[性癖大回転閲覧注意]まるまるマルクトお姉さまと愉快な仲間達+β

  • 1二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:31:33

    やぁ皆。まずこのスレを開いてくれたことを感謝する。そしてここからは残念なお知らせだ。

    このスレはいわゆる『特殊性癖』に分類されるSSを綴るスレになっている。その中でも肥満化というヤツを取り扱っているね。

    と、いうことでだ。そういったモノに理解を示せる、興味がある者だけこの先に進むといい。

    一応すぐ下に過去スレを乗せておこう。未読の者、話の流れが気になった者は是非見てみてくれ。他の同好の士たちによるSSや絵がレスされているからね

    じゃ、始めようか

  • 2二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:32:58
  • 3二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:35:01

    「……。…………………。」

    やぁ皆。俺の名は個人情報だから明かさないとして、家庭の事情でつい最近……てほど最近でもないかもしれん、まぁだいぶ前にこのキヴォトスに引っ越してきて学生をやらせて貰っている者だ。そしてある日俺は肌が真っ白、顔色真っ白で血色だけ見たら今にも死にそうなほっっっそい体躯の女性……マルクトと名乗るその女性と出会い、居候させ、大慌てでごはんを食べさせた。それはもう、毎日毎日食べさせた。

    「……?か弱き子よ、どうしましたか?おやつの時間にはまだ早いと記憶していますが?」

    結果はコレだ。見事に、まんまるに、ぱんっぱんに成長してくれた。
    手足は丸太の如く太く、胸はスイカサイズにまで膨れ上がり、それら全てを繋ぐ胴体は腹を中心として背をも飲み込む勢いで厚く重く丸く脂肪を蓄え、大きく育った巨乳や巨尻をもってして彼女のシルエットを球体から崩すことのできないほどにまで成長していた。
    その上に見える頭部も、首元は完全に脂肪に埋まり、たっぷりとついた顔肉が胸元の脂肪と押し合いへし合いを繰り広げようとしていた。

    肥満児である。誰がどう見ても、立派な肥満児である。
    正直なところ、俺自身も気付いてはいたのだ。『あれ、この肌の色って血色とかじゃなくて単に生まれつきのモノ……?』と。『これ普通に栄養過剰では?』と。
    だがしかし、それに気づいたときには既に彼女の胃が広がりきって生半可な量では満足できなくなっていたこと、そして彼女の幸せそうな食べ顔に魅せられてしまったことで量を抑えることができず、結果今に至っている。

  • 4二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:36:04

    「…………うん。そう、だよな」

    これまでの経緯、今の彼女の状況、そして肥満のもたらすリスクとを頭の中で整理した俺は、一つの結論を導き出し、目の前の白大福に声を掛けた。

    「マルクト。ダイエットするぞ」

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:37:51

    ___
    __
    _

    「か弱き子よ、これで4度目の説明となりますが私にこのようなプランは必要ありません。現状でも私はその性能を100%発揮できますし、単純にエネルギーを潤沢に蓄えた現状であればむしろ以前よりも40%もの出力向上を果たしています。故にわざわざ内蔵エネルギー量を減らすという行為には一切の意義を見出すこともできず___」
    「糖尿病に高血圧、そんな体重なら骨格へのダメージだって無視できないだろ。いろいろリスクが多いんだよ、肥満ってのは……残念なことに。っと、着いたぞ」

    いつまでもよくわからない弁明を続けるマルクトを無理やり連れて足を運んだ先は、もう人が使わなくなって久しそうな倉庫であった。
    ……否、この言い方では語弊があるか。たしかにコンテナやクレーンなどが動かされた形跡は見当たらない。が、しかしコンクリートで舗装された床の上にはゴミや落ち葉の一つも見当たらず、何者かが生活していることが推測できる。

    「ん、んーーー?あれ、キミは……」

    倉庫の奥から声が響き、そのまま近づいてくる。その声の主こそ、ここを根城としている『何者か』であろう。
    俺はその声に聞き覚えがあった故、臆することもなく友人のように話しかけた。

    「おぅ、ニコさん!すまん、ちょっと頼み事があってな!」
    「……頼み事、ね。今の私たちにできることなんてそう無いと思うけども……まぁ、聞かせてよ」

    施設の奥、建物の影から日を浴びて現れたるはまんまるい腹と大きなおへそ……から更に日射範囲が広がって腹と比べると慎まし気な胸、ヒトの太腿ほどはありそうな腕、そして大きな桃色の狐耳が顕わになる。
    FOX小隊は隊員、ニコさん。SRT解散前の姿など見る影もない、俺の後ろにいる白大福に引けを取らないまん丸狐がそこにいた。

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:40:42

    ___
    __
    _

    「なるほどね。うちらでやってるダイエットにその白いのも加えたいと」
    「クルミ隊員。ダイエットではなく『健康管理プログラム』だ」
    「どっちも変わらないでしょうに……」

    俺の話を要約して納得するのは他隊員よりも胸が大きめに膨れたクリーム色狐のクルミ、それに対して傍目には無用な訂正を添えようとしているのが我らがFOX小隊長にして全身くまなく大きくなった黒い狐のユキノ隊長である。

    「まっ、いいんじゃないの?今更ひとり増えたところで、って感じだしさ?」

    ラフな感じに意見を出すこやつは臀部が一際大きく成長しやがったベージュ色狐のオトギ。人にちょっかい掛けるの大好きないたずらっ狐である。

    「そ・れ・よ・り・も。……そのマルクトさんがそんな体型になった経緯、気になるな~~~……?」

    そして今、俺の右肩にポンと乗せた手から凄まじい圧を掛けているこの腹が重点的に肥えた桃色狐がニコである。いや待って痛い痛い痛い痛い。

    「ま、そこは皆気になる所だよね~」
    「キミ、何があった?彼女に何をした?」
    「待って待って何で俺が何かした前提なんですの?」
    「だって……ねぇ?」
    「『この都市で巨デブを見かけたらアンタを疑いなさい』。うちの小隊の共通認識よ?」
    「……!…………っっ!!」
    「反論する言葉失ってるじゃんウケる」

    狐共の弁に返す言葉もなく、唯『無』を叫び続ける俺をヒップの素敵なオトギが追撃する。覚えておけよ貴様ぁ……!!

  • 7二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:41:55

    「……はぁ。そんな大それたことじゃないよ。マルクトが家に転がり込んできて、同棲することになったから、俺が食事当番担当してたら、ホイこの通り」

    そう言って仕上げにマルクトの横腹をぺちんと叩く。おうコラ頬を赤らめるな可愛いなコイツめ。狐共もそんな冷めた目で……いや、あの、ちょっと目ぇ怖すぎやしませんか?

    「ほーん。へーん。部屋に女連れ込んで一緒に暮らしてるんだー。私たちここにほっぽって」
    「同棲?何?ふざけてんのアンタ?責任感とか辞書に載ってないタイプ?ハァーーー不義理もここまでくるといっそ清々しいわねホント」
    「うん。そっか。キミはその子を選んだんだ。いつから?どのタイミングで出会って何ヶ月目?私たちに靡かないでその子にコロッと靡いたその要因は?」
    「何っ!!?何よっ!!?何なのよ急に!!?俺そんな逆鱗に触れるようなこと言ったか!!?別にコイツとの付き合いだってそう不健全なッ……ものじゃッ……いやちゃんと責任は取るつもりだし……!!」
    「……!!…………!!!」

    凄まじい勢いで詰めてくるおデブFOX4/3/2。俺の弁明もむしろ火に油を注いだようでニコがその肉圧な手で俺の両肩を掴むと鬼神の如き気迫で俺の肩をがたがた揺さぶって……あっちょっ待って脳みそ揺さぶられて意識が_____





    「ストップ、ストップニコ。もうコイツ意識ないわよ」
    「……はっ!?へっわぁあっ!?ごっごめっ……!」
    「あーはいはい布団まで運ぶよ~そっち持ってニコ。ほらリーダーもいつまでも突っ立ってないで___」
    「どうせい……どう、せい……いっしょ……あのこ、わたしたち、ちがう……」
    「りっ、リーダー……!泣いて……なんて静かに……!」
    「ユキノ……脳が……っ!!」

