- 1◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:12:41
- 2◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:13:53
- 3◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:15:37
【プロローグ】
パンパカパン!
学P「葛城さん、14人もの癖がそれはもう強い彼女の皆さんとカップル成立、おめでとうございます」
学P「陰ながら応援しておりましたが、きっとうまくいくと信じておりました」
リーリヤ「あはは、ありがとうございます。わざわざケーキまで用意してもらって……」
学P「彼女が増えるに呼応して、葛城さんのアイドル力も向上しています」
学P「今の貴女に勝てるアイドルはそう多くないでしょう」
リーリヤ「あまり実感はないですが……」
学P「さて、N.I.Aの次期が近づいてきました」
リーリヤ「あれ?もうすぐ年末ですよね、あれって六月くらいのはずでは……」
学P「何を言っているんですか、今はまだ五月ですよ」
リーリヤ「あれっ」
※サザエさん時空的な何か - 4◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:16:38
リーリヤ「ともかく……N.I.Aですか」
学P「はい、ご存知かと思いますが、営業やオーディションを経てランキングを上げていくシステムです」
学P「ですが……葛城さんは本意ではない、そうですね?」
リーリヤ「…………」
学P「花海咲季さんとの五番勝負、決着ではなく団結を意識した貴女ですから」
学P「それに、たびたび口にしていたように葛城さんは本当に……アイドルという固定観念を変えようとしている。愛の力で、既存の枠組みを壊そうとしている」
リーリヤ「はい、誰かが泣いて、一人しか笑えない。そんなシステム、私は嫌です」
リーリヤ「傲慢でしょうか?」
学P「いえ、葛城さんらしいと言えます」
リーリヤ「だから私の目標は、一人しか頂点にたてないH.I.Fのシステムを変えたいんです」
私が胸の内で考えていた案を、提示する。
リーリヤ「私たち15人で、ひとつのユニットとして……出場します」 - 5◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:17:45
学P「基本、H.I.Fの舞台は個人で選出されます」
学P「前例はあっても二人や三人規模の、小規模なものだけです」
わかっている。
人数を増やしてしまえば、年の一番星を決めるという趣旨に反してしまう。
それでも――。
リーリヤ「やる必要があります」
学P「はい、それだけじゃない。まだ厳密に言えば、アイドル科の生徒ではない藤田さんの妹さん……藤田ことはさんも、出場させるつもりですよね」
リーリヤ「当然です。誰か一人でも欠けたら、意味なんてありません」
星南「そうこなくっちゃ」
同調する様に入ってきたのは、星南ちゃんだった。 - 6◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:18:55
学P「十王さん、人が悪いですね。盗み聞きだなんて」
星南「許してちょうだい。あまりにも格好いいリーリヤの姿をみてほれぼれしていたんだから」
星南「リーリヤ、貴女の覚悟を確かに聞いたわ」
星南「その強い意志を、私もかなえたい」
だから!と星南ちゃんは力強く胸を張る。
星南「お爺様と倉本家には既に話を通しているわ!そして……賛同をいただいているわ!」
学P「おお」リーリヤ「やった!」
星南「だけど、一筋縄ではいかないのも理解してほしいわ」
星南「N.I.AならびにH.I.Fには黒井社長の牛耳る極月学園……引いては961プロが参加している。彼らが簡単にこのある意味革新とも呼べる提案をそう簡単に飲まないわ」
星南「賀陽燐羽の移籍についても、ある意味で向こうからしたら許せない話だからね」
それは、わかってる。
星南「だけど、彼らも鬼ではないわ。同じアイドル業界の発展を望む同志――だから、次に提示する条件を満たせば特例も認める、と言ってくれたわ」
リーリヤ「ごくり……」
星南「賀陽燐羽を含め、次のN.I.Aで私たち14人が……全員ランキング上位を総なめすること」
学P「流石にことはさんを含まないのは安心しました。流石にデビューすらしてないので」
全員で、上位。
そうすれば……夢がかなえられる! - 7◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:19:55
リーリヤが去った後。
燐羽「あら、話は終わったのね」
星南「遅かったわね」
燐羽「入れる空気じゃないから……それで話は?」
