【ホラー注意】俺たちはまた、知らない場所に迷い込む

  • 1スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 20:38:20

    閑古鳥が鳴いている
    月は雲に隠れている

    真夜中の小学校は昼間の喧騒が一切なくて
    シンと静まり返っている

    窓に何かが映った

    ただ、それでも、逃げることは出来ないから

    *作品:ブルーロック
    *登場人物:潔世一、黒名蘭世、士道龍聖、糸師冴

  • 2スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 20:44:18

    このスレは、ブルーロックの登場人物による探索型戦闘ホラーSSです

    舞台は異界化した“小学校”
    気がついた時には、彼らは学校の目の前に立っていました

    ※プレイヤーの選択(安価)や運命(ダイス)によって、ストーリーの進行・視点・結末が大きく変化します
    ※選択肢次第で“ロスト”“発狂”“絆”に分岐します
    ※精神的苦痛(SAN値)管理あり
    ※肉体的苦痛(怪我値)管理あり
    ※取り返しのつかない選択も……あるかもしれません

    *SAN値:0(発狂)/1~5(精神異常中)/6~10(精神異常小)
    *怪我値:0(ロスト)/5~35(重傷)/40~70(中傷)/75~95(軽傷)

  • 3二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 20:45:57

    このレスは削除されています

  • 4スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 20:47:53
  • 5二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 20:49:17

    おかえりスレ主ー!!
    体調回復してよかった!

  • 6スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 20:52:31

    ■キャラヘイトを目的とするものではありません
    ■キャラsage、腐発言、アンチコメはお控えください
    ■荒らしはスルーします
    ■基本的にゆっくり進行(社畜なので平日は特に)ですのでご容赦ください
    ■感想、質問、イラスト等頂けるとスレ主が大変喜びます
    ■広域ホスト規制に巻き込まれがちです。保守して頂けると幸いです

    ※ブランクのせいで更新とっても遅いです、お許しください

  • 7スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 20:58:19

    【登場人物紹介】

    潔 世一(いさぎ よいち)
    初期SAN値:18/初期怪我値:100(無傷)

    熱意と直感で動くエゴイスト。感情に振り回されがちだが、仲間のことは決して見捨てない。よく喋ってよく叫ぶ、ホラーには欠かせない存在。そろそろホラーに慣れてきたと思っていたが、全然そんなことはなかった。

    「13:00遊園地/廃病院ホラー」クリア経験者。
    「廃病院IF」にも登場。
    精神に“ある記憶”が刻まれている。

    ■固有能力
    【空間の支配者】戦闘時、状況を冷静に見極め、自分と味方全員の回避行動を自動成功に変換する(1回限り)。
    【的確な励まし】中傷時、励ましにより味方の異常状態を無効化する(味方2名まで有効)。


    黒名 蘭世(くろな らんぜ)
    初期SAN値:15/初期怪我値:100(無傷)

    淡々とした口調でも、その言葉には確固たる意思が宿る。叫びはお手の物、よく潔たちの後ろに隠れながら周囲を観察している。死ぬほど怖いけど、全員無事で帰るためになんとか頑張る健気な最年少。

    ■固有能力
    【ポカリの写真】大好きなポカリの写真を見せることで、自分と味方全員のSAN値をランダムで回復できる(1回限り)。
    【惑星の逆行】“見かけの動き”により敵を混乱させ、攻撃失敗者全員のダイスを振り直すことができる(1回限り)。

  • 8スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 21:06:10

    士道 龍聖(しどう りゅうせい)
    初期SAN値:20/初期怪我値:100(無傷)

    爆発をこよなく愛するロマンチスト。暴走しがちだが、今回はストッパーがいるため集団行動がギリ成立する。怖さより、自分の予想を裏切る“爆発”があるかが重要。魅せてくれるものを求めて、校舎を元気に駆け回る。

    ■固有能力
    【怪我の功名】中傷・重傷時、行動制限等異常状態が付与されない。成功率と引き換えにクリティカル率が大幅に上昇するが、1探索・1戦闘ごとに、怪我値が-5減る(怪我値に応じて常時発動)。
    【悪魔の囁き】戦闘時、挑発により敵の攻撃が全て自分に集中する。よって、味方の回避行動が全て自動成功になる(1回戦闘限り)。


    糸師 冴(いとし さえ)
    初期SAN値:24/初期怪我値:100(無傷)

    冷静かつ天然、日本の至宝と呼ばれる実力者。いい加減この手のことには慣れてきたため、欠伸をする余裕すら見せる。驚くようなことがあっても微動だにしない。学校に行くのが久しぶりなので、怖さより懐かしさの方が勝っている。

    「13:00遊園地ホラー」「廃病院IF」クリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。
    精神に“ある記憶”が刻まれている。

    ■固有能力
    【最適の判断】アイテム使用時、アイテムの効果をランダムで上昇させる(自分と味方全員に1回限り)。
    【冷酷な吹雪】戦闘時、敵の行動を止めることが出来る。その後、敵の攻撃成功率が大幅に減少する(行動停止・成功率減少は2ターンまで有効・1ターンずつ戦闘で分けることも可能)。

  • 9二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 21:06:23

    このスレ主さんのSSめっちゃ好きだから楽しみ!

  • 10スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 21:12:14

    >>5

    ご無沙汰しております!なんとか回復しました!


    >>9

    恐縮ですありがとうございます!

    とってものんびり更新になりますが良ければお付き合い下さいませ

  • 11スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 21:22:11

    ───気がつくと、夜の校舎の前に立っていた。

    どこからどうやって来たのかは分からない。ただ、次の瞬間にはこの場所にいた。

    木造の校舎は闇に飲まれ、窓はまるで誰かが覗いているかのように黒く蠢いている。

    校舎の時計の針は、丑三つ時を指していた。
    静まり返った夜気の中で、不自然に閑古鳥の鳴き声が響く。
    昼間なら子どもたちの声で満ちているはずの場所が、まるで廃墟のように不気味だった。

    潔「……っ、まただ」

    最初に声をあげたのは潔世一。
    眉間に皺を寄せ、辺りを見渡しながら唇を噛む。

    潔「何回目だっけ、これ……」

    隣で欠伸を噛み殺すように小さく息を吐いたのは、糸師冴。
    まるで大したことでもないように淡々と言う。

    冴「三回目だ。いい加減慣れろ」

    その言葉に、黒名蘭世はビクリと肩を揺らした。
    ジャージの裾を握りしめ、怯えた目で木造校舎を見上げる。

    黒名「こ、怖い、怖い……。帰りたい……」

    一方で、士道龍聖は口角を大きく吊り上げ、待ちきれないように手を打った。

    士道「マジかよ!夜の学校とか最高じゃん!なんか爆発しそうな匂いがするぜ!!!」

  • 12スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 21:44:28

    四人の視線が、軋む校舎へと集まる。

    この先に何が待つのかは分からない。
    だが───ここから逃げられないことだけは、全員が知っていた。

    潔「とりあえず何が起こるか分からないし。はぐれないように、固まって行動しよう」

    潔が声を張る。
    自分に言い聞かせるように、それでも仲間を気遣う響きだった。

    士道「は?んなのつまんねーだろ」

    士道が大きく声を振り払うように叫んだ。

    士道「校舎の裏とか屋上とか!そういうの一人で突っ込んでこそ面白ぇんじゃねーか!」

    黒名は慌てて潔の背中に隠れ、震えながら言葉を零す。

    黒名「……いやだ、そんなの。置いてかれたら絶対、何かに……」

    冴「悪魔くん」

    短く名前を呼んだのは冴だった。
    暗闇の中に映るその横顔は、いつもと変わらぬ落ち着きを帯びている。

    冴「ここは普通じゃねえ。異界化してるのは確かだ。暴れたいなら、中で存分に出来んだろ」

    士道はしばらく考え込んでいたが、やがて大きく鼻を鳴らした。

    士道「……まあ、冴ちゃんが言うなら仕方ねぇな」

  • 13スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 21:49:46

    その口元には、すでに次の展開を待ちわびる笑みが浮かんでいた。

    潔は小さく息をつき、仲間を見回す。

    潔「よし……それじゃあ、まずは荷物の確認だ」

    四人がそれぞれ肩から掛けたカバンを開く。
    黒名と士道のサッカーバッグは───空だった。

    士道「……え、マジで?俺のカバン、スッカラカンなんだけど」

    黒名「俺のも……」

    黒名が半泣きになりながら呟く。

    一方、潔と冴のカバンには見覚えのあるものが収まっていた。
    いつかの廃病院で必死に手に入れたアイテムたちだ。

    潔が驚きに目を見開く。

    潔「おお……!ちゃんと残ってる!これなら───」

    そして冴のカバンを覗き込んだ瞬間、潔の声が裏返った。

    潔「えっ!?冴のアイテム多くね!?なんでそんなに温存してんだよ!!!」

    冴は涼しい顔でカバンを閉じる。

    冴「無駄に使うより、残しておいた方がいいだろ。温存しといた甲斐があったな」

  • 14スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 22:16:42

    黒名「………頼もしすぎるな」

    黒名が少しだけ安堵の笑みを浮かべ、潔も苦笑しながら頷いた。

    確認を終えた四人は、校舎の正面へと歩を進めた。
    木造の引き戸は、長年の風雨に晒されて色あせている。カラカラと風が吹き抜けるたび、ガラス窓が小さく震えた。

    士道が躊躇なく手をかける。

    士道「んじゃ、開けんぞー」

    ギィィィ……
    玄関の戸が軋む音を立てて開いた。

    木造校舎の入口に並んだ下駄箱は、扉がひとつもなく、中の空洞がそのまま闇を晒している。
    使われなくなって久しい木材は黒ずみ、近づくだけで湿った臭気が鼻についた。
    棚板は所々割れ、奥の闇は覗き込む者を拒むように沈んでいる。

    空洞のひとつひとつが、まるで口を開けて待つ棺桶のようだ。
    息をするだけで胸に鉛が溜まるような重苦しさが広がり、誰もが言葉を発するのをためらった。

    潔「……なんかさ」

    潔が先に口を開く。

    潔「人の靴が入ってるんじゃなくて、人そのものが入ってそうで……やめろって自分で思うんだけど、どうしてもそう見えちゃうんだよな」

    黒名は両腕を抱え込んで、肩を震わせている。

    黒名「怖い、怖い……中から出てきそう……絶対出てくる……」

  • 15スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 22:35:20

    士道「ははっ、いいじゃん!」

    士道がにやりと笑った。
    目は真っ暗な棚を獲物みたいに追っている。

    士道「もし何か出てきたら面白ぇって!夜の学校からオバケとか、最高の舞台じゃんな!」

    冴「黙れ、バカ」

    冴の低い声が響く。
    片手をポケットに突っ込んだまま、冷めた視線で士道を制した。

    冴「こういうのは雰囲気に呑まれたら終わりだ。浮かれるな」

    士道「ちぇー」

    士道は不満げに舌打ちしたが、冴の言葉には従うように肩を竦める。

    士道「まあ、冴ちゃんが言うなら我慢するわ。どうせ面白くなってくんのはこの先だろ?」

    潔「はぁ……」

    潔が小さく息を吐く。

    潔「俺ら、まだ入口だぞ?……でもまあ、ほんと、何が起こるか分かんないからな」

    黒名「油断しちゃ駄目だ、冷静に、冷静に……」

    主苦しい沈黙の中、四人は互いの顔を見回した。
    下駄箱の奥に広がる闇は、どこを調べても安全とは限らない。

  • 16スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 22:37:56

    【探索ポイント・下駄箱】


    ① 1〜2年生の下駄箱

    ② 3〜4年生の下駄箱

    ③ 5〜6年生の下駄箱


    >>17

    ※探索箇所・キャラを選んでください

    ※一箇所のみ二人で探索可能です

    ※二人の探索の場合、成功率が上昇します

    ※過去作品のクリティカル特典(探索自動成功)を使用する場合、どのキャラに使用するか教えてください(探索成功の場合は温存されます)

  • 17二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 22:59:55

    ①黒名、潔
    ②士道
    ③冴

  • 18二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 03:51:27

    スレ主が戻ってきてくれて嬉しいよ

  • 19スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 07:16:29

    >>17

    クリティカル特典使用なしにて承りました!


    >>18

    嬉しいお言葉ありがとうございます!のんびり無理のない範囲で更新を続けられたらと思ってます!

  • 20スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 07:36:18

    【① 1~2年生の下駄箱:潔世一&黒名蘭世】

    廊下の端、1~2年生用の下駄箱。
    背の低い棚が並び、闇に呑まれた空洞がずらりと口を開けていた。入口よりもさらに湿った匂いがこもり、木板の間からは冷気が滲み出てくる。

    潔と黒名は肩を寄せ合いながら、ひとつひとつの空洞を覗き込んでいった。

    潔「……なあ、黒名。なんで俺たちがここ担当なんだよ……」

    黒名「俺だって嫌だ……でも、仕方ない。俺たち二人で確認できるだけマシだ」

    潔は唇を噛み、目を細める。
    棚の奥はただ黒いだけなのに、何かが潜んでいる気配がしてならない。

    潔「ほら、こことか……誰か入ってたみたいに、空洞が広い気がしないか?」

    黒名「やめろ、潔……!想像するだけで怖い……」

    二人の声は囁きに近く、互いを安心させるよりも不安を増幅させていた。

    黒名が恐る恐る指先で棚板をなぞると、乾いた木屑がポロポロと崩れ落ちる。

    黒名「ひっ……!」

    潔「うわっ、ビビらすなよ黒名!」

    黒名「勝手に落ちたんだ……俺は悪くない……」

    黒名は震える声で言い訳をする。

  • 21スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 07:47:10

    潔は深呼吸して頭を振り、「よし、次は俺が見る」と言い聞かせるように前へ出た。


    潔が覗くのは「2年生の下駄箱」。

    黒名が確認するのはその隣、「1年生の下駄箱」。


    隣り合った空洞に二人同時に顔を近づけ、どちらもゴクリと喉を鳴らした。


    潔「……黒名、何か見えたか?」


    黒名「真っ暗、真っ暗……でも……奥になにかあるような、ないような……」


    潔「おい、それ一番怖いやつじゃん!………でも、こっちも同じだ。何もないけど、なんか“ある”気がする……」


    二人は息を詰めたまま、暗闇の奥をじっと凝視する───。


    潔 dice1d100=11 (11)

    黒名 dice1d100=64 (64)

    ※合計値80以上の場合:探索成功

    ※合計値79以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 22スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 11:34:38

    【探索失敗】
    【潔:SAN値18→17(-1)/怪我値100→95(軽傷)】
    【黒名:SAN値15→14(-1)】

    下駄箱の列。木材は湿気を吸って黒ずみ、ひび割れ、埃が積もっている。ぽっかりと口を開けた一つひとつの空洞が、まるで人を飲み込むために待ち構えているかのようだった。

    潔「……うわ、やっぱ中、暗いな……」

    潔はため息混じりに身を屈め、二年生の下駄箱を一つずつ覗いていく。
    隣で黒名も、一年生の列に視線を滑らせていた。

    黒名「……何もないといいな」

    二人が少しずつ進んでいった、その瞬間だった。

    ───ガサリ

    潔「えっ……?」

    潔が覗き込んでいた下駄箱の奥。
    闇の中で、乾いた布が擦れるような音がした。

    次いで、そこから白く細い“手”が突き出された。

    潔「うわああああああああああああ!!!っ!?な、なんだよこれ!!!」

    潔の叫びと同時に、その手は腕を乱暴に掴み、爪を立てる。皮膚が裂け、鋭い痛みが走った。
    鮮血がにじみ、潔は必死に振りほどこうとするが、冷たく湿った感触が骨にまで食い込むようだった。

  • 23スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 11:36:02

    潔「やめろ!!離せって!!!」

    黒名「潔!大丈夫か!!?」

    黒名の声は涙声だった。顔を真っ青にし、今にも腰を抜かしそうに震えながら、それでも潔の体を必死に引っ張る。

    黒名「やめろ!離せ、潔を離せ!!!」

    ガッ、と力を込めて腕を振るった瞬間、ようやくその“手”は潔の腕を離し、闇の奥へすうっと消えていった。
    後には、血に濡れた引っかき傷だけが残っていた。

    潔「っ……か、かすり傷だ……!ただの、かすり傷だから……!」

    潔は呼吸を荒げながらも、無理やり笑おうとする。

    黒名「………痛そうだ。嘘ついてる声だな」

    黒名は不安そうに、その傷跡を、睨みつけた。

    二人は震える脚を引きずりながら、正面玄関付近へと後退する。背後の下駄箱は、先ほどのことが幻だったかのように、ただ静かに闇を広げていた。

    だが、その暗闇の奥で、まだ“何か”が見ている気配がした。

  • 24スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 12:10:11

    【② 3~4年生の下駄箱:士道龍聖】

    昇降口には、ずらりと木造の下駄箱が並んでいる。どれも色あせ、ところどころ板が反り返り、長い年月をそのまま閉じ込めたようだった。

    士道は“3~4年生”と札のかかった列の前に立つと、にやりと口角を上げた。

    士道「ハハッ、こんなん楽勝だろ!」

    勢いよく前蹴りを一発。

    ガンッ───!
    乾いた衝撃音が、広い昇降口に響きわたる。木材がきしみ、何匹もの小さな虫がぱらぱらと飛び出した。

    士道「おお、いい音すんじゃねーか!」

    士道は楽しげに笑い、両手で上段の下駄箱の空洞を覗き込む。
    中は暗く、木が黒ずみ、乾いた泥のような汚れがこびりついている。鼻にまとわりつくのはカビと鉄の匂い。
    靴など当然なく、ぽっかりと口を開けた穴が、不気味に並んでいるだけだった。

    士道は気にも留めず、ひとつ、またひとつと覗き込む。下段にしゃがみ込んで視線を入れると、奥に影が揺れた気がしたが───すぐに「自分の影だ」と鼻で笑い飛ばした。

    士道「お化け屋敷の真似事かよ。安っぽいんだよなー」

    そう言って下駄箱を拳で叩き、さらに次の列へと移っていく。

    そのとき───1~2年生の下駄箱の方から鋭い悲鳴が突き刺さった。

    「うわあああああっ!!!」

    「潔っ!!!」

  • 25スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 17:58:07

    一瞬、士道の動きが止まる。

    だがその顔には怯えなどなく、むしろ興奮で光っていた。


    士道「おーおー、やっと盛り上がってきたじゃねぇか!」


    ニヤリと笑い、また目の前の下駄箱へ身を屈めて覗き込む。闇の奥が、妙に深く見える気がした。


    ただの空洞のはずなのに───。


    士道 dice1d100=86 (86)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 26スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 18:49:05

    【探索成功:ハズレ】

    士道は下駄箱の一番上段に顔を突っ込み、乱暴に中を覗き込む。そこには、ただ黒ずんだ木材と古びた埃だけ。靴の影も、怪しい仕掛けも見当たらない。

    士道「チッ、つまんねーの」

    苛立ったように舌打ちし、今度は真ん中の段を手で乱暴にまさぐる。ザラついた木の感触と、指先にまとわりつく粉塵。爪に黒い汚れが入り込んで、嫌な感覚が残る。

    それでも士道は止まらない。

    拳で横板を叩き、膝で下段の木枠を蹴り、ひとつ残らず調べていく。下駄箱の奥に目を凝らすたび、影が伸びてこちらを覗いているように感じる。

    だが、士道は笑った。

    士道「ビビらせようってのが見え見えなんだよ」

    下段にしゃがみ込み、顔をぐっと近づける。鼻を突くのは、土と血を混ぜたような生臭さ。
    思わず咳払いするが、すぐに拳で木を叩いて打ち消した。

    ───何も出てこない。

    影はただの影。音は自分が立てた音。
    背後に漂う寒気も、気のせいに過ぎない。

    ………それでも、背筋を伝う冷たさは確かにあった。

    士道「ハッ、脅かすならもっと派手にやれよ!」

    強がるように声を張り、最後の列を乱雑に蹴りあげる。

  • 27スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 18:51:24

    だが、中にあるのは───またもや空。

    ただの、埃。
    ただの、木。

    士道「…………は?」

    一瞬、士道は言葉を失う。

    何も起きない。
    どの下駄箱にも、靴一足すら残されていない。

    最後のひとつまで覗き終えた瞬間、士道の表情から笑みが消えた。

    士道「………おいおい。何もねぇのが一番つまんねぇだろ」

    低く呟き、拳を木枠に叩きつける。
    乾いた衝撃音だけが、広い昇降口に虚しく響いた。

    肩で息をつきながら、士道はしばらく動かなかった。
    胸の奥で熱が冷めていく。

    せっかく盛り上がってきたと思ったのに───。

    士道「……ハズレかよ」

    吐き捨てるように言い、士道は踵を返す。
    やり場のない苛立ちを抱えたまま、正面玄関の方へと無造作に歩き出した。

    足音だけが、静かな昇降口に響いていった。

  • 28スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 20:14:57

    【③ 5~6年生の下駄箱:糸師冴】

    昇降口の右端、5~6年生の下駄箱。
    古びた木材の色は黒ずみ、板の隙間には闇がこびりついたように沈んでいる。足を踏み入れた瞬間、空気の質が違うことに冴は気づいた。

