【AI注意】【SS注意】メカクレデカパイモブウマ娘を置いていくのであとはみんなの好きにしてくれ9

  • 1二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:34:46

    「好きなだけ好きにしてくれ」と言うスレ主の言葉と供に送り出された一人のウマ娘。
    彼女の名前は、チャンドラポメロ。
    このスレは、彼女や彼女の友人達を好きに形作っていくスレです。

    なおスレ主≠大元のスレ主です。
    画像はこちらの環境で作ったポメちゃん。

  • 2二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:35:55
  • 3二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:39:01

    ここまでのチャンドラポメロと愉快なDKPI仲間たち
    各キャラざっくり概要
    チャンドラポメロ ↓
    高身長、DKPI、完全両メカクレ、黒髪長髪、恥ずかしがり屋、赤面癖、お洒落リップ

    ダブルマシュマロ ↓
    低身長、DKPI、やや両メカクレ、栗毛ツーサイドアップ、お喋り、Hな話苦手、ボクっ娘

    カベルネソラリス ↓
    眼鏡、DKPI、やや両メカクレ、芦毛ポニーテール、表裏の無い生真面目、超甘党、オレっ娘、青色アンダーリム眼鏡、または青色サングラス風眼鏡

    ミスディレクション ↓
    高身長、DKPI、筋肉、片目ややメカクレ、鹿毛ショート、見た目優等生の中身今時ギャル、赤色アンダーリム眼鏡、お嬢様(トレーニング機器メーカー社長令嬢)

    レッドへリング ↓
    高身長、DKPI、筋肉、そこそこ両メカクレ、鹿毛ライオンヘアー、誤解を生む表情(特に笑顔)持ちの大人しめの娘、黒色アンダーリム眼鏡、お嬢様(トレーニング機器メーカー社長令嬢)

    ネーロディセッピア ↓
    高身長、DKPI、片目完全メカクレ、姫カット黒長髪、ハート目、恋愛オールラウンダー

    プティートモナ ↓
    低身長、DKPI、片目メカクレ、飛び級小等部、鹿毛太い流星癖っ毛ロング一つ結び、豹変癖あり

    ハニーハニーハニー ↓
    金髪、 DKPI、片目メカクレ、お嬢様(下着メーカー令嬢)、ストレートロング、ヘーゼル色の猫目

    ウーバフローラ ↓
    金髪、 DKPI、片目ややメカクレ、ギャル、セミロングハーフアップ編み込み、茶色の目

  • 4二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:40:07

    有志作成のキャラクターシート

    チャンドラポメロ


    ダブルマシュマロ

  • 5二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:41:34

    カベルネソラリス


    プティートモナ

  • 6二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:42:47

    ミスディレクション


    レッドヘリング

  • 7二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:44:10

    ネーロディセッピア


    ハニーハニーハニー

  • 8二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:45:13

    各キャラの基本プロンプト

    チャンドラポメロ プロンプト
    solo,long hair,black hair,(black-horse tail),no ears,(blush:1.5),lips,(bangs over eyes:1.3),long bangs,black bangs,
    BREAK,masterpiece, high quality, huge breasts,(horse ears),(kemono ears),

    ダブルマシュマロ プロンプト(服によってDKPIサイズが変わりやすいので要調整)
    (umamusume, horse girl, long horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    16 years old, (light brown hair, dark orange hair, multicolored hair, medium hair, twintails:1.5), (hair over eyes:1.6), red eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, slit pupils, sharp teeth,
    (oppai loli, short height:1.2), (huge breast:1.3), breasts apart, wide hips, curvy,

  • 9二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:46:24

    ミスディレクション プロンプト
    (umamusume, horse girl, horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    (dark brown hair, light brown hair, multicolored hair, short hair:1.5), straight hair, (hair over eyes:1.3), dark-green eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, (tall female, big woman, enormous, towering), muscular female, large breasts, (leg muscles, wide hips:1.1),
    (multicolored big hair bow, red semi-rimless eyewear:1.5),

    レッドヘリング プロンプト
    (umamusume, horse girl, long horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    (dark brown hair, black hair, multicolored hair:1.5), short hair, straight hair, (long big hair, hair over eyes:1.5), dark-green eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, (tall female, big woman, enormous, towering), muscular female, huge breasts, (wide hips:1.1), long legs,
    (hair bow, black-framed eyewear:1.5),
    evil grin, parted lips, crooked teeth,

  • 10二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:47:54

    ネーロディセッピア(トレセン制服姿) プロンプト
    solo,girl,(long hair),(black hair),hime_cut,(black-horse tail),no ears,violet eyes,(hair over one eye:1.3),(heart shaped pupils),long bangs,black bangs,BREAK,masterpiece,high quality,(huge breasts:1.5),(horse ears),(kemono ears),glamorous,kind smile,,tracen school uniform,

    プティートモナ プロンプト(基本部分のみ/状況によっては年齢指定は抜いた方がいいかも/DKPIサイズが変わりやすいので要調整)
    (umamusume, horse girl, horse ears, horse tail:1.2),
    12 years old, child, (dark-brown hair, white streaked hair, inwardly curled hair, flipped hair, low-tied hair, very long hair, hair over one eye, shaded face:1.5), black eyes, round eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes,
    break, shortstack, oppai loli, (short height, huge breast:1.2), pointy breasts, (no headwear, ear bow:1.5),

  • 11二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 22:49:17

    ウーバフローラ プロンプト
    (umamusume, horse girl, long horse ears, horse tail:1.2),
    blonde hair, medium hair, long hair, straight hair, long bangs, swept bangs, (hair over one eye:1.3), half up braid, ahoge, brown eyes, tareme, narrowed eyes, star-shaped pupils, eye reflection, high detailed eyes, shiny eyes, beautiful eyes, pink lips, puffy lips,
    break, tan, tall female, tall height, (large breasts:1.1), (heavy breasts, sagging breasts), (wide hips:1.1), long legs, shiny skin, gleaming skin,
    break, (no headwear, star hair ornament on own right head, neon eyeshadow, mascara, jewelry, gyaru accessories:1.5),

    甘味処のDKPI店員さんのプロンプトは載せなくてもいいかなと

  • 12二次元好きの匿名さん25/09/30(火) 23:46:48

    そう言えば、まだ牛柄レオタード角ポーズをやってもらっていなかったっけ

  • 13二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 07:53:11

    ノリノリでやりそうではある

  • 14二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 08:08:07

    スレ立ておつですわ

  • 15二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 15:08:34

    マーシュはおだてればいけそう(トップバッターだったし)
    ミスディレクションとセッピアはノリノリ、モナ&ハニーサンは騙せば何とか

    ポメ、ソラ、ヘリはそれぞれ断固として牛柄拒否りそう

  • 16二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 15:11:19

    秋から冬は普段の露出は下がるが、ウマ娘の運動量だと体操服は変わらなさそうだ
    むしろ湯気でムワッムワッとなりそう

  • 17二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 21:03:09

    >>12

    いっぱい出そう

  • 18二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 23:46:48

    前スレ183より

    「綺麗……」
    「意志が固い、良い目だな」
    「え?」
    「ん?」

     チャンドラポメロは、カベルネソラリスの一切の曇りも濁りもない、透き通ったエメラルドグリーンの綺麗な瞳をその目に見惚れる。
     対してカベルネソラリスもまた、チャンドラポメロの瞳を手放しで褒めるような言葉を漏らす。
     そして、お互いがお互いの発言に小首を傾げ、この場に沈黙が訪れた。

    「……無駄に高いプライド、か。悔しいが、その通りかもな」
    「え?」

     互いに見つめ合ったままの沈黙は少しの間続き、それを破ったのはカベルネソラリスであった。
     顔こそはチャンドラポメロの方を向いているが、その独り言のような言葉を呟く際は、どこか遠くを見るように視線が合わなくなった。
     しかし彼女は、その瞳を一度閉じ、軽く頷いた後に再びチャンドラポメロを真正面に見据える。

    「ポメロは、秋華賞に出走するつもりか?」
    「はい……はい! もちろんです」
    「期待通りの答えに、良い顔付きだ。だが、メイクデビューの時のようにはいかない。オレだって、あれから強くなったんだ。泥にまみれ、プライドを捨ててでも、勝ちに行くつもりだ」

     チャンドラポメロがいつか見た、カベルネソラリスの不敵な笑み。
     選抜レースの時は、そんな彼女の言葉の強さと圧を掛けられる意味が理解出来ず、曖昧な返事しか出来なかった。
     メイクデビューの時は、意味こそ理解したものの、その視線と意志の強さから一度は目を背けてしまった。

    「っ! わ、私だって、メイクデビューの時からずっと、強くなりました! 負けません、貴女にも、憧れの人にも!」

     けれども、今の彼女は違う。チャンドラポメロはその笑みから逃げず、圧を跳ね返すように。
     好敵手であるカベルネソラリス。そして、憧れであるダイワスカーレットへと宣戦布告とも取れる言葉を返すのだった。

  • 19二次元好きの匿名さん25/10/01(水) 23:49:33

    選抜レースの時は、カベルネソラリスからの一方通行だった
    メイクデビューの時は、好敵手としてではなく、同じレースを走る者として返した

    そして今回、互いの目標である秋華賞を前に、二人の視線は交差する

    互いが互いを尊重し、意識し、それから勝ちを譲らない意志を見せる

    人はそれを「好敵手」と呼んだ


    ほーなーまーたー…(しおしおになりながら)

  • 20二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 00:26:49

    おつおつ~
    真正面から競えて青春してていいわぁ

  • 21二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 08:51:50

    これは本番が楽しみになってきますね

  • 22二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 09:26:35

    >>17

    ウーバフローラは卒業して結婚しても、旦那さんの前でこの格好をしてそうな

    そして、ある時期から両胸部分が内側から濡れるようになる

  • 23二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 17:46:42

    一気に冷えて秋っぽくなってきた
    マーシュはトレーナーと焼き芋を半分こして食べて肥えればいいと思うの

  • 24◆8YBpUCUZW625/10/02(木) 22:36:18

    「き、気持ちいい……です、ね……トレーナーさん……えへ」

  • 25二次元好きの匿名さん25/10/02(木) 23:23:07

    明日から3日間遠征につき、SSの更新は早くても5日の夜でござりまする
    そして明日の為に早めの就寝故、本日のSS更新はござりませぬ、殿
    出発まで時間の余裕が多少あるので、運が良ければ明日の朝にSSが投下される…か、も?
    朝晩冷えてまいりましたので、お体と急なDKPI過剰摂取で体調を崩されませぬよう、ほなまたでござりまする

  • 26二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 08:32:55

    >>25

    本当にお疲れ様です

  • 27二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 09:01:29

    >DKPI過剰摂取

    一つ上でキまって、もうオーバードーズさ

  • 28二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 09:51:44

    >>18


    「そうか。俄然楽しみになって来た。アンタやダイワスカーレット。ウオッカ、他の出走メンバーとも走れるのが今から待ち遠しい」

    「……」


     彼女の言葉を聞き、カベルネソラリスは心底嬉しそうに目を細め、笑う。

     好敵手を数えるように指を折り、来るレースへの期待を語る。


    「その上で、一番になるのはオレだ」

    「いいえ。私です」

    「言うじゃないか。ならまず、秋華賞の出走権を得てもらおうか」

    「望むところです」


     覚悟を決め、もう迷わないと誓ったチャンドラポメロにとって、目の前でレースの一着宣言は聞き逃せない。

     一歩、二歩、とカベルネソラリスに近づき、意志の強さを表明する。

     対してカベルネソラリスは、チャンドラポメロがまだオープンウマ娘ですらない事は言及せず、このままでは目標のレースに出走出来ない事を暗に伝える。

     当然、チャンドラポメロとてそれは先刻承知。その為に、格上挑戦にはなるもののフルゲートになり辛いレース、紫苑ステークスを選んだのだ。

     かつてはオープンレースだった該当レースは、今や重賞、GⅡレースに格上げされている。

     故に、未だオープンウマ娘ですらないチャンドラポメロにとっては過酷なレースになる事が予想される。

     だが、だからこそ、彼女はそのレースに挑む。勝利を掴む為に、持ちうる全てを使い、走る。そう決めたのだから。


    「……ハハッ、そうか。それでこそ、だ」


     チャンドラポメロの決意を、カベルネソラリスは笑う。

     しかし、その笑いは相手を嘲笑うものではなく、正しく好敵手が目の前に現れた際の歓喜にも似た笑いのように思えた。

     その後、二人は見つめ合ったまま沈黙し、しばらくその場には波の満ち引きの音のみが響いた。

     そして、そんな二人がいつの間にかいなくなった事に気付いた他のメンバーが呼びに来るまで、チャンドラポメロとカベルネソラリスの好敵手らは、戦うべき相手、倒すべき相手を見据えるのであった。

  • 29二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 09:53:38

    志、高らかに
    その上で、チャンドラポメロは全てを投げ打ってでも勝つという危うさを孕みつつ覚悟を決める
    カベルネソラリスは好敵手らを倒し、一番になると言う気持ちをそのままに、チャンドラポメロを明確な同格好敵手と認識を新たにする

    この二人の対決の行方や如何に


    ほなまたっ(遠征遅刻寸前ギリギリまで書いた奴感)

  • 30二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 10:31:10

    秋華賞トライアルでダスカはどうだったかと思ったら123番人気の123フィニッシュで芝

  • 31二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 17:46:55

    保守

  • 32◆8YBpUCUZW625/10/03(金) 19:11:33

    >>24

    私大元のスレ主なんですけど出したいポメ出していくのでアウトやろってイラスト出しちゃったら言ってくださいね削除しますので

  • 33二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 00:49:11

    ライン探しはよくないけど、今のところは大丈夫じゃない?

  • 34二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 09:04:28

    若くハリのあるDKPIもいいが、しっとりもっちりな熟れDKPIもいいなと思うようになってきた秋の日

  • 35二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 14:37:43

    >>30

    ダスカの方はローズSだから本番までは当たらないわけね

  • 36二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 20:37:48

    >>34

    良バ場おっぱいと重バ場おっぱいってやつだな

  • 37二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 23:53:59

    旦那様の為にFFT踊り子衣装をする、むちぽちゃロリ巨乳な甘味処のDKPI店員さん

  • 38二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 09:08:57

    子供が増えますね

  • 39二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 09:40:45

    保守

  • 40二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 16:09:11

    >>35

    改めて見るとダスカの戦績頭おかC…

    一説にはレース間隔が空いた時があったからこそ、この戦績とか言われるけれども

    古馬牡馬とかが混ざる秋天や有馬であの強さはやっぱりやべーよやべーよ…

  • 41二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 23:55:14

    うぉおー! 明日からSS再開だー!(宣言&自身の追い込み)

  • 42二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 00:59:33

    もちもちふわふわDKPIが迫ってくる旦那様の明日の太陽は何色だ

  • 43二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 09:34:47

    よいライバル関係だ

    それはそれとして、学生には手が出せないので店員さんのお乳もちもちしたい

  • 44二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:03:55

    そう言えば、DKPIズの趣味と言うか、暇な時に何して過ごすのが好きかみたいな傾向って決まってたっけ?

