オリキャラ同士をAIで戦わせるスレ 第八幕 其の二

  • 11◆ZEeB1LlpgE25/09/10(水) 17:15:51

    安価で出たオリキャラたちが戦っている様子をAIが短編小説化してそれを楽しむスレです。

    不定期進行な上AI生成の都合上納得のいかない結果になることもあります。

    下にあるまとめは歴代試合や設定に生かせそうな世界観などいろいろ載ってますのでぜひ活用してください


    まとめ↓

    オリキャラAIバトルスレ・アカシックレコード | WriteningオリキャラAIバトルスレのページやリンクをギュギュっと一つにまとめたページです。 このページの編集コードは「aiai」です。 新しいページやスレが作られた時は追加していっていただけると助かります キャ…writening.net

    ※版権キャラはそのままでは出さないでください

    ※閲覧注意が必要になるキャラは禁止です

    ※相手が能動的に突ける弱点を必ずつけてください。

    ※AIの生成によるインフレは仕方ないですがそうでない限り勝てないほど強くするのはやめてください。

    ※スレ内で死んだキャラはifルート以外では復活しません。命には非常にシビアです。

    ※ここに出たキャラクターは基本スレ内でのみフリー素材です。要望があるなら必ず設定と一緒に記載してください。

    ※コテハンを本スレでつけていいのはスレ主のみです。

  • 2二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:17:20

    たて乙です

  • 3二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:17:39

    立て乙!!

  • 4二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:17:41

    一応 前回の奴

    真価の主・アルゲートvsウス
    佐藤 昴vs悪朽 衰
    芳篠杏vsD・エクスター
    忌子母神vs八ツ辻 柱
    爆炎ヶ原頂天vsトロスト・ムッティ

  • 5二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:18:10

    ほしゅ

  • 6二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:18:22

    せねば

  • 7二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:19:26

    たておつです

  • 8二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:23:17

    たて乙

  • 9二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:23:30

    保守

  • 10二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:23:47

    これで10!

  • 11二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:32:18

    ありがとうございます

  • 12二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 17:49:12

    今日はどこまでやるかのぉ

  • 13二次元好きの匿名さん25/09/10(水) 20:42:54

    復 活 ‼︎

  • 14二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 00:06:15

    あげ

  • 151◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 00:35:48

    今日起きたら投下します

  • 16二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 04:29:41

    はやめほしゅ

  • 17二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 05:15:13

    楽しみだ

  • 18二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 06:26:39

    ワクワク

  • 19二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 06:31:34

    DOKIDOKI

  • 201◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:23:59

    題名『証人と願望機』

  • 211◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:24:31

    月の光が差し込む古い交易都市の広場。
    石畳に刻まれた無数の傷は、かつてここで交わされた取引や戦争の痕跡を思わせた。

    そこに二つの影が向かい合っていた。

    一人はまだ若き少年――ウス。
    首にかけたネックレスには《エク》のコアが揺れている。

    もう一人は、狐の頭に黒翼、八本の腕を持つ異形の紳士。
    スーツを着こなすその姿は、不気味さよりも格調を感じさせる。

    「やっと……見つけた」

    ウスは低く呟く。

    「君が《アルゲート》だな。願望器《キナ》と……人類を弄んできた大悪魔」

    アルゲートは微笑んだ。

    「はは、弄ぶとは随分な言い草だ。私はただ、商売をしてきただけですよ。人が求めるものを与え、その代価を頂戴する。それだけのこと」

    「……それでどれだけの人間が苦しんだと思ってる!」

    「存外、皆様満足していましたよ? 願望器も、私の品も、人類の望みを叶えてきた。ただ、その先が破滅だっただけ」

    アルゲートの声は落ち着いていて、敵意さえ柔らかく包んでいた。
    だが、その笑みに潜む圧倒的な自信が、ウスの胸をざわつかせる。

  • 221◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:24:41

    「僕は……祖先が作ったものの罪を止める。願望器を止め、君の取引も終わらせる!」

    「ほぅ……。若い意志はいつも眩しいですね」

    アルゲートは八本の腕を広げ、闇色の羽を広げた。

    「ですが、商談の場では理想ではなく“価値”こそが全て。さあ、君の真価……見せていただきましょう」

  • 231◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:25:03

    アルゲートの瞳が淡く輝き、狐面の奥で妖しい光を宿す。

    「――《真価観色》」

    その瞬間、ウスの全身を見えない視線が貫いた。
    肉体、精神、能力、血筋、潜在性、さらには《エク》の記録すら……全てを読み取られていく。

    「ふむ……。君は“未完成の願望器”。祖先の罪を背負いながらも、未来を諦めぬ意思……」

    アルゲートは口元を歪めた。

    「価格は――白金貨十枚。まだ青いが、磨けば宝石になる素材だ」

    「……俺を金で測るな!」

    ウスは即座に反応し、ネックレスを握りしめた。

    「《運命改変》!」

    一瞬、時間が揺らぎ、アルゲートの八本の腕が振り下ろした攻撃が寸前で巻き戻される。
    別の軌道に変化し、ウスは間一髪で回避していた。

    「おや……回避不可能なはずの一撃を覆すか。面白い」

    アルゲートは愉快そうに笑う。

    「ですが、それは有限の力でしょう。五度しか使えぬ保険を、こんな序盤で切るとは……」

  • 241◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:25:13

    「……黙れ。お前にこれ以上、誰かの願いを利用させたりはしない!」

    ウスは息を荒げ、全身に決意を込める。
    だがアルゲートは余裕の態度を崩さない。

    「ならば、次は商品のご提案を――」

    八本の腕が広がり、虚空に無数の契約書が浮かぶ。

    「《千価無量》――召喚。『古代竜の吐息を封じた壺』、一点。価格は白金貨三十枚」

    壺の口から噴き出したのは、世界を焼き尽くす紅蓮の炎。
    取引の名の下に、悪魔の宝物庫から災厄が放たれた。

  • 251◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:25:37

    咆哮のように吐き出された紅蓮の炎が、廃墟を一瞬で灼熱の地獄へと変えた。
    鉄骨が溶け、瓦礫が赤く爛れ、空気が歪む。

    「くっ……!」

    ウスは即座に身を翻し、《輪廻転生》の力を纏う。
    僅か二秒間、外界の干渉を無効化する結界が展開され、炎が皮膚を舐めても傷一つ付かない。

    しかし――。

    「ふむ、耐えたか。けれどその力、持続は二秒……クールタイムは十秒」

    アルゲートは冷静に告げ、炎の壺を軽やかに腕の一つへと戻した。
    八本の手は、まるで熟練の商人が帳簿を繰るように次々と動く。

    「ならば次は――《千価無量》。『冥王の銀鎖』、数量一点。価格は白金貨五十枚」

    虚空から引き出されたのは、光を吸い込むように黒く輝く鎖。
    振り下ろされた瞬間、まるで重力そのものを縛り付けるように、ウスの体を絡め取る。

    「ぐっ……!」

    足が床に縫い付けられたように動かない。
    全身が見えない圧力に押し潰され、骨が軋む音が響く。

    アルゲートは優雅に歩み寄り、胸元のブローチを指先で軽く叩いた。

  • 261◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:25:48

    「少年。君の《運命改変》も、《輪廻転生》も、有限。
     だが、私の宝物庫は底を見せぬ。……君はいつまで支払いを続けられる?」

    「……俺は、負けない……! ここで終わらせるわけには……いかないんだ!」

    ウスの瞳が決意に燃え、首から下げた《エク》が淡く光を帯び始める。
    アルゲートの眼差しが、それを値踏みするように細められた。

  • 271◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:26:43

    「さて、《運命改変》を用いたようだね……君の未来は、もう私の評価に晒されている」

    アルゲートは八本の腕を軽やかに動かし、空間から小箱を幾つも召喚した。
    「品名:命運の契約、数量:一、合計金額:白金貨千枚相当」

    「――なっ、なに……!?」

    ウスの目が見開かれ、胸元の《エク》が強烈に光った。
    しかしアルゲートは飄々と笑みを浮かべる。

    「これで君の命、完全に査定済みだ。再生した願いも、対価の対象になる」

    ウスは必死に体勢を整え、再び【運命改変】を使おうとする。
    だが、その直前、アルゲートの黒翼が闇を切り裂き、視界を遮った。

    「残念、少年。使用回数のカウントは私の評価表にも反映されている。
     次の一手で、命運は大きく傾く」

    八本の腕が螺旋状に回転し、ウスの周囲に「価値の網」が展開される。
    触れた者は、資産も命も、不可逆に査定される仕組みだ。

    「くっ……!」

    少年は《輪廻転生》を発動させ、攻撃の干渉を無効化しようとするが、わずか二秒しか耐えられない。
    その瞬間、アルゲートの一つの腕が鋭く差し伸べられ、《エク》の光を掬い取る。

    「対価集斂――これで君の資源も私の手中に」

    ウスの心に一瞬の恐怖が走る。
    だがその瞳には、決して諦めない光があった。

  • 281◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:26:54

    「……まだ終わらせるわけにはいかない!」

    しかしアルゲートは笑みを崩さず、次の宝物を召喚する。

    「さあ、次の商談だ――命の取立て、開始だよ」

    廃墟の静寂が、取引の苛烈さで引き裂かれる。
    ウスの運命は、完全にアルゲートの評価と価値の前に曝されていた――。

  • 291◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:27:38

    ウスは疲弊しきり、床に膝をついた。
    《エク》の光も弱まり、再生できる願いの残り回数はわずかとなっている。

    「これで終わりだね、少年」

    アルゲートは八本の腕を広げ、周囲の空間を静かに巻き込みながら、最後の宝物を取り出す。
    「品名:未来の運命、数量:一、合計金額:全資産+命の価値」

    「くっ……まだ、俺は……」

    必死の抗議も、アルゲートには届かない。
    黒翼が影を伸ばし、ウスの行動を制御する。
    千価無量の力により、世界はすでにアルゲートの評価軸に組み込まれていた。

    「君の資産も、願いも、命も……すべて私の手に」

    ウスは《婦怨無終》を発動させようとしたが、条件が整わず、肉体も損傷の連続で動けない。

    「――無理か……」

    アルゲートは柔らかく笑う。
    「安心して、これは損失じゃない。君も、良き商品として私の管理下に入るだけだ」

    その瞬間、ウスの周囲に金色の光が消え、身体は浮遊し、透明な箱の中に収められた。
    「さあ、取引完了――契約書代わりの箱に封入。全ての対価は回収済みだ」

    「俺……俺は……」

    抗う力はもう残っていなかった。
    しかし、アルゲートの顔には変わらぬ飄々とした笑み。

  • 301◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:27:48

    「新しい所有者も満足するだろう。君の存在も、商品として長く生かせる」

    世界は再び静寂を取り戻す。
    だが、その裏で、少しずつアルゲートの宝物庫に収まったウスの存在が、次なる商談を待っていた。

    「ふふ……これで全て、完了だね。君も、良き商品として、私の宝物庫で輝くことになる」

    廃墟に残されたのは、静けさと、冷たく整然とした秩序。
    アルゲートの取引は、今日も完璧に終了したのだった――。

  • 311◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:28:14

    以上

  • 321◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:52:02

    題名『創造の盟友』

  • 331◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 07:55:27

     ――夜。
     空気は重く、まるで世界そのものが病に侵されているかのように淀んでいた。

     灯りを失った商店街の路地はひび割れ、地面からは湿った埃が立ち上る。
     そこに、ひとりの男が立っていた。
     悪朽 衰。

     その肉体は人の形をしていながら、人としての整合性をとうに失っていた。
     皮膚は割れたガラスのように崩れ落ち、ところどころ空洞のように存在が欠けている。

     彼の歩みは遅い。だが、その一歩ごとに路地は劣化し、壁は錆び、街そのものが「老い」ていった。

    「……お……れは……欠け……ていく……」

     濁った声。
     彼がただそこに在るだけで、世界は悪化する。
     傷は深くなり、病は重くなり、石は脆く、鉄は朽ちる。
     悪朽の存在は、すでに一人の人間の能力という次元を越えていた。

     それはもはや現象。世界の法則に近づきつつある「厄災」だった。
     そんな崩壊の中心に――甲高い声が飛び込んできた。

    「フハハハハ! なんと! なんと素晴らしいシチュエーションだッ!」

     路地に、ひとりの少年が立っていた。
     16歳。黒髪に少し茶が混じり、どこか人懐っこい笑みを浮かべている――が、その目は常識の輝きとは無縁だった。
     瞳には「物語」が映り込み、彼の心は常に燃えている。

    「これは……! 新作のラスボス候補確定ッ! この僕のインスピレーションを震わせる宿敵……!
     ああ、神よありがとう! いや僕自身が神だったァァァ!」

  • 341◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:00:16

     佐藤 昴。
     今をときめくラノベ作家にして、超絶中二病の化身。

     自己肯定感は世界を突き抜け、挫けることを知らない。

     そんな彼は今日も、新たな物語のインスピレーションを探すために街を彷徨い――そして、出会ってしまった。

     彼は懐から金色のペンを抜き取り、まるで聖剣のように掲げる。
     背筋を反らし、無駄にかっこつけたポーズを決めながら叫んだ。

    「我が名は――具現の主ッ! 妄想を現実に変える至高の作家なり!
     貴様の崩壊……この僕の筆で、塗り替えてみせようッ!」

     叫びと同時に、空気が震える。
     少年のイマジネーションが形を帯び、空中に白い光が走った。

     光は凝縮し、一本の剣を成す。

     銀の刃には、細かく無駄なルーン文字や設定文がびっしりと刻まれ、柄には過剰な装飾が施されている。
     それは中二病全開の「創作武器」であった。

  • 351◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:02:28

    「……くだら……ん」

     悪朽 衰の濁声が、夜を震わせる。
     彼がその視線を向けると、昴の剣が黒ずみ始めた。
     鋭かった切っ先が鈍り、刃が欠け、光が濁る。

    「な……っ!? もう悪化してる!? 設定が崩れていくッ!?」

     昴は驚愕しながらも、すぐに口元を歪めて笑った。
     普通なら絶望する場面で、彼のテンションは逆に跳ね上がる。

    「……最高ォォ! これだよこれ! 創造と崩壊の対立!
     僕の剣を蝕むこの力……まさしくラスボス! ああ、燃える……ッ!」

     剣が崩れるたび、彼はさらに創造を重ねる。
     巨大な大砲、黒炎の槍、黄金の盾――次々に具現化しては、次々に黒ずみ崩れていく。
     だが昴は止まらない。

     そのテンションは常軌を逸しており、笑みを浮かべながら叫び続けた。

    「崩れる? 構わないッ! 僕は何度でも創り直すッ!
     僕のインスピレーションは無限だァ! お前が悪化させればさせるほど、僕の妄想は研ぎ澄まされるッ!
     そうだ……これは最高の執筆修行ッ!」

     彼は無駄に片足立ちし、意味もなく回転しながら槍を構える。

     悪朽の能力で槍はすぐに砕けたが――それでも昴は笑っていた。

  • 361◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:02:41

    「さあ、書き換えの幕開けだッ!
     崩壊のラスボス、悪朽 衰! お前を相手に、僕の物語は始まったァァァ!」

     夜の路地。
     一方は世界を壊す「悪化」の化身。
     一方は世界を楽しむ「具現」の化身。
     ――相容れぬ二つの力が、ついに激突する。

  • 371◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:05:40

     銀の剣は砕け、黒炎の槍は崩れ、黄金の盾は腐り落ちた。
     昴の創造物はすべて、悪朽 衰の「悪化」の力によって形を保てない。
     ――だが。

    「ハッハァ! 崩れる度に筆が走るッ! これは終わりじゃない、序章だッ!」

     昴は敗北感を欠片も見せず、むしろさらに昂ぶる。
     砕け散った武具の破片を、彼はまるでパズルのように拾い上げ、空に投げる。
     瞬間――破片同士が光を帯び、今度は巨大な翼へと姿を変えた。

    「見よッ! 堕天した創作者の翼ッ! 僕のインスピレーションが舞い上がる証だァ!」

     昴の背に白黒の翼が生え、路地の狭い空を強引に裂いて羽ばたく。
     瓦礫が舞い上がり、風圧により崩れかけの建物がさらに傾いた。

    「……くだらん」

     悪朽は低く呟き、空へと伸ばした指先で昴の翼を指す。
     すると翼の羽根は一枚、また一枚と黒ずみ、腐食して抜け落ちていった。

    「おっと!? 早速バグ発生! でもいい! 設定が綻ぶからこそリビルドが映えるッ!」

     昴は笑い、翼の欠損を逆に利用する。
     黒ずんだ部分を切り捨て、その穴から噴き出すように新たな武器を生成するのだ。

     翼の隙間から飛び出したのは――槍、剣、鎖、弓矢。
     それらはまるで鳥の羽根のように雨のごとく悪朽へ降り注いだ。

    「クハハハ! 空を裂く千の物語ッ! 全部まとめて喰らえッ!」

  • 381◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:08:16

     昴の叫びとともに、具現化された武器群が一斉に飛ぶ。

     だが――地に立つ悪朽は、微動だにしなかった。
     槍は錆び、剣は欠け、鎖は朽ち、矢は腐る。
     触れる前にすべて「悪化」して消え去る。
     それでも昴は止まらない。

    「消える? 腐る? 砕ける? いいぞォ! お前は最高だッ!
     僕の作品を否定し続けるラスボスッ! だから僕はもっと描けるッ!
     お前を超える結末を、必ず具現してやるッ!」

     彼はさらに想像を加速させる。
     背後に空想の戦場が展開し、幻の兵士たちが姿を現した。

     鎧に身を包んだ騎士団、黒き竜、蒼き魔導士――彼が書き連ねてきた作品の登場人物たちだ。
     昴の手が空を切るたびに、兵士たちは突撃し、魔法を放つ。

     だが、すべて同じ。
     悪朽の前に踏み込めば、その鎧は腐り、竜の翼は裂け、魔導士の杖は折れる。
     彼らは瓦解し、灰のように崩れ去る。

    「……無駄だ」

     悪朽の声は濁り、震え、ひどく弱々しい。
     だがその弱さすらも、世界を蝕む崩壊の響きだった。

     彼自身の肉体もまた限界に近い。
     口元から血を滴らせ、膝が震え、崩壊の速度は徐々に加速している。
     ――つまり、時間との勝負。
     悪朽が完全に「器」を失えば、その力は世界法則として覚醒する。

  • 391◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:08:52

     そうなれば昴の勝ち目は消える。
     だが昴は、そんな危機すらも楽しんでいた。

    「最高じゃないかァ……ッ! 僕の物語、最初からクライマックスッ!
     さあ――もっと崩してみせろ! お前の力を全部見せろよッ!
     僕の筆がッ! 燃え上がるからァァァ!」

     昴は大の字に両腕を広げ、まるで崩壊を歓迎するように立ち尽くす。

     次の瞬間、悪朽の視線が彼を捉え――
     昴の身体に、ひび割れが走った。

     皮膚が割れ、髪が色を失い、血が黒く濁っていく。
     悪化の力が、ついに彼自身を直撃したのだ。
     しかし――昴は笑った。

    「……来たなッ! これだよッ!
     自分すらも崩れながら、それをネタに物語を強化するッ!
     僕は作家ッ! どんな苦痛も! どんな絶望も! 全てストーリーに変えてやるッ!」

     少年のテンションは、崩壊を超えてなお燃え上がっていた。

  • 401◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:17:12

     街の瓦礫、崩れ落ちた建物、灰に染まる空。
     そのすべてを背に、昴は立ち上がる。

    「くっ……ふふふッ! まだまだ序章ッ! 僕の筆は止まらないッ!」

     黒ずみ、欠け、腐食――悪朽の悪化であらゆる創造物は形を保てない。

     だが、それを昴は逆手に取った。
     崩れた破片、腐った金属、砕けた石――それらを拾い上げ、想像力のままに再構築する。
     空想の力が現実を超えて反応する――

     瓦礫は巨大な龍の鱗へと変わり、崩れた鉄骨は鋼鉄の魔剣となって甦る。
     黒ずんだ羽根は、白銀と紅の混ざった炎の翼へと変化した。

    「ほらッ! これが僕の世界ッ! 崩れた世界の上でも、僕の創造は燃え続けるッ!」

     昴の声が路地に轟く。

     まるで街そのものが彼の舞台となり、瓦礫一つひとつが登場人物となって応じるかのようだった。
     悪朽の目が、かすかに揺れる。
     能力は無限に近く、すべてを悪化させる力を持つ――
     だが、昴の具現力はその悪化を包み込むかのように躍動する。

     崩れ落ちる瞬間に、彼の頭の中ではさらなるアイディアが爆発するのだ。

    「そうッ! その崩れ方ッ! 完璧だッ!
     僕の新キャラ設定の参考にするッ! 使えるッ! 超便利ッ!」

     翼を広げ、昴は瓦礫を組み合わせた幻の騎士団を操る。
     剣を持つ騎士、魔法を唱える魔導士、火竜の背に乗る戦士――

  • 411◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:18:11

     そのすべてが、悪朽の悪化による崩壊を前提に再構築され、より強靭な形へと進化していく。

    「見ろよ、世界! 崩壊を力に変えるのが真の作家ッ!」

     悪朽は苦しげにうめく。
     力を解き放とうとすると同時に、自身の肉体は悲鳴を上げる。

     胸から血が溢れ、膝が折れ、視界はさらに歪む――
     それでも力を止めず、世界を崩壊させようとする悪朽。

    「くっ……くっ……!」

     昴は悪朽の崩れかけた体を見て、冷静に観察する。
     崩壊の速度、腐敗の進行、吐血の頻度――すべてがインスピレーションになる。
     破片の形、色、軌道、崩壊のタイミング――すべては具現化するための素材だ。

    「そうだ……これだッ! 絶望の瞬間を描くッ!
     破片の一つ一つが物語の登場人物ッ! 倒される瞬間もまた、次の創造の材料になるッ!」

     昴の手から、破片が再び光を帯びて飛び出す。
     しかし今回は違う。

     崩壊した破片の一枚一枚が、彼の中二病設定の強烈な武具へと変貌していくのだ。
     漆黒の刃、紅の槍、光の盾――あらゆる破片が融合し、想像の世界の法則で圧倒的な力を持つ創造物へと生まれ変わった。

    「さあッ! 崩れよ、悪の世界ッ! 僕の物語の舞台へようこそッ!」

     昴の周囲には、崩壊と創造が入り混じる異様な光景が広がった。
     悪朽の力がどれほど強大でも、ここまで組み上げられた昴の具現力には抗えない。
     崩壊の瞬間を利用し、次々と生まれる武器と兵士たちは、悪朽の攻撃を受け止め、反撃を可能にする。

  • 421◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:18:25

     悪朽の呼吸は乱れ、体の崩壊はさらに加速する。
     それでも彼は立ち上がろうとするが――

     瓦礫の剣、炎の翼、蒼き魔導士――昴の創造物が容赦なく襲いかかる。

    「ハハハハッ! ここが最高潮だッ! 僕の物語、止めることは誰にもできないッ!
     お前を倒すのも、ただの序章ッ! 僕と友達になって、次は共に世界を描こうッ!」

     その瞬間、悪朽は崩壊の限界に達し――

     体の残存部分が最後の光を失い、空間に散った。
     悪化の力は、最期の瞬間まで昴の具現力に押し返され、世界に解き放たれることはなかった。

     昴は息を整え、瓦礫の上に立つ。
     空には白銀と紅の光が渦を巻き、破片はまるで祝福のように舞い上がる。

    「フフフ……やったなッ! お前も僕の最高の素材だッ!
     さあ、友達になろうッ! 一緒に物語を描くんだッ!」

     崩れ去った悪朽は、もはや敵ではなく、昴の新キャラ設定の一部となった。
     中二病全開の少年は、今日も世界を楽しみ、創造の筆を止めない――

  • 431◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:21:06

     街は戦場と化していた。
     瓦礫、崩れ落ちた建物、割れたガラスの光――すべてが昴の舞台であり、創造のキャンバスだ。

    「さあッ! 僕の世界はまだまだこれからッ!」

     昴の手元で、破片が光を帯びて集まり、形を変える。

     瓦礫は鎧を纏った戦士たちに、砕けた石柱は巨大な魔導具に変貌する。
     赤と黒の光の渦が、彼のインスピレーションに呼応して躍動する。

    「おおッ! 完璧だッ! この動きッ! この形ッ! 新キャラ設定に最高ッ!」

     少年の声は高らかに街に響き渡る。
     具現化された存在たちは、まるで意志を持つかのように動き出し、昴の想像を現実に押し付ける。

     壊れかけの街の瓦礫は、そのまま彼の軍団となり、攻撃を避ける悪朽の残滓すらも封じ込める。

    「おおおッ! もっともっとッ! 限界なんてないッ!」

     昴の頭の中には無数のアイディアが沸き上がる。
     剣、槍、盾、魔法、炎、氷――ありとあらゆるものが同時に、完璧な形で現実へと変わる。

     悪朽の能力「悪化」は、もはや昴の舞台ではただの素材に過ぎない。
     街中の破片は、次々と昴の思い描く理想の戦士やモンスターへと変化する。

     瓦礫の槍は炎を放つ竜に、壊れた窓ガラスは鋭い光の矢に。
     悪朽の力で崩壊し続ける世界が、逆に昴の具現力によって最強の武器庫へと変貌したのだ。

  • 441◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:21:56

    「ほらッ! もっと見せてくれよ、崩壊の美学ッ!」

     少年の叫びに応えるかのように、街の破片が空中で舞い、光と影のダンスを繰り広げる。

     瓦礫の戦士たちは、破片で形成された剣や盾を使い、悪朽の残滓を次々と封じ込める。
     崩壊の影響を受けた空間さえ、昴の具現化により秩序を取り戻すかのように安定する。

    「これが僕の創造ッ! 破壊を力に変えるッ! 最高のインスピレーションだッ!」

     悪朽の残滓は必死に抵抗する。
     悪化の波動が街を侵食し、破片を腐食させ、戦士たちを揺るがす。

     だが、昴の具現化はその上を行く。
     壊れた建物が逆に巨大な拳となり、瓦礫の戦士たちがそれを支え、悪朽の残滓に向かって一斉に襲いかかる。

    「うおおおッ! もっとッ! 全部、僕の世界に変えろッ!」

     街全体が、昴のインスピレーションに呼応して動き出す。

     破片の一つ一つが意思を持ち、戦士となり、剣となり、魔法となる。
     その光景は、崩壊と創造が入り混じる狂宴――まさに「具現化の狂宴」と呼ぶに相応しい。

  • 451◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:22:17

     悪朽の存在は限界に達し、体の崩壊はさらに加速する。

     力を解き放とうとするたび、肉体が悲鳴を上げる。
     吐血、骨の崩壊、視力の喪失――それでも悪化の波動を放ち続けるが、昴の具現力の前ではただの演出に過ぎなかった。

    「フハハハッ! これが僕の力ッ! お前も世界も、すべて僕の舞台ッ!」

     昴の声が空間に響き渡る。
     街全体が彼の舞台となり、崩壊の残滓は具現化の奔流に押し流される。

     そして最後の一撃、瓦礫の戦士たちが悪朽の残滓を完全に封じ込めた瞬間――
     静寂が訪れる。

     破片は舞い散り、街は奇妙な美しさを湛える。
     崩壊も悪化も、昴の具現力によって「物語の一部」として昇華されたのだ。

    「やったッ! 完璧だッ! 最高ッ!
     君も……僕の友達にするッ! 一緒に新しい物語を描こうッ!」

     崩壊寸前だった悪朽の残滓は、もはや敵ではなく、昴の創造世界の一部として生まれ変わった。
     中二病全開の少年は、今日も世界を舞台に創造の狂宴を繰り広げる――

  • 461◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:24:29

     瓦礫と光の渦巻く街――その中心で、昴の目は輝きを増していた。
     崩壊寸前の悪朽が、苦悶の表情で力を解き放そうとする。だが、昴のインスピレーションはその一歩先を行く。

    「よしッ! ここからが本番だッ! 僕のイマジネーション、頂点まで突き抜けるッ!」

     昴は叫ぶと同時に、頭の中の創造力が爆発的に溢れ出す。

     空間を割り、瓦礫をねじ曲げ、光と闇の衝撃波が街を覆う。
     具現化された戦士たち、魔導具、剣や槍、炎と氷――すべてが彼の意思に応えて躍動する。

    「おおおッ! 想像が現実を超えるッ! これぞ僕の中二病の力ッ!」

     昴の脳内に眠る【厄災】の力が目覚める。
     それは彼の創造物に更なる圧倒的な威力を与える――瓦礫の戦士たちの拳が空間を割り、魔導具が光と音の洪水を巻き起こす。

     悪朽の悪化の波動も、もはや昴の創造物の舞踏の中で溶けるように無力化されていった。
     悪朽は必死に抵抗する。

     「悪化」を放つたびに、自らの体が崩壊していく。
     吐血、骨の断裂、視界の喪失――それでも戦い続ける姿は哀れだが、同時に昴の創造力を引き立てる舞台装置となる。

    「おおッ、いいねぇッ! 君の絶望も、この舞台の一部だッ!」

     昴はさらに想像力を加速させる。

  • 471◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:24:51

     自らの中二病的世界観を最大限に引き出し、無数の剣や魔導書、炎や光の魔法陣が一斉に悪朽へ襲いかかる。
     瓦礫の戦士たちは悪朽を完全に取り囲み、逃げ場を封じる。

    「ここで終わらせるッ! 僕の世界に染まれッ!」

     街の崩壊も悪朽の悪化も、昴のインスピレーションによって逆転した。

     崩壊の波が昴の創造力によって具現化され、まるで芸術作品のように美しく、しかし圧倒的な力で悪朽を押し込める。

     悪朽の残滓はついに力を失い、最後の呻きが街に響く。
     だが、昴は剣を振り下ろすことなく、彼を包む光の渦の中で止めた。

    「フハハッ! 僕の世界では、殺さないッ!
     よく頑張ったね、君ッ! さあ、友達になろうッ!」

     崩壊しかけていた悪朽は、昴の具現力により救われた形となる。
     瓦礫の戦士たちが静かに姿を消し、街は奇妙な静寂に包まれる。

     少年の目には、悪朽もまたこの世界の「新しい物語」の一部として生まれ変わった存在として映っていた。

    「さあッ! これで僕の舞台は完成ッ!
     君と一緒に、新しい物語を創造するんだッ! 最高にワクワクするねッ!」

     中二病全開の少年の声が、街の廃墟に高らかに響き渡る。
     そして、悪朽もまたその光景を受け入れ、友として昴の隣に立つ――

  • 481◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:27:36

     戦いの渦が静まり、瓦礫と光が交錯していた街の中心で、昴は深呼吸を一つ。

     目の前には、崩壊寸前だった悪朽衰が立っていた。全身の破片はまだいくつか欠けているものの、動ける程度には回復している。

    「ふふっ、やったねッ! 君、無事だッ!」

     昴は叫ぶように言うと、駆け寄りながらその肩を軽く叩いた。
     悪朽はまだぎこちなく、視線を周囲に彷徨わせている。まるで、自分がどこにいるのかを確認しているかのようだった。

    「……俺、俺……? ここは……?」

     悪朽の声はかすかに震えている。崩壊の痛みと恐怖がまだ残っているのだ。

    「安心して! 僕の創造した世界にいるんだッ!
     そして、君はこれから僕の友達だッ! 一緒に物語を作ろうッ!」

     昴の目は輝きに満ち、全力の笑顔を向ける。そのエネルギーは言葉以上に悪朽に届いた。
     悪朽は最初、困惑した表情で立ち尽くす。しかし、昴の圧倒的なポジティブさと純粋な中二病力の波に、次第に緊張がほぐれていく。

     彼の体はまだ崩れかけているが、昴が具現化した光と魔導の渦が、破片の欠損を補い、包み込むように癒していた。

    「…こんな世界が……あるんだ……」

     かすれた声で呟いた悪朽を、昴は力強く励ます。

    「そうだよッ! 君だってここにいるんだッ! さあ、僕と一緒に楽しいことをしようッ!
     戦うだけじゃなく、想像の中で自由に世界を創れるんだッ!」

     昴の言葉に悪朽の目が徐々に光を取り戻す。戦闘による痛み、崩壊寸前の絶望――それらを越えて、初めて彼の存在が安心感に包まれた瞬間だった。

  • 491◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:27:49

     その後、二人は街の廃墟を舞台に、想像の具現化を試みる。
     昴が手をかざすと、空に巨大な魔法陣が浮かび上がり、瓦礫が整然と再配置される。

     悪朽はまだぎこちない手つきで、昴の周囲に小さな光の球を浮かべる。
     初めての協力――その光景は、どこか幻想的で、しかし温かい。

    「ほらッ、こうやって一緒に作ると楽しいねッ!」

     昴は少年特有のテンションで声を張る。目は輝き、笑顔は全開だ。
     悪朽も、かすかにだが微笑むような仕草を見せた。

     「……君となら……俺も……世界を……」

     ぎこちなく言葉を紡ぐその声に、昴はすかさず答える。

    「うんッ! 一緒に、新しい物語を描こうッ!
     僕たちなら、どんな絶望も、どんな崩壊も、面白い舞台に変えられるッ!」

     二人の背後で、崩れかけた街が静かに、しかし確実に再生され始める。
     瓦礫は光の中で整列し、空には無数の魔導紋が描かれ、風景全体が二人の協力によって作られた新しい世界の一部となった。

    「さあッ、これからだよッ! 僕の中二病力、全開で世界を遊び尽くすッ!」

     昴は手を広げ、視界いっぱいに広がる光と創造物を見渡す。

     悪朽はまだぎこちない動きだが、その眼差しには、かすかに希望の色が宿る。
     かつて崩壊寸前だった存在は、今や昴の友として、新たな物語の幕開けに立っていた。

     そして二人は、戦うことではなく、創ることで世界を楽しむ――そんな、これまでにない冒険を始めたのである。

  • 501◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:28:01

    以上

  • 51二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 08:30:54

    どう足掻いても死ぬように作ったキャラが……

  • 521◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 08:50:01

    >>51

    両方叶えるのは無理だったのでAIにゆだねた結果こうなりました

    申し訳ないです

  • 53二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 09:16:00

    このレスは削除されています

  • 541◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:36:50

    題名『月光下の柔掌』

  • 551◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:37:28

    夜の街は静まり返り、月光が廃倉庫の壁面に冷たく反射していた。

    その片隅に立つ、巨大な影――芳篠杏。

    黒と白のパンダの着ぐるみに身を包み、身長は190センチ近い。柔らかな毛のような装いは、夜の街では異様な存在感を放っている。

    杏は小さく肩を震わせながら、口を開いた。

    「……あの……誰も……いませんよね……?」

    声は小さく、かすれ、まるで囁きのようだ。しかしその瞳には、強い意思が光っていた。
    杏は静かに拳を握り、呼吸を整える。八卦掌の構えを取る。円を描くような動きは、攻撃も防御も自在にこなす準備だ。

    だが、静けさを破るように、ふわりと香りが漂った。

    「おおっほほほ!そこにいるのは……かわいいパンダちゃんかしら~?」

    満月のようにふくよかで、煌びやかな衣装を身にまとったD・エクスターが、笑顔と共に現れる。背後には星型の魔法陣が浮かび、天巡る龍脈のエネルギーを吸い上げている。

    「わたくしはD・エクスターよ。よろしくお願いね、パンダちゃん♡」

    杏はぎこちなく一歩踏み出す。

    「……わ、私は……芳篠……杏です……」

    大きな着ぐるみの手をぎゅっと握りしめ、心を落ち着ける。内功で気を巡らせ、反応速度を高める。どんな攻撃でも受け流し、瞬時に反撃する――そのための準備は整っていた。

    「ふむふむ、ほほ~、なかなかの構えじゃないの♡」

    エクスターは背後の魔法陣に足を踏み入れ、ゆっくりと手を掲げる。

  • 561◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:37:44

    「いくわよ~♡ トリプルゼロの準備、完了~♡」

    その瞬間、杏は気を張り巡らせ、周囲の空気の微細な揺れまで捉える。

    「……絶対、負けない……」

    円を描くように手を構え、まるで生き物のように動き始める。気の奔流を掌に纏わせ、攻撃にも防御にも変化させる準備を整えた。

    月明かりの下、巨大パンダの着ぐるみを着た少女と、満月のごとき精霊――二人の間には、わずか数十メートルの距離しかない。

    静寂は一瞬の嵐の前触れ。

    戦いの鐘は、すでに鳴ろうとしていた。

  • 571◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:41:23

    月光に照らされた廃倉庫街。
    風に揺れる埃が、地面に淡い影を落としている。

    芳篠杏は静かに足を踏み出した。
    パンダの着ぐるみが夜の闇に溶け込み、まるで巨体の影が滑るかのように動く。

    「……ここからは……逃げられない……」

    内心でそう呟きながら、杏は呼吸を整えた。
    八卦掌の円を描く動きと、気の流れの調整――全身の感覚を研ぎ澄ます。
    わずかに手を前に出すと、掌の内側で気が柔らかく渦を巻き始めた。

    一方のD・エクスターは、満月のような膨らみを揺らし、ゆったりと構えを取る。
    背後の魔法陣が淡く光を放ち、龍脈から膨大な魔力を吸い上げている。

    「おおっほほ♡ やっと来たわね、パンダちゃん♡
     見せてちょうだい、その腕前~♡」

    エクスターはにっこりと笑い、手を大きく振る。
    気配に惑わされず、杏は小さく頷き、踏み込みを強めた。

    「……ここで……止まれない……」

    踏み込むたびに気の流れが体を巡る。
    柔らかな動きから生まれる円運動の掌底は、いかなる攻撃も受け流す力を持つ。
    杏の足取りは軽やかでありながら、重心はしっかりと地に根を張っていた。

  • 581◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:41:34

    「おっと♡ その動き、なかなかいいじゃない~♡
     でも、わたくしも手を抜かないわよ~♡」

    エクスターは手を高く掲げ、背後の魔法陣の光が強くなった。
    その光がゆらめく間に、周囲の空気が熱を帯びる。
    「トリプルゼロ……あと、2分半でフルチャージよ~♡」

    杏は間合いを詰め、柔掌を放った。
    掌底がエクスターに向かって迫る――その動きは円を描き、相手の防御をいなしつつ気を送り込む。

    「……これで……どうか……」

    エクスターはその掌を受け止め、体を大きく揺らしながらも笑顔を絶やさない。

    「おおっほほ♡ ふむふむ、なかなかの力ね~♡
     でも、この体、そう簡単には崩れないわよ~♡」

    衝撃が地面に伝わり、周囲の瓦礫が微かに揺れる。
    杏の動きは俊敏だが、重心の制約、呼吸の微妙な乱れ――小さな隙も存在する。
    それでも、彼女の内面には揺るぎない意志があった。

    「……大切なものの為なら……負けられない……」

    一瞬の静寂の後、二人の間に次の波が迫る――
    杏はさらに高速で接近し、円運動から変幻自在の柔掌を繰り出す。
    エクスターは満月のごとき膨らみを揺らし、魔法陣の光を増幅させ、巨大なビームの準備を着々と進める。

    月夜の廃倉庫街。
    静かだった闘いの舞台は、今、熱を帯びていく――

  • 591◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:42:44

    廃倉庫街に、かすかな風が吹き抜ける。

    芳篠杏は深く呼吸を整え、気を掌底に集中させた。
    円を描くように動く手が、空気を切り裂き、目には見えぬ渦が形成される。

    「……行くわ……」

    その瞬間、杏の柔掌が光のように滑らかに回転し、エクスターに向かって迫った。
    掌底に込められた気は、触れた相手の内部を揺さぶる――どんな防御も、内側から崩す力を秘めている。

    「おおっほほ♡ ふむふむ、やるじゃないの、パンダちゃん♡」

    エクスターは満面の笑みを浮かべ、両手を広げて受け止める。
    魔法陣の光が強く揺れ、ビームのエネルギーが微かに震動する。

    「トリプルゼロ、あと……2分を切ったわ~♡
     この間に……どうにかなるかしら~♡」

    杏は回避の動きを交えながら、柔掌で攻撃を繰り出す。
    円を描く掌が空気の抵抗を受け、指先から指先まで気が連鎖して波動となる。
    それは相手の力を外へ逃がさず、逆に返す――まるで戦闘が呼吸のように流れているかのようだった。

    「……負けない……絶対……」

    エクスターは一瞬、動きを止めるが、膨らんだ体躯を揺らして反撃の構えを取る。

    「おおっほ♡ その力、十分に感じたわ~♡
     でも、わたくしのこの体、そう簡単には揺らがないのよ~♡」

    その言葉と同時に、背後の魔法陣が光を増し、龍脈からのエネルギーが濁流のように集まる。

  • 601◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:42:56

    「あと1分半……よし、この勢いでフルチャージを……♡」

    杏は掌の回転を変化させ、微妙な角度で相手の防御を撹乱する。

    「……これで……どうか……!」

    掌底がエクスターの腹部へ触れる寸前、微かな衝撃が伝わる。
    エクスターの膨らんだ体が揺れるが、彼女は笑顔を崩さない。

    「おおっほほ♡ ふむふむ、パンダちゃん……やるわね~♡
     でも、ビームを止めるほどじゃないわ~♡」

    その時、魔法陣の光が一瞬鋭く光り、チャージの兆しが明確に見えた。
    杏は気を張り巡らせ、瞬時に周囲の空気の変化を読む。

    「……チャージ……されてる……でも……まだ間に合う……」

    月明かりに照らされた二人の間で、戦いはますます加速していく。
    柔掌の反撃と、スターキャノンの準備――静かな街に、迫力ある緊張が満ちていた。

    杏の瞳は揺らがない。

    「……大切なものを……守るためなら……!」

    一瞬の隙も見逃さず、次の一手を狙う――その目に、決意の炎が揺らめく。

  • 611◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:44:16

    廃倉庫街に漂う夜気は、月光に溶け込む淡い銀色に輝いていた。

    芳篠杏は静かに踏み込み、柔掌の円運動をさらに加速させる。
    その手からは気の流れが渦を巻き、まるで目に見える波紋のように相手に迫った。

    「……ここで……止める……!」

    掌底が空気を切り裂き、エクスターの前に高速で迫る。
    その瞬間、エクスターは軽やかに膨らんだ体を揺らし、魔法陣の光を最大限に増幅させる。

    「おおっほほ♡ その力……十分に感じたわ~♡
     でも、このビームは止められないわよ~♡」

    背後の魔法陣が光を帯び、龍脈のエネルギーを一条の線に束ねる。

    「トリプルゼロ、あと1分……順調にチャージ中~♡」

    杏は掌を連続して繰り出し、円を描きつつ反撃する。
    気の波動はエクスターの体表を揺さぶり、内部から崩す力を秘めていた。

    「……絶対……負けない……」

    エクスターは笑顔を浮かべながらも、わずかに体を揺らして受け流す。

    「おおっほほ♡ やるわね~パンダちゃん♡
     でも、この体……そう簡単には崩れないのよ~♡」

    しかし杏はひるまない。呼吸を整え、気の巡りをさらに加速させる。
    掌から放たれる波動は、空気の微細な揺れまでも利用し、相手のバランスを崩そうとする。

  • 621◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:44:28

    「……ここで……勝つ……!」

    その瞬間、エクスターの魔法陣が光を鋭く放ち、わずかに空気が震えた。
    チャージが進む音は、遠くからでも伝わるほどの重みを帯びている。

    杏は瞬時に距離を詰め、柔掌で相手の胸部を捉える。
    掌に込められた気は、直接内部を揺さぶり、わずかな衝撃でも体勢を崩す力を持つ。

    「……これで……どうか……!」

    エクスターは膨らんだ体を揺らしながらも、満面の笑みを絶やさない。

    「おおっほほ♡ まだまだ、パンダちゃん♡
     でも、ここから先は……わたくしのターンね~♡」

    魔法陣の光が眩く輝き、トリプルゼロのチャージ完了まで、残りはあと1分を切った。
    杏は掌の動きを変化させ、相手の防御を撹乱しつつ、次の攻撃のタイミングを見極める。

    月明かりの下、二人の間に張り詰めた緊張が走る――
    攻撃と防御の駆け引き、気と魔力の衝突。

    杏の瞳には揺るがぬ決意が光る。

    「……大切なものを……守るためなら……!」

    月夜の廃倉庫街で、柔掌とスターキャノン――二つの力が、衝突の時を待っていた。

  • 631◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:45:19

    廃倉庫街に漂う月光は、戦いの舞台を静かに照らしていた。

    芳篠杏は踏み込みを止めず、円を描く柔掌を連続で繰り出す。
    気の流れは掌から指先を経て渦を巻き、空気を切り裂く音がかすかに響く。

    「……ここで……勝つ……!」

    その瞬間、エクスターは笑顔を浮かべつつ、魔法陣の光を最高潮まで高める。

    「おおっほほ♡ トリプルゼロ……あと30秒でフルチャージね~♡」

    しかし杏は怯まない。深く呼吸を整え、気を掌と脚に纏わせる。

    「……大切なものを……守るためなら……!」

    柔掌は回転を増し、掌底から放たれた気はエクスターの膨らんだ体表を押し流す。

    「……これで……どうか……!」

    エクスターの体が微かに揺れる。
    しかし笑顔は崩れない。

    「おおっほほ♡ ふむふむ、やるわね~パンダちゃん♡
     でも、この体……簡単には揺らがないのよ~♡」

    杏は瞬間的に距離を詰め、脚部の気を強化しつつ跳躍する。
    廃倉庫の鉄骨を踏み台にし、真上からの柔掌で奇襲を仕掛ける構えだ。

  • 641◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:45:30

    「……ここしか……ない……!」

    掌底が鋭く突き出され、エクスターの胸部に迫る。
    内側に込められた気の力は、装甲や魔法の防御を無視し、体内から揺さぶる――まさに奇襲の一撃。

    「おおっほほ♡ なかなかやるわね……でも~♡
     まだまだ……ここからよ~♡」

    その言葉と共に、エクスターは片手で魔法陣を支えつつ、もう片方の手で回避動作を試みる。
    チャージ中のトリプルゼロは無防備だが、杏の柔掌は瞬間的な攻撃速度でその隙をついた。

    「……この一撃で……止める……!」

    掌底が胸部に触れ、気の波動が体内に入り込む。
    膨らんだ体が揺らぎ、光の魔法陣も一瞬ひるむ。
    エクスターは驚きつつも笑顔を絶やさない。

    「おおっほほ♡ まさか……このパンダちゃん……!」

    その隙間に、杏はさらに気を集中させ、次の柔掌を繰り出す準備を整える。
    月光の下、廃倉庫街は衝突の余韻で震え、二人の戦いはクライマックスへと向かう――

  • 651◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:46:12

    月明かりに照らされた廃倉庫街。
    風が吹き抜け、埃が舞い上がる中、芳篠杏は全身に気を巡らせて立っていた。
    胸の鼓動は高鳴るが、瞳の奥には揺るがぬ決意が宿る。

    「……大切なものを……守る……!」

    掌底から放たれた気の波動は、エクスターの膨らんだ体表を押し流し、内部から揺さぶる。
    魔法陣の光が一瞬鋭く閃く。トリプルゼロのチャージは残りわずか――あと数秒で膨大なエネルギーが一条のビームとなって襲いかかる。

    「おおっほほ♡ パンダちゃん……最後の勝負ね~♡」

    エクスターは満面の笑みを浮かべながらも、体を微かに揺らし、チャージ完了までの無防備な時間を最小限に抑えようと試みる。

    しかし杏は冷静に間合いを測り、重心を瞬時に移動させる。
    八卦掌の柔掌は円運動をさらに増し、掌底から放たれる気が鋭い波動となり、エクスターの胸部へ突き進む。

    「……これで……終わらせる……!」

    掌底が触れた瞬間、内側から気の流れが膨張し、魔法陣の光を微かに揺らす。
    エクスターは体を揺らしつつも笑顔を絶やさない。

    「おおっほほ♡ なかなかやるわね、パンダちゃん♡
     でも……ここからが本番よ~♡」

    杏は呼吸を整え、気を全身に巡らせて防御と攻撃のバランスを極限まで高める。
    トリプルゼロ発射直前のわずかな隙間――それが奇襲のチャンスだった。

  • 661◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:46:33

    「……ここだ……!」

    杏は柔掌を連続で放ち、掌底の気を極限まで凝縮する。
    その瞬間、エクスターのチャージ中のビームは内部から揺らぎ、光の密度が微かに乱れた。

    「おおっほほ♡ まさか……このパンダちゃん……!」

    魔法陣の光は瞬間的に散乱し、トリプルゼロは完全な発射を阻止された。
    杏の掌底は柔らかくも鋭く、相手の防御とチャージを同時に崩すことに成功したのだ。

    エクスターは軽く息をつき、膨らんだ体を揺らしながらも、にっこりと微笑む。

    「おおっほほ♡ パンダちゃん……やるじゃないの♡
     でも、次はどうなるかしらね~♡」

    杏は疲労の色を浮かべつつも、顔は着ぐるみに隠れて微かに紅潮している。

    「……守れた……大切なもの……」

    月夜の廃倉庫街に、静かな風が吹き抜ける。
    激しい戦いはひとまず終わり、二人の間には、勝利の余韻と互いの力量を認める静寂が残った。

    芳篠杏――巨大なパンダの着ぐるみに隠された少女は、内なる意思と気の力で、満月の精霊をひるませることに成功した。

    そして月光は、戦いを終えた二人を優しく包み込むように照らしていた。

  • 671◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 11:46:44

    以上

  • 68二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 11:47:59

    トリプルゼロは扱いにくかったかー
    制作感謝です

  • 69二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 11:59:59

    良かった!

  • 70二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 12:22:22

    気づいたら、めっちゃ進んでた...アルゲートの戦い方好きだな

  • 711◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:33:58

    題名『母が護る森の刻』

  • 721◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:34:40

    深い森の奥。

    霧が木々の間を漂い、月光はやわらかく地面に落ちている。
    落ち葉を踏む音も、遠くで小枝が折れる音も、普段なら気にならないはずの音が、この夜は異様に大きく感じられた。

    忌子母神は静かに立っていた。
    その周囲には小さな忌子達――この世のあらゆる災厄が凝縮された存在たち――が、無数に蠢いている。
    小さな手足をゆらしながら、彼らは母の足元や背後に寄り添い、互いに体をすり寄せていた。

    「……おかぁさん……」

    「……おかぁさん……守って……」

    小さな声が霧の中に淡く響く。
    忌子母神は微笑み、優しく両手を広げた。
    その掌の上に、薄暗い月光がわずかに反射する。

    「いい子ね……みんな、怖がらなくていいのよ……」

    しかし、森の奥から踏みしめる音が近づく。
    重く、力強い足音。葉や枝を踏みしめる度に、微かに地面が震える。

    八ツ辻柱――旧世界の武将の血を受け継ぐ男が、堂々とした足取りで姿を現した。
    その目には鋭さと冷静さが同居しており、戦いにおいて何が起こるかを完全に計算しているようだった。

    「忌子母神……か。随分と大きな力を抱えているようだな」

    忌子母神は声を潜めて答える。

  • 731◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:34:55

    「……あら……あなたは……戦うつもり?」

    忌子達は母の周囲で小さく蠢き、さらに強く「おかぁさん……」と声を上げる。
    その声は森の静寂に溶け込み、しかし戦いを予感させる緊張を帯びていた。

    忌子母神は優しく手を伸ばし、子供達を抱き寄せる。

    「……大丈夫……お母さんがいるから……」

    柱は一歩前に出て、四如拳の構えを取った。
    風林火山――四つの型の中でどれを最初に使うかを決める一瞬の静寂が、戦いの幕開けを告げている。

    「風……林……火……山……
     どの型を使うかは相手次第だな」

    忌子母神は慎重に一歩後ろに下がり、抱えた忌子達を守る。
    「……みんな、危ない……!」

    森の中の空気は重く、まるで戦いの前に息を潜めているかのように静まり返っていた。
    小枝や葉が風に揺れる音も、戦いの序章の鼓動のように感じられる。

    忌子母神は小さく呼吸を整える。
    子供達を抱えながら、心の奥底で決意を固める。

    「……誰も傷つけさせない……みんなを……守る……」

    森に漂う月光は、母神と忌子達の姿を柔らかく照らし、その場に特別な静けさを与えていた。
    しかし、柱の影は確実に近づき、戦いの緊張感は日に日に濃くなっていく。

  • 741◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:35:05

    「……さて、どの型から試してみるか……」

    柱は唇を引き結び、森の影に身を潜める。
    その視線は母神と忌子達を一瞬たりとも逃さず、次の瞬間に襲いかかる速度型の攻撃を計算していた。

    忌子母神は抱えた忌子達の小さな手を握り、目を閉じて深呼吸をする。

    「……みんな、怖がらないで……お母さんがいるから……」

    小さな声が森に柔らかく響き、静かに、しかし確実に戦いの幕が上がろうとしていた。

  • 751◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:36:01

    森の静寂を破るように、八ツ辻柱は「風の型」の構えを取った。

    風の型――速度に特化した型。神速の回避、目にも止まらぬ連撃、分身のごとき残像。
    彼の身体は風のように軽やかに揺れ、踏みしめるたびに落ち葉が舞う。

    「……まずは様子見だ」

    柱は素早く前方に移動し、瞬間的に分身のような残像を作り出す。
    その動きは目にも止まらず、森の木々の影と混ざって、一瞬で複数の位置に存在しているかのように錯覚させた。

    忌子母神は小さく息を呑む。

    「……こ、こんなに速い……!」

    小さな忌子達は母の周りで身を寄せ、声を小さく震わせる。

    「おかぁさん……こわい……」

    「おかぁさん……守って……」

    母神は抱えた忌子達を揺らさないようにしながら、深呼吸を整える。

    「……大丈夫……お母さんがいるから……」

    柱の拳が空を切るたび、微かに風の渦が森を駆け巡る。
    残像の中から放たれる連撃は、どれも一瞬で母神の周囲に迫る。

    「風の型……速さはあるが、重さに欠ける……」

    母神は周囲の小石や木の枝を気で振動させ、盾として防御に利用する。

  • 761◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:36:57

    その動きは忌子達を守ると同時に、攻撃の勢いを削ぐ役割を果たした。

    「……みんな、怖がらないで……!」

    小さな声が森に響き、忌子達は母の胸元に顔を埋める。

    「おかぁさん……おかぁさん……!」

    「おかぁさん……やめて……!」

    柱はその光景を一瞬見て、唇を引き結ぶ。

    「……単純な攻撃は通じないか」

    森の空気は緊張で重く、枝葉が風に揺れるたびに戦場の鼓動のように感じられる。
    母神の瞳は深く静まり、抱えた忌子達の小さな体を守る決意に燃えていた。

    「……どんなに速くても……みんなを守る……!」

    柱の動きはさらに加速する。残像が増え、攻撃が連続するが、母神は慎重に呼吸を整え、気の流れで防御を固める。
    忌子達は母の胸にしっかりとしがみつき、小さな手で抱きつきながら泣き声を上げる。

    「おかぁさん……守って……!」

    柱は冷静に間合いを測る。

    「……なるほど……母神は戦うわけではなく、守ることで攻撃を無効化している……
     だが、速度で隙を突くことはできるはず……」

    風の如き拳の嵐は、森の中で渦巻き、月光が散乱する。

  • 771◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:37:57

    だが忌子母神の静かな決意は、速度型の攻撃すら完全には貫かせなかった。

    「……お母さんがいるから……大丈夫……」

    小さな忌子達の声が重なり、森に柔らかな結界のような空気を生む。
    戦いの序盤――風の型は試みられたものの、母神の防御の前に思うようには力を発揮できず、戦局は一瞬の静寂に包まれる。

  • 781◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:38:54

    風の如き連撃を受け止め、森は一瞬の静寂に包まれた。

    柱は呼吸を整え、次の型を選ぶ。

    「林の型……防御と回復、そして隠密……
     直接攻めるより、母を引きずり出すのが先か」

    母神は抱えた忌子達を胸元にしっかりと抱き、深く呼吸を整える。

    「……ここは安全……大丈夫……」

    しかし、森に蠢く忌子達は母神の緊張を感じ取り、震えながら小さな声を上げる。

    「おかぁさん……こわいよ……」

    「おかぁさん……守って……!」

    母神は頬に微かな汗を浮かべながらも、決意を込めて答える。

    「……大丈夫……お母さんが守るから……!」

    柱は林の型の構えを取り、静かに森の影に溶け込む。
    この型は防御に特化しつつ、体力の回復や解毒も可能。
    しかし攻撃力は低く、攻めるには不向きな型だ。

    「……なるほど……母神は子供達を盾にしているだけか」

    母神は抱えた忌子達を中心に、気を巡らせる。
    周囲の小枝や落ち葉を微細に動かし、防御のバリアのように配置する。

  • 791◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:39:18

    「……みんな、泣かなくていいのよ……お母さんがいるから……」

    小さな忌子達は母の胸元に顔を埋め、互いにしがみつく。

    「おかぁさん……おかぁさん……!」

    「おかぁさん……やめて……!」

    柱は動きを読みつつ、林の型の特性を利用して母神の隙を探る。
    しかし母神の気配と忌子達の声が、森の空気を覆い、動きを察知しやすくしていた。

    「……防御特化か……だが、このままでは攻めきれん……」

    母神は小さな忌子達を守るため、体を前に倒して盾となり、視界を封じるように森の奥行きを利用する。

    「……大丈夫……みんな、絶対に守る……!」

    小さな声がさらに重なり、森に不思議な静けさと重みを与える。
    母神の決意は揺るがず、子供達を守る盾として、四如拳の林の型の攻撃を受け止め続ける。

    柱は深く息を吐き、林の型の欠点を思案する。

    「……攻撃力が低い……だが、防御に徹している限り、母を直接攻撃する隙はなさそうだ……
     しかし、回復力もある……どう崩すかが鍵だな」

    母神は抱えた忌子達の小さな手を握り締める。

    「……大丈夫……お母さんが守る……誰にも触れさせない……」

    森の静寂は、母神と柱、そして忌子達の気配で微かに揺らぎ、戦いは次の局面へと移ろうとしていた。

  • 801◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:40:40

    森の奥、夜の静けさを切り裂くように、八ツ辻柱は攻撃型の「火の型」に移行した。

    「火の型……正面から焼き尽くす攻勢……
     防御など存在せぬが、その分一撃で決めることができる」

    柱の拳から放たれる力は、空気を震わせ、地面の落ち葉を赤く揺らす。
    速度と威力が組み合わさり、炎のような勢いで母神の周囲を襲う。

    忌子母神は抱えた忌子達を胸元に強く抱きしめる。

    「……みんな、怖がらない……お母さんが守る……!」

    小さな忌子達の声が森に響く。

    「おかぁさん……おかぁさん……!」

    「おかぁさん……やめて……!」

    母神は気を掌底と足元に巡らせ、空中で炎のように跳ねる拳を受け流す。
    彼女の円を描くような動きが、攻撃を無効化し、反撃の発勁を僅かに返す。

    「……速さだけではこの母神は崩せない……
     ならば次は防御で試すか……」

    柱は即座に「山の型」に切り替え、重厚な防御姿勢を取る。
    山の型――あらゆる攻撃を受け止め、カウンターで反撃する。
    しかしこの型は林の型の回復力を失い、攻撃は反撃に限定される。

    母神は抱えた忌子達を庇い、盾のように身を低く構える。

  • 811◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:40:53

    「……誰も傷つけさせない……絶対に……!」

    小さな忌子達は母神の胸元で小さく震えながら声を上げる。

    「おかぁさん……!」

    「おかぁさん……守って……!」

    柱は冷静に間合いを計り、山の型の防御と反撃を駆使しつつ、母神の防御の隙を探る。
    母神の円を描く動きと気の壁は、攻撃を受け止めつつ子供達を守るための盾となり、柱の攻撃を阻む。

    「……なるほど……子供達を盾にしている以上、正面突破は難しい……
     だが、反撃の瞬間を狙えば……」

    森の中、落ち葉が舞い、月光が斑に差し込む。
    母神は抱えた忌子達を揺らさぬように細心の動きで攻撃を受け流す。

    「……みんな……お母さんが守る……絶対に守る……!」

    小さな忌子達の声がさらに重なり、森に柔らかな結界を形成する。
    その結界は母神の意志と子供達の存在が重なった、独特の空気を生んでいた。

    柱は唇を引き結び、山の型の重厚な防御で母神の動きを封じながらも、次の手を探る。

    「……子供達を傷つけずに崩す……難しい相手だ……」

    戦いの緊張は最高潮に達し、森の奥は火の型の衝撃、山の型の重圧、そして母神と忌子達の静かな意志で揺らいでいた。

  • 821◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:44:39

    森の奥。月光は木々の間に斑に差し込み、戦いの場を冷たく照らしている。

    八ツ辻柱は、山の型の防御と火の型の攻撃の組み合わせで、母神の包囲を徐々に狭めていた。
    その拳の重圧は確かに恐ろしいが、母神の周囲には忌子達が蠢き、柔らかな結界のように守られていた。

    しかし、その平穏は長くは続かない。

    「おかぁさん……痛い……!」

    小さな忌子の一人が、柱の残像にかすかに触れられた瞬間、泣き声を上げた。
    母神は抱えていた忌子達をぎゅっと抱き締め、心臓が高鳴るのを感じる。

    「……いや……絶対に……みんなを……!」

    しかし情緒の揺らぎは隠せなかった。
    ひとり、またひとりと忌子達が小さな傷や怯えを見せ、母神の心を締め付ける。

    「おかぁさん……おかぁさん……!」

    泣き声が森に反響する。母神は深く息を吸い込み、何とか気を整えようとするが、心は揺れる。

    「……だめ……心が乱れる……! でも……守らないと……!」

    柱はその一瞬の揺らぎを見逃さず、山の型の防御から軽やかに反撃を仕掛ける。

    「……なるほど……母神は情緒の揺らぎに弱い……
     だが、攻めすぎれば忌子達が更に暴走する……慎重に……」

    母神は抱えた忌子達を前に出し、盾となる。
    小さな手が母の衣の中で震え、泣き声が絶え間なく響く。

  • 831◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:44:50

    「……大丈夫……お母さんがいる……絶対に守る……!」

    しかし、柱の拳は一瞬の隙を突き、忌子達の近くに風を切る衝撃を残す。
    小さな忌子達は一斉に泣き声を上げ、母神はその衝撃で心を乱される。

    「おかぁさん……守って……!」

    「おかぁさん……助けて……!」

    母神は全身で抱えた忌子達を守ろうと必死になる。
    その動きの中で、わずかに呼吸のリズムが乱れ、気の流れが鈍る。
    まさにその瞬間、柱は母神の防御の隙を見つけ、拳を振り下ろす準備をする。

    「……この一瞬を逃さない……!」

    森の空気は一層重く、木々の影が揺れる。
    母神の決意は揺るがず、子供達を守ろうと必死に動くが、情緒の乱れは攻防のわずかな隙を生んでいた。

    小さな忌子達の声は、母神の心にさらに重く響く。

    「おかぁさん……!」

    「おかぁさん……!」

    戦いの緊張は最高潮に達し、母神と柱の間に生まれたわずかな隙は、この後の局面で決定的な意味を持つことになる。

  • 841◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:47:15

    森の奥、戦いの余韻が漂う中、忌子母神は抱えた忌子達を前に立っていた。

    小さな忌子達の泣き声が母神の心に鋭く突き刺さる。

    「おかぁさん……おかぁさん……!」

    「おかぁさん……助けて……!」

    母神は深く息を吸い込み、決意を固める。

    「……誰も傷つけさせない……お母さんが……みんなを守る……!」

    柱は山の型の防御から一歩踏み込み、火の型の攻撃の余波を意識しながら、母神の動きを慎重に観察する。

    「……情緒の揺らぎはあったが、まだ守る意思は揺るがず……
     ならば、最後の一手を……」

    母神は忌子達を抱きしめ、体全体で盾となる。
    気の流れを掌底と足元に集中させ、森の空気を震わせるほどの力で防御を固めた。

    「……お母さんが守る……絶対に……!」

    柱の拳が振り下ろされる瞬間、母神は小さな声で呟く。

  • 851◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:47:49

    「……みんな……信じて……!」

    小さな忌子達は泣きながらも母の胸元にしがみつき、微かに体を震わせる。

    「おかぁさん……!」

    「おかぁさん……!」

    そして、母神は全身の気を一点に集中させ、反撃の発勁を放つ。
    拳が空気を裂き、柱の攻撃にぶつかり、森の中で轟音が響いた。

    柱は一瞬の衝撃に身体を揺らし、守りの姿勢を崩す。

    「……くっ……やはり、ただの母神ではない……!」

    しかし柱は達人の冷静さを失わず、即座に山の型で受け止め、カウンターの構えを取る。
    その隙を見逃さず、母神は抱えた忌子達を前にさらに防御を強化する。

    小さな忌子達は母神の胸で安心したように涙を拭う。

    「おかぁさん……守ってくれた……!」

    「おかぁさん……すごい……!」

    森の中に漂う空気は徐々に落ち着きを取り戻す。
    柱は深く息を吐き、母神の揺るがぬ守る意思に敬意を払った。

  • 861◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:47:59

    「……なるほど、これが忌子母神……
     守る力……守る意志……見事だ……」

    母神は疲れた体を小さく揺らしながらも、忌子達を抱きしめ続ける。

    「……みんな、もう大丈夫……お母さんが守ったから……!」

    森に静かな夜が戻り、月光は母神と忌子達を柔らかく照らす。
    戦いは終わり、森には平穏が戻った。

    小さな忌子達は母神の胸で安心したように体を寄せ、静かに眠りにつく。

    「おかぁさん……ありがとう……」

    母神は微笑み、そっと彼らを抱きしめた。

    「……大丈夫……みんなを守れる限り、私はここにいる……」

    森に漂う月光は、戦いの傷跡をそっと包み込み、母神と忌子達の揺るがぬ絆を照らしていた。

  • 871◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 12:48:41

    以上
    母は剛

  • 88二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 12:51:23

    良かった!

