【オリキャラss閲覧注意】サイバーノッブの逆襲〜電脳世界の天下布武〜

  • 1◆TpifAK1n8E25/09/29(月) 23:02:22
  • 2◆TpifAK1n8E25/09/29(月) 23:05:17

    設定
    真名:建勲信長
    属性:秩序・悪・獣 殺神の獣
    性別:男性
    クラス:ムーンキャンサー
    ステータス
    筋力A。    耐久E+++
    敏捷C+     魔力A
    幸運EX    宝具EX
    クラススキル
    ・単独顕現 B
    ・殺神の神核 A
    ・獣の権能 D
    ・狂化 EX
    保有スキル
    ・天下無双の傾奇者 EX
    【自身を除く味方のNPが50%以上の場合のみ使用可能】
    自身を除く味方全体にコマンドカード選出不能状態を付与(1回/1T)
    コマンドカードを配り直す
    自身に防御無視を付与(3T)
    自身のNPを100%増やす
    自身を除く味方のNPを0にする[デメリット]
    ・人神を頼らば神人を捨てん EX
    自身の攻撃力をアップ(3T/20〜30%)
    &神性神核以外特攻を付与(3T/50〜100%)
    &自身のNPを増やす(3T/30〜50%)
    +敵全体の防御強化解除
    ・インターネット楽市楽座(闇) E
    バトル中のメンバーをサブメンバーと入れ替える
    後退するメンバーのNPを0にし【デメリット】味方全体のNPを増加(10~20%)

  • 3◆TpifAK1n8E25/09/29(月) 23:07:34

    宝具
    電魔決戦SENGOKUネットワーク
    Arts宝具
    ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
    効果
    ・敵単体に確率で強化解除&Arts耐性ダウン(3T)
    ・自身の攻撃力アップ&&Arts性能アップ&宝具威力アップ(1T)
    ・敵単体に超強力な天属性特攻攻撃
    ・味方全体のスキルチャージを1進める
    説明
    心象風景。氾濫する戦国武将の概念が集積した争いの絶えないサイバースペースをこの世に具現化する建勲信長の固有結界。結界内ではありとあらゆる原理原則が無視され、内包する情報の多さだけが力となる。つまり天下人にしてこの世界そのものを内包した信長が最強になるだけの世界。
    カード配色:B.A.A.A.Q
    容姿:重瞳で眼鏡を掛けている。鎧と陣羽織の戦国武将スタイルで月の意匠が施された帽子を被っており超デカイパイルバンカーを装備している。体の所々に青い炎。髪が黒ベースで白と青のメッシュ。サイバーチックでパワードスーツを思わせる機械の骸骨を侍らせる。高身長の男の娘。角のようなケモ耳と牙、フォウ君を思わせる髪型。服、装備、パーソナルカラーが青
    性格:クールで無口、冷酷ながらも無垢
    他者へのスタンスは身内にはゲロ甘でそれ以外には無関心

  • 4◆TpifAK1n8E25/09/29(月) 23:14:10

    あらすじ

    特異点の修正を終えた藤丸立香はマイルームでレポートを作成していると、自身のタブレットから謎の音を聞く。
    タブレットを持つと目映い光に包まれ、気がつくとそこは電脳空間、それも特異点の中だった。
    多種多様な織田信長が発生し、電魔決戦という名のバトルロワイヤルが繰り広げられる特異点で、藤丸立香はこの特異点で唯一本物のサーヴァントである信長、建勲信長と出会い、六つの空間が存在するこの特異点を巡り、特異点の修正を目指す。

    この電子六道特異点にはそれぞれキリク、バク、ウーン、クウ、カーン、エンの六つの空間があり、この特異点の黒幕を自称するジンバオリムーンがいるというキリクには他五つの空間の信長を倒さなければ入ることが出来ない。
    藤丸立香と建勲信長は紆余曲折ありながらも五つの空間の信長を倒し、遂にキリクへ突入。ジンバオリムーンと相対するため、キリクに建っていた城の中へ・・・・・・

  • 5◆TpifAK1n8E25/09/29(月) 23:15:35

    特異点の早見表的なもの

  • 6◆TpifAK1n8E25/09/29(月) 23:18:07

    明日から再開するので10まで保守お願いします

  • 7二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 23:20:55

    保守

  • 8二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 23:23:50

    続き助かる

  • 9二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 23:27:50

    保守

  • 10二次元好きの匿名さん25/09/29(月) 23:42:36

    保守ノブ

  • 11二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 08:50:54

    保守

  • 12◆TpifAK1n8E25/09/30(火) 09:03:17

     安土城の中を進み、階段をひたすら上っていく。
    「・・・・・・ここが、天守閣の部屋になる」
     階段が途切れた階層、つまるところ最上階に到着した。
    「開けるぞ」
     部屋の扉は襖ではなく引き戸になっていた。
    「ここに、奴がいる・・・・・・」
     建勲信長は思い切り開き、藤丸立香と共に突撃した。
    「・・・・・・誰もいない?」
    「シッ・・・・・・音がする。あそこじゃ!」
     火縄銃を手に部屋の隅にあるドアを指す。
    「ハア、ハア、ハア!」
     するとドアが開き、中から倒れるようにジンバオリムーンが現れた。
    「ハア、ハア、ハア!足りない・・・・・・足りない!早く、早く吸わなきゃっ!」
     床を這い向かいに置かれた箪笥の中を漁る。
    「ハアッ!ハアッ!スゥーーーーーッ!!!」
     箪笥から取り出した紙を顔に押し当て思い切り吸った。
    「ハァーーーーースゥーーーーーッ!お゛っ!?」
     するとジンバオリムーンは白目を剥き舌を出して倒れた。
    「・・・・・・」
    「・・・・・・」
     陸に打ち上げられた魚のように震えるジンバオリムーンを二人は無表情で眺めていた。
    「あ゛ぁー・・・・・・」
     震えるジンバオリムーンの風で顔に押し当てていた紙が二人の方へ飛んできた。
    「奴めなに、を・・・・・・」
     紙を拾い上げた建勲信長は信じられないものを見たような顔で固まった。
    「な、なんだったの?・・・・・・え」
     藤丸立香も紙を見て固まってしまった。
     その紙には、我々がよく知る織田信長の絵が印刷されていた

  • 13二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 15:54:24

    ジンバオリムーンの名前だけ聞くとファンタズムーンみたいだな。混ざってたりする?

  • 14◆TpifAK1n8E25/09/30(火) 16:12:26

    「気持ち悪ぅ・・・・・・」
     軽蔑と憐憫が混じった瞳で建勲信長はジンバオリムーンを見つめる。
    「ハア、ハア、ハア・・・・・・あ゛ぁー・・・・・・落ち着いた。あれ?もうここまで来てたの?いやーごめんごめん。信長公が足りなくなっちゃってね」
    「ハ?なに行っとるんじゃ貴様」
     正気を取り戻したジンバオリムーンは立ち上がり、建勲信長と藤丸立香に向き直る。
    「信長公は麻薬だよ。その内違法になって国からも規制される。いや、そうなったらもう信長公を喫せなくなってしまうな・・・・・・どうしよう?」
    「ふざけておるのか貴様ッ!」
     ジンバオリムーンに怒りを露にする。
    「フフフ。いやぁ良いものだね。その怒号。まさに信長公だ。・・・・・・あ゛っ決まるっ」
    「そうかふざけておるのじゃなでは死 ね今死 ねすぐに殺 す」
    「あぁ・・・・・・その罵倒も良ぃ・・・・・・くらくらする。やっぱり本物の信長公、信長様が一番だ!」
     建勲信長の言葉を意に介さず、ジンバオリムーンは言葉を続ける。
    「いやー、最初はまじで焦ったけど、結果的に大正解だったなー。容認して良かった良かった」
    「聞けぇッ!」
     火縄銃をジンバオリムーンの耳に向かって放ち、右耳を吹き飛ばした。
    「ぐぅっ!?・・・・・・ああ、この容赦の無さも信長様か・・・・・・ええ。少々自分の世界に入りすぎた。反省反省。気を取り直して。ようこそ、空間キリクへ。儂・・・いや、私だったっけ?いやぼく?まあいいや。何度か会ってる訳だし、質疑応答といこうかな?信長公、そしてマスター君?」
    「質疑応答じゃと?随分と余裕じゃな。耳でなく頭を撃ち抜いてやるべきじゃったか」
    「余裕?ないない!あの信長公を前にして、そんなものあるわけが無い!死を目前にした生命体ってのは存外軽くなるのさ。もう後が無いからね。ぼかぁ貴方のファンだ、恐ろしさは身に染みて分かってる。どこから話そうか、貴方達に聞かれてから答えたいんだ。黒幕の独白なんて聞いてて飽きるだろ?だから質問と解答にしたいのさ」

