【悲報】スティルインラブ、金鯱賞で引退【ss】

  • 1二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:08:04

    あれからトレーナーを引退する事も考えたが、スティルの希望もありトレーナーは続けることになった。
    新しい生徒も担当しているが、なかなかに手のかかる子だった。それでもスティルと共に歩んだあの期間は俺にとって間違いない経験になっていた。あの頃を思い出して一つ一つ解いていき、なんと今日念願のG1を勝った。

    しばらく2人で喜びを分かち合い、その日は自宅に帰る。もうすっかり夜だ。俺はトレーナー寮ではなく近辺にマンションを借りていた。鍵を回し、「ただいま」と言いながらドアを開けると、ふわりといい香りと共にスティルインラブが出迎えてくれた。

    「おかえりなさい、あなた」
    「ただいま、スティル」

    走らなくなった。普通になることを選んだウマ娘。「走らない私じゃ、貴方を笑顔にできない」と何度も言われた。
    それでも俺はスティルを見ると幸せで胸がいっぱいになるし、一緒にいると癒されるし、共にベッドに入ると今でもドキドキする。

    「G1勝利、おめでとうございます」
    「ありがとう、あの子も喜んでたよ。スティルにもよろしくってさ」
    「ふふ」
    「なあ、スティル」
    「はい、なんですか?」
    「今日のあの子の走りは、まるでかつての君を彷彿とさせるようだった」
    「···はい」
    「正直ワクワクしたし笑顔にもなった」
    「······っ」
    「その上で、言わせてくれ」

    "今でも愛してる"

  • 2二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:23:12

    助かった

  • 3二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:32:19

    >>1

    有能

  • 4二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:33:21

    偽りのハッピーエンドやねんな

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:36:22

    こういうエンドもどこかの世界線ではあるんだろうな、ネオユニの発言鑑みるに
    心のどこかに空虚を抱えながらも人並みの幸せに落ち着くか、全部受け入れた上で破滅しながら絶頂にたどり着くか
    どっちが良いかは人それぞれだし、多分どっちの世界線のコンビも自分の選択がベストと言いそう

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:36:49

    >>4

    こっちのスティルだって本物なんだからいいじゃない。

  • 7二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:38:52

    育成verは3冠取ってトレーナーも喜んでくれるけど80点の幸せで心ここに在らず、貪欲だからトレーナー為に求められている紅に染まっちゃおうってだけだからな

  • 8二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:40:15

    トレーナーのあの笑顔は見れないけどこれでいいんだよこれで

  • 9二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:40:53

    別にレースじゃなきゃトレーナーの笑顔が見れないって訳じゃないからな

  • 10二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:41:45

    続きは無いのですか?

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:42:24

    トレーナーが好きなのは間違いないしトレーナーだってスティルが好きなのも変わらない筈だろ
    踏み込み過ぎなければこうなるのも全然あり得るから偽りではないと思いたい

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:43:23

    スパロボ「公式で報われないのであらば違うやり方で報わらせりゃええねん」

  • 13二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:44:23

    一生真に満たされることはないだけで合格点は超えてるからこれはこれでアリかつあり得るルートなんだと思うよ

  • 14二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:45:05

    >>12

    スパロボと違って10割救われてるわけじゃないから少し違うと思う。ていうかあれは見方によっては公式だし

  • 15二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:46:15

    なんかこう…スレチだがサムライレムナントの伊織みたいな奴だよなスティル…
    渇きを抑えて振る舞えるであろうルートと間違いだらけだが満たされるルートが存在しているのが…

  • 16二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:47:07

    >>13

    妥協して生きるのも人生だもの

  • 17二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:47:24

    トレーナーとしての「本能」に無意識的にでも抗えてなかった結果、スティルの古馬以降の「本能」再起動に至ったから、本編ではどっちも「本能」を受け入れたGoodエンドか飲まれたNormalエンドになった

    トレーナーに人としての「理性」が勝って「私(理性)」を愛すと発言すれば、スティルも「私(理性)」が勝ってこのSSみたいになったかもね

  • 18二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:48:18

    >>15

    割と真面目にスティルシナリオが刺さった人にやってほしいゲームだわ>サムレム

  • 19二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:48:26

    子供が産まれたらまた変わるかな

  • 20二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:48:53

    >>7

    結局二人とも今のまま終わることに満足できないで突っ走ったのが育成シナリオのルートって感じであのまま終わっても幸せ自体は待ってるんだろうね

  • 21二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:50:13

    ものすんごいご都合主義展開が起こってスティルトレが史実のみゆぴーのようにブルーコンコルドの主戦も途中から務めるようになってたら何とかハッピーエンド行けないかな?