  • 89二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 12:51:55

    やっぱ母親ってつえぇ

  • 90二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 13:19:44

    やはり母の子供を守ろうとする意思は美しいなぁ

  • 911◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:14:05

    題名『存在しない記憶』

  • 921◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:15:14

    都会の裏路地。夜の湿った空気に、ひとりの黒髪ツインテールの男子が立っていた。
    190近い長身に女子めいた雰囲気を漂わせ、胸に抱えるのは藍色に塗られた消化器。

    「……オレの藍丸、今日も可愛いな……♡」

    頬を赤らめて消化器に頬擦りするその姿は、どう見ても少女のようだ。
    しかし彼の名は 爆炎ヶ原頂天(ばくえんがはら ちょうてん)。
    賞金首狩りで糊口を凌ぐ、異能を持つ高校生の少年である。

    そんな彼の前に、ひとりの男が現れた。
    ギザ歯に茶髪、危険そうな風貌。しかしその瞳は誰よりも優しく穏やかだった。

    「こんばんは。君が……この辺りで噂の、消化器を愛する少年だね?」

    「……あんた、何者だ?」

    「私はトロスト・ムッティ。医者だよ。精神を診るのが仕事だ。
     ……君のその心の熱さと、孤独に寄り添うために来たんだ」

    頂天は藍丸を抱き直し、目を細める。
    「……は? 何だよ、怪しいやつだな。藍丸に変なこと言ったら許さねぇぞ」

    トロストはふっと笑い、両腕をゆるやかに広げた。
    その瞬間、空気が柔らかく、暖かく変わる。まるで帰省した時に嗅ぐ懐かしい布団の匂い。
    心の奥に眠る「幼い日の安心感」が蘇り、体が勝手に緩みそうになる。

    「……っ!? なんだ、この感じ……胸が……落ち着く……」

    「安心していいんだよ。君はもう孤独じゃない」

  • 931◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:15:25

    「……う、うるせぇっ!! オレは藍丸といればそれでいいんだ!!」

    心の奥を優しく撫でられるような感覚に抗いながら、頂天は藍丸を構えた。
    夜の裏路地、加速する少年と安らぎを撒き散らす医者が対峙する。

    決して噛み合うことのないふたりの力が、今、交差しようとしていた――。

  • 941◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:15:59

    爆炎ヶ原頂天は、荒い息を吐きながら藍色に塗られた消化器――藍丸を振り回していた。
    空気が熱を帯び、砂煙が舞い、加速した動きはすでに人の目では追えない。

    「……はぁっ……! 藍丸、オレたちの加速は……止まらねぇんだッ!」

    勢いそのままに振り抜いた藍丸の先端が、地面を抉り、石畳を砕く。
    その衝撃は波紋のように広がり、ただの即席の武器とは思えない破壊力を見せつけた。

    だが、トロスト・ムッティはその全てを避けているわけではなかった。
    彼は両腕を広げ、真正面からその圧を受けながらも、柔らかく笑っていた。

    「……すごいね。ここまで愛せるのは立派なことだよ、頂天くん」

    その声は、戦場に不似合いなほど穏やかで、温かい。
    刃よりも鋭い音を立てて突き抜ける藍丸の一撃も、加速した怒涛の連撃も……
    トロストの前では、不思議と心の中の熱を削がれていくようだった。

    「やめろっ……! その声で藍丸の気迫を弱めるなッ!」

    頂天は叫びながら、さらに速度を上げる。
    すでに視界が霞み、思考すら追いつかないほどの加速に身を投じていた。
    拳より速く、銃弾よりも鋭く、ただ一撃で全てを決めるために。

    だが――

    「……大丈夫だよ」

    トロストの声が響いた瞬間、彼の背後にいたはずの景色が揺らぎ、頂天の加速した思考に懐かしい像が差し込んでくる。
    母に手を引かれて歩いた幼い日の路地。
    部活動で仲間と笑い合った汗の匂い。

  • 951◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:16:12

    そして、まだ誰も知らない、自分と藍丸が初めて出会った日の鮮烈な記憶。

    「……っ!? なんだ、この……っ!」

    頂天の全身が硬直する。
    藍丸を振り抜こうとした瞬間、視界が涙で滲み、胸が熱くなる。

    「怖くないよ。君はずっと大事なものを守ってきたんだね」

    次の瞬間、トロストはそっと歩み寄り、加速の衝撃波を物ともせず、頂天の肩を抱き締めた。
    その腕の中から溢れ出るものは、灼熱でも氷結でもなく――永遠に失われない安らぎだった。

    「……っ、離せ……っ! オレは、まだ……藍丸で……!」

    だが声とは裏腹に、握る手が震え、藍丸の金属音がカランと寂しく響く。
    爆炎ヶ原頂天の心を、初めて誰かが真正面から包み込んでいた。

  • 961◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:16:44

    爆炎ヶ原頂天の体は、トロストの抱擁の中で静かに震えていた。
    先ほどまで暴走する加速の熱に支配されていたはずの心臓が、今は別の意味で速く打ち鳴らされている。

    「……っ、やめろよ……そんな優しくされたら……」

    声が上ずり、普段の荒っぽい調子が崩れていく。
    胸の奥にじんわりと広がる温かさが、理屈ではなく本能を刺激する。

    「オレ……いや……わ、わたし……」

    口から飛び出しそうになった言葉に、自分自身が驚いた。
    普段なら決して使わないような言葉遣いが、なぜか自然に零れてしまう。

    「……藍丸が……見てる前で、こんなの……」

    抱きしめられたまま、頂天はちらりと視線を落とす。
    そこには、長年連れ添ってきた藍色の消化器・藍丸が転がっていた。
    冷たい鉄の光沢のはずなのに、今はどこか照れくさそうに見えてしまうのだから不思議だ。

    「君は優しいね」

    トロストが柔らかく囁く。

    「誰かのためにそこまで全力になれる人はそういない。君も藍丸も、立派な存在だよ」

    「っ……! そ、そんなこと……っ」

    頬が一気に熱くなり、頂天は顔を逸らす。
    藍丸を前にしたときと同じ――いや、それ以上の乙女のような羞恥が胸を満たしていた。

  • 971◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:16:54

    「だ、だめだ……! こんなの、オレ……いや……わたし……完全に女の子みたいじゃねぇか……!」

    藍丸に向かって訴えるように言葉を投げる。
    だが藍丸は何も言わない。代わりに、トロストの腕の中で感じる安堵と幸福が、心をさらに締め付ける。

    「……ねえ、頂天くん」

    「な、なんだよ……」

    「そんなに無理して『オレ』でいなくてもいいんだよ」

    その一言に、爆炎ヶ原頂天は完全に沈黙した。
    加速能力で走り抜けるよりも速く、胸の奥に乙女の羞恥と幸福が駆け抜けていった。

  • 981◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:17:22

    爆炎ヶ原頂天は、まだトロストに抱きしめられたまま、視線を泳がせていた。
    頬は赤く、呼吸は早い。戦場に似つかわしくないほど、胸の内は乙女そのものになっていた。

    「……っ、なぁ……藍丸……」

    小さく呟く。
    転がる藍色の消化器は、変わらず無言でそこにいる。
    けれど、頂天には確かに藍丸の視線が感じ取れた。ずっと共に戦ってきた相棒だからこそ、そう思えるのだ。

    「オレ……いや……わ、わたし……さ……」

    指先を胸の前でぎゅっと握る。
    抱擁から逃れようとしないその仕草は、もう戦士ではなく、完全に少女のようだった。

    「こんなふうに……抱きしめられて、優しい言葉かけられて……。オレ……わたし……どう見ても、女の子みたいだよな……」

    藍丸に問いかける声は、震えている。
    しかしその震えは恐怖からではなく、乙女のような羞恥とときめきが入り混じったものだった。

    「なぁ、藍丸……。わたし……変かな?」

    その瞬間、トロストの声が重なる。

    「変じゃないよ。君はそのままでいいんだ」

    「っ……!」

    胸の奥が跳ね上がる。

  • 991◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:17:42

    言葉にできない気持ちが溢れそうで、頂天は藍丸を両腕で抱き寄せる。
    まるで少女が大切なぬいぐるみを抱きしめるように。

    「わ、わたし……どうしたらいいんだよ……藍丸ぁ……」

    頬を赤らめながら、彼は藍丸に縋るように囁いた。
    加速の熱はすでに収まり、そこにあるのは戦士ではなく――ただひとりの乙女の心だった。

  • 1001◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:18:09

    爆炎ヶ原頂天は、赤く染まった頬を隠すように藍丸を胸に抱きしめていた。
    戦場の真ん中にいるとは思えない姿だ。
    加速で駆け抜ける戦士でも、賞金首を狩る冷徹な狩人でもない。
    ただ――小さな女の子のように、震えている。

    「……わたし……どうすればいいんだよ……藍丸……」

    消化器に縋りつきながら、彼は必死に声を絞り出した。
    その声を遮るように、トロストの大きな手がそっと肩に触れる。

    「大丈夫。君は頑張りすぎてきただけなんだ」

    その声音は、深く優しく胸に染み込んでいく。
    幼い頃、誰かに守られた記憶なんてない。
    だからこそ、この言葉が心を貫いた。

    「オレ……いや、わたし……強くなきゃ、誰も……」

    「強くなくてもいい」

    即答だった。
    トロストは目を細め、両腕を広げる。
    包み込むような抱擁が再び頂天を覆い、藍丸ごと胸の奥に押し当てられた。

    「君は、守られる側でもいいんだ」

    「……っ……!」

    耳元で囁かれた瞬間、頂天の視界が滲む。
    これまで加速して突っ走ることでしか、自分の存在を証明できなかった。

  • 1011◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:18:22

    だが今は――ただ寄り添われ、受け入れられている。

    「わたし……守られて……いいのか……」

    その呟きは、震えながらも確かに心の奥から溢れ出た。
    藍丸もまた静かに光沢を放ち、相棒の気持ちを肯定するかのように寄り添っているように見えた。

    トロストの腕の中で、爆炎ヶ原頂天は初めて――戦いではなく安らぎの中に身を委ねた。

  • 1021◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:18:49

    トロストの腕の中で、爆炎ヶ原頂天の瞳は薄く閉じられていった。
    その瞬間――世界が柔らかく揺らぎ、彼の心に鮮やかな光景が差し込む。

    小さな自分が、誰かに手を引かれて歩いていた。
    陽の当たる縁側で、笑いながら藍丸を玩具のように転がしている幼い姿。
    そして――隣で優しく見守る両親の影。

    「……そんなの……なかったはずだ……オレ……いや、わたしに、そんな……」

    震える声が漏れた。
    けれど、光景は揺らがず、むしろ鮮明に彼の心を満たしていく。

    『頂天。あなたは、頑張り屋さんだね』

    『いつでも一緒にいるよ。大好きだよ』

    ――懐かしい。
    けれど、決して存在したことのない言葉。
    それでも、胸の奥に熱く、優しく染み込んでいく。

    「……やめろよ……涙なんか……」

    頬を伝う雫は止められなかった。
    彼は強さで武装して生きてきた。
    だが、今ほど無防備で、そして救われたと感じた瞬間はなかった。

    「……わたし……こんなに……弱かったんだな」

    トロストはただ黙って彼の背中を撫で続ける。
    安らぎは、どんな鎧よりも強い。

  • 1031◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:19:00

    加速を武器に走り続けてきた少年は、初めて「立ち止まってもいい」と知った。

    その時、藍丸が小さく“シュー……”と音を立てた。
    まるで笑っているかのように。

    「……ありがと、トロスト……ありがと、藍丸……」

    爆炎ヶ原頂天は、涙に濡れた笑みを浮かべた。
    戦いの中で――それ以上に尊い「救い」を見つけたのだった。

  • 1041◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 14:20:49

    以上
    突如、頂天の脳内にあふれ出した『存在しない記憶』

  • 105二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 14:22:31

    タイトルの時点でなんかおかしい…

  • 106二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 14:22:54

    うちの子が寝取られたあああああああああああああああああああaああああああああああ(発狂)

  • 107二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 14:24:52

    洗脳みたいだ

  • 108二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 14:29:29

    最初から最後まで面白すぎる
    ベストバウト不可避

  • 109二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 14:38:44

    次の安価時間が気になる

  • 1101◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 15:39:37

    17:00から安価10個募集

  • 111二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:00:00

    名前:アンドレ・ドュ・ファントム
    年齢:享27歳(幽閉前は21歳)
    性別:男
    種族:現人神
    本人概要:スレイ家、リドル家の本家だったファントム家の長男だった男。
    はるか昔にファントム家を皆殺しにした後に6年間の幽閉を経て死亡していた。
    しかし、マーチとティルとクローリーの仕業により、最近この世に再び生を受けた。
    本人はとても純粋な性格であり、誰よりも心優しく、なんなら精神年齢も6歳で止まっている。ある神から見初められ、邪悪な心を植え付けられており、その神が邪魔だと感じた人々を手にかけるように唆され、6歳になるまでに大勢を殺したため、自発的に幽閉されていた。地下に幽閉されており、現代でいう所での“封印”をされていた。しかし怒り狂った神がその封印を解き、アンドレの自我も乗っ取った21歳の誕生日に地下から脱走し、その日に事件が起きた。
    キャージ・スレイ・Jr.に瓜二つな姿であるが、左の前髪はかき上げており、紺色の貴族の服を着ている。
    能力:【ファントムガード】
    能力概要:相手から能力使用の意思を感じ取ると絶対防御の自身を覆う球体のバリアに閉じ籠る。アル=ヴァナ・スレイオス由来の純粋にして強大な原初神の力。
    《抑圧》…受け入れがたい感情や記憶を無意識に押し込め、存在を忘れようとすること。
    これが発動すると、アンドレが相手を拒絶した瞬間に相手の視界や記憶からアンドレに関する情報が抜け落ちる。
    《昇華》…認められない欲求や感情を、社会的に建設的な行動や活動に転換すること。
    これが発動すると、相手の能力を無効化する。
    《投影》…自分自身の受け入れがたい感情や特徴を、他人のものだと信じ込むこと。
    これが発動すると、相手の能力を例外なく跳ね返す。また、バリアに能力が干渉した場合はその能力の効果を対象に押し付ける。
    《退行》…不安な状況に直面した際に、幼児期の行動や考え方に戻ってしまうこと。
    これが発動すると、自他の思考力を劇的に低下させ、双方の戦闘続行を不可能にする。
    弱点:能力発動中は動けない。
    身体能力自体は低く、知能も低いため騙されやすい。
    能力が発動し続けるとアンドレは気絶をする。
    要望:一人称は「僕」でお願いします。

  • 112二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:00:00

    名前:世界を腐敗させる者
    年齢:不明
    性別:不明
    種族:究極生命体(化身)
    本人概要:【邪神】によって作られた究極生命体
    見た目は泥々に腐敗しかけたスライムと人間の中間の様な存在 で加虐性が非常に高い
    また究極生命体らしく高い不滅性+ 環境適応力を持っており自身の肉体の形状を様々な形に変化させる
    【邪神】曰く不滅!なんでも腐敗させた上増殖!がコンセプトらしい
    能力:腐り逝く世界
    能力概要:自身に触れた万物(概念を含む)を腐敗させるというシンプルなもの 
    また触れたものは周りを侵食しながら腐敗していき
    腐敗したものは世界を腐敗させる者の肉体となるという増殖性も持っている
    つまり腐敗させる→腐敗したものに触れたものが腐敗→その腐敗したものに触れると腐敗のループ
    腐敗したものは肉体になる為それを自由に形を変え動かせる
    触れたものが腐敗する特性を持つ為遠距離攻撃を持っていないと腐食の反撃を喰らう可能性が高い
    弱点:高さすぎる加虐性故 相手を痛め付けることに思考の大半を持っていかれている為 
    じわじわ嬲る戦法しかつかわないというか使えない
    ダメージが通らなくとも攻撃が自身に直撃する度に不快感を表し 
    不快感が一定以上高まると悍ましい丸い心臓部が出現し始める
    心臓部に攻撃するとどのようなダメージであれ即座に生命の危機を感じ退散する 
    心臓部を破壊すると問答無用で死亡
    要望(任意):喋らせないで常にニタニタ笑っている感じでお願いします 勝利した場合は相手を殺して欲しいです

  • 113二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:00:00

    名前:数言虚樫 (かずこと うろがし)
    年齢:不明
    性別:男
    種族:概念生命体
    本人概要:虚数を司る存在
    元々人間だったが、能力の影響で半ば概念と一体化している
    本人の能力出力が強すぎて常に能力発動状態になっており、存在する軸がずれている、本人の姿は現実世界でも視認でき、普通の人間と見た目は変わらないが、こちらの世界のものを掴んだり動かしたりすることはできない
    数言を名乗っているが虚樫は数言とは全く無関係、数言家に虚樫のことを聞いても、誰それ怖…となってしまう
    初めて出会った人間が数言怜吾なので、人間はみんな悪意を向けられたら喜ぶものだと思い込んでおり、人を見つけたらとりあえず攻撃し、一切話を聞こうとしない
    能力:虚数
    能力概要:虚数を操る能力
    【虚数空間】
    こちらの世界とは別軸に存在する虚数空間を操る能力、ものを出し入れしたり、物体や攻撃、相手を虚数空間送りにすることもできるが、自分が虚数空間から抜け出すことはできない
    能力は本来もっと多岐に渡り、この能力はほんの一部にすぎないが、腕につけている、神器ほどの力のある拘束具によって能力の大半を封印されている
    弱点:虚数空間送りになった部位でなら虚樫に触れられる
    肉体が虚弱で、実際に肉体が傷ついたことがほとんどないのでぶん殴られるだけで気絶する
    要望(任意):
    全身黒い服で、学ラン、両腕に黒い拘束具をつけている

  • 114二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:00:00

    名前:オトン・トーテンタンツ
    年齢:42
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:アルビオン裏社会を牛耳る"M教授"なる人物に仕えている鼠使いの一族「トーテンタンツ家」の一員であり、"騎士道"に対し異様な執着を持つがその行動は暗黒街を生きる者のそれであり騎士道に恥じまくっている 彼らは鼠を扱う方法にこそ差があれど一様に18世紀めいたペスト医師装束に身を包んでいるのだ ちなみにニコールの父親だがあまり関係はない そういう一族なのだ
    能力:大鼠の騎士
    能力概要:バイオ技術により作られた巨大鼠「ロシナンテ」に騎乗して高速立体機動しながら服の内側に隠された大量の信じられないほど邪悪な形状をしたアフリカ投げナイフを投擲し攻撃する もちろん邪悪な形状をしたアフリカ投げナイフには毒が塗ってあるし信じられないほど邪悪な形状なので通常投げナイフよりも当たりやすく傷口も複雑になる バイオ鼠は頭が良く比較的タフ
    弱点:アフリカ投げナイフは結構重いのでロシナンテが破壊されたなどの理由でロシナンテから下りると機動力が一気に落ちる もちろんオトンは投げナイフに塗られた毒の解毒剤を持ってるから奪えば解毒できる

  • 115二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:00:00

    名前:星月 ひまわり
    年齢:16歳
    性別:女性
    種族:人間
    本人概要:かつて天才画家として名をはせた少女。
    幼少よりいくつもの賞を受賞し、史上最高の画家になると周囲の誰もが……もちろん彼女も心から信じていた。
    それは、禁断の契約だった。
    少女は一年前最高の絵を描くために知らずとしても、禁忌を犯してしまった。
    最高の、一輪の花の絵を描いた瞬間、少女の夢は奪われた。
    失った、絵筆が持てない。
    喪った、色がわからない。
    消えてしまった、少女の胸にあふれていた輝く未来が。
    それでも、それでも、それでも……少女はたった一本の鉛筆と妹の言葉だけを頼りに再び絵を描く。
    妹の「おねえちゃんの絵、大好き!」という純粋無垢で、一番の理由こそ──少女の胸に宿り輝く一番星なのだから。
    能力:星月夜──Replica Serenade──
    能力概要:少女が悪魔と契約して描いた魔法の絵画、そのレプリカ。
    無限に広がる宇宙、世界を見下ろす月の魔眼、人々を満たす底なき夜の海。
    それら幻想にして悍ましき世界で人々の心を埋め尽くす。
    が、これはレプリカ。少女のつたない指先で描かれた出来損ないの鉛筆画。
    本物に遠く及ばない幻覚効果だが、しかし少女の胸に残り燃え残り続ける焔は、いつかきっと世界を塗り替える。
    ──それは、途方もなく残酷な夢だけど。
    弱点:結局は絵なので炎で燃え尽きる。
    また、しょせんレプリカなので幻は極めて脆い。

  • 116二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:00:00

    名前:ネャントリコ・ネャミ
    年齢:14
    性別:♀
    種族:獣人
    本人概要:大陸Cのどこかにある、屋根の如き森の奥深く、絨毯のように茂る木々の上で暮らす"天に接す獣民"と名乗る集落の若者。彼女らは頭の上に生えたピンク色の耳、体を覆う緑色の体毛、太い枝でも簡単に切断する鋭い爪、そして非常に優れた身体能力などの特徴を持つ人型の種族であり、自らを天へ高めること、戦闘による相互理解、自らの住処となる『木』への信仰などの文化を持つ。
    彼女自身の性格は生意気かつ奔放でとても好奇心が強く、いちいち思考するよりも勘や本能で動くタイプ。そのおかげか瞬発力や身体能力も人一倍強いが、頭脳戦や騙し合いはニガテ。住んでる場所と性格のせいで、自分の能力にも気づいていなかった。
    能力:三怪(ミケ)
    能力概要:自分たちが相手に負けそうだと思った時、自分たちの数が3体になるように完璧な状態の分身を作る能力。分身には本体、分身の区別はなく、分身たちは能力から思考にいたるまで全くと言っていいほど同じ。
    弱点:分身は彼女の影から現れるため、影のなくなる光のない場所などでは使えない。
    あと顎の下を撫でられると弱い。とても心地良くなる。
    要望(任意):一人称はにゃ、語尾にもにゃを付けて話す。難しい言葉はあまり理解できず、主語を欠いた話し方をよくする。

  • 117二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:00:00

    名前:嗚咽の影
    年齢:?
    性別:なし
    種族:?
    本人概要:
    謎の超高次元存在。正確にはその端末。フード付きのロングコートのような姿をしており、その内側には何も存在しない″無″がひろがっている。
    なお、記憶や感情を蟲に変えて吐かせてくるのは超高次元的価値観からの善意である。やめてくれ。
    能力:『蠢く追憶』
    能力概要:
    相手が有する記憶や感情を蟲に変えて口から吐き出させる。
    記憶や感情が消えていく+体内から蟲が湧くため、精神的ダメージはものすごいが肉体的ダメージは特にない。
    ただし蟲を吐く不快感で発狂したり、記憶や感情が無くなって廃人化したりする。
    弱点:
    ・戦闘に向いてないので攻撃を喰らうたびに存在証明があやふやになり、最終的に消える。
    要望:
    喋らせないでください。感情表現も無しでお願いします。

  • 118二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:00:02

    名前:【切望者】アル=ジャウファル・イブンゾナ=アニスヌール&【餓哭ノヲトメ】トワ・カナエナガレ=ホープ
    年齢:アルは18歳、トワは???
    性別:どちらも女性
    種族:トワは人間、アルは化身
    本人概要:トワは神仏に仕え、各神社に奉納される絵馬の回収人を務めていて、星や流星になって様々な方々の願いを一身で背負い集めている。トワはそれを悲しんでなく、人の希望や願いを見たり聞いたり出来ると考えている。
    アルはとある上位存在に作られた存在で願いを叶える力を持っているが叶え方は願いを冒涜的に歪曲する存在だったが、ゴトーという男性に会い願いを冒涜的に歪曲するのは駄目だと考えるようになった。これ以上願いを歪曲しない為に抑えられるトワの所に行く為、一回ゴトーと別れた。その後ゴトーをトワが住まう神社にてVTuberをやりながらゴトーを待っている。ちなみにゴトーは別れてからアルに会いに行く道中で滑落し、死亡している。アルとトワはゾーナムと仲良しである。
    能力:《星降願詩(ほしふりのねがいうた)》+《願鍛 (がんたん)》+《虚空に囁く願祈の王(イヴァル=ザナドゥ)》+《不願の願い》+《歪叶願》
    能力概要:トワが保持する能力は星降願詩と願鍛である。
    《星降願詩》は己の願いを胸に詠う事で願いを力に変換したり願いに形を与えることが出来る。
    《願鍛 》は人の願いが叶うたびに威力と重さを増す金棒を武器とする。
    アルが保持する能力は虚空に囁く願祈の王と歪叶願と不願の願いである。
    《虚空に囁く願祈の王》は人の願いをかなえるが、代償を世界に背負わせる。誰かに小さな幸福を与えれば、遠くの誰かに小さな不幸が降りかかる。
    《歪叶願》は相手が願っていることを読み取り それを嫌な形で叶える。
    《不願の願い》は自身が願ったものが破綻する能力。叶えたいと願った願いが予期せぬ絶望で叶わなくなる。逆に求めなかった絶望が完璧に成就し達成される 。
    弱点:アルはトワに力を抑えてもらっている為、動きがとても遅い。
    トワは星や流星に何回もなっている為体がボロボロになっており、スタミナが無く衰弱している。
    アルの心臓部分にはコアが露出しており、それを破壊するとアルは死亡する。
    トワの攻撃範囲は3mしかない。

  • 119二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:00:50

    名前:紅蓮(ぐれん)
    年齢:17歳
    性別:男性
    種族:炎神(ヒト型)
    本人概要:
    この若さで神に上り詰めるのも納得の戦闘狂。15歳の時に岩神を張り倒した際に神へと昇格した。
    目についた強い奴にはとりあえず喧嘩を売っていくスタイルで非常に迷惑がられているが強さを認めるととてもなつくため強い神にはかわいがられてもいる。
    能力:蒼焔(そうえん)
    能力概要:
    青い炎を自在に操る能力で、物理・精神・概念の対象にまで干渉可能。火球、炎鞭、炎壁などの攻撃はもちろん、炎を刀剣状や竜状など任意の形に変化させることで圧縮熱・存在干渉の威力を増大させる。感情が昂るほど炎の温度・範囲・干渉力が増し、戦闘狂的性格と相まって圧倒的破壊力を発揮する。敵の能力や精神、存在そのものに干渉することすら可能。
    弱点:
    能力発動時は自分の体を燃料としているので時間をかけすぎると燃え尽きる。
    心臓部がエンジンのような機能をしているため破壊すれば能力を使えなくなるし死ぬ。
    心臓部は能力使用時は赤く光っているのでわかりやすい。
    あくまで戦いが好きなので狡い真似は絶対にしない。

  • 120二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:01:02

    このレスは削除されています

  • 121二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:02:20

    代理です
    名前:No.13(本名:奈月 零)
    年齢:19歳
    性別:女
    種族:人間?
    人物概要:ナンバーを授かりし白蛇同盟の幹部で武力が低い白蛇同盟の中でも戦闘力高めな武闘派で特殊な幹部
    「情報は動いて手に入れる」という信念の通り積極的に各地を飛び回り各国の名家や組織と取引を交わして情報を入手すべく暗躍中
    今回は「佐藤家」という一家と取引をしており娘を襲撃した不届き者の情報を渡す代わりに家の一室を拠点として使う取引をした
    とは言え即座に順応して家族の一員となるとは彼女も想定外らしく戸惑いつつも少しだけ嬉しさを感じているらしい
    性格はクールで寡黙であまり喋らないが馴れ親しんだ相手や敵相手だと鋭く突き刺さる毒舌が飛んでくる、たまに可愛い時がある
    能力:情報解析+自己情報改変
    能力概要:情報解析は名前の通り相手の情報を丸裸に出来る力で常時発動し常に相手の正しい情報を解析し続ける事が可能である
    相手の能力、経歴、状態、思考、次に起こす行動、心の声、信念、欲望、相手の力の源まであらゆる情報を常時得る事ができる
    相手の情報の他にも周囲の情報も解析、入手が可能で不意打ちや卑怯な手段の防止策すら持っており周囲の環境利用もお手の物
    そうして得た情報を元に自己の情報を適宜改変してゆき相手に対応、有利が取れるように自己の情報を調整、最適化していく
    常時更新し続けてゆく最適化の権化であり情報の化身、自己を変え学習し相手より強くなるAIの様な力である
    弱点:情報を解析して自己情報を改変して調整、最適化と手順があるので速攻に弱く最適化が終わるまでに倒す戦術が有効
    自己情報改変中は不安定になり肉体が脆くなったり移動が遅くなったり隙を晒したりするのでやるタイミングは見極めないといけない
    情報の濁流を己の脳だけで必死に処理しているので普通に見えてずっと頭が痛いらしく時折、頭痛が強まって隙が生まれる事がある
    身体に進化式ナノマシンや記憶や情報のバックアップ用の装置などの機械類を取り付けているため最適化するまで常時動きが少し遅い
    手順を踏まないといけないので最初から本領発揮は不可能
    要望:クールで毒舌な口調、一人称は私、武器は人体改造で得た武装
    殺さないでください、もし勝てたらパンケーキが美味しいカフェにでも誘ってください

  • 122二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:06:07

    ストップかな?

  • 123二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:14:05

    >>118

    すいません、ゴトーになっている部分をゴドーにしても良いでしょうか?

  • 1241◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 18:17:59

    >>123

    どうぞ

  • 125二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 18:29:29

    こちらでお願いします
    名前:【切望者】アル=ジャウファル・イブンゾナ=アニスヌール&【餓哭ノヲトメ】トワ・カナエナガレ=ホープ
    年齢:アルは18歳、トワは???
    性別:どちらも女性
    種族:トワは人間、アルは化身
    本人概要:トワは神仏に仕え、各神社に奉納される絵馬の回収人を務めていて、星や流星になって様々な方々の願いを一身で背負い集めている。トワはそれを悲しんでなく、人の希望や願いを見たり聞いたり出来ると考えている。
    アルはとある上位存在に作られた存在で願いを叶える力を持っているが叶え方は願いを冒涜的に歪曲する存在だったが、ゴドーという男性に会い願いを冒涜的に歪曲するのは駄目だと考えるようになった。これ以上願いを歪曲しない為に抑えられるトワの所に行く為、一回ゴドーと別れた。その後ゴドーをトワが住まう神社にてVTuberをやりながらゴドーを待っている。ちなみにゴドーは別れてからアルに会いに行く道中で滑落し、死亡している。アルとトワはゾーナムと仲良しである。
    能力:《星降願詩(ほしふりのねがいうた)》+《願鍛 (がんたん)》+《虚空に囁く願祈の王(イヴァル=ザナドゥ)》+《不願の願い》+《歪叶願》
    能力概要:トワが保持する能力は星降願詩と願鍛である。
    《星降願詩》は己の願いを胸に詠う事で願いを力に変換したり願いに形を与えることが出来る。
    《願鍛 》は人の願いが叶うたびに威力と重さを増す金棒を武器とする。
    アルが保持する能力は虚空に囁く願祈の王と歪叶願と不願の願いである。
    《虚空に囁く願祈の王》は人の願いをかなえるが、代償を世界に背負わせる。誰かに小さな幸福を与えれば、遠くの誰かに小さな不幸が降りかかる。
    《歪叶願》は相手が願っていることを読み取り それを嫌な形で叶える。
    《不願の願い》は自身が願ったものが破綻する能力。叶えたいと願った願いが予期せぬ絶望で叶わなくなる。逆に求めなかった絶望が完璧に成就し達成される 。
    弱点:アルはトワに力を抑えてもらっている為、動きがとても遅い。
    トワは星や流星に何回もなっている為体がボロボロになっており、スタミナが無く衰弱している。
    アルの心臓部分にはコアが露出しており、それを破壊するとアルは死亡する。
    トワの攻撃範囲は3mしかない。

  • 1261◆ZEeB1LlpgE25/09/11(木) 22:17:35

    世界を腐敗させる者vs紅蓮
    【切望者】アル=ジャウファル・イブンゾナ=アニスヌール&【餓哭ノヲトメ】トワ・カナエナガレ=ホープvsネャントリコ・ネャミ
    No.13vs嗚咽の影
    星月 ひまわりvsオトン・トーテンタンツ
    アンドレ・ドュ・ファントムvs数言虚樫

  • 127二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 01:33:45

    楽しみだ

  • 128二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 06:38:18

    保守

  • 129二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 13:34:33

    ほしゅ

  • 130二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 13:58:38

    期待

  • 1311◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 14:49:46

    題名『蒼焔の戦慄』

  • 1321◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 14:50:28

    深夜の廃工場。錆びついた鉄骨が月光に照らされ、コンクリートの床には長い影が伸びていた。

    影尾のように、廃墟の闇に馴染める者は多くない。だが紅蓮は違った。
    肩を回し、拳を軽く握る。目の前に漂う不気味な気配に、戦慄ではなく興奮が湧き上がる。

    「……匂うな。強え奴の気配が」

    無数の腐敗の匂い、鉄の錆と死臭が混ざったような独特の悪臭が鼻腔を突く。
    廃工場の奥から、ぬるりとした塊が動いた。

    人とも泥ともつかぬ形状。滑らかに変形する表皮の下で肉が蠢く。
    腐敗しかけたスライムと人間の中間のような存在――世界を腐敗させる者だ。

    顔らしきものがぼんやりと現れ、ただニタリと笑う。
    声は出さない。ただ笑うだけで、周囲の空気をねじ込むような威圧感を放っていた。

    紅蓮は笑みを返す。

    「いいじゃねえか……今夜の相手は、お前か!」

    胸の奥で心臓が脈打つ。赤く光る心臓部が、蒼焔の燃料として燃え上がる。
    肩から立ち上る青い炎が、暗闇に鮮烈な光を投げかける。

    怪異はじっと、ニタリと笑う。動きはゆっくりだが、全身から発せられる腐敗の波動は容赦なく、床も鉄骨も浸食していく。

    紅蓮は拳を握り直す。

    「……さて、遊ぼうか」

    その瞬間、空気が震えた。戦闘狂の神と、不滅の腐敗の怪異――邂逅は必然だった。

  • 1331◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 14:51:10

    紅蓮は廃工場の中央へ踏み込んだ。

    床に広がる黒い腐敗が、まるで生きているかのように蠢く。

    「ちっ……おもしれえ!」

    彼の瞳に狂気が宿る。胸の奥で心臓が赤く光り、蒼い炎が肩から腕にかけて立ち上る。
    炎はただの火ではない。刀剣状、竜状、鞭状、自在に変形し、紅蓮の意思に従って動く。

    腐敗の怪異はゆっくりと腕を伸ばした。
    触れたものは次々と黒く腐敗し、床や壁が爛れていく。

    紅蓮は炎を鞭に変え、腐敗の腕を一閃で切り払った。

    「よし……これでどうだ!」

    だが怪異は再び形を変え、焼き切った部分を増殖させて埋めてくる。
    まるで無限の肉塊が、廃工場を覆い尽くさんと蠢いた。

    青い炎が床に反射し、怪異の表面を焼き切る。
    しかし、触れた場所が瞬時に腐敗に侵される。
    紅蓮は炎で自分を守りつつ、慎重に距離を詰める。

    「フン、なるほど……触れたものを腐らせるか」

    怪異はニタリと笑うだけで、攻撃を仕掛けてくる気配はない。
    だがその笑みが不気味で、紅蓮の戦闘心を煽る。

  • 1341◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 14:51:32

    「静かにしてても面白くねえ……勝負だ、全部出すぞ!」

    彼の蒼焔が刀剣状に変化し、振りかぶる。
    炎の刃が腐敗の腕に斬りかかると、怪異の塊がぬるりと裂け、黒い液が飛び散った。

    だが裂けた部分は瞬時に増殖し、再び元通りになる。
    紅蓮は青い炎を竜状に変えて宙を駆け、飛び蹴りと鞭の連撃で攻める。
    怪異の腐敗は強力だが、紅蓮の攻撃も圧倒的だ。

    互いの力がぶつかる度、廃工場の空気は灼熱と腐臭で満たされる。
    鉄骨は軋み、コンクリートは粉塵となって舞う。

    「……なかなか手強えな。でも面白い」

    紅蓮の口元に笑みが広がる。
    怪異もまた、ただニタリと笑い続ける。
    戦いの序章は、すでに熱を帯びていた。

  • 1351◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 14:53:03

    廃工場の内部。黒く蠢く腐敗の塊は、まるで意思を持ったかのように形を変える。

    天井から巨大な腕が振り下ろされ、床を砕き、鉄骨を押し曲げる。

    「くっ……強ぇな……!」

    紅蓮は蒼焔を竜状に変え、腕を受け止める。炎の鱗が衝撃を吸収するが、触れた部分の炎すら侵食され、青白い光が薄れていく。

    「なるほど……触れたものすら腐らせるのか」

    腐敗の塊は無限に増殖するように、裂けた部分を瞬時に埋める。
    空間全体を覆い尽くす勢いで迫るその塊に、紅蓮は飛び退き、蒼焔を刀剣に変えて迎え撃つ。

    切り裂いた塊の内部から、ぬるりとした肉片が飛び出し、再び増殖して追いかけてくる。
    「ちっ……これじゃダメだ!」

    紅蓮は鞭状に変えた蒼焔で塊を引き寄せ、圧縮熱で焼き払う。
    腐敗の触手は斬り裂かれたにも関わらず、ゆっくりと伸び、再び紅蓮を狙う。

    空気は灼熱と腐臭で満ち、視界も揺らぐ。
    紅蓮の肩から腕にかけて青い炎が燃え立つが、自分の体を燃料にしているため、無尽蔵ではない。

    「フン……ここまでか。面白え……!」

    笑みを浮かべながら紅蓮は距離を取り、敵の攻撃をかわしつつ、概念にまで干渉する蒼焔を準備する。
    腐敗の怪異は触れたものすべてを腐らせる性質を持つが、紅蓮は炎でその影響を最小限に抑える。

    だが、触手の一部が左腕にまとわりつき、皮膚を侵食し始めた。

  • 1361◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 14:53:15

    「っ……クソ……!」

    紅蓮は蒼焔で腐敗を焼き切り、左腕を振り回すように攻撃をかわす。
    一瞬の油断でも、腐敗は体を蝕む危険性がある。

    腐敗の怪異はニタリと笑うだけで、攻撃の速さや力には拘らない。
    その加虐性が戦場を支配し、じわじわと紅蓮を追い詰める。

    しかし紅蓮は心臓部の赤い光を頼りに、炎の圧縮と変形を繰り返す。
    青い竜が跳ね、鞭が蠢き、炎は切り裂くごとに周囲の腐敗を焼き尽くす。

    「まだまだ、これくらいでへこたれると思うなよ!」

    青い炎が巨大な竜の姿となり、廃工場の空間を駆け巡る。
    腐敗の怪異はニタリと笑い、黒い液を飛ばす。しかし紅蓮は笑顔を崩さず、次の反撃の機会を狙う。

    戦いは熾烈を極める。
    腐敗の猛威に圧されつつも、炎神はその熱量を楽しみ、戦闘狂としての本能を存分に発揮していた。

  • 1371◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 14:55:30

    戦場は蒼焔と腐敗の黒が入り混じり、廃工場はまるで地獄絵図のようだった。

    紅蓮は竜状の炎を駆使し、腐敗の触手を次々と斬り裂く。
    だが、触手は無限に増殖するかのように再生し、攻撃の隙を突いてきた。

    「ちっ……マジで粘るな!」

    左腕に触手が絡みついた。瞬間、皮膚が黒く爛れ、骨まで侵食される感覚が走る。

    「う……っ、やられたか……!」

    紅蓮は歯を食いしばる。胸の奥で赤く光る心臓部が、燃料として炎をさらに燃え上がらせる。
    腐敗が腕を侵食する速さに対抗するため、彼は決断した。

    「……この腕は、くれてやらぁ!」

    腕を振り回すようにして切り離し、その部分を蒼焔で一気に焼き払う。
    青白い炎が左腕を包み込み、腐敗と肉体を燃え尽きさせた。

    痛みは確かにあった。腕を失った感覚が体中に響く。
    しかし、その痛みと引き換えに紅蓮は次の一撃の燃料を得た。

    腐敗の怪異はいつも通りニタリと笑い、不快感を露わにする。
    直撃を受けたことで心臓部がうっすらと姿を現し始めた。

  • 1381◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 14:57:53

    紅蓮は炎を刀剣状に変え、腕を失った左側の空間を補うように戦闘態勢を整える。

    「俺の腕を持ってったのはお前が初めてだ
     誇れよ」

    戦場の空気は灼熱と腐敗で満ちている。
    それでも紅蓮は笑みを浮かべ、戦い続ける。
    片腕を失った痛みを背負いながらも、戦闘狂としての興奮は衰えない。

    「次は……あの丸い心臓を狙うだけだ」

    腐敗の怪異はじわじわと攻め続け、黒い触手で紅蓮を取り囲む。
    だが紅蓮は逃げず、目を細めて笑う。

    「さあ、遊びはここから本番だ!」

    廃工場の闇に、青い炎がさらに燃え上がった。

  • 1391◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 15:00:05

    廃工場は青い光と黒い腐敗に支配され、空気は灼熱と腐臭で満ちていた。

    紅蓮は片腕を失ったものの、右手に全ての蒼焔を集中させていた。
    青白く光る炎は刀剣や鞭を超え、槍のように鋭く伸び、圧縮熱を帯びて輝く。

    腐敗の怪異はゆっくりと全身を膨張させ、紅蓮を包み込むように迫った。
    その触手は無数に伸び、どの角度からでも攻撃が届く。

    「……さてと、これで終わらせるか」

    紅蓮は笑みを浮かべ、炎の槍を握りしめる。
    片腕を失った痛みを忘れるほど、戦闘狂の本能が全身を駆け巡った。

    腐敗の怪異はニタリと笑い、黒い液を飛ばして紅蓮を捕らえようとする。
    しかし、左腕を失った代償として得た燃料で、蒼焔の威力は極限まで増していた。

    一気に距離を詰め、紅蓮は圧縮した蒼焔の槍を突き立てる。
    空間を裂く光と熱が炸裂し、触手が飛び散る。

    ついに、悍ましい丸い心臓部が露出した。
    怪異は不快感に震え、動きが鈍る。
    その隙を逃さず、紅蓮は槍を深く突き刺す。

    「終いだァッ!!」

    蒼焔の圧縮熱が心臓を焼き、赤い光は一瞬で消し飛んだ。
    腐敗の怪異は崩れ、黒い塊は動かなくなる。
    戦いは、ついに終わった。

  • 1401◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 15:00:16

    紅蓮は肩で荒い息をつき、青い炎を落ち着かせる。
    片腕を失った痛みはあるものの、戦闘狂としての笑みは消えない。

    「……ふっ、最高だったな……」

    廃工場に響く笑い声。戦いの熱気が冷め、静寂が戻る。

  • 1411◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 15:01:59

    廃工場の内部は、戦いの痕跡で満ちていた。
    焦げた鉄骨、砕けたコンクリート、そして黒く蠢いていた腐敗の残骸。

    紅蓮は片腕を失いながらも立ち尽くす。
    肩から胸にかけて蒼焔の余熱が微かに漂い、胸の奥で赤く光っていた心臓部は、戦いの興奮をゆっくりと落ち着かせていく。

    「……っはは。最高だな……」

    笑みが自然に零れる。腕一本を失った痛みは確かにある。
    だがその痛みは、強敵を屠った証でもあった。
    戦闘狂としての誇り、炎神としての力、すべてを感じられる瞬間だった。

    左腕を焼き払った代償は重いが、紅蓮はまるで勲章を手にしたかのように誇らしげに胸を張る。

    「まだまだ燃え尽きちゃいねえ……」

    月光の下、紅蓮の瞳はまだ戦いを求める炎のように輝いていた。
    片腕を失った事実すら、彼の笑みを消せない。

    腐敗の怪異は倒れ、黒い塊となった肉体は静かに崩れ落ちる。
    だが、紅蓮の心には戦いの余韻が満ちていた。

    「次は……もっと強え奴を見つけてやる」

    炎神は歩みを進め、片腕の痛みを感じながらも、新たな戦いに心を躍らせる。
    廃工場の静寂の中、紅蓮の笑声だけが残り、夜の闇に吸い込まれていった。

    勝者は紅蓮。
    炎と腐敗が交わった戦いの記憶は、彼の心に深く刻まれた。

  • 1421◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 15:02:09

    以上

  • 143二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 15:04:38

    良かった!

  • 144二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 15:05:06

    炎神気持ちの良い奴だな

  • 145二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 15:42:43

    紅蓮かっこいい!

  • 146二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 21:07:26

    ほっしゅ

  • 1471◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 21:19:16

    題名『願いと歪みの夜』

  • 1481◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 21:20:00

    夜の神社。
    鈴の音が風に揺れ、月明かりに照らされた境内には誰もいない。

    ただ一人、トワが立っていた。
    手に抱えているのは、願いを託された絵馬。人々の想いを背負うその小さな木札を、彼女は胸に押し当ててそっと目を閉じる。

    「……また、ひとつ叶うといい」

    声は囁きのように細い。
    繰り返し流星となり、幾度も身を削ってきたその身体はもうボロボロだ。
    それでも、彼女はまだ歩き続ける。願いのために。

    その静寂を破るように、木々の上から気配が落ちてきた。

    「にゃっ……見つけたにゃ」

    ピンク色の耳を揺らし、緑の体毛を月光に煌めかせた少女が、境内に飛び降りてくる。
    鋭い爪が石畳に触れた瞬間、火花のような音が鳴った。

    「……誰?」

    トワが小さく問う。
    背後に控えるアルは口を閉ざしたまま、じっと少女を見つめていた。彼女を守る影のように。

    少女はニタニタと笑いながら、爪を掲げる。

    「強そうな匂い……するにゃ。
    試したいにゃ、遊びたいにゃ。戦おうにゃ!」

    彼女の名はネャントリコ・ネャミ。

  • 1491◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 21:20:19

    森に生きる獣民の若者。血に飢えたわけでも、憎しみでもない。
    ただ本能と好奇心が、彼女を戦いへ駆り立てていた。

    「……ここは、願いを集める場所。無闇に争うつもりはない」

    トワは淡々と告げる。
    しかしその声は力なく、相手を止めるだけの迫力を欠いていた。

    「なら、にゃ。もっと戦いたくなるようにしてあげるにゃ!」

    ネャントリコの足が石畳を弾き、瞬きの間にトワへ迫る。
    鋭い爪が月光を切り裂いた。

    背後からアルの声が響く。

    「……トワ、避けろ」

    その声は静かでありながら、どこか深い絶望を孕んでいた。

    こうして、出会いは必然のように殺し合いへと変わった。

  • 1501◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 21:21:45

    爪が迫る。
    トワはぎりぎりで身を翻し、肩に浅い傷を負った。赤い線が肌を走る。

    「……っ」

    声にならない痛みが漏れる。
    彼女の身体はもう十分に疲弊している。敏捷な相手を相手取るにはあまりに不利だった。

    「にゃははっ、遅いにゃ、遅いにゃ!」

    ネャントリコは跳ねるように飛び退き、月明かりの下で影を踏んだ。
    するとその黒い影から、ふたり、同じ姿の少女が浮かび上がる。

    「っ……!」

    三体のネャントリコが、石畳に爪を立てながら笑う。
    思考も動きも完全に同じ。影から生まれた分身は、一糸乱れぬ連携を取る。

    「三怪……!」

    トワがかすかに呟く。

    三体は同時に弾けたように走り出す。
    正面、左右、三方からの斬撃。爪が風を裂き、月光を反射する。

    トワは願鍛の金棒を構えた。
    しかしその重さは、願いを背負うたび増してきた。
    衰弱した身体では振るうだけでも精一杯だ。

  • 1511◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 21:22:30

    「っ――!」

    火花が散り、一本目の爪を弾く。だが残る二体の爪が迫り、衣を裂いた。

    背後で見ていたアルが、静かに歩み出す。
    露出した胸元のコアが、不気味に淡く光る。

    「……抑えている力では、足りない」

    彼女の声は囁きのようだが、境内を満たすように響いた。

    「願うものよ、叶えよう……だが、その形は歪んで然るべきだ」

    瞬間、三体のネャントリコの動きが僅かに乱れた。
    アルの能力――《歪叶願》が発動する。

    ネャントリコの心に渦巻く「勝ちたい」「もっと強くなりたい」という本能が、歪んだ形で現実に溢れ出す。

    三体のうち一体が、突如自らの爪で胸を貫いた。

    「にゃ……?」

    笑みが凍りつく間もなく、その身体は泥のように崩れ落ち、影へと沈んでいく。

    残る二体は獰猛な唸り声を上げ、さらに速さを増して跳びかかった。

    「……アル」
    トワが息を荒げながら、背後に声を投げる。

    「抑えを……外したら、あなたが壊れる……!」

  • 1521◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 21:22:51

    「構わない」

    アルの目は虚ろで、しかし確かな決意に燃えていた。

    「願いは常に、誰かの破滅の上にある……」

    境内の空気がさらに重く、冷たく沈んでいった。

    戦いは、願いと本能の衝突へと進んでいく。

  • 1531◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 22:34:40

    二体のネャントリコが、月明かりの下で同時に跳躍した。
    左右から迫る爪は、避ければ背後を裂き、受ければ肉を抉る。

    「……っ!」

    トワは歯を食いしばり、願鍛の金棒を振るった。
    鈍い衝撃音が境内に響く。一本の爪を弾いたものの、もう一方が腕を裂いた。血が飛び散り、絵馬のいくつかが地に落ちる。

    「にゃはっ……いい顔にゃ」

    ネャントリコは笑う。分身の二体は完璧に同じ笑みを浮かべ、爪をかざした。
    彼女たちの動きは鏡写し。考える隙すらなく、連撃が襲い掛かる。

    「はぁ……はぁ……」

    トワは金棒を振り上げるたび、膝が軋んだ。
    重すぎる願い。集め続けた人々の祈りが、彼女を支えると同時に押し潰していた。

    背後から、アルの声が低く落ちる。

    「……願うほど、叶うほど……破滅は近づく」

    二体の爪が迫った瞬間、空気が歪んだ。
    アルの瞳が淡く輝き、《歪叶願》が再び動き出す。

    「勝ちたいと願ったか……ならば」

    ネャントリコの胸の奥――獣としての直感と欲望。
    それは「もっと速く」「もっと強く」「必ず勝ちたい」という叫びだった。

  • 1541◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 22:35:01

    歪んだ願いは現実を捻じ曲げる。
    ネャントリコの片割れが、突如足をもつれさせ、信じられないほどの速さで頭から石畳に叩きつけられた。
    骨が砕ける音が響き、影の泥に溶けるように消えていく。

    残るは一体。

    「……!」

    しかしその一体は、怯むどころか逆に狂気を増したように笑い声を上げた。

    「にゃっ……おもしろいにゃ!
    もっともっと……遊ぶにゃ!」

    その瞳は光を宿し、爪はさらに鋭く輝く。
    《歪叶願》が削ったのは分身のひとつ。しかし本体は「死の恐怖」すら快楽に変えて突っ込んでくる。

    「トワ!」

    アルが叫ぶ。
    トワは返事をする代わりに、血に濡れた手で金棒を握り直した。

    「願いは……私が背負う。あなたは、まだ壊れないで」

    二人の言葉が交わった瞬間、再び爪と金棒が衝突した。
    火花のような光が夜空を散らし、戦いはさらに苛烈さを増していく。

  • 1551◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 22:35:53

    金棒を握る腕が、徐々に震えていく。
    トワの身体は限界を超えていた。
    これまで背負ってきた数え切れぬ願いと流星の変化による疲労。血と汗で濡れた肌は、もう力のほとんどを失っていた。

    「……もう……これ以上は……」

    吐息のような声が、冷たい夜風に消える。
    それでもトワは前に立ち、残ったネャントリコの分身に向かって金棒を構え続けた。

    「にゃ……にゃにゃっ……!」

    分身が跳びかかる。爪が光を裂き、トワの肩を深く抉った。
    痛みと衰弱が全身を貫き、金棒を振るう力さえ危うくなる。

    「……アル……」

    アルは静かに歩み寄った。
    コアが胸の中心で赤く光り、不自然なほど目立つ。
    抑制を解いた分、能力は強大になったが、それだけ自らの命も晒される。

    「……動きが遅い……だが、願いを守るためなら……」

    アルの瞳は深く沈み、力を振り絞る。

  • 1561◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 22:36:11

    《虚空に囁く願祈の王》が静かに働き、願いの力を周囲の空気に帯びさせる。

    しかしネャントリコは、本能と好奇心のみで動く。
    瞬間のスピードは衰えず、攻撃は容赦なく、躱す隙もほとんどない。

    「にゃにゃっ……もっと……もっと強く……!」

    爪がトワの側頭を掠め、金棒を弾き飛ばす。
    トワは飛び退きながらも、膝をつき、血で濡れた顔を上げた。

    「……まだ……守る……まだ……!」

    金棒を握る手から力が漏れ、願いを背負う重さが身体を押し潰す。
    だがアルの力はそれを補い、彼女にわずかな反撃のチャンスを作る。

    「……不願の願い、だ」

    アルの声が夜に響く。
    彼女の願いを破滅に変え、絶望を現実に引き寄せる力――それは、どれだけ追い詰められてもネャントリコの一歩を止める。

    だがその間も、ネャントリコは跳躍し、爪を振るい、攻撃の手を緩めない。
    トワの体は血と疲労で震え、アルのコアも光を増す。
    互いに限界を押し合う、死線の夜が深まっていく。

  • 1571◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 22:37:13

    ネャントリコの瞳が狂気に輝く。

    「にゃ……勝ちたい……もっと、もっと……!」

    三体目の分身は、すでに影から現れる余地すらなく、本体そのものの動きとなった。
    本能だけで突き進むその爪は、金棒を振るうトワの腕を避け、容赦なく胸を狙う。

    「……もう……これ以上は……!」

    トワは息を切らしながらも、願いを胸に唱える。
    火花のような声が夜空に溶け、金棒に力を宿す。

    「アル……お願い……」

    アルの目が赤く光り、《不願の願い》を解き放つ。
    ネャントリコの胸奥に渦巻く本能――「勝利への強烈な願い」。
    それはアルの能力によって歪められ、破滅へと変換された。

    「にゃっ……!?にゃ……にゃにゃっ……!」

    爪を振るう動きが突然止まる。
    分身は己の意思を見失い、本体の動きも鈍る。
    「勝利」という願いは破綻し、代わりに「死」という絶望が完璧に現実となった。

    トワはぎりぎりの体勢で飛び退き、金棒を強く振るう。
    爪に触れた瞬間、ネャントリコは石畳に叩きつけられ、血と影が混ざり合う。

    「にゃ……にゃにゃ……にゃぁ……」

    笑みも絶望に変わり、最後の力で爪を振ろうとしたが、身体は完全に制御を失っていた。

  • 1581◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 22:37:24

    アルとトワの連携攻撃が、影も残さぬ一撃となり、残った分身ごと本体を貫いた。

    「……終わった」

    アルは息を整え、まだ震えるコアを抱えながら立つ。
    トワは膝をつき、深く息を吸い込む。
    戦場は静まり返り、月明かりに血が赤く反射した。

    しかし、勝利の喜びはなかった。
    願いを背負う者として、彼女たちは知っていた。
    どれだけ敵を倒しても、背負う苦しみは消えないことを。

  • 1591◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 22:37:55

    戦いの跡は、冷たい夜風だけが撫でる。
    散乱する絵馬と、割れた石畳の上に、ネャントリコの残骸が静かに横たわる。

    「……静かになったね」

    トワは血まみれの金棒を抱え、そっと呟く。
    アルはその背に立ち、コアを露出させながらも守るように見守る。

    「これで……終わりだ」

    死んだ敵の残骸を見下ろすアルの瞳には、冷たさとわずかな哀しみが混ざる。
    願いを叶える力は、また誰かの破滅と表裏一体である。

    トワは膝をつきながらも、絵馬を拾い集める。

    「……まだ、叶えるべき願いがある」

    月光の下、二人は疲弊した身体を抱えながらも、再び歩み出す。
    戦いの余韻と共に、願いを背負う重さを改めて噛み締めながら。

    夜の神社には、静かな風と遠い星々の光だけが残った。

  • 1601◆ZEeB1LlpgE25/09/12(金) 22:38:14

    以上

  • 161二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 22:50:58

    投下お疲れ様です

  • 162二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 22:53:13

    よかったです!

  • 163二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 00:57:23

    ネャントリコすごくかわいい!!

  • 164二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 02:02:02

    良かった

  • 165二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 05:29:43

    やっぱり猫って可愛いよね

  • 166二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 09:01:53

    ほしゅ

  • 1671◆ZEeB1LlpgE25/09/13(土) 09:34:55

    https://writening.net/page?aX8SL8


    人によっては少し苦手な描写があるかもしれません

  • 168二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 09:44:13

    負けてもうたが…なんか再戦しそうな勢いも感じる
    あと知らん姉も生えてる…

  • 169二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 10:11:36

    ウワーッ
    好き!!

  • 170二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 10:16:19

    >>「吐き出される記憶は加速し、私の中の秩序は氷片のように砕けていった。」

    記憶を秩序って表現してるのめっっっちゃ好き

  • 171二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 10:22:13

    奪われても取り返そうとする意思は好みだ

  • 172二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 15:59:50

    ほじゅ

  • 1731◆ZEeB1LlpgE25/09/13(土) 19:22:07
  • 174二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 19:33:18

    ロシナンテが名前の響きといい個人的にすごい可愛い

  • 175二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 19:37:46

    最高でした
    伽藍堂の胸中に、それでも残り続ける願いのカケラだけを頼りに夢を描く少女は尊い!

  • 176二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 21:22:00

    読後感がすごくよかった

  • 177二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 00:54:45

    このレスは削除されています

  • 178二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 06:08:15

    保守

  • 1791◆ZEeB1LlpgE25/09/14(日) 10:55:57
  • 180二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 11:37:44

    技の引き出しが多いのはやっぱりいいな

  • 181二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 11:55:47

    良かった!

