- 11着をねらえ!25/08/16(土) 21:07:02
- 21着をねらえ!25/08/16(土) 21:08:53
このスレの主人公
イリフネ | Writeningイリフネ 二つ名: - ウマソウル:牝馬 学年:高等部1年 出身:東京 身長:170cm スリーサイズ:B81・W57・H90 好きなもの:アニメ、プラモ、特撮、レース 苦手なもの: - 脚質:逃げ 毛色:尾花栗毛 主な勝ち鞍: - …writening.netその母親
キンペイバイ 諸設定 | Writening【ウマ娘】 キャッチコピー>ミニマムボディの白金少女 誕生日>12月21日 身長>131cm(デビュー時)→136cm(ラストラン) 体重>片方でスイカ1玉分 スリーサイズ>B104・W52・H86(デビュー時)→B117・W5…writening.net - 31着をねらえ!25/08/16(土) 21:10:10
- 41着をねらえ!25/08/16(土) 21:13:31
【あらすじ】
とある弱小出版社の書いた新聞記事、そこには『疫病神ウマ娘』というタイトルが書かれていた。
この新聞を見たチーム『オルク』の1stウマ娘『ヒビノミライ』は彼女が次に出走するらしい『毎日王冠』への出走を決めた。敬愛するお姉さまの不可思議な判断に戸惑いながらも疫病神と言われるウマ娘『クローズドメイデン』を調査するイリフネ。
しかし、調べれば調べるほど彼女は優しいウマ娘で…… - 5二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 21:13:41
立て乙! 前スレでお姉さまVS.クローズドメイデンの勝負がついて良かった
- 6二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 21:14:48
立て乙
お姉さまの秘密が気になるな - 71着をねらえ!25/08/16(土) 21:17:32
【お知らせ】
酷く暑い夏の候、皆様いかがおすごしでしょうか。
現在、スレ主は夏風邪にやられたのか出ちゃいけないタイプの咳が止まらず連日高熱&寝不足です。
皆様も体調にはお気をつけて水分等しっかりとって、栄養のあるものをたくさん食べて、画面から目を離してイリフネちゃんたちの活躍をご覧ください。
p.s.スレを落としちゃってごめんなさい🙏 - 81着をねらえ!25/08/16(土) 21:18:32
イリフネ'sメモ⑨
「クローズドメイデン」
由来:『クロ(黒)』+『クロス(交差)』+『クローズド(閉じる)』+『ローズ(薔薇)』+『アイアンメイデン(拷問器具)』+『ガーデン・ローズ・メイデン(遊戯王)』
トレセン学園中等部3年。耳飾りは左耳。
限りなく銀に近い芦毛のウマ娘。その見た目からおっとりして優しい性格を想像するが、本来は若干S寄りの性格(他人には優しい面もある)しかし、一連の事故から自責の念に駆られSの側面は鳴りを潜めている。
相手のスタミナを奪い、自身の力に還元する"ゲイン能力"に長け、特に"追い抜かす"ことを条件に発動する固有スキルは既存のスタミナグリード系スキルとは比べ物にならないほどであり、一度追い抜かされればその根に絡め取られ彼女の養分となってしまうだろう。
元は『リリスファタール』のチームの育成候補生であり、彼女からレースのイロハを教えられていたが、現在のトレーナーと出会いチームを抜けた。脱退後も交流は続いているらしい。
なお、そのトレーナー(女性)は冴えない顔だが非常に優秀。しかし、担当バを心配するあまり少々スピリチュアルな方面に傾倒しがちな嫌いがある。
勝負服は純白のドレスで、薔薇の衣装がふんだんにあしらわれている。 - 91着をねらえ!25/08/16(土) 21:19:53
イリフネ'sメモ⑩
「グレンラセツ」
由来:『天元突破グレンラガン』+『羅刹』
※グレン(紅蓮)とラガン(羅漢)でグレンラガンなのでコア部分であるラガンをラセツに変更(ラゼンガンのオマージュを多分に含む)
ドリルが頭部についた鉄仮面を常に被っているのが特徴的なウマ娘。黒をベースとしており、目や差し色には赤が使われている。
性格は勝気で挑戦者気質、目の前に壁や強い相手がいると越えたくなる性分であり、レースで負けたウマ娘には必ずリベンジをしに行く。
語尾も特徴的であり、「〜リル!」「〜でスパイラル!」「〜でラセン!」など、ドリル、回転体に関係する語尾を文末につける。時折、この語尾が外れる時があるのでおそらくキャラ付けでつけているものと思われる。
レースでは超の付く『出遅れ癖』が災いし毎回最下位スタートだが、持ち前のど根性と後半から伸びてくるキレのある脚を武器に重賞レースで幅広く活躍しており、GⅠタイトル獲得も夢じゃないと期待される有望株である。
また地味にダートも走れるのだが、フルフェイスの仮面は砂対策に露骨すぎないかと反感の声も一部ある。
そんな彼女の素顔は超の付くお嬢様で、とある財閥重工の代表取締役の一人娘であり、虫の一匹も殺せないような心優しい少女である。両親が歳をとってからできた子供という事もあって箱入りで育てられてきたのだがレースの世界を志しトレセンへと入学。しかしながら、生来の気弱な性格ゆえ中々デビューまで辿り着けず、幼い頃から彼女の面倒を見てくれた会社の老メカニックから『勇気の出るおまじない』として仮面を贈られ、それ以降は勝気なチャレンジャーウマ娘グレンラセツとしてレースで活躍できるようになった。 - 10二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 21:28:50
- 111着をねらえ!25/08/16(土) 21:32:44
【お知らせⅡ】
『質問』『登場して欲しいウマ娘(オリウマ含む)』『こんなウマ娘が見たい』『このレースを走ってほしい』『こんなダイスを振ってほしい』等ヶ引き続き大募集中!
また、近日メインウマ娘の募集もする予定です
<募集予定>
・お父さんのチームのウマ娘(3人くらい)
・イリフネがクラシックレースで戦う強敵たち(複数人)
- 12二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 21:35:36
このレスは削除されています
- 131着をねらえ!25/08/16(土) 21:38:00
- 14二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 00:34:15
ヒビノミライの家族が気になります
- 15二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 09:45:00
過去スレにちょい役出ててたアイルランドのロイヤルな姫や、ヒダリミミの呪い克服した子の意思を受け継いだ……みたいな子は時系列的に出てこれるかなあ
- 16二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 15:35:38
エルとはまた違うんですね
- 17二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 18:23:45
このレスは削除されています
- 18二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 23:45:37
- 191着をねらえ!25/08/18(月) 01:20:30
- 20二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 04:18:57
ヒビノミライのいつか出る家族、これで普通の現代の地球人だったら逆に目玉が飛び出るくらい驚く自信があるしそうでなくてもマジかってなるのでどう転んでも美味しいやつ
- 21二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 09:15:23
ユニちゃんの家族が想像しにくいのに近いか
- 22二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 18:19:22
イリフネの妹たちの中で作中でデビュー予定の子はいますか?
- 231着をねらえ!25/08/18(月) 23:48:43
トレセン学園は基本的に寮制を採用しており、入学してきた生徒は栗東と美浦のどちらかの寮に振り分けられ集団生活を送り、社会のルールやマナーを先輩たちから身近に学んでいく。
そんな寮にはある伝統的な文化がある。
「いけ!そこだ差せ!」
「粘れ粘れ!」
それはレース鑑賞会である。寮の仲間がレースに出走するときは必ず応援するというのがトレセン学園での暗黙のルールであり、現地での応援も多い。しかし、人混みの混雑が予想されるような場合や用事や怪我で外出が難しい場合には無理にレース場には出向かず、こうして寮のテレビで中継を流しレースを応援するということも往々にしてある。
今日も幾人かの少なくない数のウマ娘たちがテレビの向こうで激闘を繰り広げる友人の雄姿に名一杯の声を上げている。そんな中にサイレントオナーズの姿もあった。
まだ怪我は完治しておらず、彼女の座る席の横には松葉杖が立てかけられている。
彼女は怪我をしてからというもの、こうして他人の応援をすることを頑なに拒んでいた。自分が走れないのにどうして他人を応援しなければならないのかという不満も勿論あったが、なによりも画面の向こうで“自分の足”で走る彼女たちの姿を見ると、4本足でずるずると体を引きずる自分の姿があまりにも惨めに思えてきて、見ていられなかった。
そんな彼女であるが、いまはこうして他人のレースを見ることができるまでになっていた。彼女を変えたのはイリフネであった。あの事件の後、本当に連絡をしてきたイリフネは何か困っていることはないか、話したいことはないかと尋ねてきた。ほとんど他人だというのにずけずけと入り込んでくる面の皮の厚さに最初は警戒していたが、それでも最後には不安な気持ちを吐露してしまった。
それからというもの、彼女は定期的にイリフネに連絡を送るようにしていた。怪我の経過、将来への漠然とした不安、レースに出られないことへの不満、まるで本当の姉のようにたわいのない愚痴さえ彼女は何時間でも聴いてくれた。サイレントオナーズは築いていなかったが、最初の1回以降、イリフネから連絡をしたことはなく、全てサイレントオナーズのほうから連絡をしていた。よほど、彼女に心を開いているようである。 - 241着をねらえ!25/08/18(月) 23:49:46
時刻は丁度おやつ時、寮長が寮に残っている寮生のために持ってきてくれたお菓子をつまみながら今日の最終レースの走者紹介を見る。体操服にゼッケン姿の彼らは学園で見たことがある者や名前を聞いたことがある者が多く、相当な実力者が集まっているようだ。さすがは秋レースの登竜門とも言われる毎日王冠といったところだろうか。誰が勝つか洋装できないハイレベルなレースの予感にサイレントオナーズ自身もワクワクが隠せなかった。
そういえば、イリフネからも今日の毎日王冠は絶対に見てほしいと念を押されていたことを思い出す。確か、彼女が『お姉さま』と呼ぶウマ娘も出走するらしい。ウマ娘の姉妹は親が同じでも姿が似ない場合があるので、一目でこのウマ娘だとは断言できないが、出走するウマ娘の誰かがイリフネの姉妹であることは確かだろう。
イリフネのお姉さまが誰なのか、パドックの紹介映像をせんべい片手に眺めていると、画面に映し出されたそのウマ娘に一瞬時が止まった。クローズドメイデン、あの疫病神が出走していた。思わずその場を離れようとするが、怪我している足を庇っては上手く立つことはできず、5センチほど浮いた尻が音を立てて椅子へと落下する。
彼女が出走するからイリフネはこのレースを絶対見ろとそう言ったのだろうか。しかし、あの優しい彼女が自分を苦しめるために鑑賞を強要するとはとても思えない。何かあるのだろうか、彼女がこれを自分に見せたい本当の理由が…
レースは快調そのものな進行だった。かなりハイペースで、タイマーもいい数字がでておりもしかしたらレコード更新なんかもあり得るかもとテレビを見るウマ娘たちから声が上がる。しかも、出遅れてビリを走っていたウマ娘が固有スキルを発動して一気に捲り返してきたとあっては寮生たちのボルテージもかなりのものである。
そんな興奮の中、サイレントオナーズの視線は未だ後方集団にあった。
クローズドメイデン──疫病神と呼ばれる彼女が一番嫌いなウマ娘。いくら仲直りの握手をしたといっても、怪我が良くなるわけでも棄権したGⅠに出られるわけでもない。未だに赦すに足る理由をサイレントオナーズは見つけられていなかった。 - 251着をねらえ!25/08/18(月) 23:50:48
このレースでのクローズドメイデンはここまで全くいいところなしで、スタートから後方につけたまま勝負を仕掛けるそぶりどころか、何かしらのスキルを発動することすらしていない。レースに対するやる気を感じられない走りだった。こんな奴が走れてなんで自分が…再び湧き上がる不安に奥歯を噛みしめた、その時だった。
そこは一面に広がる薔薇の園。小奇麗に整えられ、ところどころに金属の装飾品があしらわれている庭園の最奥、薔薇の天蓋が陽光を遮り、木漏れ日として狩り揃えられた芝生の絨毯を照らすその場所に咲く一凛の薔薇。白の花弁に黒のコントラスト、誰もが美しいと言葉を漏らさざるを得ないその煌めく薔薇は音もなく立ち上がるとひらりと自身のスカートの裾を揺らして見せる。香る薔薇のフローラル、これがレースだということを忘れてしまいそうな魅惑の香りの主はキュッと唇を結び、俯いていた顔を上げた。
「貴方の願い(呪い)も連れて行きます」
そういって彼女はぐんぐんと抜け出し、ついにはゴールを超え、万感の拍手に包みこまれた。彼女が世界の全てを一瞬で包み込んでしまったように、今度は世界が彼女を祝福によって包み込む。その様子を最後まで見ることなく、サイレントオナーズはその場を立ち去った。 - 261着をねらえ!25/08/18(月) 23:52:04
向かう先は自分の部屋。勢いよく開け放たれた押入れから服を引っ張り出しては放り投げ、幾重にも積み重なった好きだった物の残骸の中にそれはあった。
「私の勝負服…」
宝塚記念の出走が決まり、大喜びで作った世界で一つだけの一張羅。夢への道が途絶え、ねじ込むように押入れの奥深くにしまい込んだそれは少々ヨレているがまだ輝きを失っていなかった。
姿鏡の前、ハンガーに吊るしたまま体にあてがう。これが届いて始めて着たあの日、トレーナーはとても似合っていると褒めてくれた。両親に送れば、親戚中に自慢して全員に写真を渡していた。あの日大喜びで作った憧れと夢の結晶はまだ生きている。ハンガーを持つ手が震えた。
着たい。この勝負服を着て走りたい。
クローズドメイデンのあの走りがサイレントオナーズの水底に沈んだ闘志に再び火を灯し始めていた。まだ、クローズドメイデンのことは苦手に感じているし赦しているわけでも、ましてや好きになったわけでもない。それでも、あの走りに確かにサイレントオナーズの心は震え、走りたいという衝動が芽生えていた。
鏡に映る勝負服、いつかは超えるべきそれを目に焼き付け、少女は固い決意と共に勝負服を最奥へと封印した。次、これを手に取るのはGⅠに出る時。その時が来るまで、少女は服に別れを告げた。
<第一章 魂の勝負服>
- 271着をねらえ!25/08/19(火) 00:13:02
- 28二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 07:33:17
- 29二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 17:13:10
再燃のきっかけになったようでよかった
- 301着をねらえ!25/08/19(火) 22:00:14
<第2章 本当のウマ娘>
──12月某日
「逃げる逃げる!イリフネまだまだ逃げる!」
しんしんと雪の降り積もる中山レース場には多くの人が集まり、冬場とは思えない熱気が辺りを漂っていた。今日はジュニア級の最後の重賞レース『ホープフルステークス』が開催されていた。次年のクラシック戦線で活躍が期待されている有力バが集まっているということもあり、GⅡでありながら注目度・レースのレベルともに高いものになっている。
そんなレースの先頭を独走し続けるウマ娘が一人。金髪の風にたなびく髪をポニーテールに纏め、髪飾りには三角柱のクリスタルが輝いている。レース開始時点から優位を譲ることなくトップスピードで走り続けているスタミナは尋常なものではなく、多くがティアラ路線に進む左耳飾りのウマ娘でありながら、王道路線での活躍が期待されているウマ娘たちを引き連れるように独走する様は凱旋そのものである。
「イリフネちゃーん頑張れー!」「おねーちゃんがんばれー!」
「イリフネ!ファイト!」
観客席では彼女の母親や妹たち、親友が力の限り応援の声を上げている。
それはウマ娘の優れた聴覚によってイリフネへと届けられ、彼女に力を与えてくれる。心が滾り、魂が燃焼する。その力は光となって彼女の体を包み込み、爆発した『末脚』が中山の短い最終直線を駆け抜ける最後の一押しとなり、ついぞ一度も先頭を譲ることなく、彼女はゴール板を駆け抜けて見せたのだった。
- 311着をねらえ!25/08/19(火) 22:10:29
というわけで第2章イリフネのクラシック挑戦編始まります
牝馬3冠路線でいくのか、気がくるってクラシック王道に行くのか、それとも変則3冠するのか…それすら決めていませんが気長にお付き合いよろしくお願いします。
つきましては、どの路線に進むか、イリフネと戦うウマ娘のアイデアを募集します
一応、テンプレを置いておきますので活用してください
※すべてを入力しなくても大丈夫です
【名前】(9文字以内)
【耳飾り】(右耳・左耳)
【身長】[cm]
【スリーサイズ】(B・W・H)
【髪色】(栗毛や葦毛のように表記)(赤・青というような表記でもOK)
【走り方】(逃げ・先行・差し等)
【紹介】(アピールポイントやどういうウマ娘なのかの説明)(固有スキルとかあったら出るかも) - 32二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 01:41:50
募集来たか
考えなきゃ - 33二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 06:43:39
原案だと牝馬3冠だったけど、「牝馬変則三冠」「牝馬なのにクラシック三冠」の可能性もあるのか
あのキンペイバイの初年度産駒だからな、それぐらいぶっ飛んでても驚かないぜ - 34二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:48:55
保守
- 35二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 20:05:46
こういうの考えるの好きだな
- 36二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:44:40
まだ応募が来てないようなので1件だけ……
【名前】ピピボーイング(P P Boeing)
【耳飾り】ヒダリミミ(牝馬)
【身長】150[cm]
【スリーサイズ】(B88・W67・H81)
【髪色】鹿毛
【走り方】先行
【紹介】
トゥインクルシリーズを走っているにしては、ちょっとコロコロした体型のウマ娘。名前と見た目にちなんで「ジャンボジェット」の異名がある
しかしその見た目を揶揄する声を、実際のパワーある走りで黙らせてきた実力派。ちょっとやそっとでは動じない肝の据わったメンタルは、レースでは最大の武器となる
性格も良くて要領もある良い子なので、クラスの男子に「あいつの良さを分かってるのは俺だけ」と思われるタイプ。その朗らかで愛嬌のある性格は、かえって「強者の余裕」に見えると評判
勝負服はキャビンアテンダント風。序盤~中盤の安定した走りが長所だが、パワー系であるがゆえにスタミナに不安定さがあり、末脚が伸びないと「不時着」と言われることも - 37二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 22:32:56
いいのかなこれと思うけど、出すだけ出してみよう
【名前】ラムライブラリ/■■■■■?
【耳飾り】右耳
【身長】131cm
【スリーサイズ】B86・W55・H88
【髪色】青毛/青黒く長いトリプルテール。裏側が紅色に光っている。
【走り方】
追込。その末脚は光が如く、最後方から文字通り「消えた」かと錯覚するほど。
そこには「本物」のウマ娘が至りうるところへのヒントがあるのかもしれない。
【紹介】
紅く輝く目を持つ謎めいたウマ娘。
いかなる心理か、イリフネひいてはチームオルクに対し、先導するような言動を見せる。
勝負服はサイバーチャイナ路線だが、古代中国(キングダムで出てるようなの)の装甲をメカニカルにしたようなセンスになっている。
結果として、どことなくイリフネやヒビノミライと対な部分があるようにも見えるビジュアル。
【名前】ムライリーブラ
【耳飾り】右耳
【身長】131cm
【スリーサイズ】B86・W55・H88
【髪色】青毛/青黒く長いロングヘア。裏側が緑青色に光っている。
【走り方】
サポート科生にも関わらず非常に強力な競走能力を持ち、自分の体でテストされたトレーニングや知見を提供することができる。
自分で自分を担当できるのではと思う者もいないではないが……?
