【SS・閲覧注意】「トレセン学園ラブストーリー……?」

  • 1二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:34:27

    「たづなさん、なんですかこれ」
    「はい。トレセン学園の宣伝のために、ドラマを撮ってみようということになりまして」
    「ドラマ」
    「勧善懲悪ものや職場密着のドキュメントもよいかと思ったのですが」
    「なぜ勧善懲悪」
    「老若男女に受けるものですので」
    「そうですけども。トレセン学園に関係がなさすぎる」
    「職場をそのまま映すのも、あまりちゃんと描写するとそれはそれで宣伝にならなそうだなとは思ったんです」
    「えぇ……?」
    「ああいうのはふわっとした感じがいいですから、主題にするなら別な物がいいのではないかと」
    「それで恋愛ドラマ?なぜ?」
    「王道ですよね。トレーナーとウマ娘の恋愛もの」
    「そうでしょうか」
    「プリファイとか」
    「あれそうなんです?」
    「そうなんです」

  • 2二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:36:25

    そうだろうか。男トレーナー。別に恋愛ものは嫌いではないが、ウマ娘とそのトレーナーの恋愛を題材にして宣伝用の動画に使うというのはなかなか勇気がいるのではないか。
    そもそもウマ娘とトレーナーの関係はいろんな意味でセンシティブだ。
    ウマ娘の「ほぼ」全員は成人していない学生身分の少女たちである。一方学園のトレーナーは男女比がほぼ均等であり……当然、若い男性も一定数いる。
    ご多分に漏れず、若い男女が長い期間一緒にいると、それだけで問題が生じる。あるいはそれが美談になることもあるが、大体の場合、本当にただの胸糞の悪い問題になることが多い。
    ついこの間も、ウマ娘につきまとった男性トレーナーが再起不能になったとかなんとか。
    社会的世間的、そして法律的な処罰よりも単純な暴力沙汰が恐ろしいのがこの業界である。

  • 3二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:37:54

    「あとですね。ドラマといったらラブストーリーだと出演を打診したウマ娘から提案がありまして」
    「あっなんで俺にこの話が持ってこられたのかなんとなくわかりました」
    「というわけで」

    「ハァイ!トレーナー君のウマ娘、マルゼンスキーよ♪」

     ニコニコしながらブイサイン。見慣れたグンバツのプロポーションが学生服に悲鳴を上げさせている、そんな美女が上機嫌で飛び込んできた。

  • 4二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:40:50

    「こちらマルゼンスキーさんです」
    「見ればわかります」
    「んもう♪そんな蔑んだ目で見られると、お姉ちゃんちょっと興奮しちゃうゾ♪」
    「出演を依頼しましたマルゼンスキーさんからの強い要望がございましたので」
    「そんな要望はドブに捨ててください」
    「ですが学生の主体性を尊重するのが当学園の指導方針ですので」
    「脚本と方針ぐらい決めてから依頼してください」
    「ちなみに脚本案はラブストーリーも含めて複数ございましたが、マルゼンスキーさんがこちらを選ばれました」

    ぐうの音もでねえ。

  • 5二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:43:04

    「じゃあそれで撮影なりなんなりすればいいじゃないですか」
    「あれ?トレーナー君、ちょっとプッツン?」
    「トレーナーさんにしては珍しいですね」
    「そりゃ……」

    担当ウマ娘が恋愛もののドラマに出演するのは誰だって嫌でしょう、と言おうとして、そこで気づいた。
    それは決して当たり前の感情ではない。

  • 6二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:44:15

    よく考えてみたら、自分はマルゼンスキー……担当ウマ娘にとって仲の良い男女ではあるが、そういった意味で恋愛関係にあるわけではない。少なくとも、公にはしていない。
    いや違う。自分はただ、彼女のレースやトレーニングに責任を持つ教官として、このような多忙な時期に余計な義務を負わせた学園に少しイラついただけだ。
    だが、マルゼンスキーのレース予定はしばらく空いている。
    であれば。怒る理由はない。そうだ。

    「……いえ、失礼しました」
    「あっ無理やり感情をリセットしちゃった感じ?」
    「マルゼンスキー」
    「露骨に失言したなって思ってますねこれは」
    「たづなさん」

    マルゼンスキー一人であれば、比較的何か言えるが、たづなもいる。いつものような軽口を叩けば、むしろやりこめられかねない。この二人、なぜか呼吸があっている。比較的年齢が近いからだろうか……いや、言うほど近いか?

  • 7二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:45:17

    「いつも飄々としているトレーナーさんにしては珍しいですね」
    「人のことをいけ好かない男みたいに言わないでください」
    「そうよ?トレーナー君はこれで結構熱血漢なんだから!」
    「マルゼンスキー」

    てへっとか年甲斐もねえと思う一方で美女なのだから様になる。
    腹立つな本当。

    「……予定は後で連絡してください。こちらで彼女のトレーニングのスケジュールは合わせますので」
    「えっ?マルゼンスキーさんのトレーニング予定の調整だけでいいんですか?」
    「そうでしょう。彼女もトゥインクルシリーズの三年間を走り抜いた後とはいえ、まだ次のレースの出走予定もあるんですから」
    「あ、ではなく。業務も調整していただく必要もあるので」
    「へ?業務?誰の?」
    「トレーナーさんの業務です」
    「……んん?」

  • 8二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:50:46

    「トレーナーさんも出演するんですよ?」

    何言ってんだこの緑。

    「そうよ。私の相手はトレーナー君以外できるわけないじゃない」
    「……いや、だっ……れでもはできないけども。認めないけども。だけど俺以外でもできるだろ」
    「嫌よ。トレーナー君以外と恋愛物のドラマなんて」
    「……そっか」
    「そうよ?見くびらないでよ、あなたのウマ娘を」

