【閲覧注意・🎲】ここだけ不知火カヤの中身が、大体ボンドルド卿だった世界線 Part.21

  • 1ホットドリンク大好き25/09/15(月) 22:58:25

    【あらすじ】

    共に踊り狂いましょう、ベアトリーチェ。
    貴方と貴方の仔らが、『奇跡』を目にする その時まで。

  • 2ホットドリンク大好き25/09/15(月) 23:00:13
  • 3ホットドリンク大好き25/09/15(月) 23:02:36
  • 4ホットドリンク大好き25/09/15(月) 23:04:33
  • 5ホットドリンク大好き25/09/15(月) 23:05:55
  • 6ホットドリンク大好き25/09/15(月) 23:07:48
  • 7ホットドリンク大好き25/09/15(月) 23:09:01
  • 8ホットドリンク大好き25/09/15(月) 23:10:53
  • 9ホットドリンク大好き25/09/16(火) 00:09:39

    ────────────────────

    ベアトリーチェ:
    「─── ヴェルギリア?」

    突然、ベアトリーチェの動きが止まった。
    体勢を立て直す為に後退するカヤの動きになど目もくれず、極彩色の光が溢れる至聖所の方に視線を向ける。

    ヴェルギリアに付けていた視界が、前触れなく途切れたのである。

    ベアトリーチェ:
    (・・・やっと あの”失敗作”を処分することが出来たというワケですか。)

    ベアトリーチェが最後に見たのは、祭壇を穢す血だった。
    あの出血量では、”何か奇跡でも起きない限り”助からないだろう。

    ベアトリーチェ:
    (・・・まぁ、アレにしては良くやったと思っていいでしょう。)

    『儀式』は、確かに成った。
    それも、自身で執り行うより ずっと効果的に。

    ベアトリーチェ:
    (・・・。)

    不意に、何か虚しい気分にベアトリーチェは襲われた。
    現在進行形で、予想以上の権能が自身に流れ込んでいるのは感じる。
    だが、どこか満たされない。

  • 10ホットドリンク大好き25/09/16(火) 00:14:06

    何か、心の大事な部分が萎えてしまったように感じた。

    ベアトリーチェ:
    (・・・私が あの”失敗作”に感傷を覚えているとでも? フンッ、まさか。)

    ベアトリーチェは【色彩】から流れ込んだ、膨大な力によって膨張した肉体を再構築した。

    権能を、神秘を咀嚼し、再解釈し、より高位な存在へと自らを作り替える。

    ─── やがて出来上がった その姿は、竜の姿に似ていた。

    ベアトリーチェ:
    【─── 私が! 私だけが高位の存在に成れれば、それで良いのです!!
    そこに並び立つものなど不要! 私こそが全てを支配し、所有し得る存在!!!】

    ベアトリーチェは自身に言い聞かせるように叫んだ。
    頭の片隅に浮かんだ、「しかし奴隷くらいはいた方が良かったかもしれない」という吐き気を催す考えは無視した。

  • 11ホットドリンク大好き25/09/16(火) 00:15:54

    ベアトリーチェ ─── 竜は翼を広げて羽ばたくと、月を背に その顎を開き、朱い閃光を放った。
    朱い閃光は、雫のようにポトリと地面に垂れていく。


    ─── そして それが地面に触れた瞬間、アリウスを朱い光の波が襲った。


    それはアリウスの街を呑み込み、全てを朱に染めていく。

    光の波が去った後、そこには朱い結晶に呑み込まれたアリウスの街があった。
    朱い結晶は、月明かりを受けて、極彩色のようにも見える未知の色彩で煌めいていた。

    ベアトリーチェは、結晶の中でも最も背の高いものの頂きに止まった。
    翼を畳み、四肢の爪を結晶に食い込ませて体重を固定する。

    ベアトリーチェ:
    【・・・何人か、まだ動けているようですね。】

    頭部に幾つもある眼球をギョロギョロと動かして呟く。
    その視界には、結晶に呑まれて行動不能になった生徒達に紛れて、確かに動く影が映っていた。

    ベアトリーチェ:
    (とはいえ、後は時間の問題でしょう。 ・・・勝負あったようですね。)

    ベアトリーチェは再び翼を広げると、カヤの方へと向かった。
    ここからの負け筋があるとすれば、彼女だけだと思ったのだ。

    ここにきて初めて、ベアトリーチェに慢心というものが生まれ始めていた。

    ────────────────────

  • 12二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 10:06:22

    保守

  • 13二次元好きの匿名さん25/09/16(火) 18:00:21

    保守

  • 14二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 00:00:24

    保守

  • 15ホットドリンク大好き25/09/17(水) 00:27:09

    ────────────────────


    <一方その頃・・・>


    ”・・・ここが、アリウス自治区?”


    ???:

    「うわぁ・・・凄いことになっちゃってます・・・。」


    瓦礫を押しのけ、何人かの生徒と、一人の大人が姿を現わした。

    そんな一行が目にしたのは、朱い結晶に呑まれて見る影もなくなったアリウス自治区の姿だった。


    ???:

    「え~と・・・一応 確認ですけど、元から こういった景観の自治区では───」


    ???:

    「─── そんなワケないでしょ! これ、明らかに おかしいって!!」


    ???:

    「うん、コハルの言う通りだ。

    少なくとも、私の・・・いや私達の知っているアリウス自治区は、こんな景観では無かったはずだよ。」


    ???:

    「・・・。」

  • 16ホットドリンク大好き25/09/17(水) 00:28:44

    アリウスの地に踏み入った一行 ─── 補習授業部とミサキ、そして先生は唖然とした様子で朱く染まったアリウスの街並みを眺めていた。

    ???:
    「・・・あぁ、もう この段階まで来てしまっているんだね。」

    ???:
    「何か ご存知なのですか?」

    その後ろから、ヒナタに背負われたヴィルトゥオーソが姿を見せる。
    その姿は もうボロボロであり、片腕を除いた四肢をもがれ、大部分の金属骨格が露出していた。
    生徒としての電子的な化けの皮が残っているのは、もはや胴と顔くらいしか無かった。

    ヴィルトゥオーソ:
    「うん・・・まぁ・・・。
    ・・・協力すると言った手前、全力を尽くす所存だけどね?
    だが、これだけは言っておこう。 ・・・もう手遅れかも知れない。 覚悟だけはしておくと良い。」

    ヴィルトゥオーソは悲痛な面持ちで そう言った。

    ─── 彼女が何故、一行に協力することとなったのか。
    その端緒は、時間を少し遡る。

    ────────────────────

  • 17二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 09:00:27

    保守

  • 18二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 15:00:20

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん25/09/17(水) 21:00:19

    保守

  • 20二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 03:00:22

    保守

  • 21二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 09:00:17

    保守

  • 22二次元好きの匿名さん25/09/18(木) 15:00:25

    保守

  • 23ホットドリンク大好き25/09/18(木) 16:05:13

    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

    ヒナタ:
    「─── サクラコ様~!
    どちらにいらっしゃるのですか~!!
    聞こえていたら返事をしてくださ~い!!」

    ハスミが『機械仕掛けの樹海』に乾坤一擲の突撃をする準備を進めていた頃、ヒナタは既に金属の樹海の中に入っていた。

    無機質な金属とプラスチックで構成された森は彩度が極端に高い光によって彩られ、既知の自然では有り得ないようなガスと結晶体の組み合わせによる生成物が空中を彷徨っていた。
    一歩一歩を踏みしめる度に、硬質の地面がコツコツと足音を鳴らす。

    かつて仕えた■■■・・・ヴィルトゥオーソがいるということで、その辺りの人間関係に対する配慮で後方に回されていたヒナタだったが、サクラコ達が音信不通となり、遂には天変地異にも近しい異変が向かった先で起こったことで、いてもたってもいられなくなり、遂には単身で危険地域に乗り込むに至ってしまった。

    ヒナタ:
    (やっぱり・・・私が最初に向かうべきだったのかも・・・。)

    配慮をしてくれたサクラコ達に申し訳ない気持ちと、ヴィルトゥオーソに対する不義理の念がヒナタを襲う。
    同じ学園の生徒として、そして何よりヴィルトゥオーソ個人のことを思うなら、所在が分かった時点で真っ先に向かって話し合うべきではなかったか。
    自分の言うことなら聞いてくれると考えられるほど傲慢ではないが、もしかしたら その苦しみの一欠片だけでも分かち合えたかもしれないという後悔はある。

  • 24ホットドリンク大好き25/09/18(木) 16:07:08

    仕える主は変わっても、互いに魂を分かち合ったという思いは、決して変わってはいなかった。


    ───── (銃声)

    ───── (爆発音)


    ヒナタ:
    「うぅ・・・な、何が・・・。」

    ヒナタが樹海を彷徨っていると、不意に襲撃を受けた。

    銃弾の飛んできた方向を見ると、そこでは異形の機械仕掛けの天使が群れをなしていた。
    それはまるで蜂の大群のようであり、蚊柱のようでもあった。

    ヒナタ:
    「─── っ・・・。」

    あまりの物量に一瞬で戦意を喪失してしまうヒナタ。
    青ざめる彼女を、機械仕掛けの群体が呑み込もうとし───


    ”─── あぶないっ!”


