【超閲覧注意】思い出せねぇや

  • 11主25/08/23(土) 19:45:48

    頭の中でなにか焼き切れるような気がした

    「ヴィランをけしかけたって言ったよな…!?夏兄も死ぬとこだった!!」
    「泣いて縋ってたんだろ!!!夏兄に!!!」
    「それならそれで、エンデヴァーが苦しむ」
    「イカれてんのかてめェ!!!」
    「そうだよ焦凍兄ちゃん何も感じなくなっちまったぁ」

    そン時はただ、激しい怒りと祝福と不安や喜びがそうさせているのだと思った

    ──────────

    けど…頭の中気持ち悪いのに異様にスッキリして…
    なにかそこそこ大事なことを忘れてるような気がしてならない
    「…」
    タバコの匂い、小さなガラス玉の音
    思い出そうとする度に、頭の内側から鈍痛が襲う
    今こうして、リーダー達といられるのは誰のおかげだ?と言われたとしたら、俺はきっと答えられねぇ

    「…誰だっけ」

    「思い出せねぇや」

  • 21主25/08/23(土) 19:47:12

    …目の前の2人のことは知ってる
    スピナーとトガ
    それぐらいはすぐに分かる
    そして、今呻き声を上げているのはリーダー…死柄木弔

    俺は必死に頭を回転させた
    別に思い出したくてたまらなかった訳じゃないが、思い出せない事が無性に気持ち悪かった
    仲間…の1人…だったか…?ホークスのことは覚えてる…けど、なんで俺はあの時あの場所に行った?
    ただ、ホークスを燃やすだけ?ならなんで場所がわかった?
    誰かを助けに行った…?俺が?何のために?
    仲間なんて都合のいい言葉で固めただけのただのヴィランの集まり
    俺が情を移すほどの人物はこの場にいない、この世界には居ない
    なら…俺はそいつの個性を必要としてた?
    なんで?
    トガが怒ってた、なんでだ?あいつが好きな奴が…俺が知らないやつが死んだからか?
    それと…あの時、ギガントマキアの上に乗っていた時だ…お父さんも焦凍も居た…そして他にも学生のヒーロー…そしてベストジーニストが居た
    …あそこから俺はどうやって脱出した?そんなことこのメンツじゃ不可能だ
    「燈矢くん、大丈夫ですか?」
    「…別に」
    「少し休んでくるといい、君も万全の状態で居てもらわなくては困るからね」
    「…命令すんな」
    AFOも分かる…けど、コイツはあの場に居なかった

    思い出せないって、こんなイライラするんだな

    俺はなんとなく居ずらくなってその場を後にした

  • 31主25/08/23(土) 19:48:28

    雨が嫌に降っててうざったかった
    どうしても思い出せない
    正体不明の何かにイラつきながら、俺は無意識に身体から炎が立ち上った
    けど、また頭の中でなにか焼き切れるような感覚が起こりそうになり、俺はすぐに雨にあたって身体を冷やした
    「火力の上げ方しか教えてくれなかったもんな」
    教えてくれたのは…
    「…お父さん…だよ…な?」
    誰に聞く訳でも無い
    単純な疑問を口にした
    頭が心臓になったみたいにドクドク鳴ってる
    うるせぇ…
    「…大概俺も…疲れてんのかもな」
    今も忘れられない新鮮な憎しみがあるはずなのに、何故か俺の記憶にモヤがかかって、俺の知らないところで消えていく
    そんな気がしてならない
    ため息をついたあと、俺は雨宿り代わりなる適当な建物を探した
    ──────────
    乾燥した薪を何本か暖炉に焼べる
    弱火で火をつけようとすると、また頭の中が熱くなってくる
    「…」
    俺は近くにあった水を被りすぐに冷やした
    焼き切れるような感覚はなく、今の行動に意味があったのか?と疑問に思うほどだった
    「個性…」
    俺は何となくわかってしまった

    ‪”‬個性を使う度に、徐々に記憶を失っていく‪”‬

    まぁ…多分脳の記憶を司る部分に俺の熱が悪さしてそんなことになってんだろうな
    …失敗作ってのは、大変だよ、お父さん

  • 41主25/08/23(土) 19:49:50

    寒いだとかは、体質がお母さん譲りだからか思わなかったが
    無音はさすがに落ち着かなかった
    パチパチと火が音を立てていた
    「…はー」
    自分で火が消せないのは厄介だな…忘れちまったからか?
    …いや、元からそんなの教えてもらったことねぇな
    火力の上げ方しか教えてくれなかったもんな

    「…誰に教えてもらったんだっけ」

    汗腺から汗なんか垂れないはずなのに、俺の背中が少し湿っぽくなったような気がした
    「…ははっ…何忘れてんだ…俺…教えてくれたのはお父さんだ」
    「髪だけじゃなくて…頭もじじいになっちまったみてぇ…だな」
    必死に独り言を並べ立てる
    くだらない話だ
    忘れちまうとか…そんなことに何故か冷や汗みたいなもんをかいて
    「…記憶とか思い出とか…どうでもいい」
    何故かその一言が、自分で言ってて気分が悪かった

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 19:50:55

    珍しく荼毘が曇り気味だ……!

  • 61主25/08/23(土) 20:07:25

    この気持ち悪さを早く抜きたくて、必死に考えた
    誰だ…?俺達を助けてくれたのは…
    あぁ…クソ…顔が分かんねぇ
    「…顔を隠してた?」
    思い出してもなんの意味もない
    ただ今俺が楽になるためにしている無駄な行為

    確か…顔全体を覆うマスクと…ピッチリしたスーツ
    そして…もう1人は…仮面をしてて…マジシャン…みたいな

    「分かりずらい格好すんなよな」
    声と顔までは思い出せなかったが、何となくどんな関係性だったとかは思い出せてきた
    酷い鈍痛が俺を襲った
    何も感じないのはあくまで外側だけだ
    「…はぁ…」
    久々の痛みに、まだ生きてる、お父さんの大事なものを奪えるとほんの少しの喜びが溢れるが

    …お父さんの大事なものってなんだ?

    肝心なところが思い出せずに、体の内側が痒くなる
    「AFOなら何とか…」
    いや…あれは氏子さんが居たおかげだ
    それに、失った記憶の復元なんて…最新医療でもできっこないだろう
    思い出すまで待てと言われても…時間が無い
    「…轟炎司…冷…冬美…夏雄…焦凍」
    「荼…轟燈矢」
    みんなの名前を言ったらほんの少しだけ楽になった
    まだ忘れてない、絶対に忘れない

    俺の体からまた少しだけ炎が上がった

  • 7二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 20:11:17

    荼毘、曇ってる
    オデ、ウレシイ

  • 81主25/08/23(土) 20:23:35

    薪が燃え尽き、湿っぽい熱が無くなり、雨の打ちつける音だけがココに響いた
    なんて事ない廃洋館
    俺は階段をゆっくり登った
    ギシギシ音を立てて、広い洋館内にこだまする
    家の広さってどのぐらいだったか?ここより広かっ…いや、そんなこと…別にどうでもいいだろ
    自分で言ってて、自分の馬鹿らしさについ笑っちまった
    でも、まだイライラが治まらねぇ…
    あの時…俺が、燈矢が生きてると言った時のお父さんの顔が思い出せない
    もう二度と見れないような顔をしてたってことは…何となくわかるのに
    俺が歩く度に、ホコリが舞う
    「…焦凍は?どんな顔してた?」
    濡れたガラスに写る自分の顔を見ながら、必死に思い出す
    雨粒に自分の瞳が反射する
    蒼い…お父さん…の…目
    「ははは!思い出した…!」
    あの顔は本当に滑稽としか言えなかった!
    こんな簡単に思い出せちまうぐらい鮮明に残ってたんだな…良かった
    あぁ、どうしよ…笑いすぎて変になりそうだ

    安心したな…まだ忘れてない

    お父さんのことだけはずっと覚えてないとな
    まぁ、忘れる心配なんてない…だって俺は、お父さんの罪そのものなんだから
    なのに…なんでさっきから…
    こんな汚い涙が止まらないんだろうな

  • 91主25/08/23(土) 21:29:32

    雨音が弱くなった

    俺は、さっさとリーダー達の方に戻ろうと、洋館を出た

    だが、俺の足はそこで止まった

    「俺…どっちから来たっけ?」

    深く長いため息をついたあと、どうしようかと考えていた

    「あぁ…」

    少しぬかるんできた道を歩いてきたからか、足跡がくっきりと着いていた

    「ははっ…みっともねぇ」

    俺は足跡を辿りながら元きた道へ戻り始めた


    荼毘の記憶喪失の酷さは?

    dice1d100=79 (79)

    (1〜20) 時間はかかるが思い出せる

    (20〜60) 思い出すことは出来ても、完全には思い出せない

    (60〜100) 忘れるとほぼ思い出すことは不可能


    完全に忘れてることはある?

    1 ある

    2 ない

    dice1d2=1 (1)

    1の場合何を忘れてる?

    1 トゥワイスの死、ミスターの確保

    2 なぜ連合に入ったか

    3 最終的な死柄木の目標

    4 幼少期のささやかな幸せな

    dice1d4=4 (4)


    感想レスとかくれるとやる気に繋がりますので…

    レス乞食と思われるかもしれませんが…レスしてくれると本当に嬉しいです

    1主のスレは大概スローペースで進行します

  • 101主25/08/23(土) 21:39:30

    ぐちゃぐちゃ不快な音が響く
    頭の中で考えていることがその音にかき消される
    思い出さなくていいと思っているのに
    そして…なんか…いちばん大切なことを忘れてる気がする

    ‪『──────────』

    暖かくて…でも一瞬で…
    俺のかけがえのない思い出で…
    誰か大切な人と過ごした…

    なんだっけな、思い出せねぇや

    「燈矢くん!どこ行ってたんですか!」
    イカレ女…トガが走ってこっちに来る
    「…別にどこ行ってもいいだろ、好きにしろって言うのがリーダーの命令だ」
    「それは…そうですけど!ヒーローに見つかったらどうするんですか!」
    「ヒーローなんか今パトロールしてる暇ねぇだろ…安心しろ」
    「…トガ」
    「なんですか?」
    「いや、なんでもねぇ」
    「隠されると気になります…燈矢くん、教えて?」
    「うるせぇなぁ、トガ」
    「燈矢くん、なんで私の事名前で呼ぶんですか?」
    「…忘れちまったら大変だろ、ま、お前みたいなイカレ女、よっぽどの事がない限り忘れねぇけどな」
    「燈矢くん、まだなにか隠し事ですか?」
    不安そうに俺を見る
    「ねぇよ、んなもん」
    「お前が呼びに来たってことは、さっさとリーダーのとこ行きゃいいんだろ?ほら、行くぞトガ」
    「…燈矢くんの意地悪」

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 21:43:56

    記憶喪失の酷さがやばい……
    しかも幼い頃のささやかな幸せを忘れちゃったか…

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 22:07:40

    ということは好きな物蕎麦で同じだ。が発生しないって事だよな。辛い

  • 13二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 22:13:39

    おんなじだがないならごめんなもない?
    悲しい…

  • 141主25/08/23(土) 22:24:52

    「…なぁ、お前はさ、思い出せないこととかあんのか?」
    「思い出したくないことはあるのです」
    「へー、そ」
    思い出したくない記憶なんてないな
    そりゃ、最初はあまりにも苦すぎる思い出に、吐き気と目眩がした
    けど、今は俺の怒りと憎悪を燃え上がらせる薪になった
    俺は幸せだったなんて感じたことは、お父さんの絶望した顔を見たあの時ぐらいだ
    色々思い出そうとすると、余計な思い出まで着いてくる
    けど、幼少期には、マトモな思い出なんて1ページもない
    ただ、俺が火傷を負って帰ってきて、お父さんに怒られて、それでも訓練を続けて、焦凍が生まれて、俺は誰からも見られなくなった
    言っちまえば、生まれてから1度も幸せだったなんて思ったことが無いかもしれない
    嗚呼…そうだな、エンデヴァー、てめぇは誰も幸せにできない
    自分の息子1人守れずに、挙句の果てに1番守るべきだったものを自分でぶち壊す
    てめぇが父親やってる瞬間なんて俺は見た事ねぇよ

    俺は本当に見た事ないのか?
    もしかしたら、忘れてるだけで…本当は楽しい記憶とかも

    「…笑えるな」

    体が変な状態になると、ありもしない事を考えちまう
    都合のいい夢物語を勝手に妄想しちまった
    そんなこと…存在しねぇのに

  • 15二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 22:32:59

    少しずつ過去を忘れていくタイプの荼毘か
    記憶という薪が焚べられなくなったら、煙になることすら許されずに魂ごと消えてしまいそう
    好きです

  • 161主25/08/23(土) 22:39:51

    「よぉ、リーダー生きてるか?」
    リーダーは何も答えない
    「死柄木の肉体を休ませるっていうのが…AFOの今の目的だ」
    「知ってる、いちいち言わなくていい、俺が年寄りみたいだろうが」
    「なんでそんなキレてんだよ」
    「は?キレてねぇよ、いつも通りだろうが」
    「どこに行っていたかは聞かないよ燈矢くん、けど、君は今何か困っているように見える、話してみてくれないか?」
    AFOの子供に接するかのような態度に腹が立つ
    「別になんもねぇよ、AFO、お前はリーダーのこと考えてろ」
    「俺の…俺達の目的のために欠かせない存在だからな…まさか裏切るとか考えてねぇよな」
    「君がエンデヴァーに心をかき乱されていることがよく分かったよ、好きにしてくれ」
    「悩みに悩んで出た結果が僕達のためになることを祈っているよ」
    「…あっそ」
    俺は横になっているリーダーの傍に座った
    特にすることもない…いや、あった
    「なぁ…俺たちを助けてくれたのって誰だっけ」
    「いきなり何言い出すんだ荼毘、仲間のことすら愚弄する気かよ」
    「そんなんじゃねぇよ、頭が沸騰しちまってよく覚えてないんだ」
    「…みんなを助けようとして、死んじゃったのが、仁くん、そして、私達を逃がそうと助けてくれたのが、圧紘くん」
    泣きそうになっているトガの背中を優しく撫でるスピナー
    「…仁…圧紘」
    ぼんやりと浮かぶような浮かばないような…
    「少し考え事するから、黙っててくれ」
    「自分勝手だな本当」

  • 171主25/08/23(土) 22:51:55

    ──────────
    「バレるも何も、ハナから何も信じちゃいねぇ」

    『燃やせェ!』
    『熱っつめたぁぁ!』

    「お前1人いればヒーローなんざ蹴散らせる」
    「暴れろ、みんなが待ってるぜ」
    ──────────
    「ごめん焦凍、事情が変わった」
    「轟炎司がまだ壊れてない上に気絶しちまったらこのショーの意味が無い、ごめんな、最高傑作」