  • 45二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:15:51

    暇さえあれば何か自主トレしているようなソラリス以外は特になかった気がする
    後は暇さえあればラヴ探してそうなネーロディセッピア

  • 46二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 23:55:53

    Switch2を手に入れ、またティアキンをプレイ中なのでコスプレポメちゃんで保守
    マーシュはそこそこゲーマーだったりしそう

  • 47二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 04:12:37

    >>28




    ※※


    ※※※



     7月中旬から気が付けば7月下旬へとなり、浜辺でチャンドラポメロとカベルネソラリスを真っ先に見つけてからかい近付いて来た、ダブルマシュマロとミスディレクションはレースの為に合宿を離脱。ミスディレクションと担当トレーナーが同じのレッドヘリングは応援という形で同じく合宿を離脱する。

     残ったチャンドラポメロ含む他のメンバーも、合宿トレーニングが佳境に入った事もあり、中旬以降の自由時間で全員が揃う事はなく、各々が各々の自由を謳歌した。


    「お待たせ、ポメロ」

    「いえ。私も今、着終わったところですから」


     東海ステークスを前日に控えた日の夜。

     合宿から離れ、中京レース場へと向かったダブルマシュマロとミスディレクションを密かに応援した後、チャンドラポメロは白の縦線と桔梗の花柄のある紺色の浴衣を身に纏い、ロッジの玄関先で担当トレーナーと合流した。


    「それじゃあ、少し歩く事になるけれども」

    「はい。大丈夫です」

    「なら、行こうか」

    「はい」


     その日は合宿が行われている地域にある神社で夏祭りが開催するとの事で、チャンドラポメロは担当トレーナーと一緒に見て回る事となっていた。

     なっていた、というのは、彼女自身はトレーナーを誘う勇気はなく、本来であればレースに向かったダブルマシュマロとミスディレクションを除いたメンバーたちと一緒に行く予定だった。

     しかしながら、何故かそれをヨシとしなかったネーロディセッピアによって、気が付けば担当トレーナーとの同伴による夏祭りへと変わっていた。

     当初は彼に迷惑が掛かると消極的、否定的だったチャンドラポメロだったが、担当トレーナー自身が乗り気であった為に、断る事が出来ずに今こうして横に並んで祭り会場へと向かう。

  • 48二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 04:15:33

    復帰早々の寝☆落☆ち

    それはそれとして、東海ステークスを前に始まりました
    合宿幕間の最後、夏祭りイベントトレポメです
    これで幕間Ⅱを終了し、第四章「緋色の女王」へと向かいます

    コンゴトモヨロシク…

    因みに桔梗の花言葉は「永遠の愛」、「変わらぬ愛」、「誠実」、「気品」、「清楚」だそうです
    ポメちゃんは紫の桔梗が似合いそうですねほなまた

  • 49二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 09:09:09

    安心と安定のネーロディセッピア

  • 50二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 16:32:49

    >>48

    某花の擬人化ゲームだと桔梗は巫女だったな

    デカパイ巫女もいいもんだ

  • 51二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 16:59:58

    イメージカラーならぬイメージフラワーをみんなで好きなだけ好きにするターンかな?

    チャンドラポメロ → 紫の桔梗
    ダブルマシュマロ →
    カベルネソラリス →

    ミスディレクション →
    レッドヘリング   →
    プティートモナ   →

    ネーロディセッピア →
    ハニーハニーハニー →
    ウーバフローラ   →


    夏に登場したキャラだけあって安直にウーバフローラは赤のハイビスカスな感じある

  • 52二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 00:21:44

    カベルネソラリスは名前的にはブドウ関連か

  • 53二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 00:47:36

    >>47


    「ポメロは、夏祭りが好きかい?」

    「えっ、あっ、はい」

    「そうか。恥ずかしながら、僕はこの年になっても大好きでね。現実でありながら、どこか幻想的で。賑やかなのに、どこか寂しさもある。そんな雰囲気が、子どもの頃から魅力的に思えて仕方がない」


     夏祭りの会場は合宿からそう遠くはない。

     しかしながら、少し歩く事には変わりはなく、チャンドラポメロとトレーナーは互いに手にした懐中電灯で歩く先を照らしながら歩いて行く。

     彼女が会場のある神社へと目を向けると、トレーナーの言葉の通り、現実でありながらどこか幻想的な色や音がそこを祭りの場であると主張している。


    (もしかして、これは、噂に聞く夏祭りデートというものでは……)


     ネーロディセッピアから、トレーナーと一緒に夏祭りへ行くように誘導された時は何事かと思っていたが、その時は「おでかけ」のようなものだと説き伏せられた。

     実際に、チャンドラポメロはトレーナーとの「おでかけ」自体は何度か経験があった為、彼女の熱弁と勢いに押されるままに納得していた。

     けれども今こうしてトレーナーと隣同士で並んで歩いている事。そして通常の、それこそシューズ選びや病院の付き添い等のレース関連ではなく、夏祭りと言う娯楽が目的という事。

     それらの二つの状況を見て、チャンドラポメロは今になってこの「おでかけ」がただの「おでかけ」ではない可能性がある事に気付く。


    「ポメロ?」

    「あひゃい! だだいじょうぶでしゅ!」

    「あ、うん。ここから坂になるから、足元気を付けてね」

    「あ、はい」


     しかしながら、この現状に恥ずかしくなったところで、今更引き返す事は出来ない。

     不意に隣から話しかけられるトレーナーの言葉がいつもより近く、そして優しい事に一人どぎまぎしている事を強く感じながら、チャンドラポメロは努めて平静を装う。


    (で、デート、ではない、はず……見た目はともかく、私はまだ、子ども、ですし)


     少し高い位置にある会場へと向かって坂を上り、会場の下へと辿り着く。そこから階段を少し登れば、もう祭り会場へと到着する。

     トレーナーにエスコートされるがままに、チャンドラポメロは自身に言い聞かせる。

     これはたまたま、ネーロディセッピアが気を利かせたところ、祭り好きのトレーナーがその話に乗っかった事による息抜きの「おでかけ」である、と。

  • 54二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 00:49:40

    ネーロディセッピアが熱弁説得し
    トレーナーがそれに乗っかる夏祭り
    それをおでかけと自分に言い聞かせるはチャンドラポメロ


    世界はそれを! デートと言うんだぜ! ほなまたぁ!

  • 55二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 00:51:47

    推せる~!

  • 56二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 07:00:04

    >>50

    君ィ…花○士団○かねぇ…

    メインでプレイしているゲーム名出されるとちょっとドキッとするねぇ~

    ウマ娘もあっちにもメカクレDKPI増えて欲しいんだけどねぇ~

  • 57二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 15:02:36

    花言葉など雅な知識には疎いが…マーシュにはマーガレットのような大きく開いた花が似合う気がする

  • 58二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 17:40:22

    こういうのは早いもの勝ちで言ったもん勝ちだぜー!
    何たって好きなだけ好きにするスレなんだぜー!

  • 59二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 22:16:32

    ポメちゃんがトレーナーと夏祭りに行く一方、マーシュは練習で遅くなったところをトレーナーに送ってもらう夜道デートを繰り返していた…ッ!

  • 60二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 22:30:18

    >>59

    恋する乙女の顔になっとる…




    恋する乙女の顔になっとる!!!!!!!!!!

  • 61二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 22:36:27

    >>57

    マーガレットの花言葉 … 「恋占い」、「真実の愛」、「信頼」、「心に秘めた愛」、「誠実」など

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 23:27:36

    >>53


    「ポメロ」

    「あ、はい?」

    「手を」

    「えっ、はい……へ?」


     そうして階段前で立ち止まり、色々考えているところにトレーナーから声を掛けられ、チャンドラポメロはその言葉のままに小物入れの巾着袋を持っていない右手を無造作に前へと出す。

     すると彼はその手の甲に懐中電灯の光を照らしたかと思うと、そっと彼女の手を左手で優しく掴んだ。その動作の意味が分からず、チャンドラポメロは全身が強張り、それまで考えていた物事が雲散霧消していくのを自覚した。


    「え、あ、え?」

    「浴衣姿だと、階段は危ないからね。一段一段、ゆっくり行こう」

    「はわっ、あわわ……っ」

    「大丈夫。落ち着いて」


     海沿いで潮風が吹くとはいえ、真夏の夜は蒸し暑い。

     そんな中で、トレーナーの手の温もりと自身の手の温もりが重なっている事の意味をようやく理解したチャンドラポメロは酷く狼狽してしまう。

     驚きのあまり思わず手を振る彼女を離さないと言わんばかりに、彼は掴む力を少し入れる。そのせいか、チャンドラポメロは自身の身体を引っ張らせる形となり、バランスを崩してしまった。


    「ふわぁっ!?」

    「お、っとと。ごめん、ごめん。少し強く掴み過ぎちゃったね」

    「え、あ……」


     浴衣姿故に一度崩れた体幹を戻そうにも思い通りに行かず、結果として彼女はトレーナーの胸元へと飛び込む形となった。

     チャンドラポメロと彼の身長はそう変わらない。その為、お互いに身体を正面から抱き合う状態となる。

     上手い具合に互いの顔はぶつからなかったが、トレーナーの胸板と彼女の胸は完全に密着した。そして、チャンドラポメロの胸の大きさ故に、そこから下は下半身まで隙間が空く事となり、しかしながら互いの脚は絡み合う形になってしまった。

     トレーナー自身は彼女を受け止めた為にやや上体を反らしていたが、それでも倒れないようにと空いた手をチャンドラポメロの腰に回してバランスを維持しているようだった。


    「えっと、うん。その、大丈夫かい?」

    「ひゅっ」

  • 63二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 23:28:52

    >>62


     そして、その態勢故か少し声を震えさせながらも、彼女に優しく声を掛ける。

     だがしかし、それが逆にチャンドラポメロの乙女心を爆破させる事となった。


    「ポメロ? 聞こえている? その、言いにくいんだけど、君の胸が──」

    「ふ」

    「──ふ?」


     周囲に明かりは階段両脇の提灯の淡い光と、それぞれが手にした懐中電灯のみ。

     その為か、視覚が鈍くなり、反面他の器官が補うように鋭くなる。

     今日まで意識した事のなかった成人男性の胸板の感触。鼻孔をくすぐる、爽やかな洗髪剤の香りや柑橘類の匂いがする制汗剤。それらに混じってほんのりと汗とトレーナー自身の匂い。

     加えて、間近で聞く事になった彼の優しく、耳の奥まで……それこそ頭の中まで達するような甘く痺れる声。

     視覚と味覚以外の全てが同時にチャンドラポメロを包み、彼女は全身が麻痺するような痺れを覚えた。


    「ふにゃ~……」

    「わっ!? わーっ! ぽ、ポメロー!?」


     結果、全身の力が抜けてしまい、そのままトレーナーへとしな垂れかかる事となった。

  • 64二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 23:30:39

    >>63


    「し、しっかり気を持って! 立ち眩み!? それとも……ぐっ!?」


     まだ中等部とはいえ、身長は既に大人顔負けの体型のチャンドラポメロがそのまま圧し掛かる形となり、トレーナーは必死に彼女を支えようと脚に力を入れる。

     目の前に火花が走るような感覚の中、その事に気付いた彼女は何とかトレーナーを安心させようと口を開く。


    「し、っかり」

    「ポメロ! そう、しっかり脚に力を入れて──」

    「しっかり、いた、せー」

    「──それはこっちの台詞だよ!? しっかりいたせー!」

    「せー……」

    「だー!? ポメロー!」


     彼女の脳裏に浮かんだのは、少し体調が優れない時にダブルマシュマロから受けた、元気付ける為の軽口気味な声掛け。

     その言葉をトレーナーの口から聞きつつも、チャンドラポメロはそれまであった緊張の糸が切れる音を同時に頭の中で聞いた。

     そして、トレーナーが傍にいてくれるという安堵の気持ちと共に、気持ちの良い浮遊感に身を委ねるのであった。

  • 65二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 23:32:38

    既に同期の誰よりも大人の色気があるポメちゃんだけれども!
    彼女 まだ 中等部 !
    思春期乙女機能満載の女の子にこのハプニングは刺激が強過ぎた!

    後多分トレーナーも一部刺激が強過ぎたと思うほなまた!

  • 66二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 08:01:25

    この状態で寮まで連れ帰ったら、めちゃキャーキャー言われるのでは

  • 67二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 15:58:15

    ふにゃふにゃポメちゃんのまま寮に送り届けたら誤解を招いて騒ぎになりそう
    流石に大人がいないと収拾つかなさそうだけど、寮だし寮長の他に寮母さんとかいるんだろうな

  • 68二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 19:13:27

    (7月下旬だからまだ合宿中というのは私の書き方が甘いからなんじゃろうのう…精進せねば)

  • 69二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 23:14:05

    >>64



    ♡♡♡



     夜分遅くにこんばんは。ネーロディセッピアです。

     夏の季語と言われたら、「恋愛」の一択。夏に燃えるものと言われれば、「恋心」なラヴの求道者、ネーロディセッピアです。

     トレセン学園の夏合宿と言えば当然ながら、トレウマ、ウマウマ、トレトレ、トレ友、ウマ友、友友の仲が大きく進展する一大イベント。

     それに比べたら合宿のトレーニングや勉強なんて二の次三の次でしょう。ウマ娘はレースも恋も走って、どうぞ。トレーナーは早く担当のウマ娘に手を出して、どうぞ。

     という訳で、ラヴを探して三千里。そのラヴが見つからなければ、ラヴの芽を見つけ、育てるのが私の生きがいです。

     我ら、メカクレ同盟の中で一番のトレウマ濃厚だったトレマシュことダブルマシュマロさんは、残念ながらレースの為に合宿を離脱してしまいました。

     しかしながら、ここで嘆くのは三流ラヴ者。ダブルマシュマロさんがレースに出走するという事は、当然ながらその担当トレーナーさんも付いていくという事。

     つまりは私はダブルマシュマロさんたちから離れながらもラヴの香りを摂取出来るのです。実にありがたい事です。今頃は二人して初々しいラヴチュッチュしていると思うと、それだけで白飯が10杯進みます。恋のぼだっこ、大変美味しいです。


    「好機ですよ……! 好機到来……!」


     さて、そんな一欠片で脳髄が蕩けそうな恋のぼだっこを堪能しつつ、今の私は次なるラヴの標的、トレポメことチャンドラポメロちゃんを近くの茂みの中から観察しております。

     暗闇の中でも遠くのお二人がしっかりと見える高性能暗視ゴーグル。茂みの小枝に引っ掛からない為のフード付きブラックスウェットスーツ。夏の夜ですから虫対策にウマ娘の鼻でも分からない無香料の虫除け。暑いのだけが難点ですが、そこはラヴパワーで我慢します。

     そして、それらを十二分に活用する為に、こうしてチャンドラポメロちゃんとその担当トレーナーが上手い具合に夏祭りへと向かうように仕向けたのです。


    「せっ……! 押せっ……! いえ、いっそ……けっ! 抱けっ……!」


     二人にはバレぬよう、されど熱いエールは心の中で送り、私は成り行きを見守るつもりでしたが、無理でした。

     ラヴの神様の思し召しか、二人で抱き合うとかいう激熱イベントを前に、私の興奮は一気に高まります。

  • 70二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 23:15:20

    ポメちゃんの意識が途切れると同時に、仕掛け人、登場
    我らがネーロディセッピアが、デートを仕掛けるだけ仕掛けて後は流れで、なんてするはずもなく…
    ポメちゃんが次に目を覚ますまでその暴走は止まりませんほなまた

  • 71二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 23:33:03

    ネーロディセッピアが手馴れすぎてるw

  • 72二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 23:37:23

    桔梗の花柄のある紺色の浴衣が上手い事出てこなかったので、各自脳内で色調してください

  • 73二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 23:40:55

    >>72

    現在20万文字超え

    幕間Ⅱも無事の5万文字超えですが、各自頑張ってついて来て下さい(白目)


    面子増やしてやや群像劇っぽくするとどうしてもね…


    構想は既に練り上がったダブルマシュマロVSミスディレクションの東海ステークスまではよう行きたいのう…

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 08:44:55

    >>69

    汗かきまくったせいで服がじっとりしてそう

  • 75二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 09:56:56

    >>73

    >20万文字超え

    クオリティを維持しつつコンスタントに書き続ける熱量と腕前に敬意を表します

    文庫本一冊以上の文字数があるし、もし同人や笛に出す気があるなら自分が作ったAI絵は使ってもらって構いません

  • 76二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 16:30:29

    いずれ仕掛ける側もスパダリにふにゃふにゃにされてしまえw

  • 77二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 21:24:00

    >>75

    お褒め頂き恐悦至極…

    実はプロローグはXに投下してみましたが…誰一人反応しなかったんですなこれがガハハ!