【紹介】
通称ムライちゃん。
サイバーゴーグルをかけたサポート科生にしてトレーナー。
記憶喪失状態で徘徊していたところを保護されたが、その際身につけていた中央トレーナーバッジには紛れもなく彼女自身のパーソナルデータが入っていたためこのような状態となった。
イリフネと出会う時が彼女の転機である。たぶん。 - 38二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 22:38:11
【備考】
まずは詫びを。こんなメチャクチャなもん投げ込んで申し訳ないです。
一応投稿したものの全然ボツにしてくれて良いです……やはり領分を超えている気がする……
ネタとしては伏字5文字が先行しています。
せっかく本当に続編が書かれてるんだから、せっかくのダイス神があつらえてくれた最強の最初と最後が何かのまちがいで戦えたら面白そうだなー、という一発ネタ。
このスレがSF要素満載で、かつ使ってるパロディ元に成立させられそうな要素もありこのようなことに。
ただ、多分本来の■■■■■とはドラゴンボールの本編トランクスと未来トランクスくらい違うような気もする。
余談ですが、以前のキンペイバイちゃんスレ感想3の
>戦績も含めてイリフネちゃんは特異点だからな…
>アーモンドアイが10年ぐらい早くやってきたようなもん
という書き込みを見て、もしかするとこれくらいのことが起きてイリフネが本来以上に成長した可能性もあるのかもなと思ったところもあるかもしれません。
- 391着をねらえ!25/08/21(木) 00:07:22
その日の夜、府中住宅街の大きな一軒家はいつも以上の賑わいを見せていた。壁に『イリフネお姉ちゃん!受賞勝利おめでとう!!』の横断幕が提げられた広いリビングのこれまた広いテーブルには10を超える子供たちが行儀よく座り、目の前に運ばれてくるごちそうによだれを垂らしている。両親や上の姉妹たちが食器を取り分け、席の関係で少し離れたテレビ前のローテーブルで食べる祖母曾祖父母たちの元へとは依然していく。
テーブルの上座に座るイリフネは居心地悪そうに座っており、目を盗んで下の子たちに料理を配ろうとすると、「主役は座っていて」と席に押し付けられてしまう。長女として模範的な姉である彼女からしてみれば、こうして手伝いもせずにただ座っているだけというのはなんだか不思議な感覚であった。
「リベット、やっぱり私何か手伝う…」
「だーめ!お姉ちゃんは大人しく座ってて」
気が弱く、優しい次女に尋ねてみても今日ばかりはダメだと言われてしまい、しょぼしょぼと浮いた腰を木製の座椅子に押し付ける。
そんな娘の姿を見て少し笑いながら、母キンペイバイはイリフネの前に使い慣れた陶器製の食器と銀のスプーンとフォークを置く。
「今日はイリフネちゃんのお祝いだってみんな張り切って準備してたから、皆に頑張らせてあげてね」
「そうはいっても何もしないのはなんだか申し訳ないのです。それにお母さんこそ、お腹大きいんだからゆっくりしていてほしいのです」
娘の言葉にキンペイバイは大きく膨らんだ腹をさする。今年も妊娠したキンペイバイはすでに妊娠後期に入っており、低身長故に目立つお腹がこれまた慎重には不釣り合いな大きな乳房を押し上げ、ニットの中でお腹の流線型に合わせて左右に広がっている。もう10人以上生んでいる大ベテランだが、娘からしてみれば心配で仕方ない状態であるのは変わりなかった。
「お母さんはもう慣れっこだからな~。…そうだ、それならお料理が出来上がる間、おばあちゃんや妹たちに今日のこと聞かせてあげて。みんなイリフネちゃんのかっこいい話聞きたいと思うな」
「…!それならお安い御用なのです!お姉さまやコーチにムーバ先輩との熱い努力の日々が成し遂げた勝利、皆にも聞かせてあげるのです!」 - 401着をねらえ!25/08/21(木) 00:08:56
そう言うと席を飛び出し、彼女にとっての祖母、曾祖父母がいるローテーブルへと座り込み、小さな妹たちを手招きする。その合図で小さな子供たちがソファーに集まり、その場の全員が身振り手振り、時折音楽ありのイリフネの青春の日々に耳を傾けるのだった。
「イリフネ、楽しそうだな」
席に座ってイリフネの姿を眺めていると、後ろから手が回される。握りなれた夫のゴツゴツとした手にキンペイバイの柔らかな手が重なる。夫婦はそろって姉妹や祖母達の前で楽しそうにレースの話をするイリフネの様子に微笑みを浮かべている。
「本当はイリフネちゃんをトゥインクルシリーズに出走させるの、ちょっと怖かったの。私みたいに大変な目にあったらどうしようって。でも、杞憂だったみたい」
そんな妻の言葉に夫は「何があっても大丈夫」と答える。
「秋川理事長はよくやってくれているし、同僚も皆いいやつばかりだ。何か困ったことがあっても助け合えるような仕組みや雰囲気が今のトレセンにはできてる。もうキーちゃんが感じた悲しみを繰り返すようなことはないよ。それに…イリフネ達に何かあったら、俺が何があっても全力で守るから」
力強く握り返されたその手の力にキンペイバイは頼もしさを感じる。出会ってから30年以上、いつだってキンペイバイに安心感を与えてくれる夫が言うことなら彼女は無条件に信じられる。背もたれに深くもたれかかると、彼の手を取って、自分の膨らんだ腹の上で重ねる。
「パパが守ってくれるなら安心だね」
夫婦二人の甘い時間が流れ始めると、キッチンの方から呼ぶ声が聞こえる。
「おとーさん!グラタンできたよ!」
「はいよ!」
娘に呼ばれ、離れる夫。居間ではイリフネや小さな娘たちが楽しそうにはしゃぎ、キッチンでは上の娘たちが料理を運んでいる。常に音が絶えず、騒がしい家、鳥取で母と二人で暮らしていたころのあの小さなアパートでは考えられなかった光景だ。
母と二人、身を寄せ合って助け合いながら暮らしていたあの頃。それが今ではこんなにも家族が増え、春になるころにはもう一人増える。過去の自分に言ってもきっと信じられないだろう。
「…幸せだなぁ」
小さくこぼしたその言葉は、幸福な騒音の中に消えていった。 - 41二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 00:25:27
【名前】フォフォフォライト(Ho Ho Hollite)
【耳飾り】左耳。耳は先端が四角く角ばっている。
【身長】173cm
【スリーサイズ】B73・W53・H83
【髪や目の色】芦毛/グレー。目は黄色で全てのハイライトは緑。
【走り方】
幻惑逃げ。スキルも使うがそれ以上に別の走行技術——絶妙な走りの緩急やスキルの発動タイミング、ミスディレクションなどの複合と言った相手の認識を狂わすことによる「瞬間移動」や「分身の発生」を引き起こす。
特に固有スキル発生時はスキルに伴う幻視とガウス関数的加速が同時に発生。二つの原理で編まれた分身が飛行機雲のように生えていく。
【紹介】
月出身の宇宙忍者。
活発化する宇宙開発の中で棄民的に労働者を送り込む者たちが存在し、そうした層の者がやむなく母体に抱えて持ってきて月で産んだ子供である。
月の開発途上区画で現状のウマソウル(ポールライト)の性質上数少ない月生まれのウマ娘として、幼い頃から労働力として活動。
働けど豊かにならず治安も最悪な実家と地元で育っていたある日、月へ来ていたイリフネの父と出会う。
月の重力下で同環境の地球のウマ娘と遜色なく走れたスピードや、その治安の悪さと余裕のなさが育んだ反則にならずに反則的な挙動をする曰く「忍者的」な業前、そして環境身分両面でウマ娘として特異な生い立ちをしたことで持つ「本物」を予感させるほどのハングリー精神を買われてスカウトされる。
その出自上最も力ある者として頼られていたため、面倒見は良い。
一方低重力と貧困で育ったため、骨盤こそ女性的だが針金の様な体躯をしている。
そのため地球に適応する体作りを要したが、その上で上記のスリーサイズである。
名前は(メタ的にはバルタン星人の)笑い声+フォスフォフィライトから。
勝負服はブルーグレーメタルな忍者装束。手脚の甲や鉢金にある緑の宝石がアクセント。
和マンチレベルで技巧に長けるため、極めて走行効率が良く意外と距離達者。
【備考】
おそらく世情の急激な変化により、運命が育ちから丸ごと変わってしまった系のウマ娘。
ソウル自体はたぶんインドとかのだと思われる。
「本物」を予感させた一因として元々地球のものだったウマソウルが月の環境と厳しい育ちにさらされての突然変異が(スレの未開示設定と矛盾しなければ)あるのかもしれない。 - 42二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 00:32:32
(すみません更新とぶつかってしまった)
長子ゆえの不安、そりゃああるよねえ
そしてまだだいぶ増える余地を残してるのちょっと笑ってしまう - 43二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 07:28:25
あいかわらず夫婦アッツアツ描写があって嬉しい
でもまだ全部の産駒が生まれてるわけじゃないんだよね…… - 44二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 16:45:55
そういえばここからあと数人増えるんだった
- 45二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 16:48:33
>どの路線に進むか
なんとなくダービー走るところは見てみたいかもしれない
イリフネにはそれだけの資質があり、多くのウマ娘の憧れのレースなだけに
目指すのがクラシック三冠かそれ以外はティアラの変則三冠かは悩ましいとこだけども
- 46二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 23:31:24
余談ですが、由来は「英字2つ+人名」……となっているが実際は「大人のお店の名前から」としています
元となった競走馬はキンペイバイ、あるいはトーキョーバニーと同じ馬主かな……という想像で投稿させていただきました
- 47二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 06:58:14
そういう由来って競走馬の名前で通るんだろうか……って思ったけどオトナノジジョウやリャクダツアイが実在する時点で野暮な疑問だったな
- 48二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 07:31:04
ジャスタウェイやドウデュースみたいに有名なのにも表向きの由来と実際の由来がある馬もいるしね……
- 49二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 12:31:50
【名前】ブラックブル(Black Bull)
【耳飾り】右耳
【身長】181cm
【スリーサイズ】(B86・W69・H95)
【髪色】黒毛・大きめの流星
【走り方】差し
【紹介】
アメリカ合衆国カリフォルニア州モハーヴェ砂漠近郊が出身のウマ娘。
長身でがっしりとした体格をしており、バストカップ数は小さくヒップが大きいウェッジ(楔)シェイプの体形をしている。やや褐色がかった肌をしている。
目付きと気性は悪い。そこに口が悪いのも加わっており一見すると荒々しい性格をしているが、攻撃的だったり我儘だったりはしない。実直なマイスター的な一面があり自身の脚の繊細さが合わさって、神経質で気難しいのはそれらの反動である。レースシーンを離れれば気性悪は鳴りを潜める(口調は荒いままだが)。
長身とそこに付いた恵まれた筋肉から生み出される「90秒あれば宇宙に届く」と評されるほどの爆発的な加速と到達速度の末脚が武器。ただし速度がある分、コーナリングはとても不得手であり、その末脚の持続時間も現在は83秒が限界である(直線での計測値。カーブが存在するレースコースでは持続時間を活かせていない)。
そのパワー故に怪我や全力発揮時の姿勢安定性に悩まされ、本人でさえスパート中に気を抜くとどこにぶっ飛んでいくか分からない。強力な武器であると同時に非常に調整に気を遣う繊細な脚をしている。
私生活では、臭い食べ物が好きという変わった一面を持ち、特にアンモニア臭のする発酵食品が好みである。日本で出会ったくさやの瓶詰を寮の食堂で開けるという「爆発事故」を度々起こしては怒られており、集団生活では食べる機会が少なく難儀している。
日本の湿度にはまだ慣れず。
トレーナーは実母にしてウマ娘のボールズエイト(oooEight)。もともとブラックブルよりグラマラスで上背もあるが齢を重ねた事で横にも大柄になっており、如何にも包容力に溢れたボディをしている喧しいアメリカンおかん。ハグは強烈。
不倶戴天のライバルに神出鬼没不思議系ウマ娘フロムスターズ(From Stars)がいる。フロムスターズからブラックブルへの感情は定かではないがしばしば接触してきており、遭遇した時は一触即発レベルにまでブラックブルの機嫌が悪くなる。
元ネタは極超音速実験機X-15と母機NB-52B。と、笹本祐一著「ほしからきたもの」。 - 50二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 14:01:34
名前それぞれ
プラムライブラリ(Plum Library)/■■■■■?
プライマルバーリー(Primal Burly)→バリちゃん
に修正提出します
ポケモンのラムのみとごっちゃにしてたけど梅はプラムだったのとアナグラムできてなかったので……
あと身長や毛色、走り、備考でほとんど公然の秘密にしてますが伏字は要するに19子です
- 51二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 19:04:05
このレスは削除されています
- 52二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 19:06:14
【名前】アンユークリッド(Un Euclid)
【耳飾り】左耳
【身長】160cm
【スリーサイズ】B80・W60・H80
【髪色】
ピンクになりやすい白毛/長いピンク髪を一つにつき白玉2つのヘアゴムで20の数珠つなぎにしている。
これくらい固めないとぐにゃぐにゃのうねうねが爆発する。
【走り方】先行
【紹介】
要するに逆カルストンライトオ。
カーブしなければ走ることができないし、私服も私物も勝負服も非ユークリッド幾何学的なものばかり持っている。
コーナリングが至高の領域に近いのはもちろんのこと、誰がどう見ても曲がろうとしているのに直進している「まっすぐに曲がる」という走法が可能(またはそうなる)。
固有スキルの心象風景としてこのミームが拡散することにより、自らと同じように周囲のウマ娘も直線とカーブの区別がつかなくなる……かもしれない。
勝っても負けてもへらへらしているひねくれ者であり、勝ちがいがなさすぎるウマ娘同世代No.1。
それに苦言を呈する者もいればカリスマ的なヒールとして心酔する者もいる。
実は、一定以上彼女に関わったものは否応なく何かがねじ曲がっていくらしい。それが良いことか悪いことかは人による。 - 531着をねらえ!25/08/22(金) 22:07:32
年が明け元旦、全国の神社仏閣に縁と1年の幸運を祈願しに人々が長蛇の列を成すこの日、府中の住宅街の一軒家、イリフネの生家ではこの日のために用意したおせちが机の上に所狭しと並んでいた。
子供たち用に用意したお肉のお重の前には上から下まで姉妹が詰め寄り、我先にと箸を伸ばしている。そんなおしくらまんじゅう状態の中心にイリフネの姿はあった。とはいっても、姉妹たちに混ざってお肉争奪戦に参加しているというわけではなく、手の届かない末妹たちのために小皿に料理を盛り付けていた。
「イリフネちゃんはもうどっちに進むのかは決めたのかね」
配膳が終わり、曾祖父の作ってくれただし巻きに舌鼓を打っていると目の前に座る老人から声を掛けられる。
どちらに進むか──それは王道路線とティアラ路線のどちらの路線を選ぶのか、クラシック期に突入したウマ娘が必ず直面する命題である。
この2つの路線は日本のウマ娘が目指すレースの頂点のようなものであるが、その成り立ちや意味合いは全く異なっている。そもそも、近代日本のウマ娘レースは神事から軍事へとその目的が変わっており、王道路線と言われるレースは富国強兵の思想の元、強いウマ娘を育成することに主眼を置かれており、そのレース内容も短距離から長距離まで幅の広いレースを走ることになる。対して、ティアラ路線は兵隊としてのウマ娘を育てるという目的の他に、軍や貴族のお偉いさん方の嫁選びという側面もあり、他の路線やシリーズに比べると全体的に煌びやかつ華やかな印象が強く、レースとしての需要の多い短距離から中距離までの距離でレースが構成されている。
現代でもこうした各路線ごとの風土的な物は残っており、競技者・強者としての格を示したい傾向の強い者は王道路線へ、華やかさや伝統を重んじるウマ娘はティアラ路線に進む傾向がある。一昔前はティアラ路線は勝負事よりもおめかしの好きな者が進む軟派なレースと言われることもあったが、今はレースレベルの向上により、どちらが明確に競争能力が上かというのは一概に言えなくなっている。
イリフネとしては目の前のレースに勝つことだけを考えてきたこともあって、これから自分がどの路線に行くべきなのかというのは薄ぼんやりとしか考えていなかった。 - 541着をねらえ!25/08/22(金) 22:09:35
「う~ん…どっちに進むべきだと思いますか“おじじ様”」
尋ねられた言葉をそのままオウム返しで繰り返すイリフネは困ったように眉を八の字にして目の前の『おじじ様』と呼ばれる老人──じじトレに助言を求めた。
「ほっほほ…それはイリフネちゃんが決めなくちゃダメな問題じゃな」
笑って煮豆をつまむ好々爺は助言の一つもくれず、のらりくらりとイリフネのHELPをかわし続けるだけで、具体的な方針も解決策も与えてはくれない。安易に助け舟を出さないのは流石数十年間ウマ娘を教え続けた大ベテランである。
「う~…おじじ様のケチんぼなのですぅ~」
「まぁそうせっかちするもんでもないぞい。飽きるほどに悩めばいいんじゃよ、お前さんの母のようにな」
そう言ってじじトレは視線でイリフネにキンペイバイの方を見るように促す。小さな娘にご飯を上げる身重の母は見慣れた姿そのもので、彼女の目標の強くて綺麗な母そのものだった。母の競争時代に悩み事や壁にぶつかったという話は小さいころからよく聞いていた。自分や妹たちが何か壁にぶつかった時、できないことで諦めそうになった時、母はいつだって諦めないこと、継続することの大切さを教えてくれた。その教えは今でもイリフネの中に残っている。
だが、母の姿を見るとイリフネは余計に分からなくなってきた。自分は母と同じ道に進むべきなのか、それとも別の道を行くべきなのか。
“名牝キンペイバイの娘“という肩書は知らず知らずのうちに彼女の選択肢に重い責任として腰かけていた。 - 551着をねらえ!25/08/22(金) 22:39:01
どの路線に行くかは…多分明日ごろに決まったら…いいな(多分このままだとティアラ路線のままですが)
お持ち頂いたウマ娘ちゃんたちは『全員』順次登場する予定です。ただ、ストーリー進行に合わせての登場なので期間が空いてしまう場合があります。ご了承ください
また、オリジナルウマ娘ちゃんはいつでも募集中なので皆さん気軽に投稿してください。スレ主が頑張って全員出します - 56二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 23:09:29
