(CP・閲覧注意)ようこそ ジオン村へ

  • 1二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:05:27

    宇宙猫難民ニャアンが、おそらく元宇宙犬難民で今はキシリア様の飼い犬のエグザベくんとニャンニャンするだけの話です。


    ※注意

    ・エグニャア

    ・一部キャラクターの擬獣化

    ・おとぎ話パロ?&パラレル世界(宇宙コロニーが宇宙村になっててMSはあるのに生活はシルバニアってる)

    ・スレ主はドスケベ卑しか雌猫のドスケベを書きたいだけ

    ・上記含めた諸々の二次創作要素が苦手な方はブラウザバックお願いします


    元ネタ

    【閲覧CP注意】エグザベ君とニャアンだけどさ17【エグニャア】|あにまん掲示板とりあえず先輩後輩にはなるんだろうそのような頼れる先輩と熱心な後輩の助け合いルートかもしれないもしくはさらに進んで恋人になるルートなのかもしれないとにかく良い関係で二人とも良い方向に行って欲しい不穏な…bbs.animanch.com

    上記より抜粋

  • 2二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:06:34

    人類の一部が半獣化してから、すでに半世紀が過ぎていた。
    人々は地球を離れ、宇宙にいくつもの『村』を築き、子を産み、育てた。
    その中でも、地球から最も遠い宇宙村────サイド3は、自らを『ジオン公国』と名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んだ。

    多くの犠牲を払いながらも、戦いの果てに勝利を手にしたのはジオン公国であった。

  • 3二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:08:10

    そこから5年……

    17歳の宇宙猫難民ニャアンは、独立国・サイド6の『イズマ村』で軍警と保健所の職員から逃げ回っていた。

    宇宙猫難民としての暮らしは、普通の難民の二倍は厳しい。
    だがニャアンはそう簡単には捕まらない。

    なぜなら宇宙猫難民として11歳の時から一人で生きてきたのだから。

    そんなニャアンにも人間の友達ができた。

  • 4二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:09:19

    それは彼女が違法デバイスの運び屋をしていたときに出会った子だった。
    ニャアンはその友達と一緒の時間を過ごし、代打としてMS同士が戦うクランバトルに参加したりもした。

    けれどその行動がかえって友達を傷つけてしまった。

  • 5二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:10:46

    紆余曲折の末、またひとりぼっちに戻ってしまったニャアン。

    サイコガンダムの破壊行動で混乱するイズマ村をさまよっていたとき、彼女は犬の獣人と思しきエグザベ・オリベに出会った。

  • 6二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:12:34

    そしてニャアンは彼からジオンの村に来ないかと誘いを受ける。

    このままイズマ村にいればニャアンは軍警か保健所に捕まってしまう。
    なぜなら彼女は宇宙猫難民だから。

    ニャアンは同じ獣人である彼について行くことにした。

  • 7二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:15:01

    エグザベの飼い主であるキシリア・ザビはNTに深い理解を示し、さらに難民や獣人を差別することはなかった。

    キシリアはNTや獣人たちの未来を考えていた。

    彼女は手作りの美味しいアップルパイでニャアンをもてなし、今後を応援した。

  • 8二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:16:37

    キシリアが村長を務める緑豊かな月面村落グラナダ内を移動中、ニャアンはエグザベの引く馬車の中ではなく────なぜか御者席でエグザベの隣に座っていた。

    「ここだと揺れるし椅子も硬いから……馬車の中に入りなよ」

    「……馬車の窓、小さくて外がよく見えないから」

    嘘だった。
    本当はニャアンは自分と同じ獣人で元難民である、境遇が近いであろうエグザベと会話がしたかった。


    (どう見ても馬車です)

  • 9二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:18:07

    「ああ。グラナダ村はこれでも月面にあるからね、窓は贅沢品なんだ」

    人工太陽とテラフォーミングにより月面にあるグラナダ村には植物は生い茂り、酸素循環装置の稼働音すらも、まるで風の流れる音のようだった。
    地球のようなこの場所は、なぜかとても懐かしさを感じさせた。

    「あなたは……犬?」

    ニャアンは彼のぴんと立った両耳を見つめている。
    尻尾は衣服の下に入れてしまっているのか、見られない。
    外見はどう見ても犬の獣人だが、ニャアンは少し彼のニオイに違和感を持っていた。

  • 10二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:19:19

    このレスは削除されています

  • 11二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:20:33

    「そんなところかな。君は猫だよね?」

    「はい、猫です」

    「猫の獣人には初めて会うよ。故郷では同じ獣人の群れで生活してたし、僕の同期や所属している部隊の人は犬の獣人が多いんだ」

    ニャアンは彼から視線を逸らす。
    ふわふわとした被毛素材に覆われたコンチのアームを上下させながら、こっそり彼を横目で見る。

    少しニオイに違和感があるだけで、彼は犬で間違いないだろう。

    ニャアンのスカートの下から伸びた尻尾が、ゆらゆらと揺れた。

  • 12二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:22:45

    投下おしまい。
    次の投下は明日の予定です。

    シルバニアってる世界です。
    スケベがメインです。

  • 13二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:25:07

    相変わらず筆の速さが爆速のドスケベ神だ!
    ありがとうございます!

  • 14二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 16:33:26

    ひゃっはードスケベの人だ!
    早速エグザベくんから不穏()な匂いがするぜ

  • 15二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 20:52:48

    スレ主さんの筆は神速

  • 16二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 21:26:08

    シルバニアってる世界とは・・・!
    春の季節(意味深)が楽しみですね!

  • 17二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 22:16:26



    ジオン軍の格納庫。
    ニャアンはそこでエグザベの同期だという青年と遭遇する。
    ミゲルと名乗ったその男にも犬の耳と尻尾が見受けられ、犬の獣人だということがすぐにわかった。

    「(この人は……ニオイもちゃんと犬)」

    ミゲルは物珍しそうにニャアンの耳の先から尻尾まで眺めると、エグザベと二人で何やら会話を始めた。

    手持ち無沙汰になったニャアンの視線は、格納庫に鎮座するMSへと向けられていた。

  • 18二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 22:17:35

    耳はぴくぴくと動き、周囲の気配を探っている。
    しかし尻尾は下がり、目の前の光景に意識を奪われているのが自分でもわかった。

    ふわふわの被毛素材に覆われた巨大なMS。

    「(……お母さんに似てる)」

    胸の奥で言葉がこぼれた。
    なぜそんな感想を抱いたのか、ニャアン自身もわからなかった。

    ふと嫌な空気を感じて、ニャアンの意識は再びMSからエグザベとミゲルに向けられた。
    何やら不穏な会話をしている様子だった。

    どうやらこのMSのパイロットに選ばれた彼らの同期二人は従来のワクチンが通用しない新型の狂犬病に罹り、入院生活を余儀なくされているそうだ。

    「新型の狂犬病って……発症したら死んじゃいますか」

    ニャアンは思わず彼らの会話に割り込む。

    やや驚いた様子のミゲルが視線をニャアンにやる。

  • 19二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 22:18:59

    「感染力自体がすごく弱いし、発症するのは犬の獣人だけみたいだよ」

    ミゲルはニャアンを安心させるために笑ってみせる。

    「それでも怖いよね。僕たちもなるべく気を付けるから」

    エグザベが静かに言葉を添える。

    「治療薬ができるまでは肩身が狭いよ。一緒に食事とかは難しいだろうな」

    ミゲルが肩をすくめる。
    その言葉にエグザベが小さく息をつく。

    「懐かしいな。僕がジークアクスのパイロットに選別されたとき、ミゲルがケーキを焼いてみんなで祝ってくれたんだ」

    友達の手作りの食事をみんなで食べる。
    思わず「うらやましい」とニャアンは呟いた。
    彼女がずっとしたかったことだった。

    「君が大丈夫なら、ケーキくらい焼いてやるよ」

    ミゲルがニャアンに笑いかける。

    「大丈夫。僕は毎日検査を受けてるから感染の心配はないよ」

    彼はそんなことをおどけた様子で言った。

  • 20二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 22:20:16



    結論から言えば────ニャアンに振る舞われたケーキからは、わずか数滴でも死に至る猛毒が検出された。

    ミゲルと、彼の焼いたケーキから嫌なニオイを感じ取った時。
    ニャアンは気付けば「犬にしか効かない病気が使えない場合は、どうするんですか」と彼に問いかけていた。

    図星だったのか、彼は銃を抜きそれをニャアンに向ける。
    それとほぼ同時にエグザベも銃を構えてやって来る。

    「抜け目のないお嬢さんだ」

    ミゲルが呟く。
    エグザベの制止の言葉など届いていない様子だった。

  • 21二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 22:21:51

    「最初からこうすればよかった。君の人間の心を守ってあげるよ」

    何を言っているのか理解する暇もなかった。
    ニャアンの身体は反射的に動き出し、ミゲルから距離を取ろうとした。

    ミゲルもすぐに動き、ニャアンを追い詰める。

    ────絶体絶命の、その刹那。

    格納庫のMSのビットが、まるで猫のパンチのように素早い動きでミゲルを叩いた。
    数発それが繰り返されると、ミゲルは意識を失いその場に倒れ込んだ。

  • 22二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 22:24:06



    気絶したミゲルが、キシリアのシークレットサービスに連行されていく。

    「エグザベ少尉は……どうしてここに?」

    ニャアンの耳と尻尾は垂れている。

    「なんだか心配になって……役には立てなかったけどね」

    エグザベの露出している耳も同様に垂れ下がり、同期の狂犬病の原因が友人であり同期のミゲルであることにショックを受けていることが見て取れた。

    「新型の狂犬病……早くワクチンと治療薬ができるといいですね」

    「あんな目に遭ったのに、僕の同期の心配をしてくれてるの?」

    違う。
    ニャアンは心の中で否定する。
    目の前にいる犬の獣人まで新型の狂犬病に罹られたら、誰が自分のそばにいて世話をしてくれるのだ。
    そのようないかにも“猫らしい”思考をニャアンは巡らせる。

