- 1二次元好きの匿名さん21/09/19(日) 19:08:55
安田記念、十一着。その箸にも棒にもかからない着順を噛み締めた時に、身体からふっと力が抜けていくような感覚を覚えた。
「たくさんのウマ娘ちゃんと一緒に走りたい。」たとえ誰にふざけていると言われようとも、それがあたしの走る意味。
だから、「どんなレースでも走れるようにして見せる!」と笑顔を向けてくれた、いまのトレーナーさんと出会えたことは、これ以上なく幸運なことだったと思う。
万事恙無くはなくとも、順調ではあったはず。
勝ったり負けたりして、ダートの重賞を手にして、二人で作戦を練りに練り込み、ついにG1のタイトルを手に入れたときには、ウマ娘ちゃんのライブを見ているときと同じ……もしかしたらそれ以上の喜びがあった。
だけどそれから、思うようにいかなくなる。周りからのマークが厳しくなり、端から見ればふざけた理由で走るあたしへの蔑みが、耳にも届いてくるようになる。
目立たない、ただの重賞ウマ娘なら放っておかれたものを、G1を勝つことで「それにふさわしい行動や格」を求められることが増えた。
理事長や会長の思惑とは相反していようとも、それは少なからざる世論としてあたしたちを縛った。
今年に入って、一度もまともに走れていない。いつも、頭の片隅の靄がかった何かが、進もうとするあたしの足を重くした。
それでもなんとかもがこうとして、雪辱を期して出場した安田記念の結果が、これだ。
「デジたん、マジ凹みですよ……」
誰もいない控え室で、タオルを頭から被りながら、ぼそりと呟く。
もう、G1ウマ娘の名は地に落ちた。フロックでタイトルを掠め取ったウマ娘だと、一部が騒ぎ立てるだろう。
あたしへの蔑視はさらに深まる。一緒にいるトレーナーさんもそれに晒される……。
「これは……推し変、かな」
名前だけが悪い意味で売れて、実利は少ない、そんなあたしを担当する旨味なんて皆無に等しい。
仕方のないことだと思った。もしもトレーナーさんから言われたなら、笑って受け入れよう。言われなくたって、あたしから……。
「──いやだ」
頑張って笑おうとした顔がくしゃり、と歪んで、みっともない本音が漏れた。
──例え誰に蔑まれようとも、あの人にだけは推し続けてほしい。
……そうか。
あたしの走る意味は、いつの間にかもう、一つじゃなくなってたんだ。 - 2二次元好きの匿名さん21/09/19(日) 19:12:20
しっとりデジたんいいぞ…
- 3二次元好きの匿名さん21/09/19(日) 19:59:03
あっ好き
- 4二次元好きの匿名さん21/09/19(日) 20:00:24
名作の予感
- 5二次元好きの匿名さん21/09/19(日) 20:00:32
素晴らしい…
- 6二次元好きの匿名さん21/09/19(日) 20:01:32
お゛っ やべっちょっと惚れるッ!
- 7二次元好きの匿名さん21/09/19(日) 20:02:22
クソっどいつもこいつもデジたんのダイマしやがって!
好きだったのが大好きになっちまうだろ!続けろ! - 8二次元好きの匿名さん21/09/19(日) 20:08:42
なんだこいつ最高じゃないか!