- 57二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 07:24:33
前哨戦に牝馬混合戦を選ぶとかはありそうね
- 58二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 12:31:14
このレスは削除されています
- 59二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 12:34:58
【名前】ラストブレイド(Rust Blade)
【耳飾り】右耳
【身長】158cm
【スリーサイズ】B79・W54・H79
【髪色】
明るめの栃栗毛に日本刀の刃紋じみた流星
錆鉄色から末端や流星、ハイライトが赤熱化した橙色になっている(固有スキル発動時完全赤熱)
【走り方】先行寄りの差し
【紹介】
父母両方のラストクロップにあたるウマソウルを持つウマ娘。
軍事企業の父と自衛隊員の母の間に生まれ、レースは殺し合いが持論で、それが目の前のレースと敵に最も敬意を払う対話の形とも考えている。
同世代では特にイリフネを最強格として目をつけ、叶うなら同期の屍の山に立つ18人同士としてクラシック・レースで死合いたいと思っている。
彼女を選んだ路線に関わらずダービーにひきずり込むかもしれないし、イリフネがオークスに行くなら「お前を倒して初めて世代最強を名乗れる」というダービーを蹴る理由を持ってこっちが追いかけて来るかもしれない(ウマ娘世界では何故か滅多にいないだけで右耳がティアラに行くことも可能なため)。
メタ的にはイリフネinダービーの可能性を残しつつそうならなくても面白いことになりそうなアイデア。
彼女の感情エネルギーは競り合う中で蓄積する性質を持っており、特に全霊の死力を持って「殺し合える」ウマ娘たちの想いを受けて鍛え上げられたそのエネルギーは、レース場をも斬り裂く錯覚を与える一片の錆なき焔の刃として顕現、硬いバネの弾けるが如く強烈なパワーで全てをぶち抜かんとする。 - 60二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 19:55:57
みんな色々とオリウマ考えるなぁ
- 61二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 23:51:22
こういうアイデア、自分で募集しても完全にさばき切れるか不安だし全部拾おうとする精神、惚れるね
- 62二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 07:58:27
自分も何とか考え出したい
- 63二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 16:15:54
保守
- 641着をねらえ!25/08/24(日) 18:14:56
「そっかぁ~イリフネももうそんな時期か」
正月のめでたい雰囲気が抜けきっていない1月の第二週、全国各地に帰省していた生徒が帰ってきてトレセン学園はいつもの騒がしい雰囲気を取り戻していた。高等部1年のクラスではあちらこちらで新年の挨拶が飛び交い、太り気味のおなかを摘まんで正月のだらけ具合を比べる娘たちの姿もあった。
イリフネもこの教室の中にあって正月明けムードを楽しみたかったが、目の前に迫る選択に気が乗らず、友人の前で机に突っ伏していた。当の友人もデバイス片手に話半分と言った様子で、深刻さがどうにも伝わってないように思える。
「こっちは真面目に悩んでるのです!ちょっとはソアラも一緒に考えてほしいのです!!」
「いや、そりゃ最終的にアンタが決めんといかんことっしょ。私にできんのはアンタがどっちの道を選んでも応援することとアンタが来るまでシニアクラスで待つことくらいだし」
それはそうと言うしかない正論にイリフネはまたもや机と額をこすり合わせる。
王道路線かティアラ路線か、最終的に決めるのはイリフネ自身、それは彼女も分かっていた。どちらの道に行きたいかも、ほんのりではあるが心の中で決めてはいる。だが、それを後押しするような“何か”をイリフネは見つけられずにおり、それが迷いに繋がっていた。
「ソアラはクラシックでどっちの道に進むかどうやって決めたのです?」
突っ伏したままの顔を上げ親友を見上げる。トレードマークのおさげを揺らし、わざとらしく眼鏡の位置を正すと、しばらくの沈黙が二人の間を支配する。キャッキャッと騒がしい教室で時が止まったように静かな長方形の木板の上、ダイナソアシーが小さく喉を鳴らすと、口元に手を当てイリフネの方を見る。
「そっちの方が楽しそうだったから…かな?」
「えっ…そんな軽い理由…?」
「冗談冗談。ホントのところは胸の奥にあるナニカがそうしろって私に言ってる気がしたんだよね」
「…胸の奥、魂ってやつなのですか…ムーバ先輩に聞いたときにも同じようなこと言われたのです」
実は少し前、新年あけ最初のチームミーティングの時、イリフネはどちらの路線に進むべきか先輩2人に相談していたのだ。その時、ムーバレズハールから言われた言葉は今のダイナソアシーの言葉とそっくりだった。 - 651着をねらえ!25/08/24(日) 18:15:58
「イリフネにはないの?ソウルの滾りみたいなやつさ」
とある科学者が提唱した説によれば、ウマ娘の行動指針や精神形成には通常のヒトミミの子供のように親や友人等の周囲の人間とのコミュニケーション以外にも、『ウマソウル』が強く影響をもたらしている可能性があるのだという。例えば、ウマ娘が必ずと言っていいほど身に着けている耳飾り、これを右耳につけるか左耳につけるのか、その傾向には周囲の影響というのはさほど関係なく、直感的なものでどちらにつけるかを決めているケースがほとんどであるらしい。また学園の指定している運動服においてズボンかブルマのどちらを選ぶのかというのも本人の人格や精神よりも直感のような根源的部分で無意識下に選択しているようだ。このように、ウマ娘の『選択』というものに関しては精神学ではなく、『ウマソウル』のような根源的な物が強く関係しているとされている。
クラシックでどちらの路線に進むのか、その選択もウマソウルに左右されているというのは間違いないだろう。ソアラやムーバの言う魂がそうするべきだと語るという表現はあながち間違いではないのだ。
「うーん…実は私、そういうこと一回もないのです」
だが、極まれにウマソウルの影響がかなり少ないウマ娘というのも存在している。そういったウマ娘はレースの道に進むこと自体が稀でいたとしても実力を十全に発揮できず、早々に消えていく。
しかし、イリフネは実力で言えば申し分なく、単純に鈍いだけのような気がしないでもないと、ダイナソアシーは首をかしげる。
「パッションがウマ娘の形をしているイリフネが…?」
「ちょっと、どういう意図での発言なのか詳しく言うのです」 - 66二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 19:06:31
イリフネはそれだけ強大な意志力を持っているということなのかな
ウマの本能ではなく娘の意志によって限界を超越し得るそういう器かもしれないと - 671着をねらえ!25/08/24(日) 21:21:02
結局どうすればいいのか、その答えを出すことはできず木枯らし吹きすさぶ府中の街を口が閉じ切らない上の空、冬晴れの澄んだ青空を見上げながら歩いていた。実家へと帰る商店街のアーケード、正月飾りも店の奥へと引っ込み、正月特売を謳うポップの名残が軒先のワゴンにわずかながらに残っている。今は人通りがそこまであるわけではないが、あと30分もすれば晩御飯のおかずを求めて多くの人で賑わうことだろう。
若干閑散とした道のど真ん中を歩いている時のことであった、前方からやや大きな段ボールを数段積みでよろよろと歩く女性の姿が見えた。転びそうだななどとその人の姿を見ているイリフネであったが、だんだん一番上の段ボールの揺れが激しくなっていくのを見ては流石に棒立ちというわけにはいかず、駆け足気味で近づいていく。
「あわわわ、あっ!」
しかし、案の定というべきか舗装されたタイルの極々わずかな隙間に足を取られ、段ボールと共に女性の体が宙に投げ出されてしまう。またやってしまったとグルグル目に涙を浮かべていだが、自分を支える誰かの存在に気づき、恐る恐る顔を上げる。
「あの…お怪我はありませんか?」
飛び込んできたのは黄金色の美しい髪。目鼻立ちが整っていて、青い目が金髪と美しいコントラストを生んでいる。ぴょこぴょこと動く頭頂部の特徴的な耳、なにより女性にとっては懐かしい服が彼女がどんな人間なのかをありありと示していた。 - 681着をねらえ!25/08/24(日) 21:22:07
「えぇ‼お姉さんってあのメイショウドトウさんなんですか⁉」
あの後、女性が働いているらしい店まで段ボールを運ぶことにしたイリフネは女性の案内で商店街の一角にある宝石店にいた。煌びやかな宝石や貴金属が並ぶ高級感あふれる店内で似つかわしくない大きな声を出してしまったのは、先ほど助けた女性があの世紀末伝説の当事者だったからだ。
大物ウマ娘に目を輝かせ、テーブルから身を乗り出すほどのイリフネの圧にドトウは少々驚きながらもこくりと頷く。
「メイショウドトウさんといえば、テイエムオペラオーさんとも鎬を削った超すっごいウマ娘!それが近所で宝石店を営んでたなんて私知らなかったのです!」
聞くところによれば、この店は彼女の実家である大きな宝石商の支店らしく、実務経験と眼を養うために働いているらしい。本人曰く駆け出しの身らしいが宝石商の修行も何年かかかるものなのかと、イリフネは勝手に空想する。
「先ほどは助けていただいてありがとうございました。このお礼は何と言っていいのやら」
「いえいえ、気にしないで下さい。ミカンもご馳走になっちゃいましたし」
そう言って視線を向ける先には店の奥に置かれたミカンの入った段ボール箱。なんでも高知の友人が送ってくれた物らしく、店を開けていた時に不在届扱いになってしまったようで商店街の宅配店から直接持ってきたのが先ほどの場面ということらしい。
イリフネが通りかかたのが不幸中の幸いで、もしあのままだったらミカンがアーケード街にバラまかれるか、最悪かなり重量のあるミカンの詰まった段ボール箱がほかの通行人に当たるかもしれなかったともなれば恐縮と謝罪も仕方がないだろう。もっとも、ドトウが頭を下げるたびにスーツに収め切れていない爆乳がブルンッブルンッ揺れるほうがイリフネにとっては毒である。
「それじゃ、また来ます、今度はお客として」
「はい、またのお越しをお待ちしています!」 - 691着をねらえ!25/08/24(日) 21:23:27
そろそろ商店街が混みだす頃、時計の針が頂点を指し示したので区切りがいいと席を立つ。本当はショーケースに陳列された商品を見たい気持ちもあるが、今はお金を持っていないし、それになにより目の前に立ちふさがる問題に解答が得られていない現状では煌びやかな宝石を見ても十分楽しめないだろう。なんとなく後ろ髪をひかれる思いを抱えたまま、金の装飾のドアノブに手を触れたその時。
「もしかして何かお悩み事が?」
ドトウの少々自信のない呼び止めに思わず振り向いてしまう。
「どうして…私何も…」
「いえ、あの、どことなく昔よく見たことのある眼をしているように見えて」
イリフネとしてはドトウの前でそれらしい態度を見せたつもりはなかったのだが、それだけ彼女の観察眼が素晴らしいということか。しかし見方を変えればこれは行幸、相手はかつてトゥインクルシリーズで激闘を繰り広げたウマ娘、もしかしたら何かヒントになるような話を聞けるかもしれない、そう思い意を決し話すことにした。
「実は私今年クラシック級で…王道路線とティアラ路線どちらの道に進むべきか悩んでいて」
「それはどちらにすべきか全く選べていないという…?」
「いえ、なんとなくこっちかなというのは決まってるんですけど…」
そう、なんとなくは心の中で進むべき方向を決めてはいるのだ。しかし、それは本当に自分自身の確固とした考えでそう決めているのか、それとも親や周囲の環境故にその道に進むのがベストだと打算的に決めているのか、自分の心の正解がよくわかっていなかった。 - 701着をねらえ!25/08/24(日) 21:24:30
「それなら、その道に進むべきではないでしょうか」
優柔不断な質問を押し付けてしまったなと内心後悔していると、意外にもドトウは即答に近い形で答えた。
「“なんとなく”は“本当はそうしたい”の裏返しです。もうイリフネさんの中で答えは出ているんじゃないですか?」
トレーナーさんの受け売りですと恥ずかしそうに縮こまるドトウ。だがしかし、その通りなのかもしれない。イリフネが欲しかったのはどちらの道が正しいとか、この道に行くべきだとかいうアドバイスではなく、自分の心にあるものを信じたほうがいいという肯定だったのだ。でも、彼女の周りの人たちはみんな優しく彼女の行動をきっと肯定してくれるだろうだから、わざわざ遠回りな聞き方をしていたのだと、今更になってイリフネ自身、自分の言動の真意に気が付いた。
「そうです…そうなのです!答えはもう私の中にあったのです!ありがとうドトウさん、私行くのです!」
そういってドトウの手を取りぶんぶんと振ると、風のように店の外へと飛び出して行ってしまった。その様子をポカーンと見つめていたドトウであったが、扉のしまる鈴の音でハッと我に返る。
「お土産のミカン渡し忘れちゃいました~」 - 71二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 21:31:15
> “なんとなく”は“本当はそうしたい”の裏返しです
ソウルの影響もなしで何となくだからマジでそうなのが一層沁みる
- 721着をねらえ!25/08/24(日) 21:36:40
走る。夕暮れ時の商店街、人が増えだしたタイルの路面を蹴り上げ出口のアーチをくぐりウマ娘専用道へと飛び出す。
走る。アスファルト・コンクリート用の蹄鉄を鳴らし、薄暗くなっていく寒空のした白い息を置き去りにして今年で4年目の校門をくぐる。
走る。蕾を備えた今は寂しい桜並木の道をスキップしたいほどに高鳴る胸を前方への推進力に変えて、いつものチーム部屋の扉を開け放つ。
「決まったのです!」
勢いよく開け放たれた扉に驚いてムーバが目を丸くしている。何事かとコーチがデスクから立ち上がり、難解なレース関連書籍を読んでいたヒビノミライはその目に活字ではなく、火照った頬に白い煙を引き連れた荒い息で肩を震わせ、いつもよりも2割増しで口角を吊り上げている後輩の姿を映している。
「私決めたのです!私は…桜花賞に出るのです!」 - 73二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 23:13:36
ティアラではなく桜花賞を名指しと来たか
これは一寸先が読めなくてそういう点でもワクワクするね - 74二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 07:32:08
母は中~長距離適性ゆえに敗北を喫した桜花賞
血統的にもマイラーの血が入ったから期待大きいんだよね - 75二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 16:02:52
保守
- 761着をねらえ!25/08/25(月) 22:28:10
「G1レースは今までのレースとは次元の違うレースだ、今までのトレーニングだけで楽に勝てると思うな!」
「はい!コーチ!!」
まだ冬の名残を残す1月の東京、今日もトレセン学園では乾燥した冷たい空気を吹き飛ばすように熱気の籠った指導と返答の叫びが白い煙となって空にたなびき霧散していく。
先日、チーム全員の前でG1レースへの出走を表明したイリフネはあの後、コーチや親との話し合いで選んだ道への面談を行い正式に春のG1レース『桜花賞』への出走を決めた。それに伴い、トレーニングメニューは今まで以上に厳しいものとなり、彼女に向き合うコーチの指導にも一層熱が入っていた。多くのウマ娘がクラシック以降に本格化の本番を迎えるということもあり、メニューもそれに合わせて組み立てられ、それらをこなすイリフネの表情にもその過酷さが表れていた。
しかし、彼女は折れることも弱音を吐くこともなくトレーニングを日々こなしていた。それは自分が望んだ道であるという自覚故というものもあるが、それ以上に隣にいるヒビノミライの存在が大きかった。
「ペース落ちてる、辛いときは呼吸が乱れていないか確認が大事」
「はい!お姉さま!」
その雰囲気や立ち姿から誤解されがちだがヒビノミライは決して才能のみで走っているウマ娘ではない。誰よりも努力し、誰よりも練習をこなす努力の鬼である。かつて彼女は言った「私は努力して勝ちたい」と。そのストイックッさにイリフネは益々憧れた。
いまだイリフネとお姉さまとの距離は遠い。それは努力してきた時間の違いで、歩んできた道の長さの違いでもある。ならばどんなにつらいトレーニングでもお姉さまが隣で同じメニューをこなしている、そう思うとへこたれている暇なんてないのだ。
この日のトレーニング
1.地獄の巨大タイヤ引き
2.階段鉄下駄ウサギ跳び
3.校内高速雑巾がけ
dice1d3=2 (2)
- 771着をねらえ!25/08/25(月) 23:19:24
「ぐ゙ぎ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!」
さて、その夜もトレセン学園併設の寮の一室からはおおよそ年頃の乙女たちの花園から奏でられた音とは思えないすさまじい絶叫が響いていた。もうすぐは時計の針が頂点で重なる時刻、声の主であるイリフネはベッドに体を投げ出し、相部屋のダイナソアシーになされるがままマッサージを受けてはそのたびに汚い叫び声をあげていた。
「そろそろクラシックレースも本格的に始まるころ合いだし、本格化でトレーニングに体が慣れてもいいころなんだけどね」
たった今、すさまじい練習量に棒切れのように布団の上に投げ出されている親友の足のツボを押しその叫びで流行りの曲を奏でたダイナソアシーはそんなことを呟く。本来、ウマ娘は本格化の兆しと共にレースに登録し、本格化の進行やそれに伴う身体の発育に合わせてトレーニングの強度を上げていくものである。イリフネの行っているトレーニングは確かに常軌を逸しているハードなものだが、平均的な本格化の進行度であればここまでボロボロになることもないはずである。それなのに、毎日イリフネはまともに歩けなくなるレベルまでトレーニングをしてそのたびに悲鳴を上げている。幸い彼女の尋常ならざる回復力のおかげで日常生活に支障が出ることはまだないが、少しばかり現状には疑問が湧いてくる。
「イリフネ、アンタ自分が強くなってるなって感覚ある?」
自覚があればそれでよし、そうでなくとも何かしらの変化は感じているだろうとソアラは考えていた。
「いきなり言われてもわ゙ぎ゙ゃ゙っ゙!…分からないのです。だじがに゙っ゙…なんとなく頭打ち感というかタイムがあんまり変わってないのです」
しかし、イリフネからの返答は芳しいものではなく、それどころか一抹の不安さえ感じるものであった。この時期でタイムが頭打ち、それを本人も自覚し始めている。だが、トレーニングの強度が上がってもそれについていけているし、イリフネの体を触った感じも日々成長しているのは分かっている。ならばなぜ…
「この尻と太ももは前よりもデッカくなってるのになぁ~」
「ぎ゙ゃ゙びん゙っ゙‼」
平手打ちされたイリフネの母親譲りの豊かな尻と丸太のような太ももがいい音を奏で、深夜の府中にイリフネのアンサンブルを響かせた。 - 78二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 01:07:56
