- 1◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 16:18:08
- 2◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 16:19:17
- 3◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 16:20:34
【寮分け】
寮長は名前の前に◎、副寮長は名前の前に○。
バッファーセンス:清夏 燐羽 学P (同室P、◎竜太、○未夢)
メンタロジック:咲季 ことね ◎麻央 広 佑芽 美鈴 (○レイト)
アノマリア:手毬 リーリヤ 莉波 ○燕 (◎ウィル)
自宅通い:千奈 ◎星南 優 - 4◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 16:21:54
【登場人物/オリキャラ】
・同室P
年齢:20
学年:プロデューサー科1年
性別:男性
学Pのルームメイト。清夏をプロデュースしている。明るい性格で、清夏から「話しやすい」と評されている。
元々アイドルのプロデューサーとして活動していたが、担当の引退を機に初星学園へ入学し、学び直すことを決意。元担当を支えきれなかったことが心の傷となっている。
・茨城竜太(いばらき・りゅうた)
年齢:17
学年:アイドル科男子3年3組
性別:男性
バッファーセンス寮長。超然としたオーラを放つアイドル。
学校にいる時間が少ない上、近寄りがたい雰囲気のせいで友達を作るのが苦手。数少ない友人である未夢に懐いている。
・郡司未夢(ぐんじ・みむ)
年齢:17
学年:アイドル科女子3年3組
性別:女性
バッファーセンス副寮長。老人のような口調で話す。
初星学園3年生の例に違わず面倒見が良いものの、言動がほとんどおばあちゃん。竜太のことを弟や息子……いや、孫のように慈しんでいる。 - 5◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 16:26:42
・円レイト(まどか・れいと)
年齢:16
学年:普通科2年1組
性別:男性
メンタロジック副寮長。
寮長会議では唯一の普通科かつ後輩であり、アイドル達の圧に押されることが多い。寮長の麻央を尊敬している。
・薬師寺志(やくしじ・うぃる)
年齢:17
学年:アイドル科女子3年3組
性別:女性
アノマリア寮長。現役の俳優であり、演劇で培った技術をアイドルのパフォーマンスに還元している。
向上心が高く、自分にも他人にも厳しい。副寮長の燕のことをどう思っているかは謎。 - 6◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 16:28:04
【これまでのあらすじ】
初星学園の寮生は、入学時に「バッファーセンス」「メンタロジック」「アノマリア」のいずれかに分類され、別々の寮で暮らすことになっている。寮生の結束を強める「寮内交流会」や寮対抗行事が毎年開催されているが、今年度からは『寮無しの一番星』十王星南が自宅通学者代表に就任し、風向きが変わりつつある。
賀陽燐羽をスカウトし、終活を手伝うこととなった学P。引退ライブを見据え、まずはパフォーマンスの完成度を上げること、そしてその成果を定期公演『初』で示すことを燐羽に指示した。 - 7◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 16:32:59
【予告】
Episode 11: 交流会後編(メンタロジック、自宅通学者)
Episode 12: 学Pによる燐羽プロデュースSTEP1
本日17時頃からEpisode 11を投下します。
N.I.Aと大運動会のエピソードも鋭意執筆中です。 - 8◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 16:54:27
たまにTipsで情報を補足します
↓
Tips: まるで理想のお姉さんみたいな
