🎲【閲覧注意】学P「初星バトルロワイアル……?」3

  • 1◆YYjiOMVygQ25/10/07(火) 21:37:54
  • 2◆YYjiOMVygQ25/10/07(火) 22:05:21

    戦場は一色触発の空気を醸し出していた。

    射程では投擲武器であるブーメランを扱っていることねの側に分があるため、美鈴は下手に接近ができない。正面衝突では先に動ける方が勝者だ。
    だが、ことねの側も馬鹿正直に武器を投げてしまえば美鈴の金属バットで叩き落とされ、武器を失う結果に終わるだろう。

    互いにその予測ができているからこそ、どちらも動くに動けない。
    その戦局を傍から見ている千奈は、思う――というより、口にする。

    千奈「えっと、これ……どういう状況ですの?」

    無言で睨み合っている両者間で渦巻いている緊張感など、外部には伝わらない。
    第三者から見ればその様相は、見つめ合っている二人そのもの。
    その思惑がどう絡まっているかも――その殺意が、"誰"に向いているのかも、分からない。

  • 3二次元好きの匿名さん25/10/07(火) 22:45:31

    このレスは削除されています

  • 4◆YYjiOMVygQ25/10/07(火) 22:46:55

    美鈴「藤田さん。このまま時間が経てばなあなあになる、なんて思っていませんか?」

    ことね「しょーじき、そうしてくれるとすっげー助かるんだけど。」

    美鈴「いいえ……そもそもわたしの目的は――あなたではありませんよ。」

    千奈「えっ!?」

    突如、美鈴は真正面のことねを無視して、斜め前に位置する千奈へと走り始める。

    元々美鈴が千奈を狙っていた理由は、千奈が徒党のリーダーなり得る存在だからだ。
    彼女の持つ独特な雰囲気は、周囲をふわふわとした空気で包み込むかのように、争いごとを遠ざける。
    そうしてなし崩し的に、このゲームに"乗らない"選択肢を取らされるのだ。

    タイマンでの勝負であれば勝機は充分にあるが、複数人を相手取るとなればそうもいかない。
    ゆえに、ことねの命には興味がない。ここで見逃しても、他の誰かと争ってくれればむしろ自分の優勝に都合がいいとすら言える。

  • 5◆YYjiOMVygQ25/10/07(火) 23:04:06

    ことねには美鈴が千奈を狙っていた理由など知る由もないのだ。
    現在進行形で美鈴を牽制していることねよりも、手負いの千奈を優先して狙うことなど予想できまい。

    それでもことねの武器が長物であれば、距離の差を活かして千奈との間に割って入り、彼女を護ることもできるだろうが、ブーメランではそうはいかない。
    下手に投げれば千奈に当たる可能性もあるため、攻撃に転じることも難しい。

    ――と、そう、思っての特攻だった。

    美鈴「ッ――!?」

    美鈴の眼前を横切る黒い影。
    反射的に身体を仰け反らせ回避しなければ、顔面に直撃していたであろう。

    影は投擲者の元へと舞い戻る。
    その先に視線を向けると、戻ってきたブーメランをキャッチし、再び投げる姿勢を取ったことねが睨みを聞かせていた。

    美鈴「まあ……そのコントロール……あなたは忍者か何かですか。」

    さすがに面食らった表情を浮かべた美鈴が、されど落ち着きをもって発する。
    先に述べた数多の不利な要素を覆して美鈴の動きを止めたのは、針の穴を通すかの如き妙技だ。
    花海姉妹のようにスポーツに身を投じていた者ならいざ知らず、そのような経歴のないはずの藤田ことねが、一体なぜ。

  • 6◆YYjiOMVygQ25/10/07(火) 23:29:55

    ことね「馬鹿言うなって……こっちはギリギリなんだっての……。」

    ――藤田ことねが最も得意とする武器は何なのか?

