ここだけ黒服がシャーレの先生になった世界線

  • 1二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:34:52

    「……い。……先生、起きてください。黒服先生!!」
    と言われ、目を覚ますと連邦生徒会室・ロビーで寝ていた黒服。
    何故? 何故? 何故? となりながらシャーレを奪還し、先生の隨にアビドスの支援に向かうことになる。

  • 2二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:43:13

    これゲマトリアどうなるんだ?黒服ポジションに誰かがいるのかいるにしても誰なのか
    もしくは黒服ポジションに誰もいないのか

  • 3二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:46:30

    >>2

    黒服の所属がゲマトリアから先生にスライドする感じで。

    アズサの所属が変わってもアリウススクワッドではあるように、前組織の在り方に従って活動することもできる。

  • 4二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:48:57

    電車の中で連邦生徒会長から『先生をした方がより真理に近づける理由』が説明された感じかな
    搾取を前提とする悪い大人の理屈より優先するだけの何かを

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:49:18

    >>3

    なるほどね、そういう感じね…これは面白そうだからとりあえず10まで埋めよう

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 19:55:28

    そのままだとチュートリアルの最後にサンクトゥムタワーの制御を握ったままキヴォトスの王になる√だよね
    あるいはスーパーアロナちゃんが勝手に「おおっと手がすべっちゃいました(棒読み)」とかやって連邦生徒会に制御権を投げつけるか

  • 7二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 20:01:33

    >>2

    マエストロとベアトリーチェの言い争いの間で困り果ててるアニメ先生が浮かんだ

  • 8二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 20:03:12

    人選ミスにも程がある

  • 9二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 20:19:14

    自分の中にある原因不明の使命感も研究対象にしながら先生としての使命をこなしそう

    怪しい言動を重ねながら結果だけ見ればハッピーエンドな展開

    生徒に絆されてしまうことへの苦悩を綴った手記とかが徐々に公開されたりするんだよ

  • 10二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 20:29:22

    当初黒服は自分の中にある他人格を上書きされた先生の人格と仮定し、考察を続けるんだけど、偶にそれでは説明できない記憶がフラッシュバックしたりする。

    クライマックスではその人格が「上書きした他人のもの」ではなく「成れの果てになる前の自分自身」の人格であることに気づき、統合を果たす。

    なんてのはどうでしょう

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:02:34

    面白そうな概念

  • 12手記①25/08/27(水) 21:41:01

    何らかの原因不明な作用により自分の状況を口外することは敵いませんでしたが、
    「自分用のメモ」として記録することは可能なことを発見したので、ここに手記として残します。

    私があの「先生」に成り代わる形で時間遡行してから数日が経ちましたが、状況は依然変わっていません。
    その間にいくつかの検証を行い、以下の仮説を得ました。

    仮説① 私自身の行動がすべて制限されている訳ではない。
    ―ほとんどの発言や行動は自由に行うことができています。キヴォトスの住民たちに対しても、意図的に敵対的、あるいは友好的な関係を作り出すことは可能でした。

    仮説② 自分自身の状況を人に説明することは出来ない
    発声、筆談、メールその他他人に自分の時間素行や立場の変化などについて、自分の置かれている状況を伝える試みは現時点で全て失敗に終わっています。このメモに関しても、意図的に放置して他人に読ませるようなことはできませんでした。

    仮説③ 結果として先生の役割を果たせなくなるような行動は取れない
    サンクトゥムタワーの権限移譲のときが顕著でしたが、意図的に「先生」の行動に反する行動をとろうとすると
    全て失敗に終わるか、そうでなくても「先生」の行動として違和感の無いものとして受け取られています。

    仮説④ 行動に制限がかかる場合、その原因は「先生」の意思が影響を与えている
    仮説②や③で制限がかかるとき、それは強烈な感情を伴う「それはしたくない」や「それはするべきではない」といった拒否反応として発露します。
    これは私の理性や目的とは相反するものであることもあり、私は現在、自分自身の感情を制御できない状態にある、と言えます。
    根拠は不足していますが、私はこの事象を「先生の意思」であると現在仮定しています。

    以上

    追記)先ほどアビドス高等学校からの支援依頼を発見したので、これから向かう予定です。
    小鳥遊ホシノ――私の知る時間軸では既知の関係である生徒がいるはずですが、彼女の反応も興味深いところです。

  • 13二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:44:18

    SCPみがあるな…

  • 14二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:15:15

    続けてほしい

  • 15二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:56:25

    >>10

    黒服先生の成れの果て概念との相性が良すぎる、ある意味プレ先2周目概念とかに近いな

  • 16二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 23:05:06

    ――貴方は私、私は貴方。こんなに近くに答えがあったのに気が付かなかったとは……クックックッ……

    どこかの『修正された世界』で、それでも尚『先生』だった時の記憶だけは消えず、『先生』が行動理念や思考は違えど同じ選択を取り続ける姿を見ていつかそう語りかけてほしい

  • 17手記②25/08/27(水) 23:40:01

    現在、遺憾ながら私はアビドスの砂漠の中で遭難している状況にあります。
    無論のこと、この地域に関する知識は十分にあり、尚十二分に準備をして出発したにも拘らず
    砂漠に到着して以降、不幸な偶然と呼ぶには不可解な出来事の連続により、荷物のほとんどを失い、残されたのはこの身一つとメモ帳のみとなってしまいました。

    現在、廃墟と思わしき瓦礫の影で手記を綴っています。
    時間遡行自体が異常な現象であることはさておき、それ以降このような不可解な現象が

  • 18砂狼シロコとの邂逅 1/225/08/27(水) 23:42:46

    ――

    「生きてる?」

    手記を書いていたはずがいつの間にか意識が朦朧とした状態となり、突っ伏してしまっていた私にも、救いの手はあったようだ。
    一方的にではあるものの良く知っている少女、砂狼シロコが「偶々」通りかかり、声をかけてきた。

    「ええ……何とか。申し訳ありませんが、水分をお持ちではありませんか?」

    辛うじて言葉を出すことが出来た私に、砂狼シロコは動揺を隠さない表情を示しました。

    「うわ。喋った……。一応スポーツドリンクならあるけど……飲めるの? どこが口なのか分からないんだけど」
    「もちろん飲めますよ。一応生物という自覚はありますからね。」

  • 19砂狼シロコとの邂逅 2/225/08/27(水) 23:45:31

    それなりに失礼なことを言われた気がしましたが、命の恩人でもある少女に指摘することはせず、ありがたく飲料をもらい、一瞬で飲み干す。
    良いように言って複雑な表情をしていた砂狼シロコは、返したボトルを受け取ると気を取り直したように私に目的や遭難経緯を問いただしました。

    「ん。じゃああなたは久しぶりのお客さんってことなんだ」
    「ええ、その認識で相違ありません。」

    警戒心を強く感じる表情をしながらも、砂狼シロコは一応会話を続けるつもりがあるようでした。

    「まだ結構距離があるけど、一人でこれそう?」
    「せっかく命をつないでいただきましたので、どうにかやりますよ。」
    「……」

    誰が見てもわかる葛藤の表情を浮かべながらしばらく何かを考えていた少女は、そのままの表情で突然私を突然担ぎ上げました。

    「死なれても困るから、連れてってあげる。匂い嗅いだりしないでね」
    「匂いですか? 興味がないとは言いませんが流石に状況は選びますよ。」
    「……黙って」

    砂狼シロコは何が気に食わなかったのかそう言って私を小突くと、私を抱えたまま自転車で走り始めました。

    私とアビドス高等学校の生徒たちとの、ある意味での初邂逅はこのようにして為されたのです

  • 20二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 23:46:59

    私1でもなんでもないんだけどこれ書き続けてていいんだろうか。

  • 21125/08/28(木) 00:16:41

    >>20

    良いですよ、こっちはこっちで勝手に書くので。

    是非ともお願いします。

  • 22二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 00:27:48

    実際「大人のカードの代償」発言で黒服含めゲマトリアの面々が元先生かそれに類する存在だった考察もあったし、こういう形で再送するのも興味深い。

  • 23二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 03:48:44

    保守

  • 24二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 03:49:46

    >>20

    待ってますよ~

  • 25シッテムの箱について 1/225/08/28(木) 08:06:53

    私が時間遡行に遭遇した日に入手した奇妙な端末「シッテムの箱」が本日、新たな反応を示したのでこれまでの調査結果を記述します

    ①低品質なAIと高過ぎる権限
    一般的な少々旧式のタブレット端末程度の機能と、余り高性能とはいえないサポートAIが搭載されているだけのようですが、サンクトゥムタワーの権限奪取を瞬時に行えるほどに高い権限を有しています

    ②不自然なデータベース
    サポートAIを通してのみ閲覧可能なデータベースには生徒のことについて詳細な記載がありますが、見ることができるのは既に関わったことのある生徒に限るようです。
    どのように判別しているのでしょうか。
    その生徒の現在地や、信憑性は不確かですが私に対する友好度を示すと思われる数値など、異常なデータの確認が可能です

    ③解析不可能性
    この端末を操作することや、他端末との接続でこの端末の中身を解析する試みは失敗しています。
    分解や耐久度調査には強い拒否反応が起こりこちらも失敗します。

  • 26シッテムの箱について 2/225/08/28(木) 08:08:16

    以上がこれまでの検証内容なのですが、本日アビドス高等学校内にて生徒たちの戦闘時、シッテムの箱が自動起動し次の機能が出現しました。

    ・戦場が俯瞰表示され、敵味方(識別方法は不明)の場所がリアルタイムで監視可能な機能
    ・指揮下にあると見なされる生徒への音声、テキストでの簡易的な指示機能

    元より戦術指揮については多少の心得がありましたが、そういった技術はむしろ不要で、
    例えるならゲームを遊んでいるかのような単純な操作で的確な指示が出せるような仕組みでした。

    実際に指示を受けた生徒たちは驚いてはいたものの、疑問に感じている様子はありませんでした。
    ただ戦闘中に指示を受けそれに従ったと認識しているようです。

    今日のこの反応から、シッテムの箱には未特定の様々な機能を持っていると推測されます。
    なお、サポートAIに機能の全貌を確認したところ「何でもできます」とだけ回答があり、それ以上具体的な回答を得ることは不可能でした。

  • 27二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 12:24:44

    アロナいないのかな?

  • 28二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 15:06:44

    アロナという色々と規格外なデータがねじ込まれる前のバニラ状態のサポートAIはこんなだったのかな

  • 29二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 15:11:25

    ゲマトリアの連中も最初はキヴォトスに訪れた先生だった説
    記憶が擦り切れるほど繰り返されたループでもはや自分のルーツがわからなくなってしまった

  • 30アビドス高等学校の生徒たち25/08/28(木) 21:32:58

    銀髪の狼少女に抱えられた状態で目的地、つまり―アビドス高等学校―の中にある一室に到着した私は、その室内に打ち捨てられた。

    「お帰りシロコせんぱ……何その黒いの!?」
    黒髪の猫耳少女、黒見セリカが一番に口を開く。
    「もう、シロコちゃん? あまり変なのを持って帰ってきたら怒られちゃいますよ!」
    金髪のおおらかそうな雰囲気の少女、十六夜ノノミが戻ってきたシロコを笑顔で嗜める。
    「ワンちゃんじゃないんですから…でも、なんでしょうこれ」
    奥空アヤネが困惑と好奇心の混ざった声で疑問を投げかける。

    3人とも記憶の通りアビドス高等学校の生徒たち。

    「ん。ゴミじゃない。一応、お客さん?」
    砂狼シロコが弁明とも紹介ともとれる発言をしつつ私を指差す

    3人の表情が一斉に固まり、私の顔あたりに視線が集まる。

    「只今ご紹介に預かりました。…そうですね、皆さんに分かりやすく言うのであれば『シャーレの先生』をやっているものです。行きがかり上ですが」

  • 31アビドス高等学校の生徒たち25/08/28(木) 21:35:02

    「ええっ、あなたがあの先生なんですか!? つまり、支援依頼を見て来てくれたってことですか?」
    「え? 本当に? 人でもロボットでも無さそうなこの変な人が!?」
    「こら、失礼ですよセリカちゃん。とっても素敵なお顔? だと思いますよ」
    「ん。そこで疑問符を出したらフォローになっていないと思う。」

    一瞬の静寂の後、女子高生らしい姦しさで矢継ぎ早に話してくる。
    それにしても、別にフォローは求めてないが、あまりに歯に衣着せぬ物言いである。
    そろそろ落ち着かせようと口を開きかけたとき、タイミングよく外から大きな物音が起こり、対照的に室内が静まり返る。

    銃声。

    続いて、武装集団の姿が見え始める。カタカタヘルメット団。カイザーの依頼で襲撃をかけてきたのでしょう。
    私との関係が無くてもカイザーの攻勢は変わりないようです。

    その後、黒見セリカがこのアビドス高等学校最後の生徒を連れてきた。私にとって最も興味深い相手であり、今の状況において最も警戒すべき生徒を。

    「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよー。」
    眠そうに眼をこすりながら現れたその生徒、小鳥遊ホシノは室内にいる私を確りとその目で捉えた。

    「あなたが『先生』? よろしくー。」

    その発言に警戒心を滲ませていることは間違いないが、小鳥遊ホシノは私が『先生』であることを否定したり、私と知り合いであることを思わせるような態度はとらずそのまま戦場へと向かった・
    少なくともこの時間軸の過去、小鳥遊ホシノが『ゲマトリアの黒服』と既知の関係であるという線は無さそうだ。
    ……想定通りではある。私が時間軸に移動してから、『ゲマトリアの黒服』の存在の痕跡は一切見つからなかったのだから。

  • 32二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 21:36:40

    その後の戦闘で、黒服がシッテムの箱の戦闘支援機能について知る、という展開でした。

  • 33二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 05:41:19

    保守

  • 34二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 07:01:05

    絶妙に本編先生より扱い悪くて面白い

  • 35二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 07:46:06

    しかし よく最初にワカモに撃たれなかったな………

  • 36二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 14:22:50

    >>29

    どこかでそれに近い説でSS書いてたのがあった気がするな

    ベアトリーチェがヤンクミみたいな女性体育教師だった可能性を出してた覚えが

  • 37二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 18:09:40

    >>35

    異形頭フェチだったんでしょう

  • 38二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 19:25:14

    この黒服がイオリの脚を舐めたり、卒アル入手したりするところを想像できないんだけど....