    鼻を刺す、鉄と腐敗の入り混じった匂い。
    血の生臭さと、長く放置された肉が腐り果てたような酸味。吐き気を誘う重さが空気に満ちていた。

    冴「……クソみてぇな臭いだな」

    眉ひとつ動かさず吐き捨て、冴は下駄箱の一番上段に手をかけた。

    木枠に手を滑らせ、暗がりを覗き込む。視界の端には闇が広がり、そこに何かが蠢いているように錯覚する。

    だが、冴の眼差しは揺れなかった。

    ───その時。

    潔「うわあああああッ!!」

    左手奥から、潔の叫び声が響いた。
    続いて黒名の悲鳴も重なる。

    冴「…………はぁ」

    冴は短くため息を吐いた。声の方に目をやることもなく、淡々と下駄箱を確認し続ける。

    木の軋み、埃の落ちる音、自分の靴底が床を擦る音だけを意識に留める。

  • 29スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 20:17:47

    次の下駄箱を見る。


    中には何もない。


    血の匂いは濃くなる。

    今度は鼻腔だけでなく、喉奥を焼くようにまとわりついてきた。普通なら一歩退いてしまうその感覚を、冴は平然と受け止める。


    冴「大げさなんだよ、あいつら」


    呟きながら、下段へしゃがみ込む。

    木枠に顔を近づければ、影はさらに濃くなる。奥の奥まで目を凝らしても、やはり見えるのは闇だけだ。


    隣で、ガンッ、と木が軋む音が響いた。

    士道が蹴りを入れているのだろう。


    士道「……騒がしい」


    冴は小さく舌打ちし、残りの下駄箱へと淡々と手を伸ばす。


    一つ、また一つ。

    誰かを挑発するような影が視界を横切っても、動じることはない。手の甲を掠める冷気にも、眉を動かすことすらしない。


    ただ順に、冷たく、正確に確認していく。


    昇降口の右端に、冴の低い吐息だけが落ちていた───。


    冴 dice1d100=22 (22)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 30スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 20:41:57

    【探索失敗】
    【冴:SAN値24→23(-1)/怪我値100→95(軽傷)】

    闇に沈んだ木製の下駄箱。
    冴は最後の一段、六年生の名札が剥がれかけた枠へと手を伸ばした。

    その瞬間。

    ───シュッ

    木材が揺れる気配と共に、何かが闇の奥から飛び出した。目にも止まらぬ速さで、冷たい風のようなものが冴の頬をかすめる。

    ザリッ、と鈍い痛みが走った。
    刹那、赤い線が頬に浮かび、血が一滴だけ垂れ落ちる。

    同時に。

    『……ふふ……あははは……』

    子供の笑い声が闇の奥から響いた。

    甲高く、不自然に揺れる音程。

    生きた子供の声ではない。
    死と腐敗に染み込んだような、異質な響きだった。

    下駄箱全体がその笑い声に震え、闇の底がひどく楽しそうに蠢く。

    普通なら背筋が凍りつく。心臓をわしづかみにされたような錯覚で、声をあげて逃げ出すはずだ。

  • 31スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 20:43:45

    しかし───冴は微動だにしなかった。

    冴「……チッ」

    血の滴を指で拭い、口端を歪める。

    目には怒りも恐怖もない。
    ただ淡々と、鬱陶しそうなだけ。

    冴「くだらねぇ悪ふざけだな」

    そう言い捨て、下駄箱の闇に背を向ける。

    子供の笑い声はまだ続いていた。それは追いすがるように、背後から耳を刺し続ける。

    だが、冴は振り返らない。

    踏み出す靴音は一定のまま。
    冷徹なリズムで、正面玄関へと進んでいく。

    冴「……仕切り直すか」

    低く呟き、ほんのわずかに肩を竦めた。
    その仕草さえ、恐怖ではなく退屈を紛らわすもののようだった。

    子供の笑い声は、その背中に虚しく吸い込まれ───やがて昇降口の闇に溶けていった。

    冴は踵を返し、正面玄関へ歩を戻していく。
    背後に残された下駄箱群は、まだ重く湿った気配を放ち続けていた───。

  • 32スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 21:08:24

    【情報共有フェーズ】

    昇降口の空気はさらに湿り、四人が再び正面玄関に揃うと、重たい沈黙が落ちた。
    先に戻っていた士道が、冴の頬を見て笑う。

    士道「おー、冴ちゃんも血ぃ出てんじゃん」

    冴「こんなの、痛くも痒くもねぇよ」

    その冷淡さに、潔は思わず息を呑む。

    潔「冴までやられたのか……!」

    黒名も顔を引き攣らせた。

    黒名「………やっぱり、ここは危ない場所だ。全員生きてて良かった、良かった……」

    各々の様子を見て、士道が退屈そうに鼻を鳴らした。

    士道「俺んとこなんか何も出てこなかったぜ?期待外れもいいとこだよな」

    冴「何もねぇのが一番なんだよ」

    呆れた冴をため息を横に、潔が皆に向き直る。

    潔「……俺と黒名のとこは、下駄箱の中から腕が伸びてきて……俺がちょっと引っ掻かれた。傷は浅いけど……確かに“何か”いた」

    黒名が小さく頷く。

    黒名「………ああ、本当だ。俺も見た、腕が出てきた」

  • 33スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 21:33:08

    その言葉に、昇降口の空気がさらに重く沈む。
    それぞれが探索の結果を胸に抱えたまま、全員が同じ結論に行き着いた。

    冴「……収穫なし、だな」

    冴が吐き捨てる。

    士道はつまらなそうにあくびをかみ殺し、潔と黒名は強張った顔を見合わせた。

    恐怖と退屈、苛立ちと不安───四人の感情が交錯する中、それでも歩みを止めることはできない。

    潔が息を吸い込み、かすれた声で言った。

    潔「……次の場所に行こう。気をつけて」

    靴音が再び、静まり返った校舎の奥へと響き始めた。

    ───その時。

    昇降口に漂っていた濃い沈黙を切り裂くように、廊下の奥から“ずるり”と何かが這い出す音が響いた。

    下駄箱の並ぶ暗がりのさらに奥。
    薄闇を縫うように、それは形を成す。

    黒い染みのような“影”が床から立ち上がり、じわじわと背丈を伸ばしていく。
    人間のようでいて、人間ではない。輪郭は定まらず、煙のように揺らめきながらも、確かに四人へ向けて敵意を滲ませていた。

    ぞわり、と肌を撫でる悪寒。
    血と腐臭に慣れ始めていたはずの空気が、一瞬で張り詰める。

  • 34スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 21:36:24

    潔が息を呑み、低く言い放った。


    潔「……経験上、戦うしかないよな」


    冴は眉ひとつ動かさず、姿勢を正す。


    冴「構えろ。油断するな」


    黒名は恐怖に震えながらも、歯を食いしばって吐き捨てる。


    黒名「うわっ、キモい……!絶対に倒す……!!」


    そして、士道の口元が大きく歪む。


    士道「やーーっと来やがったか!……あぁ、いいぜ。俺のこと、楽しませてくれよ!!!」


    影が、ぬるりと四人の前に歩み出た。廊下の光を吸い込み、校舎の暗さを倍増させながら。


    全員の視線が一点に集まる。足の裏から心臓まで、血が逆流するような緊張が走る。



    【影】1回攻撃成功で撃破

    潔 dice1d100=61 (61)

    黒名 dice1d100=49 (49)

    士道 dice1d100=43 (43)

    冴 dice1d100=66 (66)

    ※20以上の場合:攻撃成功

    ※19以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 35スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 22:15:48

    【戦闘開始:勝利】

    ───その瞬間、空気が震えた。

    廊下に佇む“影”がゆらりと動き、黒い腕のようなものを振りかざす。それは生き物ともつかぬ質感で、闇そのものが形を持ったように、冷たく粘ついた気配をまとっていた。

    冴「チッ……」

    冴は小さく舌を鳴らし、一歩、床を蹴る。

    鋭い踏み込みと共に、身体は影へと疾駆した。その速度は人間離れしていて、潔が目で追うのもやっと。

    潔「俺たちも続くぞ!」

    そう、声をかけた潔よりも先に───

    ───ガッ!!

    冴の蹴りが影の脇腹を正確に捉えた。衝撃音が下駄箱の列に木霊し、影の輪郭が大きく波打つ。

    煙のように形が崩れ、人型を無理やり保とうとしたが───次の瞬間、霧散した。

    廊下に残るのは、しんとした沈黙。
    さっきまでの敵意が嘘みたいに消え、ただ闇と埃の匂いだけが漂っていた。

    士道「……………は?」

    士道がぽかんと口を開け、次いで爆笑した。

    士道「弱っっ!!なんだ今の!?ワンパンじゃん! 期待して損したわ!!!」

  • 36二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 03:33:41

    前から思ってたけどスレ主の文章センスあるよね

  • 37スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 07:25:37

    >>36

    うわー!嬉しいですありがとうございます!!スレ主基本的に誤字脱字が多いので慢心せず気をつけます!

  • 38スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 07:50:56

    潔は少し肩の力を抜きながらも、まだ油断しきれずに下駄箱の影を確認していた。

    潔「……雑魚、だな。こんなに簡単に消えるなんて」

    黒名は背筋を震わせたまま、ぎこちなく息を吐く。

    黒名「………終わった、のか?……俺、ビビる必要なかったな……」

    悔しそうに吐き捨てたが、その声にはまだ恐怖の余韻が滲んでいた。

    ───と、その時。

    士道「………ん?」

    足元でコン、と乾いた音がした。
    影が消えた床に、小さな何かが転がっている。
    薄暗い中でも、ほんのりと光を反射していた。

    士道が身をかがめて拾い上げる。

    士道「……んだこれ、ペットボトル?」

    掌に収まるほどの小さなサイズ。ラベルには《きれいなおみず》とだけ、白い文字で無機質に印字されていた。
    中には透き通った水が揺れている。

    士道「あー……戦利品ってやつか?」

    振りながら軽く笑う士道。

    冴は今だ血の滲む頬をぬぐい、興味なさそうに視線を逸らした。

  • 39スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 10:31:59

    【《きれいなおみず》×1:SAN値+1回復入手】

    冴「前と同じシステムなら、飲めば少しは落ち着くだろ」

    そう聞いて、潔は安堵のような声で呟いた。

    潔「そうだな、少しの水でも精神的に安心できる気がする」

    その言葉を聞き流しながら、士道は興味なさげにペットボトルを眺めたあと、ぽいっと黒名へと投げて渡す。

    士道「チビスケ、お前が持っといた方いいだろ」

    黒名「うわっ!?………えっ、俺?」

    慌てて受け取った黒名は目を丸くした。

    黒名「……分かった、俺が持つ。ありがと士道、お前案外いいヤツだな」

    士道「俺は元からいい子ちゃんだっつーの!」

    そんな軽口を交わしつつも、容器の冷たさが指先をじんわりと伝い、黒名は思わず身震いした。

    ───影は消えた。

    だが、この学校のどこかに同じものがまだ潜んでいる。それを全員が、胸の奥でひそかに理解していた。

    静寂が戻った玄関口。影はいなくなったはずなのに、空気は少しも軽くならない。むしろ息苦しさが増したようで、全員の耳に心臓の音だけが響いていた。

    ぎしり、と床板を踏む音。四人は顔を見合わせ、無言のまま廊下へと足を進める。

  • 40スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 11:34:13

    そこは木造校舎特有の長い廊下。古びた板張りの床の上に、赤黒く錆びた非常灯の光が点滅していた。一定のリズムではなく、不規則に瞬くそれは、闇を切り裂くどころか、むしろ闇を濃くしていく。

    潔「……なんか、いやな感じするな」

    潔が唾を飲み込むように小声で言う。

    冴「最初からずっとだろ。気にすんな、行くぞ」

    冴は面倒そうに肩をすくめる。

    潔「まあ、そうなんだけどさ。ちょっとでも油断したらヤバい。……次は廊下を手分けして探そう」

    自分を奮い立たせるように、潔は声を張った。

    そうして四人は、玄関から伸びる東の廊下へと歩を進めた。だが───数歩進んだところで、全員の足が止まる。

    士道「………あ?」

    士道が眉をひそめる。

    目の前に立ちはだかっているのは壁。だが、確かにさっきまで廊下は真っ直ぐ続いていた。
    いつの間に現れたのか分からない。まるで、最初からそこが行き止まりだったかのように当たり前の顔をして、灰色の板張りが通せんぼしていた。

    潔「……まだ行けないってことか」

    潔が呻くように言い、拳で壁を軽く叩く。固い手応えが返るだけで、夢や幻ではないのが分かった。

    士道「なんだよこれ。ふざけてんのかよ……!」

    士道が歯ぎしりする。

  • 41スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 12:02:39

    黒名は不安そうに視線を巡らせ、やがて小さく頷いた。

    黒名「……西の廊下から調べなきゃいけないってことだな」

    冴「結局、あっちに誘導されんのか」

    冴は低く吐き捨て、踵を返す。

    潔「はぁ……マジで気持ち悪い」

    潔が顔をしかめた。

    点滅する非常灯の下、四人は重苦しい空気をまといながら、西側の廊下へと向かっていった。

    ───足を踏み入れた瞬間、空気がさらに冷え込む。

    非常灯の明かりすら届かず、壁や天井は黒い影に飲まれている。人の気配はない。あるのは、湿った木の匂いと、どこからか染み出す鉄錆のような臭いだけ。

    四人は自然と肩を寄せ、視線を巡らせる。
    そこには三つの異様なものが並んでいた。

    一つ目は、西側廊下の入口に鎮座する【校長の銅像】。顔から胸までのよくある胸像だが、金属は黒ずみ、天井から落ちてきた水滴が額を濡らしている。まるで汗をかいているようで、不気味だった。

    二つ目は、壁際に掛けられた【学校掲示板】。破れかけたプリントや紙片が無造作に貼られているが、その多くは湿気で文字が滲み、判読できない。中には子供の筆跡で「たすけて」と書かれた紙が混ざっているように見えた。

    三つ目は、掲示板から少し離れた壁に並べられた【お父さん・お母さんの似顔絵】。低学年の子供たちが描いたであろうクレヨンの絵が、整然と貼られている。どの顔も笑っているはずなのに、目の部分だけが黒く塗りつぶされていて、廊下の闇と繋がっているように見えた。

  • 42スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 12:07:22

    潔「……どれも気持ち悪いな」


    潔が苦々しく呟く。


    冴「選べってことか。分かりやすいな」


    冴が冷めた声で応じる。


    士道「おいおい、やっと面白そうなオモチャが出てきたじゃねぇか!!」


    士道はにやつきながら拳を鳴らした。


    黒名「……嫌だ……全部嫌だ……」


    黒名は額に汗を滲ませ、視線を逸らす。


    廊下に漂う重苦しい空気の中、四人は顔を見合わせ、どこを調べるかを決めることになった。



    【探索ポイント・1階の西側廊下】


    ① 校長の銅像

    ② 学校掲示板

    ③ お父さん・お母さんの似顔絵


    >>43

    ※探索箇所・キャラを選んでください

    ※一箇所のみ二人で探索可能です

    ※二人の探索の場合、成功率が上昇します

    ※アイテム・固有能力・クリティカル特典を使用する場合、どのキャラに使用するか教えてください(成功の場合は温存されます)

  • 43二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 15:48:39

    ①潔
    ②士道
    ③黒名冴

  • 44スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 18:39:41

    >>43

    アイテム等使用なしで承知しました!


    ちょこっと余談ですが……

    本作は探索・戦闘の難易度を下げる代わりにギミックとSAN値・怪我値減少を増やしてます

    新しい試み、お楽しみ頂けたら嬉しいです

  • 45スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 18:55:16

    【① 校長の銅像:潔世一】

    潔は、足を止める。

    西廊下の入口、沈黙の中にただ一つ重く構えるものがある。見下ろすたびに胸の奥がざわついて、落ち着かない。

    潔「……こんなとこに……」

    独り言が漏れた。
    返事をする者はいない。

    士道の気配は確かに左隣にある。けれど、ハッキリと姿が見えないだけで、これほど心細いものなのか。

    足元にはガラス片。踏むとわずかに音を立てる。
    反射した光が銅像の下で揺れている。

    ───冷たいものが、背筋をなぞる感覚がした。

    潔「………ただの銅像だ」

    そう言ってみても、声は頼りなく響くだけだった。

    汗で滲んだ手のひらを握って、そのまま思い切って像の肩に触れる。カン、と乾いた金属音。耳の奥で反響して、やけに大きい。

    慌てて手を離す。響きが途切れると同時に、廊下がますます静かに沈んだ。

    銅像の台座は石造りで、角にはひび割れが走り、そこから細い根のようなものが覗いていた。土ではなく、暗い湿り気のある何かに絡まっている。

  • 46スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 18:59:28

    潔「何だよ、これ……」

    喉の奥がひゅっと鳴る。

    ───背後に気配を感じて振り返る。
    だが、そこには誰もいなかった。

    非常灯の点滅だけが、壁を赤く染めては消える。

    息を整えようと深呼吸する。
    しかし胸は重く、落ち着かない。

    ふと、台座の下に、細い隙間があるのに気づく。かがんで覗き込むと、暗闇が奥へと伸び、何かが置かれているように見える。

    潔「……中に、何かがあるのか?」

    声に出すと同時に、自分の鼓動が聞こえる気がした。
    額にじわりと汗が浮かぶ。

    息を止めて、さらに近づく。
    手を伸ばせば届くかもしれない。

    その瞬間、どこからか水滴の落ちる音。
    天井から垂れた水が、また像の額を濡らしたのだろう。だが耳に届く音は、まるで目の前で誰かが涙を落としたかのように近かった。

  • 47スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 19:02:12

    潔「ほんと、マジでやめろよ………」


    小さく呟く。

    声はかすれ、廊下に吸い込まれていく。


    気を抜けば逃げ出したくなる。

    それでも足は銅像の前に縫い付けられていた。


    左隣から、かすかに士道の足音。

    だが、こちらには来ない。


    頼りたいのに、呼べない。

    今ここで声を上げれば、銅像が動く気がして。


    深呼吸を繰り返す。

    震える手を、台座の隙間に向けて伸ばす。


    潔「……大丈夫だ。ただの……ただの銅像だ」


    繰り返し、繰り返し、言い聞かせる。

    声が震えていることを、どうしても隠せなかった。


    背後の非常灯がまた点滅する。光が途切れるたび、廊下の闇が迫ってくる。汗が首筋を伝った。


    潔は喉を鳴らし、隙間へと手を近づけていった。


    潔 dice1d100=62 (62)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 48スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 21:09:50

    【探索成功】

    隙間に手を差し込んだ瞬間、ざらりとした感触が走る。冷たく硬い石ではない何かがそこにある。

    慎重に指を動かすと、柔らかく湿ったものが指先に触れた。

    潔「………まさか」

    心臓が跳ね、思わず息を止める。
    指で摘んだそれを台座の奥からゆっくりと引き抜き、非常灯の赤い明かりにかざした。

    湿気で端が擦り切れた紙には、拙い字でこう書かれていた。

    ───『かげがくるよ』

    影───さっき下駄箱で襲いかかってきた、あの大きな黒い影のことで間違いないだろう。

    頭の中で戦った瞬間の光景が蘇る。
    目に焼き付いた恐怖、足元から伝わる緊張、空気の重み。

    (………やっぱりか。あの影はまた、俺たちの前に現れるんだな)

    息を整えようとしたが、手が小刻みに震える。
    恐怖で胸が張り裂けそうになりながらも、どこか胸の奥で小さな喜びが芽生えていた。

  • 49スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 21:11:46

    潔「………それでも、やっと成果をあげられた……!」

    そう呟き、紙切れをぎゅっと握る。

    廃病院のときも、こんな小さな手がかりで次に進めた。
    きっとこの紙だって同じだ。
    小さくても確実に、次の行動の糸口になる。

    湿った紙を折りたたみ、そっとサッカーバッグの奥にしまい込む。もし破れてしまったら、手がかりは消えてしまう。

    だから、丁寧に。

    潔「……絶対に無駄にはしない」

    震える手を握りしめながら、小さく息を吐いた。恐怖の中でも、前に進むための確信が心の奥にあった。

    非常灯の赤い光がちらつく廊下に、静けさと重苦しさが漂う。銅像は相変わらず無表情で立っていたが、今の潔にはそれが脅威ではなく、ただの目印のように見えた。

    小さな紙を握ったまま、静かに立ち上がる。
    握った手に力を込め、心の奥で決意を固めた。

    【《ちぎれたかみ》×1:『かげがくるよ』と書かれているメモ】

  • 50スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 21:34:17

    【② 学校掲示板:士道龍聖】

    壁沿いの掲示板に目をやる。
    赤や青のプリントが無造作に貼られ、ところどころは湿気で文字がにじみ、何が書かれているのか判読できない。紙片の端は折れ曲がり、破れかけているものもある。

