閲注 鏑丸くん・・・

  • 1二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:34:18

    じっとりとした雨の日であった。
    晩夏に差し掛かってもなお強く残る暑気は人々の意気を凪ぐのに十分すぎたのか、出かけていく伊之助と禰津子も少々力無げ。善逸に至っては部屋の片隅で物書き机にへばりつくも、いっこうに動かない筆を所無げに見つめるばかり。

    炭治郎もまた、じめじめとした空気の中でいつものような精悍さを手放してしまっていたが、実のところ、ため息の理由は天気とは別のところに在った。

    定期健診のたびに蝶屋敷へと出向いて戦友のカナヲと会っていた彼だが、戦いの傷が癒えるにつれて次第にその身の中に回復してきた健康な情動、それこそが炭治郎自身を悩ませている。

  • 2二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:35:51

    カナヲとの健診および歓談が彼を悩ませている、というのは正確ではない。このところ炭治郎はこの検診の日を心待ちにしている色すらある。彼の煩悶の遠因となっているのはカナヲではなく、その傍らにいる蛇、鏑丸であった。

    カナヲの薄い襯衣の中からするりと這い出てきてはちろちろと舌を出し、また再びカナヲの胸襟の中へと潜り込んでいくその蛇体は、なまめかしく造化の妙を感じさせる。

    炭治郎は優しい少年であった。だからこそ、暴性を伴うような強い色欲とは無縁そのものでもあった。言ってしまえば、彼はまだ恋を知らない、ということ。そんな彼が自身の脈拍や体温の上昇を自覚した瞬間を考えたとき、そこにはいつもカナヲと鏑丸が居る。

  • 3二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:37:18

    (俺、もしかして・・・)
    少年の脳裏にあったのは尊敬する先達であり、勝利の礎としてその身を捧げた偉大なる柱たちの一人、蟲柱・胡蝶しのぶの言葉。
    「恋というのは感情変化の一様態であり、身体的には体温の上昇と脈拍の強壮化が顕著見られます。また、人によっては普段とは違った言動を取るようになることもありますが、これは脳内の物質が関係しており・・・」

    恋の呼吸の威力を間近で目撃した彼がふと問うてみた質問に対して、蟲柱として彼女はさまざまな見識を授けてくれた。その知識が今、炭治郎の中でひとつの推論へと至ろうとしている。

    「俺、もしかして・・・鏑丸くんに・・・恋を・・・?」
    竈門炭治郎16歳、初恋の芽生え(?)である。

  • 4二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:38:31

    「清姫伝説ってのがあってよ!」
    いつだったか、女人に強く恋焦がれている善逸が逆に恋慕われる側になりたいと言いながら鼻息荒く語っていた昔話。伊之助は川魚をかじるのに夢中だったが、楽しそうに語る善逸を炭治郎は温かく見守っていた。彼は今、その話を思い出していた。

    「っ・・・!」
    人というのは不思議なもので、それまで考えもしなかったことでも一度自覚すると目を閉じるだけで脳裏に浮かぶようになる。

    カナヲの白いうなじに絡みつく鏑丸
    カナヲの胸襟から覗く鏑丸
    カナヲの艶やかな髪と戯れる鏑丸
    カナヲのしなやかな細い指を撫でるように這う鏑丸・・・

    炭治郎は心の臓を強く握られるような錯覚に陥ったが、存外その甘い苦しみは不快ではなかった。その両頬にはわずかに紅が差す。いつの間にか、彼の片目には世界が煌めいて美しく見えるようになっている。

    残暑も力強いとはいえ、葉月も終わりに差し掛かり、ひぐらしも鳴き始めるこの季節に、少年は「春が来た」という慣用句の意味を心で理解するに至る。庭先にある親族の墓の傍らにはアサガオが小さな花を咲かせていた。

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:40:06

    これ半分くらいしのぶさんのせいだろ

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:40:53

    クソボk…あれ!?

  • 7二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:41:34

    どうしてこうなった

  • 8二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 12:56:23

    描写が繊細で風景が目に浮かぶ良文……なのにどうして……

  • 9二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 13:21:35

    アサガオも困るだろコレ

  • 10二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 13:21:53

    でも蕪丸はオスで女好きだ!

