【CP・閲覧注意】ヒゲマンから連絡が来ない……Part4【シャリマチュ】

  • 1二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:35:32

    立てました。

  • 2二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:36:43
  • 3二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:38:31
  • 4二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:39:56
  • 5二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:42:15

    前回の話から設定を引き継いでいます。


    お手数ですが、最初のスレからお読みいただくか、Part1、Part2はpixivに小説としてまとめてありますので、そちらを御覧ください。


    「暁の邂逅」/「あんみつ」のシリーズ [pixiv]機動戦士Gundam GQuuuuuuXの二次創作です。 最終回の少し後。 地球の海にいるマチュと、ジオンにいるシャリア・ブルが再び会うまでのお話。www.pixiv.net

    ダイス判定の臨場感を味わいたい方はスレを、内容だけ一気読みしたい場合はpixivをどうぞ。


    Part3の新シリーズは現在進行中です。

    こちらも完結したらpixivにまとめる予定。

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:46:42

    とりあえず、想定のストーリーの半分は越えましたので、後半戦も頑張って書いていきたいと思います。

  • 7二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:49:59

    そういえば、すっかり注釈が遅くなってしまったんですが、フラナガンスクールについて

    正史だと、フラナガン機関はサイド6にあるんですけど、GQでは、ジオンとサイド6との関係性や、スクールがジオンの士官学校的側面があることから、フラナガンスクールがサイド6にあるのがいまいちしっくり来ませんでした。

    ということで、Beginningで、グラナダでフラナガン博士と会う描写があったので、スクールは月にあるっていう設定にさせてもらいました。
    機関とスクールが同じ敷地内にあるっていうのもこのSSの中での独自設定です。

    スクールの場所は明言されてなかったと思うんですが、もしどこか別の場所設定があったら、イオマグヌッソの「事故」後にグラナダに移転したってことにさせてください……。

  • 8二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:51:49

    では、続きです。

    舞台変わって。
    少し時間は遡り、月の基地、グラナダ。

    コモリから、マチュたちが地球で行方不明になったという連絡が入った直後。

    連絡を聞いて、動揺したシャリア・ブルだったが、月にいる自分が二人にしてやれることと言ったら、信じて待つ以外にない。

    ひとまずコモリには、落ち着いて報告を待つように伝えて、自身は自分の任務に専念することにした。

  • 9二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:52:58

    ニャアンの話を聞く限り、スクールの方に不審な点はないようだ。
    (調べるとしたらやはり機関の方か)

    フラナガン機関の組織図と、構内図を眺める。
    問題は、シャリア・ブルはフラナガン機関ではそこそこ顔が知られているということだ。
    一年戦争時代から顔見知りの者もいる。
    すれ違う程度であれば問題ないだろうが、注視されたり声をかけられたりすれば、見破られる危険性は格段に上がるだろう。

  • 10二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 21:54:14

    スクールの月間予定表を見ると、2日後の週末にスクール生の定期健康診断があるようだった。
    (多分、併せてフラナガン機関でニュータイプの能力測定も行うはずだ)
    人の出入りが増えれば、うまく紛れられるかもしれない。

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 22:50:42

    スレ立て乙です!
    続き楽しみにお待ちしております!

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 01:47:42

    新スレ乙!今回もダイス神の御加護ありますように

  • 13二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 03:10:38

    おつかれさまです…
    ふしゅうう…(煙吐きながら正座待機

  • 14二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 07:46:51

    週末。
    シャリア・ブルは事務の職員を装い、スクール生に紛れて、フラナガン機関を訪れた。
    入るときに偽の身分証をかざす。臨時職員登録なので、生体認証までは求められないことを確認済みだ。

    遠目にニャアンがいるのが見える。
    目が合ったが、そ知らぬ振りをすると、向こうも気付いていない振りをしてくれた。

  • 15二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 07:48:03

    近くを通りかかる研究員たちの様子をさりげなく観察する。
    中には、うっすら顔を知っている者もいたが、全く気付かれる様子はなかった。

    (変装した甲斐がありましたね)
    シャリア・ブルは指先でそっと顎を撫でた。

  • 16二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 07:49:12

    聞こえてくる会話はほとんどが当たり障りのないものばかりだった。
    今日は収穫なしか、と諦めかけたその時。

    シャリア・ブルの耳に、気になる単語が耳に飛び込んできた。
    「……本当にオブジェクトは大丈夫なんだろうな?何かあったら困るんだ。せっかくここまで上手くいっていたのに……」
    「……今のところ、問題ありませんよ……」
    (……オブジェクト?)
    会話している2人を、ちらりと横目で確認してみる。
    後から答えた方は研究員で、もう一方はその上司といったところか。
    シャリア・ブルの方からは、上司の顔がよく見えた。彼の心の中は苛立ちと心配で溢れかえっていた。

  • 17二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 13:34:57

    ついに本格的な潜入調査か…、頑張れヒゲマン…

  • 18二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 19:48:54

    こういう潜入調査のときも、中佐の心読める能力って便利だよね

  • 19二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 21:42:50

    オブジェクトといえば、グラナダの地下に収容されていたシャロンの薔薇が思い浮かぶが、既にゼクノヴァによって向こう側の世界に帰ってしまった。

    (では、彼らの言う『オブジェクト』とは、一体何のことだろう?)

    名札を見て、所属を確認する。
    上司らしき人物は『生物応用グループ』、研究員の方は『未来生体機能調整研究室』と書かれていた。

  • 20二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 21:44:09

    シャリア・ブルが前回フラナガン機関を訪れたのは、半年ほど前だ。
    その時のことを思い返してみるが、オブジェクトの話など、一切出てこなかった。
    心を読めるシャリア・ブルに対して、その気配さえ感じさせないというのは、かなり意図的なものを感じる。

    新たなオブジェクトについては、規定に基づき、国への届出義務がある。
    もちろん些細な漂流物程度であれば見過ごされている例はいくらでもあるが……。

    シャリア・ブルの勘は、何かがあると言っていた。

  • 21二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 21:46:02

    話をしていた2人はとっくに通りすぎてしまった。
    もう少し事情を知っていそうな者が通りかかってくれればよいのだが、残念ながらそう都合よくはいかない。
    様子をうかがっているうちに、どんどん時間は過ぎていく。
    能力測定が終わったら、スクールの方へ戻らなければならない。

    シャリア・ブルは思い切ってその場を離れ、先ほど名札に書かれていた研究室を探しに行ってみることにした。

  • 22二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 21:47:08

    組織図と構内図を頭に入れていたので、研究室の場所はおよそ検討がついた。
    廊下を進むうち、スクール生たちのざわめきが次第と遠くなっていく。
    途中何度か研究員とすれ違うが、特に不審に思われることはなかった。

    すれ違い様、研究員同士の会話が耳に入ってくる。
    「聞いたか、また人員縮小だと」
    「相当厳しいらしいな」
    「予算が取れないんじゃどうしようもない」
    「上手くやってる部署はいいよな」
    (やっぱり狙うは軍事特需しかないな)
    聞こえた心の声に、思わず眉をひそめた。
    機関へは、ジオンもかなりの資金を投入しているが、国自体の財政状況が厳しい現在は、以前と比較して、予算配分がかなり減少している。
    (機関も経営が厳しいのかも知れないが……。とはいえ、軍事特需とは穏やかでない)

  • 23二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 06:01:48

    支援!
    軍事特需とは穏やかじゃないですね…

  • 24二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 07:44:21

    目的の部屋は、建物のやや奥まったところにあった。
    ドアはきっちりと閉められている。
    掲げられている標示板には『未来生体機能調整研究室』と書かれていた。
    標示板が比較的新しいところを見ると、ここ数年で新設された部署なのかもしれない。

    (さすがに中に入るわけにはいかないか)
    辺りを見回す。
    部屋のはす向かいが給湯室になっていた。
    わりと余裕のある造りなので、陰にいれば廊下からは見えなさそうだ。
    シャリア・ブルは、給湯室にそっと入り込んだ。
    部屋から誰か出てきたら、すれ違って様子を伺ってみるつもりだ。

  • 25二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 07:45:21

    ややあって、ドアが開く音がした。
    シャリア・ブルは自然に給湯室から出て、研究室から出てきた人物とドアの前ですれ違う。
    だが、何だかおかしい。
    相手の思考が全く読めなかった。
    (……妙だな)
    足を止めそうになったが、あまり不自然に思われてもまずい。
    そのまま研究室の前を通りすぎる。
    大分離れたところまで歩いてきて、ほっと息をついた。


    能力の出現の度合いにはバラつきがあるが、こんなことは珍しかった。
    妙な感覚はなくなっていたが、代わりに酷く頭が痛む。
    (能力の使いすぎか……?)
    色々と探りすぎて疲れが出たのかもしれない。

  • 26二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 07:46:28

    頭痛に加えて吐き気もしてきた。今日はこれ以上深入りするのは無理そうだ。
    シャリア・ブルがスクール生たちの元まで戻ると、彼らはちょうどスクールへ引き上げるところだった。
    これ幸いと、彼らに混ざって機関を出る。
    歩いていると、ニャアンがこちらへ近付いてきた。
    「大丈夫ですか?ええと……」
    ニャアンは、シャリア・ブルの偽の身分証に目を走らせて、そこに書かれている偽名をぎこちなく呼んだ。
    知らない人に声をかけている演技だ。
    彼女は心配そうに続けた。
    「……顔が真っ青です」

  • 27二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 12:45:52

    ニャアンはシャリア・ブルの代わりにスクール入館の手続をして、彼をベンチに座らせる。
    (どうしよう、水とか、持ってきた方がいいかな……)
    「ちょっと待っててください、あの……」
    名前をうっかり呼びそうになり、慌てて口をつぐむ。
    水を取りに行きながら、ニャアンは偽の身分証を眺めて、何度も偽名を復唱した。
    (うう、ダメだ、いざというとき絶対間違えちゃいそう……。あ、そうだ)

