- 1◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 00:57:39
- 2◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 01:00:05
ある世界。そこではリーリヤと学Pが恋仲同士。
大変な日々ですが、夏のH.I.Fに向けて切磋琢磨していた。
リーリヤ「センパイ、おはようございます」
学P「はい、おはようございます。体調の方はどうですか?」
リーリヤ「完全に治りました!」
ここ数日、リーリヤは熱を出していた。
学P「少しずつリハビリを……ん?」
ドンドコドンドコ……。
突然空からドラゴンに乗ったあさり先生がやってきた! - 3◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 01:03:15
学P「あれは……」
リーリヤ「日本昔ばなしみたいなドラゴンですね……」
学P「葛城さん何かしましたか?」
学P「いえ、そんな変なことはしませんよね。月村さんではあるまいし」
あさり「連れて行きます!無礼討ちです!」
学P「うわー!?」
リーリヤ「センパイ!?」
突然、カウガールのように投げ縄で学Pは捕まえられてしまった!
あさり「取り返してほしければ、アイドルの世界を滅ぼしてきてください!」
学P「なに言ってんだこいつ……」
あさり「それでは!」ドンドコドンドコ…… - 4◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 01:09:00
リーリヤ「大変だ……センパイが時空の裂け目みたいな中に消えちゃった……」
リーリヤ「追いかけなきゃいけないけど……どうすれば?」
そのとき、時間がまるで停止したかのようにリーリヤ以外の全てが止まった!
リーリヤ「!」
清夏「やっほ、リーリヤ」
リーリヤ「清夏ちゃんだけど……清夏ちゃんじゃない!?」
清夏「色々あってこのままじゃこの世界滅んじゃうよ」
リーリヤ「いろいろ」
清夏「防ぐために、リーリヤにはアイドルの世界を旅してもらう必要があるんだ。
リーリヤ「ええ……」
清夏「これ、旅する為の一式道具ね。ま、そのうち使い方がわかるよ」
清夏「リーリヤがセンパイを助けるには、他の世界を攻略してこの世界を救うしかないんだ」
清夏「全部壊してセンパイを救うか、他の方法で助けるかはまだわからないけど……」
清夏「きっとリーリヤなら上手いことやってくれるよね」
リーリヤ「無茶振りがすぎるよぉ」 - 5◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 01:13:13
- 6◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 01:18:39
『アイドルの世界』は何らかの1つのルール(秩序)に則った世界になります!
例えば手毬の世界は『歌』の世界。
歌の上手い人が強く、正しいと見なされるような世界になります。 - 7◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 01:24:07
リーリヤ「靄を抜けたそこは……絵本みたいな世界でした」
リーリヤ「なんて独り言を言ったはいいけど、ここはどこだろう?」
中世風の世界に、リーリヤはなんだか不安な気持ちになった。
リーリヤ「あれ?」
ある程度落ち着くと、そこかしこから歌が聞こえてくるのを感じた。
リーリヤ「みんなが歌ってる……?」
不思議な感覚だった。
物を運んでいる人も、売り子をしている人も、駆けまわっている子供たちさえも皆が歌っているのだ。
まるでミュージカルの世界に迷い込んだみたいだった。 - 8◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 01:33:40
リーリヤ「歌うのが好きな人が多いみたい……」
だけどリーリヤはこの世界を楽観的に捉え過ぎていた。
街に入ると……自分が浮いていることに気付く!
リーリヤ「?」
ナンダ、コノムスメウタッテナイゾ
ヘンナノー
ケンペイヲヨンデクル……
ガヤガヤガヤガヤ……。
リーリヤ(もしかしてまずい感じ……?)
憲兵1「貴女は何をしているんだ~♬」
憲兵2「何故黙っている~♪」
リーリヤ「え、ええと……?」
憲兵1「こいつ~♪戒律違反っ!戒律違反っ!」
憲兵の一人が、楽器のようなものを叩くと、蜘蛛の子を散らしたかのように市民たちが屋外に隠れてしまう。
リーリヤ「あっ、やばそう……」 - 9◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 01:36:02
リーリヤ「ど、ど、どうしよう!?」
リーリヤ「う、歌えばいいの……?」
リーリヤ「で、でも歌って会話なんて……は、恥ずかしいよぉ」
引っ込み思案気味なのであった。
そこで……リーリヤは清夏っぽい人からもらったアイテムを思い出す。本のようなベルトだ……。
リーリヤ(使ってみるか……!)
使い方は、何故かマニュアルで学んだかのように何となく、頭の中で理解できた。
その本を腰に当てると、マゼンタ色の四角いベルトに変わる!
リーリヤ(ピンクじゃなくマゼンタだ……なんとなくそこは間違ってはいけない気がした) - 10◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 01:41:17
そして手には、謎のカードが収まっていた。そこには……見慣れた白線の衣装があった!色はマゼンタの完凸後のものではあるが……。
それをリーリヤは上部から差し込み、左右の出っ張りを、押した!
すると光が輝き、リーリヤはカードに書かれた衣装に変身したのだった!
リーリヤ「こ、これは……」
憲兵1「わっ……あ、アイドルだ~!」(悲し気なテンポ)
憲兵2「女王さまに報告しなきゃ~!」(焦ったテンポ)
リーリヤ「あれ、行っちゃった」
女王様、という言葉にリーリヤは引っかかった。
リーリヤ(アイドルの世界……っていうくらいだからアイドルが女王様なのかな?)
