【🎲⚓️】ファンタジー世界の現地人がダイスと安価でなんやかんや

  • 1◆d4/k1RhItvAy25/09/24(ć°´) 22:27:45

    少なくとも地球ではないどこかの世界にて。

    自分達を人間と総称する生き物がそれなりの文明を築き上げた時代のこと。


    【故郷】

    発展:dice1d10=6 (6) (高いほど都会)

    治安:dice1d10=1 (1) (高いほど安全)

    場所:dice1d10=2 (2) (高いほど海側)


    な場所に、


    【主人公】

    性別:dice1d10=5 (5) (奇数男、偶数女)

    人種:dice1d10=10 (10) (2〜5で亜人、6以上で人間、1なら???)


    な者が暮らしていました。

  • 2二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 22:28:59

    治安が終わり散らかしてて笑う

  • 3二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 22:29:21

    都会なのに治安わるっ

  • 4二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 22:31:19

    世紀末じゃん

  • 5二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 22:31:30

    治安最悪

  • 6◆d4/k1RhItvAy25/09/24(ć°´) 22:42:46

    土地の名前はジムナスタ。
    とある山脈の中に広がる街でした。

    この街の特徴といえば、とにかく治安が終わっている事です。
    盗みや喧嘩など多いどころではなくただの日常です。
    なんと殺人すら当たり前のように合法です。
    というか、そもそもまともな法さえありません。

    それもそのはず、ジムナスタという街は元々が山賊の棲家を祖としています。
    ちょっとばかり伝説的に名が残ってしまうような化け物山賊が山中を通ろうとする商人やら貴族やらを片っ端から襲い、報復の軍さえあっさり追い返し、そのうちに麓の町や村からも掠奪を繰り返した結果。
    噂を聞き付けて集まった荒くれ連中が溜まりに溜まった事でなんかいつの間にやら街っぽい形になったというわけでした。

    主産業は暴力。
    ひでー街ですが、ジムナスタ産の傭兵といえばあちこちで重宝されているようです。

  • 7◆d4/k1RhItvAy25/09/24(ć°´) 22:50:49

    さて、そんなジムナスタの街にとある男の子が居ました。


    歳の頃はまだ10歳前後でしょうか。

    耳は丸く、手足は太くも長くもなく、顔にヒゲもなく、肌の色は緑ではありません。

    亜人と呼ばれる者たちが人間と混ざり始めて長いこのご時世では珍しく、完全な純血の人間のようでした。


    そんな彼の現状は、


    【主人公】

    健康:dice1d10=5 (5) (高いほど健康)

    家族:dice1d10=1 (1) (高いほど円満)

  • 8二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 22:52:25

    治安わるっ

  • 9二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 22:53:18

    この家族仲もまあなるわな…
    というかこれは親族いないレベルなのでは?

  • 10◆d4/k1RhItvAy25/09/24(ć°´) 23:04:48

    割と劣悪でした。


    何しろまだ子供の時分だというのに、保護者が居ません。

    母親は麓の村から拐われてきた村娘で、父親は不明。

    彼を産んだ時点でとっくに発狂していた母親が彼を育てられるわけもなく、かといって父親候補の連中が引き取るわけもなく、当たり前に捨て置かれました。

    ……という事実を本人は知りさえしません。


    路地裏のゴミ山の中に放置されて死を待つばかりだった彼を、母とはまた違う狂い方をした女が拾い上げて乳を与えた幸運のために彼はこうして生きています。

    なお、そちらの女は死病持ちだったために彼が物心つく前にさっさと亡くなりました。


    そんなわけで彼は天涯孤独なのですが……。

    不思議なことに、境遇の割に中々の育ちぶりです。

    健康優良児とまでは言えないものの、同年代の子供達の平均ぐらいにはピンピンしていました。


    その理由は、


    1.盗みが上手い

    2.喧嘩が強い

    3.職人の才能を見出された

    4.顔が良く街の有力者に飼われている

    5.??の寵愛を受けている


    dice1d5=3 (3)

  • 11二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:10:54

    壮絶な人生

  • 12◆d4/k1RhItvAy25/09/24(ć°´) 23:11:24

    その理由は、


    「おいヤスリィ! 水汲みにいつまでかかってる! 飯抜かれてぇのかウスノロ野郎がッ!」


    と、彼を怒鳴りつけた


    dice1d10=8 (8) (奇数男、偶数女)


    にありました。

  • 13二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:12:54

    久しぶりに面白い安価スレを見つけたので上げ

  • 14二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:15:53

    果たして主人公君はこの環境で生き残れるんだろうか…

  • 15◆d4/k1RhItvAy25/09/24(ć°´) 23:18:05

    煙突からモクモクと煙を吹き出す近くの建物、その窓から顔を覗かせるのは一人の女でした。

    名前をラダ。


    容姿:dice1d10=1 (1) (高いほど美人)


    な見た目をした、


    腕前:dice1d10=5 (5) (高いほど熟練)


    な腕前で知られた鍛治師です。

  • 16二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:21:59

    ドブス…というよりもはやこのレベルだと大怪我とかで見るも無惨な感じになってるのか?

  • 17二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:24:03

    女オーク師匠!

  • 18◆d4/k1RhItvAy25/09/24(ć°´) 23:25:54

    その姿を見た周囲の通行人は「うげっ」という顔で目を背けました。
    このラダという女、とんでもない醜女なのです。

    生まれつきに歪んだ顔に、過去に病で負った爛れた皮膚。
    さらに鍛治仕事での事故で頭に火傷までこさえて半ばまで禿げ上がっているおかげで、まともな人間なら二目と見れないような容姿です。

    ただ、そのおかげで女の身でありながらジムナスタで男どもに襲われる事なく住めていました。
    また、顔のために客こそ多くないものの、それなりの鍛治の腕のおかげで店を構える事も出来ています。

  • 19二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:31:00

    こんなゴミ治安の街で強〇被害にあんま会わなそうってホントに化け物扱いされてそうだな…

  • 20二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:32:10

    無駄に整合性があるダイス

  • 21◆d4/k1RhItvAy25/09/24(ć°´) 23:35:38

    このラダに彼……今し方「ヤスリ」と呼ばれた少年は弟子入りしていました。


    出会いは一年ほど前。

    暴力溢れるジムナスタで暮らすために必要なのは、やはり暴力です。

    ヤスリはその暴力を、拾ったナイフによって補っていました。

    身ぐるみ剥がされて路地裏に打ち捨てられていた見窄らしい小男の持っていた、錆びて歪んだナイフです。


    本来ならそんなものはジムナスタではクソの役にも立たないのですが、ヤスリはこのナイフを見様見真似で磨き、歪みを直し、それなりに頼れる武器に変えていたのです。


    そんな日々の中、ある時またも錆び始めたナイフを研いでいる所をラダに見られ、その手つきに才能を見出した彼女によって、


    1.うちに来ないかと優しく誘われたのでした。

    2.食料と引き換えに働けと声をかけられたのでした。

    3.ボコボコにされて拉致られたのでした。


    dice1d3=1 (1)

  • 22二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:38:50

    ひゃだこんなクソみたいな街でクソみたいな境遇なのにすごい優しい…

  • 23二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:39:39

    お母さんとヤスリくんの容姿も知りたい

  • 24二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:40:26

    地獄に醜女とはこのことか

  • 25◆d4/k1RhItvAy25/09/24(ć°´) 23:46:16

    「チッ! とっとと戻れっつってんだろうが! 耳潰れてんのかクソガキッ!」

    などと、ラダは窓から身を乗り出してヤスリに叫びます。
    その声は容姿から連想されるに相応しいほどに潰れてしゃがれた音でした。

    ですが、一年を弟子として過ごしたヤスリにはわかっています。
    言葉も音も汚いそれは、ヤスリを心配しての怒鳴り声でした。
    ラダの言葉を翻訳するならば。

    「外を長々歩いてたら危ないよ。早く帰ってきなさい。あんまり心配させないで」

    というものになるでしょう。
    ぬるい言葉を使っていれば秒で舐められて喧嘩を犯罪被害に遭うために培われた、いわばジムナスタ弁というやつです。

    ……このラダという鍛治師は、こんな掃き溜めの街ではとんでもなく希少なお人好しなのでした。

  • 26二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:49:00

    この人に見つけられたヤスリ君幸運すぎる

  • 27◆d4/k1RhItvAy25/09/24(ć°´) 23:54:56

    ヤスリは井戸で水をいっぱいに汲んだカメを抱えて、ラダの待つ鍛冶場へ戻りました。

    強盗対策のための分厚い扉を開けて、


    容姿:dice1d10=1 (1) (高いほど美人)


    な顔をラダへ向けて口を開きます。



    【選択肢】


    1.「遅くなってごめん」

    2.「はいはい、戻ったよ」

    3.「……ただいま」

    4.「怒鳴られるほど遅くないだろ」

    5.「ギャーギャーうっせぇ! 聞こえとるわ!」


    >>28

  • 28二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:56:31
  • 29二次元好きの匿名さん25/09/24(ć°´) 23:59:39

    ヤスリくんも顔に病気や怪我負ってそうだな…

  • 30二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 00:03:17

    >>29

    でもこの年齢で健康状態平均だし…

  • 31◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 00:06:00

    「……ただいま」

    とだけ静かに告げて、ヤスリはカメを定位置に運びました。

    その容姿はラダに負けず劣らず醜いものです。
    元々がそれなり以上に不細工に生まれついた上に、親なしで育ったヤスリは不潔な環境で長くを過ごしました。
    その生活の中でかかった疱瘡の痕がブツブツと全身に残る上に、強盗から逃げ損ねた際に深々と斬られたために顔の右半分にはおそらく生涯消えないだろう傷痕も刻まれています。

    生まれからして明るい性格になるのは難しい、というのもありますが、あまり長々と口を開くと傷痕が時折痛む……そんな理由で、ヤスリの言葉は端的で短いものになりがちでした。

  • 32◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 00:20:23

    「ふん……さっさとしな。珍しく大口の注文が入ってんだ。ダラダラしてっと承知しないよ」

    「……ん」

    そんなヤスリを促して、ラダは今日の仕事を始めました。

    すでに火を入れてある炉で鉄を溶かし、金床の上で叩き伸ばし、また熱して、また叩く。
    その繰り返しです。

    ひとつ叩いた程度では、さしたる違いは見て取れません。
    しかし、ひとつが重なってふたつになってみっつになって、それが十や二十にもなると少しずつ先が見えてきます。
    つまり、鍛治師であるラダがこの鉄をどうしたいのかという意思がヤスリに読み解けるようになってきます。

    どうやら今日打っているのは剣のようでした。
    暴力と略奪、それと傭兵業で成り立つジムナスタではいくらあっても足りない人気の商品です。
    なお、最も売れるのは鏃で、その次は槍といったところ。
    殺される前に殺せば良いだろうとの理論で防具はそこまで売れ行きは良くありません。

  • 33二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 00:20:27

    キズモノ同士お似合いだな!みたいな事言われてそうだなこの2人…

  • 34◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 00:22:36

    さて、そんな鍛冶場でのヤスリの仕事は、


    神秘適性:dice1d10=8 (8) (高いほど適性あり)

  • 35二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 00:24:18

    鍛冶師より付呪師とかの方が向いてそう

  • 36二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 00:28:23

    センスはガチなんだな

  • 37◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 00:33:36

    「…………」

    ヤスリは火箸で掴んだ、熱されて赤くなった小さな鉄を、ラダが使っている物とは別のほんの小さな金床に運び、やはり小さな槌で叩きます。

    カン、カン、カキン、と小気味良い音が鍛冶場の中に鳴り響き、真っ赤な火花が散り飛びます。
    しかしそれを何度繰り返してもヤスリの鉄は何かの形にはなりません。
    それもそのはず、これは鉄の整形を目的としてはいないのです。

    「音が濁ってる! もっと鋭く、リズムよくやれ!」

    「……ん」

    ラダの叱責に、ヤスリが慎重さよりも感覚と勢いに任せて鉄を叩き始めると。

    “──! ────!”

    ヤスリの周りから、何やら人の言葉ではないざわめきが聞こえ始めました。

  • 38二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 00:37:50

    火の精霊とかか?

  • 39◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 00:50:26

    すると同時に、窓をするりと抜けて数匹のトカゲが現れました。
    ただのトカゲではなく、体を作っているのは肉ではなく炎のようです。
    さらに、床をすり抜けて、あるいは完成品が並ぶ一角の奥からモゾモゾと、鉄の皮膚を持つモグラがやってきました。

    これらは見た目通り通常の生物ではありません。
    いわゆる精霊、というやつです。
    前者のトカゲは火の、後者のモグラは鉄の精霊でした。

    炉の火と鉄の音は彼らの好物で、ヤスリの行っているそれは精霊を誘き寄せるための、どこの鍛冶場でも当たり前に行われる儀式です。

    そして、彼ら二種の精霊が集まっているところでは、鍛治はより簡単に効率よく行えるようになるのです。
    火は温度を上げて鉄を熱しやすく、叩かれた鉄はラダの思うままに形を変えていきます。

    ヤスリはこの儀式が中々に得意でした。
    精霊達は姿を見る事が出来る者と出来ない者に別れるのですが、ヤスリはかなりハッキリと視認できる人間です。
    おかげで、集まってきた精霊の様子を見ながら音色の加減も出来てしまいます。

    「よぉーしよし、いいぞ、そのまま続けとけ」

    今日もまた、精霊たちは上機嫌に鍛冶場の中をウロチョロし始めました。
    精霊が数を増すにつれて作業効率が劇的に上がっていく様に、ラダも頬を上げてニヤリとします。
    残念ながら、凶相のために笑顔と分かる者は多くないでしょうが。

  • 40二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 00:51:31

    こんなクソみたいな街に居るのが勿体ない才能だなあ…

  • 41◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 01:03:43

    そうして、それなり以上に時間をかけつつも、精霊の力のおかげで剣の量産に成功したラダは、最後の仕上げにかかりました。

    研ぎです。

    研磨用の砥石に剣を乗せ、削り磨いて刃を作っていきます。


    そのうちの一本を、ヤスリが担当しました。

    といっても後ろから抱えるように覆い被さったラダに手を添えられながら、ですが。


    招来の報酬を受け取って精霊が姿を消し静かになった鍛冶場に、鉄が削れる音が響きます。

    均一に、滑らかに、しっかりと肉を切り裂ける刃を生むには繊細さが不可欠です。

    ジムナスタ人らしく良く怒鳴るラダも、この時ばかりは大声は発しません。


    そうして、ラダの指導を受けながら完成した刃の、その研ぎの出来栄えは、


    品質:dice1d10=3 (3) (高いほど良い)

  • 42二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 01:04:07

    普通に世界観が良いな

  • 43二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 01:05:28

    不格好だけど初めてにしてはそこそこの出来栄えか?

  • 44二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 01:14:49

    精霊の力借りてる割には感もあるけど基準が分からんから何とも言えんな

  • 45◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 01:27:44

    「……ま、こんなもんだろな」


    ラダがそんな風にこぼす程度の出来でした。


    どうしようもないほどのナマクラではなく、けれど良品とは口が裂けても言えない。

    つまり、この街ではそこらでいくらでも見かけられる数打ちの剣といったところです。


    「売り物にはなるか。学び始めて一年のガキにしちゃ中々上出来ってとこだ。この調子で精進しろよ」


    ラダはヤスリから身を離して立ち上がり、筋肉質で女らしさのない体をぐっと伸ばし。


    「そんでアタシにもっと楽させてくれや! じゃねぇと拾ってきた甲斐も飯食わせてる値打ちもねぇ! いいかぁ? 無駄飯食らいに使わせてやる寝床なんざうちにはねぇからな!」


    などと言いました。


    もちろんジムナスタ弁です。

    標準語に直せば「この調子で頑張ってね。応援してるからね。手を抜かないようにちゃんと見てるし私もしっかり教えるからね」ぐらいの意味です。

    当然、生粋のジムナスタ人であるヤスリもよくよく理解して、内心で思いました。


    【選択肢】


    1.やっぱり良い人だな、好きだ。

    2.言われた通りにしておけば飯が食える、ありがたい。

    3.相変わらずチョロ甘だなこいつ、助かるわ。


    >>46

  • 46二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 01:31:31
  • 47◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 01:51:23

    (言われた通りにしておけば飯が食える、ありがたい)

    ヤスリは特に大きく心を動かす事もなく、淡々とそう思いました。

    これほど良い環境は、ジムナスタという街には他にほとんど存在しません。
    とくに、見目悪く、飛び抜けた身体能力を持っているわけでも、血筋に恵まれているわけでもない、ちょっと精霊が見えるだけのヤスリにとっては。
    そこら中に死体と腐臭と虫とネズミがはびこる路地裏の暗闇で育った彼には、それが良く理解できていました。

    なので、ラダに逆らおうなどという考えはヤスリにはありません。
    言われた通りにしておけば一年前とは比べ物にならない生活が出来るのですから当然でしょう。
    今日食べる物を手にするためにゴミを漁り、時に同年代や年下の子供の体に刃を突き立てて奪うような日々に戻りたいと願うほど、ヤスリはイカれた頭をしていないようです。

    ヤスリが静かに頷いたのを確認すると、ラダはヤスリの頭をグリグリと、より正確にはゴリゴリと撫でて、夕飯にするぞと言って鍛冶場を後にしました。
    もちろんヤスリもそれに続き、仕事で疲れて鳴り出した空きっ腹を満たしに向かいます。



    今のところ、こんな風な暮らしがヤスリの日常のようでした。

  • 48◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 01:52:44

    寝る
    また明日の夜に

  • 49二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 02:00:18

    面白い
    続きも期待

  • 50◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 07:09:02

    保守ついでにダイス


    店の防犯対策は?


    1.用心棒を雇っている

    2.ラダの武力がやばめ

    3.比較的治安のマシな一画に店がある

    4.有力者の庇護下にある


    dice1d4=1 (1)

  • 51◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 07:13:31

    【用心棒】


    性別:dice1d10=3 (3) (奇数男、偶数女)

    人種:dice1d10=7 (7) (2〜5で亜人、6以上で人間、1なら???)

    武力:dice1d5=3 (3) (出目に+5、つまり最低保証6))

    人格:dice1d10=6 (6) (高いほど良い人)

  • 52◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 07:15:24

    【用心棒】


    容姿:dice1d10=10 (10)  (高いほど美人)

  • 53二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 07:58:42

    とんでもないレベルの美形…!いやダイスが極端…!

  • 54◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 12:37:33

    昼休みなので少しだけ書く
    安価はないよ

  • 55◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 12:45:54

    鍛冶場の朝は……別に早くはありません。

    正確には、ジムナスタの鍛冶場の朝は、という話ですが。


    原因はこの街の終わり散らかした治安のせいでした。

    下手に仕事をして剣やら槍やらの在庫を蓄えてしまえば盗みが入るのはあっという間です。

    なのでラダの鍛冶場では作り置きの武器はほとんどなく、もっぱら受注生産式なのです。

    流石に重くてかさばる運びにくい未加工の鉄の塊を盗み出そうなんて考える賊は少なく、週に一度来るか来ないか程度でしたので。


    よって、今日の朝もゆったりと始まりました。

    日がすっかり上り切ってからのそのそ起き出してきたラダが台所に立ち、ヤスリが準備を終えた食材を適切に処理していきます。


    その手つきは、


    腕前:dice1d10=1 (1) (高いほど料理上手)

  • 56二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 12:46:56

    料理というかなんというか…これほぼ食料の残骸では?

  • 57二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 12:49:24

    適切とは・・・?

  • 58二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 12:50:49

    あまりにもひどい

  • 59◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 12:55:25

    ハッキリ言ってカスそのものでした。

    保存用に乾燥させたクズ肉を適当に平鍋に放り込み、ただ火にかけるだけ。
    鍛冶仕事の際に見せる火加減の繊細さはどこに消えたのか、強火で焼けば早く済むだろ、などという思考が丸分かりの雑さは少し料理をかじった者が見れば閉口間違いなしです。
    さらに、思い出したように野菜クズも追加して炒めました。
    先に焼かれていた肉と火の通り具合の差がとんでもないですが、ラダは一顧だにしません。

    そうして適切に……と、ラダが信じ込んでいる処理を終えられた無残な炒め物が二人の食卓に並びます。

    名前をつけるなら「黒焦げクズ肉と生焼け野菜のソテー」といったところでしょう。
    なお、味付けはありません。
    肉は塩漬けされたものなので十分だとラダは考えているようでした。

    唯一の救いは、添えられたガチガチの硬パンは買ってきたもののため、ある程度の品質が保証されているという点だけです。

  • 60◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 12:59:58

    とはいえ、ヤスリに不満はありません。

    何しろラダに弟子入りする以前は腐って原型がわからなくなった生ゴミにも手を出していたのです。
    そこらの虫やネズミを捕まえて生でむさぼる事さえ日常でした。
    今ヤスリの目の前にある食事を路地裏の住人たちの前に出したなら、次の瞬間には奪い合いで血が流れる事態になるでしょう。

    なので、これで問題ないと思っているラダと、味にこだわりなんて一切ないヤスリ、二人の朝食はつつがなく進みました。

  • 61◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 13:05:56

    そうして食べ終えて片付けをし始めた時です。

    ラダがふと思いついたようにヤスリに声をかけました。


    「ああ、ついでだ。アイツも飯いるかどうか聞いてきてくれや」


    その声に、鍋のコゲをこそぎ落としていたヤスリは頷いて、一旦手を止めて店の表に移動しました。

    移動距離はほんのちょっとです。

    具体的には扉をひとつくぐっただけで、交渉用のカウンターと試し切り用の木人形だけが置かれたスペースに辿り着きました。


    その片隅には、一人の男が壁にもたれて座り込んでいました。

    ラダが雇っているこの店の用心棒です。


    彼とラダの関係は、


    関係:dice1d10=10 (10) (低いほど打算、高いほど情)

  • 62◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 13:06:32

    ダイス極端しか出んのか?

