【ホラー注意】俺たちはまた、知らない場所に迷い込む

  • 1スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 20:38:20

    閑古鳥が鳴いている
    月は雲に隠れている

    真夜中の小学校は昼間の喧騒が一切なくて
    シンと静まり返っている

    窓に何かが映った

    ただ、それでも、逃げることは出来ないから

    *作品:ブルーロック
    *登場人物:潔世一、黒名蘭世、士道龍聖、糸師冴

  • 2スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 20:44:18

    このスレは、ブルーロックの登場人物による探索型戦闘ホラーSSです

    舞台は異界化した“小学校”
    気がついた時には、彼らは学校の目の前に立っていました

    ※プレイヤーの選択(安価)や運命(ダイス)によって、ストーリーの進行・視点・結末が大きく変化します
    ※選択肢次第で“ロスト”“発狂”“絆”に分岐します
    ※精神的苦痛(SAN値)管理あり
    ※肉体的苦痛(怪我値)管理あり
    ※取り返しのつかない選択も……あるかもしれません

    *SAN値:0(発狂)/1~5(精神異常中)/6~10(精神異常小)
    *怪我値:0(ロスト)/5~35(重傷)/40~70(中傷)/75~95(軽傷)

  • 3二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 20:45:57

    このレスは削除されています

  • 4スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 20:47:53
  • 5二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 20:49:17

    おかえりスレ主ー!!
    体調回復してよかった!

  • 6スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 20:52:31

    ■キャラヘイトを目的とするものではありません
    ■キャラsage、腐発言、アンチコメはお控えください
    ■荒らしはスルーします
    ■基本的にゆっくり進行(社畜なので平日は特に)ですのでご容赦ください
    ■感想、質問、イラスト等頂けるとスレ主が大変喜びます
    ■広域ホスト規制に巻き込まれがちです。保守して頂けると幸いです

    ※ブランクのせいで更新とっても遅いです、お許しください

  • 7スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 20:58:19

    【登場人物紹介】

    潔 世一(いさぎ よいち)
    初期SAN値:18/初期怪我値:100(無傷)

    熱意と直感で動くエゴイスト。感情に振り回されがちだが、仲間のことは決して見捨てない。よく喋ってよく叫ぶ、ホラーには欠かせない存在。そろそろホラーに慣れてきたと思っていたが、全然そんなことはなかった。

    「13:00遊園地/廃病院ホラー」クリア経験者。
    「廃病院IF」にも登場。
    精神に“ある記憶”が刻まれている。

    ■固有能力
    【空間の支配者】戦闘時、状況を冷静に見極め、自分と味方全員の回避行動を自動成功に変換する(1回限り)。
    【的確な励まし】中傷時、励ましにより味方の異常状態を無効化する(味方2名まで有効)。


    黒名 蘭世(くろな らんぜ)
    初期SAN値:15/初期怪我値:100(無傷)

    淡々とした口調でも、その言葉には確固たる意思が宿る。叫びはお手の物、よく潔たちの後ろに隠れながら周囲を観察している。死ぬほど怖いけど、全員無事で帰るためになんとか頑張る健気な最年少。

    ■固有能力
    【ポカリの写真】大好きなポカリの写真を見せることで、自分と味方全員のSAN値をランダムで回復できる(1回限り)。
    【惑星の逆行】“見かけの動き”により敵を混乱させ、攻撃失敗者全員のダイスを振り直すことができる(1回限り)。

  • 8スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 21:06:10

    士道 龍聖(しどう りゅうせい)
    初期SAN値:20/初期怪我値:100(無傷)

    爆発をこよなく愛するロマンチスト。暴走しがちだが、今回はストッパーがいるため集団行動がギリ成立する。怖さより、自分の予想を裏切る“爆発”があるかが重要。魅せてくれるものを求めて、校舎を元気に駆け回る。

    ■固有能力
    【怪我の功名】中傷・重傷時、行動制限等異常状態が付与されない。成功率と引き換えにクリティカル率が大幅に上昇するが、1探索・1戦闘ごとに、怪我値が-5減る(怪我値に応じて常時発動)。
    【悪魔の囁き】戦闘時、挑発により敵の攻撃が全て自分に集中する。よって、味方の回避行動が全て自動成功になる(1回戦闘限り)。


    糸師 冴(いとし さえ)
    初期SAN値:24/初期怪我値:100(無傷)

    冷静かつ天然、日本の至宝と呼ばれる実力者。いい加減この手のことには慣れてきたため、欠伸をする余裕すら見せる。驚くようなことがあっても微動だにしない。学校に行くのが久しぶりなので、怖さより懐かしさの方が勝っている。

    「13:00遊園地ホラー」「廃病院IF」クリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。
    精神に“ある記憶”が刻まれている。

    ■固有能力
    【最適の判断】アイテム使用時、アイテムの効果をランダムで上昇させる(自分と味方全員に1回限り)。
    【冷酷な吹雪】戦闘時、敵の行動を止めることが出来る。その後、敵の攻撃成功率が大幅に減少する(行動停止・成功率減少は2ターンまで有効・1ターンずつ戦闘で分けることも可能)。

  • 9二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 21:06:23

    このスレ主さんのSSめっちゃ好きだから楽しみ!

  • 10スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 21:12:14

    >>5

    ご無沙汰しております!なんとか回復しました!


    >>9

    恐縮ですありがとうございます!

    とってものんびり更新になりますが良ければお付き合い下さいませ

  • 11スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 21:22:11

    ───気がつくと、夜の校舎の前に立っていた。

    どこからどうやって来たのかは分からない。ただ、次の瞬間にはこの場所にいた。

    木造の校舎は闇に飲まれ、窓はまるで誰かが覗いているかのように黒く蠢いている。

    校舎の時計の針は、丑三つ時を指していた。
    静まり返った夜気の中で、不自然に閑古鳥の鳴き声が響く。
    昼間なら子どもたちの声で満ちているはずの場所が、まるで廃墟のように不気味だった。

    潔「……っ、まただ」

    最初に声をあげたのは潔世一。
    眉間に皺を寄せ、辺りを見渡しながら唇を噛む。

    潔「何回目だっけ、これ……」

    隣で欠伸を噛み殺すように小さく息を吐いたのは、糸師冴。
    まるで大したことでもないように淡々と言う。

    冴「三回目だ。いい加減慣れろ」

    その言葉に、黒名蘭世はビクリと肩を揺らした。
    ジャージの裾を握りしめ、怯えた目で木造校舎を見上げる。

    黒名「こ、怖い、怖い……。帰りたい……」

    一方で、士道龍聖は口角を大きく吊り上げ、待ちきれないように手を打った。

    士道「マジかよ!夜の学校とか最高じゃん!なんか爆発しそうな匂いがするぜ!!!」

  • 12スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 21:44:28

    四人の視線が、軋む校舎へと集まる。

    この先に何が待つのかは分からない。
    だが───ここから逃げられないことだけは、全員が知っていた。

    潔「とりあえず何が起こるか分からないし。はぐれないように、固まって行動しよう」

    潔が声を張る。
    自分に言い聞かせるように、それでも仲間を気遣う響きだった。

    士道「は?んなのつまんねーだろ」

    士道が大きく声を振り払うように叫んだ。

    士道「校舎の裏とか屋上とか!そういうの一人で突っ込んでこそ面白ぇんじゃねーか!」

    黒名は慌てて潔の背中に隠れ、震えながら言葉を零す。

    黒名「……いやだ、そんなの。置いてかれたら絶対、何かに……」

    冴「悪魔くん」

    短く名前を呼んだのは冴だった。
    暗闇の中に映るその横顔は、いつもと変わらぬ落ち着きを帯びている。

    冴「ここは普通じゃねえ。異界化してるのは確かだ。暴れたいなら、中で存分に出来んだろ」

    士道はしばらく考え込んでいたが、やがて大きく鼻を鳴らした。

    士道「……まあ、冴ちゃんが言うなら仕方ねぇな」

  • 13スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 21:49:46

    その口元には、すでに次の展開を待ちわびる笑みが浮かんでいた。

    潔は小さく息をつき、仲間を見回す。

    潔「よし……それじゃあ、まずは荷物の確認だ」

    四人がそれぞれ肩から掛けたカバンを開く。
    黒名と士道のサッカーバッグは───空だった。

    士道「……え、マジで?俺のカバン、スッカラカンなんだけど」

    黒名「俺のも……」

    黒名が半泣きになりながら呟く。

    一方、潔と冴のカバンには見覚えのあるものが収まっていた。
    いつかの廃病院で必死に手に入れたアイテムたちだ。

    潔が驚きに目を見開く。

    潔「おお……!ちゃんと残ってる!これなら───」

    そして冴のカバンを覗き込んだ瞬間、潔の声が裏返った。

    潔「えっ!?冴のアイテム多くね!?なんでそんなに温存してんだよ!!!」

    冴は涼しい顔でカバンを閉じる。

    冴「無駄に使うより、残しておいた方がいいだろ。温存しといた甲斐があったな」

  • 14スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 22:16:42

    黒名「………頼もしすぎるな」

    黒名が少しだけ安堵の笑みを浮かべ、潔も苦笑しながら頷いた。

    確認を終えた四人は、校舎の正面へと歩を進めた。
    木造の引き戸は、長年の風雨に晒されて色あせている。カラカラと風が吹き抜けるたび、ガラス窓が小さく震えた。

    士道が躊躇なく手をかける。

    士道「んじゃ、開けんぞー」

    ギィィィ……
    玄関の戸が軋む音を立てて開いた。

    木造校舎の入口に並んだ下駄箱は、扉がひとつもなく、中の空洞がそのまま闇を晒している。
    使われなくなって久しい木材は黒ずみ、近づくだけで湿った臭気が鼻についた。
    棚板は所々割れ、奥の闇は覗き込む者を拒むように沈んでいる。