  • 39手記 小鳥遊ホシノについて 25/08/29(金) 22:18:40

    アビドスで出会った小鳥遊ホシノは『黒服』としての私を認識していませんでした。

    彼女はキヴォトス最高の神秘であると同時に、以前の時間軸の私であれば是が非でも欲しい研究対象でした。
    しかし、事実として今の私にとってはそうではありません。

    研究対象として魅力的なのは事実ですが、この身に起こっている事象そのものが今の一番の関心事であり、観測した最高の神秘的現象(研究対象)と言えるからです。

    一方、この研究や時間軸において、彼女のような力のある存在と敵対するのは明確に避けるべきです。
    ある意味フラットな状態で小鳥遊ホシノと知り合えたのは運が良かったというべきでしょう。

  • 40小鳥遊ホシノとの対話記録①25/08/29(金) 22:19:49

    アビドスでの戦闘の後、小鳥遊ホシノと短時間会話することができたため、その記録を残します。

    小鳥遊ホシノ(以下、ホシノ):いやー、まさか勝っちゃうとはね。さすがは大人の力ってやつ?
    私:いえいえ、大したことはしてませんよ。それより、見事な連携ですね。とても場馴れされているように見えましたよ。
    ホシノ:まあそれはねー。最近しょっちゅうだしおじさんもうやんなっちゃうよ。
    私:それでシャーレに支援を依頼したと。
    ホシノ:うん、正直ダメ元だったからびっくりだよ。
    私:それは何よりです。ところで…
    ホシノ:なぁに?
    私:以前、どこかでお会いしたことがありませんか?
    ホシノ:…(束の間、逡巡するような仕草)えー? それナンパ? おじさん困っちゃうよ。

    その後、他の生徒達が興奮気味に追いついてきたので話は打ち切りとなりました。

  • 41借金問題について① 1/225/08/29(金) 22:33:38

    小鳥遊ホシノの提案により、ヘルメット団への追撃を終え、学校に戻ってきた際、
    黒見セリカが借金について、口を滑らせた。

    借金については当然こちらは認識している上、この時間軸でも借金を抱えているのはアビドスに来る前に調査済み。
    あえて知っていると明かす必要があるかどうかは……

    「待って! それ以上は」
    「この学校が多大な借金を抱えているということであれば、すでに存じ上げていますよ。」
    「え!?」

    奥空アヤネの言葉を遮ろうとしていた黒見セリカが、こちらの発言に目を丸くする。

    「何で知ってるんですか?」

    十六夜ノノミから訝し気に疑問を向けてくる。

    「こちらとしてはこれから支援を行おうとしているわけですから、事前に何に困っているか位は調べておこうと思いまして。」

    砂狼シロコが少しむっとした表情になり、小鳥遊ホシノは僅かに目を細める。
    不穏な空気に気付いたのか、奥空アヤネが慌てて口を挟む。

    「で、でも先生は調べたうえで、支援のために来てくれたんですよね? ええと……遭難しそうになってまで」
    「アヤネ、違う。先生は実際に遭難してた。」

    その訂正は必要なのか?

  • 42借金問題について① 2/225/08/29(金) 22:35:55

    「ええ、アヤネさんの言う通りです。具体的な支援内容は決めかねていますが、基本的にこちらとしては支援を行うという前提で伺っています。実際の生徒たちへのヒアリングも必要だと思いましてね」

    主目的は小鳥遊ホシノや砂狼シロコに接触するためではあるが、支援を用意があることは事実だ。
    『先生』が行ってきたことを考えれば、ここでアビドスの生徒たちに好印象を持たせておくに越したことはない、という打算もある。


    「では、相談してもいいってことでしょうかー?」
    十六夜ノノミが笑顔で、周囲に問いかけるように言う。

    「そうだねー。知ってくれているなら話は早いんじゃない?」
    「ん。信用できるかは別として、知られているなら相談してしまった方が良いと思う。」

    小鳥遊ホシノと砂狼シロコが賛同を示す。奥空アヤネもうなずいており、賛成に傾いているようだ。

    「み、みんな本気なの? 確かに助けてくれたけど、今日初めて会った、得体のしれない『大人』なのよ!? 私は騙されないからね!」

    黒見セリカがそう言って立ち去るのを横目に、私は奇妙な感覚に陥っていた。
    既視感。以前に同じ体験をしたような記憶。『先生』の記憶なのだろうか。

    気付くと十六夜ノノミも黒見セリカを追っていなくなっており、小鳥遊ホシノと奥空アヤネがこちらを窺うようにじっと見つめていた。
    気を取り直し、私は残った二人から改めて話を聞くことにした。

  • 43二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 22:43:45

    シロコがずっと微妙に辛辣な所がツボ

  • 44二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 06:55:35

    何がそんなにかんに触るのだろうな

  • 45二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 09:12:02

    まあ明確に胡散臭いからな
    見た目も性格も

  • 46二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 11:42:33

    ”黒服はどこかの世界線でのプレ先の成れの果て”そういう電波を受信してしまった…ワイにはSS書く才能がないのでこれだけ置いていく…サラバだ

  • 47二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 18:53:39

    >>45

    それはそう

  • 48黒見セリカとの対話記録①25/08/30(土) 21:40:23

    黒見セリカについてはこれまでアビドスの生徒であるということ以外に気に掛けるべき点は無いと考えていました。
    現在でも認識自体は変わっていないのですが、今の私には使える手札がない以上、小鳥遊ホシノや砂狼シロコとの協力関係
    を得ることが必要で、そのためにはアビドスの生徒全員から一定の支持を得ることが必要でしょう。

    アビドスに到着した翌朝、黒見セリカとの1対1での対話を行うことが出来たので、その記録です。

    黒見セリカ(以下、セリカ):げっ
    私:おはようございます。セリカさん。
    セリカ:なんでこんなところにいるのよ!? まさか待ち伏せしてたんじゃないでしょうね
    私:偶然……と言っても信じないでしょう。少しお話がしたかっただけですよ。昨日はあまり話せませんでしたから。
    セリカ:話すことなんて無い! 私は騙されないんだから!
    私:そうですか。では、これ以降アビドスへの支援は無かったということで
    セリカ:え? ほ、本当に?(動揺した様子)
    私:勿論、冗談です。
    セリカ:何よそれ!? 全然笑えない!
    私:そうですか。申し訳ありません。
    セリカ:ふ、ふん! 私、行くところがあるから、着いてこないでよねっ!
    私:勿論です。ですがセリカさん。私としてはアビドスの生徒たち全員の同意を得て支援を行いたいと考えています。覚えておいて下さい。

    黒見セリカは私の最後の言葉に一瞬立ち止まりましたが、すぐにその場を後にしました。
    その後学校には登校せず、アルバイト先のラーメン店にてアルバイトをしていたようです。

  • 49黒見セリカ誘拐への対処について25/08/30(土) 22:02:12

    アビドスの生徒たちとラーメン店で別れた後、この後起こるであろう事件について考える。
    以前の時間軸においては、カイザーの支援を受けていたヘルメット団が黒見セリカを拉致し、
    その後『先生』とアビドスの生徒たちにより奪還されるという事件があった。
    その件について私は直接関わっておらず、しかし当然のごとく知ってはいた。

    未然に防ぐことは可能だ。事前にカイザーの手の届いていない者に匿名で依頼し、動ける状態にしてある。
    偶然を装ってヘルメット団を襲撃し、黒見セリカを逃がすことは可能だろう。

    しかし、この事件自体は『先生』と生徒たちが信頼関係を構築するきっかけになった可能性があり、
    あえて誘拐事件を止めずに、ことが起こった後に彼のやった通り奪還作戦を行うというのも考えられる。

    しかし、それはわざわざ情報戦で有利な立場を放棄するに等しい行為でもある。
    何より、『先生』であれば知っている情報を遣わず生徒を危険な状況に置くようなことをすべきではない、というあの強迫じみた感情が起こるのだ。

    故に、私は第3の手段を使用する必要がある。その手段とは――

  • 50分岐点①25/08/30(土) 22:23:20

    A「直接乗り込む」

    B「ヘルメット団を一部買収する」

    選択;A

  • 51直接乗り込む25/08/30(土) 22:43:06

    私は用意していた人員に連絡し、防弾車両1台を直に手配した。
    入手経路については何かしら理由を考える必要があるが、最悪の場合『大人の力』とでも言って強引に誤魔化せばいい。
    『そんなことより、黒見セリカの安全だ』という、到底自分の内面から出てきたとは思えない感情に支配されていることは考えないようにして、急ぎ準備を進める。

    黒見セリカのアルバイト時間が終わり、監視からヘルメット団との接触点を予想し前もって移動する。

    そして、黒見セリカがヘルメット団に囲まれる。
    未だ背後の敵に気付いていない黒見セリカへの警告とヘルメット団への威嚇を兼ね、クラクションを鳴らしつつアクセルを踏み込み、集団に突っ込む。

    ヘルメット団たちは突然の闖入者に動揺し、咄嗟に行動することは出来ていない。

    「セリカさん! 乗ってください!」
    同じく呆然としている『セリカ』に叫び、どうにか乗り込んだところで再度急発進する。

    直後、背後で爆発音。おそらく対空砲の着弾音。
    懐にあるシッテムの箱が一瞬振動したような気がしたが、とても気にするような状況ではなかった。

  • 52直接乗り込む②25/08/30(土) 23:00:24

    「せ、先生? コレどういう状況!? っていうかあれFlak41改じゃない!? あいつら何であんなの」


    黒見セリカが何か騒いでいるが、今の私はとてもそれに答えられる状況になかった。


    「学校に向かいます。応戦準備を連絡しているので、そこで迎え撃ちます。 セリカさん、すみませんが背後の状況を確認してもらえますか?」

    「わ、わかったわよっ! うわっ、めっちゃ追いかけて来てるって、装甲車とか戦車とか! なんでそんな装備持ってるのよ! でも、今のところ追いついては来てない、と思う。」


    所詮大した指揮系統も持っていない集団だろう。こちらが逃げているから追いかけてきているだけ。

    油断はできないが一番の危険はすでに過ぎたといえるだろう。

    「ありがとうございます。そのまま見ていてください。」


    「う、うん。あの、先生。訳わかんないけど、助けに来てくれたってことだよね>」

    「それ以外に考えられますか?」

    「ううん……」


    黒見セリカがまた何かを聞いてきたが、こちらには一切余裕がない。そもそも車の運転など、いつ以来だか全く覚えていないのだ。方法が分かるから、乗ったことはあるのだろうが。


    そうしているうちに、校舎が見えてきた。

    そして、その直後、私は昨日とはまるで違う『暁のホルス』の実力を見ることになるのだった。

  • 53二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 23:01:58

    元々ヘルメット団買収する方向で考えてたけど黒服が単身車で突撃したら面白いかな、と思ってしまい変なことになってしまった…

  • 54二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 23:20:10

    セリカが落ちたか…

  • 55二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 23:42:44

    黒服でここまで熱い展開見たことないわ

  • 56二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 06:59:48

    黒服先生って言われることになるのかな

  • 57二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 09:03:35

    再構成ものとして普通に面白い

  • 58二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 11:55:39

    >>53

    そのセンス、最高やで

  • 59二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 15:36:23

    黒服の代わり的な人いるのかな?

