- 11主25/08/23(土) 19:45:48
頭の中でなにか焼き切れるような気がした
「ヴィランをけしかけたって言ったよな…!?夏兄も死ぬとこだった!!」
「泣いて縋ってたんだろ!!!夏兄に!!!」
「それならそれで、エンデヴァーが苦しむ」
「イカれてんのかてめェ!!!」
「そうだよ焦凍兄ちゃん何も感じなくなっちまったぁ」
そン時はただ、激しい怒りと祝福と不安や喜びがそうさせているのだと思った
──────────
けど…頭の中気持ち悪いのに異様にスッキリして…
なにかそこそこ大事なことを忘れてるような気がしてならない
「…」
タバコの匂い、小さなガラス玉の音
思い出そうとする度に、頭の内側から鈍痛が襲う
今こうして、リーダー達といられるのは誰のおかげだ?と言われたとしたら、俺はきっと答えられねぇ
「…誰だっけ」
「思い出せねぇや」 - 21主25/08/23(土) 19:47:12
…目の前の2人のことは知ってる
スピナーとトガ
それぐらいはすぐに分かる
そして、今呻き声を上げているのはリーダー…死柄木弔
俺は必死に頭を回転させた
別に思い出したくてたまらなかった訳じゃないが、思い出せない事が無性に気持ち悪かった
仲間…の1人…だったか…?ホークスのことは覚えてる…けど、なんで俺はあの時あの場所に行った?
ただ、ホークスを燃やすだけ?ならなんで場所がわかった?
誰かを助けに行った…?俺が?何のために?
仲間なんて都合のいい言葉で固めただけのただのヴィランの集まり
俺が情を移すほどの人物はこの場にいない、この世界には居ない
なら…俺はそいつの個性を必要としてた?
なんで?
トガが怒ってた、なんでだ?あいつが好きな奴が…俺が知らないやつが死んだからか?
それと…あの時、ギガントマキアの上に乗っていた時だ…お父さんも焦凍も居た…そして他にも学生のヒーロー…そしてベストジーニストが居た
…あそこから俺はどうやって脱出した?そんなことこのメンツじゃ不可能だ
「燈矢くん、大丈夫ですか?」
「…別に」
「少し休んでくるといい、君も万全の状態で居てもらわなくては困るからね」
「…命令すんな」
AFOも分かる…けど、コイツはあの場に居なかった
思い出せないって、こんなイライラするんだな
俺はなんとなく居ずらくなってその場を後にした - 31主25/08/23(土) 19:48:28
雨が嫌に降っててうざったかった
どうしても思い出せない
正体不明の何かにイラつきながら、俺は無意識に身体から炎が立ち上った
けど、また頭の中でなにか焼き切れるような感覚が起こりそうになり、俺はすぐに雨にあたって身体を冷やした
「火力の上げ方しか教えてくれなかったもんな」
教えてくれたのは…
「…お父さん…だよ…な?」
誰に聞く訳でも無い
単純な疑問を口にした
頭が心臓になったみたいにドクドク鳴ってる
うるせぇ…
「…大概俺も…疲れてんのかもな」
今も忘れられない新鮮な憎しみがあるはずなのに、何故か俺の記憶にモヤがかかって、俺の知らないところで消えていく
そんな気がしてならない
ため息をついたあと、俺は雨宿り代わりなる適当な建物を探した
──────────
乾燥した薪を何本か暖炉に焼べる
弱火で火をつけようとすると、また頭の中が熱くなってくる
「…」
俺は近くにあった水を被りすぐに冷やした
焼き切れるような感覚はなく、今の行動に意味があったのか?と疑問に思うほどだった
「個性…」
俺は何となくわかってしまった
”個性を使う度に、徐々に記憶を失っていく”
まぁ…多分脳の記憶を司る部分に俺の熱が悪さしてそんなことになってんだろうな
…失敗作ってのは、大変だよ、お父さん - 41主25/08/23(土) 19:49:50
寒いだとかは、体質がお母さん譲りだからか思わなかったが
無音はさすがに落ち着かなかった
パチパチと火が音を立てていた
「…はー」
自分で火が消せないのは厄介だな…忘れちまったからか?
…いや、元からそんなの教えてもらったことねぇな
火力の上げ方しか教えてくれなかったもんな
「…誰に教えてもらったんだっけ」
汗腺から汗なんか垂れないはずなのに、俺の背中が少し湿っぽくなったような気がした
「…ははっ…何忘れてんだ…俺…教えてくれたのはお父さんだ」
「髪だけじゃなくて…頭もじじいになっちまったみてぇ…だな」
必死に独り言を並べ立てる
くだらない話だ
忘れちまうとか…そんなことに何故か冷や汗みたいなもんをかいて
「…記憶とか思い出とか…どうでもいい」
何故かその一言が、自分で言ってて気分が悪かった - 5二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 19:50:55
珍しく荼毘が曇り気味だ……!