  • 15◆TpifAK1n8E25/09/30(火) 21:14:39

    「・・・・・・従う道理は?」
    「儂を倒したとしても、その時点で聖杯は手に入らない。ぼかぁ聞かれたことは答えるからね。例えば、私の正体。この特異点の真実。もう目的は果たせそうなんだ。隠す理由も無い。全て話す。その後殺してくれて構わない。君達がこの特異点を修正するためにも、聞いておかなきゃいけないんじゃないかな?色々と」
    「・・・・・・筋は通っている、か。しかし言葉が足らんな」
    「口下手でね。書くのは得意なんだが、話すのがどうも」
    「・・・・・・良かろう。では聞くぞジンバオリムーン。貴様、この名は偽名じゃろう?それに何故他の信長と同じ顔をしている?黒幕を名乗るならば、貴様も信長ということは無かろう?自分のことじゃ。よくわかる。わざわざ信長に対しファンなどとは言わぬ。誰じゃ、貴様は?」
    「誰、ですか・・・・・・ハハハ、やはり貴方は信長公だ!聡明で先見の明があって、何よりも最適解を導き出す!私の求めていた、完璧な信長様と同じ言葉だ!」
    「答えよ。殺 すぞ」
    「ああ、そうですね。私は・・・・・・太田牛一」
    「太田牛一?」
    「太田・・・・・・そういえばそんな家臣がいたような・・・・・・」
    「覚えてくださっていましたか!」
     建勲信長の言葉を聞いたジンバオリムーン、太田牛一は見るからに興奮し始めた。
    「あああ!やはり貴方は最高だ!凄烈で豪快で壮烈で聡明で雄壮で怪傑で明晰で怜悧で無惨で慈悲深い英雄だ!」
    「貴様・・・・・・何が目的だ?面倒な臭いがプンプンする。言え!」
    「私の目的?私はね・・・・・・



    ─────貴方を、獣にしたい」

  • 16◆TpifAK1n8E25/09/30(火) 21:52:25

    「獣じゃと?」
    「獣・・・・・・信長をビーストにするってこと?」
    「その通り!信長様という英雄は!最強なのだ!一線を画す英雄!全てを滅ぼす英傑!それでいて城下の人間達に慈愛をかける将軍!獣にならないわけがない!」
    「・・・・・・それが、貴様の目論見か。そのために、この特異点を作ったのか」
    「少しだけ違いますねえ。この特異点は保険でした」
    「保険?」
    「そう。元は現実世界に作った微小特異点だった。その特異点が維持出来なくなった時のための保険。私が持っていた聖杯になけなしの魔力を流し作り上げた聖杯の欠片でこの特異点を作ったわけ!」
    「聖杯の欠片で、この規模の特異点を?」
    「別におかしな話じゃない。ここは電脳空間。早い話サーバーに限定して特異点を発生させれば負担は少なく済む。私はそう考えてね。あの特異点に君達カルデアが現れたからね、聖杯の欠片を持って電脳空間に逃げた。そして、特異点を形成した」
    「微小特異点?もしかして、それって・・・・・・!」
    「そう。君が修正した、織田信長のいた特異点。それが私の作った特異点だ。そうだねぇ・・・・・・あの特異点の話もしないといけないな。よし、するとしよう。まあそんなに語ることは無いけどね。あの特異点で、私はまず準備をした。さっきも言ったように、ここを保険として作っておく準備さ。そしてその後、織田信長を召喚した」
    「・・・・・・そうか、儂を初めに呼んだの貴様だったのか」
    「そういうことです。ですが、がっかりしましたよ。貴方は・・・・・・なぁ~んで、神性なんか持ってきちゃうんですか~?」
    「はあ?」
     太田牛一の一言に建勲信長は呆れと困惑の混じった声を出す。
    「貴方は織田信長のはずだ。神なわけがない!神を殺し、仏を嗤い、神聖な物をも壊す第六天魔王だ!それなのに、それなのになんで!?・・・・・・その瞬間、私は、自分の手で作ろうと思った。完璧な信長公を」

  • 17◆TpifAK1n8E25/09/30(火) 23:23:55

    「それから、この特異点を作ったわけよ!仏教における六道である天道、人間道、修羅道、餓鬼道、畜生道、地獄道を再現し、そこで様々な可能性から信長公をデザイン、発生させて戦ってもらう。そして、全ての空間で殺人を犯した最強の信長公こそが理想の信長公に違いない!そう考えていたは良いものの、どうにも上手くいかなかった。
    どれだけ繰り返しても、違う。どれだけやり直しても、理想とはほど遠い。満足の行く信長公は現れなかった・・・・・・
    そんな時、貴方が現れた。カーンに、修羅道に、貴方が現れたんだ。
    その瞬間、私に希望の光が差し込んだ!貴方は本物だ!私の頭の中にある断片的な信長公じゃない!本物なんだ!私がかつて見た、あの織田信長公なんだ!じゃあもうやることは決まってる!他の信長なんかどうでもいい!貴方を最強にするんだ!
    確かに貴方は私が捨てたあの現実の特異点で呼んだ信長なんでしょう?あの時は心の底から落胆しました。ですが、貴方は私の心を救ってくださった!目的や動機なんていい!貴方は今回も私の心の行き先を定めてくださった!私の目は!最初から!アナタしか見ちゃいなかったんだ!
    アナタは私のところへ来てくださった!このキリクへ!当時はまだ隔壁も薄く、アナタ程の方なら平気で壊せましたからね・・・・・・心が躍りました。
    あなたを、かんぺきにする。わたしのりそうを、かたちにするために、ひつようなものを、なにもかもあなたにけんじょういたしました。あかよりあついアオイホノオを、すべてをくだくパイルバンカーを。織田信長をいろどるガイコツとヒナワジュウを。
    そしたらぁッ!!!貴方は!マスターを呼んだッ!!!
    マスターなんか望んじゃいない!元から電魔決戦なんて嘘っぱちだ!マスターが必要だなんてルールも納得が行かなかったときにやり直すための、絶対にクリアできないようにするための口実だった!!!
    それなのに!それなのにそれなのにそれなのに!本物を呼んだんだ!貴方はッ!!!
    私は、貴方を理想の信長公にしたい。その理想は、最も強い、誰よりも優れ、燦然と輝く称号を持つ者・・・・・・ビーストなんです。ビーストが私の理想なんです。
    あなたには、人類愛、あるでしょう?なければ明智やあんな猿を側に置きやしない!楽市楽座なんかしやしない!比叡山延暦寺を焼いたりなんかしない!
    アナタはビーストになって然るべきなんだッ!!!!!

  • 18二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 23:40:11

    このレスは削除されています

  • 19◆TpifAK1n8E25/09/30(火) 23:41:20

    マスターなんかいらないッ!アナタは一人でも成し遂げられる英雄なんだッ!六道に強いた電魔決戦という秩序を破壊して!アナタは世界を壊す存在だという結果を得た!十分準備は整ったんだ!
    アナタは、貴方貴女アナタは・・・・・・貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタ貴方貴女アナタは・・・・・・
    ビーストになれるッ!!!!!
    なるべきなんだ!なるべくしてなるんだ!
    私の書いた信長公記に記した魔王はッ!なにもかもを焼き付くし!なにもかもを討ち滅ぼし!なにもかもを平伏させる戦国の覇者ッ!!!!!
    アナタがビーストじゃないなら、一体何がビーストなんだッ!!!何が獣なんだッ!!!
    可笑しいだろッ!!!!!
    だから、聖杯を使う。
    聖杯で、貴方を、貴女を、アナタを・・・・・・ビーストにする。この特異点で作り上げた数多の信長が自発的に生成した魔力を全て聖杯に流し、聖杯を変質させる。
    既に欠片は完全になった。
    数多の織田信長の可能性を凝縮し、完成した、この波旬聖杯を、使う。
    "織田信長"という存在の可能性を0から∞まで、この聖杯で引き寄せる。
    そして、人類悪となった"織田信長"を顕現させ、ここにいるアナタ、建勲信長でしたっけ?アナタに混ぜる。凝縮した"織田信長"と、波旬聖杯と共に!
    この、波旬聖杯と共に!!!」
     太田牛一が両手を広げると、安土城の天井が吹き飛び、黒く禍々しい渦のようなものが出現。そして太田牛一の手に収まった。
     渦は徐々にもやとなり、そして晴れる。
     その手には、紅く燃え上がる炎のような形をした聖杯が握られていた。
    「さあ、探せ!ビースト織田信長を!波旬聖杯!!!」
     波旬聖杯は再び黒い渦を纏い、宙に浮かびだした。
    「貴様・・・・・・狼藉を!」
    「なんとでも仰ってください!私は本気だ!アナタにかける、この想いは!・・・・・・そうだ。もう必要ありませんよね。お返しします。解凍して上げますよ、記憶」
     太田牛一が手をかざすと、藤丸立香の頭に膨大な情報が流れ込んだ。