    人影が、彼女を庇った。

    ────────────────────

  • 25二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 00:00:25

    保守

  • 26二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 06:00:22

    保守

  • 27二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 12:00:24

    保守

  • 28二次元好きの匿名さん25/09/19(金) 18:00:29

    保守

  • 29二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 00:00:25

    保守

  • 30二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 06:00:26

    保守

  • 31ホットドリンク大好き25/09/20(土) 10:45:46

    ────────────────────

    ”─── 大丈夫?”

    ヒナタ:
    「・・・うぅ・・・はい。 ・・・えっと───」

    ヒナタが目を開くと、そこにはシャーレの先生がいた。

    ヒナタ:
    「えっ、せ、先生!?」

    良く見ると、先生は肩に切り傷のような怪我を負っていた。

    ヒナタ:
    「っ! お怪我を───」

    ”─── 大丈夫、掠り傷だから。”

    先生は周囲を見渡す。
    既に、異形の天使達は どこかに去ってしまっていた。

    それを確認すると、先生は鞄から包帯を取り出し始める。

    ”怪我はない?”

    ヒナタ:
    「わ、私のことはいいですから! それよりも先生ご自身の手当を・・・!」

  • 32ホットドリンク大好き25/09/20(土) 10:48:53

    ヒナタは そう言うと、普段の穏やかさからは想像もつかないような荒々しい手つきで先生の手から包帯を引ったくり、そのまま背後に回って手当を始めた。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    ヒナタ:
    「─── 先生は、どうして お独りで こちらに?」

    ”うん、本当は他の皆も一緒だったんだけど、どうも はぐれちゃって。”

    手当をしながら、ヒナタと先生は話をしていた。
    手持ちの飲料水で手と傷口を洗い、ガーゼで圧迫し、包帯を巻く。
    その中で、ヒナタには頭に浮かぶものがあった。

    ヒナタ:
    (・・・違う。
    きっと あの方なら、先生と誰かが一緒にいることを危険と考えるはずです。
    まず分断し、周りを刈り取って先生を孤立させるはず・・・。)

    かつて その手腕を間近で見ていたヒナタには、それが偶然を装った作為的なものであると分かった。
    そういうことが出来る人だったからこそ、彼女はシスターフッドの中でも より後ろ暗い部分を背負えたのだ。

    ヒナタ:
    (ここから あの方の策謀に対処するには・・・。)

  • 33ホットドリンク大好き25/09/20(土) 10:50:40

    少し考えたヒナタだったが、直ぐに自分では対処できないことが分かった。
    彼女の策はヒナタから見て常に完璧以上だった。
    稀に大きく狙いを外す時はあったが、結局ヒナタには それが何故なのか良く分からなかった。

    ヒナタ:
    (でも・・・もしかしたら先生なら・・・。)

    ─── 彼女の弱点が分かるかもしれない。
    一縷の望みをかけて口を開く。

    ヒナタ:
    「・・・あの───」

    ”ん?”

    しかしヒナタが その先を口にすることは無かった。

    ─── その前に、足元に大穴が空いた。

    ヒナタ:
    「えっ?」

    ”えっ?”

    ヒナタと先生は顔を見合わせる。
    次の瞬間、重力が仕事を思い出したかのように二人は落下していった。

    ────────────────────

  • 34二次元好きの匿名さん25/09/20(土) 18:00:23

    保守

  • 35二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 00:00:28

    保守

  • 36二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 06:00:17

    保守

  • 37二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 12:00:28

    保守

  • 38二次元好きの匿名さん25/09/21(日) 18:00:25

    保守

  • 39ホットドリンク大好き25/09/21(日) 23:43:03

    ────────────────────


    <一方その頃・・・>


    ヒフミ:

    「あ、あう・・・捕まってしまいました・・・。 これからどうしましょう・・・。」


    ヒフミ達は、樹海の地下に設けられた迷宮の牢に閉じ込められていた。


    コハル:

    「まさか先生と はぐれて、そのまま変な怪物達に連れ去られちゃうなんて・・・。

    ・・・・・・この水、飲めるかな・・・?」


    ここに来るまでに水筒を落としてしまい、実は喉が渇いていたコハルが そんなことを言う。

    牢の中には、小さな水の道が通っていた。


    ハナコ:

    「ウフフ♡ 止めておいた方が良いと思いますよ? 恐らくそれ、純水ですから。」


    コハル:

    「? 何ソレ、綺麗な水ってことじゃないの?」


    ハナコ:

    「そうですね。 でも飲み続けていると、その内 頭痛や吐き気がしてくるんです。 ・・・試してみますか?」


    コハルは小川から急速に距離をとった。

  • 40ホットドリンク大好き25/09/21(日) 23:50:12

    コハル:
    「うぅ・・・喉が乾いたのに・・・。」

    ハナコ:
    「あら、それなら私の分を分けてあげましょうか?」

    コハル:
    「! いいの!?」

    ハナコ:
    「えぇ。 もっとも、関節キスには なってしまいますが・・・♡」

    コハル:
    「・・・。」

    ハナコがコハルの百面相を楽しんでいる間、アズサとミサキは牢の格子に触れながら話し合っていた。

    アズサ:
    「・・・不思議な造りだね。 まるで自然に生成されたかのように継ぎ目がない。」

    ミサキ:
    「・・・もう時間なんてない。 ・・・何とかして ここを突破しないと。」

    ミサキは荷物を漁って解決策を探る。

  • 41ホットドリンク大好き25/09/21(日) 23:51:32

    ミサキ:
    (ランチャーを使う・・・?
    ・・・ダメ、この牢の狭さだと威力が強すぎる。 爆発に巻き込まれて意識を失うのは避けたい。)

    手榴弾を使う案もあるが、こちらはランチャーよりも対人威力が高いので むしろリスクが高まるだけだった。

    ミサキ:
    (・・・諦める、ワケにはいかない。 サオリ姉さんに皆のことを頼まれた私が、諦めるワケには・・・。)

    アズサ:
    「・・・ミサキ。」

    アズサに名前を呼ばれてハッと顔を上げる。

    アズサ:
    「何も手を打たないワケにはいかない。
    ・・・局所的に格子を打ち続けてみようと思う。 弾薬が無駄になるかもしれないけれど・・・。」

    ミサキ:
    「・・・いい、やって。 貴方の言う通り、何もしないよりはマシだから。」

    アズサ:
    「・・・うん。」

    アズサが突撃銃をリロードする。
    ミサキは その様子をボンヤリと見つめていた。

  • 42ホットドリンク大好き25/09/21(日) 23:52:49

    ミサキ:
    (この格子がアサルトライフルの連射で壊れるとは思えない・・・。
    もっと現実的な・・・この状況を打開できるアイデアは・・・。)

    ミサキは ふと横に目線を向けた。
    そこではコハルが、ハナコから借りた水筒に顔を真っ赤にしながら口を付けていた。
    ハナコが その様子を楽しそうに眺めている。

