- 1二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:03:03
- 2二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:04:13
- 3二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:04:58
たておつさんです。避難所も置いときます?
- 4二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:05:41
乙です。ありがとうございます!!
- 5二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:06:55
たておつ。SS書いていただき誠にありがとうございます
- 6二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:09:19
たて感謝です!!
- 7二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:09:46
建て乙
- 8二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:11:42
たておつー
- 9二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:12:57
おつつ
- 10◆O8jjXmH60s25/09/14(日) 21:14:00
あらすじ
先生になっていた黒服は由来不明の『使命感』のようなものに揺れ動かされながら
アビドスの支援を行っていた。
便利屋68を手駒に使うなど、以前の時間軸で得た情報も利用しながら、
自分なりの方法で先生としての日々を送る黒服は、
風紀委員会の侵攻という事件を便利屋68およびアビドス廃校対策委員会の合同作戦にて乗り切ることに成功しつつあった。 - 11二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:14:06
ほしゅー
- 12風紀委員長空崎ヒナ25/09/14(日) 21:16:10
空崎ヒナが到着し、その姿を見せると同時、それまで余裕を持っていた小鳥遊ホシノが、表情は変えないまでも私を庇うように前へと出た。
強者同士の直感というものだろうか。小鳥遊ホシノは空崎ヒナを警戒すべき相手だと認識したようだ。
「小鳥遊ホシノ……」
空崎ヒナはその場に彼女がいることに驚いているようだった。まるでそこに存在しているのが意外だとでも言うように。
小鳥遊ホシノは首を傾げている。
「状況は大体把握している。通達なしでの他校自治区内における兵力運用と、他校生徒たちとの衝突」
気を取り直したように、空崎ヒナが話を始める、が……
『いえ、こちらとしてはそのように受け取っていません。お互い誤解があり、衝突が起きそうなところではありましたが……』
「え?」
『あ、申し遅れました。アビドス高校の奥空アヤネです。』
奥空アヤネがその発言に待ったをかけた。 - 13風紀委員長空崎ヒナ25/09/14(日) 21:18:32
用意していた言葉を伝えるように、よどみなく奥空アヤネが話を続ける。
『私たちはお互いに銃弾の一発も撃ち合っていません。あくまでそちらの指名手配犯の処遇について意見を交わしあったにすぎません。ですから……』
「……」
『このままお引き取りいただけるのであれば、今回の件は殊更責任を追及するつもりはありません。皆さん、それでいいですよね。』
奥空アヤネが対策委員会のメンバーへと確認する。
当然、尋ねられた者たちも頷く。
「そう……」
空崎ヒナは、視線を小鳥遊ホシノに、他のアビドス生に、そして私に視線を向けた後、
「ありがとう。この恩はいずれ返させてもらうわ。みんな、聞いていたでしょう? 帰るよ、撤収準備」
頭を下げて、そう言った。 - 14風紀委員長空崎ヒナ25/09/14(日) 21:20:27
あの作戦会議で立てたプラン。
詳細な方法については荒唐無稽差があるものであったが、大きく分けて2つあった。
一つは、「もし攻撃された場合」正面から撃退し、ゲヘナを相手取って賠償金を請求する。というプラン。
空崎ヒナが来る前であれば、小鳥遊ホシノも含め一方的な制圧ができるだろうという戦力分析で行うメインプラン。
しかし、この作戦はどこか、失敗することが前提でメインプランに据えられているものだった。
そしてもう一つは、「戦闘を避けられそうな場合」戦闘が起こらないよう時間稼ぎをし、こちらの消耗なしに退却させること。相手に恩を着せることが出来れば上々。
そういうものだ。
生徒主導で立案されたこの作戦は、甘い部分が無いとは言わないまでも、『先生』として図らずも感心してしまったところがあり、こうして口を出さずに乗ってしまったのだ。
あるいはこれも、私が何かに影響を受けてしまっている結果のものなのかもしれないが。 - 15風紀委員長空崎ヒナ25/09/14(日) 21:21:46
風紀委員が大方撤収した後、残っていた空崎ヒナがこちらに近づき、話しかける。
「あなたがシャーレの先生、よね?」
「ええ、そのようになっていますね。」
「? 妙な言い回しをするのね。……カイザーコーポレーションについて、知ってる?」
空崎ヒナからもまた、カイザーの名前が出てくる。独自で何かを掴んでいるのだろう。
「調べて分かる程度のことであれば」
「このアビドスで何かをしようとしている者がいるわ。一つはカイザーだと思うんだけど、他にも。逆に、先生は何か知らない?」
「……生憎、思い当たりませんね。」
カイザーの他に、アビドスで暗躍する者。それは私のことだろうか。
「そう。それじゃあ、先生、私も帰るわね。」
「ええ。近いうちにゲヘナ学園にも訪問させてもらうつもりですよ。それでは、また。」
「そうね。楽しみにしてるわ。」
空崎ヒナは帰っていく。私にとって気になる報を残して。
こうして、ゲヘナ風紀委員によるアビドス侵攻未遂事件は幕を閉じた。 - 16人物備忘録② アビドス編25/09/14(日) 21:22:46
小鳥遊ホシノ
現アビドス高等学校唯一の3年生にして。以前の時間軸において、私が最高の神秘と評していた存在です。
今もその評価自体は変わりませんが、研究対象として求めているかというとそうでもありません。
余りに危険すぎるという面もありますが、今は生徒に対し、神秘を研究したいという渇望自体が薄れている気がします。
しかし、今の彼女は時間遡行の影響を受けているか、私に関する何かしらの情報を持っている可能性があります。
今後も関係を続けていく必要がありそうです。
砂狼シロコ
以前の時間軸においては、彼女の異世界における同一存在として、および色彩との接触により反転した存在として非常に興味深い存在でしたが、
彼女自体も非常に有力な神秘を持つ存在です。
そして、私を遭難の危機から救った恩人でもあり、それゆえに彼女は私のことを生活能力の無い危うい人間であると認識している節があります。
それについての訂正はともかくとして、特に有事の際においては彼女がキーパーソンになる可能性があるので、動向に注意する必要があります。
十六夜ノノミ
セイント・ネフティスの令嬢として存在している生徒です。
その生い立ちからかは不明ですが、温厚な印象とは裏腹に、状況によっては手段を選ばない一面もあるようです。
私のことはただ少し背の高い人程度の認識をしている傾向が見られます。
言動が読みにくい生徒ではあるので、要注意対象です。
奥空アヤネ
生真面目な性格で、この学校においては苦労人という立場を欲しいままにしているような人物です。
神秘はともかくとして、情報処理能力は十分にあり、小鳥遊ホシノの武力とともに、アビドスの戦術の要の一つといって良いでしょう。
私に対しては当初、恐怖の対象として認識されていた気がしますが、今は普通の大人程度の考えに変わっている気がします。
黒見セリカ
アビドスの生徒としては少数派である、普通の学生らしい生徒という印象です。
騙されやすい危うさと、この年代の人物にありそうな片意地な態度は、むしろ限界集落と化しているアビドスにおいてどのように醸成されたのか少々気になります。
私に対しては、当初信用できない大人という認識でしたが、誘拐未遂事件以降は、逆に信頼を感じ、居心地が悪く感じる時があります。 - 17二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:29:37
本日はここまでー
アビドス編も3章除けばだいぶ終わりが近づいた気がします。 - 18二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 22:49:16
お疲れ様ですー
- 19二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 00:24:05
更新感謝です カイザー以外で暗躍………………気になりますね…………
- 20二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 08:29:18
一体誰なんだ…
- 21二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 10:34:56
黒・黒服…
- 22二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 14:33:13
保守
- 23二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 14:46:32
素晴らしい
いったいここからどう転ぶのか
展開が非常に楽しみ - 24二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 18:59:20
このレスは削除されています
- 25二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 19:27:46
アビドス編以降も続くのかな?エデン条約編とか悪い大人対悪い?大人の構図がすごく見たいけど、元の黒服ならRTAじみた手段で片付けられそうなのに“黒服先生”だとなんとなく本編先生より苦しい戦いになりそう
- 26二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 19:48:08
もう一つ気になる事があるんだ………………………………舐めるのか?
- 27カイザーについて25/09/15(月) 20:54:42
風紀委員がアビドスを去ったのち、念のため建物等の被害が無かったのかを確認した。
その後で対策委員会及び、便利屋68のメンバーと私は再び紫関ラーメンに集合することになった。
貸切営業をすると言った大将が、好きに使っていいと事前に言っていたこともあり、そこで作戦成功記念パーティと称して打ち上げをしている。
何のことはない、ただ新しくできた友達と仲良くなりたいというのが主目的の、女子学生らしい会だった。
その場に私がいることも、それが悪いことでなくないことであると自ら思っていることにも居心地の悪さを覚えながら、私は端の席で今後について考えていた。
つまり、カイザーをどうするかという話だ。 - 28カイザーについて25/09/15(月) 20:55:56
と言っても、カイザーグループ全体を今すぐどうこうするつもりはない。
彼らにはまだ役割が残っているし、そもそも全体に大きな影響を与えるほどの力は今の私にはない。
しかし、カイザーPMC理事という個人の話は別だ。
仮にアビドスが借金の借り換えの道を選ぶとして、
今後数か月の間にそれが実現したとして、今のカイザーPMC理事がそこにいる限り、嫌がらせは続くだろう。
彼の目的は歪んでおり、アビドス高等学校を破滅に追い込むことが半ば目的と化していたのは、以前の時間軸でビジネスパートナーであった私はよく知っている。
もし借金を返したとしたら、逆恨みをより濃くし、どういった横暴を行うか分からない。
だからこそ、彼には以前の時間軸と同様に、破滅してもらわなければならないだろう。
彼に個人的な恨みはないが、逆に仲間意識も一切ない。 - 29カイザーについて25/09/15(月) 20:58:06
幸いにして、私は彼の弱みとなり得る情報をいくつも持っている。
ビジネスパートナーであった時の彼は、私から見るとあまりにも迂闊であり、私は彼との関係をいつでも断ち切れるようにした上で、彼の隠している様々な弱みを調べ上げていた。
勿論それは今の私が使ってどうこうできるものばかりではないが、
情報は使いようだ。使えるものに使ってもらえばいい。
私は『黒服』の端末を立ち上げ。
「黒服さん……楽しんでる?」
陸八魔アルが話しかけてきたため、すぐにそれをしまった。 - 30陸八魔アルのお願い25/09/15(月) 21:00:11
突然話しかけられたことに少し戸惑ったが、恐らくお人よしである彼女が、黙っている私を気にかけたのだろう。
「ええ、あまりこういった会には慣れませんが、楽しんでいますよ」
「良かった。実は私も祝勝会なんてやるの初めてなのよ」
「いっつも報酬踏み倒されてるから喜ぶ気分にもなれないもんねー」
「ちょっと、ムツキ!?」
浅黄ムツキも話に割り込んでくる。どうやら考え事ができる状況ではなくなってしまったようだ。
「そうなんですか? 良ければ今まで踏み倒してきた依頼者を教えていただいても」
「え? どうしてかしら?」
純心な彼女には分からないだろう。こう言った世界でもルールというものはある。
「クックック……いえ、我々の世界でも報酬の支払いというのは鉄則ですから。それを知ってもらおうかと」
「怖っ!? い、良いわよ黒服さん。私たちに瑕疵があったのも事実だから。それに『先生』にそういった尻ぬぐいしてもらう訳にはいかないわ、アウトローとして」
「そうですか、残念です。」 - 31陸八魔アルのお願い25/09/15(月) 21:01:18
そして私の発言に驚いていた彼女は、今の私を嚙み締めるかのように復唱し
「うん、言いたいことは分かったわ。これからは舐められないようにする。」
「おー、アルちゃんカッコいい!」
真剣な顔でそう言った。彼女も本気なのだろう。
「そ、それで黒服さん。一つお願いがあるのだけれど」
一転、緊張した面持ちで切り出される。
「何でしょう?」
「私たちに依頼してくれて、こうやって話してて思ったの。私は、貴方からもっといろんなことを学びたい。いえ、学ばなければならない。」
「……それで?」
「だから、私たち便利屋の外部顧問になってもらえないかしら!?」
