ここだけ黒服がシャーレの先生になった世界線3

  • 1二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:00:30

    気付いたら自分がシャーレの先生になってしまっていた黒服スレの3スレ目です。

    初代スレの1とは別人ですが、SSを書いている者です。

    現在パヴァーヌ1章進行中

  • 2二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:01:30
  • 3二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:04:13

    あらすじ

    気付いたら過去に戻っていたうえ、キヴォトスに呼ばれた先生に成り代わってしまっていた黒服。
    持てる情報を駆使してアビドスでの仕事を何とかこなしたが、詳しい経緯を知らぬままミレニアムへ。
    得意の深読みの当ては外れ、廃墟に行くメンバーに早瀬ユウカが加わってしまった。
    アリスは無事開発部の仲間になれるのだろうか…

  • 4二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:04:29

    たておつー

  • 5二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:05:04

    たておつ

  • 6ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:08:19

    「監視薄れてるって話じゃなかったお姉ちゃん!?」
    「これでも減ってるんだよー!! たぶん」
    「あー、やっぱり認めるんじゃなかったわこんなこと!!」
    「いまさら言わないでよユウカ!」

    才羽モモイの案内で廃墟を慎重に進んでいたが、何らかのセンサーに触れたのか、
    次から次へとセキュリティロボが現れ、私たちは逃走しながら進んでいた。

    そして、私たちはまるで誘導されるかのようにとある建物へと逃げ込んだ。
    いや、恐らくは実際に誘導されていたのだろう。入った後に私はそれに気が付いた。

  • 7ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:10:18

    「もう、酷い目にあったわ。みんな、怪我はない? 特に先生、大丈夫ですか?」
    殿を務めていた早瀬ユウカが最後に室内に飛び込んできて、全員の無事を確認する。

    「問題ありません。」
    「良くないよー! 何で私がこんな目に合わなきゃいけないの!?」
    「まあまあミドリ、落ち着いて。」

    双子姉妹が喧嘩を始めるが、それだけ元気だということだろう。問題はないようだ。

    その時、機械音声と思われる声が、室内に響いた。

    『接近を確認』

  • 8ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:11:33

    『対象の身元を確認します。早瀬ユウカ、資格がありません。』
    「私の名前……?」

    突然名前を呼ばれた早瀬ユウカが身構える。

    『対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません。』
    「私もだ!? 資格って何のこと?」
    『対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません。』
    「な、何で私たちのことを知ってるの!?」

    生徒たちは突然の出来事に混乱している。
    そして、私の番が来た。

    『対象の身元を確認します。●●●先生、エラー、認証失敗しました。再度実行します。』
    「エラー?」

    違う反応を示した音声を聞き、生徒たちの視線が私に集まる。

    『データベース更新完了。対象の身元を確認します。【先生】。資格を確認しました、入室権限を付与します。』

  • 9ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:13:11

    一体何が更新されたというのか、私に対し入室の権限が付与された。
    機械音声はさらに、同行者である生徒にも資格を付与する。そして、

    「下部の扉を開放します。」
    その声の直後、床が開いた。

    咄嗟にその場を離れようとしたが、それは全く間に合わず、近くで呆然としていた才羽ミドリを抱えるので精一杯だった。
    そのまま落下する。

    「きゃぁっ!?」
    才羽ミドリの悲鳴と乗られた重みによる衝撃が体に伝わるが、幸いにして、落下の衝撃をそこまで強くなかった。クッション性の高い床になっていたようだ。設計者の悪趣味な仕掛けだろう。

    「せ、先生。大丈夫ですか!?」
    「……ええ、落下することが前提になっている作りのようだったので。」
    「あ、本当だ……。あ、ごめんなさい、どきますね。」

    才羽ミドリが降りたので、立ちあがる。
    先ほどの自分の行動については後で考えることとしよう。

  • 10ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:15:08

    才羽モモイは早瀬ユウカに庇われたようだ。お礼を言っている姿が見える。
    しかし、私はそれよりも、落ちた部屋の中央付近にある存在が目に留まった。

    「え!? 女の子!?」

    傍らの少女も気づいたようだ。
    そしてその声に気付いた、才羽モモイと早瀬ユウカの二人も、部屋の中心にある存在に気付く。

    AL-1S、「名もなき神々の王女」の素体がそこで眠るように起動を待っていた。

    「綺麗な子ね……、じゃない。この子、眠ってる?」
    「というか、息してないような。何か、人形みたいというか……」
    「AL-IS……アリスって読むのかな。」
    天童アリスの由来をここで知るとは思わなかったが、ただの誤読が元だったらしい。

    「よく見なさいモモイ、AL-1Sよ。まるで商品の型番みたいだけど」
    「それより、着替えさせた方が良いんじゃない? 先生もいるし。」

  • 11ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:16:36

    「状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します。」
    着替えが終わるまでこちらを見るなという視線を感じたので終わるまで待ち、
    その後ようやく呼ばれたため近づいていくと、AL-1Sから警報音のようなものが鳴り、今の言葉を発した。

    皆が呆気に取られていると、さらに機械の少女は続ける。

    「状況把握、難航。同期データの大部分が破損しています。しかし、一部データは残っています。モモイ、説明をお願いします。」
    「私のこと、知ってるの?」

    「さっきここに入る前も名前知られてたし、お姉ちゃんのこと知っててもおかしくないけど……私のことは知ってる?」
    「肯定。才羽ミドリ、そして、早瀬ユウカ。しかし、理解しているのは名称のみです。説明を求めます。」

    名前を知っている。それだけならそこまで不思議な点はない。しかし、同期データとは何を意味するのか。
    私以外にその意味が分かるものはこの場にいないだろう。

    「せ、説明が欲しいのはこっちなんだけど!? 何で私たちの名前知っているの?」
    「この場所、なんなの?はっきり言って異常だわ。」

    才羽モモイと早瀬ユウカが矢継ぎ早に質問するが今のAL-1Sは殆どのデータを失っており、初期状態に近いのだろう。
    要領を得ない回答が続く中、才羽モモイが核心を突く。

    「じゃあ、あなたは何者なの?」
    「本機の自我、記憶、目的はほぼすべて消失状態であることを確認。しかし、残った情報があります。」

  • 12ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:18:09

    「私の名前は天童アリス。ゲーム開発部の天童アリスです。」

    AL-1Sであったはずの彼女は、自らをそう名乗った。

  • 13二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:20:39

    短めですが、本日は以上です。

    3スレ目もよろしくお願いします。

  • 14二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 01:02:56

    アリスに記憶が残ってる...?

  • 15二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 07:28:48

    ノアも変だったしホシノも別の要因があったとはいえ、記憶の残滓みたいなのがあるのかな?

  • 16二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 08:22:36

    やはりループして混線してる…?

  • 17二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 08:26:58

    まさかここでも影響が出てるのか…

  • 18二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 10:01:23

    お疲れ様です。

  • 19二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 12:32:24

    素晴らしい 全く想定していなかった事態だ
    黒服よ これは面白く成るぞ

  • 20二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 13:08:31

    >>13

    マジか 既に面白かったが 面白くなってきたな こうなると他の人工知能系も1部記憶が残ってるんだろうか?

  • 21二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 19:27:57

    本当に降って湧いたような概念からほぼ毎日これだけの文章が書ける筆者は一体何者なんだ?文学に崇高を見出したゲマトリアか?

  • 22新たな仲間25/09/27(土) 23:11:58

    「自分でゲーム開発部の部員って名乗ってるんだからゲーム開発部の部員ってことでいいじゃん!」
    「肯定。私はゲーム開発部の部員。」
    ゲーム開発部として自己紹介した天童アリスに諸手を上げて部員としての加入を主張する才羽モモイに対し、改めて自分の立場を機械的に肯定するAL-1S。
    勿論、満場一致という訳ではない。

    「そ、そうはいってもこの子、ミレニアムの生徒かどうかも定かじゃないじゃない。あまりにも出来すぎているというか……この子に問題があるわけじゃないけど、怪しいわ」
    セミナー、生徒会として慎重な立場をとる早瀬ユウカは当然として。

    「わ、私もちょっと怖いよお姉ちゃん。こっちのこと一方的に知ってて、それにゲーム開発部だなんて言って……。」
    才羽ミドリも不安が先行しているようだ。

    当の天童アリス本人は無表情でこちらの様子を見ている。
    私が以前の時間軸で目撃したときは通常の人間の少女のような振る舞いをしていたはずだが、今の彼女はかなり機械的だ。
    先ほどはゲーム開発について尋ねると。「不明。類推は可能。ゲームとは遊戯のこと。ゲーム開発部はゲームを開発する部活動のことを指すと思われます。」
    と古臭いAIのような返事が返ってきた。シッテムの箱のシステムAIの方がまだマシなレベルだ。

  • 23新たな仲間25/09/27(土) 23:13:30

    「でも、このままだと人数が足りなくて廃部になっちゃうよ!? ユズの居場所が無くなっちゃう……」
    「う……」
    「モモイ……」

    才羽モモイの言葉に、反対寄りの意見だった二人もトーンダウンする。
    しかし、ここで話していても仕方ない。
    一旦打ち切るとしよう。

    「どちらにせよアリスさんをこのままにしておくわけにはいきません。一度ミレニアムの校舎へ戻りませんか?」
    私の提案に生徒たちは頷き、天童アリスを連れてゲーム開発部の部室へ戻ることになった。

  • 24新たな仲間25/09/27(土) 23:15:03

    「私は一度生徒名簿のチェックと校則や事例の確認をするから、セミナーに戻るわ。先生、申し訳ないけどアリスちゃんと一緒にゲーム開発部にいてくれる?」
    部室へと戻った後、何かあったらすぐに呼ぶようにと言い残し、早瀬ユウカはセミナーに戻る。

    天童アリスは室内のもの全てに興味を感じているようで、様々なものを触ったり、口に含もうとしたりして、才羽姉妹をハラハラさせる。
    そのうちに彼女は、一つのものに目を止める。

    「あ、その雑誌……」
    「お、良いものに目をつけるねー、アリス! その中に、私たちの作ったゲームも載ってるんだよ!」
    「酷評されてるけどね……あ、そうだ、アリスちゃんこれやる? ただ待ってるっていうのも退屈でしょ? 会話しながらゲームすると話し方とかの勉強になるかもだし」

    テイルズ・サガ・クロニクル、というタイトルのゲームのページを開きながら、二人がゲームプレイを促す。

    「肯定、アリスはゲームをします」
    天童アリスは即答した。

    「よしきた! じゃあ準備するからちょっと待ってね!」
    才羽モモイがゲームを起動し、プレイが開始された。

  • 25新たな仲間25/09/27(土) 23:16:06

    シナリオライターが酩酊状態で書いたとしか思えない意味不明なストーリーが流れ、チュートリアルが始まる。
    私はこういったデジタルゲームを知識としては知っているが、実際にプレイした経験はない。
    天童アリスのプレイを興味深く見ていたが、チュートリアルの指示に従った瞬間ゲームオーバーになった様子を見て、これが普通のゲームではないだろうことをすぐに察した。

    一方、プレイしていた当の本人、ゲームオーバーの画面を呆然としたように眺めていたが、よく見ると目から涙が流れている。

    「あ、アリス!? ごめん、泣くほど嫌だった!?」
    「やっぱりチュートリアル位はちゃんと作るべきだったんだって! お姉ちゃん」
    慌てて才羽姉妹がなだめにかかるが、天童アリスは首を振り

    「落涙の原因は不明。悪影響は無いとみられます。ゲームを続けます。」
    そう言って改めてチュートリアルを進め始めた。

  • 26新たな仲間25/09/27(土) 23:17:25

    あれは確かにチュートリアルであった、と傍から見ていても理解できるほどの理不尽な展開の連続に天童アリスはたびたび疑問を呈しながらも、
    ゲームを進めていった。
    驚くべき事に、ゲームやそれにかかわる会話を通じて、彼女の会話能力は飛躍的に成長していき、また表情も豊かになっていった。個人的にはそちらの方への興味が強かった。

    「こ、ろ、し、て……」
    そして、およそ3時間が経過したころ、ついに天童アリスがテイルズ・サガ・クロニクルをクリアした。
    ゲームには多少興味がわいたが、こう言ったゲームばかりであれば私が実際にやることは無いだろう。

    才羽姉妹が天童アリスにゲームについて感想を聞いている。
    質問を受け、咄嗟に言葉が見つからず、あたかも普通の少女が自分の知り得る言葉から感想を絞り出そうとしているような表情の変遷を経て

    「面白さは、確実に存在。プレイを続けるうち、別の世界を探しているような……そして」
    天童アリスの眼からはまた涙が浮かんでいる。今度はだれも彼女に話しかけず、続きを待つ。

    「私は確かに、ゲーム開発部の天童アリスであると実感しました」
    その場の誰にも、私や、恐らく天童アリス自身にもその言葉の真の意味を理解することはできなかった。
    しかし、その言葉と涙は、誰にもその真実性を疑うことは出来なかった。

  • 27新たな仲間25/09/27(土) 23:18:28

    がたんと、ロッカーが唐突に開く音がする。
    突然の物音に才羽姉妹が飛び上がり、天童アリスが困惑の表情を浮かべる。

    ロッカーの中からは一人の少女が出てきた。

    「ユズ!? いつからロッカーにいたの!?」
    「みんなとユウカが廃墟から戻ってきた辺りから……」
    どうやら、この少女が花岡ユズ、このゲーム開発部の部長だという生徒らしい。

    「あ……ありがとう、私たちのゲームを面白いと言ってくれて、泣いてくれて。そういう言葉が、聞きたかったの……」
    感極まった表情で、天童アリスに花岡ユズはそう話す

    「ユウカが返ってきた結果がどうであっても、アリスちゃんはもうゲーム開発部の仲間だよ」
    その言葉に、天童アリスは笑顔で頷いていた。

    「あ……、ご、ごめんなさい先生。自己紹介が遅れました。花岡ユズです。一応ゲーム開発部の部長です」
    花岡ユズはそういって、こちらに頭を下げる。少し怯えた表情をしているが、仕方ないだろう。

    「ええ、よろしくお願いします。アリスさんの感想の後だと薄っぺらく聞こえるかもしれませんが、私もゲームというものに興味を持ちましたよ」
    私の返事に、少女は赤面して再度頭を下げる。

  • 28新たな仲間25/09/27(土) 23:21:53

    花岡ユズとの挨拶を終えたとき、タイミングよく部室にノックの音が響いた。

    「あ! ユウカかな? どうぞー」
    それに対し、モモイが代表して入室を促す。

    「遅くなってごめんなさい! あら、ユズも戻ってきていたのね。ちょうど良かったわ」

    扉を開き、早瀬ユウカが入室してくる。
    「ユウカ! よくお戻りになった。丁度今、アリスはゲーム開発部の真の仲間になったところです!」
    「え? 何? ……っていうか、あなたすごく会話が上達していない……? ってそれはまた後でよね。」

    彼女は天童アリスの言語レベルの上昇に驚きつつも、本題を進めるべく後ろを振り向く。
    「コユキ、そんなところで覗いていないで、あなたも入ってきなさい」

    結果を報告に来たはずの彼女は、何故か黒崎コユキを伴っていた。

  • 29二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 23:27:02

    という訳でここまで


    黒服先生の深読みによりユウカを仲間に引き入れたことで

    状況が結構変わってしまっているようです。


    アリスは……なんなんですかね?