リーリヤ(その人を探してみようかな……)
リーリヤ(また絡まれると大変だから、せめて白線を歌っておこう……)
リーリヤ「澄み渡った空に白線~♪」 - 11◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 01:42:23
- 12二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 08:36:15
リーリヤ「舞台を食い破って頂戴~♪」
リーリヤ(歌ってると本当に怪しまれない、なんなら食べ物さえももらえた)
この世界は、『歌が上手い』……つまりVoが高ければ高いほど善とされる世界。
故に――自覚こそないが、歌唱力の高いリーリヤは優遇され、通貨の支払いさえも免除される。
リーリヤ(だけど……)
それは裏を返すと、『歌えない人』の扱いはどうなるか……という考えが、脳裏を掠めるのだった。
歌いながら、頂いた食事を有難く補っていると、街の中で一番の建設物の前へ出る。お城だ。
リーリヤは恥じらいながらもリズムに乗せて尋ねると、この国では常時「女王に歌の勝負」を挑めるらしい。
そして勝者が女王になれる、と。
女王の座にリーリヤは興味がなかったが、きっとその女王は自分の求めている情報を知っているのではないか……そいう考えたため、挑むことにした。 - 13◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 09:02:12
※リーリヤは変身を解除しています。
リーリヤは本人に自覚はないが、歌唱力だってしっかり高いアイドル候補生。
女王に謁見するために行われる幾つかの予選を勝ち抜くことくらい造作でもなかった。
リーリヤ(センパイのおかげだ……)
リーリヤ(この世界にセンパイはいるのかな)
リーリヤは謁見までのわずかな時間で、受けた説明の意味を反芻する。
リーリヤ(世界を壊すって……どういうことだろう?)
リーリヤ(壊しちゃったらそこに住んでいる人は……?)
リーリヤ(……センパイは助けたい、でもそれで世界を壊すだなんて……)
そう考えていると、ついに謁見の儀が開始される。
リーリヤは、女王と呼ばれる人物の正体を見て、あっ、という声が漏れてしまう。
リーリヤ「手毬ちゃん……?」
手毬「…………」
そこには高貴な衣装をまとった月村手毬の姿があった。 - 14◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 09:36:50
女王、と謡われた月村手毬は『仮装狂騒曲』の衣装をまとい、玉座に深々と座り込んでいた。
隣接する机には、鮮度の高さがうかがえるフルーツの類や、喉を温めるのにちょうどよさそうなホットココアを入れた銀のコップがあった。
階段が三段、玉座に続くように作られており、赤い絨毯がぴっしりと張られている。
リーリヤは土足で入って大丈夫なのだろうか、といった取り留めのないことを考えながら、自分が思った以上に緊張しているのを認める。
喉が渇き、少し……冷汗が流れる。
自分の知る月村手毬のはずなのに、邂逅した今の彼女は、まさにおとぎ話から飛び出てきた冷酷無比の女王そのもので……。
手毬「話の通り、か」
手毬「みんな、下がっていいよ」
手毬のその一言に、最初は城を守る騎士たちも困惑したが誰も異を唱えずに一人、また一人と謁見の間を後にする。
残されたのはリーリヤと手毬だけだった。 - 15◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 09:45:58
手毬「リーリヤ、久し振り……なのかな」
リーリヤ「えっと昨日会った気がするけど……」
手毬「……そうだね」
すこしだけ言い淀む姿があったが、その機微にリーリヤは気づけなかった。
手毬「ここに来たってことは、この世界を壊すためだね」
リーリヤ「壊すだなんて」
???「事実じゃろうて」
リーリヤ「!」
会話に割り込むように入ってきたのは、なんと十王邦夫だった。謎のハットをかぶってまるで探偵気取りかのようなコートを着用しているためか、普段と様子が全然違った。
邦夫「ふぉっふぉ、息災のようじゃの。葛城リーリヤ君、いんや、世界の破壊者と言った方がいいかの?」
リーリヤ「私はよその世界の破壊なんて……」
邦夫「己の世界、ひいてはPを守れなくても……かの?」
手毬「ちょっと、今私が話してるんだけど?」
邦夫「そりゃあすまん」
手毬に睨まれた邦夫は黙り、すごすごとその場を後にした。
手毬「そっか、リーリヤの世界も危ないんだ」
リーリヤ「えっと、それはつまり……」
手毬「私の世界も、本来なら滅びてたんだよ」
手毬「生き残る方法は一つ。他のアイドルの世界よりも長く生き延びて、唯一に残ることなんだ」 - 16◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 09:47:15
※ベースになってるのはディケイドですが、イメージとしてはFGO第二部みたいなエッセンスも入ってます。
- 17◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 10:04:07
手毬は語った。
自分の世界もある日ドラゴンに乗った根尾あさりが粉々に壊していった、と。
手毬「Pもそこで死んだんだ。美鈴も、燐羽も……そしてリーリヤも」
ここに至り、リーリヤは邂逅時に手毬が発した「久しぶり」という言葉の意味を解する。
そして同時に、誰もが自分のように救出する術を与えられていないことを知る。
その事実はあまりにも残酷で、リーリヤの心を刺すものだった。
手毬「ねぇ、リーリヤ。ここで暮らさない?リーリヤ、歌もうまいし……きっと豊かに暮らせるよ」
リーリヤ「…………」
手毬「ここは『歌唱の世界』。歌えれば、それだけ出世できるし、人気になれる。もうリーリヤに才能がないって言う意地悪な人はいないよ」
リーリヤはその言葉に
dice1d4=2 (2)
1.少し揺らぎかけているのを感じ、意識を取り戻す
2.センパイはどうなるんですか、と尋ねる
3.それでも……と続ける
4.何も言い返すことができなかった
- 18◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:31:29