    彼は自分が犬である自覚が足りていないのではないか。

  • 23二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 22:25:21



    格納庫のMS────ジフネコのパイロットとして正式に認められたニャアンには、大きな窓のあるお家があてがわれた。

    ニャアンは窓の外を眺める。
    窓の外には人工的に作られた湖が見える。

    この時間帯は人工太陽は休眠モードに入り、空には月ではなくソロモンの残骸が浮かんでいる。
    それが、今いる場所は月なのだとニャアンに自覚させた。

    エグザベはニャアンの背後で大きな窓を見上げながら「大きな窓だなぁ」などととぼけたことを言っている。
    彼の耳はゆるく垂れ、どこか落ち着かない様子だ。

    「女性の家に入り込んで、窓ですか」

    「えっ?」

    ニャアンはエグザベのほうへ歩み寄る。
    そしてためらいもなく彼の胸に顔をうずめる。

  • 24二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 22:26:27

    「ちょっと……!?」

    エグザベの狼狽する声が頭上で響く。
    ニャアンは構わず、鼻先を彼の胸元に押し当てる。

    イヤなニオイはしない。ただし違和感がある。
    この犬の獣人には敵意や悪意もない。
    違和感は『犬に限りなく近い別の何か』のニオイだった。

    「(何かを隠している?)」

    ニャアンは直接聞こうとも思ったが、その『隠し事』は自身にとって不利益になるようなものではなさそうだったので、枕として非常にちょうどいい硬さのエグザベの胸に頭を擦り付けた。
    彼女の意志とは関係なく、尻尾がぱしぱしと彼の腿を打ったり離れたりを繰り返す。

    「やっぱり……怖かったよね」

    ニャアンの行動に別の意図を感じたのか、エグザベはそのようなことを口走る。

  • 25二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 22:28:19

    ニャアンはじとっとした目で軽く彼を見上げると、とても申し訳なさそうな顔をしていることが見て取れた。

    「……怖くなかったと言えば、嘘になります」

    ニャアン自身も驚くほど、素直な言葉が出た。

    「これからもあんな風に命を狙われる可能性があると思うと、恐ろしいです」

    半分本当で、もう半分はそれらしい理由を探していただけだった。

    「なるべくそばにいてほしいです」

    エグザベは一瞬の逡巡の後、頷く。

    「それはもちろん……」

    「じゃあ、私専用の枕になってください」

    「えっ!?」

    ニャアンは宇宙猫難民だ。
    今までは野良猫としてずっと1匹、強く気高く生きて来たが、実は誰よりも寂しがりやで甘えん坊な子猫なのだ。

  • 26二次元好きの匿名さん25/10/12(日) 22:29:24

    投下おしまい。
    次の投下は明日の夕方以降。
    この世界はギャグ時空です。

  • 27二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 00:11:32

    ほんまにか~?ほんまにギャグ時空かぁ~?って今までのスレを見てると思ってしまう……

  • 28二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 01:20:40

    宇宙猫難民!?
    ケモレベルはどれぐらいなんだろう

  • 29二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 05:20:35

    >>27

    よぽよぽハムちゃんのスレ主でもあったので、きっと大丈夫?めいびー多分大丈夫

  • 30二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 07:41:45

    シルバニアってる世界観めっちゃ面白くて大草原
    耳としっぽで感情でるのかわいいな

  • 31二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 09:24:01

    スケベとシルバニアが両立するか
    ボブは訝しんだ

  • 32二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 09:28:44

    ドスケベシリーズの新作嬉しい
    人間が半獣化した背景とかもそのうち明かされるのかな

  • 33二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 10:31:18

    なんか某登場人物全員擬獣化した水星たぬき世界を思い出した(YMD一族感)

  • 34二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 15:10:06

    ジフレドがジフネコならギャンはワ゛ンとかキャンになるのかな・・・・・・
    多分みんなアンパンマンのだだんだん的なメカデザで・・・・・・

  • 35二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 16:13:03

    男は○○とか言うもんな。あんまりからかいすぎるなよ子猫……(食われてしまえ)

  • 36二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:08:35

    他所のスレ(notエグニャア)でもエグザベ=白狼で設定されてたから、犬系で強い→狼になるんだな

  • 37二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:34:54



    やはりこの枕はちょうどいい。
    まるで自分専用に作られたものではないか。

    ニャアンはベッドの上で、エグザベに跨るような姿勢になり、彼の胸に顔をうずめていた。

    「あの……護衛のために一緒にいるのはわかるけど、これは絶対違うよね」

    エグザベは困惑した声でつぶやく。
    両腕を後ろで組み、彼女に触れないように必死で距離を保とうとしていた。

    しかしニャアンはそれをまったく気にせず、黒い尻尾をゆらゆらと揺らしながら、彼の胸にしがみついたままだ。
    やがて尻尾の動きが次第に鈍くなり、とうとうエグザベの腰のあたりに絡みついたままぴたりと止まった。

    「寝ちゃった……のか?」

    エグザベは息をのんだ。

  • 38二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:36:49

    エグザベに跨ったまま、ニャアンは静かな寝息を立てている。
    彼の胸に顔をうずめ、すっかり力が抜け落ちていた。

    エグザベは考える。

    きっと彼女は今置かれている状況が不安なのだろう。
    そうでなくとも、11の時に故郷を追われてから今日までずっと大変な思いをしてきたのだ、多少幼く感じる振る舞いも仕方がないことなのかもしれない。

    ミゲルの一件も、本来ならば自分が対応しなければいけないことだった。

    彼女の動かすジフネコがミゲルをある程度しばいて終える形にしてくれなければ、エグザベは友人に引き金を引かねばならなかった。

    彼はゆっくりと息を吐いた。

    ニャアンの耳が寝息に合わせてぴくぴくと動く。
    その小さな動きが可愛らしく、触ってみたいという衝動が湧き出る。
    自分に巻き付いている尻尾もかなり気になっているが、彼は堪える。

    余計なことを考えないように、エグザベも目を瞑る。

    彼女が安心できるなら、この状況を受け入れるしかない。

  • 39二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:38:00



    翌朝。

    エグザベはニャアンの枕としての役目を全うした。

    「ニャアン……起きて。訓練に行かないと」

    ニャアンの耳がぴくりと動き、彼の腰あたりに巻き付いていた尻尾もわずかに立ち上がって反応を示すが、目を開けようとしない。

    「起きてるよね? 早く準備しないと遅れちゃうよ」

    「ぅー……」

    ニャアンは眠たげな声を上げ、起きようとしない。

    「この体勢だと僕も起きられないんだ」

    エグザベはなんの気無しに、彼女のゆらゆら揺れる尻尾の先端を指でつつく。

  • 40二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:39:16

    「に゛ゃっ!?」

    先ほどまでの様子が嘘のように、ニャアンが跳ね起きる。

    「何をするんですか、変態」

    怒りと恥ずかしさが混じった声。
    彼女は彼から距離を取り、ベッドの下にしゃがみ込む。
    耳は外側に張られ、尻尾は身体に巻きついていた。

    「ご、ごめん……つい」

    エグザベも慌ててベッドを降り、謝罪の言葉を口にする。
    彼としては、彼女の尻尾が自分に絡みついたり軽く叩いてきたりするので、つつくくらいは問題ないと思っていた。

    「次に尻尾を触ったら、許しませんから」

    そう言いながらも、ニャアンの頬はほんのり赤い。
    彼女の尻尾はぱたぱたと床を打っていた。

  • 41二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:40:50



    訓練のために訪れたジオン軍基地で、エグザベは自身の所属する部隊のメンバーをニャアンに紹介した。

    彼の言う通り犬の獣人が多い。
    部隊のメンバーたちはニャアンを歓迎し、これからは一緒に頑張ろうと声をかける。
    数少ない女性の部隊員は、ニャアンを一目見て気に入ったのか尻尾をぶんぶんと激しく揺らしている。

    なぜ軍には獣人の、特に犬が多いのか。
    それは宇宙全体で獣人の立場が決して良くなかったからだ。

    彼らは耳と尻尾が生えている程度で通常のヒトとほぼ同じ姿をしているが、体内には種特有のウイルスや病気を保有している可能性が高い。
    それらは全て出生児のワクチン接種によって解決する事柄なのだが、人々の無意識に根づいた忌避感が正しい理解を遠ざけていた。

    だからこそ獣人がこの宇宙で平穏に生きていくにはある程度の社会的地位を持つか『飼い主』の存在が必要だった。

    軍はそれらを持たない獣人たちの受け皿になっていた。
    特に犬の獣人は忠誠心が高く命令に従順と言われて、歓迎されることが多かった。

    一方で猫の獣人はその正反対で、軍のような統率の場では扱いづらい存在と見なされている。

    猫の獣人であるニャアンの存在は、軍では非常に珍しいものであった。

  • 42二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:42:12



    訓練を終えたニャアンは、エグザベの運転する車で自宅に戻る。

    「車……あるんですか」

    「君の送迎のために使用許可が降りたんだよ。グラナダ村の環境を汚染させないように、非常時以外は使えないよ」

    「そんなに厳しいんですね。この村」

    「キシリア様はNTだけでなく、獣人の未来を考えておられる。グラナダ村が他の村より緑豊かで昔ながらの生活を好むのはその影響だと言われてる。僕個人としては便利な方がいいんだけどね」

    ニャアンの意識は会話ではなく、後部座席に置かれた荷物へと向けられていた。
    そこにはまだ封も開けられていない軍の支給品の服があり、素材からして寝間着の類と見て取れた。

