【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第2R】

  • 11◆qxc6n.SpgKwJ25/10/12(日) 01:27:18

    生まれも育ちもロクなもんじゃない

    幸い小賢しい程度には頭は悪くなかった

    だから勉強してトレーナーになった

    金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲った

    それでも経験も実力も実績もあるわけじゃない

    だから口八丁でだまくらかすように担当契約を結んだ

    特に優しく 時に寄り添うように 時に一生添い遂げるかの如く

    実績つんで金になればそれでいい

    そのために他人を騙すことに心が痛む? 良心?

    そんなものは親の腹のなかに置いてきた

    いや……俺が腹の中にできる前からそんなものありゃしない

    こいつらを利用して俺はのしあがる


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    【閲覧注意】俺は闇のトレーナー|あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com
  • 21◆qxc6n.SpgKwJ25/10/12(日) 01:31:53

    サクラローレル :クラシック
    カレンブーケドール:ジュニア
    スーパークリーク :ジュニア
    ジェンティルドンナ:ジュニア

    現在大体6月~7月
    四人の担当チームなのでオムニバス要素あり、会話による時間の前後があります
    史実・ウマ娘アプリと出走レースおよびシナリオの齟齬間違いがあります
    色々キャラ崩壊などありますがご理解頂ける方のみ閲覧ください
    素人なので誤字脱字文脈の乱れなどありますがそうだねプロテインでご容赦下さい

  • 3二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 01:58:30

    トレセン学園の夏休みは長い
    7月から地方のジュニア戦線があり春G1戦線、クラシック戦線が一段落する関係上7月頭にはもう夏休みが始まっている
    多くの現役ウマ娘は学園主導の合宿に参加したり一部チームは独自の合宿メニューを組んだりする
    華やかな一方で学園のトレーニングセンターでもまだ未勝利だったり夏のローカル線戦を戦う生徒がトレーニングをしている。 学業は夏休みでもウマ娘たちには忙しく自らを鍛える期間だ、夏休みだとうつつを抜かせば待っているのは敗北
    俺たちはジュニアの子たちを含め合同合宿に参加する予定であったがカレンブーケドールが7月にデビューするということで札幌遠征も兼ねて札幌合宿に変更
    トレセン学園から紹介された札幌の合宿所は北海道レースの生徒やばんえいウマ娘のみなさんも使ってるらしい
    なので皆さんともなかよくやってくれと説明をしたところで意外にも四人から抗議が上がった

    ――旅行先の女の子とひと夏の思い出とかやめてくださいね
    ――トレーナーさんって主導権とってくれるお姉さんに弱いですよね? ばんえいウマ娘とかどうなんですか?
    ――あらわたくしならばんえいよりも強いですわよ?
    ――わ、わたしの方が柔らかいし抱き心地きっといいですよ

    黙れ! ブーケのメイクデビューで札幌に合宿であって旅行じゃねえし新しい女子見るたびそうなってたら俺はトレセン学園ですでに蒸発しとるわ!
    俺はそんな彼女たちに説教をしつつ合宿部屋に案内してもらう。
    気さくなばんえいウマ娘のお姉さんたちが荷物まで運んでくれた
    なんというか――ばんえいウマ娘ってもっとガチムチ筋肉ガテン系を想像してたのに普通に高身長のお姉さんなんだな……どっちかといえばタキシードや燕尾服やスーツ来てホストにいそうな
    そんな事を考えていたらサクラローレルに腕を思い切りつねられた、痛い。
    好みなのか? ああいうのが好みなのか?と大きな就寝部屋で四人に詰め寄られたので堂々と「ああそうだ」と答えてやる
    高身長でおっぱい大きくて腰くびれてるお姉さんが嫌いな男なんていません。それが一番好みかどうかは別にして嫌いな男なんていません
    ぶーぶーとブーイングを喰らいながらも俺はトレーナー寮のような合宿用男性寮があるということなのでそちらに荷物を起きに行く

  • 4二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 02:04:31

    正直遊んでいる暇はない、ブーケをレース当日までに仕上げてサクラローレルを菊花賞トライアルまで万全に仕上げる。 クリークだって本格的にメイクデビューに向けてハードトレーニングができるよう身体をつくっていかなければいけない
    唯一そこらが信用できるのはジェンティルドンナぐらいだ、入学時からトレーニングに余念がなく基礎的な身体が出来上がっているし自分のなすべきことをある程度理解している
    それでもジェンティル自身がおもっているよりジェンティルドンナというウマ娘はもっともっと高みに登れる、そのためにジュニアからつまづいては居られない
    札幌についた瞬間からトレーナーの俺には休んだり観光したり遊んでる余裕はない。遊ぶのはあの温泉旅行までだ
    温泉旅行で俺自身の身体もリフレッシュ出来てノートパソコンに向かって集中できている
    ――と、そんな俺にジェンティルドンナが声をかけてきた。
    忙しいところ悪いのだけど、と前置き一つ
    ――父が出張で札幌に来ますの。 紹介したいのでどうかディナーに付き合って頂けないかしら?
    正直行きたくない
    と俺は正直にジェンティルに返答する。 その返答に露骨に不満げに眉を寄せているのがよく分かる。
    どうして? と問うジェンティルに俺は静かに扉の方を見やって……誰もいないことだけ確認し
    他の三人には言わないこと、とジェンティルの顔をまっすぐ見て約束する。
    俺の「本性の顔」にジェンティルは静かに頷いた

  • 5二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 02:17:23

    貧乏というのは不幸だ
    しかしもっともっと不幸なことは――貧乏ゆえに愚かなものは愚かなままだと言うことだ
    そんな愚かな家庭に産まれ育ったものが愚かであるのは――一体誰が悪いのだろうか

    俺は母子家庭の出身だ、ろくな出自じゃない。
    俺の言葉をジェンティルは鼻で笑った。
    ――そんな事はどうでもいい、私は貴方をトレーナーとして認めている
    ああそうだ。ジェンティルに認められるのは光栄だ。 俺は堂々と胸を張ってお前の父に挨拶をすべきだろう、トレーナーとして。 ……だがそうじゃない

    俺は犯罪者なんだ――もっともっと厳密に言うと幼少期に重い重い犯罪を犯していた
    母親の命令で犯罪に手を染めていたんだ、勿論幼児に刑罰は降りないしすべて母親の命令だった
    母は警察に捕まって刑務所へ。 俺は警察の保護からいくつもの擁護施設、保護施設を経て自立支援の進学育成所でくらしてた。 そこで中等部を終えた。 それなりに素晴らしい成績だったから奨学金も貰えて、いそいで大検をとった
    すごいだろ? 俺一応はすぐ大検を取る特例が出たせいで史上最年少のトレーナー試験合格者だぜ? 一応天才扱い

    でも、俺の前歴にはその事件が残ってるし――俺の実母はその犯罪歴がしっかり残ってる
    だから俺のような犯罪者がジェンティルの家のような名門とあれこれあれば、一族も一族の外からもおしかりをうけるだろうさ
    俺はお前のトレーナーであるだけで十分だよ。 これ以上ジェンティルにもジェンティルの親御さんにも迷惑かけたくない
    だから俺はいきたくない。 本当はジェンティルの親御さんに挨拶ぐらいはすべきなのだろうが……ごめんな

  • 6二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 02:23:43

    ジェンティルは天井を仰ぎ、ため息をついた
    誰が悪いわけでもない。 正直俺だって悪くない。それをなじる奴らだって悪くない。それに眉をしかめるものがいたとしたって悪くない。
    でも――こういうのはどうしようもなく存在する。 家柄がよければなおさらだ
    だからこそ、ジェンティルもそれを全部一笑に付すことはしなかったんだろう。一族を背負うつもりの彼女だからこそ、その一族の重みと人生の重みは高等部という若さにして理解をしてるのだろう

    ――貴方は、悪くありませんわ

    ジェンティルはそう言った。 力なく、疲れ果てたように
    最悪ジェンティルとは契約を解消する可能性すらあるだろう。 一族の事を考えればその方が良いだろう
    ――貴方はわたくしのトレーナーですわ、唯一わたくしが認めたトレーナー
    ――今までも、これからも
    そう言ってジェンティルは俺に背中を向ける。「お父様に相談してみる」と
    無理はすんな、と俺はジェンティルの背中に声をかけた。 ジェンティルはその言葉には何も答えず部屋を出ていく


    嫌なもんだ
    嗚呼、いやなもんだ
    また【嘘】をついちまった

  • 7二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 02:28:50

    俺が母親の命令でとある犯罪に手を染めていたのも事実だ
    そして母親は結局のところそれの主犯として捕まった事も、その後の俺の人生も
    だけど――そうなった一番の原因は言ってない
    しょうがなかったんだ――だって
    ――だって、おなかがすいてたんだ
    ――オナカガスイテ、ゴハンガタベタクテ、オナカガスイタンダ

    カヒュッ、かふっ、けふっ、げふっ!!
    我に帰った俺は胸を全力で叩き過呼吸になった空気を吐き出す。必死に必死に溜まった嫌な空気を吐き出す
    誰が悪いんだ、俺が産まれてきたのが悪いのか?
    母親を捨てた父親だろうか? それとも俺をこんなにした母親?
    それとも俺を◯した大人たち?
    知るか、そんな事――あのときはただ、ただ――
    ただただ、おなかがすいてたんだ

  • 8二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 02:33:25

    最悪の気分のまま俺は畳に寝転ぶ
    シミのついた木の天井を見上げる。 セミの音が都会より煩い
    俺は、今はもう中央のトレーナーだ。
    メシだって普通に食える。 温かい服だってある、風呂だってシャワーだって自由だ
    自由があってそれなりにちゃんとした生活ができる
    何より――担当たちは俺を大事にしてくれる。
    くすぐったいし恥ずかしいしまだ彼女たちは生徒だから問題はあれど
    俺のことが好きなのはわかる。 俺の知らない「好き」をくれるんだ
    十分幸せじゃないか、こういうのを世間じゃ幸せっていうんだろ? だったらいいじゃないか
    昔は昔で今はもう今を生きるべきじゃないか
    過去なんか考えるべきじゃないじゃないか
    なんで俺はこんなにも苦しいんだ、そんな昔のことなんか考えるべきじゃないのに

    本当に俺は――あの子たちのトレーナーでいるべきなのだろうか

  • 9二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 02:46:02

    遊んだり観光している時間などない!
    ローレルは全力で砂浜を走り泳げ!
    ブーケもここで一歩がんばればその一歩でメイクデビュー勝てると思って最後に一歩踏みしめろ!
    クリークどうした!休養はおわりだぞお前もメイクデビュー待ちだ頑張れ頑張れ
    俺は声を張り上げて砂浜の担当たちを走らせる
    ――カラ元気かしら? それとも吹っ切れた?
    ジェンティルが俺の後ろから声を書ける
    虚勢だよ
    正直辛い、いまでも心臓が苦しい。 胃が痛い
    大声上げて喚き散らしてすべてを投げ出して逃げ出したい
    だけど
    本当にだめになったら辞めるさ、お前らも全部捨てて逃げ出す
    それまではまあ……やるさ。 やるからには頑張ってるだけだ、正直逃げたいし布団被って震えてたい
    ジェンティルドンナはそんな俺の言葉に目を見開き
    ――貴方は強いわ、汚れてて汚くても貴方は強くてたくましくて……そして貴方が思うよりは正しい人間よ
    それだけ言ってジェンティルは海に泳ぎに行った
    それはお前が俺の本性をしらんからだ馬鹿め
    そう思いつつも、俺は担当たちに声を張り上げる
    ソレしか出来ないのだから、できるうちは全力で彼女たちを走らせるために

  • 101◆qxc6n.SpgKwJ25/10/12(日) 02:47:06

    寝ます、おやすみなさい

  • 11二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 02:50:25

    ポルノグラフィティのカルマの坂が似合いそうなトレーナーだ

  • 12二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 02:55:58


    次期待してる
    それにしても十分闇深いのにまだ奥底に深い闇沈んでるのかよホラーじみてる

  • 13二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 03:01:27

    ジェンティルめちゃくちゃこのトレーナーのこと気に入ってそう

  • 14カレンブーケドール25/10/12(日) 08:04:49

    優しい性格――優しすぎる性格
    わたしという人物はそう評価されてきた
    優しいから勝負に勝てない、優しすぎるから相手を押しのけられない
    違う
    わたしは優しいからじゃない――怖いだけだ
    わたしは勇気なんかこれぽっちもない臆病もので、だから良い人のフリをして
    優しいフリをして生きてきた臆病なウマ娘――それがカレンブーケドールというウマ娘
    でも走ることは大好きで、レースに出たくて
    模擬レースではいつも負け続けて選抜でも全然結果を残せなかった
    ――勿体ないな
    わたしにそんな声をかけたトレーナーさん
    ――どのくらいが目標? OP? 重賞?
    そんな事考えた事もない。わたしはきっと「善戦はするけど勝てない落ちこぼれ」でOPにいけるとか考えもしなかった
    ――俺はカレンブーケドールがG1を穫れると思ってる
    トレーナーさんは微笑みながら言った。なぜ――わたしを見てそんな事を思ったのだろう
    わたしは勝負が出来ない、臆病でバ群にもみ合うのもぶつかり合いも嫌ってしまう。
    だから勝てない。 ポジショニングが最悪で仕掛けどころでスパートすらさせてもらえない
    ――でもソレ以外は超一流だ。 キミはとんでもない才能をもったウマ娘だよ。だから「勿体ない」言った
    勿体ない
    わたしのようなウマ娘を「勿体ない」とトレーナーさんはわたしを拾ってくれた

  • 15カレンブーケドール25/10/12(日) 08:14:28

    根性論とか精神論とかメンタルトレーニングをするのかな
    なんとなくわたしはそんな事を考えていた。 啓発セミナーだとか……滝行だとか。
    トレーナーはわたしを街に連れて行って「好きなように歩いて欲しい」と言った。ウインドウショッピングでも実際に何かモノを買っても良い、と
    わたしはトレーナーの意図がわからないまま商店街を歩き……小さなお花屋さんを見つけた
    可憐な花が並ぶそれを眺めているだけで心が軽くなる、幸せな気持ちになる
    ――花は好き?
    トレーナーが優しく問いかけてくる。 わたしは小さく頷いた
    ――良かった
    ほっとしたようなトレーナーの声に私が不思議そうに振り返るとトレーナーは頬をかきながら
    ――ブーケがどんなウマ娘なのか見たかった。 どんなものに興味があってどんなモノが好きなのか
    ――花が好きなんだって知れて良かった
    トレーナーは店員に小さな花束をお願いしていた。 店員がブーケにいたしますか? と聞いていて、トレーナーさんはこまったようにわたしを見て助け舟をもとめている
    ブーケは茎を短くきったコンパクトな花束、わたしの名前のそれをトレーナーさんはじゃあそれで、と店員さんにお願いして、店員さんから花束を受け取った
    そして――わたしの前で片膝をついて、私にそのブーケを捧げるように掲げた
    ――こんな小さな花束――いやブーケで悪いけど、ブーケが本当に花咲く時にはもっと立派な花束を渡すから

  • 16カレンブーケドール25/10/12(日) 08:21:18

    そんな約束をした―― トレーナーさんはきっと覚えても居ない他愛のない出来事
    ――今は優しすぎても臆病でも良い。 最初は勝てないだろうし苦労すると思う
    ――でも心と感情は理屈じゃないから、それをアレコレ言ったところでブーケの心が辛いだけだよ
    ――だから何のためならキミが変わるきっかけになるのか、今日だけじゃなくこれからカレンブーケドールというウマ娘を知れるように努力したい
    それからわたしは模擬レースを繰り返して、何度も何度も負けた
    負けた理由はいつも一緒でポジショニングの悪さ。 能力的な表現をすれば勝負根性がない
    ここ一番で相手に譲ってしまう。 バ群が怖い、仕掛けが遅い。 競り合う相手にぶつかる恐怖から身を引いてしまう
    ごめんなさい
    あんなにわたしを褒めてくれたのに、信じてくれたのに、わたしは同じ間違いばかりする
    でもトレーナーさんはいつもレースが終わると褒めてくれる
    今日の上がりはいつもより速かった
    最後に垂れずに踏ん張ることができた
    今日は最後に長く相手と競り合う事ができた

    ――頑張ったね、偉いね

    と――いつもいつも褒めてくれた
    優しい言葉でわたしを励ましてくれた、勇気づけてくれた
    依存していると思われてもしょうがないけど……それが心地よかった。 幸せに思えた
    わたしは――あの人のそんな声を、言葉をもっと聞きたい

  • 17カレンブーケドール25/10/12(日) 08:27:05

    ジェンティルさんにも、スーパークリークさんにも、サクラローレルさんにも譲りたくない
    トレーナーさんを独り占めしたいとは言わない
    でもトレーナーさんを譲ってあの優しい声を聞けないのは絶対に嫌だ
    もっと褒めて欲しい。 優しい言葉をかけて欲しい。あの人にわたしを見て欲しい
    ジェンティルさんとクリークさんと模擬レースをした時、心から勝ちたいって思った
    とても醜くてふしだらで不健全な、汚い動機かもしれないけれど
    心からレースに勝ちたいって、ジェンティルさんクリークさんに勝ちたいって思って
    あの二人の前に飛び出てゴールした時のトレーナーさんは嬉しそうだった

    ――見ろ、やっぱりブーケは凄いウマ娘なんだ!見てくれあれがカレンブーケドールだ!!

    周囲に自慢する子供のようなトレーナーのはしゃぐ姿にわたしは心から勝ってよかったって思った
    もう譲りたくない
    私が勝てばトレーナーさんは喜んでくれる
    私の心に小さな灯火をくれたトレーナーさんに――勝利を捧げたい

    ――あの小さなブーケのお返しに、私は大きな大きな勝利のブーケを束ねて、贈ろう

  • 18二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 08:37:43

    気合が入ってる
    昨日までのカレンブーケドールとは別人のようだ、静かに佇むブーケの周囲にはオーラのような空気の変化があるように錯覚をしてしまう。
    ――あの時みたいですわね、わたくしとクリークさんと行った模擬レース
    ――静かで、それでいて彼女とは思えない闘争心
    ――がんばれ、がんばれブーケちゃん!
    1800Mのメイクデビュー戦、中距離向きなカレンブーケドールにはギリギリ短いといえる距離
    7月上旬にこの距離しかないのが厳しい、先行争いは激しくなるだろう
    不安を抱えていたが、その不安はあの表情で一気に消え失せた。
    ジェンティルの上がりハロン最速は芝状態のいい選抜レース場での34秒だったか
    ジェンティルに俺は口を開いた
    ジェンティルドンナ――見ておけ、あれがティアラ三冠の最大のライバル――カレンブーケドールだ

    スタートは横一列、しかし先行争いに参加するウマ娘が多すぎてカレンブーケドールが即座にバ群に飲まれる
    ――あらあら、ブーケちゃん……
    ――ブーケちゃん!
    だが、そのバ群のど真ん中を滑り込むように低い低い体勢で抜け出るカレンブーケドール
    そのまま2番手の位置をキープする
    うまい、あの位置なら先団のスパートがあってももみ合いにならない
    そしてカレンブーケドールのキレ味は――全力をだせれば「貴婦人」ジェンティルドンナをも凌駕する

  • 19二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 08:44:39

    ――勝つんだ――私はトレーナーさんに、勝利の花を――
    残り三ハロンでカレンブーケドールが最大加速に入った。いやコーナーを抜けさらに加速する

    ――カレンブーケドール!!カレンブーケドールが抜けた!
    ――速い速い!後続は着いてこれない!更に引き離す
    ――圧勝!カレンブーケドール圧勝です!! メイクデビュー戦とんでもないウマ娘が現れました!
    ――勝ったのはカレンブーケドール! 圧倒的な強さです!

