- 1二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:02:16
- 2二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:03:20
私の生きる場所は、定灯台(スポットライト)に照らされた舞台(ステージ)にこそあった。模倣者であることで、私はそこにいることを許された。
あるときは輝かしい王子に。あるときは麗しい令嬢(ヒロイン)に。あるときは立ちはだかる敵役に。あまりにも多くの役割を学んで、羽織って、映写機(カメラ)の前に立って、立ち続けて―――最後に辿り着いた舞台に、キミは咲いていた。
キミは、荒地に咲く一輪の花のようなひとだった。私のこの、十五年の人生の中において、キミというひとは何より輝いているように見えた。その余りの眩しさが、初めは憎たらしいとすら思うほどに。
私は人の視線が好きだった。多くの視線の中で、万雷の拍手と歓声を受けることが、私にとっての至上の幸せだった。そう。私は生来、そういう性分だったはずなのに。
嗚呼、あれは、いつからだっただろう。私の幸福は、キミの視線の中にだけあるような気がした。キミの見せる美麗で、真剣さを携えた横顔が、私の心を奪ったような気がした。キミが、ふとした時に浮かべる柔和な笑顔が、何より素晴らしいもののように思えた。その存在を形作る細胞の全てが、私の心を強く、それ以外が見えなくなるほど明るく照らしていた。
私は、その昂りをどう定義するべきか分からなかった。今思い返してみれば、少しは思いつく。きっと私は、キミのことを敬愛していたのだ。キミがどう感じていたかまでは、分からないけれど。
私はキミと共に歩みたかった。キミという存在と、この舞台で踊り続けて居たかった。役者(わたし)にできることと言えば、擬い物のようなことしか無かったかもしれないが、きみのために何かが出来ているような気がすれば、それで良かった。それだけで、満たされていたのだ。 - 3二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:04:43
あれは確か、なんでもない昼下がりのことだっただろうか。
いつもと変わらないはずの、キミの横顔の中に僅かな、けれど確かな悲しみが滲んでいた。
人の表情には、どんなに微細なものであれ、その人の心情が顕になるものだ。私という役割を全うしてきて、形作られた一つの真理のようなものだった。
思えばキミは、何があろうとその本心をさらけ出そうとしなかった。何があろうと凛とした佇まいを崩さなかった、キミは。誰かの命が潰えるたびに、皆のあずかり知らぬところで、一人静かに泣いていたのだ。その事実が、あまりにも重く私にのしかかった。
私はそっと、笑顔の仮面を被った。その事実を理解した途端に、不意に涙が零れそうになったからだ。泣いてはいけない。それは、勝手な憐憫だ。もし、涙を流してしまえば。キミのその、薔薇のような気高い覚悟を、汚してしまうのだから。
そうして、日々をいつもと変わらぬように過ごしてから、一人きりで浮(ぼや)りと道を進む私に、数多の問いが駆け巡っていった。
私はキミに、一体何をしてあげられるのだろう。どうしたら、キミの痛みのその百分の一でも、請け負ってあげることができるんだろう。何をすれば、誰より尊いキミの、その内に秘めた思いを理解してあげられるのだろう。そのどれも、私には応え得ぬ問いだった。それが、たまらなく情けなかった。
だが、だからと言って。屹度私が、キミの感情に同調することは、してはならないのだ。私がどれだけキミのために泣いたとしても、キミが楽になる訳では無いのだから。もしも、この私の身体でキミの苦痛を受けてあげることができたなら。それはどんなに、素晴らしいことだろうか。どんなに、満足の出来ることだろうか。キミのためならば、私は屹度、この心臓すらも捧げることができよう!