    そういえば昨夜の彼は、軍服のジャケットを脱いだだけの姿で眠っていた。

    「(寝苦しかっただろうな)」

    ただでさえ自分専用の枕をやっている犬の彼に、少し申し訳ないことをしてしまった。

  • 43二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:43:58

    あとは群れで自分より大きな獲物を狩る所も狼っぽいと思われる所以だと思うね

  • 44二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:44:16



    「シャワー、ありがとう」

    エグザベが脱衣所から出てくる。
    寝巻き姿のエグザベは、やはり尻尾を隠している。

    「尻尾、ないんですか」

    「あるけど……嵩張るから」

    エグザベはやや苦笑いを浮かべる。

    「服の中に入れてたら蒸れて窮屈じゃないですか。寝る時くらい出せばいいのに」

    彼の寝巻きは獣人用で、尻尾を外に出すために臀部に小さなスリットが入っているはず。

    「まあ、そうだね。君が構わないなら……正直出しておいた方が楽かも」

    エグザベは上向きに立てて背中側に沿わせていた尻尾をゴソゴソと移動させる。

  • 45二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:45:47

    「……!」

    スリットから現れたのは、太くしなやかで、先端まで柔らかな毛が密に生えた立派な尻尾だった。

    その光景を見た瞬間、ニャアンの中の“猫”が反応した。
    気づけば彼女は彼の尻尾に飛びついていた。

    こんな尻尾を、ずっと立たせて背中に隠していたのか。

    「ふわふわで……あったかい……」

    うっとりとした表情でニャアンは尻尾に頬をすり寄せる。
    ひとしきり堪能したあと、顔を上げてエグザベを見た。

    「おっきなふわふわしっぽが、恥ずかしかったんですか?」

    やり過ぎたと思い、ニャアンは一旦彼から距離を取った。

    「別にそういうわけじゃ……いや、そんな感じだよ」

    エグザベが気まずそうに視線を逸らす。

  • 46二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:48:19

    「もったいないです。そんなしっかりした良い尻尾。狼の尻尾みたいでかっこいいです」

    「邪魔なだけだよ」

    エグザベのややぶっきらぼうな声とは裏腹に、その尻尾はぶんぶんと激しく揺れている。

    「尻尾を褒められて、嬉しいんですか?」

    「なんでそう思うの」

    彼の表情とは裏腹に、尻尾は千切れんばかりに右へ左へ揺れ続けている。

    「(この尻尾じゃ隠し事は難しいだろうな……)」

    ニャアンはそう考えながらも揺れる尻尾に飛びつき、再びじゃれつくように戯れ始めた。

    「ちょっ、ちょっと……! そこは……!」

    エグザベが慌てて身を引くが、ニャアンは聞いていない。
    まるで新しいおもちゃを見つけた子猫のように、尻尾に顔をうずめては頬をすり寄せ、毛並みを撫でている。

    尻尾の毛先がニャアンの頬をくすぐるたびに、彼女は小さく笑って余計にじゃれつく。

    エグザベは観念したように溜息をつく。もう好きにしてくれ、と言外に伝えていた。

    「確かに嵩張りますね。外ではしまった方がいいかもしれませんね」

    この尻尾は私専用のおもちゃにちょうどいい。

    ニャアンの細く長い尻尾は、最高のおもちゃを見つけた喜びでぱたぱたと揺れている。

  • 47二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:49:32

    その晩もニャアンはエグザベにしがみつく形で、彼の胸に頭を擦り付けながら眠りについた。

    昨晩とは異なり、2本の尻尾が意図せず絡み合う。

  • 48二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 17:51:08

    投下おしまい。
    次の投下は0時以降あるいは明日の夕方以降です。
    シルバニアってる世界のスケベをしたいのですが色々と過程が多いですね。スケベの道が遠くてすいません。

  • 49二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 18:04:54

    尻尾を絡ませ合うのはなかなか叡智ですね

  • 50二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 18:21:59

    2匹が仲良くにゃんこプロレスするのが楽しみです

  • 51二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 20:20:04

    もしかして
    ギレン:人間派
    キシリア:獣人派
    で思想が対立してるのかな?

    『青葉区全滅!イオマグヌッソは人間をもふもふ生物に変えるもふもふ製造機だった!』(レオ40話感)

  • 52二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 21:16:36

    猫って自分のものに身体を擦り付けて自分の匂いをつける事によって所有権を主張するんですね

    けど風呂に入ったら付けた匂いが落ちちゃうのでスリスリしに来るんですね

    もし他の猫の匂いでマーキングが上書きされていようもんならすげえ不機嫌になるんですね

  • 53二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:39:49



    翌日の夜。

    ニャアンはグラナダ村の村長であるキシリアの館に訪れていた。

    通された部屋のテーブルの上には、キシリアの手料理が置かれている。

    「ソール・オ・ヴァンブランだ。しっかりとアルコールは飛ばしているぞ」

    ニャアンはやや緊張しつつも「いただきます」と言って、それを口に運ぶ。
    少し酸味を感じる魚料理だったが、かかっているクリームが優しい味わいでとても美味しい。

    「すごく美味しいです」

    今まで食べた料理の中で一番美味しいかもしれない。そんなことをニャアンは考える。

    ニャアンの言葉に、キシリアがわずかに目を細める。

    「そなたのような者の感情はわかりやすい」

    キシリアの視線は、ゆったりと上下を繰り返すニャアンの耳と、椅子からはみ出すほど揺れ動いている尻尾に向けられた。

    「人類全員がそなたのようであれば、人々が瑣末なことで互いを疑い合うこともなくなるのだがな」

    そなたのよう、というのは獣人という意味だろうか。

    エグザベの言葉をニャアンは思い出す。

  • 54二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:41:31

    『キシリア様はNTだけでなく、獣人の未来を考えておられる』

    キシリアから嫌なニオイは感じない。
    もし彼女が本当に獣人の未来も考えてくれているなら、ニャアンは素直に嬉しいと思うだろう。

    「今晩は私のところに留まるといい。お前の部屋も用意させた」



    大きくて綺麗な浴室、そこを出ると滑らかなシルクのネグリジェが用意されていた。

    そして気づけばニャアンはキシリアの部屋で椅子に座らされ、背後から静かに髪を梳かれていた。

    その手つきは優しく、思わずニャアンの喉がゴロゴロと鳴る。

    「(誰かに髪の毛をお手入れしてもらえるの、久しぶりだな……)」

    ふと、甘く上品な花の香りをニャアンは感じ取る。

  • 55二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:43:00

    「いい香り……」

    「気付いたか。そなたにはより強くこれの匂いを感じられるだろうな」

    そう言って彼女はドレッサーに置かれた花瓶に活けられている一輪の花を取り上げ、ニャアンに差し出す。

    一輪の薔薇の花。

    「ダマスクローズの花だ。今日はこれをそなたに見せたかった。受け取れ」

    ニャアンは両手でそれを受け取る。
    棘は丁寧に取り除かれていた。

    「いいんですか、こんな綺麗な薔薇……」

    「どんなに美しい花も、愛でられなければ意味はない」

    キシリアは窓の外に目をやる。
    ニャアンも同じ方向を見ると、綺麗に手入れされた薔薇の茂みがある。
    数えるほどしかない花はまだ蕾の段階で、ニャアンが貰ったものだけが満開の花を咲かせている。

    「美しい香りは香水に、優れた成分は紅茶やスキンケアにも使われる……だが栽培が難しくてな」

    キシリアは続ける。

  • 56二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:44:24

    「宇宙では、おそらく私の庭にしか咲いていないだろう……やはりこの花には地球の環境が最も適している」

    短い沈黙のあと、彼女は窓の外を見たまま低く呟く。

    「だが地球は人間たちによって汚され続けている」

    薔薇のように気高く美しいキシリアの声色に、一瞬だけ棘が含まれた。

    ぞわり、と。
    ニャアンの背筋を冷たいものが這い上がる。

    「(どうしてこんなに優しい人から、イヤな気配を感じるの……?)」

    薔薇の香りでニャアンはキシリアのニオイを感じることができない。
    この一瞬だけのイヤな気配が、ニャアンは自分の気のせいであることを祈った。

  • 57二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:45:54

    しばらく二人はやり取りを続けた後、キシリアは配下の兵士を呼び、ニャアンを寝室へ案内させた。



    翌朝。
    キシリアに用意された部屋の、ふかふかのベッドの上で、ニャアンは自身の身体に違和感を持つ。

    かすかな熱感、胸の奥から上がってくるようなざわめき。心臓の鼓動がいつもより速く、耳の先まで血が上る。

    「(うそ……どうして)」

  • 58二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:47:48

    ────獣特有の、発情期。

    彼女の本能がそれを告げている。

    猫の獣人であるニャアンにも、本来ならそれが毎年訪れるはずだ。
    けれど彼女が狼狽しているのには理由があった。

    まず、季節外れ。
    本来なら春先に訪れるはずの発情期が、そうでない時期に始まっている。
    これはおそらく月での生活という環境の変化のせいで、体内時計が狂ってしまったのだろう。

    そしてもう一つ。
    ニャアンはこの現象を一度も経験したことがなかった。

    多くの獣人の女性は、初潮を迎えるころから毎年発情期が訪れる。
    だがニャアンは違った。

    故郷で初潮を迎えた直後、彼女は難民となった。
    原因はストレスか栄養不足か。

    そのまま2回目の生理が訪れることはなく、発情期も経験しないまま17歳を迎えた。

    煩わしいことがない分、むしろ彼女にはそれが好都合だった。

    「(自分には、来ないかと思ってた……)」

    初めての発情期。
    しかも季節外れのそれに戸惑うが、こんなものに振り回されている場合ではない。

  • 59二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:50:04

    ニャアンは深呼吸をして湧き上がるものを抑えようとする。
    ベッドから起き上がり、制服に着替えた。

    いつも通り、いつも通りに振る舞えば大丈夫。

    ニャアンはそう自分に言い聞かせる。

    キシリアの配下の兵士に送迎をされ、ニャアンは訓練場に足を踏み入れる。

    「おはよう。ニャアン」

    パイロットスーツ姿のエグザベがニャアンに気付き、声をかける。
    尻尾は綺麗にしまわれており、まるで最初から無いもののようだった。

    「おはようございます」

    ニャアンはわずかに身じろぎをした。

    なぜだろう。
    彼から発せられる『違和感のあるニオイ』に、身体が過敏に反応している。
    胸の奥がざわめき、すぐにでも離れなければと頭の中でアラートが鳴る。

    「なんだかいい匂いがするね」

    エグザベが一歩近づき、手で空気をあおぎながら匂いを嗅ぐ仕草を見せる。

  • 60二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:51:55

    「セクハラ……」

    ニャアンは少し顔をそむけ、近づかれた分だけ距離を取った。

    「ち、違う違う! 本当にお花のいい匂いがするから」

    「昨晩……キシリア様から綺麗な薔薇をいただいたんです」

    ニャアンの尻尾は勝手に揺れて、落ち着かない様子だった。

    「帰ったら、見せてあげます」

    言い終わった後に、しまったとニャアンは心の中でつぶやいた。
    猫としての本能が、理性より先に彼女を突き動かしている。
    本来ならば、この時期の夜は一人で過ごすべきだと知識でわかっているはずなのに。

    「へえ、それは楽しみだ」

    エグザベはニャアンの心情などつゆ知らず、穏やかな声音で答えた。

    大丈夫。
    ちゃんと理性を保って自分をコントロールすればいいだけ。
    ニャアンはそう自分に言い聞かせた。

  • 61二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:53:01

    投下終わり。
    次の投下は明日の0時前後の可能性が高いです。

    今後の展開当てられて草。
    そうですこの時空のキシリア様は大量殺戮なんて物騒なことはさせません。
    このSSはドスケベがメインなのでそこらへんは普通にネタバレありきでお願いします。

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/13(月) 22:59:20

    みんなイヌマグヌッソでもふもふかわいくなっちゃうの草

  • 63二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 01:41:07

    >>51

    >>61

    この獣人世界もララァの見た夢の一つなら薔薇に接続しさらにララァの認識を改変することによりもふもふ世界を実現できる

    実際猫になってるシャアはいる

    まあみんな獣人になって自然に還りたがったら宇宙での生活を維持できるかはわからんが

  • 64二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 05:40:33

    保湿

  • 65二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 10:35:51

    狼はつがいとの絆が強いんだよね

  • 66二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 11:08:00

    発情期ってえっちだよね

  • 67二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 11:30:02

    シルバニアワールドにはセクハラの概念がある!?