    誰しも一度は考えたことのある問いだろう。
    そしてその答えは、"ブーメラン"である。

    藤田ことねのアイドルとしての特徴は、そのダンス力も然ることながら、天性のファンサの技術にある。
    おおよそ独学でファンサの基礎を網羅しながら、我流のパフォーマンスをステージ上での武器にまで昇華したためるその才は、数多のアイドルの成長に携わっていたビジュアルトレーナーを驚愕させるレベルである。
    ファンサの極意――それは"視線"を狙った観客のもとに届ける技術だ。
    "いま目が合った"という特別感を、より速く、より多くの観客に味わわせる能力。

    それを可能にしているのは、空間把握能力と言っても差し支えまい。
    XYZの3軸から成る世界を構造的に捉え、そこに干渉する力加減を正確に把握する能力なのだから。

    それに、洗練されたダンス力が裏付ける手首のスナップ。
    されどプロポーションを維持するために控えめに留まっている筋肉量から扱える業物の規模――

    ――ブーメランを上手に扱う条件の何もかもがことねに揃っていることに、異論を唱える者はいないだろう。

  • 7◆YYjiOMVygQ25/10/07(火) 23:41:37

    ことね「千奈ちゃん、急いで逃げて!」

    千奈「は、はいい!!」

    華麗な弧を描くブーメランの軌道と、鈍い煌めきを放つ金属バット。
    それらを手に相対するは、煌びやかな衣装に身を包んだ二人のアイドル。
    自らに迫る命の危機すら忘れて千奈が見惚れてしまったのも、無理はあるまい。

    そんな彼女に発せられた一喝が、彼女を現実に引き戻した。

    美鈴「逃がしませんよ。」

    と、後を追おうとする美鈴の脚を止めたのは一投のブーメラン。
    軽く掠っただけで走る日常から乖離した痛みと共に征く道は、"快適"と呼ぶには程遠く。

  • 8◆YYjiOMVygQ25/10/07(火) 23:50:09

    美鈴(っ……。所詮は一介のアイドルと侮っていましたが……一筋縄ではいきません。)

    既に千奈は自身の射程から離れてしまった。
    認めざるを得ない。
    敵対し得るアイドルたちに、身体能力では引けを取らないと思っていた。
    自身が本気を出せば――否、本気を出さずとも、凌駕できると疑っていなかった。

    美鈴(少しばかり……認識を改めなければなりませんね。)

    この油断は――傲慢は、時に己の首を絞め得ると知っている。
    N.I.A で予想を大きく超えてきたまりちゃんに先を行かれたように、決定的な敗北に繋がり得ると知っている。

  • 9◆YYjiOMVygQ25/10/07(火) 23:56:47

    千奈「す、すぐに助けを呼んで戻ってきますわ!」

    遠くから千奈の声が反響して聴こえてくる。
    千奈が安全な位置まで逃げられたことへの安堵と、未だなお自らに迫る危機への緊張が混ざった表情をしながら、ことねはその手にブーメランを構えた。

    美鈴「あなたはいつも、わたしの邪魔をしますね。藤田ことね。」

    ことね「今回ばっかりは利害が対立してるワケだし。……やっぱ、手毬のため?」

    美鈴「それをあなたに話す必要がありますか?」

    ことね「別にぃ。ってか美鈴ちゃん分かりやすくって、言うまでもないっていうか。」

  • 10二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 07:15:55

    スレ立ておつ

  • 11二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 08:28:39

    >>6

    “ブーメランを上手に扱う条件の何もかもがことねに揃っていることに、異論を唱える者はいないだろう。”

    そうかな……?そうかも……?

  • 12二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 17:18:22

    >美鈴「まあ……そのコントロール……あなたは忍者か何かですか。」

    >美鈴(っ……。所詮は一介のアイドルと侮っていましたが……一筋縄ではいきません。)


    美鈴の強キャラ感すごい

  • 13二次元好きの匿名さん25/10/08(水) 22:07:50

    保守

  • 14◆YYjiOMVygQ25/10/08(水) 23:24:57

    美鈴「……安い挑発ですね。」

    不機嫌そうに顔をしかめつつ言い放つその様相は、言葉よりも饒舌に怒りを物語っている。あくまでも平静を保ったままじりじりと距離を詰める。

    ことね「安いどころか無料(タダ)じゃん? それで短絡的な行動取ってくれるならいくらでもやるって。それに……」

    美鈴「っ……!」

    瞬間、美鈴の眼前に速度を増したブーメランが飛来する。
    咄嗟に金属バットで受ければ、跳ね返った武器をキャッチしながらことねが続ける。

  • 15◆YYjiOMVygQ25/10/08(水) 23:28:55

    ことね「……あたしもさぁ、機嫌よくないからね。」

    手毬を巡っての衝突を避けるために、ことねは美鈴には愛想のいい顔しか見せていなかった。言葉に宿る低音のトーンも、滲み出る負の感情も、美鈴は知らない。

    ことね「最近のあたし絶好調で、N.I.A優勝こそできなかったけど……このまま人生うまくいくって、そう思ってた。」

    ことね「すっごいプロデューサーが付いて……落ちこぼれだったあたしが、このままアイドルで稼ぐことができるんじゃないかって……」

    ことね「そんな夢みたいな将来設計が……現実になろうとしてた。それなのに……殺し合いとかさぁ!」

    美鈴(もう一発……来る!)