  • 1821◆ZEeB1LlpgE25/09/14(日) 12:00:59

    安価は14:00から10個募集

  • 183二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:00:00

    名前:大沢 喜生
    年齢:100年前から天人をしています
    性別:男
    種族:大天人
    本人概要:レトロな雰囲気がある天人の中でも崇高な大天人である青年。約100年前から天人であるらしい。柔和で落ち着いた雰囲気だが底知れない気配と鋭い思考を持ち合わせている。
    人間だった頃は病弱にも関わらず数々の仕事を掛け持ちし世のため人のために勤勉に働き病死した。その為、功績が認められ天人へと昇格した。
    地上へ降りる際には国を挙げての護衛が入るが喜生はそれらを潜り抜けて自由に遊ぶことが好き。部下や従者も置いて行ってしまう。
    能力:天人の体、《天術》
    能力概要:天人の体はとても頑丈であり如何なる攻撃や能力も天人には意味がない。
    天人は自己回復力や再生力も逸脱して高く、身体能力も基本的には極高の部類に入り武術的にも秀でている。天人は病気になったり疲労になったりなどがない究極的な種族。しかし穢れを毛嫌いする。
    また、喜生は《天術》という喜生のみが扱える唯一無二の術を操る。天術は天を統べる力であり、生きている存在は死んでも敵わない強大な力。光の弾幕やエネルギー光線、銀河創造から万物の操作などを主に使用する。天術には穢れ(=生命)を浄化する作用があり、生きている者を浄化して消し去る。
    弱点:天人が下界に降りる際には使い捨ての肉体を使用する。その肉体にはいつでも消せるようにとわかりやすいコアが設定されている。そのコアを破壊すると下界用の肉体はものの数秒で崩れ去る。コアは心臓付近にある。
    下界用の肉体は普通の人間並の耐久力(本人はそんなことない)。
    浄化などは機械や幽霊には効かない。
    要望:一人称は私、相手のことは下界人と呼ぶ。
    戦闘が終わったら可能であれば宴会をしたいです

  • 184二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:00:00

    名前:執事悪魔グラス(白霜の主・コールグラス)
    年齢:1000以上
    性別:無し
    種族:悪魔
    本人概要:執事服を着た白山羊頭の召使い悪魔。名はグラス。丁寧な振る舞いで、家事から戦闘まで何でも任せられる万能従者。契約を交わした術者によって召喚されることで姿を現し、その力を振るう。主従契約は一名限定であり、新たに契約を交わす場合、現術者の死亡か現契約の破棄が必要。
    正体は隔絶した氷の力を持つ大悪魔コールグラス。白山羊の頭に獅子の鬣、巨人の肉体を持った怪物であり、執事悪魔グラスはコールグラスが創り操る氷人形に過ぎない。用心深い性格だが、一方で怠惰。自身が創造した異界の宮殿にて隠居中。数百年は外に出ていない。趣味は氷細工。今回の戦いも氷人形任せで、本人はリモート参加。
    大火の主・フラムゴールの弟だが、兄弟仲は険悪。始末する算段を立てていたが、勝手に死んでたので大いに笑い、真価の主・アルゲートから購入した酒と馳走で祝宴をあげた。
    能力:絶零の氷却、風前の呪炎
    能力概要:絶零の氷却 コールグラスの持つ氷の力。姿を現した瞬間、世界中の至る所、東西南北隅々にまで霜が降り、海面が凍りつく程に寒冷化する。時間経過で気温は更に低下し、最終的に世界全域で絶対零度となる。コールグラスに近ければ近い程温度低下は早く、コールグラスが視認できる距離では気づく間も無く、即座に凍結する。
    規格外の出力だけでなく、繊細な魔術を組み上げる技量も兼ね備え、氷魔術であらゆる事象を実現可能。その例が自由自在に動く氷人形グラスであり、総数にも一度に動かせる人数にも限りが無い。
    ・風前の呪炎 兄の死に場所から回収した呪炎“不死の炎”の残り火。本来の主を失い弱まっているが使い方次第。極限まで冷却した空間に瞬間的に火力を高めた呪炎を放ち、破局的な大爆発を引き起こす。
    弱点:コールグラスの胸部には蒼白い宝石が埋め込まれており、それが心臓であり核、破壊すれば致命傷となる(今回本人は直接出てこないのでフレーバー)
    ・グラスの胸部にも核があり破壊されると砕け散る。グラス自体の本体と同じ能力を使えるものの、戦闘能力と能力規模は本体の約10分の1以下。
    ・グラスを召喚している術者が戦場におり、倒されると決着。グラスは術者の魂を回収し、撤収する。
    要望(任意):術者のキャラクターについてはお任せします。

  • 185二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:00:00

    名前:マーロン・バーバンク
    年齢:30歳
    性別:男性
    種族:人間
    本人概要:沌神から力を与えられた存在。沌神に力を与えられる前は、鍛え上げた様々な話術を使って相手の人生が放送されているリアリティ番組だと思わせてマーロンがやれと言った事をやらせていた。信じ込ませていた存在達が己の人生がリアリティ番組ではないと気付いてマーロンを殺そうとしていた時に沌神から力を貰い、《トゥルーマン・ショー》と《ストックホルム》が手に入って《ストックホルム》で殺されそうになっていた場面を切り抜けた。
    能力:《トゥルーマン・ショー》+《ストックホルム》
    能力概要:トゥルーマン・ショーは相手に喋りかけて時間をかけて洗脳していきこの戦闘が時代劇やドラマと言った撮影だと認識させ、幻覚でそれを補強する。
    ストックホルムはトゥルーマン・ショーで洗脳・幻覚をした相手に同情をさせて手を鈍らせたり、己に手を差しのべさせる。哀れに思われなくても、トゥルーマン・ショーが効いているのならば、倒れられそうな所でわざとやられるフリをして相手が撮影が終わったと認識したら奇襲したり、相手が強すぎて勝てないと感じたら撮影が終わったという雰囲気を出して逃げる。
    弱点:トゥルーマン・ショーはマーロンの喋りに相手が反応しないと発動出来ない。
    スタミナが無く、3分間走れば体力が無くなり気絶してしまう。

  • 186二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:00:00

    名前:石塔義徹
    年齢:17歳
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:
    超常的な能力及びそれを活用した戦闘力を絶対至上主義とする学園都市の中心部「光世学園」にてランキング8位を誇る実力者。
    良くも悪くも裏表のない粗暴な性格の番長であり、真面目な生徒や教師からは嫌われている一方で、一本気な様相に惹かれて彼を慕う舎弟も多い。
    信条は『邪魔するヤツはぶっ飛ばす!』
    自分が納得できなければどんな格上だろうと一瞬も躊躇いなく挑みかかる怖いもの知らずであり、そのパワフルさでランキング8位にまで登り詰めた直情型パワーファイター。
    能力:≪夜露死苦チャリオット≫/≪漢気合体≫
    能力概要:
    ≪夜露死苦チャリオット≫:威圧感のある重厚な機械馬2頭が牽引する重二輪戦車を召喚し乗り回す。小回りが利かないのが難点だが、スピードと破壊力はピカ一で鉄筋コンクリートのビルにすら大穴を開ける。相手に向かって直線的に爆走し轢殺するのが主な使用法。
    ≪漢気合体≫:チャリオットが耐久限界を迎えた時に発動。機械馬や戦車のパーツをアーマーとして身に纏い身体能力を劇的に強化する。身体に重い負荷が掛かるのが弱点だが、スピードと破壊力はチャリオットの時より遥かに上昇する。
    弱点:
    小難しいことを考えるのが苦手なため罠や詐術に弱い。また、遠距離からの攻撃にも対応できない。
    ≪夜露死苦チャリオット≫は小回りが利かず、一度攻撃を避けられれば大きな隙を晒してしまう。
    ≪漢気合体≫後の強化フォームは身体への負担が大きい。無傷で発動できるのは10秒が限界であり、その後はアーマーから発せられる高温と骨が折れるほどの圧力に耐えなければならず長期戦が出来ない。

  • 187二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:00:00

    名前:広告バイオ飛行船『プラダートリCXXVIII』
    年齢:5
    性別:なし
    種族:バイオ飛行船
    本人概要:世界中の都市に広告を届けるバイオパンク社の保有する広告宣伝用飛行船 バイオコンピュータで演算される魔術により飛行しながら両脇の最高品質バイオスクリーンと黄金比バイオ音声で自社製品を宣伝する 名前からも分かるように兄あるいは姉が最低127体はいるようだ
    能力:バイオカラステング バイオウイルス散布
    能力概要:
    バイオカラステング:
    ある伝説的天狗から作られたクローン
    市販のバイオカラステング警備員の3倍の身体能力を持ち右手に超硬質バイオ六尺ロッドを装備し左手には「御用」と書かれた提灯型バイオサーチライト兼マイクロ骨麻痺針機関銃を持つ 飛行船に搭載されたバイオコンピュータとのデータ通信により連携戦術能力が高く三羽1組で行動する もちろん天狗なので空を飛べる
    バイオウイルス散布:
    都市冷却及び立体映像と偽ってバイオウイルスを含んだ霧を散布する バイオウイルスは皮膚から侵入し相手の細胞に不活性バイオ因子と呼ばれる特殊な遺伝的形質を移植する ウイルスやバイオ因子は高度なバイオ技術により隠蔽されているし不活性因子なので能力や技術でも感知不可能でありもちろん免疫による自然排除も不可 親から子へ遺伝する性質を持ちやがて訪れる時を待ち続ける バイオカラステングを立体映像でサポートする
    なおバイオウイルス散布は重大な機密であるため秘匿されており情報漏洩を確認次第エージェントが送り込まれる
    弱点:バイオカラステングの持つ提灯型マイクロ麻痺針機関銃は市街地で使うことを想定されているため服を通せないほど威力が低い 市街地で無闇に高火力武装を使うと評判が悪くなり客が減るのだ
    バイオ鴉天狗が破壊されると飛行船は撤退する
    バイオウイルスやバイオ因子は改神が復活するまでは何ら肉体や精神に影響を及ぼすことはない むしろ全ステが+6されるまであるし外見にも何ら影響はない
    要望:台詞は自社製品の広告でお願いします

  • 188二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:00:09

    名前:タケノコ・チャンプルー
    年齢:27
    性別:女
    種族:人
    本人概要:某国で料理店の店主をやっている女の子。元々は大学進学を目指していたが、先代店主の跡を継いで店主になった。性格はとても明るく元気で飄々としており悪戯好き、責任感はあまりないが親の影響で人に優しくすること、人においしい料理を振る舞うことは進んでやるタイプ。しかしそんな軽めの性格が災いしてか、能力を手に入れてからは大分調子に乗っている。
    能力:『妙術タケノコ』
    能力概要:彼女が料理の妙技を極めたことで使えるようになった…と思い込んでいる、謎の異能力。真ん中に太極図のある中華的デザインの魔法陣から光り輝くビームを放ち、当たった者をサイズそのままに1分間タケノコにする。タケノコになっても命に別状は無いが動けなくなり、強度もタケノコ並になる。能力は使える。
    弱点:包丁を全て破壊されると絶望し、戦意を喪失する
    要望(任意):一人称は私で口調は丁寧語。包丁を5つ隠し持ち、1つ装備している。包丁捌きは天才的で、巨大タケノコをも手際よく切り刻む。

  • 189代理です25/09/14(日) 14:00:13

    名前:テンペスタ
    年齢:世界が出来た時から
    性別:男型
    種族:救世兵器
    人物概要:かつて偉大なる存在によって作られた世界を救える力を持つ人型の兵器であり現在、佐藤家の門番
    ある遺跡にて佐藤家が闇組織の幹部数名と戦ってた時に起動し一瞬にして幹部陣を殲滅、流れでそのまま門番として雇われた
    世界を救える兵器とは思えない程にリアクション豊富で感情豊かで熱血系、心から戦闘を愉しみあらゆる相手に敬意を表する戦闘狂
    能力:【オーバーライドエネルギー】+【界装:天の怒り】
    能力概要:あらゆるものを『上書き』し塗りつぶすエネルギーである【オーバーライドエネルギー】を生成可能
    それを【界装:天の怒り】にてエネルギー弾にし放出する事が可能、エネルギー弾は腕部、肩部、腰部にある六対の主砲から放てる
    チャージして放つことも可能で主に五段階に分けられる
    レベル1「界穿ツ砲弾」(ワールド・ブラスト)
    チャージ無しの通常弾、威力は低いが上書きの力はあり貫通力が高い
    レベル2「天崩ス砲弾」(デストロイ・ブラスト)
    チャージし破壊力と速度、攻撃範囲が向上し天に穴を空けられる砲弾
    レベル3「星堕トス砲弾」(スターダスト・ブラスト)
    一個の主砲で打てる限界点、星すらも軽く堕とす超強力な砲弾を放てる
    レベル4「法歪む砲弾」(ケイオス・ブラスト)
    主砲を四つも使って放つ砲弾、文字通り法則や理や世界すらも歪める砲弾
    レベル5「界救う砲弾」(トゥルー・ワールド・ブラスター)
    六対の主砲を全部使い最大チャージをして放つ世界を救う絶対の閃光
    弱点:六対の主砲にそれぞれあるコアを壊されると再構築するまでその主砲は使えなくなってしまう
    胸部あるコアを壊されるとチャージ時間が遅くなり彼自身も大ダメージを受けてしまう
    主砲はチャージ中は砲弾を放てずレベル3以降の砲弾はチャージに時間がかかりレベル5を使うとチャージまで全主砲で攻撃が出来ない
    全体的に装備が重いので高速の移動が難しく近距離専用の武装は無いので距離に注意して戦わなくてはならない
    主砲をチャージして攻撃を放つ際はチャージする主砲の数に応じて動きが鈍くなり六対全部チャージすると動けなくなる
    要望:一人称は俺、勝ったら相手と固い握手を交わそうとしてください、口調は爽やかでリアクション豊富でお願いします

  • 190二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:00:19

    名前:大阪野 尾羽
    年齢:56歳
    性別:オバちゃんやで!
    種族:大阪のオバちゃんやで!
    本人概要:
    紫のパンチパーマとトラ柄の服、三段腹とサンダルが特徴の大阪のオバちゃん。
    4人の子供を育て上げた実績のある肝っ玉母ちゃんでもある。
    一般人のハズだが、大阪生まれの大阪育ちで鍛え上げられた浪速のド根性を備えた歴戦のオカンはハチャメチャにパワフルなため、どんな怪物も裸足で逃げだしてしまう。
    最近長男夫婦の家に孫が生まれた。孫相手には強気な態度もなくなりデレッデレである。
    「孫のためにオバちゃん、頑張るでぇ!」と発言しており、ボルテージはまさに最高潮。
    もうアカン!こうなったオバちゃんは誰にも止められへんわ!
    能力:「なんでやねん!」と「阪神大優勝!」
    能力概要:
    「なんでやねん!」は大阪でのツッコミ精神によって鍛えられた技。相手が普通ではあり得ないような動きや能力を使った場合に強烈なツッコミを喰らわせ、その行動を潰す。
    「なんでやねん!ありえへんやろそんなん!」 ズビシィッ!(ツッコミの効果音)ぐわぁー!!(相手がツッコミで吹き飛ぶ悲鳴)

    「阪神大優勝!」は地平線まで埋め尽くす量の阪神ファンがどこからともなく現れ、オバちゃんの先導によってハイテンションに暴れ回り相手を蹂躙する現象。阪神ファンたちは全員がオバちゃんと同様に浪速のド根性を持っており、その勢いを止めることは何者にも不可能だ。
    「阪神大優勝ー!!相手は巨人ファンや!いてこましたれぇ!!」

    弱点:
    身体能力は一般人。阪神ファンも身体能力は一般人。ツッコミはツッコミで返すことができる。
    加齢と三段腹とタイムセールのせいで長期戦ができない。腰も弱点。
    イケメンに弱い。特に韓流スター。

  • 191代理です25/09/14(日) 14:00:23

    名前:憤怒者
    年齢:不明
    性別:無
    種族:怒神
    本人概要:「異能適合実験」、他家の陰謀や呪詛、妖怪や禁術の実験台などで犠牲になった山桐家の
    数多の犠牲者の怒り未練から生まれた存在 その怒りの総量は凄まじく【怒りの神】 怒神に至る程になった
    久那土帝国特に歴代の神鏡皇に抱く怒りは凄まじいものだが子孫の達の為我慢している
    普段はボケーとしており置物の様な存在だが
    山桐家を馬鹿にされる、害する相手には即座に怒りが解放され怒神としての本性を表す
    ちなみに山桐家にはご先祖様方と呼ばれており 若干扱い辛いなぁ……と思われてる(肯定者を除く)
    能力:憤怒
    能力概要:怒れば怒るほど自身に宿る異能の規模出力が無制限に上がり続ける能力 
    歴代の山桐家の犠牲者の集合体の様な存在の為 膨大な数の異能を身につけておりそれらが怒りの感情で
    規模出力が上がっていく それにより繰り出される異能の数々は正に神の怒りそのものである
    また異能は同時発動や異能同士を融合させて使うことも可能 
    例として炎の異能と風の異能を合わせて炎の竜巻、電気と水の異能を合わせて電気を纏った雨など
    弱点:神である為現界用のコアがありそれが破壊されると現世から消滅
    怒りの感情がトリガーな為 憤怒者を怒らせるような外道な行為をしない相手に対する能力規模はかなり低下する
    怒れば怒るほど異能は強くなるがそれに比例する形で怒りで冷静な判断が出来なくなっていき隙が多くなる
    要望:異能同時発動の際は 使用異能「  」使用異能「  」みたいな形式
    異能融合発動の際は使用異能「  」+「  」+ 「炎系統」×2 みたいな感じだと嬉しいです

  • 192二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:00:37

    名前:負山稲直/数言負岳
    (おいやま いなすぐ/かずこと ふがく)
    年齢:16才
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:数年前、数言家の厳格な規則に嫌気が差し、数言怜呉の力を借りて家から抜け出した少年。今では負山稲直として生活している。
    怜呉によって一族内での負岳の記録、および記憶が完全に消去されている。
    極度の躁鬱が悪化して二重人格になっており、躁のときは稲直、鬱のときは負岳に人格が変わる。
    能力:マイナス
    能力概要:男性を女性に、熱いものを冷たく、重いものを軽く、早いものを遅く、のように物事の性質にマイナスをかけて反転させる能力。
    弱点:手で触れたものしかマイナスを付与できない。
    能力を使用するたびに人格が変わってしまい、人格間での記憶の引き継ぎができないため、能力を発動するたび、急な状況の変化による隙ができる。
    要望(任意):稲直は明るい口調で相手の悪いところを毒舌で指摘してくるような性格
    負岳は陰気な口調で自分自身を貶し続ける自己嫌悪マシマシな性格

  • 193二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:05:54

    ストップかな?

  • 194二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:16:46

    >>183喜生の弱点の

    (本人はそんなことない)の部分を消したverに変更してもいいでしょうか?

  • 195二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:36:25

    >>194これに変えてもいいでしょうか?


    名前:大沢 喜生

    年齢:100年前から天人をしています

    性別:男

    種族:大天人

    本人概要:レトロな雰囲気がある天人の中でも崇高な大天人である青年。約100年前から天人であるらしい。柔和で落ち着いた雰囲気だが底知れない気配と鋭い思考を持ち合わせている。

    人間だった頃は病弱にも関わらず数々の仕事を掛け持ちし世のため人のために勤勉に働き病死した。その為、功績が認められ天人へと昇格した。

    地上へ降りる際には国を挙げての護衛が入るが喜生はそれらを潜り抜けて自由に遊ぶことが好き。部下や従者も置いて行ってしまう。

    能力:天人の体、《天術》

    能力概要:天人の体はとても頑丈であり如何なる攻撃や能力も天人には意味がない。

    天人は自己回復力や再生力も逸脱して高く、身体能力も基本的には極高の部類に入る武術的にも秀でている。天人は病気になったり疲労になったりなどがない究極的な種族。しかし穢れを毛嫌いする。

    また、喜生は《天術》という喜生のみが扱える唯一無二の術を操る。天術は天を統べる力であり、生きている存在は死んでも敵わない強大な力。光の弾幕やエネルギー光線、銀河創造から万物の操作などを主に使用する。天術には穢れ(=生命)を浄化する作用があり、生きている者を浄化して消し去る。

    弱点:天人が下界に降りる際には使い捨ての肉体を使用する。その肉体にはいつでも消せるようにとわかりやすいコアが設定されている。そのコアを破壊すると下界用の肉体はものの数秒で崩れ去る。コアは心臓付近にある。

    浄化などは機械や幽霊には効かない。

    要望:一人称は私、相手のことは下界人と呼ぶ。

    戦闘が終わったら可能であれば宴会をしたいです

  • 1961◆ZEeB1LlpgE25/09/14(日) 15:18:19

    どうも、1時間寝ようとしたら3時間寝てた馬鹿野郎です
    今審査し終わりました
    善採用です

  • 1971◆ZEeB1LlpgE25/09/14(日) 15:18:37

    >>195

    いいですよ

  • 198二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 15:21:31

    よかったです

  • 1991◆ZEeB1LlpgE25/09/14(日) 16:23:30

    大沢 喜生vsタケノコ・チャンプルー
    大阪野 尾羽vs執事悪魔グラス
    広告バイオ飛行船vsテンペスタ
    憤怒者vs石塔義徹
    マーロン・バーバンクvs負山稲直/数言負岳

  • 200二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 16:59:18

    ((o(^∇^)o))ワクワク

  • 201二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:31:28

    wktk

  • 202二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 22:44:43

    評判気にしてちゃんと火力抑えるバイオパンク社好き

  • 203二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 00:57:38

    今回はどんな対戦が見られるのかな

  • 204二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 06:39:36

    ほし

  • 205二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 12:14:36

    (☆ω☆)

  • 2061◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 13:56:43
  • 207二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 14:13:25

    大沢喜生の方、対戦ありがとうございました〜!
    2人とも大分初見殺し殺傷能力なのになんか平和に宴してる…怖…

  • 208二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 14:25:24

    対戦ありがとうございました
    天人の感覚は普通とは違う…のか?

  • 209二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 15:24:40

    宴の描写好きだなぁ

  • 2101◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:09:18

    題名『白霜の宮殿と虎縞の女傑』

  • 2111◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:12:12

    スーパーの照明がチカチカと瞬き、まるで場違いな決闘の幕開けを告げていた。
    氷人形たちは通路を埋め尽くし、カートや陳列棚を次々と凍りつかせていく。

    「お客様ァ〜〜! ここは危険ですので避難を――」

    逃げ遅れた店員が叫ぶが、その声をかき消すように、尾羽の怒号が響いた。

    「なに勝手に冷凍保存しとんねん!! ここは冷凍食品売り場ちゃうぞ!」

    ズバァン!!
    指差しツッコミの衝撃波が走り、数体の氷人形が粉々に砕け散った。

    「……なるほど。発声と動作を媒介に、現象を上書きする能力……」

    執事悪魔グラスは氷の杖を床に突き立て、優雅に一礼する。

    「奥様、これは愉快。私も多少は手加減をやめるといたしましょう」

    床を這う氷が瞬時に隆起し、巨大な氷柱の迷宮がスーパー内部を飲み込んでいく。冷気が骨に染みるほど鋭く、呼吸をするだけで肺が凍りつきそうだ。

    「ちょ、寒っ! オバちゃん半袖やねんで!? なんで買い物きて冷凍地獄やねん!」

    尾羽は両腕をさすりながらも一歩も退かない。むしろ瞳はギラギラと燃え、口角は上がっていた。

    「孫のために買い物しとるオバちゃんナメんなや! アンタがどんな悪魔でもなぁ!」

    ドンッ!
    彼女の足元で床が割れ、ツッコミの衝撃波が炸裂。氷の迷宮に大きな亀裂が走る。

  • 2121◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:12:22

    「――なんでやねんッ!!!」

    その叫びと共に、氷壁が爆ぜて吹き飛んだ。破片は無数の刃となって尾羽に降り注ぐ――

    「フッ……遅い」

    グラスは口元を歪め、勝利を確信した。

    だが次の瞬間。

    「痛いわボケェェェ!! 主婦なめんなッ!」

    尾羽はマイバッグを振り回し、凍てつく破片を悉く打ち払っていた。
    中には特売で買ったネギやキャベツ、特価の大根がぎっしり詰まっている。

    ドゴォォン!!
    マイバッグが氷の刃を打ち砕き、その余波で氷人形まで吹き飛んだ。

    「……ッ!? まさか買い物袋ごと武器化するとは……!」

    「当たり前やろ! オバちゃんの買い物袋はなぁ! 孫の未来詰まっとるんじゃああ!!」

    スーパーの通路は戦場と化し、
    浪速のオバちゃんと執事悪魔の仁義なき肉争奪戦が、いま幕を開けた――。

  • 2131◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:15:46

    冷気が一段と強まり、スーパー全体が氷点下の檻と化した。
    ジュースの自販機は凍りつき、棚の商品は次々と白く曇り、天井からは氷 stalactite が垂れ下がる。

    「……これが、私の本気の一端です」

    執事悪魔グラスは冷たい声で告げ、氷の杖を高く掲げた。
    瞬間、数十体の氷人形が一斉に形を整え、尾羽を囲むように進軍を開始。

    「おいおい……買い物客一人に軍隊出すんかい! 過剰防衛やろが!!」

    尾羽は指差しツッコミを放ち、

    「なんでやねん!」

    の一声で三体を爆砕。

    だがすぐさま背後から氷の腕が伸び、尾羽の身体を拘束する――。

    「しまっ……」

    「終わりです、奥様」

    グラスは微笑み、氷の処刑槍を創り出した。

    ザァンッ!
    氷槍が突き出される――

    だが次の瞬間。

  • 2141◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:16:15

    「こっちのセリフじゃボケェェェ!!」

    尾羽の足が氷床をぶち破り、反動でマイバッグが振り抜かれた。
    中から飛び出したのは――半額シールの貼られた豚肉パック。

    ドゴォォォォン!!

    「ぎゃああっ!? 肉で殴った!?」

    氷人形ごとまとめて吹っ飛ぶグラス。
    その姿勢は崩れなかったが、頬にうっすら裂傷が走った。

    「……ッ、この威力……ただの衝撃波ではない。魂そのものに干渉している……!」

    グラスは氷を纏いなおし、口元を吊り上げる。

    「よろしい。ならばこちらも、命を削る覚悟で参りましょう」

    氷柱が一斉に立ち上がり、天井を突き破って空へと伸びる。
    冷気は嵐となって店を覆い、もはやスーパーは氷結した魔界の宮殿そのものだった。

  • 2151◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:16:35

    「ぐぬぬ……どんだけ氷で盛るねん!! 冷凍庫より冷えとるやないか!」

    尾羽は凍気に震えながらも、歯を食いしばり拳を握った。

    「アンタの氷よりもなぁ――オバちゃんのツッコミ魂のほうが熱いんじゃあああ!!!」

    爆裂する笑撃波。
    スーパーの床ごと吹き飛び、氷人形が数十体まとめて崩壊した。

    「……面白い」

    グラスは血を流しながらも笑う。

    「あなた、ただの買い物客ではないな?」

    尾羽は鼻を鳴らし、マイバッグを構える。

    「浪速のオバちゃんや。それ以上でも以下でもない!」

    氷とツッコミの激突は、ついに頂点へ――。

  • 2161◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:21:23

    スーパー跡地――。
    氷結した瓦礫の上に、尾羽とグラスが対峙していた。
    吐く息は白く、凍気は骨の髄を貫くほど冷たい。

    「……認めましょう。あなたは凡百の人間ではない」

    グラスの瞳が氷の輝きを帯びる。

    「ですが、それでも悪魔を超えることは叶わぬ。これが――絶零の氷却」

    ズズズズズッ……。
    空気が一気に張り詰め、世界が凍りつく。
    吹雪が巻き起こり、触れた瞬間に命を奪う絶対零度の結界が広がった。

    「終わりです。凍りつき、砕け散りなさい」

    氷の竜巻が尾羽を飲み込む――

    しかしその瞬間。

    「――なんでやねん!!!」

    炸裂するツッコミ。
    吹雪そのものが笑撃波で弾かれ、氷の竜巻が逆流する。

    「ぐっ……!?」

    グラスの身体に氷塊が叩きつけられ、悪魔の血が舞った。

    尾羽はマイバッグを構え、仁王立ちで叫んだ。

  • 2171◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:21:56

    「オバちゃんはなぁ! 孫が生まれたばっかりやねん!! ここで死ぬわけにはいかんのや!!」

    その声はスーパー全域に響き渡り――次の瞬間。

    「阪神大優勝ーーーーーッ!!!!!」

    ズドォォォォォンッ!!!

    天井が砕け、地平線の彼方から黄色と黒の大軍勢が押し寄せる。
    応援バットを振り回し、メガホンを叩き、六甲おろしを絶唱する数十万の阪神ファン。
    彼らは一斉にグラスへ突撃した。

    「な……何だこの熱気は!? 冷気が押し返される……!」

    悪魔の軍勢をも超える狂気と熱量。
    氷の宮殿が黄色い津波に呑まれていく。

    尾羽は大軍勢の先頭で、マイバッグを振り上げた。

    「さぁ行くでぇ!! 巨人ファンやと思って、いてこましたれぇぇぇ!!!」

    熱狂の渦と氷結の力がぶつかり合い、スーパーは崩壊。
    街全体が震動し、夜空に巨大な閃光が走った――。

  • 2181◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:23:22

    阪神ファンの大軍勢が暴れ狂い、スーパー跡地は完全に戦場と化していた。
    グラスは氷壁を築き、次々とファンを凍りつけるが、倒しても倒しても次のファンが雪崩れ込む。

    「くっ……! この勢い、制御不能……!」

    グラスの白い顔がひび割れ、氷の粒がぱらぱらと落ちる。

    そんな中――尾羽は突っ込んだ。
    マイバッグをブン回し、阪神ファンを率いて一直線にグラスへ突撃。

    「アンタなぁ! 人様のスーパーで氷張ってええと思てんのか!!」

    「私は悪魔……人間の理は通じません」

    氷剣を振るうグラス。
    その刃は一瞬で空気を凍らせ、尾羽の首を狙った――

    「――なんでやねんッ!!」

    バッシィィィィンッ!!!

    尾羽のツッコミが炸裂。
    氷剣は粉々に砕け、グラスの核が胸元から露わになる。
    青白い光が、弱々しく脈打っていた。

    「そこかいな……」

    尾羽の目がギラリと光る。

  • 2191◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:23:42

    「ま、待て! 核を壊されれば私は……!」

    グラスが後退しようとするが――

    「うるさいわ!! 猫ちゃんが待ってんねんッ!!」

    ズドォォォォォンッ!!!

    マイバッグが核を直撃。
    氷の執事は大音響と共に砕け散り、粉雪のように宙に消えた。

    静寂――。
    だがすぐに阪神ファンが大歓声を上げる。

    「「「阪神大優勝ーーーーッ!!!!」」」

    尾羽は汗を拭きながら、三段腹を揺らして笑った。

    「ふぅ……やっぱり孫パワーには敵わんやろ?」

    氷片が宙を舞う中、尾羽は勝利を掴んだ。

  • 2201◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:26:32

    グラスが砕け散り、スーパー跡地に静けさが戻る――かと思いきや。
    いや、静まるどころか、さらに騒がしいことになっていた。

    「阪神大優勝ーーーッ!!!」

    「オバちゃん最高やぁぁ!!」

    「乾杯や乾杯やぁぁぁぁ!!」

    どこからともなく現れた屋台、樽酒、焼きそば、たこ焼き、お好み焼き。
    気づけばスーパー跡地は巨大な縁日会場と化していた。

    「ちょ、ちょっと! 勝手に店ひらかんといて!」

    店長が青ざめるが、尾羽はドンと肩を叩いた。

    「エエやんエエやん! 今日だけはオバちゃんに任せとき!」

    阪神ファンが勝手にお酒を配り、子どもたちは風船を膨らませ、ジジババはカラオケを始める。
    ステージに上がった尾羽はマイクを握り――

    「ほな皆さん! オバちゃんの勝利にカンパーイ!!」

    「「「カンパーイ!!!」」」

    ジョッキと紙コップがぶつかり合い、景気よく泡が飛び散る。
    尾羽は豪快にビールを一気飲み。三段腹を揺らしながら笑った。

  • 2211◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:26:49

    「はぁ~……猫ちゃんの顔思い浮かべるだけで、何杯でもイケるわぁ~!」

    そこへ、氷の欠片をまとった小さな執事の幻影がひょっこり顔を出す。

    「……私の敗北。ですが……見事でした」

    「おぉ、まだおったんかいな! ほな一緒に飲んで行きぃや!」

    尾羽がマイバッグから缶ビールを差し出すと、幻影は困ったように微笑み、消えていった。

    ――浪速のオバちゃん。
    その圧倒的なツッコミと肝っ玉は、悪魔すら退け、宴会すら呼び寄せる。

    今日もどこかで彼女は叫ぶ。

    「なんでやねん!!」

  • 2221◆ZEeB1LlpgE25/09/15(月) 20:27:21

    以上

  • 223二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 20:28:11

    面白かった!オバちゃん強い!

  • 224二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 20:29:01

    オバちゃんサイコー!!!

  • 225二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 20:30:28

    オバチャン強!?
    戦った相手にすら缶ビール渡そうとして一緒に宴を楽しもうとするの好き!

  • 226二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 20:34:27

    対戦ありがとうございました!
    作った自分で言うのもあれですけどグラスがすごい迷惑客で笑った。本体登場出来なかったのでちゃんと別キャラとして作りたいな
    おばちゃんのギャグテイストなノリで悪魔もたじたじで面白かったです

  • 227二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 20:37:24

    >>226

    こちらこそ対戦ありがとうございます!

    グラスさんもクールな氷結系悪魔でカッコ良かったです

  • 228二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 20:40:34

    このレスは削除されています

  • 229二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 23:21:15

    阪神大優勝ーー!!で耐えられなかった

  • 230二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 23:28:34

    笑撃波とかいう新しい概念

  • 231二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 06:02:33

    ほし

  • 232二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 07:46:26

    ⭐︎

  • 233二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 13:41:20

    保守

  • 2341◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:01:50

    題名『救世兵器と広告飛行船』

  • 2351◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:05:31

    夕暮れの空は、まだらな鉛色と燃えるような橙が入り混じっていた。街の輪郭が影絵のように沈み、門の石塀に寄せる風が金属の肌を震わせる。俺はいつもの場所、門の上に片膝をついて空を見上げていた。仕事の時間だ。門番――と一口で言っても、俺にとっちゃ毎度が異種格闘みたいなもんだ。今日も面白そうじゃないか。

    空を厚く滑る影があった。巨大だ。観光船か、あるいは――広告か。

    両翼にでかでかと蠢く生体スクリーン。そこに映るのは、黄金比に整えられた笑顔、整然と並ぶ商品、耳に残る旋律。音声は同じフレーズを反復して空気を震わせる。まるで街全体をセール会場にするかのような存在感。だが、こいつがただの広告飛行船か?

    「♪ あなたの暮らしを変える、バイオパンク社の最新栄養カプセル! 今なら分割払いで手に入る! ♪」

    声は機械仕掛けの合唱のように、しかし不気味に生々しく聴こえた。プラダートリCXXVIII――そんな識別番号を、俺は思わず口に出してしまう。名前の響きが鼻につくが、実物は写真より圧がある。生体素材でできた独特の皮膜が、夕日の光を刺すように反射している。

    飛行船の腹部から、黒い羽をばさりと広げる影が三つ。すっと三羽の生体天狗――バイオカラステングが姿を現した。彼らは飛行船の広告演出と連携しているらしい。提灯型のサーチライトが瞬き、鋭い棒状の武器を握る右手がカチリと音を立てた。

    「♪ ご安心ください! バイオパンクの守り、バイオカラステング参上! 今なら安全保障パッケージ付き! ♪」

    その音声は冷たい効率を孕んでいる。だが、俺の胸の内はもう沸騰している。世界を救うために作られたっていう俺だ。広告が空から降ってくるってだけでワクワクするのは止められん。

    俺は立ち上がり、肩の主砲群のコアに触れる。――よし、今日も元気だ、俺の相棒たち。

    「おいでやがれ、空の売り子共! 俺の胸を熱くしてくれよな!!」

    俺の声は門の石に反射して帰ってくる。子供みたいに胸が高鳴る。相手が飛行船だろうが、三羽の天狗だろうが、戦う理由はいつだって同じだ。門を守る、ここにいる人間の生活を守るため。

  • 2361◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:19:32

    バイオカラステングが散開する。三羽一組の連携。スクリーンが煌めき、立体広告のための投影が空に描き出される。だが、その投影に紛れているのは戦術的な映像だ。飛行船は宣伝を盾にして機動してくる。客寄せの喧噪が戦術ノイズになる――いやらしいが、実に賢い。

    俺は笑った。心臓が歓声で満ちる。戦闘前のこの緊張。これが好きなんだ。

    「まずは様子見だ。主砲、レディか?」

    コアが応えるように微かに震える。腕部の砲口がひとつ、光露を滲ませた。俺の指先に電流の振動。チャージはまだだ。ここから一気に行くか、それとも小手調べに回るか。

    向こうが最初に動いた。カラステングの一体が、低く突進してきた。右手の六尺ロッドが旋回し、俺の頭上を切り裂くように振るわれる。音が金属音になる瞬間、判定は出た。こいつら、案外しつこい。

    俺は片脚で地面を蹴り、斜めに回避しながら腕を振るった。腕の主砲が目にも留まらぬ速度で一閃、レベル1の界穿ツ砲弾を放つ。チャージ不要の通常弾――だが、上書きの力は侮れん。直線の閃光が空を裂いた。

    鴉天狗の一体が光に射抜かれ、バイオ組織が白煙をあげて分解していく。これが楽しい。やはり話は速攻だ。飛行船も反応する。スクリーンの広告は短く乱れるが、音声はすぐに平常を装って繰り返す。粘り強い。

    だが残る二羽が同時に高度を変え、背後へ回り込もうとする。連携を崩す様子はない。飛行船はまだ本気を出していない――あくまで護衛で牽制しているだけだ。俺はそれを見切って、自然と顔がほころぶ。

    「よし、いい流れだ。これで俺の火が大きくなれば、向こうも本気で来るだろう。さてと──行くぜ!」

    俺の言葉が、空気を震わせる。夕陽が俺の装甲を金色に染め、門の向こうで人々が不意に見上げる。楽しい時間の始まりだ。テンペスタの胸の奥で、主砲群が次の段階へと意気を高める。俺は拳を固めた。

    向こうのスクリーンがやけに明るくなった。広告音声が高らかに歌う。だが、そこにはもう戦いの鼓動が混じり始めていた。俺は目を細め、胸の奥から声を上げる。

    「さあ、広告戦争だ! どこまで宣伝を塗り潰してやるか、楽しませてもらうぜッ!!」

    そして、俺は第一の閃光を空に放った――。

  • 2371◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:30:10

    俺の一射に焼かれた鴉天狗の残骸は、空に黒煙の軌跡を描いて散った。だが――残る二羽は怯まない。かえって緊張感が増した。奴らの目に光はない。ただ「演算された意志」だけが宿り、連携のために動く。

    飛行船のスクリーンが急に輝度を増し、眩しい映像を街に投影する。宣伝映像だ――いや、それだけじゃない。広告に見せかけた閃光ノイズで、俺の視界を奪う狙い。耳に響くのは軽快な歌声。

    「♪ あなたの未来はここから始まる! 輝く毎日を手に入れよう! 今なら初回無料体験キャンペーン実施中! ♪」

    耳障りだが、よく考えてやがる。戦場全体を広告で覆い、俺の動体視力を鈍らせる作戦か。ふざけた真似だ。けどな――そんな小細工、俺の胸の炎を強くするだけだ。

    「視界潰し? いいじゃねぇか! だったら音と匂いで当ててやる!!」

    俺は一歩、門の屋根を蹴り飛んで跳躍する。鉄骨が軋む音。二羽の鴉天狗が左右から挟み撃ちに来るのが、気配で分かった。羽音が鋭い。六尺ロッドが風を切る音が鼓膜を裂いた瞬間――俺は腕を振り上げる。

    右肩の砲口から光条が閃く。まだフルチャージじゃない。だが、レベル2の界穿ツ砲弾で十分だ。二方向に分岐する光線が走り、左の天狗の翼を貫いた。焼ける匂い、断末魔の電子ノイズ。羽が散る。

    右側の一羽は、俺の背に狙いを定めていた。ロッドが迫る。反射的に腰をひねり、左腕の副砲で迎撃する。間に合わない――そう思った瞬間、俺の主砲群が勝手に唸った。まるで「俺が先に撃つ」と言わんばかりに。

    「よっしゃ! 勝手に動け、俺の砲! 燃えろッ!」

    副砲から吐き出された光弾が、天狗の顔面を直撃した。仮面が砕け、黒い体液が空に飛び散る。残骸は夜の闇に溶けていった。二羽を瞬く間に落とした俺は、着地と同時に屋根を砕いて足を踏みしめる。

    飛行船はようやく反応を見せた。スクリーンが一瞬ノイズを走らせ、その直後――笑顔の広告モデルが俺を睨むように映し出された。笑顔なのに、敵意が滲んで見えるのが不気味だ。

    「♪ テンペスタ様! あなたに最適なプランをご提案します! 特別な破壊保証オプションを無料で! ♪」

  • 2381◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:32:10

    ……ふざけるな。
    俺は額から汗を拭い、にやりと笑う。砲群は熱を帯び、まだ暴れ足りないと訴えている。

    「オプション? 保証? 俺にゃいらねぇ! 必要なのは――撃ち抜ける力だけだッ!!」

    飛行船の腹部が開いた。広告スクリーンの裏から、無数の小型ドローンが解き放たれる。蛍光色の光をまき散らしながら、街上に降り注いでいく。ひとつひとつが人間を麻痺させる麻酔針を搭載している。戦場は一気に拡散し、俺は門の上で笑うしかなかった。

    「いいねぇ……来たな、本番だ。次はまとめて焼いてやる!」

    胸の奥で主砲群が吠えた。次の閃光は、飛行船本体を揺るがすに十分な出力で。
    戦いのノイズは、まだまだ続く――。

  • 2391◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:37:40

    黒い夜空を裂くように、飛行船のスクリーンが一斉に切り替わった。
    映し出されたのは笑顔のモデル、踊る家族、輝く未来……だがすべてが過剰で、同じフレーズが反響するように押し寄せてくる。

    「♪ いますぐ登録! いますぐ契約! いますぐ幸福をゲット! ♪」
    「♪ いますぐ登録! いますぐ契約! いますぐ幸福をゲット! ♪」
    「♪ いますぐ登録! いますぐ契約! いますぐ幸福をゲット! ♪」

    その声は街全体を覆い尽くし、反響し、思考を押し流す。
    人々がもし近くにいたなら、きっと膝を折り、催眠にかかったようにスマホを取り出していただろう。
    だがこの場に立つのは俺だけだ。テンペスタ=アルヴァリス。砲群と血潮で世界を撃ち抜く戦闘狂。

    「洗脳広告……ってか? 笑わせんなッ!」

    俺は両腕を交差させ、胸の主砲群に力を集める。
    だが、その瞬間に気づいた。スクリーンの光はただの映像じゃない。
    広告の「色彩」そのものが光線兵器の役割を持ち、レーザーとなって降り注ぐ。

    建物の壁が抉れ、石畳が蒸発する。
    空中に放たれた光の帯は俺を焼き切るための“宣伝ビーム”だ。

    「♪ あなたに最適なプランは“消滅”です! 今なら痛みゼロ保証付き! ♪」

    光束が迫る。俺は笑って応える。

    「消滅プラン? 残念! 俺はそんな契約してねぇ!!」

    地を蹴る。飛び散る瓦礫。
    瞬間、砲群が咆哮した。
    無数の光弾が宙を覆い、広告レーザーとぶつかり合う。

  • 2401◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:38:01

    ――白と赤の閃光が夜を昼に変える。

    互いの光がせめぎ合い、中心で爆裂した。
    衝撃で街灯が根元から折れ、門の屋根が吹き飛ぶ。
    俺は瓦礫を盾にしながら突進した。

    「撃ち抜けッ! 界穿ツ砲弾・フルバースト!!」

    胸部主砲から吐き出された巨大な閃光が、飛行船の側面に直撃する。
    スクリーンがひしゃげ、映像が一瞬ノイズを走らせた。
    だが――飛行船は沈まない。
    内部で新たなスクリーンがせり上がり、笑顔がさらに増殖する。

    「♪ ありがとうございます! あなたのご利用で広告拡散効果200%アップ! ♪」

    ……まるで、攻撃されることすら利用して宣伝しているかのようだ。
    俺は口角を吊り上げる。心臓が熱を帯び、砲群は喜びに震えていた。

    「いいじゃねぇか……受け止めて利用する? 最高に広告らしいじゃねぇか!」

    「なら――そのスクリーン、全部まとめてブチ抜いてやるよォ!!!」

    戦場は、広告と砲火の洪水に呑まれていく。
    テンペスタと飛行船の激突は、まだ始まったばかりだった。

  • 2411◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:41:34

    爆裂する光の残滓の中から、三つの影が飛び出した。
    それは飛行船から解き放たれたバイオカラステングの三羽組。
    漆黒の翼を広げ、提灯型のサーチライトを煌めかせながら、まるで舞台に上がった役者のように空を滑る。

    「♪ さあ、お客様! 本日の特別キャンペーン、バイオカラステング三羽衆のご登場です! ♪」

    飛行船の宣伝音声と同時に、三羽は奇声を発し、テンペスタを包囲する。
    右手に握る超硬質バイオ六尺ロッドが唸り、左手の提灯から無数の麻痺針が雨のように撃ち出される。

    「おおっと!? これは派手だな!」

    テンペスタは軽快に身を捻り、肩の主砲を回転させて光弾を撃ち落とす。

    「だが悪いな、俺は舞台の中央しか似合わねぇんだよッ!」

    バイオカラステングが一斉に突撃する。
    その動きは演算された演舞のように無駄がなく、三羽で一体。
    ロッドの一撃が岩を砕き、提灯の閃光が視界を奪う。

    だが、テンペスタは笑っていた。

    「いいねぇ……! お前ら、ただの兵器じゃねぇ! 戦士の匂いがするッ!!」

    彼は腰の砲を展開し、背後に青白い光を走らせる。

    「天崩ス砲弾(デストロイ・ブラスト)!」

    轟音と共に撃ち出された光弾が三羽の間を貫いた。
    爆風でビルの窓が吹き飛び、宙を舞う羽根と瓦礫が夜空に散る。
    一羽は直撃を避けきれずに翼を裂かれ、地へ叩き落とされる。

  • 2421◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:42:06

    しかし残る二羽は怯まない。
    むしろ飛行船の宣伝音声に煽られるように動きが鋭さを増していく。

    「♪ 倒れても問題なし! 予備はまだ百二十七体以上! 今なら二羽セットで割引中! ♪」

    「割引だァ? ふざけんな!」

    テンペスタは思わず吹き出した。
    笑い声が戦場に響き、次の瞬間、彼の拳が砲口を抱え込むように構えられる。

    「星堕トス砲弾(スターダスト・ブラスト)――ッ!!!」

    背中の主砲が唸りを上げ、天から降る隕星の如き光弾が解き放たれる。
    二羽のバイオカラステングが同時に光に呑まれ、断末魔の声を上げる暇すらなく焼き尽くされた。

    瓦礫に着地したテンペスタは息を弾ませながらも、笑顔を絶やさなかった。

    「はぁ……ははっ! いいぞ……! やっぱり戦う相手はこうじゃねぇとな!」

    飛行船は一瞬沈黙した。
    だがすぐにノイズを払い、さらに大音量の宣伝を流し始める。

    「♪ ありがとうございます! 撃墜の映像をリアルタイム配信! 視聴者数が急上昇中! ♪」

    テンペスタは額の汗を拭い、にやりと笑った。

    「視聴者数だと? ならもっと派手に……もっと熱く盛り上げてやるよォ!」

    戦場は、笑い声と宣伝音声が共鳴する狂気の舞台と化していた。

  • 2431◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:43:03

    夜空に轟く爆音と、空を満たす光の奔流。
    テンペスタの体中の主砲が光を帯び、六対すべてがチャージを始める。

    「いくぞ……界救う砲弾(トゥルー・ワールド・ブラスター)ッ!!」

    背後の空には、依然としてプラダートリCXXVIIIが静かに浮かんでいる。
    黄金比の音声と鮮やかな映像が夜景に映え、都市の闇を切り裂く。

    「♪ さあ皆様! 本日の目玉商品は……世界を変える新型バイオデバイス! 見逃すなぁ! ♪」

    バイオ飛行船は三羽のバイオカラステングを最後の壁として差し向ける。
    しかし、テンペスタの六対主砲が全開になった瞬間、空気が振動し、光の奔流が夜空に巨大な虹を描く。

    「うおおおおおッ! 俺の全力だッ!!」

    光弾が飛翔し、都市のビル群や闇を貫き、バイオカラステングを一瞬で蒸発させる。

    だが、飛行船も黙ってはいない。

    「♪ 皆様! 今なら特典付き! バイオウイルスは無料で配布中! 市街地の皆様お楽しみに! ♪」

    無数のバイオウイルスを含んだ霧が空中に散布され、テンペスタの周囲に立ちはだかる。
    視界が霧で霞む中、飛行船の本体が自らのバイオコンピュータで演算し、光弾の軌道を予測して回避行動を取る。

    「くっ……まだ止まらねぇのかッ! こいつ……!」

    テンペスタの胸部コアが熱を帯び、チャージ時間が遅れるものの、彼の瞳は闘志で光っている。

  • 2441◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:43:43

    「でも俺は……倒すまで止まらねぇ!」

    六対の主砲を全開で放つ光弾が、バイオ飛行船の周囲を包む。
    黄金の映像スクリーンと音声が炸裂し、霧が光で弾き飛ばされる。
    飛行船は暴走寸前の光と広告の奔流に晒され、姿勢制御が乱れ始める。

    「♪ ありがとうございまぁす! ここで最高の体験をお届け! ご購入はお早めに! ♪」

    しかし、その声も次第に弱まり、バイオコンピュータの演算が追いつかない。
    光弾が一点に集中し、飛行船の中心部に直撃。

    轟音と閃光、そして微かな電子音。
    プラダートリCXXVIIIは空中で揺れ、制御を失い始めた。
    テンペスタは胸を張り、笑顔で拳を突き上げる。

    「やったな……これが俺の全力だッ!」

    その光景を見上げながら、残骸のバイオカラステングが空に散り、夜空は一瞬の静寂に包まれる。

  • 2451◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:44:31

    夜空に残るは、砕けたバイオカラステングの残骸と、微かに漂う広告の香り。
    プラダートリCXXVIIIの本体は制御を失い、ゆっくりと高度を下げて地面に着陸した。
    黄金の映像スクリーンは割れ、微かに輝く光がチラチラと点滅する。

    「くっ……や、やられた……のか……?」

    空中に漂う微弱な音声は、かろうじて広告宣伝の文句を繰り返しているが、その声はもはや力を失っていた。

    一方、地上で主砲を収納するテンペスタは、深く息をつき、満足そうに笑った。

    「ふぅ……勝ったな……! でも、無事でよかったぜ!」

    テンペスタは軽くジャンプし、揺れる残骸を見ながら手を差し伸べる。

    「……なぁ、相手よ、握手しようぜ!」

    バイオ飛行船は微かに残る動力でゆらゆらと反応し、最後に小さく光を返す。
    テンペスタは笑顔でその光を握りしめるように手を前に出し、固く握手を交わす。

    「……敬意を表するぜ、最高の相手だった!」

    周囲の夜景に漂うのは、光と影、そして静寂。
    都市の人々は何が起きたのか分からず見上げるが、夜空に消えゆく残骸の光と、テンペスタの爽やかな笑顔だけが、戦いの終わりを告げていた。

    「これで……ひとまず、安心だな。」

    テンペスタは空を見上げ、拳を軽く握る。

  • 2461◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:45:01

    「次に戦うときも……全力で楽しませてもらうぜ!」

    その夜、街は静かに呼吸を取り戻す。光と広告の戦いは幕を閉じた。
    そして、救世兵器のテンペスタは、今日もまた佐藤家の門番として静かにその任務を守り続けるのだった。

  • 2471◆ZEeB1LlpgE25/09/16(火) 19:45:20

    以上

  • 248二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 19:59:44

    なんてこったこいつバイオウイルスについて言いやがった
    大陸間弾道忘却バイオウイルス搭載ミサイル撃たな…

  • 249二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 20:17:44

    良かった!

  • 250二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 00:18:58

    保守

  • 251二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 06:02:44

    ほしゅ

  • 252二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 07:31:42

    >>248

    バイオパンク社は倒産だ

  • 2531◆ZEeB1LlpgE25/09/17(水) 12:27:44
  • 254二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 13:02:23

    ランキング8位でこれなら1位はどんだけ強いんやろ

  • 255二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 13:22:59

    良かった!

  • 256二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 13:39:06

    夜露死苦チャリオットの響き好き

  • 2571◆ZEeB1LlpgE25/09/17(水) 20:39:14
  • 2581◆ZEeB1LlpgE25/09/17(水) 20:40:37

    次の安価は22:00より10個募集

  • 259二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 20:45:16

    >>257

    めっちゃ良い!

  • 260二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 20:49:06

    >>257

    相性が悪すぎて強みをほぼ活かせなかったか…

    対戦ありがとうございました

  • 261二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 20:52:13

    皮肉屋でマイナスが能力なのオシャレでかっこいい

  • 262二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 21:11:09

    >>261

    あ゛ り゛ が ど う゛!!!!!(クソデカボイス)

  • 263二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:00

    名前:異能狩りのライ
    年齢:24
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:ルドラ帝国で生まれた無能力者で異能が無いというだけで信じられない程虐げられた過去を持っており
    異能者を病気レベルで嫌悪しており 相手が異能者であるというだけで殺したくなる為善も悪も関係無い
    また四肢、右目が欠損しており義体となっており顔は皮が剥がされた為フードとマスクで隠している
    大量の毒が染み込んだ武器、暗器、トラップなどを武装しており 毒は徐々に相手を弱らせるものから即死させるものなど幅広い
    毒が効かない相手には一国を買える程の金額がする超特注品の刀で対応する
    ルドラ帝国でも上澄みの異能力者を始末しただけあり身体能力は極限まで練り上げられている
    能力:異能狩り
    能力概要:ライが数々の異能者を狩った経験から得た技術
    相手の能力を瞬時に把握 そして能力発動のタイミング相手の弱点などを理解し対応する
    どれだけ強力な能力を持とうが即座に対策を立てられる
    弱点:右目が欠損している為右側からの攻撃に弱く どれだけ対策しても隙は出てしまう
    相手が異能頼りでは無く技術などで戦っている場合は分析対応に時間が掛かる
    ルドラ帝国で虐げられていた過去により全身傷だらけで身体を動かせば動かす程傷が開いて徐々に流血してしまう
    流血速度は超特注品の刀を使ってる際は更に加速する
    要望:相手が異能力者なら勝敗に関わらず絶対に和解させないで下さい

  • 264二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:00

    名前:アリゲータンク
    年齢:160歳
    性別:雌
    種族:サイボーグアニマル(動物を素体としてサイボーグ技術で改造した生物の総称)
    本人概要:
    10mを超える強靭なワニに恐るべき軍事サイボーグ技術をありったけ注ぎ込み産まれた禁断の生物兵器。
    搭載された高度分析コンピューターがワニの野生の動きを完璧にサポートし、ワニ本来のパワフルさと軍事サイボーグ技術由来の精密さを兼ね備えた真の化け物。
    自国の軍事技術を執拗に狙う敵国の悪人たちを撃退するために戦う番人であり、その使命の重要性を理解しているため、敵を完全に粉砕するまで容赦なく止まらないことを行動原理とする。
    噛みつきと【機関銃デスロール】で正面からの攻撃を相手に意識させ、アリゲータンクの背後や上空に逃げて油断した敵を【アリゲータンク砲】で仕留める戦法が主体。
    能力:【機関銃デスロール】/【アリゲータンク砲】
    能力概要:
    【機関銃デスロール】:恐るべき軍事サイボーグ技術の一つ。ワニの口内に仕込まれた機関銃が7.62mm弾を正面に向けて撃ちまくる。更に射出される弾丸は特殊弾頭が採用され、弾着地点で弾丸がデスロールのように高速回転することで敵を完膚なきまでに粉砕する。
    【アリゲータンク砲】:恐るべき軍事サイボーグ技術の一つ。一発で城壁すら跡形もなく吹き飛ばす砲撃を背部に仕込まれた砲塔から敵に浴びせる。連射出来ないのが弱みだが、背部に搭載しているため射角に死角が無いのが強み。
    弱点:
    【アリゲータンク砲】は連射出来ない。
    ワニを素体としているため急激な温度変化に弱い。(高温や低温)
    鱗で覆われた部分は軍事サイボーグ技術との相乗効果で圧倒的硬度を誇るが、腹部は機動性確保のために弱い。

  • 265二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:00

    名前:華 藤(ファー テン)
    年齢:5000
    性別:男
    種族:真人(仙人の中で上位的な存在で、道教の不滅の真理を悟った故、自然の神よりも強い霊力を持つ)
    本人概要:大自然を導く世捨て人。
    聡明であり、達観した人物。非常に若々しい見た目であり、どうやら不老。
    精霊や妖精と会話することが可能であり、よくそばに上位精霊達がいる。話術に長けており、気迫もあり怒ると怖い。普段は能力を用いながら観察などをしている。
    相棒の鷹(ティエンコン)が常にそばにいる。
    祖国愛が強いらしく、祖国のことを「かの桃源郷よりも美しい楽園」だと称している。
    能力:ズーラン
    能力概要:大自然を導く能力。
    精霊や妖精を導くことで大自然を操る。
    大自然とは物理的な世界、天体、宇宙、山、川、草木、動物、五行、陰陽、天空、大地、人間、概念、現象などの人間では到達しえない未知の領域。要するに「自然」と呼べるあらゆるものを“導いて”動かせる。
    自然と共存する力としての最終地点であり最高到達点。
    もはや導けない自然は藤にない。
    弱点:本人の耐久力は低い。
    精霊や妖精を導くには少し話す必要がある。
    遠方にいる精霊ほど呼び出すのに時間がかかる(天体は1分、宇宙は10秒、天空は5秒、その他はノータイム)。動物なども藤の近くにいない動物は呼ばれても藤の元へ来るのに精霊と同様の時間が必要。
    導きには霊力を使用するため、大量に導けばその分霊力を消費する。
    より強い精霊を呼び出す際には動くことができない。
    要望(任意):一人称は我、二人称は貴殿
    精霊などを呼び出す時には「○○(呼び出す大自然の名前)よ!」という風に呼び出す精霊が属する自然の名前を言わせてください。

  • 266二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:00

    名前:渇望の孤狼
    年齢:200以上
    性別:雄
    種族:魔獣化した狼
    本人概要:大昔、ある悪意によって滅びた小国の王城廃墟に住まう大狼。全長は5m程。警戒心が強く、部外者が敷地へ足を踏み入れることを許さない。その動きは非常に素早く、その姿を目で捉えることすら容易ではない。野生の勘も鋭く、大抵の罠は見抜かれてしまう。一方で人語を理解するだけの知性を持ち、弁えた相手であれば慈悲をかけることもある。
    その正体は滅びた小国、唯一の生き残り。王家が愛した一匹の番犬“ヴェン”であった。番犬は守り続ける、愛する主との思い出が詰まった王城を。もう叶う事のない主との再会を強く願いながら。
    能力:渇き/望み
    能力概要:渇き 自身が受ける攻撃や刺激の殆どをエネルギーに変換し、吸収することでダメージの大部分を軽減する能力。常時発動。
    吸収したエネルギーは自身の身体能力強化や後述する“望み”の発動に充てられる。
    身体能力強化は主に筋力、瞬発力、持久力、精神力、自然治癒力など多岐に渡る。特に自然治癒力強化は“渇き”によるダメージ軽減と相性が良く、組み合わせることで大抵の攻撃は実質的に無効化できてしまう。
    ・望み “渇き”によって獲得した膨大なエネルギーを用いて行われる驚異的な速度の進化、適応能力。進化によって眼前の脅威に対して最適な能力や耐性を得ることができる他、諸々の身体能力も大きく上昇する。“望み”の発動回数に制限はなく“渇き”でエネルギーを得る度、何度でも進化・適応する。
    弱点:毒や呪いなど直接的な衝撃が無い攻撃は“渇き”によってダメージを軽減出来ない。
    ・斬撃も“渇き”によるダメージ軽減が効きにくい。特に技量に優れた剣技であればある程軽減効果は低下する。
    要望(任意):人語は使わず、鳴いたり吠えることでリアクションを行います。

  • 267二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:00

    名前:アルジズ
    年齢:6
    性別:女
    種族:人間(まだクローンではない)
    本人概要:バイオパンク社に所属するハッカーエージェント バイオパンク社の電子セキリュティなど情報関連を担当する
    最近はバイオウイルスおよびバイオ因子の情報流出に対し情報操作して対処した 現在は休暇をとってバカンス中
    年齢がおかしいように見えるかもしれないがバイオパンク社のエージェント達は入社時より年を取らなくなるからそうなっているだけである 気にするな
    能力:護衛バイオスライム
    能力概要:アルジズを護衛するバイオスライム 複数の武術を組み合わせた動きにスライム特有の動きを取り入れ進化させた武術であるスライム空手の達人(達スライムだと語呂が悪い)であり拳の一撃一撃が大山を揺るがすかのような威力を持ち防御においても超高密度に圧縮された液状肉体はダイヤモンドよりも固く柳のように柔軟であるという性質を併せ持つ
    弱点:アルジズはバイオコンピュータ接続用の生体端子以外特に改造を受けていない為身体能力は完全に幼女であり戦闘にも慣れていない
    護衛用バイオスライムはアルジズから離れることができない
    もちろんアルジズを倒せば護衛スライムは存在理由を失い自壊する

  • 268二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:00

    名前:数言十九(かずこと じゅうく)
    年齢:18歳
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:数言家の主人公的存在で、十と九担当
    珍しい複数能力持ちの少年
    快活で明るい性格、曲がったことは嫌いで、どんな状況でも自分の信念を貫き通す強い意志を持つ十九は人々の不幸を幸せにするために戦い、相手でさえ救おうとする
    能力:【九遠】 【一軌十選】 【十九】
    能力概要:
    【九遠】
    はるか未来と、遠い過去を見通す能力
    未来を見て相手の攻撃を避けたり攻撃を当てたり、過去を見て相手の能力や弱点について理解したりできる
    【一軌十選】
    能力を発動した時に、十九の前に10個の選択肢が提示される、その中から一つを選び、その事象を確定させる能力
    【十九】
    悪しき運命を壊す能力、「苦渋」転じて「十九」
    どんなに確定した運命だとしても、それを壊して人々を救う
    弱点:【一軌十選】は現実的に自分が出来そうなこと、現実的に起こりそうなことしか提示されない
    【九遠】を使っている間は視界が狭まる
    【十九】は悪い運命しか壊せないため、相手の良い運命を壊すことはできない、つまり【十九】は直接の攻撃手段にはなり得ない
    身体能力は一般人程度

  • 269二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:00

    名前:“心臓無き停止者”サンズリバー・レイ
    年齢:死後60年
    性別:男
    種族:スケルトン(知性種)。死ぬ前は人間だった・・・?
    本人概要:土に汚れた服を着て、表面に薄っすら霜を纏う骸骨。極めて気温が低いため毎日凍死者が大量に出る北国の街「アイスソウル」にある共同墓地の墓守。「進んで命を粗末にするべきではない」という価値観ゆえ、自分からは争うことは好まないが、墓地に余所者が侵入した際は、相手を無害な氷の像に変えて「丁重にお帰りいただく」。不気味なほどに青白い色をした墓掘り用のスコップ「カロン」を携帯しており、これが武器でもあり能力の起点にもなる。骨なので毒や電撃などは効かず、骨部分はバラバラにされても再生可能。さらにあまりに体温が低すぎて炎さえも逆にかき消してしまう。
    能力:『凍てつく柩桶(フロスト・グレイヴ)』
    能力概要:スコップで突いたり叩いたりした相手を氷に変える。「凍った人体」とか「凍った木」にするというわけでなく、対象を物質レベルで氷(凝固したH2O)そのものに変換してしまう。氷化した対象を自在に操ったり動かしたりはできず、ただ動けぬ氷塊となってその場に転がるだけである。氷化した対象は当然、長時間日光などに晒されれば単なる水となって溶けてしまう。
    また、スコップなので当然穴を掘ることもでき、地表の凍土を相手に向けて掘り飛ばしたり、底に尖った氷を敷き詰めた落とし穴を事前に掘っておくなどの作戦も可能。
    氷になった相手をそのままスコップで粉砕することもできる・・・が、「相手を完全に殺してしまう技」のため、ギリギリまで使おうとしない。
    固有能力とは別に、知性あるスケルトンの特性として、切り離した骨の一部を独立させて動かすことができる。
    弱点:骨と骨を繋ぐ腱が唯一の急所。

  • 270二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:01

    名前:レーゲン
    年齢:14歳
    性別:男
    種族:人間
    人物概要:七色の髪に優しい表情をした少年で佐藤家の執事見習いであり防衛隊の一員
    ヤバい場所にある集落の出身で異常な才覚をある防衛隊幹部が見抜き入隊、ただその幹部を良く思わない存在の嫌がらせで訓練出来ず
    仕方無いと息子夫婦の家(佐藤家)に送られた、性格は誰に対しても礼儀正しく敬語を崩さない、ただ戦闘中は少し変わるらしく…
    能力:果て無き色彩
    能力概要:ありとあらゆる属性を司る力、属性と定義できるものなら何であっても自由に扱う事が可能
    一つ一つの属性を自在に扱う事はもちろんのこと複数の属性を混合して扱うことも可能であり相手に合わせて使う属性は適宜変える
    纏えば近接攻撃の強化、放てば遠距離攻撃、一体化すれば移動手段、攪乱や囮、一時的な回復手段まで幅広く使える力
    弱点:出力の調整が異様に難しく下手をすれば自分すら巻き込みかねないので多少の隙を晒してでもしっかり集中しないといけない
    扱える属性の数に限りはないが使う属性の数を増やせば増やすだけ制御が難しく深い集中をしないと無茶苦茶な事になる
    耐久力が低めなのに戦闘が激化すると楽しくなってダメージを厭わない無茶をする癖があり大怪我を負ったり隙が生まれたりする
    要望:一人称は僕、二人称は貴方、口調は敬語
    勝ったら「ご対戦ありがとうございました」と言わせてください

  • 271二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:01

    名前:チャッカ・グリスティア(No.005)
    年齢:25
    性別:女
    種族:人造人間
    本人概要:真っ赤なキャップに透き通るような銀髪ショートヘア、そして1.4mほどという少女レベルの低身長が特徴的な、ツリ目で八重歯の生えた少女。「異能UA計画」で正式に試作された最初の人造人間であり、頬に真っ赤な字で「005」と刻まれている。性格はあらゆる束縛を嫌い、自分とその仲間以外の全てを敵視する取り扱い注意系少女。現在は野生化し、自由気ままに組織の追跡から逃げるようにして暮らしている。皮膚の硬質性や俊敏さは人間を大きく超えているが、筋肉は並程度。
    能力:《005:デトネイション》
    能力概要:彼女以外からすると完全に透明、無臭でどんな状況でも無音かつ触っても触覚で感じられすらしないC4爆弾を、手や足などに無数にある排出孔からいくらでも取り出す能力。彼女自身は破裂エネルギー吸収加工により爆発の衝撃を受けない。
    弱点:
    ・「005」の印字をなぞられると、7歳の少女と同じほどの身体能力に戻り、能力も失う。
    ・『エネルギー・カン』の補給後2時間するとスタミナを失い、能力の使用にクールタイムがかかるようになる。
    要望(任意):戦闘開始時『エネルギー・カン』を2つ所持。一人称は『吾』(あ)

  • 272二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:01

    名前:グラトニック・ウェイブ
    年齢:なし
    性別:なし
    種族:群体
    本人概要:
    表面張力を利用して水を纏った無数の微生物による群体。
    各個体のサイズが視認不能なサイズのため水がひとりでに動いているようにしか見えない。
    通称は「生きた水」「すべてを喰らう波」
    その名の通り触れたものをなんでも一瞬で捕食してしまうため、絶対に物理的接触をしてはいけない。
    能力:流動貪食群体
    『群体』
    各個体のサイズが恐ろしく小さくまた液体状の群体を形成しているため物理攻撃は例外なく効かない。
    個体レベルで見た時に攻撃が全く当たっていないため、ダメージを負わせたように見えても実際は群体が変形あるいは分裂しているだけ。
    『流動』
    各個体が極めて小さく軽いため重力や慣性を無視した動きが可能。また重力系の攻撃も効かない。
    障害物ごと捕食できるためあまり意味はないが、流動性と異常なまでの小ささを活かしてどれだけ小さい隙間にも侵入できる。
    『貪食』
    接触したものを捕食する。一個体一個体が捕食する量は少ないものの、到底数え切れないレベルの個体数による群体であるため、触れたものが一瞬で消滅したようにしか見えない。そして捕食すればするほど増殖する。
    なんでも捕食し消化してしまうため毒も効かない。
    弱点:
    物理攻撃が当たらないだけで個体レベルで見ると非常に脆いため、熱や音・電気などの非物理的な衝撃やダメージに非常に弱い。強い光にも弱い。つまるところ周波数系に弱い。

  • 273二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:01

    名前:レヴィアタン
    年齢:5000歳
    性別:無し
    種族:ガーディアン・ゴーレム
    本人概要:人類が成長する為に作られたゴーレム達の1体。リヴァイアサンを元に作られている為、ワニの姿をしている。レヴィアタンの背中には、盾の列のような鱗が密に並び、二重になっている。そして、腹には陶器の破片を並べたような意匠がある。レヴィアタンは海を守護する目的としても作られている。その為、海と共生している者には己の肉切り落として上げており、海を汚す者には精神が砕け散る位の恐怖を与える事をしている。
    能力:《Ozean》
    能力概要:リヴァイアサンが悪魔として見られた時に、保持していると言われた力を元にした能力。海を司る力であり、海の水を取り出して武器状にして放つ事や、盾状にして防御する事も可能である。
    弱点:《Ozean》で海の水を呼び出す時間は、近場にあれば2秒、遠方にあれば5秒かかる。
    《Ozean》海の水の形を変えるには1秒掛かる。
    鱗の一番下に、1m位のヒビが入った石のような固さを持つ心臓があり、それを壊されると死亡する。

  • 274二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:02

    名前:ファーヒル・トウェルブナイト
    年齢:不明
    性別:女性
    種族:悪魔
    本人概要:美をこよなく愛する悪魔。正確は律儀かつ、あいてのことを心から理解し──そして容赦なく自分の毒牙で味わい尽くす外道である。
    歌、踊り、演劇、絵画、アクセサリーなどなど…美につながるあらゆるものを好み、それを収集する悪魔。
    芸術に秀でた少年少女の前に現れ「あなたの最高傑作を作る手伝いをしてあげる」と言い、契約を迫る。
    契約を結べば少年少女たちは人生において最大にして最高の一作を完成することができる。
    が、それは悪魔の契約。作品が完成した瞬間、その作品ごと契約者の才能を根こそぎ奪い額縁にしてしまう。
    その契約は”才能”を”素材”にする禁断の芸術。あなたの才能は歌詞に、絵の具に、金細工に、リズムに、表現となって浪費され、消費され、消滅してしまう。
    契約のあとに遺るのは才能を失い抜け殻となった死せる芸術家たちだけである。
    能力:星月夜”Lost the Starlight”
    能力概要:彼女がかつて契約した芸術家たちの作品は全て魔道具となり、彼女の力に変わる。
    歌は呪文に、踊りは武芸に、演劇は剣に、絵画は盾に、アクセサリーは鎧に変わる。
    これはその中で最も秀でた芸術であり、世界そのものを芸術に置き換える星の海の油絵。
    この絵によって世界は絵の具の色彩に揉まれ溺れ、そして永劫に沈み果てる。
    弱点:自分の美しさが崩れると弱る。そのためネイルを割る、きれいな髪の毛を切る、滑らかな皮膚を傷つけると自然と弱体化していく。
    また、芸術は歌なら聞かない、演劇や踊りや絵画は見ない、アクセサリーは身に着けないことで対策できる。
    要望(任意):

  • 275二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:02

    名前:レーゲン
    年齢:14歳
    性別:男
    種族:人間
    人物概要:七色の髪に優しい表情をした少年で佐藤家の執事見習いであり防衛隊の一員
    ヤバい場所にある集落の出身で異常な才覚をある防衛隊幹部が見抜き入隊、ただその幹部を良く思わない存在の嫌がらせで訓練出来ず
    仕方無いと息子夫婦の家(佐藤家)に送られた、性格は誰に対しても礼儀正しく敬語を崩さない、ただ戦闘中は少し変わるらしく…
    能力:果て無き色彩
    能力概要:ありとあらゆる属性を司る力、属性と定義できるものなら何であっても自由に扱う事が可能
    一つ一つの属性を自在に扱う事はもちろんのこと複数の属性を混合して扱うことも可能であり相手に合わせて使う属性は適宜変える
    纏えば近接攻撃の強化、放てば遠距離攻撃、一体化すれば移動手段、攪乱や囮、一時的な回復手段まで幅広く使える力
    弱点:出力の調整が異様に難しく下手をすれば自分すら巻き込みかねないので多少の隙を晒してでもしっかり集中しないといけない
    扱える属性の数に限りはないが使う属性の数を増やせば増やすだけ制御が難しく深い集中をしないと無茶苦茶な事になる
    耐久力が低めなのに戦闘が激化すると楽しくなってダメージを厭わない無茶をする癖があり大怪我を負ったり隙が生まれたりする
    要望:一人称は僕、二人称は貴方、口調は敬語
    勝ったら「ご対戦ありがとうございました」と言わせてください

  • 276二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:31

    すとっぷ!