    昼休み終わり
    後は夜に

  • 63二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 13:27:02

    おつおつ
    ほんとに1か10しか出なくて笑う

  • 64◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 21:45:56

    ガッツリ寝てもた
    書くね

  • 65二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 21:49:56

    わーい待ってた

  • 66◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 21:57:53

    壁にもたれる男は、それはもうとんでもない美丈夫でした。

    精悍だとか剛健だとか、その辺りの褒め言葉は彼のためにあるようなものです。
    パッと見の顔貌が整っているのはもう当然。
    その皮と肉の下、骨格からして神か何かが比率を厳密に計算して生み出したかのような美しさです。
    さらにその上に本人の鍛錬と努力によって乗せられた筋肉も分厚く、しかし不恰好にはならず引き締まっています。

    ここまで行ってしまえば、軽くボサついた髪や手入れの足りていない無精髭なんかもアクセントでしかありません。
    服の襟元から首に絡むようにして伸びる、効力を失っているらしい奴隷紋がかもしだす背徳感もその筋の人間をゾクゾクさせるでしょう。

    通りを歩けば十人中十二人くらいが振り返るような人間でした。
    全員の目を惹きつけた上で、そのうち二人くらいは現実を疑って二度見する、の意。

  • 67◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 22:10:29

    とはいえ、それはヤスリにはどうでもいい特徴でした。
    生まれと育ちから、美醜の判別は出来ても興味は薄いのです。
    相手が美しくとも醜くとも構いません。

    ただ、ちょっと鬱陶しいなとは感じていました。
    何しろ彼の周囲には羽を生やしたごく小さな人影が飛び交っています。
    それらは男をちやほやするようにか細い声ではしゃいでいましたが、ヤスリを見るや否や顔を嫌そうに歪めては「イーッ」と歯を剥いて睨みつけてきます。

    美の精霊、というやつでした。
    綺麗なものが大好きで、醜いものが嫌いな連中です。
    大した力はないのでほぼ無害ですが、全く無害とまでは言い切れないイタズラをされる事があるという程度の、ヤスリにとっての厄介者。

    今もまた、綺麗なものに近付くなとばかりに数匹ばかりが床から拾い上げたホコリをヤスリの頭に落としています。
    それを手で払う以外は努めて無視しながら、ヤスリは問いかけました。

    「……サウル。朝飯は、要る?」

  • 68二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 22:20:33

    精霊に愛されてるのか

  • 69◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 22:22:00

    聞かれた男、名をサウルという彼は……頬を引き攣らせました。

    「おはようヤスリ。……朝飯ってのは、ラダが?」

    そして問い返してきます。
    ヤスリはそれに、もちろんと頷きました。
    食材の管理権限はラダにしかないのですから当たり前です。

    「そうかそうか……実はさっき外で果物をもらってな。腹がいっぱいなんだ。また今度ってことにさせてくれ」

    「……ん」

    「いやぁ残念だ。せっかくの誘いなのに悪いな、全くこんな事なら断っておけば良かったなぁ! だが果物ってのが平地のやつでな。街中じゃ中々見つからんやつなもんだから……」

    そこまで聞いてないのに良く喋るな、とヤスリはぼんやり思います。
    路地裏では饒舌な人間ほど早く死にましたが、表ではそうではないのだな、などとも考えたり。

  • 70◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 22:32:19

    ともかく。
    ヤスリにとって重要な情報は、サウルがこの店の用心棒である事と、彼が用心棒を引き受けているのは彼とラダが幼馴染という関係であるためらしい事。

    それと、今日「も」サウルの朝飯はいらないらしい事だけでした。

    「……わかった。伝えとく」

    「おう、頼んだぞ」

    ヤスリは淡々とサウルに言い、ラダのもとへ戻るべく背を向けました。

    その際、サウルの周囲を飛び回る小人どもをチラリ。
    精霊たちは相変わらずうるさくしていますが、サウルに気にした様子はありません。
    精霊を視認できる目は、希少と呼ばれるほどではありませんがどちらかと言うと珍しい資質です。
    サウルには備わっておらず、自分が今もデレデレした顔の精霊数匹に頬擦りされている事など気付きもしていません。

    どうやら見えるも見えないも、どちらも良し悪しなのだなと、これもラダの鍛冶屋でヤスリが学んだ事でした。

  • 71二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 22:34:08

    精霊視ができる人間とできない人間で物理的に見えてる世界が違うからだいぶ価値観の相違がありそうだな…

  • 72二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 22:36:33

    美の精霊をメロつかせる男

  • 73◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 22:47:02

    さて、そんな風に始まった朝は、やはり始まりと同じくゆったりと過ぎていきます。


    店の営業は、屋内にしまわれていた看板をラダが表に出すところから始まりました。

    通りで頻発する喧嘩の巻き添えでしょっちゅう破壊される物ですが、ラダにはこだわりがあるようで何度壊されても作り直しているやつです。


    ラダの鍛冶屋はもっぱら受注生産。

    客が注文を持ってくるまではさしてやる事もなく、暇な時間が流れるのが常でした。


    ラダは交渉用カウンターの奥で細かな道具の手入れを行い、サウルは窓に片腕をついてもたれながら通りの様子を観察しています。


    そんな中、ヤスリのする事といえば、


    1.店内や鍛冶場の清掃でした。

    2.二人との雑談でした。

    3.道具の手入れの手伝いでした。

    4.体を鍛えることでした。

    5.文字や算術の勉強でした。

    6.近場の外出でした。

    7.精霊の世話でした。


    >>74

  • 74二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 22:49:48

    7‌

  • 75◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 23:03:06

    大体の日は、精霊の世話をしていました。
    サウルは役割のために表にいるべきですし、そもそも精霊が見えません。
    ラダの方は見える人間ですが、ヤスリほどハッキリとは視認できません。
    これはまだ諸々の仕事が未熟な子供のヤスリが、店に最も貢献できる作業でした。

    「……炉、火ぃ入れてくる」

    「おぉ、頼むわ。居心地良くしてやってくれや」

    なので今日もラダに一声かけて店奥の鍛冶場に向かいます。

    ヤスリが鍛冶場に踏み入ると、早速そこかしこの物陰からゴソゴソと何かがうごめく気配が感じられます。
    それは、炉に小さいながらも確かな火が灯されるとより大きくなりました。
    先日の大口注文の際にも協力してくれた、火と鉄の精霊たちです。

  • 76二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 23:04:00

    この世界は魔法とかあるんだろうか

  • 77◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 23:18:58

    火でできた体を持つ手のひらに乗るサイズのトカゲ。
    それと、鉄の皮膚を持つやはり手のひらサイズのモグラ。

    彼らは鍛治師の強い味方です。
    出来上がりの品質は鍛治師の腕次第なので変わりませんが、作業のやりやすさや速度は精霊のいるいないでまるで段違い。
    一匹でも多いに越した事はありません。
    そしてそれには、普段から鍛冶場の居心地を良くしてやる事が肝要です。

    ヤスリはまず、布の切れ端を取り出すとあぐらをかき、膝の中に潜り込んできたモグラの体を磨き始めました。
    小さいながらも鉄らしくズッシリしたモグラの表皮に酢を少量ふりかけ、わずかに浮いた錆を落としていきます。
    中々に指先の力が必要で爪の間が痛む事もありますが、その分モグラは気持ち良さそうに目を細めてリラックスした様子。

    対して、同時進行でもう片手で世話されるトカゲはと言うとこちらは賑やかです。
    炉に使うものと比べるとオモチャにしか見えない小型のふいごの先を咥え、ヤスリの手で送られる風を体内に取り込んでは燃える体をごうごうと揺らしていました。
    それに伴い火の粉が大量に飛び散ってはいますが、精霊の体は本人(本霊?)が望まない限り物体を透過する性質を持ちます。
    彼らを怒らせているわけでもない現状、トカゲたちが火事を起こす心配はありません。

  • 78◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 23:25:17

    普段から日常的にやっているだけあり、ヤスリの手つきは慣れたもの。

    一通りの作業が終わる頃には、精霊たちは、


    満足度:dice1d5=3 (3) (出目に+5、最低保証6)


    な様子になっていました。

  • 79二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 23:26:15

    かなりご満悦だな

  • 80◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 23:31:25

    精霊たちはすっかりなんとも満足げ。

    モグラたちはスピスピ鼻を慣らしつつヤスリの膝の中で団子になって無防備に昼寝をはじめ、トカゲたちは炉の中で互いに毛繕いならぬ炎繕いです。


    これならば、余程の事がない限り鍛冶場の周囲から離れる事はないでしょう。

    次の仕事でもしっかり手伝ってくれるに違いありません。


    そんな彼らを眺めて、ヤスリは思いました。


    【選択肢】


    1.精霊は可愛いな。好きだ。

    2.上手くいって良かった。これで明日も飯が食える。

    3.面倒だけどこれも仕事だからな。


    >>81

  • 81二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 23:32:05

    1.精霊は可愛いな。好きだ。

  • 82◆d4/k1RhItvAy25/09/25(㜍) 23:46:00

    (精霊は可愛いな。好きだ)


    ヤスリはぼんやりそう思い、眠るモグラの小さな額を指先で撫でました。

    くすぐったそうに鼻先を揺らす様はなんとも愛らしく、無意識のうちにヤスリの頬がわずかだけ緩みます。

    残念ながら、頬の傷跡の痛みのためにすぐに消えてしまいはしましたが。


    ヤスリにとって精霊たちは好ましい存在でした。


    精霊はわかりやすく単純なものたちです。

    好ましい場所に住みつき、好ましい相手に懐き、好ましい物事を助けます。

    彼らの好みに合わせた用意をしてやれば生活の助けになる事は数多く、ラダに出会う前の生活でも随分と世話になりました。

    いつ裏切るかわからない同じ境遇の人間たちよりも、精霊はよほど信頼のおける隣人だったのです。


    中にはサウルにたかる美の精霊のように敵対的なものも存在しましたが、それもむしろ危険を予知するために役立つ事がありました。

    彼らがいなければヤスリは今日まで生き延びられていなかったでしょう。


    と、そこまで考えてふと、路地裏では良く見かけたとある精霊の事をヤスリは思い出しました。


    それは、


    1.揺らめく影の体を持つムカデ

    2.崩れ続ける羽を持つ紫の蝶

    3.青白い体色の盲目のイモムシ


    dice1d3=2 (2)

  • 83二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 23:47:02

    崩れ続ける羽…破壊を司る精霊とかなんだろうか…

  • 84二次元好きの匿名さん25/09/25(㜍) 23:55:49

    精霊のデザインが良いな

  • 85◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 00:05:08

    崩れ続ける羽を持つ紫の蝶の事です。

    路地裏の暗闇の中には良くない精霊も頻繁に見かけたものでした。

    例えば、黒い影の体を持つムカデ。
    これはおおよそ「これから死ぬもの」の近くに湧いていました。
    無数の脚がうごめいてかき鳴らされるあざ笑うような音色を遠ざけるため、必死に彼らの嫌うものを集めた記憶はヤスリの中ではまだまだ鮮明です。

    例えば、青白い色をした必ず目の潰れているイモムシ。
    これは路地裏の中でも特に暗い一画、行き止まった吹き溜まりで良く見られました。
    彼らの多い場所に長く留まれば必ずと言って良いほど体調を崩したものです。
    思えば、今も跡が残る疱瘡に冒されたのもイモムシの多い場所に滞在した時期でした。

    そんな者たちの仲間ではありますが、蝶は比較的マシな部類と言えます。

    蝶は「すでに死んだもの」に沸き、集ります。
    特に、死んでから長くがたったものに。
    逆に言えば彼らがさほど集まっていない死体は新鮮ということで、食料調達の目安となってくれたのです。

    今もまだ時折見かけはしますが、ラダの鍛冶屋がある表通りと路地裏を比べれば安全度は雲泥の差。
    必然的に転がる死体の数も段違いで、蝶を見かける頻度は随分と減っています。

    (……)

    こうして思い出したのも何かの縁かも知れません。
    そのうちに暇があれば当時の恩返しをしてみるのも良いかと、ヤスリは心の片隅に留め置きました。
    もちろん、危険な精霊ではあるでしょうから深入りはしないように、ですが。

  • 86二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 00:10:36

    百足が死の精霊、芋虫は病魔の精霊、蝶は腐敗の精霊か?

  • 87◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 00:16:55

    【ここまでのヤスリくん】

    健康:普通
    武力:──(未判定)
    鍛治:未熟
    話術:未熟
    知識:カス
    家事:カス
    神秘:得意

    特徴:情動少なめ/精霊好き


    【未解決フラグ一覧】

    ・ラダとサウルの関係性
    ・サウルに刻まれた効力の切れた奴隷紋
    ・崩れ続ける羽を持つ蝶の精霊

  • 88二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 00:19:22

    ド腐れ治安のクソみたいな育ちの割には唯一神比に関してはそこそこの才覚があるのはまだ恵まれてる方か。実際第六感みたいな感じで今までの生存に役立ってるみたいだし

  • 89◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 00:25:31

    さて、そんな日々が何日か続きました。


    朝起きて飯を食べ、精霊の世話をし、小口の注文に対応し、日が暮れれば眠る。

    荒れ果てていた路地裏の生活に比べれば静かなものですが、これが毎日ともいきません。

    たまにはちょっとばかり違う事も起こります。


    その日はどうやら、そんな日のようでした。


    1.大口の注文

    2.強盗の襲来

    3.通り魔の出没

    4.発狂した薬中の訪問

    5.害虫の大発生

    6.英雄の凱旋

    7.知人の訪問

    8.突然の悪天候

    9.見慣れない精霊

    10.安価


    dice1d10=1 (1)

  • 90◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 00:27:21

    次イベント決まったとこで今日はここまで
    寝ます

  • 91二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 00:31:36

    おつ

  • 92◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 06:31:28

    保守ついでダイス


    【注文】


    数量:dice1d10=6 (6) (高いほど大量)

    納期:dice1d10=4 (4) (高いほど余裕あり)

  • 93◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 07:56:34

    【発注者】


    dice1d10=10 (10) (高いほど有力者)

  • 94◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 07:57:13

    確実に街のトップで草

  • 95二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 09:07:35

    相変わらずダイスの振れ幅がおかしい

  • 96◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 10:25:46

    【街のトップさん】


    性別:dice1d10=6 (6) (奇数男、偶数女)

    人種:dice1d10=3 (3) (2〜5で亜人、6以上で人間、1なら???)

    容姿:dice1d10=10 (10) (高いほど美人)

    武力:dice1d10=6 (6) (高いほど本人が強い)

    部下:dice1d10=10 (10) (高いほど率いる組織が強い)

  • 97二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 10:27:48

    お、初めての亜人だ。しかもこの人もとんでもない美形…というか部下つっっっっよ!!

  • 98◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 10:31:54

    【人種】


    1.エルフ

    2.ドワーフ

    3.ハーフリング

    4.ゴブリン

    5.オーガ

    6.カオスシェイプ

    7.ハーフスピリット


    dice1d7=1 (1)

  • 99◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 10:33:14

    今時珍しいくらいコッテコテの厨キャラできちゃったな……

  • 100二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 10:35:45

    まあでもこの街でトップ張ろうと思ったらそりゃそんな武力はいるよなって

  • 101二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 10:51:32

    この世界美醜の振れ幅がおかしいだろ

  • 102◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 10:53:02

    【で、お偉いさんがなんでこんな普通の鍛冶屋に?】


    1.戦争が近いよ(外)

    2.戦争が近いよ(内)

    3.才能発掘(定期)

    4.才能発掘(突発)

    5.ラダとの繋がり有り

    6.サウルとの繋がり有り

    7.ただの気まぐれ

    8.安価


    dice1d8=2 (2)

  • 103◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 10:56:35

    【対立組織くんの規模】


    dice1d10=5 (5)

  • 104◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 10:57:56

    組織パワーが倍ある上に普通の鍛冶屋まで動員する事前準備……あっ、ふーん

  • 105二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 12:19:09

    この街でドンパチやるつもりか

  • 106◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 12:23:00

    昼休み
    少しだけ書く
    安価なし

  • 107◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 12:31:14

    「ちょいと邪魔するよ」

    非日常の一幕は店の扉をくぐって現れた客のそんな一言から始まりました。

    やってきたのは五人組。
    より詳細に言うと、明らかに纏う雰囲気の格が違う一人と、その護衛らしい四人です。

    「いらっしゃ…………は?」

    「な……」

    そんな集団の来訪に店主のラダと用心棒のサウルは揃って絶句しました。

    それもそのはず。
    絶世の美を携えた細身の女。
    腰から下げた小剣の柄に刻まれた二本の斧が交差する紋章。
    その上、長い寿命と高度な魔法適性で知られるエルフである事を示す長耳。
    これらを待ち合わせる者など、このジムナスタの街では一人きりです。

  • 108◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 12:48:33

    ジムナスタの大元となった、山脈に根城を築いて暴虐の限りを尽くし、国軍による三度の討伐さえ跳ね返して実質的に辺り一帯を占領支配するに至った伝説的な山賊の頭領。
    その数十人居た子供達の一人です。

    名をアルメイダ。
    頭領が寿命で死した後、跡目争いの群雄割拠の中で真っ先に頭角をあらわし、カリスマによって数多の部下を束ねてジムナスタの大半を平らげてみせた、当代きっての傑物でした。

    ラダやサウルの困惑も当然です。
    鍛治師としてのラダの腕は精々並程度。
    こんな大物がわざわざ出向いてくるような店では到底ありません。
    一体何事かと彼らは身を硬くするばかりです。

    そしてまた、ヤスリもそうでした。

    ただし、彼の目には他二人とは少しばかり違うものに集中しています。
    初見の店の中を悠々とカウンターへ歩むアルメイダの周囲には数種の精霊が舞っていました。

    サウルの近くにも多い美の精霊はわかります。
    アルメイダもまた途方もない美女ですのでそりゃあ居るでしょう。

    しかし、それに混じって飛ぶ影の体を持つ黒ムカデはいただけません。
    「これから死ぬもの」にたかる影ムカデ。
    それが路地裏の同種よりも二回りは巨大で、しかも二対の羽まで生やして空を飛んでいるのです。
    頭から長く伸びた牙は下手なナイフよりも鋭利に見えました。

    好ましい場所に長く住む精霊はより大きく成長するとヤスリは知っていましたが、これほどの変化は初めて目にします。
    この女エルフの周囲には、常に何かが死に続けていた路地裏よりも多くの「死」が付き纏っているのだと、そう確信したヤスリは己の全力をもって空気に徹しようとしました。
    目立つ者から命を落とす路地裏育ちの本能のようなものです。

  • 109◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 12:59:48

    「こ、こりゃあアルメイダ様……こんな場末の鍛冶屋にどうしてまた」

    「なぁに、そう硬くなるない。ちょいと物入りでね。方々の鍛冶屋に片っ端から注文してんのさ」

    しかしどうやら、物騒な話が店に持ちかけられたわけではないようです。
    緊張と畏怖で震え声を出すラダに、アルメイダは呵呵と笑って告げました。

    近頃勢力を増してきた目障りな対立組織との争いの予定がある事。
    そのために新しく大量の武器を揃える必要があり、ここ以外にも多くの鍛冶屋に声をかけている事。

    その話に、ラダはホッと息を吐いたようでした。
    街の大物に変に目をつけられた、などという事態ではなさそうです。
    注文自体も数量に対して納期はやや短めでしたが、多少無理をすれば問題なく納品できるでしょう。

    ただし。

    「ああ、ところで店の規模からしてこの注文だとギリギリだろう? ……他の客はしばらく相手に出来なかろうね?」

    「ひっ……へ、へぇ、そりゃもちろん! アルメイダ様のご依頼だけに集中させていただきますとも! こ、これだけの数なら終わった後も疲れが残るでしょうし、ちょいと休業する事にいたしまさぁ、へ、へへ……」

    「ん、よろし。賢い子は好きだよ」

    そんな事を、つまりは敵対組織に武器を売るような事があればどうなるかわかっているだろうな、という釘は刺されましたが。

  • 110◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 13:15:01

    穏便に話が終わりそうな気配に、ヤスリは細く息を吐きました。

    この恐ろしい女の姿をした化け物は、どうやらこのまま帰ってくれそうです。

    流れからして再度の来訪もないでしょう。


    ……そんな安堵が良くなかったのかも知れません。

    ヤスリはつい、アルメイダの周りを飛ぶムカデたちの動きを目で追ってしまい。


    「──へぇ」


    しかもそれを、アルメイダに気取られてしまいました。


    「イェルク」


    アルメイダは口の端を持ち上げて目を細め、たおやかな指先でヤスリを示しながら言葉を発しました。


    次の瞬間です。

    名を呼ばれた護衛のうちの一人、小柄な男がいつの間にか、誰も……それこそ彼らから目を離していなかったサウルさえ反応できない速度で、ヤスリの前に立ち──


    武力の才能:dice1d10=5 (5)

  • 111二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 13:17:35

    はえー武の才能自体はなんの修練もしてないのに人並みにはあるのか。かなり強めの精霊視と合わさったら今後化けそう

  • 112◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 13:24:40

    鞘から抜き放たれた一閃が寸止めだったと気付けたのは、ヤスリが床を転げるようにして壁際まで逃れた後の事でした。


    「ヤスリッ!?」


    ラダが思わず立ち上がり心配を叫ぶ中、ヤスリは自身の首が繋がっていることを何度も確かめます。

    ヤスリには確信がありました。

    刃から逃れようと体が動いたのは、剣が首に添えられた後の事です。

    つまり、イェルクという男がその気ならばヤスリは今この瞬間に死んでいました。


    恐怖:dice1d8=3 (3) (情動少なめのため上限8)

  • 113二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 13:27:28

    あんまり驚いてないな
    死にやすい環境にいたせいか?

