【閲覧注意(🎲)・SS】終章・ゾンビ映画を作ろう

[1 1◆wrMSm.CxZiIw 25/08/26(火) 23:15:32]

前スレたち

【閲覧注意🎲】ゾンビ映画を作ろう｜あにまん掲示板

【閲覧注意🎲・SS】続・ゾンビ映画を作ろう｜あにまん掲示板

昨日スレ画が貼れなくて全部乗っ取られたんだけど、今日は貼れるといいな……。

[2 1◆wrMSm.CxZiIw 25/08/26(火) 23:16:32]

なんでスレ画にすると貼れないんだろう

[4 1◆wrMSm.CxZiIw 25/08/26(火) 23:19:38]

【登場人物】

主人公：千奈
恋人：ことね
仲間達：麻央、莉波、手毬、美鈴、あさり、邦夫、倉本爺

死亡：咲季、リーリヤ、清夏、燕、星南、学P、Daトレーナー、Voトレーナー、香名江

失踪：広、佑芽

未登場?：Viトレーナー、優


現在学Pとアイドル達は、自主制作したゾンビ映画の試写会を行っている。そのためどんな惨劇があろうとも、どんなグロ描写が入ろうとも、それらは全て虚構に過ぎない。実に画期的で安心安全な曇らせ防護策である。

[5 1◆wrMSm.CxZiIw 25/08/26(火) 23:21:43]

【生存者と武器】

◯千奈：バール + 手榴弾
◯ことね：モーニングスター
◯手毬：二丁拳銃
◯麻央：鎖鎌
△莉波：スレッジハンマー、現在戦闘不能
△美鈴：薙刀、現在戦闘不能
(◯あさり：ナイフ)
◯邦夫


【退場者と死因】

✕咲季：物語開始時、既に感染していた
✕清夏：咄嗟の判断で咲季から手毬を庇う
✕リーリヤ：日課のランニング中に襲撃に遭う
✕燕：リーリヤを助けようとして数の暴力に討ち取られる
✕学P：気づいたときには手遅れだった
✕星南：ゾンビの銃乱射からことねを庇う
✕Da.Voトレーナー：学園関係者も"ほぼ"全滅済
✕香名江：倉本本邸への襲撃で感染し、完全変異の前に自害

[6 1◆wrMSm.CxZiIw 25/08/26(火) 23:23:21]

【時系列整理】

-0日目-

　・ゾンビハザード発生
　・咲季死亡


-1日目・昼-

　・清夏、手毬を庇って死亡
　・燕、襲われたリーリヤを助けるも不意打ちで死亡
　・リーリヤ、燕に助けられるも数の暴力で死亡
　・↑千奈ことね手毬、目撃で気が動転
　・莉波とあさりが千奈達を救い、一同合流
　・学P死亡、千奈が決意を固める


-1日目・夜-

　・昼の死亡者を全員が知る
　・広佑芽、失踪
　・ことね、手毬と謎の密約

[7 1◆wrMSm.CxZiIw 25/08/26(火) 23:24:29]

-2日目・昼-

　・武器調達
　・ことね手毬、星南麻央の指導のもと実戦を経験
　・十王財閥がワクチン開発中と判明、あさり交渉
　・学園防衛
　・千奈莉波美鈴、Daトレーナーと戦闘
　・美鈴、ゾンビウイルスに感染


-2日目・夜-

　・美鈴、不眠に苛まれる


-3日目-

　・美鈴、思うように身体が動かず。手毬が異変に気づく。
　・美鈴、血が変色


-4日目-

　・美鈴、不安症状がピーク。全員が異変に気づく。
　・美鈴、実質的に戦闘不能に
　・完全なゾンビ化までの残り時間が判明
　・ワクチン開発促進のため、ゾンビのサンプル採取開始
　・千奈星南莉波、Voトレーナーと戦闘
　・美鈴のタイムリミットまで、残り4日

[8 1◆wrMSm.CxZiIw 25/08/26(火) 23:27:26]

-5日目-

　・何一つ成果を得られず
　・学園長から朗報、製薬会社のデータがあれば開発が早まる
　・美鈴のタイムリミットまで、残り3日


-6日目・昼-

　・あさり以外の生存者、製薬会社に突入
　・二手に分かれて探索を開始
　・星南麻央手毬、強化ゾンビの群れに遭遇

ーーーここまで1スレ目(なっが)