    空洞のひとつひとつが、まるで口を開けて待つ棺桶のようだ。
    息をするだけで胸に鉛が溜まるような重苦しさが広がり、誰もが言葉を発するのをためらった。

    潔「……なんかさ」

    潔が先に口を開く。

    潔「人の靴が入ってるんじゃなくて、人そのものが入ってそうで……やめろって自分で思うんだけど、どうしてもそう見えちゃうんだよな」

    黒名は両腕を抱え込んで、肩を震わせている。

    黒名「怖い、怖い……中から出てきそう……絶対出てくる……」

  • 15スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 22:35:20

    士道「ははっ、いいじゃん!」

    士道がにやりと笑った。
    目は真っ暗な棚を獲物みたいに追っている。

    士道「もし何か出てきたら面白ぇって!夜の学校からオバケとか、最高の舞台じゃんな!」

    冴「黙れ、バカ」

    冴の低い声が響く。
    片手をポケットに突っ込んだまま、冷めた視線で士道を制した。

    冴「こういうのは雰囲気に呑まれたら終わりだ。浮かれるな」

    士道「ちぇー」

    士道は不満げに舌打ちしたが、冴の言葉には従うように肩を竦める。

    士道「まあ、冴ちゃんが言うなら我慢するわ。どうせ面白くなってくんのはこの先だろ?」

    潔「はぁ……」

    潔が小さく息を吐く。

    潔「俺ら、まだ入口だぞ?……でもまあ、ほんと、何が起こるか分かんないからな」

    黒名「油断しちゃ駄目だ、冷静に、冷静に……」

    主苦しい沈黙の中、四人は互いの顔を見回した。
    下駄箱の奥に広がる闇は、どこを調べても安全とは限らない。

  • 16スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/28(日) 22:37:56

    【探索ポイント・下駄箱】


    ① 1〜2年生の下駄箱

    ② 3〜4年生の下駄箱

    ③ 5〜6年生の下駄箱


    >>17

    ※探索箇所・キャラを選んでください

    ※一箇所のみ二人で探索可能です

    ※二人の探索の場合、成功率が上昇します

    ※過去作品のクリティカル特典(探索自動成功)を使用する場合、どのキャラに使用するか教えてください(探索成功の場合は温存されます)

  • 17二次元好きの匿名さん25/09/28(日) 22:59:55

    ①黒名、潔
    ②士道
    ③冴

  • 18二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 03:51:27

    スレ主が戻ってきてくれて嬉しいよ

  • 19スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 07:16:29

    >>17

    クリティカル特典使用なしにて承りました!


    >>18

    嬉しいお言葉ありがとうございます!のんびり無理のない範囲で更新を続けられたらと思ってます!

  • 20スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 07:36:18

    【① 1~2年生の下駄箱:潔世一&黒名蘭世】

    廊下の端、1~2年生用の下駄箱。
    背の低い棚が並び、闇に呑まれた空洞がずらりと口を開けていた。入口よりもさらに湿った匂いがこもり、木板の間からは冷気が滲み出てくる。

    潔と黒名は肩を寄せ合いながら、ひとつひとつの空洞を覗き込んでいった。

    潔「……なあ、黒名。なんで俺たちがここ担当なんだよ……」

    黒名「俺だって嫌だ……でも、仕方ない。俺たち二人で確認できるだけマシだ」

    潔は唇を噛み、目を細める。
    棚の奥はただ黒いだけなのに、何かが潜んでいる気配がしてならない。

    潔「ほら、こことか……誰か入ってたみたいに、空洞が広い気がしないか?」

    黒名「やめろ、潔……!想像するだけで怖い……」

    二人の声は囁きに近く、互いを安心させるよりも不安を増幅させていた。

    黒名が恐る恐る指先で棚板をなぞると、乾いた木屑がポロポロと崩れ落ちる。

    黒名「ひっ……!」

    潔「うわっ、ビビらすなよ黒名!」

    黒名「勝手に落ちたんだ……俺は悪くない……」

    黒名は震える声で言い訳をする。

  • 21スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 07:47:10

    潔は深呼吸して頭を振り、「よし、次は俺が見る」と言い聞かせるように前へ出た。


    潔が覗くのは「2年生の下駄箱」。

    黒名が確認するのはその隣、「1年生の下駄箱」。


    隣り合った空洞に二人同時に顔を近づけ、どちらもゴクリと喉を鳴らした。


    潔「……黒名、何か見えたか?」


    黒名「真っ暗、真っ暗……でも……奥になにかあるような、ないような……」


    潔「おい、それ一番怖いやつじゃん!………でも、こっちも同じだ。何もないけど、なんか“ある”気がする……」


    二人は息を詰めたまま、暗闇の奥をじっと凝視する───。


    潔 dice1d100=11 (11)

    黒名 dice1d100=64 (64)

    ※合計値80以上の場合:探索成功

    ※合計値79以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 22スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 11:34:38

    【探索失敗】
    【潔:SAN値18→17(-1)/怪我値100→95(軽傷)】
    【黒名:SAN値15→14(-1)】

    下駄箱の列。木材は湿気を吸って黒ずみ、ひび割れ、埃が積もっている。ぽっかりと口を開けた一つひとつの空洞が、まるで人を飲み込むために待ち構えているかのようだった。

    潔「……うわ、やっぱ中、暗いな……」

    潔はため息混じりに身を屈め、二年生の下駄箱を一つずつ覗いていく。
    隣で黒名も、一年生の列に視線を滑らせていた。

    黒名「……何もないといいな」

    二人が少しずつ進んでいった、その瞬間だった。

    ───ガサリ

    潔「えっ……?」

    潔が覗き込んでいた下駄箱の奥。
    闇の中で、乾いた布が擦れるような音がした。

    次いで、そこから白く細い“手”が突き出された。

    潔「うわああああああああああああ!!!っ!?な、なんだよこれ!!!」

    潔の叫びと同時に、その手は腕を乱暴に掴み、爪を立てる。皮膚が裂け、鋭い痛みが走った。
    鮮血がにじみ、潔は必死に振りほどこうとするが、冷たく湿った感触が骨にまで食い込むようだった。

  • 23スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 11:36:02

    潔「やめろ!!離せって!!!」

    黒名「潔!大丈夫か!!?」

    黒名の声は涙声だった。顔を真っ青にし、今にも腰を抜かしそうに震えながら、それでも潔の体を必死に引っ張る。

    黒名「やめろ!離せ、潔を離せ!!!」

    ガッ、と力を込めて腕を振るった瞬間、ようやくその“手”は潔の腕を離し、闇の奥へすうっと消えていった。
    後には、血に濡れた引っかき傷だけが残っていた。

    潔「っ……か、かすり傷だ……!ただの、かすり傷だから……!」

    潔は呼吸を荒げながらも、無理やり笑おうとする。

    黒名「………痛そうだ。嘘ついてる声だな」

    黒名は不安そうに、その傷跡を、睨みつけた。

    二人は震える脚を引きずりながら、正面玄関付近へと後退する。背後の下駄箱は、先ほどのことが幻だったかのように、ただ静かに闇を広げていた。

    だが、その暗闇の奥で、まだ“何か”が見ている気配がした。

  • 24スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 12:10:11

    【② 3~4年生の下駄箱:士道龍聖】

    昇降口には、ずらりと木造の下駄箱が並んでいる。どれも色あせ、ところどころ板が反り返り、長い年月をそのまま閉じ込めたようだった。

    士道は“3~4年生”と札のかかった列の前に立つと、にやりと口角を上げた。

    士道「ハハッ、こんなん楽勝だろ!」

    勢いよく前蹴りを一発。

    ガンッ───!
    乾いた衝撃音が、広い昇降口に響きわたる。木材がきしみ、何匹もの小さな虫がぱらぱらと飛び出した。

    士道「おお、いい音すんじゃねーか!」

    士道は楽しげに笑い、両手で上段の下駄箱の空洞を覗き込む。
    中は暗く、木が黒ずみ、乾いた泥のような汚れがこびりついている。鼻にまとわりつくのはカビと鉄の匂い。
    靴など当然なく、ぽっかりと口を開けた穴が、不気味に並んでいるだけだった。

    士道は気にも留めず、ひとつ、またひとつと覗き込む。下段にしゃがみ込んで視線を入れると、奥に影が揺れた気がしたが───すぐに「自分の影だ」と鼻で笑い飛ばした。

    士道「お化け屋敷の真似事かよ。安っぽいんだよなー」

    そう言って下駄箱を拳で叩き、さらに次の列へと移っていく。

    そのとき───1~2年生の下駄箱の方から鋭い悲鳴が突き刺さった。

    「うわあああああっ!!!」

    「潔っ!!!」

  • 25スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 17:58:07

    一瞬、士道の動きが止まる。

    だがその顔には怯えなどなく、むしろ興奮で光っていた。


    士道「おーおー、やっと盛り上がってきたじゃねぇか!」


    ニヤリと笑い、また目の前の下駄箱へ身を屈めて覗き込む。闇の奥が、妙に深く見える気がした。


    ただの空洞のはずなのに───。


    士道 dice1d100=86 (86)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 26スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 18:49:05

    【探索成功:ハズレ】

    士道は下駄箱の一番上段に顔を突っ込み、乱暴に中を覗き込む。そこには、ただ黒ずんだ木材と古びた埃だけ。靴の影も、怪しい仕掛けも見当たらない。

    士道「チッ、つまんねーの」

    苛立ったように舌打ちし、今度は真ん中の段を手で乱暴にまさぐる。ザラついた木の感触と、指先にまとわりつく粉塵。爪に黒い汚れが入り込んで、嫌な感覚が残る。

    それでも士道は止まらない。

    拳で横板を叩き、膝で下段の木枠を蹴り、ひとつ残らず調べていく。下駄箱の奥に目を凝らすたび、影が伸びてこちらを覗いているように感じる。

    だが、士道は笑った。

    士道「ビビらせようってのが見え見えなんだよ」

    下段にしゃがみ込み、顔をぐっと近づける。鼻を突くのは、土と血を混ぜたような生臭さ。
    思わず咳払いするが、すぐに拳で木を叩いて打ち消した。

    ───何も出てこない。

    影はただの影。音は自分が立てた音。
    背後に漂う寒気も、気のせいに過ぎない。

    ………それでも、背筋を伝う冷たさは確かにあった。

    士道「ハッ、脅かすならもっと派手にやれよ!」

    強がるように声を張り、最後の列を乱雑に蹴りあげる。

  • 27スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 18:51:24

    だが、中にあるのは───またもや空。

    ただの、埃。
    ただの、木。

    士道「…………は?」

    一瞬、士道は言葉を失う。

    何も起きない。
    どの下駄箱にも、靴一足すら残されていない。

    最後のひとつまで覗き終えた瞬間、士道の表情から笑みが消えた。

    士道「………おいおい。何もねぇのが一番つまんねぇだろ」

    低く呟き、拳を木枠に叩きつける。
    乾いた衝撃音だけが、広い昇降口に虚しく響いた。

    肩で息をつきながら、士道はしばらく動かなかった。
    胸の奥で熱が冷めていく。

    せっかく盛り上がってきたと思ったのに───。

    士道「……ハズレかよ」

    吐き捨てるように言い、士道は踵を返す。
    やり場のない苛立ちを抱えたまま、正面玄関の方へと無造作に歩き出した。

    足音だけが、静かな昇降口に響いていった。

  • 28スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 20:14:57

    【③ 5~6年生の下駄箱:糸師冴】

    昇降口の右端、5~6年生の下駄箱。
    古びた木材の色は黒ずみ、板の隙間には闇がこびりついたように沈んでいる。足を踏み入れた瞬間、空気の質が違うことに冴は気づいた。

