(オリウマ娘注意)キンカメさん

  • 1二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 01:46:24

    ※初投稿、オリウマSS
    スティルインラブ実装で
    過去のキンカメ→スティル概念を思い出し、書き上げました
    よければお付き合いください

  • 2二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 01:52:44

    1章:2003.11.16

    京都の空は、どこまでも澄み渡り、黄金に輝いていた。
    エリザベス女王杯当日。ターフに立つウマ娘たちは皆、その日の主役となるべく緊張と高揚の入り混じった表情を浮かべていた。
    しかし、主役は誰の目にも明らかだった。

    スティルインラブ。
    桜花賞、優駿牝馬、そして秋華賞を制した、史上2頭目の牝馬三冠ウマ娘。
    彼女は、このレースで、初めて一番人気に推されていた。
    パドックを周回する彼女の姿は、まるで絵画のようだった。
    落ち着いた表情、優雅な足取り。だが、その瞳の奥には、獰猛な野生の光が宿っている。
    他のウマ娘たちが、緊張に顔をこわばらせる中、彼女だけが、静かに、そして鋭い殺気を放っていた。

    彼女の隣を歩いていたのは、アドマイヤグルーヴ。ここまで本命として推されてきたが、ついにその座を譲る。その表情には、勝利への渇望が強く表れていた。
    「スティルさん、今日こそ貴方を倒すわ」
    そう言い放つアドマイヤグルーヴに、スティルはただ静かに微笑んだ。
    「……ええ。でも、大丈夫です。私には、私のやるべきことが、ちゃんと分かっていますから」
    その言葉は、どこか遠い未来を見据えているようで、俺の胸に、ちくりと刺さった。

    2003年11月16日。京都第5R。俺は、この京都の地で、デビューを迎えていた。
    俺は、この日のデビューを望んでいた。トレーナーに無理を言って、今日のレースにしてもらっていた。
    理由は、ただ一つ。
    同じ場所で走る、あの人を見るため。
    レース前、俺は冷静だった。いや、そう振る舞っていた。だが、内心は、張り裂けそうなほどの期待と不安に揺れていた。
    俺は、まだ誰にも知られていない、ただの新参者。だが、俺の中には、誰もが羨む圧倒的な力が漲っていることを、俺自身が一番よく分かっていた。
    俺はデビュー戦を制した。興奮冷めやらぬまま、身支度を整えると、観客席のゴール板の近くへと駆け出した。
    彼女のレースが、今、まさに始まろうとしていた。

  • 3二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 01:55:06

    「ゲートイン完了! いま、スタートしました! 綺麗に揃ったスタート!」
    実況の声が、俺の耳に響く。
    彼女は、先行集団の後ろにつけている。
    その優雅な走りは、まるで舞を舞っているかのようだった。
    「最終コーナーを回って、直線に向いた! 激しい叩き合いだ! 先頭は、内からスティルインラブ! 外からアドマイヤグルーヴ! 並んで、並んで、どっちだ! どっちだーっ!」
    二人は、一歩も譲らず、ゴール板を駆け抜けた。
    息をのむような、静寂。
    そして、実況は叫んだ。

    「わずかに、わずかに前だ! 勝ったのはアドマイヤグルーヴ! 激闘はハナ差決着です!」

    騒がしい実況が、俺の心をかき乱す。
    俺が知る彼女は、いつも穏やかに微笑んでいた。その微笑みが、好きだった。
    彼女に近づきたくて、トレーナーさんに無理を言って、今日のデビューに変えてもらった。
    初めて間近で見たあの人は、静かに、涙に濡れていた。

    誰もが知る三冠ウマ娘の、誰も知らない哀しみ。
    その濡れた瞳は、俺の心に、忘れられない痕跡を残した。
    俺は、この時、初めて知ったのだ。強さの中に隠された、脆くも美しい魂があることを。
    そして、その魂を、誰よりも深く愛し、守りたいと、そう強く思った。
    その愛は、まだ形を持たない、純粋な憧れだった。だが、その愛は、俺の人生の全てを変える、始まりの光だった。

  • 4二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 01:58:57

    2章:still in...

