Re:見つけましたよ、杏山カズサ 7

  • 11825/10/04(土) 01:13:06

    ここだけ15年前に行方不明になった杏山カズサを探し続けていたレイサがいる世界。
    なお、カズサには30分程度道に迷ってたぐらいの認識しかない。

  • 21825/10/04(土) 01:14:26
  • 31825/10/04(土) 01:15:47

    -登場人物-
    ■栗村アイリ SUGAR RUSH 30才
     バンド活動を提案した元凶。妖怪キーボード。初めてみんなとお酒を飲んだ日、アマレットにハマり一瓶明け、カウンターをゲロ塗れにした。改造ベースキーボード+シンセ+キーボードはダンスの感覚で弾いているがコピバン殺し構成のため人気の広がりにストップかけている原因。ファンが一番多くグッズはすぐ売り切れる。好きなことをしないなんて人生の浪費だよ。
    ■伊原木ヨシミ SUGAR RUSH 31才
     バンドの方向性を変えた元凶。アナログオカルトギター女。ナツにキレられてもデジタルには絶対しない。シューゲイザーにバカハマりしてからの傾向のため、初期曲は意外とフツー。ファンが頭を撫でてくるのが本当に嫌い。その度蹴散らしてたらファンが減った。グッズが最後まで売れ残る。子供であることをやめるってことは物事に興味を失うってことよ。
    ■柚鳥ナツ SUGAR RUSH 30才
     バンドをテロリストに変貌させた元凶。要塞ドラマー。でも全部使えてるわけじゃない。ぶっちゃけシンバルは10枚もいらないと思っている。”バンドマンは遊ぶもの”として、適当なファンとホテルに入るも何もわからず恥をかかせて罵られ何もせずに解散となり、挙げ句SNSで拡散されて『ファン食いのカス』と炎上し、一番アンチが多い。燃やされる用にグッズが良く売れる。私が成すべきプレイは音楽が導いてくれる。
    ■杏山カズサ SUGAR RUSH 16才
     ボーカル。15年消えていました。

  • 41825/10/04(土) 01:16:50

    -登場人物-
    ■宇沢レイサ S.C.H.A.L.Eトリニティ支部 31才 
     S.C.H.A.L.Eに就職直後、慣れない仕事と、相談できない自分と、もういない先輩と、怖いアケミと、ぜんぜん進展がないカズサ捜索に情緒ぐちゃぐちゃになり毎日部屋で泣いていたら、いつの間にか自宅がSUGAR RUSHの避難場所&暴動ライブ後の打ち上げ会場に使われるようになったのでおちおち泣いてもいられなくなった。『セーフハウスでやってくださいよ』と文句を言うと『ナツが”レイサん家の方が狭くて汚くて落ち着く”って言うから』と言われ、また泣かされる。
    ■エリナ S.C.H.A.L.Eトリニティ支部 23才
     トリニティ支部正規職員。レイサの子飼い。トリニティの支援を受けているが、あくまで独立自治区を宣言しているアリウス出身。神学を修めるためにトリニティのシスターフッドに部活動のみ参加。経典の解釈について誰彼構わず論戦を挑み、らちが明かなければ正式に武力決闘を申し込む辻斬り御免タイプ”だった”。一つ上のシスターフッドの元長と仲が良い。トリニティの怪談”エリナの亡霊”と神秘上で同一人物。

    ■和泉元エイミ S.C.H.A.L.Eミレニアム支部 31才
     ミレニアム校に捜索されているヒマリとリオがどこにいるか唯一知っている人。二人がいればいくらでもブレイクスルーが起きるだろうに、”学校には関わらない”の一言で雲隠れし、そのくせ生活に必要なインフラも食材も全部ミレニアムから盗んでいる二人に、ほとほと愛想を尽くしている。ちなみに一緒の空間にいるわけではなく、めっちゃ近いとこで別々に過ごしているのも知っている。バカじゃないの?

