- 1二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:48:17
アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの26スレ目です。
ミネルバはグラディス提督以下、全パイロット・乗員の努力により困難な宙の旅を乗り越え、ガルナハン沖に着水を果たしました。
カスピ海遠征諸任務の内、アイリーン・カナーバ前議長とアラン・クラーゼク国防委員の護送は一先ず達成されたと言えるでしょう。開幕されたガルナハン国際会議、特命全権大使の任を帯びた前議長の活躍が期待されます。
しかしミネルバ、殊にパイロット隊はそれを喜ぶ余裕はありません。
ユーラシア連邦を主体とした地球連合軍は領土と勢力圏の維持を企図して中央アジアに大規模攻勢を開始しました。
連合離脱を表明する現地独立政府の為、アグネス達パイロット隊は中央ユーラシアの空を東西南北に駆け回ります。
オアシスと草原の道を舞台に激突する地球連合(ロゴス・ブルーコスモス派)とザフト・汎ムスリム会議連合軍(対ロゴス同盟軍)、地球最大の大陸で生じる政治的地殻変動はその頂点に達しつつあります。
アグネスは中央アジア戦役の勝利がこの戦争の終結の近道と信じているようです。国防委員会の意向を受け、極東情勢も意識しながら任務に当たります。ただし彼女のコンディションはお世辞にも良好とは言えません。戦友達にも疲労の色が見え隠れしています。
砂塵の大地、天を衝く山々の頂、氷結する大気、アラルクム砂漠に消えるアムダリヤ川。彼女はこの苦境の中で何を思うのでしょうか。そして激震の大地をミネルバはどう乗り越えるべきなのでしょうか。
おつきあいをいただければ。 - 2二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:53:01
前スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart25|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの25スレ目です。危険なデブリ帯を遂に突破し…bbs.animanch.com1スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たら|あにまん掲示板アグネスが士官学校卒業ザフトアカデミー、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSを書く予定です。お付き合い頂ければ。bbs.animanch.com2スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart2|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。はたして、アグネスは、ルナマ…bbs.animanch.com3スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart3|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。己を取り巻く不可解な状況に四…bbs.animanch.com4スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart4|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの4スレ目です。ミネルバとアグネスはその進撃…bbs.animanch.com - 3二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:56:05
5スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart5|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの4スレ目です。ミネルバの活躍は起こるはずだ…bbs.animanch.com6スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart6|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの6スレ目です。自分の心境の変化や激動する世…bbs.animanch.com※落としてしまった7スレ目です。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart7|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの7スレ目です。出世の点数稼ぎの場として『戦…bbs.animanch.com再建てされた7スレ目です。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart7(再立)|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの7スレ目です。※不注意から一度スレを落とし…bbs.animanch.com - 4二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 21:58:48
8スレ目です。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart8|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの8スレ目です。戦いに消耗したアグネスとミネ…bbs.animanch.com9スレ目です。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart9|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの9スレ目です。C.E.73年- C.E.7…bbs.animanch.com10スレ目です。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart10|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの10スレ目です。遂に開始される『ロゴスとの…bbs.animanch.com11スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart11|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの11スレ目です。『対ロゴス戦』は本編とはや…bbs.animanch.com - 5二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:03:04
12スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart12|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの11スレ目です。対ロゴス戦争が変え行く世界…bbs.animanch.com13スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart13|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの13スレ目です。本編を上回るほどの規模とな…bbs.animanch.com14スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart14|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの14スレ目です。激しい戦いの後、戦女神と大…bbs.animanch.com15スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart15|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの15スレ目です。アークエンジェル問題を何と…bbs.animanch.com - 6二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:13:06
16スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart16|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの16スレ目です。アグネスは目の前で次々と発…bbs.animanch.com17スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart17|あにまん掲示板北限の海で繰り広げられる戦い。この世界のアークエンジェルを巡る戦いは一つの帰結を迎えようとしています。アーモリーワンから戦い抜いて来たミネルバ、世間は『彼女』を武勲艦と持ち上げ、事実そうなのではありま…bbs.animanch.com18スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart18|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの18スレ目です。アグネスはひょんな成り行き…bbs.animanch.com19スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart19|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの19スレ目です。アグネス・ギーベンラートが…bbs.animanch.com - 7二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:15:45
落としてしまった20スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart20|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの20スレ目です。一夜の間に繰り広げられるプ…bbs.animanch.com再建てした20スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart20(再建て)|あにまん掲示板※落ちてしまっていたので建て直しました。書き込んでくださった方、申し訳ありません。もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart20アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、…bbs.animanch.com21スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart21|あにまん掲示板もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart21アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、と…bbs.animanch.com22スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart22|あにまん掲示板もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart22アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、と…bbs.animanch.com - 8二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:17:16
23スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart23|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの23スレ目です。アグネスは、傷の快癒前から…bbs.animanch.com24スレです。
もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart24|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの24スレ目です。精神的な落ち込みこそあれで…bbs.animanch.com - 9二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:29:15
たておつです
日々楽しみにしてます
ありがとう! - 10二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 22:31:44
たておつ!アグネスもおつ!
- 11二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 23:49:29
ただし、これはあくまで私個人の勝手な希望に過ぎない。
テルメズの地球連合部隊が武装解除と都市の明け渡しに応じないなら、此方は総攻撃を掛けるしかない。ザフトのモビルスーツ隊で郊外の敵を叩き潰し、汎ムスリム会議軍の陸上部隊に都市制圧を担当してもらうのだ。
ただ言うは易く行うは難し。連合は自然国境アムダリヤ川に架かるアフガニスタン=ウズベキスタン友好橋(に起源が有る国境の橋)を爆破している。
おかげで汎ムスリム会議軍はアムダリヤ川を敵前渡河するしかない。それがどれほど困難を伴うかは言うまでも無いだろう。
アグネス「(そうなると…。テルメズ空港の奪取が鍵となるか。モビルスーツ飛行隊の腕の見せ所ね。歩兵部隊も空路で…少し苦しいけれど何とか)」
もっとも取り越し苦労に終わるかも知れない。暗黙の現地停戦合意の下、説得工作は続いている。大きな動きが有るにしても明日の正午に差し掛かる頃のはず。少なくとも今晩はぐっすり寝られるだろう。
トルキスタン軍管区で他に気にするべきはトルクメニスタン地域レバプ州都トルクメナバート。ユーラシア連邦軍歩兵師団に占領されたままになっている。
アグネス「(アムダリヤ川南岸、同地域の第二都市でウズベキスタン国境にも近い要地よ。ここに至っては汎ムスリム会議・ウズベキスタン独立政府軍の地上部隊主力が辿り着けていない)」
トルクメナバートに対しても説得工作は試みられている。陸路の距離的にある程度の猶予は在るだろう。良し―。
アグネス「(戦況確認作業止め。切りが無いわ。それにしてもアムダリヤ川がここまで障壁となろうとは…。地理の授業ではせいぜい『アラル海に注ぐ大河。アラル海の消滅は人類史の汚点』くらいの扱いなのに)」
まあ、四の五の言っても仕方ないだろう。
アグネス「先生、看護師さん。ご心配をお掛けしました。用は済みましたので…」
主治医「もう!」、看護師「じゃあ、そろそろ夕食ですね」
アグネス「はい」
ルナマリア達は食堂かな。食事が特別医療食でなかったら一緒に食べたいのだけれど。
アスランとシンは…ハイネ先輩がご一緒だから何やかんや上手くやっているだろう。 - 12二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 07:01:28
保守
- 13二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 14:17:23
保守
- 14二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 15:11:16
ハイネ先輩へのこの信頼感…
頑張れアスラン先輩 - 15二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 23:54:04
保守
- 16二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 04:36:45
東方遥か825㎞以上、トルクメニスタン首都アシガバートの3人の顔を思い浮かべる。
彼らと私達の間にはカスピ海とコペトダグ山脈が跨る。思えば自分達もそこを跳び越えて任務を果たしたばかりだ。往復2500㎞。帰りは意識を失っていたけれど。
アグネス「(時間と空間の認識がおかしくなりそうだわ。今朝、宙から降りたばかりよ。今更と言われればそうだけれど。宇宙戦ではもっと長大な距離を移動するわけだし)」
状況次第では明日も大移動だ。テルメズまでなら往復3250㎞、交戦時間を抜きにしても3時間40分近くかかる。何ともはや…。
アグネス「(これ程の力と労力を何故、人類は破壊と殺戮以外の分野に生かすことが出来ないのだろう?)」
宇宙開発でも戦後復興でも、地球環境の改善…何だって良い。以前の思い付きだけれど、いっそアラル海再生プロジェクトを成功させれば、それだけでも後世の遺産として十分だろうに。
アグネス「(『人類は』は主語が大きすぎるか。『交戦国が』と言うべき所ね。さほど変わりないけれど)」
我ながら柄にもない。程々にしよう。余り生産性のある話題ではない。立場上『やれ』と言われたら『やる』だけ。
鬱々としている間も周囲はテキパキと仕事をこなしている。お世話になっている看護師さんもそうだわ。
ススっと準備を整えて食事を運んで来て下さる。美味しそうな香りがベッドまで漂ってくる。
看護師「はい。アグネスさん、どうぞ。アゼルバイジャン料理『ルーラケバブとラヴァシュ』風の医療食ですよ」
アグネス「わぁ。ありがとうございます。ご当地風ですね」
串に刺さったまま焼き上げられた羊肉、香辛料がしっかり効いている。ラヴァシュはこの地方でよく食されている種なしパン。平たい形のフラットブレッドだわ。
アグネス「(あくまで『風』の医療食だから、そのままと言う訳では無いと思うけれど。でも嬉しいわね)」
ちょこっと顔を上げて看護師さんと目を合わす。目線が合うと彼女は少しだけ得意そうに言い添える。 - 17二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 05:03:04
看護師「行先がガルナハンと伺って。私達、病院の者も出航準備を」
アグネス「そうでしたか…。本当にありがとうございます。突然、敵の大規模攻勢に遭って、さぞ驚かれたでしょう」
私達はまだ良い。慣れっこだし、それが務めだ。でも彼女や主治医の先生、エルスマン博士はどうだろう…。
看護師「正直、はい…。ただ、私達も覚悟はしてきた積もりです。途中から雰囲気が変わっていましたから。気持ちの整理を付ける時間はありましたので…。さあ、冷める前に!」
ちょっと急かされてしまう。うん…そうね。今更、あれこれ言うのはかえって彼女達に失礼だわ。
アグネス「はい!いただきます」
ほぐほぐ熱い料理を食べる。そう言えばと以前、来た時のことを思い出す。あの時はボズバッシュ(肉のシチュー)を食べた。色々食べられて嬉しい。艦上では食べる事ぐらいしか楽しみが無い。
アグネス「(いや…。戦時下であることを思えばかなりの贅沢ね。これは食事療法、しっかり味わおう。)」
ペロッと平らげてコーヒーを飲み一休み。さっきまでの陰鬱な気分は見事に吹き飛んだわ!効果は抜群ね。
アグネス「(私は軍人で今は戦時下よ。この戦争を終らせる為に、地球連合-別けてもロゴス・ブルーコスモス派を―を打倒する以外に道がないなら。会敵する為、万里の果てまで飛ぼうではないか!)」
さて、気持ちの整理は済んだ。でもまだ寝るには早い。
ルナマリアやメイリン達に会いたい。アビーやヴィーノ、ヨウラン達。ショーンやデイルにも。
全員は無理だけど。お互い明日も知れない身だからこそ―。
アグネス「看護師さん、外出してもよろしいでしょうか?会いたい人達が居まして…」
看護師「良いですね。ちょっと先生に訊いてみますね」
アグネス「お願いします」
外出許可は直ぐに下りた。先生も『気分転換に是非行ってきなさい』と。
取り合えず自分の船室に向かうとしようか。この任務ではルナマリアとメイリンとアビーの部屋になっている。 - 18二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 08:18:36
○○風医療食…地味に毎回楽しみにしている
- 19二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 14:57:32
保守
- 20二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 21:15:45
保守
- 21二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 04:49:54
ベッドを這って電動車椅子に転がり込む。リハビリ、リハビリと!
看護師「右腕に点滴刺しますね。チクリとしますよ」
アグネス「はい。お願いします」
また点滴スタンドに繋がれてしまった。仕方ない事と分かっているが、いい加減鬱陶しい。自分が腰縄を巻かれた囚人になったようにさえ感じられる。
看護師「じゃあ、行きましょうか?」
アグネス「はい。あの…。看護師さん、私一人でも大丈夫ですよ?」
ワンアクションする毎に彼女を連れだすのは心苦しい。電動車椅子にもいい加減慣れた。自分独りでも行動できると思うのだが…。
主治医「駄目です。アグネスさん、貴女、昏睡状態で後送されたばかりですよ。体調の急変に備えて付き添いが居ないと」
アグネス「ああ…。そう言えば…、はい」
主治医の先生に呆れた顔をされてしまったわ。まあ、止む無し。うっかり忘れる程度には回復していると捉えよう。点滴パワーを信じる。栄養以外の成分も入っているはず。
看護師「では改めて出発です。アグネスさん、何処に行きたいですか?」
看護師さんが明るい調子で尋ねて下さる。仕切り直しってことね。さてどうしよう。
アグネス「うーん。私の…メイリン達の船室に行きたいです」
看護師「分かりました。では―」
女性主治医と当番の看護兵に見送られ医務室を後にする。
ゴロゴロ、パタパタと二人で通路を進む。
艦内を漂う空気は少し異様だ。緊張と弛緩の間を不安定にゆらゆら揺れている。1秒ごとに色が変わるグラデーションの只中に居る感じだ。『何時のこと』と言われればその通りだが。 - 22二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 05:03:14
アグネス「エルスマン博士は晩餐会にご出席ですか?」
看護師「はい。陸の会場で。良いなー。美味しい物を一杯食べられて」
アグネス「ハハハ。それもお仕事ですから。博士の場合、食べる暇がないかも知れません。ご挨拶で忙しくて」
各国の全権大使はじめ、お偉いさんが大勢ご出席のことだろう。当然、カナーバ前議長やクラーゼク国防委員も。
看護師「そう言えば…。エルスマン博士は元最高評議会議員ですものね。踊ったりするんでしょうか?」
アグネス「踊る?そうですね…」
どうだろう? 会場の空気が今一つわからない。連合の中央アジア攻勢を受けて、お通夜ムードになっていないか心配だわ。若しくは対ロゴス同盟軍のトルキスタン方面の勝利に祝杯を挙げているのか。
アグネス「(どっちでも困るわ。極端な悲観論も楽観論も現状では排除すべき)」
ただし国際会議の行方を考えるなら、『勝利の報が次々と舞い込む』状況の方が望ましいだろう。おそらく国防委員会も本国も今は何より戦果を欲しているのではないか。
アグネス「(まあ、今考えても仕方ないか…。どうせFAITHには指令が下りてくるだろうし)」
また考えても仕方ない事を考えている。程々にしないとね。
さて、そうこうするうちに自室に到着した。インターホンを鳴らしてみる。
アグネス「失礼。ルナマリア、メイリン、アビー、誰か居るかしら?」
メイリン「アグネスさん!お身体の調子は?お姉ちゃんと一緒です」
ルナマリア「あんた、意識が戻ったの?動いて大丈夫?」
そう言えば二人は医務室の中の事を知らないか。
アグネス「ええ。ちゃんと夕食も食べられたわ。看護師さんと此処に。ねえ、時間が有ったら少し話さない?」
メイリン「良いですね!」、ルナマリア「良いわよ。ちょっと待っててね」 - 23二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 08:06:56
保守
- 24二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 15:56:57
保守
- 25二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 22:50:44
保守
- 26二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 06:08:25
保守
- 27二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 06:53:20
すみません。うまく続きを書けず、今晩はお休みします。
- 28二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 14:22:41
ゆっくりで大丈夫です!いつもお疲れ様です!
- 29二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 20:13:02
むしろいつもあれだけ書けるの凄いです
頑張れアグネスそれゆけアグネス
…いや、やっぱり寝なさい - 30二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 00:36:23
保守
- 31二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 04:29:42
室内からバタバタと音がする。制服に着替え中らしい。
アグネス「急がないからね!」
ルナマリア「はーい」
そんな言葉を交わしつつも二人は直ぐに部屋から出て来てくれた。ちょっと悪かったかも。
アグネス「休憩時間を邪魔してごめん…」
ルナマリア「いえ…と言うか!アグネス、点滴…。本当に大丈夫なの?」
メイリン「もう!無理は駄目ですよ」
姉妹そろって顔色を変え、私を心配し出した。これは予想していなかったらしい。当然か…。
アグネス「平気、平気!もう慣れたから。さあ、行きましょう」
ルナマリア「慣れた?ちょっと―」、メイリン「分かりました。どこ行きましょう?」
さて、何処が良いだろう? 何時もならレクリエーションルームだけど、今回の任務では狭くなっている。一緒部屋にお邪魔しようかとも思ったが、4人入るとなればやはり狭いかも。
我ながら無計画の極みだわ。成り行き任せだからこんなものか。
アグネス「無難に食堂かな。まだ空いていると思う。『甲板に上がって外の空気を』、とも思うけれど寒いもの」
メイリン「じゃあ、それで。行きましょう」、ルナマリア「良いと思うわ」
二人も良いと言ってくれた。傍の看護師さんに目線で合図し、タイヤをクルリと回して方向転換する。
移動中、メイリンから色々と話を聞く。国際会議に先立って催された歓迎式典は、ともあれ平穏無事に幕が引かれたとのこと。各国大使等はホテルで一休み、会議は明日からが本番らしい。
アグネス「(つまり今頃、ホテルでは非公式会議が繰り広げられていると言うことね。おそらく個別に幾つも。カナーバ前議長も大変だわ。道中いろいろあったのに)」 - 32二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 04:51:05
まさか自分が彼女の身を案じる日が来ようとは思わなかった。
クラーゼク国防委員はどうなさっているのだろう?東アジア共和国の密使とやらとコンタクトを取っているのかな?