    ミサキ:
    (水筒・・・容器・・・。)

    それを見た瞬間、ミサキの脳裏に閃くものがあった。
    咄嗟に、格子に銃撃しようとしていたアズサを止める。

    アズサ:
    「・・・ミサキ?」

    不思議そうにするアズサが何か言う前に、ミサキが言葉を続ける。

    ミサキ:
    「─── 5.56mm弾を ありったけ頂戴。 ・・・そっちの人達も、持ってる弾丸 出して。」

    ミサキは自分の水筒を取り出すと、その中身を全て飲みきった。

    ────────────────────

  • 43二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 06:00:16

    保守

  • 44二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 12:00:29

    保守

  • 45二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 18:00:27

    保守

  • 46ホットドリンク大好き25/09/22(月) 21:49:31

    ────────────────────

    ヒナタ:
    「ケホッ・・・コホッ・・・!」

    大穴から落ちた先、純水の流れに呑み込まれたヒナタは、やがて大きな空間に放り出された。

    ヒナタ:
    「せ、先生は・・・───」

    一緒に大穴に落ちた先生の安否を確かめようと、瞼を開く。









    ─── 赤く光る無機質なカメラが、至近距離でヒナタのことをジッと見つめていた。

    ヒナタ:
    (─── っ!!)

    驚きのあまり声も出なかった。
    華奢な肩が、ビクリと震える。

  • 47ホットドリンク大好き25/09/22(月) 21:52:40

    それを画角に収めたカメラは、どこか動揺したように ゆっくりとヒナタから離れる。
    ヒナタは、その仕草に どこか見覚えがある気がした。

    ヒナタ:
    「■■■様・・・?」

    その仕草は、研究でハイになった■■■が、ついヒナタを驚かせてしまったときにしていた仕草と瓜二つだった。

    赤い光を放つカメラは、恐る恐るといった様子でヒナタを映す。

    ???:
    『君は・・・バカなのかい・・・?』

    そして、ノイズが混じってはいるものの、明らかに記憶にある その人の声と分かるものが聞こえてきた。

    ヴィルトゥオーソ:
    『ここが危険地帯であることは、幼稚園児でも分かることだろう?
    それなのに君は、どうして一人で乗り込んでくるかなぁ?
    ねぇ、君。 私が君一人だけで乗り込んできたとき、どんな気持ちだったか分かるかい?
    ・・・本当に、生きた心地がしなかったよ。 このバイオームは、全てが私の管理下にあるワケではないんだよ??』

    ヒナタ:
    「うぅ・・・はい・・・。」

    明らかに怒っている様子のヴィルトゥオーソに、ついヒナタは謝ってしまう。
    そもそもヴィルトゥオーソが こんな事をしでかさなければ起きなかった問題ではあるが、染みついた習い性というものは中々直るものでもなかった。

  • 48ホットドリンク大好き25/09/22(月) 21:55:04

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・はぁ。 いや、すまない。
    結局は君の善性を甘く見積もった私の責任だったね。
    ・・・全く、自分の悪癖が嫌になるよ。 どうしてこう、二兎を得ようとして一兎も得られなくするかな・・・。』

    ヴィルトゥオーソの視線である赤い光が、ヒナタとは別の方向を向く。
    そこには、水浸しになった先生が立っていた。

    ヒナタ:
    「っ! 先生!!」

    ヒナタは先生の方へ駆け寄る。

    ─── そして、その一歩後ろで、先生が対面しているものに気が付いて足を止めた。

    ”・・・こんにちは。 君がヴィルトゥオーソかな?”

    ヴィルトゥオーソ:
    『こんにちは、先生。 こうして会うのは初めてかな? ・・・出来れば退室 願いたいんだけど ───』

    四肢をもがれ、金属の骨格が露わになり、無数の無機質なチューブで宙吊りにされたヴィルトゥオーソが そこにいた。

    ヴィルトゥオーソ:
    『─── あぁ、それは難しそうだね。』

    次の瞬間、ヴィルトゥオーソが繋がれた空間の、壁の一部が爆発した。

    ────────────────────

  • 49二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 06:00:13

    保守

  • 50二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 12:00:15

    保守

  • 51二次元好きの匿名さん25/09/23(火) 18:00:14

    保守

  • 52二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 00:00:19

    保守

  • 53ホットドリンク大好き25/09/24(水) 02:12:23

    ────────────────────


    <少し前・・・>


    ミサキ:

    「─── ・・・よし、下がって。」


    ミサキは、皆で出し合った弾丸を解体し、中の火薬を取り出して水筒に詰めた。

    一つの弾丸には1~2グラム程度の火薬しか入っていないが、それが百発、二百発となると水筒を満たせるだけの火薬が集まった。


    ミサキは空になった水筒に弾丸の火薬を詰めた即席の爆弾に、サバイバルキットの中に入っていた可燃性の紐を取り付ける。

    そして、僅かな燃料だけが入ったライターで火を点けた。




    ───── (爆発音)




    ロケットランチャーの弾頭よりは明らかに火力が低く、また手榴弾よりも対人威力の低い小規模な爆発が起こった。


    ─── そして その爆発は、確かに幾何学模様を描いていた牢の格子を破壊していた。

  • 54ホットドリンク大好き25/09/24(水) 02:14:56

    ヒフミ:
    「やった! これで脱出できますね!」

    アズサ:
    「いや、喜ぶのは まだ早いよ、ヒフミ。
    今の爆発音を聞きつけて守衛がやってくるかもしれないし、そもそも脱出路も確保出来ていない。」

    困ったように眉を寄せるアズサの手を、ヒフミは優しく包み込んだ。

    ヒフミ:
    「大丈夫です! きっと何とかしますから。」

    アズサ:
    「何とかって・・・。」

    ミサキ:
    (・・・。)

    何の根拠もない励ましを口にするヒフミに、ミサキは冷たい視線を送っていた。
    不意に「その言葉に何の意味があるの?」と問いただしたくなってしまう。
    しかし、その言葉はアズサの表情を見て吹き飛んだ。

    アズサ:
    「・・・そうだね。 すまない、ヒフミ。 少し弱気になっていたようだ。 私も解決策を考えるよ。」

    アズサが、笑っていた。
    それも、幼い頃から共に訓練を受けた自分達でさえ見たこともないような穏やかな笑顔で。

    そこには、確かに『意味』があった。

  • 55ホットドリンク大好き25/09/24(水) 02:18:42

    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

    サオリ:
    「─── 大丈夫だ、ミサキ。 ・・・もう、大丈夫だから。」

    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

    不意に、そういって不器用に笑っていたサオリ姉さんのことを思い出した。
    あのとき、自分は何か酷い言葉を姉さんに浴びせてしまったことを覚えている。

    本当は その優しさに身を任せたかったのに、それ以上に自分が惨めで、つい口に出してしまったのだ。

    ・・・あのときの、サオリ姉さんの辛そうな顔は忘れられない。

    ミサキ:
    (・・・そっか。 『意味』は、あったんだ。 ・・・私が見ようとしなかっただけで。)

    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

    アツコ:
    「まずは、自分を認めてあげて。
    そうすれば、自分が何を持っているか よく分かるはずだから。

    ─── ・・・もちろん、『あの子』が貴方の何を妬んでいるのかも。」

    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

  • 56ホットドリンク大好き25/09/24(水) 02:20:12

    ミサキ:
    (・・・今なら、分かる気がする。)

    ミサキは噛み締めるように瞼を閉じた。
    ・・・そして ゆっくりと開く。

    既に、考えは決まっていた。

    ミサキ:
    「─── ランチャーの弾頭に、まだ余裕はある。
    ・・・とりあえず手当たり次第に壁を破壊してみよう。
    崩落にだけ気を付けて取り掛かれば、もしかしたら出口に繋がるかもしれない。」

    アズサ:
    「・・・悪くない案だとは思う。 でも、強硬すぎる。 慎重なミサキらしくない。」

    ミサキ:
    「・・・今は、何よりも時間が惜しい。
    その為なら、多少は無茶をするべきだと思うから。 ・・・それに ───」

  • 57ホットドリンク大好き25/09/24(水) 02:21:53

    アズサ:
    「それに?」

    ミサキはアズサと目線を合わせた。

    ミサキ:
    「─── 『だとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない』・・・だっけ?
    今なら・・・うん。 ・・・少しくらいは、貴方の言いたいことが分かる気がする。」