　・6人の総力戦で群れを撃退するも、星南死亡
　・星南の死を受けてことねと手毬が口論、分裂の危機に陥る
　・千奈が争いを治め絆が深まる
　・ゾンビウイルス発明者が倉本の親族と判明
　・データ抽出を試みるが失敗、ビルが爆発
　・莉波が片足を失い、瀕死の重傷
　
　・倉本グループ、救援に到着
　・莉波、治療で一命を取り留める
　・千奈、香名江とともに倉本本邸に舞い戻る
　・他、ワクチン開発中の邦夫と初星学園で交信

[9 二次元好きの匿名さん 25/08/26(火) 23:28:34]

レス内のリンク先が多いと画像貼り付けがうまく出来ないことがある

[10 1◆wrMSm.CxZiIw 25/08/26(火) 23:28:38]

-6日目・夜-

　・邦夫、星南の死を知る
　・千奈、倉本爺との交渉で協力を仰ぐことに成功
　・倉本本邸でゾンビに関係する生体情報を入手
　・ゾンビの異常発生で倉本邸壊滅、香名江自害
　・千奈の精神に大きな変革をもたらす
　・千奈、倉本爺と召使いとともにヘリで倉本邸を脱出
　・千奈は初星学園を、倉本爺は十王財閥を目指す
　・美鈴のタイムリミットまで、残り2日

ーーーここまで2スレ目(みじか)
ところどころ時間が空いてた関係で、スレ主の描写の勘というか感覚というかがちょっと変わってるかもしれません。ゆっくりですが完結まで頑張ります。

[11 1◆wrMSm.CxZiIw 25/08/26(火) 23:30:44]

>>9

おお初めて知った、ありがとうございます。

今後こういうことがあったらリンクは分別してみます。

[12 二次元好きの匿名さん 25/08/26(火) 23:31:26]

待ってた、期待

[13 1◆wrMSm.CxZiIw 25/08/26(火) 23:33:35]

【失踪者たちのあらすじ】

咲季の死を受けて錯乱し、学園を飛び出した佑芽。そしてそれを追った広。2人の関係は粘度の高い共依存へと変貌し、その頭脳と運動能力を活かして今日まで生き続けている。

しかしビルの爆発とほぼ同時刻、ゾンビを一網打尽にした佑芽は、咲季の痕跡……ばくおんライオンを発見した。世界の昏迷に反して姉が見つかったと、光の失せた目で無邪気にはしゃぐ佑芽。彼女が見ている世界に共鳴できない広は、焦りと恐怖を心の内にしまい込んだ。

たとえどんなに険しい道が目の前に続いていたとしても。きっとこの2人なら、喜んで正面から踏破を目指していただろう。この2人なら……。

決めかねていた、ひろうめの結末

dice1d4=3 (3)

1.Happy

2.Normal

3.Bitter

4.Bad

[15 二次元好きの匿名さん 25/08/27(水) 03:53:38]

夜も更け、虫の羽音が鮮明に聞こえるようになった頃。闇と同化したヘリコプターが静寂を破り、初星学園へと降り立った。

「ことねさん！」
「あっ、千奈！よかったあ、あたし心配で、心配で！」
「ふふ、ことねさんを残してわたくしが一人ではるか遠くに行くわけがありませんもの！わたくし、ずうっと！ことねさんとはご一緒しますわ！」

わずか数時間ぶりの再会であったが、二人は固く抱擁を交わした。……この世界に安寧なんてものはない。いつかの別れが今生の別れかもしれない、そんな陰惨な世界。五体満足な相手の姿を見るだけで涙腺が緩むのも、半ば必然といえよう。

「でも……その、香名江さんは、さ。聞いたんだ、学園長から」
「はい……香名江はけじめをつけて、去っていきました。人間として、去っていきました」
「…………。」
「ことねさん？」
「ああー、なんでもない。……そっか、あんな強そうな人でも、負けちゃうんだな。星南先輩も、そう。明日を生きることすら……」
「いいえ。香名江も星南お姉さまも生きていますわ。他ならぬ、わたくし達の心の中で！ゾンビなどに負けず、強い心を失うことなく……生きて、いますもの。負けてなんて、いませんわ！」

プロデューサーは、ゾンビとしてその命を終わらせた。星南や香名江は、人間として終止符を打った。本来そこに大きな違いがあるわけではないけれど。千奈は確かに、実際以上の生命の鼓動を感じていた。

