

    「……ここで止めるわけにはいかない」

    拳銃の引き金を引き、自死を伴った奇襲が再び炸裂する。

  • 5151◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:31:43

    死体の山を盾に、彼は無数の死を背負いながら前進する。

    千幾は目を細め、頭の中で膨大な情報を整理する。
    複製の連続攻撃、死体の配置、隠れるタイミング──すべて把握しつつも、わずかに疲労が見え始めた。
    眠気の影が、未来予測の精度を微かに曇らせる。

    「……面白い、しかし泥臭い戦法だな」

    東雲は微かに笑い、冷たい鉄の床に体を滑らせながら次の複製を準備する。
    死体を盾にし、複製を前方に送り出す。
    千幾は目の前の事象を理解しているが、複製の連続攻撃の前に、一瞬の迷いが生まれ始める。

    鉄骨の軋む音、刀と銃弾の金属音、死体が崩れ落ちる音。
    廃工場全体が、二人の戦いを受け入れ、鼓動のように響き渡る。

    東雲の瞳が光る。

    「……まだまだこれからだ」

    死体と複製を駆使する泥臭い戦法は、まだ終わらない。

  • 5161◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:33:46

    廃工場の奥、雨に濡れた鉄骨の影が長く伸びる。
    東雲は複製の死体の間を縫うように進む。
    刀を振るい、拳銃を随所で撃ち、死体を盾にして前進する──泥臭く、しかし確実な戦術だ。

    「……少しずつ、だが押せているか」

    東雲は低く呟き、自死の準備として拳銃を額に向ける。
    複製の位置を決め、次の瞬間には背後の陰影に再び現れる。
    死体を盾にしたまま、斬撃を加える。
    この動きの連続が、千幾にとって予測不可能の圧力となる。

    千幾は瞬時に相手の位置、複製の動き、死体の配置を頭の中で計算する。
    その動きは未来予知のように見えるが、複製の連続攻撃の前では一瞬の遅れも命取りになりかねない。

    「……なるほど、複製のタイミングをずらして連続攻撃……読めるが回避には手間取る」

    微かに呟き、千幾は一度腰を落として回避の角度を変える。

    東雲は笑みを浮かべ、刀を横に振るい、死体を盾に前進する。

    「……まだ、死ぬには早い」

    拳銃で自分の頭を打ち抜くと、複製は瞬時に別の位置へ現れ、千幾の側面から斬撃を放つ。

    千幾は一瞬だけ目を細め、計算の速度を上げる。
    だが、複製の連続と死体の盾による複雑な攻撃は、彼の情報処理にわずかな遅れを生む。
    眠気の影も微かに差し込み、未来予測の精度が揺らぎ始める。

    東雲は刀を振り抜き、複製の死体を踏み台にしてジャンプし、千幾の背後に回る。

  • 5171◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:34:00

    「塵も積もれば山となる……だったっけか?」

    自嘲と覚悟が混ざった呟き。
    死体と複製を駆使した泥臭い戦法は、ただの狂気ではない。
    戦術として、千幾の理解力の限界を試す挑発でもある。

    千幾は咳き込みながらも動きを止めず、刀の軌道を読み斬撃を受け流す。
    だが複製の数と死体の盾による物理的圧力は、彼の思考を少しずつ削っていく。

    鉄骨の軋む音、刀と銃弾の金属音、死体が崩れる音。
    廃工場全体が、二人の戦いを静かに、しかし確実に映し出している。

    東雲の瞳が光った。

    「……まだ、終わらせるつもりはねぇ」

    泥臭い戦法は、接近戦でこそ真価を発揮する。
    死体の山と複製を盾に、東雲はさらに前に進む。
    千幾の理解力に、初めて目に見える圧力がかかり始めていた。

  • 5181◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:35:23

    廃工場の奥、鉄骨が雨に濡れた光を反射し、二人の影を揺らす。
    床には東雲の複製の死体が無数に転がり、小さな山となっていた。
    彼はそれらを踏み台にし、刀を振るい、拳銃を撃ち、千幾を追い詰める。

    「……この調子だと工場が埋まっちまうぞ」

    低く呟き、額に拳銃を押し当てる。
    複製を即座に展開し、千幾の死角から斬撃を加える。
    死体の盾を利用し、銃弾を受け流しながら前進する泥臭い戦法。
    これまでの戦闘の中で、幹部たちが揶揄したやり方だが、実際には極めて計算された戦術だ。

    千幾はその全てを理解している。
    複製の位置、死体の配置、次の動き──瞬時に頭の中で再現する。
    だが、複製の連続攻撃は彼の情報処理に微かな負荷をかける。

    「……複製の数が……わずかにずれている……計算精度が僅かに狂うか」

    その瞬間、東雲は床に崩れ落ち、自死による複製を別の位置へ展開。
    瞬間、斬撃が千幾の側面に迫る。
    複製の連鎖が、空間に張り巡らされ、千幾の回避の幅を徐々に削っていく。

    「そろそろ死んでくれたっていいぜ?」

    東雲は短く呟き、また拳銃を構える。
    自死と複製の連鎖は、単純な攻撃ではない。
    千幾の理解力に圧力をかけ、次の動きを制限するための戦術だ。

  • 5191◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:35:53

    千幾は全力で複製の軌道を読み、斬撃を受け流す。
    しかし、複製の数と死体の配置、複雑な動線の組み合わせは、彼の思考を微かに乱す。
    瞬間、微細な隙が生まれ、東雲はその隙を見逃さない。

    東雲の刀が鋭く空を切り、死体を盾に次の複製を生む。
    千幾の回避の軌道に合わせて連鎖的に斬撃が降り注ぐ。
    雨音、金属音、死体の崩れる音──廃工場全体が戦場のリズムとなる。

    東雲の瞳が光る。

    「……そろそろ、終わらせるとするか」

    泥臭く、異常な戦法。
    だがそれは、単なる狂気ではなく、計算された連鎖攻撃として千幾を追い詰めていく。
    理解力に優れる相手にも、死体と複製の連鎖は揺さぶりをかける。

    戦いは頂点に達しつつあった。

  • 5201◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:37:23

    廃工場に積み上がる屍は、すでに小さな山を作っていた。
    東雲の複製の死体が、赤黒い影となり、雨水に溶けて鉄臭い匂いを広げる。
    刀と拳銃を構えたまま、彼は息を荒げることなく、静かに佇んでいた。

    「……ずいぶん散らかしちまったな」

    淡々とした声は、戦場を見渡す老練な傭兵のものだった。

    千幾は対照的に息を乱し、足元をわずかに揺らしていた。
    彼の理解力は、東雲の複製と死体の連鎖攻撃によって削り取られ、眠気が濃く忍び寄っている。

    「……理解はできる……だが、処理が追いつかない……」

    その言葉は、彼の限界を示していた。

    東雲は複製の死体を盾にしながら、静かに歩み寄る。
    刀を握り直し、拳銃をもう一度頭に向ける。

    「……この戦いで、今日だけで何体死んだか……数える気にもならねぇ」

    自嘲するように笑い、引き金を引く。
    複製が千幾の背後に現れ、鋭い斬撃を振り下ろす。

    千幾は最後の力で身をひねり、軌道を読み切ろうとする。
    だが、疲弊した思考はわずかに遅れ、頬に血が走った。
    その瞬間、彼の体は膝をつき、ノートが床に落ちる。

    「……ふぅ……まじで死ぬとこだったぜ」

    東雲は刀を振り抜きながらも、自分がギリギリで命を繋いだことを理解していた。

  • 5211◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:37:37

    千幾の理解力は恐るべきものであり、あと一歩でも遅れていれば自らが真に倒れていた。

    千幾は倒れながらも、かすかに笑った。

    「……やはり君は、理解を超えた場所で……戦っている」

    東雲は返事をせず、黙って拳銃をホルスターに戻す。
    雨音だけが残り、死体の山と共に静寂が戻る。

    彼はコートを翻し、出口へ向かって歩き出す。

    「……泥臭くても、生き残ったもん勝ちだ」

    振り返らずに言い残し、屍山血河は闇へ消えていった。

    残されたのは、無数の死体と、一冊のノート。
    そこには「一で千を知る」という言葉と、戦いの断片が書き込まれていた。
    それが誰に読まれるのかは、まだ誰にも分からない。

    夜の廃工場には、死と理解の痕跡だけが静かに残されていた。

  • 5221◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:38:41

    以上
    屍山の言動がばぐりまくってたのでおかしいところは私が考えました
    へんなふうになってたらすいません

  • 523二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 12:40:39

    最高!こういう泥臭い戦い方は良い

  • 5241◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 12:41:00

    次の安価は14:00より10個募集

    この安価の次の安価は1スレ目くらいの緩さとテンプレでの募集にしようと思っています

  • 525二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 13:59:59

    このレスは削除されています

  • 526二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:00:00

    名前:シャビリアンヴァンパイア
    年齢:4,096歳
    性別:男性
    種族:ヴァンパイア型ラスボスモンスター(亜熱帯エリア)
    本人概要:
    亜熱帯エリアの洞窟最奥に鎮座するラスボスの人型ヴァンパイア。
    亜熱帯エリアの他の何者よりも強靭な肉体と知性を兼ね備えたラスボスに相応しい強者。
    亜熱帯エリアに生息し冒険者たちにやられたコウモリ型モンスター「ポットリアシャビアバット」の無数の無念の集合体という設定。
    その設定の為、今まで「ポットリアシャビアバット」が冒険者たちにやられた時の情報を解析済みであり、そのデータを基にして冷酷かつ容赦なく冒険者へ攻撃を行う。
    相手が隙を見せれば手刀による攻撃、相手が攻撃に出れば煙になって回避するというヴァンパイアらしいヒット&アウェイ戦法をとる。
    能力:【肉体強化】/【煙化】/【眷属召喚】
    能力概要:
    【肉体強化】:自分の攻撃・防御力を元々の数値から30%上昇させる。戦闘中永続。重複可能。発動には相手の血液が1滴必要。
    【煙化】:身体を煙に変えて回避したり狭い場所へ逃げ込むことができる。
    【眷属召喚】:モンスター「ポットリアシャビアバット」の幽体を召喚し相手に対する噛みつきによる攻撃や纏わりつかせて妨害をさせる。発動には相手の血液が2滴以上必要。
    弱点:
    【煙化】以外の能力は敵の血液を摂取しないと発動できない。【煙化】発動には1分のクールタイムが必要。
    【煙化】している間は自分も攻撃することができない。【煙化】している間に強い風を受けると体が霧散して元に戻れない危険がある。
    亜熱帯エリアのラスボスであるため熱に強いが冷気に弱い。

  • 527二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:00:00

    名前:バイオスライムI号
    年齢:この個体は20
    性別:なし
    種族:スライム(神獣)
    本人概要:かつて色々あって封印された『改神』の意思を受信する力を与えられた原初のバイオスライム 改神の器を作り復活させるために動いている
    能力:無限再生 パイロキネシス 流体化
    能力概要:神域から送られるエネルギーによる無限再生能力と特殊な電波により相手の代謝を強制的に活性化することで相手を内側から発火・爆発させる力 もちろん流体化による物理耐性ともある あとバイオテクノロジーに詳しいのでバイオ技術由来の相手には有利
    弱点:神域からのエネルギーを受け取るためのコアを破壊されるとエネルギーが暴走して自爆する パイロキネシスは直接触れている場合を除き発動にはおよそ3秒(距離で増加)のタイムラグがあり横移動で回避可能だし体が熱くなるので気づける
    要望(任意):勝ったら相手の肉体を回収させておいてください

  • 528二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:00:01

    名前:オウル・フィン・アレクサンダー
    年齢:23歳
    性別:男
    種族:魔術師
    人物概要:魔術、魔導、魔法の頂点の一家「アレクサンダー家」の天才子息であり世界最高の魔法機関「魔導帝院」に入るはずだった男
    何をどう間違えたのか現在は何故か佐藤家という一家で執事・・・というより戦闘訓練の相手や子供に魔法を教える先生となっている
    本来なら「魔導帝院」にスカウトされてはいるはずが彼の世界をも驚かせる天然具合により色々な事が起きて最終的にこうなった
    性格は優しく温和で子供にお菓子を配るのが好きなお兄さん、ただ世界で唯一無二レベルの言葉にも出来ぬ異次元の超天然である
    その天然具合は一切の言動、行動の予測が不可能レベルであり天然を通り越して言葉に出来ぬアホっぽさも兼ね備える
    能力:総魔の主
    能力概要:全魔を元にアレクサンダー家が改良に改良を重ね生み出したアレクサンダー家相伝の魔法群
    天才の彼は総魔の全てを完璧に習得し無数の魔法、魔導、魔術を使っての戦闘を可能であり色々な魔を使って幅広い攻撃が出来る
    まだ燃費は悪くて調整中のオリジナル魔法も作っており既存の魔法を超越したオーバーパワー過ぎる魔法も持っている
    概念や世界に関与するような強大な魔もあるが基本的に燃費が悪いのは大事なタイミングでの攻撃に回しているのであまり使わない
    総魔とは対の「極魔」という魔法もあるが「あまり使いたくないから使わないね~」と言っており実際に滅多に使わない
    弱点:生まれつきの物凄い魔術師なので近接戦、耐久力はからっきしであり魔法を使えば防御と回避だけならまだ何とか・・・レベル
    身体能力と持久力も魔法で底上げしないと並み以下であり激しく動くと転んだりするので戦闘時は基本的に棒立ちが多い
    極魔、概念魔法、オリジナル魔法、超広範囲魔法などは体力&魔力の大幅負担と肉体負荷が発生するので肝心な時に使う必殺技である
    総魔の主の魔法や魔導は一度に大量に使うと情報処理で肉体負担がヤバいので一度に使うのは5種の魔法のみに制限している
    あと超弩級の天然なので戦闘を戦闘と思っていなかったりすっごい魔法間違いをするときがある
    要望:間延びした感じの落ち着いた口調でお願いします
    一人称は僕、物凄く天然にしてください

  • 529二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:00:01

    名前:死亡予報
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:現象怪異
    本人概要:突如深夜帯に映る死亡予報という名前の番組
    本日○○ 死亡 死因は○○です というものをナレーターが読みその際の映像を流し消える
    その後番組の通りの出来事が起こる これらの一連の流れを引き起こす現象
    また名前が読み上げられた存在は放送されている最中テレビ画面に触れることで異空間に行ける
    異空間内は広大で上下左右がテレビ画面になっており中央には首吊り死体がある
    能力:死亡予報
    能力概要: 本日○○ 死亡 死因は○○です というナレーターの声 読み上げられた死因通り未来の映像が流された直後
    死因になるものが現れる 例で言うとトラックに衝突し死亡ならトラックが現れるし
    死因は溺死と言うと突如水が現れるなど
    死因となるものを避けると また映像が現れ失礼しました死因は○○でしたと言いまた死因となるものが襲い掛かる
    死を回避する度にナレーターの声、死の映像の流れる速度が上がるし
    死因も黄泉の門が開いた、邪神が顕現した為など滅茶苦茶かつ理不尽に
    弱点:ナレーターの読み上げ、読み上げられた死因通り未来の映像という一連の行いを必ずする為
    どのような死因が迫ってくるかは把握できる  
    首吊り死体を破壊すると現象が消滅する 首吊り死体は動かず回避もしない
    要望:ナレーターの読み上げ以外では喋らないで下さい

  • 530二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:00:01

    名前:ハリス・アルマダ
    年齢:26
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:頭の固い軍人気質の男。無口でほとんど喋らず、最低限の事しか口を開かない。無口だが仲間思いであり、国に対する忠誠心は海の底よりも深い。人間、物質を問わず、霊と融合する能力を持つ。
    能力:『亡霊艦隊(エスピリテ=アルマーダ』
    能力概要:肉体に融合させた艦隊の霊を具現化し無数の砲台や魚雷で相手を爆撃する
    弱点:砲塔の発射口に異物をぶち込まれると爆発し、ダメージを受ける。
    破壊された砲塔の再起動にはそれなりの時間を要する。

  • 531二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:00:01

    名前:”伝詩司書“ ダリア・”ヨハネス“・ペタテクスト
    年齢:1971年
    性別:無性(形は女性)
    種族:自動人形(オートスコアラー)
    本人概要 : 前世界で製造された自動人形、アンドロイドとも呼ぶ。
    普段は国際大図書館”トート“で司書さんをしている。
    球体関節のボディは動くたびにオルゴールのような可愛らしい音色が響く。
    陶器人形のように滑らかな肌と硝子の瞳、そして金糸の長い髪の毛を持つ。
    性格は悪戯付きでよく人を揶揄うが、それは人に構ってもらいたい、愛されたいという感情の裏返し。図書館では来客の望む本を的確に選び、休日では街でよく子供達に古い童話の読み聞かせをしていることから彼女の人類への愛がわかる。
    この世の様々な書籍のデータを記録しており、これらの物語を語り継ぐことを至上命題にしており、これを邪魔するものや本を大事にしない者はたとえ人間でも容赦しない。
    能力:ダンタリアン・サブスクリプション
    能力概要:遥か古代に構築された本の悪魔の名を冠する情報サービス。彼女はそのデータベース(残骸)にアクセスすることができる数少ない存在である。
    ダンタリアン・サブスクリプションはあらゆる書籍…小説から図鑑、漫画から魔導書まで…が記録されており、古代ではこのサービスを介してあらゆる書物を享受することができた。
    今となっては残骸しかないが、それでも得られる情報は人智を凌駕している。彼女はこの情報を自在にインストール&アウトプットすることで擬似的に万能の天才としてあらゆる困難に対抗することができる。
    弱点:ボディの経年劣化が著しく、強い衝撃を受ければ簡単にパーツが壊れてしまう。
    胸部にある錠前型の蓋の中にコアとなる電算ユニットがある。そこを破壊されると死ぬ
    能力は万能ではあるが、機械の身体は全能ではない。インストールした機能を再現するたびに強い負荷がかかり出力が低下していく。

  • 533二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:00:51

    代理

    名前:数言理一(かずこと りいち)
    年齢:35
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:数言家現当主にして、数言怜呉に並ぶかそれ以上の強さを持つ、数言家最強の人物。
    数言怜呉に自分以外の当主候補を全員殺されれたので仕方なく当主の座についている。
    15歳ほどから見た目の成長が止まっており、外見は少年だが、中身は常に冷静沈着で頼れる大人。あらゆる戦闘技術を極めており、異能によるものでなければ基本的に見ただけで真似することができる。
    能力:1
    能力概要:全ての開始点であり、基準点である1を操る能力。
    周辺の全てを固定して不変にする、擬似時間凍結を1秒のみ使うことができる。
    一度能力を発動すると次に発動するまで1分クールタイムがある。
    止められるのはたった1秒だが、戦闘においては致命的な隙である。
    また、身体能力が非常に高く、肉体での戦闘も強い他、家族の剣技や射撃術、先読み、武闘術などを完璧に模倣し、それを本人以上の技術で扱うことができる。これは能力由来のものではなく、本人の天才性によるものである。幼い頃からの教育により、頭脳もずば抜けており、能力なしで数言千幾の10分の1という、化け物じみた頭脳を持っている。
    普段は剣を使うが特にこだわりはないため、銃でも槍でも場合によってはなんでも使う
    弱点:殺しを好まず、できるだけ殺さないように立ち回るためそこに隙ができる。
    昔、怜呉に右目の視力を0にされているので、右側からの攻撃に弱い
    要望(任意):屋敷の敷地内で戦う感じでお願いします。

  • 534二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:00:52

    名前:マリン
    年齢:不明
    性別:雌
    種族:イグアナ
    本人概要:スレイ家に飼われているイグアナ。主にアルナが世話をしている。生まれた瞬間に上位存在からの祝福としての能力を持っており、それを用いて生活してきたため能力の扱いは神をも越えるレベルにまで達している。厳しい自然界で培った戦闘センスがあり、能力を巧みに操ってスレイ家を守っている。
    見た目は普通のイグアナであり、能力の発動は見てもわからない。常に冷静で感情を現にせず、自身の感情を抑制する能力に長けている。
    また、スレイ家の先祖の神の力で人間の姿になることも可能。姿は老齢の女性だが、身体能力は武神をも越えるレベル。能力のサブウェポンとして有用している。
    能力:【スレイ家の非日常】
    能力概要:イド、エゴ、スーパーエゴを操る能力。
    イドとは「食べたい」「眠たい」「愛したい」など生物の欲求の元。無意識の奥底にある生物なら誰でも持っている本能を生み出す源泉のようなもののこと。生物の全ての活動はイドより生まれる。マリンはそれを操り、理性を失わせ相手の本能を支配することが出来る。相手の自滅を誘うことも可能。
    スーパーエゴとはそんなイドの本能を抑制するための良心と道徳心のこと。イドの暴走を躾によって抑制する。マリンはこれを用いて対象や自身の欲望や欲求を制限している。そのため、支配系や獣を操るなどの能力はマリンには意味がない。マリンは一個人のイグアナである。
    エゴとはイドとスーパーエゴの中間に存在し、イドの本能とスーパーエゴの躾を調整する。生物はこれによって現実的な判断が可能になる。
    相手の挑発を受けても冷静でいたり、予測不能な事態に平常でいたりと、心のストレスを和らげる力を持つ。これによりマリンは生物的に冷静で的確な判断が可能な存在へと昇華し続けている。
    弱点:イグアナなので急激な温度の変化が苦手。特に寒さに苦手であり、下手すると冬眠しだす。
    胸付近にある力のコアを破壊されると、寒さ関係なく冬眠を開始する。
    要望:殺さないでください。
    人間形態の一人称は「私」、二人称は「あんた」でお願いします。

  • 535二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:01:12

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  • 536二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:01:39

    名前:マカイ
    年齢:55
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:不細工貧困フリーターで性格も歪んでいて悪い所謂人生の負け犬
    劣等感から世界を呪い、他者を責めて自分は悪く無いと思っていたところ異能に目覚めた
    能力:負け犬の怨嗟
    能力概要:相手を自身と同レベルまで能力を強制的に落とさせるという相手が強ければ強い程ブッ刺さる能力
    相手の身体能力が優れていたなら下がるし戦闘技能経験などもマカイが対応できるレベルまで低下
    異能や武装なども出力機能ともにマカイが戦闘できるレベルまで下げられる
    弱点:自分と同レベルに能力を下げるだけで相手より上回ってるという訳では無い為
    最後に優劣を分けるのは意思の力の差になる 
    要望(任意):能力使用時は お前も惨めで歪んだ負け犬である俺と同じところまで落ちてこい!!って台詞を言わせて欲しいです

  • 537二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:02:26

    名前:ドルフ・ベーア
    年齢:20
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:とある新興マフィアのアンダーボスを務めているにも関わらず下手なソルジャーより現場に出てくる。
    低身長で眼の下にバカでかい隈がある童顔で、普段は気怠そうで柄こそ悪いが優しい(マフィア基準)低身長なことを指摘されるとブチギレる。
    付いたあだ名は「パンダ」
    武器:ラッビア・バストーネ
    武器概要:壊れないだけのバット
    能力:センツァフィーネ・ヴィオレンツァ
    能力概要:負傷すればするほど身体能力と暴力性がとてつもなく上昇する。死にかけにでもなった場合はそれこそ星を割るほどの力を発揮する。
    弱点:遠距離攻撃の手段がない上に本人は学校に通っていなかったため頭も悪い。虐待を受けながら育ったので素の耐久力は一般人並みかそれ以下。

  • 538二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:03:40

    すとっぷ

  • 539二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:07:36

    >>533

    出してくれてありがとうございます

    それとスレ主、悪いんですけど設定をこっちにしてもらえますか?

    名前:数言理一(かずこと りいち)

    年齢:35

    性別:男

    種族:人間

    本人概要:数言家現当主にして、数言怜呉に並ぶかそれ以上の強さを持つ、数言家最強の人物。

    数言怜呉に自分以外の当主候補を全員殺されれたので仕方なく当主の座についている。

    15歳ほどから見た目の成長が止まっており、外見は少年だが、中身は常に冷静沈着で頼れる大人。あらゆる戦闘技術を極めており、異能によるものでなければ基本的に見ただけで真似することができる。

    家族全員(怜呉を除く)をとても大切に思っており、最近数言千幾が死んだことを知り大分キレている

    能力:1

    能力概要:全ての開始点であり、基準点である1を操る能力。

    周囲の全てを固定して不変にする、擬似時間凍結を1秒のみ使うことができる。

    一度能力を発動すると次に発動するまで1分クールタイムがある。

    止められるのはたった1秒だが、戦闘においては致命的な隙である。

    また、身体能力が非常に高く、肉体での戦闘も強い他、家族の剣技や射撃術、先読み、武闘術などを完璧に模倣し、それを本人以上の技術で扱うことができる。これは能力由来のものではなく、本人の天才性によるものである。幼い頃からの教育により、頭脳もずば抜けており、能力なしで数言千幾の10分の1という、化け物じみた頭脳を持っている。

    普段は剣を使うが特にこだわりはないため、銃でも槍でも弓でも暗器でみ場合によってはなんでも使う

    弱点:殺しを好まず、できるだけ殺さないように立ち回るためそこに隙ができる。

    昔、怜呉に右目の視力を0にされているので、右側からの攻撃に弱い

    要望(任意):屋敷の敷地内で戦う感じでお願いします。

  • 540二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:10:22

    スレ主、本当に微妙なんですがマリンの修正版にさせてください


    名前:マリン

    年齢:不明

    性別:雌

    種族:イグアナ

    本人概要:スレイ家に飼われているイグアナ。主にアルナが世話をしている。生まれた瞬間に上位存在からの祝福としての能力を授かり、それを用いて生活してきたため能力の扱いは神をも越えるレベルにまで達している。厳しい自然界で培った戦闘センスがあり、能力を巧みに操ってスレイ家を守っている。

    見た目は普通のイグアナであり、能力の発動は見てもわからない。常に冷静で感情を現にせず、自身の感情を抑制する能力に長けている。

    また、スレイ家の先祖の神の力で人間の姿になることも可能。姿は老齢の女性だが、身体能力は武神をも越えるレベル。能力のサブウェポンとして有用している。

    能力:【スレイ家の非日常】

    能力概要:イド、エゴ、スーパーエゴを操る能力。

    イドとは「食べたい」「眠たい」「愛したい」など生物の欲求の元。無意識の奥底にある生物なら誰でも持っている本能を生み出す源泉のようなもののこと。生物の全ての活動はイドより生まれる。マリンはそれを操り、理性を失わせ相手の本能を支配することが出来る。相手の自滅を誘うことも可能。

    スーパーエゴとはそんなイドの本能を抑制するための良心と道徳心のこと。イドの暴走を躾によって抑制する。マリンはこれを用いて対象や自身の欲望や欲求を制限している。そのため、支配系や獣を操るなどの能力はマリンには意味がない。マリンは一個人のイグアナである。

    エゴとはイドとスーパーエゴの中間に存在し、イドの本能とスーパーエゴの躾を調整する。生物はこれによって現実的な判断が可能になる。

    相手の挑発を受けても冷静でいたり、予測不能な事態に平常でいたりと、心のストレスを和らげる力を持つ。これによりマリンは生物的に冷静で的確な判断が可能な存在へと昇華し続けている。

    弱点:イグアナなので急激な温度の変化が苦手。特に寒さに苦手であり、下手すると冬眠しだす。

    胸付近にある力のコアを破壊されると、寒さ関係なく冬眠を開始する。

    要望:殺さないでください。

    人間形態の一人称は「私」、二人称は「あんた」でお願いします。

    >>534

  • 5411◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 14:22:36
  • 542二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 14:28:51

    いよっし!

  • 5431◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 14:38:11

    バイオスライムI号vs”伝詩司書“ ダリア・”ヨハネス“・ペタテクスト
    オウル・フィン・アレクサンダーvsドルフ・ベーア
    マカイvs数言理一
    ハリス・アルマダvs死亡予報
    マリンvsシャビリアンヴァンパイア

  • 5441◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:49:23

    題名『残骸は語る』

  • 5451◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:50:11

    国際大図書館“トート”の夜は、静謐で荘厳だった。
    天井の高いアーチには古の装飾が刻まれ、石床に足音ひとつ響かない。
    だがその静寂を破るように、異質な水音が広がっていく。

    廊下を這うのは、不定形の塊。
    バイオスライムI号――かつて封印された“改神”の復活を目論む器。
    その粘性の体から、微かに熱を帯びる蒸気が立ち昇っていた。

    「ここにあるはずだ……古き知識、改神の記録……」

    スライムは、図書館の奥へと進む。
    やがて、そこに待っていたのは金糸の髪を揺らす人形の司書。
    彼女の身体は球体関節で組まれ、陶磁器の肌と硝子の瞳が柔らかく光を放つ。

    「ようこそ、“トート”へ。お客様。……でも残念ね、図書館を穢す泥水は歓迎できないの」

    それは、ダリア・ヨハネス・ペタテクスト。
    可憐なオルゴール音を響かせながら、彼女はゆっくり立ち上がった。

    「あなた……本を探しに来たのではなく、壊しに来たのでしょう?」

    スライムの体表が熱を帯び、周囲の紙の束がパチパチと燃え始める。

    「違う……奪いに来たのだ。改神を復活させるために」

    その瞬間、図書館の空気が緊張に包まれる。
    ダリアの瞳が冷たく輝き、唇が微笑を形作った。

  • 5461◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:50:29

    「本を愛さぬものには、一文字すら渡さないわ」

    彼女は胸の錠前を軽く叩き、内部から古代の残響が漏れ出す。

    「アクセス権限確認……ダンタリアン・サブスクリプション、接続開始」

    バイオスライムはその気配に反応し、全身を揺らめかせる。

    「……その力。やはり、お前の躯は我らの器になる」

    互いの言葉が交差し、次の瞬間、炎と知識が激突する。
    図書館の床が揺れ、本棚から無数の書物が崩れ落ちていった。

    「開幕ね――存分に暴れてみせなさい」

  • 5471◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:53:00

    天井近くまで伸びた本棚の影の中で、二つの存在が相対する。
    ダリアの胸の錠前からは、光の糸が幾筋も広がり、空中に書物の幻影を紡ぎ出していた。
    その一冊一冊が、まるで意思を持つかのように頁をめくり、彼女の内部へ情報を流し込む。

    「接続成功。モジュール――剣術概論、第七版、インストール」

    瞬きする間に、彼女の細い腕には古の騎士の剣術が宿る。
    陶器のような指先で構えた姿は隙がなく、舞うたびにオルゴールの音が鳴り響いた。

    対するバイオスライムは、炎を孕んだ熱波を周囲へ撒き散らす。
    床に散った書物がぱちぱちと燃え上がり、図書館の荘厳さは火獄に変わりつつあった。

    「燃えろ……すべてを燃やし、灰の上に改神を迎える……!」

    ダリアの瞳が鋭く揺らぐ。

    「……本を燃やすなんて、なんて野蛮。あなたには“弁明”すら許さない」

    彼女は滑るように接近し、知識で補われた剣閃を振るう。
    刃がスライムの身体を裂くと、蒸気と粘液が飛び散り、床に散った。
    だがその傷口は瞬く間に閉じ、再生を終える。

    「切っても無駄だ……無限に蘇る。それがお前の絶望だ」

    「ならば――“弱点”を探るだけ」

    ダリアは即座に別の幻影に触れ、
    「インストール完了――生体工学、バイオテクノロジー基礎」
    という声が響いた。

  • 5481◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:53:17

    彼女の視界に、スライムの体を流れる微細なエネルギーの流れが透けて見える。
    中心で不規則に脈打つ、赤黒い輝き。

    「コア……そこが心臓ね」

    スライムの全身がぞわりと震え、炎が一層強く立ち昇った。

    「覗くな、人形風情がッ!」

    三秒の予兆を経て、床が爆ぜる。
    ダリアの陶器の脚が熱に灼かれ、関節がぎしりと悲鳴を上げた。

    「……っ、この熱量、やはり身体がもたない……」

    それでも彼女は笑う。

    「でも――私は諦めない。物語の番人だから」

    再び、光の糸が次の書を開く。
    知識と炎、脆き器と無限の再生。
    図書館は今や、灼熱の戦場と化していた。

  • 5491◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:54:02

    図書館の大広間は、既に炎と煙に包まれていた。
    天井の装飾が崩れ、瓦礫が降り注ぐ。
    だが、その瓦礫を避けるように舞うのは、金糸の髪を揺らす人形の司書。

    「インストール――水属性魔術・応用」

    彼女の手から放たれた冷流が、赤々と燃え広がる炎を押し返す。
    蒸気が轟き、炎と水が衝突する。
    一瞬だけ生まれた冷気の壁を利用して、彼女はスライムへと斬りかかった。

    「どう? 再生するだけじゃ、退屈でしょう?」

    スライムの体が裂け、熱を帯びた液体が床に飛び散る。
    だが、やはりその傷は瞬時に閉じる。
    バイオスライムは粘液の体を震わせ、咆哮のような振動を響かせた。

    「小賢しい……だが意味はない。燃やし尽くしてやる」

    床下から灼熱が走り、数秒のラグの後に爆炎が噴き上がる。
    熱波に煽られ、ダリアの陶磁の腕にひびが走った。
    ぱきん、と小さな破片が飛び散り、オルゴール音が一瞬途切れる。

    「……っ、やはり脆いわね、この身体」

    彼女は息をつくように小さく呟き、しかしすぐに笑顔を作る。
    「けれど壊れても、私は語り継ぐ。たとえ欠片になっても」

    再び光の糸が奔り、幻影の書が開かれる。

  • 5501◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:54:31

    「インストール――軍略集、戦術行動解析」

    瞬間、彼女の動きが鋭く変化する。
    爆発のタイムラグを完全に読み切り、炎が噴き上がる瞬間に最小限の動きで回避する。
    その姿は、まるで未来を見通すかのようだった。

    「……やるな。人形の分際で」

    スライムの声は低く唸り、だが苛立ちを隠せない。
    無限再生の優位があっても、的確にコアを狙われれば危険だと理解している。

    「見えている……そこにあるんでしょう、あなたの命」

    ダリアはまっすぐにスライムの体奥を射抜く視線を送った。
    一瞬、空気が張り詰める。
    だがその直後、スライムは全身を灼熱の奔流に変え、周囲一帯を焼き払った。

    「ならば近寄らせぬ! 灰になるまで燃やし尽くす!」

    爆炎に吹き飛ばされ、ダリアの背が石壁に叩きつけられる。
    陶磁の肩に大きな亀裂が走り、音色が途切れた。

    「……く、ふふ……やっぱり泥臭い戦いになるわね」

    彼女は傷だらけになりながらも、微笑みを浮かべて立ち上がる。
    知識と炎、互いの力は拮抗していた。
    だが、その均衡は確実に崩れつつあった。

  • 5511◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:55:07

    大図書館の広間は、もはや戦場の残骸と化していた。
    壁は黒焦げに裂け、天井からは炎に包まれた梁が落ちる。
    書物たちは燃え尽き、灰となって舞い散る。

    その灰の中で、ダリアの身体は明らかに限界を迎えつつあった。
    陶磁の肩には深い亀裂が走り、関節はぎしぎしと悲鳴を上げる。
    胸の錠前も熱に灼かれ、赤く脈打つように膨張していた。

    「……これ以上、出力を上げれば……私の器は持たない……」

    それでも彼女は、幻影の書を閉じなかった。
    光の糸は絶えず広がり、彼女へと知識を注ぎ込み続ける。

    「インストール――精密射撃術、狙撃兵の記録」

    ダリアの指先に、一冊の古びた銃器マニュアルが重なる。
    次の瞬間、彼女は幻影から具現化した銃を構え、狙いを一点に絞った。
    スライムの粘体を透かし、その中心で脈動する赤黒い光。
    そこが――コア。

    「終わりにしましょう、炎の怪物」

    発射音が轟く。
    弾丸は一直線にコアを撃ち抜かんと突き進む。
    だが、スライムの全身が瞬時に収縮し、液体の壁を作り出す。
    弾丸は粘液に絡め取られ、熱で溶かされて消えた。

    「……惜しいな。だが無駄だ、人形。何度狙おうと結果は同じ」

    次の瞬間、床が唸りを上げて爆ぜた。

  • 5521◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:55:18

    噴き上がる火柱がダリアを飲み込み、彼女の身体が宙に投げ出される。
    陶磁の左腕が爆風で砕け散り、指先がぱらぱらと床に落ちた。

    「……っ、これ以上は……」

    彼女の声は震えていた。
    胸の錠前から警告音が響き、コアユニットが過熱している。
    出力を続ければ、自己崩壊は避けられない。

    だが、彼女は笑う。

    「でも、知識は――必ず届く」

    スライムの体が再び赤熱し、灼熱の爆発を準備する。
    彼女は壊れかけの身体を引きずりながらも、コアを射抜く構えを崩さない。

    「愚かだ……燃え尽きるだけの命を賭けるか」

    「ええ、それが――人に愛された者の務めだから」

    次の爆炎が迫る。
    炎と知識、終焉の瞬間が目前に迫っていた。

  • 5531◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:55:41

    炎が図書館の大広間を埋め尽くす。
    床から天井まで、全てが赤黒い熱に溶ける。
    それでもダリアは、瓦礫に片膝をつきながら銃を構えた。

    「……インストール――最終射撃術。命中精度、限界突破」

    彼女の瞳に幾重もの照準が浮かび上がり、スライムの揺らぐ粘体の奥――脈動するコアが、はっきりと映し出される。
    身体は軋み、関節は崩れ、胸のコアが高熱で悲鳴を上げていた。
    それでも彼女は笑う。

    「人の物語を守るためなら、壊れてもいい……」

    引き金が絞られる。
    放たれた弾丸は光の奔流となり、一直線にスライムのコアへ。

    「――っ、しまった!」

    スライムは即座に粘体を収縮させる。
    だがそれより速く、弾丸はコアに到達し、赤黒い光を裂いた。

    轟音。
    次の瞬間、スライムの全身が激しく震え、内部から熱が暴走する。
    無限再生の循環が狂い、爆発の兆候が走る。

    「ば……かな……我が、再生が……止まる……!?」

    炎の渦の中、崩壊するスライム。
    しかし同時に、ダリアの身体もまた崩れていった。
    胸の錠前が開き、内部のコアユニットが赤熱し、警告音を鳴らす。

  • 5541◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:55:53

    「ふふ……一緒に、終わるのね」

    爆発的な光が広間を覆う。
    炎と光の奔流。
    陶磁の腕が砕け、金糸の髪が燃え、同時にスライムの粘体が四散する。

    どちらも――立ってはいなかった。

    灰の中で、司書の残骸とスライムの液体は混ざり合い、静寂に沈む。
    勝者はなく、ただ両者が互いの命を賭け、物語の最後に相打ちを刻んだのだった。

  • 5551◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:56:53

    光と炎が収まり、図書館の広間は静寂に沈んでいた。
    瓦礫の山の中には、陶器の破片と溶けた金糸の髪が散らばり、かつての「司書」の姿を辛うじて形作っている。
    対して、黒く焦げた床には粘液の残滓がまだ煙を上げていた。

    どちらも完全に息絶えている――そう思わせるほど、場には死の匂いが漂っていた。

    だが。

    「……まだ……我は終わらぬ」

    焦げた液体が蠢き、砕けた残骸の中から一片の光が滲み出た。
    それは、スライムのコアの破片だった。
    完全に砕かれたわけではなく、辛うじて残った断片が、神域のエネルギーに応答する。

    液体の一部が集まり、わずかな自己修復を始める。
    もはや戦闘が可能な姿ではない。
    それでも――彼には使命があった。

    「改神の器……そのためには、素材が要る」

    粘液が、砕けたダリアの身体へと流れ寄る。
    陶磁の欠片を包み込み、硝子の瞳を取り込み、金糸の髪を回収していく。
    それは敬意か、侮蔑か、あるいはただの実利か。
    どちらにせよ、彼女の肉体は「素材」として取り込まれた。

    「人形よ……物語を守るその矜持、確かに見届けた」

    そう呟く声が、炎に焼かれた大広間に微かに響いた。

    やがてスライムの残滓は瓦礫の隙間に溶け込み、静かに姿を消していった。

  • 5561◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:57:08

    残されたのは、燃え尽きた書物の灰と、戦いの記憶だけ。
    誰が勝者だったのか――それを知る者は、もはやいない。

  • 5571◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 15:57:28

    以上

  • 558二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 15:58:52

    そこそこ久々の相打ち

  • 559二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 16:02:44

    相打ちは美しい…… いや生き残ったスライムの勝利か

  • 5601◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:03:24

    題名『魔と暴の無敗譚』

  • 5611◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:05:59

    静かな郊外の廃工場。
    夜の風に錆びた鉄骨が軋む音が響く。

    そこに一人、低身長の童顔の男が立っていた。
    黒いコートの下、握られているのは光沢のない一本のバット。
    新興マフィアのアンダーボス――ドルフ・ベーア。
    眼の下に深い隈を浮かべながらも、ただじっと戦場を待っている。

    「チビだのパンダだの……言いやがったら、ぶっ潰すからな」

    彼は唇を噛み、怒りを抑えていた。

    そこへ、ゆったりとした足取りで現れる青年。
    金髪に青い瞳、整った顔立ち。
    高級なローブの裾を少し汚しながらも、どこか穏やかな微笑みを浮かべていた。

    「やぁ……こんばんわ。えっと……ここで待ち合わせって聞いたんだけど……」

    天然そのものの声。
    彼の名は、オウル・フィン・アレクサンダー。
    本来ならば世界最高峰の魔法学府で未来を約束された天才であるはずが、今は何故か執事のような仕事をしている。

    「……テメェがアレクサンダー家のボンボンか?」

    ドルフが吐き捨てるように言った。

    「あ、そうそう。僕、アレクサンダー家の三男坊なんだよね。あの……君、背ぇ低いけど大丈夫? 魔法で伸ばす?」

    ガキン、とバットが鉄骨を叩く。
    ドルフの目が血走り、空気が一気に険悪に染まる。

  • 5621◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:06:18

    「……今、何つった?」

    オウルは首をかしげ、のんびりした口調で答えた。

    「え? あ、間違えちゃった? あはは……ごめんごめん、天然なんだ僕」

    次の瞬間、ドルフの足元が軋み、殺気が爆ぜた。
    工場の闇に、魔法の光がゆっくりと灯り始める。

    ――天才天然魔術師と、負傷で暴力を増すアンダーボス。
    戦いの幕が、音を立てて開こうとしていた。

  • 5631◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:06:55

    廃工場の床が軋み、闇の中で二人の影が対峙する。

    オウルはのんびりと右手を上げ、指先に小さな光を灯した。
    それは魔術師の基礎中の基礎――照明魔法。

    「えっと……夜は暗いから、まずはランプを点けないとね」

    彼の周囲を柔らかな光が包む。
    しかしその無防備さに、ドルフはすぐさま飛び込んだ。
    バットがうなりを上げ、オウルの頭へと振り下ろされる。

    「油断してんじゃねぇぞボンボンッ!」

    だが、バットが触れる直前。
    オウルの足元に展開された魔法陣が淡く輝き、透明な壁が現れる。
    ドルフの一撃は火花を散らし、弾かれた。

    「わわっ、危ないね……でもすごい音。君、バット好きなんだ?」

    「……バカにしてんのか?」

    「え? ちがうよ。ただ、魔法じゃなくて棒を使うなんて新鮮だなぁって」

    オウルは首を傾げながらにこやかに答える。
    天然すぎるその態度が、逆にドルフの神経を逆撫でする。

    「……テメェ、喧嘩売ってんだろ」

    「え? あ、これバザーとかで売ってるの? へぇ、いい棒だね」

  • 5641◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:07:08

    「ッッ……!!」

    バットが再び振り上げられる。
    だがその瞬間、オウルがぽんと手を打った。

    「じゃあ、僕も少し魔法を使うね。えっと……火の玉、かな?」

    彼の掌から小さな火球が飛び出し、ドルフの足元に着弾する。
    爆発と共に火花が散り、床材が破片となって飛び散った。

    「おいおい……マジかよ」

    ドルフの頬に火傷の跡が刻まれる。
    しかしその瞬間、彼の目がギラリと輝いた。
    傷ついたことで、体の奥から凶暴な力が沸き上がってくる。

    「……いいぜ。もっと殴らせろ」

    オウルはにこやかに笑った。

    「わぁ、すごい。強くなってるよ君。じゃあ次は……氷にしよっかな」

    天然と狂気。
    火花と氷霜が交錯し、戦いはさらに加速していった。

  • 5651◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:07:47

    床が抉れ、工場内に熱気と冷気が交互に走る。
    ドルフは火傷を負った顔を歪めながらも、確かに笑っていた。
    体が熱を帯び、筋肉が隆起し、眼の下の隈がより濃く見える。

    「ククッ……いいじゃねぇか。もっと傷つけてみろよ……そんだけで、オレはまだまだ強くなる!」

    オウルはきょとんとした表情で首を傾げる。

    「え……でも僕、あんまり人を傷つけるのは好きじゃないんだよ? それに、君……お菓子食べる?」

    そう言って懐からクッキーの包みを取り出した。
    その予想外の行動に、ドルフの脳が一瞬フリーズする。

    「……は?」

    「戦いながら食べるのも悪くないと思うんだ。あ、でも熱いから気をつけてね」

    「誰が戦闘中に菓子食うかバカッ!!」

    怒声と共に、ドルフのバットが壁を割るほどの勢いで振り下ろされる。
    しかしオウルは棒立ちのまま、淡々と呪文を唱える。

    「えっと……あれだよね、水を出すやつ。あ、間違えたかな?」

    次の瞬間、ドルフの頭上から大量の水が降り注いだ。
    消火用ホースをひっくり返したような水流が直撃し、彼は一瞬視界を奪われる。

    「ぶはっ……ッざけんな!!」

    水浸しになりながら、しかしその分だけ負傷と疲労が上乗せされ、さらに暴力性が加速する。

  • 5661◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:07:59

    筋肉が裂け、血が滲んでも、彼の身体は力を増していく。

    「……オレを殺すか、死ぬか。どっちかしかねぇんだよ!」

    オウルは呑気に笑って手を合わせた。

    「うーん……殺すのはやだなぁ。でも君、すっごく強いから……あ、そうだ。今度は風にしよっか」

    床に描かれた魔法陣が輝き、突風が吹き荒れる。
    ドルフの体は浮きかけるが、彼は咆哮と共にバットを振るい、風を切り裂いた。

    「こんなもん効かねぇ!!」

    「わぁ……すごいねぇ。風を割るなんて、初めて見たよ」

    戦場は破壊され続け、火と水と風が交差する。
    だがその只中で、オウルの天然すぎる笑顔とドルフの狂気じみた力が、奇妙な調和を奏で始めていた。

  • 5671◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:09:12

    工場の壁が崩れ、外の夜風が吹き込む。
    ドルフの体はボロボロになりながらも、その分だけ力は桁違いに膨れ上がっていた。
    筋肉が悲鳴を上げ、血が滴るたびに、バットの一撃は重くなる。

    「もっとだ……もっと殴らせろ……!」

    その姿はもはや獣。
    星を割るとまで言われる暴力性の胎動が、工場全体を震わせる。

    一方でオウルは、額に汗を浮かべながらもへらりと笑っていた。

    「うーん……君、本当に元気だねぇ。僕もそろそろ……大きいのを出そうかな?」

    彼が指を鳴らすと、床一面に複雑な魔法陣が展開される。
    その輝きは小さな星空のようで、空気が一変する。

    「『総魔』のオーバーフレア……えっと、成功するかな?」

    「ッッ!!」

    ドルフの直感が叫ぶ。
    ――受ければ終わる。
    理屈ではなく、本能で悟った。

    「なら先にッ……ぶっ潰す!!」

    彼は血を吐きながらも渾身の力でバットを振り下ろした。
    星を砕く一撃。
    空間すら割れそうなその暴力が、オウルに迫る。

  • 5681◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:09:23

    だがオウルは目を細めて呟いた。

    「んー……でも、これ撃ったら工場も街も吹っ飛んじゃうよね……困ったなぁ」

    そう言って、あっさりと詠唱を解除してしまう。
    魔法陣は霧散し、ただの淡い光へと消えていった。

    「はぁ!? 何やってんだテメェ!!」

    「だって……人に怪我させるのはやだし、街壊したら後片付けが大変だもん」

    「フザけんなッ!! オレは……もっと殴られなきゃ強くなれねぇんだよ!!」

    「えぇ……殴られたいの? ……ドM?」

    オウルは素直に首を傾げ、ポケットからまたクッキーを取り出した。

    「じゃあ……お菓子食べながらお話ししようか。戦うより楽しいでしょ?」

    その無垢な笑顔に、ドルフは思わずバットを振るう手を止めた。
    胸の奥から、抑え込んできた感情が不意に溢れ出す。

    「……テメェ、バカだろ……」

    「うん、よく言われるよ」

    夜風が二人の間を通り抜けた。
    暴力の渦と天然の微笑み。
    本来なら交わらないはずのものが、不意に交錯し始めていた。

  • 5691◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:10:04

    工場跡に、風が鳴っていた。
    崩れた鉄骨の隙間から月光が差し込み、二人の影を淡く映す。

    ドルフは肩で荒く息をしながらも、まだバットを握り締めていた。
    その体は血に塗れ、立っているのが不思議なほどに満身創痍だ。
    だが――その眼はまだ死んでいない。

    「……オレを、最後まで……殴ってくれよ」

    彼の声は掠れていた。
    それでも願うように、挑むように響く。

    オウルは小さく笑って首を傾げる。

    「んー……でもさ、殴らなくてもいいんじゃない? 君はもう十分強いよ」

    「フザけんな……それじゃ意味がねぇんだ……ッ!」

    ドルフが咆哮する。
    その一歩ごとに地面が軋む。
    だが次の瞬間、彼の足がもつれ、膝をついた。

    「……ちっ……クソが……!」

    バットが手から滑り落ちる。
    それでも立ち上がろうとする彼に、オウルはふわりと近づいた。

    「ねぇ……無理しなくていいんだよ」

    そう言って、彼の掌から淡い光が溢れた。

  • 5701◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:10:22

    温かな癒しの魔法が、ドルフの裂けた皮膚をゆっくりと繋げていく。

    「……なんで……敵に、そんなこと……」

    「だって僕、誰も傷つけたくないんだもん。あ、でもさ……君と戦えたのは楽しかったよ?」

    オウルの天然な笑顔に、ドルフは言葉を失った。
    怒りでも暴力でもなく、奇妙な安堵が胸を満たしていく。

    「……はは……バカすぎて……笑えねぇな」

    彼は呟き、ゆっくりと目を閉じる。
    そのまま気絶するように倒れ込んだ。

    オウルはその身体を支え、困ったように笑う。

    「んー……どうしよっか。とりあえず、お菓子あげとく?」

    月明かりの下、二人の戦いは決着ではなく、奇妙な静寂で幕を下ろした。
    勝者も敗者もいない――ただ、不可思議な縁だけがそこに残った。

  • 5711◆ZEeB1LlpgE25/08/24(日) 16:10:46

    以上

  • 572二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 16:11:53

    天然煽りカス……

  • 573二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 16:12:24

    天然強キャラ……

  • 574二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 16:12:34

    最高だった!!