    士道「こういうのがホラーの醍醐味だよな!」

    声を張り上げ、掲示板の前に駆け寄った。
    足元に落ちた紙片を蹴り飛ばしながら、手当たり次第に一枚一枚確認していく。

    紙の中には、子供の筆跡で書かれた文字も紛れ込んでいた。掠れた「たすけて」という文字が、ちらりと目に入る。

    その瞬間、笑顔が少しだけ引き締まる。

    士道「……助けて欲しいならちゃんと出てこいよ」

    プリントを指でめくるたびに、湿った紙の匂いが鼻をつく。にじんだ文字の合間に、色鉛筆で描かれた小さな絵や、読めない落書きが見え隠れする。

    それを見つけるたびに口角を上げ、楽しそうにくすくすと笑う。

    士道「よし、こっちの方もチェックだ!」

    腕を伸ばして掲示板の左端に手をかけ、プリントの下に指を滑り込ませる。
    どこかに何か手がかりが挟まっているかもしれない。そんな予感に胸が高鳴る。

    掲示板の前で、軽くジャンプして蹴るようにしながら、紙をずらして確認する。廊下に響く足音と、紙が擦れる音。

    同時に、隣で探索する潔の声が、遠くに小さく聞こえてくる。

  • 51スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 21:36:11

    士道「よし、こいつをめくって………あ、こっちもだな!」


    テンションをさらに上げ、掲示板全体を見渡しながら指で紙を押し上げ、隙間や重なりを確認する。


    湿った紙の手触り、破れかけの端、かすれた文字。

    その一つ一つに興奮は増していく。


    士道「ハハッ、ワクワクすんなあ!何が出てくる?おい、待ちきれねえよ!!」


    掲示板の角から角まで手を伸ばし、隙間を覗き込む。破れかけの紙片の下に、何かが隠れているかもしれない───そう考えると、心臓は跳ね、思わずにやりと笑う。


    興奮と好奇心で全身が震える。背中越しに、廊下の静けさや滴る水音が恐怖を思い出させるが、それを蹴散らすかのように手を止めない。


    掲示板の中央部分に手をかけ、紙を少し持ち上げる。湿気で少し重い感触が指先に伝わる。


    何か挟まっているかもしれない。

    そんな期待が高まる。


    笑みは消えず、声を出さずにはいられない。


    士道「さあ、手がかりでもバケモンでもなんでも出てこいや!!!」


    掲示板の前で、体を揺らしながら紙を押し上げ、隙間を覗き込む。まだ何も見えない。だが、気にしない。楽しければそれでいいのだ。


    湿った紙、にじんだ文字、そしてかすかな子供の落書き。全てが士道にとっては冒険の香りであり、爆発の予感でもあった。


    士道 dice1d100=97 (97)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 52スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 22:08:49

    【探索成功:クリティカル報酬付き】

    覗き込んだ紙の隙間から、金属か硬質な木のようなものが転がり落ちてきた。カチン、と床にぶつかり、高く音が鳴る。

    紙の下から転がり出てきたのは、小さな鍵。よく見れば、“1年1組”と書かれた古い教室の鍵のようだ。

    士道「よっしゃあ!!やっと来たぜ!!!」

    手のひらに握る鍵の冷たさが、興奮をさらに加速させる。だが顔にはすぐに、まだ足りないという欲望が浮かぶ。

    士道「でも、これだけじゃねぇよな……?なあ、もっと来いよ!」

    思わず足元の紙や紙片を蹴飛ばす。すると、蹴った先から梱包された包帯が転がって出た。茶色の紙で丁寧に包まれており、手書きで『せいけつなほうたい』と書かれている。

    士道「お、こいつも付いてきたか!随分手厚いサービスだな、俺のことビビらせるんじゃねえのか?」

    包帯を拾い上げ、鍵と一緒に手に持つ。心臓が高鳴り、体が全身で喜びを表す。テンションは最高潮だ。

    士道「さあ、追加でバケモンも来ていいぜ?またワンパンでぶっ壊してやるからよ!」

    挑発的に廊下の闇を睨む。目の前にはまだ湿った掲示板と、破れた紙片の山があるだけだが、それすら最高潮へと導く舞台装置のように思えた。

    鍵と包帯を手に持ちながら、少し高くジャンプして足元を蹴る。乾いた紙の擦れる音が廊下に響く。全身で楽しさを噛みしめながら、笑いを抑えきれない。

    士道「まあ、これで準備万端だろ。次はどんなオアソビが待ってる?早く来いよ、俺を退屈させんなよ」

    手にした鍵は教室を開ける未来を約束している。包帯は、何か起こるときの保険か。頭の中には次の行動のイメージが広がり、足元から全身に震えが伝わる。

    目の奥の光は、まだ見ぬ“爆発”への期待でぎらつく。孤独な探索でも、笑顔は絶えず、周囲の恐怖を蹴散らすかのようだった。

  • 53二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 23:02:02

    士道強いな

  • 54二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 06:15:38

    ほしゅ

  • 55スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 07:20:18

    >>53

    士道は過去作品でも良い出目を出してくれてたので本作でも期待が高まります!


    >>54

    保守ありがとうございます!大変助かります!

  • 56スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 09:43:25

    【《1年1組の鍵》×1:教室の鍵入手】
    【《せいけつなほうたい》×1:怪我値+10回復入手】
    【③ お父さん・お母さんの似顔絵:黒名蘭世&糸師冴】

    学校掲示板から少し離れた場所に近づくと、壁一面に紙が貼られているのが見えた。それは、子供が描いたであろう似顔絵だった。

    クレヨンで大きく描かれた顔───「お父さん」「お母さん」と書かれた文字が紙の上に並んでいる。

    どの絵も、大きく口を開けて楽しそうに笑っている。だが、目の部分だけは黒く塗りつぶされ、墨を垂らしたように真っ暗だった。廊下の影とつながっているかのようで、ひどく不気味だった。

    黒名「……やっぱり気持ち悪いな」

    黒名が眉をひそめ、低く呟いた。その声は廊下に吸い込まれていくようにか細い。

    その横で、冴は無言のまま立っていた。士道のやかましい歓声が右隣から響いてくる。何かを見つけたらしいが、興味がない。

    黒名は、ちらりと冴の横顔を見やった。寄り添うように立っている自分に、冴が迷惑そうな顔をしているのがわかる。けれど冴は、凛と同じ年頃の少年を突き放すようことはできなかった。

    黒名「………ちゃんと見て、早く終わらせる」

    そう言って、黒名は壁の絵に顔を近づけた。

    笑顔のはずの父と母の似顔絵が、どれも異様に歪んで見える。紙の端は湿気で波打ち、ところどころ剥がれて壁から浮き上がっていた。その隙間から覗く闇は、校舎そのものが呼吸しているように見えた。

    冴は腕を組み、表情ひとつ変えずに紙の列を見ている。

    冴「………くだらねえ」

    その冷たい声が、廊下の空気をさらに重くした。
    黒名はごくりと唾を飲み込んだが、隣に立つ冴の冷静さに救われる気もした。

  • 57スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 09:44:43

    黒名「でも……なんか、嫌な感じだ」


    そう呟きながら、黒名は指先で一枚の紙の端に触れる。紙はじっとりと湿っていた。まるで生きているかのように、指に張り付いて離れない。


    黒名「……うわ。最悪、最悪………」


    ───その時、背後で士道の声が響く。その調子外れな叫びが、逆に黒名の緊張を強める。


    冴は小さく息を吐いた。


    冴「集中しろ。こっちだけ見てればいい」


    その声に従い、黒名は壁の似顔絵を睨みつける。


    父と母。笑っているはずなのに、そこにあるのは虚ろな目の闇だけだった。

    黒名の胸に、冷たいものが広がる。足元の床板が軋む音がやけに大きく聞こえた。


    黒名「……冴、これ……絶対なんかあるよな」


    だが冴は答えない。ただ、闇に溶けそうな似顔絵を淡々と観察している。


    黒名は、息を整えながら冴に並んで立った。この場の重苦しさに耐えきれず、わずかに肩が震えていた。


    黒名 dice1d100=75 (75)

    冴 dice1d100=15 (15)

    ※合計値80以上の場合:探索成功

    ※合計値79以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 58二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 13:45:06

    ギリセーフ!

  • 59スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 17:19:01

    >>58

    成功率上げてるので余裕かなと思ってましたが結構ギリギリでしたね…!


    皆様大雨の影響はなかったでしょうか

    身のご安全を一番に引き続きお気をつけくださいね

  • 60二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 17:23:32

    士道ss少ないから嬉しい

  • 61スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 17:30:16

    【探索成功:ハズレ】

    冴の「これ以上は無駄だ」という言葉に、黒名は小さく息を吐いた。その声には苛立ちよりも冷静さが宿っていて、とても逆らう気にはなれなかった。

    黒名「……そうだな。ここには何もない」

    掘り下げても、見えるのは歪んだ笑顔と黒く塗りつぶされた目ばかり。子供の無邪気な絵が、これほど不気味に変わるものなのかと、背筋を冷たい汗が伝っていく。

    その時、右隣の廊下から弾むような声が響いてきた。

    士道「なあ、聞けよお前ら!」

    士道が、わざと音を立てるように足を鳴らしながら近づいてくる。手には小さな金属の鍵を掲げ、口元には自信満々の笑み。

    士道「1年1組の鍵と包帯!ダブルでゲットだ!俺、サッカーだけじゃなくて、探し物の才能もあるかもしれねぇわ!」

    声の大きさに思わず眉をひそめる黒名だが、士道の無邪気さには皮肉を言う気も起きなかった。

    冴は小さく鼻で笑い、「ふん」とだけ返す。だがその視線は鋭く、鍵と包帯を値踏みするように見ている。

    そこへ、今度は潔が静かに歩いてきた。
    士道とは対照的に声を張り上げることもなく、けれど仲間の視線を自然と集めるような気配を纏っている。

    潔「2つもゲットしたのかよ……流石だな、士道」

    短く労いの言葉をかけたあと、潔はバッグから折れ曲がった紙片を取り出した。

    潔「……俺はこれを見つけた。“かげがくるよ”って書かれてた。……みんなもわかってるだろうけど、また影が現れる。そういう意味だと思う」

  • 62スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 17:32:56

    “影”という言葉に、黒名の喉がひゅっと鳴った。冴は眉をひそめ、士道はニィっと不敵に笑う。あの得体の知れない存在の記憶が、全員の脳裏を過ぎったのだ。

    重苦しい沈黙が落ちた───その瞬間。

    廊下の蛍光灯がパチパチと音を立て、次々に点灯し始めた。さっきまで闇に沈んでいた空間が、じわじわと白い光に満たされていく。まるで誰かが見えないスイッチを入れたかのように。

    黒名は思わず顔を上げた。

    黒名「……灯りが……?」

    冴は怪訝そうに天井を仰ぎ、士道は口の端を吊り上げる。

    士道「おいおい、歓迎ムードかよ。………いや、俺たちが何かを進めたってことか?」

    潔もまた、光に照らされた廊下を見回していた。表情には緊張が残っているが、その目にはわずかな安堵が宿っている。

    潔「……理由はわからない。けど、ここは安全になった。少なくとも今は」

    白々しい光に照らされながら、四人は立ち尽くしていた。ただの蛍光灯の明かりなのに、不思議と胸を押さえたくなるような温かさがある。

    それは希望に似ていて、束の間の休息を与えるものでもあった。

    ───この場所だけは、安心できる。

    誰も口に出さなかったが、全員が同じ確信を抱いていた。

    【西側廊下:探索コンプリート】

  • 63スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 18:06:18

    >>60

    良かったです!士道は感情の動きが多いので書いてて楽しいです!過去作品に士道が登場してるものがいくつかあるのでご興味があれば覗いてみてくださいね

  • 64スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 20:43:27

    ───明かりの灯った廊下で、少し休息を挟んでから次の目的地へと進む。

    黒名と冴は、壁沿いに並んで歩きながら、ゆっくりと前方を見据える。

    士道は少し前方で、手に握った1年1組の教室の鍵を指で弾きながら、軽い足取りで歩いている。

    潔はそのさらに前方で、廊下の床を踏みしめるたびに軋む音を気にしながら進む。廊下の幅は狭く、壁沿いの距離感が自然に生まれていた。

    ───少し進むと、似顔絵が貼られた壁の反対側に、目的の教室が姿を現した。

    士道が前に立ち、鍵を扉の鍵穴に差し込む。

    士道「んじゃ、行くか!」

    ガチャリと小さな音が廊下に響き、扉はゆっくりと開いた。

    教室の中に足を踏み入れると、空気は少しひんやりとして湿り気がある。
    以前の廊下と同じように暗く、木の床がかすかに軋む音が響く。湿った紙の匂いと、廊下よりも少し重い空気が漂い。

    胸の奥まで押し付けられるような感覚があった。

    冴「……やっぱり、ここも同じか」

    冴が低くつぶやき、黒名も小さく息を吐く。
    恐怖心はあるが、足は自然と前に出た。

  • 65スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 20:46:09

    教室の中を見渡すと、目に留まる場所がいくつか存在する。

    一つ目は、教室の壁側に存在する【黒板とその付近にある小物たち】。黒板は黒ずみ、粉っぽいチョークの跡がうっすら残る。存在感のある教卓や、壁には時間割が貼られ、かすかな埃の匂いが漂う。

    二つ目は、教室の中央に存在する【机と椅子】。15名分の机と椅子が整然と並んでいる。窓際の机には、鮮やかな赤い彼岸花が花瓶に生けられていて、暗い教室の中でひときわ目立っていた。

    三つ目は、黒板とは反対側の壁にある【荷物置き場】。ランドセルを入れるロッカーが並ぶ。床には教科書やノートが散乱しており、扉のない空洞は闇に包まれているようだった。

    潔は荷物置き場を眺めながら、ため息を一つつく。

    潔「……よくもまあ、ここまで散らかして……。………いや、落ち着け、今は探索だ」

    怖さをこらえつつも、少しだけ安心した気持ちも混ざっていた。腕の引っ掻き傷がまだ痛むが、手を伸ばして確かめる勇気はある。

    黒名は冴の横にぴったり寄り、声を潜めて言った。

    黒名「ここ、血とかの匂いはしないな……。でも気は抜けない」

    恐怖で身を強張らせながらも、慎重に視線を巡らせる。

    士道はいつも通り、好奇心が先行して笑みを浮かべる。

    士道「これ絶対中に何かあんだろ!面白そうじゃねえか!!」

    手を伸ばし、散らばった教科書やノートに軽く触れてみる。いつもならつい破壊したくなるところだが、今回は控えめに楽しんでいる様子だ。

  • 66スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 21:07:19

    冴は辺りを一瞥しただけで淡々と評価する。


    冴「……フン、特に変なものはないな」


    指先で触れずとも、空気の重さや物の配置から危険がないことを判断している。


    教室の三か所を確認して、四人は互いに視線を交わす。


    潔「……これで一通りはザックリ見たな」


    潔の声に、士道が肩をすくめる。


    士道「なら探索始めんぞ。ちなみに、俺はさっき成果を上げた。だから、次はお前らにも期待してるぜ?」


    黒名は小さく頷き、冴も淡々と前を見つめる。暗く湿った教室の空気の中、四人は少しだけ緊張を解き、次の行動を思案していた。


    【探索ポイント・1年1組の教室】


    ① 黒板付近

    ② 机と椅子

    ③ 荷物置き場


    >>67

    ※探索箇所・キャラを選んでください

    ※一箇所のみ二人で探索可能です

    ※二人の探索の場合、成功率が上昇します

    ※過去作品のクリティカル特典(探索自動成功)を使用する場合、どのキャラに使用するか教えてください(探索成功の場合は温存されます)

  • 67二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 00:56:07

    ①黒名
    ②冴、士道
    ③潔

  • 68スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 07:09:20

    >>67

    アイテム使用なしにて承りました!

  • 69スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 08:02:39

    【① 黒板付近:黒名蘭世】


    黒名「……次は、俺一人で探す」


    小さくそう言い残し、全員から距離を取って、教室の壁際───黒板の方へと歩を進めた。足音が古びた床板をわずかに鳴らす。その音すらも、この静まり返った教室ではやけに大きく響く。

    震えた手をぎゅっと握りしめて、見定めるようにゆっくりと前を向いた。


    薄暗い教室の奥。黒板は黒ずみ、うっすらと白い粉の筋が浮かび上がっていた。何かが書かれていたはずなのに、布で乱雑に消された跡だけが残っている。文字の形は判別できないが、線の流れからは“急いで消された”ような荒々しさが伝わってきた。


    そのすぐ前には、存在感のある教卓が鎮座している。だが、形が不自然だった。横から覗き込むと、天板がわずかに斜めに傾いているように見える。時間のせいか、あるいは力を加えられたせいか───まるで、中から何かが押し上げようとした痕跡のようにも思えた。

    無意識に一歩だけ後ずさる。


    壁には、色褪せた時間割が貼られていた。国語、算数、理科、社会……そんな見慣れた文字に混じって、一つ違和感がある時間割に目が止まった。


    黒名「………“かげのじかん”?」


    震えるように小さくつぶやいた。ふざけて誰かが書いたにしては悪趣味で、消されずにそのまま残っていることに気味の悪さを感じた。


    さらに目を上げると、時間割の上に取り付けられた壁掛け時計が視界に入る。針はぴたりと動きを止めていた。示しているのは───“丑三つ時”。校舎の時計とまったく同じだ。偶然ではなく、この場所全体が同じ時刻に縛られているのだと確信させられる。


    黒名の呼吸が浅くなる。背中に冷たい汗が流れるのを感じながらも、黒板とその周囲から目を逸らさずにいた。


    黒名「……やっぱり、ここも普通じゃないな」


    どこもかしこも異常だと、自分に暗示をかけるように言葉を落とした。そうして、深呼吸をした後、指先を黒板の縁にゆっくりと伸ばしていった───。


    黒名 dice1d100=63 (63)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 70スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 11:08:39

    【探索成功:ハズレ】

    伸ばした指先で黒板の縁に触れる。
    ざらりとした感触が爪先にまとわりつき、白い粉がほのかに舞い上がった。指を引くと、チョークの粉が細かく付着していて、ただの“黒板”であることが分かる。

    眉をひそめ、黒板の隅を丹念に探った。だが、隠し扉のようなものはもちろん、書き残された文字も浮かんでこない。ただ粉と黒ずみだけが、無言で黒名を迎えているだけだった。

    次に教卓へと身を寄せる。
    天板の歪みを手で押してみても、何の反応も返ってこない。中を覗き込んでも、ただ古びた木材の暗い影が落ちているだけだった。内側から何かが押し上げたように見えたその痕跡も、錯覚か時間のせいなのか、確信を持つには至らない。

    壁の時間割にも、もう一度目を走らせた。
    先ほど見た「かげのじかん」の文字以外には、新しい情報は見つからない。触れてみれば、紙は湿気を吸ってぐずぐずに柔らかく、崩れ落ちそうなほどだ。

    そして、視線を上げる。
    時計の針は動かないまま、丑三つ時を指していた。長い間止まっているせいで、文字盤にはうっすらと埃が積もり、冷たい光を反射している。

    黒名「……ここもハズレだな」

    ぽつりと呟く。教卓の傍らに立ち尽くし、改めて周囲を見回すが、やはり何も見つからない。

    しばし沈黙が落ちる。
    自分の呼吸音だけがやけに大きく響き、喉が渇いていくのを感じる。

    ───黒名は肩の力を抜き、ふっと短く笑った。

    黒名「……何もなかったけど、お化けが出てこなくて良かった、良かった」

    黒板の前で一つ、安堵の息を吐く。
    ほんのわずかに背中を伸ばし、緊張を解いた表情には、かすかな安らぎが滲んでいた。

  • 71スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 12:00:40

    【② 机と椅子:士道龍聖&糸師冴】

    士道「冴ちゃん、次は俺と一緒に探そうぜ♪」

    冴「……勝手にしろ」

    一つ目の机へと歩いていく冴を、士道が軽やかに追いかける。床板がきしむ音が重なり、二人の影が机の列に並んで伸びていく。

    冴は無駄のない仕草で椅子を引き、机の中へ手を伸ばした。
    中には古びたノートが数冊放り込まれているだけで、特に怪しい仕掛けは見当たらない。
    それを軽く押し戻し、次の机へと移った。

    士道「なぁなぁ、こういうときってさ、絶対なんか出てくるだろ?骨とか手紙とかさ!マジでこういうのワクワクすんだよなぁ!」

    冴「子供かお前は」

    士道「少年心ってやつな?ホラー探索は楽しんだもん勝ちだろ!!」

  • 72スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 12:15:55

    士道は冴の隣の机を勢いよく開けて、中を漁る。

    乾ききった消しゴムのかけらや、ページが破れた教科書が詰め込まれていた。

    ぱらぱらと開くと、文字が滲んでおり、ところどころが墨のように黒く染みて読めない。


    冴は横目でちらりとそれを見やり、ため息を吐く。


    冴「……無駄口叩く暇があるなら、ちゃんと見ろ」


    士道「なんだよ冴ちゃん、冷たいんじゃねぇの?でもそういうとこも好きだぜ!」


    冴は返事をせず、すぐに次の机へ。

    淡々と引き出しを探り、整然と並んだ机の列を進んでいく。


    士道はそれに合わせて飛び跳ねるように動き、机を開けては声を上げる。


    士道「お、今度は紙切れだ!……って何書いてあんだコレ、字がぐちゃぐちゃで全然読めねぇ」


    冴「……はあ、くだらねえ」


    二人のやりとりは続き、机と椅子の間を行き来するたびに、乾いた木の匂いと紙の埃が漂った。


    二人は教室の中央を進みながら、机の奥に潜む“何か”を求めて手を伸ばしていく。


    士道 dice1d100=43 (43)

    冴 dice1d100=79 (79)

    ※合計値80以上の場合:探索成功

    ※合計値79以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 73二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 14:58:17

    探索成功したみたいでよかった

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 17:39:59

    >>73

    これ系は推しがひでえ目にあうのを期待してしまう

  • 75スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 18:09:46

    >>73

    みんな探索順調で安心です!アイテム出現回数ケチってるのでこのまま安定した探索を見せて欲しいです…!