    『来い!荼毘!!』
    ──────────

    「…あぁ…」
    なんか…思い出した気がする…多分…いや、思い出せねぇ
    あぁ、でも、ホークスの顔もジーニストの顔も思い出せない…
    どういう体格だった?どういう個性だった?
    面白いぐらい何も覚えてねぇ
    「…ん、なんだこれ」
    俺は自分のポケットに手を突っ込んだ
    「血?」
    数十秒血の入った容器を見つめていたが、よく思い出せなかった
    こんな気色悪いもん捨てた方がいいんだろうが…
    とってるつーことは…大事なものかなにかか?
    九州の時のお父さんの血?いや、そんな古い血なんてもうとっくに固まってる
    「なぁ、AFO」
    「記憶なくなってるつったら、困るか?」

  • 181主25/08/23(土) 23:02:17

    「どこから忘れてしまったんだい?」
    「…もしものって話だ」
    俺が露骨に不機嫌な態度を取ると、AFOは笑みを浮かべた
    「ふふ、すまない」
    「そうだね、君を生かしてきた原点さえ、忘れなければ…僕はなんでもいいよ」
    「死柄木以外にはとことん辛辣だな」
    「酷言い草だね、燈矢くん…僕は今すぐ君のことを楽にしてあげることも出来る」
    「脳を弄る気か?」
    「簡単に言ってしまえばそうだね」
    「さすが魔王と呼ばれた男だな、容赦が一切ねぇ」
    「でもね、燈矢くん、最悪の事態を考えるというのも大事なんだよ」
    「例えばそうだね…」

    「エンデヴァー達のことを忘れてしまう」

    「…君ならそんなことは無いだろうけど」
    「はは…っ…おいおい、何言ってんだ魔王」
    口元は笑っているのに、声が震えた
    「俺がッ…あいつらを…忘れるわけ…忘れるわけねぇだろうがッ!!」
    声が裏返り、表情が取り繕えなくなる
    「忘れちまったら…俺は…」
    全身、細胞に至るまで俺はその言葉に動揺していた
    ツギハギの隙間から血がぽたぽた垂れる
    「…何目的に生きりゃいいんだよ」
    「大丈夫さ、君の執着が彼らを忘れるはずがない」
    「思い出してごらん、君の中にある彼らに対する憎しみを」
    AFOは俺の肩に手を添えたが、俺はその手を振り払った
    「触んじゃねぇ…」
    俺の声はまだ震えていた

  • 191主25/08/23(土) 23:17:15

    俺は少しだけその場を離れた
    壁に背中を預け、髪をぐしゃぐしゃに掻きむしる
    「忘れねぇ…忘れねぇ…絶対に…」
    馬鹿みたいにそんな言葉を繰り返す
    「忘れるもんか…俺が…過去は消えない…そんな過去を忘れるわけが…」
    「…忘れるわけねぇだろ…なぁ?そうだよな」
    俺の視線の先には暗くこの世界を覆い尽くすような雲がかかっていた
    「ははっ、でも…もし忘れたらどうすんだ?俺…」
    誰に聞かせる訳でもなく、壁に額を押し付けた
    心臓の位置を確認するように俺は胸に手を当てた
    あんな一言で動揺しすぎだ
    「お父さん…」
    感情的になりすぎて、俺からまた炎が立ち上る
    また…脳の血管1本1本が、切れそうな感覚に陥る
    俺はすぐに雨に打たれたが
    火が消えない
    あの時と…同じ
    「忘れたくない…忘れたくない…!」
    「消えろ…消えろ…」
    俺は荒くなる息を抑えながら、火を消そうと必死だった
    落ち着け…個性も身体機能の一つだ
    ゆっくりと肺に酸素を送り込み、脳を強制的に落ち着かせる
    徐々に、炎が弱まっていき、完全に消えた
    「…コントロール出来ねぇとか…さすが失敗作…」
    笑いたかった
    けど、出てくるのは震える言葉ばかり
    怖かった
    こんな些細なことで憎しみを忘れてしまいそうになることが、この上なく怖かった
    「だっせぇな…」

  • 20二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 23:50:41

    原作軸で曇ってる荼毘ということが新鮮過ぎる
    本当にありがたい

  • 21二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 06:08:07

    念のため保守

  • 221主25/08/24(日) 09:51:32

    膝が笑ってた
    ビクビク震えて…
    昔の俺を見てる気がする…あんま思い出せねぇけど
    「…痛いの…我慢して…見て欲しくて」
    お父さんが俺の事見てくれたことなんて、焦凍が産まれてからも、焦凍が産まれる前からも1度もなかったもんな
    あれ…俺はいつから髪が白くなった?
    中学生になってから?
    違う…もっと前は…あれ…?
    「俺…髪の色が違った時期なんてあったか?」
    自分の髪をまた引っ張る
    「俺はずっと…白髪で…お母さんとおんなじで…」
    違う…絶対に違う
    これだけはわかった
    自分でも何を忘れているのかも分からない
    ただ忘れたという事実だけが分かっていて、その空白が恐怖だった
    「どうして…思い出せねぇんだ…!」
    自分の髪を乱暴に引き抜き、地面に散った白髪を見ながら、俺は嗚咽を漏らした

  • 23二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 10:00:30

    なるほど……赤かった頃を忘れた感じか
    確かにあの頃は幸せだったもんね

  • 24二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 11:45:26

    原作自体が曇らせみたいなもんなのにまだ曇らせの余地があったなんて…
    確かに荼毘としての原動力である過去を忘れるのは一番辛いことなのかもしれないな

  • 251主25/08/24(日) 11:47:49

    「大丈夫か?荼毘」
    「…これが大丈夫に見えるならお前も大概だぞ」
    「見えねぇから言ってんだろうが」
    スピナーは俺の方に近ずいて来ると、俺の背中をさすった
    「何のつもりだよ」
    「相談できない悩み事か?」
    「…したところで変わらねぇから言わねぇだけだ」
    「相変わらずだな」
    「全面戦争が終わった、次は最終決戦だ」
    「もしかして怖気付いちまったか?」
    「はっ…冗談だろ、んな燃やされてぇか?」
    スピナーの手が止まる
    「俺は少しだけ怖い」
    「不安とかじゃないんだ、ただ、死柄木が…本物の死柄木が俺達のこと忘れちまうんじゃないかって」
    「一緒にゲーム…よくしてただろ?」
    「お前にはくだらない話だろうが、俺にとっては、あの時間は宝物だ」
    「…でもな、最近は…もうどうでも良くなってきた」
    「分かんなくなっちまったんだよ、死柄木が俺たちのことをどう思ってたかって」
    「本当、くだらない話だな、リーダーにそんなに忘れられたくないか?」
    「死柄木はどうかはわかんねぇけど…俺は…リーダーのこと、仲間で友達だと思ってる」
    「忘れられたら、悲しいじゃ済まないな」
    「…じゃあ、もしお前がリーダーのことを忘れたら?」
    「俺に死柄木は必要無かったって…多分そう思う」
    「必要ない…ねぇ」
    「お前そんな割り切れるタイプだったか?」
    「いざとなりゃって話だ、忘れるわけないだろうが」
    「…なんでそう思えちまうんだろうな」
    「何が?」
    「なんでもねぇよ」

  • 26二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 11:55:15

    荼毘の曇らせはとてもたすかる

  • 271主25/08/24(日) 12:09:22

    スピナーが俺から離れようとしたので、俺はスピナーの服を引っ張った
    「待て、行くな」
    「1人になるのが嫌かよ?寂しがり屋め」
    「燃やすぞ」
    「…そんなんじゃねぇんだけどよ…イカレ女と話すのも違う気がする…し」
    「男同士で話したいって訳か?」
    「変な言い方すんな、お前ぐらいしかまともに話通じるやつが居ないって事だよ」
    「しょうがない、死柄木は、今のところ大丈夫そうだし、少しぐらいなら付き合ってやるよ」
    「…ありがと」
    「お前から感謝される日が来るとは思わなかった…」
    なにか気を紛らわすために俺は話し始めた
    別に話し相手は誰でも良かったが、今の俺の精神状態的に、話が通じる相手の方がいい気がした
    「…お前は死柄木が大事なんだろ?じゃあ、死柄木だけはお前のことを覚えてるけど、俺らは誰1人お前のことを覚えてない」
    「そうなったらお前、どうするんだ?」
    考え込む仕草をするスピナー
    俺は返事を待っていた
    「そうなりゃ、面倒臭いけど、また一から覚えてもらえばいい」
    「ゲームの周回とでも思えば少しは楽しいはずだ」
    「んな面倒臭いことによく時間裂けるな」
    「ま、実際のところ忘れられたら寂しいだろ?」
    「寂しい…?」

    3年ぶりの変わらぬ光景
    俺を過去の物にしたみんな
    あの時湧いてきたのは寂しいなんて感情じゃなかったな
    憎しみと嫌悪と後悔と…

    「言われるまで、考えたこともなかった」

  • 281主25/08/24(日) 12:24:47

    あと時なんで泣いてたんだろう

    忘れられて悔しかったからか?

    「まぁ、荼毘はその顔じゃ忘れられるなんてことは無いか」

    「そりゃ、今はな」

    「その内、お前自身が、轟燈矢って誰?ってなったりしてな」

    スピナーは軽く笑うが

    俺はその言葉に思わず、内臓が震えるような嫌な感覚が走る

    「冗談でも…言うんじゃねぇ」

    スピナーは、少し額に汗を流した後「悪い」と一言だけ謝った

    俺も大概だ…そういう言葉に敏感になりすぎてる

    轟という名前が呪いみたいに俺を蝕んでる

    そんなことずっと前からだったはずなのに…みんなに会ったあとから…言葉の重みが変わった

    改めて、俺は轟家の長男で、失敗作ということを深く自覚させられた

    「気分…悪ぃ…」

    「少し寝るか?」

    「…別にそこまでじゃねぇけど」


    荼毘は


    1 記憶が徐々になくなり始めていることを話した

    2 話さなかった


    dice1d2=1 (1)


    燈矢の正気度


    100-dice1d50=5 (5)

  • 29二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 13:36:54

    珍しい
    1主の正気度ダイスちゃんが初手フルスロットルしなかった

  • 301主25/08/24(日) 19:23:46

    「もう少し話…聞いてくれ」
    スピナーは無言で頷く
    「…俺、記憶が段々無くなっていってる」
    相当驚いたのか声も出せずに驚いていた
    「多分、記憶とかを司ってる部分の血管が、個性で焼き切れて、段々大事なこととか忘れていってる」
    「…もしかして、トゥワイスもコンプレスも…」
    「あぁ…ヴィラン名はそんな名前だったか…」
    「お前が思ってる通り、俺は、その2人のことをもうほとんど覚えてない」
    「あの場に居たヒーローも、名前しか思い出せない」
    「お前や死柄木が言うところの、空っぽの人間になりつつあるんだよ、俺は」
    「…家族の方は?」
    「死んでも忘れない」
    「けど…」
    俺が無言になると、スピナーはまた俺の背中をさすり始めた
    何となくそれがとても心地よくて
    そんな簡単なことで安心してしまう自分が気持ち悪かった
    「もし、お父さんのこと…忘れたらどうしようって…」
    「大丈夫だ、荼毘、お前の執着が負けるわけが無い」
    「安心しろ、忘れても意地でもこっちが思い出させてやるから」
    「お前のそういうとこほんと気持ち悪いな…」
    「いきなり罵倒かよ!?悪かったな!気持ち悪くて!」
    「寄せ集めのヴィランにどうしたらそこまで情が移せるんだよ」
    「情を移してるつもりはねぇけどな、とりあえず今お前は俺から見て可哀想な人間だ、可哀想な人間は助けてやらないとだろ」
    「ははっ、完全にお荷物つーわけだ」
    「轟燈矢は、本当に荼毘に付した方が良かったみたいだな」
    「…はぁ」
    「タバコでも吸うか?持ってないけど」
    「奪いに行きゃいい、お前が行かないなら俺だけで行くぞ」
    「俺も食料集めに行く、トガは悪いけど待っててもらおう」

  • 311主25/08/24(日) 20:34:33

    瓦礫の中を漁りながら、何か面白いものでもないかと淡い期待を抱く
    食料集めはスピナーがやるつってたが…まぁ、食料は多めにあった方がいいだろ
    「…あ」
    「意外と探せばあるもんだな」
    コンビニの近くに、大量のタバコが箱に入ったまま落ちていた
    「カートン1個持っていくか…?」
    流石にそこまでは要らないなと思いながらも、それに手を伸ばした時、瓦礫の動く音が聞こえた
    ギャーギャーうるさく泣いている子供が出てきた
    別に殺しても良かったが、こんな子供に今何が出来る?
    体力の無駄遣いだ、ほっといてもどうせ死ぬ
    けど、ちょっくら遊んでやるのもいいかもな
    俺は子供の前にしゃがみ込んだ
    「俺の事見ても、てめぇのお父さんとお母さんが来るわけじゃねぇぞ?」
    「それか、今頃お前のことなんか忘れて、避難所で落ち着いて暮らしてるかもなぁ…?」
    子供はさらに目を潤ませ泣き続けていた
    「はは!可哀想に!お前が生きてる意味を肯定されないまま死ぬのは無様だな!」
    俺は子供と目を合わせる
    見たことある目だった、けど、これはすぐに思い出せた
    お父さんと訓練をしていた焦凍の目だ、怯えて俺に嫌悪する目
    いじめるのはここらでやめでいいか
    『待て…』
    恐らくサポートアイテムであろう切れ味の良さそうな刀が俺を横切った
    『その子を…殺す気か』
    「まさか!そんなことしてなんになるって言うんだよ?」
    ヒーローだって人間だ、煽れば乗ってくる
    俺は戦闘態勢に入った

  • 321主25/08/24(日) 21:01:25

    まっすぐ、何も考えずに突っ込んでくるヒーローを俺は軽く笑いながら、一気に燃やし尽くそうとするが
    脳裏にさっきの消えない炎の光景が湧き上がる
    もし…この炎も消えなかったら…俺は…
    「…いやだ」
    俺の手は震え、ドバっと全身から嫌なものが溢れ出る感触に陥った
    忘れたくない…いやだ…こんなくだらない事で、俺はお父さん達のことを…
    俺は後ずさりした
    殺さなきゃ…こっちが殺られる
    けど、こっちが攻撃したら…忘れちまう
    思考が上手く繋がらない、震えが止まらない

    いやだ…忘れなくない…お父さんのことも全部…全部
    頼むから…もう俺から、なにも…!!