  • 51825/10/04(土) 01:18:01

    -登場人物-
    ■小鳥遊ホシノ S.C.H.A.L.Eアビドス支部 32才
     最近は激しい曲や、きらきらした恋愛ソングが全部同じに聞こえるようになってきた。ちょっと昔に流行った曲を聴くと胸が締め付けられる。これが年を取ることかぁ、と黄昏るも、年を取ることができなかった先輩のためにこの世界の”いろいろ”をちゃんと見て憶えていたい。でも無理はしてない。そういう生き方もいいよね、程度。
    ■十六夜ノノミ カイザーコーポレーション 32才
     砂祭りとアビドス-百鬼夜行間の鉄道事業で返り咲いたネフティスを弄してカイザーを買収させ、そのトップにあっさり座った。ホシノとシロコとアヤネが暗躍済み。親会社のネフティスとはバチバチにやり合っているが、上述の鉄道権利をしっかり握られているので強く出れない。内部は旧カイザーとはまるで違うものの事業は継続・拡大中。PMCだけは離反し自然消滅したため、スケバンに追いやられていたヘルメット団を正規雇用して一から組み直した。養子縁組している子がいる。
    ■砂狼シロコ S.C.H.A.L.Eアビドス支部 32才
     さすがに銀行強盗はしなくなった。自転車は続けている。シロコ*テラーと同じぐらいまで髪を伸ばしたら周りからそれとなく『そういう嫌がらせはダメだよ』と言われたけど、区別をしないで欲しいと言ったテラーの言う通り、区別されないためにシロコなりに考えたこと。アイツが”あっちの世界のシロコ”を辞めたのだから、自分もこっちの世界の”砂狼シロコ”を辞めてあげるという理屈。なんだかんだ仲はいい。

  • 61825/10/04(土) 01:19:05

    -登場人物-
    ■シロコ*テラー S.C.H.A.L.Eアビドス支部 33才
     髪の一件には気付いている。泣いてしまったほどうれしかったけど、正直そろそろ短くしたいと思ってる。”自分ってこんな雑だったっけ”と傷んでるシロコの髪を見るたびいつ言おうか悩んでいる。だから事故に見せかけて火をつけようと画策中。自分の世界の廃校対策委員会の命日にはシロコと一緒に砂漠にお花を供えに行く。
    ■黒見セリカ 柴関 31才
     柴関を引き継いだ直後は常連に「味が変わった」と言われ続け、メニューを食べまくり、記憶と実際を擦り合わせていたら2ヶ月で30キロ太った。脅迫的に一日10杯食べることも。過食症気味になってしまったある日、大将が一ヵ月も毎日食べに来て「俺より美味ぇじゃねえか」と常連たちを睨み続けたところ、文句を言う客はいなくなり暴食は落ち着いた。それはそれとして食べるのは好き。
    ■奥空アカネ 柴関 31才
     コンタクトにしたら砂が目に入って地獄を見たので、アビドスに居る限りメガネから逃れられない人生を悲嘆している。みんなに頼られると言えば聞こえがいいけど結局面倒を後輩に押し付けてるだけじゃんと、アビドス支部の中で一番酒量が多い。週末の閉店間際に柴関に行くと泣きながらセリカにクダ巻いてるアヤネが見られる。でも誰もアヤネレベルの仕事ができないから詰んでる。

  • 71825/10/04(土) 01:20:18

    -登場人物-
    ■先生 S.C.H.A.L.E連邦捜査部 40代中ごろ
     S.C.H.A.L.Eが支部化してから本部の”当番制”を廃止しようとしたが、連邦生徒会の方から辞める意味がないと言われ、続けている。ただ、各支部で手伝ってくれた子が内申と公休のために本部も手伝いたいと言ってくれてるだけ、というのはなんとなくわかっていて、ちょっと寂しい。アロナとプラナには今回の一件、すべて説明済み。
    ■狐坂ワカモ S.C.H.A.L.E連邦捜査部 34才
     結局3年留年した。卒業する条件にしたことは、先生から離れる=二度と会えなくなるものだと思い込んでいる。自分をずっとそばに置いてくれているのだからそばに居てもいいというコミュニケーション不全。仕事終わりには一緒に飲みに行くし、休日にも一緒に出掛けたりする。護衛ではなく。話すのはほぼ業務的なものになってしまうけど、その時間が大好き。その時のレシートをファイルにまとめて眺める時間も好き。
     