    >>74

    フラグにならないことを願いましょう…怪我したり精神的に不安的になってる推しからしか得られない栄養もありますけどね……

  • 76スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 18:11:54

    【探索成功】

    士道が机の中に手を入れた瞬間、“ベチャ”っとした嫌な感触が指先に絡みついた。

    士道「……っ、なんだコレ」

    勢いよく手を引き抜くと、その掌には変色したパンの塊が乗っていた。表面は黒ずみ、湿気でふやけ、鼻をつく酸っぱい匂いが漂う。

    士道「うわ、汚ねぇな。……でもなんか面白いわ!冴ちゃん!なんか見つけたぜ!!」

    士道は眉をひそめつつも、まるでお宝でも見つけたかのようにパンを掲げる。冴は眉間に皺を寄せ、呆れた声を落とした。

    冴「……そんなもの持ち歩く気か?」

    士道「当たり前だろ?ホラー探索といえば、こういう小道具は重要アイテムなんだよ!」

    冴「…………お前が持ってろ」

    冴は視線もくれず、パンを押し戻すように士道の胸へと突き返した。士道は苦笑しつつも、結局は掌でその不気味な“腐ったパン”を大事そうに抱え込む。

    その後、残りの机や椅子を一通り探ってみても、埃まみれの教科書や空っぽの引き出しばかりで、特に目立ったものは見つからなかった。

    パン一つ。
    だが確かに“探索の成果”はそこにあった。

    士道「腐ってても食えなくても、成果があったってことだよな!」

    士道は誇らしげに笑い、胸の前でそのパンを掲げてみせる。冴は深く息を吐き、ただ前だけを見て歩き出した。

    【《くさったぱん》×1:食べられないがどこかで役に立ちそう】

  • 77スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 19:30:04

    【③ 荷物置き場:潔世一】


    黒名たちがそれぞれ机や黒板に散っていくのを横目に、一人教室の奥へと歩を進めた。


    視線の先には、壁際にずらりと並んだ荷物置き場。子供がすっぽり収まりそうなほどの大きな空洞が並び、その中は闇に沈んで中身が見えない。


    近づくにつれ、鼻先に湿った紙の匂いが漂い、床に散らばった教科書やノートが靴底に擦れて、“しゃり”と音を立てた。


    潔「……こんな場所に、何か残ってるのか?」


    小さく呟き、しゃがみ込む。


    足元に散らばったノートを拾い上げた。

    表紙は水に濡れて滲み、何度も開かれた跡のある紙は脆く、今にも崩れそうだった。文字はほとんど読めないが、ところどころに子供の走り書きが混じっているのがわかる。


    潔「字が滲んでて……全然読めないな」


    眉間に皺を寄せ、ノートを元の場所にそっと戻すと、呼吸を整えて立ち上がる。


    今度は目の前の空洞へと視線を向ける。

    暗闇の奥はまるで何かを飲み込んだまま口を閉ざしているように、不気味に沈黙していた。


    潔「……よし、次は中だ」


    ためらいを振り払うように、片手を差し入れ、内部を確かめ始めた───。


    潔 dice1d100=88 (88)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 78二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 20:17:47

    スレ主さんの新作楽しみにしていたよ

  • 79スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 20:55:48

    >>78

    嬉しいですありがとうございます!前の投稿からかなり時間が空いてしまったので原点に戻って探索SS書いてみました。良ければ引き続きお付き合い下さいませ!

  • 80スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 21:18:19

    【探索成功】

    空洞の奥に手を伸ばした瞬間、ひやりとした金属の感触が皮膚を撫でた。

    潔「ッ………?」

    息を止めて慎重に引き寄せると、小さな銀色の鍵が掌に収まる。薄暗い教室の中でも鈍く光を反射し、刻まれた文字がかろうじて読めた。

    ───“家庭科室”

    潔「………よしっ、順調だ」

    声が響かないよう、囁くように小さく口にした。冷たさを握り締める手に、僅かな安堵と達成感が宿る。

    その後も、別の空洞を覗き込み、足元に散乱した教科書やノートをめくってみた。湿気でふやけた紙の束はどれも無残に崩れており、鍵以外に目を引くものは何一つ残されていなかった。

    肩でひとつ息をつき、手に入れた鍵をポケットにしまい込む。

    潔「みんなの状況はどうだろう……士道はあの騒ぎ方だと、また何か見つけたんだろうな」

    ぽつりと呟いたあと、荷物置き場から立ち上がり、視線を黒板の方へ向ける。そこには既に三人の影が集まりつつあった。

    教室の薄暗さに浮かぶ彼らの姿を確かめながら、潔も歩を進めていった。

    【《家庭科室の鍵》×1:小さな銀色の鍵】

  • 81スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 21:23:55

    潔「お待たせ、みんなどうだった?」

    荷物置き場から戻ってきた潔が声をかけると、黒板前に集まっていた三人の視線がそちらへと向いた。

    黒名「俺のところは何もなかった」

    黒名が小さく肩を落とす。

    黒名「お化けも、役に立ちそうなものも……何にも出てこない」

    言葉の端にほんのり悔しさが滲む。それでも異形の気配を感じなかったことで、心底ほっとしているのは明らかだった。

    潔「ドンマイ、そんなこともあるって」

    潔が穏やかにフォローを入れると、士道がすかさず胸を張る。

    士道「こっちはパンを見つけたぜ!」

    誇らしげに掲げられたのは、しわくちゃに乾いたパン。表面が変色し、鼻をつく酸っぱい匂いを放っている。

    冴「腐ったものを堂々と出すな」

    冴が顔を顰める。

    黒名「………ゴミ、ゴミ」

    黒名も思わず呟く。
    潔は苦笑を浮かべながら、「士道らしいな」と心の中で苦々しくも頼もしさを感じていた。

  • 82スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 21:29:53

    潔「俺はこれを見つけた」


    潔はポケットから小さな銀色の鍵を取り出す。三人の目の前で差し出されたそれには“家庭科室”と掠れた刻印が刻まれていた。


    士道「お!次の遊び場は家庭科室ってわけか!」


    士道が身を乗り出す。


    黒名「これで次の場所に進めるんだな」


    黒名の声に、冴も僅かに目を細めた。

    確かな進展を感じ、四人の間に重苦しい空気が少し和らぐ。


    ───その瞬間だった。


    しんと静まり返った教室の奥から、か細い啜り泣きの声が漏れ出す。不気味な女の子の声が、木製の机の隙間を這うように響き渡った。


    潔 dice1d100=51 (51)

    黒名 dice1d100=69 (69)

    士道 dice1d100=7 (7)

    冴 dice1d100=81 (81)

    ※50以上の場合:影響なし

    ※49以下の場合:SAN値減少

  • 83二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 03:40:54

    ドキドキするな

  • 84スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 07:14:42

    >>83

    まだまだ余裕とアイテム達があるので大丈夫……なはずです!

  • 85スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 07:44:20

    【士道龍聖:SAN値20→19(-1)】

    潔「……なんだよ、この声」

    潔が顔を強ばらせ、耳を澄ませる。心臓が早鐘を打つが、ぎりぎりのところで気力を保っていた。

    黒名「女の子が泣いてる……」

    黒名は思わず小さく呟く。恐怖よりも、どこか胸が締め付けられるような可哀想さの方が先に立っていた。

    士道「………おいおい、ちびっ子泣かしてんじゃねえよ」

    士道はいつもの笑みを浮かべず、珍しく低い声で吐き出した。怯えているわけではない。ただ、聞こえてくる声に宿る悲しみに、心の奥が酷く痛んでいた。

    冴「気をつけろ。襲いかかってるかもしれねえ」

    冴は冷静に周囲へ視線を走らせる。感情よりも先に判断が働いている。今は身の安全を最優先にするべきだと本能が騒いでいた。

    ───啜り泣きはやがて、はっきりとした声へと変わる。

    『いたい……いたいよ……』

    少女のような声が教室に反響する。姿は見えない。ただ、机の影や窓の闇から漏れてくるように、どこからともなく響いていた。

    潔「………、……どうしたんだ?」

    潔が思わず声をかける。

    返ってきた声は震えていた。

  • 86スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 11:45:50

    『……からだがいたいの、ずっと、ずうっといたいの』

    『ママにもらったばんそうこう、さがしてきて……』

    『おくつといっしょにおいてきちゃったの』

    “靴”という言葉に、四人の脳裏へ、先程探索したばかりの下駄箱が浮かんだ。

    冴「……靴箱だな」

    冴が短く言う。

    士道「ああ、今度は見つかるかもしれねえ」

    士道が扉の方を見遣る。潔と黒名も無言で頷いた。

    教室の扉へと手をかける士道の背中には、やるせなさが滲んでいた。

    ───廊下に出ると、柔らかな光が四人を迎えた。

    蛍光灯の光は教室の薄闇を押し戻し、先ほどまでの重苦しさは嘘のように和らいでいる。空気は穏やかで、ここがまだ、安全だと告げているようだった。

    黒名はほっと息を吐き、潔の横で小さくつぶやく。

    黒名「……光ってると、なんか安心するな」

    士道は片手に腐ったパンをぶら下げたまま、軽口を叩く。

    士道「普通の夜の学校なんざつまんねえだろ、俺はワクワクしてぇの」

  • 87スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 18:26:52

    四人が下駄箱へと向かう道すがら、教室から聞こえる少女の声が廊下を伝って耳に届いた。

    その声に、黒名の顔に心配が滲む。

    黒名「どうして怪我してるんだ。……なんで、ずっと痛いなんて言うんだ?」

    潔は眉を寄せ、冷静に考えを巡らせる。

    潔「分からない。けど、放ってはおけないよな。何か事情があるっぽいし」

    冴は相変わらず淡々としているが、警戒は解いていない。足元に注意を払いつつ、声だけは低く響かせた。

    冴「怪我が治ったら、逆に襲ってくる可能性もある。用心して動け」

    黒名が不安そうに頷く。その視線は、先に進む足元と、壁とは反対側に並ぶ下駄箱へと交互に向けられていた。

    廊下の中央に右手に下駄箱の列が見えてくる。木製の枠が並び、扉のない空洞が暗い口を開けていた。いくつかはさっき覗いた場所と同じく湿気で黒ずみ、埃が積もっている。

    士道が少し前へ出る。興味と使命感が混ざったように、下駄箱を一瞥してからふっと笑った。

    士道「よっしゃ、ここで見つけられればガキンチョのヒーローだぜ!」

    ───その時だった。

    下駄箱の奥の闇が、ぬるりと形を変えた。暗がりが盛り上がり、まるで黒い布を引きちぎるように“影”が薙ぎ出した。

    無機質な黒の塊は、人の背丈を超えるほどに伸び、滑るような動きで廊下へと這い出す。“見る者に敵意を示す”その姿は、先程より悪意が強まっているようにも見えた。空気が一瞬で引き締まり、足先から背筋へと冷たさが走る。

  • 88スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 18:30:04

    士道「また来やがったな」


    士道の声は怒気と歓喜の混じったような響きだった。笑いが戻るどころか、今は闘志が燃えている。


    潔はすぐに身構える。唇を引き結び、右手をわずかに上げた。冷静だが、目は鋭い。


    潔「構えろ、無駄な動きはするな!」


    黒名は小さく震えながらも拳を握り、唇を噛む。恐怖はある。だが、少女を放ってはおけない思いも働いていた。


    黒名「絶対に……倒す……!」


    冴は表情を変えず、鋭く廊下を見据えた。声は低く冷たく、だが的確だ。


    冴「襲ってくるなら、先に潰す。生き残ることが最優先だ」


    影はゆっくりと四人の方へ向かってくる。廊下いっぱいにその黒が広がり、木の床に冷たい影を落とす。どこからともなく、低い唸りのような音が漏れた。


    四人は自然に間合いを取り、互いの動きを確かめ合う。視線を交わすことは少ないが、身体が連携を示していた。士道の叫び声と共に、全員の呼吸が重なる。


    士道「何度でも出てくるなら、何度でも倒すまでだよなあ!!!」


    【影】3回攻撃成功で撃破

    潔 dice1d100=29 (29)

    黒名 dice1d100=67 (67)

    士道 dice1d100=64 (64)

    冴 dice1d100=100 (100)

    ※20以上の場合:攻撃成功

    ※19以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 89スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 21:19:23

    【戦闘開始:勝利・100報酬付き】

    影が前に出るより早く、冴の身体が閃光の如く走る。靴底が床を叩き、鋭い瞳が黒を捉えた。

    冴「………鬱陶しい」

    吐き捨てるように声を落とし、そのまま飛び蹴りが影の胸部へ突き刺さる。衝撃音が廊下を震わせ、黒い塊が大きく仰け反った。瞳に宿る苛立ちが、普段の冷静さを打ち破るほどの迫力を帯びていた。

    黒名「うわ、すご……」

    黒名が思わず息を呑む。だがすぐに首を振り、自分もと拳を握りしめる。

    黒名「お、俺だって……!負けてられない!」

    恐怖を押し殺し、黒名の蹴りが迷いなく影へと向かう。臆せずに踏み込んだその一撃は、影の形を大きく揺らした。

    士道「いいじゃん!ナイスだぜチビスケ!……んじゃ、次は俺の番な!!」

    士道は勢いそのままに踏み込み、力任せに叫んだ。

    士道「さっさと死んどけ!!!!!」

    豪快な蹴りが影を直撃し、黒い体がさらに大きく揺さぶられる。

    潔も一歩踏み込むが───影はそこで耐え切れず、煙のように掻き消えた。

    潔「……また俺の出番なかったな」

    潔は小さく苦笑し、肩をすくめる。

  • 90スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 21:45:46

    士道「ま、次に期待するわ!このままだとサッカーしか出来ないヤツになっちまうからなあ!」

    士道が笑いながら突っかかる。

    潔「別に俺、サッカーだけ出来ればいいし……!」

    潔は少しだけムッとした顔で言葉を返し、それを見ていた黒名はほっとしたように息をついた。

    黒名「でも、よかったな。怖かったけど、みんな無事で安心した」

    そうして廊下は再び静寂に包まれる。

    ───その時、黒い残滓が床に小さく音を立てた。

    黒名「………ん、何か落ちてきたぞ?」

    黒名が指差す。

    足元に転がっていたのは、黄色い包紙がキラキラ光るレモン味の飴玉と、色褪せた怪獣のおもちゃだった。

    士道「このキラキラしてんのは………アメ玉?コイツ、影のくせに甘党なのかよ!」

    士道が飴玉を掴んで笑う。

    潔「冗談言ってる場合じゃないって!……まあ、効果は分からないけど、とりあえず持っておいた方が良さそうだな」

    潔がツッコミながら冷静に促す。

    【《れもんあじのあめだま》×1:SAN値+1回復】
    【《かいじゅうのおもちゃ》×1:効果は不明だが困った時には力になってくれそう】

  • 91スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 22:11:38

    その横で、冴は無言で怪獣のおもちゃを拾い上げた。掌にはじんわりと懐かしさが宿る。

    冴「………ふっ、随分とボロボロになったな」

    一瞬だけ微笑んだ後、ぼそりと呟いた声は酷く優しくて。その声に士道も黒名も一瞬だけ言葉を失った。

    拾ったアメ玉やおもちゃをそれぞれサッカーバッグにしまい込み、四人は改めて下駄箱へと視線を向けた。

    廊下から届く光が下駄箱に降り注いでいるが、油断はできない。全員の表情に、それぞれの決意が滲んでいる。

    潔「よし、それじゃあ行くか」

    潔が小さく声をかけ足を踏み出した瞬間、黒名が真っ直ぐ顔を上げる。

    黒名「俺も一緒に見る。二人で確かめたほうが安心だ、それにさっきのリベンジがしたいからな」

    黒名の声にはまだ震えが残っているが、先ほどの戦いで少し自信が付いたのか、その言葉はどこか強気だった。

    潔は黒名の表情を見て、軽く頷く。

    潔「頼もしくなったな、黒名」

    黒名「ああ、俺もやる時はやるんだ。また腕が出てきたら、今度はこの歯で噛み付いてやる」

    あー、と大きく口を開けた黒名。口の中にはギザギザの歯が規則正しく並んでいた。

    潔「噛み付くって……そこまでやっちゃう!?」

    潔は笑いながらも拳を握る。少女を助けるため、次こそは絶対に見つけてやると、静かに覚悟を決めていた。

  • 92スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 22:40:02

    二人は自然と肩幅を合わせ、1~2年生の列に向かって歩き出す。並ぶ木材の隙間から差す光が二人の影を長く伸ばし、足取りは慎重だが確かものだった。

    一方で、士道は腕を組んで少し誇らしげに下駄箱の方へ視線を向ける。

    士道「3~4年生の下駄箱はもう見たぜ?隅から隅まで全部な!」

    その声にはいつものはしゃぎが戻っているが、目の奥には本気の熱が残っている。

    冴は士道の隣に立ち、淡々と扉のない空洞を眺める。

    冴「ならお前は待ってろ、俺はもう一度5~6年生の下駄箱を見る」

    その場から立ち去ろうとする冴を、士道が慌てて止めに入る。

    士道「待て待て、俺も行くって!もし冴ちゃんの顔に傷つけたヤツがいたら、俺がぶっ殺してやるからさ♪」

    冴は微動だにせず、呆れた顔でため息を吐いた。

    冴「……勝手にしろ。つーかここにいるヤツなんて全員死んでんだろ」

    士道は「それもそうだな!」と笑い、冴の隣で肩を軽く叩いた。

    冴を先頭に、二人は5~6年生の下駄箱へ向けて歩き始める。士道は時折、下駄箱を軽く蹴って確かめる仕草を見せ、冴は冷静にその横で観察を続ける。

    下駄箱の空気は依然として張りつめているが、四人それぞれの動きに無駄はない。

    潔と黒名は互いに声を小さく掛け合いながら、士道は冴にちょっかいをかけながらも確実に前へ進んでいった。

  • 93二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 06:02:41

    ほしゅ

  • 94スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 09:52:01

    >>93

    保守ありがとうございます!ホスト規制が高頻度で発生するためとっても助かります

  • 95スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 09:54:13

    【再探索① 1~2年生の下駄箱:潔世一&黒名蘭世】

    一度確認したはずの場所を、もう一度念入りに洗い直していく。低い棚がずらりと並び、口を開けた空洞は、まるで小さな洞穴の連なりのようだった。そこに積もる湿気は、教室よりも重たく、空気に古びた木の匂いを混ぜている。

    潔は二年生用の列を、黒名は一年生用の列を担当し、互いに背中を合わせて腰をかがめていた。二人の影が淡く交差し、動くたびに床に揺れる。

    黒名が、少し咳払いをしながら空洞を覗き込む。

    黒名「……相変わらず真っ暗だな、何があるかも分からない」

    横で一つずつ丁寧に下駄箱を確かめる潔が、ちらりと振り返って答える。

    潔「無理して手突っ込むなよ。……何か見えたら、すぐ声をかけろ」

    黒名「分かった、潔も無理するなよ」

    黒名は短く返すが、声の調子にはわずかな緊張が混じる。埃を含んだ冷気が、覗き込む顔にかかってくるたび、小さく咳払いをして眉を寄せた。

    潔は引き続き慎重に一つずつ空洞へ視線を送る。手前に落ちている靴板をずらし、奥を確認しながら進んでいく。一度目の探索では気づけなかったものがないか、集中して目を凝らしていた。

  • 96スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 09:55:33

    やがて潔の視線は───先程、自分の腕を引っかかれた空洞へと吸い寄せられる。気配の残滓のようなものを感じ取ったのか、潔は歩みを止め、そこに腰を落としてじっと暗がりを睨んだ。


    潔「……ここだ。あの時………」


    思わず呟いた声は、湿気に吸い込まれていくように小さく響く。


    黒名が振り返り、心配そうに声をかける。


    黒名「大丈夫か?また何か出そうか?」


    潔「……分からない、嫌な感じは少しだけするけど。ただ、無視はできないから」


    潔は視線を逸らさずに答える。そうして指先は、ゆっくりと空洞の縁へ伸びていった。


    潔 dice1d100=80 (80)

    黒名 dice1d100=18 (18)

    ※合計値100以上の場合:影響なし

    ※合計値99以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

    ※再探索のため成功率上昇なし、合計値問わずアイテム発見可能

  • 97二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 14:45:55

    うわ惜しい!