    上がりハロンは33秒――気持ちよく走る事さえできれば差しでも通用するとは思っていたが……あの先行争いからこの上がりタイムで勝ち切るのはちょっと次元が違う。 あの子はやはり才能の塊だ
    ――トレーニングに行きますわ、トレーニングの準備をなさい
    ジェンティルがそう言って帰ろうとする。 ライバルとして認めて火が着いたのだろう――だが
    駄目だ、 チームの仲間が勝ったんだから祝いに行くぞ。 今日は祝勝会を優先だ
    俺がたしなめるように言うとジェンティルも「仕方ありませんわね」とため息一つ
    しかしクリークもローレルもあのラストスパートには息を飲み、闘争心に火がついたような興奮だった
    俺だって興奮してる

    ――ああ、よく頑張ったなブーケ、偉いぞ

  • 20二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 08:56:42

    メイクデビューのライブを終え、帰って来るカレンブーケドールにちょっとしたサプライズ
    ドアを開けたブーケに各自花束を持ったチームメンバーが出迎える
    様々な各自の好みで選んだ花を束ねたものをブーケに差し出して

    ――『おめでとうカレンブーケドール!』

    本当は約束通りブーケにしたかったんだけど、これだけ量が多いとブーケにするために茎を短くするとうまくまとまらないそうだ。 残念ながら茎の長い花束で贈ることにした
    大量の赤白の薔薇の花の花束はジェンティルドンナ
    黄色を基調とした明るく元気がでそうな色の花束はスーパークリーク
    ローレルはピンクとオレンジの花束にした
    俺は胡蝶蘭とデンドロビウムを束ねた花束

    ごめんな、胡蝶蘭はあの温室で育てたやつだからちょっと不出来なんだ。
    こっそり俺も温室を使わせてもらっていた。 いつかブーケに贈ろうとおもっていた胡蝶蘭
    ブーケは顔をくしゃくしゃにして、俺の花束を受け取った。

    ――偉いぞブーケ、よく頑張った。 やっぱりブーケは凄いウマ娘だ

    俺の言葉にブーケは俺に抱きつき――俺の頬に熱いキスを落とした。
    ちょんと触れるようなキスではなくしっかりと唇をつけるような熱いキス、頬にふれたぬめやかな濡れた感触は舌だろうか。ブーケはとろりとした笑顔で微笑み

    ――もっともっと勝ってトレーナーさんを夢中にさせますね

    そのキスにローレルはきゃーきゃー♪と喜び、クリークは困ったように微笑み、ジェンティルは抜け駆け禁止だとブーケに詰め寄っていた。
    俺はキスの感触の残るほっぺたを撫でつつ、その高揚とレースの感動にドキドキしたままだった

  • 211◆qxc6n.SpgKwJ25/10/12(日) 08:58:05

    休憩します

  • 22二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 09:16:43

    あの優しすぎるお清楚ブーケちゃんがこんなに積極的に……

  • 23二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 09:26:05

    次スレ来てた嬉しい

  • 24二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 09:32:11

    おつ
    続き楽しみにしてる

  • 25二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 10:00:47

    ごほうびが欲しい――ブーケにそんな事を言われた
    正直札幌合宿なども含めそこそこ最近出費が多くご褒美に見合うものを買えるかなという不安があった
    しかしブーケの要望は二人きりでトレーナー室でこの花束たちを眺めてお茶をしたいというとてもささやかな願いだった
    そんなことならご褒美と言わずいつでも歓迎だ、ブーケの入れてくれるハーブティーは美味しいし
    しかしなぜかチームから反対の声が上がる、なんでだ?
    あれこれ言い争ってるが一番びっくりしたのがこういう言い争いを一番苦手とするブーケが三人に真っ向から立ち向かった事だった。 あっさり言い負かされて引くと思ったのだが

    ――でも皆さんだってご褒美に二人きりの時間が手に入りますよ

    チームに電流走る、青天の霹靂のような表情をする三人。 ブーケの一言に三人は俺の肩を叩き
    ――ご褒美は大事ね、やる気という面でも
    ――うふふ、トレーナーさん私の時もご褒美楽しみにしてますね~♪
    ――トレーナーさん、楽しみにしてくださいね♪

    なんだこの嫌な予感は
    トレーナー室と言っても今は合宿中。 ウマ娘の合宿寮は当然男子禁制
    なので合宿寮の自室に花束を飾って、ティーセットをもってきてきてもらって
    そこでお茶会を楽しむことにした

  • 26二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 10:13:25

    あの
    ブーケさん
    お茶会なのにずっとくっついてるのはちょっとどうかと思いますよブーケさん
    花を和室のテーブルに飾って
    畳の上ざぶとん敷いて、それでハーブティというのもちょっとアレで申し訳ないが
    そんなささやかな二人きりのティータイムと思っていたのだが
    ブーケは俺にしなだれかかるように横からもたれかかり、時々俺の腕やワイシャツの胸元に顔を埋めてる
    すーっ♡
    という呼吸音。 自分の匂いを嗅がれてるような感じがしてとてもくすぐったい
    ――いいえ、トレーナーさんすっごくいい匂いです……♡
    それが恥ずかしいのだが今日はブーケがあんなに凄いレースをして頑張った「ごほうび」なのだし好きにさせてあげよう
    しかし男の体臭なんざ汗臭いだけだと思うが……
    俺がそんな事を呟くとブーケはふふっと笑って俺に身体を寄せてくる

    ――異性の匂いって、いい匂いに感じるそうですよ? 特に相性のいい方っていい匂いがするそうです
    ――トレーナーさんは私にハグされた時……匂いが気なるときってありますか?

    いやそりゃブーケはなんというか花畑みたいな花の匂いがして甘くてすっごくいい匂いだけど

    ――あはっ♡じゃあもっともっと……胸いっぱいに吸い込んで下さい

    ブーケは俺をぎゅうっと抱きしめる。膝立ちで俺の顔をちょうど胸元に寄せるような抱き方
    俺の鼻を服に押し付けるような優しく柔らかいのに、どこか蠱惑的な抱き方
    俺の鼻腔にブーケの甘い匂いが満ちる。
    花の甘い匂いとも違うブーケという女性の甘い甘い匂い。落ち着いて頭がとろんとして思考を全部捨てたくなるようなそんな匂い
    異性の匂いは魅力的に感じる――なんとなくわかる気がしてしまう

  • 27二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 10:17:14

    ゲノハラかな?

  • 28二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 10:23:38

    ――わたしにもトレーナーさんにも、「ごほうび」は大事ですよね
    ブーケはずっと俺を優しく抱いてくれる。身体をも密着させて――いつしかコロンを俺達は横になる
    押し倒される、というよりブーケに抱かれたまま横向きに抱き合う形
    ブーケは俺に身体を密着させ、脚を絡めてくる。
    こすれ合う身体と脚の感触がいたく心地良い、気持ちいい
    とろんとした頭で俺はブーケに抱きつき、気持ちよさのまま脚をブーケにこすり合わせてしまう
    ――ふふふっトレーナーさん気持ちいいんですね♡
    服を着たまま互いに抱き合い、身体も脚もくっつけるヘビが絡み合うようなハグ
    いい匂いで、気持ちよくて、あたたかくて
    全部ブーケに蕩かしてほしくなる。ブーケにもっともっと愛して欲しくなる。 依存したくなる。
    まるで食虫植物に囚われた獲物が極上の快感のまま溶かされるような
    ブーケにこうしてとらわれるのが最高の幸せに感じちゃう
    ――二人きりですから……誰も見てませんよ♡ 私がぎゅうってしてるだけですから♡
    気持ちいい……ブーケ、気持ちいい
    ブーケが俺の額に、頬に、キスをして……俺の顔を両手で包み――唇が触れ合おうとした瞬間

    ――すいませんトレーナーさん。 先日のカレンブーケドールさんへのプレゼントが多くてですね!

    ばんえいウマ娘さんの声がドアに響く
    ――あ、
    ――あぶねええええええ!? 今俺なにしてた!?
    ――なんでこうなるまで拒絶しなかった!? なんで俺いつのまにか全部受け入れてた!?

    ――……ちっ
    ブーケさん? ちょっとブーケさん!? 今ちって、ちっって!?

    ブーケはいつも通りの清楚で穏やかな笑顔で頬のそばで両手をあわせ
    ――わたしにも……ファンとかプレゼントとかって嬉しいです、トレーナーさん

    気の…気の所為だよね? 今舌打ちしてないよね?

  • 29二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 10:33:12

    危なかった――いやヤバかった。
    俺はその後できるだけ彼女のハグと香りを避けつつ、うまいこと彼女をほめちぎり
    彼女とハーブティを堪能して、ちょっとだけお高いクッキーに舌鼓を打った
    ――あの、私とのハグはお嫌、でしょうか?
    そんなワケあるかメチャクチャいい匂いするし気持ちいいし間違いを起こしていいならおこしたいに決まってる
    だけど間違いを起こせば俺とブーケとチームはそこでおしまいなのだ
    ――でも……誰にもバレませんし、チームの皆も公認ですよ?
    後ろからぎゅっと抱きつくブーケ、うわ、いい匂いする
    腕を回し胸元を撫で回し指で「のの字」を書くようにくるくる回して
    ――トレーナーさん、気持ちよくされるの好き……ですもんね♡
    上ずった声があがりそうになるのを堪えつつ、俺はブーケに向き合って両手で肩を掴む

    ――俺はブーケがG1を勝つところが見たい! ブーケならクラシック王道距離――2400Mで花開くと思う!

    これは本心だ。 おそらくブーケには2000Mより2400Mが似合う。 それを走り切るだけの能力をつけるために今後もトレーニングとレースに専念したい。
    そういう事にして欲しい、一緒に強くなろう!とブーケを得意の口八丁だまくらかしでこの場をしのぐ
    俺は闇のトレーナー、こういう逃げの口先三寸はお手の物だ
    こちらからブーケを抱きしめ、わかってくれるね? と優しく諭す。うわすっげ甘い匂いさっきより甘くて頭溶けそう
    ブーケはそんな俺の抱擁に抱きしめ返して

    ――はい、でも……さみしくなったら、こうして「ご褒美」くださいね♡

    と、耳元で囁かれ、俺は飛び上がるように震えてしまった

  • 301◆qxc6n.SpgKwJ25/10/12(日) 10:36:47

    休憩します

  • 31二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 10:42:44

    相変わらず今日も文章量が多くて助かる
    それなのにスルスル読めて助かる

  • 32二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 10:46:50

    なんでブーケはこんなに魔性の女が似合うのか

  • 33二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:00:25

    多分トレーナーが本質的に愛に飢えてるから定期的にヤバいんだろうな
    この子の善性があまりにも出来すぎてるからなんとか耐えてるだけで

  • 34二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:12:44

    このチーム魔性の女多すぎるよ
    トレーナーはよくやってる幸せになってくれマジで

  • 35二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:21:48

    文章だけで大分こちらもあてられそうな感じするんだから感触までしっかり与えられてる闇トレは大分男として耐えてる

  • 36二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 11:25:39

    積極策しかけてくるブーケとかもう勝てる気がしないよ…
    ここのトレピッピはよう耐えとる

  • 37二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 12:02:18

    こんなに応援されてるトレ始めてみたかもしれんw

  • 38二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 12:13:11

    >>33

    むしろ予測される過去があまりに地獄すぎてなんで目の前に一生懸命なれる善性満ちてるのか

    普通もっとガチ反吐な下衆トレになりそうな過去っぽさある

    つか犯罪ってこいつの母親なにさせたんだよ

  • 39二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 12:21:17

    それも怖いけど「おなかすいた」がホラーすぎてホント何があったんだ

  • 40二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 12:31:26

    男娼でもやらされてたんやろか

  • 41二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 13:07:10

    >>39

    生姜焼きでも食べさせられてたんじゃね

    証拠隠滅とか処理するにしても多すぎるとは思うが

  • 42二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 13:50:35

    食料品の万引きとかを母とコンビでやってたとかじゃね

  • 43二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 14:14:35

    ガチでおいたわしすぎるのは人の心案件なので勘弁…
    いやそうでもなきゃウマ娘たちに割と早めに陥落させられそうにはならんか………

  • 44スーパークリーク25/10/12(日) 16:46:14

    夢を見ました
    とてもとても小さい頃の夢、思い出そうと思っても思い出せないぐらい小さな頃の思い出
    託児所に新しい子が着たそうです。
    私はすぐにその子を見に行きました。 託児所に来る子で「あの部屋」に来る子はみなしごです
    みなしごはお父さんもお母さんもいません
    だからきっと寂しくて泣いてます。 私が面倒をみてあげないといけません。
    私はそんな気持ちで部屋に入りました。 もう大丈夫だよ、泣かなくていいよ。
    中には男の子がいました。男の子は泣いてはいませんでした。
    部屋の隅で膝をかかえ、やってきた私をじっと見つめていました
    その子は私に微笑むでも警戒するでもなく、 ただただじっと見つめていました
    感情の薄いただそこにいる存在を見つめる瞳。それでも私は勇気を出して前に進みました
    この子は涙を流してないけど泣いている……そんな気がしました。
    私と同じ年くらいでしょうか、頬はこけ手足は細くてガリガリでした
    だいじょうぶ――今なにか持ってきてあげるね
    私はそう言って頭を撫でようと手を伸ばしました。
    すると男の子はビクンと震え、頭を両手で多い隅っこなのに後ろずさりをしようとしました
    怯えきった表情でぎゅっと両目をつぶって、これからくる痛みに耐えるように歯を食いしばってました
    私は頭を撫でようとしただけなのに――男の子はその手すら恐れました
    男の子を安心させようともう一度手を伸ばした時、お父さんが大きな声で私を呼びました
    こんなに慌てたお父さんを見るのは初めてでした。 お父さんは穏やかで優しくて子供たちに好かれていました
    そんなお父さんがものすごい顔で私を抱き上げ部屋から出ていってしまいました。
    お父さんは物凄く真剣な、とても悲しそうな顔で私をぎゅっと抱きしめてこう言いました
    ――この部屋には入ってはいけないよ、 いいね?

  • 45スーパークリーク25/10/12(日) 16:58:38

    けれど私はその男の子が可哀想だと思いました
    一人ぼっちであの部屋にいるのは可哀想だと、それだけ思いました
    私はお父さんとお母さんに内緒でこっそりと男の子に会いに行きました
    部屋にはたくさんのぬいぐるみと玩具が並んでました。とても綺麗に
    でも男の子はその玩具にもぬいぐるみにも一切手をつけません。ただただじっと玩具を見ているだけです
    一度も触らないから綺麗に並んだままなのです
    どうして玩具であそばないのか、私は男の子に聞きました

    ――散らかしたり、壊したらおこられるから

    ぎゅっと膝をだきしめて男の子はそう言いました。
    そんな事はありません、子供はちらかすし玩具は壊れてしまうものです
    私はぬいぐるみを抱いて「一緒にあそぼう」と誘いましたが男の子は首をふります
    とてもとても怯えた、感情の見えない瞳で「おこられるから」と言います
    おこられるから――誰に怒られるのでしょうか?ここには怖い人はいません
    遊んだり玩具を散らかして起こる人はいません
    だから男の子の言葉の意味が私にはわかりませんでした
    大きな音を立ててドアが開きました。 男の子は顔を膝の中に隠しビクビクと震えてました。
    お父さんが見たことのない顔で立っています
    お父さんは私の名前を怒ったように呼びながら手を引っ張って部屋から出してしまいました
    その時、私は気づいたのです
    お父さんは怒っているのではなくて――男の子のように怯えた顔をしていました
    怖がっていました。何をそんなに怖がっているのか私には分かりませんでした

  • 46スーパークリーク25/10/12(日) 17:03:15

    お父さんの手は汗でべっとりで、滑るように私の手が離れました
    お父さんは私に男の子みたいな表情で
    ――いいかい、二度とここに来てはいけないよ?いいね?お父さんと約束しておくれ
    私は首を振りました

    だって――男の子が泣いてます
    お父さんは子供を幸せにするためにたくじじょをやっていると言いました
    私はそんなお父さんが大好きです。 だからイヤです
    あの子は泣いていて幸せじゃありません

    お父さんは私の言葉に泣きそうな顔をしながら強く抱きしめました
    お願いだからお父さんの言う事を聞いておくれと懇願されました
    男の子も、お父さんも泣いています。どうしてですか?
    この託児所は皆が笑顔でいる場所だと――そのはずの場所なのに――どうしてですか?

  • 47二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 17:09:57

    私はぼんやりした意識のまま顔を洗って歯を磨きます
    あれは何歳の時だったでしょうか? あの子は何歳だったのでしょう?
    ひどく痩せこけた顔と棒のように細い手足――それすら夢で補完されたものなのか本当の記憶なのか曖昧です
    男の子は結局すぐに引き取られました、なぜか警察の人が男の子を迎えに来たので覚えています
    男の子について聞いてもお父さんもお母さんも困った顔をして口をつぐんでいたので結局聞いてはいけないことなのだと思いました。
    ――どうして今更あんな夢をみたのでしょうか?
    ――あの男の子はどうしているのでしょうか? 泣いてはいないでしょうか?
    虐待をうけていたのでしょうか? でもどうして警察が迎えにきたのでしょうか?
    なにより孤児の子をなぜお父さんはあんなにも恐れていたのでしょうか?
    今なら、お父さんたちも教えてくれるでしょうか……
    私はぼんやりとそんな事を考えながら着替えてトレーニングに向かいます
    今日もトレーナーさんは喜んでくれるでしょうか?
    トレーナーさんの好きなレモン味の飴ちゃんをポーチに入れ
    昨日仕込んでおいたお弁当の具材を詰め込み
    私は今日もトレーナーさんのお世話をしに行きます

  • 48二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 17:20:45

    スーパークリークの調子が悪い
    普段はもっと大きなストライドで大跳びに走る。 調子の良い時はまるで羽根が生えたようにあの長身と長い脚で軽やかに跳ぶように走るのだが今のクリークは100mダッシュをするアスリートのような走り方だ
    俺はクリークのトレーニングを止める。調子が最悪な事に気づけなかった俺のミスだ
    クリークはいつものニコニコ顔ではあるがちょっと困ったような顔になっている。自分の走りに精細がない事はわかっているのだろう
    何かあったのだろうか?
    それとなく聞いてみると、スーパークリークは俺の顔をじっと見る。 クリークの身長は実は俺と殆ど変わらない、もしかしたらクリークやジェンティルのほうが俺より身長が高いかも知れないがそこは男のプライドがあるので「同じくらい」という事にしておく
    観察するように俺の顔を見る。なにか考えるような表情
    ――トレーナーさんは以前に私と会った事がありますか?
    知らん
    覚えているなら以前の担当トレーナーとの諍いの時にクリークを見て気づいているだろう
    高等部三年らしいので俺よりは年下だが3つ違えば中等部も高等部も周期がそもそも違う、第一俺は施設の中等教育までしか受けていないのだからクリークと接点があるわけがない
    実は昔に会った幼馴染とかいうドラマティックな展開は期待できないのだ、残念ながら
    そもそもが警察や施設を転々としていたあとは警察関係の施設の育ちだ、初等部も中等部も外部とのつながりがない。だからこそ社会経験の埋め合わせかのように成績の良かった俺が特例で大検を受けれたのだし

    ごめんなクリーク、俺には記憶がないな
    クリークにそんな事情を言うわけにもそんなワケ無いだろというわけにもいかず曖昧な返事をしておく
    そうですよね? トレーナーさんは私に会ってませんよね…? とクリークはまだ考え事をしていた

  • 49二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 17:21:16

    あれこれまさか…な

  • 50二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 17:30:10

    前スレ初期で思ったより相当深い闇だコレ……

  • 51二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 17:31:01

    悩み事なのか考え事なのかはわからない
    ただ今日はクリークのトレーニングは無しにしたほうが良いだろう。 集中できないのならばオフにして疲労負担を削ったほうが余程良い
    俺はクリークに休むよう指示して砂浜に刺したビーチパラソルの下で休ませる
    7月上旬の北海道とはいえ最近はとにかく暑い。 日差しも強く海水浴もできるが本州とちがうのは海はしっかり冷たい目なのだ。 軽い海水浴なら良いが本格的なシーズンインを待ってるような海水浴場である。
    だからこそウマ娘たちがトレーニングに使わせてもらえるしだーとより明らかに柔らかい砂を走るのはパワーと馬力がいる。 さらにそこに海水に脚を突っ込んで負荷を倍率ドンだ。
    ごめんなさいトレーナーさんと申し訳無さげに謝るクリークにスポドリのフローズンシャーベットを手渡す
    悩みや考え事があるのも年頃のウマ娘ならばしょうがないだろう、デビュー直前ならともかくクリークはゆっくりじっくり仕上げるべきウマ娘だ。 極論だがクラシック1月以降のデビューでも構わない
    ただし先程の俺への質問が気になる。 なにか悩み事だろうか?
    俺は「男の俺に言えることでいいならば」とクリークにそれとなく聞いてみる

  • 52二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 17:39:45

    夢を見たらしい
    小さい頃に来た男の子の夢、何もかもに怯えた痩せこけた男の子
    どうしてその夢を見たのか、その記憶すらも曖昧で夢の時の実際の記憶は殆ど無いらしい
    ひょっとしたら痩せこけてないのかもしれないし男の子はもっと小さかったかもしれないし逆にもっと大きい子だったのかもしれない。
    そのぐらい小さな時の記憶の夢だそうな
    昔の記憶とかそういう夢は確かに曖昧で、適当な記憶とごちゃごちゃに混じって実際の記憶とは別物になったりはする。その男の子が気になるのだろうが流石にそれを俺と結びつけるのは

    ――
    ――――俺が警察に捕まった後……どこで寝泊まりしていたっけか
    施設を転々として、結局どこの施設も一時的な仮入居にも届かずすぐに警察が迎えに来た
    まあ今考えればあんな事件を起こした子供を引き取れる勇気のある一般の保護施設などそうそうはないだろう
    最初は普通の託児所、孤児院を転々とした。 結局警察側も「不本意」ながら矯正施設を兼ねた保護施設で俺を育てるしか無かったのだ。
    とはいえ当時クリークは俺より2、3年は確実に離れた子供なわけで……俺は施設で子供といっしょにはされてない
    大人と話はしたと思うが近い年の子供と話す事など

    ――あ

    トレーナーさん、どうしましたか?