    アズサ:
    「・・・。」

    ミサキ:
    「自分自身のことなら幾らでも諦めがつくけど・・・。
    ・・・『家族』は、『家族』のことは・・・私も、諦めたくはないとは、思うから。」

    自分の考えを整理するように言葉を紡ぐミサキのことを、アズサはジッと見つめていた。

    そしてミサキの言葉を聞き終えると、何かを考えるように、そして何かを噛み締めるように、やはり ゆっくりと瞼を閉じた。
    そして、少しの間を置いて ゆっくりと開く。

    アズサ:
    「・・・分かった。 私は、ミサキの案に賛成する。」

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    ミサキが雑に放った最初の一発が、ヴィルトゥオーソの縛り付けられた空間を引き当てるまで あと数十秒・・・。

    ────────────────────

  • 58二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 09:00:11

    保守

  • 59二次元好きの匿名さん25/09/24(水) 15:00:13

    保守

  • 60ホットドリンク大好き25/09/24(水) 16:39:02

    ────────────────────

    ミサキ:
    「・・・ん? なんか・・・凄く大きな空間を引き当てた、みたい。」

    コハル:
    「えっ! アタリって・・・こと!?」

    アズサ:
    「油断しない方がいい。 もしかしたら巨大兵器の格納庫かもしれない。」

    ヒフミ:
    「あはは・・・まさか そんな、ゲームじゃないですから そんな場所があるワケ・・・───」

    アズサ・ミサキ:
    「・・・。」

  • 61ホットドリンク大好き25/09/24(水) 16:42:58

    ヒフミ:
    「え!? なんですか、お二人とも!? そんなまるで心当たりがあるみたいな顔は・・・!」

    アズサ:
    「・・・まぁ。(チラッ)」

    ミサキ:
    「・・・私に振らないで。」

    ハナコ:
    「・・・おや? あそこに見えるのは先生とヒナタさんでしょうか。」

    ヒフミ:   アズサ:    コハル:    ミサキ:
    「はいぃ!?」 「本当か!?」 「本当っ!?」 「え?」

    ハナコの視線の先を見ると、確かにナニカと対峙する先生が そこにいた。

    ────────────────────

  • 62二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 00:00:14

    保守

  • 63二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 06:00:14

    保守

  • 64二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 12:00:14

    保守

  • 65二次元好きの匿名さん25/09/25(木) 18:00:13

    保守

  • 66ホットドリンク大好き25/09/25(木) 23:09:16

    ────────────────────

    ヴィルトゥオーソ:
    『今すぐ貴方を炭素の塊に変えてやっても良いのだがね、先生。 だが・・・───』

    ヴィルトゥオーソはヒナタを一瞥した。

    ヒナタ:
    「?」

    ヴィルトゥオーソ:
    『─── そういうワケにもいかないようだ。 つくづく私には天運というものがないね。』

    ヴィルトゥオーソが溜息をつく仕草をする。
    そこに、ヒフミを先頭にした補習授業部とミサキが駆け寄った。

    ヒフミ:
    「大丈夫ですか!? 先生!!」

    ”なんとかね。”

    ヒフミ達が ずぶ濡れの先生を心配する中、アズサとミサキが異様な人影 ─── ヴィルトゥオーソと先生の間に銃器を構えて立ちはだかる。

    しかし その二人の銃口を、先生が手で制した。

    アズサ:     ミサキ:
    「・・・先生?」 「・・・なんのつもり?」

    二人が訝しむ中、先生は落ち着いた声で二人を説得した。

  • 67ホットドリンク大好き25/09/25(木) 23:10:21

    ”まずは、話し合おう。 戦うのは、それからでも遅くないよ。”

    二人は先生と暫く睨み合うように目を合わせていたが、やがてアズサの方が銃口を下ろした。

    アズサ:
    「・・・分かった。」

    ミサキ:
    「・・・正気?」

    未だ銃口を下ろしていないミサキに向けて、今度はアズサが言葉を続ける。

    アズサ:
    「『まず、話し合う』。
    ・・・当たり前のように聞こえるけど、これは とても難しいことだと私は学んだんだ。」

    ミサキ:
    「そんなことをしている場合じゃない。 ・・・引き金を引いた方が、明らかに時間の削減になる。」

    ミサキの得物が、カチャリと物騒な音を立てた。
    ミサキは既に引き金に指を当てている。

    アズサ:
    「ミサキ・・・そんな当たり前のことを忘れてしまったから、きっと私達(アリウス)は苦しんでいたんだよ。」

  • 68ホットドリンク大好き25/09/25(木) 23:11:36

    ミサキ:
    「・・・。」

    何か葛藤する様子を見せたミサキは、やがて低い唸り声を上げて銃口を下げた。

    ミサキ:
    「・・・3分間だけね。」

    ”ありがとう。”

    アズサの説得が功を奏し、ミサキは戦闘態勢を解いて近くの瓦礫に腰を下ろした。
    その目は警戒の色を失っていないが、少なくともランチャーの引き金からは指が離れていた。

    ”じゃあ、手短にいこうか。 ・・・君に対話の意思はあるかな?”

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・ここで拒否したら、数百年前のアリウス以下と宣言するようなものじゃないかい?』

    ヴィルトゥオーソが、対話の席に着いた。

    ────────────────────

  • 69ホットドリンク大好き25/09/25(木) 23:14:27

    <テスト>


    [[漢字>かんじ]]


    {漢字|かんじ}

  • 70二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 06:00:18

    保守

  • 71二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 12:00:16

    保守

  • 72二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 18:00:14

    保守

  • 73二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:00:14

    保守

  • 74二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 06:00:14

    保守

  • 75二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 12:00:15

    保守

  • 76ホットドリンク大好き25/09/27(土) 14:12:24

    ────────────────────

    ”・・・さて、まず最初に お互いの目的を再確認しようか。”

    ヴィルトゥオーソ:
    『そうだね、私も賛成だよ。』

    チューブによって宙吊りになったヴィルトゥオーソの前で、先生は瓦礫に腰を下ろした。
    ヴィルトゥオーソと しっかり目線を合わせる。

    ”私達の目的は、ここを通過してアリウス自治区に向かうこと。 ・・・君は?”

    ヴィルトゥオーソ:
    『無論、君達を含めて、誰もアリウス自治区に辿り着かせないことだよ。』

    ”・・・それは どうして?”

    ヴィルトゥオーソ:
    『【儀式】の贄になってしまうからさ。
    私達の敵である大人が、より高位の存在に至る為の儀式にね。
    ・・・君達を通す余地はないよ。』

    ”トリニティの子達と戦っているのも、それが理由かな?”

  • 77ホットドリンク大好き25/09/27(土) 14:16:19

    ヴィルトゥオーソ:
    『そうだね、その通りだよ。
    例えトリニティを数百年前の乱世に戻してでも、人命には代えられない・・・そうだろう?』

    ”・・・そうだね。”

    少しの間、二人の間に沈黙が流れた。
    それは、共感による奇妙な温かさのある沈黙だった。

    しかし やがて、先生が沈黙を破った。

    ”・・・これは私からの提案なんだけど・・・。”

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・うん? なんだい?
    「今すぐ引き返すから、安全を保証して欲しい」ということなら喜んで引き受けるよ?』



    ”─── 君も一緒に、アリウス自治区に着いてきてくれないかな?”