    溢れんばかりの感情を乗せて、力いっぱいの投擲。
    教室の中にまた一つ、一陣の風が巻き起こった。

  • 16◆YYjiOMVygQ25/10/08(水) 23:57:35




    千奈「はっ……はっ……。」

    アイドル科教室棟の廊下を、息つく暇もなく駆け抜けた千奈。
    息を切らしながら、ぐるぐると巡り続ける思考が止まない。

    千奈(――どうして、藤田さんは助けてくれたのでしょう。)

    これまで話したこともほとんどないというのに、明らかに自分を助けるために立ち塞がってくれたと分かる。
    その理由の予想はつかない。
    いかなる思考の巡りの果てに美鈴に立ち向かう選択をしたのか、その推理導線など千奈には与えられていない。

    千奈(――きっと、優しい方、なのでしょう。)

    千奈が浮かべた予想は単純で――なればこそ。

    千奈(お友達を裏切ることになるのは心苦しいことですけれども……優しさには……報いなければなりませんわ。)

    導き出した答えもまた、明快なものだった。

  • 17二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 08:14:41

    保守

  • 18二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 12:43:19

    しゅしゅ

  • 19◆YYjiOMVygQ25/10/09(木) 21:16:03

    千奈「けれど……。」

    だからといって、何ができるのか。
    あの戦場では、明らかに自分だけが不相応だった。
    ブーメランを使いこなすことねに、圧倒的な身体能力を有する美鈴。
    対する自分は、唯一の武器すら落としてしまった始末。
    考えなしに向かったとて、ただ無駄に命を散らす結果に終わるだけだろう。

    それどころか、人質にされて足を引っ張ってしまう可能性も……。

    千奈「待っていてくださいませ、藤田さん――そして、秦谷さんも。」

    千奈「この争いを止められるお方を、すぐに連れてきますわ!」

  • 20◆YYjiOMVygQ25/10/09(木) 21:26:50

    【15:38 アイドル科教室 1年2組】
    ※千奈に支給されたバット(木製)が床に落ちています。

    【藤田ことね】
    状態:無傷
    持ち物:ヌンチャク、ブーメラン、メット
    行動方針:プログラムをボイコットする。

    【秦谷美鈴】
    状態:ほぼ無傷
    持ち物:金属バット、メット、メット
    行動方針:プログラムに優勝し、手毬と共に帰る。


    【15:38 アイドル科教室棟 出口】

    【倉本千奈】
    状態:腕の痺れ
    持ち物:傷薬
    行動方針:争ってほしくない。死にたくもない。

  • 21◆YYjiOMVygQ25/10/09(木) 21:33:15

    次回、咲季広四音です

    書いたら出ました

  • 22二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 02:36:30

    おめで保守!

