【ウマ娘SS・微閲覧注意】トレーナーさんがフィギュアを買っただけの話

1二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 22:32:46

私がいつものようにトレーナー室に行くと、トレーナーさんが何かを棚に飾っているのを見つけた。

「ついに買ってしまったなぁ…」

トレーナーさんは独り言をつぶやいている。

棚をよく見ると、そこには私の姿をした精巧なフィギュアが飾ってあった。

「まぁ、トレーナーさん。これはどういう…」

「あ！いや違うんだアルダンこれはその…」

私はうなだれているトレーナーさんを見て少し笑ってしまった。

「ふふ、少し恥ずかしい気もしますけど気にしないでください。どうぞご自由に。」

2二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 22:33:46

「…君の姿をたくさん残しておきたかったんだ」

トレーナーさんはフィギュアを真っすぐに見つめている。

「それは嬉しいですけれど…。トレーナーさん、私はいずれ誰からも忘れられ風化していくｎ」

「俺にとっては永遠なんだ」

私の言葉を遮るようにトレーナーさんはそう言った。

「誰かにとっては刹那の光でも、俺の中で君は輝き続けている。俺だけの永遠なんだ…」

教室に差し込む日光の熱は私には伝わらなかったが、目の前のトレーナーさんからは微かな熱を感じる気がした。

あぁ…そうでした、あなたはこんなにも優しくて眩しい人だった。

3二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 22:35:06

「いいえトレーナーさん、それは違います」

「いや、そうじゃないな」

「二人の永遠、ですよ」
「二人の永遠…だよな」

私はおそらく涙を流していた。

私が思わず伸ばした手がトレーナーさんに触れそうになった瞬間、

「おーい、そろそろ選抜レース始まるぞー」

廊下の方から声が響いて、私の手は止まった。

4二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 22:36:31

「あぁ、今行くよ」

トレーナーさんは足早に部屋を出て行った。

「…気持ち切り替えられそうか？担当していたウマ娘が事故で亡くなったんだ、相当ショックだろうし無理に復帰しなくても…」

「いや、もう大丈夫だよ」

廊下の先からトレーナーさんたちの会話が聞こえてくる

私は賑やかな音の響く窓の外を見た。

5二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 22:37:32

何人ものウマ娘たちが緊張した様子でレースの準備をしている。

トレーナーさんはこれからたくさんの素敵な出会いを経験するのだろう。

それでもあの人が私の光を忘れないでくれると確信している。

ですので、私ももうしばらく輝くあの人を眺めさせてください。

6二次元好きの匿名さん25/10/06(月) 22:38:36

「いけない、言ってなかった」

突然トレーナーさんの声が廊下から聞こたかと思うと、部屋の前まで戻って来ていた。

トレーナーさんはまっすぐに私の方を見ると、

「アルダン、いってくる！」

と元気よく言った。

私は確かな暖かさを感じながら、精一杯の笑顔と届かないはずの声を返した。

「はい、いってらっしゃい。トレーナーさん」