    ■栗浜アケミ キヴォトス乙女連合 34才
     乙女連合を立ち上げたと同時に、スケバンのための自治区を作ろうと、それまでぼんやりした想いだったものを形にし始めた。レイサに頼まれ、カズサ捜索のために組織したはずがいつのまにかそっちがメインにすり替わっていったことを、幼馴染の副総裁だけがわかっている。ちなみに組織は”目、耳、鼻、口”から成る『アタマ』と”右足、左足、右手、左手”の『ドウ』で構成されている。アケミは”脳”で副総裁は”脊髄”。
    ■タミコ キヴォトス乙女連合 16才
     裏切ったとしてもアケミのことを姐さんと呼び続けようと決めている。世話になったことは実際だし、SUGAR RUSHと関われたのも、自分にこういう選択が訪れる機会を与えてくれたのも、全部アケミのおかげだっていうことは理解している。それはそれとして、いまの傷だらけの体でみんなにちやほやされるのがちょっと嬉しい。主役になった気分。大人の会話の時に置いてかれてるのはちょっとむっとしている。

  • 81825/10/04(土) 01:21:19

    -登場人物-
    ■陸八魔アル 便利屋68 31才
     社長。酒が弱いのを必死に隠しているが、全同世代にはバレている。『ボロが出るからあんまり喋らないで』とカヨコに言われて以降、自分以外の誰かが場にいるときはあまり口を開かないようにしている。おかげで威圧感があると思われ、もろもろがうまくいくようになった。本人はまんざらでもない。内心ドヤってる。『ハルカちゃんにすら舌戦で劣るって言われてるんだよー』とムツキに笑われたときは、酔いつぶれていた。
    ■鬼方カヨコ 便利屋68 33才
     課長。アルが望むアウトローの現場に、アルの性格は絶望的にミスマッチだと判断したから”喋るな”と言った。だいたいの黒い部分はカヨコとムツキが片付けている。『影で支える便利屋68を陰で支える』二重構造が楽しい。STANCE RUSHの初にして唯一の限定配布CD-Rを買えなかったことが地味にコンプレックス。本人たちからもらうのは違うと必死に自分を説得するも、オークションサイトではプレ値がついてとんでもないことになっているので悲しい目をしている。出品者はSTANCE RUSHのメンバーだと言うことは知らない。
    ■浅黄ムツキ 便利屋68 32才
     室長。ハルカと共にゲヘナ退学組。音楽にはそんなに興味がない。けど、流行り曲はSNSをひたすら漁ってリサーチ済み。これに付いていけなくなったらいよいよ終わりだと思っている。若くいることが全てではないと理解しつつ、それでも抗うこともまた”きらきら”の一つだと思っている。ちなみに20代はエナドリとお酒をぶち込みながら必死に仕事をしていた。それもいい思い出。クラウドストレージは最大で契約している。写真や動画がたくさんあるから。
    ■伊草ハルカ 便利屋68 31才
     平社員。ムツキと共にゲヘナ退学組。夢中を歩み続ける現実が自分の人生だと、20の誕生日に飲み下してからちょっと自信を持てた。毎年貰っている誕生日プレゼントの包装はレジンで固めて暗所で保存している。雑草趣味はもうないけど、その代わり誰かをお世話したい欲がものすごい。アルに貰った給料でアルたちに料理を振る舞うのが趣味。給料はすべて便利屋メンバーへの奉仕に消える。でもそれ以上のお返しが返ってきていることに微妙に気づいていない。