  • 68二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 13:46:27

    これニャアンは行きはキシリア様のとこの人に送ってもらったけど帰りはエグザベくんと一緒なんだよな……
    フェロモンむんむんのニャアンと車という閉鎖空間で2人きりになりその後枕にされるとかもう完全に送り狼だろこれ……

    ところでエグザベくんのtinっていざという時抜けないように根本大きくなったりします?
    狼のtinって犬のと同じなの?

  • 69二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 15:14:34

    >>68

    ちょっとググってみたところそうみたいですよ>犬のと同じ

    以下あくまで知恵袋の投稿文ですが


    >結合時間は10~30分が一般的ですが、それ以上長いこともあります。

    >交尾期間は約1~2週間で、期間中はほぼ毎日交尾します(1日の回数は1~4回ほど)。


    だそうです

    もうニャアンが発情してるので関係ないかもですが

    オオカミは発情期になるとオスがメスに対し「追尾」という行動に入り

    メスの許可が出るまでつけ回すらしいですえっちですね

  • 70二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 15:22:12

    >>69

    うおおお……!ありがとうございます

    このスレではどうなるかわかんないけどドスケベ期待

  • 71二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 17:45:41

    夜。
    エグザベの運転する車の助手席で、ニャアンは乱れる呼吸を堪えていた。

    非常にまずい、とニャアンは心の中で何度も呟く。

    車のような密閉された空間だと、おのずとそこに在るもののニオイがこもってしまう。
    普段ならば気にしないものでも、今のニャアンには劇薬だった。

    昼間よりも明確に身体の奥がざわついている。
    身体が火照る感覚で、意識が朦朧とする。

    このニオイは今嗅いだら非常にまずい。

    ニャアンは気付く。

    エグザベの『違和感のあるニオイ』は『犬の獣人にしてはやや野生的で、獣くさ過ぎる』のだ。
    彼の柔和な態度と軍人にしてはやや細い体躯が、彼女にニオイの正体を掴ませなかった。

    鋭敏になった嗅覚が、匂いを分解していく。

    「(シュウちゃんの匂いが、ほとんど無味無臭のクリームチーズだとしたら……エグザベ少尉のは青カビが生えてるチーズ。すっごく刺激臭がして……えずきそうになる)」

    青カビが生えてるチーズ────ブルーチーズを口にしたのは人生で一度きり。
    祖父のお酒のおつまみを一口だけもらった時だった。

    口に入れた瞬間、あまりの塩気と刺激臭に、幼いニャアンの身体は飲み込むことを拒んだ。
    かつて拒絶したレベルのニオイに、17歳のニャアンは心奪われている。

  • 72二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 17:47:38

    「(こんなににおうのに……ずっと嗅いでいたい……もっと近くで……)」

    理性が警告を鳴らす。
    ニャアンはその欲求を振り払うように、ぶんぶんと頭を振った。

    車がニャアンの家に着くと、急いで彼女は外へ飛び出し深呼吸をした。

    彼に事情を話すべきか。

    『初めての発情期で勝手がわからない、しかもあなたのやや野生的で獣くさ過ぎるニオイを嗅いでると変な気分になる』

    そんなこと、恥ずかしくて言えるわけがない。
    まるで自分が彼を性の対象として見ているみたいではないか。

    とにかく今日は帰ってもらうべきで、ニャアンは何か良い方便を考える。

    エグザベはニャアンの様子を見て、心配そうに眉を寄せる。

    「ニャアン、顔が赤いけど……どこか悪いの?」

    エグザベは彼女の顔を覗き込む。
    身長差が少ないため、ニャアンは彼の顔がよく見える。

    「……ぁ、」

    声がうまく出ない。
    心臓の鼓動が彼に聞こえてしまいそうで、怖い。

  • 73二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 17:49:34

    「今から病院で診てもらう?」

    その優しさがかえってニャアンの胸に刺さる。

    「大丈夫ですっ」

    そう言い切ると、ニャアンはその場から逃げ出すように家の中に駆け込む。
    遅れてエグザベも家の中に入ってくる。

    「お風呂に入ってきます」

    ニャアンは脱衣所で衣服を手早く脱ぎ置くと、浴室に飛び込み真っ先に水温を管理するレバーに手をかけ、勢い良くシャワーを吹き出させた。

    「(あああああああああ!)」

    冷水のシャワー。

    あまりの寒さにニャアンは縮み上がる。
    だが頭を冷やすにはちょうど良かった。

    冷静になればいいのだ。
    たかが発情期。脳から放出されるホルモンがいつもより多いせいで身体に悪さをしているだけ。
    錯覚、全て錯覚なのだ。

    ニャアンは震える手で髪と身体を丁寧に洗い、注ぎ残しがないようにじっくりと冷水のシャワーを浴びる。

    バスタオルを身体に巻き、これまた冷風のドライヤーで時間をかけて髪を乾かしてから寝支度を整える。

    脱衣所から出る頃にはニャアンの顔から血色は消え失せ、唇は青くなり歯はガチガチと鳴っている。

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 17:50:57

    「どうしたの!?」

    脱衣所から出たニャアンの姿を見て、エグザベも顔を青くする。

    「やっぱり体調が悪いんじゃないか!? 病院に行こう!」

    「熱いので水風呂を浴びただけです。あなたもとっととお風呂に入ってください。におうんですよ、本当に」

    ニャアンは鼻先と口元を押さえ、少し顔をそむけた。
    せっかく冷やした頭をもう一度熱くしたくはなかった。

    「におう……!? ごめん! 気が回らなかった」

    エグザベはその仕草に少し傷ついたような表情を浮かべながらも、慌てて浴室へ向かった。

  • 75二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 17:52:24

    一人になったニャアンはベッドに潜り込むと毛布に身を包み、尻尾を抱きしめるようにして身体を丸めた。

    耳鳴りのように鼓動がうるさい。

    「(このまま寝ちゃいたいのに、うるさいし、寒い……!)」

    間もなく脱衣所の扉が開く音が聞こえた。

    「ニャアン、寝てるの?」

    「……」

    ニャアンからの応答はない。
    エグザベはベッドの上の毛布の塊を見つめる。

    黒い耳と尻尾がはみ出ていて、ずっとガタガタ震えている。

    「(なんかそういう生き物みたいだな……)」

    エグザベはそのようなことを考えながら、明らかに正常ではないニャアンに近寄る。

    ぎし。
    ベッドが沈み込む感覚に、ニャアンの身体がびくりと震えた。

  • 76二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 17:53:35

    エグザベはベッドの端に腰を下ろし、携帯端末を操作している。
    画面には獣人の治療に対応している夜間救急の一覧が映っていた。

    やがて目的の病院を見つけると、彼は耳と尻尾だけがはみ出した毛布の塊を抱き上げた。

    「!?」

    「病院に行くよ」

    エグザベの言葉に、ニャアンは手足をばたつかせる。

    「違います! 病気じゃないです! 離してください!」

    「暴れるな! 君は今、明らかに異常だ! 何かしらの病気を発症してたらどうするんだ!」

    「毎日病気の検査はしてます! ワ゛ャン部隊の人たちと一緒に! あなたもそうじゃないですか!」

    病院に連れて行きたいエグザベと、病院に行きたくないニャアンの押し問答が続く。

  • 77二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 17:55:24

    「はなせ! ノンデリ! におうんだよ!」

    『ワケワカ』になったニャアンは、暴言を吐きながら無我夢中で抵抗する。
    その拍子に、彼女の脚が彼の頬を強打した。

    「っ……!」

    エグザベは咄嗟に体勢を崩し、床に膝をついた。
    けれどニャアンを怪我させまいと、彼女の身体を抱えたまま離さなかった。

    「……ぁ、ぅ」

    図らずも彼に抱き寄せられる形になり、ニャアンは彼から発せられる『獣くさいニオイ』に理性がどんどん溶かされてゆくのを感じる。

    ニャアンの下腹部に奇妙な感覚が走る。
    入り口の鍵を開けられているのに、その奥が収縮するような奇妙な感覚。

    「ごっ、ごめん、なさい……は、はなして……」

    ニャアンのわずかに残った理性が、震える声で謝罪の言葉を口にする。

    その間も身体はどんどん熱くなり、目の前の雄が欲しくてたまらない気持ちが加速する。

  • 78二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 17:57:53

    「僕がノンデリで臭いと感じさせてるのは申し訳ないけど……君が心配なのはわかってほしい」

    エグザベの冷静な言葉。

    ニャアンの呼吸は荒く、額には汗が滲んでいる。
    あんなに寒かったのに、今は熱い。

    ニャアンの指先は、腿で蹴り飛ばしてしまった彼の頬に添えられる。
    それは無意識の行動だった。

    ニャアンの理性は完全に消え失せていた。

    まともな性教育を受けずに育った彼女の、人生で初めての発情期。
    そこへ思春期特有のホルモンの乱れや、長い間止まっていた女性としての機能を取り戻そうとする身体の変化が重なる。

    それらが絡み合い生まれた衝動は、通常の獣人が迎える発情期よりもはるかに深刻で、制御のきかないものとなっていた。

    「ニャアン?」

    頬に触れられ、エグザベの表情は困惑の色を見せる。

    「痛い……?」

    「これくらいは別に……」

    「よかった」

    ニャアンはそのまま彼にしがみつき、胸に顔を埋める。

  • 79二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 17:59:29

    一旦投下おしまい。
    次の投下は0時前後の予定です。

    みんなスケベがお好きなんですね。
    フフフ……

  • 80二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 18:57:35

    これは・・・メチャクチャ激しいドスケベの予感!