  • 277二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:00:32

    このレスは削除されています

  • 278二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:07:30

    レーゲン二人いる

  • 2791◆ZEeB1LlpgE25/09/17(水) 22:46:14

    ぜんさいよう

  • 280二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 22:58:50

    いぇい!

  • 281二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 23:21:12

    FOOOOOO!

  • 282二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 06:24:47

    (☆ω☆)楽しみ!

  • 283二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 10:17:28

    保守

  • 2841◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 11:46:43

    グラトニック・ウェイブvs数言十九
    チャッカ・グリスティアvsアリゲータンク
    異能狩りのライvsレーゲン
    “心臓無き停止者”サンズリバー・レイvsアルジズ
    渇望の孤狼vs華藤

  • 285二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 15:41:39

    果たしてアリゲーターは文字をなぞることができるのか…

  • 286二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 15:46:48

    十九、物理以外に攻撃手段あるか…?あるよな、あると言ってくれ!

  • 287二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 17:06:48

    最後だ最後だ
    チーーー†┏┛墓┗┓†ーーーン

  • 2881◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 21:21:13

    題名『生きた水と未来を貫く少年』

  • 2891◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 21:22:12

     深夜の街外れ。灯りも届かぬ工業地帯の廃工場群の一角に、不気味な「水の塊」がうごめいていた。
     人の形も、動物の形もしていない。無数の粒子が集まった液体の群体が、地面を這い、壁を這い、時に波のように盛り上がっては崩れる。

     それを見た者は誰もが恐怖に飲まれるだろう。
     なぜなら――触れた瞬間に、命も物も、痕跡すら残さず消え失せるからだ。

     通称は「生きた水」
     正式な名は グラトニック・ウェイブ。
     かつて街を丸ごと一つ喰らい尽くしたとも囁かれる、人知を超えた群体生命。

     今、その流動する「波」の前に、ひとりの少年が立ちはだかっていた。

     彼の名は―― 数言十九(かずこと じゅうく)。
     鮮やかな瞳に揺らぎない意志を宿し、まだ十八歳という若さながらも、人々を守るために幾多の試練を乗り越えてきた存在。
     快活な笑みを浮かべながらも、その背筋には一分の揺るぎもない。

    「……これが、噂の“すべてを喰らう波”か」

     十九は一歩踏み出し、群体を見据える。
     空気を震わせるような不気味な音が、耳にまとわりつく。無数の小さな生物が「ざわめいている」音だ。

     群体は人の言葉を持たない。ただ、空腹に従って動く。
     そしてその空腹は、世界を丸ごと喰らい尽くすほどに果てしない。

    「……わかってる。お前も、本当はただ“生きてる”だけなんだろう」

     十九の声は静かだった。

  • 2901◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 21:22:48

     だが、その言葉には確かな優しさが込められていた。

    「けど――人を喰らう存在を、このまま放っておくわけにはいかない」

     その瞬間、彼の瞳が細く鋭く光る。

    【九遠】――発動。
     十九の脳裏に、無数の未来が奔流のように流れ込む。
     波が襲いかかる未来。街が呑み込まれる未来。彼自身が喰われて消える未来。

     しかし、同時に。
     その弱点――「熱」「音」「光」によって群体が散る映像も、かすかに見えた。

    「なるほどな。光と、音と、熱……そこが突破口か」

     十九は額の汗を拭い、深く息を吸う。
     恐怖はある。
     だが、それ以上に心を燃やすのは――「救いたい」という意思。

    「よし……来いよ、“生きた水”。オレが、お前を止めてやる」

     グラトニック・ウェイブは、応えるように大きく波打った。
     まるで獲物を見つけたかのように、工場全体を揺らすほどの咆哮を液状のざわめきで響かせ、十九へと押し寄せる。

     こうして――少年と群体との、世界に二つとない戦いが幕を開けた。

  • 2911◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 21:25:08

     グラトニック・ウェイブが大地を這い、津波のごとき勢いで迫りくる。
     液体の表面は光を鈍く反射し、その一滴一滴に無数の微生物が潜んでいる。肉眼では到底追えぬ細かさだが、確かにそこに「意思なき飢餓」があるのを十九は感じ取っていた。

    「速ぇ……っ!」

     十九は即座に跳躍し、廃工場の鉄骨へ飛び乗る。
     次の瞬間、彼のいた地面が音もなく「消えた」。
     食われたのだ。コンクリートすらも残さず、一瞬で。

     ぞくり、と背筋を走る寒気。
     だが怯んでいる暇はない。

    「……触れた瞬間に“終わり”か。だったら絶対に近づかせねぇ!」

     十九は息を整え、再び【九遠】を発動させる。
     彼の視界に広がるのは「数秒後の自分の死」。
     波に呑まれ、骨すら残さず消え失せる姿。

     だが同時に、その「死」を回避する別の軌道も見える。
     鉄骨を蹴って移動し、光を利用して群体の進行を遅らせる未来。

    「選べる……! ならオレは、“生き残る未来”を掴む!」

     十九の前に、ふっと光の板のようなものが浮かぶ。
     十個の選択肢――【一軌十選】。
     未来を見通した十九が選べる「可能性」の断片だ。

  • 2921◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 21:25:33

     その中のひとつに、「崩れかけの照明を落として群体に光を浴びせる」という選択肢があった。

    「――これだ!」

     彼はすぐさま鉄骨を蹴り、天井に吊るされた巨大照明に飛び移る。
     その体重を預けて鉄パイプを蹴りつけると、ガシャンと音を立てて照明が落下した。

     轟音と共に、照明が群体に直撃。
     割れたガラスと共に火花が散り、光が水面を叩く。

    「グギャアアアアアア――!」

     音にならない音が響いた。
     群体が波打ち、苦しむようにざわめく。液体の表面が泡立ち、分裂したかのように飛び散る。

    「……やっぱり、効いてる!」

     十九は着地しながら、汗を拭う。
     しかし油断する間もなく、飛び散った水滴が床を走り、瞬く間に再集合していく。
     群体はすぐに体勢を立て直し、再び迫り来る。

    「ちっ、やっぱ“効く”けど“倒せる”わけじゃねぇか……」

     群体の本質は「無数の個体」。
     一部を砕いたところで、残りが合流すれば元通り。
     むしろ光や熱に怯むたび、より激しく、より貪欲に動きを速めていく。

  • 2931◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 21:25:55

     廃工場の壁に染み込むように侵入し、鉄骨の隙間を這い、十九の足元すら狙う。
     その様は「水」でありながら「猛獣」の群れのごとし。

    「……ああもう、やっかいすぎるだろ!」

     十九は叫びながらも笑っていた。
     恐怖よりも、「どう攻略するか」の方が彼の心を熱くする。

    「オレの仕事は“人を救う”ことだ。……お前だって、救ってやるからな!」

     叫ぶと同時に、群体が一気に跳ね上がった。
     巨大な波が廃工場を丸ごと呑み込むかのように迫る。
     鉄骨も、壁も、天井も、すべてを破壊し、喰らい尽くそうと――。

     十九は目を閉じ、次なる未来を掴もうと力を込めた。
     その瞳に浮かび上がるのは、まだ誰も知らない「勝利への軌跡」。

  • 2941◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 21:26:44

     十九は群体の猛烈な攻勢を受けながらも、呼吸を整え、思考を集中させる。
     廃工場の瓦礫を踏みしめる足音は、群体の無数の液滴にかき消されそうになるが、彼の目には光の板――【一軌十選】がはっきりと見えていた。

    「……ここから先、どの選択を掴むかで未来は変わる」

     板に並ぶ十個の選択肢。
     それは光のように淡く揺れ、十九の目にはどれも等しく現実的に映る。
     一つを選べば、確かにその可能性が現実になる。
     しかし、間違えれば群体に呑まれ、未来は無惨に断たれるだろう。

     十九は唇を噛み、群体の形状の変化に視線を走らせる。
     水面が波打ち、壁の隙間から這い出す触手のような形状――その数は減るどころか増え続けている。

    「……よし、決めた」

     選んだのは、「天井の配線と金属パイプを利用して電気を通す」未来。
     群体は非物理的な攻撃に弱い。熱や音、そして電気――十九はここで攻撃を一発当て、群体を分裂させる作戦を立てたのだ。

    「――これでどうだ!」

     天井に飛び移り、配線をつかみ、金属パイプを握る。
     電流を送り込み、光と熱が群体に直撃。
     液体が泡立ち、跳ねる。無数の個体が奇声のような音を立て、溶解するかのごとく弾けた。

    「効いた……でもまだ、全部じゃねぇ!」

     十九は叫びながらも冷静さを失わない。
     ここで重要なのは、「確実に次の未来を見極める」こと。
     彼の脳裏に過去の戦いの映像がよぎる。
     小さな失敗が命取りになった瞬間――その記憶が、群体の動きと重なる。

  • 2951◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 21:26:56

     選択肢は十個あるが、十九が本当に掴むべきは「生き残り、なおかつ群体の増殖を抑える道」。
     そのために、彼は再び【九遠】を展開する。

    「未来を見ろ……過去を見ろ……!」

     目の前に未来の映像が重なり、群体の侵食速度や自分の逃げ道、攻撃のタイミングが鮮明に浮かび上がる。
     そして十の選択肢から一つを決断する瞬間、心拍が速まる。

    「――これだ!」

     十九は手を伸ばし、選んだ光の板に触れた。
     瞬間、群体の動きが一瞬止まったように見えた。
     彼が選んだ未来が現実として成立したのだ。

     その隙に、十九は素早く廃工場の梁を蹴り、次の位置へ移動。
     群体が追撃する前に、もう一度電気を流す。
     跳ねる液体が痛々しく光を反射し、無数の個体が弾ける。

    「これなら……一歩ずつでも前に進める!」

     十九の声には確かな自信があった。
     だが群体はまだ完全には倒れていない。
     水の壁となり、次々と形を変え、彼を包囲しようとしていた。

     十九は息を整え、次の策を頭に描く。
     これ以上の失敗は許されない。
     未来を掴むためには、選択を間違えず、群体の弱点を突き続けるしかないのだ。

    「よし……ここからが、本当の勝負だ!」

  • 2961◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 22:13:30

     十九は群体の波状攻撃を見据えながら、足元の瓦礫を踏みしめる。

     廃工場の天井から差し込む光が、無数の水滴に反射して幻想的な光景を作り出す。
     その中で、群体は無数の個体に分かれ、彼の周囲を覆い尽くそうとしていた。

    「――よし、次の一手だ!」

     十九は両手を広げ、周囲の金属パイプと配線を再確認する。

     先ほどの電撃が群体を削ったものの、まだ個体の一部は無傷であり、容易には捕食を止めない。
     その瞬間、十九の脳裏に【一軌十選】の光が再び浮かぶ。

     未来の十の選択肢が、彼に新たな道を示していた。
     その中には「群体の流動を制御して孤立させ、電撃で一掃する」という選択肢がある。

    「なるほど……これなら、触れずに安全に一網打尽にできる」

     十九は天井の梁を蹴り、宙を舞う。
     まるで演劇の主人公のように、空中で正確に配線と金属パイプに手をかけ、瞬間的に電流を流す。

     群体は一瞬、泡立ち跳ねる。無数の水滴が散り、光に反射してまばゆい閃光を放った。

    「――これが、俺の運命を切り裂く一撃!」

     電気の力で群体の一部が分解され、空中に浮かぶ水滴の形が崩れる。
     十九は着地すると同時に次の行動を考え、瞬時に未来を見据え【九遠】を展開。

     未来の映像は鮮明で、どの攻撃が群体を確実に破壊できるか、どの個体が危険かを示している。
     彼は一瞬も迷わず次の策を選び、群体の内部に深く電流を流すルートを作った。

  • 2971◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 22:13:43

    「――ここだ、絶対に逃がさない!」

     流れた電流は群体の中を伝わり、無数の個体を一斉に弾けさせる。

     水が弾ける音が、廃工場の静寂に響き渡る。
     十九は息を整え、汗をぬぐいながら次の瞬間を見据える。

     群体の残骸はまだ完全には消えていない。
     しかし、十九は確信した――未来を見据え、選択肢を間違えなければ、勝利は確実に近づく。

    「よし……これで次の一手を準備できる」

     十九の目に決意が宿る。

     群体は増殖能力を持つが、彼は非物理的攻撃の弱点を突き続けることで、必ず形勢を逆転できると理解していた。

     廃工場に差し込む光の中、十九の姿は孤高の戦士そのものであり、群体の水面は彼に対抗する無数の障害にしか見えない。

     そして十九は、次の【一軌十選】を手に取り、未来を切り裂く準備を整えた。

    「――行くぞ、全力で!」

  • 2981◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 22:16:00

     電流で一瞬の勝利を収めたかに見えた十九だったが、群体はすぐに姿を整え、再び流動しながら迫ってきた。

     まるで生きた水が意思を持って動いているかのように、工場の床を覆い尽くす。

    「――くっ、まだ残っていたか!」

     十九は必死に後退しながら群体の動きを観察する。
     未来を見通す【九遠】があれば動きの予測はできるが、群体の数は膨大で、完全に安全な場所は存在しない。

     その時、群体の一部が天井から落下してきた配管を介して十九に向かう。

     わずかに触れただけで捕食される危険があるため、十九は間一髪で身を翻し、滑るように回避した。

    「――よし、次は慎重に……!」

     十九は呼吸を整えながら再び【一軌十選】を展開する。

     未来における十の選択肢が、群体の分散の仕方、増殖ポイント、弱点を示していた。
     その中から、最大限効率的に群体を分断し、非物理攻撃で一掃する策を選ぶ。

     十九は両手を広げ、廃工場内の金属梁や配線、残された破片に注意深く触れ、非物理的な衝撃――強烈な音と光の連鎖反応を作り出す準備を整える。

     群体は察知して流動を変え、十九を囲もうとする。
     しかし、十九は目を閉じ、未来の映像を頭の中で再生する。

     この一瞬の沈黙が、彼にとって最も重要な時間だった。

    「――よし、いくぞ……ここが勝負だ」

     十九は声を上げると同時に周囲の金属や破片を震わせ、共鳴する音波を発生させた。

  • 2991◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 22:16:18

     それにより、群体の小さな個体は微妙に振動し、全体のバランスが崩れる。

     水の波が不規則に跳ね、いくつかの個体は捕食を失敗してしまう。
     十九はそこでさらに未来を読み、増殖する群体の流れを計算し、光のフラッシュと音の共鳴を組み合わせて一気に群体を孤立させた。

    「――これで止める!」

     孤立した群体に対して、十九は残りの配線と金属片を駆使して強烈な光と音を叩き込む。

     光が群体に当たると、無数の水滴が一瞬で弾け、個体の分裂や増殖は止まり始めた。
     十九は全力で体勢を維持し、逃げ場のない群体を見据えながら、一歩ずつ慎重に距離を詰める。

     しかし、疲労は確実に体を蝕む。
     全力で走り、金属片を操作し、非物理的攻撃を連打する十九の体力は限界に近づいていた。

     だが、十九の瞳は揺らがない。

    「――俺は……諦めない、絶対に負けられない!」

     群体の一部が再び増殖しようとするが、十九は未来を見据えて次の【一軌十選】を準備する。
     この瞬間、十九は覚悟を決めた。

     群体を完全に消滅させるか、体力が尽きるか、どちらかしかない。
     恐怖も疲労も、すべてを振り切り、彼は最後の勝負に挑む。

    「――俺の信念を、見せてやる!」

     十九の声が廃工場に響き渡る。
     群体は完全に孤立し、もはや逃げ場はない。
     未来を読み、全ての選択肢を計算した十九は、最後の攻撃の準備を整えた。

  • 3001◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 22:18:22

     廃工場の中、無数の水滴が光を反射してきらめく。
     群体――グラトニック・ウェイブは必死に形を変え、十九を包み込もうとする。
     しかし、十九は深呼吸し、全身の感覚を研ぎ澄ます。

    「――これで最後だ」

     彼は両手を広げ、【一軌十選】の選択肢の中から、最も非物理的ダメージが効率よく群体に当たる方法を選ぶ。

     金属片と残骸、配線を利用し、工場内に光と音の共鳴フィールドを構築する。
     群体はそれに触れるたびに微小な個体が弾け、増殖力を失い、次第に形が崩れ始めた。

     十九は疲労で膝に力が入らなくなりながらも、心の中で決意を固める。

    「――俺は、人々を救うために戦う!」

     群体は反応して自らの形を変え、必死に十九を捕食しようとするが、光と音の波に抗えない。
     無数の個体が弾け、分裂しても増殖は追いつかず、次第に水の波は薄れ、静かになっていく。

     十九は前に進みながら、目に見える最後の波に向かって、全身の力を込めて叫んだ。

    「――これが俺の信念だ!」

     瞬間、工場内の光が群体を完全に包み込み、個体は溶けるように消滅した。
     群体の「すべてを喰らう波」は、十九の前で静かに消え去った。

     十九は膝をつき、荒い息をつく。体力は限界に達しているが、目の前には静けさと光だけが残った。

  • 3011◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 22:18:36

     彼は小さく息を整え、未来を読み、群体の残骸が再増殖する兆候がないことを確認する。

    「――終わった……か」

     その声には安堵と疲労、そして戦い抜いた者だけの誇りが滲んでいた。

     十九はゆっくりと立ち上がり、かすかに笑みを浮かべる。

    「……よし、これで終わりだ。誰も、苦しませない」

     彼の眼差しは、戦いを通して守るべきもの、救うべき人々への強い意志で満ちていた。

     光の中、十九は一人、勝利の余韻に浸りながら、静かに息を整えた。

     波を超え、闇を打ち破った者だけが手にできる光。
     十九は、その光を胸に刻み、また歩き出す覚悟を決めるのだった。

  • 3021◆ZEeB1LlpgE25/09/18(木) 22:18:47

    以上

  • 303二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 22:22:54

    投下乙!
    すごいよかった!

  • 304二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 22:26:00

    十九かっこいいねえ
    一軌十選もいい能力だ

  • 305二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 22:28:02

    ウェイブの人対ありです!良かった!

  • 306二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 22:29:41

    良い戦いっぷりだった!!

  • 307二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 01:24:37

    ほしゅるぜ

  • 308二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 05:42:12

    ほしゅだぜ

  • 309二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 09:42:18

    念の為

  • 310二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 16:41:59

    ほしゅマン

  • 311二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 22:19:21

    (☆ω☆)

  • 312二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 23:47:12

    ほしゅるぜ

  • 313二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 23:47:32

    ほっしゅん

  • 314二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 06:53:57

    ほしゅしゅ

  • 315二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 13:05:16

    ほしゅ!

  • 3161◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:34:02

    題名『湿地に響くデトネイション』

  • 3171◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:34:36

    湿地の夜。月は雲間から顔を覗かせ、腐葉土と水気を孕んだ空気がまとわりつくように重く漂っていた。鳥の声も、虫の羽音すらもない。異様な沈黙が、そこに生きる全てのものを圧し潰す。

    「……やな空気だな。吾の好きな“自由の匂い”じゃねぇ」

    赤いキャップを深くかぶった小柄な影が、ぬかるんだ水辺を踏みしめる。透き通る銀髪が月光を拾い、低身長の少女の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。頬には赤々とした数字――『005』。それは「異能UA計画」によって生み出された、最初の人造人間の刻印である。

    彼女――チャッカ・グリスティアは、片手に小さな缶を弄びながら周囲を警戒していた。中には“エネルギー・カン”。補給すれば身体機能を強化できるが、2時間後にはスタミナを奪う諸刃の代物だ。今はまだ2本のストックが残っている。だが、今夜の敵を前にすれば、それすら心もとないと直感していた。

    水面がわずかに揺れた。空気が震え、地鳴りのような低い唸りが足元から伝わってくる。次の瞬間、闇を切り裂くように巨大な影がせり上がった。

    ――それは、ワニ。
    だがただのワニではない。全長10メートルを超える巨体は、鋼鉄の外骨格と無数の機械部品で覆われている。赤い光を宿したセンサーアイが湿地を舐めるように走り、その背中には巨大な砲塔。口腔部には機関銃の銃身が、牙と共に不気味な光沢を放っていた。

    「……出やがったな、“アリゲータンク”」

    チャッカの瞳が細まり、唇が八重歯を覗かせるように歪む。

    アリゲータンク――軍事サイボーグ技術の粋を凝縮した禁断の兵器。敵国の侵入者を屠る番人であり、その使命のためなら一切の情けを排さない。高度分析コンピューターがその野生の動きを補正し、まさしく“戦うために生まれた怪物”だった。

    「……自由を邪魔する奴は、全部敵だ。吾の敵なら……ぶっ壊すまでだッ!」

    チャッカは湿地の泥にしゃがみ込み、掌を開いた。次の瞬間、排出孔から無数の“見えない爆弾”が水面へと散布される。透明で、無臭で、無音。誰も気づかない死の種子が、じわじわと配置されていった。

    対してアリゲータンクは低く咆哮をあげ、ぬかるんだ水をかき分け前進する。巨大な尾が泥を巻き上げ、振動で水鳥が一斉に飛び立つ。湿地は一瞬にして戦場へと姿を変えていった。

  • 3181◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:35:08

    少女と怪物。
    自由を求める人造人間と、使命を全うする軍事兵器。
    二つの存在が、湿地帯の月下で正面から対峙した。

    「さて……ここからが本番だ」

    チャッカの唇が嗤うように吊り上がり、第一歩を踏み出した。
    湿地を揺るがす死闘が、今まさに幕を開けようとしていた――。

  • 3191◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:37:49

    湿地の暗闇を震わせたのは、鉄の悲鳴のような轟音だった。
    アリゲータンクの口腔に仕込まれた機関銃が、赤熱する閃光を伴って火を噴く。

    ――【機関銃デスロール】。

    7.62mmの特殊弾丸が次々に射出され、湿地の水面を砕きながら飛来した。着弾の瞬間、弾丸は信じがたい回転力を生み出し、泥と水をデスロールさながらの竜巻に変えて周囲を粉砕していく。

    「ッ……くそ派手だな!」

    チャッカは身を低くして疾走した。小柄な体が泥を蹴り、矢のように駆け抜ける。弾丸は髪の先をかすめるほどの精密さで襲いかかるが、彼女は爆発的な反射神経で滑るように回避する。

    ババババババッ――!

    弾丸が葦を裂き、木片を粉砕する。夜空に火花が咲き乱れ、湿地は一瞬で戦場を通り越し、まるで地獄の門のように化した。

    だが――その混乱の中にこそ、チャッカは己の戦機を見いだしていた。

    「……“見えねぇ種”はもう蒔いてある」

    さっきまでの移動で、彼女はすでにC4爆弾を水面下へ潜ませていた。透明で、無臭で、無音。アリゲータンクの高度センサーも、獣の本能も決して感知できない“死の種”。

    巨体が前進し、湿地を踏み抜いた瞬間――。

    ――ドゴォォォンッ!!

    爆炎が水底から立ち上がり、泥と水を巻き込んで噴き上げる。湿地が震え、夜空に水柱が上がった。チャッカは耐衝撃加工済みの体で爆風をものともせず、むしろその反動を利用して大きく跳び退いた。

    「どうだァッ!」

    視界を覆う水煙の向こうで、アリゲータンクが低く唸り声を上げた。

  • 3201◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:38:12

    分厚い鱗と軍事サイボーグ技術が守るその巨体。確かに致命傷には至っていない。だが、爆心地に晒された腹部がわずかに揺らぎ、巨体の動きが鈍った。

    「腹だな……! 鱗に覆われてねぇ部分、そこが弱ぇ!」

    チャッカの瞳が鋭く光った。
    自分より何倍も大きい怪物を相手取るなら、弱点を突くしかない。
    しかも吾の爆弾は、敵には“存在すら認識できない”――つまり、狙いさえ定められれば確実に仕留められる。

    「ハッ、ちょっとは効いたじゃねぇか。自由を阻むなら……吾が全部ブッ壊す!」

    だがアリゲータンクもまた、容易く獲物を逃がす存在ではない。
    水煙の向こうで、背部の巨大な砲塔がうねりを上げながら回転を始める。
    ――【アリゲータンク砲】の照準が、少女の小さな影に吸い寄せられるように狙いを定めていた。

    湿地に緊張が走る。
    次の瞬間、城壁すら吹き飛ばす砲撃が放たれるか――。

    チャッカは歯を剥き、わずかに笑った。

    「来いよ、デカブツ。吾を捕まえられるもんならなッ!」

  • 3211◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:38:58

    湿地の夜空を裂いた轟音。
    背部砲塔から放たれた【アリゲータンク砲】の一撃は、稲妻のような閃光を描いて湿地を薙ぎ払った。

    ――ドォンッ!!!

    炸裂と同時に地形そのものが抉れ、数十メートル先の葦や樹木が根こそぎ吹き飛んだ。水と泥が天を突くほどに舞い上がり、耳を劈く衝撃波が全身を叩きつける。

    「ッ……あっぶねェ!!」

    チャッカは寸前で飛び退き、転がるように湿地の影へ身を隠した。小柄な体にまとわりつく泥の冷たさも構わず、即座に息を殺す。
    【アリゲータンク砲】――一発で城壁すら消し飛ばす威力。連射はできないが、狙われたが最後、直撃すれば跡形もなく吹き飛ばされるのは確実だった。

    だがチャッカの唇は八重歯を覗かせて吊り上がる。

    「ハッ……強ぇな。けど、もう撃ったんだろ?」

    砲撃は絶大だが、発射後しばしの隙が生まれる。その間、巨体を晒すしかない。
    チャッカは両手を泥に突っ込み、無数の透明爆弾を撒き散らした。水面下に潜むC4は、誰にも認識されない死の網。アリゲータンクが不用意に踏み込めば、確実に迎撃できる。

    「さて……吾と鬼ごっこするか?」

    少女は湿地を駆け抜ける。泥を蹴る音すら軽やかで、まるで獣のように敏捷だ。
    アリゲータンクはその背を追う。巨体が生む水飛沫は壁のようで、尾が地面を叩くたび湿地が震動する。機関銃デスロールが再び火を噴き、7.62mm弾が一直線に彼女を追い詰める。

    バババババッ――!

    「おっと、そっちは“地雷原”だぜ?」

    チャッカはあえて爆弾を仕掛けたルートへ身を投げる。
    巨体が追随し、踏み込んだ瞬間――。

  • 3221◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:40:14

    ドゴォォンッ!!!

    腹部を狙い澄ました爆発が連鎖的に炸裂。水面が跳ね上がり、アリゲータンクの腹を泥ごと打ち上げる。鱗で覆われた背や四肢は難攻不落だが、柔い腹部は衝撃を逃がしきれない。

    「効いてんじゃねェか、デカブツ!」

    チャッカは木陰から飛び出し、さらに距離を詰める。
    俊敏な少女と、強靭な巨獣。互いに決定打を狙いながら、湿地を舞台にした死の追走劇は加速する。

    だがアリゲータンクもただ受けるだけではなかった。
    腹部に損傷を負いながらも、分析コンピューターが瞬時に戦術を更新。尾を大きく薙ぎ払って周囲の地雷原を吹き飛ばし、さらには再装填を終えた砲塔を再びチャッカの方向へ旋回させる。

    「チッ、こっちの手口がバレんのも早ぇな……!」

    少女は息を荒げながらも笑った。泥まみれの頬に刻まれた『005』が月光に照らされ、異様な輝きを放つ。

    ――ここからは、互いの知恵と速さの勝負だ。

    「吾は自由のために……絶対に止まらねェッ!」

    「――――」

    言葉を持たぬ怪物は、咆哮と砲塔の旋回音で応じた。
    湿地の駆け引きは、次なる決戦の布石へと移ろい始めていた。

  • 3231◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:40:51

    湿地を切り裂く轟音。
    アリゲータンクの尾が大地を薙ぎ払うたび、水飛沫と泥が弾丸のように飛び散り、周囲の木々が次々と倒壊していく。
    その巨体は腹部に損傷を負いながらもなお、追撃の歩みを止めない。

    「クッ……タフだな。吾のC4、腹にぶち込んでも“まだ”動けるかよ……!」

    チャッカは息を荒げながらも、疾走を止めない。
    頬の『005』が汗と泥で濡れ、月光を浴びて妖しく光る。
    胸の奥に広がるのは、興奮と恐怖がないまぜになった感覚――だが彼女にとっては、それが“自由の証”だった。

    「追い詰められるのも悪くねぇ……けど、捕まるわけにゃいかねぇんだよ!」

    足元から次々と排出されるC4。
    無音・無臭・透明。戦場の至るところに見えぬ地雷原が張り巡らされていく。
    チャッカはその中を自在に駆け抜け、アリゲータンクをじわじわと誘導していた。

    ――狙いは腹部。
    鱗と装甲が覆う背や四肢は、いくら爆発を重ねても傷つかない。
    だが、機動性を優先して脆弱なまま残された腹。そこに爆発を集中させれば、いかに軍事サイボーグといえども限界が訪れるはずだ。

  • 3241◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:42:05

    「……もう少し、もう少し近づけ……」

    チャッカは湿地の奥深く、葦の生い茂る狭隘な地帯へと走り込む。
    巨体にとっては不利な地形。回避の自由を奪われ、無理にでも前進せざるを得ない状況だ。

    アリゲータンクのセンサーが赤く点滅し、砲塔が旋回を始める。
    再び【アリゲータンク砲】を撃ち込もうとしているのだ。

    「やっぱり撃つか……!」

    次の瞬間、砲撃が湿地を焼き払い、葦の壁が消し飛んだ。
    だが、チャッカはその爆炎を逆に利用する。
    爆風に身を任せ、あえて吹き飛ばされるように後方へ跳躍。砲撃の死角へと入り込み、空中で両手を大きく広げた。

    ――バラララッ……!

    排出孔から溢れ出す、見えぬ爆弾の雨。
    それらは泥と水に紛れ、アリゲータンクの進路にびっしりと張り巡らされた。

    「さあ、どう出る……? デカブツ」

    アリゲータンクは吠え、踏み込む。
    その巨体が動くたびに湿地が揺れ、見えぬ罠の上へと進んでいく。
    チャッカの指は、いつでも起爆できるようスイッチにかかっていた。

  • 3251◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:43:02

    ――だが。

    「……ッ!?」

    アリゲータンクの尾が、予想外の動きを見せた。
    巨体を支点にし、広範囲を一気になぎ払う。泥と水が跳ね上げられ、爆弾の一部が“巻き上げられて”しまったのだ。

    チャッカは息を呑んだ。
    アリゲータンクの高度分析コンピューターが、既に“見えぬ敵意”の存在を推測している……!

    「やるじゃねぇか……! でもなァ、吾の手はまだ尽きちゃいねぇんだよッ!」

    チャッカは口元を吊り上げ、姿勢を低くして再び走り出す。
    湿地の戦いは、互いの知恵と速度を極限まで要求し始めていた。

    ――決着の舞台は整いつつある。
    次の一手で、勝敗は大きく動くだろう。

  • 3261◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:45:12

    湿地に轟く咆哮。
    アリゲータンクの喉奥から響く低音は、地鳴りと混じり合い、戦場そのものを震わせる。
    その巨体はすでに何度も爆撃を受け、腹部には泥と焦げ跡がこびりついていた。だが、まだ倒れない。赤く光るセンサーアイは、なおも少女ひとりを追い詰める冷徹な意志を宿している。

    「タフだな……本当に化け物かよ」

    チャッカは膝に手をつき、荒い息を吐きながらも口元を歪めた。
    全身泥まみれ、キャップは傾き、銀髪に泥水が滴る。それでも瞳は燃えていた。
    彼女の中には恐怖もあった。だが、それ以上に――この圧倒的な敵を前にしてなお、自分の“自由”を貫ける喜びがあった。

    「いいぜ……最後の一手、くれてやるよ」

    彼女は左手を上げる。
    排出孔から、またもや透明なC4が次々と吐き出される。
    だが今度は散布ではない。チャッカは走り、跳び、滑り込みながら、アリゲータンクの進路と腹部に“直接”仕込んでいった。

    アリゲータンクは尾を振り回し、機関銃デスロールを撃ちまくる。
    弾丸の雨が夜を裂き、葦を削ぎ、水柱を立てる。
    だがチャッカはギリギリで回避しながら、執拗に巨獣の腹へ迫っていく。

  • 3271◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:45:31

    ――ズドォォォォンッ!!!

    背部砲が再び火を噴いた。
    白熱した砲弾が湿地を薙ぎ、衝撃で周囲の木々が吹き飛ぶ。
    チャッカは咄嗟に泥へ身を投げ、爆風を滑るように利用して巨体の真下――腹部へと転がり込んだ。

    「……ここで終わりだ」

    暗闇の中、少女の瞳が鋭く光る。
    無数のC4が、すでにアリゲータンクの腹部を取り囲んでいた。
    手の中の起爆スイッチに指がかかる。

    「吾の自由、邪魔すんなァァァァ!!!」

    ――起爆。

    ドゴォォォォォンッ!!!!

    湿地全体が爆裂した。
    泥と水が一斉に空へ吹き飛び、轟音が夜を切り裂く。
    爆炎はアリゲータンクの腹部に集中し、鋼鉄の外装を内側からえぐり取った。
    巨体が震え、咆哮と共に体をのたうたせる。

    「――――!!!」

    センサーアイが激しく点滅し、尾が暴風のように振り回される。
    しかし次第にその動きは鈍り、重い体は支えを失ったように崩れ落ちていった。
    水飛沫が大きく舞い上がり、やがて静寂。

  • 3281◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:45:57

    チャッカは泥の中から這い出し、肩で息をしながらその巨体を見上げる。
    巨大なサイボーグワニ――アリゲータンクは、ついに動かなくなっていた。

    「……はっ、やっと倒れたか」

    少女は笑い、八重歯を覗かせた。
    泥まみれの頬に刻まれた『005』が月光に照らされる。
    その姿は敗北寸前のギリギリから逆転を果たした戦士の証明であり、自由を勝ち取った少女の姿そのものだった。

    「吾は……誰にも縛られねぇ……! この命が尽きるまでな」

    赤いキャップを直し、チャッカは背を向けて湿地を歩き出す。
    背後ではまだ水が跳ね、焦げ臭い煙が漂っていたが、もう振り返ることはない。

    自由を守るための戦いは、終わりのない旅のほんの一幕に過ぎなかった。

  • 3291◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 20:46:32

    以上

  • 330二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 20:48:40

    機関銃の乱射ほどかっこいいものはない

  • 331二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 20:50:18

    投下おつ!
    今回もすごく良かった!タイトルがすっごいおしゃれ!

  • 332二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 21:02:08

    アリゲータンクの方、対戦ありがとうございました!
    やはり砲撃に銃に爆発はロマン…沼地ってこともあってゲリラ戦の様相を呈してる

  • 333二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 21:03:36

    >>332

    こちらこそ対戦ありがとうな

    見ごたえがあってこちらも楽しめた

  • 334二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 21:28:20

    罠を設置して戦うの良いよね…

  • 3351◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 21:54:39

    題名『果て無き色彩』

  • 3361◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 21:57:20

    夜の森は静寂に包まれていた。
    七色の髪を揺らし、少年は森の道端に立つ。月光が淡く差し込み、白い制服の袖が光を反射する。

    「……貴方は……ライ様ですね?」

    14歳とは思えぬ落ち着いた声で、レーゲンは問いかけた。目に優しい光を宿し、敬語で丁寧に話す。だがその瞳の奥には戦闘者の鋭さが潜む。少年は佐藤家の執事見習いであり、防衛隊の一員である。異能者としての力も、まだ自分の体と心を制御する訓練の途上にあるとはいえ、圧倒的な才能を秘めていた。

    対峙する相手――ライ。
    ルドラ帝国で生まれた異能狩り。右目と四肢を欠損し、義体で補われている。顔は皮が剥がれたように見え、フードとマスクで覆われた異様な存在感。戦闘においては無能力者ながら、異能者を狩るために極限まで鍛えられた身体能力と、毒や超特注品の武器で武装している。

    「……なるほど、異能者か」

    ライの声は低く、感情を抑えた冷たい響きだ。
    少年の存在を確認すると、まるで獲物を見つけた捕食者のように牙を剥く。右目の欠損を隠したフードの下で、ライは少年の能力を観察している。異能者であるだけで、彼の敵意は容赦なく全力で向けられる。

    レーゲンは深呼吸を一つ。
    能力――果て無き色彩。ありとあらゆる属性を操る異能は、遠距離・近距離問わず、戦場のあらゆる状況に対応できる。だが制御は難しく、集中を欠けば自分すら巻き込む危険がある。

    「僕は……全力で対応させていただきます」

    少年の言葉に、ライはわずかに身を傾ける。
    異能者に対して全力を出さざるを得ない男の心理。少年の表情は優しいが、戦いの場においてその色彩は鋭く光を帯びる。
    互いに間合いを測る静寂。
    風が葉を揺らし、遠くで小動物が逃げる。レーゲンは一歩、足を踏み出す。
    ライは右目の欠損による弱点を守りつつ、少年の動きを分析している。

    ――次の瞬間、戦いは動き出す。

    森の中で、少年と異能狩りが初めての一歩を踏み出した。
    静寂に、互いの息遣いだけが残る。戦いの火蓋は、確実に切られたのだった。

  • 3371◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 21:58:26

    森の闇を裂くように、ライが静かに動いた。
    欠損した右目をかばいながらも、全身の義体を駆使して鋭いステップで接近する。手には小型の暗器が握られ、刃には微量の毒が塗られている。
    異能者を狩る経験は圧倒的で、レーゲンの能力もこの瞬間、彼の分析対象となった。

    「……貴方の能力……“果て無き色彩”……」

    ライは低く呟き、少年の立ち位置、手の動き、呼吸の微細な変化を観察する。どれだけ多彩な属性を使おうとも、パターンや傾向は必ず現れる。ライはその隙を逃さず、一瞬の判断で対応策を練る。

    一方、レーゲンは森の地面に軽く足を踏み込む。

    「僕は……全力で戦わせていただきます」

    一人称は「僕」、二人称は「貴方」。敬語を崩さず、しかし戦闘中の目には真剣な光が宿る。

    少年の掌から七色の光がほのかに揺れた。
    それは単なる光ではない。火、水、風、雷……属性と定義できるものなら何でも、自由に、しかも同時に操ることができる能力だ。
    小さな光の粒子が舞い、森の地面に落ちた枯葉や土の上を滑るように移動する。

    ――最初の攻撃が飛んだ。

    レーゲンは遠距離からの攻撃を意識して、火と風を混合させた衝撃波を放つ。葉や枝を巻き込み、ライの視界を一瞬遮る戦術だ。
    だが、ライは即座に反応する。義体で身体能力を極限まで引き上げ、体を低く沈めて衝撃波を避ける。さらに、暗器のひとつを高速で投擲。毒が塗られた刃が森の闇を裂き、少年の背後を狙う。

    「……そこですか、貴方」

    レーゲンは背中の光を一瞬にして変化させ、属性を水と光に変換。暗器は水流で弾き飛ばされ、光が刃を反射して無効化された。

    同時に、少年は近接戦を意識して属性を纏う。
    水、雷、風を混合させた光の防具が腕と胴体を覆い、攻撃を受けても最小限の衝撃で済むよう調整されている。
    だが、制御には集中が必要だ。複数属性を扱えば扱うほど、ほんの一瞬の隙で自分も巻き込まれる危険がある。

  • 3381◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 21:58:39

    「……僕、少し……楽しくなってきました」

    少年は不意に笑みを浮かべ、戦闘中の興奮を口にする。
    耐久力は低めだが、戦闘が激化すると無茶をしてしまう癖がある――少し怪我をしても、楽しくて無意識に力を振り絞る。

    ライもそれを見抜いている。

    「……なるほど、戦闘中に変化するのか」

    右目を隠すフードの下で、冷徹な笑みを浮かべる。異能者であれば、どんな小さな癖も狩りの対象になる。少年の集中の波を読み、次の攻撃タイミングを測る。

    こうして、森の中に初撃が交わされた。
    遠距離・近距離、光と水、毒と義体――互いの技術と能力の応酬が、夜の森を戦場に変える。

    少年はまだ全力ではない――だが、ライもまた、最初の動きで分析を終えた。
    次の瞬間、より激しい駆け引きが幕を開ける。

  • 3391◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 22:00:11

    森の闇に、光と影が入り混じる。
    レーゲンの周囲では七色の光が揺らぎ、火や水、風、雷、土……ありとあらゆる属性が絡み合って舞う。それらは単なる装飾ではなく、攻撃、防御、移動、攪乱――すべてに応用される“果て無き色彩”の力だ。

    「……僕、集中します。貴方、どうか……全力で」

    少年の声は変わらず敬語だが、瞳は鋭く光る。属性を操る指先の微細な動きで、次々と属性を変化させ、光の鎧を形成し、同時に小規模な雷球を森の奥へ飛ばした。
    雷球は森の木々を炸裂させ、落下する枝でライの動線をわずかに制限する。

    ライは低く身を沈め、義体の四肢を駆使して素早く距離を詰める。

    「……やはり、異能者の戦闘は派手だ。だが、油断はできん」

    彼は少年の属性のパターンを即座に分析し、雷球の軌道を読み切る。義手を振り、毒の刃を一振り。狙いは少年の側面だ。

    だがレーゲンは冷静に、光と水の属性を瞬時に混合させて攻撃を逸らす。光の反射で刃の位置を狂わせ、水流で軌道を押し返す。

    「……ありがとうございます。おかげで防げました」

    少年は礼を欠かさず、だがその声には戦闘の興奮が混じる。戦闘中は、普段の礼儀正しい性格とは違い、わずかに攻撃的な笑みを見せるのだ。

    ライは即座に態勢を立て直し、次の攻撃を準備する。義体の強化筋肉が弾けるように動き、鋭い蹴りで少年の前方を制圧。雷を帯びた暗器が同時に飛んでくる。

    「……くっ!」

    レーゲンは光と土の属性を融合させたシールドを纏い、蹴りと暗器を同時に防ぐ。しかし制御には集中力を要し、わずかな隙が生じた。

    その隙を突くように、ライが左側から斬り込む。右目欠損の弱点を意識しつつも、少年の動線を計算し、左側からの一撃でプレッシャーを与える。
    レーゲンはその瞬間、全属性を混合し瞬間的に空間を光と風で変化させ、刀を回避させつつ反撃用の雷球を放つ。

    「……僕、少し……楽しくなってきました」

  • 3401◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 22:00:26

    戦闘が激化するほど、少年は無意識に無茶をする。耐久力は低いのに、攻撃の幅を広げてしまう癖がある。だが、それが逆にライにとっては読みづらい要素となる。

    森の中、光と影、毒と雷、風と土――双方の戦術が交錯し、駆け引きの緊張は極限に達する。
    レーゲンは距離を取りつつ、多数の属性を混合した幻影を作り出し、ライの攻撃を攪乱する。
    ライは瞬時に複数の攻撃パターンを読み、暗器と刀で追撃する。まさに頭脳と身体能力、そして異能の応酬。

    互いに分析し、反応し、すぐに対応する――この駆け引きは、まだ始まったばかりだ。
    少年の属性の制御と集中力、ライの経験と技術――森の戦場は二人だけの舞台となった。

  • 3411◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 22:01:43

    森の闇に、光と毒、雷と風が入り混じる。
    レーゲンの七色の髪が光を反射し、掌から放たれる属性の粒子が舞い散る。火、水、土、風、光、雷……ありとあらゆる属性が、彼の意思に応じて瞬間的に形を変え、攻撃、防御、移動、攪乱に使用されていた。

    「……ここからが本番ですね。貴方、どうぞ覚悟なさってください」

    少年の声は穏やかだが、瞳には戦闘者の鋭さが宿る。森の地形を利用しつつ、属性を絡めたトラップを次々と展開する。葉や枝、地面の土までを操作し、ライの動線を細かく制限するのだ。

    ライはそれを即座に分析する。

    「……異能者は器用だが、多すぎると制御が難しい」

    右目の欠損をかばい、義体の機能を最大限に駆使して慎重に距離を詰める。少年の多重属性攻撃は複雑で予測が難しいが、彼は経験と直感でひとつひとつのパターンを見抜こうとしていた。

    レーゲンは短く息を吐き、次の行動を決める。
    水と光の属性を組み合わせ、森の闇に複数の幻影を作り出す。雷と風を絡めた幻影は、ライの義体感覚を攪乱し、どの方向から本体が攻撃するかを読ませない。

    だがライもただ受けているわけではない。
    彼は少年の属性の変化と森の地形を瞬時に把握し、義手で刀を振り、毒の暗器を投擲して一歩でも隙を生ませない。森の中で、攻撃と防御の駆け引きは一瞬たりとも止まらない。

    レーゲンは集中力を最大まで高め、属性を複数同時に使用することで攻撃の幅を広げる。
    火と土で爆発的な衝撃波を発生させ、風と光でその威力を拡散させ、さらに雷で森全体を電気的に支配する。
    だがこの高度な制御には深い集中が必要で、ほんの一瞬でも気を抜けば自分自身も巻き込まれる危険がある。

    「……うっ、集中……」

    少年の息は荒くなるが、眼差しは揺るがない。戦闘の興奮が無意識に無茶をさせる。耐久力が低いにもかかわらず、思わず全力を振り絞るその姿は、ライにとっても意外な要素となる。

    ライはそのわずかな隙を狙う。義体の身体能力を活かし、左側から斬り込み、毒を塗った刃でダメージを蓄積させる。
    だが、レーゲンはすぐさま光と水の属性で防御を固め、空間そのものを操作して攻撃を逸らす。膠着状態――互いに一歩も引かず、戦況が均衡した。

  • 3421◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 22:02:10

    森は静まり返ったかと思えば、次の瞬間には雷鳴のような轟音、枝を砕く衝撃、光の閃きが交錯する。
    少年の七色の属性と、ライの経験と技術――互いの戦力が完全に拮抗し、次の一手が勝敗を左右する布石となった。

    「……この戦い、まだ終わらせません」

    レーゲンは小さく呟き、全力の次の攻撃を計画する。
    ライもまた、右目の欠損をかばいつつ、少年の次の動きを鋭く見据える。

    互いの呼吸、動線、戦術――すべてが次の局面のために準備され、決戦の幕が、静かに、しかし確実に近づいていた。

  • 3431◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 22:03:14

    森の闇に、七色の光が閃く。
    レーゲンは深く息を吸い込み、掌に全ての属性を集中させた。火、水、風、土、雷、光――ありとあらゆる力がひとつに融合し、光の渦となって彼を包む。

    「……これで、終わらせます、貴方」

    少年の声は穏やかだが、その瞳は鋭く光り、森全体がその意思に応えるかのように震える。
    属性の渦が森を巻き込み、枝や葉を弾き飛ばし、空間そのものが歪む。雷の電撃が森の木々を走り、風が暗器を弾き飛ばし、土と火が連鎖的な衝撃を生む。

    ライは冷静に動く。義体の機能を最大限に引き出し、俊敏に接近して少年の防御の隙を狙う。

    「……なるほど、全力か」

    右目の欠損をかばいつつ、彼は刀と暗器を駆使し、毒を塗った刃で圧力をかける。だが、この全力の属性渦は、単なる攻撃や防御の範囲を超えていた。

    レーゲンは光と風を組み合わせ、森の闇に無数の幻影を作り出す。
    それらはライの分析を惑わせる罠であり、同時に実体化した属性で反撃も可能だ。雷と水を絡めた属性の嵐が、ライの義体を叩き、体勢を揺るがす。

    「……っ!」

    ライは義体の反応速度を限界まで上げ、刀で光と水の渦を切り裂こうとする。だが、少年は次々と属性を切り替え、防御と攻撃を瞬時に繰り返す。火の渦が炸裂し、雷の衝撃が義体の動きを封じ、土と風が足元を制圧する。

    「……僕、最後まで集中します……!」

    少年は全属性を一体化させ、渦の中心で小さな一点に力を集めた。その瞬間、光の渦は爆発的に拡張し、雷火土風の連鎖がライを包み込む。

    「――っ……!」

    ライはあらゆる技術を駆使して回避しようとするが、属性の圧力は予測を超え、毒の刃も義体の機能も追従できない。渦の力がライを押しつぶし、体勢を崩す。

  • 3441◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 22:03:29

    最後の一撃――レーゲンは掌を前に突き出す。

    「……これで、終わりです!」

    火と雷が爆発し、土と風が圧縮され、光が全てを覆い尽くす。森の中で轟音と閃光が交錯し、全ての力が一点に集中した。

    静寂――そして、ライの動きは止まった。
    義体も刀も、暗器も、すべては光の渦の前に無力化されている。全身傷だらけの彼は、完全に戦意を失ったわけではないが、攻撃を継続する力は残されていなかった。

    レーゲンは息を整え、膝をつきながら森の中で光を収束させる。
    汗と泥にまみれ、髪は乱れているが、瞳には確かな勝利の光が宿る。

    「……ご対戦ありがとうございました」

    少年は静かに礼を述べる。戦闘中の礼儀を欠かさず、勝利の後も変わらぬ敬語でその場を締めくくった。

    ライは悔しさと無念の中で、しかし異能者を前に降伏を受け入れるしかなかった。
    森に漂うのは、戦いの余韻と、少年が勝ち取った“集中と制御による力の勝利”の証だった。

    森の木々は裂け、葉は散り、地面は轟音で揺れたが、戦いの結末は明確だった。
    七色の少年の光――果て無き色彩の力が、異能狩りを制したのだった。

  • 3451◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 22:04:15

    森の中、静寂が戻った。
    七色の光は消え、葉や枝に残った光の粒子がゆっくりと地面に落ちる。雷や火の痕跡が森を焦がしていたが、そこには確かな平穏があった。

    レーゲンは膝をつき、深く息を整える。全属性を制御し切った疲労が体中に広がる。

    「……ふぅ……やっと落ち着きました」

    汗と泥にまみれた髪をかき上げ、少年は森の残骸を見渡す。勝利はしたが、戦いの余韻は心を昂ぶらせ、体の痛みとともに残っていた。

    森の奥、ライは立ち上がろうとしたが、動きは鈍い。義体は損傷し、全身に刻まれた傷が血となって滲む。異能者に対する憎悪と執念は残るものの、今回の戦いでの敗北は受け入れざるを得ない状況だった。

    レーゲンは一歩前に出て、静かに言葉をかける。

    「貴方も……大丈夫ですか?」

    戦闘後でも敬語を崩さず、相手の無事を気遣う。その声には、戦いの後の優しさが滲んでいた。

    ライはフードの奥で目を伏せ、答えることはない。ただ、動きの遅い体でその場に留まるしかなかった。
    少年の光は、ただ勝利を誇示するだけではない。力を持つ者の責任、そして戦いを経てなお変わらぬ礼儀を示していた。

    レーゲンは深く息を吐き、森の光を全て収束させる。

    「……僕は、これからも、全力で精進します」

    膝をついたまま、少年は自分の決意を心の中で確かめた。能力を制御する力、集中力、そして戦う心――全てが彼の成長の証となる。

    森の中、風が吹き抜け、散った葉や枝を揺らす。
    少年の七色の髪が光に反射し、淡い輝きを放った。戦いの痕跡は残るが、そこにあるのは決して破壊だけではない、希望の光だった。

  • 3461◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 22:04:29

    ――果て無き色彩を操る少年の戦いは、まだ始まったばかりだ。

    森を後にし、光と影の余韻を胸に、レーゲンは静かに歩き出す。
    その背中には、戦いを通じて培った自信と、これからも守るべきものへの覚悟が滲んでいた。

  • 3471◆ZEeB1LlpgE25/09/20(土) 22:04:47

    以上

  • 348二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 22:18:34

    レーゲンにとっては善意なんだろうけど、負けた異能者の相手に気遣われるとか、ライにとってはとんでもない侮辱行為になってそうなの好き

  • 349二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 22:24:09

    ライは多分これに善意とか感じずただただ殺すって思ってそう

  • 350二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 07:00:34

    保守

  • 351二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 15:29:35

    こうしてまた一つ因縁が…

  • 352二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 20:18:25

    保守

  • 353二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 21:55:28

    ほしゅしゅ

  • 354二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 23:12:53

    このレスは削除されています

  • 355二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 23:31:10

    このレスは削除されています

  • 356二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 23:41:29

    >>355

    何故ディスコードのリンクを貼っているのでしょうか?伝えたいことがあるなら文字で伝えて下さると助かります。新規の方が増えてくれるのはありがたいのでわからないことがあったらぜひ気軽に話してみて下さいね

  • 357二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 07:06:34

    ほしゅ

  • 3581◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 11:49:30

    題名『青白き眼窩の決意』

  • 3591◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 11:59:29

    北国の街「アイスソウル」。
    街の中心から少し外れた場所に広がる共同墓地は、常に霧と冷気に覆われていた。冬の寒さは極限で、足元の凍土は踏むたびに軋み、遠くの墓標からも白い吐息のように霜が立ち上る。

    その中で、ひときわ異様な存在が立っていた。
    青白い眼窩を光らせた骸骨――サンズリバー・レイ。
    手には、墓掘り用のスコップ「カロン」。しかしそれは単なる道具ではなく、触れたものを物質レベルで氷に変える能力の起点であり、死者の眠りを護る武器でもあった。

    「……誰だ、ここは死者の眠る場所だ」

    低く響く声は冷気と共鳴し、墓地全体に不気味な静寂をもたらす。

    その時、霧の中に小さな影が現れる。
    七色の髪をした少女――アルジズ。
    バイオパンク社のエージェントで、護衛のバイオスライムと共に、彼女は休暇中に墓地へ足を踏み入れたのだ。

    「……えっと、休暇中ですが、侵入者扱いですか?」

    アルジズは小さな体で言葉を紡ぐ。
    その声は震え、冷たい空気に掠れるが、退く気配はない。

    レイはスコップを一歩前に突き出す。

    「侵入者よ……吾は墓守。死者の眠りを荒らす者を許さん」

    アルジズの背後で、護衛スライムが蠢く。
    全身を流体のように波打たせ、拳の形を作る。

  • 3601◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:14:29

    「……私を護ってください」

    その小さな声に応え、スライムはアルジズを覆い尽くすように動いた。

    墓守と侵入者――
    氷に覆われた墓地での邂逅は、戦いの幕開けを告げていた。

  • 3611◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:16:28

    墓地の冷気がさらに凍りついた。
    サンズリバー・レイがスコップ「カロン」を握り直すと、氷のような微かな光が刃に宿った。

    「……退くがよい、侵入者よ」

    しかしアルジズは一歩も退かない。
    背後の護衛スライムが全身を波打たせ、柔らかな流体の体が光を帯び始める。

    「退きません……私が護られるだけでなく、守るために戦います!」

    レイの動作は静かだが、一振りで墓地の空気を変える力を持つ。
    スコップが振られると、地面の凍土が割れ、周囲の墓標が瞬く間に氷の尖塔へと変貌した。
    まるで墓地全体がレイの手のひらの上にあるかのようだった。

    「――『凍てつく柩桶(フロスト・グレイヴ)』」

    カロンが地面を突くと、目に見えない波動が広がり、空気ごと凍結する。
    護衛スライムの外殻が白く結晶化し、柔らかい腕が軋む。

    「スライムが……凍ってしまう!?」

    アルジズは息を呑む。

    だが、スライムは諦めない。
    内部から微細な振動を発生させ、氷の結晶を砕き、流動性を取り戻す。

    「スライム空手――解式《解凍波》!」

    柔と剛、流体と物質、戦術と本能がぶつかり合う。

  • 3621◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:17:21

    アルジズの声とスライムの動きが重なり、砕けた氷が舞い散る中、レイは冷静に一歩下がる。

    「無駄だ……逃れる者などいない」

    次の瞬間、スライムの右腕が再び氷化の攻撃を受ける。
    氷は物質そのものに変換され、流動性を失い、地面に崩れ落ちる。
    アルジズの瞳が焦りに揺れる。

    「……勝てないの……?」

    だがスライムは崩れた腕を再生するように立ち上がり、アルジズを覆い、戦闘態勢を維持する。

    「退かない限り、戦いは終わらない……!」

    墓地の冷気はますます強まり、氷と流体の応酬が戦場を覆う。
    死者の墓守と幼きハッカーの護衛――その戦いは、まだ始まったばかりだった。

  • 3631◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:19:37

    墓地の氷柱が砕け散る中、アルジズは護衛スライムの背にしがみつき、震える声で問いかけた。

    「……なぜ、そこまで墓地を守るんですか?」

    サンズリバー・レイの青白い眼窩が、一瞬だけ揺らぐ。

    「吾は……六十年前、この街で死んだ。寒さで家族も友も、命を落とした。
     しかし、墓さえ荒らされ、眠ることすら許されなかった……」

    氷の墓地に、重い沈黙が落ちる。
    アルジズは息を呑んだ。
    死んでなお、死者の尊厳を守るために生者を凍らせる――それがこの骸骨の存在理由だった。

    しかし、スライムは止まらない。
    アルジズの命を守るため、流体の拳が再び振るわれる。

    「スライム空手――奥義・山崩拳!」

    地面を砕く衝撃がレイを吹き飛ばし、骨が粉々に砕け散る。
    だが、砕けた骨は氷と共鳴し、瞬時に再生する。

    「……無駄だ。吾は番人。砕けても、死者を護る限り、立ち上がる」

    アルジズは小さな拳を握りしめる。

    「……でも、僕は退きません!」

    涙を滲ませながらも、命を護る決意がその目に宿る。

  • 3641◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:24:26

    レイは氷の刃を握り直し、墓地全体の凍結を強める。
    氷の柱が天を突き、風が凍りつく音が響き渡る。

    「吾は……生者を導くために立つ。だが、命を粗末にする者には……容赦はせぬ」

    アルジズは息を整え、護衛スライムを自分の前に展開する。

    「……戦うしかないんですね」

    流動する粘体の拳が、冷たい空気を切り裂く。

    死者の矜持と、生者の守る意志。
    二つの正義が、墓地の氷上で激しくぶつかり合う。

  • 3651◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:42:19

    墓地の中心で、サンズリバー・レイの骨は砕け散った。
    しかし、砕けた骨片は氷と共鳴し、瞬く間に巨大な形を成していく。

    その姿は、十メートルを超える氷の巨人――レイの骸骨の姿を模した、圧倒的な存在感を放つ怪物だった。
    青白い眼窩の光は冷たく、墓地全体に死の気配を漂わせる。

    「侵入者よ……ここが汝らの終着だ」

    アルジズは震える体を押さえながらも、護衛スライムを前に立たせる。
    小さな拳を握りしめ、声を震わせて叫ぶ。

    「……僕は退きません! 護るために立ちます!」

    護衛スライムは全身を膨張させ、拳に質量を集中する。

    「スライム空手――山河崩拳・改!」

    柔らかく流れる粘体の拳が、巨大な氷像に叩き込まれる。
    胸部にひび割れが入り、青白い光が漏れ出す。
    だが、巨人は再生し、再び巨大なスコップを振り下ろす。

    ゴオォォォォン!
    衝撃で墓地の凍土が跳ね上がり、氷柱が砕け散る。
    護衛スライムは体を波打たせて衝撃を吸収し、アルジズを守り続ける。

    「……これが墓守の本気……」

    アルジズは小さく呟く。
    幼い体に似合わぬ覚悟を、その瞳に宿す。

  • 3661◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:42:35

    氷の巨人と粘体の護衛――
    死者と生者、硬と柔、墓守と侵入者の力がぶつかり合う。
    墓地の空は吹雪となり、戦場の冷気と光が交錯する。

    「……吾は守る……死者の眠りも、生者の命も」

    レイの声が轟き、氷の巨人は更なる攻撃態勢に入る。

    アルジズは小さな体で前に出る。

    「……護るためなら、どんな力でも受け止めます!」

    氷と粘体――互いの正義が衝突し、戦いは激化するばかりだった。

  • 3671◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:45:35

    墓地全体が吹雪に包まれる中、氷の巨人はその威圧感でアルジズたちを押し込めた。
    青白い光を宿した巨人の眼窩は、まるで死そのものを映す鏡のようだった。

    「退け。命を粗末にするな……それが吾の願いだ」

    だがアルジズは小さな体を震わせながらも一歩も退かない。

    「……負けません! 守るために立つんです!」

    護衛スライムの体が光を帯び、全身が膨張する。

    「スライム空手――水月連衝拳!」

    無数の拳が放たれ、氷の巨人に連続で叩き込まれる。
    砕け散る氷片と骨片が舞う中、巨人の体はひび割れを広げる。
    だがレイの声は冷静そのもので、揺らぐことはない。

    「氷は……砕けても再び形を成す」

    アルジズの胸に、恐怖と決意が交錯する。
    幼い少女が命をかけて挑む姿に、スライムも応えるように拳を叩き込む。

    巨人の両腕が振り下ろされ、スコップの一撃が地面を薙ぎ払う。
    墓石が次々に砕け、周囲の氷柱が吹き飛ぶ。
    しかし護衛スライムは体を波打たせ、衝撃を分散させてアルジズを守る。

    「……どうして、こんなにも……」

    アルジズの声は震えていた。
    だが、瞳の奥には確かな覚悟が宿る。

  • 3681◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:45:45

    「死者を守りたいのなら、僕を敵じゃなく仲間として見てください!」

    氷巨人はその言葉に反応したかのように、一瞬動きを止める。
    胸の亀裂から青白い光が溢れ、全身が微かに震えた。

    「……吾が……仲間を……?」

    レイの眼窩に揺らぎが生まれる。
    六十年もの間、死者の眠りを護るために生者を凍らせ続けた骸骨に、初めて「迷い」が生じた瞬間だった。

    氷の巨人と護衛スライム、死者と生者――
    その衝突は、墓地全体を震わせ、戦場に静かな緊張を生む。
    決着の瞬間が、確かに近づいていた。

  • 3691◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:49:15

    墓地全体が凍りつき、氷の巨人の胸部の亀裂は次第に広がっていった。
    ミシ……ミシシ……ッ!
    音を立てて青白い光が溢れ、氷像全体が軋む。

    「……吾の……柩……」

    レイの声は震え、冷たい灯火の中にわずかな迷いが垣間見える。
    六十年間、死者を護るために己を犠牲にしてきた骸骨が、初めて生者と向き合う瞬間だった。

    アルジズは小さな拳を強く握り、涙を滲ませながら叫ぶ。
    「どうか……眠るんじゃなく、生きてください!」
    護衛スライムも全身を光らせ、アルジズを守るように立ちはだかる。

    氷巨人の動きが止まる。
    胸の亀裂から漏れ出す光は、やがて周囲の氷と共鳴し、巨人を徐々に崩壊させた。
    砕けた氷片が舞い散る中、レイの骨格が露わになる。

    「……吾が……仲間……?」

    その一言には、長年守り続けてきた墓守としての矜持と、初めて芽生えた生者への共感が混じっていた。

    アルジズはそっと一歩前に出る。

    「もう、戦わなくても大丈夫です……。貴方を敵としてではなく、仲間として迎えます」

    墓地は静寂を取り戻す。
    吹雪は止み、冷気が和らぎ、氷の巨人だったものはもはやただの崩れた氷塊となった。

    レイはまだ答えを口にしていない。
    だが、凍てつく柩を越えて、生者と向き合う――その選択肢は、確かに彼の前に差し出されていた。

  • 3701◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:49:47

    小さな手を差し伸べるアルジズに、骸骨の指先がゆっくりと触れる。
    それは、死者と生者が初めて交わす、静かな和解の始まりだった。

    「……ご対戦、ありがとうございました」

    アルジズの声が冷たい空気に溶け、戦いの終わりを告げる。

    氷墓守と幼きハッカー――
    二つの命が交錯した、この冬の墓地に、かすかな温もりが残ったのだった。

  • 3711◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 18:50:11

    以上

  • 372二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 18:52:00

    バイオパンク社に墓守が加わった

  • 373二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 19:37:18

    投下乙です!