  • 60シッテムの箱について② 1/225/08/31(日) 20:37:08

    黒見セリカの救出及び、ヘルメット団の撃退後、シッテムの箱が異常に発熱していることに気が付きました。
    およそ10分で発熱は収まりましたが、特別な操作をしていたわけではなかったので調査することにしました。

    とは言え、以前に機構について調べるだけ調べていたので、まずはサポートAIに確認した。
    下記は質問内容とAIの回答です。


    Q:先ほどシッテムの箱が異常に発熱していたが原因特定は可能ですか。
    A:システムへの高い負荷がかかっていたためと思われます。


    Q:負荷の原因はどの機能によるものですか。
    A:最終的なきっかけは戦闘補助システムの使用によるものと思われます。


    Q:最終的な原因ということは主原因ではないということですか。
    A:その通りです。

  • 61シッテムの箱について② 1/225/08/31(日) 20:39:11


    Q:では主原因を教えていただけますか。
    A:(回答まで1分ほどの時間があり)自動防御システムによるものです。


    Q:防御システムとはどういったものですか。
    A:先生の身体に危険が迫ったときに周囲に干渉する機能です。


    Q:それは、いつ作動しましたか。
    A:現時点から2時間28分前に作動しています。


    Q:先生の身に危険が迫っているというのはどうやって判断しているのですか。
    A:(再び回答まで時間があり)私が頑張ってます。私はなんでもできますので。


    Q:ありがとうございます。
    A:はい。これからもA.R.O.N.Aに何でもご相談ください。


    補足:
    ⑥の2時間28分前とは私が丁度黒見セリカを車に乗せた頃のことであり、
    A.R.O.N.Aとはシッテムの箱のOS兼サポートAIアプリの名前のことです。

  • 62二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 20:46:05

    アロナいるじゃん!

  • 63現地協力者 1/325/08/31(日) 21:40:15

    ヘルメット団による黒見セリカ襲撃のあった日の深夜。
    アビドスの生徒たちの監視や車の手配を依頼していた協力者に再度連絡を取る。報酬の受け渡しと追加の依頼のためだ。

    電話をかける。1コール。2コール。

    『もしもし!? 無事なの!?』
    電話口の向こうから非常に慌てた様子で協力者が出る。

    「ええ。おかげさまで大変助かりましたよ。その様子だと何があったかご覧になっていたのですか?」
    「当然よ。大事なお客様だもの。手出しできないのは歯がゆかったくらいよ」

    相変わらず感情豊かな少女だ。それでいてハプニングが起こらなければ高い作戦遂行力がある。

    「ああ、そうでしょう。私に何かあれば報酬を受け取れなくなりますからね。」
    「え? え、ええ。そうね、報酬!! 報酬は大事! 分かってるわ!!」

    何故か電話相手が動揺する。まさか純粋にこちらの身を心配していたのだろうか。

    「それで、報酬の受け渡しと追加の依頼をしたいのですが、よろしいですか?」
    「もちろんよ! こんな極秘任務みたいな依頼をもらえるなんて、カッコいいじゃない!」

    何を言っているかよくわからないが、上機嫌のようなので指摘することはないだろう。

  • 64現地協力者 2/325/08/31(日) 21:41:32

    「その前にまず、車や装備の入手用にお渡ししていた一時金、あれは余っていますか? 足が出たのであれば言ってください。勿論報酬とは別でお渡ししますので」
    「え? ええ、結構余ってるわよ。防弾車どころか戦車でも買えそうな金額だったじゃない。」

    予想通りの回答だ。こちらも予定通りの返答をする。

    「そうですか。では残りはご自由に使っていただいて結構です。」
    「はぁっ!?」

    余ったから返せなどというつもりは無かったし、渡したときに説明したような記憶があるが、向こうは予想外のことを言われたような反応を示す。

    「それで、すみません。話を続けてもよいですか?」
    「……はっ え、ええ。何かしら」
    「急ぎの依頼が1件と、元の依頼の延長したいというお願いが1件です。急ぎの方はまだ元の依頼分の報酬もお渡ししていないのに頼むのは申し訳ないのですが……」
    「とんでもないわ! あなたの依頼には優先すべき価値がある。私はそう思うわ」

    電話口の奥で何やら騒がしいが、本人は乗り気のようだ。

  • 65現地協力者 3/325/08/31(日) 21:42:40

    「では、お伝えします。今回襲撃してきたヘルメット団の拠点を襲撃してほしいのです。戦車や対空砲などの装備についても破壊をお願いします。おそらく今回の襲撃で相当数を失っているはずですが、念のため」
    「成程……。念入りに報復しておくということね。承知したわ」
    「それと、これは可能性の話なのですが、もし同じようにヘルメット団を襲撃しているものがいたら、そちらも消耗させていただけると助かります。」

    カイザーが懲罰のために傭兵を雇ってヘルメット団を攻撃する可能性があり、当然それはアビドスの敵である。事前に戦力を削いでおいた方がいいだろう。

    「え? まあ、分かったわ。何か考えがあるのでしょう?」
    「勿論です。それが終われば、あとは暫くアビドス周辺の監視をまたお願いします。」

    電話相手が了承する。用件はこれでほぼ終わりだ。

    「近日中にお会いしましょう。報酬は手渡しの方が都合が良いという話でしたよね。食事でもご馳走しますよ」
    「ええ。こちらは構わないわ。会えるのを楽しみにしているわ『黒服』さん。これからも『便利屋68』をどうぞ御贔屓に」

    終話前に、電話口から歓声のような声と複数人のざわついた声が聞こえたが、聞かなかったことにして電話を切る。
    便利屋68。以前の時間軸ではカイザーに雇われていたはずだが、実力に見合わぬ依頼料で多岐にわたる依頼をこなしてくれる集団だ。
    関係を強化しておくに越したことはないだろう。

  • 66二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 21:45:24

    黒服に(良い意味で)目をつけられてこき使われていたのは便利屋68でした。

    ①黒服の立場で知ってておかしくなく、先手を打てる事
    ②知ってても先手を打てないこと
    ③黒服の立場でも知りえないこと

    これを使い分けるのが難しい…

  • 67二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 00:47:40

    今回の捻じれて歪んだ世界線で一番夢に近付いてるのがまさかのアルちゃんなの草

  • 68二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 04:25:46

    (ホシノがしようとしていたことを見る)...あっ察し

  • 69二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 10:52:55

    保守

  • 70二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 11:10:25

    保守

  • 71二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 18:26:52

    >>66

    創作するにおいてどのキャラがどの辺まで情報知ってるかの管理ってすごい大事ですな…

  • 72二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 23:54:39

    保守

  • 73黒見セリカとの対話記録②25/09/02(火) 00:36:23

    私が黒見セリカを直接救出したのは、勿論私自身の選択によるものではありますが、
    その選択自体には我ながら疑問があります。
    合理的に考えれば、小鳥遊ホシノらアビドスの生徒たちに依頼するだけで十分解決できた問題でしょうし、
    そうでなくてもより私自身の安全を確保できる手段はいくつか考えられました。
    黒見セリカを可能な限り傷つけることなく、かつ確実に保護する手段を取った、と言えば聞こえはいいですが、
    それは到底合理的とは言えない選択であり、故に私はその選択を取るようコントロールされていたと考えています。

    手記①でも書いたように、私はこれを『先生の意思』と仮定していますが、今回はその『意思』が何を齎すのか。
    それを検証できる可能性があると考え、事件解決後の黒見セリカとの対話記録を残します。

  • 74黒見セリカとの対話記録②25/09/02(火) 00:37:30

    アビドス高等学校 医務室
    ヘルメット団撃退後、念のためということでそこに宿泊するよう強く指示された後という状況です。

    セリカ:先生、どこ行ってたの?
    私:おや、起きていましたか。すみませんん。少し仕事の電話を。
    セリカ:帰っちゃったのかと思ったわよ。アヤネにあれだけ怒られたのに。
    私:ええ、私ももう一度あれを体験したくはありません。
    セリカ:……(しばらく無言)先生、聞いても良い?
    私:はい、いいですよ。
    セリカ:何で、私を助けてくれたの?
    私:アヤネさんや他の方たちに説明したとおりですよ。それが最善だと考えたからです。
    セリカ:そうじゃなくて! えーと、その、だから……。ありがとう、先生
    私:はい?
    セリカ:お礼、言ってなかったから、言いたかったの! それだけっ
    私:……成程。
    セリカ:なんでちょっと動揺してるのよ。……車で飛び込んできたときは驚いたけど、先生が助けてくれたんだって理解したとき、とても安心したの。
    セリカ:大人の人にそう思ったの、初めてだった。……あ、でもっ! 何もかも信用したってわけじゃないからねっ! ……話くらいは聞いてあげるってだけ!
    私:……クックック。分かりました。それで結構ですよ。
    セリカ:……その笑い方、悪人っぽいからやめた方が良いわよ。

  • 75二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 00:38:42

    すみません。
    書いてる途中で寝落ちしてたので短いですが今日はこれだけです。

  • 76二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 02:01:47

    ゲマトリア元先生概念+scp報告書風メモ···
    良いね···

  • 77二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 09:02:44

    保守

  • 78二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 09:10:40

    保守

  • 79二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 10:24:17

    ベアトリーチェとの対決がどうなるか気になるな...
    というか黒服枠がいないのにホシノ誘拐は起こるのか?

  • 80二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 15:18:40

    ゲマトリアに黒服が居ないの、カイザーの動きも含めてアビドス編での影響でかそうだよな……

  • 81二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 21:59:33

    どうなることやら

  • 82借金問題について②25/09/03(水) 00:08:01

    ヘルメット団による黒見セリカ誘拐未遂事件の翌日、その黒見セリカを加え、ゲストとして私も参加し、
    改めてアビドスの借金をどうするか、という議題の会議が始まった。

    これに関してはアビドスを支援すると決めた段階、つまりアビドスからの支援依頼を見つける前から一つ考えがあったが、
    一先ずどのような進行なのか静観することにした。

    会議は、酷いものだった。

    詐欺まがい商法に引っ掛かりかけていた黒見セリカはまだいいほうで、他校の生徒を襲撃して生徒を誘拐する案(昨日誘拐未遂事件があったところである。)、
    以前の時間軸で計画が活かされた銀行強盗を行う案、そして即効性と確実性に欠けるアイドル売り出し案。

    いずれの案も、黒見セリカ以外は真面目に考えたとは到底思えない荒唐無稽さと無計画さで、つまるところ、恐らくこの会議は彼女たちにとっての日常そのものなのであろう。

    研究対象が自分自身とそれを取り巻く問題へと変化し、キヴォトスの生徒たちを主たる研究対象として見なくなって以降、逆に生徒たちへの理解が深まっているのは大きな学びである。

    「――先生、これまでの意見で、やるならどれがいい? 先生? 聞いてるー?」
    いつの間にか、会議が進行し、私の意見を求めるタイミングになっていたらしい。つまり、私の考えを伝える時が来たようだ。

    「どれも魅力的な案ですが……、一つ私の話を聞いてもらえませんか?」

  • 83借金問題について② 2/425/09/03(水) 00:09:09

    「えっ、先生も何か案があるんですか?」
    まず奥空アヤネが反応した。聞きたいと誰かが良い、他の生徒たちも頷く。

    「借金についてですが、シャーレへの借金に借り換えしませんか?」

    「え……」
    生徒たちの表情が明るいものから戸惑いのものに変わる。特に小鳥遊ホシノは厳しい視線へとなる。想定の範囲内の反応だ。

    「それって、ウチが連邦生徒会に吸収されたりするんじゃないの?」
    「あくまで金銭面での支援ということになりますので、立て直しに関して連邦生徒会が口出すことはありませんよ」
    小鳥遊ホシノがアビドスの維持を第一に考えているのはよく知っている。

    「シャーレってそんなにお金持ちなの? 10億近い金額をそんな簡単に払えるんだ。」
    「当然今すぐに私の一存で渡すことが出来る金額という訳ではありませんが……皆さんの希望があれば不可能という金額ではありません。」

    そもそも、10億という金額は学生が返済する借金としては途方もないものであるが、学校運営という観点から見ると大した金額ではない。
    キヴォトスの三大校と呼ばれるミレニアムやゲヘナ、トリニティの1か月の予算にも満たないだろう。

    「すみません。借り換えをしたとして、何か変わるんでしょうか。借金が減るわけではないんですよね」
    進行を担当していた奥空アヤネが気を取り直したのか、質問に加わる。

