- 1ぬし25/10/09(木) 16:51:04
- 2ぬし25/10/09(木) 16:52:20
【これまでのあらすじ】
絶海に囲まれた八つの島、ラウト地方。
元ロケット団のルッコラは相棒のニドラン♀と漂着した一つ目の島、ヴォルケ島で逆進化について研究するオトナシ博士とその娘ラフランに出会う。
光石の病という奇病にかかったルッコラは治癒を目指して博士親子とともに巡礼の旅に出ることに。
無事に二つ目の島、フェーゴ島にたどり着き巡礼を終えた今、ルッコラは会って間もない島民の少女ユッカと結婚させられようとしていた。 - 3ぬし25/10/09(木) 16:53:18
《登場人物紹介》
〈オトナシ研究所〉
・ルッコラ
主人公。元ロケット団員だったがなんやかんやでラウト地方に流れ着いた。一見クールだが本性は臆病で小物な残念イケメン。
「こうなっては 仕方ない さあ やってやれ ニドラン……あれ? ニドラン どこ行った!?」
・ラフラン
ルッコラの旅の同行者。いまいち頼りない男性陣を支えるしっかり者。
「ようこそ オトナシ研究所へ! ……とは言っても お父さん 消極的だから いつまで経っても 『仮設』のままなんですけどね」
・オトナシ博士
オトナシ研究所の所長でラフランの父親。逆進化学の研究をしている。死ぬほど気が弱い。
「アッスイマセン…余所者でスイマセン…」
〈ヴォルケ島〉
・アイビ
ヴォルケ島の若き島長。なんでか知らんが主人公に一目惚れしたらしきヤンデレ。
「…やっぱりあなたは違う…」
- 4ぬし25/10/09(木) 16:53:30
〈フェーゴ島〉
・バン
フェーゴ島の島長。喋り方がとても分かりにくい。
「島とは竈であり、竈とはすなわち人ならん」「誰も…裡に炎を閉じ込めて居るがゆえ」
・ユッカ
バンの養女にして次期島長。ほんのり因習村の香りがする元気いっぱいお転婆娘。
「……あんた さては よそからのシカクだな!?あたしが 叩きのめして サンカクにしてやる!!」
〈クラウン団〉
・エッダ
クラウン団の団長にして自称・ラウト王国の王。王様らしく態度はでかい。
「余はエッダ=フォスタ・レ・サンダ・ラウト・ミストルティン!偉大なるラウト王国の王である!!」
・レオノチス&ルナ
群体マニアのレオノチスと悪戯好きなルナのコンビ。敵がいたら囲んで殴る。
「?数なんて多い方がいいでしょ?」
「ね、キミ、ビックリした?ビックリした?怖いでしょ、怖いでしょ!」
- 5ぬし25/10/09(木) 17:21:02
「之より、試練突破者ルッコラならびに次期島長ユッカの婚礼を執り行う」
「………………はぁ???」
晴天の霹靂というにも程があるぞ。
なんじゃそりゃ、という顔でルッコラがぽかんと口を開けたまま固まる。
「はっ?婚礼?え?俺と?ユッカの?…えっ???」
ルッコラの頭上を埋め尽くす「?」マーク。いきなり今日出会ったばかりの幼い娘と結婚しろと言われたのだからさもありなん。一方でもう一人の当事者であるはずのユッカは平気な顔で「どうしたルッコラ、体調悪いのか?」なんて小首をかしげて聞いてくる。
「いや…逆になんでユッカはそんな何でもないみたいな顔してるんだよ!?バンさんの話聞いた?今日出会ったばっかの知らん男とお前を結婚させようとしてるんだぞあのオッサン!?」
身振り手振りを交えて必死に説明するルッコラ。ところがユッカは彼の焦りようにいまいちピンと来ていないというか、そもそも何が問題なのかもわかっていない様子だ。
「え?知ってるけど…あんたは外の人間なんだからこれがフツーだろ?」
「これ俺がおかしいの???」 - 6二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 17:30:49
たておつ
うーん認知の歪み - 7ぬし25/10/09(木) 18:16:07
「突然のことで驚かせてしまいましたね」
いまだ困惑が隠せないルッコラに、バンの側に控えていた島民が代表して話しかける。
「ですが、これも島のしきたりですから。どうぞお受けください」
「しきたりって…この婚礼とやらが?」
「ええ」
頷く島民。ますます訳がわからない。何がどうしたら島に来た異邦人を無理やり婿入りさせるなんて慣習ができるんだ?目を白黒させることしかできないルッコラだが、それでもなんとかずっと気がかりだったことをバンに問いただす。
「ていうか!さっきから気になってたんだが、島長の印章は!?巡礼が終わって祝宴も終わって、これで印章使って病を治せるんじゃなかったのか!?」
「…祝言が纏まらば、すぐにでも」
バンが短く答えた。ユッカはそれを聞くと無邪気な声でルッコラに言う。
「だってさルッコラ!あんたも病で時間がないんだろ?印章もらうためにさっさと祝言済ましちゃおう!」
さっさと済ましていいもんじゃないだろ、とルッコラは大声で突っ込みそうになるがすんでのところで飲み込む。どうせ言ったってこの娘には分かりやしないだろう。
そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、島民がおごそかに口を開いた。
「呪われていない外の血は非常に有り難いものです。どうかその高貴さをいたずらに散らすことなく、永遠にこの地で。フェーゴ島の娘と縁を結び、清らかな血の恵みをお授けくださいませ」
島民の言葉はどこか儀礼めいていて、言っていることの半分はよくわからなかった。だが漠然と、自分の理解を超えたおぞましい何かが彼らの中でうごめいていることだけが感じられた。
「フェーゴ島一同、巡礼者様を心より歓迎いたします。さあ、その娘の手を取り、婚姻の誓いを」 - 8ぬし25/10/09(木) 18:17:03
だんだん因習村テイストが強くなる
ルッコラの返答>>13まで安価どうぞ
- 9二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 18:25:20
断る
俺は結婚なんて望んじゃいないし、七つの巡礼が残ってる
そもそもオトナシ博士とラフランはどこへ行った - 10二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 18:26:56
流石に逃げ出すには多勢に無勢すぎる
