【SS】Still She Cries

  • 1#ソバ123425/09/05(金) 17:42:31

    捏造ハッピーエンドなので注意

    「■い。と■■……■■も、幸せ■■た」
     
    微かに聞こえる彼女の声、最早今は頬を伝う一筋の水滴の感覚だけが俺の意識を持たせていた。
    彼女の走る姿に見惚れて、全てはそこから始まった運命。
    随分、彼女を自身のわがままに付き合わせてしまった。それでも“幸せ”と言ってくれたなら……ああ、ここまで来て良かった。
    ……いや違う。幸せ、彼女は言葉では確かに幸せと言った、しかし……

    (……しかし、ならこの頬の感触の理由はなんなんだ)

  • 2二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 17:44:15

    トリップ失敗してんぞ
    #は半角な

  • 3二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 17:45:02

    漏れちゃってるから違うトリップで立て直した方がいいぞ

  • 4◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 17:45:53

    トリップしくじった、ご指摘ありがとねぇ

  • 5◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 17:50:11

    トリップ変えたんでこのままいきます。


    気がつけば、ソファーの上に寝転がされていた。
    驚いたのは、先程までと打って変わって明瞭な意識にも有ったが、こんな事は“今まで” に無かったからだ。見る限りここは自室の様だが、一体今はいつなんだ……

    「これは……」

    この日付は、忘れもしない、彼女が金鯱賞を勝利した後、”彼女が本能を抑え込まず全てを解放して走り続けると決めたであろうあの時”だ。

  • 6◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 17:51:30

    (あの時の頬の冷たい感触、そして俺がこの時間に戻されているという事は……)

    その時、自身の犯してきた罪と、これから自分の為すべき事がハッキリと分かった。
    救いに行かなくてはならない、スティルインラヴを。他でもない俺自身がかけた呪いから。
    今でも鮮明に感じられるあの頬の感触が、”言うべきだった事”を教えてくれたから。

    家を飛び出して、あの時歩いた帰り道をひたすらに走った。彼女を、スティルを見つけるために。今度はもう待たせたりはしない。
    そして、やはりあの道に彼女はいた。どうやら彼女も何が起こったのか困惑していたらしい、そういった表情だった。

  • 7◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 17:52:34

    「トレーナー……さん、一体これはどういった……」
    「俺にもさっぱりだよ、でも……きっとこれは神様が与えてくれたチャンスなんじゃないかと思う。あの時、頬の感触に気づけたから。その意味を知れたから。スティル、君はあの時、本当に幸せだった?」
    「…!ええ、それは、とても、とても……」

    彼女があの時と同じ様に言った、その声を遮るようにして。

    「……ごめん!!!!!!!!!」
    「⁉」

  • 8◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 17:54:35

    俺は、スティルの苦しみを理解していたつもりだった。
    彼女が、自身の抑えられない” 本能”に苦しむ度、その本能に惹かれてしまった事に罪の意識を感じていた、だから「もうレースは走らなくていい」だなんて……あの優しいスティルがその言葉の先に隠された醜い”欲望”に気づかないはずがないのに。
    善人ぶりたかった。"優しいトレーナーさん”であろうとしていた。

    彼女が、必死にその本能をコントロールしようとして擦り減って来たのを見ていたのに、俺は欲望を抑えられないばかりか「守る」「俺だけは味方」そんな甘い言葉で覆い隠して逃げた。それがスティル自身の依存を加速させる言葉だと知っていたはずなのに。最低な男だ。

  • 9◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 17:55:56

    今まで言えなかった言葉たちが綴られていく。 

    「今まで噓をついてごめん。俺は君が傷ついていることを知りながら、君が本能のまま走る事を求めてしまった。そして今もそれは変わらない。」
    「……ええ、存じ上げています。ですから…」
    「違うんだ、俺はそんな自分のはしたない”衝動”に気付いていたのに、噓をついた!……君が見抜かないはずは無いのに。その言葉が優しい君を苦しめると分かっていたはずなのに!俺は独り善がりだったんだ。」

  • 10◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 17:57:52

    「それは違います!私が……何度貴方の優しさに救われてきた事か……」
    「俺もだ、俺もだよスティル。君のその優しさに、俺も今まで何度助けられたか分からない。だから、自分を押し殺して俺に報いろうだなんて、そんなことしなくていいんだ。君が思っているより、君は沢山の物を、俺に与えてくれていたんだよ。」
    「これだけの事を伝えるのに、こんなにかかってしまった。本当にごめん」

