【オリウマ】銀河中央殴り込みウマ娘ッ‼︎Ⅴ【一意専心】

  • 11着をねらえ!25/09/11(木) 22:34:04
  • 21着をねらえ!25/09/11(木) 22:36:53
  • 31着をねらえ!25/09/11(木) 22:38:29
  • 41着をねらえ!25/09/11(木) 22:41:40

    【あらすじ】
    ついに始まったクラシックレース最初の大レース『桜花賞』
    並居る強豪を前に灰色の勝負服に身を包み、気合十分のイリフネ。親友ダイナソアシーからの激励を受け意気揚々とターフの上に向かう。
    果たしてイリフネを待ち構える強敵たちとは!?フォフォフォライトの「幻惑逃げ」とは!?
    イリフネの一生懸命にご期待ください

  • 51着をねらえ!25/09/11(木) 22:44:51

    【お知らせ】

    『質問』『登場して欲しいウマ娘(オリウマ含む)』『こんなウマ娘が見たい』『このレースを走ってほしい』『こんなダイスを振ってほしい』等ヶ引き続き大募集中!

    いただいたウマ娘ちゃんは頑張って全員登場させます。お気軽に送ってください

    p.s.お胸が控えめな子が多いので皆さんはそっちの方が好きなんですかね?不服そうにイリフネちゃんも喜んでいると思います 
    (ㆀ˘・з・˘)ナイワケジャナイノデス

  • 61着をねらえ!25/09/11(木) 22:48:31

    「(ここまでのペースはやや高速だけど概ね順調。だけどもなんでかすっごい違和感…)」

    質実剛健が肉体を動かしているよなパワーあふれる走りを得意とするピピボーイングは、このレースに少しばかりの違和感を覚えていた。桜花賞というと例年通りなら比較的ゆったりとしたレース進行が多く、急な坂を伴う最終直線400メートルでの叩き合いというのがここ最近のお決まりだ。だというのに、先頭を行くフォフォフォライトは逃げウマである自身の特性を存分に生かし比較的早いペースでバ群を引っ張っている。
    3000のような長距離ならばいざ知らず、1600の所謂マイルと呼ばれる距離では逃げウマ娘でも最初から最後までトップスピードを維持できることもある。だが、そうやってアドバンテージを稼いでも浪費されたスタミナでは高低差約1.8メートルの急こう配を上りきる頃には後続にそれを食いつぶされしまうだろう。そうなれば、あとは自分のパワーで登攀すれば勝利を狙える。この時点でのレース運びを見て才的とも言えるレースプランである。しかしここは“現代”のGⅠレース、そんな堅実さでどうこうと考えていては思わぬ事態に面食らてしまう。

    いまだ先頭をキープしたままのフォフォフォライトはコーナーの曲線で後ろ目にバ群の位置関係を把握すると、沈み込むように少しづつ頭を下げ姿勢を低くしていく。視界に入るフォフォフォライトの面積が減少していき、少しばかり速度把握とペース配分がやりにくくなるなと後方のウマ娘たちが考えていると、フォフォフォライトの体がブレたかと思えばいつのまにやら彼女との差が広がっていた。
    逃げウマ娘がいる時、そのレースの距離が短ければ短いほど彼女たちに必要以上の差を開けてはならない。学園の教本にすら書いあるレースの基本中の基本の一つだ。それに倣いほとんどすべてのウマ娘が加速し、フォフォフォライトとの差を縮めようと迫る。しかし、スキル発動を示す青色の光が立て続けに発動したことで余計にフォフォフォライトとの距離感把握を困難にし、もうすぐ第2コーナー、レースが残り半分を切ったとなれば未だ逃げウマ娘一人に主導権の全てを握らせるというわけにもいかないという焦りが“流れ”となってバ群の空気を支配していく。

  • 71着をねらえ!25/09/11(木) 22:49:33

    「(う~ん~これ~ちょ~っと~まず~いかも~)」

    バ群の流れに乗っていたアンユークリッドは少しづつではあるがフォフォフォライトの狙いに気づき始めていた。それは彼女がカーブにおいて直進するという奇怪な走り方をしているが故、この場の誰とも違った視座で物事を見ているからこその気づきであった。