  • 8二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:43:37

    ___
    __
    _

    「はいいっちにーいっちにー!」
    「いっひに、いっひにぃ……!」

    廃倉庫の一角がどすんどすんと揺れ、肉団子が5人列をなして駆ける。……いや、白大福がひとりやや遅れている。やはり体型通りに体力が落ちていたか。いや、そもそもコイツはたまにやたらと機敏な動きや常識外れのパワーを見せることはあれど運動しているところはこのかた見たことがないからして、もしかしたら最初っからスタミナなど皆無だったのかもしれないが……ならばむしろいい機会だ、この機にみっちり鍛え直してもらおう。
    そんなことを考えていると、汗だく白大福がだらしなく大口を開けて呼吸を荒げ、それ相応に胸部と腹部を繰り返し膨張・収縮させては息も絶え絶えといった様子で寄ってくるのが見えた。

    「ぜひゅーーーーー……ごひゅーーーーー……よ、よひっ、予想外でしたぁ……まさか、はひーーっ、これほどまでにぃ、駆動系がぁ……ごっホひゅっ、鈍っていたとはぁ……」
    「あーこら無理して喋らなくてもゆっくり聞いてやるから。ほら水」
    「か、感謝しま、んっごんっごんっご……」

    クールダウンの意図でコップにスポーツドリンクを注いで差し出せば、何とコップではなくペットボトルのほうを掴んでそのままラッパ飲みするではないか。およそ乙女の喉から発してはいけない音を豪快に鳴らし、どんどん腹囲を広げていくマルクトを眺めながら(これ近場のコンビニに追加の水買いに行かないとなー)なんて考えていると、ボトルの中身を空にしたマルクトが再び口を開く。

  • 9二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:46:14

    「っぷはっ、ふぅ……ところでか弱き子よ、彼女等はいったい何者なのですか?」
    「ん?あー……うん、まぁ、気付けないよな。メディアで報道されてた頃とはあんまりにも体型変わった……てか面影ないもんなぁ。彼女らはFOX小隊、かつてSRTの精鋭にして連邦生徒会の懐刀とまで言われ……てたらしい子たちだよ」

    俺が彼女等と知り合ったときには既にメディアへの露出は避けるようになったからその名声も又聞きがせいぜいなもので『らしい』と付けざるを得ないんだが……

    「SRT……FOX小隊……データベース参照……Hit、連邦生徒会直属の実働部隊、極めて高い戦闘力と士気を持ち、我が妹らの事前情報においても要警戒対象として登録されていてなんですかこの痩躯は!?いったい彼女らに何が!!?」

    旗から見れば虚空に話しかけているような、しかし彼女視点では何かが見えるのであろうデバイスを確認していたマルクトがいきなり大声をあげる。うん、たぶん以前の顔写真とか見つけ出したんだろうなぁ。今同じ写真撮ったら下半分が頬肉と顎肉で埋まると思う。

    「……その件について説明しようとすると、あの子らと俺との出会いから話すことになる。長くなると思うが、それでも気になるか?」
    「ええ、はい。あなたほどか弱いいち人間が特殊部隊の隊員と知り合った経緯には興味があります」
    「そんな貧相に見えるか俺って……まぁいいや、始めに接触したのは俺のほうからだった」

    当時を思い出し、そう古くもない記憶に懐かしみながら語りだす。

  • 10二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:48:44

    「連邦生徒会からのおつかいでな、『子飼いの部隊の中に変な動きしてる奴らがいるみたいだから機会があったら確認してみてくれ』ってさ。あの頃は……というか今もそうだけど、連邦生徒会はとにかく人手不足でさ、猫の手も借りたいとはまさにあの事を言うってザマよ」

    だがそれでも人に見えないところで悪態をついたのを覚えている。それもそうであろう、特殊部隊が変な動きしているとあれば国家転覆なりテロリズムなり嫌な予想はいくらでも立てられる。そんな一大事にヘイローもないただのガキが一人でできることなどたかが知れているというものだ。正直、片道切符も覚悟していた。

    「そんで思い立ったある日、俺は連邦生徒会に指定されたポイントに……ここに来た。そんで彼女らに出会った」

    そう言って、遠くのほうで休憩する狐耳の肉団子四つに目をやる。うん、健康的に汗を流しているが死屍累々といった様子ではない、日頃からのトレーニングの成果が体力という形でしっかりと現れているようだ。
    そんな豊満で肉厚で高温多湿な光景を、あの日出会った当時と重ね合わせる。

    「彼女らは……痩せていた。後から知ったことだけども、彼女らを支援していた人物のほうでゴタゴタがあったらしくてな、食料確保にも難儀していたそうだ。俺はそんな彼女等を見て」
    「居ても立ってもいられず、ご飯を食べさせた。そうですね?」

    先の展開が読めたのか、マルクトが言葉の先に被せて代弁する。そうだよな、この展開もこの街じゃもう天丼ネタだもんな。

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:51:01

    「……そうだ。俺は……それはもう、食べさせた。たくさん食べさせた。彼女らとその後援組織との間に補給線が通るまで毎日通って、毎日料理を振る舞った。ついでにニコさんから料理も教わった。おいしいお米の炊き方、味付けの工夫、小隊メンバーの味の好みに好き嫌いを判別する手段、消化吸収に良い料理の作り方……今の俺の料理の基礎には、ニコさんの教えがだいぶと根付いてるはずだ」

    ここに来たばかりの頃の俺は、正直に言って料理の腕はそこまででもない……微妙なものであった。そもそも料理自体が食事を疎かにしがちな叔父の為に始めたもので、他の誰かに食べさせる機会など皆無に等しかったからしてヤロウらしいガサツで大雑把な料理ばかりにスキルツリーが伸びていたものだ。
    そこにニコさんの丁寧で美味しい料理の作り方がスゥーーーーーと効いて……今の味に至る。彼女の教えが今もマルクトやその他雪見大福と化したアイツ、デブオコジョに肥満ディアブロス亜種と化したヤツの腹等々を満たしているのだ。

    「……そして、案の定食わせすぎた。補給路が構築された頃には皆揃ってもっちりむっちりしていた。俺は……頭を抱えた」
    「この街における肥満児第一号の完成ですね」

    兆候はいくらでもあった。ぱっつぱつの服、ハーネスの上に乗る肉、爆ぜるスカートのホック、どんどん膨張していく顔の輪郭……だがしかし、どういう訳だかあの子たちは食べ続けた。俺が『まぁ特殊部隊ってくらいだし体重管理はお手の物だろガハハ』という考えを撤回したころには、もう誤魔化しの利かない肥満児と化していた。

    「これはマズイなと俺は後援組織のほうに足を運んだ」
    「凄い度胸ですね。ほめてあげましょう」
    「細かったから沢山食わせた」
    「えっ」
    「そっちも太った」
    「えぇ……」

    直談判に出向いた先で待ち構えていたあの糸目ピンクのあの子、彼女もそれはもう細かったものだから食わせた。あっという間に膨れ上がった。会うたび会うたび膨張していくシルエットには正直俺も怖かった。

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:53:51

    「そして……今に至るって訳だ。出会いの経緯こそアレだが、その後の流れはお前とほぼほぼ同じよ」
    「あなたは……私の知る以前から相変わらずだったのですね。……っと、他の方々もこちらに戻ってきています。どうやらこのままお昼休憩のようですね」
    「そーゆーことー。もう時間が時間だしね~」

    マルクトが視線を向けた先、オトギの声と共にドスドスとよっつの巨躯が駆け寄ってくる。

    「てか長々と何か話してたみたいじゃない。私たち抜きで何話してた訳?」
    「ん~?お前らと俺との出会いから今日その体型に至るまでの経緯をな」
    「っ!……ほぉ~~らマルクトさん?コイツのせいで私たち皆揃ってぶっくぶくのパンパン!一緒にいたらその身体もどこまで膨れ上がるか分かったもんじゃないわよ~?」
    「問題ありません、FOX3よ。私はそれを望みます」
    「っ!!?なっ、えっ……強敵……!!」
    「キミ、お昼にしよう。補給物資のほうは用意してきてくれたか?」
    「はいよ、こちらに……っと」