    私のXアカウントがしょっぱいという点は見なかった事にしてもろて

  • 78二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 00:12:53

    このレスは削除されています

  • 79二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 03:49:21

    >>69


    「ん? おや? おやおやおやおや?」


     ですが、抱き合った後にどちらかがしんぼうたまらんと押し倒す様子がありません。

     まるで謎に抱擁シーンを引き延ばす洋画のようで、そこにラヴがあればそれはそれでという感じなのですが、何やらトレーナーさん側が慌ててすらいるようです。

     離れたところ且つ茂みの中にいる為か、虫の声の方が大きく聞こえる為、二人のやり取りがちゃんと聞こえないのが私のもどかしさを加速させます。

     今のチャンドラポメロちゃんとトレーナーさんを見ているのは私と天高くそびえる月と虫ぐらいなものですので、思い高ぶった勢いそのままにうまにぴょいっても良いのですが。


    「ポ、ポメロちゃーん!?」


     そう思った次の瞬間、チャンドラポメロちゃんがトレーナーさんの腕の中で崩れ落ち、流石の私も思わず声を上げてしまいます。

     幸いな事に漏れ出た声はトレーナーさんの耳に入らなかったようですが、これを不幸中の幸いとは言えません。暗視ゴーグル越しでも分かる、明らかな異常事態を前にすれば、ラヴの求道者などと言ってはいられません。

     とはいえ、ここで心配が勝って逸る気持ちのままに二人の元に行ってはいけません。浴衣でも着ているのであればそれでも良かったのですが、現在の私の姿は控えめに言っても不審者のそれです。口惜しいですが、ここはトレーナーさんにお任せするしかありません。

     チャンドラポメロちゃんの容態に気を揉みながら、様子を伺う事を続行致します。本当に不味いようでしたら、不審者姿が見られてしまう事も厭わずに突撃しますが、ここは冷静に状況を見極めましょう。

     私が着用しているのはどこぞの国の正規軍も採用している暗視ゴーグルで、所謂緑色の視界ではなく寧ろ白色蛍光体の青白い視界な為、一挙手一投足こそ遠目でもよく分かります。しかしながら、それでも離れているが故の限界はあるので、二人の表情の機微までは分かりません。

  • 80二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 03:50:34

    >>79


    「……」


     トレーナーさんが慌てており、そのトレーナーさんへとしな垂れかかるチャンドラポメロちゃん。見ようによってはラヴか性かの興奮のあまり、彼女が彼へと襲い掛かっているかのようにも見えます。

     その襲われる側のトレーナーさんにしても慌てて携帯電話を取り出してどこかに電話を掛ける様子も見受けられない為に、どうやら急な病気怪我の路線は消せるようです。まずは、安心しました。

     暑さによる軽い脱水症状か、それとも慣れないシチュエーションによる緊張の立ち眩みか。いずれにしても「トレーナーとチャンドラポメロちゃん、不安よな。不審者ネーロディセッピア、動きます」となる必要はなさそうです。


    「……寧ろこれは好機なのでは?」


     落ち着いて状況を分析し、冷静になった私に天啓が舞い降りました。

     ラヴの神様は言っている、「君ぃ、これは所謂薄い本で見られる境内裏でのうまでぴょいな流れではないのかね?」と。

     まあ、実際にそんな夜のうまぴょい伝説を踊るような二人の気持ちの高ぶったところで、虫が多くいるこの環境でヤる事ヤるなんて相当な興奮状態でなければ難しいのですが。

     そして今のチャンドラポメロちゃんとトレーナーさんがその状態かと言われると、いくらラヴに盲目っている私でもラヴの神様の言葉をそのまま受け取る事は出来ません。

     しかしながら、それでも思わず口にしたように、これはこれで好機と言えるでしょう。


    「力なく倒れる女それを優しく抱きとめる男やがて意識を取り戻した女は男が甲斐甲斐しく介抱してくれた事に気付き男もまた普段は意識していなかった女の女な部分気付きドギマギするそんな中二人は互いに見つめ合い互いに意識するそこへ『いやー』とか何とか言いながら乱入してくる第三者は創作におけるお約束ですがそんな輩が現れましたら私は間違いなくその方を張り倒しますええい貴様今良いところなんですから空気を読め。いやいやそれにしてもこれはこれで思わぬトレウマ展開ではありませんかグヘヘラヴの神様マジグッジョブですよさあさあトレーナーさんはチャンドラポメロちゃんを介抱しチャンドラポメロちゃんはそんなトレーナーさんにラヴミーラヴユーラヴズオンリーユーしましょうしちゃいましょうしなさいと言いなさいクルルァ」

  • 81二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 03:53:51

    >>80


     トレーナーさんがチャンドラポメロちゃんをしっかりと抱き抱え、神社本殿へと続く階段を登らず、その脇に進んでいく様子を見送りながらも一時的に鳴りを潜めていた私の興奮は一気に高ぶります。


    「おやおやおやおや確かその先には簡易的な手水舎がありましたねチャンドラポメロちゃんを美味しく頂く前に清い水で洗おうという魂胆ですかそうですか彼女は水も滴る良いウマ娘ですからね気持ちは凄く凄い分かりますよええ水に濡れて透ける浴衣に頬を染めるチャンドラポメロちゃんはトレーナーさんの手によって帯を優しくほどかれてその珠の様な生まれたばかりの姿を露わにするのですかそうなんですか!? 新しい生命を誕生させる神聖な儀式が始まってしまうのですか!? 神聖な神社なだけに!」


     二人の後を追いたいのはやまやまですが、私はもう自分自身を抑えられる気がしません。これ以上解放してしまいますと、私は木花開耶姫命になってしまいます。

     しかし言い訳をするつもりはありませんが、私の実家柄、こればかりは致し方ないのです。少子化が嘆かれる昨今、こういうのは機会があれば迷わず突き進むべきなのです。

     とはいえここは自縄自縛の気持ちで興奮を吐き出しつつ、チャンドラポメロちゃんとトレーナーさんの恋路を応援する構えを取らせて頂く事とします。二人の行く先に栄光とラヴと子宝あれ。

  • 82二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 03:55:10

    疲れからか寝落ちして、変な時間帯に起きますと…変に目が覚めて変なアレやコレやな妄想が止まりませんよね

    そうして出来た怪文書の犠牲になるのだ、ネーロディセッピア

    ほなまたぁ!

  • 83二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 10:11:10

    ふしんしゃさんが掛かり倒してて大草原

  • 84二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 10:17:03

    暑そうなストーキング装備のせいで熱暴走しとりゃせんか?w

  • 85二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 18:31:17

    確かに熱がこもりそうだもんな

  • 86二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 00:29:30

    このレスは削除されています

  • 87二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 04:07:24

    >>81



    ※※※



     額に何かひんやりとした感触を感じ、チャンドラポメロは目を覚ました。

     まず視界に映ったのは薄明かりに照らされた石畳みであり、湧き水の音がする事からトレーナーが手を握ってくれた場所とは別の場所だとすぐに分かった。


    「わ、私……」

    「あ、気が付いた?」


     次に背中に硬い感触を覚え、自身が柱か何かにもたれている状態だと気付いてその背を浮かすと、頭上からトレーナーの声が降って来た。

     彼女が顔を上げるよりも先に、視界内へとトレーナーの姿が映り、自身が座っている事と彼がそれに合わせて跪いている事にも気付く。

     トレーナーの姿はいつも通りのスーツ姿に夏用のワイシャツ、ではなく、何故か一枚脱いだTシャツ姿となっている。その事について疑問を抱く前に、チャンドラポメロはお尻の下に何か物が敷かれているのを感じ、同時に色々と察する。


    「わ、わああっ! わたっ、私っ!」

    「うおっ、急に立ち上がらないで! また立ち眩みしちゃうよ!」

    「ご、ごめんなさい!」


     彼女は慌てて起き上がり、今の状況を把握しつつトレーナーへと頭を下げる。

     目を瞑ったまま下を向いたチャンドラポメロが彼の声に目を開けると、視界の端には予想通り、トレーナーの夏用白ワイシャツが映る。

     意識を失った自分を安静にする為、彼が色々と手を尽くしてくれたのが分かり、彼女の頬は羞恥で熱くなった。


    「謝らないで。でも、無事で良かった」

    「トレーナー、さん」


     しかし、そんなチャンドラポメロの頭上から聞こえてくるのは、安堵も混じったいつものトレーナーの声であった。

     彼女が恐る恐る顔を上げると、手水舎の白色蛍光に照らされた彼の優しい笑顔が目に映る。

  • 88二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 04:08:30

    >>87


    「あのっ、でも、やっぱり、ごめんなさい。その、ワイシャツが」

    「ワイシャツもお姫様の敷物になれたんだ、冥利に尽きるだろうさ」


     それでも、と申し訳なく思って再度謝るチャンドラポメロに対し、トレーナーは軽く肩を竦める仕草をした後、何ともないようにワイシャツと冷やす為に使ったであろうハンカチを拾い上げる。

     彼なりの、気を使わせない為、この場の空気を悪くしない為の冗談だと理解しつつも、自分の事を「お姫様」と呼ばれた事に彼女は再び頬が熱くなるを感じた。

     それを見て、ワイシャツを羽織ったトレーナーがチャンドラポメロの様子を伺うように口を開く。


    「それよりも、体調は大丈夫かい? 無理そうなら、ロッジまでおぶって送るけれども」

    「だ、大丈夫、です。すみません」


     自身の顔を覗き込まれ、チャンドラポメロは慌てて顔を逸らし、両手で頬を隠す。

     その頬は未だ熱く、鏡があるのならいつものように紅潮しているのだろうというのが容易に想像出来た。


    「いや、僕も急に手を握りしめて悪かった。祭りの熱を前に浮かれたのかな。ポメロが恥ずかしがり屋だってのは随分前に聞いて、理解していたつもりだったんだけどね」


     すると今度はトレーナーの方から謝罪の言葉が聞こえ、彼女が視線を戻すとバツが悪そうに頬を掻く彼の姿がそこにはあった。

     チャンドラポメロの視線に気付くと、トレーナーは少し視線を泳がせて苦笑するような顔を見せた後、下から掬い上げるように右手を差し出した。


    「それでは改めて、浴衣姿の綺麗なお姫様。どうか僕と一緒に、お祭りを見て回っては貰えませんか?」

    「っ! ……はい、喜んで」


     その時、手水舎にひと時の夏の夜の暑さを忘れさせるような涼風が流れてきた。

     風はトレーナーの肩に羽織っただけのワイシャツが靡き、畏まった言葉も相まって、まるで騎士がエスコートを申し出ているように見えた。

     彼の提案の仕方もまた、こちらを不安にさせない茶目っ気を含めたものであると理解しつつも、チャンドラポメロはその手の上に自身の手を重ねる。

     そして、先程の火照りからか、自分の手が彼の手よりも温かい事に気付き、チャンドラポメロもまた茶目っ気を見せる事にした。


    「私もその、祭りの熱を前に、浮かれているかも、です」

  • 89二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 04:09:56

    >>88



    ※※※



     その後、手水舎から離れた二人はゆっくりと階段を上り、祭り会場へと到着する。

     目移りするような屋台が数多く並び、様々な食べ物の匂いが入り混じる。暖色に包まれたその会場には祭り特有の笛や太鼓の音が響き、チャンドラポメロの心を躍らせた。

     トレーナーの隣で手を繋いだまま、彼女は色んな屋台を見て回り、飲み食いや遊びを楽しんだ。

     自分たちの姿を見て、時折夫婦や恋人同士と誤解する声も聞こえ、その度に内心ドギマギさせつつも彼女は悪い気がしなかった。

     お互いに言い合った通り、祭りの熱に浮かれ、一時でもお互いの立場を忘れていたのだろう。トレーナー自身も、特にその外野の声を否定する様子を見せなかった。

     外野の声の中には聞きなれた、ネーロディセッピアの声が混じっていたような気もしたが、その姿が見えなかった為、チャンドラポメロは気のせいだろうと思う事にした。

     

    「ポメロ。君と一緒に祭りを回れて良かった」

    「はい。私もです」


     一通り見て回った帰り道。トレーナーは心底嬉しそうな声で彼女に声を掛ける。

     辺りもすっかり暗くなった街灯の少ない道で、彼の顔を伺う事は出来なかったが、チャンドラポメロもまたトレーナーと同じ表情をしているのだろうと感じた。

     祭りが終わり、合宿が終わり、夏が終われば、またいつもの日常に戻る。

     振り返れば、祭りも夏も、何と短い事かと彼女はふと思う。

     しかし、今の自分はもう迷わない。


    「また来年も、こうして二人一緒に、見て回りましょう」


     憧れの為にも、こうして自分の隣に立って支えてくれるトレーナーの為にも。そして何よりも、自分自身の為にも。

     チャンドラポメロはこの先に控えている前哨戦、GⅡレース、紫苑ステークスと、本番であるGⅠレース、秋華賞に向けて、決意を新たにするのであった。



    ──幕間Ⅱ「夏は短し、迷えよ乙女」・完──

  • 90二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 04:14:32

    変な時間に再びこんばんは、寝落ちの者です
    祭りの途中でトレポメするのではなく、敢えて祭りの前にちょっとしたハプニングを起こしつつ、そこからトレポメに持っていく…あれこれちゃんとトレポメかな?