    鼻を刺す、鉄と腐敗の入り混じった匂い。
    血の生臭さと、長く放置された肉が腐り果てたような酸味。吐き気を誘う重さが空気に満ちていた。

    冴「……クソみてぇな臭いだな」

    眉ひとつ動かさず吐き捨て、冴は下駄箱の一番上段に手をかけた。

    木枠に手を滑らせ、暗がりを覗き込む。視界の端には闇が広がり、そこに何かが蠢いているように錯覚する。

    だが、冴の眼差しは揺れなかった。

    ───その時。

    潔「うわあああああッ!!」

    左手奥から、潔の叫び声が響いた。
    続いて黒名の悲鳴も重なる。

    冴「…………はぁ」

    冴は短くため息を吐いた。声の方に目をやることもなく、淡々と下駄箱を確認し続ける。

    木の軋み、埃の落ちる音、自分の靴底が床を擦る音だけを意識に留める。

  • 29スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 20:17:47

    次の下駄箱を見る。


    中には何もない。


    血の匂いは濃くなる。

    今度は鼻腔だけでなく、喉奥を焼くようにまとわりついてきた。普通なら一歩退いてしまうその感覚を、冴は平然と受け止める。


    冴「大げさなんだよ、あいつら」


    呟きながら、下段へしゃがみ込む。

    木枠に顔を近づければ、影はさらに濃くなる。奥の奥まで目を凝らしても、やはり見えるのは闇だけだ。


    隣で、ガンッ、と木が軋む音が響いた。

    士道が蹴りを入れているのだろう。


    士道「……騒がしい」


    冴は小さく舌打ちし、残りの下駄箱へと淡々と手を伸ばす。


    一つ、また一つ。

    誰かを挑発するような影が視界を横切っても、動じることはない。手の甲を掠める冷気にも、眉を動かすことすらしない。


    ただ順に、冷たく、正確に確認していく。


    昇降口の右端に、冴の低い吐息だけが落ちていた───。


    冴 dice1d100=22 (22)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 30スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 20:41:57

    【探索失敗】
    【冴:SAN値24→23(-1)/怪我値100→95(軽傷)】

    闇に沈んだ木製の下駄箱。
    冴は最後の一段、六年生の名札が剥がれかけた枠へと手を伸ばした。

    その瞬間。

    ───シュッ

    木材が揺れる気配と共に、何かが闇の奥から飛び出した。目にも止まらぬ速さで、冷たい風のようなものが冴の頬をかすめる。

    ザリッ、と鈍い痛みが走った。
    刹那、赤い線が頬に浮かび、血が一滴だけ垂れ落ちる。

    同時に。

    『……ふふ……あははは……』

    子供の笑い声が闇の奥から響いた。

    甲高く、不自然に揺れる音程。

    生きた子供の声ではない。
    死と腐敗に染み込んだような、異質な響きだった。

    下駄箱全体がその笑い声に震え、闇の底がひどく楽しそうに蠢く。

    普通なら背筋が凍りつく。心臓をわしづかみにされたような錯覚で、声をあげて逃げ出すはずだ。

  • 31スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 20:43:45

    しかし───冴は微動だにしなかった。

    冴「……チッ」

    血の滴を指で拭い、口端を歪める。

    目には怒りも恐怖もない。
    ただ淡々と、鬱陶しそうなだけ。

    冴「くだらねぇ悪ふざけだな」

    そう言い捨て、下駄箱の闇に背を向ける。

    子供の笑い声はまだ続いていた。それは追いすがるように、背後から耳を刺し続ける。

    だが、冴は振り返らない。

    踏み出す靴音は一定のまま。
    冷徹なリズムで、正面玄関へと進んでいく。

    冴「……仕切り直すか」

    低く呟き、ほんのわずかに肩を竦めた。
    その仕草さえ、恐怖ではなく退屈を紛らわすもののようだった。

    子供の笑い声は、その背中に虚しく吸い込まれ───やがて昇降口の闇に溶けていった。

    冴は踵を返し、正面玄関へ歩を戻していく。
    背後に残された下駄箱群は、まだ重く湿った気配を放ち続けていた───。

  • 32スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 21:08:24

    【情報共有フェーズ】

    昇降口の空気はさらに湿り、四人が再び正面玄関に揃うと、重たい沈黙が落ちた。
    先に戻っていた士道が、冴の頬を見て笑う。

    士道「おー、冴ちゃんも血ぃ出てんじゃん」

    冴「こんなの、痛くも痒くもねぇよ」

    その冷淡さに、潔は思わず息を呑む。

    潔「冴までやられたのか……!」

    黒名も顔を引き攣らせた。

    黒名「………やっぱり、ここは危ない場所だ。全員生きてて良かった、良かった……」

    各々の様子を見て、士道が退屈そうに鼻を鳴らした。

    士道「俺んとこなんか何も出てこなかったぜ?期待外れもいいとこだよな」

    冴「何もねぇのが一番なんだよ」

    呆れた冴をため息を横に、潔が皆に向き直る。

    潔「……俺と黒名のとこは、下駄箱の中から腕が伸びてきて……俺がちょっと引っ掻かれた。傷は浅いけど……確かに“何か”いた」

    黒名が小さく頷く。

    黒名「………ああ、本当だ。俺も見た、腕が出てきた」

  • 33スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 21:33:08

    その言葉に、昇降口の空気がさらに重く沈む。
    それぞれが探索の結果を胸に抱えたまま、全員が同じ結論に行き着いた。

    冴「……収穫なし、だな」

    冴が吐き捨てる。

    士道はつまらなそうにあくびをかみ殺し、潔と黒名は強張った顔を見合わせた。

    恐怖と退屈、苛立ちと不安───四人の感情が交錯する中、それでも歩みを止めることはできない。

    潔が息を吸い込み、かすれた声で言った。

    潔「……次の場所に行こう。気をつけて」

    靴音が再び、静まり返った校舎の奥へと響き始めた。

    ───その時。

    昇降口に漂っていた濃い沈黙を切り裂くように、廊下の奥から“ずるり”と何かが這い出す音が響いた。

    下駄箱の並ぶ暗がりのさらに奥。
    薄闇を縫うように、それは形を成す。

    黒い染みのような“影”が床から立ち上がり、じわじわと背丈を伸ばしていく。
    人間のようでいて、人間ではない。輪郭は定まらず、煙のように揺らめきながらも、確かに四人へ向けて敵意を滲ませていた。

    ぞわり、と肌を撫でる悪寒。
    血と腐臭に慣れ始めていたはずの空気が、一瞬で張り詰める。

  • 34スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 21:36:24

    潔が息を呑み、低く言い放った。


    潔「……経験上、戦うしかないよな」


    冴は眉ひとつ動かさず、姿勢を正す。


    冴「構えろ。油断するな」


    黒名は恐怖に震えながらも、歯を食いしばって吐き捨てる。


    黒名「うわっ、キモい……!絶対に倒す……!!」


    そして、士道の口元が大きく歪む。


    士道「やーーっと来やがったか!……あぁ、いいぜ。俺のこと、楽しませてくれよ!!!」


    影が、ぬるりと四人の前に歩み出た。廊下の光を吸い込み、校舎の暗さを倍増させながら。


    全員の視線が一点に集まる。足の裏から心臓まで、血が逆流するような緊張が走る。



    【影】1回攻撃成功で撃破

    潔 dice1d100=61 (61)

    黒名 dice1d100=49 (49)

    士道 dice1d100=43 (43)

    冴 dice1d100=66 (66)

    ※20以上の場合:攻撃成功

    ※19以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 35スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/29(月) 22:15:48

    【戦闘開始:勝利】

    ───その瞬間、空気が震えた。

    廊下に佇む“影”がゆらりと動き、黒い腕のようなものを振りかざす。それは生き物ともつかぬ質感で、闇そのものが形を持ったように、冷たく粘ついた気配をまとっていた。

    冴「チッ……」

    冴は小さく舌を鳴らし、一歩、床を蹴る。

    鋭い踏み込みと共に、身体は影へと疾駆した。その速度は人間離れしていて、潔が目で追うのもやっと。

    潔「俺たちも続くぞ!」

    そう、声をかけた潔よりも先に───

    ───ガッ!!

    冴の蹴りが影の脇腹を正確に捉えた。衝撃音が下駄箱の列に木霊し、影の輪郭が大きく波打つ。

    煙のように形が崩れ、人型を無理やり保とうとしたが───次の瞬間、霧散した。

    廊下に残るのは、しんとした沈黙。
    さっきまでの敵意が嘘みたいに消え、ただ闇と埃の匂いだけが漂っていた。

    士道「……………は?」

    士道がぽかんと口を開け、次いで爆笑した。

    士道「弱っっ!!なんだ今の!?ワンパンじゃん! 期待して損したわ!!!」

  • 36二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 03:33:41

    前から思ってたけどスレ主の文章センスあるよね

  • 37スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 07:25:37

    >>36

    うわー!嬉しいですありがとうございます!!スレ主基本的に誤字脱字が多いので慢心せず気をつけます!