    ヴィルトゥオーソ:
    『うん??』

    ヴィルトゥオーソを宙吊りにしているチューブが、思わずといった様子で1本 外れた。

    ────────────────────

  • 78二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 21:00:15

    保守

  • 79二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 03:00:15

    保守

  • 80二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 09:00:17

    保守

  • 81二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 15:00:15

    保守

  • 82二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 21:00:15

    保守

  • 83二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 03:00:13

    保守

  • 84二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 09:00:15

    保守

  • 85ホットドリンク大好き25/09/29(月) 11:36:17

    ────────────────────

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・話を聞いていたのかな?
    私は、君達を通すワケにはいかないんだよ。 ・・・もう一度 最初から説明する必要があるかい??』

    ヴィルトゥオーソは辛うじて残っている頭部テクスチャの表情をピクピクさせた。
    明らかに調子を崩されていた。

    ”いや、君の話は理解しているつもりだよ。
    ・・・その上で、君を頼ろうとしているんだ。”

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・私を、頼る?』

    ヴィルトゥオーソは意外そうに目を瞬かせた。
    彼女にとって、大人とは常に自分達以上の存在で、『頼られる』というのは想像の埒外だった。

    ヴィルトゥオーソ:
    (・・・カヤの言っていた通り、この大人は『普通』ではないね。 口車に乗せられないようにしなくては・・・。)

    それでもヴィルトゥオーソの中の大人像というのは、自分達を利用するか騙すかする存在で、故にこそ目の前の大人に対しての警戒を強くした。
    得てして、甘言を囁く大人とは碌なものではないのだから。

  • 86ホットドリンク大好き25/09/29(月) 11:38:59

    しかし、その警戒は横からの不意打ちで崩されることになる。

    ヒナタ:
    「私からも お願いします、■■■様。 先生達の・・・助けになって頂けませんか?」

    ヴィルトゥオーソ:
    『う”・・・。』

    胸の前で手を組み、上目遣いで見上げてくるヒナタを前に、ヴィルトゥオーソはバツが悪そうにする。
    ・・・こういう可能性があるから、なるべくヒナタと言葉を交わしたくなかったのだ。

    ─── ヴィルトゥオーソの最大の弱点、それは正しくヒナタだった。

    ???:
    「あらら・・・♡」

    聞き覚えのある声に、ヴィルトゥオーソの肩がビクリとする。
    それは、己の最大の弱点を最も知られてはいけない相手だった。

    ハナコ:
    「以前から もしかして・・・とは思っていましたが。
    ・・・■■■さん、貴方はヒナタさんに弱いのですね♡」

    ハナコの目に妖しい光が宿る。
    それは、かつてヴィルトゥオーソが最も恐れ、しかし己の才を自ら忌避したが故に自然消滅した、謀略の怪物としての顔だった。

    ────────────────────

  • 87二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 18:00:19

    保守

  • 88二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 00:00:14

    保守

  • 89二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 06:00:14

    保守

  • 90二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 12:00:14

    保守

  • 91二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 13:19:41

    ハナコが余計な事を言った吉と出るか裏目にでるか

  • 92二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 21:00:15

    保守

  • 93ホットドリンク大好き25/09/30(火) 23:03:48

    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

    ■■■:
    「─── 本当に・・・すまない、ヒナタ。 ・・・君には苦労を掛ける。」

    ヒナタ:
    「いえ、私が好きにしていることですから・・・お気になさらず。」

    ■■■:
    「いや、それでは私の気が済まない。 いつかきっと、この恩に報いよう。 約束するとも。」

    ヒナタ:
    「い、いえ、本当に大丈夫ですよ?」

    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

    ハナコ:
    「─── 経緯は存じ上げませんが・・・貴方はヒナタさんに約束したはずです。
    『何でも言うことを聞く』・・・と♡」

    ヴィルトゥオーソ:
    『そこまで言ってないが?』

    ヒナタ:
    「えっと・・・そんな約束しましたっけ?」

  • 94ホットドリンク大好き25/09/30(火) 23:09:00

    ヒナタが困惑していると、ヴィルトゥオーソは溜息をつく仕草を見せた。

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・したさ。 例え君が覚えてなくとも、これに関しては嘘は付けない。 ・・・あぁ、確かに約束したとも。』

    ヴィルトゥオーソはハナコを睨み付けた。

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・君が その約束に至る経緯を知らないように、
    私も君が どうして その秘密を知っているのかを知らない方が良いのだろうね。』

    ハナコ:
    「・・・ウフフ♡」

    ヴィルトゥオーソ:
    『それで? 君が私の約束を知っていたから何だというんだい?
    ・・・私はヒナタからの頼みでも、ここを通すつもりはないよ?』

    ハナコ:
    「そうでしょうね。 ・・・ですが、頼みではなく約束を果たす為であれば どうでしょう?」

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・。』

  • 95ホットドリンク大好き25/09/30(火) 23:12:15

    ハナコ:
    「貴方は敵でありながら、事前にツルギさんを説得に来ました。
    つまり・・・貴方のスタンスは変わっていない。
    ─── 貴方は、搦め手は使えても卑怯な手は使えない。 ・・・そうですよね?」

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・。』

    その沈黙は何よりの答えだった。

    ハナコ:
    「そんな貴方に・・・ヒナタさんとの約束を破るようなマネが出来るでしょうか?」

    ヴィルトゥオーソ:
    『ハッ! これ以上ない脅迫だね。
    だが逆に、ヒナタが私に対して約束の履行を迫るようなマネが出来ると思うかい?』

    ハナコ:
    「・・・。」

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・。』

    二人は同時にヒナタの方に視線を向けた。

  • 96ホットドリンク大好き25/09/30(火) 23:17:21

    ヒナタ:
    「え、えっと・・・。」

    ヒナタは震える喉で言葉を紡いだ。

    ヒナタ:
    「良く分かりませんが・・・私は、■■■様と もう一度 友達になりたいです。」

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・。』

    ハナコ:
    「・・・♡」

    ヴィルトゥオーソは天を仰ぎ、ハナコは嬉しそうに微笑んだ。

    ヴィルトゥオーソ:
    『・・・私の、負けだよ。』

    ヴィルトゥオーソを宙に繋げていたチューブが千切れ、ヴィルトゥオーソの身体が重力に引かれて落下した。

    ────────────────────

  • 97二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 06:00:14

    保守

  • 98二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 12:00:20

    保守

  • 99二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 18:00:25

    保守

  • 100ホットドリンク大好き25/10/01(水) 23:20:19

    ────────────────────


    <一方その頃・・・>


    ナギサ:

    「─── う、うぅん・・・。」


    ナギサは とある一室で目を覚ました。

    そこは しっかりとした造りの、しかし飾り気の薄い質素な部屋だった。


    ナギサ:

    「・・・ここは・・・?」


    ナギサは記憶を辿る。

    確か、セーフティハウスで明日 検討する書類に目を通しながら、就寝の準備をしていたはずである。


    しかし、目に映るのは知らない天井。


    ナギサ:

    (・・・。)


    ・・・試しに もう一度 掛け布団を被って目を閉じてみる。

    布団から ほのかにラベンダーの香りがした。

    異常事態にも関わらず、僅かに穏やかな気持ちにすらなる。

  • 101ホットドリンク大好き25/10/01(水) 23:23:03

    ナギサは香りが誘う微睡みに抗い、確認の為に もう一度 目を開けた。

    ナギサ:
    (・・・やっぱり、知らない天井ですね・・・。)

    ナギサは遂に諦めてベッドから這いだした。
    ベッドの足元には、ご丁寧にスリッパまで用意されていた。

    ナギサ:
    (得体が知れません・・・。 一体、どういう意図で・・・。)

    状況的には間違い無く誘拐なのだが、謎に おもてなし精神があるのがナギサの警戒を誘った。
    部屋を見渡せば、扉こそ外から鍵が掛けられているようだが、それ以外は生活雑貨が一式揃った、ホテルのような様相だった。
    それなりに目の肥えているという自負のあるナギサには、ここが貴人を軟禁する為に整えられた牢だということが分かった。

    それは丁度、自身がミカと同じような立場に立ってしまったことを意味する。

    ナギサ:
    (皮肉なものですね・・・。)

    ナギサは眉を寄せながら、部屋のクローゼットを漁った。
    そこには どこから持ってきたのか、サイズがピッタリのトリニティ・・・それもティーパーティーの制服が入っていた。

  • 102ホットドリンク大好き25/10/01(水) 23:24:55

    ナギサ:
    (・・・あぁ、私の・・・。)

    触って確かめてみると、それが自身のものであることが分かった。
    どうやら拐かされた時に、一緒に盗まれたらしい。(実際はヴェルギリアが後から盗んできた)

    ナギサ:
    (ともかく助かりました。 今は これを着て ───)

    そう思い、ナギサが寝間着に手を伸ばすと、不意に懐から何かがバラバラになって崩れ落ちた。

    ナギサ:
    (これは・・・?)

