【SS】マルクト「ヒマリ、千年難題を解き明かすのです」Part11

  • 1125/08/24(日) 21:43:31

    セフィラたる遥か未来の科学技術へと挑む話。

    不可思議な『二体目』たちとミレニアム生徒会長の挑んだ決戦。『マルクト』殺しの犯人は?

    世界を書き換えるキヴォトスの半神。忘れ去られたのはミレニアムの特異点。


    そして始まり終わるはケセドとの対決。

    『慈悲』の名の下に残った悪夢は何処にか。


    ※独自設定&独自解釈多数、オリキャラも出てくるため要注意。前回までのPartは>>2にて。

  • 2125/08/24(日) 21:44:32

    ■前回のあらすじ

     晄輪大祭を無事に終えた特異現象捜査部の面々。しかしそこで知ったのは『二体目』のホドの存在であった。

     セフィラはそれぞれ一機しか存在し得ないはず。ならば一体『二体目』とは何なのだろうか。


     そんな疑問を抱えたまま向かうは第四セフィラ、ケセドとの決戦。

     肉体から引き剥がされて飲み込まれるは精神世界。物質界を超越した無限の迷宮。


     そこから辛くも脱出し、ミレニアムへと帰還したマルクト一行。

     気付いてしまったのは残酷な現実。悪い夢。仲間がひとり、消えている。


     遂に出てしまった犠牲者に、誰かの悲鳴が夜のミレニアムへと木霊した。


    ▼Part10

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    ▼全話まとめ

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    ▼ミュート機能導入まとめ

    ミュート機能導入部屋リンク & スクリプト一覧リンク | Writening  【寄生荒らし愚痴部屋リンク】  https://c.kuku.lu/pmv4nen8  スクリプト製作者様や、導入解説部屋と愚痴部屋オーナーとこのwritingまとめの作者が居ます  寄生荒らし被害のお問い合わせ下書きなども固…writening.net

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  • 3125/08/24(日) 21:58:00

    埋め

  • 4125/08/24(日) 22:06:21

    10まで埋め

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 22:12:47

    保守

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 22:22:13

    立て乙


    >>2

    「ならば一体『二体目』とは何なのだろうか。」が「一体」と「二体目」でややこしい…

  • 7125/08/24(日) 22:31:20

    >>6

    投稿するときに「だから何体なんだよっ!!」と我ながらちょっと笑ってしまったので通しましたw


    読み辛くならないよう漢字をひらがなに開いたりはしているのですが、ときおり本気で意図せず読み辛くしてしまってはいたりするので気づいた時には大抵呻いたりしてますね(特にスマホの予測変換)

  • 8二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 22:32:13

    寝たら本当に忘れるとかじゃなかろうな…

  • 9125/08/24(日) 22:32:48

    >>7

    うがぁ!よそくへんかん!予測変換は敵!!

  • 10125/08/24(日) 23:07:39

    埋めぇ!

  • 11125/08/24(日) 23:18:13

    「悲鳴? あー、誰かが音響兵器でも誤作動させたんじゃないかな? そうそう、エンジニア部。僕の方で注意しておくから君はほら、校内新聞でも書いてよ。『恐怖! 夜に聞こえたバンシーの叫び!』って感じでさ。……うん、よろしく頼むよ」

     がちゃりと、いやそんな音は鳴らないものの、会長室の椅子に腰かけたミレニアムの生徒会長は通話を切った。

     保安部部長兼セミナー書記からの連絡。しかし対処できるようなことなんて一つも無いため適当に誤魔化しながらお茶を濁す。

    「ほら、やっぱり死んだ。ま、分かった上で僕は止めなかったけどさ」

     特異現象捜査部が挑むケセド戦で唯一死者を出さない条件は三つある。

     一つ目にマルクトが『廃墟』に向かわないこと。
     確実にケセドに呑み込まれるため無防備になる。加えて下手に集められるケセドの『分体』が存在するせいで正確なオペレーションが出来なくなる。

     二つ目に調月リオを『廃墟』に向かわせないこと。
     ケセドは誰一人として逃さないよう全ての『意識』を引き剥がしにかかる。常日頃から忘却という精神の死が身近にある一之瀬アスナは特異現象捜査部の中で最もケセドの初動を受けにくい。何故ならちょっと触れればすぐに剥がれるのだから、そこにリソースは割かれない。

     次に明星ヒマリ。神性が高いと言うことはつまり、基底現実からの乖離度が最も高いことを意味する。
     分離し易い者は軽く剥がしてそれで済む。だが――負の神性とも言える調月リオだけは違う。セフィラの天敵ゆえに確実に消される。

     そして――三つ目。
     自分が言った「ケセドの機能」を真に受けないことだ。

    「分からないことと分かること、前者は万全の警戒をするだろうけど、少しでも分かることがあればそれを軸に対策を練る。意味の無い対策を練って、安心する――」

     そう、あの一言は後押しだった。
     対策した気になって調月リオの警戒を緩ませる一言。放っておけば確実に『神性の解体者』はケセドの機能についての推察をまとめ上げていたに違いない。