    ターゲット・フィクセーションと呼ばれる心理学的現象がある。車両の運転中などにある物体や危険などに対してそれに注意が向き、無意識にそれに対して進んでしまうというものだ。これは勿論ウマ娘にもあり、走行中に電柱にぶつかってしまったという経験を持つウマ娘も少なくはない。レースにおいても後続を突き放す逃げウマ娘に対して思わず追いかけたくなってしまうのもこの心理効果が関係している。
    フォフォフォライトがこのレースに仕掛けた罠もこの人間の性質を利用したものである。
    彼女の作戦は決して難しいものではない、むしろ仕掛けとしては極めて単純だ。『頭をかがめて姿勢を低くする』彼女がやっていることはたったこれだけのことである。しかし、ここで逃げウマ娘であること、長身であることが活きてくる。
    フォフォフォライトは長身のウマ娘だ。170を超える背丈のウマ娘は学園でも少なく、世代というくくりで見るのならそれこそ対等なのはイリフネ位のものであろう。そして、この身長はかなり目立つ、それが先頭を走る逃げウマ娘であれば尚更である。だからこそ、フォフォフォライトの策から逃げることは難しい。

  • 81着をねらえ!25/09/11(木) 22:51:23

    今回のレース、フォフォフォライトは最初のコーナーに侵入するまでの間だけ全速に近いスピードで走っていた。しかしそれ以降はスピードをセーブしている。これを後続がみればバテたか脚を貯めているのだろうと無理な加速はしなかったはずだ。
    だが、彼女はここで頭を低くした。つまり後続から見える面積を小さくしたのだ。そしてそこでのスキル連打である。スキルというのは発動時に青い光が発生するほかに1つ、レース中のウマ娘視点では相手が何のスキルを発動しているのか分からないという特性がある。今はこれが悪さをしていた。
    徐々に低くなっていく姿勢、それを隠すように連続して発生する青い光に、それが加速スキルなのかデバフスキルなのかはたまた回復スキルなのか分からないという現状、そしてターゲット・フィクセーション、それらが複合的な要因となり後続のウマ娘に『スピードを落としているはずなのに追いついていないような感覚』を錯覚させているのだ。

    だが、多くの者はこう感じるはずだ。“コーナーであるならば差しや追込のウマ娘には横から見えているから何の効果もないのではないか”と。
    実際のところ、それは正しい、しかし、これは“大人数”でやるレースなのだ。別に全員をだます必要などない。ほんの数人、例えば真後ろを走る先行ウマ娘なんかを引っ掛ければ、あとは彼女たちという集団が「フォフォフォライトに追いつかなければならない」という“流れ”を作ってくれる。この流れは潮の満ち引きのように強力で強制的に全てのウマ娘を巻き込んでいく。
    レースは1人の天才で出来上がるわけではないが、1人の天才によって“流れ”が作られることはある。フォフォフォライトはその天才側の人間であった。
    地球に比べわずかな重力しか月は持たない。だというのに、潮の満ち引きという大きな“流れ”を作っているのはその月の重力なのだ。空に浮かぶ直径3474kmの星、その星が何倍にもなる地球の“流れ”を作っているのだ。
    今、月面からやってきたウマ娘がその細い体で勝利を引き寄せる“流れ”を作り上げていた。

  • 91着をねらえ!25/09/11(木) 22:54:19

    その流れに乗ってバ群は加速を続けていく。レースは既に最終コーナー、1600メートルの戦場は残り半分を通り過ぎ、気づかぬうちに見えざる罠に囚われ気持ちよく先頭を追いかける数人のウマ娘によって既に事態は圧倒的にフォフォフォライト優勢へと傾きつつあった。
    これこそが彼女が得意とする「幻惑逃げ」速度の緩急、認識誤認の誘導、一つ一つは小さなほころびでも集まればすべてを破壊するほどの致命的な亀裂となる。月面の開発プラントという過酷な環境、ほかに参考になる存在もおらず、ただ生きることにウマ娘としての全ての力を注いできた彼女だからこそできる“勝つため“の走り方である。