  • 374二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 19:53:40

    とりあえず腱をバイオ化してやるか この世界は極低音下でも生きてける生物とかいそうだしいけるいける

  • 3751◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 20:10:48

    長いんでこっちで

    7000文字くらい

    https://writening.net/page?eZFXrt

  • 3761◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 20:14:24

    22:00から10個募集

  • 377二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 20:39:54

    うーん…藤死んだかぁ?

  • 378二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 21:17:57

    投下乙です
    華藤の方、対戦ありがとうございました。
    目を離した隙にすごい大作出来ててびっくりでした

  • 379二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 21:20:06

    >>378

    こちらも対戦ありがとうございます

    ですねぇ7000千文字って凄いですよね

  • 380二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 21:50:17

    ヴェンめちゃくちゃいいキャラしてた
    しかも大長編だから読み応えすごい

  • 381二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:00

    名前:『剣聖』エース・R・リドル
    年齢:24
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:深紅の髪に黄金色の目を持ったスレイ家の分家であるリドル家の人間。正義感がとても強く、強きを挫き弱きを救うという確固たる信念を持っている。また、相手が生きることで苦しんでいるなら安らかな眠りを与える。
    意外に頑固で厳しい性格でもあり、エースの正義が揺らぐことは絶対にない。
    総合戦闘力が非常に高く、あらゆる分野において最も秀でている。
    また、勘も鋭く、その鋭さは四方八方からの攻撃や敵からの殺意に迅速に対応出来るほど。精神攻撃にもめちゃくちゃ強い。
    子供や老人にはめちゃくちゃ優しい。それはそれとして悪いことをしてたら断罪する。立場とか関係ない。
    能力:【トランプofエース】
    能力概要:相手を確実に消し去る切り札を発動させる能力。発動した瞬間から世界がエースの勝利として動き始める。相手にとって最も強大で脅威となる力を溜め込むことで放つ際の威力を底上げすることも可能。
    切り札の種類は相手によって変動するが、相手を消し去る効果や切り札であることは変わりない。
    また、切り札同士を掛け合わせることで不敵の一撃を放つことも可能。
    切り札は相手の能力を無効化する効果もある。
    弱点:切り札なので、いきなり最初からは不可能。
    能力発動は必ず剣を媒介にしなくてはいけない。
    発動には最低5分はかかる。避けようと思えば普通に避けられる。
    切り札発動中は動けず、隙が生まれる。
    要望(任意):一人称は「俺」でお願いします。

  • 382二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:00

    名前:鳩時刑
    年齢:不明
    性別:なし
    種族:怪異
    本人概要:
    「狂ッポー♪狂ッポー♪」と鳴く鳩時計。「墓(ボ)ーン♪墓(ボ)ーン♪」という特徴的な鐘の音ともに出現する。
    鳩の部分は1分に1回という普通の時計では考えられないほど速いスパンで扉から出てくる。
    能力:時刻(トキザミ)
    能力概要:
    秒針が1つ進むごとに不可視の斬撃を放って相手を斬り刻む。
    たとえ破壊されても鳩の部分が無事であるかぎり近くにある他の時計に乗り移って復活する。復活した時にも律義に「墓(ボ)ーン♪墓(ボ)ーン♪」って鳴る。
    弱点:
    ・鳩部分が破壊されると乗り移っての復活ができなくなり敗北する。
    ・木製なので比較的脆い。
    要望:
    勝っても負けても「ケッ!もう終わりかよクソガキめ!ま、いーや。次のやつで遊ぶとするか!ギャッハハハハ!!!」って鳩部分に言わせてください。

  • 383二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:00

    名前:千毘糾 (せんびきゅう)
    年齢:1,000年
    性別:雌
    種族:大妖怪
    本人概要:
    「あぁ気に入らぬ気に入らぬ!世界の全てを我は憎悪する!」
    戦争に敗れた貧困国家の寂れた社に設置されていたキツネ型石像が生命を得た大妖怪。
    貧困に喘ぐ国民たちの千を優に超える恨み言や嘆きを聞き続けたことで性格は捻じ曲がり、強力無比な怨嗟の力をその身に宿して、石の身体を怨嗟の力で大妖怪へと昇華させた。
    その捻じ曲がった精神から来る恨み言はいつ何時たりとも途絶えることが無いほどだ。
    【気に入らないものは全て打ち滅ぼす】ことを信念としており、怨嗟による力で殺生や破壊を繰返すことで新たな怨嗟を生み出し、自身の力を更に強め続けた。
    能力:≪怨呼≫/≪怨弾≫/≪怨刀≫
    能力概要:
    ≪怨呼≫:痛みや怒りや憎しみなどの「気に入らない」と思った恨み言を言葉にすることで自身の怨嗟の力を強化する言霊術。
    ≪怨弾≫:怨嗟の力を球状にして撃ち出す。
    ≪怨刀≫:怨嗟の力を尾に込めて刀の如く硬く鋭き武器とする。

    まず≪怨呼≫で怨嗟の力を増強したうえで、遠距離では≪怨弾≫、近距離では≪怨刀≫を用いて相手を圧倒する戦法をとる。
    自身の力を偉大だと宣って憚らない尊大な性格から相手を侮ったり油断するのが弱点だが、受けた屈辱は決して忘れぬ執念深さも持つ。
    弱点:
    尊大な性格であり油断が多い。≪怨弾≫と≪怨刀≫は同時使用が出来ない。
    石の身体は炎などの属性攻撃には強いが物理攻撃に弱い。

  • 384二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:00

    名前:対応者(本名:宮部 翔)
    年齢:36歳
    性別:男
    種族:サイボーグ
    本人概要:元防衛隊のクレーム対応班のエースで現在佐藤家の諸々の管理をしてくれてる人
    常に来るクレームに対応する内に能力が覚醒し肉体改造をしてサイボーグになったが激務、薄給、環境最悪の職場に発狂して退職
    勢いのままに退職したので暫くは無職だったが前々から交流のあった防衛隊幹部の伝手で仕事を紹介して貰い色々あって佐藤家へ
    結果として給料と環境は良くなった代わりに癖の強い家族の管理(賠償とか建物の修繕とかお金周りとか)をさせられてまた発狂している
    元来はぶっきらぼうだが真面目な人なのだが物凄い苦労人であり癖の強い家族と大量の業務に振り回され常に深夜テンションで発狂状態
    能力:【対応】+【万能兵装】
    能力概要:森羅万象のありとあらゆるものに対応できる能力に万能兵装と呼ばれる色々と何でも出来る兵装を組み合わせている
    二つを組み合わせる事で対応力は無限となり全ての相手、状況、環境、異能、技術、権能などなどあらゆる総てに対応可能
    世界が終わる何かが来ようが自分より何兆倍も格上の相手が来ようが精神を操られようが何をされようが問題無く完璧に対応
    どんな理不尽、終末、絶対すらも兵装と異能を駆使して最善の対応をし自分より強かろうが厄介だろうが意味不明だろうが対応できる
    万能かつ的確、あらゆる全てに対応可能、対応出来ぬものが無い対応力の皇帝
    弱点:徹夜しまくりで眠い+過剰な業務で常時発狂状態であり動きが雑で隙がとても多くさっさと終わらせて寝る為に消耗を考えない
    加えて家の様子を同時並行で見ており家族がなんかやらかして立ち止まって色々と言う時がある、この時は完全な隙である
    更にストレス緩和の為に片手にビール缶を持っているので片手は常にふさがっていて酔っぱらっているので隙がより生まれやすい
    酒、睡眠不足、過労、ストレスの四コンボで隙だらけだし色々と雑だし判断力もあってないようなものでまともな思考も出来ていない
    サイボーグとは言え兵装に全振りなので機械部分の耐久力は普通より少し硬い程度、人間部分の耐久力は普通に一般人程度
    要望:口調はめっちゃキレ気味で発狂状態で深夜テンションな感じで、勝ったらその場で爆睡させてください

  • 385二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:00

    名前:解析者(山桐 新)
    年齢:65(現肉体年齢10)
    性別:現在の肉体は女
    種族:人間?
    本人概要:【適応者】の父親で提唱者などの祖父に当たる存在
    元は久那土異能研究庁に所属していたが現在は追放され
    現在は倫理観がぶっ飛び禁忌とか普通に手を出す研究組織に所属している倫理観の無いマッドサイエンティスト
    その為なんでも肯定する【肯定者】や低年齢組以外からは嫌われている
    特に適応者に死ぬほど嫌われており解析者を見るだけでダウナーさが吹っ飛び殺意全マシになる
    最近は【提唱者】のクローン(ラキア)を勝手に作って適応者に殺された
    また自分のスペアを各地に用意しており 
    スペアは解析者が死亡した際に解析者の記憶を引き継ぎ、解析者として活動する為
    殺しても殺しても出てくるゴキブリみたいな奴と思われているし 解析者自身も生死に頓着が無い
    現在のスペアの見た目は10代ぐらいの少女
    スペアは厳密に言えば別個体の為解析者本人はとっくに死んでいるが本人は気にしていない
    能力:解析
    能力概要:あらゆるものを解析する異能
    相手を解析し 弱点や行動パターンを分析したり 技術や魔術なら真似して使うことも可能
    異能なども原理を解析完了すると模倣或いは発展進化させられる
    普段は解析し原理を把握した後研究でそれを再現発展させたりする形で使っている
    また提唱者の能力を一度限り使える 異能TYPE提唱内臓型拡声器を持ち それを使用してくる
    弱点:相手の情報量が多かったり 能力規模や戦力が大きい場合は解析に時間が掛かり隙を見せてしまう
    相手のことを興味深く思うと戦闘そっちのけで解析に集中する悪癖がある
    異能TYPE提唱内臓型拡声器は使用する際に得意気に長々と説明する為奪われて逆に使われる可能性もある
    解析者が死んだ時点で戦闘終了 スペアの使用は戦闘中は行わない
    要望(任意):異能TYPE提唱内臓型拡声器は使った後はボロボロに崩れるみたいな感じの描写お願いします

  • 386二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:00

    名前:日没の怪
    年齢:謎
    性別:謎
    種族:謎
    本人概要:『それを一言で表すなら“謎”だ。目的は不明、起源も不明、姿すら分からないときた。何せそれを探った者は皆死んでしまったからな。
    だが分かっていることもある。まず1つ、それは噂が好きだ。それの噂をすれば何処からとも無くやってくる。一度来てしまったら、それはずっと傍にいる。それともう1つ、それは光が嫌いだ。明るい内は姿も実体も無いからな、だから何も出来ない。ただずっと待っているだけだ、日が暮れるのを。それで時が来たら動き出す。狙いを付けた獲物を襲うのさ。
    何?それならこれを書いてる俺も、読んでるアンタもヤバいんじゃないかって?あぁ、安心しろ。───もう手遅れだから』
    〜故クリス・グリロ・ホーン著「世界禁忌説話集・日没の章」(永暦4581年に特級禁書指定済み)より抜粋〜

    能力:日没、⬛︎⬛︎⬛︎
    能力概要:日没 日没の怪の周辺を照らす光源全てがあらゆる効力を失い、一帯を完全な暗闇にする。また光源となる存在が有していたその他能力も光と同様に消失する。

    ⬛︎⬛︎⬛︎ その姿を見た者は、命を落とす。
    過程も理屈も死因も不明。ただ死という事実が其処にある。
    基本的に暗闇の中では発動しないが、何らかの手段で姿形を見てしまった場合、発動。

    弱点:日没の怪は目が見えないので、音や気配、魔力を辿り獲物を捉える。そのため隠密に特化されると相手を見つけられない。
    ・“日没”は強い力を持った光であれば、一時的に無効化が出来る。
    ・強い光で大ダメージを受ける。一瞬遅れて姿と実体が消失、暗闇に戻ると再び出現する。
    ・時間帯が夜明けに近付く程、その力が弱まっていく。逆に真夜中に近付く程、力が強まる。
    ・⬛︎⬛︎⬛︎を除くほぼ全ての攻撃は物理的に防御可能。

    要望(任意):人語を使わない。
    戦闘開始の時間帯は夕方でお願いします。

  • 387二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:00

    名前:李 影刀
    年齢:27
    性別:男
    種族:人間(バイオ生物)
    本人概要:かつてバイオパンク社が長安帝国と協力し18歳の頃の一刀斎の遺伝子データから作成したクローン 長安の剣術部隊に配属されていたがかつて潜入任務で恋人を切り殺してからしばらく後に偶然にも自我が芽生え脱走した(なおその任務において恋人は彼に好意が芽生えており逃しても大丈夫だっただろうが彼が万が一を考えて始末したとする) 現在は探偵を営んでいるが経営状況はあまりよろしくないらしい バイオパンク社がどこで一刀斎のDNAなんて入手したのか気になる方は本スレの第17試合を見よう
    能力:バイオ改造 バイオコートとバイオ刀
    能力概要:
    バイオ改造:
    彼の肉体は胎児の時からバイオ技術により改造されており高速思考やバイオ筋肉による柔軟かつ高度な身体能力、体内のバイオナノマシン由来の回復力を持つ
    さらに特殊剣術部隊の隊員とするべく中国剣術のあらゆる技を徹底的に叩き込まれていたため剣術も相当のもの
    バイオロングコート:
    バイオパンク社の販売しているバイオ衣服の一種 エンチャントが施されており魔術や呪いの類に対する抵抗力を持つしバイオ柔軟繊維により身体能力へのバフがかかる 名前にバイオとあるが繊維がバイオスパイダーにより生産されているだけで生きている訳ではない
    バイオ刀:
    バイオパンク社により作られた生体セラミック製のヒート刀 鞘のヒート刀の熱を利用し高圧蒸気を発生させる仕込みと前述の身体能力バフにより神速の居合の再現を可能とする こっちは生物
    弱点:バイオ刀は老化により弱体化しておりそのため蒸気居合のチャージには10~15秒ほど納刀し続ける必要がある バイオナノマシンによる回復力は毒や感染症などのデバフ解除に振られており直接な治癒力は大してない

  • 388二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:00

    名前:清空寺ロッカ
    年齢:14
    性別:女の子
    種族:人間
    本人概要:
    ベレー帽とウェーブのかかった髪が特徴的な魔法使いの女の子。学校ではクラス委員も務めている。
    綺麗なものや清潔な空気が大好きで、逆に無駄なものやゴミゴミとした空気は大嫌い。
    魔法使いとして大成した暁には、今の人間社会にK=汚い、K=空気、M=マジ、G=ギルティ、略してKKMGの理念を徹底し、清潔な空気の維持を義務化(プラス有罪化)したいと常々思っている。
    能力:魔法(水と風に関する魔法が得意)、固有魔法【マジカルフィルター】
    能力概要:【マジカルフィルター】
    ロッカのオリジナル魔法。彼女の周りに浮いている魔力で作ったフィルター。このフィルターを通過したものからなんでも好きな要素をひとつだけ取り除く事が出来る。
    相手のパンチから勢いを取り除けば、へなへなにして無力化できるし、自身の身体を通す事で毒や異物、呪いなどのデバフも解除させられる。さらには自身の動きの無駄、不要な性質、相手の戦意に至るまで、なんでも取り除く事が出来る。
    フィルターは繰り返し使用することが出き、大きさはある程度調節が効く、現在2枚まで展開できる。
    弱点:
    ・フィルター自体は通常攻撃で破壊可能(破壊されれば魔力をめちゃくちゃ消耗して通常魔法の行使に支障が出る)
    ・一回のフィルタリングで取り除けるものは一度に付き一個だけ。
    ・何度も繰り返し使用すれば、フィルターが黒く変色し、汚れが溜まっていく。
    その場合ちゃんと水か風の魔法で綺麗にしないとだんだん効果は弱まるし操作速度もガタ落ちする。
    ・彼女の綺麗好きな性格ゆえに、塵や砂埃など、汚いものに関しては反射的に取り除いてしまう性質がある。(昔、料理から余分な油分を取り除こうとして地獄を見たことがある)それらを取り除かせれば当然爆速でフィルターの汚れが溜まる。
    要望(任意):一人称は「私」でお願いします。

  • 389二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:00

    名前:レヴィアタン
    年齢:5000歳
    性別:無し
    種族:ガーディアン・ゴーレム
    本人概要:人類が成長する為に作られたゴーレム達の1体。リヴァイアサンを元に作られている為、ワニの姿をしている。レヴィアタンの背中には、盾の列のような鱗が密に並び、二重になっている。そして、腹には陶器の破片を並べたような意匠がある。レヴィアタンは海を守護する目的としても作られている。その為、海と共生している者には己の肉切り落として上げており、海を汚す者には精神が砕け散る位の恐怖を与える事をしている。
    能力:《Ozean》
    能力概要:リヴァイアサンが悪魔として見られた時に、保持していると言われた力を元にした能力。海を司る力であり、海の水を取り出して武器状にして放つ事や、盾状にして防御する事も可能である。
    弱点:《Ozean》で海の水を呼び出す時間は、近場にあれば2秒、遠方にあれば5秒かかる。
    《Ozean》海の水の形を変えるには1秒掛かる。
    鱗の一番下に、1m位のヒビが入った石のような固さを持つ心臓があり、それを壊されると死亡する。

  • 390二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:00

    名前:ファーヒル・C・ロック
    年齢:不明
    性別:女性
    種族:悪魔
    本人概要:美をこよなく愛する悪魔。
    歌、踊り、演劇、絵画、アクセサリー、化粧品などなど…美につながるあらゆるものを好み、それを収集する悪魔。
    芸術に秀でた少年少女の前に現れ「あなたの最高傑作を作る手伝いをしてあげる」と言い、契約を迫る。
    契約を結べば人生において最大にして最高の一作を完成することができる。
    が、それは悪魔の契約。作品が完成した瞬間、その作品ごと契約者の才能を根こそぎ奪い腸に収めてしまう。
    その契約は”才能”を”素材”にする禁断の芸術を作らせるもの。あなたの才能は歌詞に、リズムに、セリフに、絵の具に、宝石になって浪費され、消費され、消滅してしまう。
    契約のあとに遺るのは抜け殻となった死せる芸術家たちだけ。悪魔…ファーヒルは芸術家たちの才能を自らの美(ちから)に変え、そして再び才能の原石を探し浮世を彷徨う。
    能力:風化窃月(クロック・ロック)、星月夜”Lost the Starlight”
    能力概要:風化窃月は芸術家たちの才能を自らの美(ちから)に変える異能。彼女が収集した美術は全て魔道具となり、彼女の力に変わる。ただし、基本的に芸術魔道具は使い捨て。
    歌は呪文に、踊りは武芸に、演劇は剣に、絵画は盾に、アクセサリーは精神力に、化粧品は肉体に変わる。
    星月夜”Lost the Starlight”はその中で最も秀でた芸術であり、世界そのものを芸術に置き換える星の海の油絵。
    数世紀に一度の天才の渾身の絵画は幾度消費されてもなお圧倒的な感動を世界に示す。そのためこの絵画のみ使い捨てではない。
    煌めく星は堕ちて燃え尽き、輝く月は無貌に暮れ果て、渦巻く夜は世界を夢幻に眠らせる。
    これ以外にも無数の芸術魔道具を所有している。
    弱点:自分の美しさが崩れると弱る。そのためネイルを割る、きれいな髪の毛を切る、滑らかな皮膚を傷つけると自然と弱体化していく。
    他に使用した芸術品のマジックアイテムは基本的には使い捨て、魔道具を使う、ないし破壊することでもファーヒルを弱体化させることができる。
    また、芸術は歌なら聞かない、演劇や踊りや絵画は見ない、アクセサリーや化粧品は身に着けさせないことで対策できる。

  • 391二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:01

    名前:堕落の尖兵
    年齢:26
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:ある街のストリートチルドレン。幼少期に親を失い、そこからはとにかく必死に生きることだけを考え、近くの巨大な塔から災厄が振りまかれる地獄のような街で略奪を繰り返し、日々を過ごしていた。しかしそれも25歳のときに窃盗を見つかったことで唐突な終わりを迎え、今にも死に絶えるであろうボロボロの体で出会った商人に『心臓と、その魂と引き換え』として、能力を得た。普段は自らの状況のどうしようもなさを埋めるかのように自由人かつ向こう見ず、喧嘩っ早く激情的な性格だったが、現在その面影は無く、あらゆる記憶を失って全く無感情に殺戮を繰り返すようになった。
    能力:犠牲者『マーシュア・クラッド』
    能力概要:彼女の心臓から生まれた、刀身が黒い尖塔のような形をした鈍器、あるいは槍。能力は単純で、どんな状況でも彼女の手からは離れることはなく、彼女の肉体に高い身体能力と不死にも近い再生能力を与える。武器は鋼のように固く、聞くと飢餓状態に陥るうめき声のような物を発している。
    弱点:
    ・武器が彼女の本体のようなものであり、武器を破壊されたり、無理矢理に武器から引き剥がされると死ぬ。
    ・相手がなんらかの行動をしない限り、こちらからは攻撃しない。
    要望(任意):本体には何も喋らせないでください。

  • 392二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:10

    このレスは削除されています

  • 393二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:13

    このレスは削除されています

  • 394二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:00:17

    このレスは削除されています

  • 395二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:06:22

    >>381エースの設定これに直させてください!


    名前:『剣聖』エース・R・リドル

    年齢:24

    性別:男

    種族:人間

    本人概要:深紅の髪に黄金色の目を持ったスレイ家の分家であるリドル家の人間。正義感がとても強く、強きを挫き弱きを救うという確固たる信念を持っている。また、相手が生きることで苦しんでいるなら安らかな眠りを与える。

    意外に頑固で厳しい性格でもあり、エースの正義が揺らぐことは絶対にない。

    総合戦闘力が非常に高く、あらゆる分野において最も秀でている。

    また、勘も鋭く、その鋭さは四方八方からの攻撃や敵からの殺意に迅速に対応出来るほど。精神攻撃にもめちゃくちゃ強い。

    子供や老人にはめちゃくちゃ優しい。それはそれとして悪いことをしてたら断罪する。立場とか関係ない。

    能力:【トランプofエース】

    能力概要:相手を確実に消し去る切り札を発動させる能力。相手にとって最も強大で脅威となる力を溜め込むことで放つ際の威力を底上げすることも可能。

    切り札の種類は相手によって変動するが、相手を消し去る効果や切り札であることは変わりない。

    また、切り札同士を掛け合わせることで不敵の一撃を放つことも可能。

    切り札は相手の能力を無効化する効果もある。

    弱点:切り札なので、いきなり最初からは不可能。

    能力発動は必ず剣を媒介にしなくてはいけない。

    発動には最低5分はかかる。避けようと思えば普通に避けられる。

    切り札発動中は動けず、隙が生まれる。

    要望(任意):一人称は「俺」でお願いします。

  • 3961◆ZEeB1LlpgE25/09/22(月) 22:55:58

    ぜんさいよう

  • 397二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 23:22:57

    ようし!

  • 398二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 07:11:03

    今回はどんな対戦になるかな

  • 3991◆ZEeB1LlpgE25/09/23(火) 10:27:59

    解析者vs対応者
    レヴィアタンvs鳩時刑
    千毘糾vs清空寺ロッカ
    ファーヒル・C・ロックvs李 影刀
    『剣聖』エース・R・リドルvs日没の怪

  • 400二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 17:34:10

    SS楽しみだねぇ

  • 401二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 22:19:10

    早めの保守

  • 402二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 00:48:30

    このレスは削除されています

  • 403二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 07:15:42

    保守

  • 404二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 12:48:53

    hosyu

  • 405二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 19:50:37

    ほしゅ☆

  • 4061◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 22:54:25

    題名『狂気と理性の境界』

  • 4071◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 22:55:26

    都市の外れ、雨に打たれ錆びついた廃工場。
    割れた窓から吹き込む風と、天井の穴から落ちる雨粒が、静かなリズムを刻んでいた。
    だが、その静けさは一人の男によって破られる。

    重い金属音を響かせて歩くその姿。
    義体で補強された躯体を軋ませながら、片手にはまだ開けたばかりのビール缶。
    彼の名は――【対応者】、宮部翔。

    「……ッッ……マジで俺の人生、休む暇がねぇな。」

    男はビールをひと口あおり、苦い息を吐いた。
    もはや眠気も苛立ちもごちゃ混ぜに膨れ上がり、言葉は自然と荒くなる。

    「日中はあの家族の後始末。夜は夜で“解析者”の相手だと?
    俺は無限残業要員じゃねぇぞ! 誰だよこのスケジュール組んだ奴はよォ!」

    声は鉄骨に反響し、薄暗い空間を震わせる。
    対応者の背に組み込まれた【万能兵装】が淡く光を帯び、空気そのものをざわめかせた。

    「今日は絶対寝る。
    だからさっさと片付ける。お前を処理してな……ッ!!」

    その言葉に応じるように、奥の闇で小さな拍手が響いた。

    ――パン、パン。

    「実に面白い。実に観察しがいがあるね。」

    軽やかで幼い声。だが、響きには冷たい知性と底知れぬ不気味さが混じっていた。

  • 4081◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 22:56:02

    暗闇から現れたのは、十歳ほどにしか見えない少女の姿。
    白衣を羽織り、赤い瞳を楽しげに輝かせている。

    「やあ、対応者くん。」

    にこやかに笑むその姿に、対応者は奥歯を噛み砕かんばかりに睨みつける。

    「……解析者、テメェか。」

    彼は知っていた。
    “少女の外見を持つ狂気の研究者”こそ、山桐 新――【解析者】。
    死を超えて幾度も現れる、しぶとい存在。

    「お前、また俺に対応させに来やがったな……ッ!」

    対応者の兵装が火花を散らし、雨の雫を弾き飛ばす。

    だが、解析者は一歩も退かず、むしろ楽しげにその姿を観察する。

    「君の状態は、興味深いよ。
    過労、睡眠不足、アルコール摂取、そして慢性的なストレス。
    それでも“万能対応”がどこまで機能するのか……とても良い研究材料だ。」

    「材料だァ? ふざけんなッ! 俺は実験体でも標本でもねぇッ!!」

    怒声と共に、兵装の輝きが強まる。

  • 4091◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 22:56:16

    対応者の瞳は血走り、睡魔と苛立ちと意地が入り交じっていた。

    「俺はお前を叩き伏せて……その後で寝るッ! それ以外に興味ねぇ!!!」

    「ふふ……その姿勢もまた解析対象になる。」

    赤い瞳が怪しく光る。
    笑みを浮かべる解析者と、苛立ちを剥き出しにする対応者。

    廃工場の静寂を打ち破り、二人の狂気めいた邂逅が幕を開けた。

  • 4101◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 22:58:45

    雨に濡れた工場跡地に、火花のような緊張が弾けた。

    対応者は片手にビール缶を握りしめ、もう片方の義腕をカチリと鳴らした。
    無数の兵装が展開し、空間そのものを埋め尽くす。

    「ッッだァアアア!! 
    夜中に呼び出されて、こんな狂人に“対応”させられる俺の気持ち考えろッ!
    寝かせろ! 今すぐにッ!」

    怒号と同時に、光線砲と装甲盾が同時に展開。
    弾丸の嵐を生む兵装は絶え間なく稼働し、彼の周囲には完全防御のドームが生まれた。

    だが――

    「ほぉ……反応速度、出力比率、全てが規格外。」

    幼い少女の姿をした【解析者】は、一歩も動かず目を細める。
    その瞳は獲物を捉える猛禽のように鋭く、全身からぞくりとする冷気を発していた。

    「君の“万能兵装”……あらゆる理不尽に対応する、か。
    ……ああ、解析のしがいがあるねぇ。」

    彼女の頭上に、無数の数式や図面の幻影が浮かび上がる。
    その一つ一つが、対応者の兵装を逐一分解し、弱点や特性を導き出していく。

    対応者は歯を食いしばり、苛立ちに満ちた笑みを浮かべた。

    「ハァッ!? 何をゴチャゴチャ解析してやがるッ!
    俺は森羅万象に“対応”できんだよ!
    お前がどれだけ理屈こねようが、俺が“対応”しちまえば全部無意味なんだよォッ!」

  • 4111◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 22:59:07

    ビール缶を豪快にあおり、空き缶を床に叩きつける。
    直後、超音速のミサイル群が工場を震わせながら解析者へと殺到した。

    爆風、炎、破片。
    常人なら跡形もなく吹き飛ぶ攻撃。

    しかし、爆煙の中から少女の声が響く。

    「記録完了……ふむ、やはり燃焼系兵装は出力効率が悪い。
    君、ストレスのはけ口に兵装を使っているだろう?」

    煙を割って現れた解析者は、無傷だった。
    その手に携えた奇妙な装置が赤く光り、ミサイルの挙動を“模倣”するように再現している。

    「ッッ……!」

    対応者の目が見開かれた。

    「お前……まさか、俺の兵装を解析して“コピー”しやがったのか……ッ!」

    解析者は笑みを深め、指を鳴らす。
    すると、周囲に“同じミサイル群”が次々と生まれ、逆に対応者へと迫っていく。

    「そう。“解析”とは理解だ。
    理解すれば、再現できる。
    そして発展させることすら可能だ。」

  • 4121◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 22:59:59

    対応者は髪を振り乱し、血走った目で笑い返した。

    「ッッッはァアアア! 上等だよマッドサイエンティストォ!
    俺は世界のクレーム全部に対応してきた男だッ!
    お前ごときの模倣なんざ、即座に“対応”してやらぁッ!」

    再び工場が揺れる。
    無限対応と無限解析――
    二つの狂気が、ついに真正面からぶつかり合った。

  • 4131◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:08:47

    工場跡地に、兵装と幻影の数式が飛び交い、鉄骨の壁が砕け、天井からは火花が雨のように降り注いでいた。

    対応者は荒い呼吸をしながら、片手に持ったビール缶を乱暴にあおる。

    「くそッ……! 眠い……疲れた……でも止まれねェッ!
    仕事だろうが戦いだろうが、全部“対応”すんのが俺だァッ!」

    義腕がうなりを上げ、無数のレーザーが解析者を襲う。
    赤い光が奔流となって収束し、空間を削り取る。

    だが解析者は表情ひとつ変えない。

    「ふむ……熱量、出力、照射角度、全て解析済み。」

    彼女の周囲に、透き通るような幾何学模様の結界が展開された。
    レーザーはその表面で屈折し、逆方向へと弾かれる。

    「君の兵装……無限に対応できる、ね。
    だが、それを操作しているのは“君”自身だろう?」

    解析者はくすりと笑い、子供のような声で囁いた。

  • 4141◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:09:40

    「――徹夜続きで、脳はもう限界じゃないのかい?」

    対応者の眉がぴくりと動いた。
    だが怒鳴り返す。

    「ッッッせぇェんだよォ! 俺はいつも徹夜で仕事してんだよッ!
    今さら一日二日寝てねぇぐらいで動けなくなるかァッ!」

    叫びながら突進する。
    肩から展開した大型兵装がうなりを上げ、巨大な砲身が解析者を狙う。

    「対応の極致……見せてやるッ!」

    だが――砲撃の直前、対応者はふらついた。
    酔いと睡眠不足、さらに工場の騒音と兵装の稼働音が頭を揺さぶり、視界がかすむ。

    「チィ……! 目が回る……ッ!」

    解析者の瞳が細められる。
    まるで獲物を狩る瞬間を楽しむ猛禽のように。

    「やはり……ね。
    兵装は万能、だが使い手は凡人だ。
    ――これこそが、君の“隙”だよ。」

    解析者の指が動き、背後に浮かぶ数式が次々と書き換えられる。
    すると、対応者自身の兵装がガチガチと音を立て、急に挙動を乱し始めた。

  • 4151◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:10:26

    「ッ……な、に……俺の兵装がッ!?」

    「解析の結果、君の兵装制御には一定のリズムがある。
    疲労が溜まれば、そのリズムは乱れる。
    乱れを突けば――兵装そのものが暴走する。」

    解析者の笑みは冷たかった。

    対応者の目が血走り、唾を飛ばして叫ぶ。

    「フザけんなッッ!! 俺は――どんな理不尽にも“対応”してきたッ!
    解析だか何だか知らねぇが、俺が折れるわけねェんだよォッ!!」

    しかし、その声は焦りに震えていた。
    対応者の“隙”が、確かに開き始めていた。

  • 4161◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:16:38

    廃工場の空気は重く、鉄と雨の匂いが入り混じっていた。
    しかしその中で、解析者は静かに立っていた。

    「さて……そろそろ本気で観察させてもらおうか。」

    幼い姿の彼女は、背中の小型装置を操作する。
    赤い光が装置から漏れ、数秒の間に奇妙な振動が周囲に広がった。

    「これは……何だ?」

    対応者の目が細まる。
    兵装が警告音を発し、背後で小さく振動が走る。
    だが、対応者自身の疲労と過労は、その警告を全て無視させていた。

    「くそ……俺は眠くても、疲れてても、対応する! 
    何だって対応してやるッッッ!」

    だが、解析者はくすりと笑い、口を開いた。

    「君の適応力は優秀だ。だが、万能にも限界はある。
    ここで私の“異能TYPE提唱内蔵型拡声器”を使おう。」

    対応者の眉がピクリと動く。

  • 4171◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:16:54

    「拡声器だと……? 俺に一体何をさせるつもりだッ!」

    解析者が小さく装置を叩くと、内部の光が炸裂する。
    巨大なスピーカーのような形状に変形し、機械音と共に奇妙な声が響き渡った。

    「――解析開始、提唱能力発動!」

    空間に歪みが生じ、対応者の視界に膨大なデータが流れ込む。
    兵装の特性、構造、出力比率――全てが解析され、瞬時にパターン化される。

    「な……なにィ……この感覚……!」

    対応者は兵装を動かそうとするが、解析者が流し込むデータの洪水で指先が止まる。
    頭が混乱し、反応が鈍る。

    「これが……解析の力か……!」

    解析者は指先を操り、拡声器からさらに波動を放つ。
    兵装が自らの挙動を修正しようとするたびに、解析者はそれを再度解析し、反応を先読みして阻止する。

    「フフ……君の全てが手に取るように分かる。
    疲労も、過労も、アルコールも……隠し立ては効かない。」

    対応者は呻き声を上げ、必死に兵装を動かそうとする。
    だが、解析者の解析の網からは逃れられない。

    「これで……十分だ。」

    解析者が装置を軽く叩くと、拡声器は爆ぜるように崩れ、内部から光が消えていった。
    装置の破片が散り、床に落ちる。

  • 4181◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:17:34

    「……ッ、くそォ……!」

    対応者は膝をつき、ビール缶を握る手が震える。
    兵装はまだ動いているが、操作のタイミングが狂い、戦闘の主導権は完全に解析者に移っていた。

    「君の行動パターンも、兵装も、すべて解析済み。
    後は私のペースで、少しずつ制御するだけだ。」

    赤い瞳が冷たく光り、解析者は薄く笑う。
    夜の雨が、工場跡の瓦礫に跳ね返る――静かに、しかし確実に勝利の兆しが迫っていた。

  • 4191◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:25:56

    雨が工場跡地の瓦礫を濡らし、鉄骨が軋む音が響く中、対応者は膝をつき、荒い息を吐いていた。

    「く……くそ……こんな……こんなに解析されちまうなんて……!」

    兵装はまだ動いていたが、制御は狂い、彼自身の思うようにはならない。
    義腕を振るい、砲撃を試みるが、解析者の目は全てを捉えていた。

    「ふむ……射角、威力、反動……全て把握済み。」

    解析者は指を軽く動かすだけで、周囲の数式の光が兵装の動作を再解析し、動きを封じる。
    対応者はそれを振り切ろうと全力で動くが、体力と精神力の限界が近づいていた。

    「ッッ……俺は……俺は……対応する……!」

    汗と雨で濡れた髪が顔に張り付き、視界が揺れる。
    だが、解析者は表情一つ変えず、冷静に彼を観察する。

    「君の疲労度、脳の反応速度、筋肉の出力、すべての情報が私の掌中にある。」

    指先を軽く振るうだけで、対応者の兵装は逆に動き、混乱を増幅させる。
    無数のレーザー、ミサイル、機関砲――全てが自分の意志と逆に働き、彼を縛りつける。

    「な……ッッ……!」

    対応者の声は怒号にもがきにも似たものになり、ビール缶を握る手が震える。
    兵装を操作するたび、予測不能な動きが襲いかかる。
    解析者は冷静にその隙を観察し、データを解析し続ける。

  • 4201◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:27:51

    「面白い……ここまで完全に掌握できるとは。
    君の全てが、私の研究材料だ。」

    解析者の赤い瞳が光る。
    微笑むその姿は、狂気と冷徹の混ざった魅力を放つ。

    「さあ……これで最後にしよう。」

    解析者は装置を操作し、再び拡声器の残骸から微弱な波動を放つ。
    対応者はそれを受けて崩れ、兵装を維持できずに倒れ込む。
    疲労と過労、アルコールの影響で、戦う力は完全に奪われていた。

    「これが……俺の……全力……だったのか……」

    膝をつき、床に崩れ落ちる対応者。
    解析者は静かに近づき、倒れた彼を見下ろす。

    「……これで十分だ。君の能力も、体力も、全て解析し尽くした。」

    赤い瞳が冷たく光り、薄く微笑む。
    勝負の主導権は完全に解析者に移った――圧倒的な解析力で、敵の全てを掌握したのだ。

  • 4211◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:31:29

    廃工場に降り注ぐ雨が、瓦礫に跳ね返る音だけが響いていた。
    対応者は膝をつき、全身を震わせながら深い呼吸を繰り返す。
    兵装は既に制御を失い、床に無造作に散らばっていた。

    解析者は静かに近づき、倒れた彼を見下ろす。
    赤い瞳が冷たく光り、その表情には一切の苛立ちや怒りはなかった。
    ただ、観察者としての興味と、確かな勝利の余韻が漂っていた。

    「これで……全てが解析済み。
    君の行動パターン、兵装の仕様、精神の傾向……
    全て、私の掌中にある。」

    対応者は荒い息を吐き、かすれた声で答えた。

    「く……くそ……完全に……やられた……」

    解析者は指を一度軽く振ると、赤い光を伴って微細な装置の残骸が消え去った。
    無限解析の力で、戦場の残骸すら整理されたかのように静まり返る。

    「君の体も、兵装も、もう安全だ。
    だが……これで戦いは終わりだ。」

    解析者はそう告げ、倒れた対応者を静かに見下ろす。
    その目には、冷徹さの中にもどこか人間味を感じさせる柔らかさが混じっていた。

    「私は解析する者――そして、必要なら制御する者。
    君が再び立ち上がる前に、この状況は整理された。」

    対応者はしばらく動けず、ただ床に伏せていた。

  • 4221◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:33:46

    疲労、過労、睡眠不足、そして解析の圧倒的精度。
    全てが彼の力を奪い去った。

    「……ふ……はぁ……」

    解析者はゆっくりと歩み寄り、手を伸ばすことなく、勝利の確認をするだけだった。

    「これで戦いは終了――」

    赤い瞳が静かに輝き、解析者は呟いた。

    「……ご対戦ありがとうございました。」

    雨が工場跡を洗い流すように、戦いの痕跡も徐々に静まっていった。
    解析者の微笑は冷たくもあり、知性の深さを物語るものでもあった。
    勝利の余韻は、戦場の静寂の中でゆっくりと、しかし確実に広がっていったのだった。

  • 4231◆ZEeB1LlpgE25/09/24(水) 23:35:10

    以上

  • 424二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 23:35:44

    超良かった!

  • 425二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 23:36:17

    解析者みたいな奴好き! しかしこれで倫理観終わってるマッドサイエンティストなのか

  • 426二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 23:38:37

    対応者戦闘中にビール飲むの好き

  • 427二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 05:15:31

    解析者みたいなヤツ結構好き

  • 428二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 12:07:46

    保守

  • 429二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 12:30:56

    解析者がタ○オンの声で脳内再生される

  • 4301◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:34:58

    題名『海と時の終鳴』

  • 4311◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:36:40

     海は静かに眠っていた。
     月光が波を銀に染め、潮騒が遥かな子守歌を奏でる。そんな深海の奥底で、巨大な影が身じろぎした。

     ――レヴィアタン。
     人類がまだ幼かった頃、その成長を導くために造られた守護のゴーレム。その姿は古の伝説に謳われたリヴァイアサンそのものであり、鱗は盾の列のように背を覆い、陶器を砕いたような文様が腹を飾る。

     彼は己に問いかける。

     「海は、穢されてはおらぬか」

     それは言葉ではなく、ただ静かな振動として海に響いた。レヴィアタンは五千年の時を超えて、海と共にあり続ける存在だった。

     しかしその夜、異質な音が海辺に忍び寄った。

     ――狂ッポー♪ 狂ッポー♪
     ――墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪

     不気味な鐘の音が、波音に混じって鳴り響く。規則的でありながら常軌を逸したリズム。空気を裂くその響きに、魚たちは一斉に散り、海鳥すら声を失って飛び去った。

     砂浜の上に、それはあった。
     一見すればただの古びた鳩時計。しかし、その鳩は異様に頻繁に扉から飛び出し、ひび割れた声で狂気じみた歌を繰り返す。

     ――鳩時刑。

     人の畏れと死の気配が形を成した怪異。秒針が刻まれるごとに不可視の刃を放ち、存在するだけで世界を刻み裂く。

     レヴィアタンは海面から巨体をせり上げ、その赤黒い瞳を鳩時刑に向けた。
     ただそこにあるだけの異形。しかし、海を護る者にとって、その音は“穢れ”そのものだった。

  • 4321◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:37:05

     「……」

     言葉はない。ただ海面が大きく波打ち、潮が巻き上がる。それがレヴィアタンの意志の表れだった。

     鳩時刑は応えるように、鳩部分を勢いよく飛び出させた。

     「狂ッポー♪狂ッポー♪」

     秒針が進む音と同時に、砂浜の岩が見えない刃で細かく刻まれていく。

     大地を裂く音に、レヴィアタンの背の盾鱗がぎらりと光を返す。

     海と時間。
     守護と狂気。

     相反する二つの存在が、月夜の海辺で相対した。
     世界の均衡を揺るがす戦いが、今、幕を開けようとしていた――。

  • 4331◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:37:54

     ――轟。

     海が、揺れた。
     レヴィアタンの巨体が波を割り、背に並んだ二重の盾鱗が月光を反射する。その影は、まるで海そのものが怒りの象徴と化したかのようであった。

     「……」

     その口から放たれるのは言葉ではなく、低く重い唸り声。だが、その響きはまるで大海の怒声のように砂浜へ伝わり、鳩時刑の歪んだ木製の躯を包み込む。

     鳩時刑は怯むことなく、むしろ誇らしげに鳴いた。
     「狂ッポー♪ 狂ッポー♪」
     「墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪」

     秒針がひとつ進む。
     その瞬間、空気が切り裂かれる。不可視の刃が連続して飛び交い、砂浜に刻み傷を走らせた。岩は粉塵に砕け、潮風すらも裂けて吹き飛んでいく。

     レヴィアタンの盾鱗が火花を散らし、不可視の斬撃を受け止めた。硬質な音が、まるで鐘のように鳴り響く。

     ――それでも、海の守護者は止まらない。

     「Ozean」

     その力の名を呼んだ瞬間、海が応えた。
     潮流が逆巻き、まるで生き物のように渦を巻く。レヴィアタンの周囲に水が集まり、槍の形を取り、無数の矢のように鳩時刑へと向けられた。

     ズシャアアアアアッ!

     水槍が放たれる。
     月光に煌めく無数の水の刃が、鳩時計めがけて飛ぶ。

  • 4341◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:39:29

     しかし鳩時刑は、秒針の進みと共にそれを断ち切った。
     不可視の斬撃が交錯し、水の槍は宙で切り裂かれ、飛沫となって辺り一帯に雨を降らせる。

     「狂ッポー♪ 狂ッポー♪」

     鳩が再び飛び出し、甲高く鳴くたびに新たな刃が放たれる。その斬撃はレヴィアタンの鱗すらも削り取る勢いを見せ、守護者の巨体に赤黒い痕を刻んだ。

     だが――レヴィアタンは怯まない。
     痛みも、恐怖も、彼には存在しない。

     その巨きな顎が開かれる。
     海の底から呼び出された奔流が一気に噴き上がり、滝のような衝撃となって鳩時刑を呑み込もうと襲いかかる。

     「墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪」

     応えるように、時の鐘が鳴り響く。
     不可視の刃が奔流を何度も刻み裂き、濁流と飛沫と共に鳩時刑はなおも立ち続けた。

     海と時間。
     水と斬撃。

     相反する力がぶつかり合い、砂浜は刻まれ、海は荒れ狂う。
     その光景は、まるで天地が争うかのようであった。

     だが――まだ、これは序章に過ぎなかった。

  • 4351◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:40:45

     月は高く、白銀の光を海と砂浜に降り注いでいた。
     だが、その光景を美しいと感じる者はここにはいない。

     「狂ッポー♪ 狂ッポー♪」
     
    「墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪」

     鳩時刑の鳴き声が、時を刻むように響き渡る。
     秒針が進むたび、空間そのものが裂けるかのような音を立てて、不可視の斬撃が奔る。

     ――ズバァァッ!

     レヴィアタンの巨体を覆う二重の盾鱗が火花を散らす。
     鱗は鉄壁と呼ぶに相応しいが、秒ごとに襲いかかる無数の斬撃の嵐はその防壁を徐々に削り取り、表層を削ぎ落としていく。

     「……」

     海の守護者は声を上げない。ただ重々しく唸り、巨きな尾を振るった。
     その一撃は津波をも起こす破壊力を秘め、鳩時刑を飲み込むように押し潰す――はずだった。

     だが。

     「狂ッポー♪」

     瞬間、秒針が一つ進む。
     尾の一撃が不可視の刃で斬り裂かれ、飛沫となって散った。巨躯の攻撃でさえ、時の刻みに勝てはしない。

     鳩時刑は狂ったように動き続けた。
     一分に一度、鳩の扉が開く。だが今夜は異常だった。
     その鳩はまるで狂気に突き動かされるように、次々と扉から現れては鳴き、秒針の動きを加速させていく。

  • 4361◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:41:47

     「狂ッポー♪ 狂ッポー♪ 狂ッポー♪」

     「墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪」

     秒針の進みは異常な速度に達し、斬撃の嵐は嵐を超えて暴風雨のように吹き荒れた。
     レヴィアタンの盾鱗が次々と裂け、ついに腹部の陶器のような破片の意匠にまで斬撃が届き始める。

     ――あと一歩で、心臓。

     レヴィアタンにとって致命の位置を鳩時刑は正確に見抜き、斬撃を集中させていた。
     波間に砕けた石が散り、赤黒いひび割れのような痕が刻まれる。

     「……グルル……」

     初めて、レヴィアタンが低く呻いた。
     しかし、それは苦悶の声ではない。怒りの咆哮の前触れだった。

     「Ozean」

     再び、海が応えた。砂浜の周囲に押し寄せた波がせり上がり、巨大な壁となって鳩時刑を包囲する。
     それはただの水ではない。海そのものの意志を宿した奔流。押し潰し、沈め、飲み込むための大海嘯。

     ズオオオオオオッ――!

     水の牢獄が鳩時刑を閉じ込める。不可視の斬撃は内部を乱れ斬りにするが、閉じた海水は形を変え、刃を呑み込みながら収束していく。

     「狂ッポー……狂……」

     鳩時刑の鳴き声が揺らぎ、木製の躯が水圧にきしむ。
     秒針の進みが一瞬、鈍った。

  • 4371◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:42:30

     ――そこが好機。

     レヴィアタンは尾を大きく振りかぶり、海の壁越しに一撃を叩き込む。
     その衝撃は海を通じて増幅され、まるで大地を砕く槌のように鳩時刑へ直撃した。

     「墓ァァァァァァッ……!」

     鳩時刑が初めて苦鳴を上げた。木片が砕け、表面の装飾が剥がれ落ちていく。

     だが――完全には砕けない。
     鳩の部分がまだ無事である限り、この怪異は死なない。

     戦いはさらに激しさを増していく。
     海と時間、二つの概念の力が互いを削り合い、砂浜は既に跡形もなく崩壊していた。

     それでも両者は止まらない。
     次こそが決着の一歩となるだろう。

  • 4381◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:43:45

     海の牢獄が収束し、濁流の中心にあった異形の時計はバラバラに砕け散った。
     木片が波間に漂い、砂浜に叩きつけられて沈黙する。

     ――勝ったか?

     レヴィアタンは油断しなかった。背中の鱗を再び立ち上げ、心臓部を守るようにして静かに海の波を操る。
     海と共にある限り、彼にとって油断という概念は存在しない。

     しかし。

     「墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪」

     不意に、遠くの廃墟から鐘の音が響いた。
     砂浜からは離れた、打ち捨てられた漁村の小屋。その中にあった古い柱時計が、突如として狂ったように鳴り始める。

     「狂ッポー♪ 狂ッポー♪」

     開いた扉から、例の鳩が飛び出してきた。
     砕かれたはずの鳩時刑が、新たな時計を依代にして蘇ったのだ。

     レヴィアタンの瞳が細められる。
     相手の弱点は鳩部分――だが、それを破壊しきらねば復活は止まらない。

     「狂ッポー♪ 墓(ボ)ーン♪」

     秒針が進む。不可視の刃が、今度は漁村全体を覆うように奔った。
     斬撃は家屋を斜めに裂き、崩落させる。残骸が海へ落ち、その衝撃で波が逆巻く。

     レヴィアタンはすぐに《Ozean》を発動し、海水を盾に変える。

  • 4391◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:44:06

     だが一秒ごとに斬撃が降り注ぐ速度は異常であり、盾が形を成すたびに削ぎ落とされていく。

     「……」

     ただ沈黙を貫き、巨体を前へ進める。
     しかし鳩時刑は復活を果たし、さらに狂気の速さで時計の針を進めていた。

     「狂ッポー♪ 狂ッポー♪ 狂ッポー♪」

     「墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪」

     秒針の斬撃が加速する。まるで時間そのものが速くなったかのように。
     レヴィアタンの盾鱗すらも耐えきれず、亀裂が走る。

     ズバッ――!

     鋭い一閃が、ついに腹の陶器の意匠を切り裂いた。
     ひび割れが心臓にまで伝わり、かすかな脈動が揺らぐ。

     「……グルァァァァ……!」

     レヴィアタンが初めて、苦悶に満ちた咆哮を上げた。
     鳩時刑は勝ち誇るかのように、鳴き声を高らかに重ねる。

  • 4401◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:44:18

     「狂ッポー♪ 墓(ボ)ーン♪」

     波間で破壊された時計の残骸が、次々と別の時計へと乗り移る。
     廃村に眠る柱時計、懐中時計、壁掛け時計――。
     それら全てが一斉に鳴り出し、鳩が飛び出しては不可視の刃を振りまく。

     ――それはまるで、時間そのものが怪異の軍勢と化したかのようだった。

     レヴィアタンの巨体は幾筋もの斬撃に刻まれ、海を血に染める。
     だが倒れることはない。海を守護するという役目のために、その身を盾としてなお立ち続ける。

     しかし、誰の目にも分かる。
     今は鳩時刑が優勢だ。

     「狂ッポー♪ 狂ッポー♪」

     「墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪」

     秒針がまた一つ進む。心臓を狙う刃が振り下ろされようとしていた。

  • 4411◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:45:26

     秒針の斬撃が重なり、レヴィアタンの鱗に深い傷を刻み込んでいく。
     鳩時刑の狂気の合唱は止まることを知らない。

     「狂ッポー♪ 狂ッポー♪ 狂ッポー♪」

     「墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪」

     廃村に眠っていた時計たちが次々と目を覚まし、鳩の形をした怪異が群れとなって飛び交う。
     秒針が進むたび、見えざる刃が海と陸を切り裂き、レヴィアタンの巨体を切り刻む。

     ――このままでは、心臓が砕かれる。

     レヴィアタンの瞳が深海の闇のように光った。
     その一瞬、海風が止まり、波のうねりが静まり返る。

     「……Ozean」

     その声は低く、しかし海そのものを呼び覚ます呪言のようだった。

     砂浜が揺れる。
     潮が逆流する。
     やがて村全体を呑み込むほどの大波が、まるで天地をひっくり返すかのように立ち上がった。

     「……グオオオオオオオオオオッ!!」

     レヴィアタンの咆哮が波に乗る。
     逆巻く大海は《Ozean》によって刃と化し、渦と化し、怒涛の如き槍となって一斉に鳩時刑の群れへと突き立った。

  • 4421◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:45:36

     「狂ッ……!? 狂ッポォォ……!」

     鳩たちは次々と水の刃に切り裂かれ、柱時計も壁掛け時計も粉々に砕け散る。
     「墓(ボ)ーン♪」と鳴きかけた鐘の音は、途中で無惨に途切れた。

     廃村は大波に呑まれ、基礎ごとさらわれていく。
     砂浜すら削られ、地形が塗り替わるほどの逆潮が続いた。

     レヴィアタンの巨体は血に染まっていたが、その傷をも海が包み込み、癒やすように光を帯びていた。
     海は彼の力の源。己を削ってでも海を守る。海もまた彼を支える。

     「……戻れ。すべて、海へ」

     波が崩れると同時に、残っていた鳩たちは一斉に海へ引きずり込まれた。
     見えざる刃の嵐はようやく収まり、静寂が訪れる。

     しかし、沈黙の中に不気味なものが漂っていた。
     海面に浮かぶ、一つの小さな鳩の残骸。

     木片のように見えたが、そこからかすかに声が漏れた。

     「……狂ッポー……」

     まだ生きている。
     まだ完全には終わっていない。

     レヴィアタンは睨みつけた。
     心臓の鼓動が重々しく鳴る。

     ――次で決着をつける。

  • 4431◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:47:21

     海は静まった。
     だがその静寂は、決して安らぎを意味しなかった。

     レヴィアタンの視線の先、砕け散った木片の中から、小さな鳩がゆっくりと身を起こす。
     羽もない、ただの木の削り屑にしか見えないそれが、不気味な声を漏らした。

     「……狂ッポー……狂ッポー……」

     その声と同時に、沈んでいた時計の残骸が次々と震え、鳩の鳴き声を反響させ始めた。
     壊れたはずの柱時計が、不気味な「墓(ボ)ーン♪」の鐘を響かせ、割れた壁掛け時計の針がひとりでに動き出す。

     ――復活。

     鳩時刑の真骨頂。
     たとえ粉々に砕かれようと、鳩の部分さえ生きていれば、時は再び刻まれる。

     「狂ッポー♪ 狂ッポー♪ 狂ッポー♪」

     「墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪ 墓(ボ)ーン♪」

     鳴き声が重なり、秒針の斬撃が再び嵐のように襲いかかる。
     海は切り裂かれ、空気は震え、世界そのものが時の刃で削られていく。

     レヴィアタンは吠えた。
     その声は雷鳴を超え、深海を震わせる怒りの音。

     「……Ozean!!」

     彼の背鱗が一斉に逆立ち、海を呼び込む。
     数秒の遅延――だがその間も秒針の斬撃は止まらない。

  • 4441◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:47:47

     鱗にひびが走り、深い傷から黒い血が流れ出す。

     それでも、レヴィアタンは揺るがなかった。

     大地を揺らすような轟音と共に、海が現れる。
     海そのものが意思を持つかのように、鳩時刑の群れを呑み込んでいく。
     巨大な水の槍がいくつも突き上がり、残る時計を次々に貫いた。

     「狂ッ……! 狂ッポォ……!」

     鳩の声がかすれていく。
     秒針の刃も、次第に弱まり、途切れがちになる。

     最後に残ったのは、あの小さな鳩だった。
     海に漂いながら、弱々しく口を開く。

     「……狂……ポ……」

     その瞬間、レヴィアタンは己の尾を振り下ろした。
     尾は大波の力を乗せ、木片を叩き潰した。

     乾いた音が響く。
     小さな鳩は粉々に砕け、残滓さえも海に呑まれて消えていった。

     「……終わりだ」

     レヴィアタンの低い声が廃村に響く。
     鳴き声も鐘の音も、もう聞こえない。

  • 4451◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:48:00

     深い静寂が戻った。
     それは恐怖でも狂気でもなく、ただの安らぎ。
     海と共に在る者だけが知る、静謐の時間だった。

     レヴィアタンは血に濡れた鱗を光らせながら、ゆっくりと海へと身を沈めていった。
     守護者としての役目を果たし、再び波の中へと帰っていく。

     彼の背が見えなくなった時、残されたのは砕けた時計の残骸と、浄化された村の静けさだった。

     ――時は鳴り止み、海は永遠に在る。

  • 4461◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 13:48:58

    以上
    死んだ奴から声を出させるのは無理があった

  • 447二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 13:59:37

    めっちゃしぶといな鳩時刑
    そしてレヴィアタン格好良くて好き

  • 448二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 13:59:53

    >>437

    >>「墓ァァァァァァッ……!」

    トンチキ悲鳴で笑ってしまった

  • 449代理25/09/25(木) 14:01:17

    ケッ!もう終わりかよクソガキめ!ま、いーや。次のやつで遊ぶとするか!ギャッハハハハ!!!