    大きな手が、俺の頭を覆った。

  • 53二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 17:50:58

    大きな手が上がる、顔に近づく
    俺は反射的に身をすくませ両手で頭をかばう
    その反応にクリークは驚いたような顔をした

    ――トレーナーさん!?

    青いスカート、大きなリボン、伸ばされた手
    響いた大声、大きな男の人の声
    怖かった、またおこられると思った、なんでかはわからない
    でも怒られると思った、叩かれると思った、痛いことをされると思った

    「いっしょにあそぼう」

    ぬいぐるみを抱いた長い栗色の髪をした女の子

    嗚呼そうか――そうか……なんで――こんな
    俺は――クリークとあの時出会っていたのか

    俺は頭を振って、いやすまんなんかびっくりしたとクリークに弁明する
    彼女はまだ思い出せてない、気づいてない。 彼女が事件のことをどれほど知っているかはわからない
    でも――だけど――知られたくない、絶対に
    俺がなにをしたかなんて知られたくない。 知られたくない。
    俺は悪くない、俺は◯したかくて◯したわけじゃない
    お腹が空いてたんだ――ただ、お腹が空いてお腹が空いてオナカガスイテ
    モノがタベタクテ――でも、冷蔵庫をあければきっとまた叩かれる、殴られる、タバコを押し付けられる
    ◯されてしまう――だけど、だけどダケドダケドダケド
    オナカガスイテシカタナカッタンダ

  • 54二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:01:11

    緊急避難
    刑法上のこの言葉で出るのはカルネアデスの板という話だろう

    船が難破し船員たちが海に投げ出された。
    板が浮いているが、小さくて一人しかつかまれない。
    自分が生き延びるため、板を他者から奪って溺死させるのは正しい行為か。

    倫理学上の思考実験であり刑法上にこの言葉はない。あくまで日本の刑法に照らし合わせた場合に緊急避難があてはまるという意味でしかない
    緊急避難は命や財産を守るため「やむを得ず」「他に手段がなく」行った行為が「降りかかる危険の程度を超えない」場合に判断される、カルネアデスの板のような他人の板を奪い相手を溺死させた場合この緊急避難を逸脱してると判断される事もありえる。

    俺はまだ幼児とも言える子供だった
    貧困で様々な依存に囚われた母親はほんの僅かな金のために子供を売った。 文字通り子供の身体を好きにさせた
    それでもギャンブルに、酒に使う金は増えていった
    ことの発端は俺が言った一言だった
    ――おかあさん、ハンバーガーが食べたい
    俺は「おてつだい」のあとで母親が上機嫌だと思い込んでいた
    その時なにがあったのかわからない。 買い手の男が金を支払わなかったのか、早速ギャンブルにでもいって負けたのか――それとも、単にムシの居所がわるかったのか

  • 55二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:06:07

    贅沢を言うな!
    お前を育てるために私がどれだけ苦労してると思ってんだ!
    お前はお父さんそっくりだ! お前とお父さんさえいなければ!

    俺は徹底して殴られ、蹴られ、「反省するまで出てくるな」と押し入れに入れられた
    テーブルにはコップに注がれた水。 ソレを母親が居ない時にこっそり飲んで、カラのコップをテーブルに置いた
    母親は殆ど家にいないけれど俺はずっとずっと押し入れに座り込んだ。「出てきても良い」という言葉をかけられるのをまった。
    そうしなければうっかり母親に会ってしまえば――また殴られると思ったから
    お腹が空いた。 まっくらな押し入れの中で何日経ったのかわからない
    ただただひたすらお腹がすいて、喉が乾いて――一生懸命眠ろうとした
    起きていると身体がいたくてお腹も痛くて、眠っていれば時間が過ぎてくれる
    お腹がすいたのもわからなくなる、身体が痛いのもわからなくなる
    だから一生懸命目を閉じて眠ろうとした

    お腹が空いた

  • 56二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:10:40

    玄関のドアが開く音
    ガシャガシャというビニール袋が擦れる音
    冷蔵庫のドアが開く音、ゴソゴソとモノが詰め込まれる音
    押し入れの中でぼんやりとそれを聞いていた。 買い物をしたんだ、となんとなくわかった
    お腹がすいた――お腹が空いた
    俺はお母さんがいなくなるのをじっと待った。 でもお母さんはそのまま家で寝てしまった
    でも
    お母さんが居ない時に勝手に冷蔵庫の中のものを食べたら、今度こそ◯されてしまうかも知れない
    殴られて、蹴られて、痛くて苦しくて
    ◯されるというのはきっともっともっともっと痛くて苦しいのだろう
    嫌だ、そんなのは嫌だ、いやだいやだいやだ
    だけど、お腹がすいた、お腹がすいたんだ、オナカガスイテショウガナイ

  • 57二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:11:59

    やめなよ……やめなよお

  • 58二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:22:40

    俺は音を立てずに押し入れをあけた、目の前でお母さんが寝ている
    そっと、そっと音を立てないように台所へ向かう
    冷蔵庫ではなく流しの下の扉を開いて――お母さんがいつも使ってる包丁を取り出す
    見つかったら◯される
    でも、お腹が空いたんだ……ご飯が食べたいんだ
    俺は包丁を握ったままお母さんが寝てるところに戻り――混濁した意識の中――母親の腹を

    ――そこからは殆ど覚えていない

    結論から言うと母親は死ななかった、栄養失調の幼児の力では致命傷まで刃が届かなかったのだ
    母親は大怪我をしながらも俺から逃げ、スマホで救急車を呼んだようですぐに警察がきた
    ◯まみれの手で冷蔵庫の中の食べ物を貪る幼児を見て彼らはどう思ったであろうか
    俺はすぐさま警察に「保護」をされ、母親が俺を児童◯春で売っていたこと、俺に暴力や食事を与えない虐待をしていたことなどが明らかになった
    虐待であればまだ執行猶予などが付くが幼児を売買する行為はそれだけで重罪だ、しかも目的がいかがわしい目的であることから重大かつ悪質な事件として母親は重い刑罰が降りたらしい
    俺は警察に保護されてからもずっと「ごめんなさい」と繰り返し身体を丸めていたそうだ、そこらはあまり覚えていない。
    ただあの時の記憶は――腹が減って腹が減ってお腹が空いてしょうがなかった……それだけだ

  • 59二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:27:10

    おおん…(白目)

  • 60二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:32:37

    ――か、かっ、はっ、ハヒュッ、かふっ
    ――トレーナーさん!息を吐いて!!! 吸っちゃ駄目です息を吐き出して!!

    痛みで我に帰る。
    記憶のフラッシュバックで過呼吸を起こし意識を失ってたようで、意識が戻っても過呼吸が止まらない
    クリークが必死に俺の背中――肺の後ろ側を叩いている。 俺の身体は意識とは裏腹になんとか呼吸をしようと息を無理やり吸い込んでるせいで呼吸が全くできてない
    まともに酸素が行き渡らず頭に白みがかかる、意識がとぶ寸前にこれ以上なく強くクリークが背中を叩き俺はたまらず肺の中の空気を吐き出す、肺の中の空気が出されることでようやくまともに呼吸ができる
    ぜ、ぜっ、と苦しげに呼吸をする。 呼吸そのもので喉も口も痛くなるほど
    だがクリークが適切な対応をしてくれたお陰で助かった
    ごめんクリーク、助かった。
    と俺がクリークに謝ると同時にクリークは俺のことを抱きしめる

    ――大丈夫です、ここに貴方を傷つける人も苦しめる人も、怖い人もいません
    ――大丈夫なんです、トレーナーさん、大丈夫なんです

    ああ、ああ、嗚呼
    ごめん、ごめんクリーク。そんな顔をさせてごめん
    そんなつもりもクリークを傷つけるつもりもないんだ
    ただただ昔を思い出して、そうしたらどうしても
    ごめん、ごめん、ごめん……ほんとうに、ごめんなさい

  • 61二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:44:49

    うつ伏せになって呼吸を繰り返す
    できるだけできるだけ息を吐き続ける、呼吸を整えると気持ちは驚くほど落ち着いている
    クリークは無言のまま、俺の背中を撫で続けていた
    大丈夫、もう落ち着いたから――ありがとうクリーク
    ソレ以上、言葉が出ない。 何を話せというのか……こんな状況で

    ――あの時の男の子は……トレーナーさん、なんでしょうか

    クリークが子供の時から大きなリボンをつけていて、髪を長くしていて、空色のスカートを履いていたなら
    俺にはそう言うのが精一杯だった。言葉を紡ぐだけで情けなくて、色々な思いがぐるぐる回って涙が溢れてくる
    情けない、みっともない
    大人で指導者であるはずのトレーナー側が見せる醜態として最悪だ
    なにより――彼女とてこんな人◯しの男だとは思っていないだろう、しかも実の母親を、だ

    ――なにがあったんですか? あの時のトレーナーさんは……やせ細っていて、何に対しても怯えていて

    ……ただの虐待だよ、程度を超えた虐待
    何も知らないほうが良い。こんなどうしようもない事件など知らないほうが良い
    いや……しかし調べれば分かることだろうか。今知らなくても彼女が知ろうとすればあっさりと真実にたどり着くかもしれない

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:53:00

    可哀想だから!もう良いでしょう!!
    トレーナーさんが救われない!!!

  • 63二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 18:54:11

    疲れ果てた俺は、ぽつりぽつりとクリークに話した
    自分が虐待を受けていたという話
    食事も満足に与えられず、母親の犯罪行為の片棒――俺という子供を売っていた事
    最後にはそれでも食事を与えられず……空腹と恐怖とが入り混じった俺は母親を◯害しようとしたこと
    それで全てが露呈して俺は保護されて、おそらく引き取り手を求めていくつか回った児童保護施設として託児所があったのではないかということ
    多分……クリークの両親は俺の事件の事を知っていたのだろう
    それでも一途の望みをもって引き取って――実際にそんな俺の姿を見てこれは無理だと悟ったのではないだろうか
    クリークの両親を責める事はできない。 誰だって自分らの話を聞けずコントロールができるかわからない相手と自分たちの愛娘を接触なんかさせれない
    経緯はどうあれ――その子供は人としてしてはいけない一線を踏み越えてしまっているのだから
    だからクリークの両親はきっと何も悪くない
    事実として俺は民間の施設すべてから拒否をされて警察の施設で育ったのだ
    それは人として仕方のないことなのだろう、むしろ警察は人道的に最後まで俺を「そっちがわ」として扱う事を避けようとしたのではないだろうか

  • 64二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:00:15

    クリークは蒼白となった顔で俺を見つめてる
    やめてくれ、俺をみないでくれ。
    俺はクリークみたいに優しい世界の住民じゃない
    ちょっと虐待された不幸な産まれだけど実は良い人、なんてもんじゃない
    人としてしてはいけない――人◯しをしたどうしようもない人でなしだ
    それでも、おもってしまったんだよ
    勉強をして一生懸命頑張って、なにか真っ当な仕事をすれば
    いつかそういうのは消えてなくなるんじゃないかって、そんな風に思っちまったんだ

    トレーナー――辞める前にちゃんと引き継ぎはするよ

    俺はそう言おうとした。 でもその言葉を発する前にクリークが俺を抱きしめていた

  • 65二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:07:18

    ――そんなお母さんはいません
    ――貴方のお母さんはあなたを抱きしめて、毎日お弁当を作ってあーんをして、貴方のために頑張って
    ――私は、貴方のお母さんじゃないけれど……私が、私が代わりになります。

    やめてくれ、そんな重荷を背負わないでくれ
    クリークにそんな重荷を背負わせるぐらいなら俺はさっぱりトレーナーをやめたほうがマシだ
    だからそんな事を同情でしようとするのはやめてくれ

    ――いやです
    ――トレーナーさんは私をGⅠの一つ二つ勝てるんじゃないかって誘ったって言いました
    ――騙したって、利用しようとしたって!
    ――だったら責任をとってください!償って下さい!
    ――私に最後まで、最後の最後まで貴方を甘やかさせて下さい……幸せな気持ちにさせてください
    ――面倒を、見させて下さい……貴方の笑顔のために――私走りますから……

    そんな事いわないでくれよ
    俺はどうしようもない人間で、お前を騙して利用しようとして
    こんな事がバレたら逃げようとして
    それでもそんな事言われて、俺どうしたらいいかわかんねえよ……

    ――私にもわからないです
    ――だから私にも頑張らせて下さい――スーパークリークをスカウトしてよかったって
    ――私に甘えて幸せだって、いっぱい頼りたいって思ってもらえるように…私頑張りますから

  • 66二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:13:54

    おぉ、おおおおおお(白目)

  • 67二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:17:20

    なんでクリークが頑張るんだよ
    お前はただのウマ娘の生徒で俺とは関係ないだろう
    トレーナーが生徒を引っ張って導くのが契約関係なのに関係ないだろう

    ――じゃあ、トレーナーさんは私をいっぱい勝たせて下さい
    ――私は貴方と契約を続けます…だから貴方ももう少しだけ、頑張りましょう?

    なんでだよ……なんでだよ……なんでだよ
    俺はもう嫌だよ、俺は人◯しをして、でもそれはお腹が空いてしょうがないほどお腹が空いて
    でもあの時ああしないともっともっともっともっと痛い事をされるって、苦しいことをされるって、◯されるって!
    そうおもったんだ……だから……だから……

    咽び泣く俺をクリークは抱きしめ頭を撫でる。
    慈しむように、落ち着かせるように、優しく、優しく撫でる

    ――トレーナーさんは悪くありません、それは全部夢です
    ――トレーナーさんは私達四人のトレーナーで、ちょっと不純な動機で私達をスカウトしたけど
    ――それでも一生懸命に私達をみてくれるトレーナーさんです
    ――それは全部夢です、そんな過去もお母さんも全部ただの夢
    ――それでもその夢をまた見ちゃったら……ちゃんと私に言って下さい
    ――ママがぎゅうってしてあげますから……

  • 68二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:23:23

    ――ぜんぶ消しちゃいましょう、そんな嫌な事
    ――今から、これから…いつも通り頑張って、いつも通り大騒ぎをして
    ――いつも通りローレルさんにからかわれて、ブーケさんの温室のお世話をして
    ――ジェンティルさんにペンダントを作って、私にいっぱいヨシヨシってされて
    ――これからいっぱいいっぱい、幸せに生きましょう?

    過去は消せない
    俺の記憶も消えない――でも無かったことになんかしていいのだろうか
    あんなことをして――そんな過去を無かったことにしても良いんだろうか

    ――わかりません、でも貴方をいじめる人がいたら私達が守ります
    ――貴方を誰にも責めさせやしません
    ――許す、許さないじゃなくて……貴方をもっと愛させて下さい

    俺は涙を流しながら何度も何度も頷いた
    ごめん、という言葉もなく何度も頷いてクリークに抱きついた
    涙と鼻水とよだれでぐしゃぐしゃにクリークの服をよごすぐらいに泣いて
    クリークはそれでもずっとずっと俺をだきしめてくれた

  • 691◆qxc6n.SpgKwJ25/10/12(日) 19:25:51

    QKします
    筆者は素人なのでここら賛否両論あると思いますがそうだねプロテインだねでご容赦ください
    基本ハピエン厨です、トレーナーの過去は少々闇深いものがありますが最後にはハピエンにしたいと思ってます

  • 70二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:34:33

    乙なんだよ
    いやこれ…闇どころか深淵抱えてない……?

  • 71二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:36:15

    ここからハピエンに行けるルートがあるんですか⁈

  • 72二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:38:06

    乙デース
    なんであにまんのSSでこんな深淵お出しすんだよ・・・このトレ基本いい奴なのになんでだよ

  • 73二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:38:51

    こんなんよぉ
    闇トレは4人に幸せにしてもらわなくちゃなぁ

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:40:15

    あにまんのSSで出す濃さじゃない(褒め言葉)
    これ笛でも渋でも出せば普通に読まれそうな出来だろ

  • 75二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:45:49

    こんな反吐事件が起きててほしくないけど実の子供を幼児の時に他人に売春として売りつづけたなんて事件あったんか・・・こんなん一生刑務所だろ?ないよね? パっとググったけど出ないし
    海外はこういう話ありそうだけどないよね?

  • 76二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:47:51

    ククク…俺は闇の読者
    闇のトレーナーがいれば光のウマ娘がいるように闇の読者がいれば光の書き手あり
    ゆっくり待ってるぜぇ…光の書き手による光の物語をなぁ!

  • 77二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 19:57:40

    なあ俺気づいちゃったんだけどさ
    クリークは今高等部三年でさ、クラシックでもう18歳なんだろ
    あれトレーナーおしまいじゃない? 合法なのでは

  • 78二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 20:23:26

    初期にこんなに深い闇を抱えてるとはだれが予想できただろうか

  • 79二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 20:24:19

    多分四人の誰が真実を知っても皆契約の事なんかどうでもよくてトレーナーを支えようとするんだろうな
    にげられんぞぉ幸せになるのだぁ

  • 80二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 20:25:44

    片栗粉そのものぐらいドロドロした闇でやんした…
    何スレかかっても待つぞ
    トレーナーはドロドロに愛されてくれ

  • 81二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 20:31:05

    なんであにまんでお出ししたんだそれとも他所にあるのか?

  • 82二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 20:37:39

    最初は自称()闇のトレーナーというチョロインネタだと思ってスレみたらガチの大作SSでビビる

  • 83二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 20:47:26

    最も恐ろしいのはこのスレ全部本日日曜日だけでお出しされてるのである

  • 84二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 21:09:52

    >>83

    毎日とんでもないペースで書いてるからな

    これ木曜からずっとってマジかよスゲーな

  • 85二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 21:33:08

    木曜から日曜の4日で普通書ける量じゃない

    どっかに>>1さんがその場その場で考えながら書いてるって言ってたけど何喰ってたらこの量とこの内容をこのペースで書けるんだよw

  • 86二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 23:39:04

    子を持つようになって、しばしば子供の虐待死の記事とかを見るたび以前より心がぎゅっとなるけど
    今日のはそれらに匹敵するくらい辛かった
    でも、それでもこのトレーナーが幸せになるのを見届けたい
    四人にはどうか心身ともにひん剥いてでも幸せにさせてあげてやってほしい

  • 87二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 00:11:49

    これほどの大作SSに出会えるとは……
    あにまんも侮れないな

    と言うかトレーナー君よく社会に出て生活出来るようになったな。並の精神の人間なら引きこもりになるのが精々だぞ。

  • 88二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 01:48:19

    ――ねえトレーナーさん
    合宿場で全員でメシを食う。 今の俺は正直メチャクチャ食う方だ、ヒトミミとしては
    少なくともヒトミミの一般男性よりは圧倒的に食う、俺はクリークにお茶碗をだしつつジェンティルに向いた

    ――なんかクリークさんに甘えすぎじゃなくって?