サポートカード「まるで王子様みたいな」のコミュ「王子様みたいなセンパイ」にて、リーリヤは寮の歓迎会で寮長の麻央に話しかけられる。麻央とリーリヤの寮が違う世界線では、麻央のポジションが莉波に置き換わる(>>79参照)。同時に麻央もメンタロジック寮で、誰かの王子様になっているのかもしれない。
- 9◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 17:00:49
Episode 11: 叫びと勝負とラブコール(広 Side)
アイドル科女子1年2組の教室。
広「千奈、千奈。」
千奈「篠澤さん、どうしましたの?」
広「愛してる。」
千奈「……ふえぇぇぇ!?」
広「ふふん。ドッキリ大成功だ、ね。」
千奈「篠澤さんったら、もうっ、もうっ……!」
顔を真っ赤にして悶絶する千奈。
千奈「一体、……いったいどこでそのようなご冗談を覚えたのでしょうか!」
広「交流会。」
千奈「交流会……この間、『寮内交流会』と題して開催されておりましたわね。」
広「うん。午後の部で、『愛してるゲーム』をやったよ。」
千奈「『愛してるゲーム』……どのようなルールでしたの?」
広「愛の言葉を言い合って、相手を照れさせた方の勝ち。相手を魅了する力と、魅了されない精神力が試される。」
千奈「なるほど……よくわかりませんわ!」
広「聞かせてあげる。わたしの『たたかいのきろく』。」 - 10◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 17:02:35
(回想。交流会、午後の部。)
メンタロジック寮舎、談話室。
レイト「……ルール説明は以上です。」
初めての挑戦。楽しみ。
ことね「あたし、こういうのは得意なんだよナ~。」
咲季「勝負とくれば勝つまでよ!寮生全員、メロメロにしてやるわ!」
佑芽「うぐぅ、やってみるしかないかぁ……!」
美鈴「皆さん、優勝する気満々ですね。あまり気負いすぎるのも良くないですよ。」
他のみんなの戦いも、楽しみ。
麻央「さあ、第1試合がもうすぐ始まります!」
最初の対戦相手は……
dice1d6=3 (3)
1.花海咲季
2.藤田ことね
3.有村麻央
4.花海佑芽
5.秦谷美鈴
6.円レイト(副寮長)
- 11◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 17:28:32
麻央「最初の相手は君かい。アイドル科の新入生、篠澤広。」
広「うん。……麻央、先輩アイドルだ、ね。」
麻央「自信のほどは?」
広「自信……」
dice1d100=25 (25)
- 12◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 17:33:55
わたしはアイドルになったばかりで、麻央はたくさんの人をアイドルとして魅了してきた。わたし、いきなり負けちゃう、かも。
広「ふっふっふ。負ける気しかしない。」
麻央「その言葉、褒め言葉として受け取っておくよ。さあ、対決を始めようか。」
【みんな大好き!愛してるゲーム・第1試合】
1P 篠澤広
魅力:dice1d100=49 (49)
耐久:dice1d100=74 (74)
2P 有村麻央
魅力:dice1d100=62 (62)
耐久:dice1d100=44 (44)
先攻:dice1d2=2 (2)
攻撃側の魅力が守備側の耐久を上回れば守備側が照れ、攻撃側の勝利。下回れば守備側が耐え、守備側の勝利。
攻守交代して、2回とも勝った方が次の試合に進む。
勝負が決まらない場合は延長戦を行い、先に相手を照れさせた方が勝ちとなる。
- 13◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 17:58:34
麻央「先攻・後攻の決め方は試合ごとに異なり、決め方は大スクリーンに表示される。今回は……『先攻:生まれたのが早い方』だね。」
広「じゃあ、麻央が先攻。」
麻央「よし。見せてあげようじゃないか、王子様の力というものを!」
……来る。
麻央「広……愛してるよ。」
広「……!」