    ど  す  ん

    にわかに騒がしくなったその人の輪の中央に、持ってきた弁当を置いて広げる。
    ……畳一枚分くらいはありそうなスペースが弁当の山に占領されてしまった。傍から見れば異常な量であることは明らかである。
    ___のだが。

    「はーこれこれ!激しい運動のあとは美味しいごはんよね!」
    「あ、隊長そっちのヤツ取って」
    「わかった、コレだな?……む、腕がつっかえて……」
    「ユキノちゃん、また腕太くなった?ほら、私が取るから……ホイっと」
    「お、ありがとニコ~~~!」

    彼女等にとってそれは異常ではなく、正常であった。何食わぬ顔で蓋を開け、何食わぬ顔で箸をとり、何食わぬ顔で飯を食う。そこに違和感も他意もなく、ただただ弁当の量と彼女らの脂肪量だけがおかしいだけの和気あいあいとした食事風景が広がっていた。

  • 13二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 00:55:11

    「むぅ……プログラムに不備はないはずだが……いやしかし、確かに腕の可動範囲が狭まっているような気が……」

    もぐもぐ。

    「しっかし、なかなかダイエットの成果でないわよねぇ。私もまた胸の辺りがきつくなってきたし……」

    むぐむぐ。

    「あー、私も、スパッツがきつくてきつくて……」

    むしゃむしゃ。

    「まぁ根気強く続けてればその内成果も出るよ。あ、そのおいなりさんこっちにちょうだい。あの子また腕上げてるみたいで、こっちはもう食べきっちゃってね。私ももうそろそろ追い抜かされちゃうかなぁ」

    もっしゃもっしゃ。

    「……いやぁ」

    「「「「痩せないねぇ(なぁ)」」」」
    「か弱き子よ、今日もとても美味しいです」




    後日、ダイエットの成果を確認しようとした俺はマルクトの乗った体重計の針の示す結果に膝から崩れ落ちることとなるのだった。

  • 14二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 01:00:37

    やぁ諸君、久方ぶりだね。私だよ。

    まず最初に謝罪させてほしい。FOX小隊の面々、一人一人を深堀りせずにセット運用するような真似をしてしまったこと、すまない。如何せんスレを重ねるたびに一話ごとの文字数が膨れ上がっていってね、ここいらで一度初心に帰って軽く纏めてみようと思ったらこんな構成になってしまったんだ。

    しかしまぁ、個人個人にフォーカスを当てた話もそのうちに書くつもりだから、まぁ今日の所は勘弁してもらえると助かるということで、ね。

  • 15二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 01:50:47

    yeaaaaaaahhh!!
    待ってました!

    まさか甥くんにダイエットさせるという選択肢があるとは…
    でもそういう性癖を持ってるだけで、たんとお食べして太らせた行動の根っこは栄養失調治して健康になれってものだから太りすぎで健康害し始めてたらこうなるのもさもありなん
    なお結果

  • 16二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 07:24:54

    もう甥くんの特殊能力なんじゃ無いのかってくらいみんな太って痩せれないの好き…
    もちもちを以上して…いやもっと増加して…

  • 17二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 08:49:36

    マルクトの人だぁ!おかえり!
    甥っ子君ダイエットさせるっていう思考あったんだな…けど食事の量減らすという選択肢ないなら効果でらんわなって

  • 18二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 17:40:44

    たすかる…

  • 19二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 19:14:57

    肥満化生徒の日常風景って感じで良いね…
    太ったのを恥じらったりせずいつも通りに(?)生活してるのデブとして完全に染まった感じでリビドー掻き立てられる
    それはそれとしてFOX小隊+マルクトで合計体重1t超えてそう

  • 20二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 03:52:21

    まるまるマルクトももちもちFOXもカワイイカワイイネ

  • 21二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 13:09:36

    FOX達の太り方違うの好き…

  • 22二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:39:46

    このレスは削除されています

  • 23二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 04:38:29

    待ってました
    まるまるマルクトかわいい

  • 24二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 12:42:21

    復活してたのか!
    ありがてぇ…!(歓喜)

  • 25二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 20:57:46

    このレスは削除されています

  • 26二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 01:03:33

    そっとぶっくぶくになるカヤ…
    まあ恰幅出ていいんじゃないかな

  • 27二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 03:03:18

    というか街単位でデブってるんだな
    もうそろキヴォトスにテクスチャが後付けされてそう
    まんまるおデブたちの学園都市、みたいな

  • 28二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 09:35:40

    これ1人の仕業っていう
    都市伝説とかになってない?????

  • 29二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 15:32:25

    >>7

    ここすき…

  • 30二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:15:58

    >>29

    うおおかんしゃあっ

    皆まん丸で可愛過ぎる!!!

  • 31二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 23:17:54

    >>27

    >>28

    まってくれ弁明させてくれ、別に街単位で肥えてるとかそういうのじゃないんだ

    東京の街中を歩いてたら有名人を見かけた、そのくらいの頻度でおデブさんを見かけるというだけの話なんだ甥くんにそんな常識改変じみた能力はない!


    そんでまだ書きたいシチュが三つ程度あるから私はまたWordに戻るね……いやでも肥やす子をこれ以上増やすとさすがに節操がなさすぎるか……?だがしかし……


    >>29

    エッッッッッッッッッ

    ちゃんと体型に個性出てるのエッッッッッッッッッ

  • 32二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 08:35:33

    もちもちな娘はいくら居ても良いので気にせずたっぷり肥やして欲しい…

  • 33二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 08:37:37

    シチュが思い浮かべば無限に増やせますからな。キャラ管理的な意味でも悩ましいのはわかる
    流石に街一つ無節操にはないけど相性がいい相手を肥やしやすくするぐらいはありそうな甥っ子君

  • 34二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 16:27:20

    >>31

    真面目な話から急に語彙力無くなるの笑うわ

  • 35二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 00:28:55

    そういや甥っ子の事は先生どう思ってるんだろ

  • 36二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 08:32:57

    案外気づかれてなかったりして

  • 37二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 16:36:10

    このレスは削除されています

  • 38二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 00:42:29

    ん~~フッフッフッフ

    ある程度書き連ねてから改めて展開のほう考え直してみたらとんでもない文量になるであろうことが判明したぞ

    フッフッフッフなんでこうなるのかねぇ毎度!!

  • 39二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 07:49:46

    プロット段階で筆が走りまくってるようで何より
    楽しみにしてます

  • 40二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 16:31:03

    こっちとしてはいくらあっても大歓迎なんだが?

  • 41二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 01:33:22

    このレスは削除されています

  • 42二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 10:35:27

    次のターゲットは誰になるやら

  • 43二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 19:51:44

    このレスは削除されています

  • 44二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 04:01:33

    あまりにもそっと太って話題にならないけどデブカヤすき
    完全事務職で基礎代謝カス、食料すら確保できないレベルのゴタゴタの処理やら全方位から飛ぶ不平不満やらでストレスMAXのところに甥くんの手料理がスーッと効いて…
    元がほっそい分制服入らなくなって芋ジャーになってそう
    そして案の定盛られない胸肉

  • 454425/08/27(水) 04:06:02

    >制服入らない

    へそ出しファッション(婉曲表現)すらできなさそうだなと

  • 46二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 12:55:57

    このレスは削除されています

  • 47二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:37:59

    カヤはね……痩せる機会がないもんね……
    あっという間だよね……

  • 48二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 01:43:51

    デスクワークメインとはいえアオイでもあっちこっち移動してそうだけどカヤはマジで後方から指示しかだけだして動かないイメージがある

  • 49二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 10:44:56

    このレスは削除されています

  • 50二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:01:27

    知らないうちに椅子がバキッと言って立ち上がれなくなってそう(コナミ

  • 51二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 23:08:51

    やぁ皆。スレ主は今日、20kgのウェイト20個をキャスター付きの籠に入れて運ぶお仕事をしたよ

    20kgが20個……つまりは400kgだ。おかげで今は全身が痛いよ。


    ……400kgって、籠に乗せればいい年した男子一人でもなんとか運ぶことができるんだね。フフッ。

  • 52二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 23:47:32

    倍以上の重さの車でも押そうと思えば押せるからね…車輪のパワーはすごい…
    それはそうとなにかに乗って押してもらわないと動けないおデブちゃんはえっちだよね…マルクトお姉様もそのうちそんなレベルに…

  • 53二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 08:32:49

    >>52

    マルクトお姉さまはなんだかんだ言って400kgでも「どっこいせ」って自力で立ち上がって駆け抜けられそうな凄味を感じる

    真に危ないのはろくに運動もしない非戦闘要因……そうだね、カヤだね

  • 54二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 17:22:33

    インスピレーション得ちゃった?