    という一抹の不安を覚えつつ、幕間終了と致します

    次回から山場(独自調査)の第四章へと移行し、レースやチャンドラポメロを含めた周囲の状況も一変します(多分)

    我が道を征く緋色の女王に、チャンドラポメロは何を思うのか
    散々言ってきた、ダブルマシュマロVSミスディレクションの勝負の行方や如何に


    ほーなーまーたー(力尽きる)

  • 91二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 10:27:34
  • 92二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 12:31:28

    イチャイチャしてるけど、じゃれ合いの範疇を出ていない感じなのが良い

  • 93二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 14:27:30

    >>92

    ウムリ…二人の関係は"まだ"トレーナーとウマ娘故


    なので 最初に 読者が 「うお、それはやりすぎ」な ネーロディセッピアで イチャイチャのハードルを下げる必要が あったんですね

  • 94二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:34:13

    う~む…良い感じの狂気を補給出来ました
    おかげで第四章のプロット構成構築がすんごい捗る…
    やっぱり作品に触れていて作者が天才と分かるものを読むのは良いものです
    凡人が天才の空気を吸って雰囲気天才を味わえる

    やはり今のポメちゃん、マーシュ君、ソラリス君に足りないのは狂気に触れさせる事…
    まずはマーシュ君からミスディレクションとその後方に控えるトレーナーの狂気に触れてもらおうねぇ…

  • 95二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 23:36:18

    「Shadow of the Scarlet」──第四章「緋色の女王」


    ※※※


     明日も、緋色の風が吹く。
     春に桜、秋に大輪の華を咲かせ、更に女王としての戴冠劇。
     速く、強く、鮮やかに。
     世代を超え、クラシック三冠やティアラ三冠の壁も超えた最強ウマ娘へ。
     ターフには、明日もスカーレットの風が吹き抜けていく。
     見すえるはただ勝利のみ。
     欲するはただ武勲のみ。
     数多の従者を引き連れて、終生の友に背を押され、憧れすらも置いて往く。
     女王の行軍に果ては無く、ただ、結果のみを歴史の一ページへと蹄鉄の跡を残す。
     戦姫の偉業は刻まれる。
     ああ、貴女こそ正しく──緋色の女王。




    ◇◇

    ◇◇◇


     7月下旬。夏の暑さもピークに達するであろうこの時期に行われるレースがある。
     中京レース場第7レース。ダート1400Mのクラシック及びシニア級レース。GⅢレース、東海ステークス。
     所謂夏レースの一つであり、数少ない重賞レース。そのレースが今正に終盤戦へと突入していた。

  • 96二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 23:38:36

    新章、突入
    主要キャラを狂気に染めると決めた手前、慎重に事を運びつつも、まずはサクっとダブルマシュマロのレースを終わらせて、ダスカの女王戴冠まで行きたいと思いますのでよろしくお願いいたします

    と言う訳で、プロット構成練っていたらそれだけで頭使った気になって文章が書き伸ばせなかった愚かなほなまた

  • 97二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 01:50:40

    果てしない熱意と情熱はイコール狂気だからなぁ

  • 98二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 09:05:58

    保守

  • 99二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:11:27

    Totkゲルド装束ポメちゃんで保守

  • 100二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:39:00

    今調べてみたら東海ステークスの開催月変更や距離変更、格付け変更が今年からで芝3200M

    どないすんねんこれ???

    実際はプロキオンステークスとの入れ替えになり、且つウマ娘アプリ版だとプロキオンステークスのままですが…

    まあいいかぁ! 脳内で東海ステークス≒プロキオンステークスって思って下さいよろしくなぁ!(どうにでもなぁれ!)

  • 101二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:57:37

    >>95


    『さあ、各ウマ娘第4コーナーをカーブして直線に入ります!』

    「っスぁああああぁぁっ!」

    『おっと! ここで一番人気ダブルマシュマロ! 先頭との差を一気に縮めに行った!』


     中京レース場は芝コース、ダートコース共に、最終直線に入って400Mから200Mの間に急勾配が挟まれる。

     ダートコースよりも芝コースの方が勾配がきついものの、その距離は短い。対して、ダートコースは芝コースよりかは緩やかであるものの、全体的に勾配が発生する。

     その高低差は東京レース場の非ではなく、芝コースよりもダートコースの方が走る力を要求される分、速度的な意味でも外野からの視覚的な意味でも全体的にそれまでの走りが緩慢になってしまう。

     日が傾き始めた15時過ぎの開催とはいえ、天候は快晴。コースどころかレース場全体が暑く、ダートの状態が良の発表とは言え、このレースを走る全てのウマ娘にとってそれは肉体的にも精神的にも厳しい坂となる。


    「はああぁぁっスぅううっ!」

    『残り400を切って! ダブルマシュマロが先頭を狙う! 前の二人は逃げ切れるか!?』


     だが、ダブルマシュマロは果敢に攻めの姿勢を崩さない。

     第4コーナーによってまばらに散った全ウマ娘。その先頭集団の後ろから、小柄な体躯を活かしてすり抜けるようにコース取りを行い、逃げの二人へと食らい付く。


    「は~っ! は~っ! ぐっ!?」

    「っし!」

    『ダブルマシュマロ、一人目を交わした! 後方集団も追い上げて来たぞ!』


     ダブルマシュマロの先を行く二人の内、コーナーを曲がる際の遠心力で外側へと引っ張られてしまった一人が勾配を前に息を大きく吸ってしまう。

     途端、彼女の脚の動きは鈍くなり、外側にいた事もあってダブルマシュマロは労せず追い越してみせた。


    (まずは一人! 後はもう一人を……ゴール手前200Mまでには!)

  • 102二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:58:50

    >>101


     ダブルマシュマロ自身の脚は鈍らない。

     厳密には流石の彼女も勾配を前にして走る速度自体は遅くなってはいるものの、それ以上の脚力を以てして前へと駆けている。

     それ以前に、メイクデビュー戦前から今に至るまで、ダブルマシュマロは坂路トレーニングを繰り返し行っていた。

     一本、二本。

     その日によって疎らではあったが、確実にこなす回数が増え、且つ走り終わった後の疲労感も変わっている。

     それが自身の才能と努力であると同時に、彼女のトレーナーの教えによるものであるとダブルマシュマロは十二分に理解していた。


    「ふぅううううぅぅっ!」

    「~っ! うぅ~っ!」

    『8番ダブルマシュマロ、追う! 3番のメガロウベラはいっぱいになったか!? 残り300を通過しようとしている!』


     残るは一人。

     しかし、300Mを前にして勾配は更に厳しさを増す。

     前半で脚を溜めていた後方集団のウマ娘たちがダブルマシュマロに迫る走行音も聞こえてくる。


    (前の人は、抜かせるっス! 後の問題は……)


     けれども、当のダブルマシュマロに動揺はない。冷静に前を走るウマ娘を分析しつつ、懸念点を含めた後方へと意識を割く余裕すらあった。

     これまでのレースは全戦全勝。クラシック級ウマ娘限定とはいえ、芝のスプリントGⅢレースを制し、彼女は正に絶頂の最中にあった。

     全能感とまでは言わないものの、確実にレースを支配しているという感覚。それはダブルマシュマロの自信にも繋がり、且つ観客にも伝わるものであった。

     その為、それまでの戦績を加味した上で、シニア級も混ざるこの重賞レースにて、彼女は堂々の一番人気。

     飛ぶ鳥を落とす勢いではなく、落とした上で自身が大空を舞うという勢いそのままに、ダブルマシュマロはこのレースに挑んだ。

     そんな彼女唯一の懸念点は、同じくクラシック級のウマ娘でありながら、豪快な追込みとそれに反して堅実な戦績を残している同級生にして好敵手。本レース五番人気のミスディレクション。

     ダブルマシュマロと共にクラシック級のウマ娘がシニア級ウマ娘に世代交代を挑む等と言う前宣伝もあった為か、結果として双方の人気が上がったという見方をしていたのは他でもないダブルマシュマロのトレーナーであった。

  • 103二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 23:01:35

    >>102


    (ディレさんは! まだ来ていない! バ群に埋もれたか、前が壁になったスか! どっちにしろ、好都合っス!)


     そして、そのクラシック級ウマ娘の相方であり好敵手である彼女の、豪快な追込み故の強烈な走行音はダブルマシュマロの耳に入って来なかった。

     後方を確認し、唯一の懸念点が消えた彼女は思わず頬を緩める。

     だがそれは決して油断からではなかった。まだ勝負の行方は分からない。ただ、自身の勝ちパターンに入ったという確信故のスイッチであった。


    『ダブルマシュマロ! ここに来て更に加速! メガロウベラに強襲!』


     もう言葉はいらない。

     後は前のウマ娘を交わし、誰よりも一番でゴール板を通過するだけ。

     300Mの標識を通り過ぎ、メガロウベラを射程圏内へと捉え、ダブルマシュマロは口角が上がるのを抑えられなかった。

     それもそのはずである。

     彼女がゴール板を通過した先には、栄光の芝ダート両方の重賞制覇ウマ娘という輝かしい未来が待っていたからであった。




    △△


    △△△



     そんなダブルマシュマロへと静かに迫る影が一人。

     自慢の後方一気。後ろから先頭までをごぼう抜きした走りをせず、ダブルマシュマロを追いかける後方集団の外側に位置するウマ娘がいた。

     彼女の名は、ミスディレクションと言った。

  • 104二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 23:04:51

    ダブルマシュマロ VS ミスディレクション
    はっじまっるよー!

    という事で、増長気味ではあるものの、それでも自身の才能をいかんなく発揮し、絶好調でレース運びをするダブルマシュマロと
    本来の走りを封印し、最終直線になってもただ不気味にそんなダブルマシュマロを見据えるミスディレクション

    相手が絶好調である分、そして自身が本来の走りをしていない分、勝負の流れはダブルマシュマロへと大きく傾いているが果たして?

    レース展開や勝敗の行方が現実的でなくとも! 「説得力」と「納得感」があればなんとかなると思いつつほなまた~

  • 105二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 08:49:45

    実際レースって何が起こるかわからないところも多いですからね

  • 106二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 09:13:31

    読者視点だとミスディレクションの名前的に「終わった"筈"は早計すぎるだろ」となるけど、マーシュ視点じゃそうもいかないからな
    展開にドキドキする

  • 107二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 18:25:16

    保守
    劇中はまだまだ夏なので、現実に合わせて秋の装いでも、劇中に合わせて水着でも楽しめるのが良い

  • 108二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 22:19:14

    来た!ダブルマシュマロ来た!

  • 109二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 22:43:43

    >>103


    (うーん、強い。強いね、マーシュちゃん)


     普段は大外最後方から脇目も振らずに走る為、こうして改めて間近で好敵手を見ると、ミスディレクションは勝てる気がしないと内心苦笑する。

     前回、観客席で観戦した時よりも更に力強く、そして速くなっている気すら感じていた。間違いなく、今このレースの主導権を握っているのはダブルマシュマロであると確信が持てる。彼女の走りはそれ程までに素晴らしかった。


    (芝のコースよりは勾配緩いとはいえ、そもそも走るのにパワーが必要なダートコースの終盤であそこまで加速を維持できるのは才能の開花か努力の結果か、はたまたその両方かー)


     先を行くダブルマシュマロが通り過ぎた、ゴールまで残り300Mを示す標識を通り過ぎ、ミスディレクションは額に冷や汗が一筋流れるのを感じた。

     残り300M。それは普段ミスディレクションが仕掛けるタイミングのデッドライン。それよりもゴール手前で剛脚の末脚を繰り出して後方一気をしたところで、脚質「逃げ」と「先行」有利のダートでは間に合わない。また、ダートよりも走る際に力を必要とせず、今や速度重視のレース展開が主流となっている芝コースでは、距離が短すぎる。

     故に本来のミスディレクションであれば、第4コーナーを終えて最終直線に入るところ仕掛け、溜めに溜めた脚を大外から捲る為に爆発させる。その開始地点の距離が400Mから300Mまでであり、以降に仕掛けたとしても1着どころか下手をすると掲示板入りすら怪しくなる。

     だからこそ、彼女は本来仕掛けるタイミングを見逃し、勝ちを捨てるような行動を自らの意志でした事に、得も言えぬ背徳感を覚えた。


    『ミスディレクションさんとダブルマシュマロさんには、筋肉量の差はともかく、才能の差はないと考えられます』


     そして、その背徳感はやがて全身に広がり、まるで彼女を含めた周囲が所謂スローモーションのようになった時、ミスディレクションは自身のトレーナーの言葉を思い出す。

     ダートコースの上にありながら、彼女の思考は跳躍し、この東海ステークス前の光景まで記憶が遡る。


    『ふーん。へー。トレーナーはアタシとマーシュちゃんは同等って見ているのねー』

  • 110二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 22:45:18

    >>109


     夏合宿が始まる直前の放課後のトレーナー室。

     妹のレッドヘリングは先に渡されたメニューをこなす為に退室し、部屋の中にいるのはミスディレクションと二人の担当であるトレーナーのみ。

     夕日に照らされて逆光を背負う形で椅子に座るトレーナーを前に、デスクを挟んで正面に立った彼女は曖昧な言葉で彼の言葉に反応する。

     色眼鏡を付けずに自身の才能がダブルマシュマロと同じと言う評価を貰えたという嬉しさがある反面、そこはもうちょっと担当ウマ娘をヨイショしなよというちょっとした不満と嫉妬が入り混じった複雑な感情。

     普段通りに返したつもりだったが、今にして思えば少し上擦っていたかも知れないとミスディレクションは振り返る。

     しかし、そんな繊細微妙の乙女心を学んでいないのか、トレーナーはさして反応を示さないまま話を続ける。


    『厳密に言えば、ダートはミスディレクションさんが、芝ではダブルマシュマロさんがやや上と見ています。ですが、ここら辺はレースメンバーや展開、当日の天候やバ場状態で簡単にひっくり返りますからね。ですので、敢えて差はないと答えました』

    『あっはっはー。トレーナーのそういう忌憚のないところ、アタシは好きだよ』

    『ありがとうございます』


     思った事を、思ったままに口にする。礼儀こそ弁えているが、それはあくまでも公に失礼と取れる言葉を口にしないだけ。

     物腰は丁寧で、相手が年下の子どもであろうが、必ず敬称を付けて名前を言い、特にウマ娘に対してはそれこそ執事であるかのように恭しい。

     見た目も中肉中背。遠目でも長身と分かるチャンドラポメロのトレーナーや、ミスディレクションと同じぐらいの身長であるダブルマシュマロのトレーナーと比べれば小さいが、小さすぎるという訳でもない。