まさか交戦国の使者がガルナハンまで来ているとは思えないけれど、うーん、分からん。
メイリン「トラドール国務秘書官も今夜はホテルにご宿泊です。エルスマン博士も。帰艦予定は明日、正午前。ファウンデーション王国行きの用事がありますから」
意外だわ。てっきりトラドール国務秘書官が全権大使もお務めになると思っていた。確認する暇も無かったし。
でも、それで正解だったかもしれない。彼女は王国内政の要でもある。この状況でガルナハンに残るのは厳しい。
アグネス「でも、そうなるとファウンデーション王国側の大使は誰?」
メイリン「王国からはブラックナイツの一人、リュー・シェンチアン隊員が参加されるそうです。ピンチヒッターってところでしょうか」
ああ!あのワインレッドの髪の親衛隊員か。ニュースで見たわ。
アグネス「どういう人なんだろう?」
メイリン「私もちょっとわかりません。でもブラックナイツですから要注意ですね?」
アグネス「当然よ。カナーバ前議長達も心得ていらっしゃるはずだわ」
シェンチアン隊員も件の『コーディネイターを超える種(自称?)』の一人。此方は心理戦対策までして備えたのだ。カナーバ前議長も呑まれないように頑張って欲しい。
現状、プラントの国益と王国の利益は必ずしも対立していないと思う。けれども転ばぬ先の杖よ。
ルナマリア「ブラックナイツもオルフェ宰相とトラドール国務秘書官、サーペンタイン国防長官以外は目立たないわね」
アグネス「そうね。そもそも近衛師団構成員が目立たないといけない事態が異常なんだけど」
そう考えるとファウンデーション王国の人材の薄さは危うい。レッドライン越え、普通の国家ならパンクしている。せめてもうちょっと人が居ないと
アグネス「(もっともプラント、ザフトも他国をあれこれ言える状況ではないわ。いざとなれば『ミネルバGO!』、『FAITH頑張れ』だから)」 - 33二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 05:02:22
とは言え、程度と言うものがある。ファウンデーション王国は歪で危うい。この認識自体は間違っていないと思う。
ルナマリア「ファウンデーション王国はやっぱりブラックナイツ頼りなのね」
アグネス「みたいね。うーん、それでは回らないと思うんだけど…。今、あの国に崩れられたら対ロゴス・ブルーコスモス戦線が持たない。しっかりしてもらわないと」
ルナマリアも気にしている。建国直後だから仕方ない面はあるにせよーやはり健全な国家の在り方とは思えない。
『コーディネイターを超える種の存在(仮)』、大アウラの研究はどう見てもファウンデーション王国とハイバル王家の呪縛になっている。
ジョチ・ウルス以来の伝統を引く国なら『父祖から受け継いだ国土・国民こそが国家の基盤である』との認識に立ち返るべきだ。そうなればこそ金帳汗国の再興もなろうと言うもの。
ユーラシアに到来した乱世、プラントも『他所の国は他所の国』と言ってはいられない。ファウンデーション王国は我が国の衛星国、と他国から思われている。支援だけでなく『助言』が必要かもしれない。
アグネス「(そうでなくともデュランダル議長と関係だった彼女らは目の上のたん瘤。もしオルフェ政権の存続がプラントの害になる日が来れば―)」
別のトカ・テムル系王族(チンギス・ハンの孫、ジョチの十三男の家系)を立てて政権転覆もありか。チンギス裔の方々はジョチ系に限っても大勢いらっしゃる。探せばコーディネイター、プラント国民の中からも見つけられるはず。
アグネス「(いけない!先走り過ぎだ。今考える事じゃない!そもそも相手が半ば従属国とて、内政干渉上等な思考は褒められたものでは無いわ)」
ブラックナイツへ警戒心が行き過ぎているのか?私達の存在が脅かされていると―。もしそうならナチュラルのコーディネイターに対する態度を笑えない。『それはそれ、これはこれ』の精神で対峙するべきだ。きっと、多分…。
ゴロゴロゴロゴロ…。ゴロゴロゴロゴロ―。
考えている内に食堂の入口に着いたわ。コーヒーでも飲んで頭をスッキリさせよう。 - 34二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 12:53:16
???「割り切れよ」
- 35二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 19:00:37
胡散臭いのがわかりきっていて厄ネタてんこ盛り国家だけど
現在の戦線維持や問題解決のために手を切ることは出来ない
ただ王国に対し借りを作りすぎると(天の視点から)多分後になってドでかい爆弾案件に...
ファウンデーションは質の悪い呪いの装備か何かか...? - 36二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 00:01:19
保守
- 37二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 05:13:49
食堂には結構、人が居る。レクリエーションルームが手狭なせいだろう。
ヴィーノ「アグネス!大丈夫か?ルナマリア、メイリン、看護師さん、お疲れ様です」
ヨウラン「皆、お疲れさま。もうきついぜ」
賑やかなコンビも漏れなくその中に。表情を見るにこの二人は元気そう。何よりね。
アグネス「ありがとう。まあ、それなりね。二人もお疲れ様」
ルナマリア「ありがとう。そこまでじゃないわ、私は」
ヴィーノ「良かった」、ヨウラン「そうか…」
二人の他、見知った乗員とも挨拶を交わし4人で席に着く。飲み物は全員、コーヒーを選択した。気を抜けば頭がボーっとしそうだと分かっているのだ。
見渡して見るに周囲の雰囲気は悪くはない。アプリリウスから強行軍続きだったが、流石は我らミネルバ一同。越えてきた修羅場が違うわ。
熱い液体をチビチビ飲み、一休みした後でメイリンに話を振る。
アグネス「メイリン、明日はどうなりそう?トルキスタン戦線の方じゃなく、ミネルバの予定として」
実際は『方じゃなく』も何も無いのだ。連合軍の出方次第で幾らでも変わり得る。見通せる範囲では、と言う意味ね。
メイリン「取り合えず、明日の午前中に艦から新型火力プラントの部品を下ろします。ガルナハン市民の皆さんと私達で供与記念式典を挙行予定です」
アグネス「元の任務を一つずつクリアしていくのね。往路の護送任務は成功したから、次は現地の民生支援と」
メイリン「はい。ただ何時、出撃命令が出るか分かりません。式典は簡略化して執り行われます」
アグネス「止むを得ないわね。友好国への支援アピールになるはずだったのに」
ある意味、連合にポイントを取られたとも言える。彼らから見れば敵国の外交を妨害できたのだ。
今日一日の損害に釣り合うかは不明だが…。此方も軍事的に痛手を被っている。 - 38二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 12:16:40
保守
- 39二次元好きの匿名さん25/09/02(火) 20:12:52
保守
- 40二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 05:17:25
アグネス「(頭を切り替えよう。『戦争は戦争』、『現地支援は現地支援』。後者は前者の為でもあるけどイコールじゃない)」
ザフトに協力してくれているガルナハン市民-ミス・コニール達-に報いること。それが本筋だわ。宣伝など後から幾らでもできる。
アグネス「やっぱり『実』が一番大事ね。部品自体は引き渡されるわけだし」
ルナマリア「確かに。でも嫌な感じ。グラディス提督やトライン副長は平常心って感じだけど」
横からルナマリアが口を挟む。繰り返しになるが致し方なし。ただ、気になる点はまだある。
ミネルバからガルナハン市に部品を引き渡す所までは良いとして―肝心の火力プラントの安全は保たれるのだろうか?連合のインフラ攻撃の餌食にならないだろうか。
アグネス「(少し、いや凄く心配になって来たわ。今更と言われればそうだけど。現地の備えはどうなっているのか…。出ずっぱりになってしまって分からない)」
胸の奥で湧きだした不安、そこの所をメイリンに問うてみる。
メイリン「多分、大丈夫そうです。ザフト工兵部隊が連合軍ガルナハン・ローエングリンゲート基地跡地にザフトの新基地を建設しました。既にマハムール基地の支隊が駐屯しています」
アグネス「へぇー。国防委員会はそんな手を打っていたのね」
良い判断だと思う。我が軍の工兵部隊は超優秀だ。何と言っても48時間でカーペンタリア基地の基礎を造って見せたのだから。新要塞はさぞ素晴らしい出来栄えだろう。
ルナマリア「内陸部からの奇襲には『新ガルナハン・ゲート基地』、カスピ海側はザフト・カスピ海小艦隊。連携してガルナハン市を防衛するとのこと。私も帰ってから教えて貰ったんだけどね」
メイリンの横からルナマリアが補足してくれる。再建された基地の様子にも話が及ぶ。
ルナマリア「新要塞の陽電子砲設置は地元住民の健康を考慮して見送られたわ。汚染低減も完全じゃないから」
アグネス「でしょうね。『連合とザフトが入れ替わっただけ』と住民に思われたら負けだもの。今度は私達が追い出されるわ。でも…。じゃあ、今、砲台には何が置かれているの?」
ビーム砲か、それともミサイル発射装置だろうか? - 41二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 13:04:08
保守
- 42二次元好きの匿名さん25/09/03(水) 19:36:11
レクイエムゲート
ジェネシスゲート
NJC核ミサイルゲート
ニーベルングゲート
…他に何かあったかな - 43二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 05:11:57
ルナマリア「『高エネルギー収束火線砲XM47・トリスタン』が2門設置されているわ。堡塁には『ソリドゥス・フルゴールビームシールド発生装置』が取り付けられているって」
アグネス「なるほど、ベターな選択ってわけね。結構固い。攻守バランスが良くていいじゃない!」
しめしめ―。中々良い感じに収まっているではないか!悪くない選択だと思う。
ミネルバの主砲『XM47・トリスタン』は幾度もの実戦を超えてきた信頼性がある。サードステージシリーズの防御武装『ソリドゥス・フルゴールビームシールド発生装置』はシールドの内側から攻撃できる優れものだ。
流石に陽電子砲ローエングリンとモビルスーツ中隊全機を防御可能なザムザザーの組み合わせには見劣りするが―。
アグネス「十分だと思うわ。あの時と違って北のアゼルバイジャンは親プラント・対ロゴス同盟側だから。ブルーコスモスの襲撃と連合の散発的な空襲に対処出来れば事足りるわ」
ルナマリア「そうね。確かに…」
拠点は取ってそのまま放ったらかしにしたら意味が無い。デュランダル議長はどう思っていたかは知らないけど、落ち着く所に落ち着いた様で何よりよ。
ザフトは文明の交差路たるコーカサスの付け根に一大拠点を確保できた。黒海のディオキア基地とペルシャ湾沿岸のマハムール基地を繋ぐ要となるだろう。
アグネス「一安心、一安心ね…。ああ、でも…。シンが突破した坑道は大丈夫?」
メイリン「バッチリ、対策済みだそうです。周囲の地形を再調査して、拠点防御に穴が無いよう万全を期しているとのことです」
アグネス「OK!良し!」
ガルナハン、汎ムスリム会議領イラン北西部の憂いは無くなったとまでは言わないにせよ、大幅に低減したと言える。
アグネス「(大戦中の体勢はこれで良し。終戦後はザフト軍の駐留継続の為、プラント・ガルナハン市間の同盟条約締結が必要となるわ。今から取り決めしておくべきよ)」
おそらくカナーバ前議長とクラーゼク国防委員が市当局者と詰めの協議をしているはず。もしかすると共同記者会見も近いかも知れない。
看護師「その新型火力プラント、地元の人が運用できるんですか?途上国支援って大変だって聞きますが?」 - 44二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 10:54:49
保守
- 45二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 17:54:03
保守
- 46二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 23:12:59
物だけ作って後はよろしくねー、とはならないのが途上国支援の大変な所よね
- 47二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 23:15:45
言われてみれば確かにだけど
まあ新型火力プラントは現地の人には扱えません、外部からプラント(国家)の技師が不可欠な代物ですだと
元も子もないというか後々問題が起きるのが目に見えてるから流石にそこは大丈夫だと思うけども… - 48二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 23:16:54
東アジア共和国の主が昔それでやらかしてますしね
- 49二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 06:01:08
横から看護師さんの指摘が入る。軍事の話が一段落したので思い切ってご質問されたのね。
看護師「『国際支援で井戸を作ってあげたは良いものの…』と言ったことにならないか心配です。納税者としては」
珍しく苦言を呈する彼女、確かに一般のプラント国民から見ればそうなるか。
アグネス「(はて?どうだろう…。火力プラントが元から有ったものだから、てっきり地元住民で運用できると思っていたわ。ちょっと新しい型になったくらいで―)」
『なったくらいで』-。そうか、ガルナハンの人はナチュラルだから技術習得に時間が掛かるのか…。私達と感覚が違って思い至れなかったわ。
アグネス「(確かにガルナハン市の前途は多難。しかし、この地で例外的に産出する石油資源は地元経済を潤す鍵となる。化石燃料が世界的に枯渇したC.E.ならばこそ―)」
火力発電所をフル活用し周辺地域に売電すれば良い。そして石油が枯渇するまでに地元資本を蓄積し、更なる経済発展の糸口を探すのだ。
アグネス「(そう思って来たんだけど。ちょっと楽観的過ぎたかな…。思えばナチュラル国家間でも上手く行かない事が多いのに)」
シビアな話にコーヒーの味が濃くなってしまう。むむむ…。しかし―。
メイリン「ええ…と―既にプラントから派遣された技術支援員は現地入りしています。火力プラント新設は極力、現地の人達のお力で。加えて地域の未来を担う人材を育成の為、ジッダの高等専門学校・大学で留学生の受け入れ準備を進めています。此方は汎ムスリム会議と連携してのプログラムです」
言葉に詰まる私に代わってメイリンが一通りに事情を説明してくれる。なるほど。現地支援と合わせての留学支援は途上国支援の鉄板だ。新鮮味は無いが、こういうのは奇を衒っても仕方がない。
ただし、一口に『人材育成、教育』と言ってもコーディネイターとナチュラル間ではいろいろ不都合が生じる。
プラント本国に留学生を直接受け入れても多分、上手く行かない。現地と教育制度の違いが大きすぎるのだ。おまけに言語の壁もある。技術先進国、オーブ出身でコーディネイターのシンでさえ苦戦していた。 - 50二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 06:09:20
故に言語・文化が近いエリアの地上国家に協力してもらうのが近道だろう。
若しくは教育機関をガルナハンに建てて、現地文化とナチュラル指導の研修を積んだ者を本国から派遣するとか―。
アグネス「(メイリンの話を聞く限り両輪の構えね。気の長い支援が求められている。仕方ないわ。世界を変える特効薬など無いのだから)」
看護師さんにそっと目を遣る。まだ納得してくれていない。血税をじゃぶじゃぶ、言いたい事が有るのは仕方ない。
でも―。
ミネルバが大破・着底した際に協力して下さった地元の人達の顔を思い浮かべる。彼ら彼女らは決して無力な存在でも無気力な群衆でも無かった。郷土を守らんと立ち上がった勇気ある人たちだ。
アグネス「あくまで作戦時の印象に過ぎませんが、ガルナハン市民は自立心旺盛です。ちょっと上から目線かも知れませんが、正しい道筋さえ示せれば―『魚の吊り方を上手くお伝えできれば』-さほど心配ないと思いますよ」
定期的な監査は必要だと思うが、汚職のせいで支援が行き渡らないとか、援助物資が横流しされるとかは無いと思う。
メイリン「そうです!」、ルナマリア「ええ!」
怒れる納税者を必死に皆で宥める。まあ、看護師さんは別に怒っては無いけれどね。
看護師「そうですか。実際に現地の方とお会いした皆さんがそう仰るなら、信じます」
アグネス「ええ。それはもう―」
彼女を何とか説得しながら己を省みる。正直、軍務で忙し過ぎて注意を払う暇が無かった。大事な事なのに…。
でもこの戦況と身体では―。
アグネス「(なんて、自分に言い訳しても仕方ない。本国の外交委員や国防委員会が何も考えてない訳は無いと思う。私の領分を超えたことではあるけれど、これからも気に留めておこう)」 - 51二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 12:11:56
そりゃ支援だけして見返り無しってのはね…
お金とは違う戦略的な見返りってのもあるけど、見える形でのバックは欲しくなる - 52二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 12:57:13
宇宙で取れる鋼材以外は基本地球優位なはずなので色々貰えるものはね
- 53二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 20:57:34
アグネスはまじめだなぁ…
- 54二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 00:52:53
保守
- 55二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 01:50:36
すみません。今晩はお休みします。明日書き込みます。
- 56二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 08:42:25
保守
- 57二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 16:45:51
保守
- 58二次元好きの匿名さん25/09/06(土) 21:09:37
保守
- 59二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 04:22:23
話が途切れたタイミングを見計らいコーヒーを飲み込む。ちょっと温くなっている。寒い季節だ。冷え切る前にいただこう。
ルナマリア、メイリン、看護師「…(チビチビ…)」
私に釣られたかのように看護師さんやルナマリア、メイリンも手元のカップに口を付けている。何と無く皆で見つめ合い、目で笑いあってみる。こういうのも悪くない。
アグネス「(さて、ガルナハンの話題は一区切りと。出来ればミス・コニールにも挨拶したい。でも状況が許してくれるかどうか、見通せないわ)」
変に自分の希望に固執するものでは無い。その時はその時でトライン副長達が上手く事を運んでくれるだろう。
少し間を置き、切り換えて別の話題を振る。
アグネス「メイリン、ハイネ先輩達-ヴェステンフルス小隊の調子はどう?私、半日意識が無かったから」
メイリン「ええ、そうですね…。ヴェステンフルス小隊はセルへダバットからの逃走部隊を討った後、汎ムスリム会議軍のトルクメニスタン地域マル州都マル市の進駐を支援しました。マル国際空港の一時占領はシンが担当しました」
アグネス「へぇー。良い感じね」
マル市はカラクム砂漠の中にあるオアシス都市。高速道路が集まる交通の要所だ。かつてはメルブの名で知られ、アケメネス朝時代に遡る歴史がある。古のメルブ遺跡は郊外にある。西暦時代は世界遺産だった。
アグネス「トルクメナバートまでは210㎞以上あるけれど、まあまあ順調じゃない。早め早めに現地の独立政府軍と合流していかないとね」
メイリン「はい。ただ、ウズベキスタン地域で敵主力モビルスーツ飛行部隊を逃したのは痛かったかも…」
アグネス「一目散に、と聞いたけど」
メイリン「ええ。本当にそんな感じでした」
そのエリアの連合軍は一旦引いてゲリラ攻撃に勝機を見出しているのだろう。実際厄介だわ。消耗戦になるかも。
敵主力軍を粉砕しない事には、如何にデスティニーが強力な機体でも手が回らない。
アグネス「(いや、欲張っても良いことは無いわ。現地の民衆の支持があるなら行く行くは此方が優位に立てるはずよ!)」
今夜、ハイネ先輩達は旧トルクメニスタン上空を守って、旧ウズベキスタンのスルハンダリヤ州を睨んでくれれば十分。そう上も考えている。何か動きが有るとすれば明日だろう。 - 60二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 04:39:40
小難しい話はここまでだわ。その後は4人、お喋りに花を咲かせる。
皆、暗い話、これからの不安は敢えて口にしない。他愛の無い、取り留めのない話題を思いつくままに話す。
ルナマリア「-でね。重力下のドッキングが難しくて。それを思うとシンは本当に…」
アグネス「うむうむ」、メイリン「そうそう、オペレーションも大変で」
インパルスの話だ。ルナマリア曰く『凄い機体』とのこと。まあ、それは良く知っているが―。
看護師「アスカさんって凄い人なんですね」
ルナマリア「ええ。何だか、もう―」
機体がどうと言うより、ルナマリアはシンの事をよく話す。もしや!?ルナマリア!人生を諦めるには早いわ!