>階段鉄下駄ウサギ跳び
階段がボコボコになってそう
- 79二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 07:00:19
ムネのペイバイ、ケツのイリフネ
- 80二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 15:10:52
実家帰った時に妹達からも育った尻を突かれたり揉まれたりしそう
- 811着をねらえ!25/08/26(火) 22:40:25
トレセン学園のトレーナーはそのほとんどが仕事に対して真摯に取り組んでいる。もちろん、そうしなければ中央トレセンという場ではやっていけないというのもあるが、彼ら陣のウマ娘にかける情熱が仕事に対して手を抜くことを許さないのだろう。今日も今日とて日がまたぐ時間までトレセン学園のあちこちではいくつかの部屋が東京の夜景に貢献していた。
その中の一つ、イリフネの所属するチーム『オルク』のトレーナー室にも明かりが灯っている。昼間とは打って変わって静寂ばかりの寂しい部屋でオオトリコーチはPCの画面と髪の記録表を見比べては眉間に皺を寄せている。
こうなっているのは、イリフネのデータが不可解であるからに他ならない。肉体強度やスタミナ、スキルの習得量を見ても今のイリフネが本格化の最盛期に入りつつあるというのは誰の目にも明らかである。だがしかし、“タイムが全く縮まらない”この1点がそれら全てに疑問符をつけて回っている。
通常、肉体の成長やスキルの習得によって少なからず1000メートルないし一定区間のタイムというのは縮まっていくものである。それが普通であり、世間一般的な成長とはそういうことを言う。だがイリフネは確かに成長していると判断出来る要素は多分にあるのになぜかタイムだけがある一定のラインから全く変動しないというのはおかしな話である。特段タイムが悪いわけではない。余裕とまではいかなくても桜花賞で勝利を狙うこと、それ自体は十分に可能な範囲である。しかしながら現状、どうしてこのようなことになっているのかその理由はいくら文献を漁っても見つからない。
「タイムが縮まらないのはトレーニングの問題ではない、もっと別の何か…ここまでしか強くなれないと誰かが上限を決めているような…」
人間工学に基づいたデスクチェアから立ち上がり、長ったらしいタイトルばかりの本棚から一冊の本を取り出だす。『ウマソウル基礎理論 著アグネスタキオン』トレーナーになると決めた時、手に取った本の中の1冊。ここに答えがあるとは思えないが、それは教え子の現状を甘んじて受け入れる理由にはならない。
角の装丁の剥がれた表紙をめくり、目次に指を走らせる。時計は長針を短針が追い抜かし、今日を60度分進めていた。 - 821着をねらえ!25/08/26(火) 23:01:52
さて、桜花賞に出走するまでにイリフネ達にしてほしいことを募集します(過度なエロでなければどんなものでもいいです)このレスに安価する形で出してくれると嬉しいです。
※オリジナルウマ娘もまだまだ募集中です。次のレースは桜花賞なので左耳飾りウマ娘が選ばれやすい…カモ - 83二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 23:38:44
AIですが、ブラックブル(>>49)のイメージイラストを作りました。それと追加情報です。
一人称:アタシ
トレーナー(彼女の場合は兼母親)の呼び方:マム
趣味:金属加工系ハンドクラフト。彼女が身に着けているピアス類は半分がた自作です。
プール:ビート板勢。砂漠地帯出身なので泳げません。
あちこちのタトゥーは全てシールで、中でもバーコードタトゥーを特に好んで顔や四肢に貼っています。
ファイルなう - アップロードされた複数のファイルpixai-1917055508121184680-勝負服.png, pixai-19170597864821296... (7.55 MB)d.kuku.lu - 84二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 07:32:02
- 85二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 16:53:14
おぉ、かっこいい
- 86二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:28:31
【名前】エムブラ(Embla)
【耳飾り】左耳(銀色のシンプルなフープピアス)
【身長】169cm
【スリーサイズ】B92・W58・H89)
【髪色】芦毛で髪と尻尾の色はライトグレー
【走り方】先行/差し
【紹介】
腰まで伸びたストレートヘア、水色の瞳に色白の肌のウマ娘。
寡黙で冗談を解せず、常に冷静沈着な堅苦しい性格の持ち主。普段は無口で愛想がないが、信頼を置く相手にはさりげない気遣いを見せる。冗談を真に受けてしまうため、周囲からは天然だと思われている節がある。
レースにおいては緻密な計算と完璧に近い準備を基礎とする堅実で外連味のない粘り強い走りに定評がある。その走りは、観客を惹きつける派手さこそないものの、どんな状況でも最後まで諦めない粘り強さでファンを獲得している。
幼少期は静かな田舎で育ち、自然と星空に囲まれた環境が彼女の落ち着いた性格を形成した。星空を見ながら「自分の走りで人々を魅せたい」という夢を抱くようになった。
趣味は天体観測とクロスワードパズル。
名前の由来は北欧神話において神々に創造された最初の人間の女性。 - 871着をねらえ!25/08/27(水) 21:19:40
「本日は他チームとの合同練習を行う」
オオトリのコーチの号令でグラウンドへと集まったイリフネ以下チームオルクのメンバーはそれぞれ長袖ジャージにブルマのいつもの練習姿である。いかにウマ娘といえどまだまだ肌寒いこの季節、せめてもの抵抗にといつもより長めのソックスを履いたり、タイツを着用したりと微量ながら寒さに抵抗の姿勢を取っている。
他チームとの合同での練習ということだが、指定の時間になってもそれらしい影は現れずビル群を通り抜ける木枯らしの甲高い音が体を耳から凍えさせていく。そうこして待つこと約5分、どたどたと土手を駆け降りる音に視線を向ければ、こちらに手を振る人影があった。
「すみませ~ん!会議が長引いてしまって!」
そのシルエットは筋骨隆々。しかして他者に誇示することばかりに固執し醜く肉を無造作に身に纏う有象無象とは違い、引き締まり無駄をそぎ落とされた体は実用性という名の芸術を身に纏っている。羽織る形のジャージをはためかせ、若々しいその声は年頃の娘ならば少なからず心揺さぶられるものがある。
もっとも、他人なら、という前提ではあるが。
「お父さん!?」
驚愕し思わず叫んでしまったイリフネの声にその隣にいたムーバも一瞬、反射的に目を閉じてしまった。再び目を開ければそこにいるのは絵にかいたような好青年、冬場の厚着の上からでもわかるその筋肉はその筋の人にはたまらないだろう。勿論、ムーバも目を奪われ思わず生唾を飲み込んでしまう。
だが、彼女はチーム最年長、精神的動揺、ましてやチームの後輩の父親に対してなんて決して許されたものではない。掛かりを押さえつける要領で平常心へと自信を導く。
それにしても、10人以上の子供がいるとは思えないほど若々しい容姿である。よほど奥さんに愛されているのだろう。もう30後半だというのに男の顔にはシワの一つも見つけられなかった。
「ごめんなさいオオトリさん、約束の時間に遅れてしまって」
「お忙しいのは常々伺っています。それよりも早く始めましょう」
社交辞令的挨拶を済ませると、お互いどこかからバインダーを取り出し今日のトレーニングの荒れそれについての話し合いへと流れるようにシフトしていく。この手際の良さは流石エリート中のエリート、中央トレセン所属トレーナー2人といったところだろうか。 - 881着をねらえ!25/08/27(水) 21:54:23
「今日はお父さんのチームとの練習なのですよね?」
「そうだぞ、どーんと胸を借りるつもりで来い!」
トレーナー二人の会議がものの1分ほどで終わったころ、イリフネが心配そうな声音で父に尋ねる。彼はそれを人一倍心優しい愛娘が他のチームに遠慮しているものだと考え、大げさに胸を叩いて安心させる言葉をかけた。
しかし、イリフネの眉は未だに下がったままで何かを探すようにキョロキョロと周囲を見回している。
「あの、お父さんのチーム誰もいないのです…」
娘の言葉に明るかった父の顔色はサーと血の気の引き、貼り付けたような笑みの中、徐々に下がってきている口角がピクピクと震えている。
「まさか…?」
「いやなっ!?ほら、今って学期末だろ?だから補習とこ補講とかで忙しいっていうか、いきなり再テストが入っちゃった奴もいたり…」
つまるところ、チームのスケジュール管理を失敗したということだろう。可愛い可愛い娘の手前、そんなこと正直に言えるわけもなく空いている奴がすぐに来てくれるだの必死に言い訳を並べるたびに娘の眉は悲しそうに垂れ下がっていく。
「今日、走れないのです…?」
うるんだ瞳の上目遣いに父としての大事な何かに音を立ててヒビが入る。ガクリと膝をついた父にイリフネが駆け寄ろうとしたその時であった、彼女の方に誰かの手が置かれる。
「走る相手ならここにいる」
突如としてそこに現れた人物にその場の全員が視線を向ける。
灰色の短めの髪はその外形を緑で縁取られ、大きく丸い瞳は怪しく光るような黄色で染め上げられている。170を超えるイリフネとほとんど変わらないほどの長身は、しかして地球の重力の上に立つにはあまりにも細く、いっそ針金とさえ言えそうな長い手足、臓物が詰まっているのか怪しい胴回りと人間らしさを見出すことはできないが、唯一張り出した骨盤周りが彼女の人間性と女性性を担保し、頭頂部に伸びた細長い耳と力なく垂れさがるばかりの尻尾が彼女をウマ娘という枠に無理やり担ぎ上げている。
一見して病的な人間、二見して異常すぎるウマ娘、感情の読み取れない張り付いた無表情が余計に不気味さを加速させている。 - 891着をねらえ!25/08/27(水) 22:56:35
「フォフォフォちゃーん!!!!」
しかし、イリフネの反応は予想外なものでくるりと振り向いてそのウマ娘の顔を見たかと思えばパァっと明るい笑顔を浮かべたかと思えば、細身のウマ娘へと勢いよく抱き着いて見せたのだ。
「あれ…イリフネちゃん、その子と知り合い?」
突然の事態の連続にムーバの口から疑問が漏れ出る。
「この子はフォフォフォライトちゃん!お父さんのチームに所属しているウマ娘なのです」
「キエテ・コシ・キレキレテ」
イリフネに抱き着かれたままのフォフォフォライトはその細い腕を彼女の首元に回し、硬い表情のままピースサインを両手に咲かせる。それはイリフネが自分の友人であるとアピールしているようであった。
イリフネの父親は自身のチームのウマ娘を年に数回、家に招き入れることがある。これは彼の妻キンペイバイの親元から離れて暮らしているウマ娘たちに家庭料理を食べてほしいという要望から始まったもので、彼のチームメンバーのウマ娘たちはトレーナーの家を訪れ、手料理をご馳走になるというのチームの恒例行事となっていた。
その中で、彼の娘達、つまりはイリフネ達と交流する機会も多く、イリフネ達姉妹は父親のチームに所属しているウマ娘達とは家族同然なほどに仲が良く、イリフネ達も彼女たちを慕い仲の良い友人のような関係を築きあげていた。
フォフォフォライトともそう言った付き合いの中で知り合い、一緒に同じ釜の飯を食べた仲であり、イリフネにとっても大切な友人の一人であった。
「まだまだ全然細いのです、ご飯ちゃんと食べれてるのです?」
「たまにトレーナーから奥さんのおにぎり貰って食べてる」 - 90二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 06:54:54
V(・_・)V
↑みたいなポーズしてるフォフォフォちゃんちょっとかわいいぞ - 91二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 07:57:33
硬い表情筋に反して、性格と仕草は愉快でフォフォフォちゃん可愛いぞ
- 92二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 16:44:02
この子結構人気なんじゃない?
- 93二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 19:23:09
ライブのコーレスで、フォフォフォやりそう
- 94二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 23:12:06
保守
- 95二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 06:58:54
保守
- 961着をねらえ!25/08/29(金) 14:24:08
「では、他のメンバーが集まるまでミライ、ムーバの二人はストレッチ等で体を冷やさないように待機、イリフネはフォフォフォライトと共に特別トレーニングを行ってもらう」
頭を下げつつ、その上で手を合わせながら器用な謝罪を見せる父の隣、いつものように日光をグラサンに反射させるコーチは懐から蛍光色の強い布を取り出す。よくよく見ればそれはビブスと呼ばれる薄手のメッシュ生地の服であり、主にチーム分けを一目でわかるようにするため多種多様なスポーツ、イベントで使用される。ウマ娘レースの会場で案内等をしているスタッフが着用している姿を見たことのある人も多いだろう。
「これをズボンに60%以上が露出するように装着し、ライン取りされた空間の中で互いのビブスを獲り合ってもらう。つまりは尻尾鬼だ」
尻尾鬼、それは鬼ごっこの派生した遊び方であり、そのルールは地域によって若干の差があるが共通しているのはズボンないしブルマに突っ込んだビブスやタオルを鬼に取られないように逃げ回るという部分だ。この時、目印の布が尻尾のようであることから尻尾鬼と言われている。
今回イリフネとフォフォフォライトが行うのは尻尾鬼の基本ルールには則っているが、それぞれが鬼と逃亡者両方の役割をこなすタイマン仕様になっている。
「尻尾鬼!小学生の頃よくやったのです!フォフォフォちゃんはやったことあるのです?」
「拙者、この遊技はやったことがない。しかし、物を盗るのには慣れている」
イリフネがいつものスパルタ一辺倒なトレーニングとは違う、遊びの要素が強いトレーニングにワクワクしているのとは異なり、コーチはいつも以上に難しそうな顔をしていた。このトレーニングはコーチ発案の物ではなく、合同トレーニング相手のイリフネの父から提案されたものだ。彼曰く「ウマ娘の成長にはユーモアと楽しさが大切」とのことで、併走トレーニングを考えていたコーチからしてみると梯子を外された気分であった。
確かに、尻尾鬼は反射神経や瞬発能力、相手の動きを見て判断する力を養うには優れていると言えるだろう。しかしトレーニングのセオリーから外れすぎなようにも思う。この柔軟な思考が何人もの重賞ウマ娘を輩出する名トレーナーたる所以なのかと関心と同時に自身の至らなさを痛感する。もっともそれは単純に目の前の男が異端寄りのトレーナーだからということが大きな理由であるのだが。 - 971着をねらえ!25/08/29(金) 18:11:02
さて、そんなこんなでグラウンドに用意された白線で区切られた正方形のフィールドの中、ぴっちりとしたブルマの中に細長く折ったビブスを入れ尻尾が2つになったウマ娘が2人。準備万端といった様子で自前の尻尾でビブスの尻尾をひらひらとさせているイリフネに対して、フォフォフォライトはだらんと垂れ下がるばかりのビブス尻尾を手に取り何を考えているのかよく分からない瞳で見下ろしていた、
「フォフォフォちゃん、猫又って知ってるです?日本の妖怪で今の私たちみたいに尻尾が2つある猫のことなのです」
「尻尾が2つでそこに谷間ができる、だから猫又…つまり今の拙者たちはウママタ…?」
明朗快活天真爛漫が形になったようなイリフネと奇怪千万奇々怪々という形容が良く似合う異性のエイリアンのようなフォフォフォライトであるが、根っこの部分はどうやら似通っているのか、ウママタウママタと170超えの長身娘が二人そろって天然を発動してぽわぽわとした雰囲気が流れる。
「ほら二人とも始めるぞ」
そんな娘たちを微笑ましく思いつつもトレーナーであるイリフネ父は手を叩き、二人をトレーニングへと引き戻す。仲良しモードから一気に真剣な顔つきへと変わった二人はお互いに線の際まで下がり、向かい合う。開始の合図を待ち、いつでも走り出せるように腰を落として構えるイリフネとは対照的にフォフォフォはぬぼーっと突っ立っているだけだ。
「ピィィィィィ!!」
甲高いホイッスルの音と共に地面を蹴り上げイリフネが走り出す。尻尾を守りながらフォフォフォに近づくため白線のライン上に合わせて時計回りに距離を詰めていく。今回の尻尾鬼では明確に移動できる領域が定められており、後ろに存在するウィークポイントを守り、なおかつ相手の尻尾を奪うというルールを最大限活用するならば尻尾を獲ることのできる範囲を限定しつつ、相手を追われる側へと強制的に立たせるイリフネのこの戦術は理に適っていると言えよう。
そんな状況をうまく活用するイリフネを目線で追いつつもフォフォフォライトは未だ走る気配を見せていない。第一直角コーナー、第二直線とイリフネが駆けあがてきても相変わらずの無表情で、ようやく走り出したかと思えばすでにイリフネは彼女のいる直線上まで迫ってきている頃であった。 - 981着をねらえ!25/08/29(金) 18:12:30
こうなってしまえばフォフォフォライトは苦しい立場に追い込まれてしまうことになる。まずもって、尻尾鬼は相手の尻尾が手の届く距離になければ勝負の土俵にも上がることができない。そうなると能力が近ければ近いほどルール的には追う側の方が有利となり、一度追われる側になると逆転は非常に困難なものとなる。イリフネがスタートから全力疾走していたのも有利不利の立場レースに一刻も早く天秤を傾けるためだ。
その思惑はピタリとはまり、すでに最高速に達したイリフネはフォフォフォの後ろにピタリと付き、にじりにじりと尻尾との距離を縮めていく。
フォフォフォの辛いのは構造上の有利不利の他に、イリフネの作戦と彼女の走りの持ち味によるところも大きい。イリフネはライン上を走っているが、これにより相手の防御をさせないようにしている。本来であればコーナー角に留まり防御の姿勢を取ることもできるだろう。しかしそれには減速のプロセスを踏まねばならず、自分と相手の体が一直線上にある時にそんなことをすれば簡単に尻尾を獲られてしまう。そのため、ラインの上をフォフォフォが走ることは叶わず、ラインの内側で短い円周上で走ることでのリソース勝負を仕掛けなくてはならない。
そこで効いてくるのがイリフネの最大の持ち味である『コーナリング性能』なのだ。体が柔軟で掻き込み型という地面との距離の近い走り方を好むイリフネは遠心力をうまく活用することで損失を少なくしながらコーナーを曲がることができる。つまり、フォフォフォはイリフネの一番得意なコーナーでの勝負に付き合わされている状態なのだ。 - 991着をねらえ!25/08/29(金) 18:15:05
「(フォフォフォちゃん尻尾鬼は初めてって言っていたしちょっと大人げなかったかもしれないのです…)」
周回軌道による遠心力でフォフォフォの体が僅かに外側へと押し出された瞬間、イリフネは彼女の尻尾へと手を伸ばす。