    「そうですね、では、話を続けても良いでしょうか」
    「うん。私は、先生の話が聞きたい。」
    黒見セリカがまっすぐにこちらを見ながら追随する確認し、説明を続ける。

  • 84借金問題について② 3/425/09/03(水) 00:10:29

    「まず、皆さんが得られるメリットについてですが。条件はまだ確定ではありませんが、金利を低くするつもりです。営利目的ではありませんからね。勿論0という訳にはいきませんが。」
    消費者金融よりはずっとマシな金利に設定できるはずだ。

    「そして、その金利が発生する時期ですが、3年程度の猶予期間を設けたいと思っています。その3年間で砂嵐の問題や、生徒数の増加施策などに集中して取り掛かれるような支援も行うつもりです。」
    客観的に、アビドスに取り巻く問題は借金問題に留まらない。砂嵐やそれに伴う、生徒、住民の減少。そして直に明らかになるだろう土地権利問題など、多岐にわたる問題がある。
    本来であれば、毎月の利息返済に追われている場合ではないだろう。

    「……ごめん、先生。疑う訳じゃないんだけど、なんでそんなにしてくれるの? 聞いた感じそっちにメリットが無いと思うんだけど」
    しばしの静寂の後、黒見セリカが質問をしてくる。当然の疑問。

    「そうですね……。そもそも支援であるということを抜きにすれば……私が皆さんと実際に関わってみて、十分返済計画が立てられると判断したためです。そういう意味で、どんな方たちにも提案できる方法ではありませんね。」

    私がそう言い切ると、再び静寂が訪れた。

    「ああ、ここまで言っておいてなんですが、今すぐ決めてほしいという訳ではもちろんありません。そもそもこの話、誰にも相談していないので、確実にできるという保証もありませんし、最短でも数か月は先の話になるでしょう。」

  • 85借金問題について② 4/425/09/03(水) 00:12:25

    「ああ、ここまで言っておいてなんですが、今すぐ決めてほしいという訳ではもちろんありません。そもそもこの話、誰にも相談していないので、確実にできるという保証もありませんし、最短でも数か月は先の話になるでしょう。」

    実際のところ、これは私にとっても時間稼ぎなのだ。精神的に不安定な小鳥遊ホシノをはじめ、アビドスの生徒たちが早まった行動を起こさないために、悠長が許される別のプランを示すこと。
    それは以前の時間軸で私が小鳥遊ホシノに提案した内容の丁度反対の内容と言えるだろう。

    私の最後の発言が功を奏したのか、場の空気が少し緩む。

    「うへ。じゃあ結局お金を稼ぐ方法は考えないとってことだね。先生、そっちは何かいい案無いの?」
    そしてその空気を察した小鳥遊ホシノが会議を元の流れに戻そうとしているのだろう。私に目くばせをしてくる。

    「そうですね……実は参加するだけでお金をもらえて超能力者になれるかもしれないという実験があるのですが……」
    「わぁっ、それって魔法少女になれたりするやつですか?」
    「ん。やっぱり先生はマッドサイエンティスト?」

    私が適当に話を合わせると即座に雰囲気が元の会議と同様のものに戻る。
    それからほどなくして、奥空アヤネの怒気が頂点を迎え、会議はお開きとなった。

  • 86二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 00:19:00

    3つ目の最後のセリフ被ってしまった…

    今日は以上です。

    お金の話とかは適当なのでご了承ください。

  • 87二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 06:34:49

    保守

  • 88二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 10:53:49

    実際、金額が金額だから金利下げるのは有効だよなぁ。カイザーが急に金利を上げて苦労もしてたわけだし……

  • 89二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 10:59:31

    これ受け入れるくらいならノノミのカード使ってるだろ

  • 90二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 12:11:04

    ノノミのカードはネフティスの資金から来るものだしノノミが事実上人質になるとかまあ色々事情は違う

    黒服のは要は俺の責任の範囲内でやるから俺を信じろってな話だしまだ信頼度は足りないかなって感じ

  • 91二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 16:07:00

    >>89 でも返済するわけじゃないしな 手数料が大きく減るだけだし

  • 92二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 17:34:30

    まあ借金代行されると学校ヌッとられるってじゃあ今カイザーにしてるのはヌッとられてないの?ってなるからね
    そこを強調されたら意外と借金肩代わりで低金利な別の場所の借金へ踏み切ってくれそう

  • 93二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 23:12:08

    ほー

  • 94人物備忘録①25/09/03(水) 23:17:51

    シッテムの箱の機能で生徒のプロフィールはある程度確認可能ですが、実際に関わった得た情報などをまとめたメモです。

    七神リン
    私が時間遡行に気付いて以降、初めて会った生徒であり、私のことを先生と呼んだ初めての生徒です。
    彼女の発言以外に私が先生であるという根拠はシステムの箱の使用権限しか存在しないので、当初彼女が時間遡行に関与している
    可能性を疑っていましたが、現在は可能性としては高くないと考えています。
    『先生』が持つ権限について現状最も詳しい生徒と考えられるため、必要に応じて連絡を取る必要があるでしょう。


    早瀬ユウカ
    シャーレオフィスの奪還時に協力を得た生徒の一人。特筆すべきはその計算能力の高さで、所謂『数字に愛された』存在と考えられます。
    一方性格はあまり研究者向きではないと思われます。

    投資や株取引に興味があるとのことですので、実験として以前の時間軸の知識から得た情報を利用して『アドバイス』を
    したところ、成功、失敗いずれも概ね予想通りの結果が得られました。
    そうした結果、本人からはある程度話の分かる人物として見られるているようです。

    羽川ハスミ
    シャーレオフィスの奪還時に協力を得た生徒の一人。トリニティの正義実現委員会の幹部というイメージ通り、正義を重んじた厳格な印象を受ける人物です。
    職務上から来るものか、性格からかは不明ですが、私(先生)への警戒心が他の生徒たちより強く表れており、
    その一方で、礼儀を失することは一切なく、また裏表の少ない人物のようです。

  • 95人物備忘録②25/09/03(水) 23:19:18

    守月スズミ
    シャーレオフィスの奪還時に協力を得た生徒の一人。羽川ハスミと同じトリニティで、自警団に所属しているとのことですが、それはつまり、正規の治安維持組織の
    活動では対処できない事案が想定されうるということでしょう。最も、本人同士の仲が悪いといったことはないようです。
    協力者となった他の生徒たちが全員学内での公的な立場のある方たちでしたので、
    純粋に自発的に表れた彼女は非常に責任感と、治安維持への強い信念のある人物なのでしょう。私に対しても他の生徒たちに対しても、礼儀正しい人物という印象です。

    火宮チナツ
    シャーレオフィスの奪還時に協力を得た生徒の一人。ゲヘナ学園で治安維持活動を行うというのは奇行であるというのが私の知る限りのキヴォトス内での常識なのですが、
    協力者となった他の生徒たちと同様に非常に生真面目な人物でした。
    医学に興味があるらしく、合法的な治験の情報にも興味を示していました。ただし研究者気質というほどのものではなさそうです。
    私に対しては想定の範囲内で警戒していましたが、作戦成功後は一定の信用は得られたようです。

    狐坂ワカモ
    シャーレオフィス内で破壊工作を行おうとしていた生徒。
    現在、私の状況について何かしらの情報を持つ可能性があるとみていますが、現時点で居場所は不明です。
    彼女との遭遇時、2,3言会話を交わしましたが、突如として動揺した様子を見せ逃走しました。
    彼女の存在自体は以前の時間軸でも認識していましたが、直接会ったことはないため、彼女の行動は
    私について何らかの情報を持つという推理が自然なものに感じます。

  • 96二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 23:25:09

    チュートリアル部分を書くのはちょっと大変なので、黒服(先生)から見た生徒の印象という形だけとりあえず書いてみました。

    半分寝ながら書いてたのですみませんが今日はここまで。

  • 97二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:15:27

    保守

  • 98二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:49:00

    ワカモ…

  • 99二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 14:04:40

    どっちだろう?

  • 100二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 22:00:38

    ほー

  • 101便利屋68との顔合わせ 1/425/09/04(木) 23:24:31

    アビドス高校での会議の後、アルバイトがあると言い黒見セリカが先に下校し、
    当然の流れのようにアルバイト先である紫関ラーメンで再び食事をとることになった。

    生徒たちの和やかな食事風景を横目に、今後の動きについて検討していると、内気そうな少女が来店する。

    伊草ハルカ。便利屋68に所属する生徒のはずだ。
    何故か最も安いメニューを確認しており、黒見セリカの返事に喜んだ様子でまた外へ出ていく。

    程なく社長の陸八魔アルをはじめ、便利屋68所属の生徒たちが勢ぞろいで店内に現れる。
    確かに正式な報酬は支払い前で元々金に困っていたのは把握済みだったが、だからこそ多めに準備金を渡したのだし、昨夜時点で残金の確認と報酬の一部とする話をつけたはずだ。
    今朝は特に何もなければ自由にしていて良い、という連絡を朝の内にしている。
    あるいは、別の依頼でこちらを尾行している……としても、金に困っている振りをする必要はないし、金欠なのは事実なのだろう。
    そもそも、陸八魔アルはこちらに気付いた様子は全くない。こちらに目線を送ってきたものがいるが、こちらとしても気づかない振りをした。

  • 102便利屋68との顔合わせ 2/425/09/04(木) 23:27:08

    一体何があったのであろうか。

    漏れ聞こえてくるところによると、「訳の分からない不運」が続き、「現金の入ったバッグが爆発」した上で、その他細かい不運が続き数百円しか手元に残らなかったようだ。
    私に連絡すれば良いものを「昨日の今日でお金が無くなりましたなんて言えるわけがない」ということのようだ。
    私がアビドスに来た日のことを思い出す。作為的な不運が続くという状況は身に覚えがある。ただの偶然と考えることもできるが、これについても調査を行う必要がありそうだ。


    そういった会話は全く耳に入っていないのか、四人でラーメン一杯を分けようとする学生に何やら感極まった様子の黒見セリカと大将が利益度外視のサービスをしているが、
    その少女たちは昨日の今日で常軌を逸した散財をした連中である、ということになる

    自然と、アビドスの生徒たちと便利屋の生徒たちとが交流を始める。依頼時には影響を考え可能な限りアビドスの生徒たちとの接触は避けるように、と言っていたはずだが、
    そもそも陸八魔アルは今会話している相手がアビドスの生徒たちで、億にいる黒ずくめの男が先生である、とは全く気付いていないようだ。

    先ほどこちらに目線を向けた生徒、鬼方カヨコは一瞬少し動揺したようにこちらを見たが、小さくため息をつくような動作をし、状況を静観しているようだ。
    そしてもう一人、浅黄ムツキは明らかにこちらに対し挑発するような笑みを浮かべ、アビドス生たちとの会話に興じている。
    今の状況においてはこちらとしても支障はない。好きに交流して問題ないだろう。

  • 103便利屋68との顔合わせ 3/425/09/04(木) 23:28:19

    紫関ラーメンを出た後、食うにも困っている状態が続いてしまうのはこちらとしても支障が出かねないので、
    予定を繰り上げてアビドスに唯一存在する夜間営業している喫茶店に陸八魔アルを呼び出す。
    隣にアビドスの生徒たちがいたため、端的な内容をメッセージで送っただけだが。


    アビドスの生徒たちと別れ、待ち合わせ場所に到着すると、すでに便利屋68の面々は揃っているようだった。
    顔面蒼白の陸八魔アル、ニヤニヤ笑っている浅黄ムツキ、呆れた様子の鬼方カヨコ、そして伊草ハルカはおろおろとしていた。
    こちらからの指示に的確に従い、黒見セリカ救出に一役買ったエージェントとは思えない個性的な様子だ。

    「便利屋68の皆さんですね。お待たせしました。」
    「契約破棄だけは勘弁してくださいっ!!」
    「は?」

    とりあえず合流しようと話しかけたところで、いきなり謝罪される。おかしな生徒だ。

    「……あれ? あなたはさっきのラーメン屋さんにいた……」
    「どうも、今しがたお別れしたばかりですが」

    動揺がとれない陸八魔アルと会話を試みるが、混乱が収まる様子はない。

  • 104二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 23:29:57

    >>61

    このA.R.O.N.Aってアロナとは別人なのかな

  • 105便利屋68との顔合わせ 4/425/09/04(木) 23:30:36

    暫くうんうんと悩んでいた陸八魔アルがようやく口を開く。
    「あ、アビドスの子たちと一緒にいたってことは、あなた先生!?」

    思ったよりも手前で思考が停止しているようだ。鬼方カヨコが溜息をついた。浅黄ムツキは今にも腹を抱えて笑い出しそうだ。

    「そうですね、お初にお目にかかります。確かにシャーレで『先生』をさせていただいています」
    「な、なんで先生がこんなところに? わ、悪いんだけど私たち今人を待っていて……」
    「よろしくねー、『黒服』さん。私のことはムツキちゃんって呼んでね。」
    「はい、こちらことよろしくお願いします。ムツキさん」

    話を遮って浅黄ムツキが自己紹介を始める。
    それを聞いてようやく私=先生=依頼主黒服、ということ事実にたどり着いたのか、陸八魔アルが驚愕の表情を浮かべ、機能停止する。

    「鬼方カヨコ。よろしくね、先生。」
    「い、伊草ハルカです。あ、アル様?」

    鬼方カヨコはあきれた様子で、それでも普通に、伊草ハルカは状況にあまりついてきておらず、陸八魔アルへの心配と先生への挨拶とを同時にこなしている。
    そして、ようやく動き出した陸八魔アルから、今後何度か聞くことになる、彼女のお決まりのセリフが飛び出した。

    「なななな、なっ、何ですってーーーーーーー!!!???」

    便利屋68との顔合わせは、このようにして始まった。

  • 106二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 23:32:32

    何か合流したところまでしか進まなかった………
    お判りでしょうが便利屋によるアビドス襲撃の代替イベントです。

  • 107二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 08:01:51

    カイザーから受けちゃったのかな?