    あの日の京都から、俺の人生は彼女を中心にして回り始めた。
    圧倒的な力で、NHKマイルカップとダービーを制覇。
    俺は、誰もが認める王者へと駆け上がっていった。だが俺の心は、決して満たされることはなかった。
    俺が追い求めていたのは、強さの先にある栄光ではない。
    ただ、彼女の隣に立つこと。
    その一心で、俺は走り続けた。
    神戸新聞杯を制し、彼女のいるシニア級への参戦も検討していた。
    このまま走り続ければ、いつか、きっと、彼女と肩を並べて走れると信じていた。
    だが運命は、あまりにも残酷だった。
    屈腱炎が判明した。
    俺の競走馬としての人生は、そこで終わりを告げた。
    絶望だった。
    俺はもう彼女の隣を走ることはできない。
    あの日の京都で見たあの瞳に、俺はもう二度と触れることができない。
    俺の心は、深い喪失感に苛まれた。
    だがその喪失感は、俺に思わぬ機会を与えた。

  • 5二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 02:00:20

    彼女もまた、あの日のレース以降調子を崩し、引退を決めていた。
    そして繁殖牝馬として、俺の前に現れた。
    運命のイタズラか、再び巡り会えた彼女にあの日の笑顔はなかった。
    ああ、ほんとは気づいていた。彼女の微笑みはいつも隣の男に向いていた。

    報われぬ愛。

    俺の思いも彼女の想いも次代へとつながる大きな流れの中であまりにも無力で。
    だが神は、俺に彼女の血を未来へ繋ぐという、新たな使命を与えた。
    彼女は、俺に身を委ねた。
    それは、血統という、抗うことのできない運命。
    彼女の心は、最後までトレーナーのものだった。

    俺は、彼女の全てを受け入れた。
    その身も、心も、そして血統も。
    それは誰にも言えない、神聖な儀式だった。
    彼女の悲しみも、絶望も、そしてその心の奥底にある、トレーナーへの一途な愛も。
    俺はその全てを、俺の愛で包み込もうとした。

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 02:02:33

    3章:愛の伝道師

    彼女の死後、余は変わった。
    ふふ、まさか、このキングカメハメハが、かくも脆い存在であったとはな。
    だが、余は気づいたのだ。
    愛は、決して死なぬ。
    愛は、形を変えこの世界に残り続ける。
    ならば余が、この愛を、この世に広めてみせようではないか!
    そう誓った余は、多くのウマ娘と交わるようになった。
    うふふ、皆は余を「種付け魔人」と呼んだな。
    だがその呼び名に、余は抗わなかった。
    むしろ、喜んで受け入れた。
    なぜなら、それは余が「愛の伝道師」としてこの世界に、愛を広めるための聖なる儀式なのだから!
    余の瞳は、官能的で、どこか退廃的な色合いを帯びていった。
    だがそれは、余の心の奥底にある、深い悲しみと孤独を隠すための鎧。
    交わるウマ娘一人一人に、余は、彼女の面影を探していたのかもしれない。

    余は、愛の伝道師。
    孤独な王として、愛を繋いでいく。
    その愛は、決して報われない。
    だがその愛は、永遠に、この世界に残り続ける。

  • 7二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 02:08:30

    4章:愛の継承者、アドマイヤグルーヴ

    ふふ、愛を繋ぐための聖なる儀式。余は、自らの血統をこの世に広めることに心血を注いだ。じゃが、そんな余の前に、またしても運命が姿を現すのだから、人生とは、うふふ、面白いものだな。
    アドマイヤグルーヴ。
    彼女は、家族を知らずに育ち、愛を否定するために、勝利だけを追い求めてきたそうな。しかし、あの年のティアラ三冠で、あの人と、彼女のトレーナーの絆に触れ、愛がもたらす強さというものを知ったと、そう聞いた。

    愛を知らぬ者と、愛を報われなかった者。なんと、滑稽な組み合わせだろうか。
    余は、彼女と結ばれた。彼女はまるで何かに導かれるかのように、余に身を委ねた。彼女の瞳は、最初は無関心であったが、その時、彼女は突然、余の頭をそっと撫でたのだ。何事かと動揺する余に、彼女は、静かに言った。
    「ごめんなさい、私あまりこういうの詳しくないのだけれど、貴方が悲しんでいる気がしたの」
    余は、声を上げて笑った。普段の芝居がかった声ではない。「ありがとう」ただ、そう言った。