「私は遊びもレースもトレーニングもいつでも全力全開なのです‼」
獲った、その確信があった。だが、イリフネの手は空を掴んだだけで、力強く握り込んだ指が手のひらに食い込んで痛い。
しかし、イリフネが驚いたのはそれだけではなかった。先ほどまで眼前に捉えていたはずのフォフォフォの姿が無かったのだ。一瞬で起こった出来事にイリフネの脳がフリーズを起こしていると、臀部を何かが撫でるような感触に「ミ゚ィッ」と少女のような悲鳴を上げ、思わず立ち止まってしまう。
「キエテ・カレカレータ(やったぜ☆)」
振り返った先では、戦利品の尻尾を見せつけるようにピースマークのフォフォフォの姿があった。 - 100二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 23:36:20
V(・∀・)V <ヤッタゼ
フォフォフォちゃん、登場からわずかながら圧倒的な存在感
イリフネの妹たちからも評判良さそう - 101二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 08:10:33
保守
- 102二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 15:36:14
かわいいな
- 1031着をねらえ!25/08/30(土) 22:19:54
「い、今のどうやったのです!?」
フォフォフォの鮮やかな手捌きに目を輝かせるイリフネ。しかし、フォフォフォは無表情だがどこか困っているようにも見える。彼女からしてみればこの程度できて当然のことであり、どうやったと聞かれてもうまく説明できないのだ。
「こらこら、フォフォフォが困っちゃってるぞ」
見かねたトレーナーが助け船を出す。自身の娘の好奇心の強さと、相手を褒める素直さは褒めるべきところなのだが、いかんせん人との距離感が近いので慣れていない人間やパーソナルスペースの広くない人間は面食らってしまう性格でもある。フォフォフォもその類であり、イリフネが自分のことを好意的に思ってくれていること自体は喜んでいるのだが、思ったよりもグイグイ来るイリフネにたじたじになってしまっていた。
「ご、ごめんなさい。でも、絶対に勝ったと思ったのにすごい逆転だったのです!もう一回!もう一回やろうなのです!」
「…御意」
そしてブルマに再びビブスの尻尾を押し込んで所定の位置へと戻る。あんな鮮やかな勝ち方をされてはこちらとしても負けてはいられない。イリフネの勝負根性にメラメラと火が燃えていた。 - 1041着をねらえ!25/08/30(土) 23:16:38
「素晴らしいですねフォフォフォライト」
今なお二人が熾烈な鬼ごっこに興じるその枠線の外側で二人の走る様子を見ていたコーチは12本目の尻尾をイリフネから抜き獲ったフォフォフォライトの姿を見て感心したように呟いた。
対面しているイリフネ視点からは分かりにくいが、フォフォフォライトがやっていることは単に速度を落として相手の背後に回りこむというミスディレクションの類似例で、それ自体はさして難しいことではない。しかし、フォフォフォライトの違うところはそれを最小限の減速とステップのみで行っていることであり、これはつまりフォフォフォライトが優れたスピード管理能力と小回りの良さを持っていることを示している。さらに言えば、チームの中でもスタミナ面で優れるイリフネが無駄な動きが多いとはいえ汗を流し肩で息を整えているというのに、フォフォフォライトは頬に一滴汗を流すだけで、特に息を荒げている様子もなく、あの細すぎる体にイリフネ以上の体力があるとは思えないことを考えれば体力効率もかなりレベルの高いことがうかがえる。
「そうでしょう!月で初めて会った時からあの身のこなしは絶対レースで活きるって思ってたんです」
教え子への称賛にトレーナーの顔に笑顔が浮かぶ。
「今日は合同トレーニングをしてよかった、あんなに楽しそうなフォフォフォの顔が見れましたから」
そう感慨深そうに言うトレーナー。相変わらずフォフォフォライトは無表情で何を考えているのかも、今どんな気分なのかも同じくあまり感情を表に出さないヒビノミライよりも分かりにくい。だが、イリフネと尻尾鬼をしている時の顔は変わらず無表情のままでも確かに楽しそうに見えた。
「いままで私のチームでは走り込み等の基礎練習と私が現役だったころの練習を組み合わせていました。…正直、年頃の女の子には厳しいものだと思います。ですが今日、枠に囚われない自由なトレーニングを見て自分の未熟さを痛感しています。」 - 1051着をねらえ!25/08/30(土) 23:17:42
「君の仕事への真面目さはたづなさんからよく聞いているよ。チームのウマ娘たちのことを第一に考えてあの子たちがどのレースを目指してもいいように“選択肢を増やす”ための基礎練習をメインに据えた育成方針、講演会や勉強会、学会にも積極的に参加していて勉強熱心ないいトレーナーだってあの人も褒めていたよ」
努力している人間は必ずその姿を見てくれている人がいる。それは努力する本人からはなかなか気づけないもので、コーチもまた自分がそのように評価されているとは知らなかった。
「いえ、私はただ…」
「君があの子のトレーナーで良かった。うちの娘を今後ともよろしくお願いします」
コーチが何かを言おうとするそれよりも先にトレーナーが深々と頭を下げる。年齢や立場、実績やトレーナー歴諸々で本来、トレーナーがコーチに対して頭を下げるようなことはない。だが、彼も一人の人の親である。自分の娘の指導をしてくれる人間に対し礼節と感謝をもって接するのは人として当然のことであった。
「…全力でやらせてもらいます」
その姿勢にコーチも思わず言葉を飲み込み、返すように頭を下げる。今更になって『コーチ』という肩書の重みが少しばかり増したように感じた。
そうして互いに頭を上げると、トレーナーがコーチの耳元に手を添える。
「もし、よければなんだけどさ…お花見しない?」 - 106二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 08:17:41
府中近辺の桜スポットか、それとも遠出をするのか
- 107二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 11:30:40
【名前】フグルエンヴェイト(Hugr Einn Veit)
【耳飾り】左耳 スペクトロライトの耳飾り
【身長】157cm
【スリーサイズ】B86・W54・H85
【髪色】黒鹿毛 (濡羽色)
【走り方】差し~追い込み
【紹介】
ふわっとしたウルフカットをなびかせ、いつも黄緑色の目を細めてニコニコしているウマ娘。
たまに異国のオカルティックな儀式を始めたりする。日常茶飯事なので親しいウマ娘たちは慣れっこ。いざというときは首から下げたお守りのマティ(イーブルアイ)を握りしめる。「心の叫びを聞く」が信条だが、完全にオカルトに傾倒しているわけではなく人事を尽くして天命を待つという姿勢の表れ。
レースにおいても慌てず騒がずで後方脚質を貫いている。道中は前進気勢が全く見られないのですごくトレーナーを困らせている。でも最後に伸びてきて結果をちゃんと出すので絶妙に咎めづらい。悩むトレーナーを見てまたにこやか。
好物はたこ焼き。阪神のレースでの楽しみのようで、レース直後に1階東フードコートで舌鼓を打つ様子がよく目撃される。大阪の王道たこ焼きしか認めないというわけではなく、京都や東京でのレース後ならチェーンのものを食べるし寮でタコパを開催すればチーズやウインナーや牛スジも持ってくる。
フグルは古ノルド語で心を意味する言葉である。間違っても3文字目を誤って呼ばないようにしよう。普段の穏やかな糸目笑顔が嘘のように消えてガチギレするぞ。 - 108二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 20:34:32
また新しい子が
- 1091着をねらえ!25/08/31(日) 22:47:11
春も盛りの東京都内某所、桜の名所と名高いとある公園には多くの人々が訪れ、普段は子供たちが駆けまわる芝生の上には多くの団体がシートを敷いては、ここは自分の陣地だと互いにけん制し合い、まだ日の上がらぬうちから場所取りに励んでいた桜の好きな者たちの中には心地の良い暖かさに当てられ桜の前に瞼を閉じてしまっている者もいた。
さて、そんな大賑わいの桜並木の一角、ひときわ大きく場所を取っている家族の姿があった。子供たちには皆ウマミミと尻尾が生えており、まだ幼い子供たちは、はしゃいでは走り回っている。それを長身のウマ娘が捕まえると一人ずつシートの上に置いていく。
「ご飯食べる前にちゃんと手を拭いてね」
走り回っていた全員を捕まえ終えると子供たちにウェットティッシュを配り、拭き終わった物からビニル袋に回収していく。それらがすべて終わるとそれぞれの要望を聞きながら紙コップにドリンクを注いで手際よく配り回る。そんな働き者な親友の様子をダイナソアシーはニヤニヤと眺めていた。
「やっぱイリフネはお姉ちゃんやってる方が似合ってるよ」
それはあの怪しいウマ娘に「お姉さま、お姉さま」とついて回る彼女に対しての当てつけの部分が大きかったが、そんなことなど想像すらしていないイリフネはふふんと誇らしげにそんなに大きくない胸を張って得意げな顔をするのであった。 - 1101着をねらえ!25/08/31(日) 23:28:15
「おねーちゃんおめめきれ~」「おにんぎょうさんみた~い」
ヒビノミライは子供たちに囲まれていた。皆、イリフネの妹たちで全員どことなくイリフネに近しい雰囲気をしていて、イリフネと同じようにヒビノミライに目を輝かせていて、普段、家に訪れるような父親のチーム所属のウマ娘とは毛色の違う神秘的な雰囲気を纏うヒビノミライのその姿に妹たちはまるでテレビの中のヒロインを見ているようなまなざしで、彼女の不思議な髪色や透き通るような白い肌、銀河を浮かべた大きな瞳を気に入ったようで気づけば10人近くのイリフネの妹たちに囲まれてしまっていた。
名前はなんて言うの?、お姉ちゃんよりも速いの?、何のレース走っているの?、勝負服着たことある?、気づけばあちらこちらからの質問攻めの大合唱である。
幼い子の扱いには慣れていないのだろう、ヒビノミライは嫌な顔はしていなかったが目を丸くしてどうしたものかとアセアセとしていた。
「みんな、お姉さんが困っているからあまりワーッとしちゃダメよ」
そんな彼女に助け舟を出してくれたのはイリフネや妹たちの母であるキンペイバイであった。柔らかな表情で子供たちをなだめる彼女の腕の中には、先日生まれたばかりのウマ娘の赤ちゃんが彼女の豊かな乳房を枕にスヤスヤと寝息を立てていた。
「子供たちの面倒を見てくれてありがとうね。あなたがヒビノミライちゃんね、イリフネがいつもお世話になっています」
「私もイリフネと走ると楽しい。あの子は誰よりも強く輝ける光を持っている」
キンペイバイとヒビノミライが話に花を咲かせていると、突然、キンペイバイの腕の中の子がぐずりだしてしまった。いきなりのことにヒビノミライが動揺していると、キンペイバイは慣れた手つきで上着の胸元をはだけさせ、彼女が知っている色よりも黒ずんだ丸の中心に立つ突起を泣きじゃくる赤ちゃんの口へと含ませる。すると赤ちゃんはたちまち泣き止み、彼女の乳房を懸命に吸い始めた。 - 1111着をねらえ!25/08/31(日) 23:29:22
「その子は皆のようにご飯を食べないの?」
それを何かの捕食行動だということまでは考え付いたヒビノミライ。しかし、キンペイバイの抱く赤ちゃんだけが彼女の乳房に吸い付き、ほかの人間のように用意されたお重の料理を食べないことに疑問を感じていた。
その質問に、キンペイバイはふわりと優しく微笑む。
「この子は産まれたばかりだから私のお乳を飲んで育つの。イリフネもここにいる子供たちも皆、生まれたばかりの頃はこうしてお乳を飲んで大きくなっていったのよ」
そう言って腕の中の赤ちゃんを見守る彼女の顔はとても優しいもので、彼女が普段、学園やレース場で見るようなどんな表情とも違って見える。それを引き出しているのがこの小さな命だとすれば、どれほどの影響力がこの子にはあるのだろうか、そう思うと疑問がやむことがない。
「撫でてみてあげて」
本人も気づかないうちに赤ちゃんをまじかで覗き込んでいたヒビノミライにキンペイバイがそう言って促す。はじめは不用心に手を近づけるヒビノミライであったが、指先に触れたその肌の無垢な柔らかさに驚き、思わず手を引っ込めてしまう。そんな彼女の様子にキンペイバイは懐かしさを感じ思わず笑みがこぼれてしまう。
そして再び差し出された手が懸命に乳を飲む赤ちゃんの頬に触れ、慎重にゆっくりと壊れ物を扱うように指の腹で優しく撫でる。
「…暖かい」
再び赤ちゃんが母の腕の中で眠りについた頃、ヒビノミライは指先に残ったままの熱を不思議そうにただずっと見つめていた。 - 112二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 06:44:56
さすがママ歴16年連続、授乳も何のそのだ
順番的にはトーキョーバニーに相当する子かな? ペイバイちゃんが現役時に出会っているから微妙だけど - 113二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 10:06:55
今は授乳ケープとかあるけど、それでも上の子達が壁になったりとかしてお母さんを支えてそう
- 114二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:44:35
ヒビノミライ、やっぱり普通の出自じゃないっぽいな
人類の赤ちゃんの生態を知らないあたり少なくとも通常の教育を受けて育った人ではなさそう - 115二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 20:38:37
ヒビノミライの出自が気になる
- 1161着をねらえ!25/09/01(月) 23:07:09
「蛇眼の炎龍で攻撃!」
「なんの!リバースカード、閃刀機-ウィドウアンカー!」
スプリットタンの特徴的な幼いウマ娘が縦に開いた瞳孔と共に掲げた手に付き従うよう炎を纏った龍が咆哮を上げる。対するはムーバレズハール率いる刀を振るう機械鎧姿の少女。その名の通り蛇のような目を持つ龍の放った炎の吐息をひらりとかわし、3本爪のかぎ爪を投射し龍の体を縛り上げていく。
桜の和やかな雰囲気とはまるであっていないファンタジーなんだかSFなんだかよく分からないその光景を余所に、大人の男たちは酒瓶片手に重箱の料理を摘まみ上げては辛口の日本酒で流し込んでいく。
「ほほ、気持ちのいい飲み方をするようになったのぉ若いの」
上座に座る皺だらけの老人はむしゃむしゃと唐揚げをほおばり、酒を煽っては気持ちよさそうににこやかな笑みを浮かべている。若人2人の酒が少なくなれば率先して注ぎ、この場に立場も何もないと無粋な言葉をかけることなく存外に示して見せていた。その証拠に最初は遠慮しがちにちびちびとカップの酒を舐めるように飲んでいたコーチも今となっては注がれたそばから飲み干し、先達二人から余計に酒を注がれることになっていた。
「ところで坊主、儂のかわいい子ちゃんたちは何か欲しいとは言ってないかのぉ」
「師匠、やたらめったらあの子たちに物を買い与えるのはやめてくださいってば!」
先ほどまで饒舌に話していたはずなのに、はて?と首をかしげる老人。子供に恵まれなかった老人にとってみれば自分の愛弟子であるトレーナーと最後の教え子であるキンペイバイの子は皆、孫のような存在であり、日々の成長を間近で見ているのもあって可愛くてしょうがないのだろう。子供たちに走りの基礎を叩き込む傍ら、隙を見てはお菓子を買い与えたり、子供たちを連れてソフトクリームを食べに行ったりと元気なことこの上ない老人である。
そんな老人を子供たちは「おじじさま」と呼び懐いており、彼が家に遊びに来た時には隣の席の取り合いが発生するほどだ。以前の病気のことや彼の過去を知っている身としては減税の様子はとても喜ばしいことではある。だとしても、親であるトレーナーからすれば子供たちが変な贅沢の仕方を覚えてしまうかもしれないと、たとえ止められないとしても形だけでも止めなくてはいけないのだ。 - 1171着をねらえ!25/09/01(月) 23:34:25
「我が弟子ながら憎々しいほど立派に育ちおって。…そうだ若いの、お前さんの方で何か困っていることはないかの。機材には限度があるが人の紹介くらいならできるぞい」
愛弟子の方は今日いくらごねても無理そうだと判断したのか老人の矛先はたくあんで一息ついていたコーチの方に向けられることとなる。
サングラスの下の表情を読むことはできないが、黙りこくっている様子を見るに何かを迷っているのだろう。
それも当然の話だ、目の前の老人はただの愉快な好々爺などではない。何人ものウマ娘を栄光へと導き、後に続く者たちのために道を作り人を繋ぎ、ウマ娘レースの発展のため文字どおり人生を捧げてきた生けるレジェンドなのだ。そのコネクションはレースに関わる人間で知り合いでないものを探す方が難しく、世界各国のレース関係者ともコネクションを築き、現代の日本における海外レース遠征のノウハウを作り上げた御仁ともなれば、提示される紹介先も一つや二つの範疇ではなく、聞けば誰もが驚くような大御所ばかりだろう。どう答えることがチーム、延いては彼自身の目的を達成することに繋がるのか、酒でキレが無くなっている頭を回してその回答を探していた。
「お前さん、隠し事は感心しないのぉ」
コーチが答えを出すよりも早く、老人がいつの間にか空になっていた彼のカップに酒を注ぐ。笑ってはいたがその瞳から陽気さは消えており、なみなみと注がれたそれをこぼさないように急いで口をつけるとようやく数刻前の老人の雰囲気へと戻っていた。
「トレーナー業は元来秘密主義の多いものじゃ、儂とてその時代を生き抜いた身、余計な詮索はせん。じゃが、世話焼きな老人らしく、忠告の一つでもつけておこうかの。お前さん、担当を信頼するのは素晴らしいが、よそ見をしていてはあの子たちは進むべき方向を見失ってしまうぞ」
「…肝に銘じておきます」
この老人はどこまで自分のことを知っているのだろうか。学園で親しくなった者にもほとんど明かしたことがないことさえ、目の前の老人にはすべて筒抜けになっているようなそんな冷や汗の流れる薄気味悪さがあった。
酒の辛さに舌の根が痺れだした頃、男たちの対岸、子供たちがご飯を食べている方から桜並木の厳かな雰囲気を台無しにするような叫びが木霊してきた。
「曲線でおっぱいがボインボインなのです!?」 - 118二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 06:58:48
曲 線 で お っ ぱ い が ボ イ ン ボ イ ン な の で す !?
- 119二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 12:55:03
ペイバイちゃん初子考える時にこの設定はどうしても入れたかった動機が亡くなられた…
イリフネちゃんは末永くお元気に… - 1201着をねらえ!25/09/02(火) 13:45:49
イリフネ'sメモ⑪
「私の家のお花見会」
私のお家では春になって桜が咲くと家族皆んなでお花見に出かけるのです!
毎年、おじじさまと仲のいい人が管理人をしている公園にお弁当箱を持って行ってご飯を食べて、かけっこをして、お昼寝して、お歌を歌ったりするのです!
お弁当はお母さんとお婆ちゃん、それとひいお爺ちゃんとひいお婆ちゃんが作ってくれるのですが、今年はなんと私もお弁当作りを手伝ったのです!