  • 22二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:50:41

    そもそもスティルがレースで勝った時に向けて貰える1番の笑顔が欲しくて本能叩き起こしたのが育成シナリオだからスティルが平穏な幸せと日常で向けられる笑顔で満足できたならこういうルートに入ることもあると思うよ

  • 23二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:51:04

    >>13

    結局一生満たされないまま人生を終えるのかどうかなんて死ぬまで分かりっこないからなぁ

    何を幸せに感じるのかなんて歳を経るごとに移り変わってゆくものだし、だからこそ今は空虚に感じても幸せな破滅という楽な道に逃げずに生き続けて幸せを探さなきゃならない

  • 24二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:52:56

    >>15

    どっちかというとトレーナーが伊織じゃねぇかな…

    結局スティルはトレに愛されたくて本能墜ちしたわけで、トレが影の薄い理性スティルを真に愛してたならこの結末にはなってないとは思う

  • 25二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:53:24

    >>15

    ファーストコンタクトやサポカイラストはオクトラ2のヒカリ・クと同じタイプなのかなと思ってたわ。闇人格の原因が"血"であるのも言動とかも共通してるし、ただ彼とは割と違ったわ

  • 26二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:54:11

    >>13

    競技者であるからには真に満たされるばかりではないからな

    三冠ウマ娘を志すも届かなかったからといって以降の人生が不幸かというと全然そんなことない訳で

  • 27二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:57:09

    許せ一歩我らが行くことを
    今、唸る時を
    身を焦がし焼き切れても
    道だけは続いていく

    サムレムの主題歌も割とスティルインラブで笑う
    笑えねぇよ

  • 28二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 18:05:23

    このレスは削除されています

  • 29二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 18:07:11

    もうすっかり夜も更け、もう深夜と呼べる時間になっていた。その間もスティルはずっと待ってくれていた。

    「あなた···」

    ベッド隣り合って座る。肩をぴったりとくっつけて、上目遣いで太ももを擦ってくる。"そういう事"の合図だ。
    しかし、なんだか良くない気がする。

    「···何か悩んでる?」
    「え···いえ、何も」
    「走るのを辞めたこと、まだ気にしてる?」
    「······」

    俯いてしまったスティルを抱きよせ、しっかりと目を合わせて伝える。

    「···何度でも言うよ。俺は今の君を愛してる」
    「あの頃の狂気を纏った走りも凄かった。でも俺は君と過ごしているうちに、素の"スティルインラブ"に惹かれたんだ」
    「っ···!」
    「だからこんな風に、自分に価値を見いだすだけが目的みたいな行為はしたくない」

    スティルの瞳から美しい涙が零れる。ようやく、伝わった。

    「うう···ありがとう、ございます···!」
    「お礼なんて。俺が君を好きなだけだから」
    「それに、すみません。あなたもお疲れでしょうに、私ってば自分のために···今日はもう寝ましょうか」
    「いや、あの···その···」
    「どうしましたか?」
    「その、したくないわけじゃないというか···」
    「···まあ、うふふっ。ねえ、あなた···私も」

    "今でも愛してる"

  • 30二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 18:16:04

    一つだけ言いたいのは、ssって最高だなって。

  • 31二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 18:18:39

    このレスは削除されています

  • 32二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 18:44:52

    もっとくれもう少しで俺の心が直りそうなんだ

  • 33二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 21:31:32

    >>29

    伴侶と共にそれぞれの因子を重ね合わせて次代に繋ぐのも、ティアラウマ娘の伝統でありウマ娘の本能の一つ

    なので、それもまた立派な幸せの一つだと思いますね

    だから、寧ろたっぷり愛し合うべきだと思います


    それはそれとして、とてもとても良いssだと思います

  • 34二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 23:00:57

    >>4

    違う。もう一つの世界のトゥルーエンドだよ。

  • 35二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 23:51:42

    「スティル...あの...」
    「...なんですか」
    「いや、だから誤解で...」
    「言い訳はいりません」
    どうしてこんなことに..