  • 20二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 08:20:46

    ビーストをこうやって出てくるの上手いなぁ

  • 21◆TpifAK1n8E25/10/01(水) 08:30:27

    「あ」
    「マスター!」
     流れ込む情報に脳が耐えられず、藤丸立香は鼻血を流して倒れてしまう。
    「貴様!何をした!?」
    「なにを?戻して上げただけですよ、彼/彼女の記憶を。自分が覚えていない範囲も含めて、ですがね」
    「覚えていない範囲だと?」
    「ええ。アナタがカルデアのタブレットに繋いでくれたお陰で、タブレットからカルデアのデータベースにアクセス出来た。そこから各サーヴァントが所有している記憶情報にまで聖杯の欠片で繋ぎ、探しだした。七つの特異点、七つの異聞帯、オーディールコール。全ての情報を一気に頭に流した。処理しきれなかったんでしょうね。可哀想に」
    「貴様ァッ!」
    「う、あ・・・・・・」
    「マスター!」
     虚ろな目で鼻血を流す藤丸立香を介抱しながらも、建勲信長は太田牛一を睨む。
    「ああ・・・・・・良い目ですね、信長様。その目を私に向けてくれるなんて、感激、感無量!私が作ったこの体・・・・・・鏡で見てもこの感情は味わえなかった・・・・・・陣羽織に、秀吉の日輪に対抗してムーンを名乗ったは良いが、ずっとモヤモヤしていた・・・・・・やはり、やはり、やはり本物でなくては!」
    「気狂いめが・・・・・・!」
    「信、長・・・・・・」
    「マスター!」
    「から、だが、動いて、きた・・・・・・」
    「無理をするな、まだ」
    「大丈夫、止めないと・・・・・・」
    「ああ、そうだな!」
    「もう遅い!波旬聖杯は可能性を探しだした!やれ!波旬聖杯!!!」
     宙に浮かぶ波旬聖杯は黒い触手を作り出し、建勲信長に迫る。
    「チィッ!」
     建勲信長は火縄銃を放つも、触手は弾丸を取り込み効果が無い。
    「くっ!うおおおっ!?」
     遂に捕まり、波旬聖杯にまで引き寄せられてしまった。

  • 22二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 14:30:58

    どうなるんだこれ…ノッブ強火オタク厄介すぎんだろ

  • 23◆TpifAK1n8E25/10/01(水) 16:41:49

    「こんなもの!」
     建勲信長はパイルバンカーの杭を床に突き刺し、波旬聖杯に対抗する。
    「ぐぅ・・・・・・体が、裂ける・・・・・・!」
    「耐えないで下さい信長様!これはアナタがビーストになるための、必要なことなのですよ!?」
    「ふざけるな!散々貴様に弄ばれ、手のひらの上で転がされたというのに、はいそうですかと享受するわけがあるか!獣になるだと?それで儂に何の得がある!?確かに、更に強くなるというのは魅力的じゃろうな。じゃがそれだけじゃ!獣にならずとも強くなる術はある!貴様は手っ取り早い方法に頼っておるだけ、いやそもそも自分の理想を妥協した体で押し付けているだけではないか!独りよがりも大概にせい!」
    「・・・・・・詭弁だ。信長様は分かっていないんだ。分かっていないだけなんだ!強く、逞しく、美しいアナタ・・・・・・獣は、ビーストは、到達点なんだ!並の英雄英傑ではたどり着けない境地なんだ!それをご存知でか!?」
    「だからなんじゃ!それで言うなら冠位じゃろ!」
    「アナタはあんな人理の捨て駒になるべき方じゃないッ!!!」
    「ええい、話の通じんうつけが!」
    「うつけ!!!私にそう言って下さるか!生前ついぞ私に向けて下さらなかったその瞳で、ついぞ語って下さらなかったそのお口で!私を罵って下さるのか!!!」
    「貴様ァッ!・・・・・・聞きたいことがある」
     太田牛一を睨みつつも、立ち上がりつつある藤丸立香をチラリと確認した建勲信長は、先程までの剣幕が嘘のように落ち着いて声を出した。
    「質問ですか?ええどうぞ!まだ時間がありますからね!」
    「マスターを・・・・・・現実に戻せるか?」
    「現実に?ええ、可能です!まあ私が、というよりも、今はこの特異点のエネルギーの殆どをここに集めていますから、現実世界と電脳空間の壁がかなり薄くなってるんですよね。アナタのパイルバンカーなら、簡単に現実世界への穴を開けられますよ!」
    「・・・・・・貴様、どこまで謀った?」
    「謀る?なんの話です?」
    「・・・・・・良かろう」
    「信長!」
    「マスター、令呪をくれ。現実への穴を開ける」

  • 24◆TpifAK1n8E25/10/01(水) 23:34:14

    「現実への穴を開けるって、何を言って」
    「ハッキリ言おう。万事休すじゃ、打つ手が無い。じきに儂は聖杯と一体化し、ビーストと化してしまうじゃろう。そうなれば、周囲に与える被害は計り知れん。ならば、そなただけでも逃がす」
    「そんな、っ!」
    「まだ痛むじゃろう。無理をするな。どうせ奴の思惑にはまってやるんじゃ。獣になった暁には、奴を殺して儂も死ぬ。この特異点も葬ろう。後は全て任せよ」
    「そんな、こと・・・・・・っ!嫌だ・・・・・・そんなの、らしくない・・・・・・!」
    「ああ、そうじゃな。儂らしくない。じゃが、これしか思い付かんのよ。すまんな」
    「う、うぅ・・・・・・ヴぅッ!」
     建勲信長の提案を否定し、痛む頭でなんとか出来ないものかと考える。
     頭に流れ込んだ記憶を辿る。あれも違う。これも無理。それではだめだ。どれならいける?
     考えろ、考えろ、考えろ・・・・・・
     必ずあるはずだ。この状況を打開する手が。建勲信長が空間に穴を空けるにはパイルバンカーを使わなくてはならない。しかし使うには杭を抜かなければ、そうすれば波旬聖杯に引き寄せられ、一体化が進んでしまう。
     その一瞬。一体化し、獣になる寸前の僅かな時間で打てる最善の一手。
     考えろ、考えろ、考えろ・・・・・・!
    「!」
     突如、藤丸立香の頭の中を、あるはずの無い記憶が駆け巡る。
     太田牛一が流し込んだ、どこかからか手にした記録にも残っていない戦いの記憶。
     それが引っ掛かる。あの場所で過ごした一秒一秒が蘇る。
     夏の記憶。
     人類の友の姿。
     送り出した光景。
     一つの結論が、決まった。
    「・・・・・・わかった」
    「そうか・・・・・・」
    「受け取って、信長!」
     令呪を一画使い、建勲信長に魔力が漲る。
    「よし、ぐぅッ!?開けるぞ!」
     波旬聖杯が肉体と一体化し始め、苦痛に悶えながらも建勲信長は腕を振るい、空間に穴を開けてみせた。穴の先に見えるのは、見慣れたマイルーム。
    「なにをしている、早う行かんか・・・・・・!」
    「大丈夫、信じてる・・・・・・BBちゃああああああああああああんっ!!!」
     最後に残った令呪が、静かに消えた。

  • 25二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 06:47:10

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  • 26◆TpifAK1n8E25/10/02(木) 06:49:26