アグネス「(いや、まさか…。単に弟分の飛躍を喜んでいるだけか。ルナマリアはアカデミー時代、シンに世話を焼いていたから)
もっとも、今のシンはかつての落ち零れとは違う。と言うか、そもそも落ちこぼれでは無かった。私が勝手に勘違いしただけだった。うーん、いや、能力はともかく中身はガキだし…。
アグネス「(私は思いの外、人の感情の機微に疎い。友達の内心も読めない。でも、現時点ではそう言うんじゃないかな。分からないけど)」
それからもコーヒーをお代わりし、話のネタが無くなるまで皆でワチャワチャ。時計を見上げて大慌て。そろそろ引き上げよう。
アグネス「どうもありがとうね。何だか気が楽になったわ」
社交辞令ではない。本当に気が変になりそうだった。身体はヘロヘロのボロボロ。せめて心だけでも強く持っていないと堪え切れない。
ルナマリア「こちらこそ。お互い苦しいけど、何とか乗り切りましょう」、メイリン「明日も頑張りましょう」
アグネス「うん」、看護師「はい。そうですね!」
互いにエールを送り合い、私と看護師さんは医務室に戻る。点滴も落ち切った。後は寝るだけか。 - 61二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 09:45:09
アグネス視点のルナシンもええのう…
- 62二次元好きの匿名さん25/09/07(日) 17:30:29
保守
- 63二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 00:36:39
保守
- 64二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 03:17:07
入室後、ササっと点滴を抜いてもらう。チクチクする感覚は慣れるものでは無い。
その次は体温・血圧・脈拍の測定が待って居る。簡易的な問診を受けないといけない。
女性主治医「悪いなりに良いですね。リラックスできたようで何よりです」
アグネス「はい。回復してきているのですね?」
主治医「いえ。『容体が落ち着いている』と言う意味です。アグネスさん。何度も言いますが、貴女、半日意識を失っていたんですよ。しっかり休んでください。今夜は睡眠導入剤を出しますので」
アグネス「はい…」
結局、体調は悪いと。分かっていた事、くよくよしない。受取ったお薬を喉に水で流し込む。これで安眠モードだ。
アグネス「(コンディションイエローで叩き起こされずに済むかもしれない。レッドはともかくとして―ともあれ、これでやっと一日が終わる。長かったわ)」
車椅子をベッドに横付けにして乗り移る。カーテンを閉めてもらい、毛布を引き上げる。
看護師「お疲れさまでした」
アグネス「いえ。お付き合い下さりありがとうございます。皆さん、お休みなさい」
軍医・主治医・看護兵・看護師「おやすみなさい。アグネスさん」
温かく柔らかい寝床でそっと瞼を閉じる。ホッと一息付く。思えば同じ戦争に参戦している戦友達の中でも私は恵まれている。塹壕の中で夜を明かすしかない最前線の陸上部隊員を思えば。彼らの為にもしっかり休養を取らないとね。急が有れば一飛びして助けに行けるように。
数千単位の人命を自ら焼き払った日の内に能天気なものだとも思う。でも仕方ない。私も人間、今日を乗り越え、どうなるか分からない明日に備えるのみだ。
薬の効果か意識が急速に遠くなる。鉛と化した身体は、まるで底なし沼に落ちた様にマットレスに沈み込む。
それから、どれだけ経っただろう?
アビー「コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!パイロットは搭乗機にて待機せよ。繰り返す。パイロット搭乗機にて待機せよ!」
アグネス「はッ!」
頭上からオペレーターの声が降って来る。何と無くこうなりそうだとは思っていた。もはや予定調和と化している。今回はアビー、尖った声が脳に直接突き刺さる。 - 65二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 09:56:14
保守
- 66二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 18:24:32
保守
- 67二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 00:06:10
保守
- 68二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 03:33:08
アグネス「(最悪!深夜よ。いい加減にして欲しいわ!)」
跳ね起きながら胸の内で悪態を吐く。誰に対してと言うのではないけれど…。
看護師「お待たせしました!格納庫に行くんですね?」
アグネス「はい。それが義務ですから。先生?」
『レッド』の号令に叩き起こされたのは勿論、私だけではない。主治医の先生、看護師さんも仮眠から飛び起き、医務室に駆け込んでくる。看護師さんが体温・血圧・脈拍をテキパキ計って下さる。結果はどうだ?!
主治医「うーん、うーん…。ご武運を!」
先生は良いとも悪いとも言わず激励の言葉を掛けて下さる。苦慮した末のことだ。この状況ではそう言うしかないのだろう。でも嬉しいわ!
アグネス「ありがとうございます。行ってきます」
主治医「…行ってらっしゃい。くれぐれも大事に」
更衣室に直行、介助を受けながらパイロットスーツに着替える。そのままエレベーターで格納庫へ。到着するとルナマリアとショーン、デイルは既にインパルス、セイバー、カオスに乗り込んでいる。
アビスとガイアは出払っている。ガルナハン守備隊に臨時で加わっているのだ。代わりに交代要員のパイロットがファウンデーション王国に供与予定のゲイツRに飛び乗っている。万一の備えだろう。最終的に引き渡すのだから良し。
アグネス「(AWACSディン2機にもパイロットが乗り込んでいる。私も遅れるわけには行かないわ)」
ヨウラン「おいおい…。アグネス…。大丈夫か?本当に乗れるのか?」
アグネス「勿論!でなければパイロットスーツに着替えて来ないわ!」
同期の仲間の心配を敢えて強気な言葉で打消す。気持ちで負けたら乗り切れない。車椅子ごと大型昇降機に乗り込んでレジェンドのコックピットへ。
ヨウラン「よし…。頑張れよ!」、看護師「ご武運…いえ、どうか命とお身体を大事に!」
アグネス「ありがとうございます」
慌ただしく挨拶を交わし、ハッチを閉めるやシステムを起動する。ブリッジから通信が届くはず、早く状況を知りたい。どうなっているのよ! - 69二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 10:28:37
アグネスもお医者さんの胃もボロボロだぁ!
- 70二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 19:05:39
保守
- 71二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 00:52:11
ほしゅ
- 72二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 02:18:44
保守ありがとうございます。すみません。今晩はお休みします。明日の夜に書き込みます。
- 73二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 09:26:45
保守
- 74二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 18:17:25
保守
- 75二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 00:25:52
いつも楽しみにしています…が!ご無理なさらず!
- 76二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 03:49:06
手元に明かりが灯りOSが立ち上がる。『核・デュートリオン統合先進機動砲撃システム』を意味する『Gunnery United Nuclear- Deuterion Advanced Maneuver SYSTEM』の文字。
ほぼ同時にコックピット回線に接続、アビーの顔が映り込む。
アグネス「ブリッジ、状況をお伝えください。アビー、お願い出来る?」
アビー「はい!現在、中央アジア諸国の複数地域がブルーコスモスゲリラの攻撃を受けています。
襲撃されているのはタジキスタン独立政府領タジキスタン・ソグド州イスタラフシャン市とキルギス独立政府領タラス州行政府タラス市、ウズベキスタン独立政府領ジザフ州都ジザフ市の3都市。
空と陸からモビルスーツで、地球連合軍本隊と連携したものと強く推測されます」
事前に予想していた事である。しかし、それにしても速い!向こうもフルスロットルだ。
アグネス「(イスタラフシャンはタジキスタンの二大都市ホジェンドとドゥシャンベを結ぶ幹線道路沿いの都市。タラスはカザフスタンの国境近く『タラス河畔の戦い』で有名、ジザフは古都サマルカンドの北東、『ティムールの門(ジラヌティ峠)』の間にある)」
どの都市も交通の要所だ。焼き払われ、最悪、陥落すれば中央アジアの血管と神経が断ち切られてしまう。
アグネス「了解」
アビー「他、ミサイル攻撃と空襲がタジキスタン独立政府首都ドゥシャンベとウズベキスタン独立政府領サマルカンド市に―」
アグネス「昼間、ザフト側に押し込まれたから次は自分達、連合のターンと言う訳ね」
ブルーコスモスゲリラと言うことはミケール大佐とやらも一枚嚙んでいるのか…。止せ。今考えても仕方ないわ。
アグネス「ヴェステンフルス小隊の所在は?もう出撃した?」
アビー「ヴェステンフルス小隊はトルクメニスタン独立政府アシガバート国際空港を発ち、汎ムスリム会議領マザーリシャリーフ国際空港に移動しました」
つまり迎撃任務には出ていないのか。マザーリシャリーフは交通の要所ではあるが―。
タリア「ヴェステンフルス小隊にはトルクメナバートとテルメズの連合部隊の牽制を命じています。引き抜けません。この攻撃そのものが陽動の可能性がある」
グラディス提督が鬼の形相で通信画面に顔を出してきたわ。何か機嫌を損ねるようなことを言っただろうか…。 - 77二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 03:55:57
タリア「特にテルメズにはハンニバル級が停船しているわ。事態が急変すればアムダリヤ川左岸の汎ムスリム会議軍に大損害が出る。同軍は南方に一時後退中よ。此方が支援するしかないわ」
ああ、良かった。別に私に怒っているのではない。一杯一杯なだけだ。昨日、今日と連戦、その後に式典に参加。ようやく一日が終わると思えばこの騒ぎ。皆、大小有れども疲弊している。
アグネス「(見事に敵の術中に嵌っているわ。収支が釣り合っているかは知らないけれど)」
違う!釣り合わないようにしてやるのだ!相手が消耗戦狙いなら此方が鑢(ヤスリ)と化して敵を削り潰すのみだわ!
此方の決意が伝わったのか、グラディス提督も直ぐに表情を改めて下さる。
あんまり変わらないわね。元々、こういうお顔だったわ。
タリア「本艦はこれより大気圏を一時、離脱します。レジェンド、インパルス、セイバー、カオスは宙から降下し、ジザフの敵勢力に奇襲を掛けよ。ミネルバ降下後はAWACSディンも後発させる。以後はイスタラフシャン、タラスの順よ。追って指示を出す」
アグネス・一同「了解」
宇宙空間から一気に降下して奇襲か!いや…、この場合は逆奇襲と言った方が正解ね。何度かやった事が有る戦法だ。
アーサー「3都市を襲撃中のブルーコスモス・モビルスーツ部隊は各々、中隊規模とのことだ。ただし、これは現地からの報告。多く見積もっておくに越したことは無い」
アグネス・一同「了解」
グラディス提督が命令を下した瞬間から時が加速していく。
マリク「各部チェック終了。メインエンジン出力上昇中。定格まで30秒。出港準備完了」
タリア「味方艦、民間船舶との衝突・接触に厳重注意せよ」
バート「了解」、アーサー「了解。ミネルバ、抜錨!」
マリク「水流ジェット接続」
ガルナハン沖で身を休めていた巨艦がゆっくり推進し始める。 - 78二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 07:44:30
アグネスの体調ギリギリすぎるなあ…燃え尽き症候群にならないと良いけどタイトロープ渡ってるかのようで見ててひやひやする
- 79二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 12:33:54
元から安静にすべき状態だし、肉体の修復に体力が使われてるんだろうね
それで寝不足で叩き起こされるから、回復が追いつ筈がない…
あとグラディス艦長達はいつ寝てるんだろう - 80二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 13:15:16
いくらコーディネイターとは言えそろそろクルーの身体のライン越えが起こってもおかしくない
- 81二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 20:35:02
アグネス達にとってはシャレになってないけど
大戦力を押し付けても突破してくるような精鋭相手には、数の利を活かしたスクランブルの連続で休息を奪ってしまうやり方が正解に近いのが…
現状は有耶無耶ならデストロイで払えるので、それを下せるエース級や指示を出す指令官の一人でも過労で病院送りに出来たらある意味大金星だろうし… - 82二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 02:44:59
ほっしゅ
- 83二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 03:32:31
ミネルバは身を震わせながらカスピ海を東進する。大気圏を離脱する為、陽電子破砕砲QZX-1/D『タンホイザー』を空中発射する必要がある。適切な位置に移動しなければいけない。
通信モニター画面を赤いツインテールが掠める。オフだったメイリンも呼び出されたか。
タリア「進路このまま。第二戦速に移行せよ」
マリク「はい!」
波を押し退け艦は加速し続ける。素晴らしい性能だ。何度体験しても惚れ惚れする。大規模改修時、建造途中のスーパーミネルバ級から装備を引っこ抜いたのは大正解だった。
アグネス「(この一点だけはデュランダル議長に感謝しているわ。歯抜けにされたスーパーミネルバも気掛かりではあるけど…。公職復帰されたエザリアおば様が何とかして下さっているはず)」
タリア「艦首上げ。タンホイザー起動!」
アーサー「了解。タンホイザー起動。総員、衝撃に備えよ!」
独特の浮遊感が腰を浮かす。いよいよか!座席に身体を深く押し付け、次の瞬間に備える。
チェン「プライマリー兵装バンク、コンタクト。出力定格。セーフティー解除!」
タリア「撃て!」
直後、漆黒の冬空を眩い光の濁流が貫く。
巻き起こる電磁ストーム!濁流となって流れ込む大気!ポジトロニック・インターフェアレンス!同時にミネルバはスラスターを全開にする。モーセは海を割った。我等は天を穿つのだ。遠ざかるコーカサス、カスピ海南岸の町々-。
コックピットモニターから見る世界は早くも平らな物から球体に代わりつつある。眼下には暗闇に包まれた山々と高原に砂漠、そして点在する都市の輝き。宝石みたい―しっかりしろ。呆けてどうする。気合いを入れろ。負けるな!
メイリン「レジェンド発進スタンバイ。全システムの起動を確認しました。発進シークエンスを開始します。ハッチ開放。カタパルトオンライン。針路クリアー。レジェンド、発進どうぞ」
アグネス「アグネス・ギーベンラート、レジェンド、出ます!」 - 84二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 10:34:16
2隻で戦隊を組んだ時ミレニアムの艦長と技術大尉以外のクルーを練度の差が激しいのでどうするか問題が起こる
- 85二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 20:19:08
もうずっとキツイ状況が続いとるんよなぁ
- 86二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 22:08:03
ミケールが指揮執るようになるとかなり厄介だなぁ…
ジブリとは大違いだ - 87二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 04:18:43
押しの装備こと『MX-RQB516 ビームランス』を握り締め死の虚空に躍り出る。ガイア用に積んで来た物を拝借した。
連合の陽電子リフレクターシールドと正体不明の敵性勢力のビーム無効化装甲がどうしても気掛かりなのだ。何時現れないとも限らない。ガイアは変形機構の関係で常には装備出来ない。今回は有効に活用させて貰うわ。
視界の隅、片側のハッチからフォースインパルスが弾き出されている。私とルナマリアに続いてショーンとデイル、セイバーとカオスも発進する。4機で息を合わせて編隊を組む。
メイリン「ジザフのウズベキスタン独立政府軍から入電です。後手に回っていると。敵戦力は飛行モビルスーツ12機。母艦は無し。ミサイル攻撃の後、一気に奇襲を受けたとの由」
アグネス「了解」
メイリンからの報告に衝撃を受ける。母艦無し…つまり帰還を想定していない!