    トレセン学園。
    俺は担当しているウマ娘と今後の予定について話していた。

    「晴れてG1ウマ娘になったわけだし、距離的にも目標は大阪杯かな。年明けはまずは金鯱賞にしよう」
    「賛成です!」

    日も落ち始めたので、約束のついでに彼女を見送るために校門まで一緒に向かう。今日はスティルが迎えに来てくれると言っていたので、帰りに外食でもしようということになっているのだ。

    「トレーナーさん、ずっとニヤニヤしてますね」
    「そりゃあそうだろ。愛する妻が来てくれるんだぞ?」
    「まあ確かにスティルさんは美人ですけど〜」
    「それだけじゃないぞ!優しくて可愛くて料理もできてお菓子も作れてコーヒーも...」
    「あーもう分かりました分かりました!」

    彼女はめんどくさそうにそう言うと、何故か俺のネクタイをきゅっと引っ張り、キス...をするふりをした。

    「お熱い夜を〜!」

    そう言い残すと颯爽と姿を消してしまった。

    「何だよ急...に...」

    校門の向こうには、スティルが佇んでいた。

  • 36二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 23:55:28

    「というわけなんだって!」
    「...生徒のせいにするんですか?」
    「ちがっ...!」
    「愛してるって、言ってくれたのに...」

    スティルはそのまま俯いてしまう。
    悲しませたことは確か。

    「愛してるよ...信じられない?」
    「...そんなことは」
    「それとも、何かあった?」

    責めないように促してあげると、こちらを伺い、ぽつりと零す。

    「...最近、キス...してくれないから」
    「...えっ?」

    耳を疑った。

    「いや、だって...この間スティルが、「すみません、キスばかり求めて...はしたない」なんて言ってたからあんまりしたくないのかなって」
    「〜~~~!!!!」

    スティルはソファに顔を埋めてしまった。

    「私ったら...あなたの優しさにも気づかずに...!」
    「いいって、誤解が解けたなら良かったし...それに、今夜はまだまだ時間あるし...な」
    「...はい!」

    その夜はかつてないほど盛り上がった。

  • 37二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 23:56:43

    ーーーーー

    「ふーっ」

    校門でスティルさんを見つけたとき、明らかに何か思ってそうな顔だったから一芝居打っちゃった!トレーナーさんは気づいてなさそうだったし。
    あんなに想い合っている二人が離れ離れになるなんて嫌だし。例えほんの少し緩んだだけだとしても...

    「私が、二人の赤い糸をきつ〜く結び直すきっかけになればいいな」


    おわり

  • 38二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 00:40:44

    まあこれはこれでありだな

  • 39二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 01:05:26

    少なくとも俺は、スレ主の頑張りが誰かの心を癒すことになると信じている
    良いものを見させてもらった。ありがとう

  • 40二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 01:44:43

    脳が破壊されてるから本当に助かる
    癒しがほしい…

  • 41二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 02:50:59

    本編も分岐でこのルートがあってほしかった

    ……メインストーリー第5部みゆぴー編とかでやれない?やろうぜ?サイゲさん?

  • 42二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 04:16:03

    なるほどアカイイトちゃんか…(G1馬になった翌年に大阪杯を目標に始動戦として金鯱賞出場)

    ほんとこの世界線良すぎるからもっとください

  • 43二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 04:22:22

    >>37

    きつ〜くって表現がグッとくる

  • 44二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 06:58:55

    スティル完全三冠イベで推定アカイイトのウマ娘がでることを教える

  • 45二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 09:35:06

    このレスは削除されています

  • 46二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 11:56:27

    金鯱賞3着は上々だった。
    同じ距離で尚且つ得意な阪神レース場だから、大阪杯はいい勝負ができると思っていた。

    大阪杯 10着

    「...お疲れ様!よく頑張ったな」
    「...お疲れ様です」
    「「.....」」

    どちらともなく黙り込む。G1ウマ娘になってからここまでの惨敗は初めてだった。どう声をかけてあげれば辛くないか。そんな初歩的な事が、これまで唯一の担当が"トリプルティアラ"の俺には分からなかった。