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 13:22:42

    単刀直入に言うけど炭治郎のばーーーーか!!!

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 13:24:59

    >>11

    の発言中の顔

  • 13二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 13:46:31

    蛇はえっちだよね

  • 14二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 15:35:34

    遡ること数か月。
    無惨討伐の礎となった英雄のひとり、岩柱・悲鳴嶼行冥は真っ暗な空間で目を覚ました。眠ったいたというよりは意識を取り戻したという感覚。戦いの末、かつて面倒を見ていた子どもたちと共に彼岸へと渡る際、炭治郎が鬼へと身を落とさんという場面に遭遇した彼は、子どもたちを先に逝かせて炭治郎の背を支えることにした。そしてその甲斐あってか、炭治郎は人へと戻ることができたのであった。

    彼の記憶はそこまでである。いや、そこまでであった。そこまでのはずであった。
    そのはずが真っ暗な謎の空間にいる自分。ここが彼岸だというのなら神仏とはあまりに残酷ではなかろうかと思ったものだが、自身を呼ぶ声に振り返ればそこには先に逝った仲間たち、煉獄杏寿郎や胡蝶しのぶの姿があった。胡蝶しのぶ曰く、竈門家は先祖の記憶を遺伝する特異な体質があり、その影響で死者たちが炭治郎の脳内を寄合所にすることができたのだという。

    そこからはとんとん拍子であった。
    炭治郎が意識を取り戻したと同時に開ける視界。活動写真に興じる観衆のように盛り上がる元鬼殺隊の面々。
    皆、炭治郎たち兄妹が心配だったのだろう。
    そんな折、その炭治郎の口からこぼれ出たのは
    「俺、鏑丸くんに・・・恋を・・・」のひと言。
    伊黒は頭を抱えていた。

  • 15二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 15:36:50

    「これは・・・しのぶ・・・」悲鳴嶼の目は見えているかのように訴える。
    「な、なんですか!私のせいだって言うんですか!?」
    「うむ!胡蝶のせいではないが、影響は甚大だろう!」煉獄は力強く悲鳴嶼は濁した言葉の先を代弁した。

    「胡蝶様・・・」「蟲柱様・・・」「しのぶちゃん・・・」「胡蝶・・・」
    「なんですか!私は問われたことに答えただけでしょう!!」恩師である悲鳴嶼や同僚の煉獄、親友の甘露寺ほか守るべき隊士たちの前であるため抑えてはいるものの、すでにこめかみにはうっすらと青筋が出ていた。

    もちろん、しのぶは異種間恋愛を奨励したわけではないし蛇に懸想する強者へと導こうしたわけでもない。彼女はあくまで「恋の呼吸」を目撃した炭治郎の「恋とは何か」という質問に対して答えたのみ。その知識を用いた炭治郎が鏑丸への恋心を誤認するなど想定外もいいところ。

    当然、そんなことは百も承知の面々は、戯れの意味を込めてしのぶをつついているのであった。

  • 16二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 15:38:59

    また別の日、くく晴れた日の朝、伊之助はマムシを捕まえたといって魚籠の中にいれた数匹のマムシを持って来たが、それを見る炭治郎の心はとくに動きはしなかった。蛇なら何でも良いわけではない。特定の相手にのみ心が動くのが恋というものである。炭治郎はカナヲの細い首筋にするりと絡む鏑丸に、まるで人間の女性のような甘い匂いのする鏑丸にのみ向いているのであった。

    「おそらく炭治郎くんはカナヲへの恋心を誤解していますね・・・」
    炭治郎の脳内で開かれる柱合会議にて、しのぶは状況を分析していた。柱合会議といっても玄弥やその他の隊士たちも大勢集まっている。
    「うむ!竈門の年齢からして恋心への理解が乏しいことは大いにあり得ることだな!」
    「うむ・・・竈門が町でふと見ていた春画の類も、蛇が絡むものではなかった・・・南無」
    「ほら見てごらん甘露寺、竈門が春画を見ているよ、珍しいものだ、ふふふ・・・」「うふふ、恥ずかしいのかしら、ちらちら見てる・・・綺麗ね、伊黒さん・・・」