  • 81二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 19:40:18

    よっしゃ興奮してきたぞ!

  • 82二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 21:17:08

    発情期のニャアンにはきついにおいではあるんだよね
    それをにおうとは言っても臭いとは言えないのマジでやられちゃってる感あってよい
    それはそれとしてタイミングがちょっと的確過ぎるのが気がかりかもしれん
    キシリア様何か盛ったりしてないよね?
    猫ちゃん大好きすぎてちょっと繁殖におかしな手段を使ってしまうタイプのヤバい人じゃないよね?

  • 83二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 22:08:26

    薔薇(マタタビ)?

  • 84二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:16:37

    「……!?」

    エグザベの耳がぴんと立ち、尻尾が彼との意思とは関係なしに高く持ち上がり、激しく左右に揺れている。

    「ん……」

    ニャアンは頬を赤く染め、熱のこもった吐息を漏らす。
    彼女の耳は根元から下がり、尻尾はエグザベに巻き付く。

    獣くさい。
    嗅げば嗅ぐほど脳が痺れる感覚がする。
    だがこのニオイをニャアンは嗅がずにはいられなかった。

    「(もっとほしい……)」

    ニャアンは彼に全体重を預け、そのまま床に押し倒した。

    「!?」

    エグザベに跨った状態になったニャアンは、彼の上着を捲り上げた。

    「えっ!? ちょっと……!? こら!」

    エグザベの抵抗をものともせず、ニャアンは彼の上半身に頬をすり寄せた。

    ニャアンの細長いしっぽが、エグザベの暴れ動く尻尾と絡み合う。

  • 85二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:17:54

    風呂上がりだからだろうか、エグザベの肌はわずかに湿り気を帯び、その温もりがやわらかく吸い付くようだった。

    「なにこのニオイ……ほんとうに、おかしい。こんなニオイは、あなただけ……」

    ニャアンは程よく引き締まった彼の胸に鼻先を押し当て、深呼吸をする。
    背を反らせて腰を上げ、彼女の下腹部が彼の下半身に擦り付けられた。

    両腕はエグザベの胴に回され、身体は密着している。

    エグザベの体温が直に伝わり、彼の心臓の鼓動がよく聴こえる。
    やや激しい心音と、嗅がずにはいられないニオイに包まれながら、ニャアンの表情は次第にまどろんだものになってゆく。

    彼女の喉奥から声が漏れる。

    その声は、甘える子猫のようでもあり、
    飢えた雌猫の鳴き声のようにも聞こえた。

    「……?」

    ここでやっと、エグザベは彼女の異変の正体に気が付く。

  • 86二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:21:25

    一度息を呑んでから、口を開く。

    「もしかして、発情期……?」

    戸惑いを隠せないまま尋ねる。

    ニャアンは答えなかった。
    否、答えられなかった。

    彼女はエグザベにしがみついたまま、ぶるぶると震え出す。
    それは寒さによるものではなく、熱と羞恥によるものだった。

    「……ニャアン。明日は休めるようにスケジュールを調整しておくから。専門医に診てもらって、抑制剤を貰ったほうがいい」

    彼の声は驚くほど静かで、まるで壊れ物を扱うように優しかった。

    その優しさがかえってニャアンの胸を締めつける。
    熱くなった頬を隠すように、彼女は彼の胸に顔を埋めたまま声を絞り出す。

    「おさえられるの……? これ」

    ニャアンの視界が滲み、揺れている。

    「知らなかったの? 症状が強い人はみんなそうしてるよ」

    「あなたも……?」

    エグザベはその問いには答えない。

  • 87二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:23:02

    代わりに────

    「っ!」

    彼は半ば無理矢理身体を起こし、ニャアンを再度抱き上げ、ベッドに寝かせた。

    ニャアンが抵抗する間もなかった。

    エグザベはぐちゃぐちゃになった毛布を整える。

    「冷たい飲み物を取ってくるから」

    まるで負傷した仲間を介抱するような手際の良さだった。

    やがて水の入ったボトルをサイドボードに置き、背を向ける。
    彼の耳はわずかに後ろへ傾き、尻尾の先が落ち着かない様子で小刻みに揺れている。

    「今晩は我慢して。僕は官舎に戻るから、また明日の朝に迎えに来るよ」

    思わずニャアンは彼の袖を掴んだ。

    「やだ……」

    幼い子供のような喋り方。
    エグザベの尻尾が少しだけ下がり、左右に揺れて、彼の袖を掴むニャアンの腕にぱしぱしと当たる。

    だから尻尾を出したくないんだ。

  • 88二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:25:03

    エグザベは暫しの沈黙の後、口を開く。

    「君の今の状態は……君の意思じゃなくて、獣人としての厄介な性質だよ、訓練施設には僕以外にも異性がいる。だから、ちゃんとコントロールできるようにならないと君自身が危ない」

    エグザベはやや冷たく突き放すように言う。
    だがそこには隠しきれない焦りがあった。
    耳はピクピクと動き、尻尾は小刻みに揺れ続けている。

    「危ないなら……なおさら、離れるのはいや……」

    一方のニャアンは耳を垂らし、小さく震える声を返す。
    瞳には怯えと戸惑い、言葉の端々から恐怖と不安が滲み出ている。

    「危ないの意味を────」

    言いかけて、エグザベは言葉を飲み込んだ。

    危ないの意味を知らないのか、と。

    そう言ってしまえば、自分が彼女を“そういう対象”として見ていることを暗に示してしまうことになるのではないか。

  • 89二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:27:00

    彼は小さく息を吐き、視線を逸らした。

    きっと彼女は自身の生理現象に振り回され、困り果て、そして今は恐れているのだ。

    なんとなく先ほどの様子から、彼女にとってこの発情期は初めての出来事なのではないかとエグザベは考える。

    心の準備もないまま突然訪れた身体の異変。
    それをどう受け止めればいいか、彼女自身にも分からないのだろう。

    彼女は11のときに故郷を追われているはずだ。
    ただでさえ孤立しがちな難民で、しかも猫の獣人。
    彼女の近くに、都合よく同じ種族で同性の大人がいたとは考えにくい。

    誰も教えてくれる人がいなかった、だからわからない。
    ならば不安になるのも無理はない。

    普段は、髪と同じ色の艶やかな耳と尻尾を誇らしげに揺らしているニャアンが、今はそれらを垂らしてしおれている。

    赤く染まった頬が、いつもの大人びた彼女を、まるで小さな子供のように見せていた。

    エグザベは額に手を当て、考え込む。

    確かにこのまま一人にしておくのは心配だ。

    「……僕は居間のソファで寝てるから」

    彼なりの折衷案だった。

    ニャアンはしばらく迷ったあと、掴んでいた彼の服の袖をゆっくりと離す。
    エグザベの尻尾が一瞬、追いかけるように彼女の腕に絡みついた。

  • 90二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:28:00

    投下おしまい。
    次の投下は明日の夕方以降です。
    保湿とコメントありがとうございます。

    スケベならずで申し訳ないです。

  • 91二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:28:43

    乙です
    焦らされますねぇ…!

  • 92二次元好きの匿名さん25/10/14(火) 23:54:06

    まだスケベじゃないけどそれはそれとしてえっちだったな……

  • 93二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 00:11:35

    口は冷静でも尻尾は正直ですね

  • 94二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 06:43:01

    発情してる猫ニャアンめっちゃえっちだな

  • 95二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 13:56:16

    保湿

  • 96二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 16:54:31

    もしかしてこれエグザベ少尉の方が先に発情期来てた可能性あるか?
    ニャアンの方が充てられた可能性

  • 97二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 17:52:10



    一人になった寝室で、ニャアンは自身の下腹部に触れる。

    「(なにこの感覚……こわい)」

    エグザベに抱きかかえられた時から生じている違和感。

    下半身はが熱を帯びて、じんと痛むような感覚。
    疼いていて、切ない。

    これも発情期の症状なのだろうか。
    ニャアンは携帯端末を手に取り、猫の獣人の発情期について調べる。

    検索結果に並ぶ単語たちは、今まで全く性に触れてこなかったニャアンには刺激が強すぎた。
    羞恥を堪えながら、信頼できそうな情報源────婦人科系のクリニックが運営するWebページを開く。

    『通常、猫の発情期は繁殖のために神経や行動が活発化する周期的な期間です。猫は交尾によって排卵が起きます。発情が来ても交尾しなければ排卵せず、2〜3週間おきに発情期を繰り返すことになります。

     一方で猫の獣人は通常の人類と同じく、交尾をしなくても周期的に排卵が起こります。発情期は年におよそ2回、春と秋ごろに訪れ、この期間中は妊娠の確率がやや高まるというデータがあります。
     それ以外の時期については、人類とほぼ同じ生理周期を持ち、特別な差は見られません。

     発情期の症状によって日常生活に支障が出る場合は、抑制剤の服用が推奨されます。』

  • 98二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 17:53:33

    ニャアンは次に、抑制剤がない場合の対処法を調べる。

    『抑制剤が手に入らない場合は、できるだけ安静に過ごすことを心がけましょう。刺激の強い環境、例えば大きな音、強い香り、対人接触などはなるべく避けることが大切です。』

    そんなことは調べなくてもわかっている。
    もっと即効性のあるものを彼女は知りたかった。

    ニャアンの手があるWebページの前で止まる。

    『発情期における性的自己刺激行為の有効性』

    過去に科学誌に掲載された記事の抜粋だった。

    「(性的自己刺激行為って……アレのこと?)」

    ページを読み進めると、発情期に『性的自己刺激行為』つまり自らを慰める行為をすると、一時的だが発情期特有の症状が落ち着くらしい。

  • 99二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 17:55:07

    ニャアンは自らを慰める行為を知っているが、実践したことはない。
    どんどん熱を帯びる下腹部を誤魔化すように、身体を丸め、尻尾を自身に巻きつけ、震える指で『性的自己刺激行為』のやり方を調べる。