(※おじじさまの知り合いは国の機関の人です) - 121二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 22:22:12
家族がいっぱいだからレジャーシート2,3枚じゃ済まないな
- 1221着をねらえ!25/09/02(火) 22:45:27
おっぱい、それは優しく包み込む母性の象徴、母の愛。
おっぱい、それは豊かさの象徴、古代から続く生命のセレスティアル。
おっぱい、そしてそれは時に残酷なまでの格差を生むもの。
その格差に、涙を流す少女が一人。彼女の名は「イリフネ」かの名ティアラウマ娘「キンペイバイ」の長女にして妹たちの良き姉であり、確かな実力を持った期待のウマ娘である。
そんな彼女にはあるコンプレックスがあった、それは…
「自分の胸があまり大きくない」ということだ
別に『無』というわけではない。確かにそこにあるという主張はしているし、揺らそうと思えばつつましくではあるが確かに揺れている様子を観測することができる。ペチャパイでも永遠の零でもない、だが決して巨乳と呼ばれるカテゴリーではなかった。
府中の街、閑静な住宅街にたなびく色とりどりの女性用下着たち、その中でもひときわ大きくその豪勢なデザインに目を引かれるのは母キンペイバイのもの。イリフネのはそれに比べれば随分と可愛らしいサイズで、文字通り大人と子供の差がそこにはあった。
イリフネは夢見ていた。いつかは自分も母のように大きく偉大な存在になれるんだと。純真無垢な心でそう信じて疑うことはなかった。
だが現実は無情で16の春を迎えてもその理想が宿ることはなく、跳ね返りっけはあっても力不足と言わざるを得ないそれはとても母のそれとは比べることなどできず、やたらと大きくなる尻と若干気にしている(かなり)太めの太ももが映る姿鏡を見て、意味のない豊乳マッサージに存在しない未来を夢見ているだけであった。
そう、今日までは。 - 1231着をねらえ!25/09/02(火) 23:15:56
昼下がり、教室でおしゃべりに花を咲かせる者、トランプをして楽しむ一団やスマホゲームに勤しむ者、この乱雑ぶりはトレセン学園では珍しくもない光景である。穏やかで、しかしカオスなこの空間に叩きつけるように開け放たれた教室の扉が新たなカオスの登場を予告する。
「頼もー!アンユークリッドさんはここの教室ですね!?」
鼻息荒く登場した金髪碧眼の美少女に教室にいたものたちの顔が若干ひきつり、そのほとんどが窓際の一人の少女の方へと視線を向けた。ふんすふんすと興奮と期待感にニマニマが止まらないイリフネはその視線に誘導されるようにその少女の元へと向かう。
「あれ~どうした~の~?あたしのお客さ~ん?」
妙に間延びした声の少女はマカロニサラダを突っつきながらふにゃけた表情を浮かべていた。白の長髪は毛先に近づくほどにピンクに色づいていて、長い髪を白玉のヘアゴムで20個ほどの数珠つなぎの団子ヘアーにしてまとめていた。所謂、ポンポンポニーと呼ばれるやつで、くせっ毛なのだろうかところどころ跳ねている髪も相まって彼女の緩やかな雰囲気にとても似合っていた。
「今日はアンユークリッドさんの噂を聞きつけてお願いをしに来たのです!」
「わぁ~あたしの名前~知ってるんだ~あたしいつのまにか有名人になっちゃったかも~」
嬉しそうに左右にゆらゆらと揺れるのに合わせて彼女の長い髪もゆらゆらと円弧を描く、大きな丸い眼を細め柔らかに笑う姿は思わずこちらもふにゃけてしまいそうになるほどだ。
「ねぇ~ねぇ~ピピちゃ~んあたし有名人かも~」
話しかけれた少しぽっちゃりめな少女は食べていたおにぎりをお茶で流し込むと少しばかり呆れたように小さくため息をついた。
「そりゃユーは可愛いから有名にもなるさね。あ、ユー、フォーク貸して」
言われるがままアンユークリッドが差し出したフォークは柄の部分まで金属製のものであったが、それがぐにゃりと捻じ曲がっており、さらには刃先で突き刺していたマカロニすら円筒形のまっすぐなマッケローニから捻じ曲がったフリッジへと姿を変えていた。
「これは見事な捻じれっぷりなのです…」
「またやっちゃった~」 - 1241着をねらえ!25/09/02(火) 23:26:29
これが日常茶飯事なのだろう、ぽっちゃり少女はしょうがないなと笑みを浮かべるとぐっと両腕に力を籠める。少女の柔らかな肌に力の根源である筋繊維が浮かび金属原子の結合をほどき、塑性変形させる音がキーと鼓膜を刺激する。へたりと前方向に倒れた耳が再び立ち上がるのは少女がまっすぐに治ったフォークを差し出してからのことであった。
「あらためて~自己紹介するね~あたしは~アンユークリッド~」
後から遅れてやってきたダイナソアシーを加え、古事記に記された作法に従い挨拶会が開催されていた。相も変わらず間延びした声でゆらゆらと揺れる白髪の少女──アンユークリッドは特徴的な数珠団子ヘアと大きな丸い目が特徴的であった。
「わたしはピピボーイング。こんなんでもクラシックウマ娘ね」
先ほど腕力でフォークを直したパワー系ウマ娘──ピピボーイングはコロコロとしていて非常に愛くるしい見た目をしていた。競争ウマ娘というにはすこしばかり太ましい気がしないでもないが、クラシックの舞台に立てているということは相応の実力があるということの証左でもある。走るウマは見た目では分からないという格言を信じるのであれば、彼女を侮ることはできないだろう。
「ピピちゃんはね~入学してから~ず~っと友達なんだ~」
身長160センチのアンユークリッドが身長150センチのピピボーイングに寄り掛かれば身長差からピピに相当に負担がかかるように思えるが、微動だにせず甘えてくるアンユークリッドを受け止める彼女の姿にはその体の内に秘めるパワーを感じさせる。
その仲良しな二人の姿を見て、イリフネが羨ましそうに投げかけてくる視線をダイナソアシーは見逃さなかった。
「いや、私とイリフネだと私、潰れちゃうから」
その言葉に見るからにしょんぼりとするイリフネにダイナソアシーの心が痛む。
結局、その後2人のようにやってあげ、案の定潰れるソアラであった。 - 125二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 23:56:03
とうとう他の子達も登場か
これは桜花賞が楽しみになってきた - 126二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 08:04:18
保守
- 127二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 08:09:37
コードヘブンの娘も出るのだろうか
- 128二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 17:26:18
- 1291着をねらえ!25/09/03(水) 21:55:28
「ところで今日訪ねてきた要件はなにさね、生憎だけどチームの勧誘とかなら受け付けないよ。この子こんな緩い感じだから流されやすくって悪徳チームなんかに入れられたら大変だわ」
ピピとユーに触発されてソアラにじゃれついていたイリフネであったがピピの言葉にここに来た理由を思い出していた。それにしても、緩く溶けているアンユークリッドの頭を撫でまわし続けるピピを見ているとどこか母の面影を感じてしまう。そこまで大きくない身長やそれにしては大きい方な胸など共通点を探そうと思えば見つかりそうではあるが、一番は心配の表情の中に確かな愛情が垣間見えるからだろうか。
「すっかり忘れてたのです!実は…曲線でおっぱいがボインボインという話を聞いてしまったのです。だから私もボインボインにしてほしいのです!」
一瞬にして訪れる静寂、呆れるソアラ、状況を飲み込めていないピピ、1人だけ熱意とッ希望に燃えるイリフネ。
「ほへぇ~?」
そして、能天気に首をかしげるユーの姿があった。
「さぁ!遠慮せずに私をボンキュッボンのナイスバディにして欲しいのです!キュッボンは自前であるのであとはボンだけなのです!さぁ早く!さぁ!」
長年のコンプレックス解消の瞬間が目前まで迫り興奮を隠しきれないイリフネはグイグイとユーに詰め寄り、バストアップを迫る。そんな暴走した親友にソアラがポンと肩を叩く。
「イリフネ…この人困っちゃってるから、ちょっと落ち着け」
抵抗するイリフネを無理やり引きはがし、再び大きなため息をつく。普段はあんなに賢くて人にやさしくできるのにどうしてここまでおかしくなってしまったのか、その原因が自分にあるとはいえ、ソアラは親友のコンプレックスを見誤っていたことを少しばかり後悔していた。
「ちょっといきなり何言いだすのさ。曲線で…なんだって?」
思考がリローディングされ現実へと復帰してきたピピが先ほどイリフネが口走っていた謎の言葉に疑問符を浮かべる。それに対し、ソアラはバツの悪そうに冷や汗を浮かべることしかできなかった。
「ほんとごめんなさい、あれは私が不用心だった…」
ことの発端はお花見会の日へと遡る。 - 130二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 22:11:28
物理的にすらものが曲がっているくらいなので悪徳チームに入ったらこれが自壊を起こしていくブラックコメディが始まりそう(小並感)
- 1311着をねらえ!25/09/03(水) 22:27:39
昼時、お花見会の盛り上がりが最高潮のこの時間、イリフネの家族、父親のチームのウマ娘達、そしてイリフネの属するチーム「オルク」のウマ娘たちが重箱に詰まった色鮮やかな豪勢な料理と様々な具材の詰まったおにぎりに舌鼓を打っていた。
家事万能料理上手なイリフネの母キンペイバイと、長年の経験を持つおばあちゃんズ、そして長年府中の街で暖簾を掲げ続けている町中華の現役店主であるひいおじいちゃんの力を集結して作り上げられたお花見弁当の味は格別であり、皆好きな料理を摘まんでは桜に負けないほどに話に花を咲かせ、公園の中でも特ににぎやかない一角を作り上げていた。
「いや~やっぱキンペイバイさんの料理は美味しいね。人の作り出した文化の極みだよ」
ソアラもまたこの絶品な料理たちに舌鼓を打ち、お花見を楽しんでいた。ニンニク味噌のおにぎりをウーロン茶で流し込み、おじさん臭い至福の声を上げ料理の余韻に浸っていると、隣に座る親友の食指があまり動いていないことに気づいた。いつもならば大口を開けているだろうおにぎりを一かじりしただけで膝の上に載せているのは実にイリフネらしくない行動であった。ぼーっとどこかを見つめているイリフネの視線を辿れば、そこには今年生まれたばかりの彼女の末妹に母乳を与えるキンペイバイと、それを観察するヒビノミライの姿があった。
どうせまたヒビノミライの方を見ているのだろうと考えるとソアラとしてはいい気分がしなかった。あのウマ娘…ウマ娘と呼んでいいか怪しい少女は明らかに普通ではない。引きずり込まれるような瞳も、“本気”と称して得体のしれないオーラを垂れ流すのにも、彼女の周りがヒビノミライを“本物のウマ娘”と持ち上げ、あまつさせ親友であるイリフネまでもがその思想に傾倒している現状が気に入らない。あの薄気味悪いウマ娘から感じる恐怖の正体が分からないからこそソアラはヒビノミライというウマ娘を好きになれていなかった。
「ねぇ、ソアラ」
「何?」
「私もおっぱいが大きかったらもっと魅力的に見えると思うのです?」 - 1321着をねらえ!25/09/03(水) 22:41:34
口に含んでいたウーロン茶が垂直投射される。むせかえった呼吸器官が痛い。ドンドンと胸を叩き痛み以外の思考ができるようになってまず最初に頭に浮かんだのは、なにを言っているんだこいつはというシンプルな疑問だった。
イリフネ、我が親友はとても容姿に恵まれたウマ娘である。まずもってウマ娘に生まれることができた時点である程度の容姿というのは担保されている。レースを走るウマ娘が皆、美女、美少女ばかりなのはこうした種族特性によるところが大きい。そんな美形種族の中でもイリフネはとりわけ容姿に優れたウマ娘であった。母親譲りの大きくはっきりとしたタレ気味な二重の碧眼、健康的な乳白色の肌に陽光を浴びて輝く黄金の髪、常に笑顔を浮かべる整った顔立ちに、長身ですらりと伸びた長い手足は所謂モデル体型、メリハリもあり誰もが憧れるような完璧な容姿を持っていた。それでいて努力家で家族・仲間思いなところもソアラがイリフネのことが好きな理由でもあった。
そんな親友が胸の大きさという俗すぎる悩みを、しかもこの桜の場所でともなればお茶の一つや二つがむせるのもやむなしであろう。
「どうしたいきなり・・・」
とにかくまずは理由を聞き出そうとするソアラであったが、イリフネは浮かない顔で乾いた笑みを浮かべる。
「私、自分のことやればできる子だと思っていたのです。でも、トゥインクルシリーズに出てトレーニングやレースをする度、やればできる程度じゃダメなんだって思うようになってきたのです」
才能の壁、素質の壁、努力の壁、レースへの道を志したウマ娘は必ず壁にぶつかり、そのたびに己の存在を自問自答させられる。今のままでいいのか、もっと強くなるにはどうしたらいいのか、その問いへの自分なりの答えがウマ娘を強くし、彼女たちを大人にしていく。
イリフネよりも先にレースの道へと歩み出したソアラはついに親友にもこの時期が来たのかと少しばかり感慨深い気持ちになっていた。妹たちの前では理想的な姉として振る舞い、学園でも困っている人を見過ごせない優しい人物である彼女は皆から愛されそして頼られている。だが、その内面はまだまだ子供で弱さもわがままなところだってあるごくごく普通の女の子であることをソアラは知っている。そんな親友が大人の階段を上り始めたのだ、自分もできるだけ彼女の力になってあげたい、そう思った。 - 1331着をねらえ!25/09/03(水) 22:50:34
しかしだ、それとおっぱい、一体全体何の関係があるというのか。
「レースで走るウマ娘の中にすごく大人っぽい人や強かった人もいたのです。その人達やお母さん、先輩やソアラたちと私の何が違うのか考えてみたのです。そして気づいたのです…それはおっぱいだと!大体の人が私よりもおっぱい大きいのです!」
呆れて物も言えなかった。なんという低俗かつ最低すぎる気づき…親友のことながら頭が痛くて仕方がない。
「あのさぁ…はぁー…」
感動を返して欲しいと思うほどにため息が止まらない。どうして私の親友はこう大事なところで抜けているのかと恨めしそうにイリフネの方を見ても私服の上から胸をまさぐりふにょんと形を変えているのを見ては呆れて文句を言うこともできない。
「…そんなに大きくしたいなら噂の曲芸師のとこにでも行ったら?なんでも曲線で胸を大きくしてくれるとか…」
「曲線でおっぱいがボインボインなのです!?」
ダイナソアシーは情報屋である。情報収集を勝つ手段とする彼女にとって噂は勝利への道筋も一つ。だから噂に目ざとく、地獄耳であった。この噂もどこかからか仕入れてきたもので、クラシックのティアラ路線に出走する有力ウマ娘のものらしいが信憑性には今一つ欠けるものがあった。しかしそれでもこのめでたいときに親友の下世話な話を聞かなくて済むのならと、彼女らしくなく真偽不明の情報を投げつけたのであった。 - 1341着をねらえ!25/09/03(水) 23:26:43
そして今、絶賛後悔の最中であった。
「ごめん、これは私が悪い」
申し訳なく頭を下げるソアラ、それを見てピピも怒るに怒れなくなっていた。
「いや…まぁいいさね、そういう噂があるってのは知ってたし。でもそんなに大きくっていいもんかね」
愚痴のようなピピのその言葉にソアラも無言で頷く。ピピボーイングは小柄でコロッとした容姿に騙されそうになるが身長の割にはかなり大層なものをお持ちであり、同じく小柄なソアラもそこそこに“ある”側のウマ娘であった。
「持つ者は持たざる者の嘆きは分からないのですー!」
そのふくらみに自分の苦しみが詰まっているんだとばかりに半分涙目で訴えるイリフネ。そんな彼女の制服の裾をちょいちょいと誰かが摘まむ。
「やったげよ~か~?」
「その、大丈夫なの?副作用とかそういうやつ」
結局、やることになった豊胸術にソアラは不安を募らせていた。曲線だか曲芸だかわからないがいきなり身体の一部を変形させるなど副作用的サムシングがあって当然のことだろう。これから桜花賞を走る親友に何かあってからでは後悔も遅いというものである。
「だいじょ~ぶだよ~今まで~腸ねん転が~ひとりだけだから~」
制服を脱ぎ、下着姿になったイリフネの胸を揉むユーは聞き捨てならないことを言っている気がするが既に始まっていることをソアラには止めることができなかった。出来ることと言えばわざとらしく変な声を出している親友の頭をひっぱたく位のものである。 - 1351着をねらえ!25/09/03(水) 23:27:46
「これどのくらいで終わるのです?流石に長時間は私でも恥ずかし…」
珍しく女の子らしい恥じらいを見せるイリフネ。手を止めることなく動かし続けながらユーはうなって考える。
「なんかね~気づいたらって感じなんだ~だから~わかんな~いな~それとも~あたしに触れるのはいや~?」
やはり間延びした声で気が抜けるような話し方に仕方ないかという気持ちが不思議と湧き上がってくるのと同時に、とろんとだが芯のある瞳で見つめられながら胸をまさぐられ続けているとなにやら体の底から熱的な感情が沸き上がってくるようなそんな感覚がしてくる。その正体がなんなのかイリフネには分からなかったが、彼女も知らないうちに漏れ出ていた初心で艶っぽい声は周りの2人の頬を赤らめるには十分すぎるほどであった。
「う~ん~どうかな~」
それから数分後、首をかしげながら手を離したユーは確認を求めるように声をかける。高揚した頬がまだ熱っぽいイリフネは先ほどまで他人の手があった胸元を確認するように触り、その表情を徐々に明るくしていった。
「おぉ!これは!ソアラ!どうなのです!?」
興奮と共に親友に言葉を求めるイリフネ。
「いや、まったく変わってない」
しかし、その期待は無情にも切り捨てられた。
「うん、清々しいくらい変わってないな。毎日イリフネの裸を見てるからわかる、本当に一つも変わってない」
言いすぎなくらいに正直に言う親友の言葉にイリフネは力なく崩れ落ちる。夢と希望にあふれた少女はブラジャーのみのトップレスで情けない姿を晒しただけに終わった。 - 136二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:01:38
イリフネちゃんも「まったくない」レベルではないけど、いちばん見てきたおっぱいが規格外だからまあ憧れも強いよなあ
- 137二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 09:19:19
胸以外の何かに影響が発生してたりして……
例えば頭打ちの成長曲線とか - 138二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 09:31:51
いっそ絶壁ならば気にしなくなるかもしれないけど、なまじっか希望が持てるから…
- 139二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 18:38:31
- 140二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 18:50:36
そう考えると胴がでかいのかな
フジさんのアンダーが小さいのかイリフネのアンダーがでかいのかはわからないが - 141二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 18:55:49
- 142二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 19:01:41
- 1431着をねらえ!25/09/04(木) 21:32:27
「あんまりなのです…世界が残酷すぎるのですー!!」
イリフネは走っていた。納得のいかない現実、変わることのない事実への不満が爆発して絶叫という捌け口から濁流のごとくあふれ出しては時速60キロ弱の風の中へと揉まれちぎられ消えていく。走ったからと言って何かが変わるわけでもなく、バカの一つ覚えでグラウンドに刻み込んだ足跡が彼女の幼さを嘲笑しているようだった。
「むむ~もうしわけない~」
「そんなことないよ。こんなバカげたことに付き合ってもらったんだからイリフネも文句は言わないはずだよ。それに、今回ははしゃぎすぎたからちょいとお灸を据えないとね」
アンユークリッドは先ほどからトラックを何周もしているイリフネを見て申し訳なさそうにダイナソアシーに詫びを入れていたが彼女はそれを微笑を浮かべながら受け取っている。ソアラの言う通り、今回に関しては噂を教えたソアラ自身をそれを聞いて猪突猛進したイリフネが全面的に悪いのだ、アンユークリッドが気に病む必要性などどこにもなかった。
「ありがたや~」
曲線を描く独創的なお辞儀を披露するアンユークリッドであったが、その脳裏にはとある不可解な点が引っ掛かっていた。 - 1441着をねらえ!25/09/04(木) 21:33:47
彼女が物を歪める時、アンユークリッド自身はそういった意思を持ってやっているわけではない。ただ、心地の良い暖かさを感じそれを求めて無意識に手を動かしているうちにありとあらゆる物がいつの間にかに捻じくれてしまうのだ。
彼女自身はこれを難儀な自分の癖だと考えているが、実態は少し違う。
この世のありとあらゆるものはその存在を定義する“個”が存在し、人はこれを時に魂と呼ぶ。魂は熱量を持ち、ありとあらゆるものは熱をもって生というあやふやな物を定義化しこの物質世界に存在している。外見というものは魂が纏う器に過ぎず、魂の形質が変われば外見が変わるのは必然と言っていいいだろう。彼女はこの魂にわずかながらに触れることができた。それを彼女は知らないが、彼女に関わるものたちが捻じ曲がっていくのは彼女が知らず知らずのうちに魂の形を変えてしまっているからなのだ。
噂の原因となった事案に関しても、そうしたことが原因であり、本来であればイリフネも彼女が望むように形を変えることができていたかもしれない。だが、彼女は特殊だった。
「イリフネちゃんは~ちょびっとぬるかったなぁ~」
アンユークリッドが感じる暖かさというのは物によってそう大差があるものではない。人だろうが木だろうが金属だろうが大体同じくらいの暖かさがある。
だというのにイリフネは今まで感じたことのない、例えるなら浸かるには少々寒いぬるま湯のようなそんな暖かさしか感じ取ることができなかったのだ。その得体のしれない違和感にアンユークリッドは首をひねり続けるのだった。 - 1451着をねらえ!25/09/04(木) 22:44:02
その夜、トレセン学園の食堂では今日も今日とて学生たちで賑わい、料理と汗と制汗剤と土のにおいが充満したカオスが鼻孔をくすぐり腹の虫を急かしている。みな選択式の夕食に舌鼓を打ち、今日会ったことや明日の予定、提出しなければいけない課題に恋の話、年頃の少女、忙しい学生らしい話で盛り上がっている。
そんな楽しげな雰囲気な食堂の一角、とても同じ空間とは思えないほどに沈み込んだ暗い雰囲気のテーブルがあった。サバの味噌煮に箸をつけていたボーイッシュなウマ娘──グレンリベットはこの重苦しい空気の原因である対面に座るウマ娘の様子をチラチラと伺っていた。