  • 108二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 12:24:54

    保守

  • 109二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 20:06:48

    くーこれこれ!

  • 110二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 22:43:27

    保守

  • 111便利屋との顔合わせ② 1/325/09/06(土) 04:14:27

    「つまり、先生が『黒服』という名前で私たちに依頼してたってことね?」
    「えー、アルちゃんまだそこなんだ?」

    店員にコーヒーを頼み、それが届いたあたりで、陸八魔アルがようやく気を取り直してそう口にした。
    早速隣の浅黄ムツキが茶々を淹れているが、彼女は顔を顰めただけで無視することにしたようだ。

    「ええ、その通りです。」
    「どうしてそんなことをって、聞いてもいいかしら?」

    先ほどまでの間の抜けた顔つきが無かったかのように鋭い目でこちらを見る。
    切り替えの早さはリーダー向きと言えるだろう。先ほど正気を取り戻すまで結構あった気がするが。

    【正直に言いますと、あなたたちがどのような方たちか分からないままに「先生」として依頼するのは難しかったからです。」
    「成程。確かに先生って最近話題だものね。理解できるわ。そして、こうして私たちの前に現れたということは……」
    「ええ、皆さんには素性を明かしてお問題ないと判断したためです」

    私がそういうと、陸八魔アルが突然口元を抑えて震え始めた。体調不良だろうか。
    浅黄ムツキが「気にしないで―、アルちゃんこういうシチュがツボなだけだから」と陸八魔アルの頭を撫でながら言うので、気にすることはないのだろう。
    紫関ラーメンの時とは違い、こちらを観察しているのを隠そうともしていなかった鬼方カヨコが溜息をつく。薄く笑っているような表情だ。
    伊草ハルカは未だ視線が定まっておらず、こちらを恐々と眺めたり、陸八魔アルの名前を読んだりと情緒不安定だ。

  • 112便利屋との顔合わせ② 2/325/09/06(土) 04:16:42

    「こほん、それで『黒服』さん。いえ、『先生』と呼んだ方がいいのかしら」
    「お好きに呼んでいただいて構いませんよ。」


    再び気を取り直した陸八魔アルが何事も無かったかのように「では、黒服さんで」と話を続ける。

    「アビドスの生徒たちに関わったことによる契約違反という話ではないのよね?」
    「契約違反? あれは偶然でしょう。そんな理不尽なことは言いませんよ」

    そもそもその条件を付けたのは私と便利屋との関係を知られて、余計な警戒をされないためのものだ。
    契約破棄したい場合にカードとして利用する可能性はあるが、いまのところそのような予定もない。

    つまり当然のことを話しただけであるが、今度は陸八魔アルだけでなく、便利屋68全員の顔が明るくなったように見える。
    普段、どれほど理不尽な契約を受け続けていたのだろうか。難儀なものだ。

  • 113便利屋との顔合わせ② 3/325/09/06(土) 04:19:32

    「ええと、ではどうして?」
    「ラーメン屋で食事にも困るような切羽詰まった状態に陥っている聞こえてきまして、早急に報酬を渡した方が良いと思いまして。余計なお世話でしたか?」
    「聞こえてたの!? 凄く助かるけど、よりにもよって黒服さんに聞かれてたなんて……すごく助かるけど……」

    もはや表情を取り繕うことはあきらめたようで、落ち込んだり喜んだりと忙しくしている。

    「深くは聞きませんが、大変だったようですね。こちらが今日までの分の正式な報酬です。一応明日以降の分も持ってきていますが」
    「いいえ、それは受け取れないわ」

    前金をもらわないことには強いポリシーがあるようだ。あえて否定する必要もない。


    「そうですか。では、これは次の機会にお渡しします。それで、次にやってほしいことなのですが――」

    その跡、便利屋68と仕事内容の打ち合わせをし、解散となった。

    帰り道で、ちょっとしたトラブルはあったが、現時点では概ね順調に事が進んでいたと言っていいだろう。

  • 114二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 06:09:44

    トラブル??

  • 115二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 13:40:00

    ほしゅ

  • 116小鳥遊ホシノとの対話記録②25/09/06(土) 17:05:48

    便利屋68との顔合わせを終え、帰路についているところで、小鳥遊ホシノと遭遇しました。
    その際、様子に違和感があったので、記録として残しておきます。

    ホシノ:(背後から)先生?
    私:(立ち止まり振りむく)おや? ホシノさんですか。その恰好、もしかしてパトロールですか。
    ホシノ:うん。あんなことあったばかりだからちょっとねー。今も怪しい人影だと思ったら先生だったんだよ
    私:そうですか。まあ、身なりが怪しいという自覚はありますよ。
    ホシノ:あはは。先生こそ、まだ帰ってなかったんだね。……何してたの?
    私:帰る前に喫茶店で仕事をしていたのですよ。
    ホシノ:……うへー、大人って大変だねえ。
    私:年齢に起因するものでもないとは思いますが……。ホシノさんもこうして、学生の身で夜間パトロールをされているじゃないですか。
    ホシノ:それもそっかー。……

  • 117小鳥遊ホシノとの対話記録②25/09/06(土) 17:06:48

    (暫く会話が途切れる)

    私:ホシノさん?
    ホシノ:何?
    私:何か、不安になるようなことがあるのですか?
    ホシノ:……何のこと?
    私:……いえ、私の気のせいのようです。
    ホシノ:あはは、変な先生だ
    私:そうですね。……もし、不安になるようなことが他にあるのであれば、誰かに相談してみるといいかもしれませんよ。私でなくても構いません。
    ホシノ:うん、ありがとう。そういうことがあったら考えておくよ
    私;さて、こんな夜中に立ち話も何ですから、そろそろ帰ります。ホシノさんもほどほどにしておくことをお勧めしますよ。
    ホシノ;そうだね。適当に切り上げるよ。先生も気を付けてね。
    私:ええ、そうします。

    話し始めた直後は普通の様子でしたが、話している途中で、どこか思い詰めたような様子でした。
    その様子は、以前の時間軸で私が小鳥遊ホシノに『提案』をした時期に近いものがあり、何かの不安を抱えていることは間違いないように思われます。
    また、私に対する警戒心も強く感じられ、こちらを牽制するような気配を感じました。
    これについては、少なくとも今は敵対するつもりはないことをどうにか信じてもらえる方法を考える必要がありそうです。

  • 118二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 22:10:50

    黒服いなくても思い詰めちゃうおじさん可哀想

  • 119ブラックマーケットへ25/09/07(日) 00:02:12

    便利屋68との顔合わせの翌日、当然便利屋は来なかったものの、カイザーが雇ったと思われる傭兵がアビドスへと襲撃してきた。
    襲撃に関しては監視を行っていた便利屋から情報が来ており、奇襲的な反撃を行い、これを撃退。一部兵装を鹵獲することにも成功した。
    恐らく正規の流通ルートで出回っているものではないものであり、型式は旧式。そのあたりの調査は生徒の自主性に任せることにする。口を出すと藪蛇になりかねない。

    そしてさらにその翌日、月に1度の利息回収の日だという。粗末なマネーロンダリング手段として、現金輸送車での回収に限っているという話だ。
    その額が毎月およそ800万円。つまるところ、彼女たちは自分が在学している3年間の中で、3億円に近い大金を返済できているということになる。

    利息の見直しと猶予があれば、やはり十分な返済能力があるとみていいだろう。

    支払いを終えた後の会議では、カタカタヘルメット団が使用していた兵装、そして昨日の襲撃に使われ、鹵獲した武器、どちらも現在は非流通品となっており、
    その出所はブラックマーケットであること。つまり、それら2つの襲撃には同一の黒幕がいるという推測が立てられた。

    便利屋たちにブラックマーケットへと向かうことを連絡し、対策委員会のメンバーとともに、ブラックマーケットへと行くことになった。

  • 120ブラックマーケットへ25/09/07(日) 00:04:02

    さっき帰ってきたため、今日はこれ以上かけなそうなので置いておきます。
    この辺の流れはホシノのこともあり、黒服が静観を決めていたため本編に近い進行となる想定です。
    そのため、ダイジェストで行きました。

    次にはファウスト様が出てくれば良いなあ

  • 121二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 02:02:09

    全然マッチポンプじゃないのに悪いことしているように黒服先生!!

  • 122二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 04:41:44

    >>121 見えるよでした………

  • 123二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 12:21:15

    まぁ、元暗躍系ヴィランですしお寿司…?

  • 124二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 20:25:59

    保守

  • 125ブラックマーケットの支配者25/09/07(日) 21:55:05

    アビドスの生徒たちと共に訪れたブラックマーケット。
    我々悪い大人にとって、非常に都合のいい場所であり、以前の時間軸で取引を行う場合には利用していた。
    最も私自身の求めるものはブラックマーケットにもそうそうあるわけではなかったが。
    今の私は外から来て間もない人物ということになっているので、知識をひけらかすわけにはいかないが。


    ダダダっという連続した銃声が、ブラックマーケットに入って間もない私たちの耳に届いた。
    その後、「ど、どいてくださーい!?」という声とともに白い制服に身を包んだ少女が走ってこちらに向かってくる。
    阿慈谷ヒフミ。以前の時間軸での調査によると、ブラックマーケットに最も多く足を運んでいるトリニティの生徒だ。

    私の姿をみて悲鳴をあげながらすっ転んだ失礼な少女は他の生徒たちに任せ、少女を追っていたガラの悪い二人組を見やる。

    「これはどういう状況です? 万引き犯を追っているような様子には見えませんでしたが。」
    追いかけていたガラ悪少女たちに確認を行う。

    「あん!? うるせえな。私らはそのトリニティの生徒に……ひっ!?」
    「邪魔するってならお前らごと……なっ、何だお前!?」

    2人組が私の顔を見て動揺したように顔を見合わせる。

  • 126ブラックマーケットの支配者25/09/07(日) 21:57:05

    威勢が良かった2人はどういう訳かおどおどとし始めている。

    「い、いやその……おい、絶対ヤバいぞこの人。明らかに『本物』だ。私らなんかが関わっていい人じゃねぇよ!?」
    「その位分かるって!! ……あ、いえあのー、そのトリニティの女は譲るので、見逃してもらえないっすかね……」
    やがて2人がよくわからないことを言いだしたが、面倒ごとが片付きそうなので頷いておく。

    「ええ、ではそのようにしましょう。『お気をつけてお帰りを』」

    2人組が悲鳴を上げて去っていく。
    悲鳴は3つ聞こえたので、もう一つの悲鳴の出どころを確認するために振り向くと、阿慈谷ヒフミが砂狼シロコと十六夜ノノミに拘束されていた。

    「あ、あなたたちもしかしてブラックマーケットにたびたび現れては気に入らない店を潰していくという『ブラックマーケットの支配者』ですか!? 私、そんな人たちに捕まっちゃったんですか!!?」

    以前の時間軸でも全く聞いたことのない情報を口にして阿慈谷ヒフミが怯えている。
    もしそういう噂があるとしたらその原因のひとつは恐らくこの少女だろう。柄にもなく、私は溜息をつきそうになった。

  • 127ブラックマーケットの支配者25/09/07(日) 21:58:49

    「そうなの、先生?」
    砂狼シロコが真顔でこちらに確認する。
    「わぁ、先生、ワルーい人だったんですねっ」
    と十六夜ノノミが朗らかな笑顔でそれに乗る。