  • 12125/08/24(日) 23:19:24

     だから意識を別に向けさせた。記憶が消えても戻れる方向へと視線を誘導した。

    「ははっ――」

     歪む顔を押さえながら席を立つ。
     全部分かっていた。自分が意図してリオを死に追い込んだのは理解している。

     言い訳なんてしない。最善だった。調月リオがケテル戦で『生き残れる』最善がこれだった。

    「安心しなよ。ケセドは『名前』を書き写す。コピー&デリート。君たちは何かを失ったことしか覚えていられない」

     夜が明ける頃には全てが忘却の彼方へと消え去る。それがケセドの機能。死なない者を殺す技術。

    「大丈夫、僕は全部覚えているから。リオちゃんは僕が『作って』あげるよ」

     代わりは幾らでも作れる。何も問題は無い。空虚な喪失感だけを胸に抱いて「悪い夢だった」で終わるだけの悪夢。きっとこれまで以上に万全を尽くすはず。調月リオの身体も、作り直せばもっと強くなる。死なずに済む。

     そして――ケセドによる殺戮ならば『テクスチャ』の排斥から免れる。

    「大丈夫……何も問題は無い。問題無いんだ。『役割』は損なわれない。みんな忘れる。僕だけが覚えているだけで、誰も何も気が付かない……」

     皆が完全に調月リオの存在を忘れてしまったのならそれでいい。問題は無い。ケセドが役割を果たしてくれる。
     誰かが一時的に調月リオを覚えていても問題は無い。作り出して送り込んで適当に言いくるめば良い。

     問題は無い。問題は無い――

    「だから僕は悪で良い。マルクトの役割を生かし続けるためなら何でもする。だからほら――笑えよ」

     会長室に置かれた姿見。そこに映る『会長』の姿はひどく憔悴していた。
     けれどもこれは自分ではない。『この身体』が上げる悲鳴であって自分ではない。

  • 13125/08/24(日) 23:21:02

     この感情も、自分のものでは決してない。
     皮肉めいて、それでもなお優しい子供の感性だ。自分のものでは決してない。

    「思った通りに事が進んだ。ほら、そこは笑うとこだろう? ねぇ……」

     だから嫌なんだ――と、僕は思った。

     偽りだらけの自分にとって、『本物』が失われるのは身を引き裂くように痛い。痛みを感じているのは僕じゃない。この身体だ。僕は痛みなんて知らないはずなのだから。

    「謝るものか。赦しは乞わない。イェソドを見てから僕はずっとこの日が来ると思っていた……そうだろう?」

     笑え。そして忘れるな。この罪を。重荷を背負う責任を。

    「この旅は必ず終わらせる。間違った欠片を消すんだ。そうじゃなきゃ――誰も救われない」

     いずれ忘れ去られる悪い夢。ただしそれは自分を除く。
     忘れられずに続くのは自分の記憶。決して覚めない永遠の悪夢。

  • 14125/08/24(日) 23:23:00

     イチかバチかのその中で、見つけ出したのは奇跡のような旅の終わりであった。
     千年に一度としてなかった条理を書き換える天才たち。それらが一堂に会したエンジニア部。

     誰も死んだことにさせない。そんなことは許さない。
     もしもそれが誰の逆鱗に触れたのであれば、その時は喜んでこの身を差し出そう。

    「はっ――ははは……っ」

     無理やりにでも笑いながら吐き出す狂気。狂ってしまえば楽だったと言わんばかりの笑みを浮かべる。

     ――抗わないでよ。頼むから。

     故なき喪失。それは『慈悲』。

     ――受け入れてよ。全部忘れて眠ってよ。

     痛みなき喪失。今なら神経痛だけで済む。

     そうしてここには――会長室には夜明けを待つ者だけがいた。
     優しき悪。ケセドの『慈悲』を賜ることだけを願い続ける小さき弱者ただ一人が。

    -----

  • 15125/08/25(月) 01:28:29

    保守

  • 16二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 02:22:57

    ネタバレになるしこの後どうなるかはわからんが、そうなるなら原作キャラ死亡の注意はあった方がいいよ

  • 17二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 09:19:10

    保守

  • 18125/08/25(月) 10:30:01

     ミレニアムに響き渡ったマルクトの悲鳴。
     『精神感応』による拒絶不可能な絶叫を聞いて、チヒロはラボへと駆けこんだ。

    「マルクトッ!!」

     ラボの奥には身体を丸めるように蹲るマルクトの姿。金色の瞳から止めどなく溢れる涙。恐慌によりもはや人間なのか機械なのかも分からない状況にあることだけは確かであった。