    >>21

    長編SSは初めて書きます。

    同じように気に入った概念で短いやつとか会話形式のやつとか書いたことはあります。

  • 30二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 00:31:23

    「所属」ないしは「身分」「身元」のデータは残ったんか。

    いや、「王女」と置き換わっているのか...?

  • 31二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 07:18:55

    外側に記憶を雑に張り付けている感じでしょうか
    思い出させていると言うよりも
    本家の映像記録をどかどかと流し込んでいるような

    こうして観察している間も 常に相手の領域ど真ん中なのが恐ろしい

  • 32二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 12:55:18

    どんなの書いてたか気になるな

  • 33二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 20:41:16

    ほしゅしゅのしゅー

  • 34二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 20:43:52

    すごいなぁ はじめてでこんな綺麗なssかけるんだもの
    いろんなスレ見て来たけれど
    やっぱり花を添えてくれるのは作家さんたちだよね

    なんだか なんにも出来ない自分が虚しくなってきちゃった
    あたしも皆みたいになりたかったな

  • 35ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:41:02

    「同じ1年生だから知ってるかしら? 一応紹介するわね。この子は黒崎コユキ。訳あってついてきてもらったの」
    早瀬ユウカの紹介に、入室してきた黒崎コユキが所在なさげに頭を下げる。

    「それじゃ、本題に入るわね。あれから、生徒名簿を調べたの。ここ何年かの卒業生、退学者も含めてね。といってもデータベースを調べるだけだから大した手間じゃなかったわ」

    話し始めた彼女が、天童アリスの方を見る。見られた方は何の話かあまり把握していないようで、首を傾げている。

    「予想通りだったけど、天童アリスという名前の人物はいなかったわ。一応天童と、アリスの双方で調べても見たけど、この子に一致している生徒はいなかった。」
    「やっぱり、そうなんだ。」

    才羽ミドリが頷く。あんなところに生徒が眠ったまま裸で放置されていたとしたら、その方が問題だ。

    「ええ、それでアリスちゃんの処遇についてなんだけど……保留ということになるわ。」

    「保留!?」
    「ほ、保留って……どうなるの?」
    才羽モモイが叫び、花岡ユズが聞き返す。

  • 36ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:44:43

    「少なくとも、当分はゲストとしてミレニアムで保護するわ。責任者は私ということになるけど、ゲーム開発部のみんなでサポートしてあげてくれる? その間はもちろんゲーム開発部として活動してもらう事は問題ないわ」
    「う、うん。それは良いけど、部員の数にはカウントできるの?」

    さらに聞き返された早瀬ユウカは、頷きながら話を続ける。
    「そこなのよ。部員として認めるには、ミレニアムの生徒でなければならない、という前提があるので、それにはまずアリスちゃんが正式にウチの生徒になってもらう必要があるんだけど……正規の方法でなるにはやっぱり来年入学してもらうのが一番簡単なのよ。」

    それは、約一年後、という話だ。天童アリス以外の表情が少し暗くなる。
    「あ、そんな困った顔しないでよ。最後まで聞いて。一応特例があるの。特別に必要性が認められた場合、生徒会長含む3名以上の推薦をもとに、ミレニアムの部長会議で承認が得られれば時期を問わず入学を認められるというルールがあるの。
    これはミレニアムの理念に基づいて、顕著な才能を持つ人物の確保を可能とするための特例措置ね。学校間の転校とはまた別で、今現在学籍のない人物であっても問題ないことは確認済みよ。」

    調べてきた資料を見せながら、そう言い切る。

  • 37ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:48:11

    「じゃあ、その制度を使えばすぐ入学できるってこと?」
    「理論上はね。リオ会長が不在なので今すぐは無理だし、そもそもこれを通すにも顕著な実績が必要なの。どういうことか分かる?」

    早瀬ユウカの問いに、質問を質問で返された才羽モモイがうーん、と今までの内容を整理しながら話しはじめる。

    「えーと、ゲーム開発部を残すにはミレニアムプライスでの実績が必要で、実績があればアリスも部員になることができる? あれ? 結局今すぐ必要な部員の人数が足りてないじゃん!」
    「そうなるわね。」
    「『そうなるわね』じゃないよー!? どうすんのさ!?」

    本来どうするのかを決めるのはゲーム開発部の方であり、セミナーである早瀬ユウカにはそこまでの責任は無いだろうが、恐らくここに黒崎コユキが来ていることがその解決策なのだろう。
    彼女が入室してきた段階で、その可能性を考えてはいた。

    「それなんだけど、うん、それが3つ目の話なの。時間がかかったのはこの子とお話していたのもあったの。ノアも含めて、3人でね。ちょっと誤解されちゃったりして、大変だったけど」

    そう言って、彼女は入室して挨拶した以来であった少女の方に笑いかける。

  • 38ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:50:52

    「え……まさか?」

    早瀬ユウカは微笑んで、黒崎コユキの背中を押す。緊張した面持ちの少女が一歩前に出て、話し始める。
    「えと、く、黒崎コユキです! ゲームが好きです! 特に好きなのは運要素が強いやつとかアナログゲームなんですけど、テイルズ・サガ・クロニクルもやりました! ちょっとくs……ヤバいゲームだったですけど、作ってる人たちはゲーム好きなんだなって興味がありました! 」

    ヤバいゲームという言葉に一瞬花岡ユズの体が震えるが、その後に続いた言葉を聞いて、現行ゲーム開発部の3人が頷きあう。同時に3人の口が開きかけ

    「ぱんぱかぱーん! コユキが仲間になりました! ということですか?」
    黙って様子を見ていた天童アリスに、その座を奪われていた。

    「合ってるよアリス! よろしくね、コユキ!」
    「アナログゲーム好きなんだ。一応デジタルゲーム開発が目的の部活だけど、ボドゲもたくさんあるよ!」
    「わ、私たちに興味を持ってくれて、ありがとう。とっても嬉しい」

    一瞬呆けていた3人も、黒崎コユキに近づいて歓迎の言葉を言っている。

  • 39ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:52:50

    「良いのですか、コユキさんは謹慎中の身だったはずですが。」
    盛り上がっているゲーム開発部を見て、安堵の表情を浮かべていた早瀬ユウカに話を振る。

    「今日の脱走が無ければそろそろ解ける頃でしたし、開発部の子たちと一緒に行動することを条件として、反省部屋からは出すことにしました。外出とかは当分許可性にする必要があるでしょうけど」
    「成程」

    そもそも、今日もロックを解除して脱走されるところだった以上、反省部屋に入れていても更生が促せるとは思えない。
    環境を変えるという試みは効果をもたらす可能性がある。

    「もともと、コユキはその能力が認められてセミナーに入ってもらったんですけど、本人的にはつまらいのかな、って思っていたんです。それでイタズラをするんだと思うんですけど、ちょっと能力が高すぎて大きな問題になることがあったんです。」

    次にやるゲームを物色したり、好きなゲームについて話したりしている5人を残し、早瀬ユウカと外に出る。
    本人のいるところではやりにくい話だろう。

  • 40ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:54:15

    「ゲームや運試しが好きっていうのは、知っていたんです。前にあの子たちのゲームをやった感想が、私とは少し違ったのも。さっきも言ったように、会長の不在はセミナーの責任もあるわけで、何とかしてあげたいって思って……思いついたんです」
    「コユキさんを紹介することをですか」

    生徒会長の不在に関しては助けるための言い訳に過ぎないだろう。
    結局、蟠りが解けて素直に頼ってくれるようになった才羽モモイやゲーム開発部に、協力してあげたかったというのが本音だろう。

    「はい。それで、コユキのところに行って話をしたんですけど……。最初、私に見限られたんだと思って泣かれてしまったんです。
    ノアにも参加してもらって、コユキ自身がやりたいのであれば、という提案であること。悪いことをしなければセミナーに戻ってくることもいずれ可能になること。
    遊びに来ることはいつでも構わないって伝えたんです。そのほかにもいろんな話をして、最終的に入部してみたいってあの子が言ったんです。」

    なので、無理に入らせたとかじゃないので誤解しないでください、と早瀬ユウカは念を押すように言った。
    勿論、彼女の子の性格では、そのような無理ができるわけがないことは承知していたが。

  • 41ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:55:36

    そして、室内に戻り、その日はもう遅いので一旦解散ということになった。
    明日は天童アリスの武器や身の回りの物をそろえたりするとのことで、私も再度来ることになった。


    後は、ミレニアムプライスで結果を残すことだ。一見順調そうに進んでいるが、私の胸中には疑問が浮かんでいた。
    「天童アリスのミレニアムへの留学が保留になる」「黒崎コユキがゲーム開発部の一員になる。」

    天童アリスがゲーム開発部だと主張したのは何らかの影響によるものと考えられるが、
    しかしこの2つについては私の考える限りでは、様々な要因が絡み、自然に起こったことだ。

    それゆえに、私は自分の歩いている道が正しい道ではない可能性を感じている。
    だが、今のところ、それを知る方法は無い。

    まずは目の前のことに集中するべきだろう。そうして、私はその疑問については棚に上げて置くことにした。

  • 42二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 21:58:27

    本日はここまで。

    黒服先生はユウカを連れてきたことくらいしかしてないですが、
    結構道がそれてしまいましたね。

  • 43二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 23:46:05

    割とヤバそうなフラグいくつか潰してる気がするけど大丈夫かな…

  • 44二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 07:17:36

    コユキ参入とはな

  • 45二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 09:42:45

    コユキが居たら鏡もいらないんじゃ…… いやユウカに頼めば貸してくれそう… 

  • 46二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 10:59:23

    keyはどうなったのだろうか。

  • 47二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 13:02:13

    ここから大きく変わってくるわけですか…
    うむ楽しみ。

  • 48二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 21:47:55

    こうも序盤からコユキがかかわってくるとなると、だいぶ本編とは乖離してきそう

  • 49美甘ネルとの遭遇25/09/30(火) 00:12:27

    翌日

    早瀬ユウカはセミナーの仕事をどうしてもやらなくてはいけないということで午前中は付き合えないという話だった。
    護衛として誰か別の者を用意しようかという話は丁重に断った。彼女が思いのほか護衛として優秀だっただけで、一緒に来てもらっていたのはその方が都合が良いと予測していたからだ。

    予定時刻になっても待ち合わせ場所である部室棟の前に誰も現れなかったので、ゲーム開発部の部室へと足を運ぶ。

    ノックをしても返事が無かったため、ドアを開くとなかなかの有様だった。

    一心不乱にゲームをしている天童アリスと、横たわる3人の少女。
    恐らくあの後ずっと遊んでいたのだろう。

    「あ! 急に先生が現れました! 何用ですか?」
    ゲームの影響か、私の入室に気付いた天童アリスが出迎えてくれる。

  • 50美甘ネルとの遭遇25/09/30(火) 00:14:29

    「何用ですか、ではありません。時間になっても来ないからこちらから来ただけです。まさか、ずっとゲームをしていたのですか?」
    「あ……先生か。た、多分ずっとやっていたのはアリスちゃんだけで、私はさっき起きました。」

    またしてもロッカーから出てきた花岡ユズだけは起きていたらしい。恐らくノックの音に驚いてロッカーに隠れていたのだろう。
    しかし、彼女も今日の予定では留守番するという話だったので、彼女が起きていても仕方ない。

    「待ち合わせの時間だったんですよね。ごめんなさい、気づかなくて。みんなを起こして、それと、準備もあると思うから、2、30分くらい外で待っていてもらえますか?」
    「私は構いませんよ。折角ですしこの辺りを見学させてもらいますよ。」
    「ほ、本当にすみません……」