あっ、異常葛城愛者です。ハーレムリーリヤがスレ落ちしてる。今晩立て直します
------
リーリヤ「きっと理想かもしれません。ですが、この世界にはセンパイはいません」
リーリヤ「センパイはまだ生きています」
リーリヤ「助けに行かないと」
リーリヤは一瞬間、自分の中にかかった心の迷いという靄を振り払い、気持ちを表明する。
手毬「リーリヤはそういうよね」
リーリヤ「……嫌じゃなければ教えてほしいんだ。そっちの世界の私と、清夏ちゃんはどうだった?」
手毬「ずっと優しかったよ。二人とも逃げずに最後まで人命救助をしてた……怖くて泣いてた私と大違いだ」
リーリヤ「…………」
手毬「どうするかはリーリヤが決めたらいい。壊すのなら、抵抗する。暮らすなら……歓迎するよ」
手毬「だけど歌うことは忘れないで」
手毬「それさえ忘れなければ、快適に過ごせるから」 - 19◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 12:02:40
リーリヤは、手毬に紹介された比較的「歌う」戒律への風当たりが緩い、町はずれの宿にひとまずの居を構えた。
角部屋なのもあって、窓からそっと町の喧騒を眺めた。
夜遅くになっても町中から様々な音色が響き、最初はなかなか眠れなかった。
そこで改めて、この世界は「歌」が秩序になっていることを理解する。でも、リーリヤの胸中にはあまり乗り切れていないところもあった。
リーリヤ(歌って、誰かに強いられることではないと思うんだ)
感情が揺れ動いたとき、漏れる表現の一つとして確かに歌はある。だけど、強いられて歌うのに、意味はあるんだろうか……と考えずにはいられなかった。
眠りにつく最中、ふと何度か言葉を交わした宿屋の主人を思い出す。
その人は接客中は歌わず、空いた時に「鼻歌」を奏でる程度だった。
リーリヤ(少し、街の外を調べてみよう。世界がどれくらい広いのかを……)
センパイを救出したい気持ちはいっぱいだが、八方ふさがりなのも事実だった。 - 20◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 16:06:27
翌朝。少し硬いパンをスープをつけながら腹ごしらえを終えたリーリヤは町の方向から反転して、舗装もままならない道を進んでいった。
リーリヤとしても難航は予想していたし、最悪は野宿も想定していたが、数時間凸凹とした道を進むと、お世辞にも豊かとはいいがたい寂れた村に到着した。
手毬のいる首都には門番がいたが、この村にはそもそも村を囲う柵すらない。
境が曖昧な……発展途上の村落だ。
リーリヤが足を運んで気づいたのは、そこには歌がないということ。昨晩の宿のあたりも聞こえることはなかったが、日中に聞こえないなんてことはなかった。
リーリヤ「……どういうことだろう」
歌なしでコミュニケーションできるのは、自然体でいたいリーリヤとしては幸いだった。
が、すぐになぜ歌がないかは理解できた。
リーリヤ「声が……」
出せないのだ、ここの村人は。
病によるものか、精神的によるものか……理由は様々だが、誰もが言葉を発せないのだ。
いわば、『歌』の優劣が絶対的指標となる世界において――最初から存在がカウントされない存在なのだ。
秩序に不適合な存在。
リーリヤはそんな静かに暮らしている人々が追いやられる世界を、どうしても肯定することができなかった。
リーリヤ「理想論なのはわかってるけど……理想を届けるのが、アイドルだから」 - 21◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 18:15:32
リーリヤは数日間世界を散策し、そして城へと戻った。結論を告げるためだ。
手毬「それがリーリヤの答えなんだ」
リーリヤ「うん、それに……手毬ちゃんも苦しむだけだよ、この世界は」
手毬「どうしてそう思ったの?」
リーリヤ「歌いたくても、声が出ないことの苦しさを知っているからだよ」
手毬「…………」
リーリヤ「それに楽しんで歌ってない歌は心に響かないことも手毬ちゃんが一番知っているはずだよ」
リーリヤ「倒さなくても、世界を壊さなくても済む方法を探そう。一緒に他のアイドルの世界を巡って……必死に考えて、考えて考えて……それでもだめだった時に行動するでも遅くない気がするんだ」
手毬「……わかっている」
手毬は立ち上がる。しかしその表情に喜色はない。
諦観と悲観、それらがごちゃごちゃになった複雑な表情で……リーリヤを見る。
決してリーリヤを嘲っているわけではない。むしろ尚も純朴でいられる彼女を心より尊敬している。
だけど、ままならない。
手毬「この世界の住人は、辛うじて私の世界で生き残った人。元の数に比べたら圧倒的に少ないけどね」
手毬「縁もゆかりもほとんどない人だ。知っている人はみんないなくなったから」
手毬「でも、これ以上失うのはいやなんだ……だからごめんね、リーリヤ。変身」チャキ
手毬は漆黒に染まったLuna Say Maybeの衣装を纏い、リーリヤと対峙する。
リーリヤ「変えればいいんだ、秩序を。歌わなくても、声を出せなくても笑顔でいれればそれでように!」
リーリヤ「変身!」ディディディディケイード - 22◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 21:56:46
漆黒を纏った手毬に、マゼンタの戦士リーリヤ。
両者が並び立つ。
手毬「働いてる人たちはすでに逃がしてるから、建物は気にしないで」
リーリヤ「わかったよ」
リーリヤは腰につけたベルトを呼び出すのに使った書籍の様なツールを手に取る。
すると、それがライドブッカーに変わる!
一方で手毬は音色を奏でると、そこからバイオリンが現れる。旋律を奏でると、音符が具現化してリーリヤに襲いかかる。
リーリヤの攻撃!
dice1d100=21 (21)
ルールはブラックジャックみたいなものです。相手のHP(100)を可能な限り削り、説得します。
削れば削るほど説得しやすくなるが、超えると倒す=世界の破壊になってしまう!
- 23◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 22:04:03
手毬の残体力……79。
手毬(やっぱり十王学園長の言ってた通りだ。リーリヤの持ってる力は、強い)
手毬(本気を出さないと……狩られてしまう!)