  • 55二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 01:40:28

    連邦生徒会の面々は総じて未実装だけど、主に刺さる子はいるだろうか

  • 56二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 10:29:27

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  • 57二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 19:05:08

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  • 58SS書いてたらもうこんな時間25/08/31(日) 03:15:05

    >>55

    ……アユム

    アオイ

    リンちゃん!!!

    だが彼女ら全員が動けなくなるとキヴォトスがマジで終わる!!D.U.の統治がオシャカになってしまう!!故に!!パス!!!涙を吞んで!!!!

  • 59二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 10:00:26

    >>58

    カヤ「解せません…ふひゅう…」

  • 60二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 19:16:36

    自重せんでも…()

  • 61二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 19:31:16

    欲望よりも原作での設定や状況を重視するその姿勢、敬意を表する!(敬礼
    …そういや甥っ子君に太らされてるの、学区運営にそこまで影響でない生徒ばっかなのか…

  • 62二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:07:36

    『ソレ』は、あまりにも唐突であった。

    「なんだ……この値段は……!?」

    陳列棚の前、丁寧に並べられた食品のその前に貼られた値札に書かれた数字に、俺は愕然としていた。

    「卵が……レタスも……もやしですらも……!?馬鹿な、高すぎる……!?」

    棚に所せましと並ぶ食品、その全てが平時では考えにくい数値にまで値上げされていたのだ。
    そんな馬鹿な。台風も酷暑も無縁であったはずだ。いったい何があったのか……その答えを求めて店員さんに話を伺ってみれば。

    「あ~……なんでも、物流のほうでトラブルがあったらしくてねぇ。この先ずっとこの調子だろうってさ」
    「な、なるほど……」

    産地のほうではなく、輸送のほうに問題があったようだ。が、重要なのは『この先ずっとこの調子だろう』という文言のほうだ。

    「(……マズい。ただでさえ食費は他所様とは比べ物にならない数値になってるのに、ここに更に値上げの波に当てられたら連邦生徒会からのバイト代じゃ賄いきれなくなるぞ……!?なんとか、何か手だてを考えなくては……!)」

    と、軽く思案して一人の少女の顔が思い浮かぶ。そうだ、こういう時は彼女ならば何か知っているはず……!

  • 63二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:08:44

    ___
    __
    _

    『はいもしもし、フウカです……あっ、その声はチアキの……』
    『うん、うん……あー、値上げの件ね。実はこっちも思いっきり煽りを受けて……うん、今新規に仕入れルートを開拓できないか模索中。流石にこのまま何もしなかったらつぶれちゃうわよ、給食部が』
    『うん、そうね。生産地のほうに直接出向いたりなんかも一つの手ね。というか、キミなら私たちほど仕事に圧殺されてる感じでもない、フットワーク軽めに動けるだろうしむしろそういったやりかたのほうが合ってるかも……?』
    『力になれたようでよかったわ。また何かあったら気軽に連絡頂戴?こういう時間帯ならいつでもオッケーよ』
    『……今度、またゲヘナにも寄りなさいよ。ジュリも待ってるわよ』

  • 64二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:10:22

    ___
    __
    _

    「うん、やはりだ。こういう時はフウカさんを頼るに限る……!」

    愛清フウカ。給食部としてゲヘナ学園に在籍する生徒の胃袋を支えるその手腕は伊達ではなく、故に料理という分野における知識で並ぶ者は数えるほどしかいない。仕入れや在庫の管理などまで含めればなおの事だ。その知識には俺も大量の料理を作るようになって世話になったものだが……今回も存分に頼らせてもらった。おかげで有用なアドバイスを貰えたというモノだ。

    「生産地、か……」

    陳列棚にあった商品を手に取り、その裏を確認する。そして俺が目指すべき目的地を口にする。

    「……百鬼夜行。エビス自治区」



    「……………………百鬼夜行、かぁ……」

  • 65二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:11:24

    ___
    __
    _

    エビス自治区。
    百鬼夜行連合学園における書類上は多数の生徒が在籍していることになっているその校舎の中を、唯一人の生徒が我が物顔で歩く。随分と都合のいいことでもあったのだろう、その口角は上機嫌を隠すことなくつり上がっていた。

    『近く客人が訪れる。用意せよ』

    その報せを受け、やってくるであろう客人の素性を調べたその生徒は思った。

    「これは使えるぞ」、と。

    何せその人物はあの『シャーレの先生』、その血縁者であったのだから。
    『シャーレの先生』。連邦生徒会によって外から呼び出された大人であり、今やキヴォトスにおけるあらゆる事件に介入・解決していっている、決して無視できない存在。同じ組織に属する箭吹シュロもあの大人に手酷くやられたと聞いており、その脅威は彼女も認知する所であった。
    彼女___土生アザミは秩序に仇なす存在である。故に先生と事を構える事態を想定し、そのための手札を欲していた。そのタイミングでこの報である、好都合を超えて最早運命すら感じるほどであった。

    「手元に転がり込んだこの吉報。使いどころによっては切り札たりえましょうが……さて、どう使ったものでしょうか……」

    口元が歪に歪み、後ろ髪がまるで生を得たかのように揺蕩う。彼女の思考は既にかの存在をどう引き入れるかではなくどう活用するかの域にあり、それはただの人間風情に遅れを取るはずがないという彼女の驕り、自信からくるもの___あるいは、彼女という存在の恐ろしさの左証であろうか。

    蛇は一人、巣穴にて獲物を待つ。極上の獲物を、ただ牙を研いで待つ。

  • 66二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:12:34

    ____
    __
    _

    「今回案内を務めさせていただきます、百鬼夜行連合学院はエビス分校の自治委員会会長、土生アザミと申します。よろしくお願いま___」
    「よろしくお願いします」
    「ふぅ……ようやく着きましたか、か弱き子よ……」
    「デッッッッッ」
    「……?」

    長旅の末列車を降りた俺達を出迎えてくれたのはガイド役を務め___ようとしてマルクトの巨躯に圧倒された様子の土生アザミさんだ。おうコラマルクトきょとんとするな、お前のせいだぞこれ。

    「……っ、こほん。お話はお手紙にて既に伺っております。輸送網のトラブルによる物価の高騰……農作物や特産品の輸出を主な財源としているこの自治区としてはとても無関係とは言っていられない状況です。あるいはそのあおりを受けてこのまま産業が先細り……などという展開もあり得たかもしれないこの状況下において、わざわざこのような僻地にまで足を運んでいただいたその熱意と誠意に私は感激いたしまして……!」
    「誠意だなんてそんな……自分は少しでも食費を浮かせられたら、なんて純度100%の下心で伺った次第ですし……」
    「ですがそうして我々を選びこの地まで足を運んでいただけたことこそ、我らにとって無上の喜びですとも!さぁ、立ち話もなんですしまずはこの自治区を見て周りましょう!そして願わくば互いに望む結果を得られればと存じます……!」

  • 67二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:13:37

    そう言ってこちらに手を差し伸べてくるアザミさん。こういった観光ガイドには慣れているのだろうか、あるいは生徒会長として役所仕事に精通しているからか?最初のマルクトを目撃したときの衝撃からさっぱりと復帰するとその後の対応は堂に入っていて貫禄すらあった。
    ……成程、とても頼りになりそうだ。今日の俺達は運がいい。