  • 38スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 07:50:56

    潔は少し肩の力を抜きながらも、まだ油断しきれずに下駄箱の影を確認していた。

    潔「……雑魚、だな。こんなに簡単に消えるなんて」

    黒名は背筋を震わせたまま、ぎこちなく息を吐く。

    黒名「………終わった、のか?……俺、ビビる必要なかったな……」

    悔しそうに吐き捨てたが、その声にはまだ恐怖の余韻が滲んでいた。

    ───と、その時。

    士道「………ん?」

    足元でコン、と乾いた音がした。
    影が消えた床に、小さな何かが転がっている。
    薄暗い中でも、ほんのりと光を反射していた。

    士道が身をかがめて拾い上げる。

    士道「……んだこれ、ペットボトル?」

    掌に収まるほどの小さなサイズ。ラベルには《きれいなおみず》とだけ、白い文字で無機質に印字されていた。
    中には透き通った水が揺れている。

    士道「あー……戦利品ってやつか?」

    振りながら軽く笑う士道。

    冴は今だ血の滲む頬をぬぐい、興味なさそうに視線を逸らした。

  • 39スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 10:31:59

    【《きれいなおみず》×1:SAN値+1回復入手】

    冴「前と同じシステムなら、飲めば少しは落ち着くだろ」

    そう聞いて、潔は安堵のような声で呟いた。

    潔「そうだな、少しの水でも精神的に安心できる気がする」

    その言葉を聞き流しながら、士道は興味なさげにペットボトルを眺めたあと、ぽいっと黒名へと投げて渡す。

    士道「チビスケ、お前が持っといた方いいだろ」

    黒名「うわっ!?………えっ、俺?」

    慌てて受け取った黒名は目を丸くした。

    黒名「……分かった、俺が持つ。ありがと士道、お前案外いいヤツだな」

    士道「俺は元からいい子ちゃんだっつーの!」

    そんな軽口を交わしつつも、容器の冷たさが指先をじんわりと伝い、黒名は思わず身震いした。

    ───影は消えた。

    だが、この学校のどこかに同じものがまだ潜んでいる。それを全員が、胸の奥でひそかに理解していた。

    静寂が戻った玄関口。影はいなくなったはずなのに、空気は少しも軽くならない。むしろ息苦しさが増したようで、全員の耳に心臓の音だけが響いていた。

    ぎしり、と床板を踏む音。四人は顔を見合わせ、無言のまま廊下へと足を進める。

  • 40スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 11:34:13

    そこは木造校舎特有の長い廊下。古びた板張りの床の上に、赤黒く錆びた非常灯の光が点滅していた。一定のリズムではなく、不規則に瞬くそれは、闇を切り裂くどころか、むしろ闇を濃くしていく。

    潔「……なんか、いやな感じするな」

    潔が唾を飲み込むように小声で言う。

    冴「最初からずっとだろ。気にすんな、行くぞ」

    冴は面倒そうに肩をすくめる。

    潔「まあ、そうなんだけどさ。ちょっとでも油断したらヤバい。……次は廊下を手分けして探そう」

    自分を奮い立たせるように、潔は声を張った。

    そうして四人は、玄関から伸びる東の廊下へと歩を進めた。だが───数歩進んだところで、全員の足が止まる。

    士道「………あ?」

    士道が眉をひそめる。

    目の前に立ちはだかっているのは壁。だが、確かにさっきまで廊下は真っ直ぐ続いていた。
    いつの間に現れたのか分からない。まるで、最初からそこが行き止まりだったかのように当たり前の顔をして、灰色の板張りが通せんぼしていた。

    潔「……まだ行けないってことか」

    潔が呻くように言い、拳で壁を軽く叩く。固い手応えが返るだけで、夢や幻ではないのが分かった。

    士道「なんだよこれ。ふざけてんのかよ……!」

    士道が歯ぎしりする。

  • 41スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 12:02:39

    黒名は不安そうに視線を巡らせ、やがて小さく頷いた。

    黒名「……西の廊下から調べなきゃいけないってことだな」

    冴「結局、あっちに誘導されんのか」

    冴は低く吐き捨て、踵を返す。

    潔「はぁ……マジで気持ち悪い」

    潔が顔をしかめた。

    点滅する非常灯の下、四人は重苦しい空気をまといながら、西側の廊下へと向かっていった。

    ───足を踏み入れた瞬間、空気がさらに冷え込む。

    非常灯の明かりすら届かず、壁や天井は黒い影に飲まれている。人の気配はない。あるのは、湿った木の匂いと、どこからか染み出す鉄錆のような臭いだけ。

    四人は自然と肩を寄せ、視線を巡らせる。
    そこには三つの異様なものが並んでいた。

    一つ目は、西側廊下の入口に鎮座する【校長の銅像】。顔から胸までのよくある胸像だが、金属は黒ずみ、天井から落ちてきた水滴が額を濡らしている。まるで汗をかいているようで、不気味だった。

    二つ目は、壁際に掛けられた【学校掲示板】。破れかけたプリントや紙片が無造作に貼られているが、その多くは湿気で文字が滲み、判読できない。中には子供の筆跡で「たすけて」と書かれた紙が混ざっているように見えた。

    三つ目は、掲示板から少し離れた壁に並べられた【お父さん・お母さんの似顔絵】。低学年の子供たちが描いたであろうクレヨンの絵が、整然と貼られている。どの顔も笑っているはずなのに、目の部分だけが黒く塗りつぶされていて、廊下の闇と繋がっているように見えた。

  • 42スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 12:07:22

    潔「……どれも気持ち悪いな」


    潔が苦々しく呟く。


    冴「選べってことか。分かりやすいな」


    冴が冷めた声で応じる。


    士道「おいおい、やっと面白そうなオモチャが出てきたじゃねぇか!!」


    士道はにやつきながら拳を鳴らした。


    黒名「……嫌だ……全部嫌だ……」


    黒名は額に汗を滲ませ、視線を逸らす。


    廊下に漂う重苦しい空気の中、四人は顔を見合わせ、どこを調べるかを決めることになった。



    【探索ポイント・1階の西側廊下】


    ① 校長の銅像

    ② 学校掲示板

    ③ お父さん・お母さんの似顔絵


    >>43

    ※探索箇所・キャラを選んでください

    ※一箇所のみ二人で探索可能です

    ※二人の探索の場合、成功率が上昇します

    ※アイテム・固有能力・クリティカル特典を使用する場合、どのキャラに使用するか教えてください(成功の場合は温存されます)

  • 43二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 15:48:39

    ①潔
    ②士道
    ③黒名冴

  • 44スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 18:39:41

    >>43

    アイテム等使用なしで承知しました!


    ちょこっと余談ですが……

    本作は探索・戦闘の難易度を下げる代わりにギミックとSAN値・怪我値減少を増やしてます

    新しい試み、お楽しみ頂けたら嬉しいです

  • 45スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 18:55:16

    【① 校長の銅像:潔世一】

    潔は、足を止める。

    西廊下の入口、沈黙の中にただ一つ重く構えるものがある。見下ろすたびに胸の奥がざわついて、落ち着かない。

    潔「……こんなとこに……」

    独り言が漏れた。
    返事をする者はいない。

    士道の気配は確かに左隣にある。けれど、ハッキリと姿が見えないだけで、これほど心細いものなのか。

    足元にはガラス片。踏むとわずかに音を立てる。
    反射した光が銅像の下で揺れている。

    ───冷たいものが、背筋をなぞる感覚がした。

    潔「………ただの銅像だ」

    そう言ってみても、声は頼りなく響くだけだった。

    汗で滲んだ手のひらを握って、そのまま思い切って像の肩に触れる。カン、と乾いた金属音。耳の奥で反響して、やけに大きい。

    慌てて手を離す。響きが途切れると同時に、廊下がますます静かに沈んだ。

    銅像の台座は石造りで、角にはひび割れが走り、そこから細い根のようなものが覗いていた。土ではなく、暗い湿り気のある何かに絡まっている。

  • 46スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 18:59:28

    潔「何だよ、これ……」

    喉の奥がひゅっと鳴る。

    ───背後に気配を感じて振り返る。
    だが、そこには誰もいなかった。

    非常灯の点滅だけが、壁を赤く染めては消える。

    息を整えようと深呼吸する。
    しかし胸は重く、落ち着かない。

    ふと、台座の下に、細い隙間があるのに気づく。かがんで覗き込むと、暗闇が奥へと伸び、何かが置かれているように見える。

    潔「……中に、何かがあるのか?」

    声に出すと同時に、自分の鼓動が聞こえる気がした。
    額にじわりと汗が浮かぶ。

    息を止めて、さらに近づく。
    手を伸ばせば届くかもしれない。

    その瞬間、どこからか水滴の落ちる音。
    天井から垂れた水が、また像の額を濡らしたのだろう。だが耳に届く音は、まるで目の前で誰かが涙を落としたかのように近かった。

  • 47スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 19:02:12

    潔「ほんと、マジでやめろよ………」


    小さく呟く。

    声はかすれ、廊下に吸い込まれていく。


    気を抜けば逃げ出したくなる。

    それでも足は銅像の前に縫い付けられていた。


    左隣から、かすかに士道の足音。

    だが、こちらには来ない。


    頼りたいのに、呼べない。

    今ここで声を上げれば、銅像が動く気がして。


    深呼吸を繰り返す。

    震える手を、台座の隙間に向けて伸ばす。


    潔「……大丈夫だ。ただの……ただの銅像だ」


    繰り返し、繰り返し、言い聞かせる。

    声が震えていることを、どうしても隠せなかった。


    背後の非常灯がまた点滅する。光が途切れるたび、廊下の闇が迫ってくる。汗が首筋を伝った。


    潔は喉を鳴らし、隙間へと手を近づけていった。


    潔 dice1d100=62 (62)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 48スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 21:09:50

    【探索成功】

    隙間に手を差し込んだ瞬間、ざらりとした感触が走る。冷たく硬い石ではない何かがそこにある。

    慎重に指を動かすと、柔らかく湿ったものが指先に触れた。

    潔「………まさか」

    心臓が跳ね、思わず息を止める。
    指で摘んだそれを台座の奥からゆっくりと引き抜き、非常灯の赤い明かりにかざした。

    湿気で端が擦り切れた紙には、拙い字でこう書かれていた。

    ───『かげがくるよ』

    影───さっき下駄箱で襲いかかってきた、あの大きな黒い影のことで間違いないだろう。

    頭の中で戦った瞬間の光景が蘇る。
    目に焼き付いた恐怖、足元から伝わる緊張、空気の重み。

    (………やっぱりか。あの影はまた、俺たちの前に現れるんだな)