  • 91825/10/04(土) 01:22:49

    -登場人物-
    ■ミツル STANCE RUSH 24才
     SUGAR RUSHのコピバン。オリジナルもある。ベース。音楽に興味のない優等生だったけれど、中学の頃にシュガラのゲリラライブに遭い、清楚な長い髪を振り乱し、汗を飛ばして叫ぶアイリに目を奪われ。そして生まれて初めて”音を浴びる”という経験をしてからずっぽり。その日のうちにディグり、”SUGAR RUSHの存在意義”を知り。トリニティにまで行って資料を漁って、”初代SUGAR RUSH”に行きつき、アイリのわけわからん楽器構成の意味を理解して、彼女が目指すベーシストを目指すことに決めた。いつか代わりにベースやらせてくれないかな、なんて思いながら。受験失敗して望みの高校に入れなかったので、バンド一本に突っ走ってるうちに停学→退学。
    ■ツキカ STANCE RUSH 24才
     SUGAR RUSHのコピバン。オリジナルもある。ギター。弾き語り界隈勢。絶望ジャイアン。自分の配信が晒されていることに気付いてビビって音楽ができなくなっていたところ、路上でベースをストロークして歌うミツルを見た。指さされ、笑われながらも毅然と『私は今、音楽しているんです』と言い放ったミツルに、野次をぶちのめし、その場でバンド結成を持ちかける。SUGAR RUSHはミツル経由でファンになっている。ミツルと同じ時期に、いっしょに退学。
    ■コウ STANCE RUSH 23才
     SUGAR RUSHのコピバン。オリジナルもある。ドラム。ナツのカルトファン。ライブで毎回『抱いて捨てて』というボードを持っているのでナツは認知しているし、炎上を思い出して胃が痛くなるので辞めて欲しいと思われている。いわゆる”どもり”で小さい頃から虐められていたが、雑誌で見たナツのわけわからん根拠のない自信に憧れ、河川敷でドラム……ではなくナツの真似事をしていたところ、練習に来たミツルとツキカに見つかり、人生で初めて”友だち”ができる。それもこれもナツのおかげ。『ヴァンデ』はレア曲として好き。実は歌わせたら一番うまい。ミツルと同じ時期に、いっしょに退学。

  • 101825/10/04(土) 01:24:14










    (区切り用)
    (キャラ紹介コピペしたらアヤネが柴関のままだった草)

  • 111825/10/04(土) 01:46:20

    >>(https://bbs.animanch.com/board/5585961/?res=99)


     濃いバニラ香の、まさに紫煙の副流煙を嗅ぎながら。私は髪をかき上げた。


    「いいえ。――必要なのでしょう。あの子たちの”反抗”には」


     わたくしには。もはやどこからが先生の意思で、どこまでが先生の意思なのか計りかねる。先生は。あの人間は。あの”外の”人間が何をどうしたいのか。


     私はあの夜、本気だった。本気で、戦争の火ぶたが切って落とされるものだと思っていた。D.Uには喧嘩部隊を待機させていたし、なによりわたくしがD.Uに潜伏している以上、多くの幹部連中もこの狭いD.U中に散って潜らせている。少しでも。少しでもだ。少しでも懐に手を入れるような仕草をすれば、すぐにでもあのビルを襲撃させる準備は整っていた。


     でも、しなかった。やらなかった。”できなかった”ではない。やらなかったんだ。


    「反抗ねぇ……」


     ぶわっと。部屋に肺を経由した煙がまあるく拡がっていく。匂いも。


    「お前の夢は叶う。わたしらの夢が叶う。――なあ。お前は一体なにが気に食わねえんだ?」


     A.R.O.N.Aは言った。先生の持つ”シッテムの箱”のOSだと言う彼女は、あっさりとわたくしたちの夢をかなえる可能性を提示してきた。先生も。あっさりと道を示し、丁寧にラッピングされたプレゼントを用意してきた。あまつさえ『バックドアを仕掛けたので、以降、この端末は変更しないでください。特定作業は手間ですが難しくはありません』と。あの白髪のアバターはすました顔で言った。


     ……ああ。すべて、手のひらの上だった。わたくしがこうして隠れる意味など。もはやない。


     ああ! ああ!!


     力の限りテーブルを叩きつける。べきべきと。木材が持つ弾性で拳をわずかに跳ね上げ、しかし自身は衝撃に耐えられず。針山のような断面をわたくしに向けてテーブルとしての機能を失った。上に載せていた酒も。アイスペールも。撃ち抜かれたスマホも。書類も。銃器も。すべて床に落ちる。


    「ジャリみてえなことしてんじゃねえよ」


     ぶわっと。隣でまあるく煙が吐き出される。

  • 121825/10/04(土) 01:56:21

     扉前に立たせていた護衛に「気にすんなよ! アケミが寝返り打っただけだ!」と怒鳴った副総裁はそのまま。零れた酒で煙草を消して立ち上がった。

    「どちらにせよこれで仕舞いだ。S.C.H.A.L.Eが連邦生徒会に掛け合っていた以上、酒の販売の合法化はもう決定的。日陰モンたちの仕事は陽に照らされる。寝耳に水だぜ。来春にゃ施行とはな」