     藤丸立香の叫びがキリクに木霊する。
     しかし、目立った変化は無い。
    「な、なにをしておる!?早う行かんか!」
    「く、くふ、ふははははははははははは!何をするかと思ったら、ただ叫ぶだけと来た!よほど追い詰められていたのかな?信長様のご厚意を無下にするだなんて、万死に値する愚行!この私直々に・・・・・・直々、に・・・・・・な、なんだこれは!?」
     太田牛一が佩いている刀を鞘から抜いた瞬間、安土城の壁や床の色と模様、材質からこの空間の外観に至るまでが書き換えられていく。
    「B~Bぃ~~~ちゃんねるー!」
     空間に開けられた穴からではない。藤丸立香の背後から、女声が響く。
    「来てくれた・・・・・・信じてたよ、BBちゃん!」
    「はい、あなたの頼れるラスボス系後輩BBちゃん。センパイの令呪まで使った必死の呼び声に応え、ここに参上です♡」
     黒い衣装に身を包む、看護師のような姿をした、信長でない者。
     この特異点に降り立った天使(?)、BB。
     思考を巡らせ記憶と知恵を振り絞った藤丸立香の導きだした最適解、起死回生の一手。
    「なにをする気だ・・・・・・今さら数を増やしたところで勝てると思うなよ!」
    「うわぁ~☆典型的なラスボス系セリフ。聞いていて寒気がします♡ですが、確かにそれはBBちゃんも気になりますね。どうしてBB ちゃんを呼んだのですか?もうちょっと破壊力のあるサーヴァントもいるでしょう?」
    「頼みたいことがあるんだ」
    「頼みたいこと?」
    「建勲信長を、ムーンキャンサーにしてほしい」

  • 27二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 10:51:48

    BBちゃん!BBちゃんは全てを解決する!

  • 28二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 13:38:10

    このレスは削除されています

  • 29◆TpifAK1n8E25/10/02(木) 13:41:07

    「・・・・・・はい?」
     ムーンキャンサー。
     BB を象徴とするエクストラクラスであり、月に縁のあるサーヴァントが時折このクラスで召喚されることもあるクラス。
     そして、BBの力で付与できるクラスでもある。
    「ビーストに変わっていくなら、その上から別のクラスで固定すれば!」
    「は?そんな夢みたいなこと起こるわけがない!信長様のビースト化は既に進行しているんだッ!無駄なんだよ!!!」
    「お願い、BBちゃん!」
    「え~?それBBちゃんが協力する利点あります~?」
    「お願い・・・・・・仲間を助けたいんだ」
    「・・・・・・もう、しょうがないですねぇ。分かりました。思った以上に必死に頼まれるので、一肌脱いで上げますよ。セ・ン・パ・イ♡」
     手に持つ杖を振るい、光が建勲信長に走る。
     波旬聖杯に飲み込まれ、黒い炎となりつつある建勲信長を包み込むように光は広がり、炎を晴らす。
    「う、ぐぅうう・・・・・・うおお、ああああああああっ!」
     呻吟する建勲信長は変わっていく自らの体と、突如として流れる魔力に困惑し、いつしか受け入れた。
    「これは・・・・・・そんなわけがない!私の波旬聖杯は完璧だ!上書きなんて弾くはず・・・・・・!」
    「これって!」
    「BBちゃんは、完璧なのです♡」
     白い光が、空間を包んだ。

  • 30◆TpifAK1n8E25/10/02(木) 16:55:21

    「フフフ・・・・・・フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」
     光が中心から爆ぜ、青い炎が柱となって燃え上がる。
    「な、なんだ!?なんなんだ一体!?こんなことあるはずがない!私の計画は完璧だったんだ!信長様は、ビーストに、まだ終わってないはずなのに・・・・・・!」
    「ビースト?ああ、ビーストか!なってやったとも!しかし、貴様よりも上位の存在を呼んだ、マスターが選んだ選択が!貴様を凌駕した!」
     炎の勢いが更に増し、生きているように動き出す。
     炎の柱が開き、中から機械の骸骨が檻のような形で出現した。
     炎は眼窩に収まり、肋骨が上から順に開いていく。
    「貴様は言ったな?織田信長は仏を恐れぬ第六天魔王だと。人類愛があるのだと」
     骨の檻からゆっくりと歩み、青い炎を身に纏い太田牛一の前に立つ。
    「肯定しよう。確かに人類愛はあるだろうな。儂が気付いていないだけで・・・・・・」
    「ヒッ!?」
     目の前に立ち塞がった建勲信長を前に、太田牛一は腰を抜かし尻餅をついてしまった。
    「しかし、貴様は自分の理想と妄想を混ぜ・・・・・・現実と空想の区別がつかなくなっていたようじゃなあ。まあ、ここは電脳空間、現実ではないわけじゃが」
     邪悪な笑みを浮かべ、建勲信長は変形し玉座となった機械骸骨に腰を下ろす。
    「待たせたなあ、マスター。感謝をしよう、BBとやら」
     流れるように足を組み、後方にいる藤丸立香とBBに向けて言葉を放つ。
    「サーヴァント、ムーンキャンサー!織田信長。またの名を!第六天魔王波旬にして建勲神社の祭神たる神霊!建勲信長!ここに、再び降臨である!」

  • 31◆TpifAK1n8E25/10/02(木) 19:28:02

    「な、なんで・・・・・・なんですかそのクラスは!?波旬聖杯は!?ビースト化は!?一体何が起こったんですか!?」
    「喧しい。質問は一つずつせよ。まあ貴様も儂の身内なわけじゃし、答えてやるとしよう」
     頬杖をつき、太田牛一を見下しながら建勲信長は続ける。
    「まず、儂は貴様の作った波旬聖杯と一体化した。そして、ビーストに変わり始めた。霊基が塗り潰され、零核にまで侵食され始めた瞬間じゃった。原理は知らんが、そこのBBとやらが儂にムーンキャンサーにした。簡単に言うとな、獣の型にはまりつつあった儂を、あやつが獣の型ごとムーンキャンサーの型に押し込んだのよ。おかげで獣が獣足り得るための要素をいくつか無くし、獣の力と姿を持ったまま、ただのエクストラクラスサーヴァントとなったというわけじゃ!」
    「は?・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな、じゃあ、それじゃあ、私のやったことは、全部、全部、全部、なにもかも、無駄じゃないか・・・・・・?」
    「そうか?獣の力は手にしてやったぞ?」
     ニヤニヤと笑みを浮かべながら、建勲信長は椅子ごと藤丸立香達の元へ下がる。
    「違う・・・・・・違う、違う違う違う!!!アナタにはビーストこそが相応しいんだ!!!なんだよ月の癌って!!!いや蟹か!?そんなことはどうでもいい!!!アナタは私の気持ちが分からないんですかッ!!!」
    「知らんし分かりたいとも思わんわ。勝手に囀ずっとれうつけ者」
    「信長様アッ!!!!!」
     床を両手で思い切り叩き、太田牛一は建勲信長を初めて睨んだ。

  • 32◆TpifAK1n8E25/10/02(木) 20:06:09

    「・・・・・・良い目をするのぅ」
    「アナタはそんな顔をしないッ・・・・・・!」
     優しく微笑む建勲信長に、なおも太田牛一は食い下がる。
    「順調だったんだ・・・・・・なんの間違いもなかった!織田信長公には獣こそが相応しい・・・・・・私は!何も!間違っていない!!!」
     立ち上がり、体が震える。
     ポロポロと体の皮膚や陣羽織が剥がれていき、内部が露になっていく。
    「どれ程・・・・・・どれ程待ったか!獣のアナタ様を、真に相応しき姿となられた信長様をこの世界に知らしめるために、駆けずり回ったというのに!全部!全部!全部お前のせいだ!カルデアのマスター!!!お前が現れなければ!なにもかも上手く行ったんだ!信長様を邪魔したんだ!!!ふざけるなあッ!!!!!」
     巨大な骨が太田牛一の体を突き破り、陣羽織は腐り落ち、瞳は燃えて溶け、体中から頭蓋骨が飛び出る。
     その姿は、大怨霊そのもの。
    「それが、貴様の正体か」
    「コロス!コロシテヤル!カルデアノマスターモ!ソコノデタラメナオンナモ!ゼンブゼンブジャマダ!テキダ!コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル!!!」
     かつてジンバオリムーンと名乗った面影は消え、思考すらも蕩けたように言葉を繰り返す。
    「コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル!!!コロシテヤル繧ウ繝ュ繧キ繝?Ζ繝ォ繧ウ繝ュ繧キ繝?Ζ繝ォ」
     言語すらも失われ、怨霊は安土城を飛び出し宙を舞う。
    「▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆」
    「何て言うか、すごいことになってますね~」
    「奴はよほど儂を獣にしたかったらしい。自らの全てをこの聖杯につぎ込んで、感情だけが残った。怒りや怨みに支配され、怪物となるまでに狂ったか・・・・・・是非もなし」
    「思考放棄ですか~?というか、どうするんです?戦うにしたってこれ以上の戦力増加は望めませんよ?」
    「大丈夫だよ」
    「へぇ?」
    「だって、BBちゃんがいる。それに・・・・・・信長もいる」
    「・・・・・・そうさな。戦うんじゃろう?では、やってやろうではないか!」
     藤丸立香は力強く頷き、それを見たBB もため息混じりに建勲信長に並んだ。