これも狂信の為せる技か。テロリスト共はパイロットと機体に余裕が有るのだろうか…。ともあれ―。
アグネス「皆!聞いたわね?敵はまともじゃない。被害がこれ以上拡大する前に勝負を決めないと。スピード勝負よ」
ルナマリア「そうね。で、作戦は?」
アグネス「レジェンドとカオスが突入して敵中隊を撃ち尽くす。ルナマリアとショーンは政府施設の防御をお願い。避難中の市民も可能な限り守って。ただし優先は政府施設よ」
ルナマリア、デイル、ショーン「了解!」
仲間に指示する中、機体の高度は下がり続ける。『MX2351 ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置』を起動!大気の壁を押し退けて進む。インパルス、セイバー、カオスもそれぞれ対ビームシールドを下方に構える。
目前の透明なビームの盾が圧縮熱で真っ赤に燃える。先には砂塵の大地が広がる。青い海は遥か彼方だ。
スラスターの調整に細心の注意を。脳と全身の神経が鉋掛けされる。何度乗り越えても慣れるものじゃない。今の私は
重量86tの隕石だ。しかもレジェンドは核も積んでいる…。そうだ…。核動力機での大気圏降下は初めてなんだ、私。
操縦桿をギュッと握り直し、不吉なイメージを頭から追い払う。どうした?らしくない。落ち着け、呼吸を整えろ。
核動力機もバッテリー機も関係ない。何時も通り落ち着いて降りるだけよ。 - 88二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 12:23:02
保守
- 89二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 20:37:33
保守
- 90二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 22:54:45
熱圏を駆け下りる。眼には見えない『宇宙と空の境』カーマン・ラインは既に突破済みだ。
勢いそのままに流星が燃え尽きる所、中間圏へ。次は成層圏、目と鼻の先だ。
地上の争乱はさて置き、降下自体は順調に進んでいる。
ジザフ市防衛司令部「こちらウズベキスタン独立政府軍、ジザフ市防衛隊司令部だ。ザフト降下部隊に通達する。回線を固定されたし」
アグネス「了解。こちらザフト軍、特務隊アグネス・ギーベンラート他3名。防衛司令部と回線を固定します」
地上からの通信を拾えたのは幸運と言うべきだろう。レジェンドは他の機種と比較して情報収集能力が高い。ドラグーン・システムの運用が前提だから。頭部アンテナも4本ある。
アグネス「司令官殿。ジザフの戦況をお伝えください」
ジザフ市防衛司令部「ブルーコスモスゲリラは市の西南西方向、ザラフシャン山脈から。ティムールの門を飛び越え奇襲された。此方の対MSヘリ中隊は殲滅された。我が方に残るはブルドックとストライクダガー1個分隊だ」
アグネス「了解」
『ティムールの門』はジザフ市近郊に存在する有名な地形、左右に山が迫る隘路だ。サンゾル川によってザラフシャン山脈が穿たれ『イラン ウティ(白い峠)』とも呼ばれる。
シルクロードの時代のみならず、現代もタシュケントからサマルカンドへの主要道路と鉄道が通過する要所だ。おそらく峠の向こうの路線は市街地攻撃に先立ってブルーコスモスにより破壊されているだろう。
アグネス「(流石に手が回らない。討って出た愚か者の首級を上げて埋め合わせとしよう)」
スラスターの出力を徐々に上げる。球だった世界がみるみる平らになって行く。今の内に情報を搔き集めよう。
アグネス「敵の攻撃目標は鉄道ジザフ駅ですか?」
ジザフ市防衛司令部「おそらくは、そうだ。駅舎にミサイルを撃ち込まれた。ただ、市街地も攻撃を受けている。市民の避難も済んでいないのに!奴等、無茶苦茶だ」
アグネス「ブルーコスモスがする事ですから。どうか落ち着いて、皆で切り抜けましょう」
ジザフ市防衛司令部「そうだな。すまない」
間を置かず降下中のミネルバ、ブリッジから入電。私達に続いてAWACSディン2機が発進したとのこと。 - 91二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 23:04:39
これで『眼』は確保された。デストロイが顔を覗かせれば急報が入るはず。良し。次だ。
アグネス「市街の状態をより詳しくお伝えください。街区を占拠されましたか?」
ジザフ市防衛司令部「防衛線は下げた。だが占拠はされていない。空中から攻撃されている。それと市外からも断続的にミサイル攻撃を受けている。おそらく高射部隊が居るはずだ。先の報告に漏れてすまない」
『母艦無し』は正しくとも『モビルスーツ隊のみで奇襲』は厳密に言えば間違いだったと。
アグネス「了解。ハンニバル級の艦影は?分かる範囲で構いません」
ジザフ市防衛司令部「レーダー、目視双方で確認できない。市周辺にはいないはずだ」
ではデストロイ出現だけは無いか。不幸中の幸いだわ。
アグネス「分かりました。モビルルーツ隊はレジェンドとカオスが対処、市外ミサイル部隊はインパルスとセイバーが駆逐します。敵撃墜時に二次被害の発生が危惧されます。市民の避難に注力してください」
ジザフ市防衛司令部「了解した」
打ち合わせ終了。降下しながらきついわ。さて次は自分達ね。
アグネス「皆!聞いた通りよ。予定変更。市内にはレジェンドとカオスが降りる。敵の目が私達に集まった隙にルナマリアとショーンは郊外のミサイル高射隊を殲滅して!AWACSディンと戦術リンクを構築。デイルは私の後ろにピッタリついて」
ルナマリア、ショーン、デイル「了解!」
一声、掛けるとスラスターの噴射を弱め、落下速度を一気に上げる。頭部を下に急角度で降下を続行する。
指示通りカオスはレジェンドのすぐ斜め後ろに付く。インパルスとセイバーは2機編隊で9時の方向を駆け下りる。
直後、レーダーに敵影の明かりが灯る。AWACSディンからは光学映像も送信される。ジェットストライカーパック装備のウィンダム12機。贅沢な連中だ。
目に飛び込むのは敵の装備だけではない。
『滅茶苦茶』と司令官が言った通りだ。連中は街中にビームを雨霰と撃ち込んでいる。駅舎や政府施設が第一目標ではあるだろうが…。これは純軍事的な攻撃とは言えない。 - 92二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 23:16:57
恐怖の宣伝こそが奴らの目的なのだ。
『ナチュラルの身でありながらコーディネイターと馴れ合うならどうなるか』、『ロゴス・ブルーコスモスに楯突く政府はどんな目に遭うか』。教育してやろう、と言うことだろう。
惨たらしい光景だ。自分自身、散々、『テロリスト』と呼んで来たではないか!私の判断が至らなかった。
アグネス「『ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置』全力展開!デイル、カオスをモビルアーマー形態に移行。巡航機動防盾で自衛しつつ、ビームシールドのカバー範囲に入って。機動兵装ポッド起動」
デイル「了解。突っ込むんだな!」
アグネス「ええ。広げられるだけシールドを展開するから…」
デイル「分かった。指示してくれ」
機体を折り畳んだカオスが起動兵装ポットを前に―この場合は斜め下に―。レジェンドの背部プラットフォームに張り付く。
アグネス「(問題はどうやって敵を斃すか。市街地の只中だ。モスク周辺にも敵影が…。カオスに『カリドゥス改 複相ビーム砲』を撃たせるのは最終手段にしたい)」
眼下のならず者共は今頃になって私達の接近に気が付いた模様。対地攻撃を切り上げ、大慌て空中で編隊を組み直している。狂信の徒もやはり死ぬのは怖いらしい。
デイル「やるか!」
アグネス「待って!先に撃たせる。奴らに地上戦を選ばせてはいけない」
故に此方は攻撃のタイミングを敢えて一拍遅らせる。
デイル「なるほど」
たちまち眼下から『M9409L ビームライフル』のビームの雨がビームシールドに吹き付ける。レーダーに光点多数!温存されていた『Mk438 3連装ヴュルガー空対空ミサイル』が一斉に撃ち放たれた。その数、60本以上!
アグネス「『GDU-X7 突撃ビーム機動砲』、『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』全門、敵ミサイルに照準。発射開始!『MMI-GAU26 17.5mmCIWS』起動!」
迫るミサイルを撃ち抜き、あるいは目前で弾け飛ばす。敵も景気よく撃ったものだ。もう後が無いだろう。 - 93二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 23:27:58
気付けばビームも疎らになっている。連射し過ぎ。チャージの時間が必要なのだ。
アグネス「デイル。機動兵装ポッド開放。『AGM141ファイヤーフライ 誘導ミサイル』24発全弾発射!1機に付き2本。『誘導』して。可能な限りミサイルを市街地に落とさないで」
デイル「了解!」
力強い声が鼓膜を叩く。それと同時にレジェンドの背後から24本のミサイルが棒立ちで飛ぶ敵12機に降り注ぐ。
十分に接近して、しかも敵が息切れした瞬間に放った攻撃だ。ブルーコスモス共、ひとたまりもないだろう!
半瞬後、オアシス都市上空に12の火球が浮かぶ。燃え盛る敵機はまるでパイロットの怨念を受け継いだかのようだ。
しかし祝杯を挙げる気にはなれない。市内に墜落した敵機は再度、爆発。町中に幾つも火の手が上がる。
心苦しいがどうすることもできない。私達の迎撃で被害が最小化されたと願うばかりだ。
ルナマリア「アグネス!此方インパルス。郊外の敵高射部隊の掃討を完了。全車両撃破したわ」
アグネス「了解」
彼方も無事終わったか。これでやっと3分の1-。
ジザフ市防衛司令部「救援感謝する。よくやってくれた」
タリア「ご苦労だったわね。アグネス。本艦はジザフを11時の方向、アイダール湖に着水します」
アグネス「了解!ありがとうございます」
労いの言葉でパワーチャージ。人間現金なものだ。
アイダール湖はシルダリア川が堰き止められて生じた人工湖。灌漑ダムの副産物で意図せずに出来上がった物だ。
タリア「カオスは帰艦してミサイルの補給を。レジェンドとインパルス、セイバーはAWACSディンの支援を受けつつイスタラフシャンに急行せよ。連戦になるが一刻を争う。補充が終わり次第、カオスは後続させる」
アグネス・一同「了解」
ジザフからイスタラフシャンまで南東南に100㎞。一気呵成に決めよう、と言う訳ね。バラけるのは気掛かりだが仕方ない。行こう! - 94二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 07:10:28
保守
- 95二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 16:39:20
相変わらずファイアフライ誘導ミサイルが良い仕事するなぁ
もうザフト標準装備にしても良いレベルじゃないか? - 96二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 01:23:18
保守
- 97二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 03:24:14
ジザフから見て4時の方向、イスタラフシャンに3機小隊で直走る。
ビームシールドを張れるレジェンド、つまり私が先頭だわ。機体を任された時は連装砲役だと思ったのに。すっかり盾持ち役ね。まあ、戦友を庇って戦えるのは名誉な事だ。『盾を持って帰るか、盾に乗って返れ』。古人の言に従おう。
右手にはパミール・アライ山脈の北方延長であるトルキスタン山脈が聳え立つ。到着まで7分とかからない。
こんな状況でなければ古より続くオアシス都市の歴史に思いを馳せる事が出来たかもしれない。
アグネス「ミネルバブリッジへ。あと五分でウズベキスタン・タジキスタン両独立政府の『国境』です。飛び越えます。両政府に通告しますか?」
タリア「通告済みよ。安心して進みなさい。逆奇襲の成功を最優先とせよ」
アグネス「了解」
山々が近づく。イスタラフシャンは指呼の間だ。谷間を抜けたら市の西北西から―。
AWACSディン「緊急報告!4時の方向、5000。山陰に大型モビルスーツの機影有り!迷彩されています」
アグネス「全機、緊急回避運動!」、ルナマリア、ショーン「了解!」
咄嗟に叫び、3機で空中宙返りを打つ。直後に、大ビームが飛来!真赤な4本の巨大な火柱が夜闇を切り裂く。焼削ると言った方が適切かもしれない。高エネルギー砲『アウフプラール・ドライツェーン』!
間一髪で躱せた。本当に危なかった。AWACSディンから光学映像が届く。モビルアーマー形態のデストロイ、ウィンダムが6機が直掩している。
アグネス「皆!無事?!」
ルナマリア「無事よ」、ショーン・AWACSディン「はい!」
アグネス「良かった。立て直すわよ」
デストロイが狙うのは都市と思い込んでいた。そちらを囮に伏兵でザフトの精鋭部隊を撃滅するのが正解、少なくとも今回敵はそう判断した。思い込みと希望的観測は兵士の敵だわ。危うかった。 - 98二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 11:41:38
保守
- 99二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 18:11:35
みんな大好きデストロイ
どんだけ作ってるんだよ… - 100二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 00:03:29
デストロイにMSの随伴…劇場版の布陣か
デストロイの死角がカバーされるか、同士討ちリスクでかえって邪魔になるか… - 101二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 03:08:52
すみません。今晩はお休みします。明日の夜に書き込みます。
- 102二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 08:43:20
保守
- 103二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 13:30:34
保守
- 104二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 19:02:33
- 105二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 01:22:50
ルナマリア、ショーン、AWACSディンパイロット「了解!」
アグネス「ありがとう!全機、『アウフプラール・ドライツェーン』への警戒を継続。回避運動を継続せよ」
コックピット回線越し、皆の返事を聞き一安心。思わずお礼を言ってしまったわ。
一方、戦術リンクしたAWACSディンからはリアルタイムデータが送信され続ける。
遥か前方に屹立するデストロイの巨影、高エネルギー砲『アウフプラール・ドライツェーン』はチャージ中。とは言え、ここから一息に距離を詰めるのは難しい。
カオスの到着を待つ間は無い。私達が一時退却を選べば、デストロイは回れ右してイスタラフシャン市を焼くだろう。同市にとってそれは致命的だ。現時点でも敵別動隊から襲撃を受けているのだから―。
AWACSディンパイロット「デストロイモビルアーマー形態を維持…左右『両腕部飛行型ビーム砲・シュトゥルムファウスト』発射!合わせウィンダム4機も突出。全機ジェットストライカーパック装備。一つの腕に2機付いています」
アグネス「了解。戦訓を生かしているのね」
レーダーに灯る6個の光点ぐんぐん迫る。
アグネス「(なるほど。『両腕部飛行型ビーム砲・シュトゥルムファウスト』各一基を陽電子リフレクター装備モビルアーマーと捉えて直掩2機ずつで『小隊』を組む)」
デストロイ本体の直掩は残りの2機。万一、腕を墜とされた場合の代わりとなり、バックパック先端部の陽電子リフレクタービームシールド発生装置を死守する、と。
アグネス「皆、焦らないで。ビームシールド持ちの2個小隊が向かってくるってだけ」
ルナマリア「ええ…」
それはそれで結構不味い状況なのだが…知った事か!
アグネス「ショーン!セイバーで高速機動して敵の気を引いて。『アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲』と『スーパーフォルティスビーム砲』を上手く使い分けて」
ショーン「了解!」
返事と共にセイバーはレジェンドを追い抜く。
同時に機体を旋回しながらアムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲2門を発射!薙ぎ払うように放たれた赤い大光線が夜空を染める。 - 106二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 01:32:57
先頭を飛ぶ『両腕部飛行型ビーム砲・シュトゥルムファウスト』2基は手甲を前傾させ陽電子リフレクターシールドを展開する。自基と僚機を守る為に。
セイバーは続けざまにスーパーフォルティスビーム砲を連射、敵編隊に捻り込みを仕掛ける。
敵もさるもの。ウィンダムは陽電子ビームシールドの合間から3連装ヴュルガー空対空ミサイルポッドを乱れ撃ち。ショーンはピクウス76mm近接防御機関砲をフル回転させて対処している。
さて、私達も斬り込もう。
アグネス「ルナマリア、インパルスはレジェンドの後ろにピッタリついて。バレルロールしながら突進するわ。『ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置』起動!」
ルナマリア「了解!」
突進、視界がくるくる回る。地面と空が入れ代わり立ち代わり大忙しだ。
やがて迫る鉄拳!黒鉄の腕に抱かれ縮こまっているお伴の4機。完全に足を引張っている。
AWACSディン「デストロイ!『アウフプラール・ドライツェーン』発射態勢に!」
アグネ「了解。通達!おそらく撃つ直前に腕をどける。そのタイミングで退避を。でも確実じゃない。要警戒!」
一同「了解」
心臓が早鐘を打つ。バクバクする何てものじゃない。撞木が脳幹を直接、連打している。
僚機に指示を出しつつ鉄腕2基と2個編隊に急速接近を果たす。レジェンドの『GDU-X7 突撃ビーム機動砲』『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』を全基起動する。『GDU-X7 突撃ビーム機動砲』2基10門を照準!
しかし一斉射寸前に『両腕部飛行型ビーム砲・シュトゥルムファウスト』はUターンする。逃がしたわ!
その代わり取り残されたウィンダム4機にビームが突き刺さる。2機はレジェンド、セイバーが残り2機のもの-。
撃墜スコアなんて今はどうでも良い!腕が退避したと言うことは。
アグネス「全機回避!!!」
レジェンドとインパルスは空中大宙返り、セイバーは急旋回して空を駆け上る。同時に炎の濁流が前面から流れ込む。 - 107二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 01:45:25
ピーっと云う音と共に核エネルギーゲージが底を突き、バッテリーに切り替わる。ビームシールドの端が掠った。
後少しでもズレていたら命は無かっただろう…。呆けている暇はない!