    ナギサが屈んで確かめてみると、それはミカが手作りしたという御守りだった。
    しかし それは、今や”朱く”変色し、脆い結晶か何かのようにスカスカになってしまっている。

    ナギサ:
    (そんな・・・ミカさんに何と言って お詫びすれば・・・。
    まさか彼女が手作りしたものを壊してしまうとは・・・!)

    ナギサは膝からガックリと崩れ落ちた。
    ちょっと顔も青ざめている。

  • 103ホットドリンク大好き25/10/01(水) 23:27:01

    ナギサは知る由もないが、その御守りは特殊な装置の取り付けられた特別製である。
    ”役割”を終えた以上、崩れ落ちるのは設計上 当然なのだが、そんなことを説明してくれる都合の良い人物は この場にいない。

    だからナギサは、虚ろな目でブツブツと何かを呟きながら項垂れ続ける。

    ナギサ:
    「えっと・・・そうですね。
    そう、敵!
    敵の・・・攻撃で、運悪く壊してしまったのです。
    つまり、私は悪くありません。
    ・・・そういうことにしましょう・・・。」

    後日ミカに会ったときの釈明の言葉を思い付いたナギサは、中断していた着替えを終え、外に続く扉へと歩みを進めた。

    ナギサ:
    (銃は幸いにも取り上げられていませんでしたが・・・この扉は私の銃では開けられそうにもありませんね・・・。)

    目の前の扉は明らかに頑丈で、防弾を想定していることは一目瞭然だった。

    ナギサ:
    (キッチンに爆発物でも置いていないでしょうか・・・?)

    物騒なことを考えつつ、扉近くのシステムキッチンに視線を向ける。
    ガラリとしたキッチンには、一台のティーポットと各種の茶葉が鎮座していた。

    ナギサ:
    (ふむ・・・幸いにも紅茶には困らなそうですね・・・。
    あら・・・? もしかしてあれは昆布茶・・・───)

    ナギサが あまり見ない茶に目を奪われていると、不意に扉の奥から声が聞こえた。

  • 104ホットドリンク大好き25/10/01(水) 23:29:13

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ???:
    「ねぇ! 本当に こっちで合ってるの!!?」

    ???:
    「あっているとも。 神に誓っても良い。 だから今は走ることだ。」

    ???:
    「社長、確かに今は逃げるしかないよ。」

    ???:
    「えっと・・・私が囮に ───」

    ???:
    「ダーメ☆ ハルカちゃん には もっと後で活躍して貰わないと!」

    ???:
    「おい! ホントに こいつら倒しちゃダメなのか!?」

    ???:
    「時間の無駄です! 倒しても直ぐに また湧きますよ!!」

  • 105ホットドリンク大好き25/10/01(水) 23:31:37

    ???:
    「うぅ・・・私達このまま皆で囲まれて・・・。」

    ???:
    「そんなことより疲れたって! まだ休めないワケ!?」

    ???:
    「1m先を右だよ。」

    ???:
    「「はぁ!?」」

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ナギサ:
    (スゥ~・・・。 ・・・不味いかも知れません。)

    ナギサは慌てて部屋の角に身を隠した。

    次の瞬間 ───

    ───── (爆発音)

    アル:
    「皆 入って!!」

    ミヤコ:
    「援護します!!」

  • 106ホットドリンク大好き25/10/01(水) 23:34:44

    セイア:
    「全員 入ったら直ぐ扉を閉めるんだよ。
    ・・・あぁ、何か重い物でバリケードを作ると良い。 時間稼ぎになるからね。」

    サキ:
    「重い物だと!? そんなもの ───」

    ムツキ:
    「─── 冷蔵庫があったよ!」

    サキ:
    「それだ! 手の空いている者は手伝え!! ─── ミヤコ!!」

    ミヤコ:
    「分かっています! アルさん!!」

    アル:
    「え!? 何!?」

    ミヤコはアルを弾き飛ばすようにして室内に押し込むと、自身も部屋に滑り込んだ。

  • 107ホットドリンク大好き25/10/01(水) 23:36:37

    ミヤコ:
    「今です! バリケードを!!」

    サキ:
    「あぁ!!!」

    モエ:
    「せーの!!」

    RABBIT小隊+便利屋68:
    「「───── !!!」」

    ───── (冷蔵庫が倒れる音)

    ───── (くぐもった銃声)

    ───── (跳ねる扉、大人数で押さえつける唸り声)

    ・・・やがて、騒ぎは小さくなっていった。

    セイア:
    「・・・やれやれ、単調な動きしか出来ないのが幸いしたね。
    まぁ、もっとも・・・だからこそ部屋の前で出待ちをしているだろうが。」

    ナギサ:
    「・・・セイアさん?」

    セイア:
    「─── やぁ、ナギサ。 何とか死の淵から還ってきたよ。 君達と、私自身の運命に抗う為に・・・ね。」
    ────────────────────

  • 108二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 06:00:18

    保守

  • 109二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 12:00:25

    保守

  • 110二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 12:06:16

    保守

  • 111二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 21:00:16

    保守

  • 112二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 03:00:14

    保守

  • 113二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 09:00:21

    保守

  • 114ホットドリンク大好き25/10/03(金) 11:06:10

    ────────────────────


    <小一時間ほど前・・・>


    カヨコ:

    「それで・・・アリウス自治区に潜入は出来たワケだけど・・・。」


    アル:

    「・・・ここから どうしようかしら・・・?」


    大ミミズが開けた大穴を通ってアリウス自治区に潜入することに成功したアル達だったが、潜入先の裏通りで立ち往生していた。


    ムツキ:

    「んー? カヤちゃんに注意が向いてるみたいだし、このまま敵の本拠地を落としちゃえば良いんじゃない?」


    ハルカ:

    「そういうことなら私が───」


    カヨコ:

    「─── ダメ。」


    息を吸うように突っ込もうとしたハルカの襟首を、カヨコが掴んで止めた。

  • 115ホットドリンク大好き25/10/03(金) 11:10:33

    カヨコ:
    「防衛室長からの情報を忘れたの?
    あの情報が正しいなら、
    敵本拠地の至聖所に至る道には無数のトラップと『複製(ミメシス)』が配置されているはず・・・。」

    アル:
    「そうなのよねぇ・・・。」

    アルは腕を組んでウンウンと唸った。
    相手の注意がカヤに向かうまでは想定内だったが、まさか自分達が ここまでマークされないとは思っていなかった。
    本来は混乱に乗じて突っ込むつもりだったのが、かえってアテが外れた結果になってしまった。

    アル:
    「状況は悪くないけど、無策で突っ込んだら蜂の巣になっちゃうわ。」

    ムツキ:
    「え~・・・じゃあ どうするの~?」

    ムツキが不満そうに頬を膨らませると、ハルカが おずおずと手を挙げた。

    ハルカ:
    「で、では このまま裏路地を縫って こっそり向かうのは どうでしょう?
    狭い路地なら、仮に敵が沢山でも全部 私が〇せます・・・。」

    ハルカ以外の3人は顔を見合わせた。

  • 116ホットドリンク大好き25/10/03(金) 11:11:49

    カヨコ:
    「・・・悪くない。
    確かに狭い路地内なら、大軍の利を〇せる。
    私達は4人だし、仮に4方向から攻められても背中合わせで戦える。」

    アル:
    「・・・やるじゃない、ハルカ! 流石 我が社の社員だわ!」

    ハルカ:
    「え、えへへ・・・///」

    ムツキ:
    「よ~しよし! ご褒美にムツキちゃんがナデナデしてあげる☆」

    3人で一頻りハルカをナデナデした後、アルが号令を下した。

    アル:
    「よし! それじゃあ行くわよ!」

    ムツキ:
    「うんうん。 これでメチャクチャ強い敵に出くわさなければ簡単に着けちゃうかもね☆」

    アル:
    「そうね! 野生の空崎ヒナでも出て来ない限り私達なら問題ないわ!」

    カヨコ:
    (・・・。)