  • 114二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 13:29:29

    このレスは削除されています

  • 115二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 13:31:32

    >>113

    というより直前にとんでもない死の精霊を確認したせいで半ばここで死ぬんじゃないかと既に覚悟してたのかもしれん

  • 116◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 13:42:37

    ヤスリの内から恐怖が湧き上がります。

    しかし、それはさほど大きなものではありませんでした。
    そんなものに囚われている暇があるならば危機を脱するために何をすれば良いかに思考を回すべき。
    過去の経験則から培われたものがヤスリを突き動かしました。

    平伏すべきか。
    逃走をはかるべきか。
    少なくとも立ち向かうのが絶対の間違いである事だけを確信しつつ、ヤスリは判断を下そうとします。

    「肝の据わりは良し。反応は人並みってとこか」

    が、それよりも先にアルメイダが決を下す方が先でした。

    「見える性質なのはちょいと珍しいが、このくらいなら攫ってくほどでもないね。……邪魔したね店主」

    アルメイダは何事もなかったかのようにカウンターに背を向け、店を去りました。
    護衛の一人が迷惑料のつもりなのか多少の金銭を残していき、どうやらこれでこの一幕は終わりのようでした。

    後に残されたのは、未だに首が落ちていないか確信を持ちきれないヤスリと、そんな彼に凶相をいっそう歪ませて慌てて駆け寄るラダ。

    それと、用心棒の癖して今回全く役立たずだったサウルです。
    まぁ、アルメイダに逆らった者の末路の暗さを思えば何もしない事が彼の最適解ではあったのですが。

  • 117◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 13:44:48

    昼終わり
    あとは夜に

  • 118二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 14:07:46

    おつおつ

  • 119二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 14:48:47

    才能がありまくったらそのまま攫われてる可能性あったんか

  • 120◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 19:38:05

    夜が来たよ

    書き始めるよ


    >>119

    クソみたいな街なので住民を100%守ってくれる(守ろうとしてくれる)タイプの為政者も公的機関もおらんねんな……

  • 121◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 19:44:57

    幸いにして、アルメイダによるヤスリへの「試し」は傷一つなく終わりました。
    オマケに彼女の興味を引いてしまう事もありませんでした。

    後に残ったのは正規の注文のみ。
    ジムナスタが生む利益……傭兵業やら略奪やら麻薬の生産加工販売やらの片っ端からろくでもない汚れ切った金をたんまり吸い上げているだけあり、アルメイダの勢力は大変な金持ちです。
    払いの心配は必要ないでしょう。

    となれば、後は注文通りに武具を揃えて納品すれば良いだけです。
    ……良いだけ、なのですが。

  • 122二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 19:59:01

    わーいいつの間にか始まってる

  • 123◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 20:03:17

    「守り、固めといた方が良いだろうな」

    深刻そうに端正な顔に警戒を乗せてサウルが口を開きます。

    「……来ると思うかい?」

    「そりゃ来るだろ。本人が白昼堂々依頼して回るなんざ、なんぼなんでもあからさますぎる」

    問い返したラダに対し、サウルは解説を続けます。
    途中チラリとヤスリを見下ろしたあたり、本当に伝えたい相手はヤスリの方かも知れませんが。

    敵が武器を新しく仕入れられないように締め上げつつ、アルメイダの依頼は隠しもしない。
    となれば対立組織としては是非とも鍛冶屋を狙いたくなるところです。
    武器を打ち終えて、しかし納品はこれからというタイミングでの襲撃に成功すれば、アルメイダの力が増すのを防いだ上で自分たちはタダで新品を手に入れられます。

    「アルメイダ……様もわかってんだろ? ならそう好きにさせたりしないんじゃないのかい」

    「どうかね。俺らは釣りの餌にされてると思った方が良い。最悪、鍛冶場を漁ってる間に建物ごと燃やせば済むと考えててもおかしくないぜ」

    そこまでは流石にしないはずだ、とラダは反論しましたが、声色はやや自信なさげなものでした。

    アルメイダには兄弟姉妹が数十人居ましたが、今はもう居ません。
    過去の抗争にて全員、その伴侶や子供にいたるまで皆殺しにされています。
    懇意にしているでもない鍛冶屋のふたつやみっつ、敵ごと燃やすぐらいはやりかねないというイメージは街の住民の頭にはしっかりこびりついていました。

  • 124◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 20:10:12

    「ああ、ところで納期は大丈夫そうか?」

    「そっちは心配いらねぇさ。ヤスリが良い仕事してくれてっからな」

    暗い話から流れをうつして、明るい材料についてです。

    こちらも忘れてはいけない依頼本体。
    要求された数量に対して少々短い納期については問題ないでしょう。

    何しろ普段からヤスリが精霊の世話に精を出しているおかげで、この店の鍛冶場はすっかり火と鉄の精霊の溜まり場と化しています。
    鍛治仕事のやりやすさでは街でも上位に入るはずで、ラダが普段通りに腕を振るえればいくらか余裕を持って終わらせられるとの事です。

  • 125◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 20:25:57

    よって、考えるべきは予想される襲撃についてのみです。

    「とりあえず籠城は確定だな。入らせちまったらまとめて燃やされかねん」

    「守るだけでどうにかなんのかい?」

    「アルメイダも部下を張らせるはずだ。襲撃の連中が攻め落とせないと見れば背中を撃つ方を選ぶと思うぜ」

    「いっそ出来た端から持ってっちまうのはどうだい。盗むもんがなけりゃ賊もこねぇだろ」

    「この街で、アルメイダの屋敷までの長い道のり、俺らだけで無事にか?」

    「……すまん、バカ言ったわ」

    二人の話し合いは続きます。

    それを聞きながら、ヤスリはじっと考えました。
    ヤスリも路地裏よりもはるかに暮らしやすいこの店を失いたくはありません。
    出来ることならラダの鍛冶屋にはまだまだ存続して欲しいのです。
    そのために自分がやっておくべき事はあるだろうか、と。

  • 126◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 20:26:21

    【選択肢】


    1.窓や扉の補強を手伝う。

    2.店の周囲に罠を仕掛ける。

    3.店を守る協力者を探す。

    4.守りに役立ちそうな精霊を集めておく。

    5.二人の世話に専念して体調を整えさせる。

    6.自分の武器を用意して戦闘に備える。

    7.二人の指示に従う(自動選択)

    8.その他自由安価


    >>127

  • 127二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 20:31:35

    8.状況の打破に役立ちそうなまだ見ぬ精霊を求め街の外に

  • 128二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 20:48:53

    このレスは削除されています

  • 129◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 20:49:54

    「……俺」

    議論をかわす二人に近付き、ヤスリは口を開きます。

    「精霊、探してくる」

    ヤスリの言葉はいつも通り端的で短いものでした。
    元々口数が少ない上に、頬の傷痕が痛むためにあまり長くは喋らないという性質のためです。
    一年の暮らしの中でそんなヤスリの話し方に慣れていたラダとサウルは、その短い一言から主張を読み取ってくれました。

    「店を守ってくれる精霊をかい? いや、しかしねぇ……」

    まずはラダが難色を示します。
    普段から口の荒いものの、その実中々に過保護で心配性な彼女としては頷きがたい提案なのでしょう。

    ですが、そんなラダをサウルが押し留めました。

    「言ってる場合か? 手はいくらあっても良いだろ」

    「それは……わかるけどさぁ」

    「こいつだってこの年まで路地裏で生き延びてきたんだ。街の歩き方ぐらいわかってんだろ」

    だよな?
    と視線を送ってくるサウルに、ヤスリは強く頷きました。

    それでもなおラダはしばらく渋りましたが、やがて力なく了承します。
    状況からして、背に腹はかえられぬと自身を納得させたようです。

  • 130◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 20:53:37

    そうして二人に送り出され、ヤスリは店を出ました。

    はじめは防備を固めるのに専念して、鍛治を始めるのは三日後の予定。
    それまでに戻ると約束して。

    ……口数の少なさは便利なものです。
    重要な要素を言葉のうちから削っても、普段からそうなら怪しまれる事はありません。

    そう、例えば。
    街中ではなく、街の外で精霊を探すつもりだ、などという内心の決意だとか。

  • 131二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 21:00:19

    やはり冒険がなくっちゃね!

  • 132◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 21:04:26

    かつて路地裏で暮らしていた頃。
    ヤスリは世界というものは死臭と病に満ちた路地裏と、そこから時折垣間見える多少マシな表通りしか存在しないと思っていました。

    ですが、今は違います。
    ジムナスタはそれなりに広さのある街ですが、所詮は街。
    その街壁の外には別の世界がいくらでも広がっているのです。
    それをもう、ラダが語り聞かせてくれた話でヤスリは知っていました。

    「アタシが子供の頃に暮らしてた別の街は、もっと明るくて優しいところだった」

    いつだったか酒に酔った時、どこかが痛むように顔を歪めてラダはポツリとそう言いました。
    ヤスリはしっかりとその文言を覚えていたのです。

    精霊は、それぞれが好む場所に棲家を作ります。
    ならば街の外の、ラダいわく明るく優しい場所にはお人好しの精霊がいるかも知れません。
    まるでラダのように、さしたる得もないのにヤスリに施しをするような者が。

  • 133二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 21:05:48

    死やら腐敗やら病魔やらクソみたいな精霊しか居ないしなここ…

  • 134◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 21:17:50

    悪い意味で目立つ自分の容貌を深く被ったフードで隠し、路地裏生活で身についた静かな歩き方でヤスリは街を抜けました。

    人目のない道の選び方ももちろん心得ています。

    おかげで因縁をつけてくる何某かに遭遇する事もなくヤスリは街の内外を隔てる門に辿り着きました。


    今回の探索行の最初の問題はここです。

    ジムナスタはその性質上、他の街からは蛇蝎の如く嫌われています。

    もちろん国からも。

    正式な討伐隊が現れなくなって久しい昨今ですが、それでも外からの敵意には常に晒されているのです。

    出入りの制限は相応に厳しいものでした。


    かといって、壁を乗り越えていくのは現実的ではありません。

    そちらを選べば、発見されれば即座に誰何さえされる事なく弓矢を射かけられるでしょう。

    戦闘に関して特段の才も修練の経験もないヤスリでは生存の可能性はほとんどゼロです。


    なので仕方なく、ヤスリは街の門に近付いていきました。


    守衛の真面目さ:dice1d10=10 (10)

  • 135二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 21:22:21

    めちゃくちゃしっかりしてる人だ…

  • 136二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 21:25:11

    これ外の人では…?絶対にこの街の人間を外に出さないという意志を感じる

  • 137二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 21:26:35

    こんなに最大値とか最低値って出る物なのか…?

  • 138◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 21:28:37

    そして、ヤスリは実に幸運でした。
    今日の守衛は飛び抜けて真面目な者だったのです。

    いくらかの詰問と、入念な身体検査。
    それと、正規の通行税の支払い。
    門を通るのに必要とされたのはそれだけでした。

    これにはヤスリも拍子抜けです。

    賄賂の要求さえされないというのは、異様と言って良い事態です。
    例え素寒貧相手だろうと盗みを働かせてから金をむしりとるのがジムナスタの平均的な大人と知っているヤスリは、門をくぐった後も本当に良いのかと数回振り返るほどでした。

    まぁともかく、通れるならばそれに越したことはありません。
    ヤスリは今回の守衛の顔をしっかりと覚えました。
    帰りの際にも同じ者が立っている時間を選ぼうと心に決めて。

  • 139二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 21:29:48

    そういえば地味にこれヤスリくんは街の外に出るの初めてなのか?

  • 140◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 21:38:34

    そうしてヤスリは街の外に生涯はじめて踏み出しました。

    そこに広がっていた光景は……森でした。
    ジムナスタはとある山脈の中、平たく広がる一画に作られた街です。
    周囲は山々と木々に囲まれていました。

    街の中では見られなかった力強い樹木。
    その葉の隙間からは陽光が注ぎ道を照らしています。
    それはキラキラと輝くようで、ヤスリの初めての外出を祝っているかのようです。

    「…………」

    これで、呆れるような数の紫の蝶が飛んでいなければなお良かったのですが。

    すでに死んだものにたかる、路地裏でも散々見た精霊です。
    街から伸びる道の左右、木々の枝に吊るされている見せしめらしい大量の死体が原因で間違いありません。
    門から数歩出た程度では結局まだまだジムナスタということのようでした。
    おかげで風に混ざるのは緑の香りではなく、鼻の曲がるような腐臭です。

  • 141二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 21:40:04

    知ってたけどほとに最悪すぎるなこの街…

  • 142◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 21:44:05

    こんなところでは街の中で見つかる精霊と同じものしか見つからないでしょう。

    ヤスリは鼻を塞ぎ、死体から目を逸らして、出来るだけ街から遠くへ行こうと歩みを進めました。


    目的は未知の精霊との出会いです。

    それも、都合良くヤスリを、そしてラダを助けてくれるような。


    鍛治が始まるのは三日後までにそんな遭遇を成し遂げられるか。

    ヤスリの運試し、まずは初日です。


    遭遇:dice1d10=8 (8)

  • 143二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 21:44:30

    これは…どうなんだ…?

  • 144◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 22:03:22

    ヤスリは山中の道を進みます。


    危険と知っている精霊を避けながら。

    例えば黒ムカデがたむろするぬかるみからは大きく距離を取るなどです。


    また、未知のものであっても一目で背筋を震わせるものは避けました。

    大きく咲き誇る真っ赤な花の中でニタニタと笑いながら手招きする、ギョロギョロとした目の小猿などが代表的でした。

    どう考えてもロクな目にあいそうにありません。

    ジムナスタにいくらでも居る末期の薬中とそっくりだと、ヤスリは全力で関わりを拒否しました。


    求めているのは、もっと明るかったり、優しかったり、穏やかだったりする精霊です。


    例えば、そう。

    今視界の端にうつった、


    1.岩の上でじっと日を浴びるトカゲ

    2.池に浮かべた葉っぱの船でスヤスヤ眠るカエル

    3.大きなキノコの傘の下で踊る小人たち

    4.傷付いて横たわるリスに寄り添う半透明の別のリス

    5.道の先から好奇心に満ちた瞳で見つめてくる小鳥


    のような。


    dice1d5=5 (5)


    (遭遇出目8=有益な精霊率80%=5体中4体が有益)

  • 145二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:09:09

    ほう鳥か。偵察とかに使えそう

  • 146◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 22:14:04

    ヤスリは前方を二度見しました。

    そこにはまさしく実に明るそうな雰囲気の一羽の小鳥がいるのです。


    なんとも愛らしい姿でした。

    大きさは手のひらにまとめて二羽乗せられるほど。

    背中側は青く、腹は白く、その境にはわずかにオレンジ色。

    そのどれもが鮮やかな彩りで、暗く淀んだ街の中では通常の鳥としても精霊としても見た事のない種類です。


    そんな鳥は、自分に気付いたヤスリの存在を喜ばしく思っているのか小さく細い脚でピョンピョンと飛び跳ねました。

    クリクリした瞳はどこかワクワクとした好奇心がともっているようで、せわしなく首を動かしながらヤスリを観察しています。


    もしかしたらこれこそがヤスリが目当てとしていた精霊かも知れません。

    ヤスリは初見のそれに警戒しながらも近付き、視線の高さを少しでも合わせるようにかがみ込みました。


    観察:dice1d10=2 (2)

  • 147二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:15:35

    よく分かってなさそう。いやまあ生まれて初めて壁外に出てるし外の存在なんて分かるわけないからそりゃそうなんだけども

  • 148◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 22:20:40

    (……かわいいな)

    観察の結果、ヤスリは確信しました。
    この小鳥はすごく可愛い、と。

    随分な人懐っこさです。
    小鳥はまるで警戒心というものを感じさせない足取りでピョコピョコ歩み寄ってくると、ヤスリが差し出した手にアッサリと乗りました。
    それからヤスリの指やら服の袖やらを散々クチバシでつついた挙句、腕を伝って肩にまでやってきます。

    さらにヤスリは知りました。
    この小鳥は意外と鳴き声が大きい、と。

    ピィロロ、ピィルロ。
    文字にすればそんな音が耳元の小鳥から発せられます。
    鼓膜が痛むほどではありませんが、至近距離からのそれはちょっとのけぞるほどの声量でした。

  • 149二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:23:03

    なんだろう歌の精霊だろうか

  • 150◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 22:26:27

    そうしてしばしヤスリと戯れていた小鳥は、ふと肩から飛び立ちました。


    どこかに飛び去ってしまうのではと慌てたヤスリですが、小鳥はアッサリと最初の位置、道の前方に降り立ちます。

    そうして再び、ピィロロ、ピィルロ、と鳴くと。


    (……誘ってる?)


    ピョンピョンと数歩進んではヤスリを振り返る、という事を何度か繰り返します。

    素直に考えれば、ヤスリの直感通り誘われているというのが自然な見方でしょう。


    【選択肢】


    1.ついていく

    2.呼び戻す

    3.ついていかない


    >>151

  • 151二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:27:03

    1,不思議と惹かれる…

  • 152◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 22:34:45

    ヤスリはその誘いに乗る事にしました。


    小鳥には、少なくとも一見して危険と感じられる兆候はありません。

    また、明るく陽気な性質があるようにも思えます。

    親交を深めれば助けになってくれる可能性は高いように思え、そして仲を深めるには行動を共にするのが得策と言えるでしょう。


    ヤスリが道を歩き始めると、小鳥は実に嬉しそうに一鳴きして飛び立ちました。

    そしてやはり、飛び去ってはいきません。

    道を先導するようにヤスリの少し先を行き、愛らしい声で鳴くのを繰り返します。


    さて、この小鳥はどこに案内してくれるのか。

    ヤスリは、


    dice1d10=1 (1)

  • 153二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:38:48

    さっきから出目がシャバい…!

  • 154◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 22:42:02

    ヤスリはとてもワクワクとした気持ちになりました。


    小鳥はどこに行きたいのか。

    その先で何が見れるのか。

    その大半が暗闇の中だったヤスリのこれまでの生では感じた事のない楽しさが込み上げてきます。


    それは、小鳥が導いてくれた先で何かを見つける度に膨らみました。


    例えば、木々の葉の中に紛れるように実る、指先でつまめるような小ささの赤い実。

    小鳥に促されるままに摘んでみれば、これまでにヤスリの舌は思わずビクンと跳ねました。

    初めて体験する強烈な酸味と、その奥にわずかながらも確かに感じられる甘味のためです。

    驚きと喜びに小鳥を見つめれば、彼はなんとも誇らしげに小さな胸を張っていました。

    美味いだろう、とそう言っているかのようです。


    dice1d5=4 (4)

  • 155二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:43:31

    お、今度は逆に跳ねたか

  • 156◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 22:47:00

    例えば、道を外れて進んだ先にあった湧水を水源とする小川。


    手を浸せば冷たさが心地良く、すくって飲めば喉を滑り落ちる清涼感がたまりません。

    浅いところに舞い降りてバタバタと水浴びする小鳥の姿もヤスリの心をなんとも和ませてくれました。


    さらに小鳥との道行きは続きます。

    小川を離れてまた飛び立つ小鳥の後をヤスリは追いました。


    dice1d7=1 (1)

  • 157二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 22:48:34

    ヤスリくんはこのまま野山で過ごす方がずっと幸せな気がしてきた…

  • 158◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 22:57:11

    そうして、ヤスリの感動は森を抜けた瞬間に最高潮に達しました。

    すっかり日も暮れ、夕刻。
    木々が消えて開けた視界にうつったのは、遥か地平の先までも見通せる真紅の絶景でした。

    狭く暗いジムナスタとはまるで正反対の、果てなく光に満ちた世界。

    「…………ぁ」

    か細く、ヤスリの喉から声が搾り出されます。
    それは情動に乏しく無口な少年に許された、精一杯の感情の発露でした。



    それに呼応するように。
    ヤスリの肩にとまった小鳥が歌います。
    ピィロロ。
    ピィルロ。

    行こう。
    進もう。
    道の先へ。
    はるか遠くへ。
    まだ君の知らないどこかへ。

    さぁ──「旅」に出ようと、渡り鳥の姿を持つ精霊がヤスリを誘いました。
    ひどく、抗いがたい鳴き声で。

    (有害精霊、直近三回のダイス内容=精神抵抗)

  • 159◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 23:05:17

    【選択肢】


    1.すすむ

    2.ふみとどまる(ダイスが必要、成功率20%)


    >>160

  • 160二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 23:09:50

    うーん悩ましい…でも2だ

  • 161◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 23:20:24

    歌声に誘われるように、ヤスリの足が持ち上がりました。


    旅に出たいとヤスリの心が告げています

    それはきっと、精霊の囁きに惑わされるまでもなく。

    生涯ではじめて目にした、本当に美しいと思えるものにわずか一歩でも近付きたい一心で。


    ……ですが、その足が道の先を踏み締める前に。

    ヤスリはふと思いました。


    本当にそれで良いのだろうか。

    自分は何かやるべき事があったのではないか。

    確か、そう、自分の助けと、そして帰りを待っているだろう優しい誰かを残してきたのではないか。


    dice1d10=4 (4) (9.10で成功)

  • 162二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 23:21:52

    まあ成功しないよねえ…今まで殆ど幸福感を味わった事のない子供がこんな幸福感を得ちゃったらね…

  • 163◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 23:30:17

    ……しかし、その思考が確かな形を取る前に、ヤスリの足は地面を踏みました。

    足の裏から返る感触がヤスリを高揚させます。
    美しいものに一歩だけ近付けた。
    迸るような幸福感が脚をのぼり背筋を駆け抜け、頭の中で弾けて。
    そして、ならばもう一歩と求めるのは余りにも自然な事で、ヤスリが走り出すまでにはいくらの時間もかかりません。

    「はは、ははは!」

    いつしか、頬の傷の痛みさえ無視してヤスリは笑い始めました。
    山を駆け下りて乱れる呼吸も、歓喜の爆発を抑えるには全く足りません。

    呼応するように、ピィロロピィルロ、精霊はひどく上機嫌に歌います。
    故郷への想いを薄れさせるその声はやがて、ヤスリがラダとかわした約束も、帰るべき鍛冶場の風景も、綺麗さっぱり記憶の片隅に追いやっていきました。



    そうしてこの日、ジムナスタからは一人の子供が姿を消しました。
    残念ながら行方不明の子供など余りにも日常にありふれているために、とある鍛冶屋の主人を除いては誰一人、彼を心配する者はなかったそうです。

  • 164二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 23:33:20

    ヤスリくんの人生はどうなってしまうのだ…

  • 165◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 23:34:22

    【ここまでのヤスリくん】

    健康:普通
    武力:普通
    鍛治:未熟
    話術:未熟
    知識:カス
    家事:カス
    神秘:得意

    特徴:情動少なめ/精霊好き/記憶障害/旅好き(状態異常)


    【未解決フラグ一覧】

    ・ジムナスタ関連のフラグは凍結されました

  • 166◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 23:39:19

    ダイス君の悪戯で色々考えたラダサウルの過去とか全部無駄になったのちょっと笑う

    まぁ正直ヤスリ君本人は街離れた方がよっぽど幸せになれそう感はあるので……

    最後にダイス振って今日は終わり

    寝ます


    【辿り着いた先】


    発展:dice1d10=(高いほど都会)

    治安:dice1d10=(高いほど安全)

    場所:dice1d10=(高いほど海側)

  • 167◆d4/k1RhItvAy25/09/26(金) 23:40:04

    ミス


    【辿り着いた先】


    発展:dice1d10=2 (2) (高いほど都会)

    治安:dice1d10=5 (5) (高いほど安全)

    場所:dice1d10=10 (10) (高いほど海側)

  • 168二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 23:43:35

    今まで積み上げてきたフラグやら関係性やらキャラやらを全部ぶっ壊しやがったあの一般害悪精霊…

  • 169二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 23:44:33

    寂れた漁村的な感じか

  • 170二次元好きの匿名さん25/09/26(金) 23:46:27

    精霊の悪意に満ちた悪戯に翻弄されてるんだけど元々の環境がグロすぎてこの悪戯に乗っかった方が幸せになれそうという皮肉よ

  • 171二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 03:11:25

    ヤスリくんを誘ったのは旅の精霊なんだろうか

  • 172◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 05:23:36

    歓迎度:dice1d10=6 (6)

  • 173◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 05:27:35

    【村で一番親しい相手】


    性別:dice1d10=1 (1) (奇数男、偶数女)

    年齢:dice1d10=5 (5) (高いほど高齢)

    人種:dice1d10=1 (1) (2〜5で亜人、6以上で人間、1なら???)