  • 11◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 17:59:55

    「……!でも、やはり貴方は私の“本能”の走りを望んでいるのでしょう⁉私がレース場で曝け出すあの狂気の血を!」

    その通りだ。この“衝動”は、スティルが持つ本能と同じ。魅せられてしまったが最後、これをなかったことにすることは出来ない。
    俺は彼女が“本能”のままに走る姿に惹かれ、愛してしまったのだ、それは今も変わらず、あの夜の記憶が今も心にまとわりついている。
    それにもし、彼女のそれをただ否定してレースを引退させたとしても、何も解決しないだろう。彼女の“本能“とはウマ娘が持って生まれた性であり、一生向き合って生きていかなければならないのだから。

  • 12◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:01:12

    「私は、その時貴方が見せる“本当の笑顔”を求めて止まないのです、三冠を取ったのも、レースに出るのも全てはその為で!」

    ああ、俺の"衝動”までもが彼女を縛り付けていた……。これを頭から否定しても、彼女を破壊してしまう。でも……

    「これは、トレーナーさんのせいではありません!私がしたいからしていることなんです!」

    「でもあの時君は泣いていただろう!!!!!!!!!」

  • 13◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:02:37

    「……それは!」

    腹の奥に力が籠る。今までスティルの葛藤した苦しみを思い浮かべるだけで、己のふがいなさに涙が出てきた。

    「あの時だけじゃない、出会った時も、これまでも、君は“ずっと泣いていた”んだろう!心の奥底に蓋をして閉じ込めながら!君は誰より優しいから!」
    「違います!悲しくなど……私は貴方を笑顔にさえ出来ればそれで…ですから、泣くのは辞めてください……貴方の笑顔が私の、一番の幸福なのです……」
    「俺もだ、俺もなんだよスティル。」
    「……え。」

    あの時言えなかった、あの時、“言うべきだった”言葉。

  • 14◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:04:16

    「俺は、確かに君が“本能”のまま走るあの姿を愛している。それは確かだしこれからも変わらない、変えられないんだと思う」
    「でも、俺が世界で一番嫌いな物、それは君の涙だ。君を泣かせるもの全てを、俺は君から遠ざけてあげたい。だからスティル、もう俺の笑顔を見るために自分を犠牲にするなんて、辞めよう。気付いてしまったんだ、君が苦しみながら走るところを見ても、もう心から笑うことは出来ない。」
    「トレーナーさん、そんな、ソンナコト……」

  • 15◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:06:47

    「ダ メ よ ♪」

    さっきまで涙ぐんでいた彼女の顔が、“あの顔”へと変わっていく。

    「トレーナーさん、本当に優しいお方……でも噓はつかないで。私を求めるその心は決して取り消せない、いずれその憎しみから押さえつけられた欲望が爆発するに決まっている……私達を取り巻く運命から逃れることは出来ないわ。」

    スティルの“本能”……確かにそうかもしれない。ウマ娘は別の世界の魂を受け継いで走るなんて言われもするが、その魂こそ、君なんだろう。そして俺は……さながらその魂と因果を持った同乗者。

    「トレーナーとウマ娘は、惹かれあう運命」
    「ええ、よくお分かりで♪それなら理解できるでしょう、この因果からは決して離れられない……」

    そうだ、俺とスティルインラヴは運命共同体。決して離れることなどできない。しかしならば……

  • 16◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:08:16

    「しかし、離れられないからこそ、トレーナーとウマ娘が真に一つになれば……」
    「……え」
    「俺たちを結び付けるものが、別世界の因果なのだとしたら……別の世界のスティルインラヴは、俺は、こんな結末を望むのか?あそこで俺たちが出会ったのは、きっと『報われなかったからこそ、この世界でくらい幸せを掴んで欲しい』と願う誰かの心があったからなはずだ。俺がこの時間に戻れたのも……きっとその思いのおかげなのかも」

  • 17◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:09:52

    「それに、理性と本能はお互いを食いつぶす為の存在じゃない。トレーナーとウマ娘も、またそうだ。俺達は、運命に対峙するパートナーであるはず。揃って同じ向きを向いて初めて、俺たちは運命のその先に歩いていけるんじゃないか?一つの、 “スティルインラヴ”になれば……。」
    「……スティルインラヴは短命の運命。これは絶対に変えられないわ。だから貴方を巻き込んで……そして永遠に二人で居られれば、それが“スティルインラヴ”という魂の幸福であるはず……」