  • 23二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 12:37:49

    保守

  • 24二次元好きの匿名さん25/10/10(金) 20:50:04

    保守

  • 25二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 01:14:33

    寝る前保守

  • 26二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 10:24:48

    ほーしゅ

  • 27二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 17:57:43

    保守

  • 28二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 18:10:03

    >>6

    スポーツとしてのブーメラン経験者だけど「うまくいかない」が基本だから

    辞めたは言わないメンタルのことねは適正あると感じる

  • 29◆YYjiOMVygQ25/10/11(土) 20:34:38

    広「咲季……どうしてわたしを庇ったの。」

    咲季「あなたねぇ……なんて顔をしているの。」

    理屈なんて、わからない。
    ――ただ、心の底から湧き上がってくる叫びが、わたしを突き動かしたんだ。

    あの時。
    広の背後に、きらりと光る殺意を見つけた。

    それが遠隔攻撃を可能とする凶器だと理解した瞬間――わたしは走り出していた。

    佑芽に負けて、とっくに折れたはずの闘志。
    それは今も再燃なんてしていない。
    諦めに近い感情が、死ぬも生きるもどうにでもなれと唾棄している。

    けれど、毎日やるべきことを順当に積み上げてきたわたしの頭はあの瞬間、確かに導き出したのだ。

    ――"みんなで生き残る"ために、"広を生かせ"と。

    横腹に深く突き刺さった一本の矢が、その結果だった。

  • 30◆YYjiOMVygQ25/10/11(土) 20:42:49

    広「ちがう……わたし、そんなことを望んでいたわけじゃない。」

    咲季「そんなことよりも……来るわよ。」

    四音「おや……。狙いをつけやすい方を狙ったつもりだったのですが……図らずも厄介な方を仕留めることができましたね。」

    背中の側から声がする。
    冷笑混じりの荘厳な声色は、その言葉に籠もる悪意をこの上なく伝えていた。

    白草四音――極月学園のアイドルにして、N.I.Aの優勝者。
    醜悪な笑みと共に、弓矢を携えて姿を現した。

    広「このプログラムに乗っているの? わたしたちに争うつもりはない。」

    四音「何ですか? その問いは。」

    まるで異なる言語を聞かされた時のように不思議そうな顔を浮かべたかと思うと、間もなくして腑に落ちたような顔に変わる。

    四音「……ああ。もしかして、皆で協力して生き残ろう、だなんて。そんな甘言で乗り切ろうとしているんですか。」

  • 31◆YYjiOMVygQ25/10/11(土) 20:51:57

    広「そう、乗り切ろうとしてる。この局面も……このプログラム自体も、皆で。だから、この場は引いてほしい。」

    四音「ふうん、乗り切る、ですか。一体どうやって?」

    広「手段は検討中。まだ具体的な方法を話し合うまで至っていない。」

    四音「……詭弁ですね。それが実現するとでも?」

    四音「というかそもそも……あなたたち、誰なんです? N.I.Aの終盤オーディションに出場していないアイドルなんて、いちいち認知していられませんので。」

    四音「ふふっ……そんな初対面の相手をどう信用しろと?」

    四音が弓矢に手をつがえる。
    その瞬間、弾かれたように広はポケットから支給された武器を取り出した。その直後――発せられた破裂音がその場の空気を切り裂く。

    四音「ッ――!?」

    驚きのあまりにつがえた矢から手を離したら、見当違いな方向に飛んでいき、壁に突き刺さった。
    広が手にした"拳銃"は、遠隔武器としての威力も速度も、四音の弓矢のそれを凌駕していた。

    四音「厄介な武器を……。」

    先ほどまで見せていた四音の余裕ある表情が、差し迫る命の危険への焦りへと、一瞬にして変貌を遂げた。
    そして憎まれ口を叩く余裕すらないままに、銃口から逃げるようにその場から走り去る。

  • 32◆YYjiOMVygQ25/10/11(土) 21:03:18

    広「ひとまず……追い払った。でも……。」


    咲季「ええ。きっとどこかに潜んでいるでしょうね。」


    事実のみを追うならば、四音は広の拳銃に恐れをなし逃げたと捉えられる。

    しかし、ここはプロデューサー科教室棟。

    プロデューサーのついていない咲季と広にとっては、馴染みのない建物だ。

    極月学園のアイドルたちへの優位性である地の利がこの建物に限っては存在しない。

    人間が潜めそうな場所の予測も、実際に向かってみないことには立てられない。


    現在地は dice1d4=2 (2) 階。

  • 33◆YYjiOMVygQ25/10/11(土) 23:27:23

    この高さなら窓から飛び降りるという手もあるが、負傷のリスクがある。
    どこから弓矢が飛んでくるかわからない廊下を進むのと、どちらを取るか。

    ……考えるまでもなかった。

    咲季は既に負傷しているし、広は広だ。
    二階から跳んではそれが原因で致命傷になりかねない。

    咲季「わたしが前を進むわ。弓矢を撃つには少なくとも腕だけでも私たちの前に現れる必要があるもの。それを即座に発見するためにも、動体視力に優れたわたしが先に行くべきよ。」