    息を整えようとしたが、手が小刻みに震える。
    恐怖で胸が張り裂けそうになりながらも、どこか胸の奥で小さな喜びが芽生えていた。

  • 49スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 21:11:46

    潔「………それでも、やっと成果をあげられた……!」

    そう呟き、紙切れをぎゅっと握る。

    廃病院のときも、こんな小さな手がかりで次に進めた。
    きっとこの紙だって同じだ。
    小さくても確実に、次の行動の糸口になる。

    湿った紙を折りたたみ、そっとサッカーバッグの奥にしまい込む。もし破れてしまったら、手がかりは消えてしまう。

    だから、丁寧に。

    潔「……絶対に無駄にはしない」

    震える手を握りしめながら、小さく息を吐いた。恐怖の中でも、前に進むための確信が心の奥にあった。

    非常灯の赤い光がちらつく廊下に、静けさと重苦しさが漂う。銅像は相変わらず無表情で立っていたが、今の潔にはそれが脅威ではなく、ただの目印のように見えた。

    小さな紙を握ったまま、静かに立ち上がる。
    握った手に力を込め、心の奥で決意を固めた。

    【《ちぎれたかみ》×1:『かげがくるよ』と書かれているメモ】

  • 50スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 21:34:17

    【② 学校掲示板:士道龍聖】

    壁沿いの掲示板に目をやる。
    赤や青のプリントが無造作に貼られ、ところどころは湿気で文字がにじみ、何が書かれているのか判読できない。紙片の端は折れ曲がり、破れかけているものもある。

    士道「こういうのがホラーの醍醐味だよな!」

    声を張り上げ、掲示板の前に駆け寄った。
    足元に落ちた紙片を蹴り飛ばしながら、手当たり次第に一枚一枚確認していく。

    紙の中には、子供の筆跡で書かれた文字も紛れ込んでいた。掠れた「たすけて」という文字が、ちらりと目に入る。

    その瞬間、笑顔が少しだけ引き締まる。

    士道「……助けて欲しいならちゃんと出てこいよ」

    プリントを指でめくるたびに、湿った紙の匂いが鼻をつく。にじんだ文字の合間に、色鉛筆で描かれた小さな絵や、読めない落書きが見え隠れする。

    それを見つけるたびに口角を上げ、楽しそうにくすくすと笑う。

    士道「よし、こっちの方もチェックだ!」

    腕を伸ばして掲示板の左端に手をかけ、プリントの下に指を滑り込ませる。
    どこかに何か手がかりが挟まっているかもしれない。そんな予感に胸が高鳴る。

    掲示板の前で、軽くジャンプして蹴るようにしながら、紙をずらして確認する。廊下に響く足音と、紙が擦れる音。

    同時に、隣で探索する潔の声が、遠くに小さく聞こえてくる。

  • 51スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 21:36:11

    士道「よし、こいつをめくって………あ、こっちもだな!」


    テンションをさらに上げ、掲示板全体を見渡しながら指で紙を押し上げ、隙間や重なりを確認する。


    湿った紙の手触り、破れかけの端、かすれた文字。

    その一つ一つに興奮は増していく。


    士道「ハハッ、ワクワクすんなあ!何が出てくる?おい、待ちきれねえよ!!」


    掲示板の角から角まで手を伸ばし、隙間を覗き込む。破れかけの紙片の下に、何かが隠れているかもしれない───そう考えると、心臓は跳ね、思わずにやりと笑う。


    興奮と好奇心で全身が震える。背中越しに、廊下の静けさや滴る水音が恐怖を思い出させるが、それを蹴散らすかのように手を止めない。


    掲示板の中央部分に手をかけ、紙を少し持ち上げる。湿気で少し重い感触が指先に伝わる。


    何か挟まっているかもしれない。

    そんな期待が高まる。


    笑みは消えず、声を出さずにはいられない。


    士道「さあ、手がかりでもバケモンでもなんでも出てこいや!!!」


    掲示板の前で、体を揺らしながら紙を押し上げ、隙間を覗き込む。まだ何も見えない。だが、気にしない。楽しければそれでいいのだ。


    湿った紙、にじんだ文字、そしてかすかな子供の落書き。全てが士道にとっては冒険の香りであり、爆発の予感でもあった。


    士道 dice1d100=97 (97)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 52スレ主◆jCG/LXEbdA25/09/30(火) 22:08:49

    【探索成功:クリティカル報酬付き】

    覗き込んだ紙の隙間から、金属か硬質な木のようなものが転がり落ちてきた。カチン、と床にぶつかり、高く音が鳴る。

    紙の下から転がり出てきたのは、小さな鍵。よく見れば、“1年1組”と書かれた古い教室の鍵のようだ。

    士道「よっしゃあ!!やっと来たぜ!!!」

    手のひらに握る鍵の冷たさが、興奮をさらに加速させる。だが顔にはすぐに、まだ足りないという欲望が浮かぶ。

    士道「でも、これだけじゃねぇよな……?なあ、もっと来いよ!」

    思わず足元の紙や紙片を蹴飛ばす。すると、蹴った先から梱包された包帯が転がって出た。茶色の紙で丁寧に包まれており、手書きで『せいけつなほうたい』と書かれている。

    士道「お、こいつも付いてきたか!随分手厚いサービスだな、俺のことビビらせるんじゃねえのか?」

    包帯を拾い上げ、鍵と一緒に手に持つ。心臓が高鳴り、体が全身で喜びを表す。テンションは最高潮だ。

    士道「さあ、追加でバケモンも来ていいぜ?またワンパンでぶっ壊してやるからよ!」

    挑発的に廊下の闇を睨む。目の前にはまだ湿った掲示板と、破れた紙片の山があるだけだが、それすら最高潮へと導く舞台装置のように思えた。

    鍵と包帯を手に持ちながら、少し高くジャンプして足元を蹴る。乾いた紙の擦れる音が廊下に響く。全身で楽しさを噛みしめながら、笑いを抑えきれない。

    士道「まあ、これで準備万端だろ。次はどんなオアソビが待ってる?早く来いよ、俺を退屈させんなよ」

    手にした鍵は教室を開ける未来を約束している。包帯は、何か起こるときの保険か。頭の中には次の行動のイメージが広がり、足元から全身に震えが伝わる。

    目の奥の光は、まだ見ぬ“爆発”への期待でぎらつく。孤独な探索でも、笑顔は絶えず、周囲の恐怖を蹴散らすかのようだった。

  • 53二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 23:02:02

    士道強いな

  • 54二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 06:15:38

    ほしゅ

  • 55スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 07:20:18

    >>53

    士道は過去作品でも良い出目を出してくれてたので本作でも期待が高まります!


    >>54

    保守ありがとうございます!大変助かります!

  • 56スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 09:43:25

    【《1年1組の鍵》×1:教室の鍵入手】
    【《せいけつなほうたい》×1:怪我値+10回復入手】
    【③ お父さん・お母さんの似顔絵:黒名蘭世&糸師冴】

    学校掲示板から少し離れた場所に近づくと、壁一面に紙が貼られているのが見えた。それは、子供が描いたであろう似顔絵だった。

    クレヨンで大きく描かれた顔───「お父さん」「お母さん」と書かれた文字が紙の上に並んでいる。

    どの絵も、大きく口を開けて楽しそうに笑っている。だが、目の部分だけは黒く塗りつぶされ、墨を垂らしたように真っ暗だった。廊下の影とつながっているかのようで、ひどく不気味だった。

    黒名「……やっぱり気持ち悪いな」

    黒名が眉をひそめ、低く呟いた。その声は廊下に吸い込まれていくようにか細い。

    その横で、冴は無言のまま立っていた。士道のやかましい歓声が右隣から響いてくる。何かを見つけたらしいが、興味がない。

    黒名は、ちらりと冴の横顔を見やった。寄り添うように立っている自分に、冴が迷惑そうな顔をしているのがわかる。けれど冴は、凛と同じ年頃の少年を突き放すようことはできなかった。

    黒名「………ちゃんと見て、早く終わらせる」

    そう言って、黒名は壁の絵に顔を近づけた。

    笑顔のはずの父と母の似顔絵が、どれも異様に歪んで見える。紙の端は湿気で波打ち、ところどころ剥がれて壁から浮き上がっていた。その隙間から覗く闇は、校舎そのものが呼吸しているように見えた。

    冴は腕を組み、表情ひとつ変えずに紙の列を見ている。

    冴「………くだらねえ」

    その冷たい声が、廊下の空気をさらに重くした。
    黒名はごくりと唾を飲み込んだが、隣に立つ冴の冷静さに救われる気もした。

  • 57スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 09:44:43

    黒名「でも……なんか、嫌な感じだ」


    そう呟きながら、黒名は指先で一枚の紙の端に触れる。紙はじっとりと湿っていた。まるで生きているかのように、指に張り付いて離れない。


    黒名「……うわ。最悪、最悪………」


    ───その時、背後で士道の声が響く。その調子外れな叫びが、逆に黒名の緊張を強める。


    冴は小さく息を吐いた。


    冴「集中しろ。こっちだけ見てればいい」


    その声に従い、黒名は壁の似顔絵を睨みつける。


    父と母。笑っているはずなのに、そこにあるのは虚ろな目の闇だけだった。

    黒名の胸に、冷たいものが広がる。足元の床板が軋む音がやけに大きく聞こえた。


    黒名「……冴、これ……絶対なんかあるよな」


    だが冴は答えない。ただ、闇に溶けそうな似顔絵を淡々と観察している。


    黒名は、息を整えながら冴に並んで立った。この場の重苦しさに耐えきれず、わずかに肩が震えていた。


    黒名 dice1d100=75 (75)

    冴 dice1d100=15 (15)

    ※合計値80以上の場合:探索成功

    ※合計値79以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 58二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 13:45:06

    ギリセーフ!

  • 59スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 17:19:01

    >>58

    成功率上げてるので余裕かなと思ってましたが結構ギリギリでしたね…!