ここは一度受け入れて、ついでに探りつつ夜逃げするしか…… - 11二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 18:55:30
そりゃ断る
ラフランちゃんとオトナシ博士にも何かしたんじゃないだろうなって詰め寄る - 12二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 18:56:49
婚姻すんだら印章くれるらしいし…ここはずる賢くとりあえず受け入れる
それはそれとしてオトナシ博士達はどこいった? - 13二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 19:18:09
- 14ぬし25/10/09(木) 19:22:44
- 15二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 19:33:36
流石は夜逃げ経験者、判断が早い
- 16二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 19:41:13
- 17二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 19:44:01
あっちが勝手に押しつけてきただけだろーが!!
- 18二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 20:14:55
- 19二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 21:11:55
今更だけどスレ絵自作か
めっちゃ可愛い…ユッカのロコンかな? - 20二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 21:22:02
どういう基準でスレ画に選んでるんだろうな
- 21ぬし25/10/09(木) 21:32:09
正直、気乗りはしない。
だがこれを断って婚姻を拒んだところで、その後自分の病やその他もろもろがどうにかなる未来が見えない。
「(…ま、ここは適当に受け入れたフリしとくのが得策だよな)」
他に方法がない、というのもあるが。まずは病を治すのが先決だ。形だけ結婚して印章を授かってしまえばこちらのもの。あとはさっさと夜逃げでも何でもすればいい。悲しいかな、その手の処世術には慣れている。
なんてユッカに若干失礼(?)なことを考えつつ、ルッコラはようやくまとめた考えをオブラートに包んで口から吐き出した。
「…わかったよ。誓いの言葉は?」
「巡礼者様のお好きなように」
相変わらずなにも分かっていないような顔をしているユッカの手を取る。見れば、その小さい手にきれいな爪紅が塗られていた。やんちゃなユッカが自分でやったはずもない、丁寧に整えられた子供らしくない艶やかな赤に何とも言いがたい生理的嫌悪を感じる。
「じゃあ適当に。…ええとなんだ?病めるときも健やかなるときも……なんだっけ、続きは忘れたけど、とりあえず」
そこで一旦言葉を切って、ルッコラがしらじらしく言う。
「ユッカと婚姻を結ぶことを誓います」
「おう!これからよろしくな!」
真っ白い無垢の角隠しの下で、ユッカが歯を見せてにかりと笑った。 - 22二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 21:38:20
手持ちも増えて今度は美人な嫁まで手に入れるなんて…なんて幸運…
- 23二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 21:40:09
各地にこういう女が居ると何かと便利って言うしまぁ好都合か(カス)
- 24二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 21:53:35
まだ恋愛的に何も攻めれてないアイビさんがすでに周回遅れになっちまった
- 25二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 21:59:44
ま、まあ権利のために結婚して即離婚したジャンプ主人公もいるから…
- 26ぬし25/10/09(木) 22:12:22
「…では、必要な儀礼は済みし故。印章の儀を」
ぱちんと扇を鳴らしてバンが言うなり、大きな波が引いていくように十数人ほど残っていた島民たちがはけていく。残るはルッコラにユッカとバン、それと二、三人いる付き人らしき島民だけだ。先程までみんなルッコラの一挙手一投足を食い入るように見つめていた姿が嘘のようである。
「ルッコラ殿、手を」
バンが突然ルッコラに呼びかける。ルッコラは当惑しながら「えっあっはい」とユッカの手を握っていた両手を離しバンに差し出す。「…出すは片手で構わぬ」とやや呆れたようにバンが言い、ユッカにからかわれながらルッコラは慌てて片手を下げた。バンはそれを見てひとつ頷き帯にかけられた印籠に手をやる。
取り出されたのは手のひらにすっぽり収まるくらいの、古くて小さい金属板だった。その表面には…炎を象っているのだろうか?特徴的な紋様が彫られ、ひんやりとしているのに焼けた鉄のような不思議な質感を覚えた。
バンが差し出されたルッコラの手首を捕まえる。
「いささか焼けつくぞ、堪えよ」
そう言われてルッコラが身構えるのと同時にバンが金属板を彼の手の甲に押し当てた。
「……っ!?」
一瞬、手の甲が燃えてしまったのかと錯覚した。感じる焼けつくような熱と、それが広がっていく感覚。肌を焼かれる痛みだけがいっさい感じられないのが不気味だった。
手の甲から熱が伝わっていく。腕を伝って肩へ、胸へ、心臓の奥深くまで届いたら、今度は血流に乗って全身の隅々まで。じゅう、と何かの焼ける感覚がして、背中と腹に感じていた鱗のごわつく感触が一瞬にして消えた。
「…終われり」
気付いた時にはもう押し付けられた印章は手を離れていた。
代わりにうっすらと、炎に似た紋様だけが手の甲にぽつりと残されていた。 - 27二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 22:25:45
なんか入れられてない?