    ニャアンは、すぐ戻ってきた。
    「水持ってきました。飲めそうですか?」
    「……すみません、ニャアン君。助かりました」
    シャリア・ブルはニャアンに礼を言って、水と預けていた身分証を受け取る。

  • 28二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 12:47:17

    「何があったんですか?」
    「……少し気分が悪くなっただけです。もう大丈夫」
    もらった水を飲みながら、シャリア・ブルは考え込んだ。
    思考が読めなかったときのことを、思い返してみる。
    まるで、能力を使うのを妨害されているような感覚だった。
    電波のジャミングに似ているかもしれない。
    吐き気は収まったが、頭痛はどんどんひどくなってくる。

    状況を整理したいと考えたシャリア・ブルは、一度宿泊先へ戻ることにした。
    心配するニャアンに再度礼を言い、スクールを後にする。

  • 29二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 12:50:30

    宿泊先の部屋へ入ると、通信機器が点灯していた。
    コモリから連絡が入っている合図だ。
    内容を見て、彼はほっとした笑みを浮かべた。
    (地球からようやく連絡が来たか)

    とにかく、マチュたちが無事だったことに安堵した。
    2人はグラナダへ来るという。
    連絡を見るに、彼らは一旦シャアの元に身を寄せたらしい。
    これ以上シャアに迷惑をかけるわけにもいかないだろう。
    一時的な避難先として、ニャアンの元に来る判断は間違ってはいない。

    (そうか、マチュ君が月に……来る……)
    それにしても頭が痛い。

    返事をしなければ、と思いつつ、ベッドに倒れ込むと目をつぶる。
    (久し振りに……会えるのか……)
    シャリア・ブルはそのまま眠りに落ちてしまった。

  • 30二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 17:00:52

    体調不良中でも、マチュに会えるって思って眠りにつく中佐が尊い…。

  • 31二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 20:25:47

    翌日。
    目が覚めると、頭痛は収まっていた。
    時計を見ると、15時間くらい眠ってしまったようだ。
    寝過ぎたせいか、頭痛の後のせいか分からないが、頭がやたら重い。

    もう一度通信機器を確認して、昨日の連絡が夢でないことを確認する。

  • 32二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 20:30:25

    コモリから追加で連絡が来ていた。
    ドック襲撃やサイバー攻撃の犯人については、シャアが調査をしてくれると知り、シャリア・ブルは正直安堵した。
    彼の調査なら信頼できる。

    (しかし、彼には面倒をかけっ放しだ。今度マチュ君を通じて礼を言わなければ)
    シャアもシャリア・ブルも、何故か間に人を置いて連絡を取りたがる。
    お互い、このくらいの距離感の方が落ち着くらしい。

  • 33二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 20:32:22

    加えて、コモリからの連絡には、グラナダ行きの艦船が手配できて、マチュたちは3日後にはこちらへ到着するとあった。


    (こちらの潜入捜査に目処が立てば、2人と合流できるだろう)


    そっと自分の顎を撫でる。

    この状態でマチュと対面するとは思っていなかったので、少し面映ゆい。

    (髭がないとき、彼女は私のことを何と呼ぶんでしょうね)


    シャリア・ブルの予想 dice1d2=2 (2)


    1 あだ名が変わるかも?

    2 気にせず呼び続けそう

  • 34二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 20:36:45

    何となく、マチュは『ヒゲマンはヒゲマンだよ!』と言って気にせず呼び続けそうな気がした。
    そのときの彼女の様子までありありと想像できて、思わず口元が緩む。

  • 35二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 20:38:05

    さて、好感度判定です。


    ヒゲマン→マチュの好感度 113+dice1d10=10 (10)


    ダイスの結果に加え、呼び方予想の内容に応じて+5の補正が入ります。

  • 36二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 20:41:05

    おぉ、最大値…良き良き

  • 37二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 20:44:00

    た、高っ!!!
    自分で書いておきながら、ダイスの結果見てニヤニヤしてしまう……ww

    ヒゲマン→マチュの好感度113+10+5=128

  • 38二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 20:45:00

    続きです。



    コモリに連絡の返事をしながら、シャリア・ブルは昨日のことを思い返してみる。

    (やはり、あれは普通ではなかった)

    オブジェクトと未来生体機能調整研究室に、何かあるのは間違いなさそうだ。

    (さて……)

    シャリア・ブルは、次に打つ手を考える。


    どうする? dice1d2=2 (2)


    1 少し時間がかかるが、正攻法でいく

    2 手っ取り早く、少々荒っぽい手段を使う

  • 39二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 22:48:34

    流石ヒゲマン、ソドンをコロニーに突っ込ませた過去の実績持ちだから、「少々」が本当に少々ですまない気がする!

  • 40二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 00:14:10

    >>35

    弱ってる時に好きな相手のことを思うと好きが加速するやつじゃん

  • 41二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 06:59:08

    マチュ大好き中佐よきよき…
    急を要するかもしれないから、荒っぽい方法も致し方ないね!

  • 42二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 07:31:16

    さて、場面変わって、こちらはグラナダに向かう輸送艦の中。

    マチュとエグザベの二人は、無事MSと共にピックアップしてもらうことができ、順調にグラナダへと向かっていた。

    通常の旅客を乗せるような定期便ではなく、古い軍艦を改修したもので、MSの格納庫が全体の半分以上の面積を占めている。
    与えられた寝室は狭苦しいので、マチュは居住区画の共同居室を覗きに行ってみた。
    ちょうどエグザベも来ていたので、二人でソファとテーブルが置いてある一画を陣取ることにする。

  • 43二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 07:32:36

    「あたし、グラナダに行くの初めてだ」
    「そうなのか。月では2番目に大きい、よい都市だよ」
    「月って、都市が点在してるんだっけ?」
    「そう、ほとんどがクレーターだらけの荒野だが……そんな光景も、慣れると悪くない」

  • 44二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 07:34:23

    「そうだ、月に行くってニャアンに連絡しておこうかな」
    マチュはスマホを取り出す。
    「ちゃんと通信機器に接続してからにしてくれよ」
    「分かってるって」
    秘匿通信用に改造されてしまったマチュ用のポータブル型通信機器だが、大型の通信機器から外してスマホを繋げば、本来の役目であるスマホ通信の暗号化も可能になる。
    大型の方は持ち運ぶのに手間がかかるので、エグザベの寝室に置いておき、ポータブルの部分だけマチュが預かることにしていた。

  • 45二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 12:26:57

    「ねえ、今回のことってどの程度伝えていいの?」
    「詳しい事情は着いたら僕が説明する。あんまり物騒なことは書かない方がいいんじゃないか?ニャアンを心配させるだけだろう」

    ニャアンが少し前までテスト期間だったので、しばらく連絡していなかった。
    マチュはするすると指を動かしてメッセージを打つ。

    『ニャアン、久し振り!あたし今、グラナダに向かってるんだ』

  • 46二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 12:28:10

    グラナダでは、寮の部屋にいたニャアンが、マチュから連絡をもらって驚いていた。
    シャリア・ブルとの約束で、マチュには連絡をしないようにしていた。新しい通信機器は、もう届いたのだろうか。
    グラナダに向かっているというのもずいぶん急な話だ。
    ニャアンはしばし思案した後で返事を入力する。
    『もしかしてエグザベ大尉と一緒?』

  • 47二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 12:30:14

    ニャアンの返事を見て、マチュは首を傾げた。
    傍らにいるエグザベに確認する。
    「ねえ、ザベ、ニャアンに地球に来たこと話したりした?」
    「いや、特には」
    「だよね」

    『一緒だけど、何で知ってるの?』


    ニャアンはマチュのメッセージを見て得心した。どうやら話しても大丈夫なようだ。
    『シャリア・ブル中佐から聞いた。エグザベ大尉がマチュのところに新しい通信機器を届けに行ったって』

    思いがけない名前を見て、マチュは驚いた。
    『ヒゲマンから?』

  • 48二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 16:26:18

    『そう。極秘任務だから、そっちに通信機器が届くまで、会ったことは内緒にするようにって言われてた』

    そう言われてみれば、ニャアンはフラナガンスクールにいるのだから、グラナダで二人が会っていてもおかしくなかった。

    おかしくはないが……。
    マチュはジト目でスマホを眺める。
    会ったってことは……。

    『もしかして、ニャアンもヒゲなしのヒゲマン見た?』

    『うん。最初は誰か分かんなかった』

  • 49二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 16:28:17

    (やっぱり!!!)
    あまりの羨ましさに、思わずテーブルに突っ伏してしまう。
    (見てないの、あたしだけじゃん……)
    隣にいるエグザベが何事かと驚いていたが、構わずに、顔だけ上げると返事を送った。
    『いいなあ!あたしも見たい!』

    ややあってニャアンからメッセージが返ってくる。


    『写真あるよ』

  • 50二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 16:29:23

    「えええええ!嘘っ!!!」

    衝撃を受けたマチュは思わず立ち上がり、声を上げた。
    横にいるエグザベが驚いて耳をふさぐ。
    「うわっ……さっきから何なんだ」


    『ホントに?ねえ、送って!』
    『いいよ。身分証の写真だから、顔の部分は小さいけど』

    ニャアンは、シャリア・ブルの偽の身分証を預かったときに、偽名を間違えないよう、念のためスマホで写真を撮っていたのだった。

  • 51二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 16:31:14

    マチュはソワソワしながらニャアンからの返事を待つ。

    マチュの様子に呆れ返ったエグザベは、もはや突っ込みもしなかった。

    やがて、ニャアンから写真のデータが送付されてきた。

    「きたっ!」

    マチュはさっそく顔写真部分を拡大して確認した。


    (おおー、ホントだ、ヒゲがない!確かに別人!)


    マチュの感想 dice1d3=3 (3)


    1 やっぱり髭がある方が良いな

    2 髭がないの、新鮮で良いな

    3 どっちも良い!!!

  • 52二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 21:32:52

    (んんん、いつもの感じも好きだけど、ヒゲなしも捨てがたい……つまり、どっちもいい!)