  • 575二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 16:13:34

    これ魔法の展開止めなかったらどうなってたんだろ

  • 576二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 16:17:00

    やっぱ天然にはキレよいツッコミだなぁ

  • 577二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:39:14

    純とかもこんな対応されてんのかなあ…

  • 5781◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 00:06:52

    題名『怨嗟と意思の庭』

  • 5791◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 00:07:37

    数言家の広大な屋敷、その門前に一人の男が立っていた。
    皺だらけの顔に憎悪を滲ませ、ぎらついた目で庭を睨みつける。

    マカイ――。
    五十五年の人生を、惨めと屈辱で積み重ねた男。
    不細工で、仕事もなく、心の支えすら持てず、ただ世界を呪い続けた。
    だがその怨嗟は、異能へと昇華した。

    「……ハッ、ここが数言家ってやつの屋敷か。
     チクショウ、強者ヅラしてる奴らに、負け犬の惨めさを思い知らせてやる……!」

    歪んだ笑みを浮かべる彼の胸の奥から、どす黒い気配が立ち昇る。
    それは彼の異能―― 「負け犬の怨嗟」。
    触れた瞬間、どんな英雄もどんな天才も、自分と同じレベルにまで叩き落とす呪いの力だ。

    ――ギィ。

    重厚な扉が音を立てて開く。
    庭に現れたのは、一人の少年の姿をした男。
    漆黒の衣を纏い、冷静な光を宿す片眼。

  • 5801◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 00:07:55

    数言理一。
    数言家現当主、そして“数言家最強”と謳われる存在。

    「……侵入者か。
     いや、ここまで堂々と立つとは、最初から俺に会いに来たのか」

    声は低く落ち着き、しかし鋭さを孕んでいた。
    その視線がマカイを射抜く。

    マカイは舌なめずりし、両腕を広げる。
    「ハハッ……そうだ、てめぇみてぇな化け物こそが獲物だ。
     ――お前も惨めで歪んだ負け犬である俺と同じところまで落ちてこい!!」

    瞬間、屋敷の庭に異様な気配が広がった。
    理一の身体に流れる膨大な技術と力が、無理やり削がれていく。
    筋肉の強靭さも、呼吸の安定も、刀の冴えも……全て、マカイが戦える程度の“レベル”まで引きずり下ろされていった。

    しかし理一は一切動じなかった。
    ただ静かに、片目を閉じ、短く呟く。

    「なるほど……これが、お前の力か」

    屋敷の庭を吹き抜ける風が、戦いの始まりを告げていた。

  • 5811◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 00:08:34

    数言理一の周囲を取り巻いていた研ぎ澄まされた気配が、確かに削がれていく。
    剣聖の如き技も、武人としての鋭敏な勘も、異能すらも……。
    その全てが、マカイの呪いに縛られていった。

    理一はゆっくりと刀を抜き、試しに振る。
    ……鈍い。
    切れ味はあるが、神速の軌跡を描くことはできない。
    彼は自らの感覚を冷静に分析し、低く呟いた。

    「……なるほど。本当に同じ“弱さ”に引きずり下ろす力か」

    マカイは勝ち誇った笑みを浮かべた。
    「どうだ? お前も所詮はただの人間だ。
     才能も、鍛錬も、血統も……全部無意味にしてやった!
     これで俺とお前は同じだッ!」

    言いながら、マカイは拾った鉄パイプを振りかざし、理一へ突っ込む。
    その動きは素人同然――だが、理一も同じレベルに落とされているため、反応が鈍る。

    ――ギンッ!

    刀とパイプが火花を散らす。
    理一は後ろへ弾かれ、庭の砂利を踏み締めて体勢を立て直した。

    「……確かに、技量も下がっている。
     だが……」

    片眼が鋭く光る。

  • 5821◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 00:09:02

    「意思まで落とせるわけじゃない」

    マカイの眉が引き攣った。
    「なに……?」

    次の瞬間、理一が踏み込む。
    同じレベルに下げられてなお、彼の一太刀は研ぎ澄まされていた。
    マカイは必死にパイプを振るい、防いだが――押し負ける。

    「ぐっ……!? バカな、力は同じはずだッ!」

    理一は冷静に答える。

    「同じ力を持つなら、勝敗を分けるのは――覚悟と研鑽の差だ」

    その言葉に、マカイの笑みが崩れ始めた。
    彼が誇る“負け犬の怨嗟”は絶対の力。
    だが、それだけでは覆せないものが確かにあった。

    庭を駆け抜ける二人の影。
    能力も技も同等に下げられた状況――。
    だが、戦いの流れはすでに理一へと傾いていった。

  • 5831◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 00:09:38

    荒い呼吸を繰り返しながら、マカイは血走った目で理一を睨みつけた。
    彼の能力は確かに理一を縛っている――だが、それでも一方的に押されている現実があった。

    「ふざけるな……ふざけるなよッ!!」

    パイプを振り回しながら、マカイは怨嗟の声を張り上げる。

    「お前も惨めで歪んだ負け犬である俺と同じところまで落ちてこいッ!!」

    その叫びに呼応するように、負け犬の怨嗟がさらに強く理一を蝕んでいく。
    理一の動きはさらに鈍り、握る刀も重さを増したかのようだった。

    庭に吹く風すら止まったかのような重圧。
    その中で、理一は静かに息を吐く。

    「……なるほど。ここまで来てようやく、君の“本気”が見えた」

    「なに……!?」

    「力を下げ、技を奪い、誇りを砕く……それが君の能力だろう。
     だが、意思までは届かない。君の呪いは、心を縛れない」

    片眼の奥で揺らぐ鋭い光。
    理一の一歩が、マカイには異様に重く映った。

  • 5841◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 00:09:55

    「バカな……! 同じ土俵に落ちたんだぞ!? 俺とお前はもう――!」

    理一の刀が振り抜かれる。
    マカイは必死にパイプで受け止めるが――その瞬間、全身に震えが走った。

    「う、動け……! なんで、俺の方が……ッ!」

    刀とパイプがぶつかり合い、次の瞬間――パイプがへし折れる。
    破片が宙を舞い、庭の砂利へ落ちた。

    理一は淡々と告げる。

    「……同じ土俵に立ったなら、あとはどれだけ“積み重ねてきたか”だ」

    マカイの顔が絶望に染まる。
    力も、技も、誇りも奪い取ってきたはずの能力――それが、まるで意味を成していない。

    最後に残ったのは、理一の冷静沈着な剣気と、折れぬ心だけだった。
    だがそれこそが、最も揺るぎない力だった。

  • 5851◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 00:10:21

    砕けたパイプを手放し、マカイは膝から崩れ落ちた。
    荒い呼吸と共に、彼の目には涙とも汗ともつかぬ液体が滲んでいた。

    「……なんでだよ……! なんで……俺の力で……お前を落としたのに……!」

    庭に響く嗚咽。
    マカイは拳を握り締め、地面を叩く。

    「俺は……惨めで、歪んで、どうしようもない……!
     お前も同じにしてやったのに……何で、立ってられるんだよッ!」

    理一は刀を下げ、淡々と彼を見下ろしていた。
    冷たい視線ではなかった。そこには確かに怒りと悲しみが混じっていた。

    「君は……自分の弱さを、他人を引きずり下ろすことで誤魔化した。
     けれど、本当の“強さ”はそんなところにはない」

    マカイは涙で歪んだ顔を上げる。

    「……強さ……?」

    理一は短く頷き、言葉を続ける。

  • 5861◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 00:10:34

    「守りたいもののために立つ意思。
     失ってもなお歩き続ける覚悟。
     そして――積み重ねた日々。
     それだけは、どんな力でも奪えない」

    その声音は厳しくもあり、どこか優しさを孕んでいた。
    マカイの胸に、これまで届かなかった真実が突き刺さる。

    「……俺には……そんなもん、なかった……」

    全身から力が抜け、マカイはうつ伏せに倒れ込む。
    怨嗟の力は霧散し、屋敷の庭に静寂が戻った。

    理一はしばらく彼を見下ろしていたが、やがて刀を収めた。

    「――敗者であることと、負け犬であることは違う。
     君がそれを理解できるかどうかは……ここからの話だ」

    そう言い残し、理一は背を向けて歩き出した。
    月明かりに照らされたその姿は、決して折れることのない強さを象徴していた。

  • 5871◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 00:11:04

    以上

  • 588二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 06:50:18

    かっこいい…
    こういう光を見失わないキャラって好きやわ

  • 5891◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:27:05

    題名『深海の沈黙』

  • 5901◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:33:05

     深夜零時をわずかに過ぎた時刻。
     軍服を纏った男、ハリス・アルマダは、朽ち果てた街路を一人歩いていた。
     足音だけが、瓦礫と化した舗道に乾いた響きを残す。
     冷え切った風が吹き抜けるが、その顔は感情を見せない。
     戦場に慣れ過ぎた軍人は、恐怖も戸惑いも表に出さぬまま、前進を続ける。

     彼の歩みを遮ったのは、電源の入っていないはずのブラウン管テレビだった。
     壊れた商店の中に、埃を被ったまま残された旧式の機械。
     だが突如として、画面が眩い光を帯び、ノイズが走った。
     ザザッ、という不快な音が夜気を切り裂く。
     そしてそこに映ったのは、黒背景に白文字のタイトル——【死亡予報】。

     ハリスは一歩立ち止まる。
     冷静な目が、ありえない現象を映した画面に注がれる。
     その直後、無機質で抑揚のない声が流れ出した。

    『本日、ハリス・アルマダ 死亡。
     死因は——爆死です』

     読み上げと同時に、画面には映像が現れた。

  • 5911◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:33:24

    炎に包まれ、爆風に吹き飛ばされる一人の男。
     それは間違いなく、今ここに立っている彼自身の姿だった。

     ほんの数秒後、現実世界に同調するかのように、周囲の空間に数十の爆薬が浮かび上がる。
     現象は「演出」ではない。現実を侵す「死の宣告」だった。

     ハリスは無言で息を吐いた。
     その眼差しは炎を映しても揺らがず、冷え切っている。
     彼の背後に影が広がり、幾つもの砲塔と艦の幻影が浮かび上がった。
     亡霊の艦隊——彼と共に戦う、戦場に散った兵たちの魂。

    「……全砲塔、迎撃」

     短く呟く。
     直後、無数の砲口が咆哮を上げた。
     弾幕が空間を覆い、爆薬を次々と破壊していく。
     爆炎は確かに広がるが、彼を呑み込むことはない。
     軍人はただ一歩も退かず、その中を歩いた。

     炎の残滓が風に消えると同時に、テレビは再びノイズを走らせた。
     映像は揺れ、無機質な声がまた響く。

    『失礼しました。
     死因は——溺死でした』

     世界が再び、死へと形を変えようとしていた。

  • 5921◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:36:24

     再び画面が揺らぎ、ナレーターの声が冷ややかに響く。

    『失礼しました。
     死因は——溺死でした』

     その言葉と同時に、アスファルトを覆っていた瓦礫が水面に沈むように消えた。
     気づけばハリスの足元に波紋が広がり、次の瞬間には街全体が水に呑まれた。
     重力を無視するかのように、海水は押し寄せ、呼吸を奪う。
     上も下もなく、全てが濁流へと変わる。

     水中に浮かびながらも、ハリスの表情は一切揺らがない。
     肺を満たすべき空気は無い。だが、彼は軍人である。
     水泳訓練も耐久訓練も積み重ね、己の体を律する術を知っている。
     だが、これはただの水難ではない。
     「死」を確定させる怪異の罠——抗うだけでは、いずれ終わる。

     彼の周囲に再び影が広がった。
     亡霊艦隊の幻影。
     水中に浮かび上がった戦艦の砲塔が唸り、魚雷が白銀の光跡を残して放たれる。
     雷鳴の如き轟音が水底に響き渡り、濁流を切り裂く爆発が起きる。

     しかし、その爆発すらも水に飲まれ、拡散し、意味を持たぬ。
     ハリスは一瞬で理解した。
     ここは「海」であるが、現実の物理法則は適用されない。

  • 5931◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:37:00

     これは映像に従う死の舞台。
     水は無限に広がり、浮上の可能性すら無い。

     肺に酸素が届かず、身体が鈍くなる。
     普通ならここで絶望に飲まれる。
     だが彼は、軍靴を鳴らす代わりに、心の中で命令を下した。

    「……艦隊、排水を開始」

     その声に応じ、幻影の艦が姿を変える。
     甲板から光の砲門が開き、吸い込むように周囲の水を取り込んだ。
     それは現実の兵器ではなく、死者の霊魂が織り成す不可能の技。
     数秒後、彼の周囲は一気に空間へと変貌し、水は砲塔へと吸い込まれて消えていく。

     呼吸を取り戻した瞬間、彼の胸は僅かに上下した。
     だがその表情は依然として無表情であり、冷徹さを崩さぬ。

     残されたのは、異様な静寂。
     だがその静寂は長くは続かない。
     テレビ画面が上下左右に現れ、無機質な声が響く。

    『失礼しました。
     死因は——圧死でした』

     次なる死が、軍人を押し潰そうと迫っていた。

  • 5941◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:38:28

     静寂を切り裂くように、ナレーターの声が画面から流れる。

    『失礼しました。
     死因は——圧死でした』

     その言葉を合図に、虚空が歪んだ。
     四方八方に現れた巨大な壁が、ゆっくりと、だが確実に迫ってくる。
     壁は石造りにも見え、鉄にも見え、時に肉のようにも見える。
     材質は目まぐるしく変わり、ただ「圧殺」という結末だけが確定していた。

     ハリスは表情を変えない。
     呼吸を整え、冷徹な瞳で迫り来る壁を測定する。
     距離、速度、閉じるまでの残り時間。
     脳裏で数値が並び、軍人の訓練で磨かれた計算が瞬時に答えを導き出す。

    「……全艦、斉射」

     亡霊艦隊の砲門が開く。
     水中でさえ轟いたあの咆哮が、今度は空間そのものを震わせた。
     無数の砲弾が壁を撃ち抜き、炸裂。
     煙と衝撃が視界を覆い、破片が飛び散る。

     だが、壁は崩れない。
     撃ち抜いた箇所は瞬時に修復され、より強固に、より厚く膨れ上がる。
     ハリスの眼が僅かに細められる。

    「自己修復型か……」

     圧殺という結末を約束する壁は、いかなる攻撃も飲み込み、破壊されれば再生する。
     まさに「死因の具現化」。

  • 5951◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:39:38

     避けることも、壊すこともできない死が迫ってくる。

     壁は彼の身体をすっぽりと覆うように近づき、骨を軋ませる圧力が遠くからでも伝わってくる。
     普通の人間なら、恐怖で心臓が止まるだろう。
     だがハリスの瞳には恐怖はなかった。

    「……艦隊、陣形変更」

     亡霊艦隊が形を変える。
     戦艦は横一列に並び、まるで防壁のように前方に立ちはだかる。
     次の瞬間、全艦が一斉に自爆した。
     轟音と閃光が爆裂し、迫り来る壁を押し戻す。

     だが、それでも完全には止まらない。
     爆炎を突き破り、壁はなおも迫る。

     ハリスは動かない。
     額に汗一つ浮かばぬまま、静かに次の指示を下す。

    「……旗艦、霊魂解放」

  • 5961◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:40:54

     彼の背後に、巨大な影が立ち上がった。
     沈んだ戦艦の亡霊が、今度は人の形を取り、巨兵のように姿を現す。
     その巨兵が両手を広げ、壁を受け止めた。

     轟音。
     骨が砕けるような圧力が響き渡る。
     だが巨兵は倒れない。
     圧し潰されるべき未来を、亡霊がその身で引き受けているのだ。

     ハリスは低く呟く。

    「死を拒むのは人ではない……魂だ」

     しかし、ナレーターの声は止まらなかった。

    『失礼しました。
     死因は——焼死でした』

     壁が消え、代わりに世界が紅蓮に包まれる。

  • 5971◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:45:33

     突然、視界が赤く染まった。
     ナレーターの無機質な声が、再び空間を震わせる。

    『失礼しました。
     死因は——焼死でした』

     次の瞬間、四方の虚空から炎が噴き上がる。
     炎はただの火ではなかった。
     爆薬のように膨張し、油のように広がり、そして生き物のように蠢く。
     まるで「死」を確実に実現するために存在する火。
     燃え移れば、一片の灰さえ残さぬだろう。

     ハリスは立ち尽くしたまま、その火を睨む。
     炎が押し寄せる。
     焼け付く熱気が、皮膚を切り裂くように突き刺さる。
     それでも彼の瞳には一片の怯えもない。

    「……艦隊、潜水形態」

     亡霊艦隊が姿を変えた。
     海底に沈んだ潜水艦たちが、彼の背後に現れる。
     甲板の影から水流が噴き出し、虚空に「海」が形成されていく。

  • 5981◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:46:25

     炎に対抗する唯一の手段、水だ。

     火と水がぶつかり、轟音と蒸気が辺りを覆い尽くす。
     激しい爆裂音が耳をつんざき、蒸気はまるで霧のように周囲を覆った。
     その中でハリスは目を細める。

     蒸気の奥、炎は消えていなかった。
     むしろ水を呑み込み、さらに勢いを増していた。
     「焼死」という未来は必然。
     水で消せるはずもなく、炎は逆に膨張を続ける。

     ハリスの喉が僅かに鳴る。
     それは恐怖ではない。
     次の手を選択するための一瞬の間だ。

    「旗艦、対空射撃」

     砲門が再び開いた。
     炎に向けて無数の砲弾が撃ち込まれる。
     爆風が炎を散らし、一瞬の空白を作り出す。

  • 5991◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:46:51

     その隙に潜水艦の亡霊が放った冷水が、局所的に火を押し返した。

     だが、すぐに炎は再び広がる。
     まるで「生きている火」そのものだ。
     彼を、世界を、必ず焼き尽くすという意思を帯びていた。

     ハリスは短く呟く。

    「……悪趣味な現象だ」

     その声は炎にかき消される。
     熱で視界が揺らぎ、甲冑のような軍服が焼け焦げ始める。
     皮膚に焼ける痛みが走る。
     それでも彼は倒れない。

    「艦隊、全力迎撃——」

     その瞬間、またナレーターの声が割り込んだ。

    『失礼しました。
     死因は——溺死でした』

     炎が唐突に消え、代わりに頭上から海が落ちてくる。
     幾億トンもの水が、空から一気に押し寄せた。

  • 6001◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:48:53

     空から押し寄せた水は、一瞬で広大な海を作り上げた。
     ハリスは全身で水圧を感じる。
     だが、彼は微動だにせず潜水艦の亡霊艦隊と一体化していたため、身体はまるで海中の一部のように自由に動く。

     水流に流される建物の破片、街路灯、車両の残骸——それらが次々に押し寄せ、まるで都市全体が波に呑まれているかのようだ。
     海中で戦う感覚は、彼にとって初めてではなかった。
     だが、今回の相手はただの自然現象ではない。

    『失礼しました。
     死因は——溺死でした』

     ナレーターの声が、冷たく、無機質に響く。
     水は止まることを知らず、波は螺旋状に回転し、ハリスの周囲を完全に囲った。
     水圧が強まり、呼吸すら困難になる。
     まるで水そのものが意志を持って、彼を飲み込もうとしているかのようだ。

     だが、ハリスは淡々と指示を出す。

    「艦隊、深度下げ——波を削れ」

     潜水艦の亡霊たちが、彼の意思に応える。
     艦体の螺旋スクリューが回転し、水流を押し返す。
     水圧がかかる中、彼らはまるで水の中での精密機械のように正確に動く。

     それでも水は強力で、局所的な乱流が何度もハリスを押し流す。
     水底に叩きつけられれば、体は破壊されかねない。
     だが、亡霊艦隊は完璧に彼を守り、同時に水流を制御する。

     水底に沈んだ街の残骸が、異様な静寂を伴い揺れていた。

  • 6011◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:49:15

     光は届かず、すべてが青黒く、幽霊のように揺らめく。
     その中で、ハリスは一点を見据える。
     未来の映像が、次に何が来るのかを教えてくれる。

    『失礼しました。
     死因は——電撃死でした』

     水が揺らめく中、次は電撃が走る。
     水中での電撃は、直撃すれば即死に等しい。
     だが、ハリスは冷静だ。
     砲塔に取り付けた電磁防御シールドが瞬時に展開され、彼の体を包む。

     未来を知る力——ナレーターの声が、恐怖を回避する鍵になる。
     死を知ることは、回避のための戦略になるのだ。
     彼は言葉少なに艦隊を指揮し、波と電撃の中で静かに進む。

     水圧、電流、破片——すべてが死を象徴する。
     だが、彼は沈まない。
     沈めることができるのは、未来だけ——彼の腕にかかっているのだ。

     そして、ハリスの目に、中央の首吊り死体が浮かび上がる。
     動かず、声もなく、死の象徴としてそこにある。
     ここを破壊すれば、現象は消滅する。

     全ては、あと一歩の判断にかかっていた。

  • 6021◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:50:10

     深海の暗闇の中、砕けた街の残骸と水流が渦を巻く。
     ハリスは艦隊と一体化し、全身で水圧と流れを感じながら、静かに前進する。
     彼の視界の中心には、首吊り死体——死の象徴が揺れていた。

     ナレーターの声が響く。

    『失礼しました。
     死因は——溺死でした』

     過去の映像と同じ未来が、目の前に展開する。
     だが、ハリスは臆することなく艦隊を操作する。
     砲塔から発射される亡霊魚雷が水流を割き、敵の死因となる波を分散させる。

     水圧が強まる中、波はねじれ、街の瓦礫を押し寄せる。
     しかし、ハリスの冷静な指示により、艦隊は正確に動き、彼を守る盾となる。
     まるで海そのものが、彼の意志に従うかのようだった。

    『失礼しました。
     死因は——電撃死でした』

     今度は電流が水中を貫く。
     直撃すれば即死に等しい危険だ。
     だが、艦隊が発する電磁防御シールドが、ハリスを包み込み、致命的な打撃を避けさせる。

     首吊り死体は静かに揺れるだけで、何も行動しない。
     だが、その存在はこの異常現象を維持する核そのものだ。
     ハリスは理解する——破壊すれば全て終わることを。

     冷静な判断と無言の指示で、彼は艦隊の砲塔を集中させる。
     霊的エネルギーが炸裂し、首吊り死体を直撃する。

  • 6031◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:51:07

     木製の首吊り台が崩れ、死体は水中に沈んだ。

     異常現象は一瞬で消え去り、海は穏やかに戻った。
     静寂の中、街の瓦礫がゆっくりと沈む。
     ハリスは艦隊と分離し、冷たい海水に手を入れる。
     静かな海底が、まるで戦いの跡を忘れたかのように平穏だった。

     未来を知る力、冷静な判断、そして死を回避する意志——
     全てが重なり、彼は生き延びた。
     そして、海の底に沈む首吊り死体を見下ろし、無言のまま呟く。

    「……これで、終わりだ」

     海は静かに波打ち、深淵の底で、ただ静寂が支配する。
     ハリスは生き残った者として、静かに帰還する道を選ぶ。
     未来を知る力と死の予兆——それを制御した彼の意思が、海底に勝利を刻んだのだ。

  • 6041◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 14:51:53

    以上

  • 605二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 16:51:32

    圧死どうやって突破すんのかと思ってたらそんな事も出来たのか…!
    いやーおもろかった

  • 606一号の作者25/08/25(月) 17:09:08

    軍人キャラかっこいいな

  • 607二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 18:09:55

    死亡予報良かった

  • 6081◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:15:01

    題名『冷血の温もり』

  • 6091◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:15:46

    マリンは淡い光の差し込む森の中でじっとしていた。
    全身の鱗が光を反射して微かに輝き、まるで生きた宝石のようだった。

    イグアナとしての感覚は鋭く、遠くの風の匂いも、近くの小動物の動きもすぐに察知できる。
    しかし彼女の目は何も逃さずとも、感情は静かに保たれていた。

    「私、今日も守らなきゃ」

    小さく呟く声は人間の言葉に変換されても冷静そのもので、揺れることはなかった。

    森の奥から煙のような影がゆらりと現れる。
    亜熱帯の洞窟から抜け出したラスボス――シャビリアンヴァンパイアだ。

    その姿は人間の男性の形だが、瞳は獲物を見据える蛇のように鋭い。
    悠然と空気を支配し、周囲を圧迫する存在感を漂わせていた。

    マリンは一歩も動かず、その存在を観察する。
    彼女の内側ではイドとスーパーエゴが微細に動き、相手の意図や危険を解析していた。

    「ここで私が動けば、無意味な殺生になる」

    低く息を吐くように呟くと、力のコアが微かに震える。
    能力が反応し、相手の行動パターンを読み、最適な対応を導き出していた。

    シャビリアンヴァンパイアは一歩前に出ると、ゆっくりと血液を見せつけるように手を翳す。
    それだけで【肉体強化】が発動するはずだった。

    マリンは瞳だけで相手を見定め、身体は一切動かさない。

  • 6101◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:16:02

    「私の体温とこの森の空気……温度差があるかもしれない」

    冷静に分析するその間も、相手は煙のように体を変化させ、狭間をすり抜ける。
    眷属の小さな影も飛び出してきたが、マリンは無駄な動きをせず、全てを受け流した。

    「焦る必要はない……ここで戦う意味はない」

    心の中でそう繰り返し、足元の葉を踏む感覚だけを意識する。

    煙化した影が目前で膨らみ、急に姿を消す。
    だがマリンは平常を崩さず、自然に合わせたバランスを保っていた。

    危険は確かに目の前にあるのに、心は平穏のままだ。
    彼女の能力は攻撃よりも、制御と分析に特化している。
    戦わずとも、相手の行動を制御できる力を秘めていた。

    やがてシャビリアンヴァンパイアは動きを止め、警戒するように様子を窺う。

    「私はあんたを傷つけない。だから、あんたも暴れなくていい」

    森の静寂が二人を包み込み、時間が緩やかに流れる。
    戦闘の兆しはあるが、まだ何も起きない。

    マリンの心は、自然のリズムに寄り添いながらも相手の行動を完全に掌握していた。
    その姿は、ただのイグアナではなく、森そのものを統べる存在のように見えた。

  • 6111◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:16:41

    マリンは静かに森を歩いていた。
    葉の上を跳ねる小さな虫、樹々のざわめき、どれも彼女にとっては自然のリズムだった。

    だがその奥に、異質な気配が混じっている。
    まるで空気そのものが血の匂いを孕み、重たく変質していた。

    シャビリアンヴァンパイアが姿を現す。
    その動きは優雅で、だが同時に死神の訪れを思わせる静けさがあった。

    マリンは人間の姿に変わった。
    しなやかな体を持つ老齢の女性の形だが、その眼差しは鋭く光を宿している。

    「……また来たのね」

    小さな声が森に響く。
    感情を抑制した声色は、驚きも怒りも含まれていない。

    シャビリアンヴァンパイアは煙のように揺れながら答えを返さない。
    ただその視線はマリンの胸に宿る力のコアを探るように向けられていた。

    マリンは気づいていた。
    相手が自分の血液を求めていることに。
    それを奪えば、奴は【肉体強化】も【眷属召喚】も発動できる。

    「血を与えると思ってるの? あんたは私を舐めすぎよ」

    マリンはそう言うと、己の能力を少しだけ開いた。
    イド、スーパーエゴ、エゴ――その三つの均衡を操作し、相手の欲望を微かに揺さぶる。

    シャビリアンヴァンパイアの体が一瞬だけ硬直する。

  • 6121◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:16:58

    血を求める欲求が増幅され、しかしその欲望はスーパーエゴによって制御され、矛盾を生み出した。

    「欲しいのに、抑えている……その苦しみを理解できる?」

    彼女の声は穏やかだった。
    だがその穏やかさこそが、鋭い刃のように相手の精神を締め付ける。

    シャビリアンヴァンパイアは呻くように低く息を吐き、煙となって姿を散らす。
    次の瞬間には背後に現れ、爪を振り抜こうとした。

    マリンは振り返らない。
    ただ冷静に右手を上げ、空間の欲求そのものをねじ曲げる。

    爪が迫る瞬間、ヴァンパイアの本能が揺れ、攻撃の軌道が逸れる。
    爪は彼女の髪先をかすめ、空を切った。

    「だから言ったでしょう。あんたの欲望は、私の掌の上なのよ」

    彼女の言葉に、ヴァンパイアの目がわずかに見開かれる。
    その一瞬、彼の中に“恐れ”が芽生えた。

    だが同時に、彼の口角が不気味に歪む。
    恐怖と共に、興奮の欲望もまた燃え上がっていたのだ。

    マリンは冷ややかに彼を見据える。
    次の一手を誤れば、戦いは避けられない。
    それでも彼女の心は一点の乱れもなく、凪いだ湖のように静かだった。

  • 6131◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:17:38

    森の空気がさらに重たく沈んでいく。
    樹々のざわめきは止み、夜の帳が早くも落ち始めていた。

    マリンとシャビリアンヴァンパイアの対峙は、静かなまま緊張を孕んでいく。
    一歩も動かないはずなのに、互いの気配は鋭くぶつかり合っていた。

    ヴァンパイアは一瞬で間合いを詰めた。
    その爪は月光を反射し、鋭い刃のように煌めいている。

    マリンは身をかわす。
    人間の老女の姿のまま、最低限の動きで攻撃を外していく。
    その冷静さは常軌を逸しており、呼吸さえ乱さなかった。

    「焦っているわね。血が欲しいのに手が届かない」

    ヴァンパイアは唸り声をあげる。
    次の瞬間、身体が霧に変わり、周囲を覆う。

    マリンの視界は奪われた。
    だが彼女は瞼を閉じ、心の奥に流れる欲望の波を感じ取る。

    ヴァンパイアのイド――それは尽きぬ渇き。
    血を求め、魂を欲し、尽きることのない飢餓そのもの。

  • 6141◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:18:12

    マリンは微かに笑う。

    「欲望に縛られている限り、あんたは私に勝てない」

    その声に応じるように、霧の中から複数の影が飛び出した。
    幽体のコウモリたち――【眷属召喚】によるものだ。

    一斉に噛みつこうと迫ってくる。
    だがマリンは動かない。

    彼女の内でスーパーエゴが広がり、己の肉体を抑制する。
    欲求に応じて反射的に動くことを禁じ、無駄な行動を削ぎ落とす。

    結果として、幽体の群れは彼女の前で宙を舞い、噛みつく寸前で動きを失った。
    理性と本能の均衡を歪められ、ただ彷徨う存在へと変えられたのだ。

    「……これが、あんたの兵隊?」

    彼女の冷たい言葉に、ヴァンパイアの目が赤く燃える。
    その怒りは理性を超え、ついにイドの暴走を誘発した。

  • 6151◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:18:29

    ヴァンパイアは再び霧となり、マリンの背後に迫る。
    爪が振り下ろされる。

    今度は避けなかった。
    マリンは己の胸を指で押さえ、囁くように呟く。

    「本能を……止める」

    その瞬間、ヴァンパイアの動きが凍りついた。
    渇きも怒りも、全ての欲望が断たれ、身体の制御を失う。

    爪は彼女の肩をかすめただけで止まり、地面を裂くだけに終わった。

    「ほら、欲望がなければ、ただの抜け殻」

    マリンの声は変わらず静かだった。
    だがヴァンパイアは笑みを浮かべる。

    「……面白い」

    その一言と共に、彼の体から再び煙が噴き上がる。
    恐怖ではなく、歓喜の気配。
    欲望を断たれてもなお、戦いの炎を消さぬ存在。

    マリンの瞳がわずかに細められる。
    冷静さの奥に、初めてほんの僅かな警戒が浮かんでいた。

  • 6161◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:19:11

    洞窟の奥で、湿った空気が震えていた。
    静かな森とは違い、ここには血と死の匂いが充満している。

    ヴァンパイアの足音は響かない。
    彼は霧となり、壁をすり抜け、無音でマリンの周囲を漂う。

    その動きを察知するのは困難だった。
    だがマリンは表情ひとつ変えず、肩に手を置き落ち着きを保つ。

    「……欲望を断たれたまま、よく動けるものね」

    霧の中から声が返る。

    「欲望がなくても、習性は残る。私の存在は群れの怨嗟の塊……その記憶が、勝手に体を動かす」

    その瞬間、地面を突き破って血色の手が伸びた。
    捕らえることだけを目的とした異形の腕が、マリンの足を掴む。

    しかし、彼女は落ち着いた声で応じた。

    「……本能の残滓か。なら、制御は容易」

    足に絡みついた力を逆に利用し、マリンは軽やかに跳躍した。
    洞窟の岩棚へ移り、上空からヴァンパイアを見下ろす。

    老女の姿でありながら、その動きは神速だった。
    身体能力が武神をも超えると語られる所以がそこにあった。

    だがヴァンパイアも笑う。

  • 6171◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:20:01

    「いい……退屈しない」

    霧が凝縮し、彼の肉体が再び現れる。
    全身を覆う闇のような力が膨張し、鋭利な牙が赤光を帯びる。

    「血を一滴でも啜れば、私は完成する」

    「その一滴が、届くと思う?」

    互いの声がぶつかり、次の瞬間には衝撃音が洞窟に轟いた。

    ヴァンパイアの爪とマリンの掌が激しく交錯する。
    掌に宿るのはスーパーエゴの制御――相手の衝動を縛る力。

    一方でヴァンパイアは肉体強化を重ね、ただ圧倒的な力で押し潰そうとしていた。

    「人の姿で、これか……化け物め」

    「化け物と言われるのは慣れているわ。イグアナだから」

    その余裕の返しにヴァンパイアの表情が僅かに歪む。
    次いで煙化――体を霧に変え、背後へ回り込む。

  • 6181◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:20:19

    マリンは振り返らない。
    霧の流れを読むことで、次の位置を察知していた。

    「……背後」

    その呟きと共に、彼女の手刀が霧の中心を薙ぐ。
    だがヴァンパイアはすぐさま別の場所に姿を変え、無数の残像を生む。

    「捕らえられるか?」

    マリンの瞳が細く光る。

    「捕らえる必要なんてないわ。本能が……勝手に自壊する」

    イドに干渉する力が放たれ、残像の全てが同時に震えた。
    抑え込まれていた飢えと渇きが暴走し、霧そのものが不安定に揺らぐ。

    だがその揺らぎを、ヴァンパイアは強引に抑え込み、笑う。

    「まだだ。私は……まだ折れない」

    両者の均衡は、わずかに崩れ始めていた。
    洞窟全体がその緊張に軋み、崩落の兆しを見せている。

    戦いは、さらに深い領域へと進もうとしていた。

  • 6191◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:20:57

    洞窟の中に、冷たい滴りが響いていた。
    それはただの水音のはずなのに、耳に届くと血の鼓動のように思えた。

    ヴァンパイアの飢えが、場を支配していた。
    彼の目は赤く爛れ、牙は唇を突き破るほどに伸びている。

    「血を……欲する……!」

    叫びと共に、地面から幾千の影が噴き上がる。
    それは無念を宿したコウモリたちの残滓――眷属召喚。

    影の群れがマリンに襲いかかり、爪や牙が空気を裂く。

    だが、マリンは一歩も退かず、低く息を吐く。

    「イド……抑制」

    冷徹な声音とともに、無数の蝙蝠たちが一斉に硬直した。
    暴れるはずの影は震えながらその場に縫い付けられ、動きを止める。

    「……やはり効くのね」

    マリンは淡々と呟く。
    しかしヴァンパイアの口角は不気味に吊り上がった。

    「効くからこそ……楽しめる」

    彼の身体が膨張し、筋肉はさらに隆起した。
    抑え込まれたイドを、強靭な意志で無理矢理解き放ったのだ。

  • 6201◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:21:30

    大地が震え、洞窟の岩盤が砕け散る。
    ヴァンパイアの手刀が振るわれ、岩壁を紙のように裂く。

    「理性も、欲望も、私は両方食らう!」

    「欲望を食らっても……理性は戻らない」

    マリンの眼光は冷たい。
    次の瞬間、彼女の掌から透明な波が広がった。

    それはエゴの力。
    飢えと抑制の間に均衡を作り、強制的に安定させる調停の力。

    「な……体が……止まる……?」

    ヴァンパイアは戸惑いを見せた。
    暴れ狂うはずの腕が震え、足が地に縫い付けられたように動かない。

    「あなたの欲望は、私が整える。暴走もしない、自由もない。ただ縛られるだけ」

    「黙れええええええ!」

    怒号とともに、ヴァンパイアは煙化して拘束を破った。
    霧が洞窟全体を覆い、視界は完全に奪われる。

    マリンは微動だにせず、霧の流れを読む。

    「……風向きが変わった」

    彼女の足元で、小さな石が転がった。

  • 6211◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:22:09

    次の瞬間、背後から牙が迫る。

    しかしマリンは振り返らない。
    代わりに、冷たい声を響かせた。

    「スーパーエゴ、全制御」

    空気が凍りついたかのように静止した。
    ヴァンパイアの牙がマリンの首筋に届く直前で止まる。
    その目に宿っていた狂気が、徐々に消えていった。

    「な……ぜ……動けぬ……」

    「あなたの理性を……私が握っているから」

    霧が晴れ、ヴァンパイアの姿が露わになった。
    その肉体はなお強靭でありながら、膝が震えていた。

    均衡は、完全にマリンの支配下へ傾きつつあった。

  • 6221◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:22:51

    洞窟の奥で、二つの存在が対峙していた。
    長き飢えに駆られたヴァンパイアと、それを抑え込むイグアナ。
    理性と欲望がせめぎ合い、空気が張り詰める。

    「……私が、四千年の飢えに……屈するはずが……ない」

    ヴァンパイアは震える膝を押さえ、再び立ち上がろうとした。
    肉体強化の力を発動させようと、血を求めて牙を鳴らす。

    しかしマリンは静かに首を振った。

    「もう、あんたに血は必要ない」

    その言葉に、ヴァンパイアの瞳が揺れる。

    「なに……?」

    「欲望も、理性も……全部、私が管理している。あんたの中にある『空腹』は、もう本物じゃない」

    ヴァンパイアは叫んだ。

    「偽りだと!? 私の存在そのものが、飢えだというのに!」

    怒号が洞窟を震わせた。
    しかし次の瞬間、その声は掠れて消えた。
    マリンの力によってイドは抑えられ、スーパーエゴは極端に増幅されていたのだ。

    「……あんたは生きてきた。無念を食らい、血を吸い、冒険者を狩り続けて。けど、それももう終わり」

    マリンの眼光は冷たいが、その奥には憐れみがあった。

  • 6231◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:23:15

    「これ以上、あんたを放っておいたら……ここに来る者たちが、みんな欲望の餌になる。だから――眠りなさい」

    ヴァンパイアの身体ががくりと崩れ落ちた。
    煙化も発動せず、ただ膝をついたまま硬直する。

    「私が……眠る……?」

    「ええ。永遠に」

    その囁きは冷たくも優しい。
    ヴァンパイアの赤い瞳から光が消え、長い牙がゆっくりと縮んでいく。
    千年単位の怨念の集合体が、今、静寂の中で霧散していった。

    洞窟には再び、水滴の音だけが響いた。
    マリンはその場に立ち尽くし、深く息を吐いた。

    「……やれやれ。人間の世話だけでも面倒なのに、ヴァンパイアの後始末まで背負うなんてね」

    彼女は人間の姿を解き、再びただのイグアナへ戻った。
    鱗に湿った光が宿り、小さな身体が静かに岩をよじ登る。

    やがて洞窟の外へと歩き出し、差し込む朝日を浴びる。
    体を温める光に、マリンは小さく目を細めた。

    「……やっぱり、太陽が一番ね」

    その声は誰に聞かせるでもなく、淡く消えていった。

    夜明けの均衡は保たれた。
    そしてスレイ家の守護者は、今日も変わらず生きている。

  • 6241◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:23:40

    以上

  • 625二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 19:29:32

    良かった!!