    皆様大雨の影響はなかったでしょうか

    身のご安全を一番に引き続きお気をつけくださいね

  • 60二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 17:23:32

    士道ss少ないから嬉しい

  • 61スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 17:30:16

    【探索成功:ハズレ】

    冴の「これ以上は無駄だ」という言葉に、黒名は小さく息を吐いた。その声には苛立ちよりも冷静さが宿っていて、とても逆らう気にはなれなかった。

    黒名「……そうだな。ここには何もない」

    掘り下げても、見えるのは歪んだ笑顔と黒く塗りつぶされた目ばかり。子供の無邪気な絵が、これほど不気味に変わるものなのかと、背筋を冷たい汗が伝っていく。

    その時、右隣の廊下から弾むような声が響いてきた。

    士道「なあ、聞けよお前ら!」

    士道が、わざと音を立てるように足を鳴らしながら近づいてくる。手には小さな金属の鍵を掲げ、口元には自信満々の笑み。

    士道「1年1組の鍵と包帯!ダブルでゲットだ!俺、サッカーだけじゃなくて、探し物の才能もあるかもしれねぇわ!」

    声の大きさに思わず眉をひそめる黒名だが、士道の無邪気さには皮肉を言う気も起きなかった。

    冴は小さく鼻で笑い、「ふん」とだけ返す。だがその視線は鋭く、鍵と包帯を値踏みするように見ている。

    そこへ、今度は潔が静かに歩いてきた。
    士道とは対照的に声を張り上げることもなく、けれど仲間の視線を自然と集めるような気配を纏っている。

    潔「2つもゲットしたのかよ……流石だな、士道」

    短く労いの言葉をかけたあと、潔はバッグから折れ曲がった紙片を取り出した。

    潔「……俺はこれを見つけた。“かげがくるよ”って書かれてた。……みんなもわかってるだろうけど、また影が現れる。そういう意味だと思う」

  • 62スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 17:32:56

    “影”という言葉に、黒名の喉がひゅっと鳴った。冴は眉をひそめ、士道はニィっと不敵に笑う。あの得体の知れない存在の記憶が、全員の脳裏を過ぎったのだ。

    重苦しい沈黙が落ちた───その瞬間。

    廊下の蛍光灯がパチパチと音を立て、次々に点灯し始めた。さっきまで闇に沈んでいた空間が、じわじわと白い光に満たされていく。まるで誰かが見えないスイッチを入れたかのように。

    黒名は思わず顔を上げた。

    黒名「……灯りが……?」

    冴は怪訝そうに天井を仰ぎ、士道は口の端を吊り上げる。

    士道「おいおい、歓迎ムードかよ。………いや、俺たちが何かを進めたってことか?」

    潔もまた、光に照らされた廊下を見回していた。表情には緊張が残っているが、その目にはわずかな安堵が宿っている。

    潔「……理由はわからない。けど、ここは安全になった。少なくとも今は」

    白々しい光に照らされながら、四人は立ち尽くしていた。ただの蛍光灯の明かりなのに、不思議と胸を押さえたくなるような温かさがある。

    それは希望に似ていて、束の間の休息を与えるものでもあった。

    ───この場所だけは、安心できる。

    誰も口に出さなかったが、全員が同じ確信を抱いていた。

    【西側廊下:探索コンプリート】

  • 63スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 18:06:18

    >>60

    良かったです!士道は感情の動きが多いので書いてて楽しいです!過去作品に士道が登場してるものがいくつかあるのでご興味があれば覗いてみてくださいね

  • 64スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 20:43:27

    ───明かりの灯った廊下で、少し休息を挟んでから次の目的地へと進む。

    黒名と冴は、壁沿いに並んで歩きながら、ゆっくりと前方を見据える。

    士道は少し前方で、手に握った1年1組の教室の鍵を指で弾きながら、軽い足取りで歩いている。

    潔はそのさらに前方で、廊下の床を踏みしめるたびに軋む音を気にしながら進む。廊下の幅は狭く、壁沿いの距離感が自然に生まれていた。

    ───少し進むと、似顔絵が貼られた壁の反対側に、目的の教室が姿を現した。

    士道が前に立ち、鍵を扉の鍵穴に差し込む。

    士道「んじゃ、行くか!」

    ガチャリと小さな音が廊下に響き、扉はゆっくりと開いた。

    教室の中に足を踏み入れると、空気は少しひんやりとして湿り気がある。
    以前の廊下と同じように暗く、木の床がかすかに軋む音が響く。湿った紙の匂いと、廊下よりも少し重い空気が漂い。

    胸の奥まで押し付けられるような感覚があった。

    冴「……やっぱり、ここも同じか」

    冴が低くつぶやき、黒名も小さく息を吐く。
    恐怖心はあるが、足は自然と前に出た。

  • 65スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 20:46:09

    教室の中を見渡すと、目に留まる場所がいくつか存在する。

    一つ目は、教室の壁側に存在する【黒板とその付近にある小物たち】。黒板は黒ずみ、粉っぽいチョークの跡がうっすら残る。存在感のある教卓や、壁には時間割が貼られ、かすかな埃の匂いが漂う。

    二つ目は、教室の中央に存在する【机と椅子】。15名分の机と椅子が整然と並んでいる。窓際の机には、鮮やかな赤い彼岸花が花瓶に生けられていて、暗い教室の中でひときわ目立っていた。

    三つ目は、黒板とは反対側の壁にある【荷物置き場】。ランドセルを入れるロッカーが並ぶ。床には教科書やノートが散乱しており、扉のない空洞は闇に包まれているようだった。

    潔は荷物置き場を眺めながら、ため息を一つつく。

    潔「……よくもまあ、ここまで散らかして……。………いや、落ち着け、今は探索だ」

    怖さをこらえつつも、少しだけ安心した気持ちも混ざっていた。腕の引っ掻き傷がまだ痛むが、手を伸ばして確かめる勇気はある。

    黒名は冴の横にぴったり寄り、声を潜めて言った。

    黒名「ここ、血とかの匂いはしないな……。でも気は抜けない」

    恐怖で身を強張らせながらも、慎重に視線を巡らせる。

    士道はいつも通り、好奇心が先行して笑みを浮かべる。

    士道「これ絶対中に何かあんだろ!面白そうじゃねえか!!」

    手を伸ばし、散らばった教科書やノートに軽く触れてみる。いつもならつい破壊したくなるところだが、今回は控えめに楽しんでいる様子だ。

  • 66スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/01(水) 21:07:19

    冴は辺りを一瞥しただけで淡々と評価する。


    冴「……フン、特に変なものはないな」


    指先で触れずとも、空気の重さや物の配置から危険がないことを判断している。


    教室の三か所を確認して、四人は互いに視線を交わす。


    潔「……これで一通りはザックリ見たな」


    潔の声に、士道が肩をすくめる。


    士道「なら探索始めんぞ。ちなみに、俺はさっき成果を上げた。だから、次はお前らにも期待してるぜ?」


    黒名は小さく頷き、冴も淡々と前を見つめる。暗く湿った教室の空気の中、四人は少しだけ緊張を解き、次の行動を思案していた。


    【探索ポイント・1年1組の教室】


    ① 黒板付近

    ② 机と椅子

    ③ 荷物置き場


    >>67

    ※探索箇所・キャラを選んでください

    ※一箇所のみ二人で探索可能です

    ※二人の探索の場合、成功率が上昇します

    ※過去作品のクリティカル特典(探索自動成功)を使用する場合、どのキャラに使用するか教えてください(探索成功の場合は温存されます)

  • 67二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 00:56:07

    ①黒名
    ②冴、士道
    ③潔

  • 68スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 07:09:20

    >>67

    アイテム使用なしにて承りました!

  • 69スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 08:02:39

    【① 黒板付近:黒名蘭世】


    黒名「……次は、俺一人で探す」


    小さくそう言い残し、全員から距離を取って、教室の壁際───黒板の方へと歩を進めた。足音が古びた床板をわずかに鳴らす。その音すらも、この静まり返った教室ではやけに大きく響く。

    震えた手をぎゅっと握りしめて、見定めるようにゆっくりと前を向いた。


    薄暗い教室の奥。黒板は黒ずみ、うっすらと白い粉の筋が浮かび上がっていた。何かが書かれていたはずなのに、布で乱雑に消された跡だけが残っている。文字の形は判別できないが、線の流れからは“急いで消された”ような荒々しさが伝わってきた。


    そのすぐ前には、存在感のある教卓が鎮座している。だが、形が不自然だった。横から覗き込むと、天板がわずかに斜めに傾いているように見える。時間のせいか、あるいは力を加えられたせいか───まるで、中から何かが押し上げようとした痕跡のようにも思えた。

    無意識に一歩だけ後ずさる。


    壁には、色褪せた時間割が貼られていた。国語、算数、理科、社会……そんな見慣れた文字に混じって、一つ違和感がある時間割に目が止まった。


    黒名「………“かげのじかん”?」


    震えるように小さくつぶやいた。ふざけて誰かが書いたにしては悪趣味で、消されずにそのまま残っていることに気味の悪さを感じた。


    さらに目を上げると、時間割の上に取り付けられた壁掛け時計が視界に入る。針はぴたりと動きを止めていた。示しているのは───“丑三つ時”。校舎の時計とまったく同じだ。偶然ではなく、この場所全体が同じ時刻に縛られているのだと確信させられる。


    黒名の呼吸が浅くなる。背中に冷たい汗が流れるのを感じながらも、黒板とその周囲から目を逸らさずにいた。


    黒名「……やっぱり、ここも普通じゃないな」


    どこもかしこも異常だと、自分に暗示をかけるように言葉を落とした。そうして、深呼吸をした後、指先を黒板の縁にゆっくりと伸ばしていった───。


    黒名 dice1d100=63 (63)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 70スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 11:08:39

    【探索成功:ハズレ】

    伸ばした指先で黒板の縁に触れる。
    ざらりとした感触が爪先にまとわりつき、白い粉がほのかに舞い上がった。指を引くと、チョークの粉が細かく付着していて、ただの“黒板”であることが分かる。

    眉をひそめ、黒板の隅を丹念に探った。だが、隠し扉のようなものはもちろん、書き残された文字も浮かんでこない。ただ粉と黒ずみだけが、無言で黒名を迎えているだけだった。

    次に教卓へと身を寄せる。
    天板の歪みを手で押してみても、何の反応も返ってこない。中を覗き込んでも、ただ古びた木材の暗い影が落ちているだけだった。内側から何かが押し上げたように見えたその痕跡も、錯覚か時間のせいなのか、確信を持つには至らない。

    壁の時間割にも、もう一度目を走らせた。
    先ほど見た「かげのじかん」の文字以外には、新しい情報は見つからない。触れてみれば、紙は湿気を吸ってぐずぐずに柔らかく、崩れ落ちそうなほどだ。

    そして、視線を上げる。
    時計の針は動かないまま、丑三つ時を指していた。長い間止まっているせいで、文字盤にはうっすらと埃が積もり、冷たい光を反射している。

    黒名「……ここもハズレだな」

    ぽつりと呟く。教卓の傍らに立ち尽くし、改めて周囲を見回すが、やはり何も見つからない。

    しばし沈黙が落ちる。
    自分の呼吸音だけがやけに大きく響き、喉が渇いていくのを感じる。

    ───黒名は肩の力を抜き、ふっと短く笑った。

    黒名「……何もなかったけど、お化けが出てこなくて良かった、良かった」

    黒板の前で一つ、安堵の息を吐く。
    ほんのわずかに背中を伸ばし、緊張を解いた表情には、かすかな安らぎが滲んでいた。

  • 71スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 12:00:40

    【② 机と椅子:士道龍聖&糸師冴】

    士道「冴ちゃん、次は俺と一緒に探そうぜ♪」

    冴「……勝手にしろ」

    一つ目の机へと歩いていく冴を、士道が軽やかに追いかける。床板がきしむ音が重なり、二人の影が机の列に並んで伸びていく。

    冴は無駄のない仕草で椅子を引き、机の中へ手を伸ばした。
    中には古びたノートが数冊放り込まれているだけで、特に怪しい仕掛けは見当たらない。
    それを軽く押し戻し、次の机へと移った。