    (このデータ保存しておこうっと)


    『ニャアン、ありがと!』

    ようやくヒゲなし姿を拝むことができて、ご満悦のマチュ。


    さて、好感度判定です。


    マチュ→ヒゲマンへの好感度 128+dice1d10=8 (8)


    ダイスの結果に加えて、変装への感想の結果により+5の補正が入ります。

  • 53二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 21:36:54

    高い……。ダイス神、シャリマチュ応援しすぎw

    マチュ→ヒゲマンへの好感度 128+8+5=141

  • 54二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 21:38:03

    続けてニャアンからメッセージが届いた。
    『そっちで何があったの?』
    ニャアンの問いに、マチュは先ほどエグザベから言われたことを思い出す。
    (えーと、物騒なことは省いて、簡単に……)

    『ザベとクワトロさんのとこに泊まりに行って、ザベがデュエルに出たのをクワトロさんと一緒に観戦したよ。あとは、ヒゲマンが変装してるって聞いて、月に行くことにした!他にも色々あったけど、着いたら話すね』

    (これでよし、と。送信!)

  • 55二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 21:39:52

    マチュから届いたメッセージを見て、ニャアンは困惑した。
    (ザベって……エグザベ大尉のこと?そんな仲良かった?)

    よく分からないが、とにかくマチュは無事らしい。
    シャリア・ブルに会った後、マチュに何かあったのかと心配していたニャアンは、ほっとして返事を送る。
    『楽しそう……。いいな、私もマチュに会いたい』
    『あたしも!もうすぐ会えるよ』
    『マチュのこと心配だったから、メッセ来て安心した』

  • 56二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 02:39:23

    ヒゲありでもなしでもどっちも好き!なマチュ可愛いね…

  • 57二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 08:32:20

    ニャアンのメッセージを見た瞬間、マチュは何となく不穏なものを感じた。
    (あたしを心配した?なんで?ひょっとして、グラナダで何かあった?)
    『あたしは全然大丈夫だけど。そっちでは何かあったの?』

    ニャアンは、極秘任務中のシャリア・ブルの様子を伝えてよいものか判断がつかなかった。
    『変なこと書いてごめん。中佐の『極秘任務』って言葉にビックリしただけ』
    (でもマチュは鋭いから気付いちゃうかな……)

    メッセージを見たマチュは顔を曇らせる。
    (うーん、これは絶対に何かあったよね)

  • 58二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 08:33:44

    その後、ニャアンと何度かやり取りして、マチュはメッセージアプリを閉じた。

    「ねえ、潜入捜査ってやっぱ危険なの?」
    「う……ん、そうだな」
    エグザベは言葉に詰まる。
    「少なくとも、中佐は機関に何かあると考えて捜査に向かっている。僕らの仕事は、危険なことだって多いよ。地球での一件だって、一歩間違えば大変なことになっていた」
    (それはそうなんだろうけどさあ……)
    マチュはふうっと息をつき、真っ暗なスマホの画面を眺める。
    シャリア・ブルから直接連絡が来ないのは分かっているが。
    (早くグラナダに着かないかなぁ)

  • 59二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 12:53:15

    一方こちらは月面基地、グラナダ。

    シャリア・ブルは次に打つ一手をどうするか、しばし迷っていたが、とうとう決断した。
    (あまりやりたくはないが、仕方ない。少々荒っぽい手でいくとしますか)

  • 60二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 12:53:15

    支援!
    マチュもニャアンも!メッセージでどこまで話したらいいかわからないから大変そうだ…

  • 61二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 12:54:26

    ……その次の日の夜。

    フラナガン機関から出てきた男は、家に向かう帰り道の途中、物陰から現れた見知らぬ人物に声をかけられた。

    「すみません、よろしいですか?」
    「?」
    振り返った男に、相手は続けて言った。
    「『オブジェクト』の件で、少しお話を聞きたいのですが」
    その単語に、男は一瞬狼狽したが、すぐに冷静さを取り戻す。
    「……何のことだ?失礼する」
    しらばっくれて、足早にその場を去ろうとした。
    「ああ、ちょっと待ってください」

  • 62二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 12:55:26

    相手が、懐から取り出したものが銃であることに気付いて、男は固まる。
    彼は男に銃を突きつけると、今までと全く変わらない平穏な口調で言った。
    「お静かに。少し、お話を聞かせてください」


    ……シャリア・ブルが銃を向けた相手は、機関でオブジェクトの話をしていた、生物応用グループの男だった。
    彼は1日かけて男の情報を調べ上げ、帰宅時間帯を狙って、相手が一人になる瞬間を待ち構えていたのだ。

  • 63二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 12:55:32

    ダイス神のナイスな転がり具合に拍手しつつ…
    ホントはこういうケースだと連絡自体控えたほうがいいけどしょうがないよね…

    んで、荒っぽい手段にどこまで含まれるかな

  • 64二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 12:57:40

    >>39

    >>63

    大丈夫、ちゃんと少々です、少々w

  • 65二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 13:01:26

    人気のない路地裏まで来ると、シャリア・ブルは一度銃口を下げる。
    「一体何者なんだ、何が目的で……」
    「質問するのはこちらの方です」
    言葉は丁寧だが、男を見る眼光は鋭い。

    「さて、機関が保有している『オブジェクト』とは、一体何のことですか?」

  • 66二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 13:02:47

    単刀直入に聞いたが、銃を向けられてなお、男は話すのを躊躇っていた。

    「……」

    (こいつどこまで知っている?やはりあの不正アクセスで情報が漏れていたのか。いや、まだ確信を得ていないのか?だとしたら、誤魔化せるかも……)

  • 67二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 13:04:05

    「……なるほど、質問を変えましょう。オブジェクトは向こう側の世界からの漂流物ですね?」

    「……質問の意味が分からん」

    シャリア・ブルは、そう嘯く男の目をじっと見ていたが、やがてうなずいた。

    「やはりそうですか。機関はいつ頃から所有していたのですか?発見したのは最近ではないでしょう?」

    「いや、だから何のことだか……」

    「1年前、いや、2年以上前?」

    「…………!?」

    「……とすると、イオマグヌッソの『事故』の直後あたりか。確かにあの頃はジオンも混乱していましたからね。オブジェクトはグラナダ内にあるのですか?」

    「…………!?!?」

  • 68二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 13:05:49

    シャリア・ブルが質問を重ねる度、男に少しずつ動揺が広がっていく。
    シャリア・ブルの言葉には、多少はったりも含まれているのだが、ある程度ズバズバと言った方が、逆に相手の連想を誘い、思考が読みやすくなる。

    「基地の外……。とすると、まあまあの大きさなのでしょうね。シャロンの薔薇よりも?……ふむ、そこまでは大きくないか」

  • 69二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 13:06:55

    「ひ、ひいぃっ!」
    男が恐ろしくなって逃げ出そうとした瞬間、閃光と銃声が響いた。
    男は慌てて立ち止まる。

    「逃げられないよう、足に当ててもいいのですが、あなたも痛い目には合いたくないでしょう?」
    シャリア・ブルは銃を構え直した。
    「とりあえず、嘘をついても黙っても無駄だということは理解いただけましたか?」
    「わ、分かった!話す!話すからもうやめてくれ!」
    「そう、協力してもらえると助かります。お互い、時間を浪費しないで済む」
    シャリア・ブルの声は穏やかだったが、その言動と冷たい表情は、男を震え上がらせるのには十分だった。

  • 70二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 20:13:31

    ヒゲマンの尋問、銃で脅してるとはいえすごい迫力がありますね…

  • 71二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 20:30:48

    男の話は、およそ次のようなものだった。

    そのオブジェクトが発見されたのは、イオマグヌッソが「事故」によって消滅した後のことだ。
    「事故」のせいで多数のスクラップが宇宙空域に存在しており、それを漁っていたジャンク屋がたまたま発見したものらしい。
    機関はジャンク屋からオブジェクトをこっそり買い取ると、国への届出をせずにそのまま機関の保有とした。

    オブジェクトは、かなり大型のMSの頭部で、サイコミュシステムが多数搭載されている。
    この世界の技術とは全く異なるものだったため、向こう側の世界からの漂流物であると判定された。
    頭部内にはコックピットがあるが、シャロンの薔薇と異なり、中に人は乗っていない。

    彼らは、オブジェクトに組み込まれていたサイコミュシステムの一部を機関へ持ち帰り、研究室での研究を行っているのだという。

  • 72二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 20:46:26

    男の話を聞いたシャリア・ブルは深いため息をついた。
    (道理で、不正アクセスの報告が遅れるわけだ……)
    機関はオブジェクトのことを何とか隠し通そうと考えたに違いない。
    それが対応の遅さにつながったのだろう。

    「で、そのオブジェクトはどこに保管されているのですか?」
    シャリア・ブルの問いに、男は渋々と、ポケットからスマホを取り出して、位置情報を表示した。
    「サイバー攻撃の後に移転も検討したが、他によい場所が見つからず、そのままになっている」

    シャリア・ブルは、男から入手したオブジェクトの位置情報を確認する。
    (このポイントは……月面小規模居住地の跡地か。うまいところを見つけたものだ)

  • 73二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 21:22:19

    「国に報告しなかった理由は?」
    「それは……研究を進めるために、どうしてもオブジェクトが必要だったのだ。シャロンの薔薇も、結局軍が事故で消滅させてしまったじゃないか。我々の手元にある方が、オブジェクトを有意義に使用できる」
    「……それは、規定に基づいた報告と、適正な管理ができる組織だけが言える台詞では?」

  • 74二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 21:23:56

    「しかし……戦争終結後、ニュータイプの出現率は著しく下がっている。これは周知の事実だ」
    男の言葉はシャリア・ブルの感情を逆撫でするものだった。
    「スクールの卒業生は『養殖』などと揶揄される始末で、このまま自然に任せていては破綻する。オブジェクトがあればこそ研究成果が上げられているのだ。新たな戦争でもない限り……」

    「……まるで、戦争が起きてほしいとでもいうような発言ですね」
    「い、いや、そんなつもりはないが……」

    シャリア・ブルは感情を表に出さないようぐっと堪えた。
    まだ、聞きたいことは残っている。冷静にならなければ。

  • 75二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 21:39:44

    「……未来生体機能調整研究室。あそこでは何の研究をしているのですか?」
    「あの研究室は、ニュータイプの能力調整をメインにしている」
    「調整?」
    「強化と制御、そして付与だ。ただし、全てオブジェクトを活用する前提のものだが」
    「ニュータイプの能力の発動を抑えたりも?」
    「そうだ」
    男の声に力が入る。どうやらこの辺りが彼の担当している分野らしい。
    「全ての能力に適用できる訳ではないが、一部の能力には特に強い効果を発揮する。元はゼクノヴァの制御の研究から派生しているから、効果が出やすいのは、ゼクノヴァに関連が深い能力なのではないかと推察している。特異感応空間にも応用が利くし、その他にも、サイコミュを使用しているMSの挙動を停止したり……」
    「分かりました」
    男が早口で滔々と語り始めたため、うんざりしたシャリア・ブルはピシャリと言い放って話を止めさせた。

  • 76二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 21:41:14

    あの時の頭痛と吐き気は、ニュータイプの能力に干渉されたのが原因とみてほぼ間違いないだろう。
    男の思考を読むに、オブジェクトの一部を接続させた、装置かシステムのようなものらしい。
    (まったく、厄介な代物だ)

  • 77二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 02:14:43

    支援
    大型のMSの頭部…だと…?