- 28ぬし25/10/09(木) 23:05:38
「病の快癒おめでとうございます」
儀式の余韻に浸る間もなく、島民の上機嫌な声がルッコラの意識を現実に引き戻す。
「これでルッコラ様も立派な島の一員ですね。まことにめでたい限りです」
いや、儀式を済ませたら即帰る予定なんですが…とはさすがに言えないので、ルッコラは曖昧に笑ってお茶を濁す。満足げににこにこ笑む島民。間に立っているバンの表情は、相変わらず覆面に隠されていて分からないが。
「ではお屋敷に帰りましょう。ご安心を、ルッコラ様の部屋はすでに空けてございます」
「あたしがお布団敷いといたんだぞ!」
ユッカが自慢げな顔でルッコラの袖を引く。ルッコラはあれよあれよと引きずられながらふと振り返り、そういえば、とあることを思い出した。
「バンさん、連れは結局どこ行ったんすか?こんな夜遅くになっても来ないなんてさすがに心配なんですけど…」
バンは答えなかった。
「…バンさん?」
不安げに揺れる声で、ルッコラが再度問う。もしかしたら聞こえていなかっただけかもしれないという一縷の希望を込めて。
十数秒の時間を置いて、やっとバンが答えた。
「…案ずることは無し。其方の連れたる助手の少女も、海の香する博士も、傷ひとつ無く留め得れば」
「…何を言ってるんですか?」
ルッコラの問いにバンは答えなかった。ただ小さく掠れた声で、ひそやかに言った。
「…其方さえこの島に結びおけば、かの二人も共に留まらん…同じ籠の中とはいえ、無理に安住を強いるよりは、自ら望んでさする方が…」
彼の放った言葉の意味を噛み砕いている間に島民はさあさあとルッコラの背中を押してくる。
「屋敷にお戻りなさいませ。今宵は雨が降るようですから、お身体を冷やされる前に」
「ちょっ待っ、俺まだ船に荷物とか取りに行かなきゃいけないからさ、いったん港に戻らせて…」
「まあまあそうおっしゃらずに」
ユッカが袖を引っ張るのに合わせて島民たちが揃って退路を塞いでくる。その有無を言わさない彼らの圧に、ルッコラの背にぞわりと寒気が走る。
自分はもしかして、とんでもない選択をしてしまったんじゃないか?
後悔するのも束の間。ルッコラはフェーゴ島の島長の屋敷に引き摺り込まれていった。 - 29二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 23:08:12
やばいって
助けて!ヤンデレアイえもーん! - 30ぬし25/10/09(木) 23:28:29
ーー
中身をくり抜かれたカメックスの甲が宴席の真ん中にどかりと鎮座している。中身は客人ひとりひとりに配られた羹(スープ)の皿の中にあった。
外のものは有難いから、呪われていないから、その御身を取り込むことで自身も炎病から逃れようと。そんな忌々しい慣習が今よりなお色濃く残っていた時代。
ちらりと男は隣の婦人の方を見た。
彼女はフェーゴ島ではないどこか、異国にみられる意匠のほつれたドレスを纏っていた。左手の薬指に見える指輪。不自然に膨らんだ腹。それに取ってつけたような花嫁衣装が上着だけ掛けられているのに、酷いアンバランスさを感じた。
おえ、と婦人がえずく。
その吐き気は悪阻だけのせいではあるまいと、他人事のような同情心が湧いた。
彼女の椀を下げてくれと側仕えに頼んだ。待ちかねたように伸ばされた手がさっと彼女の椀を奪った。あまりに可哀想だったので、自分の椀も下げてもらった。
どうすればいいのか分からないまま婦人の背をさすり続けた。彼女はずっと嗚咽していた。それでも婦人が落ち着くまで、せめて隣に居てやった方がよかろうと思った。
下げられた二人分の羹を台所番たちが奪い合って食っているのが視界の端にちらりと移って、扇を広げて自分たちの視界を塞いだ。
彼女から燃え移った気持ち悪さがたえず腹の底で煙を吐いていた。
ーー - 31ぬし25/10/09(木) 23:29:23
- 32二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 23:31:21
神の祠のもう少し奥
- 33二次元好きの匿名さん25/10/09(木) 23:52:25
屋敷の地下