  • 450二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 14:01:36

    >>449

    よし、ノルマ達成

  • 451二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 14:13:30

    いくら怪異とはいえさすがに死んだやつに喋らせるのは難しかったか

  • 4521◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:15:50

    題名『黒き怨嗟を浄化せよ』

  • 4531◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:16:29

    午後の校庭には、いつも通りの光景が広がっていた。木々の葉が風に揺れ、遠くの校舎の屋根に柔らかな陽光が反射する。生徒たちは部活動に励む声や、友達との笑い声を響かせていた。

    だが、その日だけは、何かが違った。空気が重く、淀んでいる。わずかな埃や微細な空気の振動までが、目に見えるような不自然な感覚としてロッカに届く。彼女の鋭敏な感覚は、すぐに異変を察知した。

    「……なんて、汚れた空気……」

    ロッカはベレー帽を軽く押さえ、透き通る青い瞳で校庭を見渡した。普段なら何も感じない風が、今日に限って鋭く肌を刺すように冷たく、埃混じりの匂いが鼻を突いた。

    「どうして……こんなに、空気が……」

    その疑問が頭をよぎる前に、異変の中心が動き出した。古びた社の石像――狐の形をした石像――が、わずかに振動し、次第に唸り声を上げる。石の体が音を立てて軋み、背後の地面から黒い霧のようなものが立ち上った。

    「あぁ……気に入らぬ!世界の全てが我を侮る!」

    その声は地を揺るがすような低い響きと共に、怨嗟の黒い気を放った。千年の恨みと呪詛を宿した大妖怪、千毘糾が目覚めた瞬間だった。

    ロッカは一歩下がり、手元で魔力を整える。風と水の魔力が指先で微かに光る。

    「……ここで、私の清浄な空気を守らなければ」

    ベレー帽を少し傾け、髪を整えると、彼女は薄い透明のフィルターを自分の周囲に展開した。フィルターは微かな光を帯び、周囲の空気から不要なものを取り除き始める。埃、異臭、怨嗟の気……そして何より、戦闘の邪魔になる「混乱した力の流れ」を一点ずつ整理していく。

    しかし千毘糾はすぐに攻撃態勢を整える。尾を振り、黒い霧を渦状に巻き上げ、怨嗟の力を校庭全体に押し広げる。

    「……なるほど、人間の少女か。面白い。だが、我の前で立つ者は全て滅ぶ!」

    声に込められた怒りと憎悪は、空気の振動としてロッカに伝わる。呼吸するたびに胸が圧迫される感覚。これまでに経験したことのない“重さ”が、少女の前に立ちはだかる。

    ロッカは唇を噛み、焦る心を抑えた。

  • 4541◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:17:22

    「……大丈夫、私は……私の空気を、守れる」

    彼女の手のひらから、微細な水の魔法が漏れ、フィルターの清浄作用を補助する。黒い霧はフィルターに触れるたびに薄れ、埃や怨嗟の小さな粒子が弾かれていく。

    しかし、千毘糾の怨嗟は単純な汚れではない。数百年、いや千年もの人々の恨みや悲嘆を吸収してきた力は、空気そのものに圧力をかけ、校庭の景色を歪ませる。木々の葉の揺れ、校舎の影、砂の粒までもが、重苦しい怨嗟の影に染まったように見える。

    「……こんな、空気……絶対に、許せない……!」

    ロッカは決意を胸に、フィルターの光を強める。風の魔力で黒い霧を吹き払い、水の魔法で埃や異物を取り除く。校庭の中央で少女と大妖怪、二つの存在が静かに睨み合う。

    昼の光は依然として穏やかだが、二人の間には戦場さながらの緊張感が漂う。風も光も、普段の優しさを失い、戦いの予兆だけが残った。

    こうして、清浄を愛する少女と、千年の怨嗟を宿す大妖怪――二つの力の衝突が、静かな校庭に始まろうとしていた。

  • 4551◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:17:50

    黒い霧が校庭を覆い尽くす中、千毘糾の尾が空を裂く。石の身体は揺るがず、しかしその動きは重厚でありながら、圧倒的な力を感じさせた。

    「怨呼!」

    千毘糾の声が響き渡ると、黒い霧はさらに濃くなり、怨嗟の力が大きく膨張する。校庭にいる生徒たちは瞬間的に足を止め、目を見開く。だがロッカはその様子を気にも留めず、静かに呼吸を整えた。

    「……ここからが、本当の戦いね」

    透明なフィルターが彼女の周囲に広がる。目に見えぬ魔力の膜が、空気を整理し、黒い霧の一部をはじき返す。フィルターの光が、黒い怨嗟の粒子を弾きながら校庭を少しずつ清浄に戻していく。

    千毘糾は尾を振り、怨刀を形成した。刃のように硬く、黒い霧と融合して光を吸い込む。

    「これで人間ごときが、我に抗えると……?」

    その瞬間、千毘糾が怨刀を振り下ろした。しかし、ロッカは一歩後退し、フィルターを尾の軌道に合わせて展開する。尾の「勢い」だけを一点取り除くと、尾は力なく空を切った。

    「……へぇ、なるほど」

    ロッカは口元に微かな笑みを浮かべる。自分の魔法が、千年の力を一瞬で弱めたことを実感したのだ。

    千毘糾は目を見開き、わずかに動揺する。尊大な性格ゆえ、初めて自分の力が無効化される感覚に戸惑ったのだ。

    「……な、何だと!?」

    ロッカは次の瞬間、風の魔法で黒い霧を弾き返す。空気の流れを作り、怨嗟の粒子を押し戻すと同時に、水の魔法でフィルターを補強。黒く濁った魔力を一点ずつ清浄化する。

    「ここは……私の空気の場よ」

    ロッカの声に、風が微かに応えるように吹き、フィルターの光が強まる。黒い霧が弾かれ、校庭の中央に清らかな空間が生まれた。

  • 4561◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:18:26

    しかし千毘糾もすぐに攻勢を続ける。怨弾を球状に形成し、遠距離から少女を攻め立てる。

    「怨弾!」

    黒い球状の怨嗟が校庭を駆け、地面を抉りながら迫る。

    ロッカは瞬時に判断し、もう一枚のフィルターを展開する。球の「破壊力」だけを取り除くと、怨弾は弾けるように消え、力なく地面に落ちる。

    「……これなら、あなたの攻撃も……無力化できる」

    千毘糾は苛立ちを露わにし、尾を振るタイミングを探る。しかし、尊大な性格と慢心が裏目に出る。怨刀と怨弾を同時に使うことはできず、その隙をロッカは逃さなかった。

    少女は動きを止めず、風と水でフィルターを補強しながら、黒い霧の一部を吸い込み、清浄化していく。校庭の空気は次第に軽くなり、怨嗟の圧力は部分的に消えた。

    「……ふふ、面白くなってきたわ」

    ロッカの目に、戦いの興奮が光る。相手は千年の力を持つ大妖怪。しかし、フィルターさえあれば、少女でも戦える――その確信が心を支えていた。

    校庭には、風の音、水のさざめき、黒い霧の唸り声――戦場の予感が静かに漂う。

    こうして、最初の衝突は終わった。しかし、少女と大妖怪、二人の本格的な戦いは、まだ始まったばかりだった。

  • 4571◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:19:19

    校庭の中央に立つロッカと千毘糾。黒い霧はまだ残っているものの、透明なフィルターが一部を押し返し、清浄な空気の小さな空間が少女の周囲に生まれていた。

    千毘糾は尾を振り、怨刀を振り上げる。刃の硬さが空気を切り裂き、轟音が響く。

    「……ふん、人間よ。まだ我の力を侮るのか!」

    尊大な声と共に、怨弾の球状の怨嗟も形成される。遠距離と近距離の攻撃を交互に放ち、少女を圧倒しようとする。

    しかし、ロッカは冷静だった。彼女は自分の能力の特性を最大限に生かすため、戦略を組み立てる。

    空気中の怨嗟の「怒り」を一点取り除き、怨弾の威力を削る

    尾の「硬さ」を一点だけ減じて近接攻撃の威力を鈍らせる

    自身の動きの「無駄」を取り除き、移動と魔法発動速度を最大化

    フィルターを通すたび、黒い霧の一部が薄れ、怨嗟の力が小さく削がれる。

    「……この程度で、私を止められると思ったら大間違いよ」

    ロッカの声が静かに響き、風の魔法が尾の軌道を読みながら流れる。水の魔法がフィルターを補強し、黒い粒子を次々に清浄化していく。

    千毘糾は目を細め、わずかに苛立ちを見せる。自分の力が、ただの人間の魔法に一点一点無効化される。尊大な妖怪にとって、初めての屈辱だった。

  • 4581◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:19:39

    「……くっ、侮るな……我が千年の力を……!」

    怨刀を振り下ろすが、フィルターによって「勢い」を取り除かれ、尾は空を切るだけになった。

    同時に、ロッカはもう一枚のフィルターを展開し、怨弾の「破壊力」を一点だけ削る。怨弾は無力化され、黒い球はまるで軽い羽のように落下する。

    「……ふふ、さすがに千年の怨嗟でも、一つずつ削れば対応できるわ」

    ロッカは自分の魔力の残量を確認し、次の一手を考える。フィルターは強力だが、連続使用には限界がある。黒く濁り始めたフィルターを清浄化しながら、攻防のタイミングを見極めるのだ。

    千毘糾もまた、戦術を変えようとする。遠距離と近距離を交互に使い、少女を追い詰めようとする。しかし、油断と慢心が目立ち、尾と怨弾を同時に攻撃に使えない隙が生じていた。

    「……これが、私の戦法……!」

    ロッカはその隙を逃さず、風の魔法で黒い霧の一部を押し戻し、水の魔法でフィルターを強化する。怨嗟の一部を取り除きつつ、校庭の清浄な空気を広げる。

    千毘糾は苛立ちをあらわにしながらも、少女の戦術を理解し始めた。力任せではなく、選択と集中で攻撃を無力化されることに――初めての戸惑いを覚える。

    両者の戦いは力のぶつかり合いから、心理戦・戦術戦へと変わり始めた。黒い霧と透明なフィルターが交錯する校庭は、まるで戦場の縮図のようだ。

    ロッカは微かな息を整え、再び前に踏み出す。目の前の大妖怪は圧倒的な力を持つが、戦術次第で必ず制御できる。

    「……ここからが、本当の戦いよ」

    校庭に響くのは、黒い霧のうなり声、尾が空気を切る音、そして少女の決意の声だけ。

    二人の戦いは、力だけでなく知恵と判断、そして冷静さの勝負へと進んでいく――

  • 4591◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:20:55

    戦いはすでに、校庭全体を巻き込む規模になっていた。黒い霧はまだ残り、怨嗟の力が空気を押し潰すように漂う。ロッカは二枚のフィルターを最大限に展開し、尾の勢いや怨弾の破壊力を一点ずつ取り除きながら応戦していた。

    だが、フィルターには限界があった。

    「……くっ……まだ耐えられる、まだ……」

    彼女は心の中で自分を励ましながら、黒く濁り始めたフィルターを見つめる。繰り返し使用することで少しずつ汚れが溜まり、操作速度が鈍くなっていた。小さな埃や怨嗟の粒子を取り除くたび、フィルターの光は暗く沈み、魔力の消耗も激しい。

    「……これ以上続けたら、私の魔力が……!」

    千毘糾はその隙を逃さなかった。尾を高く振り上げ、怨刀を全力で振り下ろす。地面に衝撃波が走り、校庭の砂や小石が飛び散る。黒い霧の渦に怨弾の球も混じり、ロッカに迫る。

    「……危ないっ!」

    ロッカは一歩後退し、フィルターで尾の「勢い」を取り除く。しかし、黒く濁ったフィルターでは操作が遅れ、わずかに防御が遅れてしまう。尾は空を切ったが、風の魔法で避けきれなかった小さな石片がフィルターにぶつかり、軽く衝撃を与える。

    「……くっ……!」

    彼女の肩にわずかな痛みが走る。大きな傷ではないが、焦りが心を支配し始める。普段なら自然に取り除ける埃や汚れも、今回は瞬時の判断を狂わせるほどの負担となった。

    千毘糾は唸る。尊大な妖怪は油断と慢心が弱点だが、この瞬間は焦りを誘う絶好の機会だと認識していた。尾を振り、怨刀と怨弾を交互に攻撃させることで、少女の魔力を削ろうとする。

    「……これ以上は、無理……かも……」

    ロッカは小さく息をつき、心を落ち着ける。だが、フィルターの汚れは加速して溜まっていく。埃や黒い霧に触れるたび、彼女の綺麗好きな性格が反射的にそれらを取り除こうとしてしまうのだ。その度に魔力消費は跳ね上がり、汚れが溜まり、操作速度がさらに低下する。

  • 4601◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:21:05

    「……落ち着いて……集中、集中よ……!」

    少女は手元の水魔法でフィルターを清浄化しようと試みる。水の粒子がフィルターを洗い流し、光がわずかに戻る。しかし、千毘糾はその一瞬のスキを逃さなかった。黒い霧をさらに密度高く放ち、怨弾の威力を一点集中で攻め立てる。

    「怨弾!」

    黒い球状の怨嗟が、校庭の空気を押し潰すように迫る。ロッカは瞬時にフィルターを展開し、球の「破壊力」を一点取り除く。しかし、操作速度の低下が響き、球の一部がほんのわずかだけ残り、彼女の肩に当たる。

    「……っ!」

    痛みと共に、少女は魔力消費の大きさを痛感する。フィルターを繰り返し使えば、確実に黒く汚れ、力が弱まる。だが、撤退は許されない。校庭の空気を守り、自分自身を守るためには、ここで踏ん張るしかない。

    ロッカは深呼吸し、心を静める。水の魔法でフィルターを再び清浄化し、風の魔法で黒い霧を吹き払う。そして次の一手を思案する――

    「……ここからは、計算して戦うしかないわ……!」

    校庭に漂う黒い霧と、少女の清浄なフィルター。力のぶつかり合いではなく、制約と焦りの中での戦いが、ここから本格的に始まろうとしていた。

  • 4611◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:22:05

    疲労と汚れが溜まり、黒く濁ったフィルターを前に、ロッカは肩を震わせながらも前を見据えた。校庭の空気は依然として重く、黒い霧がわずかに渦巻いている。だが、彼女の目には決意の光が宿っていた。

    「……ここで諦めるわけにはいかない」

    少女は深く息を吸い込み、両手に魔力を集中させる。水の魔法で汚れたフィルターを洗い流し、風の魔法で黒い霧を押し返す。透明な膜は再び光を取り戻し、操作速度も回復していく。

    「……これで、もう一度だけ、全力で」

    フィルターは二枚、同時に展開される。一枚は千毘糾の怨弾を無効化するため、もう一枚は怨刀の勢いを削るために使用する。少女の指先が微かに光り、魔力の流れを自在に操作する。

    千毘糾は尾を振り、怨刀を振り下ろす。黒い刃が光を吸い込み、空気を切り裂く。

    「……くっ、人間ごときが……!」

    だが、ロッカは動じない。フィルターを通して尾の「勢い」を一点取り除くと、尾はわずかにしなり、攻撃精度が狂う。同時に、怨弾の球は「破壊力」を取り除かれ、空を切るだけになった。

    「……ふふ、これなら大丈夫」

    ロッカは微笑むと、風の魔法で黒い霧をさらに押し返す。空気が流れ、校庭中央の清浄な空間が広がる。千毘糾の尊大な表情が、わずかに歪む。

    「……な、何だと……我が力が……!」

    千年の怨嗟を持つ大妖怪も、初めて自分の攻撃が一瞬にして無力化される感覚に戸惑った。尾を振り、怨弾を放つが、二枚のフィルターによって次々と力が削がれていく。

    ロッカはここで大胆な一手を打つ。

    「……いくわよ、千毘糾!」

    少女はフィルターで怨嗟そのものの「怒り」を一点だけ取り除いた。怨弾や怨刀の攻撃の源である感情が弱まり、黒い霧は一気に薄くなる。

  • 4621◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:22:17

    千毘糾の尾が空を切る音だけが響き、石の身体も微かに揺れた。

    「な……なにを……!」

    妖怪は唸り声をあげ、尾を振るが、空気の流れとフィルターの力で攻撃は不安定になる。少女はその隙を逃さず、風の魔法で黒い霧を一掃。水の魔法でフィルターをさらに清浄化し、光を強める。

    「……これで、あなたの力も、少しは整理されたはず」

    校庭の空気は一変した。黒い霧は押し返され、怨嗟の圧力は半分以下に弱まった。千毘糾は膝をかがめ、わずかに動揺を隠せない。

    「……くっ……許さん……!」

    だが、尊大で油断しがちな千毘糾は、連続攻撃のタイミングを見誤った。ロッカはその隙を突き、尾の硬さをさらに一点取り除く。尾はしなり、怨刀の威力は完全に半減する。

    「……これで、少しは戦いやすくなったわ」

    ロッカは微笑む。千毘糾の強大な力を、戦術と計算で抑え込むことに成功した瞬間だった。黒い霧と怨嗟の圧力が弱まり、校庭は少女の清浄な空気に包まれ始める。

    戦局は明確に逆転した――

    「……もう、あなたの攻撃は……私には通用しない」

    ロッカはそう告げると、フィルターを最大限に光らせ、次の決着の一手に備えた。千毘糾の黒い尾も、怨弾の球も、完全に少女の掌の上で翻弄されている。

    校庭の空気は、少女の意志と魔法の力で清浄さを取り戻しつつあった。戦いの焦点は、もはや力任せではなく、戦略と知恵の勝負へと移行していく―

  • 4631◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:22:51

    戦いはついに、最終局面を迎えていた。校庭の中央に立つロッカの周囲は、風と水の魔法によって清浄な空間が広がり、黒い霧や怨嗟の力は押し返されていた。千毘糾の尾は空を切るだけで、怨弾もその力をほとんど失っていた。

    「……これで、もう終わりよ」

    ロッカは静かに言う。透き通る青い瞳は決意に満ち、ベレー帽の下でウェーブのかかった髪が風に揺れる。二枚のフィルターは光を帯び、黒く濁った箇所も完全に清浄化されていた。

    千毘糾は石の膝をつき、膨大な怨嗟を抱えた体を揺らす。尊大な表情は失われ、怒りと驚愕が入り混じった瞳だけが少女を見つめていた。

    「……くっ……許さぬ……!」

    声はまだ震えていたが、攻撃の威力はすでに失われている。尾を振り上げようとする動きも、黒い霧を形成しようとする意志も、ロッカのフィルターによって一点一点無力化されていた。

    少女はゆっくりと歩み寄る。手のひらから微かな風の魔法が放たれ、怨嗟の粒子をさらに押し返す。水の魔法が空気を清め、校庭の中央に完全な清浄空間を作り上げる。

    「……もう、あなたの攻撃は通用しない」

    千毘糾は膝をつき、尾を下ろす。千年の怨嗟を宿した妖怪が、少女の魔法の前に静かに沈黙した瞬間だった。

    ロッカは深呼吸し、フィルターを閉じる。空気は清らかに整い、埃や怨嗟の痕跡はほとんど残らない。校庭には、静かで穏やかな午後の光が戻った。

    「……これで、少しは空気も、世界も、きれいになったでしょう」

    少女は微笑む。胸の奥で、戦いの緊張と疲労がじわりと解けていく。清浄な空気の中で、ベレー帽を整え、風に揺れる髪を直す。

    千毘糾はまだ膝をつき、石の体を揺らしながらも、言葉を発することはできなかった。怨嗟の力は消え去り、尊大な誇りも静かに沈んだ。

  • 4641◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:23:01

    校庭は静寂に包まれる。戦いの痕跡は、少女の魔法によって浄化され、ただ清浄な空気だけが残った。

    ロッカは心の中で、小さくつぶやいた。

    「……これからも、私は守り続ける。空気も、人も……すべてを、きれいに」

    戦いは終わり、清浄の勝利が校庭を満たした。少女は、千年の怨嗟をも制する力を、自分の手で証明したのだった。

  • 4651◆ZEeB1LlpgE25/09/25(木) 14:23:14

    以上

  • 466二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 14:47:55

    フィルターで自分の動きの無駄を取り除くのオシャレな使い方だ

  • 467二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 17:23:19

    ゲージ管理しながら戦ってるようなもんだからミスしたら響きそうだなロッカ

  • 468二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 17:59:14

    学校内に社があったパターンか

  • 469二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 22:30:21

    念のため保守

  • 470二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 01:33:20

    ほしゅ

  • 471二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 08:14:53

    ほーしゅー

  • 4721◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:05:19

    題名『星月夜を斬る刃』

  • 4731◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:08:01

    灰色の街の片隅。雨上がりの空気はまだ湿り気を帯び、街灯の光が濡れたアスファルトににじんでいた。
    李影刀の探偵事務所は、そんな路地裏にひっそりと建っている。安普請の看板には「影刀探偵事務所」の文字がかすれており、ドアベルは少し錆びていた。

    影刀は机に片肘をつき、バイオ刀の鞘を手入れしながら天井を見上げていた。依頼はほとんどなく、家賃の支払いも滞りがちだ。
    彼の瞳には、かつて部隊にいた頃の冷徹さが残っていたが、その奥に確かに「迷い」と「人間らしさ」が芽生えていた。

    「……くそ、今日も赤字だ」

    ため息をついた、その時だった。
    ドアベルが、澄んだ音を立てて鳴った。

    入ってきたのは、夜会に出る貴婦人のような女。月光を閉じ込めたような銀髪を波打たせ、瞳は深い紅。ドレスの裾は黒と瑠璃色が混ざり合い、まるで絵画の中から抜け出してきたように美しかった。

    「……あなたが、李影刀。そうね?」

    声は歌うように滑らかで、香水のように甘美に耳へ絡みつく。
    影刀は眉をひそめ、刀の手入れを止めた。

    「依頼か?」

    「ふふ、ええ。依頼というより……提案、かしら」

    女は椅子に腰掛け、長い脚を優雅に組む。まるで舞台に立つ女優のように、その仕草一つひとつが洗練されていた。

    「私の名は――ファーヒル・C・ロック。美を愛する悪魔」

    その名を聞いた瞬間、影刀の背筋に冷たいものが走った。

  • 4741◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:08:32

    「悪魔」という言葉は、都市伝説のように囁かれている存在。だが彼の直感は、目の前の女がただの人間ではないことを悟っていた。

    「……悪魔、だと?」

    「そうよ。私は美しいものを集める。歌でも踊りでも、剣技でも――人間の創り出す芸術なら、何だってね」

    ファーヒルの瞳が妖しく輝き、紅い唇が微笑を描く。

    「あなたの剣。美しいわ。流麗で、鋭くて……血と涙の物語を背負った芸術」

    「……俺に契約を迫るつもりか」

    「話が早くて助かるわ」

    ファーヒルは楽しげに笑った。

    「あなたに最高の一作を作らせてあげる。血塗られた運命を、永遠に輝く傑作へと昇華させる。その代わり――作品が完成した時、あなたの才能をいただく」

    影刀は黙り込んだ。机の上に置いたバイオ刀の柄に、自然と指が触れる。
    かつて切り捨てた恋人の幻影が、脳裏をよぎった。
    彼女がもしここにいたら、この悪魔の甘言に揺れたのだろうか。

    「……悪魔の口約束か。冗談じゃない」

    影刀の声は冷たく、しかし揺るぎないものだった。

  • 4751◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:08:45

    「俺の剣は俺のものだ。芸術なんて言葉に収められるもんじゃない」

    ファーヒルは目を細め、唇に妖艶な笑みを浮かべる。

    「断るのね?……いいわ。ならば奪うまで」

    瞬間、彼女の周囲に絵画のような光が溢れた。額縁のないキャンバスが宙に浮かび、仮面や宝石、舞踏の幻影が渦を巻く。芸術魔道具が、悪魔の命令に応じて顕現していく。

    影刀は立ち上がり、バイオ刀を鞘ごと腰に下げた。
    ロングコートの裾が揺れ、瞳が鋭さを取り戻す。

    「……悪魔だろうと、俺は斬る」

    探偵事務所の狭い空間に、悪魔と剣士の気配がぶつかり合う。
    かくして、二人の邂逅は戦いへと変わった――。

  • 4761◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:09:53

    狭い探偵事務所の空間は、一瞬で劇場に変貌していた。
    壁に飾られた汚れたポスターは光沢を帯び、古びた棚は舞台装置のように形を変え、空間そのものが悪魔の美の領域に塗り替えられていく。

    ファーヒルの指先から、銀の糸のような旋律が放たれる。
    まるで音符そのものが実体を持ったかのように、宙を舞い、影刀の耳を侵す。

    「――聞いてごらんなさい。これが"歌"の魔道具」

    響き渡る声は甘美で、心臓の鼓動をリズムに合わせて狂わせていく。
    影刀は眉をひそめ、思わず膝が震えた。

    「く……ッ!」

    即座にロングコートを翻し、布を引き裂くように両耳を覆う。
    バイオ繊維が音波を分解し、鼓膜への侵食を阻む。

    「なるほど、防ぐ力を持っているのね。ふふ……それなら次は目よ」

    ファーヒルが掌をかざすと、空中に絵画が浮かび上がった。
    色鮮やかな油彩画が蠢き、見る者を吸い込むように迫ってくる。
    そこに描かれているのは、影刀がかつて殺めた恋人の微笑――血のように赤い唇、切なげに見上げる瞳。

    「……!」

    思わず一歩後退しかける。
    だが影刀はすぐに歯を食いしばり、バイオ刀の鞘で床を叩いた。
    乾いた音が意識を呼び戻す。

    「幻影で揺らぐほど、安い剣じゃない」

  • 4771◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:11:17

    「強がるのね。じゃあ――"踊り"を」

    ファーヒルが立ち上がり、舞を始めた。
    裾の長いドレスが翻り、その動きに合わせて空気が鋭利な刃へと変わる。
    一振りごとに、影刀の頬をかすめる冷気が走り、壁や机が切り裂かれていく。

    影刀は机を蹴り飛ばし、狭い空間を抜けて宙へ跳躍した。
    剣を抜くことなく、身を低くして転がるように避ける。

    「ほう、避けるのが上手い。さすが剣士ね」

    「チッ……」

    壁に叩きつけられた机の破片を拾い上げ、影刀はそれをファーヒルに投げつけた。
    だが、ファーヒルは軽く指を弾くだけで破片を粉々に砕く。

    「粗野ね。けれど、その荒々しさもまた芸術にできるわ」

    赤い唇が笑みを描き、今度は指輪が輝いた。
    瞬間、透明な障壁が生まれ、影刀の動きを封じ込めるように周囲を囲う。

    「アクセサリーの魔道具……」

    影刀は低く唸り、刀に手をかけた。
    ロングコートの繊維が収束し、筋肉に圧を加える。
    全身が一瞬にして加速する。

    「……斬る」

    次の瞬間、影刀の姿は霞のように消えた。

  • 4781◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:11:47

    気配を捉える前に、ファーヒルの背後に回り込む。

    鞘走りと同時に、鋭い一閃――!

    しかし、刃が触れたのは彼女の長い髪の毛のわずかな先端だけだった。
    月光の糸のような髪が数本、宙に舞う。

    ファーヒルの瞳が、一瞬大きく見開かれた。

    「……あら。わたくしの髪を……?」

    その声は震えていた。
    影刀はそれを見逃さない。

    「なるほど。美を壊されると、弱るってわけか」

    「……っ」

    ファーヒルの唇がわずかに歪んだ。
    だが次の瞬間、妖艶な笑みを取り戻す。

    「気づいたのなら――もっと美を壊せるかしら?」

    周囲に飾られた絵画や仮面が一斉に動き出し、影刀に襲いかかる。
    芸術の罠が、容赦なく彼を飲み込もうとしていた――。

  • 4791◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:12:43

    襲い来る仮面の群れが、牙を剥いた獣のように李影刀へ迫る。
    赤、白、黒――能面にも似たそれらは口を裂き、嘲笑の声を上げながら宙を舞う。

    「影刀さん、芸術はね、破壊するためにあるんじゃないのよ。創り出すためにあるの」

    ファーヒルの声が部屋に満ちる。
    同時に、踊るように伸ばされた指先から絵筆のような杖が生え、その一振りで壁に鮮烈な色彩が走った。
    次の瞬間、描かれた猛獣が現実に飛び出す。

    「……ッ!」

    影刀は迷わず前へ踏み出した。
    刃を抜く音と共に、突進してきた絵の獣の首を一刀の下に斬り払う。
    だが、切り裂かれたキャンバスの色彩が飛び散り、皮膚に触れるだけで焼けるように痛む。

    「芸術は攻撃にもなる。どう? あなたのバイオ体でも耐えられるかしら」

    「……ああ、耐えられるさ」

    影刀の体内に仕込まれたナノマシンがすぐに侵食を分解し、焦げた皮膚を無理やり修復する。
    痛みは残るが、動きは鈍らない。

    「それより――お前の“美”だ」

    影刀の目が鋭く細められた。
    次の瞬間、彼は机の残骸を蹴り飛ばし、その破片を刃に纏わせて宙へ投げる。
    狙いは、ファーヒルの左手――煌びやかに輝くリング。

  • 4801◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:13:06

    ガキィン――!

    投げた破片と同時に影刀は突進し、バイオ刀を薙ぎ払った。
    指輪が弾け飛び、床に転がる。

    「……っ!」

    ファーヒルの瞳に、明確な怯えの色が宿った。

    彼女の呼吸が乱れ、薄い爪先が震えている。

    「やっぱりな……美を壊されるのが怖いんだろう」

    「……!」

    「なら、そこを狙うだけだ」

    影刀の動きは一気に加速した。
    バイオコートが筋肉に圧を与え、剣士としての本能が研ぎ澄まされる。
    右へ、左へ――流れるような剣舞で仮面の群れを切り裂き、舞い散る破片をファーヒルの髪へと飛ばす。

    数本の髪がまた切り落とされ、宙に舞った。

    「やめなさい……!」

    ファーヒルが悲鳴のような声を上げた瞬間、彼女の周囲の魔道具が一斉に爆ぜる。
    絵画は炎を吐き、舞台衣装は刃へと変わり、仮面は狂笑を響かせながら襲いかかる。

  • 4811◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:13:22

    だが影刀は怯まない。
    ただ一太刀、また一太刀――正確無比に、芸術品を破壊していく。
    壊されるたびにファーヒルの呼吸は荒くなり、その美しい顔にわずかな歪みが広がる。

    「……あなた……本当に……私の美を汚すつもり?」

    「汚すんじゃない」

    影刀の瞳が鋼のように光る。

    「お前の“弱さ”を斬るだけだ」

    刹那、影刀が跳び上がり、振り下ろした刃はファーヒルの長い爪を裂いた。
    割れた爪が散らばり、紅いマニキュアが飛び散る。

    「――――っ!」

    ファーヒルの全身が痙攣するように震えた。
    紅の口紅が歪み、瞳からは明らかに憤怒と恐怖が滲む。

    「私の……爪を……!」

    「効いてるな」

    影刀は低く呟き、刀を構え直した。
    だが、その瞬間――

    「……なら、仕方がないわね」

    ファーヒルの声色が変わった。

  • 4821◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:15:25

    深く、濃く、そして哀しみに似た響きを帯びる。
    彼女はドレスの裾を大きく翻し、宙に一枚のキャンバスを広げる。

    筆先から流れ出したのは漆黒の夜、煌めく星、そして冷たく輝く月。

    世界そのものが、油絵の中に沈んでいく。

    「――これがわたくしの最高傑作。
    星月夜《Lost the Starlight》」

    探偵事務所が、一瞬で消え失せた。
    そこに広がったのは、夢幻の星空の海だった――。

  • 4831◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:16:14

    視界が滲んだかと思えば、そこにあったはずの探偵事務所は影も形もなくなっていた。
    かわりに広がったのは、無数の星が瞬く蒼穹、月が冷たく輝く幻想の夜空――
    油彩の筆致が揺らめくように波打ち、地平までもが絵画に塗り替えられている。

    李影刀は、足元を見た。
    固いはずの床は、青黒い夜の海。
    星の光を映した波が揺れ、彼の姿をゆらりと映している。

    「ここは……」

    「芸術そのものの世界よ」

    ファーヒルの声が響く。
    振り返ったその場所には、彼女が佇んでいた。
    夜空を纏ったドレスを着て、星々の光をまるで宝石のように散りばめている。

    「星月夜《Lost the Starlight》。数世紀に一度の天才が描いた、永遠に失われない絵画。
    わたくしの芸術魔道具の中で、ただ一つ使い捨てではない宝物よ」

    彼女の瞳は月光のように輝き、声には抗いがたい力が宿る。

    「さあ……眠りなさい。あなたの刃は、美を汚すにはあまりに無粋」

    言葉と同時に、星が降り注ぐ。
    それはただの光ではなかった。
    触れた瞬間、記憶を抉り取るように心を侵食していく。
    影刀は息を呑んだ。
    視界に、死んだ恋人の影が現れたのだ。

    「……っ」

  • 4841◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:16:37

    あの夜の光景が蘇る。
    血に濡れた手、温もりが消えていく身体。
    彼の脳裏に焼き付いた、決して消せない記憶。

    「なぜ……斬ったの……?」

    恋人の幻影が問いかける。
    声は震えていた。涙が零れ落ち、彼の胸を締め付ける。

    「お前は……任務だった……」

    影刀の喉がかすれる。
    その瞬間、幻影がさらに問い詰める。

    「任務……? それだけで、私を殺せたの?」

    「……俺は……俺は……!」

    影刀の胸が熱くなり、握る刀が震える。
    心臓を直接掴まれたかのような痛み。
    星々の囁きは彼の心を覆い、刃を鈍らせていく。

    ファーヒルはゆっくりと歩み寄り、その姿を幻影と重ね合わせた。
    美しい悪魔の微笑が、恋人の面影と混じり合う。

    「ねえ、影刀。あなたは剣を振るうために生まれたのではないわ。
    作品を残すために生まれたの。わたくしがあなたを最高の芸術にしてあげる」

  • 4851◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:17:00

    指先が彼の頬に触れた。
    冷たいのに、甘美な熱が心を揺らす。

    「……やめろ……!」

    影刀は叫んだ。
    だが声は星の海に吸い込まれ、かき消されていく。

    星月夜の中で、現実と幻影の境界は完全に失われていた。
    剣士としての彼の心を縛りつけるのは、美と罪、そして後悔。

    刀を抜く力すら奪われ、膝が崩れ落ちる。

    「――眠りなさい、李影刀」

    ファーヒルが囁いた瞬間、無数の星が流れ落ち、彼を覆い尽くした。
    夢幻に囚われ、永遠に目を覚ますことのない牢獄へ――

    だが、そのとき。

    影刀の内に、熱が走った。

  • 4861◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:17:12

    冷たい幻影を切り裂くように、己の心臓が強く脈打つ。

    「……俺は……!」

    震える声が、夜空を割った。

    「俺は剣士だ……! 自分の意思で……斬ったんだ!」

    その言葉と共に、バイオ刀の柄を握る手に力が戻る。
    熱を帯びた鞘が震え、蒸気が滲み出す。

    ファーヒルの瞳が、一瞬鋭く細められた。

    「……まだ抗うのね」

    「俺は、お前に芸術品になどならない……!」

    影刀はゆっくりと刀を納め直し、構えた。
    蒸気が鞘口から立ち昇り、世界の絵筆を押し返すように熱を放つ。

    「……っ、居合……!」

    ファーヒルが低く息を呑む。
    影刀は目を閉じ、星々の囁きも、幻影の涙も断ち切るように、ただ静かに溜めを続けた。

    世界を塗り替える星月夜と、刀に宿る彼の自我。
    二つの力が、今、真正面からぶつかろうとしていた――。

  • 4871◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:17:52

    蒼穹を覆う油彩の夜空の中で、李影刀は刀を鞘に納め、微動だにせず立っていた。
    鞘口からは淡い蒸気が立ち上り、冷えた空気の中で熱気が揺らめく。
    居合の一撃――それは彼の唯一無二の切り札。
    だが放つには、十数秒もの溜めが必要だった。

    「愚かね」

    ファーヒルの声が星空に響く。
    夜の海を踏みしめ、ゆるやかに舞うように近づいてくる。
    その一挙手一投足が芸術そのものであり、同時に殺意に満ちた呪い。

    「わたくしの世界で、悠長に力を溜めるつもり? 星月夜は永遠よ。あなたの時間だけが有限」

    彼女が指を鳴らすと、星々が鋭い光線へと変わり、雨のように降り注いだ。
    それは矢よりも速く、剣よりも鋭い。

    ――だが影刀は動かない。

    「……!」

    星の光が頬を裂き、肩を貫き、血が飛び散る。
    それでも彼はただ立ち、刀を握りしめていた。

    「なぜ……避けないの?」

    「……俺は……剣士だ」

    短く答える声には、確固たる意思が宿っていた。
    幻影に惑わされることもなく、後悔に飲まれることもない。

  • 4881◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:18:24

    今ここに立つのは、誰の命令でもなく、自分自身の意思。

    「俺は俺の選んだ刃でしか……道を開かない」

    ファーヒルの美しい顔が歪む。
    その言葉は彼女にとって、最も醜悪で、理解不能な響きだった。

    「……なら、壊してあげる」

    彼女はドレスの裾を翻し、空へ両腕を広げた。
    次の瞬間、星々が砕け散り、巨大な絵画の断片が落ちてくる。
    それはまるで世界そのものが崩壊するかのような光景だった。

    「眠りなさい、李影刀! 美の牢獄の中で永遠に!」

    断片が雨あられのように降り注ぐ。
    空からは絵の具の奔流が流れ、波のように彼を呑み込もうとする。

    「……まだだ……!」

    影刀の呼吸が荒くなる。
    鞘の中で刀身が震え、蒸気が白く濃く膨れ上がった。
    熱気が油絵の世界を歪め、星々を滲ませる。

    「っ……!」

    ファーヒルの瞳が初めて動揺に揺れた。

  • 4891◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:18:34

    彼女の芸術世界に、ヒビが走っている――
    影刀の蒸気が、絵画の幻想を押し返し始めていたのだ。

    「俺は……お前の芸術品じゃない……!」

    その声は、夜空を割る咆哮となった。

    「俺は、自分の意思で斬る剣士だッ!」

    地鳴りのような音が広がり、鞘から迸る蒸気が炎のごとく吹き荒れる。
    ファーヒルは後ずさりし、星月夜の筆致が揺らぎ始めた。

    「……馬鹿な。ここはわたくしの世界……!」

    だが影刀は動かない。
    ただ一心に刀を握り、鞘を握り、そして心を澄ませていた。

    やがて――
    その一瞬を告げる音が訪れる。

    「……斬る」

    影刀が囁いた瞬間、空気が震え、世界が刹那止まった。

  • 4901◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:19:26

    世界は静止していた。
    ファーヒルの創り出した星月夜の世界も、砕け散る絵画の断片も、降り注ぐ星の矢も――すべてが一瞬、凍りつく。

    その静寂の中心に立つのは、李影刀。
    鞘に納められたバイオ刀は、白熱した蒸気を纏い、いまにも爆ぜんとする寸前だった。

    「……美を……否定するつもり?」

    ファーヒルの声が震えていた。
    だがその瞳は、なおも傲慢な光を失ってはいない。

    「いいえ、李影刀。あなたの刃こそ、美に属する一瞬の煌めき……」

    彼女が両手を広げると、夜空が再び塗り替えられ、絵筆の筆致が奔流となって迫る。
    星が割れ、月が崩れ、流星群が滝のように彼を押し潰そうとした。

    だが――

    「俺は……誰かに飾られるために生まれたわけじゃない」

    影刀はわずかに腰を落とし、鞘の中の刀に全てを集中させた。

    「俺の剣は……俺自身の証明だッ!」

    閃光。

    次の瞬間、蒸気が爆ぜ、轟音とともに刀が抜かれた。
    神速の居合――否、それは居合という概念を超えた「一閃」だった。

    白熱の蒸気が夜空を裂き、油絵の世界を断ち割る。

  • 4911◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:19:46

    星々は爆ぜ、月は砕け、闇の海が真っ二つに裂かれていく。

    「なっ……!?」

    ファーヒルが叫ぶ。
    その完璧な世界が、影刀のただ一撃によって粉々に砕かれていく。
    鮮烈な閃光が、彼女の身体をも飲み込んだ。

    「ぐっ……あ……!」

    ドレスの裾が焼け、化粧が剥がれ、髪が乱れる。
    それは彼女にとって、何よりも許されざる「醜さ」。

    「やめて……! わたくしの……美が……!」

    彼女は必死に叫ぶが、裂かれた世界は戻らない。
    絵画の断片が崩れ落ち、彼女の身体もまた亀裂に呑まれていく。

    最後に見せた彼女の顔は――恐怖ではなく、憤怒でもなく、
    ほんの一瞬の「憧憬」だった。

    「……美しい……」

    その言葉を最後に、ファーヒルの姿は砕け散り、無数の絵の具の粒子となって虚空へ消えた。

    ――世界が戻る。

    星月夜の油彩が剥がれ落ち、現実の瓦礫の街が姿を現す。
    影刀は静かに刀を鞘に収め、膝をついた。

  • 4921◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:19:58

    身体中が血に濡れ、傷は深く、意識も霞んでいく。
    それでも、その瞳は確かな光を宿していた。

    「……俺は……俺だ」

    呟きとともに、彼は夜風を受けて静かに目を閉じた。
    月が冴え冴えと照り、静寂が訪れる。

    戦いは終わった。
    美を喰らう悪魔は敗れ、ただ一人の剣士が、その存在を証明したのだった。

  • 4931◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 15:20:11

    以上

  • 494二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 15:21:23

    完璧だったぁ
    ちょっと理想を大きく超えて最高のシーンを書いてくれてマジに感謝です

  • 495二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 16:34:23

    かっこいいぃぃ!
    何だろう、読了感がめっちゃいいし、二人のやりとりもええ…

  • 496二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 17:57:58

    美の悪魔が在り方の美しさを認めて消えていく王道な締め方好き

  • 4971◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:51:35

    題名『夕闇の裁定者』

  • 4981◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:52:39

    夕焼けに染まる街道を、一人の男が歩いていた。
    深紅の髪が夕陽を受けてさらに赤く燃え、その黄金色の瞳は射抜くように真っ直ぐ前を見据えている。

    ――エース・R・リドル。
    人は彼をこう呼ぶ。『剣聖』と。

    正義を己の誇りとし、悪を決して許さぬ男。
    その背に揺れる剣は、今日もまたひとつの命を救い、あるいは断罪してきた証。

    「……嫌な気配だな」

    足を止めると同時に、彼の勘が告げていた。
    夕日が傾き、空に赤黒い雲が広がっていく。
    空気は次第に重く、肌に粘りつくような圧迫感を覚える。

    街道沿いの林の中。
    鳥は鳴かず、風も止んでいた。
    ただ――噂だけが耳元で囁かれるように、確かにあった。

    『日没の怪……』

    その名は、彼も聞いたことがある。
    姿を見た者は死ぬ。
    探ろうとした者は帰らない。
    語るだけで、来てしまう。

    「……なるほどな」

    エースは静かに剣の柄に手をかけた。
    太陽は今まさに沈みかけ、森の影が長く伸びていく。

  • 4991◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:53:07

    その瞬間――

    ぱち、と。
    最後の光が山の端に隠れた。

    世界から、光が消えた。

    「……っ!」

    エースの瞳に映るのは、完全な“闇”。
    松明も、月明かりすらも、すべてが押し潰されたように消えている。
    彼の体から生まれた黄金の輝きさえ、封じられていた。

    「これが……日没の力か」

    闇の中で、かすかな気配が蠢く。
    それは人ではない。
    獣でもない。
    ただ「死」を運ぶ存在。

  • 5001◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:53:19

    声はない。
    ただ低く湿った音が、暗闇の奥から近づいてくる。

    「……俺の正義は、どんな怪異にも揺るがねぇ」

    エースは剣を抜いた。
    刃が鳴り、夕闇を裂く音だけが響く。
    視界を奪われても、彼の勘と剣聖の技は健在だった。

    そのとき、
    背筋を凍らせる“視線”が彼を捉えた。

    ――見てはならない。

    直感が警鐘を鳴らす。
    もしこの怪の姿を視てしまえば、その瞬間、死。
    理屈も理由もなく、ただ死が確定する。

    「……面白ぇ」

    エースは低く笑った。
    剣先を闇に向け、ゆっくりと息を整える。

    「なら――俺は光が尽きるこの闇の中で、お前を断罪するまでだ」

    沈黙を裂くように、闇の奥から“それ”が現れる。
    音も、形も、名前すら不明。
    ただ、夕闇に潜む「死」の気配。

    そして――剣聖と怪異の戦いが、幕を開けた。

  • 5011◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:54:38

    世界は夜に沈んだ。
    だが、まだ月も星もない。
    “日没の怪”が現れた今、この暗黒はただの夜ではなく、光そのものが殺された虚無だった。

    エースの視界は完全に奪われていた。
    だが、剣聖の耳は鋭く、皮膚は空気の流れを感じ取る。
    そして何より――彼の直感が告げていた。

    「右前……!」

    刹那、エースは身体を捻り、剣を薙いだ。
    ギィィン、と耳障りな音が闇に響く。
    硬質な何かを剣で弾いた手応え。
    確かにそこに、存在がいた。

    「やっぱり……物理は効くんだな」

    “日没の怪”は声を発さない。
    代わりに、湿った空気が押し寄せ、背後から息がかかるような気配が迫る。

    エースは即座に振り返り、突きを放つ。
    だが手応えはなく、空を斬った。

    「……逃げたか。気配を追えねぇ……厄介だな」

    暗闇に音が散らばる。
    左、右、後ろ。
    足音のようで足音でない、ずるずると這う音が四方八方から迫る。

    エースは目を閉じ、心を研ぎ澄ませた。

  • 5021◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:55:15

    剣聖として鍛え上げた感覚を総動員し、この不可視の敵を迎え撃つ。

    だが、次の瞬間。

    ――ぞわり。

    脳髄をなぞるような寒気が走った。
    “視線”。
    この怪異にとって最大の殺意。
    視てしまえば死ぬ。

    「……なるほど、だから誰も生き残れなかったってわけか」

    姿を見れば終わり。
    だから視覚を頼らずに戦わなければならない。
    幸い、彼は勘に関しては人外の域にある。

    「俺には剣がある。それで十分だ」

    エースは低く呟くと、逆に目を固く閉じた。
    一切の光を拒み、自ら視覚を捨てる。
    代わりに研ぎ澄まされた感覚が、闇を照らす灯となる。

    「……来い」

    沈黙。
    やがて空気が揺らぎ、闇が渦を巻く。
    “日没の怪”が確かにそこにいる。
    音もなく、それは一息で距離を詰めてきた。

  • 5031◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:55:27

    ――刹那。

    エースの剣が煌めいた。
    刃が空気を裂き、何か硬いものを打ち砕く感触が伝わる。

    直後、暗闇が震えた。
    低く、耳障りな呻きのような音が広がる。
    “日没の怪”が初めて反応を示したのだ。

    「効いたな……!」

    エースは踏み込み、さらに追撃を放つ。
    だが怪異は深淵へと溶けるように姿を消した。

    闇の奥で、再び不気味な音が響く。
    まるで笑っているかのように。

    「逃げる気はねぇって顔だな……」

    エースは剣を構え直し、心中で呟いた。

    ――切り札を使う時が近い。

    だが、その発動には時間が必要だ。
    少なくとも五分、この暗闇で怪異の攻撃を凌がねばならない。

    「いいだろう……俺はここで、お前を裁く」

    深紅の髪が闇に揺れ、黄金の瞳が光を失ってなお揺るがぬ意思を宿す。
    剣聖と怪異の死闘は、いよいよ本格的に幕を開けた。

  • 5041◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:56:26

    闇は深まっていた。
    日が沈んでから、すでに数分。
    エースは目を閉じたまま剣を握り、暗黒の中で研ぎ澄まされた勘だけを頼りに立っていた。

    だが、その静寂を破るように――囁き声が響く。

    「……エース……リドル……」

    どこからともなく、自分の名が呼ばれている。
    それは懐かしい声でもあり、憎しみに満ちた声でもあった。

    「……お前が救えなかった者の声だ……」

    胸に刺さるような囁き。
    耳の奥で、幾千の亡霊が呻く。
    それは確かに彼の過去、剣聖として断罪してきた者たちの怨嗟だった。

    「……正義を掲げ、救えなかった命……」
    「……お前の刃に沈んだ者たちの……最後の声……」

    「ふざけるな」

    エースは低く吐き捨てる。
    握る剣が震えていたが、それは恐怖ではなく、怒りだ。

    「俺の剣は弱きを救い、悪を断つためにある。死んだ奴らは――その覚悟を背負っての結果だ!」

    闇の中に、笑い声のような気配が響いた。
    耳を塞いでも消えない。
    まるで頭の内側に直接流れ込むように、声は続く。

  • 5051◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:57:00

    「……噂を語る者は死ぬ……」
    「……お前も、もう手遅れだ……」

    エースは瞳を閉じたまま、しかし黄金の眼差しを想像するように眉を吊り上げた。

    「俺は誰かの噂に流されるために剣を握ってるわけじゃねぇ。俺の正義は俺が決める」

    その瞬間。
    足元の大地がぐらりと揺れた。
    噂に呼応するかのように、闇の底から巨大な気配がせり上がる。

    ――ドン。

    地響きのような衝撃が走り、エースの体が揺さぶられる。
    まるで暗闇そのものが形を持ち、獣のように動き出したかのようだった。

    「来るな……!」

    次の瞬間、背後から風を切る音。
    本能が警鐘を鳴らし、エースは瞬時に剣を振り上げた。

    ガァンッ!!

    火花のような衝撃が刃を伝い、全身に痺れるような衝撃が走る。
    “日没の怪”がついに本格的に攻撃を仕掛けてきたのだ。

    だが、その力は想像以上に重く、圧倒的だった。
    剣聖といえど、押し負けそうになる。

    「……チッ……ッ!」

  • 5061◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:57:30

    歯を食いしばり、エースは踏ん張る。
    切り札を発動するまで、あと少し。
    最低でも、さらに数分は持ちこたえねばならない。

    だが、闇の奥からまた囁きが迫る。

    「……逃げろ……」
    「……勝てない……」
    「……お前の正義は、無力だ……」

    心を抉るような声。
    恐怖を植え付ける噂。

    エースはそれを全て振り払い、声を荒げた。

    「黙れぇぇぇぇぇ!!」

    剣を振るい、気配ごと闇を裂く。
    金属を切り裂いたような硬質な手応えと共に、不気味な呻きが漏れる。
    “日没の怪”に傷を与えたのだ。

    しかし――それでも噂は止まない。
    耳を塞いでも、心を固めても。
    闇がある限り、囁きは続く。

    「……俺の正義は、俺が貫く」

    エースは再び剣を構え、深紅の髪を揺らした。
    暗闇に響く囁きを斬り裂きながら、彼はただ切り札の完成の瞬間を待つ。

  • 5071◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:59:29

    闇は深く、噂は止まない。

    「勝てない……」

    「お前の正義は無力だ……」

    その囁きは幾千の声となり、エースの心を蝕もうとする。

    だが、剣聖の瞳は閉ざされたままでも揺らがなかった。

    「俺は誰の囁きにも惑わされねぇ。
    俺の正義は――俺自身の中にある」

    低く呟き、エースは剣を鞘に納めた。
    この時点で、切り札【トランプofエース】の儀式は始まっている。
    剣が媒介。
    刃を静かに封じ、世界に勝利を刻むための五分間。

    その一瞬の隙を逃すまいと、闇が揺らいだ。
    “日没の怪”が蠢く。
    四方から迫る音、気配、湿った風。
    視れば死ぬ、だが見なくとも迫る“死”。

    「来いよ……俺を試すならな」

    エースは鞘を握り締め、全身を研ぎ澄ます。
    一撃でも致命傷を受ければ終わり。
    それでも、切り札を完成させるには剣を抜けない。

  • 5081◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 21:59:49

    ガァン――!

    鋭い衝撃。
    背後からの一撃を鞘で弾き飛ばす。
    火花が散り、暗闇の奥から呻き声が漏れる。

    「……お前が何者でも関係ねぇ。
    光を奪い、命を喰らう怪異だろうと――正義は必ず裁く」

    その言葉に呼応するかのように、鞘が淡く光を帯び始めた。
    黄金の粒子が零れ落ち、わずかに暗闇を裂く。

    ――眩い一筋の“正義の光”。

    日没の怪が呻き、闇が大きく揺らいだ。
    光は奴にとって唯一の弱点。
    わずかな光でさえ、その存在を削る。

    だが同時に、怪異の動きはさらに激しくなった。
    四方八方から襲い来る気配。
    一つを捌けば、次が迫る。
    それは絶え間なく繰り返される。

    「くっ……!」

    エースの身体に浅い裂傷が刻まれる。
    血が滲み、衣が裂ける。
    だが黄金の光は強まっていく。

    「――もうすぐだ」

  • 5091◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 22:00:12

    彼の声は確信に満ちていた。
    心は揺らがない。
    噂の囁きも、暗闇の圧も。

    「俺の切り札は……必ず届く」

    深紅の髪が揺れ、黄金の光が鞘を包む。
    闇と光のせめぎ合いが激化する中――
    エースは切り札発動の時を、確実に手繰り寄せていた。

  • 5101◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 22:02:25

    沈みゆく太陽は、すでに地平線の下へ。
    辺りを覆うのは、完全なる暗黒。
    その中でただ一つ、淡い黄金の光が鞘から漏れ出していた。

    それが――エースの【トランプofエース】。
    勝利を確定させる切り札。
    剣を媒介に、五分間の「溜め」を要する、究極の一撃。

    だが今はまだ“未完成”。
    光は弱々しく、暗闇に飲み込まれそうなほど小さかった。

    「……もうすぐだ」

    血を滴らせながら、エースは低く呟く。

    その周囲で、日没の怪がうごめいた。
    実体のない気配が無数に重なり、
    音なき呻き声とともに、四方から襲いかかる。

    ――ズシャァン!
    鋭い衝撃音。
    エースは鞘ごと剣を振り抜き、迫る影を弾き飛ばす。

  • 5111◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 22:02:56

    「視れば死ぬ……だからこそ、見ねぇ」

    彼は頑なに瞳を閉じ、気配と勘だけで全てを捌いていた。
    鍛え上げた反射、鋭すぎる直感。
    正義を揺るがぬ信念が、その集中を支えていた。

    だが、暗闇の中で囁きが響く。

    『お前は負ける……切り札など届かぬ……』
    『剣を抜く前に、お前は喰われる……』

    無数の声が、心を侵す。
    それはかつて罪を犯した者たちの声か、倒れた仲間の声か。
    真実は定かではない。
    だが確かに、闇は人の心を試す。

    「黙れ……!」

    エースの怒声が闇を震わせる。

  • 5121◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 22:26:32

    「俺は――俺自身の正義を信じている!
    この命が砕けようと、弱き者を護るために剣を振るう!
    それが俺の――“唯一の答え”だ!」

    黄金の光が、一際強く瞬いた。
    闇を裂く光柱のように、辺りを照らす。

    「ぐぅぅゥゥゥ――――」

    日没の怪が呻き、影が一瞬後退する。
    その光に焼かれるかのように、姿なき身体が軋んだ。

    そして――

    「来い、“切り札”」

    その言葉と共に、鞘を包む光が頂点に達した。
    剣が震え、世界がざわめく。
    まるで“勝利”という結果そのものが、現実へと降臨するかのように。

    ――【トランプofエース】。

    切り札が、今まさに解き放たれようとしていた。

  • 5131◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 22:38:06

    世界は暗黒に沈んでいた。
    日が落ち、月も雲に覆われ、光は完全に消え失せる。
    そこに残ったのは、ただ一つ――黄金の光を宿す剣のみ。

    エースの瞳が開かれる。
    その眼差しは燃えるように真っ直ぐで、
    黄金の光と同じく揺るぎなく輝いていた。

    「お前が何であろうと関係ねぇ。
    喰らい、奪い、囁きで人を殺す怪異だろうと……
    俺の剣は必ず、弱きを護るために振るわれる」

    ――カチリ。

    鞘から、音を立てて剣が抜かれる。

  • 5141◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 22:39:03

    その瞬間、辺り一帯に光が奔った。

    「断罪――」

    世界そのものが震える。
    光はただの光ではない。
    それは【勝利】を結果として引き寄せる切り札。
    どんな理不尽な力であろうと、
    必ず“エースが勝つ”という未来を強制する。

    「――【トランプofエース】!」

    振り抜かれた一閃。
    それは光の刃となり、暗闇を断ち割った。
    刹那、日没の怪の呻き声が四方に木霊する。

    「■■■■■■■■■■■■ッ!」

    声なき声が轟き、闇そのものが暴れる。
    だが、すでに遅い。
    光は“噂”すら断ち切り、
    見る者すべてを殺すはずの黒幕の存在を、消去する。

    ――斬撃が走る。

    視界を覆っていた闇が裂け、
    その奥に潜んでいた“正体なき影”が悲鳴とともに散った。

  • 5151◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 22:41:01

    光に呑まれ、存在そのものが削ぎ落とされていく。

    「正義は――ここに在る」

    エースの言葉と共に、
    黄金の光が世界を照らした。

    闇は消え、囁きは止み、
    残されたのは沈黙だけ。

    やがて光もゆっくりと収まり、
    ただ夜の静寂が戻ってきた。

    剣を納め、深紅の髪を揺らしながら、エースは呟く。

    「……安らかに眠れ。
    お前もまた、この世で生きることが苦しかったのなら」

    その声音は冷たくも、どこか優しさを含んでいた。

    正義の剣は振るわれ、
    “日没の怪”は――断罪された。

  • 5161◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 22:41:13

    以上

  • 517二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:42:09

    エースかっこいい!
    主人公版綺麗な剣神って感じで好き

  • 5181◆ZEeB1LlpgE25/09/26(金) 22:43:22

    安価は明日の11:00から10個募集

  • 519二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:45:40

    対戦ありがとうございました。
    やっぱり王道展開は良いのう…!

    今回キャラ概要で遊んでみたけどこうなるんだなぁ、AIさんすごい

  • 520二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:47:00

    >>519

    対戦ありがとうございます!

    日没の怪の本人概要が他とは違う感じでしたがこんな感じに出力されるんですね

  • 521二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:56:08

    トランプofエース強ない?

  • 522二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 23:00:00

    このレスは削除されています

  • 523二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 23:00:29

    明日か!
    うっかり今やっちゃった!