    ……そうだろうか? いやクリークに甘えてるのは事実だが前々からこんなものだったような気もするが
    第一クリークの甘やかしに遠慮すべきじゃないというのはジェンティルだってわかってるだろうに
    とはいえ言いたいことはわかる。 トレーナーとしてどうなんだという意見は甘んじて受けなければならないだろう

    ――そんな事より、父が会いたいと言ってますわ

    ……………………俺は会いたくないって言ったろうが
    ジェンティルはジェンティルなりに御父上を説き伏せたのかも知れない
    ジェンティル家はおそらく日本中の会社員、社会人の知名度は四井 二菱 メジロ 深堀 Northern 車台 趣味友などと並ぶ超名門だ。ジェンティル家を知らない社会人がいたら多少は常識を疑われるほどには
    そんな超名門の総帥なら俺の素性や過去を調べていないわけがない
    そしてそういう人物は何千何万という人物の今後の人生を背負っているのだ、海外を含めればジェンティルの御父上は億以上の人物の人生と生活を背負って生きている
    スキャンダルが嫌だとか下賤の産まれとか汚らしい犯罪者だとかそういう感情的な差別ではない
    感情的な差別からその億人以上の人間を守らなければいけない
    その重責は彼一人でなく彼の一族も同じように責任を背負って生きているのだ
    そんな人物と俺がお近づきになっても――誰も幸せにはならない

  • 89二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 01:57:07

    このレスは削除されています

  • 90二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 02:01:21

    だから会いたくない――ジェンティルは父親の立場や重責も俺が「会いたくない」と言った理由もわかっているはずだ。 だからこそ以前俺の言葉に何も言えず疲れ果てたように父に相談すると去ったのだから

    ――父は会いたいと言ってますわ。 私が会ってくれとお願いしたのではなく、父が会いたいと

    ンなワケねえだろ……それはアレじゃないのか? トレーナーを子飼いに代わってくれとかそういう話じゃないのか?
    そちらを自分から頼むぐらいならむしろ誠実な御父上だ。 普通は認めないし強制執行されてもおかしくない
    俺が思う以上に名門からしたら俺の出自を知ったら俺がジェンティルのトレーナーである事を認めるわけにはいかないだろう

    ――もしその話だとしたらどういたしますの? トレーナーさんは
    そうだとしたらむしろジェンティルはどうしたいんだよ? 御父上殿の希望だぞ
    ――私が認めたトレーナーは貴方だけでしてよ、他の有象無象に務まるとは思えませんわ
    そうか、じゃあ直接御父上にお断り申すよ。 俺より凄くてジェンティルが認めるトレーナー連れてこいって

    あー、ん
    むぐむぐと肉団子をよく噛んで飲み込む。 これクリークの作った肉団子じゃないか美味しい
    ちょっとお口ふいて欲しいとクリークにせがむと、クリークは尻尾をぶんぶんと振りながら俺の口元を拭く
    それを待ってからジェンティルに向き直って

    ジェンティル……今ハッキリ言え。 俺に対する義理や言いにくいとか無しで
    俺はお前が望むならお前の御父上と喧嘩をしようがジェンティル家に圧力かけられようがトレセン学園を辞めさせられるまでお前のトレーナーを辞めない。
    お前を今一番強くできるのは他のトレーナーでもジェンティル自身でもなく俺だからだ。 だから絶対にゆずらない、お前が最強を望んでいる以上俺がお前をスカウトし素性を隠してだまくらかしてスカウトしたとしても――ジェンティルを最強にできる俺はトレーナーを降りない

    だが――お前が俺の素性や前歴……過去を知った上でトレーナーを迷っているのなら御父上に従うべきだ
    お前だってジェンティル家の当主候補……自分のふるまい一つが一族どころかその参加の人生、モノによっちゃ億の人間の人生に影響するぐらいわかるだろ?

  • 91二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 02:07:46

    ――父は……私には教えてくれませんでしたわ。貴方の過去も、何があったのかも
    ――ただ、貴方は辞めておきなさい。 一度はそう言われたのも事実
    ――トレーナーさん、貴方は何者ですの? 本当にただの

    ただの犯罪者なら?
    俺の言葉にサクラローレルとカレンブーケドールの顔があがる。 信じられないものを見る顔でこちらを見ている
    失言をした、と悔やむ顔のジェンティルドンナをいつもの嘘つきの笑顔ではなく真剣に見つめて俺は言った

    続けてくれ、後で皆にはその事は話す。 ジェンティルにも俺が過去にどういう事をしたのかも話す
    だから今はジェンティルの話を続けよう
    スーパークリークが泣きそうな顔で俺を見ていた、正直言って胃が痛い。 気を抜けばまたフラッシュバックで過呼吸を引き起こしそうだ――過去はなくそうとしても消え去りはしない
    でも
    それでも
    無かったことにして踏み出すには、もう一度俺が立ち向かわないと――
    そうしないと、クリークもジェンティルもローレルもブーケも
    俺はこいつらを誰一人幸せにできない、それはもっと嫌だ
    ――俺はこいつらのトレーナーだ、そればっかりは「過去」にだって譲ってたまるものか

  • 92二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 02:14:56

    ――……本当に貴方がただの犯罪者なら、父はおそらく問答無用で私と引き剥がしてますわ
    ――貴方の言う犯罪というのは決して軽いものではないのでしょうし

    ジェンティルは静かに続けた。 俺に対しかなり気を使っている雰囲気ではあるが――もう引き返せないのもわかっているのだろう。
    俺は全員に皿を下げてお茶か飲み物を用意するようにお願いする。
    ブーケにハーブティをお願いした、リラックスしたい時はブーケのハーブティが一番だ。

    全員が席についてから俺は話を始める
    今日この話は他言無用であること
    この話を聞いて契約解除をしても俺は一切絶対に恨んだり妬む事も傷つくこともないこと
    俺自身それなりの覚悟ができているので俺に気を遣うことは俺を侮辱する事だと理解して欲しいということ
    今すぐそれを決める必要はないと言うこと

    嗚呼、とても嫌な話だ……だがそれも必要な事
    だから俺は俺の過去を暴き、彼女たちにもう一度曝す

  • 93二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 02:15:48

    このトレーナー覚悟がガンギマリしてやがる⁈

  • 94二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 02:27:55

    俺が母子家庭であったこと
    母親が虐待とギャンブルと酒と男に狂っていたこと
    そのせいで俺は万にも満たないちっぽけな金のために母親に売られていたこと
    本当は全部女子高生に言うような話じゃないのだろう、それなりにセンシティブで児童売春などショッキングな話だ
    それでも彼女たちは真実を知らないといけない。 これ以上俺は彼女たちを裏切りたくない
    だから今全部を俺の口から言わなければいけない
    食事を一切与えられず、虐待の恐怖と空腹のせいで俺は◯意を持って母親を◯そうとしたこと
    母親は致命傷にはいたらず警察に逮捕され俺はそこから施設を転々として最終的には警察の保護育成施設で初等部、中等部を過ごしたこと
    幼児だった俺は刑法では裁かれないが事件としては残り母親の前歴は少なからず社会では俺にも関係してるということ――だからこそ俺はジェンティル家の人間と関わりを持つべきではないということ

    すべてを、ゆっくりと四人に話す
    ジェンティル家の後継者候補としてある程度の予測が出来ているジェンティルとすべてを知っているクリークはともかく、普通の女子高生の少女達にはショッキングな内容だろう
    自分のトレーナーが人殺しなのだ。実際は◯んでいなくてもあの時俺は明確な◯意を持っていた
    ――◯さないと、◯される……痛いのは苦しいのはいやだ
    あの時の感情がぶり返し吐きそうになる
    口を抑えそうになった俺を支えたのは――カレンブーケドールだった

    ――大丈夫ですトレーナーさん……大丈夫です。 ここには貴方を傷つける人はいません

  • 95二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 02:35:01

    ブーケは肩を震わせながら俺を支えていた
    きっと怖いのだろう、俺が――ではなくその真実が
    それでも俺を必死に支えて、俺に言葉をかけている
    サクラローレルは伏せた顔から涙をボロボロ流していた。ボロボロないて顔をくしゃくしゃにして

    ――どうしてですか? お母さんがなんでそんなひどいことをしたんですか?
    ――お腹がすいてそんなことをするほどになんで子供をおいつめられるんですか!?
    ――トレーナーさんを愛してなかったんですか!? どうして? 自分の子供なんでしょう!?

    ……嗚呼、それは知っている。 知っているんだ
    子供って、普通は愛の結晶で愛し合う二人が授かるもので――そりゃあ意図的にじゃなく授かることもあるだろうが大体はそれも愛し合う二人の結果論ってのは……普通なんだよな?
    俺はローレルにそんな事を確認しながら
    俺の場合はちょっと違うんだ。 お母さんはお父さんとすでにうまく行ってなくて失敗した、結婚して失敗したとは思っていたらしいんだ。 いつもそんな話ばかりしていたよ
    お父さんがどれだけどうしようもない人物で俺達を苦しめたか、お母さんを苦しめたか
    そんな話ばかりだったのは覚えてる
    それでも――子供が生まれれば変わるんじゃないか? また自分を見てくれるんじゃないか
    そんな打算で俺を産んだらしい――そりゃそれで振り向いて貰えないなら俺が憎くて仕方がない

    ――なにせにくい旦那の子供だものな

  • 96二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 02:41:03

    そんな気持ちと、酒とギャンブルと
    貧乏だから心はどんどんどんどん擦り切れて
    それである時ぷつん、とタガが外れたんだろう。俺というサンドバッグに気づいてしまった
    子供ってのは愚かなもので
    どんなに虐待を受けても――おかあさん、おかあさんと母親を頼るんだ
    愛するんだ、大好きなんだ――命の危険を感じるそのギリギリまでは、お母さんが大好きなんだよ
    何をしても自分をおかあさんおかあさんと慕う都合のいい存在
    そのクセ手を上げれば怯え従う嗜虐性を満たす存在
    何でも言うことを聞き――しかも金になる存在

    きっとお母さんも俺を愛してた時はあったんだと思う
    愛そうと努力した時もあったんだと思う
    でも――そうやってどんどんどんどんと、変わっていったんだ

    本当に
    何が悪かったのだろう
    俺達を捨てた父親だろうか? 俺を虐待した母親だろうか?
    それとも地獄に気づけなかった社会だろうか?
    SOSを出せずに隠し続けた子供だろうか?
    母親を引き止めずギャンブルと酒と子供を売らせていた大人たちだろうか?
    なにがどうしてこうなったんだろうか
    多分、きっと――
    ――お母さんにも俺を愛してた時はあったはずなのに

  • 97二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 02:46:54

    四人の視線に気づき、思考が横道に逸れたのを詫びる
    俺には前科前歴はない、でもこういう背景からこの記録はおそらく永遠に残る
    法的な記録ではなくこのような事があったという事件の記録として永遠に
    それに俺の母親は虐待のみならず児童を金のために売っていたせいで刑務所に入った
    もう10年以上昔の話だから母親がその後出所したのかまだ刑務所なのかはしらないが社会ってのは少々めんどくさい
    公務員や一部の職業は3親等6親等ぐらいまでの前歴を徹底して調査する
    その中に前科前歴があれば表向きは職業の事由から拒否はされなくても実際は人事に大きく影響する
    俺も俺が子供を授かったとしてもそのような呪縛から逃れることはできない
    少なくとも社会的には俺はこういう人間だ
    なにより――俺は自分の意思で、人間として最も禁忌とされる殺人というハードルを超えてしまっている

  • 98二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 02:54:21

    このような事を隠して君たちのトレーナーになった事は本当に申し訳なく思っている
    だから今すぐでなくても今後君たちの契約を考え直したい時は遠慮なく言って欲しい
    気遣われる方が俺は辛いし、そうなったとしても皆には心からありがとうと言える
    でも――

    ――俺は、何を
    何を言おうとしてる?
    きちんと説明をして……彼女たちに詫びて
    それで彼女たちの意思を尊重すべきだろう
    ここまででおしまいでいいだろう? 俺は何を言おうとしてるんだ


    ――
    ――俺は君たちのトレーナーでいたい!
    ジェンティルにはティアラ三冠を取ってほしい
    でもその一方でブーケにそれを阻んでオークスあたりでジェンティルを破って欲しいとも思ってる
    ああ、心が矛盾してる、それでもそう思ってる、そうさせたいと思ってる
    サクラローレルだってナリタブライアンに勝つには俺がトレーナーじゃなきゃだめだ!その後だって凱旋門賞を勝つんだろう? 俺が勝たせてやる、何をしても絶対に!
    スーパークリークだって、菊花賞だって、速ければダービーだって勝たせられる。 ステイヤーのクリークは凄いから春の三冠もグランプリも、天皇賞春秋連覇だって狙うことができる




    俺はお前らの――お前らのトレーナーでいたいよ!!!

  • 99二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 03:03:09

    言葉は止まらなかった
    俺は感情のままなんにも考えずに叫んでいた
    俺はお前らのトレーナーだと
    傲慢に、矛盾的に、幼稚に、我儘に
    子供が駄々をこねるように
    叫んでいた――お前らは、俺のものだと

    ――わたくしの答えは一緒ですわ……貴方は私の好ましいトレーナーでしてよ

    ジェンティルが口を開いた
    ――先程の問いに答えますわ、私はお父様が…一族が何を言おうと貴方を望みますわ
    ――もしトレーナーを降りろと言われたら……そうね
    ――貴方も、お父様と――ジェンティル一族と真っ向から闘ってくださらない?

    とんでもない事を言う
    庶民どころかこんな出自の俺にジェンティル一族の総帥と喧嘩をしろと言い出すのだ
    でも、そんな事より俺はジェンティルが自分が良いといった事に大きな喜びを感じていた
    嗚呼――ああ、俺はジェンティルドンナのトレーナーだ
    だからお前の御父上だろうが絶対に譲らない!

  • 100二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 03:11:51

    待って下さい!
    テーブルを叩く音に俺もジェンティルも我に帰る
    カレンブーケドールが少し感情的な表情で俺を睨んでいる
    ――私は
    ――私は……私だって、私も
    ――私もカレンブーケドールは俺のモノだって言って欲しいです!

    …… 心からそう思ってる
    ジェンティル同様カレンブーケドールだって絶対に手放したくない
    優しくて花を愛する乙女――しかしその実、ジェンティルドンナを脅かすほどのウマ娘
    多少依存気味だしそれが暴走するとあまりに怖くてきすぎて一番間違いがおきてしまいそうな少女
    ブーケは見たことのない顔をしてる。 わかりやすく言うとほっぺたをプックーと膨らませている
    明らかに不満を溜め込んだ子供の顔だ
    ジェンティルは目をまん丸にして驚き俺を一瞬見やり……とてつもなく意地悪な笑みを見せた
    ――あら? じゃあ奪ってご覧なさいな?「私の」トレーナーさんを

    ほっぺたを膨らませジェンティルをぽかぽかするブーケ
    これはブーケは俺と契約を続けてくれる……ってことでいいんだよな?

  • 101二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 03:20:24

    ――ごめんなさい――私――許せません
    まだ涙でくしゃくしゃな顔のローレルが俺に顔を向ける
    ――トレーナーさんのお母さんが許せません!
    ――なんでそんなひどい理由で、ひどいことして
    ――トレーナーさんは今でも苦しんで、悲しんで
    ――私、そんなの絶対、絶対許せなくて――許せません!

    ごめんな
    俺には本当に――そういうのはわからないんだ
    俺だって色々なものを見て育ったから、親子ってのがどういうものかは「知識」程度にはわかる
    親ってのは子供を愛して、しつけや説教で子供から多少嫌われたり、言うことを聞かない子供にイライラしたり感情的になることもあって
    でも――無条件に子供を愛するのが親なんだろう? そうじゃないからローレルは感情がぐちゃぐちゃになってるんだ
    だけど俺には知識だけしかそれはわからないんだ

    ――だって、だって、だってトレーナーさんが苦しんで、悲しんで
    ――トレーナーさん絶対に、幸せじゃないじゃないですか!
    ――救われないじゃないですか!こんなの!!!

    ――救われてる

    俺は救われてるよ、幸せだよ
    苦しいし悲しいし、思い出せば腹がねじれるように痛いし過呼吸で苦しむこともあるけど
    それでも
    ――ローレルと会えたよ
    ――ジェンティルとも、ブーケとも、クリークとも会えたよ
    ――トレーナーになったのもあんな過去があったからで
    ――トレーナーになって、四人と出会えて、いろんなことがあって
    ――トレーナーなのにずっとずっと皆に迷惑をかけて…それでも皆は俺を支えてくれて
    ――あんな過去は地獄だったけど、今でも苦しいけど
    ――俺はローレル達と出会えて良かった。 トレーナーになって良かったよ

  • 102二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 03:25:29

    大丈夫だ
    今思い返しても俺だって俺のお母さんはクソだと思う
    でも世の中は自分の母親をそんな風に言っちゃいけないんだろ? だから言わないだけだ
    俺はローレルの頭を撫でて頬を撫でてやる
    俺の担当になってくれて――ほんとにありがとう

    ――まあまあまあまあ♪トレーナーさん、みなさんが契約を続けてくれてよかったですね♪
    ――勿論私もずっとずっとトレーナーさんを甘やかしてあげますよ
    ――ところでトレーナーさん?

    うん、なんだいクリーク
    ――ナンデスカ……その大きな赤ちゃん前掛けは
    ウワアトッテモオオキイデスネオトナガツケルサイズダア

    ――勿論トレーナーさんがつけるんですよ?
    ――小さい時に甘えられなかった分、大人になった今甘えましょう!
    ――ね? トレーナーちゃん♪

  • 1031◆qxc6n.SpgKwJ25/10/13(月) 03:26:37

    休憩します

  • 104二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 03:46:24

    うわあああああああああああ
    あああああああああああ
    うわあああああああああああああああ

  • 105二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 03:49:57

    救われない・不幸って思ってたらもうトレーナーは救われたたのか

  • 106二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 03:55:18

    >>1

    こんなに心から幸せになってくれと思うSS初めてだ

  • 107二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 06:47:09

    トレーナーさんはどうしてトレーナーになろうと思ったんですか?

    金になりそうだったから
    札幌合宿場
    トレーナー寝室
    都心と違って地価が安いせいか旅館の和室ぐらいの大きさがある
    5人で布団を並べるには狭いが4組の布団を並べて5人で寝るぐらいは出来そうな
    どのみちテーブルとノートパソコンぐらいしかモノらしいものはない
    テーブルを片付けて布団を4枚敷いて全員で横になっているとサクラローレルが聞いてきた
    修学旅行のガールズトークは温泉旅行でもしたがあの時は一泊だしなかなかこういう機会があるわけでもなく
    俺は布団をかぶりつつ答える

    勉強は出来たんだよ……しかもかなり

    トレーナー試験って結局過去のトレーニング理論やウマ娘の人体への深い知識や初歩の医学的な知識とか経験を積まないと得られないモノ以外の試験に必要な部分は実は勉強が多い
    勿論専門分野の知識を色々な分野を同時に習得する必要があるのでかなり難易度は高い
    かといって専門の育成機関に属して専門分野を一生叩き込まないとなれないわけじゃない
    そういう意味では医大経由の医者とか船舶学校やその上位の海洋技術大学などの方がよほど俺にとってハードルは高いのだ

    ――あら、自分でかなり勉強ができると豪語するとは余程自信があるようね

    そりゃそうだ、正直勉強で困ったことはない。 見た瞬間覚えるとかいう超能力があるわけでもないがインプットと脳内の反復とそのアウトプットの繰り返しと自己問題を提出しそれを添削して
    この物量を繰り返して「覚える」座学で困ったことはない
    むしろレポートのような自由形式の論文の方が苦労する、ソレ以外は勉強量という物量でこなせないことはないのだ
    一応はかなり良い成績を挙げたはずだ、なんか国際基準のテストで合格した気がする
    なんだっけかえーと、メンサだかメンズだかそんな感じの

    ――MENSA!? もしかしてトレーナーさんMENSAの会員なんですか!?