外部顧問。便利屋68の一員になってほしい、という話でもされるのかと思ったが違ったようだ。 - 32陸八魔アルのお願い25/09/15(月) 21:02:32
「……外部顧問というのは、貴女たちに依頼するうえで問題になりますか?」
依頼できなくなるのは私としても困る。今回の働きぶりを見るに、今後も依頼することはありそうだった。
「え!? もちろん、そんなことはないわ! むしろ依頼は優先して受け付ける!」
「であれば、問題ありませんよ。」
私の回答に、陸八魔アルの顔から緊張が解け、明るくなる。
「ちょっとちょっとー、いま顧問って聞こえたけどー?」
「ホ、ホシノさん!?」
「ん。先生は対策委員会の顧問。譲らないよ」
小鳥遊ホシノと砂狼シロコまで話に加わってきて、店の奥が一気に窮屈に感じるようになる。 - 33陸八魔アルのお願い25/09/15(月) 21:03:53
「えー、そっちは『臨時顧問』でしょー?」
「や、やってしまいますか!? アル様」
「やめなさい、ハルカ! ち、違うのよ私はただ……」
そして私を放置して盛り上がっていく。彼女たちの表情は明るく(伊草ハルカだけは本気なのかもしれないが)
そのやり取りを楽しんでいるようだった。
その時間も終わりはやってくる。 - 34紫関ラーメンの閉店25/09/15(月) 21:05:09
「大将、ありがとうございました!」
店の外で、アルバイトをやっている黒見セリカが生徒を代表して礼を言う。
「いや、良いんだ。最後にこれだけ楽しんでもらえて何よりさ。」
大将が笑顔でそう口にする。
「さ、最後? それってどういうことですか?」
奥空アヤネが思わずといった様子で口にする。
「うーん。まあ色々あってな、退去依頼も来てるし、そろそろ潮時かなって思ってな。」
退去依頼。カイザーからのものだろう。アビドスの生徒たちもこの土地が既にカイザーのものあることを調べて知っていた。
生徒たちは黙り込んでしまう。
「おっと! 言い方が悪かったな。ラーメン屋をやめるつもりはねえよ。ただ暫くは新しい店舗の場所も決まってないし、とりあえず屋台でも引くかねえ」
その言葉を聞いた生徒たちは、ほっとしたように口々にお礼を言い、そして帰路へとついていく。
そして残った私と黒見セリカは、店の中の片づけを行うために店に残った。 - 35紫関ラーメンの閉店25/09/15(月) 21:06:32
「セリカさんは、知っていたのですか?」
「それは、シフトの話とかするし。聞いてたわ。でも、退去依頼の話や屋台やるってのは聞いてなかったけど」
「それは、セリカちゃん。今日決めたからだよ」
片づけながら、3人で会話をする。
「そうなのですか? 理由を伺っても?」
「ここの子たちに店がこんなに好かれてるって知れたからな、本当はすっぱり辞めようかと思ってたんだけど、未練がましくなっちまった」
こういうのを「善い大人」というのだろう。彼の生き方と同様に、私には真似できない存在だ。
「私も、ここの味が残ることは嬉しく思いますよ。」
「先生、あんた初めて見たときは飯食えるのかと思ってたけど、結構分かるやつだね」
「うん、こう見えて結構意外性の塊なのよ!」
そうして片付けも終わり、改めて礼を言い店を出る。
黒見セリカを無事に送り届けた後、宿泊地に戻った私は、改めてとある人物へ先ほどできなかったメールを送信し、その日を終えた。 - 36二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 21:09:34
本日は以上
カイザー理事はこの黒服先生にとって風紀委員よりよっぽどやりやすい相手だと思う - 37二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 22:06:51
乙
話が進んできたら見返すの大変だしいつかハーメルン辺りにまとめてくれないかなぁ…(チラッ - 38二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 22:43:41
アビドス編が終わった時に一度まとめて短話ずつ投稿してくれるといいな………ここが消えることもあるって聞いたし
- 39二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 23:21:24
めっちゃ、面白い。
便利屋好きだから、これから出番あるのも嬉しい - 40二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 01:33:25
保守
- 41二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 08:33:09
保守
- 42二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 12:46:41
保守
- 43二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 13:57:15
本編でセリカが何も知らなかったのが不思議な気分になるな
- 44二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 21:03:31
保守
- 45二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 23:41:30
保守
- 46社会科見学25/09/17(水) 00:21:06
ゲヘナ学園の風紀委員会がアビドスに現れた日から数日が経過した。
その間私は一度シャーレに戻り、来る日への準備を行っていた。主に関係各所への根回しや物資の調達である。
そして、ある連絡を以て、行動の日を決めた。
すなわち、アビドスでカイザーが何をやっているのかを実際に見に行く『社会科見学』の日程だ。 - 47社会科見学25/09/17(水) 00:22:09
アビドス高校から電車で暫く進み、砂漠化がかなり進行した駅へと降り立つ
「お待たせしてすみません。本当はすぐにでも行きたかったでしょうが」
「良いわよ、何か考えがあるんでしょ?」
「ええ、一応は」
アビドスの砂漠を徒歩で進み暫く、何度か戦闘を挟みながらも特段大きな問題とはならないまま、カイザーの採掘現場へと到着した。
その場所を懐かしんでいた小鳥遊ホシノにとっても、そのような施設があることには驚いたようだったが、私が平然としているので、
直接的な動揺を見せることはなかった。 - 48社会科見学25/09/17(水) 00:23:17
施設内部では当然侵入者として扱われ、集団に攻撃されるがそれを逐一撃破していく。
想定を超える程ではなかったものの、予想通り囲まれてしまう。
そして、そのタイミングでこの施設の王である、カイザーPMC理事が現れた。
「侵入者と聞いていたがアビドスとはな……まさかここに来るとは思っていなかったが。」
現れた理事に対し、小鳥遊ホシノが何かを言おうとしたが、私が手で制する。
これは事前に決めた合図だ。私が相手をするので、警戒心を保ちその様子を見ているように、という。
「侵入者とは遺憾ですね。事前に『見学』するよう申し出ていたはずなのですが」
「何だと? とんだハッタリを抜かすやつがいたものだ。成程、お前があの『先生』とかいう奴か」
想定通り、カイザーPMC理事は私のことを知らないようだった。 - 49社会科見学25/09/17(水) 00:25:07
「ええ、今後ともよろしくお願いします。」
「よろしくする必要があるかは疑問だがな。個々の施設や職員への被害はどうするつもりだ?」
「正当防衛ですよ。不服があるなら連邦生徒会へ申し立てをしていただいて結構です。」
「……話にならんな。まあいい。見学というならお前ら、何が見たくてここに来た?」
子供相手には威勢が良いが、この男は特段論の立つ男という訳ではない。少し思うように話が進まないだけですぐに話題を転換する。
「そうですね。……そもそもあなたは一体何者ですか? 聞いたところ、この場の責任者のようですが……現場監督というやつでしょうか」
「私をそのような者と一緒にするな! 私はカイザーコーポレーションの理事をしているものだ! つまりお前たちアビドスが借金をしている相手だ!」
「理事でしたか、失礼。それと、借金の主体は学校であり、彼女たちではありませんよ。」
「同じようなものだろう!」
激高したように叫ぶが、攻撃の指示を出したりすることはない。今この場で戦闘が始まったらこの男もタダでは済まない可能性が高いからだ。
それだけ、このキヴォトスの生徒たちの力は強い。その位はこの男であっても理解しているだろう。 - 50社会科見学25/09/17(水) 00:26:28
「それもそうですね。では、次の質問ですが、あなた方は一体何をしているんです。ずいぶんと熱心に土地も集めているようですが」
「……宝探しだ。このアビドスの地に埋まっているという宝物を掘り当てるために我々はこの地を購入している。」
私に乗せられていることに気付いたのか、少し冷静になり、カイザーPMC理事は目的を明かす。勿論、私にとっては既知の内容だ。
「それはそれは、ロマンがあることですね。見つかることを願っていますよ。……さて、皆さん、聞きたいことは終わったのでそろそろ帰りますよ」
「え!?」
黙っているようにと言っていたが、黒見セリカがつい驚きの声をあげ、慌てて口を塞ぐ。
「待て! これだけのことをしておいて、黙って返すと思ったか? お前らを潰すことなど、わざわざ兵力を使うまでもないということを見せてやる。」
怒りに震えながら、理事はどこかへと連絡する。兵力を使うと自らに大きな被害が出ると思っているから他の手段を取るのだろうが、まさか自覚がないのだろうか。
「何だと!? チッ、間の悪い。」
「おや? 何かトラブルですか?」
暫く電話で話していた彼だが、なにか起こったようだ。この期に及んで何が起きているか気付いている様子が無いのが滑稽ではあるのだが。 - 51社会科見学25/09/17(水) 00:29:24
「フン、お前らに何が起こるかだけ説明しておいてやろう。今回の不法侵入により、お前らの信用は大きく下がる。その結果利子は3000%上昇、利子の徴収は9130万円になる。これだけでお前らは終わりだ」
苛ついた様子で電話を切った理事は、そう言ってのける。それが上手くいかなかったのが今の電話なのだろうが。
「成程、金利3000%。それもまたロマンあふれる話じゃありませんか。では、皆さん、帰りますよ」
私は後ろに向き直り、歩き始める。
理事の話を聞いた生徒たちは動揺しているようだったが、言いつけを守ったまま、私に従うことにしたようだ。
「バカめ。お前は動揺を隠しているように見えるが、ガキどもは動揺してるようだぞ。」
「……言いたいことはそれだけですか? それより先ほどトラブルがあったような様子ですが、それの対処に向かわれた方がよろしいのでは?」
最後にそう言い残し、私たちはアビドス高等学校へと戻った。 - 52社会科見学25/09/17(水) 00:31:08
一度休憩として解散した後、再び対策委員会の部室へと集合することになった。
定刻になり、集まった人員に小鳥遊ホシノがいないことに少々不安を感じながら、私は種明かしを行った
「先生、大丈夫なの? 急に利子が3000%なんて言われても、払えるわけない」
砂狼シロコが珍しく不安そうな表情で問いかける。
「大丈夫ですよ。とりあえず順番に説明しますね。まず、信用低下と利子の上昇についてですが、これは起こりません」
「え……なんで?」
「先ほど会った理事ですが、本日付けで理事を解任になっており、ローンの信用を増減させる権限を失っています。つまり、あの人は理事ではなく元理事だという訳です。本人も今頃その事実を知った頃でしょう」
生徒たちの表情が固まる。今の発言がまるで理解できないといった様子だ。 - 53社会科見学25/09/17(水) 00:32:09
「な、何でですか? あと、先生はどうやってそれを?」
「私がそれを知っている理由は簡単です。私に教えてくれた人がいるからです。それを知った上で今日訪問することに決めましたからね。理由については……そうですね、私は知らない、ということにしておきましょう」
「えー。絶対何かしたでしょあんた……」
生徒たちの私を見る目が胡散臭い者を見る目に変わったようだが、一応信じてはくれたようだ。
実際のところ、私はカイザーPMC理事、元、ですが彼の弱みとなり得る情報、例えば資金の不正利用の証拠を、それを欲しがっている者、
つまり彼の立場を狙っているカイザー内部の別の人物に与えたのだ。
そしてその人物は以前の時間軸であの理事が失脚後、後釜に収まった人物であり、故に今後の動向にも大きな影響を与えないことが分かっている人物でもある。
カイザーは裏で様々な悪事を行っているが、表向き善良な企業だ。不正の証拠をマスメディアなどに持ち込まれると、尻尾を切られるものが必ず出てくる。そして、それが公になる前に判明すれば、先んじて不正を行ったとして懲罰し、不正を許さないクリーンな企業であることをアピールする。
カイザーPMC理事は今回、偶々その対象に選ばれただけの話だ。 - 54社会科見学25/09/17(水) 00:33:10
「じゃ、じゃあ今後はもうあんな嫌がらせみたいな襲撃は起きないってこと?」
黒見セリカがそれでも期待の眼で私を見る。
「そうですね。いえ、襲撃は起きると思います。これまでより大きなものが。」
「どういうことですか?」
十六夜ノノミがこちらも珍しく不安そうな表情でこちらを見る。
「今日訪問した様子で分かりましたが、少なくとも今アビドスにいるカイザーPMCの部隊は、あの元理事に忠実に見えました。事態に気付いた彼は恐らくこちらに報復に来るでしょう。報復というか、八つ当たりと呼べるものですが。最悪の場合、今日見たあの戦力の大半で攻めてくるかもしれませんね。」
再び生徒たちの表情が固まる。
「それ、大変じゃないですか!? ホシノ先輩も呼んでこなきゃ!」
いち早く我に返った奥空アヤネが叫ぶ。
「……私が呼んできますよ。皆さんはここで待機していてください。」
私はそう言い残し、小鳥遊ホシノを探しに、部室の外へ出た。 - 55二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 00:35:36
本日はここまで
黒服が思ったより理事に対して辛辣になってしまった感
後この辺本編の1話辺りの展開が戦闘除けば異様に短くて改めて読んでびっくりしました。 - 56二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 02:46:39
更新感謝です!! もしかして見学は事前にカイザーに伝えていたのでしょうか!!