    容姿:dice1d10=2 (2) (高いほど美人)

  • 174◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 05:29:13

    【人種1やけど?】


    1.この人だけだよ

    2.村みんながそうだよ


    dice1d2=1 (1)

  • 175◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 05:32:10

    ダイス振ったとこで朝保守終わり

    今日は昼間に書き込みできない予定なんで誰か気がついたら保守お願いします
    (スマホ巻き込み規制食らってるので)

  • 176二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 09:52:12

    ほいほい

  • 177◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 11:12:50

    >>176

    たすかる


    トラブルで予定吹っ飛んで一日暇になったからダラダラ書いてく

    安価ある部分は夜に

  • 178◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 11:20:45

    とある地方のとある海辺。

    スプーンでえぐり取ったような丸い湾のほとりに、ひとつの村がありました。


    人口は百に届かないほどのごく小さな村です。

    住民がつけた名前はクタリ村。

    土地の古い言葉でスプーンを意味する、湾の形をそのまま由来とした呼び名でした。


    主産業は漁業。


    豊かさ:dice1d10=2 (2)


    な漁場からの海産物を糧としています。

  • 179◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 11:28:20

    残念ながらクタリ村はお世辞にも豊かとは言えません。
    人口は百に満たないと言いましたが、正確には百を超えて増やせる余地がまるでない、という方が正しいでしょう。
    湾の中は波も穏やかで漁業自体は難しくないのですが、その穏やかさが逆に災いしてか良くないものがたまりやすいのか魚の育ちが悪い上に、しばしば大量死が起こるのです。

    過去に別の都市を治める領主が海産物目当てに開拓を行ったもののそういった理由から上手くいかず、かといって人々を引き戻して補填をするでもなく……。
    無責任に放置を決め込んだのがクタリ村のはじまりであったそうです。

  • 180二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 11:31:43

    か、寒村…
    でも今までいた街よりずっとマシだな…

  • 181◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 11:34:31

    とはいえ、村の人々は腐る事なく暮らしています。

    海の糧は少ないものの、人口も相応なのでそれなりに食いつなぐ事はできています。
    領主も村の貧しさは承知の上なので税の取り立てもゆるく、物理的な距離と、あとは実質見捨てた後ろめたさからか小うるさく指示や命令が下る事もありません。
    村人はほどほどに働き、ほどほどに愚痴を語り合い、ほどほどの楽しみを日々の営みに見出し暮らしていました。

  • 182◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 11:44:00

    そんな村に、最近よそ者が一人増えました。

    「ヤスリィ! こぉばカタしちょけぇ!」

    「ん」

    ヤスリです。
    ジムナスタの山中で行方をくらましてからしばし経ち、十二歳ほどになった彼は今、クタリ村に滞在していました。

    訛りのひどい中年漁師の指示に従い、ヤスリは小舟を岸に引き上げ、そこに乗っていた様々な漁具をまとめて抱えます。
    向かう先は浜に建てられた掘立て小屋。
    村では主に雑用を担わされているヤスリは、まだ慣れない様子で小屋の中の棚に漁具を仕舞い込みました。

  • 183◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 11:56:05

    小鳥の姿をした精霊との出会いからこちら、ヤスリはずっと旅の空を渡り歩いてきました。
    肩に乗せた青い小鳥に誘われ導かれるままに街から街へ、村から村へ。
    様々な未知の風土と景色を求めての旅路です。

    その道行きに取り立てて語るべき不幸はありませんでした。
    それは何より小鳥のおかげです。
    導きに従っている限り、不思議と獣や賊などと出くわす事はなく、飲み水や野の果実などにありつけたのです。
    オマケに目を見張るような絶景にまで案内してくれるのですから、今や小鳥はすっかりヤスリの相棒と化していました。

    おかげで、ヤスリの旅路は実に充実していましたが……さて、ではどうしてクタリ村に留まっているのかといえば。

    「ピィロロ、ピュイイ」

    「……仕方ないだろ。路銀が貯まるまで我慢してくれ」

    そういうわけでした。
    旅を続けようと不満げに鳴いて頭の周りを飛び回る小鳥に、ヤスリはバツが悪そうに呟きます。

  • 184◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 12:02:40

    小鳥がもたらしてくれる野の果実はヤスリの舌を喜ばせるものでしたが、それだけで腹が膨れてくれはしません。
    生きていくためにはどうしても別の食料が必要で、それは人の手から買うのが最も確実かつ簡単な方法でした。
    なので、辿り着いた街や村で出来る仕事を探して路銀を稼ぎ、日持ちする食料を買い込んではまた旅に出るという事をヤスリは繰り返しています。

    「ピューイ、ピピピ」

    「いてっ! いてぇな、この……!」

    その度に不機嫌な青い小鳥につむじのあたりをつつかれて催促されるのもお決まりです。
    地味に鋭いクチバシの痛みには、残念ながら中々慣れませんが。

  • 185◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 12:10:41

    「ヤスリィ、今日の分だぁ。こだば、もっでげ」

    そんなヤスリに近付き、中年漁師が魚を差し出します。
    クタリ村では良く取れる白身の魚でした。
    キラキラとした銀色の鱗は綺麗なものの、痩せていて可食部はそう多くありません。
    漁師に忙しく指示を出されて汗水垂らしたにしては、ややみすぼらしい報酬でした。

    よそ者に対する冷たさ、ではありません。
    単にこの漁場で取れる魚の平均がこんなものなのです。
    見れば、漁師自身が持ち帰る魚たちもおよそ似たようなものでした。

    村人たちは旅の子供だからとヤスリを甘やかすような事はしませんが、逆に冷遇するような事もしようとはしません。
    働いたなら働いたなりの報酬を与えてくれています。

  • 186二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 12:13:38

    すごいちゃんと報酬をくれてる…!

  • 187◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 12:23:04

    なんとなく、ありがたい事なのだろうなぁという感慨がヤスリにはありました。
    ですが、その感情がどこから来るものなのかは判然としません。

    ヤスリは、自分がどこで生まれてどう育ったのかをほとんど忘れています。
    故郷、というものを思い出そうとしてもモヤがかかったようで、相棒の小鳥がピィロロと鳴く度にさらに曖昧になっていくのです。

    彼が今持つ記憶の始まりは、山中から見た真紅の夕暮れでした。
    そこより前は、もう良くわかりません。

    「明日もなぁ、だのむぞ。寝坊すんなや」

    「……──うん、気ぃつける」

    「おう、しだらな」

    幸いなのは、ヤスリがそれを気に病んでいない事でしょう。
    故郷であるジムナスタに、彼は強い思い入れはありません。
    むしろどちらかと言えば疎んでいたと言って良く、師であったラダや同居人のサウルについてもそこまで心を許していたわけでもなく、後ろ髪引かれる理由がなかったのです。

    唯一、誰かと約束をかわす時に「自分は約束を守れるような人間ではない」と考えてしまう事だけが、後遺症のようなものでした。

  • 188◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 12:31:13

    ヤスリは漁師とかわした言葉を何度か反芻してから、魚を手に掘立て小屋のひとつに移動しました。


    並ぶ小屋のうちで最も古く最もボロい一軒です。

    もう漁師たちは使っていないそれを、ヤスリはクタリ村での宿として借りていました。


    村の長から許可を得る際に言われたのは、不便があるなら自分で補修をして使え、との事。

    あわよくばヤスリが上手く直してくれれば立ち去った後はまた再利用出来るかも、などと考えていたのかも知れません。


    補修:dice1d8=7 (7) (未熟な技術、上限8)

  • 189二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 12:33:09

    だいぶしっかり補修できてんじゃん

  • 190◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 12:37:07

    そんな村長の考えはどうやら見事に当たったようです。

    村で出た廃材を壁や天井の穴につぎ当てし、乾燥させた流木で柱を補強し、腐って落ちていた棚板もしっかりと直されています。
    元が元だけに終の住処とするには余りにも貧相ですが、いっときの滞在にならば不満はそうそう出ません。

    これには村長も、ヤスリが立ち去った後に利用できる漁師たちもホクホクです。
    ヤスリが正当に報酬を与えられているのは、彼らがこの働きを見たからかも知れません。

  • 191◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 12:45:46

    そんな小屋の横では、魚が干されていました。


    これはヤスリがこれまで働いて得た魚たちを加工したもの。

    保存食になる干し魚の作り方を村人たちから学んだのです。


    見捨てられたド田舎であるクタリ村では金銭を労働の報酬として得る事はできません。

    が、ならば金銭を経由せずに直接旅用の食料として得られれば良い。

    そんな単純な話でした。


    今日の報酬もまた、同じように加工に取り掛かります。


    調理:dice1d6=4 (4) (カスな技術、上限6)

  • 192◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 12:52:57

    その手つきはたどたどしいものでしたが、慣れないならばその分時間をかければ良いと、ヤスリは丁寧に作業を行います。

    ナイフを慎重に魚の腹に差し込んで、内臓を引き抜き、骨に沿って開きの形へ。
    そうしたら海水で洗ってから少し置きます。

    半乾き程度になったなら、おこした火で炙り焼きに。
    しっかりと火が通れば焦げる前に取り上げて、干し台に移して本乾燥を行います。

    焼き干し、という手法でした。
    焼きと干しで水分が飛んでカラカラになり、長期保存が可能になるという村の知恵です。
    過去に湾の魚の大量死が起きた折、何度もクタリ村を救ってきた保存食なのだとヤスリにこれを教えた者は語っていました。

  • 193◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 12:56:14

    と、そんな所へ。


    「オ、オォ、イイ、ニオイ、ダ」


    ヤスリの背後からそんな声が聞こえました。


    掠れてくぐもった片言のそれは、



    【人種ダイス1】


    1.サハギン

    2.スキュラ

    3.セルキー

    4.アーヴァンク

    5.ディープワン


    dice1d5=5 (5)

  • 194二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 13:00:05

    深きものどもが居んのこの漁村…?!

  • 195二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 13:00:56

    クトゥルフ要素ある感じ?

  • 196◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 13:05:20

    カエルと魚の合いの子のような姿の異形の種族から発せられたものでした。

    ヤスリが声に振り返れば、そこには人型の手足を持ちながらも、全身を魚の鱗に覆われた巨体があります。
    指の間にヒレのついた手をダラリと垂らして、体を左右に揺らしながらノソノソと歩みくるそれは、カエルめいた、いまいちどこを見ているかわからない両目と良い、大きな口と良い、なんとも不気味な顔。
    ヌメついた表皮の質感とあわせて、唐突に出くわせば大の大人でも悲鳴を上げかねません。

    すわ、異界の魔物の襲撃か、という絵面ですが。

    「うん。今、焼いてたから」

    「ワ、ワテ、てくれる、カ?」

    「ダメ。保存食」

    「グゥ、ウ」

    ヤスリは平然と対応し、異形もまた襲うでも威圧するでもなく、対等に言葉をかわします。

  • 197二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 13:12:45

    友好的で草

  • 198二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 13:14:23

    心開く相手が人外ばっかりやんけ

  • 199◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 13:20:25

    それもそのはず。
    この異形、なんと村の一員なのです。

    種族をディープワン、あるいは深きものと自称する彼らは深海の生物であるとの事でした。
    海辺に住む事もあるとはいえ基本的には陸の生物である人間と、彼らディープワンの間には真っ当な友好関係はありません。
    むしろ稀にですが船や漁村を彼らが襲う事もあり、敵対的な異種族として知られています。

    そんな中にあり、この個体は結構な変わり者でした。

    過去のとある時、深海から浮上して浜に上がった折に近くで野営していた人間たちが慌てて逃げ、食べかけの食料だけが残された、という事があったのだとか。
    彼はふとした気まぐれでその食料、焼き魚に手を出してひとかじりし……あっという間に虜になったのだそうです。

    「……火は、残ってる」

    「オ、オォ、ありが、タイ」

    そうして、このディープワンは人類への友好性を獲得しました。
    水性生物らしく熱が苦手なために火おこしは人間に頼らざるを得ず、必然的な流れだったのでしょう。

    もちろんその異形の姿と、同種の過去の行い故にはじめは一悶着あったそうなのですが、なんやかんやの末にクタリ村に居着く事に。
    海中で呼吸できる上に魚同然にスイスイ泳げる彼は、今や村の漁師の稼ぎ頭です。

    今日もまた素潜りのモリ漁で捕らえてきた魚をヤスリがおこしていた火にかけ、立ち上る香りに涎を垂らし始めました。

  • 200◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 13:34:33

    ……とはいえ、それでもやはり異形は異形。
    居着く事は許されても完全に溶け込む事は出来ません。

    彼、名前をラロと名乗っているこの個体は、村人たちからどこか遠巻きにされています。
    ヤスリよりもずっと先に村に加わっていながらにして、扱いは未だよそ者。

    なので、ラロにとって今最も親しいのは異形をあまり気にする事なく接してくれたヤスリであり、ヤスリにとってもしょっちゅう近寄ってきて火をねだるラロがこの村における最大の友人でした。

    「ア、アァ、ソウ……きょウ、ノ、火ノ、レイ、ダ」

    「ん、たすかる」

    「イイ、テコト、ヨ」

    そこには互いに少しの打算もあります。
    ラロは嫌な顔をされずに火を得られ、ヤスリは報酬に追加の魚を手に入れられる。
    お互いに得のある関係というやつでした。
    先程のようにラロがヤスリの魚をわけてもらおうとするなど、ちょっと甘えてくるような場面も時にはありますが。

  • 201◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 13:40:48

    「……ア、アト、ドレクライ、イル?」


    程よく焼けた魚を一度海水に漬けて冷やし、骨ごとバリバリムシャリ。

    豪快に牙を立てて貪ってから、ラロはそうヤスリに尋ねました。


    ヤスリはいつまでクタリ村に滞在できるのか、という問いです。

    それに対し、ヤスリは小屋横の干し台を眺めて言いました。


    期間:dice1d6=6 (6) (単位=週間)

  • 202二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 13:45:50

    1ヶ月ちょい位居るのか

  • 203◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 13:46:09

    「……一月半くらい、かな」

    「オォッ」

    「ピュイイ!?」

    ヤスリがそう言うと、正反対の反応がふたつ返ってきました。

    ひとつは目の前のラロから。
    鋭い牙の生えた大口をガパリと開けて喜色満面といったところ。
    彼の予想よりも長い友人の滞在期間にテンションが爆発したようです。

    もうひとつはヤスリの頭の上から。
    そんな事聞いてないぞ!? といった風の驚愕がこもった鳴き声はもちろん青い小鳥のものです。
    その身に宿した力からしておそらく「旅」の精霊か何かなのだろう彼には六週間の停滞は我慢ならないものなのでしょう。
    ヤスリのつむじに突き刺さるクチバシの勢いは普段に増して強いものでした。

  • 204◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 14:00:11

    「ソウカ、ソウカ。オォ、そうカァ」

    上機嫌に何度も頷くラロを尻目に、拗ねたように「ヒッヒッ、クククキィー」などとくぐもった鳴き声を上げてから小鳥は飛び立ちました。
    空高くをグルグル周回した後にどこかへ消えてしまいましたが、そのうちに戻ってくるでしょう。
    これまでの旅の間にも何度かこういう事はありましたが、小鳥が完全にヤスリと別れる事はありませんでしたから。

    なので、今のところヤスリは予定を変えるつもりはありません。

    クタリ村は、居心地が良いのです。
    何故刻まれているのかも忘れてしまった醜い傷痕を目にしても、顔を歪める事はあっても迫害はしてこない村人。
    キツい肉体労働ではあるものの正当に得られる報酬。
    雨風をしのげるしっかりと補修の済んだ小屋。
    そして、自分が村に居る事を喜んでくれる奇妙な友人。

    旅の中で、これほど好条件が整う場はそうそうありません。

    (……焼き干しは長持ちするっていうし、軽いからかさばらないし……もう少し作っておきたいよな)

    言い訳めいて湧き上がったそんな思考は、理性ではなく感情を根にしているのかも知れませんでした。

  • 205◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 14:02:38

    ここから先は安価が出てくるからまた夜に

  • 206二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 14:02:52

    おつおつ

  • 207二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 18:42:15

    夜の部は何時からだろうか

  • 208◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 18:58:13

    20時から書くやるねー

  • 209二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 19:18:56

    わーい待ってる

  • 210二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 20:01:55

    全裸待機

  • 211◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 20:11:45

    さて、そんなクタリ村での生活ですが、そう忙しさはありません。


    明け方が最も魚が獲れるという都合で朝こそ早いものの、村人がその日食べる分と加工して保存する分を獲れれば仕事は終わりです。

    そもそもが豊かな漁場ではないのであまり頑張ったところで見返りもなく、見放された村にやってくる行商なんてほとんど居ないので売り物にする分を獲る必要もないのです。


    村は貧しく、しかしそれでものんびりとした時間が流れていました。

    だからこそ、ヤスリやラロを受け入れる余地があったという事かも知れません。


    そんな村での生活は、残り一月と半分。

    そのうちの最初の二週間ほど、さてヤスリは空いた時間をどう過ごすのでしょうか。


    【選択肢】


    1.海を眺めて体を休める(健康+)

    2.漁に出て大物を狙う(武力+)

    3.漁具の修繕を手伝う(技術+)

    4.村人たちと交流する(話術+)

    5.村人から生活の知恵を学ぶ(知識+)

    6.より美味しい魚の食べ方を研究する(家事+)

    7.海辺特有の精霊を探す(神秘+)

    8.その他自由安価(何が育つかは適当に決定)


    >>212

  • 212二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 20:12:50
  • 213◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 20:29:59

    その日も早朝からの仕事を終えて、ヤスリは仮宿の掘立て小屋を出ました。

    すでに今日の報酬として得た魚の加工も済み、ついでにそのうちのいくらかを食べて腹もくちくなっています。
    調理の間に体もそれなりに休めたので活動を始めるにはちょうど良い頃合いでした。

    「オ、イクのカ?」

    「うん。ラロはどうする?」

    「イ、イヤ……イイ。ジャマ、ニナル」

    それに、残り火を利用していたラロが反応します。
    ヤスリは共に行くかと聞いてはみたものの、返事がかんばしくないのは分かっていた事です。

    最近、ヤスリは空き時間をクタリ村の人々との交流にあてていました。
    かつてジムナスタにいた頃よりも、彼は他者との対話を重視しているようです。
    旅の空で必要性を実感したのか、それとも記憶をなくした事が影響しているのか、ヤスリの口数は以前よりも随分と増えていました。
    それでもまだまだ物静かな部類の少年ではありますが。

    そんなヤスリと村人との交流にラロはあまり参加したがりません。
    不気味がられて距離を取られている自分が行けば村人を萎縮させて邪魔になってしまうと、そう考えているようでした。
    今もそれがわかりやすいくらい、並の大人よりもずっと大きな異形の体を丸めて俯いています。

  • 214◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 20:32:06

    【選択肢】


    1.(村に居る間に仲を取り持ってやれたらいいな)

    2.(本人の問題だ、本人に任せよう)

    3.(見た目の割に臆病だよな、こいつ)


    >>215

  • 215二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 20:32:47

    1‌

  • 216二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 20:33:24

    ちなみにディープワンこと深きものどもの見た目はこんな感じだったりする(デカい異形の半魚人)

  • 217◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 20:43:15

    (村に居る間に仲を取り持ってやれたらいいな)

    なんて、ヤスリは体を縮こまらせるラロを見て思いました。

    ラロはこれで気の良い奴だとヤスリは知っています。
    旅人のヤスリに村に留まって欲しいと思いながらも無理に滞在を伸ばさせようとはせず、残り火を使う度に律儀に礼は持ってきて。
    さらにこうして村人の心情を慮って寂しさを堪えようとする面もありました。
    彼がヤスリに見せる態度を思えば、他者と笑い合って過ごす時間に価値を感じているだろう事は明らかなのにです。

    なので、ヤスリは少しばかり村へ向かう足取りを強めました。
    所詮ヤスリはよそ者の旅人です。
    やれる事は多くないでしょう。
    けれど、この村に残っている間にやれる事はやっておきたいと、うなだれる友人を想う心は持ち合わせていました。

  • 218二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 20:47:41

    あんな町出身なのに大分優しいな

  • 219二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 20:50:03

    このレスは削除されています

  • 220二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 20:50:26

    >>218

    まぁ旅の精霊から精神汚染受けたりしてるしな…明らかに記憶に影響きたしてるみたいだし

  • 221◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 20:55:56

    クタリ村の人口は百に届きません。

    そんな少なさでは全員が親戚のような付き合いをしています。

    というか、実際にほぼ全員に濃い薄いの差はあれどなんらかの血の繋がりがありました。

    こんな辺鄙な村に外から新しく住人が増えるなんて事はそうそうあるわけもないので当然の事です。


    なので、村の家屋もほとんど一塊に密集していました。

    それぞれの家々の役割は夜に寝るところといった程度。

    魚を捌いて焼くのも村の中心に据えられたかまどを中心とした屋根付きの一画でまとめてのことですし、子育ても村の女手総出での共同作業です。


    そんな中に、ヤスリは近付いていき。


    「よ」


    と、集まって遊ぶ村の子供たちに片手をあげます。


    子供懐き度:dice1d6=4 (4) (カス話術、上限6)

  • 222二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 20:56:40

    ヤスリくんこの村に来てからあからさまなくらいダイスの出目が上振れまくってるな

  • 223◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 21:01:20

    【村の子供A】


    性別:dice1d10=9 (9) (奇数男、偶数女)

    人種:dice1d10=7 (7) (1〜3で亜人、4以上で人間)

    容姿:dice1d10=3 (3) (高いほど美人)


    【村の子供B】


    性別:dice1d10=5 (5) (奇数男、偶数女)

    人種:dice1d10=6 (6) (1〜3で亜人、4以上で人間)

    容姿:dice1d10=2 (2) (高いほど美人)


    人種ダイスの異形種枠は村にラロだけと判定されてるので今回は無し

  • 224二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 21:03:18

    相変わらず子供はあんまり容姿良くないんだよなこの世界…

  • 225◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 21:17:05

    すると、子供達の側からも同じく片手をあげての挨拶が返ってきました。

    「おう」

    と短く言いながらニヤリと口の端を上げているのはルマ。
    村の子供たちの中では一番活発かつ生意気な性格で、皆を率いるリーダー格の男の子です。

    「あっ、ヤスリ、今日も来たんだ」

    ルマの後ろから覗くようにしているのはジェム。
    ルマとは対照的に理知的で落ち着いた男の子でした。

    歳の頃はどちらもヤスリと同年代ということもあり、村の「人間」の中ではヤスリにとって最も付き合いやすい相手でした。

    この二人は大体セットになっている印象で、動きの鈍いジェムをルマが引っ張ったかと思えば、暴走しがちなルマをジェムが引き留めたりと相性が良さそうな感じです。

    他に特筆すべき点としては……二人とも、外見という点ではあまり恵まれていません。
    これは村人たちのほとんどに共通する特徴でした。
    血が閉じている以上、顔の作りは似たり寄ったり。
    大きな傷跡がなければヤスリも彼らと同程度なので、そういった共通点もまた、掘立て小屋修復の功績と合わせて村人の共感を得たのかも知れません。

  • 226二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 21:34:53

    明確に下だと認識してたから馴染めたという閉鎖的な田舎特有の嫌な生々しさよ

  • 227◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 21:41:44

    「おいヤスリィ、お前今日も船に乗ってただろ」


    「ね。俺も見たよ。ずるいよねヤスリばっかり」


    そんな二人は挨拶を終えるや、左右からヤスリを挟んで絡み始めました。

    逃がさんぞとばかりに肩を組んで、じっとりと半目でヤスリの顔を覗き込みます。

    内容は、ヤスリが仕事のために漁師の船に乗っていた件について。


    村の漁場である湾は波が少なく穏やかなのですが、それでも薄暗い早朝の漁には幾らかの危険もあります。

    そんな中にまだ心身共に未熟な子供を伴いたい者は多くなく、ルマやジェムが朝の漁で船に乗れるのはもう一年か二年は後の事でしょう。

    それまでは漁具の修繕や魚の解体調理、船や掘立て小屋の清掃などが彼らの役割です。


    ですがそこに来て、ヤスリは当たり前のように毎朝の漁に同行しているのです。

    これはヤスリが陸仕事で真面目に働く姿を見せた事や立場を弁えた振る舞いをした事も多少は影響していますが、最大の理由は事故で死んだところで村に損のないよそ者である点です。