     顔付きは成人男性らしからぬ線の細さで、端正寄りな顔立ちではあるものの、パッと見ると頼りなさが先に来る印象がある。

     他のスーツ姿のトレーナーが濃紺色や黒、そうでなければ分かりやすい色をしているのに対し、彼はグレーというこれまたパッとしないスーツ姿。

  • 111二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 22:48:29

    >>110

     父方の祖母がウマ娘だった為か、その隔世遺伝として髪の色が銀髪になったとはいうものの、青みがかっていないせいで見ようによっては若白髪にすら見えてしまう。

     加えて丁寧な物腰に反してお世辞にも愛想が良いとはいえず、表情筋の大多数を母親のお腹の中に忘れて来たのかと思う程には、無表情。

     その為、全体的に見ると、若くして苦労しているせいか髪の色も表情も褪せた事なかれ主義なトレーナーという印象を受ける。というか、ミスディレクション自身の第一印象はそれであった。


    『であれば、二人の差が付くところがどこかと言われれば、他ならぬ私たちトレーナーの指導と言えるでしょう』

    『あーはーん? さてはトレーナー。アタシがマーシュちゃんに勝てない事を相手トレーナーが凄いからって言い訳するつもりでしょー?』

    『はい。事実ですから』


     ただ一点。

     その全ての印象をひっくり返すのが、他ならぬ彼の目にあった。

     からかうつもりで言ったミスディレクションの言葉に動じる事なく、寧ろそれを受け入れた上で、トレーナーは目を怪しく輝かせる。

     隔世遺伝としてウマ娘の祖母から受け継いだ、黒の瞳孔を中心に幾重もの金の虹彩が広がる、狂気を孕んだ黄金の瞳を。


    『事実って、トレーナーとマーシュちゃんとこのトレーナーさんは同期でしょー。新人と中堅とかならともかく、そこまで差が出るー?』

    「はい。悔しいですが、彼は天才です。凡人の私がいくら彼のやり方を学び、真似たところで、それは稚拙で猿真似にも劣るものとなるでしょう」


     淀みなく答える様子に困惑が勝ってきたミスディレクションを他所に、本当にそう思っているのか疑わしい程に表情を変えないまま、彼女のトレーナーは淡々と語る。

     しかしながら、仮に事実だとしても相手を持ち上げて自身を卑下するような言葉を前に、ミスディレクションは不服を感じた。

     彼が自身とレッドヘリングのトレーナーとなったのは、その狂気と確かな腕前あっての事であり、そんなトレーナーの過去は当然ながら調べ上げている。その経歴を見て、且つ実力を示して契約を結んだ手前、ミスディレクションからすれば凡人と自虐する彼の発言は許容出来なかった。

  • 112二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:03:49

    >>111


    『ちょっとー。その凡人が高等部の3年間だけで中央トレーナーになれるとは思えないんですけどー? 謙虚も行き過ぎると嫌味に聞こえるよー?』

    『それは失礼しました。ただ、一つだけ訂正しますと、中央のトレーナーになるのはそう難しい事ではありません』

    『……は?』


     軽くデスクを叩くように手を置き、トレーナーへと顔を寄せて憤慨して見せても、彼は表情一つ変えずに謝罪の言葉を述べる。

     そして、続く言葉に寧ろミスディレクションの方が表情筋の崩れる感覚を覚えた。


    『中央のトレーナーになるのは確かに最難関。天才でなければその狭き門をくぐる事も出来ないでしょう』

    『で、でしょ? だからトレーナーも』

    『ですが、狭き門を叩き、くぐるだけの試験であれば凡人でも攻略は可能です』

    『……』


     天才でなければ不可能と言っておきながら、凡人でも可能という矛盾を平然と口にするトレーナーを前に、ミスディレクションは言葉を失う。

     彼はその様子を気にも止めずに話を続ける。


    『秀才であれば、退路を断って挑んで打ち勝てば、天才の領域に足は踏み入れられます。凡人であれば、今ある全てとこれから人生を投げ打って勝ちを拾えれば、天才の領域に触れる事が出来ます』

    『えぇ……』

    『試験というのは、そういうものです。知識と記憶を積み重ね、応用に対応する。問題の範囲は無限大ではありませんので、それこそ並々ならぬ覚悟があるならば、誰しも合格します』


     まるで、自分のしてきた事はそう大した事ではないとでも言いたげな、特に当時の事を思い出す様子もない語り口調。

     雄弁に物語るのは爛々と輝く彼の瞳だけであり、故にミスディレクションは改めて目の前のトレーナーに狂気を感じるのであった。

  • 113二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:06:12

    レースの最中に過去回想が入るのは確定演出でございます(パチ○コ感)

    と言う訳で、狂気降臨。

    ミスディレクション及びレッドヘリングのトレーナー登場&紹介を済ませつつ、狂気を存分に示していければと思いますほなまた



    >>108

    狂気に負けるな! ダブルマシュマロ~!

  • 114二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 06:31:25

    いったいどれほどのモノやコトを犠牲にしてきたというんだ…

  • 115二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 06:36:38

    これは良い具合に狂っているw

  • 116二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 10:09:37

    >>114

    高校3年間のあれやこれやと進路を全部捨てるとか…


    >>115

    レッドヘリングにマイル戦で中距離を走らせる狂人

    尚、ギリギリの勝利

  • 117二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 13:09:40

    まず真っ先に投げ捨ててるのが常識というリミッターっぽい
    理性のある常識知らずは盲点を突いてくるから怖い

  • 118二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 21:16:52

    保守

  • 119二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:39:53

    ミスディレクションの元ネタとして参考にしているブロードアピール君のレースや記事を色々調べていたら…

    君、牝馬だったのか…(驚愕①)
    えっ、君の孫にワグネリアンいるの???(驚愕②)

    ってなってる…あの後方一気の剛脚でお牝馬なのか…クリスタルカップのヒシアマ姉さんみたいじゃな…

  • 120二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 00:00:27

    >>112


    『話が逸れてしまいましたね。兎に角、次の東海ステークスはシニア級のウマ娘が主戦場としているレース。絶好調のダブルマシュマロさんに、その彼女を全戦全勝させたトレーナーのコンビともなれば、クラシック級ウマ娘とて厳しいマークが予想されます』

    『その隙を突いて大外一気?』


     内心で担当トレーナーに対してドン引きしているミスディレクションの様子を知ってか知らずか、彼女のトレーナーはレースの話を進める。

     東海ステークスの出走条件はクラシック級から解禁される。とはいえ、暑さの厳しい夏レース且つ、ダート単距離における数少ない重賞レースともなれば、そこにはシニア級の猛者たちが詰めかける。

     そこへ今一番勢いに乗っているクラシック級ウマ娘が来るともなれば、トレーナーの言う通り警戒され、情報も色々とチェックされてしまうだろう。

     親友にして好敵手といえども、レース中に周囲を取り囲まれている彼女の姿を想像し、ミスディレクションはやや同情しつつも勝ちの目をそこに見出す。

     生意気な後輩をマークしつつ、他のウマ娘たちとも牽制しながら走るのであれば、それこそ大外からの追い込みが刺さると考えたからだ。

     だが、その発言に対し、トレーナーは一度目を閉じてからゆっくりと首を横に振る。


    『いいえ。そんな私でも予想出来る事を、あの人が予想出来ないはずがありません。成功率か失敗率を視認出来ているのかと思う程に、効率的なトレーニング負荷と休息のタイミングを読み切る感覚派な彼ですが、問題を見ただけで答えのみを解ける類の天才ではありません。しっかりと積み重ねてきた知識と基礎の上に、天才的な判断を降せる彼ですので、当然そこら辺は対策してくるはずです』

    『うぅん。そっかー……なら、マーシュちゃんが先頭に立った際のソラの隙を突くとかは』

    『とても素晴らしい着眼点です。事実、ダブルマシュマロさんは先頭に立った後、少しソラを使う癖がありますからね』

    『へへへー』


     口角をほんの少しだけ上げ、金の目を輝かせながら褒めるトレーナーに、ミスディレクションは少し恥ずかしがりながらも頬を緩める。

     物腰が丁寧であるが故に、喜怒哀楽がイマイチ掴み辛い彼ではあるが、流石に付き合いが一年以上続くと色々と分かって来る。

     表情や声色の微妙な変化から、今のトレーナーは心の底から自分を褒めてくれていると分かったからだ。

  • 121二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 00:04:17

    おぉう…気付いたら日付変わっている…
    キリの良いところが見当たらなかったので今日はこれでほなまたします

    以前ダブルマシュマロのレース視察にて、ソラを使うところを直に確認しているミスディレクション
    その隙を突く策を提案し、トレーナーもその着眼点を褒め称えるが果たして…?

  • 122二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 09:03:13

    やっぱこのコンビ仲いいね

  • 123二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 13:05:15

    >成功率か失敗率を視認出来ているのかと思う程

    アプリプレイヤーだこれ

  • 124二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 18:23:42

    >>122

    レッドヘリング「トリオ! トリオです!」


    >>123

    お気づきになり申したか…アプリトレーナーを三分割したのがそれぞれポメロ、マーシュ、ディレヘリのトレーナーだという事に…

  • 125二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 01:13:38

    このレスは削除されています

  • 126二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 01:18:28

    >>120


    『ですがそれも、今回に限っては期待しない方が良いでしょう』


     しかし喜んだのも束の間、トレーナーはまたいつもの表情へと戻す。否、それこそ一年近く付き合って来たからこそ、彼もそこに活路を見出していたのだとミスディレクションは悟った。

     その証拠に、眉がやや下がり、先程まで輝いていた金の瞳にも陰りが落ちたからだ。


    『それも、マーシュちゃんのトレーナーさんによる対策?』

    『はい。ダブルマシュマロさんがこれまで走って来たレースは、いずれもジュニア級のみ、クラシック級のみでした。そこでシニア級混合のレースに出走ともなれば、彼が指導しないはずもありません』

    『そっかー』

    『そしてもう一つ』


     レースに勝つ為の打ち合わせだというのに、出す案が悉く勝ちの芽を潰される気分になり、ミスディレクションは肩の力が抜ける感覚になる。

     けれども、対面するトレーナーはそこに追い打ちをかけるかのように右手の人差し指を立てて見せた後、手を開いて彼女の方へと差し出した。


    『他でもない、貴女が出走するからだと、私は考えます』

    『あ、アタシ?』


     思わぬ言葉に、ミスディレクションは鳩が豆鉄砲を食ったような気分になる。しかし、そんな彼女に構わず、トレーナーは話を続ける。

  • 127二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 01:19:55

    >>126


    『強烈なマークも、ソラも、対策や意識をすれば回避は可能です。ですが、ダブルマシュマロさんにとって一番恐ろしいのは、後方からの捲り……即ち、ミスディレクションさんの大外一気です』

    『そ、そう……かなー?』

    『はい。ご存じの通り、ダートコースというのは芝コースよりも走るのに力が必要であり、故に脚質「逃げ」と「先行」が有利です。ですが、その逃げや先行で走るウマ娘にとって一番恐ろしいのは、その不利を物ともしない力強い追い込みに他なりません』

    『……』

    『一瞬の判断と行動が重要となるスプリント戦において、スタートダッシュや道中の位置取り、終盤に向けてのコース取りや抜け出し準備等、特に先行のウマ娘はその取捨選択が重要となります』


     表情こそ無表情のそれだが、再び金の瞳を輝かせ、饒舌になりながらもトレーナーは次第に声量を大きくしていく。


    『心身ともに疲弊し、脚はダートに取られる。中京レース場の最後の勾配、先を行くウマ娘たちにとっては相当しんどいものになるでしょう。そこに後方から追い込みをされると気が気ではないはずです。故にダブルマシュマロさんはソラを使わないでしょう。最後まで気を張らなければ、好敵手であるミスディレクションさんに追い抜かされるかも知れないのですから』


     そして真っ直ぐにミスディレクションを見つめ、そう思われる担当ウマ娘が誇らしいと言わんばかりに、トレーナーはここにきてはっきりとした笑みを見せるのだった。

  • 128二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 01:23:19

    身構えていない時にこそ、死神は来るものだ
    故にダブルマシュマロは油断しない
    そのゴールの先にある栄光に想いを馳せても、脚は緩めない、ソラも使わない
    しかし、トレーナーはだからこそミスディレクションは素晴らしいと笑う

    それ程までに、意識される強いウマ娘なのだから

    ほなまた

  • 129二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 09:21:20

    このトレーナー、しっかり脳を焼かれてやがる
    …アプリトレーナーは大概誰も彼も似たようなもんだな

  • 130二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 17:35:22

    保守

  • 131二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 23:07:59

    ダンスレッスン中のミスディレクション

  • 132二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 01:09:02

    >>127


    『うーん。真正面から褒めてくれるのは嬉しいけどー。でもそれって結局、いつもの走り方をしたらマーシュちゃんに勝てないって事だよねー?』

    『はい。そうなりますね。相手は絶好調のダブルマシュマロさん。今の彼女を止めるのは、歴戦のシニア級ウマ娘でも難しいと思います』

    『うわぁ、急に冷静に……というか、そこはもうちょっと担当をヨイショして欲しいんですけどー』


     ミスディレクションの言葉に笑顔から無表情へと戻り、トレーナーは淡々とした口調で勝てないと言う事を認める。

     それが事実であると理解しつつも、ミスディレクションは眉根を寄せながら口を尖らせた。

     しかし、やはりトレーナーは特段反応らしい反応を示す事なく、目礼のみを返す。


    『善処します。ですので今回は──』

    『えー? まさか今から出走取り消しとかー?』

    『──いつもの走り方を捨てましょう』


     それから一度目を伏せてからゆっくりと開き、いつもと変わらない表情でミスディレクションに作戦を提案するのだった。


    『それってどういう──』

    『残り200Mを前にして! ダブルマシュマロがメガロウベラに並んだ、並んだ! さあ、かわせるか!?』

    「──っ!」


     ミスディレクションがトレーナーの言葉の意味を聞こうとしたところで、彼の口からレースの実況が聞こえ、彼女が瞬きをすると同時に思考と視界が東海レースへと戻って来た。

     彼女は深く思考の海を漂い過ぎたと反省しつつ、周囲の様子を伺う。

     現在は最内先頭を走るメガロウベラに、ダブルマシュマロが横並びになったところで、地点は目算で220M。コースの勾配が緩やかになり、200Mを過ぎればラストスパートへと入る。

     後20Mだが、ダブルマシュマロは問題なくメガロウベラを追い抜くだろうとミスディレクションは分かった。既にいっぱいになっているのか、上体が弓なりになりつつある彼女に対し、ダブルマシュマロは未だ前傾姿勢のままだった。

     そして肝心の自身は幸いな事に、思考と意識とは裏腹に順調な走りをしている。ダブルマシュマロたちからは更に外側にはなるが、徐々に位置取りを押し上げた甲斐があり、その差は目算で10Mと4バ身差。

     しかしながら、その差と200Mという距離は、今回の走り方におけるミスディレクションのデッドラインでもあった。

  • 133二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 01:10:40

    >>132


    (ふぅー……)


     心臓が跳ね、肺は常に新鮮な酸素を取り入れようと忙しい。その為に呼吸は荒くなり、何ならレースの熱で全身が熱い。

     その中にあって、ミスディレクションは頭を冷やすように内心でゆっくりと息を吐いたつもりになった。実際の呼吸にそんな余裕は微塵もないが、それでも努めて冷静を保とうとする。

     全ては、その瞬間の為だけに。



    ◇◇◇



    (ぐっ、ぎぎっ……流石はシニア級ウマ娘のメガロウベラさんっス。クラシック級限定とはいえ、過去のオープンレースを2つも取っているだけはあるス)


     横並びになったはいいものの、メガロウベラを追い抜く事が出来ず、併走状態のダブルマシュマロは内心で呻く。

     今回の東海レースへと挑むにあたって、彼女のデータはトレーナーと共に調べた。

     クラシック級時に、二つしかないクラシック級限定ダート短距離レースをどちらも勝利し、シニア級に入ってすぐの根岸ステークスも掲示板入りを果たした実力者。

     今回の有力候補の一人として、その対策もして挑んだつもりだったが、横並びになってからの粘りが思いの外強かった。


    (彼女自身も、そりゃ分かっているスよね)


     その粘りの理由が、彼女の諦め癖によるソラだとも調べ上げた為、同じくソラを使ってしまうダブルマシュマロからしたら共感出来る相手だった。

     メガロウベラは、抜群のスタートの良さと序盤の逃げ足によって後続と距離を取る。そして、それをレース終盤まで保ちつつ、最後は根性勝負に持ち込んで逃げ切り勝ちを狙うウマ娘。

     反面、一度抜かされてしまうと抜き返す事が出来ない為か、彼女は他のウマ娘が自身よりも明確に前へと出られると諦めてしまう悪癖があった。

     その為、根岸ステークスこそギリギリで掲示板入りを果たしたものの、それ以降のダート短距離重賞だと負ける時は派手に負けてもいた。


    (ディレさんが迫って来る気配が感じられないとはいえ、後ろから他の皆が詰めてきているのは感じるス……デッドラインまで後10M! 何とか!)