  • 78二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 02:23:46

    やれやれだな…

    研究もろくなもんじゃないが、金に結びつける方法も同じくだろうな

  • 79二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 06:56:44

    これは強行手段にでて正解だったかも

  • 80二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 07:21:20

    「あとは、そう、不正アクセスの件で、何か知っていることは?」
    「あれは、完全にうちは被害者だ!だいぶ前から不正アクセスの形跡はあったことは事実だが、結局データをどこまで抜かれていたかは分からん。誰がやったのか、こっちが知りたいくらいだ!」
    「そうですか」
    嘘は言っていないようだった。

    「も、もう知っていることは全て話したぞ!これ以上はない!本当に何もない!」
    男は悲鳴をあげる。
    「……分かりました」
    もう彼から聞き出せる情報はなさそうだ。

  • 81二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 07:22:24

    「わ、私をどうする気だ」
    男はすっかり怯えきっていた。
    「そうですね……」
    シャリア・ブルは男の足元に落ちている鞄を拾い上げる。
    「あなたには一週間程度バカンスに行ってもらいましょうか」
    中から彼の身分証を取り出して、ヒラヒラさせた。
    「仕事のことは忘れて、しばらくの間、お休みをゆっくり満喫してくるといい」

  • 82二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 07:23:51

    男に無理やり休暇を申請させてから解放すると、シャリア・ブルは髪を搔き上げて息をついた。
    (さて……)
    よい気分ではなかったが、ともかく情報を得ることはできた。

    (これで、機関が狙われる理由がはっきりした)
    ジオンも把握していない大型のオブジェクトに加えて、それを活用したゼクノヴァやニュータイプの能力調整の技術。
    一部の組織にとっては垂涎の的だろう。

    一刻も早くサイバー攻撃を仕掛けてきた犯人を突き止める必要がある。
    不正アクセスの件で、男に不審な様子は見られなかった。
    まずは、シャアからの連絡を待つのが一番の早道となりそうだ。
    オブジェクトの件を機関に詰めるのは、それらが片付いた後のことになるだろう。

    (コモリ中尉に連絡しておかなければ)

  • 83二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 10:20:41

    大型MSの頭部がコックピット、中に誰もいない
    もしかしてこのオブジェクト、ジオンg…(に近しい系譜?)

  • 84二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 13:45:21

    不正アクセス、オブジェクト…、問題が次から次へと出てくるね… 頑張れヒゲマンたち…

  • 85二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:17:11

    >>83

    そうです!

    ちなみに、このオブジェクトは、カネバン有限公司が見つけて機関に高く売りつけた、という裏設定があります。

  • 86二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:19:20

    舞台は変わり、マチュとエグザベが乗っている輸送艦の中。
    グラナダ到着予定時刻は、今からあと半日後に迫っている。

    フラナガン機関がオブジェクトを所有していたという話は、コモリを通じて、昨日マチュたちの元へ届いていた。
    「これってけっこうヤバい話?」
    「まあまあ大ごとかもな。……これは狙われるわけだ」
    今はまだ、公には情報は伏せられていた。

  • 87二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:22:30

    「あー、暇だなー」
    マチュは居住区画の共同居室にあるソファにひっくり返り、愚痴をこぼした。

    「ねえ、ザベ、せっかく宇宙にいるんだから、MSの戦闘訓練とかしようよー」
    「なに言ってるんだ」
    エグザベは全く取り合わない。
    「はー、しょうがない。動画でも見て研究するか」
    マチュはスマホのアプリを開き、ダウンロードしてある動画を漁り始めた。
    「ずいぶん熱心なんだな」
    「まあねー。クワトロさんも動画見るのは参考になるからお勧めだって」
    マチュのその言葉に、エグザベは興味を引かれたようだ。
    「もしかして、あの人にMSの指導をしてもらっているのか?」
    「指導っていうか、たまに教えてくれる」
    「それは羨ましいな……」
    「クワトロさん、ザベのMS戦見て、なかなかやるなって言ってたよ」
    「本当に!?」
    「ずいぶん嬉しそうだね」
    「『赤い彗星』に褒められるなんて、滅多に経験できることじゃないぞ」
    「ま、ザベはかなり上手い方なんじゃないの?」
    「随分な物言いだな」

  • 88二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:26:02

    「それに、ヒゲマンもザベのこと褒めてたよ。自分の専用機の特性を最大限に引き出してるってさ」
    「中佐が……。そうか」
    「ちょっとー、何で今度はビミョーな反応なわけ?」

    エグザベの脳裏には、イオマグヌッソのときのシャリア・ブルとの戦闘が浮かんでいた。
    (あの時は一歩間違えばどちらかが死んでいたし、結局僕は負けたしな……。中佐は本当に心から褒めてくれていそうだから、余計反応に困るんだよな)

  • 89二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:28:01

    「中佐が僕を評価してくれてるのはありがたいけど……その言葉をもらう資格が僕にあるのかなと思ってさ」
    複雑な表情を浮かべるエグザベ。
    その様子を見たマチュは、思い切って、ずっと知りたかったことを聞いてみることにした。

    「ねえ、あの時さあ」
    「え?」
    「イオマグヌッソの『事故』のとき。……ヒゲマンって、やっぱり死んじゃうつもりだったのかな」

  • 90二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:30:22

    シャリア・ブルはイオマグヌッソのときに起きたことを大体マチュに話してくれたが、結局「軍人の責任の取り方」の意味だけは、最後まで明言しなかった。

    「何でそれを僕に聞くんだ」
    エグザベはギクリとする。
    「別に。ただ、何となくあんたなら知ってそうな気がしただけ」
    マチュの推察は正しい。
    シャリア・ブルから、『この命をもって償おう』という台詞を聞いた彼は、確かにその答えを知っている。

  • 91二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:32:18

    「……僕たちは軍人だ。死ぬときは戦場であっさり死んでしまう。だからこそ、あんな命の使い方をしてはいけないんだ。僕はただ、中佐に生き残った者としての責務を果たしてほしかった」

    エグザベがぽつりと言った言葉を聞いて、マチュは胸がぎゅっと痛くなった。
    薄々分かってはいたが、改めてはっきり聞かされると、ショックは大きい。
    (やっぱりそうだったんだ……)
    そして、エグザベの言葉でシャリア・ブルが死ぬのを思い止まったことも、何となく分かってしまった。

  • 92二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:37:19

    「ふーん……ま、あんたのお陰でヒゲマンが死ななかったんだったら、一応お礼言っとく」
    マチュは、決して素直とはいえない態度でエグザベに感謝の気持ちを伝えたが。
    「何で君が?」
    きょとんとした顔でエグザベに返されて、グッと言葉に詰まってしまった。

    (そういや、こいつはこーいう奴だった!)

    マチュはむくれ顔で言葉をつなぐ。
    「……だって、ヒゲマンは一応あたしのMSの師匠だし」
    「そうか」
    エグザベは頷くと、
    「でも、僕は礼を言われるようなことはしていないよ。……それにしても、中佐と『赤い彗星』の両方が師匠なんて、ずいぶん贅沢者だな、君は」
    と言って笑った。

  • 93二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 19:52:12

    光のザベ君いいなぁ

  • 94二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 21:44:45

    ちょうどその時。
    マチュのスマホが光ってメッセージが届いたことを知らせた。
    マチュはスマホのアプリを立ち上げる。
    「あっ、クワトロさんからだ」
    噂をすれば、マチュの元へ届いた連絡はシャアからのものだった。

    「もしかして、真犯人が分かったのか!?」
    エグザベが勢い込んでスマホを覗き込む。
    「ちょっと待って、今見てるから……。え?何これ、どういう意味?」
    マチュはシャアからのメッセージを読んで困惑する。

  • 95二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 21:55:21

    エグザベはメッセージを見て、深刻な顔になった。
    そこにはこう書かれている。


    『ドック襲撃とサイバー攻撃の依頼元だが、どちらもフラナガン機関からであることが分かった』


    「意味不明なんだけど。フラナガン機関って、サイバー攻撃を受けた側じゃないの?自分で自分を攻撃したってこと?」
    マチュの疑問にエグザベは考え込む。

  • 96二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 21:56:23

    「フラナガン機関も一枚岩ではないってことだ。もしも、今までの手口が外部犯に見せかけた陽動で、犯人が内部の者だったとしたら…」

    相手は、こちらの想定よりずっと早く動くかもしれない。

    「これは……手遅れになる前に、すぐに中佐に知らせなくては!」

  • 97二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 21:57:44

    これで、今までのダイスの結果を元に、全てのカードが出揃いました。

    ここからは、最終決戦です。
    できるだけ区切りのいいところまで、まとめて上げていきます。
    よろしくお願いします。

  • 98二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 22:07:38

    更新嬉しいです!
    楽しみに待ってます!