  • 108二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 07:03:47

    なんだブーケ知ってるのかメンサ

    ――有名ですよ!世界有数の高IQ団体で最低でも世界的に上位2%のIQが入会条件ですよ!?

    ふーん、2%て130以上だっけか……俺すぐやめちゃったけど

    ――えっ、どうしてですか!? 上位2%って凄いじゃないですか!!

    金がかかるんだよ。 俺の成績見た施設の人がテストと最初の費用だけ請け負ってくれて合格して入会したってだけで
    年間いくらだとか諸経費が結構かかるの
    元々MENSAは大学のサークルみたいなもんで交流とかが主な内容。
    MENSAに入会したから将来の就職とかが約束されるようなものじゃない
    第一上位2%っていうとすごいけど学校のクラスのめちゃ頭いいやつとか普通に上位2%にいると思うぞ

    ――それで貴方はいくつでしたの?

    140。 多分この数字とか色々のお陰で学業は優遇受けれたし大検の特例はあったんじゃないかなと思う
    一応は学業に限ればそれなりに優秀な結果を出してるし、トレーナー試験も自信は十分あった
    ああ、でもきっかけは



    ――俺に勉強を教えてくれたお姉さんがいたんだよ、ウマ娘の

  • 109二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 07:16:43

    初等部の真ん中ぐらいかな
    ボランティアと地域貢献ってことで何人かでライブに来たウマ娘たちがいた
    勝負服じゃなくライブ用の衣装を着て、キラキラと光る服でライブを披露してくれた
    当時勉強は出来たしようやく他人をそんなに怖く感じなくなってきた時に見たライブは俺にとってヒーローショーを見るようなもので
    ふれあいの時間にそのお姉さんとお話をして

    ――お勉強がいっぱい出来て、偉いね

    と頭を撫でてくれた。 栗色のウェーブのかかったお姉さん
    ふわふわしたおっとりとした人で、俺が「ウマ娘」とか「レース」だとか「ライブ」というものを知るきっかけになったお姉さん。
    俺に与えられた教科書も図鑑も本も全部読みきって覚えちゃって
    あのお姉さんが新しく本を持ってきて、新しい知識が楽しくて夢中で勉強して覚えた
    いっぱい覚えて問題に答えるとお姉さんはすごく驚いた顔をして……いっぱいいっぱい褒めてくれた
    そういや――あの時から勉強に自信がついて、勉強をいっぱいしようって思ったんだっけか
    それで中等部にあがるぐらいに中等部が終わったら自分の将来を決めなきゃいけないってなんとなく思って
    自分は勉強が得意だから勉強いっぱいしたらなれる、お金になるものがいいなって
    本当にガキみたいな漠然とした考えぐらいしか無い時にトレーナーっていうウマ娘のレースに携わる仕事を知ったんだ
    大学に行く必要がなくて……高校卒業資格を取れば試験を受けられる
    どっちみに奨学金前提で大学にいくにも大検は必要だったし大検レベルの勉強もしつつ
    一度トレーナー試験を目指してみようって、そう思ったんだっけか

  • 110二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 07:22:30

    最初は大検で良いままきちんと職につけて、稼げる職ならよかったけどそれだと道が多すぎて
    それならウマ娘の関わるトレーナー職に挑戦してもいいかなって
    俺に勉強を教えてくれたウマ娘のお姉さんがさ、未勝利で終わっちゃったらしくて
    俺は頭がいいから、きっとそんなウマ娘を助けられて、お金にもなる
    そんな不純な動機だったんじゃないかな……金、金、金が中心だったのはあの頃からだ

    そういえば彼女は今どうしてるんだろう
    レースは引退してるけど、将来はライブの仕事をしたいって言っていたけれど

    ――もしかして……トレーナーさんの初恋ですか?

    からかうようなローレルの声に、俺は「そうかも」と言いながら天井を仰ぐ
    なんか左右からものすごい負荷のあるオーラを感じるので俺は横を向かない。なんでだ?
    俺は聞かれた事を答えただけだしその御蔭でこうしてトレーナーができてるんじゃないか

  • 111二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 07:31:36

    ――その方の名前は覚えてないの? 貴方の初恋のおねえさん♡

    明らかにからかうようなジェンティルドンナの声
    いいだろ子供の初恋ぐらい、皆なにかしらで初恋の誰かってのはいるだろうに
    ただやはり子供の記憶というのは自分でも曖昧で……俺の場合嫌な記憶を脳がシャットアウトしてる可能性があると医者に言われたことすらある
    栗色のウェーブでおっとりしたあの時のお姉さん……
    ああ、そうだ

    ――ライトハロー

    四人が立ち上がった。 いや正しくは膝立ちであり仁王立ちではない
    同時に俺の布団が引っ剥がされ、ジェンティルが俺に添い寝をするように密着し、俺を抱き寄せる

    ――忘れなさい、その記憶すべて…いいから、いいから。
    ――まあまあまあ♪ そんなわるーい記憶は全部夢の中にないない♪しちゃいましょうね~♪
    ――忘れてください、忘れてくださいトレーナーさん……忘れたらわたしが全部、上書きしちゃいますから♡
    ――諦めて下さいトレーナーさん♪ それは忘れるべき記憶です、その名前も初恋も全部わすれちゃいましょう♪

    なんだよっ!?突然なんだよお!?
    四人にもみくちゃに抱かれる。そりゃいい匂いもするし柔らかい身体にだかれるだけでめちゃめちゃ気持ちいい
    それでいて手を出せといわんばかりに身体もフトモモもこすりつけてくる
    耳を甘噛され声を上げると、ジェンティルの瞳が爬虫類みたいな光を帯びた

    たすけて!助けてだれか! ライトハローさん助けて!
    うすぼんやりとして顔すら覚えてないライトハローさんに助けを求めつつ俺は四人の捕食者に襲われていた

  • 112二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 07:43:29

    くそ、危なかった……危なかった……
    ファーストキス、というのはほっぺまではノーカンなのだろうか?
    口でのキスは唇のみならセーフなのだろうか
    くそ、くそくそくそ、俺だってあんな美少女四人組とハレームスケベしたい
    だが「どうぞご自由に」と言われてるのに手を出したら終了とか拷問でしか無い
    世界はこんなにも理不尽で不公平だ
    ウマ娘は手を出すのにそれに負けたらトレーナーが加害者なのだ
    俺は闇のトレーナー……この理不尽に断固抗議しなければいけない
    なんで女の子ってあんなに抱き合ってるだけで気持ちいいんだろうな……

    ――貴方がそんな浮気者だとは知りませんでしたわよトレーナーさん

    うるせえっ!俺の記憶にまで浮気認定すんじゃねえ、そもそも浮気以前に付き合ってねえ!

    ――だめですよ? 今は私たちのトレーナーですよトレーナーさん、め、っです

    過去の!記憶にまで!めっするなっつってんだよ!
    てかお前らなんでライトハローさんの名前知ってるんだ?

    翌日
    俺の言葉に一斉に俺から目を逸らす
    俺が目を見ようとすると全力で逸らす
    お前らライトハローさんの事知ってるな? 今何してるかとか知ってるんだな?

    ――忘れなさいと言ったでしょう?
    ――忘れないと今ここで貴方の服全部破り捨てて逆ぴょいするわよ?

    こっわっ!?

  • 1131◆qxc6n.SpgKwJ25/10/13(月) 07:46:30

    寝ます
    ライトハローさんは恋のレースに参加はしません
    たぶん、きっと、メイビー

  • 114二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 07:47:25


    知らん間に超大作になってる…

  • 115二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 08:02:16

    >俺に勉強を教えてくれたお姉さんがいたんだよ、ウマ娘の

    この瞬間担当達「ざわっ」ってなってそう

  • 116二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 08:04:28


    ハローさん思わぬ所で出てきたな…

  • 117二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 08:10:25

    多分手を出したり負けても何も問題ないけどコンプラ、ガイドラインという修正力が働くからな

  • 118二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 08:22:22

    ライトハローって名前出た瞬間四人が凄い顔してそう

  • 119二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 09:08:51

    トレーナーの過去の深淵を忘れなさいが物凄くいい話だったのにもうライトハローを忘れなさいになってる

  • 120二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 09:10:06

    ライトハローさんが初恋のお姉さん、余りにもしっくりくる。

  • 121二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 09:18:22

    そりゃあ担当は危機感持ちますよ

  • 122二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 11:49:21

    前スレから軽い気持ちで読み始めてトレーナーの凄惨な過去にリアルで涙腺崩壊したわ…と思ったらライトハローさんで涙腺修復した
    話の緩急がやばい、応援してる

  • 123二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 18:31:16

    これもし、ライトハローさんがトレーナーと会ってあの時の子供だと覚えていたら、とんでもない事態になりそう(白目)

  • 124二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 19:23:27

    温度差で風邪ひきそう

  • 125二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 19:23:36

    そこまで行くと闇のトレーナーじゃなくてただの修羅場製造機になっちゃうから……

  • 126二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 20:39:13

    ジェンティルドンナの一族はこの国の名門財閥だ
    広く多くの分野に影響力を持ち世界にもその影響力を見せる名家
    その名門の総帥と会うというのはとんでもなく緊張するものだがついに今日その日がやってきた
    俺はそのためスーツとネクタイをを新しく庶民のスーツ屋で購入し、美容室で恥ずかしくないように整えてもらい
    朝から10回は歯を磨いている。 正直胃が痛いし逃げ出したい気持ちの方が強い
    食事のマナーなんか知らんがとにかくネットで最低限のタブーだけ叩き込んでおく

    ――気合を入れてるところ悪いのだけど
    ――父が指定してるのラッキーピエロですわよ?

    ラッキーピエロ?
    あの函館中心のハンバーガーも売ってる丼屋?
    そんなわけねえだろジェンティル財閥の総帥がラッキーピエロになんか来るわけねえ

    ――着飾った貴方じゃなく貴方の本性がみたいそうなの
    ――空回りしてる貴方を楽しめたしそろそろ行きましょうか?

    ジェンティルは昨日からスーツを仕立てて美容室に行く俺を知っている
    こいつ……ずっと知ってた上で……こいつ…………ッ!!!
    俺はそれでもシェーバーでヒゲの剃り残し一本すらないように最後のチェックをして出かける
    昼にはちょっと早い午前
    肩幅の広い立派な体格をした御父上殿とラッキーピエロのテーブル越しに対面する
    白とエメラルドグリーンのポロシャツとモスグリーンのゴルフパンツ
    服装はどこか休日にゴルフの打ちっぱなしに行くおじさんといったところだがこうして目の前に座る御父上殿にはやはり雰囲気というものがあり
    ――お初にお目にかかります、トレーナー殿
    ――私がジェンティルドンナの父です
    その一言だけで俺は恐縮してしまう
    肩書とかそういうものじゃなく、御父上殿が持つ威圧感、存在感、威厳に恐縮してしまう
    すげえな、これが大財閥の総帥ってやつか

  • 127二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:09:59
  • 128二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:11:12

    唐突なラッキーピエロで草生えるわ。

  • 129二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:14:44

    そんなジェンティル大総帥様がラッキーチーズバーガーと北海道ジンギスカンバーガーを広げているのは実はレアな光景なのではないだろうか。
    なんかジェンティルに「ラキポテは頼まないのか」とか言っちゃってるし……

    ――失礼だとは思うが君の事は調べさせてもらってる、私も人の子の親だからね
    ――娘がどんな男を気に入ったかぐらい気にはなるというものだ、許して欲しい

    総帥として、後継者の父としてじゃないのかね
    俺は内心毒づく。それを見透かしたように御父上殿は俺を見て笑い

    ――総帥じゃなく親として、だよ。だから高級なホテルや料亭じゃなくファストフード店で話をしてるんだ
    ――夜なら居酒屋とかで話をしたかったのだが午後は予定が詰まっていてね

    豪快にハンバーガーにかぶりつく御父上殿、「君も食べなさい、ラッキーピエロは都心にはないしいい機会だぞ」と気を使ってくれるので俺は御父上の食べるペースを見つつ、同じぐらいに食べ終えられるようにハンバーガーにかぶりついた
    ……実は今回の札幌遠征で一度は函館に来たかったぐらいにラッキーピエロは楽しみにしていたのだが…マジで全く味がしない、しょっぱいのか甘いのかさえわからない

    ――ドンナは一族の後継者になると私は思ってる。 他にも娘、息子、甥、姪……候補となる親族はそれなりに多い
    ――だが強さ、力、勝利を第一とする一族の総帥に今最もふさわしいのはドンナだと私は思ってるよ
    ――一族の総帥になるということは財閥のトップとしてその一族、その下の家族、その人生と命をすべて背負う事だ

    俺の『過去』はそれにふさわしくないと言いたいのだろう
    しかし御父上殿はおそらく人として立派な生き方をしてきた人格者なのではないだろうか
    多分俺が生きてきたソレは俺の責任ではなく、よくある世の中の不条理や理不尽でただの被害者でしかないと
    だからこそ、なぜ被害者であるはずの俺を拒絶するのかを、一生懸命伝えているように思えて仕方無い
    多分……いいお父さんなんだろう。下賤というとあれだが庶民と違いすぎる人生を進んだ御父上殿と俺達では同じ国に生きていても生きてる世界は完全に違う
    だからこそ俺という◯人者を、母親に実刑が降りたその息子を、何も悪くない子供を拒絶する理由を説明しているのだと思う。

    ――舐めやがって……舐めやがって、ここで俺達が話してるのはそういう話じゃないだろう

  • 130二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:18:36

    俺はビジネスケースから分厚い書類の束を取り出す。それとその内容が全部詰まったUSB
    ここには俺の育成理論全部が詰まっている。 ジェンティルドンナというウマ娘の大目標からその目標に至るまでの小目標中目標、それを踏み越える一歩一歩、その一歩一歩に必要な設備とその設備の責任者の名前まで
    俺のトレーナーとしての全部がここに詰まっている
    財閥の総帥として一族全てに認められるようなURAの覇者、強者になるためのすべてが詰まっている
    これを利用してもいい、他のトレーナーでコレ以上のノウハウを出せる奴がいてもいい
    ジェンティルドンナは人生をかけてレース競技をしている
    そのトレーナーに必要な『力』が俺に劣っているなら俺も諦める。 無理矢理にでも降ろせば良い
    このデータ全部を丸パクリして利用したって構わない。それでも俺には敵わない
    俺はこのデータ以上に進化していくからだ、天才を舐めるな
    ジェンティルドンナは俺をトレーナーだと認めた
    だから俺もトレーナーとして御父上殿にぶつからせてもらう
    ジェンティルドンナを最強に育てるのがトレーナーだ、俺以上にそれが出来る奴をつれてこい
    一族? 人生? 俺にはそんな事一切関係ない
    俺という矮小な存在はジェンティルドンナの事しか考えてない
    だからせめてトレーナーっていう矮小な俺より優秀でジェンティルドンナを最強にできるトレーナーを連れてこいって言ってるんだ
    そうじゃなきゃ俺は絶対にトレーナーを降りない


    俺はジェンティルドンナのトレーナーだ!
    財閥とか一族とか人生とか知るか! 俺は彼女のレース人生のために生きるんだよ!
    全部が終わった時……俺の実績や栄光全部どこかのトレーナーにくれてやってもいい
    俺を利用して利用しつくして全部が終わったらポイって捨ててもいいじゃないか
    俺はジェンティルドンナを育ててレースを走らせりゃそれでいいよ、あとは全部あんたらにくれてやる
    目の前にジェンティルドンナを歴史に残すトレーナーがいるのになんで利用しないんだ御父上殿!!!

  • 131二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:26:33

    ツバがかかるぐらいの勢いでまくしたてる俺に、御父上は目を丸くしていた
    周囲の――恐らくSPなのだろう、そんな客たちが一斉に立ち上がると御父上殿は右手を上げる
    それだけで客は何事もなかったように座り談笑にもどった……こええ、あの客全部財閥のサクラかよ
    わかるよ、一族ってのはそんな軽いもんでも生易しいもんでもない
    色んなやつの人生を背負って生きてる、だからそこに危険な混じり物をいれるわけにはいかない
    その混じり物が悪くなくても、ただの被害者でも、本当は認めたくてもだめってのは分かるんだ
    だってそのせいで他の何万って家族を道連れにできないもんな

    だけどそうじゃないだろ、ジェンティルドンナはレースを走りたいって言ってんだから
    URAで戦うんだから、俺は別に財閥の総帥としてジェンティルドンナを育ててるんじゃない
    URAのトレーナーとして育ててるんだ。 だからそんなのどうでもいい
    分かる、分かるけどどうでもいいんだ……本当にそれがまずいなら全部が終わったあとに俺から奪い取ってくれ
    ジェンティルドンナのトレーナーっていう栄光も名誉も全部くれてやる
    だから今ジェンティルドンナを奪わないでくれ
    ジェンティルドンナは最強になれるウマ娘なんだ
    だから俺にやらせろ、他の無能どもに任せられるか

    ジェンティルドンナの父親だろう?だったら
    だったら選べよ御父上殿――
    最強のトレーナーを利用しつくすか、財閥っていう『無難』に今敗北するか
    最強の御父上だったら選んでみせろ!俺を!!

  • 132二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:34:57

    やっぱこのトレーナー覚悟ガンギマリすぎてない⁇

  • 133二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:36:19

    このレスは削除されています

  • 134二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:37:32

    ――最強の御父上どの、か
    ――なあ、ドンナ。 オレは今『最強のお父さん』か?

    御父上殿がジェンティルドンナに問いかける。ジェンティルドンナは肩をすくめて

    ――さあ? 最強のお父さん、なんて言葉初めて聞きましたもの。 でも
    ――わたくしのトレーナーさんはやはり、最強にふさわしいトレーナーだと思いますわ

    御父上殿はニカっと白い歯を見せて笑う

    ――オレもそう思う。 だが他が認めん、それだけじゃ他が妬む
    ――だからトレーナー君、これは預からせてもらうよ
    ――これ以上の理論と実力を持つトレーナーを一族に探させる。 もし見つかれば君には降りてもらう
    ――勿論……君がその時に進化していれば話は別だ

    御父上殿はオレの右手を両手で掴んで握手をした
    大きくてごっつくて暖かい――「お父さん」といった両手
    きっとオレよりも社会で幾千幾万と闘ってきた男の手だ

    ――ジェンティルドンナをよろしく頼むよ、トレーナー君
    ――あと……一人の父親として、男として君を気に入った。 今度酒でも飲みに行こうじゃないか
    ――ああ、北海道はムチウマ居酒屋も多くてね、どうだねキミ、そういうの好きかい?

    御父上殿の頭にジェンティルドンナの拳がめり込んだ

  • 135二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:39:23

    親父さーーん⁈

  • 136二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:41:04

    ドンナパンチは破壊力

  • 137二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:42:24

    R.I.P.ジェンティルご当主

  • 138二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:43:11

    でもおピンクなムチウマ居酒屋ならトレーナーの白因子開放しても問題ないし…

  • 139二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:48:03

    御父上殿が店を出るとラッキーピエロの2階は俺とジェンティルドンナを除きもぬけの殻
    ……全部サクラのSPだったの!?