- 57二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 08:31:37
可能性はありそうだね…
- 58二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 15:17:20
保守
- 59二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 21:39:55
更新ありがとうございます
- 60小鳥遊ホシノとの対話記録④25/09/17(水) 23:05:08
小鳥遊ホシノを除く対策委員会の生徒たちに種明かしをした後、彼女を探していると、
とある空き教室にいるのを発見しました。
彼女の様子は今までで最もおかしく、錯乱状態に近い状態でした。
その際の対話記録です。
私:ホシノさん?
ホシノ:(無言で立ち尽くしている)
私:皆さん、お探しでしたよ。
ホシノ:……何を企んでるの?
私:は?
ホシノ:答えろ、黒服。(こちらに振り向き、銃を構える)
私:ホシノさん……その呼び名
ホシノ:良いから、答えろ!(私の心臓部分当たりに銃をつきつける)
私:……何も企んでいませんよ。この間お話した通りです。
ホシノ:信じられない。だってお前は、あの大人と一緒に……
私:あの大人……あの理事のことですか。それは…… - 61小鳥遊ホシノとの対話記録④25/09/17(水) 23:07:02
ホシノ:そうだ。お前はあの時私の身柄と引き換えに借金を……
私:落ち着いてください、ホシノさん。
ホシノ:アビドスを守らないと……だって、ユメ先輩が……私が
私:……
ホシノ:黒服。あの時の話って今も有効だよね?
私:あの時の?
ホシノ:私の身柄と引き換えに借金を受けもってくれるって話だよ。
私:それは……ホシノさん、それは一体、いつの話をされていますか?
ホシノ:いつって……
しばらく小鳥遊ホシノが独り言のように何かを呟きますが、内容は聞き取れませんでした。
恐らく彼女の記憶に齟齬が発生しており、それを整理しようとしているようでした。 - 62小鳥遊ホシノとの対話記録④25/09/17(水) 23:09:09
私:分からなければ大丈夫です。ホシノさん。
ホシノ:……
私:聞いてください。他の皆さんには説明しましたが、利息が急に上がるという話は起こりません。
ホシノ:……え?
私:借金について、急に状況が変わることはありません。ですから、すぐに考えなくても良いことなのです。
ホシノ:……信用できない。だったらなんであんな提案を……
私:ホシノさん。よく考えてください。それは本当に……今の貴女が体験した記憶ですか?
ホシノ:何を言ってる。だって、お前は、自分で悪い大人だって……でも借金を借り換えするのは私たちのためだって言ってくれて……
私:……
ホシノ:…………先生? あ、あれ? 私何で先生に銃なんて。
私:……大丈夫ですよ、ホシノさん。私は大丈夫ですから、落ち着いてください。
突然正気を取り戻したかのように小鳥遊ホシノは『先生』呼びに戻り、まだ混乱している様子でしたが、こちらに敵意を向けている状態からは脱しました。
その後、彼女と話をしましたが、原因については分かりませんでした。彼女の言っていたことは間違いなく以前の時間軸のものに近しいものであり、
極めて重要な現象であると言えるでしょう。
記録は以上です。 - 63対話記録④の後(おまけ)25/09/17(水) 23:11:02
「落ち着きましたか、ホシノさん」
小鳥遊ホシノが正気を取り戻したあと、混乱のあまり、謝罪を繰り返すのをなだめていると、ようやくそれが収まった。
「うん……」
「先ほどまでのことは覚えていますか?」
「うん、多分。何だか突然先生のことが悪い大人なんだって思いこんじゃって、借金の件も、私の中でおかしい話になっちゃってて、せっかく先生が焦らなくても良い案を出してくれたのに、今すぐ解決しなきゃって……うへー、何だったんだろ」
「そうですね……すみません。」
小鳥遊ホシノの話を聞いているうちに、私の中に『罪悪感』に近い感情が湧いてくる。
彼女にとっては訳の分からない話だろう。私にとってもそうだ。
「何で先生が謝るの?」
「……ホシノさんの言っていたことは起こり得る話だったのです。話すことができるようになれば、お話します。」
「そっか。うん、じゃあ、いつか話してね。」
そう言って、小鳥遊ホシノは小さく笑った。それに安心してしまうのも、本来ありえない感情だったはずだ。
そして翌日、彼女に起きた現象に近いものを私も体験することになるのだった。 - 64二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 23:16:39
うーん、やっぱり別の世界線か時間軸と混線してる?
- 65二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 23:17:47
本日はここまでです。
黒服なりの挑発行為のつもりですが本当に行くことを誰かに言ってたかもしれませんね。
それと本当は今日投稿予定だったけど黒服がだいぶはっちゃけてしまったので
「あったかもしれない話」として見たい方だけ見ていただければ…
要は黒服が準備期間中にヒナに会いに行って有事の協力依頼するという昨日の投稿で折りたたまれた部分の話です。
ゲヘナへの布石 | Writeningカイザーの掘削拠点への襲撃の数日前、私はゲヘナ風紀委員へと赴いていた。 空崎ヒナへ大まかな計画と起こりうる事態の事前説明のためだったが、電話でアポイントを取ろうとしたところ、多忙であると電話口の…writening.net - 66二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 00:25:51
対カイザーはもう楽勝ムードなのに何か不穏だ
- 67二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 01:05:46
>>65 手玉に取られてるな…
- 68二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 07:49:48
世界の混線か 黒服にも来るのかな…でも今混線しているようなものか
- 69二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 12:52:53
保守
- 70二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 14:42:15
保守
- 71二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 16:28:27
ホシノが突っ込まなくて良かった
- 72別の記憶25/09/18(木) 21:08:45
怒り狂った元理事がいつ攻めてくるか分からなかったため、アビドス陣営は高校内で夜を明かすこととなった。
こちらの戦力はアビドスの生徒たちと便利屋68。そして、三大校の空崎ヒナ、阿慈谷ヒフミ、早瀬ユウカにそれぞれ依頼した協力がどのような形になるか、というところである。
その内、ミレニアムの早瀬ユウカからの支援はシンプルながらかなり有用なものだった。
自律移動する戦闘ドローンと、戦闘ロボット。予算として渡した金額からは足が出ていると思われるが、これは早瀬ユウカの私費で補填してくれたようだ。
そしてゲヘナからは空崎ヒナから準備ができたとの連絡があったが、残るトリニティからの回答は未だない。
しかし、追加された戦力に加え、小鳥遊ホシノがいる以上恐らく事足りるだろう。 - 73別の記憶25/09/18(木) 21:10:02
翌朝早く、私の端末に1通のメールが届いた。差出人は隠蔽されており、それがシッテムの箱へ届いていること自体興味深いことであったが、
そこにはとある座標が記されていた。
そしてその座標は、私の良く知るものであった。そこに来い、ということだろう。
罠である可能性も考えたが、私の目的のためにはいった方が良いだろう。
そう考え、外に出ると背後から声をかけられた。
「どうしたの? 黒服さん」
陸八魔アルだ。
「ああ、アルさん。すみませんが、行くところが出来ました。こんな時に申し訳ありませんが……」
「出かけるの!? まさか一人で? 駄目よそれは。聞いた感じ貴方が一番恨まれてそうじゃない、殺されるわよ!? 誰か護衛につけないと」
「しかし、この状況で戦力を割く訳にはいかないでしょう。」
いても単純な戦力にならない私が抜ける分には問題は少ないが、護衛をつけるとなると話は別だ。
しかし、陸八魔アルは首を振った。 - 74別の記憶25/09/18(木) 21:12:05
「そういう問題じゃないわ。ちょっと待ってて」
彼女はそう言ってどこかへ行き、すぐに戻ってきた。
「本当は私が行きたかったのだけれど、それは反対されたから代理を連れてきたわ。カヨコ、よろしくね」
「社長は戦力の要なんだから外れちゃ駄目でしょ……。という訳で私も行くから。護衛という意味では私が最適だと思うし」
陸八魔アルに続いて現れたのは鬼方カヨコだった。
私は反対する理由を探したが、自分でも根拠に欠ける理由しか思いつかなかい。
「……それでは、お願いすることにしましょう。」
仕方なく同行をお願いすることになり、例の座標には2人で行くことになった。 - 75別の記憶25/09/18(木) 21:13:24
「それで、先生。私どこに行くか聞いてないんだけど。」
「ああ、それがですね。私にもそこに何があるのかは分からないのです。」
「何それ?」
向かっている場所、それは私が以前の時間軸であの『先生』と会話した場所であり、当時の私の拠点の一つだ。
しかし、時間遡行後、その場所は特に何もない廃ビルであることは確認済みだ。
「その場所に行け、と指定された場所に向かっているのです。」
「それ、明らかに罠じゃん」
鬼方カヨコが普段、よくしている溜息をつく。
「罠である、とわかったらすぐに戻るつもりですよ。頼りになる護衛もいらっしゃることですし」
「一人で行こうとしてたでしょ。……先生って、意外と適当なところあるよね。」
心外なことを言われたが、特に時間遡行後、強迫的な作用のない時であっても、勢い任せの行動をしてしまうことがある。
反省しなければ。 - 76別の記憶25/09/18(木) 21:15:28
目的地の廃ビルにたどり着く。以前確認したときと変わっていないように見えるが、中に入ってみなければならないだろう。
敵の気配どころか、誰かがいる気配すらない。
「本当に、この中に何かあるの?」
鬼方カヨコが周囲を警戒しながら私に問いかける。それは分からない。
私は首を振って、
「それを今から確認するのです。」
そう言って先へと進む。
何があるか、何もないかは直にわかるだろう。 - 77別の記憶25/09/18(木) 21:16:45
そして、示されているであろう場所。
ビルの上階にあるとある一室に足を踏み入れた。
果たして、そこには誰もいなかった。ただ、見覚えのある机が置いてあるだけ。
いや、机の上に何かある。私がそれに気づいたとき、唐突に私の脳裏に様々な光景が浮かび上がった。
私が『先生』に提案している姿。
小鳥遊ホシノが提案を吞んだ時の姿。
少し幼い小鳥遊ホシノへの提案をしている姿。
そして、私が"暁のホルス"という神秘を見つけたときの姿。
他にも何かを見た気がするが、それ以上のことは思い出せなかった。 - 78別の記憶25/09/18(木) 21:17:56
「先生、大丈夫? 急に立ち止まって」
鬼方カヨコからの呼びかけで現実に立ち返る。
「いえ、大丈夫です。立ち眩みのようなものですかね?」
「本当に大丈夫?」
鬼方カヨコの不服そうな視線にい再度大丈夫だといい、机へと近づく。
今見せられた光景は、つまり以前の時間軸での私の記憶だろう。
小鳥遊ホシノに同じようなことが起きたとしたら、昨日のことも説明がつけられそうだった。
机の上に置いてあるものを確認し、手に取る。小さくヒビの入ったカードだ。何とも分かりやすい。 - 79別の記憶25/09/18(木) 21:19:47
誰かから私への贈り物であろうそれをしまって、鬼方カヨコの方へ振り返る。
「帰りましょうか、カヨコさん。」
「……了解。……結局、殆ど何もなかったみたいだけど、よかったの?」
「そうですね。いえ、決行大きな収穫がありましたよ。」
