- 1◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:33:59
前スレ
🎲【閲覧注意】学P「初星バトルロワイアル……?」|あにまん掲示板あさり「はい、通称H.B.R……。アイドルの皆さんに dice1d3=@3 (3)@ を賭けて戦ってもらいます。」1 冬のH.I.Fの出場権2 プロデュース契約の続投3 命bbs.animanch.com落ちてしまったので新スレです。
星南・燐羽の話の途中で終わってしまったのでその話の最初から投稿し直します。
- 2◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:34:59
私の願いは、叶わないことばかりだ。
いつか焦がれ、向かい始めたあの空も、一度追い越してしまえば失っていくばかり。憧れも競争も、失望へと染まっていく。見上げる限りに広がっていた空は、突き抜けて見下ろした瞬間、ちっぽけだったのだと気付いた。
とうに太陽は沈んだ。煌めけどなお、返す光もありはしない。陽光を無くした鈍色の空は――いつか憧れたアイドルの道は、どうしようもなくくすんで見えた。
燐羽「……私も随分腑抜けたものね。」
みんなで歌いたいと思ったクラスの合唱コンクールでは、ある女の子が、私の隣で歌うのは嫌だと泣きながら訴えた。どうやら私には、"実力"だとか"才能"だとか呼ばれるものがあるらしい。
燐羽「私は元々一人だった。長い間、忘れていたわ。」
初星学園中等部。アイドルを志す者たちにとって、私の持つそれは喉から手が出るほど欲しかったものらしい。
羨望にも嫉妬にも晒され続け、そんな疲れるものから距離を置いているだけで、簡単に"一匹狼"は出来上がった。
歌うだけで他人様を傷付けるらしい私にとっては、与えられるべくして与えられた末路だ。
燐羽「そう思わない? 一番星さん。」
そして――ステージから見渡す先に、"彼女"はいた。
その手に金属製のメイスを携えて、客席から堂々と歩み寄る。 - 3◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:36:28
星南「どうかしら。私の知るステージ上のあなたは、ユニット活動をしている姿ばかりだもの。」
燐羽「あら、光栄ね。一番星に認知されていたなんて。」
星南「美鈴を生徒会に勧誘する時に、SyngUp!の映像は一通り目を通したわ。噂に違わぬ危なっかしいユニットだったけれど……。」
星南「中でもひと際、異彩を放つアイドルがいた。」
燐羽「手毬のことでしょう? 随分と目立っていたもの。」
星南「言ってなかったかしら。私の目は、アイドルの能力を見抜く。」
星南「才を隠すなら歌の中、といったところかしら。月村手毬の圧倒的な歌唱力の中ではその才能を疎まれることもないまま、あなたは中等部ナンバーワンユニットになれた。随分といい隠れ蓑を見つけたものね。」
しばしの静寂を、吹き荒れた一陣の風が撫でた。
言葉尻から醸し出る悪意は、幾度となく味わってきたものだ。
特に、初星学園を裏切った上で再び交換留学などという制度で戻ってきたのだ。
白草四音でなくとも、どっちつかずの蝙蝠女への愚痴のひとつも零れよう。 - 4二次元好きの匿名さん25/09/08(月) 22:37:34
待ってた
- 5◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:37:45
燐羽「…………それで、用事はそれでおしまい?」
星南「本題はここからよ。アイドル活動から離れ、実力を落とした今のあなたでも、その潜在能力は底が知れない。」
星南「かつての一番星、賀陽継をも凌駕するその才能――」
燐羽「……。」
星南「だからこそ、言わせてもらうわ。」
星南「今日は一番星、十王星南をもってしても……私が、挑戦者なのだと。」
それは宣戦布告であった。
鈍器を手に、よもやアイドル勝負を始める気でもあるまい。
そこに動揺が生まれたのは確かだ。初星学園生への慈愛に満ちたあの十王星南が、このようなプログラムに"乗って"いるのか、と。
だが、その動揺も瞬く間に一笑に付した。
初星学園の一番星がどのような人物であったとしても、もはや今さらどうでもいい。
けれど――命を狙われている現状は、到底看過できるものではない。
これはアイドルとか才能とか、そんな一切合切を抜きにした生存本能の話だ。
燐羽「へえ……あなたがそうくるのなら、喜んで正当防衛とさせてもらうわ。」
支給された刀を鞘から抜く。
抜き身になった刃を以て対峙してみれば、その場に生じる緊張感。
先に一歩を踏み出したのは星南の側。
土を踏みしめる鈍い靴音だけが、このステージにおける開戦の合図となった。 - 6◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:39:46
燐羽(っ……! 速……)
迫り来る攻撃は想像以上の速度だ。
平均身長を大きく上回る恵まれた体格。一番星の称号を与えられるに相応しい圧倒的なダンス力を可能とするだけのその筋肉量。まともなレッスンから離れて長い私の身体能力で、受け切れるだろうか。
大振りの一撃を前に回避は困難。なればこそ刀を横に構え、その一撃を受け止める。
