- 1◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:43:06
- 2◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:44:09
「ほら言った通りこっちも何もないだろ?」
確かにトレーナーの言う通り、見回しても特に変わったものや珍しいものは見当たらない普通の家。
多分アタシの家と同じ様な感じだと思う。
「でもこうしているとすっごく落ち着くんだよね」
(アタシの家に近いからなのか、それともキミの家だからなのか……多分両方かな?)
そんな事を考え天井を眺めてその後辺りを見回す。
さっきトレーナーが言っていた"何もない"という一言……確かに見渡す限り珍しい物とかは見当たらない。
だけどその言葉がアタシの探究心を刺激する。
「でもさ、何もないなら見つければ良いじゃん?」
そう言いながら寝転がっていたアタシは立ち上がり、トレーナーの方へ向き直り話そうとすると……
「ほら、ここにあるのとかさ」
「あ、それの事?」
立ち上がったアタシの目の前に映ったのはケースの中で大事に飾られている飛行機の模型。飛行機の事はよく分からないけど多分戦闘機ってやつなのかな?
トレーナーはそのケースを見つめながらアタシに語り始める。 - 3◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:45:14
「懐かしいなぁ……昔親父に我儘言って買ってもらった時の事思い出すや」
「今も好きなの?飛行機」
「まぁね。昔何度も飛行機のショーに連れられてそこから好きになったんだっけか」
目を輝かせながらその時の思い出を語るアタシのトレーナー。その横顔はまるで幼い頃に戻ったような感じだった。
時間を忘れたように夢中になるトレーナー……
でも視線の先にあるのはアタシじゃなくて——— - 4◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:46:17
「シ、シービー!?」
気付けばアタシはトレーナーの視線を強引にこっちへ向けさせていた。両方の手で顔を抑えてじっと彼の顔を凝視していると自然と二人の視線が合わさっていた。
いつもアタシを見てくれる瞳……いつもアタシに夢見てくれるその瞳に次第に吸い込まれるように……
「………あ」
アタシがハッとしたその時には互いの顔がもう目と鼻の先だった。慌てて距離を取ろうにも何故か身体が鎖で繋がれたかの様に動かす事はできなくて……
「シービー」
「………っ」
「大丈夫だよ」
「……!」
その一言がアタシに繋がれた鎖を砕いて……ううん、退こうとしたアタシに進む決意をくれたってはっきり分かった。
だからアタシは———
「ごめんねトレーナー。別にキミの夢中を否定するワケじゃない。でも………」 - 5◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:47:21
キミの一番の夢中は……
アタシでいて欲しいから——— - 6◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:48:25
レースでも感じたけど夢中な時間ってあっという間に過ぎていく。
キミに向かって一歩踏み出して唇を重ねた……言葉にすればそれだけの事だけど、さっきまで太陽が出ていたのに気付いたらもう部屋に夕陽が差し込んでいる。
あと少しだけ
もうちょっと
まだ足りない
そんな我儘な言い訳や理由を付けては何度も何度も呼吸を整えキミと唇を重ね続ける。
扇風機とエアコンの風と外の蝉の鳴き声しか聞こえなかった部屋。
でも今はアタシ達の息遣いが一番大きくて……まるでアタシ達二人だけの世界のように…… - 7◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:49:28
『!?』
まるでそんなアタシ達に痺れを切らしたかのように大きな轟音が響いて、ビックリしたアタシ達の重なっていた顔が離れる。轟音はその一回だけじゃなく何度も何度も響いて……これは花火の音だって理解したのはそう遅くはなかった。
「そういや今日は花火大会だったな」
「お腹も空いたことだし散歩で行ってみる?」
そんなワケでさっきの夢中な時間の興奮も冷めないままに身支度をし、外に出る。
朝昼とは打って変わってひんやりとした夜の風がアタシ達に吹き付けてくる。
普段は涼しいと感じる筈なのに今はそれだけじゃ全然足りない。
でもそのくらい、キミに夢中なんだなって実感できる……そう思えるんだ。 - 8◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:50:32
「その……さっきはゴメンね?」
「何もシービーは悪くないさ」
「でも…キミが夢中になってる所を遮って……」
「それ程シービーが俺の事見てくれているって改めて実感できてさ、嬉しかった」
本当に…キミはいつもアタシの事を……
「それにこれからは飛行機よりも……」
でも、それは感心しないな
「ダメ」
「え?」
「アタシの為って理由でキミが縛られるのはアタシが納得できないから」
「……! そうだったな」
「だから今度、アタシにも飛行機の事教えてよ。キミと一緒に夢中になりたいからさ」
そんなやり取りに夢中になっていたら、あっという間にアタシ達は祭りの会場に到着してた。 - 9◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:51:36
屋台で色々楽しんでそろそろ花火が本格的に始まる頃なのに、アタシ達はもう部屋に帰っていてスイカを頬張りながら隣り合って部屋から花火を眺めてた。
別に祭りの最中で花火を眺めるのがつまらないワケじゃないしむしろ楽しくて夢中になる。それでも帰ってきた理由はきっと……
「それにしても珍しいな。シービーが途中で切り上げるだなんて」
「キミだってあの時アタシが帰るって言った時、何も疑わず即座に頷いたじゃん?」
「まぁな。多分シービーと同じ事考えてる」
「ふふっ、アタシも同じ事言おうとしてた。それじゃ二人で言ってみる?」
気付けばあの時の様にアタシ達の顔はすぐそこまで近づいてた。
でも当然だよね。だって今、アタシ達考えてる事同じだから。
キミの息遣いが聞こえるほど近い距離……
あの時の様に見つめ合って…… - 10◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:52:52
『だって今』
『花火よりも』
「キミの事に」
「君の事に」
『夢中だから』
あの時のように、アタシ達の唇は重なった。 - 11◆1189VsJMks25/08/24(日) 05:53:55
以上、暑い夏にしっとりしたシービーの話
- 12二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 07:49:42
美しい話でした
- 13◆1189VsJMks25/08/24(日) 08:25:01
ありがとうございます
- 14二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:23:49
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- 15二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:27:49
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- 16二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:29:03
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- 17二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:30:07
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- 18二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:31:14
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- 19◆1189VsJMks25/08/24(日) 17:32:13
すみませんなりすまし等はおやめ下さい
- 20二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:32:39
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- 21二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:34:41
- 22二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:35:20
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- 23二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:35:38
早いとこレス削除がええで
- 24◆1189VsJMks25/08/24(日) 17:36:14
- 25二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:36:26
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- 26二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 19:49:42
お互いの存在で全てを満たせる……
「“何もない”がある」とはこういう事か - 27二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 19:51:34
そうそうこういうのでいいんだよ(そうそうこういうのでいいんだよ)
- 28二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 20:37:03