- 1二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:12:25
- 2二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:13:47
「はい?」
それほど人のいない喫茶店、前の席に座る少女の言葉に俺は頭を抱えざるを得なかった。
「私はこの時代の約70年後から来たあなたの孫なんだ。おじいちゃん」
「……一応お聞きしますが、俺のお相手は」
「私の容姿で察してると思ったんだけど……あなたの担当アイドル、だよ」
彼女ほどでは無いが、色素の薄い髪に琥珀色の瞳、確かに容姿は血縁者でなければおかしいほどに似ている。
「『篠澤広』。それが私の祖母の名前」
「あの人はいつものこととして、あなたもよく彼女の変な企みに手を貸そうと思いましたね」
「……何と勘違いしてるの?」
「会わせたい人がいる」。そう広さんに言われ、待ち合わせ場所の喫茶店へ到着したのが事の経緯だ。
大方、広さんの悪巧みに付き合わされた親戚の子なのだろう。これまでは広さんが単独犯であることがほとんどだったが、今回はさすがに度を越している。 - 3二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:15:39
「やっぱり信じてない、ね」
「いきなり自分の孫が未来から来たと言われて信じる人の方が少ないと思いますが」
「それもそう。だから歴史が改変されない程度におじいちゃんしか知らない話をしてあげる」
「と、言いますと?」
「例えば……おじいちゃんがプロデュースするアイドルに広おばあちゃんを選んだ理由、とか」
「そんなもの、本人からいくらでも聞けるでしょう」
「確かに、ね。でもあの人は人に馴れ初めを話す時、絶対に脚色を加える、よ」
「……それは否定できません」
「それにおじいちゃんは、本当は最初から広おばあちゃんとの契約を切るつもりなんてなかった。お試し契約なんてなかった、でしょ?」
「はい、イタズラのためにそんな事まで聞いていたんですね」
「まだ信じてくれないんだ、出会った時からおばあちゃんに恋愛感情があったくせに」
俺はコーヒーを吹きかけた。
「恋愛感情……?俺が広さんに?」
「うんうん」
「何を根拠にそんなこと」
「根拠?私が生まれてるんだから私が生きた根拠、子孫が繁栄してる」
「仮に事実でも言い方をもう少し改めてください」
少女は当然のように腕を組み、どこか見覚えのある決めポーズとドヤ顔をした。 - 4二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:18:06
「そもそも、アイドルとプロデューサーの関係にそういう感情を持つなんて不適切でしかない」
「でも持ってた、でしょ?」
「ありません」
「今、ちょっと間があった」
「……呼吸を整えていただけです」
「ふふ、おばあちゃんと同じ言い訳」
「……」
完全に手玉に取られている。彼女のあまりにもフィクションを感じさせない言動、仕草のあまり俺は本当に未来から来たのではないかと錯覚してきていた。
「だいたい、“お試し契約”なんて言い方、本人に教えられたんですか?」
「うん。おばあちゃんがいつ見限られるかワクワクしてたって言ってた」
「そういう話を孫にするんですかあの人は」
「あと、“プロデューサーはツンデレで可愛い”とも言ってた」
「……」
「“普段は淡々としてるのに、時々優しくなるのがズルい”って」
「……」
「“コーヒーを吹くところが好き”って」
「吹かされてるんですよ、あなた方に」
少女は机を軽く叩いて笑い出した。
その笑い方も、どこか広さんと同じ癖がある。 - 5二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:20:21
「ほんと、おじいちゃんとおばあちゃんってお似合いなんだ、ね」
「いい加減やめてください。俺たちの間にそんな感情はありません」
「おばあちゃんの言った通りだ、おじいちゃんはプロデューサーの間はそう貫き通すと思うって」
「……」
少女は楽しそうに笑い、ストローでカフェオレをかき混ぜた。氷が音を立てて回るたび、俺の心臓もなぜか落ち着かない。
「ねぇ、おじいちゃん」
「何ですか」
「未来を変えちゃうかもしれないけど……おばあちゃん、あなたに出会えてすごく幸せだったって言ってた」
「……」
「だから今日、どうしても伝えたかった。“ありがとう”って」
静かな喫茶店の中で、時が止まったように感じた。
そして俺は、苦笑を浮かべて言う。
「さすが広さんの従姉妹、頭が切れるのは彼女同様ですね」
「……え?」
「コーヒーを飲む合間に篠澤さんの記事を読み漁っていましたが、あなたも彼女に並ぶ頭脳の持ち主のようだ。やはりあなたとほとんどそっくりな顔をした従姉妹の記事も出てきました」
「……」
「最近日本に帰国してきたらしいですが、本当にあなた方は……もっと良い才能の使い方があるでしょう」