    あまり彼女自身には責任がない花岡ユズに頭を下げられ、一旦部室を後にする。
    実際のところ、同伴者がいない状態で落ち着いて見学するのも悪くないだろう。
    ミレニアムに関しては、以前から興味はあったのだ。

  • 51美甘ネルとの遭遇25/09/30(火) 00:16:05

    「おい、お前」
    周辺を散策していると、突然声をかけられた。この学園にはあまり似つかわしくない、柄の悪い言い方だ。

    振り向くと、着崩したメイド服の上にスカジャンという、奇抜なファッションをした少女がいた。
    この生徒は知っている。美甘ネル。ミレニアムの最高戦力の一人だ。

    「あんま見ねぇ顔だな? 迷ってんなら案内してやろうか。ってかお前でけぇな……」

    大小以前に見た目に気になるところは無いのだろうか。恐らく大きさにコンプレックスがあって人を大小で区別してしまう癖があるのだろう。

    「いえ、案内は遠慮しておきます。人を待っているだけですので。」
    「待ち合わせだぁ? 誰かの客か? 入校許可証出してみろよ」

    恐喝としか思えない雰囲気で詰め寄られる。堅気の者では出せない迫力がある。素直に許可証を出す。早瀬ユウカに渡されたもので、彼女の名前が入っている。

    「早瀬ユウカぁ? セミナーの会計だろ? ああ、確かカリンが何か言ってたな、ユウカの代わりに先生の護衛がどうとか……先生?」
    「はい、恐らくその話題の人物は私のことでしょうね。今待ち合わせしているのはゲーム開発部の生徒たちですが。」

    こちらを問い詰めていた美甘ネルの顔色が変わる。

  • 52美甘ネルとの遭遇25/09/30(火) 00:17:19

    「わ、悪い、例の先生だったのか。てっきり不審者か何かかと」
    「大丈夫ですよ。よくあることです。あなたは保安部の方ですか?」
    「いや、別にそういう訳じゃない。 保安部がこんな格好してたら変だろ?」

    誰がそんな恰好をしていても変だと思うが、私は曖昧にうなずいた。

    「ゲーム開発部を待ってるんだっけ? 何かあまり良いうわさは聞かねえが……そもそも先生は何でミレニアムに来たのか聞いても良いか?」

    どうやら彼女は私に興味を示したようだ。単に暇だったからかもしれないが。
    私としても美甘ネルには興味があ。話に乗ることにした。


    「成程な。それで人数の壁は越えられたけど、今度は成果を出さなきゃいけないと。あたし好みのアツい展開じゃねえか」

    待ち合わせ場所に戻り名がら、天童アリスについての話は最小限に抑え概要を話すと、美甘ネルの琴線に触れたらしく彼女は上機嫌になった。

    「そうですか? 派手なことはあまりないと思いますが」
    「今派手な戦闘が好きそうって偏見で話しただろ? まあ否定はしないけどさ。でも派手な勝利だけが良い勝利って訳じゃないからな。困難に立ち向かって何かをつかみ取るって展開、熱くなってくるだろ?」
    「そういうものですか」

    先ほど初めて会話したときはミレニアムよりブラックマーケットが似合いそうな柄の悪さだったが、話していくうちに、彼女は視野が広く多角的に物事を考えられる人物であることが分かった。

    「今、何か失礼なこと考えたか?」

    そして察しも良い。

  • 53美甘ネルとの遭遇25/09/30(火) 00:18:32

    「うわー、先生がメイドさんをナンパしてる!?」
    「にはっ、先生意外と手が早いですねえ」
    「ええ!? っていうかあの人ってメイド部の部長さんじゃない!?」
    「メイドも仲間になりますか?」


    待ち合わせ場所で美甘ネルと話していると、聞きなじみのある声が聞こえてきた。」
    時刻は待ち合わせ時間からおよそ30分。花岡ユズはどうにか上手くやったらしい。

    「お、待ち人が来たみたいだな。じゃあな先生、ゲーム開発部の連中にも応援してるって言っといてくれ。」
    そう言い残し、美甘ネルは合流前にその場を去っていった。

    「遅れてごめんなさい先生! 皆して寝坊しちゃった!」
    「おはようございます、皆さん。寝坊したのは知ってますよ。そう思って見に行きましたから」

    謝ることを覚えた才羽モモイは、去っていった人物のことが気になる様子ではありながらも、すぐに謝ってきた。

    「既に部長のユズさんから謝罪をいただいているので大丈夫ですよ。次から気を付けてください。朝霞用事があるのに徹夜でゲームはよくありませんよ」
    「はーい」

    子供らしい全く響いていなさそうな返事だ。
    何はともあれ、全員揃ったので、私たちは移動を開始した。

  • 54二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 00:22:16

    本日はここまで

    何となくお察しいただいているかもしれませんがユウカ推しです。

  • 55二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 06:39:01

    更新感謝です!!

  • 56二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 12:08:37

    ゲ開+コユキの面々は可愛いなぁ(キミら高校生に見えないんよの意)

  • 57二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 18:19:57

    先生は何をしようとしているんだ?
    原作にこのタイミングで移動ってあったっけ

  • 58書いてる人25/09/30(火) 21:06:43

    仕事が終わらないので本日は更新できなそうです

  • 59二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 21:19:45

    >>58連日の連続投稿お疲れ様です お仕事頑張ってください

  • 60二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:14:13

    しっかり休んでください

  • 61二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 23:50:06

    お疲れ様です…!

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 06:21:12

    朝保守!!ゲーム部ピンチヒッターコユキです!!

  • 63二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 12:34:55

    お昼ですよー
    ミレニアムの特殊工作部隊と言われるゲーム開発部が
    さらに有望な人材を取り込んでしまったなぁ
    ……君ら全員一年生ってマジかいな

  • 64二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 20:19:16

    ほしゅー

  • 65二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 22:54:59

    よるほー

  • 66エンジニア部へ25/10/02(木) 00:07:55

    「まずはどこへ行くのですか? アリスさんの物を買いに行くという話でしたが。」
    「そっか、先生には言ってなかったね! まずは生活必需品ということで、武器! エンジニア部に行くよ!」
    「成程。私もエンジニア部へは行きたいと思っていたところです」

    以前、アビドスへの支援を早瀬ユウカに依頼した際、銃器等を手配したのはエンジニア部経由とのことだ。

    「先生は武器持ってないんですかー??」
    「銃を持っているかという意味では持っていますよ。使ったことはありませんが」

    黒崎コユキの質問に答える。携帯もしていないが、所持品として持ってはいる。
    しかし私が使わざるを得ない状況では大抵使ってもどうにもならないだろう。であれば丸腰の方がまだ撃たれる可能性は低いというものだ。

    「変わってますね。外の世界では銃は持ってる人が少ないって聞いたことありますけど……」

    才羽ミドリが呟く。子供時代に培ってきた偏見が常識となるとはよく言ったものだ。

  • 67エンジニア部へ25/10/02(木) 00:09:53

    「聞く話と実際に見てみるのとでは大違いです。ミドリさんも外の世界に行く機会があればすぐに銃の無い生活に慣れますよ」
    「そういうものなんですか? ……少し、行ってみたいですね」

    半信半疑といった様子ではあるが、外の世界に思いをはせているようだ。

    「外の世界……異世界ですね! 勇者はよく異世界に召喚されています。」
    「それでいう世界とここでいう世界とは違いますが……、まあ、似たようなものでもありますね」

    天童アリスは相変わらずゲームに毒された反応を示すが、そこまで遠い話でもない。
    それを説明するのは彼女がもう少し成長してからで良いだろう。……気づけばまた思考が教育者方向に誘導されていたようだ。

    流石はミレニアムの生徒といったところだろうかエンジニア部へ向かうまでの短い間ではあるが、
    好奇心旺盛な生徒たちの質問が尽きることは無かった。

  • 68エンジニア部へ25/10/02(木) 00:11:29

    エンジニア部に到着した。
    入室すると、中では生徒たちが様々な機械に向き合っていた。
    薄い紫髪の少女がこちらに気付き、近づいてくる。エンジニア部の部長、白石ウタハだ。

    「やあ、ゲーム開発部。どうしたんだい? それに……おや、コユキじゃないか。君も一緒だったのか」
    「当然だよー! コユキもゲーム開発部の一員だからね! それで、もう一人の新入部員のアリスの武器を探し来たも」
    才羽モモイが新入部員である二人を紹介しつつ要件を伝える。

    「はい、ゲーム開発部の天童アリスです! 旅立ちの前には武器を装備することが重要です!」
    「……成程?」

    白石ウタハ一瞬困惑していたようだが、すぐに受け流すことにしたようだ。

    「コユキちゃん、ウタハ先輩のこと知ってたの?」
    「そりゃあ勿論! 私のコレをメンテナンスしてくれたのウタハ先輩ですから!」

    彼女の持つ銃を示しながら説明する。ピンク色の少々珍しいカラーリングだ。

    「塗装に関してはヒビキのセンスだがね。大体話は分かったよ。確かに武器は必要で、ここに来たことは大正解だ。存分に探していってくれ。ヒビキ、適当に見繕ってやってくれ」
    「はーい、一年生の猫塚ヒビキだよ。じゃあこっち来て」
    「はい! よろしくお願いします。」

    猫塚ヒビキと名乗った少女が天童アリスを案内する。
    他の部員たちも彼女たちについていくか、自分の興味がありそうなものがないか物色するようだ。

  • 69エンジニア部へ25/10/02(木) 00:12:49

    「それで……あなたがもしかして礼の『先生』かな? 最近ユウカがお熱になってるって話題になってるよ」
    「ええ、その通り、シャーレの先生をやっている者です。ユウカさんには大変お世話になっています。そして、ウタハさん、貴女にもお会いしたかった。」
    「どういう意味かな?」

    白石ウタハには心当たりがないと首を傾げる。
    「先日のアビドスへの支援の件で、実際に手配されたのはエンジニア部の方々だと聞いたので、お礼を伝えたくて」
    「ああ、その件か。こちらとしても臨時収入になったし、それ以外にも色々メリットのある話だった。凄い形相のユウカがエンジニア部に来たときはまた怒られるのかと思ったけどね」

    良く問題を起こしているのだろう。白石ウタハが溜息をつく。恐らく早瀬ユウカがついている溜息よりは遥かに少ないだろう。

    「それと、こちらをお渡ししたくて」
    懐から小型のストレージを取り出して渡す。

    「これは?」
    「あの支援で送っていただいた兵器類についてのレビューです。実際に間近で使用されたり味方として戦ったりした兵器についての感想を中心にデータに残しました。」
    「……いいのかい? こちらとしてはお金と戦闘データで報酬としては十分だったんだけど……」

    やはり戦闘データはログとして取っていたようだ。しかし、新商品のレビューには価値があるようで、彼女は大事そうにストレージをしまった。

  • 70エンジニア部へ25/10/02(木) 00:14:01

    「さて、あちらはどうなっているかな……ふむ、あれは」
    私への質問という目的を果たした白石ウタハが天童アリスの方を見て、何かに気付いたように近づいていく。
    どうやら、ゲーム開発部の面々はそこにある巨大なレールガンについて話しているらしかった。


    「どうしてこのレールガン、完成まで持って行っちゃったのさ!?」
    才羽モモイの叫び声が聞こえる。

    「ビーム砲は、ロマンだからね」

    白石ウタハの言葉に部員たちが同調している。
    ビーム砲がロマンであるかは分からないが、ロマンを追及する気持ちは理解できると心中で頷いていると、才羽モモイが何かを叫んでいた。

    【光の剣:スーパーノヴァ】という名称に天童アリスが心惹かれたのか、これが欲しいと言い出す。
    エンジニア部のメンバーは難色を示すが、それ自体は理解できる。明らかに人間が持って取りまわすような武器ではないが、人間離れどころか人間から逸脱している彼女なら持ち上げることくらいは問題ないだろう。

    そして、私の想定通り、彼女はそのレールガンを持ち上げ、容赦なくその銃の威力で天井を貫き破壊した。今度こそ怒りの形相で早瀬ユウカが襲撃するだろう。

  • 71エンジニア部へ25/10/02(木) 00:16:01

    かくして、天童アリスはそのレールガンを所有する資格を得た。
    そして、力試しと称して、エンジニア部の生徒たちと模擬線を行うこととなった。

    「コユキちゃん、一緒に戦うのは初めてだけど、何が得意?」
    「えー……陽動と逃走?」
    「えー……じゃ、じゃあお姉ちゃんと一緒に最前線で!」
    「何でーー!?」

    黒崎コユキの叫び声を皮切りに戦闘が始まった。

  • 72二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 00:21:06

    本日はここまでです

    ウタハも好きです

  • 73二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 08:09:28

    コユキはこういう役回りが似合うなぁ

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 15:05:38

    頑張れコユキ……

  • 75二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 21:54:15

    あぁー... 光よ! 入手か
    ここら辺覚えてないな...