    翌年は、二人の間に機会がなかった。しかしその翌年、再び機会がやってきた。余は彼女に語りかけた。
    「アドマイヤグルーヴ殿が勝利したエリザベス女王杯の日、あの日は余のデビューでもあってのう。実はあの場で見ておったのじゃ」
    彼女は、静かに耳を傾ける。「そうだったのね」
    そして、彼女は、余に微笑みかけた。
    「貴方を見てると、あの人を、スティルを思い出すの。不思議ね、全然似てないのに」
    彼女の言葉に余は息をのんだ。彼女は、あの日のレースで、あの人が流した涙の意味を知っている。あの人が、トレーナーとの絆がもたらす強さに触れた。そして、彼女自身愛を信じる希望を見出した。彼女の言葉は、余の心を震わせた。
    その瞳に、愛を繋ぐという使命の光が宿っていくのが、余には分かった。
    そして彼女は、余との間にドゥラメンテという、素晴らしい命を産み落とした。
    だが、彼女はその子を産んだ後、急に体調を崩した。
    余は、彼女の最期の瞬間に、声を絞り出すように告白した。

  • 8二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 02:10:04

    「アドマイヤグルーヴ殿、最後に聞いてくだされ。余の、いや、俺の懺悔です。
    俺は、過去にあの人とスティルインラブさんと結ばれました。
    俺はあの人に焦がれていました。
    運良く彼女の相手に選ばれたとき、足の怪我のことも忘れて喜びました。
    そしてあの日、俺の前に現れたあの人は、悲しそうな、泣き腫らした目を化粧で誤魔化した顔でした。
    俺は本当は知っていたのです。
    あの人の笑顔の先に誰がいるのか。
    だけど俺は、俺は、これは仕事だからって、決められたことだからって

    彼女を傷つけました

    誰にも話せませんでした。
    墓場まで持っていくつもりでした。あの人の友達だった貴方にも、こんな際まで隠していたんです」

    俺は彼女の手を握り、その身に泣いてすがりついた。今まで保ってきた鎧が剥がれている。
    だが彼女は、いつかのように頭の手を伸ばすと優しく撫でて、静かに微笑んだ。
    「あなたの愛は、確かに、伝わったわ」
    そう告げた彼女の声は、弱く、か細い。だがその声は、俺の胸に、深く、深く、刻み込まれた。彼女の穏やかな微笑みは、俺の胸に深く刻まれた。
    ふふ、何ということだ。愛を継承する使命を果たし、満足げに微笑む彼女の最期。

  • 9二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 02:12:30

    5章:孤独な王の晩年

    時は流れ、余は老いた。
    かつては、多くのウマ娘に囲まれ、華やかな生活を送っていた。
    じゃが、体は長年の種付けの疲労で、ぼろぼろだ。
    もはや種付けの中心に居続ける必要もない。
    若い世代が、余の築いた血統を受け継ぎ、次々とターフを駆け抜けていく。
    ふふ、皆、余が孤独だと思っているのだろうな。
    だが違う。
    余は、決して一人ではない。
    スティルへの報われなかった愛、そして、アドマイヤグルーヴが繋いでくれた愛。
    その全てが、ドゥラメンテをはじめとする、余の子や孫たちの血の中に、確かに流れている。
    余の孤独は、愛の物語を背負った者だけが味わえる、静かな誇りなのだ。
    夕陽の放牧場。
    余は、老いた体で、ただ静かに佇む。
    遠くで、若いウマ娘たちが、楽しそうに駆け回っている。
    彼らの瞳の中には、かつての俺と、そしてスティルのように、未来への希望が確かに宿っている。

  • 10二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 02:15:16

    このレスは削除されています

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 02:17:56

    終章:夢の再会
    最近は体の節々が痛む。衰えを感じながら、私は静かに目を閉じた。
    ふと目を覚ますと、体は若返り痛みはどこにもなかった。導かれるように歩くと、一人のウマ娘が静かに微笑んでいた。
    「久しぶり」
    短い一言は優しく響いた。
    「お、うむ。久しいの」
    「私相手なら普通にしゃべっていいんじゃない」
    「そ、うかな」
    「そうよ」
    アドマイヤグルーヴの言葉に、私はいつもの芝居がかった口調を捨てた。
    「よくがんばったわね」
    そう言って、彼女は、いつかのように私の頭を優しく撫でた。
    「俺は、ちゃんとやれたのかな」
    「わからないけど、後悔なくできたのでしょう」
    「かもな」
    彼女の言葉に、私の心は静かに満たされていく。
    「貴方に合わせたい人がいるの」
    アドマイヤグルーヴは、そう言って、遠くを指差した。
    「このまま真っ直ぐ進んで」


    彼女に別れを告げ、指示された方向に進む。
    光の先に誰かがいる。遠目だが、間違いない。
    知らず知らずのうちに、私の足は早歩きになっていた。
    細くて小柄で、どこか頼りないシルエット。
    足はどんどん速度を上げる。
    赤みがかった栗毛、独特な髪飾り。
    もう、全力で駆けていた。

    2019.8/9

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