  • 98二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 19:00:54

    2足りない

  • 99スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 20:02:25

    >>97

    あとちょっとでしたね!でもまだまだ余裕があるのできっとこの先もなんとかなります!


    >>98

    悔しいですよね……士道達は成功してくれることを願いましょう!

  • 100スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 20:05:49

    【潔:SAN値17→16(-1)】
    【黒名:SAN値14→13(-1)/怪我値100→95(軽傷)】

    伸ばした指先が、空洞の中の“何か”を感じ取った。空気が一瞬、ぴたりと止まる。
    冷たい。だが、それは木の冷たさではない───どこか、生温いものが潜んでいる。

    潔は即座に腕を引いた。

    潔「……黒名、来るぞ!」

    声が下駄箱に鋭く響く。

    次の瞬間、下駄箱の奥から青白い腕が伸び出した。指先は細く、肌は濡れた紙のように透けている。空気が軋む音がして、湿った風が二人の頬を撫でた。

    黒名「ッ任せろ……!」

    黒名が低く息を吐く。逃げるどころか、一歩踏み込み───牙を剥いた。

    ガチリ、と乾いた音が響く。黒名のギザギザの歯が、腕に食い込んだ。そのまま勢いよく腕を引き千切ると、腕は苦しげに蠢き、ぼやけて、霧のように消えていった。

    だが、直後に黒名の頬を何か鋭いものが掠めた。細い線が赤く浮かぶ。

    黒名「いたっ……」

    潔「黒名!大丈夫か!?」

    焦る潔の横で短い息を漏らしながらも、黒名は冷静に答える。

    黒名「……大丈夫、ちょっと引っかかれただけだ」

  • 101スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 20:28:59

    潔は一瞬だけ心配そうに眉を寄せたが、黒名の言葉を聞いて息を整える。

    潔「……無茶はするなよ。でも、助かった」

    黒名は肩を竦め、血のついた指先を下駄箱の縁にかけ、中をもう一度覗き込む。

    黒名「……なんかある」

    視線の先には湿気で端が擦り切れた小さな紙切れが入っている。潔が拾い上げると、拙い文字でこう書かれていた。

    『わすれものしちゃだめ』

    潔はそれを手の中で見つめ、ふと思い出すように自分のバッグを開いた。廊下で拾ったもう一枚の紙を取り出し、慎重に並べる。二つの紙は、継ぎ目を合わせるようにぴたりと繋がった。そこには、こう綴られていた。

    『わすれものしちゃだめ、かげがくるよ』

    潔「……なるほどな、取りこぼしちゃいけないってことか。忘れたら“影”が来る───そういうことだろ」

    黒名が静かに頷く。表情には、ほんのわずかだが複雑な陰が差していた。
    二人は周囲を確認しながら立ち上がり、暗い下駄箱の列を背に廊下へと戻る。影の気配は消えている。だが、廊下の静けさが、余計に不気味だった。

    潔「……行こう」

    潔が言うと、黒名は頬の傷を軽く拭って、小さく答えた。

    黒名「ああ、士道達にも知らせないと。………また出てこないといいな」

    その声は少しだけ強がりで、けれど確かに───前を向いていた。

    【《ちぎれたかみ》×1:拙い字で『わすれものしちゃだめ』と書かれているメモ】

  • 102スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 20:50:02

    【再探索② 5~6年生の下駄箱:士道龍聖&糸師冴】

    視線の先には、少しだけ背の高い下駄箱が並んでいた。
    冷たい空気が流れ、木の隙間には黒ずんだ湿気が染みついている。空洞の奥は闇を抱え、何かが潜んでいるような静けさだった。

    冴は並ぶ棚をざっと見渡し、淡々と指示を飛ばす。

    冴「俺は六年の段を見る。お前は五年の方を見ろ」

    士道「りょーかい♪」

    士道は軽く手を上げて応えると、その勢いのまま下駄箱を足で軽く蹴った。古びた木がギシリと鳴り、埃がふわりと舞う。

    士道「相変わらずホコリばっかだな。ちゃんと掃除しとけよなー」

    軽口を叩きながらも、士道の目は意外と真剣だ。空洞の奥まで覗き込み、時折しゃがんで手を入れて確かめていく。

    冴はその様子を横目で見つつ、自分の段を一つずつ丁寧に確認していった。

    五年、六年───どの棚も同じように冷たく、湿り気を帯びた空気を吐き出している。

    何も出てこないことに、士道はつまらなさそうに肩をすくめた。

  • 103スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 21:00:42

    士道「なんも出てこねーな、あの影根に持ってんのかと思ったけど」


    冴「何が起こるか分からねえ、油断すんな」


    冴の声は低い。

    その一言に、士道も笑いを引っ込めた。


    士道「あいあい、分かってるって」


    しばらくして、冴の動きが止まる。

    その視線は、ある一つの空洞に吸い寄せられていた。


    そこは───先程、“笑い声”が聞こえたあの場所だった。照明の光が届かないその奥は、闇がより濃く沈んでいる。


    指先が自然に頬へと触れる。

    まだ微かに残る傷の感触。皮膚の下で鈍い痛みが走る。


    (……次があっても、確実に避けられる)


    冴は静かに息を吐いた。


    その目には迷いがなく、ただ、これから起こるかもしれない“次”を正確に見据えていた。


    士道 dice1d100=45 (45)

    冴 dice1d100=88 (88)

    ※合計値100以上の場合:影響なし

    ※合計値99以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

    ※再探索のため成功率上昇なし、合計値問わずアイテム発見可能

  • 104スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 21:29:48

    ゆっくりと暗闇の中に手を伸ばすと、指先が何か固いものに触れた。木片かと思ったが、少し滑らかで、角の丸い感触がする。

    冴は慎重にそれを引き寄せ、埃を払いながら光の下へと出した。

    冴「………救急箱、か」

    白いプラスチックの箱は、黄ばんでところどころにひびが入っていた。蓋の中央には、黒マジックで書かれた文字。

    ───“さーちゃん”

    子どもの字ではない。
    どこか柔らかく、優しい丸みがある。

    冴は眉をひそめ、低く呟いた。

    冴「……母親の字だな。これがさっき子供が言ってたやつか」

    士道「なになに冴ちゃん、何か見つけた?」

    士道が気軽な調子で顔を覗き込んでくる。

    廊下から伸びる明かりが冴の横顔を照らし、淡い影が揺れた。

  • 105スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 21:40:33

    冴「救急箱だ。中は───」

    冴が開けると、包帯や絆創膏、小さなハサミがきちんと並んでいた。

    だが、その一角。包帯の下に、茶色く乾いたシミが広がっている。
    ───古い血の跡だ。

    一瞬だけ、士道の表情が曇る。

    士道「6年生の下駄箱にこれがあって、血が付いてる。………あー、何となく分かったわ」

    冴は箱を閉じ、立ち上がった。

    冴「持っていくぞ。ここから脱出するための手がかりになるかもしれない」

    士道「りょーかい。……んじゃ、アイツらと合流して教室向かうか」

    士道の声はいつも通り軽い。けれどその足取りは、どこか慎重だった。

    冴は静かにうなずき、救急箱を抱えたまま廊下へと歩き出す。

    古びた床が軋み、二人の影がゆっくりと伸びていく。薄暗い廊下の奥から、冷たい風が一筋、ふっと吹き抜けた。

    【《きゅうきゅうばこ》×1:1年1組の少女のものと思われる】

  • 106スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 22:08:45

    暗がりを背にわずかに埃を舞い上げながら、下駄箱の影から士道と冴が戻ってくる。
    その表情には、ひと仕事を終えた安堵と、どこか張り詰めた気配が同居していた。

    潔「お疲れ、俺たちはこれを見つけた」

    潔が手を伸ばす。
    掌には、湿気でふやけた紙切れ。

    『わすれものしちゃだめ』と拙い字が滲んでいる。

    冴はその文字を一瞥し、眉を寄せた。

    冴「……なるほどな。次からはより慎重に確認しねぇとな」

    士道「ま、次も見つけてやっから期待しとけって!」

    士道が口を挟み、冴が懐に抱えていたものを指さす。

    士道「こっちは頼まれてたモン、ちゃんと見つけてきたぜ!」

    潔と黒名の視線が同時に向く。

    冴が手渡した救急箱は、ところどころにひびが入り、掠れた文字で“さーちゃん”と名が浮かんでいる。

  • 107スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 22:23:57

    黒名は小さく息を呑み、指先で箱の縁をなぞった。

    黒名「……これで、あの女の子の怪我が治せるんだな」

    言葉の端に、安堵の色が滲む。

    士道はにっと歯を見せて笑い、肩をすくめた。

    士道「だろ?これで有言実行だぜ!」

    冴は呆れたようにため息を吐くが、その横顔には僅かに優しい表情が浮かんでいた。

    やがて四人は、光の灯る廊下を並んで歩き出す。床の軋む音と、遠くで鳴る風の音だけが静かに響く。

    士道「~~~♪」

    士道が鼻歌を口ずさみながら、先頭を軽い足取りで進む。

    その背を追うように、潔と黒名、冴が続く。

    廊下の奥───あの教室の方から、また微かに少女の声がした気がした。
    だが、誰も口にはしなかった。

    ただ、歩調を少しだけ早める。

    士道の駆け足が、闇を切り裂くように響いた。

  • 108スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 22:47:21

    軋む音を立てて、教室の扉が開く。

    中は闇に沈んでいた。廊下の灯りがわずかに差し込み、角の机の上に置かれた花瓶───その中の赤い彼岸花だけを照らしている。
    血のような花弁が、闇の中でゆらゆらと揺れた。

    士道「ほら、救急箱持ってきたぜ!」

    士道が一歩、光の筋を跨いで中へ入る。その声に続いて、冴が静かに机へと近づき、花の傍へ救急箱を置いた。

    箱が木の表面に触れた瞬間───

    『………ありがとう』

    柔らかく、それでいて胸の奥をかすめるような声が響いた。次の瞬間、救急箱は光の粒となって、音もなく消えた。

    潔「……っ、今の……」

    潔が息を呑む。
    黒名は目を細め、教室の奥を見つめていた。

    ガサ……ガサ……
    何かが、机と机の間を這うような音。
    四人が同時に振り返ると、闇の中から小さな影が姿を現した。

    それは───少女だった。
    頭には包帯が巻かれ、擦り切れた制服の裾が破れている。身体のあちこちには、色とりどりの絆創膏が貼られていた。

    『……これでもう、いたくないよ』

    微笑んだその顔は、透けるように白く、どこか温かかった。

  • 109スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/04(土) 22:58:44

    少女は、手に小さな絆創膏を一枚持っている。

    『お兄ちゃんたちにも、ひとつあげるね』

    その声に導かれるように、士道がそっと受け取る。小さな四角いそれは、ほんのりと光を帯びていた。

    『かていかしつで、わたしのわすれものをみつけたらもってきてね』

    少女は、まっすぐに彼らを見上げる。

    『そうしたら……わたし、やっとパパとママのところにいけるの』

    その微笑みは、哀しみと安堵が混ざったように見えた。

    次の瞬間、風が通り抜け、花瓶の彼岸花がかすかに揺れた。少女の姿は、花の揺らぎとともに消えていた。

    静寂が戻る。誰も言葉を発せず、ただ、彼女が立っていた場所を見つめる。

    ───やがて、潔が小さく息を吐いた。

    潔「……家庭科室、だな」

    四人は教室を出て、角にある“家庭科室”の前へ向かう。扉の前で、潔が先程見つけた鍵を取り出した。

    金属の音が静かに、カチャリと響いた。

    【《かわいいばんそうこう》×1:SAN値+1、怪我値+5回復】

  • 110二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 07:58:24

    パパとママって誰だ?

  • 111スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 10:39:46

    >>110

    少女の両親です!

  • 112スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 12:49:54

    家庭科室の扉を開けると、湿った空気がふわりと流れ出した。かすかに漂うのは、古い木と油の混ざった匂い。部屋の中は薄暗く、窓のすき間から射し込む非常灯の明かりだけが、机の輪郭を浮かび上がらせていた。

    調理台は分厚い木製で、天板の角は丸くすり減っている。かつて磨かれていたであろう光沢も、今は色褪せ、所々が黒ずんでいた。壁際のガス管は錆びつき、取っ手には蜘蛛の巣が絡んでいる。

    潔が声を潜める。

    潔「……ここ、家庭科室だよな?」

    冴が目線を滑らせた。

    冴「恐らくな。ガスの元栓が見えてる」

    黒名は鼻をひくつかせて呟く。

    黒名「……焦げくさい。古い匂いだな」

    士道は面白そうに口角を上げた。

    士道「昔のコンロって、モロに爆発しそうな見た目してるよな!」

    潔「縁起でもないこと言うなって…!」

    潔が反射的に叫ぶ。

    黒名「……爆死は嫌だ、嫌だ」

    黒名が小さな声で繰り返した。

    薄いカーテンが時折震える。吊るされた鍋やボウルが、触れ合ってはかすかに音を立てた。照明は落ち、天井の裸電球はほこりをまとって沈黙している。

  • 113スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 12:51:46

    家庭科室の中には、調べられそうな箇所が三つあった。


    1つ目は、部屋の中央に並ぶ調理台の周囲。厚みのある木の台は四台、斜めに配置され、ところどころに刃物跡が刻まれている。使い古された鉄製の鍋がひとつ転がり、薄く錆びて赤茶けていた。机の脚の下には古いガス管が通り、少しだけ冷気が流れている。


    2つ目は、壁際にある棚とガスコンロの並び。棚はひび割れた木製で、乾いた埃が積もっている。上段には、色褪せた布製のエプロンがいくつも折り重なっていた。古いガスコンロは、脚の短い鉄製の台に固定されており、つまみの一つは欠けて、黒く焦げた跡が残っている。ガス管の接続口が緩んでおり、金属のにおいがかすかに漂っていた。


    3つ目は、出入口の横にある流し台とその下の収納扉。流しは深く、ステンレスではなく琺瑯製の古い型。水道管の継ぎ目にはひびが入り、蛇口の先からは水滴がゆっくりと落ちていた。床はそこだけ湿っており、足を踏み出すたびにかすかに軋む。下の収納扉は片方だけ開いており、中には使われなくなった木箱が押し込まれている。


    黒名が小さく「……落ち着かないな」と漏らした。


    士道は笑いながら部屋の中をウロウロする。


    士道「いいな、この感じ!嵐の前の静けさってやつ!何が起こるか楽しみだぜ!」


    冴が呆れてため息をひとつ。


    冴「……大人しくしとけ、無駄なことに体力を消耗するつもりはない」


    湿り気と古びた木の匂い。人の気配を忘れたこの部屋が、今、静かに息をしていた。


    【探索ポイント・家庭科室】

    ① 調理台周辺

    ② 棚とガスコンロ

    ③ 流し台と収納扉


    >>114

    ※探索箇所・キャラを選んでください

    ※一箇所のみ二人で探索可能です

    ※二人の探索の場合、成功率が上昇します

    ※アイテム等を使用する場合、どのキャラに使用するか教えてください

  • 114二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 13:07:28

    黒名蘭世 ②

  • 115スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 17:12:34

    >>114

    1人だけではなく、全員の探索場所をお選びください


    >>116

    再安価です

    ※探索箇所・キャラを選んでください

    ※一箇所のみ二人で探索可能です

    ※二人の探索の場合、成功率が上昇します

    ※アイテム等を使用する場合、どのキャラに使用するか教えてください

  • 116二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 18:13:47

    ①黒名
    ②士道
    ③潔、冴
    アイテム使うタイミング悩むのでスレ主にお任せでも大丈夫でしょうか…?

  • 117スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 18:37:58

    >>116

    もちろん大丈夫です!家庭科室では状況に応じてこちらの判断でアイテム等使用致しますね!

  • 118スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 20:25:12

    【① 調理台周辺:黒名蘭世】

    黒名「俺は一人で行く。怖がってばかりじゃ足でまといになるからな」

    その言葉は、自分に言い聞かせるように小さかった。

    潔「お、おい黒名!?お前さっき怪我して───」

    潔が声をかけたが、黒名は振り返らずに首を横に振る。

    黒名「大丈夫だ、すぐに終わる。それに怪我してるのは潔だって一緒だろ?」

    潔の返事を聞くこともなく、黒名は足音を古い床を軋ませる。

    部屋の中央───四台の調理台が、沈黙したまま並んでいた。非常灯の明かりが窓から細く差し込み、角ばった影を床に落とす。

    ゆっくりと歩を進め、最も手前の台に手を置いた。
    木の感触はざらつき、かすかに湿っていた。指先に残るのは、古い木と油が染みついた感触。

    黒名「……ここで、本当に料理をしてたのか?」

    声に出すと、空気がわずかに揺れた。
    すぐ近くで何かが動いたような錯覚に息を止める。

    調理台の端には、刃物で刻まれた跡が無数に残っている。線は浅く、けれど重なり合って、模様のようにも見えた。
    錆びた鍋が床に転がり、かすかに揺れて止まる。

  • 119スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 20:26:47

    黒名「……気のせいだ、不安定な位置に置いてあっただけだ。誰かが触ったわけじゃない」


    呟きは、少し震えていた。

    その震えをごまかすように周囲を見渡す。


    木の脚の下、古いガス管が覗いている。

    そこから吹き上がるように、ひやりとした冷気が漂っていた。


    黒名「ガス栓……外に繋がってるのか」


    しゃがみこみ、目を凝らした。

    床の下に続く影が、不自然に深く見える。


    背後から潔が小さく息を呑む音がしたが、黒名はもう聞いていなかった。


    冷気が頬をかすめる。


    そして───その奥へと、そっと手を伸ばした。


    黒名 dice1d100=82 (82)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 120スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 20:49:08

    【探索成功】

    伸ばした手が、何か冷たいものに触れた。

    肩がビクッと跳ねる。
    反射的に息を吸い込み、心臓が一拍、強く跳ねた。

    その感触は金属───だが、冷たさの奥に、かすかな手触りがある。震える指で確かめながら、ゆっくりとそれを手繰り寄せた。

    ───出てきたのは、小さな包丁だった。

    刃先には安全カバーが付けられ、埃をかぶったまま。それでも、刃こぼれひとつない姿が、不思議と丁寧に保たれていた。

    喉を鳴らし、包丁の柄をそっと撫でる。
    そこには、子どもの筆跡で「さち」と掘られていた。

    黒名「………“さち”?」

    かすれた声が、冷えた空気の中で溶けていく。

    すぐに、記憶の奥から思い出す。
    下駄箱で見つけた救急箱に書いてあった名前、それを自分のものだと受け取った少女。

    ───“さーちゃん”。

    一年一組のあの女の子の名前だ。

  • 121スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 20:51:19

    胸の奥に、ほんのわずかな温かさが灯る。恐怖に縮こまっていた心臓が、静かに解けていくのがわかった。

    黒名「……見つけた……、良かった、良かった」

    言葉がこぼれた瞬間、部屋の空気が少しだけ軽くなる。木の床の軋みも、さっきより柔らかく聞こえた。

    包丁を両手で包み込むように持ち上げる。
    それはまるで、何かを守るような仕草だった。

    黒名「ちゃんと……返してやらないとな」

    自分に言い聞かせるように呟き、その包丁を丁寧にサッカーバッグの中へしまい込む。金属の冷たさが、今は不思議と心地よかった。
    誰かの記憶を拾い上げたという安堵が、指先をあたためていく。