    「えっ……ヮ、ワァ……!」

    ニャアンは表示された画像を見て情けない声を上げ、思わず携帯端末を取り落とす

    それは安全性・健康面の観点から正しいやり方を教えるための簡素なイラストだったのだが、彼女には馴染みがなさ過ぎた。

    それでもニャアンは今の自分の状態をなんとかするために、携帯端末を再度手に取り一般的なそれのやり方を調べた。

  • 100二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 17:56:14

    女性の多くは、生殖器近くの多数の神経が集中している小さな感覚器官を刺激することで自分を慰めるらしい。
    その器官は生殖には直接関与せず、刺激を受けて肉体の興奮を高めるためだけに特化した場所である。

    そして、女性の性的な興奮は心理的・感情的要因の影響を強く受けるとされているようで、愛情・信頼・安心感などの要素や、実際の行為の状況を想像することで、スムーズにそれを行える。

    ニャアンは携帯端末をサイドボードに起き、大量の情報を脳内で処理する。

    「(とにかく、インターネットで調べたやり方で、刺激すれば……いいんだよね)」

    『ワケワカ』の状態になりながらも、ニャアンは恐る恐る自身のショーツの下に手を伸ばす。

    『生殖器近くの多数の神経が集中している小さな感覚器官』とやらの周辺を刺激し、潤滑剤となる体液の分泌を促すらしい。

  • 101二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 17:57:19

    「ぁぅ……」

    初めての感覚に、ニャアンの身体が跳ねるように震える。
    耳はピンと立ち、尻尾は毛を逆立てている。

    「(なに、これ……こんなの、知らない。私の身体にこんな場所があったの……?)」

    性教育をまともに受けられなかった弊害が、今この瞬間のニャアンに襲いかかっている。

    「(でも、これをしたら、発情期も、一時的に落ち着くんだよね……?)」

    ニャアンは先ほど得たばかりの情報通りに、震える右手で多数の神経が集中している小さな感覚器官の周辺に触れ、撫でたり揉んだりして刺激を与える。

    「くっ……ん……!」

    しばらくすると熱い、粘り気のある液体が溢れ出るのを感じる。
    それは指にも付着し、これが潤滑剤となる分泌液なのかと、ニャアンはすぐに理解する。

    「(次の段階に……)」

    ニャアンは顔を真っ赤にし、呼吸は絶え絶えに、目を硬く瞑ったままそれを続ける。

    濡れた指で、先ほどまで刺激していた場所の中心────ひだに覆われて普段は露出しないその場所を探り当てて、触れた。

    「〜〜〜〜〜〜〜っ!」

    声にならない叫び。

  • 102二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 17:58:30

    彼女にとって、その場所への接触は刺激が強すぎた。

    すでにニャアンの腰から両脚にかけては力が入らなくなっており、身体はびくびくと震えている。

    「(わかんない、わかんない……)」

    この後はどうすればいいのだ。
    ただでさえおかしい身体が、刺激のせいでさらにおかしくなっている。
    頭もぼんやりして、上手に考えることができない。
    そもそもこれはどこが終わりなのだ。
    経験どころか知識もニャアンには備わっていない。

    「(確か……『実際の行為の状況』を想像すると、いいんだよ、ね)」

    だがニャアンは実際の行為をしたことがない。
    実際の行為がなくても、何かそういう気持ちになれるようなものはないのか。

    ベッドシーツに顔を寄せると、彼のニオイをわずかに感じる。

    「ぇ……?」

  • 103二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 17:59:35

    多数の神経が集中している小さな感覚器官────刺激を与えられるためだけのその場所が、充血し、硬くなる感覚がする。

    「(こんなの……こんなのまるで……)」

    ニャアンは指でその場所を刺激した。

    「ぁっ……!」

    甘い声が部屋に響く。

    「(だめ、だめ、だめ、こんなのおかしい)」

    ニャアンはエグザベが使用していた枕に顔を埋める。

    けものくさい。
    おすのにおい。
    あの人のかおり。

    ニャアンの細く長い指が刺激を求めてその場所を擦り、圧する。

  • 104二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 18:01:00

    「ゃっ……! ぁっ……! ぅぁ……」

    枕でくぐもった、甘えた子猫のような声。

    「〜〜〜〜〜〜っ、!」

    ニャアンの身体に電流が走るような感覚がして、そのままへたり込む。
    彼女の耳と尻尾も力なく垂れ、それは自らを慰める行為を完遂したことを意味していた。

    ニャアンはエグザベの枕に顔をうずめたまま、はあはあと息を漏らし、肩と胸を上下させながら、少しずつ微睡に落ちていった。

  • 105二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 18:02:03

    投下終わり。
    次の投下は0時前後の予定です。
    一人ドスケベですね。早く真のドスケベに辿り着きたいです。
    保湿とコメント感謝です。

  • 106二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 19:21:34

    うお・・・ドエッチ・・・

  • 107二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 19:33:46

    冷水シャワーとか過去作のモチーフをちょっとだけ変えて挟んでくれるのがこのスレ主さんの上手いところで好き

  • 108二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 20:29:02

    >>99

    ちいかわ化草

  • 109二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 21:34:15

    慰めドスケベだいすき

  • 110二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 22:04:12

    子猫が大人の遊びを知っちゃったね・・・すごくエッチだね・・・

  • 111二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:16:39



    居間のソファに横たわったエグザベの表情は、どこか気まずくいたたまれないものだった。

    違和感は今朝会ったときから感じていた。
    ニャアンからどこか甘くて心地よい香りがしていたのだ。
    最初は、キシリア様から贈られたという薔薇の香りだと思っていた。

    だが、車内の空気が彼女の気配を帯び始めたとき、その香りが花のものではないとはっきり分かった。

    「(季節外れの発情期とは思いもしなかった)」

    自分の察しが悪かったし、配慮不足でもあった。

    彼女をジオン軍に勧誘して以来、護衛や送迎などでほとんど自分が付きっきりだった。
    異性の自分が常にそばにいる状況では、生理的な問題について誰かに相談することなどできなかっただろう。

    ワ゛ャン隊にも女性隊員はいるが、訓練漬けの生活ではそういった話をする余裕はないだろう。
    村長のキシリアなどはもってのほかで。

  • 112二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:19:40

    獣人にとって発情期は仕方のない生理現象であり、なにも悪いことではない。
    しかし恥じる気持ちはわかる。
    そして解消したいという欲求も。

    寝室から漏れ聞こえる艶を帯びた、だがどこか幼さを含む声。
    湿度を帯びた、むせ返るような甘い香り。

    エグザベの耳と尻尾は強張っている。

    彼もまた獣人であり、そうでない者に比べて聴覚も嗅覚は優れていた。
    だから意識せずとも寝室で今起こっていることを示す情報が彼の中に入り込み、悩ませた。

    エグザベの発情期は年に1回のみで、今はその時期ではない。

    しかし獣人は完全に獣と同じというわけではない。
    発情期以外も普通に性的な欲求を持ち、繁殖も可能だ。
    獣人にとっての発情期はただ生殖活動の成功率が上がるだけの期間なのだ。

    「(僕だって普通に男で……こういう匂いを嗅いだり、声を聞かされてると、変な気持ちになる)」

    かと言って耳を塞いでしまうのも何か違う気がして、エグザベは寝室から漏れ聞こえる猫の鳴き声を聞きながらぼんやりと天井を見上げる。

  • 113二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:20:49

    「(あの匂い……抑制剤で無くなるやつかな……)」

    血が騒ぐ感覚を、彼は持ち前の強い理性で抑える。

    「(今が発情期じゃなくてよかった……)」

    エグザベは大きく息を吐く。
    わずかに開かれた口の奥に、犬の獣人にしては鋭すぎる牙がちらりと覗いた。

  • 114二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:24:15



    昨晩、ニャアンは自分を慰める行為の後にそのまま眠り込んでしまった。
    朝になって寝室の扉を叩く音で目を覚まし、そのままエグザベに病院へ連れて行かれた。

    ニャアンが訪れたのは大きな総合病院で、そこには獣人専門の婦人科も備わっていた。

    問診と検査の結果、医師は11歳で初潮を迎えてから6年間、二度目の月経がない状態──── 続発性無月経の治療を急ぐ必要があると判断した。
    ニャアンは上記の治療のために専門家によるメンタルケアと栄養管理の指導も受けるように言われ、何種類かの薬の名前が書かれた処方箋が渡された。

