(CP・閲覧注意)エグザベ「この世界には僕の居場所はなさそうだ」

  • 1二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 09:45:09

    ニャアン、君はどう?

    退役軍人エグザベくんがPTSDで自分がわからなくなる話

  • 2二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 09:46:50

    注意

    ・エグニャア

    ・スレ主はドスケベ卑しか雌猫のドスケベを書きたいだけ

    ・エグザベくんが精神崩壊起こしてしまうので苦手な方はブラウザバックお願いします

    ・最後はハッピーエンドにしたい


    元ネタ


    【閲覧CP注意】エグザベ君とニャアンだけどさ17【エグニャア】|あにまん掲示板とりあえず先輩後輩にはなるんだろうそのような頼れる先輩と熱心な後輩の助け合いルートかもしれないもしくはさらに進んで恋人になるルートなのかもしれないとにかく良い関係で二人とも良い方向に行って欲しい不穏な…bbs.animanch.com

    (レス29あたり)

  • 3二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 09:51:10

    イオマグヌッソの事件から3年が経った。
    ニャアンはあれから地球でマチュと暮らしながら高卒認定を取り、看護学部に進学。あの頃の彼女からは想像もつかないほど地に足のついた穏やかな生活を送っていた。

    3年間の中で、ジオンはアルテイシア元公女の宣言により共和制化が推し進められ、その過程で多くの血と犠牲が払われた。
    だが共和制の樹立により長きにわたる戦争の時代はようやく幕を下ろした。
    新生ジオン共和国は、戦争を続けなければ成り立たない武力支配の時代に終止符を打ち、対話による統治を志した。

    そして、その理想を絵空事で終わらせなかったのが、元公女でありジオン共和国初代元首となったアルテイシア・ソム・ダイクンである。

    彼女は冷徹な現実主義と揺るぎない理想の両輪で国家を導き、軍縮と国力維持、そしてジオンの国際的影響力の共存という、かつて誰も成し得なかった奇跡を実現させた。

  • 4二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 09:53:01



    エグザベは浜辺に腰を下ろし、地球の海をぼんやりと眺めていた。
    何年ぶりかの休暇だったが、その横顔には晴れやかさはなく、むしろ深い陰りが差していた。

    エグザベの所属していたシャリア率いる突撃機動軍は事実上の解体、シャリアとコモリは別の形でジオン軍に残ることを選んだ。
    ジオン共和国樹立のための内部紛争で活躍したエグザベは26歳にして華々しい昇格を果たし、今後は参謀職・教育職・外交職のいずれかに任ずる方針が示された。
    しかし彼は自身にそれらの適性があるとは思えなかった。

    かと言って前線に残ったところでしばらく大きな戦いはない。
    悩んだ末、結局彼はジオン軍を離れた。
    ジオン軍にはもう、戦うことしかできない自分は必要ないと考えたからだった。

    同じく昇格したシャリアからは「あなたの少佐としての席は残しておきます」と言われたが、その気遣いすら彼の心にはむしろ重くのしかかった。

  • 5二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 09:55:38

    故郷を追われてから、彼は自分の思考や感情を意図的に抑え、なるべく深く物事を考えないよう努めていた。
    それは心を平静に保つための防衛だった。

    憎しみを封じ、故郷を奪ったジオン公国軍に入隊した。
    ジオンの国籍を得て、ジオンのために戦い続けた。

    仲間を失い、友を失っても、彼は決して心を乱さなかった。
    時には全てを投げ出し自らの生すら諦めた上官を叱咤し、ただ前だけを見て走り続けた。

  • 6二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 09:56:54

    そして今。

    ────戦いの終わった世界で、NTがNTとして生きられる世界が実現されようとしている中で、彼は自分が何をすればいいのか分からなかった。

    「エグザベ……さん?」

    背後から女性の声がした。

  • 7二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 09:58:26

    長くて綺麗な髪に、すらりとした長身の女性────ニャアンだ。
    彼女は浜辺を走り、エグザベの元に駆け寄る。

    「ニャアン? どうしてここに?」

    エグザベは、驚いたような顔でニャアンを見つめた。
    直接会うのはもう二年ぶりくらいになるのだろうか。

    目の前の彼女からは、かつて感じたことのない落ち着きと、ほのかな艶が漂っていた。

    ────なぜだろう。
    その変化を意識した瞬間、彼は自分でも分からぬまま身構えていた。

    飾り気はないが、女性らしいラインを引き立てる服装のせいなのだろうか。
    元々綺麗な子ではあったが、以前会った時よりもそれに磨きがかかっていると感じた。

    「シャリアさんからマチュ経由で……エグザベさんがこの付近にいると聞いて……少し歩き回ってました。それにここの海岸、家の近くだし」

    疲れているのか、ニャアンは服が汚れるのも気にせずにエグザベの隣に座り込む。
    前に会った時は『エグザベ少尉』と呼ばれていたから、さん付けで呼ばれるのにむず痒さがあった。

  • 8二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 09:59:29

    「呼び捨てでいいよ」

    「じゃあ……そうします」

    しばらく二人は近況報告を兼ねた世間話を交わした。

    学校ではそこそこ上手くやっていけている。
    学業面も人間関係も大きな苦労はない。
    マチュは無事にシュウジを見つけ出し、今は三人で暮らしている。
    平穏な毎日だと。

    シュウジ・イトウが発見されたことは聞いていたが、そういえば再会後の彼女たちには会えていなかった。

    ひとしきり会話を終えると、一瞬の沈黙が流れた。
    ニャアンはおずおずとエグザベに切り出す。

    「エグザベ、は……どうして軍を辞めたんですか」

    「できることがなくなったから、かな」

    「……あなたもできないことがあるんですね」

    「できることの方が少ないよ」

    自分はただ運が良かっただけ。
    たまたま自分の適性と時代が合っていた。
    だから戦いのない今、自分は時代に取り残された。

    「これからどうするか……聞いてもいいですか」

  • 9二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:01:03

    「実はなにも考えてないんだ」

    エグザベは苦笑いを浮かべる。
    ニャアンは至って真面目な表情でそれを見つめている。

    「居場所も、行く場所もないの?」

    核心をつく言葉。

    「そういうことに、なるね」

    ニャアンが俯く。

    「居場所がないのは……つらいです。行く場所がないのは、もっとつらい」

    彼女は続ける。

    「……私も」

    「君にはマチュさんとシュウジくんが……」

    言いかけて、エグザベは黙り込んだ。
    彼女の表情は暗い。

    「マチュとシュウちゃんのことは好きです」

    波風がニャアンの髪を揺らす。

  • 10二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:02:21

    「二人とも私の大切な友達です。でもマチュとシュウちゃんはそれ以上の関係なので……私、お邪魔虫なんです」

    髪の隙間から覗く、どこか寂しげな笑み。

    「それは気まずいね」

    「二人は私のことを気にかけてくれるけど、私はとても申し訳なさを感じています……でも、二人には悪いけど、離れるのは寂しすぎるからもっと嫌……」

    ニャアンは笑っているが、目は暗い。
    その様子を見ていると、エグザベは何故か胸が締め付けられる感覚がした。

    居場所も、行く場所もない。
    今目の前にいる彼女が、自分と同じものを抱えているとしたら。

    「僕のところに来る?」

    思わず口をついて出た言葉だった。
    言った瞬間、エグザベは後悔した。
    軽率だった。きっと彼女から気持ち悪がられてしまう。

  • 11二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:03:42

    けれど────

    「いいんですか?」

    返ってきたのは、予想だにしなかった声音だった。

    ニャアンはわずかに頬を染め、戸惑いながらもどこか嬉しそうだった。
    その瞳がまっすぐにエグザベを見つめ、逃げ場を与えない。

    澄んだ光をたたえたその目に射抜かれ、エグザベは息を呑んだ。

    ああだめだ。
    そんな目で見られたら、もう冗談だったなんて言えなくなる。

  • 12二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:05:11



    二人は地球での新しい暮らしを始めた。

    ニャアンの前に住んでいた場所と通っている学校から少し離れてしまったが、それなりに良い部屋を借りた。

    「エグザベの荷物は……それだけ?」

    ニャアンは荷解きをしながら、鞄一つだけのエグザベの荷物を見て目を丸くしている。

    「ずっと軍艦暮らしだったから」

    「私の荷解きが落ち着いたら、あなたの分の日用品でも買いに行きましょうか」

    ニャアンは、カトラリーやお皿、コップなど、生活に必要なものを思いつくままに指折り数えていく。

    「大丈夫だよ。自分一人で買いに行けるから」

    「私も買い足したいものがあるので……それに家電も見たいし」

    少し遠慮がちに言うその声音が、なんとなく嬉しそうに聞こえた。

  • 13二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:06:16

    「わかった。じゃあ荷解き手伝うよ」

    「ありがとうございます。じゃあそこにある本を私の部屋の勉強机の隣の本棚に入れておいてください」

    ニャアンが教材の入った段ボールを指差す。

    「なにをどこに、みたいな指定はある?」

    「上から順番に入れてくれれば大丈夫です」

    エグザベは教材の入った段ボールを抱え、ニャアンに割り当てられた部屋に入る。
    ベッドと座卓、勉強机や本棚などの大きな家具はすでに業者が配置してくれているようだ。
    作業を終えると彼はニャアンに声をかける。

    「車、必要になるよね」

    段ボールを片づけていたニャアンが、顔を上げる。

    「車ですか」

    「あった方が便利だし、この家からじゃ君の通学も大変だろうから」

    「私……免許持ってないですよ」

    「学校への送迎くらいするよ。事の発端は僕だし」

  • 14二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:07:17

    その言葉に、ニャアンはわずかに頬を染めて目を伏せた。
    照れくさそうに髪を耳にかける。
    沈黙を破るように彼女が話題を変える。

    「グラナダで乗ってた、あの赤い車は……あなたの趣味ですか」

    「あぁ、あれは販売店で薦められたやつを買ったんだ」

    「色も……?」

    「納車日が早い方を選んだ」

    「何かこだわりがあると思ってました……」

  • 15二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:08:40



    『僕のところに来る?』

    その言葉を聞いた瞬間、ニャアンは胸の奥が熱くなった。

    ────まるで、自分を迎えに来てくれた騎士様みたいだ。

    いくつになっても、ニャアンは御伽話のお姫様のような恋に憧れを持ち続けていたし、エグザベのことは少なからず好んでいた。
    それは彼が誰にでも親切で優しい人間だったのもあるが、そんな彼が自分を特別に扱ってくれているような錯覚が彼女の心を強く揺さぶった。

    荷解きを終えたあと、ニャアンはほとんど物のない居間を見渡す。カーテンの隙間から射す光が、まだ何も置かれていない床にやわらかく広がっている。

    「(一人暮らし用に貯めてた資金……まだほとんど手をつけてないな)」

    学校に通いながら、アルバイトで少しずつ貯めてきたお金。
    マチュやシュウジと離れるのは寂しかったが、もともと卒業後は一人で暮らすつもりでいた。

    だがこの家の契約やインフラの整備にかかるお金はすべてエグザベが支払ってしまっていた。
    そのためニャアンの貯金はほとんど手つかずで口座に残っている。

    せっかく新生活のために貯めたお金だ。
    いつでもくつろげるようにソファでも買おうか。

  • 16二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:10:03

    前の家では、マチュとシュウちゃんの3人でソファにすし詰めになって、お菓子をつまみながら映画を観たりしていた。
    あの楽しい時間を思い出すと、自然と頬がゆるんだ。

    自分とエグザベも同じようにできるだろうか。

    「(そんなの恋人同士みたい……)」

    ニャアンはぶんぶんと首を振り、頭の中からその思考を追い出した。

    彼はおそらくいつもの親切の延長線上で同居を持ちかけてくれた。
    良くも悪くも彼には淡白なところがある。変な期待を持ってはいけない。

    そう自分に言い聞かせながら、ニャアンはそっと彼の部屋を覗き込む。

    「どうしたの?」

    エグザベは自室で窓の外を眺めていたようだ。

    がらんどうの部屋だった。
    部屋の片隅に置かれた彼の数少ない持ち物の入った鞄が、さらに哀愁を誘った。

    「ベッドすらない……」

  • 17二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:11:22

    「流石にベッドは注文してるから。届くまでは床で寝るよ」

    「身体に悪いですよ」

    そう言いながら、ニャアンの脳裏にある考えが浮かぶ。
    一瞬、口を開きかけてためらい、それでも勇気を振り絞って切り出した。

    「今夜は……一緒に寝ましょうか」

    「え?」

    ニャアンは耳まで真っ赤にして、視線は泳いでいた。

    「床で寝るより……マシじゃないですかっ、ただ一緒のベッドに寝るだけで……それ以外の意味なんてありません、の、で」

    「申し訳ないよ、君が窮屈になる」

    エグザベもやや焦った様子だった。

    「私の使ってるベッド、セミダブルだから……」

    スレンダーな体型のニャアンと、元軍人にしては細い体躯のエグザベなら、それで十分だろう。

  • 18二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:12:57

    導入おわり。
    このSSのメインはドスケベなので真面目なパートはなるべくまとめて投下します。
    次の投下は0時過ぎの予定です。
    フフフ……

  • 19二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 10:57:09

    わーい!同居だ!続きが楽しみです

  • 20二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 11:22:48

    やったー!エグニャックスだー!

  • 21二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 13:51:10

    ドスケベ神乙です!!