    そうして黒名はゆっくりと立ち上がる。

    その表情にあったのは、恐怖でも不安でもなく───ほんの少しの、誇らしさだった。

    【《ちいさなほうちょう》×1:用途は不明だが1年1組の少女の忘れ物と思われる】

  • 122スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 21:27:00

    【② ガスコンロと棚:士道龍聖】

    士道「んじゃ、俺も行ってくるわ!」

    元気に歩き出す士道の足音が、静まり返った家庭科室に軽く響いた。

    埃の匂い、焦げた金属のにおい、そしてわずかに混じる油の酸化臭───その全部が、時間の止まった空間の空気を濁らせている。

    士道「おっ、ここ何かありそうじゃね?」

    壁際の棚に手を突っ込む。
    乾いた木が軋み、手の甲をざらりと掠めた。積もった埃がふわりと舞い、思わず片手で鼻を押さえる。

    士道「ぶはっ……なっつ!こんなん昔テレビで見たわ!」

    棚の上段には、薄汚れた布の束。
    持ち上げると、折り重なったエプロンが緩く解れ、布と布の間から古い洗剤のような匂いが立ちのぼる。

    士道「……おー、エプロン祭りじゃん。誰がこんなに仕込んだんだよ、料理部か?」

    興味なさそうに笑いながら、布の束を適当に棚に戻す。

    目線を下げると、並んでいるのは重たそうな鉄製のガスコンロ。脚が短く、台座の周囲には焦げ跡。
    触ると、冷えた鉄が指先にしっとりと張りつく。

  • 123スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 21:29:39

    士道「これまたレトロだな、火でも出たら大火事になるわ。……いや、逆に燃やせば脱出できんじゃね?」


    名案だとにやりと笑った。


    腰を落とし、コンロの側面を覗き込む。つまみの一つが欠け、黒ずんだ金属がむき出しになっていた。


    士道「おっと、こいつ……まだ動くのか?」


    興味の矛先は危うい方へ向かう。


    ガス管の接続部を軽く蹴ると、鈍い金属音が響く。その音がやけに響いて、教室全体が一瞬静まり返った。


    士道はまるでその緊張を楽しむように、片手でコンロのつまみを掴む。


    士道「……ちょっと試してみるか」


    そう言って、笑いながら───ゆっくりと、つまみを捻った。


    ガリ、という感触が、指先に伝わる。

    埃が舞い、空気がかすかにざわついた。


    士道 dice1d100=40 (40)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 124スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 21:59:33

    【探索失敗:士道龍聖】
    【SAN値19→18(-1)/怪我値100→95(軽傷)】

    つまみを捻った瞬間、ガスコンロの奥の黒ずんだ着火口から“パチッ”と小さな火花が跳ねた。

    一瞬の静寂。

    次の瞬間、そこから細い炎がスッと伸びて、まるで誰かの指のように空気を掴む。火はゆらりと形を変え、薄く透けた手のひらのように揺れながら、士道の腕へと伸びてきた。

    士道「………お?」

    火は音もなく触れた。
    燃えるというよりも、撫でられる感覚に近い。

    次の瞬間、ジャージの袖口が赤く弾け、青白い炎が走る。生地が焦げ、煙が立ち昇る。

    反射的に腕を引いたが遅かった。
    焦げた匂いが鼻を突く。

    火はすぐに消えた。だが、袖の下の肌は赤くただれ、皮膚の上を熱がじんじんと這う。

    士道はしばらく、ぽけーっと腕を見つめていた。表情の抜けたその横顔に、ひどく静かな空気が流れる。

  • 125スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 22:05:37

    士道「……っは」

    小さく息を吐き、次の瞬間には大声で笑い出す。

    士道「いいな、最高だわ!!!」

    笑い声が家庭科室の壁に反響し、埃がまたふわりと落ちた。

    士道「俺の予想が裏切られるのは、やっぱりたまんねぇよな!!!」

    火傷の痛みを気にも留めず、その場で笑いながら腕を軽く振る。まだ熱を持つ袖口から、焦げた糸くずがパラパラと落ちた。

    士道「ちょっと焼けたくらいが丁度いい!この痛みが、俺はまだこの世界で生きてるって証明してくれる!!!」

    そう言って、白い歯を見せて笑う士道の目は、どこまでも楽しげだった。

    床には、焦げた布の破片。
    壁には、うっすらと煤の筋。
    けれどそんなことは気にも留めない。

    士道「ま、楽しかったわ」

    ぽつりと呟き、焼けた袖を軽く払う。
    その声には、痛みよりも満足の色が滲んでいた。

  • 126スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/05(日) 22:10:24

    さて、投稿開始から1週間が経過しましたがまだまだ終わりません(多分今で5分の1くらい)
    引き続きのんびり更新していきますので良ければお付き合いくださいませ
    ここまでの経過は非常に順調ですね、スレ主ダイス運が悪いのでこれからが怖いですが…
    ではまた明日からよろしくお願いします、おやすみなさいませ

  • 127二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 03:52:22

    ゆっくりのんびり楽しみに待ってるよ

  • 128スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 07:11:53

    >>127

    ありがとうございます!ゆっくりのんびりでいいと思えるといつも楽しく更新ができるので、マイペースで更新続けていきたいと思います!

  • 129スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 07:54:49

    【③ 流し台と収納扉:潔世一&糸師冴】

    黒名と士道がそれぞれの探索場所に向かったことを確認し、潔と冴もゆっくりと歩き出した。

    潔「……俺たちは、あっちか」

    潔が視線で流し台の方を示す。出入口の脇、影が少し濃く落ちている場所。そこに古びた流し台が静かに佇んでいた。琺瑯の白は、ところどころ剥げてくすんでいる。蛇口の先からは水滴が一つずつ落ち、“ぽちゃん、ぽちゃん”と室内の静けさを切り裂くように響いていた。

    潔「なあ冴、これ……突然水が吹き出たりしないよな……?」

    冴「知らねえよ。触って確かめりゃいいだろ」

    冴の返答はいつも通りぶっきらぼうで、潔は思わず肩をすくめた。

    潔「いや、ほら……こういう時って、変なもん出たりするだろ……」

    冴「お前の頭の中だけだ。行け」

    潔「うぅ……く、くそ……わかったよ……」

    潔は慎重に足を進めた。床板がしっとりと湿っていて、靴の裏が吸い付くような音を立てる。

    潔「………冷た」

    小声で呟いたその声が、やけに大きく響く気がした。

    流し台の下の収納扉の片方が開いている。薄暗い隙間から、古い木箱の角が覗いていた。そこだけ風が抜けているようで、髪の先がかすかに揺れる。

    冴は一歩下がり、腕を組んだまま様子を見ている。

  • 130スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 08:06:34

    冴「おい、手早くやれ。ぐずぐずしてると余計なこと考えるだけだ」


    潔「そんなこと言われてもな……!……うわ、湿ってる……」


    潔はしゃがみ込み、蛇口の下へと手を伸ばす。錆びた金属のにおいが鼻についた。水滴が指先に落ち、ひやりとした感覚が走る。


    潔「……な、なんか嫌な感じしない………?」


    冴「しねえよ。ただ古いだけだ」


    冴の声は低く、淡々としていた。


    流し台の奥、収納の中は暗く沈み、古びた木箱がいくつも押し込まれている。空気が淀み、湿気が肌に張り付く。


    潔「……ちょっと、見てみるか……」


    手を伸ばしかけて、止まる。

    喉の奥が、ひゅっと鳴った。


    冴「おい、何迷ってんだ」


    潔「わ、わかってるって!今、今開けるから!」


    冴の視線を背に受けながら、潔は手を伸ばした。その指先が、湿った木の表面をかすめる───。


    潔 dice1d100=70 (70)

    冴 dice1d100=51 (51)

    ※合計値80以上の場合:探索成功

    ※合計値79以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 131スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 10:01:11

    【探索成功:ハズレ】

    木箱には何ら異変はない。
    開けてみても、中身は空だった。

    潔は息を止めたまま、しばらく中を覗き込んでいた。

    古びた木箱の底には、うっすらと埃が積もり、それが自分の呼吸に舞い上がって、鼻をくすぐる。

    潔「……な、なんにもないな………」

    小さく呟いて立ち上がると、膝についた埃を払った。

    冴は壁にもたれたまま、腕を組んでこちらを見ている。

    冴「だから言っただろ。古いだけだって」

    その声が冷ややかで、潔は思わず肩をすくめる。

    潔「い、いや!だって、水音とかしたし!ああいうの、絶対なんかある雰囲気だったんだよ!!」

    冴「お前が勝手に雰囲気作ってんだよ」

    淡々とした一言に、潔は苦笑いを浮かべた。

    蛇口をひねってみても、水は出ない。ぽたり、と最後の水滴が落ちて、床に小さな輪を作った。それが静かに広がって、消える。

    潔「なんか損した気分だわ……」

    潔がぼやくと、冴は小さく息を吐いた。

  • 132スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 11:09:05

    冴「お前が勝手にビビってるだけだ。まあ、何も出ないならそれでいい」

    潔「そうだけどさ……なんかこう……オチくらい欲しかったな」

    冴はわずかに眉を動かしただけで、反応しない。
    潔は肩を落としながらも、手を拭うようにパンパンと叩いた。

    流し台の周辺には、かすかな湿気と、古い金属の匂い。それだけが、ここがまだ“生きている”ことを示すように残っていた。

    潔は冴の隣に立ち、もう一度部屋を見回す。中央では黒名が何かを手にしていて、士道が笑っているのが見えた。

    潔「……行こう。二人とも戻ってる」

    冴「やっとか」

    冴が無造作に歩き出す。
    潔も慌てて後を追い、家庭科室の真ん中へ向かっていった。

    乾いた床を踏む音が、少しずつ他の足音と重なっていく。

    ───やがて四人の姿が、調理台のあたりに揃った。

    黒名「全員無事でよかった」

    黒名が安堵の息を吐いた。窓の隙間から差し込む光が、埃を照らしながらゆっくり漂っていた。

    黒名はサッカーバッグの中をまさぐり、丁寧に取り出した小さな包丁を手のひらにのせる。

    黒名「俺は女の子の忘れ物を見つけた」

  • 133スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 11:23:50

    静かな声でそう言いながら、柄の部分を見せた。包丁には、子どもの手で彫られたような拙い文字で“さち”と掘られている。

    その文字を見て、潔が小さく「あ……」と声を漏らした。

    冴「“さち”……あの一年の教室にいた子供か」

    冴と士道がちらりと視線を交わす。
    黒名は頷いた。

    黒名「そうだな。……たぶん、あの子のだ」

    包丁の刃先には安全カバーがつけられており、まるで誰かに“まだ大丈夫だよ”と告げるように、光を反射していた。黒名はそれをそっと包み、再びサッカーバッグの中へ戻す。

    黒名「……よかった。これであの子を救える」

    その声には、ほんの少し優しさが滲んでいた。

    次に士道がにやっと笑って、袖をめくる。

    士道「俺の方は、なんか燃える手が出てきたぜ!」

    焦げたジャージの裾をつまんで見せると、中の皮膚にはまだ赤く火傷のあとが残っていた。

    冴「お前、さっきガスコンロ着火してただろ」

    冴が眉をひそめ、呆れたように言う。

    冴「不必要なことはすんな。バカが燃えるのは勝手だが、こっちに飛び火すると困る」

    士道「ははっ、でも楽しかったぜ?火が形になるとか胸アツだろ!!」

  • 134スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 11:37:52

    士道が笑い飛ばすと、潔が思わず頭を抱えた。

    潔「……もう、なんなんだよ……」

    苦笑いを浮かべながら、自分の探索結果を口にする。

    潔「こっちはハズレだった。怖がって損した……」

    その言葉に、冴が小さく鼻で笑った。

    冴「まあ、何も出ないなら出ないでいい」

    家庭科室の中に、ようやくほんの少しだけ穏やかな空気が流れた。

    ───その空気は、突如崩れ去った。

    家庭科室の奥、流し台の下。さっきまで静かだった水滴の音のかわりに、“ギィ……ギィ……”と、木が軋むような音が響いた。

    潔が顔を上げた瞬間、調理台の影が、ゆらりと動いた。光の当たらない床の縁から、黒い“何か”が滲み出す。それは液体のように広がり、形を持つように膨らんでいく。

    潔「……っ、な、なんだ……?」

    潔の声が震える。黒名も思わず一歩後退した。

    床の影はゆっくりと持ち上がり、人の形を模した黒い塊が立ち上がった。空気が一瞬で冷えた。室内の温度が、息の白さでわかるほどに下がっていく。ガスの焦げた匂いと、鉄のにおいが混ざり合う。

    士道「うははっ!悪い!!忘れ物したの俺んとこだわ!!!」

    士道が笑いながら一歩前に出た。
    その無茶な明るさが、逆に異様だった。

  • 135スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 11:39:58

    冴がちらりと士道を見る。


    冴「責任取ってお前が倒せ」


    冷ややかに吐き捨てる声。

    士道は腕をぐるぐると回しながら、にかっと笑って答える。


    士道「寂しいこと言うなって!全員でボコそうぜ!!」


    潔「ま、取りこぼすなって方が難しいしな……!」


    潔が自分を奮い立たせるように笑う。

    その笑みの奥には、やはり少しの恐怖が見えた。


    黒名は深く息を吸い込んで、目を見開いた。


    黒名「戦うぞ。もう怖がる必要なんてない!」


    その言葉が合図のように、四人は一斉に構えた。


    【影】4回攻撃成功で撃破

    潔 dice1d100=61 (61)

    黒名 dice1d100=13 (13)

    士道 dice1d100=62 (62)

    冴 dice1d100=58 (58)

    ※20以上の場合:攻撃成功

    ※19以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

    ※黒名:攻撃失敗時のみアイテム自動発動

  • 136二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 13:41:53

    失敗したの黒名だけか

  • 137スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 15:32:35

    >>136

    アイテム自動発動のお守りつけておいた甲斐がありました!逆に付けてたせいで失敗したかもしれませんが…

  • 138スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 15:35:00

    【潔世一の固有能力:直感の導き・改発動】
    【黒名蘭世:攻撃自動成功に変換】

    士道「責任取って、一発目行くぜ!!!」

    士道が地を蹴る音が、静寂を裂いた。

    蹴り出しの瞬間、青黒い靄が舞い上がる。目に映るのは、壁のように広がる“影”。だが、士道の動きは迷いがなかった。

    士道「ブッ飛べぇぇぇぇぇ!!!」

    叫びと同時、爆風のような一撃が叩き込まれる。影の胴がぐにゃりと歪み、闇が飛沫を上げた。

    その黒煙の隙間を抜けて、潔が滑り込む。

    潔「士道、ナイス!!───今だ!!!」

    潔のジャージの裾が翻り、光を裂くように蹴りが放たれる。影の肩口に命中。重い鈍音が響き、床にひびが走る。

    潔「……まだ立つのかよ」

    吐き出す息の中、影が再び形を取り戻した。

    冴が前に出る。表情は変わらない。

    冴「相変わらずしぶとい野郎だな」

    次の瞬間、影の腕を紙一重でかわし、冴の右足が閃いた。

    冴「終われ」

  • 139スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 15:36:14

    短く放たれた言葉のあと、影の首元に正確な蹴り。黒い塊がぐらりと揺れる。

    潔「黒名、仕上げろ!」

    潔の声が響いた。
    黒名は頷き、恐怖を押し殺すように息を吐く。

    黒名「……行くぞ」

    その足が動く。
    だが───影の輪郭が突然蠢いた。

    黒名「───っ!?」

    足首に冷たいものが絡みつく。
    視界が反転するような錯覚。心臓が跳ねた。

    (やばい、捕まる……!)

    一瞬で全身が粟立つ。

    その時だった。

    潔「黒名!右に避けろ!!!」

    潔の声が飛ぶ。
    思考より早く、黒名の身体が横へ跳んだ。

    足元を黒い手が掠め、闇が地を裂く。

  • 140スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 18:04:36

    黒名「っは、危ない……!!」

    黒名は息を荒げた瞬間、転がるように前へ進む。

    黒名「───潔が繋いでくれた、だからこれで終わらせる!」

    全力の蹴りが影の中心へ突き刺さる。

    ぐしゃ、と嫌な音を立てて、闇が弾けた。波紋のように黒が砕け、空気が澄み渡る。影の残骸が霧散し、穏やかな空気が戻ってくる。

    士道「はは!!!やるじゃんチビスケ、成長したな!」

    冴「……助かった。悪くねぇ判断だ」

    黒名「……ありがと潔、今回もなんとかなった」

    潔「はは、みんな無事で良かった……!もう勘弁してくれよ……!」

    残響のように、黒い靄が消えていく。その足元には、影の破片だけが静かに溶けていった。

    影が消えた場所に、小さな包み紙が置いてあった。
    それは、淡い水色の包み。焼け焦げた床の上で、ひときわ静かに光っていた。

    潔がしゃがみ込み、指先でそっと拾い上げる。

    潔「……これ、ラムネか?」

    包みを開くと、中には青い粒がひとつ。湿った空気の中で、かすかに甘い香りが漂う。

    【《しゅわしゅわするらむね》×1:SAN値+1回復】

  • 141スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 18:25:06

    士道が覗き込み、にやりと笑う。

    士道「腹の足しにもなんねーけど、小学校らしくはあるよな!」

    黒名がぼそりと返す。

    黒名「……士道、食べてみるか?」

    士道「いや、俺は脳みそが沸騰しそうなものしか食わねえ。あと肉とか元気出るやつ!」

    冴がため息をつく。

    冴「くだらねえ。……好きにしろ」

    士道は肩をすくめながら、包みを黒名へ放り投げた。

    士道「ほらチビスケ、気分転換に丁度良いだろ?」

    黒名「……ありがと」

    黒名は静かに受け取ると、指先で包みを確かめ、慎重にサッカーバッグの奥へと滑り込ませた。チャックの金具が小さく鳴る。

  • 142スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 18:34:51

    潔が周囲を見渡す。


    潔「……よし、もう出ようか。ここ息苦しいし」


    士道も大きく伸びをして笑う。


    士道「ま、近いうちもう一回来ることになりそうだけどな」


    冴は無言で扉に手をかけた。

    湿った空気を押し分けるように、古びた蝶番が鳴る。


    外の廊下には、かすかに風の音。

    ようやく動き出そうとしたその時───


    『………ねえ』


    耳の奥で、誰かの声がした。

    全員が同時に振り返る。


    そこに立っていたのは、ひとりの少年だった。


    制服は色を失い、腕は枝のように細い。

    頬はこけ、目の下の影は深く沈んでいた。


    潔 dice1d100=13 (13)

    黒名 dice1d100=20 (20)

    士道 dice1d100=9 (9)

    冴 dice1d100=35 (35)

    ※50以上の場合:影響なし

    ※49以下の場合:SAN値減少

  • 143二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 19:43:56

    みんな動揺してるな

  • 144スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/06(月) 20:38:29

    >>143

    みんな子供には優しいのが分かりますね、特に士道は教室でもめちゃくちゃ低い数字出してたので…


    本日体調不良のため早めに寝ます

    申し訳ないですが良ければ保守お願いします…

    明日体調が治ればいつも通り朝から更新します…!

  • 145二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 21:00:58

    楽しみに待ってます♪ご自愛ください〜

  • 146二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 01:07:44

    スレ主のssいつも面白い
    体調気を付けてね

  • 147スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/07(火) 07:13:20

    >>145

    嬉しいお言葉をありがとうございます!引き続きのんびり頑張って参ります!