再度、両側背部プラットフォームを前に折り曲げ『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』を3基6門を起動する。まだ敵の両腕は生きている。
案の定、『シュトゥルムファウスト』2基はターンして此方に向かって来る!ウィンダムを捨て駒に『肉を切らせて骨を断つ』積もりだ。5連装スプリットビームガン2基10門が火を噴く―。
その直前、ビーム突撃砲を片腕に6門ずつ割り当てて一斉発射する。もう一度、『シュトゥルムファウスト』に陽電子リフレクターの起動を強制するのだ。これで攻撃が止まる。もう護衛はいない。両椀を切り落とすなら今だ!
アグネス「二人共!今よ」
ショーン「えい!」、ルナマリア「はッ!」
モビルスーツ形態に変型したセイバー、レジェンドを飛び越えたインパルスはそれぞれ『シュトゥルムファウスト』に急接近を遂げる。刹那に爆発が二つ!ビームサーベルがリフレクター発生装置ごと両拳を斬り裂いたのだ。
喜ぶ暇も無い。レーダーに光点多数-24。ミサイルだ。生き残りのウィンダム2機が放った3連装ヴュルガー空対空ミサイル12本、デストロイの『Mk.62 6連装多目的ミサイルランチャー』から放たれた12本。狙いは弱ったレジェンド。
アグネス「17.5mmCIWS起動!」
手元に目を遣る。さっき掠った上にチャージ前にビームを連射してしまった。迂闊だった。
撃墜するが爆風と衝撃が残る僅かなエネルギーを容赦なく奪っていく。デュートリオンのチャージが間に合わない。
このままではフェイズシフトダウンする。ピーピー音が五月蝿い。鳴らなくても分かるわ。
AWACSディン「デストロイ、モビルスーツ形態に変型中-熱プラズマ複合砲『ネフェルテム503』20門、起動されます!」
アグネス「…」
このエネルギー残量で上手く捌けるだろうか…。いや、捌くしかないわ。 - 108二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 01:55:24
ルナマリア「アグネス!私とショーンで援護するわ。一旦距離を取りましょう」
ショーン「対ビームシールドも伊達ではありません」
目の前にインパルスとセイバーが舞い降りる。二人がデストロイの猛火から守ってくれる。助かったわ。
アグネス「ええ。ありがとう。退避!」
ルナマリア、ショーン「了解!」
二人に庇われながら大旋回、デストロイと距離を取る。
半拍後に『ネフェルテム503』が全門発射される。夜空を20本の緑のスポットライトが回転しながら煌めく。4本はインパルスとセイバーが盾で弾く。
AWACSディン「デストロイ、複列位相エネルギー砲『スーパースキュラ』3門及び『ツォーンMk2』、発射態勢に!」
アグネス「了解。回避運動続行。ルナマリア、ショーン!ハイパーデュートリオンエンジンのチャージが完了した。入り代わるわ。ビームシールドを展開する!」
ルナマリア、ショーン「了解!」
編隊を組み直す。此方に向け敵主砲、口部砲、『ネフェルテム503』の再発射が同時に押し寄せる。ウィンダム2機からもビームライフルを連射される。
心配ご無用。『スーパースキュラ』『ツォーンMk2』は全門に成功した。しつこい『ネフェルテム503』とビームライフルはビームシールドで受け流す。
アグネス「(潮目が変わったわ。敵は追い詰められている)」
そう思ったのも束の間、レーダー上に12機分の光点が瞬く。偵察機から急報が入る。
AWACSディン「イスタラフシャンを攻撃していた敵中隊12機、2時の方向から、此方に向かってきます!」
アグネス「了解!」
同じタイミングでミネルバブリッジからも入電!グラディス提督から『レジェンド等を陽動としてカオスが迂回して逆奇襲をかける』と?思い切った策だけど…。 - 109二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 02:01:28
マップ上を時計回りに駆け付ける機影が一つ。デイルのカオスだ。もうここまで来たら信頼するしかない。
『彼方は大丈夫だ。ならば私達は目前の敵に集中しよう』と。
アグネス「ルナマリア、ショーン。デストロイは今モビルスーツ形態よ。『アウフプラール・ドライツェーン』の射角は限定される。レジェンドで一気に突っ込むわ。援護をお願い」
ルナマリア「分かったわ」、ショーン「了解!」
二人に指示を出すやレジェンドの両手を前に構えて『ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置』を全力展開。背面プラットフォームは前に折りスラスターは全開にする。
そのまま回避運動は一切せず真正面からデストロイに突っ込む。『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』6基12門は連射してビーム弾幕を張る。ウィンダムが飛び出して来たら蜂の巣にしてやる!
直後にデストロイの胸部と口部、バックパックの端が一斉に煌めく。
正面から被弾。1580mm複列位相エネルギー砲『スーパースキュラ』3門、のみならず200mmエネルギー砲『ツォーンMk2』、熱プラズマ複合砲『ネフェルテム503』も。
ビームシールドは何時破れるか分からない。コックピットモニターの画面はずっと真赤だ。
エネルギーゲージはまた下がる。まるで高水圧ホースにビニール傘で対抗しているみたい。
アグネス「あっ!」
デストロイの傍らで爆炎が2つ立ち昇る。巨人の一斉砲火に護衛のウィンダムが巻き込まれた。おそらく『ネフェルテム503』が掠った―。
アグネス「私の知った事じゃないわ!」
直掩を自分で吹き飛ばしたのは明らかに失策だった。わざとじゃないかも知れないが…。どっちでも構わない。
このタイミングでレーダー上の光点12個が消滅する。カオスが来てくれたのだ。。
デイル「迂回奇襲に成功に成功した!イスタラフシャン市西郊外でブルーコスモスゲリラ12機中隊を殲滅完了。繰り返す本機は逆奇襲に成功!」
アグネス・一同「了解!」
デストロイの劣勢を知って救援に来たブルーコスモス別動隊-当初、私達は彼らが本隊と思っていたのだが―しかし、迂回して接近したカオスの猛砲火を受け敢無く全滅した。結果的に私達が陽動に成功した形になる。 - 110二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 02:08:07
よりミクロな陽動は此方でも。レジェンドの特攻でデストロイが見せた隙をルナマリアとショーンは見逃さない。
ショーン「えいッ!」
捻り込んだセイバーが敵側面からアムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲を撃ちこむ。
デストロイは堪らずバックパック先端の陽電子リフレクターを起動する。
これで私への攻撃が止む。もう彼我の距離は『MX-RQB516 ビームランス』の切っ先が届く範囲だ。
ルナマリア「はッ!」
次いで急降下したインパルスが頭部を袈裟斬りにする。巨人の肩の上で爆発が起こる。これで『ツォーンMk2』と『イーゲルシュテルン』は潰れた。首を失くしたデストロイの姿は何とも滑稽だ。昔話の妖怪みたい。
待てよ?これなら中のパイロットを助けられるかも―。
アグネス「ルナマリア!ショーン!『アウフプラール・ドライツェーン』を斬って。可能ならパイロットを投降させる。非人道的作戦の生き証人よ。被害者かも。ただし不可能なら撃破する」
ルナマリア「うん?!了解」、ショーン「はい!?」
二人に指示を下すやビームランスを真一文字に一閃する。『スーパースキュラ』3門を浅めに切った。右から順に小爆発が3つ生じる。
ランスを振り抜き、今度は突き。ホバースラスター1基を穿つ。敵の翼を奪った。
同じタイミングで上部では『アウフプラール・ドライツェーン』の巨大な砲塔2基が焼切られる。悪足掻きをさせない為、陽電子リフレクターシールド発生装置は最後まで破壊しない。
アグネス「(もし敵が相打ち覚悟でリフレクターを切り攻撃しようとしたら、もう仕方がない。その瞬間にデストロイを撃ち抜くまで。私達は3機とも攻撃手段が有る)」
出来ればそんな事態は避けたいけど―。
ビームランスを反時計回りに大回転させる。バックパックを叩き切って爆発させないよう、端をなぞるように。『ネフェルテム503』発射口を潰すのだ。 - 111二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 02:13:39
そのまま左足首に足払いを掛ける。大木を切り倒すように―。
片脚を失ったデストロイは回転しながらバックパックの重みで仰向きに倒れる。
これでミサイルも撃てない。念のため『ネフェルテム503』は全門潰しておく。ルナマリアとショーンに指示を!
アグネス「パイロットが自爆を選ぶかもしれない!二人は緊急退避。レジェンドはビームシールドがある。上空監視をお願い」
ルナマリア、ショーン「了解!」
2機の上昇を確認。コックピットデバイスを叩いてミネルバブリッジに一報を入れ、投降勧告を開始する。
アグネス「国際救難チャンネルの放送を開始します。此方はザフト月軌道艦隊、特務隊アグネス・ギーベンラート。デストロイパイロットに告ぐ。武装を解除し投降せよ。
人道に基づいた処遇を約束する。貴機には既に継戦能力は無い。プラントはブルーコスモスによる非人道的行為-人体実験、洗脳行為-を把握している。医療措置を含む人道的対処を約束する。繰り返す。降伏せよ。コックピットハッチを空け出て来なさい!」
勝手に約束してしまったわ。まあ、私はFAITHだからね。もう後はグラディス提督頼りだ。
アグネス「(時間が無い。タラスに向かわないと。次呼び掛けて駄目ならピッケルでコックピットハッチを抉じ開けるか…)」
ハラハラする。自爆を選ばれたら?閉じこもって時間稼ぎをされたら?
憤怒に駆られた現地軍と住民が押し寄せてきたら―どうしようか…。余計なことをしたか。
そう思った次の瞬間、コックピットハッチが音も無く開く。中から華奢な人影が這い出す。あの人は死にたくなかったようだ。私と同じように。後戻りされないよう、レジェンドの両手で彼もしくは彼女を包み込む。そっと空に上がる。
応じてくれた。良かったわ。自己満足かも知れない。でも…。私は決して不殺主義者では無いが過剰殺戮を望んではいない。軍人としてもそれで正解なはず。
アグネス「ミネルバブリッジ、応答を願います。此方は―」
タリア「分かっているわ。ご苦労だったわね。本艦もそちらに向かっています。『国境』付近で合流せよ。その後は宇宙に。タラス降下作戦を決行します」
アグネス・一同「了解」
残り3分の1。もう少しだ。もうヘトヘトだけど頑張ろう。 - 112二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 08:45:01
やったなアグネス!大金星じゃん!
- 113二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 18:26:36
これは月光のワルキューレ
- 114二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 00:42:32
ザフトの偉い人「プロパガンダしなきゃ…」
- 115二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 03:28:10
マニュピレーターに全神経を集中する。万一、捕虜を押し潰したり落としたりしたら洒落にならない。
アグネス「ルナマリア。『MX-RQB516 ビームランス』拾ってくれる?置いて来ちゃった」
ルナマリア「良いわ」
インパルスに槍を拾ってもらい再び3機で編隊を組む。ゆっくり北北東11時の方向に飛行、
レーダーによればミネルバ到着まであと僅かだわ。
AWACSディン「周辺に敵影無し。ミネルバ接近中。光学映像、送ります」
アグネス「ありがとう」
大きく翼を広げた戦女神がお出迎えだわ。『ミネルバ』と言うより勝利の女神ニケにも見える。もっとも両女神の神格は同一ともされるから問題ないかも。
メイリン「医療班スタンバイ。カタパルトハッチ及び甲板エレベーター出入口開放。モビルスーツ隊、着艦準備良し。レジェンド、着艦どうぞ」
アグネス「了解。レジェンド、着艦します」
無事に全機で帰艦を遂げる。
デストロイのパイロットは待機していた医療班、看護兵達に引き渡した。
捕虜はキャスターに固定されて医務室に運ばれていく。
アグネス「(大丈夫よ。ザフトには既にエクステンデッドの治療ノウハウが有る。ここに『揺り籠』は無いけれど一時的な対症療法は可能。明日にでもシャトルで本国に送致すれば良い)」
何れにせよ今夜を凌いでからの話だわ。
『ミネルバが沈めば一巻の終わり、奮起を!』と自分に喝を入れる。
ともあれレジェンドをハンガーに収め、ようやく一息つく。
同時に傍らの大型昇降機が競り上がる。看護師さんと治医の先生が乗っているわ。
コックピットハッチを開放する。 - 116二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 03:35:31
看護師「アグネスさん!お帰りなさい。お疲れ様です。ご無事で何よりです」
アグネス「お疲れ様です。ただいま帰艦しました。直ぐに再出撃する事になりそうですが…」
看護師「その前にバイタルチャックです!」
測った所でストップは無理だろうけど…、言っても仕方ない。大人しく身を任せよう。
アグネス「お願いします」
看護師「はい。では体温、脈拍、血圧っと。むー」
検査結果は相変わらず思わしくないらしい。予想通りね。看護師さんは先生と話し合っている。私には何ともし難い。
主治医「アグネスさん、ご気分はいかがですか?」
アグネス「疲れました。もう限界って気分ですが…、やり遂げます」
主治医「目がぼやけたり、耳鳴りがしませんか?」
アグネス「視覚と聴覚に異常は感じません」
問診の最中もミネルバの飛行と止まらない。バックでは艦内放送が始まっている。
アーサー「本艦はこれより大気圏を離脱する。艦首上げ。タンホイザー起動、発射30秒前。総員衝撃に備えよ」
はぁー。もう何も言わない。煮るなり焼くなり好きにして欲しいわ。壁を隔てた先のブリッジのことは今は良い。
それより目の前で心配げな顔を浮かべてくれている女性二人の方が気に掛る。
主治医「どうか…、どうかご武運を!」、看護師「アグネスさん!気を付けて。本当に―」
アグネス「ありがとうございます。お二人も!」
互いにエールを送り合い昇降機を見送る。二人が下りたタイミングでコックピットハッチ閉鎖。
タンホイザー発射まで残り10数秒、目を瞑って少し考えを巡らせる。 - 117二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 03:37:55
アグネス「(雨後の筍のようにデストロイが出現する…。参ってしまうわ)」
無論、デストロイは筍ではない。量産機ではあるものの本来は希少なモビルスーツだ。
製造、管理、維持、運用に莫大な労力とコストが掛かる。ザフトにとってのセカンドステージシリーズか―いや、それ以上のはず。サードステージシリーズに匹敵するかも。
アグネス「(それをこうもポンポンと。皺寄せが出ない筈が無い。地球連合は明らかに国力の先食いをしている。数年分、下手したら10年分くらい。ユーラシアも大西洋連邦も―)」
正気の沙汰じゃない。ブルーコスモスの執念はかくも凄まじいものなのか。
それとも権力を失うまいと足掻くロゴスの底力か。覇権国家、地域大国の座にしがみ付く大西洋連邦とユーラシア連邦の愚行なのか―。もう混然一体と化している。
我慢比べを続けるしかないのか。それは何時までなのか…。疑問が頭の中をグルグル回る。
タリア「撃て!」
チェン「タンホイザー、発射!」
グラディス提督の号令と共に、艦前方にポジトロニック・インターフェアレンスが生じる。スラスターは轟音を上げ、我等は再び宙へ。
(カウントMS1076〈+共同撃破多数〉 デストロイ4(共同) セカンドシリーズ1(共同) 大型MA22(共同2)
戦闘機56 対MS戦闘ヘリコプター245 大型輸送機33〈+共同撃破多数〉 VTOL輸送機33〈+共同撃破多数〉 長距離偵察機1
リニアガン・タンク166〈+共同撃破多数〉 自走リニア榴弾砲218〈+共同撃破多数〉 ブルドック253〈+共同撃破多数〉 工兵車60<+共同撃破多数> レーダー車10 汎用車両・兵站車両・軍用トラック等297〈+共同撃破多数〉
地対空75mmバルカン砲塔システム7 大型砲20 ヘルダートタイプ・ミサイルランチャー5基 50mmガトリング砲9
空母12 イージス艦16 フレーザ級6 攻撃型潜水艦2 大型輸送艦1 コルベット艦2 哨戒艇1 軍用艇3 ハンニバル級1 アガメムノン級14 ネルソン級14 ドレイク級17 リフレクターシールド装備型ドレイク級10)
- 118二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 10:22:09
保守
- 119二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 17:56:32
いつもながら撃破数もえらい事に
- 120二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 20:29:51
後の歴史家というかドキュメンタリーとかでいや流石に盛りすぎでしょとか言われるんだろうな
- 121二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 02:42:27
コックピットモニターをブリッジと同期する。艦外の様子を知りたい。
遠ざかるトルキスタン山脈、イスタラフシャンは既に遠く。平らな大地が急速に球体と化す。
天高く駆け上がるミネルバ。その進路上-地球軌道上-に大きな光点が5つ瞬く!?
プラズマと大気の嵐の先に―敵影在り。敵影在り!?
アガメムノン級1、ネルソン級2、ドレイク級1、リフレクター装備ドレイク級1。連合分艦隊の遊撃だ!