    なので彼らがまだ船に乗れないのは親に、そして村に愛されているからと言えるのですが……。

    まぁ、この年頃の男の子にそれを理解しろというのも無理がある話です。

    俺がダメなのになんでお前は、という反感は自然なものでした。

    むしろ、こうして絡むだけで済ませ、いじめなどに発展しないあたり十分に理性的な振る舞いと言えるでしょう。


    【選択肢】


    1.漁の体験を語って聞かせる

    2.話を逸らす

    3.楽しんでるわけじゃないと苦労を語る

    4.その他自由安価


    >>228

  • 228二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 21:43:19

    4.俺は精霊が見えるから特別に乗せてもらってるんだと子供たちの興味と好感度を稼げそうな特別な力を示唆しつつ話題を逸らす

  • 229◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 21:54:18

    「それは……」

    と、そこでヤスリは思いつきました。

    このダルく絡んでくる二人に対して有効なのは話を逸らしてしまう事でしょう。
    特にルマの方は好奇心が旺盛で、他に何事かあればアッサリとそちらに気を取られて不満を忘れるタイプです。
    そして、彼らが興味を持ちそうな事にヤスリは心当たりがありました。

    「俺、精霊が見えるからな。それでちょっと役に立つから船に乗れるんだ」

    ヤスリはそう嘯きました。
    それは実際全くの嘘でもありません。
    精霊は大体どこにでもいるもの。
    漁の最中にも様々な種類の精霊を見かけ、そこから海の変調を読み取ってちょっとした貢献が出来ることもあったのです。

  • 230二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 21:59:16

    やっぱり精霊が見えるって便利だな…危険もあるけど…

  • 231◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 22:07:26

    「……精霊?」

    それに、二人はポカンとした顔。
    全く予想していなかったという感じです。

    仕方のない事でしょう。
    精霊を目視できる者は希少とまでは言いませんがそう多くなく、この村にはせいぜいが「そこにいるかも」と気配を感じ取れる者が何人かいる程度。
    そういった者もそれが精霊だという確信はなく、なんとなく勘が鋭い人間と自他共に考えているようです。
    そんな状況では精霊への造詣など深まるわけもなく。

    「精霊ってアレか? 子供攫うやつ」

    「あ、俺知ってる。前に来た旅人さんがそうでしょ。子供の頃に攫われて体いじられたって言ってた。犬の耳と尻尾生えてた人」

    村人の平均的な認識としてはそんなものです。
    存在する事は知られていても、目に見えず、交流もできないならば、誤解ばかりが広まるのも当然の事でした。

    「……」

    いや、誤解でもないかなとヤスリはふと考えます。
    冷静になれば、ヤスリは青い小鳥に現在進行形で誘拐されていると言って間違いありません。
    ヤスリ自身、今の境遇に不満はないので問題になっていないだけです。

  • 232二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 22:09:36

    身体改造されるパターンもあんのかよ怖…そう考えると旅の精霊というひたすら旅をさせるだけの奴に引っかかったのは幸運な方だな…

  • 233◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 22:23:45

    「別に、精霊って人攫いだけじゃない」

    気付きはともかく。
    二人が軽く興味を持った様子なのを良い事に、ヤスリは話を続けました。

    精霊とは何か。
    ヤスリも正式に学んだわけではありませんが、経験則としてわかることはそれなりにあります。

    多くの人々の目には見えず、音も聞こえない事。
    精霊自身が望まない限り物体を透過する事。
    一般的な虫や獣に似た姿をしている事。

    そして、それぞれが何か司るものを持ち、その力を強める性質を持つ事。

    例えば火の精霊の近くでは炎は温度と火勢を増し、水の精霊が暮らす泉は淀んで汚れる事がありません。
    ヤスリが旅の途中で小鳥に案内されて訪れた泉には大抵水の精霊がコロニーを形成しており、そこでは生水をたらふく飲んでも腹を下す事はなかったという体験談も付け加えます。

    ルマたちが言ったような害ある精霊もそれなりにはいますが、適切に付き合えれば益のある存在であるのです。

  • 234二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 22:26:08

    やはりヤスリくらい精霊の姿形を五感で完全に知覚できるレベルまで神秘の能力が高い人はレア寄りではあるんだな

  • 235◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 22:31:22

    「ホントかぁー?」

    「それ、運が良かっただけとかじゃないの?」

    ですが、ヤスリの言葉にルマとジェムは懐疑的です。
    それも当然。
    目に見えない物を、まだ付き合いの浅いヤスリから聞いただけで信じるのは難しいでしょう。
    むしろ簡単に信じてしまう方が心配になるというものです。

    なのでヤスリはより彼らの興味を惹きつけるように、意図して表情を作りながら言いました。
    提案するのは不信に対する特効薬。

    「なら、試してみるか?」

    つまりは実証実験です。

  • 236二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 22:31:24

    神秘8が明確にどの程度か分からんけど、ジムナスタのドンが一瞬目を留めるぐらいには珍しいんやろうね

  • 237二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 22:36:00

    ヤスリの血縁上の母親が元々神官とかそういう神秘の能力が高そうな家系の人の可能性がありそう

  • 238◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 22:41:01

    「……あそこ、海鳥が群れで飛んでる。見える?」

    ヤスリは二人を連れて掘立て小屋が並ぶあたりにやってきました。
    そこからグルリと見渡して、ちょうどいい精霊が居るのを発見します。

    「……なんも飛んでねーけど」

    「本当にいるの?」

    ルマたちにはやはり見えないようですが、ヤスリにはハッキリと見えています。

    それは海鳥の姿をしていました。
    具体的にはカモメです。
    通常の海鳥との違いは、羽から潮水らしき飛沫を散らし、飛んだ軌跡を空に描いている事。

    村での暮らしの中、すでに安全性と、そして交流の方法を確立した相手です。
    精霊についてレクチャーするにはまさにうってつけでした。

  • 239二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 22:43:18

    これヤスリレベルでハッキリと精霊を知覚出来てたら普通の動物とかだと思ってたものが実は精霊でほかの人には見えてませんでしたってパターンがそこそこありそう

  • 240◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 22:49:37

    ヤスリは指を口に当て、強く息を吹きました。

    そして高い音が……鳴りません。
    口笛でも吹くのかと思いきや、ヒューヒューと息が漏れるだけ。

    「……何してんだ?」

    そんなヤスリにルマは呆れた様子ですし。

    「あはは、こうだよ、こう」

    ジェマは手本を見せるようにピューイと口笛を吹いてみせます。

    しかし、それには構わずヤスリは息を吹き続けます。
    ヒュウヒュウ、フスゥ。
    どことなく間抜けな姿に、二人は段々と興味を薄れさせているようでした。

    そんな時です。

    「……来る」

    ヤスリがポツリと言います。
    彼が見つめる先、空を飛んでいた海鳥の群れ、その先頭の一羽がピクリと頭を巡らせました。
    どうやら、ヤスリの発する音を聞きつけたようです。

  • 241◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 23:00:32

    先頭のカモメが首を下げてヤスリを見つめます。
    そうしてそのまま真っ直ぐに急降下。
    十羽ほどの群れはそれに引っ張られるように続いて、全体が勢いよく突撃してきます。

    それにヤスリは動じません。

    「砂が目に入るかも。気をつけて」

    そう一言だけ二人に伝えると、一際強く息を吹きました。
    ヒュウウ、と。
    次の瞬間、ついにカモメはヤスリ達三人の間を飛び抜けて……。

    「おわっ!?」

    「ひゃあ!?」

    同時に、潮の香りをまとう突風が彼らを襲います。
    それまでは緩やかに流れるだけだった風の突然のイタズラに、ルマとジェムは驚いた様子でタタラを踏みました。

    対して、ヤスリは通り抜けていったカモメたちに振り向いて手を振ります。
    返事のように尾羽を揺らしてまた上昇していく彼らは海風の精霊でした。
    好むのはある強さの風の音色で、それを模した音を立ててやれば引き寄せられると数日をかけた実験でヤスリは学んでいたのです。

  • 242二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 23:05:15

    生まれつき精霊がそこに居るのが当たり前だっただけあって精霊の扱いが手馴れてるなあ

  • 243二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 23:09:57

    見えない人からしたら自然現象操ってるのと同義やん

  • 244二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 23:14:50

    この世界で精霊にめちゃくちゃ愛されてるお願いを聞いてもらいやすい人は魔法使いみたいな扱い受けてそう

  • 245◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 23:18:08

    そういった事を説明すると、ルマとジェムは目を白黒させました。

    これまで存在を意識もしなかったもの。
    しかも目に見えず、声も聞けず、触れられもしません。
    だから確信なんてまだ持てないようですが、それでもヤスリが今起こしてみせた事は確かに自身が体験した事実としてわかります。

    「……え、ほんとに?」

    「うん」

    それは少なくとも、彼らにとっての精霊を「迷信」や「言い伝え」から「本当にいるかもしれないもの」に引き上げるには十分だったようです。
    ジェムは恐る恐るヤスリに問い掛けましたし、ルマなどは驚きから立ち直るや早くも自分でも試そうとヤスリの真似をして息を吹き始めました。

    「ひゅー、ふすー! ……だー! 風こねぇ! おいヤスリ、どうやったんだよ今の!」

    どうやら、彼らの興味を強力に惹きつけるには十分な出来事だったようです。
    不思議な力を自分もとねだる彼らに、ヤスリは応じてコツを伝授しました。
    その甲斐もあり、いくらかの練習の後にはルマたちもカモメの好む音色の習得に成功します。

    残念ながらそれは彼らの演奏がまだ拙いのか、それともヤスリにあり彼らにない素養が影響しているのか、ヤスリの時よりは弱い風でしたが。
    それでも自分たちでも精霊を通して風を呼ぶ術を身につけた事で、彼らは精霊の存在をついに確信するに至ったようです。

  • 246二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 23:20:44

    意外と簡単に使えるようになるもんなんだな精霊にお願い事をする方法。まあ神秘の素養が無いとやはり確実性が無くてちょっとした手品レベルっぽいが

  • 247◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 23:25:50

    一連の出来事の後、ルマとジェムのヤスリを見る目は全く変わりました。

    一目置かれた、という表現がまさに適切でしょう。
    こいつはすごいやつで、俺たちの仲間だ。
    そんな好意的な感情が宿っているのが見て取れます。

    「……精霊は、好きな音とか匂いがするとこに寄ってくだけで、俺たちが好き勝手に操れるものじゃないからな」

    「おう、わかってるわかってる!」

    「覚えとく! ……で、精霊って他にどんなのがいるの?」

    そんなヤスリの忠告もちゃんと聞いているのかどうか。

    ですがまぁ、ともかく。
    彼らと交流を深めるという目的はしっかりと達成できたようでした。

  • 248◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 23:28:53

    【ここまでのヤスリくん】

    健康:普通
    武力:普通
    鍛治:未熟
    話術:未熟+(UP)
    知識:カス
    家事:カス
    神秘:得意

    特徴:情動少なめ/精霊好き/記憶障害/旅好き(状態異常)


    【未解決フラグ一覧】

    ・村に溶け込めないディープワン
    ・精霊に興味を持った子供達

  • 249◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 23:30:17

    次の二週間


    【選択肢】


    1.海を眺めて体を休める(健康+)

    2.漁に出て大物を狙う(武力+)

    3.漁具の修繕を手伝う(技術+)

    4.村人たちと交流する(話術+)

    5.村人から生活の知恵を学ぶ(知識+)

    6.より美味しい魚の食べ方を研究する(家事+)

    7.海辺特有の精霊を探す(神秘+)

    8.その他自由安価(何が育つかは適当に決定)


    >>250

  • 250二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 23:32:05

    7.海辺特有の精霊を探す

  • 251◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 23:33:01

    決まったとこで今日はここまで
    寝ます

  • 252二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 23:34:27

    おつおつ

  • 253二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 23:41:51

    ヤスリくんがちゃんと子供らしく友達作ったりできてる時点でやっぱり攫われてて正解だったのかもしれん…

  • 254◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 23:51:18

    寝る前に気付いたから懺悔

    成長前のヤスリくんの話術、「カス」だと勘違いしてたけど「未熟」だったから子供達相手のダイスは1d6じゃなくて1d8スね……

    あと神秘は「得意」なんで青い小鳥遭遇時の観察ダイスは1d10じゃなくて1d12スわ……

    再振りして、元より高い数字だったら後の展開でなんかボーナスします


    子供:dice1d8=3 (3)

    青鳥:dice1d12=1 (1)

  • 255◆d4/k1RhItvAy25/09/27(土) 23:51:54

    ヤスリ君絶対攫うマンじゃねぇかこの鳥……

  • 256二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 00:00:30

    なんだか知らんがヤスリくんはものすごくこの鳥の琴線に触れたらしい

  • 257◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 07:00:26

    朝保守ついでのダイス


    精霊発見:dice1d10=6 (6)

  • 258◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 07:24:03

    1.浜の砂の中から淡く光る触手を伸ばす巻貝

    2.掘立て小屋近くにたむろする赤茶色のフナムシ

    3.海底近くを漂う虹色の粘液を垂れ流すクラゲ

    4.磯で日向ぼっこする水かきつきのヌメヌメした猫

    5.背の低い植物に潜む葉の鱗を持つ小型のヘビ


    dice1d5=3 (3)


    (有益3:有害2)

  • 259◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 07:30:45

    【村の大人A】


    性別:dice1d10=3 (3) (奇数男、偶数女)

    年齢:dice1d10=3 (3) (高いほど高齢、1で成人したて)

    人種:dice1d10=9 (9) (1〜3で亜人、4以上で人間)

    容姿:dice1d5=4 (4) (高いほど美人、この村では上限5)

    対ラロ好感度:dice1d6=3 (3) (高いほど友好的、上限6)

  • 260◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 08:17:26

    ホスト規制チェック

  • 261◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 08:18:16

    開いてんじゃーん!
    昼にちょっと書く
    安価は夜

  • 262二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 12:01:12

    平均辺りの容姿の人か地味に初めてなのバグだろ

  • 263◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 12:57:52

    「な、ヤスリ。俺にだけちっと教えてくれんか。風呼びの他にもなんか隠し種あんだろお前」

    「……いや、別にないよ」

    「まーたンな事言ってからに」

    ルマとジェムの二人に精霊が見える事を教えてから十日ほどが経ちました。
    その間にあった変化といえばまさにこれでしょう。

    今日も早朝から漁の船に同乗していたヤスリは、本日の雇い主である男からそんな風に話しかけられていました。
    彼はマハ。
    村の漁師の中では若手に数えられ、整った(あくまでクタリ村基準、実際のところは中の下がせいぜい)顔つきと引き締まった体のために女性陣の人気が高い人間でした。
    そのためか自己肯定感が強く、何事も自分がやれば上手くやれると大きな自信を持ちがちなのが特徴です。

    今もまた、マハは笑みの奥から隠しきれない自信を滲ませて、小舟の上でヤスリに迫っていました。
    海風の精霊以外にももっと面白い、具体的には自分たちの暮らしを楽にしてくれる精霊の存在を聞き出してやろうという魂胆のようです。

    ヤスリはそれに淡々と否定を返しながら、ルマたちに口止めをしておくべきだったなと反省中。
    対人関係においてはまだまだ未熟な彼らしい失敗と言えるでしょう。

  • 264◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 13:05:55

    「そう隠すなって。まぁ見てろよ」

    溜め息を吐くヤスリを前に、マハは指を口に当てました。
    それはまさに先日ヤスリがルマたちに教えた風呼びの方法です。
    気付いたヤスリが止めようとする前に、マハはさっさと風を模した音色を吹き鳴らしてしまいました。

    ひゅうぅ、とマハの口から流れる音。
    普段から口数の多くないヤスリでは咄嗟に口を開くのが間に合わず、それは上空のカモメ型の精霊に届きます。

    「ば……!」

    か、と言いかけたのを慌てて飲み込んでいる間に。

    「はっはぁ! どうだ、俺もやるもんだろう!」

    精霊がもたらした突風が小舟を揺らします。
    ヤスリのそれよりは多少弱く、しかしルマたちよりもずっと強い風は陸に戻ろうとしていた小舟を急加速させました。
    必然的に揺れが激しくなり、ヤスリは必死に小舟のヘリにしがみつかざるを得ませんでした。

  • 265◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 13:13:27

    突然の揺れに振り回されるヤスリ。
    それに対して全く小揺るぎもしない鍛えられた体幹でもって立ったままのマハは、ワハハと誇らしげに笑ってから言いました。

    「な? 風呼びはどうやら俺が一番上手いみたいでな。見えはせんが、扱いならそれなりのもんじゃないか?」

    風に翻弄されたヤスリがじっとりと睨むも、マハは動じません。
    また、言葉では「それなり」などと言っていますが態度はもっと大きなものです。
    むしろ、知りさえすれば子供でしかないヤスリよりも大人である自分の方が上手くやれるという、そんな傲慢な確信が透けて見えていました。

    本当に失敗だったと、ヤスリは改めて反省します。
    こんな事ならば伝えるべきではなかったと、心の底から思いました。

    ですが、もう伝えてしまったのは仕方ありません。
    なのでせめて、精霊との付き合い方をもっと深く教えておかねばならないでしょう。

  • 266◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 13:23:56

    「……それ、もうやらない方がいい」

    出来るだけ真剣に聞こえるように、低い声でヤスリは伝えます。

    同時に、視線を上空へやりました。
    マハが音色を止めた今、カモメたちはまたそこへ戻り悠々と空を泳いでいます。

    「海風の精霊、増えちまってる」

    ヤスリの言葉通り、カモメたちは数を増やしていました。
    その差はほんのわずかなものですが、確実に。

    「うん? それの何が悪いんだ?」

    精霊について良く知らないマハは首を傾げてそう言いますが、これは明確に悪い兆候です。

    ヤスリは先日ルマたちに教えた事を、改めてマハに教えます。
    精霊はそこに居るだけで、自身が司る物事を強める力を持ちます。
    例えば火の精霊の近くでは炎が温度を増すように。

    「このまま増え続けたら海風がどんどん強くなる。……そのうち行くとこまで行ったら、船なんか出せない嵐の日が毎日続くようになるぞ」

    そしてカモメの場合は、極端な話をしてしまえばそんな壊滅的な未来もありえました。
    とはいえ、それは本当に極端な例。
    このままの増殖が一年二年と続いたならば、という話ですが、ヤスリはあえてそこは言いませんでした。
    警戒心を少しでも多く煽るためです。

  • 267◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 13:24:20

    半端だけど時間なくなったから昼はここまで
    また夜に

  • 268二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 13:34:29

    おつおつ

  • 269二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 19:57:13

    そろそろ全裸待機しとくか

  • 270◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 20:41:59

    ちょっと遅くなった
    これから書くよ

  • 271二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 20:54:52

    わーい待ってた

  • 272◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 20:56:28

    「ちょ……おいおい、そんなまさか大袈裟な」

    ヤスリの脅しにマハはギョッとしたものの、すぐに軽く笑い始めます。
    適切なやり方で命令すれば「使役」が叶う。
    精霊についてそう理解してしまっているためでしょう。
    自分の言う事を聞いている相手が反抗を起こすとはまるで思っていない口ぶりでした。

    それに、ヤスリは頭の痛い思いです。
    生まれつき精霊と接する事の出来ていたヤスリがこれまで積み重ねた観察と経験からして、精霊とはそのような「話の通じる相手」ではないのです。

    「……風の音を真似たそれ、命令とかお願いとかじゃない。単にあいつらはその音が好きだから寄ってきてるだけ」

    その事実をヤスリは根気強く言って聞かせます。
    ヤスリとて、海鳥の精霊を好きなように操ったりは出来ません。
    カモメたちは大体いつも沖の側にいるので、呼び寄せた時に陸側に吹き抜けていく事が多いという傾向を利用するのがせいぜいというところでしょう。

  • 273◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 21:05:45

    他にもヤスリは例を出します。

    人間が力を利用する事の多い精霊といえば、やはり火の精霊でしょう。
    人の営みには火がつきものです。
    料理にも鍛治にも、寒さから身を守るためにも使うものですから。
    そもそも自然の中では火が起こる事が少ないのも合わせて、火の精霊は最も人間と共に生きてきた時間の長い精霊と言えるかも知れません。

    そんな火の精霊でさえ、別に人の都合など知りやしないのです。
    彼らは炉の火が心地良いからそこにいるだけ。
    人の暮らしを良くしてやろうなどという考えは微塵もありません。

    なので、あんまり環境を整えすぎて火の精霊を増やしすぎると……彼らはアッサリと火事を引き起こして災禍を招きます。

    方々を旅する最中、燃え上がる家屋の周りでその体を一回り大きくした火の精霊たちが大はしゃぎしていた光景をヤスリは見たこともあります。
    家の中に取り残された、生存が絶望的な家族の存在に泣き叫んでいたこれまでの同居人の事など気にもせずに。

  • 274二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 21:08:46

    旅の精霊も別に悪意を持ってヤスリを連れ出した訳じゃなくてただ旅に誘う事が好きなだけっぽいもんな

  • 275◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 21:16:55

    「精霊は好きな事して生きる他はなんにもしない。俺らはそのおこぼれで勝手に助かってるだけ。自由に使えるなんて思ってると痛い目見るよ」

    半ば自分にも言い聞かせるように、ヤスリはそう言葉を閉じました。

    これまでの旅路でヤスリを大いに助けてくれた青い小鳥も、安全で楽しい旅が好きだからそうしてくれているだけなのでしょう。
    旅といえば危険がないとつまらない、という性質だったならば彼はヤスリをむしろ獣の巣に案内するぐらいの事は平然としたに違いありません。
    その末にヤスリが獣の夕飯になったとして、悲しむでもなく次の旅人を探すでしょう。

    そして、その嗜好はヤスリが例え涙を流して地に頭をこすりつけて頼み込んだところで変える事は出来ないのです。

    「……お、おう……そ、そうなのか?」

    そこまで言えば、マハもようやく理解が及んできたようです。
    自分たちが軽く考えてやっていた行いが想像よりも危険なものだったかも知れないとわかり、少しばかり目が泳ぎ始めました。

  • 276二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 21:21:00

    そう考えるとなんやかんや悪運は強いんだよなヤスリくん。あんなクソみたいな街で育ての母である狂人やとびきりの善人である鍛冶師に拾われた時点で運命力が凄い

  • 277◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 21:30:49

    「……海風のやつは、しばらく風の真似をしなきゃ大丈夫。良い音がするから集まってきてるだけで、聞こえなくなったらすぐ散ってくよ」

    わかってくれた事に安堵して、ヤスリはそう付け加えました。

    ルマとジェムを介して広がった流行のために、村の人々はこぞって風の音を吹き鳴らしたのでしょう。
    それが短期間に何度も何度も繰り返されたために一時的に増殖が起こっただけで、やめればまた元通りの、クタリ村の環境に相応の数にもどります。

    「はー……そういうもんなのか」

    「うん。そういうもんだよ」

    なんとなくこぼしたのだろうマハの言葉は、偶然にも的を射ていました。
    精霊とは「そういうもの」なのだという、ある種の諦めを含んだ、ちょっと離れた目線で見ておくのがちょうどいい距離感というものです。
    少なくとも、ヤスリは己のこれまでの人生でそう学んでいました。