これは……明らかに言い慣れてる。相手の目をまっすぐ見つめて、シンプルな言葉に温かみをのせて、包み込んでくるみたい。
でも、……わたしはそう簡単に照れたりしない。
広「……ふぅ。なんとか耐えた、よ。」
麻央「ボクの『愛してる』が……通じない!?」
広「麻央の驚いてる顔、かわいい。」 - 14◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 18:58:52
麻央「……いや、ここで負けるわけにはいかない。キミの愛の言葉、正面から受け止めてみせるよ。」
広「うん、じゃあ……行くよ。」
落ち着いて、深呼吸して……。
広「……愛してる。」
渾身の一撃。手応えは……。
麻央「はわわわわ……(赤面)」
手応えアリ。
広「相手は完全に落ち着きを失っている。わたしの勝ちだ、ね。」
麻央「そ、そんな……このボクが……第1試合で……」
広「完全勝利。いぇい。」
麻央「……フフフ、ボクはキミの実力を見くびっていたみたいだ。おめでとう、広。次のステージに進みたまえ。」
勝っちゃった。あの寮長に。 - 15◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 21:47:17
麻央は挙動不審になりながら司会者席に戻っていった。
麻央「ただ今……うっ……も、戻りました。」
レイト「どうしたんですか寮長!?どこか具合でも悪く……」
麻央「心配いらないよ。ただ、生きのいい新入生に返り討ちに遭っただけさ。」
レイト「まさか……初戦敗退、ということですか?」
麻央「恥ずかしながら、その通りさ。」
【みんな大好き!愛してるゲーム・第1試合】
レイトの戦績:dice1d2=2 (2)
1.勝った
2.負けた
負けた場合、対戦相手はdice1d5=1 (1)
1.花海咲季
2.藤田ことね
3.花海佑芽
4.秦谷美鈴
5.その他
- 16◆JCC0OVVJYw25/09/25(木) 22:04:39
レイト「そんなに落ち込まないでください。僕もついさっきアイドル科の新入生……花海咲季ちゃんと勝負して負けました。」
麻央「花海咲季……やはり今年の新入生は逸材揃いだね。」
レイト「(咲季ちゃん、小さくてかわいかったな……。)」
麻央「第1試合はこれにて終了です。続いて第2試合です。」
麻央はようやくいつもの調子に戻ってアナウンスをした。
さて、わたしの対戦相手は……
dice1d5=1 (1)
1.花海咲季
2.藤田ことね
3.花海佑芽
4.秦谷美鈴
5.その他
5の場合
・学科:dice1d3=3 (3)
1.普通科 2.アイドル科 3.プロデューサー科
・性別:dice1d2=1 (1)
1.女子 2.男子
・クラス:dice2d3=2 2 (4)
- 17◆JCC0OVVJYw25/09/26(金) 07:43:25
同室Pと清夏の物語を短編でお送りします。
【朝の短編/同室Pの日記#1】
清夏ちゃんの今の実力を見せてもらった。そつなく歌っているけど、これから更に良くしていけるはずだ。 - 18◆JCC0OVVJYw25/09/26(金) 16:54:02
咲季「次の対戦相手は……あなたね、篠澤広。」
広「あ、2位の人だ。」
咲季「……その呼び方はやめなさいって言ってるでしょ。」
広「咲季、自信のほどは?」
咲季「大ありよ!!わたしは勝つのが好きだもの!ついさっき、そこの副寮長を叩きのめしたところよ。」
広「へー。わたしは麻央……寮長を倒した。」
咲季「あの寮長を……やるわね。でもね、わたしはここで負けるわけにはいかないの。覚悟しなさい、篠澤広!今度こそわたしが1番よ!」
広「おおー、凄い自信。」
わたしの自信はdice1d100=76 (76)
- 19◆JCC0OVVJYw25/09/26(金) 16:58:33
広「でも、わたしだって……負けない。」
さっき麻央に勝った分、自信がついた。
咲季「そっちも自信があるようね。腕が鳴るわ!さあ、試合開始よ!」
【みんな大好き!愛してるゲーム・第2試合】
1P 篠澤広
魅力:dice1d100=100 (100)
耐久:dice1d100=94 (94)
