メジロマックイーン「血を――お願いします」

  • 1二次元好きの匿名さん21/09/20(月) 12:17:36

     トレーニングウェアに着替える前トレーナー室にて担当ウマ娘のマックイーンがいつものように頼み込んできた。もう慣れた頼みだったので首筋の傷口を隠している医療用テープに手をのばした。が、その手を白魚のような指を持った手がとめる。その手の主――マックイーンを見ると歳に見合わない笑みを浮かべている。そのまま腕の力を抜くと満足げに彼女は微笑んだ。その薄く笑みが浮かべられた口元は傷口のように艶めかしい。そしてゆっくりとテープを引きはがした。

    「……っ――」
    「痛みますの?」
    「大丈夫……」

     首筋の傷口が外気にさらされる涼しさと、テープがはがされる裂けるような熱さを同時に感じる。そしてその後は湿り気を持った柔らかさがきた。同時に石鹸にも似た甘い香りが鼻をくすぐる。見なくてもわかる、マックイーンがこちらの傷口をなめているのだ。それは親が子供の毛づくろいをしているようにも、これから味わう獲物を味見しているようにも感じられる。慈しみか食欲かそのどちらを受けたのかは分からないが自然に体に力がこもる。はたから見たらトレーナーと担当ウマ娘が抱き合っているように見えるだろう。が、実際は食事の準備に過ぎない。育ちの良さからか水音一つ立っていないが首筋をなぞる感触のみが証拠だ。

  • 2二次元好きの匿名さん21/09/20(月) 12:18:13

    「これで大丈夫ですわね」

     どれほど首筋をなめられていたのかわからないほど時間をかけてようやく解放してくれた。白磁のような肌にうっすらと朱がさしているのがわかる。ここまではただの準備だ、本格的な行為はこれからだ。マックイーンはこちらの反射によって手元――いや口元が狂うことを嫌ってこちらを椅子に座らせて両腕ごと抱きしめるような形で膝の上に座ってくる。少女特有の柔らかさをほぼ全身で受けながら万力に拘束されたような束縛を受ける。

    「では――いただきますわ」

     首に歯が突き立てられる激痛と急所を噛まれるという本能的な恐怖が襲い掛かってくる。もうずいぶんの回数をこなしたがいまだに慣れず体が跳ね上がり振り払おうとするがその柔らかい拘束を振りほどくことはできない。それどころかさらにこちらを強く抱きしめてくる。それは怯えをなだめるためか、最後の抵抗をさせないためかは分からない。小さくだが確かに肉を食いちぎられた。続いてマックイーンの喉が小さく鳴った。感覚からしてそれほど多くは血が出ていない。が、マックイーンはそれを大事に味わうようにしてなめとり嚥下していく。首筋から熱い液体がにじむ感覚とそれを必死に舐め上げる熱、最後にこちらを包む温かな体温を感じながら、マックイーンに血を提供するようになった時――いや、スイーツの類をやめて血を飲むようになった時を思い出す。あの時はタイムが落ちて同時に体重が落ちていた、同僚やたずなさんにも相談したがどうにも解決策が見えず迷走していた。

  • 3二次元好きの匿名さん21/09/20(月) 12:19:52

    「どう……しました?」

    「……なんでもない」

     不意にこちらを心配そうな――子供が見捨てられることを怖がるような顔で覗き込んでいるマックイーンと目が合う。だから安心させるように笑みを浮かべ首を横にふる。そう、あの時もこんな顔だった。食事量が減少した理由がわからず深夜まで調べ物をしてトレーナー室のソファーで仮眠をとっていたときだ。そのとき唐突に首筋に激痛が走った。跳ね起きようとしたが何か柔らかなモノ――マックイーンに泣きそうな顔で押さえ込まれて不可能だった。急所を噛まれるその恐怖に思わず悲鳴を上げたらさっきのような襲ってきた側にあるまじき心細さを感じる表情を浮かべていた。その様子をみてあるまれな症状を思い出した――吸血ウマ娘という症状だ。そのことを問いかけたら少しだけ間があってゆっくりとマックイーンはうなずいた。

    「すみません、トレーナーさん」

    「きにしないで」

     あの時と同じやり取りが吸血――儀式の終わりを告げる合図だ。それ以来マックイーンは以前のような食事をとり、血をとる代わりにスイーツの類への強い興味を失っていった。今のところは他の症例とは違い摂取する血の量は増えず、日光への反応もない。大きな生活への支障もないので病院での診断やメジロ家への報告を行っていないそうだ。こちらかもやるべきではないかという思いはない事はない。

  • 4二次元好きの匿名さん21/09/20(月) 12:20:45

    「いきましょうか、トレーナーさん」

    「わかった、今日のトレーニングは――」

     が、医療用テープで隠した傷――彼女との秘密をなでてその思いを飲み込んでメニューの説明を始めた。

  • 5二次元好きの匿名さん21/09/20(月) 12:23:11

    不意に色々高まって書いてしまいました。

  • 6二次元好きの匿名さん21/09/20(月) 12:24:54

    お上品な秘事みたいで良いね

  • 7二次元好きの匿名さん21/09/20(月) 12:33:26

    勘のいい方は気づいてると思いますが、正確には吸血ウマ娘ではないんですよね。

  • 8二次元好きの匿名さん21/09/20(月) 12:58:18

    それでも良いと思うぞ!!

  • 9二次元好きの匿名さん21/09/20(月) 13:31:47

    言われて気づいたけどこれ血と言うより肉……

オススメ

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