  • 33◆TpifAK1n8E25/10/02(木) 21:28:40

    「・・・・・・倒そう。ここで!」
     藤丸立香の言葉を聞き、建勲信長は立ち上がり椅子が変形する。
     自身の2倍程の大きさの機械骸骨を背に、建勲信長は火縄銃を手にする。
    「そうさな。奴はもう声も届かん化け物よ。せめて儂の手で葬ってやるか」
    「では、わたしはサポートに徹しますね♪頑張ってください、信長さん♡」
    「行くよ、みんな!」
     藤丸立香の号令で二人は飛び出した。
     機械骸骨を足場に弾丸を放つ建勲信長。そして杖を振るい牽制するBB。
    「そこじゃあっ!」
     右腕のパイルバンカーに杭を装填し、大きく振りかぶって撃ち込む。
     怨霊は大きくよろめくも、すぐに体勢を整え建勲信長に腕を振るう。
    「そんなものが!」
     身に纏う炎で腕を焼き、その隙に火縄銃で大量の頭蓋骨を撃ち抜きまくる。
     体を構成する骨が続々と砕け、怨霊は小さくなっていく。
    「わたしからは、これで最後です!」
     怨霊の背後にBの字が刻まれ、大きく前に倒れる。
    「マスター!・・・・・・立っていられるな?」
    「もちろん!」
    「良し!」
     藤丸立香の方へ倒れる怨霊。建勲信長は藤丸立香の前に着地し、杭を装填。そして、炎を纏わせる。
    「太田牛一よ、儂の家臣であった男よ。また出会うことがあるならば、せめて・・・・・・さらば!」
     倒れる怨霊の一際巨大な頭蓋骨に杭が刺さる。
     間髪入れずに撃ち込まれ、亀裂を走らせ青い炎が迸る。
    「▆ ▆ ▆ ▆ ▆ ▆ ▆ ▆ ▆ ▆ ▆ ▆ ▆ ▆ ▆」
     やがて炎は全身を包み、太田牛一であった怨霊を消滅させた。

  • 34◆TpifAK1n8E25/10/02(木) 21:53:11

    「・・・・・・終わったのぅ」
     静寂に包まれたキリクに、建勲信長の呟きが響いた。
    「そうだね。長いようで、短かったような、そんな感じ」
    「ああ。マスターよ、受け取れ」
     胸に手を当て、建勲信長は聖杯を取り出した。
    「これ・・・・・・波旬聖杯じゃない?」
    「ああ。おそらく波旬聖杯を波旬聖杯たらしめていたものが全て儂と溶け合ったんじゃろうな。不純物が取り除かれ、もとに戻ったわけじゃ」
    「なるほど」
    「・・・・・・お別れじゃな」
    「あ・・・・・・」
    「そなたと過ごした時間。思い返せばとても良いものであった。ただの一つも悔いの無い、良い時間であった」
    「俺/私も、楽しかったよ!」
    「そうか。それならば、良かった」
     気付かない内に、二人の瞳から涙が流れていた。見つめ合うだけで溢れる涙を、二人は拭うことはしなかった。
    「・・・・・・良く分かりませんけど、ハッピーエンドなようでなによりです」
     その光景を遠目に見ていたBBは、どこか優しい顔をしていた。
    「さて!こんな温かい空気も永遠ではありません!帰りましょう、センパイ?」
    「・・・・・・そうだね。信長は、どうするの?」
    「儂はこの特異点だけで成立するようなものじゃろうしな。いつか、そちらに向かえる手立てが出来ればすぐに行くとしよう。また会おう!マスター!」
    「うん!またね!建勲信長!」
     別れの挨拶を済ませ、閉じかけていた現実世界への穴へBBと共に飛び込んだ。
    「さらばだ。フフッ・・・・・・全く、愉快愉快!ははははははははははっ!」

  • 35◆TpifAK1n8E25/10/02(木) 23:14:27

    「んぅ・・・・・・あれ?ここは・・・・・・俺/私の部屋?」
     特異点から帰還した藤丸立香は、ベッドの上で目を覚ました。
    「あ、起きましたね」
    「BBぃ・・・・・・?」
    「もう、戻ってきたと思ったら気を失ってしまって・・・・・・ベッドに運んで寝かせるとか、か弱い女の子のすることではありません!」
    「ははは・・・・・・ごめんごめん」
     目の前でぷりぷりと怒るBBを見て、意識がハッキリした。
    「あ、聖杯・・・・・・」
     起き上がりベッドから降りようとした時、手にものが当たる感覚。手に取ったそれは聖杯だった。
    「やっぱり、夢じゃなかったんだ・・・・・・そういえば、なんであの時BBを呼ぼうとしたんだろう?」
    「・・・・・・まあ気にしなくて大丈夫ですよ。忘れてしまうということは、本当に些細なことなんですから」
    「それもそうだね」
    「それでは、わたしはこれで失礼します。お大事になさってくださいね♡」
     BBはそそくさとマイルームを後にした。
    「・・・・・・?」
     BBが退室したことで開いた扉の先、廊下から複数の走る音がこちらに向かってくるのが聞こえる。
    「マスター君大丈夫!?」
     その音の正体は、ダ・ヴィンチ、マシュ、ゴルドルフの三人。
    「いきなりバイタルがロストしたと思ったら急に戻ってきて、それに微量のぐだぐだ粒子まで観測されたし・・・・・・てそれ聖杯じゃないか!?一体なにがあったんだい!?」
    「え、あ・・・・・・ははは・・・・・・」
     その後、数時間の聞き取りの後、レポートも追加されたという。


    ~fin~

  • 36◆TpifAK1n8E25/10/02(木) 23:35:30

    「わしが増えた件について」
     カルデア、ボイラー横。
     一部のサーヴァントが不当に占拠するこの場所で、リーダー格の一人である存在、織田信長が深刻そうに口を開いた。
    「なんですか?本能寺はもうファイナルしたでしょう?」
     呆れ混じりに言葉を返したのは、カルデアでも古参の一人、沖田総司。
    「いやまじなんじゃよね。なんかマスターがへんな特異点に行ったって話があっての、ちょいと記録を拝見させてもらったんじゃよ。そうしたら建勲信長?て名前が出てきてのう・・・・・・新しいわしと戦ってたっぽい」
    「新しい姉上!?マスターめ、なんて羨ましい・・・・・・!」
     藤丸立香に嫉妬の思いを抱いたのは、織田信長の弟である織田信勝。
    「ま、サーヴァントなら珍しいことじゃねえだろ。んなことはよ」
     信長の言葉に反応したのは、森長可。
    「それはそう。しかしじゃ、なんとこの新しいわし、男らしいんじゃよね」
    「まさかの兄上!?」
    「それにの、いつもならしれっとカルデアに来てそうなもんじゃが、マスター曰く特異点で別れてからそれきりだと言う」
    「それの何が問題だってんです?」
    「気味が悪い」
    「はあ?」
    「いやさ、わしが増えたんじゃよ?そんなの全国の信長ファン感涙ものじゃない?なのにここにいないなんて・・・・・・気味が悪くって仕方がないわ。じゃからこのもやもやをどうにかしたいんじゃがな・・・・・・」
    「えー、感情の問題ですか?」
    「大変でーす!」
    「なんじゃ人が深刻な話をしておる時に」
    「大変なことになったんですよ!」
     ボイラー横の扉を勢い良く開けて入ってきたのは、歌舞伎役者出雲阿国。
    「大変なことって、今のわしの心より大変なのじゃ?」
    「イエース!めちゃくちゃ大変でございます!とにかく、早くこちらに!」
     出雲阿国に連れられてストーム・ボーダーの外を見ると、そこには白紙化地球上に円形の壁で囲まれた───
     ───六道を模した大地があった。