  • 99二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 22:10:28

    遂に最終決戦!
    更新、楽しみに待ってます!!

  • 100二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 22:10:43

    一方こちらはグラナダ。

    出先から戻って来たシャリア・ブルが、エグザベからのコモリを通じての連絡を確認したのは、シャアから連絡があった数時間後のことだった。

    報告を読んだシャリア・ブルは、ハッとする。
    (まさか……)

    オブジェクトの件を知り、てっきり機関は外部から直接狙われているのだと思ったが。

    フラナガン機関に潜入したときのことを思い出す。
    予算がつかずに縮小する研究がある一方で、「うまくやっている」部署もあると話していた。

    ゼクノヴァやニュータイプの研究成果は、軍事利用目的で、たいそう高く売れることだろう。
    一部の者たちが、資金を得るために、情報を横流ししたに違いない。
    もしかしたら、機関を見限り、他国へ亡命するつもりかもしれない。
    外部からの攻撃と見せかけるために、わざわざ地球からアクセスさせた。
    オブジェクトのことを隠している機関は、不正アクセスが判明しても、対応が遅れると踏んだのだろう。


    そして、それらの研究結果がオブジェクトの活用を前提としたものだとすれば。
    (次は、オブジェクトそのものが狙われる……!)

  • 101二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 22:15:43

    (ともかく、グラナダ常駐軍に協力を依頼して……。いや、すぐにオブジェクトの確保に向かった方がよさそうだ。協力依頼の件はコモリ中尉にお願いしよう)

    マチュたちがグラナダに着くのを待ってはいられない。

    急いでコモリに連絡して、グラナダ常駐軍への協力要請を依頼する。
    あわせて、自分はオブジェクトの確保に向かうことを伝えた。

    (リック・ドムをグラナダに持ってきておいてよかった)

    連絡を終えるとすぐに、シャリア・ブルはリック・ドムが置いてある格納庫へ向かった。
    少し迷ったが、目的地は居住地跡地なので、空気があるはずだ。
    ノーマルスーツを着る手間を惜しんで、そのままMSに乗り込んだ。
    (大分マチュ君に毒されているな……)

  • 102二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 22:16:53

    基地の外へ出て、急ぎ目的地へ向かう。
    しばらくすると、MSのレーダーが使用できなくなった。
    「これは……」
    ミノフスキー粒子が散布されている。
    相手がMSを持ち出していることは確実だ。
    (やはり、嫌な予感ほどよく当たる。間に合えばよいが……)

  • 103二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 22:20:15

    ジオン公国。

    数時間前に、エグザベからの連絡を受け取って、慌ててシャリア・ブルに送信したコモリだったが、今度はシャリア・ブルからの連絡を受け取ることになった。

    内容を見て、びっくりする。

    (大変、中佐一人でオブジェクトの元に向かっちゃった!もう、すぐ無茶するんだから!)

    (至急、グラナダ常駐軍に支援要請と……エグザベ君にも連絡しないと!)

  • 104二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 02:57:06

    お~…楽しみにお待ちしております~!

    待ってる場合じゃないっぽい状況、なんでやむなしだろけど…弟子より先に師匠が無茶したなぁ~w

  • 105二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 07:09:14

    慌ただしくなってきたな…!更新楽しみにお待ちしてます…!

  • 106二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 11:02:01

    このタイミングで規制に巻き込まれ……。
    更新が遅れてすみません。

    昼に続きを上げます!

  • 107二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 15:55:40

    楽しみにお待ちしてます!

  • 108二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 19:12:10

    すみません!
    結局お昼も規制、夕方も規制でこんな時間に……。
    更新するする詐欺になってしまった。

    今から上げていきます。

  • 109二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 19:13:52

    グラナダに向かう輸送艦の中。

    マチュとエグザベの二人は、通信機器の前に張り付いてコモリからの連絡を待っていた。
    機器が点灯し、連絡が来た旨を知らせる。
    「来た!」
    「なに、なに?何て書いてある?」

    『中佐から、オブジェクトの確保のために、一人でMSで出撃するって連絡が来た。グラナダ常駐軍に協力要請をしてるけど、そんなにすぐには動けないと思う。中佐の応援をお願い』

    二人は顔を見合せた。
    「「一人でMSで出撃!?」」

  • 110二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 19:15:22

    「ヒゲマンって今、MSは何乗ってるの?」
    「リック・ドムだ」
    「あれってオールレンジ攻撃できるんだっけ?」
    「できるわけないだろ、サイコミュなんて搭載してない」
    「もー!何でキケロガを用意しとかないんだ!」
    「簡単に言うなよ、一体開発するのにいくらかかると思ってるんだ」
    ギャンがビグザムを大量破壊したせいで、今MA開発にはほとんど予算が付かないのだ。

    「いくら中佐でも、敵の規模も分からないのに一人でなんて……」
    エグザベの言葉に、マチュの心がざわざわする。
    ニュータイプの勘が、急いだ方がいいと言っている。

    多分シャリア・ブルも同じものを感じて、急ぎオブジェクトの元へ向かったのだろう。

  • 111二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 19:16:38

    「オブジェクトの場所ってどこなんだっけ」
    「グラナダ内じゃない。月面のどこかだ。前の連絡で、位置情報の値が送られてきていたな」
    エグザベは急いで確認する。
    位置情報そのものをデータ共有できればいいのだが、現在シャリア・ブルもマチュたちも、テキストデータしかやり取りできない。

    「あたしたちも、すぐに行かなくちゃ!あとどれくらいでグラナダに着く?」
    「まだ数時間はかかるぞ」
    「そんなに!?間に合わないよ!」
    「いや、もしかすると……」
    エグザベは考え込んでいたが、やがて艦船の航路のデータを表示した。
    現在位置とオブジェクトの位置情報とを見比べる。

    「……このポイントなら、グラナダへ着いてから向かうよりも、宇宙から直接月に降りていった方がずっと早く着くんじゃないか?」

  • 112二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 19:18:07

    エグザベの言葉を聞いた瞬間、マチュは立ち上がった。
    踵を返して部屋を飛び出していく。
    「あっ、おい!」

    「ハロ!さっきのポイント、ジークアクスにインポートできる?」
    「リョーカイ、マチュ」
    ハロに声をかけて、ジークアクスのコックピットまで三段跳びで駆け上がる。
    追いかけてきたエグザベは慌ててマチュを止めた。
    「待て!ここは宇宙だぞ!ノーマルスーツを着なきゃ……!」
    「平気!ザベ、あたし先に行くから!」

    そのままコックピットに滑り込む。
    「行こう、ハロ!」
    「リョウカイ、マチュ」

  • 113二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 19:19:56

    以前、確かに二人が再会する未来を見た気がした。
    けれどそれは、ほんの一瞬で……しかも、この世界ではない、どこか別の世界の話かもしれない。

    (ララァも夢で、色々な世界のことを見てた……)

    今行かなければ、あの光景は幻のまま、儚く消え去ってしまうかもしれない。

  • 114二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 19:21:06

    マチュの様子を見て、エグザベは止めるのを諦めた。
    近くの乗組員に声をかける。
    「すまない、緊急事態だ。出してやってくれ。……僕もすぐに準備して出撃する」

  • 115二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 19:24:00

    一旦ここまでで、続きは21時過ぎくらいにあげます。

  • 116二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 21:28:05

    「ジークアクス、出ます!」
    すぐにハッチが開き、機体が射出された。


    久々の宇宙だ。
    無限に広がる暗闇と、途方もない数の星の瞬き。
    無重力空間で、マチュは機体をコントロールする。
    月はジークアクスの足元、真下にあった。

  • 117二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 21:30:16

    ハロが、オブジェクトの位置情報をジークアクスにインポートし、目的地までのオートモードに設定してくれる。
    「サイコミュ使って、最大出力で行くよ!!!」

    機体をくるりと回転させ、マチュは一直線に月を目指す。
    「マチュ、ボウソウ!キケン!」
    ハロが警告を出すが、構っていられなかった。

    みるみるうちに、月面が近づいてくる。

    しばらく進んでいくと、クレーターだらけの月の表面に、ぽつりと人工物らしきものが見えてきた。
    「あそこか!」

  • 118二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 21:31:49

    最初は豆粒ほどの大きさだったが、近付くにつれ、かなり大きな建造物であることが分かる。
    (基地……と、居住地跡?)
    どうやら、基地と居住区が一体化している造りのようだ。

    月面に着陸したマチュは、基地の入口を見つけると、ハッチを開けて中に入り込んだ。

    (空気がある……)
    ここにオブジェクトを運び込んだ者たちが、建造物の生命維持機能を管理しているのだろうか。

  • 119二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 21:45:03

    基地の内部は複雑な造りになっていた。
    ジークアクスにインポートした位置情報は、確かにこの基地兼居住地跡で間違いないようだが、オブジェクトの詳細な位置までは分からない。
    (また通路が分かれてる。ヒゲマンはどこ?基地の中?それとも居住地の方まで行けばいい?ミノフスキー粒子が撒かれてて全然分かんない……)
    構造を知らないマチュはどちらへ向かえばよいのか迷ってしまう。

    (いや、焦るな、落ち着け……よく感覚を研ぎ澄ませて……)

  • 120二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 21:48:03

    不意に、マチュの脳裏に閃光が走った。

    (きた……!)

    溢れる緑と、様々な色の光。
    ハタハタと髪や服が揺れる。
    マチュの意識はあっという間に光の中に溶け込み、身体も光彩の渦に飲み込まれていく。

    キラキラだ。


    (この中でなら、きっと……。)


    認知能力が極限まで解放された、この空間の中でなら、離れた場所にいても、きっと居場所が分かるはず。
    そして、相手を認識しさえすれば、きっと出会える。

  • 121二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 21:54:21

    マチュは素早く辺りを見回す。必ず見つけられるという確信があった。


    (いた!)


