- 1二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:00:30
- 2二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:01:30
- 3二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:04:13
あらすじ
気付いたら過去に戻っていたうえ、キヴォトスに呼ばれた先生に成り代わってしまっていた黒服。
持てる情報を駆使してアビドスでの仕事を何とかこなしたが、詳しい経緯を知らぬままミレニアムへ。
得意の深読みの当ては外れ、廃墟に行くメンバーに早瀬ユウカが加わってしまった。
アリスは無事開発部の仲間になれるのだろうか… - 4二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:04:29
たておつー
- 5二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:05:04
たておつ
- 6ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:08:19
「監視薄れてるって話じゃなかったお姉ちゃん!?」
「これでも減ってるんだよー!! たぶん」
「あー、やっぱり認めるんじゃなかったわこんなこと!!」
「いまさら言わないでよユウカ!」
才羽モモイの案内で廃墟を慎重に進んでいたが、何らかのセンサーに触れたのか、
次から次へとセキュリティロボが現れ、私たちは逃走しながら進んでいた。
そして、私たちはまるで誘導されるかのようにとある建物へと逃げ込んだ。
いや、恐らくは実際に誘導されていたのだろう。入った後に私はそれに気が付いた。 - 7ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:10:18
「もう、酷い目にあったわ。みんな、怪我はない? 特に先生、大丈夫ですか?」
殿を務めていた早瀬ユウカが最後に室内に飛び込んできて、全員の無事を確認する。
「問題ありません。」
「良くないよー! 何で私がこんな目に合わなきゃいけないの!?」
「まあまあミドリ、落ち着いて。」
双子姉妹が喧嘩を始めるが、それだけ元気だということだろう。問題はないようだ。
その時、機械音声と思われる声が、室内に響いた。
『接近を確認』 - 8ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:11:33
『対象の身元を確認します。早瀬ユウカ、資格がありません。』
「私の名前……?」
突然名前を呼ばれた早瀬ユウカが身構える。
『対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません。』
「私もだ!? 資格って何のこと?」
『対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません。』
「な、何で私たちのことを知ってるの!?」
生徒たちは突然の出来事に混乱している。
そして、私の番が来た。
『対象の身元を確認します。●●●先生、エラー、認証失敗しました。再度実行します。』
「エラー?」
違う反応を示した音声を聞き、生徒たちの視線が私に集まる。
『データベース更新完了。対象の身元を確認します。【先生】。資格を確認しました、入室権限を付与します。』 - 9ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:13:11
一体何が更新されたというのか、私に対し入室の権限が付与された。
機械音声はさらに、同行者である生徒にも資格を付与する。そして、
「下部の扉を開放します。」
その声の直後、床が開いた。
咄嗟にその場を離れようとしたが、それは全く間に合わず、近くで呆然としていた才羽ミドリを抱えるので精一杯だった。
そのまま落下する。
「きゃぁっ!?」
才羽ミドリの悲鳴と乗られた重みによる衝撃が体に伝わるが、幸いにして、落下の衝撃をそこまで強くなかった。クッション性の高い床になっていたようだ。設計者の悪趣味な仕掛けだろう。
「せ、先生。大丈夫ですか!?」
「……ええ、落下することが前提になっている作りのようだったので。」
「あ、本当だ……。あ、ごめんなさい、どきますね。」
才羽ミドリが降りたので、立ちあがる。
先ほどの自分の行動については後で考えることとしよう。 - 10ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:15:08
才羽モモイは早瀬ユウカに庇われたようだ。お礼を言っている姿が見える。