    「そんな訳がないでしょう。私がブラックマーケットに来たのは今日が初めてです。」
    2人にそう返事をし、改めて阿慈谷ヒフミの方を見る。

    「何やら追われている様子だったので事情を確認しようとしただけですよ。」

    「3人が3人とも先生の顔見て怖がってたねぇ」
    「こ、こう見えて結構いい人なのよ」

    小鳥遊ホシノと黒見セリカが茶々とフォローをしてくるが、そちらは無視する。

    「せ、先生。……ということはもしかして、最近話題の外から来られた先生って」
    「ええ、恐らく私のことでしょうね。よろしくお願いします。」

    阿慈谷ヒフミに再び驚きの声をあげられつつ、私は初対面で先生だとわかる方法について検討する必要性についてそろそろ考えなければならないと思い始めるのだった。

  • 128二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 22:35:11

    保守

  • 129二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 00:05:15

    黒服からもちょっとアカン奴と思われてるヒフミさん…

    後好意を隠さないセリカ可愛い

  • 130二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 07:51:39

    保守

  • 131二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 07:55:05

    >>126 なんか知らない二つ何黒服先生困惑で草

  • 132二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 15:54:27

    保守

  • 133二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 22:21:22

    ほしゅほしゅ

  • 134銀行強盗(ダイジェスト)25/09/09(火) 00:04:08

    阿慈谷ヒフミへの誤解が解け、謝罪と感謝を引き出したのを良いことに、アビドスの生徒たちは特に私が何かを言うまでもなく、
    案内役として彼女をこき使うことに決めたようだ。

    そして、案内役としての阿慈谷ヒフミは「何度か来たことがある」程度では説明がつかないほどブラックマーケット内部について詳しく、
    次々と武器の販売経路についての心当たりを回っていた。どうも、一般流通していないグッズ入手目的のみならず、戦車にも興味があるようだ。

    しかし、私自身は分かっていたことだが、流通元の特定には至らない。
    行き詰まりの空気を感じ、偶然を装って何か手を打てないか考えていたところ、そういったことが不必要なほど明確な手がかりが現れた。
    カイザーローンの現金輸送車が闇銀行へと入っていったのだ。誰の目があるとも知れないこの場所に、まさか堂々と同じ車で乗り込んでいたとは考えもしていなかったが、
    これで何故以前の時間軸で『先生』やアビドスの生徒たちがカイザーの悪事に気付き、闇銀行への銀行強盗を敢行したのか、という疑問が解決された。
    生徒たちも当然、見覚えがある車の登場に興奮と憤りを隠せない様子である。
    程なくして、アビドス生徒全員の賛成の元(トリニティ生を巻き添えに)銀行強盗の実行が決定した。

    銀行内部への侵入は生徒たちのみで行い、私は奥村アヤネおよびその他実行犯と通信を結び、サポートをしつつ脱走準備をする手はずとなった。
    待機している便利屋に連絡し、警備の陽動と念のための追手の排除を依頼し、目的は無事達成されたのだった。

  • 135陸八魔アルとの通信記録25/09/09(火) 00:05:37

    モモトークの記録

    黒服:本日は何もなければ夕方まで待機とします。
    陸八魔アル:了解

    黒服:申し訳ありません。成り行きでブラックマーケットへ行くことになりました。
    陸八魔アル:承知したわ。こちらもすぐにブラックマーケットへ向かうわ。
    黒服:ありがとうございます。
    陸八魔アル:何でも言ってくれて構わないわよ

    黒服:申し訳ありません。成り行きで銀行強盗を行うことになりました。サポートをお願いできますか?
    陸八魔アル:任せなさい。何をすればいいかしら?
    黒服:出口の警備員を出来るだけ長く引き付けてください。それと、脱出後に再度連絡しますので、もし追手があるようでしたら排除をお願いします。
    陸八魔アル:承知した。気を付けて

    黒服;脱出成功しました。追手の確認をお願いします。
    陸八魔アル:了解。バッグが落ちているけどあれは何かしら?
    黒服;アビドスの生徒たちには不要なようです。処理は任せても良いですか?
    陸八魔アル:了解

  • 136浅黄ムツキとの通信記録25/09/09(火) 00:08:34

    モモトークの記録(黒服としての連絡先をいつの間にか入手されていた。)

    浅黄ムツキ:暇ー。アルちゃんのモモトークチェック回数のカウント位しかやることない(端末を眺めている陸八魔アルの画像)

    浅黄ムツキ;いきなりブラックマーケットに行くことになったときのアルちゃんの顔(何かを叫んでいる陸八魔アルの顔写真)

    浅黄ムツキ:いきなり銀行強盗をするって聞いた時のアルちゃんの顔(白目を剥いて何かを叫んでいる陸八魔アルの顔写真)

    浅黄ムツキ;銀行強盗を成功させたアビドスの子たちに感動してるアルちゃん(陸八魔アルが興奮して語っている53秒の動画)

    浅黄ムツキ;バッグの中の現金に驚いてるアルちゃんの顔(白目を剥いて何かを叫んでいる陸八魔アルの顔写真
          さすがに現金入っているのは私も驚いたよ!

    黒服:顔写真を勝手に送るのはやめてあげませんか?
    浅黄ムツキ;はーい

  • 137二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 00:16:13

    銀行強盗の下り、書いてたのですがあまりに本編通りになりそうなのでダイジェストっぽく流すことに
    それだけだとあれだったのでちょっとおまけをつけました。
    便利屋と対策委員会との絡みは借金する必要が無い&黒服との関係があるので実現しましませんでした

  • 138二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 06:51:30

    保守

  • 139二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 12:38:42

    保守

  • 140二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 15:45:33

    ほしゅ

  • 141二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 19:07:11

    >>137 たしかに黒服が銀行強盗しているのはイメージつかないな

  • 142カイザーの目的25/09/09(火) 22:39:24

    ブラックマーケットからアビドスの校舎に戻り、入手した資料を調べるにつれ、生徒たちの表情は険しいものとなっていった。
    借金を返済したその金が、そのままアビドス襲撃の資金源となっていたという事実が浮き上がったからだ。
    行きがかり上同行しているだけの阿慈谷ヒフミも他人事とは思えないといった様子で理由を考えている。
    私の持つ情報、と言っても調べれば誰でも分かることではあるが、それを切るべきなのは今だろう。おそらくあの『先生』はもっと後に気付いただろう。

    「皆さん。実は私も独自で調査をして知ったことがあるのです。皆さんはご存じかもしれないと思っていたのですが…」
    「何? 先生。重要なこと?」

    砂狼シロコが直に聞き返す。
    私は頷いて続きを本題を話す。

    「このアビドスの土地の権利についてです。そうですね、端的に言うとこのアビドスの地の多くの部分の権利はカイザーコーポレーションが握っています。」
    「……は?」

    一瞬沈黙があった後、だれかがそう呟いた。

  • 143カイザーの目的25/09/09(火) 22:40:51

    私は懐から書類を取り出し、近くにいた奥空アヤネに手渡し、話を続ける。

    「勿論この校舎の敷地内は違いますが、砂漠地帯の大部分、そして元々市街地だった廃墟地域や、現在も住民が暮らしている部分にまで、カイザーが所有する地点は多数あります。」

    奥空アヤネが無言で、そして焦りながら資料を確認する。
    生徒たちの注目が彼女に集まる。そして、

    「……先生の、仰っているとおりです。」

    資料を確認した奥空アヤネがうなだれるようにそう言い、俯く。
    重い沈黙が再び流れる。しかし、私がこれを口にしたのはそのような空気を作るためではない。

    「どのような経緯でそうなったのかは調べ切れていませんが、そうですね。話を整理しましょうか。何故カイザーローン、あるいはカイザーコーポ―レーションそのものがアビドスを攻めているのか」

  • 144カイザーの目的25/09/09(火) 22:42:32

    話を再開した私に重い視線が集まる。

    「土地の権利を集めていることからみるに、敵はアビドスの土地そのものが目的と考えるべきでしょう。いくら権利を持っていても、アビドスという学校があれば思い通りに開発するのは難しい。そのために敵はアビドスを疲弊させ、借金を返せない状況に追い込もうとしている。というのが理由として考えられます。」

    あくまで想像という体で話をしているが、これは事実だ。私は彼らが何を探しているのかも、実際にそれが存在していることも知っている。
    そしてそれがどうなったかという顛末まで。

    しかし、アビドスの生徒たちにとってはにわかには信じられず、しかし反論することも出来ない様子で、なかなか二の句が継げずにいるようだ。
    時折口を開くが、「何で」とか「そんな」といった感情が漏れ出した言葉のみ。

    「ふむ。今日のところは解散にしましょうか。結局のところ、状況が今すぐ変わるわけではないのです。幸いにして襲撃の実行犯たちにはある程度の打撃を与えていますし、考える時間もあるでしょう」

  • 145カイザーの目的25/09/09(火) 22:44:58

    「そ、そうですね! 私もトリニティに帰らないと……」

    唯一当事者ではない阿慈谷ヒフミがいたたまれない様子から立ち直り、解散に同意する。

    その声に釣られ、アビドスの生徒たちも顔を上げ、立ちあがる。

    「えー、ヒフミちゃんはアビドスに残ってくれてもいいんだ?」
    「ん。ファウストなら大歓迎」
    「その名前はやめてください!?」

    空元気だろうが、小鳥遊ホシノと砂狼シロコがいつもの様子でふるまう。
    十六夜ノノミも暗い表情を隠すように小さく微笑む。
    俯いていた奥空アヤネも、こちらをすがるような眼で見ていた黒見セリカも頭を振って、立ちあがる。

    そして、トリニティに戻るという阿慈谷ヒフミへ一定の口止めをして見送り、この日は解散となった。

  • 146二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 22:53:51

    対策委員会は正式な部活ではないってホシノに伝えるのかな……

  • 147二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 23:45:52

    今日も良かったです。

  • 148二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 06:17:55

    さて、そろそろこの世界の黒服ポジが姿を現す頃か?

  • 149二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 13:23:27

    保守

  • 150二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:47:13

    ホシノはここでも誰かと契約しているのかな?

  • 151二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 22:35:11

    hosyu

  • 152ゲマトリアについて25/09/10(水) 23:24:56

    現在の時間軸において、ゲマトリアとしての私が存在したという痕跡を見つけることは出来ていません。
    少なくとも今の私の立場で確認できる範囲では何も見つからなかった、というのが現実です。
    アビドスにいる間にいくつか実際に行って調べることが可能な場所があるので、近いうちに行って確かめる予定です。

    ゲマトリア自体に関しては、これはあると考えるのが妥当でしょう。
    こちらについては、特に派手に動いていたベアトリーチェが活動していた痕跡を発見しています。
    ただし、構成員のいずれにも、こちらから連絡を取る手段は現状存在せず、あくまで可能性としての話になります。

    ゲマトリアがあると仮定して、私の代わりとなる構成員がいるのか、という話ですが、これについても不明です。
    私が『先生』の立場になったように、何者かが『黒服』という立場を得ている可能性もあります。
    あるいは私の全く知らない構成員がいる可能性もあるでしょう。

    そのような存在がいるかどうか、はある意味どうでもいいことではあります。今気にすべき点は、そういう存在がいたとして、
    それが敵になるのか、ということです。

    小鳥遊ホシノに取引を持ち掛けたり、あるいはカイザーに協力したりする人物が私の代わりとして存在している場合、
    その人物への対策も考えなくてはいけないということになります。
    本人からは聞き出すことは出来ていませんが、アビドスの現状について認識を改めた今日以降、近日中に何かアクションがあるかもしれないと考えています。

  • 153小鳥遊ホシノとの対話記録③25/09/10(水) 23:26:11

    以前の時間軸で私が小鳥遊ホシノに提案を行った日と同日である本日。
    私は二つの予想を立て、そのうち一つについては予想通りに事が進みましたが、
    もう片方について、つまり小鳥遊ホシノが誰かに会いに行きアビドスを不在にする、ということにはならず、
    彼女は私の宿泊地へと現れました。その際の会話記録です。

    ホシノ:ごめんね、先生。今朝は来れないっていうのは知ってたんだけど……
    私:いえ、別件の所用については終わりましたので大丈夫ですよ。何かありましたか?
    ホシノ:それがね、私にもよくわからなくてさ。何だか今日は、先生に会わなきゃいけなかった気がして
    私:それは……
    ホシノ:うん。変な話だよね。前にさ、先生と初めて話したとき、前にも会ったことが無いかって言ってたでしょ?
    私:確かナンパじゃないかと仰って躱されましたね
    ホシノ:う、そうだけど。あの時はごめんね。
    私:気にしていませんよ。続けてください。
    ホシノ:うん。それで、今日は先生と何かお話をしなきゃいけないような気がしたんだ。そんな気がするとしか言えないんだけど…

  • 154小鳥遊ホシノとの対話記録③25/09/10(水) 23:29:07

    私:成程……。不思議な話ですね。
    ホシノ:だよねー。あはは、何なんだろ。
    私:直感、あるいは前世の記憶という可能性もあるでしょうか。
    ホシノ;えっ、先生も冗談とかいうんだね。
    私:私を何だと思っているのですか?
    ホシノ;あはは、ごめんね。……先生、この前、借金の借り換えの話をしてくれたでしょ。
    私:ええ、しましたね。
    ホシノ:頭では、受けた方が良いと思ってるんだ、私は。でも、どうしても信じきれないっていう気持ちが出てきちゃって……、それを言うことが出来なかった
    私:……ホシノさんの意見が出れば、賛成にしろ反対にしろ大きな意味を持つでしょうからね。慎重なのは良いことです。
    ホシノ:うん、ありがと。……先生、信じても良いんだよね?