    「...も〜トレーナーさん、なんて顔してるんですか!大丈夫!やれるだけの事はやりました!」
    「うん、そうだな。本当に…よく頑張った!まだまだ次がある!」
    「はい!」

  • 47二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 12:14:29

    ヴィクトリアマイル 8着

    「大丈夫!苦手な距離でよく頑張った!展開さえ向けば...」
    「そうですね!展開が...」
    「疲れも溜まってるだろうし!しばらく休息に充てよう。ゆっくり休んで、具合を見つつ府中ウマ娘ステークスから再始動。目標は当然...」

    「「エリザベス女王杯!!」」


    秋始動戦
    府中ウマ娘ステークス 10着

  • 48二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 12:35:13

    このレスは削除されています

  • 49二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 12:36:22

    秋始動戦
    府中ウマ娘ステークス 10着

    「大丈夫!本番はまだ...」
    「トレーナーさん」

    いつになく真剣な顔で、悲しいような声色で、彼女は告げた。

    「私、走るの辞めます」

  • 50二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 14:47:06

    気の利いた事は何も言えず、その日は解散した。
    家でもそのことばかり考えていると、スティルが声をかけてきた。

    「何かお悩みですか?私で良ければ聞きますよ」
    「...うん。だけど、これはトレーナーとしての悩みだから大丈夫」

    心配してくれた事はありがたいが、とスティルを横目に再度頭を悩ませようとすると。

    「だったら...余計私にも相談してください!」

    ピシャリと一喝するような、スティルにしては珍しいような声色で。

    「あの子は...私に憧れて、あなたに憧れてトレセン学園まで来たんですよ!私たちで考えなくてどうするんですか!?」

    そうだった。担当契約を交わした時彼女はスティルのトリプルティアラを見てレースに興味を持ったと言っていた。
    それからスティル含めて情報共有をしたり、トレーニングに付き合ってもらったりもした。
    俺一人でどうにかしよう、どうにかできる、なんて傲慢だった。

    「ありがとう...話、聞いてもらってもいいか?」 
    「ふふっ、勿論です」

    スティルはいつもの穏やかな笑顔だった。
    改めて、自分の弱い部分を認めて、それを補い合える関係が理想だと思った。 

  • 51二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:31:48

    このレスは削除されています

  • 52二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:32:49

    やはりきちんとウマ娘本人の意思を確認した上で尊重してあげたい。その娘にとって最適な選択肢を選んであげたいということで、翌日実際に本人と話し合うことにした。

    「一応、確認したい。どうして辞めようと思ったんだ?」
    「もう、やり残したことがないからです」

    彼女はやけに落ち着き払った様子で答えた。

    「スティルさんに憧れて、トレセン学園に入りました。そしてトレーナーさんに担当してもらって、たくさんトレーニングをしました。トリプルティアラどころか出場することもできなくて、何度も諦めかけました」

    淡々と続ける。

    「それでもトレーナーさんもスティルさんも、じっくり向き合ってくれて...ようやく、スティルさんが取れなかったエリザベス女王杯を勝てました。もう、じゅうぶん幸せなんです」

    言い終えたとばかりに笑顔を見せる。その様子からして半分は本心だと思う。
    しかし、どこか大事な部分が欠けている気がする。

    「君は?」
    「...え?」
    「スティルの後を追って、満足の行く結果を出せて、幸せ。じゃあ、君は?」
    「言ってる意味が...」
    「これは君の人生だ」
    「っ...」

    少しの間押し黙った。
    俺は待った。彼女から口を開いてくれるのを。

    「...私は」

  • 53二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 17:53:01

    「悔しい...です!エリ女もフロックだって言われて!本当はもっと勝ちたい!そんな奴らを見返すくらい!いつか私のレースを見てトレセン学園に来ましたって言われたい!」

    この激情が、彼女が持つ個性だ。
    赤く赤く燃え上がる力。最近は見なくなってしまった力。

    「それなのに...勝てない!もう分かんないです...大好きなはずのレースが近づくたびに辛くなって...そのくらいなら、今の時点で幸せだって言い聞かせて辞めたほうが...」