「うん、そーだね。みんな負けてなんかいない。あたしだって、負けない！ってことで今日はここまで。寝よ、千奈。」
「ねえ、ことねさん。今日眠るときは……わたくしの手を握っていただけますか？────少しばかり暖を、取りたくて」
「手、震えてるじゃん。……ひひ、分かった。あたしの手はあったかいぞ〜？寝かしつけはちびどもお墨付きだからナ〜、ほれ！」

ぎゅっ。

ことねは千奈の手を優しく、されど決して離さないという意思を込めて、握りしめた。やってくる明日に立ち向かうように。人肌のぬくもりを忘れないように。
────まだ壊れていない学園の温度計は、いつもより高い数値を示している。

[16 二次元好きの匿名さん 25/08/27(水) 04:16:46]

「ふわぁ。……なんて、稚拙なあくびのフリも、もう何度繰り返したことでしょうか」

ことねと千奈が横並びになって床に就いたその傍らで。美鈴は、ボヤケてよく見えない天井のシミを眺めていた。
美鈴が眠りを奪われてもう1週間近く経つ。身体が超常的な適応を始めて以来、自分が自分じゃなくなって。今のわたしは、本当に秦谷美鈴なのか？……その問いに答えてくれる者は誰も、自分の頭の中にもいなかった。

「んぅ……。美鈴？」
「まりちゃん、起こしてしまいましたか？」
「いや、違うけど。あの……ここに大きな毛布があるでしょ？美鈴が寒そうにしてたから、一緒に寝てあげてもいいよ」
「まあ……では、お言葉に甘えて。今日は寒いですね」
「……美鈴はさ、怖くないの？みんながどんどんいなくなって、みんながどんどん傷ついて。私は別に……ちっとも怖くないけど」

こんなに分かりやすい嘘はそうそうない。

「はい、怖くなんてありませんよ。わたしはわたしですから」

こんなに分かりにくい嘘もそうそうない。

「──そ。」

それ以降、言葉は続かなかった。美鈴はもう何度目かも分からない静謐に身を預けて、無駄と分かっていても目を閉じる。まだ、隣にいる手毬を感じられる。今はそれだけが、美鈴の心の支えだった。

「……美鈴のことは、私が助けるから」
「────ふぇっ！？」

まりちゃん、今何を……。そう言いかけて、美鈴は口を噤んだ。
安らかな手毬の寝息を、邪魔したくはなかった。眠りを妨げられることの不快さは、一番よく知っているから。

「もうっ……」(まりちゃん、ありがとう)

今じゃなくていい。その言葉を、真正面から伝えるのは。

[17 二次元好きの匿名さん 25/08/27(水) 04:55:07]

ことねと千奈、手毬と美鈴。それぞれが想いを交錯させ、葛藤し、不器用に他人を慮る。それはこの2人も例外ではない。

「莉波？もしかして、眠れないのかい？」
「あっ、麻央。……ちょっとね、夜風に当たってるだけ。今日はなんだか暖かいからさ、暑くなってきちゃった」

莉波はそう言って、困ったような顔で笑ってみせた。暑いから、なんて。それだけじゃないこと位、麻央にはお見通しだ。

「あまり感心しないな、外にまで出てきて。もうキミは……まともに戦える状態じゃ、ないんだから」
「うん、ごめんね。でも千奈ちゃんのおうちの人も警備してくれてるし、少し、少しだけ」
「────やっぱり、気にしてるんだろう？左足のこと」

今聞こえてくるのは、お互いの声だけ。一切の風がない今夜は、いつもより声が鮮明に聞こえた気がした。
……だからだろうか、気づいてしまう。ほんの少しの声の震えに。

「ごめん！あの時、ボクの判断がもう少し早ければキミはっ……！」
「……まーお？ダメだよ、それ以上は。思い詰めて、人のことを何でも背負っちゃう。麻央の悪い癖」
「で、でも！ボクは莉波にずっと助けてもらってばかりだ！肝心なときに限ってボクは、なにも……」
「ううん。そんなことない。咄嗟の脱出策を閃いたのは麻央でしょ？私だって杖があれば歩けるし、みんなを無傷で救ったのは麻央の機転なんだよ？」
「……違う！莉波がこんな傷を負ってまで、ボクは。ボクは莉波にしてあげられることが、何もないんだ！」
「麻央っ！」
「……っ！」