「なら、良いけど。」
確かにこの場所は誰もいなかった。しかし。
鬼方カヨコや、他の者にいっても仕方のないことだが、今回で分かったことはある。
それは、私の時間遡行が偶然起きた事象ではなく、それを起こした黒幕が存在するということ。
そして、その黒幕はこの時間軸において、私が時間遡行していることを知っていて、何かをさせようとしているということ。
その二つが分かっただけで今回は十分だろう。 - 80別の記憶25/09/18(木) 21:21:04
建物を出たところで、通常のモモトークへの着信通知が届く。
そして、それは小鳥遊ホシノ居場所を知らないか確認する、砂狼シロコからのものだった。
どうやら、すぐに学校に帰るわけにはいかないようだった。 - 81二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 21:23:00
本日はここまで。
明日はもしかしたら更新できないかもしれないです。
こういう長編SS書くの初めてなので、ここ分かりづらいとか、質問とかあれば言ってくれると助かります。 - 82二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 22:22:07
更新感謝です
アビドス編以降も続きますか?? - 83二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 22:48:11
とりあえずやれるところまでは…
- 84二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 23:58:27
無理せずに頑張ってくだいぃ〜。
とてもおもしろいです! - 85二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 01:34:33
このレスは削除されています
- 86二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 08:05:37
不穏というか続きが気になる切り方がうまいなぁ
- 87二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 08:29:01
保守
- 88二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 14:11:37
早めの保守
- 89二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 18:40:57
ひび割れかけたカードか…
- 90二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 23:08:10
保守
- 91二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 03:36:10
イオリをからかってしまうのも先生の本能説
- 92二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 06:55:50
先生~
- 93二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 12:05:04
保守します
- 94二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 12:46:42
しっかし 彼か彼女か
目的は何なのでしょうかね - 95小鳥遊ホシノの居場所25/09/20(土) 17:34:40
小鳥遊ホシノがいないという情報の他にも、複数の生徒たちから様々な連絡が来ていた。
理事の部隊が襲撃してきたという報告や、戦況が優勢に進んでいること、元理事の姿は見えないこと。
そして、小鳥遊ホシノのことをよろしく頼む、という内容。
戦況については、概ね予想通りで、トリニティからも砲兵隊が演習という名目で支援を行ってくれているようだ。
そういうことであれば、こちらとしても任された任務を全うするべきだろう。
小鳥遊ホシノの行先には心当たりがあった。 - 96小鳥遊ホシノの居場所25/09/20(土) 17:36:02
予想通り、カイザーPMC基地内の実験施設に小鳥遊ホシノは向かっているらしい。
遠くから確認したところ、カイザーPMC基地は混乱に陥っている様子だった。
入口周辺で戦闘が行われた形跡があり、外からでも慌ただしくしているのが確認できた。
もちろん正面から入るような真似はせず、近くに唯一存在する廃墟のような建物へ入る。
何故基地の近くに廃墟が1軒だけ残されているのか。この廃墟に偽装された建物は、基地からの非常脱出口になっており、
それは基地内の実験施設のある建物の地下に繋がっている。
「何で先生がそんなこと知ってるの?」
鬼方カヨコが訝しげにこちらに当然の疑問を投げかける。
「情報提供者がいまして」
「ふーん。そもそもホシノがここにいるってどうやって分かったのかも知らないけど……まあいいか」
ありがたいことに彼女はそれ以上追及することは控えてくれたようだ。 - 97小鳥遊ホシノの居場所25/09/20(土) 17:37:46
「さて……では、カヨコさんはこちらで待っていてください。ここからは私一人で行きます。」
「は? どうして? 私、護衛なんだけど。これ、基地に繋がってるんでしょ? 危ないってわかってるよね?」
珍しく焦った表情で詰め寄る彼女に、どう言い訳をするか考える。
「大丈夫ですよ。想像通りであれば、今から向かう先にカイザーの兵士はいないはずです。」
「だとしても、私が先生から離れる理由にならないでしょ。」
「……カヨコさんには、ここで外を見張っておくという役割をしていただきたいのです」
私がそういうと鬼方カヨコは暫く私を睨んだ後、
「……分かった。でも、戻ってくるのが遅かったら追いかけるから。」
そう言って諦めてくれた。 - 98小鳥遊ホシノの居場所25/09/20(土) 17:39:21
一人になり、脱出経路を逆走しながら歩いている間、私は考えていた。
何故自分が、一人で小鳥遊ホシノに向き合うことに拘ったのか。
いつもの『使命感』が働いたのだろうか。そんな気にもなったが、よくわからない。
ただ、そうしなければならないと思ったのは事実だ。
例えば『先生』が私の立場だったとして、この場で一人で向き合う事を求めるだろうか。
理屈が通らない。そもそも理屈が通る存在ではないが、どうしてもそう思ってしまう。
実験施設の非常口の扉。
この経路の終着点が見えてきたころ、私に一つの考えよぎった。
以前の時間軸で小鳥遊ホシノに取引を持ち掛け、虜囚の身としたのは私だ。
つまり私のこの考えは、私自身の「罪悪感」から来るもの。
私がそのような考えになることはあり得ないと切り捨てようとしたが、扉を開ける時になってもその考えは消えなかった。 - 99選ばなかったもの25/09/20(土) 17:44:38
非常口のすぐ隣にある実験室、その扉は開かれていた。
そしてやはり、そこには小鳥遊ホシノがいた。
以前の時間軸で彼女がそうであったような縛られた状態でなく、昨日の空き教室と同じように立ち尽くしていた。
制服であった昨日とは違い、戦闘を前提とした姿になっていたのが異なるが。
背後に誰かいることに気付き、彼女が振り向く。
「誰? ……あれ、先生? ……見つかっちゃったかー」
小鳥遊ホシノは昨日とは違い、どこか振り切れたような、落ち着いた様子だった。 - 100選ばなかったもの25/09/20(土) 17:46:21
「ごめんね。先生、みんなに心配かけちゃったよね。緊急事態だって分かってたんだけど……どうしても気になって」
私がかける言葉に悩んでいると、小鳥遊ホシノは続けてそう口にした。
「メール、ですか? ホシノさんにも届いていた?」
「私『にも』? 先生にも来てたんだね、あの変なメール。うん、実は3回目なんだー」
やはり、私に届いたメールと同様のものが彼女にも届いていたらしい。それも3度も
「昨日と、今日以外にもあるのですか?」
「うん、実は私が先生に会いに行ったとき、あったでしょ。ゲヘナの風行委員の子たちが来た日、その前の日にも来てたんだ。変な場所へ行くように指示するメール。それで、行ったら知らない記憶が頭の中に現れる」
「ああ、成程」
思い返せば、小鳥遊ホシノが妙な言動をしていたのはあの時が最初だったかもしれない。
「1回目はよく分からなくて、ただ何となく先生と前から知り合いだったかのような感覚になっただけだったんだけど、2回目は酷くて、私が別の先生と話してたり、先生のことを黒服と呼んで、嫌っていた記憶。それでそのすぐあとに先生が来たから、どっちが本当の記憶か分からなくて、混乱しちゃったんだ。」
「昨日のことはそういうことだったんですね。何となく、分かりました。」
私がそういうと、小鳥遊ホシノは少し申し訳なさそうに笑った。 - 101選ばなかったもの25/09/20(土) 17:47:25
「うん。ごめんね。それで昨日は、あれからずっとモヤモヤしてたんだけど、またメールが来て……また同じようになったらって怖くもあったんだけど、我慢できなくて」
「それで一人でカイザーの基地に押しかけた、と。私が言うのも何ですが危ないですよ。」
小鳥遊ホシノの強さは知ってはいるものの、つい口に出してしまう。
「うへ、本当に先生には言われたくないかも。……うん、それでここにたどり着いたら、今まで一番鮮明な記憶を思い出したの。私が取引を飲んでこの場所で捕まってて、後悔しているところにみんなが助けに来てくれる、そんな記憶を。」
「私は別の人を先生と呼んでいて、私と取引したのが、私が黒服、と呼んでいた人、見た目は今の先生だったけど。」
「そうでしょうね。」
「うん。やっぱり先生もそんな感じの体験をしたんだね。それで、はっきりと思い出した記憶について、改めて考えてるところで、先生が現れたってところだね」
そういって小鳥遊ホシノは微笑む。そこまで思い出していて、私に対し、憎しみや敵対心といったものは今は感じない。何故だろうか。
「それで、私に対して思うところはないのですか?」
「うーん? 全然ないんだよねそれが。 だって、私にとって先生は、アビドスの支援にかけつけてくれて、良い提案をしてくれて、セリカちゃんを助けてくれて、私たちのことを考えてくれる人だもん。確かに悪い大人っていうのは、ちょっと否定できないところはあるけど。」
小鳥遊ホシノは心からそう思っているかのように言う。 - 102選ばなかったもの25/09/20(土) 17:51:05
「しかし、ホシノさん。貴女がみた記憶というのは間違いでは……」
小鳥遊ホシノの言っていることに対し、私はつい反論しそうになる。しかし、彼女に遮られてしまう。
「もしかしたら、本当のことなのかも。私が思い出した記憶を先生も見たのなら、そういう世界が本当にあって、私と先生は敵対していたのかもしれない。でも、それは私自身のことじゃないって、そう思えたから、良いんだ」
「……そうですか」
小鳥遊ホシノにとってはそうかもしれないが、私にとっては自分自身のことであり、納得は出来ない。
しかし、それは私が気にするべき問題であり、私は彼女の発言を否定することもまた出来なかった。
「ホシノさんがそうおっしゃるのであれば、そういうことにしましょう」
「うんうん、理解ある大人って格好いいよー」
そう言って、小鳥遊ホシノは年相応の笑顔を見せた。 - 103選ばなかったもの25/09/20(土) 17:52:18
そのすぐ後実験室のそとへ近づいてくる足音が聞こえてきた。
小鳥遊ホシノもそれに気づき、外に目を向ける。
現れる人物は、彼女だろう。
「先生、大丈夫? ちょっと、不味いことになった」
案の定、息を切らした鬼方カヨコが室内に飛び込んできた。
「あれ、カヨコちゃん? 一緒に来てたんだ」
「ええ、護衛を買って出てくれまして」
「うへー、ありがとカヨコちゃん」
鬼方カヨコが息を整え、再び話す。
「ちゃんとホシノと会えたんだ。良かった。でも、少しヤバいよ。こっちの出口が塞がれた。姿は見られてないと思うけど、いきなり建物が爆破されて、慌ててこっちの通路に抜けてきたんだけど、多分、最低でもホシノがここにいることはバレてる。多分、先生も。」
「こっちの出口?」
「ええ、この建物から直接外の出口に繋がる非常口があったのですが、残念ながら使えなくなったようです。」