「あちゃー、バレちゃったか」
途端に彼女の雰囲気が変わり、口調もそれまでとは違う陽気なものになった。 - 6二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:21:27
「広ちゃんは私とあなたに会って欲しくなかったみたいだけどどうしても見てみたくてさー」
「なら素直にそう言ってください。危うく信じかけました」
「本当に信じていなかったの?」
「はい。仮に俺の孫が未来から来るとして、未来人がこんなに気楽に過去へ来れるのならば歴史は改ざんされ放題でしょう」
「あ、確かに。でもね」
彼女は少し笑ってから、ふと目を伏せた。
その瞬間、先程までの軽さが嘘みたいに消える。
「未来なんて誰も分からないけど、私は――プロデューサーさんが後悔しない選択をしてくれたらいいなって思ってる」
その声は、先ほどまでの冗談めいた響きを完全に失っていた。まっすぐで、どこか懐かしい響き。俺は一瞬、言葉を失う。
「後悔のない人生などないでしょう」
「うん。でも、後悔の形は変えられる。たとえば“やらなかったこと”を悔やむか、“やったこと”を悔やむか。それだけでも違うから」
胸の奥で何かが微かに疼いた。俺の視線を受け止めた彼女は、どこか寂しそうに微笑む。 - 7二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:23:30
「いたずらしてごめんね。広ちゃんのこと、お願いね」
「彼女の事を知り尽くしているようですね」
「知り尽くしてるなんて言えないけど、彼女がどれだけ“あなたに救われた”か、ぐらいは知ってるよ」
俺はコーヒーの残りを一口だけ飲み干した。冷めきった苦味が、妙に現実を突きつけてくる。
「今日はこれでお開きにしましょう、この後も彼女のプロデュース計画を見直すつもりなので」
「うん。また、きっとどこかで」
彼女の笑顔は、もうあの陽気なものではなかった。
ドアを開け、冷たい夜風が肌を撫でる。背後でカップが静かに卓上へ置かれる音がして、俺は一度だけ振り返った。
「……あなたの言葉、覚えておきます」 - 8二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:40:14
「プロデューサー、行っちゃった、よ。いいの?」
「うん、言いたいことは言えたから」
窮屈な隣の席から身を乗り出して、広おばあちゃんは私の顔を覗き込んで来た。
「めんどくさい性格だよねー、おじいちゃんもおばあちゃんも」
「ふふ、そんなの私たちの孫なら分かりきってると思ってた」
「趣味で始めたアイドルでトップに立つなんて、進路に悩んでる私が馬鹿らしくなってくるよホント」
「へえ、未来でも進歩に悩むことはあるんだ、ね」
広おばあちゃんはコーヒーカップを手の中で静かに回した。窓の外では、風が看板を揺らしている。 - 9二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:43:11
「過去を改変する可能性のある行動は重罪なんだ。広おばあちゃんなら何となく察しは着くよね?」
「もちろん。だから、あなたがここにいる理由が気になる」
おばあちゃんの瞳が、まっすぐに私を射抜いた。優しいけれど、逃げ場のない眼差し。観念して、テーブルの上に置かれた小さな金属プレートを指先で撫でた。
光沢のあるそれには、『篠澤家認可コード』の文字が刻まれている。
「タイムマシンを作ったのは、おばあちゃんの息子――つまり、私のパパなんだ」
「うん、そんな気がした」
「父さんは、“一度だけ過去に触れる権利”をくれた。改変が目的じゃなくて、確認のための特例」
「確認?」
「うん。“未来を創る人たちが、どんな想いで過去を選んだのか”を、知るための」
私の声が少し震えている。目の前のおばあちゃんは、もう現代では歴史の中の人。
“伝説のアイドル”が、今こうして目の前で笑っている。 - 10二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:45:11
「それにしても、似た顔の従姉妹が帰国してるのによく信じてくれたよね」
「あの子とはずっと連絡、取ってるから」
「おじいちゃんに会うのも本当はルール違反。でも、おばあちゃんが止めなかったんだよね」
「だろうね、止める理由なんてない、よ」
「そっか」
篠澤広が私にシワひとつない笑顔をしてみせる。その笑みは、どこか昔の記録映像のままの彼女に重なって見えた。
「未来のあなたたちが幸せなら十分。私が過ごした時間はもう、変えられないけれど」
「でも――変えたいって思うことも、あるでしょ?」
「もちろんある、よ」
おばあちゃんはまだ若いのに、まるで懐かしい夢を語るように、ゆっくりと窓の外を見つめた。 - 11二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:48:13