    マチュはシャリア・ブルの姿を見つけると、勢いよく飛びついて掴まえた。
    「ヒゲマン!」
    「おっと……」
    シャリア・ブルは飛びついてきたマチュを受け止める。
    彼女がここにいることに、驚いているようだった。
    「マチュ君、まさかここにいるとは」


    二人の、約2年振りの再会だった。

  • 122二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 22:00:39

    今日はここまでです。
    続きは明日にします。

    やっと2人が会えた……長かった!!

  • 123二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 02:30:57

    2年は長い…!けど会えた時の感動もひとしおだ!

  • 124二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 03:39:47

    ヒゲなしヒゲマンとの再会だぞ!わぁい!

  • 125二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 07:03:44

    マチュの空間認識能力、2年も経つとかなり強化されてる…!ヒゲマンに会えて良かったねマチュ…!

  • 126二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 07:34:02

    「早かったですね、グラナダに着くのはもう少し先だと思っていました」
    「グラナダまで行ったら間に合わないから、宇宙から直接降りてきたよ!」
    シャリア・ブルは、ふふ、と微笑んだ。
    「相変わらずですね、マチュ君は。ノーマルスーツも着ずに?」
    そう答える彼の顔には、やっぱり髭がなかった。

  • 127二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 07:35:57

    マチュがつい、まじまじと見つめると、シャリア・ブルはちょっと視線をそらして、顎を触りながら彼女に尋ねる。
    「……そんなに気になりますか?」
    「気になるっていうか、なんか慣れないっていうか……。でも、髭がなくてもやっぱヒゲマンはヒゲマンってカンジ!」

    その言葉を聞いたシャリア・ブルは少し目を見張る。あまりに予想通りの言葉に、笑いを堪えきれなかった。
    「ねぇ、なに笑ってんの?」
    「……いえ、別に」

  • 128二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 07:39:46

    軽く咳払いして仕切り直すと、
    「地球では、無事でよかった。行方不明と聞いて心配しました」
    柔らかい表情と慈愛のこもった声に、マチュはドキッとする。
    「う、うん……」
    (わー、久しぶりだからかな。ど、動悸が……!)

  • 129二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 07:41:06

    「ていうか、一人で行っちゃうなんて無茶しすぎだよ」
    「すみません、マチュ君のがうつりましたかね」
    「なにそれ」
    「まあ、私一人でも、ある程度は何とかなりますから。それよりオブジェクトを持ち出されてしまう方が厄介なので」

  • 130二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 11:48:35

    2年は長かったろうなぁ…
    ヒゲがあってもなくてもというのにほっこり&改めてダイス神に感謝
    んでヒゲマン、弟子のがうつったってをいw(そうだろうな~と思うけどw

  • 131二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 18:52:02

    照れちゃうマチュ可愛い…!

  • 132二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 18:59:08

    話はつきないが、残念ながら、久々の再会をゆっくり満喫している余裕はない。
    マチュは再度辺りを見回して、遠くにMSの影を見つける。
    「ジークアクスですぐ合流するから、待ってて!」

  • 133二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:01:32

    キラキラの中で、リック・ドムの影を見たマチュは、今度こそ間違わずに基地の中を抜けていった。
    やがて現実世界でも、シャリア・ブルが乗るリック・ドムを発見する。
    「お待たせ!もう勝手に先に行かないでよね!」
    「分かりました、一緒に行きましょう」


    (久々のM.A.V.戦だ!)
    いやが応にもマチュの気分は高揚した。

  • 134二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:04:56

    リック・ドムが先行し、ジークアクスが後に続いた。
    やがて、二体は居住地区域に到着する。
    「どこだろう?」
    シャリア・ブルは、機関の男から入手した、地図とオブジェクトの位置情報を重ね合わせたデータを確認しながらマチュに伝える。
    「もう少し先に、ひらけた場所があります。どうやらオブジェクトはそこのようです」

  • 135二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:07:07

    そこは居住地跡地の中の大きな公園施設だった。

    「あれか!」

    公園中央の広場には、大きなMSの頭部を、今正に運び出そうとしている集団がいた。

    恐らくオブジェクトの運搬作業用のMSが3機、それ以外に武装しているMSが複数体いる。


    武装したMSの数は dice9d2=2 1 1 2 2 1 1 2 2 (14)

  • 136二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:06:16

    (多くて十数機と踏んでいたが……。辛うじて想定の範囲内か)
    彼らは、突如乱入してきた二体のMSに、混乱している様子だ。
    「あいつらを蹴散らしたらいいんでしょ?」
    「とにかく、オブジェクトの運び出しを阻止しましょう。私が護衛に回ります」
    「りょーかい!」

  • 137二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:09:25

    マチュはジークアクスでオブジェクトの元へ突っ込んでいく。
    直接向かってくるMSはシャリア・ブルのリック・ドムが受けてくれる。
    遠くからの射撃は身を翻して避けながら、二体はオブジェクトとの距離を詰めていった。

    シャリア・ブルは、ヒートサーベルを駆使して相手に対抗していたが、さすがにリック・ドムでは複数体相手の取り回しを続けるには難がある。
    四体、五体までならともかく、七体、八体目ともなると、次第に駆動系が怪しくなってきた。

  • 138二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:11:05

    リック・ドムの機体がもたなくなる前に、何としてもオブジェクトの運び出しを阻止したい。

    (ここで逃したら大変……)

    マチュは焦れて、機体を前に出す。
    連携の体制が僅かに崩れ、リック・ドムとの距離がやや空いてしまう。

  • 139二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:15:04

    一方、MSと切り結んでいたシャリア・ブルは、横目でオブジェクトの様子を確認して、ギクリとする。
    オブジェクトの横に、見慣れぬ装置が設置されているのに気付いたのだ。
    研究員が、急いでオブジェクトと装置を接続している様子が目に入る。
    (あれはまさか……)
    例の、ニュータイプの能力調整の装置。
    機関の男が言っていたことを思い出す。

    『……その他にも、サイコミュを使用しているMSの挙動を停止したり……』


    「いけない!マチュ君!下がって!」
    「えっ?」

  • 140二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:19:22

    ジークアクスが装置の射程圏内に入った途端。
    ガクン、と機体が揺れ、ジークアクスの動きが止まる。
    敵が装置のサイコミュ起動停止機能を発動させたのだ。
    「なっ、何!?」
    「サイコミュダウン!キケン!キケン!」
    ハロの切羽詰まった声。
    「くっ!」
    急がなくては、とサイコミュ制御にしていたのが失敗だった。
    すぐに切り替えないとマズい。
    マチュは焦って操作しようとしたが、その隙は戦場では命取りだ。
    見えない方向から、敵のMSがジークアクスに照準を合わせるのを、マチュはニュータイプの超感覚で感じた。
    背筋がゾッとする。

    (ヤバい、あたし……死ぬ……!?)

    ビームライフルが放たれる瞬間。
    敵MSとジークアクスとの間に割って入ったのは、シャリア・ブルが乗るリック・ドムだった。

  • 141二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:35:12

    シャリアアアアアアアアァ!!!!!

  • 142二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:42:00

    ヒゲマンが!!
    死ぬ!!
    エンディミオン君なんとかしてくれー!!

  • 143二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 01:27:08

    お祈り保守

  • 144二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 05:35:09

    支援!
    ヒゲマン無事でありますように…!

  • 145二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 08:17:27

    リック・ドムは、咄嗟に装置に向かってヒートサーベルを投げつけた。
    ヒートサーベルは見事装置に突き刺さり、装置は火花を散らして煙を上げ、動作を停止する。
    その瞬間、ジークアクスのサイコミュが再起動した。
    (戻った!)

    ぎりぎりのタイミングで、ジークアクスとリック・ドムは被弾を回避しようとするが。
    ジークアクスを庇う立ち位置にいたリック・ドムは避けきれず、ビームが機体に直撃した。

  • 146二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 08:18:58

    「ヒゲマン!」


    マチュは目の端でリック・ドムの機体が吹っ飛ばされ、斃れるのを確認したが、彼が身を挺して作ってくれたチャンスを無駄にはできない。

    リック・ドムの元へ向かいたいのを堪えて、オブジェクトの方に向き直ると、一足飛びに突っ込んだ。
    まず先に作業用のMSを3体、メインカメラが付いている頭部を破壊して、あっという間に行動不能にする。

  • 147二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 08:21:16

    「よくも……!」
    機体を翻し、残った戦闘用のMSに怒りの目を向けたとき。


    横から白い機体が稲妻のごとく飛び出してきた。
    敵MSがジークアクスに斬りかかろうと突撃してきたところを、そのままの勢いで槍で貫く。

    「悪い、遅くなった!」
    「ザベ!」

    ようやく登場したギャンは、すぐに反転すると、別のMSとの距離を一気に詰める。
    複数体の相手をものともせずに、各個撃破で残党を一掃していく。


    MSの相手をエグザベに任せ、マチュは急いでリック・ドムの元へ向かった。

  • 148二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 12:27:25

    ナイスエグザベ君!!

  • 149二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 14:40:48

    ザベ君、かっこいいぞー!
    うっかりから見忘れて一気に読んだ~(笑

    ……ヒゲマンだいじょうぶかな…

  • 150二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:18:29

    めちゃくちゃになったコックピットのドアを、ジークアクスで力任せに引っ剥がす。
    マチュはジークアクスから飛び出すと、リック・ドムのコックピットの中へ飛び込んで、シャリア・ブルの体を外へ引きずり出した。
    地球の6分の1の重力のおかげでできる芸当だ。

  • 151二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:21:12

    シャリア・ブルの体を横たえてその横に座ると、彼の頭を膝に乗せて顔を覗き込む。

    「ヒゲマン……」
    声をかけても反応がない。

    心臓がバクバクして、手が震えた。

  • 152二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:23:26

    エグザベの言葉が脳裏をよぎる。

    『僕たちは軍人だ。死ぬときは戦場であっさり死んでしまう』
    『だからこそ、あんな命の使い方をしちゃいけない』

    彼は、その目的のためなら覚悟をもって命を賭けることができる人だ。

  • 153二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:25:04

    (あたしのこと守ってくれたんだって、分かってる……分かってるけど!)