    「……ですね。改めて、本日はよろしくお願いします!」

    そう言って差し出された彼女の手を握った。




    尚、駅のホームから階段を上がろうかというシチュで握手したものっだったのでそのまま手を引かれる勢いだったが、大した荷物も持っていないしお手数おかけする訳にもいかないから「自分は大丈夫」とやんわりと断ったら俺の後ろのマルクトのほうを見遣って「えっ、じゃあこの白大福の手を引……補助しなきゃいけないんですか?」ってほんの一瞬固まった。ごめんね、そいつこの前のFOXダイエットの際に昔の勘を取り戻しただかで特殊部隊顔負けの体力発揮しだしたから階段程度なら一人で上り下りできるし平地なら凄い勢いでダッシュできるくらいにはスタミナお化けで補助とか必要無いんだ。変に怖がらせちゃって本当にごめん。

  • 68二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:14:58

    ___
    __
    _

    「ずいぶんと……買い込みましたね……?」
    「い、いやぁ……どれも気に入ってしまいまして……あはは……」

    数時間後。駅を降りた時の軽装から打って変わって、俺はまるでコミケ帰りの戦士たちのような重装と化していた。
    俺は悪くねぇ、丁寧で情熱溢れて思わず見入る作品を並べてとても良いお仕事をする工芸家職人さんたちが悪……いややっぱ俺が悪いや、以後気を付けねば……しかしいい買い物であった……。

    「この地の工芸品を気に入っていただけたのでしたら私としましても委員長冥利につきるというものですが……しかし本来の目的をお忘れではありませんよね?」
    「あぁ、いや、そっちもちゃんと覚えてますとも。本命はそっちですもんね」

    俺の目的。そう、食品の件である。
    ぶっちゃけ買い物中は何度か頭からすっぽ抜けることもあったが、それは言わぬが花というヤツであろう。あれこの言葉こういう用途で合ってたっけ。

    「……忘れていないならこのまま参りましょうか。視覚で工芸品を堪能していただいた次、ここからは視覚ではなく___味覚の時間です」
    「味覚……!」
    「じゅるり」

    アザミさんのその言葉の意味することを察し、そしてそれは連れのマルクトも同様だったのであろう、後ろからよだれをすする音が聞こえてくる。こら、みっともないからやめなさい。
    と、なにやらいそいそと用意しだすアザミさん。さて何が出てくるのかと期待に胸を膨らませているとなにやら香ばしい、それでいて甘い香りが漂ってくる。これは……。

  • 69二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:15:58

    「はい、こちらはこのエビス自治区で採れたじゃがいもを使用しました___」
    「じゃがバターだぁ!!」
    「ふふっ、正解です。ささ、暖かいうちにどうぞ」

    いったいいつの間に用意したのだろうか、見覚えのあるその料理についついアザミさんの言葉を遮ってしまう。そのまま勧められるがままにじゃがいもを手に取り、パコっと割って__その柔らかさに感嘆しつつ__口に含んでみれば……

    「甘い!これは……バターの甘味じゃない!イモ自身が蒸されたことで出る甘味っ!こびりつかないさわやかな、旨味と密接に繋がった甘味……!だがイモがこれほど甘くなるとは……!!」
    「おいしいです」
    「品種も違えば生育環境も違う。例えそれらがこのいもと同じ、この地で収穫されたものであっても鮮度が異なります。ならば味に差ができるのは自明の理……さらに言えば、じゃがいもはどちらかというと保存の利く作物です。長期保存しても味は本来ならば早々落ちるものではありません。しかしてこれほどに鮮度が旨味を引き出しているのです、これがもし保存の利きにくい作物であったならば___いったい、どうなってしまいますでしょうかねぇ?」
    「___!!」
    「食欲がとまりません」

    馬鹿な……つまり、この『鮮度』というパロメーターはこの絶品じゃがいもでもまだ本気を出していないということか……!?
    その事実に戦慄する俺とその後ろでもっしゃもっしゃと三つ目のじゃがバターを口にするマルクト。どうやら今回の遠征はとんでもないことになりそうだ、そう予感するには充分すぎる状況であった。

  • 70二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:17:37

    ___
    __
    _

    「凄かったな……どれも美味しかった……」
    「それに量も充分でした。私も大満足です」
    「……うん、そうだな」

    今日予定していたスケジュールを全て終え、女将さ……アザミさんの用意してくれた宿にて明日の英気を養うためにくつろぎながら今日という日を思い返す。

    じゃがバターから始まったエビス自治区味覚堪能ツアーは、その後もとうもろこし、焼きイカ、ホタテ、トマト、etc……と様々なものがお出しされたが、そのいずれも市場でお目にかかることは難いであろう絶品揃いであった。凄い勢いで試食を平らげていくマルクトにちょっと抑えるよう言おうともしたが……そも今回の目的は大量の食材と食費を賄うためのものであり、そういった意味ではマルクトの食欲と胃袋に対応しきった今回のツアーは合格点を優に超えているであろう。
    さて今夜はどんな料理が出てくるのか……そう思って、ふとひとつ考えがうかぶ。

    「……!そうだ、おkアザミさん!この付近にお店やってるところありませんか!?それと厨房をお借りしたいのですが……」

  • 71二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:19:24

    ___
    __
    _

    土生アザミは勝利を確信していた。
    『ここ』に連れ込めた時点で勝負は決した、後はいくらでも時間をかけてじっくりと篭絡していけばいい。洗脳といっても差し支えは無かろう。そうやって自分にとって従順な駒を仕立てあげられれば、こちらもシャーレに干渉する経路を得られるという話だ。
    一介の人間とただのデブがこれから行われる責め苦に耐えられることなど不可能。外からイレギュラー要素でも突っ込んで来れば話は変わってくるかもしれないが……だがこちらには『彼女』が、百花繚乱最強の彼女がいる。負ける見込みなど無いに等しかろう。

    王手にむけ、駒は得た。後はこれで以て我が宿g「うっま」

    思考が途絶えた。卓上に並べられた、彼の作ったその料理を口にしたその瞬間、彼女の脳内は美味という感情に塗りつぶされ、謀略の一切合切が蚊帳の外に押しのけられてしまった。

    「え、あ、旨……おいし……!?こ、これは……!?」

    口の中に広がる美味、その衝撃に箸が止まる。この味、この風味、間違いなく自分の自治区で採られたものだ。だが引き出し方が違う。作物たちが持つスペックを、風味から食味まで余すことなく最大限に引き出している。こんなやりかたがあるのか。これほどまでに伸びしろがあったのか。

    「よかった、お口に合ったようでなによりです。……試食してる間に『これならこういった料理に使えるかも』ってずっと考えてたもので、それを実際に形にしてみたのですが……見立てが当たったみたいですね。やはりこの調理法なら甘味と歯ごたえがより引き立つ……!」
    「?どうしましたか、案内役よ。そう呆然として……口に合わなかったのであれば私が頂きますが?」
    「え、ちょっ、美味しいって言ったでしょう!?私ももっと頂きますからそんな勢いよく食べないでむっは美味しい……!」

    と、白大福がお皿にこんもりと盛られたじゃがいもの煮付けを掃除機もびっくりの勢いで口に放り込み始めるものだから自分の分を取られまいと大慌てで箸を伸ばす。

    「(美味しい……この野菜たちも、よもやこれほどの実力を秘めていたとは……もうひとつ、いや、もっと……あっ旨……)」

  • 72二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:22:18

    ふたつ、みっつとロールキャベツを口に運ぶ。よっつ、五つと春巻きを口に放り込む。そのたびに美味に打ちひしがれ、更なる美味を求めて食卓に箸を伸ばす。
    ……この時点で既に彼女は並の人間の食事量を軽く凌駕していた。だが、彼女がそれに気づくにはもう暫し時間が必要であった。



    卓上の皿に空きが目立つようになってきた頃合い、アザミの身にそれは起こった。

    「おぉ……こちらは七味唐辛子でしょうか?ピリリと舌を撫でるような辛味が野菜の秘めた甘味を引き立ててまた素晴らしい仕上がりで……っ!?」

    ぶちぶちぶちっ  ぼんっ!