アグネス「(待ち伏せされた。地上のブルーコスモス派と連携している?!)」
心臓が早鐘を叩く。北極海の時と同じ。思えば当然だわ。
強敵ミネルバは大気圏を離着陸できる。ならば比較的無防備な離脱途中ないし直後を強襲しよう。地上や宇宙で正面から遣り合うよりずっと勝機がある、と…。ミネルバの無双を地球連合が甘受する道理はない。
敵を感知してもミネルバの急上昇は止まらない。今更引き返すことは愚か、艦の姿勢を変える事も叶わない。
タリア「アンチビーム爆雷、発射用意!」
アーサー「了解!」
状況の推移は0.1毎。宙に飛び出すと同時にアガメムノン級の『高エネルギー収束火線砲 ゴットフリートMk.71』2連装4門が火を噴くだろう。お供の艦の大型ビーム砲も同時に。初弾を受け流した後が勝負だ。
足元の格納庫は修羅場と化している。私も飛び出せるようメンタルの調整に掛かる。
その刹那-同期したブリッジに渋い男性の声が流れ込む。
コノエ「『225cm2連装高エネルギー収束火線砲 ゴットフリートMk71』全砲照準。目標、敵旗艦及び左右のネルソン級とリフレクター装備ドレイク級。ミラージュコロイド解除と同時に発射せよ。グラディス提督よろしいですか?」
タリア「許可します。コノエ艦長」
ミラージュコロイド…。コノエ艦長と言うことはまさか!ガーティ・ルー! - 122二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 02:49:22
そこからの展開はコマ送りそのものだった。
緑色の光に包まれたミネルバの艦首が大気の層を突き破る。
アーサー「アンチビーム爆雷発射!」
チェン「了解!」
敵の分艦隊5隻は艦首を此方に向けている。全砲門の照準はミネルバに向く。
その後方で暗黒のベールが一枚剥がれ落ちる。露になった群青色の船体が禍々しい。
コノエ「撃て!」
コノエ艦長の冷静沈着な号令。次の瞬間、緑の閃光が6つ迸り巨大な火球が5つ瞬く。
此方の虚を突く積もりだった敵分艦隊が逆に虚を突かれ宙に散った。
アグネス「(対策していたのは月軌道艦隊も同じだったのね。グラディス提督はカードを伏せていた。私達、味方にさえ秘密にして―。ナイスな判断ね)」
ブリッジの提督とトライン副長はモニターに顔を出したコノエ艦長と敬礼を交わしている。私も感謝を込めてレジェンドの中で敬礼する。
最低限の挨拶を済ませ、ガーティ・ルーはミラージュコロイドを展開する。再び虚空に身を潜ませミネルバの頭上を守護してくれるのだ。改めて恐ろしい艦だ。
アグネス「(アレクセイ・コノエ艦長。資料でしか知らない人だったけれど。やっぱり凄いわね。なんか圧倒されちゃったわ)
感心するのは程々にしよう。これで急場は凌げた。私は私のなすべきことを! - 123二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 11:32:24
保守
- 124二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 11:48:44
前の大戦のガンダム達のように鹵獲兵器で大暴れ
- 125二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 16:38:40
名前だけは出ていたコノエ艦長が遂に登場か!
- 126二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 19:27:25
鹵獲兵器で大暴れはガンダムの伝統
- 127二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 19:31:31
ただでさえ守りの戦いで生き残ってきたコノエ艦長にミラージュコロイド搭載艦は凄まじい
- 128二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 23:38:53
道理(条約)もわからぬナチュラルが、こんなものを作るから!!!
- 129二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 04:14:04
今晩はお休みします。明日の夜に書き込みます。
- 130二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 11:37:27
おつです!
- 131二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 20:05:48
保守
- 132二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 03:20:46
ガーティ・ルーと別れ、ミネルバはキルギス上空へ向かう。
宙の闇に消えた戦友達。彼らの存在そのものが私達の安全を担保してくれる。
隠密性に優れた艦が一隻存在するだけで大違いだ。海上における潜水艦のようなもの。
アグネス「(今後、地球連合軍はミネルバ及びプラント陣営シャトルの待ち伏せ攻撃に慎重になる。ザフト軍の降下作戦間際を狙った奇襲作戦も採り辛くなったはず)」
それがはっきり示せたこと自体が巨大な戦果と言える。
勿論、1隻がカバーできる範囲は限られている。しかし『その恐れがある』だけで戦略上の優位は確立できるのだ。
アグネス「(ゲリラに勤しむモグラ共をぎゃふんと言わせられたようで痛快な気分よ!ブルーコスモスに引っ掻き回され、ひたすら後手に回っているようでは気分が悪いわ)」
その間も地上の景色は目まぐるしく変わる。
『世界の屋根』とも称されるパミール高原を後にし、フェルガナ盆地を飛び越え、あっと言う間に天山山脈上空。
アグネス「(宇宙開発が発展途上であった西暦時代は『コロニー建造は現実的ではない。極超音速輸送機の開発に力を入れるべき』との声もあったと聞く。改修後のミネルバは上位互換と言える存在かも知れない)」
我等の眼下には旧キルギス共和国、山と盆地の国だ。上から見ると本当に険しい地勢。
この地で文明を育んで来た先人への敬意と『ああ、これは発展難しいな』と言う感情を同時に抱いてしまう。現地の方の前では絶対に口に出来ない。
アグネス「(全く失礼千万だわ。所詮は現地情勢に疎い外国人の戯言よ。この地の民は偉大な遊牧帝国・交易国家を打ち立てた歴史がある。侮るなかれ)」
降下予定のタラス市は同名の河川タラス川流域の主要都市の一つ。
カザフスタンにも『タラズ市』があるけど私達が救援するのはキルギスの方。
タラス川は天山山脈北嶺に源を発し、キルギス山脈とタラス山脈を合間を縫いタラス渓谷を西に過ぎ去る。
アグネス「(『タラス』の語が出過ぎて頭が一杯になりそう。地名はそう言うものか)」 - 133二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 03:42:54
余計な事を考えるな。降下ポイントと飛行経路、その後の戦闘に意識を集中よ。
アグネス「ブリッジ、現地軍からの情報をお伝えください」
アーサー「ブルーコスモスの攻撃は中隊規模以上。リニア榴弾砲・ブルドック中隊、護衛のリニアガン・タンク小隊も伴っている。モビルスーツは北のキルギス山脈側から飛来したとのこと。ハンニバル級の艦影は無し」
アグネス「了解」
敵も空からの攻撃に備えている。これではミネルバを降下させられない。砲弾は案外厄介なのだ。
ビームはアンチビーム爆雷、ミサイルはCIWSで対処できるのに。
アグネス「(AWACSディンも発進させられない。降下中に撃墜される恐れがある。偵察機は貴重だ。何よりパイロットは大事な仲間だし…)」
ならば現地軍の『ハンニバル級無し』を信じるしかないか。うーむ…。不安だ。
タリア「作戦はジザフと同様。レジェンド、インパルス、セイバー、カオスは敵前降下の後ブルーコスモスゲリラを駆逐せよ」
アグネス、ルナマリア、ショーン、デイル「了解!」
無理難題をサラッと仰るわね。まあ、『その為に最新鋭機に乗せている』と言われたらそれまでだが…。
頑張れ私!あと少しだから。
メイリン「カタパルト推力正常、全システムオンライン。ハッチ開放、進路クリアー。レジェンド、発進どうぞ!」
眼をギュッと瞑り、パッと開く。メイリンの力が籠ったオペレーション。しっかり応えないとね。
アグネス「アグネス・ギーベンラート。レジェンド、出ます!」
自分で自分を鼓舞しつつミネルバの脇腹から飛び出す。同じタイミングでインパルス、後続してカオスとセイバーも。
アグネス「全機に告ぐ。敵は私達の降下を予期している。用心して、でも勇敢に戦いましょう。当機が先陣を務める」
ルナマリア・一同「了解!」 - 134二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 07:38:45
これは英雄アグネス
- 135二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 16:15:30
保守
- 136二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 23:13:53
保守
- 137二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 23:14:29
通常兵器とMSの部隊ならこれまでも撃破きたし楽勝やな(錯乱)
- 138二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 01:41:26
全員の応答を確認。大気圏突入に備えよう。
ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置を起動する。
一番使用し頼りにも思っている兵装だ。『型式番号ZGMF-X666S』の最大の持ち味はハイパーデュートリオンエンジンの大出力と『盾』の大きさ・頑丈さにあるように思う。
何せ中から攻撃可能、云わば『銃眼』まで付いている。これほど心強いものはない。
この局面、僚機を守って進むには砲塔だけでは足りない。
アグネス「ビームシールド展開!これより本機は大気圏に突入します」
ルナマリア・一同「了解」
回線越しに一声かけるや前方にビームの大傘を張る。同時にスラスターの出力を上昇!
青い星に向けダイブする。文字通り先陣を切るのだ。
コックピットモニターは圧縮熱を受けて真っ赤に染まる。突破できると知っていても油断はできない。少しでもスラスターの力加減を間違えば明後日の方向に降り立つ羽目になる。
熱圏を突破、中間圏も抜けた。このまま対流圏、眼下には闇に包まれたタラス盆地、点在する都市の明かり―。
ピピピピピピ―。
けたたましい警報音がコックピットに響く。直後、数十発の榴弾が透明な盾の表面に弾ける。
タラスのブルーコスモスゲリラが放つ対空砲火だ。始まった。自走リニア榴弾砲、本当に厄介だわ。作戦の度に多くの仲間が撃ち落とされた。
敵の全火力を一度は引き受けないといけない。ルナマリア達、セカンドステージシリーズなら強行突破は出来る。フェイズシフト装甲は物理攻撃に強いから。でも被弾するたびに電力を喰われる。本戦の為に電力は温存したい。
アグネス「(だから前に来たのよ。私は囮、躱さないからしっかり狙って撃ちなさい!)」 - 139二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 11:25:12
保守
- 140二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 20:32:14
CEのバッテリー技術は優秀(限度はある)
- 141二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:57:13
- 142二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 03:33:18
ピピピピピピピピ―。ピピピピピピピピ―。ピピピピピピピ―。
下から絶え間なく『降り注ぐ』砲火、鳴り止まぬ警報音。エベレストの高さまで降りるまで何発被弾したのだろう?
宙からの攻撃を事前察知されているとこうも違うとは!
地表が迫る。逆噴射開始!途端に被弾数が跳ね上がる。
ピピピピピピピピピピピピピ―。ピピピピピピピピピピピピピピピ―。
速度が落ちたタイミングで敵の一斉射を喰らってしまったわ。大気圏突破の負荷と逆噴射、絶え間ない榴弾の直撃。
エネルギーゲージがまた下がる。切れるほどでは無いのが救い。何時もなら回避運動で躱しているのに―。
アグネス「(ちょっと過保護になっているのかな。ルナマリア達にしてみれば余計なお世話なのか。全部を守ろうとし過ぎているのか?)」
しっかりしろ!今は自問自答している時ではない。彼女達は安全な降下経路を進んでいる。
今日はそれで良しとしようではないか。『今後の作戦がどうあるべきか?』は帰ってから考えれば良い。
アグネス「レーダーと光学映像確認。全機に通達。敵モビルスーツ隊は24機。タラス市右岸地域、村役場周辺に攻撃が集中している。キルギス山脈側に敵対空陣地を発見」
ルナマリア・一同「了解」
タラス川右岸は火の海よ。空からでも良く見える。村役場、企業地域、高等学校-残念ながら間に合わなかった。
アグネス「(仕方ない。私はスーパーマンじゃない。出来る事と出来ない事が有る)」
スラスターを調整、腹部を下に向け滑空を開始、背部プラットフォームを前に折る。
先ずは自走リニア榴弾砲とブルドックを何とかしよう。お伴のリニアガン・タンク諸共ね。 - 143二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 03:44:25
アグネス「(問題なのは敵モビルスーツの…。えっ!?)」
レジェンドが漸くタラス上空に辿り着こうとした矢先、ブルーコスモス・モビルスーツ隊が飛行方向を北に転じた。燃え上がる街を背に…破壊の限りを尽くしていたのに!
アグネス「報告!ブリッジ及び全機。タラス市を空爆していたブルーコスモスゲリラ24機が戦線を離脱!キルギス山脈の拠点に逃走しています。追いましょう。ここで撃ち減らさないと!」
タリア「…」
ゲリラ戦の鉄則、敵主力が来たら退く。戦力の温存を図る積もりか―。
足の遅い通常兵器部隊を置き去りにして…。合理的だけど非常、まるで船から逃げ出すネズミの様だ。
アグネス「(追撃するべき。私達は『イタチごっこ』を仕掛けられている。なら、撃てる内に一匹でも多く撃ち減らすべき)」
山地を飛び越えて行くウィンダムとダガーL、逃がす訳には行かない。行かないが―。
タリア「アグネス、タラス市の脅威は取り除かれていない。町は未だ部隊の射程圏内よ。先ずは対空陣地を破壊しなさい」
アグネス「…了解」
町の北側丘陵に自走リニア榴弾砲24両とブルドック12両、リニアガン・タンク6両。盛り土や迷彩で見逃していた分を含め、これで全てのはず。降り注ぐ榴弾の雨の中をランダムにジグザグ飛行。もう躱しても構わない。
アグネス「高エネルギービームライフル、『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』起動、6基12門。照準、敵対空部隊-!」
対空陣地から空に向けて12本の赤外線センサー!対モビルスーツミサイル96本が飛来!
アグネス「CIWS起動。ビーム兵器は目標そのまま―発射!」
此方も『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』を一斉射!高エネルギービームライフルも3連射!入れ違いになる。
空中と地上で爆発が同時に連鎖する。空の爆発は17.5mmCIWSで撃墜されたブルドックのミサイルの物、地上の爆発は撃ち抜かれた自走リニア榴弾砲15両の分。爆発で死に切れなかった兵士が燃えながら飛び出す。
アグネス「(違う。彼らは兵士じゃない。ゲリラ…。犯罪者よ。投降すれば裁判を受けられたのに)」 - 144二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 08:44:53
保守
- 145二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 18:33:32
保守
- 146二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 23:39:06
hosyu
- 147二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 01:50:58
脳裏を掠めた感情の波を振り切る。憐れみも同情も、共感でさえ生者の特権だ。揺らぐな!
背部プラットフォームを前傾、『GDU-X7 突撃ビーム機動砲』2基10門を追加で発射!
リニアガン・タンク6両と自走リニア榴弾砲4両の撃破を確認する。続けて高エネルギービームライフルを三連射、榴弾砲3両の乗員が死者の列に加わる。
残るは自走リニア榴弾砲2両とブルドック12両。ミサイルはさっき撃ち尽くしていた。ランチャーの中は空だ。勝負はあった。あと一斉射で対空陣地の無力化は成る。
背部プラットフォームの位置を戻して前に折る。即、『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』を発射!
緑の光線が伸びた先で12本の爆炎が夜空に立ち昇る。一拍遅れて高エネルギーライフルも撃ち放つ。爆発が二つ!
アグネス「ミネルバブリッジ、敵対空陣地の無力化を確認しました」
タリア「よくやったわ。もう少しだ。気を緩めるな」
アグネス「はい」
グラディス提督の声音には疲労の色が色濃く滲んでいる。集中力は限界が近い。私もそうだ。
タリア「逃走したモビルスーツの追撃をショーンに命じたわ。一撃離脱せよと。直ぐに報告が届くはず」
アグネス「了解」
ベターな選択とは思う。でも単機は危ない。いや―、時にはリスクを冒す必要がある。
このタイミングでインパルスとカオスが傍らに降下、ルナマリア達と一緒に3機編隊を組んでタラス上空を旋回する。
眼下に広がるタラス市の夜景。川沿い東西に延びる市街地、燃え上がる右岸地区、駆けまわる消防車-。
12時の方向、キルギス山脈の谷間に赤い大光線が2本迸る。緑のビーム弾幕も同時に展開。
セイバーの『アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲』と『スーパーフォルティスビーム砲』だわ。 - 148二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 02:03:19
ブリッジから中継映像が送信される。
セイバーは急降下しながらビームの嵐を巻き起こし、狙われたブルーコスモス・モビルスーツ隊は逃げまどう。
奴らが窮鼠と化す前にセイバーは機首を上に急上昇に転ずる。一撃離脱と、お見事ね。
爆散する機体のが4、5…。
ショーン「6機撃墜。再度攻撃を仕掛けますか?」
タリア「いいえ。アグネス達と合流しなさい。深追いは禁物よ」
ショーン「了解」
12時の方向から此方に飛来する赤い機体、3機編隊を4機編隊に組み替える。
アグネス「(18機は逃がしてしまった。でも止無負えない。キルギス山脈に深入りして、もしデストロイでも出ようものなら…)」
正直、今のコンディションで勝利は覚束無い。私達パイロット隊の現状は悲惨の一言だ。
機体は無事でも乗っているのは生身の人間。断続的に続く戦闘と大気圏突入の繰り返し。心身の疲労は精神力だけで解決できない。
アグネス「(少なくとも私はそう。ドバドバ出っ放しの脳内麻薬で辛うじて操縦桿を握っている。レッド信号が出ていると自分でも分かっている)」
これ以上の戦闘継続は不可能よ。早く下りたい。この閉鎖空間に居たくない。
心中泣き言ばかりで嫌になる。言い訳だけど勇士にも休息は必要なのよ。限界をとうに超えている。
遥か上空、闇夜の帳を押し退けるようにミネルバの巨体がトルキスタンの大地に舞い降りて来る。艦の明かりを光学モニターで見て涙が出そう。あとちょっと、あとちょっとよ。 - 149二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 11:21:34
保守
- 150二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 21:17:11
保守
- 151二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 00:53:25
アグネス「全機、ミネルバの降下支援を!警戒を厳に。何処かに自走榴弾砲が隠れていないとも限らないわ」
ルナマリア、ショーン、デイル「了解!」
皆に呼び掛け、自分も目を皿にして光学モニターとレーダーを覗き込む。うむ、敵影無し。
赤色の翼と船底がドンドン大きくなる。
アーサー「ギーベンラート小隊、飛行高度を上げよ。着艦を許可する」
アグネス・一同「了解」
開放されるカタパルトハッチと甲板エレベーター出入口-無事、着艦!