  • 76エンジニア部へ②25/10/02(木) 23:46:00

    エンジニア部とゲーム開発部の模擬戦は、実際のところ見どころのあるものだった。
    最初に前線に配置された黒崎コユキは持っていた爆弾を放り投げると一目散に後方に逃げ、才羽ミドリと立ち位置を交代した。

    結果的にその動きは功を奏し、ドローンたちの統制を混乱させていた。
    才羽姉妹は息の合った動きを見せており、お互いを見ずとも状況を理解しているように動き回っていた。

    そして天童アリス。動きは完全に素人のそれだが、キヴォトスの生徒たちを基準にしても超人級の腕力に加え、
    高い学習能力でレールガンを持ちながらの戦い方をものにしていっているようだ。

    直接戦闘は後輩に任せ私と同様観戦に回っていた白石ウタハも真剣な様子で天童アリスのことを観察している。
    エンジニアとして、何かに気付いたのだろう。

    それから間もなく、戦闘はゲーム開発部の勝利で終了した。

  • 77エンジニア部へ②25/10/02(木) 23:47:10

    「何よこれ!?」
    エンジニア部から正式に天童アリスへと武器が与えられる、ひとしきり喜んでいると、見知った声が聞こえてきた。

    「天井に穴空いてるじゃない!? ウタハ先輩、これどういうことか説明してください!!」
    怒りの形相の早瀬ユウカだ。予想より早い登場に、白石ウタハも苦笑いしている。

    「ユウカ先輩!」
    「あー、ユウカだ! お仕事終わったの!?」
    「ユウカ! アリスは光の剣を手に入れました!」

    返事より前に、才羽ミドリを除くゲーム開発部の3人が得、嬉しそうに早瀬ユウカへと近づいていく。

  • 78エンジニア部へ②25/10/02(木) 23:52:17

    「うわっ!? 先生やみんなも来ていたのね。アリスちゃん、良かったわね。随分大きいけど大丈夫なの?」
    「はい!」

    まずは天童アリスの持つ武器を見て、驚きながらも心配をする。

    「コユキ、良かったわ。ちゃんと仲良くやれてるみたいね。」
    「にはは! とうぜんですよ」

    元の後輩である黒崎コユキその返事に、偉いと頭を撫でながら褒め、

    「仕事は急いで終わらせたの。あなた達のことも気になったし、先生の護衛である以上、長時間不在はまずいでしょ。」
    「そっかそっか、そんなに早く私に会いたかったんだね!」
    「まあ、みんなに、という意味ならそれもあるけど……」

    才羽モモイとは付き合いの長い友人のような会話をする。

    「ミドリも、マイペースな子増えちゃって大変ね。」
    「! ううん、コユキちゃんもアリスちゃんも良い子だから大丈夫だよ」

    行きそびれたという顔をしていたミドリへ話しかけるのも忘れない。
    そしてそれらの様子を、白石ウタハは呆気にとられたように観察していた。

  • 79エンジニア部へ②25/10/02(木) 23:53:24

    「それで、ウタハ先輩、どういうことですか?」
    怒りは他のうれしさで相殺されたようで、早瀬ユウカは暫く後輩と話した後、本題に戻り白石ウタハへと話しかけていた。

    「これはちょっとした事故でね……まあ、すぐに直すさ。セミナーの手間は取らせない。それより……」

    「何ですか?」
    「随分と仲良がよくなったようだね、君たち。噂ではゲーム開発部に最後通牒を出したと聞いていたから、少し心配していたのだけどね」

    確かに、部活動の財布を握っている、生徒会の会計は部活動をしている生徒たちと折り合いが悪くなることは多いだろう。
    実際、早瀬ユウカとゲーム開発部は対立してもおかしくはない状況だった。今のこの現状は偶然の結果ともいえる。

    「……まあ、それは事実ですよ。それより。自分たちで直すのはいいですけど、ちゃんと『元通りに』直してくださいね.ミレニアムでも、天井に変な機能は不要ですから。」
    少し苦い顔をして、早瀬ユウカは白石ウタハに念を押すように忠告した。恐らく数多くの前科があるのだろう。

    絶対に天井に改造を施さないとは明言しなかった白石ウタハにセミナーの会計は折れ、再度天童アリスからのお礼がエンジニア部へ送られ、私たちエンジニア部の作業場を後にした・
    そして改めて早瀬ユウカは我々に合流し、この後の予定を決めるため、一度ゲーム開発部に戻ることにした。

  • 80エンジニア部へ②25/10/02(木) 23:54:33

    本来昨日進めたかったところまで書いたので今日はここまでです。

    月末月初はちょっと忙しいです。

  • 81二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 07:14:34

    お疲れ様です。

  • 82二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 08:20:17

    アルちゃんとかユウカとか本編に登場はするけど立ち位置がだいぶ変わるキャラが良い味出してる

  • 83二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 16:36:17

    保守

  • 84二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 20:14:56

    素直にユウカに甘えられるゲ開withコユキはちょっと強すぎる

  • 85二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 22:23:40

    忙しいなか素晴らしいSSを描いてくださることに感謝を

  • 86作戦会議25/10/04(土) 00:54:50

    「本当に私が進行役で良いの? 私一応部外者なんだけど……」
    ゲーム開発部に戻った私たちは、本来早瀬ユウカが参加できる午後から始めるつもりだったという、作戦会議を行うことになった。
    部活動存続に関するルールを確認するには、セミナーの実質ナンバー2である早瀬ユウカがいた方が都合が良いのだろう。

    「良いのね? じゃ、始めるわ。まず、コユキが部員になったことで、あなた達ゲーム開発部は部活動としての構成要件をようやく満たしたわけだけど、廃部の危機を免れたわけではありません。」
    「それがユウカの言ってた実績ってやつだよね?」
    「お姉ちゃんがサボった部長会議で決まったってやつでしょ? 私たちの場合はミレニアムプライスでの受賞が条件……今更だけど、条件が厳しすぎない? ミレニアムプライスの受賞が条件ならほとんどの部活が実績を出せないことになると思うんだけど……」
    「そうだよ! そこんとこどうなのさ!?」

    才羽ミドリの疑問はもっともだ。ミレニアムのような巨大校で多く存在する部活動それぞれが顕著な実績を同時に残すことなど不可能に近い。
    実績が出るかどうかすら未知数な分野の学問もあるだろう。

  • 87作戦会議25/10/04(土) 00:56:13

    「ええ、ミドリの言うとおりね。なので、もう少し正確に話すわ。実績を出す必要があるといったけど、実績として認められる条件がいくつか設定されているの」

    条件は次の通りよ、と早瀬ユウカはどこかから持ってきた電子黒板に書き込んでいく。


    実績として認められる条件

    下記のいずれかを満たしていること

    ①セミナー主催、または一定の人数が参加する学内コンクールにて受賞すること。

    ②新しい特許の取得、論文の発表、新商品の販売、学外の何等かの賞への受賞など、学外活動における成果の報告

    ③所定の様式に則った定期的な活動報告書の提出。


    「こんな感じね。元々は活動報告の提出は義務ということにでほとんどの部活動はちゃんと出していたんだけど、出していないところもあって、ゲーム開発部はずっと出ていない状態が続いている。」
    「ご、ごめんなさい」

  • 88作戦会議25/10/04(土) 00:57:15

    「あ、べ、別にユズを非難しているわけじゃないのよ。出していないところも色々事情があるでしょうし」
    「うん……」

    他の生徒との相手をするときと異なり、花岡ユズとの相手だけややぎこちない。色々とあるのだろう。

    「まあ、そうなるとちゃんと出しているところからは不満が出るわけで、それが今回の存続ルールに影響したって感じね。活動報告については任意ということになり、代わりに実績として評価可能になった。出していないところは部活存続のための別の実績を示す必要がある、そういう事なの。」

    成果らしい成果を出すことが出来ない場合でも活動報告さえ規定通り出していれば問題ない。
    出せない場合でも、顕著な実績を示せば問題ない。
    そうすることで「活動に忙しくて報告書など出している暇がない」というような主張を罷り通すことが可能でありつつ、主体的な活動を行っているすべての生徒たちの活動機会を与える制度ということだろう。
    困るのは実績もないのに活動報告を出していなかった生徒たちだけであり……

    「じゃ、じゃあ結局G.Bibleが必要ってことじゃん!? また廃墟に行くの!?」

    ゲーム開発部はまさしくそのような部活動であると言えるだろう。

  • 89作戦会議25/10/04(土) 01:03:05

    「G,Bibleってなんですか?」
    説明を受けていなかった黒崎コユキが質問する。

    「その名の通り、ゲーム開発における聖書のようなものだよ! それには最高のゲームの作り方があるんだって!」
    「へー、なんだか夢のある話ですね! それで廃墟って?」

    「連邦生徒会長が立ち入りを制限していた廃墟地区で、G.Bibleはそこにあるって噂だよ!」
    「アリスはそこで目覚めました!」
    「ええ!? なんだか面白そうです」

    黒崎コユキが目を輝かせる。

    「でも、警備ロボットがたくさんいてめちゃくちゃ攻撃してくるんだよね……」
    「ええ!? じゃあ絶対行きたくないです!」

    手をクロスさせて拒否する新顔にやっぱりそうだよねー、と才羽モモイが頷く。黒崎コユキを連れて行けば何かしら便利な場面がありそうだが、
    本人の意志を無視することは出来ない。

  • 90作戦会議25/10/04(土) 01:17:12

    「本当にあるかもわからないもののためにもう一回危険を冒すつもり? 今更止めはしないし、行くなら私はついていくけど……」
    早瀬ユウカは心配そうな顔を隠そうともせずに言う。

    「私は……」
    その時、今まで殆ど会話に参加していなかった花岡ユズが意を決したように顔を上げる。

    「私は、廃墟に行くというなら、今度こそついていくよ。私の行動が原因でこれ以上みんなだけに危険を冒させるわけにはいかない。」

    彼女の言葉に、才羽姉妹と、早瀬ユウカが驚いた表情をし、大丈夫なのか確認をする。
    彼女は長いこと。この校舎の外から出ていなかったらしい。
    しかし結局、彼女の決意は変わらなかった。

    「わ、私は……」
    黒崎コユキが何か言おうとして止める。行きたくないと言いたかったのだろうが、それと同時に何かが不安であると訴えるように左右を伺う。
    「じゃあ、コユキちゃんは私と一緒にお留守番しよ? 大勢で行ってもしょうがないと思うし、ほら、機材とかの説明まだしてなかったから。色々覚えてもらう必要があると思うし。ほら、研修ってやつ」
    そこで才羽ミドリがすぐフォローに入り、黒崎コユキは1も2もなく頷く。

  • 91作戦会議25/10/04(土) 01:20:55

    方針が決まったようだ。
    廃墟にはゲーム開発部の才羽モモイと花岡ユズ。天童アリスの3人。それに早瀬ユウカと私を加えた5人で行き、才羽ミドリと黒崎コユキは研修という名目で居残りということになった。
    天童アリスは研修と廃墟、どちらに行くか悩んだ結果、冒険優先ということで廃墟に行くことを選んだ。

    この2人を残した結果、後に私たちはとある事件に巻き込まれることとなるのであった。

  • 92二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 01:30:29

    今日はここまで

    この辺り割と説明が無いので私のSSではこういう設定ですよという説明回でした。

  • 93二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 07:11:53

    その2人で起こるトラブル…?

  • 94二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 14:49:34

    保守

  • 95二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 18:59:42

    素晴らしい
    世界観や現状を説明する回は大好物です

  • 96二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 00:23:53

    よるほー

  • 97覚えていますか25/10/05(日) 00:56:15

    「ユウカ、右から敵が来てる!」
    「任せて! シールド展開!」

    メンバーを変更しての2回目の廃墟への挑戦は思いのほか順調に進んでいた。
    エンジニア部との模擬戦の際もうそうだったが、早瀬ユウカと花岡ユズ、前衛と後衛に状況判断力の高い人物が揃ったことで、より的確な判断が出来るようになったのだろう。
    そして何より

    「光よ!」

    天童アリスという極めて突破力の高い人員が追加されたこともあるだろう。
    また、シッテムの箱の戦闘支援システムは、何故か指示している人数が多いほうが性能が上がるという理解不能な仕様となっており、
    単純に人数が一人増えたことも前回との違いだろう。

    とはいえ、流石に連戦に次ぐ連戦で生徒たち自体も武器も消耗している。
    それでも、限界が来る前に目的地として指定されていた「工場」へとたどり着くことが出来た。

    「全員大丈夫? 怪我はないわよね?」
    早瀬ユウカが以前も行ったように安否確認を行う。

  • 98覚えていますか25/10/05(日) 00:59:02

    「全員大丈夫? 怪我はないわよね?」
    建物内に最後に入った早瀬ユウカが以前も行ったように安否確認を行う。

    「大丈夫だよー! アリスちゃん凄かったね!」
    「ふう、うん、私も大丈夫……。先生の指示も心強かった。」
    「あ、そういえばそれ、どうなってるの!?」

    才羽モモイと花岡ユズが頷くが、天童アリスは黙って周囲を見渡している。

    「アリスさん、何かありましたか?」
    「……あ、先生。いえ、分かりません。でも何だか見覚えがあるような、こちらです。」

    そう言って天童アリスが何かに導かれるように歩き始める。
    他のメンバーもそれに気づき、慌てて後を追い始める。

  • 99二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 01:01:14

    このレスは削除されています

  • 100覚えていますか25/10/05(日) 01:02:59

    「何があるのか、記憶しているわけではありません。ですが、体が記憶してるみたいです。ここに、大事な何かがあったような……」
    歩きながら、天童アリスが自分の行動の意味を説明するように語る。

    「そういえば、アリスって初めて会った時も不思議なこと言ってたよね。私たちのこと知ってるみたいな」
    「そうなの?」
    花岡ユズはそのあたりの話を聞いていなかったらしい。理解しがたい現象ではあるが。

    「あ、ユズには言ってなかったっけ。私とミドリとユウカの名前を言って、私はゲーム開発部の天童アリスだって自己紹介されたの!」
    「そ、そうなんだ? 不思議な話……」


    「……これです。」

    導かれた先には、周囲で唯一動作しているコンピュータがあった。

  • 101覚えていますか25/10/05(日) 01:04:11

    天童アリスが近づくと電子音が鳴り、自動で画面が切り替わる。

    [Divi:Sion Systemへ、ようこそお越しくださいました。お探しの項目を入力してください。]
    画面上に、文章が表示された。

    「おお、親切設計! G.Bibleについて聞いてみる?」
    「待ちなさい、モモイ。怪しいわよこれ。ようこそお越しくださいましたなんて、監視されてるみたいじゃない」

    才羽モモイの発言を早瀬ユウカが止めるが、その会話の最中、天童アリスが入力を始めてしまう。
    「ちょ、アリスちゃん!?」

    そして、今度はアリスが止められようとするも、本人が打ち終わる前に再び画面が切り替わる。
    始めは意味不明な文字記号の羅列に、そして

    [覚えていますか?]