    >>146

    そう言っていただけて嬉しいです…!最近寒いので体調管理は本当に気をつけないとですね…


    ひとまず悪化はしなかったので更新できるタイミングで更新できればと思います!引き続きよろしくお願いします

  • 148スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/07(火) 07:25:27

    【潔世一:SAN値16→15(-1)】
    【黒名蘭世:SAN値13→12(-1)】
    【士道龍聖:SAN値18→17(-1)】
    【糸師冴:SAN値23→22(-1)】

    少年を見た四人は、声が出せなかった。
    驚いたのではない。ただ、尋常ではない痩せ方をしたその姿に、誰もが胸の奥をぎゅっと掴まれるような痛みを覚えた。

    潔は息を飲む。

    潔「……なんで、そんなに痩せて……」

    かすれた声が、教室の空気に溶ける。

    黒名もまた、目を逸らせずにいた。

    黒名「……ご飯、食べられなかったのか……」

    その言葉には怯えではなく、哀しみが滲んでいた。

    士道がギリッと歯を噛みしめる。

    士道「……チッ。この小学校、こんなヤツしかいねぇのかよ……」

    怒りとも悲しみともつかない声音が、静かな室内に落ちる。

    冴は、ただ一度まばたきをしただけだった。
    それでも、その沈んだ目が語っていた。

    冴「………虐待か」

  • 149スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/07(火) 11:48:33

    短く吐かれた言葉が、四人の胸にずしりと沈んだ。

    その時、少年が小さく首をかしげた。目は曇りのないまま、まっすぐ士道を見上げている。

    『お兄ちゃん、そのパンちょうだい』

    士道は一瞬、意味がわからず眉をひそめた。

    士道「パン?……これのことか?」

    サッカーバッグの中を探ると、先程教室で拾った“くさったパン”が手のひらに収まった。

    潔「……ダメだ、そんなの───」

    潔が止めようとしたが、少年は静かに笑った。

    『それでいいの。僕には、それで十分だから』

    差し出した瞬間、少年は両手でそれを抱え込み、がつがつと飢えを満たすように食べ始めた。

    湿気でふやけて表面が黒ずんだパンを、一口ごとに噛みしめながら、嬉しそうに頬を動かしている。

    誰も、その光景から目を離せなかった。
    けれど、直視することもできなかった。

    ただ、痛々しさとやるせなさが、胸の奥をじわじわと蝕んでいくのを四人は黙って受け止めるしかなかった。

    少年は最後の一口まで、美味しそうにパンを食べていた。
    かすかに笑いながら、欠けた前歯の隙間からパンくずがこぼれる。その頬に、ほんのりと赤みが差していくのが見えた。

  • 150スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/07(火) 11:56:21

    骨のようだった腕にわずかに肉が戻る。肋の浮いた胸も少しだけ膨らんだ。ほんの一瞬だけ、その姿は“普通の子供”に見えた。

    『ありがとう、お兄ちゃん』

    食べ終えた少年が、士道に向かって微笑んだ。

    『これでもう、お腹はすいてないよ』

    その笑顔はどこまでも柔らかく、そしてどこまでも儚かった。

    士道は無言で頷くしかなかった。胸の奥が焼けたように痛い。言葉にできない何かが喉の奥につかえていた。

    『この部屋のちかく……たぶんトイレとかに、僕のわすれものがあると思うから……』

    『見つけたら、持ってきてほしいな』

    ふわりと声が消える。
    同時に少年の輪郭が淡く滲み、まるで光が解けるように空気へ溶けていった。

    そこに残ったのは湿った足跡だけ。いつの間にか冷たい風が流し台の窓から入り、カーテンをゆるやかに揺らす。

    誰も言葉を発しなかった。
    沈黙が重くのしかかる。

    潔は拳を握り締めた。胸が締めつけられるような思いに、どうしようもなく苛立ちすら覚えた。

    黒名は、少年の立っていた場所を見つめていた。

  • 151スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/07(火) 18:17:38

    士道は歯を食いしばり、吐き出すように言う。

    士道「……クソみたいだな」

    冴は何も言わなかった。ただ目を閉じて、ひとつ長く息を吐いた。

    誰もが悲しみ、誰もが怒っていた。どんな感情にも形がなく、ただ心の底で、静かに燃えるような痛みが残る。

    ───しばらく、誰も動けなかった。
    時間が止まったように、古びた家庭科室の中で立ち尽くす。

    その沈黙を破ったのは、潔だった。

    潔「………行こう」

    その声は低く、けれど確かだった。

    潔「ここから脱出するために。……子供たちを助けるために」

    黒名が、はっと顔を上げる。

    士道も、唇を噛みながら頷いた。

    冴は目を細め、静かに同意する。

    潔は黒名の肩に手を置いた。

    潔「黒名、部屋を出る前に少し水を飲んで落ち着いた方がいい。多分思ってるより精神的に来てるはずだ」

    黒名は一瞬黙り込み、そのあと、静かにひとつ頷いた。

  • 152スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/07(火) 21:00:57

    【黒名蘭世:《ちいさなおみず》使用】
    【SAN値12→13(+1)】

    黒名はサッカーバッグの中から、小さなボトルを取り出した。掌にすっぽり収まるほどのサイズ。ラベルには白い文字で、《きれいなおみず》と無機質に印字されている。中では、透き通った水が静かに揺れていた。

    キャップをひねると、かすかに空気の抜ける音。
    黒名は一息でそれを飲み干した。

    冷たい水が喉を通り、胸の奥まで澄み渡る。乾ききっていた心がほんの少しだけ潤ったような気がした。

    飲み終えたボトルを見つめる。次の瞬間、手の中のそれは光の粒になって崩れ、ふわりと空気に溶けて消えた。

    黒名「……ありがとな」

    黒名が小さく呟く。その声には、確かに息を吹き返したような力が宿っていた。

    冴がそれを見て、無言で頷く。潔は少し安心したように笑い、士道は「復活か、チビスケ」と軽く肩を叩く。

    黒名「それじゃあ───」

    黒名が立ち上がった。

    黒名「次は教室に行こう。女の子に忘れ物を返さなきゃいけない」

    家庭科室の中央に差し込む薄い光が、黒名の手元にわずかに反射した。掌の中にあるのは、小さな包丁。安全カバーが付けられたままの刃。柄には、震えるように掘られた“さち”の文字。

    潔「……行くぞ」

    潔の声が合図になり、四人は並んで家庭科室を出た。

  • 153スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/07(火) 21:03:25

    ホスト規制で本日はほとんど投稿出来ませんでしたが、引き続き体調不良のため寝ます……
    明日は病院なのでもしかすると更新再開が昼くらいになるかもしれません、差し支えなければ保守のご協力お願いします……
    皆様もご体調にはお気をつけくださいませ…!

  • 154二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:24:14

    なんやかんや4人に一体感出てきたな

  • 155二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 03:01:09

    今日もお疲れ様でした!
    のんびりお待ちしてますのでお身体お大事にしてください~

  • 156スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/08(水) 08:24:20

    >>154

    協調性が出来てきましたね!この調子で引き続き頑張ってもらいたいです!


    >>155

    ありがとうございます!身体が弱すぎて本当に嫌になります……


    ホスト規制解除されたのでぼちぼち更新開始します!本日もよろしくお願いします

  • 157スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/08(水) 08:29:33

    歩いて数歩、右手に“1年1組”と書かれた木製のプレートが見えた。

    黒名が扉に手をかける。蝶番が軋む音を立てて、静かに開いた。

    中は薄暗く、古い机と椅子が整然と並んでいる。カーテン越しに入る光が、舞い上がる埃を金色に照らしていた。

    黒名は一歩、教室の中へ進む。

    黒名「……忘れ物、取ってきた」

    その声が、ゆっくりと空間に広がる。

    次の瞬間、黒板の前──そこに少女の姿が現れた。

    擦り切れた制服を着たその姿。髪は肩まで、光を透かすように淡い色をしている。

    『ありがとう、これでやっとかえれるの』

    黒名の手から、包丁が静かに離れていく。少女は両手でそれを受け取り、大切そうに胸の前で抱きしめた。

    『ようじをおわらせてから、おそらにいくね』

    『お兄ちゃんたちがここからぶじにかえれるように、おいのりするね』

    少女はそう言って、やわらかく微笑んだ。その笑顔はどこまでも穏やかで、儚い。

    黒名の手から受け取った包丁を胸に抱き、光の粒を散らしながら、少女の姿はゆっくりと消えていった。

    そこに残ったのは、ほんのり温かい空気だけだった。

  • 158スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/08(水) 09:14:42

    黒名「……包丁で、何をするんだろうな」

    黒名が静かに呟く。声はかすれ、誰に問うでもなく宙に溶けた。

    士道が少し顔をしかめて答える。

    士道「復讐だろ。だってよ、傷だらけだっただろ。救急箱も“6年生の下駄箱”にあったしな。100パーイジメだ。くだらねえよな」

    潔の喉が小さく鳴る。

    潔「イジメ……」

    それ以上、言葉は続かなかった。

    教室の空気が、じわりと重く沈む。黒名は視線を落とし、冴は無言のまま窓の方を向く。士道だけが奥歯を噛みしめ、机の脚を軽く蹴った。

    その時、パチ、と乾いた音がして、教室の照明が点いた。蛍光灯の白い光が天井から降り注ぐ。

    黒名が目を細め、潔が小さく息を吐く。

    冴「これで、この部屋も終わりだな」

    冴の低い声が響いた。

    一瞬の静寂。四人は互いに顔を見合わせる。

  • 159スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/08(水) 10:06:34

    潔が一歩前に出る。

    潔「……まだ行かなきゃいけない場所は残ってる」

    その言葉が、重たく張りつめた空気を少しだけ解いた。

    黒名が頷き、士道が笑って肩を鳴らす。
    冴は黙って扉を開けた。

    冷たい廊下の風が、彼らの頬をかすめて通り過ぎていった。そうして四人は、振り返ることなく教室を後にした。

    教室の目の前には、段差を数段降りたところに生徒と職員用のトイレがあった。灯りがチラつく廊下の先、壁の一角にぽっかりと開いた入口。中からはじめっとした空気が漂い、鼻の奥をかすかに刺す。

    潔が足を止め、眉をひそめる。

    潔「……家庭科室の子が、トイレに忘れ物したって言ってたな」

    士道「ってことは、ここで間違いねえな」

    士道が頷く。

    黒名は静かに息を呑む。

    黒名「……湿気すごいな。壁がカビだらけだ」

    冴は無言で灯りを確認したが、電気のスイッチは反応しない。

    冴「明かりもロクにねえな。……潔、足元見ろ。床がぬめってる」

    潔は思わず靴底を擦り合わせる。べちゃり、と水音がした。

  • 160スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/08(水) 11:00:02

    潔「うわっ……!最悪だなこれ、まじでトイレかよ……」

    士道が鼻をつまみ笑う。

    士道「学校のトイレって、なんでどこもホラー臭ぇんだろうな!」

    笑い声は湿った天井に吸い込まれていくだけだった。

    ───探索場所は三つ。

    一つ目は、女子トイレ。入り口の上に“女子”と掠れた文字が残り、ドアの塗装は半分剥がれ落ちていた。中は三つの和式便器と、割れた鏡のついた洗面台が二つ。壁際には小さな掃除用具入れがひとつあり、錆びたモップが斜めに突っ込まれている。

    黒名が小さく肩をすくめ呟く。

    黒名「……暗い。鏡が割れてるのも気になるな」

    潔も落ち着かない様子で声を潜める。

    潔「うん……なんか、誰かいる気がする……」

    二つ目は、多目的トイレ。他の部屋よりも新しめで、個室として独立している。扉には点字プレートが貼られたままだが、途中でひび割れ、読めなくなっていた。中を覗くと、広い空間に便座がぽつんとあり、壁際には古びた手すりが取り付けられている。

  • 161スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/08(水) 18:04:31

    冴が淡々と観察する。

    冴「古い校舎に多目的トイレがあるってのは珍しいな。後から改装したんだろ」

    士道が口の端を上げて軽く言う。

    士道「だったら他のトイレよりマシってことか?」

    その声も、どこか湿って響いた。

    3つ目は、男子トイレ。入口の上のプレートは半分欠け、残った文字は“子”だけ。小便器が二つ、奥には和式がひとつ。洗面台はひび割れ、水道の蛇口からぽたぽたと水滴が落ち続けている。床の排水口には髪の毛が絡まり、薄暗い光がそこに滲む。

    潔がそっと覗き込む。

    潔「……こっちもひどいな。使われてないのに湿ってる」

    冴が低く答えた。

    潔「地下に水道が通ってるせいだろ。下手に触るな、崩れる」

  • 162スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/08(水) 18:16:16

    士道が手をパンッと叩いた。


    士道「よーし、場所はわかったな。……女子、多目的、男子、三箇所!」


    潔「どこから行くか、慎重に決めよう」


    潔が頷く。


    黒名は深呼吸をひとつ。


    黒名「時間がかかりそうだな。どこもイヤな感じがする」


    冴は腕を組み呟く。


    冴「どのトイレもろくでもなさそうだが……やるしかねえな」


    四人はしばらく黙り込み、湿った空気の中に立ち尽くした。


    【探索ポイント・1階トイレ】


    ① 女子トイレ

    ② 多目的トイレ

    ③ 男子トイレ


    >>163

    ※探索箇所・キャラを全員分選んでください

    ※一箇所のみ二人で探索可能です

    ※二人の探索の場合、成功率が上昇します

    ※アイテム等を使用する場合、どのキャラに使用するか教えてください

  • 163二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 22:35:00

    ①黒名、潔
    ②冴
    ③士道
    でお願いします

  • 164二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 03:23:41

    ワクワク

  • 165スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 07:27:12

    >>163

    アイテム使用なしにて承知しました!状況によってはこちらで管理し適宜使用します


    >>164

    このまま順調に進むといいですよね…!

  • 166スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 08:52:38

    【① 女子トイレ:潔世一&黒名蘭世】

    潔「……よし、俺たちは女子トイレを見てくる」

    黒名と共に、潔は静かにドアを押し開けた。

    ぎい───と、湿気を含んだ金属が擦れる音。
    途端に鼻を刺すようなカビと鉄の匂いが鼻を掠めた。

    潔「……うわ、なんだこの臭い……」

    黒名「湿気がひどいな。ここの床もぬるぬるしてる」

    入り口の上には、“女子”と読める掠れた文字。
    ドアの塗装は剥げ、灰色の壁は斑模様のように黒ずんでいた。中は三つの和式便器。仕切りは一枚だけ残り、他は歪んで倒れている。

    潔は足元に気をつけながら進む。

    割れた鏡が、廊下から届く光を鈍く反射して、その度に二人の顔をぐにゃりと歪ませた。

    潔「鏡、割れてる……何回も殴ったみたいな跡だ」

    黒名「誰かがここで怒ってたのか……」

    短く呟いた声は、湿った空気にすぐ吸い込まれる。

  • 167スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 08:53:42

    壁際には、古びた掃除用具入れ。

    扉が半分外れ、錆びたモップが斜めに突っ込まれていた。柄の先には蜘蛛の巣が絡み、床には小さな靴の跡がいくつも乾いて残っている。


    潔「……子供の足跡?」


    黒名「そうだな。ここで何か探してたのかも」


    ───沈黙。


    水滴の音が、ぽた、ぽた、と天井から落ちる。

    光がかすかに揺れ、二人の影を不規則に伸ばした。


    潔「黒名、俺はこっちの個室を見てみる。お前は洗面台のあたりを頼むぞ」


    黒名「分かった」


    二人は視線を交わし、それぞれの位置へと動き出した───。


    潔 dice1d100=91 (91)

    黒名 dice1d100=87 (87)

    ※合計値80以上の場合:探索成功

    ※合計値79以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 168スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 11:49:18

    【探索成功】

    黒名は、鏡が割れた洗面所に目を通す。
    天井の蛍光灯はすでに切れていて、廊下から差し込むわずかな明かりだけがこの薄暗い空間を照らしていた。

    鏡の破片が床に散らばり、そこにぼんやり映る自分の輪郭が歪んで見える。息を吐くたび、空気が少し白く揺れた。

    洗面台の底には、雨水のような濁った水が溜まっている。
    覗き込んでも何も映らず、その沈黙がかえって不気味だった。

    黒名「潔、こっちは何もない」

    湿った空気を押し分けるように声をかけると、個室の奥から潔の声が返る。

    潔「こっちはあと一つ見れば終わる!」

    黒名は足音を殺して、隣の個室へ向かった。
    古びたドアが軋み、鼻を刺すようなカビの匂いが漂う。

    潔がタンクの上を覗き込む。
    すると───そこに、くしゃくしゃになった紙切れが貼りついていた。

    潔「………あった」

  • 169スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 11:50:37

    潔が指先でそっとそれを剥がす。
    湿気で半分透けかけたメモには、震えるような字でこう書かれていた。

    『わすれものしないと、あんしんできるばしょになる』

    潔はサッカーバッグから、他の二枚のメモを取り出す。
    それぞれ、“わすれものしちゃだめ”“かげがくるよ”。

    明かりの下で三枚を並べると、まるでひとつの物語のように意味が繋がった。

    潔「……取りこぼしがなければ、安全になるんだな」

    黒名「この小学校の子たち、忘れ物を返してもらうことで、“影”から逃げてたのかもしれない」

    黒名は短く息をつく。
    潔は小さく頷いた。

    二人の間に、わずかに生まれた安堵の気配。

    黒名「この調子で、休める場所を増やさないとな」

    潔「……ああ」

    静寂の中で、靴底が水を踏む音だけが響いた。
    明かりに照らされた廊下へ戻るため、二人は慎重に女子トイレを後にした。

    【《ちぎれたかみ》×1:拙い字で『わすれものしないと、あんしんできるばしょになる』と書かれている】

  • 170スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 13:32:07

    【② 多目的トイレ:糸師冴】

    冴「俺はこっちを探す。お前は男子トイレに行け」

    士道「おっけー、新しめっぽいけど気をつけろよ、冴ちゃん」

    軽く手を振って、士道が男子トイレへと姿を消す。

    冴は無言で、多目的トイレの前に立った。他の部屋よりも扉の色がわずかに明るく、まだ新しさをかすかに残している。点字プレートには亀裂が走り、読み取れぬほどに劣化していた。

    手で触れてみる。ざらついた感触と、冷たい金属の温度が指先に伝わる。

    ───カチリ。

    ドアノブを回すと、重い音を立てて扉が開いた。

    湿った空気が顔にぶつかる。それでも、家庭科室や女子トイレほどの腐臭はない。ただ、静かすぎる。

    何かが足りない───そう感じた。

    冴(……広いな)

    視界の端に便座がひとつ。その周囲には何もなく、まるで展示物のようにぽつんと存在していた。壁際の手すりは古び、塗装がはがれ、白かったはずの金属は鈍い灰色に変わっている。

    靴音を殺して一歩、また一歩と近づく。
    踏みしめる床は、やけに湿っていた。

    しゃがみ込み、タイルの隙間を指でなぞる。ひび割れの中には黒ずんだ汚れがこびりついていた。長い年月、人の手が入っていない証拠だ。

  • 171スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 14:48:29

    冴「……点検口はなし。鏡も……割れてるな」


    顔を上げると、壁の鏡が斜めに傾いている。表面の半分は錆とカビで覆われ、自分の姿すらはっきり映らなかった。


    冴(やっぱり、“ここ”も普通じゃない)


    便座の脇にしゃがみ、タンクの裏へ手を伸ばす。乾いた埃が指にまとわりつく。金属がきしむ音が、妙に大きく響いた。


    どこかで水滴が落ちる音がする。

    それ以外に、音はなかった。


    冴(……静かすぎる)


    天井を見上げる。電気の笠には蜘蛛の巣が絡まり、その中心には、干からびた蛾が一匹、まるで見張り役のようにぶら下がっていた。


    小さく息を吐き、冴は立ち上がる。


    視線は便座から鏡へ、鏡から壁へ。まるで目を逸らすことを許されないような圧迫感。


    冴の眉がわずかに動く。ほんの一瞬の気配。視線を落としたまま、身体の重心を低くした。


    冴「……誰かいるのか?」


    返事はない。

    ただ、冷えた空気が頬を撫でた。


    冴 dice1d100=40 (40)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 172スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 18:01:48

    【探索失敗:ハズレ】
    【SAN値22→21(-1)/怪我値:95→90(軽傷)】

    ───頬に鋭い痛みが走る。

    その瞬間、空気が一枚刃のように裂けた気がした。頬に触れる冷気が、皮膚を切り裂く。

    冴は反射的に手を上げ、指先に触れた温かさでそれを悟った。

    ───血。

    下駄箱でついた傷口が風に抉られて開いたのか。それとも、何か見えないものに斬られたのか。

    冴「……なるほどな」

    声は低く、乾いていた。痛みを受け入れるように、ただ一度目を伏せる。

    頬から血が垂れ、顎を伝ってポタポタと落ちていく。床に赤い点が三つ、四つ。それを見下ろしながらも表情は動かない。

    冴(……痛い)

    冴(けど、まだ平気だ)

    舌で傷の内側を押すと、鉄の味が広がった。そのままジャージの裾で無造作に拭う。深い傷、今は止まる気配がない。

    冴「……血の匂いで、何か寄ってこなきゃいいが」

    そう呟きながら、トイレの奥をもう一度見渡す。

  • 173スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 18:03:23

    鏡、便座、床、タンク。
    どれも同じ、静まり返ったまま。

    冴「……ハズレか」

    乾いた声が小さく響く。その言葉はまるで確認のようで、自分自身を納得させるためのものでもあった。

    便座の縁に手をかけ、軽く押してみる。

    ギィ、と鈍い音を立てて戻る蓋。
    その下には、何もない。

    壁の手すりにも床の隅にも痕跡ひとつ見つからない。

    冴(……無駄足か)