- 61主25/08/23(土) 20:07:25
この気持ち悪さを早く抜きたくて、必死に考えた
誰だ…?俺達を助けてくれたのは…
あぁ…クソ…顔が分かんねぇ
「…顔を隠してた?」
思い出してもなんの意味もない
ただ今俺が楽になるためにしている無駄な行為
確か…顔全体を覆うマスクと…ピッチリしたスーツ
そして…もう1人は…仮面をしてて…マジシャン…みたいな
「分かりずらい格好すんなよな」
声と顔までは思い出せなかったが、何となくどんな関係性だったとかは思い出せてきた
酷い鈍痛が俺を襲った
何も感じないのはあくまで外側だけだ
「…はぁ…」
久々の痛みに、まだ生きてる、お父さんの大事なものを奪えるとほんの少しの喜びが溢れるが
…お父さんの大事なものってなんだ?
肝心なところが思い出せずに、体の内側が痒くなる
「AFOなら何とか…」
いや…あれは氏子さんが居たおかげだ
それに、失った記憶の復元なんて…最新医療でもできっこないだろう
思い出すまで待てと言われても…時間が無い
「…轟炎司…冷…冬美…夏雄…焦凍」
「荼…轟燈矢」
みんなの名前を言ったらほんの少しだけ楽になった
まだ忘れてない、絶対に忘れない
俺の体からまた少しだけ炎が上がった - 7二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 20:11:17
荼毘、曇ってる
オデ、ウレシイ - 81主25/08/23(土) 20:23:35
薪が燃え尽き、湿っぽい熱が無くなり、雨の打ちつける音だけがココに響いた
なんて事ない廃洋館
俺は階段をゆっくり登った
ギシギシ音を立てて、広い洋館内にこだまする
家の広さってどのぐらいだったか?ここより広かっ…いや、そんなこと…別にどうでもいいだろ
自分で言ってて、自分の馬鹿らしさについ笑っちまった
でも、まだイライラが治まらねぇ…
あの時…俺が、燈矢が生きてると言った時のお父さんの顔が思い出せない
もう二度と見れないような顔をしてたってことは…何となくわかるのに
俺が歩く度に、ホコリが舞う
「…焦凍は?どんな顔してた?」
濡れたガラスに写る自分の顔を見ながら、必死に思い出す
雨粒に自分の瞳が反射する
蒼い…お父さん…の…目
「ははは!思い出した…!」
あの顔は本当に滑稽としか言えなかった!
こんな簡単に思い出せちまうぐらい鮮明に残ってたんだな…良かった
あぁ、どうしよ…笑いすぎて変になりそうだ
安心したな…まだ忘れてない
お父さんのことだけはずっと覚えてないとな
まぁ、忘れる心配なんてない…だって俺は、お父さんの罪そのものなんだから
なのに…なんでさっきから…
こんな汚い涙が止まらないんだろうな - 91主25/08/23(土) 21:29:32
雨音が弱くなった
俺は、さっさとリーダー達の方に戻ろうと、洋館を出た
だが、俺の足はそこで止まった
「俺…どっちから来たっけ?」
深く長いため息をついたあと、どうしようかと考えていた
「あぁ…」
少しぬかるんできた道を歩いてきたからか、足跡がくっきりと着いていた
「ははっ…みっともねぇ」
俺は足跡を辿りながら元きた道へ戻り始めた
荼毘の記憶喪失の酷さは?
dice1d100=79 (79)
(1〜20) 時間はかかるが思い出せる
(20〜60) 思い出すことは出来ても、完全には思い出せない
(60〜100) 忘れるとほぼ思い出すことは不可能
完全に忘れてることはある?
1 ある
2 ない
dice1d2=1 (1)
1の場合何を忘れてる?