手毬が奏でる旋律は、悲壮に満ちたもの――彼女の心情を如実に表してるようだった。
リーリヤは切り結ぼうと迫るが、その拒絶にも似た旋律に足を奪われる。
リーリヤ「手毬ちゃん、諦めないで」
リーリヤ「諦めるのは……何もかもが駄目になってからでも遅くないよ!」
手毬「もう遅いんだよ!」
手毬はここにきて、声を荒げる。
手毬「Pも、美鈴も、燐羽も……咲季もことねも、リーリヤも……いないんだよ」
手毬「何もない荒野に、ただ一人だ。もうどれだけ泣いて、後悔しても戻らないんだ」
手毬「まだ失ってないリーリヤとは違う!」
リーリヤ「きゃっ……!?」
リーリヤの説得チャレンジ!成功の判断は手毬のHPに依存します!
dice1d100=8 (8)
79以上で成功!
- 24◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 22:12:38
リーリヤ「それでも……!」
リーリヤ「手毬ちゃんはまだ生きている!」
手毬「きれいごと!」
バイオリンの弓と、ライドブッカーが交わり、激しい火花が入る!直撃じゃないためダメージは減少する!
dice1d70=30 (30)
手毬「私は一人じゃ何もできないんだ」
手毬「わかってる!わかってる!だけど、それでも残されたこの世界だけは……守りたいんだ!」
リーリヤ「守ろうよっ――」
- 25◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 22:14:46
手毬残体力……49
過半数の体力を失った手毬は、膝をつく。
その顔には疲労が見て取れるように張り付いていた。
手毬「体が壊れてもいい……もう笑えなくても、いいよ」
手毬「居場所を守れれば――!」
リーリヤ「このっ、わからずやー!」
説得チャレンジ!49以上で成功です。
dice1d100=81 (81)
- 26◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 22:45:10
手毬「……力を絞っても、ここまでしかできない」
手毬「リーリヤ……そんなに強いなら、皆を戻してよ。世界を……戻してよ」
リーリヤ「……私は魔法使いでも、神様でもないよ。奇跡は起こせない」
手毬「っ……」
……センパイも、どうなるかだってわからない。
もしかしたら、もう間に合わないのかもしれない。
時間を止められるなら止めたいし、戻せるのなら何度だって戻したい。
だけど、できないんだ。
リーリヤ「私も明日、違う世界で死ぬかもしれない。誰も守れないかもしれない……」
リーリヤ「だけど、それも全部ひっくるめて生きてるんだ」
リーリヤ「限りある命だから……頑張れるんだと……思う」
手毬「そんなの……きれいごとじゃん……」
リーリヤ「でも!だからこそ現実にしたいよ!本当は綺麗事が、いいんだもん!」 - 27◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 22:53:41
リーリヤ「もう一回始めよう。泣いて、笑って……いっぱい一緒に悩もうよ」
リーリヤ「私にとっては別の世界かもしれないけど、手毬ちゃんがいなくなるのはどの世界だっていやだよ」
手毬「……どうしてそこまで言い切れるの?」
リーリヤ「こっちの世界の私も……手毬ちゃんが悩んでいるなら、手を差し伸べると思うから」
手毬「そっか……そうだよね……」ウルッ
手毬ちゃんは変身を解除する。
すると、光が体内から抜け出て、ライドブッカーに収納される。
そして、一枚のカードが出てきた。
リーリヤ「これは……手毬ちゃんのカード?」
リーリヤ「なんだかいけそうな気がする」
手毬「まずは……無理強いして歌わないといけない、その秩序をなおすよ。上手くいくかはわからないけど……リーリヤみたいに、頑張ってみる」
死んだら戻らない。
なんて残酷な世界なんだろう、リーリヤは考えずにいられなかった。
誰も死なずに、誰も悲しまないのならそれがいいんだろうけど……ままならない。リーリヤは優しく手毬のカードを抱きしめて、収納するのだった。
そうしていると、再びあのカーテンが現れた。その先は、別のアイドルの世界。
手毬「リーリヤ」
リーリヤ「手毬ちゃん?」
手毬「死なないで。あと……たまに顔を見せてくれると、その、ちょっと……嬉しいかも」
リーリヤ「うん!」
手毬の世界編、完結。
次の世界:dice1d13=1 (1)
重複の場合+1
- 28二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 07:58:45
ほしゅ
- 29◆je8PYTqP5Ydc25/08/29(金) 11:01:46
【咲季の世界】
リーリヤがこの世界に到達する少し前。
その世界は、先ほどのメルヘンとも中世的とも解釈できる手毬の世界と比較するとその差は大きかった。
この現代よりもはるかに近未来的なのだ。
街並みを占めるのは大半が高層建築物であり、平屋や戸建などという低層な住宅街などは存在しない。また、陸上を走る車軸も圧倒的に少なく、そのほとんどが高層ビルと同等かそれ以上の高さにある敷き詰められた特殊合金のレールを走る列車だった。
そんなどこを見上げても首が痛くなるような高層ビルの中でも最高層にあたるビルがあった。
咲季「そ、この世界にもリーリヤが……」
邦夫「じゃの。ここまで繁栄した世界もそうない。壊されるのは惜しいだろう」
咲季「戦って負けたならそれもまた正義よ」
邦夫「なるほど」
邦夫「ある意味で……それがこの世界の秩序だからの」
咲季「そういうことよ。だから余計なことはしないでほしいわね」
邦夫「せんせん、発展したこの世界じゃ儂も動きにくい」
ここは『咲季の世界』……換言するならば、『勝負の世界』。
純然たる勝者のみが、正義となる。勝負の秩序をつかさどる世界だ。
邦夫が去った後、咲季は虚空を見つめて、独り言ちる。
咲季「本来……今のこの座にいるのは、私なんかじゃないのよ」 - 30◆je8PYTqP5Ydc25/08/29(金) 12:52:42
リーリヤ「すごい世界だ……技術の発展が私の世界よりも……」
リーリヤは咲季の世界に到着し、驚愕した。
地平線の先まで大都市が続き、自然が一切見当たらないのは気にはなったが、何よりもその近未来SF然とした風景に息をのむばかりだった。
「えっほえっほ」「お嬢ちゃん邪魔だ!」
リーリヤ「えっ、あ、すみません」
リーリヤが謝罪を示すも、大きな荷物を担いだ二人の筋骨隆々な男性らはすでにかなりの距離まで離れてしまっていた。
「お嬢ちゃん!こっちにおいで!食事が安いわよ!なんたってうちは先月度No.1飲食店なんだから!」
「なに言ってんだ!ぽっと出の料理屋に騙されちゃいけないよ、俺の店は先々月までは一年以上No.1を維持してたんだから!」
リーリヤ「ふ、ふええ……」
あまりにも強い押し売りにリーリヤはたじたじになってしまっていた!