    広「わかった。じゃあ……この拳銃を使ってほしい。」

    広「わたしは狙いを定めるのがうまくない。さっきの反動ひとつで腕が痺れているからなおさら、ね。だから……」

    咲季「……いいえ、受け取れないわ。」

    広「え?」

  • 34二次元好きの匿名さん25/10/11(土) 23:59:15

    このレスは削除されています

  • 35二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 09:03:31

    保守

  • 36◆YYjiOMVygQ25/10/12(日) 13:57:56

    咲季「それは非力なあなたでも扱える唯一の身を守る手段でしょ? わたしの方が扱うのが上手いからといってそれを横取りするつもりはないわ。」

    広「脱出後で返してくれればそれでいい。これは脱出成功の可能性を上げるための合理的選択、だよ?」

    咲季「……じゃあ、言い方を変えるわね。」

    咲季「前に立つわたしが不意打ちへの見切りに失敗して殺されたら、わたしの懐から拳銃を取り出している間にあなたが死ぬわ。」

    咲季「そうなれば二人とも殺されて白草四音の手に拳銃が渡ってしまう。それがわたしたちだけじゃなく他のみんなの死にも繋がる最悪のルートでしょ?」

    咲季「だから、その拳銃はあなたが持ちなさい。そして、あなたの技量で応戦しなくていい。もしわたしが死んだらそのまま一目散に逃げるの。白草四音も弓をつがえなおす隙があるから、あなたが全力で逃げれば逃げられるはずよ。」

  • 37◆YYjiOMVygQ25/10/12(日) 14:01:05

    広「……咲季は、ずるい。」

    広「わたしとあんまり話したこともないはずなのに……わたしがいちばん断れない言い方をしってる。」

    咲季「佑芽がいつも話しているのよ。責任感がとっても強いお友達のことをね。」

    広「……うん。佑芽はわたしの、大切なともだち。」

    広「わたしたちは似ている。咲季も佑芽が大好きだから……負けたときあんなにも、くやしい。」

    咲季「……別にそれを呑み込めたわけじゃないから、あんまり言わないでくれるかしら?」

    広「うん。だから、生きて……いっしょにリベンジしよう、ね。」

    咲季「リベンジの約束はしないわ。今でもまだ、立ち直れる気なんてしないもの。」

    咲季「……でも、今この瞬間。一緒に生き残るのには協力してあげる。」

    咲季「――この胸を駆け巡る鼓動の熱さに、気づいたから。」

    きっとここは、地の底。
    どうしようもない挫折に翼をもがれ、叩きのめされ、落ちてきた。
    釜の底であっても――されど運命が逃がさない。
    醜悪な催しが、灯火のごとく儚い命すらも取り立てにやってくる。

    けれど、そのような逆境の中でこそ。
    地に伏し倒れ、泥に塗れたとて――懸命に足掻くその勇姿は、綺麗だ。
    仮に、彼女たちに魅入られ、惚れ込んだプロデューサーがいたとするならば、その者はこう語ることだろう。
    花海咲季/篠澤広は――逆境でこそ輝きを増すアイドルなのだ、と。

  • 38二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 20:41:37

    >>33

    >広は広だ。

    ここほんま草

  • 39◆YYjiOMVygQ25/10/12(日) 22:26:13

    さて、プロデューサー教室棟の脱出のためには開け放されたままの教室のドアを潜り、廊下に出なければならない。

    とはいえ、教室の中から廊下は死角だ。
    凝った隠れ場所なんて必要ない。一歩外に出た瞬間に撃たれてもおかしくないのだ。
    敵が"見えない"恐怖に心を蝕まれるような心地がじれったい。

    咲季「こういう時は――」

    広「しめちゃうの?」

    咲季「盾を用意するわ。わたしの後ろについてきなさい。」

    広「まって。まさか……」

    咲季は横スライド式のドアを一度閉め、数歩後ろに下がる。
    そして両の手を床に置く。いわゆるクラウチングスタートの構えだ。

    咲季「位置について……用意……」

  • 40◆YYjiOMVygQ25/10/12(日) 22:31:14

    床を蹴る鋭い音が心地よく広の耳に響く。
    それと同時に咲季の掛け声。

    咲季「――どんっ!」

    音を置きざりに駆ける少女は一瞬の間にドアの前に到達すると、その速度のまま脚を突き出した。
    鳴り響くは、破壊音。
    大きく凹んだドアを廊下の壁へと叩きつける。

    咲季「広っ!」

    広「……すぐいく。」

    脚をドアから引っこ抜くと、両腕を広げて両端を掴むと、それを目の前に携えて走る。
    咲季の背丈よりも高い盾を突き出しながら、二階廊下を駆けていく。

    広(怪我してるのに……ばけもの……。)

    背後から突き刺さる広の冷ややかな視線に気付かないまま、ばけものたちは廊下を突き進んでいった。

  • 41◆YYjiOMVygQ25/10/13(月) 02:51:57

    保守

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