    淡々としたまま立ち上がり、出入口に向かう。

    血はまだ頬を伝い落ちている。
    だが、拭おうともしない。

    痛みはある。
    けれど、それすら今の冴にとってはただの事実に過ぎなかった。

    冷たいドアノブを握り、一度だけ深く息を吐く。

    冴「……終わりだな」

    短く言い残して、多目的トイレを後にした。

  • 174スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 19:06:34

    【③ 男子トイレ:士道龍聖】

    男子トイレに足を踏み入れると、濡れた床の上で思わず転びそうになる。

    士道「っぶね!!うお、ツルッツルじゃねぇかここ!」

    慌てて体勢を立て直し、肩で息をつく。
    床には濁った水がうっすらと溜まり、月明かりも届かないはずなのに、その中には微かな光が滲んでいる。

    士道「……ま、こんなの気にしてたら爆発なんて起きねーよな」

    ニッと笑って、濡れた靴のまま奥へ進む。
    入口の上に掲げられたプレートは、半分欠け落ちて“子”の字だけが残っている。その文字がまるで“孤独”の“孤”にも見えて、士道はほんの一瞬だけ笑みを引っ込めた。

    士道「ったく……あの痩せっぽちのガキ、何忘れてんだよ」

    士道「ここまで探してやってんのに、出てこねぇとかやめろよな」

    ひび割れた洗面台を軽く叩くと、乾いた金属音が狭い空間に響く。蛇口からは、ぽた、ぽた……と水が落ち続けていた。

    士道「……この音、ムカつくな」

    そう言いながらつまみをひねる───が、動かない。錆びついて固まっている。
    力任せに回そうとしても、ギギギ……と嫌な音を立てて抵抗するだけ。

    士道「おいおい、頑固だな。まるで冴ちゃんみてぇだ」

    士道「んじゃ、無理やり動かしてやるか!」

  • 175スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 19:07:44

    肘を突き立て、体重をかけてぐっと押し込む。蛇口の奥から鈍い音が響き、水が勢いよく跳ねた。顔に冷たい飛沫がかかる。


    士道「ぶはっ……冷てぇ!……けど、ちょっとはマシな空気になったな」


    笑いながら袖で顔を拭い、鏡代わりに水面を覗き込む。そこに映る自分の顔は、少し曇って、歪んで見えた。


    士道「……はは、超ブサイクじゃんか」


    苦笑いを漏らしつつ、視線を奥へ向ける。

    和式トイレの個室の扉が半開きになっていた。中は暗く、底の見えない影が溜まっている。


    士道「……あのガキの“忘れ物”、あそこにあんのか?」


    呟きながら、ゆっくりと足を進める。排水口のあたりで、長い髪の毛がぬるりと靴に触れた。


    士道「……うぇ、なんだこれ」


    けれど、怯むことはない。

    むしろ、好奇心が勝っていた。


    士道「……はっ、いいねぇ、怪しい感じ!こういうの楽しいことの前触れってやつだろ?」


    薄暗い個室の扉に手をかける。


    心臓がわずかに高鳴り、口角をゆっくりと吊り上げた───。


    士道 dice1d100=52 (52)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 176スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 21:17:34

    【探索成功】

    個室を開けると、濡れた床の上に一枚の写真が落ちていた。

    しゃがみ込み、顔をしかめる。
    濡れた紙の感触。指先に張りつく冷たさ。

    士道「……なんだこれ」

    拾い上げて見た瞬間、言葉が止まった。

    白黒の写真。健康そうな男の子が、満面の笑みを浮かべている。その隣で、優しそうな女性が肩を抱くように立っていた。

    古びた紙に焼き付けられた幸福。だが、写真の端は破れ、男の子の指先だけが少し擦れていた。

    士道「……あー、なるほどな」

    士道は低く笑った。

    士道「コイツが……あのガキの母親ってわけだ」

    家庭科室で見た、痩せこけた姿が脳裏に蘇る。頬はこけ、骨が浮き、目だけが助けを乞うように潤んでいた。
    けれどこの写真の中の彼は、あの骸のような子どもとはまるで別人だ。

    士道「……多分、死んだんだろうな。母親が」

    士道「そんで……別のヤツに育てられた、ってとこか」

    水滴が天井から落ち、写真の表面を滑る。
    笑っている母子の頬が、水の波紋に揺れた。

  • 177スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 21:18:43

    写真をもう一度見つめた。
    どこか胸の奥がざらつく。

    士道「………チッ」

    乱暴に息を吐くと、服が濡れるのも構わず、写真をそのままポケットに突っ込んだ。

    ズボンの生地が冷たく貼りつく。
    だがそれよりも、この空間の冷気のほうが気に障る。

    士道「ま、忘れ物は回収完了ってことでいっか」

    満足げに呟き、口角を上げた。

    振り返ると、鏡に自分の姿がぼんやり映る。
    ジャージの胸元が汚れ、髪も湿っていた。

    その姿に一瞬、笑みが深くなる。

    士道「……ハハ、泥くせえな」

    濡れた床を踏みしめ、トイレを後にする。

    背後で、ぽたり───と水滴の音。

    それに紛れて、小さく写真の中の笑顔が揺れた。

    【《ふるびたしゃしん》×1:家庭科室の男の子と母親と思われる姿が写っている】

  • 178スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 21:54:28

    四人全員が廊下に揃う。湿った空気の中で、それぞれの息が白く揺れた。

    潔が先に口を開く。

    潔「お疲れ、そっちはどうだった?」

    士道はニッと笑い、ジャージのポケットから何かを取り出した。

    士道「ちゃんと忘れ物見つけてきたぜ」

    掌の上に広げられたのは、濡れた古びた写真。白黒の中で笑う母親とその子供。その姿はどこか温かくて、今のこの場所には似つかわしくない。

    黒名が小さく息を漏らした。

    黒名「……幸せそうだな」

    冴は腕を組み、無表情のままその写真を見つめた。

    冴「ずっとこのままなら、ああにはならなかったはずだ」

    その言葉に、ほんの少しの沈黙が流れる。誰も口を開けず、蛍光灯の明かりだけが微かに揺れていた。

    ふと、士道が冴の顔を覗き込む。

    士道「てか冴ちゃん、顔の傷さっきより酷くなってね?」

    冴は眉ひとつ動かさず、短く答えた。

    冴「何かに切りつけられた。別に問題はねえよ」

  • 179スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/09(木) 21:55:57

    潔が慌てて一歩詰め寄る。

    潔「いや、でも血が垂れてんじゃん!手当したほうがいいだろ!」

    冴はその声を軽くいなすように視線だけを動かした。

    冴「いらねえ。別に手足が動けばなんとでもなる」

    顎を拭った指先から、赤い滴が床に落ちる。それを気に留める様子もなく、冴は廊下の奥を見た。

    冴「そういうお前たちはどうだったんだ」

    黒名が潔の方を見て、小さく頷いた。

    黒名「俺たちはまたメモを見つけた」

    潔はサッカーバッグを開け、中から一枚のメモを取り出す。皺だらけの擦り切れた紙を広げながら、目を細めた。

    潔「取りこぼしがなければ安全が保証される。だからここのトイレもきっと───」

    言葉の途中で、“カチッ”と乾いた音が響く。

    次の瞬間、トイレの中に淡い光が灯った。天井の蛍光灯が、一拍遅れてジジジと鳴る。

    黒名が思わず声を上げる。

    黒名「これでヤバかったらトイレに行けるぞ!」

  • 180二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 00:06:35

    安全地帯増えたね!よかったよかった

  • 181スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 08:24:28

    >>180

    少しずつ学校が安心出来る場所になってきましたね!この調子でスムーズに進むことを祈ります!

  • 182スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 10:24:50

    潔は苦笑しながら肩を竦める。

    潔「でも濡れてるし……なんか不気味だよな……」

    それでも、誰もがほんの少しだけ胸の奥に灯りを感じていた。

    どこかで滴る水の音。
    曇り空の向こう、月はまだ隠れたまま。

    だが今だけは───廊下に、わずかな安堵が流れていた。

    士道「んじゃ、家庭科室に戻るか」

    士道の声で、三人もその背に続いた。

    廊下の先、トイレのすぐ隣にある家庭科室の扉。そこに手をかけると、蝶番が小さく悲鳴を上げる。湿った空気が、ふわりと外へ流れ出した。

    かすかに漂うのは、古い木と油の混ざった匂い。錆びついた鉄のにおいが混じって、鼻をつんと刺す。

    室内は相変わらず薄暗い。割れた窓から冷気が入り込み、カーテンをわずかに揺らしていた。机の上には埃を被った調味料の瓶、床には布切れと紙屑。

    その中で───ひとりの少年が、静かに椅子に腰掛けていた。以前見たときより、少しだけ頬の線が柔らかい。

    士道が、にやりと笑って近づく。

    士道「ほら、忘れ物ちゃんと拾ってきたぜ」

    少年の目が、ぱっと輝いた。

    『ありがとう、これで本当のママのところに行ける』

  • 183スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 10:25:55

    その声は確かに温かくて、この場所の冷たさとはまるで別の世界のもののようだった。

    士道から白黒の写真を受け取った少年は、小さな手を胸の前に伸ばす。

    『これ、あげるね』

    士道の手のひらに置かれたのは、錆びた銀色の鍵。プレートには“給食室”と刻まれている。

    『もしかしたら、何か食べられるものが残ってるかも』

    そう言って笑った少年の姿が、やがて霞のように淡く消えていった。
    残されたのは静寂と、ほのかなぬくもり。

    士道は鍵を見つめながら呟く。

    士道「……ちゃんと成仏できたんか」

    潔がその横で、優しい目をして少年がいた場所を見つめる。

    潔「ああ。これで、また一人救えた」

    黒名は静かに頷き、冴は何も言わずに扉の方へ向いた。外の風が吹き込み、埃がゆっくりと舞い上がる。

    古びた家庭科室の中、小さな灯りがひとつ───確かに消えていった。

  • 184スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 12:15:38

    潔「───よし、それじゃあ次は給食室に行こう」

    声が静かな廊下に響く。
    家庭科室の空気は少し穏やかで、さっきまでいた少年の気配も跡形もない。

    四人は出口に向かって歩き出す──が、士道がふと足を止め、手をヒラヒラと振った。

    士道「先行っててくんね?俺、さっきここで取りこぼししたんだわ。回収してから向かったほうがいいだろ」

    軽く言うその声音に、黒名が振り返る。

    黒名「一人で大丈夫なのか?」

    わずかに眉を寄せ、心配そうに目を向けた。

    士道はいつもの調子で、白い歯を見せる。

    士道「問題ねえよ。さっきのガスコンロ付近、ちょっと気になるもんあったし。さくっと調べてすぐ合流するわ」

    黒名の視線に、潔が小さく息を吐いた。

    潔「……無理するなよ」

    その言葉には、冗談めかした響きがない。

  • 185スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 12:17:14

    そのすぐ後ろで、冴が腕を組んだまま口を開く。

    冴「死ぬなら役に立ってからにしろ」

    冴らしい、冷たくも的確な一言。

    士道はそれを聞くと、肩を竦めて笑った。

    士道「了解、分かってるって」

    冴が先にドアを押し開け、潔と黒名も続いて廊下に出ていく。
    古い床板が、ゆっくりと軋む音を立てた。

    扉が閉まる直前、士道は一人、室内を振り返る。
    どこか名残惜しそうに、それでも口元には笑みを浮かべた。

    士道「ま、さっさと見つけてやるか」

    首をゴキッと鳴らす。
    その音が、湿った空気の中に沈み込む。

    小さく笑った士道の影が、家庭科室の暗がりにひとり溶けていった。

  • 186二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 12:27:47

    しどーひとりで何を、、

  • 187二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 19:22:55

    保守

  • 188スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 20:00:25

    >>186

    普通に探索に進めようと考えてましたが頂いたレスで閃いたので特殊イベント用意します!


    >>187

    保守ありがとうございます!またまたホスト規制に巻き込まれてました…

  • 189スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 20:06:06

    士道は家庭科室の中で大きく息を吸い込み、吐き出す。誰もいないはずの空間は、先程の穏やかな空気から一転して、どこか淀んでいた。

    焦げた油の臭いが鼻を刺し、流しの下では何かが「ぴちょん」と水を垂らす。割れたガラス越しに、雲間から差し込む月の光が一筋だけ射している。

    沈黙。
    だが───その奥に、確かに“気配”があった。

    士道「……いるんだろ、出てこいよ」

    低く挑発する声に、室内の空気がゆらりと揺れる。黒い影が床から染み出すように現れ、形を取る。

    女と男。だが、どちらも歪で、正しい人の形をしていなかった。腕は長く、指は針金のように細く、顔には穴のような口が開いている。そこからかすれた声がこぼれた。

    『あの子はダメな子』
    『あの子は醜い子』
    『あの子は言うことを聞かない』

    反響するように、二つの声が重なっていく。まるで、自分たちの罪を子に押しつけるかのように。不快な音が部屋の壁を這い、ガラスがカタリと鳴った。

    士道は黙ってそれを見ていた。
    唇の端が、ゆっくりと吊り上がる。

    士道「……なんだよそれ。そんなの全然面白くねぇよ」

    喉の奥で、乾いた笑いが弾けた。
    一歩、踏み出すたびに靴底が粉のような埃を踏む。

    士道「自分が腐ってるのを人のせいにしてんじゃねぇよ。そんな腐った根性じゃ、誰も爆発させらんねぇだろうが」

    影がざわめき、無数の声が重なる。

  • 190スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 20:09:15

    『私たちは悪くない』

    『あの子が悪い』

    『壊れてるのは、あの子のほう』


    その瞬間、士道の笑みが消えた。

    目の奥で、炎のような光が閃く。


    首をゴキリと鳴らし、両手を広げる。


    士道「───じゃあ、見せてみろよ。その“壊れた子供の親”ってやつの力をさ」


    沈黙。

    そして、息を吸い込む。


    空気が一瞬止まり、次の瞬間───吠えた。


    士道「俺なりのケジメだ───二人まとめてかかってこいや!!!!!」


    叫びと共に士道が走り出す。


    足元を黒い影がうねり、包丁の反射が一瞬だけ光る。爆発のような衝突音が、夜の家庭科室に響いた。


    士道 dice1d100=40 (40)

    女 dice1d100=6 (6)

    男 dice1d100=37 (37)

    ※特殊イベントルール

    ※敵のダイス値を上回った場合:撃破成功

    ※敵のダイス値を下回った場合:怪我値減少

    ※例:士道50 女30 男60→女撃破、男残存

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 191二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 20:13:19

    このレスは削除されています

  • 192スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 20:34:27

    【撃破完了:戦闘勝利報酬付き】

    包丁を振り回す女を避けつつ、頭部に回し蹴りを放つ。
    ヒュッと空気を裂く音。靴底が影の肉を打ち抜いた瞬間、女の身体はぐにゃりと曲がって収納棚に叩きつけられた。
    衝突音のあと、そこにはもう何も残っていなかった。

    士道「おいおい、クソ雑魚じゃねえか!!!」

    舌打ち混じりに笑い、次の標的を睨む。

    もう片方の影───男は包丁を手にゆらゆらと近づいてくる。切っ先が光を反射し、薄闇の中に白い軌跡を描いた。

    士道「やれやれ……」

    士片手で髪をかき上げ、ひらりと身をかわす。
    そして、すれ違いざま左腕を振り抜く。

    鈍い衝撃。骨を砕くような音。
    男の影がぐらりと揺らいだ。

    士道「口ばっか達者で大したことねえな。俺、そういうヤツがいっっっちばん嫌いなんだよ」

    低く、喉の奥で笑う。

    気配が変わる。
    空気がピンと張り詰めた。

    士道の右足がわずかに後ろへ引かれ───

    士道「───爆ぜろ」

  • 193スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 20:36:14

    乾いた音と共に、前蹴りが男の胴を撃ち抜いた。
    その瞬間、影が霧のように弾ける。壁際まで吹き飛んだ男は、呻き声も出せずに消えた。

    静寂。
    ただ、埃と焦げた匂いだけが残る。

    士道「………クソつまんねえヤツらだったな」

    息を吐く。
    肩の力を抜き、軽く首を鳴らす。
    それでも、どこか満足そうに見えた。

    闇の中で誰よりも生を感じているような、危うい光。

    士道「まあでも、あのガキの冥土の土産にでもなったか」

    口の端がニカッと吊り上がる。

    一瞬、あの少年の笑顔が脳裏をよぎる。
    それを見送りながら、士道は笑った。

    士道「さて、忘れ物でも探すか」

    家庭科室の床を踏みしめ、散らばった椅子を蹴り飛ばしながら進む。焦げた鍋の中、割れたガラスの隙間、どこかに“まだ役に立つ何か”が眠っている気がした。

    その背に、廊下から一筋の光が差し込む。

    汗も拭わず、士道はただ、次の“爆発”を探すように歩き出した。

  • 194スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 21:19:38

    壁際の棚の前で立ち止まり、士道はしゃがみ込んでガスコンロを覗き込む。

    鉄製のコンロは長い年月を経たせいか鈍く光り、脚の短い台座の周囲には黒々とした焦げ跡が残っていた。それはまるで、誰かが最後にここで何かを焼こうとしたまま時が止まったようだった。

    士道「相変わらずボロいな」

    士道は鼻を鳴らして手を伸ばす。

    つまみの一つが欠けて、金属の芯が剥き出しになっている。指先で軽く回してみると、カチッと乾いた音が響いた。

    士道「さっきは燃える手が出てきたし、試しにもう一回ちゃんと捻ってみるか」

    そう呟いて、再び手に力を込めた瞬間───
    背後で、カサリと何かが床に落ちた。

    振り返ると、音の主は折りたたまれた一枚の紙だった。床にぴたりと貼り付き、その表面には滲んだ文字が浮かんでいた。

    拾い上げて広げると、そこには大きく一言。

    『遺書』

    士道「………は?」

    眉をひそめ、苦笑が漏れた。
    まるで悪趣味な仕掛けだ。

    だが、それでも中を読まずにはいられなかった。

  • 195スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 21:29:43

    文字は細く震えていて、ところどころが零れ落ちた涙の跡で滲んでいた。

    『私はあの子を守れなかった』
    『イジメから守ることが出来なかった』
    『私にはもう、この世界で生きる資格がない』
    『この世界を見る資格がない』

    ページの下段には、びっしりと同じ言葉が並んでいる。

    『ごめんなさい』
    『ごめんなさい』
    『ごめんなさい』
    『ごめんなさい』
    『ごめんなさい───』

    延々と、埋め尽くすように。

    しばらく黙って見つめて、小さく舌打ちをした。

    士道「イジメに虐待、その次は自殺かよ……」

    どこか投げやりな声。
    けれどその奥には、わずかな痛みが滲んでいた。

    士道「………まあ、どうにもなんねえこともあるよな」

    息を吐いて、紙を丁寧に折り畳む。
    埃がついた指でサッカーバッグの奥に滑り込ませた。

    【《いしょ》×1:誰のものかは不明。今後何かの役に立つかもしれない】

  • 196スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 21:48:57

    士道「アイツらにも見せねえとな。───っと、その前に……」

    そう言いながら、士道は立ち上がる。
    目線の先は、さっき男の影が崩れ落ちて消えた壁際。

    足音を忍ばせしゃがみ込み、手探りで床を撫でる。

    士道「戦利品、落ちてろよ……」

    指先に硬い感触が当たった。

    掴み上げてみると、小さなペットボトル。
    半透明の中で、わずかに泡が立っている。

    士道「……炭酸水、ね」

    士道はにやりと笑った。

    士道「どうせガキには飲ませなかったんだろ。……ま、疲れたら俺が飲んでやるよ」

    サッカーバッグの奥に突っ込み、くしゃっと手を払った。

    【《つめたいたんさんすい》×1:SAN値+2、なぜか冷えている】

  • 197スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 21:49:59

    士道「さてと、んじゃ給食室行くか」

    部屋を見渡すと、戦闘の痕がそのまま残っている。
    それでも、不思議と空気は軽くなっていた。

    歩き出したその瞬間、天井の蛍光灯が一つ、チカッと明滅した。

    士道「…………お?」

    次の瞬間、パチンと音を立てて部屋全体の照明が灯る。

    士道は振り返って、にかっと笑った。

    士道「これでこの部屋もコンプリートってな♪」

    満足気に手を鳴らし、そのまま扉に手を掛ける。

    パタン、と軽やかな音が響いた。

    士道は肩を揺らして笑いながら、光の戻った家庭科室をあとにした。

  • 198スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/10(金) 21:58:10

    次スレですが明日の昼~夜になりそうですので、このスレの残りは埋めていただけたら嬉しいです!
    質問等ありましたら次スレでお答えします
    それではまた明日、パート2でお会いしましょう!

    ■探索成功率
    潔:4/6
    黒名:4/6
    士道:5/6
    冴:4/6

    ■戦闘成功率
    潔:3/3
    黒名:2/3
    士道:3/3
    冴:3/3

    ■イベント成功率
    潔:1/2
    黒名:1/2
    士道:0/2(特殊イベント:1/1)
    冴:1/2

    ■クリティカル回数
    士道:1回(97)
    冴:1回(100)

  • 199二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 22:09:57

    今日もお疲れ様です!
    次スレも楽しみにしてます!

  • 200二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 00:37:04

    みんな頑張れ!!

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