    頭の中で叫んだ瞬間、拳が突き刺さる
    その刺激で胃が爆発したみたいに、
    「おぇぇぇぇっ!!ぐっ、げぶぅぅっ…!!!」
    吐瀉物が勢いよく口から飛び散る
    地面を汚し尽くしても終わらず、喉の奥から「ゴボゴボッ」と空気混じりの音を立てながらまだ吐き続ける
    「ごぶっ…っげぇぇっっ!!はぁっ!げほっ!げぼぉぉぉっ!!!」
    呼吸と嘔吐が混ざり、何度も肺に液体を吸い込んで窒息しかける
    背中を丸め、体を震わせ、声にならない悲鳴を漏らしながら
    ただただ無様に、自分の中身を吐き散らかしていった
    どこに溜め込んでいたんだ、というほど吐瀉物を吐き散らかした
    ヒーロー側は渾身の一撃だったのだろう、俺から数歩引いて気絶した
    揺れる視界に吐き気を覚え、また嘔吐する
    俺は適当に落ちていた物を何個かポケットに詰めたあと、その場を後にした

  • 33二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 21:32:24

    あらら、蒼炎が使えない感じかな

  • 341主25/08/24(日) 22:45:46

    俺は、拾ってきたライターでタバコに火を付けた
    そして一服する
    タバコの匂いと、吐瀉物の匂いで、常人なら鼻をつまみたくなるような状態だったが
    俺にとっては本当にどうでもいいことだった
    けど…それよりも
    「…」
    タバコを持っていない方の手が震えてる
    炎を出せと脳に命令しても、ただ手が震えるだけ
    実質無個性みたいなもんだ…
    「笑えるなぁ…」
    タバコを吸ってると次第に落ち着いてきた
    別に慣れていた訳じゃないから、何回か咳き込んで胃液を吐き出したが…とりあえずは…これでいい
    子供の駄々みたいなモンだな
    ポケットに手を突っ込む
    何を拾ってきたか自分でも覚えてなかった
    「ガムと…ライターと…あぁ、胃薬あんのか…それと」
    それと、数本の栄養ドリンク、それと落し物かなにかの手鏡
    俺は手鏡を開いた
    「…ひでぇツラ」
    どういう意味を含めて言ったのか自分でも分からなかった
    焼け落ちそうな肌が酷いという意味なのか…吐いたあとの醜い顔という意味なのか
    脳がぐちゃぐちゃになっていく
    「焼き切れるよりかは…マシだな」
    「なぁ、失敗作に何か言ってくれよ…」

    「誰に…何を言って欲しいんだ…?」

    「あぁ…お父さんだ、とどろき…えん……じ…」
    「…合ってるよな?」

  • 35二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 01:26:04

    うーん、これは

  • 36二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 06:52:08

    どうなるかわくわくしてる

  • 371主25/08/25(月) 11:47:01

    「…くっせ」
    「あぁ、来たのか」
    「足音が聞こえたから、ヒーローかと思った」
    「そうかよ」
    俺はスピナーの方にタバコを1本差し出した
    スピナーはそっと俺の手からタバコを受け取った
    「ライターは?」
    「ん」
    むせながらも俺と一緒に吸い始めるスピナー
    「…むせるなら吸うなよ」
    軽くスピナーが笑う
    「吐いちまったか?目が疲れてんぞ?」
    「一撃キツイのをお見舞されたからな」
    「傷は?」
    「そんなやわな体じゃねぇよ…ほら」
    「見せなくていい」
    俺は、曇り空を見ながら、登っていく煙を見ていた
    「なぁ、エンデヴァーは最初からクズだったと思うか?」
    「個性婚なんだろ?その時点でお察しじゃねぇか」
    「俺が産まれてからもそれは変わらなかったのかな」
    「それを知ってるのはお前とエンデヴァーとその嫁ぐらいだろ」
    「…忘れちまったのかな」
    「なんかいつにも増して子供っぽいなお前」
    「そんなことね…ごほっ!ごほっ!」
    「はいはい、落ち着け…水いるか?」
    嫌だな、いつもみたいに自分が抑えられない
    満たされたことがないから、誰かに満たして欲しい
    そんなわがままが脳にまで侵食してきて…
    ただ俺は…何を…何が欲しかったんだ…
    「あれ、なんで俺ここにいるんだっけ」

  • 38二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 12:13:12

    もしや記憶の喪失スピードが上がってきた?

  • 391主25/08/25(月) 13:19:00

    「…俺は食料、お前は適当になにか探しに来た」
    「いつから?」
    「40分くらい前に」
    記憶が上手く繋がらない
    手元に食料とかがあるのを見るに、なにか探しに来た所まではスピナーに言われなくても分かる
    けど、なんでその思考に至ったのか…その経緯が分からない
    俺は…タバコを…吸いに…
    「あ、あぁ…悪ぃ…」
    うっすら、思い出してきた
    まだ新しい記憶だったからか、割と早くに思い出せた
    「顔色さらに悪くなってるぞお前…さっさと帰ろうぜ」
    「おい?荼毘?」
    俺はまた、軽く嗚咽をもらした後吐いてしまった
    頭の中がグルグル回る、考えがまとまらない
    俺が思い出せないだけでもっとたくさん色んなこと忘れてるんじゃねぇかって…
    「…俺の代わりに…お前が覚えといてくれ」
    「お前が本当に何者かになりたいなら…ちょっとは手伝え」
    「要するに、助けてくださいって訳か」
    「言ってねぇ…」
    「お前も死柄木もそういうとこあるよな」
    「まだ吐きそうか?水いるか?」
    「…リーダー達の所…戻らなきゃだろ…」
    俺は足を進めるが、スピナーに手を掴まれた
    「帰り道はこっちだ、無理して強がるな」
    「無理なんかしてねぇ」
    「なら、さっさと戻るぞ」

  • 401主25/08/25(月) 18:44:50

    「う‪”‬っ…ぅぅ…」

    帰ってくると、リーダーが唸り声をあげていた

    どういう苦しさがリーダーを襲っているのか、俺達には想像もつかなかった

    「ほら、トガも飯食え、非常食用のビスケットがあった」

    「ありがとう」

    「少し、ご飯にしましょう…弔くんには悪いですけど」

    AFOに視線をやっても、特に反応は無く、俺達は3人で食料を分けながら飯を食い始めた

    「おい、荼毘お前魚ダメだったんじゃねぇのか?」

    スピナーがそういう前に俺は咀嚼していたが

    生臭さに、ペッと吐き出した

    「燈矢くん、汚いです」

    「仕方ねぇだろ不味いもんは不味いんだから」

    「なんでこんなもん食ったんだろ…」

    何回か唾を吐き出しながら、考えてもやっぱり分からない

    「ビスケット食べます?」

    「…いる」

    トガが手渡しで渡してくる

    俺はそのまま口でキャッチし、咀嚼した

    「やめろよ荼毘…リア充みたいな…」

    「食えりゃなんでもいいだろ、文句多いんだよ」

    「犬に餌あげてるみたいでした」

    「誰が犬だ…」

    「物覚え悪いもんな、犬とは大違いだ」

    「あ?」

    「ふふっ、かぁいいね燈矢くん」

    笑うふたりに苛立ちながらも…嫌な不快感は不思議となかった

    けど、確実に元の自分とかけ離れつつある頭と心に俺は嫌な汗をかいた


    燈矢の正気度

    95-dice1d60=14 (14)

  • 41二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 18:58:32

    今のところ荼毘の正気度ダイスちゃん、なんか強いな…

  • 421主25/08/25(月) 19:01:27

    早く発狂するレベルの正気度になっても大丈夫だよ…荼毘

    前前スレ?のホークス、前スレ?の轟くんの倍ぐらい強いね…


    >>41

    今回あんま荒ぶらないですね

  • 431主25/08/25(月) 19:16:53

    「弔くん、大丈夫ですかね…ずっとあの調子ですけど」
    「AFOが近くにいるから大丈夫だろうけどよ…やっぱり…俺は死柄木が心配だ」
    「よく良く考えれば、今1番あいつが辛いのかもな」
    「だって、あいつが潰れたら俺ら全員終わりだろ?そんな重荷背負いながらあいつは今日も唸ってる」
    「まぁ、リーダーがそこまで責任感感じてるとはあんま思わねぇけどな」
    スピナーが何か言いかけるが、トガの方をチラッと向いて黙った
    「どうしましたか?スピナーくん」
    「いや…別に」
    「でも、こうして静かに体力温存っていうのも…退屈で私はヤです」
    「まぁまぁ、死柄木が体力回復したら思いっきりぶっ壊して自由な世界になるから安心しろ」
    「全部壊した世界は、どんな感じなんでしょうか」
    「この世でいちばん綺麗な地平線が見えるんじゃねぇの?」
    「それか俺が想像できないぐらい綺麗な…海とか、あと…」
    「…何黙って見てんだよ」
    「いや、お前がよく話すって珍しいなって」
    「燈矢くん変なお薬でも飲みましたか?」
    「…おかしいか俺」
    「変だな/です」
    調子がずっと狂ってる、俺だけど俺じゃないみたいな
    かと言って二重人格みたいか?と言われれば俺は首を横に振るだろう
    言語化するのが難しいが…こいつらとの記憶が徐々に曖昧になっていって…‪”‬荼毘‪”‬って存在自体がもう‪”‬燈矢‪”‬と同化して、こいつらの前で荼毘でいる必要が無くなりつつある
    でも、荼毘は別に忘れてもいい…よな、大切なのは轟燈矢だ
    …けど、荼毘を忘れたら、この憎しみも…?
    「なぁ、荼毘…」
    「お前のこと、トガとAFOにも伝えていいか?」

  • 441主25/08/25(月) 19:34:57

    「え‪…何の話してるんですか?」
    「それ…もうバラしたも同然だろ」
    「でも、情報共有ってのは大事だろ?」
    「今の状態じゃ、互いに信頼して背中預けられるぐらいに相手のことを知らなきゃダメだ」
    「特に俺らは、ステインに触発された人間なんだから、もうちょっと仲間意識、合ってもいいだろ?」
    「…別に言っても構わねぇよ」
    スピナーは、その場でトガに俺の記憶喪失の件を話し始めた
    「燈矢くん…もっと早く言ってくださいよ」
    「今、俺の事で無駄に体力使っても仕方ないだろ」
    トガに話し終わったあとスピナーはAFOの方へと話に行った
    そして、俺とトガはその場に二人きりになった
    「燈矢くんが、私の事名前で呼んでくれるの、嬉しいな」
    「…忘れないようにだ、別に急に仲間意識湧いたわけじゃねぇよ」
    「燈矢くんは、忘れたくないことが沢山あるんですね」
    「私は…」
    「忘れたいこと塗れなんだろ?」
    「…そういえば、前に、燈矢くんに言ってましたね」
    「あのね、燈矢くん、私の事覚えてるうちにお願いがあるんだ…聞いてくれる?」
    「血くれとかだったら聞かねぇぞ」
    トガは首を横に振った
    「嫌なことが詰まった普通のお家…燃やしてくれる?」
    そんな、馬鹿げた言葉に、妙に親近感を抱いてしまった
    「…覚えてたら…な」
    「優しいね、燈矢くん」
    「…燈矢くんは、お兄ちゃんなんだもんね、優しくないわけがなかったです」
    「別に優しくしてるつもりはねぇよ…ただ」
    俺はトガを使って何をしようとしてた…?
    この目の前で笑うイカレ女をどう利用しようとしてた?
    忘れちまったなら、仲良くする必要なんかねぇんじゃねぇのか?
    俺の頭も心も穴ぼこだらけだ

  • 45二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 20:16:41

    荼毘と燈矢が同化かぁ…
    よくよく考えたら原作でもあり得そうだった展開だなぁ…

  • 46二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 23:49:20

    念のため保守

  • 471主25/08/26(火) 00:22:40

    「燈矢くんが私のことを忘れても、また思い出させます」

    「そして、私はもっと燈矢くんの事を好きになります」

    「馬鹿らしいな」

    この女と居て、初めてまともに話したかもしれない

    コイツ、普通に話せたんだなって

    「…燈矢くんは、もう仁くんのこと思い出せないかもしれないけど」

    「仁くんはとっても優しかったんだよ、面白くて、優しくて、私には兄弟が居ないから分かりませんが、お兄ちゃんみたいでした」

    「…まともだったのか?」

    「ここに居るのになんでまともだと思うの?燈矢くん」

    「よく考えて見りゃそうだな」

    「その、仁ってやつは…」

    「ホークスに殺されました」

    「人が死ぬって、悲しいのか?」

    自分で自分の質問の意味が良く分からなかった

    「…大切な人が居なくなるのは、とってもヤな気持ちになります」

    「燈矢くんもそうだよね?」

    トガが俺の胸に手を当ててくる

    「家族のこと忘れたら、悲しくてヤな気持ちになるよね?」

    「…忘れちまったら何も感じねぇだろ」

    トガはクスッと何が面白いのか分からないが笑った

    調子を完全に狂わされた

    けど…この穴ぼこだらけの俺に、何となくそれががっちり当てはまって、楽になる

    「轟燈矢はここにいる…よな」

    「はい、トガヒミコの前にちゃんと居ますよ」

    「うん…」

    無駄な会話を済ませたあと、俺は立ち上がった

    また外に出るのもいいし…スピナーと話すのでもなんでもいい

    …何をしよう

    >>50

  • 48二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 02:33:10

    今覚えている事を紙かなんかに書き残す

  • 49二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 06:45:13

    自分を含めて今思い出せる人の関係を整理する

  • 50二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 12:01:25
  • 511主25/08/26(火) 13:38:17

    「ペンか何かないか」

    「そこに落ちてます」

    ポケットの中に入っていたクシャクシャのレシートに、思いついたこと全てを書き記す

    ぐしゃぐしゃな字でも、俺さえ読めればそれでいい

    何を書きゃいいのか、自分でもわかってなかったが

    最初に出て来たのはお父さんの名前だった

    家族…みんなのことは忘れたらダメだ

    炎司、冷、冬美、夏雄、焦凍

    家族みんなの名前を書き終わったあと、俺は1度深呼吸し、現状を書き記し始めた

    今居る仲間、トガ、スピナー、死柄木(リーダー)、AFO

    居なくなった仲間、トゥワイス、コンプレス

    拾ったもの、ライター、タバコ、缶詰

    個性を使う度に記憶喪失になっていく


    そんなことをレシートに書いたあと、俺はまたポケットにしまった

    最後のはいらないと思ったが、記憶喪失になったこと自体を忘れたら、終わりだ

    …そういや、さっきのに俺の名前書かなかったな

    自分のこと忘れるなんて有り得ねぇから…別にいいか


    「ちょっとリーダーのとこ行ってくる、少しぐらいなら話してくれるだろ」

    「弔くん無理そうですけど…」

    「まぁ、試してみる価値はあるだろ」


    死柄木は

    1 少し話せる状態

    2 唸るだけで話せない状態


    dice1d2=2 (2)