    なにか嫌な予感がしたカヨコだったが、敢えて口に出すまでもないかと口を噤んだ。 しかし僅か数分後、その予感は的中することとなる・・・。
    ────────────────────

  • 117二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 18:00:21

    保守

  • 118二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 00:00:20

    保守

  • 119二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 06:00:19

    保守

  • 120二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 12:00:18

    保守

  • 121二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 18:00:18

    保守

  • 122二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 00:00:23

    保守

  • 123二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 06:00:16

    保守

  • 124二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 12:00:16

    保守

  • 125ホットドリンク大好き25/10/05(日) 15:04:59

    ────────────────────

    ─────(爆発音)

    アル:
    「─── 何で こうなるのよぉー!!!」

    ムツキ:
    「あはは☆ こうなると思った!」

    カヨコ:
    「右に同じ。」

    ハルカ:
    「あの・・・私が囮に───」

    踵を返して足止めをしようとするハルカの袖を、カヨコが引っ張って戻す。

    カヨコ:
    「─── 今ハルカが囮になっても、アレは私達を追ってくる算段が高いよ。」

    アル:
    「そうよ! やるなら皆で反撃するわよ!!」

    ムツキ:
    「こっち こっち!!」

    先導するムツキに合わせて、廃墟の窓枠を乗り越える3人。

  • 126ホットドリンク大好き25/10/05(日) 15:20:33

    カヨコ:
    「・・・想定してたルートから大幅にズレてる。 このままだと修正が効かなくなるよ、社長。」

    アル:
    「分かってるけれど・・・。」

    アルは振り返る。

    そこには、アルにとってトリニティの街中で遭遇したアンブロジウスから助けてくれた恩人の、変わり果てた姿があった。

    眼は太陽のように爛々と輝き、全身を覆うように神秘の炎が燃え盛っている。
    黒く焦げ、内から自らの熱に焼かれ続ける天使の翼が やけに痛々しかった。

    アル:
    「─── それでも、私は あの人を助けたいの。」

    カヨコ:
    「・・・。」

    カヨコは一瞬、何か眩しいものを見たかのように目を細めると、諦めたように笑って溜息をついた。

    カヨコ:
    「・・・ふぅ。」

    アル:
    「え、あ、違うのよ?
    ほら、アウトローとして一度 受けた恩は返さなきゃじゃない??」

    しどろもどろに言い訳をするアルに、カヨコは優しい微笑みを返した。

  • 127ホットドリンク大好き25/10/05(日) 15:31:05

    カヨコ:
    「・・・分かってるよ、社長。 ・・・貴方は そういう人だってことは。」

    アル:
    「? そう?」

    不思議そうに首を傾げるアルを尻目に、カヨコは必死に知恵を絞り始める。
    こういうときに社長の願いを叶えてこそ、便利屋68の課長というものだろう。

    カヨコ:
    (相手は空崎ヒナ並・・・いや、身体能力だけならヒナ以上の怪物・・・。
    そんな相手に、私達4人でバカ正直に応戦しても勝てるとは思えない。
    つまり・・・搦め手を使う必要がある。
    何か・・・『梃子』のようなものがあれば・・・───)

    そこまで考えて、ふと思い付くものがあった。

    カヨコ:
    「・・・社長、次の角を右に曲がろう。」

  • 128ホットドリンク大好き25/10/05(日) 15:32:52

    アル:
    「え!? でも それだと ───」

    そう、『複製(ミメシス)』の集団に突っ込むことになる。
    だが、それで良い。
    否 ───

    カヨコ:
    「─── それしか、ない・・・。」

    アル:
    「・・・。」

    無言で見つめ合うアルとカヨコ。
    しかし それは一瞬だった。

    アル:
    「─── 分かったわ!
    ムツキ! ハルカ! 次の角を右に曲がりましょう! そして、そのまま敵集団に突っ込むの!!」

    ムツキ:   ハルカ:
    「了~解!」 「承知しました・・・!」

    カヨコ:
    (・・・ここから先は───)

    ─── 賭けになる。
    その不安を、カヨコは敢えて思考の端から追いやった。

    ────────────────────

  • 129二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 23:29:29

    保守

  • 130二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 06:00:13

    保守

  • 131二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 12:00:13

    保守

  • 132二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:00:14

    保守

  • 133二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 00:00:16

    保守

  • 134二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 06:00:14

    保守

  • 135二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 12:00:14

    保守

  • 136二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 18:00:14

    保守

  • 137ホットドリンク大好き25/10/07(火) 23:54:32

    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

    カヤ:
    「─── あぁ、一つ言い忘れていました。

    もし ─── 両腕に重火器を持った『複製(ミメシス)』を見かけたら・・・。

    ─── 逃げて下さい。
    あなた方を侮るワケではありませんが・・・決してアレには勝てないでしょう。

    その者の名は・・・───」

    ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

    カヨコ:
    (─── あぁ、賭けには負けたみたい。 ・・・それも、最悪な形で。)

    カヨコの前には、明らかに他とは格の違う威圧感を放つ『複製(ミメシス)』が立ちはだかっていた。

    ─── 足の運び。
    ─── 顔の動き。
    ─── 指先の流れ。

    それらの細かい動きに、強者特有の癖が幾つも見受けられた。
    例え自我の殆どない『複製(ミメシス)』だとしても、否、自我がないからこそ、オリジナルの無意識を否定できるはずもない。

    だからこそ、カヨコは理解できてしまった。
    目の前のソレが、空崎ヒナに並ぶか それを上回る、『最強』であると。

  • 138ホットドリンク大好き25/10/07(火) 23:59:41

    カヨコ:
    (『バルバラ』・・・かつての聖徒会で、最も偉大と謳われた聖女・・・。)

    ───── (金属の擦れる音)

    銃口が自分達の方を向く。

    カヨコ:
    (ごめん・・・社長。 私のせい───)

    アル:
    「何してるの!」

    カヨコが全てを諦めかけたその時、突然 手を引っ張られた。
    機関銃特有の弾幕が、カヨコの頬を掠める。

    カヨコ:
    「ご、ごめ ───」

    アル:
    「やったじゃないの!!」

    カヨコ:
    「・・・え。」

    アルがカヨコの手を引きながら、輝くような満面の笑みで振り返った。

    アル:
    「大当たりよ! 私達は賭けに勝ったの!!
    アレを利用すれば間違いなく、あの人を助けられるわ! 貴方のお陰よ!!」

  • 139ホットドリンク大好き25/10/08(水) 00:00:53

    カヨコ:
    (・・・本当に この人は。)

    考えてみれば そうである。
    別に『梃子(てこ)』が強すぎて困ることはない。
    ましてや背後に迫っている存在も、小さめの怪獣のような存在なのだ。

    全ては、発想次第。
    最大のピンチは、得てして最高のチャンスでもある。
    そして目の前の社長は、自覚がなくとも そのことを知っている。

    カヨコ:
    「・・・そうかもね。
    でも、それをモノにするには、次の砲撃を躱さないと。」

  • 140ホットドリンク大好き25/10/08(水) 00:02:26

    アル:
    「へ? 砲撃?」

    バルバラが右手の大砲を、アル達に向けていた。

    ───── (爆発音)

    アル:
    「─── なにアレ!? 反則じゃないの!!??」

    カヨコ:
    「個人で・・・しかも片手で大砲を扱える人間は、確かに このキヴォトスでも珍しいけど・・・。
    そんなことより、社長。 第二波が来るよ。」

    アル:
    「なんなのよぉ─────!!!」

    バルバラの連装砲が火を吹いた。

    ────────────────────

  • 141二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 09:00:16

    保守

  • 142二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 15:00:13

    保守

  • 143ホットドリンク大好き25/10/08(水) 15:38:36

    ────────────────────

    ムツキ:
    「いくよ! ハルカちゃん!」

    ハルカ:
    「は、はいっ!」

    ムツキとハルカがバルバラに応戦する。
    ガトリング機関銃と大砲による弾幕の嵐を躱しながら、散弾銃と機関銃の反撃を叩き込む。
    しかし それも、大して効果があるようには見えなかった。