    腹部のあたりからにわかに鳴り出したその異音は瞬く間に広がり、締めに爆発音に似た何かと共に腹まわりに妙な解放感を与えて消えた。
    いったい何か……状況も読めぬまま視線を下に向け___

    「……へ?」

    ぱんぱんに膨れ上がり着物を押し退けてはみ出たヘソが、視界の先に飛び込んできた。

    「なん、でしょうか……これ___」

    ヘソ。つまりお腹の先である。お腹……お腹?何故?誰の?自分の?自分の……お腹が?膨らんでいるのか?……着物を押し退けて?

  • 73二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:23:45

    ……食べ過ぎて、いつの間にかこれほどまでにお腹が膨れ上がったのか?その思考に行き着いたその瞬間。

    「___っぐ!!?」

    食欲によってごまかされていた満腹感が彼女を襲う。

    「お、お腹、キツ……!?」
    「あ、アザミさん!?」

    噴き出る脂汗。頭上からはミシミシと何かが__おそらくはヘイローが__軋む嫌な音が響き、彼女の身が限界を過ぎていたことを知らせる。

    「う、ふっぁ……!!お腹、がぁ……破裂す……!!」
    「アザミさん!ま、マルクト!」
    「わかりました、布団を取ってきます。その間にあなたは座布団で簡易的なベッドを」

    周りがにわかに騒がしくなり、動きが激しくなる。が、アザミにとってはそれどころでなく、帯が弾けたことで抑えのなくなった腹がブクゥと二回りほどさらに膨れ上がって彼女の意識を圧迫する。
    傍から見れば生死の境、あるいは食い過ぎて倒れた阿呆に見えるであろう。だが、そんな彼女の中には未知の感覚が湧き出ていた。

    (あ、ぅう……苦しいはずなのに……気持ちいい……!)

    それは膨れ切った胃袋が彼女の性感帯を圧迫したのか、あるいは苦しすぎる状態にドーパントが過剰に分泌されたからか。理由がどうあれ、彼女は腹の膨らみに快感を覚え、興奮していた。

    「あ……あぁ……ぁっ……!♡」

    言葉にならない、最早嬌声とすら取れる音を口から発しながら、アザミの意識は腹に圧し潰されるように消えていった。

  • 74二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:25:23

    ___
    __
    _

    「おはようございます。昨夜はよく眠れましたでしょうか?」
    「あっ、アザミさん……」

    一夜明けて翌朝。寝室から出た俺をアザミさんが優しく出迎えてくれる。が、昨夜の件もあって彼女と顔を合わせるのは正直に言って気まずく感じていた。

    「……はい、ぐっすり眠れました。それよりもアザミさんのほうは……」
    「私は……昨夜はお見苦しい姿をお見せしてしまいました。申し訳ありません。まさか自分でも気づかないうちに気絶するほどに食べていたとは……人生で初めての経験でした」

    そういって恥ずかし気に頭を下げるアザミさん。が、気負った様子も怒った気配もなく、むしろ機嫌は良さそうだ。

    「それもこれも、あなた様のお料理の腕前の為せる技……感服致しました。私ももっともっと精進せねばと気を引き締めたい所存です」
    「あはは……気に入っていただけたならなによりです」

    どうやら昨夜のことに対して怒っているような様子はなさそうで、それどころか料理の腕を褒められてしまった。こう、旅館の女将みたいな人にドストレートにべた褒めされるとさすがに気を良くしてしまう。調子に乗ってしまわないよう自制はしているつもりだが、それでも笑みがこぼれるというものだ。と、女将さゲフンゲフンアザミさんが不意に窓の外に視線をやるものだから、俺もそれにつられて外の様子を伺う。

    「……大雨ですね」
    「土砂降り、ってヤツですね」

    窓の外に映るのは、バケツをひっくり返したような絶え間ない豪雨のただ続く光景であった。空に青は一片も見当たらず、それどころか向かいにあったはずの街灯も雨粒に遮られて見失ってしまうほどだ。

    「これでは本日の予定は難しいでしょうね……それどころか、この地を離れるのにも命の危険が出てくるというものです。今日のところはこの宿で雨宿りしつつ、明日改めて見て周るというのをおすすめしたいのですが……大丈夫でしょうか?」
    「ん、まぁ連邦生徒会に事情を説明すれば納得してくれるでしょう」
    「でしたら連絡のほうは私にお任せを」

    アザミさんからの有難い提案にありがとうございますと感謝を述べ、再び外の景色に意識を向ける。
    あいも変わらぬ灰色の雨模様は、しかし止まぬ雨はないと知っていながらそれでも尚、永遠にこの雨の中に囚われてしまうのではないかという漠然とした不安を感じるほどに勢いを衰えさせず降り続ける。

  • 75二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:26:26

    ……この時感じた不安は、後に見事に的中することとなる。



    「あ、じゃあ朝食作るのお手伝いしましょうか?」
    「!!!……コホン、それではお言葉に甘えて……」

    その日、朝昼晩と三度にわたり俺も厨房に立ち入ることとなった。アザミさんは流石に食後にぶっ倒れるなんてことはもう起こさなかったが……が、食事を終えるといそいそと別の部屋に籠るようになった。食直後を見られるのは恥ずかしいのだろうか……?

  • 76二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:27:32

    ___
    __
    _

    (不覚を取った……よもや、ただの料理にあれほどの醜態をさらすことになるとは……!)

    目を覚まし、土生アザミはぎりりと歯噛みする。思い出されるのは昨夜の出来事。自身の胃袋の限界を見誤って過食し、その果てに気絶するというなんとも言えぬ間抜けを晒した挙句、その場に居合わせたただのガキと白いデブに介抱されたという事実が彼女の自尊心を著しく害していた。

    (……いや。だがしかし、それよりも……)

    が、記憶を掘り起こしていくうちにより懸念すべき事柄を思い出し、思考をそちらに向ける。

    (……私は、意識を手放すその寸前に『感じて』いなかったか?)

    思い起こされるのは昨夜の記憶の末尾。張り裂けんばかりの腹の圧迫感と薄れゆく意識の中に、艶めかしい声が混在していたような気がしてならないのだ。

    「……馬鹿げているにも程がある。食事と性的快楽を結びつけるなど畜生にも劣る行為……酷い記憶違いだろう、まったく……」

    確かに腹を満たすことは欲求を満たす行為であり、あるいは快感を感じることもあろう。だが冷静に考えればその程度のことで喘ぎ散らすほど自分が落ちぶれているなどあり得るはずがない。であるならば勘違いであろう。そう結論付け、彼女は着替えを終えると善良なガイド役を演じるべく客人__獲物らが待つ寝室へと足を運んだ。







    .

  • 77二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:28:55

    「はっぐ、ぅぷ……ぉっ♡」

    勘違いではなかった。桁違いの量の朝食を白大福と競うように食べ、弾けんばかりに膨れ上がった腹を抱えて自室に籠ったアザミ。その吐息と喘ぎ声には、確かに嬌声が混在していた。

    「なん、でっ……おぐ、きもち良……!」

    ぎちぎちと張りつめる腹、腹を内側から自身を破壊せんとばかりに迫る圧迫感。あるいは拷問でも受けているかと錯覚しそうなほどの苦痛の中で、しかし彼女は内から溢れ出る性的快感に打ち震え、身悶えしていた。

    「はぁ、はぁ……!苦しいのに、苦、じぃっ!?……の、にぃ……!!」

    彼女の中で苦痛と快感が拮抗し、しかし打ち消し合うこともなくその暴威が彼女の思考力を奪っていく。
    が、苦痛は一定量が流れ続けるのに対して快感は溜まっていく。次第に快感が溜まっていくと彼女の理性を溶解させにかかる。