2P 花海咲季
魅力:dice1d100=73 (73)
耐久:dice1d100=68 (68)
先攻:dice1d2=2 (2)
- 20◆JCC0OVVJYw25/09/26(金) 17:16:04
咲季「『先攻:握力が強い方』……。今、握力計が配られたわね。右手と左手の平均値を比べるそうよ。」
広「じゃあ、わたしが先に測るね。」
測る前から結果は分かりきっている。
広「ふんっ……!」
右手:13kg 左手:14kg
広「……はあ、はあ……」
交流会で体力をこんなに消耗するなんて、思わなかった。
咲季「じゃあ次はわたしの番ね。」
右手:39kg 左手:41kg
咲季「ふぅ、こんなところね。」
広「わぁ、およそ3倍の差……」
咲季「ということは、先攻はこの花海咲季!」
広「わたしは後攻。」 - 21◆JCC0OVVJYw25/09/26(金) 17:34:23
咲季「……ふうーっ。」
相手は呼吸を整え、万全の状態。
……来る。
咲季「愛しているわ。広。」
広「……」
疲れた体に染み渡る、甘い声。まるでハードなレッスンの後に飲むドリンク。生き返るような気分……だけど……
咲季「……ねえ、生きてる?」
広「うん、生きてる、よ。」
しばらくの間、わたしは死んだように動きが止まっていたみたい。表情筋を動かす余裕も無かった。そもそも、恥ずかしいという感情すら沸かないくらい参っていた、から。 - 22◆JCC0OVVJYw25/09/26(金) 18:01:39
前の試合でも後攻だったけど、わたしは耐久力がある方だ。問題は、攻めの方。
咲季「次はあなたの番よ。どこからでもかかってきなさい!」
わたしは疲労困憊。普通ならデバフだ。でも、わたしは絶体絶命の崖っぷちでこそ、輝く。
想定するのは、もうすぐ息絶えるわたしが、ずっと好きだった人に最期に愛をささやくというシチュエーション。
広「さ……き……あ……ゴホッ……あいして……る……」
咲季「……な、な……」
咲季の顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。
咲季「何よその顔つき!目線!言い方!まるで死ぬ直前の恋人じゃない!!(赤面)」
広「咲季って、結構チョロい?」
咲季「……相変わらず引っかかる物言いね。」 - 23◆JCC0OVVJYw25/09/26(金) 21:50:59
広「はぁっ……これで、2勝……」
咲季「篠澤広。今の愛の言葉、凄い威力だったわ。あなた、役者に向いている気がする。」
広「そ、そうかな?」
咲季「まあそれはそれとして、わたしに勝ったからには優勝して貰わないと困るわよ!わたしの想いも背負って、行きなさい!」
行っちゃった。
レイト「第2試合は全員終わりましたね。」
麻央「それでは、勝ち残った寮生を大スクリーンに表示します。」
そうだ。佑芽と美鈴は勝ち残ったのかな。
【みんな大好き!愛してるゲーム・第2試合】
佑芽の戦績:dice1d2=2 (2)
美鈴の戦績:dice1d2=1 (1)
1.勝った
2.負けた
- 24◆JCC0OVVJYw25/09/26(金) 21:52:33
佑芽が負けた対戦相手はdice1d3=3 (3)
1.藤田ことね
2.秦谷美鈴
3.その他
- 25◆JCC0OVVJYw25/09/26(金) 22:01:13
佑芽「負゛け゛た゛~~~~~~!!!」
咲季「佑芽……」
佑芽、負けちゃったんだ。
でも、美鈴は勝ち残ったみたい。
麻央「それでは、第3試合へ進みます。」
次にわたしと勝負するのは……dice1d3=1 (1)
1.藤田ことね
2.秦谷美鈴
3.その他
3の場合
・学科:dice1d3=1 (1)
1.普通科 2.アイドル科 3.プロデューサー科
・性別:dice1d2=2 (2)
1.女子 2.男子
・クラス:dice2d3=1 1 (2)
- 26◆JCC0OVVJYw25/09/27(土) 07:46:38
【朝の短編/同室Pの日記#2】
今日はダンスレッスンを受けてもらう予定だったけど、「だるいしサボりー。」とのこと。これが自称「ぜんぜんやる気ない」人の行動か……。 - 27◆JCC0OVVJYw25/09/27(土) 17:00:12