  • 626二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 19:29:50

    イグアナなのに強キャラ感が半端ない

  • 627二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 19:34:15

    その点マリンさんってすげぇよな
    最後まで余裕たっぷりだもん

  • 6281◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 19:43:21

    20:30から安価10個募集
    テンプレートはこれで固定

    名前:
    年齢:
    性別:
    種族:
    能力:
    能力概要:
    弱点:

  • 629二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:29:59

    このレスは削除されています

  • 630二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:00

    名前:シュアエル
    年齢:不明
    性別:両性具有
    種族:大天使(高次元存在)
    能力:ヨハネの黙示録「7つのラッパ」
    能力概要:
    『ヨハネの黙示録』にて記された、終焉を告げる7つのラッパに因む「雷・疫病・審判・火・地震・封印・滅び」の7つの最上位権能を有する。
    各権能を高次元存在としての凄まじい判断力で適格に使い分け、あらゆる生命と概念に終焉をもたらす。
    ~ヨハネの黙示録第11章より引用~
    「第七の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、大きな声々が天に起って言った、『この世の国は、われらの主とそのキリストとの国となった。主は世々限りなく支配なさるであろう』。」
    弱点:7つのラッパの権能を全て同時に使用することは出来ない。主神及び主神に仕える天使以外の全存在を下等生物と侮っている。頭上の天使の輪が弱点。

  • 631二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:00

    名前:ネロ
    年齢:9歳
    性別:女
    種族:人間
    能力:【禁断】
    能力概要:あまりにも膨大で言葉にも出来ぬ悍ましい【禁断】を使う
    弱点:反動お構いなしに【禁断】を使いまくるのですぐボロボロになる

  • 632二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:00

    名前:たかしくん
    年齢:小学五年生前後
    性別:男
    種族:地縛霊
    能力:点P
    能力概要:『一定の速度で絶対に止まらない特性』を持つ点Pという鉄球を操る。
    自身を点Pに代入することで瞬間移動のような芸当も可能
    弱点:行動範囲が池に縛られており、ずっと周囲を一定の速度で走っている。落ち着きがない

  • 633二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:01

    名前:疫神
    年齢:不明
    性別:女
    種族:疫病神
    能力:疫病と災いを齎す程度の能力
    能力概要:相手に絶えず疫病や災いを与える
    疫神が能力発動を止めるか死ぬかしないと常にどんどん疫病や災い怪我が追加される為再生、治すのは無意味
    治っても即座に新しく疫病や災いや怪我が発症、降りかかる
    中でも世界三代激痛、癌、エイズなどの病気は強力
    機械や無機物の場合は故障などが頻発する
    弱点:能力発動は疫神の一定範囲にいることが条件なので離れれば追加の疫病や災いは来ない
    また遠距離攻撃が苦手

  • 634二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:01

    名前:欠落者
    年齢:謎
    性別:無し
    種族:謎、人の形にも見える黒い靄
    能力:綻び
    能力概要:現れた場所に世界の綻びを作る。綻びが生じた地点から一定範囲はあらゆるものが存在出来ない欠落領域となり、元々領域内にあったものと領域へ侵入したものは強度に関わらず消滅する。欠落者が生物と接触した場合、接触箇所に綻びを作るが、領域化するまでは猶予がある。
    4箇所以上の欠落領域に囲まれた場合、囲まれたエリアの内側は消失し、4つの領域とその内側が統合された一つの広大な欠落領域になる。欠落領域内は外側からのいかなる手段においても観測は不可能であり、真っ黒に塗り潰された様に見える。欠落者は欠落領域内において影響を受けず存在でき、欠落領域同士の間を瞬間移動も可能。また誰にも観測されていない死角にも瞬間移動できる。

    弱点:見られること、観測されることが弱点。他者からの観測は徐々に欠落の補完へと繋がり、それにより欠落者は欠落者として存在を維持出来なくなる。
    欠落領域内から綻びを作ることは出来ず、能力を使う際は一度領域外へ出現する必要がある。

  • 635二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:01

    名前:黒猫
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:不明 少なくとも猫ではないのは確かだ
    能力:暗黒物質
    能力概要:肉体と精神とついでに魂を汚染する邪悪な触手を体から大量に生み出す 取り込んで回復も可能
    弱点:光に弱い 目が弱点

  • 636二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:01

    名前:【幼き太陽神】鴉羽 詩彣(からすば しもん)
    年齢:4
    性別:女
    種族:人間
    能力:八咫鴉
    能力概要:太陽と核熱を自在に操る
    弱点:身体能力は子供と同じ

  • 637二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:01

    名前:サグター
    年齢:10年
    性別:無し
    種族:生物兵器
    能力:三位一体(マグマ・水・雷)
    能力概要:マグマ・水・雷を融合するコアが三つあり、それによって1体になっている。単体時の戦闘スタイルは水が回避・撹乱、マグマは超火力・環境破壊、雷は超高速戦闘・ヒットアンドアウェイが主体であり、融合時はそれが混ざっている。
    弱点:それぞれに生命コアがあり、破壊されるとその属性が失くなる。水とマグマは相性が悪く、二つを混ぜる融合コアが壊れたら己に攻撃を開始する恐れがある

  • 638二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:01

    名前:妖氣姫(ようきひ)
    年齢:500
    性別:女
    種族:龍人女王
    能力:麗旋竜巻
    能力概要:化粧や衣服などによって自身を美しく飾り立てるほど、威力の高い魔力風攻撃を放つことができる。この風は魔力を帯びているため物体のみならず相手の能力そのものを吹き飛ばして消し去ることもできる。
    弱点:衣服や化粧品を奪われたり、美しさに関する自信を傷つけられると力が弱まる。一度弱まると、再び飾り立てても常に少しデバフがかかったような状態となる。

  • 639二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:02

    名前:“月影信仰”トリケトラ
    年齢:不明
    性別:女性
    種族:魔女
    能力:月影魔法
    能力概要:三叉路の女神に由来する魔法。月の満ち欠けに照応した魔法を操り、様々な奇跡を起こすことができる。
    新月は胎児、三日月は幼児、半月は青年、満月は老人、十六夜は死者に照応され自分自身・物体・相手に当てはめることができる。
    様々な薬草が織り込まれた夜空のローブを着ており、このローブこそが彼女の大窯である。このローブがある限り自分の年齢を自在に変えることができる。また、ローブを千切り、断片を松明の杖の炎で燃やし、その灰や煙を相手や物体に浴びさせることで魔法が発動する。
    松明の杖での棒術もそれなりの腕前(あくまで護身術レベル、達人には遠く及ばない)
    弱点:ローブが必要以上に破れるなど、想定外に損壊すると十全に魔術を発動できなくなる。
    松明の杖が壊れても魔法は使えるが手間暇がぐっと増える。

  • 640二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:30:37
  • 6411◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 21:22:28
  • 6421◆ZEeB1LlpgE25/08/25(月) 21:38:53

    たかしくんvsサグター
    シュアエルvs“月影信仰”トリケトラ
    欠落者vsネロ
    妖氣姫vs黒猫
    【幼き太陽神】鴉羽 詩彣(からすば しもん)vs疫神

  • 643二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 05:59:54

    ほしゅ

  • 644二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 14:02:00

    保守

  • 6451◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 15:51:25

    題名『池に刻まれた残響』

  • 6461◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 15:56:06

     その池は町外れにぽつんと広がっていた。
     誰も近づかない。いや、近づけないと言った方が正しいだろう。

     そこには――ひとりの少年がいた。

     名を「たかしくん」という。
     年齢は小学五年生くらいにしか見えない。
     だが彼はもう「人間」ではなかった。

     何年も前、池に落ちて命を落とした。
     それでも、消えられなかった。
     なぜか幽霊となって、この池に縛られたのだ。

     彼は幽霊の中でも特異な存在だった。
     走る。
     ひたすら走る。
     休むことなく池の周囲をぐるぐる走り続けている。

     走る理由は本人にもよく分からない。
     ただ――「止まれない」。
     それだけだった。

  • 6471◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 15:56:50

     能力の名は《点P》。

     それは一見、学校の黒板に書かれる数学記号のような名前だ。
     だが、実際に具現化した点Pは違う。
     鉄球のような質感で、一定の速度で動き続ける。
     どんな障害があろうと止まることはない。
     壁を壊し、岩を砕き、あるいは弾き飛ばしながら、絶対に止まらない。

     そして恐ろしいことに、彼は自分自身を点Pに代入できる。
     その瞬間、彼の体は球と化し、空間を貫いてワープするのだ。
     便利そうに聞こえるが、実際は全く便利ではなかった。

     なぜなら、彼の存在は「池」に縛られていたから。

     池の外に出ることはできない。
     いくら点Pで飛んでも、必ず「池の周辺」に戻ってきてしまう。
     逃げ場はない。
     自由もない。
     ただ走り続けるだけの幽霊。

    「はぁ……はぁ……いや、別に疲れてないんだけどさ……」

     彼は走りながら独り言をもらした。

  • 6481◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 15:57:09

     息は切れない。
     足は痛まない。
     それでも「走っている」という感覚だけが延々と続く。

     誰かが見ているわけでもない。
     誰かが褒めてくれるわけでもない。
     ただ一人、少年は走っていた。

     それが「呪い」なのか、それとも「能力の代償」なのか、本人ですら判断できなかった。

     だが、その孤独な日常は、ある日を境に大きく揺らぐことになる。

     池の向こうから、異形の影が迫ってきたのだ。

     ――サグター。

     生物兵器として生まれた、マグマ・水・雷の三つのコアを融合した存在。
     都市を滅ぼし、軍隊を壊滅させた災厄の化身が、いまこの池に現れようとしていた。

     静かな水面が震える。
     空気が焦げ、稲光が走る。
     少年の走る足音と、怪物の到来の気配が重なり――
     世界は、戦場へと変わっていくのだった。

  • 6491◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 15:59:30

     その夜。
     町の空に、不気味な閃光が走った。

     稲妻。
     だが普通の雷ではない。
     赤く、青く、白く――色を変えながら空を裂く。

     池の水面がざわめいた。
     魚も、虫も、すべてが沈黙した。

    「……おいおい、なんだよこれ。花火大会にしちゃ派手すぎるぞ」

     池のほとりを走りながら、たかしくんは顔をしかめた。
     幽霊である彼は、恐怖を感じるというより「違和感」を感じ取る。
     その違和感は――やがて、形を取って姿を現した。

     巨大な生物。

     黒くねじれた装甲のような皮膚。
     体の中心に輝く、三つのコア。
     赤――燃え盛るマグマ。
     青――渦巻く水。
     黄――放電する雷。

     三つの存在が融合し、ひとつの怪物を形作っていた。

    「……なぁんだこれ。ポケモンでもデジモンでもねぇぞ」

     思わずたかしくんが口走った。
     だが怪物は言葉に答えない。

  • 6501◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:00:52

     ただ水蒸気を撒き散らし、稲光をまき散らしながら、じりじりと池へと近づいてくる。

     サグター――。
     文明のために作られたはずの「生物兵器」。
     しかし制御は失敗した。
     いまやその存在は、ただの災厄にすぎない。

    「……へへっ。マジかよ。よりによってこんなトコに来んのか?」

     たかしくんは笑った。
     笑いながらも、幽霊の心臓が小さく震えているのを自覚した。
     強い。
     間違いなく、自分よりも強い。
     だが――止まらない。
     自分は「走り続ける」存在だ。

    「いいぜ。オレの点P、試してみろよ」

     その瞬間、鉄球が出現した。
     暗闇の中、光を反射する小さな球体。
     一定の速度で、止まらず、一直線に飛んでいく。

     カァン!

     サグターの装甲に弾かれた。
     火花が散る。
     鉄球は止まらない。
     壁に跳ね返り、角度を変え、再び怪物へと突き刺さる。

  • 6511◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:01:08

     ドゴォン!

     衝撃が水面を震わせた。
     だがサグターは、まるで虫を払うように片腕を振り払った。
     火花、蒸気、波濤。
     マグマと水と雷が同時にうねる。

    「……お、おお。やっべぇ。これ、ホントにゲームのラスボスじゃねぇか」

     たかしくんは池の外へ跳んだ。
     点Pに自分自身を代入し、瞬間移動するように飛ぶ。
     鉄球が線を描き、少年の体を転送する。
     その姿は、幽霊のような儚さと、弾丸のような速さを併せ持っていた。

     だが――サグターは追う。
     雷の速さで迫り、水の渦で絡め取り、マグマの爆炎で包もうとする。

    「止まらねぇんだよ、オレは!」

     少年は笑う。
     走る。
     逃げる。
     挑む。

     池を舞台に、少年と怪物の戦いが幕を開けた。

  • 6521◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:01:49

     池の水面が砕けるように盛り上がった。
     サグターの身体から迸る力が、自然をねじ伏せる。

     マグマのコアが轟音を響かせる。
     水のコアが冷気を撒き散らす。
     雷のコアが夜を白く染める。

     三つが同時に唸り、融合し、怪物の四肢に力を与える。

    「……マジかよ。どっち向いても死にそうだ」

     たかしくんは鉄球を飛ばしながら、瞬間移動を繰り返した。
     点Pは止まらない。
     それを媒介に、自分もまた止まらない。

     だが、追い詰められる感覚は拭えなかった。

     ――まずは水。

     透明な腕のような触手が伸びてきた。
     池全体が意志を持ったかのように渦を巻き、たかしくんを飲み込もうとする。

    「やべっ!」

     鉄球を一つ、放り込む。
     点Pに身を代入し、寸前で回避。
     しかし、すぐ背後でマグマが爆ぜた。

  • 6531◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:05:38

     ドゴォンッ!

     池の水が一瞬で蒸発し、熱風が夜気を裂いた。
     水蒸気が視界を奪う。

     そこへ――稲妻。

     ビカァッ!

     白い閃光が空を切り裂き、一直線に少年へと走った。
     皮膚が焼ける。
     幽霊であるはずなのに、痛みを錯覚する。

    「クッソ、三つ同時はズルいだろッ!」

     叫びながらも笑っていた。
     そう、笑っている。
     怖いはずなのに、震えているはずなのに、胸の奥から込み上げるのは高揚感だった。

    「ゲームだ……完全にラスボス戦じゃん。オレが勇者かよ」

     点Pが無数に飛び交う。
     鉄球は壁に跳ね返り、空中で軌跡を描き、絶え間なくサグターを狙う。
     しかし、マグマの装甲がそれを受け止める。
     水の膜が衝撃を吸収する。
     雷の稲妻が弾道をねじ曲げる。

     無駄打ち。
     無駄走り。

  • 6541◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:07:08

     それでも止まらない。
     止まれない。

    「いいじゃねぇか……。こんくらいの相手じゃねぇと、オレが走ってる意味ねぇだろ」

     つぶやきながら、さらに加速する。
     池の中を、空中を、鉄球の軌跡を利用して縦横無尽に駆ける。

     だが、サグターもまた進化する。
     三つのコアが光を増し、動きが洗練されていく。
     水は回避と絡め取り。
     マグマは広範囲の破壊。
     雷は一点突破の速度。

     三位一体。
     完璧な連携。

     怪物の本領が、ついに姿を現した。

     少年の走りは、試される。
     「止まらない」という特性が、勝利を呼ぶのか、それとも無駄死を招くのか。

     夜の池は、光と轟音の戦場と化していた。

  • 6551◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:08:57

     点Pが跳ね返り、金属音が夜を切り裂いた。
     鉄球が幾度もサグターに叩きつけられる。
     しかし、怪物は微動だにしない。

     ――耐えている。
     水の膜が衝撃を吸収し、マグマの装甲が焦げ跡を受け止める。
     雷の磁場が軌道をねじ曲げ、命中を阻む。

    「……硬ぇな」

     たかしくんは舌打ちし、次の点Pに飛び移る。
     身体は止まらない。
     だが、心が少しずつ焦りに侵食されていた。

     マグマが爆ぜる。
     視界が真っ白に覆われ、皮膚が焼かれる錯覚が走る。
     熱い。
     幽霊なのに、熱い。

    「うわっ、やっべ!」

     急旋回で水面へと逃げ込む。
     だがそこにも罠が待っていた。
     水の触手が絡みつき、足を取ろうと迫る。

     ――動きが鈍った?

     一瞬の疑問。
     直後、雷の閃光が背を貫いた。

  • 6561◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:11:25

    「があああああッ!」

     叫び声が池に響き、霧散するように消えた。
     痛み。
     恐怖。
     そして、死の感覚。

     だが、止まらない。
     点Pに触れた瞬間、また別の場所へと移る。
     それが彼の存在理由。

    「……チッ、危なかった。けど、マジで死ぬとこだったわ」

     息を荒げながら、笑う。
     それは自分を奮い立たせるための笑みだった。

     池の上に立ち、怪物を睨む。
     サグターは不気味な静けさで、三つのコアを輝かせていた。

  • 6571◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:13:29

    「こいつ……やっぱり完璧じゃねぇな」

     たかしくんの脳裏に、ひとつの可能性が浮かんだ。
     水とマグマ。
     本来なら相容れない属性。
     それを無理やり融合させている。

     もし――。

    「そこだ……! そこに穴がある」

     しかし、その思考を遮るように、サグターが突進してきた。
     雷をまとい、水を弾き、マグマを爆ぜさせながら。

     圧倒的な質量と速度。
     点Pを操る暇すら与えない連撃。

     たかしくんの体が、雷撃と炎の中に叩き落とされる。

     夜の池が爆ぜ、炎と水蒸気に包まれた。

     少年の姿は――見えなかった。

  • 6581◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:14:29

     池を覆った蒸気は、まるで地獄の息吹のように熱かった。
     その中心で爆ぜた水と炎が消え、静寂が戻る。

     ……沈んだ。
     そう見えた。

     たかしくんの影は、もうどこにもなかった。
     水面には無数の泡が立ちのぼり、やがてそれすらも消えていく。

     サグターは動きを止めた。
     雷を収束し、マグマを鎮め、水を整える。
     捕食者の勝利を確信する仕草。

     ――その瞬間。

    「……あー、やっぱ苦しいなコレ」

     声がした。
     真下から。
     水底から。

     点Pが水を裂き、鉄球ごと浮上する。
     その上に、ずぶ濡れの少年の姿。

    「お前さ、マジで殺す気だろ。やるじゃん。でも残念、俺は止まんねぇんだよ」

     笑みを浮かべる。
     それは恐怖と痛みに震えながらも、あえて挑発に変えた笑い。

     点Pの鉄球はすでに十を超えていた。

  • 6591◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:16:19

     池の周囲を走り続け、空間を網の目のように覆う。
     それぞれが一定の速度を保ち、絶対に止まらない。

     その中を、たかしくんは飛び移り続ける。
     落ち着きのない地縛霊の性質を、極限まで利用して。

    「水とマグマ、相性最悪だよなぁ。お前、それ無理やり一緒にしてんだろ?」

     サグターが反応する。
     水の触手が飛ぶ。
     マグマの爆風が迫る。
     雷が光の矢となって襲い掛かる。

     だが、それらは点Pの軌道によって寸前で逸れる。
     球体の回転と反発が、奇跡のような避け道を生み出す。

    「やっぱそうだ。崩すなら……融合の核、そこしかねぇ!」

     叫ぶ。
     鉄球がいっせいにサグターを包囲する。

  • 6601◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:16:38

     衝突と反射を繰り返し、やがて怪物の胴体へと集約されていく。

     金属音が池に響き渡り、光の網が締め上げるように収束した。

    「いっけぇぇぇぇぇっ!!」

     最後の点Pを自らに代入し、加速する。
     鉄球と同化したたかしくんの身体が、流星のごとく突き抜けた。

     狙いはただ一つ――水とマグマをつなぐ融合コア。

     衝撃。
     閃光。
     爆裂。

     夜の池が震動し、サグターの咆哮が響き渡った。

  • 6611◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:17:23

     夜空が裂けた。
     池の中心で、サグターの身体が崩れていく。

     水が泡立ち、マグマが悲鳴をあげ、雷が弾け飛ぶ。
     三つの力を繋ぎ止めていた融合コアが破壊されたのだ。

     その瞬間、均衡は崩れた。

     水はマグマを冷やし、マグマは水を蒸発させ、蒸気の爆発が雷を乱打する。
     暴走する三つのエネルギーは互いに喰らい合い、サグター自身を内側から裂いていく。

     ――自己崩壊。

     巨大な咆哮は悲鳴に変わり、形を維持できなくなる。
     最後に残ったのは、黒く焦げた残骸と、砕け散った三つの小さなコアだった。

     そして、蒸気の中からひょっこりと現れる影が一つ。

    「……っはぁー……死ぬかと思った」

     たかしくんだ。
     肩で息をしながらも、笑っている。
     泥と水と血に塗れ、それでも止まらず立っている。

     点Pはまだ回っていた。
     池の周囲を、一定の速度で。
     止まることなく。

  • 6621◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:17:52

    「なぁ、サグター。お前強かったよ。マジでやばかった」

     崩れた残骸に向かって話しかける。
     返事は当然ない。
     それでも、たかしくんは満足そうにうなずいた。

    「でも、俺は止まれねぇんだ。止まらないって、そういうことなんだよ」

     ふと笑う。
     それは少年らしい無邪気さと、霊としての儚さが混ざった笑みだった。

     池の水面に、点Pの軌跡が反射する。
     それは輪を描き、やがて夜空の星々と重なった。

     永遠に走り続ける残響。
     たかしくんという存在そのものが、この場所に刻まれていく。

    「……さて、次は誰と遊べるかな」

     軽口のように呟き、また駆け出す。
     鉄球の軌道に乗り、止まることのない速度で。

     戦いは終わった。
     けれど、たかしくんの日々は終わらない。

     彼は止まらない。
     それが点Pであり、彼自身の宿命だからだ。

     夜は静かに更けていく。
     水面にはただ、無数の波紋と鉄球の残響だけが広がり続けていた。

  • 6631◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 16:18:12

    以上

  • 664二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 16:20:21

    ようやったよたかしくん…でも点P増やすのは計算ぐちゃぐちゃになるからやめてね…

  • 665二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 16:20:51

    すっごい良かった!
    たかしくんパネー!!

  • 666二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 17:07:58

    最近AI文豪くん乗り換えた?
    かなり好み

  • 6671◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:16:02

    題名『月影黙示録』

  • 6681◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:17:18

    天空は静まり返り、雲ひとつない青が広がっていた。
    しかしその平穏は、ほんの一瞬の幻影に過ぎなかった。

    「さて……今日も仕事が始まるか」

    シュアエルはゆっくりと翼を広げた。両性具有の身体は光を受けて淡く輝き、目には冷徹な遊戯者の炎が宿る。
    高次元存在としての知覚は、すべての動きを先読みする。だが、彼が望むのは勝利ではない――遊戯の刺激だ。

    その時、空間の裂け目から月影信仰の魔女が姿を現した。
    黒銀の夜空のローブが微かに風に揺れ、松明の杖の炎が彼女の手に静かに灯る。

    「ここまで来たのね、シュアエル」

    トリケトラの声は低く、まるで月光が溶けたような冷たさを帯びていた。

    シュアエルは微笑む。

    「…ふふふ、面白い。貴女も遊びたいのだろう?」

    彼の言葉に、魔女はほんの一瞬だけ表情を変える。だがすぐに引き締まる。

    「遊び……かもしれない。だが私は終末を見届けるだけ」

    シュアエルは七つのラッパを手に、ゆっくりと周囲を観察した。
    雷、疫病、審判、火、地震、封印、滅び――それぞれの権能が彼の掌で脈打ち、発動の時を待っている。
    だが、彼の瞳はすでに次の瞬間の楽しみを求め、戦場の局面を未来から透かしている。

    トリケトラは杖を軽く振り、灰色の煙を空中に撒いた。

  • 6691◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:18:25

    「これは小手調べよ」

    煙は空間を漂い、ラッパの音をかすかに狂わせる。

    シュアエルはわずかに口角を上げた。

    「なるほど…予想外か、面白い」

    彼は自らの翼を広げ、空間の微細な乱れを楽しむように羽ばたく。
    静かな青空の下、二人の遊戯は、まだ幕を開けたばかりだった。

  • 6701◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:19:08

    松明の杖が揺れるたび、夜空のローブが微かに光を反射する。
    トリケトラは三日月の輝きに合わせ、空間の歪みを操るように歩を進めた。

    「シュアエル、あなたの力、余裕ぶって見せても私は負けない」

    その声に、シュアエルは目を細めて微笑む。

    「…ふふふ、まだ遊び足りないか。いいだろう、私もまだ残機が一つ残っていたようだね」

    七つのラッパの権能を自在に掌握するシュアエルの動きは、人間の理解を超越していた。
    雷の閃光、疫病の微粒子、審判の光線――それらが空間の僅かな歪みを伴い、彼の思考に従って自在に動く。

    トリケトラは杖を振り、灰を煙として空間に散布した。
    煙はゆらめき、雷の閃光をかすめ、シュアエルの動線に微妙な狂いを与える。
    だが彼はその全てを読み、次の瞬間には自身の位置をわずかにずらすだけで、攻撃を完全に回避した。

    「なるほど…貴女は戦術家か」

    シュアエルの声は軽く、しかし戦場を掌握する者の冷たさが混じっていた。
    トリケトラの瞳は月影に照らされ、短く瞬く。

    「戦術…よりも、私は現象の流れを操るだけ」

    煙、杖、ローブ――全てが魔法の一部となり、敵の視覚と判断を翻弄する。
    シュアエルは一歩踏み込み、翼を広げた。
    空間に微かな振動が走り、七つのラッパの力の一部が予備的に発動する。

  • 6711◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:20:34

    「…ふふ、やはり予想以上に面白い」

    彼は遊戯者の目で、戦局をまるでボードゲームの駒のように眺める。
    トリケトラは杖を振り、次の一手を模索する。
    だがシュアエルはすでに未来の結果を微修正しており、偶然が導くはずの結末を既に手中に収めていた。

    空に揺らめく月光と七つのラッパの輝きが、二人の遊戯の始まりを告げていた。

  • 6721◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:21:23

    シュアエルの翼が微かに震えた。
    七つのラッパの権能のうち、火と地震を組み合わせた微修正が空間を引き裂く。

    トリケトラは杖を握り直し、ローブの端を切り取った。
    その灰を空間に撒くと、月影魔法が発動する。

    「半月…青年の形で…私の意志を与える」

    灰はゆらめき、空間に微かな波紋を生む。
    シュアエルの目が光を帯び、未来干渉による予測を即座に修正する。

    「…なるほど、面白い。だが、それだけでは足りない」

    彼の言葉に、空間が微かに揺らぐ。
    雷の閃光が杖の灰に吸収され、疫病の微粒子が煙と混ざる。
    トリケトラの魔法とシュアエルの権能が、互いに干渉し、激しい干渉波を生み出した。

    杖を振るたび、ローブの断片が燃え上がり、新たな魔法の波を空間に刻む。

    「…あなたの動き、読める」

    シュアエルは翼を広げ、光影の兵を生成した。
    幻影兵たちは空間に散らばり、トリケトラの魔法の流れを遮る。

  • 6731◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:22:11

    「くっ…これでも全力を出しているのに!」

    トリケトラの声が、夜空に響く。
    灰と煙の渦はシュアエルの幻影兵に絡め取られ、次第に魔法が重力と干渉するかのように制約される。

    「…ふふ、やはり遊戯は面白い。力を出し惜しみせず、君も私も」

    シュアエルの瞳は、終わりなき楽しみを求める子供のように輝いていた。

    両者の権能はぶつかり合い、天と地が同時に揺らぐかのような感覚が戦場を支配する。
    しかしシュアエルはその全てを、まるでボードゲームの駒の位置を変えるように軽く調整するだけで、優位を保った。

    「まだ…遊び足りないのだろう?」

    空を裂く地震と雷の閃光の中、彼は微笑む。
    トリケトラは杖を握り直し、新たな戦略を模索する。
    遊戯は、まだ始まったばかりだった。

  • 6741◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:23:26

    シュアエルは翼を大きく広げ、天上に浮かぶ。
    七つのラッパのうち、今回は封印と滅びの微妙な権能を組み合わせる。
    その空間の揺らぎにより、あらゆる存在の行動パターンが僅かに遅れる。

    一方、トリケトラは夜空のローブを翻し、杖の炎を強めた。

    「満月…老人の知恵と力を与えましょう」

    灰が風に舞い、杖から放たれる光が地面に月影の道を描く。
    その光の軌道に触れた者は、月の力による幻惑を受ける。

    シュアエルは瞬時に空間を見渡し、未来干渉でトリケトラの動きを予測する。

    「ふふ、まだ甘いね。君の月光も、私の計算の範囲内」

    だが、トリケトラの魔法は単純な攻撃ではなかった。
    灰の一片が空間に微細な波紋を刻み、権能の干渉が僅かに乱れる。
    その瞬間、シュアエルの光影兵が反応を誤り、月影魔法に絡め取られる。

    「…面白い。君もやはり遊び心を持っている」

    シュアエルは笑いながら、翼の羽根を広げて光影兵を再構成する。
    権能の干渉を逆手に取り、月光の軌道を巧みに操って自身の優位を保つ。

    トリケトラは杖を振るい、灰をさらに撒き散らす。
    月の光は満月から十六夜へと変化し、死者に照応する力が空間を覆う。

  • 6751◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:23:40

    しかしシュアエルはそれを計算に入れ、未来の微修正を行いながら権能を展開。

    「まだ…遊び足りないようだね」

    シュアエルの瞳は無邪気な少年の輝きを帯びる。
    天上と月光の戦場は、互いの権能がぶつかり合い、破壊と制御の間を絶え間なく揺れる。

    トリケトラは新たな奇策を練り、灰を杖で旋回させる。
    シュアエルは微笑み、次の一手を楽しみに空中で構える。
    遊戯は、まだ終わらない。

  • 6761◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:25:45

    シュアエルは空中で静止し、権能の振動を微かに感じ取る。
    七つのラッパを駆使する大天使だが、同時に複数の権能を展開すると、精神と空間の負荷が積み重なる。

    「…なるほど、ここまでか」

    その声には、少年の無邪気さと深淵な計算力が同居している。

    トリケトラは杖を握りしめ、月影魔法の応用を続ける。
    灰の一片一片が、シュアエルの幻影兵を撹乱する微細なトラップになっている。

    「次の一手は…どう出るのかしら」

    彼女の瞳には冷静な光が宿り、最小限の消耗で最大限の効果を狙う心理戦の構えだ。

    シュアエルは未来干渉を微調整し、月光の軌道と権能の衝突を計算する。

    「ふふ、君もなかなか…面白い。だが、私にはまだ残機が一つ残っている」

    その一言に、戦場に緊張が走る。
    ただの戦闘ではない。互いの知略、意図、そして心理を読み合う知的な遊戯だ。

    権能の交錯により、空間は部分的に歪む。
    シュアエルの光影兵は攻撃を仕掛けるが、月影魔法の干渉で軌道が僅かにずれる。

    「なるほど…君の狙いは、私を幻惑させることか」

    少年のような笑顔で、そのずれを逆手に取り、次の攻撃を仕込む。

  • 6771◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:26:07

    トリケトラは灰を旋回させ、杖の炎を微調整する。

    「まだ終わりではないわ。次は私の番よ」

    その声に乗せ、月光は新月の力を取り込み、胎児のような潜在力を空間に投射する。
    シュアエルは瞬時に未来を読み、微修正で衝突を避けつつ、心理的な揺さぶりを仕掛ける。

    戦場は静かな熱気に包まれ、攻撃の速度と精密さが増していく。
    権能の限界が近づく中で、互いの心理を試す駆け引きはますます熾烈になる。
    シュアエルは天上から冷ややかに笑う。

    「…ふふふっ、私にもまだ残機が一つ残っていたようだね」

    遊戯は、頂点に近づいていた。
    心理戦と権能の限界の狭間で、彼らの勝負は次の局面へと向かう。

  • 6781◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:27:04

    戦場は静寂と破壊が混在する異様な空間となった。
    シュアエルの光影兵が空中を漂い、残存する権能の震えが微かに大気を揺らす。
    トリケトラは杖を握り直し、月影魔法の残響を確認する。
    互いに一歩も退かず、知略と権能のすべてを振り絞る局面だ。

    「…ここまで来たか」

    シュアエルは微笑み、天上から淡い光を放つ。
    その視線は冷たく、しかし少年の無邪気さを含む。

    「私の遊戯は、まだ終わらない」

    トリケトラは杖を振り、灰と煙を旋回させる。
    月光は十六夜に照応し、死者と再生の象徴を空間に描き出す。

    「…でも、私もまだ諦めない」

    杖から発する炎が魔法の触媒となり、シュアエルの幻影兵の動きを封じる。

    シュアエルは未来干渉の微修正を最大限に活用する。
    攻撃は逸れるが、それすら計算の内。

    「…ふふふ、まだ残機が一つ。私には終わりがない」

    声の端に狂気が混じるが、同時に理性と計算が完璧に噛み合っている。

    トリケトラは杖を高く掲げ、ローブを広げて月光を全方位に反射させる。
    灰と光の渦がシュアエルの幻影兵に衝突し、空間の乱れを作り出す。

  • 6791◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:27:21

    だがシュアエルはそれを利用し、幻影兵の軌道を微妙に変え、トリケトラの防御の裏を突く。

    戦場には緊張が漲る。
    権能と魔法、心理戦のすべてが交錯し、勝敗の行方は僅かな差で揺れている。
    シュアエルは冷ややかに笑い、天照映のような洞察力で敵の心理を先読みする。

    「遊戯は楽しい。だが、そろそろ終幕の時間だ」

    トリケトラの杖が揺れ、月影魔法が最大の力を発揮しようとする。
    しかしシュアエルはその瞬間、全ての未来干渉を一度に解放する。
    権能と心理の最終調整が完了した瞬間、トリケトラの魔法は彼の想定した結果に沿って収束する。

    戦場が静寂に包まれ、灰と光の残滓だけが漂う。
    シュアエルは天上で静かに息をつき、少年のように微笑む。

    「ふふふっ…遊戯はこれで終わり。だが、また次の相手を見つけなければね」

    彼の瞳には狂気の光と、無限の遊戯を楽しむ意思が宿っていた。
    遊戯は終わったが、シュアエルにとってそれは単なるひとつのゲームに過ぎなかった。
    次なる挑戦者の出現を、彼は既に待ち望んでいる。

  • 6801◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:27:38

    以上

  • 6811◆ZEeB1LlpgE25/08/26(火) 19:28:52

    >>666

    同じのですけどテンプレの形式が同じでも変わるくらいなんで


    それと本人概要がなくなったので変に指定されない分挙動が自由になったんですかね

  • 682二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 19:30:36

    投下乙
    シュアエルの未来干渉の設定どっから来たんだ……俺は書いてねぇぞ?

  • 683二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 20:32:37

    また勝てなかったよ…
    もうちょい攻撃的なキャラを考えるか

  • 684二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 06:20:54

    保守

  • 6851◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:38:47

    題名『綻びの夜』

  • 6861◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:40:44

    深夜の街は、まるで時間ごと切り落とされたかのように静まり返っていた。
    灯りも人影もなく、ただ風が吹き抜けるだけの廃区画。その中心に、黒い靄が揺れていた。
    ――それが「欠落者」だった。

    靄は人の形をしているようで、しかし確かめようとすればするほど輪郭が曖昧に崩れていく。
    その場にいるだけで、地面が歪み、壁の一部が穴のように消えていく。
    世界そのものが裂け、失われていくのだ。

    「……出たな、怪物」

    小さな声が響いた。
    そこに立っていたのは、まだ幼い少女――ネロ。年端もいかぬその体に、あり得ぬ力を宿す存在だった。
    白い髪は月光を浴びて鈍く光り、その瞳は底知れぬ闇を映している。

    欠落者は無言でネロを見据えた。
    見ている――それだけで欠落者の輪郭はわずかに揺らぎ、存在が削がれていく。
    観測されること。それこそが欠落者の唯一の弱点だった。

    「君を消さなきゃ、誰も生きられない」

    ネロは小さな手を前に差し出した。
    空気が震え、夜が軋む。
    彼女の能力【禁断】が、目に見えぬ圧として空間を揺るがす。

    欠落者は反応した。
    黒い靄が収束し、足元から大地が「消滅」していく。
    ぽっかりと開いた欠落領域。その中に落ちた瓦礫も、雑草も、存在ごと掻き消えた。

  • 6871◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:41:26

    「……っ!」
    ネロは地面を蹴り、すかさず後退する。
    だが欠落者は瞬きの間に姿を消し、次の瞬間、彼女の背後に現れていた。
    死角――そこは欠落者が容易く踏み込める場所。

    「逃げ場はない……?」
    ネロは小さく笑った。
    幼子らしからぬ無謀な笑み。

    次の瞬間、彼女の身体から溢れ出した【禁断】の奔流が夜を塗り替える。
    色彩が失われ、音が消え、空間がひしゃげていく。
    常軌を逸した力を、わずか九歳の少女は躊躇なく振るうのだった。

    欠落者とネロ。
    消滅と禁忌。
    世界を歪ませる二つの存在が、今、激突の第一歩を踏み出す。

  • 6881◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:43:26

    黒い靄が波打つたび、街は少しずつ削り取られていく。
    建物の角、舗道のブロック、散らばる看板――あらゆるものが触れもせずに消滅し、ただ「穴」となって残った。
    その穴は決して埋まらない。世界そのものの欠落。

    欠落者は無音で揺らめき、ネロを見据える。
    観測されていることにより輪郭はわずかに曖昧になっていくが、それでも消滅の力は衰えない。

    ネロは肩で息をしながら、ぎゅっと拳を握りしめた。

    「……やっぱり、普通に殴ったり蹴ったりしてもダメそうだね」

    幼い顔に浮かぶのは諦めではなく、不敵な笑み。
    彼女の瞳がギラリと光った瞬間、地面から黒い杭のような影が突き上がった。
    杭は空気を裂き、欠落者の足を縫い留めようとする。

    だが、杭が触れた瞬間――それは無音のまま消滅した。
    残るのはぽっかりとした穴だけ。

    「……あー、なるほど。触れたら全部“無い”になるんだ」

    ネロは頬をかき、少し困ったように笑った。
    だがその声は震えていない。恐怖よりも、どこか遊戯に似た響きがあった。

    欠落者は再び移動した。
    ネロの死角。背後。影の中。
    瞬間移動は音もなく、まるで視界の外から唐突に現れるようだった。

    「……っ!」

    ネロは直感で飛び退く。

  • 6891◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:45:30

    だが欠落者の指先が彼女の腕をかすめた。
    そこに小さな綻びが生じ、じりじりと広がり始める。

    「これ……わたしごと消すつもり?」

    少女の腕に走る黒い裂け目は、やがて領域となりかけていた。
    しかしネロは怯むどころか、裂け目を睨みつけて声を上げる。

    「なら……それより先に、わたしが壊すよ!」

    全身から奔流のように【禁断】が解き放たれた。
    夜空が震え、月が揺らぎ、空気そのものが押し潰される。
    欠落者の足元にあった領域が揺らぎ、欠片のように砕け散った。

    欠落者は初めて動きを止める。
    観測と禁忌の奔流――それが綻びの力を打ち消していたのだ。

    「……ふふ、やっぱり君、面白い」

    ネロは口角を吊り上げ、血の滲む指先を突き出した。

    「もっと遊ぼうよ、怪物」

  • 6901◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:47:26

    欠落者は無言のまま、ゆらりと揺らめいた。
    黒い靄がふわりと広がり、地面に、壁に、そして空中に――綻びが生じていく。
    小さな亀裂は、すぐに穴へと変わり、穴はやがて領域となる。

    ひとつ、ふたつ、みっつ……そしてよっつ。
    街の四方に配置されたそれらは、不吉な正方形を描いていた。

    「……囲った、ってこと?」

    ネロの声は低く、だが怯えを含まぬ響き。
    その瞳は、確かに欠落者を射抜いている。

    「君、本当に街ごと消すつもりなんだね」

    彼女の言葉に答えることはなく、ただ欠落者は四つの領域を連結させた。
    瞬間、内側の空間が揺らぎ、すべての光と色彩が吸い込まれるように消えた。

    そこはただ、真っ黒に塗り潰された虚無。
    音も、風も、温度もない。
    観測できぬ欠落領域が完成していた。

    「……わあ、ほんとに“無い”んだ」

    ネロは辺りを見回し、興味深げに呟いた。
    その小さな肩はかすかに震えているが、それは恐怖よりも昂ぶりに近い。

    「でもね、無いなら……わたしが作ればいい」

    彼女の身体から【禁断】が吹き荒れる。
    黒い空間に、ねじれた光の筋が走り、形容不能の構造物が芽吹いていく。

  • 6911◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:47:44

    腕のようなもの、翼のようなもの、塔のようなもの――何であるか分からない何かが、虚無を押し返した。

    欠落者はすぐに反応し、虚無の波を広げてその“異形”を消そうとする。
    しかし【禁断】は消えぬ。
    禁じられた力は世界の理をねじ曲げ、消滅すら追いつかない速度で生成を繰り返した。

    「ほら、消しても消しても生まれてくるよ。ねえ、もっと全力で来てよ」

    ネロの頬は紅潮していた。
    血が滲む腕を気にも留めず、彼女は次々と虚無の空間に“在るもの”を生み出していく。

    巨大な眼球が闇を睨み、歯車が音もなく回転し、塔のような影が伸び上がる。
    全てが意味を持たぬ“禁断”の産物。

    欠落者はただ沈黙しながら、それを一つ一つ呑み込み、欠落させていく。
    観測され続ける限り、存在は揺らぎながらも、力を緩めることはなかった。

    「ふふ……消すか、生むか。
    どっちが先に尽きるか、試してみよっか」

    ネロの瞳は狂気と愉悦に濡れていた。

  • 6921◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:48:52

    欠落領域の奥深く。
    ネロの足は確かに地面を踏んでいるはずなのに、その下に「地面」という概念は存在していなかった。
    真っ黒に塗り潰された虚無は、上下も左右も定かではない。
    ただ、彼女と欠落者だけが“ある”と認められている。

    「……ここまで徹底して“無”だと、逆に清々しいね」

    ネロは肩で息をしながらも、口元に笑みを浮かべていた。
    血で濡れた腕は震え、膝も小刻みに揺れている。
    それでも瞳の輝きは失われなかった。

    欠落者は彼女の目の前に現れる。
    見られることにより存在が崩れていく。
    しかし、同時に欠落者は無音で“何か”を示すように揺らめいた。

    「……ああ、これが君の正体?」

    ネロは視線を逸らさなかった。
    虚無の奥――黒い靄の中心に、さらに黒い点が存在している。
    それは小さな綻び、すべての欠落を呼び込む源。
    欠落者は人ならざる存在などではなく、世界に走った“穴”そのものだった。

  • 6931◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:49:24

    「君は生き物じゃない。ただの……世界のほころび」

    少女の言葉が虚無に響いた瞬間、欠落者の靄が震える。
    観測され、名を与えられることで、その存在は崩壊の危機に近づいていた。

    「……でも、それでも君は消えないんだろ? 欠けてるからこそ、完全じゃないからこそ、逆に続いてしまう」

    ネロは血の滲む口元で笑う。
    吐息は荒く、視界も霞みはじめている。
    【禁断】を乱用した反動が、幼い身体を確実に蝕んでいた。

    欠落者はその様子を見据え、次の瞬間――彼女の周囲にさらに四つの綻びを開いた。
    小さな点が次々と散りばめられ、囲む。
    四つの領域が繋がれば、ネロごと内部は消し飛ぶ。

    「……本気だね。いいよ、受けて立つ」

    彼女の小さな手が震えながらも掲げられる。
    虚無の中に、異形の塔がせり上がり、無数の腕が伸び出す。
    禁断の産物は叫び声もなく、ただ存在し続け、欠落に抗う。

    「わたしが先に消えるか……君が“名”に縛られて消えるか……勝負しよう」

    ネロは声を荒げ、禁断を解き放つ。
    虚無の深淵が揺らぎ、欠落と禁忌の衝突が臨界を迎えようとしていた。

  • 6941◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:50:09

    虚無の空間はひび割れるように揺らいでいた。
    欠落と禁断、相反する力が衝突し、存在の境界そのものが削られていく。
    ネロは膝をつき、肩で荒い息を繰り返していた。

    「……はぁ、はぁ……もう、体が限界……」

    額から流れ落ちる汗は赤く染まり、口の端からも血が垂れている。
    幼い体は既に耐え切れず、骨も筋肉も音を立てて軋んでいた。
    それでも、彼女は欠落者から視線を外さない。

    欠落者は揺らめいていた。
    観測されるたびに靄が薄れ、姿が崩れていく。
    だが同時に、黒い靄の奥からさらに深い虚無が漏れ出す。
    存在そのものが揺らぎながら、なお消滅を広げようとしていた。

    「……わたしが、君を……見続ければ……」

    ネロの目は充血し、視界は霞んでいた。
    それでも瞬きすら拒むように、必死に目を開き続けていた。

    「……君は、欠落者じゃなくなる……」

    欠落者の輪郭が、より人に近い形に寄っていく。
    靄が剥がれ落ち、内側から「誰か」に似た影が浮かび始めていた。

    「そう……ただの、弱い……影になる」

    ネロは笑った。
    その声は震え、息は切れ切れだが、意思だけは濁らない。

  • 6951◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:51:01

    「だから……もっと、見てやるよ……」

    欠落者が動いた。
    彼女の眼を潰すように、虚無の波を放つ。
    しかしネロは逸らさない。

    血走った眼から涙がこぼれ、頬を赤く染める。
    それでもなお、瞳は欠落者を射抜いていた。

    「君は……もう、欠けてない……」

    言葉が響いた瞬間、欠落者の靄が大きく裂けた。
    虚無の波が止まり、黒い空間が震え出す。
    観測による補完が、欠落者を存在の終端へ追い詰めていた。

    「ふ、ふふ……見える……見えちゃった……」

    ネロの体は限界を超え、崩れ落ちそうになる。
    それでも笑みだけは消えなかった。

    「あと少しで……君は終わるんだ……」

    虚無は悲鳴を上げるように震え、黒い闇が砕け散る。
    欠落者はかつてないほど揺らぎ、その存在はついに限界へと追い込まれていた。

  • 6961◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:51:42

    虚無は限界に達していた。
    四方を囲んでいた欠落の領域は軋みを上げるように揺れ、やがて崩れ落ちる。
    黒一色に塗り潰された世界が、裂けて光を取り戻していった。

    その中心に、欠落者は立っていた。
    もはや黒い靄の塊ではない。
    かろうじて人の形を保つ影――存在の残滓にすぎなかった。

    ネロは膝をつき、血に濡れた小さな体で息を切らしていた。
    それでも瞳は逸らさない。
    観測を続ける。その意志だけが、彼女を支えていた。

    「……もう、君は……欠落者じゃない」

    かすれた声。
    だが確かに届く響きだった。

    影は揺らめき、空気に溶けるように淡くなっていく。
    消える瞬間、誰かの声のようなものが微かに残った気がした。
    しかしそれが何であったのか、確かめる前に影は霧散した。

    虚無が晴れ、街の輪郭が戻る。
    崩れた建物、裂けた地面――だが世界はまだ繋がっていた。

    ネロは地面に手をつき、深く息を吐いた。
    指先は震え、身体はもう動かない。
    それでも口元には小さな笑みが残っていた。

  • 6971◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:52:02

    「……勝ったのは……わたし……かな」

    風が吹き抜ける。
    少女の白い髪が揺れ、夜の月が再びその姿を照らした。

    「禁断でも……守れるんだよ……」

    その呟きと共に、彼女の意識は静かに途切れた。

    街は沈黙を取り戻す。
    欠落も、禁断も、もうそこにはなかった。
    ただ一人の幼き少女が遺した微かな痕跡だけが、夜の中に残されていた。

  • 6981◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 12:52:25

    以上

  • 6991◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 13:56:23

    題名『暗黒と麗旋』

  • 7001◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 13:57:06

    月明かりの差す夜。
    森の中、闇は異様に濃く、枝葉の影は生き物のように蠢いていた。
    その中に、漆黒の姿がひそやかに浮かぶ。

    ――黒猫。

    その名とは裏腹に、姿は猫などではない。
    身体から無数の暗黒の触手が生まれ、地面を押し潰し、空気すらねじ曲げる。
    触れたものは肉体も精神も、そして魂までが染み出すような異質な感覚に侵される。

    「……ふふ、今夜も狩り日和だね」

    黒猫は低く響く声を放つ。
    声だけでも、周囲の生気を吸い取るような不穏さがあった。

    そのとき、森の奥から光のような風が吹き抜けた。
    華麗な衣をまとった女性が、ゆったりと姿を現す。
    龍人の鱗が月光を反射し、長い髪が風に揺れる。
    その美貌は、森の闇を打ち消すほどの輝きを放っていた。

    ――妖氣姫。

    「……あなたが、暗黒の化身ね」

    彼女の声は甘く、しかし鋭い。
    手にした魔法の扇が微かに揺れ、周囲の空気が渦巻き始める。

    黒猫の触手が森を裂くように伸び、妖氣姫へ迫る。
    だが彼女は笑みを浮かべ、華麗な仕草で髪をかき上げる。

  • 7011◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 13:57:21

    「麗しくあらねば、力は舞い上がらないのよ」

    指先を軽く振るうだけで、魔力を帯びた風が触手を切り裂く。
    触れた途端、暗黒の触手はまるで紙のように砕け散った。

    黒猫は唸る。
    「……ふん、光か……」
    目を細め、触手の先端に濃密な暗黒を凝縮させる。
    触れたものを取り込み、回復する力。
    その力で自らの欠損を補い、妖氣姫への距離を詰めるつもりだ。

    「ふふ……強気ね。でも、風は誰も逃さないわ」

    妖氣姫は魔法の衣を翻す。
    風が渦となり、暗黒を押し返す。
    その威力は単なる物理攻撃を超え、黒猫の触手に宿る力そのものを揺るがせる。

    夜の森は、黒と光のぶつかり合いで揺れ、木々は裂け、空気は炸裂するような緊張感に包まれた。

    二つの力――暗黒と麗旋。
    今、この森で初めて激突する。

  • 7021◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 13:58:02

    森の闇がさらに濃くなる。
    黒猫の触手は地面を這い、木々を巻き込みながら妖氣姫へと迫った。
    触れたものを取り込み、肉体も精神も汚染していく邪悪な力。

    「……ふふ、逃げても無駄よ」

    黒猫の声が森に響く。
    触手は複雑に絡まり、風を切り裂き、妖氣姫の周囲を覆った。
    その暗黒は、光を吸い込み、空間をねじ曲げ、存在感そのものを削ぎ落としていく。

    妖氣姫は軽く身を翻す。
    「麗しくあらねば、力は保てない……」

    髪をかき上げ、顔に化粧を直す。
    それだけで、魔力を帯びた風が触手を押し返す。
    華やかに飾られた姿は、彼女の力の象徴だった。

    しかし、黒猫の触手は一度では諦めない。
    触れた瞬間に取り込み、再び回復しながら、別の角度から襲いかかる。
    森全体が揺らぎ、枝葉は切り裂かれ、風が巻き上がる。