    そう、記憶を問う言葉へと。

  • 102覚えていますか25/10/05(日) 01:06:57

    「……ごめんなさい、みんなの名前しか覚えてないのです。」
    意味深な言葉に、他の者が言葉に詰まっていると、天童アリスが申し訳なさそうな声で返事をした。
    その回答に、画面は再び意味不明な文字記号の羅列へと切り替わり、

    [音声を認識、資格が確認できました。おかえりなさいませ、AL-1S]

    先ほどとは違い、具体的な内容へと変化した。

    「AL-1S?」
    花岡ユズは何のことか分かっていない様子だ。

    「それって、アリスちゃんに書かれていた文字よね。そういえばアリスちゃんが名乗る前に、モモイがアレをアリスって読んだのよね」
    早瀬ユウカが思い出したように言う。本来であれば、天童アリスはAL-1Sであり、恐らく以前の時間軸では才羽モモイが彼女をそう名付けたのだろう。

    「AL-1Sって、私のことですか? 私は天童アリスです。ですがあなたは、私のことを知っているのですか?」
    音声認識があるとわかり、AL-1Sであった少女はそう問いかける。

    [よく……"%!%\%$#!!$!!!!……やはり……緊急事態発生。電力限界に達しました、電源が落ちると同時に消失します。残り時間51秒]
    一部しか判別しかできないメッセージの後、画面表示は突然警告を現した。

  • 103覚えていますか25/10/05(日) 01:08:03

    直感的に、この緊急事態というのは嘘であると感じた。こちらを慌てさせ、目的を達成するための何かをさせたいのだ。
    都合よく、才羽モモイが慌てている。慌ててG.Bibleについて聞こうと画面とやりとりを始めている。

    しかし、私は敢えてこの状況に口を挟まないことにした。
    この画面の向こうにいる存在は、私に起きている現象について、事情を共有している可能性が高いと感じたからだ。
    故に、その目的を阻止せず、何が起こるかを実際に確認すべきだろう。

    「保存媒体なんて『ゲームガールズアドバンスSP』のメモリーカードしかないよ!?」
    [……どうしてもそうなるんですね……まあ、可能です]
    「何かすっごく不服そう!?」
    騒ぎながら、才羽モモイと花岡ユズでどうにか接続を完了させる。
    保存容量が足らず、元々のデータがすべて削除されるという事故があったようだが、些細なことだろう。

    「あ。G.Bible.exeだって! ってパスワードかかってるじゃん!?」
    「そ、それくらいならヴェリタスでなんとかならないかな?」
    「わざわざヴェリタスに頼らなくてもコユキのセキュリティ突破能力はヴェリタス以上よ」

    早瀬ユウカの発言に驚く2人。騒がしい3人をよそに、再び黙っている天童アリスに目を向ける。

    「ケイ……?」
    彼女が小さくそう呟いたのを聞いていたのは、私しかいなかっただろう。

  • 104覚えていますか25/10/05(日) 01:09:13

    そのすぐ後、騒ぎを聞きつけたのか警備ロボットたちが現れて、戦いとなる。
    それが終わるころには天童アリスも朗らかな様子へと戻っていた。

    そして、成果を持ち帰るため、工場から外に出たとき、自分の携帯端末を持たない天童アリス以外の4人に同時に通知がくる。
    今更ながら、工場内は圏外となっていたらしい。

    妙な予感がして通知内容を確認する。

    「急いで戻れますか!? コユキちゃんが誰かに誘拐されちゃったみたいなんです!」

    どうやらパスワードの突破をしている場合ではないようだ。
    才羽ミドリからの通知であったそれは、私たちに新たな事件が起こっていることを知らせるものであった。

  • 105二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 01:10:48

    本日はここまで。

    ケイの本格的な登場は本編同様だいぶ先にはなります。

  • 106二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 08:45:32

    囧<うわぁああー!なんでー!

  • 107二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 17:52:44

    ゆうがたほー

  • 108二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:07:57

    コユキ!?
    なんやおばあちゃんの仕業か?

  • 109怪文書25/10/06(月) 00:11:24

    急ぎゲーム開発部へと戻ると、才羽ミドリが待ち構えていた。既に夕方近くの時間だ。

    「あ、みんな! お帰りなさい。」
    「ミドリ! コユキが誘拐されたって本当!?」

    早瀬ユウカが前のめりで問いただす。一方、才羽ミドリはというと、想像よりも普通、というよりは微妙な表情をしていた。

    「う、うん。多分? 最初見たときは焦って皆に連絡したんだけど……何か変というか、とりあえず状況を説明するね?」

    そう言って、才羽ミドリは説明を始める。

    「まず、部室でコユキちゃんに色々教えてたんだけど、とりあえず使ってるソフトとかを教えて、触ってもらっているときに、コトリちゃんから連絡が来たの。『誰かの落し物があるんだけど、ゲーム開発部のじゃないかな?』って」

    「う、うん?」
    落ち着いて話すに妹に違和感を持ったのか、才羽モモイが疑問符をつけながら続きを促す。

    「それで、エンジニア部にもう一回行って、コユキちゃんにはお留守番をしてもらってたの。結局それは私たちのものではなかったんだけど、戻ってきたらコユキちゃんがいなくなってて、代わりにこの紙が置かれていたの」

    そういって、一枚の紙を見せてくる。

  • 110怪文書25/10/06(月) 00:13:50

    才羽ミドリの提示した紙はコピー用紙であり、

    【黒崎コユキは預かった。返してほしければゲーム開発部のメンバーで以下の場所へ来い。】

    という文字が妙なフォントで打たれていた。
    そして下には2つの絵があり、その絵の指し示す場所へ行けという指示だろうことがうかがえた。

    「これ、どういうこと?」
    「アリス、知ってます! これは謎解きミッションです! 今までに13回経験済みです」

    訳が分からないといった様子の早瀬ユウカに、慣れているといわんばかりの天童アリス。
    ゲームでないことをゲームに例えることの多い彼女だが、今回は非常に的を射ていた。

    「そうだよね、これ謎解きゲームの始まりみたいな感じで、でも実際にコユキちゃんはいなくなってるし、どうしたらいいか分からなくて……」

    才羽ミドリが微妙な表情をしていた理由が分かった。この犯行声明を読んで本気で心配するべきなのか分からなかったのだろう。

    「う、うん……でも、放っておくわけにはいかないよね。もし本当に攫われたなら大変だし」
    「っていうか、これ!? ゲーム開発部への挑戦ってことじゃない!? ゲーム開発部にゲームで挑戦しようなんて言い度胸じゃん!」

    花岡ユズは悪い想像をしたのか目を瞑り、才羽モモイは鼻息を荒くする。

  • 111怪文書25/10/06(月) 00:16:59

    「皆さん、このようなことをする人物に心当たりは? 例えば、ゲーム開発部に恨みを持っているとか、悪戯だとすると、そういう謎解きとかが好きな人物は」
    念のため、まずはそれを確認する

    「う、うーん? 恨みを買うようなことは」
    「結構いるんじゃない? ほら、襲撃事件とか起こしてたじゃない。」
    「それは誤解なんだってば。」

    否定に対し指摘した早瀬ユウカに、才羽モモイが冷や汗をかいている。
    心当たりが無いわけではないようだ。

    「でも、悪戯好きっていうのはちょっと多すぎて絞り切れないわ。コユキ本人もそうだし、この子たちも……、謎解きが好きな子も多分多いと思う」
    ぱっと思いつくのは何人かいるけど……、と早瀬ユウカは頭の中で誰かを思い浮かべながら言っていた。

    「つまり、絞り切れないと」
    「はい」

    紙をまだ見ている天童アリスを除く他の部員たちも頷く。

    「そういうことであれば、結局のところ、この紙に従うしかないのでしょうね。」

  • 112怪文書25/10/06(月) 00:18:11

    犯人が特定できるのであれば、わざわざ相手の思惑に乗る必要はなかったが、一方でここでは乗った方が良いという思惑もないではなかった。

    黒崎コユキがゲーム開発部に加入したこのタイミングで、何故彼女が狙われたのだろうか。
    偶々にしてはタイミングが丁度良すぎる。そもそも彼女がゲーム開発部に入ったことを知る人間は非常に限られているはずだ。
    例えば、エンジニア部や、書類が提出されたセミナーの部員たち。
    または、我々を監視している何者か。

    その線から洗っても良かっただろうが、生徒たちが既にやる気になっていること。
    そして今のところ犯人の思惑が分からない現状では、黒崎コユキの身の安全のために、従った方が良いだろう。

    もっとも、状況から言ってほぼミレニアムの生徒の仕業であろうし、そこにエンジニア部が1枚嚙んでいる可能性も高そうであり、可能性として危険であることを排除しない、と言ってレベルではあるが。

  • 113怪文書25/10/06(月) 00:19:11

    「それで、これ、何の絵だろう」
    花岡ユズが改めて紙を覗き、呟く。

    「スーパー何かで売ってるお肉と、これは手裏剣と苦無かな?」
    才羽ミドリの言う通り、容器に入りパック詰めされた肉と、暗器のイラストが描かれている。1つ目は肉ではなく容器に矢印が付いている。

    「お肉と忍者グッズですね!? スーパーの忍者グッズ売り場でしょうか?」
    「アリスちゃん、スーパーには忍者グッズ売り場無いと思う」
    「残念です……」

    謎解きを始めた生徒たち、口出しするつもりはないが、そこまでレベルが高い内容とは思えないが。

    「分かったわ。簡単じゃない、これって……」
    「ちょっと待ってユウカ! 自分で考えるから!」
    「コユキが攫われたかもしれないってのに随分余裕ね……」

    どうやら早瀬ユウカはすぐに分かったらしいが、才羽モモイに答えを言うのを止められる。
    「いやほら……これ一応ゲーム開発部への挑戦みたいだからさ、セミナーのユウカが答えたらマズイかもだし!」
    「はいはい、分かったわよ……」

  • 114怪文書25/10/06(月) 00:20:15

    「わかったよ! 1つ目はお肉の入った『トレー』で2つ目は忍者のアイテムだから『忍具』で、トレーと忍具でトレーニングだね!」
    暫くして、才羽モモイも分かったらしく答えを叫んだ。
    尚、恐らく忍具という語彙が無い天童アリスを除けば、他の生徒たちは全員分かっていたようで彼女の言葉に頷いている。

    「凄いです! モモイ!」
    「ふっふっふ。トレーニング……ってことはトレーニング部だね! じゃあ、皆行くよ!」

    才羽モモイの号令で、私たちはトレーニング部の部室へと向かった。
    そのころには、、生徒たちに僅かに残っていた緊張感は霧散していた。

  • 115二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 00:21:16

    本日はここまで
    次回、ゲーム開発部が大変なことに

    基本的にコメディ展開です。

  • 116二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 06:07:05

    保守

  • 117二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 06:39:46

    ヴェリタスかな?
    ケイもなんか覚えてそうな気配だ

  • 118二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 12:59:41

    コユキがいるせいでリオヒマの計画狂ってるからなぁ…

  • 119二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 16:06:02

    やべぇわかんなくなってきた
    コユキ隠したのヒマリおばあちゃんじゃないんだ

    いや おやつで釣った可能性もあるか

  • 120二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 22:57:21

    なしてトレーニング部…?