「お、お姉ちゃん元気出して…ほら、俺のサバちょっとあげるから」
そういって白米丼の上にちょこんと切ったサバ味噌を置くと、無言でガツガツと米と一緒にサバを頬張る。つまった飯を水で流し込むと、彼女の姉であるイリフネの目からぽろりぽろりと涙が零れる。今日あったことは同じ席に座るダイナソアシーから大体聞いている。いつだって妹たちのお手本だった姉にそんなコンプレックスがあったことに驚くとともに、この落ち込みっぷりからどれほどそれが深いものなのか嫌でも理解させられる。
「うぅ…こんな優しい妹を持てて私は世界一幸福な姉なのです…」
大げさすぎるほどの言葉だが、普段の姉の言葉を見ればその言葉が心からの本心であることくらい妹のグレンリベットにはすぐに分かった。
鼻をすすりながらも白米を口に放り込んでいく姉の姿にほっと一息をつくとキノコクリームパスタを食べていたダイナソアシーがわざとらしく金属製のフォークを陶器製の平皿に立てかける。
「ところで、相談したいことってなに?」
普段イリフネとソアラの夕食は一緒に食べるかイリフネのチームのウマ娘を交えて食べるかの2パターンがほとんどだ。時たまクラスの友人やイリフネの妹たちと食べることはあっても、グレンリベット一人だけが訪ねてくるというのはかなり珍しいことであった。
「あの、実は俺、本格化が来たっぽくて。それでトゥインクルシリーズに登録しようかなと…思ってて」 - 1461着をねらえ!25/09/04(木) 22:45:02
なるほどそういうことかとソアラは納得しつつコップの水を仰いだ。トレセン学園で競争ウマ娘を志す者は個人差はあれど皆トゥインクルシリーズへと出走する。出走を決める基準となるのが本格化であり、これが来た順番から登録していくのでトゥインクルシリーズにおける同期というのは年齢が一致しないことがよくある。
そして、このレースシリーズへの登録は一生に一度きりしかできない。本格化を迎え登録に本腰を入れることになる新米たちは当然、人生における大事な分岐点で悩み不安を抱えることとなる。そうしたウマ娘の多くは知り合いの先輩を頼り、アドバイスや心構えをうけるというのがトレセン学園での伝統の一つでもある。
「それはめでたいね、おめでとう。で、何が聞きたいの?スキルとかレース場でのやったほうがいいこととかなら教えられるけど」
そうなると、ここで答えるべきはトゥインクルシリーズでのレース歴がこの中で最も長い自分であるというのを理解したソアラは新米が聞きがちな質問の候補を並べるが、どうにもグレンリベットが聞きたいのはそういうものではなさそうだった。
「俺、弱気な自分を変えたくて少しでもカッコよくなりたいんです。レースに出るのもそうしたらカッコいい先輩やお姉ちゃんみたいになれるかもしれないって思って…あの!ダイナ先輩とお姉ちゃんは何を目標にレースにでたんですか?」
それは切実だが大事な質問であった。多くの人間が歩む普通の道からはみ出し、親元を離れトレセン学園に通いトゥインクルシリーズに出走するようなウマ娘は皆大小さまざまな目標を掲げているものだ。自分の力を証明したい者、可能性を探求する者、憧れを叶えたい者、ウマ娘の数だけ目標があり、理由がある。 - 1471着をねらえ!25/09/04(木) 22:50:26
勿論それはダイナソアシーも同じである。
「私の目標はグランドスラム制覇。まだ道半ばだけど、これは私の夢だから必ず叶えて見せるよ」
グランドスラム、それはレース界に数ある称号の中でも最も困難で最も過酷な道の一つと言われている。春と秋の天皇賞、宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念、まずもって出走することすら難しいこの5つの大レースを“1年間”で達成することによって達成される限られた英雄にのみ許された称号であり、今まで1人しかその栄光を手にした者がいないとなればそれがどれほどのことなのかも分かるものだろう。
「グランドスラムって…あの超難関な条件のですよね。すごい…応援してます!」
大きく掲げられた先達の目標に感動したグレンリベットは、その高ぶった心のまま姉の方へと向く。
「お姉ちゃんはどんな目標でレースに出たの?」
やっときたこの瞬間にイリフネは意気揚々と胸を張る。
「ふふん、お姉ちゃんの目標、それは…」
高らかに叫ぼうと目一杯に肺に空気を詰め込む。酸素を交換し終え、喉を震わせる振動となるはずだったそれは、なぜか喉元を通り過ぎては霧散していき、言葉が続くことはない。
「それは…」
徐々にトーンダウンしていく声。今日この日、イリフネの口からそれに続く言葉が紡がれることはなかった。 - 148二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 23:05:23
>時速60キロ弱の風
地味にこれが気になる
いくらクラシック期でまだまだスピードが鍛えられていないと言ってももう10から20(までいくのはガチの伝説級だろうけど)はあっても良いはず
ましてイリフネは世代でも格別の資質を持っていると思われるわけで
能力の伸び悩みやウマソウル<意志力な在り方に加えて魂の熱がぬるいこともあるしここもそれらと関係していそうだな
- 149二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 07:02:43
本当のウマ娘は心に勝負服を持っている
これはイリフネちゃんの言葉の引用だけど、実際は彼女自身の心がまだ定まっていないのか - 150二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 15:27:02
まだウマソウルが励起していないっぽい
- 1511着をねらえ!25/09/05(金) 21:22:42
桜花賞までもう間もなくと迫った春の日、グラウンドには相も変わらず色とりどりのウマ娘たちが汗を流し今日も今日とてトレーニングに励んでいた。
「イリフネちゃん、随分スキルの使い方がうまくなってきましたね」
勇猛驀進といった様子で一心不乱に走るイリフネ、彼女の纏う青いオーラを見てムーバは満足そうにそう呟いた。
スキルという技術はごく最近になり開発されたものであるが、それがレースひいてはトレーニングに与えた影響は大きい。少し前まで育成の程度というのは目算やデータからの推測、つまるところはトレーナーの経験による判断が占める比重が非常に大きかった。
ところがスキルというある一定の水準に到達することによって獲得できる“誰の目にもわかる成長程度”というものが確立されたことにより基準の曖昧な成長というものに明確な基準が生まれたのだ。今日に至ってはどの程度のスキルをどのくらい習得しているのかがウマ娘育成において非常に大きなファクターの1つを占めている。
スキルの習得にもセンスや才能が関係しており、優れたウマ娘はより優れたスキルをより多く獲得でき、それが彼女たちの強さを裏打ちする理由の一つとして存在している。
その点、イリフネはスキルの習得の速さでいえば現トゥインクルシリーズの古株であるムーバからしてみても舌を巻くほどであり、乾ききったスポンジの如く教えたスキルを超短期間で習得し、自分のものとしている。未だ固有スキルを獲得できていないこと、強力なスキルに成らないことは少々気がかりであるが、十分にGⅠ戦線を戦っていけるだけの力があると言えるだろう。
「戦っていけるだけではだめだ」
しかしそれをコーチが一括する。今日は一段と黒いサングラスが威圧感という説得力を纏い、突き立てられた竹刀の如く真っ直ぐな厳しさが目元に宿る。
「アイツは桜花賞に出走し、“勝つ”ために努力している。指導し導く側が“戦える”程度の結果に満足することはアイツへの裏切りに他ならない」
その言葉に現れるコーチの矜持にムーバは一歩下がるとグラウンドを走るイリフネを見る。
前回のレースからスタミナもパワーもスキルの量も確かに上がっているし増えている。それは以前と今のトレーニングの強度を見れば明らかだ。なのに一向に“トップスピード”だけが変わらない。昨日を超えるいい走りができても今日と昨日のタイムは同じ。 - 1521着をねらえ!25/09/05(金) 21:25:15
本来ならばもっと先に行っていいはずなのに、成長という世界のルールに彼女一人が取り残されてしまっている。結果という必然に彼女だけが裏切られ続けている。
それを知ってか知らずかイリフネの表情は明るくなかった。とはいっても、その表情の理由は昨日のあの会話のことであった。
『お姉ちゃんはどんな目標でレースに出たの?』
妹からの質問にイリフネは答えることができなかった。だが別に何も目標がないわけではない、イリフネにだってなりたいビジョンはある。それは母キンペイバイである。母のように強く優しいウマ娘になりたい、それはイリフネの小さなころからの目標である。だがそれはあくまで“生き方の指針”であって、レースを走ってどうこうするというものではない。
妹であるグレンリベットのようにレースを通して“自分を変えたい”というものでもなければ、親友であるソアラのように特定のレース・称号を目指し走っているわけでもない。
どのレースに出たいかくらいは考えたことがあっても、レースを通して何をするのか、トゥインクルシリーズでなにを成し遂げたいのか、よくよく考えてみればそんなこと一度も考えたことがなかった。それでこの先いいのだろうか… - 1531着をねらえ!25/09/05(金) 21:26:19
「いいんじゃないかな」
声に振り向けばいつもの微笑を浮かべたお姉さまの顔がそこにあった。
そうだ、このチームに入りたいと強く願ったのはお姉さまにあってからのことだった。他のウマ娘には生み出せない美しくそれでいて網膜を焼くような激しい閃光、渦巻く銀河を瞳に浮かべるその少女にイリフネは心打たれた。強さだけではない、その存在そのものにイリフネは強く惹かれていた。初めてヒーローを見た幼子のようにいつだってその光を追い続け、憧れていた。
では、レースに出るのはお姉さまに追いつくためか、そう聞かれてもイリフネは素直に首を縦には振れなかった。確かに、お姉さまに追いつきたい、そう思う心は確かにある。だが、レースに出る理由の本質がそれかと問われればそれは何かが違うような気がするのだ。
「今、無理に理由を探す必要はない。理由がなくても走っていいのがレース。答えのないまま心を当てはめてもターフの上で迷子になるだけ」
お姉さまはいつだってこちらの心を見透かしたかのような言動を見せる。今だってそうだ、微笑みを浮かべて優しい言葉をかけてくれる。
「イリフネはレースが好き?」
「それは…勿論好きなのです」
「なら、今はきっとそれがあなたの走る理由になってくれる」
だが、その優しい言葉にイリフネは思うことがあった。
レースが好き、そんなの当たり前のことじゃないかと。 - 154二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 21:43:16
どこぞの王子様でいう天衣無縫の極みってやつか
- 1551着をねらえ!25/09/05(金) 22:36:16
この時期のトレセン学園ではとある言い伝えが流行り始める。
『3女神の微笑みに認められたウマ娘はさらなる力を得ることができる』
言い伝えには人によって多少内容が変わるが、大体の内容はこれである。4月初頭、トレセン学園にある始祖の3女神像の前を素質のあるウマ娘が通ると、歴代のウマ娘から力の一端を譲渡されるというオカルトに肩まで浸かっている思春期の煮凝りのような噂であるのだが、それを裏付けるような発言が強豪ウマ娘たちから飛び出してくるものだから妙な信ぴょう性も相まって変に期待をしてしまう者が後を絶たない。
イリフネも以前はこの噂に心ときめかせていた内の一人であったが、親友のソアラが何もなかったことからこの噂を信じることを止め、今やその存在すら記憶の片隅で埃をかぶってしまっている。
だからだろうか、トレーニングが終わり食堂で先に待っているとソアラからのメッセージにドタバタと着替えを済ませ小走りで駆けていく際中、3女神像の横を通り過ぎた瞬間に暗闇に暗転してしまった世界に彼女は戸惑いを隠せないでいた。立春は過ぎて今の時間は日が落ちかけていてもこんな漆黒の暗闇に包まれるようなことはない。見回しても街灯一つすらないこの空間にイリフネは薄気味悪さを覚えると同時に、なぜか体の芯がふわりと軽くなるようなそんな感覚を感じていた。
心地よい浮遊感に体を預けようとすると、自身の頭の上、闇を切り裂くような閃光に思わず顔を覆う。その光はイリフネの方に近づきながら2つへと別れ、螺旋軌道を描き、彼女の眼前を通り過ぎる。その光を追って目線を走らせれば、彼女の前には薄ぼんやりと光る人型の形をしたナニカがいた。身長はイリフネと同じくらいか、ロングの髪はちょうどイリフネが髪をほどいた時と同じくらいに見える。 - 1561着をねらえ!25/09/05(金) 22:41:30
「あなたはいったいだれなのです…?」
人影はゆらゆらと揺らめくだけでイリフネの質問には答えてくれない。それどころか、イリフネから遠ざかってい行ってしまう。慌てて追いかけるイリフネだったが、いつもとは違う浮遊感に上手く力が籠められず人影との差は広がるばかり。
だが、不思議と諦める気持ちは湧かなかった。それどころか、本能があれを追いかけなくてはいけないとそう叫んでいるようにも感じた。走って、走って、走り続けて、それを長いこと繰り返して人影との距離がちょうど1バ身まで縮まるとそれ以上が進まなくなってしまう。いつも自分を限界の内側に閉じ込めるこの決められた速度の足がいつも以上に憎々しい。
果てしない無限光、いつ終わるとも知れない追走についに終止符が打たれる。遥か前方に2つの光が揺らめき、また1つの閃光となって輝きだしたのだ。それが何なのか、イリフネには分からないがそれがゴールであることだけはなんとなくわかった。
人影もそうなのだろう、それまでとは比べられないほどに速度を上げ、爆発したかのような推進力を得てイリフネを突き放していく。イリフネはただただそれを見ていることしかできず、せめてものあがきと必死に伸ばした手が光と共に人影を隠す。
「教えてほしいのです!あなたは…あなたはいったい!?」
その叫びが人影に届くことはついぞなく、それが光の中に溶けるのと同時に世界は元に戻り、イリフネの鼻孔にその残滓として草原の香りを僅かばかりに残していた。
現実に戻った心地を腹の虫で感じたイリフネは先ほどの奇妙な体験を思い出していた。そしてそれに最も近しい記憶、あの3女神像の噂を思い出し、彼の像を見上げる。もしあれが噂通りの出来事であるのなら何か変化があるはずだ。しかし、今のイリフネに特にそういった実感はない。だとすれば、ただの走り損・驚き損だろう。
しかし、イリフネにはあの人影がただの無意味な存在にはどうしても思えなかった。その理由は分からない、だが必ずあるはずのその理由をイリフネはこの日から考え続けることになる。 - 157二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 22:53:15
ロングの髪ってことはタイキじゃあないな
果たして何者から継承したのか - 158二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 07:50:05
競走馬イリフネ(●●●●●イリフネ)
父タイキシャトル、母キンペイバイ、母父サクラバクシンオー(仮)
そういえば全員髪をしばっている髪型なんだよな - 159二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 16:48:39
【名前】バーチカルスカイ(Vertical Sky:由来「縦長の空」)
【耳飾り】右耳……なのだが、意図的に左にしている。出走時のみ右
【身長】169cm
【スリーサイズ】B80・W58・H89
【髪色】原毛色青毛のマーブル芦毛。平時はウルフカットだが固有スキル覚醒以降は発動の度に尻尾の先にも届くほど伸びる。
【走り方】逃げ
【紹介】
少しイリフネに近いスタイルをした、琥珀色にミントブルーのハイライトの目をしたウマ娘。
存外根明な思考回路だが、それを覆い隠すほどにとても臆病な感覚——ウマソウルの本能がある。
そんな自分を変えたいと願い、心が本能を超越してこそ最強になれると応じたトレーナーに師事している。
(既存人物か別途かで迷ったのでおまかせ。ウマソウルのことがわかるウマ娘のトレーナーっぽさは書いてて感じますが人に預けるのに増やさせすぎるのもなあ)
現在は自らの超えるべき本能と思考し選択する確かな自分の意志とを掴むため、「衝動と反対のこと」を日常的に実行中。
寝転がる豚が食べたければ川を上るシャケを喰い、コーヒーが飲みたければ紅茶を飲む。
右耳飾り・ハーフパンツがしっくりくることを理由に左に耳飾りを付けるしブルマを履いている。
勉強をしたければ遊ぶしその逆もするし、走りたい時に走らずそうでない時に走る。
さらには胸の奥から王道路線への想いが湧いたからこそ、ティアラ路線を目指すこととする。
そうしてトレーナーに聞いたウマソウルの話に基づいて自分自身の無意識の挙動を常に意識して暮らし続けながら、自分がどんな者でありたいかを探していたその時、クローズドメイデンとサイレントオナーズを仲裁するイリフネを目撃。
背格好も似た彼女に見た自らの意志を感じさせる「強い」姿に強い憧れを抱くようになる。
それをきっかけにパフォーマンスが目覚ましく向上し、未勝利脱出後確かな進撃を開始。
イリフネの志望を知ると、彼女を追って明確な意志を持って桜花賞を志願する。
自らの在り方を組み直すための逆張りではない、確かな自分の心の手本が彼女にあると思ったから。 - 160二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 16:50:16
>>159続き
【走り方】
その走りは天性の逃げ足。だが伝説の鏑矢に近い傾向のウマソウルなのか、そのウマ娘が引退後語ったような本能的な錯乱リスクが存在。
レース中の挙動が極めて不安定な上日常生活でも人目を伺って争いが起こらないように生活せざるを得ない始末であった。
だが現在は魂と異なる「自分」を育て始め、イリフネという手本を得たことによってその魔物めいた恐怖の塊に制御が効き始めている。
結果、彼女と目標を合わせたレース選びになったり、走りとしてもイリフネの記録を見よう見まねした走り方になっているが、当然ながら自分の走りとしてチューニングする余地がまだまだ大いにあるようだ。
振り回されるわけでもなければ拒絶・抑制でもない本能以上の意志を持って乗りこなす、ウマ娘が人類として在る理由を示す走り。
それこそが、トレーナーがバーチカルスカイに示し、目指している境地である。
- 161二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 22:54:01
- 162二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 22:57:29
- 163二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 08:26:07
朝★
- 1641着をねらえ!25/09/07(日) 16:26:47
『2番 ピピボーイング』
4月もうららかな阪神レース場、ウマ娘の熱気と汗と夢で溢れたこの場所は今日は殊更に華やかに、それでいて煌びやかに光り輝いていた。それもそのはず、今年もファンファーレを待つクラシック戦線、その第1走にして乙女たちの憧れの集うトリプルティアラの第一宝冠「桜花賞」の開催日とあっては誰のものでもない桜の花も今日ばかりは彼女たちのために花びらを舞い散らすのも当然の摂理であった。
レース場の中でも観客席と同等か、それ以上に賑わうパドック(下見所)にはバズーカと称される大型のカメラレンズを装備した精鋭たちが白い柵に囲まれたステージに仰角高く己がブツを黒光りさせている。視線の先にはまるでキャビンアテンダントの装いのウマ娘が1人、彼女がポーズをとるたびに機械式シャッターが夏のセミのように大合唱を上げ、左に右にと立ち位置を変えるたび、カメラの砲身もまた左に右にと一斉に動く。
なんとも奇妙奇天烈な光景であるが、これはレース前に観客にまじかでその姿を見せるための大事なプロセスであり、レースが神事であった名残を感じさせるものでもある。
パドックの壇上には原則として1人のウマ娘のみが立ち、入れ替わり立ち代わりで衆目の前へと立つ。今は2番ゲートから出走するピピボーイングの番というわけだ。彼女が下がれば次に3番、その次に4番と順繰りで各ウマ娘の出番がやってくる。パドック裏では特大の晴れ舞台を前にして緊張した面持ちのウマ娘が控え、自分の番をいまかいまかと待っていた。
「次、4番お願いします」
係員の指示により一人の少女が立ち上がる。勝負服を隠すように茶褐色の外套を身に纏い、壇上へと歩み出す。 - 1651着をねらえ!25/09/07(日) 16:28:02
『4番 イリフネ』
壇上に立つは金の髪の少女、空のような青い瞳、首から下を纏う外套が春風に揺れる。それを勢いよく剥ぎ取り、大空へ投げ捨てる。視線が天に舞う布切れへと誘導され皆が空を見上げる、そして揺れ落ちるのに合わせて重い頭を元に戻せばそこには一張羅に身を包む彼女の姿。
首元に巻かれた黒いスカーフ、オフショルダーのワンピースタイプのトップスの方から飛び出す白く細い腕は質素なデザインのロンググローブに包まれ、彼女の細身の上半身のシルエットの美しさを際立たせ、ミニスカートの上からあつらえられた4本の長裾は2枚重ねとなり風に揺れるたびにその姿を幾重にも変化させる。ガータータイプのロングブーツはその素材のしなやかさと柔軟さを見るものに想起させ、大きくくりぬかれた太ももの両側面とミニスカートの間の絶対領域が彼女の女性性という柔らかさと丸みを強調し、薄布の内側に隠された豊かな曲線に期待を感じさせる。
「う~ん、実にエレガンッ!己という存在を映す鏡のような美しさ、これこそ勝負服!流石は私の被造物だ!…しかし思ったより少々トレビアッが足りていないか」
パッドクに詰めかける群衆の中、大げさにポーズを取って見せるやたらと目立つその人物は興奮した様子であり、何やら奇怪なことをわめいてはその周囲から人が遠ざかっていく。
「勝負服とは理想を抱く心の写し鏡!少女たちの持つ個性という名の一条の光線を反射させその身に纏うもの!その幻像(ヴィジョン)を読み取り、この世へ形を与えるそれこそ仕立て屋の本懐ッ!美しい…美しいぞ少女たちよ!」
もはや周りに人はなく、誰かが通報したのか人混みの向こうから警備員たちが大挙を成してやってきていた。それを認めるやいなや、散々にわめき散らしていた男はするりするりと人混みの間を縫うように逃げ出す。その最中、うっとりしたようにイリフネの勝負服姿を見ては納得のいかない表情を浮かべていた。
「あれは彼女の思い描く理想の姿、しかしどうしてか、仕立て屋としての本能があれへの納得を拒んでいる…」
人混み越しの途切れ途切れの視界、イリフネを着飾る“灰色”に染め上げられた勝負服がひらりと風にたなびいていた。 - 166二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 16:31:31
ガンダムSEEDのフェイズシフト装甲みたいになってるんかしら?