学P「済みましたよ。黒井社長が提示した条件も含め、葛城さんに伝えています」
燐羽「そ……本当にやる気なのね」
燐羽「……あの子が諦めるとは思わない」
しかしその燐羽の言い方には、いささかの含みがあった。
星南「……思う所があるようね」
燐羽「十王会長も学Pさんも……本当に懸念していることがないってのなら驚きよ」
その言い方に、二人は重々しく頷く。
燐羽「ずっと目を背けていた。私だけじゃない、美鈴や手毬、それに咲季お姉ちゃん……それだけじゃないわ。彼女を隣で見てきている全員がとっくに気付いている」
星南「ええ、私たちが彼女に甘えすぎたが故に、後回しになっていた問題」
星南「彼女自身が抱える元来の危うさ……」
星南「それと向き合わないと、この夢はかなわないわ」
燐羽「ま、私としては叶わなくても好きっていう気持ちは変わらないケド」
星南「それはみんなもそうよ……だけど、それだと他ならないあの子自身が負い目を感じて生きていくことになる」 - 8◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:21:13
燐羽「そんなのは、私は許せないわ」
燐羽「リーリヤを、じゃない。抱えているのをわかっていて見てみぬふりする自分を、よ」
星南「だけど今の私たちはまだ、為す術がない……ってのが本音」
燐羽「前年度とはいえ一番星じゃない。何か……ないの?」
星南「私を買い被り過ぎよ……」
本当に無念そうに星南は俯き、そして学Pを見る。
星南「先輩として聞きたいわ。どうすればいいかしら?」
学P「俺個人の意見でしかありませんが……今はまだこちらでできることはありません」
燐羽「意外ね、もう解決策を出してるばかりかと」
学P「これは葛城さんの問題ですから。本人が自覚できなければ何を言っても仕方がありません」
学P「ですが……裏を返せば、その問題さえ乗り越えればこのN.I.Aは問題ないでしょう」
燐羽「あら、随分と大きく出たわね。極月からも精鋭は出てくるわよ?」
学P「それでも、ですよ」
と言って学Pは笑った。 - 9◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:22:47
【みんなでハワイに……行きたかった編】
咲季「みんなで旅行に行きたいわ!」
ことね「どうしたんだ藪から棒に」
咲季「聞いたわよ!あのバスケ大会の後に佑芽とハワイに行ったって」
佑芽「あー、行ったよねー。十月ごろ……あれ?今って五月……?」
広「ふかく考えたら、だめ」
懐かしい思い出である。
あのときは、まだ皆揃ってなかったなぁ。
莉波「私が出逢う前だもんね」
ことは「お姉だけずるかったやつ」
星南「遅かったとはいえ……参加できなかったのは残念だったわ」
燕「そうだな」
星南「でもね、安心して!」
星南ちゃんがおもむろに立ち上がる。
星南「五番勝負、皆すっごく頑張っていたから用意したわ!再びのハワイ旅行を!」
リーリヤ「えええ!?ほんと!?」
清夏「やったぁ!また行けるなんて!」 - 10◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 11:23:54
数日後……。
星南「この旅客機よ!」
ことね「わぁ、プライベートジェット」
ことは「お姉、荷物運ぶの手伝いなよー」
莉波「すごいね!」
清夏「あれ?リーリヤ寝不足?」
リーリヤ「ふぁあ……ちょっと作業が煮詰まってて……」
燕「よかったな、飛行機でゆっくり眠れるぞ」
プライベートジェットなら安心して眠れそう。
佑芽「前はリーリヤちゃんが赤ちゃんだったから」
千奈「大変でしたわ」
咲季「リーリヤに一体何が……?」
燐羽「どういうこと……?」
美鈴「広さんが?」
広「ふふ、私のミス」
なんて、皆が皆、楽しみを吐露しながら搭乗する。
ハワイまでは結構時間がかかるからね、楽しみだ。
だけど、予想外のことが起きた。
飛行機が墜落してしまった!!!! - 11◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 13:56:20
リーリヤ「うう……」
目を覚ますと、そこは見知らぬ海岸の砂浜だった。残っているのは背負っているカバンしかない。
どうしてこんなことに……。
そっと私はカバンの中を確認し、ノートが無事なのを確認する。
リーリヤ「み、みんなは……」
飛行機が墜落した……尋常ではない事態。
自分なんてどうでもいい、皆が無事なら……。
リーリヤ「広ちゃん!?」
なんとそこには砂浜に半身を砂浜に埋まって気絶している!
た、大変だ……。
リーリヤ「だ、大丈夫!?生きてる!?」
広「う、ううん……もう駄目そう……」
リーリヤ「よ、よかった。息はある。今助けるね……」
なんとか広ちゃんは生存確認できたけど……他の皆はこの島にいるのかな?