あれよあれよと案内され、先月度No.1と呼ばれる店舗へと入っていった。
出されたコーラに肉料理を堪能することとなったのだが、食べて違和感に気づく。
リーリヤ(ゼロカロリーコーラだし、お肉は……これ豆腐肉だ)
美味しいのに変わりはないが、妙なヘルシーさに肩透かしを若干だがくらうのだった。 - 31◆je8PYTqP5Ydc25/08/29(金) 13:24:03
リーリヤ「あっ、これは……」
飲食店を出てどうしたものか、と考えていると喉も乾くため手ごろな自販機に立ち寄ったときだった。
リーリヤ「SSDが自販機で販売されてる……」
リーリヤ「もしかして佑芽ちゃんか咲季ちゃんの世界なのかな……?」
水も販売しているのは幸いだった。
ペットボトルの水を無事入手し、近くの公園に立ち寄る。ベンチに深く腰掛け、周りを観察してみることに。
リーリヤ(手毬ちゃんの世界みたいに、何かをしなければ罪に問われる……ってのは見受けられない)
リーリヤ(けど、なんだろう、この殺伐とした感じは……)
近未来な世界で、地面のほとんどが未知の金属張りであるが、ある個所だけ自然豊かな公園が設置されており、そこには子供があふれていた。
だが、皆が皆、かけっこであったり、かくれんぼであったりと……競い合っている。
砂場でどれだけ精緻な砂のお城を作ったかで言い争っている幼児たちは、はっきり言って普通ではなかった。
リーリヤ(親も嗜めないし……)
リーリヤ(……アイドルの世界には、何らかの秩序があって、その秩序に沿って動き続けている……だったかな)
そう考えたリーリヤは、街で一番の高さを誇る、目立ったビルに意識を向ける。
リーリヤ「とりあえず……あそこに行ってみよう、望遠鏡とか設置されてたら嬉しいんだけどな」 - 32◆je8PYTqP5Ydc25/08/29(金) 13:30:51
ビルの前に到着すると、なんと花海咲季が待ち構えていた!
咲季「遅いわよ!リーリヤ!」
リーリヤ「咲季ちゃん……ということはやっぱり……」
咲季「そうよ、ここは『常勝世界』!私の世界よ!」
果てしなく、それこそ天を衝くような高さを誇るエレベーターが二人を静かに最上階へと運んでいく。
咲季「最初はこの世界もボロボロになって、大変だった」
咲季「でもどうにか復興……いいえ、それ以上の進化ができたわ」
リーリヤ「咲季ちゃんって市長としての手腕もあったんだ」
咲季「市長?そんな小さな役職じゃないわよ」
リーリヤ「え?」
そう問い直すと、チン、という音と共に最上階へ到着する。
咲季「私の肩書は――世界大統領よ!」
リーリヤ「ええええええ!?」
最上階は咲季の自室のようだ。
ベッドと机、椅子といった最低限の家具以外のほとんどがトレーニング機器だ。
咲季「何か食べる?」
リーリヤ「え、ううん、ついさっき食べたから……」
咲季「そ、なら始めましょうか」 - 33◆je8PYTqP5Ydc25/08/29(金) 13:35:27
リーリヤ「え、始めるって?」
咲季「そんなの決まってるじゃない!世界をかけた戦いよ!」
リーリヤ「ちょ、ちょっと待って!」
余りにも早すぎる展開にリーリヤはついていけずに必死に咲季を止める。
咲季「なによ!」
リーリヤ「勝敗で世界が滅びるかもしれないんだよ!?」
咲季「私は負けないわ」
リーリヤ「だとしてもだよ……別に私は世界を滅ぼしたいワケでは……」
咲季「あら、十王学園長から聞いてた情報とは真逆ね、ま、その方がリーリヤらしいか」
咲季「でも心配しないで、『常勝世界』は勝者が正義となる世界……貴女が勝ったのなら世界が滅んでも誰も文句を言わないわ。最も、負ける気はないけど」
リーリヤ「だ、だめだよ。戦わずに済むなら……それが一番だよ」
咲季「違う世界の貴女も、同じようなことを言うのね」
そう言われ、少しの驚きと安堵が芽生えた。
リーリヤ「それで……この世界の私は?」
咲季「死んだわよ」
リーリヤ「!」 - 34◆je8PYTqP5Ydc25/08/29(金) 15:35:02
並行世界における自分という存在の死――二度目だけど、やはり慣れるものではない。
せめて自分の足跡を辿ることができたら、なんて思わなくもない。
そこに意味がないことはリーリヤもわかっているが……。
咲季「最後まで秩序に抗ってたわ。戦わずに、勝者も敗者もなく、手を取り合える世界にできるように」
咲季「俗にいうレジスタンスってやつね」
リーリヤ「…………」
咲季「私はそのころにはもう、街のトップだったから……何度も貴女たちと戦ったわ」
リーリヤ「そう、なんだ」
咲季「最後まで勇敢だったわ。みんなを率いて、ね」
リーリヤ「詳しいんだね」
咲季「とどめを刺したのは……私だもの」
