- 11◆iT7WvLBL2aBf25/10/04(土) 14:59:21
- 21◆iT7WvLBL2aBf25/10/04(土) 15:00:44
前スレ
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- 4二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 15:13:39
たておつ
- 51◆iT7WvLBL2aBf25/10/04(土) 15:21:05
前回のあらすじ
人知れず起こる新たな通り魔事件。そのわずかな痕跡に気付いた特異現象捜査部は被害者の追跡を開始する。被害にあったトリニティ生、城島ルカの身体には異変が起こっていた。
一方カノンはキリノとの会話を通じて、自身の過去へと思いを馳せる。落ち込んだ気分のまま彼女はエリの廃ビルへと向かい…… - 61◆iT7WvLBL2aBf25/10/04(土) 15:23:22
- 7二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 15:24:31
待ってました
- 81◆iT7WvLBL2aBf25/10/04(土) 15:29:30
「よかったら、さ……今夜、飯でも行かない?」
半ば勢い任せに、カノンは言った。
──大したことじゃない。誰かと飯に行くなんて、よくあることだし。
カノンが内心で一人ごちるのは、ほんのりと熱を持った顔から意識を逸らすため。
「ごはん?」
エリがカノンの言葉を繰り返す。その単語の意味を考えこむように、顎の下に指をあてて視線は遠くに向けた。
「ほら昨日持ってきたのは冷めちゃってたしさ?折角なら温かいもの食べたくね?」
息継ぎを挟まず早口で言い切るカノン。エリはそれを見て眉尻を小さく下げた。
「お金ないよ、私」
「ふふん」
カノンは得意げに笑うと親指と人差し指を擦り合わせる仕草をする。
「良いよ、奢ってやる。今、ちょっとリッチだからさ」
嘘ではない。家賃を支払った残りの金が手元にある。見栄は少しだけ張ったが。
どう?と首を傾げて、カノンはエリの答えを待つ。 - 91◆iT7WvLBL2aBf25/10/04(土) 15:31:44
「──ううん、ご飯は良いよ」
「えっ」 - 101◆iT7WvLBL2aBf25/10/04(土) 15:35:43
にべも無く断られて、カノンは思わず気の抜けた声をあげる。
「たくさん食べたから、しばらくは大丈夫だもん。それよりも……」
エリは遠くに向けていた視線をカノンに戻した。
「私、映画に行ってみたい」
柔らかく微笑み、エリは言った。
「マジかよ」
カノンが低い声でつぶやく。自分が渋い表情をしているのが、鏡が無くてもわかった。
「映画、好きじゃなかった?アキもそれで買ったんでしょ?」
太腿のホルスターに手を置いて、エリが尋ねる。
「昨日も言ったけど、そいつの名前はそういう区切りじゃないからな?」
カノンは銃の呼び名を訂正しつつ、顔を手で覆い、強張った表情筋を揉み解した。
「映画な……わからなくなったよ」
「わからない?」
「しばらく見てないんだ……結論出ちゃう気がしてさ」
「どういうこと?」
エリがカノンの目をまっすぐ覗き込んでくる。きらりと輝く赤色が心の奥に入り込んできて、誤魔化すことを許してくれない。
やがてカノンは観念したように手を広げ、語る。
彼女の後悔と挫折を。 - 111◆iT7WvLBL2aBf25/10/04(土) 15:46:08
「アタシさ、ワイルドハントに通ってたんだよ。映画が撮りたくて。……でも才能なかったんだろうな。段々キツくなって……逃げちゃった」
ほんの少し冗談めかした声色でカノンは語る。釣られてエリが笑えば、それを口実に会話を打ち切るつもりだった。
けれどエリは何も言わない。口を噤んで、カノンの言葉に耳を傾けている。
それがほんの少し疎ましくて……そしてほんの少しだけ嬉しかった。