高揚と自己陶酔の中、ふと天井を見上げた時に、甚深(じんじん)と痛む頭に浮かぶものがあった。役者(わたし)のよく知った、けれど自分(わたし)の知り得ぬ感情であった。
嗚呼、そうか。人はこれを、愛と呼ぶのだ。
無性に、手を伸ばさなければならないと思った。キミに、夜空に浮かぶ星のようなキミに。届かぬとしても手を伸ばしていることさえできれば、それで救われるような気がした。
たとえ私が、それで灼けてしまうのだとしても。 - 4二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:08:19
それから、少し時間が経ってからのこと。
極彩色の絵の具の中で、太陽のように笑う彼女の姿が溶け消えるのを見た。キミが、これまでにないほどに強く感情を表すのを見た。キミが繕っていた、汎ゆる事を平然と受け流そうとするための仮面が、剥がれ落ちていた。
私は、どうにもそれが耐え難かった。キミの抱える欠落を、受け入れてあげたかった。私がそれに適うような存在だったかは、分からなかったが。
そうして、キミと二人になった時に、私の中で沸き立つ衝動があった。
私は、キミに手を差し出した。不安と、確かな期待感ばかりを胸にして、キミが私の手を取ることを、期待していたのだ。
キミはといえば、少しの困惑を浮かべて。
キミは、私の手を払った。
それは、ただの反射のような、ほとんど意識を介さないような物だったのやもしれないが。そこにはただ、拒絶があった。憐憫があった。それらの遥か奥底に、きっとキミ自身ですらも気付いていない、どろどろとした嫌悪が籠っていた。それらの全てが、私の目を潰した。嗚呼、そうか。私は、キミに嫌われたのだ。直感的に、嫌でも理解した。
作り笑顔を浮かべて、震える手を引っ込めた。そう、この程度、造作もない。私は役者なのだから。表情を、感情を、本心を偽ってやることくらい、容易いはずだ。その筈なのにどうにも、私の視界が酷くぼやけるような気がした。窓の外で、鳥やら何やらがピィピィと鳴き喚いていた。
後悔と悲嘆が入り混じった、最も聞き馴染んだ誰かの名を叫ぶキミの声を振り払って、ただ私は駆け出していた。涙と嗚咽がとめどなく溢れた。でも、仕方のないことなのだと思った。出しゃばりで、嫌われ者の私には、これこそが、相応しいのだ。
何処に行くでもなく、駆けた。キミから、私という悪性を少しでも遠ざけたかった。嗚呼、そう、その通りだ。これは、そのための正当なる行為なのだ。そう思うと、気持ちばかりは、この私の惨めさを正当化できる気がした。涙を零しているというのに、私の顔に浮かぶ笑みの意味も分からぬまま、只管に走って、走って、走って。
気付けば、私には孤独だけがあった。キミからの友情も、信頼も、何もかもを失った愚かな道化として、そこに居た。自分のその、どろどろした感情を知覚した途端に、大声を挙げて笑いたくなった。
嗚呼、鳥の声が、厭に煩い。 - 5二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:09:43
私の名を呼ぶ声があった。私の目に映像(うつ)ったキミは、今にも泣きそうな顔をしていた。
震える声でキミの名を呼ぶ前に、キミの唇が私を幸せで包んだ。甘くて、蠱惑的で、それでいて陽だまりのように温かい、キミの愛が流れ込んだ。私とキミの舌が、自然に絡まって溶け出した。どんな言葉ですら形容できぬような強烈な情愛が、私の内側から溢れ出して、気付けばキミを抱きしめていた。
まるで数時間にも、数日にも思える刹那が過ぎて。キミは私の胸に顔を埋めて、年相応の少女のように、言った。
「キミまで、喪ってしまいたくないんだ」
私の、先程までの溶け落ちてしまうような悪感情が、ふっと消え去るのを感じた。冷えた頭で見据える、普段ならしゃんとしているキミのその背中が、あまりにも小さく見えた。ぐしゃぐしゃになったキミの声が、私の胸に染み込んでいった。
「どこにも行かないと、約束してくれないか」
そうやって震える声で言うキミが、たまらなく愛おしく、同時にとても可哀想なひとのように思えた。それが、キミに吐き出せる最大限の弱音なのか。それが、キミにできる唯一の反抗なのか。
私は、キミを見ていなかったのだ。キミを尊び、愛しすぎるがあまりに、キミの本質を見落としていた。キミが、どれだけ高潔で、潔白で、正義を体現するようなひとなのだとしても。キミは、やわらかな心を持った一人の少女だったのだ。そう思うと、無性に泣きたくなった。先程までの絶望と自嘲に濡れた涙でなく、愛ゆえの、涙であった。
「ああ、勿論だとも...」
そう、絞り出すような声で呟いた。
それを聞き届けて、少し微笑みながら私の胸に縋り付くように泣くキミが、えも言えぬ感情を沸き立たせた。愛情であり、それ以上に倒錯的な感情が、私の心と脳を満たした。
私の内なる性が、まろび出てゆくのを見た。私のこの全てを代償として、キミの淋しさを埋めることができると、思ってしまった。