    それでも。

    (そのせいで、ヒゲマンが死んじゃうなんて……そんなの絶対に嫌だ!)

    (お願い、起きて……!もう、死ぬことなんて考えないで、あたしと一緒に生きてよ!!)

  • 154二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:28:29

    しばらくのち、彼の目がゆっくりと開いた。
    ……生きてる!


    「このっ……バカバカバカ!」
    「マチュ君……」
    「し、死んじゃったかと……思ったじゃないか……。よかった……」
    ポタポタと涙がこぼれて、シャリア・ブルの顔や胸の上に落ちた。

  • 155二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:29:38

    「……私のために泣いてくれる人がいるとは思いませんでした」
    「何でそういうこと言うんだ!」
    「……」
    シャリア・ブルはマチュの言葉には答えず、じっと彼女の顔を見つめる。
    「何?」

    シャリア・ブルに、マチュの想いが伝わってくる。
    (そうか、エグザベ大尉から、あのときのことを聞いたのか。……心配させてしまった)

  • 156二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:31:07

    シャリア・ブルは、マチュを庇った刹那のことを思い返す。
    とっさに身体が反応して、MSを操作していた。
    あの瞬間、マチュを守らなければという気持ちと共に。
    ……彼の中には、まだ死にたくないという感情が、確かに存在していた。

    (ずっと、いつ死んでもよいと思っていたはずなのに……)

    自分がそんな風に感じる時が来るとは、考えてもみなかった。

    (それは、多分……)
    マチュの顔が浮かんだからだ。
    彼女と共に、生きていきたいと思ったから。

  • 157二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:33:57

    「……ありがとうございます、マチュ君」
    「だから何で……」
    お礼を言わなきゃいけないのは、こちらの方なのに。
    マチュの涙は止まらない。後から後から溢れてくる。


    シャリア・ブルは優しい眼差しでマチュを見つめる。
    自身の変化に戸惑いもあったが、それ以上の想いが、彼の心を占めていた。

  • 158二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 20:35:30

    ところで、怪我の状態は dice1d3=1 (1)


    1 奇跡的に無傷

    2 軽傷で済んだ

    3 重傷

  • 159二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 21:46:14

    ダイス神マジ愛してる

  • 160二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 21:53:30

    「……ふふっ」
    シャリア・ブルの顔から、自然と笑みがこぼれた。
    「!?」
    「すみません、そこまで心配しなくても大丈夫です」
    「どういうこと?」
    「衝撃で気を失っただけで……怪我はしていないようですから」
    「はあぁ!?」

    彼は膝枕された状態のまま手を上げて、マチュの頬に流れる涙をそっと拭ってやる。
    「すみません、あなたの泣いている姿があまりにも愛おしかったので、つい」
    (!!!)

  • 161二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 21:54:53

    「中佐、大丈夫ですか!?」
    戦闘を終えたエグザベが、ギャンを降りて駆け寄ってくるのも構わずに、マチュはシャリア・ブルの頭をぎゅっと抱き締めたのだった。

  • 162二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 21:56:23

    ダイス神は、まごうことなき神でしたw
    最後の最後までシャリマチュの味方ww


    最後、エピローグです。
    明日以降、ゆるゆると上げていきたいと思います。

  • 163二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 22:02:28

    すげぇ…ここから入る保険あるんですか??!状態からのコレよ…ダイス🎲の神に愛されてすぎるシャリマチュ!

    エピローグの更新楽しみに待ってます!!

  • 164二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 22:07:51

    まじでご加護だ!!!ってなったダイス神のナイスすぎる御采配

    無事で済んだ―、祝……はまだ早いな、我慢だw

  • 165二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 01:41:40

    無事でよかった…!ダイス神流石すぎるな

  • 166二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 06:06:14

    エピローグです。


    その後、オブジェクトは無事確保された。


    シャリア・ブルとエグザベの2人は、事件の事後処理のため、グラナダに1週間程度滞在することとなった。
    マチュも、彼らの業務がある程度進んで地球での安全が確保されるまで、必然的にグラナダで過ごすこととなった。

  • 167二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 06:12:29

    その後の調査により、事件の関係でいくつかのことが明らかになった。


    情報を横流ししていた者たちは、フラナガン機関を裏切って、ゼクノヴァの研究成果とオブジェクトを手土産に、最終的には連邦へ亡命するつもりだったようだ。

    シャリア・ブルの能力は、フラナガン機関では相当警戒されていて、彼に対しては、オブジェクトのことがばれないよう、厳戒態勢が敷かれていた。
    裏切り者たちも、当然その事は知っていたので、わざわざ彼の周辺を探っており、その折に、マチュのことにも目をつけた。

    不正アクセスの件で何度も調査が入ったために、発覚を恐れた彼らは、シャリア・ブルの目を地球へ向けさせるため、ドックの襲撃を依頼したのだった。

  • 168二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 06:13:55

    (もしも潜入捜査前にドックの襲撃を知っていたら、自分が地球に向かっていたかもしれない……。危ないところだった)


    「結局、マチュ君の身に危険が及んだのは、私のせいだったということになります。面目ない」
    「別に、そんなの気にしなくていいのに」

  • 169二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 06:14:55

    シャリア・ブルが破壊した例の装置だが、もしもニュータイプの能力発動阻害機能をオンにされていたら、いくら彼でも敵MSの数に押し負けていただろう。
    マチュがジークアクスで突っ込んでいったお陰で相手は焦り、サイコミュの起動停止機能の方を発動させた。
    結果、動きが止まったのはジークアクスだけで済んだので、リック・ドムが装置を壊すことができたのだった。


    「ヒゲマン一人だったら、マジで危なかったじゃん!途中で追いついてよかったよ」
    「返す言葉もない……。しかし、オブジェクトとあの装置が新たな戦争の火種にならなくて、本当によかった」

  • 170二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 06:15:56

    また、彼らは地球にいるはずのギャンが突如現れたので、相当驚いたらしい。

    「どうやら、MS同士の非合法の賭け試合に参戦しているから、地球にいるのは間違いない、という連絡が来ていたようですね」
    (あの動画……!役に立ってたのか)
    「敵の目を欺くために、敢えて地球にいる様子を演出した、ということで処理をしておきましょう」
    「中佐……!ありがとうございます!」

    「動画を見ましたが、なかなかよい動きをしているではないですか。また腕を上げましたね」

    (いや、もう、動画は削除してほしい……!)

  • 171二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 12:43:34

    一連の事件は相当尾を引きそうで、シャリア・ブルたちは仕事に追われ、結局グラナダにいる間、マチュはほとんど二人と会うことはなかった。
    (せっかく久し振りに会えたのにな。極秘任務中だから仕方ないのか……)


    マチュはニャアンと共にグラナダでの滞在を満喫し、あっという間に地球に帰る日がやってきた。

  • 172二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 12:45:20

    帰還直前、シャリア・ブルたちがわざわざ顔を出してくれたので、マチュは最後に彼らと話をすることができた。

    シャリア・ブルの顔を見たマチュは気付く。
    「あれ、もしかしてまた髭伸ばしてる?」
    「ええ、もう変装する必要もないですから。……そんなにじろじろ見ないでください。照れるので」
    (伸ばし途中なんて、めっちゃレアじゃん!……この後の途中経過も見たい!)
    「ねえ、ザベ……」
    エグザベに話しかけたマチュだったが、シャリア・ブルは先回りして釘を刺す。
    「エグザベ大尉に頼んでも写真はダメですよ」
    「えー!いいじゃん、何で!」
    「ダメなものはダメです」
    (じゃあコモリンに頼もうっと)
    「コモリ中尉に頼んでも、同じですからね」

  • 173二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 14:30:59

    更新お疲れさまです
    あれこれ手土産に亡命するつもりかと踏んでたが……つくづくバカな連中だな
    ザベ君よ、動画の件は諦めれ(笑

  • 174二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 20:00:42

    さっさと付き合って恋人特権で毎日写真見させて!!!!!!!!

  • 175二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 20:43:14

    「2人はいつまでグラナダにいるの?」
    「明後日には向こうに戻る予定です。あちらでの仕事も溜まってますしね」
    シャリア・ブルがマチュに答え、エグザベはげんなりした顔をする。
    「そうだった……。こっちでの業務も山積みなのに、参ったな」
    「そんな忙しいのに、帰らなきゃいけないんだ?」
    シャリア・ブルが頷く。
    「ええ、アルテイシア様の政権奉還の式典の準備を進めなくては」
    「そっか、いつなんだっけ?」
    「もう残り3か月を切ってしまいました。急がないと。向こうに残してきたコモリ中尉にも負担をかけっ放しだ」
    「ジオンの首都でやるんだよね。ちょっと見てみたいかも」

  • 176二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 20:45:15

    「……もしマチュ君がよければ、ですが」
    マチュの言葉を聞いたシャリア・ブルは、少し思案したあと、彼女に提案した。
    「ニャアン君と一緒に式典を見に来たらどうですか?学校も、その期間は休みでしょう」

    その言葉に、マチュは顔を輝かせる。
    「そっか、そうしようかな!」

  • 177二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:08:54

    ……そして、ついに迎えた政権奉還の日。
    ジオンはついに、公王制から共和国制へと移行する。

    一度地球に戻ったマチュは、改めてジオンに来訪していた。

  • 178二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:10:49

    離れた建物の屋上で公王庁を見守るシャリア・ブルと、コモリ、エグザベ。
    建物の陰にはギャンが配備されている。
    アルテイシアの戴冠式のときも、同じ場所で護衛の任務に当たっていたが、今回はその3人に加えて、マチュとニャアンも一緒に式典の様子を眺めていた。

    式典当日は忙しいだろうから、シャリア・ブルに会うのは難しいと思っていたマチュだったが、ダメ元で聞いてみたところ、「式典を少し遠くから見ることになっても良ければ」と、2人を案内してくれたのだった。

