恋雪は

  • 1二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 07:56:17

    恋雪さんは、とても病弱でいつも臥している。
    一人で食事をとる事も、一人で厠に向かう事も、一人で汗を拭く事もままならない。

    ままならない、事ばかりだ。

    俺は今、恋雪さんと同じ布団の中に居る。
    恋雪さんは、熱に浮かされたような吐息を漏らして微かに身じろぎするばかり。
    俺と恋雪さんの顔が近いが目線が合う事はない。
    恋雪さんは俺の胸元に頭を擦り付ける様に押し付け、行き場を無くした両手が俺の襟や背中に延ばされる。

    横向きで寝る彼女の腰や背中に負担が掛からないように、恋雪さんの脚の間に俺の脚を差し込むが恋雪さんにとってはそれだけでも大層刺激が強いだろう。

    それでもまだ、始まっていないのだ。

    俺の手が、そっと慰めるように恋雪さんの腹を撫でて、するりと慰める様に下腹部へ向かう。

    彼女は体力がなくて、一人で果てる事すらままならない。

    ふすまを閉じ、布団をかぶり、誰に見られるわけでもないこの部屋の中で。

    二人で隠れて、行う事がなんだか悪い事をしているような気分に晒されながら。

    俺の事を置き去りに、彼女は今日も泣いているかのように嬌声を漏らす。

  • 2二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 07:57:30

    続きはないので失礼する。

  • 3二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 07:58:22

    恋雪さん、最後まで書いて

  • 4二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 08:17:18

    どうして俺なんだろうか。
    酸いも甘いも――どころか基本的に血の味しかなかったこれまでに、特に思い当たる事もない。
    恋雪さんは、確かに可愛らしいが俺にとっては師範となった男の一人娘で。
    臆病な小動物を思わせるようだったので、初めはワザと距離を置いていた。

    病にかかった人は云う、

    誰にも会いたくない、誰にも迷惑をかけたくない。

    それでも、寂しい。それでも、助けて欲しい。

    だから俺はまるで居ないように振舞う、暇つぶしの手遊びは貴女に興味がないという態度を伝える為。
    食事の手伝いはする、汗をかけば拭いてやる、姿勢が辛ければ変えてやる。
    それ以外は無口で、それ以外は視線も向けず、それ以外は耳に届いても幾らかは聞きながす。

    恋ではない、愛ではない、義務感でもない。

    生まれて来た人に、報いる事こそ

    生きている人に、応える事こそ

    生きた人に、敬う事こそ

    必要な事であったのではないか、今日も視線を外に向けながら物思いに更けていた。

  • 5二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 08:43:15

    人を殴る事、人を看る事。

    つまり喧嘩と看護というのは違うのだが、殺法と活法というのは裏表なのだそうだ。

    「お前が強いのはやると決めた事をやり続ける事と、人の体の動かし方を知っているからだろうな」

    なるほど、終わりの見えぬ父の介護と介助は人の動きと仕組みというものをよく捉えていたらしい。

    「一目見て驚いた。あれだけ人を強く打てるのに殺意は感じなかった、出来るからやってるだけなんだとな」

    金と薬が欲しかっただけで、人を殺してまでというのは確かになかった。

    「お奉行にも感謝しろよ、お前の腕が飛んでいれば恋雪を任せる事も出来なかった」

    「感謝?俺が役人に感謝?」

    「前科者全員に刺青なんて入れてたら、今頃江戸は彫師の天国だろう。牢に放り込む事無く、罪の減刑である入れ墨と体罰に留めたお奉行はよほど人情溢れた人とも言える」

    「いつかお前に感謝されなくても、お前が立派になればお奉行も鼻高々だろうな」

    「なんだそれは」

    因果応報、天罰覿面、たしかに俺は罰を受ける立場であり役人はそれを実行する立場だった。

    それでも、少しばかりは信じていたのだろうか

    俺にも、やり直せる時が来るんだって。

  • 6二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 08:44:17

    深夜までの仕事、徹夜でゲーム、早朝からの飲酒で眠いので失礼する。

  • 7二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 08:44:57

    俺ちょっと剣術道場のやつら37564にしてくる

  • 8二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 08:46:03

    >>6

    余裕できたらでいいから続き書いてくれ

  • 9二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 08:49:17

    このレスは削除されています

  • 10二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 08:51:36

    >>8

    スレが残っていれば考える。

    俺は今猛烈に眠い、富岡さんの羽織みたいに1:1で酒を割って飲み続けているからだ。

  • 11二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 08:54:30

    このスレは絶対に落とさせない!俺は俺の責務を全うする!