兎に角探さなきゃ……。
今後はダイスで誰と出会うかを決めていきます。
(※はつみちゃん=ことは)
(※再掲部分はダイスなし) - 12◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 15:20:17
星南「ことね!?リーリヤ!?どこにいるの……?」
広ちゃんを助けた後にどうしたものかと考えていると、奥地へと続く道から星南ちゃんがやってきた。
どうやら少し先の川下で気を失っていたらしい。
リーリヤ「星南ちゃん!」
星南「ことね!」
再会がうれしくて、そっと抱きしめてキスをする。
妬いちゃったのか広ちゃんも後ろから抱きしめてくる。可愛い。
リーリヤ「はやく他のみんなを探さないと……怪我をしていたら大変だ」
星南「怪我は大丈夫だと思うわ」
リーリヤ「えっ?」
星南「い、いいえ、なんでもないわ。探しに行きましょう! - 13◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 15:21:19
リーリヤ「まずは暖をとれる……できれば拠点を作りたい」
リーリヤ「14人分だからだいぶ木材を集めるしかないね」
星南「それなんだけどね、道中ですごいものを見つけたの」
案内された私と広ちゃんが目にしたのは、やや劣化し一部の壁に穴こそ開いているが十分使用に足りる木造の小屋だった。
星南「これで雨風だけでもしのげるわ……数は多くないけどブランケットもあるし、十分な非常食も残されている。きっと前の人が善意で残してくれたのね」
リーリヤ「…………」広「…………」
星南「どうしたの?」
リーリヤ「……いいえ」
と、小屋を確認していると誰かがやってきた! - 14◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 15:30:25
佑芽「おーーーい!みんなーーー!!!」
リーリヤ「佑芽ちゃん!うわっ!」
タックルに近い抱きしめを受けたけど、そこはがっつりと構えて何とか受け止める。
星南「う、佑芽の全力タックルを受け止めるなんて……」
広「すごい、リーリヤの愛は物理法則を超える」
そして満面の笑みを浮かべた佑芽ちゃんはそっと私にキスの雨を降らせる。
佑芽「でもお姉ちゃんが見つからないの……」
リーリヤ「この島に辿り着いているなら、きっと無事なはず」
星南「人を分けてできることをするべきね」
保存食はあるけれど、食べ物はあればあるほど助かる。
だから広ちゃんと星南ちゃんが小屋の補修及び果実などを集め、そして私と佑芽ちゃんが皆を探しつつ食料を取るために川へと行くことになった!
佑芽「あー!見て!いっぱいお魚さんがいるよ!」
リーリヤ「本当だ……!こんなに丸々と育ってるなんて珍しいや」
佑芽「それに川の向こうに鹿や羊のいっぱいだ。そこに石があるから……えーい!」
佑芽ちゃんが拳くらいの大きさの石を素早く投擲すると、それがまったりとしている羊の頭にヒット!
ダウンした羊を〆て連れ帰ることに。可哀想だけど生きる為だからね。
佑芽「あっ、見て!ちょうど使えそうな釣り竿が落ちてるよ!」
リーリヤ「…………」
佑芽「リーリヤちゃん?」
リーリヤ「あっ、そうだね、私は釣りをしようかな」
佑芽「じゃああたしは川に入って魚取ってくる!」
リーリヤ「溺れないように気を付けてね」 - 15◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 15:35:28
リーリヤ「わぁ、佑芽ちゃんが水面を叩けば……」
佑芽「えーい!」バチャーン
リーリヤ「大きな魚が弾かれて陸地に……クマみたいだ……」
リーリヤ「せっかくだから労えるように火を焚いておこう」ミマモリーリヤ
いい感じに焚火が整った辺りで佑芽ちゃんが戻ってきた。
リーリヤ「これで乾かせるね、魚は焼き始めているよ」
佑芽「わー!ありがとう!」
リーリヤ「さっきの肉も解体して燻しておこう、長持ちするよ」
佑芽「ええ!?解体できるの!?」
リーリヤ「故郷でちょっとね」
するといい匂いが風に乗り始める。家を補修している星南ちゃんや広ちゃんも気づくだろうし、匂いに釣られて誰か合流できるかもしれない。 - 16◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 16:57:42
咲季「見つけたわ!佑芽!リーリヤ!」
佑芽「おねえちゃん!!!!」タックル
咲季「ふふん、元気そうね!」
咲季「リーリヤ!」
リーリヤ「無事でよかったよ」
咲季「私にキスしなさい!」
リーリヤ「勿論だよ」チュッ
咲季ちゃんは私たちがやってきた方とは逆からやってきた。というかロープで引いてるのは……。
リーリヤ「熊!?」
咲季「見つけたから罠にかけたのよ。佑芽なら一人で倒せるとは思うけど……」
なんと肥えた熊を運んできたようだ!
