夢枕獏が書いたウマ娘スレ

  • 1二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 19:19:48

    秋。芝。京都。気が付くとそこに一人のウマ娘が立っていた。
    (春よりも、強大(デカ)いな)
    と、ウイニングチケットは思った。

    頭蓋(あたま)が強大い。肩幅が強大い。前胸(むね)が強大い。尻が強大い。勝負服のスリットから覗く腿が強大い。おそらくは下着も、その心根までもが、強大い。
    たまらぬウマ娘であった。名をビワハヤヒデと言った。

    『春よりも、鍛えたな』
    チケットは言った。
    『ああ、鍛えた』
    と、ハヤヒデは答えた。
    『それで、やるのか』
    『ああ、やるにはやるが――』
    ハヤヒデはゴロりとした拳を撫でて嗤った。
    『東京での借りを、返すつもりだ――』
    そうしてレースがは始まった。

  • 2二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 19:57:34

    オグリ、やっぱりアンタは大したヤツや。
    ここからはもう関係無いで。
    スピードとか、スタミナとか、パワーとか、根性とか、賢さとか。
    ウチも上手くは言えへんけどな。
    例えば、これまで我慢してきた量、味わってきた哀しみ、ウマ娘としての全部。
    そんなもんや。
    これからそれを、根こそぎ比べあう。
    うれしいな。
    アンタだってそうやろ?
    やっぱり。
    ほな、いくで――

    ( '88有マ記念、最終直線より)

  • 3二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 20:31:38

    なんという――
    なんという、ウマ娘なのか。
    脚。
    息。
    体。
    鍛。
    鬼。
    ライスシャワー、というウマ娘は私を倒すためだけに鍛えたのだ。
    鬼と、なったのだ。
    これ程までに、できるのか。
    これ程までに、やれるのか。
    ならば、やろう。私もやろう。
    ゴールまであと、200メートルを切っている。
    なのに前を走る、背中との距離が縮まらない。

  • 4二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 20:50:17

    おお。それっぽい
    特にマックちゃんの心理描写、持ち帰りたいくらい好き
    時の王者はこうでないといけない

  • 5二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 21:20:59

    『して、クラシック登録はどうした?』
    ――していない。オグリキャップが答えた。
    『それで私に、どうしろと』
    『貴方の力で、私をダービーに出して欲しい』
    ピュアな願いだ。だから強い。
    ルドルフは嗤った。
    『クラシックレースは、厳格な規則に則って行われる。例外は、許されない』
    ――しかし、いきなりダービーとは。

    最高峰、のレースであった。
    数多のウマ娘が、一生に一度。
    目指し。
    目指し。
    破れ。
    破れ。

    ただ一人の頂点を決める。そんなレースに勝つというのだ。眼の前のウマ娘は。
    『中央を、無礼(なめ)るなよ』
    ルドルフは言った。務めて保っていた穏やかな態度は消えていた。
    ベルノライトは、床にへたり込んだ。膝が、ガクガクと笑っていた。
    息をすることさえ、忘れてしまいそうであった。
    威。
    厳。
    冷。
    徹。
    峻。
    烈。

    それが中央の猛者、7000人を統べる皇帝の姿であった。

  • 6二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 21:24:48

    >>1

    夢枕獏なつかしいな。このやりとりで、源博雅と安倍晴明の掛け合い思い出した。

  • 7二次元好きの匿名さん25/09/22(月) 21:39:30

    ――グッド·マイリング。
    ウマ娘は、溌溂とそう叫んだ。
    グッド·マイリング。英語でおはマイルを意味する言葉である。
    耳に馴染まぬ言葉であった。

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