「でも、未来を変えるより、今を大切にできる人でいたい。私は私の選んだ今の景色を楽しみたい。あの人も、きっとそう願ってるから」
胸の奥がじんと熱くなった。私の時代にいるおばあちゃんはもう過去の人。でも、この言葉はきっと、未来でも生き続けているんだ。
「おばあちゃん」
「なあに?」
「やっぱり私、この光景が好き。少しだけ、羨ましいよ」
おばあちゃんは何も言わず、窓の外の景色を見る私の手を取った。
この温もりを忘れることは、きっと出来ないだろうな。 - 12二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:51:03
このレスは削除されています
- 13二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 19:59:17
このレスは削除されています
- 14二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:08:54
このレスは削除されています
- 15二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:20:29
え?
- 16二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:21:44
広さんの戦闘シーンどこいった?
- 17二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:22:39
この温もりを忘れることは、きっと出来ないだろうな。
↑くっせぇwwwwwwww - 18二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:23:44
あんまり面白くないね
- 19二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:24:16
タイムマシンといえばドラえもんだよな
- 20二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:24:42
ドラえもんかぁ
- 21二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:25:12
続きは?
- 22二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:26:01
勝手な解釈で広を汚さないで😭
- 23二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:26:31
ドラえも〜ん
- 24二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:27:09
ぴかりん
- 25二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:27:41
キングスマン
- 26二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:28:35
「過去を改変する可能性のある行動は重罪なんだ。広おばあちゃんなら何となく察しは着くよね?」
「もちろん。だから、あなたがここにいる理由が気になる」
おばあちゃんの瞳が、まっすぐに私を射抜いた。優しいけれど、逃げ場のない眼差し。観念して、テーブルの上に置かれた小さな金属プレートを指先で撫でた。
光沢のあるそれには、『篠澤家認可コード』の文字が刻まれている。
「タイムマシンを作ったのは、おばあちゃんの息子――つまり、私のパパなんだ」
「うん、そんな気がした」
「父さんは、“一度だけ過去に触れる権利”をくれた。改変が目的じゃなくて、確認のための特例」
「確認?」
「うん。“未来を創る人たちが、どんな想いで過去を選んだのか”を、知るための」
私の声が少し震えている。目の前のおばあちゃんは、もう現代では歴史の中の人。
“伝説のアイドル”が、今こうして目の前で笑っている。 - 27二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 20:46:11
なんでこんな荒らされてんだ
いいSSだからがんばれ - 28通りすがりの莉波P25/10/07(火) 21:12:45
すみません、SSはこれで終わりです
自分の書いたものでない続きが勝手に投下されていたので勘違いされないよう消してしまいましたがこの後は好きなようにここを使ってもらって大丈夫です
スレ主が規制かかったらしいので代理投稿です - 29二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 23:45:12
これ荒らされる理由分からなくて困惑してる
まじでなぜ??