リーリヤ(広ちゃんじゃなくてよかった……)
咲季「おいしそうね!食べていいかしら?」
リーリヤ「うん、しっかり火は通してね」
佑芽「ふふーん!あたしがいっぱいとったんだよ!」
咲季「やるじゃない!食べ終わったら勝負よ!」
私は念のため熊を簡単に解体しておこう。可食部も多いし、皮は学園に戻った時に売れそうだ。
リーリヤ「ふぅ……」
咲季「器用ね、解体はやったことなかったわ」
魚を食べながら咲季ちゃんがそう言ってきたので、簡単に教えることにした。 - 17◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 16:58:50
その後、食事の後の運動として咲季ちゃんと佑芽ちゃんは同じように川に入り、魚を乱獲し始めた。
燻製にすれば長持ちできるからね。
私は簡単ではあるけど石を集めて燻製用の土台を作ることにした。
咲季「ふぅ、お姉ちゃんの勝ちね」スッポンポン
佑芽「ま゛だまげだ~!!!!」スッポンポン
二人は勝負の最中にひっくり返ってびしょぬれになったため、服を乾かしている。
星南「あら、咲季じゃない。合流できたのね」
星南「って、すごい量の魚と肉……えっ、熊!?聞いてない……」
咲季「巣を探したけどこの子だけだったわ。運がよかったわね」
星南「そう……」
星南「あ、さっき広と探していたら廃棄された業務用の冷蔵庫を見つけたのよ!」
佑芽「すごーーい!」
星南「これで肉を保存できるわ」
リーリヤ「電気はあるの?」
星南「それは広が太陽光発電システムを作ってくれたからなんとかなりそうよ!」
これで腐敗は防げそうだ。
だけど……すごい偶然が重なる。
リーリヤ「…………」
なんというか、有難いけれどここまでおぜん立てされた無人島なんてあるのかな……? - 18◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 16:59:52
佑芽「あっ!こっち!!!手毬ちゃんが倒れてるよ!!!」
リーリヤ「えっ!?」
手毬「おなか……すいた……」
ガヤガヤガヤガヤ……。
リーリヤ「今ちょうど焼けた羊肉を近づけてみよう」
手毬「お肉!?ジンギスカン!?」ガバッ
リーリヤ「ゆっくり食べてください、いきなり食べたら胃がびっくりしちゃいます」
手毬「うん……美味しいよぉ……」
リーリヤ「とってもしっかり育っているよね、こんなに美味しいお肉は珍しいよ」
リーリヤ「あ、魚もあるよ、食べる?」
手毬「食べる!」
咲季「さっき散策したらいい感じの山の幸もあったわ!これでSSDを作れるわ!」
手毬「ひぃっ……」
リーリヤ「つ、作らないでいいよ!!!」 - 19◆je8PYTqP5Ydc25/08/28(木) 17:00:52
手毬「…………」ウルッ……
ひとしきり食べ終わった後に、手毬ちゃんは私の隣に座った。
そして少しすると、静かに泣き始めてしまった。
リーリヤ「手毬ちゃん……?」
手毬「ごめんね、リーリヤ。私何もできていないのに……みんなの手柄なのに、それを感謝もできずに食べるしかできなかった」
手毬「最初、何かリーリヤたちの力になりたいって島の中を散策したんだ」
手毬「だけど、虫に逃げて、動物も捕まえられなくて……」
手毬「挙句の果てに拾われた……足を引っ張ってばっかり」
リーリヤ「そんなこと、ないよ?」
私だって何もできていない。
ご飯にありつけているのも、みんながいたからだ。私一人だと……きっと行倒れてた。
リーリヤ「手毬ちゃんが無理をしようとしてたのも、わかってる」ギュッ
リーリヤ「上手くいかない気持ちも、知っている」
リーリヤ「そのときにできることはひとつだよ。一緒にいてくれること」
リーリヤ「それがとっても嬉しいんだ」
手毬「リーリヤ……だいすき」
そういって泣き止むまで、手毬ちゃんを静かに抱きしめるのだった。
少しすると……。
星南「きゃー!?」
星南ちゃんの悲鳴が聞こえたのだった。