  • 22二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 19:54:07

    保守

  • 23二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 20:50:10



    日用品の買い出しを終え、外で軽く食事を済ませた二人は自宅へと戻ってきた。

    ニャアンは買ってきたばかりの食器を袋から丁寧に取り出し、軽く洗い流してから備え付けのキッチンラックに並べる。
    それらはどれも二個組の、色違いのペアデザインだった。

    全て『出してもらってばかりで申し訳ないから』と押し切る形でニャアンが購入したものだった。

    「君は前の家から持ってきたものを使えばよかったんじゃない?」

    「そのつもりでしたが、マチュから『ここはニャアンの家でもあるんだよ』と言われてしまったので、食器はほとんど置いてきちゃったんです」

    少し大袈裟なマチュの真似をするニャアン。
    その仕草に、エグザベの胸の奥がふっと温かくなる。
    ニャアンが以前よりも少し明るくなったように見えた。
    少なくとも彼の知るニャアンはいつもどこか寂しげで、笑っていてもその奥に影を感じていた。

    「先にシャワー、浴びちゃってください。私は自室の整理がしたいので」

  • 24二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 20:51:38



    ニャアンの部屋。
    エグザベはベッドの端に腰をかけ、どこか所在なさげにしていた。
    『居間にはまだ何もないから、私の部屋でこれでも観ていてください』
    そう言ってニャアンが置いていったノートパソコンからは、ネット番組が流れている。
    しかし彼はとてもそれに集中できる状態でなかった。

    洗面所の方から、ドライヤーの音が聞こえてくる。
    やがて音が止み、扉が静かに開く。

    ニャアンが部屋に入ってくる。
    ワンピースタイプのパジャマを着用し、頬は湯上がりでほんのり赤い。

    「今日は色々と疲れましたし……もう寝ましょうか」

    ニャアンがエグザベの隣に腰掛け、ノートパソコンの電源を落とす。
    湯上がりの髪から漂う甘い匂いが、そっと彼の鼻先をかすめた。

    「迷惑じゃない?」

    照れ臭さを誤魔化すように、エグザベが問いかける。

    「身体を悪くされる方が迷惑かもしれないです」

  • 25二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 20:53:00

    「君は女の子だし……」

    「20歳ですよ、もう。女の子って年齢じゃないです」

    「そういう問題じゃなくて、付き合ってもいない異性と同じベッドは流石に……」

    「付き合ってもいない異性に同居を持ちかけてますよね、あなたは」

    「それは、そうだけど」

    たじろぐエグザベを、ニャアンは冷めた目で見つめる。

    「嫌ですか?」

    「嫌ではないけど……」

    「そうですか、ならよかったです」

    そう言ってニャアンはベッドの奥側に身を横たえ、レモンイエローの枕に顔をうずめた。
    パジャマの裾からのぞくしなやかな脚に、エグザベは思わず目を逸らす。

    元から持っていたのか、新たに用意したものなのか、レモンイエローとオレンジ色の枕がベッドには並んでいる。
    ニャアンはレモンイエローの枕に顔をうずめている。
    エグザベは覚悟を決めてベッドに横たわり、オレンジ色の枕に頭をあずける。
    新品の寝具の香りがした。

  • 26二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 20:54:15

    エグザベはなるべく彼女に触れないように、ベッドの端ぎりぎり、今にも落ちそうな淵に身を寄せた。

    「落ちちゃいますよ」

    ニャアンが体を動かし、エグザベの方を向いた。
    背中を向けようとした彼の服の裾を、彼女の指がそっと掴む。

    ニャアンの顔は赤い。湯上がりの時よりもずっと。
    わずかに緊張した面持ちだった。

    「落ちちゃうから、」

    二度目の忠告。
    固辞することもできず、エグザベは照れくささを押し殺して彼女の方へと身を寄せた。

    ニャアンはわずかに口元を緩めると、サイドボードのリモコンを手に取り部屋の照明を消しす。

    暗闇。
    彼女に背中を向けるタイミングを失ってしまった。
    エグザベは言葉に詰まる。
    しばらくの間、二人は黙って見つめ合った。

  • 27二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 20:55:38

    そしてその沈黙を破るように、ニャアンの右手がゆっくりとエグザベに伸ばす。
    細く長い指が彼の首筋に優しく触れる。

    突然の接触にエグザベの身体がわずかにこわばる。

    「どうしたの?」

    エグザベの問いに、ニャアンは落ち着いた声音で答える。

    「脈を測ってます」

    「なんでそんなことを……?」

    「あなたの状態が知りたかったので」

    「僕の状態はどう?」

    「規則正しく、落ち着いた鼓動が続いてます……正常ですね」

    「僕も君の脈を測っていい?」

    「……」

    ニャアンは一瞬だけ躊躇いを見せたが、静かに髪をかき上げ、細く長い首を晒した。

  • 28二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 20:57:47

    エグザベは慎重に手を伸ばし、その首筋にそっと指先を当てる。

    触れた指先の下、脈が跳ねるように速く打っている。

    「脈……速すぎない?」

    ニャアンはどこか不満げな面持ちだった。

    「逆に、なぜあなたはこんなに正常なんですか」

    ニャアンはエグザベの首から指を離す。
    しかしエグザベの手はニャアンの首に添えられたままだった。

    「君の脈、いつもこんなに速いの?」

    だとしたら心配だ、と彼は付け加える。

    「そんなわけないじゃないですか」

    彼女の脈拍はさらに激しくなった。

    耐えきれなくなったのか、ニャアンは自分の首に添えられた彼の手を掴み、ゆっくりと引き剥がす。
    指先が離れる直前、一瞬だけ彼女の手が彼の手を強く握り締めた。

  • 29二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 20:58:53

    「……おやすみなさい」

    ニャアンは背を向けて、枕に顔を埋めた。

    「うん、おやすみ……」

    エグザベも体勢を変え、天井に視線を向ける。

    手にはまだ彼女のぬくもりが残っている。
    彼はそのぬくもりを少しでも長く感じていたくて、決して逃さぬように自身の手を強く握り締めた。

    自分の居場所が、この手の中にある気がした。

  • 30二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:01:02



    ────エグザベが眠るベッドが届き、車が納車され、生活が徐々に落ち着いてきたころ。

    「じゃあ、いってらっしゃい」

    「はい、いってきます」

    エグザベはニャアンの通う学校の前に車を停め、彼女を見送った。
    彼女が校門の中に消えるのを見届けると、車を走らせて帰路についた。

    家に戻ると必要最低限のものしかない自室に入り、ベッドに横たわってぼんやりと天井を見上げる。

    ────やることがない。

    18歳で故郷を追われてから今日に至るまで『何もしなくていい』という状況に陥ったことがなかった。
    ではそれ以前はどうしていたのか、彼は思い出せなかった。

    彼は18歳より前の人生を全て消していた。

  • 31二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:02:29

    自分の人生を根本的に書き換えることで、新しいアイデンティティを構築する。
    それによって彼は『ルウムのエグザベ・オリベ』を消し、代わりに『ジオンのエグザベ・オリベ』を誕生させた。
    過去の自分を全て否定することで、本来ならば憎むべき故郷を滅ぼした存在────ジオンの軍人として戦うことを正当化する。
    それは彼の本能的な防衛機制だったのかもしれない。

    代償として、彼は平時の安らぎを忘れてしまったのだが。

    異常な状況では、異常な反応を示すのが正常な人間だ。
    だがエグザベは違っていた。
    どんな極限の状況でも彼は常に“正常”でいられた。
    その“正常さ”こそが、彼の中の“異常”だった。
    戦場ではそれが彼の強さであり武器になった。
    だが平和な場所ではその“異常性”は居場所を失い、ただの重荷になっていた。

    エグザベはほんの数ヶ月前に思いを馳せる。
    鳴り響く銃声と武器のぶつかり合う音、敵味方関係なく聞こえてくる叫びや呻き声。
    それらがここにはない。

    ここは穏やかで、静かすぎる。

    ぴくりと、彼の片手が動く。

  • 32二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:04:03

    ニャアンの手のぬくもりを思い出す。
    あの瞬間、自分の居場所がそこにあるのではないかと感じた。

    それが錯覚なのか、自分にとっての真実なのか、彼はもう一度確かめたかった。

  • 33二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:09:30



    学校の送迎を終えて、自宅に戻った二人。
    エグザベは前置きもなくニャアンに切り出す。

    「ねえ、ニャアン。もう一度脈を測ってもいい?」

    ニャアンはわずかに眉を顰める。

    「……どうして?」

    真っ当な疑問だった。脈を測るというのは建前で、ただ彼女に触れたかっただけだった。

    「……僕の脈も測っていいから」

    「等価交換になりませんよ、そんなの」

    そう言いつつも、ニャアンは髪を片側に寄せる。

    互いの首に触れ合う。

    自分の首に触れるニャアンの手と、自分が触れている彼女の首の感覚を噛み締めた。

    あたたかい。
    ニャアンの脈拍が少しずつ速まるのを感じる。

    「もう、いいですよね」

    ニャアンがエグザベの首から指を離す。
    だがエグザベはニャアンの首から指を離そうとしなかった。

  • 34二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:11:47

    「エグザベ、いい加減にしないと────」

    「君の体温を感じていると、安心するんだ」

    エグザベがそう告げると、ニャアンは途端に顔を赤くして俯いてしまう。

    自分の首に触れているエグザベの手に自分の手を添え、顔を寄せる。

    「それって、どういうことですか」

    震えの奥に、微かな期待が滲む声。
    ニャアンの脈拍は激しくなるばかりだった。

    「よくわからない」

    そう答えが返ってくると、ニャアンは少し拗ねたような顔になる。

    「あなたは本当に……」

    ニャアンは何かを言いかけて口をつぐみ、彼の手に添えられた手を離してしまう。
    ニャアンは睨むでもなく、ただ強い眼差しでエグザベを見つめていた。

  • 35二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:13:21

    「……?」

    それの意味するところをエグザベはわからなかった。

    「こっちのほうが、よくわかりますよ」

    ニャアンは自分の首に触れていたエグザベの手を掴み、そのまま自分の胸の上へと導いた。

    服越しでも、心臓が激しく脈打っているのを感じた。

    「満足ですか、あなたのせいで私が異常になっていると知られて」

    そう言うと、ニャアンはエグザベの頬に手を添えて口付けを交わした。

    「!?」

    予想外の出来事に、エグザベは目を丸くする。

  • 36二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:15:04

    「もう知りませんから」

    背中を向けようとするニャアンの腕をエグザベは反射的に掴んでしまった。

    先ほどの行為は一体何を意味していたのか。
    それくらい考えずともわかった。

    エグザベはニャアンを強く抱きしめた。

    やはりとてもあたたかい。
    ここが本当に自分の居場所だったら、どんなに良いか。

    「いたい……」

    ニャアンが消え入りそうな声を上げる。

    「ご、ごめん!」

    すぐにエグザベは彼女を解放した。
    気付かぬうちに、抱きしめる力を強めすぎていたみたいだった。
    ニャアンはやや悩ましげな表情でエグザベを見ている。

    「これがエグザベの答えと受け取っても……良いですか」

    エグザベは一瞬のためらいの後、黙って頷いた。

    あのぬくもりがもっと欲しかった。

  • 37二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:16:27

    投下おしまい。
    次の更新はいけたら0時過ぎ、いけなかったら明日の夕方以降です。
    資料を読みながらの作成なのでちょっと時間かかるかも……フフフ……!

  • 38二次元好きの匿名さん25/10/05(日) 21:39:21

    ドキドキする・・・

  • 39二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 03:40:45

    エグザベくんが最初から不安定な設定はシリアスだと読むの初めてで緊張感あるねえ

  • 40二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 09:04:38

    ウヒョー

  • 41二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 14:51:43

    保湿

  • 42二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:49:57



    エグザベの部屋。
    ニャアンはベッドの上で、緊張した面持ちで服のボタンを外そうとしているが、手が震えてうまくできない様子だった。
    エグザベは背後からそっと腕を回し、彼女の震える手を押さえた。

    「やっぱり、やめておこうか」

    彼に残ったひとかけらの良心が言わせた言葉だった。
    男女が互いに惹かれ合っていたとしても、ニャアンがエグザベの二人がこのような関係になるのはあまりにも早すぎた。
    つい先ほど気持ちを確かめ合ったばかりなのに、勢いに流されすぎている。

    「いま、したい、です……」

    ぽつぽつとニャアンが呟き、押さえられた両手を少しだけ動かす。
    その様子が幼い少女のようで、エグザベに罪悪感を与えた。

  • 43二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:51:08

    本当にこれでいいのかという不安が、エグザベの身体をニャアンから無理矢理引き離した。
    考えるより先に身体が動くことはよくあった。
    だがそれは戦闘中の話で、それ以外のことでは滅多に起こらなかった。

    「エグザベ……?」

    ニャアンは不思議そうな様子でエグザベを見つめている。
    やがて不安げな面持ちになり、口を開く。

    「……怖いの?」

    ニャアンからの問いに、エグザベは面を喰らう。

    怖がっているのは君ではないのか。
    ニャアンには、自分が怖がっているように見えているのか。

    「そう、見えるかな……」

    エグザベが声を絞り出すと、ニャアンはそっと彼の手に触れた。
    やはり彼女の手は震えたままで、彼を見つめる瞳も揺れている。

  • 44二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:52:08

    「エグザベも、はじめて……?」

    遠慮がちに質問される。

    「どうだろう……」

    適当にはぐらかしてしまった。
    故郷にいた頃に年齢相応のことはしていたが、もう8年以上も前のことだ。

    「その時は、どんなふうに?」

    ニャアンから。どこか嫉妬めいた様子がうかがえた。

    「別に……普通だったよ」

    「エグザベの普通って、わからないですよ」

    「相手は、君と違って、初めてではなかったし……」

    「誰だって最初は初めてですよ」

    ニャアンは意を決し、服のボタンを全て外して下着姿になる。

  • 45二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:53:21

    「どうですか、私は……? やっぱりその人と比べたら貧相ですか。興奮できないから、そういう対象にならないですか」

    背中をやや丸めながら、恥じらいを含んだ声でニャアンが問う。

    「覚えてないよ……昔のことだから」

    「そういうことをしたのに、忘れちゃったんですか」

    「そうだね。薄情だよね」

    故郷のことをあまり思い返さないせいなのか、単純に自分にとって取るに足らないものだからなのか。それすら曖昧になっていた。

    ────あの時は、確かに自分はその子のことを大切に思っていたはずなのに。

    それに今の彼の心は、目の前の女性の存在に完全に支配されていた。

    すごくお腹が空いている時に、目の前にとても美味しそうなケーキがあったら。
    それを食べてもいいよ、早く食べなさいと言われていたら。
    そんな気分だった。

  • 46二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:54:29

    しなやかな四肢、程よく引き締まった細いウエスト。

    胸部のわずかな膨らみは呼吸に合わせてかすかに上下し、そのたびに肌の下の心臓の鼓動が伝わってくるようだった。
    その輪郭を見ているだけで、エグザベの胸はざわめいた。

    それは欲望というよりも、今日まで生きて、こうして自分のそばにいてくれる存在を前にした、どうしようもない感動に近かった。

    そんな感傷を隠すように、エグザベは彼女を抱き寄せた。

    「綺麗だよ、君は」

    「ん……」

    ニャアンがわずかに身を捩り、自身の顔をエグザベに突き出す。
    応えるように、口付けを交わす。

    そのままエグザベは彼女を押し倒す。

    「やめるなら、これが最後のチャンスだけど……」

    ニャアンは黙ってエグザベを見つめている。
    覚悟は完了した、という面持ちだった。

    彼女の背中に左手を回し、下着の留め具を外してやり、取り払う。
    ニャアンが慌てて胸部を隠そうとする前に、エグザベも着ていたものを脱ぎ、もう一度抱きしめて彼女の体温を直に感じた。