火花が飛び、削り取られた金属粉が風に舞った。
燐羽「……チッ。」
痺れる腕と刃こぼれした刀から伝わってくる。
何度もこの押収を繰り返していては、刀が折れるのが先だ。
星南「まだまだっ!」
そこに優位を見出した星南は攻めの姿勢を止めない。
すでにアイドルとして"完成"しているその身体能力から振るうメイスの殴打は、武器の重量など感じさせないほどの速度を見せていた。 - 7◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:43:17
燐羽(だけど、甘い。)
力で押し勝てると確信した星南が取った方針は、精度を二の次にした、乱雑な攻撃の連打。
されど縦横無尽に振るわれるその切っ先の、ひとつひとつが致命傷になり得る理不尽。
まるで流星が辺り一面に降り注いでいるかのごとき光景。
燐羽「――見つけた。」
されど、流星が描くのは流線型のみ。
そこに最初から活路は開かれている。
星南「なっ……!」
燐羽が取った一手は"突き"であった。
直線的に振るわれた刀は振り回されるメイスの隙間を縫って星南の心臓に真っ直ぐ向かっていく。
確かに肉を削ぐ感覚が腕を伝うも、メイスを振り回す際に逸れた身体の軸により、心臓から僅かに逸れ、致命傷には至らない。捨て身の突撃に対し、メイスは燐羽の脇腹に確かに命中する。
両者の身体に耐え難い痛みが走る。アイドル活動と――否、これまでの人生と無縁だった痛み。
次に反射的に取る行動が逃避であるのも止むを得まい。
互いに大きくバックステップを行い、両者の間には再び、充分な距離が生じた。 - 8◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:44:57
星南「今のは危なかったわね。もう少し踏み込んでいたら、死んでいた。」
燐羽「自分の数値を過信しすぎなのよ。井の中の一番星?」
再び武器を構えて見据え合う両者。
燐羽(まだ戦意があるのね。)
死を直感させるだけの痛みを与えても、星南は引く様子がない。
"死にたくない"という至極真っ当な動機で殺し合いに乗っているのならば、その痛みこそ最も忌避して然るべきもののはず。
星南の戦う理由は、もっと別のところにあるのか。
燐羽(……よしましょう、こんなこと考えても、ノイズになるだけ。)
刺突による強襲は、敵が乱雑に攻撃を仕掛けてきたが故に成功したものに過ぎない。
警戒され、一撃の重みに"集中"を乗せられては通じないだろう。
だからといって、防御によるメイスへの対応も難しい。
刀の耐久力が持たないという話以前に、先の刺突を決めた代償に、左脇を大きく損傷した。
片腕で防御するには、相手の攻撃は重すぎる。 - 9◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:50:02
燐羽(だったら方針はシンプル。敵よりも速く、首を落とす。)
星南「……へえ。」
刀を鞘に納めた。
持ち上げ、振り下ろす――相手を斬るために本来必要なふたつの動作を、ひとつに纏める最速の構え――居合い。
星南がいかに腕力と体格に任せた速度の攻撃を行おうとも、メイスという重量物を扱う以上、速さには利がある。
防具の無い箇所にたたき込めば、お互いにお互いが一撃必殺。
遠隔武器も関与しないこの戦いに、両者の射程にも大差はない。
ならば、速さだけが要である。
交錯するその一瞬、射程に入る瞬間を狙いすまし―― - 10◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:51:27
燐羽「っ!?」
――集中を深める燐羽の眼前には、荒い軌道を描いて飛来するメイスがあった。
燐羽「しまっ――」
反射的に抜刀。
敵を叩き切るための構えは、飛来物への対処に使われた。
質量の塊とぶつかりあった刀はぽきりと音を立てて折れ、大地に転がる。
そして叩き落されたメイスの向こう、走り寄る星南の姿が映った。
手にしていた武器は投擲済み。
支給袋から新たな武器を取り出すほどの時間は与えていない。
そんな星南が攻撃に用いたものは――己の脚であった。
ダンスパフォーマンスを実現するために日々走り込みやレッスンで鍛えられたその脚は、金属によるコーティングなどなくとも、立派に凶器として成立する。
腹を蹴られ、悶絶するまでの痛みとともに、燐羽は背中から倒れ込んだ。
燐羽(……ここまで、かしら。)
1対1での戦いでそれだけの隙を晒すことが、いかなる結果に繋がるか。
その先は、語るまでもあるまい。
内臓を蹴られ、霞む意識の中――自身の死を確信しながら、私は走馬灯をみた。 - 11◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:57:12
■
――私の願いは、叶わないことばかりだ。
あの日焦がれた太陽はどこにもありはしない。
"実力"やら"才能"やらで周りの人を傷つけながら、くすんだ空で独り歌う私の、何がアイドルと呼べるのだろう。
そんな心地でいたから、だろうか。
『最後まで生き残った者……優勝者には、ひとつだけどんな願いでも可能な範囲で叶えてやろう。』
あの言葉にも、心は震えなかった。
どうせ叶うことなんてないと、諦めてすらいた。
星南に負けた理由も、それがすべてなのだろう。