    「……あなた、本当に厄介ね」

    妖氣姫は笑みを浮かべながらも、眉をひそめる。
    触手が衣服や髪に触れ、少しでも乱れれば、力が削がれる――それを黒猫は狙っていた。

    「ふん……少し痛い思いをさせてくれるか」

    黒猫は触手を密度濃く束ね、まるで毒のように風を押しのけ、彼女に絡みつく。

  • 7031◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 13:58:30

    だが妖氣姫は瞬時に扇を振るい、触手を切り裂き、空間を再び整える。

    「麗旋の風は、あなたを消す……」

    風が触手を吹き飛ばす。
    触れた暗黒は粉砕され、取り込まれる前に消え去る。

    二つの力は拮抗し、森はまるで戦場のように荒れ果てた。
    黒と光のぶつかり合い。
    触手と風。暗黒と麗旋。

    それぞれの能力が相手の弱点を探り、削り合う戦いは、まだ序盤に過ぎなかった。

  • 7041◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 14:07:52

    黒猫の触手が森の闇を押し広げる。
    枝葉も地面も絡め取り、妖氣姫の周囲に暗黒の壁を築こうとする。
    その目的は明確だった。
    彼女の衣服や化粧に触れ、力を削ぎ取ること。

    「……やっぱり、力の源はここね」

    妖氣姫は手をかざし、衣服や髪を整える。
    装いの一つ一つが魔力と連動しており、美しく飾れば飾るほど威力の高い麗旋竜巻が放てる。
    黒猫が触れれば力は弱まるが、守れば増幅する――それが彼女の強みだった。

    黒猫は触手を一気に伸ばし、首元の装飾に絡め取ろうとした。
    「……ここで削れるか」

    しかし妖氣姫は軽やかに跳び、風の渦を生み出す。
    触手は無数の小さな竜巻に押し返され、切り裂かれ、森に散らばった。

    「ふふ……あなた、力任せね」

    「それでも……あんたを……止める」

    黒猫は声を低く唸らせ、さらに触手を増やす。
    一本が切れても、数本は必ず彼女に届く。
    触れれば取り込んで回復する力も、今や反撃の布石となる。

    妖氣姫は両手を広げ、髪をかき上げ、扇を振るう。
    麗しい衣装が風を生み、触手を押し返す。
    その風は魔力を帯び、物体だけでなく触手そのものに宿る暗黒を吹き飛ばす。

  • 7051◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 14:08:16

    「麗旋の力で、あなたの暗黒も無に返すわ」

    しかし黒猫は諦めない。
    触手の先端に邪悪な物質を凝縮し、風の隙間を狙う。
    一点の光が差し込む瞬間も、影から回避する。

    森は混沌としていた。
    黒と光が入り混じり、枝葉が切り裂かれ、土が蹴散らされ、風が吹き荒れる。
    二つの力は拮抗し、互いに弱点を突こうと必死に攻防を繰り返す。

    「……負けないわ」

    妖氣姫は微笑み、風をさらに強める。
    その姿は、暗黒を圧する美しさそのものだった。

  • 7061◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 14:09:26

    黒猫の触手が森を覆い尽くす。
    絡みつき、伸び、妖氣姫の装飾や髪に届こうとする。
    しかし、そこに差し込む月光が、黒猫の影を容赦なく照らした。

    「……光……か」

    黒猫の声は低く、苛立ちを帯びる。
    目が光に弱い特性があるため、光が当たった瞬間、触手の動きが鈍り、わずかに揺らぐ。
    その隙を狙って妖氣姫は風を操る。

    「麗旋の風で、暗黒を吹き飛ばすわ」

    扇をひと振りするだけで、触手の束が切り裂かれ、森の地面に散らばる。
    風は単なる物理的攻撃ではない。
    暗黒物質そのものを押し返し、力を弱める効果を持つ。

    黒猫は唸る。
    触手を一度回収し、再び濃密な闇を作り直す。
    「……邪魔な光め……」

    だが、妖氣姫は光を味方にする。
    衣装の輝き、髪の光沢、扇の反射――あらゆる美しさが魔力となり、暗黒の触手を焼き払う。

    「麗しくあらねば、力は失われるのよ」

    黒猫は光を避け、森の闇の中に潜む。
    瞬間移動のように姿を消し、別角度から触手を伸ばす。
    しかし、妖氣姫は動じない。
    目を光らせ、風を渦巻かせ、再び触手を切り裂く。

  • 7071◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 14:09:46

    「ふふ、あなたの影も、この風には勝てないわ」

    森は風と暗黒が入り混じる嵐のようになった。
    木々は切り裂かれ、地面は爪痕だらけ。
    だが、妖氣姫の麗しさと魔力の風が優勢を保ち続ける。

    黒猫は触手を増やしながら、慎重に攻める。
    力を削ぐため、目や光に晒される部分を避け、隙を探る。
    しかし、妖氣姫の華麗な動きは、光と風で全てを防ぎ、逆に暗黒を押し返す。

    「……ここまでとは、やはり侮れない」

    黒猫の声は苛立ちと共に低く響き、森の闇が微かに揺れる。
    光と影の綱引きは、まだ終わらない。

  • 7081◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 14:14:18

    森の中、黒猫の触手が妖氣姫を包囲した。
    狙いは明確だ。
    衣服や化粧、彼女の美しさそのものを汚すことで、力を削ぐ――。

    「……ちょっと、やめなさい」

    妖氣姫は口元に微笑を浮かべながらも、風を操り触手を払いのける。
    しかし黒猫は諦めない。
    瞬時に密度の高い触手を生成し、わずかな隙間から彼女に触れようとする。

    「……あなた、本当にしぶといわね」

    「……美しさを奪えば……力は減る……」

    黒猫の声が低く森に響く。
    触手が頬や装飾に触れ、ほんのわずかに化粧が乱れる。
    その瞬間、妖氣姫の力が微かに弱まる。

    「……くっ、侮れないわね」

    彼女は手を伸ばし、扇で風を渦巻かせる。
    触手は吹き飛ばされ、森の木々を叩きつけられながらも再び復活する。
    暗黒は一度消えても、黒猫の意思で即座に再生するのだ。

    「……まだまだ、これくらいじゃ終わらない」

    黒猫は触手を集中させ、衣服や髪に絡め取る。
    妖氣姫は髪をかき上げ、衣装を整えながらも、防ぎ切れない部分が出始める。
    風はまだ触手を吹き飛ばすが、完全ではない。

  • 7091◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 14:16:23

    「……このままじゃ……力が……」

    妖氣姫の顔に一瞬の焦りが浮かぶ。
    しかし、彼女は微笑みを絶やさない。

    「……ふふ、こういうときこそ、麗しく……」

    顔を整え、髪を翻すその所作が、魔力を再び増幅する。
    乱された美しさを瞬時に補うことで、微弱に減った力を取り戻す。

    森は混沌としていた。
    暗黒と麗旋のぶつかり合いは、単なる攻防を超え、心理戦のようにも見える。
    美しさと暗黒の攻防――それは、戦いの中で最も象徴的な瞬間だった。

    「……ふふ、あなたもなかなか手強い」

    黒猫は低く唸る。
    暗黒の触手を再び増やし、森の奥へと深く侵攻させる。
    妖氣姫は扇を握り直し、風を纏わせて対抗する。

    光と影、美と暗黒――森はまだ決着を許さなかった。

  • 7101◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 14:22:54

    森の闇は深く、黒猫の触手が妖氣姫を包囲する。
    だが、月光が一筋差し込み、黒猫の目を直撃した。
    その瞬間、触手の動きが鈍り、影は揺らぐ。

    「……光……やっぱり……」

    黒猫の低いうなり声が森に響く。
    目が弱点――その特性を妖氣姫は見逃さなかった。

    「麗しさを守れば、風は止まらない」

    妖氣姫は扇を振るい、魔力を帯びた風を黒猫の方向へ巻き上げる。
    触手が押し返され、暗黒の塊が乱れ、森の闇に隙間が生まれた。

    「……これで、終わりよ」

    風は触手を吹き飛ばすだけでなく、黒猫そのものの力を削ぐ。
    取り込む力も鈍り、暗黒の塊は徐々に小さく縮んでいく。

    黒猫は逃げ場を探し、瞬間移動で森の闇に姿を隠す。
    だが、月光の届く範囲から完全に逃れることはできなかった。

    「……光に負けるのか……」

    弱体化した影は触手を縮め、森の床に沈むように揺れた。
    妖氣姫は衣服と髪を整え、輝きを保ちながら、最後の風を纏わせる。

    「麗旋の竜巻、これで終わらせるわ」

  • 7111◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 14:24:46

    渦巻く風が黒猫を押し包み、暗黒を完全に吹き飛ばす。
    触手はもはや伸びず、影は消え入りそうに縮んでいく。

    黒猫は低く唸りながらも、最後の力で森の闇に紛れようとした。
    しかし、妖氣姫の光と風が覆い、暗黒は完全に浄化された。

    「……これで……終わったのね」

    妖氣姫は静かに息を吐き、森に漂う風を鎮めた。
    衣装も髪も整い、麗しさは全てを覆っている。
    戦いの跡に残るのは、枝折れた木々と、月光に照らされた森だけだった。

    森に静寂が戻る。
    暗黒は消え、光と美が勝利を示す。
    妖氣姫は静かに森を見渡し、微笑む。

    「美しさを守ることは、力を守ること……」

    夜の森に、風と光の余韻だけが残った。
    戦いは終わり、麗旋竜巻と暗黒の触手の衝突は、静かに幕を閉じた。

  • 7121◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 14:25:53

    以上

  • 713二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 15:09:17

    美しさが力に直結するってのは今まで無かった気がするし新鮮なバトルだった

  • 7141◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 15:52:12

    題名『幼き太陽と疫神の葬歌』

  • 7151◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 15:54:49

    廃墟の都市の空に、朝日が差し込む。
    瓦礫に囲まれた路地で、小さな少女が立っていた。
    鴉羽 詩彣――四歳にして神と呼ばれる存在。

    「……太陽、私の力、出すね」

    彼女の瞳は光を帯び、手をかざすと太陽の光が集中し、周囲の瓦礫を溶かすように熱を帯びた。
    核熱の力もまた、幼い体から発せられるとは思えぬほどの圧力を生み出す。

    一方、薄暗い影から現れたのは疫神。
    黒い装束に覆われ、顔には微笑のような陰影。
    疫病と災いの力を自在に操る存在。

    「……ふふ、ちっちゃな太陽神ね……でも、私には勝てないわ」

    鴉羽は無邪気に笑い、足元の瓦礫を光で焼き払いながら前進する。
    しかし、疫神が手を振ると、空気に浮かぶ埃や瓦礫に奇妙な病気や腐食が生じ、鴉羽の周囲に怪異が降りかかる。

    「……あれ、痛いの?」

    幼い身体は怪我や病気に対する耐性は低い。
    しかし、太陽の力はその痛みを徐々に押し返し、光の炎が疫神の影を焼き払う。

    戦いの幕開けは、光と疫病、純粋な力と災厄のぶつかり合いだった。
    鴉羽の無邪気な太陽は、疫神の闇を少しずつ照らし始める。

  • 7161◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 15:55:56

    廃墟の都市に静かな朝が訪れる。
    瓦礫の山の隙間に、小さな少女が立っていた。
    鴉羽 詩彣――四歳の幼き太陽神。
    その手には光の粒が踊り、太陽の熱が微かに身体を包む。
    幼い体でも、核熱を操る力は尋常ではない。
    しかし、疫神の影はそれを容易に許さなかった。

    「……ふふ、かわいい子ね。でも、私には勝てないわ」

    黒い装束の疫神が現れ、指先から無数の災いを降らせる。
    瓦礫が腐り、空気が重くなり、鴉羽の周囲には怪我や病が絶えず降り注ぐ。
    幼い体はその痛みに顔をしかめるが、太陽の力が少しずつ押し返す。
    光が闇に触れるたび、災いの影はわずかに薄れる。

    「……太陽、強くなって……」

    少女は手をかざし、光を集中させる。
    その光は瓦礫を溶かし、街の破片に光の輪を描く。
    だが疫神は手を振るだけで、光の中に疫病の粒子を送り込む。
    小さな身体に襲いかかる痛み、熱、吐き気……
    どれも、幼い神にとっては耐え難いものだった。

    「……でも、負けない……!」

    鴉羽は力を振り絞り、光を爆発させる。
    瓦礫が弾け、疫神の影が揺れる。
    だが、疫神は微笑みを絶やさず、災いの連鎖を続ける。
    小さな身体に次々と病や怪我が降り注ぐ。

  • 7171◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 15:56:35

    「……逃げても無駄よ。能力は止められない」

    しかし鴉羽は恐れず、光を集中させ、足元の瓦礫から熱を放つ。
    それは疫神の影を焼き払う力となり、わずかに距離を生む。
    都市は光と災いの混沌で揺れ、瓦礫は粉塵となり、空気は灼熱と瘴気で歪む。

    「……太陽、もっと……」

    少女の小さな手が光を集め、腕から核熱が放射される。
    瓦礫の山を焼き尽くし、疫神の影を押し返す。
    しかし、疫神は軽く指を振るい、また新たな災いを降らせる。
    痛みは増し、呪いは絶えず鴉羽を襲う。

    「……まだ、まだ終わらない……!」

    鴉羽の目は光を帯び、涙を流しながらも戦う意志を見せる。
    小さな体に宿る太陽の力と核熱が、疫神の影を少しずつ押し返していく。
    だが、都市の空はまだ疫病の影に覆われており、戦いは序盤にすぎなかった。

    闇と光、疫病と太陽。
    四歳の幼神は、絶え間ない災いに耐えながらも、ひたむきに光を振るう。
    それが彼女の全力であり、唯一の武器だった。

  • 7181◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 15:57:19

    都市の上空に、黒い雲が広がっていた。
    それは自然のものではない。
    疫神の能力が生み出した瘴気の雲だった。
    その下で、幼き太陽神・鴉羽 詩彣は苦しげに息を吐く。
    四歳の小さな体には、無数の疫病と怪我が絶えず襲い掛かっていた。
    皮膚には火傷のような痕、呼吸は荒く、咳が止まらない。
    しかしその瞳は、曇ることなく光を宿していた。

    「……こんなに痛いの、初めて……」

    少女は小さく呟き、震える足で立ち上がる。
    膝は崩れそうに揺れ、体の奥から熱と痛みがせり上がる。
    けれど、太陽を宿す者は決して倒れない。
    その心は小さくとも、核熱のように強靭だった。

    疫神は愉快そうに笑う。

    「ふふ……立ち上がるのね。愛らしいこと。でも無駄よ」

    彼女の指先から、さらに濃密な瘴気が生まれる。
    瓦礫は崩れ、鉄は錆び、空気そのものが腐敗していく。
    鴉羽の体にもまた新たな疫病が芽生え、激痛が走った。

    「……うっ……でも……負けない」

    涙を流しながらも、少女は光を集める。
    その掌からは、小さな太陽のような輝きが生まれた。
    それは周囲の瓦礫を溶かし、腐敗した空気を押し退ける。

  • 7191◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 15:57:44

    光が増すたびに、影が後退する。

    「太陽は……いつも、空にある……だから……私も負けない……!」

    幼い声に宿る決意は、震えながらも確かな力を放つ。
    彼女の周囲に熱が渦巻き、核熱の光が爆ぜる。
    瓦礫の街は一瞬だけ昼のように明るく照らされ、疫神の影が揺らいだ。

    「……あら、面倒な子……」

    疫神は笑みを引き締め、瘴気をより濃くする。
    黒い雲は渦を巻き、嵐のように都市を覆った。
    その中で、鴉羽は小さな声で呟く。

    「怖い……でも、ここで……止めなきゃ……」

    恐怖を抱えながらも、少女は前を見据えた。
    幼い体に宿る神の力を、全て解き放つ覚悟を胸に抱いていた。

    そして、光と闇の激突が、さらに激しくなろうとしていた。

  • 7201◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 15:58:50

    瓦礫と化した都市の中央で、二つの力が拮抗していた。
    一方は太陽の幼き化身、鴉羽 詩彣。
    もう一方は災いと病を司る疫神。
    光と闇は触れ合うたびに爆ぜ、都市の残骸をさらに破壊していく。

    「……はぁ、はぁ……まだ、立てる……!」

    鴉羽は小さな身体を必死に支え、両手を高く掲げた。
    光の粒が集まり、頭上に小さな太陽が浮かび上がる。
    それは都市全体を照らし、瘴気の雲を押し返すほどの輝きを放った。

    疫神は冷たい瞳でその様子を見つめる。

    「ふふ……眩しいわね。でも、病は光でも止められない」

    彼女が軽く手を振ると、鴉羽の体に新たな災いが刻まれる。
    耳を裂くような頭痛、血を吐くような咳、骨を軋ませる激痛。
    幼い少女の体は崩れ落ちそうになるが、それでも瞳は消えなかった。

    「……こんなの……いやだ……でも、負けない……!」

    涙を流しながら叫ぶと、頭上の太陽がさらに膨れ上がった。
    その熱は瓦礫を赤く染め、空気を焼き切るように波打つ。
    都市の影は後退し、瘴気の雲に穴が空いた。

    疫神は僅かに表情を歪める。

    「……へえ……本当に子供なの? この力は……」

    しかし、彼女は決して退かない。

  • 7211◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 15:59:25

    闇の瘴気を再び渦巻かせ、都市を覆い尽くそうとする。
    光と瘴気がぶつかり合い、音のない轟音が辺りを震わせた。

    「……太陽は……消えない……!」

    鴉羽はふらつきながらも、両手を突き出す。
    そこから放たれた核熱の閃光が、疫神の影を直撃した。
    一瞬、疫神の姿が焼き出され、黒い衣が揺らぐ。

    「……っ!」

    疫神は初めて小さく呻いた。
    その顔には驚愕と怒りが交じっていた。

    「小娘が……!」

    彼女は全力で瘴気を放ち、鴉羽を押し潰そうとする。
    しかし、少女は倒れながらも立ち上がり、光を絶やさなかった。

    「私は……太陽だから……闇には……負けない……!」

    幼き神の声が、嵐のような戦場に響き渡った。

  • 7221◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 16:00:04

    瓦礫の街に、再び沈黙が訪れる。
    だがそれは戦いの終わりを示すものではなかった。
    空には瘴気の雲が渦を巻き、地上には灼熱の光が広がっている。
    その狭間で、幼き太陽神・鴉羽 詩彣が苦しげに息を吐く。

    「……はぁ……いたい……くるしい……」

    小さな体は傷だらけで、肌には火傷と痣が刻まれていた。
    咳と共に血が滴り、視界は揺れている。
    それでも、その瞳だけは消えていなかった。
    炎のように燃える決意が宿っていた。

    疫神はゆっくりと歩み寄る。
    黒い衣がひらめき、足元から瘴気が滲み出す。

    「もう立てないでしょう? あなたは子供。私に抗えるはずがない」

    その声には余裕と冷酷さが満ちていた。
    だが鴉羽は歯を食いしばり、再び立ち上がる。

    「……私は……太陽……負けない……」

    少女は震える腕を掲げ、再び光を集める。
    それは小さな灯火のように弱々しかった。
    しかし、その灯火は決して揺らぐことはなかった。

  • 7231◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 16:00:23

    「くだらないわ」

    疫神は片手を振るい、災いをさらに注ぎ込む。
    鴉羽の体に新たな激痛が走り、膝が折れそうになる。
    だが、その瞬間、光が膨れ上がった。

    「……っ、まだ……消えない……!」

    幼い声が、瓦礫の街に響く。
    その光は太陽の欠片のように明るく、瘴気を押し返した。
    都市の空が一瞬だけ晴れ渡り、黒雲に裂け目が生じる。

    「なに……?」

    疫神の瞳に驚きが走る。
    彼女にとって疫病は絶対であり、消えぬもの。
    それを押し返す存在など、あり得ないはずだった。

    「……太陽は……どんな病にも……負けない……!」

    涙を流しながらも、鴉羽は光を放ち続ける。
    幼い体は限界を超えていた。
    それでも、その心だけは折れることがなかった。

    「なら……本気で滅ぼしてあげる」

    疫神の声が低く響き、瘴気の嵐が都市を覆う。
    光と闇、灼熱と瘴気が再び激突する。

    決着の刻は、すぐそこまで迫っていた。

  • 7241◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 16:00:57

    瓦礫に覆われた都市に、最終の嵐が訪れた。
    疫神が放つ瘴気は黒い竜巻のように吹き荒れ、建物の残骸を粉砕する。
    空は完全に覆われ、昼であるにもかかわらず夜のように暗い。
    その中心で、幼き太陽神・鴉羽 詩彣は膝をつき、息を荒げていた。

    「……もう……立てないの……かな……」

    小さな手が震え、額から血が流れる。
    体中に刻まれた疫病と怪我は、常人ならとうに命を落としているほど。
    それでも彼女はまだ生きていた。
    そして、まだ負けてはいなかった。

    疫神は勝利を確信したように、静かに笑う。

    「終わりよ。幼い神よ。あなたの光はここで消える」

    その言葉は冷たく、絶望を告げる鐘の音のようだった。
    だが、鴉羽は震える声で答える。

    「……太陽は……絶対に……消えない……」

    その瞬間、彼女の胸に小さな炎が宿った。
    それは残り少ない命を燃やす覚悟。
    幼き身でありながら、神として最後の力を解き放つ決意だった。

    「……みんな……見てて……」

    両手を広げ、空に向かって叫ぶ。
    その声は幼いながらも、確かな祈りのように響いた。

  • 7251◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 16:01:21

    次の瞬間、鴉羽の身体から爆発的な光が迸る。

    「八咫鴉――昇れ……太陽……!」

    都市全体を包み込むほどの巨大な光球が現れた。
    それは核熱の塊、彼女が持つ力のすべて。
    瘴気の嵐を押し返し、黒雲を裂いて青空を取り戻す。

    「……な、何……これは……!」

    疫神が初めて本気の恐怖を浮かべた。
    彼女の放つ病と災いが、光によって次々と焼き払われていく。
    逃げ場はない。
    光はあらゆる影を追い詰め、疫神を中心に収束した。

    「……私は……闇……疫病そのもの……消えるなんて……!」

    疫神の叫びは虚しく掻き消え、闇は灼熱に呑まれた。
    黒い衣が崩れ、瘴気は完全に晴れ渡る。
    残ったのは光に照らされた都市の瓦礫と、立ち尽くす小さな少女だけだった。

    「……やった……の……?」

    鴉羽はふらりと揺れ、笑みを浮かべた。
    そのまま意識を失い、静かに倒れ込む。
    だがその顔は安らかで、空にはまばゆい太陽が輝いていた。

    幼き太陽神は確かに勝利した。
    その光は、永遠に消えることなく世界を照らし続けるだろう。

  • 7261◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 16:02:05

    以上

  • 7271◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 16:07:50

    次の安価は通常安価に戻って19:30から10個募集

  • 728二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 16:11:26

    面白かった!

    次の安価は七時半か

  • 729二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:30:00

    名前:ワインド・ワルド
    年齢:19
    性別:男性
    種族:人間
    本人概要:
    能力で相手の動きを止め、そこに銃弾をぶち込む戦術をとる。
    自由自在かつ無制限に時間を止める能力を持つとされているが……?
    能力:時間停止?
    能力概要:
    その正体は強力な催眠能力。相手に「動くな」という命令を刷り込むことで行動不能にし、それを巧みな話術で時間停止と錯覚させている。
    弱点:
    あくまで催眠能力であるため、相手がダメージを受けるたび行動停止が解除される。相手の意識が痛みで埋めつくされるのが原因。
    実際に時間が止まっているわけではないため、ミサイルなどの飛び道具は自力で避けなければならない。

  • 730二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:30:00

    名前:樫 勝田
    年齢:34歳
    性別:男性
    種族:人間
    本人概要:
    決して理不尽を許さない隻腕の熟練拳闘士。濡れ衣により20年もの拘禁と拷問を受けたが、利き腕を失いつつも耐えきり、世の理不尽を殲滅する羅刹の如き戦士となった。
    激しく燃える理不尽への怒りを身の内に凝縮しつつも、確実に、確実に殲滅を成すため、その言動は全てを静かに研ぎ澄ます精神力が最大の強み。
    ゆっくりと相手に歩み寄り、正面から正々堂々と渾身の打撃をぶっ放すのが主な戦法。
    能力:【初志貫徹】/【臥薪嘗胆】
    能力概要:
    【初志貫徹】:利き腕である右腕を失った代わりに覚醒したスキルの一つ。
    初心を思い出すため身体をかつての拘禁される前の健康な状態へ回帰させる。
    ただし、回復のためのスキルではなく、あくまで【臥薪嘗胆】を使うための準備用のスキル。
    【臥薪嘗胆】:利き腕である右腕を失った代わりに覚醒したスキルの一つ。
    【初志貫徹】を使用した後にのみ発動可能。
    自身が受けた20年もの拷問と理不尽によって受けた傷と苦痛を自身の体へ一瞬で再現する。
    鞭打ちの苦痛や腕の切断などの苦痛を再度受けることで精神が壊れたりショック死する危険すらあるが、それに再び耐え抜いたとき、理不尽への激しい憎悪を、常軌を逸した力に変えることが出来る。
    弱点:
    【臥薪嘗胆】を使用するたびに精神ダメージ蓄積。
    【臥薪嘗胆】を使用するたびショック死の危険あり。
    右腕を欠損しているため右側からの攻撃に弱い。
    全身に拷問による無数の古傷がありそれらを突かれれば致命傷になる。

  • 731二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:30:00

    名前:異能再現体TYPE提唱(渾名 ラキア)
    年齢:1
    性別:女
    種族:サイボーグ
    本人概要:【提唱者】を狂気のマッドサイエンティストが再現しようとして生まれた存在
    見た目は提唱者そっくりだが 無表情 情緒が幼いという特徴がある
    現在は山桐家に保護されて山桐家の一員となっており【提唱者】に懐いている
    渾名は提唱者の本名である晶(アキラ)を逆さまにしたもので名付けたのは提唱者本人
    能力:異能再現 提唱(言葉=世界律)
    能力概要:口にした言葉通りに世界を改変する 提唱者の能力を人為的に再現したもの
    弱点:提唱者とは違い能力発動には溜めが必要なうえクールタイムがある
    これは世界改変の規模が多いほど発動に必要な時間は伸びるし クールタイムも同様
    能力を発動しようとする際は【異能再現開始…… 発動まで残り○秒】という機械音声が鳴るし
    クールタイム時には【クールタイム…… 能力再使用可能まで残り○秒】という機械音泉が鳴る
    制御装置がわりの首飾りをつけておりそれを破壊されると修理するまで機能停止する為実質敗北
    要望(任意):普通の会話は【 】みたいな機械音声 能力発動の時のみ「  」みたいな肉声と言った形でお願いします

  • 732二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:30:00

    名前:狗木 骸霞(くぎ がいか)
    年齢:15
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:麻薬カルテル“テノチティトラン”の暗殺者(シカリオ)。
    闇医者の父親、淫蕩な母親の間に生まれ、2人から暴力やネグレクトなどおよそあらゆる虐待を受けた過去を持つ。
    転機となったのは10歳の時。父親から無理やり薬物“link lost”を摂取させられたときであった。母方の呪術師の血が目覚め、トリップした幻覚を現実のものとし、2人を一塊の物質に変えた。
    以来この異能の力、薬物、そして唯一の友達の人形“キョウちゃん”だけを支えに、社会の闇の中で生き続けている。
    能力:夜と風(ヨワリ・エエカトル)、異端薬物“link lost(通称L2)”
    能力概要:薬物でトリップし、その幻覚を現実のものとする。
    骸霞が拳銃型注射機でL2を摂取すると、彼女の背後に黒曜石でできた鏡が浮かび、そこから少女のトリップして見ている幻覚が映し出され、世界を冒涜する。
    密林のジャガー、狡猾なコウモリ、太陽を喰む禿鷲、地を這う毒蛇、心臓を潰す鬼(父親のイメージ)、希望を嘲笑う天狗(母親のイメージ)…少女の歪んだ脳髄で蠢く魑魅魍魎が夜の闇のように世界を侵し、風のように世界を巡り、敵対者の心臓を奪い神に捧げる。
    ……正しくは、正気を捧げることで黒曜石の鏡を生み出しこの異様な奇跡を起こしている。父方の古代文明の神官の血と、母方の供犠の才能が複雑に絡み合うことで生まれた異端の力。彼女の場合、異能が発動したから失うのではなく、失ったから異能が発動している。
    テスカトリポカを意味するその能力は、少女の夢(ぜつぼう)で世界を滅ぼす。
    弱点:重度の薬物中毒であるため体力がなく、また薬物耐性があるため幻覚が割とすぐに覚めてしまう。
    手に抱いているキョウちゃん人形を攻撃されると発狂して攻撃の規模こそ増すが狙いが大雑把になる。
    背後の黒曜石の鏡を破壊すれば能力は中断される。
    次の異能を発動するために、震える手で何度も注射を失敗している間に制圧すべし。
    要望(任意):セリフは全てひらがなです。

  • 733二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:30:00

    名前:混沌の主・スファレラス
    年齢:1500以上
    性別:外見は男性
    種族:悪魔
    本人概要:人界に溶け込み暗躍する金髪碧眼の大悪魔。悪魔としては珍しく角や翼といった悪魔的な身体的特徴を一切持たない。擬態の精度が異常に高く、まずその正体を見破ることは出来ない。
    人間を含む定命の種族に対して非常に友好的であり、多くの者と契約を交わした。スファレラスは彼らの持つ進化の可能性に魅入られている。
    一方で生物の進化には苦難が必要であると考えており、様々な厄災や戦乱を引き起こした。その度に様々な姿に扮し現れては、進化を促す知恵や力を授けた。そのため信仰や英雄視されることもあるが、本人にその気は全く無い。邪悪で天然なマッチポンプである。
    能力:不和の脈動、地脈掌握
    能力概要:不和の脈動:摂理、運命、集合的無意識、概念といった世界を構成する高次元要素に干渉し、世界のあらゆる流れをより悪い方へ、不安定な方と揺り動かす神域の大魔術。効果範囲はちょっとした大陸であれば全域に及び、影響下では何もかもが上手くいかなくなり人心は荒む。彼はそれを息をする様に使い熟し、様々な厄災や戦乱を引き起こした。
    その力を個人へ向けた場合、以上の効果に付随し対象はあらゆる力や集中が乱れ、運命に見放される。世界そのものが敵にまわった様な状況で襲いくる数多の苦難に立ち向かうことになる。
    地脈掌握:スファレラスはあらゆる魔術に長ける大魔術師でもある。中でも大地の力を扱うことへの造詣が深く、広大な地脈すらも掌握し自身の魔力として用いる。そのため己の力を損なわずに天変地異の如き大魔術を無数に行使できる。また土塊を整え己と寸分違わぬ分体を作り動かすこともでき、身代わりや戦力として使用する。
    自身の死後に分体へ力と知識を継承し実質的な復活も可能。ただし戦いにおいては使用しない。
    弱点:胸の中心部から突き出した黄金の宝石、それが悪魔としての心臓であり核。守りはあるが、破壊すると勝利。
    圧倒的な力を持つが基本的に相手に進化を促すことが目的であるため頑張る相手には本気を出さない。なお相手が諦めたり、心が折れた場合はその限りでは無い。
    要望(任意):核が破壊された場合は恍惚の表情で対戦相手や生物の可能性を賞賛し、高笑いしながら死亡。その後どこか遠くで新たなスファレラスが現れ、改めて人の可能性に感動する終わりだと嬉しいです。

  • 735二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:30:01

    名前:固定者
    年齢:創生の頃から
    性別:消滅
    種族:人間→機械
    本人概要:元はありとあらゆる可能性を観る者で有ったが、自分が観測した結果可能性が固定されてしまった。それを挽回しようとしたらさらに悲惨な結果になって絶望をしてしまったら、大体の感情を犠牲になってしまい、能力が反転し今の能力になった。その事があった為、自分が動くと悲惨な事になると考えている。現在はオワタマから生き延びて対応策を得る為に、人間からありとあらゆる宇宙で起きた事を記録する円環機になっている。己の一部を分けて人の形を取らせ、世界に流したり本体の代わりに戦闘を行う存在を造っている。
    能力:《ツザメンファッセン》
    能力概要:ありとあらゆる可能性を一つに纏めて多様性をなくして固定させる能力。
    相手のありとあらゆる選択肢・未来予知・複数戦術を消し飛ばし一つに纏められる。
    相手のありとあらゆる行動を一つに纏めてそれしか行動出来なくさせる事も可能。
    自分に掛かる毒・寄生・時間経過などの変化の可能性を消し飛ばし自分を固定させれる。
    弱点:一切の変化をしない存在の為、相手のありとあらゆる攻撃はクリティカルヒットする。
    世界の可能性を一つに纏める為、その時に起こる可能性があるさまざまな現象が一斉に起こる。
    世界を纏める為に大体の力を使っている都合、世界を纏めようとすると、相手の行動の択を3択までしか纏められない。
    端末の胴体に巨大なコアが露出しており、それが破壊されると、端末は死亡する。

  • 736二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:30:01

    名前:シャルロッテ・スレイ
    年齢:5
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:最近生まれたスレイ家の新参者。
    だが家族の誰もシャルロッテのことを覚えておらず、唯一覚えているのは兄のマーチャーだけ。謎の存在。
    大人しくいつもショボショボしているが、忘れられている中でも正気を保てる強い精神性を確かに持っている。よく神鏡皇の所に侵入して勝手にお菓子などを食べていったり、トートで読書をしたりしている。自信家で図太い。自身の能力に絶対の自信を持っている。根っこはしっかりと良い子だし、大体がキャージJr.からの悪影響。
    少しウェーブした金髪に碧眼。顔が少し髪に隠れている。
    能力:【スレイ家のお遊戯】
    能力概要:前意識を操る能力。
    前意識とは「あれなんだっけ?……そうだった」となる現象のこと。
    シャルロッテはその「思い出せる範囲」を破綻や施錠することで相手の記憶を抑制することが出来る。また、相手の生活的な記憶や戦闘においての記憶を抑制することで「息の仕方を忘れる」「能力の使い方を忘れる」「体の使い方を忘れる」「自分自身を忘れる」「喋り方を忘れる」といった効果が現れる。
    さらに、忘れていたことの抑制を外すことで忘れていたこと(潜在的な記憶(戦闘技術やアル=ヴァナ・スレイオスの記憶))を呼び覚まし、戦闘に活用することが可能である。
    能力の副作用として「さっきまでいなのに思い出せない」というような効果が現れる。この副作用の影響でシャルロッテは家族から忘れられている。
    弱点:
    ・身体能力は普通の子供並み。長くは戦闘は出来ない。
    ・他者へ能力が発動するのはシャルロッテが視認出来ている間のみ。
    ・潜在的な記憶を思い出さなければ戦闘技術等は身に付けることが出来ない。
    ・注目が集まると能力の効果が薄くなる
    要望:一人称は「私」、二人前は「あなた」でお願いします。シャルロッテが勝てたら相手をオモチャとして連れて帰ってください。

  • 737二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:30:07

    名前:惡鎖坊
    年齢:少なくとも100年以上は生きている
    性別:無い
    種族:妖怪
    本人概要:無数の鎖の塊が人の形の姿をした妖怪。動くと鎖のジャラジャラ音がする。喋らない。闇の中から突然現れる。
    能力:自身の鎖を巻き付ける
    能力概要:自信を構成する鎖を自由に伸ばして攻撃する。鎖は鞭のように相手に打ち付けたり、大きな塊にして叩きつけることも出来る。
     相手の四肢に鎖を巻き付けた状態で首に鎖を巻き付けると相手は抵抗する意思が失われ闇の中に引きずり込まれてしまう。ちなみに鎖の強度は一般的な鎖と同程度である。実は視力が存在しないが音を感知する能力は高く、鎖を壁や地面の叩きつけた時の反響音で状況を把握出来る
    弱点:自分のジャラジャラ音で妨害されてしまうので反響音を使うときは全く動く事が出来ない。
     鎖が切られた場合、切り離された部分は速攻で塵になって消滅するので巻き付かれても何らかの方法で鎖を破壊すれば逃れられる、そして鎖が絡み合ってる中核部を破壊されると完全消滅する。四肢に鎖を巻き付ける時は絶対に手か脚、一本ずつで複数ずつ巻き付けることは出来ない

  • 738二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:31:00

    このレスは削除されています

  • 739二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:31:28

    代理

    名前:パヌルー・トーテンタンツ
    年齢:58
    性別:男
    種族:元人間の妖怪
    本人概要:元はアルビオン裏社会において鼠を使うことで諜報や暗殺などをこなしてきた「トーテンタンツ家」の一員だった 18世紀めいたペスト医師装束と皮膚が一体化している 鼠の言葉を理解しようと修行を積んでいるうちに自身を鼠であると思い込むようになって複雑に入り組んだ下水道に姿を消した その行方は流石のM教授も知らないしトーテンタンツ家にとってはよくある事なので探そうとは思われていない
    能力:鼠化した肉体
    能力概要:四足獣めいて変化しペスト医師装束および仮面と一体化した危険な肉体 腕とかがトゲトゲしてる 元々凶暴で大きいクローヴァン鼠よりもさらに大きく攻撃的で凶暴 あと下水道に生息する凶暴なクローヴァン鼠の群れをボスとして従える
    弱点:肉体が鼠化しているため強烈な光や音、寒さなどに弱く複雑な思考が苦手 鼠は凶暴なだけで統率が取れてないので大して強くない あとこいつは巨体ゆえに狭い通路には入れない
    要望(任意):決して人語を喋らせないでください

  • 740二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:31:37

    このレスは削除されています

  • 741二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:31:44

    名前:佐藤 心(こころ)
    年齢:22歳
    性別:女
    種族:人間?
    人物概要:佐藤家に仕える従者で和風メイドの格好をした女性
    死にかけの所を佐藤家に助けて貰った過去があり佐藤家への忠誠心は高い、メイドとしてはアレなので家族の話し相手をしている
    その正体は久那土暗部にて行われた実験の末に生まれた存在で狂うほどの呪いを魂に抱えて神へ至り国に復讐を誓った「呪神」
    性格は可愛らしく感情豊かでリアクション旺盛、その仮面の裏には狂うほどの憎悪と誰にも晴らせぬ復讐心を隠している
    能力:呪詛の主
    能力概要:名の通りありとあらゆる呪いを司る呪神の権能、復讐の為に大部分の呪いをある呪いに回しているがそれでも強大
    魂を根底から穢す力であり憎悪すればするだけ力が増し呪いが練りこまれていればいるだけ悍ましく恐ろしい呪いを引き起こす
    軽度の呪いでも精神錯乱、様々なデバフ、幻覚、病魔、感情暴走などなどを引き起こす事を可能とし他にも様々な事を引き起こせる
    より重い呪いだと存在破綻、能力暴走、超絶不運、人生の破滅、何も上手く行かなくなる等々を起こすことが可能である
    弱点:冷静に考えて初対面の相手に対してそんなに憎悪して呪うような事があるわけも無く余程の相手でない限り重ねないと効力は薄い
    また復讐の為に呪いの練っているので出力は更に低く出し惜しみもしがちで呪い無しでの攻略をしようとする時もある
    余程憎悪している対象以外には普通に心優しくて良い子なので攻撃を躊躇しがちであり急所以外を狙おうとするので隙がある
    遠距離攻撃は持たず身体能力は従者一だが耐久力は普通、天界から現界する為のコアが心臓部にありそこを突かれると消滅する
    要望:感情豊かで可愛らしい口調、一人称は「私」
    暗い部分は表に出さずなるべく可愛らしい感じでお願いします

  • 742二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:32:59

    >>738

    これ剣神安価用のきゃらじゃなかったっけ?

  • 743二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:34:29

    >>742

    本当ですね、削除しておきます

  • 744二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:46:52

    >>739

    ありがとう

  • 7451◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 20:17:26
  • 7461◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 22:49:50

    固定者vs混沌の主・スファレラス
    ワインド・ワルドvs樫 勝田
    惡鎖坊vs狗木 骸霞
    異能再現体TYPE提唱vsパヌルー・トーテンタンツ
    シャルロッテ・スレイvs佐藤心

  • 7471◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:38:25

    題名『混沌と固定の狭間』

  • 7481◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:40:20

    大地は薄曇りの空の下、静寂に包まれていた。
    どこからともなく現れたのは、金髪碧眼の男。スファレラス──混沌の主と呼ばれる悪魔である。
    彼の瞳には人間では理解しきれぬ好奇心が宿り、世界の秩序が微かに揺れる気配を纏っていた。

    足元の草木が微かにざわめく。彼が立つだけで、空気は重く、不安定なリズムを刻む。
    その傍ら、無表情の存在が一人。固定者。創生の頃からありとあらゆる可能性を観測し、機械の身体に自身を固定させた存在だ。
    その眼差しは冷たく、世界を整理するような秩序と静寂を放っていた。

    「なるほど……可能性に満ちているな」

    スファレラスの声は低く、だがどこか楽しげに響いた。
    固定者は反応を示さない。ただ、世界の流れを監視する機械の眼だけが、微かに揺れる。

    「……全てを、一つに」

    静かな声で固定者は呟く。周囲の時間がわずかに揺れ、空気がねじれる感覚があった。
    スファレラスは微笑んだ。

    「面白い……この手で、少し世界を弄んでやろうか」

    彼の足元の土塊が盛り上がり、寸分違わぬ分体が複数現れる。
    固定者はそれを前にしても動じず、全力で世界をまとめようとする。
    しかし、スファレラスの存在が空間に影響を及ぼすたび、固定者の選択肢は狭まる。

    風が不規則に巻き上がり、木々はねじれ、空は薄紫の陰影を帯びた。
    遠くで鳥が鳴く声すら、世界の秩序に違和感を覚えるかのようだった。

    「さて……どう楽しませてもらおうか」

    スファレラスは静かに笑う。その表情は、戦いを前にして期待に満ちていた。

  • 7491◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:41:08

    固定者の内部で、計算され、固定されていた可能性が微かに揺れる。
    「……動くな」と、無言の圧力を放つ固定者。
    だがスファレラスはその圧力を楽しむように微笑み、分体を整える。

    その瞬間、戦いの幕が静かに開かれた。
    世界の均衡はわずかに傾き、これから起こる激しい衝突の予感が大地に染み渡る。

  • 7501◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:42:25

    スファレラスの分体たちは、地面を蹴り飛ばすように一斉に動き出した。
    それぞれが微妙に異なる角度で揺らぎ、見た目は同一でも、内側ではまったく別の存在のように振る舞う。
    固定者は無言でそれを見据え、全方位に広がる可能性をまとめようとした。

    「……なるほど、面白い」

    スファレラスは空中で軽く跳ねると、手をひらりと振った。
    その瞬間、大地がわずかに波打ち、木々の葉が逆風に煽られる。
    不和の脈動――世界の摂理を微かに揺らす彼の能力が、無言の圧力とともに固定者の計算を乱す。

    固定者は素早く対応する。
    目の前の分体が動くたび、可能性の選択肢を一つにまとめる。
    しかし、スファレラスは笑うだけで、攻撃の手は一切加えない。

    「……まだ本気じゃないのに、これか」

    その笑みは、相手の力を試す子供のようでもあり、狡猾な悪魔のようでもあった。

    分体の一つが固定者に接近する。
    だが、固定者は瞬時に行動を固定し、回避するルートを一つに絞る。
    しかし世界はスファレラスの力によって揺らいでいた。
    固定者が選択できる道は次第に狭まり、偶然と必然が絡み合う。

    「もっと……楽しませろ」

    スファレラスの言葉とともに、大地から無数の土塊が生まれ、寸分違わぬ分体を取り囲む。
    固定者は冷静に観察する。分体に触れると可能性が混ざり、彼の制御が微かに乱れる。
    その隙を逃さず、スファレラスは次々と分体を動かす。
    固定者は、攻撃することも防ぐこともできず、ただ秩序をまとめることに意識を集中する。

  • 7511◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:43:14

    しかし、彼の内部では、可能性がわずかに揺れるたび、世界全体が反応する。

    「……悪い奴だな」

    固定者はわずかに呟き、計算の力をさらに絞り出す。
    だがスファレラスの笑い声が、世界の奥底まで震えるように響き渡った。

    遠くの山の稜線が微かに揺れ、土塊が小刻みに振動する。
    この静かな戦場で、二つの力が互いに呼応し、緊張の糸が張り詰める。
    激しい衝突はまだ始まらない。だが、次の瞬間、全てが動き出す予感が満ちていた。

  • 7521◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:44:13

    スファレラスは静かに立ち、分体を周囲に配置した。
    彼の瞳は冷たく光り、世界そのものを見下ろすような角度で固定者を見据える。

    「お前も、そろそろ本気を出すんだろう?」

    固定者は無言で応じる。
    円環機の端末がわずかに振動し、周囲の可能性を収束させようとする。
    しかし、スファレラスの不和の脈動がそれを阻む。
    秩序を強引に押し込もうとすればするほど、世界の運命は乱れ、選択肢は増える。

    スファレラスの手が空を裂く。
    その一瞬で、周囲の大地がねじれ、木々は不自然に揺れる。
    土塊の分体が固定者に向かって跳躍し、圧力をかける。

    「……ふふ、まだ見えていないな」

    固定者は行動を一つに絞ろうとするが、分体はあらゆる方向に展開し、接近と遠隔の両方で揺さぶる。
    可能性をまとめる力も、広範囲に干渉する不和の脈動には完全には勝てなかった。

    「人間の進化ってのは、やはり面白い」

    スファレラスは一つの分体を握り潰すように触れ、その瞬間だけ固定者の視界に変化が生まれる。
    無数の可能性の糸が絡まり、固定者の計算は瞬時に複雑化する。
    秩序を守ろうとする力と、混沌を楽しむ意思が、静かにぶつかり合う。

    しかし、固定者は怯まない。
    端末が光り、周囲の可能性を再び一つにまとめようとする。
    だが、スファレラスは笑いながら軽く指を鳴らす。
    「まだ、ほんの一部しか使っていないのだぞ」

  • 7531◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:44:43

    その瞬間、分体の動きが加速する。
    土塊が砕け、空気の渦が巻き、視覚と聴覚に異常な圧力がかかる。
    固定者は冷静に秩序をまとめるが、予測不能な揺らぎが絶え間なく襲いかかる。

    「さて……これでどこまで耐えられるか、見せてもらおうか」

    スファレラスの声が戦場に響き渡る。
    そして次の瞬間、全ての分体が一斉に固定者に突進した。
    秩序と混沌の本格的な衝突が、ついに幕を開けた。

  • 7541◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:46:15

    衝突は次第に激しさを増していった。
    固定者はありとあらゆる行動を一つにまとめ、分体の動きに対応しようとする。
    しかし、スファレラスの不和の脈動は大陸規模で効果を及ぼし、どれだけ秩序を纏めても揺らぎが生まれる。

    「ふふ、そんなもんか……」

    スファレラスは笑いながら、分体の一つを自らの胸元の宝石に触れさせ、巨大な地脈を掌握する。
    大地が隆起し、天が裂ける。
    固定者は端末を操作して可能性を固定しようとするが、分体の突進は止まらない。
    押し寄せる大地の圧力、裂ける空、揺れる時間軸──すべてが固定者の計算を狂わせる。

    「まだ、ほんの序の口だ」

    固定者は必死に可能性をまとめ、分体を回避させる。
    だが、スファレラスの魔術はさらに連鎖する。
    土塊が変形し、自身と寸分違わぬ分体を作り出し、固定者の攻撃を受け流す。