    ――仕方ありませんわよ、父は政治的な意味も含めて国際的要人ですもの


    ジェンティルドンナが俺に手を伸ばす。その顔はいつもより誇らしげで上機嫌だった
    ジェンティルは椅子に座ったままの俺にウインクをしながら

    ――思ったより熱血だったわね、貴方。 父を怒鳴りつけた男なんて初めて見ましたわ

    俺はジェンティルに顔だけ向けて、その手を取るのを首を振って否定する
    ジェンティルの手は取れない
    もう腰が抜けて全身に力が入らなくて椅子から転げ落ちそうなんだ
    緊張と御父上殿の威厳威圧感とに身体はもう耐えかねて限界を超えている
    よくあんなタンカが切れたものだ、その反動でもう身体がまともにうごかない…情けないものだ

    ――あら? わたくしは格好いいと思いましたわ
    ――お父様にあそこまで言い切れて、ジェンティルは俺の物だと父親に言えるんですもの

    そう言ってジェンティルは俺の腰ごと身体を抱えあげる
    いわゆるお姫様抱っこの体勢で俺を抱き、がらんどうのラッキーピエロのニ階でステップを踏むように回ってみせた
    これ以上なく機嫌の良いジェンティルドンナを見ながら、振り落とされないようにジェンティルの首に両手を回す
    なんだか王子様とお姫様が逆じゃないか

    ――いいじゃない、わたくしもお嫁さんがほしいし
    ――貴方、婚約者候補に上がりなさいな

    冗談はやめろ、俺の出自じゃトレーナーが限界だ。 財閥の幾万幾億の人生まで巻き込む気はない

  • 140二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:49:43

    ――ああ、北海道はムチウマ居酒屋も多くてね、どうだねキミ、そういうの好きかい?

    大塚明夫の声が聞こえた気がする

  • 141二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:55:53

    ムチウマ居酒屋でハローさんと再会したりしないよな

  • 1421◆qxc6n.SpgKwJ25/10/13(月) 21:58:43

    休憩します

  • 143二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:05:29

    担当だけにじゃなくそのパパにまで俺を選べって言えるの強すぎだろ
    認めてくれ認めろじゃないのかよ

  • 144二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:08:46

    パパ「ドンナ、ラキポテはいいのか? 美味いぞラキポテ」
    ドンナ「お父様そういうのいいですから」
    パパ「んーいやしかしなあせっかくラキピエにきたのだからなあ」
    ドンナ「ほんとそういうの良いですからお父様」

  • 145二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:21:27

    注文の時やたら過干渉で娘にウザがられるお父さんじゃん

  • 146二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:23:39

    24時間以内に以上なまでに深刻な深淵と熱血良作とギャグをまとめてお出しされるスレ

  • 147二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 23:25:54

    このトレーナー強すぎてジェンパパの話の後過去話見返してちょっと泣いた

  • 148二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 23:54:17

    セントライト記念 GⅡ2200m
    一番人気はエアダブリン
    青葉賞でサクラローレルの猛追を抑え込み1着
    ダービーではあのナリタブライアンに完敗だったがそのスタミナは間違いなく菊花賞で花開くであろう逸材
    明らかにステイヤーの才能を持ちながらも2400mでサクラローレルが届かぬスピードを持っていた天才児だ
    目立たず堅実であるがその実力は目を見張るものがある
    良いウマ娘なんだよなエアダブリン
    自分がどう動くべきかをわかっている。 すべきことを瞬時に判断できる。とにかく「最初にゴール板を通れば良い」というシンプルかつ真理を理解してる……派手さがないから注目度は薄いがナリタブライアンを除けばステイヤー路線で壁になるのはエアダブリンとヤシマ家の絶対君主ヤシマソブリンぐらいだろう
    とは言えナリタブライアン妥当を目標にしているサクラローレルがここで躓くわけにもいかない
    サクラローレルの脚の調子を確認しつつ俺はマッサージをする
    毎日マッサージをしてると彼女の脚の筋肉の成長がよく分かる
    筋肉が増えれば増えるほど脚は重くなる――ハイスピードで重いものが地面にぶつかるのだからその負担は計り知れない。
    しかし――その筋肉は同時に彼女のガラスの脚を保護する鎧にもクッションにもなる

  • 149二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 00:02:11

    大昔、相撲で常時肩を脱臼する力士がいた
    力士は肩をかばうのではなく肩が壊れそうなほど筋トレに励んだという
    肩の筋肉を鍛え筋肉で固め脱臼を防ぐという非科学的な試みを行った。 力士はその筋肉の鎧で肩を守りその実力で歴史に名を残した

    同じ理論というわけではないが豊富な筋肉はローレルのガラスの脚を護ってくれている
    そのお蔭で激しいトレーニング――特にコーナーリングの特訓を続けられるのは大きい
    サクラローレルの春風――いや嵐のような差し脚を今以上に活かすにはそのコーナーリング技術の向上は必須だ
    コレばかりはプールや速度が出ない坂路では身につかない、実践的な速度の出せる芝で実践的な速度でコーナーリングをするしかないのだ

    ――万全です、最近はトレーニングが終わったあと、もっともっと走りたいなって思っちゃうぐらい

    やめてくれ、菊花賞目前なんだしオーバーワークになる
    あはは、と愉快そうに笑うローレルの腰とお尻を両手で掴んで押し込む。
    柔らかく弾力のある筋肉が俺の腕を押し返す。 マッサージをし続けて俺の腕はパンパンで指の感覚は怪しいが腕が動かなくなるまで今日はマッサージをしておきたい
    エアダブリンとて強力なライバルであることは変わらない

  • 150二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 00:06:07

    1月に出会った頃とは大違いだ
    脚はもっともっと細くて貧弱で悲しくなるほどだった
    もっともっと鍛えたいだろう、しかし鍛えようがない……鍛えようとするだけで脚が壊れるのだから
    それからずっとずっとプールと坂路を繰り返した。 実践的なトレーニングをせず地道にそればかり繰り返した
    もっと芝で鍛えたかったろう、焦っただろう、芝でレースをするウマ娘が坂路とプールばかりで良いのかと不安になっただろう
    よく頑張った、我慢した、 怖かっただろうに……不安だっただろうに

    ――それでも、私はブライアンちゃんと走れます
    ――トレセン学園の誰でもない、たった一人のトレーナーさんと出会えたから
    ――私はブライアンちゃんに勝てるんです

    じゃあその前に勝ってこい、セントライト記念

  • 151二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 00:35:13

    スタートの瞬間スタンドから悲鳴が上がる
    エアダブリンがつまずくように大きな出遅れをしたのだ
    サクラローレルは中団の後ろ側だが後方差しなので定位置と言ったところ
    エアダブリンには申し訳ないが正直こうなってしまうとこのレースでは眼中にはない
    サクラローレルにはこのレースの指示をしてある

    ――内側でレースをしろ、出来れば内ラチ沿い。 勝ちは最優先だが可能であれば内ラチ1人分ギリギリ「開けずに」空間を作って勝て

    その指示を実行するようにローレルは内ラチ沿いギリギリを走る
    そうじゃない、内ラチピッタリじゃなく――内ラチから一人分開けるんだ。
    内ラチに入れない、けど一人分空いた絶妙な隙間
    それが――菊花賞でナリタブライアンに勝つための秘策、神様の作った「京都の抜け道」を通る鍵だ
    サクラローレルは微妙に位置取りを変えて隙間を作る。 ウマ娘一人が入り込めそうな、しかしギリギリ入れない隙間
    後続はその内側に入ろうと動きを起こし、しかし狭すぎるそこを避けるようにローレルの外に回る

    後方からであんな内ラチぴったりではバ群に飲まれるんじゃないのか
    スーパークリークが心配するように俺に聞く。 その心配は最もだ、内ラチ沿いは最も無駄のない最短コースだが混み合うバ群に飲まれれば差しウマはスパートすらかけさせてもらえない
    前が詰まれば外に回せと俺は命令しておいたが――ローレルは前のウマ娘が外に膨らんだ瞬間スパートをかけ内側からえぐるように飛び出す

    ――おっと第四コーナーでサクラローレルが抜け出た!!
    ――直線に入ってサクラローレル先頭! サクラローレル!エアダブリンはまだはるか後方だ!
    ――サクラローレル! サクラローレルが突き放す!菊に向けて桜が咲く!
    ――サクラローレルゴールイン! セントライト記念を完勝、菊花賞に名乗りを上げました!

  • 152二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 00:42:28

    よし――最高にいいレースだ!
    内ラチ沿いを1人分空けたレース運び、その内ラチからそのままインに向けてのスパート
    もっとも難しく恐怖に打ち勝たなくてはできないレース運びをサクラローレルはやってみせた
    重賞初制覇――青葉賞で悔しい思いをしたサクラローレルを出迎える
    セントライト記念GⅡ 大目標には遠くてもウマ娘として胸を張れる大きな大きな勝利だ

    ――あはは、あはは……勝っちゃいましたね、トレーナーさん

    凄いな、ローレル。 凄いよホント
    1月まで未勝利で引退しようとしていたウマ娘のレースかこれが
    硝子の脚でまともにトレーニングができなかったウマ娘だというのか?
    俺は感極まってローレルをぎゅうっと抱きしめた。
    ――本当に、今までよく頑張った……堂々とナリタブライアンに挑みに行こう
    そうだ、彼女が堂々と菊花賞に……ナリタブライアンに挑めるのだ。 最強のライバルとして肩を並べられる
    一緒に走るじゃなくて――ナリタブライアンに勝ちに行こう

    ――すごいな、本当にブライアンちゃんと戦える。 堂々と勝ちにいける
    ――本当に、本当に凄いです……トレーナーさん

    ああ、本当にローレルは凄いウマ娘だよ。 その脚で菊花賞に桜を満開にしに行こう

  • 153二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 00:49:04

    ――あの

    セントライト記念後日
    スーパークリークがトレーナー室で俺に声をかけてきた
    クリークの手にはレース場のコースデータが書かれた紙がある

    ――この前のセントライト記念のローレルちゃんのレース……やっぱり変じゃないですか?

    さすがレースセンスはこのチーム随一の天才スーパークリーク
    恐らく感覚的な違和感を感じたのだろう。 あのレースがあまりにサクラローレルにとって不合理的なレースなことに気付けるのはクリークのセンスの良さを感じる

    サクラローレルは7枠9番 11人レースのセントライト記念ではほぼ大外枠
    中山2200mは最初のカーブまでかなり余裕があるとはいえスタート直後中団外の後方にいたサクラローレルがなぜリスクを背負って内側にいったのか
    内側は確かに走る距離に無駄がないがバ群に飲まれるリスクが高い。 しかもローレルは後方から強襲する差しタイプ
    縦長の展開とはいえあんなに強引に内ラチ側に入るメリットや理由が見いだせないのも当然だ
    結果的に大勝ではあるがあのレース運びには無駄が多すぎる事に疑問があるのだろう

  • 154二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 00:57:42

    あれはローレルに勝ちを確信できる時にだしていたプランBだ
    中山2200mでは正直なんの役にも立たない立ち回り
    内ラチ沿いをぴったり付けるのではなく入り込めないギリギリの一人分を空けた位置取りとコーナーリング
    最も難しいレース運びを中山2200で予行演習をさせたに過ぎない
    アレに本当の価値が産まれるのは菊花賞――京都3000mだ

    スーパークリークも来年の大目標は菊花賞
    そして先行力もレースセンスも抜群にあるクリークには最高の勉強になるだろう
    史上最強、一世代前に最強をほしいままにしたビワハヤヒデ以上の逸材ナリタブライアン
    怪物の名にふさわしい彼女を菊花賞で打ち破るにはサクラローレルの最大の実力+αが必要になる
    位置取り、コーナー、そして――勝利を掴むための神が作った「抜け道」が菊花賞には存在する
    針の穴を通すようなレースをしなければならない
    しかし今のローレルならそれが可能だろう、そして来年のクリークにも

    ――次の菊花賞で、俺達はナリタブライアンの内側を突くんだよ

  • 155二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 01:03:48

    圧倒的な先行能力とスパート力を持つナリタブライアン
    レースでは恐らく三角から四角ではもう先頭に立っているだろう
    そうすれば3000mという距離もふまえナリタブライアンが取るのは内ラチ沿いぴったりの最短ルート
    サクラローレルは後方強襲な以上四角を抜けて先頭であってもナリタブライアンはもうすでに最内をキープしている
    それは不可能だ、すでに前で最内をキープされてる内側を突くなんて
    クリークはそう言った。 この上なく正しいことだろう
    先に前に行ったウマ娘が最内をキープする、内から抜け出ることはあってもそれは外から抜いたウマ娘の内側を、であって最内から抜けたウマの内側は存在するわけがない
    ましてや相手はあのナリタブライアンなのだ――これまで多くのレースで勝ち続けてきた相手が内側を許すとは思えない。
    至極真っ当、正しい言葉
    だけど菊花賞にはそれが存在する
    存在しない最内、神様の作った抜け道がちゃんとある
    だから危険を犯してでもセントライト記念でサクラローレルはあのレース運びをしたのだ

    クリーク、来年はクリークも同じレースを目標にしてもらう
    今年の菊花賞はすごいぞ――色々と

  • 156サクラローレル25/10/14(火) 01:15:20

    その脚ではレースは無理だよ
    その脚ではトレーニングは無理だよ
    その脚では
    その脚では――その脚では――その脚では

    それでも――一歩、一歩
    私は頑張ってきたと思う
    素質を褒められることはあった――でも必ず「脚さえ」という言葉がついた
    少し走れば熱をもって、炎症を起こした
    骨より靭帯の方がすぐに悲鳴をあげた。 靭帯は鍛えることができない
    だから皆「無理だよ」といった。 私の脚じゃないのに、私じゃないのに「無理だよ」と決めつけた
    それでも一歩一歩私は前に進んで中央トレセンに入れた
    夢は凱旋門賞、そんな夢に皆は困った顔をした
    その脚では、今のそれでは、トレーニングがせめてできれば
    私もそう思う――この脚がもうちょっとだけ丈夫でもう少しトレーニングができたらもっと頑張れて
    ブライアンちゃんみたいに遠くを見ていてもそれが現実になるぐらいに走ることができたのかなって

  • 157サクラローレル25/10/14(火) 01:19:56

    ジュニアの最初は今より脚は貧弱で模擬レースすらまともに出来ない脚で
    とにかくトレーニングを出来るだけやって、それでも皆の半分もこなせない
    それでも――私にできる一歩一歩
    一歩、一歩、一歩
    そうして気がついたらもうジュニアは終わってた
    ようやくこぎつけたメイクデビューも散々だった
    私の一歩も――努力も、みんなみんな無駄だった
    私が一歩努力してる間に皆は十歩努力してる。私の一歩はなんだったんだろうな
    そう思ったら心はあっさり折れちゃった
    こんなに辛いなら――引退しよう。 その方がお父さんもお母さんも安心する
    怪我をして心配させることもない
    もう、いいや――どんなに頑張っても――ううん
    全然私の脚じゃ頑張れなくて――ブライアンちゃんにも、凱旋門賞にも……勝てないよ

  • 158サクラローレル25/10/14(火) 01:32:43

    ――サクラローレルじゃないか、脚、痛むのか?保健室までおぶろうか?

    トレーナーさんがそんなふうに泣いてる私に声をかけてきた。涙目の私に驚いたようにどうしたんだとトレーナーさんは私の隣に座って
    引退を決めたこと、脚が弱くて脆くてレースどころかトレーニングもできないこと。
    夢が叶わないならいいかなって
    そんなのを愚痴みたいにトレーナーさんに話してた
    トレーナーさんは考え込むように

    ――全然トレーニングもできないのに、あんなスピードとスタミナがあるのか……凄いな

    と言っていた。 スタミナ切れよりも先に脚が悲鳴をあげるようなウマ娘の私を凄いといった
    今までのやり方が悪いんだと――そんな事よりまず脚を壊さないようにそれでもトレーニングになるようにすべきだと、そのやり方を考え出した
    その場であれこれ考えだしたかと思うとノートPCみたいから着いてきてくれと
    私のトレーニングの事を考え出した。
    その顔は真剣で、なにかに熱中した子供のようで――おかしいし――すごく嬉しかった

    ――夢ってなんだっけ?
    私はナリタブライアンちゃんに勝って、凱旋門賞に勝利したいんです! 世界一になりたい!
    学園に入った時の無垢で愚かな時みたいに答えてた。 自分の答えに我ながら少し恥ずかしくなる

    ――ふうん、だけど脚が弱くて……か、凱旋門賞はシニアだとして――ブライアンに皐月賞とかダービーで勝てなきゃだめだって話じゃないんだろ? クラシックでやるとしたら菊花賞だろうな

    ブツブツ言いながらトレーナーさんはノートパソコンとにらめっこしていた
    ひょっとして――ひょっとして――この人は私をブライアンちゃんに勝たせる方法を考えているのだろうか?

    ――勝てるよ、ローレルなら。 その脚で走れるようにすれば
    ――だからさ――俺にG1くれ。その代わり俺がローレルをナリタブライアンに勝たせられるようにするから

  • 159サクラローレル25/10/14(火) 01:39:27

    本当は違ったんだと最近聞いた
    慟哭のように、懺悔のように、私達に詫びたあの言葉は本当なのだろう
    あの時のトレーナーさんは打算と嘘で私を騙そうとしたのだろう
    トレーナーさんは嘘つきだ
    だって
    だって――あの時のトレーナーさんはあんなに真剣に目の前のPCを見ていた
    私を走らせることを真剣に考えていた
    あれが嘘でだまくらかして私と契約したなんて――なんて嘘つきなんだろう

    私は知っている
    トレーナーさんは不器用だけど目の前にいつも真剣で――私たちの事ばかり考えてる一生懸命な人だ


    トレーナーさんは1月の時点で、春と夏はもう捨てろと言っていた
    我慢してプールと坂路を繰り返して心肺を徹底して鍛えると
    芝もダートもせず筋肉を鍛えクッションと鎧で固めるまでそれ以外はできないと
    三冠を取るであろうブライアンちゃんを菊花賞で倒して、日本中を注目させようと
    そしてシニアで日本中をURAを巻き込んで大規模な遠征と作戦を組んで凱旋門賞に出ようと
    個人の渡航遠征では組織的なレースの凱旋門賞には勝てないから――日本を巻き込んでしまえと

    本当にただの嘘つきが――こんな真剣に先のことを考えたりはしない

  • 160サクラローレル25/10/14(火) 01:42:59

    私は青葉賞で2着になって
    脚の不安が払拭されてからは激しいトレーニングにも耐えれた
    ジェンティルさんやブーケさん、クリークさんも並走に付き合ってくれる
    何より
    何よりそんなトレーングをしても、私の脚は痛くならない
    頑張れる――いっぱい、頑張れる
    私は毎日が楽しい、嬉しい――こんなにも全力で走れる
    全力で一生懸命に生きれる

    ブライアンちゃん――私きたよ
    菊花賞に――貴方に勝ちに来た
    全力で――一生懸命に走って――貴方に、勝つんだ

  • 161サクラローレル25/10/14(火) 01:49:00

    ブライアンちゃんとパドックで対峙する
    ブライアンちゃんは私をまっすぐに見てくれた
    いつもレースの相手も、レースもゴールも見ずにもっともっと遠く――伝説の頂だけをみていたのに
    ちゃんと――私をライバルとして、敵としてみてくれていた

    ――私は三冠を穫る。 姉貴に私は…妹は大丈夫だって言ったからな

    先日の天皇賞秋でビワハヤヒデさんは故障引退をした。 屈腱炎――私が最も恐れる故障
    最強の座を姉から引き継ぐ妹、怪物ナリタブライアンは私をちゃんとライバルとして見てくれてる
    きっと今日のブライアンちゃんは今までで最高の仕上がりだろう
    良かった
    最強のブライアンちゃんに――私は勝ちたかったんだ

  • 162二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 02:03:38

    青葉賞2着は本当にありがたかった
    お蔭でセントライト記念までトレーニングをずっと続けられた
    激しいレースで脚を消耗するのが一番恐ろしい
    京都競馬場は3コーナー前に緩やかな上り坂がありすぐにそこから一気に坂を下り落ちる
    勢いのついたスピードでコーナーを曲がれば当然足首に大きな負担がかかる
    そんな難しくも脚への負担が高い3000mの菊花賞を前に脚を消耗させるわけにはいかない

    スーパークリーク・ジェンティルドンナ・カレンブーケドールとゲートを見つめる
    このレース、殆どのファンも業界人もナリタブライアンの三冠達成を期待しているだろう
    一方で俺等ローレル陣営も、エアダブリン陣営もヤシマソブリン陣営も全員がこの3000mという長距離だからこそナリタブライアンに勝つという気持ちで菊花賞に望んでいる
    全員が最高の位置と最短距離を奪い合う総力戦だ

    ――さあ大外サムソンビッグが最後にゲートイン
    ――菊花賞スタートしました!