    「……えっち」

  • 47二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:56:11

    心臓の鼓動が重なり合っている。
    全く異なる拍子で動いている。

    「あ、避妊具……」

    今更それの存在を思い出し、エグザベはニャアンから離れようとする。
    ニャアンは両腕を彼の肩に回してそれを阻止してしまった。

    「生理が不安定で、ピルを飲んでるので……妊娠しませんよ」

    ニャアンは頬を紅潮させながら、妖しく微笑んでいる。
    もはやそれは悪魔の囁きだった。

    ────彼女と交わったら、自分はもう正常でいられなくなる。
    そのような直感が彼の脳裏を駆ける。

    禁じられた果実が美味しそうな林檎だったように、破滅を形にするならきっと彼女のように美しく、微笑みながら自分を手招きしているのであろう。

  • 48二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:57:31

    甘くて美味しそうなケーキを、林檎を、貪るように。

    彼女の膨らみに触れると、かすかな声を洩らした。
    その部分に貪るような口付けをし、ねぶり、なぶった。
    彼女の心臓の音をよく感じられる。
    どこまでこの鼓動は激しくなるのだろう。

    ニャアンは震えながら押し寄せる感覚をこらえている。

    次にエグザベは彼女の身体に指を走らせ、ショーツの下に手を伸ばす。

    「ここを触ったことはある?」

    エグザベからの問いにニャアンは口元を抑えながらわずかに首を縦に振る。

    「どんなふうに触ったの?」

    「さ、さわっただけ……」

    ニャアンは顔をベッドに埋め、恥ずかしさをこらえて言葉を絞り出す。

  • 49二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 18:59:05

    エグザベはショーツ越しに彼女の輪郭を撫でる。

    「んっ」

    ニャアンが身体をびくつかせる。
    少し撫でただけでこんな反応ができるのに、本当に触っただけで済んだのだろうか。

    エグザベは彼女の輪郭の上部────普段は肉びらに包まれて露出しない芽の部分ぬ中指の第二関節をやや強めに押し付ける。

    「ぁ゛んっ!」

    ニャアンが目を見開いて、身体を弓なりに逸らす。

    「嘘……ついてるよね」

    ニャアンは所在なさげにベッドシーツを掴み、自らの顔を隠すように引き寄せる。

    「いれたことは?」

    次の質問に移る。
    しばらく間が空いた後、ニャアンは首を縦に振った。

    「ショーツ、脱がせたいから腰を浮かせて」

    ニャアンは言われた通り、わずかに腰を浮かせる。

    本当に何もそういったことをしたことがなかったら、きっと困り果てていたと思う。

  • 50二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 19:00:25

    露わになったその部分は、血色が良く赤々としており、ひどく濡れそぼっていた。
    理性よりも先に、身体が彼を求めているのは明白だった。

    中指をゆっくりとその部分にいれると、ニャアンはせつなげな声を上げた。
    狭い内部で、少し指を動かすだけで彼女は身体を震わせ、甘くくぐもった声を漏らした。
    指を抜くと、彼女の身体が脱力する。

    はあはあと、胸が大きく上下している。

    彼女の限界を知りたいと思った。
    絶えず脈を打ち血を巡らせる、生きた心臓の限界を。

    彼のものを、ゆっくりと彼女の中にいれる。
    やはり痛むのか、苦しそうな声を上げながらも彼女は息を吐きながらそれを受け入れる。

    腕をエグザベの背中に回してしがみつき、恐怖で目を瞑ってしまっている。

    「全部入ったよ」

    ニャアンは薄目を開き、片手を自らの下半身に伸ばす。
    ぺたぺたと繋がっているその部分に触れると、安堵したような声を上げた。

    「はいっちゃった……」

    小さな子供のような喋り方に、エグザベは罪悪感と嗜虐心を刺激される。

  • 51二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 19:02:04

    君はいつだって大人らしいのは見た目だけで、その中身の情緒は育ち切ってないように見える。

    いれたものを、強く彼女の最深部に打ちつけた。

    「あ゛っぁ゛!」

    呻くように息を吐いた。
    思わず背中に回されていたニャアンの指が爪を立てる。

    背中に鋭い肌を裂く痛みを感じたが、エグザベはそれを気にする様子はなく、彼女の深部を攻めるように、同じことを続ける。

    背中が、じりじりと弱火で炙られているように痛む。
    しかし彼女はそれよりも痛むはずで、それと比べたら瑣末なことだった。

    最初は苦痛の色を帯びていたニャアンの声が、次第に甘やかな響きへと変わっていった。
    初めての感覚に、彼女の身体は迷いなく応じていた。

  • 52二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 19:04:15

    それは相手が自分を少なからず好いてくれているであろう男性で、自分もその男性のことは好きで、彼はいつだって自分にとても親切で優しかったという裏付けが、彼女を安心させていた。
    エグザベはそんなことを知る由もなく、単純にニャアンの適応力が高いのだと判断した。

    彼女の控えめな胸に顔を埋めた。
    何かをするためではなく、心臓の様子を確かめるために。

    激しく脈打つニャアンの心臓。
    このまま止まってしまうのではないか、そう思うほどに早鐘を打つ鼓動。
    だがその不安は、彼女の深奥が必死に彼を締めつけ、離すまいとする熱によりかき消された。

    こんなにあたたかな死体なんて存在しない。

  • 53二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 19:05:39

    ふと、エグザベの背後を黒い影が横切る。
    それは形を持たぬ衝動────かつて何度も大切な人を失ってきた彼の胸に、焼きついた傷跡のような感情だった。

    もう二度と大切な人を失いたくない。
    そう思ったことは多々あれど、この思いに向き合ったことは一度もなかった。
    それら全てに真摯に向き合っていたら、彼は自分が壊れてしまうことを理解していたから。

    彼は無意識に、彼女の細く長い首に手をかけた。

    「ぇ……?」

    ニャアンが目を見開く。
    わずかに力を込めると、ニャアンの表情が苦痛に歪む。

  • 54二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 19:06:48

    エグザベの中で、何かがざらついた音を立てて崩れていく。

    ニャアンの心臓は狭まった気道から酸素を運ぼうとさらに拍動を速め、その鼓動がかえって彼に安堵を与える。

    ────生きている。
    彼女はここにいる。
    その実感だけが、エグザベをこの場所に繋ぎ止めた。

    「ぅ……ぁ……」

    ニャアンは涙をこぼしながら、か細い息を吐き、それでも逃げずに彼を見上げていた。

    その瞳に映る自分は、一体どんな顔で君を見ているのだろうか。

    ぬくもり────彼女がちゃんと生きていることを確かめなければ、不安になる。
    生きていることを確かめるために、死に近い場所へ連れていく。
    なんと身勝手な話だろうか。

    ニャアンの最深部にちぎれそうなほど締め上げられて、彼は感じたことのない快楽と、彼女の“命”を強く感じながら、今目の前にいる“大切な人”を抱き潰し、果てた。

    残ったのは激しい脈拍と、互いの呼吸音だけ。
    エグザベは彼女の胸に額を押し当てた。

  • 55二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 19:08:07

    投下一旦おしまい
    次の投下は0時過ぎ(予定)
    ドスケベまでの導入が長かったですね

  • 56二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 19:11:47

    おぉ・・・首絞ックス・・・キラキラだぁ!

  • 57二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 20:39:12

    居場所を求めるエグザベくん…重い
    ハピエンに定評のあるスレ主でよかった

  • 58二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 23:34:04



    「ごめん……僕はなんてことを……」

    力無く横たわるニャアンを、エグザベは抱きしめる。
    罪悪感や自己嫌悪に苛まれ、彼の顔には強い後悔が滲んでいる。

    あの時────彼女から『怖いの?』と問われた時に、考えるより先に身体が彼女を遠ざけようとした時に、すぐに引き返していればこんな後悔はなかった。

    「エグザベの部屋……本当になにもない」

    髪を乱し、放心した状態のニャアンが呟く。
    抱きしめる力が強すぎて痛かったが、それすら今のニャアンには心地よかった。

    「必要ないから」

    エグザベは短く答えると、ニャアンの首に顔を埋めてしまった。

    くぐもった謝罪の言葉が何度も彼の口から漏れる。
    悲痛な声だった。

  • 59二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 23:35:11

    下半身はそれぞれの液体が混ざり合ってどろどろになっていた。
    その中には血も混じっているはずで、少なからずニャアンは抱きしめられている上半身以外も痛むはずなのだが、それを口に出すことはしなかった。

    なぜかニャアンの表情は晴れやかで、彼の頭を優しく撫でてやる。

    「いいんですよ、あれくらい」

    ニャアンはむしろあの行為が嬉しかった。

    痛くて、苦しくて、怖かった。
    それでも、目の前にいる今にも泣き出しそうな顔をした、自分を抱いている彼を、すぐにでも慰めてやりたいと思った。

    そう思うに至ったのは、罰を執行されないまま3年間放置されていた彼女の罪のせいだった。

  • 60二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 23:37:31

    エグザベの大切な友人を殺した。
    知らなかったとはいえ、大量殺戮兵器の起動ボタンを押した。

    3年間の中でそれを忘れた日はなかった。
    幻覚と幻聴に怯え、時には高熱にうなされ、何度もあの気持ち悪さが自分に襲いかかった。

    ニャアンの罪は単純な殺人ではない。
    人間が足を踏み入れてはいけない領域に、何も知らずに彼女は立ち入ってしまったのだ。
    善意からそれを止めようとした者すら殺し、進み続けた。
    その結果、人智を超えた存在を呼び起こし、召喚者である彼女のために大量の生贄を喰らい尽くした。

    ────自分を止めようとしてくれた人を殺したのは正当防衛だったから、大量殺戮兵器だと知らなかったから、命令されたから……

    それで許されていいはずがない。

    だから嬉しかった。
    やっと自分に罰を与えられたようで。

  • 61二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 23:38:48

    0時前後の投下おしまい(短めですまぬ)
    次の更新は明日夕方以降で……

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 06:13:36

    おつらい……

  • 63二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 13:49:39

    >>57

    そこに至るまでの山あり谷ありがすごいから読み応えあるよね

  • 64二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 17:44:04

    早朝。
    エグザベは浴室から聞こえるシャワーの音で目を覚ました。

    腕の中にいたはずのニャアンの姿はもうなかった。

    ふと視線を落とすと、自分が服すら着ていないことに気づく。
    慌ててベッドから抜け出し、散らばった衣服を拾い上げながら身に着けた。
    昨夜の記憶を断片的に思い出していく。

    ────ひどいことをしてしまった。

    胸の奥に重く沈む感情。
    同時に、彼女は怒るでも泣くでもなく、なぜか自分の頭を撫で逆に慰めてくれた事実が余計に彼をみじめな気持ちにした。

    ぐったりと脱力した彼女の身体が、どれほど弱々しく見えたか。
    その光景を思い出すたびに、エグザベは深い後悔に苛まれた。

  • 65二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 17:47:03

    やがてシャワーの音が止む。
    暫しの静寂のあと、洗面所の扉が開く音がした。
    エグザベは息を整え、廊下へ出る。

    「……起きましたか」

    振り返ったニャアンは、いつも通りの表情だった。
    すでに外出着に着替えており、髪も整っている。その淡々とした様子が、かえって胸に突き刺さった。

    「ニャアン、昨日は────」

    言いかけた瞬間、彼女が静かに遮った。

    「今日中に仕上げたいレポートがあるので、もう出かけます」

    「車を出すよ」

    「今日は自分で行きます。ひどいニオイですよ、あなた」

    その言葉に、エグザベは小さく息を詰まらせる。

    「朝食は……?」

    「喫茶店で食べます」

    短く答え、彼女は視線を合わせないまま玄関へ向かった。

  • 66二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 17:48:53

    「……あなたの作る食事に不満があるわけではないので」

    ニャアンが付け加える。
    今は家事のほとんどをエグザベがやっている。
    おかげで家はいつも清潔で整えられている。
    食事もきちんと用意される────ただし栄養補給を最優先にしているせいで、味のほうはおざなりだった。

    ニャアンは通学用の鞄を手に取り、靴を履く。
    いってきます、とも言わずに扉の向こうへと消えた。

  • 67二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 17:50:53



    避けているわけではない。
    どんな顔をしていればいいかわからないだけで

    ニャアンはバスと電車を乗り継ぎ、学校へ向かった。
    講義が始まるまで少し時間があったので近くの喫茶店に入り、レポートを進めながら時間を潰すことにした。

    「(この時間帯は、あの人はランニングかな……)」

    ニャアンは、エグザベが普段どんなふうに過ごしているのか、いまいち分からなかった。

    『習慣になっちゃったから』という理由で続けているトレーニングと、分担してくれている家事以外で彼が特別何かをしているところを、ニャアンはまだ見たことがなかった。

  • 68二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 17:54:15

    配信サイトで無料で観られる旧世紀の映画を、ニャアンが居間の大きなテレビモニターで観ているとき、彼はよく近くにいてくれる。
    なんとなく彼も暇を潰したいのだろうと思い、一緒に観ましょうと誘えば素直に隣に座ってくれる。
    そうして一緒に映画を視聴するが、黙ってテレビモニターを見つめる横顔を見ても、面白いと思っているのか、退屈しているのかは分からない。

    時折ニャアンが「何か観たいものはある?」と聞くと、いつも「特にないよ」と返ってくる。
    彼の趣味や好みは、まだまったく掴めていない。

    「(二人で出かけてみたりしようかな……猫カフェとか、好きかな)」

    講義の時間が近づいていることに気付き、ニャアンは喫茶店を出て学校へ向かった。

  • 69二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 17:56:14



    「本日は“終わらない戦争”について話しましょう」

    臨床心理学の講義だった。
    モニターには『退役軍人の深刻な精神障害とそれがもたらす社会問題』という旨のテキストが表示されている。

    ジオン共和国の樹立を目指した長く激しい戦い、そして戦後に進められた軍縮政策。
    その影響を最も強く受けたのは現場で戦い続けた兵士たちだった。

    現在、ジオンにおける退役軍人の自殺率は一般市民のおよそ1.5倍に達している。
    退役軍人のPTSDや不安障害、薬物・アルコール依存、家族関係の不和など、社会全体でそれらの問題が取り沙汰されている。
    国家元首アルテイシア・ダイクンが掲げる支援制度は彼らの心を救いきることはできなかった。

    「戦場では“死”が日常です。銃声、爆発音、仲間の絶叫。人間の神経系は、それを“異常”として記録します。でも、その異常が“日常”として続いたとき────慣れます」

    講師が語る。

  • 70二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 17:58:13

    「ドストエフスキーは人間が何にでも“慣れる”存在だと説きました」

    「慣れ、とは絶望の中で生きる力であり、回復力であり、麻痺です」

    「帰ってきた彼らの世界は苦しみのない世界ではありません、ましてや元いた世界でもないのです。帰ってきた兵士たちは苦しみの中で新しい日常を再構築しなければならないのです」

    そこまで話すと講師はスライドを次のページに移す。

    「皆さんの家族や友人知人にも同じような人間がいるのではないでしょうか。今はいなくても、ここにいる大多数の人間が否が応でも卒業後に関わることになるでしょう」

    ニャアンはエグザベを思い浮かべる。

    彼は自分のよく知るエグザベ・オリベに見える。
    精神的に安定しており、クリニックの類に通っている様子もない。
    お酒も付き合いでしか飲まないらしく、健全そのものだった。