  • 155小鳥遊ホシノとの対話記録③25/09/10(水) 23:34:37

    小鳥遊ホシノの話は、以前の時間軸と記憶が混線している、あるいは本人も時間遡行をしており、それを覚えていないという可能性すら考えられる内容でした。
    しかし、この時の私はまた、あの『使命感』のようなものの影響を受け、その考察へと思考を割くことが出来ていませんでした。

    私:……誤解なきように言っておきます。ホシノさん、私は悪い大人です。
    ホシノ:え?
    私:目的のためなら手段を選ばない、外道と言われても否定しようのない選択を取ったこともありますし、それを後悔もしていません。
    ホシノ:……
    私:ですので、ホシノさんが私を信用しないのは当然といえますし、助言を与えるとするなら、あのような提案を受け入れることには常にリスクがある、ということです。
    ホシノ:せ、先生?
    私:私は裏表のある人物です。その上で、ですが、あの提案自体に一切の裏はありません。アビドスの生徒たちの状況を改善するための提案です。皆さんでよく話し合って、考えてください。
    ホシノ:……うん、ありがとう。先生は悪い大人だってことは覚えておくよ
    私:そこですか。
    ホシノ:あはは。……
    私:さて、ホシノさん。よければ食事でも行きませんか
    ホシノ:えー、先生と?
    私:はい。ですが、そろそろ皆さんも揃っていると思いますので
    ホシノ:みんな? あ、紫関ラーメンだ
    私:正解です。

    記録はここまでです。
    考えるべきことは多くありますが、今のところは小鳥遊ホシノに接触しているゲマトリアの構成員はいないと考えて良さそうです。

  • 156二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 23:38:12

    という訳で、次回は対策委員会と便利屋が集合する紫関ラーメンからです

  • 157二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 23:48:53

    更新ありがとうございます!! ある意味黒服の本音?を聞いて悪い大人認定はされることになったんですね
    そしておそらく敵はなし そして紫関での会合…………あっ…

  • 158二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 08:05:36

    保守

  • 159二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 12:11:25

    昼保守

  • 160二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:18:47

    このレスは削除されています

  • 161二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:22:14

    コンスタントにSS更新できる人すごいな

  • 162作戦会議25/09/11(木) 21:54:11

    小鳥遊ホシノを連れ、紫関ラーメンに到着したときには既に呼んでいた生徒たちは全員集合していた。
    表には「本日貸切」の札が張られている。直前に大将に相談したのだが、快く許可してくれていた。

    「くろっ……先生!? 遅かったじゃない。アビドスの子たちも呼ばれたって言ってるけどどういうこと!?」
    入店直後、開口一番に陸八魔アルが問いかける。困惑こそしてはいるようだが、正に談笑していた様子で、十六夜ノノミと浅黄ムツキなどこちらに目線を向けた後、すぐに会話を再開し始めるほど馴染んでいた。

    「それはこれから説明しますよ。大将、私にもラーメンをいただけますか? ホシノさんも好きなものを頼んでください」
    「先生のおごり?」
    「もちろんです」
    「じゃあ、特製ラーメンにしよっかな~」

    小鳥遊ホシノに動じた様子はない。というのもここに来るまでに誰がいるかも含め、凡その事情を伝えていたからだ

  • 163作戦会議25/09/11(木) 21:55:25

    「ラーメンが来る前に簡単に紹介だけしましょうか」
    席に着き、私がそういうと全員の視線が集まる。座席の間取りも少し話しやすいように大将がアレンジしてくれたようだ。

    「アビドスの皆さん、彼女たちは便利屋68。アビドスに来るに辺り、私の護衛も含め、様々な依頼をしていた私の協力者です。」
    陸八魔アルが律儀に頭を下げる。伊草ハルカは慌ててそれに倣うが残り2人は静観している。
    一方のアビドスの生徒たちはというと、

    「そ、そんな……酷いじゃない先生!」
    黒見セリカがこちらを糾弾するように叫ぶ。

    「この人たち、ご飯も食べられないほど困窮していたじゃない! そんな安いお金で働かせてたの!?」

    私の考えとは違う理由で憤っていたらしい。陸八魔アルに顔を向ける。
    「ち、違うのよ黒見さん! あれは不幸な偶然が重なって偶々お金が無かっただけで、先生にはとてもよくしてもらっているわ!」

    陸八魔アルが慌ててフォローすると、何だそうなの? と黒見セリカが席に着く。

  • 164作戦会議25/09/11(木) 21:56:54

    「ちょっと待って。気になることがある。」
    今度は砂狼シロコが手を挙げて発言する。
    「どうぞ、砂狼さん」
    奥空アヤネが唐突に仕切り始め、いつもの会議の雰囲気になり始める。

    「先生は、こっちに来た日に遭難してた。この人たち、本当に頼りになるの?」
    「何よそれ!?」
    砂狼シロコの疑問もまた、私の予想したものではなかった。これにも陸八魔アルが動揺している。

    「彼女たちに直接会ったのはこちらに到着してから暫くしてからなので、遭難しかけた責任はありませんよ」
    「ん。ならいい」

    聞きたいことは終わったらしい。続く者はいないようだ。

  • 165作戦会議25/09/11(木) 21:58:42

    「私に協力者がいたことに関しては、特に思うところはないのですか?」

    「正直、身一つで来られる方が心配になると言いますか、そういう方がいて安心しています。」
    奥空アヤネがそう言い、残りの面々も頷く。そして隣で静観していたホシノが口を開く

    「それにさ、先生。セリカちゃんを助けるために使ってた車、この子たちが用意してくれたものなんでしょ? だったらむしろありがとうだよ」
    「そ、そうね! あなたたちも、私の命の恩人みたいなものよ! ありがと」

    黒見セリカがそれに続いてお礼を言い、その場が収まる。特に異論はなく、受け入れているようだった。

    「そうですか、わかりました。では、本題に入りましょうか、と言いたいところですが……」
    「おう、その前に腹ごしらえにしないか? この子たち、全員が揃うまで待ってたんだぜ」

    大将がラーメンの完成を伝え、先に早めの昼食を済ませることになった。準備が幸いして、まだ時間の余裕はある。

  • 166作戦会議25/09/11(木) 22:01:43

    「さて、本題に入ります。便利屋68の皆さん、事情をお話いただけますか?」
    食事を終え、一通り自己紹介も済ませたところで便利屋に話しかける。

    「ええ、カヨコ。お願い」
    陸八魔アルが鬼方カヨコに話を振る。説明は彼女が行うようだ。

    「うん。先生の依頼でゲヘナとの境界辺りを監視してたんだけど、今朝、ゲヘナ学園の風紀委員会が部隊を引き連れてこちらに向かってきているのが分かった。」
    アビドスの生徒たちが息を飲むような顔をするが、鬼方カヨコは気にせず続ける。
    「名目は恐らく、私たち便利屋68の確保、だと思う。」

    「え、あなたたち犯罪者なの?」
    思わず黒見セリカが質問する。
    「……指名手配されていることは事実だね。」
    「ブラックマーケットに出入りするだけで校則は違反しているでしょうね。」

    ここで追及に時間を取られるわけにもいかないため口を挟む。彼女たちの指名手配とそれは全く関係ないが、黒見セリカはそれで誤魔化されてくれたようだ。
    「それで、進行速度から考えると大体あと1時間半くらいでこの辺りまで到着すると思う。簡単に言うとそんなところかな」

  • 167作戦会議25/09/11(木) 22:02:57

    「ありがとうございます。つまり、それを何とかしなければならないということで、皆さんに集まってもらいました。」
    話し終わったのを確認し、あとを引き継ぐ。アビドスの生徒たちは顔を見合わせている。

    「先生。それってこの人たちにアビドスから出て行ってもらえればすむ話じゃないの?」
    「風紀委員会の目的が本当に私たちだったら、そうだね。でも……」

    砂狼シロコの疑問には鬼方カヨコが答える。
    「本当の狙いは、『シャーレの先生』の身柄である可能性がある。そうなると、きっちり手を打たないといけないと思う。」

    「ま、まさか、そんなことありえるんですか?」
    「ゲヘナの行政官はそういうことを考える人物だと思う。それに、そういった理由でもなければあなたたちに無断で越境して捕まえにくる意味が分からない」
    アビドスの生徒たちが一度沈黙する。
    鬼方カヨコの言葉には説得力があり、それを感じ取ったようだった。

    「さて、対策を取る必要があることは分かっていただけたと思うので、具体的な作戦を立てることにしましょうか。」

  • 168作戦会議25/09/11(木) 22:04:14

    以前の時間軸において、小鳥遊ホシノが私と面会していたことにより、風紀委員会への対応が遅れたことは分かっていました。
    今回に関しては小鳥遊ホシノが準備万端の状態でこちら側にいる上、便利屋68の完全な協力体制が得られている状態で空崎ヒナ不在のゲヘナ風紀委員に敗北する道理は無い。
    そのため、作戦会議に関してはこちらが口出すことはなく、静観を決め込んでいたのだが、対策会議と同様の雰囲気で進む作戦会議は、あらぬ方向に進んでいき、
    最終的にはメインプランとサブプランの2通りの作戦が立てられることになった。
    サブプランに関しては特に異論はなかったため、私はその作戦に反対することはなかったが、

    「じゃあ、一旦対象と先生は店の外で待っててくださいね☆」

    会議の結果、大人二人は店から追い出されることとなったのである。

    「なあ、先生。女子高生ってのは元気なもんだなあ」
    「ええ、最近私も本当にそう思うようになりました」

    そして、私と大将は暫く大人の雑談を嗜んだ。

  • 169作戦会議25/09/11(木) 22:05:42

    to be continued

    ということで、そろそろ第一章クライマックスですが大体ギャグ展開です
    陸八魔アルが悪いい

  • 170二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 22:08:26

    なっな…何ですって!!!!

  • 171二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 22:18:43

    普通に戦っても過剰戦力状態なのにヤバそうな作戦立ててそう。

    哀れ風紀委員会

  • 172二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 02:28:02

    追い出された二人かわいそう

  • 173二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 09:01:01

    黒服「うーん元気だ」
    ってなってるの笑う

  • 174二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 14:40:16

    追い出されたってことは着替えているのかな?