    「……くっ」

    固定者の端末が光を放つ。
    一瞬だけ秩序が整ったように見えるが、スファレラスの笑い声が戦場にこだまする。

    「お前の努力も尊い……だが、世界はそんなに簡単には従わない」

    スファレラスの掌から放たれた力は、固定者の動きを直接押し潰す。
    可能性を固定しようとする端末は大きく揺れ、コアが露出する。

    「ここで……終わらせる」

    黄金の宝石が赤く輝き、巨大な魔力波が固定者を包み込む。

  • 7551◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:46:47

    端末は耐えきれず崩壊し、固定者は動けなくなる。
    スファレラスはゆっくりと近づき、宝石を見下ろしながら、崩壊する固定者の残像に笑みを向けた。

    「これが……お前の可能性の全てか」

    固定者は消え、世界は混沌に満ちたまま静かになった。
    スファレラスは空を見上げ、遠くの地平線に新たな進化の兆しを感じる。

    「……面白い、また新しい可能性を見つけに行こう」

    高笑いが戦場に響き渡る。
    そして、どこか遠くで新たなスファレラスが人々の前に現れ、世界は再び進化の連鎖を刻むのだった。

  • 7561◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:48:54

    戦場に静寂が訪れるかと思われたが、スファレラスの胸の宝石はまだ赤く脈打っていた。
    彼の視線の先には、崩壊した固定者の残骸。だが、それは完全消滅ではない。
    散らばった端末の破片から、かすかな光が漏れる。

    「ふふ、まだ諦めてはいないようだな」

    スファレラスはゆっくりと歩み寄る。地脈を掌握し、裂ける大地を跳ね上がらせ、空間の歪みで破片を押さえ込む。

    「可能性というのは、時に頑固で厄介だ……だが、それもまた美しい」

    固定者の端末から微かに動きが生じる。
    一つ、また一つと小さな光点が集まり、分体を形成し始める。

    「まだ抗うか……面白い」

    スファレラスは掌を開き、巨大な不和の脈動を放つ。
    大地は震え、風が逆巻き、空気はねじれ、分体の動きは次第に鈍くなる。

    「全ての可能性を、たった一つの結末へ」

    だが、固定者は反撃の手を緩めない。
    分体の一つが奇跡的な動きで大地の裂け目を飛び越え、スファレラスに接近。

    「なるほど……生き延びる術を身につけているな」

    スファレラスは微笑む。

    「その程度か?」

    次の瞬間、掌から放たれた魔力が分体を押し潰す。

  • 7571◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:49:19

    不和の脈動が極大化し、可能性の流れを完全に乱す。
    分体は崩壊し、端末の光点も消え去った。

    「これで、全ては終わりだ……」

    スファレラスは黄金の宝石に手を触れ、深く息を吐く。
    目の前に残ったのは、完全に静まり返った戦場。

    「やはり、世界は興味深い……人も、魔も、そして固定されたものも」

    静かに、だが確実に勝利の余韻を味わいながら、彼は遠くの地平線を見据えた。

  • 7581◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:50:46

    戦場には、もはや生命の息吹すら届かない静寂が横たわっていた。
    固定者の端末も、分体も、そして抵抗の可能性も、すべては消え去った。
    スファレラスは胸の中心部に触れ、黄金の宝石を見つめる。

    「……よくやったな、全ての可能性を見事に抗った者よ」

    彼の顔には恍惚の笑みが浮かんでいた。
    戦いの果てに、ここまでの力と意思を見せつけられたことを、素直に賞賛している。

    「面白い……人の進化の可能性とは、いつだって計り知れない」

    宝石の光がゆっくりと沈み、体がゆらりと揺れる。
    その瞬間、崩壊した戦場の片隅で、微かな光が再び生まれる。
    遠く離れた場所で、また新たなスファレラスがその姿を現す。

    「ふふ……さあ、次はどんな知恵と力を見せてくれるのか」

    スファレラスは悠然と歩き出す。
    周囲の大地は彼の足取りに呼応するかのように軽く震え、風が吹き抜ける。
    戦いの痕跡は残っても、世界の秩序はゆっくりと再構築されていく。

    「進化のための試練は終わらない……人も魔も、全ての生命は次の可能性へと誘われる」

    彼の言葉と共に、視界の先に広がる大地は新たな生命の兆しで輝き始める。
    花のように、風のように、次々と新たな存在が生まれ、世界は静かに息を吹き返す。

    「私はそのすべてを、ただ見守る……だが楽しむのだ」

    スファレラスの笑い声が、遠くの山々に反響する。
    それは恐怖でも、悲しみでもない。

  • 7591◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:51:06

    純粋な好奇心と愛おしさに満ちた、高らかな歓喜の声だった。

    こうして、混沌の主・スファレラスはまた、新たな可能性を求めて旅立つ。
    その歩みの先には、まだ誰も見たことのない未来が待っている。

  • 7601◆ZEeB1LlpgE25/08/27(水) 23:51:30

    以上

  • 761二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 06:04:45

    投下乙
    対戦ありがとうございました。
    サブプラン程度に考えていたスファレラスの分体生成がこんなに活躍するとは思わなかった。

  • 762二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 15:04:15

    保守

  • 7631◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:12:30

    題名『理不尽殲滅』

  • 7641◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:15:04

    深夜の工業地帯。錆びたクレーンが並び、コンクリートの床に薄暗い影を落としていた。湿った空気が鼻をつく。ワインド・ワルドは人知れず静かに歩いていた。手には黒光りする拳銃。指先の微かな震えが狙いの集中力を示す。

    「ふふ……今日の獲物は、なかなか手ごわそうだな」

    囁くように呟き、自分を鼓舞する。視線は先にある影に吸い寄せられる。

    遠くから、片腕の男が歩いてくる。樫勝田。隻腕の熟練拳闘士だ。動きは重厚だが無駄がない。右腕を失った代わりに、左腕と足で絶妙なバランスを保っている。

    「……来たか」

    ワルドの目が光る。

    「理不尽を許さぬ者……か」

    樫も視線を合わせ、ゆっくりと息を整える。街灯の下、二人の影が床に長く伸びる。沈黙の中、互いの存在を確かめるように間が続く。

    ワルドは頭の中で戦術を組み立てる。

    「ここで動きを止めて……一気に……」

    樫は予期せず、ただ目の前の敵を正々堂々と打ち倒すことだけを考えている。右腕を失っても、左腕の威力と正確さは常人の比ではない。

    ワルドは引き金を握る。

    「……動かぬ……」

    唇の端で微かに笑う。催眠術――相手に「動くな」と刷り込む能力だ。時間を止めたような錯覚を与える。

  • 7651◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:15:55

    だが樫は微動だにしない。過去の拷問、失われた右腕の痛み、古傷の数々。それを抱えた精神は、催眠を跳ね返す。

    「……!? ま、まさか……!」ワルドが声を上げる。

    樫はゆっくりと踏み出す。痛みの記憶が彼の体を走り、精神を研ぎ澄ます。

    「……くっ」

    拳銃を握る手に力が入る。ワルドの催眠が効かない相手に初めて直面した緊張が走る。
    樫の眼差しは、ゆらぐことなくワルドを捉えている。

    「理不尽……絶対に許さん……」

    ワルドは深く息を吸い込み、次の指示を心で唱える。

    「動け……動くな……」

    しかし樫の足は止まらない。古傷の痛み、右腕の欠損、それら全てを力に変え、静かに前へ歩を進める。

    ワルドは混乱する。催眠で止められるはずの相手が、一歩一歩近づいてくる。

    「な……なんで……?」

    樫の瞳に迷いはない。怒りと決意が濃縮され、研ぎ澄まされた精神が全身を満たす。

    ワルドの指先が微かに震える。銃口を構え、射撃のタイミングを計る。

    「止め……止まれ……!」

    樫は止まらない。静かだが力強い足取りで迫る。暗示の効果が微かに揺らぎ始める。

  • 7661◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:16:51

    「くっ……痛み……?」

    ワルドは理解する。催眠は強力だが、相手の意識が痛みに支配されれば破れる――その原理を、今、目の前で思い知らされる。
    工業地帯の冷たい風が、二人の間を吹き抜ける。錆びた鉄の匂いが鼻を突く。
    ワルドは拳銃を構え続けるが、心中は焦燥で満ちていた。
    樫はただ歩く。右腕はなくとも、左腕の一撃で全てを終わらせられる力を秘めている。

    「……ふん……理不尽を……俺は……許さぬ……」

    ワルドは銃弾を撃ち出すタイミングを計る。相手の動きを止めたはずなのに、止まらない現実に戦慄する。

    「これが……俺の……能力……!」

    しかし樫は、一歩一歩、確実に距離を詰める。古傷の痛みも、失われた右腕の不便も、彼の歩みに影響を与えない。

    「……終わりだ……」

    ワルドは拳銃を握り締め、次の動きを迷う。催眠に頼るしかない戦法だが、今の相手には通じない。

    「く……くそ……!」

    暗闇に、二人の影が交錯する。静寂の中で、わずかな息遣いと、遠くで崩れる鉄の音が聞こえる。戦いの火蓋は、すでに切られたのだ。
    ワルドは再び心の中で唱える。

    「動くな……頼む……!」

    「……理不尽は……絶対に……」

    闇夜に沈む廃工場跡。二人の気配だけが、孤独な空間に支配的に響く。戦いはまだ始まったばかりだ。

  • 7671◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:21:09

    乾いた靴音が床を打つ。樫の歩みは遅いが確実だ。距離が縮まるごとに、ワルドの胸に焦燥が募る。

    「止まれ……!」

    ワルドが再び命令を叩き込む。目の奥に宿る光が、相手の意識へと侵入する。通常ならば、それだけで人は操り人形のように硬直する。しかし、樫は足を止めない。

    「……効かぬ」

    低い声が響いた。静かな響きなのに、ワルドの心を抉る重みがある。

    「な……ありえない……俺の催眠が……」

    銃口が震える。弾丸を撃ち込むしかない。しかし撃てば、痛みが彼を目覚めさせる。催眠の意味を失う。

    「どうする……?」ワルドの心臓が速く打つ。

    樫はなおも歩み寄る。隻腕の姿で、正面から堂々と。彼の視線には恐怖も迷いもない。ただ「理不尽を許さない」という一点の決意だけが燃えている。

    ワルドは必死に声を張った。

    「止まれッ!!」

    空気が震えるような錯覚。だが樫は止まらない。むしろ一歩踏み込み、床を打つ音を強めた。

    「……お前の言葉など……俺には届かん」

    その言葉に、ワルドの全身が震えた。

  • 7681◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:21:56

    「ぐっ……だったら、これでどうだ!」

    引き金が引かれる。閃光と銃声。弾丸が真っ直ぐに樫の胸を狙う。

    しかし次の瞬間、樫は体を捻り、左腕で弾道を逸らした。金属音が響く。皮膚を裂いた痛みが走るはずなのに、彼は眉一つ動かさない。

    「な……弾を……!」

    ワルドは愕然とする。銃弾を受けた痛みで催眠は完全に解けるはずだ。それでも樫は進む。

    「理不尽を……潰す……」

    低く呟くと同時に、鋭い踏み込み。たった一歩で距離が一気に詰まる。
    ワルドの心臓が跳ねる。銃を乱射するしかない。
    乾いた銃声が連続する。数発の弾丸が宙を裂き、樫の体へと殺到する。

    しかし、彼は避けない。痛みを受けながらも、なお前進する。銃弾が肩を抉り、腹を掠める。血が滲む。それでも足は止まらない。

    「やめろ……来るなッ……!」

    ワルドの叫びは恐怖に近かった。催眠は破られ、銃弾も止められない。迫り来るのは理不尽を許さぬ羅刹の如き男。

  • 7691◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:22:14

    「俺の……力が……」

    言葉が途切れる。次の瞬間、樫の左拳が風を裂いた。

    「終わりだ……!」

    拳が一直線に伸びる。ワルドは必死に身を捻る。間一髪で直撃は避けるが、拳風が頬を裂き、コンクリート壁を粉砕する轟音が響いた。

    「ひっ……!」

    壁に深い穴が穿たれる。もし直撃していれば即死だった。

    「これが……人の拳……か……」

    ワルドの額に汗が滴る。時間を止めたはずの錯覚は崩れ去り、ただの人間の力が、今目の前で超常を凌駕していた。

    「動けぬようにして……撃ち抜く……その浅知恵……」

    樫の声が低く響く。

    「俺には通じぬ」

    ワルドは後退る。銃を構える手が震える。焦りと恐怖が混ざる。

    「……くそっ……まだ……まだ終わっちゃいない……!」

    冷たい夜気が二人を包む。銃声と拳の衝突の余韻が、工場跡にこだまする。戦いは、まだ序章に過ぎなかった。

  • 7701◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:24:10

    工場跡の闇に、二人の荒い息遣いがこだまする。
    銃弾の硝煙が漂い、壁には粉砕された跡が刻まれている。

    ワルドは拳銃を握りしめ、必死に距離を取る。

    「……くそ……なんでだ……俺の力が効かない……」

    唇を噛み、目を血走らせる。今まで通用してきた催眠が、この男には通じない。
    樫は肩から血を流しながらも、静かに立っていた。左腕を垂らし、わずかに拳を握る。

    「……お前の力……その理不尽……俺は絶対に許さぬ」

    低い声が響くたび、ワルドの心は削られていく。

    「やめろ……近づくな……!」

    ワルドは再び引き金を引く。銃声が轟き、弾丸が宙を裂く。しかし樫は一歩も退かず、弾を受けながら前進する。血が滴り、古傷が再び開く。それでも足は止まらない。

    「な、なんなんだ……お前は……!」

    樫は静かに目を閉じ、深く息を吐いた。

    「……俺は、俺だ」

    次の瞬間、彼の全身を淡い気配が包み込む。身体の力が研ぎ澄まされ、失ったはずの右腕を幻のように感じ取る。

    「【初志貫徹】……」

    低く呟いた。

  • 7711◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:25:07

    「な、なんだ……!?」

    樫の姿は変わらない。だが空気が一変していた。拘禁される前の健康な状態を思い出す。初心を取り戻し、拳闘士としての全盛の肉体を呼び覚ます。

    「……まだだ」

    樫は目を開き、前を見据える。

    「俺がここまで耐え抜いた理由……理不尽を許さぬため……」

    全身に刻まれた痛みがよみがえる。鞭打ちの跡、焼き鏝の痕、切断の苦痛。それらが一気に蘇り、精神を揺さぶる。

    「……ぐっ……!」

    樫の膝が一瞬だけ揺らぐ。ワルドはその隙を見逃さず、銃を構える。

    「今だ!」

    引き金が引かれる。閃光が走る。
    だが、樫は避けない。痛みを抱えたまま受け入れる。苦痛を再び耐え抜くために。

    「【臥薪嘗胆】……」

    低い声が夜を震わせた。
    ワルドの目が見開かれる。

    「なにを……してる……?」

    樫は全身を震わせ、再現される拷問の痛みに耐える。皮膚を裂かれる感覚、骨を砕かれる記憶、腕を失う瞬間の絶望。それらが一度に押し寄せる。

  • 7721◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:25:30

    「ぐああああああああああ……!」

    声を押し殺し、必死に耐える。頭が割れそうなほどの痛み。心臓が止まりそうなほどの衝撃。それでも倒れない。
    ワルドは唖然とした。

    「バカか……! そんなことをすれば自分が死ぬだけだ!」

    だが、樫は歯を食いしばり、叫んだ。

    「これが……俺の……怒りだッ……!」

    痛みを乗り越えた瞬間、彼の左腕が轟音を立てて振り抜かれる。空気が爆ぜ、床が軋む。

    「理不尽は……粉砕するッ!!」

    ワルドの背筋に戦慄が走った。催眠も銃弾も、この一撃には通じない。

    「く……くそおおおおおお……!」

    恐怖と焦燥が入り混じり、ワルドの顔が歪む。

    闇の工場跡に、怒りの咆哮と銃声が交錯する。
    戦いは激しさを増し、夜はさらに深く沈んでいった。

  • 7731◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:26:32

    轟音が止み、工場跡は一瞬だけ静寂に包まれた。
    しかしその静寂は長くは続かない。樫の左拳が空気を揺らし、鉄骨を震わせる。
    ワルドは汗を拭う余裕もなく、荒い息を吐く。

    「……化け物め……」

    弾丸は通じない。催眠も通じない。それでも戦うしかない。

    「俺が……俺が負けるはずがない……!」

    ワルドは必死に声を張り上げる。言葉そのものが力であると信じ込むように。

    「止まれッ!」

    再び命令が飛ぶ。鋭い響きが空間を支配する。
    樫の足が一瞬止まる。しかしそれは催眠に従ったのではない。痛みによる痙攣の一つに過ぎなかった。

    「……くだらぬ」

    樫がゆっくりと顔を上げる。血に濡れた瞳がワルドを射抜く。

    「俺は……止まらん」

    言葉が返るたびに、ワルドの喉が乾く。

    「だ、だが……俺には無制限の時間がある……! お前は……いずれ倒れる!」

    虚勢に近い声。ワルドは必死に催眠を上塗りしようとする。
    相手に「時間が止まっている」と錯覚させるため、言葉を畳み掛ける。

  • 7741◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:27:54

    「見ろ……お前はもう動けない……時間は止まった……!」

    ワルドは銃を構え、冷笑を浮かべる。

    「これで終わりだ……!」

    しかし、その瞬間。

    「……止まったのは、お前の方だ」

    樫の低い声が響いた。

    「な……に……?」

    ワルドの腕が震える。引き金を引こうとしても、なぜか力が入らない。錯覚ではない。恐怖に支配されているだけだ。

    「俺の前で……虚構を語るな」

    樫が踏み出す。

    「ぐっ……来るなッ!」

    銃声が鳴る。弾丸が樫の肩を撃ち抜く。血が飛び散る。
    しかし彼は止まらない。

    「時間が止まったんじゃない……!」

    樫の拳が振り上がる。

  • 7751◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:28:15

    「お前の……浅い幻術が……砕けただけだッ!」

    拳撃が吹き荒れ、床が割れる。瓦礫が舞い上がる。
    ワルドは後退りしながら必死に叫ぶ。

    「ち、違う……俺は……本当に時間を止められるんだ……!」

    必死に自分自身をも催眠にかけようとする。自分が虚構を信じなければ、この力は消えてしまうからだ。

    「止まれ……止まれ……止まれええええええ!」

    叫びがこだまする。しかし樫は止まらない。

    「……もう終わりだ」

    樫の影が覆いかぶさる。
    ワルドは銃を乱射する。弾丸が雨のように降り注ぐ。しかし樫は受けながら進む。肉体は削られ、血に染まる。それでも、なお前に進む。

    「な……なんで……なんで動ける……!? 俺の能力は……!」

    「それが理不尽だからだ」

    樫の声が轟く。

    「理不尽を許さぬ……それが俺の存在理由だッ!」

    ワルドの瞳に恐怖が宿る。彼の“時間停止”は幻想でしかない。
    虚構と真実の狭間で、彼は追い詰められていた。
    夜の闇は深まる。勝者はまだ決まっていない。
    しかし、勝利の天秤はすでに大きく傾き始めていた。

  • 7761◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:29:28

    工場跡に瓦礫が散らばり、血の匂いが漂っていた。
    ワルドの弾丸は尽きかけ、銃口は熱を帯びている。
    呼吸は荒く、目の焦点は揺らぎ、しかし口は止まらない。

    「まだだ……俺は止められる……止められるんだ……!」

    虚ろな言葉を繰り返すたび、自分を支える力を必死に保つ。

    「俺の力は絶対なんだ……時間を止められるんだ……!」

    しかし、目の前の樫は動いている。血まみれでありながら、確実に歩み寄る。

    「……否定する」

    その声は冷ややかで、重い鉄槌のようだった。

    「な……に……?」

    「お前の力は……虚構だ」

    樫の目は迷いを知らない。血と痛みに覆われながらも、その歩みは一度たりとも止まってはいなかった。

    「嘘を力に変える者は……いずれ自分自身に喰われる」

    ワルドは後ずさり、銃を振りかざす。
    引き金を引く。しかし空しい音だけが響いた。弾倉は空だ。

    「……っ……あ、ああ……!」

    顔が青ざめ、手が震える。銃はただの鉄塊と化した。

  • 7771◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:30:06

    「俺は……負けない……!」

    ワルドは必死に声を張る。だがその声は震え、説得力を失っていた。

    「動くな……止まれ……!」

    声は掠れている。命令の響きも力を失い、虚ろな言葉となって空へ消える。

    「……終わりだ」

    樫は足を止め、拳を握る。
    その拳に込められたのは、二十年の苦痛、怒り、憎悪、そして誓い。

    「理不尽を……殲滅する」

    振り下ろされた拳が空気を裂く。
    ワルドは避けようとするが、足は動かない。恐怖に縛られ、自らの幻に囚われていた。

    「や……やめ……!」

    次の瞬間、轟音が工場を揺らした。
    樫の拳がワルドの胸を貫いたわけではない。だが、その衝撃は全身を打ち抜き、床に叩きつけた。

    「ぐはっ……!」

    血を吐き、ワルドは地に伏す。銃が手から滑り落ち、冷たい床に響く。

  • 7781◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:30:39

    「……な、なんで……俺の力が……」

    樫は血を滴らせながら、低く答える。

    「虚構は……真実には勝てぬ」

    ワルドの瞳から光が消えかける。催眠の力はすでに消え失せ、ただ弱々しい青年の姿だけが残っていた。

    「俺は……止められるはずだったのに……」

    掠れる声を最後に、意識は闇へと落ちた。

    樫は深く息を吐き、拳を下ろす。全身は限界を超えていた。
    しかし、その目は静かに燃えている。

    「……理不尽は……これで一つ潰えた」

    夜風が吹き、崩れかけた工場を撫でる。
    その中で樫はゆっくりと背を向け、歩み去った。

    虚構に囚われた少年と、真実を握りしめた戦士。
    その結末は、あまりにも鮮烈だった。

  • 7791◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:31:26

    夜が明け始めていた。
    工場跡の屋根越しに、灰色の空が徐々に赤く染まっていく。
    瓦礫の隙間から冷たい風が吹き抜け、血と鉄の匂いを運んだ。

    樫勝田はその場に立ち尽くしていた。
    全身に無数の傷を負い、左腕は重く垂れ下がっている。
    呼吸は荒く、胸を上下させるたびに血が滲んだ。

    「……まだ……俺は、生きている」

    声は低く掠れていた。
    だがその響きには、確かな実感が込められていた。

    瓦礫の中に、ワルドが横たわっている。
    若さを残した顔は蒼白で、かすかに呼吸を繰り返していた。

    「……時間を……止められるはずだったのに……」

    微かな寝言のような声が漏れる。
    それは敗北を認めきれぬ少年の最後の抵抗のようにも聞こえた。

    樫は彼を見下ろす。
    しばし無言のまま立ち、やがて目を閉じた。

    「お前もまた……理不尽に囚われた者か」

    その声には怒りではなく、わずかな哀れみが混じっていた。

  • 7801◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:33:27

    「虚構を信じなければ生きられなかった……その弱さは……罪ではない」

    だが、彼の拳は容赦を知らなかった。
    理不尽を許さぬその在り方が、勝田の全てだったからだ。

    瓦礫の上に朝日が差し込む。
    鉄骨の影が伸び、崩れかけた工場を黄金色に染め上げる。

    樫はゆっくりと背を向けた。
    足取りは重いが、揺るぎはない。

    「俺の道は……まだ終わらん」

    彼の視線は、遠くの地平線に注がれる。
    その先に、さらに多くの理不尽が待ち構えていることを知っていた。

    「全てを殲滅するまで……歩みを止めはせん」

    言葉は静かに、しかし確かに響いた。

    背後でワルドのかすかな呼吸音が残る。
    彼が再び立ち上がることがあるのか、それは誰にも分からない。

  • 7811◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:33:46

    ただひとつ確かなのは、虚構ではなく真実の痛みを知ったということだけだ。

    朝日は昇り続ける。
    冷えた風が徐々に温かさを帯び、夜の闇を押し流していく。

    樫の背中はその光を受け、長い影を引いた。
    その影は、かつての苦痛と憎悪を抱えつつも、確かに未来へと続いていた。

    やがて、工場跡には誰の足音も残らなくなった。
    ただ朝の光だけが、全てを照らしていた。

    虚構に敗れた少年。
    真実を握り歩み続ける戦士。
    その物語はここで終わり、そして新たに始まっていくのだった。

  • 7821◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 20:34:39

    以上

  • 783二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:39:05

    一方的な試合だった……

  • 784二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:39:36

    投下乙です
    マッチングはランダムだから仕方ないけど相性差がエッグい

  • 7851◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:44:26

    題名『ジャラジャラと揺れる闇』

  • 7861◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:45:07

    夜の密林は、静寂と闇に包まれていた。
    木々の影が風に揺れ、枝が擦れる音が微かに耳に届く。
    その暗がりの中で、ジャラジャラ……と鎖が絡む音が響き始めた。

    「……ここは……どこ……」

    少女の声は小さく震える。
    黒曜石の鏡を背後に浮かべ、骸霞は周囲を警戒する。
    暗闇の中、視覚よりも聴覚に頼る存在が迫ってくる。

    「……我が鎖に触れるな……」

    低く響く声に、空気が振動する。
    無数の鎖が絡み合い、人の形を成した塊――惡鎖坊が、闇から現れた。
    ジャラジャラ……金属が擦れる音が絶え間なく続く。

    「……きみは……ひとりか……」

    惡鎖坊の鎖が地面に叩きつけられ、木々の間に反響する。
    少女の目の前に影が揺れ、形を変えながら近づいてくる。

    「……あたし……負けない……」

    黒曜石の鏡が背後に揺らめき、ジャガーや禿鷲、毒蛇の幻影が現れる。
    薬物“link lost”が少女の体内で渦を巻き、世界がゆがみ始める。
    幻影は闇と混ざり、鎖の音と交錯し、密林全体が不穏な空気に満ちた。

    惡鎖坊の鎖が伸び、木々を切り裂く。

  • 7871◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:45:53

    先端は少女の足元に向けられ、鞭のようにしなる。

    「……我が鎖から逃れることは出来ぬ……」

    ジャラジャラ……鎖が空気を切る音が耳を刺す。
    骸霞は黒曜石の鏡を傾け、天狗の幻影で鎖を防ぐ。
    幻覚と現実が混ざり、視界は常に歪む。

    「……くるしい……でも……負けない……」

    惡鎖坊は鎖を回転させ、次の攻撃を狙う。
    音を頼りに少女の位置を把握しようとするが、幻影の干渉に混乱する。

    「……面白い……」

    低く響く声に、ジャラジャラと鎖が振動する。
    夜の密林に、妖怪と少女の不気味な邂逅が刻まれた。

  • 7881◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:46:47

    「……くそ……やはり……強い……」

    惡鎖坊は鎖を地面に叩きつけ、反響音で少女の位置を探る。
    ジャラジャラ……金属の擦れる音が密林に響き、木々の間に震動が走る。

    骸霞は手にした注射器型拳銃を握りしめた。
    小さく震える手でL2を注入する。
    薬液が体内に回ると、吐き気が襲い、目眩が走る。

    「……うっ……くらくらする……!」

    幻覚が視界を覆い、黒曜石の鏡からは密林全体に蠢くジャガーや毒蛇が現れた。
    呼吸が荒くなり、脈は早まる。汗が額を伝い、指先が震える。

    「……よし……こわがるな……あたし……!」

    骸霞は必死に薬の影響を押し殺し、幻覚の生み出す影と現実を重ね合わせる。
    ジャラジャラ……鎖が再び振るわれ、膝元に絡みつく。

    「……我が鎖は逃がさぬ……」

    惡鎖坊は低く唸り、鞭のように鎖を振るう。
    木々を切り裂く鎖の先端は、少女の体を縛ろうとする。

    「……ああ……くらくら……うっ……!」

    薬が効きすぎ、骸霞はふらつきながら幻覚と現実の境目を見失う。
    背後の鏡から現れた禿鷲が鎖を弾き、少女は何とか身を守る。

    「……まけ……ない……でも……あたま……まわら……ない……」

  • 7891◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:47:13

    惡鎖坊は鎖を回転させ、足元から胴体へと攻撃を伸ばす。
    だがジャラジャラと響く自らの音に惑わされ、攻撃の精度がわずかに乱れる。

    「……くそ……我が鎖を……」

    骸霞は手を震わせながら、再度L2を注入。
    吐き気と眩暈が強まり、幻覚はさらに鮮明になった。
    毒蛇が鎖に絡みつき、天狗が空中から押し返す。

    「……ああ……もう……くらくら……する……でも……」

    彼女の呼吸は荒く、吐息と汗が混ざる。
    幻覚のジャガーが鎖を避け、密林に響くジャラジャラ音と化学的な頭痛が交錯する。

    「……まけない……あたしが……やる……!」

    惡鎖坊の鎖は一本切られ、塵となって消える。
    幻覚と薬の影響で、少女の動きは鈍くなるが、幻影の力で防御と反撃を同時に行う。

    「……もう……あたしの……ターン……!」

    黒曜石の鏡から禿鷲、ジャガー、毒蛇が連鎖的に現れ、鎖を押し返す。
    惡鎖坊は塊を守ろうと鎖を集めるが、幻影が巧みに干渉する。

    「……面白い……だが……容易くは……捕えぬ……」

    ジャラジャラ……鎖の音が夜の密林にこだまする。
    薬の影響で体が震える少女と、音を頼りに動く百年以上の妖怪。
    戦いの応酬は、まだ始まったばかりだった。

  • 7901◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:47:48

    「……ううっ……めまいが……でも……あたし……」

    骸霞は背後の黒曜石の鏡を揺らし、幻覚を現実に干渉させる。
    体内のL2が脈打ち、吐き気と頭痛が波のように押し寄せる。
    しかし少女の意識は必死に耐え、幻覚のジャガーや禿鷲を操る。

    「……我が鎖に触れる者よ……逃すことはせぬ……」

    惡鎖坊は鎖を回転させ、木々を切り裂きながら足元を狙う。
    鎖の金属音が密林全体にこだまし、反響を頼りに少女の動きを読む。

    「……ああっ……くらくら……する……でも……まけない……」

    薬の影響で体が震える。手足が思うように動かず、幻覚と現実が混ざる。
    しかし黒曜石の鏡から現れた毒蛇が鎖に絡み、攻撃を防ぐ。

    「……面白い……だが……我が鎖は止まらぬ……」

    惡鎖坊の鎖が鞭のようにしなり、少女の肩を狙う。
    骸霞は幻影を次々と展開し、鎖を押し返す。
    禿鷲が空から羽ばたき、ジャガーが足元から跳びかかる。

    「……やだ……でも……あたし……やる……」

    吐き気で顔色は悪く、汗が額を伝う。
    注射器型拳銃を手に、震える指で再度L2を注入する。
    薬の影響で意識が一瞬揺れ動くが、少女は幻覚と現実を同時に制御しようと踏ん張る。

  • 7911◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:48:27

    「……我が鎖を切るとは……愚かな……」

    惡鎖坊は塊を縮め、鎖を再構築する。
    一本が切れると塵となり消えるが、中心部を守るように鎖を束ねる。

    「……ああ……くらくら……もう……でも……」

    骸霞は幻覚の禿鷲を鎖にぶつけ、ジャガーで地面から押し返す。
    ジャラジャラと響く鎖の音と、幻覚の攻撃が絡み合い、密林は戦場と化す。

    「……まだ……我が鎖は……捕えぬ……」

    惡鎖坊は声を低く響かせ、鎖を集中させる。
    だが薬の影響で体が震える少女の幻覚操作は、鎖を巧みに攪乱する。

    「……もう……あたし……つかまえさせない……!」

    吐き気、眩暈、頭痛、震え。
    体が薬に支配されつつも、少女は幻影を最大限活かし、鎖をかわす。
    密林の闇と幻覚、そして鎖の音が交錯し、戦況は膠着する。

    「……くっ……面白い……しかし……我が鎖に逃れはなし……」

    惡鎖坊はジャラジャラと鎖を振り、少女の幻覚を押し返そうとする。
    だが黒曜石の鏡が生成するジャガーや禿鷲の幻影が絶え間なく干渉し、戦場全体が揺らぐ。

    密林の夜は、妖怪と少女の駆け引きでひたすらに蠢いた。
    鎖の音と幻覚の奔流、薬の影響。
    戦いはまだ、決着の気配すら見せなかった。

  • 7921◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:49:04

    「……くっ……まだ……あたし……」

    骸霞は体を揺らし、吐き気と眩暈に耐えながら黒曜石の鏡を揺らす。
    幻覚が暴れ、太陽を喰む禿鷲や地を這う毒蛇が密林を駆け巡る。
    体は震え、指先は痙攣し、汗が全身を覆う。

    「……我が鎖に抗う者よ……死を恐れるな……」

    惡鎖坊は鎖を空高く振り上げ、影のように少女へ迫る。
    ジャラジャラと響く音は、密林全体に反響し、少女の幻覚操作を逆に妨げる。

    「……ああっ……くらくら……でも……まだ……!」

    薬が脳内で波打ち、幻覚と現実がさらに交錯する。
    吐き気に顔をしかめ、震える手で注射器を再び握る。
    L2の効果で体が熱くなると同時に、心臓が速まる。

    「……くっ……無駄だ……我が鎖から逃れることは……」

    惡鎖坊は鎖を一本一本慎重に伸ばし、少女の四肢に絡めようとする。
    しかし、ジャガーの幻影が足元を滑り、天狗が空から圧力を加え、鎖の動きを攪乱する。

    「……まけない……ぜったい……まけない……!」

    骸霞は幻覚を駆使し、鎖の動線を読み切ろうとする。
    吐き気で視界が揺れ、頭痛が脳を締め付けるが、彼女の手は注射器を離さない。

  • 7931◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:49:45

    「……面白い……だが……ここで終わりではない……」

    惡鎖坊の鎖が少女の腕に巻き付き、力を加える。
    しかし背後の黒曜石の鏡から、ジャガーが飛び出し、鎖を切断する。
    塵となって消える鎖の残骸。

    「……くっ……なによ……これ……!」

    骸霞は顔をしかめ、吐き気で体をよろめかせる。
    幻覚の禿鷲が鎖を押し返し、毒蛇が絡みつく。
    薬の影響で手足が震える中、少女は鎖の攻撃をかわす。

    「……まだ……あたし……やる……!」

    惡鎖坊は塊の中核を守るように鎖を密集させ、再び少女を捕らえようとする。
    だが幻覚の連鎖と薬の症状で、動きの正確さがわずかに乱れる。

    「……ふふ……面白い……だが……我が鎖に逃れはなし……」

    ジャラジャラと響く鎖と、幻覚の影が交錯し、密林は戦場として揺れ続ける。
    少女は薬に蝕まれる体を押さえ、必死に幻覚を制御し、鎖をかわす。

    夜の密林に、妖怪と少女の戦いの緊張が張り詰める。
    追い詰められつつも、骸霞はまだ立ち上がり、戦意を失わなかった。

  • 7941◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:50:24

    「……ああっ……くらくら……でも……まだ……!」

    骸霞は吐き気と眩暈に耐えながら、背後の黒曜石の鏡を揺らし続ける。
    ジャガーや禿鷲、毒蛇の幻影が密林を奔り、鎖に絡みつき、攻撃を阻む。
    体は震え、脈拍は速く、息が荒い。

    「……我が鎖は全てを捕える……お前の幻覚も無駄だ……」

    惡鎖坊は鎖を一斉に伸ばし、密林の闇の中から少女を捕らえようとする。
    ジャラジャラと響く金属音が空気を震わせ、黒曜石の鏡の反射も交錯する。

    「……くっ……あたし……やる……!」

    薬の影で手足が震え、頭痛が脳を締め付ける。
    吐き気が胸を押し潰し、幻覚が視界を埋め尽くす。
    だが少女は幻覚を操り、鎖の一本一本を回避する。

    「……愚か者よ……ここで終わるが……運命……」

    惡鎖坊の鎖が肩を捕えようとした瞬間、背後の鏡から巨大なジャガーが飛び出す。
    鎖に巻きつき、振り払われて塵となる。

    「……うっ……くらくら……でも……まけない……!」

    少女は吐き気に顔をしかめ、汗だくになりながら再度L2を注入。
    体内で薬が波打ち、幻覚は鮮明さを増す。

  • 7951◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:50:55

    禿鷲が空から鎖を押し返し、地を這う毒蛇が絡みつき、妖怪の動きを制限する。

    「……面白い……だが……我が鎖は止まらぬ……」

    惡鎖坊は塊を縮め、鎖を集中させる。
    一本が切れると塵となり消えるが、中核部を守ろうと力を注ぐ。

    「……まだ……あたし……やる……!」

    薬の影響で体が震える中、少女は幻覚の禿鷲とジャガーで鎖を攪乱し、密林を駆ける。
    ジャラジャラという音と幻覚の奔流が交錯し、夜の密林は戦場として揺れる。

    「……くっ……面白い……だが……我が鎖に逃れはなし……」

    惡鎖坊は最後の力を振り絞り、鎖を一斉に少女に巻き付けようとする。
    しかし、黒曜石の鏡の幻覚と毒蛇の絡みで、鎖は空を切る。

    「……あたし……やった……!」

    骸霞は最後の力で幻覚を押し出し、鎖をすり抜け、密林の闇に立ち続けた。
    薬で震える体を押さえながらも、少女は妖怪を前に立ち、戦意を失わない。

    夜の密林に、妖怪と少女の衝突の余韻だけが残る。
    ジャラジャラと鎖の音がかすかに響き、風が葉を揺らす。
    勝負はまだ終わらないが、少女は確かに、立っていた。

  • 7961◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:52:53

    「……ああっ……もう……くらくら……でも……」

    骸霞は体を震わせ、吐き気と頭痛に耐えながら黒曜石の鏡を揺らす。
    幻覚は暴れ、禿鷲や毒蛇、天狗の影が密林を覆う。
    薬の影響で視界は揺れ、手足は思うように動かない。

    「……これ以上逃がすことは許さぬ……!」

    惡鎖坊は鎖を一斉に振り、少女を捕えようとする。
    ジャラジャラと金属音が夜の森に響き、密林全体が振動する。

    「……まだ……あたし……!」

    骸霞は吐き気で顔をしかめ、震える手で注射器型拳銃を握り、再びL2を注入する。
    体内で薬が脈打ち、幻覚は鮮明さを増す。
    吐き気と頭痛に呻きながらも、少女は幻覚を現実に干渉させ、鎖を回避する。

    「……面白い……だが……我が鎖は止まらぬ……」

    惡鎖坊の鎖が肩に絡みつこうと伸びる。
    だが黒曜石の鏡から現れたジャガーが鎖に飛びかかり、禿鷲が空から圧力を加え、鎖の動きを攪乱する。

    「……くっ……でも……あたし……まけない……!」

    薬で体が震え、吐き気に顔をしかめながらも、少女は幻覚の禿鷲と毒蛇を駆使し、鎖の束をかいくぐる。
    ジャラジャラと鎖の音が密林にこだまする。
    惡鎖坊の中心部は守られていたが、幻覚による攪乱で攻撃の精度は落ちていた。

  • 7971◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:53:22

    「……最後だ……抗うなら……」

    惡鎖坊は鎖を集中させ、中心部を守りながら少女に巻きつける。
    しかし背後の黒曜石の鏡が光を放ち、幻影のジャガーと禿鷲が鎖を切り裂く。
    塵となった鎖の残骸が闇に消える。

    「……あたし……やった……!」

    骸霞は吐き気で体をよろめかせながらも立ち上がる。
    震える手で注射器を握り直すが、妖怪はもう鎖を再構築できない。
    ジャラジャラと鳴る鎖は力を失い、惡鎖坊は最後の声を上げた。

    「……愚か者よ……ここまでか……」

    惡鎖坊の姿は密林の闇に沈み、ジャラジャラという音も次第に消えていった。
    黒曜石の鏡も揺らぎを止め、夜の密林には静寂が戻る。

    「……ふう……くらくら……でも……あたし……生きてる……」

    骸霞は吐き気と眩暈に顔を歪めながらも、密林の闇の中で深呼吸する。
    薬の影響で全身が震え、汗が滴る。
    だが、少女は確かに勝利を手にした。

    夜の森に残ったのは、戦いの余韻と、黒曜石の鏡の微かな光だけだった。
    戦闘は終わった。妖怪も少女も、互いに力を振り絞り、そして決着はついた。

    「……あ、むりぃ…おえぇ……」

  • 7981◆ZEeB1LlpgE25/08/28(木) 22:54:13

    以上
    くらくらじゃらじゃら

  • 799二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 22:55:53

    もっとダークなイメージをしていた
    なんじゃあこりゃあ

  • 800二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 23:03:13

    幻覚でカオスなバトルになったな

  • 801二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 08:34:51

    ほす

  • 802二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 15:15:45

    保守

  • 8031◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:15:18

    題名『下水道の咆哮』

  • 8041◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:20:37

    下水道の闇は深く、湿った空気が鼻を突く
    水の流れる音と遠くで鼠の群れが走る音が混ざり、低くうねる空気を作っていた

    ジャリッ……ジャリッ……

    何百もの爪音が、暗闇の奥から響く
    そして現れたのは、巨大な鼠化した姿のパヌルー・トーテンタンツ
    その体は四足獣めいており、トゲトゲした腕や足、ペスト医師装束と皮膚が一体化した恐ろしい姿
    彼の目は赤く光り、鼻がピクピクと動く

  • 8051◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:21:49

    ジャリッ……ジャリッ……

    群れの鼠が彼を中心に蠢き、獲物の気配を探る

    「【……探索対象を確認……】」

    ラキアの機械音声が地下通路に反響する
    少女の小さな体が水溜りの脇に立ち、首飾りの制御装置を握る
    冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、彼女の目は無表情ながら獲物を見据えている

  • 8061◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:22:07

    ジャリッ……ガリッ……

    パヌルーが低く唸り、前足を踏み込む
    小さな群れのクローヴァン鼠が突進して、ラキアの周囲を取り囲む
    少女は足を止めず、機械音声で冷静に指示する

    「【群れの挙動を分析……攻撃に備えろ】」

    しかし鼠たちは凶暴なだけで統率が取れていない
    一斉に攻撃することはなく、各自が好き勝手に動く

    ジャリッ……ジャリッ……

    その不規則な動きが、逆に地下空間を狂わせる

    「【異能再現準備……発動まで残り十秒】」

    首飾りから機械音声が響き、ラキアの体が微かに震える
    パヌルーは鼻先を水面に近づけ、匂いを嗅ぐ

    ジャリッ……ガリッ……

    獲物の匂いを捉え、闇の中をゆっくりと前進する
    地下通路の水面に、巨大な鼠の影が揺れる
    ラキアはわずかに息を吸い込み、冷たい空気の中で心を静める

    ジャリッ……ジャリッ……

    二つの存在が、闇の中で初めて互いを認める
    その距離は数メートル、しかし次の瞬間、戦いは始まろうとしていた

  • 8071◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:30:36

    ジャリッ……ガリッ……

    パヌルーは四肢をしならせ、下水道の床を蹴る
    群れの鼠がその動きに反応し、彼を中心に一斉に跳び散る
    小さな鋭い爪が通路を叩き、湿った空気に金属のような音が響く

    「【……異常動作を感知……攻撃開始】」

    ラキアの機械音声が冷たく鳴り、首飾りのランプが赤く点滅する
    彼女は小さな手を動かし、背後の黒曜石のような鏡を浮かべる
    水面に映る影が不自然に歪み、禿鷲やジャガーの幻影が現れる

    ジャリッ……ジャリッ……

    パヌルーが低く唸り、前足を振り上げる
    トゲトゲした腕が鏡の幻影に向かって打ち下ろされる
    だが幻影は空中で分裂し、物理的には存在しない
    パヌルーは一瞬戸惑い、ジャリッ……と爪を滑らせる

    「  この闇は、我がものだ  」

    ラキアの肉声が突然響き、言葉通りに鏡の幻影が現実世界の一部を変形させる
    壁がねじれ、通路の水面が盛り上がり、パヌルーの足元を揺らす
    巨大な鼠化した体はバランスを崩し、ジャリッ……ガリッ……と滑る

    ジャリッ……ジャリッ……

  • 8081◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:30:57

    パヌルーは咆哮し、尾を振り、さらに群れの鼠を引き連れて反撃する
    群れの小さな体がラキアの足元に飛び込み、彼女の足をかすめる
    だが統率の取れていない群れは乱雑で、幻影の攻撃に翻弄される

    「【……クールタイム……能力再使用可能まで残り二十秒】」

    機械音声が冷たく告げる
    ラキアは震える手で注射器型制御装置を握り直し、次の発動の準備を整える
    薬の微かな影響で体は軽く震え、吐き気が胸を圧迫するが表情は無表情のまま

    ジャリッ……ガリッ……ジャリッ……

    パヌルーは再び前進し、トゲトゲの腕で通路の壁を叩きつける
    その衝撃で水が跳ね、鏡の幻影がわずかに揺れる
    ラキアはその隙を見逃さず、肉声で次の言葉を吐く

    「  水を裂き、足元を支配する  」

    通路の水面が盛り上がり、パヌルーの前足が飲み込まれる

    ジャリッ……

    滑る爪の音が鳴り響き、闇の中で戦場は混沌を増す
    戦いはまだ序盤に過ぎない
    だが二つの存在は互いの力を確認し合い、次第に緊張感を増していった

  • 8091◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:33:18

    ジャリッ……ガリッ……

    パヌルーの四肢が通路を叩き、凶暴な群れの鼠が彼の背後で蠢く
    低く唸る声が水面に反響し、湿った空気が震える
    巨大な鼠の体は通路にぶつかり、狭い壁面が軋む

    「  闇を貫き、足元を縛れ  」

    ラキアの肉声が響き、背後の黒曜石の鏡から禿鷲やジャガーの幻影が飛び出す
    通路の水面を裂き、パヌルーの足元を押し流す
    ジャリッ……滑る前足が水面に沈み、バランスを崩す

    ジャリッ……ジャリッ……

    パヌルーは咆哮し、尾を振って水を跳ね上げ、群れの鼠を突進させる
    だが統率の取れていない群れは混乱し、ジャリッ……ガリッ……と無秩序に跳び回る
    パヌルーの怒号だけが地下通路に響き、闇を震わせる

    「【……異能再現開始……発動まで残り五秒】」

    首飾りの機械音声が告げる
    ラキアの手が震え、注射器型制御装置を握り直す
    体内で薬の影響が広がり、吐き気と頭痛が脳を締めつける
    だが彼女は無表情で幻覚を具現化させる

    「  通路を裂き、鼠を絡め取れ  」

    鏡から無数の黒曜石の触手が生え、パヌルーの四肢に絡みつく
    ジャリッ……ガリッ……鎖ではないが爪の音と触手の

  • 8101◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:33:31

    擦れる音が混ざり、地下は狂騒と化す
    パヌルーは低く唸り、触手を振り払おうとするが巨体は通路に制約され、動きが制限される

    ジャリッ……ジャリッ……

    群れの鼠も巻き込まれ、混乱の中で逃げ惑う
    ラキアの肉声は冷たく響き、幻影は現実のように空間を変形させる
    水面が波打ち、通路の壁がねじれる
    パヌルーの巨大な体が水に沈み、爪が滑る

    ジャリッ……ガリッ……

    咆哮を上げるパヌルーの姿に、ラキアはわずかに身を引き、次の発動準備を整える
    しかし薬の影響で体は震え、吐き気が増す
    地下通路に漂う湿った空気が、戦場の狂気をさらに増幅させる
    互いの力が交錯し、闇と幻覚、鼠の群れと異能が渾然一体となる
    この戦いの真の恐ろしさは、まだ序盤の戦局に過ぎなかった