ヴィーノ「お疲れ」、ヨウラン「ほんと、もうお疲れさん」
アグネス「こちらこそ。ありがとうね」
ヴィーノ、ヨウラン達、整備班の皆が出迎えてくれる。何やかんや、この瞬間が一番嬉しいかも。敵を撃墜した時でも勲章を授与された時でもなく。
ハンガーに機体を戻すや昇降機が競り上がる。上には看護師さんと主治医の先生と車椅子。
コックピットハッチを開放、ヘルメットを脱いで『ただいま』を言おう。
アグネス「ただいま帰りま…」
看護師「お帰りなさい、アグネスさん。さあ、バイタルチャック!」
主治医「アグネスさん、お帰りなさい。痛い所は有りますか?吐き気は?」
二人がわーって来るものだから挨拶しそびれたわ。止む無し。大人しく身を任そう。
アグネス「痛みと吐き気はありません。ただ、眩暈と言うか…くらくらします。平衡感覚を失う程ではありません」
主治医「大事ですよ!それ。良く着艦出来ましたね?」
アグネス「まあ…。戦場ではままある事なので。うーん、多分-」 - 152二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 01:11:48
主治医の問いに何とも曖昧な返事をしてしまう。他の部隊がどうかは知らない。月軌道艦隊がおかしいだけかも。
看護師「バイタルチェック終了。先生…」
主治医「うーん。アグネスさん、早急に医務室に戻りましょう。さあ!」
アグネス「はい」
ベルトを外し、看護師さんに抱えられて機外へ。ポンっと車椅子に乗せられる。
主治医「運転しないで下さいね」、看護師「押して行きます」
アグネス「はい。でも重いのでは?」
看護師「大丈夫ですよ。そう言う事態も考慮しての設計なので」
その言違わず、昇降機が下りるやゴロゴロ押されてあっと言う間にエレベーターへ。スムーズな流れに驚いてしまう。
格納庫から上がる鉄籠の中、ふと気になって尋ねる。
アグネス「あの後、デストロイのパイロットはどうなりましたか?」
看護師「あの子は…エクステンデッドでした。今は第一医務室で治療中です」
『第一医務室』とは何時もの船室のこと。今作戦のミネルバは難民を輸送任務の為、医務室が拡充されている。
アグネス「助かりますか?」
看護師「はい。安心してください。大きな外傷なども無く。軍医さんが診てくれています」
アグネス「良かった…。どんな命も生きられるなら生きたいと―」
そう言ったのは誰だっただろう?自分か、レイが先に言ったのか。あいつ大人しくしているでしょうね!?
看護師「私も…本当にそう思います。それで―アグネスさんは第二に移っていただきます。本当に申し訳ありません」
アグネス「いえ。私もゆっくり休みたいですから。ご配慮、ありがとうございます」
看護師「いえいえ」 - 153二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 10:36:53
保守
- 154二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 12:23:57
デストロイのパイロットは誰なんだろうなあ
本編でもステラとスティングしか登場してなかったし、知らないエクステンデッドなんだろうか - 155二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 21:08:22
保守
- 156二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 02:55:03
お喋りしながらゴロゴロ進む。通路の先には『第二医務室』のマーク、乗員を移して空けた船室を改装したものだ。
アグネス「(本来の部屋の主たちは今頃、ぎゅうぎゅう詰めで別の部屋に―いや、任務中で戻っている暇が無いかも。思えば私達は本来の任務から随分と寄り道をしている…)」
ゴロゴロゴロゴロ―。ゴロゴロゴロゴロ―。
何だか賽の河原で石を積んでいるみたい。虚しくなってしまう。私は何をやっているのか―。
看護師「それでですね―」
アグネス「ああ…、なるほど。彼が―」
看護師さんは後ろから努めて明るく話しかけてくれる。横を歩く先生の眼差しも穏やか。二人から温かみが伝わって来る。今夜はそれで良しとしよう。
アグネス「(どの道、中央アジアの連合軍とは雌雄を決する必要があった。遅かれ早かれよ)」
ともあれ扉の前に到着した。サッサと中に入ってベッドに入りたい。
メイリン「コンディションをイエローからレッドに移行します。コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!パイロットはブリーフィングルームに集合せよ」
緊迫した艦内放送が流れる。心の中に軽い失望と活力が同時に湧いてくる。
『せっかく休めると思ったのに―。はぁー、もう嫌だ』なんて、言っても仕方ない。何処かで何かが起きたのだ。
軍人たるもの、『やれと言われたらやる』、『行けと言われたら行く』、それだけだわ。
予想するにテルメズ方面で何事かが起きたのだろう。汎ムスリム会議と現地連合軍との交渉が決裂したのか。
アグネス「看護師さん、申し訳ありませんが…」
主治医「ストップ!ストップです!もう見逃せません」 - 157二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 03:02:45
車椅子の方向転換をお願いしようとした所、主治医の先生が強い口調で割り込んで来る。
主治医「今出たら貴女の身体が持ちません。まして戦闘なんて以ての外です。トライン副長にお伝えします」
アグネス「いえ、そう言う訳には行きません。せめてブリーフィングには参加しないと…」
主治医「駄目です。早く休まないと」
病室の扉が目の前で開き、強引に室内に押し込まれる。小ざっぱりした部屋に医療器具とベッドが二つ。病床数の確保って難しい、何て言っている場合じゃない!
不味い。不味い。不味い。危うい事態が起こっているのだ。寝ている場合じゃない。
アグネス「これで仲間に万が一のことがあれば。私は立ち直れません。行かせてください」
主治医「生きてこそ言える事です。墜落して自分が死…怪我をして、貴重なモビルスーツを失ったら元も子もないでしょう。少しだけ冷静になってください」
主治医の先生の険しい表情、今度の今度ばかりは見過ごせないらしい。
看護師「アグネスさん、ベッドに。一、二、三、はい!」
アグネス「わぁ」
ふわっとしたと思えば、もうベッドの上、看護師さんに隙を突かれてしまった。これで私は俎板の上の鯉だ。
看護師「アグネスさん、自分一人で戦っている訳じゃないんですから。パンクしないで、ね」
主治医「艦内回線で私から副長さんに話します。特務隊アグネス・ギーベンラート、よろしいですか?」
看護師さんに説得され、先生からは念を押されるように問われる。これは…、二人に理があるかな。
アグネス「私は医学の素人です。先生に身体のことはお任せします」
主治医「ありがとうございます」
看護師「じゃあ、お着替えを。それと点滴しますね」
むむむ…。もう点滴を持ってこられてしまったか。まあ、トライン副長には私が話す訳じゃないから良いかな。 - 158二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 08:07:03
ついにドクターストップされてしまったかアグネス
今回のコンディションレッドはデストロイが「やあ」するヤバい現場じゃないといいけど... - 159二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 17:18:01
保守
- 160二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:50:00
保守
- 161二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 03:15:32
看護師さんの手により、あっと言う間にパイロットスーツから病衣に着せ替えられる。
看護師「チクッとしますね」
アグネス「はい。お願いします」
そのまま薬液入りの点滴を刺される。助かったわ。一気に体が楽になった気がする。プラセボ効果だろうけれど。
主治医の先生は回線越しにトライン副長とお話しされている。彼、と言うより、グラディス提督はどうご判断になるのだろう?
アグネス「(そこは私の分を超えた事。『それでも出撃してくれ』と言われれば赴くまで)」
それより状況を知りたい。自分が戦うか否かに関わらず、見逃せない。
アグネス「看護師さん。業務用デバイスを取っていただけますか?無理しませんので…」
看護師「もう!寝ないと駄目ですよ!…ちょっとだけですよ」
拝み倒すように視線を送り、コソっとデバイスを受け取る。どうか大目に見て欲しい。
先生に駄目と言われたら閉じる。若しくは意識が墜ちる寸前に切る予定だから―。
ポチっとスイッチ。情報にアクセス!
やはり汎ムスリム会議領アフガニスタンとウズベキスタン独立政府の国境線。アムダリア川右岸の都市テルメスが震源地だった。
汎ムスリム会議軍と同国に居座るユーラシア連邦軍の現地停戦交渉が破局したのだ。軍使が射殺されたと!
アグネス「(何てこと!もう少しで合意だったのに。もうお互い、後には引けないわ)」
犯人は恐らく紛れ込んだブルーコスモス派地球連合軍人。彼方の司令部とて本意で無かったはず。でも引き返せない。 - 162二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 06:37:30
ちくしょーブルコスゆるせねえー
- 163二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 16:05:38
なんてこった
- 164二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 22:10:49
☆
- 165二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 02:53:49
デバイスモニターをブリッジモニターと同期する。現地の映像が中継されている―。
アグネス「デストロイ!やっぱりか…」
先程の懸念は現実のものと変わった。中継映像の中、ハンニバル級の中央ドームがみるみる開き、中から黒鉄の巨人が顔を覗かせる。アムダリヤ川、崩落したアフガニスタン=ウズベキスタン友好橋付近を乗り越えようとしている。
先手を取られた!
汎ムスリム会議は、この事態をある程度予想し、部隊の大部分を後退させていた。しかし、連合の万一の反攻に備えを1個装甲旅団と2個機械化歩兵連隊を左岸に留めている。いや…、もう『留まっていた』が正しい。
デストロイが高エネルギー砲『アウフプラール・ドライツェーン』を一閃、味方部隊の半分を業火に沈めてしまう。たった一撃で5000人近くの命が吹き飛んだのだ。恐るべき大量殺戮!
浮遊するデストロイは川沿いを西進する。初撃を免れた汎ムスリム会議軍は…。今から撤退など間に合うはずもない。
逆に連合リニアガン・タン部隊とストライクダガー隊は雪崩を打ってテルメズ市内に逃げ込む。もう滅茶苦茶だ。
アグネス「(ハイネ先輩、ヴェステンフルス小隊は…。到着まで4分…いや3分か)」
どうする事も出来ない、私達には。成す術無く見つめる中、『アウフプラール・ドライツェーン』が再発射される。火柱の下、4000人の戦友が跡形も無く蒸発する。
アーサー「全艦に告ぐ。本艦は此れより大気圏を離脱する。総員、衝撃に備えよ」
ミネルバ全体に響く声、『戦闘は未だ終わっていない。此処で対処をしくじれば、先に後退した汎ムスリム会議軍の本隊まで危機に陥る』と。艦内に走る緊張が壁越しに伝わってくる。
看護師「アグネスさん!ちょっとお身体、押さえますね」
アグネス「お願いします」
私を押さえる看護師さんの腕が震えている。いや、震えているのは私だ。どうしたのだろう?人の死には慣れっこなのに。私は聖人君子では無いはずなのに。
アグネス「(大量死に脳が追い付かない。異常な事なんだ。1分、2分の内に1万弱の命が消えた。慣れる訳無い!鈍感なままで在りたかったのに…。昔みたいに)」 - 166二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 09:30:35
やっぱり出てきたかデストロイ…
出現のタイミング的に地区近くの主力部隊がミネルバに帰還した所を見計らって隙を突いてきた感じかな - 167二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 19:03:19
保守
- 168二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 03:41:18
敵が一枚上手だった。同時多発的に攻勢を掛けてミネルバとモビルスーツ隊を引きずり回す。ヴェステンフルス小隊は広域を見張らないといけない。その隙を突いて―。
アグネス「(『テルメズのデストロイを特攻させ、国境付近の汎ムスリム会議軍を磨り潰す』。撃破されることは想定の範囲内だろう。ハンニバル級の撃沈さえも)」
彼らを囮に機甲部隊とストライクダガー隊はテルメズ市内に撤退し、市街戦に備える。連合現地司令部の内心がどうあれ、もうそれしか道が残されていない。
勿論、何処から何処までがミケール大佐の作戦だったのか、計算だったのか?
私には知りようがない。はっきりしていることは二つ。旧ウズベキスタン-アフガニスタン方面の友軍が壊滅の危機に瀕している。このままでは市街戦になること。両方とも最悪だわ。
タリア「撃て!」
アーサー「タンホイザー発射!スラスター出力上昇!」
チェン、マリク「了解!」
デバイス越しに号令、ミネルバ艦尾からは振動が伝わる。我等は瞬く間に『空』の上に駆け上る。
看護師「無事に抜けましたね」
アグネス「はい。ありがとうございます」
看護師「いえいえ。こんな状況ですから。本当に忙しい夜ですね」
アグネス「忙しい…。ハハハ、ええ、本当に!そう思います」
看護師「?」
意味も無く笑ってしまう。全く場にそぐわない、不謹慎の極み。病室の中の事、大目に見て欲しい。きっと私の脳内は極度の緊張を緩めようと必死なのだ。
看護師「大丈夫ですか?私、ちょっと変なこと言っちゃったかな」
アグネス「いえ、そんな!私の勝手な…心理作用です。どうかお気になさらず」
『忙しい中』、私達は良くやっている。そうだわ。730㎞彼方の事を此処で慌てても仕方ないじゃない?!
アグネス「(月軌道艦隊はスーパーマンじゃない。そうあることを求められているだろうし、国益を考えれば可能な限り応えるべきだけど。でも自分達が潰れたら意味がないわ。物理的・生物学的に可能な範囲で最善を尽くそう)」 - 169二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 12:35:33
疲労がやべぇい!
- 170二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 19:01:28
自軍部隊を使い捨てにしてでもミネルバの討ち取る事を狙ってるのか、ただ破壊をまき散らせればいいのか…
ブルコスと連合は自分に都合の良いときは相乗りしたりするからたちが悪い - 171二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 00:10:58
冷静さを少しだけ取り戻し、偵察映像の視聴を再開する。
デストロイはなおもモビルアーマー形態で進撃!乾いた大地をホバーで駆け、高エネルギー砲『アウフプラール・ドライツェーン』の長大な砲身を振り回している。
赤い大火線が地面を舐めるたびに味方部隊が蒸発する。溶けた軍用車両の残骸が延々と続く墓標のよう。マザーリシャリーフに延びる2本の幹線道路上の縦隊が狙い撃ちにされる。
アグネス「(既に初撃から数えて4射目よ。友軍の戦死者は4万人を超え、5万に達しようとしている。テルメズ方面は無理か…)」
ミネルバは地球儀を回転させるが如く、現場に急行中だ。しかし、とても間に合うものでは無い。ウズベキスタン地域スルハンダリヤ州攻略は見直すべきかもしれない。
諦めにも似た感情が胸から溢れる。画面の向こう側、デストロイのチャージが終わった。また『アウフプラール・ドライツェーン』が発射される―。
しかし、そうはならなかった!ビームの直撃を受けたのはデストロイの方だ。陽電子リフレクタービームシールド『シュナイドシュッツSX1021』で防いでいる。M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲だわ!
夜空に輝く3つの光-ハイネ先輩、アスラン、シンーヴェステンフルス小隊が到着した!これで何とかなる。
ハイネ「グラディス提督、応答を願います。小隊到着。これよりデストロイを撃破します」
タリア「了解。頼んだわ」
デストロイはお返しとばかりに『Mk.62 6連装多目的ミサイルランチャー』でミサイル弾幕を張り、モビルスーツ形態に変型する。ハンニバル級は後方から援護射撃を開始、42cm長距離無反動砲が3機を狙い撃つ。
勿論、そんな攻撃当たる筈もない。デスティニー3機はそれぞれヴォワチュール・リュミエールを全力展開、三手に分かれてデストロイに迫る。加速と残像で頭がパニックになる。
私がそうなのだ。敵は言うまでも無いだろう。
しかしデストロイのパイロットも馬鹿じゃない。熱プラズマ複合砲『ネフェルテム503』と両腕部の5連装スプリットビームガン計25門で偏差射撃を敢行!25体分の立体映像を撃ち抜いて見せる。 - 172二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 00:30:39
出し惜しみせず頭部の200mmエネルギー砲『ツォーンMk2』、胸部の1580mm複列位相エネルギー砲『スーパースキュラ』も発射される。
首を振り、腰を捻って少しでも広範囲を薙ぎ払わんとする。幾つもの残像が虚空で蒸発する-と言うか、残像なのか本物なのか、私も見分けられない。
いや、答えは分かっている。全部偽物だ。
本物-ザラ機とヴェステンフルス機-は既にデストロイの足元。『MMI-714 アロンダイト ビームソード』で足払いを掛けている!
切り倒される巨人の足。デストロイは未だ諦めずモビルアーマー形態への変形を試みる。ホバーなら飛べる、と。
しかし、悪あがきは不発に終わる。直後にアスカ機が吶喊、シンは『MX2351 ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置』でビーム弾幕を弾き、アロンダイトで胴を叩き切る。
デストロイ撃破、大爆発が一つ。素晴らしい連携だ。汎ムスリム会議軍の生き残りはこれで救われた。
やれやれと胸を撫で下ろしているとデバイス画面が切り替わる。ブリッジ、グラディス提督からの直接通信だ。
タリア「アグネス、お疲れさま。具合はどう?いえ、良くは無いわね」
アグネス「はい。グラディス提督」
提督の気不味そうな表情。これは、まあ…そう言うことか。
タリア「これより本艦モビルスーツ隊は地上に降下します。目標はテルメズ空港の確保よ。マザーリシャリーフの汎ムスリム会議部隊が後続する。敵機甲部隊も削れるだけは削りたい。此処で押し込まないと長期戦となる。市民生活への影響も計り知れない。貴女にも参加して欲しい」
アグネス「了解」
あ…、返事しちゃった。馬鹿か、私。と言うか提督はドクターストップ聞いていないのか…。
アグネス「(いや、『それでも行け』ってことね。此処が天王山と、仕方ない。空港を占領、分かったわよ)」 - 173二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 08:13:55
あー…仕方ないけどそうなっちゃうか
無事に帰ってこれたらアグネスも提督も主治医の先生からがっつりお説教コースになりそう… - 174二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 17:49:37
保守
- 175二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 23:09:11
もうアグネスのライフはマイナスよ!