    ニャアンは自身の首に触れる。

    「(あれは、いったい何だったの)」

    彼に首を絞められた。

    そういうことをする人とは思っていなかったから驚いたし、それをする彼の今にも泣き出しそうな表情が気に掛かった。
    単に性的な趣向だったら、あんな顔はしない。

  • 71二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 17:59:24

    だが自分はそれを受け入れた。
    心臓が激しく高鳴る感覚、脳に直接快楽物質を浴びたような強い興奮が、自分の中の罪悪感を誤魔化してくれた気がして。

    本来なら怒ったり、もうしないでと拒否すべきかもしれない。
    だがニャアンは、自分にそれを言う権利があると思えなかった。

    ────あなたの大切な人を殺して、ごめんなさい。

    首を絞められ、軽い酸欠で頭がくらついた時に真っ先に思い浮かんだ言葉だった。

    彼女の罪が、彼女の本心をかき消している。

    「(次も、同じようにされるのだろうか)」

    ニャアンは首に触れていた手で自分の脈を確かめる。
    脈動が早まっている。

    「二人組を作ってください」

    講師の声に、ニャアンははっと顔を上げた。

  • 72二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 18:00:54

    モニターには《脳の過剰なストレス反応に対する安全・安定・関係性の再構築》という文字が映し出されている。

    「(どうしよう……講義、全然聞いてなかった)」

    近くに座っていた女子生徒が、ニャアンの隣に移動してくる。
    彼女はいつも三人組で行動している学生で、こうした二人組を作る場面になると、いつも余ってニャアンのもとへ来る。
    おかげでニャアンも一人にならずに済むし、気楽な距離感もありがたかった。

    彼女はディベートよりも何か別のことが気になっている様子で少し身を乗り出した。

    「ねえ、ニャアンさんをいつも送り迎えしてる人って……彼氏?」

    送り迎えしてくれている人────エグザベのことだ。
    ニャアンは反射的に口を開いた。

    「今日は、送ってもらってないです」

  • 73二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 18:02:26

    女子生徒は苦笑して、「そういうことじゃなくて」と言った。
    その瞬間になって、ニャアンはようやく質問の意図に気付く。

    「……どう見えましたか?」

    ニャアンが少し困ったような表情になりそう返すと、今度は女子生徒のほうが戸惑ったように黙り込んだ。
    私と彼はどのような関係なのか、恋人同士だと堂々と言えないことだけは感じていた。

    「講義、聞いてなくて……ディベートで何を話せばいいかもわからないです」

    ニャアンは無理やり話題を切り替えた。
    女子生徒は「ディベートなんて、やってるふりでいいよ」と笑いながら受け流し、近くの友人たちと目配せを交わした。

    最初から彼女は、自分と彼との関係を探るために来たのだとニャアンは察した。

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 18:03:36

    保守コメありがとうございます。
    次の投下は0時前後の予定です。
    講師の先生はただのそっくりさんです。

  • 75二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 18:35:46

    乙です
    よかった怪しい実技の課題を出してきそうな講師じゃなくて

  • 76二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 21:30:04

    このスレ主さんのエグニャアで一番成り行きが気になる二人かもしれない

  • 77二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:10:38



    学校を出ると、ニャアンは校門の近くに見慣れた車が止まっているのに気付いた。

    「迎えに来てくれたんですか……」

    「他にやることもないから」

    ニャアンは少し気まずさを感じながら、そっと助手席に乗り込んだ。

    「朝……におうとか言ってごめんなさい」

    「事実だから特に気にしてないよ。僕の方こそ────」

    「謝罪は聞き飽きました」

    エグザベが黙り込むと、ニャアンは視線を窓の外へ向けた。

    「趣味ですか、ああいうの」

    そうではないと分かっていながら、ニャアンはあえて問いかける。

    「趣味ではないよ……確かめたかっただけで」

    「何を?」

    エグザベは口籠る。
    ニャアンは窓ガラスに映る彼の横顔を見つめながら、回答を待った。

    しばらくの沈黙のあと、彼は普段よりわずかに低めの声で呟いた。

  • 78二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:12:22

    「自分の、居場所を」

    「居場所?」

    「もうしないから、この話題はやめにしないか……?」

    「……居場所ってなんですか、あんなことされたのに、私が何も感じてないと?」

    少し含みのある言い方をした。
    ニャアンは首を絞められたこと自体に怒りや悲しみを感じていない。
    むしろそこに救済を見出してしまっていた。
    だがそれはあえて言わない卑怯を選んだ。

    「君がちゃんと生きてるか確かめるために、君を殺してみたくなった」

    微かに震える声。
    その言葉に、ニャアンは黙りこくった。

    ハイデガーは死を『まだ来ていない未来ではなく、すでに私の存在の地平にある可能性』であると語った。
    大半の人間が『死』を未来の一点に押しやって、まだ起きていないこととして扱う。
    だが死というものはどこへ行っても背後にぴったりとついてくる影のようなものなのだ。
    人間はその影を見ないふりをして、未来の自分任せにしているだけで。

    つまり生きること自体が、死に向かい続けることなのである。
    だから彼の言う『生きていることを確認するために殺そうとする』は“死”を使って“生”を証明しようとする、二重の誤りだ。

    これらは全て本や学校の授業の受け売りで、彼女自身の言葉ではない。
    それにこの言葉は彼には毒にも薬にもならないだろう。

    ニャアンはため息を吐いた。

  • 79二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:13:28

    「ケーキ……食べたい」

    彼の言葉に返す言葉が見つからず、ニャアンは心にもない言葉を口にした。

    「ケーキ? じゃあケーキ屋さんに寄って行こうか」

    エグザベもそれで話題が終わったと判断したのか、声のトーンがいつも通りに戻る。

    脈絡もなしにケーキが食べたいなどと言った自分にも非があるが、彼は切り替えが早すぎる。

    「(こういうところがこの人の“違和感”なんだ……)」

    ニャアンは視線だけを動かし、窓に映る影ではなく、本物のエグザベの横顔を見つめた。
    まっすぐと前を見ていて、やはり何を考えているかわからない表情をしている。

  • 80二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:14:55



    買ってきたケーキをエグザベは冷蔵庫に入れる。

    「夕ご飯、今から準備するから」

    先にお風呂にでも入りなよと言おうとしたエグザベの携帯電話が鳴る。

    「ごめん、電話だ」

    エグザベは携帯電話を手に取り、廊下に出てしばらく話し込む。
    「自分に向いているとは思えない」「シミュレーションと実戦は違う」────そんな言葉が断片的に聞こえてくる。

    ニャアンはソファに腰を下ろし、耳を澄ませた。

    「……誰でしたか」

    戻ってきたエグザベに、ニャアンが問いかける。

    「フラナガン博士────卒業した学校の校長先生だよ」

    「どうして校長先生が?」

    「うちに教職員として就職しないかって」

  • 81二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:16:44

    「なるんですか、先生」

    「あんまり僕に向いてると思えないな」

    「……私にMSの操縦を教えてくれたじゃないですか」

    「君は飲み込みが早かったから」

    「一回試してみるくらいなら、いいと思いますけど」

    「そんな簡単に……」

    「きっといい先生になれると思います」

    それは本心からの言葉だった。

    エグザベは少し照れくさそうにしながら、「そうかな」と小さく呟いた。

  • 82二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:18:52



    「昨日の今日だよ?」

    エグザベの困惑した声。
    今朝交換したばかりのシーツの上で、彼は自分にまたがるニャアンを見上げる。

    「……私も確かめたいです。自分の居場所を」

    「ああ、そういうこと」

    エグザべは理解をしたのか、顎を軽く上げて自身の首を差し出すような形になる。

    ニャアンはその首に、彼女の細くしなやかな指を伸ばし────撫でた。

    「……っ!」

    くすぐったいのか、エグザベはわずかに身体を震わす。

    そのまま、ニャアンは彼の首にそっと唇を寄せた。
    やや不器用に、肌を吸い上げるようにして刺激を与える。

    顔を上げたニャアンは、彼の首に浮かんだ赤い痕を見つめ、満足そうに微笑んだ。

  • 83二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:20:34

    そして、もう一度同じように口付けをする。

    「な、何してるの……?」

    首を吸われる感覚に身を震わせながら、エグザベが問う。

    「キスマークでの死亡事例があります」

    三度目。
    かなり上手にできるようになった。

    キスマークをつけられるたびにエグザベがわずかに反応するのが面白いのか、ニャアンの表情は次第に熱を帯びていった。

    「首は血管や神経が多いから……あんまり傷つけちゃダメなんです。死んじゃうかもしれないから」

    ちゅっ、ちゅっと音を立てながら、まるで子猫のように甘える仕草で、ニャアンは彼の肩に手を添え、首筋へそっと口づけた。

    「どうです。私は今、あなたを殺そうとしてますけど、生きてますか」

  • 84二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:23:12

    「これでそうなったら苦労しないね……」

    エグザベの顔は真っ赤だった。
    首から肩にかけては、ニャアンの執拗な口づけで無数の皮下出血────キスマークが残り、見るも無惨な状態になっていた。

    「あなたの番です」

    ニャアンは彼の両手を取り、自分の首へ導いた。

    「しないよ……」

    「行為中じゃないと、意味ないですか」

    「そういうことじゃなくて」

    エグザベの手を放すと、ニャアンはもう一度彼の首に唇を寄せた。
    そして今度は歯を立てた。

    「……なっ!?」

    皮下出血を起こしていたせいか、表皮をかすかに切っただけでも血が滲み出た。
    ニャアンはその血をそっと舐めとった。

    「ダメだよ、そんなもの舐めちゃ……っ!」

    エグザベはびくりと半身を起こし、覆いかぶさっていたニャアンをそのままベッドに沈める。

    彼の表情には焦りの色が浮かんでいる。

  • 85二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:26:09

    今度はニャアンが彼に見下ろされる側になった。

    「やり返してもいいですよ」

    強がりの言葉だった。
    ニャアンは努めて冷静を装い、彼の目を見返す。
    胸の奥で鼓動が早まっているのを感じた。

    エグザベの手が、そっとニャアンの首に触れた。
    冷たく、そして震えている。

    「脈を測ってるつもりですか?」

    彼は戸惑い混じりに笑おうとしたが、ぎこちない。
    ゆっくりとその手を離し、自身の背中の後ろへと隠した。

    「今日……早起きだったよね。明日も早いんだから、寝よっか」

    言葉はいつもの穏やかさを取り戻しているように聞こえた。
    だがニャアンの第六感的なものが告げる。

  • 86二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:27:34

    彼は苦しんでいる、と。

    昼間の講義──── “終わらない戦争”が思い出された。

    目の前にいる彼の心も、まだ戦っているのではないか。
    戦争に心が最適化され、今いる場所に自分の居場所を見出せないのではないか。

    つまり彼には安心が必要なのだ。

    そばにいて、一緒に居場所を作ることを示れば、少しは楽になれるかもしれない。
    それが自分にできるかどうかは、今はどうでもよかった。

    「噛んじゃって、ごめんなさい」

  • 87二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:29:04

    「別にそれは……」

    ニャアンは立ち上がり、自室へ走るように向かう。
    救急箱を取り出し、必要なものを手にして戻る。
    慣れた手つきで彼の傷を手当てした。

    「上手だね」

    「一応看護学部に通っているので……」

    手当てが終わると、ニャアンは考えるより先に彼を抱きしめていた。
    最初は戸惑っていたエグザベも、頭を撫でられると彼女に委ねるように身を預けた。

    「あったかいね、ニャアンは」

    そんなことを漏らして、彼はそのまま目を閉じる。
    声がいつになく柔らかく、脆い。

    「今晩も、一緒に寝たいです」

    ニャアンの言葉に、エグザベは穏やかにうなずいた。

    「うん、そうしようか」

    ニャアンにひとつの決意が芽生えていた。

  • 88二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:34:10

    私が彼の戦争を終わらせられるのなら。
    いや、終わらせるのは私だ。

    正確に言えば、私の手で終わらせたいのだ。

    もしこれが、彼の大切な友人に留まらず、多くの命を奪った自分に課された義務だとするのなら、これを乗り越えなければ、私は自分の罪にすら目を背けることになるだろう。

    彼のためではない、これは私自身のエゴなのだ。

  • 89二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 01:35:27

    投下終わり。
    次の投下は夕方以降の予定です。
    スケベならずで申し訳ないです。
    コメントありがたいです。

  • 90二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 11:32:26

    保湿

  • 91二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 11:34:43

    保湿
    ニャアンの方からエグザベの苦悩に寄り添って行くのいいな

  • 92二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 18:47:25

    あれから一週間が経った。
    ニャアンはエグザベを観察していくつかわかったことがある。

    手持ち無沙汰になるとぼんやりと窓の外を眺めること。

    運転中を除き、会話をする時は必ず相手と視線を合わせようとすること。
    彼が何か作業をしている時に声をかけると、その手を一旦中断して必ずニャアンの方を振り返る。

    彼の作る食事は栄養バランスを最優先にしており味は二の次だった。
    だが美味しいケーキや、外食や、ニャアンが用意した食事を食べている時の方が反応は良い。
    つまり彼も美味しいものの方が普通に好きなのだ。

    どんな映画を観ていても、彼の表情からは面白いのかつまらないのか判断がつかなかった。
    しかしあまりに退屈な映画────例えば低予算で低クオリティ、ストーリーも破綻し、肝心のサメがほとんど出てこないサメ映画などを観ているときは違った。
    彼は姿勢を崩し、時おりテレビモニターではなくニャアンのほうへ視線を向ける。
    観るに耐えないが、同時視聴している人間が楽しんでいたら申し訳ない、という気持ちで様子を伺われていることくらいは彼女でもわかった。
    一方で映画のワンシーンで、ニャアンが感動して泣きそうになっていると、彼がほんの少しだけ身体を寄せてくることがある。
    それが慰めるためなのか、それとも自分も同じ気持ちだと伝えたいのか、そこまではわからなかった。

  • 93二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 18:48:38

    最後に、彼は眠りが浅い。
    一週間ほど同じベッドで眠っていたが、ほんのわずかな音にも反応し、ニャアンが用事でベッドを離れようとするだけで目を開けてしまう。
    もっともすぐに再び眠りにつけるため、これは深刻な問題ではなかった。
    それに眠っている彼はほぼ必ずと言っていいほどニャアンを抱きしめる。
    その間はいつもより眠りが深いように見える。

    抱き枕などで代用できるのかはわからない。
    けれど彼に抱きしめられるのは嫌ではない。むしろ嬉しい。だからニャアンは特に何も言わず、そのままにしておくことにした。