    と、そこで。マルゼンスキーの顔がほころんだ。いや。にんまりと笑った。

  • 9二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:51:56

    「ふぅん……そういうこと?そういうこと?私がレースやトレーナー君の都合も考えず、ドラマへの出演を受けちゃったのに怒ったんだとばかり思ってたけどぉ」
    「……」
    「トレーナー君、もしかして。私が恋愛物のドラマに出演するのが、嫌だったのカナ?」
    「ああ……そういう」
    「……そんなことないぞ」
    「んもう♪そうならそう言ってくれればいいのに♪」
    「言ってないぞ」
    「嫉妬なんてかわいいんだからもう♪」
    「かわいくないぞ」
    「でも私のことは?」
    「かわいいぞ」
    「んもう♪」

    んもうんもう言うな。牛か。
    牛みたいなそれを押し付けるな。

  • 10二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:55:14

    「……」
    「ほらたづなさんが見てるぞ」
    「いいじゃなーい。見せつけましょ?」
    「そうですね、ちょっと恋愛ドラマの始まりにしては距離が近すぎますね」
    「……本気で撮影するんです?」
    「ええ。もう予算が降りているので」
    「予算あるなら本職雇いましょうよ。トレセン学園のコネならそんなの簡単でしょうに」
    「こういうものは素人っぽさがいいと思うんですよね」
    「いかがわしい動画じゃないんだから……」
    「私とトレーナー君は健全よね♪」
    「健全ではない関係でも問題ありません。マルゼンスキーさんは成人で一人暮らしですので、他の学生への影響も少ないと思います」
    「いや……いやいや」
    「実際そんな感じでイチャイチャしてる人もいますし」
    「えぇ……」
    「ちなみにそのイチャイチャしている方々にもドラマの打診をしたのですが、中央に利することはしたくないと断られました」
    「えぇ……?」

  • 11二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:56:47

    「ちなみにもう脚本は上がっています」
    「いやいやいや」
    「結構面白かったわよ?」
    「早くない……?対応早くない……?」
    「トレーナー君は私と恋愛ドラマで主演するの嫌かしら」
    「嫌か嫌じゃないかで言えばどっちかというと嫌な方に振れるなあ」
    「むー」
    「そりゃマルゼンスキーはライブとかで慣れてるかもしれないけども」
    「いいじゃない!私とトレーナー君でブイブイ言わせちゃいましょうよ!」
    「やっぱり俺は断ろうかと……」
    「ほら!せっかく脚本あるんだから読み合わせしましょ!」
    「いや……」
    「逃げられないのに覚悟を決めない男は嫌われちゃうゾ☆」
    「逃げられないのか……」

    「ほら、こっからね?」

  • 12二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:58:44

    ===
    常勝不敗のウマ娘。
    だが、ウマ娘はレースだけに勝てばいいわけではない。スポンサーとの顔合わせ、気に入らないことをトレーナーに庇ってもらったことでウマ娘は落ち込み、トレーナーもスポンサーについてよい感情を持てずにいた。
    夜、二人は帰路につく。
    公園。そこで浮かない顔のトレーナーを見たウマ娘は、無理やり笑顔を浮かべ、にこやかにこう言った。
    ===

  • 13二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 07:59:57

    「あー帰りましょ、帰りましょ。疲れたー!」
    「……ああ。帰ろう、ちゃんと飯食って」
    「歯を磨いて、毛布にくるまって」
    「寝よう、いい夢でもみて、さ」

    お互い笑顔を浮かべるウマ娘とトレーナー。

    「トレーナー君の夢でもみよっかな」

    いたずらっぽく笑うウマ娘。自然とトレーナーの顔も笑顔になる。

    「ああ……じゃあ、俺も」
    「ふふっ……」

    一歩、お互いに距離をとる。

    「じゃ」
    「また明日、ね」

    後ろを向き、そして。

    「……」
    「……」

    もう一度、向き直る。距離は10メートル。

  • 14二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 08:02:39

    「トレーナー君♪」
    「ん?」
    「トレーナー君♪」
    「……なんだよ」

    お互い笑顔。深夜のトレセン学園前には、彼らの声以外はない。

    「ね、トレーナー君」
    「……そろそろ帰ろう」
    「トレーナー君……」

    潤むウマ娘の顔。戸惑うトレーナー。一歩。お互いに歩を進める。
    そして―――

  • 15二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 08:06:25

    「ねえ、セック「はいストップ!!」
    「トレーナー君、セック「脚本家ぁ!!駿川たづな!!」

  • 16二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 08:08:11

    「んもう!トレーナー君!せっかくいいところだったのに!」
    「よくない!」
    「なんでよ!ここが一番の盛り上がりじゃない!」
    「盛り上がって言っちゃいけない言葉を言ってるんだよなぁ!!理事長のところに行く!抗議してやる!!」
    「いいえ、一般的には忌避するべき単語ではないと思いますが」
    「トレセン学園は10代前半の女の子もいるんだぞ!?」
    「でも私は成人よ?」
    「マルゼンスキーさんぐらいの年齢であれば、普通にしていることだと思います」
    「そういう問題じゃない!」
    「ちなみにここで主題歌が流れます」
    「トレンディだわ!」
    「トレンディだけどダメだろ!!」

  • 17二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 08:09:32

    その後本当にドラマが撮影されたのだが、公開されたかどうかは別の話。
    (どっとはらい)

  • 18二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 08:13:41
  • 19二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 10:52:05

    斜め上のイチャつき方してる…

  • 20二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 20:18:31

    >>10

    フリオーソの方は千葉テレビのドラマ枠でやるかもね

  • 21二次元好きの匿名さん25/09/04(木) 20:23:27

    トレセン学園が婚活会場だと勘違いする娘が発生しますねこれは…

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