    好スタートをしたナリタブライアンが一気に第二集団の先頭に立とうとして――
    しかし――菊花賞を勝とうとしてるのはナリタブライアンだけではない

    ――おっとナリタブライアン前が詰まってつんのめるかたちです
    ――ゆっくりと後退、先団の先頭はエアダブリンとヤシマソブリン

    露骨にブロックし合うようにナリタブライアンの前をシャットアウトしやがった
    一見斜行にも見える封鎖だがエアダブリンヤシマソブリンの位置取り争いと見ればナリタブライアンへの斜行判定にはならない絶妙な封鎖だ
    高次元のレースになればなるほどブロックやシャットアウトなどポジショニングコーナリングで勝負が左右される
    とはいえナリタブライアンはその後ろの好位置だ

    ――先団、激しいですね。 まるで短距離のスタート直後みたい

    ブーケがスタートからすでに始まる勝負に息を飲む。

  • 163二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 02:13:14

    サクラローレルはその先団の争いには加わらない
    ゆっくりと位置取りを下げてくるナリタブライアンの斜め後方にしっかりと位置づける
    ナリタブライアンをマークできる位置取り――さらにローレルはそのままブライアンの後方に位置をかえていく

    ――あれでは最後の直線でナリタブライアンに詰まってしまいますわ
    ――3000mは長いですから……スリップストリーム位置で内枠ぴったりに距離を稼ぐのでしょうか

    あれでいい――ローレルとは散々練習でやりこんだ手口だ
    チームにもまだ伝えてない菊花賞の勝ち方がある
    来年のクリークのために天才肌のクリークにはその現場を見せるべきだ
    レースってのは脚が速いだけが勝つものじゃない――レース場を理解しその攻略ができる強者が勝つんだ
    やや速いペースのまま一周目のスタンド前を通過する
    俺等は全力で声を張り上げ、サクラローレルを応援した
    ここまできたら喉が枯れるまでローレルを応援することしかできない
    頑張れ、ローレル! 頑張れ!

  • 164二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 02:23:51

    サクラローレルは真の強者だろう
    速く、強く、賢い。 レースセンスもあるしその仕掛けどころの嗅覚はズバぬけている
    強襲するサクラローレルの末脚はナリタブライアンにも勝てるだろう
    しかしナリタブライアンはそれを上回る怪物ぶりだ。 先行力、スピード、スタミナ、それらすべてが姉であるビワハヤヒデより上だとすら言われる
    客観的に見ても菊花賞の時点では五分五分、だからあとはレース……競技場の上手さが差を作る
    しかし
    ……そんな事よりなんか正面きたらすげえ縦長だな



    あーっ!?

    一息入れたかのように笑って、先頭を走ってたスティールキャストが2周目の第一コーナーで加速する
    あいつ!あいつあいつあいつ!! まさか母親のマネすんじゃねえだろうな!?

    ――母親?

    プリティキャスト――まだ3200mだった時の天皇賞秋を大逃げで逃げ切った女傑だよ!
    あいつ菊花賞で大逃げする気だ!おいばかやめろ!!

    俺の絶叫を他所にスティールキャストはどんどん加速していき先頭集団すらぶっちぎっての一人旅を始める

    ああああああああ!ばかああああああああああ!!

  • 165二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 02:36:04

    五バ身以上一気に差を広げたスティールキャストが一人旅
    その後ろにヤシマソブリンエアダブリンを含めた先団
    第二集団の先頭にナリタブライアンが追走といったところだ。その真後ろにぴったりくっつくサクラローレル

    くっそ、一番難しいレース展開になりやがった!
    もうヤシマソブリンエアダブリンは引くに引けない、むしろ前のスティールキャストをいつ仕留めるか仕掛けどころを気にしないといけない。 前の連中はもう縦長であろうと引くに引けないから仕掛けは早くなる
    そうなれば先団は団子のまま3角4角になる
    更に京都の急坂を下り降りて勢いのついた身体は全員が大きく膨れるのだ、ナリタブライアンもそこだけは例外ではないがそれに崩れるようなウマ娘ではない

    ナリタブライアンは大外まくりの直線勝負一択だろう、元々大外まくりのレースはナリタブライアンの得意とするところだ。 確実に外差し、まくりを決めてくる

    だが今回の作戦でイン攻めを決行したサクラローレルはさらにその外側を回らないといけなくなる
    ナリタブライアンがインベタできるという信用があったからこそ行った作戦が大逃げ一つで崩れ去るのだ

    ――ローレル!ブライアンは外周りだ!ポジショニングを変えろ!!

    そんな声も当然届くわけがない。
    向正面に入ってもスティールキャストの加速はとまらない。 観客たちも動揺の声があがる
    一方でレースのウマ娘たちは冷静、焦ってスティールキャストを追うことなく仕掛けどころを待っている
    ナリタブライアンが三角の手前の上り坂で進路を左に取った
    これでローレルは更に外を回らざるを得ない

  • 166サクラローレル25/10/14(火) 02:43:20

    トレーナーさんと散々行ったミーティング
    ――京都の3コーナー ここが京都競馬場で最も難しく勝負が別れるポイントだ
    ――緩やかな坂を上り一気に下る。 その時にはもうそこは第三コーナー、当然勝負を決するために各自はスパートしてなくてはいけない。
    ――下りだから当然スピードは出る、しかも緩やかな上りを全力で駆け上った直後のスパートだ。その勢いのまま大きく急な第四コーナーにぶつかって――大きく膨れる

    だからこそのイン攻め、勢いを殺さず最短距離を通るためのイン
    しかしそれは一歩間違えばインから外に膨れたウマ娘たちに進路を塞がれエンドとなる危険なルート
    だからこそウマ娘一人が通れないギリギリの間をあけて自分がもっともインに入る練習
    ……なぜ隙間をあけるんだろう?
    インベタの方が走行距離も短いし意識的に走りやすいはずだ。
    しかも万が一にもインを奪われることがない

    ――理由はいくつかあるが、ローレルはインががら空きの時入ろうとするか?

  • 167サクラローレル25/10/14(火) 02:48:43

    勿論です。 前が詰まるならインが空いてれば確実に前にいけますから

    ――そうだ、だが内に入り込もうとして入れないとなれば下がるしかない。 その無駄は致命的だ
    ――入れそうで入れない隙間は気になる。だが入ろうとしたら終わる
    ――さらに言えばこの隙間があると外からこられようと内に入りこまれようと対処しやすい
    ――まあ何より――この隙間ってのは京都競馬場では「抜け道の鍵」になる


    ――いいか? 菊花賞でお前だけが通れる抜け道を教えてやる、全員の度肝をぬいてやれ


    先頭が見えない、大逃げのせいで先団との差が更に広まる
    ブライアンちゃんが外に大きく進路を変えた――外捲り!
    ブライアンちゃんがインをつかないのは進路が塞がれてる証拠――この練習もしてる
    私はブライアンちゃんの外に――

    でも

    その時の私はどうかしていた

  • 168サクラローレル25/10/14(火) 02:51:56

    何が見えたのだろう
    だが――確かに見えたのだ、先頭と先団がごっちゃになり――
    その外を回るブライアンちゃんが先団を抜き去る様が
    そして先団の内側にはポケットのように大きな穴が空いてるのが

    ――見えないはずの『先』が見えた
    ――トレーナーさんが予見した通りの『抜け道』が存在した
    ――トレーナーさんは……やっぱり凄い人だ

    私は迷わずスパートをかける
    前へ――前へ前へ
    脚は痛くない。 熱もない。 違和感もない。
    トレーナーさんが鍛えてくれた私の脚は――もう弱くて脆いガラスの脚なんかじゃない――!

  • 169二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 02:55:49

    ――第3コーナー京都の坂を下ります!
    ――さあエアダブリンが動いた、ヤシマソブリンも動く
    ――ナリタブライアン大きく外に回っていく!これは直線勝負

    ローレル!外に――外に――
    ローレルは内のままスパートを掛ける。
    加速していくがすぐに先団の壁に阻まれ――しかしそのローレルの内側には身体半分の隙間
    あいつ――ナリタブライアンなしであの抜け道を使うのか
    京都のぶっつけ本番で

    ――いけ、まっすぐにぶち抜け!サクラローレル!!!

  • 170サクラローレル25/10/14(火) 03:04:04

    京都第四コーナー
    急な坂道からくる急角のコーナー
    京都レース場は外回り内回りの二種類がある
    京都の急坂からの第四コーナー、多くのウマ娘が大きく外にふられるここには一つの抜け道がある
    京都巧者でも難しいそれ――だがマークしたウマが目の前を走っていればスパートもマークも意識が軽い分、コーナーを一緒に回る分難易度が下がる

    ――私は、ブライアンちゃんの横を、後ろを走るんじゃない
    ――ブライアンちゃんに――ナリタブライアンに勝つんだ!!!
    ――はやく、はやく! その内ラチ、速く消えろ!!!!

    外に振り回されそうな身体を踏ん張りつつスパートをし、前の壁に押しつぶされそうな瞬間
    私の視界の右側のラチと視界が消えた
    ――本当に消えた!!!ここだ!!!!

    京都レース場、内回りと外回りの交差点――そこだけ一瞬内ラチが消える
    そこがもっともウマ娘が外に振られる分岐点――その内側には誰も居ない
    神様が作った抜け道――その鍵は身体一つだけ外にでた、インベタでは見えないその角度だ

    一歩まちがえれば内ラチに激突するような
    しかしその内ラチは無い――その瞬間私は外を回るすべてのウマを置き去りに先頭に出た

  • 171二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 03:11:35

    ――内からサクラローレル!!
    ――まるで瞬間移動でもしたかのように後方から最内をついて一気にサクラローレルが先頭だ!

    うわああああああああああ!!!!
    大きな悲鳴と歓声――あいつ本当に一人でやりやがった
    京都レース場の内周り外回りの合流地点――内ラチが一時的に消える場所
    その空間に入るにはインベタでは角度が足りない――そこを見るための角度、そこに飛び込むための角度が必要だ
    そのための半身の空間、そこに集中するための内枠のマーク
    しかしナリタブライアンが大外に周り前のごちゃごちゃした壁を一人で抜くには初めての京都競馬場で単独遂行は危険が過ぎる
    理屈は簡単、しかしそれは京都巧者でも超高難易度のテクニックだ。 俺が授けた「鍵」はあくまでそれを実現しやすくするためのものでしかない
    それをサクラローレルは一人でやってのけた
    外に振られた先団は勿論大外を回るナリタブライアンより圧倒的な最短距離。
    それがサクラローレルを先頭に出す

    ――サクラだ!サクラだ!菊の季節にサクラが舞い散る!
    ――サクラローレル先頭!サクラローレルが先頭だ!!
    ――だが大外ナリタブライアン突っ込んでる!!すごい脚、まさに豪脚だ!!

  • 172二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 03:15:36

    サクラローレル以上の豪脚で大外からナリタブライアンが突っ込んでくる
    身体を低く低くしたあのフォームより更に前傾した走り
    その走りは一度大きなアドバンテージを産んだはずのサクラローレルに詰め寄るほど

    ローレル!負けるな!!
    ローレルさん!勝って!頑張って!!!
    勝ちなさい!!!ローレルさん!!

    サクラローレルとナリタブライアンが並ぶ――抜かれる
    そう思った瞬間サクラローレルは更に加速する

    ――サクラローレル一歩前!一歩前!ナリタブライアンを一歩突き放す!
    ――先頭はサクラローレル、並ぶナリタブライアン!
    ――どちらも譲らず今――ゴールイン!

  • 173二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 03:21:48

    光る写真判定の文字

    あいつは完璧なレースをした
    大外のナリタブライアンに習ってサクラローレルも外を回ってたら100%勝てないレースだった
    ローレルはナリタブライアンを――俺すら超える四角の抜け道を使ってみせた
    俺が不可能だと思った単独実行を成し得た。あのアドバンテージは勝利確定だろう
    だがナリタブライアンはそれすら凌駕するようにスパートをした
    なんだアレは――本当に怪物じゃないか
    今までのナリタブライアンはなんだったんだ……あんな走りなんて今までなかったじゃないか

    写真判定の時間がながい
    俺は両手を組んで必死に祈る
    勝っててくれ、勝っていてくれ――
    サクラローレルは本当に本当に頑張ったんだ
    ガラスの脚だとまともにレースも練習もできずに頑張ったんだ
    だから――サクラローレルに勝たせてやってくれよ
    そんな中――大きな歓声が上がった



    ――1着は4番ナリタブライアン! ナリタブライアンです!
    ――三冠達成! 3000mレコードタイムで菊花賞を制しナリタブライアンが三冠を達成しました!!

  • 1741◆qxc6n.SpgKwJ25/10/14(火) 03:23:27

    QKします
    ところで競馬ってなんですか? 京都競馬場ってなんですか? 知らない子ですね

  • 175二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 05:39:51

    まけた…?

  • 176二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 06:36:43

    菊花賞の勝者はナリタブライアン
    サクラローレルは2着

    負けた……? サクラローレルが?
    だって、だってあいつは最高のスパートだったじゃないか
    見えない四角の抜け道すら自分で飛び込んで――ナリタブライアンより前にでたじゃないか
    あいつは一番でゴールをきったはずだ
    ナリタブライアンにだって勝てる……あいつはそれだけ頑張ったんだ
    あいつは、ローレルは凄いんだよ
    嘘だ……ローレルは……

    ――ごめんなさい、負けちゃいましたトレーナーさん

    ライブからローレルが戻ってきた
    俺はまだ放心状態で……床にへたり込んだままローレルを見たら
    涙があふれて止まらなかった
    ローレル――きっと俺のせいだ、俺の作戦が悪かったんだ
    トレーニング方法が、セントライト記念じゃなく京都レースのトライアルだったら
    だって、ローレルはすごかったじゃないか。あんなにもすごかったじゃないか
    だからローレルは勝てるはずだったんだ

    ――負けたのは――俺のせいだよローレル

  • 177二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 06:45:58

    ――ブライアンちゃん、すごかったですね

    ローレルは俺を現実に引き戻すように笑ってた、悔しいだろうに、やるせないだろうに
    それでもローレルは笑って、しゃがんで俺に目線を合わせた

    ――ブライアンちゃんが言ってました。

    ――オマエには礼を言う。私ですらない不可能なはずの高みに……進化することができた
    ――サクラローレルという今までの私では勝てない相手が居たからだ

    ――ずるいですよね……私が勝てる時に更に凄いブライアンちゃんに進化しちゃうなんて
    ――本当にずるくて、ブライアンちゃんはやっぱり凄いです

    ……違う
    そんなブライアンとローレルはあんなに張り合ったんだ
    あの数センチの差はトレーナーである俺の責任だ。俺の実力がローレルを負けさせたんだ
    ローレルはあの進化したブライアンにも、勝てるはずなんだ

    ――だったら……私をもっとつよくしてください♪
    ――私の脚も心も壊れてないんです。 トレーナーさんが育ててくれた脚はまだ健康です
    ――すごいですよね、トレーニングンの800mすらまともに走れなかったんですよ?私
    ――菊花賞の3000mを走って、悔しいから次は天皇賞春の3200mかなとか考えてて
    ――トレーナーさんは私をこんなに強いウマ娘に育ててくれたんです

    ローレルはぎゅうっと俺を抱きしめてくれる。
    俺は、ローレルの背中にぎゅっと手を回して抱きしめる
    そうだな……次はブライアンに勝とう。 日本中に教えてやるんだ
    怪物ナリタブライアンより――サクラローレルのほうが強いんだって

  • 178二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 06:56:22

    劇的な菊花賞は日本中が注目し何日も語られるレースになった
    三冠の最後の一線、エアダブリンとヤシマソブリンの全力の好走
    大逃げを敢行したスティールキャスト
    そして全員の大内を瞬間移動したように切り込み先頭に立ったサクラローレル
    明らかに負けた状況からさらに進化した走りでレコード勝利したナリタブライアン
    今の日本は完全に三冠ウマ娘とURA大ブームだ
    街のモニターでナリタブライアンを見ない時はないし鼻に絆創膏をつけた長髪の人形――ナリタブライアンであろうぷち人形だのグッズだのがもう出回ってる
    ――これ全部許可とかまだ出てねえだろホント大丈夫なんかここらへん
    もうナリタブライアンのジャパンカップだ、有馬記念だという話が出てたり――

    ――シニアの海外遠征の話題すらニュースでしきりに話されている

    そりゃあ三冠ウマ娘があそこまで劇的に勝って……しかもつええんだ
    世論はそれを求めだす――そうすればURAや業界も黙っては居られない
    勝敗はどうあれそんなウマ娘が海外遠征をすれば話題には事欠かない
    心情理想はどうあれ経済を動かすURAからすればブームや話題性というのは最も重要なファクターだ
    だからこそサクラローレルの凱旋門賞遠征に俺もそれを利用しようとしたわけだが

  • 179二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 07:03:46

    恐らくサクラローレルの凱旋門賞遠征にURAを巻き込むことは不可能だろう
    同じURAが凱旋門賞に動くならどう考えてもナリタブライアンの方が良い
    今後シニア春でナリタブライアンを打ち倒したとしてもネームバリューが違いすぎる
    だからこそ菊花賞でサクラローレルがナリタブライアンに勝ってシニアでの決着というライバル構図にしたかった
    だがこれではシニアでサクラローレルが勝っても凱旋門賞にURAを引っ張り出す事は難しいだろう

    凱旋門賞は日本のレースと違う
    欧州は日本と違うレースポイントシステムだ。 ウマ個人個人ではなくチーム一括りでレースの結果の恩恵をうける
    日本では特定のウマ娘を勝たせるために手を抜くのは当然厳禁だし明確な違反行為だが欧州はペースメーカーであったりチームプレイとしての行為が許されてる
    個人個人で挑む日本の遠征スタイルは明らかに欧州レースでは不利だ
    凱旋門賞に勝つには最低限のチームプレイを実践し個々が勝つためにレース中どんな事が起こるのか自分で理解した上で体験しなければならない
    個人遠征では限界がある――それでも、URAを巻き込めない以上そっちを念頭にすすめないといけないが


    ――おや……キミはサクラローレルの、トレーナーか?

  • 180二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 07:13:20

    長身、白く量の多い芦毛の髪、メガネ
    ウェーブの掛かった髪が頭大きく見えるオマエはビワハヤヒデ

    ――誰の頭が大きいと言うんだ!髪の毛だ髪の毛!

    ……気にしてたのか
    シニア最強と呼ばれたウマ娘でナリタブライアンの姉
    菊花賞前から有馬記念での姉妹対決に期待がかかっていた猛者だ
    天皇賞秋で屈腱炎を発症し引退してしまったことで姉妹対決は実現しなかったが

    三冠とったな、妹。 おめでとう
    俺は姉であるビワハヤヒデに軽く拍手する。 ビワハヤヒデは呆れたように

    ――やめてくれ。ライバルだったサクラローレルくんのトレーナーにそんな事をさせるつもりじゃない
    ――サクラローレルはすごかった、あの第四コーナーで私もブライアンの敗北を悟ったぐらいだ
    ――あの時のブライアンはこう……今までのブライアンとは違う存在だった

    自慢の妹だろう? あのレースで勝ってしまうのだから
    俺のいたずらっぽい問いかけにビワハヤヒデは少し鼻を擦ってはにかんでいた
    そりゃあ妹があんな凄いレースをしたのだから誇らしいだろう。そのぐらいは菊花賞直後だし自慢すべきだ
    確かに最後の直線のナリタブライアンはすごかった
    今までも低い前傾姿勢でぐーんと加速するさまは「ウワア、凄い」と素直に思ってはいたが
    それより低く地面をかくようなあの走りはサクラローレルの豪脚をも凌いだのだ

    ――自慢しろよ姉、私の妹はこんなにもすごいんだぞって
    ――それで……次はジャパンカップか? それとも有馬か?