    士道「なぁなぁ、こういうときってさ、絶対なんか出てくるだろ?骨とか手紙とかさ!マジでこういうのワクワクすんだよなぁ!」

    冴「子供かお前は」

    士道「少年心ってやつな?ホラー探索は楽しんだもん勝ちだろ!!」

  • 72スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 12:15:55

    士道は冴の隣の机を勢いよく開けて、中を漁る。

    乾ききった消しゴムのかけらや、ページが破れた教科書が詰め込まれていた。

    ぱらぱらと開くと、文字が滲んでおり、ところどころが墨のように黒く染みて読めない。


    冴は横目でちらりとそれを見やり、ため息を吐く。


    冴「……無駄口叩く暇があるなら、ちゃんと見ろ」


    士道「なんだよ冴ちゃん、冷たいんじゃねぇの?でもそういうとこも好きだぜ!」


    冴は返事をせず、すぐに次の机へ。

    淡々と引き出しを探り、整然と並んだ机の列を進んでいく。


    士道はそれに合わせて飛び跳ねるように動き、机を開けては声を上げる。


    士道「お、今度は紙切れだ!……って何書いてあんだコレ、字がぐちゃぐちゃで全然読めねぇ」


    冴「……はあ、くだらねえ」


    二人のやりとりは続き、机と椅子の間を行き来するたびに、乾いた木の匂いと紙の埃が漂った。


    二人は教室の中央を進みながら、机の奥に潜む“何か”を求めて手を伸ばしていく。


    士道 dice1d100=43 (43)

    冴 dice1d100=79 (79)

    ※合計値80以上の場合:探索成功

    ※合計値79以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 73二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 14:58:17

    探索成功したみたいでよかった

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 17:39:59

    >>73

    これ系は推しがひでえ目にあうのを期待してしまう

  • 75スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 18:09:46

    >>73

    みんな探索順調で安心です!アイテム出現回数ケチってるのでこのまま安定した探索を見せて欲しいです…!


    >>74

    フラグにならないことを願いましょう…怪我したり精神的に不安的になってる推しからしか得られない栄養もありますけどね……

  • 76スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 18:11:54

    【探索成功】

    士道が机の中に手を入れた瞬間、“ベチャ”っとした嫌な感触が指先に絡みついた。

    士道「……っ、なんだコレ」

    勢いよく手を引き抜くと、その掌には変色したパンの塊が乗っていた。表面は黒ずみ、湿気でふやけ、鼻をつく酸っぱい匂いが漂う。

    士道「うわ、汚ねぇな。……でもなんか面白いわ!冴ちゃん!なんか見つけたぜ!!」

    士道は眉をひそめつつも、まるでお宝でも見つけたかのようにパンを掲げる。冴は眉間に皺を寄せ、呆れた声を落とした。

    冴「……そんなもの持ち歩く気か?」

    士道「当たり前だろ?ホラー探索といえば、こういう小道具は重要アイテムなんだよ!」

    冴「…………お前が持ってろ」

    冴は視線もくれず、パンを押し戻すように士道の胸へと突き返した。士道は苦笑しつつも、結局は掌でその不気味な“腐ったパン”を大事そうに抱え込む。

    その後、残りの机や椅子を一通り探ってみても、埃まみれの教科書や空っぽの引き出しばかりで、特に目立ったものは見つからなかった。

    パン一つ。
    だが確かに“探索の成果”はそこにあった。

    士道「腐ってても食えなくても、成果があったってことだよな!」

    士道は誇らしげに笑い、胸の前でそのパンを掲げてみせる。冴は深く息を吐き、ただ前だけを見て歩き出した。

    【《くさったぱん》×1:食べられないがどこかで役に立ちそう】

  • 77スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 19:30:04

    【③ 荷物置き場:潔世一】


    黒名たちがそれぞれ机や黒板に散っていくのを横目に、一人教室の奥へと歩を進めた。


    視線の先には、壁際にずらりと並んだ荷物置き場。子供がすっぽり収まりそうなほどの大きな空洞が並び、その中は闇に沈んで中身が見えない。


    近づくにつれ、鼻先に湿った紙の匂いが漂い、床に散らばった教科書やノートが靴底に擦れて、“しゃり”と音を立てた。


    潔「……こんな場所に、何か残ってるのか?」


    小さく呟き、しゃがみ込む。


    足元に散らばったノートを拾い上げた。

    表紙は水に濡れて滲み、何度も開かれた跡のある紙は脆く、今にも崩れそうだった。文字はほとんど読めないが、ところどころに子供の走り書きが混じっているのがわかる。


    潔「字が滲んでて……全然読めないな」


    眉間に皺を寄せ、ノートを元の場所にそっと戻すと、呼吸を整えて立ち上がる。


    今度は目の前の空洞へと視線を向ける。

    暗闇の奥はまるで何かを飲み込んだまま口を閉ざしているように、不気味に沈黙していた。


    潔「……よし、次は中だ」


    ためらいを振り払うように、片手を差し入れ、内部を確かめ始めた───。


    潔 dice1d100=88 (88)

    ※50以上の場合:探索成功

    ※49以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 78二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 20:17:47

    スレ主さんの新作楽しみにしていたよ

  • 79スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 20:55:48

    >>78

    嬉しいですありがとうございます!前の投稿からかなり時間が空いてしまったので原点に戻って探索SS書いてみました。良ければ引き続きお付き合い下さいませ!

  • 80スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 21:18:19

    【探索成功】

    空洞の奥に手を伸ばした瞬間、ひやりとした金属の感触が皮膚を撫でた。

    潔「ッ………?」

    息を止めて慎重に引き寄せると、小さな銀色の鍵が掌に収まる。薄暗い教室の中でも鈍く光を反射し、刻まれた文字がかろうじて読めた。

    ───“家庭科室”

    潔「………よしっ、順調だ」

    声が響かないよう、囁くように小さく口にした。冷たさを握り締める手に、僅かな安堵と達成感が宿る。

    その後も、別の空洞を覗き込み、足元に散乱した教科書やノートをめくってみた。湿気でふやけた紙の束はどれも無残に崩れており、鍵以外に目を引くものは何一つ残されていなかった。

    肩でひとつ息をつき、手に入れた鍵をポケットにしまい込む。

    潔「みんなの状況はどうだろう……士道はあの騒ぎ方だと、また何か見つけたんだろうな」

    ぽつりと呟いたあと、荷物置き場から立ち上がり、視線を黒板の方へ向ける。そこには既に三人の影が集まりつつあった。

    教室の薄暗さに浮かぶ彼らの姿を確かめながら、潔も歩を進めていった。

    【《家庭科室の鍵》×1:小さな銀色の鍵】

  • 81スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 21:23:55

    潔「お待たせ、みんなどうだった?」

    荷物置き場から戻ってきた潔が声をかけると、黒板前に集まっていた三人の視線がそちらへと向いた。

    黒名「俺のところは何もなかった」

    黒名が小さく肩を落とす。

    黒名「お化けも、役に立ちそうなものも……何にも出てこない」

    言葉の端にほんのり悔しさが滲む。それでも異形の気配を感じなかったことで、心底ほっとしているのは明らかだった。

    潔「ドンマイ、そんなこともあるって」

    潔が穏やかにフォローを入れると、士道がすかさず胸を張る。

    士道「こっちはパンを見つけたぜ!」

    誇らしげに掲げられたのは、しわくちゃに乾いたパン。表面が変色し、鼻をつく酸っぱい匂いを放っている。

    冴「腐ったものを堂々と出すな」

    冴が顔を顰める。

    黒名「………ゴミ、ゴミ」

    黒名も思わず呟く。
    潔は苦笑を浮かべながら、「士道らしいな」と心の中で苦々しくも頼もしさを感じていた。

  • 82スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/02(木) 21:29:53

    潔「俺はこれを見つけた」


    潔はポケットから小さな銀色の鍵を取り出す。三人の目の前で差し出されたそれには“家庭科室”と掠れた刻印が刻まれていた。


    士道「お!次の遊び場は家庭科室ってわけか!」


    士道が身を乗り出す。


    黒名「これで次の場所に進めるんだな」


    黒名の声に、冴も僅かに目を細めた。

    確かな進展を感じ、四人の間に重苦しい空気が少し和らぐ。


    ───その瞬間だった。


    しんと静まり返った教室の奥から、か細い啜り泣きの声が漏れ出す。不気味な女の子の声が、木製の机の隙間を這うように響き渡った。


    潔 dice1d100=51 (51)

    黒名 dice1d100=69 (69)

    士道 dice1d100=7 (7)

    冴 dice1d100=81 (81)

    ※50以上の場合:影響なし

    ※49以下の場合:SAN値減少

  • 83二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 03:40:54

    ドキドキするな

  • 84スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 07:14:42

    >>83

    まだまだ余裕とアイテム達があるので大丈夫……なはずです!