しかし、私はそれよりも、落ちた部屋の中央付近にある存在が目に留まった。
「え!? 女の子!?」
傍らの少女も気づいたようだ。
そしてその声に気付いた、才羽モモイと早瀬ユウカの二人も、部屋の中心にある存在に気付く。
AL-1S、「名もなき神々の王女」の素体がそこで眠るように起動を待っていた。
「綺麗な子ね……、じゃない。この子、眠ってる?」
「というか、息してないような。何か、人形みたいというか……」
「AL-IS……アリスって読むのかな。」
天童アリスの由来をここで知るとは思わなかったが、ただの誤読が元だったらしい。
「よく見なさいモモイ、AL-1Sよ。まるで商品の型番みたいだけど」
「それより、着替えさせた方が良いんじゃない? 先生もいるし。」 - 11ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:16:36
「状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します。」
着替えが終わるまでこちらを見るなという視線を感じたので終わるまで待ち、
その後ようやく呼ばれたため近づいていくと、AL-1Sから警報音のようなものが鳴り、今の言葉を発した。
皆が呆気に取られていると、さらに機械の少女は続ける。
「状況把握、難航。同期データの大部分が破損しています。しかし、一部データは残っています。モモイ、説明をお願いします。」
「私のこと、知ってるの?」
「さっきここに入る前も名前知られてたし、お姉ちゃんのこと知っててもおかしくないけど……私のことは知ってる?」
「肯定。才羽ミドリ、そして、早瀬ユウカ。しかし、理解しているのは名称のみです。説明を求めます。」
名前を知っている。それだけならそこまで不思議な点はない。しかし、同期データとは何を意味するのか。
私以外にその意味が分かるものはこの場にいないだろう。
「せ、説明が欲しいのはこっちなんだけど!? 何で私たちの名前知っているの?」
「この場所、なんなの?はっきり言って異常だわ。」
才羽モモイと早瀬ユウカが矢継ぎ早に質問するが今のAL-1Sは殆どのデータを失っており、初期状態に近いのだろう。
要領を得ない回答が続く中、才羽モモイが核心を突く。
「じゃあ、あなたは何者なの?」
「本機の自我、記憶、目的はほぼすべて消失状態であることを確認。しかし、残った情報があります。」 - 12ゲーム開発部の天童アリス25/09/27(土) 00:18:09
「私の名前は天童アリス。ゲーム開発部の天童アリスです。」
AL-1Sであったはずの彼女は、自らをそう名乗った。 - 13二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 00:20:39
短めですが、本日は以上です。
3スレ目もよろしくお願いします。 - 14二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 01:02:56
アリスに記憶が残ってる...?
- 15二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 07:28:48
ノアも変だったしホシノも別の要因があったとはいえ、記憶の残滓みたいなのがあるのかな?
- 16二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 08:22:36
やはりループして混線してる…?
- 17二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 08:26:58
まさかここでも影響が出てるのか…
- 18二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 10:01:23
お疲れ様です。
- 19二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 12:32:24
素晴らしい 全く想定していなかった事態だ
黒服よ これは面白く成るぞ - 20二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 13:08:31
マジか 既に面白かったが 面白くなってきたな こうなると他の人工知能系も1部記憶が残ってるんだろうか?
- 21二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 19:27:57
本当に降って湧いたような概念からほぼ毎日これだけの文章が書ける筆者は一体何者なんだ?文学に崇高を見出したゲマトリアか?