  • 121体力試験25/10/07(火) 00:25:03

    謎解きの解答はトレーニングだった。
    早瀬ユウカの案内により、トレーニング部の部室、ということになっているというトレーニングルームに向かう。

    「ここがトレーニング部だね。ここにコユキがいるのかな?」
    「だといいんだけど……」
    トレーニング部の部長が主犯でもあればその可能性はあるが、それは考えにくいだろう。

    「お邪魔しまーす」
    「おや、いらっしゃい。あなた達は……ユウカさんもいるんですね。セミナーの関係ですか? それと……そちらの方は」

    トレーニング部の部長と目される人物に突然の来客に怪訝な様子で迎えられる。

  • 122体力試験25/10/07(火) 00:29:05

    「突然の訪問すみません。私はこの学園を見学中の『シャーレの先生』をやっている者です。そしてセミナーではなく」
    「げ、ゲーム開発部の部長の花岡ユズ……です。」
    私に続き、ゲーム開発部の代表として花岡ユズが挨拶をする。

    「成程、あなたがあの……、そしてゲーム開発部ですか。あ、申し遅れましたトレーニング部部長の乙花スミレです。」

    「私は先生の案内役兼護衛です。こちらに用があったのはこの子たちで……」
    「あの、黒崎コユキっていう生徒がここに来ませんでしたか? ピンク髪のツインテールで背は私と同じくらいの……」

    「黒崎コユキ? そういいましたか?」
    「何か知ってるの!?」

    名前を聞いて即座に反応した乙花スミレに、才羽モモイが反応する。

  • 123体力試験25/10/07(火) 00:39:57

    「いえ、私はその生徒は知らないのですが、先ほど別の生徒から「黒崎コユキを探している生徒がいたら読んでほしい」と言って渡された手紙が2枚あるんです。
    これですね。では読んでみましょう。1枚目ですね……」
    トレーニング部部長はそう言って取り出した2枚の紙の内、一枚を開く。
    そこには……

    【よくぞ最初の謎を解き明かした。次の目的地は2枚目の紙に書かれている。2枚目の紙を開く条件は、トレーニング部の部長のトレーニングに挑戦し、完走することである。】

    と最初の怪文書と同じ書式で書かれている。

  • 124体力試験25/10/07(火) 00:53:18

    「成程……」
    乙花スミレが頷いている。何が成程なのだろうか。

    「トレーニング? あ、あの、私たちちょっと急いでるんです。2枚目の紙を見せてもらったりは……」
    才羽ミドリが恐る恐るといった様子で尋ねる。

    「いいですよ。では、トレーニングを行いましょうか。皆さん参加されるということでよろしいですか?」
    「いえ、私と先生は付き添いなので結構です。」
    誰よりも早く早瀬ユウカが拒否の解答をした。私まで含んでもらったのは正直助かった。

    「ちょっとユウカ!? なんで即答!?」
    「何よ。さっき私はゲーム開発部じゃないから駄目っていったのはモモイじゃない」
    「根に持ってた!? あ、あれはそういうことじゃないよ!?」
    早瀬ユウカにしては珍しく子供らしい応対をし、才羽モモイが焦る。

    「あ、あのそうじゃなくて、緊急事態なので今すぐ見せてもらったりは……」
    「では今すぐ始めましょう。参加されるのは残りの4人で大丈夫ですか?」
    「あれ、もしかしてこの人全然話聞いてない!?」
    話し方や対応は真面目で理知的に感じたが、どうも乙花スミレという人物は少々変わった人物であるようだ。
    才羽ミドリも焦っている。
    ついでにトレーニングに自信が無さそうな花岡ユズも焦っているようだ。表情で伺える。

  • 125体力試験25/10/07(火) 01:01:32

    「アリスは参加します! みんなは参加しないのですか? これは第二の試練です!」
    「しょうがないよ、ミドリ、ユズ。誰か一人でもクリアすればいいみたいだから参加しよ」
    「それしかないのかぁ」
    「わ、私、体力は全然これっぽっちも自身が無いんだけど……」

    ゲーム開発部のメンバーは全員諦めて潔く参加することにしたようだ。
    話が通じない以上、正直なところそれしかないと思うが、傍観に回った早瀬ユウカが隣で溜息をついている。
    「これは……不味いかもしれないわね」
    何か知っているようだが、であれば止めれば良かったのではないだろうか。

    それから暫く。

    「はあっ、はぁっ、もうダメだあーー」
    才羽モモイが倒れこむ。

    ランニングや筋力トレーニングなど、科学的見地に基づいたトレーニングの方法自体は興味深いものではあったが、
    その量が尋常ではなかった。まず初めに花岡ユズが極めて速やかに脱落し、その後、才羽ミドリが少し前に脱落。
    そして明らかに無理をしていた才羽モモイもついに脱落した。

  • 126体力試験25/10/07(火) 01:04:24

    「うう……犯人め……絶対に許さない……」
    才羽モモイが地に伏せながら相当な憎しみを込めて、誘拐犯へ恨み言を呟く。
    横たわっている残り2人も頷いている。
    先ほどは霧散しかけていた犯人への敵対心がここにきてかなり増しているが、まあ、悪いことではないだろう。

    一方、残りの一人、天童アリスはというと。

    「次は何ですか? スミレ先輩!?」
    未だ楽しそうにトレーニングを続けていた。

    彼女に筋力トレーニングなど意味があるのかは不明だが、走り方のフォームや力の入れ方のコツなど、乙花スミレから教わりながらすぐにそれを吸収していく様は
    トレーニング部の部長のやる気に火をつけたらしく、倒れた者たちに目を向けず、トレーニングを続けている。
    少なくとも体力という面においてはこの学園で天童アリスを超えるものは到底いるはずもない。

    そして、才羽モモイが脱落してからさらに倍ほどの時間の後、天童アリスは全てのトレーニングメニューを達成した。

  • 127体力試験25/10/07(火) 01:05:28

    「ふぅ、少しやりすぎてしまいましたね。」
    「少しじゃないよー!!」
    「そうですか? まあ、おひとり達成されたので、2枚目を開けましょう。」
    ある程度体力が回復した才羽モモイの抗議はどこ吹く風といった様子で2枚目の紙を開く。
    そこには

    【よくぞ体力の試練を突破した。次は4番倉庫へ行け】
    とだけ書かれていた。

    「4番倉庫とは何ですか?」
    「ミレニアムの倉庫区画のNo.4の倉庫のことだと思うわよ、アリスちゃん……って25番ってウチの管轄じゃない」
    読み上げた天童アリスが疑問を口にすると、早瀬ユウカがそれに回答する。

    「ウチのってセミナーの倉庫ってこと?」
    「いいえ、そういう訳じゃないわ。結構大きい倉庫なんだけど、ちょっと色々あって今は使われてないからセミナーが管轄してるってだけ。」

    つまり、倉庫に無断侵入しているか、セミナーの誰かが犯人、ということになるだろうか。しかし

    「まあ、行ってみれば分かることでしょう。皆さん、お疲れのところだと思いますが、大丈夫ですか?」

    「はい!いよいよボスとの対決でしょうか!? アリス、わくわくしてきました!」
    疲れを一切感じさせる様子の無い天童アリスと、黙ってうなずく疲れ切った様子の残り3人とともに、我々は次の目的地であるミレニアムの倉庫区画へと向かった。

  • 128体力試験25/10/07(火) 01:06:28

    本日はここまで。

    だいぼうけんではありません。

  • 129二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 07:55:54

    > だいぼうけんではありません。

    ええーほんとにござるかー?

  • 130二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 10:12:29

    考えてみればコユキの拘束なんてほぼ不可能なんだしセミナーないし身内のお遊びでしかないよね。ただこんなことやりそうなのは…流石にまさかリオじゃなかろうな?

  • 131二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 17:01:03

    いわれてみればそうである

  • 132二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 23:04:51

    よるほー

  • 133謎の仮面メイド25/10/08(水) 00:13:24

    レニアムの倉庫区画。学校の倉庫とはいえ、実際にメーカーとして開発した商品の売買も行っている営利企業としての側面もある学校だ。
    倉庫もかなり大型のものだった。

    「倉庫区画って初めてきたかも」
    「まあ普通に生活してるだけなら校舎のある研究区画(スタディエリア)から出ることはあっても、倉庫の方にいくことは無いわね。私も殆ど来ることは無いわ。会計だから全くないということは無いけど。あそこに見えるのが4番倉庫よ。」

    才羽モモイと会話していた早瀬ユウカが他の倉庫と少し離れた建物を指し示す。

    現在は使われていないというが、廃墟のようにはなっていない。
    使われなくなった理由については早瀬ユウカも完全には知らず、一つには立地の問題もあるということだけが分かっているようだ。

  • 134謎の仮面メイド25/10/08(水) 00:16:47

    入口まで到着する。やはり、使用していないというにはどうも整備が整っているような状態となっている。

    「じゃあ、開けるわよ。中に何があるか分からないから、気を付けて。」
    早瀬ユウカのその言葉の後。シャッターが開く。

    「何が待ち受けているのでしょうか、ドキドキします。」
    「ちょ、ちょっと不気味だね。」
    「大体こういうとこって入ったと思ったらシャッターが扉が閉まって大勢の敵に囲まれてるんだよねー
    「お姉ちゃん、変なこと言わない……で……」

    才羽モモイの軽口に言い返そうとしていた才羽緑の言葉が一瞬止まる。シャッターが閉まる音がしたからだろう。
    そして、突如照明がつく。開けた視界には、エンジニア部で戦ったものとは違うタイプの多量の戦闘ドローンが目に留まった。

  • 135謎の仮面メイド25/10/08(水) 00:18:37

    「お姉ちゃん!?」
    「わ、私のせいじゃないよー!?」

    「ふざけてないで! 戦闘態勢!」
    「と、とりあえず先生は後ろへ!」
    「まずは一発行きます! 光よ!」

    流石はキヴォトスの生徒というところだろう。戦闘へ至るまでの切り替えの早さはかなりのものだ。
    私は大人しく花岡ユズの言葉に従い、最後列へ移動する。

    最初の混乱を乗り切り、周囲の状況を見る余裕が出来てきた。
    奥はまだ見えないが、周囲のドローンやオートマタ兵器は、すべてが稼働しているわけではないようだ。
    多くはそこにただ置かれているだけ。つまり、ここは倉庫として現在も利用されている可能性があるということだろう。

  • 136謎の仮面メイド25/10/08(水) 00:19:55

    襲い掛かるドローン兵器を倒しながら、倉庫の奥の方へ進んでいく。
    そしてある程度進んだところで、不意に、ドローン兵器たちの攻勢が止まる。
    気付けば、棚などが一切なく少し広くなった場所まで来ていた。

    「お待ちしておりました。ゲーム開発部の皆さん。」
    突然、正面から声が聞こえてきた。

    周囲を警戒していた生徒たちが驚き、そちらに銃口を向ける。
    そこには、、いつの間にかメイド服を着た、仮面をつけた少女が立っていた。

    「あ、あなたは! …………誰?」
    「ボケてる場合じゃないでしょモモイ」
    才羽モモイの悪ふざけに対し、律儀にツッコミを入れる早瀬ユウカ。

    「っていうかメイド服って、嫌な予感しかしないんだけど。」
    才羽ミドリは一人頭を抱えている。

    「ここにいた、ってことは、あなたがコユキちゃんを攫ったんですか?」
    花岡ユズが尋ねる。
    天童アリスは黙って武器をチャージしている。勇者らしいかは別として良い判断だ。

  • 137謎の仮面メイド25/10/08(水) 00:20:57

    「いいえ、私が攫ったわけではありません。しかし、ここにあなた達が来たら戦うようにと指示されていますので、ここは私が相手です。」

    仮面メイド服の少女はそう宣うと、今まで戦ってきた機械たちとは明らかに格の違う、1台のロボットが現れる。

    「黒崎コユキさんを返してほしければ、私たちを倒すことが条件とのことです。では、お覚悟を」

    「無理無理無理無理!! ちょっと強すぎるよあのメイドさん!」
    「それにあのロボ、顔はちょっとあれだけど今までのとはくらべものにならないくらい硬い!」

    才羽姉妹の言う通り、仮面のメイドと戦闘ロボットの戦闘力はかなりのもので、数の差を物ともしない立ち回りでゲーム開発部の生徒たちは逃げ回りながらなんとか応戦していた。

    「うわーん!? 動きが早くてうまく照準が合わせられません!?」
    火力という意味で頼りの天童アリスも、相手の機動力に翻弄されている。

  • 138謎の仮面メイド25/10/08(水) 00:22:01

    「……先生。ちょっといいですか?」
    手詰まりを感じていたところに、壁際に遮蔽を作り、隠れていた花岡ユズから通信が入る。

    「どういう方法か分からないですけど、先生って私たちの事を俯瞰視点のゲームみたいに状況確認しながら指示を出していますよね? ならこういう事ってできますか?」

    シッテムの箱の戦闘支援システムのことを生徒に教えたことは無い。
    しかし、ゲーマーとしての勘が働いたのか、私がやっていることを把握していたらしい。
    そして、花岡ユズには紛れもなく最高の、ゲーマーとしての素質があった。

    「……成程、分かりました。何とかやってみましょう。」

  • 139謎の仮面メイド25/10/08(水) 00:23:05

    「防戦一方のようですね。黒崎コユキさんのことを諦めて帰るのであれば、追撃はしませんよ。」
    仮面のメイドがそう挑発する。実際のところ、状況としては追い詰められていると言っても良いものだった。

    「諦めるわけないでしょ! コユキはもうゲーム開発部の仲間なんだから!」
    才羽モモイが即答する。

    「それに、新しい大事なお友達だよ」
    才羽ミドリが頷いてそれに続く。

    「その通りです。コユキは仲間で友達で、私たちのパーティの一員です!」
    天童アリスが真剣な顔つきで同意する。

    「返してください! ゲームを一緒に作りたいって言ってくれた、コユキちゃんを、返して!」
    花岡ユズがどもらずはっきりと、そう口にする。

    「……まあ、私からはなんとも。何となく後ろにいる人は見えましたし、どういった理由があるのかは後で問い詰めるとして、
    一つ言えることは、この子たちを本気にさせるととても面倒なことになる確率が極めて高いってことね。同情するわ。」
    早瀬ユウカは、微妙な表情で最後にそう付け加えた。