  • 181二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 07:19:39

    その言葉に、ビワハヤヒデは眉を曇らせる
    言葉を選ぶようにしては言葉を飲み込み、思案してる
    ……なるほど、本来2着のサクラローレルのトレーナーをわざわざ呼び止めた理由があるのか
    何か話したいことがあるならどこかで茶を飲もう、と俺が近くの喫茶店を示すとビワハヤヒデは頷いた
    ……こりゃあ、少し深刻なのだろうな
    俺は少々嫌な予感がしていた


    喫茶店で俺はアイスココア、ビワハヤヒデはバナナスムージーを注文
    ついでに俺はカツサンド・ ビワハヤヒデはバナナパフェバナナソーストッピングを注文していた
    ……もしかしてバナナ好きなのか?
    最初は黙々とお互いにカツサンド、バナナパフェを口に運び
    ようやくビワハヤヒデが口を開いた

    ――菊花賞のナリタブライアンの走りは、どう思った?

    そりゃあすごかった。というより怪物以外のなにものでもない
    最内を切り込んで先頭に立ったサクラローレルは別にポジショニングが良かったという話だけじゃない
    サクラローレルの最大の武器であるその豪脚を最大に使っていた
    あれでもしナリタブライアンと並んでいたとしても確実にサクラローレルの勝利だ
    スパートで位置が五分五分ならナリタブライアンよりサクラローレルだろう
    そう――あの進化したスパートをみるまでは確信していたのだ

  • 182二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 07:25:00

    ――あれはブライアンがサクラローレルに負けたくないという気持ちだけで無我夢中で走った結果だそうだ
    ――考えたり前々から考えていた走法でも試したこともないそうだ
    ――だからね、再現が出来ないんだ

    当たり前だ、あんな怪物を毎回自由に出されてたまるか。 反則だ反則
    まあ真面目な話再現が難しいというのはわかる。 あれはあまりにも低くて前傾が過ぎる
    前を低く低くしてぐんっと伸びるブライアンの走法は独特だがあれは極端だ
    恐らく限界ギリギリの速度とアドレナリンで頭と肉体のブレーキがぶっちぎれてること
    つまり――負けたくない、という気持ちと菊花賞の最後の直線という限界状態が産んだものだ
    練習なんかで狙って再現ができないというならほぼ間違いがない
    それはしょうがないだろう。ほんとに追い詰められたら出るって……こっちからしたら溜まったものじゃないけど
    だがビワハヤヒデの表情は晴れない……本当になんなんだ

    ――それで納得してない人がいるってことさ

  • 183二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 07:33:51

    ナリタブライアン本人だろうか? 意外とストイックなところがあるとは聞いている
    高み、頂に登るために走っている節があるとローレルからそんな話を聞いたが
    それでも姉がそんな心配をするようなものじゃないがオーバーワークだろうか

    ――トレーナーなんだ、ナリタブライアンの
    ――あの走りがナリタブライアンのモノになれば、使いこなせれば
    ――ナリタブライアンはもっともっと高みに行けると
    ――なんとかして菊花賞のあの走法を会得しようと必死なんだ

    …………やめさせろよ、ナリタブライアン本人に、姉として
    これ以上なく冷たく、真剣に俺は発した
    なにしてんだ、あんな走法が練習で出来ないのはわかるだろうに
    理屈でも無理、やってみても無理、そもそもその走法のノウハウもない
    それなのにあんな前傾の極端な走法をしてたら確実に事故が起きるぞ

    ――わかっているがブライアンもやめれないんだ
    ――ブライアン自身強さへの渇望が強い子だ
    ――しかも今までそれなりに我儘だった自分を三冠まで導いてくれたトレーナーに恩義を感じてる
    ――ブライアン自身もあの時の走りはサクラローレルがいないと無理だろうと言っていた

    …………
    だったらさあ…………
    おまえが!姉であるビワハヤヒデが!妹を止めないと誰も止められないだろうが!
    俺はそう言ってるんだよ! お前は妹も故障起こしてもいいってのか!
    思わずビワハヤヒデに掴みかかりそうになる。突然立ち上がり大声を挙げたことで店員が止めにやってきた

  • 184二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 07:42:43

    そもそも今のブライアンの走法はブライアンにしかできないある意味完成されたフォームだ
    いくら菊花賞のあの走りがその進化系だったとしても、それで奇跡を起こしたとしても
    その進化系にこだわりすぎて今更フォーム改造なんかしたら最悪元のフォームが崩れる
    今三冠を獲った走法を壊してまでやるにはあまりにリスクが高い、最悪今までの能力すら発揮できなくなる
    何を考えてるんだそのトレーナーは……担当を壊す気か?

    ――俺にGⅠくれよ、脚が壊れたっていいから

    ……俺が他所様のトレーナーになにか言って良い訳ないわな
    俺は闇のトレーナー、人様に人道を説く資格はない
    とはいえ、こちらもセントライト記念一着、菊花賞は二着。一度はブライアンに勝ちそうになった身だ
    人気投票で出走権が得られれば有馬記念には出走する
    サクラローレルの目標は『ブライアンちゃん』に勝つことでフォームがガタガタで弱いナリタブライアンじゃない
    トレーナーが固執してるってのが物凄く気がかりではあるが
    せめて姉であるビワハヤヒデがちゃんとみてやるべきだ、最悪ふんじばってでもやめさせるべき
    俺にはこれ以上は口出しも首を突っ込むことも出来ない
    俺は二人分の会計を済ませてビワハヤヒデに振り返る
    ――わかってるだろ、一回事故ったら直してサンハイ次やり直しじゃないぞ
    ――怪我ってのはどんどんどんどんウマ娘を不幸にしていくんだ
    ――ブライアンをそんな目には合わせるなよ

  • 185二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 07:51:35

    走法、ってのは個人差がある
    ピッチ走法と大跳びが有名なとこだろうが
    スーパークリークは大跳びだ。ストライドの広い前に、前に跳ぶような走り
    スーパークリークが本当に調子が良い時は本当に綺麗な走りをする
    まるで天使の羽根が生えたように軽やかに飛ぶのだ、伝説の生き物『天マ』のように
    ナリタブライアンの走りはどちらにも分類しないが近いのは芦毛の怪物オグリキャップだろう
    上半身を低くぐっとためるように屈めグーンっと加速する
    深く深くかがめるのは加速する最初、トップスピードでは脚が真横に伸びるような横長のスタイルだ
    サクラローレルはストライド長く脚をズンっと落とし強く強く蹴る走法
    脚と体質の弱いローレルには正直向かない走法だがこの走法が多いのは日本ではない

    ――凱旋門賞のあるフランス組に多い走法だ
    あの芝も地面も深いロンシャンに向けて自分なりに考えた走法だろう

  • 186二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 07:58:05

    この走法が崩れるとろくなもんじゃない
    例えばクリークは調子が悪い時はなんとか脚を出そうとするせいか短距離走のようなピッチ走法に近くなる
    当然タイムもわるいしそんな走法で走ってると本来のフォームが分からなくなってくる
    俺がクリークとであった頃はこんな走りだった
    ナリタブライアンの走法もかなり独特だがあれがブライアンの走りであれば……進化系にこだわって今の走法が崩れるほうが怖い。本来の走りを見失えば長い長いスランプだってあり得るし――最悪スランプ脱却ができずに引退なんてのはレースに限らず様々な競技で日常的によく見る光景だ
    ――そう、限りない頂の栄光を掴んだものがなにかのスランプで一生沼の底なんてのは、よくある日常なのだ
    ……とはいえ
    ……とはいえあのナリタブライアンがスランプで惨敗とか想像できないけどな

    とはいえ俺はナリタブライアンのトレーナーではなくむしろサクラローレルのトレーナーなのだ
    思ったよりお高かった喫茶店の二人分で軽くなった財布を叩きながら寮に戻る
    ……ほんとに予想の3倍以上たかかったどうしよう、今月

  • 187二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 08:26:41

    物凄く悩んでいることがある
    今まで散々この悩みについて考えていたのだが結局答えが出なかった
    なので直接聞いてみることにする
    俺はジェンティルドンナがトレーナー室で紅茶をすすってる時に声をかけることにした

    ――なぜジェンティルは俺のスカウトを受けて俺の担当ウマ娘をしてるんだろう

    そんな事を聞いたら今まで見たことのない呆れ顔をされた
    本当にこいつ馬鹿なのか?という明らかに失望と呆れの混じった顔で紅茶をもって固まっていた

    ――貴方……私の父にあんなタンカを切ってなんでそんな言葉がでますの?

    いや、いやいやいやそうじゃない
    最近の俺とか過去のだまくらかしを懺悔したときじゃなくて――もっと前
    だってジェンティルって俺の本性と言うかある程度俺の嘘を見抜いてたんでしょ?
    ああ、とジェンティルは息を吐くように返事をした。 納得はしたらしい

    ――単に面白そうだったからですわよ? 無能なら即契約解除をしてましたわ
    ――なんというか……試供品のナシを口に入れたぐらいの感覚

    ……さいですか、聞かなきゃよかったわ
    その割にそのナシずっと喰ってるじゃねえか、このいやしんぼめ

    ――だって美味しい味が続くんですもの、ほほ
    ――ご希望なら……甘い蜜をお返ししましょうか? 口移しで

  • 188二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 08:27:56

    ジェンティルは紅茶を置いて、立ち上がって俺に近寄ってくる。
    腰をすこし揺らして前にかがむそれはわざとだろうか?
    たゆんっとゆれる巨乳が柔らかそうに揺れる
    ジェンティルは手を伸ばし、俺のアゴを優しく掴んで上に上げて

    ――キスはまだ……だれとも?

    こくりと頷くだけしかできない俺にジェンティルは目を細める。
    強者として見下ろすのではない――クリークやローレル、ブーケとは違う慈しみの瞳
    愛らしいものを愛でる目つきだ。そんな瞳で見つめられると脳が麻痺してとろけてしまう

    ――ご存知? 愛する方とのキスって……とても甘いらしいわ、甘いだけでなくて気持ちがいいと
    ――試してみましょうか?

    じいっと見つめられる瞳、ジェンティルの瞳も熱っぽく潤んでる
    唇はぬめやかに濡れた光を発していて……そんな唇をジェンティルは自分の舌でぺろりと舐める

    ――とっても甘くてくせになるキス……してみません?


    顔が近づいて――ジェンティルは椅子に座った俺の肩を抱きよせ
    俺は必死に両手でジェンティルの肩を掴んで制する

    ――メイクデビューーーー!!!まだメイクデビューすらしてません!!!

    ギリギリ理性を保った俺に、ジェンティルはチッ、と舌打ち一つ
    ねえええええその舌打ちやめようよおおお君たちさあああああ乙女でしょおおお???

  • 189二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 08:33:10

    あぶね、あぶねえ……くそ、どいつもこいつも俺が彼女なしDTだと思ってからかいやがって!
    今担当とそういう仲になって万が一そういうお咎めからのがれたとして
    覚えておくべきだ、麻薬も薬物もギャンブルもなにもかも
    ――自分は大丈夫、のめりこんで人生を破綻なんかさせない
    そう信じて人間は壊れのめり込み破綻していくのだ。 そうなればそれがなければ生きていけない
    そんな中毒者の皆様はそれを始めて味わうまで、それ無しで健全に生きていたのだ
    俺は闇のトレーナー
    だから俺は自分自身を信じない。 ジェンティルもブーケもクリークもローレルもそりゃあ美人でおっぱいも大きくて可愛くて柔らかくて正直ハグだけで気持ちいい
    だから一度そういう関係になった時俺がトレーナー人生をおろそかにしないとは限らない
    彼女たちは魅力的で一生溺れていたいのだ
    だから俺は決してそういう関係にならない、なってはいけない
    俺は闇のトレーナー

  • 190二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 08:40:17

    ……キスって甘いのか……レモン味って聞いたことあるのに
    俺はちょっとジェンティルとのキスを想像してしまう、あの唇の中の舌が触れ合うと甘くて蕩けそうで……
    ……
    …………

    ――トレーナーさん? お望みならもう一度キスしなおしましょうか?

    からかうジェンティルの声に我に返ってぶるぶるぶると首を振る
    それにしても……うーん
    クリークは元々誰かが喜ぶのが見たい、という努力家にして天才、秀才肌
    ブーケは今までの経歴からして、今までの頑張りを評価すべき
    ローレルだってそうだ、脚の弱い彼女は今まで我慢も努力もすごかった
    しかし
    ジェンティルってどうにも強すぎて「頑張ったね、偉いね!」と褒めにくい

    ――あら、私は頑張っていないと?

    そうじゃない……むしろジェンティルは恐らく一番ストイックに頑張ってる
    練習量もその負荷もチームで一番だと思う

  • 191二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 08:43:14

    >>190

    したんか!?したんか!?

    したんかぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

  • 192二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 08:48:44

    だが実際のところ(妄想キラキラトレ)

    ――ジェンティル、今までよく頑張ったねメイクデビューおめでとう!
    ――頑張ったね、偉いねジェンティル!(なでなで)
    なんてジェンティルがされたいんだろうか?

    ――遠慮しておきますわ、それしたら10%ぐらいの力でビンタしますわよ

    死ぬじゃん!? やめてよしないから!
    ほらみろー……ジェンティルをなんとかして労う事自体難しいんだよ
    色々考えたけど絶対ジェンティル嫌がりそうだもん

    ――あら、わたくしを労いたいと思っていたの?

    そりゃそうだろ、メイクデビューって大きな区切りだしさ、ジェンティルにとっては通過点かもだけど
    俺はジェンティルが今まで一番努力量が凄いと思ってるんだ
    でもなんというかジェンティルって強者強者してるし実際褒めてナデナデとかいやなんでしょ?
    そしたらなんかそういうアクション的なねぎらいって難しいなあって

    ――ふうん……まあわたくしの感性にはあまり合わないわね。ナデナデとかヨシヨシとか
    ――けど、望みはありますわね。 トレーナーさん
    ――むしろわたくし、貴方を労いたいの。 こうお姫様みたいに……もっと言えば女装とか興味はないかしら?

    ……ん?
    ……俺はジェンティルを労いたいといったんだけど?
    なんで俺の趣味の話を、しているの、カナ?😅💦
    ちょっとわかんないなー、おぢさん

  • 193二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 08:57:00

    そもそもが可愛い女の子はトレセン学園いっぱいいるだろ
    フジキセキだのシリウスシンボリだのみたいに生徒を囲え生徒を!

    ――それも悪くないけれど、男子を愛でたいというのは別腹でしてよ
    ――もっというと貴方を愛でたいのわたくしは

    うーん女装には興味ありません!
    さーて今週のメイクデビューはー!
    ジェンティルです、ローレルちゃんが菊花賞2着で惜しかったですね。
    来週は私のメイクデビュー、ティアラ三冠に向けてがんばりますわ!
    ジェンティルドンナメイクデビュー・デュエルスタンバイ!

    ――色々と混ぜるのはよろしくなくってよ
    ――まあ女装は貴方に興味をもってからにしましょう

    一生持たないよ!?でもさ、実際今までのご褒美とかはしたいなっておもってるわけだよ

    ――……要りませんわ、だってもう貰ってますもの色々と

    ジェンティルは耳飾りにつけたペンダントトップを弾いて見せて

    ――父にタンカを切ったり、私が納得するトレーニングメニューを毎週だしてきたり
    ――面白い毎日で飽きませんわ、本当に。 そんな口先のおべっかなんか必要ないぐらいにね

    むう
    全然ロクなことをしていないのでこちらが納得できないのだが
    そんなこんなでジェンティルは本当にいつも通りの雰囲気でメイクデビューを迎え
    あっさりジュニアのコースレコードで勝利した
    当たり前のように生き当たり前のように勝つ、それも完璧に
    これが強者の強者たる生き様なのかとちょっとときめいてしまった

  • 194ジェンティルドンナ25/10/14(火) 09:01:54

    退屈だ
    わたくしは常にそう思っていた
    つまらない争い、つまらない力比べ
    権力も能力も――何をしても当たり前のようにわたくしが一番になる
    トレセン学園に入ってからは多少やりがいがあった
    今のわたくしではクラシックのウマ娘には叶わず、多少歯ごたえのある相手が同期にもいる
    しかしトレーナーというのはいただけない
    どれもこれもかぼちゃやナスビにしか見えないぐらいに同じような事しかいわない
    最強ならばクラシック三冠、グランドスラム、天皇賞春秋連覇
    トレーニングメニューも大したものは出してこない
    口先だけ、おなじような事だけ、判子を押したよう、コピペのよう
    これならわたくしが自分でメニューを考えたほうがよほどマシ

  • 195ジェンティルドンナ25/10/14(火) 09:09:05

    最初は同じように思っていた
    最強を示すには貴方ならどうするかといつも通り聞いて
    提示されたのはティアラ路線――名誉ではあるけれどクラシックの方が格上と言われると思うのだけど
    しかし、空いたクラシックには仮初の王でも載せておけば良い。むしろ三冠ウマ娘でも生まれてくれればもっといい
    ――その三冠ウマ娘をシニアでジェンティルが倒すのだからと
    強者は強者を打ち倒してこそ、真の強者。
    最強というのは無もなき王冠を積み重ねるにあらず
    きらびやかな王冠をつむより最も無骨で固い岩を自らで砕くことこそ真の最強
    嗚呼、面白い――この人の奥底のその深淵にも興味が湧くというもの
    この男はほかの有象無象――もしかしたら今まで出会ったどの男よりも面白いかも知れない
    そんな好奇心で契約をした
    つまらない男ならすぐに契約を解除しようとはおもっていた
    しかしこの男はいつも鬼気迫るような雰囲気で仕事をする
    ノートパソコンとにらめっこをして
    時に著書をあさり、他の担当のために管理者に頭を下げて回っていた
    ――俺自身を鍛える? すまんそんなヒマがないんだ
    その言葉は確かにそのとおりだった。 彼はいつも何かに必死にいきていた
    まるでトレーナーという仕事なのに――自分が人生をかけて走ってるように

    だからそれが――好ましかった

  • 196ジェンティルドンナ25/10/14(火) 09:14:43

    この男が嘘つきなのはすぐにわかった
    仮面を被ったように体裁を作ろうような
    表面的な演技で好印象を得る事を良しとする男なのもわかった
    しかしそれが不思議と薄っぺらくない
    その仮面の下はもっともっと――深く黒い何かがある
    おぞましい化物がなにかの理由で人の皮を被ってるような
    そんな男なのに――その真剣さ、必死さはウマ娘に向けられていた
    不思議でしょうがない、嘘つきなのに卑怯なクズには見えない
    ある時、金が目的だと言っていた
    ある時はすべてを懺悔し告白し私たちを騙して契約を結んだと言っていた

    ほんとうにどうしようもない
    私たちが見ているトレーナーはこんなにも必死で一生懸命で不器用で
    それでもウマ娘のことばかり考えていて
    なにが金が目的、なにが騙してなのかしら
    こんなにも誠実に、頑張って生きているトレーナーなんていないでしょうに
    本当にしょうがない――それでも好ましい人だ

  • 197ジェンティルドンナ25/10/14(火) 09:18:59

    トレーナーを紹介したあと、父は私にいった

    ――本当に勿体ない
    ――彼の出自が一般人であっても……オレは彼を婚約者候補にも認めたのに

    誇りなさい
    貴方の出自は不幸でも、どうしようもない地獄でも
    貴方の生き様は私のお父様にすら認められた、こんな事はじめてでびっくりしましたわ
    だから
    だからもう少し頑張りなさいな
    私は簡単にメイクデビューを勝って、今後もティアラで、シニアで強さを証明してあげる
    貴方も一緒に、証明して差し上げますわ。
    だから――貴方がどんな出自でも関係ないと、お父様に、周囲に言わせられるように
    もう少しだけ頑張りなさい――頑張ったね、偉いねとか私に言う必要なんてないわ
    ――だって、楽しいもの…貴方といるのは

  • 1981◆qxc6n.SpgKwJ25/10/14(火) 09:20:03

    次スレを立てます
    正直ジェンティルを褒めちぎるのが一番難しいです

  • 199二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 09:21:06

    うめ

  • 200二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 09:21:40

    うめ

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