     しかし、横並び程度ではその悪癖も出ない為、ダブルマシュマロとしては勾配が緩やかになる前に勝負を決めたかった。

     中京レース場はゴール手前まで勾配が続くが、200Mからは極端に緩やかとなる。そこまで粘られてしまうと、明確に前へと出る事が出来ないまま、彼女が盛り返す可能性があったからだった。

  • 134二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 01:13:03

    視点はミスディレクションからダブルマシュマロへ
    奇しくもミスディレクションがトレーナーから受けた策のデッドラインがダブルマシュマロのデッドラインと被る中、レースはいよいよ佳境を迎える

    勝負の行方や如何に?

    ほーなーまたっ

  • 135二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 09:31:15

    いよいよ正念場ですね

  • 136二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 13:03:44

    >>133


    『負けられない、メガロウベラ! 追い抜きたい、ダブルマシュマロ! シニア級の意地とクラシック級の意地とのぶつかり合い!』


     ダブルマシュマロの耳に遠くから、実況の声や歓声を上げる観客たちの声が届く。

     実況の言葉通り、見ごたえのある競り合いだろう。観客の盛り上がりも肌で伝わってくる。

     だが、ミスディレクションは来ない。

     ダブルマシュマロの懸念点の一つ、ミスディレクションが仕掛けてくるはずの地点は通り過ぎた。

     そして今、そのミスディレクションの猛追があるのならば、実況や観客は違った反応をするはず。それがないという事は、彼女は追い上げる事が出来なかった。少なくともダブルマシュマロはそう思った。


    (ディレさんは、来ない! ならっ!)


     後方から迫る他のウマ娘たちは今の自分とメガロウベラに追いつけない。

     加えてミスディレクションが来ないと断じるのであれば、ダブルマシュマロのやるべき事はただ一つ。

     メガロウベラを降し、そのまま一着でゴールするだけである。


    「っスぅううぅぅああぁぁっ!」

    『ダブルマシュマロがかわした! そのまま突き放すか!? 残り200M!』


     勾配が緩やかになるゴール手前200Mの中京レース場ダートコース。

     ここで競り合った相手を振り切る勢いでダブルマシュマロは吠える。

     その気合の叫びと加速により、メガロウベラよりも先に出る事に成功した。


    (よし! かわしたっス!)


     彼女よりも明確に前へと出たと確信し、同時に残り200Mを示す標識を横切った時、ダブルマシュマロは思考は跳躍する。

     周囲全てが物凄く緩やかで緩慢になり、次第に視界は東海レース前のトレーナー室へと変わる。

  • 137二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 13:05:04

    >>136


    『身構えている時には、死神は来ないものだ。マーシュ』


     夏合宿が始まる直前の放課後のトレーナー室。

     その日のトレーニングやダンスレッスンは休みとし、部屋の中にいるダブルマシュマロは彼女の担当であるトレーナーと共に最終の作戦会議を行っていた。

     夕日に照らされたトレーナー室の中、ホワイトボードを前にして座るダブルマシュマロに対し、彼女の担当トレーナーはそう伝える。

     レース中はまるで子どものように目を輝かせ、大げさに振る舞い、感情のままに喋る彼。しかしひとたびレースを離れれば、大げさな振る舞いと口調こそ変わらないが、大人らしい一面を覗かせる。

     しかし、彼のその言い回しはダブルマシュマロも知っていた。

     そのコンテンツの明確なジャンルは彼女には分からない。限りある語彙力の中から選ぶのだとしたら、それはSF戦記だとダブルマシュマロは思った。

     そして、トレーナーが言った台詞はそのコンテンツの昔の小説にある一文。本来であればダブルマシュマロが知る由もない短い文章。

     だが、少し前にその小説を元にアニメ映画が製作され、公開。映画館で観た訳ではないが、機会があって彼女はそれを視聴していた。


    『トレーナーさん、今の子にそれは通じないスよ』


     やや金色に近い茶色の短髪。日本人というよりは欧州人を思わせる堀の深い整った顔立ち。お洒落スーツを着て黙って立っていればそれだけで絵画の一枚になりそうではあるものの、彼の性格や言い回し、大げさな振る舞いがそれを陽気で口の軽い人としてぶち壊す。

     けれども、トレーナーとしての腕は一流であるとダブルマシュマロは確信していた。


    『ん? あー、もしかしてマーシュもあの映画観た?』

    『機会があって観たスよー。まあ、劇中でその台詞を言った人? は天才パイロットらしいスから、天才なトレーナーさんが言う分には違和感なかったっスよ』


     トレーニングは効率的で、且つ的確。

     最初の内は、ダブルマシュマロがもう無理と思ったところで更に一本追加する鬼畜でありながら、まだ余裕があるのに切り上げるよく分からないものだった。

     しかし、彼の指導に従ってそれらをこなす内に、自然と自身が鍛えられている事と、本人でも気付かない絶妙は疲労度や肉体酷使を見抜いてトレーニング追加や終了を見切っていたのだと感じた。

  • 138二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 13:06:07

    >>137


     他のトレーナーは、怪我や疲労を恐れてそれなりにしかやらせない者、担当ウマ娘の力量や限界を測り間違えて怪我にさせる者。複数担当している場合は距離適性が同じであれば全員同じトレーニングしかさせない者もいた。

     その中で、専属契約であるのを活かし、怪我を恐れずトレーニングへと踏み込ませ、疲労がピークに達する前にウマ娘を労わるトレーナーはそうはいない。

     それこそ、GⅠレースに勝つようなウマ娘と専属契約しているトレーナーぐらいである。

     同期の中で例を挙げれば、ダイワスカーレットやウオッカの担当がそれぞれ正しく、ダブルマシュマロの担当トレーナーと同じような効率的で的確なトレーニングをさせているように思えた。

     その為、彼の指導を受け続ければ、いずれは自分自身もGⅠタイトルを取れる。そうダブルマシュマロは夢見ていた。


    『天才? 俺が? いやいや、マーシュ。残念だが、俺は天才とは程遠いよ』

    『え? で、でも』


     しかし、そう期待して見つめたトレーナーは目を丸くした後、すぐに天才である事を否定し、大げさに肩を竦めてみせる。

     いつも通りの大げさな仕草はともかくとして、ダブルマシュマロは彼の言葉に驚く。

     彼が天才でなければ一体誰が天才なのか。

     自身の脚が中央で通用するとは思ったが、ダブルマシュマロの認識では行けてオープンクラスだろうと見積もっていた。

     その彼女を勝利に導くどころか、これまで出走したレースが4回と少ないものの全戦全勝させた上に芝の重賞レースであるGⅢも取らせたのだ。

     ダブルマシュマロ自身の自己分析が甘かった可能性はあるものの、己の才能は他でもない彼女が一番分かっている。

     にも関わらず、そうさせたのは他でもないトレーナーの手腕によるものだと思っていた。だからこそ、その彼の口から天才を否定する言葉を聞いて、俄かには信じがたかった。

     だが、驚いてみせたダブルマシュマロを見つめ、いつになく真面目な顔をしてトレーナーは口を開く。


    『本当の天才っていうのは、チャンドラポメロ君のトレーナの事を言うのだろう』

    『ぽ、ポメちゃんの?』


     そして、ダブルマシュマロが天才だと思っていた彼の口から、思いもしないウマ娘の名前が出てくるのだった。

  • 139二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 13:08:52

    【悲報】第四章さん、主人公の名前が出る前に1万文字消費してしまう


    そして明かされるトレーナー三すくみ

    ポメちゃんのトレーナーはミスディレクションとレッドヘリングのトレーナーを天才と認識し
    ディレレッドのトレーナーはダブルマシュマロのトレーナーを天才と評する
    そしてそのマーシュのトレーナーはチャンドラポメロのトレーナーこそが天才に相応しいと言う


    加えてダブルマシュマロの回想を入れる事でギリギリまでどちらが勝つかを分からなくさせる姑息なほなまた

  • 140二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 14:04:35

    プレーヤーを三分割って、そういう事か

  • 141二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 14:40:58
  • 142二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 15:04:40

    積んで積んで、ひたすらにがむしゃらに積み上げろ
    いつまで?
    届くまで!

  • 143二次元好きの匿名さん25/10/18(土) 18:25:07

    >>142

    頑張れミスディレクション!

    という気持ちと

    頑張れダブルマシュマロ!

    という気持ちが二つある~~~!


    両方勝たせてあげてぇ~~~

    両方勝ちって事にならんか? ならんか…

    さてはて、勝敗はどうつけたものか…

  • 144二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 01:09:13

    >>138


    『ああ。そう言えば、マーシュにはまだ話してなかったか。あいつは俺と同期のトレーナーで、もっと言えば幼馴染なんだよ』

    『は、はえー。そうだったんスか……でも、人が優しそうな感じはあっても、天才とは感じなかったんスけどねぇ』


     トレーナーの言葉に、ダブルマシュマロはチャンドラポメロのトレーナーと出会った時の事を思い出す。

     自身の本質の為か、初対面の相手には気さくに話しかけるタイプと自認している彼女にとっては、その言葉の通り優しそうな人という評価しか出てこなかった。

     そもそもそれ以上に、チャンドラポメロのトレーナーとの交流がない為か、どうしても見た目や雰囲気に印象が引っ張られてしまっている。


    『いや、正にそこだよ。流石は俺のマーシュ、良い着眼点をしている』

    『ぴゃっ!? き、急にそんな、言わないで欲しいスよ~』

    『?』


     すると、ダブルマシュマロの言葉を聞いたトレーナーが天啓を得たかのように瞬きをし、その後で彼女を褒めて来る。

     褒めるだけならいつもの彼なのだが、どさくさに紛れてまるで付き合い始めた恋人のような事を言ってきた為、それを聞いた彼女は思わず目を閉じて顔を逸らした。

     その所作の意味を知ってか知らずか、トレーナーは話を続ける。


    『あいつは雰囲気もそうだが、声も落ち着いていて、聞いていて不思議と心地が良い。加えて、人の機微に聡くて、簡単に心の壁を取っ払って来る……まあ、所謂人たらしという奴だな』

    『ひ、人たらし……で、でも、それだけで天才ってのは』

    『その通り。それだけならただの良い奴止まりなんだが……俺の見立てではそれが君たちウマ娘のウマソウルってのと物凄く相性が良いように思えてならない』

    『ウマ、ソウル』

    『未だに解明されていない分、それが現象なのか、魂の在り方なのかは分からない。だが、俺たちトレーナーは担当するウマ娘との交流を通して、そのウマソウルとやらに触れている。そして、あいつはその力を引き出すのが上手い、と俺は見ている』

  • 145二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 01:10:21

    >>144


     トレーナーの口から聞いた事があり、それでいてそれを宿す身としては実感のあまり持てない単語が出てきて、ダブルマシュマロは再び視線を彼へと戻す。

     そこにはやけに真剣な表情をしたトレーナーが思案するように言葉を選ぶ姿があった。


    『例えば……そうだな。ここは奴、ミスディレクション君のトレーナーに従って、分かりやすく数値化してみよう』

    『数値化っスか?』

    『ああ。俺がマーシュを指導して、鍛え、元々の才能100に10を加えたとしよう。これでマーシュはレースで110の力で走る事が出来る。ここまではいいかい?』

    『はい』

    『で、悪いがトレーニング効率に関してはあいつよりも俺に分がある為、チャンドラポメロ君の元々の才能100に対して、あいつは5しか加えられない。この時点で彼女の力は105となり、俺たちと比べると力を十二分に発揮出来ない事になる』

    『んー、まあ、そうスね』

    『そんな顔をしないでくれ。レースは複雑で、何が起こるか分からない。だからこんな単純な数字で語れるなんて俺も思っていないよ。……ただ、あいつはその105という数値にウマソウルから引き出した力を与える。それが加算か乗算かは、大した問題じゃない。だが、少なくとも俺たち以上の力をレース中に発揮する事がある』

    『それって……』


     眉根を寄せつつ、渋い顔をするトレーナー。

     わざわざ数値化して説明しつつも、その説明の仕方に一番納得していないのは他でもない本人であると言っているようにも見えた。

     だが、ウマソウルとレース中に才能以上の力を発揮する、という現象については、ウマ娘であるダブルマシュマロにも察しがついた。


    『ああ。所謂"領域<ゾーン>"と呼ばれるものだ』


     そして、彼女が行きついた答えに同調するように、トレーナーは深く頷きながらウマソウルと並んで未だに解明されていない現象の名前を挙げるのだった。

  • 146二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 01:14:10

    チャンドラポメロのトレーナーとは!
    担当ウマ娘と心を通わせ、才能や努力以上の力を引き出す天性の力を持った者!

    ダブルマシュマロのトレーナーとは!
    担当ウマ娘の伸ばすべき能力や、トレーニングの失敗率を見抜き、指導する力に長けた者!

    ミスディレクションとレッドヘリングのトレーナーとは!
    担当ウマ娘の覚悟や勝利の為に、自らの狂気を狂気と思わず、どんな事にもウマ娘やそのトレーニングに繋げるような思考をし、時に奇策や奇行とすら思える行動に出る者!


    アプリ版トレーナーとは!
    上記の全部をこなせる者である! やべぇ!

    ほなまた!