震える麻央の悲痛な声は、強い自責を孕んでいるようで。このままでは、きっと潰れてしまうだろう。ならばそれを取り払うのが、親友の役目だ。

「いい？命があればそれだけで、何度だってやり直せる。それに私は、ありがとうなんて言葉じゃ足りないくらいに麻央に感謝してるんだからね、分かった？」
「う、うん……」
「ふふ、じゃあこの話は終わり！この戦いが終わったらさ、麻央。……また、私のクッキーを食べてくれる？あまーいカフェオレと一緒に！」
「……っああ。ボクは、みんなを守る！そして生き延びる！」

麻央と莉波は、そうしてまた微笑んだ。莉波を前にすると、気がつけば麻央は絆されている感覚に陥る。だがそれもまた心地いい。まるで苦すぎるコーヒーが、砂糖とミルクで少しずつ……甘く柔らかに馴染むように。時間をかけて、朗らかに。

[18 二次元好きの匿名さん 25/08/27(水) 13:13:30]

保守組

[19 二次元好きの匿名さん 25/08/27(水) 21:23:24]

ほしゅ

[20 二次元好きの匿名さん 25/08/27(水) 21:30:54]

そこはかとなく感じるラスダン突入前の会話イベント感

[21 二次元好きの匿名さん 25/08/28(木) 01:11:01]

朝まで保守

[22 二次元好きの匿名さん 25/08/28(木) 07:20:22]

期待

[24 二次元好きの匿名さん 25/08/28(木) 19:14:05]

「おはようございます、皆さん。今日は倉本家の方々もわたし達の警備をしてくれていますし、ゾンビのサンプルを集めに行く必要も事実上なくなりました」

翌朝。相変わらず疲れを感じさせない口ぶりで、あさりは周囲を見渡した。生活から眠りを奪われた約1名を除けば顔色は良好、それぞれに行われた会話の中で何か収穫でもあったのだろう。
さて、一見この状況は安全が確保され些か希望が見えるようだが、あさりの声は上擦らない。

「つまり、我々にできることは事実上ないということ。……秦谷さんの様子を見るに、今日が天王山となるでしょう。それを黙ってみていることしかできないのが、今のわたし達が置かれた状況です」
「……、ふぅ………ふうぅ………っ！」
「美鈴……！」

美鈴の肌や瞳孔はうっすらと濁り、およそ人体のそれではない。しかし、ワクチンの生成は十王や倉本の最新技術がなければ叶わない。つまり最後に残されたのは、時間との戦い。開発が間に合うか間に合わないかの、もどかしい賭けだ。

パリィン────！

「……おや、どこかでガラスが割れたような音が聞こえた気がしたのですが」
「あら？わたくしには、何も聞こえませんでしたわ？」
「私どもが見て参りましょう。お嬢様と皆さまは職員室にて待機をお願いいたします」

倉本の警備兵が職員室を去る。……とにかく、彼女たちは感染を防ぐことが何よりも重要であるのは変わらない。これ以上無駄な戦闘に興じる必要もない。守って守られて、命のバトンを繋ぐのだ。
もしも美鈴のためのワクチンが間に合わなかったら……いや、そんなことは今考えるべきではない。

「藤田さんや月村さん、倉本さんに有村さんはまだ戦闘能力が残っていますし、戦闘要員ならわたしだっています。いずれにせよ、消耗を避け続報を待ちましょう。いいですね？」

「はい！ / わかりましたわ！ / は〜い！ / くきゃ♪」

────くきゃ？

[25 二次元好きの匿名さん 25/08/29(金) 01:49:57]

保守

[26 二次元好きの匿名さん 25/08/29(金) 09:47:25]

ほしゅ

[27 二次元好きの匿名さん 25/08/29(金) 17:07:29]

ほしゅ

[28 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 00:13:07]

最初に違和感に気づいたのは手毬だった。振り返るとそこには……生首。防護用のヘルメットごと引きちぎられ、自分が死んでいることにすら気づいていないような虚ろな"顔"と、

『きゃはあ♪』

対照的に狂気を孕んだ不敵な笑みを浮かべる────ビジュアルトレーナーの姿があった。

「う、うわああああぁぁぁぁぁっ！！」

ばきゅん！悲鳴とともに引き金を引くが、動揺から照準が定まらない。同時に飛び出したトレーナーが手毬の首に手を掛け……

「させません！」
ザシュッ！
『くけぁ……、？』
「はあっ！」
ズドン！
『……かぁっ！』

……ようとしたところで、トレーナーの手と胴体は泣き別れとなった。あさりが、すんでのところで手毬への攻撃を防いだのだ。あさりは間髪入れずに蹴りを放ち、トレーナーを突き放す。そして苦々しく舌打ちをし、手毬へと向き直った。