  • 8111◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:38:05

    ジャリッ……ガリッ……

    パヌルーの巨体が狭い通路を踏みしめる
    水滴が飛び散り、鼠の群れが悲鳴にも似た声をあげて飛び回る
    四肢の爪が壁に擦れ、軋む音が闇に反響する

    「  通路を支配し、群れを繋げよ  」

    ラキアの肉声が響き、黒曜石の鏡から新たな幻影が現れる
    禿鷲が空を飛び、蛇が通路を這い、ジャガーが床を跳ねる
    触れるものすべてが現実に干渉し、パヌルーの動きを妨害する

    ジャリッ……ジャリッ……

    パヌルーは低く唸り、尾を振って幻影を押し退ける
    しかし通路は狭く、巨体は自由に動けない
    ジャリッ……ガリッ……爪が壁に引っかかり、さらに滑る

    「【……異能再現開始……発動まで残り三秒】」

    機械音声が告げる
    ラキアは震える手で注射器型制御装置を握り直す
    体内で薬が脈打ち、吐き気と眩暈が全身を包む
    それでも無表情のまま、鏡を操作する

    「  足元を縛り、闇に沈めよ  」

    黒曜石の触手がパヌルーの足に絡み、巨体を通路に縛りつける
    ジャリッ……ガリッ……爪音と触手の擦れる音が混ざり、地下は混沌となる

  • 8121◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:38:43

    パヌルーは咆哮し、群れの鼠を突進させる
    だが乱雑な群れは幻影の力で蹴散らされる

    ジャリッ……ジャリッ……

    パヌルーは低く唸り、通路の壁を蹴って揺らす
    水が跳ね、光も届かぬ闇に、金属音と水音が重なる
    ラキアの黒曜石の鏡はそれでも形を変え、通路の地形を操作し続ける

    ジャリッ……ガリッ……

    戦場は完全に混沌としていた
    パヌルーの咆哮、群れの鼠の悲鳴、ラキアの異能による水や触手の波動
    地下迷路はまるで生き物のように二つの力に引き裂かれる

    「  逃げ場はない……全てを掌握する  」

    ラキアの肉声が冷たく響く
    パヌルーは低く唸り、全身の筋肉を緊張させて抗う

    ジャリッ……ガリッ……

    しかし狭い通路と幻影による圧迫で、次第に動きが鈍くなる
    地下迷路の死闘は、互いの力を極限まで引き出し、まさに命の削り合いとなった

  • 8131◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:47:22

    ジャリッ……ガリッ……

    パヌルーの巨体は通路の水に沈み、四肢を必死に動かす
    触手に絡め取られ、群れの鼠も混乱のまま飛び回る

    ジャリッ……ジャリッ……

    咆哮が地下の壁を震わせ、湿った空気がさらに重くのしかかる

    「  逃げるな……全てを縛れ  」

    ラキアの肉声が響き、黒曜石の鏡からさらに無数の幻影が溢れ出す
    禿鷲は空を覆い、蛇は足元を這い、ジャガーは床を踏みつける
    パヌルーの前進は鈍くなり、巨大な体が水面で揺れる

    ジャリッ……ガリッ……

    低く唸るパヌルーは、最後の力を振り絞り、群れを指揮する

    ジャリッ……ジャリッ……

    散乱する小さな鼠たちが、奇妙に壁や水面を蹴ってラキアの幻影に突進する
    混乱の中で、触手が幻影を捉え切れず、パヌルーの体が少し自由を取り戻す

    「【……異能再現開始……発動まで残り五秒】」

    機械音声が冷たく告げる
    ラキアは小さく息を吸い、震える手で注射器を握り直す
    体内で薬が脈打ち、吐き気が胸を押しつぶす
    だが彼女は無表情のまま、肉声で発声する準備を整える

  • 8141◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:47:53

    「  闇を裂き、全てを閉じ込めよ  」

    黒曜石の触手が再びパヌルーを捕らえようと伸びる
    ジャリッ……ガリッ……爪音が壁に響き、通路は生き物のように揺れる
    しかしパヌルーは咆哮とともに前足を蹴り、触手を吹き飛ばす
    ジャリッ……ジャリッ……群れの鼠も追随し、ラキアの幻影に突進する

    ジャリッ……ガリッ……

    地下迷路の水面が跳ね、壁面が軋む
    ラキアの黒曜石の鏡は揺らぎ、幻影の一部が現実に干渉しきれなくなる
    パヌルーの巨体は通路に押し付けられながらも、狂暴な力で逆襲を開始する

    ジャリッ……ジャリッ……

    低く唸るその咆哮は、闇を裂く雷鳴のように響き渡った
    ラキアは小さな手で注射器を何度も握り直す
    薬の影響で震え、吐き気が強まる
    しかし幻影は不完全となり、触手は少しずつ砕かれ、通路の支配力が削がれていく

    ジャリオ……ジャリッ……

    ついにパヌルーの巨体が前進し、黒曜石の鏡に触れる
    クラン……と微かな音が通路に響き、ラキアの異能の制御が崩れ始める

    ジャリッ……ジャリッ……

    逆襲の波が通路を支配し、地下迷路はパヌルーの力で次第に静寂を取り戻しつつあった

  • 8151◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:52:08

    ジャリッ……ガリッ……

    パヌルーの巨体が通路を踏みしめ、群れの鼠たちも混乱を糧に突進する
    黒曜石の鏡は砕け散り、ラキアの幻影は次々と消滅していく

    ジャリッ……ジャリッ……

    触手は力を失い、通路の水面に落ちた破片が冷たい音を立てる

    「【……クールタイム……能力再使用可能まで残り六十秒】」

    機械音声が冷たく響く
    ラキアは小さな手で注射器型制御装置を握り直す
    薬の影響で吐き気と震えが全身を襲う
    黒曜石の鏡を失い、幻影はもはや現実を変えられない

    ジャリッ……ガリッ……

    パヌルーは低く唸り、前足を踏み込み、巨大な体を前進させる

    ジャリッ……ジャリッ……

    群れの鼠たちも彼の意思に従い、ラキアを取り囲む

    「  逃げ場はない……全てを終わらせる  」

    肉声で響くパヌルーの咆哮
    ラキアは立ち尽くし、無表情のまま注射器を握る手が震える
    薬の影響で体は痙攣し、吐き気で膝が折れそうになる

  • 8161◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:52:26

    ジャリッ……ガリッ……

    パヌルーの巨体が最後の前足を振り下ろす
    黒曜石の破片と水飛沫が飛び散り、ラキアは力尽きて通路に倒れこむ

    ジャリッ……ジャリッ……

    地下迷路には低い唸り声だけが響き、闇は再び静寂に包まれた
    水面に映るパヌルーの巨大な影
    鼠の群れが周囲を警戒しながら蠢く
    闇の中でパヌルーは低く唸り、勝利を示す

    ……だが、どこからともなく声が響く

    「……ほんっとしょうがないわね」

    水路の奥の方から若い女の声が響く

    「その力はね。こうやって使うの」

    『世界は巻き戻る』

  • 8171◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 17:52:48

    以上

  • 818二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 17:54:03

    投下乙です

  • 819二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 17:56:22

    提唱者って…強かったんですね

  • 820二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 17:56:24

    これはトップ13の風格がある提唱者乱入

  • 821二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 17:58:44

    こいつより強い通常キャラが11体もいるなんて信じられない

  • 822二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 18:04:46

    前回と混ざった? しかし本家は流石規則外

  • 8231◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:45:21

    題名『忘却遊戯』

  • 8241◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:47:16

    佐藤家の屋敷。
    縁側で箒を抱え、和風メイド装束の佐藤 心はひとり humming しながら廊下を掃いていた。

    「ふふんっ、今日もお屋敷はぴかぴか〜! ……って、あれ、ここちょっと埃残っちゃってる〜!」

    頬をぷくっと膨らませ、箒を振り直す。彼女は明るく感情豊かな従者で、主家の人々の話し相手をすることを心から楽しんでいた。
    だがその瞳の奥には、誰も知らぬ深い影が潜んでいる。胸の奥に抱えた、狂おしいほどの憎悪と復讐心――「呪神」としての本性。
    それを隠すように、彼女は可愛らしい仕草で笑っていた。

    「……?」

    ふと、廊下の向こうに小さな影が差す。
    金髪の少女。碧眼が少し髪に隠れ、ショボショボとした瞳が心をじっと見ていた。

    「えへ……誰だろう? お客さんかな?」

    心が小走りで駆け寄ると、少女はぽつりと名乗った。

    「私の名前はシャルロッテ。……あなたは誰?」

    「わ、私? 私は佐藤家に仕える従者、佐藤 心! ……あの、可愛いメイドさんって呼んでくれてもいいのよっ?」

    両手でスカートを持ち上げてお辞儀。
    笑顔で明るく振る舞う心に、シャルロッテは首を小さく傾げた。

    「可愛い……。でも、あなたの中身はちょっと暗い」

    心の胸がドクンと跳ねる。
    ――見られた? 仮面の裏にある“呪神”の影を。

  • 8251◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:47:48

    「な、なにそれ〜! 私は明るくて可愛い従者なんだからねっ!」

    心は慌てて頬を押さえ、笑顔を貼り付ける。

    シャルロッテはショボショボした瞳でじっと彼女を見つめ続ける。

    「私、あなたを忘れてしまいそう。でも……お兄ちゃんみたいに、忘れたくない」

    その言葉の意味を測りかねた瞬間、心の視界がわずかに霞む。
    頭の奥がぐらりと揺れ、「あれ……? 箒、どう持ってたんだっけ……?」と手元の動きが一瞬ぎこちなくなる。

    「……え?」

    心はすぐに正気を取り戻したが、少女の能力の気配を感じ取っていた。
    ――記憶を弄られた。ほんの一瞬。

    シャルロッテは小さく口角を上げ、囁いた。

    「私の遊戯、ちょっと試してみるね……あなた、オモチャになれるかどうか」

    心は頬を引きつらせながらも、にっこりと笑みを浮かべた。
    その声は可愛らしいが、心臓の奥では呪神の鼓動が荒ぶっていた。

    「ふふっ……面白い子ね。でもね、私……あんまり甘く見ないでよ?」

    縁側に緊張が満ち、可愛らしい従者と忘れられた少女の邂逅は、戦いの幕開けを告げていた。

  • 8261◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:50:21

    縁側に張り詰める静寂。
    心は頬に微笑を浮かべたまま、スカートの裾をふわりと揺らして立ち上がった。

    「ねえ、シャルロッテちゃん。人を“オモチャ”だなんて……可愛いお口からそんな言葉、出しちゃダメよ?」

    小首を傾げて可憐に笑う。だがその指先からは、目に見えぬ黒い靄がじわりと漏れ出していた。
    呪神の力――魂を侵す呪詛の気配。

    シャルロッテは怯むことなく、むしろショボショボした瞳を細めて呟いた。

    「あなたは……忘れやすそう。私の遊戯にぴったり」

    次の瞬間、心の頭に鋭い違和感が走った。
    ――あれ? 私、今なにを考えてたんだっけ?

    呪神の鼓動が不意に鈍り、握っていたはずの呪詛の糸が手から滑り落ちる。

    「う……そ……。これ、私が……」

    ふらりと一歩下がる心。
    シャルロッテは無邪気に首をかしげ、囁くように言った。

    「あなた、呪いの使い方……忘れてるよ」

    「っ……!」

    心の背筋に寒気が走る。
    魂に刻み込まれたはずの呪いの手順、その重ねた怨嗟の形が、一瞬だけ記憶の海から抜け落ちる。

    可愛らしい笑顔を崩さぬまま、心は必死に頭を振った。

  • 8271◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:51:57

    「だ、だめ……こんなのに負けちゃ……!」

    両の掌を胸に当て、心臓の奥に宿るコアを震わせる。
    魂の呪詛が、心の強い憎悪に応じて再び息を吹き返す。

    「わ、私の呪いは……そんな軽い忘れ物で消えないんだからっ!」

    ふわりと広がる黒煙。
    縁側に座っていた障子がひとりでに軋み、柱が黒ずんでいく。
    軽度の呪詛が空気に溶け込み、シャルロッテの胸を圧迫した。

    「……ん……重い」

    シャルロッテは小さな手で胸元を押さえた。呼吸が乱れ、思考が霞む。
    しかし彼女は怯まずに、小さく笑った。

    「私ね、忘れることに強いの。だから……これくらいなら、まだ大丈夫」

    心は笑顔を保ったまま、頬に指を添えた。

    「ふふっ、ほんとに可愛い子。でもね……私の呪いに“慣れる”なんて、できると思う?」

    縁側はすでに黒い靄で覆われ始めていた。
    呪詛と記憶抑制。
    ふたりの力が初めて正面からぶつかり合い、空気が歪む。

  • 8281◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:52:47

    黒い靄が縁側を覆い、障子の影が揺らめく。
    心は胸元で手を組み、小さく息を吐いた。

    「ふふ……可愛い子を呪うなんて、本当はしたくないのに……。でも、私も負けられないの」

    可憐な声色のまま、呪詛は濃さを増していく。
    影の中から耳鳴りが走り、見る者の精神を掻き乱す幻覚が生まれる。

    だが、その幻覚が形を結ぶ前に――

    「あなた、それを使うこと……忘れて」

    シャルロッテの囁きが響いた。
    心の掌から広がっていた呪詛が、突如として途切れる。

    「えっ……えっ? わ、私、なにして……?」

    彼女の中にあるはずの“呪いの詠唱”の記憶が、まるごと霧散していた。
    思い出そうとすればするほど、頭の奥で靄が渦巻く。

    「……ふふ。すごい……ほんとに、忘れちゃった……」

    心は笑顔を保ったまま、震える声を漏らした。
    瞳は大きく潤み、必死に縋るような色を宿す。

    「や、やめてよ……これじゃあ、私……従者失格じゃない……!」

    シャルロッテは椅子に座るように床へちょこんと腰を下ろし、金の髪を指で弄んだ。
    その姿はまるで遊戯を楽しむ子供そのもの。

  • 8291◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:53:49

    「まだ終わりじゃないよ。次は……身体の使い方を忘れてみる?」

    「ひゃっ……!」

    声を上げた瞬間、心の足に力が入らなくなった。
    膝から崩れ落ち、床に手をつく。
    立ち上がろうとしても、足の動かし方そのものが頭から抜け落ちている。

    「……ど、どうして……歩き方まで……!」

    涙目になりながらも、心は震える指で自分の頬を叩いた。

    「だめっ、こんなの……負けちゃ……!」

    憎悪。
    胸の奥から、黒く濁った炎のような感情が吹き上がる。
    復讐を糧に燃やし続けてきた魂の呪いが、記憶の彼方から無理やり蘇る。

    「わ、私は……忘れない! 国に……あの国に、復讐するまで……絶対にっ!」

    叫びと共に、床一面を黒い痣のような呪詛が這い広がった。
    空気がどす黒く濁り、縁側の木材が音を立てて裂ける。

  • 8301◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:54:14

    「……あれ?」

    シャルロッテは一瞬だけ驚いた表情を浮かべた。
    忘却の支配を振り切るように、心の呪詛は濃度を増し、黒い蛇のように縁側を這い回る。

    「わ、私だって……簡単にはオモチャにならないんだから……!」

    涙目で叫ぶ心。
    その声は怯えと決意が混ざり合い、呪神としての気配をますます膨らませていった。

  • 8311◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:55:15

    縁側に響くのは、心の荒い呼吸。
    黒い呪詛の靄がさらに濃さを増し、庭先にまで伸びていく。

    「はぁ……はぁ……ダメ、抑えなきゃ……。このままじゃ、私……ただの呪神に……」

    声を震わせながら、必死に笑顔を繕う心。
    可愛らしい仕草で胸の前に両手を当てるが、その背中には凄絶な影が滲んでいた。

    「うふふ……でも、私、まだ……戦えるよ……!」

    立ち上がろうとする彼女に、シャルロッテが首を傾げた。
    無邪気な碧眼が、黒い靄を真っ直ぐに見つめる。

    「あなたは、強い。でも……忘れたらどうなるのかな」

    その声は小さく、囁くように。
    しかし次の瞬間、心の頭を鋭い痛みが貫いた。

  • 8321◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:56:15

    「い、いや……やめ、やめて……っ!」

    思考が崩れる。
    自分の名、過去、存在理由……少しずつ霧散していく。

    「……わ、わた……し……?」

    声が震える。
    可愛らしい笑顔の仮面の下で、顔色が青ざめていく。

    「うそ……わ、私って……誰だった……?」

    足元の呪詛は暴れ、縁側の柱に絡みついて砕いた。
    だが、当の心は両手で頭を抱え、座り込む。

    「お兄ちゃん以外、みんな私を忘れるんだ」

    シャルロッテはぽつりと呟いた。
    その声音には寂しさが混じっている。
    けれどすぐに、無邪気な笑顔に戻る。

    「だからね。あなたも、忘れていいんだよ」

    「や、やだ……やだよ……! 忘れたくない……私……佐藤家に……仕えて……」

    必死に縋るような声。

  • 8331◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:56:45

    だが、舌の上で「佐藤家」という単語が崩れていく。

    「さ、さ……と、け……?」

    涙を浮かべて見上げる心。
    縁側の白木の上で、その姿は小さな子供のように脆く見えた。

    「可愛い……」

    シャルロッテの瞳が細くなる。
    呪詛の暴走を物ともせず、ただ一人でその存在を支配していく。

    「あなたは、もうすぐ『あなた自身』を忘れる」

    心は震える唇を開いた。

    「……っ、やだ……私、私……『私』は……!」

    叫ぼうとするたびに、言葉が喉で途切れる。
    呪詛の濃度はさらに濃くなるが、主の意思が薄れれば薄れるほど、ただの暴走と化していく。

    縁側の空気は破滅的に黒く濁り、しかしその中心で――
    心自身は「自分」を保てなくなりつつあった。

  • 8341◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:57:37

    縁側の空気が黒く染まりきった。
    心の呪詛はもう彼女の制御を離れ、庭木を枯らし、瓦を砕き、家そのものを蝕み始める。

    「や、やだ……止まって……! お願いだから……」

    涙を浮かべて叫ぶが、呪詛は主の言葉を聞かない。
    憎悪が、恐怖が、魂から勝手に溢れ出し、現世に災厄を呼び込んでいく。

    「私……もう、誰だか……わからない……!」

    震える声。
    笑顔の仮面は完全に崩れ、必死に胸を抑える彼女の姿だけが残る。

    その様子を、シャルロッテはじっと見つめていた。
    彼女の碧眼は、まるで玩具を選ぶ子供のように澄んでいる。

    「あなたは、壊れてる」

    小さな声が縁側に響く。

    「でも……壊れてても、私が遊んであげる」

    その瞬間、心の頭にさらに鋭い衝撃が走る。
    「名前」「家」「存在理由」――すべてが剥がされ、霧散する。

    「……っ、あ……あぁ……!」

    心は頭を抱え、呪詛を無制御に放出する。
    漆黒の靄が渦を巻き、縁側も庭も飲み込もうとする。

  • 8351◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:58:08

    しかし。

    「忘れて、いいんだよ」

    囁く声と共に、靄の濃度が不自然に薄れた。
    呪詛は「呪い方」を忘れ、ただ空気のように漂うだけの存在へと変質していく。

    「……な、に……これ……?」

    心の瞳が揺らぐ。
    自分の呪詛が、忘却の力によって「呪いとしての意味」を奪われていく。

    シャルロッテは小さな手を胸に当て、静かに目を閉じた。

    「忘れることは、壊れることじゃない。思い出せるようにしてあげるだけ」

    次の瞬間、彼女の身体から淡い光が溢れる。
    忘却の逆流――「潜在的な記憶の解放」。

    その力が呼び覚ましたのは、スレイ家に連なる古代の記憶。
    戦闘技術、魔術、そしてアル=ヴァナ・スレイオスに関する膨大な知識が、幼い肉体に流れ込む。

    「……っ……ふふ」

    シャルロッテの瞳が、一瞬だけ無邪気ではなく、冷ややかな光を帯びた。
    彼女の背に、見えない巨大な影が揺らぐ。

    「あなたの呪い、私には届かない。だって――忘れちゃったから」

    呪詛を失い、名前を失い、存在を揺るがされる心。その姿はもう、従者ではなく……ただ一人の「少女」に過ぎなくなっていく。

  • 8361◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 20:59:52

    縁側に、静寂が戻っていた。
    けれどそれは安らぎではなく、すべてを呑み込んだ虚無の静けさ。

    佐藤 心は、膝を抱えて震えていた。
    呪詛はもう、形を成さない。
    「呪い方」を忘れてしまったから。
    そして――「自分が誰なのか」さえも、霞んでゆく。

    「わたし……わたしは……だれ……?」

    掠れた声。
    涙が頬を伝い、頬の下で小さな水溜まりを作る。

    そんな彼女に、シャルロッテは小さな足で近づいた。
    碧眼は幼子の無垢さで輝き、同時に絶対的な支配の光を湛えている。

    「あなたは、私のおもちゃ」

    短く、冷たい宣告。

    「……お……もちゃ?」

    心は瞬きを繰り返し、やがてかすかな笑みを浮かべる。
    混乱の中、記憶の断片は砕け、ただ「役割」だけが心に植え付けられていく。

    「そう……わたし……は……」

    「うん、私のもの。だから大丈夫」

    シャルロッテは小さな手を伸ばし、心の頬に触れた。

  • 8371◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 21:00:29

    その瞬間、心の体から最後の抵抗――呪詛の気配が完全に消えた。

    「……私、は……こころ、です。……あなたの、おもちゃ」

    その言葉と共に、彼女の瞳は静かに濁る。
    復讐を誓った呪神の正体は、もうどこにも残っていなかった。

    シャルロッテは満足げに微笑むと、縁側から庭へと歩き出した。
    片手を後ろに伸ばし、心を引っ張るようにして。

    「行こう。あなたは、これからずっと私と一緒」

    夜風がふわりと二人の髪を揺らす。
    幼子の掌に導かれ、かつて呪神と呼ばれた少女はただ従順に付き従う。

    「……はい」

    縁側の光は消え、闇の中に二つの影だけが消えていった。

    スレイ家の小さな少女と、その新しい「おもちゃ」。
    忘却の力にすべてを奪われた従者の結末だった。

  • 8381◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 21:01:33

    以上
    ゲットだぜ

    次の安価は22:00から10個

  • 839二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:02:13

    呪神!ゲットだぜ!

  • 840二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:02:27

    おつです
    復讐から解放されたし考え方によってはハッピーエンドか()

  • 841二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:04:06

    うーん・・・盛り具合が甘かったかぁ

  • 842二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:59:56

    このレスは削除されています

  • 843二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:00

    名前:マーチャー・スレイ
    年齢:18
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:スレイ家にいたはずの三男。
    一番常識的な人格であり、家族への説教やお詫びをしたりしている。
    灰色の人の形をしたオーラのような状態で認識できる。本来は金髪に碧眼の王子のような見た目をしていた。
    家族から忘れられているシャルロッテを唯一覚えていられる。そのため、よく二人で遊んだりしており、シャルロッテからイマジナリーフレンドだと思われている。
    子供にはマーチャーの姿はハッキリ見えており、父共々奥様方から指名手配されている。
    明るく前向きな性格であり、どんな逆境でも諦めない強い心を持っている。心優しく、芯が通っており、常識的な思考を持っている。拉致とかはしない。
    やたらタフであり、身長は184cmはある。
    だが普段は胸から上と腕しか認識出来ていないため、これはマーチャーの自己申告。本当に184cmもあるのかは不明瞭である。
    能力:【スレイ家の秘密】
    能力概要:意識を操る能力。
    相手の意識を操り、自身への注目を下げて存在を隠したり、相手の意識を下げて思考力を低下させたりなどが可能。
    さらに、相手の「何かをする意識」を操り、記憶をいじることも可能。記憶をいじると、しようとしていたことへの関心が消滅し、気力が一気になくなっていく。
    自身へ対する意識への低下は常時発動しており、目を離したり会話を終了した時点でマーチャーへの関心が消滅し、記憶からマーチャーに関するものが抜け落ちる。相手の意識を奪うことも可能。また、意識を操って相手を洗脳することが可能。かなり深く洗脳出来る。
    相手がマーチャーを意識すればするほどマーチャーもハッキリとした存在になっていくが、見えているのは意識した相手のみ。
    弱点:透けているわけではないので、攻撃をすれば普通に当たりダメージになる。持久力はない。身体能力も常人と同じ。長い間の戦闘は精神的に苦痛で能力の効果も薄れだすので不可能に近い。
    より深い洗脳は相手の意識が朧気な場合のみ。
    要望:一人称は「俺」でお願いします。殺さないでください

  • 844二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:00

    名前:高峰蓮華
    年齢:16歳
    性別:女子
    種族:人間
    本人概要:
    超自然的な能力及びそれらを用いた戦闘力を絶対至上主義とする学園都市の中心部「光世学園」にて全学生ランキング1位である無敗の傑物「高峰薫」の双子の姉。
    自分の「光世学園」ランキングは現在9位。
    妹は自身及び視界内の全ての存在を強制的に転移できる能力「テレポート」の使い手であり、「光世学園」で無敗を誇っている。
    完璧な妹と比較され劣等感に塗れた日々を過ごしてきたことから驚異的な克己心が育まれ、不断の努力によってランキング9位まで勝ち上がってきた。
    「どんな能力や道具も使い方次第で強力な武器にできる」という信念のもと、どんな状況でも臨機応変に立ち回ることが出来るのが最大の強み。
    小型レーザーとカーボンワイヤーを搭載した3つの小型ドローンビットと「チェンジ」の能力で柔軟にテクニカルに相手を追い詰める戦法を得意とする。
    能力: 「チェンジ」
    能力概要:
    自分及び視界内のものの位置を強制的に入れ替えることが出来る。
    妹の「テレポート」の能力が視界内の存在を自由に転移させられるのに対して、「チェンジ」の能力は位置を入れ替える必要があるという点で劣っている。
    しかし彼女は妹に対する克己心から自身の能力を最大限活用するために研究を重ね続けており、砂粒程度の微細な単位まで精密に入れ替えることが出来る。
    周囲のものと自分の位置を入れ替えて回避に使用したり、ドローンと相手の位置を入れ替えてワイヤーで捕獲するといった使い方が主になる。
    弱点:
    相手の体内など、直接視認できないものまでは「チェンジ」で入れ替えできない。
    「チェンジ」は入れ替えたい対象を視界内に収める必要があるため視界妨害に弱い。
    入れ替えるものの質量が大きい程、入れ替えた際に体力を消費。

  • 845二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:00

    名前:シーウルフ(別名:オルカ)
    年齢:5000歳
    性別:なし
    種族:ガーディアン・ゴーレム
    本人概要:人類が成長する為に作られたゴーレム達の1体。墓を守る役目も保持している。ケートゥスを元に作られている為、口から火炎を吐くことも可能である。人類の壁としての役割も全うするつもりはあるが、それ以上に、墓守の役割を主軸に置いている。
    能力:《Medoūsa》
    能力概要:ペルセウスがメデゥーサの首を使用しケートゥスを退治したと言われる話を元にした能力。シーウルフが付けているネックレスを見ると段々体が硬直して、石化していく。
    例 ネックレスを1秒見れば、右腕が動かなくなり、2秒見れば両腕が動かなくなる。そして4秒見れば、両腕が石化する。
    弱点:《Medoūsa》によって相手が硬直や石化すると、シーウルフも類似する部位が硬直・石化する。
    尾びれのコアを破壊すると、一切行動できなくなる。
    海を主軸に住んでいるので、陸に出て12秒経つと、動けなくなる。
    要望(任意):フィールドは海辺の近くでお願いします

  • 846二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:00

    名前:死と大地の神カルトゥーン・テフ=ナーシュ
    通称:「地母の屍」「生を喰らう黄骸」「終わりを孕む者」
    年齢:不明
    性別:女性的
    種族:神/リリトの化身
    概要:
    古代文明 ザル=イナース の地底神殿において崇拝された、大地と死を司る双面の神。豊穣と腐敗、誕生と終焉を同時に抱える存在であり、肉体を持つすべての種の「最初の母」と信じられている。
    その肉体は黄土と腐肉で形作られ、地に触れるすべての命に死を孕ませると伝承される。神話によれば、彼女の胎内は種子の揺籃であり、生者は死を迎えるとそこへ還り、再び命の循環に組み込まれるとされる。
    彼女の血肉より生まれた使徒「ナフ=イルの眠れる十三体」は、現在も世界各地で冒涜的な儀式を執り行い、文明の影に瘴気を撒き散らしている。
    能力:《地母因子〈テラゲン・コード〉》/《死穀の胎動〈ワンバ・ノストラム〉》
    /《終息讃歌〈ミサ・アルス・モルティス〉》
    能力概要:
    《地母因子〈テラゲン・コード〉》
    触れた土地環境に腐敗の神性因子を刻み込み、生命の循環を狂わせる。森は肉塊と化し、川は血流となり、空気は胞子の霧へと変貌する。彼女が歩む大地は、やがて「死の胎内」そのものとなる。
    《死穀の胎動〈ワンバ・ノストラム〉》
    自身の体内から「死せる種子」を生成し、大地に蒔くことで屍人樹・骨の蔦・腐肉獣などの異形を育成・召喚する。
    《終息讃歌〈ミサ・アルス・モルティス〉》
    聖句めいた詠唱により、生者の「生への執着」を削ぎ落とす精神干渉術。肉体だけでなく神経系・魔術構造・概念生命にまで干渉する。
    弱点:
    ・黄土と腐肉で構成された肉体は高温により急速に乾燥・崩壊する。その結果、《地母因子》の拡張力や《死穀の胎動》の成長速度が大幅に低下し、戦闘持久力を著しく失う。
    ・《死穀の胎動》による異形の育成・召喚には時間を要するため、奇襲や短期決戦には対応しづらい。
    ・頭部を失った場合、全身は砂塵と化し完全に消滅する。

  • 847二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:00

    名前:禁忌の知識を囁く者
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:人間?(とある外宇宙の神の化身)
    本人概要:研究所やテロ組織などにいつの間にか入り込み禁忌の知識を蔓延させ
    人類には早すぎる兵器や技術(科学魔法両方)の開発で世界に大惨事を巻き起こす存在
    かつて久那土異能研究庁と地底結社《灰の歯車》に潜り込み組織に禁忌の技術を開発させ大打撃を与え
    世界に途轍もない影響を与えた過去があり世界魔導知識機構にはとても危険視されている
    容姿は顔が暗闇で見えない中性的な姿で白衣を身に纏っている
    また本人曰く自分は【邪神】のバックアップ要員でもある為化身でも結構重要な存在なんだぜとのこと
    能力:禁忌的知識教唆
    能力概要:禁忌の知識を相手に囁き教唆させ世界に大混乱を巻き起こす能力
    相手に禁忌の知識を流し精神ダメージを与えたり自身がこれまで囁き教唆させ
    生まれた冒涜的禁忌の兵器を生成し操つったり 禁術指定された魔術魔法を使用する

    大技として【繧ッ繝ォ繝シ繧キ繝・繝√Ε方程式】を使用する
    内容としては空中に数式が現れて禁忌の知識を囁く者をそれを解き始める
    解き終わると【邪神】が降臨 
    存在が抹消されていた場合は禁忌の知識を囁く者が【邪神】として作り変えられる
    弱点:禁忌の知識を囁く者の身体能力はクソ雑魚の為 接近されると驚く程不利になる
    【繧ッ繝ォ繝シ繧キ繝・繝√Ε方程式】の発動はかなりの時間が掛かるうえ集中も必要な為
    冒涜的禁忌の兵器や禁術の操作がかなり落ちる為それがかなりの隙となる
    扱う冒涜的禁忌の兵器の規模が大きい程生成に時間が掛かり 禁術なども同様
    要望:囁く者の身体能力は本当にクソ雑魚って感じでお願いします

  • 848二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:00

    名前:落日
    年齢:創世期より記録あり
    性別:無し
    種族:?
    本人概要:ある神話に於いて語られる終末に天の果てより現れる黒い太陽。滅亡の具現、文明を終える者、輪廻の起点など様々な名で呼ばれる。周囲の重力が歪む程巨大な黒い球体であり、その表面には赤黒い線で刻まれた目玉の様な紋様がいくつも存在し、脈動する。赤黒い光を放つその球体は見る者全てに鮮烈な滅びのイメージを刻み込む。
    能力:陽射し
    能力概要:落日が放つ赤黒い光。万物消滅光線。通常照射と収束照射を併用する。
    通常照射:落日を視認できる位置は全てに陽射しを照射する。効果範囲内では範囲内のあらゆる存在は徐々に崩壊し、最後には塵一つ残さず概念単位で消滅する。また消滅の光を常に放ち続けるためあらゆる攻撃は光を越えられず消滅する。攻撃の即効性は落ちるが、不落の守り。
    収束照射:球体表面の目玉模様から通常の効果範囲を遥かに超えた長距離光線狙撃を行う。チャージが必要だが光線薙ぎ払いによる大規模破壊攻撃も使用する。照射範囲が落ちるものの速度、精度、貫通性能に優れ、おおよそあらゆる防御を貫通し、その箇所を消滅させる。
    落日はゆっくりと降下しており、地上に接触したが最後、球体が破裂し規格外の消滅光を放つ。止められなければゲームオーバー。

    弱点:陽射しの放出器官である球体表面の目玉模様が弱点。全て破壊されると陽射しを球体外へ放出出来ずに暴発、内側で連鎖爆発を起こし崩壊する。
    通常照射で敵を倒しきれないと判断した場合、収束照射による攻撃を行う。収束照射を行った目玉模様は周辺の光が剥がれ、一時的に通常の攻撃が通るようになる。
    要望(任意):落日は人語を使いません。諸々のリアクションは球体表面の紋様の点滅することで行います。

  • 849二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:00

    名前:ヴェクター
    年齢:古くから存在する
    性別:男
    種族:神鳥
    人物概要:青く透き通る様な宝石の羽を持ち人の姿と大きな鳥の姿を自在に行き来できる不思議な鳥
    その正体は森羅万象の総ての脅威から世界や人類を守りし神「守護神」の眷属の一人であり主の命にて派遣された人類の守護者
    神鏡皇を含めた将来的に起こる無数の脅威を察知した守護神は人類に必要な存在や組織、一族に眷属を遣わして守護する様に命じた
    彼は佐藤家という一族に遣わされた眷属で半分ペットみたいな扱いを受けつつも番人として佐藤家を常に守護し驚異を退けている
    性格は真面目で厳正厳格な守護者、だが人類に対して心優しく守護者としての誇り高き矜持と信念を持っている武人
    能力:守護の主
    能力概要:「守護神」より賜りし絶対の守護を司る神の権能であり守護神の力の一つ
    名の通り守護を司る力で守る事に特化しており賜った力が強大すぎて羽や肉体が変質し防御に特化した身体へと変貌している
    彼の羽の頑強さは異次元で硬度はかの剣神の異能や絶対王剣カリギュラ、槍神のブリューナクですら傷付ける事は不可能である
    身代わりやシールド生成、範囲防御や守護神に報せを飛ばし耐性を入手、守護の加護など守護に関連した様々な力を使う事が可能
    守護という概念を存在に表したかの如く防御に関しては絶対的、堅牢であり盤石であり揺るぐことなき守護の番人
    弱点:力を使っている間は一歩も動けず力を使っていない場面でも羽や肉体が重すぎて移動は超絶遅い
    防御力や耐久力に全振りしているので攻撃手段が皆無であり重たい羽根でぶん殴る程度だが振りが遅く避ける事は容易い
    安全の為に守護の加護を佐藤家全体に掛けているので気が散りやすく守護の能力に綻びが生まれるタイミングがある
    羽があるのは両の翼のみであり両の翼以外は硬いものの攻撃は普通に通るレベル、両の羽は肉体全てを覆いきれるほどの大きさは無い
    両の羽はビビるぐらい重いので即座の防御には向かずゆっくりであり覆い切れていない隙間もそこそこある
    そもそも避けるのが難しいのもあるが守護者の矜持と信念があるので攻撃も能力も真っ正面から避けずに堂々と喰らう
    要望:一人称は「我」、厳正厳格な守護者のような重厚感ある口調

  • 850二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:01

    名前:花羅美 麗美
    年齢:26
    性別:女性
    種族:人間
    本人概要:
    歯の美しさに異常に執着する美人。歯を手入れするという行為を最も人間らしい行為と考え、それを怠る人間は家畜以下と考えている。
    夜、街で見つけた汚い歯を治療して人間に戻してあげるのが毎日の趣味。治療の邪魔になるので人の部分は殺しておく。
    能力:永久麻酔
    能力概要:
    超強力な麻酔能力。手足の感覚や平衡感覚、能力を使う感覚を失わせていき、最後に意識も失わせる。失わせたものは永遠に失ったまま。
    弱点:感覚を失わせるだけで直接的なダメージはないため、タックルなどでのゴリ押しが有効。
    要望:このキャラが勝ったら「それでは治療を始めますね」で〆てください。

  • 851二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:01

    名前:八ツ辻 竈
    年齢:21
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:八ツ辻 襖の兄であり常にハイテンションな性格 ちなみに竈という名前なのはその力を得ることが予言されていたから
    能力:竈
    能力概要:体内の生命力を激しく燃焼させ身体能力を大幅に向上させる さらに燃焼による熱気を纏っているので能力発動中は触れるだけで火傷を与えることができるし生命力を燃やしている影響で自身に直接干渉する能力や毒を軽減できるようになる もちろん本人は熱に耐性がある 生命力は寿司を食えば回復可能
    弱点:身体能力が上がっても耐久力が上がるわけではなくダメージを受けるとそこからエネルギーが漏れ出してやがてエネルギー不足になる

  • 852二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:01

    名前: 黒掌牢無 影拍
    (こくしょうろうむ えいはく)
    年齢:36
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:《馬鹿出加伴怒闇アリステラ菩薩》(ばかでかはんどやみありすてらぼさつ)に魅入られ、体の中に入られた僧
    ゲートボール世界記録保持者でプロのプレイヤー。だったが、事故により両腕を無くし、影拍の稼ぎで母親を養っていたにもかかわらず、カスの母親自身に「稼げないなら出て行け」と言われ家を追い出された。
    路頭に迷っていた時、心優しい僧に助けられて、影拍自身も僧となった。
    その出自に興味を持った馬鹿出加伴怒闇アリステラ菩薩が中に入り、今に至る。影拍は能力により腕を生やせるようになったのでアリステラ菩薩には感謝している。
    能力発動中は、僧として諸衆を救おうとする意思と、世界に混乱を巻き起こそうとする闇菩薩の意思が混じり、迷惑系YouTuberみたいな性格になってしまう
    能力:影法師
    能力概要:
    大きな手の形の影を生み出す能力
    手の形にした影を使って、拍手した時の風圧の勢いで吹き飛ばす『大合掌』が必殺技、ただ両手が痛くなるというデメリットあり
    手をあわせて「ナムサン」と唱えることで天変地異を引き起こす。天変地異はランダムであり、地震、雷、津波、法則崩壊、祟りなどがある。
    弱点:
    光や聖属性の力に極めて脆弱。強力な光に晒されると影が消え、能力が無効化される。
    「ナムサン」は、自然は味方してくれるわけないので自身も天変地異に巻き込まれる

  • 853二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:00:34

    このレスは削除されています

  • 854二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:01:16

    >>843 から >>852 かな?

  • 855二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:01:19

    すとっぷ

  • 8561◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 22:05:54

    >>843

    >>844

    >>845

    >>846

    >>847

    >>848

    >>849

    >>850

    >>851

    >>852


    一応全部セーフですけどヴェクター怪しいです

    次は気を付けてください

  • 8571◆ZEeB1LlpgE25/08/29(金) 23:24:52

    高峰蓮華vs八ツ辻 竈
    黒掌牢無 影拍vs落日
    ヴェクターvs花羅美 麗美
    マーチャー・スレイvs死と大地の神カルトゥーン・テフ=ナーシュ
    禁忌の知識を囁く者vsシーウルフ

  • 858二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 07:30:44

    今回のバトルはどんなのになるかね 楽しみ

  • 8591◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:03:56

    題名『竈火と双華』

  • 8601◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:06:56

    光世学園の模擬戦会場。観客席には数百人の生徒が詰めかけている。
    ランキング9位、高峰蓮華――その名は「無敗の薫の姉」として広く知られていた。だが今日の対戦相手は、学園外から招かれた異質の存在。

    八ツ辻竈。
    炎を纏う男。生命を燃やす「竈」の異能者。

    「はっはーッ! おーし、やってやんぜぇぇ!」

    竈は開始の合図と同時に爆炎を撒き散らし、跳ねるように蓮華へと突進する。体中から放たれる熱は、観客席にも熱風を押し寄せた。

    「っ……体温が、壁みたい」

    蓮華はすぐに理解する。普通に接触すれば焼かれる。接近戦を許せば終わる――。

    「ビット展開!」

    三つのドローンが空を舞い、レーザーが閃光を走らせる。しかし竈はそれを見もしない。

    「効かねぇな! 寿司食ってりゃ全回復よッ!」

    火花を散らしながら直進し、拳を振りかざす。

    その瞬間――

    「チェンジ」

    竈とドローンの位置が入れ替わる。
    振り抜かれた拳は虚空を切り裂き、代わりに竈自身がワイヤーの罠に絡め取られていた。

  • 8611◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:07:31

    「……っしゃあ! 捕まえた!」

    蓮華が叫ぶ。しかし竈は――

    「おおおおおっ!!」

    体温を爆発的に上昇させ、ワイヤーごと燃やし尽くす。煙と熱気が渦を巻き、観客席がざわめいた。

    「熱に耐性あり、か……!」

    蓮華の額に汗が滲む。

    竈はにやりと笑う。

    「お前、やるなぁ! でも俺はまだまだ燃え足りねぇぞォ!」

    そして炎が更に膨張する。
    ――燃え尽きるか、捕らえ切るか。
    無敗の妹を持つ少女と、生命を燃やす男の激突が、幕を開けた。

  • 8621◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:16:45

    炎の渦をまといながら、竈は一直線に蓮華を追い詰めていく。
    床は焦げ、壁は灼熱に歪む。観客席からは悲鳴すら漏れた。

    「ハッハァ! 燃える! 俺の寿命が燃えてるって実感が最高だぜぇぇ!」

    その姿はまるで灼熱の鬼神。生身の人間がまともに相手できる存在ではなかった。

    だが蓮華は一歩も退かない。

    「……その力、確かに脅威。でもね」

    彼女の瞳は冷静だった。

    「私は“完璧な妹の影”じゃない。
     私は、“私自身の力”でここに立ってる!」

    「チェンジ!」

    蓮華の声と同時に、竈が足を踏み込んだ床と真下にあった鉄板が入れ替わる。
    竈は一瞬、体勢を崩し――

    「今!」

    三機のドローンが一斉にレーザーを浴びせる。

    しかし竈は吠えた。

    「ぐおおおおッ! そんなもんで止まれるかぁぁぁ!」

    焼かれた皮膚からは蒸気が噴き出し、だがそのまま突き進む。

  • 8631◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:18:20

    蓮華は即座に次の手。

    「チェンジ!」

    今度は竈とレーザーの光線を入れ替える。
    炎を纏う竈の胸元へ、自らが放ったレーザーが突き刺さった。

    「ッぐぉ……!」

    竈が膝をつく。焼け焦げた胸から煙が立ち上る。

    観客席がどよめいた。
    ランキング9位の少女が、炎鬼の猛攻を凌いだのだ。

    しかし竈は笑っていた。

    「ハッ、やるじゃねぇか……! だが、燃え尽きるのはこれからだぜ!」

    再び炎が膨張し、空気が揺らめく。

    蓮華は深く息を吸う。

    「……っ、妹に勝てなくても……私だって、ここで証明する!」

    熱と光が交差する。
    戦場は一層、熾烈な舞台と化した。

  • 8641◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:21:35

    竈の炎はさらに激しさを増した。
    空気は赤く歪み、視界に揺らめく蜃気楼が広がる。

    「ハハァァァ!! 寿命なんざ知るかよッ! 俺は今、この瞬間に生きてんだよぉ!」

    竈の全身から吹き荒れる熱風は、もはや灼熱の嵐。近づくことすら困難な領域に達していた。

    蓮華は顔に汗を伝わせながらも、視線を逸らさなかった。

    「……燃やすほどに強くなる。でも、その分……穴も大きくなる」

    竈が踏み込む。地面が焼け落ち、床板が黒焦げに崩壊する。
    振り抜かれる拳が灼熱の竜巻のように迫る――

    「チェンジ!」

    直前、蓮華は手元のドローンの一つと竈の拳の位置を入れ替える。
    拳が空を切り、代わりにドローンが竈自身の拳圧で粉砕された。

    「おおッ!?」

    竈がわずかに体勢を崩す。

    すかさず蓮華は二つ目のドローンを操る。ワイヤーを射出し、竈の腕へ絡みつかせる。

    「捕まえた……!」

    だが竈は笑った。

  • 8651◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:23:25

    「こんなモンが通じるかぁッ!」

    灼熱を放ち、ワイヤーを一瞬で溶断する。

    「……やっぱり、力で真正面からぶつかっても無駄」

    蓮華は冷静に分析する。

    「けど、“入れ替える”なら、力なんて必要ない!」

    彼女の視線が炎を纏う竈の肩口を捕らえる。

    「チェンジ!」

    竈の肩と、壁に突き刺さっていた鉄骨の先端が入れ替わる。

    「ッがぁッ!?」

    炎を噴き上げる竈の肩に、鋭い鉄骨が突き刺さった。

  • 8661◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:23:50

    だが竈は咆哮する。

    「ぐおぉぉぉッ! 痛ぇ! でも……燃えるッ! まだ燃えられるッ!」

    体から吹き出す血すらも蒸気と化し、さらに熱量を増していく。

    蓮華の眉が僅かに動いた。

    「……この人、どこまで……?」

    竈はもう限界の一線を踏み越えていた。
    寿命を削り、生命力を燃やし尽くしてなお前へ進む。

    「ハハハハァァァ! もっとだ! もっと熱くさせろぉぉぉ!」

    蓮華は息を呑む。
    この狂気に飲み込まれれば一瞬で敗北する。
    だが――彼女の瞳は決して揺るがなかった。

    「だったら……その炎ごと、利用してあげる」

  • 8671◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:28:57

    竈の体は限界を越えて燃え上がっていた。
    皮膚は赤黒く焼け爛れ、血管が光のように浮き上がり、呼吸のたびに火炎が吐き出される。

    「グハハァァァ!! これだ! これが俺の生き様だぁぁぁ!!」

    彼はすでに常人の動きではなかった。
    跳躍一つで床が砕け、拳を振るえば衝撃波と炎が同時に奔る。
    空気そのものが悲鳴をあげ、会場の壁が一瞬で燃え尽きていく。