1 トゥワイスの死、ミスターの確保
2 なぜ連合に入ったか
3 最終的な死柄木の目標
4 幼少期のささやかな幸せな
dice1d4=4 (4)
感想レスとかくれるとやる気に繋がりますので…
レス乞食と思われるかもしれませんが…レスしてくれると本当に嬉しいです
1主のスレは大概スローペースで進行します
- 101主25/08/23(土) 21:39:30
ぐちゃぐちゃ不快な音が響く
頭の中で考えていることがその音にかき消される
思い出さなくていいと思っているのに
そして…なんか…いちばん大切なことを忘れてる気がする
『──────────』
暖かくて…でも一瞬で…
俺のかけがえのない思い出で…
誰か大切な人と過ごした…
なんだっけな、思い出せねぇや
「燈矢くん!どこ行ってたんですか!」
イカレ女…トガが走ってこっちに来る
「…別にどこ行ってもいいだろ、好きにしろって言うのがリーダーの命令だ」
「それは…そうですけど!ヒーローに見つかったらどうするんですか!」
「ヒーローなんか今パトロールしてる暇ねぇだろ…安心しろ」
「…トガ」
「なんですか?」
「いや、なんでもねぇ」
「隠されると気になります…燈矢くん、教えて?」
「うるせぇなぁ、トガ」
「燈矢くん、なんで私の事名前で呼ぶんですか?」
「…忘れちまったら大変だろ、ま、お前みたいなイカレ女、よっぽどの事がない限り忘れねぇけどな」
「燈矢くん、まだなにか隠し事ですか?」
不安そうに俺を見る
「ねぇよ、んなもん」
「お前が呼びに来たってことは、さっさとリーダーのとこ行きゃいいんだろ?ほら、行くぞトガ」
「…燈矢くんの意地悪」 - 11二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 21:43:56
記憶喪失の酷さがやばい……
しかも幼い頃のささやかな幸せを忘れちゃったか… - 12二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 22:07:40
ということは好きな物蕎麦で同じだ。が発生しないって事だよな。辛い
- 13二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 22:13:39
おんなじだがないならごめんなもない?
悲しい… - 141主25/08/23(土) 22:24:52
「…なぁ、お前はさ、思い出せないこととかあんのか?」
「思い出したくないことはあるのです」
「へー、そ」
思い出したくない記憶なんてないな
そりゃ、最初はあまりにも苦すぎる思い出に、吐き気と目眩がした
けど、今は俺の怒りと憎悪を燃え上がらせる薪になった
俺は幸せだったなんて感じたことは、お父さんの絶望した顔を見たあの時ぐらいだ
色々思い出そうとすると、余計な思い出まで着いてくる
けど、幼少期には、マトモな思い出なんて1ページもない
ただ、俺が火傷を負って帰ってきて、お父さんに怒られて、それでも訓練を続けて、焦凍が生まれて、俺は誰からも見られなくなった
言っちまえば、生まれてから1度も幸せだったなんて思ったことが無いかもしれない
嗚呼…そうだな、エンデヴァー、てめぇは誰も幸せにできない
自分の息子1人守れずに、挙句の果てに1番守るべきだったものを自分でぶち壊す
てめぇが父親やってる瞬間なんて俺は見た事ねぇよ
俺は本当に見た事ないのか?
もしかしたら、忘れてるだけで…本当は楽しい記憶とかも
「…笑えるな」
体が変な状態になると、ありもしない事を考えちまう
都合のいい夢物語を勝手に妄想しちまった
そんなこと…存在しねぇのに - 15二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 22:32:59
少しずつ過去を忘れていくタイプの荼毘か
記憶という薪が焚べられなくなったら、煙になることすら許されずに魂ごと消えてしまいそう
好きです - 161主25/08/23(土) 22:39:51
「よぉ、リーダー生きてるか?」
リーダーは何も答えない
「死柄木の肉体を休ませるっていうのが…AFOの今の目的だ」
「知ってる、いちいち言わなくていい、俺が年寄りみたいだろうが」
「なんでそんなキレてんだよ」
「は?キレてねぇよ、いつも通りだろうが」
「どこに行っていたかは聞かないよ燈矢くん、けど、君は今何か困っているように見える、話してみてくれないか?」
AFOの子供に接するかのような態度に腹が立つ
「別になんもねぇよ、AFO、お前はリーダーのこと考えてろ」
「俺の…俺達の目的のために欠かせない存在だからな…まさか裏切るとか考えてねぇよな」
「君がエンデヴァーに心をかき乱されていることがよく分かったよ、好きにしてくれ」
「悩みに悩んで出た結果が僕達のためになることを祈っているよ」
「…あっそ」
俺は横になっているリーダーの傍に座った
特にすることもない…いや、あった
「なぁ…俺たちを助けてくれたのって誰だっけ」
「いきなり何言い出すんだ荼毘、仲間のことすら愚弄する気かよ」
「そんなんじゃねぇよ、頭が沸騰しちまってよく覚えてないんだ」
「…みんなを助けようとして、死んじゃったのが、仁くん、そして、私達を逃がそうと助けてくれたのが、圧紘くん」
泣きそうになっているトガの背中を優しく撫でるスピナー
「…仁…圧紘」
ぼんやりと浮かぶような浮かばないような…
「少し考え事するから、黙っててくれ」
「自分勝手だな本当」 - 171主25/08/23(土) 22:51:55
──────────
「バレるも何も、ハナから何も信じちゃいねぇ」
『燃やせェ!』
『熱っつめたぁぁ!』
「お前1人いればヒーローなんざ蹴散らせる」
「暴れろ、みんなが待ってるぜ」
──────────
「ごめん焦凍、事情が変わった」
「轟炎司がまだ壊れてない上に気絶しちまったらこのショーの意味が無い、ごめんな、最高傑作」
『来い!荼毘!!』
──────────
「…あぁ…」
なんか…思い出した気がする…多分…いや、思い出せねぇ
あぁ、でも、ホークスの顔もジーニストの顔も思い出せない…
どういう体格だった?どういう個性だった?