私がそういうと、小鳥遊ホシノはわざとらしく驚いたように手を口に当てる。
「ええ! それは大変だ。」
「ホシノ?」
演技がかった様子に鬼方カヨコも不思議そうにしているが、
「じゃあ……正面から出てかなきゃだね。」
そう言って、小鳥遊ホシノは不敵に笑った。 - 104二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 17:53:33
今回はここまで
謎は残りますが、アビドス2章は次でほぼ完結すると思います。 - 105二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 18:15:50
好き
- 106二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 18:48:45
確実に黒服が生徒に絆されかけてしまってるのがなんか良いな
- 107二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 20:34:12
良かったです。
- 108二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 21:23:55
ほしのちゃんなら一般兵は余裕でしょうな
平和に終われそうです ( ^ ^) - 109二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 23:43:17
保守
- 110二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 00:08:32
つ、強い…
- 111二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 03:28:20
黒服と背中合わせ的な
- 112二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 10:33:54
クライマックス待機
- 113二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 12:10:41
PMCの対処はもう大丈夫そうなので 注意すべきはメールさんですね
一方的に送り付けてくるのは地下坊に似てるでしょうか - 114PMCとの決戦25/09/21(日) 19:20:06
本気の小鳥遊ホシノの戦いというものを間近で見たのは初めてだったが、圧巻の一言に尽きる。
建物内になだれ込んできた多数の敵をものともせず、ほぼ一方的に蹂躙している。
私の護衛に専念している鬼方カヨコもその戦いぶりには驚いたようだ。
「凄いね、ホシノ。戦いの様子は遠くから見たことはあったけど、その時とはまるで動きが違う。風紀委員長にも引けをとらないかも」
周囲の警戒は継続しながら、呆れながらそう呟いた。
歩兵中心の突入部隊は難なく突破し、小鳥遊ホシノの宣言通り建物の正面玄関へとたどり着く。
そこではわざわざ兵力を残していたのか、複数の戦車や2足歩行戦闘ロボットが待ち構えていた。
小鳥遊ホシノが溜息をついて銃を構える。表情は険しくなったが、勝てないと思っているわけでは全くなさそうだ。 - 115PMCとの決戦25/09/21(日) 19:21:10
「現れたな小鳥遊ホシノ、そしてシャーレの先生!! お前らアビドスだけは絶対に許さん!」
直に攻撃開始した方がまだ勝機はあるだろうに、一言いっておかないと敵は気が済まないらしい。
「熱烈な歓迎、感謝しますよ『元』理事。確か、武力に頼らずとも簡単に倒せると仰っていたかと思いますが、結局武力を使用して自分で自分を追い込んでいませんか?」
「黙れ! お前が卑劣な手を回したからだろう!」
思わず鼻で笑いそうになる。卑劣な手などと、まさか子供のようなことを言うとは。
「被害妄想も甚だしいですね。大方、背任行為の証拠でも見つかったのではないですか? 自らの迂闊さを人のせいにするのは大人のやることではありませんよ」
「……もういい。お前らはここで終わりだ。お前ら、やれ。」
そして、反論できなくなると暴力に移行する。子供の喧嘩そのものだ。そういう事であればこちらもこちらもそれに準じよう。 - 116PMCとの決戦25/09/21(日) 19:23:03
既に起動していたシッテムの箱の戦闘支援システムに映っている、とある生徒へと指示を送る。
直後、こちらに攻撃を仕掛けようとしていた戦車が1台爆破された。
「良かった……社長、間に合ったんだ」
生徒数人が戦場を縫ってこちらに向かってきているのは気づいていたが、鬼方カヨコが事前に場所を連絡していたようだ。
「間に合ったようね! 黒服さん、カヨコ! ホシノも元気そうで何よりよ」
そして、元理事たちの陸八魔アルが姿を見せる。遠目からだが、安堵している様子だ。
「何だと!? お前は便利屋!? いつの間に!?」
今しがた戦闘の号令をかけた元理事が物語の間抜けな悪人のような発言をする。いや、彼そのものか。
「ん。鬼方カヨコ。そしてそっちには浅黄ムツキ」
「シロコ先輩もうそれいいって。だとしたらアルさん2人いるじゃんこっち」
「えへへ~。私もいますよー☆」
そして、奥空アヤネ以外のアビドスの生徒たちも次々と姿を現す。
どこか緊張感の足りない集団なのも、もはやおなじみと言っていいだろう。 - 117PMCとの決戦25/09/21(日) 19:24:13
現れた生徒たちの背後からは連続した爆発音と激しい銃声が聞こえてくる。
恐らく他にも戦っている生徒たちがいるのだろう。姿を見せない便利屋の2人と、
「ウチの社員がピンチみたいだから駆け付けたけど、案外大丈夫そうじゃない?」
「いや、社長どうやってここまで来たの……」
「そ、それはー……」
『ホシノ先輩。先生、聞こえていますか?ゲヘナ風紀委員長さんが相手戦力の多数を受けもってくれたおかげで、ここまで突破することが出来ました。』
奥空アヤネの通信も聞こえてくる。やはり、空崎ヒナ本人が支援に入ってくれているらしい。陸八魔アルとアビドスの生徒たちを行かせたのも彼女の厚意あってのものだろう。
「ということはつまり、残りは……」
後輩の登場に驚いた様子を見せていた小鳥遊ホシノは、狙いを定める。
「ん、こいつらだけ。今回はホシノ先輩に一番大きいの譲ってあげる。だから……」
「後は任せて!」
アビドスの生徒たちが一斉に宣言し、戦闘に突入する。 - 118PMCとの決戦25/09/21(日) 19:26:46
最後の戦闘が始まった。
小鳥遊ホシノが二足歩行ロボットゴリアテへと突撃する。射撃して応戦するロボットの攻撃を回避し、盾で受け流し、
誰にも止められることなく足元までの接近を果たす。
「ふざけるな、お前らいつもいつも楽しそうに! 私が何をした!? 絶対に許さない!! 絶対に……」
その通信を最後に、元理事の声が聞こえなくなる。
小鳥遊ホシノの容赦のない連続攻撃により、元理事の乗機はあっという間に破壊されつくしてしまった。
カイザーコーポレーションという大人の権力争いの場ではうまくやれていたはずの彼は、結局最後まで大人であり続けることは出来なかったようだ。
間もなく、他の主要戦力も残りの人員によって撃破され、対カイザーPMCはある意味予想通り、あまりにもあっさりと終わってしまった。
カイザーだけでなく、私自身も、彼女たちの戦力分析を誤っていたようだ。 - 119対策委員会編エピローグ25/09/21(日) 19:28:34
戦闘後、理事含むこの戦闘に加わったカイザーの兵たちは、突然武装蜂起したテロリストとして身柄を拘束された。
詳しい捜査についてはこれからだが、カイザー上層部は様々なやり口で責任を回避し、元理事に責任を擦り付けるだろう。
こちらとしてもそうであってもらわなければ困るというものだ。
小鳥遊ホシノは突然姿を消し、単身でカイザーPMC基地へ乗り込んだ理由について、私の不在理由を知らなかったため、誘拐されたと思い込んだ、ということにしたらしい。
無理のある説明であったと思うが、陸八魔アルが私の不在を他の人員に伝えた際、既に小鳥遊ホシノはいなくなっていたこともあり、他に論理的な筋が通る理由を
誰も思いつくことが出来なかったため、受け入れるかどうかは保留として、それはそれとして説教されていた。勿論、私自身も同様に説教を受けた。 - 120対策委員会編エピローグ25/09/21(日) 19:29:54
「では、私はシャーレへと戻りますが、借金の話もありますので、また近いうちに来ることになると思いますので。」
事後処理が終わり、私はアビドスから本部へと戻るため駅に来ていた。
便利屋68は昨日中に任務終了となり、報酬の受け渡しを行っていた。
また、アビドスの生徒たちは見送りという名目で同道している。
先ほど行われた対策会議にて、対策委員会の全生徒の承認を得て、シャーレへの借金の借り換えを前向きに進めていくという方針が正式に決定していた。
「もしアルバイトをしたいということであれば、仕事はいつでもありますので、書類にまみれたい方はぜひいらっしゃってください。」
便利屋68との関わりを見て、他校の生徒たちとの接触もいい刺激になるだろう、と柄にもないことを考える。 - 121対策委員会編エピローグ25/09/21(日) 19:32:51
乗車予定の電車が定刻通りに到着する。珍しく言葉少なだった生徒たちから、一言ずつ別れの言葉がかけられる。
「道に迷ったりしないよう、気を付けて。今度、自転車でそっちまで行ってみようかな。」
最後まで私を遭難者として扱うことをやめなかった砂狼シロコ。警戒は随分解けたようだ。
「次にいらっしゃったときには、またいろいろお話を聞かせてくださいね☆」
十六夜ノノミが裏表の無さそうな笑顔でそう口にする。会議での彼女への意見に真面目に検討していたのがうれしかったようだ。
「私もアルバイト続けることになったから、またラーメン食べに来なさいよ!」
アルバイトを掛け持ちしている黒見セリカだが、やはり紫関でのバイトが一番思い入れがあるようだ。私は頷く。
「私は、先生の仕事に興味があります。アルバイト、真面目に考えてみます。」
生真面目な奥空アヤネはそう私に告げた。彼女はシャーレでの仕事に向いているだろう。
「えー、じゃあおじさんはお昼寝しに行こうかなー。先生、ありがとうね、色々と」
抱えている物がすべて解消されたわけではないだろうが、小鳥遊ホシノは当初より幾分か穏やかな表情で最後に私へと話しかける。
重大な秘密を共有している間柄としても今後も関係を続けていくことになるだろう。 - 122対策委員会編エピローグ25/09/21(日) 19:34:27
こうして、私が『先生』になって初めの大きな仕事である、アビドスへの出張が終了となった。
私や小鳥遊ホシノに怒ったことについては、未だに不明な点が多い。
黒幕が存在することは確かだろうが、その目的、そしてそれが敵なのか味方なのか、それも不明である。
私自身の感情制御を含め、検証すべき謎はむしろこの仕事で増えたと言ってもいいだろう。
いずれにしても、私はまだしばらく『先生』を続ける必要があるらしい。
私は心の中でそう締めくくった。
対策委員会編 第一章第二章 完 - 123二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 19:37:06
アビドス編いったん終了です
次は考察とかメインストーリ―でない間話とかやって
その後ミレニアムに行くと思いますが、展開は特に思いついてないので引き続き行き当たりばったりになると思います。 - 124二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 21:52:41
更新感謝です やっぱり強かった そしてある意味なぞだけが残った
- 125二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 22:15:06
お疲れ様です。
アビドス編の便利屋がどうなったか気になる - 126二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 23:25:06
お疲れ様でした!
- 127二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 23:42:55
黒服視点が新鮮で面白かった!