  • 52二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 15:00:45

    自分のことも忘れそうなフラグ立ってて怖いな

  • 531主25/08/26(火) 17:26:26

    「おーい、リーダー」
    相変わらず、AFOに宥められているリーダー
    「スピナーから聞いたか?俺記憶徐々に無くなってんだよ」
    獣の様に唸るだけ、俺の話を聞いてるのか聞いてないのかすら分からない
    「お前確か記憶ないって言ってたよな、今はどうなんだ?全部思い出したか?」
    「あぁ…いや、思い出したって言ってたか…?」
    「笑えるだろ?俺が色々忘れちまってる」
    「…だび」
    死柄木が俺の服の裾を引っ張る
    「殺したい…全部…ぶっ壊したい…」
    その一言だけ発したあとから、もう人の言葉を忘れたかのように話さなくなった
    俺は、そんなリーダーの頭を軽く撫でた
    「感情豊かでご苦労なこった」
    記憶を失ううちに、こんな俺にもあった感情がどんどん薄れていくような感覚がして、気持ち悪かった
    俺は何の気なしに、死柄木の隣に横になった
    「地面硬いのによくずっと横になってられるな」
    荼毘という人格がどんどん壊れていく
    「君が記憶を失ってから、随分と幼い態度が目立つね」
    「悪いか?」
    「いいや、一時の休息だ、好きなことをして過ごすといい、僕たちに悪影響を及ぼすことじゃなければね」
    「それと僕はひとつ君に聞きたかったんだ」
    「最近君は単独行動はしたとしても直ぐに辞めるね?どうしてだい?」
    「…さぁ?なんでだろうな?」
    「そんなに忘れられるのが不安かい?」
    「ははっ、そうかもな…そういうことにしておく」
    俺は、なんかもう考えすぎで疲れてきた
    メモを取ったんだ、少しぐらい頭を休めても…支障は出ないだろう
    俺は目を閉じた

  • 54二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 17:31:18

    起きたらどうなるかわくわくしてる

  • 551主25/08/26(火) 17:53:07

    「燈矢〜、お夕飯の時間だからいらっしゃい」
    「…はーい」
    夢なのに、妙に意識がはっきりしてた
    これが夢だと自覚できる程度には
    幼い俺の身体、少しきしむ音がする廊下
    懐かしいような、こんなんじゃなかったような
    「お母さん」
    お母さんの服を軽く引っ張る
    お母さんはこっちを向いてはくれなかった
    「どうしたの?燈矢」
    「3人も呼んできた方がいい?」
    「そうね…炎司さんも呼んできてくれると助かるわ」
    「うん、わかった」
    ゲームのチュートリアルのような、ちょっとめんどくさくて簡単なミッションの始まりだ
    「…冬美ちゃんの部屋どこだっけ」
    面白い事になってんな…廊下
    襖まみれで、まるで無限に続いてるみたいだ
    「冬美ちゃーん?夏くんー?焦凍ー?」
    あれ、そういや、今お母さんとお父さんの仲が良くて、焦凍が居て、俺もいるんだな
    なんて都合のいい夢なんだろうか
    でも、良かった、これでみんなのこと忘れずに済む
    そんな中、冬美ちゃんが襖の中から出てきた
    「ごめん、燈矢兄、声聞こえなくてさ」
    「…え?」
    「どうしたの?」
    「いや…うん、別になんでもない」
    その声は、冬美ちゃんの声じゃなかった
    でも…本当の声が思い出せない…もっと優しい声だったような、元気いっぱいの声だったような…
    …大丈夫…だよな?

  • 561主25/08/26(火) 18:07:39

    「燈矢兄、別にいいんだけどね…急に手が握りたいって…どうゆう事?」
    「兄貴が妹の手握って何か悪いかよ?」
    「いや…いいんだけど!ちょっと力強いよ…」
    「あ…ごめん」
    考えてる内に、無意識に手、強く握りすぎてたみたいだ
    どうしても今俺の横にいるのが、轟冬美…俺の妹だと思えない
    「なぁ、冬美ちゃん…冬美ちゃんは、俺の知ってる冬美ちゃんだよな…?」
    「本当、どうしちゃったの?燈矢兄」
    「私は────」
    そのタイミングで、廊下の奥から走ってくる誰か
    幼い頃の記憶はほとんどないからか、今の夏くんだ
    そういえば冬美ちゃんもか…
    「燈矢兄、ごめん…燈矢兄の部屋のパソコン借りてて」
    「気にしなくていいよ」
    夢ならではのカオス、俺は幼いのに夏くんは大学生
    別に、そこはどうでもよかった
    「あれ、焦凍は?」
    「今冬美ちゃんと一緒に」
    「冬美って誰?」
    俺がこの世で今1番聞きたくない言葉が鼓膜にこだました
    冬美ちゃんが…誰って…
    何を言っているのか、俺には分からなかった
    分からなかったんだよ!!!
    「な、夏くん…ほ、ほら、ここに」
    俺は繋いでいた方の手を見る
    そこには誰もいなくて、全身から冷や汗がドバっと溢れた
    「燈矢、夏雄、ここで何をしてる?」
    「ぁ…あ…お父さん…ねぇ…お父さんは、冬美ちゃんのこと…」
    「…はぁ…燈矢、また訓練をしてきたのか?全く…脳まで焼き切れたんじゃないか?俺にも冷にも心配かけさせないでくれ」
    お父さんはただ混乱する俺のポンと撫でるだけだった

  • 571主25/08/26(火) 18:16:01

    俺はその後…焦凍を連れていった
    怖くて手は握れなかった
    …あれ、何が怖くて手、握れないんだ?
    「燈矢兄…?」
    「焦凍、手、繋ご」
    パッと顔を明るくさせるのは、幼少期の焦凍
    多分焦凍はこんな顔しない
    だって、俺がイメージできないからか、顔のパーツが少しおかしい
    「なぁ、焦凍、兄ちゃん今日変か?」
    「…うーんとね…優しい!」
    「あはは!優しいのはいつもだろ?」
    「でも、今日いっぱい優しい…」
    やわらかい手が俺の指先を包み込む
    「どうだかな…焦凍に言われたら…でもちょっと安心した」
    そのまま俺はお父さん、お母さん、夏くん、焦凍と一緒にご飯を済ませた
    何を食ったか覚えてなかった…麺類だったことだけは覚えてるけど…俺麺類好きだったか?
    でも、そんなことどうでもいいや
    「お父さん!一緒に遊ぼ!」
    「…食べたばかりで行儀が悪いぞ燈矢」
    「いいでしょ?ダメ?」
    夢なら、いくらでも駄々を捏ねていい
    だってこれは都合のいい夢、そうだな、これは夢だ
    昔っから憧れていた夢
    仲良い家族、6人…ろく…にん…?
    ──────────
    「違う…」
    「違う…違う…あれ…?」
    俺はビクッと痙攣すると同時に目が覚めた
    どうでもよかった
    ただ、どうしようもない不安が、俺のこめかみを冷やした

  • 58二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 18:23:32

    このレスは削除されています

  • 591主25/08/26(火) 18:24:34

    いつの間にか俺は死柄木の方から離れて、壁に座りもたれかかって寝ていた

    どうでもいい

    「違う…誰だ?だれ…」

    俺はぐしゃぐしゃのレシートを取りだし、指を折り数えた

    「炎司…冷…冬美…」

    顔は?髪色は?目の色は?性別は?性格は?何歳だ?

    とっくに焼ききれたと思っていた汗線からポタッと一滴の汗が落ちた

    「思い出さなきゃ…思い…出さなきゃ…」

    俺は頭を掻きむしりながら、必死に目を瞑り思い出そうとした

    髪は…確か、白髪だった

    目の色は、お母さんと同じだ

    冬美って名前なら…女の子だ…多分

    そこら辺しか思い出せなかった

    イライラが募り、俺はツギハギから血を溢れさせた

    それと同時に俺の体から焦げ臭い煙が上がる

    それさえもどうでもよかった

    「待ってて…兄ちゃんが今…思い出して…やるから…」

    俺の声は情けないほど震えていて、実際情けなさからか涙と称した血が溢れ出していた


    燈矢は、冬美のことを思い出せた?(90以上で思い出す)

    dice1d100=10 (10)

  • 60二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 18:36:39

    思い出させる気0のダイスちゃんである

  • 611主25/08/26(火) 20:29:43

    「ねぇ!なんで!なんで思い出せないんだよ!」

    子供のように喚きながら、俺は何回も地面を叩いた

    「お父さん…お母さん…夏くん…焦凍…」

    冬美という名前が、どの顔にも当てはまらない

    さっきまで分かってた外見の特徴も今は思い出せない

    忘れないとタカをくくっていた俺が悪いのか?

    「やだ…!忘れたくない…!俺の…俺の家族を返せよ…!」

    まるでヴィランに家族を殺された哀れな子供だ

    「やだぁ…やだっ…」

    「燈矢くん!」

    「おい!落ち着け!荼毘!お前まで暴れてどうする!?」

    「やめろよっ…俺は…俺は思い出さなきゃいけないんだよ…!」

    トガとスピナーに俺は宥められていた

    「大丈夫だ!荼毘!お前名前は覚えてんだろ!?また会ったら思い出す!お前の執着が負けるわけないだろしっかりしろ!」

    「大丈夫ですから、燈矢くん!落ち着いてください!」

    「違う!違うんだよ!思い出せたんだよ俺は…!確かにそこに冬美がいたんだよ!」

    頭を掻きむしり、ツギハギから血が滲んでも止まらない

    「笑ってた!俺の手を握ってた!確かに!俺の妹だったんだよ!」

    声が嗄れても叫び続ける俺に、スピナーが肩を押さえつけた

    「荼毘!やめろ!一旦落ち着け!」

    「燈矢くん!落ち着いて!」

    必死に宥める声も届かない

    「うるせぇ…俺の邪魔するやつはみんな死んじまえばいい…」

    俺の体から炎が上がる

    脳が焼き切れる

    ただ、俺の口から出たのは乾いた笑い声だった

    「ははっ…思い出せねぇや…」


    燈矢の正気度

    81-dice1d81=43 (43)

  • 62二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 21:58:02

    お、がっつり削った
    物語の流れが分かってるダイスちゃんさん

  • 631主25/08/27(水) 00:27:21

    「燈矢が覚えてなきゃ、一体…誰が覚えてるんだろうな」
    俺の口から出てきたのは笑い声だった
    「ははっ!もう!どうだっていい!」
    「忘れちまったもんは…もう帰ってこねぇんだから…」
    ひとつ失ったところで、俺の憎しみも過去も消えたわけじゃない
    そんなことわかってるのに…
    「燈矢くん、落ち着いたら少し散歩しに行きましょう」
    トガが手を差し伸べる
    俺はその手を取ろうとした

    また忘れちまったら、俺はどうする?

    「…もう、とっくに落ち着いてる」
    「嘘つかないでください震えてます」
    「震えてねぇよ…」
    トガが小さなため息をついたあと、俺を抱きしめた
    さっさと離せと言いたかった、こんな女に抱きしめられるなんて全身が拒絶するはずなのに
    そこに、コイツがいるんだって、嫌なほど理解させられて…
    「悲しいね、燈矢くん」
    「…悲しいで済むと思うのかよ」
    「なら、せめて外の空気吸いましょう、ほら、風が気持ちいいですよ」
    言われるまま立ち上がると、夜風が頬を撫でた
    俺には重くのしかかる風
    トガには楽しげに髪を揺らす風
    同じ風のはずなのに、全然違うものに思えた
    それが妙に悔しくて、俺はうつむいた
    この光景だっていつまで覚えてられるか、分からない
    頭が痛い、今すぐにでも叫び出したい
    「…少しだけなら…いい」
    都合の悪いことはずっと覚えてる俺は、失敗作だ

  • 64二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 06:50:40

    お父さんのこと、いつまで覚えてられるのかな

  • 65二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 12:12:26

    保守

  • 661主25/08/27(水) 15:39:43

    やることが無いから散歩なんて、まるで年寄りだな
    月明かりだけが俺たちを照らしていた
    そんな優しい光にすら俺は身を焼かれていた
    うざったくて仕方なかった
    けど、ぽっかりと空いた記憶の穴を埋めるにはこの気持ち悪さは十分だった
    こんなくだらないことはずっと覚えてるんだろうなって
    トガが鼻歌混じりに、俺の前を歩く
    「燈矢くんって、ダンス好きなんですか?」
    返事をするのすらめんどくさかった
    どうでもいい…どうでも…

    ‪”‬地獄で息子と踊ろうぜ!!!”‬

    「燈矢くん、ダンス教えてよ」
    「…ははっ…やなこった」
    思い出せた…コイツのおかげで
    「んー!なんでですか!」
    「やなもんはやなんだよ」
    「けど、ありがとな、トガ」
    俺はトガの頭を軽く撫でた
    あぁ、荼毘ってなんだっけ…燈矢って俺だっけ?
    別に仲間なんてどうでもいい、死のうが生きようが、俺の人生を邪魔することがなければどうでも…
    「…燈矢くんがおかしくなっちゃいましたね」
    「そうか?いや、まぁ…そうだよな」
    俺なのに俺じゃない…燈矢でも荼毘でもない…俺は…?
    なんなんだろうなぁ…
    「でも、私はちょっと心配です」
    「燈矢くんが燈矢くんじゃなくなっちゃったらって」
    「ねぇ、燈矢くんは燈矢くんのままで居てくれるよね?」
    「…覚えてたらな、それに、俺はアイツとは違うから安心しろ」

  • 67二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 17:13:26

    お、一個思い出したか

  • 681主25/08/27(水) 20:21:31

    トガが少し笑う
    「燈矢くん、落ち着いてくれて良かったです」
    別に落ち着いたわけじゃねぇんだけどな…
    なんて思いつつ、適当に返事を返した
    なんか今俺はとてつもなく幼くなっている気がしてきた
    もうンなもんないと思ってた羞恥心が、さっきの子供のような喚きを思い出すとフツフツと湧いてくる
    「俺は今ガキに見えるか?」
    「荼毘くんにしては幼いですけど、燈矢くんは私が知ってる燈矢くんから変わってませんよ」
    「俺そんなガキに見えてんのかよ…」
    俺に妹が居たらこんな感じだったのか?
    あぁ、違う…俺に妹は居たんだ忘れてるだけで
    名前以外も思い出せりゃいいのに
    「トガは一人っ子だったのか?」
    「はい、私は一人っ子ですよ」
    「まぁ、そうだよな、自由人って感じが一人っ子」
    「お兄ちゃんなんだから、お姉ちゃんなんだから、我慢しなさいなんて言葉言われたことないよな」
    「やめなさいとは言われたことあるのです」
    「…にっこり笑うことの何がいけないんでしょう?」
    「トガはいいな、親からちゃんと見られて」
    「良くないのです…笑うなって言われて」
    「反抗すりゃ良かったのに、別に笑えばいいだろ」
    「はは!そうだ!俺の真似して笑えよ!」
    軽くスキップ、体をくるっと回す
    ひとりで軽いダンスを踊りながら俺は笑った
    自然と悩み事とか無くなった気がした
    「笑おうぜ、トガヒミコ」
    俺がそう言うと少し唇をふるわせた後に、トガも笑い始めた

  • 69二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:13:45

    ちょっと回復してそう

  • 701主25/08/27(水) 23:42:11

    「デートみたいですね」
    「焼き殺されてぇかイカレ女」
    「いきなり怖くなっちゃいましたね燈矢くん」
    「笑い疲れた」
    錆びついて壊れた公園
    幾つかあるブランコの鎖はぶっ壊れて、地面に転がってた
    トガはまだ乗れそうなブランコに座った
    「ガキかよ」
    「燈矢くん、背中押してください!」
    俺が露骨に嫌な顔をしても、トガはくすくす笑ってた
    「しょうがねぇなぁ…」
    不快な金属音が鳴る
    ユラユラとトガが落ちないぐらいの力で押してやる
    楽しそうに笑うトガを見てると俺も自然と笑みが零れた

    俺はこれを知ってる

    やったことがある気がする
    黒塗りで何も思い出せないのに、訳の分からない喪失感が全身を蝕んでは引き裂いていく
    不快な金属音が、心臓を削り取るように響く。
    「楽しいですね!」
    トガの声が上書きするように聞こえる
    ……でも違う、別の誰かだったはずだ
    忘れてる、俺が、俺自身で奪ったんだ
    思い出そうとすれば、真っ黒な壁にぶつかる
    そのたびに脳がぐらぐら揺れて、吐き気がする
    「……もう嫌だ」
    喉の奥が焼ける
    「俺は、何を殺した?何を失くした?……なぁ答えろよ」
    気づいたら俺はトガの背中を押すことをやめ、少量の血を垂れ流していた

  • 711主25/08/27(水) 23:44:34

    急に熱を出してしまい、ただでさえスローペースなのがさらに遅くなりそうです
    レスを毎回くださっている方本当にありがとうございます

    本当にすいません…!