    事態の深刻さに多くのウマ娘が気づいたのは先頭がもう間もなく最終コーナーを抜けようかというところのこと。フォフォフォライトの正確な速度を把握できず、追いすがるだけであった後続が疲労の色を見せ始めたこのタイミング、万事整うこの瞬間にフォフォフォライトは己の足を開放する。
    このタイミングでの再加速に誰もが驚き、矢継ぎ早にデバフスキルが投げつけられる。しかし、“回復スキル”の連打で体勢を整え切ったフォフォフォライトの力をそぎ落とすにはまるで至らない。仕掛けどころのタイミングさえ意のままにコントロールされ、無暗矢鱈と足を使いすぎ、じわじわと知らぬ間に致命の刃を鳩尾に突き刺された後続は精彩を欠き、突き放されるばかりで並ぶことはおろか勝負ができる者さえいない。

    たった一人を除いては。

    『伸びるフォフォフォライト!しかしイリフネが食い下がるッ!』

  • 101着をねらえ!25/09/11(木) 22:55:29

    自身の後方、灰色の勝負服に身を包むイリフネが自信を猛追していた。その差はきっかり1バ身半、ここから抜かれることも十分にあり得る距離だ。
    フォフォフォライトはその光景に驚いていたが同時に納得感もあった。
    イリフネはこのレース、常にフォフォフォライトから一定の距離を保ち2番手をキープしていた。父のチームに所属しているウマ娘である、当然その走り方の特徴も“弱点”も理解していた。
    幻惑逃げは決して最強の戦術などではない。むしろそれ自体は一発芸に近く、強みとするには戦術やスキルの使い方、さらには事前のレースから相手が予想してくるであろう戦い方を逆に予想する必要さえある。それ故に“分かっている”幻惑逃げほど怖くない物はない。ただ速度の緩急をつけて走っている、それだけならば一番近くでそのペースに合わせ続ける、たったこれだけのことで簡単に対策ができる。だが今回、フォフォフォライトはスタートと共に最高速で抜け出し先頭を獲った。それに合わせようと思えば最初から全速力を出さなくてはならない。そんなことができるのは逃げウマくらいのもので、そしてこのレースでの逃げウマは彼女とイリフネしかいない。
    しかし、よくここまで我慢しそしてこの状況に耐えている。もし、イリフネがフォフォフォライトのことを知らなかったらきっと最初のコーナーで足を貯めている間に前を取られ仕込みが破綻していたことだろう。だというのにイリフネは自分の速度を落としてもフォフォフォライトの作戦の邪魔をしなかった。おかげで今、このレースの勝敗はフォフォフォライトとイリフネの一騎打ちという状況になり、最終直線に勝負の行方が託された。
    もしかしたらイリフネはこの展開になることを見越してわざと先頭を取らなかったのかもしれない。自分の実力、出走しているウマ娘のデータ、イリフネはそれをないがしろにしてレースをするようなウマ娘ではない。だとすれば、この展開、フォフォフォライトがレース全体をかき乱す今この現状こそ、イリフネが最も望んでいた光景なのではないだろうか。

    「仲良くなりすぎた」

    後方から迫る一陣の光の存在を感じながら、誰にあてつけるわけでもないその言葉は自嘲と共に珍しくどこか嬉しそうな声音に聞こえた。

  • 11二次元好きの匿名さん25/09/11(木) 23:19:38

    立て乙です
    「仲良くなりすぎた」いいね
    とはいえそれは絆の力の発生をも意味し得るわけでどちらにとってもまだわからんな

  • 12二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 06:58:36

    V(・x・');V 三 <仲良くなりすぎた

  • 13二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 15:10:03

    今更ですけど新スレ乙です

  • 14二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 23:23:59

    保守

  • 15二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 08:28:48

    本当にレース中の描写が細かい

  • 16二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 11:06:04

    このレスは削除されています

  • 171着をねらえ!25/09/13(土) 11:07:18

    接戦を繰り広げるイリフネとフォフォフォライト、二人の前に最大にして最後の壁が立ちはだかる。桜花賞が開催される阪神レース場での1600mレースで走者たちの前に最後の難関としてその存在感を示すのが高低差1.8メートル差の急こう配の坂である。
    最終コーナーから下り坂を下りスピードがついた状態で臨むこれは単純なコースデータのみを見れば、勢いそのままに駆け抜けられそうにも思えるが、1600mという絶妙な距離はレース全体の高速化を招き、結果としてここに至るまでに多くのウマ娘がスタミナを消耗しており、それがこの坂の難所具合を加速させているのだ。