「だけど、未練なのかな……ソフトも制服も処分できないんだ。ずっと部屋に置いたまんま。捨てたら、その時が本当に終わりな気がして。その癖クローゼットの奥から出した事ないんだよ。引っ越しの時に押し込んで、ずっとそのまま」
ひく、と喉の奥がしゃっくりを上げる。熱を持った目元を手の甲で乱暴に拭った。
「アタシの言う映画が好きって、ちょっと躓いたら投げ出す程度だったのかなって。ずっと頭の中ぐるぐる回ってて。バイト増やしたりして考えない様にしてるんだけど……寝る時とか不意に頭過って、嫌になったりしてさ……あぁ、何の話だっけ」
口数が増えていく。話の筋がそれ始めている事に気づいたカノンは大きく頭を振るとぎゅっと目を閉じた。
「……怖いんだよ。これから先映画を見たときに、真っ先に思い浮かぶのが面白いとか楽しいじゃなくて、やりたかったこと投げ出して逃げた事だったら──ってさ。結論ってそういうコト。あぁ……ハハ、つまらない話だなーほんと……」
自嘲気味に笑うと、カノンは顔を伏せた。
無理にでも笑わないと、心に澱んだものが溢れて来そうだったから。 - 121◆iT7WvLBL2aBf25/10/04(土) 15:53:34
書き溜め分は以上です
続きは例によってある程度書け次第順次上げていきます - 131◆iT7WvLBL2aBf25/10/04(土) 20:59:20
「カノン」
「くだらないだろ?ほんと」
「カノン」
「はい、やめやめ!こんなしょうもない話、いつまでもひっぱってないでさ──」
捨て鉢になったカノンの声が、途切れる。
エリが彼女の事を抱きしめたからだ。
「なん……え……っ?」
「カノン」
エリはカノンの首元に緩く両腕を回し、身体をもたれさせていく。
カノンの体が束の間硬直し、やがてゆっくりと脱力していく。両腕が半端な高さで、エリの身体に近づいたり離れたりを何度も繰り返していた。
「泣かない?」
「はぁ……!?」
「カノン、泣きそうだったから」
「ばっ……泣くかよ、こんなことで!」
カノンは叫び、それから長く息を吐いた。
──少し、危ない所だったけど。
目の奥に溜まっていた熱さは、もう消えていた。
エリは冷たい指先でカノンの横顔をなぞり、そのまま彼女から離れた
二人の距離が元に戻る。カノンの腕だけが未だ行き場を見つけられず、宙に掲げられていた。 - 14二次元好きの匿名さん25/10/04(土) 22:23:33
ちょっとエロスを感じる
- 15二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 07:29:23
妖しい…
- 161◆iT7WvLBL2aBf25/10/05(日) 11:22:08
「ねえ、カノン」
エリは目を閉じて、囁いた。
「やっぱり映画に行こうよ。結論、出しちゃおう」
「……どうしてだよ」
「どっちつかずは、苦しいから」
カノンは息をのんだ。
それほどエリの表情が痛ましげで、ずっと年上な誰かの面影が見えたからだ。
一瞬目の前の少女がエリに見えなくて、カノンの背筋に冷たいものが走った。
「カノン、向き合わなくちゃ駄目。それも苦しい事だけど……でも今よりずっといい」
「なんだよそれ」
「私がそうだから」
エリは自分の胸に手を置いた。それはなんだか、内で蠢く何かを押さえつけているようにも見えた。彼女の言葉に滲み出る重い実感にカノンは思わず拳を握りこんだ。
「でも……それで向き合って、ダメだったらどうするんだよ」
「その時考えよう」
「……っ、簡単に言いやがって……!」
「簡単じゃないよ」 - 17二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 11:26:00
このレスは削除されています
- 181◆iT7WvLBL2aBf25/10/05(日) 12:39:42
エリがそっと手を伸ばし、カノンの拳に重ねた。
「カノンなら乗り越えられる。私は信じてるから」
「……」
「それに、私が一緒に居るから……泣いても大丈夫だよ」
「……だから、泣かねえよ」