  • 72二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 23:47:56

    大丈夫ですよー
    ゆっくり休んでくださいませ、体調悪い時は体調優先が一番ですから

  • 73二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 05:37:57

    念のため保守

  • 74二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 11:57:59

    保守

  • 751主25/08/28(木) 13:10:06

    「…先に帰っててくれ」
    「俺はもう少し…居る」
    ブランコが最後の一往復の音を立て、止まった
    「1人に…なりたい時もありますよね」
    「楽しかったです、また一緒にお散歩しましょうね」
    俺がちょっとイカレちまったぐらいで正常になるなんて
    素直で聞き分けがいい、なんていつものこいつとは真逆だ
    気を使うなら俺にバレないようにやれよ
    「…クズ」
    俺はトガから離れ、また荒れ果てた街を一人で歩いた
    ──────────
    壊れた自販機、倒壊したビル、瓦礫に潰された死体
    「…食うもん…なんかねぇかな」
    少し小腹が減った俺は、元はスーパーであろう半分潰れた建物に入った
    蛍光灯なんてのはとっくに壊れて、腐った食べ物にはハエが集って、ゾンビでも出てくるんじゃねぇかって空間に少し笑いながら奥に進んだ
    「リーダーに、市販の薬って効くのか…?」
    「懐中電灯は1本ぐらいなら…いや…ヒーローに光でバレたらめんどくせぇ」
    「包丁…いや、トガとスピナーにナイフを借りれば…」
    声に出さなくていいことを、あえて声に出して言う
    トガと離れたのは悪手だったかもしれない
    1人が怖いなんて思ったこと…多分人生で1度もなかったはず
    孤独ってこんなに怖いのか
    「…ん」
    足になにか当たる感触があった
    「なんだこれ…ヒーローチップス?」
    俺はそれを手に取った
    いかにも子供が好きそうなヒーローがデカデカと載ってる
    あぁ、オールマイト…だっけ?
    なんか憎らしくて仕方ないような気がする…なんでだっけ

  • 761主25/08/28(木) 18:35:01

    隣に落ちていたのには…エンデヴァー…お父さんが載っていた
    「ははっ…まじか、こんな子供向け商品にまで使われるのか…大変だなぁ…ナンバーツーは」
    「…ナンバーツー?」
    自分で言っていて、俺は疑問に思った
    「ナンバーツーは、ホークスだろ?あれ、じゃあお父さんはナンバーワン?」
    「なんでだっけ」
    「オールマイトは今何してるんだ?日本が終わりかけてるのに」
    「いや、お父さん以外のことは思い出さなくていいか」
    「お父さんはこの国のナンバーワンヒーロー、エンデヴァー、本名は轟炎司、俺の、轟燈矢のお父さん」
    「お母さん…轟…」
    思い出せなかった
    直ぐに俺はまたレシートを出す
    「轟冷…これが…お母さん…だよな?そして、轟夏雄…は、俺の…弟?」
    「轟焦凍は、轟家の末っ子で、最高傑作」
    お父さんと焦凍以外が全て曖昧になってきた
    冬美ちゃんのことはもう何も覚えてない、俺がコイツのことをなんて呼んでたかすら分からない
    「次…寝たら…終わりか?」
    俺は適当なエナジードリンクを空け飲み始めた
    「なら、寝なきゃいい…単純な話だ」
    俺はタバコに火をつけ、その場に座りながら、空腹を満たすために、まだ食べれそうなお菓子やパンを食べていた
    エナドリとタバコに目をつぶれば、まるで戦時中の子供だ
    「俺が好きな食べ物ってなんだっけ」
    …平和な時間なんてひとつもなかったからなぁ…お母さんに何か作ってもらった覚えもない
    お父さんだって、きっと俺の好物なんて知らないはずだ…だって一緒に食事なんてしたことが無い
    轟燈矢の幸せってなんなんだ?

  • 77二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 19:39:56

    寝なくても少しずつ忘れていくんだよなぁ

  • 781主25/08/28(木) 23:32:53

    「あれ、なんで俺ここにいるんだ」
    ふとした疑問を持つ度にすぐに答え出す
    「…なんで」
    ふとした疑問を持つ度にすぐに答え出す
    「なん…で」
    ふとした疑問を持つ度にすぐに答え出す
    ふとした疑問を持つ度にすぐに答え出す
    ふとした疑問を持つ度にすぐに答え出す
    ふとした疑問を持つ度にすぐに答え出す

    その繰り返し

    「あれ、なんで俺ここにいるんだ?」
    「…もういいだろ」
    そう答えた瞬間、次の問いに答えが浮かばなくなった
    喉まで出かかってるのに、掴めない
    「……え?」
    初めて、本当に思い出せなかった
    呼吸が荒くなる
    忘れることには慣れてたはずなのに、今度ばかりは全身が凍りつく
    「誰か…答えろよ…俺は何をしてた?」
    声が掠れるたび、脳の奥で鈍い痛みが響いた
    「あれ…俺はいつ食った?寝た?連合のヤツらと話した?」
    「連合のヤツらの名前は?…しがら…き…すぴ…なー…あと…と…が?」
    「俺は…!俺は!?」
    地面を叩きつける
    これが現実かも怪しくなってきた
    何も感じないこの肌が、途方もなく気持ち悪かった

  • 79二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 03:36:06

    連合とのこと消えてきたか…

  • 80二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 07:34:06

    保守

  • 811主25/08/29(金) 13:41:30

    俺を反射するガラス片を手に取った

    俺は…ちゃんと…ちゃんとここにいるんだよな?

    ガラス片を腹部に思い切り刺した

    そんなことをすれば当然血が溢れてくる

    痛みとか…そんなものはあんまりなくて…

    「俺は…轟燈矢…ここにちゃんと存在してる…ちゃんと痛みも苦しみも祝福も感じられる…」

    ガラス片を抜くと、少し血液がトロリと糸を引いたあと、地面へとポタポタ落ちていった

    血塗れのガラス片には、荼毘が映っていた

    「めんどくさいことするからだ…荼毘は燈矢…燈矢は荼毘だろ…」

    俺は拳を振り上げ、そのガラス片を粉々にした

    心の底からの安堵感と、ほんの少しの痛みで、俺は何故かとても幸せだった

    生きている、ここに存在している

    轟燈矢は消えていない、ちゃんと覚えている

    「ははは!!あはは!!勝手にしろよ!」

    笑う度に血がゴポゴポ溢れ出す

    「俺は忘れない絶対に…!俺の執着を負かしてみろよ!!」

    「くふっ…ははは!!」

    「お父さん!!焦凍ぉ!!ははは!ほら!覚えてる!」

    腹部の出血なんか気にせずに俺は火をつけまたタバコを吸い始めた

    笑いすぎでむせながら、俺はまた涙を流した

    『燈…矢…』

    「ようやくお前を殺せるよ」

    昨日の事のように鮮明にあの時の会話が蘇る

    全てが…全て…?

    「俺は何人家族…だ…?」

    疲労感からか俺は目の前がぼやけてきた


    1 燈矢は寝てしまう

    2 何とか起き、アジトへ戻る

    dice1d2=2 (2)

  • 82二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 17:09:21

    アジト戻ったら流血しすぎで倒れてそう…

  • 831主25/08/29(金) 19:25:18

    「…」
    何も考えずに俺は自分の腹に手を当て、傷を焼いた
    「帰ろう…」
    俺は壁に手を付きながら、戻ろうとしたが
    「あぁ…クソ…なんで道思い出せねぇんだよ…」
    うっすら残った足跡を頼りに、ゆっくり、ゆっくりと俺は進んだ
    まだ出血していた、眠かった
    けど、次寝たら本当に全部忘れちまう気がしてならなかった
    ──────────
    足跡が途中で消えていた
    不安が俺の中で渦巻いた
    「…はぁ」
    低スペックなコンピュータみたいだ
    「…勘で行くしかない…か」
    俺は足を進めようとしたが、視界がぐにゃりと歪む
    さっきまでザクザクと地面を歩いていた音が、いつの間にか木製の床を歩くような音に変わっていた
    それは…前に見た事がある廊下だった
    「家…」
    いい加減にしてくれ
    俺の脳みそは一体何がしたいんだ?俺を陥れて何がしたいんだ?
    俺は自分が死んでしまえばいいとでも思ってるのか?
    「はぁ…っ…」
    早く…楽になりたい
    なんでもいい、薬でも個性でも手術でも…

    「荼毘!」
    「…ぁ」
    名前が出てこなかった
    なんだ…っけ…

  • 841主25/08/29(金) 22:36:44

    「おい!まさかお前忘れちまったのか!?」

    「…冬美ちゃん…夏くん…焦凍…」

    「てめぇの家族じゃねぇよ!俺だ!ヴィラン連合!スピナー!」

    「…すぴ…なー…」

    目の前の人物は…分かる…はずなのに

    頭のどこかで目の前の存在を拒絶してるような気がする

    このまま思い出さない方がきっと、楽で不安なことなんて無くなるんだろうが…

    「頼むから…」

    「思い出してくれ」

    こんな…必死な顔して懇願されたらな…

    ははっ…笑えるよな…俺はヴィランなのに

    「少し待ってくれ…今思い出すから」

    俺は目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をした

    この目の前の異形の名前はスピナー

    そこまでは分かった

    「俺…俺は、そう!死柄木といつもゲームをしてた!」

    「…死柄木」

    「そう、分かるか?」

    「…イマイチ」

    「いい、ゆっくりで大丈夫だ」

    スピナーは俺の肩を軽く叩く


    荼毘は今いる連合のことを思い出せた?(高いほど鮮明に)


    ・スピナーdice1d100=65 (65)

    ・トガdice1d100=86 (86)

    ・死柄木dice1d100=58 (58)

    ・AFOdice1d100=50 (50)

  • 85二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:46:01

    トガちゃん一番高いの、今までの話の流れ考えるとなんとなくわかる
    記憶一個思い出せたきっかけになったし…
    スピナーは今目の前にいるのもあるしね

  • 86二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 06:19:54

    保守

  • 871主25/08/30(土) 08:37:24

    「気持ち悪いぐらい微妙にしか思い出せねぇ…」
    「けど…うん…大丈夫、お前のことはだいたい覚えてる」
    「じゃあ、なんで俺が連合に入ったか…」
    「俺と同じだろ?ステインに触発されて」
    スピナーは俺の両肩にまた手を置いたあと、深い溜息をついた
    「…間違ってたか?」
    「合ってる…大丈夫だ」
    「他の連合メンバーは?」
    「トガ、死柄木、AFOだろ?あと捕まったヤツ2人」
    「なんだよ…正常じゃねぇか!心配させやがって!」
    バシンと叩かれる
    「何すんだトカゲ野郎」
    「こっちがどんだけ心配したと思ってんだ馬鹿野郎!」
    「つーかお前腹大丈夫か、ヒーローにでも会ったのか?」
    「…さぁ…?何やったか…覚えてねぇ」
    「ジジイがよ…」
    「なんつったテメェ」
    ──────────
    「薬局が近くにあってよかったな」
    「包帯なんざ直ぐに取れる、意味ねぇよ」
    「あのなぁ…」
    「お前とリーダーのことはそこそこなんだけどよ」
    「トガのことは…結構覚えてるんだよな」
    「AFO忘れんなよ…」
    俺は照れくさくなったというか、まだ覚えていられる脳みそに少して頬が緩んだ
    「あいつの家…焼いてやらねぇとな」
    「約束か?」
    「そうなるんじゃねぇの?」
    「はっ、お前も約束とか守ろうとするタイプなんだな?意外だったぜ」
    「別にんなもんじゃねぇよ…大事なこと思い出させてくれたんだから、それなりの恩返しは必要だろ?」

  • 88二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 10:54:53

    手当てされたか、よかった

  • 891主25/08/30(土) 16:33:06

    「お前、変わったな」
    「だよな」
    「なんつーか…優しくなったっていうか…丸くなったっていうか…子供っぽくなった…ていうか」
    「もっとはっきり言えよトカゲ野郎」
    「人間臭くなった」
    「ははっ、んだそれ…俺が前まで人間じゃなかったみたいな言い草だな」
    「だってよ〜…」
    スピナーの反応が面白く、俺は軽く笑った

    「あれ…なんで笑ってんだ俺…なんの話…してたっ…け?」

    一瞬にして全身の血が凍るような感覚に陥る
    「冗談…だよな?荼毘…」
    「え…ぁ…」
    本気で思い出せなかった
    少し前までの話なら、人間はすぐに思い出せるだろう
    思い出せなかったとしても、現在進行形で進んでいる会話を忘れるなんてことはありえない
    「俺…俺っ…」
    「落ち着け!荼毘!」
    俺に触れようとする手を、軽く叩き遠ざけた
    「なァ…スピナー」
    「お前らのことも…家族のことも…忘れて、俺は…その後どう生きればいい?」
    「落ち着け荼毘…まだそうと決まったわけじゃ…」
    「全部忘れちまったら…俺は…」
    「落ち着け!」
    「なんで…なんで思い出そうとする度に忘れるんだ?」
    俺自身に生きている意味を否定されている気がする
    明日まで生きるのが大罪のように感じる
    「…涙…止まらねぇや…」
    「助けてくれよ…もう、誰でもいいから…」