    ……好きな事をして好きに生きる精霊はヤスリの目には愛らしく、完全に実践できているかと聞かれれば口を閉じるしかないのですが。

  • 278◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 21:43:18

    さて、そんな出来事の何日か後の事です。

    ヤスリはまたマハの小舟に乗り仕事をしたのですが、その帰路でまたも精霊の話になりました。
    より正確に言うと、精霊に関するヤスリへの「依頼」です。

    「こないだのアレ、集まりで話しておいたんだけどよ」

    との文言から始まった説明によると、マハはヤスリからの警告を村の中で共有してくれたのだそうです。
    風呼びの濫用は災いを呼びかねない事。
    それと、精霊の性質について。
    若手の中では発言力の強いマハの言葉は村の人々に重く受け止められ、どうやら海風の精霊についてはもう心配はいらないとの事でした。

    ただ、その場で同時に心配事が村人から寄せられたのだそうです。

    「村の周りで精霊関係で変なこと起きてないかが気になるって奴が結構いてな。確かにそうだってなったんだが……俺らじゃわからんだろ?」

    風呼びの件で実在が信じられた精霊ですが、いると分かれば見えないからこそ気になるものです。
    不思議な力を持つものが、自分たちの近くでこそこそ隠れていると知ってしまった事は、気の弱い者にとっては不幸かも知れません。
    いっそ知らないままでいたかったなんて者も多いでしょう。

    「まぁアレだ。家具の裏に逃げ込んで見つからなくなったデカい虫は……ちょっとイヤだろ?」

    その例えはどうかという所ですが、ヤスリにもわからなくもありません。

  • 279二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 21:45:14

    この自分にしか出来ない事を人から頼られるって言う経験はかなりヤスリくんの人格形成に良い影響出そう。今まで虐げられることばっかだったからなあ…

  • 280◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 21:56:03

    なので、今のところこの村で唯一精霊を視認できる人間であるヤスリに調べて欲しいと、そういう事のようでした。

    「もちろんタダとは言わんさ。焼き干し溜めてんだろ? 村の備蓄からいくらか分けてやるから引き受けちゃくれんか」

    「……良いけど、それ、俺がデタラメ言ったらどうすんだ」

    「ハハハ! お前そんな適当な事するタマじゃねぇだろ!」

    ですが精霊は村人には見えません。
    手を抜いたところで誰にもバレない仕事に、報酬を約束して良いのかとヤスリは言いますが、マハはカラカラと笑い飛ばしました。

    「小屋の補修でも、船の上でも片付けでもよ、お前中々良い仕事してんじゃねぇか。ま、ガキにしちゃって話だがよ」

    「……」

    傲慢な自信家であるマハ。
    そんな彼は自分の「人を見る目」についても大きな自信を持っているようでした。
    そして、その目に叶った相手を信じてやる気にさせる術にもどうやら長けていそうです。
    こういった部分が、若手ながらも村で一目置かれる所以なのでしょう。

  • 281◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 22:06:36

    依頼を引き受けたヤスリは、その日の午後から早速動き始めました。

    正当な報酬が出るならば、正当に働く。
    それがヤスリの気質です。
    ついでに言えば元々海辺に暮らす精霊にも興味がありました。
    渡りに船、というやつです。

    ヤスリはとりあえず最初はと、村の中から歩き回り始めました。

    村内でまず目についたのはやはりというか、火の精霊です。
    中央の広場、村の住民が共同で使う大かまどの周りでは火の体を持つトカゲたちが呑気に昼寝していました。
    数匹の群れで固まってウトウトとしていて、なんとものどか。
    時折ふわぁとアクビをする姿にはヤスリも素直に可愛らしいと思わず頬を緩めます。

    これに関しては問題なさそうです。
    多すぎず少なすぎず、精霊の力で燃料の節約はできつつ、人間が火の扱いを間違わなければ火事の心配はないというちょうどいい塩梅と見えました。

  • 282二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 22:11:50

    世界のどこかには精霊が集まりすぎて、或いは成長しすぎてとんでもない事になってる場所もあるんだろうな…例えば雷の精霊みたいなのが大量に集まってるせいで永に雷が降り注ぐ場所とか

  • 283◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 22:22:48

    他に多いのは。

    「……うわ」

    思わずヤスリの声が漏れます。
    それを聞きつけた近くの村民がビクッとしました。

    「も、もしかして……何かいるの?」

    「うん、いるけど……まぁ、こいつらは仕方ない連中だから」

    臆病なタチだったらしい村娘は声を震わせていますが、残念ながらヤスリには何もしてやれません。

    ヤスリの視線の先では、ノコギリめいた脚を持つヤスデの小さな群れが建物の金具にたかっていました。
    錆の精霊です。
    彼らが多い場所では金属が通常よりも早く錆に覆われてしまい、特に鉄なんかはあっという間。
    鍛冶場などでは大変に嫌われる種でした。

    彼らを追い払う方法として、ある種の塗料の匂いやとある果実の汁がてきめんに効くとヤスリは知っていましたが、どちらも村で手に入るものではありません。

    (……? そんな事、どこで覚えたんだったか)

    ピィロロ、という頭上からの鳴き声でそんな疑問はいっとき忘れて、次の精霊を探しに向かいます。

    幸い、金属を錆びさせる以上の害は無い精霊です。
    彼らについては、村で一般に行われている錆止めの工夫を念入りにやってもらうよう伝えておけば良いでしょう。

  • 284二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 22:27:17

    ヤンデレ旅バードめ…

  • 285◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 22:39:03

    そんな風にして、数日をかけてヤスリは村の中とその周囲を見て回りました。
    結果としては。

    「とりあえず、気になるのはいなかったよ」

    「ほう! そうかそうか、そりゃ良かった」

    大きな害のある精霊も、おかしな増殖も、変わった挙動を見せるものもいません。
    いたって普通の様子といったところで、村人たちの心配はとりあえずは杞憂に終わりそうでした。

    これにはマハも安心からうんうんと頷きました。
    ヤスリの方も中々にホクホクです。
    精霊の観察はヤスリの趣味でもあり、好きな事を村の中で自由にやって良い権利を与えられた上に報酬まで出るのですから役得も良いところ。

    (……特に、あのヒトデは良かった)

    小船に揺られながら、ヤスリは記憶を反芻します。
    ほんの一匹だけ見かけた半透明の水の体を持つヒトデは、波で浜に打ち上げられては五本足でピョコンと立ち上がり、テコテコと音の聞こえそうな足取りで水中に戻ってはまた打ち上げられるのを延々と繰り返していました。

    ヤスリの見立てでは「波」の精霊です。
    ヒトデの居る場所だけ不自然に波がほんの少し強かったのでおそらく間違いはないでしょう。
    その動きがあんまりに目に面白かったために、ヤスリは随分な時間を砂浜に吸い取られたものでした。

  • 286二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 22:47:58

    不思議な生き物?だなあ精霊は

  • 287◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 22:53:21

    「……ところでさ」

    そのおかげで上機嫌だったためか。
    それともマハとの仕事に慣れて多少気安くなったためか。
    ヤスリは珍しく自分から口を開き、雑談を持ちかけました。

    「この辺、そこそこクラゲ多いけど……網にあんまりかからないのってなんかコツでもあるの?」

    それは少し前からのヤスリの疑問でした。
    クタリ村の漁場である湾は透明度が高く海の底近くまで容易に見通せます。
    そこを泳ぐ魚たちの姿もしっかりと。

    そして、その中には割と頻繁にクラゲの姿もありました。
    なのにどうしてか漁師の網にはごくたまにしか入ってこないのです。
    これが熟練の漁師の技術というやつなのだろうかと、ヤスリは感心していたものでした。

    ですので。

    「うん? クラゲなんてそんな居るもんでもないだろ」

    マハが何気なく返してきたそんな言葉に、あれ、と首を傾げました。

  • 288二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 22:57:34

    海の透明度が高いってのは=でプランクトンが少ない貧栄養ってのがわかってなんとも言えなくなるな…

  • 289◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 23:03:09

    「……」

    「……」

    ヤスリとマハ、話をしながら漁を進めていた二人の手がピタリと止まります。

    「……クラゲ、多いよな? ほら、そこにも群れが」

    「…………俺には、魚しか見えんが」

    確認のためにヤスリは小舟から身を乗り出して水中を指差します。
    そこには五、六匹のクラゲがまとまった群れでフワフワと流れに身を任せていました。
    にも関わらず、どれほど示してみせてもマハには見つけられないようです。

    小舟の上に少しばかりの沈黙が流れた後、フー、と息を吐いてからヤスリが言いました。

    「……たまにいるんだ。普通の動物とほとんど見た目変わらなくて、精霊なのかどうかわかんないやつ」

    言い訳めいたその言葉に、マハはヤスリの肩をガシリと掴みます。

    「追加の調査、頼んだぞ」

    もちろん、ヤスリは頷く他ありませんでした。

  • 290◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 23:12:41

    「ソ、ソレデ、おれ、カ」

    「うん。頼める?」

    「ク、ク、マカせろ」

    そんなわけで、ヤスリはクラゲの調査に応援を要請しました。
    相手はラロ。
    ディープワンという水棲種族である彼は、水の中では魚同然に動けます。
    その性質が、今回の仕事にはどうしても必要だとヤスリは考えました。

    なにしろ、クラゲは群れを作っているのです。
    精霊は司る物事の力を強める性質を持ちますが、その増幅の度合いは数を増すほどに大きくなります。
    漁の手伝いの中でクラゲを見かけた頻度から考えて、楽観は出来ません。

    調査中に全力で陸に逃げる必要がでる可能性は低くないとヤスリは判断しました。
    その際、ラロの速度は頼りになるはずです。
    報酬は山分けになってしまうので取り分は減りますが命には代えられないのです。

  • 291◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 23:16:17

    ラロはヤスリを片手で抱えて海に潜りました。

    人間の大人よりも大きな体を持つ上に怪力のディープワンにとって、ヤスリのような子供一人ぐらいは大した荷物でもありません。

    手足についた水かきで力強く水をとらえ、グングンと海の中を進んでいきます。


    ラロ神秘適性:dice1d10=2 (2)

  • 292二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 23:16:55

    神秘そのものみたいなのに由来する種族のくせにカスみたいな神秘適正だな…

  • 293◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 23:20:20

    その行く先はヤスリが指示します。

    ラロが精霊を目視できるなら話は早かったのですが、残念ながらそう美味い話はないようです。


    そうして、やがてクラゲの群れのひとつが見えてきました。

    ヤスリはすぐさまラロの顔の前に手のひらを広げて止まってもらいます。


    まだ少しばかり距離はありますが、まずは遠目からの観察をすべきでしょう。

    未知の精霊に無防備に近付く危険性を、ヤスリは身をもって十分に知っています。


    観察:dice1d12=7 (7) (得意な分野、上限12)

  • 294二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 23:23:14

    そこそこに得意だな

  • 295◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 23:33:28

    「どうだ、何かわかるか?」

    耳元に囁かれたその声に、はじめヤスリは困惑しました。
    が、冷静に聞いてみればそれはラロの発言です。

    陸の上ではゴポゴポとくぐもった音が混ざる片言でしたが、水の中では流暢に話せるようです。
    考えれば、人が水中では話が出来ないのと逆と思えば自然な事でした。
    むしろ途切れ途切れの片言とはいえラロが陸で声を出せるのは中々すごいことだったのかも知れません。

    それはともかく、ヤスリは目を凝らしました。

    クラゲはフワフワと漂っています。
    多少の距離はあるとはいえラロという大型の生き物の接近に動じた様子はありません。

    それはまぁ、予想のついた事ではありました。
    これまでも周囲を魚が泳いでいるのは頻繁に見た事がありましたが、特段動きに変化は見られなかったのです。
    生物に興味があるタイプの精霊ではないのでしょう。

  • 296◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 23:43:48

    他の特徴は、とヤスリは観察を続けます。

    次に気付いたのは、どうやらクラゲは粘液を放出しているらしい事でした。
    クラゲの頭、傘状の部分の内側から滲むように漏れ出た虹色のそれは、触手によってかき混ぜられて広がりながらゆっくりと沈んでいきます。
    そうして海底の砂まで辿り着くと、染み込むようにして見えなくなりました。

    それがしっかりと見て取れるまで、息継ぎのための浮上と再度の潜行をヤスリたちは繰り返しました。
    その結果。

    「濁ってきたな。見辛いだろう。場所を変えるか?」

    ラロの巨体が海底の砂を巻き上げてしまい、段々と視界が悪くなってきてしまいました。
    透明だった海は薄茶色に変わっていき、観察の邪魔になり始めています。

  • 297二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 23:45:54

    なんだ…?なんの精霊だこれ…?

  • 298◆d4/k1RhItvAy25/09/28(日) 23:55:58

    (……いや)

    しかし、ヤスリは首を横に振りました。

    しっかりとクラゲの群れを見ていたヤスリは気付きました。
    群れは巻き上げられた砂を嫌うように動きを変えたのです。
    それまではただ波に流されるだけだった彼らは、今や自分で泳ぎ、意思を感じさせる動きで濁った水域から離れていこうとしています。

    そのうちにクラゲはヤスリたちから遠く離れていきました。

    その跡地、これまでクラゲが漂っていたあたりにヤスリは近寄ります。
    そして、半ば確信をもってヤスリは海底の砂に触れました。

    (変に固い)

    よくよく目を凝らせば虹色の粘液が今も残る砂は、不自然な固さをもっていました。
    見た目はただの砂であるのに、相当な力をこめないと指が入っていかないのです。
    明らかに精霊の力が働いている証でした。

    (……良くわからないけど、大体わかった)

    ヤスリはラロの体を叩き、浮上を指示します。
    おおよその性質は読み取れたと考えて良いでしょう。
    後は、これを報告するだけです。

  • 299二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 00:02:11

    さてヤスリくんはどういう性質の精霊だと認識したんだろうか

  • 300◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 00:05:30

    「静かな環境が好きなやつらみたいだ」

    あくる日、ヤスリはマハをはじめとした依頼主である村人たちの前でそう語り始めました。

    クタリ村の目の前の海。
    それはスプーンでくり抜いたような丸い湾で、左右には細長い岬が伸びています。
    その地形のおかげか、よほど風が荒れない限りは波はずっと穏やかなまま。

    そういった環境がクラゲたちには心地良かったのでしょう。
    静かな海が好きでここに集まり、その力でもってさらに海を静かにさせていく。
    どうやらそんな精霊のようでした。

    「えぇと……「沈む事」とか「漂う事」とか、あとは「止まっている事」とか……そういうものを司ってる精霊、なんだと思う」

    学のないヤスリは語彙に乏しくそんな言い方になりましたが、つまりは沈殿、あるいは停滞の精霊ということになりそうだと判断を下したわけです。

  • 301◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 00:15:55

    「それで、害はあるのか?」

    「……」

    マハの言葉にヤスリは考え込みました。

    正直なところ、ヤスリにはわかりません。
    何しろ彼には学がないのです。
    海が精霊によって自然な形よりもさらに静かになることでどんな影響があるのか、判断の下しようがありません。

    彼にわかったのはクラゲたちの性質と、後は散らし方ぐらいのものです。
    海がかき混ぜられて砂で濁れば逃げていったのですから、村の漁師総出で船の上から長い棒でも突き立ててあちこちの海底を乱せばそのうちにクラゲは湾からいなくなるか、少なくとも数を大きく減らすはずです。

    ただ、そうすると今よりも湾の中の波は多少大きくなるでしょう。
    それがどのような影響をもたらすかもまた未知数です。

  • 302◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 00:18:11

    【選択肢】


    1.報酬を返上し、判断のため学者を呼ぶ資金にあててもらう

    2.手に負えない、村人たちの判断に任せる

    3.少なくとも数が多すぎるのは不安があるので多少の間引きを提案する

    4.その他自由安価


    >>303

  • 303二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 00:27:55

    4.旅の精霊の影響か自分が街まで行ってこの謎の精霊について調べる為学者を呼んでくると提案する

  • 304◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 00:58:29

    考えた末のヤスリの結論は……自分だけではどうにも手に負えそうにない、というものでした。

    あのクラゲたちは安全なのか、それとも追い払うべきなのか、ヤスリにはわかりません。
    そして、村人たちもまた答えを持たないでしょう。

    「ああ、最近急に海が静かになったってこたぁないぜ」

    「だよな。昔っからこんなもんだわ」

    ヤスリが確認してみても返る答えはそんなものです。
    村人にとっては今の海が当たり前で、あれらの影響が良いものなのか悪いものなのか、そのどちらでもないのかはこの場に居る誰にも判断できそうにありませんでした。

    と、その時です。

    ピィロロ、とヤスリの肩で青い小鳥が鳴きました。
    耳元に何事かを囁くような、そんな声で。

    それでヤスリは閃きました。
    わからないならわかる人間に聞けば良いのです。
    クタリ村のはじまりは近隣の都市から開拓のために派遣された一団です。
    それはつまりそう遠くない場所に都市があるという事で、都市と呼ばれるような規模の街ならば学者の一人や二人は居る事でしょう。

    精霊を目視できる者は珍しいですが希少というほどでもなく、ヤスリよりも詳しい者がその中にいる可能性は高いと思えました。
    そちらに聞けば良いのです。

    ……そのついでに、村を離れて野原を突き抜ける街道を行く様を想像して心が躍りもします。
    クタリ村の居心地は中々に良いものですが、長い滞在で旅心がうずうずし始めていたのも確かでした。

  • 305◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 01:07:27

    なのでヤスリは提案します。
    自分が都市に向かって学者を呼んでくる。
    そうしてより知識の深い者に判断してもらおう、と。

    「……そこまでするほどの事かね?」

    「急に増えてるってわけでもないんだろ? ならわざわざそこまでしなくてもよ……」

    しかし、村人たちの反応はかんばしくありません。
    そもそもが貧しい村です。
    学者の知識を頼るのもタダというわけにもいかないだろう事がネックのようで、今すぐに実害がなさそうなら様子見で良いのではないかと、そんな雰囲気。

    「それに、街も結構遠いぞ。お前さんに負担が大きすぎないか?」

    そんな声もまた、提案を押し下げようとします。
    確かに痛いところでした。
    ヤスリの当初の予定では残る滞在期間は二週間。
    街までの往復でその半分は消えてしまうでしょう。
    当然その間は旅の糧となる焼き干しも増やせません。

  • 306二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 01:08:51

    まあでも憧れは(強制的に)止められない(ようにされてる)からな…

  • 307◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 01:18:57

    「なら、こういうのはどうだ?」

    ただ、助け舟も出ました。
    一通りの意見を聞き終えたマハが口を開きます。

    その提案は以下の通り。

    ヤスリがこの街を発つ時、マハを伴って都市に立ち寄り、学者に事情を説明する。
    そうして村での対応が必要と判断されたならマハが学者を連れ帰る、というものです。
    その時にヤスリの現地立ち会いも不可欠でないならヤスリはそのまま旅に出れば良い、と。

    中々良い落とし所と思えます。
    村としての学者との交渉は村の人間がやるべきで、ヤスリ一人が行くよりは良いでしょう。
    ヤスリの負担も最小限に抑えられています。
    これまでの村での働きで貢献した分、いくらか気を使ってくれているようでした。

    ……ただ、ヤスリは内心もどかしく思いました。
    先ほど思いついた瞬間、すでに心は旅路に向いていたのです。
    半ば以上、都市までを歩む楽しさに意識が向いてしまっていました。

  • 308二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 01:20:06

    マハ良い奴だな…別に特にそこまでヤスリへの好感度高い訳ではないのに

  • 309二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 01:21:13

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  • 310◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 01:23:40

    【選択肢】


    1.マハの提案に頷く(ダイスが必要、成功率40%)

    2.提案を蹴って都市に向かう


    ※ 都市に向かう場合、次の二週間の行動内容が強制決定されます


    >>311

  • 311二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 01:25:40

    うーむ決めがたいのでダイスロール!dice1d2=2 (2)

  • 312二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 01:25:51

    1

  • 313◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 01:39:24

    「……いや、俺、すぐ行くよ。なんなら今回の報酬はいらない。学者を雇う分に回してくれていいから」

    その衝動のまま、ヤスリは言い放ちました。

    行きたいと思ってしまった以上、もう居ても立っても居られません。
    正直なところ、今すぐに村を飛び出してしまいたいぐらいです。
    こうして対話を続けられている段階で十分に理性的と言えました。

    しかし、それはヤスリだけの事情です。
    村人たちはこれまで主張の少なかったヤスリの豹変に戸惑うばかり。

    「何をそんな……今すぐ危ないわけでもないんだろ?」

    「わかんないよ。そう見えるだけかもしれない。ちゃんと調べるなら早い方が良いと思う」

    なので説得を試みるもヤスリは頑なです。

  • 314◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 01:44:52

    最終的に、決定権は村長に委ねられました。

    頭の禿げ上がった老人である彼はしばらく唸りながら自慢の白ハゲを撫でて少し黙考した後、口を開きます。


    「ま、ヤスリ本人が良いなら行ってもらおう。ただヤスリ一人というわけにもいかんな。村の資産を使うわけだから誰か大人を……そうだな」


    村長はその場の全員をグルリと見回して、一人を指差しました。


    1.「マハ、お前がついていけ」

    2.「⚪︎⚪︎、お前がついていけ」


    dice1d10=5 (5)

  • 315◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 01:45:21

    癖でd10してもうた


    dice1d2=2 (2)

  • 316◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 01:47:22

    【村の大人B】


    性別:dice1d10=2 (2) (奇数男、偶数女)

    年齢:dice1d10=9 (9) (高いほど高齢、1で成人したて)

    人種:dice1d10=10 (10) (1〜3で亜人、4以上で人間)

    容姿:dice1d5=3 (3) (高いほど美人、この村では上限5)

    対ラロ好感度:dice1d6=1 (1) (高いほど友好的、上限6)

  • 317二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 01:52:28

    これ旅についていける年齢か?しかもヤスリの事全然好きじゃないし…

  • 318◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 01:58:30

    「セアラ、お前がついていけ」

    「は? アタシがかい?」

    村長に指名されたのはとある老婆でした。
    まさか自分がとは思っていなかったのか、セアラと呼ばれた彼女は困惑した様子です。

    「おいおい、ちょっと待ってくれ。ついていくなら俺の方がいいだろ」

    それにマハが待ったをかけます。
    セアラは老婆でマハは若い男。
    都市までの距離を考えればマハの方が適任だろうという彼の主張は確かに筋が通るものではあります。

    「ほー。んで、マハ。お前、街で何してくるつもりだ?」

    「何ってそりゃ、学者との交渉を──」

    「ところで話は変わるがよ。お前、この間の行商相手に随分熱心に話聞いてたよなぁ。さて、内容はなんだったか。確か花街がどうこう──」

    「ん、んんん! いや、村長の判断だからな、間違いないな!」

    が、マハは村長の指摘に引き下がりました。
    どうやらこの男、ヤスリの提案にかこつけて街での女遊びを画策していたようです。
    ……先ほど自然とヤスリに同行する枠に自分を突っ込んでいたのもそういう理由なのでしょう。
    村の資産を個人の遊びに使われてはたまらないという村長の判断は全く正当なものと言えました。

  • 319◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 02:08:27

    その点、セアラという老婆は信頼がおけると村長は保証しました。

    長く生きている分だけ村や海の事情に詳しく、また気が強く、そしてケチで知られ、口も達者と来ます。
    学者に支払う報酬の交渉も十分こなせるでしょう。

    そして、村長は内心で思います。

    セアラはヤスリをあまり良く思っていません。
    精霊についてヤスリが語る内容にも懐疑的で、村の若者に見られるような鵜呑みにする気配が全くないのです。
    そんな彼女がついていれば、もしヤスリがデタラメを言って村の資産を掠め取ろうとしている場合、阻止してくれるはずだと。

    ヤスリには全くそんな気はないのでこれは杞憂なのですが、村を預かる者としてはその辺りを考えないわけにもいきません。
    精霊に関しては目に見える保証が何も無いのですから仕方のないところです。

  • 320二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 02:10:04

    このババアもそのうちデレてくれるんだろうか

  • 321◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 02:16:11

    問題となるのはセアラの年齢、つまり旅の足の事ですが……。
    これも、村長は当てがあると言います。
    彼がそう言う以上、任せておくべきでしょう。

    明日一日は旅支度にあてて、出発は二日後。
    そのように決定が下され、集まりは解散となりました。

    ヤスリも他の村人と同じように集会所を出ると、足早に仮宿の掘建て小屋に向かいます。
    その足取りは軽く、まるで弾むよう。
    寄り添って飛ぶ青い小鳥もピィロロピィルロ上機嫌で、久方ぶりの旅路に浮き立つ様が丸分かり。

    同行者にちょっとした不安はあるものの、それでも高揚を抑えるのは、今のヤスリには少々難しいようでした。

  • 322◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 02:18:12

    【ここまでのヤスリくん】

    健康:普通
    武力:普通
    鍛治:未熟
    話術:未熟+
    知識:カス
    家事:カス
    神秘:得意+(UP)

    特徴:情動少なめ/精霊好き/記憶障害/旅好き(状態異常)


    【未解決フラグ一覧】

    ・村に溶け込めないディープワン
    ・海中を漂う精霊クラゲ

  • 323◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 02:18:33

    今日は終わり
    寝ます

  • 324二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 02:25:44

    おつおつ

  • 325二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 02:26:15

    >>317

    上のダイスでヤスリとの友好度って分からなくない?