カノンはぎゅっと顔に皺を寄せた。
学校を辞めるまでの日々が、瞼の裏を流れていく。
これまでずっと見ないフリをしてきた、心の重石になっていた記憶。
潮時だとおもった。いい加減向き合って折り合いを付けるべきだと。
何事にも理由がいる。長く続けてきたものを変える時ほど、相応の物が。
それが、今できた。出来てしまった。
──信じられちゃったしな。
エリは「できる」といった。根拠はないけれど打算もない、まっ
すぐな言葉。それを嘘にしたくはなかった。
時間をかけて息を吸い、吐く。その間に腹を括る。
そしてカノンは、立ち上がった。 - 191◆iT7WvLBL2aBf25/10/05(日) 13:06:07
「──わかったよ、行こう」
迷いは、もう無い。 - 20二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:10:36
たておつ
それは進んでも大丈夫な道か…? - 211◆iT7WvLBL2aBf25/10/05(日) 23:12:30
──
────
毛布が作り出す暗闇の中で、ルカは目を覚ました。
いつの間にか眠っていたようだ。彼女は寝起きの気怠さに閉口しながら毛布を引き剥がそうとして……
「……っ!」
肌を刺す強烈な痛みを思い出して、身体を強張らせた。
毛布から出れば、またあの痛みに襲われるかもしれない。それは怖いが、いつまでもこうして過ごすわけにもいかない。暫し逡巡した後、ルカは毛布の端に指を引っ掻けて目元だけを恐る恐る外に出した。
「う、ぁ……!?」
赤色がぎらりと目に飛び込んできて、ルカは両手で目を覆った。
眩しい。まるで閃光手榴弾の炸裂を間近で見てしまった様だ。ルカはいつだったか自警団が不良の鎮圧している横を知らずに通りがかった時の事を思いだした。
じくり、と毛布から出した顔が痛む。ただそれは、朝に感じたものよりずっとおとなしくて、不快だが我慢できる程度だった。ルカは呻きながら立ち上がると、目が眩しさになれるのを待って部屋の中を見渡した。 - 221◆iT7WvLBL2aBf25/10/05(日) 23:34:07
部屋は酷い有様だった。そこら中に本やモモフレンズのグッズが転がり、足の踏み場もない。外は夕方だった。痛みがマシになったのは、そのおかげもあるだろう。窓からは夕日が差し込み、床に赤い帯を作っている。その帯の端の方にペロロのぬいぐるみが仰向けに倒れ、虚ろな目を天井に向けていた。
ルカはペロロを起こして床に座らせると窓に向かいカーテンを閉じた。日差しが遮られると、眩しさと痛みは治まっていく。彼女は大きく息を吐くとベッドに腰を下ろした。
「一体、どうしたのかしら……」
ルカはつぶやいた。
朝起きてから、身体がずっと変だ。その不調に振り回されて、すっかりくたびれていた。
何が起きたかはわからない、だけど何故こうなったかはわかる。
あの路地で、あの子に噛まれたからだ。
ルカは手を伸ばし首元の傷を……既にかさぶたも剥がれかけ、僅かな肉の盛り上がりが名残を残しているだけの傷を掻きながら、考える。
噛まれたせいで、雑菌が入ったのだろうか。何かの病気は、人の五感を鋭敏にすると本で読んだ気がする。日差しで痛みを感じるのは、もしかしたらそれに罹ったせいかもしれない。だとしたら、救護騎士団の元に行くべきだろう。だけど……
ルカは寮から救護騎士団の拠点までの道筋を頭に描き、溜息をついた。日のさす中、そこまでの道を歩くのか?痛みに耐えながら?
いやだ、とルカは首を横に振った。行くにしても、夜だ。それまで待とうと思った。 - 231◆iT7WvLBL2aBf25/10/05(日) 23:58:00
- 24二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 07:06:29
草
- 251◆iT7WvLBL2aBf25/10/06(月) 10:39:50
- 261◆iT7WvLBL2aBf25/10/06(月) 11:04:04