  • 901主25/08/30(土) 17:14:50

    そう口にした瞬間、やけに自分の声が遠くから聞こえた
    思い出そうとした家族の顔も、仲間の名前も、全部が砂みたいに指の間から零れ落ちていく…そんな想像をしてしまい、冷えた体がさらに冷えていく
    「スピナー…お前だって…今は顔が見えてるのに…一瞬目を逸らしたら、もう思い出せなくなりそうなんだ…」
    「…怖い…」
    絞り出すように出た声
    あの日から、燈矢が死んだあの日から、ずっと、助けを求めてる
    「お父さん…」
    「荼毘…お前は…もう一度寝とけ…」
    「何も…知らねぇくせに…」
    「お前はいいよなぁ、なんだっけ…空っぽな人間?なんだっけか?いいよなぁ…忘れてもこの先の人生も過去にもなんの影響もないんだからよ」
    「あぁ、そうだな…俺は空っぽな人間だよ…だからお前は俺みたいになるんじゃねぇよ!」
    「…火は…消えないと思ってた」

    ‪”‬火が────消えないんだよ‪”‬

    「幼い俺の戯言だった」
    「…失敗作だもんな…とことん欠陥品」
    「いい加減にしてくれ…」
    小さな手で透明の涙を拭った

    「俺を見てよ…お父さん…助けてよ、お父さん」

    涙で視界がぼやける
    爛れ落ちそうな皮膚、透明の涙なんかじゃない、赤い液体
    「AFOに…」
    スピナーが何か言いかけたが、何かをぐっと堪えた表情をしたあと、そっと俺の手を引いた
    「行こう、みんなのところに、ふたりぼっちじゃ…解決するもんもしないだろ」
    俺は…首をほんの少しだけ縦に振った

  • 91二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 17:19:07

    イラストつき嬉しい……
    蒼い瞳と紅い血の二つだけが色つきなのが思わずにやけてしまう…

    記憶が消えていくスピードが速くなって、仲間に縋りながらも血涙する荼毘…良い……

  • 921主25/08/30(土) 23:06:24

    「…お前のことちゃんと分かってやるのは、無理だ」
    「けどよ、1番恨んでるやつのことを考えたらどうだ?」
    「1番?」
    スピナーは俺の方を振り返らずにただただ俺の手を引っ張る
    「色々考えるから、大事なものがおぼそかになるんだろ」
    「お前が1番壊したいものはなんだ?」
    俺は少し俯きながら考えた
    「…難しいことサラッと…言うんじゃねぇ」
    「悪かったな!けどよ、忘れる暇あるなら考えとけ」
    俺の1番壊したいもの…
    焦凍だ…けど、その理由は…お父さんを…轟炎司を壊したいから
    どっちも覚えてなきゃダメだ
    本当は…家族みんなのことを…
    「お前の家族の名前は」
    「…いきなり…なんだよ」
    「もう思い出せねぇか?」
    「お父さんと焦凍のことしか」
    「えーと、お前の母親は冷だろ?そして妹は冬美、弟は夏雄…ほら、お前が書いた家族の名前見てみろよ」
    俺はまたクシャクシャになった紙を取り出す
    「なんでお前の方が覚えてるんだよ…キメェ」
    「お前のためだ」
    「…ほんとキモイな」
    俺はスピナーから手を振りほどこうとしたが、さらに力強く握られた
    この怒りと憎悪の炎がいつまで続くのだろうか
    ふとした風で絶えてしまうのではないか
    「…お父さん…焦凍…」
    手を引っ張られながら歩くことに慣れておらず、俺は石に躓き転んでしまった
    打ちどころが悪かったのか、そのまま、俺は意識が薄れていった

  • 93二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 23:08:35

    この気絶でどこまで忘れるのかな…

  • 94二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 06:54:19

    保守

  • 951主25/08/31(日) 08:44:09

    俺の破滅の物語を進めるためだけの展開
    本当はこれは何かのストーリーで、全て終わったら俺はこの物語から解放されていつも通りの日常に戻る
    なんて…都合のいい事ばかりが頭をよぎった
    「…またここか」
    元の声が思い出せないからか、喉が焼けた今の俺の声だった
    前と同じどこまでも続く廊下
    轟冬美の記憶を失ったのはここだった
    声は今の俺の声なのに、身体は13歳の時と全く同じ
    夢ならもっとまともなものを見せてくれよ
    「お父さん」
    誰もいない廊下に向かって俺は声を発した
    返事は返っては来なかった
    「…?」
    何かパチパチ燃える音と、誰かとお父さんの言い争う声と、誰かの泣き声が聞こえた
    俺は脚を進めようとしたが、誰かに後ろ髪を引かれる様に振り向いた
    「誰だ…っけ…」
    そこには誰も居なかったが、確かに誰か、何かがいたような気がしてならない
    「…夏雄か?」
    本当に名前以外俺は知らなかった
    あってたらいいな
    「返事ぐらい…してくれよ…俺はお前の…兄貴だぞ」
    「ははっ…いや、ごめん‪…うん…夏くんだよね」
    「誰だそれ」
    分からないということが執着心を徐々にすり減らしていく
    いよいよ、俺が俺じゃなくなる気がしてならない
    あぁ、でも、もうとっくに俺は…
    「さっさと行こう」
    俺は無意識に出た涙を拭いながら、声がする方へと歩いていった

  • 961主25/08/31(日) 08:58:05

    この襖の先がなんの部屋かももう覚えてなかった
    「────!!」
    「お前が口出しすることは何も無い!」
    白髪の…誰か…
    違う…お母さんだ、お母さんとお父さんが言い争ってる
    お母さんが何を言ってるのか、どんな表情をしてるのか分からない
    思い出そうとしても、ぼやける顔に誰かの顔を当てはめようとしても…分からない
    「分かったなら、とっとと出ていけ!まだ焦凍の訓練は終わっていない!」
    「…」
    「なんとか言ったらどうだ!」
    お父さんがお母さんの髪の毛を掴み、乱暴にお母さんを転ばせた
    「お母さん!!」
    焦凍は、涙目になりながら、お母さんの前に立った
    「邪魔だ退け、焦凍…お前はまだ訓練を」
    「しない…お母さんに暴力を振るうお前の言うことなんか聞かない!」
    こんなこともあったのか?
    「…お父さん」
    俺はその‪”‬2人‪”‬の前に現れた
    「ねぇ、お父さん‪…俺の事見てよ」
    「燈‪矢…!?」
    「俺なら…俺のことを見てくれるなら、俺はちゃんと…オールマイトを超えるよ?お父さんの望みを叶えてあげるよ?」
    「燈矢兄…」
    「なんで俺じゃダメなの?お父さん、なんで焦凍じゃなきゃダメなの?」
    「お前は…」
    「俺は失敗作なんかじゃない、世界でたった2人の兄弟をここまで差別して楽しいかよ?」
    俺の言葉、全てに違和感が走った
    「俺を見てよ、お父さん、俺だけを見て」

  • 971主25/08/31(日) 09:08:03

    ──────────

    「おい!荼毘!」

    「燈矢くん!」

    まだ…大丈夫だ、2人のことは覚えてる

    「悪い…転けさせるつもりは無かったんだ」

    ふと、白い手が浮かんだ

    お母さんの…冷たい手

    俺の熱を受け止めきれずに震えていた、あの…

    「……あれ?」

    そこまで思い出した瞬間、顔が霞んだ、髪の色も、声も、何も出てこない

    ただ「お母さん」という呼び方だけが、虚空に浮かんでいた

    「おい、荼毘…次は何を忘れたんだよ!?」

    「忘れ…忘れてない!」

    ぼんやりと、小さな影が頭に浮かんだ

    「なつ…」

    名前を呼んだ気がした、夏…雄?そう、夏雄、弟の──

    「……え?」

    言葉が途切れた

    あんなに近くにいたはずなのに、顔が描けない、声も、笑い方も、思い出そうとするほど霧みたいに散っていく

    「いやっ…違っ…覚えてる…覚えてるんだ俺は!」

    「覚えてるんだよ…!」

    「燈矢くん!深呼吸してください!」

    「クソっ…クソがクソがクソが!」

    俺は頭を掻きむしりながら、浅い呼吸を繰り返した

    なんであんなに他の家族に無関心になれたのだろうか?

    そんな自分にすらイライラする


    燈矢は、冷と夏雄のことを思い出せた?(90以上で思い出す)

    dice1d100=26 (26)

  • 98二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 09:18:45

    二人忘れちゃったね
    次は誰かな、それともどっちかな

  • 991主25/08/31(日) 09:36:47

    俺は元々父子家庭だった

    それで…もうそれでいい気がする…

    …違う…ちゃんと…ちゃんと思い出さなきゃ…

    「父子家庭で…いい…それでいいはずだ…」

    口にしながら、胸の奥がきしむ

    涙が勝手に出て、顔がぐちゃぐちゃに歪んでいく

    「でも…なんか違う…違うんだ…誰かが…いたんだ…」

    鼻水も涙も止まらず、まるで子供みたいに声がしゃくり上げる

    「…思い出せないのに…寂しいのは…なんでなんだよ…」

    「涙なんか…出てくるな…」

    泣きじゃくる俺をそっと抱き寄せるトガ

    「燈矢くんは泣き虫ですね、大丈夫です」

    「私達がいますから、家族と思うのは難しいかもしれませんが」

    「離せ…よ…イカレ女」

    「大丈夫だよ、燈矢くん、私達は忘れたりしませんから」

    「お前らじゃ…意味が無いんだよ…分かれよ!それぐらい!」

    「俺には…あの家しかないんだ、アレだけが俺を生かしてきた」

    日に日に近づく最終決戦

    その度に俺の執着の蒼い炎が今にも消えてしまいそうで

    もし、お父さんか焦凍に会ったら俺は俺でいられるのかって

    最高火力なんて出せずに、そのまま捕まって死ぬまで刑務所行きだ

    なんでそんなクソつまらない人生を想像できるぐらいに、俺は忘れちまったんだろう

    「可哀想な、轟燈矢くん」

    顔を上げるとそこには、AFOが居た

    「うるさい…」

    「君の記憶を復元させてあげるのは難しいかもしれないが、もっといい方法もあるさ」

    「それには痛みも伴う、そして後遺症も…でも確実に君の執着の炎をまた────」


    正気度

    38-dice1d38=26 (26)

  • 100二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 11:08:51

    また、ごりっといかれたか
    ダイスちゃんが分かってる…

  • 1011主25/08/31(日) 15:43:31

    「うるさい…つってんだろうが!!」
    「赫灼熱拳!ジェットバーン!」
    ははっ…なんで技名出てくるんだよ…そんなことに記憶のリソース割いてるぐらいなら…思い出させてくれよ
    俺は何を忘れた?
    「…相変わらずだね君は、それほどまでの執着心…やはり君は…」
    攻撃は防がれ、俺は数歩後ろに下がった
    だが、AFOは不機嫌そうな態度を取るどころか笑っていた
    ムカつく…なんで笑ってんだよ…
    「感情的にならないでくれ、燈矢くん…ソレは無意味な結果しか生まないよ」
    「赫灼熱拳!ヘルスパイダー!」
    「…さて、どうしようか」
    イライラする…ムカつく…
    思い出せない、自分が失敗作であることを突き付けられる
    俺を産んだ全てに…腹が立つ
    「っ…ふーっ…ふーっ…!」
    「落ち着け!荼毘!」
    どこから持ってきたのか知らないが、俺は水をぶっかけられた
    「てめぇ…なにすんだ…」
    深呼吸を繰り返した後、俺は混乱に陥った
    「…ここどこだよ…お前ら…誰…だよ」
    「荼毘!忘れんな!俺はスピナー!お前の仲間だ!」
    「分からない…お父さんは?焦凍は?」
    「ふむ、やはり君は個性と体が合っていないんだね」
    顔が焼け爛れたのか潰れたのか醜い見た目をした男が、俺の頭に手を置いた
    「多少痛みを伴うかもしれないが…君なら我慢できるだろう」
    「…お父さん…助け…」
    「あ…あ‪”‬ぁぁぁぁ!!」
    神経を直接触られているような、痛み
    歯を食いしばりすぎて血が出てくる
    「荒療治だが、効果はあるはずだ」

  • 102二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 15:52:43

    このレスは削除されています

  • 1031主25/08/31(日) 15:54:18

    このまま死んでしまうのではないかと思うほどの痛み

    「は…な…せっ…」

    久々にこんなに痛いと感じた

    なんで痛みを久々に感じたんだ?

    嫌な熱を孕んだ液体が俺の足を伝っていく

    「っ…ぐぅぅ…あ‪”‬ぁぁぁ!」

    だが、そんなことも、この男は気にならないようで、俺の頭から手を離さない

    そのまま…数分俺は地獄の痛みを味わった

    ──────────

    手を離され、俺はその場に倒れた

    「おい!大丈夫か!?」

    「…すぴ…なー…」

    「良かった、思い出してくれたか」

    「AFOさんやり過ぎです!」

    「すまない、だが、会話が食い違う、通じない…そんな面倒なことがたった数分で解決するならいいほうだろう?」

    「荼毘が失禁するほどの痛みってなんだよ…荼毘に何したんだよ!AFO!」

    「少し脳を弄った、記憶全てを復元は無理だ、だが、最低でも君達の名前程度の記憶はあるよ」

    「さて、燈矢くん、君はどこまで思い出せた?」


    荼毘は連合のことをどれぐらい思い出せた?(40以上で最近の会話はだいたい覚えている)

    ・スピナーdice1d65=35 (35)

    ・トガdice1d86=36 (36)

    ・死柄木dice1d58=15 (15)

    ・AFOdice1d50=47 (47)


    「まぁ…少しばかり後遺症は残るかもしれないが、破滅へと向かう君ならこのぐらい誤差だろう」

  • 104二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 16:26:43

    AFOだけか…

  • 1051主25/08/31(日) 17:04:49

    「ひでぇこと言ってくれるな…さすがヴィラン」
    「思い出してくれてよかったよ」
    「あぁ…まだ脳味噌ぐぢゅぐぢゅいってる…気持ちわりぃ…ははっ…」
    「荼毘、大丈夫か?」
    「これが大丈夫に見えんのかよ!?慰め下手にも程があるな!?ちったぁ頭使えよ、トカゲ野郎が」
    「お、おい、これ、さっき言ってた後遺症ってやつか?」
    「いや、多分まだ燈矢くんの頭が追いついてないだけだ、時間が経てば…或いは…度重なる記憶喪失で、少し取り乱してるだけかな」
    「謝るから…帰ってきてよお父さん…お父さん…!」
    「俺…ここに居るから…」
    「燈矢くん、大丈夫です、みんなここにいますから」
    「お前らなんていらない…お父さんが居ればいい…」
    「もうやだ…ぁ…お父さんのこと…忘れたくない…よぉ…!」
    俺を繋ぎ止めていた物がぐちゃぐちゃにされて再構築された
    誰かのことを思い出そうとする度に、気絶してしまいそうなほどの痛みが走った
    「燈矢くん」
    荼毘の手を引くトガ
    「おい、トガ、荼毘をどこに…」
    「約束忘れちゃいましたか?」
    「…約束?んなもんどうでもいいから…お父さんに…」
    「お家燃やしてくれるって」
    「覚えてねぇよ…そんなくだらない話」
    「…いいですよね?AFOさん」
    「あぁ、構わないよ」
    トガが俺の手を引く
    「行こう、燈矢くん、また、少しお散歩しましょう」
    微笑みが誰かに似てる気がした
    そんな気がしただけだ、実際俺の脳にそんな記憶は無い
    ついに俺の頭は記憶の捏造まで初めてしまったらしい
    「…わかっ…た」