言葉に詰まってしまった。リーリヤが次の問答に移るより早く、咲季は続ける。
咲季「そうしなければいけない理由があった。謝ることは……できない」
リーリヤ「……いいよ、咲季ちゃんにも譲れないことがあった」
咲季「何か興ざめね、今は戦わないでおくわ。もし貴女が望むのなら、レジスタンスの残党の場所を教えるけど」
リーリヤ「知っているのに、残してたんだ」
咲季「倒しても次々出てくるからよ。それに……今のリーダーにはリーリヤのような気概はないわ。完全に心が折れてしまってるんだから」
常勝こそが正義、それはあまりにも乱暴な理屈だとこの世界のリーリヤも思ったのだろう。
彼女を旗印に立ち上がったワケで、そんな中心人物であるこの世界の葛城リーリヤが死亡してしまった以上、今はもうレジスタンスなんて名ばかりの、はみ出し者でしかない。
咲季としても、リーリヤの訪問でちょっとでも投降が進めばいい、という風に考えていた。
咲季「そういえば、リーリヤ」
去り際に、咲季はひとつだけ伝える。
咲季「世界そのものの秩序に抗う貴女のような存在を……不適合者というらしいわよ」 - 35◆je8PYTqP5Ydc25/08/29(金) 15:46:54
道すがら、リーリヤは考えていた。
アイドルという勝敗が存在する世界に身を置いている自分が、果たして花海咲季を糾弾などできるのだろう、と。
どれだけ避けようとも人間社会に溶け込む以上、競争は発生するし、人並みに感情も揺れ動く。
N.I.Aだって、そもそものセンパイを取り戻すための旅だって本質的には戦いなのだ。勝たなければ、『大切』は取り戻せない。
この世界のリーリヤも、その自己矛盾に陥りながらも――秩序に抗った。
もしも自分が同じ立場なら、この世界の自分のように立ち振る舞えるか?
リーリヤは即答することができなかった。
指定された地図の場所に向かうと、既に廃棄済みの金属加工専門の工場だった。
そのまま出没するとややこしいことになるので、少なくともリーダーにあうまでは変装をすることにした。
工場敷地に足を踏み入れると、すぐに関係者に囲まれ、リーダーの下へ案内される。
本来であれば警戒されて尋問などされてもおかしくない状況ではあるが、それがない当たり、咲季の言う『心が折れた』はあながち間違いではないのかもしれない。
リーリヤ「貴女が……」
リーダー、と言おうとしたその時、見慣れた髪色に言葉を失う。
リーリヤ「清夏ちゃん……?」
清夏「…………」 - 36◆je8PYTqP5Ydc25/08/29(金) 15:53:20
清夏「……驚いたよ」
清夏「元学園長がいきなり旅人の話をしにきたけど、違う世界のリーリヤだったんだ」
静かにそう言葉を発したのは、紛れもなく紫雲清夏だった。
だけど、その目にかつての輝きはない。目に隈ができていて、メイクもしていない。
何よりも気になったのは……その右足だ。
太もも当たりから下はなく、武骨な義足が彼女の足代わりになっていた。
清夏「迷わず来れるとは、あの子が教えたんだ」
リーリヤ「清夏ちゃん……」
清夏「そう呼ばれるのも懐かしいよ、ま、座ってよ。碌な物資も人手もないけど、もてなすくらいはできるから」
彼女の姿は、静止した時の中で出会った彼女でも、リーリヤの知る彼女とも異なる存在だった。
同い年のはずなのに、既に一回り長い時間を生きているかのような貫禄さえも感じさせられた。
リーリヤ「えっと、その……」
リーリヤの視線を察し、清夏は苦笑する。
清夏「そっか、そっちの世界の私は……義足じゃないんだ」
リーリヤ「なんで、どうして――」
清夏「もう覚えてないよ。この世界で市民権を得るには、戦って勝つしかない。無茶ばっかりをして、いつしか足の痛みが再発して、さ。気づいたらこうだった」
その説明に、リーリヤは何も言えなくなってしまった。 - 37◆je8PYTqP5Ydc25/08/29(金) 16:14:06
清夏「ここに来たってことは……あの子、花海咲季の差し金かな」
その呼び方に、かつての親しみの籠った感情はなかった。
清夏「ま、仕方ないよ。確かに前までは同じクラスで、仲良かった。でもあの子はリーリヤをころした」
清夏「ははっ、ややこしいよね」
リーリヤ(笑っているけど……笑ってない)
清夏「大方、私たちに降伏を促すためにリーリヤを送ってきたんだろうね」
リーリヤ「あ、あはは……」
清夏「でもそれはできないかな。敗北濃厚だとしても、組織がリーリヤと私の最期の居場所だから」
そう言い終えて、清夏は顔を横に一度振る。
清夏「リーリヤを言い訳にしちゃだめだね。単に、私は逃げることも死ぬことも怖くてできなかっただけなんだよね」
清夏「でももう……」
そのとき、爆発音が響いた!