  • 326二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 03:00:39

    >>325

    一番下をヤスリへの好感度に空見してたわ

  • 327◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 09:34:02

    朝保守
    ヤスリくんへの好感度は村生成時に平均「6」と判定されてるので個々人で上下するけどあんまり大きく離れない感じ

  • 328◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 13:02:20

    今日の昼は忙しいんで投稿なし

    都市のダイスだけ振っときます


    規模:固定

    治安:dice1d10=7 (7) (高いほど安全)

    場所:固定

  • 329◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 13:05:45

    都市の特長


    1.交易

    2.学問

    3.塼漭

    4.武力

    5.魔法

    6.螲漭


    dice1d6=1 (1)

  • 330◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 13:26:52

    この規模と安全性の「交易」都市ならもしかして「居る」?


    dice1d10=2 (2) (3以上で居る)

  • 331◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 13:28:48

    追加イベントは無し
    また夜に
    今日は早めに7時くらいに始めたい(願望)

  • 332二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 15:20:05

    滅茶苦茶治安が良い…!

  • 333二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 15:28:31

    移動するたびどんどん治安よくなってて草

  • 334◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 18:58:28

    時間守れてご満悦
    書いていきます

  • 335二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 19:04:55

    わーい待ってた

  • 336◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 19:17:08

    服と靴はできるだけ丈夫なものを。
    その上からやはり丈夫で大きな外套を。
    この外套は雨の日には傘として、夜の中では毛布として扱える必需品でした。
    それから昼の陽光を避けるつば広の帽子もかぶります。

    次に背嚢……箱型のリュックサックの中身を確認します。
    村でこさえた保存食、簡易的な食器、火打ち石と火口のセット、乾燥させた薬草、ほんのわずかな貨幣。
    それと旅先の各地で集めたさしたる値打ちのない、しかし所有者本人にとっては宝同然の品々。
    全てが不足なく詰め込まれているのを確認したなら背負って固定し、後は腰から水筒と護身用兼調理器具である大振りなナイフを腰から吊るすだけ。

    最後に使い込まれて先端のすり減った木の杖を手に持って、これで準備は万端です。

    「ほう、立派な旅人の装いだ」

    久方振りに旅装に戻って姿を現したヤスリに、村長が目元を緩めてそう評します。
    すでに二年も旅ばかりをして生きてきたヤスリです。
    外套や背嚢に刻まれた細かな傷と汚れは、いっぱしの風格を滲ませていました。
    それを纏う少年にはちょっと不釣り合いなほどです。

  • 337二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 19:18:35

    綺麗な石とか集めてるんだろうか

  • 338◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 19:24:50

    都市は向かう出立の見送りに来た村長の横には、同行する老婆であるセアラも立っています。

    「全く、なんだってアタシが……」

    少々腰の曲がった彼女は、温和な表情を浮かべる村長とは逆に、実に不機嫌そうでした。
    シワにまみれ節くれだった手で持つ杖はそれを示すようにコツコツと地面を叩き、セアラの神経質ぶりをヤスリに伝えます。
    ブツブツと愚痴をこぼしながらの横目でのひと睨みにヤスリは若干気圧されました。

    さて、セアラがこれほど不機嫌なのは、余り良く思っていないヤスリとの旅路が不満……なのもありますが、それだけではありませんでした。
    最大の理由はそれよりもむしろ、村長が旅の足として用意したものにあります。

  • 339二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 19:25:38

    一体何を用意したんだろ老馬とかか?

  • 340◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 19:36:38

    村長とセアラの隣。
    村の出入り口に鎮座しているのは荷車です。
    ただし普通の物とは少しばかり違いました。

    荷台には座り心地のために藁を入れた袋がクッションとして敷かれていました。
    それを覆うようにドーム状の幌がつけられ、見た目はさながら超小型の馬車といった風体です。
    そしてまさに、用途もそういったもの。
    セアラを乗せて引いていくための乗り物として、村の備品のうちの一台が突貫で改造されたのです。
    普段は魚の運搬に使われているのでちょっと生臭いのはご愛嬌。

    ここまでは問題ありません。
    生臭さなどクタリ村で生まれ育ったセアラには今更のことですし、多少揺れようが我慢するぐらいの度量は彼女にもありました。
    が。

    「キ、キタぞ、ソンチョウ。……マタセタ、か?」

    「ちっ!」

    「ウ、ムゥ……」

    その引き手がどうにも気に入らないようです。
    自分が登場するや、ヤスリに向けたものよりもずっと鋭さを増した睨みを向けられた上に舌打ちまで送られた異形の半魚人、ラロはその大きな体を気まずそうに縮こめました。

  • 341二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 19:38:11

    えっ同行すんの?

  • 342二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 19:39:09

    人力車か…ディープワンの世間での受け入れ具合ってどんな感じなんだろ

  • 343◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 19:53:34

    クタリ村には馬はいません。
    漁村であるために農耕馬はおらず、領主からもほとんど放置されているために緊急連絡用の早馬も置かれてもいないのです。
    なので当然通常の馬車もなく、改造荷車は人の手で引いていくしかないのですが……。

    村は貧しく、若い男手を何日も村から出すのは抵抗がありました。
    言い出しっぺのヤスリは旅慣れているにしてもまだ子供で一抹の不安があると村人の数人から囁かれもしました。

    そこに来て、ラロはちょうど適任だったのです。
    体力も筋力も人よりあり、漁では活躍するものの彼が獲った魚を毛嫌いする者も多く、村からいっとき離れたところでそう困りはしません。
    むしろ、一週間ほどとはいえラロが居なくなる事に安堵する者の声さえ聞かれたほどです。

    そんなラロは村長から木製の札が付けられた首飾りを受け取りました。
    この者はクタリ村の一員であると、村長の責任で保証する物です。
    ディープワンという種族は人間の敵対者として一般に知られていますが、この木札さえあればある程度は信用が得られるでしょう。
    少なくとも、問答無用で剣や槍を向けられる事まではないはずだと村長は請け負いました。

    「よし、頼んだぞ。道中しっかりな」

    「オ、オォ、マカセロ」

    「……う、うむ」

    牙だらけの大口を開けての意気込みには頬を引き攣らせて後じさってはいましたが、村長はどちらかと言うとラロを受け入れている側の人間に属するようです。

  • 344◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 20:05:48

    そうして、都市を目指す一行は村を出発しました。

    先頭を行くのはヤスリ。
    その少し離れた後ろをラロが荷車を引いて付き従い、セアラは荷台のクッションにどっかりと腰掛ける布陣です。

    村から伸びる街道は中々に荒れていました。
    理由は単純で、使う者がほとんどいないためです。
    クタリ村の生活は村内で完結しており、村民が都市へ向かうこの道を使うような機会はよほどの事がない限りありません。
    年に二度ほど徴税官の行き来がある以外は、ごく稀に行商が通るぐらいのものなのだそうです。

    必然的に道には石や木切れが転がっており、荷車の邪魔になりそうなそれらをヤスリは杖で弾いて除けて歩きます。
    車輪に絡まりそうな丈の長い草があればナイフで刈り取る事もしました。
    植物の生育にあまり適さない土地なのかナイフの出番は控えめだったのがいくらかは幸いと言えるでしょう。

  • 345二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 20:11:07

    ホントに荒れ果ててるなこの近辺の土地…

  • 346◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 20:19:15

    さて、そんな道中ですが。

    「ずいぶんゆっくりだねぇ。こんなんじゃいつ街につくんだい」

    「ウ、ム、ス、スマン」

    「あいた、っ。なんて乱暴な……荷車が跳ねたろうが。老人を労わろうって気はないのかいアンタにはっ」

    「モ、モウシワケ、なイ」

    「はぁ……全く、これだから魚もどきは嫌なんだよ。人間の振りしたとこで結局は気遣いもできないバケモノってわけだ」

    「グ、ゥ……」

    控えめに言って最悪でした。

    原因はなんと言ってもセアラです。
    彼女のラロに対する態度は酷いものでした。
    口を開いたと思えばラロを責める言葉ばかりが飛び出し続けます。
    それどころかラロの人格や種族を貶める発言も少なくありません。

    だというのにラロは言い返しもせず、セアラの暴言を背中に受け止めながら黙々と荷車を引いています。
    短気な者ならば荷車をひっくり返してセアラを振り落としてもおかしくはなさそうなところです。
    彼の我慢強さはかなりのもののようでした。

  • 347二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 20:20:24

    ギスギスすぎる…

  • 348◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 20:26:11

    ただ、これには聞いているだけのヤスリもたまりません。

    ラロはヤスリにとって、クタリ村で最も親しい相手です。

    友人が理不尽に言いたい放題されているのは不快の一言でした。

    ついでにヤスリの相棒、青い小鳥も辟易としているようで、ヤスリの頭の上からは不機嫌そうな「ジジジ」という低い鳴き声も聞こえてきます。


    短いとはいえ折角の旅路だというのに、これでは楽しさのカケラもありません。


    そこでヤスリは、


    【選択肢】


    1.セアラに一言ビシッと言ってやる事にしました。

    2.雑談で場の空気を変える事にしました。

    3.大声でラロとだけ会話し罵倒をかき消す事にしました。

    4.その他自由安価


    >>349

  • 349二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 20:29:07

    4.自分が今干渉できそうな精霊に超常現象を起こしてもらうお願いをしてちょっとセアラを驚かせてやる

  • 350二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 20:38:35

    コイツ・・・ 他人には精霊であんまり好き勝手しない方がと言っておきながら・・・!

  • 351◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 20:40:13

    ちょっとばかりセアラを驚かしてやろうと考えました。

    彼女の肝を冷やさせ、その小うるさい口を閉じさせてやろうという魂胆です。
    それも普通のイタズラではありません。
    彼女の目には見えない精霊を介した、予想のつかないだろう一撃です。
    友人を散々に責め立てる不快な輩にはちょうどいいと、傷痕のない側の頬をわずかに上げてほくそ笑みました。

    ……村でマハに伝えた、精霊は自分勝手に便利扱いして良いものではない、という文言は頭からスッポリ抜けているようです。
    ヤスリもまだまだ子供という事でしょう。

  • 352◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 20:49:37

    (そうと決まれば……)

    と、ヤスリは道の小石を弾きながら辺りを見回しました。
    必要なのは軽いイタズラにちょうどいい精霊です。
    そういったものは都合よく見つかるでしょうか。

    まず最初に目に入った、一人でポツンと座り込む三角帽子を被ったヒゲ面の小人は不適任です。

    彼は「道」の精霊でした。
    過去の旅路で何度も見かけた、人間にとっては中々に益のある種です。
    立派な街道などでは一列になった彼らは勇ましく歌いながら行進し、今のヤスリのように小石や草を除けて自主的な整備に精を出してくれるのです。
    他にも小さな穴ならばせっせと埋めたりもするので、為政者にとってはこれほどありがたい精霊もそう居ないでしょう。

    残念ながらこれほど荒れた道では仲間も集まらずしょんぼりと道端でいじけていましたが、道と関わりの深い旅を司る青い小鳥が飛んでいって一鳴きし、羽毛をすりつけています。
    それはほんの少しばかりですが、いっときの慰めになったようでした。

  • 353◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 21:02:01

    次に目に入ったのは、荒れ地のただ中、小岩の上でのんびりと陽を浴びるトカゲです。


    これはわかりやすい精霊でした。

    石の肌を持つという特徴を見て分かるとおり「岩」の精霊です。

    彼らの好む岩は硬く、安定していて、旅の途中の休憩にちょうどいい椅子になってくれるため、ヤスリも良く知っていました。


    彼らもまた不適任です。

    山道などならともかく、今いる道は平地を貫いて伸びているため、流石の精霊の力を借りても岩を転がしたりはできません。

    また、そもそも岩らしくとんでもなく腰が重いため、ちょっとやそっとではまともに動いてはくれないのです。


    後は大体どこにでもいる風の精霊も目に入りましたが彼らは逆に身軽すぎて頼るには加減が難しいですし、草の葉の上でヤスリを見上げてくる朝露の精霊などは力が弱すぎて何の役にも立ちません。


    それでもヤスリは根気強く、手を借りられそうな精霊を探します。

    後方から未だに絶え間なく聞こえる罵声を早く止めたいと考えながら。


    遭遇:dice1d5=1 (1)

  • 354二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 21:10:23

    あっ

  • 355◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 21:10:28

    【発見した精霊】


    1.崩れ続ける羽を持つ紫の蝶

    2.枯れ草にたかるトゲまみれの尺取り虫

    3.立木の下に佇む首のない狐

    4.低い空を跳ねて歩く灰色の羊

    5.小石の下に書かれていた植物の肌を持つミミズ


    (有益1:有害3:危険1)


    dice1d5=1 (1)

  • 356二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 21:15:19

    まあコイツ自体は直接危害加えてこないしまあ当たりの方か

  • 357◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 21:21:10

    と、その時。
    ヤスリの視界の隅にとある精霊が映りました。

    道から少しばかり外れた位置に、紫色の蝶の群れが舞っているのです。
    ボロボロと崩れては再生する羽が特徴的なそれは、旅路の中では時折見かける事のあった種です。
    十匹ほどがまとめて飛んでいるそれは、不吉な見た目通りに有害な精霊ではあるのですが……。

    (……ちょうどいいな)

    害のありすぎる存在ではなく、また誘導もしやすい精霊でした。
    今の状況にもピタリと一致していて、まさにイタズラにはうってつけです。
    驚かせる、とは少し違う結果にはなるでしょうが。

    「ラロ、ちょっとこの辺道が悪い。少し外れよう」

    「オォ、ワ、ワカッタ」

    内心でしめしめとニヤリ笑いを浮かべ、しかしそれを表情には出さずにヤスリはラロに指示を出しました。
    道が悪いというのはあながち嘘でもなく、ラロはそれを信じてヤスリについて道を外れます。
    そうして、ガタガタと揺れを増し、速度を落としながらも進み……蝶の群れの横を通り過ぎました。

  • 358◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 21:25:20

    その瞬間、ヤスリは……。

    「……」

    特に何もしませんでした。
    必要がないからです。

    紫の蝶は、ヤスリが何もせずとも動いてくれました。
    群れのうち三分の一ほどがフラフラと引き寄せられるように、それまで集まっていた小動物の死骸から離れて荷車の中へ入っていきます。
    精霊が見えないセアラとラロはもちろん気付きもしません。

    そうして、同乗者を数匹増やした荷車はまた道に戻りました。

  • 359◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 21:31:41

    「それにしても臭いねぇ、あぁ臭い。鼻が曲がりそうだよ。見た目は魚もどきの癖に、魚のハラワタより臭いってんだからどうしようもないね」

    「……」

    それから少しの間は、まだセアラの罵声は続きました。
    蔑んだ目でラロを見下し、見せつけるように鼻をつまんで侮蔑の言葉を吐いています。
    ラロの方はすっかり萎縮してしまい、はじめのうちはいくらか返していた反応ももうありません。

    ですが、セアラの言葉は段々と途切れ途切れになっていきました。

    「…………ちょいと。なんか本当に臭くないかい」

    荷車の中にひどい悪臭が立ち込め始めたためです。

  • 360二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 21:32:45

    腐敗の精霊ってホントに腐敗臭もするんだ…

  • 361◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 21:40:54

    「そう? 俺は何も感じないけど」

    ヤスリはしれっと返します。
    ラロも良くわからない様子でした。
    それに構わず、セアラは辺りに手を伸ばして藁袋のクッションをひっくり返し悪臭の元を探します。

    そうして源に思い当たってセアラは顔を歪めました。
    なんのことはありません。
    荷車の内側、その全体がどうしようもなく臭っているのです。

    紫色の蝶は、すでに死んだものにたかり「腐敗」を促す存在です。
    そして、荷車は普段は魚の運搬に使われていました。
    改造の際にしっかりと清掃はしたのでしょうが、それでも取りきれないカケラはあったでしょうし、染み付いた汁を除去するのも難しかったでしょう。
    「腐りやすいもの」を好む蝶にとっては荷車自体が大好物と言えました。

    精霊の力で急速に腐敗し始めたそれらは、耐えがたい悪臭でもってセアラを包み込みました。
    いかに普段から生臭さに慣れていようとこれにはたまりません。
    下手に口を開いて大きく息を吸えばむせてしまうほどです。

  • 362二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 21:49:30

    この世界の死体って全然残らなそうだな…

  • 363◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 21:50:20

    「げほ、えほ……! こ、この幌、外せないのかい……!」

    「外せるのは外せるだろうけど、戻せないよ」

    「なら戻せなくてもいいから──」

    「雨が降ったらどうする気?」

    「──ぐ、ぬ」

    セアラは少しでも臭いがマシになるよう幌を開けさせようとしますが、残念ながら急増の幌に開閉機構などあるわけもありません。
    出来るのは幌の根本から壊してしまう事ぐらいですがそうしてしまうと工具もない現状、もう戻す事は出来ず、天候が崩れれば老体を雨に晒す事になります。

    結局、セアラに出来る事は可能な限り口を閉ざしておく事だけでした。
    当然ながらラロへの罵倒など出来るわけもなく、道中は静かなものに変わります。

    「……」

    「ォ……ク、ク」

    目論見がハマった事を確認して、ヤスリはラロにだけ見えるように振り向き、親指を立てました。
    意図はラロに十分に伝わったようです。
    ヤスリが何かして助けてくれたのだと知ったラロは、カエルのように喉を震わせ、同じくヤスリにだけわかるように感謝の意を伝えてくれました。

  • 364二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 21:53:54

    スッキリスッキリ

  • 365◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 22:09:23

    静かになった道中は、それまでとは打って変わって少しばかり楽しいものになりました。
    青い小鳥の面目躍如というやつです。

    上機嫌にヤスリの頭から飛び立った小鳥は、上空からグルリと辺りを見回すととある場所に降り立ち、ピィロロとひと鳴き。

    そちらを見れば野ウサギが一匹。
    荒れ地の土に溶け込むような焦げ茶色のウサギは自分が遠目から発見されるなど思ってもいないのか、警戒はさほど強くないようで、ヤスリたちを視界に収めてはいるもののどこか呑気にまばらに生えた青草を食んでいます。
    その愛らしさにヤスリはホッコリした気持ちになりました。

    そしてまた、小鳥は別の場所に降り立ってピィルロとひと鳴き。

    今度はちょっとしたテーブルほどある大きな岩です。
    割れて崩れているそれには細いツルが巻きつき、ところどころに白い花を咲かせていました。
    荒れた大地を彩る儚い姿はなんとも目に優しく、ヤスリは頬が緩むのを自覚します。

    ともすれば何も思わず通り過ぎてしまいそうな、ちょっとした自然の美しさを見逃さずにいられるのは青い小鳥と旅をする者の特権です。

  • 366◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 22:18:50

    旅程は進みました。
    途中で休憩や何度か挟みつつも道のりは順調です。
    罵倒が消えたおかげでラロの足取りも軽く、この分ならば予定通りに都市に辿り着けそうでした。

    ヤスリには青い小鳥がついている以上、獣などに襲われる心配もありません。
    そういった危険がある場合は道を外れるよう促すか、出くわすタイミングからずらせるように休憩を提案してくれるのです。
    二年ほどの旅路の中でそれが裏切られた事はなく、ヤスリは小鳥の判断を信用していました。

    そうして、やがて夜が来ます。
    足元が見えず、夜行性の獣が動き出す中で進む利点は何もありません。
    ヤスリは大きめの立木の下に荷車を誘導し、そこで一夜を明かす事としました。
    火をおこし、乾燥させた薬草をすり潰した獣避けの香を焚けば一晩程度の野営には十分です。

  • 367二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 22:28:51

    ヤスリくんのサバイバルスキルがすごい上がってる

  • 368二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 22:28:57

    このレスは削除されています

  • 369◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 22:29:46

    夕飯は各自が持参した保存食です。

    つまりはクタリ村で作られている魚の焼き干しでした。


    歯と顎の強いラロはそのままバリバリと。

    ヤスリとセアラは湯を沸かし、割った焼き干しを放り入れたスープを楽しみます。


    「ウ、ム! ウマい!」


    「……薄気味悪い。そこらの犬だってもう少し上品に飯を食うよ」


    好物をモリモリ食べるラロは全く上機嫌です。

    それを見るセアラはようやく悪臭漂う荷車から出られてまた口を開いていますが、疲労からか声は小さく切れ味がありませんでした。


    そんな二人の横で、ヤスリはスープを啜りながら考えました。

    今夜の過ごし方についてです。



    【選択肢】


    1.セアラと話をする

    2.ラロと話をする

    3.二人と話をする

    4.青い小鳥の羽繕いをして過ごす

    5.何もせずに寝る

    6.その他自由安価


    >>370

  • 370二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 22:31:43

    6.ディープワンであるラロも精霊がハッキリと五感で知覚出来る自分も世間一般から見ればどっちも一纏めな異物なのに何故そんなにラロに対して当たりが強いのかとセアラに詰めてみる

  • 371二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 22:33:29

    このレスは削除されています

  • 372◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 22:44:19

    獣避けの香に、細々とながら燃える焚き火。
    それに、青い小鳥の加護。
    それらがあるとはいえ、ここは人を守る家どころか柵もない原野です。
    ろくに整備されていない道では大きな街道のように定期的な獣の間引きもされていません。
    夜の見張りはどうしたって必要です。