    ムツキ:
    「硬っ~・・・。
    防御力はヒナちゃん並みかなぁ・・・コレ。」

    ハルカ:
    「いざとなれば私が盾に ───」

    ムツキ:
    「だから今は そういうのじゃないんだってば!
    それより行くよ!? 1、2の ───」

  • 144ホットドリンク大好き25/10/08(水) 15:39:43

    ハルカ:
    「あ、えと、─── 3っ!!」

    ムツキとハルカが、突然二手に散る。
    すると二人の後方に隠れていた位置から、燃え盛る神秘の炎に包まれた生徒が現れた。
    そして そのまま、バルバラに向かって一目散に突撃していく。

    ???:
    【─────!!!】

    バルバラ:
    『─────!!!』

    二つの『反則(チート)』が、激突した。

    ────────────────────

  • 145二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:00:17

    保守

  • 146二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 06:00:16

    保守

  • 147二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 12:00:19

    保守

  • 148二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 18:00:19

    保守

  • 149ホットドリンク大好き25/10/09(木) 23:19:23

    ────────────────────

    ・・・。
    ・・・・・・。
    ・・・・・・・・・。

    ───── ドガガガガガガッ!!

    バルバラのガトリング銃が火を吹く。
    アリウスの街が、穴だらけになっていく。

    その弾幕の嵐を、燃え盛る天使は人外の速度で躱した。
    瞬きの間に、バルバラの眼前へと迫る。

    それに対し、バルバラは平然と眼前の生徒に向けて連装砲の砲口を向けた。
    その距離であれば確実に己も爆発に巻き込まれるであろうが、しかし そんなことは お構いなしに連装砲の先を眼前の燃え盛る天使に押し付けた。

    引き金を引く。

    ───── ボッ!!!

  • 150ホットドリンク大好き25/10/09(木) 23:21:15

    一瞬、世界を静寂が包む。
    爆発音によって音が叩き潰された世界に、少しずつ音が戻っていく。

    爆発の煙が散り散りになり、辺り一帯が焼け焦げた そこに立っていたのは、果たして燃え盛る天使であった。

    バルバラの連装砲、その砲身を握り潰し、地面に投げ捨て、踏んで焼き溶かす。
    この世のものではないにも関わらず、『複製(ミメシス)』によって生成された火器は神秘の炎に焼かれてドロリと溶け、やがて炭化するかのように黒ずんで消えた。

    ???:
    【 ─────。】

    バルバラ:
    『・・・。』

    燃え盛る天使は、尋常ではない威圧感を伴って一歩、前に出る。
    バルバラは それを迎え撃つ為に、残ったガトリング銃を構え ───

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  • 151ホットドリンク大好き25/10/09(木) 23:22:39

    アル:
    「困ったわ・・・付け入る隙がないわね・・・。」

    目の前で繰り広げられる怪獣大決戦を前に、呆然と呟く。

    ムツキ:
    「んー・・・コピー聖女ちゃんの方が劣勢そうだから、そっちに加勢した方が良いんじゃない?」

    ハルカ:
    「そ、そういうことでしたら今度こそ私が ───」

    GOサインを出すムツキと、そのまま突っ込もうとするハルカを、カヨコが留めた。

    カヨコ:
    「それで どっちも私達を狙ってきたらどうするの?
    ・・・それよりも、どっちかが倒れるまで待とう。 そっちの方が安全だし、手間も省ける。」

    アル:
    「んー・・・そうね・・・それが一番良いわよね・・・。」

    カヨコ:
    「・・・。」

    (ちょっと格好悪いかも・・・)と思っているであろう社長を見て、カヨコは(もう一波乱ありそうだな・・・)と思った。

    ────────────────────

  • 152二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 06:00:19

    保守

  • 153二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 12:00:16

    保守

  • 154二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:00:18

    保守

  • 155二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 00:00:18

    保守

  • 156二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 06:00:19

    保守

  • 157ホットドリンク大好き25/10/11(土) 06:15:58

    ────────────────────

    ???:
    【─────!!!】

    バルバラ:
    「・・・。」

    カヨコの不安を余所に、燃え盛る天使とバルバラの怪獣大戦争は、既に決着の時を迎えようとしていた。
    バルバラは至る所を神秘の炎に焼かれ、満身創痍といった様子だった。
    辛うじてガトリング銃は生きているが、銃身の大部分が焼き溶け、連射は殆ど出来ない有様だ。

    もう、決着は付いたようにすら思える。
    しかしここに至っても、カヨコは不安を拭えずにいた。
    そして、こういう時の第六感は良く当たる。



    ─── それは一瞬の出来事だった。



    燃え盛る天使が満身創痍のバルバラに最後のトドメを決めようとしたその瞬間、燃え盛る天使の背後の建物が弾けた。
    そして、土煙の中から黒い巨人 ─── アンブロジウスが出現する。

  • 158ホットドリンク大好き25/10/11(土) 06:17:04

    咄嗟に迎撃しようとする燃え盛る天使だったが、その一瞬の隙を、バルバラの銃撃が捉えた。

    体勢を崩す、燃え盛る天使。

    そこに、アンブロジウスの雷が如き蒼炎の一撃が叩き込まれた。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    ムツキ:
    「あちゃ~・・・完全に挟まれちゃったね天使ちゃん。 あれじゃリンチだよ。」

    カヨコ:
    「まだ暴れる元気はあるみたいだけど・・・まぁ、時間の問題かな。」

    ハルカ:
    「あ、あの ここは私が ───」

    言い募ろうとするハルカの肩に、アルの手が添えられた。

    アル:
    「そうね、ハルカ。 私達も行きましょうか。」

    カヨコ:
    「・・・社長?」

    そう来ることは分かっていた。
    しかしカヨコは、一応 声を掛ける。

  • 159ホットドリンク大好き25/10/11(土) 06:18:48

    アル:
    「・・・ごめんなさい、カヨコ。
    でも、これ以上は見ていられないわ。」

    カヨコ:
    「・・・まぁ、そうだよね。」

    諦めたようにカヨコは溜息をついた。
    ・・・しかし、その口元は微かに笑っていた。

    カヨコ:
    「─── 仕掛けるなら聖女バルバラの『複製(ミメシス)』の方にしよう。
    あっちなら、かなり弱ってるから私達でも仕留められるはず。
    アンブロジウスの方は、あの子に任せよう。」

    アル:
    「良いわね、それで行きましょう。 ─── ハルカ。」

    ハルカ:
    「は、はいっ!」

    アル:
    「先鋒は任せるわ。 あの『複製(ミメシス)』を引き付けて頂戴。」

    ハルカ:
    「っ!(力強く何度も頷く) お、お任せ下さい!!」

  • 160ホットドリンク大好き25/10/11(土) 06:29:29

    アル:
    「─── ムツキ。」

    ムツキ:
    「はいはい。」

    アル:
    「ハルカが引き付けた『複製(ミメシス)』を私と一緒に迎撃するわよ。
    即席のトラップを仕掛けることは出来る?」

    ムツキ:
    「任せて~♪」

    アル:
    「─── カヨコ。」

    カヨコ:
    「・・・うん。」

  • 161ホットドリンク大好き25/10/11(土) 06:31:57

    アル:
    「貴方は遊撃。
    万が一 聖女バルバラ以外にも釣れてしまった場合、そのヘイトを引き受けて頂戴。
    ・・・辛い役になってしまうかもしれないのだけれど・・・。」

    カヨコ:
    「大丈夫。 やるよ。」

    アル:
    「ありがとう、じゃあ ───」

    アルは肩に掛けたコートを翻した。

    アル:
    「─── 仕事を始めましょうか。」

    ────────────────────

  • 162二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 15:00:13

    保守

  • 163二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 21:00:16

    保守

  • 164二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 03:00:15

    保守

  • 165二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 09:00:17

    保守

  • 166二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 15:00:14

    保守

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