  • 140謎の仮面メイド25/10/08(水) 00:24:12

    実際のところ、本気になって奮い立ったところで、戦力差がそうやすやすと覆るわけではない。
    しかし、ゲームとしての視点に立った時限定なのか、花岡ユズの観察能力は極めて高い。
    局所的には今まで出会った中で最高ともいえるだろう。
    狙い目は、メイド服の少女ではなく、ロボットの方。
    自律移動しているそのロボットはそこまで高度なAI使われているわけではないようで、一定のアルゴリズムに基づいて行動しているようだ。
    花岡ユズはその行動をほぼ完全に分析できており、ロボットを追い詰めていく。

    そして、ついに、ロボットが壁際にある棚から出ていた何かの部品に突っかかり、一瞬足を止める。

    「アリスちゃん!」
    私の指示とほぼ同時に花岡ユズが叫ぶ。

    「光よ!」
    そして待ち構えていたように天童アリスの武器が唸りを上げる。

    初めてクリーンヒットした天童アリスの攻撃により、ついにそのロボットは完全に動きを止める。

  • 141謎の仮面メイド25/10/08(水) 00:26:35

    「さあ、後はあなただけだよ!」
    前線で仮面メイドの対応をしていた才羽モモイが叫ぶ。

    残りのゲーム開発部の生徒たちも武器を構えなおし、早瀬ユウカはシールドを展開する準備をする。

    「性能の低いプロト版とはいえ、まさか彼が倒されるとは……なるほど、まだ続けたいところですが、十分に目的は果たせたようですのでこの辺りでお暇いたします。」
    それに対し、仮面の少女はそう言って何かを投げる。
    途端、周囲に煙幕のようなものが張られる。

    「ケホッケホッ に、逃げたー!?」

    煙幕が晴れると、既に少女も壊れたロボットも消えていた。
    代わりに、またもや一枚の手紙が置かれていた。

  • 142謎の仮面メイド25/10/08(水) 00:27:40

    そこには

    【おめでとう 黒崎コユキはここにいる】

    と書かれており、その下にはミレニアムの部室棟の地図が描かれており、矢印がひとつつけられていた。

    「え? ここって……」

    才羽モモイが首を傾げる。見覚えがある場所だったようだ。

    「モモイ、しっているのですか?」
    天童アリスは知らないようで、首を傾げる。
    花岡ユズや才羽ミドリもピンとは来ていないようだ。

    「そこは……ヴェリタスね。一応不法占拠なんだけど……」
    ただ一人、早瀬ユウカはそう言ってため息をつく

    ヴェリタス。今回の首謀者はその組織の者だったという事のようだ。

  • 143二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 00:29:13

    本日はここまでです。
    そろそろパヴァーヌ1章が終わりですね……

    この賞の実質的なクライマックスがコレです。
    自分でも何でこうなったかはよくわかりません。

  • 144二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 07:56:07

    非公認の部活だし、不法占拠と言われるのもやむなしか

  • 145二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 08:00:32

    やはりヒマリか…?

  • 146二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 16:48:43

    このメイドってトキ?

  • 147二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 20:07:16

    保守

  • 148二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 21:53:56

    だれがやったんだほんま

  • 149事の顛末25/10/08(水) 23:20:49

    戦闘の影響で悲惨な状況になっている倉庫を放置して、ミレニアム校舎へと戻り、ヴェリタスの部室へと向かう。
    早瀬ユウカは非公認であることを強調したが、何故存続できているかについては上からの指示とだけ言っていた。
    C&Cと違い、ヴェリタスという組織については高いセキュリティによって守られていて、以前の時間軸ではミレニアムに極めて能力の高いハッカー集団がいるという
    噂程度の情報でしか知らなかった。

    ヴェリタスの部室へと到着した。
    はっきりと緊張した面持ちで、花岡ユズが扉の前に立つ。
    私がミレニアムに来てから起こった一連の出来事によって、当事者意識か、あるいは責任感のようなものが生まれたのだろうか。
    自然に先頭に立つようになっていた。

  • 150事の顛末25/10/08(水) 23:21:50

    「お、お邪魔します……ええっ、コユキちゃん!?」
    扉を開き、中の様子を確認した花岡ユズが叫ぶ。
    慌てて他のメンバーも中に入っていく。そして一番最後に入った私も同じものを見た。

    室内には、4人の生徒が神妙な顔で正座しており、もう一人、腕を組んだ女子生徒だ。
    4人の生徒は神妙な顔をしており、一人は涙目になっている。その涙目の生徒こそが黒崎コユキだった。

    「ユ、ユズ部長、みんな。ユ、ユウカせんぱい……うわーーー、ごめんなさいーーー!!」
    黒崎コユキが入ってきた私たちを見て、激しく泣き出しながら花岡ユズへと突進する。
    それに対し、同行していた生徒たちは

    「こ、コユキちゃん!? 無事でよかったけど……落ち着いて……」
    「何々!? っていうかコレどういう状況!?」
    訳が分からない状況に混乱するもの、


    「これが敵のアジトですか? コユキを泣かせる悪いボスですね?」
    「わー! アリスちゃんも落ち着いて!」
    別のことに翻弄される者、

    「はぁ、、まあ大体想像はつきますけど、説明してくださいますよね? チヒロ先輩」
    出来る限り冷静に努めようとするものに分かれた。

  • 151事の顛末25/10/08(水) 23:23:35

    「うん、今回は本当に申し訳なかったよ。ウチの問題児たちのやらかしに巻き込んじゃって。私は各務チヒロ、一応ここの副部長をやってる。詳しい説明は……首謀者にさせるから」
    頭を抱えながら、謝罪と挨拶を済ませた各務チヒロは、首謀者、として正座していた内の一人、赤髪の少女を指指す。

    「はい。この度は私の考えた悪戯でゲーム開発部の皆さんやユウカ先輩、先生を危険な目に合わせてしまい、誠に申し訳ありませんでした・」
    「何か気持ち悪いから普通に話しなよ、マキ」
    神妙に頭を下げながら謝罪していた首謀者、マキと呼ばれた少女に、才羽モモイが軽く返す。気やすい間柄ではあるらしい。

    「うん、わかった。」
    「それじゃ、事情を説明してちょうだい?」

    「うん……実はこの間友達に誘われてリアル脱出ゲームに行ってさ、それが楽しくて、実際に作ってみたいって話をしたんだ。そしたらみんな乗り気になってさ。」

  • 152事の顛末25/10/08(水) 23:25:02

    「やっぱり、そんな感じだったんだ、謎は一つしかなかったけど。それが何でコユキちゃんを攫うなんてことになったの?」

    才羽ミドリの質問に、花岡ユズにあやされていたコユキがびくりと体を震わせる。

    「う……いや、最初はゲーム開発部の人たちにプレイしてもらって、あわよくば感想聞いたりアドバイスなんかもらえないかなって思ったんだけど、部室にいったらコユキちゃんしかいなくてさ、何か魔が差したというか、コユキちゃんが攫われたことにしたら臨場感も増して面白いかなって思って……その場で文章をアレンジしたんだ」

    「そういうの得意だよねー、マキ。それでコユキも乗っかっちゃったって感じかな?」
    「そうなの、コユキちゃん?」
    才羽モモイの言葉に、花岡ユズは手元にいる黒崎コユキに語り掛ける。

    「……はい……」
    泣き止んでじっとしていた少女が、返事をする。
    「面白そうだなって思ったんです。それに、心配してくれたら嬉しいなって思っちゃって……」
    「コユキ……」

    静観していた早瀬ユウカから言葉がこぼれる。本当に子を心配する親を見ているようだ。

  • 153事の顛末25/10/08(水) 23:26:23

    「そっか……じゃあ、二つ目とか三つ目の試練もマキが考えたんだ?」
    「うん、ハレ先輩やコタマ先輩にも準備の協力とか、カメラやマイクの設置に協力してもらったけど」

    横で正座していた残り2人の生徒が頭を下げる。共犯というところだろう。

    「なるほどー……。じゃあ、感想欲しいっていうから感想言うね。」
    「え?」

    才羽モモイの予想外の反応に、俯いて喋っていたマキが顔を上げる。

    「まず……正直リアル脱出ゲームとしては微妙だった! というかリアル脱出ゲームと認めたくないレベルの低さだったよ!」
    「うぐ……そ、それはまだ試作も良いところだったから……」

    才羽ミドリも姉の言葉に頷いている。

  • 154事の顛末25/10/08(水) 23:27:43

    「それと……一つ許せないことがあるんだけど」
    「はい、ですよね。」

    「2つ目の筋トレ! あれ、絶対おかしいよ!? リアル脱出ゲームであんな要素聞いたことないよ! しかもアリスいなかったらあそこで脱落してたし!」
    「え、そこ!? 3つ目の試練は!?」

    「え、3つ目? まあ、最後の試練が戦闘になるっていうのは最近のキヴォトスのリアル脱出ゲームでは定番みたいだし、良いんじゃない?」
    「いや、流石にアレはおかしいでしょお姉ちゃん。アレ本気すぎて下手したら大けがしてたよ」
    「……確かに……ひどいじゃん! マキ!」
    才羽モモイはトレーニング部での恨みを忘れていなかったようで、そこを詰問する。一方で、妹の指摘した件については何とも思っていなかったようだ。

    「え?それだけ?」
    「うん? まあそうだね。私からはその位かな……あ、そういえば何でみんなはお説教中だったの? コユキなんか泣いてたし。」

    その通りだ。
    今の説明では、悪戯自体は思惑通りいっていて、説教されることで張るだろうが、4人が反省した様子を見せるのはおかしい。

  • 155事の顛末25/10/08(水) 23:31:50

    「そ、それがその3つ目の試練の件でさ。あそこにもカメラ設置したりして、様子を見てたんだけど、実際のところ、あそこを任せてたのはぶちょ……別の人の伝手でさ、あんなに本気の戦闘をさせるつもりなんてなくて……。正直思ってたよりはるかに危険な戦闘になってて、みんなのコユキを助ける決意みたいな発言とか聞いちゃって、もう申し訳なくて全然笑えなくてさ……」

    言いかけてやめたが、部長と言おうとしていた。道すがら早瀬ユウカが言っていた明星ヒマリという人物の事だろう。
    その生徒の何らかの伝手で用意した内容が、あのような戦闘が起こるきっかけとなった。


    「あー……だから、コユキちゃん泣いてたんだ」
    「あれ聞かれてたの!? は、恥ずかしい……」
    「えー、なんかアレゲームの主人公になった気分がして結構楽しかったよ?」
    「はい! アリスも同意します。」

    ゲーム開発部のメンバーは厳しい戦闘をさせられたことよりも発言が本人に聞かれていたことの方が気になったようだ。
    黙って聞いていた早瀬ユウカも「あまり変なこと言わなくてよかった」とほっとしている。

  • 156事の顛末25/10/08(水) 23:34:29

    「それでみんなが無事クリアして、ほっとしたところにチヒロ先輩が現れて、めちゃくちゃ怒られてたってところ。……本当にごめんね?」
    「うん……まあ、大体分かったよ。うーん……。まあ、私個人的には別にこれ以上怒るつもりはない、かな? コユキみたいに、私が誘われても多分乗ってたと思うし……。みんなはどう?」
    才羽モモイは仲間たちに振り返る。

    「私もお姉ちゃんと同じかな。私もなんだかんだ乗っかっちゃいそうだし。」
    「私は多分、乗らないと思うけど……でも、ゲームを作ってやってもらいたいって気持ちは分かるから」
    「アリスはとっても楽しかったです。本当の冒険をしているようでした」

    三者三葉ではあるが、全員肯定的な意見を示す。

    「あ、最後に一つ! 私、今めっちゃモチベ高いかも! こんなゲームやらされて、悔しいけど私たちならもっと良いゲーム作れる、作りたいってすっごく思っちゃった!」
    才羽モモイがそう言い、片手を上げてやる気を示す。

    「あら、じゃあG.Bibleはもういいの?」
    「あ、そうじゃん忘れてた! コユキ、これ開けられる?」
    早瀬ユウカの指摘に才羽モモイが、何故か持ってきていたゲーム機を黒崎コユキに見せる。

  • 157ゲームを愛すること25/10/08(水) 23:36:33

    「はい? まあプログラム制御のロックなら何でも開けられますよ」
    黒崎コユキがこともなげに言う。彼女にとってはそういうものなのだろう

    「え? 何それ。ヴェリタスに来ない?」
    「ハレ。黙ってなさい。」
    コユキの発言に今まで黙っていたハレと呼ばれた少女が反応するが、各務チヒロに窘められて再び黙る。

    黒崎コユキは何の感慨もなく、G.Bibleにかけられたパスワードを解除する。
    ヴェリタスとゲーム開発部のメンバー、そして早瀬ユウカと私が見守る中、G.Bibleが起動する。そしてその内容は……

  • 158ゲームを愛すること25/10/08(水) 23:37:35

    「何だよそれーーー!!?」
    才羽モモイの叫び声が室内にこだまする。

    【ゲームを愛しなさい】それがG.Bibleの内容だった。何者かの悪ふざけなのか、それとも本当に真理に至ったものなのか。
    それは分からないが、少なくとも具体的な条件を提示されるような期待していたものではなかったということだ。

    「モチベーション上がったんじゃなかったの?」
    早瀬ユウカが励ますように言うが、才羽モモイは首を振る。

    「現実問題として、私たちに面白いゲームなんて……」
    才羽ミドリが後ろ向きな発言をし、花岡ユズは青ざめている。想像よりも、彼女たちがG.Bibleにかけていた希望は大きかったようだ。
    黒崎コユキはおろおろと首を振る。自分が何かまた悪いことをしてしまったのではないか、そのような不安が見られる。

