ファインモーションのトレーナーは

  • 1二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 23:09:31

    ──王になればよいのだ、と思った。

    自ら国土を拓(ひら)き、同じ志を持った臣民を集い、基本的人権を保障し、健康で文化的な生活基盤を提供する。トレーナーは、まずはじめに屋台を購入した。次に、味の要となるスープのベースについて模索した。鶏ガラ、豚骨、牛骨、魚介、野菜。肉も骨も余さない。化調非化調、エスニック、エキゾチック、クラシカル、トラディショナル、センセーショナル、イノベーショナル。しょうゆ、みそ、しお。そして麺だ。東西南北、産地を問わずあらゆる小麦を吟味する。むろん、米粉を顧みなかったわけではない。トッピングは? 己に問うた。ネギ、チャーシュー、メンマ。三位一体。疑い。トッピングのコペルニクス的転回。何が正しく、何が正しくないのか。何度も自問自答した。王になるための条件とは。王とは。

    知る人ぞ知る屋台『麗しの殿下のための四葉軒』が、府中の人々を影から魅了したとき、トレーナーは物件を購入した。居抜きの店舗だ。国土と呼ぶには不充分。さりとて、王国と呼ぶにはあまりに充分。店主とは、すなわち王なのだ。

    満員御礼、臣民は日を追う毎に増加していった。これなら、とトレーナーは思った。この成功を足がかりに、一切の諸外国に対して、『ファインモーション女王陛下による古今東西ラーメン連合高血圧王国』の独立宣言を行う日も、そう遠くないはずだろうと確信した。

    「おいしい!」と殿下は笑う。奔放に散らされた背脂さえ霞む満面の笑顔。ああ。王とはつまり、尽くす者だ。顧客に、臣民に、王妃に、おおよそ国を形作るすべてのものに、五体を擲ってすべてを捧げる存在が、すなわち王なのだ。

    「……でも」と殿下はこっそり耳打ちした。その表情は少し寂しげだった。「深夜にナイショで作ってくれた、あのインスタントラーメンの方も……私は好きだったよ」

    翌日、黒服に身を包んだ謎のウマ娘集団の手によって、府中の人々を熱狂させたラーメン屋は崩壊した。その夢の跡地には屋台が残されており、我らがファインモーション殿下は、「これ、もらってもいい?」と目を輝かせ、来る将来に向けて、御自らラーメンを振る舞うべく、今日もその辣腕を振るっておられる。

  • 2二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 23:15:09

    な、なんだかずいぶんレベルの高い話だな……

  • 3二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 23:16:42

    ファイトレと殿下は楽しそうに生きてんな

  • 4二次元好きの匿名さん22/04/26(火) 23:28:35

    モルモットどうぶつ王国の作者だなテメー

  • 5二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 00:43:21

    これすごい好き

  • 6二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 00:45:39

    なんだその国民全員生活習慣病にかかってそうな国は

  • 7二次元好きの匿名さん22/04/27(水) 00:47:12

    耳打ちする殿下卑怯すぎるでしょ
    こんなの堕ちる

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