「あ、あぁ……！あの、わ、私……！」
「月村さん！気を確かに、深呼吸です」
「は、はあ……すう、はあ……！」
「有村さん！今の一瞬で分かったと思いますが、あの個体の戦闘力は尋常ではありません！他の5人を連れてすぐにここから離れてください！」
「で、でも！それだと先生が……！」
「一人でも多くの生徒を守るのが先生の役目です。アイツが持っていた生首……恐らくさっき出ていった警備の皆さんもきっと、アイツにやられたのでしょう。そう考えるとあれはマズい、とにかくここ『きひぃあ！』ﾎﾞｷﾊﾞｷﾞｯ を゛っ────！？」
「ぐああぁっ！」ﾄﾞｫｫﾝ!
「先生っ！……っみんな、すぐにここを離れるよ！」

今の一瞬で復帰したビジュアルトレーナーは、仕返しとばかりにあさりの横腹に強い蹴りを入れた。あさりは受け身が間に合わず、手痛い一撃にうめき声が漏れる。生徒が半端に束になって挑んでも敵わないと判断しての伝令が、大きな隙を生み出してしまったようだ。
指示を受けた麻央たちは即座にこの場を離れ、職員室にはビジュアルトレーナーとあさりだけが残された。片腕を失ったトレーナーと、胴体に渾身の一撃を受けたあさり。……手負い同士のデスマッチが、幕を開ける。

[29 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 01:20:16]

『けひひっ♪』
「トレーナー、貴女は今までどこに……いいえ、聞くだけ無駄ですね。生徒に魔の手を向けた責任はきっちり取ってもらいますよ、あなたの首でっ！」ﾀﾞｯ　
『ひひぇあっ！』ﾊﾞﾊﾞｯ
「ちぃっ……、俊敏な！」

あさりの斬撃を躱したビジュアルトレーナーは、床、壁、天井に至るまであさりの前後左右上下を目まぐるしく駆け巡る。

(スピード勝負に出ましたか……落ち着きなさい、あさり。このパターンなら勝負は一瞬、相手がわたしの懐に飛び込んできた刹那、奴の首を斬り落とす！)

姿勢を低く構え、ナイフを握るその手に力を込めた。呼吸を乱さず相手の動きに集中しろ、わたしに近づいたその時が奴の最期だ！そう己を奮い立たせ目を凝らし続ける。そして、ターニングポイントは突然に────。

『くひょおあ！』
「そこっ！」

目論見通り懐に飛び込んできたトレーナーにタイミングを合わせて、あさりは刃を斜めから振り下ろした。万全の体勢からうなじ目掛けて振り下ろされた刃は、憎き相手の生命線を斬……

[30 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 01:22:03]

フォンッ……

「────え？」

……り落とすことなく、虚空に曲線を描く。

「な、消え……！？ば、バカな、私は確かに姿を捉えて的確に！」

『……くけけっ♪』

"姿を捉えて的確に……"、それを決め打って出たのは、誰だ？

「しまッ────！」
『くひゅふはあっ！』

ズドオオオオオオオオンッッ！！！！！

「あ、が、がはっ……！！」
『きひい……♪』

[32 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 01:56:17]

「く、ぐぅ……、げほっ……！」
(……やられた！不覚でした……わたしとしたことが、相手の力量を見誤っていた……！)

間一髪、身体を捻って致命傷は免れた。それでも右手からナイフは離れ、胴体に風穴が空いていて。満身創痍の死に体で、あさりは砕けた壁に力なく座り込んだ。

視線誘導──ミスディレクション──それは、人々を欺く幻影。手練手管を弄する奇術。おもにマジシャンがパフォーマンスの一環として身につけている技巧だが……それは彼女も同じこと。
ビジュアル……それは、視覚そのものを表す言葉。何を見せ何を魅せるかは、全て彼女の掌の上。あさりは最初から盤上で踊らされていた。広義の"ビジュアルトレーナー"の名をほしいままにする彼女が、視覚にまつわる高度な技巧など、会得していないはずがないのだ。

『……へひ♪』

彼女は懐に潜り込んだ瞬間、失われていない左腕を体の軸から大きく反らし、手の先と胴体の2つの視点を作った。同時に拳を大きく震わせることで、あさりの視線はそちらに誘導される。あとはあさりが見ていた像が前に残っているうちに、本体が後ろに回り込めばいい。