    「・・・・・」玄弥は何も語らない。ただ、時折竈門家に置かれているおはぎの差し入れに心温まる思いを大切に抱きしめるのであった。

  • 17二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 16:00:35

    炭鏑スレじゃなかった…

  • 18二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 16:51:01

    文章の書き方目茶苦茶好みなのに内容これなのほんま笑う

  • 19二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 17:44:50

    「その結論、伊黒さんが見たらどう思うと思いますか?」って書こうとしたらもう伊黒さんに見られてた…

  • 20二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 18:05:09

    「・・・・・///」

    狂い咲きの藤の花。いまや鬼の存在の残り香となっているのは、この藤の花のみ。
    ・・・いや、それは正しくはないだろう。

    戦いの爪痕として四肢を失った者、家族を失った者、そして命を失った者・・・。残された者たちの心にぽっかりと空いたその穴こそが鬼という悲しい存在がかつてあったことの証左である。炭治郎のしわがれた片腕もまた同じ。
    その片腕をゆったりとさすりながら、炭治郎は先日の診察を思い出していた。

    優しくたおやかに触れるカナヲの手。その上を軽妙に這う蛇体。もはや触感を伝える役目を失っていた片腕だが、そのときばかりは、まるで火がついたような、浮き立つような感覚となったことを、目をつぶらずとも思い出せる。

    「・・・・はぁ・・・」
    胸がつまったかのようにため息を吐く炭治郎。その頬の赤は色味も増すばかり。

    しかし、その赤は決してあの雪の日の禍々しい血の赤ではなく、照りつける夏の太陽を受ける命脈の躍動を象徴する赤であった。

  • 21二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 18:16:15

    「炭治郎の性癖がねじ曲がったとしても、何も変わらないよ」
    ふわりと微笑んで言う時透無一郎。意気を高めんとする獰猛な笑みとも、邪気を挫かんとする不敵な笑みとも違う、温かな笑顔がそこにはあった。

    「うむ!時透の言う通りだ!」
    若き同僚に同調する煉獄。特徴的な瞳は視線を読みづらくしているが、その口角は緩やかに上がっている。
    「ほら見てごらん甘露寺・・・」
    「素敵ね伊黒さん・・・」

    「私も昔寺に居た頃、僧侶たちが奇怪な性癖を拗らせていたを覚えている。いわんや戦友である鏑丸をや・・・。」
    岩柱・悲鳴嶼行冥の目に涙はなかった。涙の代わりか、その力強い胸の中には温かい心持ちがいっぱいに満ちているのであった。

    「いや、待ってください!?炭治郎くんの性癖がねじ曲がったかどうかはまだ分からないですよ!?というかそもそも、炭治郎くんはカナヲに恋をしているに間違いありませんてば!!」
    人が変わったようにかしましく吠える蟲柱・胡蝶しのぶ。しかし、昔の彼女を知る者たちは、どこか彼女が帰って来たような懐かしい気持ちにならないではいられなかった。隠や隊士たちの中にはその姿にほろりと目尻を濡らす者もいたが、それを口に出すような無粋を踏む者は一人もいない。

  • 22二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 18:28:32

    「しのぶ・・・ここは落ち着いて竈門の選択を見守ろう」
    「悲鳴嶼さん・・・そう、ですね。外野がとやかくいう事ではありませんね・・・」

    「煮詰まっているね」
    「「「 御 館 様 !!!? 」」」
    炭治郎の選択を見守っていた面々の前に現れたのは、病床に伏せる身でありながら無惨討伐の先陣を切った偉大なる先代、産屋敷輝哉その人であった。

    「焦らなくてもいい。君たちは本当によくやっている。」
    ゆったりとした声。その声の力か、はたまたは別の何かが働いたのか、ある隠がぼそりと呟いた一言は不思議にその場の空気を一変させるものとなった。