- 22新たな仲間25/09/27(土) 23:11:58
「自分でゲーム開発部の部員って名乗ってるんだからゲーム開発部の部員ってことでいいじゃん!」
「肯定。私はゲーム開発部の部員。」
ゲーム開発部として自己紹介した天童アリスに諸手を上げて部員としての加入を主張する才羽モモイに対し、改めて自分の立場を機械的に肯定するAL-1S。
勿論、満場一致という訳ではない。
「そ、そうはいってもこの子、ミレニアムの生徒かどうかも定かじゃないじゃない。あまりにも出来すぎているというか……この子に問題があるわけじゃないけど、怪しいわ」
セミナー、生徒会として慎重な立場をとる早瀬ユウカは当然として。
「わ、私もちょっと怖いよお姉ちゃん。こっちのこと一方的に知ってて、それにゲーム開発部だなんて言って……。」
才羽ミドリも不安が先行しているようだ。
当の天童アリス本人は無表情でこちらの様子を見ている。
私が以前の時間軸で目撃したときは通常の人間の少女のような振る舞いをしていたはずだが、今の彼女はかなり機械的だ。
先ほどはゲーム開発について尋ねると。「不明。類推は可能。ゲームとは遊戯のこと。ゲーム開発部はゲームを開発する部活動のことを指すと思われます。」
と古臭いAIのような返事が返ってきた。シッテムの箱のシステムAIの方がまだマシなレベルだ。 - 23新たな仲間25/09/27(土) 23:13:30
「でも、このままだと人数が足りなくて廃部になっちゃうよ!? ユズの居場所が無くなっちゃう……」
「う……」
「モモイ……」
才羽モモイの言葉に、反対寄りの意見だった二人もトーンダウンする。
しかし、ここで話していても仕方ない。
一旦打ち切るとしよう。
「どちらにせよアリスさんをこのままにしておくわけにはいきません。一度ミレニアムの校舎へ戻りませんか?」
私の提案に生徒たちは頷き、天童アリスを連れてゲーム開発部の部室へ戻ることになった。 - 24新たな仲間25/09/27(土) 23:15:03
「私は一度生徒名簿のチェックと校則や事例の確認をするから、セミナーに戻るわ。先生、申し訳ないけどアリスちゃんと一緒にゲーム開発部にいてくれる?」
部室へと戻った後、何かあったらすぐに呼ぶようにと言い残し、早瀬ユウカはセミナーに戻る。
天童アリスは室内のもの全てに興味を感じているようで、様々なものを触ったり、口に含もうとしたりして、才羽姉妹をハラハラさせる。
そのうちに彼女は、一つのものに目を止める。
「あ、その雑誌……」
「お、良いものに目をつけるねー、アリス! その中に、私たちの作ったゲームも載ってるんだよ!」
「酷評されてるけどね……あ、そうだ、アリスちゃんこれやる? ただ待ってるっていうのも退屈でしょ? 会話しながらゲームすると話し方とかの勉強になるかもだし」
テイルズ・サガ・クロニクル、というタイトルのゲームのページを開きながら、二人がゲームプレイを促す。
「肯定、アリスはゲームをします」
天童アリスは即答した。
「よしきた! じゃあ準備するからちょっと待ってね!」
才羽モモイがゲームを起動し、プレイが開始された。 - 25新たな仲間25/09/27(土) 23:16:06
シナリオライターが酩酊状態で書いたとしか思えない意味不明なストーリーが流れ、チュートリアルが始まる。
私はこういったデジタルゲームを知識としては知っているが、実際にプレイした経験はない。
天童アリスのプレイを興味深く見ていたが、チュートリアルの指示に従った瞬間ゲームオーバーになった様子を見て、これが普通のゲームではないだろうことをすぐに察した。
一方、プレイしていた当の本人、ゲームオーバーの画面を呆然としたように眺めていたが、よく見ると目から涙が流れている。
「あ、アリス!? ごめん、泣くほど嫌だった!?」
「やっぱりチュートリアル位はちゃんと作るべきだったんだって! お姉ちゃん」