  • 179二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:15:37

    歓声がさざ波となり、ここまで響いてくる。
    民衆の期待に満ちたそのざわめきは、新しい時代の始まりを予感させた。

    「もっと近くで見られるのに、わざわざこっちでいいの?」
    コモリに聞かれてマチュは答える。
    「大丈夫だよ。あたしはジオン国民じゃないから、近くで見て邪魔しちゃ悪いもんね。それに、ここからの方が、全体のお祭り騒ぎを感じられて楽しいし」
    「僕らは仕事なんだから、本当は一緒にいたらまずいんだからな」
    「相変わらずうるさいなー。固いんだって、ザベは。一応あたしも特務部隊所属扱いってことになってんだからいいじゃん」
    「それは便宜上だろ」
    コモリはエグザベとマチュとの会話を生暖かい目で見守る。
    (地球でもずっとこんな感じだったんだろうな。いつの間にかあだ名呼びだし……)

  • 180二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:20:20

    シャリア・ブルは、今日は仮面をつけている。
    髭もすっかり元通りだ。
    (ニャアンが送ってくれたあの写真データ、保存しといて良かった)
    マチュは密かにそう思った。
    実は、髭を伸ばし途中の写真もコモリに頼んでこっそり一枚だけ送ってもらっている。
    隠し撮りだが、シャリア・ブルは多分何となく気付いていて、
    (そんなに気になるのなら、一枚くらいなら、まあ……)
    と観念しているようにも見えた。

  • 181二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:22:40

    式典は無事に終わりを迎えた。これで警備の仕事も一段落だ。
    何事も起こらずに済んで、3人はひとまず安堵した。


    「ニャアンは学校卒業したら、こっちに配属になるの?」
    「まだ決めてないけど……月での勤務にするかもしれないし、マチュが地球にいるなら地球を希望するかも」
    「地球に来るなら、ジオンじゃなくて、ニャアンも一緒にクワトロさんの仕事手伝ってもいいじゃん」
    「そういえば、結局地球では何の仕事をしてるんだ?パイロット代行だの何だの、物騒な話しか聞いてないぞ」
    「えー、色々だよ、色々!」
    エグザベに聞かれたマチュは適当に返事する。
    「あんまり物騒なことはやめときなさいよ」
    「そんな大したことしてないって。ねえ、今度はコモリンも地球に遊びにおいでよ」
    「地球かー。たまには長期お休みを取って行ってもいいかもね」
    「そうそう、ヒゲマンもザベも来てるんだし」
    「いや、僕は遊びに行ったわけじゃないんだが」

  • 182二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:25:03

    彼らの様子を見ていたシャリア・ブルは声をかけた。
    「……そろそろ撤収しましょうか。エグザベ大尉、ギャンを移動させてください」
    「はい、中佐」


    エグザベたちが建物を降りていく。
    マチュも行こうとしたが、シャリア・ブルが立ち止まっているのを見て、戻ってきた。
    隣に来ると、彼の顔を見上げる。
    彼は名残惜しそうにジオン公王庁を眺めていた。
    あの庁舎も、いずれは取り壊して、新たに共和国の官房庁が建設される予定だ。

  • 183二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:27:24

    「これが、ヒゲマンが目指してた景色?」
    「そうですね、その一部は達成されたでしょう」
    「そっか。じゃあ次は、何を目指すの?」


    人の革新は終わらない。ニュータイプのための世界もまだ訪れない。
    この世は上手くはいかないことばかりで、平和な世界は程遠いのかもしれない。


    「……これから考えます。でも」

    彼はマチュを見つめると、微笑んで言った。
    「大丈夫です、きっと」
    彼女がいてくれる限り、自分は生きていける。


    シャリア・ブルの様子を見て、マチュも彼に笑いかけた。
    「……うん、大丈夫だね、きっと」

  • 184二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:30:12

    マチュの笑顔を見たシャリア・ブルは、彼女から視線を外して再び公王庁を眺めながら、さりげなく切り出す。
    「ところで……」
    「?」
    彼は、暫し言葉を探していたようだが、やがてマチュに視線を戻す。2人の目が合った。

    「マチュ君は今回、『大人になって』私に会いに来てくれた、と解釈してもいいんでしょうか」

    「……!」

    彼の言葉の意味を理解したマチュの頬がみるみる赤く染まる。


    しばらくの沈黙の後、彼女は返事のために思いきって口を開いた。


    ……マチュが何と答えて、その後二人がどう過ごしたか。
    それは、二人だけしか知らない。

  • 185二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:34:01

    終わりです。

    ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

    「まだ生きねばなりませんか……」って言ってたヒゲマンが、「マチュと一緒に生きたい」まで進化して、2人はやっと結ばれてハッピーエンド、ということで終了です!!!

    今回もたくさん応援をいただいて、何とかラストまで書き切ることができました。
    本当に本当に感謝です。

    序盤からいきなりヒゲマンの髭がなくなったりして、予想外の展開でしたが、それもダイス神のお導きということで……w

  • 186二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:36:08

    お疲れ様でした!素敵なお話をありがとう!

  • 187二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:54:19

    >>186

    ありがとうございます!

    感想嬉しいです!

  • 188二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:09:58

    完走お疲れ様です!
    今回も中々の長編で序盤からヒゲマンがヒゲなしヒゲマンになり、最後らへんはハラハラ展開の神ダイスが決まるところなど最後まで目が離せない読み応えあるお話になって、とても楽しく拝読させてもらいました!
    とても良いシャリマチュを綴って頂きありがとうございます!!

  • 189二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:47:27

    ありがとうございます!
    ダイスは、最終的にとてもよい形にまとまったので、本当によかったです

    ずーっと2人が会えないまま話が続くんで、途中で「こんなんで大丈夫か……」って毎回不安になっちゃうんですが、読み応えあると言っていただけて、嬉しいです!

  • 190二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:50:15

    お、来てたか…
    前回に続いてすんばらしいシャリマチュあざーっす!!!!!
    ダイス神の加護ありがたいがまた各所で観られたのもあわさって…もうね

    ……けどよ、裏方の仕事続くよなコレ?
    表向き正規軍人じゃない面子にも声かかるって幻覚・幻聴重なってんだが…
    まぁいいや… 二人といつもの面子が無事でありゃそれで(政治だの興味なし(ひど)

    改めて… 祝完結!!!
    お疲れ様~っした!!!(礼

  • 191二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 23:06:50

    >>190

    ありがとうございます!


    正史ではそれこそ、逆シャア、UC、ハサウェイ(はちょっと違うか?)と続いていくので、今後も不穏な陰を感じるのは、宇宙世紀の宿命ですねw


    しかし、普段が殺伐としているからこそ、隙間の平和な日常回が楽しいんです!

    とりあえず2人にはしばし甘い恋人気分を味わってもらいたい……w

  • 192二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 23:08:41

    今シリーズの後日談ですが、「2人だけしか知らない」で締めた癖に、一応書いておりますw


    ただ、内容が内容なので、ここに上げるのは難しいかなっていうのと、まだまだ書き途中なので、スレとしてはこれで終了したいと思います。


    R18部分は、書き上がったらpixivに上げるつもりなので、興味がある方は、よければ。

    誘導みたくなってしまって申し訳ないですが……。


    URL貼っときます。

    「朔望の軌跡」/「あんみつ」のシリーズ [pixiv]20歳になったマチュとシャリア・ブルが再会して、結ばれるお話。 前シリーズ「暁の邂逅」の続編です。www.pixiv.net

    最後までアップできるのはもう少し先かと思います。


    あと、スレPart2の最後の方に書いたネタを、Part3の最初の方に書いた話とくっつけて、今回のシリーズ前日譚としてまとめたので、よろしければこちらもどうぞ。


    #10 次シリーズ前日譚 コモリ少尉の名推理 | 暁の邂逅 - あんみつの小説シリーズ - pixiv続き物です。 お手数ですが、一話目からお読みください。 前話、「残照の番外編」の続きです。 何をしても裏があるように見えてしまう、シャリア・ブルの話。 シャリマチュですが、マチュは出てきません。 シャリア・ブル、コモリ、エグザベの3人の、いわゆる日常回です。 次シリーズ「朔望の軌www.pixiv.net
  • 193二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 23:40:38
  • 194二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 23:55:22

    完結お疲れ様!
    今回もシャリマチュ推しダイス神の加護とスレ主の文才に感謝
    PIXIV版も楽しみしています!

  • 195二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 07:09:09

    >>194

    ありがとうございます!

    後日談も頑張って書きますので、よろしくお願いします!

  • 196二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 14:06:04

    R18の方が難航しすぎて、現実逃避で、全く別の番外編(ヒゲマンの隠し撮りに挑戦するコモリンの話)を書き始めてしまった……w


    このネタひとつだけだと、スレ立てるほどの量ではないんですが、もし幾つか思いついて書きためたら、もしかしたら後日談だけのスレを立ててしまうかもです

    終わる終わる詐欺、すみません……昨日の時点ではホントに……全部出し切ったと思ったんです……

    またどこかでお目にかかることがありましたら、その時はよろしくお願いします

  • 197二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 21:15:26

    そういう時にも支部とかあれこれの使い時ですよ~
    楽しみにひっそりお待ちしてまする~

    ネタだけあって全然進まないとかばっさり削除して原型なくなってテキストじゃなく漬物状態になるとかいうのもありますけどね(ちーん

  • 198二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 22:20:37

    ひっそりと番外編とかを期待してた身としては有り難い…🙏
    支部でもスレ立てでも、ゆっくりと楽しみにお待ちしてます!

  • 199二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 22:20:59

    >>197

    ありがとうございます


    幾つかネタが出れば、ダイスで出た目の内容のSSを書くっていうのもいいかなー、と思ったんですが、今のところ、そこまで発展できそうになく……


    ひとまず、番外編として>>192に追加するか、もっと思いついたらスレ立てますw

  • 200二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 05:21:56

    >>199

    お疲れ様でした

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