「こ、しゃく、な！……ごほおっ！かは、はあ……はあ……」
『きゃっはははあー！！』

しかしあさりにはもう攻撃手段がない。動く気力もない。弱らせた相手を見て、トレーナーは醜く口角を歪ませた。偉そうに大口を叩いていた獲物が無様に壁にもたれる"ビジュアル"は、よほど素晴らしかったのだろうか。
……そんなことを気にする必要もない。もう勝敗は明確だ。

とどめを指すべくトレーナーは、大きな跳躍とともにあさりに飛びかかる！

[33 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 01:58:38]

『くきゃっ！は！はは！はは……』


サクン──────。


『────は？』

[34 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 02:22:45]

「…………わた、しが。あれで、終わる……と？」

『……！？？げぼぉっ……！！』

「そんなわけが……ない、でしょう！せん……せいを！なめ、るな……！」

何が起こったのか全く理解できない。トレーナーはそう言わんばかりに目をぎょろぎょろと動かして、音と痛みの元凶を探す。死期が近いはずの憎きあさりの顔、腕が貫通した跡のある腹、こちらに向かって伸びている脚…………脚！？

彼女はゆっくりと、視線を下にズラす。そこには。

────ヒールのつま先に仕込まれた第二の刃が、自分の喉元に、深々と突き刺さっていた。

『！？……か、かはっ……！？』

「あな、たが確実に……わたしを、殺そうとして、低い姿勢から首、を、掴まれて……いたなら……。わたしは……もうしん、で……いた、でしょう。」

「ゆ、だん……！あなた、の……敗因、です……！」

死にかけの獲物を前にして、反撃の可能性を棄て去った。
抜かることなく、静かに第二第三の刃を研いでいた。

勝ちを確信してほくそ笑み、愚かにも急所を相手の前に晒した。
最後まで相手から視線を外さず、がら空きの1点を穿った。

もう勝敗は明確だ。……明確だったのだ、あの瞬間から。

『かひゅううあぁぁ！？げ、けひゃ……っ！』
「さようなら。────ビジュアルトレーナー」

[35 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 02:25:50]

あさり先生つよ…
そういや生存組だったな…

[38 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 02:41:46]

喉に突き刺さった刃に、脚に、最後の力を込めて。
地面に手をつき自重をかけながら、左に大きく一振り。
半分斬れた首級目掛けて、右に大きくもう一振り。

ザクンッ……！

トレーナーの首と胴は、これを以て完全に切り離されて。最初に彼女が持っていた倉本の私兵の生首と同じように、不格好な放物線を描いて廊下に放られた。
あさりとビジュアルトレーナーによる文字通りの死闘は、あさりの辛勝で幕を閉じた。最後にあさりが見た彼女の顔は……口元だけでなく目元から髪の生え際に至るまで、苦痛に歪んでいたという。

[39 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 02:51:31]

あさり「あの、プロデューサーくん」

学P「はい、なんでしょう」

あさり「これ、ゾンビ映画でしたよね？先生はアクション映画のキャストになった覚えはないんですが？」

学P「……脚本の都合です」

あさり「そうは言いましてもね！？先生、あんな格闘技みたいな派手な動きしたことありませんよ！？トレーナーさんに無理言ってストレッチを手伝ってもらって正解でした……ああ恐ろしい……！」

Viトレ「いや〜、あさりちゃん名演だったわよ〜！どうかしら、アナタもアイドル、なっちゃわない？素質あるわよ？」

あさり「け、結構ですっ！」

Daトレ「というかプロデューサー、なにやら前の私達より戦闘の描写が丁寧じゃないか？」

Voトレ「おかしいですね……私達、ヴィランとして似たような立ち回りだったはずなんですが」

学P「あ、えっと……個々の戦い方も違いますし、その時のリアル感も結構大事にしてますので……」

Viトレ「あら〜？じゃあプロデューサーを詰める会、久々にやっちゃう？」

学P「お、お手柔らかにお願いします！」

美鈴「まあ……プロデューサー。美女との食事会、どうぞじっくり……楽しんできてくださいね？」

>>34

✕掴まれて

◯掴んで

殴り書きしてたら、視点がとても大事なシーンなのにやっちゃいけない初歩的な誤字してました！ごめん！

どうでもいい話ですが、生徒複数人でようやく対処できるトレーナー級の強敵が相手でも、あさり先生なら単騎で戦えるというのが小さなこだわりだったりします。なんてったって"先生"なので。

[40 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 10:13:14]

ほしゅ

[41 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 17:33:32]

保守

[42 二次元好きの匿名さん 25/08/30(土) 23:13:01]

保守