    処方箋とジオン軍から交付された身分証を受付の女性に見せると、そのまま薬が手渡された。

    待合室のベンチに座ったエグザベは、ニャアンと目が合うと立ち上がった。

    「……終わりました」

    「お疲れさま」

    二人は病院を出る。
    車内に入ると、エグザベがミネラルウォーターのペットボトルを差し出した。

    「お薬、飲んじゃいな」

  • 115二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:27:14

    いつの間に買っていたのだろう。
    水滴のついたそれをニャアンは受け取り、処方薬の袋から発情期抑制剤を一錠取り出すと、その場で水と一緒に飲み込んだ。

    「……ありがとうございます」

    まだ昨日の余韻が残っていた。恥ずかしくて、どんな態度を取ればいいかわからない。

    「いや、僕も配慮が足らなかった。これからは定期的に軍医の人と話せるように手配するから」

    車はジオン軍ではなく、ニャアンの自宅へ向かう。

    車内には重い沈黙。

    「昨日は……ごめんなさい」

    ニャアンが切り出す。

    「ノンデリとか、におうって言ったり……ベタベタ触ったりして……」

    「別に気にしてないよ」

    エグザベはやや苦笑い混じりに答える。言われた言葉はともかく、触られたことに関しては今更とも思う話だった。

    「僕、そんなに臭い? 自分じゃわからないから、申し訳ない」

    「あなたが謝ることじゃないです……」

    ニャアンは小さく首を振り、息を整える。

    「くさい、というよりも、におうんです。獣のにおいが」

  • 116二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:28:51

    一呼吸置いてから、ニャアンが問いかける。

    「エグザベ少尉は、犬ではないですよね」

    エグザベの視線は前に向けられたまま、表情からは感情は窺い知れない。

    「犬ってことにしておいた方が、色々と便利で」

    その声には抑揚がなく、まるで他人事のようだった。

    「いつから?」

    「故郷を追われてから。元々そんなに違いがあるわけでもないし、誰も疑わなかった」

    「……初めて会います。狼の獣人」

    「群れで生活するからね。僕も故郷にいたころはそうだった」

    「今は一匹狼ですか」

    「群れの中の犬だよ」

    車がニャアンの家の前に止まる。

    「じゃあ、今日は安静にしてて。僕は基地に行くから」

  • 117二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:31:09

    エグザベが助手席に視線を向けるが、ニャアンはすぐには動かない。
    彼女は静かに身体を傾け、わずかに露出する彼の首元へ顔を寄せた。

    「私は好きです。このニオイ」

    その言葉に、エグザベの肩がわずかに揺れる。

    「君は嗅覚が鋭いんだね」

    エグザベの返事はややズレている。

    「……今晩も、ちゃんとこっちに来てくれますか」

    ニャアンは目を伏せ、小さく囁く。

    「いや、官舎で過ごすよ」

    「病院で処方されたお薬を、信用していないんですか」

    「そういうわけじゃ……」

    彼が言葉を濁すと、ニャアンは続けた。

    「私一人だと……寂しくなって勝手に外を出歩くかもしれません」

    自分専用の枕がなくなると困る。
    お気に入りのおもちゃのしっぽも。
    ニャアンは、今夜も彼に家へ来てもらうために嘘をついた。

  • 118二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:32:34

    エグザベは眉を顰めて少し黙ってから、答える。

    「……僕は居間のソファで寝るから」

    その言葉を聞くとニャアンはやっと車から降り、身を屈めて彼の顔をまっすぐ見た。

    「待ってます」

    「……わかった」

    ニャアンは彼の車を見送ると、ふぅ、と小さく息を吐いた。

    抑制剤が効いているのか、昨日ほどひどくはないが、やはり身体は熱に浮かされている。
    下腹部が疼くあの感覚は、いまだ消えていない。

  • 119二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 23:33:46

    投下終わり。
    次の投下は明日の夕方以降。
    過去のドスケベSSも読んでくれててうれしいです。
    フフフ……

  • 120二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 00:04:06

    動物が生理現象に動かされるのはしょうがないよねフフフ…

  • 121二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 00:25:56

    エグザベはニャアンを雌として見ないように努めて眼を逸らしてる感はあるんだがニャアンの方はまだ無自覚でもエグザベのことを完全に繁殖相手として見てしまった感あるなあ
    『あなたが今晩来てくれないと外を出歩くかも』は『今晩一緒に過ごしてくれないと発情した状態で他の雄に近づきますよ、いいんですか?』っていう雄の縄張り意識や独占欲をくすぐりに行く発言だよね
    枕だおもちゃだと言ってて自覚なくても完全にそういうことすぎてえっちだ……
    好きな匂いと言っちゃったのもアウトだ……

    ?????『そういえば、いい香りがする人とは遺伝子から相性がいいって聞いたことがあるな』

  • 122二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 07:37:17

    保湿

  • 123二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 13:38:31

    そういえばニャアンが帰った家にはエグザベくんが眠ってたソファーが残ってるんだな……
    大丈夫か?

  • 124二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 14:40:10

    スケベ展開が気になる
    一方で(「ワ゛ャン」てどう発音するんだ……?)ってそっちも気になってる

  • 125二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 17:43:02



    グラナダ村を走るエグザベの車。
    窓は換気のために全開にされている。

    「(気持ちを切り替えなければ)」

    彼が向かっているのは軍の訓練場ではなかった。

    自動車の使用許可が降りていてよかった。
    ニャアンに感謝を伝えるべきだろうか。

    テラフォーミングされた月で“環境保全”を掲げるグラナダ村の暮らしは、軍事以外は不便が多かった。
    何かにつけて時間を取られ、自由に使える時間はほとんどなかった。

    自然豊かな村の景観には不釣り合いな、無機質な灰色の建物の前でエグザベは車を止めた。
    中に入り、受付カウンターでエグザベがIDカードを提示すると、職員は無言で端末を操作し許可証を手渡した。

    彼はそれを首にかけると隣の棟へと向かう。

    隣の棟────患者棟。
    そこで彼は防護服を身に着け、人工光に照らされた無機質な通路を進んでいく。

  • 126二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 17:44:19

    厚いガラスの向こうで、いくつかのチューブに繋がれ、人工呼吸器をつけた青年が血の気のない顔で眠っている。

    「……ミゲル」

    ここはエグザベの卒業したスクールの校長────フラナガン博士の管理する医療施設だった。

    キシリアのシークレットサービスに連行された直後、ミゲルは例の新型の狂犬病を発症したらしい。
    取り調べが始まる前に錯乱状態に陥り、意思の疎通が不可能になった。

    「(……そんな都合の良いことがあるか)」

    まだ公式には発表されていないが、どうやらこの新型の狂犬病は宿主特異性が高く『犬の獣人』しか発症しないらしい。

    犬の近縁種であるオオカミ属の獣人でさえ、この病の影響は受けない。
    感染力も非常に弱く、犬の獣人同士が同じ空間で生活していても発症例はほとんどない。

    だが一度発症すると、錯乱状態に陥った末に意識不明の重体となる。
    そしてこれまでに目を覚ました者は一人もいない。

    「(ジオンの技術力なら、こういった感染症くらいは作れるだろうな)」

    もしこの感染症が人為的に作られたものだとしたら。

  • 127二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 17:46:18

    例えばジオン公国総帥のギレン・ザビに忠誠を誓う学者が開発した感染症が、間者を介し、ジフレドのパイロット候補たちを次々と意識不明の重体に追い込んでいるのだとしたら。

    そして実行犯であるミゲルが“口封じ”を受けたのだとしたら。

    ミゲルはキシリアのシークレットサービスに連行された。
    つまりシークレットサービス内部にギレン派のスパイがいた?

    事件を“一人の狂人が起こした事件”として処理するために?

    エグザベはもう一つの可能性を考える。

    キシリアの配下が、ミゲルに“余計なこと”を言わせないために手を下したとしたら。

    「(不敬か……それは)」

    ミゲルの言葉が思い出される。

    『あれは悪魔の機体だ』

    ジフレドを見ながら彼は言った。

    『君の人間の心を守ってあげるよ』

    ニャアンに銃を向けながら放たれた言葉。

    ミゲルがこうなってしまった以上、その真意を知る術はない。

    ならば自分で調べるしかない。
    少なくとも自分の知る彼は同期であり友人たちを害したり、何も知らない女の子を手にかけようとする人間ではなかった。

  • 128二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 17:48:43



    「おかえりなさい」

    夜。
    ニャアンは訓練を終えたエグザベを出迎える。

    「お風呂に入ってください」

    「……やっぱりにおうの?」

    「病気のにおいがします」

    ニャアンが少し顔をしかめながら言った。

    「午前中に行った病院とは、別のにおいです」

    その言葉に、エグザベの脳裏を昼間の光景が過ぎる。
    多数のチューブに繋がれ、人工呼吸器をつけられて眠るミゲルの姿。
    防護服の上からでも、医療施設特有のにおいがついてしまったのだろうか。

    エグザベは素直に浴室へ向かった。

  • 129二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 17:50:12



    エグザベがシャワーを浴びて居間に戻ると、テーブルの上に湯気の立った出来立ての料理が並べられていた。

    「夕ご飯、食べますよね」

    「作ってくれたの?」

    「……勘違いしないでください、キシリア様に振る舞う料理の練習ですよ」

    具だくさんの白いスープが入った皿からはココナッツとスパイスの香りが漂い、どこか異国の雰囲気を感じた。

    「エスニック、食べられますか」

    「初めて食べるかも。でも美味しそうだ」

    エグザベはそう言って席に着いた。

    「本当は鶏肉のスープなんですけど、キシリア様はお肉よりお魚が好きらしいので、鮭にしました」

    二人は食事を始める。

  • 130二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 17:51:17

    「どうですか、お口に合いますか」

    「うん。すごく美味しいよ。ありがとう」

    ニャアンの耳がぴくりと動き、尻尾がゆらゆらと揺れた。
    表情こそ乏しいが、安堵の様子が滲み出ていた。

    「よかったです。ところでエグザベ少尉はレバーなどは食べられますか?」

    「普通に食べられるけど、どうして?」

    「今後のメニューの参考に」

    「キシリア様はあんまりレバーを食べるイメージはないな」

    「……」

    ニャアンはじとっとした目になり、エグザベを見つめた。
    耳はわずかに倒れて、尻尾も動きを止めて固くなっている。

  • 131二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 17:54:21



    「(なんか……ソファからいい匂いがするな)」

    ソファに横たわったエグザベは、わずかな違和感を覚えながらも目を閉じる。

    ────しばらくして。
    ぎぃ、と寝室の扉がゆっくりと開く音がした。

    扉の隙間から、ニャアンがそっと顔をのぞかせた。
    エグザベが眠っているのを確認すると、足音を立てないようゆっくりと彼に近付いた、

    抑制剤が効いているから、昨日みたいにはならない。
    しかし胸の奥にぽっかりとした空洞が残っている。

    ニャアンはエグザベにかかっている毛布の隙間にゆっくりと身を滑り込ませた。
    覆い被さる形になると、次は彼の胸に頭を擦り付ける。

    「(このにおい……やっぱりすき)」

    ニャアンの尻尾が彼に巻き付き、耳は軽く伏せられて安心した様子だった。

    「(ちゃんとお薬飲んでるから、大丈夫)」

    胸はちょうどいい枕で、尻尾は最高のおもちゃ。
    それにこのにおいは自分を夢中にさせて、理性を溶かしてくる。

    エグザベ自体も嫌いではない。
    この人は誰にでも優しいのだが、ニャアンは自分に下心なしに優しくしてくれる人は好きだ。

  • 132二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 17:55:45

    投下おしまい。
    次の投下はいけたら0時前後。

    コメントと保湿ありがとうございます。
    早くスケベに辿り着きたいです。

  • 133二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 18:10:09

    すきなにおいを我慢できないニャアン、おおかみさんに自ら食べられに行くネコチャン

  • 134二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 18:47:09

    乙ですこの世界はシルバニア…シルバニアかなあ?

