- 1二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:03:14
- 2二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:04:16
物陰に隠れて狙っていた兎が逃げてゆく。私はどんな因果があってこんな目立つ毛色で生まれてきたのかと思うことがある。白い毛色が馴染むのは雪の上だけではないか。
とある日にまた食糧を探していると、見知らぬ場所に入ったらしいことに気づいた。金網に囲まれた畑で、何人もの人間が黙々と作業をしている。向こうはこちらに気づいていないが、私の鼻には風が匂いを届けた。肥沃な土の香り、人間特有のこざっぱりとした香りに混ざり、重く苦い油の香りがした。この黒い油を嗅ぐといつも何かを思い出しそうになる。
『(なんだろうか、ここまで出かかっているのだが)』
しかし、此奴らはここで何をしている?誰も外に出たがる気配がない。まるで養鶏場で餌を貰って満足している雌鶏ではないか。
私は興味に駆られて、伏せたままごくゆっくりと彼らに近づいていった。
人間たちは帽子を目深に被っており、視界が狭まっているようだ。現に金網の近くまで接近したが、私の存在に気づいていない。
遠くに見える一人が帽子を外し、汗を拭った。その男の顔を見た瞬間、私の脳内に強烈な痛みと閃光が走った。まるで、壊れた機械に再び命を吹き込むように。
コウ・ウラキ少尉だ。私はあの男を知っている!
情報が濁流の如く流れ込んでくる。私が追い求めていたものはこれだったのだ!好敵手のウラキ少尉を前にして私は吠えたてた。こんなにも大声で吠えたのは初めてだった。金網に前脚(手というべきか)を掛けると、金属同士が擦れ合い音を立てる。
『ウラキ少尉、私だ、アナベル・ガトーだ』
もはや私の意識は犬ではなくなっていた。しかし、犬の声帯では吠え声しか発することができない。
他の人間が何事かと顔を上げてこちらを見てくるが、私はただ一点のみを睨み据えて吠え続けた。しかし、それも虚しく、ウラキ少尉は私を見ることはなく去ってゆく。 - 3二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:05:39
彼を見送りながら吠えるのも止めると、私は急に力が抜けてその場に座り込んだ。犬として生きてきた数年が一気にフラッシュバックする。全てがどうでも良いことであったような気がした。
私はあの時宇宙で死んだのだ。人間としての命は終わり、今度は犬として生を受けたのだろう。私の未練が、再びこの世に舞い戻らせたのかもしれない。確かにウラキ少尉と決着をつけることは叶わなかったが、我ながら女々しいことだ。 - 4二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:16:40
ガトーが犬に…
- 5二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:18:01
「転生したら犬だった件(著:アナベル・ガトー)」
- 6二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:18:53
白(白銀?)は野生じゃ目立つだろうなぁ
- 7二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:23:36
何が始まるんです?
- 8二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:30:15
麦が大粒の実をつける季節になった。
「わ」
道で待ち構えていた私を目にしてウラキ少尉は驚きの声をあげた。そしてしゃがみ込むと、「またお前か、ワンコ」と苦笑した。
収容所の柵越しとはいえ、毎日通っていれば顔も覚えられるのは当然だ。この男は動物好きなのだろう、一度「お腹空いてるんだろ」と缶詰の肉を投げてよこしたこともあった。それにしても、年上の私を「ワンコ」とか「白いワンコロ」と呼ぶのはやめてほしいものだ。
記憶が戻ってからというもの、人間だった頃の知恵や経験も蘇った。今日、この男は収容所から釈放され、新しい住居に向かうことも知っている。
『私を連れて行け』
一応そう話してみるが、やはり人間に犬語は理解できないようで、彼はじっと私を見たあと「じゃあな」と手を振った。
しかし私が後ろをついて歩いているのに気づくと、困った様子で「一緒に来たいのか?」と訊いた。
私は『やっと理解したか』とため息をついたが、きっと彼には「クーン」としか聞き取れなかったことだろう。 - 9二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:31:30
アナベル犬、側から見たらめっちゃ懐きまくってる可愛い犬でしかないの草
- 10二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:31:50
ウラキの新居はアパートの一階だった。軍に斡旋された場所らしいが、よくもあれ程の腕前の兵をこんなところに住まわせようと思うものだ。やはり連邦は腐っている。確かに天井と打ちっぱなしのコンクリートの壁、家電一式があるだけ、私の前の巣よりは快適だろうが……。
少ない荷物を片付けた後、ウラキはボウルに新鮮な水を汲み、差し出した。
「今度、ちゃんとしたのを買ってくるから」
『飲めればなんでもいいのだが』一応、返事をする。ずっと黙っているよりは建設的だ。
彼は思い出したように「名前を決めないとな」などと言う。
「んー……アナベル……」
『は?』
突然ファーストネームを呼ばれ、少々面食らった。
「あ、でもオスかぁ」
ふざけているのか、この男は。私は男だがれっきとしたアナベルだ。それとも『アナベル・ガトー』は外れ値だと思っているのか。
「ああ、やっぱりガトーって呼ぼうかな」
妙に納得した様子で頷いている。
はたから見れば、戦死したライバルの名前を飼い犬につけている男になるが、貴様はそれでいいのか。確かに人間だった頃も今も、雰囲気はよく似ているが。
もしくは、この男なりに私から何かを感じ取っているのだろうか。私が認めた兵士だ、可能性はある。
『しかし……もし私の正体に気付いたなら君はひっくり返るだろうな』
「返事してくれてるのか、ガトー?」
君には犬の声帯が発する音しか聞こえないようだが。私は心の中だけでそう言った。 - 11二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:34:09
シャ産人?
- 12125/10/03(金) 19:34:40
そういうわけで犬になったガトーとウラキが一緒に暮らすスレです
- 13二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:35:27
まぁそんな気はしてた
マジで常に3スレ維持するじゃん - 14125/10/03(金) 19:35:42
- 15二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:37:25
ふざけているのか、この男は。私は男だがれっきとしたアナベルだ。それとも『アナベル・ガトー』は外れ値だと思っているのか
まぁ大分外れ値ですよね? - 16二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:39:04
こんな所でこんな文才投げ捨てる行為する人間がシャアの人以外にもいる…?とか思ってたら本人で安心しちゃったな
1人と1匹には平和に過ごしてほしいよ - 17二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:42:43
これ1人と一匹で暮らしていった後寿命差でまたガトーに置いてかれるとかはない…?
とりあえずペットになったなら一回病院行こうなガトー - 18二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:43:18
- 19125/10/03(金) 19:48:18
超懐かしいなコレ!
面白いよなこの漫画
一応ガトー犬はホワイトシェパードっぽいのをイメージしていた
スレ画を実写の犬の写真にしようかとも思ったが、こっち向いて笑ってるような画しかなくて断念した
シェパード君たち可愛いね…
- 20二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 19:54:45
ホワイトシェパード画像見てみたけどもののけ姫思い出すな
犬ガトーは人の記憶を持ってるけど犬の本能に抗えなかったりする時もあるのかななんか良い感じの棒を持ち帰ろうとしたりなでなでに負けたりしろ - 21二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 20:00:40
散歩に行こうとしたらテコでも動かなくて家の前で大苦戦するコウはいる
ガトー『その紐をつけるのは勝手にしろ!だが貴様には従わん!』 - 22二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 20:07:38
ウラキを心配して新居に会いに来たキース、ガトーって名前を犬につけてるのをみてウワッてなるし、たぶんめちゃくちゃ唸られる羽目になりそうでかわいそう
- 23二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 21:07:06
- 24二次元好きの匿名さん25/10/03(金) 21:30:58