私には、このプログラムを"勝ちたい"と思えるだけの理由が特に無いのだ。
勝って掴みたい願いなんて、何もない。
だけど、駆け巡る記憶は――たとえば、私のファンたちを佑芽に託すことができた、N.I.Aの一幕だった。
アイドルを引退するにあたり気がかりだった、ファンのみんなの行き先にひとつの着地点を与えることができた。
願いは叶わない、なんてずっと燻っていたけれど、そんな鬱屈を壊してくれる者はいるのだと――少し、ほんの少しだけ、思えたのだ。 - 12◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 22:58:36
燐羽(――なんて。今さら思い出しても、手遅れでしょうに。)
燐羽(死ぬのね、私。)
燐羽(きっとみんな、せいせいするんじゃないかしら。私、周りを傷つけてばかりだったものね。)
燐羽(でもきっと、あいつらは――)
走馬灯の果て、浮かんできた二つの憎たらしい顔があった。
秦谷美鈴と、月村手毬。
腐れ縁とばかりに、突き放しても離し切れない目障りな奴ら。
燐羽(私が死んだら、アイツらはどんな顔をするのかしら。) - 13◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 23:01:12
想像に容易いわね。
きっと美鈴は、勝手にいなくなった私に、怒るんでしょ。
極月に行ってから、ゆっくり話をする機会もなかったもの。
そして手毬は――泣くのでしょうね。
それで私が生き返るわけでもないのに。
人目も憚らず、子供みたいに――
ああ、本当に、今さらだ。
すべてが終わるその時になって、ようやく――
――死ぬわけにはいかない理由が、生まれてしまった。
■ - 14◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 23:03:28
星南「……なっ!?」
それは、死刑執行の瞬間だった。
背中から倒れ、悶絶のあまりに失神すらした燐羽は、まさにまな板の上の鯉も同然だったはずだ。
瞬時に落ちているメイスを拾い、振り上げているその時だった。
折れた刀の破片を直に鷲掴みし、それを星南へと突き出した。
折れた刃とメイスがぶつかり合う。
武器としての質も相性も、比べるまでもないだろう。
かつて刀だったものは砕け散り、それを粉砕しながらメイスは燐羽へと到達した。
されど、燐羽の最後に見せた意地を示すかの如く――メイスの中央からぴしりと、線状の亀裂が横一文字に走った。
砕けたメイスの一撃を顔面に受け、今度こそ大地に完全に倒れ伏していく。
星南「……驚いた。」
星南「最後の瞬間、まるで火が灯ったかのように、あなたのアイドルパワーが上昇したわ。」 - 15◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 23:06:17
星南「もしあの"熱意"を最初からあなたが出していたなら――殺し合いの行方はきっと違ったでしょうね。」
消えゆく意識の中で、星南の言葉を聞いた。
それは、命を奪う執行者にしてはとても弱弱しく、そして儚く。
星南「……でもあなたからその熱を奪ったのは、きっと――」
星南「――ごめんなさい。」
星南「あなたに……初星学園の皆に、言いたかった。」
ああ、本当に。
私の願いはいつも、叶わないことばかりだ。
星南「私を……一番星を目指しなさい、と。」
星南「あなたたちの夢は、ここにある、と……。」
夢も希望も、全てが潰えようとしているこの瞬間――
私が最も欲しかった言葉を。
この世界への希望となり得るひと言を。
手も届かないほどの、遥か遠くにチラつかせるのだから。
【賀陽燐羽 死亡】
【残り 14人】 - 16◆YYjiOMVygQ25/09/08(月) 23:13:50
【15:07 野外ステージ】
※ステージ上に剣と折れた刀が落ちている。
【十王星南】
状態:胸元に裂傷
持ち物:金属バット、メイス(亀裂アリ)、盾
行動方針:??? - 17二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 00:02:01
燐羽😭😭😭
- 18二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 07:27:08
保守
- 19二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 08:13:16
壱の型で決めることはできなかったか……
- 20◆YYjiOMVygQ25/09/09(火) 15:27:27
保守
次はことね千奈美鈴の予定です。 - 21二次元好きの匿名さん25/09/09(火) 21:10:18
星南が好戦的だったの、わりと意外。
- 22◆YYjiOMVygQ25/09/09(火) 22:48:24
ほしゅ
- 23二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 06:15:22
保守
- 24二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 12:43:15
このメンバーだと美鈴が容赦なくヤってきそうで怖いな…