不敬だ。これは、君の誠意と信頼に対する冒涜だ。私の脳が、鳴々(ジリジリ)と警鐘(ベル)を鳴らしていた。
嗚呼、だとしても。そんなことは、屹度どうでもいいのだ。悠々とした声が、口から零れ出た。
「キミが、私を離さぬために」
「私に、キミを刻んでくれないか」
泣き腫らしたままのキミを抱きながら、私達は長い夜への扉を潜るのだ。 - 6二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:11:17
昏い闇の中に佇む宿舎(ゲストハウス)の中、夜明けに向かう為の過程を2人で、言葉を交わしながら歩み続ける。鳥の声は、今や何処かに掻き消えてしまった。
初めこそ戸惑っていたキミは、今や私に跨って、必死に猛獣のフリをする犬のように、私を愛していた。
「あ、はっ、れいあっ、れい、ぁっ」
淫靡な声を漏らしながら、キミは私にその存在を押し付ける。私はその性を受け入れながら、紅潮したキミの顔に、快楽に震える手で触れる。私の身体に垂れ係るキミの髪が、無性にこそばゆく感じた。
はぁ、はぁっ、と私の口から喘声が溢れた。
「おねがいっ、だから、いかないで、くれ…」
その時のキミは、私だけを見ていた。キミの思いの全てが、私に注がれているのを感じた。気付けば私の口から、はしたない喘ぎ声が漏れ出していた。そんな様をキミに、見られたくなかった。いつもなら心地良いキミの視線が、その時ばかりは恥ずかしかった。ダメだ。抑えなくては。そう思っても、一度得た昂りとは、中々収まらぬものなのだ。
ああ、みないで。おねがいだから、みないで。
「…がまん、しないで……わたしに、みせて…っ…」
目を逸らそうとした私を、キミの手が阻んだ。興奮と恥辱の混じり合ったキミの顔が、私を見下ろしていた。キミの視線が、体温が、愛情が、私の体の中に、染み込んでいった。かぁっと私の全身が火照って、快楽の涙が視界を濡らした。ああ、ヒロくん、ヒロくん。繰り返すように、キミの名を叫び続けた。 - 7二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:12:20
「……っ…れい…ぁっ、すきっ…すき、だ…レイアっ……」
わたしも、すきだ。ヒロくんが、キミが、だいすきだ。
お互いに、口から互いの名と意味のない声をひり出すようにして、細胞の一片一片を重ねて、蕩かしてゆく。ぬちゃぬちゃと響く水音が、私達の繋がりを示しているような気がした。
「ただしくなくてっ、いいから…ずっと、いっしょに……いて………」
あぁ、いっしょだ。わたしは、ずっと、キミといっしょだ。
甘い、何処までも甘い肉体の戯れの中で、幾度かの絶頂が訪れて、尚もあらゆる種類の体液でお互いを汚しながら、私達はダンスを踊る。ぎしぎしと鳴る寝床(ベッド)の発条(スプリング)と、私達の声が、猥雑な不協和音(ラブソング)を描き出す。キミと私の肉が触れて、淡く弾けて、幻想のような快感を齎す。
嗚呼、キミがいなくては、私は生きられない。
私がロミオなら、キミはジュリエットだ。私がハムレットなら、キミはオフィーリアだ。私がシグルドなら、キミはブリュンヒルデだ。この結末が悲劇なのだとしても、今だけは、この愛の中に溺れていたかった。
狂おしい程に長く、そして短い時間を過ごしながら、私達はただ夜明けを待っていた。 - 8二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:13:30
___血液(ちょうちょ)が、視界の端でひらひらと飛ぶ。
そうか。これが、走馬灯というものか。
私という舞台の幕が落ちる最期の時まで、その主題はやはり、キミだった。キミはやはり、私にとっての光だったのだ。だがその姿ももう、ぼんやりとしか浮かばなくなってしまった。
一つだけ、キミに、謝らなくては。そんな思いがふと浮かんだ。
キミから離れないと、キミとずっと一緒だと、言ったのに。私は、キミを置き去りにしてしまうのだ。それだけが、唯一の後悔だった。
ああ、願わくば、最期くらいは。
キミの顔を見て、死にたかったなぁ。 - 9二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:15:19
以上です。
ヒロレイは、いいぞ。 - 10二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:17:47
- 11二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:18:10
ヒント・本編
- 12二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:20:06
本編2週目軸のヒロレイ絶対に死別するのどうにかなりませんかね?