  • 135二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 19:00:16

    ミゲル自業自得とはいえせっかくしばかれるだけで済んでたのに…

  • 136二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 22:27:13

    すっかりニャアンがエグザベ君を「自分専用の何か」と認識してしまっている

  • 137二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 22:53:16

    誰にでも優しいエグザベ君だけど番になれば自分専用の繁殖相手にできるね

  • 138二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:00:08

    なんかこの状態だといわゆるぬいぺ問題になりそうな気もするんだけど当のニャアンが心はともかく身体はやる気満々なんだよな……

  • 139二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:14:14

    今まで────サイド6で運び屋をしていた頃は、ニャアンは自分の感情を上手に表現することができなかった。
    彼女なりに頑張っていたつもりなのだが、いつも空回りばかりしていた。

    初めての発情期は、良くも悪くも彼女に大きな影響を与えた。

    今の彼女は以前よりもずっと自由に、感情のままに生きている。
    ただし、その“自由”が向けられるのはエグザベただ一人だけだった。

    すり。

    彼の胸に、自分の匂いを残すように頭部を擦り寄せる。
    その行動は、猫の所有欲でも支配欲でもなく、もっと人間的な────“好き”という感情によるものだった。

    少なくとも彼女は今、猫としての本能ではなく、ニャアンという一人の人間として、目の前にいる男に触れ、求めている。
    少なくとも本人はそう信じている。

  • 140二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:15:15

    すり。
    今度は下腹部が彼の腰に触れる。

    すり、すり……
    艶かしくニャアンの腰が揺れる。
    彼の腰に巻きついた猫の尻尾がきゅっと締まり、まるで“もう離さない”と訴えているようだった。

    それは本当にニャアンの意志なのか、本能によって為されている行動なのか、本人にしかわからない。

    エグザベの耳がわずかに後ろへ倒れ、尻尾の先が落ち着きなく揺れる。

    「ニャアン……自分のベッドで寝なよ」

    「ヮッ!」

    ニャアンは目を大きく見開き、反射的に身体をびくりと跳ねさせた。
    耳はぴんと立ち、尻尾が一瞬でふくらむ。

  • 141二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:18:27

    「起きてた、の!?」

    「いや……半分寝てたけど」

    エグザベがゆっくりを目を開ける。

    「寝不足になっちゃうよ」

    やや眠気混じりのエグザベの声。

    彼に跨ったままのニャアンは、どこか落ち着かない様子で身をすくめ、眉を下げながらエグザベを見下ろしている。

    「一人で寝るのは……不安になるから」

    掠れるような小さな声。

    「今は我慢してくれないかな」

    ニャアンから発せられる、やや甘くしっとりとした香り。
    石鹸や洗剤の類ではなく、彼女自身から発せられるにおいだった。
    抑制剤でも、彼女から発せられる発情期特有のにおいは制御しきれなかった。

    本来であればエグザベがこの程度のにおいに反応することはない。だが昨晩の出来事が頭をよぎり、余計な考えが浮かんでしまう。

    エグザベの尻尾がわずかに動き、彼は慌ててそれを脚で押さえつけた。

    「どうして……?」

    ニャアンがエグザベに顔を寄せた。
    金色の瞳が潤みを帯びて揺れている。

  • 142二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:19:31

    「ちゃんと抑制剤も飲んでる……一緒に寝るだけでいいのに」

    その声には焦りが混じっている。
    しかし言い終えた後、彼女の表情がふと冷め、そのまま顔が伏せられた。

    「もしかして……イヤでしたか?」

    抑えた声。
    耳と尻尾はしょんぼりと垂れ下がっている。

    「そういうのじゃないよ」

    低いが、戸惑い混じりの声。
    どう言葉を選んでも誤解を招く気がして、『僕が困るんだ』とも言えなかった。

    「じゃあなんなんですか」

    ニャアンは眉を顰める。
    意地になったように、彼の胸へもう一度顔をうずめた。

    「わっ! こら、」

    すー、はー、とニャアンの呼吸音が聞こえる。

  • 143二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:20:34

    「あなたが悪いんですよ、こんなにおいを撒き散らして……今までどれだけの獣人の女性を変な気持ちにさせたんですか」

    「においに関しては自分でどうにかできないんだよ。それに僕はそんなこと……」

    エグザベの声が震えている。

    「いいじゃないですかこれくらい、減るものじゃないし」

    やや投げやりな言い方。
    その一言で、エグザベの中で堪えていたものが決壊する。

    「そういうことをやってると、君はいつか痛い目を見るぞ」

    叱責ではなく、良識ある大人としての忠告だった。
    エグザベは上体を起こし、ニャアンの両肩を掴んで真っすぐに見つめる。

    ニャアンは目を丸くしている。

    「僕はまだいいよ……今は発情期じゃないし、君の状態をわかってるから」

    一拍おいて、彼は続けた。

  • 144二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:22:27

    「そもそも人間は、生物学的には一年中発情期みたいなもの。獣人だって本来は一年を通して繁殖できる。一年に数回だけ起こるこの“発情期”はバグみたいなものだ」

    エグザベの視線が少しだけ厳しくなる。

    「つまり何が言いたいかというと……君がそんなふうに気軽に近づいてたら、いつか襲われるぞ、ってこと」

    「ェ……?」

    ニャアンの顔がみるみる赤くなる。

    「襲われるって……あなたに?」

    エグザベは言葉を詰まらせる。
    彼の耳は左右で違う動きを見せ、尻尾はぎこちなく揺れていた。

    「ゼロじゃないよ……可能性は」

    ニャアンはわずかに肩を震わせた。

    「気軽に近づく、を続けてたら、あなたはいつか私を襲うんですか?」

    震える声の中には恐れと同時に、どこか熱が含まれていた。

    「襲うだろうね」

    ぶっきらぼうな返答。
    気持ち悪い。とでも吐き捨ててくれて構わない。
    エグザベはニャアンに一刻も早くこの場を離れてほしかった。

    「いつかって、いつですか」

  • 145二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:24:15

    ニャアンは離れようとせず、質問を続ける。

    エグザベは意を決したように、ニャアンの肩を掴んでいる手に力を込めた。

    「一生来ないようにするから、」

    そのまま無理矢理ニャアンを退かせる。

    「!」

    ニャアンはソファに座らされ、エグザベは立ち上がった。

    「やっぱり僕は官舎で過ごすよ」

    彼はニャアンを見下ろす。

    「君が夜に不安な気持ちになるなら……ちゃんと専門家に相談できるようにするし、なんならワ゛ャン隊の女性隊員に……」

    ニャアンは力なくソファから滑り落ち、そのまま床に座り込む。
    耳も尻尾も垂れ下がり、しおれていた。

  • 146二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:25:58

    「……襲ってもいいから、ひとりにしないで」

    小さな子供が、甘えるような言い方。

    「君は……」

    襲ってもいいから、など。
    本当に意味をわかって言っているのか。
    エグザベは眉を顰める。

    「ここは安全だよ。もうあんな出来事は起こらないはずだし、君の家の周辺には警備がついてる」

    「そういう不安じゃ、ない」

    ニャアンの声には涙が含まれている。

    「寂しい、です」

    ぽつりと彼女が呟く。

    「発情期だからとか、そういうのじゃなくて……ひとりが、怖くて、寂しいだけ……」

    言葉は途切れ途切れで、声の端が震えていた。

  • 147二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:27:43

    寂しい、か。

    エグザベの心がわずかに揺らぐ。

    目の前の少女は今にも壊れてしまいそうだった。
    親に置き去りにされた子ども、あるいは捨てられた子猫のようで。

    もし自分の存在で、彼女を少しでも救えるのなら。
    それがエゴだとわかっていても。

    エグザベは自嘲気味に息を吐く。

    自分はなんて、流されやすい人間なのだろう。

    彼はしゃがみ込み、ニャアンと同じ目線になる。

    「距離は保つと、約束できる?」

    ニャアンは頷く。
    耳は垂れたままだが、尻尾はゆっくりと左右に揺れ始めていた。

    エグザベはソファの端に腰を下ろし、自身の腿をぽんぽんと叩いた。
    その仕草が『ここに頭を乗せて』と言っていた。

    ニャアンは一瞬だけためらいを見せたが、すぐに彼の膝に頭を預けた。
    エグザベは彼女に毛布を掛けてやる。

  • 148二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:30:26

    「おやすみ、ニャアン」

    「……おやすみなさい、少尉」

    ニャアンは瞼を閉じる。

    エグザベは背もたれに体を預け、深く息を吐く。
    無意識のうちに彼の尻尾が動き、そっとニャアンの体に触れるように覆いかぶさった。

    その感触にニャアンの両耳がぴくぴくと動く。
    彼女は半ば眠ったまま、エグザベの尻尾に頬を擦り寄せた。

    「ん……」

    ニャアンは安心したように、小さく息を吐く。
    だんだんと彼女の呼吸は落ち着き、静かな寝息へと変わった。

    「(この子はただ寂しいだけなんだ)」

    エグザベは天井を見上げる。

    「(身体だけが成長してしまっただけで、心はまだ小さな子供なんじゃないか)」

    穏やかに眠る彼女を起こさぬよう、エグザベはほとんど身動きを取らないまま朝を迎えた。

  • 149二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:31:46

    投下おしまい。
    次の投下は明日の夕方以降の予定です。
    保湿とコメントありがとうございます。

    ちょっと俺ナガン博士呼んできます。
    フフフ……!

  • 150二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:37:31

    クッ子猫が雌猫になるところを見たい自分がちょっと申し訳ない…

  • 151二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 23:53:07

    確かにニャアンが子供子供してるのでまだそういうことしたら駄目だろ……!みたいな気分になる
    でもニャアンの方の発情期が終わるまでに最初の一回を致せるか心配になってきたぞ……!

  • 152二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 01:17:32

    エグザベくんの発情期までお預けかな?

  • 153二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 06:03:26

    保湿

  • 154二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 06:25:14

    >>124

    "Cthulhu"みたく、人間は実際に発音できない音とかもしれない

  • 155二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 14:46:41

    保湿

  • 156二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 14:47:37

    ザベ吸いする子猫ニャアンかわいいかわいい
    よく耐えたな良いぞザベという気持ちと
    抱けぇー!!という気持ち

  • 157二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 15:44:58

    子猫の顔と雌猫の顔がコロコロ変わるのほんとずるい
    実際抱くまでどっちかわからないシュレディンガーの化け猫やめなさい

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