    「あっあっ、気持ち良、だめっ、もう我慢っ、あっ、できないっ」

    ついには快感に屈し、自ら更なる快感を求めて胸元へと手を伸ばすと、自身の豊満な胸を掴んで揉みしだく。

    「~~~~~~~~~~~っ!!!あっ、へっ、へっ……!」

    波が彼女の全身に駆け巡り、股下に体液の池を作る。だがしかし、身体に溜まった快感の全てを吐き出せず、やるせない感覚に身をよじりながら股下へと手を伸ばす。

    「あっ、はっ、あっ、ぃ__________っ!!!」

    水音が小さく鳴り響き、池がじわりと面積を広げる。それと同時に快楽の波が引いたのか、アザミは自らの生み出した池の中に力なく崩れ落ちた。

    「はぁ、はぁ、はぁ……」

    気付けは腹囲を襲う圧迫感も苦痛もだいぶと和らぎ、心地よさばかりが残っている。その多幸感に浸りながら、アザミは働かない頭でぼんやりと考えるのだった。

    ___食直後は絶対に他人には見せられないな、と。

  • 78二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:30:24

    ___
    __
    _

    「……雨、ですね」
    「ですねぇ」

    エビス自治区、二回目の朝。相も変わらず空は曇天、人も車も走らない街中を、雨あられだけが元気に降り注いでいた。

    「……その、提案なのですが。今日もこちらで泊まっていきませんか?」
    「……ですね。昨日とそう変わらない天気ですし、昨日が駄目なら今日も駄目でしょう。お言葉に甘えさせてください」

    連邦生徒会とかのほうが気がかりだが、まぁ外様の一介の子供が二日三日帰らない程度で何か影響が出るほど細い組織でもあるまい。俺は女将さゲフンゲフンアザミさんの提案に有り難く乗らせていただくことにした。

  • 79二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:31:25

    ___
    __
    _

    夜。

    (ん……ちょっとお手洗い行きたくなってきたな……)

    ふと目が覚めた俺は、尿意を我慢できずにお手洗いに向かうことにする。その為に頭上に乗った白い肉塊を掻い潜ってマルクトの腹と胸の谷間から顔を出すと、そのまま枕にしていた彼女が起きないよう細心の注意を払いつつ起き上がり、部屋の外へと出る。
    と、その時だった。

    「___っ!?」

    暗い廊下の向こうに、人影が見えた。アザミさんか……いや、違う。ややぼさっとしたあの髪型はアザミさんのものではない。
    ならば誰だ。マルクトは違う。隣の部屋で寝てるし、第一あんな細い身体つきじゃない。自分、なんて以てほのか。そしてアザミさんでもないとすれば……不用意に接していい類のものではないことは明白であった。

    (出た……幽霊……!!いや、あるいは泥棒……!?)

    などと考えていると、謎の人影は向きを変えて別館のほうへと移動していった。
    遠くから物色するような物音などはしない。物取りではなったようだ。
    だがそれでもなお、いや、だからこそ、俺は足の一本も動かすことができず、ただ立ち尽くすのみであった。

  • 80二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:32:27

    ___
    __
    _

    ざぁざぁと降りしきる雨が朝日を遮る。この宿で迎える三度目の朝も相変わらず曇天なんてものじゃない天気模様である。

    「……相変わらずですね」
    「ですねぇ」

    流石に三日連続の土砂降りには女将sゲフンゲフンアザミさんも想定外も良い所なものらしく、困った様子で笑みを浮かべていた。

    「とはいえ、先程頂いた話ですとこの悪天候も今日までとのことで……それまでご不便おかけすること、大変心苦しくはあるのですが何卒もう一日……」
    「いえ、自分らとしましても渡りに船というものです。明日まで有り難く泊まらせていただきます」

    ありがたいことだ。既に規定の日数を大きく超過しているというのにこちらからお願いする前に提案していただけるアザミさんの懐の広さに感服し、礼で応じる。

    「本当にここは娯楽の無い宿です。……いえ、たしか古い書庫がありましたね。もしかしたら退屈しのぎになるかもしれません、後で開放しておきましょう」
    「!ありがとうございます!」

    正直なことを言うと、列車内での暇つぶし用に持ってきていた本では限界が来ていたところだったのでこの提案はまさに渡りに船であった。しかし古い書庫、か……古本とか沢山出て来そうでワクワクするというものだ。もしかしたら昨晩のアレの正体も……と、そこまで考えてそういえばと思い出す。

    「あの、アザミさん……昨晩、なんか髪がぼさっとした女性をあっちの廊下で見たんですが誰でしょうか?」
    「昨晩……?私ではありませんね、従業員もいませんし……もしや別館のアレが戻ってきた?」
    「?」

    最後の言葉は独り言だったのかうまく聞き取れなかったが、なにやら不穏なニュアンスが漂っていることだけは窺い知れる。ともかく、昨夜遭遇したモノはこの旅館に本来いるべき者ではなさそうだ。

    「……あるいは、消灯後は不用意に部屋の外に出歩くのは控えたほうがよろしいかもしれませんね」

    アザミさんが怖いことを言ってくる。どうしよう、すごく帰りたくなってきた。

  • 81二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:33:41

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    「夕飯はグラタンも行けるな……エビとホタテで海鮮風にするのも……女将さん、あぁいやアザミさんの伝手も凄いな、欲しい物なんでも揃うし……」

    ぶつぶつと独り言ちながら廊下を歩いていると、ふと雨音が止んでいることに気付く。
    まさか、そう思い視線を上げてみれば縁側に数日ぶりに陽光が差し込んで照らしているではないか。
    いや待て、陽の中を誰かがいる。アザミさんだ。俺は思わず声を掛けた。

    「……久しぶりのお日様ですね」
    「おや……えぇ、そうですね。この後はまた降るそうですが……束の間とはいえ、晴れ間とはやはりいいものです」

    陽に照らされ、露に照らされたアザミさんは、とてもとても美しかった。美しさと色気、そして安心感を感じさせる笑顔はとても同じ学生の身分であるとは思えず、まさしく大人、旅館の女将といった貫禄であった。
    ここで会話を終わらせたくない。そう思い、必死に言葉を紡ぐ。

    「あの……こんな何日も泊めていただいてありがとうございます。そちらにも都合があるでしょうに、自分らのわがままでこんな……」
    「いえ、わがままなどではありません。ガイド役として、この自治区の自治委員会会長としてあなた様方を迎えたからにはどのような事態にも毅然に対応するのが私の責務というものです。……それに」
    「それに?」
    「……私個人としましても、あなた様方にはできるだけのことをしたいのです。ここにいらした際に説明したかと存じますが、この地は作物の生産・輸出が主な産業となっています。ですが一次産業故かあまり見向きもされず、知名度も低いのが現状です。工芸品の生産のほうも行っていますが、それでも尚です。ですので私は……嬉しかったのです。遠路はるばる、私たちの作った作物を求めて足を運んでいただける方がいらしたという事実が。私たちの努力が報われた、そう考えると嬉しくて嬉しくて……それで、出来る限りのことをしたいと思った次第です」
    「……大好きなんですね、この場所が」
    「ええ、とても。でなければ会長などやっていません」

    あまりに直球に誠意と好意をぶつけられてしまったものだから、つい照れながら言葉を返せば、アザミさんは上品に、しかし満面の笑みでそう言い切ってくれた。
    ……ほんとうに、凄い人だ。
    その後も晴れ間が雲に塞がれるまで話は続き、弾んだのだった。

  • 82二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:35:28

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    深夜。ふと目を覚ませば雨音はなく、窓の外から月光が差し込む。まるで昼間の陽光と対照的だな、などと考えながら部屋の戸に手を掛けて。

    『……あるいは、消灯後は不用意に部屋の外に出歩くのは控えたほうがよろしいかもしれませんね』

    アザミさんが今朝言っていたことを思い出して、思いとどまる。もし仮に昨夜のアレにまた遭遇したとて、今度も無事とは限らないのだ。今夜、この夜を乗りきればアレが何だったのかなど知る由もなくさよならできる。
    俺は布団に戻ると、マルクトの腹に頭を乗せて再度夢の中へと意識を投げ込むのであった。

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    月光を浴びて、その影は人の形を成す。
    大きく後ろから編んで肩にかけた三つ編み。ややぼさっとした髪質。尖った耳。後頭部にはヘイロー。

    「ご愁傷様」

    この館に囚われた憐れな獲物たちに憐れみを籠めたその言葉を贈ると、黒く染まった制服を翻して闇の奥へと消えていく。
    窓の外は、豪雨に覆われていた。

  • 83二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:37:03

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    「おはようございます。昨夜はよく眠れましたでしょうか?」
    「アザミさん……ええ、ぐっすりと。言いつけ通り廊下の外には出ませんでしたよ」
    「?言いつけ……?」

    四度目の朝。居間で出迎えてくれたアザミさんに朝の挨拶をしていたところ、怪訝そうな顔を向けられた。もしや昨日の今日で忘れてしまったのだろうか?