    いつかを思い出す。だけど、彼女とは違う。
    俺は向き合わなければいけない。大人として。導く者として。

    「もう一回だけ走ってみないか」
    「もう、一回?」
    「次のエリザベス女王杯。秋の目標だったろ?」
    「でも...私...もう...」
    「去年までの熱を持った君はいなくなった。恐らく悲願を達成して燃え尽きた」
    「......」

    「だけど、今は君自身の火がついた」
    「私、自身の...」
    「もう一度だけ、今まで頑張ってきた自分自分を信じてみないか」

    長い沈黙のあと、彼女はゆっくり口を開く。

    「私、やります!」

  • 54二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 19:36:55

    エリザベス女王杯 当日

    「調子はどうだ?」
    「絶好調です!」
    「それなら良かった!」

    気合乗りは十分。しかし相手関係はかなりレベルが高い。
    トリプルティアラウマ娘、今年の秋華賞ウマ娘、前哨戦を勝ったウマ娘、海外からの刺客、あの"貴婦人"からも目をかけられているウマ娘...
    直前まで作戦を練ろうと頭を働かせていると、明るい声がかけられた。

    「トレーナーさん、私、大丈夫です!」
    「何が?」
    「今日は...今までにないくらい!楽しく走れそう!」

    ハッとした。ウマ娘が走る根本たる理由。そう、それだけなんだ。

    「そうだな!それが一番だ!」
    「はい!」

    すると、係員の呼ぶ声が聞こえた。

    「もうすぐ入場か」
    「トレーナーさん...私!今まで一緒に頑張ってきた皆さんとの絆を信じて!そんな私を信じて!最っ高に楽しんで!エリザベス女王杯2連覇!やっちゃいます!!」

    誰がどう見ても最高の状態。そんな彼女にかける言葉はただ一つでいい。しっかりと、目を見て。

    「楽しんでこい!アカイイト!」
    「はい!!」

    それは、今年に入ってからほとんど見なくなった、はじけんばかりの笑顔だった。

  • 55二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 19:55:19

    「負けた〜!!!!」

    結果は4着。2着同着なので実質3着。負けたとはいえ、今年に入ってからずっと不調だった彼女にとっては久しぶりの掲示板入りだ。

    「なあ、イト」
    「なんですか〜!?私落ち込んでるんですけど!」
    「楽しかった?」
    「......」

    「もっちろん!です!!」

    飛び跳ねて心から楽しかったと伝えてくれる彼女を見ると、トレーナーをやっていて良かったと思う。

    「走るのってやっぱり楽しい!引退なんて撤回撤回!私まだまだ走りますよ〜!」
    「よし!それじゃあトレセン学園に戻ったら早速次走のミーティングだな!」
    「えー!鬼〜!!」

  • 56二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 19:56:22

    トレーナー宅

    「スティル、いつもありがとう」
    「...何がですか?」

    家に帰るなりどうしてもスティルへの感謝を伝えたくなった。突然過ぎて困惑させてしまったが。

    「あの子がこれまで頑張ってこれたのも、今回やる気を取り戻せたのも、ほとんどスティルのおかげだ」
    「そんなこと...」
    「それだけじゃなくて、家事とかそういうのも。それに何より...俺と出会ってくれて、ありがとう」

    いまだに、愛を伝えると顔を赤くして両手を頬に当てて俯いてしまうところがとても可愛らしい。改めて本当にずっと好きでいてくれてるんだなと感じる。

    「私も...同じ気持ちです。出会えて良かった」

    まだ廊下だが、抑えきれずにぎゅっと抱きしめる。
    細い体からは夕飯と甘さが混ざったようないい匂いがして、温かくて、柔らかい。

    「「...幸せ」」
    「「あっ...」」

    「ははっ」
    「ふふっ」


    おわり

  • 57二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 02:14:13

    遅くなったけど良SSありがとう…

  • 58二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 10:23:28

    とても助かりました

  • 59二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 17:40:46

    >>54

    これキズナ(アカイイトの父)ともかけてるのか···改めて素晴らしいSSをありがとう

オススメ

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