慌てて才羽姉妹がなだめにかかるが、天童アリスは首を振り
「落涙の原因は不明。悪影響は無いとみられます。ゲームを続けます。」
そう言って改めてチュートリアルを進め始めた。 - 26新たな仲間25/09/27(土) 23:17:25
あれは確かにチュートリアルであった、と傍から見ていても理解できるほどの理不尽な展開の連続に天童アリスはたびたび疑問を呈しながらも、
ゲームを進めていった。
驚くべき事に、ゲームやそれにかかわる会話を通じて、彼女の会話能力は飛躍的に成長していき、また表情も豊かになっていった。個人的にはそちらの方への興味が強かった。
「こ、ろ、し、て……」
そして、およそ3時間が経過したころ、ついに天童アリスがテイルズ・サガ・クロニクルをクリアした。
ゲームには多少興味がわいたが、こう言ったゲームばかりであれば私が実際にやることは無いだろう。
才羽姉妹が天童アリスにゲームについて感想を聞いている。
質問を受け、咄嗟に言葉が見つからず、あたかも普通の少女が自分の知り得る言葉から感想を絞り出そうとしているような表情の変遷を経て
「面白さは、確実に存在。プレイを続けるうち、別の世界を探しているような……そして」
天童アリスの眼からはまた涙が浮かんでいる。今度はだれも彼女に話しかけず、続きを待つ。
「私は確かに、ゲーム開発部の天童アリスであると実感しました」
その場の誰にも、私や、恐らく天童アリス自身にもその言葉の真の意味を理解することはできなかった。
しかし、その言葉と涙は、誰にもその真実性を疑うことは出来なかった。 - 27新たな仲間25/09/27(土) 23:18:28
がたんと、ロッカーが唐突に開く音がする。
突然の物音に才羽姉妹が飛び上がり、天童アリスが困惑の表情を浮かべる。
ロッカーの中からは一人の少女が出てきた。
「ユズ!? いつからロッカーにいたの!?」
「みんなとユウカが廃墟から戻ってきた辺りから……」
どうやら、この少女が花岡ユズ、このゲーム開発部の部長だという生徒らしい。
「あ……ありがとう、私たちのゲームを面白いと言ってくれて、泣いてくれて。そういう言葉が、聞きたかったの……」
感極まった表情で、天童アリスに花岡ユズはそう話す
「ユウカが返ってきた結果がどうであっても、アリスちゃんはもうゲーム開発部の仲間だよ」
その言葉に、天童アリスは笑顔で頷いていた。
「あ……、ご、ごめんなさい先生。自己紹介が遅れました。花岡ユズです。一応ゲーム開発部の部長です」
花岡ユズはそういって、こちらに頭を下げる。少し怯えた表情をしているが、仕方ないだろう。
「ええ、よろしくお願いします。アリスさんの感想の後だと薄っぺらく聞こえるかもしれませんが、私もゲームというものに興味を持ちましたよ」
私の返事に、少女は赤面して再度頭を下げる。 - 28新たな仲間25/09/27(土) 23:21:53
花岡ユズとの挨拶を終えたとき、タイミングよく部室にノックの音が響いた。
「あ! ユウカかな? どうぞー」
それに対し、モモイが代表して入室を促す。
「遅くなってごめんなさい! あら、ユズも戻ってきていたのね。ちょうど良かったわ」
扉を開き、早瀬ユウカが入室してくる。
「ユウカ! よくお戻りになった。丁度今、アリスはゲーム開発部の真の仲間になったところです!」
「え? 何? ……っていうか、あなたすごく会話が上達していない……? ってそれはまた後でよね。」
彼女は天童アリスの言語レベルの上昇に驚きつつも、本題を進めるべく後ろを振り向く。
「コユキ、そんなところで覗いていないで、あなたも入ってきなさい」
結果を報告に来たはずの彼女は、何故か黒崎コユキを伴っていた。 - 29二次元好きの匿名さん25/09/27(土) 23:27:02
という訳でここまで
黒服先生の深読みによりユウカを仲間に引き入れたことで
状況が結構変わってしまっているようです。
アリスは……なんなんですかね?