    「そうか・・・御館様のおっしゃる通りだ・・・炭治郎の性癖がねじ曲がったのかどうか・・・待てばいいんだ・・・健康な男子なら必ず馬脚を現す・・・」

    「・・・・ん?」
    鬼狩りの長・産屋敷輝哉、一生を終えた後に己の先見の明を超えるような事態が起こるとは想像もしていなかった。

  • 23二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 18:37:24

    「そうか!確かに!」
    複数の隊士たちが納得したように頷きだす。
    「さすがはお館様・・・炭治郎が自慰を始める瞬間を待つとは・・・これが産屋敷の先見の明・・・!」
    隠や隊士たちの気勢は強まるばかり。

    「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
    想定外の事態であったが、ニコリと微笑む産屋敷。

    「自慰ですか、確かにあり得なくはないですが、炭治郎くんの印象にそぐわないところが多いですね」
    蟲柱・胡蝶しのぶ、あくまで冷静に状況を考える。
    「南無・・・まれだが・・・・自慰を覚えないまま大人になる子どもも・・・いる」
    「うむ!見たくはない!しかし後輩を導くのは柱の責務!」
    「ふふ、甘露寺・・・お館様がいらっしゃったな・・・」
    「うふふ、伊黒さん・・・お館様がご自分で歩いてらっしゃるわ・・・」

    一連の流れが、霞柱・時透無一郎には全く理解できなかった。

  • 24二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 18:40:14

    炭治郎の自慰見たがる異常者しかいない…

  • 25二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 22:21:51

    待て

    待て

  • 26二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 23:20:15

    なぜか迷い込んだ妓夫太郎の感想

  • 27二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 23:25:53

    蛇と恋がバカップルみたいになってる…

  • 28二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 23:30:55

    炭治郎もばーーーか!!!だけど炭治郎×鏑丸を容認しようとしてる柱どもはもっと何なんだよ!!!!!!!

  • 29二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 06:37:41

    >>27

    まあそりゃ……ね?

  • 30二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 07:17:36

    (もしかしてだけど前継承者に見守られるデク美文SSとか書いてた方?)(お嫌でしたらレス消してください)

  • 31二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 07:27:01

    >>27

    告白も済んだし来世に向けてアップ始めてるからな

  • 32二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 08:08:26

    すごい文才あって面白い

  • 33二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 08:21:24

    >>27

    伊黒さんからしたら

    家族も同然の親友が異種間同性純愛に巻き込まれてる

    戦友たちがこぞって炭治郎の恋に対して応援しているので反論を言いづらい

    甘露寺かわいい

    でもう脳が真夏の氷菓のように蕩けている可能性があるから

  • 34二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 08:21:37

    何だこれは…

  • 35二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 08:31:24

    >>30

    (ドキッ)

  • 36二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 08:55:31

    その日はからからと良く晴れた青空が印象的であった。
    明治の頃に始まった天気予報とやらはラヂオを通してその日の天気を伝えてくれるが、それによると午後には雷雨になるとかどうとか。青く澄んだ大空のところどころに白い雲がよく映える晴天を見ながらでは、とても信じられないといったところ。

    炭治郎は禰津子や善逸らを伴って蝶屋敷へと繰り出していた。といっても善逸が禰津子を街歩きへと誘い、別行動となったため屋敷へは伊之助と二人でやってきている。そもそもなら、この日に健診の予定はない。脚気に悩まされた数名の患者たちがカナヲの診察を待っていたため、受付の者に言って離れで待つことにした炭治郎。
    おそらく元は隠の者なのだろう。受付の女性は炭治郎を見るやにこりと笑って案内するのだった。

    今年は雨が少なったこともあり、時期の遅れた紫陽花が多少残っている。だいぶしおれた葉の上に佇む蝸牛を、伊之助は夢中で観察している。そんな伊之助を陰ながら熱のこもった視線で眺めるのは、蝶屋敷の台所番・神崎アオイであった。その視線に気づいた炭治郎は心がふわりと軽く、また温かくなるのを感じる。

    と、同時に・・・
    「うむ!神崎も性癖がねじ曲がっている!」
    「南無阿弥陀仏・・・・」
    と炭治郎の脳内で面々は盛り上がっていたが、玄弥だけは・・・、
    (いやアレは猪にケソーしてんじゃなくないか?たぶん伊之助のことだろ)
    と考えるも、口に出すには至らなかった。