次の対戦相手は、藤田ことね。
ことね「ここまで順調に勝ち上がってきたんだ、今のあたしならできる、きっと……」
広「ことね。」
ことね「うえぇ!?!?……あーびっくりした。あんたが第3試合の相手?」
広「うん。並み居る強豪を攻略してきた、よ。」
ことね「ふーん。相手にとって不足無し、か。」
ことねは、相手の心にリーチしやすい社交性の持ち主。言うなれば……『世界一かわいい補正』がかかっている。今までで一番の強敵だ。
わたしの自信はdice1d100=86 (86)
- 28◆JCC0OVVJYw25/09/27(土) 17:02:42
でも、頑張る。これまでの戦績がある分、自信も最高潮。
広「負けない、よ。」
【みんな大好き!愛してるゲーム・第3試合】
1P 篠澤広
魅力:dice1d100=57 (57)
耐久:dice1d100=31 (31)
2P 藤田ことね
魅力:dice1d100=88 (88) +20(世界一かわいい補正)
耐久:dice1d100=97 (97)
先攻:dice1d2=1 (1)
- 29◆JCC0OVVJYw25/09/27(土) 17:28:17
ことね「先攻後攻は……どれどれ、『先攻:名前に濁点が少ない方(同じ場合はじゃんけんで勝った方)』だってさ。あたしは『藤田ことね』だから、濁点は1個だナ~。」
広「わたしは濁点が一つも無い。わたしが先攻だ、ね。」
初めての先攻。それでも、今まで通りにやれば良いだけ。
ことね「いつでも来ていいぞー。」
うん、準備は万端。
呼吸を整えて、真っ直ぐ相手の目を見て……
広「愛してる。」
前回のあれはイレギュラーとして、麻央に対する攻撃よりは魅力が上だったと思う。
ことね「……ぐ、……ぐぬぬぬぬ……」
広「あ、耐えられた。」
ことね「ぷはぁーっ!!よっしゃ、なんとかなった。」
広「ことね、以外と耐久力ある。」
ことね「まーね、スルースキルも社交性の一部だし?」 - 30◆JCC0OVVJYw25/09/27(土) 17:44:46
ことねを先攻で仕留められなかった。となれば。
ことね「ふっふっふ、遂にあたしの番……見てろよ篠澤広!あたしの愛の言葉!」
これを耐えなければ、わたしは負ける。それでも、勝てる可能性が1%でもあるなら……!
わたしは臨戦態勢に入った。
……来る。
ことね「広ちゃん、愛してる~っ♪」
!?……か、考えることも……ままならなくなって……
……意識が、遠のく……
広「はああああああああ……きゅう。」バタッ - 31◆JCC0OVVJYw25/09/27(土) 19:11:27
ことね「……おーい、大丈夫かー?」
広「うう、ううん……」
目を覚ますと、保健室。
ことね「あんたさっき、見たことないくらいほっぺた真っ赤にしてたし、汗ダラダラだったし。無理すんなよー。」
広「心配かけてごめん。許容量を超える愛を受けて、倒れちゃった。」
わたしが倒れて保健室送りになるのは日常茶飯事だ。でも、あの心臓の高鳴りと全身の血の巡りが速くなった感覚、ほてった体は……これまで経験したことがないもの。
美鈴「篠澤さん、ご無事で何よりです。」
佑芽「広ちゃん……生きてて良かった!!……あの、皆さん、広ちゃんはもう大丈夫です。」
周りの視線は、わたしという一点に集まっていた。保健室の外に人だかりができていたみたいで、佑芽がわたしの無事を知らせた。 - 32◆JCC0OVVJYw25/09/27(土) 21:50:17
広「大会は、どうなった?」
美鈴「第3試合がすべて終了した所です。」
佑芽「広ちゃんとことねちゃんの対決、どうなったの?」
広「わたしの負け。ことね、あなたはわたしを攻略した。わたしの限界を超えてきた。」
ことね「あたしが……あんたの限界を……」
広「第4試合、行ってきて。」
ことね「うん、そっか。そうだよな。気持ち切り替えていくしかないかー!」
ことね、吹っ切れたみたい。
美鈴「それでは、わたし達も会場に戻るとしましょう。保健室に長居するのも良くないですから。」
広「美鈴、ことね、頑張ってきて。」
佑芽は人だかりが引いていくのを見届けてから、