リーリヤ「えっ、なに!?もしかして……咲季ちゃん?」
清夏「だったら楽なんだけどね、ここももう限界か、リーリヤ、誘導するから一緒に逃げよう」
リーリヤ「一体何が……」
そうリーリヤが告げると、一体の……怪人のような存在が現れた。
びっくりして立ち上がり、ライドブッカーに手を伸ばそうとするが……リーリヤ以外の時間が停止した。 - 38◆je8PYTqP5Ydc25/08/29(金) 16:21:00
リーリヤ「時間が……」
邦夫「思えば、おぬしの世界には存在しなかったの、グロンギは」
リーリヤ「グロンギ……?」
静止した時の中で、邦夫がゆっくりと杖をついて現れる。
邦夫「名称や性質などは世界によって変わるからものの問題ではない。もっと本質的な話をしよう」
邦夫「この怪人は、世界の深度が高まったが故に出現した……いわばがん細胞のようなものじゃな」
リーリヤ「世界の深度、ですか?」
邦夫「うむ。『常勝世界』はその秩序から、誰もがしのぎを削って勝利をつかむ。故に、他の世界よりも科学の進展も早いのじゃ」
現代基準で考えても科学の異様な発展ぶりの経緯には、そういった競争を促すシステムがあるからだった。
各社が競争した結果、技術は指数関数的に発展を遂げ――止められない速度で今なお進み続ける。
邦夫「世界の規模を深度、と呼んでおる。話を戻すと……」
深度が一定を超え、世界が許容できる値を超えたときに生じる超過分が怪人となって現れるという。
邦夫「いずれ怪人は増え続け、この世界を滅ぼすじゃろうな。なぜか、ではない。そうシステム化されておる」
邦夫「遅かれ早かれ、この世界は滅びる」
邦夫「これで心置きなく滅ぼせるな」
リーリヤ「……グロンギを倒します。世界も、滅ぼさせません」
邦夫「強情じゃのう」
そういって、邦夫はまたどこかへ消えてしまった。少しすると、止まっていた時間も動き出した。 - 39◆je8PYTqP5Ydc25/08/30(土) 00:04:07
静止していた時間が動き出す――。
清夏「リーリヤ、急いで!」
リーリヤ「大丈夫、ここは私が食い止めるから」ディディディディケイード
清夏「……!」
『白線』に変身したリーリヤはライドブッカーでグロンギに切りかかる!
「バビロボザ、ビガラパ!?」
リーリヤ「何言ってるか、わかりません!」
斬!
その一撃で蝙蝠型のグロンギは一瞬間怯むが、その両翼でリーリヤに反撃する。
リーリヤ「くっ……」
リーリヤ「蝙蝠は音に敏感だったはず……だったら」シュッ
リーリヤはライドブッカーから、一枚のカードを抜き取る。
それは以前入手した、手毬のカード。
リーリヤ「はっ!」カメンライド――テテテテマリィ
それにより、Luna Say Maybeの漆黒を纏った姿になる。
清夏「!」
リーリヤ「ここからいなくなってください!」アタックライド
登場したのはエレキギター!それを激しく引くと、旋律が蝙蝠型のグロンギを襲い、吹き飛んでそのまま爆破されるのだった。 - 40◆je8PYTqP5Ydc25/08/30(土) 00:08:42
清夏「リーリヤ……」
リーリヤ「怖がらせちゃった、かな?」
清夏「違うよ、驚いただけ……そっか、そっちの世界のリーリヤも……戦ってる」
清夏「うん、覚悟を決めたよ」
リーリヤ「え?」
それはどういう……と聞くよりも早く、清夏は答える。
清夏「私は、今度こそ……咲季を倒すよ」
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咲季は自宅の窓から、市街地を見下ろす。
また、グロンギが姿を現したそうだ。それも商業の中心部、にだ。
勝負をすることを是としている世界であるため、一般の人も頑張って戦うが、そもそもグロンギと人間では圧倒的な能力差があるため……被害は増え続ける。
また、街から煙が上がっていた。
咲季「仕方ないわね、って、この前発掘したやつは!?」
「な、何やら下手人が盗んだようで……」
咲季「なんですって!?はやく探しなさい!」 - 41◆je8PYTqP5Ydc25/08/30(土) 00:13:18
リーリヤは、石箱に入ったものを清夏に見せられる。
リーリヤ「これは……」
清夏「グロンギを唯一倒せる力が秘められたベルト。この辺の遺跡で発掘されたやつだよ。最初はあの子が抑えたけど、盗ませた」
清夏「これで……常勝世界を終わらせられるんだ」
リーリヤ「だめだよ、その力は……グロンギを倒すための……」
清夏「詳しくは知らないけど、咲季が居続ける限りは終わらない。本当は、とても怖い」
清夏「だけど、最後にリーリヤに会えて……決心が付けられたよ」
清夏がそう言い、石箱に入ったベルトを腰当たりに近づけると、すぅーっと、体内に吸収されていった。
リーリヤは駆け寄り、清夏を止めようとするが……急な睡魔に襲われる。
初めてのカメンライドの弊害だ。
意識が朦朧とするリーリヤをみた清夏は一度だけそっと優しく抱きしめると、そのままここを後にするのだった。 - 42◆je8PYTqP5Ydc25/08/30(土) 01:42:38
リーリヤが目覚めると、もう清夏の姿はなかった。
彼女は咲季の元へ向かい、決着をつけようとしている。
そして、咲季はその挑戦から決して逃げずに、あのビルにて待ち構える。
止めなければならない。
咲季が負ければ世界は滅びるし、清夏が負ければ――。
リーリヤは軋む体に鞭うちながら、全力疾走でビルへと戻っていった。
※3d100= でダイスをこれから3レスの間に振って、一度でも70以上が出れば間に合います。dice3d100=40 73 98 (211)
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同刻。
咲季「来たわね、やっぱり私の目論見通りだった」
清夏「別の世界のリーリヤが来たことは、あまり関係ないよ」
清夏「どっちにしろ、あんたとは決着を付けないといけなかったから」