     リアルノッブの逆襲~現実世界の偽六道巡り~ 開幕

  • 37◆TpifAK1n8E25/10/03(金) 08:17:39

    「来てやったぞー。なんじゃあれは」
    「織田信長に沖田総司、織田信勝に出雲阿国・・・・・・なんか少ない気がするけど、まあいいとしよう」
     管制室に赴いた四人(森君は留守番)は、ダ・ヴィンチから説明を受ける。
    「結論から言うとね、あれは固有結界だ。特異点や異聞帯じゃない。どういうわけか、こちらから視認できるようになっているけどね」
     モニターに変貌した大地が映し出される。
    「それで?なんでわしらが呼び出されたんじゃ?」
    「ああ。この結界は今から2、3時間前に出来たものらしくてね。ボーダーから出来るだけ調査してみたんだ。そうしたら、なんと君とよく似た反応があったんだよね」 「わしと・・・・・・?」      ぐだぐだ
    「うん。それで確信した。これ、きみたち案件だって」
    「なにその確信、酷くない?」
    「まあとにかく、マスターくんも同行するから、よろしくね!」
    「投げやりじゃな・・・・・・まあ良いわ。で?どうやってあそこまで行くんじゃ?レイシフトか?」
    「徒歩だよ」
    「え?なんて?」
    「ストーム・ボーダーから降りて、歩いていってもらうよ」

  • 38二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 08:18:15

    特異点の発生地点はやっぱ尾張国があったとされる愛知県辺りなのかな…

  • 39二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 10:50:17

    このレスは削除されています

  • 40◆TpifAK1n8E25/10/03(金) 11:00:50

    「ここが固有結界かー、テンションあがるのー」
     壁を越え、固有結界内に突入した一行は、家屋の立ち並ぶ町のようなエリアに降り立った。
    「何て言うか・・・・・・特にコメント出来ませんね。日本の風景と言うか、なんというか・・・・・・」
    「いつぞやのサイタマのような町並みでございますねぇ。あそこよりは明るいですけど」
    「よくぞ参ったな!」
    「誰じゃ!?」
     目の前の光景に呆然としていると、突如空から声がした。
    「あれは・・・・・・建勲信長!」
    「久しいな!マスターよ」
     そこには、機械骸骨が変形した椅子に腰かける建勲信長がいた。
    「貴様かー!新しいわしというのは!」
    「うん?そこにいるのは・・・・・・おお!魔王の儂か!」
    「わ、わわわ・・・・・・兄上が目の前に・・・・・・!」
    「うわー、なんですかあの尊大そうな態度」
     空に浮かぶ建勲信長に思い思いの反応をする。
    「あれ?でもなんでここにきみが?」
    「ああ。何を隠そう、この固有結界は儂の宝具よ」
    「え?」
     建勲信長の口から出た言葉に一同は困惑した。
    「・・・・・・順を追って話そう。儂はそなたを見送った後、消え行く特異点で一つ閃いた。折角獣の力を得たんじゃし、宝具も銃とか火とかじゃなく、新しいものにしようとな。そこで、あの特異点を儂の宝具にした」
    「特異点を宝具にって・・・・・・さっすがわしじゃあ!やることの規模が違うネ!」
    「フハハハハ!自画自賛も気持ちの良いものよ。それで、どうにか宝具にした後、一つ疑問が生じてな。・・・・・・これ、使ったらどうなんの?・・・・・・ということで、単独顕現ゲットしてたから使って、今こうして試運転してるというわけじゃ!」

  • 41二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 11:33:47

    焼香を位牌にぶちまけた話とか楽市楽座が第2第3宝具にあって欲しいな。

  • 42◆TpifAK1n8E25/10/03(金) 19:53:53

    「名付けて、電魔決戦SENGOKUネットワーク!儂が最強になってぶん殴るだけの単純明快、それ故に無敵の宝具よ!・・・・・・まあ、今ちょっとトラブってるんじゃけとね」
    「トラブル?」
    「そう。さっきも言った通り、この固有結界は特異点を宝具にしたもの。実は要らんものまで取り込んでしまってな・・・・・・」
    「要らないもの?」
    「そう。太田牛一まで取り込んでしもうてな」
    「太田?・・・・・・なんか知ってるような知らないような・・・・・・」
    「ああ、家臣の中にいましたね、そんな名前の奴。よく覚えてませんけど」
     建勲信長の言葉に織田信長と織田信勝は微妙な反応を返した。
    「やっぱそんな反応じゃよね!儂もそんなんだった気がする。まあとにかく、あの特異点で黒幕やってたあやつの情報が入ってしまってな。宝具をさらにより良いものにするには太田成分が多すぎるんじゃよね。どうしよっかな~、て考えてたら・・・・・・そなたら正に渡りに船よ!ちょっと儂に変わって太田の奴を倒してきてくれん?」
    「オーケー!」
    「いや軽っ!?」
     建勲信長の言葉に織田信長は二つ返事で了承した。
    「なにそんな軽々とOKしてんですかノッブ!?」
    「えー?だって他ならぬわしの頼みじゃしー。それにわしが言わずともマスターが言うじゃろ。代わりに言っただけのことよ」
    「そうですかねえ?というか、そんなの自分でやれば良いんじゃないですか?」
    「・・・・・・魔王の儂が良くしておるし、まあ貴様の問いに答えてやってもよいか。まあストレートにぶっちゃけると、自分の宝具に攻撃なんて出来るわけないじゃん。てことじゃな」
    「な、なるほど」
     建勲信長の答えに一同は一応納得した。
    「じゃ、よろしくのー」

  • 43◆TpifAK1n8E25/10/03(金) 23:54:32

    「というわけで放り出されたわけじゃけど、この結界特異点が素なんじゃろ?どういう特異点だったのじゃ?」
    「ああ、あの特異点は仏教の六道を再現した特異点だったよ」
     織田信長の疑問に藤丸立香は答えた。
    「なるほど。ではここは何道?」
    「え?えーと・・・・・・たぶん空間バクだと思うけど、あれ何道って聞かれてもな・・・・・・」
    「まあ普通に生活していれば六道とかわかりませんよ。ここは阿国さん達にその特異点の特徴をお教えください。分かるかもしれませんしね」
     藤丸立香はキリク、バク、カーン、ウーン、クウ、エンの特徴を話した。
    「なるほどなるほど。その特徴から推測するに、それぞれキリクは天道、バクは人間道、カーンは修羅道、ウーンは畜生道、クウは餓鬼道、エンは地獄道といったところでしょう。つまり、ここは人間道に相当しそうでございますね」
    「なるほど」
    「ウオオオオオオオオオオオッ!!!」
    「ハハハハハハハハハハハハッ!!!」
     人間道エリアを歩きながら話していると、突如二つの叫び声が耳を貫いた。
    「なんじゃ!?」
    「あ、あれは!」
     指差す先には、赤き焔と白き焔。
     それは、激突する武田と上杉。
     早い話、川中島である。
    「なにやっとんのじゃあやつらー!?」

  • 44二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 08:22:11

    二人が出会えばそこが川中島になるんだ…

  • 45◆TpifAK1n8E25/10/04(土) 09:55:52

    「あの神のわし太田をどうにかしろって言ったんじゃよね?なんであの二人が激突しとるんじゃ!?」
    「あれ?何か落ちてきましたね」
     目の前で激突する二つの焔に唖然としていると、空から手紙が落ちてきた。
    「あ、兄上からですね。何々・・・・・・言い忘れ取ったけど、これ固有結界じゃから儂の心象風景でもあるんじゃよね。じゃから儂が駆け抜けた戦国時代も模してるわけ。途中知ってる顔とかいると思うけど無視して良いぞ・・・・・・だそうです」
    「駆け抜けたってわし本能寺でファイヤーしたんじゃけど!?最後まで行ってないのに言いきるとことかさすがわし!」
    「感心してる場合ですか・・・・・・」
    「あ、追伸がありますね」
     沖田総司が織田信長に呆れていると、信勝が追伸を見つけた。
    「何々・・・・・・追伸、あの特異点は様々な儂が出てきたな。あいつらも多分いるから気を付けよ・・・・・・え!?姉上がもっとたくさん!?」
    「えー!なんちゅう特異点が出来あがっとったんじゃ!?」
    「▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆▆」
     織田信長が驚いていると、ビルを突き破り巨大な怨霊が姿を現した。
    「ホワッツ!?なんですかあれは!?」
    「あれが多分太田牛一だ。特異点で最後、怨霊になってたから」
    「なるほどのう・・・・・・あれ?わしの周りってヤバイのしかいないの?」
     藤丸立香の説明に織田信長は疑念を抱き始めた。
    「ノッブー!」
    「うわっ!ちびノブまで!?」
    「フハハハハ!儂のは忍田信長!いざ、ニニンがファイトー!」
    「忍者のわしとか時代考証どうなっとんじゃ!?フリー素材にも程があるぞ!?」
    「ウオオオオオオオオオオオッ!!!」
    「ハハハハハハハハハハハハッ!!!」
    「あの川中島ってる二人はこっち来るし!雑が過ぎるわ!ええい!迎え撃つぞ!」