佑芽「保健室の先生、後は頼みました!」
と言い残して、保健室を後にした。 - 33◆JCC0OVVJYw25/09/27(土) 21:59:30
ことねは、第4試合以降も順調に勝ち進んでいた。そして、遂に決勝戦へ進出した。
広「決勝前に戻ってこれて、良かった。」
佑芽「見て見て!あそこにいるの、美鈴ちゃんとことねちゃん!」
咲季「本当にもうすぐ終わるのね。最後まで、勝負の行方を見守りましょう。」
レイト「さて、『みんな大好き!愛してるゲーム』もいよいよ最終試合となります。」
麻央「決勝進出を果たした2人に、拍手をお送りください!」
壇上には、大喝采を受ける2つの影。
ことね「頑張りま~す。ぜってー勝ってやるから!」
美鈴「まあ、わたしに勝てるとでも?わたしが上で、あなたが下です。」
ことね「何でそう上から目線なんだ……。」
【みんな大好き!愛してるゲーム・決勝試合】
1P 藤田ことね
魅力:dice1d100=66 (66) +20(世界一かわいい補正)
耐久:dice1d100=85 (85)
2P 秦谷美鈴
魅力:dice1d100=53 (53) +10(やる気補正)
耐久:dice1d100=44 (44) +10(やる気補正)
先攻:dice1d2=2 (2)
- 34◆JCC0OVVJYw25/09/28(日) 07:48:59
【朝の短編/同室Pの日記#3】
担当と一緒に受ける授業はプロデューサー科らしくて好きだ。あさり先生の教え方も丁寧で、入学して良かったと思える。 - 35◆JCC0OVVJYw25/09/28(日) 14:20:40
美鈴「『先攻:出身地が西にある方』ですか。わたしは京都出身ですが、藤田さんは……」
ことね「あたしは埼玉県出身だから、あんたが先攻ね。」
美鈴「はい。それでは……行きます。」
美鈴は目を閉じて力を溜めたようで、それからゆっくりとまぶたを上げて瞳をことねに向けた。
美鈴「藤田さん、愛しています。」
ことね「……」
ことね「ヨシ、耐えた!」
美鈴「まあ……」
観客の一部がざわついた。美鈴のアイドル力に心奪われた人も多い。流石中等部ナンバーワンユニットの一人。だけど、ことねは強い。 - 36◆JCC0OVVJYw25/09/28(日) 14:23:04
ことね「さあ、後は分かってるなー?」
美鈴「はい、藤田さん、お願いします。」
ごくりと息を呑む。わたしを一番追い詰めた愛の言葉。来る。
ことね「美鈴ちゃん、愛してる~っ♪」
美鈴「!!!!!!」
美鈴「ふっ、うふふふふ……(赤面)藤田さん、あなたの勝利です。」
ことね「えっ……あ、あたしが……」
麻央「おめでとう。自信を持って。キミが勝ち取った好印象ナンバーワンだ。」
ことね「はい……あたし、優勝しました!みんな、愛してるー!」
レイト「今回の『みんな大好き!愛してるゲーム』優勝は、高等部アイドル科女子1年1組、藤田ことねさんでした!藤田さんとすべての寮生の皆さんの健闘をたたえ、今一度大きな拍手をお送りください!」
割れんばかりの拍手。
麻央「寮内交流会は、これにて閉幕となります。お疲れ様でした。」
会場内は温かな空気に包まれ、白熱の戦いは終結した。 - 37◆JCC0OVVJYw25/09/28(日) 17:00:28
(回想終わり。)
広「これが、『たたかいのきろく』。」
千奈「篠澤さん……わたくしのあずかり知らぬところでこのような激闘が繰り広げられていたのですわね。まずは、皆さまのご健闘をたたえますわ。篠澤さんも、素晴らしい戦いぶりでしたわ。」
広「ふふ……そんなに褒められると、照れちゃう。その場に千奈がいなかったのが、一番の心残り。」
千奈「まあ、篠澤さんったら……」
佑芽「うわあああああああああああん!!!」
いきなり叫びながら教室に駆け込んでくる佑芽。
千奈「は、花海さん!そのご様子でいらっしゃるということは……」
佑芽「またお姉ちゃんに負けた~~~!悔しい~~~!!」
広「今度は、何の勝負?」
佑芽「愛してるゲーム。交流会で直接対決できなかったから。」
千奈「花海さんと咲季お姉さま、本当にあらゆる勝負をしてらっしゃるのですね。」