    今回のレースにおいてもその凶悪さは健在であり、多重掛けした回復スキルでスタミナにある程度の余裕があったはずのフォフォフォライトであるが、集中砲火で喰らったデバフスキルが今になって足を引っ張り始め、じとりと汗が額を流れる。
    レース巧者でありスタミナ調整が得意な彼女であるがGⅠという大舞台ではそうも言う余裕はなく、ここから先には根性勝負も視野に入れなくてはならない。問題はその相手だが、横目で見たその姿にフォフォフォライトは驚愕する。
    並んでいたのだ。
    トップスピードでは今のフォフォフォライトに敵わないはずのイリフネがこの激坂で自分と並んでいたのだ。しかし、彼女も余裕など一切内容で一文字に結ばれた口の端からは尋常ならざる熱量が蒸気となって漏れ出し、滝のように流れる汗が髪を乱し、音が出るほどに握り込まれた両腕を力の限り振り続け、その反動で一歩また一歩と足を回す。
    イリフネとて逃げウマ娘である以上フォフォフォライトと同じデバフを受けていることには変わらない。ならばなぜ、いま彼女はフォフォフォライトに並んでいるのか。
    今の彼女はどれだけトレーニングを行いピッチ(足の回転速度)やストライド(走り幅)を鍛えても、どれだけスタミナを向上させてもなぜか一向にタイムが縮まらないという悩みに直面していた。だがこれは言い換えれば「それ以上の速度が出るはずの能力を持て余している」ということでもある。つまり、イリフネの速度が変わったわけではなく、普段から能力を十全に使えていないがゆえにデバフスキルを喰らってもなお現状の最高速度を出すことができているのだ。そして、同じくデバフをフォフォフォライトが喰らったことで速度が並び、今こうして並走状態にあるというわけである。

  • 181着をねらえ!25/09/13(土) 11:08:25

    今の自分にはフォフォフォライトに勝つためのスピードは出せない。ならば、自分が勝てるスピードにフォフォフォライトのスピードを落としてしまえばいい。イリフネがフォフォフォライトの作戦を黙ってみていたのはこの真の狙いを通すためだったのだ。

    『並んだ!この土壇場で2勇が並び立った!』

    興奮したようなアナウンスに観客席のボルテージは本日最高潮、しかしその声も今の二人には決して届かない。もはや意地と意地のぶつかり合いとなりいかに相手よりも強い根性を持つか、レースの勝敗はそこにかかっていた。
    坂を上り終えた時、二人の体力は互いに限界レベルであった。フォフォフォライトにはもう使えるスキルは残されていない、正真正銘の自力勝負である。息を吸うたびに短時間に酷使された肺が針を刺したように痛い。しかしどうしてか辞めたいという気持ちは一切湧いてこず、むしろもっと走っていたいとさえ心が求めているようであった。レースはあくまで真剣勝負、だがウマ娘にとって走ることは楽しいことなのだ。それはどこで生まれてどう育っても、たとえそれが月だとしても同じなのだ。
    本気だからこそ楽しい、楽しいからこそ負けたくない。その気持ちはいつかの日、煤汚れにまみれた彼女とトレーナーが出会った日、彼がそれを見つけてほしいと願っていた者でもあった。

    そしてそれはきっとイリフネも同じで、スタミナを大きく消費し相当に苦しいであろう彼女もまたその口角をわずかに上げ、目を輝かせ懸命に走っていた。
    二人の少女は死力を尽くし、己の持てる全てを持って青い芝の上を駆ける。もはや魔法のような力は出せず、気力と精神が彼女たちをゴールまで引っ張っていく。
    苦しいけれど終わらないで欲しい楽しい時間、だがどんなものもいずれ終わりが来る。それはレースだってそうだ。そしてその終わりは劇的な物でなくてはならない。