  • 175二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 21:23:44

    保守

  • 176偽便利屋作戦25/09/12(金) 23:18:55

    『おっけー、風紀委員たちは予想通りのルートで進行して来てるね! 先頭はイオリだね。ちょっと誘導したら乗ってくれると思うよ。 爆音に気を付けて~』

    浅黄ムツキからの通信。監視ドローンで確認しているが、曰くこちらの監視に気付いている様子は全くないようだ。
    私自身もシッテムの箱の戦闘支援システムで状況を離れたところで確認している。先行して1部隊、さらに後方には複数の方向から部隊が展開している。


    数秒後、予告通り爆発音と複数の銃声が近くで響く。そして間もなく、複数の足音が近づいてくる。

    「爆発があったから来てみたら、探す手間が省けたな! 覚悟しろ便利屋68! ……あれ?」

    先行してきたのは銀鏡イオリ。これも聞いていた通りだ。

  • 177偽便利屋作戦25/09/12(金) 23:21:42

    「ふ、風紀委員会ー!? どうしてこんなところに。便利屋68、撤退ですよー☆」
    一人の少女が叫び、それを合図に全員が予定通り行動し始める。

    「ん。了解。社長」
    黒いパーカーを身を包んだ少女。

    「もう、本当にこの作戦で良いの!?」
    ゲヘナの制服に帽子をかぶった黒髪の少女。

    「うへー。アルちゃんも一緒に逃げるんだよー」
    4人の中で最も小柄な少女。

    4人が手際よく路地の中へと逃げていく。決め台詞を言ったにも拘らずまるで自らの接近がバレていたかのような振る舞いに、銀髪に褐色の少女、銀鏡イオリは慌てている。

    「待て、逃がすわけないだろっ、規則違反者……っていうか……っていうか……」
    言いながら2,3歩踏み出して、銀鏡イオリが堪えきれなくなったように立ち止まる。

    「お前ら誰だよ!!?」
    「イオリ!? どうしたんですか?」
    銀鏡イオリの叫ぶようなツッコミと、追いついてきた火宮チナツの困惑する声が端末越しに聞こえてきた。

  • 178偽便利屋作戦25/09/12(金) 23:23:32

    大きな車両が進むには困難な狭く、しかも砂まみれの路地で行われる逃走劇は、追手を疲弊させるには十分なものであった。
    逃げている側は、砂道の移動に慣れているらしく、苦も無く進んでいく。

    あえて距離を離さず挑発するように誘導し、合流予定地へと到着した風紀委員会と便利屋を名乗る集団。

    「はあっ……はあっ……追いついたぞ、お前ら。バカにしやがって、何なんだお前らは!?」

    むきになって追いかけていたためかなりの疲労が見られる銀鏡イオリが怒りに満ちた様子で問い詰める。
    何故逃げていた者たちが立ち止まっているかもわかっていないようだった。

    「じゃあ、自己紹介しよっかー。誰から行く?」

  • 179偽便利屋作戦25/09/12(金) 23:25:10

    「ん。ゲヘナ学園の鬼方カヨコ。よろしく」
    「よろしくじゃないよ! 鬼方カヨコに犬耳生えてないだろ!?」
    「あ。これはファッション」

    砂狼シロコが淡々と嘘をつく。

    「うへー、おじさんは浅黄ムツキちゃんだよー」
    「おじさんって何!? 後、髪の毛、ピンク!? 私の記憶と全然違うんだけど!?」
    「おー、良いツッコミだね」

    小鳥遊ホシノが感心したようにうなずく。

    「これ、もうバレバレだけど続ける必要あるの? 一応、伊草ハルカってことになってるけど……」
    「もう諦めてるじゃん! お前が一番ちゃんと変装してる感あるけど!?」

    イオリの指摘通り、耳を防止でうまく隠し、後ろ姿からでは瞬間的には伊草ハルカと見間違うような恰好になっている黒見セリカ。

    「そして~。私がこの便利屋68のリーダー、陸八魔アルです☆」
    「いや、お前が一番おかしいっていうか、そもそも変装すらしてないじゃん!? アビドスの制服だよなそれ!?」
    「それはそのー……えへへ、サイズが合わなくて」
    「だよな!? 確かにちょっと規格外のサイズしてるもんな!?」

    十六夜ノノミの照れたような発言に、通信越しに浅黄ムツキの笑い声が聞こえてくる。

  • 180二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 23:29:08

    このレスは削除されています

  • 181偽便利屋作戦25/09/12(金) 23:31:25

    銀鏡イオリが逐一ツッコミを入れているうちに、後から追いかけていた風紀委員の部隊も追いついてくる。

    「イオリ!? 何を叫んでいるんですか……って、よく見るとあの人たち……」
    そのうちの一人である火宮チナツも、凡その状況を察したようだ。

    「とにかく!? 邪魔するってならお前らも許さないからな! 総員、戦闘突入……」
    「待ってください、イオリ。……してやられましたね。」

    怒りに任せ突撃しようとする銀鏡イオリにストップをかけたのは、風紀委員側からだった。

    通信越しではあるが、今回の黒幕と目される人物、天雨アコが現れた。

  • 182偽便利屋作戦25/09/12(金) 23:33:29

    対風紀委員戦、前半終了

    銃撃戦すら起こりませんでしたね

  • 183二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 23:40:20

    おかしいな、ノノミとアルの身長は同じなはず……

  • 184二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 07:22:03

    さすがイオリ、いいツッコミだ

  • 185二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 10:31:44

    背とπのサイズで分担した?

  • 186二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 15:19:32

    この作戦に口出ししなかった黒服はいい先生だよ

  • 187二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 21:37:34

    このレスは削除されています

  • 188天雨アコとの舌戦25/09/13(土) 21:51:47

    「な、何でだよアコちゃん? そもそもこの計画を言い出したのはそっちだろ」
    状況が読めてないらしい銀鏡イオリに、天雨アコが溜息をつく

    『相手が便利屋であればまだしも、アビドスの生徒との勝手な戦闘は許可していないでしょう。それに……アビドスの自治区まで誘導されたようです』
    その通りだ。カイザーの買い占めが進んでいるとはいえアビドスすべての土地がそうなっているという訳ではない。誘導するまでは上手くいっていたが、そう簡単にはいかないということだろう。

    「あーあ、風紀委員に自治区内でいきなりアビドス生を攻撃させて賠償金たっぷりもらっちゃおう作戦は失敗かぁ」
    小鳥遊ホシノが相手に、というより銀鏡イオリに聞こえるようにそう零す。

    「お前ら、ふざけた格好してそんな酷いこと考えてたのか!?」
    「これ、ゲヘナの制服だけど。」
    砂狼シロコの的外れな指摘に煽られ再び激高しそうになったところを火宮チナツに抑えられる。

    『シロコ先輩、他の皆さんも一旦落ち着いて、手筈通りにいきましょう。こんにちは、ゲヘナ風紀委員の皆さん。アビドス対策委員会の奥空アヤネです。』
    メインプランが惜しくも失敗となったことで奥空アヤネがこちらも通信で割り込んでくる。サブプランの開始だ。

  • 189天雨アコとの舌戦25/09/13(土) 21:53:02

    『ああ、彼女たちならこちらの敷地内への無断侵入の疑いで既に拘束済みです。これから事情聴取等を行うのでそちらの捜査は不要です。』
    あらかじめ決めていた設定を奥空アヤネが先制で伝える。

    「そんなの信じられるか! 服交換するほど仲良しじゃないか!」
    「ん。これは交換じゃなくて、逃走を防止するために奪っただけ。」
    「お前めちゃくちゃヤバいこと言ってるの気づいてる!?」

    前線では今の発言を受け、間の抜けた応酬が始まるが、主体である二人は冷静に会話を続ける。

    『そうですか。あまり信じられませんが、彼女たちはゲヘナの学生であり、指名手配犯ですので今すぐ引き渡していただくことは出来ませんか?』
    『それは出来ません。犯罪者の引き渡しは正式な手続きを踏まえ、日程などの調整を行ってからでないと許可できません。』
    『成程。そういうことであれば、少々強引な手段にでるしかないかもしれませんね』

    一瞬、会話が途切れる。「強引な手段」というのが何なのかは明白であり、天雨アコは脅しとしてそれ利用しているのは明白だ。
    最も、正面戦闘でこちらが負けるとはとても考えられないが。

  • 190天雨アコとの舌戦25/09/13(土) 21:54:33

    『それはつまり、武力でもってこちらの自治に介入するという宣言であっていますか? 三大校の治安維持組織ともあろうものが、私たちのような弱小校に対しそれをすると』
    『そういうことになりますね』
    『たかが指名手配の確保のためだけに、そこまでしますか? 他に目的があるのではないでしょうか。例えば……シャーレの先生の身柄とか』

    通信を聞いていたゲヘナ風紀委員の、特に私と唯一面識のある火宮チナツに動揺が走る。
    案の定、そういった話は実働部隊には聞かされていなかったようだ。

    『そこまで気づかれていましたか……ああ、そういえばそちらにはカヨコさんがいるんでしたっけ。それならば納得です。』
    天雨アコが何かを納得しているが、もう十分に言質はとっただろう。私に割り振られた役割を務めることにしよう。


    「ありがとうございます。アヤネさん。ご指名をいただきましたので、ここからは私が引継ぎましょう」
    今まで廃墟の陰で姿を隠していた私の登場に、ゲヘナの生徒たちの間に再び緊張と動揺が走る。直接会ったことのある火宮チナツだけが、今度は律儀に頭を下げている。

    「初めまして、ゲヘナ風紀委員の皆さん。所謂『シャーレの先生』をやっています。」

  • 191天雨アコとの舌戦25/09/13(土) 21:55:34

    『やはり、本当にそこにいらっしゃったのですね。初めまして、先生。やはり先生も引き渡しに反対の立場ですか?』
    「私は賛成したり反対したりする立場にはありませんよ。皆さんの決定に従うだけです。ですが、少しお伝えしたいことがありまして」
    『伝えたいこと?』

    天雨アコの声に疑問が混じる。と、同時に今までになかった緊張も感じ取ることが出来た。イレギュラーな状況にはあまり強くないのかもしれない。

    「ところで、確認ですが、今回ゲヘナの正式な治安維持部隊である風紀委員の皆さんが来られたということは、これはゲヘナの正式な行動ということですか?」
    『……ええ、そう捉えてもらって構いません。』
    「……クックック。成程、それではあまりお伝えする意味はないかもしれませんね。」
    『何が言いたいんです……』

    苛立ちと警戒。以前、黒見セリカに指摘されたが、この笑い方は相手に不信感を与えるらしい。

    「いえ、今朝がたですが、ゲヘナの自治区との境界線あたりに住む繊細な住民の方から、アビドスの生徒たちに通報があったのですよ。『見慣れない制服を着た武装集団がいる』と。確認してみると、ゲヘナの風紀委員の方たちだったという訳です。」
    「成程、待ち伏せされていたのはそういう事情からですか。それで?」

  • 192天雨アコとの舌戦25/09/13(土) 21:56:39

    「それでですね、私のところにも連絡が来たのです。事実確認のために連絡しようと思ったのですが、生憎ゲヘナの風紀委員会への連絡先が分からない。」
    天雨アコが黙り込む。何を言い出すつもりなのか考えているのだろう。

    「ですが、ゲヘナ学園にももちろん、渉外の窓口はありますからね。ゲヘナの生徒会、そこの会長へ連絡しました。『そちらの治安維持部隊が無許可で侵攻しているように見えるが、どういう事情ですか?』と。風紀委員の責任者の方に確認すると言っておられましたが、まだ折り返しは来ていないですね。」
    「…………はぁっ!!?」
    これまで表面上冷静さを保っていた天雨アコが、初めて動揺を表に出した。

    「パ、万魔殿に通報した!? ヒナ委員長に確認する!? そんな、私にはまだ何も連絡は来ていないですよ!?」
    「クックック、どうされましたか? 先ほどそちらの正式な行動と仰っていたじゃないですか。まあ、まだ確認に時間がかかっているだけかもしれませんね」
    「ヒナ委員長は別件で出かけているはず。だからまだ気づかれていない? いや、でも……」

    天雨アコがぶつぶつと何かを言っている。
    風紀委員たちにもかなりの動揺が広がっている。聞いてはいたが、万魔殿の議長と風紀委員会との確執は思ったよりも大きいようだ。
    「そんなに気になるなら、『電話でもして確認してみたらいかがですか?』その責任者の方とやらに」

  • 193天雨アコとの舌戦25/09/13(土) 21:58:55

    私の誘導に、堰を切ったように誰かに連絡する様子を見せる天雨アコ。鬼方カヨコの見立ては相当に正確なようだった。

    『アコ? どうしたの?』
    『ひ、ヒナ委員長。ちょっと確認なんですけど、万魔殿の議長から何か連絡があったりしましたか?』
    『マコトから? ……いいえ。来ていないわ。それより……」
    『え? きていない?』
    『ええ。それより、アコ、今どこにいるの?』
    『それはアビドスに……あっ』
    『やっぱり、アビドスにいるのね。そこで待機していなさい。もうすぐ着くから』

    シッテムの箱を通して聞こえていた通話がそこで終了する。

  • 194天雨アコとの舌戦25/09/13(土) 22:00:30

    尚、万魔殿に連絡したという事実はない。もし本当に戦闘に突入すればすぐにそうするつもりであったが、あまり事を大きくしたくないアビドス生にとっても、
    それは最後の手段にしておいたのだ。

    ただ、こう言えば天雨アコは動揺して空崎ヒナに連絡する。そうすれば違和感に気付いた空崎ヒナが天雨アコの行動を牽制するだろうというのが鬼方カヨコの読みだった。
    そして、威圧感のある私がそれを伝える役になったという訳だ。最も、空崎ヒナはすでに別口で天雨アコの行動に気付いていたようだったので、結果的には大きな違いは怒らなかった可能性もあるが。

    数分後、宣言通り個人の出す力としては理外の速度で空崎ヒナが現場に到着した。

  • 195二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 22:08:19

    ホシノいるのにムツキちゃんになってただけで終わりました。

    ところで、次スレどうします?

  • 196二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 02:55:34

    日が出てからぐらいがいいと思います

  • 197二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 11:42:25

    避難所スレのスレ立てを検討しておいた方がいいか?

  • 198二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 19:34:58
  • 199二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 19:41:33

    >>198

    たておつです

  • 200二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:08:07

オススメ

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