  • 94二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 18:50:29



    すっかり二人で一緒に眠ることが習慣になってしまった。

    朝。
    ニャアンはエグザベに抱きしめられたまま眠ってしまっており、目を覚ますと少しだけ身じろぎした。

    「今日は……土曜、だよね」

    エグザベの意識もすぐ覚醒する。

    「パン屋さん……行きたいので」

    ニャアンはそう言うと、するりと彼の腕から抜け出してしまった。

    「僕も行くよ」

    「人気のパン屋さんなので、あなたもいたらかさばります」

    「そっかぁ……」

    エグザベはまどろんだ目で彼女の背中を見送ると、再び浅い眠りに落ちた。

  • 95二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 18:51:51

    ことん。

    何かを置く音で、エグザベはまた目を覚ます。
    起きて確認すると、ニャアンが窓辺に立ち、小さな花瓶に活けられた花を眺めている。

    「……かわいいお花だね」

    ベッドに横たわったまま、エグザベは呟く。

    「ミモザです。お花屋さんで売れ残りが安くなっていたので」

    ひだまりのような淡く黄色い小さな花。
    ほのかに甘い香りもする。

    「その花、ニャアンに似てる」

    やや寝ぼけた声。

    「……気障ったらしいことを言うんですね」

    「えっ、いや、そんなつもりじゃ……!」

    思わずエグザベは身体を起こす。

    「今日は私が朝食を作るので、顔を洗ってきてください」

  • 96二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 18:57:46



    「バゲットサンドか、美味しそうだ」

    「ウィエットパンです」

    バゲットの切り込みの中にはハムの他に香草や甘酢漬けにされた大根と人参が詰められ、エスニックな様相を示している。
    付け合わせに湯気の立つスープが添えられている。

    「バインミーとは違うの?」

    「そうとも言いますね」

    二人は食事を始める。

    「すごく美味しい。ありがとう」

    美味しそうに食事を食べるエグザベの姿を見て、ニャアンの表情が綻ぶ。

  • 97二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 18:58:52

    食後、半ば押し切る形でエグザベが食器洗いをする。

    それを終えると携帯電話を取り出し、なにかを調べ始める。

    「ニャアン、この後二人で出かけない?」

    「どこへ?」

    「少し遠いけど、ミモザの花が綺麗な丘があるみたいだから、よかったら行かない?」

    「……好きなんですか、あのお花」

    「君に似てるから、気になってるかも」

    その一言に、ニャアンの肩が小さく揺れた。

    「もしかして、私……からかわれてます?」

    赤くなった頬を隠すように俯く。

    その様子を見たエグザベはようやく自分の言葉の気恥ずかしさに気づき、思わず口元を押さえた。

    ニャアンは俯いたまま呟く。

    「行きます、着替えるので待っててください」

  • 98二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 19:00:53



    ネットで調べればすぐ出てくるような場所だったが、車がないと行きづらいせいか人はあまりいなかった。

    丘一面に咲くミモザの花が、陽射しを受けて淡い黄色をきらめかせ、風にそよいで揺れていた。

    やわらかな香りが通り抜けていく。

    「綺麗ですね」

    ニャアンは穏やかな表情でその光景を見つめ、静かに呟いた。
    花の香りを運ぶ風が、彼女の長く美しい髪をやさしく揺らす。

    その姿は一枚の絵画のように美しかった。

  • 99二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 19:03:12

    「……」

    「エグザベ?」

    ニャアンが怪訝そうな表情で彼の顔を覗き込む。
    エグザベは一瞬、返す言葉に迷った。

    君に見惚れていた、なんて言ったらまたからかっていると思われるだろう。

    「ごめん、少しぼんやりしてただけ」

    「……寝不足ですか」

    「よく眠れてるよ。君だって見てるだろ」

    ニャアンは半ば呆れたように、少しだけじとっとした視線を向けた。
    眠りが浅いくせに、と心の中で呟く。
    生活に支障が出ていない限り、指摘することはなかった。

    向かいから、手を繋いだ若いカップルが笑い合いながら通り過ぎていった。
    ニャアンの視線が自然とその二人を追う。

    「……手、繋ぎますか」

    ぽつりと漏れた声に、エグザベが少し驚いたように彼女を見る。

  • 100二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 19:05:50

    ニャアンが再び呟く。

    「……繋ぎたいです」

    エグザベは彼女の手を取った。

    「ありがとう」

    そんなことを言いながら。

    「どうしてあなたがお礼を言うんですか」

    二人は手をつなぎ、陽射しを受けてきらめくミモザの花の間を並んで歩く。

    「ミモザの花を贈ると……あなたがいてくれて嬉しいとか、生きていてくれてありがとうって意味になるらしいです」

  • 101二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 19:07:36

    ニャアンの呟きに、エグザベは彼女が今朝窓辺に飾っていた小さなミモザの花を思い出す。

    「君は僕に、そう思ってくれてるってこと?」

    ニャアンはやっと、今朝に自分がそれを彼の部屋に飾っていたことを思い出し、慌て出す。

    「ちっ、違う……私はたまたま……です! あなたの部屋が殺風景で、何もないのが悪いんですっ」

    「本とか全部、電子で済ませちゃうからなぁ……」

    エグザベは彼女の狼狽をまるで気づかないように、どこかずれた言葉を返す。

    「……もし、本当にそういう意味で私が贈ってたら、嬉しかったですか?」

    少し拗ねたような声。

    「そういう意味じゃなくても、お花を貰ったら嬉しいよ」

    どうしてこの人は、いつもそうなのだろう。
    一歩踏み込んだところで、必ず優しく受け流してしまう。
    まるで深いところを見せることを恐れているみたいに。

    「私は、あなたとどういう関係なんでしょうね」

    思わず口から零れた言葉だった。
    学校で同級生に聞かれた「いつも送り迎えしてくれる人は彼氏か?」という問いが、まだ彼女の心のどこかに引っかかっていたのだ。

  • 102二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 19:10:49

    エグザベは目を伏せる。

    「ごめん……」

    低く落ちた声。
    その一言の意味を、ニャアンはすぐに掴めなかった。最悪の予想をし、血の気が引いて手先が冷たくなるのを感じた。

    「ずっと僕たちは、そういう関係だと思ってた……」

    それは申し訳なさそうな声で告げられる告白だった。

    「え……」

    ニャアンは微かな驚きの声を立てる。

    「恋人同士でもない人と、できないことばっかりやってるから……てっきりそうだと……ごめん」

    エグザベは耳まで赤くする。

    「そうですか……そうですよね……はい、私もあなたとじゃないとできないことだらけです」

  • 103二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 19:11:59

    ニャアンは一人で納得すると、周囲に人がいないことを確認する。

    そして彼の頬に手を添え、静かに唇を重ねた。

    「……なんで?」

    驚きと戸惑いが混じった声。
    けれどエグザベの表情は、どこか安堵した様子が見て取れた。

    「私を不安にさせたペナルティとでも」

    「なにそれ」

    二人は手を繋いだまま淡い黄色の花々のあいだを歩く。
    風が吹くたびに、甘く優しい香りがふたりを包む。

  • 104二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 19:13:24

    投下ここまで。
    次の投下は0時過ぎか明日の夕方以降です。
    やっとスケベが書けます。
    保守とコメントありがとうございます。
    フフフ……

  • 105二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 20:07:43

    なんだよもー
    重いだけじゃなくて甘酸っぱいじゃん
    いいぞー

  • 106二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 21:53:03

    ニャアンのフレグランスのミドルノートがミモザだよね確か

  • 107二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 22:18:34

    花のような女の子・・・

  • 108二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:00:35



    エグザベの部屋。

    濡れた髪をそのままに、薄着の二人はベッドの上に横たわり、言葉もなく深い口づけを交わしながら互いを確かめ合う。
    湯上がりの余熱が肌に残り、しっとりとしたぬくもりがふたりを包んでいた。

    「……ぁっ」

    膨らみに触れられて、ニャアンは吐息混じりの声を漏らす。

    「んっ、あっ……」

    なだらかでやわらかな曲線の頂を刺激されると、喉の奥で溶けるような声を吐き出す。

    すりっ、とニャアンは自身の下腹部を彼の下半身に擦り付けた。

    『はやくちょうだいと』でも言いたげに、すりすりと腰を擦り付ける。

    縋るような、ご飯を求める猫のような目。
    約一週間ぶりでまだ2回目の行為だったが、彼女はずっと待ち侘びていた。

    エグザベは応えるように彼女の腰に手を回し、彼女のいちばん熱を宿す場所に触れてみる。

    すっかり準備が整っている様子だった。

    エグザベは姿勢を変え、とろけるように熱いその場所に口をつける。

  • 109二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:03:36

    「やっ……! だっ、ダメっ きたないからっ」

    こぼれそうなほどあふれているあたたかな液体を舌で舐めとるように、その場所を刺激する。

    「ぁっ……んっ、」

    舐めても舐めてもそれはあふれてきた。

    「これがニャアン味か……」

    からかうような口調でエグザベが呟く。

    「ばか……」

    ニャアンの顔は真っ赤で、恥じらいに震えている。

    「君だって、僕の血を舐めてた」

    彼女のほてった深奥に、エグザベは自身のものをいれる。

    触れ合っている部分が溶けてしまいそうなほど熱い。
    自分の中に入ってくる雄を逃すまいと、きつく締め付けているような感覚が、彼の情欲を掻き立て理性をいとも容易く取っ払った。

    身体が奥深くに触れ合う度、彼女の喉の奥から小さな声が零れる。
    下で起こっている目を逸らしたくなるような営みと反比例して、子猫の鳴き声のように可憐な声が響く。

    互いの心臓の高鳴りを感じられるほど近い。
    あたたかく、はげしい。
    間違いなく生きている。

  • 110二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:07:24

    彼の無意識が、自身の両手を彼女の首へ導く。

    もっと感じたかった。
    彼女の“生”を。

    それを止める理性は今のエグザベにはなかった。

    あるいはこれが彼の隠されていた本性なのだろうか。
    郷愁と共に消したはずの“18歳より前のエグザベ・オリベ”が暗闇の奥底から突き動かしているとしたら。

    あるいは身勝手で矛盾した行動でしか、目の前にいる大切な人がちゃんと生きていると実感できない“欠陥”がこうして表出しているのだったら。

    首を絞めらたニャアンは、苦しげに眉を顰める。
    彼女の心臓は高鳴り、自身の中に侵入するものを締め付ける。

    だめだ、すぐにこんなことはやめなければ。
    頭ではそう考えているはずなのに、エグザベの肉体は今この瞬間の、生と死のあわいにある甘美な地獄に溺れかけていた。

    ニャアンは霞む意識の中にいながらも、真っ直ぐとエグザベを見つめた。
    揺らぐ視界の中で彼の顔だけを見て、震える両手を伸ばし、その頬に触れる。

  • 111二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:09:06

    ニャアンは言いたいことを伝えようと叫んだつもりだったが、声になったのは掠れた呻きだけだった。

    「わっ、たし……を……」

    絞り出される声。

    「しん、じて……」

    言い終えると、微笑んでみせる。

    「あっ……」

    エグザベの声。

    彼の目から一粒の雫が落ちる。
    両手はニャアンの首からすでに離されている。

    「だいじょうぶ」

    ニャアンは胸を荒く上下させながら、彼の頬を伝った涙の跡を指先でそっとなぞった。

  • 112二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:10:26

    「だいじょうぶだから、つづけてっ」

    瞳を滲ませながらニャアンは声を上げ、下から彼のものを自分の一番奥に受け入れた。

    ニャアンは噛み付くようなキスをする。
    突き動かされて、エグザベは行為を再開した。

    「わた、し、はっ、しなないっ、ぜったいに……!」

    激しく突かれながら、息を乱しながらニャアンは告げる。
    そのままエグザベに腕を回し、抱きしめた。

    「ごめん……」

    掠れた声が彼の喉から漏れる。

    「もっとっ、きて」

    謝罪の言葉などには構わず、ニャアンは彼の中の熱を呼び起こす。
    言われた通り、彼は彼女の奥へ奥へと自身のものを突き動かした。
    獣のように貪り尽くし、ニャアンも雌猫の鳴き声を上げた。

    やがて果てると、エグザベは糸が切れたように力を失い、彼女に覆い被さるようにベッドに沈んだ。

  • 113二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:16:17

    しばらく二人の荒い息だけが部屋に響く。

    「ごめん……」

    「本当にそういうの、いらないです……」

    しばらくするとエグザベはニャアンに覆い被さるのをやめ、隣に寝転ぶ。しばらく黙り込んだ後、ゆっくりと口を開く。

    「NTがNTとして生きられる世界に……僕の居場所はない」

    ぼんやりと天井を仰ぎ、かすれた息の中からこぼれた言葉。

    「どうして……?」

    ニャアンは両手で彼の頬を包み込み、無理やり自分の方に顔を向けさせる。
    伏せられたエグザベの瞳には影が落ちている。

    「僕は他者を導くことも、守ることもまともにできなかった」

    導くことも、守ることもできなかった他者────かつて難民だった少女や、自らが隊長として率いていた小隊のメンバーたち、そして仕えていた主君。

    「戦うことしかできない僕は────」

    かつての難民の少女────ニャアンは彼の言葉を遮る。

    「シャリアさんは……あなたに救われたと言ってました」

    「……救われたのは僕だよ」

  • 114二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:17:51

    「私だってあなたに救われた。あなたには自覚が足りてないだけ」

    あの日、サイド6の街でひとりぼっちだった自分に舞い降りた白磁の騎士を、差し出された手を、なかったことになどさせたくなかった。

    「NTがNTとして生きられる世界があなたを排除するなら、そんな世界……いらない」

    「壊したっていい、私ならそれができる」

  • 115二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:18:53

    言い切ると同時に、ニャアンは彼を強く抱きしめた。
    彼がちゃんと痛いと思えるように、精一杯の力を込めて。

    彼をこの世界に繋ぎ止めるために。

  • 116二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:20:25



    ニャアンは、学校で学んだ知識や本で読んだ言葉を思い出しながら考えを巡らせる。

    ゴットホルト・エフライム・レッシングは『特定のことに直面しても分別を失わない者は、そもそも失うべき分別をもっていないのだ』と説いた。
    “何があっても正常”な人間は立派なのではなく、そもそも“本気で感じていない”のだと。

    人間は苦悩と情熱の中でこそ理性を試される。

    理性とは、感情が衝突し心が崩れ落ちるその瞬間に姿を現す。

    安定した理性はただの習慣にすぎない。
    苦悩を乗り越えた先に“本当の理性”が生まれるのではないか。

    つまり彼のあまりに安定した理性は数々の苦難の中で心を守るため────感情の衝突や心の崩壊を意図的に排除し続けた末に、残ったものなのではないか。

    一度排除された感情の衝突と心の崩壊が戻ってきてしまえば、彼は遅れてやってきた感情の波に飲まれてしまうのではないか。

    それが今、自分の目の前で起こっているとしたら。

  • 117二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:21:46

    彼の心はとっくにアパシー、すなわち“魂の死”に陥っていたのかもしれない。

    それは心の防衛反応であり、作られた理性が勝ちすぎた故の末期症状で、実は彼はとっくに限界を迎えていたのだはないか。

    初めて会った時から、すでに。

  • 118二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:23:27

    ここから先はニャアンの想像だ。

    彼には光があったのではない、彼自身が光だった。
    闇を裂く、眩しすぎるほどの光。

    光は暗きに照る。

    そして闇のない世界には光もささない。

    彼は眩い光で、その分だけ暗い影を生み出した。
    あろうことか彼は、その影を自分の中に隠してしまった。
    彼は彼の光で他者を照らしながら、実はその心はずっと暗闇の中にいたのではないか。

    今度は彼が光の下に連れ出される番ではないか。

    世界を照らすその太陽に、光が届かぬと、なぜ誰も疑わなかったのだろう。
    世界を明るくする太陽もまた、他所からの光を求めているかもしれないのに。

  • 119二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:25:30

    二人は一つのベッドに向かい合うようにして横たわっていた。

    「あなたは、知っているでしょう?」

    ニャアンはじとっとした目でエグザベを見つめている。

    「私は11の時に故郷を追われてから、わりとしぶとく生きてきたと自負してます」

    「うん」

    「私は強いですよ」

    「そうだね」

    「あなたが思ってるより、ずっと強いです」

    「骨身に染みたよ」

    ニャアンの言葉全てに、エグザベは答える。

    「だから私のことを信じてください」

    「……ありがとう」

    ニャアンはそっと手を伸ばし、彼の首筋に触れる。
    脈を確かめるように指先をあてると、鼓動が指先に伝わった。

    「脈が早いですね……」

    彼女は目を丸くしてから、ふっと微笑む。どこか安心したような表情だった。

  • 120二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 00:26:30

    投下おしまい。
    次の投下は明日の夕方以降か0時前後。
    コメント嬉しいです。
    スケベ薄めですいません。
    精進します。

  • 121二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 08:11:08

    保湿

  • 122二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 14:42:23

    今日たまたま見つけたけどこの文体は……
    エグニャックス界のドスケベシリーズの人?