    「……もう離れ離れにはなりたくない!!!!!!!!!」

    それが、初めて聞くことの出来た、魂からの叫び。そうか……こんな残酷な運命と、彼女らは独りで戦っていたのだ。

  • 18◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:13:24

    ……そこに並んで立ちたい。彼女が暖かな陽の光とそよ風の中で眠れるようになるために、彼女に安寧を与えるために君の心の傍にいたい。だから……

    「本当に、すまない……今まで君を独りにさせてしまった。これからは、おれがずっと君の心の傍にいるから。君の笑顔を、いつだって支えられるトレーナーになりたいんだ。」
    「もうこんな事は終わりにしよう。」
    「でも……!もし、ダメだったら……アタシ……」
    「……それでも、最後の時まで君が心から笑える、そんな人生にする。約束する」
    「……!そうね、それなら……他でもない、貴方がそう約束してくださるなら……」

    そう言い終わると、“本能”は鳴りを潜め……

    ……そこには、“スティルインラヴ”が佇んでいた。

  • 19◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:17:21

    「トレーナーさん、私、今までこんなはしたなくて醜い“本能”を受け入れて一つになるなど……出来ないとそう思い込んでいました。」
    「でもこんなの、今までにない感覚なんです。本能が、私と溶け込んでいく様な……私、怪物になってしまうのかも……」

    “本能”の彼女は納得してくれたようだが、スティルの理性がそれを拒んでいた。過去のトラウマがまだ彼女を縛り付けているのだ。

  • 20◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:20:21

    「……大丈夫、大丈夫だよ。君のその“本能”は他でもない君の為に備わっている物なんだよ。君を幸せにするために。でも怖いよな、いきなりこんな事言われても……君がこれまで恐れてきたものを受け入れろだなんて……」
    「……はい。恐ろしくて……たまらないです、とても」
    「でも、あの日二つに分かたれてから、私はこの子を恐れて壁を作ってしまっていた。どちらも同じ“スティルインラヴ”のはずなのに……私も、貴方と同じ様に善人ぶろうとしていたのかもしれません」

  • 21◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:24:24

    「だから、受け入れてみることにします。それに、もし私が狂ってしまっても……」
    「貴方が傍にいてくれると言ってくれたから」

    ー疎ましく感じていたはずの日差しが、今日は二人を祝福するように光を照り返させていた。

  • 22◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:26:35

    それからどれだけ経っただろうか。スティルは引退を取りやめ、まだレースに出ている。俺の為ではない、スティルと混じりあった“本能”が、やはり強者とのレースを望むようだ。
    だが、彼女は苦しそうではない。今の彼女の走りは、ひたむきにトレーニングを積んで完成させた美しいフォームに、彼女本来の闘争を求める心が混ざった……今までにない魅力を持っていた。その走りに、当然俺も惹かれていた。

  • 23◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:28:41

    「トレーナーさん、私の中で眠った“あの子”がまた求めているようです」
    「でも、やっぱり不思議……全く苦しくないなんて……」
    「スティル、次はどこへ行こうか。もっと君の事を色んな人に知って欲しい、好きになって欲しい。」
    「まぁ、そんな……私今はしたない顔をしていないでしょうか……」
    「大丈夫、いい笑顔をしてる」
    「うう……///」

  • 24◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:40:29

    「……トレーナーさん」
    「なんだ?」
    「私、今凄く幸せなんです。こんなに幸せで、いいんでしょうか。“あの子”を抱えながら、お日様の下で普通の女の子みたいな幸せを得てしまって……」
    「みんな、それを望んでいるはずだ、だからあの時“泣いている君”が見えたんだ」
    「……愛しております、いつまでも……」
    「俺もだよ」

    この先、スティルがどんな道筋を辿っていくのか。それはまだ分からない。
    しかし、運命は確実に分岐した。あと俺に出来ることは彼女の笑顔が途切れないよう支え続ける事だけだ。いつまでも、いつまでも……

  • 25二次元好きの匿名さん25/09/05(金) 18:43:11

    とても良いSSを読ませてくれてありがとう
    似たような解釈とIFを展開する人が自分以外にもいたんだなって……

    ただ、一つだけ言わせてくれ
    スティルインラヴではなくスティルインラブだ

  • 26◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:45:59

    最後まで読んでいただきありがとうございました。

    スティルの一連の話は、トレーナーとスティルインラブが輪廻を繰り返しているという解釈なのですが、その果てにこういった終わり方があってもいいんじゃないかと思います。(こうしないとあまりにも救われなさすぎる)

    >>25

    最悪のミスをしました。皆さん脳内変換でよろしくお願い致します。

  • 27◆3qRoe1Ijy225/09/05(金) 18:52:22

    Still She Cries

    書いてる間ずっとハートを押してくれていた方、ありがとうございました。読んでくれている方がいると分かるだけで大変心強かったです。

    これでやっと折り合いがつけられたので、もう一回スティルの育成してきます、ありがとうございました。

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