  • 37二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 09:05:23

    「ごめんね炭治郎、遅くなっちゃって」
    頬にほんのりと赤みが浮かんだ表情で、襖の奥からカナヲが顔を出した。
    胸元には聴診器が垂れ下がっている。その柔らかな雰囲気は以前の彼女を知る者から見れば、感涙を禁じ得ないだろう。事実、炭治郎の脳内でしのぶは目尻が熱くなるのを感じていた。

    「ふふ・・・」
    笑みを浮かべたまま炭治郎に触れるカナヲ。感覚のない左腕の指先から上腕へ、上腕から肘へとカナヲの細い指が触れる。肘を越えたあたりからは鈍く感覚が伝わってくる。二の腕・・・肩・・・鎖骨を伝って首筋へ・・・。くすぐったがる炭治郎を見ながら、いたずらっ子のような楽しさを感じるカナヲ。彼女はいま不思議な幸福感に満たされている。

    そして、同時に・・・
    「カナヲ!カナヲ!行きなさい!カナヲ!」
    「うむ!栗花落は何かの扉を開いたようだ!」
    「南無阿弥陀仏・・・」
    と盛り上がる面々。

    はるか後方で見守る産屋敷輝哉は、その光景から、愛する妻との日々のことを思い出すのだった。

  • 38二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 10:07:08

    鬼殺隊が気ぶり隊になっている⋯

  • 39二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 11:45:44

    頬を包むようにカナヲの手のひらが炭治郎の顔を撫でる。必然的に鼻との距離も短くなってくる。
    慈しむようなカナヲの眼差しと交差する炭治郎の穏やかな眼差し。竈門家特有の少し角ばった特徴的な瞳には確かな熱がこもっている。

    「・・・・・ふふ」
    「・・・・・ふふ」
    ほとんど同時に笑みがこぼれる。互いに語らずとも通じ合っている実感が何よりも心地よいと感じる炭治郎。カナヲもそう感じていてくれると嬉しいと、心から思うのだった。

    そんなとき、カナヲの襟元から這い出てきたのは件の鏑丸。襟元から出てくれば当然襟元が少し開かれる。結果、炭治郎の視界にはカナヲのうなじが入ってくることになった。結果的には、鏑丸の登場と同時に、炭治郎の胸は高鳴る。

    そして、頬に触れているカナヲの腕を伝って這い寄る鏑丸。炭治郎の鼻腔に入ってくるは爬虫類特有の生臭さ・・・ではなく、どこまでも温かく甘やかで、まるで年頃の少女のような匂い。炭治郎の脳はもはや正常な判断力を失っていた。

  • 40二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 11:49:45

    >>33

    伊黒さん現実逃避してない?

  • 41二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 13:51:35

    何が南無阿弥陀仏…だよ

  • 42二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 15:46:49

    まあそれや鏑丸からも年頃の娘のニオイするだろうよ!くっついてんだから!

  • 43二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 16:46:14

    (地獄より無惨からのコメント)
    ほらみろ鬼殺隊は異常者の集まりじゃないか

  • 44二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 17:10:29

    炭治郎の脳内では元鬼殺隊の面々が盛んに議論を交わしていた。

    「蟲柱様!カナヲちゃんの性癖についてはどのように把握なさっているのですか」
    「カナエ姉さんなら分かりませんが、私はカナヲと性癖談義で盛り上がったことなどないので・・・」

    「霞柱様!たしか炭治郎とは仲がよろしかったかと!」
    「うん、そうだね。炭治郎はボクの親友だし恩人だよ」

    「うむ!竈門少年!心を燃やしているな!甘露寺との稽古を思い出すようだ!」
    「見てごらん甘露寺・・・俺たちの鏑丸があんなにも愛されてるよ・・・」
    「うふふ素敵ね伊黒さん・・・伊黒さんの鏑丸くんがあんなにも・・・」
    「こら甘露寺・・・『俺たちの』さ・・・ふふ」
    「うふふ、ごめんなさい伊黒さん・・・うふふ」