  • 123二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:31:02

    一週間後。

    『今日は実習で何時に帰れるかわかりません。明日も朝早くから実習があるので、今日はマチュのところに泊めてもらいます』

    看護実習先の病院で、ニャアンは携帯電話を操作しエグザベに短いメッセージを送った。
    すぐに携帯電話の電源を落とし、ニャアンは実習に戻る。

    実習が終わる頃にはすでに時刻は20時を迎えようとしていた。
    ニャアンは実習先からほど近い、かつて自分が暮らしていた家へ向かった。

    玄関の前に立ち、合鍵を差し込む。
    懐かしい感触と共に、かちゃりと錠が外れる音が響く。

    「ニャアン! おかえり!」

    ドアが開く音が聞こえたのか、マチュが笑顔で駆けつける。

    以前三人で暮らしていた家。
    今はマチュとシュウジの二人で暮らしているが、家の中はニャアンがいたころとほとんど変わっていない。

    遅れてシュウジも玄関にやって来る。

  • 124二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:33:40

    「ただいま。二人とも久しぶり」

    「早く早く! 映画観ながら夕飯食べよ!」

    三人は一緒に住んでいたころの癖で、自然と一つのソファにすし詰めになる。

    真ん中に座ったマチュが、リモコンを手にテレビの電源を入れた。

    「伝説の発禁映画……どんな内容か楽しみ」

    シュウジは両手を握りしめ、ワクワクしている様子だった。

    「ニャアンが観たがってた映画のディスク、ダイビング中に見つけたから持って帰ってきちゃった」

    「僕がデータを復元したから、完璧な状態で観られるはずだよ」

    「ふたりともありがとう」

    ニャアンはマチュとシュウジに礼を言う。

    「いーのいーの、シュウジも観たがってたやつだから」

    三人はテレビモニターに視線をやる。

  • 125二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:34:52

    テーブルの上には三人おそろいのグラスと、デリバリーの食事が並べられている。

    やがて映画が始まる。

    「復元中に少し観ちゃったんだけど、このキャラは────」

    「こらシュウジ! ネタバレは厳禁!」

    「この曲、この頃からあったんだ」

    三人は和気藹々と映画を楽しんだ。

  • 126二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:36:36



    「映画、めっちゃ面白かったね! あれがお蔵入りだなんてもったいないね!」

    流し台の前で泡だらけの手を動かしながら、マチュが振り返る。

    「ね。すごく映像も綺麗だった」

    ニャアンは洗った皿を布巾で拭き取りながら、穏やかに答える。

    「ねー、本当に明日には帰っちゃうの?」

    マチュは甘えたような声を出す。

    「ずっとニャアンにはこの家にいてもらいたいよ、毎日美味しいご飯が食べられるし」

    「私がいたら迷惑じゃない?」

    「そんなわけないじゃん」

    マチュは肘でニャアンの肩を軽くつつく。
    ニャアンはくすぐったそうに肩をすくめて、口元をほころばせる。

    「作り置き、いっぱい作るから。冷凍できるやつにしておく」

    「ありがと!」

    マチュはにっと歯を見せて笑う。
    けれど次の瞬間、少しだけ視線を伏せる。

  • 127二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:37:54

    「……そういえばさ、」

    声のトーンが変わる。

    「あの変態に変なことされてない? ニャアンは流されやすいから、心配だよ」

    「変なことって、何?」

    「そりゃもう……あるでしょ!」

    マチュは顔を真っ赤にして声を上げる。

    「マチュだって、シュウちゃんといっぱい変なことしてる」

    「ちょ、ちょっとぉ! それは関係ないでしょ!」

    「マチュの声は大きいから、今日くらいは声を我慢してね」

    「もー! ニャアンの耳がいいだけだし!」

    堪えかねたマチュがニャアンに頭突きをする。

    「いたいよー」

    ニャアンが笑いながら、子供のような声で抗議する。

  • 128二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:39:49



    翌日。
    ニャアンはマチュとシュウジの住む家を後にし、実習先の病院に向かう。

    実習の後は学校に戻り、必修の講義を受ける。
    それらが終わって校門を出るとやはり見慣れた車が止まっており、助手席に乗り込む。

    ニャアンは運転席のエグザベの顔を見て目を丸くする。

    エグザベの目の下には濃いクマができていた。

    「どうしたんですか……? ひどいクマ」

    「なんだか昨晩は寝つきが悪くて、仕方がないからトレーニングして気を紛らわせてたんだ」

    エグザベが苦笑いを浮かべる。

    「徹夜明けってことじゃないですか。大丈夫ですか、運転なんてして……」

    「こういうのは慣れてるから、3日くらいなら一睡もしなくても影響は出ないよ」

    「どうして眠れなかったんですか」

    ニャアンが切り出すと、エグザベは少し間を置いた後に答える。

    「一人で寝るのは久しぶりだったから、かな」

  • 129二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:42:00

    「一人じゃ寝られないなんて、小さな子供みたい」

    思わずニャアンはそんなことを口走る。

    「うん、そうだね。だから今夜は一緒に寝てほしい」

    冗談とも本気ともつかない声音に、ニャアンは思わず眉をひそめた。
    どうしてこの人は、そんなことを平然と口にできるのだろう。

    「仕方ないですね……」

    ニャアンの顔は赤い。

    ────ふと、彼女の脳裏にひとつの懸念がよぎる。

    彼は酒やタバコや薬物に依存をしていない。
    だが、もし彼の依存先が私だったら。

    烏滸がましい考えとは自覚している。

    それでも、もしそうなら。
    今の関係は“相互安定”が成立しているのではないか。
    ニャアンは彼の“安全基地”として機能しており、彼女はそれを満更ではないと思っている。ならば無理に断ち切る必要はないだろう。

    いま彼に必要なのは、離れていても心穏やかでいられるような、そんな“安心”なのだ。
    それは焦らず少しずつ育てていけばいい。

    そんな考えに耽っていると、エグザベが静かに言った。

    「そういえば、軍に戻ることにしたんだ」

  • 130二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:43:27

    「え……?」

    ニャアンの思考が止まる。
    エグザベはいつもの穏やかな口調で続ける。

    「シャリア准将と相談して、すぐにではないけど」

    「軍で、何をするんですか」

    「後進育成がメインになるのかな……」

    「教官になるんですね」

    「うん。君に言われてから色々考えて、頑張ってみようかなって」

    「応援してます」

    「ありがとう」

    一瞬、車内が静けさに包まれる。

  • 131二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:44:41

    「君に何も相談せずに決めてごめん」

    「別に……あなたの人生じゃないですか」

    ニャアンは窓の外を見つめながら言った。

    「多分、サイド3勤務になる。運良く地球での勤務だったとしても今いる場所からは離れちゃうだろうし」

    その言葉に、ニャアンは横目で彼を見つめる。
    申し訳なさそうな顔をしていた。
    だがどこか、寂しさを隠そうとしているようにも見えた。
    それは彼女の願望も投影されているのかもしれない。

    「私がちゃんと学校を卒業できたら……軍属で働けたりしますかね」

    「一緒に来てくれるの?」

    エグザベの表情に、かすかな光が差す。

    「当たり前じゃないですか。むしろ私を置いていくつもりだったんですか」

    「いや、そんなつもりは……」

    「あなたは危なっかしいところがあるので、私はどこまでもついていきますよ。エグザベ少佐」

  • 132二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:46:20

    「階級で呼ぶの、やめてくれよ」

    「なんとなく予想はしてましたけど、やはり軍には戻るんですね」

    「でも前線には出ないし、多分非戦闘員だよ」

    よかった、とニャアンは心の中で呟く。

    「あと君の軍属の話だけど……できればそういうのとは無縁の場所にいてほしいかも」

    「そしたら、あなたのそばにいられないじゃないですか」

    「前線勤務じゃないから、ちゃんと家には帰れるよ」

    「そうですか。まあ就職先まだ先の話なので、検討しておきます」

  • 133二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:48:56

    投下ここまで。

    次の投下は0時過ぎか明日の夕方。

    保湿コメありがとうございます。


    恥ずかしいから言えなかったけどバレちゃったなら仕方ないですね。

    以前にもスケベSSは書いてました。

    誤字が多いですがスケベです。


    甘めのドスケベスレ

    (CP閲覧注意)慰めるよ…|あにまん掲示板自分を…bbs.animanch.com

    苦めのドスケベスレ

    (CP閲覧注意)未亡人か……|あにまん掲示板私がそうなるなんてbbs.animanch.com
  • 134二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 20:00:50

    ドスケベの人で認知されていきそうなの草

  • 135二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 20:07:15

    甘めの方にシャレにならない鬱展開入ってるのも草なんですよ

  • 136二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 20:49:44

    またの名を【エグニャックス界の直木賞受賞者】と呼びたい
    (甘めの方のpart4終盤のレスにあった呼称)

  • 137二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 20:52:30

    お互いの間にまだまだ問題や距離感がある
    でも恋人同士、ってシチュはこの二人では読むの初めてかも
    新鮮だわ

  • 138二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:13:11



    今日はニャアンの部屋のベッドで、二人は向かい合うように横たわっていた。

    「今の平和が一時的なものだとしても、ちゃんとそれを噛み締めないともったいないよね」

    エグザベがぽつりと呟いた。
    低く穏やかな声だった。

    「突然どうしたんですか」

    ニャアンはまっすぐに彼の瞳を見つめた。
    彼の感情の機微を見逃さないように、まばたきすら忘れて。

    「戦争は人間をただの数字にしてしまう。殺しても殺しても、死体が積み上がるのではなく、撃墜数として数えられるだけ……きっと僕は、人間を人間として見られなくなっていた」

    淡々と語るその言葉に、彼の心の奥底でまだ消えずに燻っているものがあると伝わってくる。

    ニャアンは静かに問い返した。

    「ずっと……それを考えていたんですか?」

    「いや、考えるようになったのは最近のことだよ」

    ニャアンはしばらく黙ったまま、枕の端を指でなぞる。

    「私が……クランバトルで撃墜したのは、2機」

  • 139二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:14:37

    そして二人の人物の名前を呟く。

    「ガイアとオルテガ……」

    彼女の心の中で今もまだつっかえている、二人の人間の名前。

    「……?」

    「私がクランバトルで命を奪った人たちです。初めてMSで戦った相手でした……」

    「すごく好評だったらしいです、あの試合。人が死んでいるのに、恐ろしいですよね」

    ニャアンは淡々と語る。

    「面白い試合の中だったら、殺人歴が戦歴としてすごいと言われる。本当に、何もかもが正気と思えません」

    エグザベは思い出す。
    彼女が代打で出た勝負の対戦相手
    かつて黒い三連星と呼ばれたエースパイロット3人組のうちの2人だったはず。

    あまりこのような表現はしたくないが、元エースパイロット相手にニャアンは悪魔のような戦いぶりだった。

  • 140二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:16:02

    「教授のツテで……ウーセンのマッシュ市長と手紙のやり取りをしたことがあるんです」

    「……え?」

    エグザベの声が低く揺れる。
    黒い三連星の最後の生き残りの名が出るとは思っていなかった。

    「言いました、彼らの最後のクランバトルの対戦相手が私だったことを」

    ニャアンの指先はシーツを握りしめている。

    「今更クランバトルのことで出頭したって、証拠不十分でまともに取り合ってくれない。でもあなたからの通報だったら軍警も動いてくれるはず……そうでなくても報いを受ける覚悟はできていると」

    その声には懺悔も開き直りも含まれていなかった。

    エグザベは言葉を失う。

    自分が宇宙にいた間、彼女は地球で自分の過去と向き合い続けていたのだろうか。

    「マッシュ市長からの返事は?」

    しばしの沈黙ののち、ニャアンは呟く。

    「あなたは彼らに引導を渡しただけで、私から与える罰などない、と」

    ニャアンは自嘲気味に笑う。

  • 141二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:20:26

    「マッシュ市長には、とても幼稚なことをしてしまったと思ってます……でも彼のおかげで今私は、ガイアさんとオルテガさんは戦争を終えられなかった人たちだったと理解できます」

    あの時は痛くて、苦しくて、まともに考える余裕なんてなかった。

    「だから私は彼らとの戦いを後悔しないことにしました。でもその後は……」

    そこまで言うと、ニャアンは口をつぐんだ。

    「ここから先を言うと、きっとあなたは私を庇う」

    エグザベの友人、その先で彼女が引き起こした厄災も。
    きっとエグザベは『僕が君をジオンに引き入れたせい。僕だって共犯者だ』とでも言うはずだ。

    ニャアンはそのような甘い言葉は聞きたくなかった。

    私の罪に、未だ相応しい罰は与えられていない。

    ニャアンにとっての罰は救いと同義だった。
    だから彼女は烏滸がましいと分かっていながらも考える。

    罪を犯した人間は、いかにして救われるのか

    神が赦すのか、否。
    神は在るが、それは人の心の中にいる。
    人間に罪悪感が備わっているのは神に見られているという意識ではなく、人間の内なる良心の叫びだ。