原作とのズレやそのズレそのものに気付く一部生徒の存在も面白いし
黒幕の狙いとか気になる点もある GJ! - 128二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 02:03:26
お疲れ様です
- 129二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 07:39:07
ミレニアム……血とか抜かれそう
- 130二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 12:59:36
アビドス以外はだいたい黒服の記憶戻っても知らんやつだよな……どうなるんだろ
- 131二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 18:20:10
そういえばそうか
- 132二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 20:31:56
メールさんの目的
良い物語が見たいだけだったりして
それくらいしか本人に利益がなさそう - 133二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 22:42:34
特異現象捜部活の捜査対象になりそうな見た目してるけどどうなるんやろか
- 134二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 00:05:32
案外なんとかなりそうな気が……
- 135手記 黒幕について25/09/23(火) 01:09:40
アビドスでの仕事が一段落したので、私の身に起こっていることについて確度の高い順に状況を整理しておきます。
確定事項
・私が『シャーレの先生』として連邦生徒会長に招待された存在として認識されている。
確定していると言って良いのはこのくらいです。
高確度の事項
・私は時間遡行をしており、今後起こることをある程度認識している。
今のところ私の記憶通りに進行しているケースが多いですが、違う場合もあります。
ただし、私の認識としては以前の私は『先生』では無かったため、単純な時間遡行があった、という話でもありません。
・私の状況を知っている者が他にいる
私や小鳥遊ホシノにメールを送った人物がいる以上、何者かがこちらの状況を知っており、メールを送っていると考えるのが分かりやすいでしょう。
それが可能な人物は限られると思いますが、今のところ手がかりはありません。 - 136手記 黒幕について25/09/23(火) 01:10:46
中確度の事項
・私の行動には一定の制限がかけられており、それを逸脱した行動はできない。
理屈上はやったほうがいいことであっても、場合によってはそれを選択できないことがあります。
私は当初それが行動制限だと認識していましたが、思考制御の可能性もあります。
以前の私であればとる事の無かった行動、考えをしてしまうことがありました。
今後も検証が必要です。
・私の時間遡行は何者かによって行われた。
私が時間遡行をしたという前提によるものですが、それが『黒幕』によって引き起こされたという仮説です。
最も筋の通る説明であると思われますが、時間遡行の方法も不明である以上、確度が高いとは言えない状況です。
低確度の事項
・私の行動制限(思考制御)の原因は先生となったことによるもの。
私に対して行動制限ないし思考制御が行われているという前提によるもので、それが『先生』らしいかどうか
が基準となっているという仮説です。そう考えれば理解できる場合が多くあるものの、それでは説明が難しいこともあるため、確率はそこまで高くありません。
・私の行動によって未来の結果は変えることができない。
私の記憶に置ける状況と、アビドスの現在の状況は大きく変わっておらず、またアビドス二初めて赴いた際に不運が続いたことを踏まえ、
世界には予定通り進むよう道筋がある、という仮説です。
しかし、便利屋はカイザーからの依頼を受けることはなく、アビドスもシャーレへの借金の借り換えを検討するなど、異なる状況も存在しているため、この仮説には懐疑的です。
他にもいくつかありますが、重要な部分はこんなところでしょう。 - 137プロローグ 早瀬ユウカ25/09/23(火) 01:12:19
アビドスから帰って数日後の早朝。シャーレ宛てのメールチェックを行いつつ、アビドスに関する後処理や融資に関する資料作成などをどうスケジュールにねじ込むか思考していると、
事務所のドアがノックされる。
「先生、おはようございます。早瀬ユウカです」
来客はシャーレオフィス奪還作戦以来の付き合いである、ミレニアムの会計だった。
「おや、ユウカさん。おはようございます。ずいぶん早いですね。」
「以前、先生は遅くとも6時にはここを開けているとおっしゃっていたので」
私は主にここで生活しているので問題ないが、ミレニアムからは電車で少しかかるだろう。
現在時刻は6時半。彼女も忙しい身のはずだが…… - 138プロローグ 早瀬ユウカ25/09/23(火) 01:13:42
「それで、こんな早くにどうされましたか? 今日の午前中は来客の予定は無かったはずですが。」
「学校に行く前にお手伝いに来たんです。出張から戻ってきてばかりで仕事も溜まっているだろうと思いまして。……お邪魔でしたか?」
予定にもないのにわざわざ仕事の手伝いに来てくれたらしい。
本人もミレニアムのナンバー2であり、多忙な身であるはずだが、実際人手は足りていない。
便利屋に事務仕事を依頼するかとさえ考えていたところであり、断る気には到底なれなかった。
「いえ、お察しの通り、非常に過密な状況でして。大変助かります。助かるといえば、先日は物資提供ありがとうございました。大変役に立ちました。」
「いえ、あれはミレニアムへのれっきとした正規の仕事の依頼ですから。当然のことです。」
「ですが、お渡しした金額ではあの量は購入できないでしょう。」
こちらで想定したより40%ほど多くの兵器、物資が届いたのは驚いた。買い物上手という話では説明できない量だろう。
「それは……先生にはいつもお世話になっているので、投資のこととか……そのお返しも兼ねて、ちょっと色を付けただけです。あっ、不正なことはしていませんよ!?」
「分かっていますよ。本当に助かりました。ありがとうございます。」
「は、はい。」
褒められ慣れていないのか、早瀬ユウカは赤面して事務椅子に座る。手伝ってもらいたい仕事は幾らでもある。
私たちは黙々と仕事にとりかかった。 - 139プロローグ 早瀬ユウカ25/09/23(火) 01:14:58
「そういえば、昨晩ミレニアムの方から支援要請がきましたよ」
「え? 誰からですか?」
仕事が一段落し、そろそろ早瀬ユウカは学校に向かおうかという段階になり、昨晩来た妙な連絡について話を振る。
「こちらのメールです。」
ミレニアムのゲーム開発部を名乗るメールを見せる。
「ええと……ゲーム開発部!? あの子たち、先生に相談するなんて……」
「ということは、このやはりこのメールに書かれていることは本当なのですか? 廃部命令と書かれていますが」
「ご、誤解です! 廃部しろと言っている訳じゃなくて、そもそも人数が要件を満たしていないし、ちゃんと活動もしてないどころか色々問題起こすから強めに警告を出しただけです。やる気出してくれないと本当に廃部しなきゃいけないのに、もう……」
早瀬ユウカの口調からは廃部になどしたくないという意思が感じられる。
「成程、少々行き違いが発生しているようですね。」
「はい……」
「それで、ユウカさんはこの依頼についてどう思いますか? 私が行く意味はあるでしょうか」
落ち込んでいる彼女へと質問する。 - 140プロローグ 早瀬ユウカ25/09/23(火) 01:16:10
彼女は暫く考えた後、返答した。
「はい。少なくとも実績という意味では先生のような大人の知恵も助けになると思います。……でも、先生もお忙しいでしょうし難しいですよね?」
「ミレニアムには一度訪問したいと思っていたので、ゲーム開発部を覗いてみることは出来ますよ」
早瀬ユウカの顔が少し明るくなるが、私は話を続ける。
「人数の問題と並行して、実績作りも必要……成程、確かに私でもできることはあるかもしれません」
「本当ですか?」
「その前に一つ確認、というか前提なのですが、ユウカさん。貴女は私にゲーム開発部のことを支援してほしいと思っていますか?」
私の質問に少女はバツが悪そうな顔をするが、暫くして話し出す。
「はい……できるなら廃部になんかしたくないですし、それに……ユズの居場所が他に無いのも分かってるんです。でも、私は立場的に特別扱いできないじゃないですか」
「……分かりました。では、まずは会ってみましょうか。」
聞きたかった言葉が引き出せたので、彼女の言葉に引き継ぐ。
「本当ですか?」
「ええ、もちろん。ですが、一つお願いがあります。」
「お願い? はい、私にできることであれば」
「では、内容ですが。ミレニアムにいる間、私についていてほしいのです。名目は監視でも護衛でも構いません。」
早瀬ユウカは驚きの声をあげたが、最終的には同行に同意した。 - 141プロローグ 早瀬ユウカ25/09/23(火) 01:17:16
実際の訪問はスケジュールの関係で明日、ということになり、早瀬ユウカは学校へと向かうため帰路についた。
昨日メールが届いてから考えていた内容だが、図らずも彼女自身がシャーレに来たことで殊の外うまく話が進んだ。
アビドスでのことと違い、私は先生がどのようにしてAL-1S、「名もなき神々の王女」の素体と交流し、
友好関係を築くことになったかは不明である。
関係のありそうな事柄としては、彼女が「天童アリス」としてミレニアムのゲーム開発部に所属していることだが、それもまた経緯は殆ど不明。
一方、私の持っている情報として、早瀬ユウカの存在があった。彼女は恐らく以前の時間軸でもあの『先生』とともにシャーレオフィスを奪還した経緯があり、
一連の流れでミレニアムの実質的なナンバー2である彼女の助けがあったことは想像に難くない。
都合よく彼女が訪問してきたのも、恐らく以前の時間軸で『先生』がここで早瀬ユウカへの協力を依頼したということだろう。
同じ方路を辿るというのも善し悪しだが、手掛かりがない以上、一つずつ進めていくしかないのもまた事実だ。
そう考え、私はミレニアムへ訪問する準備を始めた。 - 142二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 01:19:35
本日はここまで
黒服、ミレニアムへ行く前に脱線してしまう。の巻。
本編にすぐ入るかはちょっとまだ考えてます
誰かとの会話記録(絆ストーリー)になるかも - 143二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 05:42:53
更新感謝です!! 少し流れ変わったのでしょうか……幕間が楽しみです
- 144二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 11:53:38
このレスは削除されています
- 145二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 12:11:58
なんかそのうち黒繋がりでブラックジャックみたいに生徒の覚悟を決めた台詞を吐き出して「その言葉が聞きたかった」みたいな事言いそう
- 146二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 12:13:33
黒服さんなら ”みんなとはっちゃけるのた~のし~!”