    蓮華は熱波に押されながらも、一歩も退かずに構える。

    「……完全に寿命を削り切るつもり……。なら、私は――冷静に、最短で止める」

    ドローン三機のうち残る二機を同時展開。
    一つは高速回転するワイヤーで周囲の瓦礫を巻き上げ、もう一つはレーザーで照射し、竈の視界をかく乱する。

    「フッ……小細工なんざ通じねぇッ!」

    竈は拳を振り上げ、炎を纏う衝撃波で瓦礫を粉砕。
    レーザーすらも熱気で屈折し、狙いを逸らされる。

  • 8681◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:31:37

    だが蓮華の狙いは違った。

    「……今」

    「チェンジ!」

    瞬間、竈の足元とドローンのワイヤー先端が入れ替わる。
    竈の両脚にワイヤーが絡みつき、地面へ縛り付けられる。

    「ぬおッ!? テメェ……!」

    竈はすぐさま炎で焼き切ろうとするが――その刹那。
    蓮華はもう一度声を放つ。

    「チェンジ!」

    今度は竈の胸元と、爆ぜる寸前まで熱せられた鉄片が入れ替わった。

  • 8691◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:32:09

    「ぐぉぉぉぉぉッ!?」

    竈の胸で鉄片が爆裂し、灼熱の衝撃が体内を焼く。
    炎に強い竈でさえ、体内からの爆発には苦悶の声を上げざるを得なかった。

    「……ごめん」

    蓮華は小さく呟き、三度目の声を放つ。

    「チェンジ!」

    今度は竈の頭上と、天井から崩れ落ちてきた瓦礫の位置が入れ替わる。
    灼熱に晒された竈の体に、重い瓦礫が直撃する。

    「グッ……ハハ……! いいぞ……もっと……!」

    血を吐き、立ち上がりながらも、竈の口元には笑みが浮かんでいた。

    「お前……いいじゃねぇか……! 俺を……こんなに燃やせる奴は……そうそういねぇ!」

    蓮華は苦悩の表情を見せつつも、拳を握りしめる。

    「……あなたの炎を止める。それが、私の勝ち方」

    熱と煙が渦巻く中、二人の戦いはついに最終局面へ突入していく。

  • 8701◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:34:55

    竈の全身が、もはや人の形を保てないほどに燃え上がっていた。
    皮膚は炎のひび割れに覆われ、骨すら赤熱して透けて見える。
    一歩踏み出すたびに床が熔け、周囲の空気が爆ぜる。

    「グハハハァァァ!! これが俺の“竈”の最終形態だぁぁ!!!」

    竈は両腕を広げ、生命そのものを焚き火のように燃やし尽くしていく。
    炎はただの熱ではなく、存在を焼却するかのような圧倒的な力を帯びていた。

    蓮華の額から汗が滴る。

    「……ここまで命を削るなんて……でも、止めなきゃ……」

    残るドローンは一機。
    その小さな光が、竈の巨大な紅蓮の前では頼りなく見える。

    竈は突進した。
    地響きを轟かせ、炎の奔流を伴いながら、ただ一直線に。

    「チェンジ!」

    瞬間、竈の前方にあった崩落した梁と、蓮華の体が入れ替わる。
    竈の炎が梁を呑み込み、一瞬足を止めさせる。

    「ぬぅ……小賢しいッ!」

    次の瞬間、竈は梁ごと爆ぜさせ、そのまま前進。
    炎の奔流が蓮華の頬を掠め、肌に火傷を刻んだ。

  • 8711◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:36:18

    「ッ……!」

    痛みに歯を食いしばり、彼女は退かない。

    「私には……妹みたいな“完璧さ”はない。
    でも、私には私の戦い方がある!」

    彼女は残るドローンを竈の背後へと飛ばし、レーザーを放つ。
    竈は炎で掻き消そうと振り返る――。

    「今ッ!」

    「チェンジ!」

    竈の心臓部と、ドローンのコアが入れ替わる。
    ドローンは即座に爆裂し、竈の胸腔から内部へ灼熱が駆け巡った。

    「ぐおおおおおぉぉぉぉッッ!!!」

    炎が暴走し、竈の体を内側から引き裂いていく。
    紅蓮の奔流は制御を失い、爆心地となって爆発を始めた。

  • 8721◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:38:27

    蓮華は歯を食いしばり、最後の声を放つ。

    「チェンジッッ!!!」

    自分と空間の岩塊を入れ替え、竈の爆発の中心から離脱する。
    直後、竈の身体が炎の塊となり、轟音と共に爆ぜた。

    紅蓮の爆心は会場を半壊させ、熱波が遠くまで駆け抜ける。
    しかし――その中心にいた竈は、もはや立ってはいなかった。

    「……やりきった、か」

    瓦礫に膝をつきながら、蓮華は息を切らす。

    「兄貴……寿司、食いたかったなぁ……」

    炎の残滓の中で、竈は笑みを浮かべ、そう呟いて崩れ落ちた。

    蓮華は静かに目を閉じる。

    「……勝った。でも、胸が痛い」

    彼女の勝利は決して誇れるものではなかった。
    だが、それでも立ち続ける――それが、彼女の選んだ答えだった。

  • 8731◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:41:10

    紅蓮の残滓が消え、瓦礫の隙間から差し込む夕陽が、静寂を照らしていた。
    焼け焦げた匂いだけが辺りに残り、戦いの余韻は痛々しいほどに濃い。

    蓮華は膝をつき、まだ震える指先で胸を押さえた。

    「……勝った、はず……でも……」

    目の前に横たわる竈の姿は、焼け爛れた皮膚の下からなお赤熱が漏れていた。
    彼は動かない。
    けれど、その顔は――笑っていた。

    「兄貴……どうして、最後に……あんな顔で」

    蓮華の胸に、重いものが沈み込む。
    それは勝利の実感ではなく、敗北にも似た痛みだった。

    ――「寿司、食いたかったなぁ……」

    竈の最後の言葉が、耳の奥で反響する。
    命を燃やし尽くしながらも、最後まで笑っていた男。
    その生き様を前にして、自分は本当に「勝った」と言えるのか。

    瓦礫の向こうから、靴音が近づく。
    聞き慣れた声が響いた。

    「……やっぱり勝ったんだね、姉さん」

    そこに立っていたのは、双子の妹――高峰薫。
    光世学園ランキング一位、無敗の傑物。

  • 8741◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:42:13

    「……薫」

    蓮華は立ち上がろうとするが、身体は思うように動かない。

    薫は竈の亡骸を一瞥し、無表情で言った。

    「この人……命を全部燃やして戦ったんだ。勝ててよかったね」

    その声音は淡々としていた。
    だが、蓮華には突き刺さるように響いた。

    「勝ててよかった……? そんな簡単に言わないでよ!」

    蓮華は震える声で叫んだ。

    「彼は……本当に全てを賭けてきた。私だって、ギリギリで……! 私は勝ったけど……勝った気なんてしない!」

    薫は少しだけ目を細める。

    「……でも、勝ったのは事実。だから、背負わなきゃいけない。姉さんが、これからも」

    その冷静さが、逆に胸を締めつけた。
    妹のように完璧でもない。
    自分はただ、必死に足掻いて、泥臭く戦っただけ。

    「……それでも……私は……」

    蓮華は拳を握りしめ、俯いた。

    ――負けた者の願いも、命を燃やした熱も、すべて抱えて歩かなければならない。

  • 8751◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:43:27

    勝者とは、そういう存在なのだと、今ようやく理解する。

    夕陽が沈みかけ、瓦礫の影が伸びる。
    炎の残滓が風に舞い、やがて空へと消えた。

    蓮華は小さく呟いた。

    「……竈さん。あなたの火は、私が背負う」

    その言葉を最後に、廃墟に静けさが戻る。
    だが、その静けさの奥底で、確かに残り火が灯り続けていた。

    ――敗者の焔は、勝者の影を照らす。

    物語は、そうして幕を閉じた。

  • 8761◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 13:43:53

    以上

  • 877二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 13:44:56

    まさか妹との会話まで描写してもらえるとは思わなかった
    投下お疲れ様です ありがとうございました

  • 878二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 13:46:07

    敗者が勝者の心で生き続ける展開っていいよね

  • 8791◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:08:55

    題名『影と漆黒の太陽』

  • 8801◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:10:58

    大地はひび割れ、空は鉛色に覆われていた。風は異常に重く、砂塵を巻き上げながら螺旋状に渦を作る。そんな荒野の中心に、漆黒の球体――落日――がゆっくりと降下していた。巨大な黒球の表面には赤黒く脈打つ目玉の模様が無数に浮かび、淡い光を放ちながら微細に点滅している。周囲の空間はその圧力で歪み、見上げる者の重力感覚さえ狂わせる。落日はただ存在するだけで、世界を消滅させる可能性を秘めていた。

    「ふぅ…… こりゃまた、すごい面子だなぁ……」

    影拍は小さく息を吐き、両腕のない自分の体から生えた影の手を地面に押し付ける。影は自らの意志を宿し、ゆっくりと伸び、黒掌の形を作り上げる。合掌の形を取るたび、微かな震動が大地を伝い、砂塵と瓦礫が舞い上がった。

    「ナムサン……!!」

    その一声と同時に、影の手は一気に天に向かって伸び、風圧と共に小規模な雷鳴が大地を叩き、落日の脈打つ赤黒い光を僅かに揺らす。落日はその場に動じることなく、赤黒い光を一点に集中させ、世界を少しずつ焼き尽くすように照射を始める。地面の砂が溶け、瓦礫が蒸発する音が辺りに響き渡る。

    「くっ…… いきなり容赦ねぇな……!」

    影拍は冷静に観察し、影を自分の周囲に広げて盾とする。影の手はただの形ではなく、物理的な干渉力を持つ。触れるものを押しのけ、風圧を巻き起こし、光線の直撃をわずかに逸らす役割を果たす。だが、落日の光は普通の攻撃では簡単に通用しない。影拍の影も徐々に光に侵食され、表面がチリチリと焼かれる。

    「むう…… ならば…… 俺の力を本気で使うときだな!」

    影拍は深く息を吸い込み、体内の僧としての意思と、馬鹿出加伴怒闇アリステラ菩薩の意思が混ざり合った“迷惑系混合人格”を覚醒させる。影は黒く粘り強く伸び、周囲の瓦礫を巻き込みながら巨大な手の塊に変化した。その形はまるで黒い山のように立ちはだかり、影拍の意思を具現化する盾となる。

  • 8811◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:11:38

    「よーし…… ここからだ! 俺の影で、世界を少しぐらい揉み消してやるぜ!!」

    影拍の声に応えるかのように、影の手が生き物のようにうねり、落日へと襲いかかる。影はただ押すだけでなく、風圧と振動を生み、落日の光を揺らす。光の直撃を避けながら、一歩ずつ影拍は前に進む。砂塵の中、彼の足跡は影となって大地に深く刻まれ、まるで世界が自ら彼に道を作っているかのようだった。

    落日は言葉を発さず、球体表面の目玉模様が赤黒く点滅することで反応する。威圧と殺意を表すその光景に、影拍は一瞬たじろぐが、すぐに笑いを浮かべて返す。

    「へっ…… そんなもんか! 俺の影を舐めんなよ、落日!!」

    空間を押しのけるほどの影の手の力が、落日の光線をわずかに逸らす。影拍はこの隙に地面を蹴り、影の合掌をさらに大きく広げる。周囲の砂塵と瓦礫を吸い込み、影の山が落日へと迫る。

    「ナムサン……!! さあ、来い、俺の影の力よ!!」

    その瞬間、地鳴りが空にまで届き、世界が震える。落日の赤黒い光がさらに増幅され、瓦礫を吹き飛ばし、影拍の影も一部が焦げる。しかし影拍は怯まず、笑みを浮かべながら影を自在に操る。

    「……まだまだ、これからだな。ここが俺の舞台ってわけさ……!!」

    荒野の空気は熱を帯び、砂塵は渦を巻き、影拍の声が世界に反響する。落日は球体を揺らしつつ、威圧を強めるが、影拍はその全てを踏み台にし、影の力を覚醒させ続ける。

    こうして、終末の黒球と影の僧は、壮絶な最初の衝突の舞台を整えた。世界はまだ序章。影拍の挑戦は、ここから本格的に始まろうとしていた。

  • 8821◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:15:08

    落日――その黒い球体はゆっくりと大地に近づき、世界全体に重苦しい圧力をかけていた。赤黒い目玉模様が脈打つごとに、周囲の空間はねじれ、見上げる者の感覚を狂わせる。影拍はその圧力を肌で感じながら、影の手を大地に押し付け、微かな振動を感じ取った。

    「……ふぅ、やるな、落日……でも、俺も負けちゃいねぇぜ!」

    影拍は口元に笑みを浮かべ、影を自在に伸ばしながら球体の側面に触れさせる。影の手が落日の表面を押し返すたび、赤黒い光の点滅が早まり、球体がわずかに揺れた。しかし、落日の力は圧倒的で、普通の衝撃や物理力ではほとんど動じない。

    「ナムサン……!!」

    再び唱えると、影の合掌が広がり、空気を巻き上げて風圧を生み出す。瓦礫や砂塵が渦巻き、落日を包み込む影の塊は巨大な拳のように見えた。赤黒い光線がそこにぶつかるが、影拍の影は焦げつきながらも崩れずに耐える。

    「おおっ……効く効く、まだまだ行けるぜ!!」

    影拍は足元の砂塵を蹴り、影の手をさらに伸ばして球体を押し返す。落日は言葉を発さないが、目玉模様の点滅が瞬きのように早まり、光線を収束して反撃を試みる。その光は瞬間的に圧縮され、周囲の瓦礫を吹き飛ばし、熱と圧力で影拍の影を削り取ろうとした。

    「くっ……! 熱いっ……でも、まだまだだ……!」

    影拍は体勢を低くして回避しつつ、両腕の影を地面に打ち付け、衝撃波を生む。その力で砂塵が舞い上がり、落日の光線を僅かに遮る。だが、光線は一瞬の隙も見逃さず、影の隙間を縫って照射される。

    「よし、ここで……俺の本気を見せるぜ……!!」

    影拍は両手を合わせ、影を全身に集約させる。巨大な影の手がさらに膨れ上がり、空間を押し広げるようにして落日を包囲。地面からも影が生え、まるで世界そのものが影拍の意思に応えて動くかのようだった。

    「ナムサン……!! 俺の影よ、全てを飲み込め――!!」

    影の塊が落日の表面に触れ、圧力を加える。赤黒い光が激しく脈打ち、球体が揺れ、光線の放射角が乱れ始める。影拍は焦らずに動き、影の手を微細に動かして光線の方向を逸らす。瓦礫や砂塵が渦を巻き、光の通路を完全に遮断する。

  • 8831◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:18:00

    「これが……俺のやり方だ……世界を押し返す力……!」

    落日は一瞬停止したかのように見えたが、内部の圧力が反発して光線を増幅しようとする。しかし、影拍は冷静に周囲を見渡し、影の手で光線の一部を受け流しながら球体の側面を押し続ける。圧倒的な力の差にも怯まず、むしろ楽しむかのような表情を浮かべる。

    「ははっ……これが俺の舞台ってわけさ……さあ、もっと来い!」

    影の力がさらに覚醒し、黒い手が球体を取り囲むように伸び、地面の影も共鳴して広がる。赤黒い光線が影に押され、光の経路が乱れる。影拍は微笑みながらも体力を維持し、影を自在に操って光を削ぎ落としていく。

    この瞬間、影拍の意思と影の力は一体となり、終末の黒球――落日――に初めて抗う力を生み出した。大地の砂塵と影の塊が舞い、空間が歪み、光と影の攻防が荒野を覆う。

    「まだまだ……ここからが本番だ……俺の影は、誰にも止められやしねぇ……!!」

    影拍の挑戦は、荒野の中心で熾烈な戦いの火蓋を切った。落日との戦いはまだ序章に過ぎない。彼の影は進化を続け、次第に世界そのものに干渉し始めるのだった。

  • 8841◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:26:59

    影拍は荒野の中央に立ち、両手の影を天高く掲げた。周囲の砂塵と瓦礫が影の圧力に押し上げられ、渦巻く嵐のような景色が広がる。落日の赤黒い光は収束を始め、巨大な光線が一点に集中して荒野を切り裂こうとしていた。

    「来やがれ……! 俺の影に触れさせてやる!!」

    影拍は「ナムサン」と唱え、両手の影を合掌させた。地面からも影が湧き上がり、巨大な黒い拳が落日に向かって押し寄せる。その影の手の先端からは圧力の波動が発せられ、空気は振動し、瓦礫は飛び散った。

    赤黒い収束光線が影拍に直撃する寸前、影拍は影を微妙に操作し、光線の経路を逸らす。光線は砂塵の渦を切り裂きながら、荒野の端にぶつかって消える。だが、落日の威圧感は衰えず、点滅する目玉模様が執拗に彼を追い続ける。

    「ふっ……熱い……でも、これくらいでへこたれる俺じゃねぇ……!」

    影拍はさらに影の力を集中させ、巨大な手で球体を包み込む。影の圧力と球体の光線がぶつかり合い、空間そのものが歪む。衝突点では火花のように黒と赤が入り混じり、砂塵の渦と光の波動が螺旋状に舞い上がる。

    「ほら、もっと来い! 俺の影に抗えると思うなよ!!」

    落日の光線は収束を維持しながら、影拍の影に触れると微かに散乱した。球体の内部で圧力が跳ね返され、目玉模様の点滅速度が変化する。その瞬間、影拍は足元の影を地面に押し付け、波動を跳ね返す形で反撃の波を生み出した。

    「これが……俺の全力だ……大合掌……ッ!!」

    影の拳が球体に衝突し、衝撃波が空気を裂く。赤黒い光は一時的に分散され、収束光線が不安定になる。影拍は冷静に呼吸を整え、影の手を微細に操りながら光線を撹乱する。砂塵の渦が巻き上がり、落日の光線は完全に一点に集まれず、荒野の至る所で弾かれる。

    「ははっ……まだまだ、俺の影は止まらねぇ……!」

    落日の球体がゆっくりと揺れ、点滅する目玉模様が焦りを示すように早まる。だが、影拍は恐れるどころか、影をさらに膨らませ、球体を完全に取り囲む勢いで攻撃を加え続けた。影と光の衝突は、もはや単なる戦闘ではなく、世界そのものを揺るがす異常事態に発展していた。

  • 8851◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:28:22

    「まだ……俺は……負けねぇ……!」

    影拍の意思と影の力は一体となり、落日の圧倒的な光を押し返す。荒野全体が影に包まれ、赤黒い光線はまるで水のように弾かれる。影拍の戦いは、決して消されない存在感と圧倒的な攻撃力で、落日に抗う唯一無二の抵抗となった。

  • 8861◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:30:35

    荒野に響く風鳴りと砂塵の唸り。影拍は地面に影を押し付けるように広げ、両手を高く掲げて「ナムサン」と唱えた。

    「よーし……行くぞ……俺の影、全部ぶつけろ!!」

    その瞬間、荒野の地面が裂け、砂塵が竜巻のように舞い上がる。影拍の周囲の空気は熱気と圧力で揺れ、赤黒い落日の光もそれを押し戻すことはできなかった。影拍の影が地面を這い、砂の粒子を巻き込み、無数の黒い手の形をした拳となって次々に落日を取り囲む。

    落日の球体はゆっくりと降下しながら、点滅する目玉模様で威圧を示す。しかし、影拍の影はその光を弾き返し、赤黒い光線を撹乱する。球体の表面から放たれる収束光線は、影の拳にぶつかるたびに反射し、空気の中で不規則に散乱した。

    「ふっ……どうした落日……俺の影に触れられないのか……?」

    影拍の言葉とともに、影が集束し巨大な「手」の形を作り、落日の球体を包み込む。影拍の意思は一点に集中し、影の拳は押し潰すように球体を締め上げた。

    「これが……俺の力……!」

    影拍が踏み込むたび、地面が割れ、影が地面を覆い、黒い拳は球体を締め上げる。落日の球体からは赤黒い光線が渦を巻いて飛び出すが、影拍の周囲の砂塵と影に阻まれ、直接当たることはできない。

    「まだまだ……俺は止まらねぇ……!」

    影拍は両手の影を振るい、空気を切り裂く波動を生み出す。砂塵が竜巻のように巻き上がり、落日の光線はそれに吸い込まれ、方向を狂わされる。影拍の意思と影の力は完全に一体化し、黒き太陽を圧迫する。

    球体の点滅する目玉模様は早まる。内部の圧力が高まり、収束光線の安定性が揺らぎ始めた。影拍は冷静にその変化を捉え、影を微細に操作して光線の経路を更に撹乱する。

    「ほら……もっと出してみろよ……俺の影に抗えると思うな!!」

    影の拳は球体の表面を押し潰す勢いで回転し、収束光線は瞬間的に不安定になる。落日の球体は僅かに揺れ、点滅の速度が不規則になる。影拍は笑みを浮かべ、さらに影を広げ、荒野全体に天変地異を巻き起こした。

    地震、雷、砂嵐――自然の法則すら影拍の意志に従い、落日の球体を押し潰すかのように渦を作り出す。荒野は影拍の影に覆われ、赤黒い光は徐々に押し返されていった。

  • 8871◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:32:26

    「ははっ……これでどうだ……落日……俺の影に触れられるか……!」

    影拍の影と天変地異は完全に同期し、球体を追い詰める。落日の赤黒い光線はもはや影に届かず、球体の点滅は焦りを示すように早まっていた。

    影拍の全力――「ナムサン」の天変地異――は、黒き太陽さえも逃れられない圧力を生み出し、荒野に前代未聞の異常を巻き起こしていた。

  • 8881◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:35:06

    影拍の足元から吹き上がる砂塵は荒野全体を覆い、視界はほとんど影に染まっていた。両手を広げ、「ナムサン」と再び唱える影拍の声は、荒野に轟き、風のうねりとなって落日の球体にぶつかる。

    「まだまだ……俺の影、止まらねぇぞ……!」

    巨大な黒い手の形をした影が、球体を包み込み締め上げる。点滅する赤黒い目玉模様は焦燥を示すように高速で揺れ、球体の表面から放たれる光線の精度が次第に乱れ始めた。

    影拍は目を細め、影を自在に操作する。砂塵と影の渦が光線を分散させ、荒野のあちこちで小さな地割れや雷鳴が発生する。落日の球体はそれでも必死に光を発射し、影拍を押し戻そうとするが、彼の影の壁は崩れない。

    「ほら、もっと……もっと力を出してみろよ……!」

    影拍の声に呼応するかのように、影は砂塵を巻き込みながら球体の周囲で螺旋を描き、光線の軌道を完全に撹乱する。落日から放たれる収束光線は次第に不安定となり、荒野の地表を焦がすだけで直接影拍には届かなくなる。

    しかし影拍も全力で踏み込むたびに、体内の血と生命力が燃え上がる。影を操作する手の動きは次第に痛みを伴い、両手の感覚が鈍くなっていく。それでも影拍は笑った。

    「痛ぇ……でも、まだ……これくらいじゃ終われねぇ……ナムサン!」

    影拍の影は巨大な拳となり、球体を押し潰す圧力を増す。赤黒い目玉模様は狂ったように点滅し、球体の内部で光が暴発しかける。収束光線も不規則に揺れ、球体表面はわずかに裂け目を見せ始めた。

    「見ろ……これが……俺の影だ……!」

    影拍は体を前に倒し、影の拳を球体にぶつける。砂塵と影の竜巻が球体を包み込み、荒野の大地は激しく揺れる。赤黒い光線が暴発しかける瞬間、影拍は最後の力を込め、影を一点に集中させる。

    「ここまで来たら……終わりだ……!」

    影が球体を押し潰す圧力は限界に達し、落日の球体は微かに揺れ、内部で赤黒い光が暴れ始めた。点滅する目玉模様は狂気に近い速度で点滅し、収束光線の発射も完全に制御不能に陥りつつあった。

    影拍の両手は痛みに耐えながらも、影の拳を押し続ける。荒野の空気は揺れ、雷鳴が轟き、砂塵は影の渦に巻き込まれ舞い上がる。黒き太陽は今、完全に押し潰されつつある。

  • 8891◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:37:21

    「さあ……行くぞ……ナムサン……最後の一撃だ……!」

    影拍の影は球体を包み込み、天変地異の力と一体化して押し潰す。その圧力はもはや光も力も及ばず、落日の球体は赤黒い光を放ちながらも縮み、ついに崩壊の一歩手前まで追い込まれていた。

  • 8901◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:39:16

    荒野に吹き荒れる砂塵の渦は、影拍の影と化して空を切り裂く。両手を広げ、「ナムサン」と唱えたその声は、雷鳴と砂嵐に溶け込み、世界そのものを揺らすかのように響いた。

    「さあ……これで終わりだ……!」

    影拍の巨大な影の拳が、漆黒の球体・落日を押し潰す。球体は必死に光を放つが、影の圧力に抗えず、赤黒い目玉模様は狂ったように点滅を繰り返す。収束光線の精度は完全に乱れ、周囲の荒野に無秩序な閃光が飛び散った。

    影拍は呼吸を整えつつ、体内の生命力をさらに燃焼させる。手の痛みは限界に近いが、燃え盛る血潮がその痛みを力に変えていく。

    「こんなところで負けるわけ……ねぇだろ……ナムサン……!」

    影の拳が球体を包み込むと、荒野の砂塵は渦となり、光と闇が激しく交錯する。落日は最後の抵抗として強烈な収束光線を放つが、影拍の影の壁がそれを分散させ、荒野の地面を焦がすに留める。

    「見ろよ……俺の影は……止まらねぇ……!」

    影拍は叫び、影の拳を一点に集中させる。拳が球体に食い込み、赤黒い光が球体内部で暴れ、目玉模様は最後の絶望を表すように点滅する。球体の収束光線は不規則に消え、もはや防御も攻撃も成立しない。

    「これで……終わりだ……ナムサン……!」

    影拍の影が球体を圧迫し続ける。荒野の空気が裂け、雷鳴が轟き、砂塵が渦巻く。黒き太陽は最後の瞬間、影の拳に潰され、赤黒い光を暴発させながら、ついに崩壊した。

    静寂が荒野を覆い、影拍は膝をつきながら深く息をつく。両手は痛みで痺れ、体は消耗していたが、勝利の実感が全身に染み渡った。

    「……ふぅ……やっと……終わったな……ナムサン……」

    周囲の砂塵が静まり返る中、影拍の影だけが荒野に揺らめき、漆黒の太陽の残骸を包み込む。すべてが止まったかのような時間の中で、影拍はその拳をゆっくりと下ろした。

    勝者は、紛れもなく影拍――人の意思と闇の力を融合させた者であった。

  • 8911◆ZEeB1LlpgE25/08/30(土) 20:39:45

    以上

  • 892二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 20:43:42

    ナムサンが万能過ぎる!!

  • 893二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 20:44:09

    良かったぞ!

  • 894二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 20:45:27

    投下乙
    ナムサン強いなぁ

  • 895二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 23:52:28

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  • 8961◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:05:13

    題名『守護と治療の狭間』

  • 8971◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:05:52

    夜の街は沈黙に包まれていた。
    濁った雲が月を覆い、灯火の乏しい路地はまるで闇に飲まれたようだ。

    その暗がりに、青く透き通る宝石の羽がふわりと光を放つ。
    その姿は人の形をしていながらも、人ではない。
    ――神鳥ヴェクター。
    森羅万象を護る守護神の眷属にして、人類を守護する誇り高き存在。

    彼は重く口を開いた。

    「我が使命は揺るがぬ。佐藤の血を守り、すべての脅威を退ける」

    静かな宣言。
    その声は、夜に紛れた小さな音さえも切り裂くように重く響いた。

    コツ、コツ、と高いヒールの音が石畳を叩く。
    不意に路地の奥から現れたのは、黒いドレスを纏ったひとりの女だった。
    艶やかな髪を揺らし、紅を引いた唇に妖しい笑みを浮かべる。

    「こんばんは……歯の美しいお方」

    女の視線は、ヴェクターの顔ではなく、その口元を凝視していた。
    夜の闇の中で、その瞳だけがぎらつくほどの欲望を映している。

    ヴェクターは眉をひそめ、静かに羽を広げる。
    煌めく光が羽の先から滲み出し、空気を震わせた。

  • 8981◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:06:45

    「何者だ。ここは聖域。我が守護する一族へ干渉する資格は、貴様には無い」

    女は楽しげに微笑み、頬へと指先を添える。

    「私はただ……美しい歯を愛しているだけ。
     汚れた歯を磨き、家畜を人間に戻してあげる。それが私の使命なんです」

    その声音には、熱のこもった慈悲のような響きがあった。
    だが同時に、どこか冷たく、理性を逸した残酷さを孕んでいた。

    ヴェクターは、羽ばたく気配を静かに収めた。
    この女はただ者ではない。
    そう悟った瞬間、夜の気配が濃く、重く、張り詰めていった。

    ――脅威が始まろうとしている。

  • 8991◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:08:10

    女――花羅美麗美は、ゆっくりと近づいてきた。
    その歩みは優雅で、まるで舞台女優のように無駄がない。
    しかしヴェクターの眼には、その動きの一つひとつが猛獣の接近にしか映らなかった。

    「あなたの歯は……とても綺麗。きっと磨いて大事にしているんでしょうね」

    そう囁くと、麗美の指先から淡い光がにじむ。
    それは麻酔――彼女の異能「永久麻酔」の兆しだった。

    ヴェクターは即座に羽を広げた。
    重厚な羽が夜空を覆い、青い光の壁を築き上げる。
    世界を護る盾――それが彼の存在そのものだった。

    「その光……ただの癒しではないな」

    羽が震え、守護の加護が発動する。
    佐藤家へも、遠く離れた彼方へも、ヴェクターの防壁は瞬時に広がった。
    だが麗美は、揺るがなかった。

    「怖がらなくていいんです。これは痛みを消すもの。
     感覚をなくせば、あなたも楽になりますよ」

    その言葉と共に、路地全体に霞が広がっていく。
    鼻を刺すような甘い匂い――それは感覚を奪う不可視の霧だった。

  • 9001◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:08:42

    ヴェクターは羽で空気をかき乱し、結界を強めた。
    しかし、彼の動きは重い。羽根を広げて守りを固めるたびに、一歩踏み出すだけでも石畳がひび割れるほどの負荷が掛かっていた。

    「……ぬう……」

    足が鈍い。
    身体が、少しずつ沈むように重くなる。
    感覚が、霞んでいる――。

    麗美の唇に笑みが深まった。

    「そう、そのまま……。
     あなたの重たい羽も、誇り高い意志も……すべて感覚がなくなれば、ただの石像になるだけ」

    彼女はそっと手を伸ばす。
    ヴェクターの頬へ触れようとする白い指先。
    その瞬間、彼は力を込めて叫んだ。

    「――我が羽は、滅びを拒む盾なり!」

    羽が大きく広がり、光が奔流となって夜空を満たした。
    その光はあらゆる侵食を退ける守護の権能。
    一瞬にして麻酔の霧は弾き飛ばされ、路地は晴れ渡った。

  • 9011◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:09:43

    しかし麗美の表情は崩れなかった。
    その瞳はむしろ、獲物を追い詰める楽しみに満ちていた。

    「感覚を奪うのは……霧だけじゃないんですよ」

    彼女の足元に、ヴェクターの影が揺れた。
    知らぬ間に、彼の羽に届いた「感覚」が、そこからじわじわと失われていく。
    羽先が鈍り、硬質な宝石の輝きがほんのわずかに曇った。

    ヴェクターは重く息を吐く。

    「……小癪な……だが、我が矜持は消えぬ……!」

    彼の声はまだ揺るがない。
    だが確実に、麗美の能力は効き始めていた。

    夜の街に、守護と麻酔の拮抗が広がっていく。
    羽と牙――そのぶつかり合いは、まだ序章に過ぎなかった。

  • 9021◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:11:03

    ヴェクターの巨翼は、かつてないほど重く感じられた。
    守護神から賜った絶対の守護――その象徴たる宝石の羽。
    しかし今、それは彼の誇りであると同時に、動かすことすら困難な枷となっていた。

    「……羽が……応えぬ……」

    声は掠れ、足取りもおぼつかない。
    それでも彼の瞳には確かな意志が宿っていた。
    守護者としての矜持が、彼を無理やり立たせていた。

    麗美は一歩、また一歩と近づく。
    白い歯を見せ、あくまで優美に。

    「あなた、本当に強い人。
     でもね、強いからこそ無駄に足掻くの。
     それを見ていると、治療のしがいがあって楽しいんです」

    彼女の指先が空をなぞると、淡い光の線が走った。
    光が触れた瞬間、ヴェクターの左翼の先が痺れ、羽の感覚が霧散する。
    硬度は残っている。だが、それはただの鉱石の塊と化した。

    「……っ……まだだ……!」

    ヴェクターは残された力を振り絞り、片翼を大地に叩きつけた。
    轟音が響き、路地は瓦礫と粉塵で覆われる。
    その破壊力は、常人なら跡形もなく吹き飛ぶほど。

    だが――粉塵の向こうから、澄んだ声が届いた。

  • 9031◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:13:44

    「効きませんよ。防御はしていないから、ただ避けただけです」

    風が吹き、粉塵の中から麗美の姿が現れる。
    その歩みは悠然としていて、一歩ごとにヴェクターの体から感覚を奪い取っていくように思えた。

    「あなたの誇りも、少しずつ剥がれていく。
     守りたい気持ちは素敵ですけど、もう十分ですよね?」

    ヴェクターはその場に膝をつき、羽を広げた。
    守護の加護がなおも遠くの佐藤家を覆い続けている。
    その結界だけは、彼の命と引き換えにでも維持しようとする意思が燃えていた。

    「……守護の矜持……我は決して折れぬ……」

    麗美は歩みを止め、彼の目前に立った。
    そして柔らかく、囁くように告げた。

    「折らなくてもいいんです。
     あなたが眠れば、全部解決します」

    その瞬間、彼女の両手がヴェクターの頭に添えられた。
    まるで慈母が子を寝かしつけるように優しい仕草。

    「……く……! 守……る……」

    ヴェクターの声はそこで途切れた。
    宝石の羽が大地に崩れ落ち、硬質な音を立てて沈黙する。
    その瞬間、路地を覆っていた緊張感がすべて消え去った。

  • 9041◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:14:18

    麗美はその姿を見下ろし、微笑む。
    美しく整った歯が、夜の闇に冷たく光っていた。

    「さあ……それでは治療を始めますね」

  • 9051◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:15:06

    夜の街は、いつもよりも深い静寂に包まれていた。
    瓦礫の散乱した路地には、かつての戦闘の激しさを示す爪痕が刻まれている。
    しかし今、その場所に立つのはただ一人。

    花羅美 麗美。

    彼女は地面に沈んだヴェクターを静かに見下ろしていた。
    宝石の羽はなおも淡い光を帯びており、その美しさは損なわれていなかった。
    だが、そこにはもう動きはなく、守護の力も響いてはいなかった。

    「……強かったわね、本当に」

    麗美の声には敬意があった。
    彼女にとって敵であっても、歯や肉体、そしてその信念が美しいものであれば評価を惜しまない。
    ヴェクターの羽は、世界でも唯一無二の硬度を誇る。
    その姿は確かに、人類を守る盾として完璧であった。

    だが――完璧であるがゆえに脆さを抱えていた。
    移動できないほどの重さ。
    攻撃を持たぬ絶対防御。
    そして、「守る」という意志が強すぎたがゆえに隙を突かれる。

    「だから私は治療するんです。
     完璧な存在は、いつか崩れる。
     その前に、綺麗にして差し上げないと」

    彼女はヴェクターの口元にそっと触れ、白い歯を確かめた。
    ――美しい。
    神鳥と人の姿を行き来する存在であっても、その歯の形は整っていた。
    まるで彼の矜持そのものを象徴しているかのように。

  • 9061◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:15:42

    「うん……やっぱり、人間らしいわ」

    麗美は微笑み、そのまま背を向けた。
    治療の道具は既に取り揃えてある。
    彼が目覚めることは二度とないだろう。
    しかし、その肉体は彼女にとって「作品」となる。

    夜風が吹き、瓦礫を撫でる。
    羽の輝きがほんの一瞬、月光に応えて煌めいた。
    まるでまだヴェクターの意志がこの地を守護していると告げるかのように。

    だが、麗美は立ち止まらない。
    彼女にとって戦いの勝利も敗北も重要ではない。
    すべては「治療」という行為のために。

    そして静寂の中、彼女の声が小さく響いた。

    「……次の患者を探しに行きましょうか」

    路地にはもう、誰の声も返ってこなかった。

  • 9071◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 00:16:04

    以上

  • 908二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 00:17:48

    静かに狂気を抱えてる感じで最高だった

  • 909二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 09:35:57

    保守

  • 910二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 14:42:09

    歯医者さんつおい…

  • 9111◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:03:11

    題名『死母の胎内と灰色の意志』

  • 9121◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:04:19

    地下深く、ザル=イナースの地底神殿は息を潜めるように眠っていた。
    しかしその静寂は、決して安らぎではない。重苦しい空気が支配し、壁に刻まれた古代の文様は、今もなお蠢いているかのように見えた。

    湿った石床に靴音を響かせながら、マーチャー・スレイは歩を進める。
    彼の姿は灰色のオーラに包まれ、胸から上と腕しか見えない。
    けれどその足取りには、幽霊じみた不安定さよりも、不思議な確信めいた強さがあった。

    「……ここが、伝承にある場所か」

    彼は思わず息を呑んだ。
    鼻を突く腐臭、黄土に混ざる血の匂い、そして遠くから聞こえる鼓動のような響き。
    まるで神殿全体が、母胎の中のように蠢いている。

    そのとき、大地が軋むように揺れた。
    床に広がる亀裂から、粘つく瘴気が立ち昇る。
    そして、その裂け目から現れたのは、黄土と腐肉をまとった巨躯。

    「……人の子よ」

    低く、重々しい声が響いた。
    その存在感は、圧倒的な母性と恐怖を同時に孕んでいる。
    死と大地の神――カルトゥーン・テフ=ナーシュ。

    「我が胎内に還り、生を終えよ。
     すべての命は、我が胎に抱かれ、次なる循環へと繋がるのだ」

    神の言葉が大気を震わせた瞬間、周囲の大地は変貌を始めた。
    石床は肉塊に変わり、壁からは骨の蔦が這い出す。
    空気そのものが、胞子の霧となって肺に忍び込む。

  • 9131◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:05:02

    マーチャーは後ずさりせず、しっかりと前を見据えた。

    「……俺は、諦めない」

    心臓が早鐘を打つ。
    けれど、その鼓動は恐怖ではなく、前へ進むための確信に満ちていた。

    灰色のオーラが、彼の存在を薄めていく。
    その場にいるのに、確かにそこに立っているのに、神の視線はどこか焦点を結ばない。

    「何だ……? 我が目に映らぬか」

    神は不快げに呻いた。
    彼女の胎動は地に伝わり、屍肉獣や腐樹が芽吹いては蠢く。
    だが、マーチャーの存在はその中心にありながら、霧の中の幻のように揺らめいている。

    「俺は……ただの人間だ」

    小さく呟きながら、彼は意識を研ぎ澄ませた。
    神の視線が自分に注がれるたびに、その視界へ揺らぎを生じさせる。
    一瞬、胎動が鈍り、屍樹の蔦が止まる。

    「……なるほど。意識を縛るか」

    神は気づき、低く笑う。
    その声には、まるで子を見守る母のような優しさと、命を圧殺する残酷さが同居していた。

    マーチャーは歯を食いしばる。

  • 9141◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:05:34

    「俺がここで……消えるわけにはいかない」

    そう呟いた彼の瞳には、光が宿っていた。
    それは灰色の身体を包み込む、小さな希望の灯火。

    地下神殿に響く胎動の音。
    死と生を抱く神と、忘れられた三男の少年。
    二つの存在の邂逅は、まだ始まったばかりだった。

  • 9151◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:06:17

    神殿の奥、黄土と腐肉の壁が息をするかのように微かに動く。
    カルトゥーン・テフ=ナーシュの体躯は、神殿の床と一体化し、まるで大地そのものから生まれたかのようだった。

    「……我が胎内に触れる者よ」

    声が振動となって空気を揺らす。
    振動は地を伝い、骨蔦や腐肉の獣を動かす。
    それらの異形は一斉に動き出し、周囲を囲むように展開した。

    マーチャーは灰色のオーラの中で冷静に観察する。
    敵の出現と同時に、神殿の地形そのものが生き物のように変化していく。

    「ここまで……やるのか」

    彼の言葉に、神は無言のまま応える。
    胎内の鼓動は次第に強まり、地面に立つだけでも身体に圧力がかかる。

    「……この意識の揺らぎ、まさか……」

    マーチャーは考えた。

  • 9161◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:06:54

    彼の能力【スレイ家の秘密】を駆使すれば、この胎動の中でも自分の存在を薄く保てる。
    ただし、神の意識はあまりに広大で、完全に無視することは不可能だ。

    「……やめろ、俺を消すつもりか」

    小声で言うが、神には届かない。
    それでも彼は意識を集中させ、目を閉じると薄い灰色の膜のように自分を包み込んだ。

    胎動が一気に強まる。
    大地が割れ、腐肉の塊が迫る。
    マーチャーは一歩、また一歩と後退するが、その姿はまるで透明のように、神の視界から瞬間ごとに消えたり現れたりする。

    「……面白き者よ」

    神は声を低くして笑った。
    その笑いは、胎内の鼓動と混ざり、まるで大地そのものが笑うかのように響いた。

    マーチャーはその笑いに怯まず、心を研ぎ澄ます。

  • 9171◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:07:58

    「……俺は、負けない」

    灰色のオーラが周囲の異形の攻撃をすり抜ける。
    骨の蔦が彼の足元に絡みつくが、意識操作で注意をそらすことで、攻撃は外れる。
    ただし、時間が経つにつれ体力の消耗も大きくなる。

    「……この胎動、止められるか」

    マーチャーは心の中で呟きながら、次第に周囲の意識操作の範囲を広げる。
    神の目に映らない瞬間を作り、足元の異形をかわす。

    地面が裂け、腐肉の塊が飛び上がる。
    しかしマーチャーは焦らず、空中に現れる異形を見極め、着地の瞬間に意識をずらして通過する。

    「……なるほど、貴様の意識操作は確かに巧妙だ」

    神の声は地を震わせ、周囲の異形をさらに活性化させる。
    マーチャーは薄い灰色の膜の中で息を整え、次の瞬間の行動を思案する。

    鼓動はますます大きくなり、地母の胎動が神殿全体に拡がる。

  • 9181◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:08:50

    しかし、マーチャーは立ち止まらない。

    「俺は……俺は生きる……! そして守る」

    灰色のオーラが、神の意識の隙間を縫うように揺れる。
    その瞬間、胎内の異形の動きが一斉に鈍る。
    神が微かに、意識の存在に気づく前触れだった。

    「……面白い……我が胎内で、ここまで動けるとは」

    神は再び低く笑う。
    そしてマーチャーは、微かに開いた隙を見逃さず、次の行動に向かう。

  • 9191◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:09:50

    神殿の空気は腐敗と湿気に満ちていた。
    カルトゥーン・テフ=ナーシュの体から、無数の「死せる種子」が静かに撒かれていく。
    黄土の床に触れた瞬間、種子は膨張し、微かに生き物のような形状をとり始める。

    「……芽吹くか……」

    低く、しかし確かな声が響く。
    神の体表から滴る腐肉の液体が、まるで胎内の養分のように大地に吸い込まれていった。

    マーチャーは周囲を見渡す。
    「死穀の胎動〈ワンバ・ノストラム〉」——すでに異形が複数育ち始めている。
    骨の蔦が天井から垂れ、腐肉獣が床を這い回る。
    彼の意識操作で何とか隙間を作りつつも、異形は次々と増えてくる。

    「くっ……こいつは……想像以上だ」

    灰色のオーラで自らを薄め、マーチャーは異形の攻撃を回避する。
    しかし、腐肉獣の動きは予測不能であり、空間そのものが彼を縛るかのようだった。

    「我が胎内に生きる者よ……その命を刈り取ろう」

    神の声が響くと、異形たちは一斉に動きを増す。
    地面が割れ、骨蔦が床を埋め尽くす。
    マーチャーは一歩一歩慎重に足を運ぶが、意識を分散させる疲労が徐々に蓄積していく。

    「……でも、負けるわけにはいかない」

    胸の内で強く呟き、灰色のオーラをさらに固める。
    すると、異形の動きに微細な変化が生じた。
    神の意識は広大だが、目に見える範囲には限りがある。

  • 9201◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:10:26

    その隙間をマーチャーは巧みに利用する。

    異形の一つが彼の足元に迫る。
    骨の蔦が絡みつき、腐肉獣が跳ね上がる。
    だが、マーチャーは意識操作で自分の存在を霞ませ、攻撃をかわす。

    「……面白い……その工夫、我が予測を超える」

    神の声が暗闇に響き、種子はさらに成長していく。
    マーチャーは灰色の膜の中で息を整え、次の戦術を思案する。
    このままでは長期戦になり、彼の意識操作にも限界が来る。

    「……ここで、仕掛けるしかない」

    彼は微かに笑みを浮かべ、薄く視界を歪めるようにして異形の攻撃を誘導。
    腐肉獣は互いに干渉し合い、動きが乱れる。
    マーチャーはその瞬間を逃さず、灰色のオーラで瞬間移動のように位置をずらした。

    種子はまだ成長途中だが、胎内の異形の進化を遅らせるには十分な行動だった。
    神は低くうなるように声を発し、地母因子〈テラゲン・コード〉の拡張力が微かに暴走する。
    大地はひび割れ、空気は胞子の霧に変わり、マーチャーの足元に重圧がかかる。

    「……しかし、俺は諦めない」

    灰色の膜が微かに揺れ、彼の存在が神の視界にぼんやりと映る。
    神の胎内の鼓動がさらに強まり、異形たちは膨張していくが、マーチャーは冷静に対応する。

    「……まだ終わらせはしない」

    彼の意識が広がり、異形の一部の動きを無効化。

  • 9211◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:10:46

    腐肉獣が互いに衝突し、骨の蔦が絡み合う。
    神の体躯は巨大で揺るがないが、少しずつ胎内の支配に小さな波紋が広がる。

    「……なるほど、貴様の精神は、ここまで強靭か」

    神は微かに笑う。
    しかしマーチャーはその笑みに怯まず、灰色のオーラをさらに強固にする。
    異形の進化は止まらないが、彼の機転と意識操作により、戦局はわずかに均衡を保っていた。

    黄土と腐肉の神殿、胎内の異形、そして灰色のオーラ。
    その三者の交錯が、静かな狂気の戦場を作り上げていく。

    「……俺は、必ず生き抜く。そして守る」

    マーチャーの心が強く光り、死穀の胎動は一瞬、足踏みをする。
    神の胎内で芽吹いた種子たちは、これから彼に試練を与え続けるだろう。
    だが、彼は揺るがない。

  • 9221◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:11:44

    胎内の異形がうねり、地面は黄土と腐肉の波に飲み込まれた。
    カルトゥーン・テフ=ナーシュの体から、淡く光る瘴気が立ち上る。
    それはまるで古の聖句が形を持ったかのように空間を震わせた。

    「……終息讃歌〈ミサ・アルス・モルティス〉、始まる」

    声とともに、空気が重く変質する。
    生への執着を削ぐその響きは、見えない鎖のようにマーチャーの心を締め付ける。
    周囲の色彩が薄れ、世界が灰色へと変わっていく。

    「……! くっ……この感覚は……!」

    灰色のオーラを固め、マーチャーは抵抗する。
    だが、神の詠唱は深く彼の意識に入り込み、思考を鈍らせる。
    それは単なる精神攻撃ではなく、存在そのものを揺るがす力だった。

    「……神の力……だが、俺は負けない……!」

    意識を集中し、マーチャーは自身の存在を霞ませる。
    だが、神の胎内の声は無限に広がり、彼の心の隙間を次々と埋めていく。
    その声に触れた者は、生への渇望を失い、無力感に覆われるという。

    「……ふふ、貴様の意志も、やがて私の胎内に包まれるだろう」

    黄土と腐肉が波打ち、異形たちはさらに肥大化する。
    骨蔦は天井から床へと伸び、腐肉獣は攻撃の隙間を埋めていく。
    マーチャーはその中を慎重に進む。

  • 9231◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:12:38

    「……ここで負けるわけには……いかない」

    彼は意識操作で神の注意を分散させ、異形の動きを微妙にずらす。
    しかし、終息讃歌の精神干渉は依然として強烈で、心が削られていく。
    彼の視界はわずかに霞み、動作が遅れる感覚があった。