    一方、岩柱・悲鳴嶼行冥は脳裏に一すじのとげを感じ取っていた。
    (竈門はかの戦いにて痣を発現した者。それも鬼殺隊で最も初めに痣者となった・・・。だとすれば、恋路に時間が多く残されているわけではない・・・。竈門が選ぶのが鏑丸なのか栗花落なのかはまだ分からないが、性癖の行き先をしっかりと定めねば時を浪費してしまう・・・)
    「・・・南無・・・阿弥陀仏・・・・・・・」
    深く静かに呟くその経文。産屋敷輝哉を除いて、その声を聴くものはいない。

  • 45二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 19:21:25

    これは異常者

  • 46二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 23:16:25

    読んじゃったわ、何なんだこれ

  • 47二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 05:14:49

    どうなってしまうんだ…?

  • 48二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 13:24:32

    ほし

  • 49二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 14:05:13

    カナヲとの戯れは妙に艶やかなひと時を炭治郎に与えるものであった。
    この夏の残暑は厳しく、庭先には未だ真夏のツクツクボウシがかしましく鳴いている。そんな夏の憂さを吹き飛ばし、ほうとため息をつかせるだけの悩ましいひと時。

    「炭治郎・・・あの・・・」
    「ん?どうしたんだ?カナヲ?」

    赤らめた頬は不思議な香気を纏っているかのように炭治郎の目に映える。まだ明るい真昼間の中であったが、まるで月夜の晩に逢引きに出たかのような浮足立つ気持ちが少年の心を満たしていく。

    「今日・・・泊まっていったら・・・どうかな・・・」
    カナヲは目を合わせずに言った。その言葉を聞く炭治郎の鼓動は強く脈打つ。カナヲが目を合わせなかったため炭治郎の視線は胸元の鏑丸とかち合うこととなっていた。

    その晩、禰津子は久方ぶりに家に烏を迎えた。曰く、炭治郎と伊之助は蝶屋敷にて外泊してくるとのこと。村田や後藤といった戦友たちが尋ねに来ていたため善逸と二人きりにはならなかったことを、心のどこかで不満に思うこの少女が、その気持ちに名前を付けて自覚するに至るにはまだまだ時が必要なようであった。

  • 50二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 14:16:40

    「南無阿弥陀仏・・・尊きものだ・・・」
    岩柱・悲鳴嶼行冥は心の底から少年少女たちのやり取りを称賛する。久しく見ることのなかった、人間の美しさそのものを眼前で見ることになった幸運を、それも己が人生の本懐を遂げた後にこうして眺めることができることを、神仏に感謝するのであった。

    「うむ!栗花落は勝負をかけるつもりのようだ!竈門少年は色香に気おされて鼻が利かなくなっている!男児としてふがいなし!」
    「炭治郎くんは嗅覚による探知に頼りすぎたのでしょうね。いまの彼は少々鈍感なところがあるように見えます。カナヲの恋心に気づいていないようですね。」
    「ふふ・・・ごらん甘露寺・・・栗花落が竈門炭治郎を落とそうとしている・・・・鏑丸はどうするのかな・・・ふふ」
    「うふふ・・・素敵ね伊黒さん・・・三角関係みたい・・・カナヲちゃん頑張って・・・」

    「普段はとても鋭く聡明なのに、あの奥手さ、あのじれったさ・・・お館様を夜這ったときのことを思い出しますね・・・」
    「あまね?」
    誰に聞かれる声でもなく、先代当主と夫人は肩を寄せ合って若い隊士たちのやり取りを眺める。まるで夏の日の花火を見るかのように、まばゆい光景を眺めるかのように・・・。

  • 51二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 14:27:29

    カナヲが炭治郎に外泊を求めたのはまだ日の高い時刻であった。そのため炭治郎は蝶屋敷が医院としての門を閉めるまでの間、離れのあてがわれた部屋の片隅に座り、ぼんやりと畳の線を数えていた。
    もともと手持無沙汰に過ごすことを好まない性分もあってか、少年の脳裏には目まぐるしく様々な光景が駆け巡る。