みたいなノリで あんなめちゃくちゃはしないだろうけど
モモイにはぶん回されそうかな 抑えられるかなあの子 - 147二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 12:40:49
数日後、そこにはTSCをプレイし
「理解不能…理解不能…」
「何故?何故?何故?」
と壊れたおもちゃのように呟く2人組の姿が! - 148二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 13:02:21
先生がそこまで自発的に動かなくてもそこにいるだけでアリスは仲間になるんだけどまあ黒服の視点からだと考えすぎちゃうよな
- 149二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 16:53:48
今のところ
ダメってされてしょぼんなってるモモイしか想像できないんじゃが - 150二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 20:53:41
保守
- 151人物備忘録 便利屋6825/09/23(火) 23:49:46
陸八魔アル
便利屋68のリーダーであり、自称社長です。法人登録が無いので実質的にはフリーの何でも屋ということになるでしょう。
時間遡行以前からその実力や噂は認識していましたが、実際に会ってみると、裏社会に憧れつつ翻弄される少女、という様子でした。
しかし、戦闘面、知能面双方ともに優れており、人柄も良く人望もあるという、表の世界にいれば間違いなく大組織の長となれる人物と言えます。
本人は裏社会で一流になることを強く望んでいるため、一刻も早く裏でのやり方に慣れる必要があるでしょう。
もちろん本人の性格的にあまり非人道的な行いは出来ないと思いますが、外部顧問として肩書を与えられた身として、彼女の組織が舐められないよう支援を行うつもりです。
浅黄ムツキ
陸八魔アルから室長という肩書を与えられている少女。
爆発物に関する感覚に優れており、風紀委員の経路誘導の際にはその能力を遺憾なく発揮していました。
行動に躊躇が無く、危険物の収集を趣味としているという、ある意味では社長よりも裏社会に適した人物です。
それどころか、陸八魔アルの下にいなければ、あるいは彼女が凶悪な人物であれば爆弾魔として矯正局送りにされていそうな生徒です。
明るい少女のような振る舞いを見せますが、実際には人を良く観察しており、相手を見て接しているところがあるようです。
事実、直接会って話をするまで警戒していたことを本人から伝えられています。 - 152人物備忘録 便利屋6825/09/23(火) 23:51:12
鬼方カヨコ
陸八魔アルから課長という肩書を与えられている少女
冷静沈着で、あまり主張はしない人物ですが、優れた洞察力と危機感知能力を持っており、
有事の判断力は一流と言って良いでしょう。私の護衛を務めていた際にもその能力を発揮していました。
素質としては裏社会向きな面を持っていますが、本人のスタンスとしては裏社会に拘っているという訳ではないと思われます。
私に対しては不審に感じている点を多々感じていると思いますが、聞かずにいてくれる気遣いのある対応をしてくれています。
伊草ハルカ
陸八魔アルに狂信的な忠誠を誓っている少女。
自己主張が不得手で浅黄ムツキとは対照的なほどに、ネガティブな印象を受けますが、
陸八魔アルに対する敵とみなした相手には過剰と思えるほどの敵対心を発露します。
また、そのハードルも非常に低く、少しでも陸八魔アルが困った様子を見せればその対象に敵意を出し、本人に止められるといった光景がよく見られます。
しかし、その他に趣味がないということもなく、植物を愛する側面もあるようです。
私に対しては直接会った際には恐怖の対象として見られていたようですが、私の金払いや陸八魔アルへの対応を受け、その件に直接礼を言われる程度には信頼されているようです。 - 153セミナーの生徒たち25/09/23(火) 23:52:27
ゲーム開発部へ訪問することを決めた翌日、早瀬ユウカに伴って、ミレニアムサイエンススクールへと初めて直接足を踏み入れた。
「ゲーム開発部に行く前に、セミナーへ寄っていってもいいかしら?」
早瀬ユウカの提案に断る理由もなく、まずはミレニアムの生徒会、セミナーが事務所を構える部屋へと訪れることになった。
「ただいま、戻ったわ、ノア。」
早瀬ユウカの後に続き、室内に入る。人気は多くなく、一人の生徒が座っているだけだった。
「お帰りなさい、ユウカちゃん。と……あなたが『先生』ですか? よろしくお願いしますね
ノア、と呼ばれたその生徒は立ち上がりそう言ってお辞儀をした後、まじまじと私を見つめる。
奇異の目で見られることはよくあるが、そういった反応とはまた違うように感じられた。
「ええ、こちらこそ、よろしくお願いいたします。ノアさん、でいいのでしょうか。」
「あ、すみませんじろじろと。生塩ノア、と言います。セミナーで書記をしています。」
そう言って生塩ノアは恐縮したように再度頭を下げた。 - 154セミナーの生徒たち25/09/23(火) 23:53:39
「構いませんよ。自分が少々変わった見た目をしているのは理解していますから。」
「ええと、すみません、そういうことではなく、なんというか、そう。……以前どこかでお会いしたような」
小鳥遊ホシノと同じような反応をされるが、今度は私の方に彼女との面識があった記憶がない。
「そうですか? 私には覚えがありませんが。」
「ごめんなさい、私の記憶違いかもしれません……」
恐らく気のせいだろうと思ったのだが、隣で早瀬ユウカが驚いたように私たちの顔を見比べていた。
「え!? ノアが記憶違い? 相当珍しいわね。」
「そうですね。私も初めての感覚何です。」
早瀬ユウカが口にした言葉に、生塩ノアも同意する。どういうことだろうか。 - 155セミナーの生徒たち25/09/23(火) 23:55:40
「ノアって記憶力がすごくいいの。見たことを殆ど忘れないのよ」
「成程。完全記憶能力というものですか」
「そこまでのものではないと思いますが、一度見たことは殆ど忘れたことが無いと思います。」
記憶能力について詳しく測定したことはないそうだが、簡易的なテストにおいてはすべて満点だったという。
その能力についても興味があるが、それよりも興味があるのが、その彼女が、私に会ったことがあるような気がするという話だ。
この時間軸のいずれかのタイミングで会った、あるいは私を見たことがある可能性か、あるいは『彼女にも時間遡行に関する影響が出ているか』だ。
「ふむ……ところで、ノアさん。最近妙なメールが届いたといったことはありませんか?」
「メールですか? すみません、心当たりは特に……」
この返答に関しては想定内だ。アレは本人の記憶を呼び起こすものであると仮説を立てており、もうしそうであれば彼女が以前の時間軸での記憶を見ているということはないだろう。 - 156セミナーの生徒たち25/09/23(火) 23:57:02
「不思議な話ね……。で、会長は今日も不在ね。もう、何してるのかしら。で、少ないけどセミナー専任で所属している部員はこれだけよ。他の子たちは手伝いとか兼部で入っているから繁忙期や緊急の案件以外では来ないわね。保安部は別の部室。最近までもう一人いたんだけど……」
生塩ノアとの挨拶が終わり、早瀬ユウカはいくつかの資料を印刷し、ファイルにしまいながらそう話す。
「辞められたのですか?」
「辞めたっていうか辞めさせざるを得なかったというか、服役中というか……気になります?」
そう言われれば気になるとしか言えない。私は同意する。
「……そうね、あの子にも良い刺激になるかもしれないから、ちょっと会いに行ってみましょう。」
早瀬ユウカは暫く思案した後、そういって頷いた。 - 157セミナーの生徒たち25/09/23(火) 23:58:52
巨大な学校であるミレニアムサイエンススクールはいくつかの区画に分かれており、その中でも厳重なセキュリティで守られている区画へと行く。
「この先に懲罰房でもあるのですか?」
歩きながら、先を進む早瀬ユウカへと問いかける。
「懲罰房って……、そんな大層なものではありません。反省部屋というか……ああ、でもあの子にとったらあまり違いはないかもしれません。」
そう言って、彼女は溜息をつく。昨日、ゲーム開発部に対して行っていた態度と似たようなものだ。
つまり、その感情も似たようなものだろう。
さらに奥へと進み、厳重なロックがかかっていると思われる扉の前で彼女は立ち止まる。
周辺にはいくつも監視カメラが置かれている。
「ここです。先生。今ロックを開けますね。」
早瀬ユウカが口にしたとき、ガチリ、と扉内部で鍵が解錠された音がした。
彼女の動きが止まる。そして、私と二人、少し脇に移動し、扉を凝視する。
ゆっくりと音を立てないように扉が開く。
そして中から一人、ピンク色の長髪が特徴的な少女が姿を現した。 - 158セミナーの生徒たち25/09/23(火) 23:59:52
「そーっと」
と実際に口にしながら一歩踏み出したその少女は辺りを見渡し、そして、間近に早瀬ユウカが存在していることに気付き、硬直した。
「ユ、ユウカ先輩!!? なんでこんなところにー!? ふぎゃっ!?」
反射的に早瀬ユウカのいない方向へと闘争を開始し、そこにいた私にぶつかり悲鳴を上げる。
「何ですか!!? ……ひ、ひぃ!!? オバケですか!? 助けてユウカ先輩!!?」
私の姿を見てもう一度悲鳴を上げた少女が今しがた逃げようとした先輩へと縋りつく。
今までで一番大げさな反応だ。
「落ち着きなさいコユキ……この方は先生よ。」
纏わりつかれて何を言ったものか考えたのだろう、少し困った顔をして、早瀬ユウカが私を紹介する。 - 159セミナーの生徒たち25/09/24(水) 00:00:54
「……え、先生? あの?」
「ええ、その先生。挨拶は?」
子供をあやす親のように、後ろにいた黒崎コユキの背を押している。
「……黒崎コユキ、です。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。コユキさん。」
存外丁寧な挨拶に返事をする。
早瀬ユウカの後輩ということは15歳かそこらだろうが、それにしては幼く見える。
「にはっ、大人の先生って初めて見ました!」
「にはっじゃないわよコユキ! 脱走しようとしてたわね!?」
笑顔で私に話しかける黒崎コユキに、早瀬ユウカが思い出したように怒り出す。 - 160セミナーの生徒たち25/09/24(水) 00:02:00
「げっ!? やっぱり忘れてなかった!? 簡単に開けられちゃう鍵が悪いんですよ!?」
「反省部屋なんだから勝手に開けて良いわけないでしょ!?」
「なんでーーー!!?」
そして、喧嘩を始める二人、さながら親子喧嘩のようだが、ここであまり時間を使っても仕方ない。
「まあまあ、ユウカさん。その辺で。コユキさんの言うことにも一理あります。開けられる場所に閉じ込められたら人は脱走します。」
「にはは、そうですよね先生! 話が分かる人ですねっ」
「そこでコユキの肩を持つんですか!?」
黒崎コユキが喜び、早瀬ユウカは怒る。私は気にせず、言葉を続ける。
「なので、閉じ込めておきたければより厳重にしましょう。物理的なロックをつけるとか……構造上内部からの開扉が絶対に出来ない扉にしておくとか」
「怖っ、発想が猟奇的じゃないですか先生!?」
「……それもそうね。検討するわ」
「ユウカ先輩!?」
こうしてセミナーの元メンバー、黒崎コユキとも出会った。 - 161セミナーの生徒たち25/09/24(水) 00:03:03
黒崎コユキがここに閉じ込められた理由は、言わずもがな自分の能力を悪用し、悪戯(というには規模の大きい行為)を繰り返したためであるという。
脱走したら次は内側からは絶対に開けられない密閉された部屋に閉じ込めると暗に告げ、大人しくなった黒崎コユキと別れ、私たちはゲーム開発部へと行くことになった。
「それで、生徒会長は不在と仰っていましたが……」
「ええ、そうなんです。最近は全然連絡が取れなくて……」
「そうですか……一度お会いしたかったのですが、残念です。」
ここに来た第一の目的は調月リオと会う事だったのだが、やはり難しいようだ。
「……先生が合いたいというのであれば、メールで伝言しておきますよ。もしかしたらメール位は見てくれているかもしれません。モモトークは既読にもならないんだけど」
「ありがとうございます。そうしていただけると助かります。」
そして、ゲーム開発部の部室棟が近づいたとき、突然空から落下物が降ってきた。 - 162二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 00:05:33
本日はここまで
ノアとコユキ出したいなと思ったのでとりあえず出しました。 - 163二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 05:32:48
ノア…………君は何を見たんだ…………
- 164二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 11:25:05
黒服と先生の存在がちょっとずつ混ざり合ってるっぽい描写がちょくちょくあったし、ノアが既視感を覚えたのは黒服じゃなくて先生のほうだったりするんじゃないかな。
適当考察でスマソ - 165二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 19:41:02
保守
- 166二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 19:58:46
保守
- 167二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 21:08:05
ずっと思っていたことを言ってくれてありがとうございます
そうですよね 外側に板をはめれば出れないんですよ - 168二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 23:39:30
今追いついた
続きは寝て待つ - 169才羽姉妹との出会い25/09/25(木) 00:15:31
開放された窓から何か声が聞こえてきたと思い、見上げると何かが飛来してきていることが確認できた。
「先生!?」
直後、同じく飛来物に気付いたのだろう、早瀬ユウカに体を押され、バランスを崩し、
「あいたぁ!?」
ガコン、という音とともに、早瀬ユウカが悲鳴を上げる。
どうやら、私を庇って飛来物が当たったらしい。
そういえば、シャーレオフィス奪還の際にも目の前の少女に弾が命中していた。
「何なのよもう……先生、大丈夫ですか?」
頭をさすりながら名目上護衛の少女がこちらの無事を確認する。いや、名目上という部分はもう外していいだろう。
「おかげさまで、尻餅をついた程度で済みましたよ。ユウカさんこそ大丈夫ですか?」
「平気です。痛いは痛いですけど、銃弾食らった方がよっぽど痛いですよ。」
早瀬ユウカは立ち上がり、当たり前の事を言った。 - 170才羽姉妹との出会い25/09/25(木) 00:18:20