長編SSは初めて書きます。
同じように気に入った概念で短いやつとか会話形式のやつとか書いたことはあります。
- 30二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 00:31:23
「所属」ないしは「身分」「身元」のデータは残ったんか。
いや、「王女」と置き換わっているのか...? - 31二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 07:18:55
外側に記憶を雑に張り付けている感じでしょうか
思い出させていると言うよりも
本家の映像記録をどかどかと流し込んでいるような
こうして観察している間も 常に相手の領域ど真ん中なのが恐ろしい - 32二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 12:55:18
どんなの書いてたか気になるな
- 33二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 20:41:16
ほしゅしゅのしゅー
- 34二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 20:43:52
すごいなぁ はじめてでこんな綺麗なssかけるんだもの
いろんなスレ見て来たけれど
やっぱり花を添えてくれるのは作家さんたちだよね
なんだか なんにも出来ない自分が虚しくなってきちゃった
あたしも皆みたいになりたかったな - 35ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:41:02
「同じ1年生だから知ってるかしら? 一応紹介するわね。この子は黒崎コユキ。訳あってついてきてもらったの」
早瀬ユウカの紹介に、入室してきた黒崎コユキが所在なさげに頭を下げる。
「それじゃ、本題に入るわね。あれから、生徒名簿を調べたの。ここ何年かの卒業生、退学者も含めてね。といってもデータベースを調べるだけだから大した手間じゃなかったわ」
話し始めた彼女が、天童アリスの方を見る。見られた方は何の話かあまり把握していないようで、首を傾げている。
「予想通りだったけど、天童アリスという名前の人物はいなかったわ。一応天童と、アリスの双方で調べても見たけど、この子に一致している生徒はいなかった。」
「やっぱり、そうなんだ。」
才羽ミドリが頷く。あんなところに生徒が眠ったまま裸で放置されていたとしたら、その方が問題だ。
「ええ、それでアリスちゃんの処遇についてなんだけど……保留ということになるわ。」
「保留!?」
「ほ、保留って……どうなるの?」
才羽モモイが叫び、花岡ユズが聞き返す。 - 36ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:44:43
「少なくとも、当分はゲストとしてミレニアムで保護するわ。責任者は私ということになるけど、ゲーム開発部のみんなでサポートしてあげてくれる? その間はもちろんゲーム開発部として活動してもらう事は問題ないわ」
「う、うん。それは良いけど、部員の数にはカウントできるの?」
さらに聞き返された早瀬ユウカは、頷きながら話を続ける。
「そこなのよ。部員として認めるには、ミレニアムの生徒でなければならない、という前提があるので、それにはまずアリスちゃんが正式にウチの生徒になってもらう必要があるんだけど……正規の方法でなるにはやっぱり来年入学してもらうのが一番簡単なのよ。」
それは、約一年後、という話だ。天童アリス以外の表情が少し暗くなる。
「あ、そんな困った顔しないでよ。最後まで聞いて。一応特例があるの。特別に必要性が認められた場合、生徒会長含む3名以上の推薦をもとに、ミレニアムの部長会議で承認が得られれば時期を問わず入学を認められるというルールがあるの。
これはミレニアムの理念に基づいて、顕著な才能を持つ人物の確保を可能とするための特例措置ね。学校間の転校とはまた別で、今現在学籍のない人物であっても問題ないことは確認済みよ。」
調べてきた資料を見せながら、そう言い切る。 - 37ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:48:11
「じゃあ、その制度を使えばすぐ入学できるってこと?」
「理論上はね。リオ会長が不在なので今すぐは無理だし、そもそもこれを通すにも顕著な実績が必要なの。どういうことか分かる?」