    「マルクト、大丈夫!? 何があったの!?」
    「チ……チヒロ……、リオが……リオがいません」
    「っ……」

     チヒロは顔を歪める。自らの記憶から消えかけていることを自覚しているからだ。

     調月リオ――エンジニア部結成時から共にいたはずの友人。
     臆病だが臆病ゆえに頭がキレる天才。私たちの友達……そこまでは思い出せる。

     しかし、既に声も顔も思い出せなくなっていた。

    (落ち着け……ちゃんと何が起きたのか整理しないと……)

     取り返しが付かないことが本当に起きてしまったのか正しく整理する必要がある。
     ひとまず携帯を取り出して特異現象捜査部のグループチャットを開いて、全員に『マルクトはラボに居た』ということを連絡する。

     即座に了解の返信が全員から帰って来る。全員ここに向かっているようだ。

    【ちょっと『廃墟』に行ってくるね!】

     アスナから来たチャットだけ妙な一文が添えられていたが、もしかすると何かに気付いたのかも知れない。一旦アスナは好きにさせておくことにした。

  • 19125/08/25(月) 10:31:15

    「ケセド、あんた今なにかをしているわけじゃないんだよね?」
    【ええ、私はいま何もしていないわ】
    「ちっ……ああ、そういうことか! あんたが被っている疑似人格がリオなんだ。だからか――!」

     疑似人格とは死んだ人間の人格から作り出されるセフィラの機能。
     以前聞いた限りではそのはずで、だからこそケセドの存在がリオの死を肯定してしまっている。

    (本当に、本当にそうなのか……?)

     マルクトの背中をさすりながら奥歯を噛み締める。ちょうどその時、他のメンバーもラボへ続々と入って来た。

     とりあえずアスナ以外の全員が集まったが、皆の表情は険しい。

     真っ先に口を開いたのはヒマリだった。

    「まず、落ち着いて聞いてください。私は、この状況は何とかなりはすると考えてます」
    「本当ですかヒマリ!?」

     今にも縋りつかんばかりに顔を上げたマルクト。しかしヒマリの表情は決して楽観的なものではなかった。

    「何とかなりはする、というのはあくまで生き返るという意味ではありません。覚えておりますか? 会長の言葉を」

     思い出すのは会長の言葉。あのとき会長はこう言っていた。

    『いいかい? ケセドは記憶を書き換える。あと人の姿を見えなくする。何かおかしいと思ったら……それか悪い夢だと思ったら一晩眠りなよ。そうすれば、次の朝には元通り。全部夢だったで終わるだけ』

     あれ――と違和感を覚えた。
     真実をはぐらかすことを嘘と言うのなら会長は嘘吐きだ。発言全てを信用できるわけではない。

     しかし――

  • 20125/08/25(月) 10:32:38

    「一晩眠れば……?」
    「そうですチーちゃん。恐らくそれがタイムリミットです。夜が明ける頃にはきっと私たちはこの出来事自体を忘れてしまうのかも知れません」
    「『誰かが死んだ夢を見た、でも全員いるから気のせいだった』ってこと……?」
    「その可能性が最も高いと思われます。もしくは……会長はリオを何らかの方法で『用意』できるのでは無いでしょうか?」
    「は……?」

     ヒマリの言っている意味が分からず一瞬呆けてしまう。
     どういうことかと問いただすと、ヒマリは静かにチヒロの目を見た。

    「私はリオのことをはっきりと思い出しました。恐らく忘れ方には個人差があると思うのです。そしてもしも私が思い出してしまったらそれはもう『夢だった』では終わりません。だって明らかに居なくなってしまっているのですから」
    「ちょっと待ってヒマリ。あんた……何か知ってるの?」
    「チーちゃん。以前『スワンプマン』の話をしたことを覚えておりますか?」
    「っ!」

     それは以前マルクトとセフィラの不死性の話をしたときのことだった。

     『スワンプマン思考実験』。死んだ直前の情報を完全に再現して生まれた人間は、死んだ人間と同じであるか否か。

     機械は役割に同一性を持つために、代わりの部品となればそれは死んだことにならないというロジック。人間の死と意味するものが異なるという話であった。

    「会長が本当にマルクトを作り出したのなら、会長は何らかの方法で『代用品』を作り出すことが出来るはずです。事実、初代『マルクト』は本当の死を与えられて消滅してますが、新たなマルクトによってセフィラの旅は始まっております」
    「ちょっと待ってよ! それでもリオは機械じゃなくて人間なんだよ!? 代わりって……私はそれを生き返ったなんて思えない!」

     それは作り出された『二人目』であって『本物のリオ』じゃない。

     けれど、もしも本当にそんなことが出来るのなら『リオが死ぬ夢』だと認識をすり替えられて、その上でラボに寸分違わないリオが居れば恐らく二度と思い出せなくなる。辻褄が合ってしまえば違和感なんて覚えようもない。

スレッドは8/25 20:32頃に落ちます

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