  • 159ゲームを愛すること25/10/08(水) 23:38:42

    ただ一人、天童アリスは笑っていた。
    「大丈夫です。ユズ、モモイ、ミドリ。面白いゲームは作れます。G.Bibleは言っていました、面白いゲームを作るには、ゲームを愛することが必要だと。私たちはその条件を十分に満たしていると思います。だから、私はゲーム開発部の天童アリスとして目覚めました。」

    天童アリスの言っていることは前後関係がおかしい発言だったが、確かな説得力が感じられた。

    「それは、テイルズ・サガ・クロニクルにも表れています。あのゲームは、面白くて、ゲームへの愛にあふれていました。だから。次はもっと多くの人にそれを伝えられるゲームを作りたいです。」

    アリスがそう言い切ると、他のゲーム開発部の眼に光が戻る。
    「うん、作ろう。今度こそ。私たちの作ったゲームをみんなに楽しんでもらおう」
    「そうだね! どうせ後がないのは一緒なんだし、頑張って作ろう!」
    「デザインは、任せて! いまならより洗練されたものが描ける気がする。」
    「にはは、私も、できることなら何でもお手伝いしますよ! まだまだ見習いですけど!」

    それぞれが決意表明のような物を口にする。

  • 160ゲームを愛すること25/10/08(水) 23:39:54

    「何か、本当にゲームの主人公を見てるみたいな気分だよ」
    きっかけを作った事件の首謀者、マキが感慨深そうにそう呟いた。

  • 161二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 23:41:48

    本日はここまで。

    表の話はあとはミレニアムプライスで大体終わりです。

    裏の話については、トリニティへ行く前までに、何回かに分けて書くつもりです。

  • 162二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 05:46:31

    保守

  • 163二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 08:40:10

    まぁ、なんだ…
    大事になってなくてよかったというか…

  • 164二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 14:17:46

    ひるほー

  • 165二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:01:39

    よるほ

  • 166美甘ネルとの対話記録25/10/09(木) 23:53:03

    黒崎コユキの誘拐騒動の後、それぞれゲーム開発部やセミナーに戻る生徒たちと別れ、
    私は帰路についていました。
    そこで美甘ネルと遭遇し、彼女が気になる事を話していたので記録として残しておきます。

    美甘ネル(以下、ネル):よっ、先生。今帰りか?
    私:おや、ネルさん。ええ、そうです。幸いミレニアムはシャーレから通える距離にありますから。
    ネル:そっか。じゃあ、気をつけて帰れよ。
    私:ええ、ありがとうございます。ところで、ネルさん。
    ネル:ん?
    私;今日倉庫区画の方で、メイド服の生徒とお会いしたのですが、C&Cの方でしょうか?
    ネル:今日? 今日のいつ頃の話だ?
    私:夕方頃ですね。
    ネル:いや、だったらそれは無いな。私以外の生徒は別の仕事が入ってていなかったはずだ。」
    私:そうですか……ネルさんの来ているそのメイド服と同様の者に見えたのですが……
    ネル:何?

  • 167美甘ネルとの対話記録25/10/09(木) 23:55:02

    私;リボンの色合いとか形ですか、それが同じに見えました。それから……戦闘能力もかなり高かったですね。
    ネル:戦闘能力ぅ? 戦ったのか?
    私;はい、コユキさん以外のゲーム開発部全員に加え、会計のユウカさんで戦ったのですが、かなり厳しい戦いでした。もっとも、相手は一人ではなく、妙なロボットもいましたが。
    ネル;戦闘能力が高くてウチのメイド服を着てる奴か……もしそんなのがいるとしたら、そいつはあたしの知らないC&Cのメンバーって事になるな。そんな奴は……変なロボット? それってどんな感じに?
    私:こちらも戦闘能力が高い自律移動ロボットだったのですが、そうですね、造詣が独特というか、才羽姉妹なんかは『ダサい』と表現してました
    ネル:……(暫く無言で何かを考えている)
    私:ネルさん?
    ネル:いや、その件についてはちょっとこっちでも調べとくわ。そいつがもし本当にC&Cの真似事をしてるんだったら……、話つけなきゃなんないかもしれないしな
    私:……分かりました、ありがとうございます。
    ネル:ああ、こっちこそ情報ありがとな。
    私:ええ。ネルさんも、何かあればシャーレにご相談ください。私の力でよければお貸ししますよ。
    ネル:ははっ、考えとくよ

    メイド服の生徒については美甘ネルの知っている人物ではないこと、
    そしてその件について彼女に何らかの心当たりがあることが分かりました。

  • 168手記 ミレニアムで起きたこと25/10/09(木) 23:56:09

    ミレニアムで、特にゲーム開発部に対するサポートという意味で私にできることはもうほとんどないと言える状況です。
    後はゲーム開発部の生徒たちがどれだけのゲームを作り、どう評価されるかということになりますが、それについては直接介入することは不可能であり、
    また望ましくもありません。

    そこで、ミレニアムにいる間に起こったことをまとめておきます。

    ①ゲーム開発部の件
    ゲーム開発部はその名の通り、ゲームを開発する部活動ですが、私が支援依頼を受けた段階で、人数が足りない、実績が無いといった状況でしたが、
    AL-1S(天童アリス)の発見と、早瀬ユウカとゲーム開発部との和解による黒崎コユキの紹介という経緯を経て、現状実績さえ残せば存続可能というところに来ています。

    ②天童アリスについて、
    AL-1Sという型番が刻印された機械の少女は、目覚めた時点から自らを「ゲーム開発部の天童アリス」だと自称し、自分をそういう存在だと認識しています。
    これが以前の時間軸でどうであったかは不明ですが、少なくとも私と同じような現象、つまり時間遡行などを経験している可能性が高いと思われます。
    私と違い名称以外の記憶を失っているのは、本当に喪失したのか、思い出せないだけで今も残っているのか、それとも誰かからインプットされただけの情報なのか。
    それらについては現状不明です。少なくとも彼女のことは今後も注視する必要があるでしょう。

  • 169手記 ミレニアムで起きたこと25/10/09(木) 23:57:16

    ③廃工場のPCについて
    廃工場の音声認識のついたAIは、天童アリスに対し、「覚えていますか?」とこちらの状況を把握しているような発言をしました。
    また、そのAIに対し、天童アリスもまた、何かを思い出しているかのように言葉を発していました。
    このAIn小隊自体はまだ調査中ですが、天童アリスと同じく時間遡行の影響を受けている可能性があります。

    ④黒崎コユキ誘拐事件について
    首謀者が謝罪し、被害者がそれを許し、解決したかのように思えますが、実際には小塗マキは踊らされただけであり、何らかの目的でゲーム開発部と
    メイド服の少女を戦わせたかった、と現在は推測しています。
    これについては現在、ヴェリタスの元部長であり、その黒幕の第一候補たる明星ヒマリと連絡をつけられるよう、各務チヒロに打診しています。

    こんなところでしょう。
    自発的に取れた行動が少なく、成り行き任せになったところが多くあり、今後にどう影響するのかが現在の懸念点です。
    しかしいずれにせよ、ベアトリーチェ対策という点では過去のあの『先生』とは全く異なる方法をとることになでしょうし、そこに至るまでの進め方も大きく異なってくるでしょう。
    些細な影響であれば無視できるmの、と今は考えています。

  • 170二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 23:59:46

    短いですが、本日はここまで

    裏側っぽい話と、ミレニアムに関するレポートでした。
    ネル以外のC&Cが出てないのはどうしようもなかったです。

    コユキのせいです。

  • 171二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 01:04:12

    囧 

  • 172二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 04:43:07

    保囧

  • 173二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 06:48:26

    >>169

    ×AIn小隊

    ◯AIの正体


    誤字は結構多いかもしれませんが大目に見てください

  • 174二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 12:25:55

    昼保守を

  • 175二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:43:17

    ほ囧

  • 176二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 21:59:10

    ほー

  • 177ミレニアムプライス25/10/10(金) 23:54:09

    あれから。
    特に何事もなくミレアニムプライスの発表当日の日がやってきた。

    ここに至っては、私にできることは特になく、たまっていた仕事をこなしつつゲーム開発部やミレニアムの他の部活動の見学等も行った。
    その際の話は別でするとして、特に大きな事件もなく、平和に過ぎ去っていったと言えるだろう。

    勿論ゲーム開発の当事者にとっては非常に忙しい日々だっただろう。
    また、早瀬ユウカは自分の仕事の合間を縫って毎日ゲーム開発部に顔を出していた。
    最初は来るたびに言い訳を考えていたらしいが、その内その言い訳もしなくなったと、黒崎コユキから聞いた。

    あるいは他の学生から贔屓だと言われないのかと思ったが、それは無いようだった。
    「疲れすぎたセミナーの会計が毎日仲のいい後輩に癒されに行っている」
    という強ち間違いでもない噂は耳にしたが、大した問題ではないだろう。

  • 178ミレニアムプライス25/10/10(金) 23:55:45

    また、ゲーム開発部の新メンバーである、天童アリスと黒崎コユキの2人はというと
    ゲーム開発が修羅場でも何か可能な役割を、ということでテストプレイ係とSNS運用の担当を兼任しているようだ。

    全てをゲームに例えるキャラクター性を持つ天童アリスと、それに対しオーバーなリアクションを取る黒崎コユキの相性が嚙み合って、
    ゲームの内容はともかく、徐々に人気を博しているようだ。
    勿論、今回のミレニアムプライスでの結果に大きく貢献するとは限らないのは承知の上で。『今後』のゲーム製作の情報発信もしたいという意向らしい。

  • 179ミレニアムプライス25/10/10(金) 23:56:56

    そして、ミレニアムプライスの受賞作品の発表が始まった。

    「い、いよいよね……」
    当然の顔をして早瀬ユウカもいる。

    「にはっ、何でユウカ先輩が一番緊張してるんですか?」
    「だ、だって……」
    そう指摘する黒崎コユキも、早瀬ユウカがいることに関しては特に何も思うところは無いようだ。

    次々と発表されていく作品の中に、ゲーム開発部のゲームは無い。

    「続きは、CMの後で!」
    「ひどい!!?」
    「お、お、お落ち着きなさい!!?」

    1位発表を焦らす司会に対し、才羽モモイが吠え、早瀬ユウカが止めようとするが動揺でうまくいっていない。
    先ほどまで余裕がありそうに見えた黒崎コユキも口を噤み、モニターを見つめていた。

    その中で、天童アリスだけは落ち着いた様子で何かを考えていた。

  • 180ミレニアムプライス25/10/10(金) 23:58:08

    その中で、天童アリスだけは落ち着いた様子で何かを考えていた。


    CMが流れる中、私は既にゲーム開発部の作品が一位ではないことを確信していた。

    というのも、ミレニアムを視察する中で、それぞれの生徒にミレニアムプライスについて聞きとるなどをして、予め受賞する可能性が高いだろうものをピックアップしていたのだ。

    そして、あくまで個人的な評価だが、その最有力候補である新素材開発部の作品が未だ受賞していなかった。

    故に、十中八九優勝作品はそちらになるだろうと考えていた。しかし、そのまま終わるわけがないという予感も同時にしていた。


    「1位は、新素材開発部部の……」

    「うわあああ!?」


    才羽モモイがモニタの電源を引き抜いた。

    銃は乱射する可能性を感じた早瀬ユウカが没収していたので、モニタに当たる方法がそれしかなかったのだろう。


    「お、終わっちゃった……」

    才羽ミドリも呆然と呟く。


    「駄目だったってことですか? せっかく入ったのにみんなと離れ離れになっちゃうんですか?」

    「ううん、コユキちゃん。終わってないよ。私が量に戻っても、ゲーム開発はできる。」

    「え……でも、ユズ……大丈夫なの>」


    部室内を重苦しい空気が流れる中、天童アリスが一人動き、モニタの電源を入れなおす。



    「……その受賞作品は、ゲーム開発部の「テイルズ・サガ・クロニクル」です」



    再起動したモニタから、奇跡の言葉が飛び込んできた。

  • 181二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 00:00:19

    とても短いですが、ここまでです。

    それと、週末遠出するので、土、日は更新できない可能性が高いです……

  • 182二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 00:21:56

    多分だけどリオとヒマリがマッチポンプセミナー襲撃の代わりにこういう形でアリスを観察しようとしたんだな

  • 183二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 05:35:33

    お気をつけてー

  • 184二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 11:58:19

    パヴァーヌ一章も終わりか。エデンはどうなるんだろ
    もう何か手を打ってそう

  • 185二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 16:14:54

    乙です

  • 186二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 23:38:04

    保守

  • 187二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 06:42:01

    らり保ー

  • 188二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 13:28:34

    保守

  • 189二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:26:29

    そろそろ次だが主が間に合わないなら避難所でも立てるべきか?

  • 190二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 23:01:18

    明日にはそうしたほうがいいかもね

  • 191二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 23:09:26

    このレスは削除されています

  • 192二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 07:11:17

    一応保守を、、、

  • 193二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 13:56:09

    保守一応

  • 194二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:53:20

    保守二応

  • 195書いてる人25/10/13(月) 21:56:42

    予定が長引いて今帰宅中です。
    今日も更新は出来なそうです…

  • 196二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 06:05:10

    次スレ待機

  • 197二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 13:14:36

    保守

  • 198二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 19:47:02
  • 199二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 00:07:29

    待合室で待ってます

  • 200二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 00:08:46

オススメ

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