  • 147二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 08:43:35

    おはようの保守

  • 148二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 09:57:48

    逆説的には、プレイヤーが1/3された状態だからそれぞれGⅠクラスに勝てなかった(勝たせられなかった)とも言えるのか

  • 149二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 10:02:00

    >>148

    五等分の花嫁ならぬ三等分のトレーナーか…

  • 150二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 19:22:18

    保守

  • 151二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 21:36:56

    チャンドラポメロ-cute jersey collection-
    にて保守
    たぶん、友人の誰かに唆されたんだろうなぁ

  • 152二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 23:46:13

    >>145


    『一流のトレーナーは、担当ウマ娘との交流を通してウマソウルと共鳴し、その領域に導く……なんて言われているが、正直にわかには信じがたいのが本音だ』

    『まあ、何ていうか現実的ではないスからねぇ』

    『ああ。しかし、そのチャンドラポメロ君のメイクデビューやダイワスカーレット君の桜花賞。そして、ウオッカ君の日本ダービーを見て、その領域にウマ娘を導くトレーナーは存在すると認めざるを得なくなった』

    『ダイワスカーレットさんやウオッカさんのレースはGⅠレースだから分かるスけど、ポメちゃんのレースも見たんスか?』

    『幼なじみで同期のトレーナーの担当ウマ娘の初出走ともなれば、応援したくもなるのが人情ってものさ……まさか、そこで領域についての認識を改めるとは思わなかったけどな』

    『はえー』


     トレーナーの言葉を聞き、ダブルマシュマロはあまり理解が及ばなかった。というのも、ウマソウルについてもウマ娘である自分自身でも良く分からないのに、一度もレース中に拝んだ事のない領域の話をされても体験していない以上憶測でしかなかったからだ。

     寧ろ、担当のトレーナーがどちらかというと軽薄な言動をしているのに反して、意外と義理人情に厚いという意外な一面の方に意識が向く程であった。

     そんな好奇な目を向けられている事に気付いたのか、彼は一度わざとらしく咳払いをした後に、取ってつけたように大げさに両手を広げる。


    『とまあ、話は逸れたが、俺はあいつのようにウマ娘を領域に導けるような天才ではない。だが、それなりのアドバイスは君に出来る』

    『はあ……と言うと?』

    『レース中に先頭へ躍り出た際にソラを使うのは止めておこう、マーシュ』

    『っ!? な、何で、それを!?』

    『イェア! 俺は君の最強最高のパートナーだぜ! 俺のマーシュ! そんな事はお見通しさ!』

  • 153二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 23:51:04

    >>152


    『~っ!?』

    『それまでのレースはソラっても危なげなく勝っていたから、指摘するつもりはなかったが今回は流石に別だ! シニア級のウマ娘もいる、君の好敵手なミスディレクション君もいる! 楽に勝てるとは思わない事だ!』

    『だからって、俺の、なんて言葉は使う必要はなかったっスよねー!?』

    『はっはー! 俺のマーシュ! 照れるな、照れるな!』


     アドバイスと言いつつも、またどさくさに紛れて恋人のような発言をするトレーナーに対し、ダブルマシュマロは一気に顔が熱くなるのを感じた。

     そんな彼女を見て、彼は満面の笑みでサムズアップをしてみせるのだった。


    『んもー! あなたって人は──』

    『──が、先頭を行くダブルマシュマロを強襲! 残り200Mを切ったが間に合うか!?』

    『──っ!?』


     どこか誇らしげな様子のトレーナーに一言も二言も文句を言おうとしたところで、その彼の口から実況の声が聞こえ、ダブルマシュマロは我に返る。

     そして、自身の右後方から物凄い勢いで迫って来る一人のウマ娘の気配を感じた。

     急に遠ざかる実況の声や、元々遠くから聞こえる観客の歓声の質が変わった事にも気付いた彼女は、振り向かずとも誰が迫ってきたのかが分かった。


    「マーシュちゃん! その首、狩らせてもらうよん!」

    「~っ!? 死神の真似事スか! ディレさん!」


     仕掛けて来ないと思い、意識の外に置いたはずのウマ娘、ミスディレクションであった。

     場面はゴール板まで残り200Mを切った直後。ダブルマシュマロに抜かされたメガロウベラはそのまま後退。ダブルマシュマロが意識を跳躍してから時間はほとんど経過しておらず、ソラ自体もしていない。

     ただ、メガロウベラをかわして一着になったという認識だけを抱いたという状況。

     そして、そのメガロウベラと入れ替わる形で強襲してきたミスディレクションに、ダブルマシュマロは額に冷や汗が滲むを感じながら、残る力を全て脚に回して彼女との根性勝負を開始するのだった。

  • 154二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 23:53:13

    ソラを使わずに逃げ切り態勢のダブルマシュマロ
    それに対して秘策で挑むミスディレクション

    果たして栄光はどちらの手に?

    ほーなーまーたー

  • 155二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 09:09:59

    ここからはもう気合の勝負か

  • 156二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 09:10:26

    会話の端までたっぷりイチャイチャが詰まってるな

  • 157二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 17:34:16

    保守

  • 158二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 00:16:20

    age

  • 159二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 00:35:48

    >>153



    △△△



     今作戦におけるデッドラインである200Mを切る前に、ダブルマシュマロがメガロウベラを追い抜いてくれた。

     これにより、ミスディレクションは第二関門をようやくクリアする事が出来た。


    『ダブルマシュマロさんはソラを使わないでしょう。ですが、その注意を意図的に逸らす事は出来ます』


     自身が追っている事に気付き、逃げるダブルマシュマロの背中を追い縋るミスディレクションの脳裏にトレーナーの言葉が浮かぶ。


    『第一関門は、ミスディレクションさんがいつもの走りをしない事で、ダブルマシュマロさんに追って来れていないと思わせる事。これにより、ミスディレクションさんを彼女の意識の外へ逸らす事が出来るはずです』


     遠くで聞こえていたはずの実況の声も、観客の声も、ミスディレクションの耳から遠ざかる中、彼の言葉だけが聞こえてくる。


    『そして第二関門は、そのダブルマシュマロさんが先頭に立った瞬間に仕掛ける事。ここが一番の博打になります。もしも彼女が先頭に立ったのがゴール前残り100Mを切っていたのなら、恐らくは間に合いません。かと言って、残り400Mや300Mの時点でそれをされてしまうと、今度はミスディレクションさんが何時もの走りをせざるを得なくなり、やはりダブルマシュマロさんに警戒されて逃げ切られてしまいます』


     トレーナーの提案した奇策は勝つ為のものではない。

     勝つ可能性が限りなく低いものに、勝ちの芽を見出すものであった。

     故にそれはレース展開に左右され、彼の言う通り、ダブルマシュマロのタイミング次第ではそのまま負ける事も十二分にあり得た。

     提案を受けたミスディレクションは、そうでもしなければ今や向かう所敵なしのダブルマシュマロを打ち取れない事を理解していた。

     だが、理解していたが故に、トレーナーに疑問をぶつけた。

     奇策を打つのは良いと思った。そうでもしなければ、ダブルマシュマロに勝てないと思っていたから。ダブルマシュマロの意識から自身を外へと弾かせるのも面白い。意識外からの強襲はそれこそ自分が得意とするやり方だから。

     けれども、その為に今の自分の走りを捨てて勝てるのか、と。

     それに対し、彼女の脳裏に浮かんだトレーナーは明確に笑みを浮かべて言った。

  • 160二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 00:36:55

    >>159


    『ですから、"ミスディレクション"させるのです。貴女が意識の外へとやり、目の前の抜かすべき相手に集中させる。そして、その相手を抜かして先頭に立ったその瞬間、人は必ずその事実に意識や注意を持っていかれます。"やった、抜かせた"、"一番になれた"等と言うその刹那の瞬間を意図的に向けさせるのです。そして、その一瞬の隙を突いて、ダブルマシュマロさんを狩りましょう』


     ダブルマシュマロの背中にもう手が届くところまで迫っているのを確認したと同時に、ミスディレクションの脳裏に浮かんでいたトレーナーが姿を消す。

     しかし、その言葉の続きは彼女の脳内に響く。


    『その為に、とあるウマ娘に指導をお願いしました。先方は予定に厳しい方なので、今日一日しか予定を合わせられませんでしたが、一瞬、されど閃光のように鋭い末脚。その感覚を掴めれば、貴女はダブルマシュマロさんに勝てる。私はそう信仰しております』


     そこまで言われたのならば、そこまでしてもらえたのならば、後はやるしかなかった。

     残る力、残る気力、残る感覚。

     その全てを走る事、走る脚に集約し、閃光のような一瞬の刹那を駆ける。

     残り100Mの標識が視界の端に映ると同時に、ミスディレクションはダブルマシュマロの横に並ぶ事が出来た。


    『残り100を切って! ここでミスディレクションがダブルマシュマロに並んだ! さあ、両者互いに譲らぬまま! ゴールへと向かう!』


     だが、ダブルマシュマロを抜かせない。

     その背中を追い、並ぶ事は出来ても、自身の背中を彼女に見せる事は出来ない。


    「ふっは! あっはっはー!」


     ここまでして尚、勝たせてくれない好敵手を横にし、ミスディレクションは思わず頬を緩めて笑うしかなかった。

     となれば後は運否天賦。人事を尽くして天命を待つ。

     そんな思いのまま、彼女は閃光の末脚でゴール板の前を愛すべき好敵手と横並びで通り過ぎるのだった。

  • 161二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 00:38:41

    奇策を二重三重に仕掛けても尚、明確に抜かす事の出来ないダブルマシュマロ
    絶好調且つ身構えているにも関わらず、死神の鎌を持って狩りに来るミスディレクション

    果たして今日の勝利の女神は、一体どちらにキスをするのか?

    ほなまた

  • 162二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 00:46:11

    奮い立てと吼え、死力が交錯する

  • 163二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 08:05:37

    これは写真判定かな?

    判定に使った写真も胸の躍動感すごそう

  • 164二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 14:32:15

    新聞や雑誌で心持ち大きめに写真が掲載されたりしてそう

  • 165二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 23:07:14

    保守

  • 166二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 23:42:05

    >>160



    ◇◇◇



     二人並んでゴール板の前を横切った時、ダブルマシュマロは不思議と負けた気がしなかった。

     それは、デビューを果たしてからこれまで全戦全勝で負けた時のイメージがなかった事もあったし、ミスディレクションに奇策を打たれても明確に抜かされる事がなかったからだった。

     以前の直接対決時は半バ身差の勝利。それ以降の直接対決は今日のレースまでなかった為、まさかここまで詰めて来るとは思っていなかったのも確かだった。

     だがそれでも、自分でも分かる程の絶好調のダブルマシュマロには、自身の勝利を信じて疑わない。否、疑えなかった。


    「はあっ! はあっ!」


     ゴールした後も勢いそのままに走り続け、気が付くと隣にミスディレクションはいなかった。

     先程まで死力を尽くして競い合っていた相手が、ゴールした後とはいえ姿が見えなくなっていた事もまた、ダブルマシュマロにとっては優位に立てたという思うを増長させる。

     観客の大歓声が実況の声を掻き消し、どちらが勝ったかはまだ分からない。しかし、重賞レースとはいえGⅢレースでレース場全体をここまで揺さぶる程の大歓声ともなれば、勝者が何かしらの記録を樹立した時ぐらいだろうと彼女は内心ほくそ笑みながらクーリングダウンを済ませる。


    (ディレさんには悪いスけど、芝ダート両方の重賞制覇ともなれば、これだけの歓声も仕方がないっスよね~)


     その後、一人だけ遠くまで走り抜けた事もあり、周囲に誰もいない状態でダブルマシュマロはこみ上げる笑みを抑えながら電光掲示板へと顔を向ける。


    「……ぇ」


     そして、その掲示板の1着と2着の表示が未だされない事に目が見開く感じがした。

     掲示板入りの5着から3着までは既に表示されている。3着に入った3番は他でもないダブルマシュマロが競り勝ったメガロウベラ。悪癖によって諦めたかと思いきや、1着と2着からは1バ身差で食らい付いている。

     そこは流石のシニア級ウマ娘というところだったが、今のダブルマシュマロにとっては同じ悪癖持ちのウマ娘の掲示板入りを称える余裕はなかった。


    「あ、れ……どう、して」

  • 167二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 23:43:27

    >>166


     ゴール手前で競った時も、ゴール板を駆け抜けた時も、クーリングダウンが終わった時も、ダブルマシュマロに負けの二文字のイメージは一切なかった。

     しかし、基本的にはゴール直後にすぐ表示される着順が表示されず、順位が確定していない事実を前に、彼女は首筋から背筋にかけて嫌な悪寒が走ったのを覚えた。

     こみ上げてきた笑みは、頬を引っ張られたように痙攣したものへと変わり、クーリングダウンが終わった後だというのに、心臓が再び早鐘を鳴らす。

     ミスディレクションの方を見る余裕もない。ダブルマシュマロはただ、祈るような気持ちで未だに着順が表示されていない電光掲示板を見上げ続ける。

     そして、観客席からもざわついた声が彼女の耳に入る中、レース場内スピーカーのスイッチが入った音が響いた。


    『お知らせします。中京第7レース。只今のレースは写真判定の結果……1着、13番ミスディレクション。2着、8番ダブルマシュマロ。以上の結果となります』

    「……ぁ」


     瞬間、レース場全体が騒がしく盛り上がる中、ダブルマシュマロはその結果を知らせる案内の言葉を脳内で何度も繰り返した。

     だが、何度繰り返したところで結果は変わらず、それを理解した瞬間に全身が震え、視界がぼやけた。

     彼女が最後に視認出来た電光掲示板には、自身とミスディレクションの着差が「クビ」という二文字が自己主張をするかのように輝いていた。

  • 168二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 23:44:30

    >>167




    ※※


    ※※※



     飛ぶ鳥を落とす勢いで駆け抜け、自らも大空を飛ぶ鳥と化したウマ娘の少女は、好敵手であるもう一人のウマ娘の少女の奇策と言う名の鎌によって刈り取られた。

     東海レースの後、ダブルマシュマロは次のレース、GⅠレース、スプリンターズステークスで大敗。

     1着アストンマーチャンに対して、11着という自己最低順位を更新してしまい、以降はシニア級の夏まで完全に低迷してしまう事となる。

     それに反して、ミスディレクションは東海レースの勝利の勢いのままに、東海レースから合わせて3つのダートスプリント戦重賞レースを連戦連勝快勝する。

     東海レース直後はダートスプリント戦を盛り上げるクラシック級のエースが二人、友達で好敵手という見出しで売り出していたメディアも、ダブルマシュマロの低迷によって路線を変更。

     脚質相性不利を物ともしない、豪快な走りを見せるミスディレクションを大々的に取り上げ、且つ彼女の実家が実家なだけに、「世界的企業の令嬢の脚は不可能を可能にする」といったプロパガンダまで喧伝し始める始末と相成るのであった。

     そして実に勝手な話ながら、芝ダートの両重賞制覇を狙って芝の重賞レースへと出走したミスディレクションが敗北した事によって、喧伝していたメディアたちは彼女を取り上げる事を止めるのであった。

  • 169二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 23:47:59

    溺れゆく者であったダブルマシュマロ、それまで増長し、肥大した自己肯定感と好敵手であるミスディレクションによって水底まで溺れてしまう事に…
    そして、その溺れゆく者たちは後二人

    カベルネソラリスとチャンドラポメロは果たして如何なる溺れ方をしてしまうのか


    ほなまた(小声)

  • 170二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 23:49:06

    東海レース ×
    東海ステークス ○


    真に溺れていたのは私だったってオチですなガハハ!