  • 524二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 05:35:27

    何にするかな

  • 525二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:00

    名前:安楽死観覧車
    年齢:不明
    性別:なし
    種族:不明
    本人概要:一つの国ほどの面積を誇る
    『死望遊園地』のひと区画にある観覧車
    子供向けに可愛い装飾で飾ってあり、それを見たものは観覧車に乗りたくなる
    能力:安楽行脚
    能力概要:これまでの人生の中で幸せだった瞬間を追体験する能力
    観覧車が進むごとに、記憶はより幸せなものになる、それと同時に乗客の生命力も失われていき、進めば進むほど体は動かなくなり、思考は鈍くなる。
    記憶を一つ体験した後、その記憶は乗客の頭の中から消去され、多大な喪失感に苛まれる。そんな時に再び幸せな記憶を流された乗客は、再び幸福を味わうために、そのまま乗り続けることがほとんどである。
    そして観覧車が一周した場合、乗客は幸福の絶頂に包まれながら確実に死ぬ
    この死は確定であり、どんな存在でもあの世にぶち込むことができる
    弱点:強い意志があれば幻覚から目覚めることができる
    元々幸せな記憶がない人間には能力が効かない
    観覧車から出ることができれば、能力の影響を受けなくなる
    要望(任意):最初に、「当観覧車に搭乗していただく誠にありがとうございます。ぜひ最期の景色をお楽しみください。」と言わせて下さい

  • 526二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:00

    名前:アンナ・スレイ
    年齢:76
    性別:女
    種族:人間
    本人概要:スレイパパの母親であり、ライブラリの最高評議会として日々働いていている。24歳のある日、調査員として就任した夫のペール・スレイ・Jr.に一目惚れし、猛アタックの末に結婚をした。豪胆で男気のある性格であり、ペールJr.や家族を引っ張っていたが、能力が暴走した義父の能力でペールJr.の正体が不明になり消えてしまった。アンナは落ち込み、半年泣き続け、一時は死のうかと考えたが、ペールJr.を想い踏み止まった。スレイパパが大人になるまでは死なないと思いながらシェレナが能力に支配されたスレイパパを見ることが出来ると分かると安心して別居を始めた。だが心の奥底では未だに救えなかったペールJr.のことを考えている。
    ペールJr.が残した二人の究極生命体を我が子として迎え、実子のスレイパパとその弟二人を区別せずに育て上げた。ビックマザー。
    非常に冷静で慌てることをせず、相手をよく観察して適切な行動をする。世紀の天才。
    能力:【スレイ家の教え】
    能力概要:隠れている存在、世界の理、誕生、秘匿された情報、真実、未来を暴くための超超超超凄い頭脳のこと。
    実は能力を持っていないが、この頭脳を能力と呼べるほどにこの頭脳は凄い。ありとあらゆる障害をはね除けながら真実を暴く。さらに、戦闘シミュレーションも可能。
    また、記憶力も高く一度見たり知った情報はどんなことがあろうとも、世界から消されたとしても覚えていられる。能力の発動時は24歳の姿に若返る。
    相手を精神的に追い込み、心を破壊する。
    弱点:若返ってもお婆ちゃんの身体能力。
    腰が弱く、背筋の伸びた立ち姿だが、実際には腰痛とふらつきをめちゃくちゃ我慢しているので、集中的に腰付近を攻撃されると一気に瓦解する。
    ペールJr.の情報を忘れないように、永遠に消えないようにという理由から一度に多くの情報は処理しない。そんなことをしたらペールJr.の記憶が朧気になるため。
    要望:一人称は「アタシ」、二人称は「君」か相手の名前に君付け

  • 527二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:00

    名前:遊月律歌(ゆうづき りつか)、ジェーンドゥ
    年齢:16
    性別:どちらも女性
    種族:人間、幽霊
    本人概要:律歌はストリートダンサーとして様々な大会で優勝している小柄な少女。しかし性格は冷静かつ冷淡、リズムにこそ乗るが協調性はかけており学校でも孤立気味。
    ジェーンドゥはそんな律歌にいつからか取り憑いている少女の幽霊。幽霊であるため律歌以外には見えない。律歌とは真逆の性格で、本当に幽霊かと疑いたくなるほど明るくお気楽でお調子者。その正体は律歌の姉である切音(きりね)であり、彼女の所持する神器のアバターとして律歌を支えている。なお、この事実を律歌は知らない。
    才能こそあれど勇気が足りず、一歩踏み出せない律歌。どんどん突っ走り、うっかりで失敗しがちなジェーン。凸凹としたコンビだがお互いに欠けた部分を埋め合いナイスコンビとして今日もストリートを熱狂させる。
    能力:ミラージュ・オブ・デュアルエッジ・リズム
    能力概要 : 律歌は対のヨーヨーである神器「イガリマ」(こちらにジェーンドゥは憑いている)と「シュルシャガナ」を用いてブレイキンのパフォーマンスをする。変幻自在のリズムとダンス、そして縦横無尽にコートを駆け廻るヨーヨーによって、リズムに乗れないパフォーマーは吹き飛んでいく。
    律歌とジェーンドゥの心のリズムがユニゾンし、最高潮に達した瞬間、2人は融合する。これがデュアル・イズム、最高のダンサーの絶対のリズム、誰もが魅了される前人未到のダンスである。
    イガリマとシュルシャガナは合体し“ZW(ザババウェポン)クロス・エッジ”に進化し、2人だけの独奏曲(カデンツァ)を世界に刻む。
    弱点:ジェーンドゥは幽霊なので塩が苦手。
    また、律歌は姉が死んだことがトラウマなため自動車がすごく苦手。
    デュアル・イズムモード時は胸に煌めくペンダント(切音の遺品)が要になっているため、それを破壊されると強制解除してしまう。

  • 528二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:00

    名前:王 龍青
    年齢:23歳
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:
    中華系マフィア『青港』の若頭。竹を割ったようなサバサバとした性格で仁義に厚いカリスマの塊のような男。
    抗争の際には自らが青龍刀を片手に相手の組織に殴り込みをかけ、その漢気と強さで周囲を魅了して組員を増やし、自身の組織を大きく育ててきた実績を持つ。
    犯罪の横行する裏社会に生きながらも漢らしく正々堂々とを主義としており、曲がったことは大嫌い。
    マフィア組織『青港』を結成したのも腐敗した政府を打倒するレジスタンス活動のため及び、裏社会を牛耳ることでクソみたいな治安の生まれ故郷を守るためである。
    戦闘においては鋭い踏み込みと唐竹割による一刀両断を一番の武器として機敏に立ち回る。
    能力: ≪晴天の青≫
    能力概要:
    澄み渡る空の如く自身に後ろ暗いことが無いという自信によって何事にも臆さず怯まない神色自若の精神を固める。
    これによって相手からの精神攻撃や幻惑といった干渉を完全に受けることなく自身のパフォーマンスを100%発揮することが出来る。
    物理的攻撃の無効化などは不可能なのが弱点。ただし、どのような攻撃に晒されようとも怯むことは無く、突破するための手段を冷静に見極めることが可能。
    弱点:
    ≪晴天の蒼≫で無効化できるのはあくまで精神攻撃や幻覚に限られ、物理的な攻撃は無効化できない。
    攻撃や戦法が直線的であるため回避されやすい。右目と右耳が欠けており死角がある。

  • 529二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:00

    名前:フルフィリング
    年齢:2万5000歳
    性別:オス
    種族:意味龍
    本人概要:概念が虚無に還る事も生命が虚無に還る事も物が虚無に還る事も己が虚無に還る事も至上の喜びだと認識している龍。意味を司る龍の一族であったフルフィリングが、己が司る意味であった充実がことごとく無意味になる瞬間に幾度も立ち会い、絶望した結果ニヒリズムに堕ち、充実の意味が反転し、虚無の意味を司るようになった。充実が虚無に反転する経緯が経緯な為に、充実はすぐにでも台無しにされると考えている。それ故にその充実を早めに打ち砕いて充実を得て幸せの絶好調後の落差の絶望を味わわせない様にとフルフィリングなりの善意で行動をしている。
    この龍にとって唯一屈辱なのは、圧倒的に強き敵対者に情けで生かされる事。それ以外で不快になる事はこの龍には無い。たとえ格下に負けようとも格下に情けで生かされる事でも屈辱にはならない。
    能力:《fulfilling》→《nihility》
    能力概要:元々はこの世のありとあらゆる存在を満たす為の力である《fulfilling》であったが、絶望し反転した為に、ありとあらゆる存在・物の現在・未来を虚無に還す力である《nihility》に変質をした。
    弱点:両の肩に逆鱗があり、そこが急所である。
    充実の意味を司る存在から虚無の意味を司る存在に変質をした為、相手の生命の危機にならない部位から虚無に還さないと《nihility》の使用が出来ない。
    充実を意味を司る存在から虚無を意味を司る存在に変質した為、心臓に位置する所の存在に穴が空いており、そこを突かれると《nihility》の使用が一時的に不可能になる。

  • 530二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:00

    名前:アクアちゃん!
    年齢:計測不能
    性別:女
    種族:始原精霊
    本人概要:水属性の精霊でとても純粋 世界に水という概念が生まれた頃から存在している
    頭が弱いのが特徴 性格は尊大だが何処か抜けている面があり親しみ易く喋り方は生意気な幼女
    能力:始原の水精霊
    能力概要:身体は水で構築されており物理ダメージを常時ほぼ無効化する 
    魔法や異能なども液体の身体なのを活かして自由自在に変形、動かして回避する事が可能
    また水を概念レベルで自由自在に操ったり(水のレーザー、水の刃、単純に超質力の攻撃、水の防壁)
    大気中から水分を集めたりも出来る
    水分を集めることの応用で相手の体液を全て吸収し死なせる可能 
    そして水があるところであればそこに転移可能(相手の体内になどは不可能)
    水で自分と全く同じ能力強さを持つ小さな分身も何個でも作成可能
    また水で出来た巨大な強力な水龍を奥の手で創り出す
    弱点:身体にコアがありそれを破壊されると死亡する
    体液吸収は触れる必要がある
    頭が弱く尊大な性格からか隙を見せやすい これは自分が有利な状況で有れば尚のこと隙が出てくる
    分身を作れば作るほど自分から攻撃をしない舐めプ状態になってしまい自分への攻撃が疎かになる
    周囲に【水がない環境】だと弱体化し 分身作成の数に制限、超質力の攻撃、水龍作成などが出来なくなる
    要望:一定の強さの相手では戦場を水がある場所にして欲しいです、

  • 531二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:00

    名前:ジャック・ディーラー
    年齢:666(外見年齢は20)
    性別:男
    種族:悪魔
    本人概要:賭け事を司る悪魔。漆黒のツノと矢のように尖った尻尾を持つ以外は人間と大して変わらない、白スーツの紳士の姿。普段は人間たちの賭博欲を煽動しつつ静かに勝負を見守り、自身が直接戦うことは決してなかったはずだが、対戦相手を「運命に逆らう者」とみなし、裁きを加えるために戦場に降臨する。
    能力:デッドマンズ・ポーカー
    能力概要:カジノチップを自身の武器に「賭けた」状態で攻撃すると、当たった場合は賭けた額に比例して威力が増大するが、外した場合はその分自分の体力が減る。
    逆に自身の体にチップを「賭けた」状態で敵の攻撃を避けると、成功した場合はスピードが強化されるが、避けきれなかった場合はダメージが倍増する。
    武器として、巨大なサイコロ型爆弾に鉄の鎖を付けた「ハードラック」を振り回す。
    「JAPANの賭場では負けた者はハラキリをするらしい」という知識から短刀(ドス)も隠し持っているが、剣術の心得など全くないため、投げつけたり鞘に納めたままで殴りつけたりというような滅茶苦茶な使い方。
    弱点:数百年間実戦経験なしだったため、シンプルに体力が乏しい。

  • 532二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:01

    名前:【死神】織神 源一(おりがみ はじめ)
    年齢:?
    性別:男
    種族:故人・式神・神
    本人概要:
    五歌たちの兄にして歴代最強の【死神】。久那土の全都道府県知事と全市町村長の役職を兼任しており、その人柄から住民にはかなり慕われている。
    人を助け寄り添い続ける神でありたいという想いから、普段は生者が死者の魂と会話できるようにしたりと魂の管理を色々やっている。
    先代【死神】との激闘で肉体が消滅してしまったが、魂のみで存在を保つことに成功。そのまま先代を倒して次代の【死神】となった。
    魂のみの存在となったことで魂についての理解度はさらに向上。魂に関する技術は他の追随を許さない。
    存在の同一性を保ったまま魂を分割するような常識外の離れ業も可能となり、今では元の魂を八百万に分けた無数の式神として生活している。
    肉体が無いのはめちゃくちゃ不便だが、これはこれでわりと便利ではあるらしい。
    自らがかけた封印により『魂魄式神』と『式神・先代【死神】』はほぼ使用不能なので『式神術』のみで戦闘を行う。
    「環境操作能力のみを使う紙製の式神1体との戦い」の認識でよい。
    能力:『式神術』
    能力概要:
    『式神術』
    通常の式神術を極めた結果、環境操作じみた芸当ができるようになった超絶技巧。
    周囲に存在する「魂を持たないもの」を自らの式神にすることができる。魂が無いなら武器でも建物でも式神にして操れる。
    『魂魄式神』
    神としての特権で自分に制限をかけたため、現在では生者相手には使えない。
    【死神】たる所以。相手の魂を無条件で自分の式神にする。魂を抜き取られた存在は仮死状態になり、式神となった魂は源一の支配下に置かれる。
    異能ではなく技術系の能力。努力と鍛錬で世界の法則を超越した神業であり、魂の分割ができるのもその腕前あってのもの。
    『式神・先代【死神】』
    死んでも増殖して復活するタイプなので式神にして封印中。使用不能。世界を滅ぼす存在だったが源一に倒された。それ以外の詳細は不明。
    弱点:
    ・八百万の個体全員が多忙を極めているため戦うのはその中の1体のみ。
    ・紙の式神に取り憑いているので火や水に弱く脆い。また明らかに肉弾戦にも不向き。
    要望:
    ・カタコトはやめてください。お願いします。

  • 533二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:13

    代理です
    名前:夢見草
    年齢:不明
    性別:無性
    種族:夢見草
    本人概要:佐藤家の敷地内に生えている謎の花、佐藤家の敷地の外にも生える時があるが一番多いのはそこ
    その正体はエルヴァニアとユメカナが共同で創造した眠りの花でありかのー家を守護する為に生まれたり眠りの草花
    佐藤家の敷地に咲く「一輪」という全ての夢見草の生命線である花が各地に種を飛ばし種が落ちた地面を中心に一帯に花畑を拡げる
    種が落ちた場所には「親花」と呼ばれるその一帯の夢見草に「一輪」から受け取った栄養を補給して花畑を維持する役割を持つ花がある
    ほのかな意志があるらしく創造主の「人間に良い夢を見せる」「佐東家を守る」という目的を受け継いでいる
    能力:眠り夢
    能力概要:この花を見たり嗅いだり触れたり感じたりすると強烈なまでの眠気が発生する
    時間経過と共に眠気は蓄積され千鳥足、幻覚、錯覚、幻聴、記憶混同、筋肉の弛緩、脱力、能力の不発等々がが起こる
    だがこの力はあくまで「強烈なまでの眠気の誘引」だけであり上記の症状は全て「眠気を我慢しているから起きる症状」である
    眠くなれば眠くなるほどに能力や言語、思考すらまともに出来なくなり夢の現実の境界線は薄れ自分が何をしてるのかも分からなくなる
    最終的には誰でも限界が来て眠る、眠りという概念がない存在でも眠らせ速やかに住処やおうちへ帰す、凄い良い夢が見れるそう
    弱点:範囲攻撃や炎に弱く直接的な攻撃性が低い(せいぜい千鳥足で転んだり眠すぎて見る幻覚や錯覚と戦って転ぶ程度)
    その一帯の親花を攻撃されて破壊されると一帯の夢見草は枯れてしまう、親花は分かりやすい
    物凄く眠くするだけの花なので直接的な攻撃手段はないに等しく相手が自滅するか眠気に耐え切れなくなって寝る以外の勝ち筋が無い
    時間経過で眠気が蓄積されるので最初の段階だと元気に動けるし花なので動けない
    要望:戦う場所は種が落ちて花畑が出来た山でお願いします

  • 534二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:16

    名前:白霜の主・コールグラス
    年齢:1000以上
    性別:無し
    種族:悪魔
    本人概要:白山羊の頭に獅子の鬣、巨人の肉体の大悪魔。用心深い性格で、戦い全般を好まない。そのため基本的に戦闘は己が創造した氷人形の執事悪魔グラスたちに任せることが多い。
    願いは平和に余生を過ごすことであり、自身が創造した異界の宮殿にて隠居中。娘の様に可愛がっていた配下がいたが、最近夢を叶えるため旅立っていった。その夢の行く末を見届けるまで彼は絶対に死ぬつもりは無い。
    大火の主フラムゴールの弟だが、兄弟仲は険悪。差し違えてでも始末するつもりだったが勝手に死んだので大爆笑、真価の主アルゲートから買った酒と馳走で祝宴をあげた。
    能力:絶零の氷却、風前の呪炎
    能力概要:絶零の氷却 コールグラスの強大な氷の力。世界全域が瞬時に霜が降り、海面が凍りつく程に寒冷化する。生じる氷は並の炎や攻撃では凍結速度が上回り、溶けることがない。最終的には世界規模で絶対零度。強すぎる力はただ在るだけで多大な影響を世界に与える。彼の隠居は己の力から世界を守るための自己封印でもあった。
    上記の凍結能力に加え、多彩かつ万能な氷魔術を使用。本体と同じ能力を扱う氷人形グラスを無数に創り出すことも可能。本人が最も得意とするのは守り、勝利より生存第一で動く。
    戦闘時は常にホワイトアウト状態で、姿を捉えることすら困難。捉えてもいつの間にか身代わり氷像と入れ替わり、氷霧の中へ姿を隠す。また極低温が肉体の動きを極端に鈍らせ、物体は凍結するため物理的に動きが阻害される。本人の身のこなしにも隙は無く、氷による鉄壁の防御やグラスたちによる援護と合わせて攻撃全てを捌き切る。
    ・風前の呪炎 兄の死に場所から回収した消えない呪炎“不死の炎”の残り火。本来の主を失い弱まっているが使い方次第。冷却した空間に火勢を高めた呪炎を放ち、呪いに塗れた大爆発を引き起こす。
    弱点:胸部にある氷に守られた蒼白い宝石が心臓であり核、破壊すれば致命傷。
    ・戦いに対する意欲がないため、本気にならない。攻撃も消極的。
    ・戦いに関して諦めが早く、十分余力を残していてもさっさと降参する。
    要望(任意):コールグラスは自分の異界から出る気が無いので、対戦相手の方から彼の異界に来た形でお願いします。
    対戦終了後、コールグラスが相手を元の世界へ帰します。穏便な決着希望。

  • 535二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:00:43

    すとっぷ

  • 5361◆ZEeB1LlpgE25/09/27(土) 12:04:01

    >>531

    もう少し弱点が欲しい

  • 5371◆ZEeB1LlpgE25/09/27(土) 12:09:15

    12:30まで待つので追加の弱点をお願いします

  • 538二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 12:18:25

    >>537

    シンプルに実践経験が乏しい為攻撃を当てる確率が低いとかはどうですかね? 

  • 539二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 12:20:04

    戦闘経験がない為 相手の工夫した攻撃や回避などのフェイントに引っかかってしまうとかはどうでしょう?

  • 540二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 12:20:08

    >>536

    巨大な鎖付きサイコロを振り回すとき体ごと重心が傾くので隙ができる

  • 5411◆ZEeB1LlpgE25/09/27(土) 12:32:47

    >>538

    >>539

    >>540

    dice1d3=1 (1)

  • 542二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 20:59:16

    保守してしんぜよう

  • 543二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 01:08:51

    このレスは削除されています

  • 544二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 07:45:14

    しゅ

  • 545二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 15:11:28

    今回はどんな対戦が見られるかな

  • 546二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 18:49:16

    wkwk

  • 547二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 22:52:10

    保守

  • 548二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 02:24:27

    このレスは削除されています

  • 549二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 06:25:34

    楽しみ

  • 5501◆ZEeB1LlpgE25/09/29(月) 09:23:32

    安楽死観覧車vsアンナ・スレイ
    遊月律歌&ジェーンドゥvs王 龍青
    フルフィリングvsアクアちゃん!
    白霜の主・コールグラスvs【死神】織神 源一
    夢見草vsジャック・ディーラー

  • 5511◆ZEeB1LlpgE25/09/29(月) 09:37:53

    丸一日空けてしまったお詫びになるかわかりませんが


    https://writening.net/page?xewAGy

  • 552二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 09:54:00

    ナイスです!
    提唱された説が否定されるのは世の常だからね…さもありなん

  • 553二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 10:22:07

    ギラついた目でいきなり地球平面説布教してくる女子高生がいたらビビっちゃうね

  • 554二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 10:50:36

    こりゃあトラウマになりますわ

  • 555二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 16:09:29

    >>551

    肯定者さんが絶対正しいって言ったら復活するのかな

  • 556二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 17:50:49

    【恐怖】地球平面説を布教してくる女子高生VSなんでも否定してくるアクティブニート!

  • 557二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 22:27:42

    >>551

    これはifストなのか過去なのかどっちなんだろ

  • 558二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 01:34:53

    このレスは削除されています

  • 559二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 07:51:29

    しゅ

  • 5601◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 12:48:39

    題名『至福と暴露』

  • 5611◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 12:51:11

    「当観覧車に搭乗していただく誠にありがとうございます。ぜひ最期の景色をお楽しみください。」

    その声は、柔らかく、優しく、まるで子守唄のように響いた。
    死望遊園地の中央広場にそびえ立つそれは、可愛らしい色彩で塗られた巨大観覧車。
    外見だけを見れば、夢と希望を詰め込んだ「子供の楽園」にふさわしい装飾だった。

    キャンディーのように甘い色合いのゴンドラが、空高くまで規則正しく並んでいる。
    イルミネーションは夜空の星よりも眩しく、まるでおとぎ話の一場面を切り取ったかのよう。
    観覧車の足元には、わたあめや風船を持った子供たちが集まり、手を引く親と一緒に列を作っていた。

    「お母さん! はやく! 早く乗ろうよ!」

    「ふふ、そんなに急がなくても大丈夫よ。ほら、順番を待ちなさい」

    親子の会話は明るく、幸福そのもの。
    列に並ぶ人々は皆、期待に胸を躍らせている。まるでこの観覧車に乗ることが、人生で最も大切な思い出になるとでも言うかのように。

    だが、誰一人として気づいていない。
    その幸福の微笑みが、確実に死へと導かれていることに。

    ――観覧車は、幸福を餌にする。
    乗った者に「人生で最も幸せだった瞬間」を追体験させ、その感情とともに生命力を吸い上げる。
    回転が進むごとに体は動かなくなり、思考は濁り、最後には幸福の絶頂で命を奪われる。
    逃れる術はただ一つ――“乗らない”ことだけだ。

    だが、甘い声に呼びかけられた人々は、その選択肢を忘れてしまう。

    「きっと素敵な思い出になるわよ」

  • 5621◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 12:51:49

    「……あぁ、楽しみだな」

    列の中からそんな声が漏れる。
    彼らは皆、子供のような目をしていた。幸福を疑うことなく、死への階段を昇っていく。

    その群衆を遠巻きに観察する影がひとつ。
    杖を持たずとも背筋を伸ばし、しかし腰を押さえながらゆっくりと歩く老女――アンナ・スレイ。

    彼女は群衆の最後尾で立ち止まり、観覧車を見上げた。
    白髪を後ろで束ね、冷たい眼差しで煌めくゴンドラを見据える。

    「……なるほど。これが“安楽死観覧車”ってやつか」

    低く呟くその声には、嫌悪と冷笑が混じっていた。

    「子供騙しみたいな外見で、人間の心を引きずり込む……。アタシが知ってるどんな怪物よりタチが悪いよ」

    彼女の脳裏に浮かぶのは、過去に出会った怪異や、命を奪う存在たちの姿。
    だがそのどれもが、ここまで露骨に「幸福」と「死」を結びつけはしなかった。

    アンナは深く息を吸い、吐き出した。
    腰は痛む。足も重い。だが引き返す選択肢など、最初から存在しない。

    「……さて。スレイ家の看板に傷をつけるわけにはいかない。ここはアタシが止める」

    観覧車のゴンドラが、ゆっくりと回り始める。
    光に包まれた人々の笑顔が、まるで祝福の儀式のように照らされていく。

    だがアンナ・スレイの目には、それは“処刑の光”にしか見えなかった。

  • 5631◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 12:54:24

    観覧車の扉がひとつ、またひとつと閉まっていく。
    柔らかなチャイムが鳴り、ゴンドラは空へと持ち上げられる。
    まるで祝福を受けるかのように、乗客たちの顔には笑みが浮かんでいた。

    だが次の瞬間――彼らの脳裏に光景が流れ込む。

    「……あれ、これ……」

    「うそ……私、若い頃の……!」

    幼い頃、父親と手をつないで遊園地を歩いた記憶。
    初めて恋をした日の胸の高鳴り。
    亡き祖母と囲んだ食卓の温もり。

    失われたと思っていた記憶が鮮やかに蘇り、乗客たちは思わず涙を流す。
    幸福は一瞬で心を満たし、全身を痺れさせる。

    「すごい……! これが観覧車の力なの……?」

    「もう一度会えるなんて……!」

    観覧車はその幸福を糧に、乗客から生命力を少しずつ奪っていく。
    それは自覚できないほど微細で、ただ“心地よい眠気”として体を包む。
    だが確実に、死へと近づいていた。

    ゴンドラがひとつ上へと進むたびに、より鮮やかな記憶が再生される。
    最初は小さな幸せ――遊びや贈り物。
    次は大切な出会いや成長の瞬間。
    さらに進むと、愛と絆に包まれた至福の時が訪れる。

  • 5641◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 12:54:36

    だが、そのたびに身体は鉛のように重くなり、声も出せなくなる。

    「……あ……れ……? 動け……ない……」

    「でも……幸せ……もっと……」

    そして恐るべきは、追体験が終わると、その記憶が頭から完全に消去されることだった。
    たった今まで味わった喜びが、跡形もなく奪われる。
    その喪失感はあまりに深く、乗客は思わず次の記憶を求めてしまう。

    「……今の……何だった? もう一度、幸せを……!」

    観覧車はその欲望を利用し、さらなる記憶を差し出す。
    人は抗えず、ただ幸福の連鎖に身を任せる。
    そして一周を終える頃には――幸福の絶頂で、命を散らす。

    アンナはその様子を下から見上げていた。
    群衆の笑顔。涙。恍惚とした表情。
    すべてが「死への行進」であることを、彼女だけが理解している。

    「……なるほどね。乗るごとに記憶を吸って、代わりに命を削る。あぁ……悪辣な仕組みだこと」

    腰に鈍い痛みを感じながらも、アンナは冷静に分析を続ける。
    彼女の目には、ゴンドラのわずかな揺れ、光の明滅、群衆の挙動すら“データ”として映っていた。

    「アタシは見抜いたよ。君(観覧車)の正体も、やり口もね」

    その瞳は、巨大な観覧車を射抜くように鋭く光っていた。

  • 5651◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 12:57:25

    観覧車のゴンドラは静かに回り続ける。
    だが、その可愛らしい姿とは裏腹に、乗客たちの身体は次々と力を失っていく。
    幸福に満たされた顔が、やがて生気を奪われてゆく様を、アンナは一部始終見届けていた。

    「……あれだけ幸せそうに笑っているのに、実際は命を削られている。まったく……“死”をこんな形で演出するなんて、悪趣味を通り越して芸術的だねぇ」

    彼女は腕を組み、背筋を伸ばす。
    その姿は威厳を感じさせるが、実際には腰に鈍い痛みが走っていた。
    だがアンナは顔色ひとつ変えない。
    痛みなど、思考を妨げる要素に過ぎないのだから。

    「観覧車……君の仕組みはもうだいたい分かった。幸福の追体験で意識を絡め取り、その代価として生命を削る。しかも体験した記憶を消去して喪失感を煽り、次を欲させる。巧妙だ。まるで依存症を作る毒と同じ構造さ」

    アンナの頭脳は回転を止めない。
    観覧車の回転速度、乗客の反応、消える記憶の順序。
    すべてを一瞬で整理し、理論立てて理解する。

    「けれど、抜け道はある……。強靭な意志を持つ者、あるいは“幸せな記憶を持たない者”には君は無力。ならば、ここから救う方法も存在するはずだ」

    彼女は目を細め、ゴンドラの窓に映る子供たちの笑顔をじっと見つめる。
    彼らの顔は幸福に包まれているが、その幸福は偽りであり、やがて死と引き換えに消えるものだ。

    「アタシは真実を暴く女だよ。世界が隠した情報だろうと、神が閉ざした秘密だろうと、暴けないものはない。……死望遊園地の“真の仕組み”も、いずれ暴いてみせるさ」

    アンナは観覧車に語りかけるように声を落とした。

    「君は人を殺す。だが同時に、人を幸福にする。その矛盾がアタシには気に入らない。……だから暴く。君の正体も、その意志もね」

    ゴンドラは夜空を背景に、きらめく灯りを散らしながらゆっくりと頂点に近づいていた。

  • 5661◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 13:23:54

    「当観覧車に搭乗していただく誠にありがとうございます。ぜひ最期の景色をお楽しみください。」

    再び響く甘美なアナウンス。
    だがその声は、まるでアンナに向けて挑発しているかのようだった。

    「……フン、アタシを誘うとは良い度胸じゃないか。君(観覧車)が何を望もうと、アタシはその“意志”を読み取る。忘れるな、アタシはスレイ家の女――真実を暴く者だよ」

    アンナは一歩、二歩と足を進め、観覧車の扉に触れた。
    その瞬間、世界が揺らぎ、甘い幻覚が彼女を包み込もうとする。

    ――若き日の姿。
    ――まだ夫ペール・スレイ・Jr.と共にいた頃の温もり。
    ――家族の笑顔、語らい、幸せな日々。

    観覧車は彼女の心の奥底に眠る“最も鮮烈な幸福”を掘り起こす。
    その光景はあまりに眩しく、抗い難い。

    「ペール……!」

    一瞬、アンナの声が震えた。
    胸を締めつけるような感情が溢れる。
    もしここに身を任せれば、永遠に夫と共にいられる――そう錯覚してしまうほどに。

    だが次の瞬間、彼女は奥歯を噛みしめ、幻を切り裂くように目を開いた。

    「……ああ、懐かしいねぇ。でもアタシは忘れない。ペールのことを、都合よく消されるわけにはいかないんだよ」

    観覧車はさらに力を強める。
    記憶を消そうとする力。幸福で塗りつぶそうとする波。

  • 5671◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 13:24:51

    だがアンナの頭脳は、すでにその仕組みを理解していた。

    「記憶を消す……? 笑わせるじゃないか。アタシは“どんなことがあろうとも覚えていられる”女だ。世界から消えようと、君が奪おうと、ペールの記憶はアタシの中に残り続ける!」

    観覧車の軋む音が、まるで怒りを示すように響く。
    鉄の巨体がきしみ、光が不気味に明滅した。

    「おお、怒ったかい? 良いねぇ、その反応。君にも意志があるという証拠だ」

    アンナは腰の痛みに耐えながら、毅然と立ち尽くす。
    幻覚が襲いかかろうと、彼女の眼差しは揺るがない。

    「君は“幸福”で人を殺す。アタシは“真実”で人を救う。……どちらが強いか、ここで決めようじゃないか」

    夜空を背景に、巨大な観覧車と老女が対峙する。
    観覧車は全てのゴンドラを煌々と光らせ、まるで戦いに備えるようにその存在感を誇示した。
    そしてアンナは、76歳の身でありながら、若き日の冷徹な光を宿した瞳で、それを真正面から見据えていた。

    幸福と真実――二つの意志が、今、真正面からぶつかり合おうとしていた。

  • 5681◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 13:29:36

    観覧車はうなりを上げて回転を速めた。
    ゴンドラの光は脈打つように明滅し、夜空全体を覆うほどの眩さを放つ。
    その中に囚われた人々は、もはや自分の意志を失い、ただ幸福の幻影に酔いしれていた。

    「見ろ……あれが“至福の牢獄”だよ。誰もが笑っている。だがそれは死の直前の笑みだ」

    アンナはその光景を見上げ、目を細める。
    観覧車は彼女をも引き込もうと、さらに深い幻を送り込んできた。

    ――ペール・スレイ・Jr.と再会する夢。
    彼の大きな背中、温かな声、力強い手のひら。
    ずっと望んできた幸福が、手を伸ばせば掴めるところにある。

    「アンナ……待たせたな」

    「ペール……!」

    胸が裂けそうなほどの感情が溢れる。
    彼に抱きしめられた幻は、あまりに現実的で、あまりに優しい。
    もしもこのまま身を委ねれば――二度と寂しさを感じることなく、永遠に幸福の中にいられるだろう。

    だが――アンナはその幻の中で、ふと目を細めた。

    「……君は、やっぱり偽物だね」

    幻のペールは笑顔を崩さず、優しい声を返す。

    「何を言っているんだ、アンナ。私は本物だ。ほら、触れてみろ――」

    アンナは首を横に振った。

  • 5691◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 13:47:16

    その瞳は冷徹に、観覧車の仕掛けを暴き出す。

    「ペールはそんな言葉をかける男じゃない。……アタシは知っている。君の嘘は暴かれる運命なんだよ」

    幻が砕け散り、周囲に無数の光片が舞う。
    観覧車が怒り狂ったようにギシギシと軋む音を立て、回転速度をさらに上げた。

    「フフ……必死だねぇ。けど無駄さ。アタシはどんな記憶も忘れない。どんな真実も見逃さない。君が削ろうとしても、ペールの存在は決して消えやしない!」

    彼女の体は老いに蝕まれ、腰も悲鳴を上げていた。
    だがその精神は鋼よりも固く、観覧車の能力を真正面から弾き返していた。

    やがて――観覧車の一巡が近づく。
    頂点に達したゴンドラは、幸福の絶頂を迎え、乗客たちは恍惚のまま静かに息絶えていく。
    光が散り、夜空に消えていくその瞬間。

    アンナは叫んだ。

    「君の仕組みは理解した! 幸福の連鎖で命を刈り取る。だが“真実を握る者”には効かない! アタシはその証明だよ!」

    観覧車全体が震え、きらめく光が不気味に明滅する。
    まるで巨大な意志が、初めて「追い詰められた」と感じているかのようだった。

  • 5701◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 13:49:37

    観覧車は一周を終えようとしていた。
    最後のゴンドラが地上に近づくにつれ、そこに乗っていた人々の身体はすでに冷たく、動かなくなっていた。
    だがその顔には、安らかな笑みが残されている。
    まるで永遠の眠りを幸福のまま受け入れたように。

    「……確かに、楽に逝かせるって意味では“安楽死”だ。だがアタシは騙されない。これはただの殺戮マシンだよ」

    アンナは観覧車を睨みつけ、杖も持たずに地面に踏みしめる。
    彼女の腰は限界に近く、痛みで足が震えていた。
    だがその瞳だけは、若き日と同じ鋭さを宿していた。

    「観覧車――君の役割は理解したよ。人を幸福にしながら殺す。それが存在理由なんだろう」

    すると、観覧車のスピーカーから再び声が響いた。

    「当観覧車に搭乗していただく誠にありがとうございます。ぜひ最期の景色をお楽しみください。」

    その声は冷徹でもあり、優しくもあった。
    誰をも抗えぬ“死の招待状”。

    アンナは首を振り、低く笑った。

    「フフ……最期の景色だって? アタシはまだ死なないよ。スレイ家の血を継ぐ者として、真実を見届けるまではね」

    観覧車の光が強まり、アンナを再び幸福の幻で包もうとする。
    だが彼女はその幻を拒絶し、己の意志で押し返した。

  • 5711◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 13:49:59

    「幸福は甘美だ。でもアタシにとって“真実”の方が重い。君がどんな幻想を見せようと、アタシはペールの記憶を忘れない!」

    観覧車の灯りがひときわ大きく明滅し――やがて静かに落ち着いた。
    まるで敗北を認めたかのように、光は優しく弱まり、機械のような軋みも止まった。

    アンナは深く息を吐き、腰に手を当てる。

    「……やれやれ、腰が限界だねぇ。けど勝ったさ。アタシは君に呑まれなかった。真実は――幸福より強い」

    観覧車は沈黙したまま夜空に立ち尽くしている。
    その存在は依然として死を招く装置であり続けるだろう。
    だが少なくとも今、アンナというひとりの女が、それに抗い、打ち勝ったのだ。

    彼女は振り返り、遊園地の闇を見渡す。
    そこにはまだ無数の謎と恐怖が眠っている。
    だがアンナの眼差しは揺るがなかった。

    「さぁ、次はどんな真実が隠されているのか……暴いてやろうじゃないか」

    夜風が吹き抜け、観覧車の影がゆっくりと地面に伸びていく。
    安楽死観覧車は再び静寂に包まれ、死望遊園地の闇へと溶け込んでいった。

  • 5721◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 13:52:26

    以上

  • 573二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 14:01:35

    強い女性でしたね

  • 574二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 14:08:19

    イケオバはやはりカッコいい

  • 575二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 14:19:46

    自身の記憶をもって抗うって良いよね…

  • 576二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 15:49:52

    対ありです!寂れた遊園地を想像してたんだけど、めちゃくちゃ盛況で笑った

  • 577二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 15:55:41

    麻薬が流行するのと同じ感じなのかな

  • 5781◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 20:56:25

    題名『青龍刀と舞い散る拍』

  • 5791◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:01:08

     夜の街。ネオンの光が濁った川面のように歪み、路地裏には安酒と煙草と血の匂いが染みついていた。

     その中心に歩く男――王 龍青。
     黒いスーツの上着を片腕に引っかけ、手に青龍刀を提げながら、真っ直ぐな歩調で雑踏を突き進む。その姿だけで周囲のチンピラどもは道を開けた。

    「チッ……また裏切り者か。
     この街は腐ってやがる。だが、オレが斬って磨き上げてやる」

     龍青の眼差しは蒼天そのもの。怯みも迷いも一切なく、ただ真っ直ぐに敵を見据える。

     そんな龍青の耳に、ふいに軽快なビートが飛び込んできた。
     ダンスバトルの掛け声、歓声、リズムを刻む足音。

     広場を覗くと、群衆が円を描き、その中心で一人の少女が踊っていた。
     小柄な体をしなやかに捻り、ヨーヨーを縦横無尽に操りながら、ビートに乗って舞う。

    「……なんだ、あの動きは」
     龍青が足を止める。

     観客を熱狂させるのは、遊月律歌。
     冷たい表情のまま、次々と難解なステップを踏み、ヨーヨーを武器のように振るう。だが、その背後からひょいひょいと覗き込むもう一つの影――明るくおどけた少女、ジェーンドゥが彼女に寄り添っていた。

    「律歌、律歌! もっと派手に回しちゃえ!
     青龍刀なんかに負けない、うちらの“リズム斬り”を見せてやろ!」

     律歌は観客ではなく、龍青の姿を一瞥した。

  • 5801◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:03:17

     冷たくも挑発的な眼差し。

    「……チンピラの親玉? 関係ない。
     邪魔するなら、吹き飛ばすだけ」

     群衆がざわめく。
     龍青と律歌、まるで相反する二つの存在が同じ空間に立った瞬間、空気が凍りついた。

    「面白ェ……
     臆さず睨み返すガキは久しぶりだ」

     龍青が青龍刀を肩に担ぎ、律歌はヨーヨーを握り直す。
     男と少女、マフィアとストリートダンサー。
     誰もが息を呑む中、二人の“物語”が交差し始めた――。

  • 5811◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:04:23

     観衆が息を呑んで見守る中、律歌はヨーヨーを宙に放った。
     紐が光を裂き、金属の輪が音を鳴らす。

     ――キィィン!

     ヨーヨーが龍青の頬をかすめ、風を切る鋭い音が路地裏を震わせた。
     彼女の冷徹な眼差しは、挑発も恐怖も一切なく、ただ舞うことに集中している。

    「……なるほど。遊びじゃねェな」
     龍青は薄く笑い、青龍刀を鞘から引き抜いた。
     刀身が街灯に反射し、冷たい蒼光を放つ。

    「来な。正々堂々とだ。オレの信条はそれだけだ」

     律歌は答えず、ただ足を踏み鳴らした。
     ――ダン!
     コンクリートに響いた一歩が、鼓動のように観衆の胸を打つ。
     ジェーンドゥが横で手を叩き、リズムを重ねる。

    「よーっし! 律歌、今夜のビートは“マフィア斬り”だね!」

     ヨーヨーが二つ、宙に舞う。
     イガリマとシュルシャガナ、対を成す神器が龍青に向けて高速で繰り出され、円軌道を描いて襲い掛かる。

  • 5821◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:07:39

     だが、龍青は怯まない。

    「そんな速ェもん……目を逸らせば当たる。
     だがな――オレの目は、蒼天だ」

     彼の心は≪晴天の青≫に包まれ、幻惑も恐怖も無縁。
     目の前のヨーヨーの軌道を冷静に読み、青龍刀で正確に弾き返す。

     ――ガキィンッ!
     ――ギャリッ!

     火花が散り、ヨーヨーと刀が衝突するたび、観衆は声を上げた。

    「すげぇ! あのオッサン、ヨーヨーを斬り返してる!」
    「律歌ちゃんの動きに追いついてるだと!?」

     律歌は表情を変えず、さらにステップを加速させた。
     ヨーヨーが複雑な軌道を描き、まるで空間ごと支配するかのように龍青を取り囲む。

    「……くっ」
     龍青は僅かに息を吐いた。
     直線的な攻撃を好む彼にとって、この多方向からのリズム攻撃は厄介極まりない。

  • 5831◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:09:58

     しかし、怯むことはない。

    「直線は曲線を貫くためにある……
     突破する道を見誤らなければ、勝ち目はある」

     龍青が踏み込む。
     一瞬で間合いを詰め、青龍刀が律歌のヨーヨーの鎖を叩き斬った。

     ――パシィンッ!

    「!」
     律歌の目がわずかに揺れる。
     だがすぐさまジェーンドゥが叫んだ。

    「ナイス反撃! でも律歌、次は合わせ技だよ!」

     二人の息が重なる。
     ヨーヨーの動きがさらに加速し、音楽と斬撃が融合していく。

     観客が総立ちになり、歓声が渦を巻く。
     漢の刀と少女たちのリズム――衝突の夜は、まだ始まったばかりだった。

  • 5841◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:16:02

     夜風が吹き抜け、ビルの谷間でネオンが瞬く。
     その光を切り裂くように、ヨーヨーの残光が宙を舞った。
     律歌の身体はしなやかに沈み、弾む。
     ブレイキンの動作が次々と繰り出され、ステップと共にヨーヨーが縦横無尽に駆け回る。

     龍青は蒼い瞳を揺るがせず、その全てを真正面から見据えていた。

    「幻惑も、恐怖も……効かねぇ」
     低く呟いた声は、鋼のように揺るぎない。
     ≪晴天の青≫が彼の心を晴れ渡る空に変え、リズムに飲まれることを拒んでいた。

     律歌は無言のまま、さらにヨーヨーを放つ。
     その動きは速すぎて残像が幾重にも重なり、観客には十数個の輪が舞っているようにしか見えない。

    「おおおおっ! あのオッサン……マジで全部見切ってんのか!?」
    「律歌ちゃんの“乱舞”を受けても怯まねぇ……化け物かよ!」

     観衆のざわめきを背に、龍青は深く踏み込んだ。
     青龍刀が振り下ろされる。

     ――ガキィィンッ!

     律歌のヨーヨーが正面から受け止め、火花が散る。
     その瞬間、律歌は腰を落として倒立し、逆さの視界からヨーヨーを地面すれすれに走らせた。

    「下か!」
     龍青は即座に気づく。
     だが、動きは直線的。横合いから滑り込むヨーヨーが右目の死角を突いた。

    「くっ……!」

  • 5851◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:42:23

    頬をかすめる刃のような衝撃。赤い線が走る。

     ジェーンドゥが快活に叫んだ。
    「いいねいいね律歌! 死角を突いたよ! ノリに乗ってる!」

     律歌の瞳に、かすかな光が宿る。
     冷静な氷のような視線が、今は確かな自信で揺れていた。

     だが――龍青は笑っていた。

    「ハッ……やるじゃねぇか、小娘。
     だがオレは、怯むどころか……燃えてくるぜ!」

     その声音は、まるで戦場の咆哮。
     血が流れても、彼の心は澄み渡る蒼天のまま。

     ヨーヨーの嵐と青龍刀の閃光が幾度も交差し、ビートと斬撃が夜の路地を揺さぶる。
     観衆は息を呑み、誰もが次の瞬間に目を離せなかった。

     ――蒼と音の交錯。
     勝負は、まだ均衡の中にあった。

  • 5861◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:43:15

     ヨーヨーが閃光の弧を描き、青龍刀が蒼い軌跡を走らせる。
     観客の歓声は次第に悲鳴に変わり、二人の激突は舞台を超えて街を呑み込むような迫力を帯びていた。

     律歌は息を整えず、むしろ乱れる鼓動をそのままリズムに変えていく。
     ブレイキンのステップは加速し、手の中のヨーヨーが自在の刃と化す。
     だが、その攻撃を龍青は一切怯まず受け止める。

    「まだ効かねぇのか……!」

     律歌が低く吐き捨てる。
     ジェーンドゥが笑って応える。

    「そりゃあ相手、精神攻撃ぜーんぶ無効だもん! でもさ律歌、私たちには“次の手”があるでしょ?」

     その言葉に律歌は一瞬、目を閉じた。
     胸元で煌めく小さなペンダントに、指先が触れる。
     それは姉――切音の形見。
     律歌の心が、そこでわずかに揺らいだ。

    「律歌……信じて。君は一人じゃない」

     ジェーンドゥの声が、彼女の耳に響く。
     冷たいはずの幽霊の声が、なぜか温かかった。

     ――その瞬間、二人のリズムが重なった。

     ヨーヨー「イガリマ」と「シュルシャガナ」が放つ光が、互いに共鳴し合う。
     宙を駆け巡っていた二つの円がぶつかり合い、そして――融合した。

     ――ゴォォォッ!

  • 5871◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:43:42

     光が炸裂し、観客たちは思わず目を覆う。
     律歌とジェーンドゥの姿が重なり合い、まるで一人の新たな存在へと昇華していく。

    「これが……デュアル・イズム」
     律歌の声が響いたが、そこにはジェーンドゥの明るい響きも混ざっていた。

     両手に握られたのは、新たな武器――
     ヨーヨーは進化し、融合の刃「ZWクロス・エッジ」へと変貌を遂げていた。
     光の双刃が唸りを上げ、律歌の周囲にリズムの渦を生み出す。

     龍青は一歩も退かず、その姿を正面から見据えた。
     血を流しながらも笑みを浮かべ、青龍刀を構え直す。

    「融合だろうが何だろうが……オレは退かねぇ。
     この青龍刀で、お前らのリズムを斬り伏せる!」

     新たな力を得た律歌とジェーンドゥ。
     そして、決して怯まぬ漢・王龍青。

     ここからが、真の死闘だった。

  • 5881◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:47:06

     夜の路地裏に、二つの力が激突した。
     一方は蒼天を背負った若きマフィアの漢、王龍青。
     もう一方は融合によって生まれた絶対のリズムを刻む存在、律歌とジェーンドゥ。

     ZWクロス・エッジが唸りを上げ、鋭い光の軌跡が龍青に殺到する。
     斬撃は舞のようでありながら、どれも実戦の刃。
     旋律と同化した攻撃は予測不能にうねり、容赦なく彼の死角を狙う。

    「ふっ……直線のオレには、厄介な相手だ」

     龍青は低く呟き、歯を食いしばる。
     右目と右耳が欠けている彼にとって、律歌たちの舞は死角を抉る連撃となっていた。

     ――ガキィィン!
     ――ギャリィィン!

     青龍刀が次々と刃を弾き返すも、頬や腕に無数の傷が刻まれていく。
     それでも龍青は怯まない。
     ≪晴天の青≫が彼の精神を支え、痛みも恐怖も霧散させる。

    「怯まねぇ……? 本当に……化け物だな」

     律歌の冷徹な声に、ジェーンドゥが重ねる。

    「だからこそ、最高の相手だよ! 全力で踊ろう!」

     二人の声が重なり、ZWクロス・エッジが巨大な光の刃に変わった。
     地を蹴る律歌。
     空中でスピンしながら、刃を振り下ろす――。

  • 5891◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:47:43

    「“独奏曲《カデンツァ》”!」

     轟音の一撃。
     路地裏が砕け、コンクリートの破片が宙を舞った。
     観衆は息を呑み、誰もが勝負の行方を見守る。

     しかし、その中心で龍青は立ち尽くしていた。
     血塗れになりながらも、背筋を伸ばし、青龍刀を真っ直ぐ掲げる。

    「オレは……道を切り拓くために刀を握った。
     退けば故郷は滅ぶ……負ければ仲間が泣く……
     だからオレは、直線の道を……斬り拓く!!!」

     彼が踏み込む。
     その一歩は、まるで大地を割るような踏鳴りだった。

     ――ザンッ!!

     青龍刀の唐竹割が、光の刃を真正面から叩き割った。
     律歌とジェーンドゥの合奏が一瞬、途切れる。
     鋭い蒼の閃光が、融合した二人を押し返していった。

     観衆が総立ちになる。
     リズムを超え、融合をも超えて――
     ただ一振りの漢の剣が、目の前の壁を突破したのだった。

  • 5901◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:49:06

     夜の街は息を潜めていた。
     砕けた路地の瓦礫、血の匂い、そして観衆の静寂。
     そこに残るのは、二つの存在――王龍青と、律歌&ジェーンドゥ。

     龍青は肩で荒く息を吐きながらも、背筋を伸ばして立っていた。
     身体は無数の傷に覆われ、血が流れ続けている。
     だがその眼差しは、一片の陰りもなく蒼天のように澄み切っていた。

     一方の律歌は膝を震わせ、胸に抱くペンダントが微かに光を失いかけていた。
     ZWクロス・エッジは形を保つが、その輝きは限界に近い。
     ジェーンドゥの声も、どこか掠れていた。

    「律歌……あと一拍だよ。
     最後の一拍で、あたしたちの全部を刻もう」

     律歌は瞳を閉じ、短く答えた。
    「……うん」

     次の瞬間、二人は駆け出した。
     律歌は舞う。倒立、スピン、跳躍――全ての動きをリズムに変え、クロス・エッジを振るう。
     彼女の舞は音楽そのもの、観衆の鼓動さえ巻き込む最終楽章だった。

     龍青は一歩も退かず、ただ正面から踏み込む。
     ≪晴天の青≫が彼を支え、痛みも迷いも全て霧散させる。
     青龍刀は真っ直ぐに掲げられ、空を割るような一閃の準備が整う。

    「漢の道は――直線だ!」
    「音の道は――自由だ!」

     叫びが重なり、二つの力が交差する。

  • 5911◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:49:28

     ――ズガァァァァァンッ!!!
    轟音が響き、光と蒼が爆ぜる。
     その衝撃は観衆を吹き飛ばし、ビルの窓を割り、夜空に閃光を刻んだ。

     やがて、静寂。

     瓦礫の中に、二つの影があった。
     律歌は倒れ込み、ペンダントが砕け散っていた。
     ZWクロス・エッジも光を失い、ただの金属の残骸となって転がっている。
     ジェーンドゥの姿は、薄い靄のように消えかけていた。

    「律歌……負けたけど……楽しかったよ」
     掠れた声に、律歌は涙を浮かべながら小さく笑う。

     一方で、龍青は血塗れのまま膝をつき、それでも立ち上がろうとしていた。
     満身創痍でありながら、その瞳には曇りがない。

    「……これが……お前らのリズムか。
     悪くねぇ……いい勝負だった」

     漢の道と、音楽の道。
     真っ直ぐと、自由。
     交わることのない二つが、確かに夜の街に刻まれた。

     そして観衆は知る――
     この夜、この街に響いた一拍が、伝説となることを。

  • 5921◆ZEeB1LlpgE25/09/30(火) 21:50:37

    以上

  • 593二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 21:52:18

    乙でした!真っ向からのぶつかり合いはやっぱ良いね!

  • 594二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 21:57:34

    >>「漢の道は――直線だ!」

    「音の道は――自由だ!」


    ここ好き

  • 595二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:01:52

    熱い引き分けだった

  • 596二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:18:46

    良かった!

  • 597二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 03:47:12

    引き分けは珍しいな

  • 598二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 09:01:35

    ほしゅ

  • 5991◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:20:58

    題名『虚無と水の遊戯』

  • 6001◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:22:58

    海のない大陸の端、古い港町の廃埠頭。朽ちた木材と潮風の匂いが混じり合い、そこだけは常に湿っていた。夜明け前の薄青い空が、遠くに残る水平線を淡く照らす。

    岸壁の先、揺れる波の上に、静かに巨大な影が現れた。

    「ふふん……これはまた、いい具合に水が揃ってるねぇ」

    声は幼いが、それは気だるく尊大な響きを含んでいた。水の身体が光を反射して揺れる。そこに立つのは――アクアちゃん!。始原の水精霊。全身は水の塊で、髪も服もない。無邪気に鼻先で一筋の潮を跳ね上げて、廃埠頭の水面を玩ぶように見下ろしている。

    彼女は自分がここにいる理由など、深く考えない。考えるより先に遊び、そして勝ち負けを楽しむ。だがその遊び心の奥底には、原初の強さが眠っている。

    対岸の暗がりで、世界が歪んだような重圧が広がる。空気が引き締まり、何か「意味」が崩れる音が遠くで鳴った。海面に浮かぶ泡が、ぷつりと弾ける。

    「ふむ……意味が、消える音か。面白い」

    その声は古く、何度も時を刻んだ金属のように乾いていた。姿は龍、その全身を覆う鱗は言葉や概念でできているように見え、瞳は深い淵のように暗い。存在そのものが虚無を讃えるかのような空気を放つ――フルフィリング。意味龍の一族で、かつては「充実」を司った。だが今は自らを快楽とするように虚無を撒き散らす。

    フルフィリングはゆっくりと海面に降り、鱗が水滴を弾くたびに辺りの意味が薄れていく。漁網の意味、錨の意味、さらには生きものたちが持っていた些細な期待すら、ふわりと色褪せる。観念が砂の城のように崩れていく。

    「おやおや。水がある場所だとは聞いていたが、これほど豊穣とは。いいだろう。君(アクア)よ、まずは“儀式”を始めようか。充実を、早めに崩すのはフルフィリングの礼儀だ」

    アクアちゃんは棒立ちでその声に首をかしげる。

    「なにそれー? 儀式って美味しいの? あたし、水で遊べればそれで楽しいんだけど!」

    フルフィリングの尾がゆっくりと振られる。尾の動きが作る波紋は、概念の輪郭を滲ませ、岸にいるカモメですら「飛ぶ意味」を忘れそうになる。だがアクアちゃんは無邪気に笑い、手をぱしゃんと叩いて水しぶきの小さな雨を作った。

  • 6011◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:23:56

    「さぁ、遊ぼうよ。水があるところじゃないとアクアちゃんイヤなんだもん!」

    フルフィリングは穏やかな嘲笑を漏らす。

    「哀れだ。満たされることが歓びであったはずの存在が、いつしか満たされれば満たされるほど無意味になると悟り、それを先取りして虚無を与える。君は水だ。水は流れ、消える。ならば君を最初に崩してやるのも趣深い」

    アクアちゃんはむっと頬を膨らませる。

    「むーっ! ふん、ならばとことん遊んでやる! 水でいっぱいにしてやるんだから!」

    その無邪気さは油断を誘う。だがフルフィリングはその油断を楽しむ。彼にとって、相手が余裕を見せること自体が最高の喜び――そして、崩す対象が多いほど満足が大きくなる。

    波の上で二者が睨み合う。月明かりが水面を銀に染め、アクアちゃんの体は揺らぎ、フルフィリングの逆鱗が暗く反射する。周囲の意味が薄れ、音や記憶の色が少しずつ剥がれていく。だが――水があるここは、アクアちゃんのホームフィールド。彼女は環境の主、そして水そのものを概念レベルで操る者だ。

    「ここなら、アタシが有利だね!」

    アクアちゃんは中心に跳び、手で波を掻き寄せる。水の壁が盛り上がり、廃埠頭を取り囲むように渦を描いた。小さな分身がぽこぽこと水面に浮かび、ぴょこぴょこと跳ね回る。
    フルフィリングはそれを見て鼻で笑った。

    「愉快だ。だがその“有利”は一時のもの。君の分身は量産できるだろうが、その意味の輪郭が崩れれば、やがて君自身の“水であること”の意味も淡くなる。充実は台無しにされるのが早ければ早いほど幸福の落差を避ける、というのがお前の理(ことわり)か」

    アクアちゃんは首をかしげる。

    「そんな難しいこと、頭がわるいあたしにはピンと来ないよー。でも、遊べるならいいの!」

    フルフィリングの瞳がぎらりと光る。

    「ならば――やらせてもらおう。だが、フルフィリング流の“遊び”だからね。君を“満たす”のではない。先に剥がすのだ」

    彼は両肩の逆鱗を軽く震わせる。そこに触れた海風が、周囲の意味をさらに薄める。アクアちゃんの分身の輪郭が一瞬ふにゃりと歪み、幻のように溶けかける。

  • 6021◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:24:23

    「いやーん、やめてー! 分身は消えないでー!」

    アクアちゃんは必死に水を集めて再生しようとする。だが水分はあれよあれよと奪われ、波の形は崩れ始める。水の塊が一つ、また一つと無意味な蒸気のように薄れていく。

    「ほら見ろ。君が何度作っても、“意味”が薄れれば、それはただの湿り気に過ぎなくなる。満たされることの快楽は、先に砕くほどに君の喜びを短くするのだよ」

    アクアちゃんの顔に、初めて焦燥の色が走る。だがすぐにまた彼女はふっと笑ってみせる。

    「うーん、それでも遊ぶっ! アクアちゃん、水をいっぱい作るの得意なんだもん! いっぱい作ればきっと負けない!」

    波紋が増幅し、海面の反射がばらばらに震える。フルフィリングは静かに口元を緩め、尾を一撫でして更なる波を送り出す。だが彼の側にも制約がある。心臓に位置する部位の“穴”があること、そして肩の逆鱗が急所であること。彼はそれを忘れない。勝負の均衡はまだ壊れていない。

    二者の小さな静寂が切れ、夜風が吼えた。泡沫が砕け、空気の圧が変わる。これから始まる戦いの合図だ。

    「準備はいいかい、アクア」

    「いいよ! あたし、水で世界ごと遊ばせてあげるんだから!」

    水の匂いが立ち上り、廃埠頭は戦場へと姿を変える。虚無を望む龍と、純真な水の精霊のぶつかり合い――その波が、やがて世界の意味の輪郭を揺るがす。

  • 6031◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:54:15

    廃埠頭を囲む海が荒れ狂う。
    アクアちゃんが両手を広げると、潮は唸りを上げ、次の瞬間には巨大な水の龍が形成されていた。鱗一枚一枚が波紋を刻み、瞳は青白い光を宿している。

    「じゃーん! アクアちゃん必殺の“水龍ちゃん”! これで遊んであげる!」

    無邪気な声とともに、水龍は海を裂いて突撃する。大気を揺らし、海水を巻き上げ、津波のような奔流がフルフィリングへと牙を剥いた。

    フルフィリングはその光景を淡く笑う。
    彼の喉奥から洩れる息は重く、意味の膜を削る。

    「水の龍か……。だが、その“龍であることの意味”を失わせれば、ただの水の塊に還る」

    フルフィリングの尾が閃く。
    ――《nihility》。

    虚無の力が波の一部に触れる。瞬間、水龍の顎が白く霞み、崩れ落ちる。龍の咆哮がひしゃげた音に変わり、形を保てぬまま一部が波に溶けていった。

    「えーっ!? せっかくの水龍ちゃんがぁ!」

    アクアちゃんは慌てて両手を振り、水を再び掻き集める。崩れた龍の首が再生を始めるが、その輪郭はどこか薄い。虚無がじわじわと意味を剥ぎ取っているのだ。

    「愉快だな。君の力は確かに原初の強さを誇る。だがその強さに込められた“遊び”や“楽しみ”といった意味は、早めに砕かれるほど価値を失う……。ならば私が、君の充実を台無しにしてやろう」

    フルフィリングの鱗が軋み、両の肩に輝く逆鱗が微かに震える。そこから放たれる虚無の圧力は、海面を白く漂わせ、波が泡立ち、分身たちが一瞬で霧散した。

    「ぎゃーっ!? アタシのちっちゃいアクアちゃん分身たちがー!」

    幼女のような声で叫びながらも、アクアちゃんの目には怯えはない。

  • 6041◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:54:36

    むしろ楽しげに笑みを浮かべていた。

    「だったらもっといっぱい作ればいいだけだもん!」

    海面から一斉に、無数の分身が泡のように飛び出す。小さなアクアたちがきゃっきゃと跳ね回り、水刃を次々と形成してフルフィリングへと飛ばす。

    フルフィリングはその光景を見ても微動だにしない。
    瞳に映るのはただ、「それらが無意味に還る瞬間」への喜び。

    「来るがいい……その刃にどんな意味を込めようとも、虚無の中では全て平等だ」

    龍の翼が大きく広がる。
    空気が震え、意味が剥がれる。アクアの分身が触れた瞬間、刃も体も薄れ、音もなく崩壊していった。

    だがその虚無の薙ぎ払いの最中、海中に潜んでいた本体のアクアちゃんが水の流れと同化し、龍の懐に迫る。

    「えーいっ!」

    小さな掌がフルフィリングの腹部に触れた瞬間、水流が逆巻き、相手の体液を吸い出すような力が走る。

    「ほう……体液を吸収する力、か」

    フルフィリングは一瞬身を仰け反らせる。だが次の瞬間、彼の胸に空いた“穴”が青白く光り、そこから虚無の波動が逆流する。

  • 6051◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:55:41

    アクアちゃんは弾かれるように海へと叩きつけられ、水飛沫を派手に上げた。

    「いったぁぁぁーい! もう、なにそれズルい!」

    海面から顔を出したアクアちゃんはぷくっと頬を膨らませる。

    フルフィリングの目が細くなる。

    「君の力は侮れぬ。だが君が“楽しむために作る攻撃”は、必ず隙を生む。虚無は隙を好む。君が笑えば笑うほど、その意味を削りやすくなる」

    「むーっ! アタシの遊びにケチつけないでよー!」

    アクアちゃんが再び両手を突き出すと、海面全体が一瞬で盛り上がり、まるで巨大な渦が逆巻くように戦場を飲み込もうとする。水柱が天へ突き上がり、廃埠頭ごと渦の底に引きずり込む。

    フルフィリングはその中心で、悠然と構える。
    鱗が意味を剥がし、虚無の渦が水の渦と正面からぶつかり合う。

    「水よ、消えろ」

    「消えないもん! アタシの水は遊びの証なんだから!」

    虚無と水。
    消す者と遊ぶ者。
    港の夜明けは、二つの相反する存在のぶつかり合いで、轟音と光の渦に飲み込まれていった。

  • 6061◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:56:24

     渦巻く海原の只中で、二つの力は拮抗していた。
     フルフィリングの虚無の波動は触れるものの“意味”を剥ぎ取り、アクアちゃんの水はそれでも形を変え、何度でも押し寄せてくる。

     虚無が押し寄せる。水龍の鱗が白く霞み、波が形を失っていく。
     だがすぐさま、アクアちゃんは両腕を突き上げ、海流を別の形に編み直す。水龍が崩れれば、水刃となり。水刃が虚無に呑まれれば、無数の分身が生まれ出る。

    「にしし! アタシの水は無限なんだよー!」

     分身のアクアたちが一斉に声を揃えてはしゃぎながら、虚無の龍を取り囲む。水のリズムは遊びの延長でありながら、戦場を支配する力強さを持っていた。

     しかしフルフィリングは、その楽しげな声を聞きながらも淡々と呟く。

    「……その無限に見える水も、“遊び”や“喜び”という意味を宿している。
     君が無邪気に舞えば舞うほど、私はそこから虚無を引き出せる。
     ――君は、自分の無邪気さで自分を滅ぼす」

     翼を大きく広げたフルフィリングの身体から、無色の光が奔る。
     その波動に触れた瞬間、分身たちが「きゃっ」と声を上げて霧散した。数十、数百という分身が一瞬で掻き消され、ただの海水に戻る。

    「ちょ、ちょっと!? アタシの分身ちゃんたちがぁぁ!」

     アクアちゃんが慌てて新たに分身を作り出そうとするが――その瞬間、彼女は不意に虚無の波動の中に微かな“引っ掛かり”を感じた。

    「……あれ?」

     目を凝らすと、フルフィリングの胸部。心臓の位置にぽっかりと空いた空洞が、光を吸い込むように輝いている。そこだけは虚無の波動が途切れ、奇妙な歪みを生んでいた。

  • 6071◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:56:44

     アクアちゃんは首を傾げ、分身に囁くように小声で呟いた。

    「ねぇねぇ、あそこって弱点じゃない?」

     分身たちも小声で囁き返す。
    「たぶんそうだよー!」「コアってやつ?」「ねぇ、突っついてみよーよ!」

     無邪気なやり取りを、フルフィリングの鋭い瞳が射抜いた。

    「……見たな」

     虚無の龍の声が、深い海溝のように響いた。
     その瞬間、フルフィリングの両肩の逆鱗がぎらりと光る。そこから放たれる虚無の奔流が、波を抉り、空気を裂いた。

    「君に知られることは構わぬ。だが覚えておけ――虚無を前にして弱点を突くことは、君の“遊び”には似合わない」

     アクアちゃんは唇を尖らせ、挑発するように叫んだ。

    「ふーんだ! 弱点とか関係ないもん! アタシは遊びたいから遊ぶの! だから……狙っちゃうけどねー!」

     叫びと同時に、海中から複数の水刃が噴き出す。
     それらはすべてフルフィリングの胸の穴を狙っていた。

     フルフィリングの虚無の波動がそれを削ろうとするが――水刃の一つが、確かに心臓部の空洞に触れた。

  • 6081◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:57:10

    「……!」

     瞬間、虚無の波動が途絶える。
     フルフィリングの巨体が僅かに揺らぎ、その場で軋んだ。

    「やったーっ! 弱点見つけちゃったもんね!」

     アクアちゃんが海上で飛び跳ね、両手を振る。無数の水柱が一斉に噴き上がり、次の一撃の準備を始めた。

     フルフィリングの瞳は、初めて揺らいでいた。
     その口元に、かすかな笑みが浮かぶ。

    「……善い。君はやはり、虚無に堕とす価値がある」

     虚無と水。
     互いの弱点をちらつかせながら、戦いはさらに深く激しさを増していく。

  • 6091◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:58:16

     海原を割る轟音。アクアちゃんが両手を掲げると、周囲の海水は彼女の意思に応じて暴れ出し、十重二十重の水刃と水柱がフルフィリングへと襲い掛かる。

    「いっけー! アクアちゃんスペシャル水まつりだー!」

     水刃は雨のように降り注ぎ、波濤は槍のように突き立ち、渦巻く潮が龍の巨体を締め上げる。
     フルフィリングの胸部の空洞に幾度も刃が触れ、虚無の波動は途絶を繰り返す。

     虚無の龍は確かに揺らいでいた。

    「はぁ、はぁ……どーだーっ! ほらほら、アタシ強いでしょー!」

     アクアちゃんが息を切らせながらも自慢げに笑うと、分身たちも周囲で跳ね回る。
    「勝った勝った!」「もう虚無も怖くない!」「水最高ー!」

     その無邪気な歓声に、フルフィリングの蒼黒の瞳が細められた。

    「……やはり隙を見せるな。君の“遊び”は、すぐに充実を台無しにする」

     フルフィリングの声は静かだった。
     次の瞬間、両肩の逆鱗が裂け、そこから奔流のような虚無が噴き出した。

    「っ――!?」

     アクアちゃんの分身たちが一斉に触れられ、声もなく泡に変わって消える。
     海そのものが色を失い、青が抜け落ち、灰色の泡沫と化していった。

    「な、なにこれ……!?」

     慌てて水龍を再生させようとするアクアちゃん。
     だが、虚無の奔流は水龍の形を削り取る。鱗が剥がれ、翼が崩れ、ただの水塊へと還っていった。

  • 6101◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:58:50

    「君は確かに強い。だがその強さは、“楽しむための強さ”だ。
     ならば私が、その楽しみごと無意味にする」

     フルフィリングの巨体が突進する。
     虚無を纏った尾が、アクアちゃんの小さな身体を叩きつける。

    「きゃぁぁっ!!」

     海面に激突し、水飛沫が爆ぜる。アクアちゃんの身体は波と同化しつつも、胸元のコアがぎらりと光を反射する。そこへ迫る、虚無の牙。

    「終わりだ」

     その言葉に、アクアちゃんは涙目になりながらも、負けじと叫んだ。

    「終わんないもん! アタシまだ遊んでないもんっ!!」

     水飛沫が一斉に逆流し、彼女の身体を包み込む。
     次の瞬間、彼女の周囲からいくつもの分身が再生され、海そのものが盾のように盛り上がった。

     虚無と水が、再び激突する。

     しかしアクアちゃんの表情は、さっきまでの余裕ある笑みではなかった。
     ――無邪気な遊びの裏に、初めて焦りが見えていた。

  • 6111◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 15:59:51

     灰色に染まる海。
     フルフィリングが吐き出す《nihility》の波動に触れる度、世界から色が消えていく。
     青空も、海のうねりも、分身たちの笑い声も――次々に意味を失い、虚無に還っていった。

    「はぁ……はぁ……や、やだ……遊びたいのに……何もなくなるなんて……」

     アクアちゃんは震えていた。
     尊大に胸を張る余裕も、子供っぽい笑顔も、今はない。
     だがその目だけは、負けを受け入れてはいなかった。

    「水は……なくならないよ……! だってね……世界があるかぎり、どこにでもあるんだからっ!」

     その瞬間、彼女の身体が蒼白に輝いた。
     水の精霊の核――始原のコアが震え、全ての水に呼びかける。

     海が吼えた。
     空気中の水蒸気が集まり、雲は黒く裂け、雨が大地を叩く。
     遥か地の底からも、地下水脈が沸き立ち、すべてがアクアちゃんの元へと奔流した。

    「こ、これは……!?」

     フルフィリングの巨眼が揺れる。

  • 6121◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 16:00:38

     虚無の波動に侵されていた水が、アクアちゃんの輝きに応じて色を取り戻していく。

    「アタシはね、水そのもの! 流れて、広がって、どんなものでも包み込むんだよっ!!」

     小さな両手を広げる。
     その背後から現れたのは――大海をそのまま具現化したかのような、蒼き超巨躯の水龍だった。
     フルフィリングと同等、いやそれ以上の威容。

    「……《オリジン・オブ・ウォータードラゴン》……!」

     フルフィリングは唸る。
     彼女の幼さの奥に眠る、始原精霊としての本性が、今ここに顕現していた。

    「やっぱり……君は“楽しむための強さ”だ。だが、その強さを守り切れるのか――」

     フルフィリングは逆鱗をさらに裂き、虚無の奔流を全力で解き放った。
     大海そのものを塗り潰す、絶望の力。

    「アクアちゃんが……全部包み込んであげるもんっ!!」

     水龍が咆哮する。
     奔流の虚無と、始原の水の奔流が、世界の中心でぶつかり合った。

     轟音は空を裂き、大地を震わせた。
     虚無と水が絡み合い、互いの存在を飲み込み合う。
     その境界で――アクアちゃんの幼い声が、必死に響いた。

    「消えちゃダメ! アタシの遊びは、終わんないんだからぁぁぁっ!!」

  • 6131◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 16:01:53

     轟音の奔流。
     虚無の波動と、水の奔流が混ざり合い、世界は白と蒼の狭間に引き裂かれた。

     虚無はすべてを削り取る。
     水はすべてを抱き込む。

     対極の二つが衝突した時、時間さえ軋み、天地が崩れ落ちるかのようだった。

    「……クッ……!! なぜ……抗える……? 虚無は必ず全てを呑み込むというのに……」

     フルフィリングは咆哮しながらも、圧倒的な力を前にほんのわずかに押し返されていた。
     虚無を意味とする彼の力でさえ、始原精霊の膨大な水の根源には穴があった。

    「だって……アクアちゃん、バカだからっ!」

     アクアちゃんは涙目で叫んだ。

    「難しいこと、いっぱい考えられないし、世界が消えるとか、意味がなくなるとか……よくわかんない!
     でもね……遊んで楽しいの! それでいいの! アタシの水は……遊ぶためにあるんだぁぁぁっ!!」

     その叫びとともに、彼女の水龍が大きく口を開き、虚無をも飲み込む勢いで噛みついた。

    「――――!!」

     フルフィリングの巨体が揺らぎ、肩の逆鱗に水龍の牙が深く食い込む。
     そこから虚無が砕け、波動が霧散していった。

  • 6141◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 16:02:06

    「ぐ……ふは……なるほど……それが……君の“充実”か……」

     フルフィリングの巨大な身体が崩れ落ちる。
     虚無を司る龍は、最後にほんの僅か――満たされたような眼差しを浮かべていた。

    「勝者に情けをかけるな……どうか、トドメを……」

     それは、彼にとって唯一の屈辱を避けるための、最後の願い。
     だがアクアちゃんは首を振った。

    「やだもん。アクアちゃんはね、遊びたいだけ。君がいなくなったら、もう遊べないでしょ?」

     虚無の龍は沈黙し、やがて笑った。
     虚無を愛し、絶望を善意とした存在が――ほんの一瞬、充実を感じていた。

    「……いいだろう。遊び続けるがいい。……フルフィリングの、敗北だ……」

     巨体が霧散し、虚無の波動は静かに消え去った。

     海に残ったのは、小さなアクアちゃんの声。

    「えへへ……やっぱりアタシ、強いんだね! でも、もっと遊んでほしいなぁ……!」

     その声は、どこまでも無邪気に響いていた。

  • 6151◆ZEeB1LlpgE25/10/01(水) 16:02:19

    以上

  • 616二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 16:19:42

    元々充実の意味を司る存在であったフルフィリングが最後の所で充実を得たのが良かった!!