- 13125/09/14(日) 10:24:14
- 14125/09/14(日) 10:29:02
おかしいな……エロいことするまでに3500文字ある……エロssなのに…
- 15二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 10:40:19
レイア……お前………
- 16125/09/14(日) 10:47:09
ヒロレイss、世の中に全然ないんだよな………えっちなのに………
- 17二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 11:40:37
おお、神か?
朝からヒロレイを摂取して元気いっぱい - 18125/09/14(日) 12:50:44
- 19二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 12:58:25
- 20125/09/14(日) 13:21:31
- 21二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:24:22
調べたらpixivのヒロレイr18って4作品しかないんだ……
- 22二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:29:13
このレスは削除されています
- 23二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:32:32
- 24二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:34:38
- 25二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 15:41:22
身体を重ねるくらいの相手が死んじゃった時のヒロちゃん、本編以上に絶望なのでは……??
- 26125/09/14(日) 16:37:44
- 27二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 16:42:38
ロウワーかな?
駆け込み訴えが元ネタの曲だしめっちゃ合ってるなぁ...... - 28125/09/14(日) 16:56:59
ですです!!!ありがとうございます!!!バケツツールくん優秀ね……
あとよろしければですが、「まのさばss」って検索欄にいれると過去スレ何本かあるので…そちらのほうもよろしければ……是非………(大売名)
- 29二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 19:58:35
悲しいなぁ…広めていかないと
- 30二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 20:06:04
レイヒロって
レイア→→→→→←ヒロ のイメージだけど、
やはり純粋に両思いというのは素晴らしくてですね - 31二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 20:10:53
- 32二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 20:18:57
レイア→ヒロ 序盤
レイア→→→←ヒロ 2-2、2-3
レイア→→→→→←←ヒロ 2-4序盤
レイア→→→→→←←←←ヒロ 2-4途中
レイア←←←←←ヒロ 2-4事件後
レイアは死んでしまったのでヒロに矢印を向けれることはもうありません。あーあ - 33125/09/14(日) 20:32:24
- 34二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 20:35:31
2-4がエマとの同時死なせいでレイアの死のインパクトが薄れてしまっている気がする。せっかくの相棒死亡シーンだというのに
まぁ目立てないまま地味に死んでしまうというのもレイアらしいが - 35125/09/14(日) 20:41:30
これ、物書きとしてあまりに嬉しいコメントすぎる……感謝……
- 36二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 20:47:29
あなたの書くヒロレイが好きすぎてpixivの方でもフォローしてしまった......
- 37125/09/14(日) 20:55:15
!!??!!?!?!?!?ありがとうございます!!!!!!
- 38二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:55:43
終わり方えっちだな……
- 39二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:56:50
- 40二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 22:30:02
- 41二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 23:52:04
ヒロレイヒロはもっと流行るべき
王子様系ポンコツ気味少女×生徒会長系真面目少女なんて魅力の塊じゃないか
しかも死別までできちゃう - 42二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 01:37:37
よいものを見せてもらった age