早瀬ユウカの問いに、質問を質問で返された才羽モモイがうーん、と今までの内容を整理しながら話しはじめる。
「えーと、ゲーム開発部を残すにはミレニアムプライスでの実績が必要で、実績があればアリスも部員になることができる? あれ? 結局今すぐ必要な部員の人数が足りてないじゃん!」
「そうなるわね。」
「『そうなるわね』じゃないよー!? どうすんのさ!?」
本来どうするのかを決めるのはゲーム開発部の方であり、セミナーである早瀬ユウカにはそこまでの責任は無いだろうが、恐らくここに黒崎コユキが来ていることがその解決策なのだろう。
彼女が入室してきた段階で、その可能性を考えてはいた。
「それなんだけど、うん、それが3つ目の話なの。時間がかかったのはこの子とお話していたのもあったの。ノアも含めて、3人でね。ちょっと誤解されちゃったりして、大変だったけど」
そう言って、彼女は入室して挨拶した以来であった少女の方に笑いかける。 - 38ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:50:52
「え……まさか?」
早瀬ユウカは微笑んで、黒崎コユキの背中を押す。緊張した面持ちの少女が一歩前に出て、話し始める。
「えと、く、黒崎コユキです! ゲームが好きです! 特に好きなのは運要素が強いやつとかアナログゲームなんですけど、テイルズ・サガ・クロニクルもやりました! ちょっとくs……ヤバいゲームだったですけど、作ってる人たちはゲーム好きなんだなって興味がありました! 」
ヤバいゲームという言葉に一瞬花岡ユズの体が震えるが、その後に続いた言葉を聞いて、現行ゲーム開発部の3人が頷きあう。同時に3人の口が開きかけ
「ぱんぱかぱーん! コユキが仲間になりました! ということですか?」
黙って様子を見ていた天童アリスに、その座を奪われていた。
「合ってるよアリス! よろしくね、コユキ!」
「アナログゲーム好きなんだ。一応デジタルゲーム開発が目的の部活だけど、ボドゲもたくさんあるよ!」
「わ、私たちに興味を持ってくれて、ありがとう。とっても嬉しい」
一瞬呆けていた3人も、黒崎コユキに近づいて歓迎の言葉を言っている。 - 39ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:52:50
「良いのですか、コユキさんは謹慎中の身だったはずですが。」
盛り上がっているゲーム開発部を見て、安堵の表情を浮かべていた早瀬ユウカに話を振る。
「今日の脱走が無ければそろそろ解ける頃でしたし、開発部の子たちと一緒に行動することを条件として、反省部屋からは出すことにしました。外出とかは当分許可性にする必要があるでしょうけど」
「成程」
そもそも、今日もロックを解除して脱走されるところだった以上、反省部屋に入れていても更生が促せるとは思えない。
環境を変えるという試みは効果をもたらす可能性がある。
「もともと、コユキはその能力が認められてセミナーに入ってもらったんですけど、本人的にはつまらいのかな、って思っていたんです。それでイタズラをするんだと思うんですけど、ちょっと能力が高すぎて大きな問題になることがあったんです。」
次にやるゲームを物色したり、好きなゲームについて話したりしている5人を残し、早瀬ユウカと外に出る。
本人のいるところではやりにくい話だろう。 - 40ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:54:15
「ゲームや運試しが好きっていうのは、知っていたんです。前にあの子たちのゲームをやった感想が、私とは少し違ったのも。さっきも言ったように、会長の不在はセミナーの責任もあるわけで、何とかしてあげたいって思って……思いついたんです」
「コユキさんを紹介することをですか」
生徒会長の不在に関しては助けるための言い訳に過ぎないだろう。
結局、蟠りが解けて素直に頼ってくれるようになった才羽モモイやゲーム開発部に、協力してあげたかったというのが本音だろう。
「はい。それで、コユキのところに行って話をしたんですけど……。最初、私に見限られたんだと思って泣かれてしまったんです。
ノアにも参加してもらって、コユキ自身がやりたいのであれば、という提案であること。悪いことをしなければセミナーに戻ってくることもいずれ可能になること。
遊びに来ることはいつでも構わないって伝えたんです。そのほかにもいろんな話をして、最終的に入部してみたいってあの子が言ったんです。」