  • 1061主25/08/31(日) 20:07:07

    トガと手を繋いで歩いていた
    何が楽しいのかよく分からなかったが、トガはずっと笑っていた
    「私は一人っ子なので分かりませんが、燈矢くんが今弟みたいでちょっと嬉しいです」
    「…俺の方が年上だぞ…何言ってんだ」
    「‪”‬みたい‪”‬って話です、今の燈矢くん、中学生みたいですよ」
    「そんなに幼児退行してる俺が面白いのかよ」
    「かぁいいね、燈矢くん」
    「…話にならねぇ」
    この繋いだ手を俺は心の奥底で何故だかどうしても離したかった
    けど、手、離したらコイツどんな反応するんだ?って考えたら…なんか…離せなかった
    「で…何するんだっけ」
    「私のお家を燈矢くんに燃やしてもらいます」
    「なんで?」
    「忘れたいからです」
    「…お前はいいな、忘れたいことがあって」
    「燈矢くんは、忘れたくないことだらけですもんね」
    トガが俺の手を強く握る
    「でも、燈矢くんには、私のこと忘れないで欲しいです」
    「…考えとく」
    「考えてる間に忘れちゃいますよ!」
    「…ははは!それもそうだな…てめぇのことなんて…すぐに」
    「あぁ…なんですぐに忘れちまうんだろ」
    「ハイになったり、急に落ち込んだり、忙しいね、燈矢くん」
    「皮肉か?死んじまえイカレ女」
    「そんなことを思っちゃうなら殺せばいいのに…優しいね燈矢くん」
    何か…トガが必要な理由があったような気もする
    「んなことしても…意味無いだろ…お前1人殺して俺の記憶が全部なくなったらどうすんだよ」
    「ふふっ、それもそうですね」

  • 1071主25/08/31(日) 20:09:18

    結構歩いただろうか、トガが手を離した
    俺は疲労で体が重くて仕方がなかったが、トガはそんなことも気にせずにどんどん歩いて行きやがった
    「…ここか?」
    トガは無言で頷いた
    俺が燃やしてくれるのを待っているようだった
    スプレーで書かれたであろう落書きが、家の隅々に見えた
    「燃やす前に、入ってもいいよな」
    「そんなに私のお家が気になりますか?」
    「…てめぇが思ってるのとは違う理由でな」
    俺は土足で家に入っていった
    トガは別に何も言わずに着いてきた
    「お前は外で待ってても良かったんだぞ?思い出したくないんだろ」
    「ちょっと気になっただけです、気にしないでください」
    「そうかよ、俺は勝手にするぞ」
    「はーい」
    ──────────
    俺の家がいかにでかかったのかがよく分かった
    もう、思い出せるのは廊下だけだったが
    「人が住んでないみたいだな」
    俺は呟いた
    「……けどさ、住んでた痕跡は消えねぇんだな、落書きも、埃も」
    「消えないから、嫌なんです」
    そう言ったあと、俺とトガはしばらく黙ったまま、崩れた天井を見上げていた
    「多分…ね…燈矢くんがお家燃やしてくれても、ずっと心には残ると思います」
    「今の燈矢くんが、ほんの少しだけ…羨ましいなぁ…」
    トガの声が少しだけ涙声だった
    慰める気なんて更々なかった

  • 1081主25/08/31(日) 20:21:56

    ただ、俺の後ろを着いてきてる間もずっと泣いてた
    「うるせぇな…いい加減泣きやめよ」
    こっちが正気に戻るほど、トガは少し取り乱していた
    「…はぁ…お前みたいなイカレ女にも感傷に浸る時間があるなんて思わなかった」
    「私も…人間ですから」
    俺は振り返って、トガの涙を手で拭ってやった
    「泣きやめよさっさと」
    俺はトガの顎を軽く掴んで、口元に親指を添え無理やり笑顔を作らせた
    「もう、俺の記憶の中でごちゃつくんじゃねぇ…ずっと笑ってろ」
    「それが俺が思うトガヒミコだ」
    「…優しいね、燈矢くん」
    「優しい?馬鹿なことを言うんじゃねぇよ」
    「可哀想だなぁ、トガヒミコ、俺のために都合よく使われて」
    「…???」
    「さて、そろそろ燃やさなきゃな」
    トガから手を離し、玄関の方に向かう
    「あの、燈矢くん」
    「なんだよ、さっさと来ないとてめぇまで燃やしちまうぞ」
    「…笑っても…いいんですか?」
    「はぁ?いきなり何言ってんだてめぇ」
    「好きにしろってのが…誰か忘れたけど…言ってただろ」
    「燈矢くんは!いいんですか!」
    「…誰が泣こうが笑おうが、明日は平等にやってくる」
    トガの手を引っ張り、家を出た
    「それなら、笑おうぜ、トガヒミコ」
    言ってることが無茶苦茶だ、俺のためだったりてめぇのためだったり
    けど、まぁ…
    「…うん!」
    別に…いいか

  • 1091主25/08/31(日) 20:23:21

    これは恩返しだ…きっと脳を弄られる前の…記憶を失う前の俺も同じことを思ってた

    火球を家に落とした

    その瞬間、家が燃え上がった

    「はは!いいねぇ、よく燃える!」

    「ほら、トガも笑おうぜ?」

    一瞬だけ表情が崩れたトガだったが、俺がお手本のような笑みを浮かべると、トガも笑った

    疲労から、足元が覚束なかったが、トガが俺の両手を握って支えてくれた

    「…燈矢くんは覚えてないと思いますけど」

    「ダンス、今なら教えてくれますか?」

    ‪”‬地獄で息子と踊ろうぜ!‪!!”‬

    「…はは!しょうがねぇなぁ」

    トガの両手が俺の手に触れていることを確認し、俺はトガにダンスを教え始めた

    俺もコイツもイカれてる

    とっくに正気なんて失ってる

    「教えてくれるどころか一緒に踊ってくれるんですね」

    蒼い炎が、トガの笑顔を照らした

    こんな失敗作の個性でも、コイツは笑ってくれる

    家族という存在が薄れていく度に、連合の存在が大きくなる

    けど、それと同時に失うことの恐怖心も増していく

    「燈矢くん、楽しいねぇ♪」

    「あぁ」

    こんな会話だって、すぐに忘れちまうのに

    頭の中ではすぐに消えちまうのに…

    トガが言った通り…心ではずっと残っちまうんだろうな

    …まだ、大丈夫…まだみんなのことは心に残ってる

    俺の‪”‬原点‪”‬を、忘れるな


    燈矢の正気度

    12+dice1d40=22 (22)

  • 110二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 20:26:23

    記憶無くなってもこのやり取りしてくれて嬉しいし、蒼い炎に照らされて踊る二人とか見たいなって思ってしまった…

    そして初めての正気度回復が来たな…

  • 111二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 23:46:35

    念のため保守

  • 1121主25/09/01(月) 02:13:37

    「でも、少し意外でした」
    「…何が」
    「燈矢くんって、意外とロマンチストなんですね」
    「は?」
    「何となく燈矢くんなら、もっと激しいダンスだと思ってました、かぁいいね、燈矢くん」
    「ワルツは不満か?」
    トガは首を軽く横に振り微笑む
    俺家の焼ける匂いに顔を顰めたりはしなかった
    そんなに燃える匂いがしないのか?
    なんて、この笑顔の前では、余計な言葉なんじゃないかと思ってしまった
    「調子狂う…」
    俺はトガの手を軽く引き、足を合わせさせる
    右へ一歩、左へ一歩
    瓦礫に足が取られそうになったトガを支え、また回転させた
    「…わ、ふふっ」
    「楽しいか?」
    「さっきも言いましたよ?忘れちゃったならもう一回言います、楽しいです♪」
    「なぁ、トガ」
    俺は片手でトガの腰を支え、もう片方の手を軽く持ち上げた
    「今、お前と踊ってるのは誰だ?」
    「燈矢くん」
    迷いなく、笑顔でそう言った
    「荼毘は?」
    「目の前にいるのは燈矢くんです」
    「荼毘くんなんて人、私は知らないのです」
    トガが俺の胸に手を当てた
    「私の目の前にいるのは誰ですか?」
    トガが、優しい瞳で俺を見てきた
    「轟燈矢」
    自分でも驚く程に、すぐに答えが出た

  • 113二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 06:34:20

    すんなりと名前が出てくるくらいには回復か…

  • 114二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 12:19:40

    保守

  • 1151主25/09/01(月) 15:19:51

    瓦礫の崩れる音と共に炎が消えた
    「案外短かったな」
    俺はトガが転けないような体勢に戻し、手を離した
    「ねぇ、燈矢くん、また一緒に…」
    「覚えてたらな」
    不満そうな顔で俺の方を見るトガ
    「なんだよ」
    「ダメです!燈矢くんすぐに忘れちゃいますから!」
    「だから…」
    「生きてたらまた一緒に踊ろうね、燈矢くん」
    そんな約束、守れるわけが無いのに、俺は首を縦に振った
    ──────────
    崩れ落ちた建物の壁に、かろうじて看板の残骸が残っていた
    そこに描かれていた文字は、もう読めないほど煤けていた
    「ここ、何だったんですかね?」
    「知らねぇ」
    俺は短く答えた
    トガは俺の顔を見て、なにも言わず笑った
    俺は何の気なしにポケットに手を突っ込んだ
    「…なんだこれ」
    小さな容器に入った赤い液体…
    「血ですか?」
    トガが目を輝かせながら、俺の手の上にあるソレを見ていた
    …なんで俺がこんなもん持ってんだ?
    「…いるか?」

  • 116二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 17:06:21

    トゥワイスの血だ
    今までの流れ見るとむしろよく残ってたね…?

  • 1171主25/09/01(月) 21:18:07

    トガは少し躊躇いつつも、俺の手からソレを取った
    容器を胸の前で抱きかかえるようにして、トガが俺を見上げる
    「これ、ほんとに……いいんですか?」
    「別に…俺が持ってても仕方ねぇだろ」
    トガは、やはりというか、当たり前というか蓋を開けない
    しばらく俺の顔と容器を交互に見て、小さく蓋を回した
    好奇心に負けたみたいに指先を濡らし、恐る恐る舐めた
    その瞬間、トガは俺が知らない誰かに変身した
    「…仁…くん…」
    トガは明らかに動揺したような声で、仁という名前を口にした
    誰だっけ…思い出せねぇや
    けど…どっかで…聞いたことが…
    「……っ、がぁっ!!」
    視界が揺れて、胃液がせり上がる
    喉に熱い酸がこみ上げ、吐き気と同時に頭を殴られたみたいな衝撃が襲った
    瓦礫の上に倒れ込み、痙攣する腕を必死に押さえ込む
    まるで体ごと拒絶しているようだった
    「燈矢くん!?」
    思い出せない
    違う、俺は覚えてるコイツを知ってる
    覚えてる覚えてる覚えてる覚えてる覚えてる覚えてる覚えてる覚えてる覚えてる
    思い出せるはずなのに…!
    「燈矢くん!!」
    震える声で名前を呼ばれ、俺の背中に小さな手が触れた。
    その瞬間、張り裂けそうだった頭の奥が、少しだけ和らいだ
    「……っ、はぁ、はぁ……」
    荒い呼吸を繰り返しながら、俺はトガに縋るように手を伸ばす
    触れた感触で、現実に戻される
    「この血は…大事に取っておきます…ごめんね、燈矢くん」
    「…いみ…わかんねぇ…よ」

  • 118二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 21:58:36

    最終的に燈矢はどうなっちゃうんだろ
    楽しみ

  • 1191主25/09/01(月) 23:09:22

    静かに破滅へと向かう音がする
    このまま、俺はどうなっちまうんだ?
    「…もう暗いな」
    「今は朝か?それとも夜か?」
    「考えなくて、大丈夫です」
    トガが俺の頭を撫でる
    「帰ろっか、燈矢くん」
    「疲れましたね、少し寝ますか?」
    「…寝たら、ダメな気がする」
    「そうですか」
    トガは何故だかクスッと笑った
    なんで寝たらダメなのか自分でもよく分からないが、嫌な予感がすることはやめといた方がいいだろう
    「ダンス、楽しかったです」
    「何踊ったっけか」
    「ワルツですね」
    「そう…」
    「燈矢くんは、家族以外、本当にどうでもいいんですね」
    嫌味を言うわけでもなく、ただただ、いつものトーンで俺にそう伝えた
    「きっと、そうなんだろうな…お前らのことだって…どうでもいい」
    「変だね、燈矢くん、どうでもいいなら私に優しくしなくていいのに」
    返事を返す気は無かった
    「ねぇ、燈矢くん、燈矢くんがもし全部忘れちゃったら、燈矢くんはどうするの?」
    「…さぁな」
    そこからは、何を話したか覚えていなかったが、気づいたら元いた場所へと戻っていた

  • 120二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 23:20:31

    このレスは削除されています

  • 1211主25/09/01(月) 23:21:36

    「死ぬほど疲れた」
    「顔色悪いな相変わらず」
    「飯、食うか?」
    「…いる」
    俺は着いてそうそう、地面に座った
    「羊羹があった、缶詰嫌いなお前でも食えるだろ?」
    「…なんで嫌いなんだっけ」
    「お前魚嫌いって、超常解放戦線の時…」
    「ちょうじょう…?やべぇ…全く覚えてねぇや」
    「ははっ、ま、そんなこともあるよな、しょうがねぇ」
    「なぁ、スピナー、思い出話してくれよ」
    「俺が死んじまう前に」
    「最終決戦で死ぬ気でいるのかよ…相変わらずだな」
    「…まぁ…な」
    「そうだな、最初の俺から見たお前の印象は、最悪そのものだったな、不気味だし、何考えてる分からなかったしよ」
    「けど、日にち重ねる毎に、お前のことが少しだけ分かってした気がして…でも、お前ほんと隠し事多すぎて、いい仲になれるとは思わなかったな」
    「まぁでも、お前からしたら最悪だろうが、今のお前は、俺はちょっと好きだ、隠し事なんてしたら全部忘れちまうから、取り繕う暇もないから、全部本音…人間臭くて、お前がちゃんと生きてる人間なんだって、分かるから」
    ほんのりと口の中に広がったうす甘い味と、少ししんみりとした空気がやけにあっていた
    …ここまで言ってもらえて、俺はきっと、普通の人間より何倍も今幸せなんだろうな
    生理現象なんて嫌いだ…忘れたくない…
    頼むから…この重いまぶたを…誰か…開けてくれ
    俺が、こいつらが、消えちまう前に…
    助けて、お父さん、助けて…焦凍

  • 122二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 23:23:36

    今覚えてる家族に助けを求めるレベルで消耗してるか…

  • 123二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 23:25:14

    あぁ…まさか、死ぬ前ってそういう…
    辛い!続きが気になる!