- 176二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 00:47:51
命令を受けたなら即行動、愚図愚図している暇はない。
アグネス「先生、看護師さん。申し訳ありません。出撃します。着替えと移動の介助をお願いします!」
一息にお願いと謝罪をお伝えする。『どう説明しようか。気を悪くされるかな』、何て言っている場合じゃない。
主治医「事情は伺いました。アグネスさん、どうかご武運を。くれぐれもお気を付け下さい」
アグネス「ああ…。ええ…っと、ありがとうございます」
心の籠った激励の言葉を受け取る。『もうどうこう言っても仕方ない。出撃直前の患者に余計なストレスを与えるのは賢明ではない』、そう言う判断だろう。
看護師「お着替えですね。どうか落ち着いて。平常心ですよ、アグネスさん」
アグネス「お二人とも、ありがとうございます」
主治医「絶対に生還してください。でないと―」
守れるか分からない約束はするべきではない。
アグネス「軍事に絶対はありません。ですが…、その積もりで行ってきます。先生もどうかお気を付け下さい。艦内も安全とは限りません」
主治医「分かりました…。避難マニュアルを再確認します」」
アグネス「素晴らしい」
遣り取りをしている間に着替えが終わる。病衣になったかと思えば、またパイロットスーツ。私も大概忙しない。
アグネス「では、行ってきます!」
主治医「行ってらっしゃい。改めてご武運を、心から」
アグネス「ありがとうございます。先生も幸運を!」
ご挨拶を終え、モビルスーツ格納庫に急ぐ。看護師さんに車椅子をゴロゴロ押してもらう。
エレベーターを降りるとヨウランが待って居たわ。 - 177二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 00:49:46
ヨウラン「アグネス、戦えるのか?」
アグネス「戦うまでよ。レジェンドは?」
ヨウラン「バッチリだ」
アグネス「ありがとう」
短い言葉でお互いの意思を伝え合う。良し、行ける!行ける!コックピットに乗り込み、準備OK。
アーサー「敵主力はリニアガン・タンクとストライクダガー。機甲部隊は師団規模。ストライクダガー隊は少なくとも連隊規模。自走リニア榴弾砲やブルドックで構成された防空連隊も確認されている。歩兵部隊は市街地に立て籠もり籠城戦の構えだ。対モビルスーツミサイルに注意せよ」
アグネス、一同「了解!」
コックピットモニターにマップが表示される。防空部隊は空港とその周辺に固まっている。残りは司令本部となっている州政府庁舎と市役所、テルメズ駅か。
敵にしてみれば『そこを固めずに何処を固めるのか』、と言う話ではあるが、厄介ね。
アグネス「(ヴェステンフルス小隊はリニアガン・タンクを駆逐中。東西に展開していた部隊の一部が逃げ損ねていた。『削れるだけ削る』、ね)」
もっとも川の屈曲部に布陣していた主力は引っ込んでしまった。市内をU字に通るM39線が渋滞している。
先ずはあれを何とかするべきかもしれない。市街地戦は避けたかったが―。
タリア「レジェンド、インパルス、セイバー、カオスの出撃後は本艦も地上へ。味方の後方拠点、マザーリシャリーフの郊外に降下します」
アグネス、一同「了解」
敵の自走リニア榴弾砲のせいでミネルバは戦闘エリアに降りられない。後方支援に徹して貰おう。ラミネート装甲、ミネルバにも欲しいわ。
アビー「カタパルト推力正常。全システムオンライン。針路クリアー。レジェンド、発進どうぞ!」
アグネス「アグネス・ギーベンラート、レジェンド、出ます!」 - 178二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 09:26:51
保守
- 179二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 19:17:56
ドクターストップも叶わずか(致し方無い)
- 180二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 02:17:43
弾き出されて宙へ。ルナマリア、インパルスは私と同時に片側カタパルトから、ショーンとデイルが搭乗するセイバーとカオスは甲板エレベーターから4機で一斉出撃する。
合流後は4機で小隊を組む。さて、どう進めたものか。FAITHには権限がある分、責任もある。『テルメズ空港を獲れ』は良しとして―。
青い星を見ながら考えを巡らす。この作戦はタラスの事例とは異なる。ミネルバも同時に地上に降下するから。
この事はセカンドステージシリーズ組にとって、安心材料と言えるだろう。テルメズ空港からマザーリシャリーフ郊外まで直線距離だと60㎞。少し後退すればデュートリオンビームを受けることが出来る。
アグネス「ルナマリア、ショーン、デイル!私が先行して敵防空部隊に急降下爆撃を図る。3機小隊を組んで後続して。今回はビームシールドで守れない。電力が心許無くなったら、無理せず後退し、ミネルバからデュートリオンビームを受けること」
ルナマリア、ショーン、デイル「了解!」
良し。方針は固まった。後は降りて撃つだけだ。一報を入れておこう。
アグネス「汎ムスリム会議軍、現地ザフト偵察機に伝達。ギーベンラート小隊、此れより反撃作戦を開始します」
汎ムスリム会議軍司令官、偵察機パイロット「了解!」
アグネス「回線をミネルバと現地司令部、偵察機に固定。レジェンド降下開始します」
アビー「了解」
今夜、3度目の大気圏突入だわ。圧縮熱で機体は極限まで熱せられる。慣れたものだ。
アグネス「(身体は悲鳴を上げているのだろうけど、頭は妙に冴えている。伸るか反るか、なのだから当たり前か)」
熱圏を抜けて中間圏へ。我等が目指すテルメズ空港は同市の北側に位置する。ソ連が長らく拠点を設け、後には国際治安支援部隊のドイツ派遣団の本拠地ともなった。
アグネス「(テルメズ市はウズベキスタン地域南部の主要な鉄道ハブでもある。国際貨物鉄道の始点で、アフガニスタンの都市マザーリシャリーフに通じる。アムダリヤ川の河川交通を担うテルメズ河川港も抱える)」
鉄道に関しては橋が落ちてしまったが、工兵隊に修復して貰えば良い。河川港は押さえたいものだ。 - 181二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 11:51:55
保守
- 182二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 20:45:54
さてどうなるかな…?
- 183二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 02:40:47
テルメズ河川港と言えば―確かアムダリヤ川小艦隊の母港だったはず。国境警備を主任務とした部隊で、西暦時代から麻薬の取り締まりやテロ対策の分野で活躍していた。
あの艦隊は何方に着いたのだろう?そもそも現存しているのか?
アグネス「汎ムスリム会議軍テルメズ方面司令部、ザフト特務隊アグネス・ギーベンラートです。アムダリヤ川小艦隊の動向をご報告下さい」
もし彼らが友軍で、危機に瀕しているなら支援の必要を上申するべきだ。艦隊の動向が今後の作戦の成否を分ける。
汎ムスリム会議軍司令官「テルメズ方面司令部だ。アムダリヤ川小艦隊はウズベキスタン独立政府側、つまり我等の友軍だ。左岸上流部に避難させた」
アグネス「応答ありがとうございます。了解しました」
一安心して通信を終える。他に気掛かりな事としては―、文化遺産の存在ね。
テルメズ市にはウズベキスタン最大の考古学博物館であるテルメズ州立考古学博物館、アル・ハキム・アット・テルメジ霊廟、スルタン・サーダット霊廟アンサンブル、キルク・キズ要塞遺跡が所在する。戦火で焼くわけには行かない。
アグネス「(道徳的な理由だけじゃない。独立政府は対ロゴス同盟側。同盟国の国民感情を慮る必要がある)」
モニターに目を転ずる。成層圏に到達!直ぐに対流圏だ。
地上では敵のレーダー車が空を見張っている。既に発見されただろう。
ピピピピピピピ―、と言う音。下方から数十発の榴弾が飛来する。未だ狙いが甘い。
アグネス「ザフト偵察部隊へ。地球連合軍の長距離偵察機の有無を報告して下さい」
ザフト偵察機パイロット「周囲に連合偵察機の機影無し」
アグネス「了解。ブリッジ、司令部に通達。本機は此れより急降下爆撃に移ります」
汎ムスリム会議軍司令官、アーサー「了解」
スラスターの逆噴射を開始する。
ピピピピピピ―。ピピピピピピピピ―。ピピピピピピピピ―。 - 184二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 02:54:41
高度を下げるにつれ、対空砲火はますます濃密になる。町はどんどん大きくなる。
眼下には空港、敵防空部隊が空港北の丘陵に陣取っている。自走リニア榴弾砲とブルドックがそれぞれ大隊規模、ストライクダガーも50機展開中。残りは町中の政府施設周辺に配置されているのだろう。
機体を前傾させ、頭部をやや下に。回避運動を繰り返しながら地上に接近する。
アグネス「高エネルギービームライフル、安全装置解除。『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』6基を発射準備態勢に移行」
ピピピピピピピピ―。鳴り止まない警報音、機体を掠める榴弾!
自走リニア榴弾砲は本当に鬱陶しい。幾つのモビルスーツ搭載カプセルが撃ち落とされ、何人の戦友が空に散ったのだろう!此処からが本番だ。敵も馬鹿じゃない。
ザフト偵察機パイロット「ブルドック大隊、ミサイル発射の兆候有り。ストライクダガー隊も攻撃に加わる模様です」
アグネス「了解!」
返事をした直後、ブルドック大隊48両のミサイルランチャーが一斉に火を噴く。
384本の対モビルスーツミサイルが目前に迫る!
ピピピピピピピピピピピピピ―。ピピピピピピピピピピピ―。
心臓が早鐘を打つ。フェイズシフト装甲やビームシールドの有無など関係ない。この光景は何度体験しても慣れない。
捌き切らねば!ビーム突撃砲と高エネルギービームライフルでビーム弾幕を張る。
アグネス「ビームシールド出力全開、17.5mmCIWS起動!」
ストライクダガー隊が放ったビームが何本も脇と頭上を掠める。バレルロール!空中宙返り!回避飛行を止めたりしない。棒立ち禁止。撃墜に成功したミサイルは爆炎を上げる。躱し切れない攻撃は受け流す。
ビームシールドは石礫を受け止め続ける。『ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置』様様だ
良し!切り抜けた。敵は指呼の間よ。何処を切り崩そうか? - 185二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 03:02:28
アグネス「(ブルドックは後回し。ミサイルを打ち尽くしている。自走リニア榴弾砲を何とかしたい。でも電力さえ注意すれば後続はフェイズシフト装甲で何とか出来る…)」
そうなると最優先はストライクダガー隊。ビームライフルはセカンドステージシリーズにとって十分な脅威となる。
敵モビルスーツ隊は3個中隊48機。3機ずつ小隊を組み、対ビームシールドを掲げて空からの敵に備えている。
アグネス「(パニックになっていない。良く統制が取れている。射撃もかなり正確だ。偏差射撃を決めて来る。ビームシールドが無ければ危なかった)」
ルナマリア達なら対処できるだろうけれど、万一は起こり得る。此処で蹴散らしておくべきね。
ピピピピピピピピピピピピ―!ピピピピピピピピピピ―!ピピピピピピピピピピピ―!!
ストライクダガー大隊の攻撃が絶頂に達し、144本のビームの束が連続して飛来する。
逆宙返り!躱し切れない分はビームシールドで弾く。
アグネス「『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』6基12門発射用意、高エネルギービームライフル構え。目標、敵地上モビルスーツ隊!」
でもまだ撃たない。対ビームシールドで弾かれるわ。後ろを衝きたい。
故に敵の鼻先、武器を投擲されたら届きかねない高さを低空飛行する。
ありがたい事にそうした武装の持ち合わせは無いようだ。しかる後、急旋回を掛ける!
アグネス「全門発射!」
ボタンを押すと同時に爆発が12回連続発生する。ビーム突撃砲、全射命中!死角を突かれ、敵は一溜りも無いだろう。
慌てて向きを変えようとする敵機目がけ、高エネルギービームライフルを3連射する。どす黒い煙が3本、夜空に吸い込まれる。テンポよく進めよう。チャージの間に体勢を立て直されるな!
背部プラットフォームを変形、90度前傾させ『GDU-X7 突撃ビーム機動砲』を前に突き出す。
スラスターの出力を調整し、捻り込みながら―左右1門ずつ順繰りに―発射!10機撃破! - 186二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 03:06:43
そのまま敵部隊の只中に降り立つ。
『MX-RQB516 ビームランス』を振り回し、自走リニア榴弾砲8両を撃破。チャージが終わった『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』を撃ち放して更に6両を仕留める。
敵もやられっぱなしではない。ストライクダガー3機がビームサーベルを引き抜き、囲むように接近して来る。得意のチーム戦術だ。
プラットフォームを持ち上げ、『GDU-X7 突撃ビーム機動砲』全門発射!正面から来たストライクダガーごとブルドック5両を撃破する。
そのまま回れ右、右手に高エネルギービームライフル、左手に『MX-RQB516 ビームランス』。
敵がシールドでビームランスを受けた瞬間にビームライフルを撃ち込む。2機撃破!
私が北で戦う中、南の空港敷地内外でも戦闘が生じている。インパルス、セイバー、カオスが降下、テルメズ空港東方4時の方向から突入したのだ。
ショーンとデイルは空港の東側M39線上のリニアガン・タンク大隊と戦闘中だ。
セイバーとカオスの大火力相手では、大隊程度のリニアガン・タンクでは持たない。路上は鉄屑で埋められつつある。
ルナマリア、インパルスは空港敷地内に突入、地対空75mmバルカン砲塔システムを次々と撃破している。空港制圧まであと一息だ。防空部隊の気を引いた甲斐が有ったと言うもの。
ヴェステンフルス小隊はM39線上の敵車列の掃討に専念している。市内で渋滞していたリニアガン・タンク部隊は、その真価を発揮することなく溶け落ちる。
アグネス「(連合も対策はしていた。対処が間に合わなかったと言ったところね)」
戦況の急変を受け、ストライクダガー隊の一部が斜面を駆け下りようとする。させない!
スラスターを上昇。旋回!『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』全門発射!ストライクダガー6機を爆散させる。方向転換を図った自走リニア榴弾砲には『GDU-X7 突撃ビーム機動砲』を叩き込み12両を炎上させる。
ブルドックが滑走路上のインパルスを狙っている!対モビルスーツミサイルの補充が終わったのか。インパルスはリニアガン・タンクと戦闘中だ。
高エネルギービームライフルを3連射! 『MX-RQB516 ビームランス』を振り回して8両を撃破する。 - 187二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 03:13:33
堪りかねたのだろう。ストライクダガー14機が陣地を離れ、9時の方向に逃走し出す。彼らは後回しだ。護衛のモビルスーツが下がったなら、ここで防空部隊を叩き潰す。
丘陵の敵を殲滅しないと空港を確保したことにならない。努めて冷静に、榴弾が飛来するが構わない。もう敢えて回避しない。攻撃を命中させることに集中する。
上空を旋回しながらプラットフォームを前傾させ、『GDU-X7 突撃ビーム機動砲』を発射する。自走リニア榴弾砲5両とブルドック5両を撃破!焼貫かれると同時に爆発が起こる。
プラットフォームを前面に折り、『GDU-X5 突撃ビーム機動砲』12門を連続発射、自走リニア榴弾砲12門を撃破する。立て続けに高エネルギービームライフルを発射して3両撃破。
下から迫る対モビルスーツミサイルを17.5mmCIWSで迎撃、お返しとばかりに『GDU-X7 突撃ビーム機動砲』を発射!ブルドック10両を撃ち貫く。
アグネス「(まるでハゲワシかコンドルと化したように感じる。此れでは虐殺ではないか!敵司令部の降伏は未だか?部隊単位でも良い。もう勝ち目がない事ぐらい気が付かないのか!)」
些か気が滅入る。独断になるが、降伏勧告を発してみようか…。
そんな迷いを断ち切るかのように、赤い光線と緑の滝が空から降り注ぐ。セイバーとカオスが駆け付けてくれたのだ。爆発炎上する10両の自走リニア榴弾砲と6両のブルドック…。
デイル「すまない。待たせた!空港東の敵は掃討した」
ショーン「西に行ったストライクダガーは自分が討ちました」
アグネス「ありがとう!」
今の攻撃で戦意が挫けたのだろう。ブルドックと指揮車両、レーダー車の乗員が両手を上げて飛び出している。武装放棄と降伏の意志ありと見て差し支えないだろう。
アグネス「ショーン、デイル!撃たないで。一先ずは…」
ショーン「了解」、デイル「おう!」
敵防空部隊の殲滅は完了した。空港はどうなっている?
ルナマリア「司令塔から白旗を視認。空港部隊の降伏宣言を受信。アグネス、やったわ!」
アグネス「良し…。グラディス提督にご報告しましょう」 - 188二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 12:37:18
保守
- 189二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 20:45:50
☆頑張れアグネスでも無理するなアグネス☆