  • 12二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 10:37:31

    酒飲んでいる上に眠いのにこの文章力は強すぎる
    というか酒がもやはバブなのかな

  • 13二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:02:14

    恋雪さんは、今日も泣いている。
    謝って、泣いて。悔しそうに、泣いて。無力な自分に、泣いて。
    泣くのは別に構わない。腫れた目元を優しく拭い、眼を擦らぬ様に言いつけるだけだ。

    親父もいつもすまない謝ってばかりで、苦労をかけるとやるせなさそうで。

    俺は一度だけ聞いたことがある、何故そんなに謝るのかと。

    俺は別に苦しいわけでも、辛い訳でもない、苦しいのも辛いのも親父の方なのに。

    「―――謝りたいって感じる、これを感謝と言うんだ」

    それならば、ありがとうがいい。それなのに、何故謝るのかがやはり分からない。
    きっと、傲慢にならないようにだろう。いつか一人で立ちたいのだと思っているのだ。
    ありがとうは、その時に為に取っておいてあるのだろう。

    「狛治さん、ごめんなさい……」

    「いえ、構いません」

    謝れる貴女は誰よりも強い、そんな人を支える事になんの不満があるのだろうか。

  • 14二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:08:24

    一度眠ったからと言って体力が回復をするわけではないし、酒は美味い。
    不定期な更新となるので恋雪さんと狛治殿のイチャイチャまで遠いのでこのスレは好きに書き込んで構わないので失礼する。

  • 15二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 17:42:40

    師範は俺に稽古をつける時以外は、生活費を稼ぐために何でも屋の真似事のような事をしていた。

    故に朝に稽古を終えると道場を出る為、俺は空いた時間を恋雪さんの看護に回す事となった。
    調子の良い時もあるにはあるのだ、咳が収まり、発熱もない日がある。
    そんな時だけは恋雪さんも体を起こし、静かに俺の手による按摩を受けている。

    高い薬を売りつけた医者だが、それでも零れ話の様に俺に話した事がある。

    人の体とは循環によって保たれているという事。
    呼吸によって取り込まれた空気が血に集まり、水に乗って流れるのだと。
    故に血の流れや水の流れが滞る事で人は不調を起こすのだと。
    何より経絡において重要な位置は手足に集中しており、人は末端より弱くなるのだと。

    故に俺は病に伏しているとはいえ女性の素肌を、指の先からその体に至るまでを解きほぐしていく。
    一つ一つの動きと共に声をかけながら進めていくと、恋雪さんから小さな言葉が溢れて来た。
    「どうして、謝るの」
    「それは―――」
    「私の為に、してくれることなのに」

    ああ、なるほど。
    謝りたい、とはこういう気持ちなのだ。

    「ありがとう」
    「え?」
    「……いえ、何でもありません」

    俺は君に感謝している。
    君の傍にいる事が、どうしようもなく心地が良い気がしていて。

  • 16二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 19:38:22

    強いて言うのであれば、変わったのはその日からだ。
    私の父が一人の男の人を連れて来た、というより引きずってきた。
    無法な暴力を振るう父ではないと分かっているのだが、明らかに強引に連れてこられたのだろう。

    顔が腫れあがっている。ああ、きっと怒っている。

    ―――しかし、不思議だった。

    貴方の瞳は、まるで私ではない遠くを見ているようで。

    一体、貴方は何を見ていたの?

    大切な何かが、自分の不手際で川に遠く流されていくような。

    一体、貴方は何を見て来たの?

  • 17二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 20:58:53

    ほしゅ

  • 18二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 21:17:38

    あゝ 美しきかな

  • 19二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 21:28:13

    距離というものは、その関係性を如実に示すのだろう。
    父は気を遣ってくれているが家を空けがちで、母は遠い場所へ行ってしまった。

    しかしこの人の距離は不思議だ、部屋の境の柱にもたれて内にも外にもいるように見える。
    興味が無い様に見えて、咳き込めば背中を撫でてくれる。
    汗をかいたら吹いてくれるし、水はいつも冷たいものを用意してくれる。

    何故貴方が、ここまで心を砕いてくれるのかは分からなかった。

    とはいえ、慣れた手つきだったから以前にもこうして看病をしたことがあったのだろう。
    腕に掘られた入れ墨の意味を知らないわけではなかったが、どうしてもこの男の人が悪人だとは思えなかった。
    どの道、乱暴されても、物を取られても抵抗は出来ないのだから。

    「ありがとう」
    「え?」
    「……いえ、何でもありません

    何故貴方が感謝するの、貴方に返せるものなんて何もないのに。
    感謝したいのは、私の方なのに。そこまで思って気が付いた。
    私、―――ありがとうって伝えた事があったのかしら。

    熱っぽい体が急速に冷えていくような感覚。

    いつもいつも私は謝ってばかりで、お母さんにありがとうって言えなかった。

    ごめんなさい、ごめんなさい。

    謝る事しかできなくて、ごめんなさい。

  • 20二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 22:30:24

    ほしゅ

  • 21二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 23:02:58

    師範との稽古を終えて、洗濯物を干そうとしていた時の話だ。

    空は晴れていて、風も心地よい一日で恋雪さんの調子がよければ日向ぼっこをさせてあげたかった。
    だから早めにやる事を終えてしまおう、そうしている内にいつもより時間がかかってしまって―――。