    「ラロ、先に寝ていい。ちょうどいいくらいに起こすから」

    「オ、イヤ、ヒトバンじゅウ、オレデモ、イイガ」

    「夜番は今日だけじゃないから。ラロもちゃんと寝てくれないと俺が困る」

    「ム……ソウか。ナラ、ソウスル」

    なので、ヤスリは先にラロを寝かせました。
    変に我慢強く、気を使いがちな彼に先に夜番をさせては途中でヤスリを起こさずに朝まで勝手に引き受けてしまいそうだというのがひとつ。
    そしてもうひとつ、別の理由もありました。

  • 373◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 22:51:54

    「で? 何の用だい」

    焚き火から少し外れた位置でラロが寝始めたのを見計らい、セアラがそう口を開きました。

    どうやら、無言のうちに冷たい視線で送っていた「話がしたい」というメッセージは彼女にしっかりと伝わっていたようです。
    夕飯をとっていくらか元気を取り戻したのか、セアラはフンと鼻を鳴らして焚き火を挟んだヤスリの対面に座っています。
    表情も姿勢もなんともふてぶてしいもので、内容は予想がついているでしょうに少しも身構えた様子はありません。

    その態度に、ヤスリはまた少しイラつきました。
    イタズラで多少はやり込めたとはいえ、ラロに向けられた罵倒の数々には頭にきているのです。

    なのでそれを、真っ向ぶつける事にしました。

  • 374◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 23:02:26

    「……アンタ、俺には何も言わないよな」

    「ふん?」

    「ラロに言ってるような事だよ。……俺もアイツも、同じハズレもんだろ」

    ヤスリは口を開きます。
    その口調には情動に乏しいヤスリをして隠しきれない怒りが滲んでいました。
    気の良い友を侮辱され続けて溜まったものを吐き出すように、詰め寄るようにセアラへと問いを投げ掛けました。

    この女はどうしてラロにだけ酷く当たるのか。
    仮にも村の一員と村長が認めているラロと、いっときの滞在者でしかないヤスリ。
    ラロが人間から受け入れられにくい異形の生き物というのはヤスリも理解していますが、それを言うならばヤスリとて多少外れた存在です。

    普通は見えない精霊を見て、声を聞き、触れ合える。
    そのために感覚や考え方がズレている自覚はヤスリ自身持っています。
    旅の中、それを原因としたトラブルに見舞われた事も何度かあります。

    だからでしょうか。
    ヤスリもラロも村から見れば似たようなもの。
    なのにラロだけが責め立てられる不公平にこそ憤りを感じているのかもしれません。

  • 375◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 23:14:41

    「く、く」

    そんなヤスリの問いに、セアラはすぐには答えませんでした。
    呆れたようにくつくつと笑いを漏らします。
    元々曲がった背中をさらに丸めて、低くなった顔からねめつける目にはヤスリをバカにするような暗い光がありました。

    「……なんだよ」

    「いいやぁ。ずいぶんお優しいボウヤだと思ってねぇ」

    そして、続く言葉にも悪意がありありとこもっています。

    「あんなのとオトモダチになれるようなのは違うねぇ。頭の中身がごっそり抜け落ちとると見える。ああ、それともやっぱり、人を騙して取り入るような連中はつるみたがるもんなのかい」

    嘲りがたっぷりと塗り込められたそれは、ついにヤスリにも向けられました。

    セアラは元々、ヤスリが語る精霊の話を信じていないようでした。
    正確には、精霊が起こす現象の実在は理解していても、それを使ってヤスリが村に詐欺でも働くのではないかと薄い疑いを持っている、といったあたりでしょうか。

    その隔意は、ここに来て大きく膨れ上がっているようです。

  • 376◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 23:26:35

    セアラの言葉に、ヤスリは反発を強めました。

    自分についての事はまだ良いとヤスリは思います。
    精霊が見えない人間に精霊に関する忠告をしたところで信用されないのは常の事です。
    詐欺師扱いされる事もままあり、いっそ慣れてしまっています。

    ですが、ラロはヤスリから見て気の良いやつでした。
    我慢強く、気遣い屋で、村人から避けられていても村に溶け込もうとする努力の出来る。
    そんな、そこらの人間たちよりもよほど友として隣にいたい相手です。

    「……アンタは、ラロの何を見て──」

    そんな事を言えるのか。
    そうフツフツと沸き上がるのは自然な事でしょう。

    「姿を見りゃわかるだろう。アイツがバケモノだからさ」

    そして、だから、セアラのそんな言葉には思わず噛み締めた奥歯がギリリと音を立てました。

  • 377◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 23:34:07

    姿が異形であるから。
    ラロが人間ではないから。
    それだけで人格など全て無視して嫌うのか。

    そんな言葉が喉から出ようとして、怒りにつっかえて音にならず、滑って肺腑の中に落ちていきます。
    荒い息を何度か吐き、ヤスリは腰の水筒を取って水をひと口飲み下しました。
    そうしなければ、意をまとめきれないまま罵倒だけが漏れでそうだったためです。

    「ふん」

    セアラはそんなヤスリの様子に頓着せず、言葉を続けました。

    「アンタ、二年ばかり旅なんかしてるんだってね。は、笑い種だ。そんなもんで世間を知った気にでもなってんのかい」

    「……何を」

    「覚えときな。根っこの生えてない流れもんにはわからんものもあるんだよ」

  • 378◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 23:35:09

    「海からやってくる人喰いのバケモノを、海に住む人間が憎まないとでも思ってんのかい」

  • 379◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 23:45:34

    ゾワリ、とヤスリの背筋が粟立ちました。

    セアラの目にはもう、嘲りはありません。
    代わりに宿っていたのは、見つめるだけで人を殺せそうなほどに濃縮された憎悪です。

    それまでセアラが見せた感情など、彼女の内心のほんの上澄みでしたなかったのでしょう。
    光の消えたドロドロとした瞳で、表情を削ぎ落としたセアラは言いました。

    「クタリの湾は貧しいだろう。あんな海じゃ、その日食ってくのが精一杯だ。……で、賢い賢いアンタらよそ者はいつだってこう言うんだ。もっと沖に出て漁をしたらいいんじゃないかってね」

    歯抜けの口が、ガパリと開きます。
    鋭くもなく、老いた歯はさしたる凶器にもならないでしょう。
    それでも、今ばかりはヤスリには、牙の生え揃ったラロの大口よりも不気味に見えました。

    「やったさ。やろうとしたさ。でもねぇ、その度に何人も死んだのさ。船に乗ってようがモリを持とうがお構いなしに、海のバケモノどもにやられてねぇ!」

  • 380◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 23:54:55

    「アタシの旦那は船ごとやられて帰ってこなかったよ」

    セアラは立ち上がり、呟きました。

    「息子は旦那と違って帰ってきたさ。孝行者だったからねぇ。体は半分だけになっちゃいたが」

    杖をついてゆらりと歩み、ヤスリの喉元を掴みます。

    「で、もう一度聞くがね」

    締め上げるでもなく。
    セアラはヤスリの顎を動かして自分に向かせ、ひどく平坦な声で問いました。

    「海からやってくる人喰いのバケモノを、海に住む人間が憎まないとでも思ってんのかい」



    「……でも、それをやったのは、ラロじゃない。アイツは、そんな事をするやつじゃない」

    「そうだろうね」

    か細いヤスリの反論に。

    「だけど、奴らと同じ、バケモノだ」

    絞り出すように吐かれた言葉は、どうしようもなくその通りではありました。

  • 381二次元好きの匿名さん25/09/29(㜈) 23:57:09

    うーんどうしようもない隔絶を感じる

  • 382◆d4/k1RhItvAy25/09/29(㜈) 23:57:21

    「アタシゃねぇ、アイツを怒らせたいのさ。怒って、アタシを憎んで……そんでアタシを頭ッからバリバリ食いでもすりゃ、村長どもも目が覚めるだろうってね」


    その言葉を最後に、セアラはヤスリに背を向けました。


    もう話すべき事はないと、彼女は無言で物語っています。


    【選択肢】


    1.何も言えない

    2.自由安価


    >>383

  • 383二次元好きの匿名さん25/09/30(灍) 00:00:25

    2.化け物なのはヒトも同じだろうと述べる。そうでなければ俺の傷はなんだ?「何も思い出せない」ハズなのに体が覚えているこのどうしようもなく誰かに虐げられてきたとしか思えない習性はなんなんだ?と

  • 384◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 00:04:44

    今日はここまで
    続きはまた明日
    寝ます

  • 385◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 00:06:43

    いややっぱキリ良いとこまでやろう
    寝づらい

  • 386◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 00:18:54

    「……バケモノなのは、人も同じだろ」

    その背中へ、ヤスリは声を絞り出しました。

    手を伸ばし、顔の傷に指先で触れます。
    醜く引きつり、今もまだ時折鋭い痛みを発するそれを、ヤスリはどのようにして刻まれたのかを覚えていません。
    思い出そうとしても頭の中にかかるモヤの向こうに霞むばかり。

    ですが、それでもわかることはあります。
    傷痕は明らかに刃でつけられたものでした。
    獣の爪によるものでも、崖などから転げて岩にぶつけたようなものでもありません。
    人間という生き物による殺意がこの傷を生んだのだとヤスリは確信しています。

    それを示す証拠は他にもありました。
    例えば、時折夢に見る、どことも知らぬ暗い路地裏に這いつくばり暴力にさらされる、過去の現実だと何故かわかってしまう光景。
    例えば、どうしても人間という種を前にした時に、心の中に混ざる警戒と猜疑。

    それらは全て、ハッキリとは思い出せなくとも、自分がどのように生きてきたのかをヤスリに示していました。
    ヤスリにとって最大のバケモノとは、他ならぬ自身の同種の事を指すのです。

  • 387◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 00:21:39

    対話:dice1d9=6 (6) (未熟+、上限9)

  • 388二次元好きの匿名さん25/09/30(灍) 00:26:05

    ちょい上振れたか?

  • 389◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 00:35:05

    「ラロは、バケモノかもしれない」

    ヤスリは立ち上がり、一歩を踏み出しました。

    「でも、人間だってバケモノだ。生きるためだけじゃなく、楽しいからって同じ人間を殺せる、クソみたいな生き物だ!」

    納得がいかないのです。
    人喰いの怪物たるディープワンと、人殺しのバケモノたる人間と、ヤスリの中ではさして違いはありません。

    「どっちも、変わりゃしないだろ……!」

    それなのに、ラロだけが憎悪される。

    咎はなく。
    しかし生まれ故に虐げられる、という。

    その所業はどうしようもなく、ヤスリには許しがたい事でした。

  • 390◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 00:51:04

    「……ふん」

    ヤスリへ返ったのは背中越しの言葉でした。
    セアラは振り返る事なく、藁袋で作った寝床に向かいながら、声を荒げずに呟きはじめ。

    「そりゃアンタだけの考えだろう。アタシには関係ないさね。……ま、少しだけは同意してやってもいいかねぇ。ああ、人間もバケモノさ。特によそ者はね。ハハ! アンタもアタシが気に入らなかったらその腰のナイフでも使ったらどうだい。今なら村から持たされた金がアンタのもんになるよ! クタリ村を、詐欺師に騙された間抜けの集まりにでもしたらいい!」

    途中からケタケタと、再び宿った嘲りに彩らせて吐き捨てました。



    それで、対話は切り捨てられました。
    セアラは自分を投げ捨てるように寝床に横たわり、ヤスリは火の前に座り込みます。

    夜は徐々に深まり、闇は濃さを増していきます。
    ほんの少しの光を求めて見上げた空はどうやら雲がかかっているらしく、月の姿は見えません。
    それでも顔を下ろす気にはなれず、ヤスリは何もない空で視界を埋めて過ごしました。

    その最中、深く長いため息をひとつ。
    ジクリと痛む傷痕に顔を歪めながら、ヤスリはゆっくりと吐き出したのでした。

  • 391◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 00:52:04

    今度こそ終わり
    また明日

  • 392二次元好きの匿名さん25/09/30(灍) 00:57:18

    おつおつ

  • 393◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 07:09:09

    朝保守

  • 394◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 13:00:57

    クソ忙しいので昼なし
    夜は7時くらいに始めたい

  • 395◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 19:02:47

    来たよ
    書いてく

  • 396◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 19:21:40

    「まぁたこのくっさいのに乗らんきゃいかんのかい。嫌ンなるね。……アンタが何かしたんじゃなかろうな。その気持ち悪い見た目だ、変な汁撒き散らすくらいはお手のもんだろうよ、えぇ?」

    翌朝からもまた移動は続きました。
    夜に詰め寄った甲斐もなく、セアラは依然変わりなく侮辱を漏らします。

    幸い、荷車の異臭はそのままです。
    朝食を済ませて乗り込むまでの間、それと休憩の時間だけを耐え忍べば静かなもの。
    旅程は停滞なく進みます。

    ただ、ヤスリには少し気まずい事もありました。

    「……オ、オォ、ヤスリ、ヤスリ」

    「ん?」

    「ア、アレを、ミロ。クモが、サカナ、ミタイダ、ぞ、ハ、ハ」

    「ああ、うん、そうだな」

    「ウ、ウム……アァ、ムグ、ソレと……オォ、アッチは──」

    これです。
    一夜明けた途端、ラロがやけに話しかけてくるようになったのです。
    それも、何とか無理に明るく振る舞おうとして、延々と話題を探しているのが丸分かりな様で。

  • 397◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 19:22:12

    恐らく、セアラとの話を書かれていたのでしょう。
    セアラもヤスリも多少声を荒げる場面がありましたから致し方ないと言えます。

    気遣い屋のラロらしい事でした。
    自分はこの旅路を楽しんでいる。
    辛いことなどない。
    だからヤスリが気に病んでセアラとぶつかる必要はないのだと、そういう意図だと思われます。

    ただ、それにしたって下手ではありました。
    不器用で嘘が苦手、という一文も、彼のプロフィールに付け加えておいた方が良さそうです。

  • 398◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 19:53:02

    さて、そんな二日目の旅路を終えて、三日目。

    朝と昼のちょうど中間あたりの時間帯に、ついに目的地が見えてきました。


    都市の名称はルーバンス。

    または、愛称をスアイの腰掛け。


    この別称はは古い伝承にある巨人の名を由来としています。

    海を見たいと泣いた友のため、スアイという巨人が天を覆うような大ダライだ西の海から水をくみ、東の山脈までを歩いたという伝説です。

    彼の歩いた跡は固く固く踏み固められて道になり、タライからこぼれた水は各地に湖や川を作ったのだとか。


    それが真実かどうかはさておき、実際に東西を貫く長大な街道は実在し、このルーバンスという都市はそのちょうど真ん中あたりに位置します。

    愛称の腰掛けの部分は、この辺りで巨人スアイが一度座り込んで休んだ伝承が元。

    近年では北方の太い荒れ川に橋がかかり新たな道が作られたおかげで、交易ルートが重なる要地として発展を遂げていました。


    そんなルーバンスは、他の一般的な都市と同様に全体を壁で囲まれていました。

    門は東西に古いものが二つ、北に新しいものが一つ。

    南西側からやってきたヤスリたちは、最も近い西の門に並びます。


    【守衛の質】


    4+dice1d6=1 (1) (治安7のため最低保証5)

  • 399◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 20:09:26

    途端、門に並ぶ列は騒がしくなりました。

    理由はすぐにわかりました。
    何人もがラロを指差し、近くの者や連れなどと何事か言葉を交わし合っているあたり、異形の種族に対する怯えと警戒が広がっているのは明らかです。

    この世界では一般に、都市を築き文明を作っているのは人間という種が中心です。
    それに友好的で人間の生存と発展に協力しているエルフやドワーフ、ゴブリンやオーガといった見た目も近い者は人間と同等の権利を得ています。

    しかし残念ながら、ラロは人間との友好関係にはないどころか、時に船や漁村を襲うことで知られるディープワンという種族です。
    法にこそ排除を定められてはいないものの、発見した場合は討伐が奨励されているような存在であり……例え突然変異的な友好性の高い個体であっても扱いは相応のものとなります。

    そんなラロが現れればちょっとした騒ぎになるのは必然でした。
    門の守衛もそれを聞きつけたらしく、槍を携えた者が数名駆けてきます。

    「異形の者が、人間の街に何用だ!」

    そしてそのまま、ラロを取り囲んで鋭い槍先を向けました。

  • 400◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 20:23:12

    「ウ、ォ……」

    自身に向けられた敵意と刃に、ラロは巨体をのけぞらせました。
    彼の体は人間のそれよりも強く、多少の武器は跳ね返す事もできるはずですが、精神的に気圧されてしまっているようです。

    見かねたヤスリはそれに、割って入って対応しました。
    そして、ラロの首から下がる木札を守衛達に示してみせます。
    それは村で持たされた、ラロをクタリ村の一員として認める一文と村長の証印が押されたものです。
    正式な身分証として機能するはずのもので、最低限ながらも法の保護がラロにも与えられるはずだと村長は語っていました。

    「これは……どうなるんだ?」

    「確かに、前例はあるが……」

    守衛はそれに困惑した様子でした。
    集まった守衛は五人。
    そのうち二人は槍を構えたまま、残る三人で顔を寄せ合って協議しています。

    その結果は。

    「……我々では判断がつかない。お前は個別に取り調べさせてもらう。ついてこい」

    ラロ一人だけ、別室に連れられていくというものになりました。
    守衛たちもどうして良いかわからず、そちらで上役か何かにラロを引き合わせて判断を仰ぐ事にしたようです。

  • 401◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 20:25:05

    【選択肢】


    1.ラロを見送る

    2.ラロについていく

    3.ラロを連れて行かないよう守衛に抗議する

    4.その他自由安価


    >>402

  • 402二次元好きの匿名さん25/09/30(灍) 20:37:12

    まあ大丈夫だろう
    1.

  • 403◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 20:48:33

    (まぁ大丈夫……だよな?)

    ヤスリはそう判断し、ラロを見送る事としました。
    守衛は槍こそ向けてはいましたが、木札を見せてからは攻撃的な気配は緩んでいました。
    あの分ならばラロが大人しくしている限りは問題ないでしょう。
    そして、ラロに限っては暴れるような事はないはずです。

    「ふん、口答えでもして牢にでもぶち込まれりゃいいんだ」

    「……」

    セアラは別の見解があるようでしたが、ヤスリはそれを努めて無視しました。
    彼女と言い合ったところで平行線に終わるだろう事はあの夜以来わかっています。
    無駄に騒いで守衛にこれ以上目をつけられるのは避けるべきです。

  • 404◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 21:09:06

    その判断を、ヤスリはわずかばかり後悔することになりました。

    「ス、スマン、マタセた」

    何事もなく審査を終えて門を通った先。
    ラロの合流を待っていたヤスリの前に現れたラロには枷がつけられていました。

    ひとつは手錠です。
    しっかりとした作りの鉄製のそれは鎖がやや長めであるために多少の余裕はありますが、自由はいくらか制限されています。

    もうひとつは、犬につけるような口輪です。
    横側に大きな間隙があるのでそこから差し込めば物は食べられるでしょうが、正面は格子状の金属で覆われており、噛み付く事が出来ないようにされています。

    また、両手にはミトンのような厚手の手袋がはめられていました。
    爪に対する対策でしょう。

    もちろん、ラロに都市の住民を傷付ける意思はなく、牙や爪を使う機会がないのですから多少の不便を除けば問題はありません。
    ですがその様は、まるで罪人のようでした。

    「ハ、ハ、キニスル、ナ。オレは、キニシナイ。ソレニ、ハズセバ、ツミ、ニナル」

    抗議するにはすでに遅く、都市としての決定は下されてしまっています。

    「…………不便があったら、手伝うから」

    「オォ、タノム」

    ヤスリに出来るのは、それぐらいのものでした。

  • 405◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 21:22:32

    「……ム? セアラ、ハ?」

    「村に来てもらう学者に心当たりがあるって、一人でどこか行ったよ」

    さて、ともかく都市に入る事は出来ました。
    ならば次はここにやってきた目的を果たすべきです。
    つまりは精霊に、あるいは海に詳しい学者か何かとコンタクトを取り、交渉をする事なのですが。

    どうやらそれはセアラに案があるようです。
    物を知らない未熟な若造は口を出すな。
    そんな言葉を吐き捨て、杖を突きつつも歳の割にはしゃっきりとした足取りで市街の中心部側へと消えていきました。

    一旦、ここはセアラに任せておくのが良いでしょう。
    もし交渉にヤスリたちの出番があるとしてもセアラが失敗した後という方になります。
    この場にいる生粋のクタリ村の住民はセアラだけですし、村長から資金の管理を任されているのも彼女です。
    優先権はセアラにありました。

  • 406◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 21:36:27

    そんなわけで、ちょっとした自由時間です。
    時刻はまだ昼前。
    セアラとの合流は夜に宿でと決めておいたので、それまでは好きに動けます。

    ピィロロ、と青い小鳥がヤスリの周りをグルグルと飛び回りました。
    これはどっちに行こうが未知のものが待っているという合図です。
    こういった大きめの街に来た時には時折見られるもので、こちらはダメ、という主張も無いあたり都市内の治安は高い水準にあるのもわかります。

    道中と、門での一悶着。
    それらで沈んだ心を引き戻すためにも、ここは小鳥の誘惑に身を任せるのが良さそうです。

    見るべきものは色々と思い浮かびます。

    ルーバンスは交易で栄えている都市ですので、当然各地から様々な物品が集まっています。
    市場でも探せば異郷の品々を目に出来るでしょう。
    土地に色濃く刻まれた巨人の伝承を調べて回るのも悪くありません。
    また、小耳に挟んだ噂によるとルーバンスは冒険者の活動が盛んであるそうです。
    吟遊詩人の唄う荒くれどもの英雄譚に耳を傾けてみるのも中々魅力的に思えました。

    もちろん、それら以外でも。
    相当に発展した都市であるルーバンスは、どこを歩いてもそれなり以上にヤスリを楽しませてくれそうです。

  • 407◆d4/k1RhItvAy25/09/30(灍) 21:45:50

    【選択肢】


    1.市場で買い食いをする(健康+)

    2.広場で英雄譚に耳を傾ける(武力+)

    3.広場で賭博遊戯に挑戦する(技術+)

    4.市場で私物を売ってみる(話術+)

    5.都市の成り立ちについて調べてみる(知識+)

    6.市場で買った食材で調理を試みる(家事+)

    7.巨人の伝承を調べてみる(神秘+)

    8.その他自由安価(何が育つかは適当に決定)


    >>408

  • 408二次元好きの匿名さん25/09/30(灍) 22:25:52

    7かな

  • 409二次元好きの匿名さん25/09/30(灍) 22:41:53

    神秘全振りビルドになろうとしている

  • 410二次元好きの匿名さん25/10/01(ć°´) 08:05:28

    このレスは削除されています

  • 411二次元好きの匿名さん25/10/01(ć°´) 14:51:57

    おつづく

  • 412二次元好きの匿名さん25/10/01(ć°´) 18:42:20

    今日は何時からだろうか

  • 413二次元好きの匿名さん25/10/02(㜍) 00:18:40

    念の為保守しとこ

スレッドは10/2 10:18頃に落ちます

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