広「わたし達も、ちょうど今その話をしてた。ほら、そこに準優勝者が。」
美鈴「ふわぁ……まあ、わたしをお呼びでしょうか。」 - 38◆JCC0OVVJYw25/09/28(日) 19:01:05
佑芽「美鈴ちゃん、愛してるゲーム強いんだね!」
美鈴「藤田ことねさんには、負けてしまいましたが。」
広「決勝は、内部進学組同士の戦いだった。アイドル4年生の力は凄かった。」
千奈「星南お姉さまが藤田さんにご執心なさる理由が、少し分かった気がしますわ。」
広「みんな、聞いて。ひとつ気づいたことがある。」
千奈「気づいたこと?」
佑芽「なになに?教えて。」
広「先攻後攻の決め方について。」
美鈴「先攻後攻の決め方……生まれた順など、毎回異なる条件が大スクリーンに表示される形式でしたね。」
千奈「あまり聞き慣れない方式ですが……相手のことを見る機会ができて、交流会にぴったりの仕組みだと感じますわ。」
広「あれ、ちょっとした法則がある、よ。」 - 39◆JCC0OVVJYw25/09/28(日) 21:59:55
美鈴「法則、ですか?」
佑芽「えっ!?完全にランダムだと思ってた!」
千奈「わたくしも特に気がつきませんでしたが……」
広「実は、ある人物が勝ちやすいように仕組まれてる。」
千奈「ど、どうしてそうなるのでしょうか!?」
広「それじゃあ、まずは振り返っていこう。」
わたしは研究ノートを開き、みんなに見せた。
第1試合『先攻:生まれたのが早い方』
第2試合『先攻:握力が強い方』
第3試合『先攻:名前に濁点が少ない方(同じ場合はじゃんけんで勝った方)』
(中略)
決勝試合『先攻:出身地が西にある方』
広「ヒント。ある人物が先攻になりやすい。分かるかな。」 - 40◆JCC0OVVJYw25/09/29(月) 07:54:45
【朝の短編/同室Pの日記#4】
今日はビジュアルレッスンの日。ポーズレッスンだったけど、普通に受けていた。ポーズを決めるのは問題ないのに、ダンスだけはダメなのか……? - 41◆JCC0OVVJYw25/09/29(月) 17:00:55
千奈「とりあえず、一番上から考えていきましょうか。まずは生まれた順の条件ですが……どう考えれば良いか、さっぱりわかりませんわ~!」
佑芽「えーっと、一番年下なのは中等部1年生の、4月1日生まれの人だよね。いるか知らないけど。」
千奈「花海さんに出会ってから初めて知りましたが、1学年の中で4月1日生まれが最年少になるのは、不思議なことですわ。」
美鈴「逆に、最年長の方はおいくつなのでしょう?プロデューサー科は4学年ありますが、18歳で入学する方は少ないとお聞きしました。居るには居るのですが。」
広「みんな、行き詰まってるね。最大と最小じゃなくて、中央値を考えるといいよ。」
千奈・佑芽「中央値?」
美鈴「まあ、なるほど。確かにその通りです。」
佑芽「美鈴ちゃん、理解早っ!」
千奈「篠澤さん、解説を頼みますわ~!」
広「了解。」 - 42◆JCC0OVVJYw25/09/29(月) 17:12:19
広「中央値とは実数値の集合に対して定義される。ある実数の集合について、集合の要素を大きさ順に並べた時、ちょうど真ん中の値を中央値と定義する。集合の大きさが偶数の場合、真ん中の2つの値の平均を中央値と定義する。」
佑芽「実数値?集合?……偶数の場合?(グルグル目)」
佑芽、混乱してるね。千奈も困った顔だ。やっぱり、わたしは説明が得意じゃない。
広「あ、教えるのが上手い人だ。中央値の説明、お願い。」
ここは偶然通りかかった咲季の力を借りよう。
咲季「任せなさい!わたしこそ『教えるのが上手い人』よ!」
佑芽「あ、お姉ちゃん!」
咲季「それで、どんな問題なの?」
広「『先攻:生まれたのが早い方』という条件で、有利になる人は何年生以上?メンタロジック寮の話。」
咲季「なるほど、交流会の時の……。年齢の中央値がどこに位置するのか求めればいいのね。」
広「それじゃ、みんなにも分かるように解説よろしく。」
咲季「それじゃあ、今から解説を始めるわ!紙の資料があると分かりやすいわね。」
広「このノートに書いていいよ。」