咲季「私を仇と思うのも、自由よ。貴女が勝てばそれも正義なのだから」
清夏「気取っちゃってさァ……」
清夏「勝たずに終わって後悔しながらもその座を降りない人に言われたくないかな」
一瞬間、殺伐とした間が訪れる。
清夏・咲季「「変身」」
光は二つ、瞬いた。
- 43◆je8PYTqP5Ydc25/08/30(土) 01:52:48
リーリヤは驚く。
既に街の数か所にも、グロンギが出没していた。
猶予はなく、本来であれば捨て置いて、一にも二にも清夏の元へ急ぐべきだが――リーリヤは襲われている人を見捨てることなんてできなかった。
リーリヤ「時間は稼ぎますから、早く逃げて!」
「な、なんで……私はこいつに負けたんだよ?」
リーリヤ「一回負けたくらいでなんですか!命があれば、何度だってやりなおせます!死んだら……終わりなんですよ!」
悲観に暮れ、諦めかけていた民衆はリーリヤのその言葉で、はっとしたようで……急いで避難を開始する。
リーリヤ「センパイなら、きっと同じことを私に言ってくれると思うから」 - 44◆je8PYTqP5Ydc25/08/30(土) 02:05:12
――咲季の部屋。
咲季は得心する。誰の手に、発掘物が渡ったかを。
だが、納得のできないこともあった。今の清夏の姿は、発掘した遺跡の碑文に残された姿とは著しく乖離していた。
咲季(赤き瞳の戦士……じゃない。甲冑のように全身が黒づくめなのも気になるけど、それ以上に目の色が……)
黒いのだ。黒一色の姿に金色の線が入ったその姿は、伝承の戦士とは程遠かったのだ。
だが、何も変わらない。挑んでくるならば、今回も倒して……勝利するだけだ。それが、この常勝世界の摂理なのだから……。
清夏「はっ!」咲季「!?」
――心清き戦士 力を極めて戦い邪悪を葬りし時 汝の身も邪悪に染まりて永劫の闇に消えん。
一撃を胸部に浴びた咲季は悟る。
速度も、威力も段違いだ。善戦できるかどうかの次元ではない。
脳裏に過る……『敗北』の文字。体が硬直して、動けなくなる。
清夏「もっと抗ってよ」
清夏「もっと苦しんでよ」
清夏「もっと、もっと……これは、あんたが作った世界だよ? その世界の摂理が、あんたをころすんだ」
咲季「っ……そう、ね」
口から血を流しながら、己の末路を思い浮かべて目を閉じる。
清夏「……さよなら」
清夏は構え、キックの態勢に入る。必殺の一撃……その威力をもってすれば咲季ごと世界そのものを破壊できる。
咲季「ごめんなさい、佑芽。弱いお姉ちゃんで、ごめんなさい」 - 45◆je8PYTqP5Ydc25/08/30(土) 02:20:15
リーリヤ「待って……!」
清夏・咲季「「!?」」
間に合った、と息を切らしたリーリヤは安堵と共に膝をつく。
咲季「水を差さないで……私はもう負けた。それに、この世界はもう……」
咲季「グロンギはこれから止めどなく溢れる。碑文で読んだわ、究極の闇ってのが出た時……世界は終わる」
咲季「今わかったわ。清夏がそう。納得よ、この世界のリーリヤを倒した私を倒すことで、碑文は果たされる」
リーリヤ「それは……違うよ!」
リーリヤは呼吸を整え、立ち上がる。
リーリヤ「究極の闇は、別に存在するんだ。清夏ちゃんは、そこから逸らすために、利用されたんだよ」
清夏「…………」
リーリヤ「清夏ちゃんのその力は、グロンギを倒すための力」
リーリヤ「本当に、滅びが確定した未来で何をやっても無意味というのなら……そんな力が存在するはずがない」
これは抑止力だと、リーリヤは言う。
リーリヤ「きっと、この世界の私もそこまでたどり着いてたんじゃないかな?」
清夏「だったら……っ」
清夏「だったら何!?リーリヤは……死んだんだよ、もう笑いかけてくれないんだよ!?今更それに……何の意味が……」
リーリヤ「清夏ちゃんに生きててほしかったからだよ」
清夏「!」
リーリヤ「同じ状況なら、私もそうするよ」
清夏「どうして……そんなの……リーリヤのいないこの最悪の世界で、どうしろって言うの……」
すべてはわからない。だけど、信じていたんだと、リーリヤは思う。
きっと、乗り越えて、幸せを掴めるって。 - 46◆je8PYTqP5Ydc25/08/30(土) 02:28:20
リーリヤ「咲季ちゃんも……たぶん清夏ちゃんと同じはず。違う、かな?」
清夏「…………」
リーリヤ「清夏ちゃんは知ってたんでしょ?佑芽ちゃんがいないことに」
清夏「……うん」
咲季「私から話すわ」
よろよろと立ち上がり、咲季はつづける。
咲季「この世界は、あるとき破壊された。寸前でなんとか食い止めたけどね、そのときには佑芽が隣にいてくれた」
復興する最中、苦難に負けずに共に切磋琢磨し、勝負しつづけた。
それがこの世界を『常勝世界』たらしめた要因だ。
だけど、その構造の歪さは直に世界そのものを揺るがし始めた。
咲季「ある日、佑芽に負けるのが怖くなって……その日に限って勝負から逃げたのよ。そんなときに限って、初めてのグロンギが発見された」
咲季「未曽有の存在に、佑芽でも勝てなかった」
咲季「対策をした、今なら遅れは取らない。でも、もう何もかもが遅いのよ」
そして同時に、あの日勝負を逃げなかったら……佑芽がきっと今の座にいただろう。
咲季「私が殺されるはずだった。それが摂理なのに、自分がその摂理を捻じ曲げた」
咲季「それを認めると……本当に負けたと思うようになって、認められなくて」
清夏「……真っ直ぐに立ち向かうリーリヤたちをゆるせなくなった」
今となってはどうにもならない話。理不尽な、悲劇の物語。
互いに、少し歯車が合わなかっただけなのだ。二人とも一緒に苦しんで、共有し合えるからこそ、憎み合った。
咲季「……今更お願いできる立場じゃないのはわかってる」
咲季「だけど、その力は本物……究極の闇を倒すのに、手を貸してほしい」 - 47◆je8PYTqP5Ydc25/08/30(土) 02:30:26