《SS》ねぇ、トレーナーさん。セイちゃん、耳かきが得意なんですよ〜

  • 1125/09/12(金) 04:50:12

    ある休日の昼下がり、トレーナー室で次のレースに向けたトレーニングスケジュールをまとめていると、セイウンスカイがひょっこり現れた。手にはお盆を持ち、俺の向かいに立つ。
    「お疲れ様です、トレーナーさん。休日なのに今日も頑張っていますねぇ」
    穏やかな声に顔を上げると、セイウンスカイはいつものほんわかとした笑みを浮かべていた。彼女は手に持っていたお盆をそっと机に置く。そこには、小さなプリンと温かいミルクティーが乗っていた。
    「よかったら、どうぞ〜。これ、セイちゃんお手製の特製プリンですから」
    「ありがとう、スカイ。でも、なんで?」
    「なんで、って……。なんとなく、トレーナーさん、疲れているかな〜って思っただけですよ〜」
    そう言って、彼女はプリンを俺の前にスッと差し出した。その気遣いが嬉しくて、俺は素直に受け取った。プリンを一口食べると、優しい甘さが口いっぱいに広がる。
    「美味しい。ありがとう」
    「にゃはは〜、よかったです〜」

  • 2125/09/12(金) 04:51:23

    それからしばらく、二人で他愛ない話をした。次のレースのこと、寮の庭に咲いた花のこと、そして最近流行っているお菓子について。彼女と話していると、いつも張り詰めていた心が自然と緩んでいくのを感じる。
    話が一段落したところで、セイウンスカイはどこか楽しそうな、それでいて少しだけ真剣な眼差しで俺の顔をじっと見つめてきた。
    「ねぇ、トレーナーさん。セイちゃん、耳かきが得意なんですよ〜」
    不意打ちの言葉に、俺は思わず固まった。なぜ、今、耳かきの話になるんだ?と戸惑っていると、彼女はさらに続けた。
    「最近、トレーナーさん、なんだかぼーっとしていることが多いみたいで……。もしかして、耳垢が溜まって、音が聞こえにくくなっているからかな〜って」

  • 3125/09/12(金) 04:52:25

    彼女の言葉に、俺は心臓がドクリと鳴るのを感じた。図星だった。最近、なんとなく周りの音がくぐもって聞こえるような、そんな気がしていたのだ。
    「それに、なんだか耳の奥がムズムズするような、そんな感じがしませんか?」
    彼女の言葉は、まるで俺の心を覗いているかのようだった。耳掃除が苦手で、誰にも言えずにいた俺の悩みを、彼女は静かに見抜いていたのだ。
    「…どうして、わかったの?」
    「なんとなくですよ〜。トレーナーさんがいつも、無意識に耳の穴を指で触っているの、見ていましたから」
    セイウンスカイはそう言って、クスクスと笑った。

  • 4125/09/12(金) 04:53:26

    「たまには、ちゃんと耳掃除した方がいいですよ。もしよかったら、セイちゃんに任せてくださいませんか?」
    穏やかな、けれど有無を言わせないような、そんな優しい声だった。俺の耳かきを、彼女に任せるなんて。最初は躊躇した。だが、彼女のあまりにも真剣な眼差しに、俺はいつしか抵抗する気持ちが薄れていくのを感じていた。
    「……わかった。スカイに、お願いするよ」
    「ありがとうございます〜。じゃあ、ソファーに行きましょうか。セイちゃんが、耳も心もスッキリさせてあげますから」
    そう言って、彼女は微笑んだ。その笑顔は、いつもより少しだけ、大人びて見えた。