  • 1241主25/09/01(月) 23:48:17

    優雅なクラシック音楽が流れていた
    不思議と曲名まで分かった
    「燈矢」
    キチンとした服を着てこちらに歩いてくるお父さん
    当たりを見渡せば、まるで映画に出てきそうな舞踏会のような場所
    もう、お父さんの顔までぼやけて見えてきた
    涙が止まらなかった
    「手…取って、俺と踊ろう?お父さん」
    辺りには、服を着せられたトルソーが4体置いてあった
    その中に1人、顔がぼやけているが、明らかに焦凍だとわかる人物が、俺とお父さんを見ていた
    お父さんは何も言わずに俺の手を取った
    「お父さん…あのね、俺…お父さんに見てもらいたかっただけなんだ」
    「…それってさ、本当はもっと簡単なことで…俺にもできたのかなって…馬鹿なこと考えたりしてさ」
    「でも、お父さんには俺だけを見て欲しくて」
    「あぁ…ごめん、なんていえばいいか分からないや…」
    お父さんが何も言わないのはきっと、俺がお父さんから優しい言葉をかけてもらったことがないからだ
    例えそれが夢だとしても、俺には…想像もできないからだ
    「嫌い、お父さんなんて大っ嫌いだ」
    足を踏み外しかけた俺を、優しく体勢を立て直させ、またゆっくりと靴底の音をほんの少し鳴らしながら、踊る
    「連合のみんなも…嫌いだ…全部嫌い…」
    「あんなイカれた奴らに割いた時間全部が無駄なんだ」
    「お父さんなら分かるだろ?俺に割いた時間が全部無駄だったんだって」
    「…俺は失敗作なんだから」

  • 1251主25/09/01(月) 23:51:48

    「燈矢兄」
    ふと、焦凍の方に視線をやると、焦凍は小さく拍手をしていた
    さっきまでトルソーだった物は、まるで自分が何者か思い出したかというように、人の形へと姿を変えていた
    4体なのが納得がいった
    スピナー、トガ、死柄木、AFOだ
    なんでスラッと名前が出てくるんだろうな
    「消えないでよ…お父さん」
    俺はお父さんの手を離し、そのまま抱きついた
    感触はなかった、お父さんに抱きついた覚えなんてないからだ
    「俺の事見てよ…お父さん…」
    「燈矢」
    壊れたラジオみたいに、全く同じ声で俺の名前を呼ぶ
    最低なお父さん、これしか覚えられない失敗作の俺
    「俺の事見てよ…」
    好きなんて言葉が当てはまってたまるものか
    なら、この感情になんて名前をつければいい?
    「燈矢」
    「死んじまえ…お父さんも…俺も」
    お父さんの首を絞める
    メラメラと炎が上がり、お父さんの服が、髪が、皮膚が、焼けていく
    クラシック音楽は鳴り止まない
    優雅なBGMとが嫌に俺の涙を誘い、透明な液体を俺の目から溢れさせた
    この状況を祝福するように、トルソーだったものが、拍手の音を大きくした
    「…焦凍」
    俺は焦凍の手を引いた

  • 126二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 23:56:06

    今覚えてるのは、焦凍のみか……

  • 1271主25/09/02(火) 00:03:56

    俺は焦凍の手を引き、舞踏会の中央に立った
    足を一歩踏み出す
    優雅なワルツが再び始まる
    炎に包まれたお父さんの亡骸の前で、俺と焦凍は踊った
    涙で前が見えなくなっても、それでも俺は手を離さなかった
    「燈矢兄」
    そう言って、俺の手を振り払った
    トルソーたちの拍手は、一瞬にして嘲笑に変わる
    崩れた会場の中で、俺だけが立ち尽くしていた
    焦凍の姿は霧のように消えていき、残されたのは、立ち尽くした俺だけ
    「燈矢」
    機械仕掛けのような声が、また俺を呼んだ
    俺はその場に膝をつき、頭を抱えた
    「…はは…っ…俺は何のために生まれてきたんだ?」
    「失敗作…もういっそ殺してくれ…その手で俺を」
    膝を着いた俺の前に、俺が求めていた家族そのものが映し出された
    俺の手で、触れるあと僅かな距離が遠い
    「壊してくれ…何回でも俺の名前を呼んで、その手で俺を」
    「忘れないように、償いみたいに…俺の名前を呼んで」
    殺してくれ、俺がもう、みんなのことを忘れないように
    そんな小さな願い事すら、叶えてくれないんだから
    全てをぶっ壊したい、お前の大事なものを奪いたい
    「…なんでそんな顔するんだよ」
    知らなかった、知りたかった、みんなのそんな顔
    あぁ…俺はどこまで行っても…

  • 1281主25/09/02(火) 00:11:13

    誰もカーテンコールを求めない

    「…うん」

    全てがどうでも良くなっていく

    あれだけ追い求めた物が、命を削ってまで求めたものが

    今は本当にどうでも良くて

    何も感じないのに一丁前に涙だけは流れてきて

    「こんなところに…1人にしないでよ」

    「なァ!俺も連れて行ってくれよ」

    思い出も、家族も、仲間も、願いも、原点も

    全部消えていく

    俺は…なんだ?

    「なんでもいい…もう」

    目が覚めたらきっとそこは俺が知らない世界だ

    俺は…起きて何をするんだろうな

    …楽しみで…仕方ないや


    燈矢は

    1 全てを忘れた

    2 自分のことだけを覚えていた

    3 ほんの一欠片の家族の記憶だけを覚えていた

    dice1d3=1 (1)

  • 129二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 00:25:15

    全部忘れちゃったか

  • 1301主25/09/02(火) 00:26:40

    誤解を産まないように…少し訂正します
    言葉を話す、歩く、火を使うといった“やり方”は残る
    けれど、誰と話してきたのか、何を願っていたのか、といった“思い出”はごっそり抜け落ちる
    だから「全てを忘れた」とは言っても、正確には「自分の人生に関する記憶をまるごと喪失した」状態です
    要らないかもしれませんが一応…

  • 131二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 01:14:18

    了解です
    説明ありがとうございます、ちょっと安心しました

  • 132二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 06:52:50

    保守

  • 1331主25/09/02(火) 10:33:16

    自分の体の形を確認するように、手を握りしめてみたり、声を出してみたりする
    ここはどこで俺は誰で何をしてたのか
    目の前には、可愛らしい女とトカゲのような男が立っていた
    「誰?」
    俺がそう言うと、その2人は、顔を青ざめさせた
    …なにかまずいことでも言ったのか?
    こっちの方が顔を青ざめたい状況なんだが…
    「燈矢く…ん、う、嘘ですよね!」
    「…とう…や?」
    「誰だそれ…俺は」
    あれ、なんだっけ
    「燈矢くん!」
    女が俺の肩を揺さぶった
    …怖いな、なんだコイツ…
    あと、この手は本当に俺の手か?俺の手は…
    「痛い…いい加減揺らすのやめろよ、ここどこだよ」
    「荼毘…冗談だよな…」
    「荼毘、燈矢」
    俺はその名前を口に出してみた
    「きっと俺はそいつじゃない…だから…」
    言葉が繋がらず、何を言えばいいか分からなかった
    そんな時、トカゲ男は女を押しのけると俺の胸ぐらを掴んできた
    「お前が忘れるなんてありえねぇ!」
    トカゲ男の目は血走っている
    掴まれた胸が痛い
    「俺は…ほんとに分からない」
    俺は小さく、けれどはっきり言った
    「名前も、過去も、何もかも」
    その瞬間、目の前の二人が同時に泣きそうな顔をした
    俺が何を失ったのか、俺よりもこいつらの方がよく知ってるんだろうな

  • 1341主25/09/02(火) 10:34:41

    「家族の事は!?お前は…誰よりもアイツを殺したがってただろうが!」
    「家族ってなんだ?」
    「それが居ないのは…悪いことなのか?」
    不安になり、俺は何回も色んなことを質問した
    女とトカゲ男は優しく答えてくれたが、完璧な理解からは程遠かった
    問いを繰り返すたびに、頭の中がぼやけていった
    言葉の意味が霧みたいに溶けて、現実の輪郭すら分からなくなる
    「俺は……ここにいるのか?」
    小さな声が、自分のものじゃないみたいに響いた
    二人の顔も遠い、音も遠い
    目の前の光景が、夢なのか現実なのかすら判断できなくなって、俺はただ黙るしかなかった
    「ゆっくり…思い出そうね…燈矢くん」
    そんな中顔が焼け爛れた男が俺の前に現れた
    「恐れていたことが起きてしまったね」
    「だ、誰だお前」
    「少し触れるね、大丈夫、すぐに終わ───」
    触るな、と言いかけたタイミングで俺の体から炎が上がった
    俺はすぐにパニックに陥ったが、顔が焼け爛れたような男が俺に触れるとすぐに炎が治まった
    俺は、徐々に理解し始めてしまった
    途方もなく俺は空っぽな人間で、何も覚えてない
    この空白を埋めてくれる人間は、存在していたとしても、もう思い出せない
    そもそも、何を思い出すんだ?

    そんなことすらどうでもいいと思えてしまう自分を殺したくて仕方がなかった

  • 1351主25/09/02(火) 10:36:29

    ○○日後
    「はい、燈矢くん、食べれますか?」
    「意味…あるのか?」
    「燈矢くんが生きてくれないと困ります」
    ビスケットを俺に手渡すトガ
    「トガだっけ…?」
    「ヒミコでもいいですよ?」
    「いつも、ありがとう」
    「もうすぐ、世界が終わりますから、これが最後の思い出作りかもしれませんね」
    「なんで世界を終わらせるんだっけ」
    「…あぁ…悪い、別に聞かなくていい事だったな」
    「なんにも覚えちゃいねぇけど…俺、みんなに迷惑かけたんだろうな」
    「迷惑なんて思ってねぇよ」
    武器を磨きながらトカゲおと…スピナーがそう言ってくれた
    「ありがとう」
    「…やっぱ、慣れねぇ…本当に荼毘か?」
    「荼毘くんじゃなくて!燈矢くんです!」
    あれから俺は、散々色んな話を聞かされた
    覚えていなかったというか、本当にそんなことがあったのかと疑いたくなった
    どうやら、この世界には‪”‬個性‪”‬と呼ばれるものがあるみたいで
    俺は炎が出る個性らしい
    へぇ…としか言えなかった
    あぁ、そういえば2人から家族の話を聞いてなかった
    …どんな人だったんだろう、優しい人だったらいいな
    俺の家族は炎が出せたのかな?ヒーローだったのかな?
    俺もかっこいいヒーローになれるかな?
    希望溢れる言葉ばかりを都合よく使ってみる
    そうすると少しだけ生きてる感じがして、好きだった
    でも、数秒後にはまた言い表せようのない喪失感に狩られた

  • 1361主25/09/02(火) 10:38:55

    「…あのね、私、燈矢くんが大好きだよ」
    「だから、私、燈矢くんになりたいなってずっと思ってた」
    「なれるかな」
    トガは時々おかしなことを言う
    「なれるよ」
    適当に返しても、笑みを浮かべてた、本当に変な女だ
    「燈矢くん、死なないでね」
    「…生きる理由も死ぬ理由もねぇから…安心しろ」
    「どうせ俺は何も出来ないんだから」
    「お前が居てくれるだけで、そこそこ俺らのメンタルも安定してるから、否定ばっかすんな」
    「うん、ごめん」
    「最終決戦はもう目前だ、お前も頑張ってもらわなきゃな」
    「えーと…しがら…いいや…リーダーは大丈夫なのかよ?」
    「あぁ、大丈夫…だと、思いたいな」
    「なんだそれ、そんなやばいのかよ?なぁ、そうだ、死柄木ってどんなヤツだったんだ?」
    「また後で話す、今少し忙しい」
    「わかった」
    俺は外の空気を吸いに数歩足を動かしてから、少し立ち止まった
    「なぁ」
    「燈矢っていい名前だよな」
    ゆっくりと視線を上げ、遠くを見つめる
    …誰が着けてくれたんだっけ
    誰が俺を育てて、愛してくれたんだっけ
    家族ってなんだっけ、誰だっけ

    「もう、思い出せねぇや」


    [END]

  • 1371主25/09/02(火) 10:46:05

    ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます

    荼毘曇らせが思いのほか難しく…途中スレ投げ出してやろうかと思いましたが、何とか…最後まで書きました

    1スレどころか結構余って終わりましたね…すいません

    大事なことほど思い出せない時ってありますよね

    荼毘はこれから破滅へと向かう事は変わりませんが、魔王すら見放した、偏執狂の死炎…が無いので、緩やかに破滅へと向かっていくっていう感じですかね


    ダイス目が今回結構ストーリーに沿ってましたね

    ちょっとだけ言ってたホークスと轟くんのスレ、一応貼っときます、良ければどうぞ


    【超閲覧注意】最近頭の中で声がする|あにまん掲示板誰の声か、すぐに分かるはずなのに、思い出したくない、背中が痛い声を聞く度に心臓の奥まで突き刺されるような痛みが走ったでも、俺はその声の人が大好きで、とても優しい人だということを何故か覚えている嫌な匂い…bbs.animanch.com

    【超閲覧注意】俺の血塗れの日々を|あにまん掲示板「今日から、俺の日常にしよう」※ホークスが可哀想な目にあったり雲らされたりするスレです所々微キャラ崩壊があるかもしれませんダイスや、安価をする可能性がありますSS形式で進みますそれでもいい方だけ見てく…bbs.animanch.com

    【超閲覧注意】きっと俺は疲れてる|あにまん掲示板雄英の寮から出て、少し外に出ようとすれば市民の嫌な視線が俺を突き刺す…当たり前だ父親はエンデヴァー、兄弟は荼毘殺されていないことが逆に不思議なぐらい恨まれている『焦凍』‪”‬燈矢って立派な名前があるん…bbs.animanch.com

    本当にありがとうございました

  • 138二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 12:00:11

    こちらこそありがとうございました、面白かったです
    なんか……荼毘、記憶全部無くなったら穏やかになったなぁ…

  • 139二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 20:03:28

    めちゃくちゃ面白かったです

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