    「ほら、アザミさん昨日言ったじゃないですか。消灯後は不用意に部屋の外に出歩くのは控えたほうがいいかもしれないって」
    「? ?? そ、そうでしたでしょうか……?」

    今ので思い出してもらえるかと思ったが、むしろ混乱を深めている様子だ。これは俺の方がなにかおかしいのだろうか……?とにかく、この微妙になった空気を変えるべく別の話題を切り出す。

    「あ~~っとぉ……あ、雨ですね今日も……相変わらずだ。これ帰れるんでしょうか?」
    「相変わらず……?ですが、昨日は快晴だったはず……?」
    「えっ」

    が、空気を変えるどころかさらに混沌としてくる。確かに昨日は晴れ間もあったはずだが、それでも快晴とはとてもじゃないが言えない天候だったと記憶している。
    ……おかしい。何かがおかしい。激しい違和感に襲われている俺を後目に、アザミさんは更なる爆弾発言を投下する。

    「だって、昨日はあなた様方と一緒にこの自治区を見て周ったはずです。そうですよね?」
    「…………」

    自治区を、見て周った?馬鹿な、昨日までの三日間はずっと宿の中に籠っていたはずだ。それは初日の出来事で……待て。まさか。

    「……アザミさん。今日って何日ですか」
    「?えぇと、2日のはずですが……」

  • 84二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:38:14

    ぐにゃり。足元が覚束なくなる感覚を覚える。

    ___俺は、エビス自治区一度目の朝に戻っていたのだ。





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    「どういうことだ……時間が巻き戻るなんてそんなことあっていいのか……!?」
    「ですが現に巻き戻ってしまったのです。ならば今は建設的は話をしましょう。私もこの事件の究明をするには機材が足りていないのが現状ですし」

    寝室に戻って二人作戦会議を執り行う。幸いなことにマルクトも俺と同様に雨天の三日間の記憶はあるようで、とりあえず俺の精神がおかしくなったという線は潰えた。本当によかった。

    「だが建設的っていったって……建設的、かぁ……何しよう?」
    「過去に戻ったというのであれば、また3日間もの時間が与えられたというもの。お料理などどうでしょうか。私はイカ飯なるものを所望します」
    「ははっ、この食欲大福め……」

    とことんブレないものだ、コイツは。抜群の安定感と言っていいもんで、そんなのだから俺の胸中に渦巻く不安もあっというまに鳴りを潜めてしまった。

    「そうだな、せっかくの機会だ。前の三日間で作れなかった海鮮料理とかに手ぇ出してみっかぁ!」
    「その調子です、か弱き子よ。あとシーフードピザも所望します」
    「それここじゃないと駄目かなぁ!?D.U.でも頼んだら普通に届かないかなぁ!?」

  • 85二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:39:40

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    こうして二度目の一日目は食卓に並んだ料理の品目が変わった程度で終わった。
    そして今は二日目の夜である。
    ……そう。前回はこのタイミングでアレが、あの謎の存在が現れたのだ。

    「巻き戻しが怪現象なら、アレも怪現象……正直、無関係とは思えないのよな……」

    そう独り言ちながら戸に手を掛ける。確か前回はこちらを気にも留めず、あるいはこちらの存在に気付きもせずに去っていった。ならば前回と同じ行動を心がければ今回だって……。
    覚悟を決め、戸口を開けて廊下の奥を確認する。

    「いたっ……!」

    間違いない。あのぼさっとした髪型は前回見たものと同じだ。よく見れば三つ編みだ、見れば見るほどアザミさんとも違う髪型だな……。アレは豪雨ばかりを映す窓を眺めているようで……今、向きを変えた。そのまま別館へと歩んでいく。
    追いかけるべきか。いや、それはリスクが大きすぎる。もしこのまま明後日帰れるならそれまでの付き合いだ、今ここで深追いする必要性は薄い。
    俺は部屋へと戻ると、マルクトの胸の中に飛び込むのであった。

  • 86二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:41:15

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    三日目。前回と同様に書庫が開放されたのでそこでアレの正体を探ってみることとした。の、だが……。

    「……それっぽい逸話が多すぎる!!」

    出てくる出てくる、幽霊や妖怪、心霊に怪談話の数々よ。これ程の量の中から特定の話に絞り込むことなどできるはずがなく、半ば迷宮入り状態であった。

    「やっぱ一人じゃ限界があるか……今度はマルクトを連れて、っと……?」

    頭を抱えながら部屋の中を見まわしていたところ、一冊の本が目に留まる。

    「……コイツ、料理本だ。随分と古いが……だからこそか、知らないレシピとかも載ってやがる。コイツは……!」

    それは俺にとってのお宝本だった。百鬼夜行の伝統料理だろうか、年期を重ねたのであろう紙に印刷されたそれは百鬼に直接出向くことを忌避していた俺ではなかなか手に入れられない情報ばかりであった。

    「味噌をこのタイミングで……みりんと米のバランスが……ここ、あれで代用できるな……」

    すっかり本来の目的を忘れて本に齧りつく。それから夕食まではあっという間であった。

  • 87二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:42:21

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    夜が来た。相変わらず月明かりの差し込む部屋の中で思索に耽る。

    「……前回は三日目の夜から今回の一日目の朝になった。過去に戻ったのは多分このタイミングだ。たった一回だけ起こった奇跡だったならいいが……」

    ちらりと窓の外に目を向ける。月明かりが変わらず俺を照らしてくれる。

    「……まぁ、こればっかりは変に気をもんでてもしかたないか。明日どうなってるかは明日の俺に任せるさ」

    そう言ってマルクトの腹の上に頭を乗せ、目を閉じた。そしてあっという間に眠りに落ちてしまった。



    窓の外が晴れ間からまるで別の日かの如く一転して豪雨のカーテンに覆われていることなど、気付く間もないほど。

  • 88二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:43:22

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    「おはようございます。昨夜はよく眠れましたでしょうか?」

    既視感。居間で迎えてくれるシチュエーションも、今の挨拶も、その佇まいも、何もかもが既視感の塊である。

    「……おはようございます。今日って何日ですか?」
    「二日のはずです」
    「……ん、ありがとうございます」

    はい確定。またしても一日目の朝に時間が巻き戻っている。

    ___何故!?巻き戻っている!?一度ならず二度までも!!?
    たった一度巻き戻っただけならそういう事象もあるのかもしれないとなんとか自分自身を誤魔化してきたが、流石に二度目ともなれば誤魔化しが利かなくなってくるというものだ。一気に見て見ぬふりをしてきた不安が胸の内から溢れ出してくる。
    ___二度あることは三度あるっていうしまた戻るのでは?そも俺はここから抜け出せるのか?永遠にループ構造の中を彷徨う存在にでもなったんじゃないか?
    不安、疑問、懸念。それらが胸中で錯綜する中、改めてアザミさんのほうを見て___気付く。

    「(……ン?アザミさん……えらくふっくらしてきていないか???)」

  • 89二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 03:47:36

    やぁ、私だ。

    いやさね、あまりにも文章量が膨れ上がってきたものだからね?とりあえずここまでで一度区切って前編ってことで投げた訳さ。ははは、構想だとこれで折り返し地点さ。頭おかしくなるよ。

    まぁともかくだ。とりあえず前編だけだが今日の所は勘弁してくれると助かるということで、ね。

  • 90二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 08:26:49

    うわああああ!深夜に激長本文を透過するなぁ!
    けどいい!
    アザミの出るとこは出てて他は引き締まってる体がどんどん脂肪で埋め尽くされていくんだろうな...
    これ蛇というよりツチノコだよもう

  • 91二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 08:57:28

    すごい文章量…後編でアザミがどれだけ太るのか楽しみ…
    そして甥くん寝る時マルクトお姉様枕にしてるの好きふかふかで気持ちいいだろうなぁ

  • 92二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 17:30:48

    うお…供給すっご…
    これは後半も待ち切れないですなぁ

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