    「……なるほど……生の執着を刈る力……だが、俺は……守る」

    灰色のオーラが微かに輝きを増す。
    マーチャーの存在がわずかに濃くなると、神は微かな揺らぎを感じた。
    胎内の異形の動きが一瞬だけ鈍る。

    「……ほう……予想外の反応……」

    神の声は低く響き、黄土の波動が加速する。
    しかし、その波動により異形たちの動きも一部乱れる。
    マーチャーはそのわずかな隙間を利用し、灰色のオーラで異形の群れをすり抜ける。

  • 9241◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:23:03

    「……まだ終わらせはしない……絶対に……!」

    神殿の腐敗と瘴気が一層濃くなる中、マーチャーは冷静に呼吸を整える。
    思考を研ぎ澄まし、異形の進化を誘導しながら自身の意識を守る。
    一歩一歩、胎内の奥深くへと進む。

    「……ふふ……人間の意志……侮れぬか……」

    カルトゥーン・テフ=ナーシュは微かに笑みを浮かべる。
    その笑みは生と死の狭間で、胎内の秩序を震わせる力となる。
    だが、マーチャーの心は揺るがない。

    「……俺は……絶対に諦めない……生きる……守る……!」

    灰色の膜が光を帯び、神の精神干渉に対抗する。
    胎内の異形の成長は続くが、マーチャーの機転により微細な均衡が保たれる。
    黄土と腐肉の世界、終息讃歌の響き、そして灰色のオーラ。

    戦場は死と生命の狭間で静かに揺れ動く。
    マーチャーはその中で、自らの意志を強く光らせ、胎内の迷宮を進み続ける。
    生への渇望、守るべきもの、そして揺るがぬ信念——
    彼の心が、神の力に抗う唯一の光となった。

  • 9251◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:25:54

    黄土と腐肉の迷宮は無数の異形で埋め尽くされ、足元をすくうように蠢いていた。
    死と大地の神カルトゥーン・テフ=ナーシュは、淡く輝く瘴気を帯びながらその中心に立つ。

    「……我が胎内に足を踏み入れた者は……すべて、死の胎に還る……」

    その声は低く、どこか母性的な響きを持つ。
    異形たちは神の命を受け、地面や壁から這い出してはマーチャーを包囲する。
    屍人樹が枝を伸ばし、骨蔦が天井から吊り下がり、腐肉獣が低く唸る。

    「……こんな世界……だが……諦めるわけにはいかない」

    灰色のオーラを広げ、マーチャーは異形の隙間を縫うように進む。
    だが、終息讃歌〈ミサ・アルス・モルティス〉の精神干渉は強烈で、心が締め付けられる。
    無数の死の影が意識に押し寄せ、呼吸すら困難に感じられた。

    「……我の胎に……生の光など……届かぬ……」

    神の声に反応して、腐敗の地母因子〈テラゲン・コード〉がさらに広がる。
    地面は粘性を帯び、足が深く沈み、歩くたびに異形が絡みつく。
    血流となった川は視界を赤く染め、胞子の霧が肌を刺すように漂う。

    「……でも……俺は……守る……!」

    マーチャーは意識を操作して自らへの注意を分散させ、神の干渉を薄める。
    灰色のオーラを鋭く輝かせ、異形の動きを微かにずらしながら進む。
    黄土の波が足元を襲うが、彼の心は揺るがず、戦意を保ち続ける。

    「……ふふ……意志……強し……だが……無意味……」

    神は身体を微かに震わせ、胎内の異形の動きを加速させる。

  • 9261◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:26:22

    骨蔦が勢いよく揺れ、腐肉獣が跳躍し、マーチャーを捕らえようと迫る。
    しかし、彼はオーラを使い、異形たちを回避し、巧みに隙間を見つけて進む。

    「……この程度で……俺を止められると思うな……!」

    異形の攻撃が迫るたび、マーチャーは瞬間的にオーラを集中させ、避ける。
    その度に胎内の迷宮は揺れ、黄土と腐肉の壁が裂け、異形たちが消滅する。
    だが神の干渉は止まず、終息讃歌の響きは深く、意識を削ぎ続ける。

    「……生への執着……捨てよ……」

    その声とともに、世界はますます灰色に染まる。
    マーチャーは微かに意識がぼやけるのを感じたが、心の奥で光を保つ。
    守るべき存在、忘れられぬ者たち、そして己の意志——
    その光が、神の胎内でもかろうじて消えずに存在していた。

    「……俺は……絶対に……諦めない……!」

    胎内の迷宮の中心で、灰色のオーラは鋭く光を放つ。
    異形の群れが襲いかかる中、マーチャーの光は揺るがず、神の干渉に抗う。
    黄土と腐肉の世界、死と生の交錯——
    戦場はまるで生と死の境界そのものとなり、彼の意志が唯一の導きとなった。

  • 9271◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:27:35

    胎内の迷宮の中心で、黄土と腐肉の世界は凍りついたかのように静まり返った。
    死と大地の神カルトゥーン・テフ=ナーシュの目は、微かに揺れる赤褐色の光を帯びている。

    「……生の光……未だ……残るか……」

    異形たちは神の命に従い、最後の力を振り絞ってマーチャーを包囲する。
    骨の蔦が天井から垂れ下がり、屍人樹の枝が裂けるように伸びる。
    腐肉獣が低く唸り、血の川が渦を巻く。
    すべては死の胎内の理に従って動いていた。

    「……ここで止まるわけにはいかない……!」

    マーチャーはオーラを集中させ、灰色の影のように異形をかわす。
    その瞬間、彼の意識は強く、神の終息讃歌に抗う光となった。
    足元の黄土は激しく裂け、異形の触手が散る。
    胎内の死の力が奔流となり、彼を包もうとするが、意志の光は消えない。

    「……母なる大地……か……だが……我を止められぬ……」

    神の声は低く、重く、胎内に響く。
    その声に応じるかのように、地母因子〈テラゲン・コード〉が拡張し、空気を腐敗させ、すべての存在を絡め取ろうとする。
    しかしマーチャーは自身の意識を操り、視界内の存在の意識を分散させ、神の干渉を弱める。

    「……俺は……負けない……」

    黄土の床が揺れ、腐肉の壁が裂け、死せる種子が爆発的に芽吹く。
    マーチャーはオーラを前方に集中させ、異形の波を切り裂きながら進む。
    神はさらに力を解き放ち、全身から瘴気を噴き出す。
    だが、その瘴気の中で、マーチャーの意志の光は小さくとも確実に神を照らしていた。

  • 9281◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:28:31

    「……これ以上……我を……抑えられぬ……!」

    マーチャーは全身の意識を一点に集中させ、神の頭部を正確に狙う。黄土と腐肉の構造が微かに崩れ、胎内の異形が暴走する。
    その瞬間、神の肉体に亀裂が入り、砂塵の粒が散乱した。

    「……生……意志……ここに……残る……」

    神は呻き、胎内の世界は揺れ、異形は崩れ落ちる。
    マーチャーはその隙に一歩踏み込み、意識を一点に集中して攻撃を完遂する。
    黄土と腐肉の神の体は急速に乾燥し、砂塵となって崩れ去った。
    胎内の異形も全て消え去り、死の胎内は静寂を取り戻す。

    「……これで……終わったのか……」

    マーチャーは深く息を吐き、灰色のオーラを薄める。
    意識が戻ると、世界は再び通常の姿を取り戻していた。
    黄土と腐肉の瘴気は消え、生者の命がその場に残される。
    神の残骸は砂塵として散り、完全に消滅した。

    「……俺は……誰も傷つけずに……ここまで来た……」

    マーチャーは静かに周囲を見渡し、無事を確認する。
    その心には生への執着と、守るべき意志が確かに存在していた。
    胎内の迷宮は消え去り、神の力ももはや及ばない。
    戦いは終わり、世界は再び光を取り戻す。

    「……これからも……守る……」

    そう呟き、マーチャーは穏やかな笑みを浮かべた。
    灰色のオーラは消え、ただの青年として、命を、世界を、見守る者として立っていた。

  • 9291◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 21:29:20

    以上

  • 930二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 21:32:30

    投下乙です!
    勝ててよかった!

  • 9311◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:04:44

    題名『禁忌の囁きと海の守護者』

  • 9321◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:05:52

    夕暮れの海辺、潮風が塩の匂いを運ぶ静かな浜辺に、奇妙な人物が立っていた。白衣を翻すその姿は、顔が暗闇で覆われ、中性的な輪郭しか見えない。

    「 さて、どこまで耐えられるか…… 」

    その声は、耳元に囁くように聞こえ、しかし同時に頭の奥底に直接響く。禁忌の知識を宿した者、世界の秩序に早すぎる混乱を撒き散らす存在がそこにいた。

    対する相手は、古代の知恵と技術で作られたガーディアン・ゴーレム、シーウルフ。その巨大な体躯は浜辺の岩に半分埋まった状態で静かに動く。海を背に立つその姿は、まるで墓を守る墓守そのものだ。口元から微かに白い蒸気が漏れる。

    「 ……ここが、我が守る場所か 」

    砂に残る足跡が徐々に消えていく。囁く者の能力は、海辺という開けた視界でこそ効力を発揮する。空中に数式が現れ、囁く者はそれを一つひとつ解き始める。周囲の空気が揺れ、浜辺の波面が微かに乱れる。

    しかし、シーウルフは動じない。眼前の異形に対して、その体は石のごとく静かに構える。尾びれをわずかに水面に浸すだけで、全身のバランスを保つ準備が整う。

    「 人類に、無謀な知識を撒き散らす者よ…… 」

    囁く者の声がさらに響く。無数の禁忌が頭の中を掻き回す。精神に直接侵入し、思考を引き裂こうとする。しかし、シーウルフは単純な防御ではなく、自身の存在そのものが異界の秩序の支えとなるように作られていた。

    「 ……なるほど、これが奴の本気か 」

    囁く者が手を動かすと、空中の数式は複雑に絡まり、光を伴って回転する。それはまるで空間そのものをねじ曲げるかのように見えた。浜辺の砂は微かに光り、細かく崩れる。

    「 ここから、始まる…… 」

    海風を切る音、数式の囁き、そして巨大なゴーレムの重低音が共鳴する。戦いは静かに、しかし確実に始まろうとしていた。囁く者は全身の力を禁忌の知識に集中させ、シーウルフは体内の魔力を整え、初撃に備える。
    遠くで波が砕け、夕日の光が二つの存在の影を浜辺に落とす。その影はすでに戦いの緊張を映し出していた。

    「 この浜辺で、どちらが先に動くか…… 」

    囁く者の瞳は暗闇で光り、シーウルフの瞳は冷静に標的を見据える。静寂の中に潜む緊張は、間もなく爆発する破滅の序章を予感させた。

  • 9331◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:06:53

    浜辺に漂う潮風は、静寂を切り裂くように囁く者の声を運んだ。

    「 これほどの海……そして生きる者たち……全て、理解させてやろう 」

    空中に浮かぶ無数の数式が微かに光を放ち、海面に反射して波紋が広がる。囁く者はゆっくりと手を動かし、数式を解きながら自らの知識を世界へと解き放っていく。その力は精神に直接作用し、近くの生物の神経系に微かな混乱を生む。

    しかし、シーウルフは揺るがない。尾びれを海に浸し、全身の重心を整えたまま、ゴーレムの視線は囁く者に固定される。

    「 ……人類に害を為す者よ、我が石化の力を侮るな 」

    囁く者の手元の数式が加速する。浜辺の砂が舞い上がり、空気は微細な粉塵を帯びる。精神を侵す知識の波は目に見えないが確実に迫っていた。シーウルフの首元のネックレスが微かに光り、その効果範囲に入った途端、腕の筋が硬直し始める。

    「 ぐっ……!? 」

    囁く者は初めての違和感を感じた。接近戦にはめっぽう弱い自分の身体が、海辺に立つゴーレムの威圧に応じて硬直を強いられる。足元の砂が微かに崩れ、均衡を乱す。

    「 ここで諦めるか……いや、まだだ…… 」

    囁く者は知識の力をさらに集中させ、空中の数式を巨大化させる。同時に、海面を揺らすように異形の兵器を生成し始める。小型の機械的な生物が砂浜に出現し、シーウルフへ向かって突進する。

    「 ふむ……敵は形ではなく概念で攻めてくるか 」

    シーウルフは尾びれを振り、砂浜に向かう異形を海水と共に蹴散らす。だが、石化の影響で動きの一部が制限される。腕の自由が効かず、攻撃の精度が落ちる。

    「 これでも、まだ理解が足りぬ……! 」

    囁く者の囁きがさらに強まり、数式が渦状に回転する。精神の圧力が浜辺全体に広がり、周囲の波が異常な動きを見せる。シーウルフはその中で慎重に足を運び、敵の存在を見失わないようにする。

  • 9341◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:07:36

    「 ……見えぬが、存在は感じる 」

    シーウルフの声は低く、砂と波の音に溶け込む。囁く者はその冷静な感覚に驚きつつも、自身の知識を最大限に活用して攻撃を続ける。

    「 君の意識も、肉体も……全て我に委ねよ…… 」

    数式から放たれる禁忌の力が、浜辺の空間を歪め、海面を赤黒く変色させる。だがシーウルフは揺るがず、石化の進行を最低限に抑えながら、敵の動きを探る。

    時間が経つにつれ、囁く者は体力の消耗を感じ始める。接近されると脆い自らの体が、精神集中と知識の展開の狭間で危険に晒されることを理解した。

    「 だが……まだ終わらん……!」

    浜辺は知識と石の力のぶつかり合いで波打ち、砂は舞い上がり、海の泡が光を帯びる。二つの異なる力がせめぎ合う中、戦いはまだ序盤に過ぎないことを、囁く者もシーウルフも理解していた。

  • 9351◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:12:17

    浜辺に降り注ぐ夕陽が、海面に赤橙色の光を反射させる中、囁く者は視界に浮かぶシーウルフの巨体を前に焦りを覚えた。

    「 くっ……距離が……近すぎる…… 」

    彼の声は砂浜の風にかき消されそうだが、内なる思考は明瞭だった。接近されると脆い自分の身体が耐えられない。数式や禁忌兵器で相手を制御するしかない。しかし、石化の範囲が徐々に迫り、精神的な圧迫も増していく。

    シーウルフは砂に足を取られつつも、尾びれで砂を蹴り、迫る兵器の進路を遮る。海水が跳ね、兵器の足元が滑る。

    「 まだ動ける……!」

    囁く者は手元の数式をさらに複雑化させ、空中で螺旋状に展開する。数式の光は彼自身を包み込み、精神の力を最大限に引き上げる。しかし、集中の隙を狙ってシーウルフが一歩前進する。その動きにより、囁く者の右腕が石化し、思考の一部が阻害される。

    「 ぐっ……くっ……ここで…… 」

    絶体絶命の状況でも、囁く者は禁忌兵器を召喚する。砂浜に小型の異形が次々と現れ、シーウルフの足を狙って突進する。だが、尾びれと首の動きで次々と蹴散らされ、攻撃はほとんど命中しない。

    「 ……愚か者よ……見えぬ相手を警戒せよ 」

    シーウルフの声が浜辺に低く響き渡る。囁く者は、目視できない敵の圧迫に精神を消耗し、手元の数式が一瞬歪む。石化の影響と距離の接近、そして兵器の消耗が重なり、限界が近づく。

    「 まだ……まだ終わらせない……!」

    囁く者は意識を操作する力を駆使し、石化の進行を遅らせようと試みる。しかし、ゴーレムの身体は通常の物理法則で構築されており、意識操作の影響は微弱でしかない。

    シーウルフは僅かに傾いた頭を調整し、ネックレスの光を囁く者の視界に送り込む。腕の硬直が一気に進行し、全身の自由が奪われかける。

  • 9361◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:12:56

    「 くっ……! まだ……! 」

    必死に禁忌兵器を動かす囁く者。しかし、接近されるほどその操作は困難を極める。異形は次々と海に投げ込まれ、波と共に消えていく。

    「 ……無駄だ……距離を詰めれば、君はただの人……いや、存在すら危うい 」

    シーウルフの声は冷徹で、囁く者の精神に深く刺さる。ここでの敗北は、知識の力だけでは防ぎきれない現実を意味していた。

    砂浜に舞い散る光と影の中、二つの力がぶつかり合い、浜辺は戦場と化す。禁忌の知識を操る者の脆さと、海辺に立つゴーレムの堅牢さが、戦局を微妙に変えていく。

    「 くそ……! だが……最後まで……!」

    囁く者の手元の数式が最後の力を帯び、空中で渦を巻く。しかし、シーウルフの尾びれが一閃し、砂浜の上に立つ彼の身体に影を落とす。次の瞬間、囁く者の腕と足は完全に硬直し、兵器の操作も限界に達した。

  • 9371◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:14:59

    砂浜に立つ囁く者は、石化の進行に追い詰められながらも最後の手段を思い切って展開した。

    「 ここで……全てを……!」

    空中に無数の数式が浮かび上がり、光を放ちながら渦を巻く。これが禁忌の大技、「繧ッ繝ォ繝シ繧キ繝・繝√Ε方程式」の発動である。数式は彼の身体を包み込み、精神と肉体を極限まで駆使する準備を整える。

    一方、シーウルフは浜辺に鎮座し、警戒を緩めることはない。ゴーレムの目は、渦巻く数式の光にじっと注がれる。

    「 ……来るか……」

    囁く者の声は、風に溶けるようにかすれながらも、覚悟の力を帯びていた。

    数式の光が頂点に達すると、囁く者の周囲の空間が歪み、海面も砂浜も光の奔流に飲み込まれる。禁忌の知識が、現実そのものを撹乱し始めたのだ。

    「 これが……邪神の力……!」

    囁く者は空中で両腕を広げ、数式を解き始める。解くごとに空間が裂け、異形の兵器や禁術が次々と生まれ、浜辺を覆う。小さな腐肉獣や砂の化身が現れ、シーウルフに向かって突進する。しかし、ゴーレムの防御は固く、次々と受け止められる。

    「 くっ……だが……!」

    囁く者は額に汗を浮かべながらも、精神を極限まで集中させ、数式を解き続ける。背後の海が光を反射し、彼の姿は神秘的に浮かび上がった。

    シーウルフはネックレスの光を囁く者に送り込むが、数式が発動することで意識操作の影響は一部緩和され、石化の速度が若干遅れる。

    「 まだ……まだ行ける……!」

    囁く者は自らの精神を数式に完全に注ぎ込み、禁忌の知識を渾身で解放した。浜辺に次々と異形の兵器が召喚され、砂と光の渦の中、シーウルフを囲む形になる。しかし、ゴーレムは動揺せず、尾びれで異形を次々に押し退ける。

  • 9381◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:16:29

    「 無駄だ……存在を晒すな、ただの人……!」

    囁く者の体は極限の集中で震え、石化が腕や足に回り始める。数式を解く速度が追いつかなくなり、禁忌の兵器の生成速度も低下していく。海からの潮風が彼の背を押し、集中を乱す。

    「 まだ……諦めない……!」

    囁く者の声は砂浜に響き、光の渦が最後の力を帯びる。しかし、ゴーレムの尾びれが渦に突き込み、召喚された兵器は海へと散らされる。数式の光が徐々に弱まり、囁く者の身体の石化が一気に進行する。

    「 ……くっ……!」

    ついに囁く者の右腕と左腕が硬直し、残る脚も自由が利かなくなる。禁忌の大技は発動中にも関わらず、シーウルフの物理的圧力によって完遂できなくなった。

    浜辺に漂う光と砂の中、囁く者の存在は限界に達し、数式の渦が崩れ落ちる。精神と肉体の力を使い果たしたその瞬間、シーウルフの存在感が浜辺を支配する。

  • 9391◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:20:04

    浜辺に漂う光の残滓と砂埃の中、囁く者は立ち尽くす。右腕も左腕も石化の影響でほとんど動かず、足元も自由を奪われている。

    「 く……まだ……俺は……まだ終わらん……!」

    声は震え、砂に吸い込まれるかのように消えかけていた。それでも囁く者は意識を集中させ、残りの禁術や冒涜的兵器を操作しようと試みる。数式の光は弱まりつつも、微かに彼の周囲で蠢き、現実を歪める力を保っていた。

    一方、シーウルフはその圧倒的な存在感を保ちつつ、浜辺に静かに佇む。目を閉じるように見えるゴーレムだが、全身が微細に振動し、囁く者の動きに即応できる準備を整えている。

    「 ……来るか、最後の力……」

    囁く者は崩れかけた姿勢で最後の力を振り絞る。残された片腕で空中に禁術の符文を描き、砂と光の小さな渦を再び形成した。生まれる異形は小規模で、シーウルフの前では焼け石に水のように見えたが、囁く者は必死に抗おうとしている。

    「 俺は……これでも……邪神の化身……!」

    その叫びに呼応するように、砂と光の渦がわずかに形を変え、囁く者の意思を反映するかのように躍動する。しかし、シーウルフの尾びれが一閃し、渦を分断する。異形は海へと押し流され、残るものも石化の影響で停止する。

    「 これ以上……は無理だ……」

    囁く者の声は掠れ、意識も徐々に消耗していく。身体能力の低さ、石化の進行、そして集中力の限界。全てが彼に重くのしかかる。海辺の潮風が彼の背を押し、砂が身体に絡みつく。
    シーウルフは慎重に距離を取り、尾びれを構えたまま静かに立つ。囁く者が最後の禁術を発動しようとした瞬間、その意識を察知し、尾びれの先で砂と光の渦を押しつぶすように力を加える。

    「 ……くっ……まだ……!」

    囁く者は力を振り絞るが、石化の進行は止められず、身体の自由はほぼ完全に奪われていた。残された禁術も僅かな範囲でしか機能せず、浜辺の戦場は徐々に静寂を取り戻す。
    シーウルフの目が囁く者を捕らえ、尾びれを一度大きく振る。砂と光の小さな渦はその圧力で崩れ落ち、最後の抵抗の残滓は海に吸い込まれていった。

  • 9401◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:21:02

    「 ……これで終わり……」

    囁く者はうめき、石化と疲労で身動きできず、浜辺に膝をつくしかなかった。数秒、数十秒の静寂の後、シーウルフの圧倒的な存在感が浜辺を支配する。
    戦局は完全に決した。囁く者は最後の力を振り絞り、意識を残すが、もはや逆転の余地はなく、シーウルフの勝利が確定した。

  • 9411◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:22:18

    浜辺に残るのは、潮の香と微かな光の残滓だけだった。

    囁く者は膝をつき、砂に手を突きながら震えていた。石化の影響は身体に深く刻まれ、動きは鈍く、かすかな意識が消え入りそうであった。

    「 く……もう……終わり……なのか……」

    声は砂と潮風に吸い込まれ、ほとんど誰にも届かない。しかし、囁く者はまだその声で世界に語りかけるように呟く。自らが生み出した禁忌の知識、冒涜的兵器の残滓、そして未完成の禁術。それらはもはや意味を失い、静かに海へと流れ去っていく。

    一方、シーウルフは浜辺の端に立ち、勝利を確かめるかのように全身をゆっくりと動かす。尾びれを海水に浸し、体温を海に返すような動作は、戦闘の緊張を解くための慎重な所作だった。

    「 ……君は本当に……危険な存在だった……」

    囁く者の存在は人間には到底扱いきれぬ知識を宿していた。だが、直接の攻撃能力は極めて低く、シーウルフの安定した力の前では長期戦を維持できなかった。

    「 俺の役目は……墓守……そして人類の壁……」

    シーウルフの目は静かに囁く者を見据え、もう二度と襲撃を受けぬよう、浜辺に残る異形や符号の残滓を海へと押し流す。砂と光の渦は完全に消滅し、浜辺は再び穏やかな海辺の光景に戻った。

    囁く者はかろうじて立ち上がろうとするも、身体の自由はほとんど奪われており、ただ震える手を砂に置くしかできなかった。目には生への執着と、敗北を受け入れざるを得ない絶望が混ざり合う。

    「 これで……終わり……なのか……俺……」

    シーウルフは距離を取り、尾びれを軽く砂に触れさせる。これは攻撃ではなく、囁く者に対する確認の所作であり、余計な危険を与えないための防御でもあった。

    浜辺は静まり返り、遠くで波の音だけが響く。戦闘の残滓はすべて海に還され、囁く者の禁忌的知識も力を失ったまま、砂に刻まれた一瞬の痕跡となる。

    「 ……俺は……まだ……学ばなければ……」

    囁く者の声は弱々しく、しかし微かに未来を見据えるかのようだった。勝者は明確にシーウルフであり、浜辺には彼の存在だけが静かに残る。

  • 9421◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:26:01

    波打ち際で静かに立つゴーレムは、勝利の余韻を感じつつも、任務を終えた達成感よりも、浜辺に漂う無力な命の残滓を見つめ続ける。彼の役目は終わったが、世界の平穏はまだ続く。

    こうして戦いは終わり、囁く者は力尽きたが、シーウルフの存在は今後も人類を見守る。浜辺の光景は、戦いの余韻と静寂を映し出し、二度と同じ戦いは起きぬことを告げるかのようだった。

  • 9431◆ZEeB1LlpgE25/08/31(日) 23:28:24

    以上
    次の安価は明日の11:00から10個募集

  • 944二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 08:11:54

    ほしゆ

  • 945二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:00:00

    名前:日向 陽(よう)
    年齢:見た目は19歳
    性別:女
    種族:祝福神
    人物概要:祝いと福を司る祝福神で和風なメイド服と太陽の様に物凄い元気で陽気で楽しそうな笑顔の似合う佐藤家のメイド
    久那土でも有名なお騒がせ神であるが呪いや邪の気配には敏感で佐藤家に来たのも最近付いたであろう濃い呪いの気配の除去のため
    メイドとしては優秀だが神とは思えぬ程に元気いっぱいで超絶ポジティブでコミュ強で相手が話す暇のないマシンガントークを行う
    性格は元気いっぱいで超絶無邪気、とにかく明るくてフレンドリーで何であっても笑顔で楽しみ逆境ですら心のままに楽しむ
    「世界中の誰もが友達!世界中のみんなに目いっぱいの祝い事と福を!」というのが彼女の信念でありモットー
    能力:祝福の主
    能力概要:祝福を司る祝福神の権能で平たく言えば自他問わない強力なバフ、簡易能力付与が出来る力
    バフは身体能力強化や防御力強化、速力強化や持久力強化、能力強化など自他問わずに色々な物を強化して強くすることが出来る
    簡易能力付与は防御貫通や属性付与、ダメージ増加、耐性入手、残像拳などの簡易的な能力を一時的に付与できる
    気分が高揚すると概念干渉や能力防御向上、覚醒、再生、超加速などの概念的なバフや強力な簡易能力付与も使えるが負荷が大きめ
    戦闘時は色々なバフや簡易能力付与を重ね掛けして己を強化しまくり本当に無茶苦茶で馬鹿げた格闘戦を繰り広げる、
    弱点:かなりバフを盛って戦うので一挙手一投足が滅茶苦茶でよく予想外の事が起きて隙が生まれる
    そうでなくとも常にマシンガントークをしており気が散りまくっているので隙はかなり多かったりもする
    滅茶苦茶に好奇心旺盛でハイテンションなので楽しすぎて勢い余って敵の攻撃に自ら飛び込むというぶっ飛んだ事を楽しそうにやる
    バフの重ね掛けは負担が大きいので長時間戦うことは難しく負担の大きいバフや能力付与を使うと負担が増大しスタミナも減りまくる
    心臓部にある現界用のコアを壊されると現界用の肉体は消滅する
    要望:勝ったら敵を友達にしてください
    一人称は私、めちゃくちゃハイテンションな口調でセリフ量も多めにしてください
    テンションは楽しそうでハイテンションではしゃいでる感じを崩さないでください

  • 946二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:00:00

    名前:アマユキヒコノミコト
    年齢:国が生まれた時から生きている
    性別:男
    種族:雪神(グラップラー)
    本人概要:雪を司る原初の神。雪で村を閉ざし人や獣を凍させる冷徹な神と、過度に暑くなった土地を優しく冷やす慈悲深き神の、二つの側面を兼ね備える。また格闘技マニアであり、「人間世界の武術」に興味を持っている。
    能力:氷雪神咒武術
    能力概要:神の力により雪を降らせる。雪は一粒一粒は柔らかく溶けやすいため直接攻撃には向かないが、周囲全体の気温を下げて相手の体温を奪う戦法などが可能。また、雪に神通力を含ませることで、触れた者に物理的防御力を無視した「祟(タタリ)」を付与することも。また最近では、人間の生み出した軍隊格闘術(コマンドサンボ)を数日のうちに達人レベルまで身につけており、冷気を纏わせた急所への打撃、骨を破壊する関節技なども行う。
    弱点:熱に弱い。炎や太陽のみならず、人間の拳の摩擦熱程度でも触れたところから体が溶け始める。そのため触れられることを極度に恐れる。

  • 947二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:00:00

    名前:マリオネット
    年齢:5年
    性別:無性
    種族:人形
    本人概要:天から降りてきている糸で、操られている。その事からの脱出を目指している子。糸は自分の意思では切れない。天からの糸を全部切られると、カクカクした動きから、縦横無尽な動きをしながら俊敏な動きをする。作られた経緯は、創造主がマジ神との託宣をする為に作ったが、他の神が垂らした糸によって操られている。
    能力:《アブソーブ》
    能力概要:近場にある様々な物質を吸収し、怪我した部位や欠損した四肢の再生に使うのが主である。攻撃方法は吸収した物質を修復に使わずに放つ事である。吸収した物を別のの物に変換する力もある。
    弱点:人形故に脆い。天からの糸を全部切られると能力は一割位の効力になる。
    吸収した物を別の物に変換するのは2秒掛かる。

  • 948二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:00:00

    名前:パーク・バーグ=スレイ
    年齢:27
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:スレイ家の長男。
    母親譲りの体格に焦げ茶色の髪。ベリーショートにしている。目は通常では茶色だが、能力を使用すると赤くなる。あまり笑わない。
    背は215cmあり、その分筋肉量も多い。
    戦闘センスとそれに関する知識は膨大であり、その場に合わせた戦闘を行える。また、普通に勉強面でも真面目であり賢い。得意分野は化学であり、石炭を素手でダイヤモンドにするのにも化学を用いている。
    行方不明になる父やそれを追ってどこかへいく母や物理法則を無視する次男やいろいろ自由な長女やどこかへ消えた三男やいつも一人な次女や不安定な末っ子を守るために長男兼門番をしている。一番まとも。
    ワインレッドのベストに同じ色のズボンを履いている。武器は大斧と手斧。
    手斧は投擲をして使用する。命中率はピカ一!
    家族を守るためならどんな強者でも抹殺する。
    能力:【スレイ家のお守り】
    能力概要:あらゆるものを凌駕する能力。
    凌駕出来るのは肉体面のみだが、フィジカルでゴリ押せば概念や現象は殴り消せる、デバフなんて余興でしかない。
    フィジカルでゴリ押せば己の肉体に傷はつかない。フィジカルでゴリ押せば呪いも支配も洗脳も打ち破れるし、フィジカルでゴリ押せば筋肉で圧縮して傷を防いで再生出来る。フィジカルでゴリ押せば光速移動も可能になるし、フィジカルでゴリ押せば気合いで空も飛べる。フィジカルでゴリ押せば小石投げも弾丸になる。つまり概念的な力がなくてもフィジカルでどうとでもなるわけですね。あと脳は筋肉、全身にあるのも筋肉、つまりパークはどの存在よりもはるかに賢いのだ。投げ斧のAIM力は含まれていないのであれはパーク自身の実力となる。投げ斧は片手で投げている。
    目が赤く光ることで発動する。
    弱点:心臓部が弱い。攻撃されると半年は昏睡状態になる。投げ斧は最大6つまでしか所持していない。そのため、投げ斧は慎重に、場面を選んで投げないといけない。
    攻撃一辺倒で防衛を自発的に行わないのでよく見ると隙だらけになっている。
    弱点の心臓部は鋼のような固さにはなっておらず、普通の人間と同じ強度。
    凌駕している間は感じないが、解除した瞬間に戦闘中に蓄積された疲労が一気に襲いかかってくる。
    要望:一人称は「僕」、二人称は「あなた」でお願いします。敬語にしてください。

  • 949二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:00:00

    名前:織神 五歌(おりがみ いつか)
    年齢:21
    性別:女性
    種族:人間
    本人概要:
    格式高い式神使いの名家・織神家の出身。名前の通り第五子であり、大犯罪者・折神 宗十(本名:織神 宗二)の妹。
    美しい黒髪のショートヘアを持つ大和撫子系美女。メンタルがめちゃくちゃ強いためいつも明るい性格。役職は神鏡皇の筆頭ボディーガード。
    メンタルの強さが兄に似たのか、その役職や異能にも関わらず精神状態は極めて正常。メンタル強すぎて神鏡皇にメシを奢ってもらおうとするほど。
    ちなみに織神家は産まれた順番を名前に付ける伝統があり、男児は名の最後に、女児は名の最初に数字を入れることになっている。
    能力:式神化
    能力概要:
    五歌に生まれつき備わった異能。一時的に自分の肉体の制御権を手放すことで依代となり、そこに神の力と意思を降ろすことでマジ神の式神となる。
    式神化している間はマジ神と深く繋がった状態になるため、あらゆるすべてを超越した存在となる。
    マジ神の気分や興味次第で式神化にかかる時間は短くなる。基本的に相手が強いほど、マジ神の興味も湧いて式神化も早く完了する。ほぼないことだが、場合によっては能力発動前に式神化が完了することもある。(つまりマジ神の方から降りてくる)
    織神家でちょくちょく産まれてくる異能。しかし、これまでのこの異能の保有者たちは皆8歳までには精神がおかしくなって死亡しているため、何も異常がない五歌はかなり特殊。ある意味では、このやたら強い精神力こそが織神 五歌の特殊能力と言えるかもしれない。
    能力の副作用で、日常生活だろうと常にどこからか神の声が聞こえる。マジ神ASMR。時々命令も受ける。実は今の役職もマジ神からのお告げ。
    弱点:
    ・逆にマジ神の気分が並以下だと式神化に2〜3分、ひどい時には4〜5分かかる。
    ・式神化完了前に戦闘不能にする速攻戦術がだいぶ有効。式神化が完了するまでに五歌を倒せば式神化がキャンセルされマジ神も降りてこない。
    ・視覚は五歌の肉体依存なので死角からの攻撃には対応が遅れる。
    要望:
    ・式神化が完了した場合、人格が変わったことがわかりやすいように口調も一人称も変えてほしいです。
    ・戦闘が開始する前に「はいハーイ!アタシ織神 五歌!『五歌ちゃん』って呼んでね!」って自己紹介入れてください。

  • 950二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:00:06

    名前:ナメ籤
    年齢:不明
    性別:無い
    種族:たぶんナメクジ
    本人概要:どこかの研究所から脱走した人間の2倍の大きさの巨大ナメクジ、デカくはあるが知性は普通のナメクジレベルで本能で行動する。
    能力:粘液と籤
    能力概要:通った所に粘液を残す、この粘液は服や靴越しでもすっごく気持ち悪く感じ、身体を揺らして粘液を飛ばすこともできる。
     定期的に口から籤を吐き出し色に応じて粘液の性質が変化する、自身にはまるで影響がない
     『白』は摩擦がゼロになり物凄く滑る、『黒』は粘着力が増大し相手は身動きが取れなくなる、『赤』は粘液が燃える、『青』は粘液が凍りつく、『黄』は粘液が発電する、『紫』は粘液が猛毒になる、『灰』は粘液が剣山のようになる。出てくる籤の色は完全にランダムであり何が出てくるかは自身を含めて誰にもわからない。
    弱点:ナメクジなので塩に超弱い。更に粘液にも有効で例え燃えていようと凍っていこうと塩をかければ粘液は消滅する。
    要望:このキャラに何も喋らせないでください 

  • 951二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:00:18

    代理です
    名前:手練の魔物
    年齢:109!
    性別:手練の魔物
    種族:手練の魔物
    本人概要:あらゆる理解の外にある魔物が一つ。性質、本体性能どちらも数多の魔物の中でも上位の強者。手強さを突き詰めた性格で、一定以上の強者を無為に屠る習性がある。
     姿形は球状の空間の外側にありとあらゆる腕から手までが隙間なく生えている形相。ビームを出すモノやドラゴンのモノなど危険なモノも盛りだくさん。
     ちなみに滅ぼした世界の数は本人でも覚えていない。
    能力:手練
    能力概要:遍く手技・手法を十二分に習熟できる。存在しないものも対象内で、相手がどんな理不尽を強いてもそれ以上の理不尽で握り潰す後出しすら可能。
    弱点:姿には当然赤子のモノや老人のモノ、栄養失調のモノなど弱いものもあり、どんな腕であろうと、どれか一つが少しでも傷つけられた瞬間退散する。
     また少し前に暴(世界を蟻感覚で潰しまくった)れすぎて現在ガス欠状態。故に能力はせいぜい使えて1〜2回程度な上に使ったらエネルギーを使い果たして戦闘続行不可能になる。

  • 952二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:00:30

    代理です
    名前:バイオスライムXIII号
    年齢:なし
    性別:なし
    種族:人工怨念スライム
    本人概要:バイオパンク社の生み出した人工感情生成技術(特許取得済)により作られた怨念スライム 13という数字に相応しくホラー風味なヤツである DNA片を接種した相手を執拗に追跡する性質を持つ
    能力:怨念
    能力概要:スライム形態と無数の黒い線で構成された霧のような形態を切り替える 霧形態では当然物理攻撃は効かないし電子回線を通っての瞬間移動もできる 攻撃手段としては触れた相手の侵食を行う スライム形態では聖属性攻撃への耐性が高くなるし流体化も可能だが侵食力と機動力がやや劣る
    その他にも分体の創造や分体を取り憑かせた死体や機械を利用して怨念を生産させての自己強化、関わった相手に穢れを付着させての幻覚による精神攻撃を行えたりと多彩な力を持つ
    弱点:強力な音や聖属性に弱い 穢れは水で洗い流せるし本体も霧形態なら水で洗い流せる 人工怨念には本来指向性がなくDNA波長を見分る性能が低いので群衆に紛れこまれると目標を見失う 本体が倒されると分体も消滅する

  • 953二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:01:02

    代理

    名前:探索者
    年齢:24
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:よく外宇宙の邪神に関係する事件に巻き込まれている、可哀想な男。
    これまでに数回発狂しているが、今は正常
    探索者と呼ばれている存在はたくさんいるが、この男はそのうちの1人で、他の探索者と一緒に事件を解決したりしている
    ちなみに探索者の異能は皆同じである。
    能力:ファンブル/クリティカル
    能力概要:100分の5の確率で
    【決定的成功(クリティカル)】
    同じく100分の5の確率で
    【致命的失敗(ファンブル)】
    を引き起こす能力
    クリティカルは通常では起こせないようなとんでもない成功
    ファンブルでは通常では起きないようなとんでもない失敗が引き起こされる
    残りの100分の90では本人の技量に見合った結果がもたらされる
    これまでの過酷な経験により一回だけ「ヨグ・ソトースの拳」という魔法が使える。
    フィジカルは若干強め
    弱点:神話的事象や死体、化け物などを見ると正気度が減り、正気度が0になると廃人になる
    魔法は1日一回しか使えず、使った後は疲弊し、正気度も少し減る
    過去の事件の後遺症で左腕が動かない
    ときたま、本人の意思とは関係なく勝手に体が動いてしまうことがある、まるで何者かに操られているかのように、しかもその時は大体状況が悪化する、おそらく操っているものは初心者なのだろう

  • 954二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:01:28

    名前:機手(メタル・ジョッキー)トヨタケ
    年齢:18
    性別:男型
    種族:機手
    本人概要:I・H・R(アイアン・ホース・レース)久那土帝国代表
    IHRとは前世界に行われていた競馬という興行を機械の馬と機械の騎手を用いて再現したものである。国際的に行われており、ルールは
    国際IHR条約第1条:M(メタル)・ジョッキーは人馬一体でなくてはならない
    第2条:M・ジョッキーは自分のI(アイアン)・ホースを守り抜かなくてはならない
    第3条:世界がターフだ!
    トヨタケは旧時代の“天才“ジョッキーのデータを元に製造されたM・ジョッキーである。
    飄々としているが、勝利への渇望は本物。割と毒舌。
    騎乗するI・ホースはスーパー・メモリー。無尽蔵のスタミナと鋭い切れ味が武器のI・ホースである。
    トヨタケとスーパー・メモリーが騎乗合体し、世界中の戦場でライバルとしのぎを削る。
    能力:好敵手(ライバル)融合(フュージョン)・三強合体“Hey Sey アイバー”
    能力概要:ライバルのI・ホース“ウカノ・イチ”と“カサマツ・ハット”と好敵手融合した強化形態。
    伝説のM・ジョッキーとI・ホースの勝利はいつだって必然。あらゆるレース展開、どのような馬場でも、いかなる脚質でも最適・最善・最高のパフォーマンスで一着をもぎ取る。以下に武装を示す。
    マイル・ロード:アイバーの両脚に備わったブースター兼ビームブレイド。どのような空間も物体も竹のように両断する。
    グランプリ・キング:アイバーが背部ウェポンラックから取り出す兵器の総称。ビームライフル・大鎌・ガトリング・ショーテル・トライデントがランダムに取り出される。
    エンペラー・ツインシールド:両腕に備わった盾。右のスプリング・エンペラーはビームシールド、左のフォール・エンペラーは小型の実体盾である。盾を的確に使い分けることで、効果的に防御可能。
    20・センチュリー・レジェンド:胸部に備わった銀色のジェネレーター。胸部装甲を解放し、伝説の鼓動が鳴り響く時、アイバーは勝利の栄光を掴むため、灰銀の戦士となって戦場を駆け抜ける。
    弱点:アイバーの頭部と一体化したトヨタケをもぎ取る…つまり落馬させれば失格となって自動的に敗北する。
    両腕、両足、胸部のいずれかを大きく損壊させることでも条約違反となり失格となる。

  • 955二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:03:20

    名前:邪神を崇拝し軽蔑する者
    年齢:不明
    性別:男?
    種族:人間(とある外宇宙の神の化身)
    本人概要:邪神を崇め崇拝するカルト宗教の教祖で異様なほど美形でカリスマがあり日々崇拝者達と冒涜的な儀式を行なっている
    性格は表向きは熱心に邪神を崇める模範的崇拝者であるが本性は自身作り出し無茶振りをしてくる邪神を軽蔑し嫌っている
    邪神は嫌いではあるがそれはそれとして邪神を補助する役割を果たす 
    能力: 冒涜的奇跡の使い手
    能力概要:崇拝者か自身の魔力を消費することで奇跡を起こせる 但し奇跡はどれも常人には理解出来ない悍ましい形で生じる
    例としては突如何かが剥がされた 突如時計のチクチク音がなり一帯の存在が薄れた 他の化身達の幻影が一瞬だけ現れたなど
    また強大な魔術の力そして非常に優れた人心掌握や煽動も持っている
    弱点:奇跡を起こす為には詠唱が必ず必要であるうえ毎度詠唱する長さは完全ランダム
    詠唱が短い時もあれば長いこともある為 
    即座に奇跡を行使したいタイミングで長い詠唱が必要になり隙が出来ることがある(この仕様は邪神の悪戯心かららしい)
    魔術と奇跡の併用は出来ず 魔術を使用した後は奇跡が一定時間使えない 奇跡を使用した後は魔術を一定時間使えなくなる
    邪神を崇め軽蔑する者はあくまで身体能力は人間の範疇である

  • 9561◆ZEeB1LlpgE25/09/01(月) 11:11:46

    >>945

    >>946

    >>947

    >>948

    >>950

    >>951

    >>952

    >>953

    >>954

    >>955

    採用

    >>949

    やりますかね

    ヤメイ案件

  • 957二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:19:06

    ヤメイ案件だぁ

  • 958二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:20:02

    母の味ィ

  • 9591◆ZEeB1LlpgE25/09/01(月) 13:50:56
  • 9601◆ZEeB1LlpgE25/09/01(月) 13:56:00

    >>959

    処刑用だったんですけどね……

    神は無理でした


    強化イベント的なことでお許しを

  • 961二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 13:57:02

    >>960

    ヤメイ強化しましょう。うんそうしよう

  • 962二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 13:58:57

    ほぼマジ神VSヤメイで笑う
    色々と気になる記載もあったな

  • 9631◆ZEeB1LlpgE25/09/01(月) 14:02:31

    >>959

    修正忘れがあったので直しました

  • 964二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 14:34:30

    これ以上つよくなられたらヤメイ安価かてんくなるやん…

  • 9651◆ZEeB1LlpgE25/09/01(月) 14:34:58

    それと
    次から神関連のキャラはなるべく控えるようにお願いします

    次似たようなキャラが出たら飛ばします

  • 966二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 14:36:58

    >>965

    マジ神のことでええんよね?

  • 967二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 14:39:00

    >>964

    元々勝ち目ほぼないやろ

  • 968二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 14:43:16

    >>965

    ラインを知りたい

    マジ神を視たとかマジ神に追放されたとかそういうのはセーフなん?

  • 9691◆ZEeB1LlpgE25/09/01(月) 14:49:37

    >>966

    です

    >>968

    追放…?はどんな感じかわからないですけど

    同程度の力を持ってるとか降臨できるとか一部能力を使えるとか以外ならセーフ

  • 970二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 14:51:40

    >>969

    擦主みたいなアウトになるってわけか

  • 971二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 14:56:39

    ヤメイ案件ならマジ神関連のキャラを出しても問題ありませんよね?

  • 972二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 14:57:51

    マジ神と同じくらいの力を持ってる神に作られた…みたいな変わり種はイケんのかな?

  • 9731◆ZEeB1LlpgE25/09/01(月) 17:20:11

    次スレ

    https://bbs.animanch.com/board/5548661/


    埋め立てお願いします

  • 974二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 17:31:53

    >>973

    たておつです

  • 975二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 17:33:31

    このレスは削除されています

  • 976二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 17:34:12

    たて乙です!

  • 977二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 17:41:02

    うめろー!

  • 978二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 17:41:05

    さぁ、未定を退かせる大仕事だ

  • 979二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 17:49:12

    立て乙です!埋め

  • 980二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 17:50:34

    埋め立て埋め立て

  • 981二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 17:55:04

    梅よ…梅よ…

  • 982二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:05:16

    ざわ…ざわ…

  • 983二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:16:44

    未定が来ない・・・今日は安全か?

  • 984二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:19:04

    未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定

  • 985二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:21:00

    きたー!

  • 986二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:21:55

    未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定

  • 987二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:22:09

    うおおおお決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定決定

  • 988二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:42:46

    未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定

  • 989二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:43:21

    確定

  • 990二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:44:56

    おおおおぉぉぉ確定確定確定確定確定確定!

  • 991黒掌牢無 影拍25/09/01(月) 18:45:55

    ナムサン

  • 992二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:46:25

    未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定

  • 993二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:46:28

    確定ィ!

  • 994二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:47:10

    ナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサンナムサン

  • 995二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:47:48

    確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定確定

  • 996ロアの鳩25/09/01(月) 18:48:26

    くるっぽー

  • 997二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:48:38

    確定

  • 998二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:48:58

    未定

  • 999二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:49:12

    未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定未定

  • 1000二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:49:15

    ねこです。よろしくおねがいします。

オススメ

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