「それはよかったです。それで、何が飛んできたのでしょう。」
「これは……ゲーム機、まさか……」
これが飛んできた窓を見上げる。
そこには顔を真っ青にした少女と、それに良く似た顔つきの少女がこちらを覗いていた。
才羽モモイと才羽ミドリだろう。
「モモイ! もう、危ないでしょ!」
傷害事件の被害者が怒りの表情で窓に向かって叫ぶ。
「うわー!? 何でよりにもよってユウカに!!?」
「お姉ちゃんどうするの!? っていうか隣にいる人ってまさか」
「何騒いでるの! 良いから降りてきなさい!」
早瀬ユウカの呼び出しに、二人が窓から顔を引っ込める。
こちらに彼女たちの持ち物がある以上、逃げるという選択は取れないだろう。 - 171才羽姉妹との出会い25/09/25(木) 00:19:26
すぐに二人の少女が降りてきて、走ってこちらに近づいてくる。
「プライステーションは無事!?」
「も、もしかして先生ですか?」
「あなた達ね……まずは言う事があるんじゃないかしら?」
先ほどの黒崎コユキもそうだが、ミレニアムの1年生というのはこういう質の生徒しかいないのだろうか。
環境が異なるとはいえ、アビドスの一年生のことを考えると、随分幼く見える。
「あー! そうだユウカ! 何でここに来たの!?」
「違うでしょ! あなた達が放り投げたゲーム機で危うく先生がケガするところだったのよ!?」
「ご、ごめんなさい。」
ピンク色の姉の方、才羽モモイが頭を下げる。妹もそれに追随する。
しかし私はどうにも、このまま話を進める気になれなかった。 - 172才羽姉妹との出会い25/09/25(木) 00:22:25
「私に謝る必要はありませんよ、実際にぶつかったのは私ではないですから。ただ、一つ言わせてもらうと今貴方たちの心証は極めて悪いです。
『普段お世話になっているユウカさんのお願い』を受け、メールの依頼通りあなたたちに会いにきたのですが、正直後悔しています。」
「ちょっ、先生!? それは言わないって……」
「え……」
そこまで言って、私は失策に気付いた。
早瀬ユウカが慌てて、才羽モモイは唖然としている。自分はこんなことで腹を立てる性格だっただろうか。それともこれも何らかの影響の結果なのだろうか。
本来であれば、最低でもゲーム開発部との関係は良好でなければならなかったはずだが、いきなり叱責してしまった。 - 173才羽姉妹との出会い25/09/25(木) 00:23:42
「……ユウカ、それ本当?」
「せ、先生が気になってたみたいだったから、後押ししただけよ。」
「本当なんだ……ご、ごめんねユウカ……私、てっきりまた何か嫌なこと言いに来たかと思ってすぐ謝れなかったよ。」
「嫌なこと言われるかどうかは別として、迷惑かけたらまず謝りなさいよ……まあ、大したことにならなかったのは不幸中の幸いだったわ。」
「うん……ごめんなさい」
どうフォローするか思案しているうちに、生徒たち同士での会話が進行していた。
「先生、モモイ達も素直になれなかっただけで反省しているみたいなので、予定通りお話、聞いてあげられませんか?」
早瀬ユウカの姿は完全に保護者のそれだったが、私の失態をも彼女がカバーしてくれたので、これを利用するほか道はなかった。
「ユウカさんがそうまでいうのであれば、話は聞かせていただきましょうか。」
そう言って、私たちは才羽姉妹の話を聞くことになった。 - 174二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 00:25:15
短いですが本日はここまで
本編の感じで黒服にゲーム機がぶつかってたら確実にめちゃくちゃこじれてしまうのをどうにかしようと考えてたら書く時間が無くなってしまいました… - 175二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 02:47:31
ほしゅ
- 176二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 08:40:22
黒服ならいい具合にモモイと接せそうですね。
- 177二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 15:45:47
なにが影響してるかはっきりしないがホントしっかり先生やってるな黒服
- 178二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 20:09:46
モモイがしょぼんするのが想定よりだいぶ早かったね
先生怒らせちゃった (ノ-`) アチャー - 179二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 22:36:32
まぁ,アレで怒らないのは結構ね…
- 180ゲーム開発部部室にて25/09/25(木) 23:10:09
とりあえずの和解を済ませ、落ち着いて話をするために、私たちはゲーム開発部の部室へと移動した。
ゲーム開発部というだけあり、室内には多くのゲーム機と作業用と思われる端末が揃っていた。
室内には、私たち四人だけで、部長であるという花岡ユズは不在だという。
私にそう説明したきり、才羽モモイは気まずそうに俯いてしまった。
先ほどのやり取りが響いているのだろう。
以前の私なら空気を読まずに本題に入っていただろうが、平等な立場での対話ではそれでは上手くいかないことも分かってきた。
適任者に任せるべきだろう。
そう思い早瀬ユウカを見ると、こちらを見つめていた彼女と目が合う。
「え、私ですか!?」と表情とジェスチャーだけでどのように伝えているのかは分からないながらはっきりと伝わってきたが無視する。
才羽モモイは無言に耐え切れなくなってきたのか、殆ど涙目であった。 - 181ゲーム開発部部室にて25/09/25(木) 23:11:25
「こほん、モモイに謝ってもらったから、私も謝らないといけません」
慌てた早瀬ユウカが咳払いをして、離し始める。
「え?」
才羽モモイが顔を上げる。
無言を貫いていた妹のミドリも何を言い出すのかという表情で話し始めた先輩を見つめる。
「私の発言を振り返ったら、確かに廃部にすると言ったし、言い方もきつかったわ。敵だと思われて仕方ないところもあった。ごめんなさい、モモイ、ミドリ。それにここにはいないけどユズにも」
「……ううん。ユウカはそういうルールだっていつも言ってたから、本当はユウカが正しいの分かってたよ。」
早瀬ユウカの謝罪に才羽モモイは首を振る。
子供っぽい振る舞いを見せていても、理解力が致命的に足りないという訳ではないようだ。 - 182ゲーム開発部部室にて25/09/25(木) 23:12:49
「……まあ、ルールはそうね。私があなた達のことを好きでも、嫌いでも、今のままだと廃部の判断にせざるを得ない状況なのは事実なの。」
「……うん」
早瀬ユウカの諭すような言葉に、才羽モモイが静かにうなずく。
「だから、私はあなた達が先生に相談したって聞いて、内心ちょっと嬉しかった。本気になってくれたのかなって」
確かメールを見せたときの第一声はゲーム開発部への文句だったはずだが、あれも本心から出るものではなかったのだろう。
「……うん」
「折角、本気になったんだから、ちゃんと相談しましょう。先生はそのためにいらっしゃったのですから、ねえ、先生?」
黙って聞いていたこちらを見て、頷けと目線で命令してきたので諾々と従う。
「……うん! 分かった!」
早瀬ユウカの話と私が頷いたのを見て、才羽モモイはようやく調子を少し取り戻したようだ。
元気よく立ち上がり、
「じゃあ、お願いがあるんだけど……あ」
何かを言おうとしてたっぷり躊躇った後、
「怒らない?」
「怒らせるようなことしようとしてるの!?」
分かりやすく問題児らしい質問をした。 - 183ゲーム開発部部室にて25/09/25(木) 23:14:37
「ふむ。廃墟ですか……」
才羽モモイの話は荒唐無稽で雲を掴むような話であったが、とある廃墟に「G.Bible」なるゲーム開発の聖書があるというものだった。
「私は反対です。」
「怒らないって言ったのに!」
「怒ってないわよ。ただ反対と言ってるだけ、そんな危険な場所に根拠とも言えない乏しい理由で乗り込むなんて……先生もそう思いますよね?」
確かに早瀬ユウカの言う通り、取り合う必要もないような噂話のように聞こえるが、この行動の結果何かが起こり、天童アリスが現れた可能性は相当に高く感じられる。
つまり、賛成の立場にならないといけないわけだ・
「……そうですね。危険を押してでも行きたいというのであれば、行ってみるべきでしょう。」
脳内で説得方法を考えながら、私はそう切り出した。 - 184ゲーム開発部部室にて25/09/25(木) 23:15:41
「先生!?」
「ほんと!?」
「ええ」
やったー、と喜ぶ才羽モモイ。裏切られたという表情でこちらを見る早瀬ユウカをよそに、今まで黙って話を聞いていた才羽ミドリが口を開いた。
「あの、先生。どうして賛成なんですか? それと、そんな場所って行っても大丈夫なんですか?」
どうやら、妹の方は幾分か冷静らしい・
気を取り直した早瀬ユウカもそれに同意するようにうなずいた・
「簡単に話せるほうからにしましょうか。まずそんな場所に行っても大丈夫かという話ですが、安全性という問題さえ度外視すれば問題ないと思いますよ」
「安全性って度外視して良いの!?」
才羽モモイが素で聞いてくる。今誰の目的のために解説しているのかわかっているのだろうか。
「それについてはなんとも言えないので度外視するしかないという話です。 一つ、まず出入り制限については連邦生徒会長が制限していたとのことですが、
私はその連邦生徒会長とほぼ同等の権限を有しているらしいのでこれは問題ありません。そして、ミレニアムの生徒がそんなところに入っていいのかという点ですね。」
そう言って、一度早瀬ユウカの方を見る。
「ユウカさんはこの学校の実質ナンバー2なので彼女の許可を取れれば問題ないでしょう。」
「お願いユウカ! 許可出して!?」
「私は反対って言ったわよ!? 先生、どういうつもりですか?」
怒らない、という約束は私には適用されないらしい。明らかに怒っている。 - 185ゲーム開発部部室にて25/09/25(木) 23:16:45
「まあ、それで何で賛成するかという話に戻りますが……、神秘への探求心というのは止められないものだからです。」
「え?」
3人が同時にぽかんとする。
「ミレニアムの方々は往々にして暴走することがあるとは、ユウカさんの口から何度も聞いていますが、私はそれは悪いことではないと思います。ゲーム開発者が、ゲームの聖書の存在を追い求める。まさに神秘への探求だ。」
「神秘……」
早瀬ユウカが私の言葉を繰り返す。意味を測ろうとしているのだろう。
「ユウカさんが数学を突き詰めるのも数という神秘の追求に他なりません。私も神秘に魅入られた身であるからこそ、ゲーム開発者が身を危険にさらしてでもゲームの神秘を追及するというのであれば、私はそれを応援したいと思います。」
方便をそれらしく話ながら、才羽モモイを見る。
口を開けてボーっとしている。聞いているのだろうか。
「私にとっての、数学と同じ……分かりました先生、私も覚悟を決めます。」
一方、何か感じ入るものがあったのか、先ほどまでとは一転、早瀬ユウカは乗り気になったようだ。
そして、残りの才羽ミドリはというと、詐欺師を見るような眼で私を見ていた。失礼な生徒だ。 - 186ゲーム開発部部室にて25/09/25(木) 23:19:03
「え!? ユウカもついてきてくれるの?」
「私の方がまだ危ないことには慣れてるでしょ。乗り掛かった舟だし、ただ許可だけして待ってるのなんて嫌よ」
「やったー!」
一人置いて行かれていた才羽モモイが状況を把握し、装備の確認をしている早瀬ユウカが廃墟へとついてくることを無邪気に喜んでいる。
早瀬ユウカの方も後輩に纏わりつかれる状況にまんざらでも無さそうだ。そういえば褒められ慣れしていないという推測をしたのだったか。
「ところで、先生。」
ふいに、先輩へと絡んでいた才羽モモイが私の方を向く。
「何でしょうか。」
「さっき、先生も神秘を探求しているみたいなこと言ってたけど、先生にとっての神秘って何なの? 私にとってのゲーム、ユウカにとっての数学みたいなこと」
確かにそう言った。もちろん嘘はついていない。
「そうですね……神秘そのものでしょうか」
「な、なんかカッコイイー!!」
「さ、詐欺師……」
才羽ミドリが今度はそうはっきりと呟いた。 - 187二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 23:21:03
本日はここまでです。
廃墟にたどり着きすらしなかった……
そろそろ次スレですかね。
このスレの最初の方でハーメルンへの投稿が推されてましたが
そちらもちょっと考えています。 - 188二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 23:36:08
おつです、ここのミドリは湿度高くならずに済むかな…?
- 189二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 01:47:03
詐欺師…間違ってはいないな!!
- 190二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 08:06:53
黒服草
- 191二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 15:45:16
もう次スレかな?
- 192二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 19:44:40
黒服先生の方が上手くやれてますねぇ
本編ではっちゃけ倒すのもうちょい先だけど - 193二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:41:33
まぁ暗躍系ヴィランでしたしお寿司…
- 194二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 23:57:52
今日の分書いたので次スレ立てますね。
- 195二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:02:33
- 196二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:29:45
乙梅
- 197二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 04:43:47
たて感謝です
- 198二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 09:19:19
埋めとくよ
- 199二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 09:26:25
うめうめ
- 200二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 09:27:54
200なら ヤンデレ生徒にあなたダレ?される