咲季「有り難く使わせてもらうわ。……こんなものかしら。」 - 43◆JCC0OVVJYw25/09/29(月) 17:14:29
咲季「これが、初星学園の生徒の学年構成を図にしたものよ。正確な値ではないけれど、大体こんな感じだと思うわ。それぞれの寮でも、構成比に差は無いと仮定しましょう。」
千奈「高等部の人数が、中等部の2倍ほどありますわ。」
美鈴「高等部は中等部から進学した生徒と入試で高等部から入った生徒がいる分、このようなバランスになるのは自然です。」
咲季「ええ。そしてプロデューサー科も含めると……中央値はここ。高等部2年のあたりよ。」
佑芽「高等部2年……」
咲季「中央値より上は『全体で見て上の方』。中央値より下は『全体で見て下の方』と解釈できるわ。」
千奈「つまり、わたくし達高等部1年生は、全体で見て下の方……ということですわね。」
佑芽「てことは、第1試合で後攻になりやすいんだね。……合ってる?」
咲季「その通りよ。」
広「このことを踏まえて、『先攻になりやすい人』の条件を考えると?」
佑芽「最低でも高等部2年生で誕生日が前半の人。」
千奈「更に踏み込めば、高等部3年生かプロデューサー科の方の可能性が高いのでしょうか?」
広「うん、完璧。咲季、解説助かった、よ。」
咲季「どういたしまして。あっ、もうこんな時間!わたしはここで失礼するわ。校内ラジオの打ち合わせがあるの。それじゃ!」
咲季は、走って教室を後にした。教え方のコツ、後で聞きたい。 - 44◆JCC0OVVJYw25/09/29(月) 17:22:37
広「第2試合の条件は『先攻:握力が強い方』だ、よ。」
千奈「握力……体力テストでの屈辱が思い出されますわ……。」
広「千奈はまだましな方。わたしはアイドルになってから鍛えたおかげでやっと2桁になった。つい最近まで10kgを切ってた、よ。」
美鈴「まあ、また始まりましたね。お二人の体力自慢。それで、『例の人』は握力自慢、ということですよね。」
広「うん。」
佑芽「握力って全身の筋肉量に比例するから、その人は何かスポーツをやってそうだよね。」
美鈴「高等部2年生以上なら、中等部の生徒の大半に勝てるでしょう。」
千奈「あの、花海さん、一つ伺いたいのですが。」
佑芽「何、千奈ちゃん?」
千奈「鍛えた女性は、男性に握力で勝るのでしょうか?」
佑芽「うーんと、小中学校の運動会だと、男女混合の競技でもお姉ちゃんが活躍してたよ。」
千奈「つまり、『例の人』候補は男性とは限らないと……」
広「ここは初星学園。高等部アイドル科の上級生かつ何かしらのスポーツを現役でやっている人なら、プロデューサー科の成人男性にも勝てそう。」 - 45◆JCC0OVVJYw25/09/29(月) 22:01:33
佑芽「第3試合は『名前に濁点が少ない方』っていう条件だったけどさ、濁点がゼロの人って結構いるよね?あたしとか、お姉ちゃんとか……広ちゃんも。」
美鈴「ここにいるメンバーでは、わたしだけが濁点持ちですね。藤田さんと円レイト副寮長も1文字ずつです。」
千奈「ある人物が先攻になりやすい、という前提ならば、その方はおそらく名前に濁点が全く無いのではないでしょうか?」
広「濁点が1個あるだけでも、後攻になる確率が跳ね上がるから、ね。」 - 46◆JCC0OVVJYw25/09/29(月) 22:05:07
美鈴「最後の条件は、『出身地が西にある方』ですね。」
千奈「この学園に通ってらっしゃる皆様は、どこのご出身が多いのでしょうか?自己紹介でも申し上げましたが、わたくしは神奈川の実家から通学しておりますわ。」
佑芽「あたしは愛知県出身!」
広「秋田県。」
美鈴「京都府です。」
千奈「バラバラですわぁ……。体感ですが、わたくし達自宅通学者を始め、関東圏出身の方が多い印象ですわ。」
広「ここは関東だから、ね。」
佑芽「中部地方は微妙な位置だけど、結構先攻になれそうかも?」
美鈴「近畿地方まで行くと、先攻になる確率はかなりのものでしょう。」
佑芽「あっ、そう言えば、寮は違うけど……リーリヤちゃんはスウェーデン出身だよね。」
広「日本人だらけの環境でヨーロッパ出身なら、ほぼ確実に先攻になれる、ね。」