  • 46◆TpifAK1n8E25/10/04(土) 17:07:37

    「いや大変だったよのぅ、あやつら相手にするの。普通にめんどくさくて」
     人間道エリアを切り抜け、一同は修羅道エリア、カーンであったエリアに到着していた。
    「ここはどういう場所だったのじゃ?」
    「カーンは激しい戦いが繰り広げられてて、何もない場所だったな・・・・・・それでちびノブの大軍を引き連れてた覇者信長っていう信長が最大勢力になってたんだ」
    「へー、覇者信長のぅ。わし魔王がコンプラ違反になったらそれ名乗ろうかな」
    「魔王がコンプラ違反って何言ってんですかノッブは・・・・・・ところで、その特異点に新撰組っていました?沖田さん達みたいなすでにカルデアにいる人いましたか?それとも島田さんとかみたいな顔も見せてない人達?」
    「いや、信長しかいなかったんだよね。ホント。信長しかいない特異点だった・・・・・・」
    「な、なんて羨ましい特異点に行ってるんだマスター!どうして呼んでくれなかったんだ!?」
    「そう言われても・・・・・・サーヴァント呼べなかったし・・・・・・」
     血相を変えた信勝に迫られ、藤丸立香はたじろいだ。
    「にしても、本当になにもありませんね」
     修羅道エリアは一面荒野となっており、地平線すらも見えた。
    「まあカーン、あの特異点だとポリゴン空間だったんだけどね」
    「ほーん。まあ良いわ。とにかくここもさっきみたいに武将と信長と怨霊がいるんじゃろ?はよ出てこんかー」
     織田信長がそう言うと、地平線から大量の足音が耳に届き始めた。
    「ノッブ、なにか言い訳あります?」
    「わし悪くないもん!」
     地平線から走り来るのは覇者信長、大量のちびノブ、怨霊、そして明智光秀。
    「うわぁ、姉上がいっぱいだぁ・・・・・・」
    「しっかりせえ信勝!どうみても全部わしのナマモノではないか!ええい、とにかく迎え撃て!こんなんレイドじゃ!殺し尽くす気でいくぞ!」

  • 47◆TpifAK1n8E25/10/04(土) 23:31:44

    「・・・・・・癒されますね」
    「そうか?」
     畜生道エリアに到着した一行は、手付かずの大自然が広がる光景に圧倒されていた。
    「にしても、自然しかないのう。怨霊はなんとなく出そうなのわかるけど、これ本当に武将とかわしとか出んの?」
    「うーん、どうだろう・・・・・・あの特異点だと、豊臣信長っていう猿みたいなノッブがいたけど・・・・・・」
    「豊臣!?わし猿になっとったの!?」
    「なんて不敬な特異点なんだ!」
     驚く信長と、一方の信勝は怒りに震えていた。
    「こんなところで言っても仕方がありませんでしょう?とにかく進みましょう。そうすれば誰かしら会うでしょう」
     出雲阿国の言葉を肯定し、一行は山に入っていった。
     しばらく歩いていると、信長が何かを見つけた。
    「ん?あれは・・・・・・城か?」
    「山城ですか?・・・・・・あー!ノッブ見っけ!」
     見つけたを注意深く眺めていた沖田総司が指差す場所は天守閣。そこには派手な羽織を纏った織田信長がいた。
    「あれは・・・・・・間違いない!豊臣信長だ!」
    「あれが!?まじでわし豊臣姓になっとんの!?どんなとんちき時代ものじゃ!?」
    「あ!隣に誰か立ってますよ!あれは・・・・・・石田三成!?」
    「豊臣に石田三成・・・・・・確かに関係性はございますが、いささか強引がすぎるのでは?」
    「わしもそう思う」
     信長は出雲阿国に同意した。
    「今までのパターンだと近くに怨霊もいそうなものですが・・・・・・あ!出てきます!」
     沖田総司の声に反応するように、城中の窓から出てきた霊が集まり、巨大な怨霊となった。
    「奇をてらってるようでワンパターンじゃね?」
    「言ってる場合ですか!いきますよ!」

  • 48◆TpifAK1n8E25/10/05(日) 09:18:58

    「ここはクウ・・・・・・餓鬼道のエリアかな」
     廃墟の建ち並ぶエリアに到着した一行は風に吹かれていた。
    「なんか、こうやってマントを風になびかせてるわし・・・・・・良くない?」
    「ケホッケホッ・・・・・・嫌なとこですねえ、煙くて」
    「まあとにかく、ここにも怨霊とかいるんでしょ?さっさと見つけましょう。なんかでかい城がありますし、あそこに行けばいるんじゃないですか?」
     信勝の言葉を聞き、一行は中心部に向かって歩きだした。
    「ノッブー!」
     城の近くまでたどり着くと、聞き慣れた鳴き声が耳に響いた。
    「あれは・・・・・・ちびノブ!?」
    「フハハハハ!良く来たなあ!」
     城の中から出てきたのは、空間クウを支配していたノブキュラ、柴田勝家、怨霊、ちびノブの大軍。
    「なんか雑になってきてね?」
    「まあ手っ取り早いから良いでしょ。やりましょう!マスター!」

  • 49◆TpifAK1n8E25/10/05(日) 17:39:20

    「暑っ!いや熱っつ!!!」
     炎が燃え上がる焦土の大地。空間エンを素とする地獄道エリアを進む一行は、燃え続ける炎に苦心していた。
    「気を付けてくださいよ、ノッブったらいつも燃えてるんですから、下手したらもっと燃やすかもしれないんですから」
    「わしとてそんなへまはせんわ!・・・・・・いや本能寺があったらヤバかったかもしれんけど!突撃して敦盛するかもしれんけど!ここ燃えてるだけじゃから!」
    「ええー?本当ですかー?」
    「なんで今になってそんな疑り深いんじゃおまえは!?」
    「漫才してる場合ではありませんよお二方!人影が見えてきました!・・・・・・てひゃあっ!?」
     沖田総司と織田信長を諫める出雲阿国の頭の横を矢がかすった。
    「んな、何事でございますか!?」
    「この矢、そして今までパターンで考えると・・・・・・ま、まさか・・・・・・」
     瞬間、織田信長の顔が青ざめていく。
    「・・・・・・よもや、織田が増えるとはな」
    「い、いいい今川~!!!」
     一行の前に姿を現したのは、海道一の弓取りと名高い戦国武将。
     今川義元その人だった。
    「まあ良い。そこのノブナガ・・・・・・ノボルケーノ諸共葬ってくれる」
    「ノボルケーノ?あ!いつの間にか後ろに!?」
     一行の後方には紅い炎を滾らせるノボルケーノと、何故かそのノボルケーノを乗せている怨霊の姿があった。
    「あれ?あの姉上なんで怨霊の頭に乗ってるんです?」
    「知りたいか!?こやつめ、口の中に炎をぶちこんで爆裂させてやったらすーぐ儂に下りおったわ!愉快よのお!」
     ノボルケーノは信勝に答えた。
    「うわー、わしえげつなー」
    「どうします?このままだと私達も巻き込まれて蜂の巣か丸焦げですよ?」
    「どうするって・・・・・・迎え撃とう!」
     藤丸立香の号令で一同は武器を構えた。