    ドストエフスキーは説いた『苦しみを経てのみ、人は真に再生する』と。
    ニーチェは言った『あなたが経験したことは、この世のどんな力も奪えない』と。

  • 142二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:22:33

    罰は終わりを意味するのではない。

    外から下される罰は、その罪を悔いている人には、新しい始まりを与える意味がある。
    罪と向き合う痛みは償いであり、償いは再び生きる権利の証だ。

    大事なのは罰の先の、罪と向き合いながら最後まで生きること。
    それこそが真の罰なのだ。

    ニャアンは自らの恥ずべき罪────大量殺戮兵器を起動させた悪魔でさえも、自らを形成する一部として認めた。

    罪から逃げない。
    それがニャアンの決断だった。

    この罪と罰は私に課された責務である。

    「私は私の罪と向き合わなければいけない。死ぬまで、もしかしたら死んでしまった後も」

    ニャアンは起き上がり、ベッドから出る。

    カーテンを開き、普段彼がするように窓の外を見た。

    今日はとても月が綺麗だった。

    「この罪と運命を一緒にできるのは宇宙で私だけ。誰も私の身代わりにはなれないし、分け合うこともできない。この罪を犯した私自身が罰を受けることに意味がある」

    罪と向き合い続ける、それが自分が今生きている理由なのかもしれない。

  • 143二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:27:26

    「だから私はあなたに寄りかからない。一人でも立てるから」

    ニャアンは続ける。

    「それでも……手を繋いで、寄り添って生きたいとは思ってます」

    そう言うと、彼女は手を差し出す。

    「わがままでしょうか」

    月明かりだけが差し込む部屋では、ニャアンの表情をうかがうことはできなかった。

    エグザベはその手を見つめる。
    やがてベッドを降り、静かにその手を取った。

    あたたかかった。

    そのぬくもりは彼に『生きていていい』と告げる光のようだった。

    ────エグザベもまた、生きることから降りられなくなった。
    彼には生き続ける責任が生まれたから。

    彼女が“罪”を理由に生きるのなら、自身の“生”はその罪を抱えて生きる彼女に寄り添うためにあってもいいのではないか。

  • 144二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:29:15

    8年分の彼の感情を堰き止めていた、非常に堅固な鉄柵は破壊されてしまった。
    目の前の、誰よりも愛している大切な人の手で。

    時間がかかりすぎて、多くのことを忘れてしまったが、確かにここには自分がいて、居場所があった。

    もう一度、学び直そう。
    何もかも全てを。

    エグザベはニャアンに軽く手を引かれて、そのまま窓辺に寄り添う形になった。

    「月が綺麗ですね」

    穏やかな声で、ニャアンが呟いた。
    エグザベは窓の外を見上げる。

    「本当に……今このまま死んでもいいくらいだ」

    絡み合った手は優しく、もう力加減を間違えることはなかった。
    二人はしばらく何も言わず、ただ夜の静けさの中で寄り添い合う。

  • 145二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:30:57

    やがてエグザベが口を開く。

    彼は話した。
    生まれてから今日のことを。

    住んでいた家、家族、学校や友人、過去に短い間だけ交際していた女性のことも、ありのまま正直に。
    ニャアンは相槌を打って、それら全てに耳を傾けた。

    「ニャアン、君のことも教えてよ」

    エグザベは微笑む。
    笑った顔はどこか幼い雰囲気で、まるで少年のようだった。
    その笑顔に、ニャアンは過去の、まだジオンに辿り着く前の彼を幻視した。

  • 146二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:34:06

    ストーリーはこれでおしまいです。
    ドスケベなしエンドであまりにも物足りないので良いドスケベが思いついたらスレが残っている限り投下したいです。

    自分はエグニャアのドスケベが読みたいし書きたいだけのシコシコドスケベSSを書いているだけのドスケベ大好きなので本当にドスケベがほしいんです。

    フフフ……エグニャックス!

  • 147二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 05:37:05

    スレ主さんお疲れ様でした!
    一旦保湿します

  • 148二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 06:47:00

    一旦ストーリー完結乙でした
    首輪プレイとかしてほしいっすねここの二人には

  • 149二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 11:14:54

    スレ主さんが過去作に使ったシーンやシチュを持ち込んたり少し意味をずらして使う設定スターシステムが大好きですよ。世界観がリンクするのよき

    そしてこの時空におけるマチュさんはニャアンのスケベ事情に興味津々やねんwやはりドスケベ時空だからかw

    ザベさんも落ち着いたしシュウマチュと4人で遊ぶのよさそうだよね。前作でエグザベ大家族だった設定もあったし、シュウマチュはクソ生意気な弟妹みたいにみえるかもとおもったけどスケベ挟まらないなあw

  • 150二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 13:45:00

    完結お疲れ様です
    昨日夕方の時の更新ではちょっとエグザベくんが心配だなと思ってた
    ニャアンがエグザベくんに依存されてもいいって思っててもエグザベくんがニャアンに依存することを善しとするとは限らなかったから
    でもちゃんと話し合ってくれて良かったわ

    あとなんか読んでて千と千尋の『いつも何度でも』が流れてた
    『粉々に砕かれた鏡の上にも新しい景色が映される』とか
    『始まりの朝の静かな窓 ゼロになる身体充たされてゆけ』とか

  • 151二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 16:02:26

    このレスは削除されています

  • 152二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 16:04:57

    エグザベは教導隊所属になるのかな

  • 153二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 16:13:12

    >>150

    自分はメリッサだった

  • 154二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 17:07:33

    >>150

    私はハウルの「世界の約束」だったなぁ

  • 155二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 17:57:28

    「エグザベ、助けて……」

    エグザベがその声に顔を上げると、首輪を嵌められているニャアンが部屋の前に立っていた。

    「なんで首輪なんてつけてるの……!?」

    エグザベは読んでいた本を窓際に置き、腰掛けていたベッドから立ち上がった。
    ニャアンも部屋へ足を踏み入れる。

    「医療用の首輪です。実際に使われることはないですが、色々な事態を想定して作られてはいるんです。実習先でたまたま、捨てる予定だったものが貰えて……試しにつけてみたら、外れなくなりました……」

    首輪は医療布材のようなものでできており肌を傷つけるようなものではない。
    だがそこから伸びる長い紐がどこか監禁を思わせる。
    本来は病室のベッドにでも繋いで、脱走を防ぐためのものなのだろう。

    しょんぼりと立ち尽くすニャアンの姿には痛々しさよりも、なぜか抗いがたい背徳の気配が漂っていた。

    「どうやって外すんだ、これ……」

    エグザベはニャアンに装着された首輪に触れる。

  • 156二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 17:58:49

    「大丈夫? 苦しくない」

    「はい……人体になるべく負担がかからないように作られてるので」

    エグザベは首輪の構造を確かめるため、慎重に指先で探る。
    だが仕組みがわからず、少し眉を顰める。
    やがて、首輪から伸びる紐の接合部に小さな留め具のようなものを見つけた。
    エグザベがそれに触れた瞬間────

    「ぁっ」

    図らずも紐を引く形になってしまい、ニャアンの身体はわずかに引き寄せられ、喉奥から吐息が漏れた。

    「ごっ、ごめん! どこも痛めてない!?」

    「ん……大丈夫ですよ」

    ニャアンの頬はなぜだが赤く染まっている。

    「そもそもどうやってつけたんだ、これ」

    ニャアンがもじもじとした様子で俯く。

    「紐、引っ張るのもう一回やって……」

    「え?」

    「紐、引っ張たら、外れるかもしれないです」

    「そうなのか……?」

  • 157二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:01:45

    エグザベはためらいながらも、そっと紐を引く。
    するとニャアンの身体はいとも容易く彼に寄りかかる形になる。

    そこでエグザベは気付く、彼女の心臓が激しく脈動していると。

    「もしかして……興奮してる?」

    「興奮って、どうしてそう思うんですか」

    ニャアンは真っ赤な顔で俯いて、所在なさげに視線をうろうろさせている。

    「ちゃんと目を見て話して」

    彼はそっと“手綱”を引いた。

    「ぁっ、う……」

    ニャアンはエグザベにしがみつき、物欲しそうな目で彼を見つめる。

    「ニャアン、その目は何?」

    「エグザベはどうして紐を握ったままなんですか……?」

    ニャアンの声はかすかに震えていたが怯えているというより目の前にいる男を誘っているようだった。

    「ニャアン、きみ、わざとやってるな」

    「外れなくなったのは本当に想定外です……」

    「ダメだろ、医療器具をそんなことに使うなんて」

  • 158二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:04:29

    エグザベはため息をつく。
    しかしその手はいまだに首輪の紐を離せずにいる。
    その事実に気付くと、彼はわずかに喉を鳴らした。

    「反省してます……」

    「僕が君の通う学校の先生だったら、反省文を書かせるよ」

    「でもあなたは私の先生ではないですよね」

    ニャアンはすりすりとエグザベの身体に自身の身体を擦り付ける。

    「すごく良くないことをしたので、あなたしか与えられない罰をください」

    静寂。
    二人の間に漂う空気が、急速に熱を帯びていく。
    首輪の紐がわずかにきしむ。

    次の瞬間にはエグザベは彼女の肩を掴み、ベッドに押し倒していた。

    「君、かなり変態だぞ。しかもこんなことに僕を突き合わせるなんて」

    その声は呆れを含みながらも熱を帯びていた。
    手にはまだ首輪の紐が握られている。
    それを軽く引くと、ニャアンの喉が小さく鳴った。

  • 159二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:06:12

    そのまま口付けを交わす。

    口内を蹂躙するような激しいキス。
    二人の舌が艶かしく絡み合い、どちらが自分の舌なのかもわからなくなった。

    「ぅっ……」

    口付けを終えると、二人の唇のあいだに細い糸が残る。

    「苦しくない?」

    エグザベの問いに、ニャアンは黙って頷く。

    「僕しか与えられない罰って、何」

    エグザベが問いかける。
    ニャアンが彼を見上げながら逡巡する態度を見せるとわずかに首輪を引かれ、彼女は今にも消え入りそうな小さな声を上げる。

    「ください……あなたを」

    ニャアンは自身の上に着ている服を掴み、胸のすぐ下までたくし上げる。
    彼女の細くて引き締まった腹部が晒される。

    「いつもと変わらないよね、それって」

    エグザベがニャアンの綺麗な腹斜筋を指先でなぞると、彼女の身体がびくびくと震える。

    「自分で脱ぎなよ」

    ニャアンはベッドシーツに顔を埋め、震える指で再び服を掴む。それを胸の上────首輪から伸びる紐に阻まれるところまで引き上げた。

  • 160二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:07:50

    「ああ、ごめん。紐付きじゃ脱げなかったよね」

    エグザベはいつもの穏やかな口調で、彼女の下着の上から控えめな膨らみを撫でる。

    「ぁっ……」

    ニャアンが身を捩る。

    すぐに膨らみの頂の部分が小さく強張る。
    その強張りに少し強く指を擦り付けるとニャアンは子猫のような弱々しい声を上げる。

    やや乱暴にその下着を引き上げてやると、興奮に染まった胸の先が、淡く紅を帯びていた。

    それを口に含み、舌でねぶる。
    そうされてない方を指でいじめ倒す。

    「あぅっ……ぅっ……」

    軽く甘噛みをしてやると、ニャアンの身体が大きくのけぞる。

    「〜〜〜〜〜〜っ!」

    声にならない叫び。

  • 161二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:09:27

    「今晩は優しくされない方がいいのかな」

    ニャアンは無言で彼を見つめる。その目は潤み、これから訪れるであろう罰に飢えているようだった。

    「やっぱり君、反省してないよね」

    低く囁きながら、エグザベは首輪の紐を軽く引く。
    ニャアンの顔がシーツから引き上げられる。

    「本当は病気で苦しむ人のためのものだよ、これ」

    「あなただって……たのしそうにしてる」

    ニャアンは震える声を上げる。
    それを挑発と受け取ったのか、エグザベは彼女の肩を掴み、背中を向かせる形でベッドに押し付ける。

    「……!?」

    ニャアンは状況を理解していない様子だった。

    「腰、上げて」

    首輪を軽く引かれると、まるでよく訓練された犬のようにニャアンはすぐにそれを実行した。
    部屋着のロングスカートがわずかに乱れ、スリットから細い脚が覗く。ウエストゴムのそれは、軽く引っ張るとすぐに脱げてしまった。

    残った薄布も躊躇いなく奪い去り、腰を掴んで、彼女のもっとも恥ずかしいであろう場所を曝け出させる。

    「ゃっ……」

    尊厳のない姿にされ、ニャアンは思わず顔を伏せる。

  • 162二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:12:15

    「こら」

    エグザベは首輪の紐を軽く引き、ニャアンの顔を上げさせた。

    「うぅ……」

    ニャアンは哀しげな声を上げているが、晒されているその部分は熱を帯び、滴が今にも溢れそうになっていた。

    エグザベはその外周を指で撫でたり、内側を刺激して、いやらしく湿った音を鳴らした。
    ニャアンに聞かせるように、その行為を繰り返す。

    「くっ……はぁ……」

    ニャアンは蕩けた表情で快楽に身を委ねる。
    彼女が腰を落としかけるたびに、エグザベは首輪を引いて制した。
    ニャアンは両腿を震わせながら必死に腰を上げ続ける。

    「ほら、ひどいことになってる」

    エグザベは濡れた手を、ニャアンの目の前へと差し出した。

    「ぅ……」

    ニャアンはそれを見て、今にも泣き出しそうな声を漏らした。

    「ニャアン、ちゃんと反省した?」

  • 163二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:13:52

    「ごめんなさい……」

    「ちゃんとごめんなさいが言えてえらいね」

    ご褒美と言わんばかりに、首輪を引っ張る。

    「ん……っ」

    思わずニャアンは目を瞑る。

    彼女の後ろでかちゃかちゃとベルトの金具が当たる音と布が擦れる音がすると、振り返る間もなく背後から衝撃が突き抜けた。

    「ぉあ゛っ……!」

    ニャアンが喉奥から情けない鳴き声を上げた。
    背後から、抉られるように、何度も律動を刻まれ、その度にニャアンは唸るような哀れな鳴き声を上げる。

  • 164二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:14:54

    「もう、こんなこと、するなよ……!」

    「ぁ゛! ぁっ……!」

    「ちゃんと、返事をして」

    「しっ、しま、せんっ゛……っ!」

    繰り返される甘い感覚に、ニャアンの鳴き声は止まらない。
    ガクガクと震える両腿の付け根では、彼のものが締め上げられている。

    「愚か者だよ……」

    エグザベは低くつぶやいた。
    それは自分自身にも向けられたものだった。

    彼は紐をぴんと張らせると、律動を激しくさせた。

    必死で突き出している腰以外はすでに力が入らぬようで、串刺しにされたような状態でニャアンはそれを全て受け止めた。

  • 165二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:16:22

    どれほどの時間が経ったのか分からない。
    やがて二人が果てると、ベッドに倒れ込む。

    「外れました……」

    ニャアンが先ほどまで首に嵌められていたものを手に持って、エグザベに見せる。

    「いつから……?」

    エグザベは吐息混じりに彼女に問う。

    「……」

    ニャアンは誤魔化すように彼に抱きつき、胸にすりすりと頭を擦り付ける。

    「本当に、君は……」

    何か言う気力も湧かずに、エグザベはニャアンの頭を手のひらで軽く叩いてから抱きしめた。

    ベッドに投げ出された首輪の紐が、二人の足首に絡まっていた。

  • 166二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 18:17:48

    投下終わり。
    ネタくれてありがとう。

    セイラさんはきっとどの時空のどの分野でも辣腕を振るってくれると思ってます。
    国家元首としての任期を終えたら一年戦争から付き合いのあった天パのメカニック(副業ハロ屋さん)あたりとのんびり海でリゾートしててほしいです。

    どの曲も聴いてみたらめっちゃ気ぶれたので自分用エグニャア感じられる曲プレイリストに入れました。ありがとうございます。

    自分は平井堅氏の『僕の心をつくってよ』や鬼束ちひろ氏の『私とワルツを』谷山浩子氏の『ガラスの巨人』あたりで気分高めていました。
    あと参考文献としてヴィクトール・フランクル氏の『夜と霧』にお世話になりました(心理学や哲学に関する分野)

    スケベネタ思いついたらスレが残る限りまた投下します。
    フフフ……エグニャックス!