    ドスン、と音が聞こえた。
    俺は走った、この道場の中で物音を立てられる人は一人しかいないから。

    「恋雪さん!?」
    「――――」
    恋雪さんが廊下に倒れていた、それと同時に蹲りながら布団の中とは違う嗚咽にまみれていた。
    急いで近づいて彼女の肩に触れる、イヤイヤをするように身を捩るもそれ以上の抵抗は出来ないようだった。

    何故ここに、何故泣いている。そんな事は考えるまでもなく俺は知っている。
    動けない人間が動く時、それは緊急事態で。

    「……嫌、いやぁ、」

    独特な臭気と、廊下を濡らすもの。

    俺の所為だ。

    親父の時と一緒だ。

    俺が、傍に、居なかったから――――。

  • 22二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 01:42:04

    ―――、ああ、泣かないで。

    ―――、ああ、泣かないで。

    私の決断が、貴方を悲しませた。

    俺の行動が、貴女を悲しませた。

    「ごめんなさい、私が、勝手な事をしたから―――」

    「ごめん、なさい。俺が、俺が傍に居なかったから―――」

    二人の言葉は噛み合わない、全ては己のせいだと思っている。

    謝りたいと、感じている。

    謝罪とは、許しの言葉だ。
    出来うるなら関係性をやり直し、いつも通りに戻りたいと願う。

    感謝とは、戒めの心だ。
    出来うるなら関係性をやり直し、相手に報いたいと思う心。

    あなたに泣いて欲しくない、そんな言葉が交わされることはなく。

    あなたの為に出来る事をしたい、そんな誓いが交わされた。

  • 23二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 02:14:36

    よくよく考えたらずっとけほけほしてる恋雪さん

  • 24二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 04:23:41

    たしかに一時は気まずい期間があったが、表面上は元通りに思えた。
    しかしそれを訳知り顔で頷いている師範を気味悪げに狛治は睨みつける。

    そのにやけ面に一本入れようと拳を振るうが躱される。
    拳の応酬、蹴りが飛び交い、肘と膝が互いを砕かんと打ち合う。

    そして、一の矢を放つ。
    狛治が放った拳が慶蔵の正中を掠めて右腕を打つ。
    慶蔵の右腕が弾かれ、右側の防御が崩れる。
    そこに二の矢である最短最速の正拳を打ち込んだ―――「甘いぞ」

    当たるかと思われた一撃は左腕でいなされ、そのままがら空きの頭に慶蔵の頭突きが炸裂する。
    足がもつれて、膝が砕ける。そのまま道場の床に倒れて今日も負けた。

    「極端な話、極めるというのは無駄をなくすという事だが少年は素直すぎるな」
    「……無駄をなくすのが、無意味という事ですか」

    敵の攻撃を捌き、敵に攻撃を当てる。
    慶蔵はそれがとても上手く、とても強かった。
    どんな攻撃も正確に防がれる、どんな攻撃も正確に打ち込まれる。

    「もっと大きく見ろ、もっと大きく聞け、もっと大きく触れろ」
    「そうすれば、見逃す事なんてなにもないさ」
    「それが出来る俺は、何も失う事はないと考えていた」

    慶蔵は悲しい時ですら、笑みと形を崩さない。

    「俺は闘気の間合いしか分からない、しかしお前は人の間合いに入れる人間だ」

    「この先、必要なのはお前のような人間なんだ」

  • 25二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 04:27:35

    炭かなSSを書きたいと願っていたのに、書いているのは狛恋SSだった事に一番驚いているのは自分なので寝所に失礼する。

  • 26二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 12:48:49

    ほしゅ

  • 27二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 14:13:23

    子供というのは未完成だから、それに伴う病も多いのだと。
    故に恋雪さんが成長するにつれて、病弱なことは変わりなくとも以前ほどの症状は出ないだろうと。
    医者は言った、これも看病のおかげだろうと。心に寄り添った賜物だろうと。

    恋雪さんは呆けていたが、俺も慶蔵さんも大層喜んだ。
    普段飲みもしない酒を開けて、ベロベロになって酒瓶を抱いて眠るまで飲み続けていた。

    俺もほっとした、それと同時に一抹の不安もあった。

    「恋雪さんが元気になったら」
    「え?」
    「俺も、お役御免ですかね」

    迂闊な言葉ではあった、まるで元気になった事を歓迎しないような発言だったから。

    「あーでも、下働きとかで住まわせてはもらえませんかね、慶蔵さんの手伝いでも―――」
    「なんでもいい」
    「え?」
    「なんでもいいから―――行かないで」

    その日、俯いた恋雪さんの表情を窺うことは出来なかった。
    貴女は、どんな気持ちでそう言ったのですか。
    貴女にとって、俺はいったい何なんでしょう。

  • 28二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 21:10:10

    続きを全裸待機

  • 29二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 21:30:59

    恋雪さんがかわいそ可愛くてお互い無意識無自覚のまま相手の心に寄り添っていって徐々に距離を縮めてく狛治と恋雪さんがすごくいい
    続きが楽しみ

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