  • 5125/09/12(金) 04:54:45

    耳かきをされるのは、あまり好きではなかった。
    耳の穴に何かを入れられる感覚がどうも苦手で、まるで電気を流されたかのように、背筋がゾワリと粟立ってしまうから。耳掃除はシャワーのついでに、たまに綿棒でサッと済ませる程度で、それ以上はしなかった。
    けれど、今日だけは少し違った。
    トレセン学園のトレーナー室。セイウンスカイに「たまにはセイちゃんに任せてください」と、穏やかにソファーに寝かされる。少し戸惑う俺に、セイウンスカイは「大丈夫ですよ。セイちゃんが耳かき得意なのはみんな知っていますから〜」と、ほんわかと笑った。確かに、彼女はなぜか生徒の間で「耳かきが上手い」と評判らしい。観念して横になると、セイウンスカイは慣れた手つきで俺の頭を自分の膝に乗せた。いわゆる膝枕だ。

  • 6125/09/12(金) 04:56:05

    「ん、少し失礼しますね〜」
    顔を近づけた彼女の髪から、ふわりと漂う甘く穏やかなシャンプーの香りが鼻腔を満たす。その香りが、張り詰めていた俺の心をじんわりと解きほぐしていくようだ。
    「……本当は、ちょっとだけ怖いんだ」
    正直にそう告げると、セイウンスカイは少しだけ驚いた表情を見せた後、すぐに優しい声で応えてくれた。
    「そうですか。でしたら、無理はしなくていいですからね〜。少しでも嫌だと思ったら、すぐに言ってくださいね〜?」
    そう言って、セイウンスカイは俺の耳元にそっと息を吹きかけた。「ふう……」。微かな風が耳の穴に吹き込まれる。鼓膜をくすぐるその優しい息の感触に、ゾクッとしながらも、熱い吐息が耳の奥まで染み渡るような錯覚に陥った。くすぐったさと、なんだか甘いようなその感覚に、俺は思わず小さく身をよじってしまった。
    「にゃはは〜、びっくりしちゃいましたか?」
    クスクスと楽しそうに笑うセイウンスカイ。その声の響きと、彼女の温かい膝の感触が、なんとも心地よかった。そして、耳かきが始まった。セイウンスカイが取り出したのは、ごくごく普通の、ごく細い竹の耳かきだ。その硬質な見た目に、俺は無意識に喉を鳴らした。だが、彼女はまるでその硬さを感じさせないかのように、慎重に、そしてゆっくりと耳かきの先を俺の耳の穴に差し込んだ。

  • 7125/09/12(金) 04:57:05

    身構えていたゾワゾワした不快感は、不思議と全くなかった。代わりに、耳の穴の入り口から、内側に向かってじんわりと温かい熱が広がるような、なんとも表現しがたい快感が全身を包み込んだ。
    耳かきの先端が、耳の入り口の柔らかい皮膚をそっと撫でる。その動きに呼応するように、背筋を這い上がるような、ゾクリとする甘い痺れが頭の奥まで響き渡り、俺の全身の力がすうっと抜けていくのを感じた。微かに『カサ、カサ』と、微細な音が聞こえてくる。ああ、これは俺の耳の中だ、と妙に冷静に認識する。同時に『ゴソ、ゴソ』と、何かを丁寧に探っているような感触が耳の壁から伝わってくる。

  • 8125/09/12(金) 04:58:07

    「ここ、ちょっとくすぐったいですか〜?」
    セイウンスカイの声が、すぐ近くで囁かれる。その声の振動が、耳かきを伝って、さらに奥まで染み渡るようだ。
    「……大丈夫。すごく、気持ちいい」
    俺の言葉に、セイウンスカイは少しだけ目を見開いた。いつも余裕のある笑みを浮かべている彼女が、ほんの一瞬、戸惑ったように視線を揺らす。そして、ほんのりと頬を染めて、「そ、そうですかぁ……」と、少しだけ声が上ずった。