  • 167二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 20:02:24

    すばらしいドスケベでした!

  • 168二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 21:33:03

    なぜこの二人のドスケベにはひとつまみの背徳がこんなにも似合うのか

  • 169二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 21:36:38

    元上官と部下という事を考えると、どえらい事ですよ

  • 170二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 21:41:18

    組織上の立場だと上官と部下なんだけど、二人の心情だと兄妹的なところもあると思うんだ

  • 17114825/10/10(金) 21:47:47

    まさか形にしてくださるなんて……ありがとうございます
    エグニャックス文学は健康寿命を延ばすともうすぐ証明される、きっと

  • 172二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 07:30:43

    保湿

  • 173二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 10:40:44

    昨日ようつべで偶々見つけた藤井風の「I Need U Back」も良いなぁ、と歌詞和訳を見てふと思った
    エグニャアは本編後しばらく離れ離れになってからまた始まる、みたいなイメージがあるので

  • 174二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 11:43:02

    ◯おまけックス

    ベッドの上。
    毛布に包まれた二人の姿があった。
    エグザベが背後からニャアンを抱き寄せており、毛布の外に見えているのは、二人の衣服を着ていない肩から上だけだった。

    「そういえば私たち、昔は上官と部下でしたよね」

    「一応そうなるね」

    「よくも部下に手を出せましたね」

    「自分で言うのか、それ」

    「んっ……」

    背後から突き上げられ、ニャアンが悲痛さがやや混じった、だが甘い声を漏らす。

  • 175二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 11:44:11

    二人は繋がったままだった。

    「あったかいな、ニャアンは」

    エグザベは呟く。

    「へん、たい……ぁっ」

    ニャアンは一瞬だけ抵抗する素振りを見せるが、再度の刺激を与えられるとすぐに子猫のような声を出してそれをやめてしまった。

    「君はキシリア様の秘蔵っ子で……それに、あんまり部下っぽくはなかったから……」

    「部下、らしい振る舞いを、知らなかっただけ、です」

    「僕の目からは君はすごく落ち着いているように見えてたし……」

    背後から突く。

    「ぁ……」

    逃げ出そうと身じろぎしたニャアンを、エグザベの腕が優しくも確かな力で阻む。

    「嫌だった?」

    エグザベはニャアンの耳元で囁く。
    その声音には少しの不安が含まれていた。

  • 176二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 11:46:37

    「……抵抗しないので、手を繋ぎたいです」

    ニャアンは自身の右手で、自身を抱きしめる彼の左手に触れる。
    二人は指を絡めて手を繋ぐ。

    「私はずっと……あなたに上官以外になってほしいと思っていましたよ」

    ニャアンの吐息は熱を帯びている。

    「でもあなたは私をそういう目で見てくれていなかった」

    「当たり前だろ……上官や部下以前に、17歳の子供にはこんなことできないよ」

    背中越しに力を込める。
    ニャアンの身体がびくりと反応する。

    「あんなに、したのに、げんき、ですね」

    吐息混じりの言葉。

  • 177二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 11:53:52

    「それだけが取り柄だと思ってる」

    本格的な行為が始まる。
    ニャアンの乾いて掠れた喉から、何度も熱を帯びた吐息がこぼれる。

    「すきっ、すきだから、きょうはっ、もうっ……!」

    こんな未来、あの時の自分は想像できただろうか。
    ニャアンはベッドシーツを鷲掴みにして身体の震えを堪えながら、迫り来る衝撃を全て、余すところなく受け入れた。

    そうして二人の行為は朝まで続いた。



    翌朝。

    「加減してください、ばか」

    「ごめん……」

    不機嫌そうな声とは裏腹に、ニャアンの表情は柔らかい。

  • 178二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 11:56:01

    おまけおしまいです。
    皆さん良い曲いっぱい知ってて助かります。ありがとうございます。
    石川由依氏カバーの『悪魔の子』を聴いたらこんなんもう…!ってなってました。
    ネタがあったらスレが残る限りまたスケベを投げに行きます。

    フフフ……エグニャックス!

  • 179二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 19:31:48

    おまけのおまけを期待して保湿

  • 180二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 21:30:25

    短いレスをこんなに膨らませるとは流石の直木賞作家!ありがたやありがたや

    遠恋は可哀想だから赴任先で一緒に暮らせるようにさっそく取り計らってくれないかな上司。シャリアならしてくれるかな?かも?

    しかし、ニャアンさん愛され過ぎてお肌ツヤッツヤしてそうだな。看護系は女子多めだろうから化粧品なに使ってるのかとかめちゃ聞かれてそう

    一晩で一箱使い切っちゃう系のあにまん時空少尉(少佐?)のおかげなんですけどねたぶん

  • 181二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 23:19:29

    「とりあえず最初の二年間は地球勤務になったよ」

    エグザベは、シャリアから送付された封筒を片手に告げる。

    「運が良かったですね」

    ニャアンは笑みをこぼす。

    「本当、ちょうど地球の基地に新しい部隊ができるなんて」

    「マンハンターとか、怖いですからね」

    ニャアンも学校で渡された書類を取り出す。

    「私の次の実習先、ジオン軍の基地のすぐ近くでした」

    「すごい偶然だね。じゃあ軍の家族住宅に入れないか掛け合ってみるよ」

    二人は終始穏やかな雰囲気で、現在住む家の解約手続きや、引っ越し業者を調べている。

    「(なんだか作為的なものを感じる……)」

    エグザベはそう思いつつも、水をさす必要もないと考え、何も言わなかった。

  • 182二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 23:20:30



    「マンハンターが脅威なのは事実です。彼らの背後にはティターンズが控えておりますからね」

    シャリアは呟く。
    彼のテーブルの上には二人分の配置転換に関する文書一式が並んでいる。

    「(ニャアンさんの通っている学校の支持母体が、軍に関係のある場所でよかった)」

    「(いや本当に……エグザベくんが戻ってきてくれるなら職権濫用くらいはしますよ……)」

  • 183二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 23:21:36

    スケベじゃないおまけばかりで申し訳ないです。
    フフフ……エグニャッ日常

  • 184二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 07:52:09

    さすが俺たちのシャリアブル
    やったね一緒にいられるね

    そしてなんか不穏なワード出てきたから保守

  • 185二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:13:49

    ◯スケベなおまけ

    夜。
    ジオン軍基地に隣接する家族住宅にて。

    「マンハンターがジオン管轄地域のセキュリティを破壊……!? すぐに対応します」

    エグザベは通信端末を握り、短く指示を飛ばした。

    マンハンターとは、地球連邦軍の極右派組織が裏で支援するテロリスト集団であり、地球に住むスペースノイドに対して無差別な虐殺行為を繰り返している者たちである。

    かつては不法難民を取り締まる地球連邦の警備機構だったが、一年戦争で地球連邦が敗北したのち、その活動目的は次第に『不法難民の排除』から『スペースノイド────特にジオンの人間の虐殺』へと変質していった。

    エグザベの背中を見つめながら、ニャアンは息を呑む。

    「ニャアン、君はシェルターに避難を」

  • 186二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:14:54



    翌日の夕刻を過ぎる頃。

    「ただいま」

    エグザべはいつも通りといった様子で家に帰ってくる。

    ジオン管轄地域でテロを企てたマンハンターはエグザベ率いる部隊によって壊滅した。

    背後に地球連邦軍の支援があったとしても、所詮は非武装の民間人を狙うことしか考えておらず、対MS戦の訓練を怠っていたような集団だ。
    統率の取れた部隊が敗れるはずもなかった。

    本来であればマンハンターはジオン軍の部隊が到着する前に撤収するはずだった。
    しかし今回はシャリアやエグザベたちの迅速な対応によって、彼らは『逃げ遅れた』

    「おかえりなさい」

    ニャアンはすぐにエグザベに抱きつく。

  • 187二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:16:54

    「……ブランク明けとは思えない活躍ぶりでしたね」

    彼女の声には安堵とほんの少しの呆れが混じっていた。

    「シャリア准将が早めに情報をキャッチしてくれたから。それに、基地のすぐ近くに住んでてよかった」

    民間人の被害はほとんど出なかった。
    ニャアンの目の下には濃いクマができており、昨夜からずっと眠れていないであろうことが伺えた。

    「……あなた、普通に戦闘員になってませんか」

    「まあ……非常事態だから。動ける人が動かないとね」

    その言葉にニャアンはわずかに目をじとっとさせる。

    「不安な気持ちになったので、ペナルティです」

    「え……?」

    ニャアンは彼を抱きしめたまま、口付けを交わす。

    それで彼女はペナルティを終わらそうとしたが、エグザベは離れようとするニャアンを逃さず、深い口付けをする。

  • 188二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:18:31

    「ん……っ」

    ニャアンは一瞬驚いたものの、すぐにそれを受け入れる。
    しばらく二人は抱きしめ合いながらキスを続け、やがて離れる。

    ニャアンは吐息を漏らす。

    「シャワー、浴びてくる」

    エグザベが囁く。

  • 189二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:19:36



    「あぅ……っ、ん……」

    二人の両手は絡み合い、強く握りしめられていた。
    エグザベは彼女の最深部を攻める。

    ニャアンが高揚した顔でエグザベを見上げる。
    二人の行為は互いの愛を確かめ合うためのものだった。
    そこには優しさがあり、だが同時に強い熱も宿っていた。

    「エグザベ……かえってきてよかった」

    吐息混じりにニャアンが呟く。

    「あれくらい、大丈夫だよ」

    「そういうことじゃなくて……んっ」

    せっかく新しい日常を再構築できたのに、マンハンターなんかに彼を壊されなくてよかった。

    ニャアンは彼の首筋に口付けをし、軽く吸う。
    エグザベがわずかに反応する。
    唇を離すと、彼の首筋に小さな皮下出血ができる。

  • 190二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:22:58

    「お返ししても、いいですよ」

    「お返しか……どうしよう」

    少し考えた後、エグザベは先ほど自分がされたように彼女の首筋に唇を当てる。

    軽いリップ音が鳴る。

    「ん、お返し」

    ニャアンの細く長い首に赤い痕が残される。

    ニャアンは指先で口付けをされた場所をなぞり、ほんの少しだけ笑みをこぼす。

    エグザべは自身のものを激しく彼女に打ち付ける。

    「……ぁっ」

    ニャアンの喉から吐息が漏れる。
    激しい律動が続き、やがて二人は果てた。

  • 191二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:24:51

    「このまま……寝ちゃいそう……」

    ニャアンがぐったりとしながら呟く。
    瞼は閉じられている。
    昨夜から一睡もしていないのだ。
    すでに彼女の体力は限界だった。

    「僕はまだ物足りないかも」

    「え……?」

    エグザべはニャアンのなだらかな膨らみにそっと触れる。
    彼女の高鳴る鼓動を直接感じると、軽く微笑んでその場所を撫で、手のひらで包み込み、刺激する。

    「ぁっ……だめ……」

    微かな刺激にも敏感に反応する彼女が、エグザベは愛おしくてたまらなかった。

    久しぶりの戦闘に恐怖や緊張はなかった。
    だが、大切な人のことがずっと気がかりだった。

    早く大切な人の元へ帰りたい。

    そのような感情を抱えて戦うのは初めてだった。

  • 192二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:26:37

    「寝ててもいいよ。ちゃんとお風呂に入れてあげるから」

    「ばか……そんなの無理……ぁっ」

    すでに互いの体液でとろとろに溶けたその場所に、彼のものがいれられる。

    「ぅ……ぁぅ……」

    ニャアンはか細い声を発し、微睡と恍惚の混じった表情を見せる。
    それがむしろ色香を漂わせ、彼の衝動は止まることを知らなかった。

    「ぁ……ぁ……」

    律動に合わせて彼女の喉奥から息が漏れる。指先の一つも動かせないといった様子だった。
    一方で、彼女の最深部は目の前の男のものが欲しくて堪らないのか、強く締め付けて離そうとしない。

    「かわいいね、君は」

    エグザべは、今にも涙があふれてこぼれ落ちそうな、潤んだニャアンの目を見つめる。

    「愛してるよ」

    「……わたし、も」

    エグザベの言葉に、ニャアンはわずかに目を細めて、息も絶え絶えに言葉を紡ぐ。

    「あい、してる」

    もう一度、二人はキスをした。

  • 193二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:31:46

    スケベおしまい。
    マンハンターの名前出しちゃったからちゃんと回収しないとね…
    良いスケベネタが思いついたらまたどこかでシコシコ書いてると思います。
    ネタくれた人サンキュな。

    ジーク・エグニャックス!

  • 194二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:47:37

    書き殴っただけの思い付きを素晴らしいドスケベに昇華してくれて有り難うございます!

    ジーク・エグニャックス!!

  • 195二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:56:29

    やはりスレ主はエグニャックス界の文豪……
    乙でした ジーク・エグニャックス

  • 196二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:59:24

    ジーク・エグニャックス!!

  • 197二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:12:44

    ちょくちょくペナルティ・キッス概念が飛んできて笑顔になる
    お疲れ様でした!

  • 198二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 20:28:11

    フフフ…次回作もセクノヴァ!

  • 199二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 23:21:46

    ドスケベスレあったんだ…
    休日にドスケベエグニャックスやったー!

    ジーク・エグニャックス!!

  • 200二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 23:45:43

    >>200ならドスケベエグニャックス文学は続くよどこまでも

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