  • 191着をねらえ!25/09/13(土) 11:09:32

    ゴールまで50メートルを切る最終盤、イリフネとフォフォフォライトは横一直線に並び意地のぶつかり合いが続いていた。お互いにすでに限界、持てる力はほとんどない。だが、“全て”を使い切っているわけではない。

    イリフネが力強く踏みだした足元から青い光が舞い上がる。それは彼女が最後の最後まで隠し持っていた最後の切り札。一番最初に習い、そしてホープフルを制したあの力をまだ彼女は使っていなかった。イリフネがフォフォフォライトに勝つために考えた作戦、その最後のピース、残った“一歩分”の『末脚』が爆ぜる。
    周りのウマ娘にフォフォフォライトの最高速を削ってもらい、なおかつ終盤で自分と叩き合いをしてスタミナを浪費させてもフォフォフォライトとの速度差はほぼ同じにしかならなかった。だからこそ、イリフネは待った。勝つための勝負の一瞬、逆転のために仕掛けどころを。残った最後の末脚が“僅か”にフォフォフォライトの速度を上回る。ほんの1歩分、しかして明確な“差”。僅かなその差をフォフォフォライトがどうこうできる余地はもう残されてはいなかった。
    一陣の風と共にゴール板を金の流星が駆け抜ける。

    『ゴール!勝ったのはイリフネ!厳しい接戦を制し桜の冠を手にしました!』

  • 20二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 19:14:04

    伝説の始まり 

  • 21二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 19:59:35

    思いがけず地に足ついた決着
    しかしそれもまた良い

  • 22二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 23:02:18

    何だかんだで、最後はウマ娘としての意地のせめぎ合いなのが良い

  • 231着をねらえ!25/09/13(土) 23:38:50

    次々にウマ娘たちがゴール板を駆け抜け、それを反映し観客席向う正面に設置された電光掲示板が1~5着までのウマ娘の出走番号とその着差を表示していく。

    「う~ん3着か~すご~い離されちゃった~」

    思った以上に開いてしまった着差に悲し気に言葉を伸ばすアンユークリッド。その隣では惜しくも掲示板を逃し、口惜しさを口元ににじませるピピボーイングの姿があった。

    空が青い。酸欠でチカチカと明滅する視界においてもペンキをぶちまけたような真っ青な空だけはよく見える。汗で肌に張り付いた勝負服を押し上げ胸が隆起するたびに酸素と共にターフの芝の青臭さと土の匂いが鼻孔を通り抜け、張り詰めていた緊張が体の芯から指先の末端にかけて解れていく。阪神レース場のターフの上、イリフネは大の字で倒れ込んでいた。今の自分の力、己の持てる策、全ての実力を出し尽くし、焼けるような肺の熱さに達成感が笑顔を浮かべる。
    本当にギリギリの戦いであった。こうなるであろうという事前予測、レース中の判断、周りのウマ娘の行動、どれか一つでも欠けていては今この勝利はイリフネの手の中にはなかっただろう。総じて今回は運がとてもよかった。

    「賞賛、見事な走り」

    「へへ…そっちもなのです」

    その中でも最大の幸運はフォフォフォライトと“友達”であった、これに尽きるだろう。もし、イリフネが彼女のこともその走り方も知らなければそれを逆手に取った今回の作戦を思いつくこともなく、スピード差に負けていたことだろう。
    彼女と友人であったこと、彼女が父のチームのウマ娘であったこと、それはイリフネにとってとてつもない幸運であった。


    「うぉぉぉぉ!!フォフォフォもイリフネもどっちも頑張った!偉い!かっこいい!最高だ!」

    さて、そんな幸運を運んできた張本人であるイリフネの父もといフォフォフォライトのトレーナーは感動にスーツの袖を濡らし、風呂の線が抜けたように大滝の涙を流し感動を叫んでいた。

    「親バカかトレーナーかどっちかにしてくださいッス…」

    そんなトレーナーの姿を見て彼のチームのウマ娘はドン引きして2歩分距離をとった。

  • 24二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 06:18:57

    > 総じて今回は運がとてもよかった

    最も運がいいウマ娘を競うレースを争う資質十分ですねこれは

    路線というより桜花賞を選んでたからこの先も気になる

スレッドは9/14 16:18頃に落ちます

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