なので、無理に入らせたとかじゃないので誤解しないでください、と早瀬ユウカは念を押すように言った。
勿論、彼女の子の性格では、そのような無理ができるわけがないことは承知していたが。 - 41ゲーム開発部の黒崎コユキ25/09/28(日) 21:55:36
そして、室内に戻り、その日はもう遅いので一旦解散ということになった。
明日は天童アリスの武器や身の回りの物をそろえたりするとのことで、私も再度来ることになった。
後は、ミレニアムプライスで結果を残すことだ。一見順調そうに進んでいるが、私の胸中には疑問が浮かんでいた。
「天童アリスのミレニアムへの留学が保留になる」「黒崎コユキがゲーム開発部の一員になる。」
天童アリスがゲーム開発部だと主張したのは何らかの影響によるものと考えられるが、
しかしこの2つについては私の考える限りでは、様々な要因が絡み、自然に起こったことだ。
それゆえに、私は自分の歩いている道が正しい道ではない可能性を感じている。
だが、今のところ、それを知る方法は無い。
まずは目の前のことに集中するべきだろう。そうして、私はその疑問については棚に上げて置くことにした。 - 42二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 21:58:27
本日はここまで。
黒服先生はユウカを連れてきたことくらいしかしてないですが、
結構道がそれてしまいましたね。 - 43二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 23:46:05
割とヤバそうなフラグいくつか潰してる気がするけど大丈夫かな…
- 44二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 07:17:36
コユキ参入とはな
- 45二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 09:42:45
コユキが居たら鏡もいらないんじゃ…… いやユウカに頼めば貸してくれそう…
- 46二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 10:59:23
keyはどうなったのだろうか。
- 47二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 13:02:13
ここから大きく変わってくるわけですか…
うむ楽しみ。 - 48二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 21:47:55
こうも序盤からコユキがかかわってくるとなると、だいぶ本編とは乖離してきそう
- 49美甘ネルとの遭遇25/09/30(火) 00:12:27
翌日
早瀬ユウカはセミナーの仕事をどうしてもやらなくてはいけないということで午前中は付き合えないという話だった。
護衛として誰か別の者を用意しようかという話は丁重に断った。彼女が思いのほか護衛として優秀だっただけで、一緒に来てもらっていたのはその方が都合が良いと予測していたからだ。
予定時刻になっても待ち合わせ場所である部室棟の前に誰も現れなかったので、ゲーム開発部の部室へと足を運ぶ。
ノックをしても返事が無かったため、ドアを開くとなかなかの有様だった。
一心不乱にゲームをしている天童アリスと、横たわる3人の少女。
恐らくあの後ずっと遊んでいたのだろう。
「あ! 急に先生が現れました! 何用ですか?」
ゲームの影響か、私の入室に気付いた天童アリスが出迎えてくれる。 - 50美甘ネルとの遭遇25/09/30(火) 00:14:29
「何用ですか、ではありません。時間になっても来ないからこちらから来ただけです。まさか、ずっとゲームをしていたのですか?」
「あ……先生か。た、多分ずっとやっていたのはアリスちゃんだけで、私はさっき起きました。」
またしてもロッカーから出てきた花岡ユズだけは起きていたらしい。恐らくノックの音に驚いてロッカーに隠れていたのだろう。
しかし、彼女も今日の予定では留守番するという話だったので、彼女が起きていても仕方ない。
「待ち合わせの時間だったんですよね。ごめんなさい、気づかなくて。みんなを起こして、それと、準備もあると思うから、2、30分くらい外で待っていてもらえますか?」
「私は構いませんよ。折角ですしこの辺りを見学させてもらいますよ。」
「ほ、本当にすみません……」