  • 9125/09/12(金) 04:59:21

    そのあどけない反応が、俺の心をさらに温かくさせた。耳かきはさらに奥へ。ゴソゴソと、何かを掬い上げるような感触が伝わってくる。耳の壁を優しく撫でるたびに、頭の芯が痺れるように甘く、トロトロに溶けていく。まるで、俺の意識が彼女の指先で操られているかのようだ。思考は霞み、ただただこの心地よさに身を委ねるだけだった。
    「反対側も、いきますね〜」
    やがて右耳の耳かきが終わり、次は左耳。セイウンスカイは俺の頭をそっと持ち上げ、体勢を変えさせた。同じように彼女の温かい膝に乗せられる。
    「こっちは、少し溜まってますね〜。しっかり取ってあげますから」
    そう言って、今度は左耳の奥へと耳かきが進む。右耳のときよりもさらに深く、じんわりとした熱が耳の奥から脳へと広がる。微かにゾクゾクするような、それでいて心地よい刺激。耳かきが動くたびに、全身の力が抜けていくようだ。

  • 10125/09/12(金) 05:00:24

    「……もう、眠くなってきた」
    「にゃはは〜、まだ半分ですから。もう少しですよ〜」
    セイウンスカイは楽しそうに笑いながら、俺の耳の中を丁寧にかき続けてくれる。微かなカサカサという音と、シャンプーの香り、そしてセイウンスカイのほんわかとした優しい声。それらが混ざり合い、俺を深いリラックスへと誘っていく。やがて、瞼が自然と重くなり、意識がだんだんと遠のいていく。もう、彼女の膝の温かさだけが、俺の唯一の現実だった。そして、俺は抗うこともなく、その意識を手放した。

  • 11125/09/12(金) 05:01:25

    次に目が覚めたのは、夕日が窓から差し込む時間だった。いつの間にか体にはタオルケットが掛けられている。セイウンスカイはもう部屋にはいないようだった。けれど、枕元には「おつかれさまでした〜!これで、すっきりしましたね!またいつでも、言ってくださいね〜」と書かれた小さなメモが置いてあった。
    耳を触ってみる。なんだか、世界が少しだけ鮮明になったような、そんな気がした。そして、もう耳かきが苦手だ、とは思わなくなっていた。
    次に彼女に会ったときは、ちゃんとお礼を言おう。そう心に決めて、俺はセイウンスカイとの次の再会を心待ちにしていた。

  • 12二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 05:06:08


    セイちゃんに耳かきしてほしい…

  • 13二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 07:40:24

    乙です
    甘々耳かきする側なのに恥じらっちゃうのがセイちゃんの良さ

  • 14二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 17:29:12

    セイちゃんはかわいいなぁ
    お返ししてあげたい

  • 15二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 19:56:20

    耳かきSSは良いぞ

  • 16二次元好きの匿名さん25/09/12(金) 20:16:47

    ヒトミミの掃除が上手いのはお爺ちゃんにしてあげてたんだろうかね
    次は「終わり」って書いてくれ~ 続きがあるかと思って待ってたら二度寝した~

  • 17二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 00:02:48

    耳かきSS読みながら寝落ちするのが好きです

  • 18二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 00:03:18

    トレセイ欠乏症患ってたから助かる

  • 19二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 02:24:51

    ほう 耳かきセイちゃんですか…たいしたものですね
    トレーナーの耳かきをするセイウンスカイは糖度の効率がきわめて高いらしくレース直前に愛飲するサクラローレルもいるくらいです
    それに特大愛情とプリンと膝枕
    これも即効性のトレウマ食です
    しかもタオルケットもそえて健康バランスもいい
    それにしても自分から誘っておきながらあれだけ狼狽できるのは超人的な赤面力というほかはない

  • 20二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 04:35:15

    良いね
    休日の昼に読みたくなる

  • 21二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 04:37:37

    途中いつ楽天カードマンみたいなの出てくるのかと不安だったが
    普通にいい話だった

  • 22二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 07:39:34

    文章が休日の穏やかに流れる時間を感じさせて良き

  • 23二次元好きの匿名さん25/09/13(土) 13:31:40

    セイちゃん器用だから耳かき得意そう

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