    「……」

    「ったく”耳”のヤロウどもめ」副総裁は舌打ちをした。これもだ。これも手のひらの上。わたくしたちの情報を司る部位すらこの体たらく。先生の発言を聞いてしどろもどろになった彼女はきっと。わたくしのヤキ入れを恐れたのだろう。

     そういう、組織になってしまったと。いうことだ。

    「いいことだよ。いいことだろ? 仕事にあぶれるヤツも最小限。夜を駆けずりまわっていた奴らも、これからは大手を振ってお天道様の下を歩ける。私らも矯正局にぶち込まれずに済むってよ。いいことだらけじゃねえか。――だからもう私にゃわからねえ。お前がそうやって駄々捏ねる理由が」

    「駄々……」

     いいことだ。とてもいいことだ。そんなことは解っている。退学者に対する保護法が施行されたときもそう。いいことだというのは解っていた。解っていたとも。

     ”でも”。”けれど”。

     解っているとも……。でも。けれど。

     こんなちっぽけでみずぼらしいワガママなんて。あの子たちの輝きには敵わないなんて。そんなこと、解っているとも。

     部屋を出る前。副総裁は振り返らずに。

     吐き捨てるように言った。

    「仕舞いにしようぜ。”みんな”のために」

     かちゃ。ぱたん。

  • 131825/10/04(土) 02:21:03

    「――……」

     ぎぃん、と。鉄筋コンクリートの部屋に振動が飛び回る。伸ばした右腕を叩き落とした音。自分の行為に愕然とする。去っていく友の背中に手を伸ばすだなんて。そんな少女染みた行為をするなんて。

     ため息を一つ。おおきく、吐く。

     ああ。解っているとも。お仕舞いだ。わたくしはこの条件を飲まざるを得ない。それほどの見返りをS.C.H.A.L.Eは用意してくれた。勝ちだ。わたくしがこれまで積み上げてきたものは。盤面上では勝ちだ。判定勝ち。レフェリーは私の腕を掴み、歓声を浴びるのは、わたくしだ。

     わたくし、なのに。

     髪を掻きむしる。腹立たしい。悔しい。悔しい!! この鍛え上げた体は所詮見せ筋。なんの役にも立たなかった。わたくしは闘わずして勝ってしまった。結局。スケバンは”保護”されてしまう。わたくしはもはや自分の足で舞台に立っていない。用意された喝采を浴びるだけの人形。わたくしの役割はだれでも良い。わたくしでなくとも。それこそ、そこらの犬だって。

     ――……。

     わたくしは、挑戦したかった。

     闘いたかった。手に入れたかった。与えられるのではなく。慈悲を受けるのではなく。わたくしは、自分の手で勝ち取りたかった。

     なのに……!

     スケバンは”保護”される。犬や猫のように。陳腐化した文化のごとく。ほかでもない。わたくしが人生を賭して”反抗してきた”と錯覚していた、S.C.H.A.L.Eによって。先生によって。”キヴォトス”によって。

     羨ましい。妬ましい。あの子たちが。

     未だ反抗し続けてる、あの子たちが。

     ブラインドから漏れる陽が。埃一つ舞っていない絢爛なガラクタを。

     割れた瓶を美しく照らしている。

  • 141825/10/04(土) 11:54:45







    (保ぁ)

  • 15二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 18:09:48

    そろそろ保す

  • 16二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 02:12:39

    >>13

    更新乙

  • 171825/10/05(日) 04:22:00



    「零れてるよカズサちゃん」

    「……あ?」

     股が冷たい。でも私の脳は現象に対して対処するのを忘れている。巡行ミサイル級のカミングアウトに、麦茶は、だばだば私の股に。浴衣の薄い生地を通り越し、尻と畳を濡らしていく。