  • 85スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 07:44:20

    【士道龍聖:SAN値20→19(-1)】

    潔「……なんだよ、この声」

    潔が顔を強ばらせ、耳を澄ませる。心臓が早鐘を打つが、ぎりぎりのところで気力を保っていた。

    黒名「女の子が泣いてる……」

    黒名は思わず小さく呟く。恐怖よりも、どこか胸が締め付けられるような可哀想さの方が先に立っていた。

    士道「………おいおい、ちびっ子泣かしてんじゃねえよ」

    士道はいつもの笑みを浮かべず、珍しく低い声で吐き出した。怯えているわけではない。ただ、聞こえてくる声に宿る悲しみに、心の奥が酷く痛んでいた。

    冴「気をつけろ。襲いかかってるかもしれねえ」

    冴は冷静に周囲へ視線を走らせる。感情よりも先に判断が働いている。今は身の安全を最優先にするべきだと本能が騒いでいた。

    ───啜り泣きはやがて、はっきりとした声へと変わる。

    『いたい……いたいよ……』

    少女のような声が教室に反響する。姿は見えない。ただ、机の影や窓の闇から漏れてくるように、どこからともなく響いていた。

    潔「………、……どうしたんだ?」

    潔が思わず声をかける。

    返ってきた声は震えていた。

  • 86スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 11:45:50

    『……からだがいたいの、ずっと、ずうっといたいの』

    『ママにもらったばんそうこう、さがしてきて……』

    『おくつといっしょにおいてきちゃったの』

    “靴”という言葉に、四人の脳裏へ、先程探索したばかりの下駄箱が浮かんだ。

    冴「……靴箱だな」

    冴が短く言う。

    士道「ああ、今度は見つかるかもしれねえ」

    士道が扉の方を見遣る。潔と黒名も無言で頷いた。

    教室の扉へと手をかける士道の背中には、やるせなさが滲んでいた。

    ───廊下に出ると、柔らかな光が四人を迎えた。

    蛍光灯の光は教室の薄闇を押し戻し、先ほどまでの重苦しさは嘘のように和らいでいる。空気は穏やかで、ここがまだ、安全だと告げているようだった。

    黒名はほっと息を吐き、潔の横で小さくつぶやく。

    黒名「……光ってると、なんか安心するな」

    士道は片手に腐ったパンをぶら下げたまま、軽口を叩く。

    士道「普通の夜の学校なんざつまんねえだろ、俺はワクワクしてぇの」

  • 87スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 18:26:52

    四人が下駄箱へと向かう道すがら、教室から聞こえる少女の声が廊下を伝って耳に届いた。

    その声に、黒名の顔に心配が滲む。

    黒名「どうして怪我してるんだ。……なんで、ずっと痛いなんて言うんだ?」

    潔は眉を寄せ、冷静に考えを巡らせる。

    潔「分からない。けど、放ってはおけないよな。何か事情があるっぽいし」

    冴は相変わらず淡々としているが、警戒は解いていない。足元に注意を払いつつ、声だけは低く響かせた。

    冴「怪我が治ったら、逆に襲ってくる可能性もある。用心して動け」

    黒名が不安そうに頷く。その視線は、先に進む足元と、壁とは反対側に並ぶ下駄箱へと交互に向けられていた。

    廊下の中央に右手に下駄箱の列が見えてくる。木製の枠が並び、扉のない空洞が暗い口を開けていた。いくつかはさっき覗いた場所と同じく湿気で黒ずみ、埃が積もっている。

    士道が少し前へ出る。興味と使命感が混ざったように、下駄箱を一瞥してからふっと笑った。

    士道「よっしゃ、ここで見つけられればガキンチョのヒーローだぜ!」

    ───その時だった。

    下駄箱の奥の闇が、ぬるりと形を変えた。暗がりが盛り上がり、まるで黒い布を引きちぎるように“影”が薙ぎ出した。

    無機質な黒の塊は、人の背丈を超えるほどに伸び、滑るような動きで廊下へと這い出す。“見る者に敵意を示す”その姿は、先程より悪意が強まっているようにも見えた。空気が一瞬で引き締まり、足先から背筋へと冷たさが走る。

  • 88スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 18:30:04

    士道「また来やがったな」


    士道の声は怒気と歓喜の混じったような響きだった。笑いが戻るどころか、今は闘志が燃えている。


    潔はすぐに身構える。唇を引き結び、右手をわずかに上げた。冷静だが、目は鋭い。


    潔「構えろ、無駄な動きはするな!」


    黒名は小さく震えながらも拳を握り、唇を噛む。恐怖はある。だが、少女を放ってはおけない思いも働いていた。


    黒名「絶対に……倒す……!」


    冴は表情を変えず、鋭く廊下を見据えた。声は低く冷たく、だが的確だ。


    冴「襲ってくるなら、先に潰す。生き残ることが最優先だ」


    影はゆっくりと四人の方へ向かってくる。廊下いっぱいにその黒が広がり、木の床に冷たい影を落とす。どこからともなく、低い唸りのような音が漏れた。


    四人は自然に間合いを取り、互いの動きを確かめ合う。視線を交わすことは少ないが、身体が連携を示していた。士道の叫び声と共に、全員の呼吸が重なる。


    士道「何度でも出てくるなら、何度でも倒すまでだよなあ!!!」


    【影】3回攻撃成功で撃破

    潔 dice1d100=29 (29)

    黒名 dice1d100=67 (67)

    士道 dice1d100=64 (64)

    冴 dice1d100=100 (100)

    ※20以上の場合:攻撃成功

    ※19以下の場合:SAN値・怪我値減少

    ※ファンブル・クリティカル適用有

  • 89スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 21:19:23

    【戦闘開始:勝利・100報酬付き】

    影が前に出るより早く、冴の身体が閃光の如く走る。靴底が床を叩き、鋭い瞳が黒を捉えた。

    冴「………鬱陶しい」

    吐き捨てるように声を落とし、そのまま飛び蹴りが影の胸部へ突き刺さる。衝撃音が廊下を震わせ、黒い塊が大きく仰け反った。瞳に宿る苛立ちが、普段の冷静さを打ち破るほどの迫力を帯びていた。

    黒名「うわ、すご……」

    黒名が思わず息を呑む。だがすぐに首を振り、自分もと拳を握りしめる。

    黒名「お、俺だって……!負けてられない!」

    恐怖を押し殺し、黒名の蹴りが迷いなく影へと向かう。臆せずに踏み込んだその一撃は、影の形を大きく揺らした。

    士道「いいじゃん!ナイスだぜチビスケ!……んじゃ、次は俺の番な!!」

    士道は勢いそのままに踏み込み、力任せに叫んだ。

    士道「さっさと死んどけ!!!!!」

    豪快な蹴りが影を直撃し、黒い体がさらに大きく揺さぶられる。

    潔も一歩踏み込むが───影はそこで耐え切れず、煙のように掻き消えた。

    潔「……また俺の出番なかったな」

    潔は小さく苦笑し、肩をすくめる。

  • 90スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 21:45:46

    士道「ま、次に期待するわ!このままだとサッカーしか出来ないヤツになっちまうからなあ!」

    士道が笑いながら突っかかる。

    潔「別に俺、サッカーだけ出来ればいいし……!」

    潔は少しだけムッとした顔で言葉を返し、それを見ていた黒名はほっとしたように息をついた。

    黒名「でも、よかったな。怖かったけど、みんな無事で安心した」

    そうして廊下は再び静寂に包まれる。

    ───その時、黒い残滓が床に小さく音を立てた。

    黒名「………ん、何か落ちてきたぞ?」

    黒名が指差す。

    足元に転がっていたのは、黄色い包紙がキラキラ光るレモン味の飴玉と、色褪せた怪獣のおもちゃだった。

    士道「このキラキラしてんのは………アメ玉?コイツ、影のくせに甘党なのかよ!」

    士道が飴玉を掴んで笑う。

    潔「冗談言ってる場合じゃないって!……まあ、効果は分からないけど、とりあえず持っておいた方が良さそうだな」

    潔がツッコミながら冷静に促す。

    【《れもんあじのあめだま》×1:SAN値+1回復】
    【《かいじゅうのおもちゃ》×1:効果は不明だが困った時には力になってくれそう】

  • 91スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 22:11:38

    その横で、冴は無言で怪獣のおもちゃを拾い上げた。掌にはじんわりと懐かしさが宿る。

    冴「………ふっ、随分とボロボロになったな」

    一瞬だけ微笑んだ後、ぼそりと呟いた声は酷く優しくて。その声に士道も黒名も一瞬だけ言葉を失った。

    拾ったアメ玉やおもちゃをそれぞれサッカーバッグにしまい込み、四人は改めて下駄箱へと視線を向けた。

    廊下から届く光が下駄箱に降り注いでいるが、油断はできない。全員の表情に、それぞれの決意が滲んでいる。

    潔「よし、それじゃあ行くか」

    潔が小さく声をかけ足を踏み出した瞬間、黒名が真っ直ぐ顔を上げる。

    黒名「俺も一緒に見る。二人で確かめたほうが安心だ、それにさっきのリベンジがしたいからな」

    黒名の声にはまだ震えが残っているが、先ほどの戦いで少し自信が付いたのか、その言葉はどこか強気だった。

    潔は黒名の表情を見て、軽く頷く。

    潔「頼もしくなったな、黒名」

    黒名「ああ、俺もやる時はやるんだ。また腕が出てきたら、今度はこの歯で噛み付いてやる」

    あー、と大きく口を開けた黒名。口の中にはギザギザの歯が規則正しく並んでいた。

    潔「噛み付くって……そこまでやっちゃう!?」

    潔は笑いながらも拳を握る。少女を助けるため、次こそは絶対に見つけてやると、静かに覚悟を決めていた。

  • 92スレ主◆jCG/LXEbdA25/10/03(金) 22:40:02

    二人は自然と肩幅を合わせ、1~2年生の列に向かって歩き出す。並ぶ木材の隙間から差す光が二人の影を長く伸ばし、足取りは慎重だが確かものだった。

    一方で、士道は腕を組んで少し誇らしげに下駄箱の方へ視線を向ける。

    士道「3~4年生の下駄箱はもう見たぜ?隅から隅まで全部な!」

    その声にはいつものはしゃぎが戻っているが、目の奥には本気の熱が残っている。

    冴は士道の隣に立ち、淡々と扉のない空洞を眺める。

    冴「ならお前は待ってろ、俺はもう一度5~6年生の下駄箱を見る」

    その場から立ち去ろうとする冴を、士道が慌てて止めに入る。

    士道「待て待て、俺も行くって!もし冴ちゃんの顔に傷つけたヤツがいたら、俺がぶっ殺してやるからさ♪」

    冴は微動だにせず、呆れた顔でため息を吐いた。

    冴「……勝手にしろ。つーかここにいるヤツなんて全員死んでんだろ」

    士道は「それもそうだな!」と笑い、冴の隣で肩を軽く叩いた。

    冴を先頭に、二人は5~6年生の下駄箱へ向けて歩き始める。士道は時折、下駄箱を軽く蹴って確かめる仕草を見せ、冴は冷静にその横で観察を続ける。

    下駄箱の空気は依然として張りつめているが、四人それぞれの動きに無駄はない。

    潔と黒名は互いに声を小さく掛け合いながら、士道は冴にちょっかいをかけながらも確実に前へ進んでいった。

  • 93二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 06:02:41

    ほしゅ

スレッドは10/4 16:02頃に落ちます

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