(エネルギーが通ってないとモノクロ) - 1671着をねらえ!25/09/07(日) 23:08:33
「ばるるん」
ピースにした両の指の先を突き合わせポーズを取ってファンサをするフォフォフォライトは相変わらずの無表情棒立ちで、昨今流行りのぷくっとボインな女の子でもなければ愛想がいいわけでもない、アイドル性という分野においてはそれほど優秀ではないが、本人の無表情だが無感情ではない特徴的なキャラクター性、色気のかけらもない棒のような足を包む網タイツ、細長い耳から細い尻尾に至るまでシャープな各パーツによって成り立つ競争ウマ娘にあるまじきスティックスタイルには一定のファンがついているようで、彼女が登壇してからというものシャッター音と目線やポーズを求める声が後を絶たない。
そんな大人気なフォフォフォライトをパドックの舞台袖から見ていたイリフネは背後から延びる腕に気づかず、ポンと肩にふいに置かれた手に全身の毛が逆立ち、反射的に出そうになった声を両手で押さえつけながら振り返るとそこには見慣れた親友のいたずらっぽい表情があった。
「もー驚かさないで欲しいのです」
「ごめんごめん、あんまりにも夢中そうに見てたからついね。…似合ってるよ。ちょいと色味は地味だけどね」
むくれる親友に判笑いの平謝りで手を合わせ、彼女の身に纏う勝負服をちらりと見る。なるほど、親友が好きそうなパーツで構成されていると一目でわかるそれはイリフネをよく知る人物ならば、この衣装にどれだけ彼女の趣味嗜好が反映されているかよくわかるだろう。よく観察すればおそらく彼女の好きなアニメの衣服のデザインなんかも取り入れられているかもしれない。
しかし、この灰かぶりの色あいだ。彼女的には試作機カラーとかそんなところなのだろうが、イリフネ本人の素体の主張が強すぎて勝負服が負けてしまっている気がしないでもない。 - 1681着をねらえ!25/09/07(日) 23:10:42
「ふふん、家族にも見せて好評をもらっているのです(`・∀・´)エッヘン!!」
イリフネが無い胸を誇らしげに張っていると、ソアラはどこか感慨深そうな様子で親友を見つめていた。
「イリフネがGⅠかぁ…時が経つのは早いね」
ソアラはイリフネよりもずいぶん前にデビューしており、もうすでにシニアクラス何回もレースを行っている。周りが次々に本格化を迎え、一人取り残される側だったイリフネを見てきた身、レースの先達としても時の歩みの速さに少しばかり驚いていた。
「すぐに追いついてやるのです。今年のGⅠは私の方が先に獲ってやるのです」
自信満々、やる気十分、意気揚々、多くのウマ娘にとって一生に一度あるかないかというGⅠという超のつく晴れの舞台、しかもそれが一生に一度しか走れないクラシック期の絵レースとあっては委縮するウマ娘も多いというのに、イリフネにそんな様子は微塵も感じられず、むしろ勝つことが当たり前かのような余裕すら感じられる。
「獲ってきなイリフネ。冠の一つや二つ持ってなきゃ張り合いがないからね」
煽るような親友からのエールに力強いサムズアップで答えると、勝負服の4つの長裾を翻し控室への帰路に靴底を鳴らし離れていく。
「全く…怖いなら怖いって、言ってくれたっていいのに。…がんば」
右手と右足が同時に出てしまっている親友の姿に思わず苦笑いが浮かぶ。大姉妹の長女らしく弱みをあからさまには見せたがらず、なにかと意地を張って無理をしがちのはどんなに歳を重ねても変わらないようだ。そんな肩筋の張っている親友の背中に小さなエールでほんの少しだけ背中を押した。 - 169二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 23:18:57
実際前哨戦とかあるかと思って読んでたら桜花賞が始まったのでマジで時が速いというかテンポが良い
まあ感情エネルギーのぶつけ合いの側面も考えれば意地を張れるのは良いことさ - 170二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 06:52:23
白と黒は宇宙往復機の色だからね。それが混じっている感じなのかな?
- 171二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 09:01:55
まだ地球の周りを行って帰るだけ
第二宇宙速度より速く、星の間を駆けるのにもう一皮むけないといけないというカラーリングかな - 172二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 18:03:45
このレスは削除されています
- 173二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 18:42:02
魂を地球に引かれているから色がないかもというのは実際ありそうだな
スレ画のように色づく時が楽しみ - 1741着をねらえ!25/09/08(月) 22:45:05
間もなくレースが開始される時刻、観客席には多くの人々がより良い位置を確保すべくパーソナリティスペースを極限まで狭め、前へ前へと押し合いへし合いの団子状態である。
アナウンスが響き渡り、期待感に会場のボルテージも上昇傾向、出走するウマ娘たちが準備運動と共にファンサを返せば観客席のあちらこちらで歓声が沸きおこる。そんな中、観客席の最前列、関係者様に用意された指定席には出走するウマ娘たちのトレーナー陣や友人たちが駆け付けており、イリフネのチーム「オルク」の面々の姿もあった。
「うおぉー!頑張れー!フォフォフォ!勝てー!イリフネ!」
「いやどっちの味方なんスカ、トレーナー…」
その中でもとりわけ騒々しくひと際目立っている男、フォフォフォライトのトレーナーにしてイリフネの父親である男は二律背反の感情を叫び、隣に控えるチームの教え子の頭を悩ませる。トレセン学園では極々たまによくあることではあるのだが、仕事としてのトレーナーである己を優先するのか、父親としての己を優先するのか、どちらを選んでも間違いであり正解という極めて難しい問題である。
できることと言えば血涙を流し両方を応援するくらいのもので、この男に至っても娘と教え子がGⅠに出るという幸運とそれが同じレースであるという不幸に全力で中指を突き立てながら命を削り声を張り上げる。
「あわわわ…お父さんがおかしくなっちゃったのです…」
観客席の様子は当然、ターフの上のウマ娘達にも伝わっている。それはつまり父の行動もイリフネから見えるというわけで、母と生涯バカップルをやったり娘たちにデレデレだったり頼めばなんだってしてくれて仕事をしている時はすごくカッコいい理想の父。そんな大好きな父の父親としての愛にあふれる言葉に感動を覚えると共に、トレーナーという仕事に誇りを持っているはず父のアレな行動にイリフネは少しばかりのショックを感じていた。 - 1751着をねらえ!25/09/08(月) 22:46:20
「拙者は気にしていない」
「フォフォフォちゃん!」
相も変わらず背後から音もなく現れるフォフォフォライトはぬるりとイリフネの隣に立つ。相変わらずの無表情フェイスであるが、今日の彼女は勝負服に身を包んで少々自己主張に激しい。極端に細身のシルエットを生かすように首元までの薄手のタイツをベースに頭には鉢金風の髪飾りを巻き付け、忍者らしい和風要素として着物のシルエットを取り入れたり、くさび帷子をイメージした網タイツは棒切れのような細足に女性らしい曲線の美しさをプラスし調理を間違えれば暗殺者になりかねない雰囲気をクノイチのレベルにまで昇華させている。
とりわけ特徴的なのは腰に備えた小刀であろう。忍者が携帯する刃物を模したのであろうそれは漆塗りの鞘に薄緑の宝石が埋め込まれているだけでなく、それに収められている刀そのものをとっても柄の部分が2つの楕円形、つまりはハサミの持ち手のようであり、所謂一般的な小刀とはまた違うようだ。
「余計なことを考えているとウサギに蹴っ飛ばされる」
フォフォフォライトはイリフネの事情をしっかりと理解している。それ故に父親の教え子だからと手を抜く必要性も気に病むこともないと暗に行っているのだろう。無表情ではないが無感情ではない抑揚に乏しいが思いやりの籠った言葉である。それにしては痛みの度合いが想像しやすくて、幻痛に冷や汗が流れる。青い表情でフォフォフォライトを見ればピースをしながら一言。
「月面ジョーク」 - 1761着をねらえ!25/09/08(月) 23:32:32
鋼鉄のゲートの前に立つは18人の花芽く乙女たち。
ある者はパリッとさせたおろしたての勝負服の皺を整え、選ばれし者だけが経つことを許された舞台にふさわしい競争者としての身なりを気にしている。
ある者はやる気があるのかないのかゆらゆら揺れて締まりがない。その様子が逆に独特のオーラを放ち見る者に彼女がただものではないような印象を与える。
ある者は影から影へと移動するように全く人目につかず、いつのまにやらゲートに収まっていた。
そしてある者は…
「勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ絶ッッッッッッ対勝つのです!」
並々ならぬ闘志を燃やし勝利への渇望を滾らせていた。それは未だ見つけられずにいる目標を勝利の中で探し当てる覚悟と気迫に満ちており、笑っている己の軟弱な膝小僧に喝を入れるための宣誓でもあった。
かくして春一番の桜舞う阪神レース場。今年最初のクラシック大レース、その最初の栄誉ある宝冠を手にするため、乙女どもは鉄の扉の内側に己の闘争心を隠し、解き放たれる時を今か今かと待ちわびる。そして振り上げられた白旗に己の全霊と共に踏み出す。
重たい解放音と共に芝を巻き上げ青い光が少女を着飾る。
『桜花賞、スタートしました!』 - 177二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 00:44:01
ついにスタートした!
さてどうなるか - 178二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 06:39:54
- 179二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 15:05:21
このレスは削除されています
- 180二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 22:07:58
フォフォフォちゃん、良いキャラだなw
- 181二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 06:57:45
V(・¥・)V <月面ジョーク
それはそうとパパトレが完全に娘を見る目になってる……
同じ学園の別チームに身内が所属するってなると、どこかで一線わきまえないといけないからね
これからパパは18年間以上コレが続くんだけど大丈夫?
- 182二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 11:30:19
既に一人だけ顔文字あるの強い
- 1831着をねらえ!25/09/10(水) 20:42:38
『桜花賞、スタートしました!』
現代のレースにおいてスキルがレースの勝敗に関わってくるというのは既に既知のことであり、それはGⅠという日本におけるレースグレードの頂点のレースにおいても同じだ。ただ一つGⅠとそれ以外のレースで違うことといえば、それがよりレースの勝敗に直結しやすいというところにある。
「全ウマ娘綺麗なスタートを切りました。“集中力”“コンセントレーション”の光が青く輝いています。先頭はフォフォフォライト、順調な滑り出しです」
そも、GⅠというレースに出走するウマ娘は例外なく才能・能力の面において超一流のエリートたちである。特にクラシックという時期は同期デビューのウマ娘達との世代の覇権争いでもあり、クラシック三冠、トリプルティアラといった栄誉あるレースに出走できただけで各世代数千人の中のトップ18であることは間違いようがない。
そして、強者が集うということはレースで実力が拮抗しやすいということにも繋がってくる。今や良質なトレーニング、優れたトレーニング方針のノウハウは確立しきっており、能力の平均という面で見るならより上位のグレードに行くほど個々の差はそれほど大きなものではなくなってくる。桜花賞のようなクラシックレースでは才能が占める割合も大きいがシニアレースになるとこの傾向はより強くなってくる。
こうなってくるとスタートスキルのようなあって初めて勝負ができるようなものをきちんと習得できているか、いかに自分の力を効率よく扱えるかというところに勝負の勝敗が置かれることも多くある。
勿論、他とは隔絶した力を持つ一個人によってレースの勝敗が決まるということもあるにはあるが、それができるようなウマ娘はほんのわずかである。
現在、レースは先頭が最初のコーナーに入ろうかというところであるがバ群は縦に長く伸びてはいるものの各ウマ娘の理想的なポジションにこの段階で収まりつつある。全ウマ娘がスタート用スキルないしは技術による好スタートで開始できたのもあって、レースはすでに如何にして自分の強みを出し切れるかという実力が出やすい展開になりそうな予感を見せている。 - 1841着をねらえ!25/09/10(水) 23:25:11
先頭に立つのは月面生まれのNINJAウマ娘フォフォフォライト、軽快なフットワークでバ群を率い好調に芝の上を飛ばしていく。彼女に突き放されぬよう追いかける先行組以下のウマ娘たちは、平均的な阪神1600のタイムよりも速めな展開に額から汗粒を流しながら鋼鉄の蹄鉄で芝を巻き上げ地響きと共に最初のコーナーへと侵入していく。
「(ここまでのペースはやや高速だけど概ね順調。だけどもなんでかすっごい違和感…)」
質実剛健が肉体を動かしているよなパワーあふれる走りを得意とするピピボーイングは、このレースに少しばかりの違和感を覚えていた。桜花賞というと例年通りなら比較的ゆったりとしたレース進行が多く、急な坂を伴う最終直線400メートルでの叩き合いというのがここ最近のお決まりだ。だというのに、先頭を行くフォフォフォライトは逃げウマである自身の特性を存分に生かし比較的早いペースでバ群を引っ張っている。
3000のような長距離ならばいざ知らず、1600の所謂マイルと呼ばれる距離では逃げウマ娘でも最初から最後までトップスピードを維持できることもある。だが、そうやってアドバンテージを稼いでも浪費されたスタミナでは高低差約1.8メートルの急こう配を上りきる頃には後続にそれを食いつぶされしまうだろう。そうなれば、あとは自分のパワーで登攀すれば勝利を狙える。この時点でのレース運びを見て才的とも言えるレースプランである。しかしここは“現代”のGⅠレース、そんな堅実さでどうこうと考えていては思わぬ事態に面食らてしまう。
いまだ先頭をキープしたままのフォフォフォライトはコーナーの曲線で後ろ目にバ群の位置関係を把握すると、沈み込むように少しづつ頭を下げ姿勢を低くしていく。視界に入るフォフォフォライトの面積が減少していき、少しばかり速度把握とペース配分がやりにくくなるなと後方のウマ娘たちが考えていると、フォフォフォライトの体がブレたかと思えばいつのまにやら彼女との差が広がっていた。 - 1851着をねらえ!25/09/10(水) 23:27:20
逃げウマ娘がいる時、そのレースの距離が短ければ短いほど彼女たちに必要以上の差を開けてはならない。学園の教本にすら書いあるレースの基本中の基本の一つだ。それに倣いほとんどすべてのウマ娘が加速し、フォフォフォライトとの差を縮めようと迫る。しかし、スキル発動を示す青色の光が立て続けに発動したことで余計にフォフォフォライトとの距離感把握を困難にし、もうすぐ第2コーナー、レースが残り半分を切ったとなれば未だ逃げウマ娘一人に主導権の全てを握らせるというわけにもいかないという焦りが“流れ”となってバ群の空気を支配していく。
「(う~ん~これ~ちょ~っと~まず~いかも~)」
バ群の流れに乗っていたアンユークリッドは少しづつではあるがフォフォフォライトの狙いに気づき始めていた。それは彼女がカーブにおいて直進するという奇怪な走り方をしているが故、この場の誰とも違った視座で物事を見ているからこその気づきであった。
ターゲット・フィクセーションと呼ばれる心理学的現象がある。車両の運転中などにある物体や危険などに対してそれに注意が向き、無意識にそれに対して進んでしまうというものだ。これは勿論ウマ娘にもあり、走行中に電柱にぶつかってしまったという経験を持つウマ娘も少なくはない。レースにおいても後続を突き放す逃げウマ娘に対して思わず追いかけたくなってしまうのもこの心理効果が関係している。
フォフォフォライトがこのレースに仕掛けた罠もこの人間の性質を利用したものである。
彼女の作戦は決して難しいものではない、むしろ仕掛けとしては極めて単純だ。『頭をかがめて姿勢を低くする』彼女がやっていることはたったこれだけのことである。しかし、ここで逃げウマ娘であること、長身であることが活きてくる。
フォフォフォライトは長身のウマ娘だ。170を超える背丈のウマ娘は学園でも少なく、世代というくくりで見るのならそれこそ対等なのはイリフネ位のものであろう。そして、この身長はかなり目立つ、それが先頭を走る逃げウマ娘であれば尚更である。だからこそ、フォフォフォライトの策から逃げることは難しい。 - 1861着をねらえ!25/09/10(水) 23:33:44
今回のレース、フォフォフォライトは最初のコーナーに侵入するまでの間だけ全速に近いスピードで走っていた。しかしそれ以降はスピードをセーブしている。これを後続がみればバテたか脚を貯めているのだろうと無理な加速はしなかったはずだ。
だが、彼女はここで頭を低くした。つまり後続から見える面積を小さくしたのだ。そしてそこでのスキル連打である。スキルというのは発動時に青い光が発生するほかに1つ、レース中のウマ娘視点では相手が何のスキルを発動しているのか分からないという特性がある。今はこれが悪さをしていた。
徐々に低くなっていく姿勢、それを隠すように連続して発生する青い光に、それが加速スキルなのかデバフスキルなのかはたまた回復スキルなのか分からないという現状、そしてターゲット・フィクセーション、それらが複合的な要因となり後続のウマ娘に『スピードを落としているはずなのに追いついていないような感覚』を錯覚させているのだ。
だが、多くの者はこう感じるはずだ。“コーナーであるならば差しや追込のウマ娘には横から見えているから何の効果もないのではないか”と。
実際のところ、それは正しい、しかし、これは“大人数”でやるレースなのだ。別に全員をだます必要などない。ほんの数人、例えば真後ろを走る先行ウマ娘なんかを引っ掛ければ、あとは彼女たちという集団が「フォフォフォライトに追いつかなければならない」という“流れ”を作ってくれる。この流れは潮の満ち引きのように強力で強制的に全てのウマ娘を巻き込んでいく。
レースは1人の天才で出来上がるわけではないが、1人の天才によって“流れ”が作られることはある。フォフォフォライトはその天才側の人間であった。
地球に比べわずかな重力しか月は持たない。だというのに、潮の満ち引きという大きな“流れ”を作っているのはその月の重力なのだ。空に浮かぶ直径3474kmの星、その星が何倍にもなる地球の“流れ”を作っているのだ。
今、月面からやってきたウマ娘がその細い体で勝利を引き寄せる“流れ”を作り上げていた。 - 187二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 23:39:22
フォフォフォちゃんがえらいことを引き起こしてる中でしれっとカーブを直進(状況からして斜行にあらず)という異常ミームを出してるアンユークリッドで芝
- 188二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 06:46:17
異能力バトルにフィジカルだけで挑むピピボーイングちゃん、やはり強者感がある
- 189二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 09:23:02
>カーブにおいて直進する
物理学空間を数学空間に変換して微分で進んでるんかい
- 190二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 18:31:11
原理はわからんがすごい技術だ
- 1911着をねらえ!25/09/11(木) 22:35:05
少し早めですが、次スレです(後は適当でいいので埋めておいてください)
【オリウマ】銀河中央殴り込みウマ娘ッ‼︎Ⅴ【一意専心】|あにまん掲示板前スレhttps://bbs.animanch.com/board/5469151/bbs.animanch.com - 192二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 23:11:25
新スレ乙です
あとすみません
159~160を書いたものの桜花賞開始のタイミングを見誤って変な設定にしすぎたのと、
後で自分で読み返してオリウマを話の流れに露骨に作用させようとするのは違うように思えたので
代わりにログ消ししておいてもらえると助かります……(IPが変わって消せない)
遅れてのタイミングですが大変失礼いたしました、今後何か対戦相手を思いついたときはこういうことがないように注意します - 193二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 23:16:34
(補足:もしもう織り込んで書いていた場合はそのままで良いので、状況にあったように対応していただけるとうれしいです)
(どちらにしろ急に言って振り回してしまうのが本意ではないということですので、お詫びとして上記お伝えいたします)
- 194二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 06:59:57
埋め
遅れましたが、新スレ立てお疲れ様です - 195二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 15:07:51
200ならエイプリルフール企画でイリフネちゃんが盛るペコされる