     押し入れに積み上げられた布団に顔を突っ込んで叫んでいる宇沢の尻。何言ってるかわかんないけど、とりあえずヨシミに対してブチ切れてるのは理解できる。
     
    「うざ……え? ごめん、ちょっと待って。いや待たないで。マジ? は? マジで?」

     布団の中のくもぐった罵倒を聞き取ったヨシミは、宇沢の揺れる尻をぺしんと引っ叩き、言った。

    「全員知ってるのにカズサだけ仲間外れはダメでしょ。というわけで、このヘタレども、この期に及んでなんの進展も無いからいい加減にしろって話でさ」

    「えっ……待って待って。いつから? マジ? は? え? ごめん、ちょっと頭から水ぶっかけてくんな――冷たッ! ほんとに掛けんなバカ!」

    「あんたがかけろって言ったんじゃない!」

     顔面から滴る麦茶。もう浴衣は上も下もびっちゃびちゃ。

     ヨシミは空になったコップをちゃぶ台の上に置いてため息を吐く。

    「いつからかは知らないの私も。それでもまあ、ここ数年は見てりゃわかるレベルだったし、そりゃ本人も気付くわよ」

     冷蔵庫から拝借した糠漬けをぽりぽりとかじり、緑茶をすすったアイリも言う。「ナツちゃんが炎上したときには既にだったと思う。あの時のレイサちゃんの怒り方、私たちと違ったもん」

     ハルカさんと一緒に、バンドTのデザインを街場のTシャツ屋に持って行ったナツはこの場に居ない。さすがにドラマーなしで練習はできないんだから、なんでわざわざナツをハルカさんと一緒に行かせたんだろうって思っていたけど……。こういうことか。

  • 181825/10/05(日) 04:31:19

    「なに炎上って」私が聞くと、かいつまんで話された衝撃の事実。

     ――なんだよバカじゃん未成年淫行未遂ってダッサいな。いやいや。それどころじゃない。

     それどころじゃない!!

    「マジで……?」

     ずず。

     アイリがお茶をすすって立ち上がり「もー。今更だってレイサちゃん」と言って。腰を掴んで一気に宇沢を引き抜いた。もはや痛みなんか忘れて顔を手で覆った宇沢だけど、乱れた髪から覗く耳の色は真っ赤で。

     あーあー。確定じゃん。絶対そうじゃん。ほんとじゃん。

     引き抜かれてもなお。ギャーギャーとマンドラゴラみたいに騒ぎ散らかす宇沢が、私に叫ぶ。

    「お願いします!! ヨシミさんを撃って私も撃ってください! 死にます! 私死にます!! そこのデリカシー皆無の大馬鹿女を道連れにしますぅ!!」

    「えー……。ていうかマジで?」

    「死ぬなら一発ヤってからくたばれこの意気地なし!」

    「うわぁああああ!! このひともうやだぁ!!」

     ……うわぁ。

     ちゃぶ台に肘をついて寄りかかって。ごろごろと畳の上を転げる宇沢と、それを足蹴にするヨシミを見ている私の顔は一体。どんな顔なんだろうか。とりあえず口は開きっぱなし。なんならちょっと顎震えてる。30才だろこいつら。

  • 19二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:08:59

     ていうか。

    「”聞きたいことは聞きたい”ってそゆこと?」

     私が言うと。天井を仰いでいた顔を、今度はうつむかせ。「う”ぁあ”……」なんてきったない唸り声。はい答えいただきましたー。

     先に言っておく。先回り。先置き。こいつは絶対そう言うし、思ってる。絶対。

    「謝ったら殴る」付け加えてもう一つ。「罪悪感持ってたら蹴る」

    「ぁああ……横暴なぁ……」

     指の隙間。顔は真っ赤。

     そりゃ半分の16年しか生きてない私が言うのはマセてるとか思われるだろうさ。それでもだよ。さすがに30過ぎてそんな乙女やってるなんて夢にすら思わないっての。なんていうかな。こう、そういうドキドキも大事だけど、なるべくしてなってる感っていうかさあ。顎を持ち上げられても「なに? 今更?」なんてニヒルに笑えるような関係みたいなさあ!

     変わんないじゃん。ベッドの中で、モモトークの返信に一喜一憂するみたいな、私ですら経験した想いと!!

     はぁ。

    「アホくさ……」

    「なんですかアホって!! 杏山カズサ! それ聞き捨てなりませんよ!!」
     
    「アホだからアホって言われるんでしょーが!!」

  • 201825/10/05(日) 18:01:31


    (いったんほしゅ)

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