面白いぐらい何も覚えてねぇ
「…ん、なんだこれ」
俺は自分のポケットに手を突っ込んだ
「血?」
数十秒血の入った容器を見つめていたが、よく思い出せなかった
こんな気色悪いもん捨てた方がいいんだろうが…
とってるつーことは…大事なものかなにかか?
九州の時のお父さんの血?いや、そんな古い血なんてもうとっくに固まってる
「なぁ、AFO」
「記憶なくなってるつったら、困るか?」 - 181主25/08/23(土) 23:02:17
「どこから忘れてしまったんだい?」
「…もしものって話だ」
俺が露骨に不機嫌な態度を取ると、AFOは笑みを浮かべた
「ふふ、すまない」
「そうだね、君を生かしてきた原点さえ、忘れなければ…僕はなんでもいいよ」
「死柄木以外にはとことん辛辣だな」
「酷言い草だね、燈矢くん…僕は今すぐ君のことを楽にしてあげることも出来る」
「脳を弄る気か?」
「簡単に言ってしまえばそうだね」
「さすが魔王と呼ばれた男だな、容赦が一切ねぇ」
「でもね、燈矢くん、最悪の事態を考えるというのも大事なんだよ」
「例えばそうだね…」
「エンデヴァー達のことを忘れてしまう」
「…君ならそんなことは無いだろうけど」
「はは…っ…おいおい、何言ってんだ魔王」
口元は笑っているのに、声が震えた
「俺がッ…あいつらを…忘れるわけ…忘れるわけねぇだろうがッ!!」
声が裏返り、表情が取り繕えなくなる
「忘れちまったら…俺は…」
全身、細胞に至るまで俺はその言葉に動揺していた
ツギハギの隙間から血がぽたぽた垂れる
「…何目的に生きりゃいいんだよ」
「大丈夫さ、君の執着が彼らを忘れるはずがない」
「思い出してごらん、君の中にある彼らに対する憎しみを」
AFOは俺の肩に手を添えたが、俺はその手を振り払った
「触んじゃねぇ…」
俺の声はまだ震えていた - 191主25/08/23(土) 23:17:15
俺は少しだけその場を離れた
壁に背中を預け、髪をぐしゃぐしゃに掻きむしる
「忘れねぇ…忘れねぇ…絶対に…」
馬鹿みたいにそんな言葉を繰り返す
「忘れるもんか…俺が…過去は消えない…そんな過去を忘れるわけが…」
「…忘れるわけねぇだろ…なぁ?そうだよな」
俺の視線の先には暗くこの世界を覆い尽くすような雲がかかっていた
「ははっ、でも…もし忘れたらどうすんだ?俺…」
誰に聞かせる訳でもなく、壁に額を押し付けた
心臓の位置を確認するように俺は胸に手を当てた
あんな一言で動揺しすぎだ
「お父さん…」
感情的になりすぎて、俺からまた炎が立ち上る
また…脳の血管1本1本が、切れそうな感覚に陥る
俺はすぐに雨に打たれたが
火が消えない
あの時と…同じ
「忘れたくない…忘れたくない…!」
「消えろ…消えろ…」
俺は荒くなる息を抑えながら、火を消そうと必死だった
落ち着け…個性も身体機能の一つだ
ゆっくりと肺に酸素を送り込み、脳を強制的に落ち着かせる
徐々に、炎が弱まっていき、完全に消えた
「…コントロール出来ねぇとか…さすが失敗作…」
笑いたかった
けど、出てくるのは震える言葉ばかり
怖かった
こんな些細なことで憎しみを忘れてしまいそうになることが、この上なく怖かった
「だっせぇな…」 - 20二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 23:50:41
原作軸で曇ってる荼毘ということが新鮮過ぎる
本当にありがたい