    がはは…

  • 171二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 08:41:58

    メディアは都合のいい時だけ寄ってすぐ去っていく…

  • 172二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 08:55:47

    一応、マーシュは勝負服に袖を通せたのか
    それだけで上澄みの部類ではあるけど、今まで自分を持ち上げてたメディア=大人達が手のひら返しするのを突きつけられる絶望感は、子供にはきつ過ぎるだろ
    心折れた子がトレセン学園から転校していくのも分かる

  • 173二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 17:28:10

    マーシュの勝負服はどんなんだろう

  • 174二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 18:00:25

    >>173

    好きなだけ好きにするスレだから「俺はこの服が良いと思うぜー!!」で先に出したのに待ったが掛からなければ早いもの勝ちだぜー!!

  • 175二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 00:08:22

    >>168




    ※※


    ※※※



     東海ステークスが終わり、夏が終わり、合宿が終わる。

     その余韻に浸る間もなく、9月に入れば秋のレース戦線が始まる。

     9月初週末。早朝、チャンドラポメロは中山レース場の関係者専用宿泊施設の一室で起床した。備え付けのカーテンを開けると、窓の外からは夏が終わった9月とは思えない程に眩しい朝日が彼女を照らす。

     天候は晴れ。レース場のバ場状態は確認するまでもなく、良バ場の発表となるだろう。

     チャンドラポメロの宿泊目的はその日のレース、秋華賞トライアルレースの一つ、GⅡレースである紫苑ステークスに出走する為である。

     出走ウマ娘によるレース前日、場合によっては一週間前にレース場入りするのは珍しくない。

     開催場所が東京から離れていれば離れている程、当日入りするのは時間的余裕がなくなる上に、何かしらのトラブルが発生した場合は最悪出走中止になってしまうからだ。

     しかし、今回の開催場所は中山レース場。場所で言えば千葉県船橋市と、東京にあるトレセン学園からすると東京レース場の次に近い。

     その為、東京レース場と中山レース場へとレース参加するウマ娘のほとんどが当日入りを選ぶ。けれども今回、チャンドラポメロは敢えて前日に中山レース場へと赴き、同じく前日に付き添ったトレーナーと共に実際のコースでレース前の最終確認と調整を行った。

     彼女にとって、この紫苑ステークスはそれ程までに大事なレースであった。


    (……よし)


     寮の普段使っているベッドや枕が変わる事、そもそも普段とは違う場所での寝泊まりという事。その為に何かしらの悪影響が起こり得る事を覚悟の上での前日入りだったチャンドラポメロは、特にこれといって調子が普段と変わらない事に安堵しながら着替えを始める。

     とはいえ、それらの懸念点はそれ以前のレースの際に前日入りしても影響がなかった事から、彼女はそこまで気にしていなかった。

     それでなくとも、用意された場所は関係者専用の宿泊施設。レースの関係者、特にそのレースに走る者の為の部屋ともなれば、当日のレースに悪影響を及ぼしてはならない。現トレセン学園理事長のURAへの働き掛けも手伝って、近年では元々質の高かった宿泊施設のサービスが更により良いものへと変わっていた。

  • 176二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 00:17:30

    >>175


     故に、もしもレースへの悪影響が出るとしてもここではないとチャンドラポメロは理解していた。

     寧ろ彼女は、宿泊施設でのサービスや寝泊まりよりも、敢えて前日入りを決めた事による精神的な面での悪影響を気にしていた。

     レース前だからこそ、実際のレース場で感覚を確かめたいというウマ娘がいる。レース前だからこそ、普段通りに過ごしたいというウマ娘もいる。そのどちらの気持ちも分かる中、チャンドラポメロは近場の開催であっても今回は敢えて前者を選んだ。

     場合によっては、前日入りした事でレースを強く意識し、その緊張で疲れ果て、レース本番で力を出せない可能性もあった。

     しかし、今のチャンドラポメロにその緊張はなかった。

     以前であれば、レース開始寸前まで断続的な緊張が続いていたが、今はそれがない。

     彼女はそれを自身の成長として静かに受け入れ、密かに喜んでいた。


    (朝食は、どうしようかな?)


     レース開始は本日の15時45分。

     対して現時刻はまだ6時を過ぎたところ。関係者施設である為、当然食堂もあるのだが、流石に早朝からはやっていない。

     寝起きの柔軟体操や今日のライブの歌やダンスの再確認をしても良かったが、チャンドラポメロはお腹が空いていた。

     近くのコンビニまで行くのも一つの手であったが、流石に何かしらのトラブルに巻き込まれても困ってしまう。

     少し悩んだ末に、彼女は備え付けの机の引き出しからメニュー表を取り出した後、内線電話のウマ娘用の受話器を取る。


    『……お待たせしました。こちら、フロントです』

    「えっと、その、本日宿泊中の107号室の、チャンドラポメロと言います。あの、朝食のルームサービスを、お願いしたくて」

    『かしこまりました。引き出しの中にありますメニュー表はお手元にございますでしょうか? AコースとBコースがございますが、如何致しましょう?』

    「……どちらもお願いします」

    『AコースとBコースの両方でございますね? 承りました。ご用意の為、お時間10分程頂戴します。今しばらくお待ち下さいませ』

    「よろしくお願いします」

  • 177二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 00:18:32

    >>176


     電話先の若いフロントマン相手には分からないと思いつつも、チャンドラポメロは二度頭を下げてから受話器を置く。

     これも以前の彼女であれば、食事をしたくとも恥ずかしさが上回って注文出来ず、そのまま空腹を遊ばせていた。

     しかしながら、こうして思うままに、無意味に羞恥せずに行動出来るようになったのも、やはり成長したとチャンドラポメロは自負するのだった。

     レース開始まではまだ時間がある。

     前日入りしたからこそ、否応なしにレースを意識せざるを得なくなってしまっているが、だからこそ彼女は普段通りの行動をしようと思った。


    (楽しみだな……Aコースの特製ヨーグルトとBコースの季節の果物)


     自身が食いしん坊である事を自覚し、どちらも食べたかったからこその選択。

     昔の彼女であれば、ふてぶてしいと思ったかも知れない。

     けれども昔は昔、今は今。

     仮に過去の自分に図々しいと思われたとて、それを恥ずかしがらずに認められる自分がいる。

     それだけの覚悟を持って、チャンドラポメロは今回のトライアルとその次の本番に挑むと決めた。


    (……とはいえ、食べ終わったらちょっと散歩、しよう)


     そしてそれはそれとして、レース前に食べ過ぎて動けないという事を避ける為、彼女は自身が食いしん坊である事は少々恥じるのであった。

  • 178二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 00:20:18

    本編2万文字を超えて、ようやく我らが主人公、ポメちゃんの登場
    ジュニア級を終え、夏を終え、色々と覚悟と成長をした彼女のトライアルが始まる


    ほなまたー

  • 179二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 01:43:49

    涙の数だけ強くなろうよ

  • 180二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 08:52:18

    ついに来たか
    ローズSはダスカが勝つから紫苑Sのほうね

  • 181二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 17:37:20

    フルーツパーラーのDKPI店員さん

    トレセン近傍の店舗とあって、悲喜こもごもを抱えたウマ娘を幾人となく見てきている
    敗北に打ちひしがれるウマ娘に対し彼女が出来る事と言えば、注文の品を少しだけ大盛りにしてあげる事と、周囲の席に他の客が入らないように案内する事くらいである

  • 182二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 18:23:03

    うーん…意外とイメージ通りに抽出してくれんのう…

    ダブルマシュマロ勝負服案?
    ダブルマシュマロで検索すると「ダブルチョコ」や「ストロベリー」が出てくるので、上半身はストロベリーペースト的な淡いピンク、下半身はチョコレートイメージ
    マシュマロにチョコやストロベリーペーストを付けるような、そんな勝負服

    床にチョコレートが散乱しとるぅ!(チョコレートの単語を入れただけで大体ぶちまけられるアレ)
    そしてポーズもなんか変だけど、これが一番良さげな感じだったぁ!

  • 183二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 22:26:27

    ※明日は早出の為、SS更新はお休みします

    急に寒くなって来たので皆様も体調にはお気を付けてほなまた

  • 184二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 07:28:26

    朝保守
    一気に冷えたから調子悪いわぁDKPIズに看病されたい

  • 185二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 08:09:05

    ポメちゃんはじんわりと温かそう
    逆にマーシュやモナ辺りは熱いまである

  • 186◆8YBpUCUZW625/10/24(金) 09:01:46

    ポメの勝負服イメージ
    モチーフは黒子です

  • 187二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 10:32:53

    ダブルマシュマロ勝負服案リトライ
    …したはいいものの、これ路地裏でカツアゲしてくるタイプのギャルじゃないですかやだー!

  • 188二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 12:04:47

    >>186

    >>187

    カッコイイ!

  • 189二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 19:47:15

    金平糖をイメージした星形髪飾り
    自身の目の色と同じ胸元のルビーブローチ
    いちごスムージーなボレロカーディガン
    チョコレート色のスカート

    そのチョコレートな色指定を「チョコレート」から「ブラウン」にしてようやくそれらしくなったぜ!

  • 190二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 23:29:42

    >>177



    ※※※



     チャンドラポメロが朝食を終え、宿泊施設を含めた周辺を散策し、施設にあるダンスフロア室へと入室する頃には時刻は9時になろうとしていた。

     レースの開始は10時からで、その1時間前ともなれば周囲も慌ただしくなっていく。

     レースのない平日なら軽く走る事も出来たコース上も、今やゲートの搬入車や整備の人々の行き来でレース関係者であっても立ち入りは難しくなっている。

     その日のライブ曲や、それぞれの順位が踊る位置や振り付けを確認しながら部屋で時間を潰していると、時間はあっという間に過ぎる。

     トレセン学園の制服姿のまま、1着になった際のダンスを一通りした後で彼女が時計を見ると、時刻は10時半を過ぎていた。


    「ねえ、あの子……」

    「え? あ、もしかしてチャンドラポメロちゃん?」

    「やっぱり? 何でこの時間にここに?」

    「さあ? ライブの最終確認じゃない?」


     ダンスに集中していた為、気付けば周囲には他のウマ娘たちも振り付け確認やダンス練習に来ており、自身の噂する声が聞こえたところでチャンドラポメロは動きを止める。


    「あの子、今どのクラスだっけ?」

    「えー? そんなの知る訳ないじゃん。うちらまだ1勝クラスだしぃー?」

    「んー、ならセプテンバーステークス辺りとか? でも、あの子の適性に短距離ってあったっけかなー?」

    「だからさー、気にしたってしょうがないでしょ。うちらが分からないって事は、どーせオープンクラス以上重賞クラス未満の子でしょー? 重賞クラスなら嫌でも顔と名前を覚えるけどさー。オープンクラスでも雲の上、雲の上ー」

    「そう、だったかなー? 私の記憶だと、あの子まだ──」

    「あー、もう。あの子、もう終わるみたいだし、さっさとうちらも最後の練習しよ!」

    「──ああん。もー、引っ張らないでよー」


     色々と成長し、付いた自信によって多少の恥ずかしがり屋な部分は改善されたチャンドラポメロだったが、流石に聞こえる声で噂されてしまうと顔が熱くなる。

     会話の内容から、この後のレースに出走する子たちの最終確認の邪魔をしてはいけないと、彼女は足早に立ち去ろうとする。

  • 191二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 23:30:55

    >>190


    「私たち、あの子の邪魔、しちゃったかな?」

    「うちらなんて気にしないでしょ。勝ち進み続ける子がわざわざさ」

    「あははー。それもそっかー」

    「そうそう。うちらは気楽にやればいいのよ。」

    「……」

    「どーせ。憧れたって、届きはしないんだからさ」

    「っ!?」


     そして、ダンスフロア室から廊下へと出る際に聞こえた彼女たちの言葉が、チャンドラポメロの動きを一瞬止める。

     手が震えるのを堪え、ゆっくりと後ろ手で扉を閉め、彼女は周囲に誰もいない事を確認した後にゆっくり深呼吸をする。


    (大丈夫……あれは、きっと)


     それから落ち着きを取り戻してから、言葉の意味を整理した。

     話を聞いてしまった限り、姿も顔も知らない彼女たちはクラシック級の1勝クラス。メイクデビューまたは未勝利戦を勝利し、今日まで走り続けてきた同期の子たち。

     ならば、そんな彼女たちからすれば、実はまだ2勝クラスとはいえオープンレースを複数走っている自分は上澄みに見えたのだと分かる。

     そして、その上澄みに対してそうなれるよう憧れを抱いても今の自分たちでは無駄だと自虐したというのも分かる。


    「……」


     だがそれは、ティアラ路線を走り続けるダイワスカーレットに対して、憧れを抱いて走り続けるチャンドラポメロにも刺さる言葉であった。

  • 192二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 23:34:59

    朝からレース場に来たという事は、出走レース以外のレースを観る機会があるという事

    1勝、2勝、3勝クラスのレースなら、頑張って走る同期たちを応援できるでしょう
    ジュニア級のメイクデビューや未勝利戦なら、かつて通って来た道だと声援を送れるでしょう
    では、クラシック級の未勝利戦ともなれば…?

    ……おやぁ? そういえば、作中の時期は9月でしたね?(暗黒微笑)
    ということは、ほなまたぁ…(ねっとり)

  • 193二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 00:27:20

    外野からの描写がえげつねぇ(誉め言葉)

  • 194二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 08:55:32

    ああ、タイムリミットか…

  • 195二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 09:24:12

    >>193 >>194

    すまない…すまない…

    オリウマ娘スレ的にはポンポンレースして苦戦しつつも勝って、且つトレウマやウマウマしていた方が面白いやも知れぬ…

    しかし、オリウマの中の更にモブともなれば…こういう現実があるというのを知るのもまた一つの物語なんじゃ…


    中央に行けただけでも、その中で勝てるだけでも、ポメちゃんらは上澄み側

  • 196二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 09:58:48

    上澄みって言い方自分からするもんだろうか?

  • 197二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 10:04:27
  • 198二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 10:26:48

    >>196

    言われてみれば…

    そして仮にそういう自認がある人もいる場合があったとしても、ポメちゃんはチャレンジャー側だから間違っても言わない思わないですな…


    まとめる際に修正しまぁっす!!

  • 199二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 10:43:02

    >>197

    スレ立ておつですわー!

  • 200二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 10:47:34

    DKPIに幸あれ

オススメ

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