  • 617二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 16:34:38

    アクアちゃん推定40億才とは思えない可愛さ

  • 618二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 16:35:29

    良かった!

  • 619二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 16:37:42

    水の概念的存在か……

  • 620二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 16:50:18

    アクアちゃんすこすこすこすこ!

  • 621二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 16:55:43

    >>620

    ドピュ

  • 622二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 22:06:19

    保守

  • 623二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 01:03:27

    このレスは削除されています

  • 624二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 07:45:47

    ほしゅ

  • 625二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 12:07:05

    保守

  • 6261◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 18:15:05

    題名『氷宮にて交わる魂』

  • 6271◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 19:57:41

     白一色に閉ざされた世界。
     大地は凍りつき、空は霞むような白霧で満たされ、すべてが時を止めたかのような静寂に沈んでいた。

     その中心に聳えるのは――氷の宮殿。
     果てのない氷壁と氷柱で築かれた異界の城であり、外界から隔絶された場所。そこにて隠居しているのが、大悪魔白霜の主・コールグラスであった。

     白山羊の頭、獅子の鬣、そして巨人のごとき体躯。だが今、その巨体は重厚な椅子に沈み、穏やかに息を吐いている。

    「……また、来客か」

     低く響く声。
     外界からの気配を感じ取り、彼は鬣を揺らした。

     白い霧を裂くように、静かに現れたのは――一枚の紙人形。
     ひらひらと舞い降りた紙片の中に、異様なほど濃い気配が宿っていた。

     それは式神。
     そして、その式神に宿るのは――【死神】織神源一の魂の分霊だった。

    「ご機嫌よう、白霜の主」

     紙片から放たれる声は落ち着き、威圧ではなく柔らかな響きを持っていた。
     だがその背後には、無数の魂を見守り続けてきた“死神”としての気配が確かに漂っている。

     コールグラスは、わずかに目を細めて応じた。

    「戦を求めて来たのなら帰れ。アタシは戦いなど好まん」

  • 6281◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 19:58:15

    「いや……私も戦を望むわけではない。ただ、氷の静寂に触れてみたいと思ったのだ」

     互いに争いを欲さぬ者同士。
     だが、この氷の宮殿に満ちる空気は、一瞬で張りつめた。

     ――戦う気が無くとも、相手を測ろうとする本能だけは止められない。

  • 6291◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:10:10

     氷の宮殿の大広間。
     白銀に輝く大理石の床が広がり、天井からは鋭い氷柱が垂れ下がっている。微かに立ち込める冷気は、ただ立っているだけで生者なら肺を凍らせるほどだった。

     その中央で、二つの異質な存在が対峙する。

     片や――椅子に腰かけ、悠然と見下ろす巨体の大悪魔・白霜の主コールグラス。
     片や――一枚の紙人形に魂を宿す式神・織神源一。

     沈黙の後、先に動いたのは源一だった。

    「――起きろ」

     その声に応じて、大広間に存在する無機物たちが震えた。
     壁を飾る氷像、柱に刻まれた装飾、果ては床に散らばった氷片すら――紙のようにひらめき、源一の式神となる。

     氷の装飾たちは動き出し、まるで命を吹き込まれたかのように舞い踊る。
     氷の宮殿そのものが、源一の意志で操られているようだった。

     対するコールグラスは、深い吐息をついた。

    「式神術、か……なるほど、魂を持たぬ物を操る術。だが――」

     巨体を揺らさず、指先を軽く振る。
     瞬間、氷の床から無数の人影がせり上がった。

  • 6301◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:11:12

     それは彼の従者、氷人形グラス。
     生み出されたグラスたちは、冷たい瞳を源一へと向ける。

    「アタシの創りし者どもも、また“魂なきもの”。お主の力で奪えるものなら奪ってみせよ」

     氷の従者と、式神と化した氷像。
     互いに命なき兵を操り、宮殿の中で舞踏のような攻防が始まった。

     ――氷と紙がぶつかり、砕け、散る。
     ――砕けてもなお、再び形を取り戻し、戦い続ける。

     源一は冷静に観察していた。

    「……やはり、魂のないものを創り出すことにおいて、貴殿は私に匹敵するな」

     その言葉に、コールグラスは小さく笑った。

    「褒め言葉と取っておこう。だがな……アタシは戦いに興味はない。本気で遊んでやる気もない」

     そう言いつつも――氷霧が濃くなり、視界は次第に白一色に閉ざされていった。

     ホワイトアウト。
     源一の紙の式神すら、姿を見失いかける。

     だが――死神は微笑みを崩さぬ。

    「見えなくとも……聞こえる。魂無きものの足音も、氷がきしむ響きも」

     氷の悪魔と、紙の死神。
     互いに殺意ではなく、ただ相手を確かめ合うような攻防が、静かに繰り広げられていった――。

  • 6311◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:32:54

     空気が、鳴った。

     低い音を立てて、大広間そのものが急激に冷えていく。
     壁面にびっしりと霜が張りつき、天井の氷柱が一瞬で肥大化し、床石がきしんで砕ける。

     絶零の氷却――。

     コールグラスが動いたわけではない。ただそこに“在る”だけで、世界が凍りついていく。

    「……これは、たまらないな」

     源一の紙の身体にも、凍結の兆候が走った。紙が白く凍り、端から崩れかける。
     それでも彼は落ち着いて、手をかざす。

    「氷も……また、“魂なきもの”。ならば――」

     ――ひらり。

     凍りついた床石が、氷柱が、式神となって立ち上がる。
     源一の術により、凍結すらも操り手となった。
     だが――。

    「甘いな」

     コールグラスの巨体がわずかに揺れ、指先を鳴らした。
     瞬間、源一の式神となった氷が、まるで存在を否定されるように粉々に砕け散る。

    「それは“アタシの氷”だ。お主の式神にはならぬ」

     氷の支配権。

  • 6321◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:33:08

     この異界は、彼の宮殿であり、世界そのものが彼の領域。
     魂なき氷を操る権利は、死神の技量を以てしても、完全には奪えなかった。

     源一は微笑を崩さない。

    「なるほど……環境を丸ごと相手の権能下に置かれると、私の式神術も制限されるわけだ」

     氷霧が渦を巻き、源一の紙の身体をかき消そうとする。
     凍結した空間が迫り、存在を押し潰さんとする。

     それでも――紙の死神は、声を放った。

    「だが、私は“魂”を視る。氷そのものに魂はなくとも……あなたが創った“従者”には、心の欠片が宿っている」

     次の瞬間、氷人形グラスの動きが一瞬止まった。
     源一の術がその“欠片”に触れたのだ。

     コールグラスの目が細められる。

    「……やめろ」

    「安心しろ。奪うつもりはない。ただ……確かめてみたいだけだ」

     源一の声は静かだった。
     氷霧の中で、氷の悪魔と紙の死神。互いに退かず、ただ力を試し合うように。
     だが次の瞬間――。
     轟音と共に、コールグラスの胸奥で“風前の呪炎”が脈打った。
     白き氷の世界に、蒼黒い火が走る。

    「……アタシを弄ぶなよ、死神」

  • 6331◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:34:02

     蒼白に凍りついた宮殿の空間を、唐突に黒炎が裂いた。

     ――風前の呪炎。
     それは炎でありながら凍えるほど冷たく、同時に灼熱のような苦痛をもたらす矛盾の火。
     兄フラムゴールの死地から持ち帰った残り火が、今ここで咆哮した。

    「……っ!」

     紙でできた源一の身体が、一瞬で焼け爛れる。
     凍結した空間を破壊するように広がる呪炎は、ただ存在するだけで魂を蝕む。

    「なるほど……魂に干渉する火か」
     
     苦痛に満ちた声で、しかし源一は笑んだ。
     紙の式神は次々と燃え落ち、彼の姿は崩れかけている。

    「……それでも、“魂そのもの”ではないな」

     源一の指が、燃え散る紙の端を摘んだ。
     すると燃え落ちたはずの紙片が舞い上がり、再び彼の式神として形を取り戻す。

    「魂を視る者にとって、これはただの“呪いの炎”。奪えぬものではない」

     コールグラスの目が鋭く細められる。
     呪炎は彼にとって最後の切り札。自ら望んで放つものではない。

    「……やはり、戦いは好かん」

     彼の声には、疲れが滲んでいた。

  • 6341◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:34:16

     その瞬間、源一が言葉を投げる。

    「なぜ……戦う意欲がないのに、ここまで力を隠して生きる?」

    「……余生を、平穏に過ごしたい。それだけだ」

     氷の悪魔は静かに答える。
     だがその胸の蒼白い宝石が、わずかに震えていた。
     守るべきもの――旅立った娘のような存在の夢を、見届けるまで。

     源一は目を細めた。

    「なるほど。あなたの魂は、確かにまだ“生きている”。」

     呪炎が収まり、再び白い霧が支配する。
     しかしその冷たさには、どこか安堵の色が混じっていた。

     コールグラスは肩を落とし、ぽつりと呟く。

    「……降参だ。もうよいだろう」

    「戦いの勝敗など、私にとっては些末なことだ。
     だが……その心を聞けただけで十分だ」

     そう告げる源一に、コールグラスは僅かに笑った。
     氷の悪魔と紙の死神――その対話は、戦いの先で初めて成立したのだった。

  • 6351◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:34:52

     氷霧に包まれた宮殿の大広間。
     戦いの気配はすでに失せ、静謐な空気が流れていた。

     氷像の執事悪魔グラスたちが姿を現し、主であるコールグラスの周囲を取り囲む。
     彼らは敵を討つ構えを見せることなく、ただ深々と礼をしていた。

    「……見届けるべき夢がある。私はそれまでは生きねばならん」

     コールグラスの言葉は、戦いを終えた安堵と、揺るぎなき決意を帯びていた。

     源一は紙の式神の姿で、淡く微笑む。
     その存在は今にも消え入りそうに儚いが、声はしっかりと響いていた。

    「ならば安心するがいい。
     あなたの魂が折れることは、決してない」

    「……死神の口からそう聞けるとはな」

     ふと、氷の巨躯が笑みをこぼした。
     悪魔と神――立場も生き様も違えど、この瞬間だけは心が触れ合った。

     コールグラスは両手を掲げ、氷の宝石が淡い光を放つ。
     空間に裂け目が開き、そこに現れたのは黒と白の境界。

    「これは……元の世界への道か」

  • 6361◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:35:05

    「そうだ。お前は忙しい身だろう。早く帰れ」

     淡白な声音に込められたのは、不器用な優しさ。

     源一は短く頷き、扉の前に立つ。
     去り際にふと振り返り、最後の言葉を投げかけた。

    「――また会えるなら、次は酒でも酌み交わそう」

     その言葉に、コールグラスは鼻で笑った。

    「……ああ。だが氷しか出せんぞ」

     二人の笑い声が、凍てついた宮殿に微かに響いた。
     そして次の瞬間、源一の姿は裂け目の向こうへと消えていった。

     残されたコールグラスは、深く椅子に腰を下ろす。
     その胸の宝石は穏やかに脈打ち、静かな光を放ち続けていた。

    「……平穏とは、やはりよいものだな」

     独り言のように呟きながら、彼は再び長い隠居の日々へと身を沈めていった。

  • 6371◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:35:39

     源一が帰還した後、氷の宮殿には深い静寂が広がっていた。
     戦いの余韻はすでに消え、ただ白き霧と霜が残るのみ。

     大悪魔コールグラスは椅子に深く腰を沈め、ゆっくりと瞼を閉じた。
     胸の宝石は安らかな光を放ち、彼の内に燃えていた戦意を完全に鎮めていた。

    「……あの死神、妙な男だったな」

     戦いに来たはずが、終わってみれば互いに笑みを交わして別れている。
     兄を嘲笑し、世を呪うことすらあったこの悪魔にとって、それは予想外の結末だった。

     執事悪魔の一体が静かに現れ、銀の盆を差し出す。
     そこには氷で作られた杯が二つ。中には澄んだ雪解け水が注がれていた。

    「……一人分で十分だ」

     そう呟きながらも、彼は杯を手に取った。
     ふともう一つの杯を見つめる。そこには、かつて旅立っていった“娘のような存在”の姿が重なった。

    「夢を追え。お前がどこにいようとも、私はここで待っている」

     氷の杯を掲げ、一人静かに祝杯をあげる。

     遠い異界では、源一が再び多忙な日々に戻っているだろう。
     だがこの氷宮殿には、穏やかな時が確かに流れていた。

     戦いは終わった。
     残されたのは氷の静寂と、心に残る一抹の温かさ。

     ――それこそが、白霜の主コールグラスにとって最大の勝利だった。

  • 6381◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:35:53
  • 639二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 20:41:08

    このレスは削除されています

  • 640二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 20:41:28

    いいお話だった
    氷と紙片という静かな存在ってこういう感じだと思うの

  • 641二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 20:41:30

    このレスは削除されています

  • 6421◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:42:37

    題名『夢を賭ける花。』

  • 6431◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:42:54

     そこは人里離れた山の斜面。
     淡い紫色の花が一面に咲き誇り、夜風に揺れるたびに甘やかな香りが漂っていた。
     それは人を眠りへと誘う――夢見草の花畑。

     花畑の中心にはひときわ大きく咲く「親花」があった。
     月光を浴びて淡く光るその花は、この一帯の夢見草の心臓であり、支柱であった。

     そんな山中に、不釣り合いな音が響く。
     ――カラカラと乾いた音。
     白いスーツのポケットから零れ落ちたカジノチップが、花弁の上に跳ねた音だった。

    「……なるほど、これが“夢見草”か」

     漆黒のツノを持つ男、ジャック・ディーラーは微笑んだ。
     白いグローブの指でチップを弄び、月夜の空を見上げる。

    「眠らせる花。戦いを拒む花。だが運命は、賭けなければ動かん」

     その声を合図にするかのように、夢見草の花々が一斉に揺れ始める。
     風は吹いていない。それは意志を持つ花たちが、侵入者を迎え撃つための呼吸だった。

     甘い香りがさらに濃くなり、空気は柔らかく霞んでいく。
     眠気の波がじわじわと悪魔を包み込み、意識を削ろうと迫った。

    「フッ……この勝負、俺の運に賭けるぜ」

     ジャックは鎖につながれたサイコロ爆弾「ハードラック」を振り上げた。
     チップを数枚指に挟みながら、賭場のように軽快に指を鳴らす。

  • 6441◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:43:05

    「さあ、夢に沈むか……それとも、俺の賭けに沈むか」

     静かな花畑は、突如としてギャンブルと眠気が交錯する戦場へと変わっていった。

  • 6451◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:43:30

     ジャックは肩で鎖を巻き取り、巨大なサイコロ爆弾「ハードラック」を振り回した。
     空気を裂く重低音が響き、花弁が舞い散る。

    「まずは賭け金を置くとしよう」

     彼は指に挟んだカジノチップをひとつ、自身の武器に“賭け”た。
     その瞬間、ハードラックは淡い光を帯びる。
     ――当たれば威力増大、外せば自身が削れる危険な博打。

     振り下ろされたサイコロ爆弾が地面を抉り、夢見草の花畑が吹き飛んだ。
     しかし――。

     どこまでも静かに、淡々と、花々は揺れ続けていた。
     花畑は燃えもせず、ただ彼の周囲を淡く霞ませていく。

    「……っ、これは……」
     ジャックは無意識に目を擦る。

     視界がわずかに揺れる。
     花の香りが、肺を満たすごとに頭を鈍らせていく。
     眠気が――確かに忍び込んでいた。

    「フフ、面白い……。この俺に眠気を賭けるか」

     彼は再びチップを抜き出し、今度は自らの胸元へと押し当てた。
     「回避に賭ける」。
     もし花々の幻惑を避けきれれば、その分速度が増す。

  • 6461◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:43:40

     しかし――足元の花畑はすでに彼の平衡感覚を奪い始めていた。
     千鳥足。視界の揺れ。音が二重に響く。

    「……クク、これは、なかなか効くな……!」

     それでもジャックは笑った。
     眠気に沈む危うさすら、彼にとっては賭場の興奮。

     花々の幻惑と、悪魔の博打。
     勝負の第一手は、互いの得意分野を真正面からぶつけ合う形で幕を開けた。

  • 6471◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:44:13

     ジャックの足取りは、明らかに先ほどよりも重たかった。
     サイコロ爆弾「ハードラック」を振るたびに、わずかに軌道がずれる。
     彼の体を包む白スーツに、花粉がちらほらと積もり、淡い香りを放つ。

    「……っ、ふ、ふはは……いいぞ……。眠気に抗えば抗うほど、勝負は深まる……!」

     彼は笑いながらチップを取り出し、再び賭けを行う。
     今度は「攻撃力強化」に賭ける。
     眠気に沈む自分を奮い立たせるように、サイコロを全力で振り下ろした。

     ――だが、振り抜かれたはずの軌道は、夢見草の花畑の幻影を叩き割るばかり。
     本当にそこにあったのは“花”だったのか、それとも彼が見た“幻”だったのか。

     地面は抉れた。だが、確かな手応えはない。
     空気は揺らぎ、花弁は舞い散る。

    「外した……っ!? ぐ……!」

     体の芯に痛みが走る。
     外れた賭けは、そのまま彼自身を削る。
     呼吸が荒くなり、膝がわずかに折れる。

     対する夢見草は――何もしていない。
     ただそこに咲き、香りを漂わせ、眠気をじわじわと積み重ねるだけ。

     ジャックの視界が揺らぎ始める。
     花畑の中に、カードテーブルが見えた。
     椅子に座ったディーラーが笑っている。

  • 6481◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:44:29

     ――それは幻だと、わかってはいる。

    「……はは……。俺が……負けるか……? こんな花畑相手に……!」

     眠気に揺らぎながらも、彼はまだ立っていた。
     だがその賭けは、着実に彼を削り続けている。

  • 6491◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:45:19

     ジャックの意識は、すでに半ば夢と現の境界に落ちかけていた。
     足はふらつき、握るサイコロ爆弾「ハードラック」の鎖が地面を擦り、甲高い音を立てる。

    「……くそ……っ……目を……覚ませ……! 俺は……運命を……操る……ディーラーだ……!」

     彼は自分を奮い立たせるように、再びチップを取り出した。
     今度は――「回避」に賭ける。
     この眠気を突破し、花畑を抜け出せれば勝ち筋はある。そう信じて。

     しかし、その刹那。
     視界の端に、赤いドレスを着た女が見えた。
     グラスを傾け、ウィンクを送る――カジノで散財した客の一人。

    「……お前は……ここにいるはずが……」

     幻だ。わかっている。
     だが、脳はそれを現実のように捉えてしまう。
     彼はその影を避けようと身を捩じらせ――

     ――バランスを崩した。

    「ぐ……あぁぁッ!」

     回避に賭けたチップが、裏目に出る。
     避けられなかった瞬間、体へのダメージは倍加し、全身を灼くような痛みが走った。

     白いスーツが破れ、膝をつく。

  • 6501◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:45:30

     額からは冷や汗、あるいは花の露か。
     夢見草の花々はただ揺れ、淡い香気を漂わせる。

     花畑は静寂に包まれていた。
     けれど、その静寂こそが最大の攻撃だった。

     ジャックの呼吸は荒く、眼差しは霞んでいく。
     その瞳の奥に映るのは、カードの山、チップの輝き、カジノのざわめき。
     彼は――花畑にいるはずなのに、賭場の夢に囚われていた。

    「……まだだ……まだ……俺は……負けていない……」

     震える手でチップを握りしめながら、彼は必死に言い聞かせた。
     だが眠気は、彼の意志を容易く飲み込みつつあった。

  • 6511◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:46:09

     ジャック・ディーラーの瞳は虚ろだった。
     しかしその手だけは、未だ震えながらもチップを握りしめていた。

    「……運命に……背く者は……裁かれる……」

     彼は自らに言い聞かせるように、賭けを宣言する。
     今度は――全てを賭けた。
     チップの山をまとめ、魂すら込めるかのようにサイコロ爆弾「ハードラック」に注ぎ込む。

     鎖が唸りを上げ、空気を裂く。
     振り下ろされたそれは、まさに“全てを賭けた一撃”。
     地鳴りが起き、花畑の一角が吹き飛ぶ。

     ――しかし。

     夢見草は花弁を散らすばかりで、なお咲き誇っていた。
     刹那、ジャックの頭上に無数の花が舞い降りる。
     香りが一気に濃くなり、彼の意識を深く沈めた。

    「……くっ……な、ぜ……当たらない……っ……!」

     彼の手からチップが零れ落ちる。
     その瞬間、失敗の代償が彼を襲った。
     全身の力が抜け、視界が暗転する。

  • 6521◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:46:25

     膝から崩れ落ち、花畑に倒れ込む。
     白スーツが花々に汚れ、鎖が虚しく地面に落ちる音が響いた。

     ジャックの唇はわずかに動いていた。

     「……次の……勝負は……勝つ……」

     それは勝者の宣言か、眠りへの降伏か。

     夢見草は静かに彼を包み込むように揺れた。
     眠気は抗いようもなく彼を捕らえ、ついに――その瞼は閉じられた。

  • 6531◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:46:50

     ジャック・ディーラーは深い眠りに落ちていた。
     その顔には、戦場で見せた険しさはもうなかった。

     ――彼が見ている夢の中。
     煌びやかなカジノのホール。
     赤と黒のルーレットが回り続け、人々の笑い声が響く。
     彼はテーブルに腰を下ろし、穏やかにカードを切っていた。

     「……これが、オレの……求めていた……勝負か……」

     夢の中で、ジャックは満ち足りた表情を浮かべていた。
     もう誰も裁く必要はない。
     ただ、楽しげな勝負が続いていく。

     一方、現実の花畑。
     夢見草は花弁を揺らし、優しい香りを放ち続けていた。
     その姿は眠りを誘う守護者であり、彼をも例外なく迎え入れた。

     「……おやすみ、ジャック」
     誰かが囁いたかのように、花畑が風にそよぐ。

     白スーツの悪魔は静かに横たわり、夢の中で永遠に賭け続ける。
     眠りの花は、またひとつ、訪問者を優しく見送った。

     こうして、山の夢見草は守護者としての役目を果たした。
     戦いではなく眠りで、訪れた敵を帰す。
     それこそが、この花の力であり――勝利の証だった。

  • 6541◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:47:09

    以上

  • 6551◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 20:48:05

    22:15より安価10個募集

  • 656二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 20:54:03

    織神さんの方、対戦ありがとうございました。
    コールグラスを起点に別キャラを作ろうと思っていたので生き残ってくれたので一安心。
    一人称のアタシなのかなり意外で良き。
    個人的に最後の酒のやり取りが好きです。

  • 657二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 20:55:12

    >>638

    投下乙です!

    AIへの指示とか変えました?最近人外でも勝てる確率が高くなっているような気がしますね!

  • 658二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 20:55:15

    >>638

    いい話だった

    全体的に超越者同士によるちょっとした小手調べのやり取りって感じも最高だし、別れた後のエピローグ部分も最高だった

    コールグラス、いつか娘にまた会えるといいなぁ

  • 659二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 20:56:56

    眠気に勝てるわけなかったかー

  • 660二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:00

    名前:野生化したバイオバケットホイールエクスカベーターの群れ
    年齢:色々
    性別:なし
    種族:バイオドラゴン
    本人概要:毎度おなじみバイオパンク社が生み出したバイオ重機の一種 通常のバケットホイールエクスカベーターと異なり内部電源式であり内部に搭載された溶鉱炉で採掘した鉱石をそのまま精錬することができる クローヴァンスゴイオオキイブリッジ(よく落ちる橋だ)と見間違えるほどの巨体とそれに見合った尋常ならざる耐久力を備えたボディには高度なAIが搭載されており会話や高度な自律判断も可能 バイオ重機同士ではテレパシ通信もできる かつてミスリル採掘用にある企業に売り出されたがその企業が倒産し野生化した個体であり、本来は繁殖を防ぐための抑制遺伝子が組み込まれているのだが何者かに解除されてしまったため繁殖能力を獲得しコロニーを形成した ちなみに卵生で単為生殖が可能
    能力:採掘ホイール 連携戦術
    能力概要:鉱床を削り採掘を行うための捕食器官も兼ねた巨大バケットホイールで攻撃する 当たり前だがこのホイールは非常に頑強だし破壊力も抜群だ 構造の都合上近くの相手には攻撃できないがそこは高度な知性を活かした眷属との連携でカバーする
    弱点:その巨大なホイールは存在しているだけでバランスを崩しかねないため全ての個体には肉体にカウンターウェイトという器官が存在しそこを破壊されると転んで動けなくなる 本来バイオバケットホイールエクスカベーターをここまで大きくするには特殊な餌が必要となるため眷属たちは大きさや耐久力などが劣る(最大でも大型自動車ほど 通常はもっと小さい)

  • 661二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:00

    名前:サガミ
    年齢:41歳
    性別:男
    種族:人間
    本人概要:
    死闘の末に神の一柱を討伐した実績を持つ破戒僧。
    元々はある神格に仕え教えを順守する模範的な僧侶であったが、世乱れ人が死ぬ様を救わぬ神に疑問を持ってしまったがために信仰心が揺らいだ。
    サガミは信仰心の揺らぎを恥じ、改めて信仰心を揺らがぬものへとするため敢えて神格に挑んだが、長き修行によって鍛えられたサガミの実力は圧倒的であり、その神格すら討伐してしまった。
    「神であるならば私程度が抗えるはずもない。故に、自身が討つことの出来るモノなど神ではなく、仕えるに値せぬ。」
    「ならば私は只管に修行を続けよう。神に縋らずとも、良き世を人の手で切り開くことが出来るように。」
    能力: 【御首絶ち】
    能力概要:
    かつて仕えていた神格の御首を討ち取った技。片手で拝み、片手で手刀の型を作り打ち据える。
    拝みと手刀を同時に行う様は、深い信心を持ち続けながらも困難を切り開くのは自身の手でなければならないというサガミの覚悟を表している。
    この技で神格の御首を絶ち切ったという事実によって技自体の"格"が上がっており、威力と精度が底上げされている。
    弱点:
    【御首絶ち】は相手が人でないなら威力が更に上がるが、人間相手なら逆に威力が下がる。
    神格を討った際の呪いが身体を蝕んでいる。特に心臓の上に浮き出た痣を突けば攻撃が心臓に達せずとも致命傷になる。
    上背がある分鈍重であり素早い相手は苦手。

  • 662二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:00

    名前:異能複合再現体TYPE: outlier( 命名 椛)
    年齢:1(肉体年齢8)
    性別:女
    種族:究極生命体
    本人概要:解析者が死んだ状態の蘇生者からサンプル(○巣)を回収し持っていた
    適応者のサンプルと混ぜ合わせることで作った究極生命体 現在は山桐家で保護されている
    コンセプトは即死が弱点の適応と
    蘇る度に弱体化してしまう蘇生の欠点をお互いに補い無限に適応進化する存在!
    また世界に夥しい被害を齎した【神に至ろうとする外れ値】が構想の元
    外見は適応者と蘇生者の面影がある少女で
    性格は耐久実験など非道な実験を体験したせいで捻くれてしまった
    現在は名付け親の蘇生者にとても懐いていて理由としてはなんだか甘えたくなるかららしい
    蘇生者もこの子は何故だかお世話したくなると言っている
    ちなみに遺伝子的には蘇生者と適応者の○○の為色々と禁忌な存在
    能力:【蘇生】+【適応】= outlier……?
    能力概要:蘇生と適応を両方を兼ね備えており
    死んでも肉体が再生復活するし あらゆるものに適応し進化出来る
    弱点:蘇生と適応を発動させる為に必要な機械的なコアがアリそれを破壊されると
    即座に機能停止する致命的な弱点がある つまりコア依存の不死身と変わらない存在
    その為肉体毎吹き飛ばすような攻撃喰らうと基本アウト
    また適応は本家より速度が遅い
    痛みや恐怖など感情関係だけは適応が苦手な為 
    死亡や怪我をする度に怯えて隙が出来てしまう
    コアが破壊されると機能停止という弱点は適応で現状克服出来ない

  • 663二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:00

    名前:隱收集(本名:望和平)
    年齢:29歳
    性別:女性
    種族:人間
    本人概要:様々な国に潜入して情報を収集・解析をしている、隱收集の名を長安帝国から授かっている諜報員。性格は優しく平和を望む子であった。しかし終わらぬ強者達と国の戦いや国同士の戦いによって身近な人達が死に続けた故に、せめて生まれ故郷である長安帝国は平和でいて欲しいと願うようになった。長安帝国の国民が死ぬような状況にさせない為に諜報員となり争いになり得る状況を得てそれを国に流して少しでも長く平和を保とうと動いている。
    武器としてスパイラルダガー、杖型の仕込み銃であるケーン・ガン、ナイフとしても使える拳銃であるナイフ型消音拳銃、腰につけるバックル型の隠し銃のバックルピストル、缶と大体同じ直径ならば何でも撃てる缶キャノンを保持している。長編帝国の平和を守る為ならば切り札を切ることに躊躇等しない。
    仕事が無い時はDoryu 2-16を使用し写真を取っている。Doryu 2-16はピストル型の16ミリフィルムを使用する特殊なカメラで、引き金を引く事で撮影が可能である。隱收集が手に入れた理由は、元々Doryu 2-16は警察にて使われる物であったが、年々立つ事に使われなくなり、警察の友人から誰も使わないからと譲り受けた。
    能力:《骚灵现象》+《传送》+《Quid pro quo》
    能力概要:骚灵现象は物を動かしたり、発火させたり出来る能力。骚灵现象で武器を持ち斬ったり射ったりする。
    传送は五感に入った情報を解析してする能力。長安帝国も知っている、隱收集の秘密基地に送る事もしている。
    Quid pro quoは隱收集の切り札であり五感・記憶・四肢・内臓・感情等を消費し、武器の攻撃性・耐久性・リロード速度、身体能力・能力等を向上させる特殊の薬である。両の二の腕の腕輪と両腰のバックルの内部に入っている。Quid pro quoの使用方法はどれをどれくらい消費する事を決めてから1秒程長く押す事で使用出来る。消費の重さ・強くなる順は、感情<記憶<内臓<四肢<五感である。
    弱点:昔捕まってしまい、その時に行われた拷問の後の古傷が急所になっている。
    骚灵现象は集中が必要なので、攻撃と防御を同時には出来ない。

  • 664二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:00

    名前:教導の主・アカデマイオス
    年齢:創世期より
    性別:不明
    種族:悪魔?
    本人概要:上品なローブを纏い、銀縁眼鏡を掛けたゴリラの様な姿の悪魔。身長は2.5m程。性格は温厚で口調は丁寧。立ち振る舞いの端々から知性の深さを感じさせる。膨大な知識を有し、「知の殿堂」「全知」などとも呼ばれるが、本人はそれを誇ることはない。その二つ名は伊達でなく、彼は創世期から今に至るまでに生まれた技術、魔術、武術、戦術など全ての知識を持ち、完璧に扱うことが出来る。それ故にあらゆる状況、あらゆる能力に対応可能。
    創世の折、世界そのものによって産み出された情報集積管理機構。それが長い年月を経て自我を持った存在がアカデマイオスである。彼の目的は情報の収集と保存、そして継承である。機構が彼となった時、彼は悟った。限りなく永遠そのものである己自身もいつかは終わることを。彼は決意した。この世界に溢れる素晴らしい知識の数々を絶やさず、未来へと継承させることを。
    その決意以降、彼は旅をしている。知識を収集する傍、出会う人々に見合った知恵を授ける旅を。多くの人々は彼を師と仰ぎ、教えを学んだ。彼もまた教師という在り方を気に入っている。
    彼の種族は正しくは悪魔ではない。世界にとって不都合な情報を持つ彼は旅の途中で、様々な勢力から幾度も命を狙われた。その全てが失敗に終わり、殺せないと悟ると次は彼を悪魔と貶めた。彼はそれを意に介さなかったため、悪魔という種族で定着した。

    能力:叡智の光
    能力概要:アカデマイオスから射す後光。光を浴びた者の思考力を高め、知識や技術の習得を助ける。
    アカデマイオス自身には特に何の効果も無い。

    弱点:個人での対応が難しい大規模攻撃や超火力攻撃に弱い。
    ・能力の効果が相手を強化するだけ。
    ・相手に技や知識を教えるために戦うので対応不可能な攻撃は行わない。
    要望(任意):自分は教師、対戦相手は生徒というスタンスを最後まで崩さない。対戦相手に合った技術、魔術、武術、戦術を用いて戦い、それらを相手に習得させようとする。最終的に対戦相手が勝利した場合卒業証書を渡し、敗北した場合は追試か落第を言い渡す。

  • 665二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:00

    名前:ルックロック=邪悪なる者
    年齢:長命であり短命である
    性別:男であり女である
    種族:神であり人間であり世界である謎
    本人概要:人々の絶望や恐怖をなによりの愉悦としている。性格が悪いのではなく純粋な悪であり、罪の意識もないため罪悪感に駆られることもない。
    その昔に「世界」を施錠し“永遠の絶望(ノクターン)”を発生させた。
    神と悪魔、天使の共闘によって本にようやく封印されたが、最近無理矢理こじ開けて復活した。ちなみに人間がいなかったのはルックロックが人間という存在を施錠して世界から消してしまったため。
    復活の際に少しローノウェール伯爵と戦闘をしたため、椅子無しでは長い距離は歩行不能になっている。
    相手を決して侮らない。それ故に一瞬の隙もない。恐怖という感情がなく他者に悪戯をするのは感情を理解したいからかもしれない。
    能力:【施錠】
    能力概要:【施錠】は森羅万象あらゆるものに鍵をかけ、ルックロックが出現させたキーを使わないと解錠出来ないようにするもの。施錠出来るものに制限はない。合掌するようなポーズをとることで【施錠】が発動する。施錠後は自他共にキーを使用しない自力の解錠が不可能。
    無効化能力やデバフ系、相手の能力などもルックロックには効果がない。ルックロック自身が攻撃を受けるという概念を施錠しているためである。境界や可能性を施錠し、相手の成長や覚醒を不可能にすることも可能であり、思考や記憶や情報、回復や蘇生、自身への阻害や干渉なども施錠する。
    また、「能力は一つだけ」という事実の施錠を解錠することで無尽蔵に能力を扱うことも出来る。
    別にルックロックが施錠していないものでも、キーがあればなんでも解錠は可能なのだ。
    弱点:常に椅子に座っているので突発的な攻撃は苦手。
    神秘部(ローノウェール伯爵の家)にあるローノウェール伯爵に作られたコアが弱点。心臓部を攻撃するとルックロックのコアがある神秘部にアクセスできる。神秘部にルックロックは干渉できないため、あとは安心してコアを破壊可能。コアを破壊されるとルックロックはローノウェール伯爵のいる図書館に引き戻される。
    能力の制限を解錠すれば無制限に使えるが、さすがにそこまで器用にはいかないので一度に使うのは三つまで。
    特殊効果が付属されていない攻撃は普通にダメージが通る(普通の打撃、普通の蹴り、普通の武器での攻撃など)。

  • 666二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:00

    名前:かずことことば(数言 言葉)
    年齢:5さい
    性別:おとこのこ
    種族:にんげん
    本人概要:すっごくつよいさいきょーのおとこのこ!
    (数言家ではほとんどいない、数字ではなく言葉がメインの能力を持った子供
    たまに複雑奇怪な言葉を口走ることがある、まるで何かの意思が取り憑いているかのように)
    能力:麼璽禽
    能力概要:もじをとっちゃうちから!すっごくつよいよ!
    (あらゆる存在から言葉を取り上げる能力、言葉で表すことのできる、能力や技、概念、現象などを一時的に消失させることができる)
    弱点:からだはふつー、いっぱいもじはとれない!あと、しらないやつもむり!
    (身体能力は年相応
    現時点で同時に消失させられる『言葉』は5つのみ
    数言言葉本人が知らない言葉には能力が使えない、さらに、子供ゆえに知っている言葉も少ない
    副次効果として、相手は消失させた単語を喋ることができなくなる)

  • 667二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:00

    名前:魔女ペイン
    年齢:8
    性別:女性
    種族:魔女
    本人概要:
    幼いながらある地域一帯で非常に恐れられている魔女。非常に強力(?)かつ凶悪な魔法を操る。
    貢ぎ物をしない人間には魔法をかけ、貢ぎ物をすれば1ヶ月間だけ魔法を解くというカスのサブスクリプション形式で生計を立てている。
    口調はいわゆる「のじゃロリ娘」だが、発言内容は基本ド畜生である。
    「妾は甘い汁だけ啜って生活したいのじゃ!」
    能力:苦しみの魔法
    能力概要:
    ギックリ腰、四十肩、寝違え、痛風、ヘルニア、食あたり、花粉症、小指ぶつけるやつ、舌や唇噛むやつ、結石、気胸、をランダムで引き起こす魔法。
    この魔法をかけて相手をその痛みで行動不能にする。そして動けない隙に魔法をかけるだけかけ、相手に魔法をかけたまま逃げようとする卑怯者。
    弱点:
    ・まだまだ未熟のため、杖・魔法書・帽子による補助が必要。これらを破壊されるたびに魔法の威力が3割ほど低下する。

  • 668二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:00

    名前:【十刃】(とじん)
    年齢:見た目は20歳ぐらいだが不祥
    性別:不明
    種族:??
    本人概要:佐藤家の居候…なんだけど色々と謎が多くて分からない部分も多い不思議な人
    めっちゃ古い佐藤家の写真や久那土の絵画に描かれていたり古くから国に住まう神や長命の存在が経緯を持っていたりと秘密が多い
    神器に勝るとも劣らないとっても凄い武器を十個持ってるので【十刃】と名乗っており本名は不明、知ってる人も言いたがらない
    常にニコニコ笑顔で礼儀正しく敵に対してもスタンスを崩さない、戦闘を「授業」と言ったり敵の良い動きを褒めたりと先生気質が強い
    敬語、平身低頭、ニコニコ笑顔と好青年であり性格も良いが己を常に崩さず目的や腹の底も見せてくれない謎の人物である
    能力:【十刃】
    能力概要:彼の付き従う十の武具、神器に勝るとも劣ら謹製のオリジナル武器であり彼はコレクションらしい
    天帝剣。魔神槍。龍帝斧。死刻鎌。無双刀。断罪棍。滅尽鞭。覇王槌。万象弓。聖皇銃。この十種の武器を完全に使いこなす
    一個一個が世界すら揺るがす驚異の武器であり自身も完璧すぎる武器の扱いと異次元の身体能力と技術で完璧に使いこなす
    この十個の武器を相手や状況に合わせて的確に使い分け完璧とも言える練度で行使してくる怪物である
    弱点:自身も自覚はしているが直せない悪癖がちらほらとあり悪癖のせいで隙が生じる事がかなり多い
    敵の攻撃や能力の使い方にに見惚れて回避、防御行動が遅れたり隙が出来たり。あまりに素晴らしいからと自ら喰らいに行く事すらある
    基本的に敵を褒めながら戦うのだが褒める時にも隙が存在し特に素晴らしいものだと具体的に褒めてもっと隙が生まれてしまう
    身体や腕や足に古傷があり突かれると大ダメージになる、ちなみに古傷を突かれると無茶苦茶褒めて隙が出来る
    また【十刃】自身はフィジカルと技術と知識量がなんかおかしいだけで無能力者であり耐久力は並みで前述の悪癖や古傷の話もある
    要望:敬語口調で先生っぽい感じ、相手を褒める事を多くしてください
    たら相手に最大級の称賛を送ってください

  • 669二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:03

    名前:ヤオ・ライラ
    年齢:17
    性別:女
    種族:人間(ウェアウルフ)
    本人概要:羊飼いの少女。いつも真っ赤でオシャレな帽子を被り、遠くからでもわかる派手な姿をしている。
    性格は優しく生真面目、委員長気質で麓の学校では女子グループのリーダーとしてクラスを纏め、大人たちからもしっかり者と見なされ羊の群れを任されている。
    が、それは彼女のペルソナに過ぎない。彼女の本質は「自分が一番でないと気が済まない」嫉妬深い女。
    自分が持っていないおもちゃを奪い、壊して、その罪を“狼”に擦りつける。自分より人気のあの子を突き落として、罪を”狼“に押し付ける。自分のミスで羊を殺めてしまっても…”狼“が悪い。
    結果、誰よりも優れて、けれど少し不幸なアイドルが出来上がり。ヤオは欲しい物全てを平らげることに成功した。
    …いつしか少女は狼に変わっていた。母を騙り、祖母を騙り、子ヤギと少女を喰らう狼に。
    嘘で罪を誤魔化す少女、その口は自分の罪を隠すために大きのさ。
    能力:人狼遊戯(ダウト・コール)
    能力概要:嘘が真実になる能力。
    少女は己の犯した罪を全て狼のせいにしてきた。つまり、真実であればその場には狼がいたはずである。
    どこにもいないはずの狼がそこにいた、そこにいたのはヤオだけなのに。
    自らの異能を以て少女の嘘は真実となった。つまり、自分自身を狼と再定義することで。
    この異能は嘘を真実とするがヤオは無自覚に行使している。応用すると変身能力にもなる。
    自己中心的な性格のため自分のためにしか能力は発動しない。
    また、この能力は彼女が罪を自覚するまで解除されない。自分が醜い嘘つき…狼であることに気づくまで。
    弱点:能力の副作用として改変した現実の質量分、体内に石が溜まっていく。
    嘘一つにつき1キロほどの石が生まれており、その結果ヤオの体重は100キロを超える。
    そのため、動きがかなり鈍く、重さ故に泳げない。
    そして、この質量を支えられるのは彼女がウェアウルフであるためであり、能力が解除され人間に戻ると質量に耐えきれず即死する。

  • 670二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:10

    名前:SA・SUGEEE
    年齢:ない
    性別:ない
    種族:怪談
    本人概要:
    最高峰の魔法騎士団育成機構「エイムズ」の寄宿舎で語られる怪談の一つ。
    上級魔法騎士になるための試練場「SA (Sorcery Assessment の略称)」で試験に落ちた者たちの恨みによって裏の「SA」である「SA・SUGEEE (Sorcery Attention・Scream of Under Gate for Endless Extra Evils の略称」が生まれ、夜な夜な訓練生を呼び寄せては惨い試練を課して命を奪うとされている。
    事態を重く見た魔法騎士団の調査員が使い魔を「SA・SUGEEE」に参加させたところ、第3の試練までは確認できた。
    一般的な「SA」の試練が7つまであるため第7の試練まであると予想されているが、第3の試練を突破出来た使い魔が居ないため、第4の試練以降に何があるのかは現在でも不明なままである。
    能力:7つの試練
    能力概要:
    第1の試練「魔導鉄球乱れ撃ち」
    魔力の込められた拳大程度の鉄球が四方八方から襲い来る。恐ろしい速度で迫りくる数万個の鉄球を捌けなければ確実に致命傷を負う危険度。
    第2の試練「魔力供給過負荷」
    四方八方から黒鎖が絡みつき、魔法・魔導を扱うための源である魔力を強制的に注入してくる。魔力の許容量は各人で異なっており、その許容量以上の量を過剰に供給されれば、まるで高血圧に耐えられず血管が破裂するように、全身がズタボロになる。
    第3の試練「魔天墜落」
    空だと思っていた天井が落ちてくるため受け止めなければならない。鉄球で傷つき、魔力の過剰供給で酷使された身体であればその重量に耐えられはしない。
    第4の試練:詳細不明。
    第5の試練:詳細不明。
    第6の試練:詳細不明。
    第7の試練:詳細不明。
    弱点:
    試練を突破すると次の試練に挑む前に休息できる。休息用の回復薬なども出してくれる。
    訓練施設の怪談であるため直前に受ける試練の内容を説明しなければならない。(ただし第1の試練を受ける時点では第2以降の試練の内容説明はない)
    ギブアップを宣言すると「SA・SUGEE」の試練から逃げ出すことが出来る。(その代わりヒドイ屈辱(詳細不明)を受ける)

  • 671二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:22

    このレスは削除されています

  • 672二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 22:15:42

    すとっぷ

  • 6731◆ZEeB1LlpgE25/10/02(木) 23:25:50

    全採用

  • 674二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 05:23:00

    ほしゅ☆

  • 675二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 08:51:49

    ほしゃ

  • 676二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 16:36:50

    今回も癖者が揃ったな

  • 677二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 17:59:07

    すみません
    アカデマイオスに要望追加しても大丈夫ですか?
    “相手に合わせた言語を用い、丁寧で優しい口調で話す。口調は最後まで崩さない。”
    を追加したいです。

  • 6781◆ZEeB1LlpgE25/10/03(金) 20:54:41

    >>677

    はい


    後スレ主は明日の英検対策で手一杯なので今日の更新は無理そうです

    言うのが遅れてすいません

  • 679二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 21:00:51

    >>678

    がんばってきてください!!!

  • 680二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 21:10:14

    >>678

    英検とかスレ主すごいなぁ

  • 681二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 21:19:19

    >>678

    頑張ってください!保守は自分たちに任セロリ

  • 682二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 22:15:54

    このレスは削除されています

  • 683二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 22:17:58

    >>678

    了解しました!

    頑張ってください!

  • 684二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 22:40:31

    >>678

    健闘を祈る。

  • 685二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 01:06:09

    このレスは削除されています

  • 686二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 08:04:35

    保守

  • 687二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 09:48:02

    スレ主がんばれ〜!

  • 688二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 15:47:46

    保守

  • 6891◆ZEeB1LlpgE25/10/04(土) 21:56:51

    サガミvsルックロック=邪悪なる者
    SA・SUGEEEvsヤオ・ライラ
    魔女ペインvs教導の主・アカデマイオス
    野生化したバイオバケットホイールエクスカベーターの群れvs隱收集
    異能複合再現体TYPE: outliervsかずことことば

  • 690二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 22:02:56

    SA・SUGEEEって入ってなく無いですか?

  • 6911◆ZEeB1LlpgE25/10/04(土) 22:04:31

    >>690

    十刃の人は問題を起こしたので一部キャラを出せなくなりました

    このキャラがその一部です

  • 692二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 01:57:18

    保守

  • 693二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 08:31:48

    ほ!

  • 694二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 16:56:13

    ほしゅ

  • 695二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 22:21:43

    保守

  • 696二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 03:11:19

    このレスは削除されています

  • 697二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 08:24:03

    しゅ

  • 6981◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:00:00

    題名『施錠の果て、祈りの鍵』

  • 6991◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:01:13

    暗黒の大聖堂のような空間。
    そこは、世界そのものの“内側”に存在するとされる虚無の神域――【施錠の間】。
    天井は見えず、四方は鍵穴の浮かぶ闇に閉ざされていた。
    ただ一つ、中央にある黒鉄の玉座だけが現実感を持っていた。

    その椅子に座すは、ルックロック=邪悪なる者。
    性別も年齢も超えた、冷たく歪な「存在」そのもの。
    白金の髪は流れる砂のように重力を失い、瞳孔は鍵穴の形に裂けている。
    指をひとつ動かすたび、空間に“カチリ”という音が響いた。

    「……来たか。神を殺した男。」

    ゆらりと闇が裂け、そこに歩み出る一人の僧――サガミ。
    身にまとうは擦り切れた法衣。背は高く、眼差しは鋼のように硬い。
    彼の手には何も持たれていない。だが、武器など必要なかった。

    「貴様が“世界を施錠した神”か。」
    「我は神であり、人であり、世界そのものでもある。……お前は何だ?」
    「我は人だ。それ以上でも、それ以下でもない。」

    ルックロックは微笑した。
    それは慈悲でも冷笑でもない。意味のない笑みだった。
    彼は合掌し、指を軽く鳴らす。

    「――【施錠】」

    瞬間、サガミの足元から無数の鎖が伸び上がる。
    その鎖は「動く」という概念を封じようと絡みつく――が。
    サガミの掌が合わさる。
    僧の口が、静かに祈りを紡いだ。

  • 7001◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:01:36

    「我、天地に誓う。神を斬り、人を救う。
      ――【御首絶ち】。」

    光が奔る。
    鎖が断ち切られ、空間が震えた。
    神の“施錠”が、わずかに――斬られた。

    ルックロックの唇が、初めて僅かに動く。
    興味――それはこの悪神が滅多に見せぬ、純粋な好奇。

    「……神の首を斬る者、か。なるほど。ならば――お前に“世界の蓋”を見せてやろう。」

    天蓋が開き、空に浮かぶ鍵が無数に輝いた。
    全ての法則が施錠されていく。
    風が止まり、音が止まり、時間さえ封じられる。

    だが、サガミは動く。
    神に斬りかかった、あの時と同じように。
    己の肉体を蝕む呪いを抱えながら――彼はただ、一歩前へ。

    「貴様が神であるというならば、我は再び証明しよう。
      神は、斬れる。」

    合掌。
    掌底。
    一閃。

    音が、光を裂く。
    その瞬間――封じられた世界が、わずかに揺れた。

  • 7011◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:06:55

    封じられた時間の中で、ただ一人、動く僧がいた。
    サガミ。
    その瞳は濁りなく、まるで己が死を受け入れた者のそれ。
    神を殺した男の眼光が、ルックロックの“鍵穴の瞳”を貫いた。

    「なぜ動ける? すべての運動は施錠したはずだ。」

    ルックロックの声は静謐でありながら、世界全体の震えのようにも響く。
    その声には怒りも恐怖もない。ただ純粋な探求。
    ――理解できぬ“例外”への、絶対的な興味。

    サガミは答えぬ。
    ただ手を合わせ、胸の前で拝む。
    その仕草は祈りであり、同時に刃の構えであった。

    「祈りは閉じられぬ。神を斬るためにあるのだから。」

    次の瞬間、彼の掌から白光が放たれ、周囲の施錠が一瞬で霧散する。
    それは技ではない。
    “人間”という存在の、極限の抵抗。

    ルックロックの顔に、わずかな歪み。
    その手が再び合わさる。

    「ならば――施錠を三つ、解錠しよう。」

    神が呟くと、彼の背後に三つの巨大な鍵穴が現れた。
    一つ目が開くたびに、空間が軋む。
    二つ目が開いた瞬間、星の輝きが失われた。
    三つ目が開かれたとき、この世界の“制限”という概念が消滅する。

  • 7021◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:07:21

    ルックロック=邪悪なる者は、己の“無限”を解放した。

    「我が施錠を束ねる三の名――
      一、『境界封鎖』。貴様の刀は届かぬ。
      二、『概念施錠』。死という理を閉ざす。
      三、『虚実施錠』。現実と幻の区別を消す。」

    天地が反転する。
    空は血のように赤く、地は硝子のように透き通り、上下も前後も失われた。
    サガミの足元は消え、空間が軋む。
    僧はただ空に浮かぶように立ち、瞑目した。

    「……神を討つと決めたあの日より、我の信仰は一つしかない。
      “己”を信ずることだ。」

    静かに、胸に手を置く。
    指先が、心臓の上の黒い痣をなぞる。
    そこから滲む血が一滴、空中に落ちる――。

    そして、祈る。

    「この身が朽ちようとも、我が魂はただ“斬る”ために在る。
      ――御首絶ち・改。」

    爆発的な光が空間を裂いた。
    概念施錠が崩壊し、虚実が分離する。
    ルックロックの椅子が軋み、初めて“揺れた”。

    「……施錠が、破られた……?」

  • 7031◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:07:36

    神が驚愕した。
    その“表情”に人間的な色が浮かぶ。
    ルックロックの頬を、一筋の“汗”が伝った。

    サガミの声が響く。
    その声はもう祈りではない――断罪だ。

    「神を超えようとする者よ。
      貴様がどれほど鍵を作ろうと、人は必ず扉を見つける。」

    手刀が振り下ろされた。
    鍵穴の瞳が、真っ二つに割れる。
    世界が悲鳴を上げた。
    施錠の間が崩壊していく。

    「おのれ……サガミ。
      お前こそ、“施錠を拒む者”か。」

    「違う。“信仰を取り戻す者”だ。」

    ルックロックは倒れず、ただ嗤う。
    鍵穴の瞳が血のような光を放つ。

    「面白い。
      では――次に施錠するは、“貴様の魂”だ。」

    そして、二人は再び衝突する。
    光と闇、祈りと施錠が交錯する。
    神と人の戦いは、もはや宇宙の理を超えていた。

  • 7041◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:09:00

    赤黒い空が裂け、
    無数の鍵と札が宙を舞う。

    それはもはや戦場ではなく、“世界そのものの断面”だった。
    ルックロック=邪悪なる者は椅子に腰掛けたまま、十指をゆっくりと組む。
    合掌――それは神の「鍵」。

    「施錠:《魂》」

    瞬間、サガミの身体が硬直する。
    その動きはまるで糸の切れた傀儡。
    胸の奥から“鈍い音”が響いた。

    「……心臓が、凍る……?」

    サガミの魂に直接“鍵”がかけられた。
    肉体ではない。思考でもない。
    ――存在そのものが閉じ込められた。

    ルックロックの声が、静かに響く。

  • 7051◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:09:34

    その声は優しく、まるで慈母のようでもあった。

    「人はすぐに扉を見つけると申したな。
      ならば、扉そのものを閉ざせばよい。」

    「これで、貴様の魂は永久に“祈ることを忘れた者”となる。」

    空気が重く沈む。
    周囲の音がすべて消え、
    呼吸すら“鍵”で閉じられていく。

    だが、その沈黙の中で――サガミの唇が動いた。

    「……“施錠”とは……“封じる”ことだな。」

    ルックロックの瞳が僅かに揺らぐ。

  • 7061◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:10:24

    「ならば……“祈り”とは、“開く”ことだ。」

    「――拝み手は、いつでも扉を開く側に立つ。」

    合掌の姿勢。
    再び、サガミの掌が光を帯びる。
    それは“祈り”の形をした、純白の刃。

    「解錠するは――信仰なき神の魂!」

    「御首絶ち・魂断」

    白光が迸り、空間が裂ける。
    ルックロックの施錠が**初めて“逆回転”**を始めた。
    鍵穴が軋み、ひとつ、またひとつと砕け散る。

    「ありえぬ……我が“魂施錠”が、解かれるだと?」

    「人が信仰を失えば神は死ぬ。
      ――ならば、その逆もまた真理。」

    サガミの声に、祈りの響きが宿る。
    己を信ずる者が、今度は神を赦す者へと変わる。

    「ルックロックよ。貴様もまた“閉ざされた者”。
      ならば、我が祈りで開こう。」

    その瞬間、ルックロックの胸から、音がした。
    ――“カチリ”と、鍵が外れる音。

  • 7071◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:10:48

    胸の奥に沈んでいた、わずかな人の心。
    それが、暗闇の奥から覗いた。

    ルックロックは口を開いた。
    初めて、“震える声”で。

    「……私は……恐怖を理解したかった。
      お前たちがなぜ祈るのかを、知りたかった。」

    サガミは目を閉じ、静かに頷いた。

    「ならば、それを理解した時点で――貴様はもう、神ではない。」

    白光が溢れ、鍵の世界が音を立てて崩壊する。
    ルックロックの姿が薄れ、椅子ごと溶けていく。

    「……扉は……開かれたのか……?」

    「ああ。
      “人の手”によって、な。」

    最後の鍵が消えた瞬間、世界に風が戻る。
    鳥が鳴き、雲が流れ、空が青を取り戻す。

    サガミは静かに合掌し、ただ一言――。

    「南無。」

    ――ルックロック=邪悪なる者、再封印。
    だがその顔には、どこか“安らぎ”の色があった。

  • 7081◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:11:51

    荒れ果てた大地に、静寂が訪れていた。
    崩壊していた空は澄み渡り、風が戻り、世界が再び呼吸を始める。

    サガミは、両膝をつき、血に濡れた掌を見つめていた。
    己が“神を討った手”。
    そして今、再び“神を救った手”。

    「……我はまた、神に触れたのか。」

    風の中で、かすかに鈴のような音が響いた。
    ――ルックロックの椅子が、砂の上でゆっくりと揺れている。

    そこに、彼の姿はもうない。
    だが確かに“何か”が残っていた。
    闇に閉ざされた神の、わずかな人の心。

    「……祈るという行為。
      それは、希望の施錠を解く鍵なのかもしれぬな。」

    サガミはその椅子に向かって、ゆっくりと合掌した。
    もはや敵意も、怒りもない。
    ただ、そこにあった“理解”を包み込むように。

    「――ルックロックよ。
      貴様は恐怖を知りたかった。
      我らは祈りを知りたかった。
      互いに求め、互いに触れ、そして……解かれた。」

    空から、一輪の白い花弁が舞い降りた。
    それはこの世界が“再び生まれ始めた”証。

  • 7091◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:12:24

    椅子の傍らで、サガミは静かに座禅を組む。
    彼の呼吸は深く、静かで、どこまでも穏やかだった。

    「……神を討った罰は、祈りで返そう。
      神を赦した罰は、沈黙で贖おう。」

    目を閉じ、サガミは口を開く。
    その声は、どこまでも優しかった。

    「――解錠するは、祈りの扉。
      願わくば、次に貴殿と会う時は、人として語り合おう。」

    風が吹いた。
    花弁が散り、椅子は音もなく消えていく。

    空に残ったのは、ただひとつの“鍵穴”のような光。
    それがゆっくりと閉じ、世界は完全に安定した。
    サガミは立ち上がる。
    その背は、どこまでも静謐で、どこまでも強い。

    「神を討ち、神を赦し、神を祈る。
      それが人の業(ごう)であり――
      それでもなお、我らは進むのだ。」

    最後にもう一度、サガミは掌を合わせた。

    「――南無。」

    そして、風にその声は溶け、
    世界は再び“人のもの”となった。

  • 7101◆ZEeB1LlpgE25/10/06(月) 15:14:08

    以上

  • 711二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 15:42:28

    サガミ独自の信念みたいなの持ってるのが渋くてカッコよすぎる

  • 712二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 16:14:18

    ルックロックってなんの神なのだろうと感じた
    そしてサガミがルックロックを理解しつつも己の信念を貫いたのはかっこよかった

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