  • 50◆TpifAK1n8E25/10/05(日) 22:16:41

    「ここが最後。消去法で天道エリアになるなのう」
    「何て言うか、絵の中の世界って感じですね・・・・・・」
     空間キリクを素とする天道エリアは一面蓮池が広がり、巨大な屋敷から伸びる橋だけが地面としてある空間になっていた。
    「良く来たな。カルデア御一行様よ」
    「建勲信長」
     屋敷の門から橋に飛び下りた建勲信長が一行の前に来た。
    「おうおう、わしともあろう者が天道でふんぞり返った末に悠々と出迎えか。信長精神がネジ曲がっておるな。ここで叩き直してやろうか?」
    「よせよせ。なにも儂とてただ退屈に待っておったわけではない。ここのノブナガと太田成分は既に除いてある故な。そなたらがすべき事は無い」
    「へぇー。それじゃあ沖田さん達はカルデアに帰って良いってことです?」
    「それがそうともいかん。この固有結界は前にも説明した通り儂の宝具。それでいてそなたらにやってもらったのはこの宝具を完全なものにするための調整。最後にやらなければならない作業が残っておる」
    「ほう。神のわしだけでは出来んことなのじゃな?」
    「ああ、それでいて魔王の儂だけいても心許ないことでな」
    「ほうほう?それは?」
    「ズバリ、バトルじゃ!」
    「・・・・・・へ?なんで?」
     思わず沖田総司の口から疑問が漏れた。
    「理由は単純明快よ。新しいものはとりあえず試したくなるじゃろ?つまり・・・・・・試運転改め、真の試運転じゃ!」
    「なんですかそれ!?やっぱり神様になってもノッブはノッブですね!あーやだやだ!」
    「ウハハハハハハ!当然であろう!そもそも神として祭り上げられたのも明治の世。割と神としては新参者でな!早い話、儂に神を期待するな。本質は依然として魔王、祭り上げられただけの怪物よ。それで?お前達はこの荒御魂を前に逃れんとするような者ではあるまい?」
    「ハッ!当然よな!」
     挑発的な笑みを浮かべた建勲信長を前に、織田信長は全力、魔王信長としての力を全て解き放ち対峙する。
    「みんな・・・・・・こうなったら仕方ない。いこう!」
     藤丸立香の声に、信勝除く他の二人はやれやれといった様子で構えた。

  • 51◆TpifAK1n8E25/10/05(日) 23:04:23

    「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
    「ウハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
     二人の信長は空中で激突し、他の三人はそれを眺めていた。
    「これ沖田さん達要ります?」
    「なんと言いますか、薄々こうなる気はしておりましたが、早くないですか?」
    「流石姉上と兄上!僕達みたいなのを寄せ付けない!そこに痺れる憧れ」
    「言わせませんよ。もう暇ですし、こうなったら取り敢えず応援でもしてみますか?がんばれー、ノッブー」
    「沖田様、やる気ねえでございますねぇ」
    「そりゃ、ノッブですしねえ?」
    「いや応援するからちゃんとやれ!」
     出雲阿国と沖田総司に信勝はつっこんだ。
    「エン!カーン!クウ!」
    「ふふはははは!死 ねい!」
     炎が舞い、蓮池の蓮を吹き飛ばし、屋敷が破壊され、戦いは激しさを増し続ける。
    「他愛なし!」
    「のわぁぁぁぁぁぁ!」
     建勲信長のパイルバンカーが魔王信長の胸に直撃し、魔王信長は橋に叩きつけられた。
    「姉上!」
    「ふっ・・・・・・流石よな。フハッ!宝具の撃ち合いといくか!」
    「ヤバい気配。マスター、離れましょう」
     魔王信長の体が光だし、宝具の発動を察知した沖田総司は藤丸立香と出雲阿国、織田信勝を連れて橋を反対方向に走り出した。
    「良かろう!ちょうど使いたいと思っておったところよ!」
    「その余裕、いつまで保つか!我が往くは神仏衆生が無尽の屍。何人たりとてこの信長を阻む事は能わず!」
    「盛者必衰、諸行無常。兵共が向かうは次なる輪廻!集えや集え戦場に!六道は今戦乱の舞台なり!いざ戦国を駆け抜けようぞ!」
    「波旬変生・三千大千天魔王!!!」
    「電魔決戦SENGOKUネットワーク!!!」
     二つの巨大な力が激突した。

  • 52◆TpifAK1n8E25/10/05(日) 23:23:01

    「どうなりました!?」
     激突した二つの宝具は閃光を生み、爆風と炎と共に天道エリアを包んだ。
     光が晴れるとそこには元の姿に戻った織田信長とパイルバンカーが砕けた建勲信長が隣り合って倒れていた。
    「フハハハ・・・・・・中々やりよる。流石は儂よの」
    「ハハッ。それはこちらのセリフじゃ・・・・・・お陰で本能寺以外で死にかけたわ」
    「本能寺のう・・・・・・今となっては懐かしい響きよ。あんま行きたくはないけど」
    「わかる。流石わし。考えてること大体一緒じゃな」
    「まあ儂同士じゃからなあ・・・・・・」
    「「フハハハハハッ!」」
    「なんか仲良くなってますね」
     倒れていた二人は起き上がり、互いに見つめ合う。
    「例を言うぞ、魔王の儂よ。お陰で儂の宝具は完成した。やはり、自分との戦いが色々解決するにはもってこいじゃな」
    「うーん、考えてみるとわしになんの得もなかったな!ははは!是非もなし!」
    「二人とも!」
    「おやマスター」
     藤丸立香達は信長達の元へ駆けよった。
    「終わったんだね」
    「まあな。儂のやり残しもこれで無くなった。後はマスター、そなたに召喚されるのを待つばかりよな」
    「あ、神のわしもそっち派なのね。まあ弓のわしが際立つから良いけど」
    「なんじゃカルデアにはもう一人儂がいるのか?全く愉快なところよな。さてマスター」
    「なに?」
    「こういうときはなんか良いこと言って締めるものだと思うんじゃが、あいにくそういったことは不慣れでな。上手く落ちんかも知れんが、まあ聞け」
     コホン、と一呼吸置いて建勲信長は続けた。
    「宝具詠唱でも言ったが、世は常に諸行無常。矛盾しとるかもしれんが、常というものは実は存在しない。あの特異点でもそうだったろう?太田のやつは常に自分を一段上にいる存在のように振る舞い、失敗など無いと高を括っておった。じゃが、実際には儂がそれを上回った訳じゃが。・・・・・・絶対は、絶対に無い。これはこの世に存在する全てに言える。そなたが逆境に立たされても、そこから絶対に負けるだなんてことはない。信じろ、己を。良いな?」
    「・・・・・・うん」
    「それは良かった。もう帰れ。儂も還るまた会おう。マスターよ」

  • 53◆TpifAK1n8E25/10/05(日) 23:37:15

    「お帰り、マスターくん!」
     ストーム・ボーダーに戻った一行は管制室へ赴いていた。
    「いやー大変な目に遭いましたよ。休憩もなく連戦に次ぐ連戦で、いつもの特異点よりも疲れた気がしますね」
    「そうかい?それはご苦労様。なんにせよ君たちのお陰であの固有結界は消滅しつつある。今モニターに映すね」
     モニターには光の粒子となって消えていく固有結界の姿が映し出された。
    「・・・・・・のう、マスター」
    「ん?なに?ノッブ」
    「いやさ、今のわしって平たく言えば色んな信長の集合体みたいなもんなわけじゃん?それに神様とかそんなに好きでもないし、なんであのわしは存在しとったんじゃろうな?既にわしの中にあって出てこなくても可笑しくないというのに」
    「うーん、良くわからないけど・・・・・・」
     ひとしきり考えた後、藤丸立香は口を開いた。
    「─────絶対は、絶対に無いんでしょ?」
    「・・・・・・ハッ、そうじゃな。あーあ、わしなんかお腹減ったわ。ここいらで失礼するぞ」
    「え?ああうん!お疲れ~!」
     どこか穏やかな顔をしながら、織田信長は管制室を後にした。
    「なにスカしてるんですかねあのノッブは。あーあ、沖田さんも少し疲れましたね。マスター、食堂にお団子でも食べに行きません?」
    「それでしたら阿国さんもご一緒させて頂きますね!」
     そして、管制室にはダ・ヴィンチ達いつものメンバーが残った。
    「うーん・・・・・・締まらない!」


    (今度こそ)~fin~

  • 54◆TpifAK1n8E25/10/05(日) 23:40:15

    ということで「サイバーノッブの逆襲〜電脳世界の天下布武〜」完結です。
    色々至らないところがあったと思いますが、ここまでのお付き合いありがとうございました。
    後は感想など書いてくだされば嬉しい限りです。
    皆様本当にありがとうございました。

  • 55二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 08:17:09

    読み応えがあって良かった。実際にあったイベントシナリオかと錯覚したわ

オススメ

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