    耳をくすぐるカナヲの声色と鏑丸の吐息・・・
    こそばゆく這うカナヲの白い指と鏑丸の白い蛇体・・・
    頬を赤らめるカナヲと艶やかに光を反す鏑丸・・・

    いつの間にか炭治郎の意識は肉体を離れ、現実世界を飛び出して、夢の世界へと落ち込んでいった。
    まさに落ちるという表現がぴったりと来るような浮遊感とともに炭治郎の意識は知らぬうちに夢の中で覚醒した。

    古今東西、多くの夢見がそうであるように、このときの炭治郎もまたそれが夢であることを自覚できないでいた。そんな彼の目の前に居たのは、カナヲその人であった。
    少年は、この少女の魅力に完全にとりつかれているが、その感情に恋という名をつけるには至っていない。だからこそ、深層心理での欲求がカナヲの姿となって、炭治郎を色と欲の中へと沈めんとしているのであった。

    その欲求を反映した夢の中のカナヲはひとこと少年の耳元で告げる。
    「今まで隠していてごめんね、炭治郎・・・わたし・・・・本当は・・・・

    蛇だったの」

  • 52二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 14:42:35

    多量の発汗を伴って飛び起きた炭治郎。その日はだいぶ傾き、空は青空から茜色に、往来の足音は医院の患者たちの重い足音から小さな子供たちの軽い足音へと変じている。

    昼寝から飛び起きた直後には乱れていた息もある程度治まってきたころにはもはや夢の内容を忘れてしまった炭治郎。しかし、少年の下半身はそれまで経験したこともないような力強さを伴っている。
    炭治郎は自身の内側に暴力的なまでに煮えたぎるような欲求が渦を巻いていることを自覚するが同時に、数刻後にはあるであろうカナヲや鏑丸らとの夕食にそなえて、自らを律しておく必要を強く感じるのであった。

    ーーーー

    「発情ですね」
    蟲柱・胡蝶しのぶは淡々と分析した。
    「我々の視点では彼の夢を確認することはできませんでしたが、おそらくは淫らな夢を見たのでしょう。人間に発情という生理機能はありませんが、類似した精神状態にあると分析できます。おおかた、カナヲとの一夜でも想像したのでしょう」
    「うむ!しかし鏑丸との一夜ということもある!断言はできまい!」
    「煉獄の言う通りだ胡蝶。鏑丸は俺と居たときから強い男気を見せるやつだった。竈門がその魅力に囚われたとしておかしいことなどない」
    「でも伊黒さん、カナヲちゃんは可愛いわ」

    「・・・・甘露寺の言う通りだ煉獄。そもそも鏑丸は雄だ。」
    「むう!」

    炭治郎は自らの脳内でかつての仲間たち先達たちが見守っているということを知らない。何も知らない彼が身に余る熱を鎮めるために何かをしたとしても、それは事故と呼ぶほかはないだろう。

  • 53二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 14:54:36

    医院としての業務を終えたカナヲが炭治郎を呼びに離れの部屋を訪れたとき、彼女はにこやかに労をねぎらってくれる彼の声と笑顔に深い癒しを感じた。ほんのわずかに栗の花に近い気配を感じたがそれについて問うには至らなかったのは幸甚のひとつか。

    夕餉の席にはすでに伊之助が座っていた。日がな一日蝶屋敷の生き物を観察していたのか、それとも何か作業でも行っていたのか、神崎アオイと妙に距離が近く見えた炭治郎だったが、それを口に出すことはしない。

    季節の野菜の天ぷらや川魚、鰻などいつも以上に奮発した食事。カナヲとアオイが無言で視線を交わし、力強くうなずき合うのに、男子二人は気づきもしなかった。

    そして晩となり、月がよく映える夜。
    雲は輪郭がはっきりとしていて月との色合いが迫力ある様相であった。夏の月の光は冬のそれとは違い鋭さの代わりにやさしさを伴っているような気がする。

    湯まで借りて、何故か妙に大きめな布団を敷かれた部屋の窓辺に座って、月を眺める炭治郎。そんな彼を訪ねようとする一人と一匹の影が、蝶屋敷の廊下に伸びていた。

  • 54二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 22:16:13

    >栗の花に近い気配


    炭治郎、お前……

  • 55二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 07:30:20

    禰豆子やで

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