あまり彼女自身には責任がない花岡ユズに頭を下げられ、一旦部室を後にする。
実際のところ、同伴者がいない状態で落ち着いて見学するのも悪くないだろう。
ミレニアムに関しては、以前から興味はあったのだ。 - 51美甘ネルとの遭遇25/09/30(火) 00:16:05
「おい、お前」
周辺を散策していると、突然声をかけられた。この学園にはあまり似つかわしくない、柄の悪い言い方だ。
振り向くと、着崩したメイド服の上にスカジャンという、奇抜なファッションをした少女がいた。
この生徒は知っている。美甘ネル。ミレニアムの最高戦力の一人だ。
「あんま見ねぇ顔だな? 迷ってんなら案内してやろうか。ってかお前でけぇな……」
大小以前に見た目に気になるところは無いのだろうか。恐らく大きさにコンプレックスがあって人を大小で区別してしまう癖があるのだろう。
「いえ、案内は遠慮しておきます。人を待っているだけですので。」
「待ち合わせだぁ? 誰かの客か? 入校許可証出してみろよ」
恐喝としか思えない雰囲気で詰め寄られる。堅気の者では出せない迫力がある。素直に許可証を出す。早瀬ユウカに渡されたもので、彼女の名前が入っている。
「早瀬ユウカぁ? セミナーの会計だろ? ああ、確かカリンが何か言ってたな、ユウカの代わりに先生の護衛がどうとか……先生?」
「はい、恐らくその話題の人物は私のことでしょうね。今待ち合わせしているのはゲーム開発部の生徒たちですが。」
こちらを問い詰めていた美甘ネルの顔色が変わる。 - 52美甘ネルとの遭遇25/09/30(火) 00:17:19
「わ、悪い、例の先生だったのか。てっきり不審者か何かかと」
「大丈夫ですよ。よくあることです。あなたは保安部の方ですか?」
「いや、別にそういう訳じゃない。 保安部がこんな格好してたら変だろ?」
誰がそんな恰好をしていても変だと思うが、私は曖昧にうなずいた。
「ゲーム開発部を待ってるんだっけ? 何かあまり良いうわさは聞かねえが……そもそも先生は何でミレニアムに来たのか聞いても良いか?」
どうやら彼女は私に興味を示したようだ。単に暇だったからかもしれないが。
私としても美甘ネルには興味があ。話に乗ることにした。
「成程な。それで人数の壁は越えられたけど、今度は成果を出さなきゃいけないと。あたし好みのアツい展開じゃねえか」
待ち合わせ場所に戻り名がら、天童アリスについての話は最小限に抑え概要を話すと、美甘ネルの琴線に触れたらしく彼女は上機嫌になった。
「そうですか? 派手なことはあまりないと思いますが」
「今派手な戦闘が好きそうって偏見で話しただろ? まあ否定はしないけどさ。でも派手な勝利だけが良い勝利って訳じゃないからな。困難に立ち向かって何かをつかみ取るって展開、熱くなってくるだろ?」
「そういうものですか」
先ほど初めて会話したときはミレニアムよりブラックマーケットが似合いそうな柄の悪さだったが、話していくうちに、彼女は視野が広く多角的に物事を考えられる人物であることが分かった。
「今、何か失礼なこと考えたか?」
そして察しも良い。 - 53美甘ネルとの遭遇25/09/30(火) 00:18:32
「うわー、先生がメイドさんをナンパしてる!?」
「にはっ、先生意外と手が早いですねえ」
「ええ!? っていうかあの人ってメイド部の部長さんじゃない!?」
「メイドも仲間になりますか?」
待ち合わせ場所で美甘ネルと話していると、聞きなじみのある声が聞こえてきた。」
時刻は待ち合わせ時間からおよそ30分。花岡ユズはどうにか上手くやったらしい。
「お、待ち人が来たみたいだな。じゃあな先生、ゲーム開発部の連中にも応援してるって言っといてくれ。」
そう言い残し、美甘ネルは合流前にその場を去っていった。
「遅れてごめんなさい先生! 皆して寝坊しちゃった!」
「おはようございます、皆さん。寝坊したのは知ってますよ。そう思って見に行きましたから」
謝ることを覚えた才羽モモイは、去っていった人物のことが気になる様子ではありながらも、すぐに謝ってきた。
「既に部長のユズさんから謝罪をいただいているので大丈夫ですよ。次から気を付けてください。朝霞用事があるのに徹夜でゲームはよくありませんよ」
「はーい」
子供らしい全く響いていなさそうな返事だ。
何はともあれ、全員揃ったので、私たちは移動を開始した。 - 54二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 00:22:16
本日はここまで
何となくお察しいただいているかもしれませんがユウカ推しです。